はいおそらく、これからの試合は美智さんのお姉様たちに有利に進むと思います

今の騒ぎが噂になって他の選手たちは、工藤遙花や剣道マリアは大したことがない相手だと油断してくれるか

わたくしが姉上にして差し上げられることはこれぐらいですから

ああ、気合いが入ったと思うぞ良くやった美智

オレは、美智を褒める

オー、Darling、ミチ、ミンナ来てくれたノネっ

と控え室の一角で、バッタリとイーディに会う

イーディはスポーツブラと身体にフィットしたショートパンツだけのへそ出し姿で

バニラのアイスクリーム・バーを咥えていた

イーディ、そんな格好で試合前にアイス食って腹が冷えたりしないのか

平気ヨRelax、Relaxネっ

本人は、ケラケラ笑っている

あここに居たわ

居たわよ例の外人の子っ

同じピンクのトレーニングウェアを着た出場選手らしい女性たちがイーディを見つけて、集まって来る

フジワラさーん、こっちです居ましたぁっ

とピンクのウェアの女性集団が、あっという間にオレたちを取り囲む

ああこの娘か

と同じピンクのウェアを着ているけど、他の人たちよりも背が高くて、髪をオールバックにしている女性がやって来る

はい、フジワラさんこの子ですっ

頭にタオルを巻いた20歳前後の選手が、イーディを指差した

アー、このコはアタシが午前中の予選で倒したコなのネ

イーディは、アイスを舐めながら自分の指差す選手を見て笑う

その後、どうネ元気か

タオルの選手は

元気なわけないでしょっ

酷く怒っている

フジワラさん、あたしこの子に反則されて負けたんですっ

イーディが反則

あたしもですあたしも反則されてその子に負けました

別のピンク・ウェアの選手もそう言う

ああ、アンタ予選の2回戦の子ネ

イーディは、笑っている

ウチの所属選手だけじゃなくってあなたと午前中に対戦した選手は、みんな反則されたって言っているのよ

ということだからさ、悪いんだけれどウチの子が、そう言ってるんだからちょっと、大会本部まで来てくれないかな話を聞かせて欲しいから

フジワラと呼ばれたオールバックの長身の女性選手はかなり不機嫌な表情で、イーディにそう言う

アンタ、誰ネ

しかし、イーディは、ヘラヘラ笑って彼女に尋ねる

おい、コラテメェ、フジワラさんを知らねえのかよっ

ふざけたことを言ってるんじゃないよっ

格闘技やってて、フジワラさんを知らねえはずがねーだろ

バカにすんじゃないわよっこのバカ外人

ああ同じピンクのトレーニングウェアを着た女性たちが、どんどん集まって来る

どうやら、かなり大きな格闘技団体の人たちらしい

おいお前たちは黙ってな

フジワラは、ピンク・ウェアの集団に言う

知らなきゃ教えてやるよ

フジワラはイーディを睨んで

ブラジリアン柔術のレミー藤原だ欧州藤原氏っていう団体のトップをやっている

ブラジルなのに欧州

イーディはレミー藤原にニヤッと笑う

ソンデアタシがどんな反則をしたって言うノネ

イーディは、アイスを持ったまま笑顔で尋ねた

このヤロー、ふざけやがってテメー、スタンガンか何か持っているだろう

タオル頭の選手が叫ぶ

そうよっあたしも試合中にビリビリ身体が痺れたわっ

もう一人のイーディと予選を戦った選手もそう証言する

闘志子は、トシコなのでⅩ死虎《トシコ》とかにしようかと思ったのですが

週刊プロレスの記事を読んだらやっぱりマズイと思って、止めました

時事ネタとしても良くないですし

ネットにアップされている動画を観てもプロレスになってないですから

1192.ファイティング・オン / 美しきライバルたち

・工藤遙花/18歳美智の姉去年の女子高生空手チャンピオン調子に乗りやすい

・剣道マリア/17歳元・天童乙女記憶を操作されて別人になった

・レミー藤原/29歳ブラジリアン柔術団体欧州藤原氏のトップ

+寧、メグ、美智

どう考えてもおかしいわよっあんたとの試合中に身体が感電したみたいにビリビリ痺れたんだからっ

絶対に何か反則してるはずよっ

スタンガンか何か隠しているんでしょっ

午前中の予選でイーディと対戦した女子選手たちを含むお揃いのピンクのトレーニングウェアを着た女子選手たちが口々にそう主張する

ウチの子たちが、ここまで言ってるんだからさ悪いけれど、大会本部まであたしと一緒に来てもらうよ

やはり他の子たちと同じピンクのウェアを着たオールバックで、背の高い選手ブラジリアン柔術の団体欧州藤原氏を主宰しているというレミー藤原が、イーディに言う

アタシが反則シテイルっていう証拠はあるノカ

イーディは、いつもの笑顔でアイスを食いながら、レミー藤原に言い返した

だ、だってあたし、あんたに触れられた瞬間に身体がビリビリしたんだからっ

あれで身体が痺れたから、あんたに負けたのよっ

あんな反則を食らわなかったら、あたしたちがあなたみたいな子に負けるはずがないんだからっ

絶対に反則よあんたみたいな子は、失格になるべきなんだからねっ

十数人はいるピンク・ウェアの欧州藤原氏のメンバーたちはイーディが反則したと確信しているらしい

反則だって

あの外人の子が反則してたらしいよっ

うわわわこっちでも、ヤジウマが集まって来てしまった

しかし、イーディはアイスバーを咥えたまま

アタシ、この格好ヨどこにスタンガンなんて仕込むノネ

ニヤニヤ笑いながら言う

電気ウナギとかジャナインダカラアタシの手から電気ナンテ出ないヨ

上は試合用のスポーツブラ1枚下半身も、身体にピッタリと貼り付いた短パンだけしか身につけていない

これじゃあスタンガンみたいな機械を隠していたら、すぐに判る

で、でもビリビリきたんだからっ

絶対にあんた、何かやってるのよっ

大会本部に提訴するから、あんたは黙って付いて来ればいいのよっ

欧州藤原氏の女子選手は、断固としてイーディを連れていこうとする

そうだな申し開きは、本部でしてもらおうほら、あたしたちと来るんだっ

レミー藤原は、イーディの腕を掴もうとする

その瞬間ッ

イーディが、レミー藤原の手を払い除けたのだが

レミー藤原は、ビクビクッと身体を痙攣させる

感電したミタイって言うノハ、今みたいなコトカ

デモ、電気じゃナイネ痺れ方が違うノヨ

レミー藤原は、痺れた自分の腕を驚いた表情で、みつめて見る

手を開いたり閉じたりして麻痺の状態を確認しているが

大丈夫ヨコレカラ試合の人には余計なダメージは与えないネ次の試合までには、その痺れは消えるヨ

ふざけんなっレミーさんの身体を何だと思ってるんだッ

スーパー無制限クラスで優勝を狙っている人なんだよっあんたのせいで、体調を崩したらどうするんだよっ

ていうか、あんたやっぱり何か反則しているんだろっ

レミーさん、大会の係の人に訴えましょうよっこいつ、やっぱりヤバイですって

そうですよ試合前のレミーさんにこいつはケガさせようとしたんですからっ

いやレミー藤原の方が、イーディの腕を無理矢理掴もうとしたんだけれど

欧州藤原氏のメンバーたちは、どんどん興奮して大声で騒ぎ出してしまっている

こりゃちょっとマズいぞ

人数が人数だしなぁ

へえ、こんなレベルのことで訴えたりするんだ

とヤジウマたちの向こうから、聞き慣れた声がした

はい、ちょっとゴメン通してもらうよ

人をかき分けて現れたのはマルゴさんだった

な、何だあんたは

レミー藤原が、マルゴさんを睨む

あたしはその子の関係者だマルゴ・スタークウェザー・クロモリチーム・クロモリのリーダーってことになっている

何かさ自分たちが知らない技を使われたら、すぐに反則されたとか言い出す、頭の悪い子たちがいるって聞いたから、顔を見に来たんだよ

な、何なの、この人

あたしたちのことバカにしてるの

欧州藤原氏を舐めてんのかよ、こいつっ

ピンクのトレーニング・ウェアの集団は怒りの矛先をイーディから、マルゴさんに変える

止めなあんたたち

レミー藤原が自分の団体の選手たちを抑える

今のが技だって言うのかよ

不機嫌な顔で、マルゴさんに尋ねる

まるで電気に痺れたみたいに、ビリビリってなる技のことですわよね

オレたちの横から武闘派お嬢様の栗宮素子さんが、前に出る

まるで大正時代の女学生のような袴姿の美少女の登場に周囲の眼が、一気に栗宮さんに集中する

特に珍しい技ではございませんわわたくしにも使えますし

栗宮さんは、自分の脇の警護役御厨くるみさんを示す

うちの御厨にも使えますわ御厨皆様にご挨拶なさい

はい御厨くるみ、14歳でございます

主とお揃いの矢がすりの袴姿のほんわかとした可愛い女の子がペコリと頭を下げる

あなたとあなたとあなたは今日はもう、試合は無いのでございますね

ピンクのウェアの集団の中から、特に騒がしかった3人の女性選手を指差す

予選敗退ですから

今日はもう、試合は無いわよっ

3人はムスッとして答える

そうですかそれでは失礼致します

御厨さんの身体が、ゆらっと揺れた

えいっ、えいっ、えーいっ

まぐぇぅ

ホゲピョーン

3人の女性選手は御厨さんに身体を軽くタッチされただけで

全員、その場に崩れ落ちる

な、何をしたッ

レミー藤原が、御厨さんに叫ぶ

ですからこれは、こういう技なんです

反則などではございませんわ見ての通り習得すれば、14歳の娘にも使える技ですから

御厨さんと栗宮さんが笑顔で答える

どういう技なんだって聞いているんだよっ

レミー藤原は、憎々しげに栗宮さんたちに問うが

あらそれをお尋ねになるのですか

呆れ顔で、栗宮さんが言った

相手の技は、対戦者が自ら見極めるべきものなのではありませんか

御厨さんが、やんわりとそう言う

レミー藤原さんは、スーパー無制限クラスですわねあたしも、そうなんだけれど

マルゴさんは、レミー藤原に

もちろん、あたしもイーディの技は使えるからレミーさんとの対戦の可能性がある以上、技の説明なんかして手の内を拭かすようなことはしませんよ

マルゴさんは、スーパー無制限クラスで優勝するのが今日の目的なんだから

思い出したあんた、スポーンサー推薦で無理矢理スーパー無制限クラスにエントリーしてきたゴリ押しの外人だね

レミー藤原は、マルゴさんを睨んでそう言う

ゴリ押しかどうかは、実力を見てから言って欲しいなぁ

マルゴさんは、笑顔のままそう答えた

何にしたってさ格闘技の試合は、リングの上だけで決着付けるべきものでしょ試合が終わった後でさっきのは反則に違いないとか言い出すのは、かなりカッコ悪いことだと思うけれどあなたの団体では、そうじゃないみたいですね

あんたあたしにケンカを売ってるのか

レミー藤原は、低い声で言う

まさかそんなつもりは無いですよ

ソウヨアタシたちは、 弱い者イジメはしないノネ

イーディがさらに煽る

弱いコにケンカを売ったりするナンテ、馬鹿馬鹿しいヨ意味が無いシ

あたしたちのどこが弱いって言うんだいっ

レミー藤原が、激高して喚く

そういうところだと思うわよ

また新しい人物が現れた

身体に密着した黄色いトラックスーツを着た金髪の女性

レミーさん、自分の門下生が可愛いのは判るけれど身内の証言だけで、多人数で対戦相手のところに押し掛けて、吊し上げようとするとかどうかしていると思うわよ

聖子

レミー藤原は、黄色いスーツの女性を見て呟く

ましてや一目で、この人たちの実力を見抜けないんてね

黄色いスーツの女性は、マルゴさんやイーディたちにニコッと微笑む

創作マーシャルアーツのルドルフ聖子よゴールデンバウムっていうジムをやっているわ

お名前は知っていますルドルフ女帝さんですよね

マルゴさんは、この人のことを知っている

それはマスコミの人がわたしに付けた仇名よあたし自身は、女帝とか言われるのは心外なのよね

格闘技界で女帝と呼ばれるような実力者なんだな

初めまして、マルゴ・スタークウェザー・クロモリです

2人は挨拶する

うふふ、2人ともいいわね活きの良い子が参戦してきて、わたし、とても楽しみよマルゴさんはわたしと同じスーパー無制限クラスで、イーディさんは一番軽いクラスなのよね

そうダヨ

イーディが笑顔で答えると

晴子こっちにいらっしゃい

ルドルフ聖子さんに呼ばれて1人の少女が前に出て来る

やはり身体にぴったりなトラックスーツを着ているけれど晴子という子のスーツの色は黒だった

小柄で細身だが筋肉は鍛えられ、引き締まった肉体をしていることは薄い布地越しによく判った

うちの晴子よイーディさんとは、良い遊び相手になると思うわ

緑川晴子です

礼儀正しく、黒スーツの少女は頭を下げた

こらこら、晴子ちゃんあなたには、わたしが素敵なリングネームを付けてあげたでしょ

ルドルフさんが、そう言う

ああルドルフ聖子さんのルドルフもリングネームなんだな

ライン晴子です

晴子さんは、ポッと頬を赤らめて言った

どうも、このリングネームが恥ずかしいらしい

ライン晴子と晴子キルヒアイスと緑川オーベルシュタインの中から好きなのを選べって言ったらこの子、一番簡単なのを選んだのよ

シュターデン晴子と緑川オフレッサーという候補もありました

もうトリューニヒト晴子とかよりは良いでしょ

何の話をしているんだろう

それで、レミーさんのところには48キロ級クラスには若手のホープはいないのかしら

ルドルフ聖子さんが、レミー藤原にそう尋ねると

い、居るさっ居るに決まっているだろウチは48キロ級は3人も決勝に残ったんだぞっおいっ

ピンク・ウェアの中から3人の少女が、前に出る

コガネイ・ハナです

カラスヤマ・チヒロです

シンマチ・サクラです

うん、この3人はまあ、普通の女子選手だな

何よ、3人も本戦に残っているんなら問題無いじゃない

ルドルフさんは言う

これでもなお、イーディさんが何か反則をしているというのなら試合中に証拠を掴んで、審判に抗議なさい試合の結審が付くまでにアピールするのよできるわよね

そうだよね試合が終わった後に、グチグチ文句を言うのはかなりカッコ悪いからね

マルゴさんも、レミー藤原にそう告げる

判ったよこいつらの試合には、あたしも張り付いて監視するよ何がどうなっているのかあんたたちが技と言っているものの正体を見極めてやるからね

レミー藤原は、そう言った

はーいじゃあ解散もうすぐ、本戦が始まるんだから、皆さん、準備に入りなさい

パンパンと、ルドルフ聖子さんが手を叩く

ちっ行くよ、あんたたちっ

ピンクのウェア軍団がレミー藤原とともに、自分たちの控え室に戻って行く

じゃあねまた後で対戦を楽しみにしているわ

ルドルフ聖子さんとライン晴子さんも立ち去って行った

集まっていたヤジウマたちも、三々五々に散らばっていく

マルゴ、選手のリストを持ってイルカ

ああ、ここにあるよ

マルゴさんが、選手の名簿を取り出した

今の人たちダケではナイネアタシたちを陰から見ている変なコたちが居たヨ

陰から見ていた

結構、強そうな気を感じたネ

イーディが、そこまで言うような人たち

ああここの連中だよ

マルゴさんが名簿を指差す

そして、オレたちに

実はさ、あたしたちと対立していた関西のヤクザたちが1グループ、送り込んで来ているんだよ

現実の抗争ではあたしたちに、やられっぱなしだからせめて、こういう機会には黒森家に勝ちたいってさほら、今回あたしたちは関西ヤクザのタカサキさんのツテで、この大会に出場しているだろだから協力する代わりに、自分たちも1チーム出場させるって

優勝が目的でなく黒森家の関係者チーム・クロモリだけを標的にして、関西から遠征してきているんだ

オレは、マルゴさんのリストを覗き込む

そこにはチーム・関西ガチ虎一家という文字が書かれていた

みんな偽名でエントリーしているけれど実力は、かなりの人たちだと思うよ

各クラスに、何人かずつエントリーしている要注意だよねこの連中は、平気で反則も仕掛けて来るだろうしあたしたちをケガさせて、決勝まで進めないようにさせるとか、姑息な手も使ってくるだろうから

マルゴさんはオレたちを見て

君たちを人質にしようとしたりする可能性もあるから気を付けてね警護役の子は、いつも以上に警戒を怠らないように

美智とキヌカが、真顔で頷く

わたくしたちも、気を引き締めましょうね

武闘派お嬢様たちも、そう言う

遙花ちゃんとマリアちゃんのところはずーっとテレビの密着取材があるから、大丈夫だと思うけれどっ

いや、そろそろチームで固まっていた方がいいと思うよ行こう

寧は、みんなと客席の方へ行ってて

えー、マルゴお姉ちゃんあたし、チームのマネージャーなんだからこっちに居たいよセコンドとか何か必要なものを届ける役とかさ

いや、チーム・マネージャーなんだから客席に居てあたしたちのスポンサーになってくれた人たちが観戦に来てくれていると思うから

ヤッちゃんマルゴさんたちに試合に集中してもらうために、そういうオモテの仕事は、ヤッちゃんがしないと

寧は、何とか納得してくれた

じゃあ君たちは客席に

はい、頑張って下さい応援してますからイーディも頑張れよ

頑張って観てますから

わたくしたちも、応援しています

栗宮さんも、そう言ってくれた

期待しております

ご健闘を

御厨さんも、キヌカも

美智は無言で、イーディと手の平を合わせた

ニヤッと笑うイーディと、いつもの無表情のままの美智

気の技を使う2人にとっては、これで充分なのだろう

試合は軽いクラスからだからイーディが緒戦で、あたしの出番が最後だよ

マルゴさんは、ニコッと笑ってそう言った

観客席は、全席指定席だから並んで座る

警護の都合があるから外側の席を、美智とキヌカにした

栗宮さんと御厨さんはお客さんだから、真ん中の方へ

ところでさっきの技、お判りになりますか

栗宮さんが、オレに尋ねた

さっきのってあの感電したみたいに、ビリビリって痺れるっていう技のことですか

ええ、そうですわ

微笑む栗宮さん

いや、あのオレはまだ工藤流の6級だから、よく判りません

痺れるツボがあるんです

美智が横から言う

正確にそのツボを突くと身体に一瞬、電気が走ったように痺れるツボが

あ、なるほどイーディは、予選でそのツボを突いたのか

それをレミー藤原の門下の女子選手たちが

スタンガンか何かで、感電させられたと勘違いした

いえ、ただ普通にそのツボを突くだけでしたら相手の動きを一瞬止める程度の効果しか出ません

イーディさんも、さっきの御厨もツボを突く手に気を乗せたのですわ

そうすると人体のツボ、すなわち経穴とは、神経や血管の集中点ですから突き込まれた気が、身体全体に拡がっていきますから

ああまるで電撃されたみたいに感じるんですね

工藤流では雷照印《ライデイン》という名称の技ですが、イーディの一族にも同様の技があったようです

うんイーディのニューオリンズの暗殺教団の技も

気を積極的に活用しているから

しかし、予選の段階でイーディさんが、あの技を多用していたということは

栗宮さんが言う

やはり、イーディさん寝技が不得意でいらっしゃるのですか

うーん、話を書きながらまた新キャラを作ってしまった

ガチ虎一家のキャラは、これから考えます

ただのやられ役も考えないといけないし

昨日、一杯200円の安いコーヒー店に入ったのですが

隣のテーブルで、4200万円のマンションの商談をしていて驚きました

最終的に、不動産屋さんが押し切れないでお客さんは、買わないことにしたみたいでしたけれど

そうだよなあ

4200万円のものを200円コーヒーの狭い店内で、売り込みする人は

ちょっと信用できないですもんねぇ

1193.ファイティング・オン / 全選手入場

・ルドルフ聖子/25歳創作マーシャルアーツゴールデンバウム・ジム主宰

・ライン晴子/17歳ゴールデンバウム・ジム所属

+メグ、寧、美智、イーディ

武術に造詣の深いお嬢様栗宮素子さんが言う

神経や血管の集中ポイントである経穴に、気の波を打ち込んで相手の身体を瞬時に痺れさせる技雷照印

イーディが、その技を午前中の予選で多用していた

これまで何度か、お稽古をさせていただきましたがイーディさんは立ち技ばかりで、相手を倒して寝技に持ち込むようなことはございませんでした

栗宮さんは、香月セキュリティ・サービスの旧研修館で行われている名家の令嬢とその警護役の合同練習会で、イーディと美智から体術を習っている

わたくしやイーディの技は実戦を重視しておりますから

競技としての格闘技のような、時間制限や判定のある1対1での戦闘は想定していません特に、1人で多人数と闘う場合は1人の敵に寝技を仕掛けるようなことをすれば、他の敵に攻撃されます

うん寝技で、1人を抑え込んでも

他のやつらに背中や頭を攻撃されたらヤバいことになる

多数の敵に、次々に攻撃を仕掛け最悪の場合には、逃亡することも想定しなくてはなりませんさらに言えば、わたくしの場合は護衛役でございますから、常にお守りすべき主の位置を把握していなければなりませんですから可能な限り立ったままでの闘うことにしています

寝技では、1人を倒しても次のアクションを起こすのに、時間が掛かってしまいますものね

美智の言葉に、栗宮さんがうなずく

イーディはこのような、競技形式の闘いは初めてなんだよな

1対1で総合格闘技のルールがあって

区切られたリングの中で、時間制限や審判による判定もあって

立ち技がメインの選手に対しては、総合格闘技の選手はタックルで倒して寝技で勝負しようとするのが基本ですから

栗宮さんは言う

それで、イーディは寝転がされた時に

はい、相手に寝技の勝負に持ち込まれる前に雷照印を使っていらっしゃるのではないかと思います

わたくしも、このようなところで闘うのならそうすると思いますわ

栗宮さんの警護役の御厨さんが、リングを見下ろしてそう言った

あの雷照印という技わたくしも、美智さんから習いましたが本当に便利ですもの完璧に打ち込めば、数秒間は相手の動きが完全に止まりますそれだけあればどんな反撃も可能です

タックルされて寝転がされても相手が寝技を仕掛けて来る前に、雷照印を打ち込めば

相手が痺れている間に、立ち上がることもできるし

もし、本当にそうだとしたらイーディ、かなり苦戦しているってことになるんじゃないか

雷照印を多用しなければならないくらい、パタパタとマットの上にタックルで押し倒されていることになる

やっぱり、リングでの闘いだと勝手が違うのかな

足下の感触が地面とは違うと思いますし

なるほど、栗宮さんの言うとおりかもしれない

リングのマットだと、衝撃を吸収するような材質になっているはずだから普通の床ほど踏ん張れないのかもしれない

ぬふふふーん心配しすぎだよ、ヨッちゃん

あたし、午前中の予選、観ていたけれどイーディ、一度もマットに倒されてないから

ていうか全試合、瞬殺だよ試合開始と同時に、相手を戦闘不能にしてるもん

そうだよむしろ、最初の1発目から気の技を使っちゃってるよそれで相手を痺れさせて2発目でK.Oしちゃってたからっ

寧が、そう証言する

いや、それならイーディなら、雷照印みたいな気の技を使わなくても勝てるだろ

リングでもいつも通りに動けて、相手にタックルされて押し倒される前に先制攻撃ができているんなら

多分ねイーディ、わざと悪評が立つようにしているんだよ

対戦相手が、あの子は何か反則しているはずだって言い広めるようにわざわざ気の技を使っているんだと思うんだよねっ

電撃を受けたみたいに、全身にビリビリと痺れが広がる

出場選手たちは、普段、そんな技を受けたことはないから

こんなのはおかしいきっとスタンガンか何かを隠し持っていているんだと思い込む

もちろん、試合中のイーディはそんなものを隠し持つことは不可能だということは誰が見ても判ることだけど

イーディと対戦した1人が、変だと言い出せばどんどん話に尾ひれが付いて、絶対に反則しているはずだという話になっていく

だからさっき、欧州藤原氏の連中が大挙して押しかけてきたんだ

レミー藤原も、複数の門下生が反則していると真顔で証言するのだから本当にそうなんだと思ったんだろう

でもイーディは、どうしてそんなことを

普通に勝てば悪い評判が広まることはないのに

どうして自分から、他の対戦相手に嫌われるようなことをするんだ

悪い評判も、名前を売るのには有効だからじゃないかしら

確かにあの子は何か反則をしているはずだという評判が拡がればイーディの試合が注目される

どんな風に反則しているのか、見極めようと

それだけでは、ございません

イーディは格闘家ではございませんから

イーディは自分の闘いをしているだけなんだと思います

判りますわたくしも、このような場で闘うとしたらわたくしらしくあろうとすると思いますから

キヌカがそう言う

もちろん、この場におけるルールは、厳守せねばならないのでしょうが心までスポーツ選手になる必要はないのでございます

ああなるほど、そういうお覚悟なんですね

わたくしにも合点がいきました

御厨さんも、そう言う

警護役の美智に、キヌカに、栗宮さん

それと栗宮流槍術師範の栗宮素子さん

武術をやっている人たちには、イーディの気持ちが理解できたらしい

ヨシくん判る

ありすも、困惑した顔でオレを見ている

寧は、いつものようにニコニコ笑っていた

まあ、見ていれば判るよイーディが何を考えているのかはさっ

予選を見ていた寧もイーディの思いを理解しているらしい

あ始まりそうだよっ

試合会場の照明がスーッと暗くなる

ああ、いつの間にか観客席か満席になっている

すると、スピーカーからアナウンスの声が

大変長らくお待たせ致しましたこれより48キロ級クラスの本戦ラウンドを行います

そして音楽とともに、リングの上にスポットライトの光線が落ちる

そこには1人の小柄な老人が立っていた

老人は、マイクを握りしめると

はい、みなさん、またお会いしましたねーっ

今日は、日本一強い女を決める日ですねっ外は青空っ気持ちの良い天気ですねっホントに死ぬには良い日ですっ

ニカッと嬉しそうに微笑む老人

あれが今日の大会の主催者だよっ

寧が、オレたちに囁いた

江戸川ナガハルさんていうホントは大きな食品会社の会長さんなんだけれど、格闘技が大好きでこういう大会を主催しているんだよっ

ボクの余計な話より、皆さん、速く選手をミタイですよねぇボクも見たいですはい、それでは丁度、お時間となりましたまずは一番軽いクラスの選手たちからですっどうぞ、お楽しみ下さいっ

アナウンスの声が、すぐに続く

48キロ級クラス全選手、入場ッッ

リングサイドに次々と女子選手がやって来る

まずは黒いトラックスーツの殺し屋ッ無国籍創作マーシャルアーツの達人ッコールデンバウム・ジム所属ッ、ライン晴子だァーっ

さっきのルドルフ聖子さんのお弟子さんか

クールで綺麗な女の子だ

無表情で、軽く観客席を見上げる

続いて 正拳三銃士を連れて来たよっ打撃の専門家ッブラジリアン柔術欧州藤原氏所属、カラスヤマ・チヒロだァーッッ

ああ、例のピンクのトレーニング・ウェアの1人だ

シャァァァっ

大きな声で気合いを発する

次も、正拳三銃士寝技の達人ッブラジリアン柔術欧州藤原氏所属、コガネイ・ハナだァッッ

この人もさっき会った

頑張りマッスッ

観客席に一礼する

そしてぇ、正拳三銃士、最後の使途何でもアリならコイツが一番怖いヤサイマシマシ、ニンニクカラメブラジリアン柔術欧州藤原氏所属、シンマチ・サクラの入場だァッ

実家はラーメン屋ですッ

そしてそしてまさか、この女が来てくれるとはっMMMAジュニア・チャンピオン女子プロレス界期待の若手、戦闘姫ッ、グラップル・アカデミー マッスルドッキング所属ロビン・ムスクだァッ

ブワワッとガウン姿の選手が、飛び出して来る

え覆面女子覆面レスラーなのかっ

時はキターァァァッ

覆面女子レスラーは、大きく拳を天に突き上げるッ

続いて闘いたいからここまできたッ格闘キャリア一切不明リューオリンズよりの金髪の黒豹、今年の最年少の16歳ッッチーム・クロモリ所属、イーディ・セクストンだァァっ

イーディはいつもの笑顔で、ひょいっと観客席に手を振る

イーディはまだ、16なのネッ

すると、一部の席からブーイングが起きる

イーディが反則しているかもしれないという噂はもう広まっているようだ

さらにさらに暗黒街からの刺客ッ女なのに不良番長ップロのケンカを見せてやるッ超A級ケンカ番長、関西ガチ虎一家所属、電人M子の登場だァッ

こいつが関西ヤクザの送り込んで来た嫌がらせ部隊の1人か

なぜか、昔の応援団みたいなボロボロの大きなガクランを着て、頭には破れた学帽を被り口に楊枝を咥えている

うぃーすっ声が小さい、もう一度だういーっす

うんとそれでも40キロ級クラスだから、小柄で可愛い女の子なんだけれど

ガクランの下は、素肌にサラシを巻いたままだけど胸は無いな

あとなぜか、首に数珠を掛けている

ああ、ガクランが大きすぎるから袖はたぷたぷだし、裾はずりずりと引き摺って歩いている

いうか、何で電人M子なんだ

そして最後の選手は去年の覇者オレたちは君を待っていた和の心超実戦空手、トミー・アシダ道場所属モンキー・ミミの登場だァッ

ピンクの空手着を着た女の子が、ジャンプしながら登場する

おもてなし殺ってやるですぅぅ

この子が去年の40キロ級の優勝者

以上、8名によるトーナメント戦を行いますッッ

背後のモニターに、試合の順が表示される

第1試合/イーディチーム・クロモリ VS コガネイ・ハナ欧州藤原氏

第2試合/ライン晴子ゴールデンバウム・ジム VS カラスヤマ・チヒロ欧州藤原氏

第3試合/電人M子関西ガチ虎一家 VS ロビン・ムスクグラップル・アカデミー マッスルドッキング

第4試合/シンマチ・サクラ欧州藤原氏 VS モンキー・ミミトミー・アシダ道場

第1試合と第2試合、第3試合と第4試合の勝者で準決勝か

同門対決にならないように、欧州藤原氏の人たちはバラバラにしたのね

レフェリーは、阿部ジロージャッジは、ゴールド菅井、シルバー前田、パール小沢の3人です

そのまますぐに試合が始まるらしい

第1試合の選手だけを残して他の選手は、控え室に戻った

イーディと欧州藤原氏のコガネイ選手がリングに上がる

ハナッ落ち着いていけよっ

ああ、レミー藤原さんは、自らセコンドを勤めるつもりらしい

さっきのマルゴさんたちとの経緯があるから

少しでもリングから近いところでイーディが反則しているのかどうかチェックするつもりなんだな

イーディの方は誰もいない

マルゴさんは工藤遙花と剣道マリアたちに付いているのか

関西ヤクザの刺客による嫌がらせで試合前に、ケガさせられる可能性があるから

イーディ頑張れっ

オレも観客席から大声で叫ぶ

オレたちが付いてるからなぁ

判ってるヨッ

嬉しそうに、リングの上からオレに手を振る

両選手中央へ

オッサンのレフェリーがイーディとコガネイ選手を呼ぶ

レフェリー、ボディチェックしっかりやって

リングの下から、レミー藤原さんが叫ぶ

そいつ、何か隠してるかもしれないからっ

イーディは、競技用のスポーツブラに、膝までの長さのピチピチのスパッツを着けているだけだ

乳首こそ浮いていないが、身体のラインがはっきりと判る

足は裸足だし、テーピングや包帯なんかも一切していない

余計なモノは何も持っていないことは遠目でも判る

ほら、ボデイチェックだ

手がいやらしいネ

イーディはオッサンに検査されるが

ネ何も無いヨ

オーケイほら、そっちもだ

レフェリーの声に相手の選手も、ピンクのトレーニングウェアを脱いでタンクトップと短パン姿になる

ああ胸に大きく欧州藤原氏のロゴが入っている

よし、オーケイ2人とも、正々堂々とやれよ

レフェリーは、正々堂々のところをイーディだけ見て言った

ということは予選からの噂は、すでにレフェリーの耳にまで届いているのだろう

ラウンド1

アナウンスが、試合の開始を告げる

まだだよ、ヨッちゃん

寧がリングの脇を指祭

ああ試合開始はあのゴングが鳴ってからなんだな

いいか、よく見ていけよ倒してけ、倒していけっ

ハイィィィッ

師匠のレミー藤原の声にコガネイ選手が鋭い声で応える

カーンッ

ようやく、ゴングが鳴ったッ

woo

ふわっと、一瞬でイーディが、コガネイ選手の前に近寄るッ

コガネイ選手は、イーディの早過ぎる動きに全く対応できていない

イーディはニヤッと笑ってポンと軽く、コガネイさんの肘に触った

ぎゃわわわわわッッ

雷照印《ライデイン》

高圧電流のような痺れが、コガネイ選手の全身に広がっていくッ

YHAAA

イーディのハイキックが綺麗にコガネイさんの側頭部を蹴るッ

そのままコガネイ選手はマットに倒れた

おいっ、ドクターッ

レフェリーが、慌てて試合を止める

ハナッコガネイ、しっかりしろっ

レミー藤原さんが、慌ててリングの中へ入って来る

大丈夫ネ後遺症が残らない様に、優しく蹴ったカラ

イーディは、ニヤニヤ笑いながらそう言った

テメェバカにしてんのかっ

レミー藤原さんは、カッとなってイーディに向かってパンチを繰り出す

ドウシタノ何を怒っているノネ

イーディは、フジワラさんの攻撃を全て躱し笑っている

おい、止めろ藤原ッ

レフェリーのおっさんが、藤原さんを制止する

お前もこの後、試合があんだろここで騒ぎを起こしたら、出られなくなるぞっ

悔しそうに、攻撃の手を止める藤原さん

それによお前も今、見た通りこの外人は、何の反則もしていねぇ

でも1発目は変でしたあんな軽い打撃でウチのコガネイが、あそこまでダメージを受けるはずがありませんっ

藤原さんは、レフェリーにそう言う

そうだよおかしいんだよ変だよなオレたち審判だって、そう思ってるよ今朝からずっとこの外人娘の試合を観てきてるんだから

レフェリーは、苦々しげにイーディを見る

でも、何でこうなるのか全然判らねえんだから

反則しているという証拠が無ければ失格にはできない

そんなことはどうでもイイのネアタシの勝ちで良いノカ

ああオメーの勝ちだ勝ちってことにするしかねぇだろ

レミー藤原は、レフェリーに訴えるが

オメーのところの子は、ブッ倒れててこいつはこうして元気で立ってるこんなのこいつの勝ちってことにするしかねーじゃないかっそうだよなっ

レフェリーは、最前列の3人のジャッジにリングの上から尋ねた

3人のジャッジは困惑した表情で、うなずいた

第1試合勝者、イーディ・セクストン

イーディの勝利が、正式にコールされる

勝ったヨーッ

イーディが、オレたちに向かって叫ぶが

観客席の半分は、戸惑っていて

もう半分は、イーディにブーイングを始めた

みんなよく判らない強さには、嫌悪感を感じるんだよね

しかし、こういう勝利をイーディさん自身が望まれたのですわ

武闘派お嬢様の栗宮さんが、そう言った

イーディさん凄いです

こんなにたくさんの人を敵にすることを恐れていらっしゃらないんですから

イーディはリングの上でも、いつものように笑っている

あの方の心の強さには敬意を表しますわ

栗宮さんは、イーディを見てそう呟いた

どうして欧州藤原氏の子を3人も本戦に残ったことにしてしまったのか

8人トーナメントだと、バリエーションが

まあ、ヤラレ役として割り切るしかないんでしょうけれど

マルゴさんの出るスーパー無制限クラスの出場者も

マルゴさん、壇闘志子、レミー藤原、ルドルフ聖子、関西ガチ虎一家の人と8枠のうち、もう5人決まってしまっているし

もう少し、変化が付けたいなあ

やっぱり、恐竜時代から蘇った原始人と、宮本武蔵のクローンは必要でしょうか

1194.ファイティング・オン / クジョ

・電人M子/18歳ケンカ番長関西ガチ虎一家

・ロビン・ムスク/21歳覆面女子レスラーグラップル・アカデミー マッスルドッキング所属

・モンキー・ミミ/26歳昨年の40キロ級チャンピオン超実戦空手トミー・アシダ道場所属

イーディさんは、スポーツ競技としての格闘技の試合をやるおつもりがまったく無いのだと思います

武闘派お嬢様の栗宮素子さんがそう言う

イーディは、試合開始と同時に相手の選手に雷照印を打ち込み、身体を麻痺させたところをハイキックして、ノック・アウトしてしまった

まあねイーディは、完全に試合の空気を無視しているもんねっ

試合の空気って

次の試合をご覧になればお判りになりますわ

栗宮さんが、リングを示す

ああ、イーディの試合が終わって失神した欧州藤原氏の選手も担架で運ばれた

そのまま第2試合の選手たちが、リングに上がっている

あの子たちはイーディと違って、スポーツ格闘技業界の人たちだからちゃんと試合をすると思うよ

第2試合は創作マーシャルアーツゴールデンバウム・ジムのライン晴子さん対ブラジリアン柔術欧州藤原氏のカラスヤマ・チヒロさんだ

このお二人ならちゃんと噛み合うと思います

栗宮さんは、そう言う

お願いしますッ

ライン晴子さんが、礼儀正しく対戦相手に一礼する

オネガイシマッスッ

カラスヤマさんは、少し甲高い声で挨拶を返した

ああいうところからして違うでしょ

イーディは、試合前は対戦相手を見て、ただ笑っているだけだった

さっきのイーディたちの時と同じようにリング上でレフェリーが選手たちをボディチェックする

ライン晴子さんは、黒字に黄色いラインの身体にぴったりフィットしたトラックスーツ

カラスヤマさんは、欧州藤原氏のロゴ入りのタンクトップと短パン

2人とも、問題は無いようだ

アナウンスが終わると同時に、試合開始のゴングが鳴る

テヤッ

ライン晴子さんとカラスヤマさんはリングの中央で、まず軽くお互いの拳を合わせて

それからフットワークを駆使しながら、適度な距離に離れる

うん確かに、テレビなんかでよく見る普通の試合っぽい感じがするよな

リングの家の2人はお互い、軽いパンチやローキックで牽制しながら相手に攻め込む、間合いを探っていく

場の空気に緊張感はあるけれどイーディが一気に対戦相手を屠ったような、峻烈さは感じない

あれが空気を読んだ試合ですわ礼儀正しくいきなり相手に突っかかって行ったりしないで、まずはお互い落ち着いたペースでスタートします

栗宮さんが、説明してくれる

うん、イーディみたいに最初から、フルスロットルで闘わないんだな

スピードや勢いだけではありませんリズムやテンポ戦いの場に立つ心構えから、イーディさんはあの方たちとは違うんです

栗宮さんは、そう答える

スポーツとしての格闘技の世界にいるとどうしても、あのような空気で試合するようになってしまうんです格闘技のルールによる縛りだけでなくスポーツの試合におけるあうんの呼吸というか、約束事みたいなものが身に付いてしまうんです

そうですわね剣道で例えるならあの人たちは竹刀での試合で、イーディさんは真剣を使った実戦なんですわ

栗宮さんが、オレたちにそう話している間に

リングの上ではライン晴子さんが、じりじりと相手との間合いを詰めていく

例えば、竹刀での試合なら浅い打ち込みなら、わざと身体で受けとめてしまうこともできます本当に斬り殺されることはないのですから肉を切らせて骨を切るというような捨て身の戦法も採れます何より、スポーツとしての格闘技の勝敗は過失で相手に大ケガをさせたり、事故が起きる可能性はあってもそもそも相手の命を断つようなことを目的にしていませんそして、試合とはそういうものであることを選手たちは理解して対戦しています

ホントに、殺したり殺されたりする闘いではなく

スポーツとして勝敗をつけるだけのことだ

だから、その競技のルールの中でどうやったら相手に勝てるかを考えて闘いますし予期せぬトラブルが起きて、対戦相手との間に遺恨が残るのを避けるために、試合の場の空気をできる限り合わせるようにしますそれが礼儀を重んじるということにも繋がるのです

試合前のお願いしますの礼やまずリングの中央で、拳を軽く合わせるところから闘いを始めるのは、場の空気をならすためか

でもイーディは

オレは、思わず呟いてしまう

イーディの技はニューオリンズの暗殺教団で身に付けた暗殺技だ

正々堂々と、真っ正面から敵と闘うのではなく

どんな手を使っても、確実に相手を殺し自分は生き残らなくてはならない

はいイーディさんの技は常に、真剣での実戦です真剣であれば最初から命の奪い合いですから、一撃たりとも、自分の肉体に相手の剣先を触れさせるわけにはいきません

金属の刃が当たれば肌が切れ、出血します血が失われれば、体力は急激に落ちます筋肉や腱を切られたり、骨が断ち斬られれば敵の次の攻撃を避けることもできなくなります

真剣によるダメージは深刻だ

少しでも気が緩んでいたら、即、死に繋がる一撃を食らう可能性もある

だから、イーディは試合開始と同時に、速攻で相手を倒しているんだな

イーディの持つ実戦感覚ではスポーツ格闘技の試合の空気は、受け入れられないのだろう

そういうことだけではございません

イーディの注意深さは、皆様がお考えになられている以上です

もし、イーディの対戦相手も雷照印のような技が使えたら、どう致しますか

気の技が使えるのは、わたくしたちだけと考えるのは早計ですわたくしの家の工藤流古武術に近い技が、イーディが居たアメリカの教団に存在していたのですから

似たような技は他の流派にも存在している

そしてイーディよりも先に、敵が雷照印を使ってきたら

美智は、静かに言った

何の防衛策も無く、真っ正面から雷照印を打ち込まれればイーディやわたくしでも、しばらく行動不能になりますそのような状況で、敵に攻撃され続ければ命も危ういでしょう死んでしまったら、ご主人様たちをお守りすることはできませんそれは、わたくしたちにとっては絶対にやってはならない失態なのです

美智は警護役であることに誇りを感じている

ですからイーディは試合開始と同時に、全力で敵を打ち倒しているのです

牽制の意味もあるんだと思うよ今、ここの会場にはあたしたちと敵対している勢力の人たちも来ているはずだし

黒森家に負け続けている関西ヤクザのたちが嫌がらせとして、今日の大会に関西ガチ虎一家というチームを派遣してきている

いや、リングの上に1チーム送り込んできているのなら

観客席にも、当然、関西ヤクザの配下が混じっているはずだ

はい敵に対する、アピールという面も、もちろんあるのでしょう

イーディにリングの上で雷照印を打ち込まれた相手は大きく痙攣したり、呻き声を上げたりしていましたが雷照印という技は、本来はもっと穏やかに打ち込むことのできる技なのです

と、観客席にドワッっと歓声が沸く

リングの上でライン晴子さんが、相手選手へのタックルを成功させた

欧州藤原氏のカラスヤマさんをマットに倒しその身体の上に、マウントする

そのままマウントポジションから、パンチを打ち下ろすッ

観客席が興奮しオレたちの座席の前のオッサンたちも、思わす立ち上がる

雷照印とは、本来こう使います

美智は前列のハゲ頭のオッサンの背中をポンと叩く

むきゅうっ

オッサンは、スーッと力が抜けて座席にぺたんと座り込む

とても自然に自分から、よっこいしょと腰掛けたみたいに

お、おい美智

い、いいのかたまたま前の席に座ってたオッサンを失神させてしまって

この方だけリングではなく、わたくしたちの方に精神を集中させていましたから

つまりこのオッサンは敵

関西ヤクザが派遣して来たやつらの一員なのか

こうやって技を打ち込まれたことを気付かせないのが本当の雷照印の使い方ですしかも、雷照印だけで完璧に相手を失神させることができます

イーディがリングで使った時は

雷照印を打ち込んだことで、対戦相手の様子がおかしくなったことは誰が見ても判ったし

ノックアウトの決め技として、雷照印の後に派手なハイキックを繰り出していた

すなわちイーディは、わざとああやっているのです

わざと試合会場の空気を乱し、他の出場選手や観客たちから反感を買うような行動をすることでこの会場内に居る敵勢力を炙り出しているのです

美智はさっきからずっと、リングでなく観客席の方を見ている

そうか他の人たちがスポーツとしての試合をやっている中で、1人だけ実戦をすることで

普通の観客ならイーディに対して場の空気が読めない娘だとブーイングするだけだ

しかし、関西から送り込まれて来た敵勢力はそんなイーディの戦闘力についつい気を取られてしまう

そいつらにとっては、イーディは嫌がらせの標的の1人だし

同時に、自分たちを駆除しに来るかもしれない存在だからだ

そしてイーディの起こしたアクションに対しての反応を見て美智が、観客席の中の不穏分子を割り出していく

このイーディたちの一番軽いクラスのトーナメント戦が終わるまでに、観客席の方の掃除は終えてしまいたいですから

後のクラスで闘う姉上や、剣道マリア、そしてマルゴお姉様には、心置きなく闘っていただきたいですので

リングで闘っている最中に関西ヤクザの配下に、何か騒ぎを起こされて

それで、試合を台無しにされては溜まらない

オオオオーッ

リングの上では、ライン晴子さんにマウントパンチされていたカラスヤマさんが、パンパンとマットを叩いて、ギブアップする

第2試合は、ライン晴子さんの勝利だ

だいたい判りましたので駆除して参ります

美智が立ち上がる

キヌカ妹、御厨くるみさんここの護りをお願い致します

キヌカと御厨さんが美智に返事する

何かあればわたくしも闘いますしうちの藤堂が、すぐそこに控えています

武闘派お嬢様栗宮さんも、そう言ってくれた

藤堂というのはああ、さっきロビーで栗宮さんたちの槍を持っていた人か

なるほどオレたちの5メートルぐらい後ろの通路の角に、布袋に入った槍を2本抱えて立っている

美智こそ、1人で大丈夫か

オレが心配になって、そう尋ねると

むしろ1人の方が小回りが利きますから

美智は、いつもの無表情でそう答える

大丈夫だよ、ヨッちゃんほら

観客席の最後列に工藤父が来ている

娘の遙花の闘いを、こっそり見に来たんだ

すでに美智が席から立ち上がったことに気付いている

父上と連携してミッションを遂行致します

美智はそう言うとオレたちから離れて歩いて行く

ヨッちゃん、ミッちゃんを見てちゃダメだよリングの方を見て

そうだなちょっと心配だけれど

オレがずっと美智の姿を眼で追っていたら敵を刺激する

やつらは、たった今美智が雷照印で、仲間を1人失神させたことさえ、まだ気付いていないはずだ

イーディがリングの上で使っている雷照印が派手だからこそ美智の地味な雷照印の存在が隠せる

敵の工作員を1人1人、確実に駆除することができるはずだ

ミッちゃんと工藤さんのコンビなら心配いらないよ

工藤遙花がリングに上がるまでに

父と妹は全てを終わらせるだろう

続きまして、第3試合を行います

アナウンスが流れる

ああ、リングの上にも関西からの刺客が登場する

関西ガチ虎一家所属電人M子

どういうわけだかボロボロのガクランに学生帽の応援団スタイルの小柄な女の子が再び、姿を見せる

そして、彼女の対戦相手は

覆面女子プロレスラーのロビン・ムスク

ロビン・ムスクも、たっぷりとしたガウンを羽織ってリングに現れる

2人とも早く脱いで試合のできる格好になりなさい

レフェリーのオッサンが、そう言うと

アタイはこのまんまでも構わん一向に構わん

電人M子は、ガクランを脱ぐことを拒絶する

いや、君は構わなくてもわたしが構うんだよっ

レフェリーが、強くそう言う

まあ、そうだよな小柄な女の子の身体に対して、ガクランがでかすぎて裾を引き摺っているし

チッ、しゃーないのぉ

電人Mは、ガクランを脱ぎリングの下に居る、セコンドのオッサンに渡す

このオッサンは、白Tシャツに青いジャージで、首にタオルを下げてる、普通のセコンドスタイルだ

てことは、このガクラン・ファッションは電人M子個人の趣味なんだろう

そのガクランは、アタイの命なんじゃからのっ大切に保管してたもれっ

そうセコンドに言う電人M子は胸はサラシでグルグルの布巻で、下半身はボンタンのズボン

履いていた下駄も、セコンドに預ける

学生帽は、そのまま被って闘うつもりらしい

そっちも早く、脱ぎなさいっ

レフェリーの指示でロビン・ムスクも着ていたガウンを投げ捨てた

こっちは女子プロレスラーらしい、身体にぴったりとフィットしたコスチュームだったが

君それは何なのかね

ロビン・ムスクは胸に金属製のヨロイを付けていた

これはわたしがあまりにも強すぎるために、対戦相手へのハンディとして身に付けているものです

ロビンは、胸を張ってそう答える

いや幾ら何でも、ヨロイはマズいだろ

うん、レフェリーの言う通りだ

しかし、この鋼鉄の鎧は我が一族の先人たちの鎧を繋ぎ合わせた、ダメージ軽減・回復効果を持つ歴史の鎧《ヒストリーアーマー》と設定されているのであるから

ロビン・ムスクは、そんなことを言い出す

そんなアイテムなら、なおマズいだろ

それにこのヨロイは胸はカバーしているが、腹はカバーしていないので、ただ重いだけで防御には余り意味の無いシロモノなのだ

それなら着けている意味が無いだろッ

レフェリーのオッサンは、怒って言う

クッあなたの つらいお気持ち このロビン・ムスクお察し致しますされど

されどじゃないっ早く脱ぎなさいっ

そうじゃ、いつまで待たせとるんじゃ早う脱がんかいっ

電人M子がシビレを切らせて文句を言う

フフッこれぞロビン殺法ナンバー2、敵の誘いには絶対に乗るな

敵の誘いとかじゃないからヨロイを脱がないのなら失格にするぞ

レフェリーにそこまで言われてロビン・ムスクはついに折れる

判りました脱ぎます脱ぎますよ

しかし鋼鉄製とか言ってた割には、やたら軽そうなヨロイだな

その代わりこの肩のところに付けてるこれは、このままにしますよっ

何だあの金色に輝く物体は

それは何なんだ

レフェリーが尋ねると

そんなのロビン・ムスクのチャームポイントに決まっているじゃないですかぁっ

あの人お笑い担当のレスラーなのかしら

ああ、何か所属のプロレス団体では、そういうポジションみたいでも、実力は確かなんだってああ見えてもジュニア・チャンピオンらしいから

寧がパンフレットを見て、そう答える

それくらい付けててもええですわそんなことよりはよ、始めましょコロシアイむっふっふ

電人M子が、レフェリーにそう言った

ライン晴子さんたちの第2試合は割と普通だったけれど

この人たちの第3試合はすでに大荒れな感じだな

もういい、始めようっ

レフェリーの声に

第3試合ラウンド1

ようやく場内にアナウンスの声が流れる

試合開始を告げるゴングが会場全体に轟く

済みません花粉症がツラくて

今年も恐怖の季節がやって来ました

1195.ファイティング・オン / 第3試合の悪夢

・壇闘志子/32歳コマンド・サンボゴッド・ヒグマ所属

・江戸川ナガハル/82歳女子格闘技大会の主催者

リングの上では

覆面女子レスラーのロビン・ムスクと関西ヤクザが派遣してきた関西ガチ虎一家の少女ケンカ番長、電人M子との対戦が始まる

と言ってもこれは一番軽いクラスの闘いだから

2人とも、小柄だしコスプレ少女たちにしか見えない

ロビン殺法、ナンバー3先手必勝ッ

試合開始のゴングが鳴ると同時に、ロビン・ムスクが素早い動きで電人M子に仕掛けるッッ

うりゃりゃ、どりゃぁぁ、コンチクショゥ

さすがプロの女子レスラー

リングのロープ際から一気に加速して鋭い、ドロップキックをかまそうと高く跳ぶッ

エイッシャアッ

にゃはほほはッ、当たらねばどうということはないのだばぁっ

電人M子の方も身体の動きにキレがある

ロビン・ムスクのキックをギリギリで躱して逆に、着地した彼女の腕を掴み、背後に廻り込むッ

こいつケンカ慣れしているッ

そのまま後ろから、ロビン・ムスクの腰を抱えて上げて

ポイっとなッッ

裏投げで、ロビン・ムスクをマットに叩き付けるッ

シェェイッ

ロビン・ムスクは、綺麗に受け身を取る

マットの上での闘いは、レスラーである彼女の方が極めている

クッやるな、コンチクショウ

ノー・ダメージでスッと立ち上がり、電人M子を睨む

それは、こっちのセリフなりィッにゅふふんっふんっ

ニヤッと微笑む電人M子

学生帽に、白いサラシを巻いた胸そして、ガクランのズボン

少女番長は大きく手を開いてて、構える

ならばロビン殺法ナンバー27空中大激突ッッ

ロビン・ムスクは、再び電人M子に突進してジャンプ

今度は、フライング・ラリアットかぁッ

なんのっ、ようこっ

電人M子は、これをヒラリとかわすが

ロビン・ムスクは、そのままの勢いで正面のリング・ロープに飛び込んで

ロープの反動を使って電人M子に飛び掛かるッッ

トペッ

背後から、フライング・クロスチョップ

ふんみゃっ

ロビン・ムスクの手刀が電人M子の喉を打つッ

ひゃゃゃゃぁぁんっ

そのまま吹っ飛ばされて電人M子は、マットに倒れ込む

どうだっコンチクショウ

ロビン・ムスクは片手を上げ観客席にアピールする

観戦者たちが、大きく湧いた

さすが普段から興行で闘っている人は、見せ方を判っているよね

ある意味予選からずっと瞬殺を繰り返してきたイーディとは真逆な闘い方だ

慌てず、急がず観客たちに自分たちの闘いを、じっくりと観戦させる

前の試合のライン晴子さんたちとも違うね場の空気が

まあねライン晴子さんたちは、スポーツ競技としての格闘家だから、ベストを尽くして相手選手と闘いはするけれどロビン・ムスクさんみたいに、観客に見せることは重視してないもんね

イーディは、相手選手との空気も、観客の視線も完全無視して自分のリズムで、ひたすら敵を瞬殺し続けている

ライン晴子さんたちアスリートは、相手選手との空気作りは大切にするが観客の視線を気にするような闘いはしていない

だけど、ロビン・ムスクは相手選手との空気も、観客たちの視線も大事にしながら、見られる試合を作ろうとしている

こういう姿勢はあたしたちも、勉強しないといけないよね

マルゴさんと一緒に、アメリカで格闘技興行をやる予定の寧はそう言う

イーディのやり方だとどれだけ強くても、ファンが増えないと思うもんロビンさんみたいに、徹底してエンターテインメントであろうとする心構えは素晴らしいと思うよ

でもわたくしには、少し意識が観客席の方へ行き過ぎることは現在の闘いでは、よろしくないと思いますわ

武闘派お嬢様栗宮素子さんが言う

エンターテインメントとしての試合は対戦相手がどちらも、そういう闘いをするという合意が無ければ、成立できないわけですから

あそれはそうだな

相手も観客に見せることを重視してくれないとエンタメ路線のロビンさんが一方的に不利になる

それは大丈夫だと思うよっ

あの不良番長ちゃんロビン・ムスクに合わせる気はあるみたいだから

ああロビン・ムスクにフライング・クロスチョップで倒されていた電人M子は

ムックリと起き上がるとネコのように、身体をブルルルッと振るわせて

アンタ、やるやんけマスクのネーチャンよぉぉっ

落ちていた学帽を拾い、パンパンと埃を払うって被り直すと

不敵な笑いをニカッと浮かべる

ふんっマスクのネーチャンではない、わたしはロビン・ムスクだっ

何でもええわっこんかいっ

オオオッ

ああこれはこれで噛み合っている試合だ

あの電人M子って子も本当は、格闘技興行の世界の人なんじゃないかな

オレはそんなことを考えた

関西ヤクザたちが、どういうメンバーを選抜して送ってきたのか判らないけれど

格闘技大会に出場させるのだから関西限定の女子プロレス団体とかから、ああいうキャラで売っているレスラーを抜擢してきたんじゃないだろうか

それは判らないよ少なくともあたしが知っている限り、電人M子なんてプロレスラーはいないし

あたし今日のために、日本中の格闘技団体に所属している選手は、ほとんど全部チェックしてるけどあの子の顔にも、覚えはないんだよね

だけど電人M子は本職のロビン・ムスクを相手にして、ちゃんとプロレスっぽい試合を成立させている

行くよっコンチクショウ

再び、ロビン・ムスクが電人M子に向かって走るッ

トゥイヤッ

身体と身体がぶつかる寸前にロビン・ムスクは、ピョンと電人M子の肩に飛び乗るッッ

そして、そのまま両太ももで、ムニュッとM子の頭を挟んで

ティヘラッ

ぶるるるんっと、M子の上で大きく身体をネジって彼女の頭を足で挟んだまま

しゃああああっ

グググイッと自分の体重で勢いを付けて電人M子の身体を回転させるように、マットに叩き付けるッ

電人M子が、変な悲鳴を上げる

かなりのダメージを受けたようだ

うわヘッドシザーズ・ホイップだよっ

寧が、興奮気味に言った

さすが、ジュニア・チャンピオンルチャ系の技が上手いねっ

ルチャ

メキシコのプロレスだよ身体の軽い選手は、ああやって大きく跳んだり跳ねたりしないと観客にアピールできないから

しかし、この試合はレスリングではございませんわ

今日の大会は、総合格闘技ルールだからこのままマットに電人M子を抑え込んでもロビン・ムスクのフォール勝ちにはならない

試合の勝敗を決めるのは

相手選手を完全にノック・アウトするか

レフェリーがもうダメだとテクニカル・ノックアウトを宣告するか

あるいは、セコンドがタオルを投げるか

ドクターストップが宣告されるか

それ以外は、選手本人のギブアップのみ

1ラウンド5分の試合を3ラウンドやっても勝敗がつかない場合のみ

審判員が、優勢だと判断した選手を勝者と認める

そういうルールだ

ヘイっカモン起きなさい、朝だよっハイ、ハイ、ハーイ

ロビン・ムスクは先に立ち上がって、マットに倒れたままの電人M子に叫びながら手を叩く

あら、寝技には持ち込まないんですね

栗宮さんが、意外そうに言う

寝技だと、M子ちゃんが対応できないと思ってるんじゃないかな

えそれなら、寝技を仕掛けたら確実に勝てるじゃないか

いや、このまま勝っちゃったらロビンちゃん的には、美味しくないんだよあの子としては、もう少し自分の見せ場が欲しいんだと思うよ

なるほどとっとと勝ちを決めるのではなく

時間いっぱい観客に見せる試合をやりたいのか

だから、瞬殺しには行かない

うううーん、もおおっ頭に来たなりィィこっのーっ、プロレス一代めーッ

よろよろと起き上がった電人M子がロビン・ムスクを睨んで、そう言った瞬間

エイヤサッ

再び、ロビン・ムスクがタタタと走って、得意の空中戦を仕掛けるッ

フライ・ハイッ

フライング・ボディプレスだっ

ようこそ、ようこっ

電人M子は、飛んで来たロビン・ムスクの身体をガバッと受けとめ

ウラウラウラァァアタイは、でっかい活火山じゃぁぁ大・爆・発ッッ

そのままロビン・ムスクを肩に抱え上げたままグルグルグルっと、その場で回転して、受け身が取れないような態勢でマットに叩き付けるッ

エアプレーン・スピン

あの小さな身体で凄いね

ムウッ

お尻からマットに落とされたロビン・ムスクは痛みに苦しんでいる

どんなもんじゃぁぁいなんぼのもんじゃあいじゃじゃじゃじゃじやあい

電人M子のアピールに、試合会場の観客がドッと湧いた

くぅぅ、コンチクショウまだまだまだぁぁ

ロビン・ムスクはダメージを残しながらも、ゆっくりと起き上がり

あたしは、あんたの力を9引き出して、10の力で勝つんだからねッッ

電人M子を指差して鋭く叫ぶ

みなさーん、プロレスは本当は強いんですよーっ

ロビン・ムスクが観客席に向かってそう言った瞬間

それはどうじゃかのっ

今度は電人M子の方が、大きく足を上げて

ロビン・ムスクの頭を狙って蹴るッ

おおっ、ケンカ・キックだっ

さっせるかぁぁッシャァァァァァッッ

ダメージにヨロついていたはずのロビン・ムスクがシュバッと身体を沈ませて

電人M子のキックを避ける

ウッシャァァァァ

そのまま、身体を回転させながら、彼女の懐に入り込み

ウォォォォっッッどっ、せいっ

電人M子の腕を掴み、足を絡ませたまま後方に倒れ込むッッ

カワズ掛けか

いや、ヨッちゃんあれは、カワズ落としだよっ

どう違うのか、オレには判らない

むぎゃ、ばふおむぅぅッ

マットに激しく後頭部を打ちつけられる電人M子

これは、かなり効いているぞ

ウッシャァァァァァウラァァァァァッ

立ち上がったロビン・ムスクが自分の勝利を確信して高く拳を突き上げる

オオオオオーッ

会場全体から、声が上がる

さすが見せる試合ができる人だ

んんんんんん

ふふふふふ、くっくっく

マットに仰向けで倒れたままの電人M子は

くははははははははびゃはっはっはっは

会場の天井を見上げたままげはげはと笑いだし

♪るるるんるんるんるるんるんるんオ~レは、死なないーだぁって、世界は丸いんだもんっ行きはヨイヨイ、帰りは怖いしょせん、この世はコネとカネ、るるるるんはぁぁ、ダンチョネ♪

わけの判らない歌を歌いながらゆっくりと起き上がると

ロビン・ムスクに向かって

ぐはははっ電人M子、復活電人M子、復活

自らを鼓舞するように、大きな声でそう繰り返すと

アンタ、強いよね序盤・中盤・終盤、スキがないと思うよ

相手にそう言う

だけど、アタイ、負けないよいくでぇぇぇ、リミッター解除、ソニック・フォーム

電人M子は、ガチャッとベルトを外すとストンとズボンを落とす

アタイが生足になると怖いんやでぇぇぇっっ

白いムッとした素肌の太ももと青と白の縞々パンティだけの姿になった

観客席の男たちから歓声が上がるッ

行くぞッ秘技ッ超常スマッシュ、裸神拳脱げば脱ぐほど強くなぁるッッ

電人M子がロビン・ムスクに仕掛けるッッ

それも両腕をグルグル回すグルグルパンチ状態で

ロビン・ムスクの周りを全力で走り回るッ

ロビン・ムスクには電人M子の攻撃の意図が理解できない

リリカル、マイカル、マイケルトミオカ全力全壊、スター・ダスト・ブレイカーぁぁッッッ

電人M子はさっき脱いだ自分のスボンをズバッと蹴り上げてッ

ロビン・ムスクの顔にぶつけるッッ

ロビン・ムスクが怯んだ一瞬の隙を付いて

ちぇすとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ

下半身縞パンだけの不良番長少女が美しいシルエットで、跳び蹴りするッッ

強烈なキックを直撃で食らう、ロビン

くぁぁひぃぃぃっ、ふぅぅっ、へぇぇぇぇぇぇっふぉぉぉぉぉぉぉぉッッ

そのまま電人M子は、連続蹴りをロビン・ムスクに叩き込んだッッッ

ま、マズいそ、それまでぇぇぇぇぇッッ

レフェリーが試合を止める

ロビン・ムスクは気絶していた

ロビン・ムスクはリングから担架で医務室へ運ばれて行ったが

審判員たちは、試合の勝敗に困っていた

何や何や何やたまたま、脱ぎ散らかしてあったズボンが足に引っ掛かって、あの人の顔に飛んでしまっただけなのじゃわ

電人M子は平然とそう言う

たまたまじゃい意識してやったんじゃないからアタシは無罪ですわアイアム・ノット・ギルティ

いや、誰が見てもわざとだろ

観客席も白々しい態度の電人M子に、みんな呆れている

ちょっと、いいですか

さっき開会宣言をした大会主催者の小柄な老人が、審判席にやって来る

江戸川ナガハルさんだよっ

江戸川老人は、しばらく審判たちと話すと

マイクを持って、観客たちに

はい、またお会いしましたねお前の顔なんかもう見たくないという方も多いと思いますが、少しだけ、お付き合い下さい

今の試合において反則かもしれない行為が行われたのは、皆さん、ご覧の通りですはい、ボクも見ていましたアナタも見ていましたそこのお爺さんも、お孫さんも見ていましたねびっくりしましたね驚きましたねボクもそうです

老人は言う

でもね試合中にズボンを脱いで、それを目隠しに使うというの故意でやったのか、たまたまだったのか、ボクにはよく判らないですねこれ、限り無く反則に近いけれども反則としちゃっていいものか困りますねはい、どうしましょうかね

だけど、こんなことをいつまでも話していると試合が進まないですねまだ一番軽いクラスのトーナメントです皆さんも、もっとどんどん先の試合を観たいのではありませんかボクは観たいです

で、どうすんだよっ

観客席から、ヤジが飛ぶ

だからって、今ので負けにされたらロビンが可哀相だろ

そうだ、そうだロビン・ムスクだって自分の団体背負って来てんだぞ

プロレス舐めたら、承知しねえぞ

ああ、ロビン・ムスクのファンの人たちなんだな

はいみなさんのおっしゃる通りですねでも電人M子さんの反則負けということにしても、今日のこの後の試合にロビン・ムスクさんは出られないですねそれに、このクラスにはリザーブの選手も居ないですですから

江戸川老人は、一間置いてから言った

それでボク提案したいんですけれどね今の試合は、勝敗無しの無効試合にしますロビン・ムスクさんには負けは付きませんそれで電人M子さんには、減点ポイントを付けて、次の試合に進んでもらいます

減点ポイント

ここから先の試合で試合が判定になった場合は、M子さんの負けになりますそういうペナルティを抱えて2回戦に進んでもらおうと思います

もちろん、また電人M子さんが反則っぽい行為をした時には、その場で負けということにします不戦勝になるよりは、その方がずっと良い

江戸川老人は、そう言うが

何か釈然としないよな

そんなんでも、もし、そいつが決勝まで勝ち進んで

そうだよ、優勝しちまったらどーすんだよ

観客たちはブーブーと文句を言う

あーら、皆さんはその子がわたしに勝てると思っているの

次の第4試合に出場する去年の勝者、モンキー・ミミが、鮮やかなピンク色の空手着姿で現われる

大丈夫よこんな子、決勝以前に、このわたしが蹴散らして差し上げるから

次の試合にモンキー・ミミが勝利すれば

2回戦は、自動的に電人M子との闘いとなる

マジで言うとるんげしょげしょ

電人M子は、モンキー・ミミを見てヘヘッと笑う

まあ、わたしとの実力差が判らないなんてあなた、本当に馬鹿なのね

モンキー・ミミも蔑みの眼で、電人M子を見る

ミミ、そんな野郎、ブッ殺しちまえ

モンキー、頼むぞっ

まだ第1回戦の4試合目が終わってないのに

観客席から、モンキー・ミミにそんな声が上がる

ヤッちゃっていいのよねうふふ、ヤッちゃうわよっあたしっ

モンキー・ミミが、優雅に観客たちに手を振る

じゃ、そういうことでいいですね、皆さん

大会主催者の江戸川老人が、マイクでそう言った

あ、そうそう電人M子さんは、この先の試合も、ずっと今のままの格好でお願いします

今のまま

ズボンを穿き直すの禁止そのままで、やって下さい

頭に学帽胸はサラシを巻いただけ

そして、下半身は縞々のパンティ1枚という姿で

電人M子は、試合を続けることになった

では、そういうことでまた、後でお会いしましょうそれでは、それでは、それでは

うーん、マジで体調が悪いです

1196.ファイティング・オン / アングル

ていやぁっ

一番軽いクラスの第1回戦の最後の試合

前年度のトーナメント優勝者で、超実戦空手トミー・アシダ道場に所属しているモンキー・ミミ選手と

ブラジリアン柔術欧州藤原氏の正拳3銃士の最後シンマチ・サクラ選手の闘いが始まる

モンキー・ミミは、全身ピンク色の空手着のままシンマチ選手は、欧州藤原氏のお揃いのタンクトップと短パンだ

サクラぁっ、しっかり見ていけよっ落ち着いてやれば、勝てない相手じゃないぞっ

相変わらず欧州藤原氏のコーナー下には、主宰者のレミー藤原選手がセコンドに付いている

はいッッ、レミーさんっ

気合い入れてけっ気合い

うわっしゃぁぁっっ

そんな2人の様子をモンキー・ミミは冷ややかに見て

ちょっと、レミーさん逆効果なんじゃないこの子緊張して、身体がガチガチになってるわよ

余裕たっぷりに、そう言う

ほら、ちょっと試してみてあげるわよせいやぁっ

モンキー・ミミは相手に拳が届く距離に、踏み込むッ

ほらっ、空手パンチ、空手パンチ、空手チョップ、空手キック

声は軽いがスバズバと重そうな拳と蹴りを繰り出していく

シンマチ選手は両腕や足で攻撃をガードするが、ずるずると拳圧に負けて、後ろに下がっていく

あれだけ重そうな攻撃だとガードしていても、ダメージが溜まっていきますね

武闘派お嬢様の栗宮素子さんが言う

すぐに腕が腫れ上がってしまいます効いていますよとっても

コラぁ、サクラぁぁ下がるな、前に出ろ隙を見て、倒していけっ

レミー藤原が、リングの下から弟子に叫ぶ

タックルだぁっ、転がしていけぇぇ打撃に付き合うなっ寝技に持ち込めば、お前の方が強いっ

そう返事はするがシンマチ・サクラ選手は、防戦一方だ

モンキー・ミミに一発も反撃できていない

あーら、失礼ね空手家だって、総合の試合に出場しているんだからグラウンドでの闘いだって、たっぷり練習して来ているわよっ

モンキー・ミミは、すでに相手の選手をコーナーに追い詰めている

あたしが寝技が苦手なんて、誰が言ったのそういう、変な噂は立てないでくれるあたしの空手イヤーは地獄耳なんだからおかしなことを言う人は容赦しないわよっ

そろそろ、キメてあげるわっ空手ウイ~ングッ

モンキー・ミミはマットをガシッと蹴り

まるで大きな猛禽類が、空中で大きく翼を広げて敵を威嚇するように

モンキー・ミミも両腕を大きく広げて、高く高くジャンプした

空手ビーム

いや、何がビームなのかよく判らないけれど

モンキー・ミミの空中跳び膝蹴りが、シンマチ選手の顔にスバッと打ち込まれたッッ

もぎぅっ

シンマチさんは、変な悲鳴を上げてガクッとマットに倒れ込む

ドボボボっと、シンマチ選手の鼻から血が零れる

ああ、気絶はしていないようだけれど

ぁぅぅ

どうするまだやる

モンキー・ミミは、ニコツと微笑む

シンマチ選手は、すでに戦意を喪失していた

ほがふぁが

でも、口と鼻を思いっきり蹴られて言葉がはっきり、言えない

そういう時は、どうするんだっけ

モンキー・ミミが、そう言うと

シンマチ選手は、マットの床をパンパンと大きく叩いて負けを認めた

サクラ

セコンドのレミー藤原が、絶句している

はい、よくできましたあなた筋は良いわよ基本はできていると思うわでも、レミーさんのところでは強くなれないわよっ

モンキー・ミミは会場中に聞こえるよう大きな声で、そう言う

うちのトミー・アシダ道場へいらっしゃいようちならあなたみたいな子だって、ちゃんと才能を伸ばしてあげられるわよ

リングの上で引き抜きか

おいっ、モンキー、てめぇっ

レミー藤原が、カツとなってリング下から睨むが

あーら、結果が物語っているでしょレミーさんたら修行途中の未熟な子たちを、この大会に出場させてま、3人本戦に残ったのは褒めてあげるけれどでも、あなたのお弟子さんは全員、1回戦負けじゃない

そうだ欧州藤原氏から、決勝トーナメントに残った3選手は

コガネイ・ハナ選手が、イーディに失神ノックアウト負け

カラスヤマ・チトセ選手も、ライン晴子選手に負けた

そして、最後のシンマチ・サクラ選手はモンキー・ミミとの圧倒的な実力差に、戦意喪失という最悪の敗北をした

レミーさんのところって、ホント人数だけはいっぱいいるけれど、選手層に厚みがないわよねうちの道場ならこの子たちみたいなレベルでは、こういう大会には出さないわよ

モンキー・ミミは笑って言う

うちは有望な選手がたくさんいるものホントはあたしだって、体重別クラスじゃなくって賞金3000万円のスーパー無制限クラスの方に出たいわよレミーさんの顔も、あたしの空手ビームでギッタンギッタンにしてみたいし

ざけんなよ、コラぁ

レミー藤原は、モンキー・ミミに徹底的に貶められて怒りを露わにする

上等だ、コラァ今から、アタシと勝負しろこの野郎

レミー藤原は、リングの上に上がろうとする

いやいや、この2人だと体格差がありすぎるだろう

レミー藤原は、とても大柄でガッシリした肉体だけれどモンキー・ミミは、一番軽いクラスだから、小柄だ

あらあら、やりますエキシビション・マッチあたしも、この子相手じゃ、まだ身体が温まりきっていないのよ

モンキー・ミミは、フットワーク軽くシュッシュとシャドウ・ボクシングして見せる

そこまででですわ

リングのモンキー・ミミ側のコーナーの下から

とても背の高いレミー藤原や、マルゴさんよりも高そうな、赤い空手着姿の女性が現れる

ミミ、そのお人は、うちの獲物ですわ勝手に獲ったらあきませんよ

まあポロンお姉様

モンキー・ミミは、現れた女性選手を見てそう言う

この人は姿を見ただけでも、相当強そうに見える

あれがトミー・アシダ道場からスーパー無制限クラスに出場しているポロン・カリスマン選手だよっ

寧がパンフレットをオレに示してくれた

ああ、本当だ本名が、オオバヤシ・マチコリング・ネームが大ポロン・カリスマン

ちなみに、モンキー・ミミ選手の本名はオギワラ・ミミコか

ミミには、ミミの獲物がおりますやろうちの獲物まで横取りしようとするんなら、可愛いミミでも容赦しませんキッチリとお仕置きしてあげますわ

ポロン選手が、同門のモンキー・ミミに言う

この人からは、何か危険な空気を感じる

キョーコさんやミス・コーデリアたちのような狂気を

いえいえ、あたしが悪うございましたレミーさんは、どうぞお姉様が屠ってあげて下さい

モンキー・ミミは、あっさりと姉弟子に謝る

あらあら、物分かりが良くて何よりやわそういうミミの方が可愛らしくて、うちは好きです

ポロン選手は、やんわりと微笑むと

そういうことですからレミーさんは、去年同様、うちがズタボロにしてあげますから楽しみに待ってて下さいね

舐めんなよ今年こそは、ゼッテェにオメーに勝つ

ああ、レミー藤原は去年のこの大会で、ポロン選手に負けているんだ

今年から賞金3000万円なんだ絶対に、このあたしが優勝してやるからなっ

そうやってキバり過ぎると足下を掬われますわ

ポロン選手は控え室の方を見て

今年は賞金が大きくなりましたから、今までとは違う面白い子たちがたくさん出場していますしな

それでも勝つのはこのあたしだ

レミー藤原が、大きな声で宣言する

そうだ、レミー弟子の分まで勝てよっ

期待しているぞ、レミー

レミー様、頑張って下さい

ゴー・ファイト

すぐに観客席の欧州藤原氏の応援団がレミー藤原にエールを送る

レミー藤原は、歓声に応えて太い腕を高く突き上げる

プロレスだねぇ

レミー藤原はブラジリアン柔術でモンキー・ミミやポロン選手は、超実戦空手

どっちもプロレスの選手ではない

女子プロレスラーだったのは、1つ前の試合に出ていたロビン・ムスクだ

いやさこうやって、これからの対戦に、因縁を作っておいてさ観客を楽しませようとしているんだよっ

今日の大会のメインは最後にやる賞金3000万円のスーパー無制限クラスのトーナメントなんだからさっ今の内から、観客の皆さんが期待するようにアングルを組んでいるんだと思うよっ

これでレミー藤原さんと、ポロンさんの試合は弟子の敵討ちっていう構図になるんだしさ

あらかじめ打ち合わせをして今、ああいう風に演技しているんですか

メグが、寧に聞く

どうだろうポロンさんとモンキー・ミミさんの方は打ち合わせしてあったんだと思うけれどレミーさんの方は、そうじゃないと思う

だって、このアングルレミーさんの方が、圧倒的に美味しくないものトミー・アシダ道場の方が有利に進んでるから

ああレミー藤原は、弟子が全員1回戦で脱落してしまったわけだし

一方的に、モンキー・ミミ選手やポロン選手に小馬鹿にされている

これでスーパー無制限クラスの試合で、レミーさんがポロンさんに負けたらホント、欧州藤原氏っていうジムそのものが潰れちゃうかもしれないもん

というよりそれが狙いなんでしょうね

トミー・アシダ道場は今日の大会で、欧州藤原氏をコテンパンに負かせて格闘技ジムとしての評判を落とそうとしているのではありませんか

あたしもそう思う多分、今、欧州藤原氏に付いているスポーンサーや練習生を根こそぎトミー・アシダ道場が奪い獲りたいんだと思うよ

ああ、確かに欧州藤原氏は選手も多くて、活気がありそうだかもんな

リングの方では

うちなぁ、女子格闘技のジムも、最近、少し増えすぎていると思うんよ

ポロン・カリスマン選手がレミー藤原に言う

せやから、あなたのところみたいな、中途半端なジムは存在するだけで目障りなんですていうかレミーさんみたいな弱い人に教わるんじゃ、練習生の子らも可哀相ですわ

うちは楽しいよっどんな子も確実に強くなれるからねっ

モンキー・ミミが、観客席に向かってアピールする

あたしやポロンお姉様みたいに強くて綺麗なお姉さんが、いっぱい居るからねっ

まあ、ミミホントのことでも、そんなに大きな声で言うたらあきませんわうち恥ずかしいですわ

口では恥ずかしいと言っているがポロン・カリスマンは平然と笑っている

じゃ、レミーさんそういうことで

あたしも、2回戦の支度をしないと

ミミ、控え室で少し相手してあげるわ今のまんまだと、身体に火が付いてないですやろ

はーい、お願いしますお姉様ぁ

ほな、皆さんもまた後で

ポロン選手はそう言うとモンキー・ミミとともに退場して行った

レミーさん、す、すみません

リングの上に残されたシンマチ・サクラ選手が顔の血を手で拭って、そう言う

あたしがふがいなかったばかりに本当に済みません

モンキー・ミミの攻撃に圧倒され思わず戦意を喪失して、負けを認めてしまったという事実が

今になって、彼女の中に激しい後悔の念となって心の底から湧き上がって来たんだろう

済みませんあたし、あたし

大粒の涙が、ポロポロと鼻血まみれの顔に流れて行く

もういいんだもういいんだぞサクラ

レミー藤原は言う

お前たちの仇は、きっとあたしが取る絶対にだっ

頑張れ、レミー

オレたちは、応援しているぞ

観客席から、またそんな声が上がる

こうしてモンキー・ミミとポロン・カリスマンの仕組んだアングルが完成する

レミーさん、あたし、絶対に格闘技止めませんからっレミーさんの下で、絶対に強くなりますっ次は、負けませんっ

マットの上にへたり込んだままの愛弟子をレミー藤原は、ギュッと抱き締める

頑張れぇぇ、2人とも

そんな歓声が、聞こえるが

オレには、これもまたモンキー・ミミたちが想定したことのように感じた

もう、そろそろイイカ

とリング下に、イーディが現れる

リングの反対側にはライン晴子選手が

悪いケレド次はアタシたちの試合なのネ

そうだトーナメントは続く

これで一番軽いクラスのベスト4が出そろったわけだから

なもなく、準々決勝を開始致します

公式アナウンスもそう告げた

後ろの大型モニターに文字が出る

準決勝第一試合/チーム・クロモリ所属イーディ・セクストン選手VS創作マーシャルアーツゴールデンバウム・ジム所属ライン晴子選手

まだ後ろのクラスの試合もたくさん残っているから、休憩を挟まずにこのまま試合は進行するのだろう

ホンジャア、やろうネっ

イーディはいつもの笑顔でとんとんとんと、リングに上がるための階段を昇って行く

すみません、ここ数年で最悪の体調不良です

花粉症かと思っていたのですが、雨が降っても辛さが変わらないので

これは別の病だと確信しました

1197.ファイテイング・オン / イーデイの闘い

イーディさん、どうなさいますかね

武闘派お嬢様、栗宮さんがオレに言う

リングの上では、ベスト4による準決勝第1試合イーディ対ライン晴子さんの闘いが始まろうとしていた

また、瞬殺で終わらせちまうつもりなのかな

ここまでのイーディは、全試合試合開始と同時に雷照印を打ち込み、相手の身体が麻痺しているうちにトドメの一撃を与える

実質、2発だけで対戦相手をノック・アウトしている

あのライン晴子という選手決して悪くはないと思いますが、イーディさんの実力には叶わないと思います

栗宮さんはそう言う

晴子簡単に勝てる相手ではないわよ落ち着いていきなさいね

はい、マスター

ライン晴子さんのセコンドには、師匠のルドルフ聖子選手が付いている

そう言えばマルゴさんは、全然、顔を出さないよね

確かに、この後マルゴさんも試合があるんだから、イーディのセコンドに付く余裕は無いのかもしれないけれど

でも、マルゴの出場するスーパー無制限クラスは、プログラムの一番最後だし

同じスーパー無制限クラスに出場する予定のルドルフ聖子選手や、レミー藤原選手、ポロン・カリスマン選手たちは同門の選手のセコンドに付いている

そりゃ、マルゴお姉ちゃんとイーディは、同じチーム・クロモリとしてエントリーしているけどさ

でも、技が全然違うでしょ同じ流派ってわけじゃないし

マルゴさんは、マーシャルアーツ系の技を使う

イーディは、ニューオリンズの暗殺教団に伝わっていた暗殺拳だ

師匠と弟子みたいな関係ではないのですから、余計なイメージが付かないようにイーディさんの試合には、お顔をお出しにならないのだと思います

栗宮さんが、そう言った

それにこの後の体重別クラスで、チーム・クロモリとして遙花ちゃんやマリアちゃんも出場するでしょマルゴお姉ちゃんがセコンドとかやって、チームとしての結束をアピールしちゃうと遙花ちゃんたちもイーディみたいな技を使うと勘違いされちゃうよっ

観客たちや他の選手たちに、イーディの技がチーム・クロモリの選手なら全員使えると思われても困る

だからチームは同じでも身に付けている技は別々だし、そんなに仲良くないっていう風に見せたいんだと思うよ

リングの下イーデイ側のコーナーに、美智が現れる

美智は工藤父と一緒に会場内に入り込んでいる関西ヤクザの嫌がらせ部隊を駆除しに行ったはずだけど

いつもと同じ超お嬢様校のセーラ服姿の小柄な美少女が、リングの上のイーディに声を掛ける

何なんだよあの可愛い子は

観客たちも突然、リング下に現れた美智に興味を示す

どうしたネ

イーディが、リングのロープに身体をもたれさせて美智に尋ねる

もう少し、真面目にやって下さい

美智のその言葉に、観客席からオーッという声が上がる

美智の見た目は年齢通りの15歳の美少女だからな

しかも、この小さな肉体に恐ろしい戦闘力が秘められていることは、外見からは全く判らない

すでにリングの上で壮絶な実力を示しているイーディに、美智が意見するというのは

観客たちには驚くべき光景なのだろう

アタシ、不真面目カネ

イーディが、美智に尋ねる

いささかそう感じられます

美智は、真っ直ぐにリング上を見上げて答えた

判ったきちんとやるヨ

両選手、中央へっ

レフェリーが、イーディとライン晴子選手を呼ぶ

いよいよ、試合開始だ

晴子っ出会い頭だけ気を付けて

ライン晴子さん側は、イーディの速攻に注意している

試合開始のゴングが鳴る

イーディが攻めてくると思って、身構えているライン晴子さん

おい、アレはやらないのか

ヘラヘラ笑いながら、ゆっくりとライン晴子さんに近付く

ホラ、試合開始の時に拳と拳をチョコッと合わせる挨拶のコトネ

イーディは、自分の拳をスッと突き出す

この試合はアンタのリズムに合わせてあげるヨ

ライン晴子さんはほんの一瞬だけ、イーディの拳に自分の拳を合わせると

テイヤッハイッ、ハイッ、ハイッ

いきなりイーディに対して連続蹴りでラッシュする

ふん♪ふん♪ふん♪

イーディは、ライン晴子さんの蹴りを全て避けた

じゃあ、こっちもいくネッ

そして、今度はイーディの方がキックを次々と繰り出す

うっはっぐっ

ライン晴子さんは、イーディのように軽々と相手の蹴りを躱すことはできない

全て、腕でガードして何とか致命傷にはならないようにしているが

晴子距離を取って1回、仕切り直しよっ

ライン晴子さんは、後ろに下がろうとするが

そうはさせないネ

イーディは跳んで、ライン晴子さんにドロップキックを食らわせようとする

ライン晴子さんは、イーディの足を力いっぱい払い除ける

マットの上に引っ繰り返るイーディの身体

今よ、晴子

セコンドのルドルフ聖子さんが叫ぶ

ライン晴子さんは、イーディの上にのし掛かって寝技で勝負しようとする

そいつは、どう見たって打撃屋なのよっグラウンドの技術なら、晴子の方が上のはずよっ

師匠の言葉通り、ライン晴子さんはマウントポジジョンでイーディを抑え込もうとするが

ライン晴子さんの身体が、突然電撃を食らったみたいに吹っ飛ぶ

ここで雷照印か

そのままイーディは、ライン晴子さんの背中に廻り込んで

腕で首を締めるッ

スリーパー・ホールドか

まだ雷照印の影響で、身体が痺れたままのライン晴子さんはどうすることもできない

リングの中にタオルが投げ込まれた

ルドルフ聖子さんが、弟子の敗北を認めた

カンカンカンカン

ゴングが打ち鳴らされる

それまでだっ

レフェリーの声に、イーディは首締めを止めた

晴子

慌ててリングの中に飛び込んでくるルドルフ聖子さん

大丈夫ヨしばらくしたら、痺れは取れるネ身体にも深刻なダメージは残ってないカラ

アナタならすぐにタオルを投げ込んでくれると思ってたネウン、良カッタ

雷照印で身体が麻痺した状態での首締めは相当、危険な行為だったんだろう

でも、ルドルフ聖子さんが、即座にタオルを投げ込んだからライン晴子さんの身体に支障はない

せ、聖子さん

ようやく、ライン晴子さんが喋れるようになる

聖子さんあたし

ええ泣きなさい、悔しかった、いっぱい泣けばいいのよそれで、今日の日の屈辱を絶対に忘れないでね

イーディは、そんな2人をいつもの笑顔で、ヘラヘラと見ている

お前やればちゃんとできるんじゃねーか

観客席から、イーディにそんな声が上がる

観客たちの大部分はイーディが雷照印を使ったことに気付いていない

マウントポジションを取ろうとしたライン晴子さんが、一瞬、身体のバランスを崩したところを付いて一気に逆転したように見えている

あたしの指示ミスよ寝技に持ち込んだら、あの技が来るっていうのを見逃していたわ

ルドルフ聖子さんは、そう言う

それは判らないヨそのコが、アタシが反撃する前に寝技をキメていたら負けていたのはアタシの方ネ

この技気を練るのに間がいるノネダカラ、今、このコに食らわせたのも慌ててやったカラ、本来の30パーセントぐらいの威力ナノネ

ああ、だからいつもは試合開始と同時に仕掛けているのね

ルドルフさんは、納得する

試合開始ギリギリまで、気を練っているからゴングと同時に、100パーセントの雷照印を打ち込める

でも、いいのそんな大切なこと、あたしたちに教えちゃって

ルドルフ聖子さんは、クスッと笑う

ああ、自信があるのねそんなことを教えてぐらいでは、絶対に負けないっていう

コレ以上は、手の内は見せないヨ

あなたみたいな化け物が、どうして体重別クラスの方に出場しているのよスーパー無制限クラスなら、このあたしがギッタンギッタンにしてあげられるのに

ウチのマルゴも相当なMONSTERネダカラそっちのクラスは任せたノヨ

あら、そうじゃあ、その人と対戦するのを楽しみにするわ

ルドルフさんは、そう言う

楽しかったヨ、ハルコまたやろうネ

笑顔で、そう言うイーディに、ライン晴子さんは

次は負けません

キッと強い眼で、イーディを睨む

2人のそんなやり取りを聞いて観客席は、また大きく盛り上がる

うん、あの子はいいかもね

アメリカに連れていく選手だよっマルゴお姉ちゃんとイーディたちだけじゃあ組める試合が少なくなっちゃうから

寧はマルゴさんとアメリカでの格闘技興行を計画している

今日はさ人材探しもしているんだよっライン晴子ちゃんは、清潔感もあるしアメリカでも、人気出ると思うよっ

でも、ライン晴子さんは師匠のルドルフ聖子さんとの絆が固そうだしヤッちゃんたちの企画に引き抜くのは難しいんじゃないか

そんなのルドルフ聖子さんごと、出場を打診すればいいんだよっ

ああ、師匠と弟子セットでアメリカに連れていくのか

あたしたちのアメリカ興行はルドルフさんたちにとっても美味しい話のはずだからさ

全米進出全世界的に名を売ることのできる女子格闘技大会にする

もっともこの後の試合で、ルドルフさんの実力を見せてもらわないと、最終決定はできないけれどねっ

ああ、師匠の方が弟子よりもセンスも才能も劣っているというケースもありますものね

師匠っていうのは、弟子よりもずっと優れていないとダメなんじゃないのか

格闘技の団体を運営する能力と、本人の強さは別のものですからなかなか難しいものなんですよ

栗宮さんは、笑顔でそう言った

ところで、これまでの試合で他に興味を持たれた選手はいらっしゃいますか

そう聞かれて寧は

うーん、欧州藤原氏の3人は良いところが見られなかったよねロビン・ムスクもプロレスに特化し過ぎてる感じだし

電人M子さんとモンキー・ミミさんは

あの2人は、ちょっと判らないなぁ強いってことは判ってるけれど

次はその電人M子対モンキー・ミミの対決となる

ま、試合を観て考えるよっ

美智が戻って来た

ご主人様、ただ今、戻りました

スッと、自分の元の席に座る

イーディが観客の注意をリングに向けている間に、客席内にいる敵は全て駆逐致しました

そうかだから、美智はイーディにあんなことを言ったのか

瞬殺では何人もの敵を倒す余裕が無い

これから会場内に侵入して来ようとする敵については父上が排除して下さるそうです

美智が観客席、後方を見る

ああ、工藤父がこっちに向かって軽く手を上げる

じゃあ、この会場の中はもう安全なんだ

はい、後は出場者だけです

各クラスに敵の手の者、関西ガチ虎一家の所属選手が、本戦に残っていますから

美智は、リングの方に視線を送る

ああこの一番軽いクラスの関西ガチ虎一家の刺客である、電人M子が現れた

先ほどと同じ学帽に、胸はサラシ巻き、縞パンのみというスタイルで

イーディとマルゴお姉様は実力で、敵を打ち倒されるでしょうが

ああ、工藤遙花と剣道マリアはガチ虎一家にやられてしまうかもしれないな

試合前に何とかして、出場を辞退させるしかないのか

それでしたら、わたくしにお任せ下さい

ずっと黙っていたキヌカが口を開く

このような場合のための、ステルス・キヌカでございます

キヌカは、そう言って黒頭巾と覆面を取り出す

熱と頭痛と重い咳で苦しんでます

死ぬかもしれませんうー

こういう体調で元気な子たちを書くのはツライです

1198ファイティング・オン / 2つの結末

・大ポロン・カリスマン/27歳超実戦空手トミー・アシダ道場所属インチキ京都弁を使う

・モンキー・ミミ/26歳昨年の48キロ級チャンピオン超実戦空手トミー・アシダ道場所属

さてでは、とっとと終わらせてしまいましょうか

鮮やかなピンク色の空手着を着た、去年のこのクラスの覇者モンキー・ミミがリングに上がる

一番軽いクラスの準決勝、第2試合

モンキー・ミミ対電人M子との闘いが始まる

くくっわいのこと、簡単に倒せると思っとるんか

前戦でのペナルティで下半身は縞パン1枚で闘うことになった、電人M子がニヤッと笑う

ええ、あなた程度の選手は簡単にヒネリ潰させてもらうわよマトモに相手したらバカを見るだけみたいだし

モンキー・ミミも、不敵な笑みを浮かべる

あなたの身体能力が、人並み以上だってことは認めるけれどあなたからは、格闘技のセンスとかは全然感じないもの邪悪さだけよね、あなたって

邪悪でなんぼですわ

そう返す電人M子を見て、モンキー・ミミは

あなた、裏格闘技の人でしょ

聞いたことがあるわ関西の方で賭の対象になって闘う裏の格闘技があるって話をルール無用、何でもありの現代の拳闘士あなた、多分そこの世界から来たのよね

だったら、何じゃい

電人M子は、あっさりと認める

困るのよね裏の人は、ずーっと裏に居てもらわないと表の世界の人間であるあたしたちは

裏の人間が、表のヤツラよりも強いことが、世間に知られたら困るからやろ

ニヤッと笑う電人M子

まさかあなたたちこそ弱いから、裏の世界に沈むハメになったんでしょホントに強ければ、ヤクザなんかのオモチャにはならないものね

モンキー・ミミは肩や首を軽く廻して、闘いに備える

あたしが困るって言ったのはメンド臭いからよ裏の人間が光ある場所に出て来たら、きっちり退治しないといけないから悪いけれど再起不能になってもらうわ

ロビン・ムスクちゃんみたいな、真面目に格闘技をやっている子があなたみたいな人のせいでケガさせられたんですもの2度と表の世界に、顔出しできないようにしてあげる

やれるもんなら、やってみーや

ゴングが鳴った

スァァァァァァァッ

モンキー・ミミ選手が、一気に電人M子との間合いを詰める

ほよっ、ほよっ、ほよっ

電人M子は、奇声を上げながらカウンター狙いのパンチを繰り出すが

遅い、遅い、遅いわよっ

全て、モンキー・ミミに避けられる

ほら、捕まえたっ

モンキー・ミミの手が電人M子の腕を掴んだように見えたが

ヌルリッと滑ってM子の腕が捉えられない

今じゃっ

逆に電人M子のキックが、モンキー・ミミの頭を狙う

モンキー・ミミは、何とか腕でキックをガードするが

その蹴りもヌルルルッと

あなた、全身に何か塗ってるわね

モンキー・ミミは、一旦、距離を取ってからM子に叫んだ

乾燥肌なんじゃいクリームを塗って何が悪いっ

何がクリームよそれはもうワセリンでしょっ

そんなん知ったことかぁぁ

今度は電人M子の方が、モンキー・ミミを攻撃する

あれ、全身に塗ってますね足の裏以外は全て

ああ、そっか足の裏までヌルヌルさせたら、踏ん張れないもんな

踏ん張るどころか、マットの上にまともに立てなくなります

しぇしぇ、しぇしぇっ、しぇけなべいびー

また訳の判らない奇声を発しながら、電人M子がモンキー・ミミにパンチをラッシュしていく

モンキー・ミミは防戦一方だ

ミミ

モンキー・ミミ側のコーナー・ポスト下に同門のポロン・カリスマン選手が現れる

髪ですその人頭の毛にまでは、塗ってないどす

そうか頭にまでベットリとクリームを付けたら

髪の毛がペッタリと頭に張り付いて異様な外見になる

全身ヌルヌルなのが、最初からバレてしまうし

クリームが流れて、自分の眼に入る危険性もあるから

最高よ、そのアドバイスッ

モンキー・ミミは、シュワッと電人M子のパンチをかいくぐると

両手でグワシッと、電人M子の髪の毛を掴むッッ

空手ホームランッッ

そのまま力任せに、ブオンッと電人M子の身体をブン投げたッ

ぎょぇぇぇぇぇぇぇッッ

投げ飛ばされた電人M子は、ドカッと背中からマットの上に倒れるが

全身にヌルヌル・クリームを塗っているから、そのままツーッと

マットの上を滑って流れて行く

ほええ

あマットの端から、リング下に落ちた

それを狙ってモンキー・ミミは

空手ウイングッッ

大きくジャンプして、コーナーポストの上に立つと

リング下の電人M子に向かって

空手トルピード

一直線にダイブするッ

ぐぇぇぇぇぇぇぇッッ

電人M子の身体を全身で押し潰すッッ

そこまでだっドクターっ

レフェリーが、試合を止めた

うおっしゃぁぁ

モンキー・ミミは大きく勝ちどきの声を上げ

1人だけ、リングの中に戻って来る

うぉぉぉぉぉぉぉ

観客たちは、最高に興奮していた

さすがモンキー

強いぜ、負けないぜ

モンキー・ミミは片手を上げて、観客たちの声に応えるが

ちっ、あいつのヌルヌルが付いちまったよ

手や足に付いたクリームを、空手着の裾で拭っていた

体重別・48キロクラスの準決勝第2戦の勝者は、モンキー・ミミ選手ですイーディ・セクストン選手との決勝戦は、54キロ級の準決勝戦の後に行います

そんなアナウンスが、会場内に響く

ああ、このまま決勝戦だと、今、闘ったばかりのモンキーさんが不利だもんね

かといって、この後も試合が立て込んでますから休憩時間を挟むわけにはいきませんし

栗宮さんも、そう言う

最後のスーパー無制限クラス以外は、決勝戦だけ次のクラスの試合の途中に組み込んでいくんですね

モンキーさんは、身体に電人M子のヌルヌルが付いているから、シャワーを浴びないといけないし空手着も着替えた方が良い

決勝戦前に、少しでも時間が空く方が助かるだろう

引き続き、体重別54キロクラスの決勝トーナメントを行います

場内アナウンスが、そう告げた

姉上の出番です

ああ、リングの前にドタドタとテレビのスタッフが現れる

美智の姉の工藤遙花は去年の高校生空手チャンピオンで、それなりに顔が知られているから

今日は、テレビのドキュメンタリー番組が密着取材に来ている

それでは54キロクラス選手入場

さっきのイーディたちのように54キロクラスでも、入場行進曲に合わせて、選手が次々と現れる

あれ一番軽いクラスと比べて、普通な子ばかりだな

覆面女子レスラーとか、ピンク色の空手着の選手とかはいない

普通の空手着や柔道着を着た選手がほとんどだ

さっきのクラスの方が異常だったんじゃないの

うんそうかもしれない

ああ、欧州藤原氏のトレーニング・ウェアの選手もいる

レミー藤原のところは、本当に選手がたくさんいるんだな

あ姉上です

工藤遙花も真っ白な空手着スタイルで登場した

今の彼女に死角は無いッ空手界の女子高生クィーンだッチーム・クロモリ所属、工藤遙花ァァッッ

紹介アナウンスに合わせて、観客席に手を振る遙花

観客席の男たちが湧く

こうやって遠くから見ている分にはそれなりの美少女なんだけどねぇ

ああ、美智の姉だから綺麗なことは、綺麗なんだけれど

オレも思わず言葉が出る

うん、ヨッちゃんそうなんだよねぇ

とにかく工藤遙花は残念な子だ

武闘派お嬢様の栗宮さんが、オレに言う

工藤遙花さんの2人後ろに

さっきのクラスの電人M子のように

学帽ガクラン・ケンカ番長スタイルの女が現れる

裏格闘技界からの第2の刺客ッ生で拝んでオドロキやがれっ関西ガチ虎一家所属、原人L子だァッ

さっきが電人M子で今度は原人L子か

関西ガチ虎一家の目的は、あたしたちに対する嫌がらせだから出場選手は、リングの上でうちのチームの選手を潰すつもりだと思うんだけれど

観客席やこの会場に入り込んだ関西ヤクザの手下たちはすでに、美智と工藤父が全員駆除している

残っているのは予選に勝ち残って本戦トーナメントへの出場を決めた関西ガチ虎一家の選手だけだ

でも前のクラスみたいに、イーディと当たる前に他の選手に負けてしまうこともあるから

あれは予想外だったんじゃない電人M子は、モンキーさんに勝つ気満々だったし

寧は、そう言うがすでに1人ヤられてしまっているのだから、ガチ虎一家の連中が無茶なことを仕掛けて来る可能性もあるんだよな

54キロクラスも以上、8名でトーナメント戦を行いますッッ

リング下に8人の選手が並んだところで場内アナウンスが、そう告げた

異議ありッ

シャシュッと黒い小さな影が、リングの上に跳ね上がるッ

シュバッとコーナーの柱の上に立ったのは

ステルス・キヌカ推参

顔を黒い頭巾で隠したキヌカだった

おっ、ステルス・キヌカだっ

おいっ、まじかよっ

キヌカはこの間この姿で雪乃のテレビ番組に出ている

原人L子覚悟ぉッ

キヌカはコーナーポストの上から、原人L子を指差す

原人L子も、この突然の闖入者に戸惑っている

あなたは、わたくしの親のカタキなのですっ親のカタキ、覚悟っ

わ、ワタシは

カタキと言ったらカタキなのですっ多分、カタキなんですっきっと、カタキなんですっカタキなんじゃないかなま、ちょっと覚悟をするのですッ

一気にたたみ掛けるように言うキヌカ

食らえッステルス流星キックッッ

そのまま、キヌカはコーナーの柱から高くジャンプすると

原人M子目掛けてキックを放つッ

慌てて、両腕でガードを固める原人L子

キヌカは、彼女の腕を蹴って再び上空へ舞うと

ステルス・反転ローリング・クラッシュ

今度は、クルクルッと縦に回転しながら、原人M子の後頭部に

ジャスト・ミートッッ

カカト落としをキメた

ミギィィィッッ

原人M子は

ち、チガウワタシカタキ、チガウ

それだけ呟くとそのまま、ガクッと失神て倒れた

正義は勝つ

黒頭巾のキヌカは、勝利のポーズを取る

嵐ともにやって来て、悪を蹴散らす嵐の娘ステルス・キヌカはどこへ行くステルス・キヌカこそ誠の少女の姿なのである

自ら、意味不明なナレーションを叫ぶと

サラバだ、諸君

ステルス・キヌカはシュパタタッと、風の様に走り去って行く

会場は、シーンと静まり返っていた

ああ、なるほど覆面をすれば、良いのですわね

栗宮さんの警護役の御厨くるみさんが、そんなことを言い出した

遙花たちの試合は、簡単に触れるだけにします

体調が直りません熱と咳に苦しんでます

杉なんてなくなればいいのに

1199.ファイティング・オン / 工藤姉妹

えー先ほどのトラブルによる負傷で、関西ガチ虎一家所属、原人L子選手は決勝トーナメントに出場できなくなりました

場内にアナウンスが流れる

つきましては体重別・54キロクラスは、昨年度の優勝者である大雪山柔道クラブ所属・武蔵トモエ選手を1回戦シードとして、7人によるトーナメントと致します

後のスケジュールが詰まっているから、そういうことになるんだな

対戦は、次のようになります

リングの後ろの大型モニターに対戦表が表示される

1回戦第1試合/ダイヤモンド愛子カワウチ道場VS小松竜子トゥインクル・クラブ

第2試合/工藤遙花チーム・クロモリVS岩崎ヒロミマドンナ・ララバイ

第3試合/レイン・ボーマンカワウチ道場VS岩崎ヨシミみんなのジム

1回戦シード/武蔵トモエ大雪山柔道クラブ

準決勝の組み合わせは、第1試合と第2試合の勝者と、第3試合の勝者とシード選手で行います

うん工藤遙花は、第2試合か

リングに第1試合の選手たちが上がり、対戦の準備をしている

ありす、どうだここまで観て

オレはお屋敷から、メグとキヌカと一緒に連れて来たありすに尋ねる

わたくしこういう試合を観るのは、生まれて初めてなので何と表現したら良いのか判りませんが

ありすは答える

でも、皆さん、一生懸命に鍛錬を重ねて今日の試合に臨まれているんですよねわたくしも早く、何か、一生懸命に打ち込めるものを見つけたいと感じました

この子は、本当に真面目な子だ

槍術でしたら、わたくしが教えてさしあげますわ

武闘派お嬢様の栗宮素子さんが、そう言う

いえ、あのわたくし、闘いたいわけではございませんのでその

うんありすに、戦闘は似合わない

あら、残念ですわ

でも身体を動かすのは気持ち良いことよありすさんは、もっと外で汗をかいた方が良いと思うわ

オレたちの家族になってから、ありすはほとんど外出していない

来週からは、マナや双子たちと中学校の特別クラスに通うことになっているけれど

基本的にはお屋敷の中に閉じ籠もったままになっている

あ、はいそうでございますね

うんありすちゃんは、お屋敷に来てからたっぷり汗をかくのはベッドの上だけだもんねっ

顔を赤らめるありす

ベッドの上で汗を

不思議そうに栗宮さんと、彼女の警護役の御厨さんがありすの顔を見る

あの黒森様のお側に置いていただいておりますのでわたくしにはわたくしのお役目がございます

ありすはオレのセックス奴隷だ

ベッドの上でどのようなお役目を

栗宮さんが、そう尋ねると同時に

キヌカが、返って来る

ステレス・キヌカとしての黒頭巾を外して来ているので周りの観客にはバレていない

キヌカの見た目は小さくて可愛らしい女の子だから

この小さな肉体に、あの破壊的な戦闘力が詰まっているとはとても、想像できない

ああ、お帰りキヌカご苦労さん

キヌカが、オレの方に頭を突き出す

ああ頭を撫でて欲しいんだな

うん良くやった偉いぞ

オレはキヌカの頭を撫で撫でしてやる

キヌカは、いつものように余り表情は出さないが嬉しそうに、そう言った

54キロクラスの試合は問題なく進んで行く

ええと第1試合は、小松竜子選手が勝ったらしい

次は美智のお姉さんの出番だぞ

第2試合工藤遙花は、相変わらずテレビ局のカメラを引き連れている

美智は遙花さんのセコンドに付きたいんじゃないのか

オレは美智に尋ねてみた

現在のわたくしのお役目はご主人様たちの警護でございますから

美智は、いつもの無表情でそう言う

でも、客席内に入り込んでいた敵は全て駆逐したんだろ

警護でしたら、うちの御厨もキヌカさんも居ますし

栗宮さんも美智に、そう言ってくれた

ですが、わたくしは

美智は、口籠もったまま動かない

ここはオレが見ているからお前、遙花に付いてやってくれよ

振り向くと工藤父が、観客席の一番後ろから、オレたちの席にまで降りて来ていた

ああ、場内のチェックは、ちゃんとオレの仲間たちにやらせているから、安心しろ

外から新たに関西ヤクザの配下が入って来ないように

オレは、ほら遙花のヤツには嫌われているからよだから、美智悪リィけど、オレの代わりに遙花の側に付いててやってくれねーか

工藤遙花は工藤父が、ジッちゃんの直属で裏の仕事をやっていることを知らない

工藤探偵事務所なんてものを作って、好き勝手に遊んで生きていると思い込んでいる

わたくしも姉上には嫌われています

香月家の令嬢・みすずの警護役だ

かつて遙花が望んでいた警護員のエリートコースを美智は歩んでいる

工藤遙花には、3歳も年下の妹に負けたコンプレックスが根深く残っている

そんでもオレよりは嫌われてねーだろ

工藤父の声は、寂しそうだった

美智、行こうオレも一緒に行ってやるから

美智は驚くが、オレは席を立ち

工藤さんみんなの警護、お願いします

おうっ、任せとけ

オレは美智の手を引いてリング下へ向かう

美智の手は緊張していた

何だね、君たちは

リングサイドで、呼び止められるが

チーム・クロモリの者です

オレは平然と、押し入ってしまった

今日の試合はたくさんのジムや道場の人たちが入り乱れているから

堂々としていれば、問題なく入れて貰える

リング下で空手着姿の工藤遙花を捕まえた同じく空手着姿の剣道マリアも居る

な、何よ美智

工藤遙花は美智の顔を見て、不快そうに言った

あたし、これから試合なんだから判っているの

テレビのカメラがあるからそれ以上のことは言わない

姉上頑張って下さいご武運を祈ります

とテレビ関係者の偉そうな立場っぽいオッサンが

おい、妹さんも撮しておいてくれ

カメラに指示する

ち、ちょっとあのこれって、あたしへの取材ですよね

工藤遙花は、慌ててそう言うが

もちろん、そうだけれどさっき、妹さんが控え室に来た時にも思ったんだけれどこっちの絵の方が、テレビ的に美味しいかなぁって

オレたちは試合前に工藤遙花たちを激励に行った

その時も近くにテレビ・カメラがあったから

あ、あたしより美智の方が良いんですか

テレビ局の人は笑う

そんなわけないってのそういうことじゃないです工藤遙花さんは、女子高生美少女空手チャンピオンで工藤遙花さんが、この大人も出る大会に挑戦するっていうのが今回の番組の主旨ですけれどでも、妹さんも、相当な美人さんじゃないですか

テレビの人は、ニヤニヤと遙花と美智を見比べて

美少女姉妹っていう方が、美味しさが増しますし麗しい姉の闘いを見守る、美しい妹っていうのステキじゃないですかえっと、そこの君もチーム・クロモリの人

ってオレのことか

そこだと、カメラに撮っちゃうからこっちに来ててくれる邪魔だから

ああオレは邪魔か

オレは、カメラの死角に入る

うん、いいねいいねこの絵で行きましょーッ

軽薄な感じに、テレビの人が決めてしまった

美智さっきみたいなアドバイスは、いらないからね

工藤遙花は、美智を睨んで言う

あたしの技は空手なのよあんたの使う、古臭い変な技とは違うのよあんたのアドバイスなんか聞いたら、かえって調子が狂っちゃうわ

さっき美智に反応速度を修正されたことに反発しているらしい

今は特に何も申しません

美智はリングの反対側の対戦相手をちらっと見る

あの方なら油断さえしなければ、姉上の実力なら必ず勝てるはずですから

あ、当たり前でしょあんた、あたしを誰だと思っているのよ

工藤遙花は、妹に褒められたと思っていい気になる

そういう態度が油断に繋がります

あちらの選手姉上が想像している以上に、フットワークが巧みだと思いますしリーチも長いですあちらが得意とする距離で闘ってはいけません

美智は一目で相手の能力を見抜く

そ、そんなの判っているわよだから、少し距離を取って闘えばいいんでしょ

工藤遙花は、そう言うが

姉上逆です距離を詰めて下さいインファイトに徹すれば、姉上のペースで闘えますから

あ、当たり前じゃない判ってたわよあたしは

両選手、リングへ

レフェリーに声を掛けられて工藤遙花は

リングへと上がって行く

判ってたわよあたしは美智に言われなくても、判ってたんだからね

リングのロープを潜りながら、美智に振り向いてそう言う

お姉さんは、あなたにとってどんな人ですか

とテレビの人の指示で、女のリポーターが美智にマイクを向ける

美智はリング上の遙花を見上げたまま

いつも心配していますでも姉妹でございますから

溜息を吐いてそう言う

工藤遙花は緒戦に無事勝利した

2ラウンド丸まる使って、最後は判定だったけれど

それでもジャッジは全員、工藤遙花の勝ちだと判断した

はぁ、はぁ、はぁみ、見てたわよねか、勝ったわよ

全身汗だくで、工藤遙花はリングから降りて来た

すぐに、リングの上に次の試合の選手たちが上がって行く

さすが、去年の高校チャンピオン今、対戦した岩崎選手は32歳のベテラン格闘家ですよ

リポーターの女性は、興奮気味にそう言う

現役の女子高生が、大人の選手と互角以上の闘いをして勝つなんて快挙ですよ

あこの人たちは

工藤遙花のことだけ取材に来ているから、判ってないんだ

いえ、快挙でしたらすでに、高校1年生の選手が、48キロ級クラスの決勝に残っていますので

美智がいつもの無表情で言う

姉上はすでに高校3年生ですしまだ、本戦トーナメントの1回戦に勝っただけですし誠に申し訳ありませんが、今の選手は特筆すべきほど強くはありませんでした

いや、あの、でもあなたのお姉さんが勝ったんですから

レポーターの女性は、美智の態度に困惑している

いいんです今、美智が話していた、下のクラスで決勝に残っている女子高生もあたしたちと同じチームの子ですから

ムスッとして工藤遙花は言う

アメリカから来た、留学生の子ですけどっ

勝ったのに、美智が褒めてくれないことにムクれているらしい

あ、ああそうなんですかえっとその選手も、取材した方が良いですか

リポーターの女性は、さっきの責任者らしいテレビの人に尋ねるが

しないでいいですっいえ、しないで下さい

工藤遙花は、はっきりと言う

イーディを取材されたらドキュメンタリー番組の主役の座を奪われてしまうと感じたのだろう

そんなことより、遙花さん次の試合、見ておいた方がいいんじゃないですか

リングの上では、1回戦の第3試合が始まろうとしている

レイン・ボーマン選手対岩崎ヨシミだ

み、見るわよ一応

工藤遙花はそう言う

でも第3試合の勝者は、その後は自動的に去年の優勝者と闘うことになっているから

ああそういうルールになったんだっけ

もし、あたしが決勝に残れたら相手は多分、去年の覇者の武蔵トモエさんだと思うのよ

その選手はそんなに強いんだ

姉上は決勝以前に、第1試合の勝者と準決勝を戦わなくてはならないことをお忘れなく

美智がリングの奥の壁際にいる選手を見る

確か、第1試合に勝ったのは

ああ、オレみんなと話していたから、ちゃんと試合を観ていない

次に対戦するのはトゥインクル・クラブの小松竜子選手ですよね

女のリポーターが、パンフレットを開いて調べる

ええっと華麗な蹴りに定評のある、女子キックボクサーで、愛称はコマッタさん

コマッタさん

先ほどの試合を見せていただきましたがわたくしが見る限り、かなりの難敵でございます姉上

姉上のファイト・スタイルとは一番、噛み合わないタイプの格闘家でございますから

上のクラスの出場者も、全部キャラを作りました

名前だけしか出ない人もいると思いますが

喉が痛くて、声が出ません少し動いただけで、クラクラします

誰か杉を滅ぼして下さい

1200.ファイティング・オン / バブリング

・小松竜子/23歳トゥインクル・クラブ所属女子キックボクサー通称コマッタさん

・武蔵トモエ/28歳大雪山柔道クラブ所属昨年の54キロクラスの覇者

+美智

工藤遙花の次の対戦相手であるキックボクサー小松竜子選手

通称コマッタさんについて美智が言う

特に、今日の姉上は身体のキレがイマイチでございますから

そう言い切る妹に、工藤遙花は

そんなことないわよむしろ今日のあたしは、いつもより調子が良いくらいよ

そう断言し返すが

そういう風に、ご自分の体調を自覚できないほど良く無い状態におられます

うーん、オレの眼には今の工藤遙花に、何か問題があるようには思えないけれど

いつもよりも調子が良く感じられる時こそ、実はよくないという話はよくあることです

でも、美智がこうまで言うのだから何かあるんだろう

もったいぶらないで言いなさいよあたしの何が気にくわないって言うの

工藤遙花は、怒気の籠もった声で妹に言う

そんな姉妹の様子を、テレビカメラは撮影し続けている

今の姉上はうん、たんです

美智の言葉に、ギョッとした顔をする工藤遙花

攻撃のリズムが単調ですうん、たん、うん、たんのワンツーばかりを多用しています

姉上が次に闘われる選手はカウンター攻撃がとても巧い選手です姉上のうん、たんのタイミングは、すでに知られてしまっていると考えるべきでしょう

54キロ級の第1試合を闘った小松竜子選手は、工藤遙花よりも先に試合を終えているから工藤遙花の第2試合は、チェックしているはずだ

わ、判ったわ攻撃のリズムを変えるわよ

遙花は、あっさりと自分の問題を認めた

どう変えるのです

それはうん、たんじゃなくすればいいんでしょ

うん、たんを止めてどうなさいます

うん、たんじゃないんならうん、たてぃたか、うっとんとか

いえ、いっそうってぃか、うっとん、うっぴっぱでは

それは難しいわよ

剣道マリアわたくしの前に立ちなさい

ちょっと、姉上に実演して見せるだけですから

美智は、剣道マリアを敵に見立てて姉の前で、軽く動いてみせる

いいですかうってぃか、うっとん、うっぴっぱ

するするっと、ジャブとストレートを繰り出しながら剣道マリアを追い込んで最後は膝蹴り

もしくはちゃぴぺか、ぺっとんた、まっぷりま

今度は、ローキックの連続から入ってストレート、フック、最後はアッパーの連続技

とにかく、相手に次の攻撃を予想させない組み合わせが大切です

特にカウンター狙いの敵に対しては、攻撃の入り方に注意して下さい

うん、たんで仕掛けることだけは、絶対に避けて下さい

わ、判ったわよ美智

工藤遙花は、戸惑いの表情で妹に返事した

あの今のうん、たんとかちゃぴぺかって何なんですか

工藤遙花に密着取材しているドキュメンタリー番組の女リポーターが尋ねる

工藤遙花は、少し間を置いて

あのあたしは、空手が専門ですけれどあたしたちの祖父は、古武術をやっていまして家に昔から伝わる武術なんです妹の美智は祖父から、その古武術をずっと習っててその

うん、たんは、工藤流古武術における技のリズムの表現です

姉上も、空手を始められる前はわずかな期間ですが、わたくしと一緒に工藤流古武術の稽古をしていますので

遙花が、工藤流古武術を嫌っているのは知っていたけれど稽古をした経験はあるんだ

いえ、あたしはそんな古武術とか認めてないですし近代空手の方が、技術も技も洗練されているって判っていますから

申し訳ございませんわたくしの方が工藤流しか知りませんので工藤流古武術の言葉で説明させていただいております

そうなのよこの子がうん、たんでないと、あたしに説明できないから

女のリポーターは

とっても、ご姉妹で仲が良いんですねぇ

明るい笑顔で、そう言う

はいーっ

驚く、遙花

ああ、この姉妹の絆をちょっと強調して撮っておいてくれ

テレビの偉そうなオッサンが、カメラマンに指示する

い、いやあの、あたしと妹はそんなに仲が良いとかは

工藤遙花は、必死で否定するが

いいから、いいから空手少女の孤独な闘いより美少女姉妹の挑戦の方が、ずーっとイイよ

テレビの人たちは、遙花の言葉を謙遜だと思い込んでいる

姉上うてぃった、うてぃった、やんばらやんやんやん

美智に突然、そう言われて

工藤遙花は、工藤流古武術の指導法に則って中空に蹴りとパンチを放っていく

やっぱり覚えているのですね

美智は微笑む

そりゃ忘れないわよ生まれて初めて習った格闘技なんだから

工藤遙花は、苦々しい表情で言う

あたしが6歳であんたはまだ3歳ぐらいだったんじゃないの

はい、わたくしはそのままお祖父様の家に引き取っていただきましたから

工藤家は昔は貧乏だったので末っ子の美智は、祖父の家に預けられて育った

あたしも小学校の夏休みが終わるまでは、あんたと一緒に居たから

お祖父様に工藤流古武術の基礎を教わりましたとてとて、たったん

工藤遙花は、美智の言葉の意味する連続技を繰り出す

はい、とてもよろしいですとってん、ぱらり、のぷぅ

そんなことを話している内に

リングの上の1回戦第3試合が決着する

勝者はカワウチ道場所属、レイン・ボーマン

ああ、ちょっと色黒の選手が勝利に喜んで飛び跳ねている

1ラウンド4分16秒必殺必中ライジングアローからのインディアン・デスロックの連続技でレイン選手が勝利しました

これで54キロクラスの1回戦は終了

ベスト4進出はトゥインクル・クラブ所属小松竜子選手、チーム・クロモリ所属工藤遙花選手、カワウチ道場所属レイン・ボーマン選手、そして前年度の優勝者である大雪山柔道クラブ所属の武蔵トモエ選手です

観客席が、ワーっと沸く

引き続き、準決勝戦第1試合を行います

出番だわ

遙花が美智を見る

行ってくるわよ美智

ご武運を姉上

あんなに溝が開いていたはずの姉妹の関係がいつの間にか改善されていく

勝って帰ってくるからね

工藤遙花は、リングへと向かう

オレと美智と剣道マリアはリング下から試合を観ることになった

相手の小松竜子という選手はああ、あの人か

キックボクサーというだけあって、身体が分厚いし、手足も太い

でも、とても愛嬌のある顔をしている選手だ

小松選手の応援客らしい人たちが、一斉に大声で

コマッタさぁぁーん

と、呼び掛けると

はぁぁーい

小松選手は、明るい笑顔で元気に手を振る

なかなかの人気選手らしい

遙花ちゃーん

工藤遙花も、現役女子高生選手だからファンが付き始めている

遙花も軽く手を上げて

ういっす

何でそんな返事になるのか判らないが、とにかくファンに応える

レフェリーが選手たちを軽くチェックして

試合開始のゴングが鳴るッ

FIGHT

工藤遙花と小松選手は、リングの中央で軽く拳を合わせる

そこから

姉上ッとどんぱ、どどんと、しゅびしゅば、しゅびびび

さっきまでのリング下での稽古の流れで

セコンドの席から叫ぶ美智の声に工藤遙花の身体は、率直に反応するッ

ぱらんか、ぷららんか、はんぷる、ばんぶるびー、はむぽっぷん

工藤流古武術の方式で様々な種類のキックとパンチを混ぜた複雑なコンビネーションが繰り出されるッッ

な、何なのこの子

これでは小松選手は、カウンター攻撃を仕掛けるどころか遙花の想定外の攻撃を避けるだけで精一杯だ

何なのよ

それでもさすがプロ格闘家、フットワークと腕のガードで遙花の攻撃をギリギリで避けていく

どかじゃか、どんどん、どんじゃら、ちゃかぽこ、ぽかすかじゃんがら、すかちゃら、すかぽこ、ぽこぽこぽ、ほかぽか、ぴーひゃらら、だばだば、しゅびどぅば、はららら、くわばら、おちゃっぴぃ、どんぶらこっこ、ずんぶらぶらぶら、とてとてたった、とびたった、くるくる、もこもこ、はらほれひれはれふれひれはー、じーらっは、こんぱらや、ふんばば、ほんだだ、かぁぁん、びぃやぁんッッッ

小松選手の動きを見て、さらにどんどん指示を増やす

何も考えず、機械的に美智の指示に合わせていく遙花

さらに美智は

あーれー、どるるん、ちぃーぱっぱ、ひばーだら、ぶーだれ、ばるるるん、ぼろろ、ぶろろろろろー、ぎゅんぎゅん、らーら、るーららら、はらっぽ、もろっこ、ばすまじっくりん、きんたらぎんだら、ずーとるび、かきのきくりのきかきくけこ、からんば、はらばんば、ふぁんたらぎーほけ、でりかえっせん、ちゃいさか、ほいさか、ぶひひひん、ぶぶん、ぶん、ぶひひひひひー、ぱるっく、ぽろっこ、けろっこでめたん、あんどろうめだ、さるばとーれ、ぺすかとーれ、じょかとーれ、めんたる、めんでる、めんそーる、めんそーれ、そーれ、それそれ、そらしどれッッむ

妹の指示による姉の攻撃はどんどん加速していく

ついに小松選手のガードが、追いつかなくなったッ

ゲフッ

工藤遙花の正拳が、小松選手のボディに打ち込まれるッッッ

グラッと崩れる小松選手の肉体

いまだッ

あっれ、きゅいじぃぃぃぃぃぃぃぬっ

美智が指示したトドメの一撃は側頭部への左回し蹴りだった

工藤遙花からすれば気が付いたら、対戦相手が倒れていたという状態だろう

全身汗だくで呆然と、マットの上に倒れている小松選手を見ている

カンカンカンカンカン

試合を止めるゴングが乱打されている

勝者、工藤遙花

レフェリーが、遙花に宣言する

うおおおおおっ

観客席は、もの凄く盛り上がっていた

何か良く判らなかったけれど凄かったぞー

すげー、コンビネーションだった

決勝も頑張れよ遙花ちゃーん

そんな遙花を讃える声が、あちこちから叫ばれている

いや、すげーのは美智だ

小松選手の動きを予測してもの凄い勢いで、姉に適確な指示を送っていたのだから

美智を信じて、指示通りに完全に動いた遙花もそれなりに、すげーけど

い、いいのよね勝ったんだから、これで

工藤遙花はポカンとした表情で、リング下の美智に尋ねる

姉上キリっとなさって下さい次の敵が見ています

ああ準決勝第2試合に出る2人の選手が

先に決勝進出を決めた工藤遙花を見上げている

まだ終わっていませんよ姉上

工藤遙花は、フーッと大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせる

そして、もう一度、観客席に手を振ってリングの下へ降りてくる

でも、ちょっと悔しいわ

遙花は妹に言った

あたしの力で勝ったわけじゃないから

姉上のお力です

はっきりと、そう言う

攻撃のタイミングの指示はわたくしが致しましたが敵を打ち倒したのは、姉上のご自身の空手の技ではございませんか

遙花は、改めて妹の顔を見て

美智あなた、変わったわね

ぽつりと言う

昔より、ずっと丸くなった優しくなったわ

美智は、ずーっと美智のままでございますが

そんな姉妹のやり取りもテレビカメラは記録していく

まさかツツイヤスタカ先生みたいなネタをやるとは

こういうのは書いている途中で思い付くのでうーん

体調がまだ良くないので、減ページで済みません

1201.ファイティング・オン / 48キロ級決勝戦

柔道着の選手が相手の選手を寝技で制する

関節技がキマってしまったのだろう技を掛けられた選手は、すぐにマットをパンパンとタップした

レフェリーが試合を止めた

体重別・54キロクラスの準決勝第2試合は前年度の優勝者である武蔵トモエ選手の勝利です

場内アナウンスに観客席から、声が漏れる

工藤遙花が、54キロクラスの決勝戦で戦う相手が決まった

やはり、こういうことになりましたか

柔道のスペシャリストというのは空手家である姉上にとっては、決して理想的な相手ではないと思いますが

だ、大丈夫よ倒されないようにして、立ったままの打撃で勝負するからそれに、もし倒されたとしてもグラウンドでの寝技の特訓だってしてきているし

それは、あちらも同じでしょうむしろ昨年の覇者であり、姉上よりも総合格闘技のキャリアの長い武蔵選手の方が、空手を使う選手への対応は完璧だと思いますが

確かに、武蔵選手の方は、今までに何度も打撃系の選手と闘って来て勝利している

経験値は、工藤遙花よりずっと多いはずだ

じ、じゃあどうすればいいのよ

工藤遙花は、素直に妹に尋ねた

もう、彼女はこの3つ年下の妹の格闘センスが、自分よりも優れていることを認めている

美智が、そこまで口にしたところで

アンタたち楽しそうネ

54キロ級の準決勝戦が終わったから

この次の試合は48キロ級の決勝戦なんだ

準決勝と連戦にすると連続で闘う選手が不利だから

各クラスの決勝戦は、次のクラスの準決勝戦が終わったところで行うルールだ

Darlingが、ココに居てくれて良かったネチョットENERGY貰うヨ

イーディは、そう言ってオレの背中に抱きついて来る

ウンウンDarlingの匂いネ

鼻をオレの背中に擦り付けて、クンクン匂いを嗅いでいる

工藤遙花は、そんなイーディを無視して

美智、何か策があるのなら教えなさいよあたしの決勝戦まではこの子たちの試合と60キロ級のトーナメントがあるんだから時間は充分にあるんだから

イーディの出る48キロ級の決勝戦の後は60キロ級の本戦トーナメントの1回戦が4試合準決勝が2試合工藤遙花の54キロ級決勝戦という順番になる

ソウ、慌てるコトはないネ

イーディが、オレの背中から顔を上げて遙花に言う

アタシの闘いぐらい、観てからにすればイイヨ

いつもの明るい声で、そう告げる

工藤遙花は性格はとても真面目だから、美智と作戦を練るのに使える時間は最大限有効に使いたいのだろう

姉上イーディの闘いを観ることに致しましょう

イーディが、何か姉上に示したいものがあるようですから

でも、美智この子の決勝戦の相手は、空手家よ

遙花の言う通りイーディが、決勝戦で戦うのは超実戦空手のモンキー・ミミ選手だ

あたしの相手は柔道家なんですから闘いのヒントとかにはならないと思うわよ

ソウデモないノネ

美智の代わりに、イーディが答える

マア楽しんで観ててクレレバいいノネ

そしてイーディは、剣道マリアの胸元をポンと叩いて

アンタもダヨシャッキっとするのネ

精神を改造された元・天童乙女剣道マリアが、困惑した表情で返事する

かつてイーディに敗北したことを記憶は失っても、身体が覚えているのかもしれない

イーディ・セクストン選手

係員が、イーディを呼ぶ

試合の時間だ

ハイ、今行くネホンジャアネ、ミンナ

イーディは、いつもの笑顔のままリングに向かう

ね、あんたって正体は何

リングの上でモンキー・ミミ選手は、すでにイーディを待ち構えていた

あんたも裏の人間でも裏格闘技の関係者じゃないわよねあんたからは、あの業界の人たち特有のよどんだ感じは無いみたいだから

質問したら、何でも答えてもらえると思ったら、大間違いネ

ニコニコ笑いながら、そう言う

世の中知らないままにしておいた方がイイこともアルヨ

イーディの出自はニューオリンズの暗殺教団だ

裏の世界でも、単に賭の対象になっているだけの裏格闘技の連中とは生き死にのレベルが違う

あら、そうでも、あたしは欲張りだから知りたいことは、知りたいのよ

モンキー・ミミ選手は、軽く足を屈伸させながら言う

こうしましょうかこの試合で、あたしが勝ったらあんたの秘密を、全部あたしに暴露するとか白状してもらうわよ

そういう約束はできないノネ

イーディは、笑顔のままそう言う

あら、怖いのあたしに勝つ自信が無いだから、約束できないのかしら

モンキー・ミミ選手は、そう言ってイーディを挑発するが

アタシの秘密は、そんな程度のコトで人に話せるホド軽くはないノヨ

余裕たっぷりで、そう言い返す

あらあら、自分が特別だと思っているみたいねま、そういうのは若い子の特権だから仕方ないのかもしれないけれどでもねあたしぐらいのキャリアになると判ってくるのよそんな、人に話せないような特別な何かを背負って生きている人なんて、実際にはほとんど居ないんだから

モンキー・ミミ選手は、そう言う

ソウでもないヨ世の中重い何かを背負って生きているコはたくさんいるネアンタが知らないダケヨ

どうやら、あたしたち全く、噛み合わないみたいね

アタシがアンタに合わせてアゲル気がないだけネ

じゃあ、あたしの方があんたに合わせてあげましょうか

それは無理ヨアンタじゃデキナイのネ

どんどん険悪になっていく2人

あたし判っているのよあんたの技が、気を使うものだってことは

モンキー・ミミ選手は気を知っている

対処方も、一応は心得ているわ

これはブラフか

それとも、本当に気の技の返し方を知っているのか

タシカに、気を遣うヨアンタみたいなメンド臭そうな人が相手の時ハ

イーディは、気を使うと気を遣うをすり替えて返事する

2人とも、それぐらいにしてくれ

レフェリーが、2人の決勝進出選手に言う

それでは、これより体重別・48キロクラスの決勝戦を行います

アナウンスが会場中に轟く

トミー・アシダ道場所属、モンキー・ミミ選手

ダァーッ

名前を呼ばれたモンキー・ミミ選手が大きく叫んで、片手を上げるッ

頼むぞ、モンキー

絶対、優勝しろよっ

勝ってミミさーんっ

観客席から応援の声が飛ぶ

チーム・クロモリ所属、イーディ・セクストン選手

ハイヨ

イーディの方は、軽く手を上げるだけ

準決勝のライン晴子戦には、観るべき内容があったから前みたいなブーイングは起こらなかったが

積極的に応援する声は無い

イーディ、頑張って

応援してるよっイーディ

メグと寧が、観客席から叫んでくれた

イーディは、クスッと微笑んでメグたちに手を振る

決勝戦だからな、真面目に闘ってくれよ

イーディは、レフェリーからも小声で注意されていた

カーンッッ

決勝戦のゴングが鳴るッ

シャアアアッハイ、ハイ、ハイ、ハイ、ハーイッ

まずは、リング中央で拳を合わせるみたいな儀式は抜きでモンキー・ミミ選手は、試合開始と同時にイーディを攻めていく

イーディは、軽やかなステップでモンキー・ミミの攻撃を躱していった

ちょろまかとええいっ

逃げの一手ばかりのイーディにモンキー・ミミは、イラつきを見せる

空手キック

ブオンッと、モンキー・ミミ選手の蹴りがイーディの顔面を狙う

イーディは、ギリギリでスルルッと回避すると伸びきったモンキー・ミミ選手の足を軽く手で払う

ひやぁッッ

それだけでモンキー・ミミ選手は、体勢を崩して倒れそうになるッ

いや、今回は何とか踏ん張った

よくも、よくもッ

再び、イーディに向かって攻撃を仕掛けようとするモンキー選手

ミミ、ヒートアップし過ぎですわ落ち着いて

セコンドで同門のポロン・カリスマン選手が、モンキー・ミミ選手にそう叫ぶ

でも、攻撃し続けて気を練られないようにしないと、例の技でやられるからッ

モンキー・ミミは、雷照印を打ち込まれないように連続攻撃を仕掛けているのか

ええぃ、えいっ、えいっ、たぁぁっ空手チョップ空手チョップ空手チョップ

イーデイは、敵の攻撃を巧みに避けながら最後の空手チョップに合わせて、スルスルっと身体を捻る

イーディの身体を追い掛けているモンキー・ミミは、想定外の動きに思わずつんのめってしまった

上手い

工藤遙花が、イーディの足捌きを見て思わず、呟く

あの動きいかなる流派の技か、姉上はお判りになられますか

美智が姉に尋ねる

驚く工藤遙花

あれは工藤流古武術でございます

イーディは、工藤流古武術で闘っているのか

そんなわけないわよ工藤流は、もっとふざけた感じの、気持ちの悪い動きだわ

姉上が、そう感じていらっしゃるのは父上の工藤流ばかりを見てこられたからです今、イーディがやっているのが、本来の工藤流でございます

本来の

工藤流古武術の本質は相手の攻撃の気を反らしていくことにあります自分に向けられている気を脇に流して敵の隙を付いて、カウンターで反撃しますそれが工藤流古武術です父上は、敵の気を反らすのに悪ふざけを使いますがイーディほどの手練れとなりますと、足捌きだけで同じ効果を起こすことができます

強い攻撃の気をモンキー・ミミは自分の蹴りや拳に乗せて、イーディを打ち抜こうとしている

イーディは、自分に向けられているその気のベクトルを素早いフットワークで避けている躱している自分の脇の何も無い空間に反らしていく

コンチクショッエイッ、エイッ、エイットゥアアアッ

モンキー・ミミの攻撃は、イーディにヒットしないしイーディに向けて発している強い気も、次々に外されていく

これでは焦りが溜まっていく一方だし、モンキー・ミミの内側の気はどんどん消耗していってしまう

ミミ、一旦、下がって仕切り直しせなあきませんわ

ポロン・カリスマン選手が、そうアドバイスするが

止まったら、こっちがやられるっここは、むしろギアを1つ上げていくわっ

さらに攻撃を加速させようとする

wooshawッッ

イーディの動きが、回避から攻撃に転じる

バキィィッ

モンキー・ミミが加速のために踏み出した1歩に合わせて

イーディの拳が、完全なカウンターとなって

モンキー・ミミを下腹部を打ち抜くッッ

ぐへっ

モンキー・ミミ選手の動きが止まったぁぁっ

そのまま、イーディは相手の腹に両手を当てて

ぎゃううううう

雷照印

大量の気が、電撃のようにモンキー・ミミの身体を痺れさせる

wooo、gawoo

トドメはカカト落としだった

イーディの長い足が鞭のようにしなりモンキー・ミミの頭に直撃するッッッ

ぶへぇッッッ

ドクター

モンキー・ミミがマットの上に崩れ落ちる前にレフェリーは試合を止めた

イーディの完全なるノックアウト勝利だった

うおおおおおおおおおおおーっ

会場内の観客が、大きく沸いた

イーディとモンキー・ミミの攻防が早過ぎてほとんどの観客には、1発目の腹パンチや2発目の雷照印は、よく見えていなかったかもしれないが

最後のカカト落としは、技が派手だからハッキリと見えていたはずだ

誰が見ても、正々堂々とした完璧な勝利だ

体重別・48キロクラス優勝はチーム・クロモリのイーディ・セクストン選手です

アナウンスが、イーディの勝利を告げる

yeah

イーディは、リングの中で両手を挙げて高くジャンプする

やったヨDarlingミチミンナ

喜んでいる

嬉しいんだ

ああ、暗殺教団に生まれて、暗殺技を仕込まれた少女が

表の舞台で優勝したことに

イーディの今の対戦相手のモンキー・ミミ選手も、姉上がこれから決勝戦で戦う武蔵選手もどちらも戦意を強く表現なさるタイプの選手です闘いに熱くなる性質ですから工藤流の気の反らしが有効なはずです

美智が姉に言う

あたしに工藤流古武術で戦えって言うの

工藤遙花は、驚いてそう言うが

いいえさっきと同じですタイミングの取り方だけ、工藤流の技法を流用なさればいいのです

勝機を掴んだその後はどうぞ、姉上の空手の技で決着なさって下さい

わ、判ったわ工藤流は、ちょっとだけ使わせてもらうだけですからね

工藤遙花は、美智の作戦にまんまとハマッてしまっている

美智は、姉が持っている工藤流古武術への悪いイメージを消してしまいたいのだ

別に、遙花が空手を捨てて工藤流に再入門することを期待とかはしていない

ただ工藤流のことを、一方的に嫌ったままで居て欲しくないのだと思う

工藤流は美智や遙花の家の流派なのだから

姉上、まだ時間がございますから控え室の方で、実際にやってみましょう相手の気を反らし一瞬の隙を見落とさずに、一撃で敵を討つ練習です

工藤遙花は、大きくうなずく

イーディに続いて、工藤遙花も体重別クラスを制するために

最後の仕上げに向かう

工藤姉妹が仲直りする話になってる

いいのかそれで

剣道マリアの出る60キロ級はそこそこにして

すぐにマルゴさんたちのスーパー無制限クラスに入る予定です

1202.ファイティング・オン / 結果を出すということ

では、ご主人様ちょっと席を外します

48キロ級クラスの決勝戦が終わり

姉の遙花と控え室で決勝戦の作戦会議に行こうとする美智

イーディ、ご主人様を頼みます

美智がリングから降りて来た、イーディに言った

表彰式は、全部の試合が終わってからまとめてやるらしい

リングの上は、イーディとの試合で気絶したモンキー・ミミ選手を運び出すのに手間取っている

任せておくネウフフ、Darling

オレに、抱きついて来るイーディ

やっぱり、クラス優勝を決めたことが嬉しいらしい

よく頑張ったなイーディおめでとう

ソウネ、おめでたいノネ

ついでに剣道さんのセコンドもお願いするわ

工藤遙花が、イーディに言った

剣道マリアは戸惑っている

あなた、緊張するとトッ散らかるタイプだからイーディさんにアドバイスして貰いなさいあたしが付いてあげたいって思ってたけれどこうなったら、あたしも何としてもクラス優勝したいからあなたの試合を観てあげられないのよ

工藤遙花は、そう言う

イイヨアタシ、コレでもうヒマになったからアンタのセコンドでも何でもヤルネ

イーディは、いつもの様にヘラヘラ笑いながらそう言った

60キロ級本戦トーナメントの出場者は、こちらへ

係の人が声を掛けている

ようやく、リングの上が片付いたようだ

これでまた60キロクラスの出場者紹介になるのか

ホラ行こうネ

イーディが、剣道マリアを促す

わたくしたちも参りましょう

美智も姉を連れて控え室に向かった

オレは、イーディに手を引かれて通路の方へ向かう

何をしているんです

それは間違いなく御厨くるみさんだった

武闘派お嬢様の栗宮素子さんの護衛役の14歳の可愛らしい少女

だって主とお揃いの矢がすりの袴姿という女学生スタイルだから

ただ、今の御厨さんは

ステルス・キヌカの黒頭巾で顔を隠していて

片手に槍を持っている

まあ、布袋にまだ入れられたままだからこの人が栗宮流槍術の手練れだと知らなければ、何か妙に長い棒を持っているとしか思われないだろうけれど

御厨さんは、オレを見上げて

はい、わたくしも親の仇、覚悟というのをやらせていただこうと思いまして

あ60キロクラスにも、関西ヤクザが派遣して来た嫌がらせ部隊である関西ガチ虎一家所属の選手がいるんだ

48キロクラスでは電人M子が本戦に残っていたけれど、イーディと当たる前にモンキー・ミミ選手に倒された

54キロクラスでは原人L子が選手紹介の最中に、キヌカに襲撃されて倒れた

そして60キロクラスにも、ああ、あそこに居るのがそうだな

女なのに、学帽にガクランのケンカ番長スタイルの3人目の刺客が

それはダメヨクルミ

イーディが、笑顔で御厨さんに言う

何がダメなのでございますか

親の仇はキヌカがもうやったネ同じパターンはつまらないヨニバンセンジだと思われるネ

ふんふんと、うなずく御厨さん

仕掛けるなら、違う方法でいくネ

黒頭巾を外してニコッと微笑む、14歳の少女

黒森様ちょっと、わたくしの槍を持っていて下さいませ

オレに槍とキヌカの頭巾を託す

では、ちょっと行って参ります

そのまま、ニコニコ笑顔で出場者の待機場所にいる、3人目の女ケンカ番長のところへ向かう

だ大丈夫なのか

いきなりケンカ番長に声を掛けた

わたくしは、御厨くるみと申しますあなたは

関西からの3人目の刺客は不審に感じながらも

関西ガチ虎一家、野人LL子

電人M子、原人L子、野人LL子クラスが重くなるにつれて、サイズが大きくなっている

この様子だとスーパー無制限クラスに出場するのは、XL子だな

まあ、悪手していただけますか

御厨さんはスッと手を差し出す

野人LL子選手は、躊躇している

御厨さん自身については、何のデーターも知らないだろうけれど彼女が、関西のヤツラのターゲットであるオレたちと一緒に居るのは見ているはずだ

自分の敵である確立がとても高い

わたくしとは悪手していただけませんの

御厨さんの笑顔は、無邪気で愛らしい

この華奢で可愛い女の子が、何か仕掛けてくるとも思えないし仕掛けて来たところで、大したことはないだろうと、野人LL子は感じたようだ

御厨さんの小さな手をクッと握る

はくしょんっ

御厨さんがブルンッと震えて、大きなクシャミをした

その振動が、握られた手から野人LL子の身体に、伝わる

あら、御免遊ばせうふふ、ありがとうございました試合、頑張って下さいませ

御厨さんは、そう言うとペコッと一礼して、オレたちのところへ戻って来る

野人LL子は、ポカンとした表情で御厨さんを見送った

うふふ、行って参りましたっ

クルミ誰に習ったのネ、今の技

イーディがすぐに小声で尋ねた

これも栗宮流槍術の応用ですわ300秒殺しと言います本来は、悪手でなく槍の先を相手の身体に当てて行う技ですけれど

御厨さんが、そう言う

Darling、このコ今、何をしたのか判るカ

オレにも小声でそう言う

いや、オレには何も判らなかった

剣道マリアも興味があるらしく、真剣な眼でイーディの言葉を聞いている

クルミはクシャミしたフリをして、衝撃波を送り込んだのネ

衝撃波

ほんの一瞬ダケヨブルルンッてだけの波デモ、その波が、握手をした手から伝わってあのオンナの腰の裏側アタリを焦点にして集中したのネダカラ

はい衝撃波で、あの方の背中と腰を繋ぐ骨を、ほんのちょっとだけズラしました

御厨さんは、笑顔でオレに言う

腰の一点にだけ集中するように、波を打ち込んだんです

そして、チラッと野人LL子の方を見て

あの方は、今はまだ異常に気付いていませんしかしこのまま放置していると、どんどん骨のズレが悪化していきます

骨のズレが悪化する

技を仕掛けてから、身体に影響が出るのに300秒程度掛かりますので300秒殺しという名前になっています

骨のズレを放置したまま、をリングの上で闘ったりしたらほんとに300秒で、腰そのものがギックリといくのネ

はい、バキッとなります

何て恐ろしい技なんだ

コレであのオンナは1回戦敗退決定ヨ

オレたちに嫌がらせする前に自滅してくれれば助かる

結局御厨さんとオレだけ、元の席に戻って来た

もちろん、御厨さんの槍をロビーの栗宮家のオッサンに再び預けてから

イーディだけが、剣道マリアのセコンドに残った

ありがとうな

みんなの警護をしていてくれた工藤父がオレに言う

オレは何もしていませんよ

そうだオレじゃない

美智が、ずっと溝ができたままだった姉との関係を自分で修復したんだ

いや、お前のお陰で美智が変わった昔は、香月のお嬢様のことしか頭に無い、猪突猛進タイプだったけれど今じゃ、周りの人間に気を遣える子になったから

それだって、オレの力じゃないですよ美智がうちの色んな子たちと暮らしていく中で、色々と自分で気付いたんだと思いますから

美智お姉様には、いつもお世話になっています

わたくしも、毎朝、稽古を付けていただいております

ありすとキヌカが、そう言う

年下の子たちの面倒見が良くて年上のあたしたちには、素直ですとっても良い子ですから

メグも、工藤父にそう証言する

ホント、そういう娘じゃなかったんだよなぁホント、人は良い環境だと成長するってことなんだろうな

工藤父は、苦笑する

遙花も美智が、自分より強いって認められるようになって少しは落ち着いてきたしよ

それはどうだろ遙花ちゃんはまだまだ、ちょっとオダテるといい気になっちゃうタイプだと思うけど

寧が、おどけてそう言った

さて体重別・60キロクラスの本戦トーナメント1回戦は

第1試合/コマンド・サンボゴッド・ヒグマ所属の吉良ケン子VSビーバップ反逆同盟所属、中山美穂子

第2試合/名声学園・チーム南風所属、朝倉南VS関西ガチ虎一家所属、野人LL子

第3試合/チーム・クロモリ所属、剣道マリアVS戦国魔ジム所属、Go翔子

第4試合/アナハイム・レッスルジム所属、クリスチーナ・魔拳士VSアンドロ超道場所属、大月フロル

という4試合が組まれていた

第1試合は吉良ケン子の勝ちこの人は壇闘志子さんのところの選手なんだな

第2試合は本当に300秒殺しが効いて、試合の途中で野人LL子は、腰を抑えたまま身動きできなくなった試合放棄で、朝倉選手の勝ち

第3試合はイーディのアドバイスに従って、剣道マリアが何とか勝った

そして、第4試合は

ああ、あの大月って選手お兄さんたちもレスリングで有名な選手なんだよっ

ほら、セコンドに付いている上のお兄さんが大月メロス選手で、下のお兄さんが大月マルス選手2人とも、日本代表経験があるんだってさっ

そんで、対戦しているクリスチーナ選手は普段は、靴の販売店に勤めているそうだよシュー・フィッターの資格を持っているらしいよ

寧はよく知っている

今日の試合の結果良い選手が居たら、アメリカでの格闘技興行に出場してもらおうと考えているから、あらかじめ調査しているんだろう

しっかし、アレだよなぁ

身体のでかいクラスになってくと迫力は出て来るけれど、試合は単調でつまらなくなってねえか

それは仕方ないってば本来の体重別なら、このクラスのはずの人でも、自分の力に自信がある人はスーパー無制限クラスに出場しちゃってるから

ああ、そうか優勝賞金の額が段違いなんだよな

そうそうスーパー無制限クラスだけ優勝賞金3000万円だもんっ

だから強いやつは、スーパー無制限クラスに出場している

所属している格闘技ジムや道場でスーパー無制限クラスの代表になれなかった選手が、仕方なく体重別の方に出ているのだと思う

このクラスに出場している選手の層が薄いのなら何とか、マリアちゃんも優勝して欲しいよね

寧はそう言ったけれど

剣道マリアは、準決勝第2試合で大月フロル選手に敗けた

あらら残念

チーム・クロモリによる全クラス制覇の夢は叶わなかったよっ

そいつは望み過ぎだろ相手はみんな、大人の格闘家なんだからよあのイーディっていう子が、一番軽いクラスで優勝したってだけで大金星だぜ

遙花もな正直、決勝戦まで行けただけで充分スゲェと思うよ

次、遙花さんの試合よね

60キロ級本戦トーナメントの準決勝が終わったところで

54キロ級の決勝戦工藤遙花対大雪山柔道クラブ所属、武蔵トモエ選手となる

おお、戻って来たぞ

工藤父の言うとおり

美智と工藤遙花がリングサイドに戻って来た

密着取材のテレビクルーも一緒だ

イーディと試合に負けたばかりの剣道マリアも合流する

それでは、ここで体重別・54キロ級決勝戦を行います

そんなアナウンスが会場内に流れた

武蔵トモエという選手は、柔道家らしいガッシリとした体格をしていた

大地に根を張って、ビクとも動かない大樹のようなイメージの人だ

相手の選手は柔道で遙花さんは空手ですよねこれ、相性とかってどうなんですか

メグが、工藤父に尋ねる

遙花の方が、分が悪いなどっちも道着を着たままで闘ってるからよ柔道家の方は、いつも通りに道着の衿を掴んで投げたり、締めたりできるからな

ああ、工藤遙花の空手着がマズいのか

しかも、武蔵トモエって選手は、前年度のクラス王者だし年齢も28歳だろ遙花より10も年上だ修羅場を潜ってきた経験値でも負けている

工藤遙花さんが勝っているのは、若さだけということですか

武闘派お嬢様、栗宮さんが尋ねる

それもどうだろうプロ格闘家で28歳なら、全盛期じゃねえのか下手すら、スタミナや回復力も、18歳の遙花より上かもしれねえぜ

遙花は胸を貸してもらうつもりで、ブチ当たるしかねえんだろうな

大丈夫ですよ遙花さんが勝ちますから

何で、そう言い切れるんだ

工藤父が、ジロッとオレを見る

今の遙花さんは、1人じゃないですから

オレはリングの下の一団を見る

美智やイーディが付いているんですから負けるはずがありませんよ

リングの上は、決戦の準備ができたようだ

セアアアッ

武蔵選手は、一気に距離を詰めて来るッッ

サアッ

工藤遙花の道着の衿を掴もうとするが

遙花は、落ち着いた動きで身体を捻り

自分の首元に伸びてきた武蔵選手の手を右手でズバッと払い除けるッッ

この相手の闘う気の反らし方は工藤流古武術だッ

そのままの勢いで、相手の脇腹に向かって正拳突きッッ

武蔵選手が、強打に一瞬気を取られた瞬間ッ

工藤遙花の回し蹴りが、武蔵選手の側頭部に炸裂したッッッ

ズバンッッ

武蔵選手の身体が、吹っ飛ぶ

早くて、鋭くて、正確な蹴りだ

思わず、工藤父が娘のコンビネーションを見て呟いた

こんな攻撃が遙花にできるなんて

できるさ

美智が付いているんだから

攻撃のスピードは、直前までの練習で高められていた

タイミングの取り方も、肌で感じ取らされたんだろう

今の工藤遙花なら絶対にできる

武蔵選手は、蹴られた後頭部を押さえたままうずくまっている

起き上がらない

カンカンカンカンカンッ

1ラウンド、27秒レフェリー・ストップで勝者・工藤遙花ッッ54キロ級のチャンピオンは、工藤遙花選手ですっ

アナウンスが、遙花の勝利を告げる

遙花が勝ったのかオレの娘が優勝

工藤父は、呆然となっている

遙花お姉様

リングの上下で喜び合っている姉妹を父は観客席から、見つめていた

ふっそうだな遙花の空手で、柔道家に勝つならこういう短期決戦で勝負するしかねえもんなさすが美智判っているその美智の作戦を実行できた遙花も偉いぞ2人ともよくやった

工藤父の眼に、うっすらと涙が浮かんでいた

朝から父が具合が悪いというので、病院へ

咳が出て、熱もあるというので病院の人が

もしインフルエンザだと問題なので、このマスクをしていて下さい

と、新品のマスクをくれた

しかし、父は

なぜか、受け取ったマスクで口を塞ぐのではなく

アイマスクみたいに自分の眼を覆う

私何やってんの

父マスクだから

私そういう使い方しないだろふざけているの

父いや、飛行機に乗った時とか

ホントにアイマスクだと思ってるのか

私違うってこれは、こうやって口を塞ぐんだよ

父息苦しいよ

私それでいいんだよ

ボケは笑えるが、呆けは本当に笑えないです

1203.ファイティング・オン / 馴れ合いを嫌う

・マルゴ・スタークウェザー・クロモリ/19歳チーム・クロモリのリーダー

+寧、

大会プログラムは、ついにメイン・イベントであるスーパー無制限クラスに突入する

大変、長らくお待たせ致しましたこれより日本女子格闘技界史上初の優勝賞金3000万円、スーパー無制限クラスの本戦トーナメントを行いますッ

リングアナウンサーが、高らかに宣言する

会場内が大きく沸く

ここからが本番だよなっ

ああ、各ジムや道場のエースは、みんなこのクラスに出ているからなっ

賞金が賞金だからなぁ

どこの選手もガチで獲りに来るぜ

近くの客席から、そんな声が聞こえてきた

それでは午前中の予選を勝ち抜いた8名の女戦士たちの登場です

照明がスーッと落とされ暗くなる会場

今までの体重別クラスの選手入場のような音楽は無い

控え室へ向かう通路にのみサッと強い光が当たる

まずはブラジリアン柔術団体欧州藤原氏、レミー藤原ァァッ

オオッ

軽く小走りで入って来るレミー藤原選手

もう何度も姿を見ているから、オレたちも知っている

体格がガシッとしていて、髪の毛をオールバックしているレミー選手は、リングに駆け上がると、軽く観客席に手を振った

レミー先生

レミーさぁん、頑張って下さぁい

ガンバですっレミー先生

ああ、観客席内の欧州藤原氏のトレーニングウェアを着た一団が一斉に歓声を送る

欧州藤原氏というジムは、本当にたくさんの門人を抱えているんだな

あの人は都内に3つ、大阪と名古屋と仙台に1箇所ずつジムを開いているんだよっジム経営者としても、かなりのやり手なんだよねっ

続きまして創作マーシャルアーツゴールデンバウム・ジム主宰、ルドルフ聖子ォッッ

セィィッ

ルドルフ選手の方は走らずに普通に入場してくる

長身の身体のラインがはっきり判る黄色いトラックスーツ姿で

余裕たっぷりの笑顔を浮かべて

ルドルフ女帝っ

本日もお美しいですわ

聖子様ぁぁ

観客席のあちこちからリングに向かって、声が飛ぶ

ルドルフ聖子さんは美形だから女子ファンが一番なんだってさっお姉様になって欲しい女子格闘家の第1位なんだってっ

続いてコマンド・サンボゴッド・ヒグマ、壇闘志子

うっしゃぁぁ

壇選手は、大きく気合いを入れてから会場内へ入って来る

この人は、顔も体格もかなりイカツイ

白、ピンク、青のトリコロールに塗り分けられた派手なレスリング・スーツを着ている

ああ、随分、ガニマタなんだなノッシノッシと歩いてくる

出たな、クマ殺し

女子格闘界最強のオトコ

トシコぉぉぉ

そんな声が、観客席から飛んだ

続きまして超実戦空手トミー・アシダ道場所属、大ポロン・カリスマン

白い空手着姿のスラッとした女性が、軽やかに現れる

ニコツと満面の笑みを浮かべて

ポロンさーん、頑張ってぇ

ポロンさん、可愛い

せいやっ、せいや、せいやっ

同じ道場の後輩らしい女の子たちが、一斉に叫ぶ

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