マヌケなやつは、あんたがミネソタの海は綺麗って言った瞬間に、あんたのことを敵じゃないかって判断するたった1つの嘘だけで自分に嘘を吐いているんだから、こいつは悪いやつなんだって思い込む
工藤父の言葉は正しい 1つの嘘が疑念になる信じられなくなる敵だと思い込む
そう言えばそうねこの子、一度もわたくしのことを疑わなかったわ
アグリッピーナさんが、オレを見る
でも、それは工藤あなたのことを信用しているからでしょあなたが連れて来た女だから、危険ではないと判断したんじゃないの
オレを信用冗談じゃないあの大人数の中で、こいつがここに残したのは最強の取り合わせのメンバーだぞ
香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートのレイちゃん 暗殺教団の技を受け継ぐ、イーディ そして巫女の力を持つヨミ
オレを信用してたら、3人も残さねえよ
そうかしら、あたしならニキータ・ゴルバチョフさんを残すわ彼女なら1人で充分ガード役を勤めるでしょ
ニキータはアーニャの犯罪組織でのコード・ネームだ
彼女はダメだあんたがもし裏の組織の人間なら彼女のことを知っているはずだだから、こいつは敢えてメンバーから外したんだよ
それもあるけれど少女暗殺者たちの世話をする人が必要だから、アーニャとイーディのどちらかを選ぶしかなかった
つまりだこいつは最大の防御策としてこの3人を残したオレのことなんか信用していない自分の眼と感覚で、あんたがどんな人間かを見極めようとした
確かにDarlingは、世の中の知識は足りないネでも、真っ直ぐに相手を見て、肌で相手を理解しようとする人ネ
そして、どうやらあなたのことは良い人だと判断したみたいですよ
工藤父、イーディ、レイちゃんが言う
わたくしが良い人
ソウヨ、Darlingはアナタにからかわれているって感じてたけれど悪意を感じていなかっただから、これは遊び遊ばれているだけだと思ったカラ、あなたに対して怒りは示さなかったノヨ
わたくしたちの先生は怒った時は怖いんですから
ずっと黙っていたヨミが、そう言った
色んな人から、よくからかわれますからオレでも、言葉や表情に悪意が込められているかどうかは、すぐに判りますアグリッピーナさんからは、そういうのは感じられませんでした
アグリッピーナさんは、狐につままれたような顔をする
アタシたちのFamilyでは、Darlingは判断ダケをするのヨ知識も知恵も力も、Familyの中で得意な人が担当するカラアタシたちのDarlingは、これでイイのネ
ああ、やっと判ったわこの子がボスで他の子はこの子の部下っていうのではないのねあなたたちはFamilyという形式なのね
イーディは、そう言うとオレを見て
サア、行こうDarlingアタシ、お腹空いたヨ
オレを食堂に誘う
うん、そうだな急いで食事しないと、学園祭に間に合わなくなるじゃあ、工藤さんミナホ姉さんの警護、お願いしますそれから、アグリッピーナさん、何かの機会にはよろしくお願いします
オレは2人に挨拶した
何かの機会って
アグリッピーナさんは、ニッと笑う
今日は敵ではないんでしょうけれどアグリッピーナさんのお仕事によっては、オレの敵に廻ることもあるかもしれません
もし、そうなってしまった時は手加減して欲しいの
いえ、そうなってしまった時は申し訳ありませんけど、全力でブッ潰しますからそういう意味で、よろしくお願いします
オレは、真っ直ぐにアグリッピーナさんの眼を見て言った
あら、本当に素直な子なのね気に入ったわ
クククククと、声をあげてアグリッピーナさんは笑った
おい、オメーさここだけの話だけどよ
工藤父が、オレに言う
オメーの家、何だか知らねえけど芸能プロの女性タレント部門を手に入れたんだって
ミナホ姉さんが、デススター・プロダクションから女性部門をブン獲ったことを工藤父は知っている
そうですけど何か
あのよダダドムゥと契約しておいた方が良いと思うぞ
いや、でもあの人は
ああ、オメーも知っている通り、あいつは重度のロリコンだしかし、ロリは遠くから見るだけで絶対に手を出さないという掟を自分に課している
それは、そうなんだろうけれど
だけど、どうしてダダドムゥおじ様と契約しなくちゃいけないんです
それはよオメー芸能プロってのは、どこも何かしらケツ持ちの暴力組織がくっついているもんだぜ
オメーらが芸能の仕事を始めたら、面白くねーヤツらは色々と手を出してくるぞそういうのをやられる前に、ダダドムゥに対処させるんだよ
他の芸能プロに嫌がらせされる前に、ダダドムゥおじ様にカウンター攻撃してもらうのか
なあに、高い金はいらねぇあいつのことだから、可愛いアイドルのコンサートに優先的に招待してやるとか、握手券を毎月やるとか約束すれば、それだけで契約完了になるはずだ
それはまた安く済みそうだ
判りましたミナホ姉さんに話してみますありがとうございます、工藤さん
おうよ
工藤父は、再び朝食のトーストを食べ始める
アグリッピーナさんも
ああ、またね坊や
オレは2人に頭を下げるレイちゃんとヨミも、オレと一緒に頭を下げてくれた イーディも加えて、4人でお屋敷の中へと入る
レイカあの人はどういう人ナノネ
食堂へ向かう廊下を歩きながら、イーディが尋ねた
最高レベルの警護役だよキョーコさんが世界レベルの犯罪者なら、ユリア・アグリッピーナは、警護の世界では国際的に名の知られている第一人者だよ
そんなに有名な人なんだ
そんな人が、何でウチに来たノネ
それは、わたくしには判らないですね
イーディとレイちゃんが、そう言うと
御名穂お姉様が雇われたんですわ
わたくし、あの人の心を読みましたから
ミナホ姉さんがアグリッピーナさんを雇った
ああ、それで工藤さんと一緒に居た理由が判った
2人とも御名穂さんの警護をするんだよ今日
つまりミナホ姉さんは国際的な警護役の第一人者を雇わなくてはいけないような状況にある
それって大丈夫なんだろうか
朝食が済んだら、翔お姉様に連絡してみますだから、大丈夫ですよ
レイちゃんが、オレの肩を抱く 翔姉ちゃんなら、香月セキュリティ・サービスの組織を使って、ミナホ姉さんのガードをしてくれるだろう
ソウヨ、ミナホのことはミナホに任せるネDarlingにはしなくてはいけないことがアルはずヨ今日は
今日は学園祭の最終日 オレには、パンを焼くという仕事がある
それに工藤さんとユリア・アグリッピーナが警護していれば、どんな相手が来ても返り討ちになりますあの人は、それくらいスバ抜けた警護人ですから
レイちゃんは、そう言ってくれた
あなたたち、急いで食べて
食堂に着くと、克子姉がオレたちを急かした
あなたたちと入れ違いで、ガレージへ向かわれたわ
遅かったガレージから車を出して、工藤父とアグリッピーナさんと駅前ホテルに向かうんだろう
いいから早く今日も忙しいのよ
克子姉の頭の中は、学園祭のパン屋のことで一杯になっている
愛ちゃんとマナちゃんは、もうパン工房へ行ったわあたしも行くから素子さん、お台所の方いいかしら
はい、くるみとわたくしでやっておきます
日曜日だから超お嬢様校はお休みだ 家事の得意な素子たちが居てくれて助かった
はい、お兄様イーディお姉様、麗華お姉様
瑠璃子が、オレたちのハムエッグを給仕してくれた
ありがとう、いただきます
オレは、朝食に食らいつく
アニエスちゃんたちもパン工房ですわたくしも、この後行きます
今日は学園祭で売るお土産用のパンを、このお屋敷でアニエスたちが作ってくれることになっている
わたくしも、お兄様のお手伝いができて嬉しいですわ
名家の令嬢たちとアニエスは、不特定多数の人たちが来る俺の学校の学園祭には行かれないルールになっている アニエスは特にハーフで金髪で美少女だから、目立つしな だからお屋敷の中からサポートしてもらうことにした
公さんわたしと茉莉花お姉様は、見に行っても良いんですよね
隣のテーブルから、エリカが言う
わたしたちは、名家とは関係あれませんから
エリカは超お嬢様校に通っているけれど大きな会計監査会社の娘であって、名家の令嬢ではない 姉の茉莉花も、今日は通っている高校が休みだ
いいけど必ず警護のできる子と一緒に来てくれ
オレは、ミナホ姉さんの件があるから心配になってそう言う
あの公くん
茉莉花が、オレのテーブルにやって来る
実はわたしの友達が来るんです
茉莉花の友達音楽科の人
はい、同じ寮の子です
茉莉花は音楽科のある高校で寮生活をしている
どうしても公くんに会って欲しい子がいるんです
はぁぁ、自分でも嫌になるほど仕込んでいく
いいのかこれで
1381.学園祭2日目 / 落ち着きのない人たち
・グレース・マリンカ/21歳元女子レスラーぽややんとした性格尾上ジュン
・不知火シエ/17歳桜子の元警護役裁縫係として採用された
音楽科のある高校に通っている茉莉花がオレに言う
えー、茉莉花お姉様それって、お姉様が家族にしたい人ですか
妹のエリカも、この話は初耳のようだ 元々、茉莉花は控え目で余計なことは言わない性格だからオレと個人的な話ができるタイミングが来るまで、誰にも話さなかったんだろう
そうじゃないですそういう話ではありません
わたしの大切な友達たちなんです
茉莉花の高校は女子校で全寮制だから、一緒に暮らしている女の子たちオレに会わせたい友達は一人じゃない
公くんその子たちの相談に乗ってあげて下さいわたし、他に頼れる人がいないんです
茉莉花は、真剣な顔でオレを見る
判ったえっと、今日はお昼までは忙しいと思うから、お昼過ぎにその人たちを連れて来てくれ
ミナホ姉さんの手配で、学園祭のパン屋の様子を国営放送が取材に来ることになっている
2時くらいがいいなそれなら、お昼時の混雑が済んでると思うから
判りましたその時間に行きます
茉莉花は、早速、友人にメールするつもりなのか携帯を取り出す
茉莉花、この部屋は携帯が通じないからて、いうか、ここの建物の中で携帯が使える部屋は2つぐらいしかないんだ
お屋敷は、政財界の大物たちを顧客にしていた元娼館だから内部の情報が漏れないように、徹底して電波が遮断された造りになっている 茉莉花は、オレの女になって日が浅いし普段は、土日しかお屋敷に泊まらないから、知らなかったようだ
相手のアドレスが判るよねそれだったらあたしのパソコンで送れるよ
別のテーブルに居たマルゴさんが、茉莉花にそう言ってくれた
それかどうしても自分の携帯からメールしたいのなら、あたしのドライブに付いて来る
マルゴさんは、これから車で出掛ける
2時までに良信くんの高校に着けば良いんだよねほらイーディが、今日の学園祭にゴールデンバウム・ジムのライン晴子さんを呼んじゃったから、これからあたしが迎えに行くんだよ
ああイーディのスクール水着柔道大会か ライン晴子さんは、この間の格闘技大会で知り合った選手の中で、唯一の高校生だもんな ええっと、創作マーシャルアーツゴールデンバウム・ジム所属で、ルドルフ聖子さんの弟子だっけ
ライン晴子さんは、ジムに住み込んでるそうだからここから片道、1時間ぐらいかな往復で2時間まあ、向こうでお茶ぐらい飲むことになるかもしれないけれど
マルゴさんは、女子格闘家アメリカ進出計画の主宰者だからイーディが約束しちゃったことでも、代わりに迎えに行かなきゃいけない
済みません、マルゴさんイーディが勝手に進めちゃって
オレは、イーディがマルゴさんの承諾を獲らずにスクール水着柔道大会を決めてしまったことを謝る しかも、ただの学園祭のイベントでなくテレビ中継されることになった
いや、良いんだこれはミナホたちの計画にも合ってることだから
ミナホ姉さんの計画って、何だ さっき会ったアグリッピーナさんのことといい
とにかく、エリカさんと茉莉花さんは、あたしと一緒にドライブしようよ今日は、他の子たちはみんなパン屋さんのお手伝いだけど君たちはパン作れないでしょ
学園祭のパン屋で、お土産用に売る簡単なパンを今日は、お屋敷でアニエスたちに作ってもらうことになっている
わたしは基本は習いましたが茉莉花お姉様は
わたしは、できないです
エリカは、週の半分しかお屋敷に居ないし茉莉花が泊まる週末の土曜日は、日曜日は学校のパン屋を開けないから、パン作りをしていない 茉莉花は、他の子と一緒にパンを作る機会が、ほとんどない
あたしもさだから、ちょっとお出掛けするんだよ
あたしも、行くルドルフのジムを一度見ておきたいと思っていた
マルゴさんと同じテーブルで朝食を摂っているマリンカさんが、そう言った
行って来いよエリカも茉莉花も茉莉花は、マルゴさんの車の中から、友達にメールすればいいそれと
茉莉花の友達には、近く駅まで来て貰って、それでレイちゃん
オレは、別のテーブルのレイちゃんに話し掛ける
香月セキュリティ・サービスを使って、茉莉花の友人たちを警護して駅からオレの学校までは、誰かが車で迎えに行って欲しい
防衛体制は、完璧にしておくべきだ
茉莉花は、マルゴさんたちと出掛けても昼までには、ここに戻って来るだろそしたら、茉莉花もここから送迎車に乗って、友達を迎えに行ってくれ
それでしたら、わたしが行きますよわたし、今日、空いてますから
向こうのテーブルで、香月セキュリティ・サービスの木下さんが手を挙げた
わたし、昨日、思いっきり目立っちゃいましたから今日は、変装でもしないと学園祭には行かれません
ああ昨日、オレたちの学校に入り込んだ香月セキュリティ・サービスの反乱部対をブッ潰すために 木下さんは他校の女子高生のフリをして、かなり注目されるようなことをやっちゃってるもんな 今日も学園祭に現れたら一般生徒から、色々聞かれることになる
じゃあ木下さん、お願いします
はーい、承りましたぁということだから、今日はボスの身辺警護は、安寿ちゃんお願いネ
木下さんは、隣に座っていた黒瀬安寿に笑いかける ボスってのはオレのことか 確かにオレは、香月セキュリティ・サービスのオーナーだけど
えー、わたしですかぁ
驚く、黒瀬安寿 昨日まで名家・石神家の警護役だったのを、オレが奪い獲ってそのまま、なし崩し的にお屋敷に連れて来られている 本人は、どうしてこんなことになっているのか、全然判ってないようだけれどそこは敢えて無視して、このままオレたちの家族にしてしまおうと思っている
大丈夫だって今日は、ボスの周りにイーディさんも、ミタマさんも、キヌカさんも付いているんですし藤宮さんだって、今日はここに残るんですよねぇ
うん今日はわたくし非番にしてもらっているからこちらのお屋敷で状況を確認しながら、ちょくちょく、ここと学校を往復するから
レイちゃんには、アニエスたちが作ったパンを数時間おきに、学校へ車で届けてもらうことになっている
監視カメラで黒瀬さんの様子も観ているから安心して
ええ、しかし
黒瀬安寿は、不安なようだ
隣にいるハイジを見るがハイジはニコッと笑って、朝食を続けている
大丈夫、大丈夫ちょっとくらい怖いぐらいが、丁度良いんですよねえ、藤宮さん
そうですね我が君の近くに居ると、退屈することはないですそれだけは断言できます
レイちゃんも、笑ってそう言った 結局、朝食を慌てて食べて お屋敷のパン工房へ飛び込む
昨夜のうちに愛たちが準備してくれた焼く前のパンが入ったパッドを、克子姉のバンに全て乗せる
スゲェなこの段階で、すでにいつもの倍の量を積んでいる
愛、頑張ったんだな
愛だけじゃないよみんな、手伝ってくれた
愛が、微笑む
ごめんな、オレ手伝えなくて
いいの吉田くんは、吉田くんのしなくちゃいけないことをしていたんだから
今朝はとにかく、あなたにもどんどんパンを焼いてもらわないと困るから車の方に乗ってちょうだい
克子姉は、少しテンションが高い
ああ、車組と歩いて行く組に分かれないとダメか
学校へ行く子を全員乗せるのは無理だ この間は女の子優先で、オレは歩いて学校へ向かう組に入ったけれど 今日はパン作りの人手が足りないから、オレも車に乗らないといけない
とにかくあたしと愛ちゃんとあなたは、車それから、メグちゃんも
歩いて行ったら、女子陸上部の集合時間に間に合わないでしょ
済みません、克子お姉さん
運転席に克子姉座席に愛とメグが乗り込む オレは荷室だな
わたくしも乗ります
え、どうしてレイちゃんが
だって克子さんは、そのままパン屋さんの仕事に入るんでしょこの車でないと、お屋敷で作ったパンは運べませんから、わたくしが運転して帰ります
そ、そうだったパンの入ったパッドを運べる車は、このバンだけだった マルゴさんのワンボックスカーが、あるけれどあれは黒い森の活動専用車だし、色々と変装用の小道具が乗せてあるから、勝手に使うわけにはいかない
黒瀬さんも乗って
レイちゃんが、黒瀬安寿に声を掛ける
警護役なんだから、側に付いてなきゃダメだよ
ええ、ハイジさぁーん
黒瀬安寿は、すっかり親しくなったハイジに助けを乞う
どうぞ、お行き下さいわたくしは、こちらのお屋敷を守るように仰せつかっておりますので
ほらほら、グスってないで乗って下さい
そのままレイちゃんが、黒瀬安寿を荷室に引っ張り上げた ええっといいのか
この子はうちの学校の生徒じゃないんだけれど
ていうか、飛び級で中学校を卒業してるけれどまだ15歳だっけ バンをパン工房に横付けした時に、そのまま休憩室に入らせれば良い あそこには監視装置の端末もあるし、お屋敷とも連絡を取り合うことができる 何より習うより慣れろだ
ツキコだけ乗せてあげてネミタマとアタシ歩いて行くヨ
うん、鷹倉神社の巫女は、なるべく外を歩かせない方が良い
あたしは、もうちょっと後から行くよっ学園祭は、学校の生徒は朝からだけど外部の人が入れるのは10時からでしょっ
寧が言う横に居るマナやキヌカを見て
マナちゃんやキヌカちゃんたちは10時過ぎなきゃ入れないんだからあたしが、その時間に連れて行くよっ
わたくしがパンを届ける時に、一緒に乗せて連れて行きます
そうだなレイちゃんがバンで移送してくれたら、助かる
お兄ちゃん、10時になったら、マナがお手伝いに行くからってテニス部のお姉さんたちに伝えておいてねっ
わたしらも行きます
キヌカちゃんと一緒なら、うちらがまた現れても変じゃないですから
手伝いに来てくれていた双子が言った えーとテレビに出ているリエとエリが、また現れたら大騒ぎになる
いいけど、午後からにしてくれお昼までは、なるべく混雑させたくない
昨日も、学園祭の実行委員から怒られたんだよな
とにかく、お昼の国営放送の取材が終わるまでは
ラジャーです
判りました、お兄さん
双子は笑って、オレに敬礼する
パパ、こっちは任せて下さいですのっ
アニエスが、真緒ちゃんや、可憐、ルナ、コヨミちゃんたちと見送りに来てくれた アニエスと真緒ちゃんは、オレの白衣と白帽を被っていた 渚はもう自分の花屋に出勤したんだな
お兄様瑠璃子もおりますから
うん、お屋敷でのパン作りの作業は瑠璃子がアニエスたちを見てくれれば安心だ
わたくしたちも、おります
素子にくるみも顔を見せてくれた 名家のお嬢様たちには、今日は留守番して貰う ありすと桜子桜子の警護役だったシエさんも来ている ここに後で、みすずと美智と美子さんも加わるだろう
アーニャは、キョーコとドリィたちを見ているネ今後の進路指導トカをするって言ってたヨ
ドリィたち少女暗殺者たちのことも心配しなくて良い
わたしも、藤宮さんが帰って来るまでは、こちらのお屋敷を警護致しまーす
木下さんが、笑顔で言った 壊し屋の木下さんと、慎重なハイジのペアなら、警護は完璧だ うん、全て問題ない
ヨッちゃん、閉めるよ
寧がバンの後部のドアをバタンと閉めてくれた 克子姉がバンのエンジンをスタートさせる バルルルンッ 家族の声に見送られて、オレたちの車は発進した 暗い荷室の中に居るのは、オレとレイちゃんと月子と黒瀬安寿 狭いみっちりと肩を寄せ合っている
レイちゃん、あのさ
オレが小声で話し掛けると
判ってます後の車で、雪乃さんもちゃんと連れて行きますから
オレが言う前に、レイちゃんはそう答えた
高校生の時に体験できる学園祭は、3回だけですものね
月子も、ニコッとオレに微笑んでくれた いつもの様に、裏門から高校に入った
克子お姉さん、ここで下ろして下さい
ああ、ここならパン工房よりも、女子陸上部の部室棟に近い
ヨシくん、あたし行くねっミーティングが終わって、あたしの担当時間まで間があったらパン工房の方へ顔を出すわ
ああ、頼むぞ、メグ女子陸上部の皆さんによろしく言っておいてくれ
本当ならメグとキスしたいところだけれど、今日はいつもの日以上に座席とオレの間にパンのパッドがあるから無理だ
判ったわじゃあ、後でね
メグは助手席から降りて、真っ直ぐに走って行く うん走っている時のメグの姿は綺麗だ
公様は、恵美さんのそういうところがお好きなのですね
月子がオレの心を読んで言う 克子姉が、バンをオレのパン工房の裏口に横付けした 克子姉がドアの鍵を開けている間に、愛が降りて来て、外からバンの後部ドアを開けてくれた
黒瀬さんオレに付いて来て
一般生徒に見られないうちに、黒瀬安寿をパン工房の中へ連れて行く オレは、工房の中の休憩室のドアを開け
とりあえず、この部屋に居てそっちの装置は、使い方を教えるまで動かさないでいいね
そのままパッドの搬入をする 持って来たパッドを全て入れ終わったところで
麗華さん、鍵よ
じゃあ、わたくしは戻ります
レイちゃんが克子姉から車のキーを受け取り、再びバンに乗り込む
頼むよ、レイちゃん
レイちゃんは、運転席からオレに微笑む ドルルルンッ バンは再び、お屋敷へ
さあ、白衣に着替えて作業開始よ
パン工房のドアを閉めて、克子姉が言った 克子姉とオレと愛と3人 オーブンに火を入れたり、パッドから焼く前パンを出したり作業を開始する
女子テニス部の子たちは、部室の方に集合なのよね
ああ、みんな着替えてから、こっちに来るって
パン工房+女子テニス部喫茶だから女子テニス部の子たちは、全員、テニスウェアで店に立つ だから、部室で制服からウェアに着替えて朝のミーティングを済ませてから来るはずだ
やって来るのはもう15分か、20分ぐらい後じゃないかな
オレは壁の時計を見て、そう言った
そうそれなら、今のうちにあたしたちでできることを済ませておきましょう
愛はもう自分のパンに取り掛かってくれ
今回は、女子テニス部の子にもパンを作ってもらっているけれど複雑な工程のパンは無理だから、オレたちで作るしかない その上、愛には愛のペースがあるから他の人と一緒には作れない もうすっかりパン作りに慣れてきているから、決して作業が遅いわけではないんだけれど 何か、他の人と違うところで作業がゆっくりになったり、早くなったりする独自のペースで作業を進める なのに、出来上がった愛のパンはとても丁寧な仕上がりで、格別に美味い
あのうわたしも何かお手伝い致しましょうか
ギィと休憩室のドアが開いて、黒瀬安寿が顔を出す
いや、いいからそこに居てくれていうか、もうすぐ人が来るから隠れててくれないと困る
オレは作業の手を止めずに、彼女に言った
いいわ監視モニターを起ち上げて、装置の簡単な使い方だけ教えてあげるわ
克子姉が、そう言って休憩室に向かおうとする 寧かイーディを連れて来れば良かった そうしたら、黒瀬安寿の世話をしてもらえたのに いや、黒瀬安寿を連れて来たのが間違いだったか どっちにしろ、バンにはもう人が乗れなかったし
克子お姉様わたくしがお相手致しますわ装置の使い方も、わたくしがお教え致します
オレたちの様子を壁際で見ていた月子がそう言う
でも、月子さんは監視装置のことは判らないでしょ
克子姉の言葉に月子は
今、判りました大丈夫です危ないところは触りませんから
ああ巫女の力で、克子姉の記憶を読んだんだ 黒瀬安寿に教えてあげると言った時に、克子姉が頭の中で思い浮かべた監視装置の使い方今の黒瀬安寿に、どの段階まで教えるかということまで
そう、じゃあ、お任せするわ
そちらのお部屋の中のお茶のセットも使ってよろしいですか
月子は休憩室の備品についても、オレたちから読み取っていく
ええ、いいわよ二人でお茶でも飲んでいて
ありがとうございますさあ、黒瀬さん
月子が、黒瀬安寿を休憩室ら押し込む
わたくしたちは、こちらのお部屋で落ち着かせていただきますのでどうぞ、ごゆっくりお仕事をなさって下さい
こちらのお部屋少し暗くはありませんか
いや、蛍光灯は全部点いているけれど
そうですかわたくしの思い過ごしですね
月子が、やんわりと微笑む
ああ、忘れてたわ監視モニターが点いてないわね
いつも作業中に、パン工房の外の様子を確認しているモニター画面が点いていない
では、失礼致します公様、くれぐれもお怪我をなさらないよう、落ち着いてお仕事なさって下さいませ
月子は、そう言うと休憩室の中へ入り、ドアを閉じた
こんなの、いつもなら真っ先にすることなのに
克子姉が、壁のモニターの電源を入れる オレたちにとって、外部を監視するのは防御の要だ それを忘れるなんてオレも気が緩んでいるな 現在の学生食堂の様子が、映った 生徒は疎らまだ早いもんな 学園祭の2日目だから、昨日のうちに準備は終わっているわけで 朝一から登校してくる生徒は、そんなにはいない
可奈さんたちが、来るから学生食堂側のドアのロックも解除しておくわよ
克子姉がカシャと、ドアの電子ロックを開ける 愛がパン生地を捏ねながら、口を開いた
克子お姉さん今日、ちょっと変
少し興奮気味というか、テンションが高すぎる
落ち着いて下さいみんなが来る前に
あたしそんなに変
克子姉は、愛の言葉に戸惑っている
克子お姉さん一歩、一歩地道にです
克子お姉さんと吉田くんと愛のパン屋さんができるのは3年後です今日じゃありません
だからテレビが来たってそのテレビに、どんな風に評価されたってそんなの、どうでもいいことなんです
克子姉は国営放送のテレビ取材が来ることで、ナーバスになってる
でもせっかくの機会だからチャンスなのよ
娼婦として地獄のような生活をしながら克子姉は、将来、パン屋になるために、ずっとパン作りの腕を磨いてきた パンを作ることは、克子姉には何よりも大切なことだ 今までは克子姉は、パン技能士コースの講師として、オレと愛にパン作りを教えてきた 学校で売ってきたパンも、名目としてはオレと愛が、研修の一環として作ったパンだった 克子姉のパンではない 学園祭の初日の昨日だって自分は高校の生徒ではないからと、初めは工房の中に籠もって、お客さんに顔を見せないようにしていた 昨日の終わりには克子姉自身も、学園祭に参加すると意識を変えることができた そして、高校1年生の春に誘拐された克子姉にはこれが初めての、高校の学園祭なんだ だからこそ国営放送が取材に来るということを、大きく捉えている 昨日までは、自分はオレたちのサポート役という気構えでいたのに今日は、当事者の意識なんだ 多分、克子姉もオレと同じでミナホ姉さんから、今日の国営放送の取材が、将来のオレたちの店の評判に繋がるという話をされている だから何としても良い評判を得なくてはいけないと、今朝はテンションが高すぎる状態になっているんだ 月子はそれに気付いていた
3年後あたしたちのお店の店長さんは克子お姉さんです
愛は、まったく手を休めずに言う
店長さんは店長さんなんですからいつも、どっしりとしていてくれないと愛と吉田くんが困ります
愛ちゃん
克子姉、普通にやろう評判とか、気にしなくていいからというより、今はやらなくちゃいけないことを、精一杯やることだけに集中しようよ
オレたち、まだ何もかも始めたばかりなんだからやるべきことを適確にこなしていこう
一歩、一歩地道に
愛がパンを1つ仕上げて次のパンに取り掛かる
判ったわごめんなさいそうね、あたし少し舞い上がってたわね
オレたちも、もう知っている 克子姉だって、パンで商売するのは始めてなんだ オレよりも少し年上なだけのまだ21歳の普通の女の子なんだ
良いんだよ、みんな特別じゃないんだからさ
信頼はしてもいいけれど克子姉を何でも判っている万能お姉さんだと思ってはいけない
克子姉、深呼吸してほら、すぅぅ、はぁぁ
克子姉だけでなく、愛までがオレと一緒に深呼吸した
ありがとう、落ち着いたわ
うん、そうねできることを精一杯やりましょうあたしたちはまだまだ、これからなのよね
克子姉一つ目のオーブン、焼き始めるよ
オレと克子姉が、再び作業に戻る
ちょっと、ちょっとノブどういうことなのよっ
学生食堂側のドアから可奈センパイがやって来た 2年生で一番の美少女スタイルの良い身体に、テニスウェアが似合っている
テレビの取材とかどうすんのよっ
うわわメチャメチャ落ち着いてないぞ
昨日のうちに言ってくれれば、美容院とか行って来たのにっあたし、今日は化粧品だって、普通のしか持って来てないわよっ
スゲェ、怒ってる ど、どうする
よし、これで全キャラを一通り喋らせたかなと思ったら
桃子姉ちゃんとか、まだ出て来ていない
どれだけ登場人物が多いんだ
でもとりあえず、それぞれのキャラは思い出しました
こち亀の最終回の40年前のキャラは、今はもう描けないみたいなことにはならないように
1382.学園祭2日目 / アリバイ
ちょっと、ちょっとノブどうするよっテレビの取材とかテニス部の子たちも、みんなビックリしちゃって大騒ぎになってるわよ
パン工房に、現れた可奈センパイはカンカンに怒っていた
いや、そのそれは
オレはどう返事していいのか、判らない
こういうのは、昨日のうちに話しておくのがスジってもんでしょそしたら、色々と準備できたのにっあたしも、テニス部のみんなもさっ
準備って高校の学園祭で、生徒が作ったパンを売っている様子を、国営放送の昼のニュース番組が取材に来るってことなのに どうして、可奈センパイやテニス部の子たちが特別な準備をしなくちゃいけないのか、オレには判らない 昨日と同じ感じでオレたちは、パンの模擬店をやれば良いだけのはずだ
寧さんから、30分ちょっと前くらいに、可奈の携帯にメールが届いてあたし、もう驚いてバスの中でひええっとか奇声を発しちゃったわよとっころが、もうあたし、もう家を出てバスに乗っちゃった後だったから家に化粧品とか、取りに帰ることもできなくてああああ、アッタマに来る
ああ寧が、オレたちがお屋敷から克子姉のバンで出発した後に 自分の部屋のパソコンで、可奈センパイにメールしたんだ
あたしたちもテレビの取材の件は、今朝知ったのよ
克子姉が、恐る恐る可奈センパイに言う
ホントなの、ノブ
ギロッとオレを睨む、可奈センパイ
ホントホントにホントだよオレも今朝まで知らなかったんだ
正直にオレは答えたが
今朝の何時よ何時何分何十秒
可奈センパイの怒りは、治まりそうにない
ええっと、確か
眼が覚めて鷹倉神社の巫女4人に、モーニング・フェラされて それで一発射精してから、シャワーを浴びて お屋敷の中庭での早朝トレーニングの途中に、ミナホ姉さんに呼ばれて そこでテレビの話を聞いたから
一時間ちょい前くらいかな
だったら、ノブ可奈に連絡する時間は、充分にあったじゃないっ
さらに怒りの炎が燃え上がった
テレビ局が来るなんて、最重要課題でしょっどうして電話でも、メールでもしてくれなかったのよ
いや、えーとあの
あのね可奈ちゃん吉田くん、今朝も色んなことがあってとっても忙しかったの
愛が可奈センパイに言う 愛は、怒りの可奈センパイを前にしても平然と自分のパンの作業を続けている
それでね可奈ちゃんに連絡できそうになった時はもう、ここに出発する時間でつまり、30分くらい前ねだから可奈ちゃんも、もう家を出ちゃって、バスとかに乗ってる時間になっちゃってたの
愛はゆっくりと自分のペースで話す
だから、可奈ちゃんへの連絡は寧お姉さんに、お願いしたのそれで、あたしたちは、パン工房に着いた後はパンのパッドを下ろしたり、オーブンを点けたりやらなきゃいけないことが、いっぱいあったから可奈ちゃんに連絡できなかったの
愛の細くて可愛い声と、ゆっくりな言葉に可奈センパイのテンションも緩む
本当なのね、愛
本当こんなこと、嘘言っても、しょうがないもんそうだよね吉田くん
ニコッと笑って愛が、オレを見る
可奈ちゃんまた、いつものパターンなんだよ
何のことよ、愛
国営テレビの取材のお話は、御名穂お姉さんが決めてきてくれたから御名穂お姉さんいつも、突然だもん
あーあーあー、そういうことね判ってきたわ
可奈センパイは、うんうん頷いて納得する
御名穂お姉さんはいつも、突然、吉田くんに大変なことをさせようとするから
あの人ノブに対する試練と周りの人への迷惑がゴッチャになっているのよね
あの、可奈センパイ多分、ミナホ姉さんは
いつものパターンなら、隠しマイクでオレたちの会話を盗み聞きしているはずだ
知ってるわよあたしも、もうお屋敷に何回も泊まっているんだから
可奈センパイは、天上を見上げ
あたしは、わざと話してるのっ少しぐらい嫌味を言わせてよあたし、怒っているんだからね
そんなに、テレビの件を伝えなかったことが腹立たしいんだ
判ったわノブも被害者なのね全く、あの人ギリギリにノブに話して、ノブが困るところを、どこかから監視して面白がっているのよ御名穂さん、そういうのは、良い趣味じゃありませんからね
いつものミナホ姉さんなら朝のあのタイミングでなく、もっとギリギリまで待ってオレに話すんじゃないだろうか 今日のテレビの取材もオレの試練として、ミナホ姉さんが計画したことならオレの瞬発力や、瞬間的な判断力を鍛えるはずだから
とにかく安心して、可奈ちゃん吉田くんは、可奈ちゃんのことを嫌いになって、連絡しなかったんじゃないから
判ったわよあたしも、お屋敷の朝のノブが、どれだけ大変か知ってるもの小さい子たちの面倒を見たり、みすずさんがオシッコするのを確認したりしないといけないのよね
それはまあ、そうなんだけど
小さい子たちだけじゃないよあたしたちの家族は、大きい人も朝から吉田くんにベタベタしたがるわ
愛がまた1つパンを完成させて、パッドに並べる
そうねそれも知ってるわ可奈もノブに朝からベタベタしたこともあるもの
そう言うと、可奈センパイはオレに向かって
ごめんなさい朝からギャーギャー怒っちゃってノブ、本当にごめんなさい
いや、そんなのはいいんだよ可奈センパイ
ノブのことを信用しないで、ノブの都合も考えずに一方的に怒ってごめんなさい申し訳ありませんでした
ちょっとちょっと可奈センパイ
だから可奈のこと、捨てないでね可奈はノブに捨てられたくないから
可奈はノブが大好きっ愛してるんだからだから、ごめんなさい
オレはとにかく、可奈センパイの柔らかい身体をギュッと抱き締める
オレも可奈センパイのことは大好きだから愛してるだから、おかしなことは考えないで
オレも考えが浅かったんだテレビの取材のことを聞いたら、すぐに可奈センパイに連絡するべきだったんだごめんごめんなさい
オレには、まだ可奈センパイやテニス部の子たちにとって、テレビの取材がトンデモなく重要ことの理由が判っていない 判らないけれどでも、オレはミスをしたんだ オレは、この件をできる限り速やかに、可奈センパイに伝えるべきだったんだ
そうよ寧さんからのメールじゃなくて、ノブに電話して欲しかったのよノブの声で、直接聞きたかったわよそしたら、一緒に凄いね、今日は頑張ろうねって言い合えたのに
可奈センパイは、オレにそうして欲しかったんだ それが普通の高校生の感覚なんだ
ううん、あたし、ワガママ言ってるんだよねノブは、あたしだけじゃないもんね手の掛かる面倒な子たちを一人で相手しているんだから
いや、違うよオレがいけなかったんだゴメン、本当にゴメン可奈センパイ
オレは可奈センパイの心を理解できなかった自分が情けなかった
いいのよ可奈の方が、ノブのセックス奴隷なんだから我が儘な奴隷でごめんなさい
気の利かない主人でごめん
オレと可奈センパイはお互いの身体を、優しく抱き締め合った
テレビの取材、楽しいそうよね
あたしも撮してもらえるのかしら
それは判らないけど
パン技能士コースがメインの取材だから、愛とノブを中心に撮るはずよねでも、可奈もこっそり出ちゃおっとるんっ
久々に、可奈センパイの口癖のるんっが聞けた こういう他愛も無い会話を可奈センパイはオレに望んでいたんだ それをオレは気が付かなかった
あの、あなたたちそろそろ良い今は、色々とやらなきゃいけない仕事がたくさんあるんだけれど
克子姉が、オレたちに声を掛ける
あ、いけねっパン、焼かなきゃ
気が付くと、愛と克子姉だけで作業を進めてくれていた
あ、でもテニス部の子たちが動揺しているのはホントのことなのよ克子さん、ちょっとあの子たちにお話してもらえませんか
オレが話そうか
ダメよこういうことは大人が話さないとノブは、テニス部の子たちにとってはパン技能士コースの普通の男子生徒でしかないんだから克子さんはパン工房担当の先生ってことになっているでしょ
国営放送の取材を受け付けたのは、オレたちの高校ということになっている だから、高校に雇われているパン技能士コースの講師として克子姉が女子テニス部の子たちに話をする方が道理に合っている
そうねあたしが話さないといけないわよね
克子姉は、作業の手を止める そのままオレは、克子姉の仕事を引き継いだ
あたしも時間が無かったから細かいことまで、ちゃんと考えていなかったわそうなのよねテレビの取材なんて、嫌がる子もいるのよね
ああそういうこともあるのか テレビに自分の顔を映して欲しくない子もいるのか
いえ、うちの部の子たちはむしろ全員、映りたがってます
だから逆に問題なんですテレビに映った子と、映らなかった子が出たら、後で部の中でゴタゴタしますし取材が何時からなのか知りませんけれど、その時間には、みんな確実にお店に居たいって
ああテニス部の子たちは、外の仮設のオープン・カフェで順番に休憩を取りながら、パンと飲み物を売っているから
それは大丈夫よ国営放送の担当者から、こういうタイムスケジュールで放送しますっていう表がメールで届いているからあたしが、お嬢様から受け取ったわはい、ここのファイルにあります
克子姉が、ファイルから書類を取り出す
お昼のニュースの枠で生中継で放送するんだからニュースの時間は、20分しかないから、多分、最後の辺りだと思うわ普時事ニュースを放送した後に流す、町の風景みたいなコーナーだから
それなら、12時15分から20分辺りってことですね国営放送だと、CMが無いんだから
可奈センパイは、フンフンと聞いている
じゃあ、その時間に全員ズラーッと並べちゃいますそれで誰が画面に映るかは、テレビ局のカメラマン次第ってことでそれなら恨みっこなしですから
他に何か問題はある
後はさっき、あたしが言ってたことですみんな、こんなことなら髪を整えてきたのにとか、お化粧道具を持って来たのにとか
テレビに映るのなら、綺麗な顔で出たいっていう気持ちは判るけれどでも、それはねえ
だけど、みんなかなり舞い上がっちゃっているんですよこのままだと、お昼までのお店の業務に支障が出るかもしれません
お昼のテレビのことで頭の中がいっぱいになってしまって、パンや飲み物の販売でミスが多発したりしたら困るな
そうは言われても
克子姉は、困惑している オレは壁の時計を見た 今の時間と店を開ける時間テレビの取材の時間 その3つを基に考える
克子姉テニス部の子たちの髪型とお化粧を見てあげてよ
派手に成りすぎず、高校生らしい感じででも、みんないつもより少し大人っぽく綺麗な感じに仕上げてくれないか
そんなこと言っても時間が無いわよここには、テニス部の全員にお化粧するだけの道具も無いし
化粧品とかは、お屋敷から持って来てもらえば良いお屋敷には、まだヤッちゃんが居るだろ
寧は10時になったら、キヌカたちを連れて来ると言っていた 寧なら、お屋敷の中にある物は全て把握しているから、必要な物は持って来てもらえる
レイちゃんの運転するバンで、運んでもらえばいいんだよ
それでも今からじゃ、間に合わないわよ
克子姉も、時計を見上げる
いや、間に合うさ お屋敷から学校までは、車で5分だろヤッちゃんが道具をまとめて、積み込む時間を考えても1時間はかからないはずだ
オレは頭の中の考えを話していく
ヤッちゃんが来れば克子姉と一緒に、お化粧の方をやって貰える二人でやれば、テニス部の子たち全員一時間ちょっとで終わらせると思うんだ
今から2時間じゃ、お店のオープンに間に合わないわ
学園祭は10時からだ 10時に、外部のお客さんを校内に入れる
大丈夫だよお化粧が間に合わない子がいても、すでに準備できている子たちだけで店はスタートできる
最初から、交代で休憩することになっているんだからスタート時に女子テニス部の売り子が全員居る必要は無い
それに10時になったら、マナが手伝いに来てくれることになっているから工房の仕事の方も何とかなる後は、オレと愛でとにかく頑張るから
でも女子テニス部の子たちのために、そこまでしてあげる必要がある
あたしたちにとって一番大切なのはパンでしょ今は、オープンまでに必要な数のパンを揃えることだけに集中した方が良いんじやないかしら
克子姉、それは違うよ確かにパンは大切だ売るパンがなくちゃ、パン屋は始まらないんだからでも、それだけでもダメだろ
だからといって、パン以外のことを放り出すわけにはいかない
パン屋にとって大切なことは、他にもあるよ店の売り子さんたちが、何の心配もなく、落ち着いて働いてくれるように体制を整えるのはオレたちの仕事だろ
それは、そうだけれど
すると、愛が
克子お姉さんあたしたちが、本当にパン屋さんを始めた時には高校生のアルバイトの子とかも、雇わないといけなくなるんですよね
作業しながら言う
それなら今日は、将来のお店のための練習にならないといけないと思います
愛の言うとおりだよお店の売り子さんたちが、気持ち良く仕事ができることがあるのならオレたちは、何としてもそれをしてあげないといけない大丈夫、必死で頑張れば何とかできるよ
あなたたちの気持ちは判るけれどそれにしても時間が足りないわよ
克子姉は、改めて壁の時計を見上げてそう言う
ヘイヘイヘーイ、ヘヘイヘーイ
天上のスピーカーから突然、声が聞こえてきた
お取り込み中のところ失礼みんなのキョーコさんだよっ
キョーコさんお屋敷からオレたちの様子を監視しているのか
御名穂は今忙しいので、あたしが割り込みまーすちなみに、外人軍団もずっとあんたたちの様子を観ているよっ
アーニャと13人の少女暗殺者たちも、キョーコさんとオレたちを観ている
取りあえず寧がもう化粧品類をまとめに走ってったよ一時間なんてかからない、25分でそっちに着くってさ
寧もオレたちの会話を聞いていてすぐに動き出してくれた
マナちゃんも、10時前に生徒じゃない子が学校に行くのはルール違反だけどあたしたちはどうせハナからルール無用だから、寧と一緒にそっちへ行くってさ
マナが来てくれれば助かる というか、オレはすでにルール違反の黒瀬安寿をここに連れて来ているんだよな こんなことなら、最初から違反覚悟でマナも連れて来れば良かった
それとお化粧担当に、寧がもう一人助っ人を連れて行くってさだから、克子心配しないで大丈夫だってさそう伝えてくれって、言ってたよ
もう一人の助っ人って誰だ うちに女の子の髪型やお化粧に詳しい子って克子姉と寧の他にいたっけ 渚は自分のお店に行ったから、来られないはずだし キョーコさんは
克子、あんた自分の家族を甘く見過ぎてるよ瑠璃子はもう、こっちでパンの増産を始めているし、麗華もいつでも車が出せるように待機してくれている
瑠璃子にはアニエスたちとお土産様の簡単なパンを作るように頼んで来たけれど こっちで克子姉が動けないのなら、いつものパンもお屋敷で作って届けてくれようとしている
あんたはできる限り、あんたのパン屋を自分の力で作り上げていきたいんだろうけれど家族はあんたが嫌でもどんどん介入するよだって、家族だからねっ
スピーカーから、キョーコさんの笑い声が聞こえる
最後に、御名穂から伝言だそこのお嬢ちゃんにわたしは、あなたが思っているほど底意地の悪い女ではありませんだってさこりゃ、怒ってるよ後で謝っておくんだね
ミナホ姉さんは可奈センパイのさっきの嫌味を聞いて、怒っていた ということは、やっぱり 今日のお昼のテレビ取材はオレへの試練ではない
キョーコさん、ミナホ姉さんに伝えて下さい
ああ、何て伝えればいいんだい
気を付けてってオレがそう言ってたって、伝えて下さい
お昼の国営放送のニュースに、オレたちが取り上げられるということは この学校に居るメンバーは、その時間にここに居たことが証明できるということだ つまりアリバイ おそらく、ミナホ姉さんはお昼のニュースの時間に、何か大きな犯罪を行う
ちゃんと伝えとくけど、心配しなくていいよ御名穂のことは、あたしが見ているそれに、御名穂はできる女だからねだから、アグリッピーナを呼んだんだよ
最強のフリー警護人ユリア・アグリッピーナさん そういう人材を雇わなくてはいけないような状況に、ミナホ姉さんは陥っている
あいつが、あんたのことを面白がってたよ長いこと、この世界で生きてきたけれど良い人だと思ったなんて言われたのは始めてだってさ
キョーコさんは、そう言ってまた笑った
とにかく、御名穂のことは大丈夫だからあんたたちは、あんたたちのするべきことだけに集中しなそれではラジオ・パーソナリティはみんなのキョーコさんでしたまたねぇ
そして、スピーカーからの音声は途切れた すぐに、可奈センパイがオレに言う
今の誰
ああ可奈センパイは、キョーコさんを知らないんだっけ
ハーイ、来たヨ、Darling
安城ミタマ、上番致しました
お屋敷から歩いて学校に向かっていた、イーディとミタマがようやく辿り着く
チョット遅くなったネ
お屋敷の裏門前に不審な人物がおりましたので、わたくしたちで退治して、公安警察に引き渡して参りました
不審な人物
アレは関西のヤクザじゃないネアタシたちのこと、よく知らないで来たみたいだったカラ
はい、お屋敷前の車のこと知らないようでしたから
車の中の人が警官だと知って、驚いていたヨ
相変わらず、オレたちの住むお屋敷の正門前にはキョーコさんを捕まえようとしている公安警察と、香月セキュリティ・サービスの私服組の車が常時数台配置されている 関西ヤクザなら、月子たちを追って来た時に、そのことを知ったはずだ
変なヒトが居たのは、ソレダケヨ学校の周りには、誰もいないネ
メグも、パン工房の中へやって来た
テレビのことを話したら、午後までは、こっちのお手伝いに集中して良いって竹芝キャプテンが許してくれたわ
助かったメグも居てくれれば、工房の中の仕事もはかどる
女子陸上部の人たちには、申し訳ないけれど
お邪魔しまーす
入りまーす
学生食堂側のドアからミナホ姉さんの新しい娼館の娼婦候補生たちが 鞍馬美里、住友桃香、白旗せつな、朝比奈希美の4人が入って来た
今日は、よろしくお願いします
全員、今日はパンの売り子を手伝ってくれると昨日、約束してくれた ミナホ姉さんの許可も得ている この4人は、駅前ホテルの地下の新しい娼館から、ミナホ姉さんにここまで車で贈って来てもらったはずだ
えっとミナホ姉さんは
もう行っちゃったわ
私たちを学生食堂の裏で下ろして
そのまま、他のお仕事があるっておっしゃって
黒沢さんと德大寺さんは、向こうのお部屋にいらっしやいます
向こうの部屋は校長室のことだろう 娼婦候補生の残りの2人黒沢直子さんと德大寺園子さんは、オレたちの店の手伝いはしたくないと言っていた ミナホ姉さんは、娼婦候補生たちを全員学校に残して 工藤父とアグリッピーナさんと一緒に、どこかへ向かった お昼のニュースの時間までに何かが起こる
オーケイ、じゃあ、この4人はあたしがテニス部の子たちに紹介するわ御名穂さんとの約束で接客は、させちゃダメなのよね
娼婦候補生たちには、飲み物を用意したりする店の中の仕事だけをさせるように厳命されている
そしたら克子さんも、来て下さいテニス部の子たちに、お話してもらわないと困りますからもうみんなテニスウェアに着替え終わって、こっちに来ているはずですから
女子テニス部の人たちもパン工房前の仮設のカフェテラスに集まって、開店準備を始める時間か
そうね判ったわあたしが話しますテレビ取材の詳細とそれから、みんなの髪型とお化粧を見てあげる件ね
克子姉も、ようやく覚悟を決めてくれた
お願いします年上で、いつも綺麗でお洒落な克子さんじゃないとみんな納得してくれませんから
おだてないで
おだててないですよ克子さんにお化粧とか見て貰うってアイデア、大当たりですからみんな、凄く喜ぶと思います
じゃあ、あなたちょっと行って来るわ
克子さんを借りるわねノブ
克子姉と可奈センパイは、パン工房の外へ出る
イーディ、休憩室に月子と黒瀬さんが居るから学校の監視システムを使って、学校の周りに怪しい人間は潜んでないかチェックしてくれ
ラジャー
ミタマは、美里たちの警護だ変な男に絡まれないように守ってくれ
ミタマは元々は鞍馬家の美里の警護役だから、この配置で良いだろう
娼婦候補生たちは、なでしこ科という名前で普段は、一般生徒とは隔離されている
4人とも、美しい少女たちばかりだから調子に乗って、声を掛けようとする男子生徒がいるかもしれない
そういう連中を、ミタマに排除させる
吉田くんこのパッドのパン、もう焼いていいよ
工房内に残ったオレと愛とメグの3人で、どんどんパンの準備をする オレはオーブンに、パンを入れていく
ヨシくん、あたし、感覚がおかしくなってたみたい
不意にメグが口を開く
だから、テレビの取材のことよ国営放送のニュースで取り上げてもらえることになったって話したら、女子陸上部の人たち、みんな凄い興奮しちゃって
あたしテレビ取材の話を聞いても、正直、そんなにドキドキとかしなかったのもちろん、ちゃんと頑張らないといけないなとは思ったけれど部の子たちみたいに、キャーキャー騒ぐ気にはならなかったわ
オレもそうだよそりゃ、テレビで紹介されることが将来、オレたちがパン屋を開く時の助けになるとは思ったけれど正直、何とか上手く取り上げてもらえる様に精一杯頑張ろうっていう気持ちしかないな何て言うかやらなくてはいけない任務みたいな感じがするな
だから、可奈センパイがパン工房に来た時にあんなに興奮していた理由が判らなかった
それってやっぱりあたしたちの感覚が、おかしくなってるのね
そうよほらあたしたち、一緒に暮らしている雪乃がテレビに出てるのをずーっと観てるし麗華お姉さんも、もうすっかりテレビの有名人だし、最近はエリちゃんやリエちゃんや、ミタマさん、キヌカちゃんまでテレビに出てるし
うん、うちの家族で雪乃の番組に出演している子は多い ありすも出たし、素子とくるみは槍の演武まで見せた
瑠璃子ちゃんも、香月家の本家の歴史的な建物を紹介する番組に出演したでしょ
そういうのもあった 今は第2弾で、瑠璃子が名家の国宝級の宝物を紹介する番組の準備をしている
あたし、すっかり家族がテレビに出ることに慣れちゃってたからテレビに出演するということが特別なことなんだっていう感覚が鈍くなっているんだと思うわ
そうかだからか テンションが高かった可奈センパイが変なんじゃない テレビ局が来るということに対して、テンションが低いままのオレが、おかしいんだ
だから、これで良いの
克子お姉さんに、テニス部の子たちのお化粧してもらったり、髪型を直してもらったりする方が良いの克子お姉さんも、普通の女子高生の気分に引っ張られて、気持ちが楽になるから
ホントそうだ オレたちが、パン屋を開くのは高校を卒業した後だから、最低でも後2年半は掛かる 今日、テレビにオレたちのパンを紹介してもらうことなんて実は大したことではない それなのに、オレも克子姉も自分たちのパンのことだけに、気持ちがいっぱいいっぱいになっていた
普通の女子高生ならテレビに映るかもしれないってことだけで、大騒ぎするもの
そういう女の子たちに触れることで、克子姉の心も女子高生たちに近付く 高校1年生で誘拐されて、楽しい高校生活を送ることのできなかった克子姉が
ミナホ姉さんは克子姉に青春を取り戻してあげたいんだな
そういうことなんだと思った
吉田くんもだよ
吉田くんも愛も恵美さんもだよあたしたちも、普通の子の感覚を取り戻さないとダメになっちゃうから特に吉田くんは
愛はふと作業する手を止めオレを見る
吉田くん、ここのところ大変なことばかりだったから
香月セキュリティ・サービスの反乱部隊の処置とか 石神瑞希のレイプとか 13人の少女暗殺者たちとか ちょっとハードなことが続いている
ドキドキする気持ちを忘れちゃダメ
うん、気を付けるよ
オレは、愛にそう誓った
うむキャラクターが勝手に成長している
自由に動くのはいいけれど、書くのが大変困る困らない
1383.学園祭2日目 / 株主優待
問題ナシヨ
イーディが、休憩室から出て来た
ありがとうどうだった
オレは焼き上がった最初のパンをオーブンから取り出しながら、尋ねる 愛とメグも、パン工房の中で自分の仕事をどんどんこなしていた
この学校の周囲には、不審な人物は居ないネアタシの見る限り
今日は学園祭だから、うちの高校の生徒たちはみんな普段よりも浮かれているし、模擬店とかバンド演奏とかで、制服姿で無い人も多い それでもイーディは、監視カメラで観た映像で人々の立ち振る舞いから、明らかに怪しい人物は居ないと判断した
監視システムの方は、引き続きアンジュにやらせるヨアノ子は、良い子ヨもうシステムの使い方を完全にマスターしているネ
石神瑞希の警護役だって、黒瀬安寿15歳 克子姉の記憶を読んだ月子と、イーディに監視の方法を教わってもう一人で使えるようになったんだ 丁寧な仕事をする子だから、任せておいて大丈夫だろう月子とミタマが休憩室に残って、黒瀬安寿を見ててくれるようだし
お屋敷の周りには、変なやつらが居たんだろなのにオレたちの学校には居ないということは
オレは、焼けたパンの状態を一つ一つ確認して問題無いパンだけをパッドに詰めていく
アイツラは敵ダケドアタシたちのコトは知らないノネ
お屋敷まで来たということは、敵は黒森家のことを知っている だけど今、黒森家にたくさんの人間が住んで居てそのうちの数人が、この学校に通っているということは知らない
敵は、どの程度のレベルまでオレたちのこと知っているんだろう
オレは、それが心配だ 古い情報なら黒森家は、政財界の重鎮専用の高級娼館だ しかし、敵がオレたちのことを詳しく知っていたら 名家・香月家との繋がりや、みすずや瑠璃子たち名家の令嬢たちがお屋敷で暮らしているこまで知られていたら
それによって、オレたちの対応を考えないといけない
下手に動いて、余計な情報を敵に教える結果になることだけは避けたい
大丈夫ヨ向こうは、アタシたちのFamilyのことは大して知らないと思うネ
知ってたらあんなにノコノコとやって来ないネ
ああ、そうか敵はお屋敷前の道にいつも居る公安警察と香月セキュリティ・サービスの人たちのことを知らなかったんだっけ
でも、オレたちの出方を見るためにわざと何も教えていない手下を送り込んで来たのかもしれないじゃないか
それなら、アタシたちが捕まえた連中の後ろに監視役が居るはずネそういう役目のニンゲンは居なかったヨ
イーディも、美智と同じで周囲の気を察知することができる子だ そのイーディが断言するのだから、この可能性はもう考えなくて良い
公安警察に引き渡す前に一通り、身体検査もシタカラスマート・フォンと普通の音声を記録するレコーダーは持ってたから、それはアタシとミタマで回収したヨデモ、電波を飛ばすタイプの録音機は、持ってナカッタから情報漏れは無いネ発信器とかも持ってナカッタヨ
回収したスマート・フォンとボイス・レコーダーは、今どこにある何かそいつらは録音していたのか
ソレは一回お屋敷に戻ってレイカに渡したヨ心配ナイヨ、ちゃんと電源切ってから、運んだカラソンナコトをしてたカラ、アタシたち学校に到着するのが遅くなったのネ
お屋敷には、レイちゃんと木下さんが居るし今日は、キョーコさんとアーニャも居るから、今頃、解析してくれているだろう レイちゃんは、もうすぐ寧たちとここに来るしこのパン工房ならお屋敷とは、いつでも通話ができる
判ったありがとうさすが、イーディだやることに抜かりは無い
オレは作業を続けながら、イーディを褒めた
当たり前ヨDarlingのイーディなのネ
イーディは、嬉しそうにそう言う それからイーディは、パン工房の壁の上部に設置されている外部監視モニターを操作する 学生食堂の中を映していた画面がパン工房の外、裏口の周辺を映す画像に切り替わった
ソロソロだと思ったノヨDarling着いたみたいヨ
ああ克子姉のパン運搬用のバンが、走って来た 運転席に居るのはレイちゃんだ 今日は運転手役だから帽子とサングラスで変装している
助手席の姿も見えた
寧は荷室に居るのか
そうだよなお屋敷から、女子テニス部の女の子たちのための化粧品なんかを持って来てくれたんだ荷物が多いはずだ 時計を見るとさっき通話した時間から、ピッタリ25分経過 寧たちも、約束したことを確実に実行してくれる
メグ、愛オレは荷下ろしを手伝って来るすぐにマナをこっちに来させるから
男手が要るだろうから行かないと
うん、大丈夫
ヨシくん、こっちはやっておくわ
二人の返事を聞きながら、オレはパン工房の裏口へ向かう
Darling、アタシも行くネ
イーディも、オレの後を付いてくる 裏口のドアを開けるとちょうど、レイちゃんが車を停車させたところだった
お兄ちゃん、あたし中を手伝うねっ
助手席から降りて来たマナは、すでにエプロン姿だった オレと入れ違いで、パン工房の中に入って行く
荷物を下ろしたらわたくしは、すぐにお屋敷に戻ります
運転席からレイちゃんが、オレに言った さすがにこの時間では、瑠璃子やアニエスたちがお屋敷で作っているパンはまだできていないだろう レイちゃんは、すぐに発進できるようにバンのエンジンを掛けたままにしている
レイちゃん、何度も往復させることになってゴメン
良いんですわたくしはお手伝いができて嬉しいんですからそれと
レイちゃんは、小声で
御名穂さんとお屋敷の方は、問題ありませんだから、今日は学園祭を思い切り楽しんで
翔姉ちゃんや、香月セキュリティ・サービスは、ミナホ姉さんのために、もう動き出しているってこと
オレも、小声で尋ねる
いいえ、今日は香月セキュリティ・サービスは、動きませんそういうことになっています
え、それじゃあ
だから何の問題も無いんです
レイちゃんは、オレにニコッと微笑んだ
全部、ミナホ姉さんの計画通りっていうことなんですね
やっぱりオレたち抜きで、ミナホ姉さんは何かをやっている 国営放送のニュースに出ることでオレたちには、今日は学園祭で学校の中に居たというアリバイを作るように 香月セキュリティ・サービスにも、わざと関わらせないようにしている その理由はミナホ姉さんがやろうとしていることが犯罪だからなんだと思う
香月セキュリティ・サービスは動きませんがもしもの場合には、すぐに対応できるように翔お姉様が準備して下さっています心配しないで
翔姉ちゃんは、香月セキュリティ・サービスの本社で待機しててくれているんだ
詳しいことは後で話してもらうよ
わたくしよりも、御名穂さんに直接聞いて下さい夜までには、戻られる予定ですから
オレは、まだ少し心配だけれど 今は学園祭に集中することにした
ヨッちゃん、手伝って
バンの横のスライドドアを開けて寧が、化粧品の入った大きなバッグを取りだしていた ああ、前にみすずと瑠璃子が、ロシア映画祭のパーティで花束を渡すことになった時に、ホテルの部屋の中でお化粧するために、克子姉が持っていったカバンだ
後ろの段ボールが重いんだよ全部化粧品だから
段ボール 確かに、大きな段ボールの箱が3つもある そして、その箱の横には
お早う、公
まり子が居た 今日は日曜日だから、超お嬢様校の制服でなく、白いワンピースを着ていた
うふふ来ちゃった
来ちゃったって
いや名家の子は、オレたちの高校の学園祭には来ないルールだろ
警備を厳重にしなくちゃいけなくなるからみすずも瑠璃子も桜子も可憐も、ここには来ないことになっている
あら、わたしはいいのよわたしは名家の令嬢じゃないんだからくくくっ
まり子の実家の鳥居家は、確かに名家ではない だけど、まり子の母親が3大名家の1つ狩野家の出身だからという理由で 超お嬢様校に、名家の子にしか許されない警護役を連れて登校していたのはまり子だ
それより、急がないといけないんでしょ
アタシ、2つ持つからDarlingは、その箱1つ持って来てネ
イーディが、大きな段ボール箱を2つ重ねて持ち上げる 寧は、克子姉の化粧品だけで手が塞がっていた
いや、イーディ無理するなよ3つあるんだから、オレとまり子とイーディで1つずつ運べば良いじゃないか
ダメヨ、コレ重いからマリコじゃアブナイネ
ええ、わたしじゃ運べないわ
そんなに重いのか
ガラス瓶に入っている化粧品も多いから、絶対に落としたらダメよ公
段ボール箱を持ち上げてみると確かにズッシリと重い そうか、化粧品て瓶に液体が詰まっているモノが多いもんな イーディ、よく2つも重ねて持ち上げられるよな さっさと女子テニス部の人たちが集まっている仮設テラスの方へ持って行ってしまったけど
もしかして、まり子この3つの段ボール箱は
そうよ、わたしが持って来たのよ
まり子が、またクククと笑う
今日、ここに来ることは決めてたんだけれど朝、寧お姉様からメールをいただいたから
寧は、可奈センパイだけでなくまり子にも、メールを送っていたんだ
でもそれって1時間くらい前のことだろ
オレたちが、バンに乗ってお屋敷を出発した直後だから
1時間あれば来られるわようちの運転手に、ここの学校まで車で送らせたから寧お姉さんたちとは、高校の裏の門のところで合流したのよ
まり子の家は、大会社の社長だから運転手付きの車がある
でも、化粧品を持って来るのとかは25分前に決まったんだけれど
女子テニス部のお化粧大会が決まったのはほんの少し前だ
ああ、それはたまたまよわたし、可奈とは仲が良いでしょだから、可奈のためにというか、今回は公もお世話になっているんだから、女子テニス部の子たちにプレゼントしようと思って用意してたのよ
そうだったまり子は可奈センパイと気が合う そして、可奈センパイはブランド物とか、高い化粧品とかが大好きだ
でも、まり子こんな大きな箱3つって
まり子がプレゼント様に用意したのなら、高級な化粧品のはずだ これ全部だと、相当高額になるんじゃないのか
いいの、いいの大丈夫だから後で説明するわ
まり子にお金を使わせるのは、何だか申し訳がない
早く行きましょう皆さん、待っているんでしょ
まり子が笑顔でオレに言う
ああ、そうだった
オレは、エンコラサッと重い段ボールを持ち上げる まり子が、バンのスライドドアを閉めてくれた 車が充分離れると
麗華お姉様ありがとうございました
まり子が一礼する
ええじゃあ、頑張ってねすぐにまた様子を見に来るから
レイちゃんの運転するバンが、グワワと走り出した
ご苦労様テニス部の子たちのメイクは、食堂の隅を借りてすることになったわ
オレが、重い段ボールを運んで行くと克子姉がオレを見て、そう告げた 寧とイーディは、もう荷物を学生食堂の中に運んだらしい
克子姉、どんな感じ
ちゃんとお話ししたわみんなに説明して判ってもらえたわ
女子テニス部の人たちに、今日のお昼に国営放送の取材班が来るということの詳細と、そのことを当日の朝に、突然知らせることになってゴメンなさいというお詫び
それはもう全て話し終わったようだ
お揃いのテニスウェアを着た女子部員たちは、みんな取りあえずは納得した表情をしている でも全体の雰囲気は、不安と期待の高揚感でいっぱいな感じだ
ハーイ、皆さんこんにちは可奈、着たわよ
白いワンピースのまり子が、大きな声で可奈センパイに叫ぶ
え、誰
誰なのあの子
まだ、今日の学園祭はスタートしていない
外部の人のたちの入場時間になっていないのに見知らぬ私服の女の子がやって来たのだから、女子部員たちは怪訝な表情になる
あら、まり子あなた、もう来たの
可奈センパイも、まさかこんな時間にまり子が来るとは思っていなかったようだ
星崎さん、誰なのこの子
可奈、外部の人が今入って来るのはマズイんじゃない
女子テニス部の上級生たちが、可奈センパイに詰め寄る
あらあら、皆さんこの箱3つ分の化粧品は、このわたしが持って来たのよあなたたちのために
まり子は、わざと強調して言う
ほら、可奈早く、わたしを皆さんに紹介して
ええっとこの子は、あたしの校外の知り合いで
親友
まり子が、鋭く言う
親友でしょわたしと可奈は
ええっとあたしの親友で鳥居まり子さんです
仕方なさそうに、可奈センパイは言った
皆さん、改めましてこんにちは鳥居まり子です
まり子は、女子テニス部の子たちに優雅に挨拶する
ほら、可奈わたしの紹介の続き
もう無いわよ、話すことは
あるでしょわたしの家のこととか
まり子は、自分から言い出す
えっと話していいの
こういう場合、そうした方が皆さんに判ってもらい易いんじゃない
まり子は、ニッと可奈センパイに微笑む
鳥居まり子さんはトリイ電子のほら、トリイ電子って大きな会社があるでしょ
トリイ電子は、世界的に有名な日本を代表する電化製品のメーカーだ
そのトリイ電子のお父さんが社長なんだっけ
父が社長で、祖父が創業者会長よッッ
まり子は、ドーンと胸を張る
そういうお金持ちのお嬢様なのよ
そう可奈センパイに説明されても女子テニス部員は、みんなポカンとした顔で、まり子を見ている 突然現れた少女が、世界的な大企業の社長令嬢だと言われても頭の中でイメージが繋がらないんだろう
そうよ、そういうことなのわたしは、いわゆるお嬢様そして、今日はいつも親友の可奈が皆さんにお世話になっているお礼に、プレゼントを持って来たのっ
その箱を一回下ろして、箱の中のモノをみんなに見せて
オレは、言われた通り重い段ボールをコンクリートの地面に下ろして、箱の上を開ける
うわっ、お化粧品がギッシリ
あれ、すっごい高いやつじゃない
そこの可愛い瓶に入っているの先週発売になったばかりのだよ
女子テニス部の人たちは、まり子の高級化粧品に食い付いた
この箱と今、イーディが建物の中に持っていったのが2箱あるわ全部で3箱みんな、女子テニス部の皆さんに差し上げます
まり子は、満面の笑みでそう言う
ま、マズイわよまり子
だって、これ高いでしょこれとか、これとかうわっ、これとか高いのに大人気で品薄のファンデーションじゃないこんなの貰えないわよ
どうしてよ可奈
まり子は、平然とそう言い返す
それはだって悪いわよ
悪くはないわよこれ、みんな家にいっぱいあって困ってるんだから
まり子の言葉に、女子テニス部の皆さんは驚く
毎月、わたしのところに送ってくるのよどんどん届くのよだからお化粧品が溜まる一方なのよ
送ってくる
届く
溜まる一方
可奈センパイたちには、まり子の言葉の意味が理解できないらしい
株主なのよ、だからああ、でも、いわゆる普通の株主優待で、一年間に数万円分くらい企業がくれるっていうのとはちょっと違うわよわたし、かなり大きなパーセンテージで、ここの会社の株を持っているからだから、今、売れている商品と新しく売り出す商品は、必ず送ってくるのよ
ええ、ちょっと待ってまり子のお父さんがトリイ電子のお仕事の他に、お化粧品の会社の株も持っているの
可奈センパイが、質問する
違うわよお父様は、株をなさっていないわトリイ電子のお仕事でお忙しいんだからあたしが株主なのそう話しているでしょ
そう言えばまり子は、歌晏桃子姉ちゃんに株の取引を習っていたっけ
他にも色んな会社の株を持ってるわよ化粧品メーカーの株は今は3社だけだから、段ボール箱を3つ持って来たのよ3社とも、毎月、あたしに製品を送ってくるから
一応、大株主として製品のできはチェックしているわよ良くないと思った製品があったら、送って来た会社にちゃんと伝えてるしでも、毎月、3つの会社からどんどん送って来るから、ホントに溜まる一方で困っていたのよ
だから、普段、可奈がお世話になっている皆さんに使ってもらえたら大助かりなのよ
でも、まり子これ、あたしたちじゃなくってあなたの学校で、お友達に配ればいいじゃない
克子姉から、高級な製品を貰って喜んでいた可奈センパイも今回の化粧品の量に、すっかり腰が引けてしまっているようだ
うちの学校の子はダメよどこの家も、みんなわたしと同じように製品が送られて来てると思うから
まり子の通う超お嬢様校は名家の令嬢と、ジッちゃんの選んだ一部の大金持ちの娘しか通うことができない
ていうかここのお化粧品メーカーの創業家の子も、わたしの学校の生徒よその子が居るのに、わたしが他の生徒に製品を配るわけにはいかないわよ
ああ、ここの会社は老舗なのよね確か、明治の頃からある
可奈センパイが、段ボールの中の製品の上に刻まれた企業のロゴを見てそう言う
ああ、ごめんなさいね今日、持って来たのは日本のメーカーの化粧品だけよ外国の会社は、さすがに製品を送ってはくれないわたまにしか
たまにはあるんだ
せ、セレブなんだ、この子
す、すっごーい
可奈さん、こんな人の親友なんだ
女子テニス部の人たちは絶句しながらもまり子かせ本物のお嬢様だと認めてくれた
克子さん、これから皆さんにお化粧して差し上げるんですよねそれでしたら、わたしの持って来た化粧品もどんどん使っちゃって下さいこういうのは、使ってみないと判らないものですから
まり子は、克子姉にそう言う
ええ、ありがとう使わせてもらうわ
それで、使ってみて気に入ったのがあったら好きなのを持って帰って下さいこのお化粧品は、みんな、皆さんに差し上げたものですから
もう一度、まり子は念を押すように言う
まり子さんも、みんなにお化粧するのを手伝ってよっ
寧が、学生食堂から顔を出して叫ぶ
あたしと克子お姉ちゃんとまり子さん3箇所に別れて、お化粧した方が早く終わるからっ
そうねお願いするわ、まり子さん
克子姉も、まり子に頼む
ええ、わたしで良ければでも、最終チェックは克子さんがして下さい皆さん、わたしのお化粧では、お気に召さないかもしれないですから
まり子は、明るくそう言う
うん、全体のバランスもあるからさあたしとまり子さんがお化粧した子も、みんな、最後に必ず克子お姉ちゃんに見せて、手直ししてもらってね
女子テニス部に部員よるパンのカフェテラスなんだからメイクが濃すぎたり、派手過ぎたりする子が居ては良くない 克子姉に最終調整をしてもらう方が良い
そんじゃ、3人ずつ学生食堂に来てっ
寧が、女子テニス部の子たちに叫ぶ
ほら、可奈最後は、あなたがピシッとシメなきゃ
まり子が、可奈センパイの胸をポンと叩く
そ、そうね順番に克子さんたちにメイクしてもらいながら、同時並行でカフェテラスの開店準備をするわよっみんな、いいわね
女子テニス部の皆さんも、返事をした これでテレビの取材が来ても胸を張ってカメラの前に立つことができる 眼の前にあった問題が1つ解決できた
順番は、学年順のアイウエオ順にします手の空いている人は、どんどん仕事してそれからまり子のお化粧品を貰うのは、後にしてちょうだい今は選んだりしてる余裕が無いから早い者順とかにはしないわよっ欲しい人がたくさんいる品は、今日の最後のミーティングの時にジャンケンして貰う人を決めるわ
可奈センパイが、みんなに指示を出す
Darling戻ろうネこっちは、もう平気ダヨ
イーディが戻って来て、オレに言う ここは克子姉、寧、まり子の3人と可奈センパイで上手くやってくれるだろう オレには、オレの持ち場がある
さあパンを焼こう
一応、日本の化粧品会社の株主優待について調べたのですが
うーん、こんなもんか
アメリカのホワイトハウスには、特定のメーカーがコーラとお菓子をいっぱい送ってくるので
いつでも食べ放題、飲み放題なそうです
その無料のお菓子を喉に詰まらせたのがぶっしゅ・じゅにあ
1384.学園祭2日目 / めいく・あっぷ
そうね、あなたのお肌の色ならこれとかが良いと思うわよ
パン工房の監視モニターに、学生食堂の隅で始まった女子テニス部のお化粧大会の様子が映っている オレは、パンを焼く作業をしながら時々、モニターを確認する 克子姉、寧、まり子の3人が椅子を並べて、それぞれ1人ずつ、女の子たちを順番に化粧していく すぐ脇に学生食堂の机を1つ借りて寧がお屋敷から持って来た化粧道具と、まり子が持って来てくれた化粧品の段ボール箱3つが、すぐ手に取れるように置かれている
あたし、これを使ってみたいんですけれど
自分の順番になった女子テニス部の上級生の子が、まり子の持って来た段ボールの中の化粧品を指差す
ああ、これねそれだったら、これとこれも使った方がいいわ
まり子が、ススッと箱の中から彼女の指定した化粧品と、他にも幾つかの品を取り出す
克子さん、この組み合わせで良いですか
まり子が、他の子の化粧をしている克子姉に選んだ化粧品を見せる
その組み合わせで、良いと思うけれどその子だったら、ファンデーションの色は、もう1つ濃い方が合うわよ
克子姉は、化粧品とテニス部の子の顔を見比べて、すぐに答えた
ああ、なるほどそうですね
まり子は、すぐに色の違うファンデーションを箱から取り出す
メイクし終わったら、一度、あたしに見せてね
ええ、お願いします克子さん
克子姉に返事をしてまり子が、上級生にメイクし始める すると、今度は寧が
はーい、できたよーっ克子お姉ちゃん、チェックしてっ
寧が、自分がお化粧したテニス部の子を克子姉に見せる
うわー、寧さんお化粧上手っ
あんた、普段の5割り増しで美人になってるわよ
順番待ちの女子部員たちが、大きな声でそう言う
良いけど高校生なんだから、アイラインはこの方が良いんじゃない
克子姉が手を伸ばし寧が化粧したテニス部の子の顔に、ちょっちょっと手を加える
それであなたの場合は、前髪のここを上げた方がいいわヘアピンある
克子姉は、ササッとその子の髪を直してしまった
うわっ美人度が、8割増しなった
克子さんスゴイ
えっえっえあたし、今、どんな顔してるの
はい、鏡
寧が、手鏡を差し出す
ほわーっあたしじゃないみたい感激ッ
自分の顔を見て、絶句する
とっても自然な感じに仕上がってるわよ
うん、あたしとかだったら、もっとベタベタ塗りたくってたと思うこんなにいっぱい化粧品があるんだもん
そう言う女子部員たちに、克子姉は
まだ高校生なんだから、自然なお肌を活かした方がいいわよそれに今日は学園祭だから、多少はお化粧していても先生方は見逃してくれると思うけれどあんまり派手なのは良くないわ外からのお客様がいっぱい、いらっしゃるんだから
あ、そうですよねえ
それに、これぐらいの感じで仕上げた方が、上品な雰囲気が出せるのよ
克子姉は、さらにその子の目尻のところにススッと手を入れた
うわっ10割増しだよっ
克子さん一通りできたので、こっちの人も見て下さい
今度はまり子が、克子姉を呼ぶ
あの人たちの感覚、あたしにはやっぱり判らないわ
メグが、作業しながらポツリと言う
ああいうことは先にカフェテラスの準備をして、それからするべきだと思うの
メグミの気持ちは判るケレドしょうがないノネ
Darlingやメグミにとっては、今日、学園祭でパンを売ることも、将来のための努力ネダケドテニス部のコたちにとっては、昨日と今日ダケのお遊びヨ
学園祭文字通り、タダのお祭りなのネダカラ、テレビが取材に来るって聞いたら、あんなに大騒ぎしてはしゃぐのヨお祭りという非日常の状況の中で、さらにもっとスゴイ非日常がやって来るんダカラ
女子テニス部の子たちはオレたちほど、パンを売ることに深刻な思いを抱いていない 彼女たちにとっては、あくまでも学園祭での模擬店でしかないんだから
Darlingさっき、ここにカナが来た時、テンションが変だったデショ
ああ、どうしてテレビのことを教えてくれなかったのってもの凄い勢いで、パン工房に飛び込んで来た時のことか
うん、オレもあの時は、驚いたけれど今は判るよ可奈センパイも、テニス部の人たちと同じ気持ちだったんだよな
テレビのニュースに、自分たちが映るかもしれないということだけで気分が高揚してしまう いや、登校途中のバスの中で寧からメールでテレビ取材のことを知らされた後テニス部の仲間たちに、可奈センパイもメールしたり、直接携帯で話したりしたんだろう そして、テニス部の部室に着替えに行って他の部員たちとも、テレビの話をしているうちにどんどん興奮してしまったんだ 可奈センパイも、テニス部の人たちも全員 その部室ですっかりヒートアップしたままのテンションで、パン工房に飛び込んで来たからあんなことになった
オレあんまりテレビとか見ないから、判らなかったけれどやっぱり、みんな興奮するもんなんだなテレビのカメラがやって来るってことに
オレは子供の頃には、テレビなんて見せてもらえなかったし 中学時代は、山の中の男子校の寮生活でテレビは禁止だった 今も、必ず観るのは雪乃の番組だけだもんな
あたしも、そんなにテレビに興味無いからビックリしてるわ
メグが学生食堂の様子が映るモニターをチラッと見上げて、そう言う
今は若者のテレビ離れで、ネットの方が勢いがアルって言う人もいるケレドまだまだテレビの影響力は強いネ
ムシロ、今はテレビで放送されたコトが、インターネットで拡散されて後から動画サイトで、話題になったテレビ放送をたくさんの人が観たりするパターンも増えているネ放送した時は、視聴率が低かったのに、ネットで評判になって、大きな話題になるコトもアルノヨ
そういうパターンもあるのか
ああ、そう言えば先週ぐらいにそういうことがあったんだって
パンを作りながらマナが言う
ええっと何て言ったっけああ、そうだアメリカの登山用品のメーカーで、ホワイト・フェースって会社があってさ、そこが造っている四角い形のリュックサックがあるんだよ
アメリカの登山用品メーカーの四角いリュックサック
そのリュックサックをさ先週、どこかテレビ番組が、最近、このリュックサックは同性愛の人たちに大人気って放送したんだよそのメーカーのその形のリュックサックは、オカマ・ランドセルと呼ばれてるって
オカマ・ランドセル
そうしたら、その放送がさオカマ・ランドセルって名前が面白いからって、ネットで色んな人に取り上げられて、拡散しちゃったんだよその番組をリアルタイムで観てなかった人たちも、そこのメーカーの四角いリュックサックはオカマ・ランドセルっていう名前で、同性愛の人たちに大人気って広まっちゃったんだよこれって怖いよね
どう怖いんだ
え、判んないだてさ本当は、そのリュックサックはアメリカの登山用品のメーカーが、日本だけでなく全世界で販売している普通のリュックサックなんだよそれでテレビでは、そのリュックサックが、今、同性愛の人に愛用されているって、気軽に放送しちゃってたけどそれって、多分、たまたまテレビに出演した人が聞いた知識で、本当は、その人の近くにいる一部の同性愛の人たちのグループの中での流行なんじやないかな
マナは、ハァと溜息を吐く
そのリュックサックを買って使っている人たちは日本だけでなく世界中に居るはずなんだよね比率から考えたらさ、ゼッタイに同性愛じゃない人の方が多いと思う
そうかそれなのに、テレビの放送を観た人たちは
テレビの放送を観た人だけでなく、ネットでオカマ・ランドセルのことを知った人たちもそのメーカーのその形のリュックサックを背負っているのは、全員同性愛の人だと思い込んじゃうよね
ソレはトンデモないことヨメーカーにとっても、困ったことになるネ
そうだよ、大問題だよ同性愛じゃないのに、たまたまそのリュックサックが気に入って買って使ってた人とかその放送のことを知ったら、使いづらくなっちゃうじゃないでも、オカマ・ランドセルってキーワードでどんどん拡散しちゃってるからますます風評被害が広がってるんだよね
そんなことも起きているんだ
だからさお兄ちゃんも気を付けてね国営放送のお昼のニュースだって、アナドレないよ何か、ちょっとでも、話題になるような面白いことが起これば誰かが、すぐにネットで広めようとするんだから
何かヘマをしたらそこの場面だけ切り取られて、動画サイトにアップされたりするかもしれない
Darling悪い方にばっかり考えちゃダメヨニュースがネットで評判になって逆に良い結果になる可能性もアルンダカラ
イーディは、そう言うけど
でも、そういうことを考えたら、大きな失敗をヤラカしちゃいそうだよ
そうよ普通に堅実にしっかりしてればいいのヨシくんは、その方が良いわ
メグが、真剣な顔でそう言う
メグミは、ホント、真面目ネ
そうよあたしは真面目よ真面目だとダメなの
メグは、ぷっと膨れてイーディにそう返した
ダメじゃないヨメグミは、それでイイノネ
イーディは、笑顔のままモニター画面の中のテニス部の人たちを指差す
デモメグミは、あのコたちのコトは、もう少し理解してあげないとダメヨ
判っているわよあの人たちのああいう様子が、普通の女子高校生らしい姿であたしは、そうじゃないのよね
あたしはどうせ、お堅くて、小うるさい、真面目過ぎる嫌な女の子なのよ
ああ学園祭を気楽に楽しんで、和気藹々としているテニス部の人たちと自分を比較しちゃっているんだ
だから、それはそれで別に良いんだよ恵美さん
今まで黙っていた愛が作業する手を止めずに、ぽつりと言う
恵美さんみたいな子が居ても良いの愛みたいな子も居るしマナちやんや、イーディさんみたいな子もいる家族には、色んな子が居た方が良いの
さっき可奈ちゃんが、ここに来た時ね最初は、他のテニス部の人たちと同じで可奈ちゃん、浮かれて舞い上がってたでも
途中で吉田くんは、自分たちと違ってテレビの人が来ることに、浮かれていないことに気付いて吉田くんにとっては、パンに関することは真剣なことなんだって気付いて泣きそうな顔で、吉田くんに謝ってたよ
そうかあの時、可奈センパイが急転直下の勢いで、オレに嫌いにならないでとか謝りだしたのは 自分とオレや克子姉や愛にとってのテレビの取材の意味と価値が違うことに気付いたからなんだ
オレたちは、将来のパン屋に繋がる真剣な問題で女子テニス部の人たちの様に、ただ浮かれているのでは無いということに気付いたから
だから、オレに謝ってくれた
可奈ちゃんは判ろうとしてくれたんだよだから、あたしたちも判ってあげないといけないんだよ
真面目な性格のメグは女子テニス部の人たちが浮かれて、カフェテラスの開店準備に集中していない上に、克子姉を彼女たちのお化粧のために派遣しなくちゃいけなくなったことが心の中で不満なんだ その気持ちは、オレにも判る
マナは、これで良かったんだと思うよ
ほら見て克子お姉ちゃん、パンだけでなくああいうことも得意なんだよね
克子姉が寧とまり子に指示しながら、どんどんテニス部の人たちを綺麗にしている 克子姉は黒い森の娼婦だった頃は、政財界の大物の顧客たちにナンバーワンの人気を誇った だから、お化粧だって上手いしどうすれば、品が良く見えるようになるかを適確に指示できる
知ってるわよ克子お姉さん、いつもお洒落で綺麗だもの
メグお姉ちゃんが、知ってるのはいいんだよ家族なんだからそうじゃなくって、克子お姉ちゃんが、ああやって外の人たちに、自分の能力を示しているってことが大切なんじゃない
克子さん、パンの講師だけじゃなくってお化粧の先生もすれば良いのに
っていうか、テニス部の子だけズルイあたしも、お化粧して欲しいです
モニターの中学生食堂に、どんどん女生徒が増えている 克子姉が女子テニス部の人たちにお化粧している様子を見に他の女生徒たちが集まって来たんだ
今日は無理よテニス部の子たちが済んだら、あたし、パンの方に戻らないとお店で売るパンが、間に合わなくなるわ
克子姉は、明るい笑顔でそう言う
そうよ、今日のテニス部はパン工房とコラボであたしたちは、カフェのウエイトレスだから、克子さんにお化粧してもらってるのっ
それにお昼にはあたしたちのカフェにテレビが取材に来るんだからっ
克子姉たちに化粧してもらっているテニス部の人たちが、大きな声で言う
うー、それもズルイ
何で、カフェテラス限定の取材なのよ
しょうがないじゃないお昼のニュースのトピックで、5分ぐらいしか映らないんだから
あたしたちだけ映して5分でオシマイなのよね
だから何でよどうして、そうなるのよ
うわわこのままだとテニス部の人たちと、他の女学生たちでケンカになる
ごめんなさいね今日は、テニス部の子で精一杯よお化粧の相談なら、他の日にいらっしゃい
克子姉は、優しい笑顔でそう言った
えー、克子さん良いんですか
パンの方のお仕事が終わった後ならいつでもいいわよ
約束ですよ、克子さん
場の雰囲気がどうにか和む
あたしは奈島センパイに、お化粧教えてもらいたいです
あ、あたしも奈島センパイ、綺麗だから
寧にも、女生徒たちから声が掛かる
えっ、あたしていうかセンパイて言うなぁ、同じ学年じゃんかっ
寧は1年留年していて、まだ2年生だ
しかも、あたし今、克子お姉ちゃんに何度も直されたから気付いたんんだけどあたし、帰国子女だから、メイクがちょっとキツイみたい
寧が、そんなことを言い出す
別にキツくはないわよアイラインの描き方が、ちょっと違うだけよ好き嫌いの問題だから、寧ちゃんは、そのままで良いと思うわただ、他の子には合わない時もあるのよ
ああ、奈島センパイ綺麗すぎるからあたしたちには、奈島センパイと同じメイクは合わないかもしれませんね
だから、センパイって言うなぁー
うん克子姉も寧も、楽しそうだ 普通の女子高生たちとの交流が良い影響を与えているんだと感じた
はいはい、寧さん手も動かして下さい
まり子が、自分の担当の子を化粧しながら寧に言う
この人もお化粧上手ですねぇ克子さんの助手の方ですか
違うわよまり子さんは、うちの部の可奈の校外の友達なんだって
親友よ可奈の親友
まり子は、自分から会話に加わる
それで可奈の親友のまり子さんは、トリイ電子のお嬢様なんだって
ホントですか凄―い、うちの冷蔵庫もトリイ電子のですよ
ご愛用、ありがとうございまーす
うん、まり子も絶好調だ
良いんだなこれで
オレはパンの作業を続けながら、呟く
いや、違うな何が起きても、どんな状況になっても最終的に良い方向に持っていけば良いんだ
結果的に克子姉や寧が、学校の女生徒たちと仲良くなれれば、それで良い 克子姉の不在は、オレたちで穴埋めすることができるんだし
ソウヨ発想の転換ヨ全てを肯定的に考えればイイノネ
テニス部のコたちのメイク・アップも良いコトヨ結果的に、カフェ・テラスのウェイトレスさんがみんなキレイになるんダカラ
そうだ前向きに考えよう
イーディ、モニターの画像を外のカフェ・テラスの監視カメラに切り替えてくれ
イーディの操作で画面が変わる カフェ・テラスは
はい、テーブルと椅子は全部拭き終わったわねそっちは終わってるそこはミズハラさんがメイクから帰って来てからで良いわあの人が担当だからアミノさん、ちょっと来てあ、判ったわメイクが済んでからで良いわサカタさんは、もう済んだのねそしたら、あそこのウシジマさんと交代して
可奈センパイが開店準備をどんどん進めている
うちの家族は、みんな働きものネ
オレたちの方も予定通りだな
マナが来てくれたことで全て順調にパンを焼いている これなら10時の開店の時には、予定通りの数のパンが用意できる
この時間はテニス部の人の手伝いを断っておいて正解だったよ
女子テニス部の人たちにも、パンを作ってもらうことになっているが 慣れていない人たちが、パン工房に居ると作業がどうしても遅くなる 昨日の売れ行きをみて、今日は開店前にある程度の量のパンを焼いておかなくてはいけないと思っていたから 10時の学園祭の一般入場の時間までは、オレたちだけで作業することになっていた それが結果的に正解だった オレと愛とメグとマナの4人の方が息の合った作業ができる イーディが見てるだけなのは、いつものことだし
うわ予定よりも、早く進んじゃったよ
まだ克子姉が、テニス部の人たちのメイクから帰って来ていないというのに 開店時に店頭に並べる分のパンが、全て完成してしまった
克子姉がいないからかえって、みんな頑張れたのかもな
でもヨシくんすぐに次のパンの準備をしなくちゃ
メグの言う通りだ昨日と同じぐらいお客さんが来てくれるのなら、どんどんパンは売れていくだろう 第2弾のパンに取り掛からなくてはいけない それでも少し手を止めるぐらいの余裕はある 学生食堂に通じるドアが、ガチャリと開く
もし、余裕があったらで良いんだけれど愛と恵美さんも、克子さんにお化粧してもらいに行って
可奈センパイが顔を出してそう言う
あ、あたしは良いですお化粧とか
何言ってるのよあなたたちこそ、ニュースでは一番映る可能性があるんだから、メイクしてもらいなさいよ
国営放送は今年からパン技能士コースのできた高校の学園祭での活動を放送しに来る ミナホ姉さんが、そういう内容で頼んでくれたんだからカメラは、このパン工房の中まで入ってくるだろう パン技能士コースの生徒である愛とオレは、絶対にカメラで撮られるしその時もここで作業していれば、メグの姿もテレビに映るはずだ
メグも愛も行って来いよ
でも、ヨシくんあたしは別に
ううんダメ恵美さん、お化粧してもらおうよ
愛がメグに、そう言う
ここでメイクしてもらわなかったらテニス部の子たちは、あたしたちのことを変な子だと思うよ
テレビが来ることに興奮しているテニス部の人たちにとっては克子姉にお化粧してもらって、綺麗な顔でカメラを待つのが常識になっている
そういう風に思われるのは吉田くんにとって、良くないよだから、吉田くんのために、メイクしてもらいに行こう
メグと愛も普通の女子高生たちと、交流した方が良い
行って来なよ次のパンは、あたしとお兄ちゃんで進めておくから大丈夫だから
マナが、メグにそう言う
ああ、みんなで頑張ったから時間に余裕もできたんだだから、行って来てくれ
メグと愛が、学生食堂に向かう
可奈センパイありがとう
オレは、わざわざ2人を呼びに来てくれた可奈センパイに礼を言った 克子姉にメイクしてもらうことで女子テニス部の人たちは、メグと愛に対する仲間意識も増すだろう
いいのよ今、ちょうどあの子たちのメイクをしていたから愛や恵美さんたちも呼んであげなきやって思ったのよ
あの子たち モニターを見上げると ああ、今日、特別にカフェテラスを手伝いに来た娼婦候補生の美里たちが、克子姉のメイクを受けている 女子テニス部だけでなく、カフェ・テラスに関わる子は全員てことか
でもあの子たちはお化粧すると、底抜けにトンデモない美人よねえ
4人とも、ミナホ姉さんが厳選した綺麗な子たちだから
お店のテントの中の仕事しか、してもらえないのがもったいないわ
娼婦候補生たちは、男子生徒や外部のお客さんと接触することは、ミナホ姉さんに禁止されている だから、飲み物などを提供するテントの中で、お客さんと直接接触しないような仕事しかしないことになっていた
そう言えばイーディさんもメイクしてもらったら
可奈センパイは、イーディにそう言うが
アタシは良いのヨアタシは、パン屋の仕事は何もシテナイシニュースに映るワケにはいかない理由がアルノネ
イーディは、今日の午後別のテレビに出る予定がある
ソレヨリカナは、まだメイクしてもらってないみたいダケレド
そう言えば可奈センパイは、まだお化粧していない
あたしはみんなの最後それぐらいの節度はあるわよ
可奈センパイは、ニコッと笑うとドアを閉めて、オレの方へ歩いてくる
それにメイクしちゃったらこんなこと、できなくなるでしょ
可奈センパイは、オレの唇にそっとキスをした
昔、劇場の裏方の仕事をしていた時に
上演前の楽屋で、お互いにライバル意識を持っている女優さんが2人がメイクをしていて
相手のメイクをチラチラ見ながら、自分のメイクをしていくから
2人ともどんどんメイクが濃く、派手派手になっていくという地獄を見たことがあります
最終的に演出家が2人に怒鳴ってました
オマエたちだけ、芝居のジャンルが違うだろ京劇かよっ
1385.学園祭2日目 / ダメ・ゼッタイ
みんな、最終確認してあと15分しかないわよ
外の仮設のカフェ・テラスで学生食堂のから出て来た可奈センパイが、女子テニス部の人たちに指示する
はーい、カナさーん
可奈センパイが、メイクの順番の最後だからなんとか、10時の学園祭スタートの15分前に、全ての女子テニス部の人たちのメイクは完了した
これはテントの中で良いんだっけ
昨日はそうだったけれど、今日は天気が良いからそっちにするって
克子姉と寧とまり子に高級化粧品で綺麗にメイクしてもらって女子テニス部の皆さんは、すっかり明るく元気になった テキパキと、自分の担当の仕事をしている
おい、何かお前ら普段と違わない
お目々パッチリでイイ感じになってんだけれど
通りがかった男子生徒たちが学生食堂の中でお化粧大会があったことを知らないから、すっかり美しくなったテニス部の人たちに驚いている
はいはい、ゴメンねあたしたち、お喋りしているヒマは無いの
克子さんたちにカワイク仕上げてもらっちゃったんだからその分、バリバリ働いて返さないと
後で、お土産も貰えるんだもんねー
あたし、あのピンクの口紅狙ってるぅ
あれは、あたしも欲しい何本かあったっけ
まり子さんの3つめの段ボールの中に、5~6本あったわよ
ほらほらお喋りしてる子はお土産ナシにするわよ
可奈センパイが、下級生の部員たちを叱る
はい、撤収するから手伝ってよっ
寧が学生食堂に通じるドアから顔を出しパン工房の中のオレたちに言う あ、そうか克子姉の化粧品セットと、まり子が持って来てくれた大きな段ボール箱3つをしまわないといけない だがオレはちょうど、焼き上がったパンをオーブンから出している途中だから、手伝いにはいかれない
アタシが行くネミタマとアンジュ、ちょっと来てヨ
イーディが休憩室のドアを開けて、中に居るミタマと黒瀬安寿を呼ぶ うちの高校の生徒であるミタマはともかく、私服の黒瀬安寿を出して良いのかと思ったけれど もう学園祭開始10分前で学生食堂には、模擬店や発表会なんかをやるんで制服を来ていない生徒もうろついてた 今ならバレないか 休憩室の中から、月子も出て来るが
重い荷物を運ぶだけだから、月子は良いよイーディ克子姉の荷物とまり子が持って来てくれた段ボールは、とりあえず休憩室の中に入れておいてくれ
女子テニス部の人たちへのプレゼントってことだけれど高価な化粧品ばかりだ テキトーに置いておくわけにはいかない 今日は学園祭で、校外からの客も多いし ここの休憩室は、オレたちしか入らないから保管場所に最適だろう
了解ネDarling行くヨ、ミタマ、アンジュ
えっと、あのはい
3人はパン工房から出て行く すでにメイク用品は、克子姉たちで片付け終わっていたらしい すぐに荷物を持ち帰って来た
はあああ、疲れたけれど楽しかったわ
荷物を運んで来たイーディとミタマと黒瀬安寿たちと一緒にまり子がパン工房の中に入って来る
ありがとう、まり子それに、いいのかホントにあんなにたくさんの化粧品
オレは、オーブンの中から全てのパンを出し終わったことを確認してからまり子に言う
いいのよさっき話した通りあたしの部屋にあったモノだしああ、4分の3は桃子お姉様からいただいた品だから、公、後であなたからも桃子お姉様にお礼を言ってね
歌晏桃子姉ちゃんの
いえねさっき、あたしがテニス部の皆さんに話したのは、半分はあたしじゃなくって、桃子お姉様のことなのよ
それってまり子が化粧品会社の大株主だから、毎月、たくさん製品を会社が送って来てくれるって話か
そうよあたしが、化粧品会社の株を持っているのは本当なんだけど、さすがに毎月たくさんのお化粧品を貰えるほどの量は持ってないわよ
まり子は、トリイ電子の社長令嬢だけれど個人で株の売買をしているんだから、会社側が特に気を遣うような大株主になれるほどの資金は無いか
大株主なのは、桃子お姉様よというか、歌晏グループの企業なのよ化粧品メーカー、3社とも
歌晏家のグループ企業なら本家のお嬢様である桃子姉ちゃんに、毎月、製品を箱で送ってきてもおかしくはない
でも、桃子お姉様は外国製のお好きなブランドのお化粧品しか、お使いにならないからグループ企業から送って来たお化粧品は、全部、わたしにくれるわけだから、こんなにいっぱい溜まっちゃったのよ
でも、ほらテニス部の人たちに、わたしと桃子お姉様の関係を説明するのは面倒だし貰い物のお裾分けじゃ、有り難みが無いじゃないそれにあたしがトリイ電子のお嬢様だって話しちゃった方が、あたしの親友である可奈の株が上がると思って
まり子はまり子で気を遣ってくれたんだ
うん、ありがとうそっちの休憩室で休んでくれコーヒーとかも飲めるからそれと、今、焼けたばかりのパンも出すよ
オレたちは、今からが学園祭の本番だけれど まり子と寧には、少し休んでもらおう 克子姉にはパンの味の確認だけは、してもらわないといけないけれど
何だお前ら、化粧してんのか
外のカフェ・テラスの映像を映しているモニターから、野太い男の声が聞こえてきた
学園祭だからって浮かれてるんじゃねぇぞそんな顔で、外から来る父兄の前に出られたら、学校の恥だろほら、今のうちに顔を洗って来い
あれは確か、3年生の担任をしている教師だよな 2学期から、うちの高校に赴任した オレは、習っていないから名前もよく知らないけれど
でも、ハスダ先生これはせっかく克子さんが
女子テニス部の上級生が、教師に話そうとするが
デモじゃねぇオレが顔を洗って来いと言っているんだから、すぐに洗え化粧したまんまのやつが一人でも居たら、お前たちの模擬店は閉鎖させるからな
この教師に何の権限があるんだ 確か、学生指導とかの先生じゃなかったと思うけれど
先生今日、わたしたちのカフェ・テラスにはテレビが取材しに来るんです
可奈センパイが前に出て、教師に言う
ですから、閉鎖はできませんしもう、オープンの時間ですから
テレビが来るって言うから、わざわざ様子を見に来たんだそしたら、何だお前らそのキャバ嬢みたいな化粧はお前ら、国営放送でうちの高校のオンナは揃いも揃ってケツの軽いバカ娘だって宣伝するつもりなのか
まずいな生徒たちが集まって来た 学生食堂の中からも、騒ぎを聞いて生徒が出て来る
まあまあ、ハスダ先生そんな大きな声を出して怒らなくてもこの子たちは、判ってくれますよ
現れたのは校長だった この校長も、2学期になってからやって来た人で オレたちは、その外見からチャッキーと呼んでいる
学園祭というのは、高校生活の中でも特に大きなイベントですからわたしは、女生徒がお化粧したりするのも多少は良いと思っていますでも、君たちは少しお化粧が濃いかもしれませんね
ニタニタと人形の様な作り笑いを浮かべながら、校長はテニス部の人たちに話し掛ける
ですから、わたしももう少し、薄いお化粧に直した方が良いと思いますがそれはまあ、生徒1人1人各自の判断にお任せしますわたしは生徒の自主性というものを一番に考えていますから
いや、それって結局は、化粧を落としてこいって言いたいんだよな
ところで今日、国営放送局がわたしたちの学校を取材しに来るという話を、わたしも先ほど、職員室で聞きましたこれは、わたしたちの学校にとって、とっても名誉なことだと思います
校長は話を続ける
そして、わたしはこの学校の校長先生ですつまり、学校の代表なんですねですから、もちろんテレビのことに関しても、わたしが全て責任を持たなくてはいけませんそういうことですから今日は1日、あなたたちと一緒にここで過ごそうと思っています
校長がオレたちのカフェ・テラスにずっと居るのか
トンだ営業妨害ネ
画面の中の可奈センパイや女子テニス部の人たちはすっかり戸惑っている
あー、なるほどねっつまり校長先生も、テレビに映りたいんだっ
寧が学生食堂の方から現れる
だから、ここへ来たんでしょっ昨日は全然来なかったのに
確かに、校長は昨日はここに来なかった
いえいえ、わたしはテレビに映りたいとか、そういう気持ちはありませんただ、校長先生ですから学校がテレビで紹介される場には立ち合わないといけないと思っています
そうだぞ、校長先生はなぁお前たちのために、わざわざ来て下さっているんだぞありがたく思え
ハスダ教師が、校長の後ろに回って生徒たちに叫ぶ ああ、この教師と校長は最初からグルなんだ なるほど、そういう関係か
残念ですけれど校長先生には、テレビの撮影に立ち合っていただく必要はございませんは
ついに克子姉が学生食堂から姿を現す
このカフェ・テラスは女子テニス部とパン技能士コースのコラボレーション企画ですからパン技能士コースの講師のわたくしが全て責任を負いますわたくしが全て致しますので、どうぞ校長先生は職員室にお戻り下さい
キッパリとそう言う 上品な笑みを浮かべた顔で
何だ、お前は講師の分際で、校長先生に楯突くつもりかだいたい、お前、講師のくせに全然、職員室に顔を出さねえじゃないか
ハスダ教師が、克子姉を睨む
ええわたくしの担当はパン技能士コースですから、職員室へ行かなくてはいけないことは特にありませんわ
ないことはないだろあんた教職員の飲み会にだって、出席しないじゃないか普通は顔を出して、オレたちにビールでも注ぐのが礼儀ってもんだろどういう神経してるんだ何なんだお前はよっぽど親の教育が悪かったんだろうなぁ
ハスダ教師が、そう言った瞬間
だめぇぇぇぇぇぇっだめですだめだめだめぇぇぇぇ
校舎の方から男の先生が10人ぐらい、叫びながら全力疾走でやって来る
校長先生も、ハスダ先生もダメですっそれ、絶対にダメ
パン技能士コースはダメですダメダメ
とにかく、ダメなんですゼッタイ
ドタドタと校長たちと克子姉の間に入る
どうしたんですか、先生方
走り込んで来た先生たちの異様なテンションに、校長は思わず尋ねる
あの校長先生、パン技能士コースについては何も触れないで下さい
ダメ、ゼッタイ、ダメ
講師の高梨さんに全てお任せしているんですから校長先生は何もしないで
ダメ、ゼッタイ、ダメダメ
ハスダ先生もお願いですから、触れないでノータッチです
ダメ、ゼッタイフォーエバー
スーツ姿なのに、全身汗だくでハァハァしながら先生たちは、強張った表情で校長とハスダ教師に言う
何を言っているんだあんたたち
そうです、どういうことなのか説明して下さい
ハスダと校長は、他の先生たちの行動の意味が理解できない
そんなこと説明はできませんっ
ダメ、ゼッタイ、ダメダメダメぇぇぇ
つまり、この先生たちは前からこの学校に居た人たちなんだ だから、前の校長たちの一派白坂創介の関係者が、5月以降、この高校から一掃されたことを知っているし 克子姉が、その時のこの学校の理事長で今も、理事の1人だということも知っている
現在の理事長のミナホ姉さんが教師として、この学校に居た時のことも
そして、おそらく黒森御名穂が、裏の世界の住人だということも
しかし説明していただかないと判りませんよく判るように、説明して下さい
校長は、それでもそんなことを先生たちに言うが
ふざけるなっ、そんなことできるかぁぁッッ
ダメダメダメ、ゼッタイっっっっ
後から来た先生たちはキレる
アホか、お前はアホなのか、バカぁぁ
ダメなんだよっ、ダメダメっ
校長なのに、校長室を使わせてもらえない段階で気が付けバカ
バカなんだよっ、バカバカっ
いいから、来いっあんたの定位置の職員室の隅に戻れッバカ
あんたもだ、ハスダさん9月に赴任して来たばかりなのに、クビになりたいのか
だからダメなのぉダメダメなのゼッタイ、ダメ
連れて帰るぞっ
10人近い男性教師たちに校長とハスダ教師は、引きずられていく
ちょっとちょっと、待って下さいどういうことですええわたしは校長ですよ
何なんだよお前ら、おい何でこうなるんだよ
多人数に力任せに引っ張られて2人は訳の判らないまま、連行されて行く
高梨さん、どうもお騒がせしました
1人残った男性の老教師が、克子姉に頭を下げた 確か、日本史の先生で3年生の学年主任だと思う
フジモリ先生よろしいんですわね
克子姉が腕組みして、老教師に言う
はいな、何がですか
ですからこの子たちのお化粧です今日は学園祭ですので、こうなりました
克子姉は周りに集まっている生徒たちに、女子テニス部の人たちを示す
みんなとても可愛らしい子ばかりですし、なるべくナチュラルに、品の良いお化粧を施しましたご父兄や校外からいらしたお客様がご覧になっても、高校生らしいと微笑ましく感じられると思いますわ決して学校の名誉を汚すようなものでは無いと思います
克子姉の言葉がテニス部の人たちに自信を与える
そうですあたしたちは、高校生らしく可愛らしい姿で、このカフェにお客さんを迎えたいだけです
代表して、可奈センパイが言う
このままテレビに映ることだって学校にとって恥ずかしいことになんかはならないです
うんあたしたち、ちゃんとやりますから
お化粧落とすのは、嫌です
ゼッタイ、顔洗ったりしないです
部員の人たちは、口々にそう言った
そのように、この子たちも言っていますからこのままの姿で、よろしいですわね
克子姉が老教師にダメ押しをした 老教師は、冷や汗を浮かべながら上ずった声で、答えた
ありがとうございます責任は全て、わたしが持ちますから先生方は、安心なさって下さい
克子姉は、そう言うと女子部員たちに
学校のお許しが出たわっさあ、みんな開店するわよっ
丁度、午前10時 オレたちと女子テニス部のカフェ・テラスが本日の営業を開始する
カツコはああやって、女の子たちの中にいると活き活きしてるネ
イーディが、モニターを見上げてそう言った 克子姉の作るパンは美味しいけれどパン工房の中に閉じ籠もっているより、ああやって女の子たちを仕切っている時の方が輝いている
ノブ、パンをお店に出すわよ
可奈センパイが、ドアを開けてパン工房に入って来た
そこに積んであるパッドは、全部できてるだけど、克子姉の最終チェックがまだだから
お待たせ、ごめんなさい遅くなったわ
克子姉も、ようやく戻って来た寧も一緒だ
チェックし終わったパッドから、どんどん持って行って
克子姉が、パンを検品していく
はい、このパッドはオーケイ
じゃ、持って行きます
可奈センパイが、一つ目を持っていく
これもいいわ
アタシが持っていくネ
イーディが、2つめのパッドを持ち上げる
お兄ちゃん、麗華お姉ちゃんの車が着いたよ
マナの声に、オレは外部モニターを見た ああレイちゃんが、バンでお屋敷でアニエスたちの作ったパンの第一弾を持って来てくれた
それはオレが取りに行くよ
レイちゃんには、そのまますぐにお屋敷に戻ってもらわないといけない
わたくしもお供致しますキヌカも乗って来ているはずですから
ミタマが、オレに付いてくる
すうめたるさんの誕生日だったらしいので
凄いなあ海外の大物ロックバンドのイギリス公演のサポートアクトに日本人が呼ばれることだけでも快挙なのに
メインアクトのバンドの人が、前座の演奏に飛び入り出演して観客の前で一緒に日本から来た女の子の誕生日を祝ってくれるという
ありえないはずのことが起こるから奇跡
1386.学園祭2日目 / 懲りない人たち
右側の3つが、アニエスちゃんたちのパンで左側が瑠璃子様のパンです
レイちゃんは、さっきと同じ様にパン工房の裏口にバンを横付けしてくれていた 運転席から、荷室の中に積まれたパッドのことを説明してくれる アニエスたちが作ってくれたのは、お土産用に売るクロワッサンで 瑠璃子が用意してくれたのは、予備のパンオーブンで焼く直前のところまで、仕上げてくれていた 今日はどれだけ売れるか判らないからこの時間に予備のパンがあるのは助かる
レイちゃん瑠璃子にありがとうでも、これから後は予備のパンはもういいからって伝えて
オレはパンを確認しながら、言う
判ってますお屋敷では、みんな、ずっとここの映像を生中継で観てるもの
克子姉がテニス部の人たちのメイクで不在だったけれどマナが手伝いに来てくれたことで、何とかなったことも、みんな観て知っているんだ
お屋敷の方は、お土産用のパンの製作に集中するそうです次の搬送は、1時間半後の予定です瑠璃子様が売れ行きによって、作る量を調整しますから一度、連絡して下さいって、おっしゃっていました
ホントこちらの状況を判ってくれている
うんオレか克子姉が電話するよ
オレがレイちゃんと話している間にミタマと、バンに乗っていたキヌカが、素早くパンの入ったパッドを全てパン工房の中に入れてくれた 他の子たちはこの便には乗って来なかったらしい レイちゃんが何度も搬送してくれるのだから、もう少ししたらお屋敷から来る子も増えるだろう
それでは戻ります
ああ、レイちゃんありがとう
レイちゃんのバンが、走り出す オレも、小走りでパン工房の中へ戻る 克子姉が、早速、お屋敷から持って来たパンをチェックしていた
全て問題なしよあの子たち、良い仕事をしてくれるわ
克子姉は、アニエスたちのパンにオーケーを出した
すぐにカフェ・テラスの方へ持って行くよ
オレは、克子姉がチェックしたパッドを取りに行く 焼きたてのパンは、イーディたちがすでに運んだ 追加でこのお土産用のパンも、売り出してもらおう
ちょっと待ってまだ早いわ今は、まだ学校の生徒しかお客さんがいないみたいだから
克子姉の声には、オレは壁の上部の外部モニターで、外のカフェ・テラスの様子を見上げる 今は午前10時5分過ぎ 可奈センパイたち、女子テニス部の人たちはパンが届くと同時に、本日の営業を開始していた お客はすでにかなり来ている だけど、克子姉の言う通りお客は全員、うちの高校の生徒 それも、男子生徒ばかりだ
学園祭は10時からだからもう、正門から父兄や外部の人たちも校内に入って来ているはずだけど
さすがに、この時間から来て下さる外部の人たちは少ないわよ
みんなそれぞれ家族や知り合いの生徒の展示や発表や模擬店なんかを、まず見に行くんだろう
いきなり学生食堂の外のカフェ・テラスに来てくれるわけがない
このパンは、お土産用に用意したんだからできることなら、お家に持ち帰ってもらいたいのよ
克子姉は、イーディたちの作ったクロワッサンを見て言う
今、お店に出したらあの男の子たちに、全部食べられちゃうわ
確かに、朝からパンを買いに殺到して来ている男子たちだ
そんなに小腹が空いているのならお土産用のパンも、今すぐムシャムシャと食ってしまうだろう
というか
何なんだ、これは
どうして男の生徒ばかり、こんなに集まって来ているんだ昨日の同じ時間の3倍は居るぞ
学生服の集団ばかりがどんどんやって来る
そんなの決まっているわよ
まり子は休憩室に入らずにオレたちと一緒に、モニター中のカフェ・テラスの様子を見上げていた
女子テニス部のコたちが、テニスウェアでパンとコーヒーをサービスしてくれるカフェなのよ男の子ばかり寄ってくるのは、当り前よ
テニス部の人たち、みんな可愛いもんね
マナが作業しながら、モニターを見上げて言う
克子さんと寧さんとわたしが、メイクしてあげたんだからさらに可愛らしに磨きが掛かっているしね
まり子は、自慢げに微笑む
いや、だけどそれでも多過ぎないか
気が付くとカフェ・テラスのパン売り場は、男子の黒い制服で溢れている 可奈センパイたちが、懸命にパンと飲み物の販売をしているが壮絶な大混雑だ
それは、ヨッちゃん今日は学園祭の2日目だからだよっ
イーディと一緒に、寧が外から帰って来た
うちの高校の子たちはさみんな、昨日のうちに学園祭の展示なんかを、もうだいたい見終わっちゃっているでしょだから何の企画にも参加していないヒマな男子は、今日はもう観るモノが無いから、ここにへ集まって来てるんだよっ
何で観るモノが無いとオレたちのカフェ・テラスに来るんだ
だってここなら、美味しいパンも飲み物もあるしさっ、テニスウェアの可愛い女の子たちも好きなだけ観ていられるし
アノ人たちは、ソウイウコトを昨日、知ったノヨ
ああ、昨日、カフェ・テラスならヒマを潰せるって学習しちゃったのか
女の子たちも来てくれたみたいだけれどあれじゃあ、男の子たちが多すぎて、お店に近寄れないわ
メグの言う通りモニター画面には、離れたところからカフェ・テラスの様子を見ている女子生徒の姿も見えるけれど、この状況じゃパンを買いに来られない 克子姉がモニターに映る監視カメラを切り替えた カフェ・テラス全体が画面に映る
これは問題ね
オレたちは、唖然となる カフェ・テラスに用意した仮設のプラスチック製のテーブルと椅子が
男子生徒たちで、ほぼ埋まってしまっている
あれじゃあ、他のお客さんたちが来ても座れないわ
メグが、画面を観て言った
そうね、あのまま男の子たちにテーブル席を長い時間占拠されると困るわ
克子姉は、時計を見る 今はまだ10時過ぎだがじきに昼になる
お昼近くなっても、男の子たちがずーっと座っていたら昼食にあたしたちのパンを買って下さるお客様が減ってしまうわ
カフェ・テラスに、オレたちのパンを食べる場所が空いていないのなら、お客さんたちは他のところで昼食を摂りに行ってしまう
お昼近くまでとかじゃなくてあの男の子たちこのまま、1日中学園祭が終わるまでずっとカフェ・テラスに居座る気かもしれないよ
ぽつりと愛が言う
そんなことあり得るのか
アリエルかもネ
アタシタチ昨日、ココで色んなイベントをやったカラネあのコらは、ココなら1日居ても飽きることはないと思っているカモシレナイネ
昨日の学園祭の初日はこのカフェ・テラスで、雪乃のテレビ番組に出演しているエリとリエや、レイちゃんとスペシャル番組で闘っているアーニャにトークショーなんかをやってもらった やり過ぎて、学園祭の実行委員からクレームが来たぐらいだ
うん当然、今日も何かやると思ってるよね
ていうかお昼にテレビ局が来るっていう情報も、もう知れ渡っているんじゃないの
そうだそれもあるんだ
それならテレビの人たちが帰るまでは、あそこから動かないんじゃないかしら
男子生徒たちもヤジウマとして、テレビの収録の様子を見たいのか いや、自分もテレビに映りたいと思っているのかもしれない
とにかくこのまま、あそこに居座られるのは困るよな
それでしたらわたくしとキヌカで、あそこに居る者どもを攪拌して参りましょうか
カクハン致しましょうか
ミタマとキヌカの安城姉妹が、オレに言う
攪拌分散させるじゃないの
まり子が尋ねると
いえ、攪拌ですこれを使いますから
ミタマは、チャキッと朱色の鞘の日本刀を取り出す
本日は家伝の銘刀を持参しております
いやいや、ちょっと待てミタマ、その日本刀で何をするつもりだ
わたくしが、火薬玉で敵を攪乱いたしますので姉上が浮き足だった敵を次から次にバッサバッサと刀で攪拌すれば
キヌカその案は却下だ店先で、男子高校生が切り刻まれると商売にならない
残念無念
無念でございまする
この姉妹は放っておこうでも、どうする
わたくしが参ります
休憩室から月子が現れる
寧さん、ミタマさんお付き合い下さいませ
月子たちがパン工房の外へ出る オレたちは、次のパンの作業をしながらモニターで月子たちの様子を見ていた まずは巫女の力の届く範囲まで、近付く
おっ、安城ミタマだぜ
ミタマは雪乃の番組のカバー・ガールだからヒマな男子学生たちは、みんな彼女のことを知っている
それと2年の奈島だろ相変わらず、トンデモねぇ美しさだよな
一緒に居る子も、なかなかの美人じゃねぇか
アレ誰だっけ
確か、この前なでしこ科に編入した3年生だよ
近付いただけでカフェ・テラスに居る男子生徒たちの半数以上が、3人の美少女に気付く
安城ミタマもなでしこ科だろ
なでしこ科って、美人揃いなのに授業はオレたちと別なんだよな
ちょっとは交流したいよな
そんな声がボソボソと聞こえる
全員注目ぅぅッッ
ミタマが腹の底からの大声で、男子生徒たちに叫ぶ ミタマは声に気を乗せて放っている カフェ・テラスに居た全員がミタマたちに注目した
刮目して静聴せよっ
ミタマがそう告げると月子が一歩、前に出る
皆さんわたくしの言葉を聞いて下さい
良く通る良い澄んだ声で月子が、男子生徒たち言う うん全員の心を、掴んでいる
これから、奈島寧さんと安城ミタマが、皆さんにお話を致します皆さんは、こちらのお二人のお話をよく聞いてそのお言葉の通りになって下さい約束ですよ
カフェ・テラスは、シーンと静まり返っている
では奈島寧さん、お願い致します
あのね今みたいに、男の子ばっかりでテーブルを占領しちゃったらさ女の子や、外から学園祭に遊びに来てくれた人が困るでしょ
寧の言葉を男子生徒たちは、ジッと聞いている
だからさぁ男の子たちは、席を女の子や他のお客さんに譲ってあげて欲しいんだよねっていうかできれば、男の子はそこの席は使わないで、もうちょっと向こうの30メートルぐらい向こうのあの辺に居てくれないかなっほら、男の子ばかり集まってるとさ女の子は怖いからさそっちへ行ってそっちへ
寧は空き地になっている場所を指差す
あたしたちのパンや飲み物を買ってくれるのは、とっても嬉しいしそれは感謝しているんだけれど、女の子たちも買えるように気を使ってあげてよっ外からのお客さんたちのことも
巫女の力の届かないところから観ると寧がマナーの悪い男子生徒たちを注意しているようにしか見えない
それからもう知っている人も多いと思うけれど、今日はこれからテレビ局がここに取材に来るのねでも、それはうちの高校のパン技能士コースのことと、女子テニス部のみんなのカフェ・テラスを取材しに来るんだからあなたたちは、撮影の邪魔とかはしないでよっむしろ、テレビカメラに興奮しちゃって、変な騒ぎを起こしそうな人がいたら、あなたたちが止めてお願いしたからねっ
最後にこれから、お土産用のパンっていうのを売り出すんだけれどそれはお土産用だからねっ家に帰ってから、家族にこれ、うちの高校の学園祭で買ったんだって報告をして家族と一緒に食べるパンなんだよっだからちゃんとお土産にするって約束できる人だけが買ってね
約束致しましたよ
月子が念を押す
ミタマさんお願いします
よーし注目終了っ全員、起立
テーブル席を占拠していた男子学生たちが、一斉に立ち上がる
全員持ち場に付けっ駆け足っ
男子生徒たちは店頭でパンを買っていた連中も、全員、寧が指差した空き地に小走りで向かって行く
全員、気を付けぇぇっ休め気を付けぇぇっ、休め
男子生徒たちは、ミタマの号令のままに動く
小さく前に習えっ直れ校歌斉唱
そして男子生徒たちはオレたちの高校の校歌を声高く歌い始める 男子生徒たちが、空き地に移動してくれたのでテーブル席に女子生徒たちが座れるようになった カフェの店頭でもパンや飲み物を買ってくれている ああ、段々外部からのお客さんも増えて来た
克子姉お土産用のパンを出すよ
とりあえず、幾つ出す
そうねじゃあ、まずパッド2つ分売りに出しましょう
オレは、パンのパッドを2つ重ねて、持ち上げてパン工房の外へ運ぶことにした
Darling、アタシ、1つ持つヨ
イーディが、手伝ってくれる
待って、公ドアを開けてあげるわ
まり子が、手の塞がっているオレの代わりにドアを開けてくれた 外では
取り出しましたる、1枚の紙この1枚が
ミタマがカフェのお客さんたちの前で例の日本刀を抜いて、白い半紙をスパッと切る キヌカも姉の横に立っていた
1枚が2枚に2枚が4枚に
さらに半紙を細かく分断していく
4枚が8枚、8枚が16枚、16枚が32枚32枚が64枚64枚が128枚
どんどん刀で切っていく
あれ、何をやっているんだろう
知らないノカ、Darling
知ってるのか、イーディ
アレはガマの油売りの口上なのネ
ホントミタマは芸達者なのネ
というか安城流拳法って何なんだろう
芸に使うために、あの日本刀を持って来たんだな
まあ、人を襲ったりするのに使わなければそれで良いか
普通のお客さんの客寄せには、丁度良いヨ
確かにうちの高校の生徒ではないお客さんたち 特に、子供やお年寄りが、ミタマとキヌカの周りに集まって来ている カフェの店頭もさっきのおかしな混雑でなく、良い感じに賑わってきた このままの雰囲気でお昼のテレビ中継まで行きたい
可奈センパイお土産用のパンだよ
こっちに持って来てそれは、ここで売るわ
可奈センパイの指示する方へ、運ぶ ああ、飲み物を売るテントの中で美里たち娼婦候補生の子たちも、元気に働いている 明るい笑顔で楽しそうだな
可奈センパイどのパンが売れてる
ああだいたい、満遍なく、どのパンも売れているな それでも、多少は差があるか この減り方だと、補充を急がないといけない
取りあえずは順調なスタートねちょっとしたゴタゴタもあったけれど、寧さんたちが片付けてくれたし
ああ、多少のトラブルは、何とかするよみんなでさ
ええ、頼りにしてるわノブ
可奈センパイが、オレに微笑む イーディと一緒にパン工房の中に戻ると
ええ、こっちは問題なしよそうね最初の予定通りの数でいいわはい、また後で連絡します頼むわね、瑠璃子ちゃん
克子姉が、内線電話で話していた お屋敷の瑠璃子に次に作るお土産用のパンのことを話したんだ 克子姉は、電話を切ると
あなたが居ない間に国営放送の取材班の人からも、電話があったわ11時にここへ到着するって
ああお昼のニュースでの放送だけど、カメラや中継の準備があるんだよな
そうしたら、あたし打ち合わせに行かなきゃいけないのよここ、あたしが抜けても平気よね
平気
オレと愛が、同時に返事をした
あたしとマナも居ますから
メグも、克子姉にそう言う
ええお願いするわ
さっき校長の前で宣言した通り克子姉がパン技能士コースの責任者なんだから、国営放送の担当の人との打ち合わせは、克子姉がやらなくてはいけない
美味しいパンを作っているだけじゃダメなのねこういうことも、あたしの仕事なのよね
克子姉はこの学園祭を通じて、少し変わった 視野が広くなった 前よりも頼もしくなった
それから校長先生のことだけど、春まではガマンして
春
年度の途中だと、なかなか適任者が見つからないのよもうちょっと、まともな人を探すわ
まあ今の校長も、前の校長が居なくなったので慌てて探してきた人だからなあ
少し様子を見ようよさっきのことで懲りて、少しはマシになったら春以降も校長を続けてもらえばいいじゃないか
そうねでも、ああいうタイプの人は懲りないと思うのよ
克子姉は苦笑いを浮かべる
敵を攪拌するの元ネタは、岩明均先生の雪の峠・剣の舞です
私は高校は男子校なので学園祭は楽しくなかったです
部活の展示があったので、ほとんど部室になってた教室に居ましたが
クラブに入っていなくて、クラスでも何も企画の無い友人は
自分の高校の学園祭に来ないで他校の学園祭に入り浸ってました
1387.学園祭2日目 / テレビ中継
ねぇ、ノブ悪いんだけれど、お昼過ぎまではうちの部の子はお店の方の仕事だけにしても良い
可奈センパイがパン工房に飛び込んで来る
お客さんが、次から次へとスゴイ勢いで来るから接客で精一杯なのよ
オレたちも外部モニターの様子を見て、理解している カフェ・テラスの座席を占領していたヒマな男子生徒たちの集団が、少し離れた場所に移動してくれたおかげで他の生徒たちや学園祭に遊びに来てくれた外部のお客さんがオレたちのカフェ・テラスに集まって来てくれている その人数は、昨日よりもずっと多い
こっちも大変だっていうことは、判っているけれど
昨日は、女子テニス部の人たちにも順番で、パン作りを手伝ってもらった 今日は、朝の開店前の仕事はオレたちだけでやって 女子テニス部の人たちには、10時過ぎてからパン工房に来て貰うことになっていた
昨日のお客さんが口コミで、あたしたちのパンは美味しかったって広めてくれたらしいのよ
うん、昨日感じた手応えは正しかった
こっちは大丈夫だマナが居るし、ヤっちゃんも居るメグも午後までは陸上部の方へ戻らなくて良いそうだから
克子姉は国営放送のスタッフの人との打ち合わせがあるから、一旦、パン工房から抜けなくてはいけないけれどパン技能士コースのオレと愛が、ここで踏ん張る 今日は、昨日と違ってこの学校の中では、変なことは起きないとミナホ姉さんが約束してくれているから オレがパン工房を離れなくてはいけなくなるような事態は起こらないだろう そして何より家族だけの方が、チームワーク良くパンが焼ける 女子テニス部の人たちだと、どうしても教えながら作ることになってしまうから
じゃあ頼むわねお昼さえ何とかできれば、お店の方も楽になると思うから
うん、可奈センパイよろしく頼むよ
はーい、じゃ、また後でね
可奈センパイは、パン工房の外へ急いで出て行く
そろそろ、あたしも行ってくるわ
時計を見て、克子姉が言う ああ、そろそろ高校の正門に国営放送の人たちが来る時刻だ
お店に出す前のパンの最終チェックは、あなたと愛ちゃんで、きっちりやってね
判ってる良くないパンは、店に出さないから
頑張る
克子姉に、オレと愛は即答する
イーディ、克子姉の警護に付いてくれ
アタシも行くノカ
イーディが、オレに振り向く
ああ、オレたちの高校は大丈夫だって話だけれどミナホ姉さんのこともあるから
今朝、最強のフリー警護人を雇って出掛けたミナホ姉さんは何らかの問題と闘っているはずだ それが、ミナホ姉さんの予想を越えてオレたちの方へ飛び火して来る可能性がある
国営放送の人たちは外の人間だからな一応、本物かチェックしておくべきだ
ソウネDarlingの考えは正しいと思うヨ
イーディは、真顔になってオレに答えた
それでしたら、わたくしもイーディさんと参ります
わたくしも、こちらの高校の生徒ですから留学生のイーディさんが、お一人で克子お姉様のお供なさると、国営放送の方たちは変に思われるかもしれませんが、わたくしが一緒でしたら、おかしいとは感じられないと思います
うんパン技能士コースの講師の克子姉にちゃんとうちの高校の制服を着ている月子とイーディがお供に付いてくのなら 月子なら、国営放送の人たちの心も調べることができる オレたちの方は、外でミタマとキヌカが大道芸をしながら、不審者が居ないかチェックしてくれているし
克子姉そういうことだから、イーディと月子を連れて行って
克子姉も、オレの決定に納得してくれた
アンジュアタシ、ちょっと出掛けて来るカラ、しっかり警備システムを監視してネ
イーディは休憩室のドアを開け、中に居る黒瀬安寿に声を掛けた 黒瀬安寿は、まだ完全にはオレたちの戦力にはならないと思うけれど警護役としては、センスの有る子だと思っている
ああ、聞いたわ公が、昨日、石神さんから取り上げたんでしょ
休憩室の中を覗き込んでまり子が言う
まり子は知っているのか石神瑞希を
オレは昨日、犯した石神瑞希の裸身を思い出す
石神家も名家ですものあたしは名家の娘ではないけれど、パーティとかで会ったことはあるわあの子が留学する前のことだけど
石神瑞希は、名家の令嬢だけれど超お嬢様校には通わずに、今年の夏までスイスの寄宿学校に行っていた だから、ここ数年はまり子たちとは交流が無い
わたし、あの子とお話してくるわ良いわよね、公
どうせ、あの子も公の奴隷になっちゃうんでしょわたしの方から声を掛けて仲良くなっておくわ
オレが、ここに黒瀬安寿を連れて来たのはあくまでも、警護役としての実地訓練だ 今だって黒瀬安寿には、監視システムの使い方を学ばせているだけだ
オレたちの本当の監視役は、お屋敷で同じシステムを観ている香月セキュリティ・サービスの木下さんだ
黒瀬安寿とまり子と話をすることで、何か見落としが生じても特に問題は無い
うん、よろしく頼むまり子
まり子は休憩室の中へ
じゃあ、あたしたち行って来るわ
行って来るネ
ああ、気を付けて
克子姉、イーディ、月子は外へ
ヨッちゃん、次、これ焼くって
寧は今日は、オーブンの担当になっている パンを作る作業より、パンを焼く方が合っているようだ
オーケー、3番のオーブンで焼くよ
オレは、オーブンを開けてパンを詰めていく
吉田くんこれもお願い
愛はお昼の時間に向けて、少し手の掛かる昼食用のパンを作っていた
判った1番が焼けたら、次に入れる
お兄ちゃん、こっちももうすぐ完成だよ
マナとメグは値段の安い方のパンを大量生産してくれていた とにかく、眼の前にあることをやらなくてはいけないことを、確実にこなしていく 焼き上がったパンをオーブンから出して最終確認 問題なしと判断したパンをパッドに詰めて
ああイーディはいないのか
カフェ・テラスの店頭に持って行ってくれる人がいない
オレ、行って来るよ
オレは、パッドを持ち上げて外へ向かう お店の方から、カラになったパッドも回収しないといけないし
お手伝いに参りました
うちも来ました
パン工房のドアが開いてハイジと、エリとリエの双子が入って来る
こちらがお忙しいようですから少し早めにパンを持って参りました
ハイジたちの後ろに、レイちゃんの運転するバンが停まっていた お屋敷で瑠璃子とアニエスたちが作ってくれているお土産用のパンの第2弾と一緒に、ハイジたちがバンに乗って来てくれたんだ
うちもエリちゃんも、もう簡単なパンなら作れますわ
ちょっと難しいパンも、作れると思います
わたくしも、一通りはできるようになりましたので
双子とハイジはニコッと笑う
お兄ちゃんそしたら、あの子たちはマナと一緒に作業してもらうよ
お屋敷では、マナが年少組の子たちの先生役をしているからその方が良いな
だったら、品出しはあたしがするわヨシくんは、オーブンの仕事に集中して
メグがオレの方へ急いでやって来る
外のお店にパンを届けるのは、ここの生徒のあたしの方が良いわ
そうだな高校の学園祭なんだから カフェ・テラスの店先までパンを運ぶのは、中学生のハイジたちにはさせられない
ああ、頼むメグ
メグが、オレから焼きたてのパンの入ったパッドを受け取り外へ ってあああ バンからお土産用のパンのパッドも下ろさないと パン工房の修羅場は続く
戻ったヨミタマも回収して来たネ
20分ほどで、イーディたちは戻って来た 克子姉も月子も、暗い表情はしていない打ち合わせは、問題なく済んだらしい
キヌカは
キヌカはイイノヨあのコはテレビに出る時は、いつも顔を隠しているカラ
ああ忍者みたいな格好で、ステルス・キヌカと名乗っている
ミタマは、雪乃のテレビ番組ではカバー・ガールとして、いつもビキニの水着に日本刀という姿で顔を出しているから
国営放送の人たちに見つかると、ちょっと問題になってしまうか
キヌカには、一人で客寄せを続けるように申し伝えて参りました今は、秘技南京玉すだれを披露しております
どれだけ芸を持っているんだこの姉妹は
テレビの取材の時間になったら、お手伝いの人たちは休憩室に隠れてね
ミタマと一緒に民放のテレビ局に出演しているリエとエリは、もちろんマズイしマナとハイジも、本当はこの高校とは関係のない中学生だから、ここで作業していることがバレると困る
ああ、カメラはここまで入って来るんだねっ
ええ、まず外のカフェテラスの様子をテニス部の女の子たちを映してから、ここでパンを作っている様子を映すそうよ
国営放送のアナウンサーさんが来ているけれど、話をするのは外は可奈さんここは、愛ちゃんにやってもらうわ
わたしですか
愛が、驚く
仕方ないでしょパン技能士コースの正式な生徒は2人しかいないんですから
大丈夫だよっ愛ちゃん、可愛いから
寧が、愛に微笑む そうだなテレビでパン技能士コースを紹介してもらうのなら、愛を中心に取り上げてもらった方が良い
あなたは、あたしたちと作業を続けてテレビの放送中だからって、手を止めるわけにしいかないわ外にはお客さんがいっぱいいるんですもの
アナウンサーさんに何か聞かれたら、手短に答えてあなたは、とにかく自分の仕事に集中していていつも通りにね
いつも通りにパンを作り、焼き上げて、店に出すことだけに集中する
放送は12時15分頃になるそうよまだ、時間があるわ今のうちに、なるべくたくさんのパンを焼いておきましょう
昼になれば学園祭の他のイベント体育館や講堂での発表とか演奏も、休憩時間になる お客さんは、どっと増えるだろう
大丈夫ネミンナ、揃ってるカラ
イーディが、部屋の中の全員を見る 克子姉、愛、メグ、オレ、寧、マナミタマ、リエ、エリ、ハイジ、月子そしてイーディ このパン工房の中だけでなく、お屋敷でも瑠璃子やアニエスたちがオレたちのカフェをサポートしてくれている
さあ、頑張るわよっ
克子姉の声とともにオレたちは自分の仕事に集中する
ソロソロ時間ネ
イーディが、時計を見て言った 12時10分 そろそろ準備した方が良い 壁の予備のモニターでは、すでに国営放送の昼のニュースが始まっている 今はまだ、政治とかのニュースをやっている
ええマナちゃんたち、休憩室の中に隠れて
はい、行くよ、みんなっ
マナを先頭にエリとリエとハイジ、それからミタマが休憩室に籠もる ここからしばらくは、作業する人が減るが仕方ない
克子姉これを出したら、確認して
オレは、オーブンからパンを取り出しながら克子姉に言う 最終チェックは、克子姉に任せたから オレは、これが終わったら次に焼くパンを、空いたオーブンに入れて それからメグと一緒にパンを作る方の作業へ入ろう やらなくてはいけないことは、たくさんある
はい克子姉
オレは焼き上がったパンの入ったトレーを、克子姉の前に置いて次の作業へ
うん良いわこれと、そっちのお土産用のパンも出しましょう
克子姉が指示する
ちょっと待ってネタイミングをみて、アタシが持っていくヨ
イーディが、そう言っているうちに 国営放送は、事故や事件なんかの全国のニュースを終え 12時14分 テレビ画面に映ったのはこのパン工房のすぐ外の光景 オレたちと女子テニス部のカフェ・テラスがドーンと映る
あら、予定より早かったわね今日は大きなニュースが無かったのかしら
克子姉は、そう呟いた
はいわたくしたちは今、高校の学園祭に来ています
30歳ぐらいの黒眼鏡に、ピチッとした七三分けの男のアナウンサーがマイクを持って画面に現れた
いらっしゃいませーっ
女子テニス部のお揃いのテニス・ウェアの皆さんが、カフェ・テラスの店の前に全員ずらりと並んで、一斉に挨拶する 克子姉たちにナチュラル・メイクを施された彼女たちは、みんな可愛らしく微笑んでいる ああお店のテントの中に、美里たち娼婦候補生が制服にエプロン姿で居るのも見えた しかしスゴイ人の数だな カフェ・テラスの周辺には、驚くほどたくさんの人たちが集まっていた
こちらは、どういったお店なんでしょうか
アナウンサーが、可奈センパイに尋ねる
はいここはあたしたち女子テニス部と、うちの高校のパン技能士コースの人たちがコラボレーションしたカフェなんです
魅力的な微笑みで、可奈センパイは言う
うちの高校には、将来、パン屋さんになるために特別の授業を受ける特別コースがあるんですっ
これは別のテニス部の人が言った確か、上級生だ
あたしたちは、普通のテニス部員ですけどねっ
どうぞ、1つ食べてみて下さい
テニス部の人が、トレーに乗せたパンをアナウンサーに差し出す この辺の流れは、可奈センパイがテニス部の人たちと決めたんだろう 上級生を中心に、誰が何を話して何をするのかを
はい、それでは1ついただきます
アナウンサーは、トレーからパンを取って食べる
とても美味しいですこれは全て、こちらの高校の生徒の人たちで作っているんですね
はい、パン屋くんと愛ちゃんたちがあっちの建物の中で作ってまーす
また別のテニス部員が、パン工房の建物を指差す
それでは、そちらへ行ってみましょう
アナウンサーと、テレビカメラを抱えたスタッフと、マイクを吊した棒を掲げたスタッフがパン工房へ向かって歩いて来る 途中で、テーブル席でパンを食べている女性に声を掛けた
いかがですかパンのお味は
はい、とても美味しいですうちの子が、こちらの高校の生徒なんですけれどいつも、高校のパンが美味しいって話していたんで、わたしも食べに来たんですが
わたしは毎日買ってまーす
後ろのテーブルに居た女子生徒が、笑ってカメラに言う
オレも毎日、愛ちゃんのパンを食べてるぜっ
遠くの空き地から、そんな男の声が聞こえてきた
アタシ、出るヨ
アナウンサーが、パン工房のドアの前に来たのを見計らって イーディが、焼きたてのパンのパッドを持ってドアを開ける
ハーイ、次のパンが焼けたネッ焼きたてダヨッ
ドアのところで発したイーディの声はほんのわずかな時間差で、テレビモニターからも聞こえてきた ここで撮影されているものが、中継電波に乗り壁のテレビで放送されている
いやあ、焼きたてのパンの良い匂いがします
アナウンサーの声もすぐ外から聞こえてきた
あなた仕事に集中して
克子姉が、小声でオレに言った そうだオレは、作業をしないと
えー、あなたは留学生ですか
アナウンサーは、イーディに質問した イーディは、さっき克子姉が国営放送のスタッフと打ち合わせに行った時に同行しているから
このアナウンサーさんは、イーディのことをすでに知っている
うちの高校の国際性をアピールするために、イーディを必ず出演させて欲しいというような話もしたのかもしれない
見ての通りヨニューオリンズから来ました、ミナサン、ヨロシクネ
褐色の肌に金髪に青い瞳のイーディは、日本語がまだ上手くないアメリカからの留学生を演じきる
チョット、ゴメンネアタシ、焼きたてのパンを届けに行くノネ
あ、済みませんどうぞ
センキューなのネ
イーディは、ニコニコ笑ってパッドを抱えて、カフェ・テラスの店の方へ向かう
えー、アメリカからいらした元気な留学生でしたこちらの高校には、色々な生徒がいらっしゃるようですねそれでは中に入ってみましょう失礼致します
ついにアナウンサーとカメラマンと録音係がパン工房の中へ入って来た がオレたちは、そのままパンの作業を続ける 代わりに
ようこそ、いらっしゃいましたパン技能士コースを担当しております、講師の高梨です
克子姉が、アナウンサーとカメラに挨拶した
よろしくお願い致しますこちらの高校のパン技能士コースというのは、どういったものなのですか
はい技能士コースというのは、今年から試験的にわたくしたちの高校で始めたもので高校生のうちから、特定の職業についての技能を身に付けることを目標にしています
高校生のうちからですか
ええ、日本では余り行われていませんがフランスやドイツでは、高校に進学する段階で、将来、自分が就きたい職業を選んでその仕事についての技能を身に付けることのできる学校で学ぶという生徒が、数多くいますわたくしたちの高校では、その西欧のシステムを試験的に採り入れることに致しましたまずはパン屋さんになるための専門的な技能コースからですが
専門的とおっしゃいますと
ここでは、毎日、色々な種類のパンの作り方を学ぶだけではなく実際に、自分が作ったパンを学生食堂で販売していますその他にも、材料の仕入れや、原価計算、毎日パンを販売した後の収支決算まで、生徒たち自身にさせています
実際にお店を経営するために必要なことを、実地で学んでいるんですね
ええ、その通りですわ
ところで、実際に作ったパンを売っているということですが生徒さんたちは、それで報酬を得るというようなことはあるんですか
アナウンサーは、尋ねる
学校ですから、アルバイト料とかは出ませんわというか授業としてやっていますから、黒字が出るところまではなかなかいきませんわ
赤字なんですか
授業なんですから利益優先のパンを作ることばかり学んでも、意味がありませんから今は、採算を度外視して、色々な材料を使った、世界中のパンを学んでもらっています
ですが生徒さんたちから、働いているのだから、それなりの賃金を支払って欲しいというような意見は出ませんか
アナウンサーは、さらに食い付いてくる
ですからそういうのは、アルバイトの人の感覚ですわわたくしたちは、将来、パン屋の経営者になる人材を教育しているわけですから経済的なところまで学ぶのが大切なんですうちの生徒たちは、みんな経営者感覚で考えていますから、今はどうやったら赤字が黒字になるかを真剣に考えています
なるほどありがとうございます
アナウンサーは、オレたちの方にやって来た オレは作業を続ける オーブンから、ササッとパンを出し次に焼くパンを入れ メグの隣で、パンを作る仕事に戻る
えー、生徒さんたちにもお話を聞いてみましょうパン技能士コースの喜代原愛さん
愛が手を止めて、振り向く
ここんにちは
愛は1年生で1番の美少女だ
どうですかパン技能士コースは
楽しいですか
早く色んなパンが作れるように、なりたいです
そうですかところで
パンは楽しいです
あああ愛の思考スピードと、アナウンサーの質問が思い切りズレている
吉田くん一番のオーブン、もういいわよ
克子姉が、オレに指示を出す オレは、慌ててオーブンを開けて中のパンをサササッと出す
確認お願いします
そのまま克子姉の前に置いて 小走りで戻って、次のパンを入れる
ああ、男の子は1人だけなんですねどうですか、女の子たちの中でパンを焼くのは
アナウンサーが、オレに尋ねた
もう慣れました
オレはそれだけ答えると次に焼くパンの成形作業に戻る
いやあ作業が早いですねぇ
早いだけじゃダメですわちゃんと綺麗に、形の良いパンにしないとお客様にお渡しするものですから
克子姉が笑顔で、そう言う
吉田くんこのパン、良いわよお店に運んで
オレは、焼き上がったパンの入ったパッドを持ち上げて外に向かう
生徒さんたちは、皆さん、一生懸命に頑張っていらっしゃいます今日は、今年からパン技能士コースが開設された高校の学園祭にお邪魔致しました
そして中継放送が終わる
はい、ありがとうございました
国営放送のスタッフが、オレたちに言った 壁の上のモニターを見上げるとニュース番組は、為替と株の値動きを映している
ニュースの最後に、もう一度ほんのちょっとだけ、ここの様子が映るんですね
克子姉が、スタッフに尋ねる
はい、数秒ですけれど
それは、外のテニス部の子たちを映していただけますかその方が、絵的に良いと思いますわ
ああ、そうですねカメラ、外へ出して引きの絵で女の子たちを映そう
アナウンサーやカメラマンたちは、ぞろぞろとパン工房の外に出て行く 全員がいなくなり、ドアが閉まったところで
ご苦労様上手くいったわ
克子姉は、優しくオレたちに微笑んだ
昨日見た幼女と母親の風景
スーパーの前で、3歳ぐらいの幼女がママ大好きと母親の足に抱きつく
母親は無表情で場末の演歌歌手のようにはい、ありがとね
何か印象に残りました
1388.学園祭2日目 / テレビの評価
やがて国営放送のニュースの時間が終わる 予備のモニターに映る画面には、お昼のニュース・おわりの文字と一緒に、外のカフェ・テラスの前で、可奈センパイたち女子テニス部の人たちが手を振る様子が映っていた
これで午後は、お客さんが増えるのかな
マナが休憩室から出て来て呟く ああ、休憩室の中でもモニターでテレビ中継の様子を観ていたんだ
そうね今の放送を観た人たちが、学園祭に来てくれるかもしれないわね
メグも、そう言うが
あんまり期待しちゃダメよ増えても、ここの学校の近所の人たちがちょっと覗きに行ってみようかって、いらっしゃるぐらいよ
もう日曜日の午後ですもの電車やバスに乗って、わざわざ来て下さる人は、そうはいないわ
テニス部の可愛い女子高生たちとオレたちのパンのためだけに、ただの私立高校の学園祭に慌てて来る人はいないな
でも、いいのよこうやってテレビに出たってことが、あたしたちの実績になるんだから
うん、そうだね克子姉、次のパンが焼けたからチェックを頼むよ
オレはまた、オーブンからパンを取り出してトレーに並べていく まだ12時20分だ昼の混雑は続く
ごめんなさい、パン屋くん、愛
テニス部の人が4人ほど、パン工房の中に走り込んでくる
あたしたち、みんな、どうしても並んでテレビに映りたかったから
パン作りの方、誰も手伝いに来なくてゴメンなさい
申し訳なさそうな顔をして、オレたちに言う
いいのよテレビにはパン技能士コースをきちんと宣伝しておきたかったからあなたたちがパン工房の中に居ると、説明が複雑になっていたわ
そうだねっ、外のカフェ・テラスは女子テニス部の子たちでここのパン工房はパン技能士コースの生徒って感じで映ってたもんねっ
実際のパン技能士コースの生徒はオレと愛だけだが テレビ放送を観た人たちは、寧やメグやイーディもパン技能士コースなのだと思い込むだろう 生徒がたくさんいるように見える方が、パン技能士コースが克子姉の指導の下で、きちんと運営されている印象になる
あのでも、あたしたちスマホで放送を観ていたんですけれど
うん、あたしたちをテレビに撮られてるのに、それがそのままワンセグで観られるのが面白かったよね
それであたしたちじゃなくって、カメラがパン工房の中に入ったら後
愛はしっかり顔が映ってましたけれど寧さんとパン屋くんのカノジョは、ずっと後ろ向いてて映ってなかったんですけど
寧とメグはカメラが入って来た時に、ずっと背中を向けて作業を続けていた この人たちは女子高生はテレビに映りたいのが普通だと思っているから 寧とメグがテレビに自分から積極的に映ろうとしなかったことを変に感じているんだ
良いんだよあたしたちは、あくまでもお手伝いなんだからさっ
寧は笑って、そう言った
克子お姉ちゃんや、愛ちゃん、それからヨッちゃんの方を撮して欲しかったんだもんっ
あっ、そうか奈島センパイが振り向いたら、カメラの人はついつい奈島センパイを取っちゃいますもんね
そうですよねぇ、奈島さん綺麗だから
テニス部の4人のうち、下級生らしい2人がそんなことを言い出すが
でも、愛も可愛らしく映っていたわよ
うん、可愛かったよ愛
上級生が、愛を褒める
恥ずかしかったです
愛は、顔を赤らめて小さく呟く
アタシも本当は出たくなかったノヨ
そう良いながらイーディが、外から戻って来る ああ、お店の方に焼き上がったパンを届けに行ったんだっけ 空になったパッドを、5つも重ねて回収してきてくれた
デモ仕方ないノヨ人手は足りないシ、カツコに付いてった時にテレビ局のクルーに会っちゃってるカラココに居ないワケにはいかなかったノネ
人手不足はゴメンなさい本当にゴメン
テニス部の上級生が、イーディに謝る
今も放送が終わった後に、録画した映像を確認してから来たの
あたしも3回観ちゃいました
それで遅くなりました
ああ、ニュースをスマホに録画して自分たちの出た部分を何度も見直して確認してたんだ
ソレデアンタタチはミンナ、ちゃんと映ったノカ
あ、はいあたしはバッチリ
あたしも端っこの方だけれど、しっかり映ってました
あたしなんて、セリフまで言わせてもらったもん
とりあえず、テニス部全員テレビ出演、無事達成できましたっ
4人とも嬉しそうに言う 普通の女子高生だと、こんなテレビ出演でも喜ぶんだ オレは雪乃たちのテレビ出演に慣れ過ぎている
良かったわねそれじゃあ、そろそろ、働いてくれる
克子姉が笑顔で、テニス部員たちに指示する
あああ、済みませんすっかり、浮かれちゃって
いいのよあなたたちは、昨日と同じ恵美ちゃんと一緒の作業台よ
はい、判りましたぁッ
テニス部の4人が、ようやく作業に取り掛かる それを確認してから克子姉は改めて、外部の様子を映したモニターを見上げた
テレビ局の人たちは、ここからは撤収したみたいね
確かに、画面にはもうテレビ局のスタッフは見えない 外のカフェ・テラスは、パンと飲み物を求めるお客さんばかりが見える もう、テレビカメラが撮影していた時の興奮と熱気は消えていた
それじゃあ、あたしスタッフの皆さんがお帰りになる前にご挨拶して来るわ
撮影は終わったがスタッフはまだ、カメラやマイクなんかの機材を片付けて、車に積む作業をしているだろう
あたしが行かないとまた校長先生がいらして、テレビ局の人たちに変なことを言うかもしれないから挨拶だけして、すぐに戻るわうん、15分で帰って来るから
あの校長が再度、テレビ局と接触しようとするかもしれない
あの克子さん、ホント、カッコ良いです
テニス部の下級生の1人が突然、そんなことを言った
いつも明るくて、気さくで、優しいお姉さんだって思ってましたけれど今日は、さらにカッコ良かったです
うん校長先生に対して、ビシッと言い返してたところもカッコ良かったけれどテレビの放送の時のアナウンサーさんとの会話も
大人のオンナって感じでした
ていうか仕事の出来るオンナの風格があったよね
そうそう、とにかくカッコ良かったです
それもオレは前から知っていた克子姉の別の顔だ 黒い森の娼婦として、政財界の大物たちを相手にしてきたんだから
いざとなれば、凄味も迫力も発揮する
むしろ、克子姉はオレたちの高校では、ずっと自分が前に出ないように抑えてきたように思える パン技能士コースの責任者としてテレビに出ることで、自分に課していた重しが外れた 克子姉の本性はオレや愛をサポートする裏方でなく 克子姉自身が自由に動き回る、スター性のあるフィールド・プレイヤーだ
今日は、たまたまそんな風に見えてるだけよでも、ありがとう
克子姉は、笑顔でテニス部の人たちに応えた
ああ、そう言えばパン屋くんもカッコ良かったよ
うん、すっごくテキパキ動いてて