すぅぅ、はぁぁすぅぅ、はぁぁ
うん、合って来た 呼吸の量とスピードがぴったり合えば、心臓の鼓動さえシンクロしていく
もう一度、ゆっくりすぅーはぁぁすぅーはぁぁ
すぅーはぁぁすぅーはぁぁ
緊張して青白かった松下真樹さんの顔に、少し赤らむ さっきの妹さんとの合奏の時よりも、身体の全体の固さが和らいだ もう大丈夫だ
では参りましょう、松下さん
はい高畑さん
そして2人の少女によるピアノ連弾が始まる さっきの姉妹の合奏によるクロイツェル・ソナタの時の悲愴感や苦しそうな激しさは、全く感じなかった 松下真樹さんと茉莉花のモーツァルトはとにかく明るく、軽やかで、華やかだった まるで鎖に繋がれていた子犬が、春の草原に放たれたような 真樹さんのピアノは、さっきは妹の美樹さんのバイオリンとはまるで1つの音楽機械から音が出ているように完璧に溶け合っていたけど 茉莉花との連弾はちゃんと1つのピアノから、奏者2人の音が発せられていて合っている あっという間に3分半ほどの演奏は終わった
素晴らしいわ
合唱部の女生徒が、演奏が終わるとすぐに拍手してくれた
うん、あたし、これ好き
さっきのヴァイオリン・ソナタはただただ圧倒されちゃったって感じだったけれど、今度のモーツァルトは気持ち良い
女生徒たちは、明るい顔で口々に感想を述べた 五十嵐イズミはどんよりと暗い表情を浮かべている 演奏後の余韻からゆっくりと覚めた、ピアノの前の松下真樹さんは すぐ隣に座っている茉莉花を見てこう叫んだ
高畑さん、わたしの人生には、あなたが必要だわ
わたしずっとずっと、あなたとピアノが弾きたいっ
涙で潤んだ眼で松下真樹さんは言う
わたしもです松下さん
茉莉花の眼にも、涙が浮かんでいた
わたしもあなたと一緒に居たいっ
黒革ジャンの五十嵐イズミが喚く 彼女の眼にも、悔しさの涙が浮かんでいた
そんなのダメよそんなのあたしはあたしはどうなるのよ
茉莉花松下真樹さん五十嵐イズミ 3人とも、同じ音楽家のある高校の1年生 茉莉花と真樹さんは、ピアノ科で 五十嵐イズミは、声楽科 茉莉花は真樹さんと妹をオレに紹介しに来た しかもただの紹介でなく姉妹の演奏を聴いて欲しいと言っていた 一方、五十嵐イズミは勝手に付いて来た 1人だけ制服の上に革ジャンで、下手くそな濃い化粧という姿で この3人はどういう関係なんだ ミナホ姉さんの重い声が、音楽室の中を支配する
ようやく、心の中に隠している思いが出て来たみたいね
茉莉花、松下真樹さん、五十嵐イズミそれぞれの思い
ここから先は、あなたたちのプライベートな部分に関わることですから場所をかえてお話しましょう
お部屋とピアノを貸して下さって、ありがとうございます合唱部の皆さん
男装姿の華麗なレイちゃんが、合唱部の皆さんに挨拶した
藤宮さん音楽室の外には、まだ生徒たちがたくさん居るのよ
ミナホ姉さんがレイちゃんを見て追い掛けて来たヤジウマたちのことを言う
判ってますわたくしはこのまま、1人で校庭の方へ向かいます
レイちゃんは、にこやかに答える ヤジウマたちをイーディたちのスクール水着柔道大会の会場に誘導してくれるんだ
助かるわ、ありがとう
では、行きますよあなたたち
オレたちに、声を掛ける
合唱部の皆さんありがとうございました
オレも、大崎部長たちに頭を下げた それからふと気付く イーディのスクール水着柔道大会その司会を寧にやってもらうことになった そう言えば、寧って 確か、入学当初は合唱部に入ってたんじゃなかったっけ
あの合唱部の皆さんは、学園祭での発表はもう終わったんですか
ええ、もう済んだわあたしたちの出番は、もう無いわよ
大崎さんが、オレに答える
でしたら、あのお願いしたいことがあるんですけれど
大崎部長は、警戒の眼でオレを見るが
あの、オレのパン工房のメンバーで留学生のイーディっていう子がいるんですけれど
ああ、知っているわアメリカから来ている元気な子よね
何か、格闘技をやっている子でしょこの前、何かの大会で優勝したって、うちのクラスの男子が言ってたわ
今日も何かやるらしいわよさっき校庭で大きなものを作ってたわ
あなた、知らないのあれは格闘のリングよ
よく知らないけれど、イーディさんの知り合いのプロの格闘家の人たちも来ててテレビで試合が中継されるらしいわよ
合唱部の他の人が、すぐに反応してくれた イーディはよく目立つから、みんな知っているんだな スクール水着柔道大会のことまで知っているのなら、話が早い
ええ、3時からテレビで放送されますそれでですね
オレは、たった今思い付いたことを合唱部の皆さんに話した
そんなこと、あなたが勝手に決めちゃっていいの
大崎部長が、オレを睨む
いや、さっきイーディからここに行くのなら、合唱部の人に頼んでくれないかって言われてたんですオレが忘れてただけで
ああ、そうでしたわたくしも、その場に居ましたから覚えています
レイちゃんが、オレの下手くそな嘘をフォローしてくれる
イーディさんとわたくしは、トレーニング・ジムが同じなので仲良くさせていただいていますですから、わたくしからもお願いします合唱部の皆さん、お願いします
有名人のレイちゃんに頭を下げられると合唱部の人たちは弱い
大崎さん、いいんじゃないですかもう、あたしたち予定は無いんですし
うん、素敵な演奏を2つも聴かせてもらったんですからお返しってことで
ていうかあたしたちもテレビに出られるってことですよね
出ましょうよ、テレビねえ、部長
大崎さんは
もう、判ったわよやりますやればいいんでしょ
オレの提案を合唱部として、了承してくれた ヤジウマは全て、レイちゃんが引き受けてくれたから オレたちは、何の問題もなく音楽室から移動することができた 移動先はいつもの校長室だ
ホント、ここだけはいつも人通りが無いよな
校長室のある廊下だけは、生徒も先生も全く通らないような動線になるように設計されて造られているっていうけれど 校長室の鍵を開けたミナホ姉さんに促されて、オレたちは中に入る
公、椅子を出してちょうだい座って、ゆっくり話しましょう
オレにとってもこの校長室は、とっくに勝手知ったる場所になっている パイプ椅子を人数分出した黒瀬安寿やエリカも手伝ってくれる ミナホ姉さんは、校長用の机に座る この校長室も校長用の机も現在、校長を勤めているあの変なオッサンには使用が許されていない ここは、この学校の理事長であり、影の支配者である黒森御名穂の部屋だ
はい、座って下さい
うん中央の校長の机に、ミナホ姉さん その正面に茉莉花と松下真樹さんと五十嵐イズミ 右にまり子と月子と黒瀬安寿 左にエリカと松下美樹さん オレはどこへ座ろうか
あなたは、あたしの隣よ公
ミナホ姉さんに呼ばれてオレは、校長の机の脇に自分のパイプ椅子を運ぶ
さて、あらためて挨拶するわあたしは黒森御名穂黒森家の当主です
ミナホ姉さんは、松下さんに名前を告げる
色々と手広くビジネスをやっているわ表の世界のビジネスも、裏の世界のビジネスもこの高校もあたしのものなの
普通ではあり得ない話だけれどミナホ姉さんが、この部屋を自由に使っている現実が眼の前にあるから、松下さんたちは受け入れざるを得ない
高畑茉莉花さんの学費をサポートしているのも、あたしよ松下さんはご存知だと思うけれど、一月ほど前からそういうことになっているの
エリカの家の問題で危うく、茉莉花はエリカの祖父の遺産から出ていた学費をストップされてしまうところだった 今はミナホ姉さんが、エリカの祖父が持っていた大企業の優良株を引き継いでその収益から、茉莉花の学費を支払っている
そして、この子は黒森公あたしの弟で、いずれは黒森家の全てを受け継ぐことになっているわ
ミナホ姉さんは、オレのことも改めて紹介する
この子の周りには、たくさんの力のある人たちが居るわその内の何人かはあなたちも見たわよねそして、あたしも含めてこの子のためなら、どんなことでもしてあげるって心に決めているのよ
フフフと、ミナホ姉さんは微笑む マルゴさんとテレビ関係者とのやり取り、レイちゃんとオレたちの親しげな様子を見て、松下さんたちもオレたちが普通ではないことには気付いているだろう さらに、ミナホ姉さんの圧倒的にダークな雰囲気と態度がオレたちの力の存在を裏付けている
だから、ここから先はあなたたちが、この子に話す番よ何をして欲しいのか、何を求めているのかそして、その対価として、この子に何を与えられるのか言っておきますが、黒森家は慈善事業はしないのよビジネスである以上、対等な取引でないと受けないわよ
黒森家の本性は犯罪組織だけど、一方的には奪わないし、与えることもない 常に対価を求める
あなたたちが、この子を納得させることができたならあたしは、幾らでもこの子の手助けをするわお金でも、裏の力でももっと危険なモノでも、あなたたちの求めるもののために使ってあげるそれだけは、最初に約束しておいてあげるわ
じゃあ、後はあなたが進めてあたしは見ているわ
とにかくオレは、松下さんたちの演奏を聴かせてもらったオレは音楽のことは詳しくないけれど真樹さんのピアノも美樹さんのバイオリンも、同じ年齢の音楽家の人たちより、ずっと優れているってことは判る
オレの言葉を松下姉妹も、茉莉花も真面目な表情で聞いている
だから、オレは茉莉花の友達だから、何とか助けてあげたいっていうんじゃなくって、あなたたちを才能有る音楽家の卵っていう認識をもってこれから先のことを判断しようと思う
それが茉莉花の考えだったはずだ 困っている友達を助けてあげたいというのと、とても音楽の才能のある友人を助けてあげたいではオレたちの受け止め方が違うと思ったんだろう 音楽科のある高校の中でも、トップクラスの成績を修めているこの子たちには音楽の才能に関して、プライドも有るだろうから
だけど、そういう認識の上でやっぱり、今の松下さんがどんな問題に陥っているのかということと、オレたちに何をしてもらいたいのかということは、あなたたち自身の口で話してもらわないと判らないよ
音楽の才能の高さは、判った でオレに何を求めているのか 茉莉花が、松下さんのお姉さんを見つめる
大丈夫ですから、正直に話して下さい
うん、わたしも茉莉花お姉様も公さんにお話して、困った問題を全て解決してもらったんです
エリカも、姉の茉莉花を横からサポートする
公さんは信頼できる人ですわたしたちの公さんですから
エリカの優しい微笑みに松下真樹さんは
それではお話し致します
覚悟を決めて話し始める
大変、お恥ずかしい話でございますが今、わたしと妹の美樹は、音楽が続けられなくなるかもしれない瀬戸際に居ます
やっぱりそういうことなんだろうな 2人の合奏の深刻そうな雰囲気から、何となく判っていた
わたしたちの祖父は薬のマツシタというドラッグストアのチェーン展開しているマツシタ産業の経営者です
ああ、知っているわ知ってるっていうより、株も2000株ほど持っているわよドラッグストア・チェーンの中ではかなり有望な会社よね
まり子が、横から口を挟む 松下姉妹は、立ち振る舞いが上品だし言葉遣いも丁寧だから、お金持ちの家の子だとはオレも思っていた そもそも、高校から音楽の専門過程のある全寮制の高校へはお金のある家の娘でないと入学するのは難しいだろう
薬のマツシタは、祖父が一代で大きくした会社ですしかし、わたしたちのお父様は祖父とは考えが合わなかったみたいで、学生時代に自分で別の会社を興しましたアンダーパームという名前のIT関連の会社なんですが
その会社も知っているわでもアンダーパームは、最近、別の大手のIT企業に吸収・合併されたはずよ
はいお父様が亡くなりましたから
父親が死んだ
父は、今年の春に突然倒れたんです大腸の病気でしたそれで、病状がおもわしくなかったので会社経営を続けることが難しくなり、社員の皆さんの生活を守るために20年間育ててきた会社を大手の企業に買っていただいたんです
会社を売った半月後にお父様は亡くなりました
妹の美樹さんが、悲しげに言う
とても、音楽の好きな父でしたわたしたちに音楽の楽しさを教えてくれて音楽の道に進むことを許してくれたんです
このバイオリンもお父様が買って下さいました
美樹さんは、バイオリンのケースを愛しげに撫でる
そう辛かったのね、あなたたち
まり子が、松下姉妹に優しく声を掛ける
わたしたちよりも母が看病疲れと父を失った喪失感で、すっかり寝たきりになってしまって
今はわたしとお母様は、お母様の実家で生活しています
姉の真樹さんは高校の寮で生活しているけれど 妹の美樹さんは、お母さんの実家に居る
だけど、もうお父様の会社はありませんし蓄えも減る一方です
お父さんのやってたIT企業は売ってしまったから今後は、お金が入って来ない
それでお祖父様が
松下真樹さんは、一瞬、口籠もる
お祖父様は音楽がお嫌いなんです
音楽の勉強なんて何の役にも立たないって、おっしゃるんです
ドラッグストア・チェーンの経営者の祖父は音楽に興味が無い
祖父はお母様とわたしたち姉妹を引き取ると言ってきました
あの、わたしたちが、そうお願いしたんじゃないんですお祖父様の方から、何が何でもわたしたちを自分の家に引き取るって
そしてわたしたちに音楽の勉強を止めるようにと、おっしゃるんです
姉さんは、今の高校を辞めて普通の高校にそれも、お祖父様の勧める商業高校へ行けって
美樹にも、バイオリンを辞めさせるって
このお父様のバイオリンもわたしには不必要なモノだから、売ってしまうって言うんです
それでお祖父さんの申し出を断って、何とか今まで通り、真樹さんも美樹さんも音楽を続けたいってことなんですね
いえ、祖父はわたしたちに援助を申し出て下さっているんじゃないんです
お祖父様は、わたしたちに命令しているんです
姉妹は、絶望の表情でそう言う
ああ、判ったわ息子が自分の思い通りにならなかったから、今度は息子の娘たちを自分の支配下におきたいのね
音楽がどうとかホントは関係無いのよただ、孫娘たちを自分の思い通りにしたいだけなんだと思うわ
オレも、そう思うよ
オレの母親も、そうだった オレという存在に何の関心もないくせに この部屋から出てはいけないとか私物は段ボール1つ分だけとか何かにつけて、オレを支配しようとしていた
わたしは良いんですピアノを続けられなくなってもわたしなんて、大した才能は無いんですからでも、妹は美樹は違います
学年1位のピアノの腕前の真樹さんがそんなことを言い出す
美樹のバイオリンはこのまま辞めてしまうには、余りにも惜しい才能ですですからわたしのことは構いませんから、何とか美樹がバイオリンを続けられるように、援助していただけないでしょうかお願いします
松下さんのお姉さんは、深く深く頭を下げる
いえ、わたしは良いですからお姉さんこそ
何言ってるのよ、わたしはいいのよお父様だって、美樹の才能を惜しんでいらっしゃるはずだわ
そうね美樹さんのバイオリンの才能は、素晴らしいわあなたと同じ年齢で、あそこまで弾ける子はまずいないと思うもの日本では
そうなんだ学年1位のお姉さんのピアノよりも、中学生の妹さんのバイオリンの方が凄いんだ
家に美樹のバイオリンを置いておくと祖父が、勝手に持ち出して処分してしまいかねませんので今は、わたしが預かって、高校の寮の個室で保管しています
今日は姉さんに、お父様のバイオリンを持って来ていただきました
祖父でも高校の女子寮には立ち入りできませんからしかし、わたしが今の高校を退学することになれば寮からも出なければなりません
お祖父様の家に引き取られることになったらお父様のバイオリンは売られてしまいますわたしは、それだけは嫌なんです
姉妹の悲痛な思いが伝わって来る
わたしの父が亡くなったことは、寮の皆さんはご存知ですしわたしが学校を辞めなくてはいけないかもしれないということも、何人かの友人にはお話ししましたからそれで、高畑茉莉花さんがわたしにお声を掛けて下さったんです
松下さんの窮乏を見かねて茉莉花から声を掛けたんだ
それで高畑さんご自身も、黒森様という方からご援助をいただいてそれで学校を続けることができるようになったと、お話下さいましたそして、あの大変、厚かましい申し出であることは、重々承知しておりますがわたしたち姉妹のことも、ご援助いただけるようお話して下さると
始めは信じられないお話だったんですけれどわたしも、高畑さんにお会いして、お話をうかがって
とにかく、他には何もお助けいただくツテがないんですから高畑さんのお話に縋ってみようと覚悟を決めて今日は、こちらに参りました
茉莉花だって黒森家のことは、松下さんたちに詳細には説明できないことは判っている 政財界の大物相手の高級娼館の経営をしていることなんて、言いようか無いし 香月家みたいな名家との繋がりも話せない とりあえず、お金持ちと交流があるとか色々なビジネスを広く手掛けているとか言葉を選んで、ぼやかして話したんだろう そんな説明では信用してもらうのは難しい それでも松下姉妹は茉莉花を信じて、今日、ここに来てくれた
わたしたちのことは今、お話ししたことが全てです
松下真樹さんはそう言う
そうかしら本当に、それで全部なの
松下真樹さんが、茉莉花さんの言葉を信じたのは他に何も援助してもらえるかもしれないツテが無かったからそして
ミナホ姉さんは、茉莉花を見る
茉莉花さんが、公に松下さんたちを紹介しようとしたのはクラスメイトが困っていたからだけなの
あなたたち一番大事なことを、話していないわよね
一番大事なこと
あっ、そうか判ったわ
まり子が、パンと手を叩く
何が判ったんだまり子
すぐにオレが尋ねると
わたしずっと引っ掛かっていたのよジャスミンさんが、公に相談する前に何が何でも、松下さんの演奏を聴かせようとしていたことに
それは変な先入観が入る前に、オレに松下さんたちの音楽の才能を理解して欲しかったからだろ
本当にそうだって、わたしたち学生食堂で松下さんたちと話した時から、このご姉妹は何かに困っていてそれは多分、金銭的な問題だろうって薄々感じてたじゃない
ていうか茉莉花が、あれだけ暗い顔をした姉妹をオレのところに連れて来ただけで 何かオレに助けて欲しいことがあるんだなって判っていた
そういうことじゃないのよジャスミンさんの思いは
まり子は黒瀬安寿を見る
ね、黒瀬さん例えば、あなたに大ファンのプロのサッカーの選手がいるとして
黒瀬安寿の恋人がプロサッカーの選手だった場合
親しい友達に、そのサッカー選手のことを話す時にはどうする
黒瀬安寿は
ええっと、わたくしは誰かのファンになったことが無いのであまり参考になるかどうか判りませんが
いいから答えなさい
は、はい自分の好きなプロサッカー選手のことを友達に話す時にはその人が出ている試合を観せるとか録画とかでもいいから、活躍している姿を見てもらいます
黒瀬安寿はそう言う
やっぱり好きな人のカッコ良い姿を知ってもらいたいですから
そうよねそうなのよ
まり子は茉莉花を見る
つまり、ジャスミンさんがどうしても、公に松下さんのピアノを聴かせたかったのは
ジャスミンさんて松下真樹さんのことが、好きなんでしょ
あけましておめでとうございます
2017年はユリ展開からスタートです
今年こそは、何としてもこの物語を完結させたいです
でも先は長い
1397.学園祭2日目 / 協奏曲
・黒森御名穂/28歳黒森家当主犯罪組織黒い森のリーダー家族の長姉公あるいは良信
まり子が茉莉花に言う
あ、あのわたしは
恥ずかしそうに、頬を赤らめる茉莉花
そして松下真樹さんも、ジャスミンさんのことが気になっていたのよ
まり子の視線が、松下真樹さんに向かう
だからでしょイチかバチか、ジャスミンさんの話に乗ってみようと思ったのは
改めて考えてみるといくら自分と妹が、祖父に音楽の勉強を諦めさせられるという危機に直面してたとしても クラスメイトの女の子の提案に乗ってよく知らない人に援助を頼みに行くというのは、普通ではなかなかできないことだよな
とっても気になっているジャスミンさんがしてくれたお話だから信じようと思ったううん、信じたいって思って今日、ここまで来たのよね
松下真樹さんは 穏やかにまり子の言葉を認めた
わたしは以前から、高畑さんの演奏を聴いて仲良くなりたいって思っていました好きなんです高畑さんのピアノが、わたし
わたしも大好きです松下さんの演奏が
茉莉花と松下真樹さんが、笑顔で見つめ合う
ちょっと待って待ちなさいよあなたたち
黒革ジャンの五十嵐イズミが、割り込もうとするが
あなたのことは後でするから今は、ちょっと黙ってて
まり子が、キッと睨んで黙らせる 茉莉花が、改まった様子でオレを見る
あ、あのお話しなくちゃいけなかった順番が、違ってしまっているのかもしれないけれどそうだったら、ごめんなさいだけど、聞いて下さい
あの大人しすぎる茉莉花が、懸命にオレに話そうとしている
だから、そのわたし本当に心から、松下さんにピアノを続けて欲しいと思っています松下さんと妹さんの美樹さんもです2人とも、わたしなんかより、ずっとずっと音楽の才能のある人で続けるべきなんです今、音楽を辞めてしまうのは、もったいないですホントにホントに、絶対そうなんです
松下姉妹の才能はオレにも、もう判っている
それでだからわたし松下さんたちに音楽を続けてもらうためならわたし何でもしますどんなことでもしますだから、公くん松下さんたちを助けてあげて下さいお願いしますお願いですから
茉莉花はパイプ椅子から立ち上がり校長室のカーペットの床に手を付いて オレに土下座をする
待って、そんな高畑さん
松下真樹さんは、慌てて茉莉花に駆け寄り自分も絨毯の上に正座する 妹の美樹さんも、姉に習って大切なバイオリンケースを抱えたまま、姉のすぐ隣に正座した
わたしたち姉妹は高畑さんに、こんなことまでしてもらって良いような才能は無いわ
いいのよわたしはいいから、だから、松下さん
ううん自分のことは、自分でお願いするわ
松下さんは、正座したまま真っ直ぐにオレを見上げて
わたしは黒森さんが、どういう方でどんな力を持っていらっしゃるのか、まだ良く判らないですけれどでも、高畑さんがここまで信頼なさっている方なのですから、わたしも信頼致します
どうか、わたしたち姉妹をお救い下さいいえ、美樹だけでもどうにか美樹がバイオリンの勉強を続けられるように、ご援助下さいわたしのことは、どうなっても構いませんですから、お願い致します
松下真樹さんも、オレに土下座をする額を床に擦り付けた
姉さんわたしは
美樹このままでは、あなたのバイオリンはお祖父様に売られてしまうのよそれでもいいの
美樹さんは、ビクッと震えて腕の中のバイオリンを見る
それは嫌ですそれだけは、絶対に嫌ですお父さんのバイオリンを獲られるのだけは、絶対に嫌
だったらあなたもお願いなさい
姉の言葉に、美樹さんはバイオリンケースを自分の横に置いて、床に手を付く
わ、わたしもううんわたしこそ、どうなっても構いませんお願いします助けて下さい
茉莉花と松下姉妹3人並んで美少女たちが、オレに向かって土下座する
正直、松下さんのお祖父さんを説得して、バイオリンを売るのを諦めさせたり真樹さんが、今の高校を辞めないでいられるようにするのは簡単にできます
そんなの巫女の力のある子を連れて行って、松下さんのお祖父さんに孫娘のことは忘れろと命じれば済む
そうよね今、法的にはそのバイオリンは、お父様からの遺産ということで、美樹さんの所有物になっているはずよお祖父様が手出しできないようにするのなら美樹さんが、そのバイオリンを公に売却したことにしてそれを改めて、公から貸与されているって形にすればいいのよそして、その事実を弁護士を通じて、松下さんのお祖父様に通告すればもう、どうやっても勝手に売り飛ばしたりはできなくなるわ
まり子は、オレの発想よりももっと現実的な提案をする
真樹さんの学校の件だってようは学費を払う人がいればいいんでしょあなたたちの保護者は、お母様でお祖父様ではないんだから問題なのはお金のことだけなんだから、どうにでもなるんじゃないの何なら、本当にわたしがトリイ電子の音楽家養成奨学金を出して貰えるように頼んであげましょうか本当は音大生向けのものだけれどあなたたち姉妹は特別な才能があるから、特例で認めてもらえるように、わたしのお祖父様に掛け合ってあげるわよ
奨学金さえあれば真樹さんも、音楽科の高校を続けられる
いや、それだけでいいのか
まり子オレ、音楽の世界のことは本当に知らないんだけれど
オレは頭を整理して考える
松下さんの姉妹たちの場合はただ普通に、音楽の勉強をしてるだけでは足りないんじゃないのか
オレは茉莉花と最初に会った夜のことを思い出す ミナホ姉さんは、茉莉花にピアノを弾かせてピアニストになりたいのなら、援助をしても良いって言った
今の松下さんたちが、凄い才能の持ち主なことは判っているけれどその才能を磨いて、ピアニストやバイオリン奏者になるためにはただ音楽の学校へ通うだけじゃ足りないんじゃないのか
ああそうね本気でプロを目指すのなら、学校の勉強だけじゃダメなのよね良い先生に個人レッスンをして貰ってコンクールに入賞しないと
そうだそういうことを、ミナホ姉さんは話していたはずだ
個人レッスンっていうのはやっぱり、お金がかかるんだろ
そうでしょうね良い先生に教えていただかないと意味がないしそういう先生はレッスン費用も高いと思うわコンクールだって、日本国内だけじゃないし最終的には、外国の有名な音大に留学して、外国の伝統のあるコンクールで入賞しないと
外国へ行くのなら、さらにお金が掛かる
そうね公の言う通りだわ美樹さんのバイオリンを守って、真樹さんが今の音楽科の高校を続けられるようにするだけでは全然足りないのね
まり子も、納得する
松下さんたちの才能ならプロの演奏家を目指すところまでいかないと、もったいないもの
でも、その道を進むなら莫大な費用が掛かる 松下姉妹のお祖父さんは、大きなドラッグストア・チェーンの経営者だというからお金はあるだろう だけど音楽には興味の無い人だし、心の底から孫娘たちを支配したいと思っている そういう人間に、巫女の力で命じて金を出させたりしたら後々で大きくコジレルような問題になってしまうかもしれない 美樹さんのバイオリンや真樹さんの学校のことは現在の状態を、自分の思ったように変えることをあきらめさせるだけだから、心の改変としては大したものではないけれど 自分の金を自分が望んでいないことに、しかも莫大な額を支払わせ続けるという改変は心への負担が大きすぎる 巫女の力で相手の心の奥深くまでイジッてしまうと心が壊れる 特に、個人の性格に影響が及ぶようなことは、避けた方が良い オレの心を読んで月子がうなずいた
つまりこれから、10年以上、松下さんたちが演奏家として大成するまで、ずーっと費用を援助してくれる人が必要なんだ
そこまでする人間が現れないと現状維持だけでは、意味が無い
お、お金ならわたしたちが、大人になってから返します一生懸命、働いて返しますから
妹さんの美樹さんが床に正座したまま、必死に訴える
きっとプロの演奏家になってそれで演奏してお返ししますから
今まで黙っていたミナホ姉さんが口を開く
あなたは、今は同じ年齢のバイオリンをやっている日本人の中では、確かに優れた才能を持っているわそれは認めるけれど5年後も、10年後も同じ様に高い才能を示し続けられるかは、誰にも判らないんじゃない
子供の頃は神童と呼ばれた才能の持ち主が、成長の途中で挫折してただの人になるなんていうのは、よくある話だわそれに外国へ留学してみたら、自分よりも優れた才能の人たちに圧倒されて、ダメになってしまう人も多いそうだし
そういうこともある
何よりあなたが、この先、病気になったり、大きなケガをして演奏ができなくなってしまう可能性だってあるじゃないもし、そんなことになったらそれまであなたに掛けて来た費用が全てムダになってしまうのよ判る
美樹さんの顔が、暗く沈む
だから、音楽家を目指している人の多くが家族からの支援に頼っているのよ家族の愛情でもなければなかなか、こういう夢に投資することは難しいのよ
そうねトリイ電子で奨学金を出している人たちも、奨学金だけでは足りなくて家族から援助してもらっている人がほとんどだって聞いているわ
ミナホ姉さんの言葉に、まり子が補足する
つまり、これからずっと援助してもらうためには松下さんたちも、わたしたちの家族に加わらないといけないってことですよね
ずっと姉の茉莉花の脇で静かにしていたエリカがそんなことを言い出す
そうね家族なら話は別よ
ミナホ姉さんは、フフと笑う
でも、そういう話をする前に片付けておかないといけないことがあるはずよ
うちの家族は、公を要にして成立しているわだから、公が必要としていない子あるいは公を必要としていない子は入れないのよ
オレが必要としている オレを必要としている
さっき茉莉花さんが自分で言っていた通りに話の順番が違うのよ松下さん姉妹の話をする前にあたしは、茉莉花さんの再鑑定が必要だと思っているわ
茉莉花の再鑑定
えっと、それってどういうことなのかなミナホ姉さん
これまたずっと事態を眺めていた黒瀬安寿が手を上げる
わ、わたし昨日から、こちらに置いてもらっているので、まだよくは理解していないんですけれどそれでも、黒森家の特異性については、なんとなく判るようになってきました
おどおどしながら15歳の警護役が話す
それであの思ったんですけれど
黒瀬安寿は茉莉花を見る
あの黒森様の家族は同性愛の方でもオーケーなんですか
へ同性愛 いやオレは、茉莉花とも何度もセックスしているぞ
高畑茉莉花さんは松下真樹さんのことがお好きなんですよね
黒瀬安寿の言葉に、オレは改めて茉莉花と松下真樹さんを見る 茉莉花が、松下さんのお姉さんに対して感じているものは ただのクラスメイトの友情を遙かに逸脱している これは愛だ 確かに愛だ
それで松下真樹さんも高畑茉莉花さんがお好きなんですそういうことですよね
さっきの2人の会話や表情を思い出してみると
今までお互いに何となく気になってた相手が今回のことで、さらに意識するようになってさっきのピアノの演奏で、お互いに愛してるってはっきり判っちゃったんですよね
そうだ思い出してみると
2人ともあなたのピアノが好きずっと、あなたと演奏したいって言ってましたけれどあれってつまり愛の告白ですよね
ピアノの部分で、言葉がボカされているだけですピアノを抜けば、意味が判ります
うんあなたのピアノが好きはあなたが好き ずっとあなたと演奏したいはずっとあなたと一緒にいたいか
同性愛嗜好の人だと黒森様の家族に加わるのは、ちょっと難しいんじゃないですか
黒瀬安寿は、そう言うが
あなた、何も判っていないのねっ
まり子が黒瀬安寿を睨む
茉莉花さんに同性愛嗜好があるなんてことは、あなたに指摘されなくてももう、とっくにみんな判ってたことよ
オレは友情にしては濃すぎるとは思っていたけれど 茉莉花が同性愛かもしれないというところまでは、発想が追いついていなかった 昨夜だって、オレは茉莉花とセックスしているし
でもねぇわたしたちの家族はみんな、多かれ少なかれ、同性愛の嗜好も持っているわよ
そうじゃなかったら、これだけ女の子ばっかりの集団が上手くやっていけてるはずがないでしょわたしだって、桃子お姉様のことは公と同じくらい好きだし、愛しているものそういう子はいっぱいいるわよ
確かに美智だって、みすずが大好きだし そのみすずだって、元は渚のペットだったし、可憐を自分のペットにしたがっていた 瑠璃子なんて、オレとはセックスするけれど世の中の他の男とは口をきくのも嫌だと言うし ミタマとキヌカのありすや美里に対する思いも、同性愛的だし 素子とくるみの関係も
うちの家族で同性愛の嗜好が全く無いな子なんて、可奈ぐらいよだから、あたしはあの子が好きなのあの子とは、完全に女の友情だけて話が出来るから
そうだなあ、可奈センパイは確かに女の子に対してはカラッとしている
だから、ジャスミンさんのことをあなたみたいな判っていない子が心配しなくていいのよっジャスミンさんだって、もう、あたしたちの大切な家族なんだから
まり子は茉莉花のことも家族として愛してくれている
だけど、まり子同性愛の嗜好も持っているのと完全に同性愛嗜好の人は違うんじゃないかな
オレには1つの疑問が湧いていた
ほら、茉莉花はもの凄く大人しい子だからさもしかしたら、本当は男が嫌いなのに嫌々、してくれていたのかもしれない
長年、離れ離れだった妹のエリカと会えたということもあったし エリカがオレのセックス奴隷になったから本心では男とセックスするのは嫌なのに、仕方なく自分もオレのセックス奴隷になったのでは そう言えば、茉莉花とセックスするのはいつもエリカと同時だ まあ、茉莉花には週末しかお屋敷に来られないという時間的な制約があるからなのかもしれないけれど 愛する妹と一緒に抱かれることで、オレとセックスする嫌悪感を誤魔化していたんじゃないのか
それは違いますわ
月子が口を開く
茉莉花さんが、ご自分でお話になられるのは恥ずかしいでしょうしご自分でもよく判っておられない領域のことですから、わたくしがお話致します
個人の性的嗜好のことは自分でも把握しきれていないことがある 心が読める月子の方が客観的に話せるか
茉莉花さんは、確かに同性愛嗜好が強い方ですしかし、公様のことを心より深く敬愛しておられますそして、公様との肉体の接触も楽しんでおられますご心配になられることは何もございません
茉莉花は同性愛だけの嗜好ではない
そもそも、茉莉花さんが嫌々、公様と関係なさっていてそれを隠しておられたのなら、わたくしたちが気付いております
月子たち、鷹倉神社の巫女はオレたちの精神状態を、常にチェックしてくれている
わたくしたちだけでなくキョーコ様も、わたくしたちのそういう問題に関しては、気にして下さる方ですし
キョーコさんは、本人が同性愛だし東南アジアから連れて来た13人の少女暗殺者たちのことも、同性愛だけの子はいないかどうかしっかりチェックしていた
あの、わたしのことで申し訳ありません
茉莉花が、慌ててオレに言う
わたしは公くんのことを尊敬してますし、公さんにしていただいたご恩は一生忘れませんし一生、公様にご奉仕すると誓っています
そんな茉莉花の様子を松下真樹さんが見ている
そして、それはわたしにとって、決して嫌なことではありませんわたしもエリカさんと一緒に、公くんにご奉仕する時間はとっても好きです大切な時間だと思ってます
はっきり話した方が良いよエリカお姉様
エリカが、姉に言う
エリカは公さんが好き愛してる多分愛されてることは判っているから、今の人生に何も不満はありませんご奉仕は、もっと頑張りますというより、もっと色んなことを教えて欲しいです
エリカは、オレに微笑むと
はい、お姉様の番よ
茉莉花は、恥ずかしそうにしかし、決意して言う
わたしは、公くんが好きです一生、あなたの側に居ますいえ、側に居させて下さい
その言葉に、松下真樹さんの顔が暗く曇る
そして同じくらい、松下真樹さんのことが好きです愛しています真樹さんと一生、一緒に生きていきたいです
真樹さんは驚いて茉莉花の顔を見る
ごめんなさいわたしは、とっても欲張りな娘なんです真樹さんのことも欲しいのでも、大切にする愛してるから
茉莉花と松下真樹さんが、見つめ合った瞬間
ダメよっ、そんなのはダメッっっ
五十嵐イズミが耐えきれなくなって、叫ぶ
真樹は、あたしのものなのよっあなたになんか、あげないわっ
バッと立ち上がって、五十嵐イズミは茉莉花に掴み掛かろうとするが 月子が手を叩いた瞬間に五十嵐イズミは意識を失い、スーッと床に倒れる
五十嵐さん
松下真樹さんが、驚くが
大丈夫です身体に影響は残りません
月子が、そう説明した
ああジャスミンさんと松下真樹さんは相思相愛で五十嵐さんは、一方的に松下真樹さんにLOVEしてたのね
そういうことですわテレビの人と知り合いになりたいから、付いて来たというような発言は全て嘘ですこの方は松下真樹さんのことが心配で、追っ掛けていらしただけですわ
月子は最初から判っていたのか ああ、松下姉妹の苦況は同級生の人たちに知られていた それで、今日、茉莉花が松下姉妹を誰かに会わせるという話も、どこからか聞いて松下真樹さんが心配で、無理矢理付いて来たのか
入学の頃から、ずっと松下真樹さんのことがお好きだったようですわ
でこの革の上着とか、下手くそなお化粧とかは何なの
まり子が、月子に尋ねた
これは茉莉花さんが松下真樹さんに紹介なさった方が、あまり好ましくない人物だった時に間に入って話を壊すために、この様な格好をなさってきたようです
どういうこと、意味が判らないわ
オレは判るよ五十嵐さんなりに、コワモテの不良少女を演じているつもりだったんだろう
オレは茉莉花を見る
五十嵐さんて本当はどんな子なんだ
普段は普通の女の子ですお父様は、確か、商社にお勤めだと聞いています
つまり五十嵐さんも、音楽科の高校に通っている普通のお嬢様なんだよ松下真樹さんのことで、視界が狭くなってこんなバカみたいな格好をしちゃっただけで
はい、本性はとても可愛らしい方ですわ
そしてこの方も、同性愛の嗜好が強いですが同性愛のみの嗜好ではありませんこの方の場合は、思春期によくある同性愛的な憧れが強いように思います
松下真樹さんに憧れて松下真樹さんのためにって、おかしな方向に暴走してしまったんだ
そして、この方だけでなく松下真樹さんも
同性愛だけの嗜好の方ではありません茉莉花さんと同じです女性の方がお好きなのでしょうが、男性のことも愛せる方です
月子は松下真樹さんを見る 月子が、五十嵐イズミに声を掛ける
う、ううう
五十嵐イズミが、意識を取り戻すと
わたくしが下の階に連れて行って、お化粧を洗い落とさせますわ
この校長室は隠し階段から、下に降りることができる そこには、この学校とお屋敷監視システムと何日か、ここに籠城できるだけの設備が整っている もちろん、トイレもシャワールームもある 月子は、今は娼婦候補生たちと同じなでしこ科に所属しているからミナホ姉さんに連れられて、地下の部屋に行ったこともあるのだろう
お願いするわ月子さん
ミナホ姉さんが、校長の机に隠されている秘密のスイッチを押して地下へと続く隠しドアを開ける
はい、しばらくはわたくしが居ない方がお話が進むと思いますので
心を読み、肉体を支配できる月子が居たままだと松下姉妹が、安心してオレたちの話を聞いてはくれないだろう
では、失礼します参りますよ
月子が五十嵐イズミを連れて立ち去る
ここからはまた、オレたちが話す番だと思う
オレは心配そうな顔をしている松下姉妹に言う
オレたちの家族がどんなものなのか茉莉花やエリカが、どうしてオレたちの家族になったのか、そういうことをちゃんと話さないと松下さんたちに判ってもらうのは無理だと思うんだ
そうねあたしも話すわ
だから、一度、椅子に戻って下さいそのままでは、話ができないから
茉莉花と松下姉妹は床に正座したままだった
そうだよ茉莉花お姉様も、松下さんたちも椅子に戻って
エリカも、明るい笑顔でそう言う 茉莉花が、真樹さんを見ると
判りました、少々お待ち下さい美樹、いいわね
はい、姉さん
3人が椅子に戻った
それじゃあまず、エリカから話しますっ
エリカが、元気にオレたちの出会いを語り始めた
うちには認知症の父が居るのですが、この1年でどんどん悪くなっています
今は週に3回デーサービスに預けることができるようになったので、大分楽になっていますが
そのデイサービスに行くのを本人は仕事だと思っているのですね
それで毎日、夜になると明日のオレの予定はどうなっていると聞いてきます
サラリーマン生活が長かったので、仕方ないのです
昨夜も明日のオレの予定はと聞いてきました
お父さん、今はお正月だからと言うと
ああ、そうか正月なのかと答えた後
で、オレの予定は
無いよデイサービスもお休みです
1398.学園祭2日目 / チキチキ
それでわたしと茉莉花お姉様は、公さんのおかげで会うことができたんです
エリカが、自分と茉莉花の生い立ちを手短に話した
はい公くんに助けてもらえなかったら、わたしは高校を辞めなければなりませんでしたし母の病気の治療もできなくなっていたと思います
茉莉花も話す
それは全てわたしたちが、公さんの家族にしてもらえたからですさっきの音楽家になるための資金の話じゃないですけれどこういうことって、よその人には決してしてもらえないことだと思いますううん世の中には、家族じゃない人にはしてもらってはいけないことがあるんだと思います
わたしもエリカさんも運良く、公くんに受け入れてもらえただけなんだと思っていますそして公くんはわたしたちを家族として愛してくれているからわたしたちも、公くんや他の家族の皆さんを愛しています
今ではみんな大切な人たちですわたしの家族ですみんな大好き
わたしも大好きですそしてわたしは、松下さんたちもわたしたちの家族に加わって欲しいんです
茉莉花とエリカの姉妹は、一生懸命に話すが 松下さんたちは、困惑した顔をしている ああ、オレたちの家族というものは特殊過ぎるからイメージが上手く伝わっていないんだな
わたしも公の家族よ月子さんもそうそれから
まり子が明るい表情で、話そうとするが
いや、まり子話をするのは、そこまでで良いよ後は、実際に家族のみんなに会ってもらう方が話が早い
オレは、そう言って松下真樹さんを見る
松下さん夕食をうちで食べてって下さいそれは大丈夫ですよねどうしても門限までに帰りたいんでしたら、車で送ってもらいます茉莉花はいつも月曜日の朝に、車で学校まで連れていってもらっているんですけれど
つまり何なら泊まってもらっても良い 茉莉花がいつもしているように学校の寮に、外泊しますと申請すれば問題ないはずだ
美樹さんの方は外で夕食を食べることを、お母さんのご実家の方に連絡すればいいのかなえっと、もし何ならオレの家族の大人の人から電話してもらうから、心配を掛けるようなことにはならないと思うけれど
あたしじゃないわよ
ミナホ姉さんが苦笑して言う
うちにはあたしと違って世の皆様の受けが良い人間もちゃんといますから安心なさい
克子姉や渚なら上手く、松下美樹さんの家の人に話してくれるだろう ミナホ姉さんならおたくのお嬢さんをお預かりしていますと伝えた瞬間に、誘拐事件だと勘違いされてしまう
それと松下さんたちのお祖父さんは、今、どこに居るか判りますか
面倒なことは、先に片付けてしまいましょうオレたちにとっては、大したことじゃないですから
この人たちの祖父に孫娘を支配したいという欲求を捨てさせることだけは、さっさと済ませておかないといけない そうでないと、松下姉妹は安心できない
いや、あのでも
松下真樹さんが、オレを見る
わたしたちは、まだ皆さんの家族に加わるというようなことは
まだ決めていないし、決められないですまだ全然、よく判らないお話ですから
妹の美樹さんも、不安そうに言った
それは別の話ですオレたちの家族になるっていうのはお二人が音楽演奏家になるまでのサポートを、この先ずっとしていくって話ですから
オレは真っ直ぐに姉妹の眼を見て、答える
ただお二人のお祖父さんの問題は、今すぐに解決しなくてはならないことですそうでないと、真樹さんは今の高校を辞めさせられてしまうし、美樹さんはそのバイオリンを売られてしまう
オレの言葉に、ハッと美樹さんは自分の大切なバイオリンを見る
ですから、この問題だけは先に片付けましょうもちろん、代償はいただきます
わたしたちは、何をお返しすればいいんですか
不安そうに、真樹さんはオレを見る
それは、後にして下さいオレにとっても急な話ですから
オレは心の中では、もうこの美しい姉妹を手に入れることに決めていた 茉莉花が欲しがっている子だし姉妹とも、性格も良い
この子たちが家族に加わるのは、オレたち全体にとっても良いことだと思う
だが、この場はそういう話は後回しにしておいた方が良いだろう
とにかく、お二人のお祖父さんの問題は先に解決してしまいまった方が良い松下さん、進めてしまって良いですね
オレは、松下姉妹に確認を取る
美樹
真樹さんは、不安げに妹を見る
あのその代償というのは、全てが上手くいった時にお支払いすればいいんですか
美樹さんが、オレに言う ああ、この子は判っている賢い子だ
そうです失敗した時は、何もくれなくて良いです必要経費が掛かったんだから、その分だけでは必ず何かを支払えみたいなムチャなことはオレは言いません約束します
姉さんそれなら、お願いしてみようよ
オレの言質を取ったら切り替えも早い
そ、そうねでは、お願い致します
真樹さんが、オレに頭を下げる
ドラッグストア・チェーンの経営者ならジッちゃんに話を通しても、ダメだよな
まり子に尋ねる
そうね香月様では、財界での地位が高すぎて話が通じないかもしれないわね
自分1人で1代で、大きなチェーンを育てた人だ 名家の香月家とかが相手だと逆に反発して、話がこじれるかもしれない
ドラッグストア・チェーンだと、うちのトリイ電子とも正式な取引は無いと思うんだけれど桃子お姉様なら、クスリのマツシタと取引のある方をご存知だと思うわ
歌晏桃子姉ちゃんか 桃子姉ちゃんは、自分でもネット通販の会社を経営しているし歌晏グループや、財界の人たちのパーティを通じて、色んな経営者のことも知っている
何とか今夜中にどこかのホテルで、松下さんのお祖父さんと面談できるようにしたいんだけれどな
そういうことはね表からのラインで進めようとすると、余計な時間ばかり掛かって、なかなか進まないのよ
確かに、まり子に桃子姉ちゃんに連絡してもらって桃子姉ちゃんから、松下さんのお祖父さんの知り合いを紹介してもらってさらに、その人に仲介してもらうんじゃ今日中には終わらないか
そうよ、公こういう時は、ダイレクトに裏の世界のやり方で話を進めるのよ
ミナホ姉さんは、松下姉妹を見て
あなたたちは、もちろん、自分のお祖父様の携帯電話の番号は知っていますね
は、はいわたしたちの携帯に登録してあります
松下真樹さんが、答える
では、教えてあたしが、直接、松下さんと話すわちょっと脅かすような内容になるけれど仕方ないわよね、こういう状況だから
ミナホ姉さんは、そう言うと再び、オレに
あたしは松下さんに大きな影響を与えることのできるような情報を今は持っていないわでも、そういう情報を知っていそうな人の名前は、知っているのよ
その人の名前を使って釣り上げるんだ
そうよクスリのマツシタチェーンにとって、とても良い話があるって連絡するわその情報を知ることが、松下さんの企業グループにとってとても有益で知らないままだと、ものすごいダメージになってしまうような話をね
そうね、例えば松下さんのチェーンで取り扱っている、とある製薬メーカーのとてもよく売れている薬が実は大きな問題があって、大きな副作用があるしかし、今は政財界の力で、そのことは隠されているっていう話を作るわその情報がマスコミに漏れる前にどこのメーカーの何ていう薬なのか知ることができるって、言ったら松下さんは、乗ってくると思うわ
でも、クスリのマツシタはその薬を薬屋さんとして、普通に販売しているだけですよね製薬メーカーのスキャンダルが、松下さんのチェーン店にはそんなに影響しないと思いますけれど
まり子は、ミナホ姉さんに反論する
お店で売っている品の責任は、メーカーにありますメーカーを信用して店頭に並べていただけなのですから、松下さんも被害者です
まり子さんは松下さんのような会社経営者の考え方を理解していないわね松下さんは、一代で大きなドラッグストア・チェーンを育てられた方でしょそういう経営者なら、自分の店で売っている薬のことは、何から何まで知っておきたいと思っているわよご自分で薬剤師の資格もお持ちなんじゃないかしら
はい、祖父は薬学部を卒業して、薬剤師の資格を持っています
そういう人ならお店で売っている全ての薬に責任があると感じているわよだから、あの薬は危険らしいという情報は知っておかなくてはいけないと思うでしょうしその話がマスコミから漏れる前に、自分の経営しているお店から撤去しておけばあの薬が怪しいことは、わたしには判っていたと宣伝に使うことができるわ他のドラッグストア・チェーンの企業に対しても、君たちよりも私は先に知っていたって、自慢することができるしね
自慢ですか
まり子は呆れるが
そういう優越感が大切なのよ成り上がった経営者にとっては
あたしは裏の世界の人間でしかも、裏ではそれなりの有名人ですからね松下さんがちょっと調べれば、あたしがどういう人間かは判るわそしてそういう裏の情報を知っていそうな立場にいるということも
ミナホ姉さんは政財界の大物ばかりを顧客にしている娼館の経営者だから
さらに疑ってくれば松下さんも知っている薬業界の大物の名前を出すわその方は実際に、あたしの顧客だからその方から聞いた話だと言えば、松下さんは信じるわよそれで具体的なメーカー名と薬の名前と、詳細な資料をお渡ししたいからホテルまで来て下さいって言えば松下さんは、やって来るわ
でも、会社の経営者が自分で取りに来ますか
まり子は、さらにミナホ姉さんに反論するが
来るわよ香月グループや、歌晏グループ、あるいはあなたのご実家のトリイ電子みたいな企業じゃないんだから現役の経営者として、自分の育てた企業の舵取りをしていると思っている人は、自分で来るわ人任せにはしないのよまあ、秘書を2、3人は連れて来るでしょうけれどあたしたちは、松下さん本人とお会いできればそれで良いんだから
会って面談することができれば巫女の力で心を変えてしまえばいい 二度と孫娘たちを支配しようとしないように
場所は駅前のあたしのホテルを指定するわこの件は、香月グループのホテルは使わない方が良いと思うの
そうだなこれは黒森家だけで片付けた方が良い
じゃあ、電話するから番号を教えて大丈夫、ここの電話は秘匿回線になっているし誰から松下さんの携帯電話の番号を聞いたのかも、絶対に話さないわ
ミナホ姉さんは、松下さんたちにそう言う
それであたしたちは一度、お屋敷に引き上げるわ松下さんたちにも来て貰うわその方が良いでしょ
そうだな夕食をどうぞと言ったけれど 松下姉妹に、オレたちの家族の実際の様子を見てもらうのは早くても良い
茉莉花さんとエリカさんもあたしと一緒にお屋敷へ戻るということでいいわね
わたしたちで、松下さんが心配にならないようにお世話をします
茉莉花とエリカは、そう返事をした
じゃあ、わたしもお屋敷へ行くわ松下さんたちのこともあるけれど御名穂さん、御名穂さんが松下さんのお祖父様にお電話する様子を見せていただけます
まり子はミナホ姉さんが策略を仕掛ける姿を見学したいらしい
ええ、構わないわよ邪魔にならなければね
お邪魔は致しませんわ後学のために拝見したいんです
まり子は、興奮気味に微笑む となると残るのは、オレと警護役の黒瀬安寿とそれから
皆様、五十嵐さんのお支度が調いました
開けっ放しだった地下へ続く隠し扉から月子が、五十嵐イズミを連れて戻って来る 下手くそな厚化粧と、わざとボサボサにした髪を整えた五十嵐イズミは まだ黒い革ジャンを羽織ったままだったけれど
あら、ホントはそんなに可愛らしいお顔だったのねあなた
まり子の言うとおり化粧を落とした彼女は、高校1年生にしては幼さの残る可愛らしい女の子だった
うっうう
恥ずかしそうに瞳を潤ませている
五十嵐さんは、このままわたくしと公様のお供致します
えああたしは
五十嵐さんは、憧れている松下真樹さんを見るが
松下さんとは、後ほど、お会いできますわ
そうだなしばらくは、五十嵐さんと松下真樹さんを引き離しておいた方が良い 五十嵐さんが、真樹さんと茉莉花に嫉妬して、また暴れ出すかもしれないし 今の松下さんたちには、じっくりとオレたちの家族を見てもらいたい
それに公様公様は、松下さんたちの演奏はお聴きになりましたけれど五十嵐さんがお歌いになられる姿は、まだご覧になられていませんわ
五十嵐イズミの歌 そうだ、この人は茉莉花や真樹さんと同じ音楽科の高校で声楽を学んでいるんだっけ
そうだなちょっと聴いてみたいな
オレも、興味がある さっきまでの完全に間違ったニセ不良少女の姿の時は感じなかったけれど こんなに可愛い子なら、どんな声で歌うのか聴いてみたい そうだ、どうせなら オレの中で1つのアイデアが閃いた瞬間オレは大切なことを忘れていたことに気付く オレは時計を見ると今は2時51分
あ、マズイオレ、ヤッちゃんと交代しなくちゃいけないんだった
寧に午後3時からのイーディのスクール水着柔道大会の司会を頼んだんだから オレが、寧をパン工房に迎えに行くことになっていた
マズイ、マズいぞ
後9分で、寧を迎えに行ってそれから寧が、校庭にあるリングに到着するんでは、放送の開始時間に間に合わない無理だ
もうっ、遅いよ、ヨッちゃぁぁん
校長室の壁のスピーカーから、寧の声が轟く ミナホ姉さんが、校長室のドアのロックを解除すると ガチャッと開いたドアの向こうに、寧とミタマが居た
ヨッちゃんが、あんまり遅いからあたしの方から来たよっばかぁっ
ご、ごめんヤッちゃん
オレが謝ると
済みませんわたしが公くんの時間を割いていただき過ぎたんです
茉莉花が、寧に頭を下げるが
それはいいのっジャスミンさんだって、あたしたちの家族なんだからっヨッちゃんが必要な時は、幾らでも甘えていいのっだけど
寧は、走って来て立ち上がったオレの身体を、ギュッと抱き締める
ヨッちゃぁぁんあたし、できるかな司会なんて
ああやっぱり心配なんだ それで、時間ギリギリでもオレに会いに来てくれた
ヤッちゃんなら大丈夫だよ
オレも寧のグラマラスな身体を抱きしめる
オレ、すごく楽しみにしているんだよワクワクしているんだテレビを通じてさ、日本中の人たちにオレの姉さんは、こんなに綺麗なんだ、こんなに素敵な人なんだって伝えることができるんだからさっ
オレは、直接、リングの下からヤッちゃんを見ていることはできないけれどでも、パン工房のテレビで観ているからだから、大丈夫だよ
寧は、不安そうだ
大丈夫だよ、ヤッちゃんいつもの奈島寧のままでいいんだ
テレビだろうが何だろうが奈島寧のままなら、平気だろ
奈島寧《ナトウ・ネイ》は奈島寧子《ナジマ・ヤスコ》がキョーコさんをモデルに作った人格だ
本当のヤッちゃんを知っているのはオレだけでいいんだから
本来の人格はオレ2人きりの時にしか現れない 寧は、他の家族の前でも奈島寧のままでいる
そうだねヨッちゃんが、あたしのことを判ってくれているから他のコトはどうでもいいんだよねっ
どうでも良くないよイーディのためだし、マルゴさんのためだしオレのためでもある他にも、パン工房やお屋敷で家族のみんなが、ヤッちゃんの司会を楽しみにしているみんなのためなんだからみんなのお姉さんのヤッちゃんは、頑張らなきゃ
あ、そうかうん、そうだね判った、あたし、頑張るっ
何とか寧を元気付けることができた
ほら、急ぎなさい間に合わなくなるわよ
ミナホ姉さんの声に、オレは慌てる
うん、急ごう下まで、一緒に行くからミタマ、月子、黒瀬さん、それから五十嵐さんも来てくれ
オレたちは急いで校長室を出る
はーい、お迎えの馬車ですよーっ
校舎の外には香月セキュリティ・サービスの木下さんが、いつもマルゴさんが使っている商用バンで迎えに来てくれていた 寧がギリギリになりそうなので、マルゴさんがお屋敷に連絡して来てもらったんだろう 今日の木下さんは、昨日みたいなどこかの高校の制服でなく大人っぽいスーツに、茶髪のカツラとサングラスで変装していた
お姫様は、このままわたくしがリングまで送迎致しますその後は黒森様たちをお屋敷にお連れ致します
そうかこのバンなら、全員乗せられるな
ミタマは、このままヤッちゃんたちの警護月子と五十嵐さんも連れて行ってくれ
え、あたしも
いいから乗って下さい
じゃあね、ヨッちゃん
ミタマ、五十嵐さん、月子、寧が車の中へ
頼みます、木下さん
はーい、頼まれましたっ出発進行プップーッ
バンが走り出す
オレたちもパン工房へ戻るぞ
オレは黒瀬安寿を連れてパン工房へ走った パン工房の中ではマナたちがくつろいでいた 克美姉と愛、マナとハイジとキヌカ、エリとリエにヨミ 家族のメンバーだけで、女子テニス部の手伝いの人たちはいない パン作りの作業も停まっている
あれ作業は
今、一段落したから休憩することにしたところよ
克子姉とヨミが、コーヒーの準備をしてくれる
イーディちゃんの大会の方に、お客が集まっているからカフェ・テラスの方は余裕ができたのよ
ほら、お昼のニュースは5分ぐらいだけの放送だって、判っていたけれどイーディお姉ちゃんたちの大会は、2時間近い放送時間だし麗華お姉ちゃんも来ちゃったからね
ああ、テレビの人気者のレイちゃんが姿を現したからお客さんを、そっちに取られてしまったのか
いいのよ、ここで休める方があたしたちも、テニス部の人たちも結構限界だったし
お土産用のパンも予想以上に売れたわでも講堂や体育館での発表会もだいたい終わったし、イーディちゃんの格闘技大会が終わったら後夜祭でしょ
後夜祭に残るのは在校生がほとんどだ 外からのお客さんは、その前に帰ってしまう
だから、お屋敷の方の作業もストップしてもらったわ
今日の学園祭に来た生徒の保護者なら、家にお土産用のパンを買って帰ることもあるだろうけれど 学園祭が終わったばかりの高校生が、家にパンを買って帰るとは思えない
もう一度、後夜祭の前にお客さんが増えると思うけれど今、準備してあるパンで足りると思うのよ
焼く前までの状態で、できてるから
それって、オレが居ない間に、相当頑張ったんじゃ
こうしておけば、あなたが安心してイーディちゃんや寧ちゃんの活躍を観られるでしょはい、コーヒー
克子姉が、オレにコーヒーをくれた
ありがとう、克子姉みんな
ほらほら、お兄さんそんなことは、ええですから、テレビを観ましょう
そうやな、そろそろ始まりますわ
双子が壁のモニターを示す いつもの外部監視用のモニターとは別の、予備の画面にはすでに、イーディの大会を中継する民放のテレビ局が放送が映っていた 今はニュースをやっている
今日、12時30分頃、東京の六本木の交差点で、目出し帽に金属バットを持った10人近い集団が、企業経営者の女性が乗った車を襲撃するという事件がありました
画面に、バットで叩かれてボロボロになって、ガラスも砕けた車が交差点に停まっている様子が映る 12時30分てオレたちが、国営放送のニュースに出ていた直後だ
被害に合ったのは、ジョピーズ芸能事務所の経営者マーニー牛山さん76歳で、集団による暴行で牛山さんの車は大破しましたが、牛山さんにケガは無かった模様です犯人たちは、すぐに現場から逃走し、現在も行方不明です警察は、牛山さんの経営する芸能事務所に対する怨恨が原因ではないかと
さすがアグリッピーナさんね
えマーニー牛山って人を襲ったのは、アグリッピーナさんなの
あの人は、警護人だから襲撃でなく、人を守る方だと思っていたけれど
違うわこの犯人たちは本当は、御名穂お嬢様を狙っていたのよ
ミナホ姉さんを金属バットの集団が襲うはずだった
アグリッピーナさんは、相手の計画を読んで襲撃予定ポイントの直前で車をすり替えたんだと思うわ
それでミナホ姉さんの代わりに、マーニーって76歳のお祖母さんが襲われちゃったの
アグリッピーナさんのすり替えは凄いけれど全然、関係無い人に被害が及ぶのはマズイんじゃないのか
ああ、それは気にしなくていいのよ
克子姉が、軽く言った
そのマーニー牛山って人が、金属バットの人たちに御名穂お嬢様を襲わせた人だから
ええー
だから、凄いのよアグリッピーナさんは
うん、キョーコさん並みに徹底している
何で、ジョピーズ芸能事務所の経営者のお祖母さんが、ミナホ姉さんを襲撃するんだろう
あら、そんなのは決まっているでしょ
御名穂お嬢様が芸能事務所を手に入れたからよ
ミナホ姉さんはデススター・プロから、女性タレント部門を割譲させることになっている それでオレと明日、デスプロへ行く
芸能界は、既得権益のカタマリだからよく知らないご新規さんの参入を嫌うのよ
どちらさんの芸能事務所もみんな、怖―い人たちがケツモチで付いてますからなあ
双子は親がヤクザだったから、こういう話に詳しい
それでミナホ姉さんは、自分が狙われていることを知ってて工藤さんとアグリッピーナさんを雇ったんだ
敵の襲撃を躱すのではなく、そのまま逆襲するのがミナホ姉さんらしい
まだ終わってないわよ他にも別の芸能事務所が雇った人たちが、お嬢様を狙っているわでも、工藤さんとアグリッピーナさんが、完全にお嬢様の足跡を消してしまったから今は、お嬢様はこちらに戻っていらっしゃるのよ
お昼までは、襲撃者たちのエサとして敵に姿を見せていたけれど 1つめの襲撃を失敗させてからは、姿を消す
今は工藤さんとアグリッピーナさんだけで、一つ一つ敵を潰しているそうよ
あの2人の警護人だけで動いた方が仕事が早く片付くもんな
あ、お兄ちゃん始まるみたいだよ
マナの言葉に、オレは再びモニターを見上げる 画面には午後の陽光の下のオレたちの高校の校庭が映っていた うわっ、仮設のリングの周りは生徒たちでいっぱいだ そして、リングの上には アシスタント役のアイドルのサイトー・ユーキさんと 制服姿の寧がいる
寧お姉ちゃん、綺麗だよね
マナの言う通りテレビを通しても、寧の美貌は伝わって来る 寧は、ニッコリとカメラに向かって微笑むと
緊急報道特別番組っ第1回チキチキ、ドキッ女の子だらけのスクール水着柔道大会っ高校の学園祭に幻の珍獣カータンは実在したっ、スペシャルッッはっじまるよーんっ
は、始まります
放送冒頭から、サイトーさんは寧のテンションに圧倒されている
というわけで話はスクール水着柔道大会の方へ
音楽少女たちは、きちんとカタにハメてからセックスシーンへ行きます
今日は体調が悪くて、全然書けなかったです済みません
お正月で塩分取り過ぎなのかもしれません
グッタリしてて、頭が廻りませんはぁぁ
1399.学園祭2日目 / スクール水着柔道大会
番組のスタートを示す明るい音楽が流れると報道特別番組・第1回スクール水着柔道大会の文字が画面に現れ
寧とサイトー・ユーキさんが、リズムに合わせてリングの上で踊る
アイドルらしいフリルだらけの衣装のサイトーさんに対して、寧はうちの高校の制服のままなのに 現役アイドルのサイトーさんよりも、寧の方が、ずっと華やかで明るく踊っていた 番組開始と同時に寧はハジケまくっている
寧お姉さんいつもどうりですわな
うん、いつもの寧お姉さんやわ
リエとエリが、モニター画面の中の寧を観て呟く
寧お姉さんはユカイな人ですからなぁホントはうちらの番組にも来て欲しかったんですけど
わたしらの番組はヨゴレやもんな
そうですわ寧お姉さんみたいな人がテレビに出るんなら、明るい場所の方がゼッタイええですだから、誘うのは諦めてました
双子が毎週出演している雪乃のテレビ番組は金曜日の夜の8時からの1時間番組なのに、スポンサー無し、CM無し、番組のタイトルすら無いという異色すぎる放送になっている そもそも、何でこんな番組が放送されているのかテレビ局の人たちすら知らされていないという、闇の力による謎の番組だ その番組の中心にいるのは雪乃だし お笑い芸人のスナッチやエッセイストのフランシーのように、すでに本業で確固とした知名度があって、雪乃の番組に出演している人は問題無いだろうが この番組が初出演で毎週出ている、雪乃やエリとリエは親が国民の敵とまで呼ばれた白坂創介だったり、自分の親分と銃撃戦をして死んだヤクザだったりということもあって暗いイメージもある
ミタマ姉さんぐらい突き抜けてる人なら、問題ないのかもしれないですけどな
いや、リエちゃんミタマ姉さんは、突き抜けすぎですわ
モニター画面の中、リングの下控え室用の白いテントの脇に、いつもの白い学ラン姿に日本刀を抱えたミタマが映っていた
あそこにおってもおっ、安城ミタマがおるとしか、一般の人は思わんもんなぁ
ミタマお姉さんみたいな、訳の判らん人はどこに現れてもおかしくないですもんなぁ
うんミタマお姉様は、どこでもミタマお姉様ですよねぇ
ヨミも、画面の中のミタマを見てそう言った ミタマは、雪乃の番組の中でも常に武士娘のまんまの言動で、一切ブレが無い
だから、もうこれはもう、こういう子なんだと日本全国の視聴者に認知されている
ホンマ、天然の人には勝てませんわ
双子の話に、マナが参加する
でも、意外と、ミタマお姉様のそういう風に世の皆様に受け入れられる力こそが、本物のスター性なのかもしれませんよ
そうねミタマちゃんは、実際、芸能界向きだと思うわ
克子姉も、ミタマを褒める やがて音楽が小さくなると寧たちは踊るのを止め
はい、そういうことで始まりましたッ、第1回スクール水着柔道大会司会を勤めます2年1組出席番号18番奈島寧ですっ
あ、アシスタントのデススター・プロモーションM&M・セクションF所属、サイトー・ユーキですっ
サイトーさんが、ペコッと頭を下げて挨拶すると
おおお、ユーキちゃぁぁんっ
ああ、リングの右側にガンバレ、ユーキと書かれた大きなウチワを掲げた男が3人ほど居る サイトーさんにも、ファンが居るんだ ああ、みんな上着にサイトーさんの写真の入ったバッジをいっぱい付けている
ありがとうみなさーん
サイトーさんが、ファンに手を振るが
みなさんて言うても、3人しかおらんですわ
それを言うのは可哀相やでリエちゃん
ええと頑張れ、サイトーさん
ほらほらっ、ユーキちゃん、お仕事お仕事っ
あっ、済みませんえーと
サイトーさんは、慌ててリングの隅に隠していた台本を拾い上げる
次はスクール水着柔道の説明でしょっ
ああ、そうでしたええと、ええと、ええと、ここだえー、スクール水着柔道って、どんなスポーツなんですか
サイトーさん棒読みだよ
良い質問だねもぇ、ユーキちゃんスクール水着柔道というのは、今、ロサンゼルスのナウでヤングな若者に大人気の新感覚のハイパー・グラップリング・アップデート・アンビリーバブル・スポーツなんだよっルールは簡単、スクール水着に柔道着の上だけ着て闘うだけっ
うわー、とっても楽しそうですねぇ
サイトーさん、もう少し楽しそうにして
試合は1ラウンドのみの3分間相手に柔道着の帯を解かれるか、両肩がマットに触れたら負けっ
両肩がマットに触れたらってプロレスみたいな、1、2、3って数えたりするのは無しなんですか
そういうのは一切無しっ両肩が付いたら負けっだから、試合がサクサク進むよーんっ
へえそういうルールになったんだ まあイーディが、ほんの数週前に作ったもんだしなあ
そんで、今日はお披露目のエキシビション・マッチだから3分間で勝敗がつかない場合は、そこで終了、延長戦は無し試合は、両者とも負けということになりますっ
えっ、奈島さん普通は、そういう場合は引き分けなんじゃないんですか
ザンネーン、スクール水着柔道の理念では勝者以外は全て敗者っだから、引き分けは負けなのよっぬふふふふっ
ああ実にイーディらしいルール設定だ
それでは、みんなお待たせっ出場選手の登場だよっ
寧が、カメラにニッコリと微笑む
えーと、スクール水着柔道では赤コーナー側を小説家のイササカ先生チーム、青コーナー側を画家のハマさんチームと呼びます
それでは、イササカ先生チームからっ出て来いやぁっ
寧の叫びとともに控え室のテントから、まずはルドルフ聖子さんとライン晴子さんが、スクール水着に柔道着の姿で現れる
えーと、まずは美魔女リーグに出場なさる、創作マーシャルアーツゴールデンバウム・ジム主宰のルドルフ聖子さんと、お弟子さんで女子高生の部に出場のライン晴子さんですっ
サイトーさんのたどたどしい説明の中、美人師弟はリングに上がった うーん、ルドルフさんのスクール水着姿はかなり無理があるけれどこの人は、女子格闘技界でも1、2を争う美人だから美魔女リーグの選手にはピッタリだと思う
ほらほら、晴子カメラは、あそこよカメラ目線、カメラ目線よっ
ルドルフさん
ルドルフさんは、ノリノリだが晴子さんは恥ずかしそうだ いつもは凛として試合に臨んでいるライン晴子さんが、こうも羞じらっているとこれはこれで、また新しい魅力を感じる
ルドルフさーん撮影しているのは赤いランプの点いているカメラだよっだから、今はあっちのカメラっ
寧が、笑って教える
あら恥ずかしいわ、ゴメン遊ばせ晴子、あっちのカメラですって
ルドルフさんは、カメラ目線でポーズをキメる
る、ルドルフ聖子さん、意気込みをどうぞ
サイトーさんにそう言われると、ルドルフさんは
とにかく勝つわよーっ勝って勝って勝ちまくるわっわたくしも晴子もっわたくしたちゴールデンバウム・ジムの強さをご覧になってねイエーイ
イエーイって、ルドルフさん 民放地上波による日曜日の昼間の放送に出るのが、そんなに嬉しいんだ とにかく、この機会に自分のジムを徹底的に宣伝しようと思っているらしい
続きましてハマさんチームッ
ええと超実戦空手トミー・アシダ道場より、美魔女リーグに出場なさるモンキー・ミミさんと大ポロン・カリスマンさんですっ
気合いの入った声とともに、ミミさんが控え室のテントから飛び出して来る そして、そのままタタタンっと金属の階段を駆け上がり、ロープをぴょんと飛び越えてリングに立つ
ちょいやぁぁルドルフ聖子は、あたしが倒すっ
ミミさんは、中指を立ててルドルフさんを挑発する
おおっ、ミミさん早速の勝利宣言だよっ
寧が笑うと、遅れて控え室からポロンさんが現れた
ミミちゃんそんなにイキドオってはダメどすわぁルドルフさんを倒すなんて、うちらにとっては当たり前のことなんどすえ
相変わらずのインチキ京都弁とともに、のほほーんとゆっくりリングに上がった
はーい、皆さん、おはようさんどすうちがトミー・アシダ道場のポロンどす
あたしがモンキー・ミミだっあちょーっ
こっちの2人は、迷うことなく赤ランプの点いたカメラに向かってポーズをキメる
ほいほい、それでは再び、イカカサ先生チームッ出て来いやぁっ
はい次のお二人は、女子高校生の部に出場のチーム・クロモリ、工藤遙花さんと剣道マリアさんですっ
せいやぁっ
そいやっ
工藤遙花と剣道マリアの女子高生コンビが、軽やかにリングに駆け上がって来る 工藤姉は真面目な性格だから変なアピールは一切しない 剣道マリアも、大人しく遙花に付いていく
えーと、工藤さんは昨年度の女子高校生空手チャンピオンでいらっしゃるんですよね
サイトーさんが、工藤遙花に尋ねるが
そんなのは、もうずっと昔のことよっ過去は過去っ
そうだ、時はキターッ
とにかく、今日は精一杯やるだけですっ
時はキターッそれだけだぁっ
工藤遙花はともかく剣道マリア、お前は何が言いたいんだ
そして最後のハマさんチームッッ
グレース・マリンカさんとイーディ・セクストンさんですっ
シュバッとグレースさんが、控え室のテントから走り出ると 小気味よく、カンカンカンと階段を昇ってその大きな身体からは、全く想像できない軽やかさで、ふわっとロープを飛び越えリングに立つ
フンッ
高く片手を天に突き上げカメラでは無く、リングの四方の観客たちに順番にアピールしていく 寧の冒頭の挨拶から、呆気に取られていた観客たちから大きな歓声が起きる
やっぱり女子プロレスラーとして、ずっと試合に出ていた人だからリングの周りの観客を沸かすことに慣れているのね
そんなイーディの声が、控え室のテントから聞こえたかと思うと シュババババババッ もの凄いスピードで、イーディはリングへ駆け上り まるで瞬間移動したみたいにコーナーポストの上に、スッと立っていた イーディが、鉄柱の上からリングの周囲の生徒たちに手を振る グレースさんよりも大きな歓声が上がったのはイーディが、この高校の在校生だからだ イーディが格闘技をやっていることは知らなくても
褐色の肌に、金髪に青い瞳でいつも陽気なアメリカ人の美少女は、とにかく校内で目立つし
オレたちが学生食堂でパンを売っている時に、毎日、イーディはお客の整理をしているから
在校生で、イーディのことを知らない生徒はいない
ウン良い感じネ
そのままイーディは、コーナーポストの上からピョーンと高くジャンプするとネコの様にくるんと一回転して、軽やかにマットの上にストッと降りた
え、ええっとグレース・マリンカさんはプロレスリングの選手でイーディさんは、アメリカからの留学生で、こちらの高校の生徒さんなんですよね
サイトー・ユーキさんが、イーディのパフォーマンスにビビリながらも2人の説明をする
そうナノヨアタシはイーディ、ニューオリンズから来た16歳の可愛い女子高生なのネ
イーディは、元気に挨拶する
可愛い17歳なら、うちの晴子がここにいますっ
ルドルフさんが恥ずかしがるライン晴子さんを前に出して宣言する
ポロンうちは若い子は居ないんだよね
何、言うとりますの、ミミちゃんうちらには若い子には無い、大人の女の妖艶な魅力がありますわ
うん、そうだねっ
いや、ポロンさんは確かに、かなりの美魔女系美女だけれど ミミさん、あなたは、格闘人生まっしぐらの爽やかスポーツ系じゃないですか
ええと工藤さんと剣道さんは、お幾つですか
サイトーさんが、2人に尋ねる
18よ
17歳だ
空手女子高校生の2人は、冷たく返事をする
いや、あのなんか、ホント、皆さん、お綺麗で可愛いですよねアイドルのわたしが言うのも、変なんですけれど本当に今から、このリングで格闘なさるんですか
サイトーさんの言うとおり みんな、スクール水着に柔道着の上なんて、おかしな姿でリングに上がっているけれど みんな健康的な肉体美でスタイルは良いし、顔もかなり綺麗な人ばかりだ
闘う闘わねば意味が無い
グレースさんが、いつもの無表情でサイトーさんに答える
そうよ殴ったり、蹴ったりするわよっ
それなら、わたくしは締めたり、固めてオトしたりしますわ
対戦予定のあるミミさんとルドルフさんは、早速お互いを挑発している
は、はぁぁそ、そうなんですか
女子格闘家たちに囲まれて困惑しているサイトーさんに、イーディが
アナタも、とっても可愛いと思うネ
そうそう、ユーキちゃんも可愛いって
寧も、笑ってそう言うが
いや、あの奈島さんにそう言っていただくのが、正直一番ツライです
きちんと芸能事務所と契約しているアイドルが普通の女子高生に綺麗さで負けているんだもんな
はーい、というわけでこれから、このリングで闘うのはこの8人でーすそれではっ、選手宣誓をイーディちゃんどうぞッ
寧に言われて、イーディが前に出る
かつて虎のマスクを被った2人目のレスラーがこう言ったノヨ力が正義なのではなーいっ正義が力だッッッ
な、何だそれは
ミサワが、そんなことを
元レスラーのグレース・マリンカさんが、ポツリと呟く
違う違うちがーう、グレースさんっそれは2代目イーディが言ったのは2世の方だよっ
慌てて、寧が訂正するが
どう違う
あー、グレースちゃんあなたの言ってる2代目は実在のレスラーで、寧ちゃんの言う2世って言うのはアニメの方だよ
ミミさんも、説明に加わる
アニメというと最近、深夜にやってた
違うよ、そうじゃないんだよグレースさんっ虎のマスクの2世のアニメは、1981年の放送だよっ主人公の赤いスポーツカーが、スイッチ1つで虎の顔のオープンカーに変わる方だよっイノキの声が、ギンガ・バンジョーさんの方だよっブッチャーとアンドレの声優さんが同じ人の方だよっプロレスのアニメなのに、何故かナガシマ監督が出て来る方だよっ
寧が顔を真っ赤にして、熱く語る
うん、実在の初代の虎の人はアニメの2世とのタイアップだったから、初代なのに初期のコスチュームには何故か2の文字が付いていたんだよね
ミミさんが、そんな要らない豆知識を披露した
話を戻すネヨウスルニ勝てばいいノヨ勝たなきゃ意味がナイネアタシは勝つヨートイウワケでレッツ・ファイトはい、宣誓終わりッ
イーディの無茶苦茶な選手宣誓が終わる
えーと、続きましては国歌斉唱って、これもしかしてわたしが歌うんですか
アイドルのサイトー・ユーキさんは、リングの下から放送スタッフが提示したカンペを見て驚く
あ、ゴメンゴメン、それはついさっき決まったんだよえー、国歌斉唱係のタイガー・イズミさんよろしくっ
寧がそう言うとカメラが、控え室のテントの前に切り替わる そこに立っていたのは 虎のマスクを被った五十嵐イズミだった
う、歌います
五十嵐イズミは月子の力で歌うように命じられているらしい 虎のマスクで顔は隠しているけれど音楽科の高校の制服を着たままだから、後で問題になるかもしれないな 五十嵐イズミのソプラノの声は素晴らしかった 凛として涼やかな声が国家を歌い上げていく 校庭に集まっている観衆全体が、五十嵐イズミの声に注目していた
なかなか面白い子らしいわね
克子姉が、クスリと笑う 歌が終わると また大きな歓声が沸いた
はい、タイガー・イズミさんありがとうございまぁぁすっ良かったよーんっ
と、とっても素晴らしかったですえっと、アイドルのわたしが言うのは変ですけれど
寧とサイトー・ユーキさんが、五十嵐イズミを讃える
それではっ第1試合、いっきまーすっよーっ
寧が、そう宣言すると
ちょっと、ちょっと、ちょっと待ったぁぁッッ
校門の方から野太い女の声がする
待て待て待て待て、しばし待てぇぇぇぇぇッッ
カメラが、声の方を映す と同じ柄のジャージを着た体格の良すぎる女性が3人 リングに向かって、走って来る
え、何ですわたし、この展開は聞いていないですけれど
サイトーさんが知らないということは予定には無い 誰だ誰が乱入して来たんだ
ほらほら、どけどけどけぇぇ
道を開けろ、コラぁぁ
リングの周りの生徒たちの間を3人は無理矢理割り込んでやって来る
あーら、壇さんやないですの
ポロンさんが、リング下に到達した3人組の1人を見てそう言う 壇さんて
えー、コマンドサンボ・ジムゴッド・ヒグマの大将なの
ミミさんも、リングの下を見てそう言う え、壇さんというのは前の格闘技大会でマルゴさんに負けた壇闘志子さんか
お久しぶりナノネ
イーディが笑って、そう言うと ようやくカメラが、リングの下の3人の姿をハッキリと捉える ああ、3人ともジャージに大きくジムの名前が入っている みんな、とてもガッシリとした体格だけれど その中でも一際大きい筋肉質の巨体は 間違いない、確かに壇闘志子さんだ
弟子まで連れて来ちゃってさ何の用
ミミさんが、リングの上から尋ねると
わたくしが、連絡したのよ知らない仲じゃないし
えー、ルドルフさんが呼んだの何でよ
違うわよ、ミミさんわたくしは呼んではいないわよただ、わたくしと晴子の活躍がテレビで放映されるから観てって、メールしただけよ
ミミさんに、ルドルフさんが答える
そうだっ、テキトーなメールだったからこの会場に辿り着くまで道に迷いまくったんだッ
壇闘志子さんは叫ぶ
あーら、ゴメンなさいねでも、まさかあなたが会場にまで、わざわざ、わたくしの応援に来てくれるとは思わなかったのよっ
ルドルフさんが、そう言うと
ふざけんなっ誰があんたの応援をしに来るかってんだッ
闘志子さん
まだです、まだですよ
暴れそうになる壇闘志子さんを、一緒に来た2人の弟子がなだめる
するとまさかいやーん、うちの応援に来てくれたんどすか
今度はポロンさんが、笑ってそう言う
だーかーら、応援しに来たんじゃねぇぇぇ
まだです、まだですからね
じゃ、何しに来た
グレース・マリンカさんが、ポツリと尋ねる
今ですよ、今ッ
2人の弟子に背中を押され、壇さんは、キッとリングを見上げると
このリングで、あたしも闘わさせなっ
ドーンと宣言したッ また大きな歓声が上がる 壇さんはマジで乱入しに来たのか
あーあー、なるほど、そういうことどすかこの前、マルゴさんに負けた後、壇さんのところのジムは練習生の人たちがソートー激減したって、風の噂には聞いてますわぁ
壇さんのところは、まだ良い方でしょ欧州藤原氏のレミーさんのジムなんて、手広く全国に支部展開していたから幾つかの支部は、練習生がいなくなって潰れたって聞いているわよ
ポロンさんとミミさんが言う
わたくしなんて、負けた後でもマルゴさんにわたくしもアメリカに連れて行きなさいって言った姿がカッコ良かったってかえってジムに入ってくれる子が増えましたけど
ルドルフさんは、元からその美貌で女性ファンが多いから負けても絵になるし、マルゴさんに食らいついていった姿が好感を得たんだろう
うちは、まあ最初から、人を選ぶ道場だから特に増減は無いよね
ミミさんたちのトミー・アシダ道場は最初っから超実戦空手って名乗ってるぐらいだしな
でも、うち個人のファンは増えましたわ
ポロンさんも、まあ妖艶だからホント、美魔女格闘家だ
そんなことはどうでもいいんだっあたしにも、このリングで闘わせなっ
そうだ、壇さんをリングに上げろっ壇さんが怖いのかぁぁこの野郎ッ
そうだ、そうだ、コンチクショウ
壇闘志子さんと2人のお弟子さんは、必死にアピールする
つまり、テレビカメラの前で闘ってジムの宣伝がしたいのよねま、わたくしもそうなんだけれど
苦笑するルドルフさん
うちは道場の宣伝はええんですうちの闘いを観てくれる人が、ぎょーさん増えてくれれば
あたしはポロンと同じよっ
ポロンさんとミミさんは、そんなことを言う 女子格闘家の人たちにとってテレビの昼の時間に自分や自分のジムの宣伝できるということが、そんなに大きな意味があるんだ
でも正直な話、うちらは美人格闘家ばかりどすからなぁ1人ぐらい、見た目から格闘技バカの壇さんが加わった方がええかもしれませんわな
ポロンさんは、そう言うが
わたくしは嫌よこの人を加えたら、わたくしの出場時間が減ってしまうもの
ルドルフさんは、壇さんの参加に反対する
ていうか、今日はスクール水着柔道なんだけれど壇さんも、あたしらと同じ格好になってくれるんでしょうね
そうどすなぁこの格好をしてもらわんと困ります
ミミさんの言葉を受けて、ポロンさんは、スクール水木を纏ったグラマラスな肉体をくねらせる
あたしは格闘家だそんな、みっともない格好はできないねっ
そ、そうだ壇さんを舐めるなよ
舐めんなよ、コンチクショーメ
壇さんはスクール水着の着用を断った
あらあら、ホントにダダっ子ねテレビには出たいけれど、スクール水着は着たくないってわけ
でもルドルフさんあたしたちには、何とか身体が入るスクール水着があったけれど、壇さんは身体がデカくてゴツ過ぎるから、着られるスクール水着はこの世に存在しないんじゃない
そうですわなぁ壇さんは、競泳用でも難しいかもしれませんわ
ルドルフさん、ミミさん、ポロンさんがリングの上から、壇さんをからかう
こっの野郎、ふざけやがってあたしを闘わせろっ闘わせろって言ってるんだ
そうだ、壇さんを闘わせろっ
逃げるなよ、臆病者―っ
リング下で駄々をこねる壇闘志子さんは、確か32歳
だけど今日の大会を仕切ってるのは、イーディちゃんだからねぇ
ミミさんが、イーディを見る
イーディちゃん、この我が儘な人どないします
ポロンさんの問いに、イーディは
そのまま上がってくればイイネアタシが相手をスルヨ
え、イーディが自分で壇さんと闘うのか 確かイーディは軽い体重のクラスの選手で壇さんは一番重い無差別級の選手だぞ ていうか見た目からして、全然違う
セイコすぐ終わらせるカラ
ルドルフさんに、ニコッと微笑んだ
あら、そうそれならお任せしますわ瞬殺しちゃって、イーディちゃん
後がつかえているんだから、さっさと片付けちゃってねイーディちゃん
そうねイーディちゃんなら、すぐに終わるでしょう晴子、リングの下でじっくり鑑賞させてもらいましょうね
イーディの宣言にポロンさん、ミミさん、ルドルフさんと晴子さんは、さっさとリングから降りてしまう 全員、イーディの勝ちを確信している
マリア、あたしたちもよ
工藤遙花と剣道マリアも、リングの外へ
うん任せた
グレースさんも、イーディに声を掛けると外へ出る
いいの、いいの、ユーキちゃんあたしたちも、下へ降りるよっ
いやでも、今来た人の説明とかわたしがしなくちゃいけないんじゃないんですか
サイトーさんは、番組アシスタントとしての仕事を忘れていない
いいのいいのどうせ、すぐに負けて帰る人だからあんまり大々的に名前とかジムとかテレビで公表しない方があの人のためだからねっ
寧も、サイトーさんの手を引っ張ってリングの外へ
ふ、ふざけやがってテメエら全員、あたしを何だと思っているんだ
そうだコマンドサンボ・ジムゴッド・ヒグマ代表の壇闘志子さんだぞっ
壇闘志子、壇闘志子をよろしくお願いしますだぞっ
弟子たちは、テレビカメラに向かって必死に師匠の名前をアピールする
いいからさっさと上がって来るネ
1人リングに残ったイーディが壇さんに言う
ああ、今行くよこの野郎ッ
壇さんは、ガツンガツンと大きな足音を立ててジャージ姿のまま、リングに上がった
だいたいだねぇお前は、軽量級だろこの前の大会では、軽量級で優勝してたけど無差別級のあたしに敵うわけがないんだよッ
そうだっ、格闘技は、体重の重いが有利なんだぞこの野郎
あんたみたいな薄っぺらい身体の子が、壇さんと闘うなんてのは10年早いんだよっコンチクショウ
弟子たちは、リングサイドからイーディにヤジを飛ばす
しかし、実際壇さんは、縦にも横にもイーディの6割増しぐらい肉体のボリュームがある体重なら3倍違うだろう
モニター画面で観ると巨人と子供ぐらいの差があった
ウルサイネ弱い犬ほど良く吠えるというのは日本のコトワザじゃなかったノカ
何だと、この野郎ッ
壇さんが怒りの形相に変わる
はいっ、ゴング鳴らしてっ
リングの下で、寧が係の人に言う カァァーンッ ゴングの甲高い響きがリングのあるオレたちの高校の校庭全体に轟いた
weeeッ
勝負は一瞬だった ビシィィィィ その派手な打撃音は、テレビでもはっきりと聞こえた 壇闘志子さんは、一歩も動くことができないまま ゴングの音と同時に、イーディのハイキックが壇さんの側頭部を打ち抜くッ
う、嘘だろ
そのまま、壇さんの巨体がぐらりと揺れて
ドスーンッと大きな音を立てて、マットの上に崩れ落ちる
うおおおおおおおおおーっ
リングの周囲から試合を観ていた生徒たちから、うねりのような歓声が起こった
す、すげぇぇぇぇぇぇ
つ、つぇぇぇぇぇぇぇ
そう言えば、特に格闘技が好きな生徒以外は イーディが、自分よりもずっと身体の大きなプロ格闘家を倒すのを観たのはこれが初めてなんだな
あわわわわ、この人だだだ、大丈夫なんですかぁ
眼の前で壇さんが失神、KOされる様子を見てサイトー・ユーキさんがパニックになるが
大丈夫、大丈夫いつものことだからさっ
寧は、ニコニコ笑っていた
問題ないヨダイブ手加減して蹴ったノネ
イーディも、いつも通りヘラヘラしている 見た目には派手な蹴りだったけれど
実際は、足に気を込めて打ち抜いて失神させただけだから物理的なダメージは少ないんだと思う
すぐに意識を取り戻すネ外へ運んで邪魔ダカラ
しょうがないわねぇ
ミミさんが、リングサイドに用意されていた担架を手にする
ほら、あんたたちの親分なんだから引き取ってきな
わ、判ったこ、この野郎
引き取って来ますコンチクショウ
慌てて弟子が担架を持ってリングに上がる もう1人来たのは、レイちゃんが頼んでくれた香月記念病院のドクターだろう
これでゴッド・ヒグマは、ホントにジムが閉鎖になるかもしれないわね
ミミさんが、溜息を吐くと
ええんよそれもこれも、みんなこの人の自業自得ですわ
そうよ、実力の無い同業者が減るのは良いことよ
ポロンさんとルドルフさんは、壇さんに冷たい
はぁぁ、1日経って体調がなんとか戻って来たんですけれど
体調が悪いときに書いたものは、やっぱり酷い
うーん大変だ
この話も半分ぐらい書き直しました
1400.学園祭2日目 / マイッチング
ほんじゃあ、ここでコマーシャルっんっ
壇闘志子さんが、弟子の2人にリングから担ぎ出されている前で
寧が、カメラに向かって微笑む
今回のスクール水着柔道大会は民放テレビでの放送だからコマーシャルが入るのか
ああ、この江戸川食品って、この前の格闘技大会にもお金を出してくれていた会社だよね
オレは前回の格闘技大会の主催者でもあった江戸川食品の小柄な会長さんを思い出す
ええ、今日の放送もマルゴちゃんが、スポンサーになって下さるようにお願いしたのよ
江戸川食品の会長さんは、女性格闘家が、アメリカで男の格闘家と闘って勝つというマルゴさんの夢に賛同してくれてマルゴさんの個人スポンサーになってくれている 今日の放送のスポンサーになることも、マルゴさんが頼んでくれたんだろう
イーディちゃんの格闘技大会取りあえずは、大成功ね
うん、最初は、視聴者の人たちは何が始まったんだか全然判らなかったと思うけどさ
でも、その辺は寧お姉さんがオモシロ綺麗でしたから
視聴者の皆さんも、画面に食い付いたと思いますわ
ほんでもってイーディ姉さんが、あの壇さんとかいうやたらガタイの良い、見た目からして格闘家のオバハンを一撃でノックアウトしたんですから
うん視聴者の人たちも、ああ、これはマジで格闘技大会の放送なんだって納得してくれたと思いますわ
イーディによる、壇さん瞬殺KOは流れとして、悪く無いと思う
今の映像だけでもこれから、ネットで広まって大変な騒ぎになるでしょうね
今は、テレビの視聴率なんてアテにならない時代ですから興味深い映像が地上波で放送されれば、すぐにネットで拡散します
そうですわすぐに格闘好きな人が、あの壇さんていう人のプロフィールも他の人に教えるでしょうから
ずっと前から、格闘家として実績がある壇闘志子さんという大柄な選手を小柄なイーディ姉さんが一撃で倒したっていうのが、ヤラセでないことは伝わりますわ
そうねイーディちゃんに、テレビで公開処刑されてあげるメリットが壇さんには、まったく無いものね
ハイジ、リエ、エリ、克子姉がそう言う そうだよな前回の格闘技大会でも真面目な闘いっぷりだったし
壇さんが、本気で格闘技をやっている強豪選手だっていうことは、格闘ファンならみんな知っていることなんだよな
しかも、ルドルフさんやポロンさんたちみたいにマルゴさんのアメリカ挑戦に参加表明はしていない
まだ高校生で、マルゴさんのチームのメンバーであるイーディに負けてあげなくてはいけない理由は何も無い
確か、前回の大会の様子もネットにアップされていますよね
ああ、確か動画サイトで無料で観られるはずだよ
それなら今の放送でイーディお姉様に興味をもたれた方が、そちらの動画も視聴するはずです
そして前回の大会でのイーディは、全試合、ほとんど瞬殺で圧勝
高校1年生なのに、軽量級のクラスで優勝している
ああ、あれを観たら壇さんを倒したのも、イーディの実力って理解してもらえるだろうな
色んなジムや道場からの出場者によるトーナメント戦だったんだから八百長はあり得ない
この後もルドルフさん対ミミさん、ポロンさん対グレースさんって実力派同士の闘いが続くし、ライン晴子さんや工藤遙花たちの女子高生の部も見応えのある試合になると思うよ
工藤遙花は、工藤流古武術を受け入れることで技の幅が広がったし ラインさんも、イーディたちと何度か合同練習をしている
でもよく放送までこぎ着けたよな
昨日、イーディがスクール水着柔道大会をやるって言い出して今日の午後には実現している
日曜日の午後のワイドドラマの再放送の時間に、無理矢理押し込んだんだろ
こんな無茶なことが、良く実現したもんだ
早くあの子たちに観せたかったのよイーディちゃんは
ほら、外国から来て13人の子たちあの子たちに格闘家として生きることもできるんだってことを教えてあげたかったのよ
東南アジアから来た13人の少女暗殺者たち
そうですわな実際にテレビに放送されている様子を観れば、こういう世界なんだってイメージが具体的になりますわ
格闘技のビジネスなら、どこの国にでもあるでしょうしあの子らにとって、自分の将来のプランの1つとして想像しやすいと思うわ
幼い頃に暮らした売春窟と、暗殺者をさせられていた犯罪組織のことしか知らない人たちですけれどそういう世界では、周りの大人たちの中に格闘技が好きな人は必ず居ますから格闘技ファンというより、賭の対象として試合を観ている人たちですけれど
ヨーロッパの貧民街で育ったハイジもそう言う
あたしたちが、あの子らに提案した暗殺者を辞めた後の人生プランは取りあえずは、パン屋さんと警護人と格闘家とお母さんの4つだけでしょパン屋さんに関しては昨日、今日とあたしたちが働いているところを見せたからああ、こういう仕事をやるんだとかこれぐらいお客が来れば安心して生活できるみたいなことがイメージできたと思うのよ
だから、次は自分が格闘技の試合でテレビに映っている姿を観せることで、格闘家になるっていう選択が実現性のあるものだということを、ハッキリと分かりやすく示してあげたかったんだと思うわ
イーディやグレースさんが自分は格闘家だと話してもそれだけでは、自分も格闘家になってみようとはなかなか思えないもんな リングの上で、たくさんの観衆に観られながら闘っている姿を、テレビの画面で確認することで初めて、イーディたちのように、格闘家になることで生計を立てたいと思う子が出て来るんだ
イーディお姉様は実行力も素晴らしいですし、とても頭の良い方ですわその上どうして、あんなに我慢強い性格でいらっしゃるのでしょうか
ハイジがそんなことを言い出す
イーディは、我慢強いか
オレが改めて尋ねると
はい、わたくしにはそう感じられますイーディお姉様は、周りの方よりも先に色々なことにお気づきになり、どんどん様々な対処をなさっていらっしゃいますそれも、いつもニコニコ微笑んでいらっしゃって周りの人たちが、自分の行動の意味を理解するまで、足踏みしながら待っていて下さいます
ハイジは恥ずかしそうに、うつむく
昔のわたくしは自分の考えが、いつも周囲の人たちよりも優れていると勘違いをしていましたそれで自分と同じスピードで状況判断ができない人たちに、いつも腹を立てていましたどうして、こんなこともすぐに理解できないんだなとどと、いつも傲慢な態度だったんです
そうだまり子の警護役の頃のハイジは、そういうツンツンした子だった
そうね、ハイジちゃんもイーディちゃん並みに頭の回転が早い子だから普通の人の思考スピードにイライラしていたのね
わたくしなんてイーディお姉様には敵いませんイーディお姉様と美智お姉様はわたくしよりも、ずっと優秀です
ハイジの言う通りイーディと美智は、とんでもないレベルの天才少女だ
ええわたくしたち姉妹は、皆さまの心が見えますけれどイーディお姉様と美智お姉様は、思考スピードが早すぎて、わたくしたちには理解できないことが多々あります
鷹倉神社の巫女の1人ヨミも、そう言う
ところが、イーディお姉様はわたくしたちの理解が間に合っていないと気付くと、わざと思考スピードを落としたり、要点をまとめて頭の中で示して下さったりするんです
イーディは自分の心を勝手に読み取る相手にまで気を遣う
美智お姉様は最初から、最期までどういう発想で何を考えていらっしゃるのか、全く判らない時がよくあります
うん、ヨミ美智は、オレも何を考えているのか良く判らない時が多い
美智は天才少女に加えて、マゾっ子で、みすすが大好きという要素が絡んでオレたちの理解を遙かに超越した言動をする
あら、イーディちゃんだってそうだったでしょうちに来た頃は
いや確かにミス・コーデリアから逃げて来て、オレたちと暮らすようになったばかりの頃のイーディは、何を考えているのかよく判らなかった
でも、それはイーディはまだ日本語が喋れなかったからじゃないのかな
違うと思うわよイーディちゃんはイーディちゃんで、あなたやあたしたちと思考スピードが合う様に調整したんだと思うわキョーコさんやコーデリアさんたちと一緒に居る時は、可能な限り思考スピードを早めて、なおかつ思考と同時にすぐ行動しないといけないくらい切羽詰まっていたと思うから
ああミス・コーデリアは、オレたちと敵対するつもりで日本に来てたもんな あの5月のホテルでの闘いはオレたちも生き死にの瀬戸際に居た イーディだって、頭の中は戦闘モードだったはずだ
イーディも張り詰めて切っていた状態から、オレたちの思考スピードに合わせてくれるように変わったんだ
はい、イーディお姉様はわざと変な喋り方をなさっていますけれど
わたくしは、イーディお姉様の思考の流れを見たことがあるので知っているんですがまず、綺麗な日本語を頭の中に思い浮かべた後に、わざといつもの口調に崩していらっしゃるんですそうすることで思考スピードが遅くなると同時に、わたくしたちにお考えが分かりやすく伝えられるように、思考と言葉の整理もなさっているんです
イーディちゃんも、苦労しているんだよあいつは、才能が有りすぎて、生まれ故郷から追い出されてしまったんだ
オレはハイジたちに言う
ニューオリンズの暗殺教団の指導者の孫として生まれたイーディは祖母の死後、新しい指導者に嫌われて、ミス・コーデリアに売られてしまった
どうしてそんなことになってしまったのか今のオレにはよく判る
イーディが、あまりにも頭が良すぎて暗殺術の才能も誰よりも優れていたから
普通の脳みそしか持っていない新指導者は、イーディの存在が怖くて仕方なかったんだろう
だかせ、こんなに有能な子を放りだした
イーディも、その時のことがあるからオレたちの家族では、上手く溶け込もうと一生懸命気遣いしてくれているんだと思う
はーいここからがホントの第1試合だよっまずはマーシャルアーツの美魔女vs空飛ぶ空手使いの対決だーっ
ルドルフ聖子さん対モンキー・ミミさんですっ
それではっレディィィ、ゴォォォォッ
コマーシャル開けのテレビで、寧が号令を掛ける ゴングが鳴るとスクール水着+柔道着の上衣姿のルドルフさんとミミさんがリングの中央で激突する
チックョウ、やっぱりこのリングだと踏ん張りが利かないねぇっ
空手家のミミさんが、軽い身のこなしで次々と回し蹴りを繰り出すけれどプロレス用のマットが弾んで、思ったようにルドルフさんにヒットしない
やっぱり、ここは教科書通りタックルで倒して、マウントポジョンでタコ殴りかしらねっ
一方、軽量級のミミさんよりも体格の良いルドルフさんは、ミミさんの着地の瞬間を狙って、ダダッと肩から体当たりを仕掛けるが
間違ったタックルでマウンティングしてくるヤツは、全てクズさっ
ここは身の軽いミミさんフワッと身体を躱して避ける
あら、そんなようなタイトルの本があったと思うけれど微妙に間違っているわよ
そんなこと、あたしの知ったことかぁぁ
ミミさんは、イチかバチかルドルフさんにズバーンと跳び蹴りカマすッ
そんな大技当たらなければ、どうということはないわよっ
ルドルフさんは、ギリギリでミミさんの蹴りを避けるとそのまま体勢を崩したミミさんを背後から捕まえようとする
さっせるかぁぁ
なんとぉぉぉっ
南無三ッ
ええいっ、カトンボめっ
さすがベテランの2人なかなか見応えのある試合になっていた 全く休まずに、1ラウンド3分間を2人は派手な攻防戦を続けていた 最後は
もらったわぁぁっ
一瞬の隙を突いて、ルドルフさんがミミさんの柔道着の帯を解いて引っ張る
そのまま、ミミさんの帯を力任せに抜き取ってしまった
はーい、帯を取られたらそれまででーすっ終了ッッ
スクール水着柔道ルールに則り、寧が試合を止める
えー、1ラウンド2分48秒帯解きでルドルフ聖子さんの勝ちですっ
アシスタントのサイトー・ユーキさんが、そう宣言する
あああー、コンチクショウ帯を解かれたら負けっていうルールがあったのを忘れていたよっ
本気でくやしがるミミさん
ぬふふふーん普段、帯を締めて稽古している空手家のミミさんの方が帯のことを気にするのを忘れてしまったみたいだねっ
あら、わたくしも柔道だって一通りは習ったから、柔道着にも帯にも慣れているわよ
ルドルフ聖子さんは、笑ってそう言う
組み手しながら、よく相手の女の子の帯を解いたものよだから、わたくしの勝利は当然なのっおほほほっ
ルドルフさん、最初から帯解きを狙っていたのか
はいはいはーい、ミミさぁん口惜しがるなら、リングの下でやって次の試合ができないからさっ
寧が笑って、そう言うと次の試合で対戦する、ポロンさんとグレースさんが現れる
ミミあんたの仇は、うちがとってあげますっ
リングに上がる2人
はい、次の試合は妖艶なる日独ハーフ空手使いvsプロレスの女星の対決ですっ
えー、大ポロン・カリスマンさん対グレース・マリンカさんですっ
そんではレッツ・ファイト、レディィィー、ゴォォォッ
今度は純粋に無差別級同士の対決だ
うちなこう見えても結構、研究熱心なんどすわ
ポロンさんがニヤリと微笑む
この前の大会は、マルゴさんが良いところを、全部マルッと持っててしまいましたけれどその内に、あんたはんと対戦することもあるやろうと考えて、きっちりの予習はしてあります
今のうちはあんたはんの弱点は、すでに全部お見通しなんどすっ
ほう、面白い
上背のある女子にしては大きい身体の選手2人がリングの中央で対峙する
ほな行きますッッッ
ポロンさんは、ズシュッと前に進んで正拳突きをグレースさんに打ち込む グレースさんは、ポロンさんの攻撃を読んでいた 身体を捻って正拳を躱すと前に出て、肘を使ってポロンさんを攻撃したッ ポロンさんは、何とかグレースさんの攻撃をしのいで一度、距離を開ける
それなら、これはどうですのっ
ポロンさんは、バッと前に出るとグレースさんの眼前に拳を突き出す
いや、これはフェイントだ
突き出した拳を顔の前で、パッと広げて手の平でグレースさんの視界を遮ったッ
同時に、グレースさんの見えない位置からブワンッと回し蹴りを放った これもグレースさんは、読んでいた 最初のフェイントを完全に無視して、グレースさんは敢えて前に出てポロンさんの蹴りを受けとめるッ そのまま、力任せにポロンさんを押し飛ばしたッ
きゃああんっ何すんどすぅぅ
吹っ飛んでマットに倒されたポロンさんは、急いで立ち上がってグレースさんに向かう
おかしいわどうなっとるんどす
ポロンさんは、焦っていた
あんたはんはやたら身体が頑丈だけれど、攻撃がパワー任せで単調なだけのプロレスラーだったはずですわこの間の大会の時は、もっと隙だらけだったはずどす
グレースさんは、ポロンさんの言葉に
イーディと練習したかなり
いつもの無表情でそう答える
あたしの悪いところはイーディが一つ一つ、修正してくれているだから今のあたしは、昔のあたしとは違う
何ですのそんなんズルイわぁ
ズルくはないあなたが、昔のあたしの弱点を研究している間にあたしは、昔のあたしの弱点を克服したただ、それだけのこと
でも、あんたが1人でナントカしたのと違うやないですかそんなん全部、イーディちゃんのおかげですわ
あたしはずーっとイーディの家に厄介になっているあそこは天国だ幾らでも練習していて良いし、優れたトレーニング・パートナーも何人も居る食事は美味しいし、女の子たちはみんな綺麗だ
ずっと無表情だったグレースさんがニッと微笑む
これで強くならなければあの家の人たちに、申し訳が無いッッ
今度はグレースさんの方から、攻撃を仕掛ける グレースさんの放ったミドルキックを、ポロンさんは全身で受けとめるが 勢いを殺すことができずに、ロープ際まで吹っ飛ばされる マットに倒れたポロンさんに、グレースさんは
立てあたしも元はプロレスラーだ力に差はあっても、時間いっぱいまで良い勝負を続けてやる
うそーんいやーんっ
結局、1ラウンド3分間きっちりと闘い続けて 最後は、グレースさんがポロンさんの帯を剥ぎ取って試合終了となる
ごめんな、ミミちゃんうちも負けてしもうたわ
ポロンさんが、リング下のミミさんにそう言うと
こうなったら、あたしらもイーディの家で合宿するしかないねっメシは美味いし、ネーチャンは綺麗だっていうから
おいおい、ミミさんたちまで、お屋敷に来るのかよ
はいはーい、ということで美魔女リーグの決勝戦は、ルドルフ聖子さん対グレース・マリンカさんに決まりましたぁぁッ
寧が、そう宣言してCMを挟んで、決勝戦となった その闘いも
ちょっとあなた、ホントにこの前とは全然違うじゃないのっ
ルドルフさんも、グレースさんの変化に驚いていた
ジュンは、素質はバツグンに良いノネ今まで指導してきた人が悪かったノヨちょっと直したら、どんどん良くなるのネ
リング下から、イーディがクスクス笑っている
直しすぎよっもうっ
工藤流古武術6級のオレが見てもグレースさんの動きは、格段に良くなっていた 力任せの直線的な動きしかしなかった前回と比べてイーディ的な、相手の行動を先に予測した変化に富んだ攻撃に変わっている
イーディお姉様には、トレーナーの素質もありますこの点に関しては、マルゴお姉様をしのぎます
頭が良い上に、根気よく丁寧に分かりやすく、相手が理解するまで教えてくれるんだよな だから、グレースさんみたいに強くなるためには何でもするという人は、イーディの指導でどんどん強くなる
ええい、こうなったら自分の見せ場だけは作るわよっ
ルドルフさんは、イチかバチか大技を仕掛けるッ ブワンッと放ったミドルキックは
浅いッ
グレースさんに受けとめられるが
それは受けちゃダメヨ、ジュンっ
イーディの声は遅かった
えんやっとっとッ
ルドルフさんは、片足を受けとめられたままもう片足を蹴って、宙に飛ぶッ
飛びつき腕ひしぎ逆十字固めです
ハイジが、そう言った瞬間 ルドルフさんは、空中でグレースさんに間接技を仕掛けたッ 意表を突かれたグレースさんは、ルドルフさんに腕をキメられたままマットに倒れるッ
どうよっギブアップする
ルドルフさんは、興奮して叫ぶが
はーい、ルドルフさんの負けぇぇ試合終了―んっ
寧の声が、悲しく響く
ええー、何でなのよっ
ルドルフさんは、グレースさんの腕を掴んだまま寧に抗議するが
ルドルフさん帯、解けてますわぁ残念どすなぁ
リング下から、ポロンさんが笑顔で指摘する トリッキーな飛び付き技を仕掛けたことで、ルドルフさんの柔道着の帯が解けてしまっていた
いやーん、なんなのよもう、まいっちんぐっ
柔道着の下のスクール水着が全開となった25歳のルドルフさんは恥ずかしそうにそう言った
洗脳されたキュアホワイトがキュアブラックに仕掛けて、全国の幼女たちのトラウマになった伝説の飛び付き関節技を出したかったのですが
調べてみたら、あれは技の名前が不明なままなんですね
初代プリキュアは、格闘技アニメのエアマスターのスタッフが続けて作ったので殴る蹴るのシーンが多いという
1401.学園祭2日目 / 覚えているわ
何でもアリの美魔女リーグとは違い
女子高生の部の1回戦は、工藤遙花VSライン晴子さん18歳と17歳の闘いは、どちらも真面目な性格の美少女だから、一生懸命さが前に出た爽やかな印象の闘いとなっていた
ああん、ホント弾みすぎよ、このマット
前回の格闘技大会では、2人は別々の階級で闘った 実際、工藤遙花の方が晴子さんよりも少し身体が大きいのだけれど空手家の工藤遙花は、プロレス用のリングに慣れていないから、攻守共に戸惑っている 一方、ライン晴子さんの方もスクール水着に柔道着の上衣という特殊なルールに翻弄されていた 高くキックを打ち込む度に、柔道着の上衣の裾からスクール水着に包まれた可愛いお尻がポロンと顔を出すのが気になってしょうがないらしい
ほら、晴子帯が危ないわよっもっと帯を気にしなさいっ解けたら負けなんですからねっ
リングサイドから、師匠のルドルフさんが叫ぶ 晴子さんは、慌てて帯を締め直す ルドルフさんと違って、帯を締める格闘技は経験してきていないようだ
お互い慣れていないルールに戸惑っているから結果的には、ほぼイコール・コンディションの闘いになっていた
はぃぃぃぃッ
帯を締め直している晴子さんの隙を突いて、工藤遙花が攻撃を仕掛けるが やはり足場が良くない
攻撃をするりと躱された上に足を掬われる
今よ、晴子寝技にいきなさいっ
マットに転んだ工藤遙花に、ライン晴子さんがザバッと覆い被さる
その子は空手がベースだから寝技は得意じゃないはずよっ
ルドルフさんが、そうアドバイスするが
残念ね空手に寝技はなくても、工藤流古武術にはあるのよっ
工藤遙花も、寝技を仕掛け返した
甘いです
が寝技なら、マーシャルアーツ系のライン晴子さんの方がたっぷり稽古を積んでいる 工藤遙花は、最近になってようやく工藤流古武術を受け入れたばかりだから仕方がない
アレアレ、2人とも気を付けるノネ両肩がマット付いたら、その瞬間に負けなのヨ
イーディがリング脇から、対戦中の2人に叫ぶ
ああーん、そういうルールもあったわねっ
苦々しい顔で、工藤遙花が答える
晴子、肩だけでなく帯も気にしなさいっ
クッやりにくいですっ
帯の状態と自分の肩の位置を常に気にしながら、寝技の攻防戦をやるのは相当大変らしい
ちぃぃぃ、ダメだっ
ブレイクしますっ
結局、一度身体を離して2人は立ち上がる
仕切り直しだ
くそっえいやぁぁッッ
ふんっツァッッ
工藤遙花とライン晴子さんは、一進一退の熱戦を繰り広げるが 3分が過ぎたところで無常にもゴングが鳴る
はーいっ、タイムアップ両者とも引き分けで負けぇぇぇぇッッ
寧の明るい声で試合終了だ
ううーっ、もう30秒あったらあたしが勝ってたわよ
次はゼッタイに勝ちます
2人は睨み合ったままリングから降りる
はいはい、再戦が楽しみだよねー
寧は笑って、2人に言う
それでは、コマーシャルですっ
アシスタントのサイトーさんが、カメラに微笑む
そろそろ作業を再開しましょうか
オレも立ち上がった またイーディたちの大会が終わった後に、カフェ・テラスに来るお客さんたちのためにパンを焼かないといけない この様子なら大会の運営は問題なく進みそうだし、寧の司会も安定している すぐ近くに、マルゴさんが居るし月子もミタマもイーディもいる
それじゃあここのパンから焼くよ
ええ、お願い愛ちゃんやマナちゃんたちは、もう少し休んでいて
後はオーブンで焼けば良いだけのパンがたくさんあるから愛やマナたちは、今は仕事がないハイジやヨミ、エリとリエもだ キヌカは、食い入るようにモニターの中の試合を見ているし オレはオーブンの温度を確認してから中にパンを入れていく 作業を続けているうちに、コマーシャルが終わり番組は再開した オレは、耳で番組の様子を聞きながら作業を続ける
あわわわわー、弱い、弱い、弱すぎるよっ、マリアちゃんっ
楽しそうな寧の声が、モニターから聞こえてきた
えー、試合開始3秒で剣道マリア選手、帯が解けて敗退です
アシスタント役のアイドル・サイトー・ユーキさんの声も聞こえた え剣道マリア、試合開始と同時に負けたのかよ
ヌッフッフダメヨ、マリア、気が抜けすぎネッ
どうやら女子高生の部の第2試合イーディVS剣道マリアは、イーディの勝ちで終わったようだ というかイーディと、元・天童乙女の剣道マリアじゃ、そもそもから技量が違いすぎる 試合になるわけがない
ちょっとちょっとでもイーディ、どうするのっ女子高生の部の第1試合は両者引き分けで2人とも敗退で、第2試合は瞬殺じゃ放送時間が思いっきり余っちゃったよ
寧のそんな声が聞こえた そうだよな残りの放送時間は、どうするんだろう
それやったら、イーディちゃんはうちと闘ったらええんどす
ポロンさんが、突然、そんなことを言い出す
ルドルフさんは、まだ見せ場がチョロッとあったみたいどすけどうちは、このまんまでは道場へ帰れまへん
あー、ズルイわよっ、ポロンあたしだって負けたまんまで帰りたくないわよっイーディちゃん、ここは1つ、あたしモンキー・ミミさんと闘いなさいよっ
モンキー・ミミさんの声も聞こえてきた
えー、弱い人たちをもう一度リングに上げるのハンターイ
これはルドルフ聖子さんの声だ
イーディちゃん、わたくしと勝負しましょうよっねぇっ
何だ自分がもう1試合、テレビに映りたいだけか
わたしでもいいぞ
グレース・マリンカさんまで
まあいつでもどこでも闘いたい人だから、しょうがない
イーディ、どうするのさっ
寧も、今回の大会の企画者で主催者のイーディに尋ねる
ウーンとネ今日はホントは、アタシたちの高校の学園祭での女子高生大会だったのネ
そういえば、そうだった ルドルフさんたち美魔女リーグの人は後から割り込んで来た
ダカラ最後は、ここの高校の生徒同士で闘うのが良いと思うのネッ
うちの高校で格闘技をやっているのはイーディだけだぞ
ミタマ、上がってくるネッ
イーディは、ミタマを指名した オレは驚いて壁のモニター画面を見上げる
おおおおーっ、ここでイレギュラーな出場者が現れましたっ皆さん、テレビでお馴染みの安城ミタマちゃんの登場ですッ
寧の声と共に
なでしこ科3年、安城ミタマお呼びとあれば、即、推参ッッ
いつも学校で着ている真っ白な学帽に真っ白なガクラン、片手に日本刀を持ったミタマがリングにゆっくりと上がっていく
うおおおおおおおおーっ
今、リングの周囲で観戦しているのはほとんどが、うちの高校の生徒だ もちろん、ミタマもイーディも在校生であることは、良く知っている 今までで一番大きな歓声が響く
お姉様ズルイ
モニターを観ていたキヌカが呟く いつも2人一緒の武闘派姉妹としては、姉だけが試合に出る展開になってしまったことが納得できないらしい
しょうがないよ、今のは女子高生の部だからさキヌカちゃんは、まだ中1なんだし
マナが、キヌカの頭を撫でて慰める や、ていうか 良いのかミタマは格闘家じゃないんだぞ
えっといいのイーディ
寧も迷っている
問題ないネミタマは格闘家ジャナイけれど、武道家ヨ
タダシミタマと闘うナラ、誰かレフリィーが居てくれる方がイイネ闘いに気持ちが入り込んジャッタ時に、ゴングの音ダケじゃ止まらなくナルと思うカラ
格闘家でないミタマは興奮し過ぎた止まらなくなるかもしれない ミタマの暴走を止められる人が必要だ
ああ、そうだよねっとなると
寧はマイクに向かって
えー、皆さん次の試合は特別エキシビション・マッチということになりましたのでっこの試合にのみ、レフリィーが付きますっ
みんなに宣言する
そして、そのレフリィーというのはあの人さあ、皆さん、大きな拍手でお迎え下さいっ
寧は誰を審判にするつもりなんだ
藤宮麗華さんですっ
れレイちゃん
えわたくしですか
レイちゃんは、控え室用のテントからひょいと顔だけ出す そこに居たんだ
ああ、奥に月子と五十嵐イズミも居る
しかし、レイちゃん普段の凛とした姿と、今の驚いている素の顔
そのギャップが、何とも可愛い
ええー、ホントにホントに藤宮麗華さんなんですかぁぁ
アイドルのサイトー・ユーキさんは、何も聞いていなかったようだ マイクがあるのに、大きな声で驚いている
でも、わたくし審判は、中学生の剣道の練習試合を担当したことがあるくらいですよ
いいのいいの、これスクール水着柔道だからっ審判資格なんて何も無いからさっ
寧は、ニコニコ笑っている
ミタマちやんが、ヒートアップし過ぎないように見ててくれればいいからっねっ
判りましたそういうことでしたらお引き受け致しましょう
レイちゃんが、ススッとテントの外へ出る すぐに大きな歓声が沸く 今日のレイちゃんは私服それも男装
片手に撲殺ステッキを握ったまま颯爽とリングへ上がって来る
きゃぁぁ
レイちゃんは、女子高生にも人気が高い
あああ、あのじ、実は、ふ、ファンなんです、握手して下さい
サイトー・ユーキさんは、自分がアイドルなのにレイちゃんに握手を求めた
はい、アシスタントのお仕事、大変ですけれど最後まで頑張って下さい
あああああ、ありがとうございまーす
サイトーさんが舞い上がっている、その後ろでイーディが、ミタマに言う
ミタマ今日はスクール水着柔道大会なのネ
承知刀を預かっていてくれ
はいよ、ミタマちゃん
ミタマは寧に日本刀を預けるといきなり、ガクランのズボンを脱ぎだした
うおおおおおおおおおおおおおおーっ
男子生徒が、一斉にミタマの生足に注目するッ
ふんっすでに準備はできているっ
ミタマはガクランの下に、スクール水着を着込んでいた ああ、イーディは最初からミタマをリングに上げるつもりだったんだ だから、事前にイーディに言われてミタマは控え室のテントの中で、余っていた水着を着ていたんだな
うーん、ミタマちゃん相変わらず、スタイル良いよねぇっ
寧の言うとおりミタマは足も長いし、腰はくびれていて、胸も大きい 雪乃の番組で、カバーガールとしてマイクロ・ビキニ姿を毎週披露しているだけのことはある
ちょっとちょっと、イーディちゃんあなた、この子と本気で試合する気なの
格闘家ではないわよねでも、武道家なんなの
遊びでリングに上がるのは、良うないと思いますえ
テレビのミタマしか知らないミミさん、ルドルフさん、ポロンさんがイーディに抗議するが
問題ないこの子は強い
グレース・マリンカさんは、お屋敷の朝のトレーニングでミタマの実力を知っている
それで、何の武道をやってるのさ
ミミさんに問われたミタマは剣道マリアから柔道着の上衣を剥ぎ取って、帯を締めていた
安城流拳法を少々
凛とした顔付きで答えるとイーディを見る
うむ支度は調った
それなら、ヤろうネ
高校生らしく、2人とも明るく元気に闘って下さいよろしいですね
対峙する2人に、審判役のレイちゃんが微笑む
はーい、お待たせしましたぁぁそれでは、同じ高校の女子高生マッチ、試合開始だよんっ
寧がカメラに向かって
レディィィ・ゴォォ
寧の指示で、ゴングが鳴るっ
いくぞっ、とぉぉぉっ
いきなり、ミタマはトップロープからコーナーポストへ駆け上がりシュバッと高くジャンプする
食らえっ安城流マッスル・リベンジャーッッ
そのままイーディに頭から飛び込んで、頭突きしようとする
ちょっとちょっと、それはホントのマッスル・リベンジャーじゃなくってマリポーサがやってたニセのマッスル・リベンジャーじゃんかぁ
と、寧が叫ぶが
と見せ掛けての安城流マッスル・スパーク天
ミタマはそのままイーディの身体を捕えて、良く判らない関節技を仕掛けようとする
その技は無理ネ
イーディは、ドンッとカウンターでミタマの腹を平手で弾いて身体を躱す ドダンとマットに転げ落ちたミタマは、すぐに立ち上がり
くっ、こうなれば安城流マッスル・インフェルノしかないッ
再び、イーディに突進する
いやいや、ミタマちゃんマッスル・インフェルノだけは無理ッあれは、ゆで時空か桃白白しか再現不可能な技だよっ
寧が、そんなツッコミを入れる
今度はこっちから行くネッ
イーディは、リングのロープにダッシュしてロープの反動を利用して、ミタマにキック
空中戦なら、わたしの領分だっ
ミタマも、宙に舞う うん、ここからは何とか、マトモな試合になった 2人とも、信じられないぐらい身が軽い上に驚くほど速い まったく休まずに、超高速で攻撃し続けている
何でこんなに動いていて、帯が解けないのよ
ルドルフさんが、そう言うが
安城流は古流武術イクサのさなかに帯が解けるのは武士の恥だっそのような失態は決してしないっ
ミタマは、闘いながらそう言う 一方、イーディもロープを駆使した派手な技を披露する
スワンダイブ式のキックってイーディちゃん、メキシコ式のプロレスもできるの
ミミさんが、イーディの放った技に驚く
昨夜、動画サイトで観たのネ
イーディは、一度観ただけの技を平然と使ってみせる
食らえ、安城ローリング・クラッシュ
マダマダなのネェ
電光安城キィッッック
アラヨッとソレッ
安城プロペラチョップ
ハイハイハーイ
スーパー安城月面2段蹴りッッ
ホホイノホーイ
ミタマの安城流は、元々、ダイナミックな技ばかりだから観ていてホントに面白い 姉妹でやっている大道芸もそうだけれど安城流拳法というのは、常に観客の目を楽しませることを忘れないという非情に芸能的な武術だ さらに、イーディがより観客に受けるように、試合を派手に演出していた
行くヨ、ミタマ
来い、イーディ
ああ、大丈夫だこれならミタマは暴走しない いつの間にか、イーディとミタマの間に信頼の絆が生まれている 家族となってから、ずっと一緒にトレーニングしていたもんな
お互いの技量を良く知っているし、今では深く信頼し合っているんだ
飛龍三段蹴り、トリャ、トリャ、トリャァァァァ
ソォイッ
2人の闘いは熟練の舞踊家のダンスのように軽やかでありながら、どこかコミカルでもあり にもかかわらず、2人が繰り出す拳や蹴りには一撃で相手を打ち倒すだけの鋭さと重さが込められていることは、誰の眼にも明らかだった
はーい、まもなく終了時間でーすっ10秒前8、7、6
寧が、カウントダウンを始める
5、4、3、2、1終了ッ
止めッッ
組み合うイーディとミタマの間に
レイちゃんが撲殺ステッキを割り込ませるッッ
ブオンッ 重い特殊合金製のステッキが空気を切り裂く音がモニターでもハッキリと聞こえた 人間の頭なんて簡単に砕いてしまいそうな力強いステッキの打ち込みにリングの周りの観客全員が、ハッと息を呑む
フッここまでか
ハッここまでネ
ミタマとイーディはレイちゃんのステッキを間にして、ピタッと闘いを止めていた 3分間、全く休み無しに激しく闘い続けていたのに2人とも汗1つかいていない
ええと、あのこの場合も、タイムアウトですから引き分けだけれど、両者とも負けということで良いんでしょうか
アシスタント役のサイトーさんが、恐る恐る寧に尋ねる
えー、これは臨時のエキシビション・マッチだからさっ勝ち負けは別に良いんじゃない
寧が、そう言ってニコッと微笑むと
皆さん、健闘したこの女子高校生2人に拍手を
レイちゃんが、リングの下の観客たちに笑顔でそう言う
おおおー、イーディ凄かったぞぉぉ
ミタマさーん、とってもお綺麗でーすっ
2人ともよく頑張った、感動したっ
観客席から歓声が起きる
もう、あんたたちばっかし楽しんじゃてさっ
良いところを全部持っていってズルイわよ
そうどすこのイケズ
リングサイドから、ミミさん、ルドルフさん、ポロンさんが言う
ミンナ、上がってくるネ最後にもう一暴れヨ
イーディが、笑ってそう言うと
そうこなくちゃっ
行くわよ、晴子っ
ポロン、行きますどす
美魔女リーグの4人が、笑顔でリングに乱入していく それをイーデイが、笑いながら1人1人、マットに投げ飛ばしていく
ほら、マリアあたしたちも行くわよあなたも来なさい
工藤遙花と剣道マリアライン晴子さんもリングに飛び込む みんな子犬がじゃれ合うように組み合っては、お互いをマットに投げ飛ばして笑い合っていた
はいはいみんな、もうそろそろ止めてっ放送時間が終わっちゃうよゴング鳴らして、ゴング
寧の指示で、ゴングが何度もカンカンと鳴らされてリングの上のジャレ合いも終わる
ホント、スクール水着柔道なんてクッダラないけれどでも、楽しかったわね
ルドルフさんが、満足そうな笑みを浮かべてそう言った
正式の競技じゃないからこんなの正直、勝敗とか関係ないもんね
うちは、もうちょっと、ええトコを披露したかったどす
それは本当の試合で見せれば良い
ミミさん、ポロンさん、グレースさん
えーと、あのはい、台本には無かったけれど、最後のプログラムがあるんですか
アシスタントのサイトーさんに、リング下から何やら指示が出される
えー、何なにあたしも知らないよっ、そんなのは
サイトーさんだけでなく、寧もその予定を知らないのは当たり前だ オレが放送開始ギリギリで、頼んでおいたサプライズなのだから
ええっと、あの番組の最後にですねぇ、今日、こちらの試合会場を使わせて下さった高校の校歌を歌うんですか
サイトーさんがカンペを見て、そう言う
歌うってことはわたしがえ、わたしじゃないわたしは歌わないんですか
ああ、マネージャーさんからサイトーさんに歌わせて欲しいって話も出ていたよなあ ゴメン、今日はダメなんだ
合唱部員、リングの前に集合せよっ
寧ではなく、ミタマが まだスクール水着+柔道着のままリングの上で叫ぶ さっき、オレが頼んだ合唱部の女生徒全員がぞろぞろと、リングの前に集まって来る もちろん全員、オレたちの高校の生徒だから高校の制服を着ている
奈島さんあなたもよっ
合唱部の部長の大崎さんが寧を呼んだ
へあ、あたし
あの奈島さん、あたしのこと覚えていない3年の大崎よあたしの方は、奈島さんのことを、よく覚えているわ
寧にニコッと笑う
今は、あたしが合唱部長なのよでも、合唱部に入ったのは奈島さんと一緒の時なの覚えているわ、あたし
寧は、1年留年しているから本当は大崎さんと同じ学年だった
忘れちゃったの奈島さんも、合唱部なのよっ
そして高校に入学したばかりの頃の寧は合唱部に所属していた
奈島センパイ、早く来て下さい
そうですよ、早く
他の合唱部の女の子たちも、みんな笑顔で寧を呼ぶ
みんないいの
寧の眼は潤んでいる
いいも何も校歌なら、あなたも歌えるでしょ早く来なさい
寧は合唱部の子たちの中に並ぶ 寧も制服姿だから同じ女子高生の中に溶け込む
カメラはあそこのカメラね
うんそうだよっ
すでに泣きそうな声で、寧は大崎さんに答えた
校歌斉唱
ミタマの号令の後 合唱部員たちと一緒に寧はアカペラで、オレたちの高校の校歌を歌った 合唱部員の1人として
今日の夕方牛丼屋で食事していたのですが
そこに持ち帰りの牛丼弁当を買いに来たオジサンが居て
その人が注文した品ができるのを待っているとまた別のオジサンが牛丼弁当を買いに来たのです
後から来たオジサンは、前で待っているオジサンを見て
あっ、お久しぶりです
ほら、駅の向こうでイタリアンの店をやっている**です
ああ、**さんかぁ、お久しぶりあけましておめでとうございます
おめでとうございます++さんはフレンチですよね
ええ今度、ボクの店の方にも食べに来て下さい
なぜ、飲食店をやっているというオジサンが2人とも
夕方に牛丼弁当を買いに来ているのかがとても不思議でした
1402.学園祭2日目 / 祭りの後(その1)
・サイトー・ユーキ/17歳(西塔夕貴)デススター・プロモーションM&M・セクショ・藤森リンダ/26歳 サイトー・ユーキのマネージャー
ンF所属のアイドル
はーい、そういうことで今夜の大会は、これにて閉幕っお疲れ様でしたーっ
寧が、涙を拭いながらカメラに向かって挨拶する
とっても楽しかったですっええっとこの大会は、次もあるんでしょうか
アシスタントのサイトーさんが、寧に尋ねる
うーんそれは全てっ、イーディ次第ですっあの子がやるって言ったらまたあると思いまーす
次は地上波、ゴールデンタイムで本物の女子格闘技大会よっ
そうだそうだ
リングサイドでルドルフさんはとミミさんが騒いでいる
うちは、スクール水着柔道でもええどすこのルールでも勝たんとうちのプライとが許しませんわ
あたしは闘う場があれば何でも良い
ポロンさんとグレース・マリンカさんも、勝手なことを言っている
と美魔女リーグのお姉様方は言ってますけれど、女子高生の部の皆さんはいかがですか
寧は工藤遙花たちにマイクを向ける
あたしも、何でも良いわよ格闘家で生きていくって覚悟を決めたんだからあんたもよ、マリアっ
はい姉さん次は、今日みたいなみっともない負け方はしませんっ
剣道マリアは天童乙女から、記憶改変をした時に空手の技の一部を封印している 本当は気を打ち込む技だって会得していた 元々、いい気になりやすい性格で自分は強いと過信して、関西ヤクザの娘たちのグループで威張りまくってたから 空手の能力を落として生真面目な性格の工藤遙花と一緒に稽古をさせていた 自分よりも強い人がたくさん居るということを、徹底して身体に記憶させたからもうそろそろ、剣道マリアの能力制限は解除してもいいかもしれない
わたしももっともっとトレーニングしてきます
ライン晴子さんも真面目なんだよなお茶目な師匠より
わたしは、いついかなる時でも誰の挑戦でも受ける
ミタマはスクール水着の上に、白ガクランを羽織って答えた リング下の観客たちから、声援が上がる
ただし我が主様のお許しがあればだっ以上ッ
最後に、イーディが
次は、スクール水着柔道ジャナクッテアメリカ・ラスベガスでの試合なのネ大晦日の放送を楽しみにしてるが良いノネッッ
えイーディちゃん、正式に決まったの
ミミさんが、イーディの発言に驚く
詳しいことは来週、マルゴが記者会見するネ
年末とは聞いていましたけれど
いよいよか
楽しみどす
ルドルフさん、グレースさん、ポロンさん
はーい、来週、日本の格闘技ファンがひっくり返るような大ニュースが発表されますからっみんな、楽しみに待っててねーっ
わたしも楽しみです
再び、カメラは寧とサイトー・ユーキさんに戻る
それでは皆さん、また、お会いしましょうそれではっ、緊急報道特別番組っ第1回チキチキ、ドキッ女の子だらけのスクール水着柔道大会っハナザワ不動産にハナザーさんは実在したっ、スペシャル司会はあたしっ、奈島寧がお送り致しましたっ
アシスタントは、サイトー・ユーキでしたありがとうございましたっ
see you
寧とサイトーさんの笑顔と共に放送は終わった 校庭でのスクール水着柔道大会が終わると同時に オレたちのカフェ・テラスに、お客さんがズワッと押し寄せる そのほとんどは、在校生だ 学園祭の最終日も、そろそろ終わり外部からのお客さんは、大多数が帰って行く 校内に残るのはこの後の後夜祭を楽しみにしている生徒たちだけだ
うん、予想通りお土産用のパンは全部売れたようね
克子姉が、カフェ・テラスの店先を映したモニターを見上げて言う
今、オーブンに入っているパンで今日は、終わりにしましょう
後夜祭の前にオレたちも店を片付けないといけない
女子テニス部の皆さんだって、後夜祭に参加したいだろうし
それなら作業台の方は先にお掃除を始めています
マナがお手伝いしまーす
手の空いていたマナやハイジたちが、愛と一緒に片付けに入る
あれれ、みんなこっちに来たみたいです
ヨミが、モニターを見上げて言う
あ、ホントだ
マナの声に、オレも外部モニターを見る カフェ・テラスにレイちゃんや、寧、ミタマたちが現れた さっきまで寧のアシスタントをしていたサイトー・ユーキさんも、アイドルの衣装を着替えて一緒に来ていた サイトーさんのマネージャーの藤森さんも居る それから、月子と五十嵐イズミも そしてその後ろには、たくさんの生徒たちがゾロゾロと付いて来ている
イーディお姉様たち格闘家メンバーは、リングの撤収作業をなさっているんでしょう
控え室に使っていた白テントも、解体しなくちゃいけないからアイドルさんとマネージャーさんにこちらに来ていただいたんだと思うわ
オレたちのカフェ・テラスなら、お茶も出せるしパンも食べてもらえる レイちゃんも今回はあくまでも特別ゲストだったんだからイーディたちに付き合って、力仕事をする必要はない ミタマと月子は、オレに寧の警護役を命じられたままだから当然、寧に付いてくる月子には五十嵐イズミを連れて帰るという仕事もあるし
あなた、こっちはあたしがやっておくからエリちゃんとリエちゃんとキヌカちゃんを連れて、寧ちゃんたちのところへ行きなさい
いや、でも最後のパンを焼き上げるのと、オーブンの掃除はオレがやるよ
オレだけ仕事しないのは悪い
いいから、行ってきなよ、お兄ちゃん
ミタマお姉ちゃんが、テレビに出ちゃったんだからエリちゃんたちも出てってもおかしくないしさキヌカちゃんは、お片付けとか苦手だもんね
面目次第もございませぬ
キヌカが、マナに頭を下げる キヌカも姉のミタマも家事は全然できない
それに吉田くんは、恵美ちゃんを迎えに行かないと
後夜祭のフォークダンス恵美ちゃんと踊るでしょ
愛は、優しくオレを見る
フォークダンスって何のことだ
あら後夜祭のフォークダンスって、今でもやっているの
克子姉が、愛に尋ねる
やるって聞きました
愛も1年生だからこの高校の学園祭は、今回が初めてだ
ああ、もしかして学園祭が終わって、いらなくなった木材とか集めてキャンプ・ファイアーとかやってその炎の周りで、恋人同士が踊るみたいな
マナが食い付いてくる
今は火は燃やさないダイオキシンが発生するからって禁止になったらしいよ
でも恋人たちが、みんなの前で踊るのは今でもやっているみたい
そういうイベントがあるんだ
あたしも聞いたことがあるわもう5年も前だけれど
克子姉が懐かしそうに微笑む 克子姉は、高校1年生の春に白坂創介に誘拐されたから学園祭についての話は上級生たちから聞いていても、実際には体験していない
だから吉田くんと恵美ちゃんは踊らないとダメ
オレとメグが婚約していることは学校中の生徒たちに知られている そういうイベントに出ないと、変だと思われるよな
恵美ちゃんは、吉田くんが迎えに来てくれるのを待ってると思うよ
このイベントは男の子が、女の子をダンスに誘うところからスタートだから
ああ、オレが女子陸上部に居るメグのところへ行って 他の生徒たちの前でダンスに行こうと誘わないといけないのか
そうね恵美ちゃんは普通の子だから、そういうイベントは参加したいって思っているわよね
克子姉も、オレを見る
ごめん、手の掛かるお姉ちゃんだけれど行ってあげて、お兄ちゃんお願いっ
母違いの姉であるメグのために、マナはオレに頭を下げた
判った行って来るよ、オレ
オレは、エプロンと白帽を外して外に行く準備をする
ああ、警護役に安寿ちゃんを連れて行ってねこっちは、大丈夫だから
そうだなレイちゃんに、ミタマ、キヌカ、ハイジも居る オレは休憩室のドアを開け、中で監視システムをチェックしていた黒瀬安寿に声を掛ける
黒瀬さん、外に出るから警護を頼む
今後、オレの専任警護役になる予定の黒瀬安寿は、すぐに飛び出して来た カフェ・テラスでは可奈センパイが自ら、レイちゃんやサイトーさんたちにパンとコーヒーを運んでくれていた
うちのパンは美味しいよっさっ、食べてっ
寧が、サイトーさんにパンを勧める
あ、ありがとうございますっいただきまーす
サイトーさんは、パンに食らいつく
ユーキ、そういう時はちょっと頭の悪い子みたいになるけれど、口の方をパンに近づけてパクッと食い付くのよその方がアイドルとしては、可愛く見えるから
マネージャーの藤森さんが、そんな注意をする
そんなんじゃ、食レポの仕事が来たら困るわよ
サイトーさんは、子供の様に大きく口を開けてパンに食らいつく なるほどバカっぽいが、確かに可愛いらしく見える
あれれホントに美味しい
サイトーさんは、驚いた顔をする
あら、ホントね学園祭の模擬店のパンなのに
マネージャーさんは、上品にパンを小さく千切って食べていたがやはり味に驚いている
ああ、うちのパンはねっそこのパン工房で作った焼きたてなんだよっ
わたしたちの高校には、将来パン屋さんになる人のためのパン技能士コースというのがあるんですこれは、そのコースの生徒が焼いたパンですから
寧の説明に、可奈センパイが付け足す
ああ、ちょうど来たわノブあなたのパン、美味しいって言ってくれたわよ
可奈センパイが、オレに気付く 周囲にヤジウマが多すぎて、近寄るまではオレが見えなかったようだ
あああ、ヨッちゃぁぁん
寧が椅子から立ち上がりオレに飛びついて来る
合唱部のことアリガトねっアリガトねっお姉ちゃん、とっても嬉しかったよぉぉぉ好き好き好きっ
グラマラスな肉体をオレに押し付けて抱き締めて来る
ブー、ブー、ブー
ヤジウマの男たちから、オレにブーイングが起こるが
いいでしょっ姉弟の愛情表現なんだからっ、外野は黙っててよんっ
寧は、オレを抱き締めたままヤジウマたちを叱りつける
ええっとこの人、奈島さんの弟さんなんですか
サイトーさんは、驚いている
そうそう、そうなのーっヨッちゃん、大好きっ
寧そろそろ 周りの男たちの眼が怖い
えっとさっきもお会いしましたよね
サイトーさんはオレのことを覚えていた さっきはマルゴさんたちと一緒のメンバーにオレが居たもんな
はい吉田です
オレは仕方なく名乗る
あれれ、どうして奈島さんの弟さんが吉田さん
ああ、それはねあたしの親戚のオジサンの前世の従姉の息子のお母さんの孫娘の結婚相手の大学の後輩がプラズマ・シンクロン理論によって結婚して離婚して再婚して駆け落ちしてオホーツクにオーロラを観に行った結果生まれたのが上野公園の大仏様だからだよ
寧は、ニコニコと笑っている
今は顔だけしか残ってないんだよね胴体は戦争中に供出されちゃったんだってでも、顔だけでもう頭が落ちたりはしないっていうことで、今は受験のお守りとかになっているんだよ上野大仏ヨッちゃん、今度、お姉ちゃんとお参りに行こうネっ
お邪魔しますわっ
リエとエリが、割り込んで来る
あああーっ、いつもテレビで観ている双子ちゃんだぁぁ
サイトーさんは、大きな声で驚く
お邪魔邪魔邪魔、お邪魔んま
その2人の前にさらにキヌカが現れた
どうしたのか、キヌカなぜ、そんなに不機嫌なのだ
ミタマが、キヌカに声を掛けたので
えっ、えっ、えーもしかして、この子
左様我が妹にして、ステルス・キヌカの正体だ
ステルス・キヌカとは、わたくしのことでございますっ
キヌカは、ササッとテレビの時に付けている布の忍者頭巾を被る
うわぁぁ、本物だぁぁっ
サイトーさんは、ホントに雪乃の番組をよく観てくれているんだな
お姉様お一人だけ楽しまれたようで、ズルぅございます
これもお役目キヌカに文句を言われる覚えはない
ミタマは、妹を睨むと
されどお前が納得できぬというのなら、心ゆくまで相手をしてやろう、来い
お姉様、覚悟
またカフェ・テラスの店先でミタマとキヌカの大道芸大会が始まった
安城流、炎のコマッちょいやぁぁ
真空地獄コマミラノ風ッッ
ミタマが、真剣の切っ先で、ブオンブオンと大コマを回すと キヌカは、ミタマの頭の上に片手で逆立ちしたまま自分がクルクル回っている
わぁぁ、スゴイ、スゴイですぅ
サイトー・ユーキさんが、安城姉妹の妙技に拍手している 月子が、スッとオレに近寄る
五十嵐さんは、このままお屋敷へお連れ致します
ああ同じ学校の茉莉花と松下真樹さんは、先にミナホ姉さんとお屋敷に行っている
麗華お姉様のお車に乗せていただくことになりました
レイちゃんに連れて行ってもらうのなら、問題ない オレは五十嵐さんを見る 彼女は、とても暗い顔をしていた
心配するな、すぐに松下さんたちと合流できるからそれと、なかなか良い声だったぞ
オレは、五十嵐イズミの声を褒めた 五十嵐イズミは、身体を月子に支配されたままだからそれ以上は答えられない
ヤッちゃんオレ、メグを迎えに行って来るから
ああ、そっかうん、そろそろだよねっ判った、行っといでヨッちゃん
寧が、ようやくオレを放してくれる
メグちゃんによろしくねっお姉ちゃんは、ここでもう少しサイトーさんとお話しているからっ
サイトー・ユーキさんはミナホ姉さんが、デススター・プロから奪い獲ることになっている女性タレント部門に所属している オレは明日、デススター・プロに行くことになっているから 会社の内情なんかを、サイトーさんとマネージャーさんから聞き出してくれるんだと思った
うん、じゃあ行ってくるよお姉ちゃん
行ってらっしゃい、ヨッちゃん
オレはメグの居る女子陸上部のグラウンドへ向かう オレの後ろから警護の黒瀬安寿が追って来る さてとどういうルートで行こうか 取りあえずイーディたちの様子も見たいから、校舎の中を抜けて校庭へ出て、そこからグラウンドへ向かうことにした ああ、大分、空が暗くなって来た もうすぐ日が暮れる 校庭に出るとさっきのスクール水着柔道大会の余韻がまだ残っていた ただしリングも、リングの周囲の台もすでに半分以上が解体されて、トラックに積み込まれている ホントに、簡単に組み立てられてすぐに解体できるんだ イーディが、オレに気付いて走って来る もうスクール水着柔道の格好ではない 学校指定のジャージの上下に着替えて、作業をしていたようだ
みんなと観てたぞ、スゲェ、面白かった
オレがそう言うと、イーディは嬉しそうに笑った
ネットを見てみたケレド、ナカナカ反響が良いのヨ上手くいったヨ
もう調べたんだ
マルゴがネタカサキに、アメリカへ行く前に、もう少しアタシたちの日本での知名度を上げろって言われていたノヨ
タカサキってマルゴさんが、格闘技興行の話を頼んだヤクザの人か
そうでないと、日本でのテレビ放映権が良い条件で売れないッテ
そうか女子格闘技は、日本では一部の格闘技ファンにしか知られていないもんな
もっと多くの人たちに知られた存在にならないとゴールデンタイムの地上波放送はムズカシイって言われたノヨ
ダカラ申し訳ないケレド、ネイやミタマやレイカにも登場してもらってとにかく、アタシたちの名前と顔が知られるような放送をやったノネ
今日のスクール水着柔道大会はとにかく話題性には富んでいる 放送されたものがネットで拡散して今日の出場選手たちのことも評判になるだろう 格闘技ファン以外の人たちもイーディたちに興味を持つ
コレで大丈夫だと思うヨ後は、マルゴが上手く交渉してくれるネ
そうかイーディ、色々と大変だったんだな
オレは、イーディの髪を撫でてやる
うん、頑張ったヨDarling
ソレデDarlingにお願いがあるノネ
ハルコのコトなのヨ
イーディは、リングの方で荷物を運んでいるライン晴子さんを見る
あのコは今学校に行ってないノネ
晴子さんは、父親と上手くいってなくてルドルフ聖子さんのジムに住み込んでいるんだった 当然高校には行ってないんだろう
アタシはハルコが、ウチの高校に入れるようにしてあげたいノヨ
エロシーンが足りなくて済みません
色々と新キャラの伏線を張ってますがその分、後でたっぷりエロが来ます
もうしばらくお待ち下さい
1403.学園祭2日目 / 祭りのあと(その2)
・竹芝百合香/18歳女子陸上部キャプテン陸上を武道だと考えている
イーディは、そんなことまで考えていたんだ
イーディの気持ちは判ったオレからミナホ姉さんに頼むのは構わないけれど
でも、それはやっぱりライン晴子さんが自分で高校に行きたいって意思表示しないと進めてはいけないことなんだと思う
オレたちで勝手にやって良いことではない
ウン、アタシもソウ思うネ
イーディも、うなずく
デキルコトなら、ハルコには今日の学園祭を見て、アタシたちの学校に興味を持って欲しかったノヨ
デモ、ハルコはさっきまで試合のコトで頭がいっぱいダッタノネダカラまだ全然、学校の様子を見てないノヨ
だが学園祭は
リングの撤収が終わったら、少しこの学校の中を案内してアゲヨウと思っているケド
学園祭は、もうほとんど終わっている
模擬店も展示物も片付け始めている
まだ後夜祭があるよ後夜祭だけでも、見てもらえばいいよ
イイノカナ後夜祭
後夜祭は、本当は在校生だけしか残れないことになっている
その辺は、何とかゴマカそうよむしろ、ライン晴子さんにうちの高校を見てもらうんなら、外部からのお客さんがいない在校生だけの後夜祭の方が良いかもしれないし
ソウネこの高校に通うかどうかの判断をするには、ソレがイイカモネ
ああ、オレたちのカフェ・テラスも、もうすぐ店を閉めることになっているからさ閉まっちゃう前に、ハルコさんを連れて行ってあげてくれ
オレは、時計を見てそう言う
今なら、まだみんな揃っているから
寧やアイドルのサイトー・ユーキさんたちも居る スクール水着柔道大会の関係者が一緒に居る方が、ライン晴子さんも居残りやすいだろう
うん、判ったヨ、Darlingそしたらセイコたちも連れて行くネハルコが高校に通うのには、セイコの了解を取らないとイケナイカラ
ライン晴子さんは、今は師匠のルドルフ聖子さんのジムで暮らしているんだからルドルフさんにも、当然、話を通さないといけなくなる
ホント、イーディは、スゴイよな色んな人たちのことを考えて行動しているんだから
今日のスクール水着柔道大会だって お屋敷でテレビの放送を観ている少女暗殺者たちには格闘家として生きる道があることを示したし マルゴさんのアメリカでの格闘技興行を成立させるために日本での自分たちの知名度を上げて、高くテレビ放映権を買ってもらうという理由もあった その上父親との問題で、高校へ通っていないライン晴子さんにうちの高校を紹介する機会にもしてしまうなんて
ノーノーノーアタシはスゴクはないヨただ、自分のデキルことをヤッてるダケネDarlingと同じヨ
ウウン、ソウじゃないネアタシは自分がデキルことを判っていて、それをヤッているダケダケドDarlingは、デキナカッタコトに挑戦して、無理矢理にでもデキルようになっちゃうヒトだものネ
オレはそんなんじゃないよ
オレは、そんなイーディの言葉を否定する オレは、そんなに出来の良い人間じゃない
ソウなのヨDarlingは、もっと自分に自信をもたないとイケナイのネ
自信を持つと楽にナルヨダケド、無理はシナイデネDarlingの後ろには、いつでもアタシたちが付いてるコトを忘れないデネ
イーディはクスッと微笑むとオレの後方3メートルで警護してくれている黒瀬安寿に
アンジュしっかりDarlingの警護をするのネ
は、はい了解です
黒瀬安寿は、ペコリとイーディに頭を下げる オレたちの家族におけるイーディのポジションと彼女の強さを、黒瀬安寿は理解している 警護役としては大人しくて、少し人が良すぎるところがあるけれど、黒瀬安寿は頭の良い子だ人を見る眼もある どうして、黒瀬安寿はさっきから、ずーっとオレの後方に離れているんだろう 警護ということなら、これぐらい離れていても問題ないのかもしれないけれど
イーディこれ、どーすんのっ
解体中のテントの方から、モンキー・ミミさんがイーディを呼ぶ
今、行くネッちょっと待っテテ
イーディは、ミミさんに手を振ると
ソレジャアね、また後でネDarling
うん、よく頑張ったなイーディ
オレは日が暮れて暗くなって来た校庭の影で、軽くイーディを抱き締める キュッと全身が引き締まっている鍛えられた肉体なのに抱き締めてみると軽量級のイーディは小さい
もう大丈夫ッアタシは元気百倍ネさ、メグミのトコロに行って来テ
うん、迎えに行って来るよ
イーディは、スタタタタッとミミさんの方へ走っていく オレは、女子陸上部のグラウンドへ向かう ようやく、女子陸上部のグラウンドに着くと
もう、夕陽がすっかり沈みかけている空はとても綺麗な夕焼けだった
女子陸上部も学園祭でのイベント校外から来た人や、在校生の希望者の陸上記録の記録を計ってあげるも、すでに終了していた
グラウンドに出していた用具も全て片付け終わっていた
オレは、薄闇の中女子陸上部の人たちを探す
ああ、あそこか
女子陸上部の人たちは全員グラウンドの入り口の辺りに集合していた
気配に振り向くと 黒瀬安寿は、相変わらずオレの後ろを数メートル離れて追ってきている あ無言で、木の陰に隠れた
これはあの子なりに、オレに気を使っているつもりということなんだろうか
よく判らない
おおーっ、パン屋くんだっ
恵美、王子様が迎えに来たわよっ
オレの姿を見て、女子陸上部の人たちがそんなことを言う
やっぱり後夜祭では踊るんでしょ山峰ちゃんとパン屋くんも
この高校ではホントに恋人同士の生徒は、後夜祭でフォークダンスを踊るというのが決まりになっているんだ メグは、恥ずかしそうに下を向く
なんだい、山峰はフォークダンスに行きたいのかいっ
もの凄く不機嫌そうな顔で陸上部部長の竹芝さんがやって来る この人は、信じられないくらい硬派な性格だからそういうイベントは嫌いなのかもしれない
どうなんだい山峰
ギロッとメグを睨む竹芝さん グラウンドに集まった女子陸上部の他の部員たちも一斉にシーンと静まり返る
あ、あのキャプテン、申し訳ないんですけれどああああ、あたしも、フォークダンスに行きたいですっ
一人の部員が手を上げる その部員を竹芝キャプテンは、睨み付けるが
えっと、あのあたしは、もう3年生ですし、この学園祭で陸上部も引退しますそ、それであの
その上級生の部員は、決死の覚悟で竹芝さんに言う
ゴメンなさい、今まで内緒にしてましたけれどあたし、今年の春から交際している相手がいましたぁぁッッ
と、驚きの声を上げたのは女子陸上部員の3分の1ぐらいの人たちだけだった つまり上級生を中心に、残りの人たちはこの人に恋人がいることを知っていたんだろう
そ、それであたしは、これが最後の学園祭でフォークダンスが踊れるチャンスも、今日だけなんですっですからなにとぞ、このわたしをアカマツ・アケミをアカマツ・アケミをダンスに送り出していただけるようお願い申し上げますっアカマツ・アケミですっ
最後はテンパって選挙演説みたいになった
で、アカマツの相手は誰なんだい
竹芝さんは、アカマツさんを睨んだまま尋ねる
あああ、あたしの彼は3組のキヨシバ・キヨシキヨシバ・キヨシでございますっどうぞ、温かいご支援をタマワりますよう、心からお願い申し上げますっ
アカマツさんは、もはや失禁寸前だ
あ、あの済みません実はあたしも
と別の部員も、口を開く
あたしも、実は3年2組のヨネヤ・ヨシオくんと付き合ってますッ
うええーっ
今度は、竹芝さん以外の陸上部員全員が驚きの声を上げた
ちょっとマサミ、あんた、いつからよ
全然聞いてないわよっ、そんな話
ええっとあの実は、昨日から
き、昨日 昨日は学園祭の初日だ
あの休憩時間に、ヨネヤ君に体育館の裏に呼び出されてコクられちゃったてへっ