働く男って感じだったよね
今の放送って、うちの高校の子は全員観るだろうからさ
そうそう、録画したのをみんな、携帯で送り合うだろうし
そしたら、パン屋くんも人気出ちゃうかもよ
何言ってんのパン屋くんは、そこにいる山峰さんともう婚約してるじゃん
そうだけどそれでもさパン屋くんがパン焼いてるところを見たらさ
ていうか、これでパン屋くんたちがホントにパンを作ってるって、みんなも判ったと思うし
そうそう美味しいパンは克子さんが作ってて、パン屋くんとかはあんまり仕事してないんじゃないかって言ってる人たちも居たけれど
そういう噂は、これで消えるよね
うん、あたしたちは昨日、ここで一緒に働いたから知ってたけれどテキトーなことを言う人たちが居たもんね
でも、確かに2学期からパン技能士コースに入ったばかりのオレが、スムーズにパンを焼けるようになっているのは、変だと思うヤツラは居るんだろうな
でも、今の放送でさ克子さんは指導しているだけで、ホントにパン屋くんや愛が作ってるってみんなに観せられたんだから
うんうん、パン屋くんの評価もゼッタイ上がるよアゲアゲだよ
克子姉は、優しくオレに微笑んでいた ああ最初から、そういうつもりだったんだ だからオレに、テレビのカメラの前でもいつも通りにパンのことだけに集中しろって言ってくれたんだ
あ、ソウダミタマ、キヌカアンタたちも、もう出て来てイイノネ
イーディが休憩室のドアを開け安城姉妹を呼ぶ
あ、そんなところに隠れていたんだ
テニス部の下級生が休憩室のドアを見るが彼女たちの位置では、部屋の中の様子は見えない まだ中には、何人か居る
まり子に月子、ハイジ、黒瀬安寿それから
うちらも出ますわ
双子も出て来る
うわっ、双子ちゃんたち今日も来てくれたんだ
毎週テレビに出演しているリエとエリの姿を見て、テニス部のもう1人の下級生が声を上げる
わたしら普段は民放に出てますから
国営放送には、通りがかりでも出るとマズイんです
2人には、テキトーなことを言う
しからば、わたくしとキヌカは再び客寄せの任務に向かいます
向かいまする
安城姉妹は、またカフェ・テラスの前で芸を披露してくれるらしい
いいけど、その前に克子姉が国営放送の人に挨拶に行くのに付いて行ってくれ
ミタマたちに警護を任す
かしこまりまり
安城姉妹は、オレに真顔で敬礼する
ぷっミタマさんたちってホント面白いわね
テニス部の人は、ミタマとキヌカが冗談でやっているのだと勘違いしているようだ
2人とも警戒は怠らないノネアタシもちょっと留守にするカラ
イーディは、どこに行くんだ
オレは驚いて尋ねる
そろそろリングが届くのネ
イーディは、時計を見上げてそう答えた
リング
リングって何だ輪
リングって、もしかしてアレ♪くるぅ、きっとくるう♪
あんた、古ぅぅ
テニス部の人たちが笑うがオレには意味が判らない
ホラアタシたちの企画、急に決めたカラネ、学園祭の実行委員に怒られたノネ体育館とか講堂は、もう予定が全部塞がってるッテ
そりゃそうだイーディがスクール水着柔道大会をやると決めたのは昨日だ
学園祭がスタートした後に、そんなことを言い出されたら実行委員が怒るのは当然だ
ソンデ柔道場を使用おうかと思ったんダケド、柔道部の人に断られたノネホラ、アタシたち、この間勝手に使ったカラ
ああ、前回のイーディとグレース・マリンカさんのスクール水着柔道は 授業で道場を使っていない時間を見計らって、ゲリラ的に強行開催したもんな
デモウ一度、実行委員に話したら校庭なら使っても良いって言われたノネダカラ、格闘技用のリングをレンタルすることにしたノヨ
リングってあのプロレスとかのリングか
ジュンが貸してくれるトコロを知ってたノネソレでクルマで運んで来てもらって、これから設営するノネ
グレース・マリンカさんこと尾上ジュンさんは、元女子プロレスラーだから リングをレンタルさせてくれるところを知っていたんだ
ホンモノのリングで、アタシやジュンが闘った方が、見栄えがイイデショ
イーディは、ポーズをキメて微笑む
すっごーい、イーディちゃん
ああ、またプロレスやるんだ
プロレスじゃないわよ、総合格闘技だっけ
女子テニス部の人たちも、イーディが格闘技をやっていることも、この前ここの高校でやったグレース・マリンカさんとの試合も知っているから 今のイーディの説明だけで、今日の学園祭でまた試合をするということは判ったらしい
違うネ今回は学園祭でのお遊びダカラスクール水着柔道大会ヨ
イーディは、彼女たちに答える
でもお遊びなのに、本物のリングを借りて来ちゃうんだ
パン工房の人たちって、ホント、行動的だよね
うん、普通は高校生で、そこまでできないよね
まあ、そうだよな高校生レベルの遊びではない リングを借りて、持って来てもらうんだってタダじゃないだろうし その辺は、民放のテレビ局に中継放送させることも含めて、マルゴさんが宣伝と割り切って費用を出してくれているんだろうけど
だけどリングを組むのなんて、時間が掛かるんじゃないのか
オレは、そういうことは詳しくないが色々と手間の掛かるものじゃないのか
大会って何時からやるんだっけ
午後3時からね
もう12時30分を過ぎているから2時間半も無い
ダイジョウブレンタルしたのは、興行用のリングだカラネジュンの話だとダイタイ1時間ぐらいで組めるらしいヨ割りと素早くデキルものナノネソウじゃないと、プロレスとかの地方興行は大変ネ
ああ、そうかプロレスの団体なんて、毎日、地方の体育館でリングを組み立ててるんだもんな 組み立ても、撤収も素早くできるように、最初から設計されてるんだな 意外と短時間で組み立てできるものなんだ
ジュンも新人レスラーの頃は、毎日リングを組み立ててたらしいカラ、細かいことはジュンに教わるヨソレに、ハルコたちもジムの仲間を連れて来てくれることになっているカラ
ああ、前にイーディと格闘技大会で戦ったライン晴子さんか 創作マーシャルアーツゴールデンバーム・ジムの所属だ
ハルカやマリアも呼んであるシ向こうの人手は、充分足りるヨ
美智の姉の工藤遙花と、元・天童乙女の剣道マリアも参戦する うちの高校の学園祭なのに、生徒なのはイーディだけだけど
ダカラ、Darlingは心配しないでココの仕事をしててネ向こうは、アタシたちだけで頑張るネ
イーディの笑顔を見たら、任せておいて良いんだと感じた この間の女子格闘技大会の縮小版になるんだろうけれどイーディに、グレースさんに、ライン晴子さんに、工藤遙花と剣道マリアが出場するんなら、それなりに華やかなイベントになることは確実だ
トイウコトで、12時45分に正門前で待ち合わせダカラソロソロ行って来るネ
まだ後15分くらいあるけれど早く着いた人もいるかもしれないもんな
ああ、気を付けろよイーディ
Darlingたちもネ
じゃ、あたしも行くわ後をよろしくね
わたくしたちも
ということでイーディ、克子姉、ミタマとキヌカがパン工房から出て行く
そしたら、わたしらはまたトークショーでもやりましょうか
お兄さんいいですか
ええとモニターを見ると、お昼の混雑は続いている 可奈センパイたちが、汗だくでパンと飲み物を売っていた
やってもらった方が良いと思うよっその方がかえって、お客さんが落ち着くんじゃないかな
ここまで混んでしまったら、何かイベントを始めた方が良いか
うん、そうだな頼むよ、2人ともだけど、克子姉が戻ってきてからにしてくれ
克子姉が戻ってきたら、警護のミタマたちも帰って来る イベントを開催するのなら、警護要員が多い方が良い しかしこの双子はは、狭い休憩室に閉じ込められているのに飽きてしまっているに違いない ええと外は避けた方が良いな この子たちは、有名人過ぎる
それまで、ここか学生食堂の中に居てくれ学生食堂に行くんなら
判ってますわなあ、エリちゃん
うちも判ってます
双子は休憩室のドアを開けて
ハイジちゃん、食堂の中をグルッと廻るから、わたしらに付いて来てな
お願いします、ハイジちゃん
うんエリとリエの警護は、ハイジに頼む ハイジが現れる
あれ、その子は誰
テニス部の人が、見掛けない中学生が休憩室から出て来たことに驚く
うちらの友達です
はい、わたしらの親友です
エリとリエは、そう答えた
ほんでは行って来ます
エリとリエとハイジは、学生食堂に通じるドアから出て行った 15分経って克子姉が帰ってきた
問題無しよ国営放送の人たちは、お帰りになったわ
正門にイーディたちはいなかった
国営放送の人たちにイーディたちの借りたリングや、どう見てもプロレスラーの体格をしているグレースさんとかを見られたんじゃないだろうか あるいはイーディたちの大会を中継する民放のテレビ局の人たちが、もう着いていたりしたら 国営放送と民放のテレビスタッフが、普通の私立高校の学園祭でお互いのことを知らないままにハチ合わせになるっていうのは色々と後で問題になるのでは
判っているわだから、国営放送の方たちには西門から帰っていただいたわ
ああ、克子姉はイーディたちの動きも、把握していてくれている
それよりあなたたち、お昼のお食事はどうしているの
克子姉は、テニス部の手伝いの人たちに尋ねた
あたしたちはお客さんがある程度減るまで、みんなお昼ご飯はガマンしようってことにしました
テレビのことや朝の時間に克子さんたちに、お化粧してもらったりもしましたからここは、踏ん張ろうって
昨日は交代で、お昼休憩をとってもらえたけれど 今日は、昨日よりもお客さんが多いから上手く交代できないんだ って、オレたちもだ 愛もメグもマナもオレもずっと休みなく作業を続けている
今からは、あたしもここに張り付いて仕事するから少しは余裕ができると思うわ
克子姉は、エプロンを付けてオーブンの前にやって来る
でも、ゴメンなさい、克子お姉さんあたし、そろそろ女子陸上部の方へ戻らないといけない時間になります
メグは女子陸上部の竹芝キャプテンにこっちの仕事は、午後からで良いって言われていたんだっけ
キャプテンにメールして、もう少しパン工房に残ってもいいか尋ねてみましようか
カフェ・テラスが混雑していることを伝えれば、竹芝キャプテンは理解してくれるだろうけれど
ダメよそれだと女子陸上部の他の人たちが、恵美ちゃんを良く思わないわ
女子テニス部の人たちが、自分がテレビに映ったことをこんなに喜んでいるということは女子陸上部の人たちは、自分たちのところに中継が来なかったことを不満に感じているだろう そういう意味でも、メグがニュースの放送に背中しか映らなかったのは正解だったんだ
メグとにかく、一度、女子陸上部の人たちの所へ行って、直に顔を見せないとダメだ
うんそうよね
ヨッちゃん車が来たヨ
外部モニターに、またレイちゃんの運転するバンが到着する様子が映っていた ああお土産用のパンがお屋敷から運ばれて来ていることは、テニス部の人たちに知られるわけにはいかないから オレがバンから、そのままカフェ・テラスの店先に運ぶしかないな テニス部の下級生が、車に興味を示す
ああ、あたしたちのお昼のお弁当だよっ今日は、あたしの親戚の人に、まとめて頼んだのっ
寧が、笑ってゴマカしてくれた
ヨッちゃん、取りに行こうっいいよね克子お姉ちゃん
ええ、いいわここは任せて
ほら、ヨッちゃん行こう
オレは寧と裏口のドアへ向かう
はーい、ヨミが来ましたぁ
助手席には、ヨミが乗っていた 相変わらすのロリ巨乳だ 今は薄手のブラウスの上から、シートベルトをしているからヨミのおっぱいが、さらに強調されている
正門のところで、グレースさんを降ろしてきました
運転席から、レイちゃんが言う グレースさんも、この車でオレたちの高校へ来たんだ
正門でイーデイと会った
ええ、他の人たちも集まっていましたですからイーディたちのお昼は、その時に渡して来ました
お昼
後ろの右側のパッドがお土産用のパンです左側が、皆さんのお昼のお弁当ですちゃんと人数分ありますから、安心して下さい
寧が今さっき言ったことは、本当だったんだ
素子お姉様とくるみちゃんがわたくしたちは、まだ上手くパンを作れませんからって
とっても素敵な松花堂弁当ですっヨミたちは、お屋敷でお先にいただいて参りました
素子とくるみは和食が得意だ いや、ありとあらゆる花嫁修業をこなしてきているから何でも上手いし、美味い それでも前は、形ばかり綺麗すぎる感じが強かったけれど 今は、オレたち家族になったから愛情の籠もった料理が作れるようになった ある意味理想のお嫁さんと、理想の側室なんだよな 栗宮流槍術に、人生を捧げているということを除けば
みんな、自分の得意なことで、ヨッちゃんを手助けしてくれているんだよ
うんありがたいことだと思う
ヤッちゃん、オレはこのままお土産用のパンを可奈センパイのところに届けてくるからこのお弁当、休憩室に居る月子とまり子と黒瀬さんに
あの子たちも、そろそろお腹を空かせているはずだ
判ったそれから、学生食堂に居るリエちゃん、エリちゃんとハイジちゃんにも食べてもらうよ
ああ、トークショーをやってもらうのは、食事の後で良い
あたしたちのご飯は2時過ぎちゃうかもねぇ
寧が、そう言ったのでオレは思い出した
2時かオレ、2時に茉莉花とエリカに会う約束になっているんだよな
茉莉花が、オレに友達を紹介したいと言っていた
大丈夫だよっ、さすがに2時になったらお客さんは減ってると思うもん
ということでテレビの話は終了で、次話から茉莉花編です
それでその後にイーディの格闘技編となります
そろそろエロが必要かうーん
1389.学園祭2日目 / ランチ・タイム
ごめんなさい、私、女子陸上部に行きます
休憩室から出て来たメグが、オレたちに言う 素子とくるみが作ってくれたお弁当が届いたからメグには、オレたちより先に休憩室の中で食べてもらった
ずいぶん急いで食べたのねお味はどうだった
克子姉が、オーブンの前からメグに振り向いて尋ねる
美味しかったですさすが、素子さんとくるみさん
メグとしては、いつの間にかお屋敷の台所を素子たちに乗っ取られているのだからちょっと複雑な心境なんだろう だが、台所の主である克子姉が許していることなのだから、メグに素子たちに何も言うことはできない
じゃ、行きますもうすぐ1時ですから
メグは、午後まではパン工房の方の手伝いに集中してて良いと竹芝キャプテンに言われている
ああ、気を付けろよ
そうそう今日は後夜祭もあるからねあなたたちも、フォークダンス踊るんでしょ
手伝いに来ているテニス部の下級生が、笑ってそう言う フォークダンスって何のことだ
それはまだ決めてません
メグが顔を赤くして、答える
えー、踊りなさいよパン屋くんとあなたは学校公認の仲なんだから、あなたたちが踊らないと後夜祭が盛り上がらないわよ
そうそうフォークダンスは、我が校の伝統なんだから
別のテニス部の人が、そう言う 何か良く判らないけれど後夜祭で踊る伝統
と、とにかく、あたし行きます
メグは慌てて、パン工房から走り出ていく 時計を見ると午後1時の5分前 女子陸上部のグラウンドへ全力疾走で間に合うか
午後1時になれば、カフェ・テラスの混雑はかなり緩和すると思うわ
克子姉が、外部の様子を映したモニターをチラリと見て言う
ほら、1時が近付いてるからテーブル席も空いてきたわ
確かに、お客さんがさっきまでより減っている
まこうなることは、判ってたんだよねっ
ほら、今日は午後から体育館で色んなクラブの発表会があるからそれがお目当てで来た人は、みんな、そっちを観に行くもん
ああ今日は、学園祭の最終日
文化系のクラブだと、学園祭での発表会を目標にやってるところも多いですからね
あたしたちみたいに、公式試合の大きな大会が無いクラブはね
日頃の活動の成果を家族に見せようと思ったら、学園祭の時しか機会が無いものね
女子テニス部の人たちが口々に言う
だからさ、この時間にお客さんが減るのは仕方ないんだよっ
寧は、この学校に3年通っているから学園祭も3回目 だが、去年までは、校内に白坂創介の配下の教員がうろうろしていたから監視カメラで学園祭の映像だけを観ていたんだろう
それに、奈島センパイ今日は午後から、講堂の方でもバンドを組んでる人たちの演奏会がありますよ
ああ、そっちを観に行くって子も多いよね
男子テニス部のカドタ先輩も、出演するって言ってた
えー、カドタって楽器できるの
テニス部から手伝いに来ている下級生が笑い会う
あ、でもさっ、ほらあっちは人気が一番あった人たちが全員退学しちゃったんじゃなかったっけっ
寧がそう言うがそれはオレのせいだ 確かHG5だかMG5だかってバンド名の連中が、メグをからかうようなことをしたから 月子の巫女の力で、全員自主退学してもらった
それはそれとして今年は今年で、また新しい人たちが出るみたいですから
カッコ良い先輩とかいないかなって観に行く女の子は多いみたいですよ
あたしは、ああいう感覚、よく判らないですけれど
学校の中だけで有名なバンドとか、バカみたいだもんね
ていうか同じ高校の男子を見てキャーキャー騒ぐとかヤバイよね
うん、ヤバイかなりヤバイ
テニス部の人たちは、口々にそう言う
でも、テレビみたいな遠い世界じゃなくて身近なところにいる、ちょっと顔が良くて楽器ができる子の方が気楽に騒げて楽しいんじゃないの
克子姉はオーブンの作業を続けながら、笑顔でそう言った
そういうアンイなの、あたしは嫌です
えー、あんた3組のシゲタのこと気に入ってるって言ってなかったあいつも今日バンドやるんだよ
それあたしじゃないです1年のキヨミがカッコ良いかもって言ってたんです
えー、そうだっけ
テニス部の人たちが、そんな会話をしていると
いやあ、お腹いっぱいですわ
というか恵美姉さん、急いで食べ過ぎですあれでは消化に良くありません
休憩室から、エリとリエが出て来る
ハイジとミタマとキヌカも
客が減ったと聞きましたのでわたくしたちは、大至急客寄せに向かいます
このやる気は、何なんだろう つくづく、この姉妹の本性は、警護役よりも芸人に近い
うちらもトークショーやりますわ
うん、残ってくれとるお客さんたちも、たくさんいますから
双子も、やる気満々だ
無理することはないからなだったら、エリとリエのトークショーを優先して、ミタマとキヌカはサポートしてくれハイジも付いててくれ
ミタマとキヌカは攻撃特化型だから、ちゃんと隙のない警戒ができるハイジにも行ってもらった方が良い ぞろぞろと双子たちが外へ向かう
どうして、あの子たちはパン屋くんの言うことをきくの
テニス部の子が、不思議そうにオレを見ている
それよりお客さんのピークが過ぎたんだから、あたしたちも今のうちに交代でお食事にした方が良いと思うわ
克子姉が、慌てて話を変えてそう言う
ええっと、テニス部の皆さんはどうするっ
それは、うーん星崎先輩の指示が出ないと、あたしたちは
テニス部の皆さんの司令塔は、可奈センパイだから
カフェ・テラスの方から指示が来ないと、手伝いの人たちは勝手に休憩することはできないんだ
で向こうも朝から大忙しだったもんな 休憩の順番とか、かなりメチャクチャになっちゃってるかもしれない
次のパンを持って行くからついでに、オレが可奈センパイに聞いてこようか
ちょうど焼き上がったパンを、パッドに詰めながらオレは言う するとその時パン工房の裏口のドアがガチャリと開いた
あなたたち交代よ休憩して
交代要員のテニス部が4人ほど入って来た
ああ、良かった
可奈が、新しい交代シフトを作ってくれたから、昨日の残りの時間はみんなそれに合わせるって
一度、カフェ・テラスに戻って、シフト表だけは見ておいて何か不都合なことがあったら、可奈に話してシフトをチェンジしてもらいなさい
交代要員のうち、上級生らしい2人が言う
はい、先輩それじゃあ、お先に失礼します
あ、このパン、向こうに持って行くのなら、あたしたちで運びますよ
休憩に向かうテニス部の人が、オレがパンを詰め終わったパッドを見て言う
そのパンを運んでくれるのなら、ついでに可奈さんに伝言を頼むわ
克子姉が、その子に言った
1時30分になったら、ここへ来てってそれまでは、お昼ご飯を摂らないでって言っておいて
ああ素子とくるみが作ってくれたお弁当 可奈センパイの分もあるんだ
判りました伝えます
今まで手伝ってくれた4人がパンのパッドを抱えて外へ向かう
それで、新しく来てくれた皆さんは、あたしの仕事を手伝ってあなた、オーブンの方、1人でやってちょうだい
判った克子姉
それで愛ちゃんとマナちゃんは先に休憩室でお昼を食べて
いきなり2人抜けちゃって、大丈夫
マナが、克子姉に尋ねる
お二人の代わりは、ヨミが勤めますっ
休憩室からヨミが出て来た テニス部の人たちは、突然現れた見知らぬロリ巨乳の少女に驚くが
はい、気にしなーい、気にしなーい
ヨミは巫女の力で、自分の存在を認知させる
あ、いいんだ
うん、いいのよねこれで
あっさりとテニス部員たちは、ヨミを受け入れた
そしたら、ヨミちゃんはテニス部の人たちとパンの成形あなたはオーブンね
オレはパンを焼くのをメインに克子姉自身は、テニス部の人たちの指導もする
じゃあ、ご飯食べちゃいます
マナと愛が休憩室へ 1時30分になると可奈センパイがパン工房にやって来た
はーい、代わりまーす
ごちそうさまでした
ほぼ同時にマナと愛が休憩室から出て来る 休憩室の中のモニターで、可奈センパイがやって来るのを確認していたんだろう
そしたら、あなた可奈さんと寧ちゃんと一緒に休憩して
あたしは、その次でいいわ
でも、オレ、2時に約束が
判っているわだから、ここでなるべく多くパンを作っておきたいのよ
克子姉は、パン生地を捏ねながら言う
多分、3時30分ぐらいにもう一度、お客様が増えると思うからだから、今のうちにね
部活の発表の終わった子が家族を連れて、食べに来ると思う
だから、あたしはもう少し作業を続けるわ
いやそれなら、克子姉はいつまでたっても食事できないじゃないか
次なんてない
あたしはいいのよここの責任者なんだから
いいことなんてないよ克子お姉ちゃん
そうです克子さん
マナと愛が克子姉に
テニス部の人たちには、マナが指示して作ってもらうから
オーブンは愛が見ます
わたくしもまだパンは、そんなに上手くはできませんが、お手伝いしていますから
ヨミも、克子姉に微笑む
そんならさっ、あたしが残るよあたしは、克子お姉ちゃんが帰って来てからご飯にするこんだけ人数がいれば、ちゃんとやれるって
最後に寧が、克子姉にそう言った
そうだよ、ちゃんとご飯は食べてくれそんなの、せっかくお弁当を作ってくれた素子とくるみに悪いよ
さあ、行きましょう克子さん
可奈センパイが、笑って克子姉を促す
判ったわじゃあ、少しの間だけ任せるわよ
克子姉は折れてくれた
任せておいてっ
ちゃんとしておきます
頑張りますから
ゆっくり食べていいからねっ
マナ、愛、ヨミ、寧に任せてオレと可奈センパイと克子姉は休憩室に入る
公、待ってたわよ
部屋の中にはまり子と月子と黒瀬安寿が居る
あれ、まだ食べてないんだ3人とも
弁当は届いていたのに、3人ともまだ手を付けていないようだった
公と一緒に食べたかったから
まり子の言葉に
あら、親友のあたしを待っててくれたんじゃなかったの
そう言えば、まり子は朝、散々テニス部の人たちに可奈は親友ってアピールしてたっけ
可奈のことも待ってたわよはい、お弁当ヨミちゃんたちが食べているのを見てたけど、すっごいわよ
まり子が、オレたちに弁当を手渡してくれる
今、お茶を入れますね
月子はお茶の準備をする
どれどれうわっ、豪華
弁当の蓋を開けて、中身を見て驚く可奈センパイ ええっと、和風の松花堂弁当っていうんだっけ 弁当箱の中が細かく仕切られて、色々なおかずが入っている みんな、すごい手が込んだ料理ばかりだ 見た目も美しい
素子お姉様が、お作りになられたお弁当ですもの
まり子は、素子の超お嬢様校の後輩だ まり子が高1で、素子は高2
うふふ、わたくし、素子様のことを素子お姉様って呼ぶ日が来るとは想像していなかったわ幼稚部から存知上げていたのに
ああ槍のお嬢様ねお料理、お上手なのねぇ
和食に関しては、あたしよりも上手よ素子さんもくるみさんも
克子姉が、自分の弁当を開けて言う
素子さん、テニス部の皆さんの分も作られようとなさったみたいなんですけれど
月子が、急須でお茶を入れていく
無理よねこんなに大変そうなお弁当うちの部の子全員の分なんて、とてもとても
いいのよ家からお弁当を持って来ている子たちも多いし、こういう素敵なお弁当は家族だけでいただきましょうるるんっ
可奈センパイは昼食は用意してなかったの
家からは何も持って来てないわどうせ、何か用意してくれているはずだって思ってたわよお屋敷の子たちが、何もしないわけないもの
可奈センパイも、すっかり家族の一員になっている
あなたもこっちに来て、いただきなさい
まり子が、監視システムの前に座っている黒瀬安寿に言う
監視はお屋敷でもしているから、食事くらいは問題ないぞ
真面目で良い子なんだけれどまだ、オレたちの流儀に慣れていないんだよな、この子は
ちょっと話してみたんだけれどなかなか良い子ね、公
まり子が、黒瀬安寿を見て微笑む
わたくしの警護役に欲しいくらいよハイジは、わたくしよりも他の子たちの方が気が合うみたいだし
残念だけれど彼女には、この子の身辺警護を専門にやってもらうつもりよ
克子姉がまり子に言う
公の警護ならイーディさんが居るじゃない
イーディちゃんは、年末にはアメリカに行く用があるのよそれに、彼女は目立つでしょだから、この子には普通に見える子も必要なのよ
ミタマとキヌカも居るけれどあいつら戦闘力ばっかり凄くて、警護役としては注意力に欠けてるところが多いから
ミタマちやんたちとこの子とセットにしたら、攻撃と警戒と両方出来てちょうど良いと思うのよ
克子姉とオレで、説明する
ああ、なるほどねぇ
まり子は、ずっとここに居たの
ええ、ずっと居たわ月子さんとあの子と
可奈センパイに問われて、まり子は視線で月子と黒瀬安寿を見る
このお部屋には色んな人が出たり入ったりしていたけれどわたくしはずっと、ここのモニターであなたたちの様子を観ていたわ月子さんとお喋りしながら
観てるだけじゃ、つまらなくないあたしたちのお店の手伝いをしてくれとは言わないけれど外に出て学園祭の様子を見てくれば良かったのに
外なんてダメよ公が心配するでしょ今日の状況じゃ、わたくしのために警護役の子を用意してもらうわけにもいかないもの
今日は名家のお嬢様は警護上の問題で、オレたちの学園祭に来ることを禁じてある まり子は、名家のお嬢様ではないけれどトリイ電子という日本を代表する企業の社長令嬢だ しかも、まり子はテニス部の人たちを信用させるために、その事実を自分から公表してしまった これでは、うかつに一人で外に出るわけにはいかないか
それに、ここで観ている方が面白いわよわたくしの学校の学園祭とは全然違うんですもの
ええ、わたくしたちの学校だと生徒が飲食物のお店を出すことなんて、許可されないわクラブ活動の成果発表だけよ
超お嬢様校では、模擬店は無理か
というよりクラブ活動の発表をする機会が学園祭しかないのよわたくしたちの学校は、外の大会とかには一切出ないから
名家のお嬢様たちを保護するために運動部でも対外試合は一切しないんだってさ
オレは、みすずや瑠璃子たちから聞いたことを、可奈センパイに伝える
ああ、判ったわ大会の会場で、よその学校の人がお嬢様たちに絡んできたりするのねあたしもテニスの県大会の時に、変な男の子たちに声を掛けられたことがあるから判るわ
あら、可奈声を掛けられたの
まり子も、本質的には箱入り娘だから、こういう話には興味があるらしい
よく掛けられるわよあたし、美人なんだからっ
可奈センパイは、うちの高校の2年生で1番可愛いと言われている
声を掛けられてどうするの
どうもしないわよ適当なことを言って、その場から離れるわあたしはノブのセックス奴隷なんだからほかの男のことなんて、ゴミだとしか思ってないわよ
可奈センパイ、それは言い過ぎなんじゃ
可奈のそういうところ、わたくし大好きようん、そうねわたくしにとっても、公以外の男性は無意味ようふふふ
どうしたの、まり子
不意に笑い出したまり子に、可奈センパイが尋ねる
わたくしも、可奈もそれから月子さんも克子さんもみんな、公に愛されてるんだなって思ったら、嬉しくなったのよ
ああ、それ感じるわセックス奴隷仲間っていうか、ノブとセックスした子は、みんなあたしの家族なんだって
ええ、ここのモニターで、ずっと公が働いている様子を観ていたんだけれどそれだけで、胸がキュンてなるのよ
うん、それも判る
それに他の子たちも、どんどん公の手助けに来てくれているでしょそれを観ていたら嬉しくてしかも、みんな、公としているのよね
うん、してるしてる克子さんも、寧さんも、マナちゃんも、愛も、イーディさんそれに、あたしも
それからハイジ、ミタマさんとキヌカさん、リエさんとエリさん、月子さんに夜見子さん、麗華さんも
みんなノブとセックスしている子ばかりなのね
そうよ、みんな、わたくしたちの家族で姉妹よ
まり子がそう言うと可奈センパイは、黒瀬安寿を観て
ノブこの子、昨日、手に入れた子よねもうした
それはつまり黒瀬安寿ともうセックスしたかということだ
まだていうか、可奈センパイ食事時だよ
いいじゃない気になっていたんだからへえ、まだなんだ
そんな可奈センパイに、まり子が
可奈、判ってないわねぇセックスしていたら、公とこの子の距離は、もっと近いわよこれぐらい雰囲気で判らなきゃ
ああ、そうねしてたら、公はもっとこの子に優しくし接してるわよね
昨日は、お屋敷に戻ってからも、色々あったんだよ
そうまあいいわこの子とする時は、あたしも呼んでね見たいから
ああ、公わたくしも立ち合うわよ
ホント可奈センパイとまり子は、気が合っている
別に良いけどさ
あなたも良いわよね
良いでしょ、あたしたちあなたのお姉様になるんだから
まり子と可奈センパイは、黒瀬安寿にも迫る
えっ、あのわ、わたし
黒瀬安寿は困惑していた 彼女にはまだ、オレとセックスするという覚悟はできていない 月子が、ススッとみんなにお茶をくれた それで場が和む
それでは、いただきましょうか
うんいただきます
オレたちは、昼食を食べ始める
ところで公、あなた、この後、エリカさんとジャスミンに会うのよね
ジャスミン、ああ茉莉花さん、ピアノの子ね
可奈センパイは、お茶を飲みながら言う 茉莉花というのは、英語でジャスミンのことらしい だから、家族の何人かは、茉莉花をジャスミンと呼ぶ
あの子は土日しかお屋敷に来ないからあたしはまだ2回ぐらいしか会ってないのよ
茉莉花は、音楽科のある高校の寮に居るから土日しかお屋敷に来ない
わたくしも、同じくらいよなかなか日が合わないから
まり子も可奈センパイもちゃんとした実家のある人たちだ お屋敷に来るのは、週に何回かだ まり子の両親は、香月家との関係を強化するという理由で、まり子の外泊を許してくれるが
可奈センパイの場合、本当の一般家庭だからお屋敷に泊まっていくこともマレだ
でも、大人しくて可愛い人よね妹のエリカさんは、明るくて元気過ぎる子で、ちょっと対象的ね
可奈センパイは、茉莉花とエリカの姉妹を、そう評する
それで公あなたがジャスミンと会うときは、わたくしも立ち合うからね
今日、わたくしがここに来てることは、お屋敷の皆さんは知っているんでしょ
そりゃ知っているはずだ というか、今、この部屋での会話も向こうで聞かれているかもしれない
さっきエリカさんからメールを貰ったのよわたくしにも、立ち合って欲しいって
エリカが
ノブは、ジャスミンさんから何て言われたの
いや茉莉花の友達を紹介するから、会ってくれって
ふーん何かあるのねきっと
オレも、それは判っている あの大人しい茉莉花が自分の学校から、わざわざオレの高校の学園祭に友達を連れて来るって言うんだから 何か理由があるんだ
あたしは、今日は最後までカフェ・テラスに居なくちゃいけないからまり子、あなた、あたしの分までノブの手助けをしてね
判っているわよ可奈
可奈センパイとまり子は、微笑み合った
そのうち、まり子とノブと3人でセックスしたいわ
いつでも良いわよわたくしと公で、可奈が泣くまで責めてあげるわ
何よ、あたしとノブでまり子を泣かせてあげるわ
二人は本当に意気投合している
すみませんクリスマスというのに体調不良で伏せっております
今年もサンタは来ない
1390.学園祭2日目 / 茉莉花の友人
わたくしもお供致しますわ
みんなで昼食の弁当を食べていると月子がオレに言う
そうね、月子さんにも来てもらった方が良いわよね、公
茉莉花の学校の人たちに会うのに巫女の力は必要なんだろうか
一緒に行きなさい月子さん、朝から休憩室に籠もったままでしょ
確かに克子姉が言う通りだな
申し訳ございませんわたくしはパンのお手伝いはできませんので
その月子の言葉が嘘なことを、オレは知っている 鷹倉神社の巫女たちは、人の記憶を読み取ることができる 実際、克子姉のセックス・テクニックは、どんどん読み取って実践しているのだから克子姉のパン作りに関する技術だって、読み取るのは簡単なはずだ 月子がそれをしないのは妹たちが、パン作りを通じて他の家族と仲良くなっていくのを邪魔したくないからだろう ルナやコヨミちゃんは、アニエスたちにヨミは瑠璃子たち、同世代の子にパン作りを習っている そこへ鷹倉神社の巫女たちの長女である月子が入っていけば、妹たちが気を遣う
そういうことではございません妹たちは、ずっと公様のお手元でお世話になりますが、わたくしはいずれ京都の神社に戻らなくてはならない身でございますので
オレの心を読んで、月子が答える 京都の鷹倉神社は歴史のあるお社だから誰かが継がねばならない 不思議な力のある巫女が集まって来る前から、鷹倉神社は京都の地にあった 月子たちは、その神主の血筋も引き継いでいる 今はまだ、関西ヤクザとの抗争が完全に終結していないから、京都には戻れないがいずれは、姉妹のうちの誰かが正式に巫女となって神社を守ることになる
あら、京都のあなたたちの神社の前に、あたしのパン屋の支店ができてもいいのよ
克子姉は、月子に優しく微笑む
うん今、鷹倉神社の正面に香月セキュリティ・サービスの関西支社のビルを建てているところだし
鷹倉神社とその巫女は、香月家が永久に管理する2度とヤクザたちの玩具にはさせないというのが、ジッちゃんの決定だ その意思表示のため、香月セキュリティ・サービスの関西支部は、鷹倉神社のガードを固める その関西支部のビルの1階をパン屋にして、月子がオーナーになることだってできる
とにかく先のことは、まだ考えなくて良いよ月子は来年の春までは高校生なんだから、今は学生生活を楽しんでくれ
高3の月子の卒業まで、まだ数ヶ月ある
はいありがとうございます、公様
月子さんてホント真面目よねしかも綺麗美里さんたちと一緒に、カフェ・テラスのお手伝いをしてくれても良かったのに月子さんも、あの人たちと同じなでしこ科でしょ
可奈センパイは美里たちが娼婦候補生であることを知らない
あの方たちとわたくしとは、同じ科ですがコースが違うのです
ああ、月子はミタマと同じコースだから
慌ててオレも説明する
今日は美里たちは美里たちで、同じコースで仲良くなって欲しいんだ美里以外の3人はみんな地方から出て来た子だし
住友桃香、白旗せつな、朝比奈希美の3人は地方都市で企業を経営していた父親の借金を返済するために娼婦になることを受け入れた
美里さんたちの分のお弁当もここにあるわ
まり子が、お屋敷から運んで来た弁当の入ったパッドを指差す 素子が、名家の令嬢だった美里のことを忘れるはずがない 美里も、幼い頃から超お嬢様校に通ってたんだし
ああ、あの人たちのお昼休憩は、あたしたちの後になっているからあたしが戻った時に、ここへ来るように言うわ
そうね、寧ちゃんと一緒に食べてもらいましょう
可奈センパイと克子姉が、そう言った
それで公には、あたしと月子さんが付いていくんだから、警護役はあなたね
まり子は、すっかり小さくなって食事をしている黒瀬安寿に言う
当たり前じゃないあなたは公の身辺警護役になるんでしょ早速、供をしてもらうわ
正式な名家のお嬢様ではないけれどまり子は鳥居家の社長令嬢だ 警護役は居た方が良い
ここは大丈夫よ外にミタマちゃん、キヌカちゃん、ハイジちゃんも居るし、あなたが居ない間はドアをロックしておくから
パン工房のドアの開閉は、監視カメラで必ず確認するようにして中からしか開かないようにする 今日は、女子テニス部の皆さんの出入りがあるから、ドアを解放していたけれどいつもの状態に戻すのか
それとあなた、イーディちゃんの様子も見に行ってあげて
そうねわたしも、どんな感じになっているのか興味があるわ
克子姉の提案に、まり子が乗る 今、イーディが校庭でスクール水着柔道大会の準備をしている
今日は、ずっとあなたをパン工房に拘束しちゃっているけれどあなたはみんなの旦那様なんだから、イーディちゃんの方にも顔を出してあげて
ああ克子姉の言う通りだな
そうだねイーディの大会は3時からだって言ってたけれど、今日のカフェ・テラスの様子では、オレはここでパンを焼かないといけないと思うんだ
でも試合はテレビ中継されるからパン工房の中に居ても作業しながら、観ることはできるだろう
うんだから、今のうちに顔を見に行って来るよ
やぁ連れて来たよ、彼女たち
約束の2時にパン工房の外へ出ると マルゴさんが、茉莉花たちを連れて来てくれていた ああ、駅までマルゴさんが、駅まで茉莉花たちの友達を迎えに行ってくれたんだ
あたしの車は教職員用の駐車場に駐めてきたから、ここまで歩いて来たよ
ありがとうございます、マルゴさん
オレはお礼を言って連れて来てくれた少女たちを見る ええっと茉莉花とエリカと それから、他に3人の少女 エリカは私服可愛いプリント地の和歌ピースの上に、ピンクのカーディガンを羽織っている 茉莉花は、彼女の高校の青いブレザーの制服姿 茉莉花の友人3人のうち、2人は茉莉花と同じ制服 ただし、1人はきちんと制服を着ていて髪も綺麗にまとめて、お団子頭にしている切れ長の眼の大人しそうな子だが もう一人の子は、制服の上に男物の黒い革ジャンを着ていて、スカートも短くたくし上げている髪の毛もワイルドにボアッとした感じになっているし顔も赤い口紅が目立つくらい、派手に化粧している目付きも悪いし何か、すでにとても不機嫌な様子だ 最後の1人は、紺のセーラー服ていうか、この子は中学生だと思う1人だけ幼い感じだ緊張しているのか大きな瞳が潤んでいるこの子が持って居るのはバイオリンのケースだと思う髪はえっと、ボブカットってやつだよな 3人とも、とても綺麗な子だけれどとにかく、革ジャンの子の不機嫌さがスゴイ さらに茉莉花とエリカが、暗い顔をしているのも気になる
良信くんたちは変わったメンバー構成だね
マルゴさんは、オレとまり子と月子と黒瀬安寿という組み合わせを見て微笑む
今日は学園祭だから、みんな忙しいんですよ
うん、あたしも懐かしいよ
ああ、マルゴさんも去年までは、オレたちの高校に通ってたんだっけ 学籍が偽物だった寧と違って、マルゴさんはアメリカからの留学生ということになっていたからちゃんと高校を卒業することができた 今もどこかの大学に籍だけはあるはずだ全然、通っていないみたいだけれど
とりあえず、外に立ったままなのもなんだから学生食堂に入ってお茶でも飲もうか
オレたちのカフェ・テラスでも良いけれど屋外だし女子テニス部の人たちに、オレが知らない女の子たちとお茶を飲んでいる姿を見られると説明するのが大変だし
それじゃあ、学生食堂に行きましょう
オレは、みんなを先導して学生食堂へ向かう オレたちのカフェ・テラスほどじゃないけれど 学園祭の最中の学生食堂は、ほどほど混んでいた 混んでいるはずなのに
さあね
オレたちが座ったテーブルの近くに居た生徒たちが全員、慌てて席を立った 逃げ遅れた下級生に
バカ、お前早く、こっちに来い
と、上級生の男子が声を掛けている
ほら、あたしはここの学校では、有名だったから
ああマルゴさんは今年の5月までは寧と組んで、街で不良学生やチンピラを潰し廻っていた伝説の不良少女だった
寧は金髪を黒く染め直して更生したってアピールできたけれどあたしは生まれた時からずっと金髪だからね
今でも上級生たちは特に、マルゴさんを恐ろしい人だと思っている 寧を襲った白坂創介の配下の教師をマルゴさんが再起不能にした現場を見た生徒たちも、まだ卒業していないし
はーい、ようこそマルゴお姉ちゃんこれ、みんなで食べて
パン工房に通じるドアから、寧がやって来てオレたちに焼きたてのパンを持ってきてくれた
ジャスミンちゃんとエリカちゃんは、もうお昼食べたっ
あ、はいお屋敷の方で、素子お姉様のお弁当をいただきました
寧の問いに、エリカが答えるやっぱり少し、元気がない
うん、とっても美味しいんだってねっあたしは今から食べるから、みんなとはお話できないんだよっだから、ヨッちゃん、あたしの分までこの子たちのお話を聞いてあげてねっ
寧は周囲の生徒たちにも聞こえるように、大きな声で言う
ああ、飲み物を持ってくるのを忘れてたよっヨッちゃん、悪いんだけれど、皆さんの飲み物は自販機で買ってくれる
うん、別にいいけれど
みんな、何がいい
パンなんだから、あたしは紅茶でいいわ冷たい方ねレモンティ月子さんは
わたくしは、砂糖無しの紅茶を冷たい方で構いません
まり子と月子は、すぐに答える
あたしはコーヒー温かい方微糖ねジャスミンちゃんたちは
マルゴさんが、茉莉花に尋ねる
わたしも冷たい紅茶をレモンティをいただきます
わたし、温かい方のミルクティあ、持って来るのを手伝います
エリカが席を立とうとするが
いいのよ、エリカさんも今はお客様なんだからっていうか、ここはあなたがお手伝いしますって立つところでしょ
まり子が、黒瀬安寿を睨む
は、はいぃぃ、そうでした
慌てて立ち上がる黒瀬安寿の様子がおかしかったのか、オレたちを眺めている生徒の中から笑いが起きた
そちらの皆さんは何にするの
すっかり、まり子がオレたちの側の女主人みたいになっている オレと黒瀬安寿はまるで下僕だ
松下さんいいのよ
茉莉花が、切れ長の眼の大人しそうな子に言う
わ、わたしは温かい紅茶をお砂糖の入ってないのをお願いします
美樹さんは
エリカが、大きな瞳のセーラー服の子に尋ねた エリカが中2だから、この子も同じぐらいなのかもしれない
わたし温かいカフェ・オレをいただきます
あたしはさブラックしか飲まないのよそうねあそこの自販機の中ならSコーヒーが良いわ温かい方のブラックだからね
革ジャンの目付きの悪い子は、聞かれもしないのに言う しかしまた、ことごとくバラバラだな オレは、黒瀬安寿を連れて自販機に向かう オレたちはミナホ姉さんに、万一の場合に備えてある程度の金額をチャージした鉄道のカードを持たされているから、それを使うことにした
おい、パン屋何なんだ、あの人たちは
と、オレに声を掛けて来た上級生も居たが
済みません、オレもまだ良く判らないんです
と、素直に答えておく とりあえず、注文通りの飲み物を買って オレは、黒瀬安寿にも尋ねる
あたしもいいんですか
なぜ、ダメだと考える
この子は真面目過ぎる上に、少し気の弱いところがある
じゃあ、あのオレンジジュースを
にもかかわらず、他の人とは違う飲み物を選択する辺りがこの子の面白いところだ
よし、そんじゃ持って行くぞ
オレと黒瀬安寿は、買った飲み物を抱えて元のテーブルに戻す
済みません、いただきます
お団子頭の高校生とボブカットの中学生は、オレに礼を言ったが 革ジャンの子は、オレを無視して飲み物を受け取る
じゃあ、座ってパンを摘まみながら、お話ししようか
マルゴさんに言われて、オレと黒瀬安寿も席に着く ああ、寧はいないもうパン工房に戻ったようだ
あのご紹介致しますこちらは、わたしの学校のクラスメイトで松下真樹さんです
茉莉花が隣に座っている、お団子髪で切れ長の眼の女の子をオレたちに紹介してくれた
松下です
松下さんは、小さく頭を下げる 茉莉花のクラスメイトということは高校1年生か
そしてそのお隣は、真樹さんの妹さんで美樹さん
美樹です
ボブカットの眼の大きい子も、ペコリと頭を下げる
ああ、この子たちは姉妹なんだ
お姉さんが高1なんだから、妹はやっぱり中学生だ
それから、そのお隣が
五十嵐イズミよっ
革ジャンの子が、不機嫌な態度で名乗る 何なんだろうこの子は
五十嵐さんは、わたしのお隣のクラスの方です
隣のクラス 革ジャンの下に着ているのは、茉莉花と同じ制服だから学校は同じだけどクラスは違う うーん茉莉花や松下姉妹とは、そんなに親しそうではないけれど 何より、この人は、どうしてこんなに態度が悪いんだ
ええと、彼のことは車の中で話したからもう知っているよね
マルゴさんが、笑顔をオレを示して言う
オレのことはもう茉莉花の友達たちに話している
わたしは、鳥居まり子
鷹倉月子です
まり子が睨んだから、黒瀬さんもすぐに名乗った
であたしが、マルゴ・スタークウェザー・クロモリなんだけれどえっと、ジャスミンちゃん、さっき車の中で話してくれたこともう一度、この人たちに話してくれるかな
マルゴさんが、茉莉花を促す
は、はいあの
マルゴさんはこの人たちとオレやまり子たちの集団を示したけれど 茉莉花はオレだけを見て、話し始める
あの演奏を演奏を聴いていただきたいんです
演奏って茉莉花の通っているのは音楽科だから、連れて来た3人は何か音楽をやっているんだろうけれど
えっと、演奏を聴いてどうしたら良いんだ
でも、オレは音楽のことは、よく判らない そういうのはミナホ姉さんや克子姉か渚でないと
それは聴いていただいた後にお話しします
茉莉花の顔は真剣だった エリカも、心配そうに姉を見ている
ちょっと待ってよあたしは嫌よそんなの聞いてないしやらないからねっ
革ジャンの五十嵐さんがムクレて叫ぶ
あたしは、藤宮麗華に会えるって聞いたから、付いて来ただけよっ
そしたら何よただの普通の高校の学園祭じゃないっ何なのよっどういうこと高畑さん
五十嵐さんは、茉莉花を責める
ああ、藤宮さん藤宮さんなら、もうすぐ来るよ
マルゴさんが、クスッと笑って言った
そうだよね良信くん
ええっとそうだなもうそろそろ、またレイちゃんがお屋敷から、パンを車で届けてくれる時間になる
は、はいもうすぐ来ると思いますけれど
でも、いいのかレイちゃんが来ることを、話してしまって
え藤宮麗華が、また来るんだ
オレ、こないだ来たって時は見てないんだよっ
ちょっと待って、あたしみんなに知らせてくる
ほら、オレたちの様子を見ていた生徒たちが騒ぎ始めちゃったぞ
ここの高校には、よく藤宮麗華さんが来るんだよそうだよね、みんな
マルゴさんが、生徒たちを煽る
あ、あたしは見ました遠くからでしたけど
あたしは一緒に写真撮ってもらいました
マルゴさんのことをよく知らない1年生の女の子たちが、すぐに反応する
ということだからジャスミンちゃんは、嘘は言ってないよ
マルゴさんは、五十嵐さんに微笑む
そ、それならいいんですけれどでも、あたしはゼッタイに歌いませんからね
五十嵐さんは、楽器じゃなくて歌の人なのか
でも、五十嵐さんはただのミーハー気分で、藤宮さんに会いに来たんじゃないでしょ君はできることなら、藤宮さんと知り合って、芸能界の人を紹介してもらいたんんじゃないの
芸能界って ああ、そうか一般の人は、レイちゃんとキョーコさんのテレビでの闘いを香月セキュリティ・サービスの宣伝番組だと思っているんだっけ だから、レイちゃんのことも芸能関係だと思っている
まあ、藤宮麗華さんだけでなくここの高校には、テレビに出ている人がたくさんいるんだよみんな、そうだよね
マルゴさんが、さらに周囲の生徒たちを煽った
ああ、今、すぐ外で白坂雪乃の番組に出ている双子がトークショーしてますけど
安城ミタマもその先で、皿回しの曲芸をやっているし
ていうか、昨日今日は見てないけれど白坂雪乃自身が、ここの高校の生徒だし
生徒たちが、口々に言う
あたしも今まで言わなかったけれど、プロの格闘家なんだよねあたしの試合もテレビで放映されてるし今日はイーディが
あ、何か校庭のところでリングを建ててたぞ
マルゴさんの言葉に、男子生徒が乗ってくる
テレビ局の車も来ていたわよ
それはさっきの国営放送のニュースのやつだろ
それとは別よだって、違うテレビ局のマークだったもの
イーディたちのスクール水着柔道大会を中継放送する民放テレビ局も、もう着いているんだ
ああ、イーディたちが今日の学園祭でする格闘技大会は、生中継で放送されるんだよ
マルゴさんは、平然と生徒たちに言った
あのマルゴさんは、イーディたちの方へ行かなくていいんですか
ああ、今日はあたしは見ているだけちょっと顔は出すけれどね今日は、全部イーディの企画だから
あたしは、ほらこの間の大会で優勝しちゃったからさ今日は、出場しない方が良いんだよ
いや、だって今日は、グレース・マリンカさん以外は、イーディと高校生の大会ですよね
他の出場者は工藤遙花と剣道マリアとライン晴子さんだと聞いている
それがささっき午前中に、ライン晴子さんを迎えにゴールデンバウム・ジムまで行って来たんだけれど
ああ、朝、そう言ってたっけ 茉莉花とエリカも連れて、ライン晴子さんが住み込んでいるジムまで行くって
そしたらさジムの主のルドルフ聖子さんがさテレビ中継があるのなら、自分も出るって言い出してさ
でもイーディの企画ってスクール水着柔道大会ですよ
ルドルフさんて20代半ばだと、思うんだけれど グレース・マリンカさんは、思いっきり闘えれば何でもいいて人だから、スクール水着に柔道の上着だけの格好もしてくれると思うけれど ルドルフ聖子さんて、もの凄く美意識にうるさい人じゃなかったっけ
それがさ、女子格闘技がテレビで放送される機会とか今は、なかなか厳しいからさあたしが優勝したこの間の大会だって深夜枠だったしいや、深夜枠でもキー局の放送だから、よくぞ放映したって感じだったんだよ
それが今日は日曜日の午後3時に、民放で生中継でしょこんな宣伝機会はめったに無いから、ゼッタイに出るって言い出したんだよ
ま、そういう細かいことはイーディに任せて、あたしはノータッチだけどねあたしは、出場しないんだから
マルゴさんはスクール水着柔道はやらないよな
ま、このパンを食べたら、みんなで様子を見に行ってみようよ
マルゴさんはパンを1つ取って口に入れる
うん、美味しいよみなさんもどうぞ
茉莉花が、困惑した表情をしている ああ、話が途中になったままだもんな
ジャスミンちゃんのお友達の件は、その後演奏してもらうっていっても、場所が必要でしょ
ピアノがある場所でないとね
茉莉花は高校でピアノを専攻している だからクラスメイトの松下真樹さんもピアノの演奏者なんだ
この中に、合唱部かブラスバンド部の人いるかな
マルゴさんが、学生食堂の中にいる生徒たちに向かって大きな声で尋ねる
あ、あたし合唱部です
1人の女生徒が、手を上げた
今、音楽室ってどうなってる今日は、合唱部もブラスバンド部も、演奏は講堂でしょ音楽室は、控え室ぐらいにしか使ってないよね
狭い音楽室では、人を集めて演奏や合唱を聴いてもらうのは無理だから
は、はい合唱部は、もう発表も終わりましたブラバンの子たちは、外で演奏してますから今はいません
そうええと、音楽室の管理は今でも大谷先生のままかな
はい、大谷先生です
じゃあ、大谷先生に伝えておいて後で、卒業生のマルゴが音楽室を借してもらいに行くって
大丈夫大谷先生なら、あたしのことはよーく知ってるから大谷先生の前歯が差し歯なのは、あたしのせいだし
じゃあ、みんなそういうスケジュールで行動しようかっ
学生食堂から、イーディたちがリングを設営している校庭を経由して音楽室か ここからのルートは、1本だ
じゃあ、せっかくだからパンをいただきましょうさあ、茉莉花さんたちも食べてこれ、愛が作って公が焼いたパンなのよ
まり子が、茉莉花たちにパンを勧める
久々に新キャラの名前を付けるのに時間がかかりました
すでにたくさんキャラがでているのでなるべく被らないようにしないと
いや、すでにヨミとコヨミちゃんとか存在しているんですか
なかなか大変なことになってます
1391.学園祭2日目 / 信用問題
・松下真樹/16歳茉莉花と同じ高校の音楽科のピアノ少女お団子頭にしている切れ長の眼の大人しそうな子
・松下美樹/14歳真樹の妹大きな瞳のボブカットバイオリン少女
・五十嵐イズミ/16歳茉莉花と同じ高校の音楽科の声楽科少女制服の上に黒の革ジャン化粧が濃くて、目付きが悪い
とりあえずオレたちは、1人2個ずつパンを取って、食べ始める
へえ、真樹さんはそんなにピアノが上手いんだ
マルゴさんが、茉莉花から松下姉妹のお姉さんの情報を引き出した
はい松下さんは、わたしたちのクラスで一番お上手です
大人しい茉莉花が、うつむき気味に答える
そんな高畑さんだって、とってもお上手ですわ
松下真樹さんが、恥ずかしそうに言う この人も、茉莉花と同しで大人しくて控え目なタイプの美少女だな 似た性格だから、気が合って友達になったんだろうか
わたしなんて松下さんのピアノには、追いつけないですホントに松下さんは、わたしの何倍もお上手でその
オレは、正直、ピアノの演奏のことは、良く判らない しかし、茉莉花が最初にミナホ姉さんの前で演奏した時 ミナホ姉さんは茉莉花の演奏を聴いて、すぐにもしプロのピアニストになりたいのなら、サポートすると言ってくれた ミナホ姉さんにとって茉莉花は、黒い森の娼館で生まれた妹だから茉莉花のことは大切に思ってくれている だけど、ミナホ姉さんは厳しい人だ 常にオレたちを試し試練を乗り越えた相手にしか、手助けはしない
茉莉花の演奏を聴いて、ミナホ姉さんは彼女のピアノの才能は確かだと感じたんだ
そうじゃなければ、ミナホ姉さんの方からプロを目指すのならサポートするなんてことを言い出すはずがない 茉莉花は、その場でミナホ姉さんの話を断ってしまった 自分はプロのピアニストになれるような腕前ではないと 茉莉花は音楽の先生を目指していると言っているからそれはそれで構わないんだけれど オレの心には、その時の茉莉花の様子が引っ掛かっている
それで美樹さんの方はバイオリンなんだね
マルゴさんは、今度は妹の松下美樹さんに話し掛ける セーラー服姿の美樹さんは、バイオリンのケースを大事そうに抱えている
確かバイオリンて高いんだよねそれも、かなり良い物なの
マルゴさんの言葉に、美樹さんは
いえ、これは別に、そんな、高いものではありませんあ、もちろんバイオリンですから、とても高いものなんですけれどでも、バイオリンの中では高い方じゃないというか安くはないというかええと、でも、普通の人からしたら、やっぱり高額なものなんですよね
澄んだ声で話すが緊張しているのが、よく判る
ゴメン、値段のこととか、どうでもいいことだよねそのバイオリン、美樹さんにとってはとても大切なものなんでしょ
マルゴさんは、優しく微笑んで黒髪ボブカットの大きな瞳の中学生に言う
は、はいわたしの宝物ですお父さんが、買ってくれたバイオリンですから
松下美樹さんは、愛おしそうにバイオリンのケースを撫でた
あなたも演奏を聴いて欲しいのかしら
まり子が、割り込む
あは、はいそうです
美樹さんは、顔を赤らめて小さな声で答える
それでそちらのあなたは、歌いたくないのよね
まり子は音楽科女子校の制服の上に黒の革ジャンを羽織っている五十嵐イズミさんに尋ねる
そう言ったろあたしは歌わないって
変に化粧が濃くて、口紅で唇の赤い五十嵐さんが、まり子を睨む
一応聞いておくけれど歌うってことは、あなた声楽科
当たり前だろあたしたちの高校には、ロック・ボーカリスト養成コースとかは無いからねふんっ
まり子の問いに、五十嵐さんはツンツンしながら答える セイガクって何だ オレには、よく判らないが今は聞かないでおくことにする
あら、そうなのどういうことなのか、だいたい判ってきたわ
まり子オレは、まだ全然判らないぞ やっぱり、今のうちにセイガクとは何か聞いておくべきだろうか
声楽というのは西洋音楽の主にクラシックの世界で、人間の声による音楽を指す言葉でしたわねソプラノとかアルトとか、テノールとかバリトンとか公様もお聞きになられたことがあると思いますわ
オレの心を読んで月子が教えてくれた ああ、そうか茉莉花の通っている音楽科で歌うっていうのは、クラッシック音楽を歌うってことなんだそういう学校なんだもんな クラッシック音楽を歌うことを専攻している人が、何でこんな入り込み口から間違ってしまったニワカのロック歌手みたいな格好をしているんだろ
で君も、声楽科の中では上手な方のかな
マルゴさんが、五十嵐さんに尋ねるが 彼女の代わりに、松下さんのお姉さんの方が答える
はい五十嵐さんは、声楽科のクラスでは、いつも学年のトップ3に入られています
この人も歌は上手いんだ
トップ3ったってあたしはいつもトップじゃないよ2番手か3番手なのさ
五十嵐さんは、またツンとなる
ふーん、そういうのってクラスで誰が何位とか、貼り出されるわけ
はい5位までは、毎月、学校の壁に名前が貼り出されますあの成績の良い生徒は、音楽大学への推薦入学の話もありますから
なるほど音楽科の高校っていうのは、なかなか大変なんだな
でジャスミンちゃんと松下さんのお姉さんも、ピアノ科では、いつも5位以内に入ってたりするわけ
あのはい松下さんは、入学以来ずっと1位ですわたしはいつも5位くらいですけれど
そんなことないです高畑さんは、最近、どんどん力を伸ばしていますから今月の発表では、3位だったでしょ
マルゴさんの問いに、茉莉花と松下真樹さんが答える 茉莉花はついこの間ので、お母さんが病気で入院していて、精神的に辛かったんだよな 今はお母さんの病気も、良くなってきたし生まれてからずっと離れ離れだった妹のエリカとも会えた
毎週末お屋敷に来るようになって、かなり明るくなっている
そういうのがピアノの演奏にも表れて、先生から褒められたって話してくれたっけ
高畑さんならきっと、わたしよりも上手になるわ
わたしは、松下さんみたいに弾けないです
そんなことないわわたし、高畑さんのピアノ好きだもの
わたしこそ松下さんのピアノが大好きです
クラスメイト同士でそんなことを言い合っている そして、五十嵐イズミさんは同じ高校の別の科の2人の様子を、不機嫌そうにジッと見つめている
ふんふん、なるほどねよーく判ったわ
まり子はふふんと笑って、自分のレモンティーを飲み干す オレは、相変わらず良く判らない
さてみんな、高校生なんだからパンの2個ぐらいペロッと食べられるでしょ食べちゃってよそれから、次の場所へ移動しよう
マルゴさんが笑顔で、自分のパンを頬張る
うん、良信くん君たちのパン、また美味くなってるよね
ほら、あなたもポケッとしていないで食べなさいこういう時には先に食べて、いつでも動けるようにしておくのがお仕事でしょ
まり子が困惑顔でオレたちの様子を見ていた黒瀬安寿に言う
あ、はいそうでした
慌てて、黒瀬安寿はパンを口に突っ込む
もうガッつかないのお上品に食べなさいわたくしたちが恥ずかしいでしょ
は、はひっ
まり子の以前の警護役はハイジだったけど
ハイジは、まだ13歳なのに、妙に大人びた落ち着きのあるからまり子の軽口も全て流してしまって、会話が噛み合っていなかった
黒瀬安寿は性格の良い子なんだけれど、気弱で周囲の雰囲気に呑まれやすい性格だからかえって、マイペースなまり子と合うかもしれない
公様もお食べ下さい
月子が、小声でオレを促す ああオレが食べないと、お客さんである松下姉妹がパンに手を付けづらいか
美樹さん、どうぞ食べてわたしは、いつもいただいてますけれど、とっても美味しいパンなんですよ
今まで黙っていたエリカが同年代の松下姉妹の妹さんにパンを勧める ようやく、バイオリン少女の美樹さんもパンを食べてくれた
どうです
中学生同士が、微笑み合う この学生食堂のオレたちの周囲は相変わらず、生徒たちが数メートル離れて遠巻きにして眺めている 何なんだろう、この変な集団はという顔をして まあ中心にいるのが、恐ろしい卒業生のマルゴさんだからみんな、放っておいてくれているけれど
気になさらないで下さい大したことでは、ございませんわ
月子が、オレの心を読んでそっと囁く
大したことないって、月子まさか
巫女の力で、ここにいる人たち全員の記憶を操作するとか
いえ、力を使うまでもございませんわ
皆さん、公様の周りで変わったことが起こることにはもう慣れていらっしゃいますから
生徒の皆さんは、また、パン屋の1年生が妙なことに巻き込まれているとしか思っていらっしゃいませんわ
月子は、クククと微笑み
皆さん公様こそが、いつも事態の中心におられるということに気付いていらっしゃらないんです
ああオレが事件の中心人物なのではなく いつも、オレが誰かの起こした事件に巻き込まれていると思っている
公様ご自身もですわ
公様、もう一度、しっかりとご自覚なさって下さいませ公様は、いつもわたくしたちの中心にいらっしゃるんですわたくしたちは、公様のお望みのままにどんなことでも従いますし、どこへでもお供致しますそのことをお忘れなく
オレ、マルゴさんが来てくれたことでちょっと受け身になっていたな 本当なら、オレがどんどん茉莉花や松下さんたちに、話を聞いていかないといけないんだ
いえ違いますわ今の形は、これはこれとしてマルゴお姉様にお任せして良いんですわたくしが申し上げたいのは、公様がご自身で任せていると自覚なさっていて欲しいということですそうすれば、お心にもっと余裕ができますわ
月子は、小さな声でオレに言ってくれた マルゴさんが会話を主導してくれているのをただ流されて聞いているだけなのと 今はマルゴさんにそういう役目をやってもらっているだけだと思って自分から積極的に聞き役に廻るのでは最終的な成果が違う 自覚しなきゃ オレは常に家族の要でなくてはいけない どっしりと構えてどんな事態も受けとめないと オレは月子に礼を言って改めて、考える いつも大人しい茉莉花が、今日オレたちの学園祭に、この3人の音楽少女を連れて来た理由は何だ いや、茉莉花は言っていたオレに会ってもらいたい人がいると この3人をオレに会わせたい理由 茉莉花は、この3人をどうしたいんだ オレは改めて、茉莉花たちを見る
ええ、バイロイトの音楽祭へは去年行ったわわたしは初めて連れてってもらったんだけれどうちは祖父が音楽好きなのよ
まり子は音楽の話を、茉莉花と松下さんのお姉さんたちに投げ掛けた エリカと話していた松下さんの妹もまり子に注目する
本当なの良くチケットが手に入ったわね
あ五十嵐イズミさんも、食い付いてきた
バイロイトの音楽祭は、チケットが年々取りにくくなっているって聞いているわよチケットを申し込んでも、手に入れのは何年も後って聞いているわよ
あら、わたしの家には毎年、招待状が来るわよ
え、何であなたの家、音楽関係なの
驚く五十嵐さん
違うわよちゃんと名乗ったわよわたしは、鳥居まり子だって
わたしの家は、トリイ電子って電気機器のメーカーなのよお祖父様が創業者で会長で、お父様が今の社長それで、さっきお祖父様は音楽好きって話したわよね
ああ、確か鳥居さんのお祖父さんが最初に作って売り出したのはレコードプレイヤーとスピーカーだったんだよね
マルゴさんが会話に加わる
そうです今では、トリイ電子はありとあらゆる電気製品を作ってますけれど最初は、音楽に関わる機械の会社だったんですだから、今でも音響の機械や、録音機器なんかも力を入れて作り続けてますしヨーロッパでは、トリイ電子の音響の機械は、とても評判が良いんですわ有名な大劇場の多くが、うちで作った機械を使っていますからかれこれ30年くらい
トリイ電子は世界的な電気機械企業だもんな
使っていただくだけでなくトリイ電子から、世界の音楽劇場や音楽大学に寄付もしていますそれも、普通にお金を寄付するだけじゃなくて色々なうちの会社の電化製品をプレゼントするとかもこの間も、ニューヨークのオペラ劇場に最新型の洗濯機と乾燥機を寄付したわよそういうことも、ずっと続けているからうちのお祖父様のところには、毎年、世界中の音楽祭から招待状が送られてくるのよ
ここでまり子は、さらなる切り札を切る
ああトリイ電子の文化貢献事業として、若手の音楽家に奨学金も出しているわよ海外留学の費用とか
松下さんの妹さん美樹さんの眼の色が変わる
あのそれ、どうしたら応募できるんですか
美樹止しなさい失礼よ
姉の真樹さんが、妹を制した
ああトリイ電子の奨学金は、音楽大学の学生さんが対象よ高校生や中学生は受け付けていないわ
まり子が、さらりと言うと松下さんの妹の表情が曇る
わたしがお祖父様にお願いしたら何とかなるかもしれないけどね
また、松下美樹さんの顔色が変わった 松下姉妹は、何らかの理由でお金に困っている それで、この姉妹はこの先、音楽が続けられるか分からない状況に陥っているのだろう だから茉莉花は、オレにこの姉妹を会わせようとした オレから、ミナホ姉さんに頼んでこの子たちの学費を援助してもらいたいんだと思う
でも、あなたたちは公に演奏を聴いてもらいたくて、ここに来たのよねまわたしもあなたたちの演奏を聴いてみたいから、結局は同じことになるのかもしれないけれど
まり子は、笑顔で姉妹に言う
ふーん、そうなのま、奨学金とか、あたしには関係無いことだけどね
一方、五十嵐イズミさんは、また格別に不機嫌そうな顔になってぷいと横を向く この子はどういう目的で、ここに来たんだろう 松下姉妹のように、奨学金という言葉に食い付いてこないということはお金には困っていないということなんだろうけど
でも、まとりあえず高畑さんに付いて来てみて良かったわね、松下さんあたしはてっきり、高畑さんは松下さんに嘘を吐いてダマしてる思ってたわだから心配で付いて来たんだけれど
五十嵐さんは茉莉花が、松下姉妹をダマそうとしていると思ってた
だって、そうでしょ普通の高校生が、他のクラスメイトのお金の問題を助けてくれるとか、あり得る話じゃないもの特に高畑さんは、知り合いにお金持ちが居るようには全然見えないし
止めて、五十嵐さん高畑さんに失礼よ
松下姉が、五十嵐さんを叱る だが、五十嵐さんは
ああ、でもまだ判らないわよねそこの人がトリイ電子の社長の娘だって話も、ウソかもしれないもの松下さん、あたしたち実は今、トンデモナイ詐欺に引っ掛かっている最中かもしれないわよ
大きな声で、そんなことを言い出す
ウソじゃないって言うんなら証拠を見せなさいよ
証拠って、何よ
まり子もカチンときたのか、真っ正面から五十嵐さんと睨み合う
だから、あなたが本当にトリイ電子の社長の娘だって言うんならその証拠を見せなさいって言ってるのよここで今すぐ
今すぐってあなたね
何かあるでしょネットでトリイ電子の社長の娘とか検索したら、あなたの顔が出て来るとか
そんなこと、あるわけないでしょ個人情報を堂々と晒すほど、あたしはバカじゃないわよ
誘拐される危険性があるからまり子たち超お嬢様校の生徒たちは、インターネット上に一切写真をアップしない
じゃあ、やっぱりウソなのねウソに決まっているわ
五十嵐イズミは、喚き続ける
もう、ちょっと待ってなさいトリイ電子のサイトに、お祖父様とお父様のお写真は載っているわそれでわたしの携帯に、家族で撮った写真があるから、それと見比べてくれれば判るわよ
まり子は、携帯電話を取り出そうとする
携帯の写真なんか、幾らでもねつ造できるわよそんなの証拠にならないわ
五十嵐イズミは、納得しない
もおお、何なのよあなたね
まり子がキレかけるが
もういい、まり子
オレは、まり子を制する
良いんだ、まり子まり子が、証拠を示す必要なんか無いんだ
オレが、そう言うと五十嵐イズミは、オレを見て
ということは、やっぱりウソなのねウソだと認めるのね
キィッと、睨み上げる
そんな話はしていないというか、お前には関係無い話だ
オレはキッパリと言ってやった それから、松下姉妹に
今、まり子は自分がトリイ電子の娘で奨学金のことをお祖父さんに頼んであげられるかもしれないという話を、あなたたちにした
松下真樹さんも美樹さんも、まっすぐにオレの顔を見ている
そのまり子の言葉を信じるかどうかは、あなたたちの問題だまり子があなたたちに対して起こしたアクションに対して、どうあなたたちはリアクションするのかそれをまり子は見ているオレたちだって、あなたたちが信じられる人間なのかどうか、今、一生懸命になって見極めている段階なんだから
この段階で一方的に証拠を見せろなんて言う人間はバカだ
オレはあなたたちは茉莉花が連れて来た人たちだから、できる限り信用したいと思っているでも、オレにもオレの家族を守らなければいけない義務があるあなたたちが、本当に信じられる人なのかどうか見極められるまではこちらの手の内をオープンにすることはできないオレたちだって、茉莉花があなたたちにダマされているかもしれないっていう可能性を考えているからだ
真っ正直に、オレは言った
オレは、あんたたちに信用してくれとは言わないあなたたちに信用してもらうために、何かを頑張るということもしないだって、そうだろ今の段階で判っているのはオレたちは、あなたたちに何かをしてもらいたいことなんか無いあなたたちの方が、オレたちに何かを求めて、ここへ来たんだろ
本当に奨学金なのか、あるいは犯罪組織黒い森の力なのか、香月家の権威なのか、はたまた鷹倉神社の巫女の力なのかもしれないけれど オレたちの何かを欲しているのは松下姉妹の方だ
それなら、必死になるのはあなたたちの方だ必死になって、オレたちにあなたたちが信用できる人間であることをアピールしろ話はそれからだ
困っている人間の方が、必死になって助けを求めるべきだ 困っていない方が、求められていないことをしてやってはいけない
もちろん、これでオレたちを信用できない人間だと判断するのなら、このまま帰れば良いオレは、あなたたちを止めないよあなたたちに信用してもらえなかったことを後悔することもない
助ける値打ちのない人のことなど、さっさと忘れる そうでないと家族は守れない
だけど、残ったからといって、必ずあなたたちの希望通りの結果になるかどうかは判らないぞオレがあなたたちを信用できないと判断したらその瞬間に、話を打ち切って帰ってもらうからな立場が上なのは、オレたちなんだってことを忘れないでくれ
オレの言葉に、学生食堂の中はシーンと静まり返る
後は自分で判断してくれあなたたちの人生なんだから
大変、失礼を致しましたわたしたちはいえ、わたしも正直に話しますわたしも、まだあなたたちが信じられる人なのかどうか、良く判りませんわたしも、高畑さんのことは、心から信頼していますけど高畑さんが、あなたたちにダマされているかもしれないという不安を抱いています
姉の松下真樹さんは静かにそう答えた
でも、今は、あなたたちのことを信用したい思っていますというより、今回のお話はわたしたち姉妹にとっては、残された最後のチャンスですから信じたいという気持ちが強いですですから、わたしたちには、今、ここでお話を打ち切って帰るという選択はできません
うんずっとおどおどしていたけれど、芯はしっかりした人なんだ
わたしたちも、あんたたちが信用できる人なのか、もう少し時間を掛けて判っていきたいと思いますでも、それ以上にわたしたちが信用していただくに足る人間であることを、一生懸命、精一杯アピールさせていただきます
妹さんも、それで良いのか
オレは松下美樹さんの方を見る
はい、わたしもお姉ちゃんと同じです
オレはフーと溜息を吐いて、自分の飲み物を飲む
ちょ、ちょっと何がどうなっているのよ
五十嵐イズミが、困惑しているが
お前には関係無いことだよ
オレは、はっきりと言う
お前のことなんて、誰も信用してないから
あ、あたしの何が信用できないって言うのよ
五十嵐イズミは、ボサボサ頭を振り乱して文句を言う
その髪型下手くそな化粧学校の制服の上に革ジャンを羽織っちゃうファッションセンスお前のどこに信用できる要素があるんだよっ
オレが、そう叫んだ瞬間 学生食堂の中に、ドッと笑いが起きた
良く言ったパン屋
みんな、ずっと思ってたんだそのセンスはヤバイだろって
うん、何か変よね、その子
革ジャンなのに、靴下は白で三つ折りとか何が狙いなの
えーとみんな、五十嵐イズミには違和感を感じてたのか
昨日の話で新しい登場人物の名前が途中で変わってしまっていました住みません
最初は音楽姉妹なので響子と奏にしようかと思ったのですが同じ取り合わせがプリキュアに居ると知り断念
それで朝香ととか風間みたいなカッコ良い名字にしようかと思っていたのですが最終的には世界に通じる名前ということで松下にしました
真樹と美樹は字を変えた方が良かったかも
五十嵐イズミは少女コマンドーですねいやはや
1392.学園祭2日目 / ありのままと不寛容
しっかしパン屋のヤツ、面白れぇよなぁ
学生食堂の中で、オレたちの様子を脇から見ていた男子生徒の1人が言う
うん、怒るとこんなに面白いヤツがいるとはな
オレが面白い しかも、怒った姿が いや、オレは本気で話したんだけれど ええとそうか、端から見ているとマジなオレは面白いのか
ああ、あんなに理路整然とムキムキ怒るヤツ、オレは初めて見たわ
あのー、一応、言っておきますけれどその人は、ホントにトリイ電子の社長のお嬢さんなんだと思うよ
女子生徒も、そんなことを言い出す
うんテニス部の星崎可奈さんが、そう言ってるの聞いたものその人、星崎さんの親友なんだって
星崎さんて、嘘吐く子じゃないもんね
ああ、あのテニス部の2年の美人の子か
そうそう、その星崎さんだよ
可奈センパイは、オレたちの高校の中ではかなり目立つ少女だし人気もある
あたし、午前中にその人が、ここで女子テニス部の人たちにメイクしてあげてるのを見たわよパン屋の克子さんたちと
ああ朝の様子を見ていた人も居る
あたしも見てた克子さんもさすが大人って感じで、お化粧がとっても美味いんだけどその人も、まだ高校生くらいなのに、すっごくお化粧品とかに詳しいのよ
確か、大きい段ボール箱で、ブランド物のお化粧品をたくさん持って来てたよ、その人あんなのたくさん持っているなんてトリイ電子の社長さんの娘とかじゃないと、アリエナイって
女生徒たちは、口々にそう言う
だからさそっちの人たち、特に変な革ジャンの人どういう理由で、うちの高校に来ているのかは知らないけれどさ、おかしなことを言ってトリイ電子の家の人を怒らせるのは良くないと思うわよ
ていうか今は笑っているけれど、そこの金髪の人は怒らせたらマジィからな
うん、マジでヤバイ
死ぬぞお前ら
上級生の男子生徒たちは、マルゴさんのことを恐怖の不良少女だと思っている
殺さないってもう、そういうのは卒業したんだから、あたし
この中の人で、誰かイーディが出場した格闘技大会の放送を観た人はいないあれ、あたしも出場していたんだけれど深夜の放送だったから、知らない人も多いのかな
お、オレ観ましたっ
1人の男子が、手を上げる
格闘技大会っていつもパン屋の前に立ってる、あの1年の留学生が優勝したってやつか
3年生らしい男子が、挙手した生徒に尋ねるが
1年のイーディ・セクストンさんが優勝したのは、軽い方の階級ですそれで、あの、そちらのマルゴ・スタークウェザーさんは、無差別級に出場なさってまして
優勝したのか
はい、ぶっちぎりの優勝ですていうか、決勝に残ったプロの女子格闘技の皆さんを全員秒殺で仕留めるという無茶苦茶な勢いでの大優勝です
何なんだ大優勝って優勝に大とかつけるな
ええ、ちょっと待てこの人、去年までうちの高校に居たろ
マルゴさんは、今年の3月に高校を卒業したばかりだ
そうなんですよぉぉマルゴ・スタークウェザー先輩は、まだ19歳なのに、国内トップの格闘家を全員倒しちゃったんですあのゴールデンバウム・ジムのルドルフ聖子さんまで瞬殺ですから
君女子格闘技好きなの
マルゴさんが、その男子生徒に尋ねる
は、はい格闘技は、男子も女子もどちらも好きです
そうなんだもう知ってるかもしれないけれど、この後、3時からイーディが校庭でやる格闘技大会に、ルドルフさんも出るから
ええ、そうなんですかぁぁリングを組み立ててるから、ゼッタイに観に行くつもりだったんですけれどあの、またイーディさんとグレース・マリンカさんが闘うんだと思ってましたから
2人だけじゃないよルドルフさんのジムの若手の子や、あたしたちのチームの子も出場するから
工藤遙花さんもですか
ああ、あの子もリングに上がるよ
工藤遙花は、高校女子空手チャンピオンとして有名だったから格闘技好きのこの生徒が知っているのは当然か
今日の試合は、テレビ中継されるからねみんなも校庭に集まって、応援してよ
マルゴさんは、笑顔でさらりと言う
おおお、マジかよっ
オレ、観に行きますっ
あたしも観に行ってみようかな
一緒に行こうよねっ
学生食堂の中は、大騒ぎになる
あのっマルゴ先輩も、出場なさるんですかっ
さっきの男子生徒が、マルゴさんに尋ねる
あたしあたしは、今日は出ないよ
マルゴさんは、笑って答える
だって、あたしが出場したら放送時間が余っちゃうことになるから
他の出場者は、全員、簡単に倒せるとマルゴさんは言い切る
だから、今日はあたしは観ているだけだよああ、テレビの人たちとかのお相手は、あたしがするけれどねさすがに高校生のイーディじゃ、無理な話もあるから
マルゴさんだってまだ、19歳なのに でも、マルゴさんには大人の男も圧倒するだけの風格がある
さて、美味しいパンもいただいたしそろそろイーディたちの様子を見に行こうか
マルゴさんは、立ち上がる
さあ、行こうか君たち
ニッと微笑みオレとまり子と月子と黒瀬安寿、エリカと茉莉花と松下姉妹と黒革ジャンの五十嵐イズミを見下ろす
そうですね行きましょう
オレが席を立つとまり子たちも立ち上がる エリカと茉莉花が立ったから松下姉妹も
君は行かないのかい
マルゴさんは、五十嵐イズミに言う
付いて来た方が良いと思うよテレビの関係者にも会えるしね
マルゴさんのその言葉に
わ、判ったわ行くわよ
と五十嵐イズミも立ち上がった 学生食堂の外へ出ると、すぐに
あのわたしたち、さっきは緊張していてごめんなさい
松下さんの姉の真樹さんが、妹の美樹さんと一緒にオレに近付いて来て言う
いや、良いんです
オレに怒られたことを気にしているのか
それと美味しいパンをありがとうございますそれから飲み物も
ありがとうございましたとても美味しかったですごちそうさまでした
妹の美樹さんも、姉と一緒にオレに頭を下げる
お礼が遅くなってごめんなさい
ああ、この姉妹はちゃんとお礼が言える人たちなんだ 一方、五十嵐イズミの方はそんな松下さんたちをキッと見つめると、ぷいと横を向く 革ジャンの少女は、オレたちに礼は言わない 学生食堂の外の可奈センパイたちのカフェ・テラスの方は、相変わらず人が多かった
マルゴさん、こっちから廻って行きましょう
カフェ・テラスの方を抜けていく方が、イーディたちの居る校庭に近いけれど
可奈センパイたちの仕事の邪魔にならないようにオレは、遠回りすることを提案するが
お出掛けでございますか
ごじゃいまするか
オレが学生食堂から出て来たのを察知してカフェ・テラスの前で客寄せの大道芸をやっていたミタマとキヌカが、シュババババと馳せ参じてくる
うそ安城ミタマ
五十嵐イズミも、雪乃の番組に毎週出ているミタマのことは知っているらしい
オレの方は大丈夫だ月子も居る黒瀬さんも居るマルゴさんまで居る
ミタマたちが警護すると言って付いて来ないように、先にオレは言う
お前たちは、この場を守ることに専念してくれ
承知つかまつりましたっ
まつりましたっ
ミタマとキヌカは、ススッとオレに一礼すると
頼んだぞ、黒瀬安寿
お頼みました
ええ、あたし
安城姉妹に睨まれて、黒瀬安寿は困り顔になる
心配はいらぬ何事も経験だ
経験でごじゃりまする
それでは安城ミタマ、持ち場に戻ります御免ッッ
戻りまする
ミタマとキヌカは、来た時のようにシュババババと忍者走りで、元の位置へ帰って行く
何なのよあれ
五十嵐イズミは、呆然としている
ですから公様の周りには、テレビに出ていらっしゃるような方が何人もいらっしゃるのです
月子が五十嵐イズミに言う
あなたは、茉莉花さんと藤宮麗華さんが親戚だというお話も疑っていらっしゃっるようですが
月子には巫女の力があるから、五十嵐イズミの心は丸見えのはずだ 茉莉花のためにレイちゃんは、最初に茉莉花を彼女の学校に送って行った時に わざと茉莉花の女子校の生徒たちの前に出て、自分のことを茉莉花の親戚だと話してくれた テレビに出て国民的な人気者になっているレイちゃんの親戚ということになれば、学校内での茉莉花の立場が良くなると思って 五十嵐イズミも、松下さんのお姉さんも茉莉花と同じ高校の生徒だから レイちゃんの姿を直接は見ていないかもしれないが茉莉花とレイちゃんが親戚だという噂は、誰かから聞いて知っているはずだ
茉莉花さんが、松下さんにお話ししたことには何1つ間違いはございませんわ
何だ茉莉花は、松下さんに何を話したんだ オレたちは、マルゴさんに促されて歩き出す オレは茉莉花に
どうして、きちんと話してくれないんだ茉莉花は、オレに何をしてもらいたんだ
率直に尋ねる
済みませんわたしは
わたしがお話をする前に公くんに、ありのままの松下さんを見ていただきたかったんです
ありのまま
そして、松下さんが本当に素晴らしい人だということを公くん自身の眼で判って欲しいんです
松下さん姉妹は、オレの推察ではお金に困っていて、音楽の勉強を続けるための奨学金を必要としている 茉莉花は、友達姉妹を助けるためにオレから、ミナホ姉さんに援助してもらえないかと頼んで欲しいのだと思う でも最初からこの姉妹はお金に困っていますから、助けてあげて下さいって言われたら 金を欲している姉妹という眼で、松下さんたちを見てしまっただろうし 助けてあげるべきかという観点でしか、松下さんたちのことを理解しようとはしなかったと思う
判った松下さんは、茉莉花の親友なんだな
あくまでも、まずは茉莉花の友達として松下さんと知り合うべきなんだ お金のことは、その後だ
はいわたしの、とっても大切なお友達です
茉莉花は、オレの眼にそう告げる
高畑さんありがとうございます
オレたちの会話を聞いて、松下真樹さんは眼を潤ませていた 妹の美樹さんも、ペコリと茉莉花に頭を下げる
それで、松下さんのことは判ったけれど
オレは、一番後でムスッとした顔で付いて来る五十嵐イズミを見る
五十嵐さんはどういう関係の人なんだ
さっきからの様子を見ていると茉莉花と親しいようには、全然見えない
五十嵐さんはわたしも、よく知らない人なんです
ええ茉莉花
わたしが、今日、松下さんを公くんに紹介するという話を聞いて付いて来たんです
五十嵐イズミは茉莉花の友達でもないのに、勝手に付いて来ているのか
ごめんなさいわたしが、今日のことをお話ししたら一緒に行くとおっしゃって
松下真樹さんが、うつむいて言う
ああ、茉莉花の友達じゃないけれど松下さんとは友達なんだ
いえ、わたしもあんまり、お話したことはないです
寮の談話室で、わたしと高畑さんが話しているのを聞いていたみたいで高畑さんが自分のお部屋に戻られた後で今、話していたことを詳しく教えろとかお前は高畑さんにダマされているとか世の中、そんなにうまい話は無いとか、おっしゃってそれで今日、無理矢理、付いていらして
メチャクチャじゃないか はぁぁ、さっき学生食堂で騒いだ理由が判った とにかく、五十嵐イズミは茉莉花が、松下さん姉妹をオレに紹介するのを妨害したいんだ
ち、違うそ、そういうことではなくって
五十嵐イズミが、慌ててオレたちのところまで走って来る
あ、あたしはあたしはただ高畑さんが本当に藤宮麗華の親戚なのかどうかを確かめたくて
そんなの確かめてどうするんだよ
オレはズバリと尋ねる
そ、それはふ、藤宮麗華はて、テレビに出ている人だろだ、だったら芸能関係の知り合いとかも居るんじゃないかって
芸能関係
あ、あたしは親に言われて、ずっと声楽をやって来たけれど本当はクラッシックじゃなくっても、もっと、て、テレビに出るような歌が歌いたいんだっ
五十嵐イズミはそんなことを言い出す
だから藤宮麗華と知り合いになって、芸能界の人を紹介してもらってそれで、そっちの世界に進むことはできないかってそ、そうだよそう思って、付いて来たんだよ
額に汗を浮かべながら、五十嵐イズミはそう言うけれど 怪しいメチャメチャ怪しい
本当にそうだとしたらお前、相当、どうかしているぞ
オレは五十嵐イズミの姿を見て、そう言う
あたしのどこが、どうかしてるんだよっ
だから全身、どうかしているよ
茉莉花たちとお揃いの清楚なブレザーの制服の上に黒の革ジャン 髪の毛は振り乱した状態で口紅が赤すぎる、下手くそな化粧
それが芸能関係の人を紹介して欲しいっていう女子高生のする格好か
今の五十嵐イズミのありのままを見て感想を述べればバカの一言に尽きる 五十嵐イズミは、急にモジモジして黙り込んでしまった どういう子なんだろうこいつは
公さんあの
茉莉花が、オレに話し掛ける
公くんはそのどうして月子さんが、いらっしゃるのに月子さんにお尋ねにならないんですか
茉莉花も月子には人の心と記憶無を読み取る力があることは、知っている
茉莉花お姉様は、まだ判っていらっしゃらないんですね
ずっと茉莉花の脇でオレたちの様子を見ていたエリカが口を開いた
そういうズルをしないから公さんは素敵なんだよっ
そう言うとエリカは、松下さんの妹の美樹さんのところへ行き
美樹さん何も心配はいらないからわたしたちは、ただ見ていればいいんだからねっ
明るく優しく話し掛ける
大丈夫だよっ最終的には、わたしたちの公さんが全部良いようにしてくれるからっわたしと茉莉花お姉様の時も、そうだったものっ
そんな心配そうな顔しないのっ大船に乗った気持ちでリラックスそうでないと、公さんの前で良い演奏ができないよっ
そうだオレは、この姉妹の演奏を聴かないといけないんだ この子たちが音楽をやっている少女である以上ありのままの松下姉妹を理解するためには、欠かせないことなんだな
わたしも茉莉花お姉様も応援しているんだからねっ
超お嬢様校の中等部のスターと評せられる微笑みでエリカは美樹さんに優しく言った そう答える美樹さんこの中学生の子も、とても性格の良い子なんだと感じた
五十嵐さんのことは、応援してあげませんけれどねっ
な、何よふんっ
エリカの言葉に、五十嵐イズミはまたプイと横を向く オレたちは校舎と体育館の間を抜けて校庭に出た 正門が真正面に見える校庭のド真ん中に 格闘技のリングができている いや、それだけでなくリングの周辺には、金属の枠で組み立てた高さ4メートルぐらいの大きな台が4つも建っていた 他にも周りを完全に覆った、大きめの白いテントが3つ ああ、これらを運んで来たんだと思うけれど大型トラックが4台も校庭の隅に駐められている さらにテレビ局の車も数台駐まっていた
Darlingマルゴここヨ
ジャージ姿でリングの上に居たイーディが、オレたちに手を振る さすがにまだスクール水着柔道の格好にはなっていない
今、降りるカラ
イーディは、リングのロープの間を抜けてコーナーポストにある白い金属製の階段を降りて、オレたちの方へ走って来た
そこの台はイントレって言うラシイネテレビカメラを乗せるんダッテ
イーディは、リングの周りの4つの高い台を指してそう言う
テレビの人に何でイントレって呼ぶノカって聞いたら、判らないって答えたヨオカシイネ
ホントは、理由を知っているんだろイーディ
イントレは、イントレランスの略ネ百年前のアメリカ映画にイントレランスっていうのがあったノヨ
100年前
その映画で、ムチャクチャに大きいバビロニアの城門のセットを作ったのヨ当時は人件費が安いから、平気でトンデモない大きなモノを作ってたノヨトコロガあんまり大きすぎて、カメラで撮影するのがムズカシクなったノネ
カメラで撮れないほど、大きいセット
ダッテ、100年前ヨレンズとかも、今みたいに専用のモノは無いネ大きな城門を撮ろうと思ったら充分に離れたところから、しかも高い位置からでないと全体が撮れないノヨ
ソレデ最初は、気球にカメラを乗せて上空から撮ろうとしたんダケド、当時の気球じゃ風に流されて安定しないネソレデ、ついにはもうショーガナイからって大きな城門と同じ高さの、カメラを乗せるためだけの台を向かいに作ってそこから撮影したノネ
でっかい城門のセットと向かい合わせにして同じ大きさの撮影台を建てた
そのエピソードが元になって日本の映画やテレビの現場では、撮影の時に使う台はイントレって呼ばれるようになったノヨ大きいのも小さいのも、カメラを乗せるのに使わなくても台はみんなイントレネ
よく知っているなぁイーディは ほんの数ヶ月前までは、日本語が話せなかったのに
ところでDarlingイントレの元になったイントレランスINTOLERANCEってどういう意味か判るカ
英語だとInが付く単語は、元の言葉の非定型だっけ
TOLERANCEじゃないってことか
ソウイウコトヨTOLERANCEの意味は寛容だから、INTOLERANCEは不寛容って意味なのネ
フカンヨウ
心が狭いってコトネダメヨ、Darling、INTOLERANCEになってはネ
イーディは、クスクス笑う なるほど日本では、撮影に使う台に心が狭いっていう意味の言葉が付けられているんだ
イーディ順調にいってる問題は無い
マルゴさんが、笑顔でイーディに尋ねる
設営は問題無しで出来たネソレ以外は、問題アリアリヨ
イーディは、ニコニコしたまま言う
アタシじゃどうにもナラナイネダカラ、マルゴが来るのを待っていたヨ
テレビのスタッフのこと
マルゴさんは、即座に答える テレビの人って マルゴさんは、オレに振り向き
良信くんたちをさっき撮ってくれていたのは、国営放送の人たちだったよねまあ、国営放送の人たちにも、色々あるんだけれどニュース部門の人たちだからね、何も問題なく放送してくれたみたいだったけれど
マルゴさんは校庭に駐まっているテレビ局の車を見る
イーディたちの格闘技の生中継は、民放だからねやっかいなコトが色々とあるんだよ
どんなことがやっかいなんです
簡単に言うとさっきの国営放送のニュースの人たちは、全員、国営放送の社員か関連会社のスタッフだけなんだよだから、こっちの話がストレートに相手に通じる向こうのトップは1人だから、その人に言えば下の人たちはちゃんと動いてくれるのさ
確かにさっきのニュースの人たちは、みんな真面目そうな人ばかりだった 克子姉が事前に打ち合わせに行ってそれで全部、上手くいったし まあお昼のニュースの中の5分だけのコーナーだったってこともあるんだろうけれど
ところがこっちの格闘技大会の方は、中継画像を放送してくれるのは民放のテレビ局だけれど、ここの現場に来ているのは下請けの会社のスタッフばかりだからさ
マルゴさんは、ハッと息を吐く
場合によっては色々と面倒臭いコトになったりもするんだよね
イントレランスは、昔、オーケストラの生演奏付きの上映を観ました
アメリカの映画史に残る困った映画です
今年ももうすぐ終わりですね
今年は何一つ良いことがありませんでした明るい展望の見えない来年が心配です
1393.学園祭2日目 / Pの悲劇
マルゴさんとテレビの人たちの車が、たくさん駐まっている校庭の隅へ向かう 機材を積んだバンや、中継車の他に大きなマイクロバスもあった 1台のバンの周りに、背中に黄色い文字でSTAFFと書かれた同じシャツを着ている男たちが困惑した表情で集まっている バンの横に書かれた文字を見るとバーナム・森・スポーツ映像
ねえ、君、森さんは来てる
マルゴさんは笑顔で、スタッフシャツを着た若い男に尋ねた
ああ、森さんなら、車の中に居ます
見ると、バンの助手席でテレビの台本を頭に被せて、昼寝している50過ぎのオッサンが居た マルゴさんが、車の窓ガラスを叩いてノックすると男は起きて、顔の上の台本を外す 男はマルゴさんに気付くと慌てて、車の窓を開いた
何があったんだい
男にマルゴさんは尋ねる
いやどうもこうもねぇよ局のPの野郎が、今日の現場はオレたちには手出しさせねぇって言ってんだわ
キョクノP
それで自分の知り合いの製作会社の連中を連れて来ているわけ
それだけじゃねぇよPの野郎、演出も好きにやるってよ
ふーん今日のPって、誰
マルゴさんの問に、オッサンは
スギムラって、この間まで芸能部に居たやつ何かのバラエティを担当してたらしいけれど、ハンパじゃねぇ大コケをやらかして、スポーツ部に飛ばされてきたばかりだってよ
ああ判ってない人なんだね
ああ、マジで判ってないあいつの連れて来たスタッフは、バラエティの製作会社の連中だぞカメラの配置とかも、メチャクチャなことになってる
オーケイ、5分で片付けるから今日の現場の仕切りは、森さんに任せるよよろしく
おいおい、大丈夫なのかいスギムラってバカ、タカサキさんの名前も知らなかったんだぞ
オッサンの言うタカサキという人には前にオレも会ったことがある
日本の格闘技興行の裏側に居るヤクザの大物だ
会社の仲間に教えてもらえななかったんだと思うよ芸能部からスポーツ部に飛ばされてきたのに、偉そうにしているから、スポーツ部の他の人たちに現場でシメられてこいってハメられたんじゃないかな
まそうだろうな
そんなPなら、今後のお付き合いは無いだろうしちょっとグゥの音も出ないほど、トッちめて来るよ
良いんだな、オレが仕切って
オッサンは、念を押すようにマルゴさんを睨む
良いも何も、森さんはタカサキさんに推薦してもらった人だしこの間の格闘技大会の中継も、とても良かったあたしは満足しているよ今日も急な話だったのに、来てもらって悪いと思っている
良いんだよその分、ギャラは倍って約束だもんな
うん、それは保証するよ
オレもこの間の大会は、面白かった今日の企画も、バカバカしいが出場するのが、この間のメンツならゼッタイに面白い絵が撮れると思っている
ああ、期待してくれて良いよ
余計な芸能人とか、いらねーんだよなホントによ
余計な芸能人
でPのスギムラって人は、今どこ
そっちのマイクロバスだ司会をさせるっていうタレントと、打ち合わせをやってるってよ
ああ、オレにも何となく判った スギムラっていう人が格闘技の中継こととか、全然知らないのに イーディのスクール水着柔道大会の放送なのに勝手に自分の知り合いのバラエティ番組専門のスタッフや、司会のタレントなんかを連れて来ているんだ
オーケイ、行って来る5分だからね
ああ、信じるぞおおい、野郎ども、5分後に元通りの配置で仕事再開だ
了解ッスオヤッサン
バーナム・森・スポーツ映像のバンの周りにたむろしていたスタッフが、一斉に立ち上がる
良信くん
マルゴさんが、スギムラって男の居るマイクロバスに向かいながらオレに声を掛ける
時間が無いからさ悪いけれど、月子さんの力を借りてもいいかな
どうぞ月子、頼むよ
家族でもきちんとオレに、月子の巫女の力を使う許可を得ようとしてくれる マルゴさんのすることには、いつも筋が通っている オレたちの信頼できる姉さんだ
Pのスギムラさんて人、居るかな
マイクロバスの前で、大きな声でマルゴさんは言う 下っ端スタッフらしい人が、バスから降りてくると
あたしは、マルゴ・スタークウェザー・クロモリ今日の放送の発注者なんだよどういうことだか知らないけれど、スギムラさんて人が、あたしの発注と違うことをしているっていうから止めさせに来たんだけれど
ちょっ、ちょっと待って下さいスギムラさぁぁん
すぐに他の若いスタッフと一緒に、どう見てもこいつがスギムラだろうというオッサンが降りて来た どう見ても40代のオッサンなのに肌は日焼けしていてテカテカで、髪の毛は微妙な長髪で黒サングラススポーティなブランド物のシャツを着て、背中にカーディガンを背負っていた
あん何だガイジンが何か用かよ、バカヤロー
スギムラは、マルゴさんが若い女性だと判るといきなり小馬鹿にした眼で見る バスの入り口に立ったまま、下りて来ようともしない
何なんだよ、オメー、ヤナガワ・ムロコ事務所の外人モデルかオレは、外人モデルなんざ発注してねーぞ、バカヤロー
違うよ、発注したのはあなたじゃないあたしが、今日の放送の発注者なんだよ
おー、Pよっマジでそのお姉さんが、今日の発注元だからなっ気を付けて話せよ
遠くからさっきのバーナム・森・スポーツ映像の森さんが、笑って叫ぶ
何だバカヤロー発注元だと何だ、オメーがスポンサーだとか言い出すんじゃねーだろうな
今日の放送のスポンサーも、全部、あたしが頼んだところだから何なら、どのスポンサーでも良いから聞いてみればいいさ
マルゴさんは、不敵に笑っている
別にオメーが、スポンサー本人じゃねーんだろ、バカヤロー
スギムラは、まったく聞く耳を持とうとはしない
とにかく困るんだよねあたしの発注じゃ、製作会社は森さんのところを使うって話になってたはずだしわけのわからない芸能タレントに司会させるなんて話も無かったはずだけれど
わけのわかんねぇのは、お前の方だこのバカヤローオレは局のPだぞPって言ったら偉いんだぞ、このバカヤローテレビの世界じゃ、総理大臣よりも上だからなっつまり、大統領なんだこのバカヤロー
オレには、良く判らない
とにかくよオレがPなんだからよ、オレの番組に誰を使うかはオレが決めるそういうことになってんだよテレビの世界ではよっ判ったか、バカヤロー
スギムラは、喚き散らす いい歳をした大人の男なのに何で、こんなにもみっともないんだろう
そういうのが、あなたたちの世界のリクツなのかもしれないけれどそんな理由で、あたしたちの放送をブチ壊しにされるのは困るんだよね
マルゴさんは、そう言うと
月子さん頼むよ
月子は、スーッと前に出る
何だ、バカヤロー
スギムラが、月子を見た瞬間
全てマルゴお姉様の言うとおりにしていただきます
月子の美しい声がスギムラを支配する
は、はいバカヤロー判りましたバカヤロー
このオッサンバカヤローは、もはや口癖になっているんだな
全て、マルゴお姉様の指示通りにすると他の方におっしゃって下さいそして、あなたは早退なさって下さい
オレが早退って何でなんだ、バカヤロー
あなたのような人は、ここに居ていただきたくはないからですどこへなりと行ってしまって下さい
判りましたバカヤローおい、今日の放送は全部、そこの姉ちゃんの言う通りにやれいいな、バカヤローそんでオレはちょっと遠くに行って来る
スギムラさん、遠くってどこへ行くんですか
スギムラのスタッフの1人が慌てて尋ねる
バカヤロー、遠くに行きたいって行ったら関東近郊へ行くって、昔から決まっているんだよっそういうことでオレはこれから、牛久まで大仏を観に行くさらば、皆の衆アデュー
そう言うとスギムラはマイクロバスから飛び降りて、スキップしながら校庭を走り、校門の外へ消えて行った
いや、ちょっとPなしじゃ放送できないっスよ
スギムラのスタッフが、そう叫ぶが
いや、Pなしでも放送はできるはずだよ
マルゴさんは、ふふんと笑う
森さんよろしくっ
おう、頼まれた行くぞ、お前らッ
ウィーッす
バーナム・森・スポーツ映像のスタッフが、一斉に作業を再開していく
さてと君は、スギムラPの連れて来た製作会社の人
マルゴさんが、マイクロバスのスタッフに尋ねる
あ、はいパラダイス・ギャラクシー映像のものですが
悪いけれど、君たちはスギムラさんが勝手に雇った人たちだから撤収してキャンセル料も、スギムラさんに請求してよあたしたちには、関係無いことだからさ
いやあの、ですが
スタッフの男は、困った顔をしている
そういうのは、その社長に直接言っていただかないと、オレらでは
ああ、この人たちの会社の責任者はここに来ていないんだ
だから、そういうこともスギムラさんの方に言ってよ
しかし、スギムラさんはいなくなっちゃいましたし
走って追っ掛けなよ牛久の大仏様に着くまでに会えるといいね
ケロリとマルゴさんは言う
あたしたちは、今日の放送にあなたたちを必要としていないんだから君たち、格闘技の中継とか、やったことないんでしょ
お笑い芸人と女子プロレスの選手との対決とかは経験がありますだから、スギムラPは、オレらを呼んで下さったわけですし
このままスギムラという男に任せていたら、イーディの大会はお笑い番組にされていたな
ちょっと待ってスギムラさんが、タレントも呼んでるって聞いたけれど、それってもしかして
マルゴさんの問に、スタッフの男は
はいお笑い芸人のパンチョス1号2号さんとでりんじゃあさんの2組が来ていますええと、今日は女子高生とプロレスするっていう企画ですよね
だ、ダメだこれは
ちょっと、その人たちを呼んで打ち合わせ中って言ってたから、今、そのバスの中に居るんでしょ
はいパンチョスさん、でりんじゃあさんすいません、ちょっとお願いします
男が、バスの中に呼び掛ける
なんなんです、これは
えーと、スギムラさんどうしたんですか
ちょっちょっと、打ち合わせ中なんだから困るヨ
なにが、どーなってるんでりんじゃぁぁ
4人のそんなに若くもないお笑い芸人の男たちが みんな、上半身裸で下半身はタイツというプロレス・スタイルで現れた しかも、みんな痩せすぎか、太りすぎという痛々しい肉体だ
今、どんなことを打ち合わせしていたのかな
マルゴさんが、尋ねると
ええっと、今は放送開始3分で、オレらがリングに乱入して
何だっけ、空手の女子高生がいるんだろその子に、オレとパンチョス2号が後ろから抱きついて
いやん、ばかーんで撃退されて、ドッと笑いが起きたところで
わしが何する、アレする、コレする、うるるるんでりんじゃあああってギャグをカマすところまでじゃったけど
最低だ最低の演出だ
悪いけれどあなたたち、今日は出番ナシだからお疲れ様もういいから、帰って
いや、何でそんなことになるんだ
オレら、わざわざ来てるんだからよ
つーか、スギムラさん、どこへ行ったんだよっ
どこ、どこ、どこへ行ったのでりんじゃぁぁ
面倒だから、今度はオレが月子に頼む
はい皆様
月子の澄んだ声にお笑い芸人たちは、一斉に注目する
どうぞ、今日はこのまま、何も言わずにお帰り下さい
ムッ
でりんっぐッ
4人のお笑い芸人は、口を閉ざす
お帰りはあちらでございますわ
月子に示された校門に向かってプロレス衣装のまま、歩いて行った
ちょ、ちょっと皆さん、どこへ行くんですかぁぁ
スギムラが呼んだスタッフの男が、4人のお笑い芸人に叫ぶが4人はそのまま、校門の向こうへ消えて行った
はい、君たちも撤収ああ、森さんたちの作業の邪魔はゼッタイにしないようにね頼むよ
マルゴお姉様のおっしゃった通りにして下さい
月子の声に、男は
はーい、オレらも帰りまーす森さんの邪魔はしちゃダメだよーつさあさあ、お片付け、お片付けっ
撤収作業を開始する
はー、こういうことなんですねぇ
様子を見ていたエリカが言う
わたし、前にアニメの番組の特別放送を観たことがあるんですけれど
アニメの特別放送
それは普通のアニメだったんですけれど、アニメの中でちょっとショッキングなシーンがあったらしくてで、たまたま、そのアニメの中のシーンと良く似た事件が本当に起こってしまって急遽、その話の放送が中止になって、代わりにその週だけ特別放送に切り替えられたことがあるんです
そしたら、その特別放送はそのアニメのそれまでのストーリーを、どうしてだかお笑い芸人の人が紹介するっていう構成になっていたんですけれどとにかく酷いんですそのお笑いの人たち、そのアニメを全然観ていないとしか思えないんですそれどころか、そのアニメを馬鹿にするような発言や、そのアニメを好きな人を小馬鹿にするようなことまで言い出して、あげくにその芸人さんたちが、アニメに関係ない最近自分に起きた話とか、自分のギャグとかどんどん入れて来てメチャクチャな番組になっていたんです
あの番組ってつまり今みたいな人たちが、いい加減に作って放送したからなんですね
ま、そうだろうね
急な事態が起きた時の差し替え放送なんて会社の中でアブレている仕事のできない人たちが担当するんだろうからね自分の知り合いの芸能事務所から、適当にお笑い芸人を呼んでとにかく放送時間の穴埋めができればいいとしか思わないで、いい加減な番組を作ったんだろう
あやうくイーディのスクール水着柔道大会も、メチャメチャな放送にされるところだった
あの、済みませんスタッフさんプロデューサーさん
マイクロバスの奥から誰か出て来る
あのわたし、どうしたら良いんですか
それは高校生ぐらいの女の子だった
デススター・プロモーションM&M・セクションFのサイトー・ユーキです
その少女は、マルゴさんにそう自己紹介した
マネージャーの藤森リンダです
少女の後から現れたスーツ姿の女性も、マルゴさんに名刺を差し出す あれデススター・プロって言うと ミナホ姉さんが、女子タレント部門を切り離して譲渡させようとしている 明日の昼間、オレもどんな会社か見に行くことになっているんだよな
M&M・セクションFっていうのは何なの
マルゴさんが尋ねると
M&Mは、モデル&ミュージシャンの略です
デススター・プロの女性タレントを担当している系列会社になりますセクションFというのは、フィメールのFつまり女性部門のことです
サイトーさんとマネージャーさんが、答えてくれた つまり、オレが明日行く会社、そのものだ
ああ、なるほどねそれで、今日はスギムラさんには何て言われて来たの
スギムラ・プロデューサーには、番組の司会をするようにと
マネージャーの藤森さんが、答える
いえ、あのわたしが最初、リングの上で司会のサイトー・ユーキですって、自己紹介をするとそこにパンチョス1号2号さんとでりんじゃあさんが、リングの外から入って来るのであとは、パンチョス1号さんが司会をするので、わたしは横でアシスタントをして下さいって言われました
ああ、そういう展開か
他には何か
放送時間中に、ユーキに一曲歌わせていただく約束でした
マネージャーさんが言う
いえ、それは時間が余ったら、歌わせていただけるかもしれないっていうお話でもしかしたら無理かもしれないって
ちょとユーキ最低でも、CM前にワンコーラスは歌うって話だったでしょ
ああマネージャーさんは、マルゴさんにスギムラとの約束を少しオーバーに話そうとしていて サイトーさんは、正直に答えている
それだけなのかな
マルゴさんが突き詰めると
あのスギムラさんは、わたしにも、スクール水着でプロレスをしろってそう、おっしゃってました
うーん、テレビ局や大手出版社の正社員に品が悪くて、やたら罵詈雑言ばかり撒き散らしているような人たちが居るのは何故なんでしょうね
みんな、実は良いところの生まれで一流大学を卒業しているのに
1394.学園祭2日目 / おいしい生活
・サイトー・ユーキ/17歳(西塔夕貴)デススター・プロモーションM&M・セクションF所属のアイドル
・藤森リンダ/26歳 サイトー・ユーキのマネージャー
・工藤遙花/18歳美智の姉去年の女子高生空手チャンピオン調子に乗りやすい
・ルドルフ聖子25歳創作マーシャルアーツゴールデンバウム・ジム主宰
・ライン晴子/17歳ゴールデンバウム・ジム所属緑川晴子
・モンキー・ミミ/26歳超実戦空手トミー・アシダ道場所属萩原美々子
あのテレビ局のプロデューサーは、勝手にそんなこともやろうと企画していたんだ
ユーキその話はいいから
慌ててマネージャーの藤森さんが、サイトーさんの口を塞ぐ
スギムラさんからは、そういうお話もありましたけれど私の方でお断り致しましたからうちのサイトーには、そういう仕事はさせません
このマネージャーさんは、自分の担当している少女アイドルを必死に守ろうとしているんだな 悪い人ではないんだなと感じた
いえっ、わたしおいしい結果になるんでしたら、何でもしますっ
サイトー・ユーキさんは、自分の口を塞ぐマネージャーさんの手を押しのけてそんなことを言い出す
スクール水着でプロレスでも、スクール水着で縄跳びでも何でもしますっ頑張りますからっ
元気な笑顔で、そう言い切る
馬鹿なこと言わないで、ユーキ
でもリンダさん社長が言ってたじゃないですか、アイドルはおいしそうなお仕事なら、どんなことでもやらないと売れないって
マネージャーに、笑顔のままサイトーさんは言う
テレビのお仕事はわたし、まだ1回目しかさせていただいたことはありませんでも、この前の時はたくさんのアイドルの皆さんと一緒であたしが映ってたのなんて、ほんの豆粒くらいで島根のお祖母ちゃんなんて、どの子があたしか判らなかったって言ってましただけど、今日はちゃんと顔を撮ってもらえそえなんですからそれだけだって、今までから考えたらおいしいじゃないですかだから、あたし、どんなことでも頑張ります
何か、スギムラやお笑い芸人たちみたいにこのまま帰ってもらうのは、可哀相な気がしてきたぞ
あのさっきから君の話しているおいしいっていうのは、どういう意味なのかな
オレと同じ疑問を、マルゴさんも感じたらしいサイトーさんに尋ねてくれた
ええっと、あのおいしいはおいしいってことだと思いますけれど
サイトー・ユーキさんは、キョトンとした顔でそう答えます
あ、わたしが説明しますっ
エリカが、オレたちの前に出て来る
あのこの場合のおいしいっていう表現は、芸能界の用語でテレビの放送で、特定の芸能人の人が特に注目されるような状況になって、視聴者の皆さんにその芸能人の存在を強くアピールできることを指します
なるほど、テレビ放送で自分を目立たせることができれば、多少、恥ずかしいことでも君はやるってことなんだね
エリカの説明を聞いてマルゴさんが、改めてアイドルの少女に聞く
はいわたし、どんなことでも頑張りますっ
サイトー・ユーキさんの決意は固そうだった
だってさどうする、良信くん
マルゴさんは、ククッと笑ってオレに振り向く
君が決めてよこの女の子、今日の放送に出演させるかどうか
いや、あのどんな形でも出演させていただかないと困ります
マネージャーの藤森さんが、マルゴさんに強く言う
そ、そうですテレビなんですから、出られなかったら、わたしもリンダさんも社長に怒られちゃいますよ
いやこのアイドルとマネージャーさんの芸能事務所は 明日には、オレたち黒い森のものになる おそらく、今の社長は解任されるだろう 親会社のデススター・プロの方へ戻るんじゃないだろうか
でも、ほらあなたたちを出演させるっていう話は、スギムラさんが番組の発注者であるあたしに無断で勝手にしたことだからさ
ですが、藤森さんは局のPでいらっしゃいますPから正式に出演依頼があったんですから番組製作におけるPの権限は絶対のはずですわ
マネージャーさんは、必死で食い下がるが
普通のテレビの業界じゃ、そうなのかもしれないけれどあたしたちは、普通じゃないからね
そんな何でしたら、会社の方からデススター・プロの方から正式に抗議しても良いんですよ
すれば良いと思うよでも、マネージャーさん、あたしたちがどこの誰なのか、知っているの
マルゴさんに軽く流されて口籠もる結果になってしまう
ホント、どうしようか良信くん
マルゴさんが、オレに決めてくれと言うのは マルゴさんはオレがミナホ姉さんと明日、デススター・プロの女性タレント部門に行くことを知っているからなんだと思う オレはアイドルとマネージャーさんを見る この様子ではこの2人は、自分の芸能事務所が明日にも、デススター・プロの本体から切り離されて、オレたちのものになるということを知らない だから芸能界の中では大手で、後ろ盾になるヤクザも付いているデススター・プロの名前を出して、オレたちを威圧しようとした
オレは明日のために、もう少し勉強させてもらいたいです
もう少しこのアイドルとマネージャーさんを見たい この先、芸能事務所の経営もやらなくてはいけなくなるのだから
そうじゃあ、サイトーさんにも出演はしてもらおうただし最初の企画通り、アシスタントということで司会は別の人にしてもらうそれでいいかな
はいっ、頑張ります
サイトーさんはテレビに出演さえできれば、何でもいいらしい
あのそうしますと、司会はどなたがなさるんですか
マネージャーさんがマルゴさんに尋ねる マルゴさんはオレに振り向く
ねえ、良信くん司会は寧にやってもらってもいいかい
寧を 寧は今、パン工房で克子姉と愛の手伝いをしてくれている
寧はアメリカでやるあたしの格闘技のビジネスを手伝ってくれることになっているただしあの子は、裏方に徹するつもりみたいなんだけれど
裏方
あの子は表に顔を出す気は無いみたいなんだでも
寧みたいな子は光有る場所でこそ輝くと思わないかい
良い機会だからあたしは、寧を表に出してみたい
寧は信じられないくらい美しい少女だ プロポーションも、研ぎ澄まされた美術品のように綺麗だ オレは、知っている 普段の寧は、いつもオチャラケていて明るくて楽しい女の子だけれど 本当は、とても内向的で大人しい女の子だ 奈島寧《ナトゥ・ネイ》という後から作った人格の内側に奈島寧子《ナジマ・ヤスコ》というもう一人の人格が隠れている
あたしはさ寧には、前に進んで欲しいんだよ黒髪に戻してから、ここの学校の中での寧は変わったよねあたしは卒業して半年ちょっとが経過しているけれど、まだ学校の人たちには怖がられているでも、寧は
5月の連休までは、寧はマルゴさんとセットで恐ろしい金髪の不良少女コンビとして恐れられていた だから、さっきの学生食堂でもマルゴさんは、生徒たちにまだ怖がられていた
今の寧は、学校のみんなから愛されているよねそれは、あの子が、勇気を出して裏の世界から表に出て行ったからだと思うよ
かつての寧は不良少女として、授業にも出ずに監視カメラの映像で校内の様子を眺めているだけの女のだった シザーリオ・ヴァイオラと白坂創介という、二人の狂った男のせいで寧は、一般生徒と交流することができなかった だが、二人の狂人はもうこの世にはいない
寧は金髪を黒髪にし、オレのパン屋を手伝うようになった
そして、まだ数ヶ月しか経っていなのに
すっかり、学校の人気者になっている とびきりの美人で、いつも明るく笑っている楽しい少女だとみんなが認めてくれている
寧にはたくさんの人たちから愛されるポテンシャルがあるよ今まで、その能力を使っていなかっただけだそしてみんなに愛された方が、あの子はもっと幸福になれる
あの子が苦しむようなことにはさせないよそれは約束するあたしもあの子の姉だからね
マルゴさんは、オレと出会うずっと前から寧のお姉さん役を勤めてきた
寧は光有る道だけを歩かせるあたしが守るよ
オレも光の中で、みんなから愛される寧が見たい
ありがとう良信くん
マルゴさんが、オレに頭を下げる
止めて下さい家族じゃないですか
でも、今の寧は君のものだからあの子は、君が背中を押さなければ、歩き出さないよ
でも、手は握ったままですよオレは、ヤッちゃんを手放すつもりはありませんから死んでも嫌です
判ってる判っているからみんなに愛される様になってもあの子は君だけの寧だよあの子の心の一番奥にいるのは、君だけだかからね
マルゴさんの笑顔は、優しい
寧には、あたしが連絡するから君が向こうに戻った時に、交代でこっちに来させてよ
オレがパン工房に戻るまでは寧にパン作りの手伝いを続けてもらう
君がしっかり送り出してあげて
マルゴさんに司会をやってくれと言われるだけでは寧は承諾しないかもしれない オレが直接話して送り出さないと
じゃあ、今言った通りサイトー・ユーキさんには、アシスタントをやってもらうから他の人たちに紹介するから、ちょっとリングの方まで来てよ
マルゴさんは、改めてサイトーさんとマネージャーさんに言った
アシスタントでも、出場選手の名前ぐらいは覚えておいてくれないと困るから今日の放送は格闘技の大会だからねスギムラさんが言ってたお笑い芸人とかとの絡みなんかは、全部忘れて
は、はい判りました、頑張ります頑張ります頑張ります
サイトー・ユーキさんは、やる気満々だ
それで、わたしスクール水着は着た方が良いんでしょうか
この子、まだ自分がスクール水着でプロレスするのがおいしいと思っているんだろうか
良信くんどうしようか
マルゴさんは苦笑してオレに言う
リングまで、来てくれれば判るよ一緒に出場する選手たちを見て、それでもあなたがおいしいと思うのなら、スクール水着を着れば良いんじゃないかな
わたしたちに任せるということですか
マネージャーさんが、オレに尋ねた
多分サイトーさんは、アイドルらしい衣装を着た方が、おいしいことになるとオレは思いますよ
上手くいったみたいネアリガトネ、マルゴ、Darling月子たちも
リングに戻って来るとイーディは、すでにスクール水着柔道の格好に着替えていた つまりスクール水着に、柔道着の上だけ羽織って帯を締めた姿 そして、均整の取れた肉体のイーディにはとても似合っている オレのイーディは、金髪碧眼に褐色の肌の闘う美少女だ
ミンナ、きびきび働いてくれているヨさっきのSTAFFとは全然違うネ
ああ、スギムラの呼んだバラエティ番組専門の下請け会社の人たちが居なくなってマルゴさんが頼んでくれたバーナム・森・スポーツ映像の人たちが中継放送の準備に入っている
イーディ、今日の放送の司会は寧にしてもらうことになったよそれで、この子はアシスタントをするから
マルゴさんが、イーディにサイトー・ユーキさんを紹介する
アア、ソウネイなら大丈夫ネソンデ、あなたがアシスタントなのネアタシ、イーディチーム・クロモリの所属ネ
お、おはようございますデススター・プロモーションM&M・セクションF所属のサイトー・ユーキです本日は、よろしくお願いします
ハイ、ヨロシクネ
すると、リングの上でドッタンバッタンと大きな音がする 見ると、ゴールデンバウム・ジムのライン晴子さんがリングのマットの上で受け身の練習をしていた もちろん彼女もスクール水着柔道姿だ ゴールデンバウム・ジムは主宰のルドルフ聖子さんも、とても綺麗だけれどライン晴子さんも凛とした美少女だ まだ高校生だから、格闘家らしい身体のラインになっていないその未完成な感じが、逆に魅力的に感じる
ハルコちょっと来てネ
ライン晴子さんは、リングの端まで来てくれた ロープの越しに、オレたちを見下ろす
このコ今日の放送のアシスタントをしてくれるネ
よろしくお願いします創作マーシャルアーツゴールデンバウム・ジム所属、緑川晴子です
おはようございますデススター・プロモーションM&M・セクションF所属のサイトー・ユーキですよろしくお願いします
サイトーさんは、リングの上のライン晴子さんにペコリと頭を下げる
ちょっと、イーディどうなっているのよこのリング、マットが跳ねすぎて踏ん張れないわよ
美智の姉の工藤遙花が、剣道マリアを連れてやって来た
仕方ないネプロレス用のリングだカラ、マットの下にスプリングが入っているノヨ
見れば判るデショボクシングのリングはロープが4本、プロレスのリングはロープが3本なのネ
そういう話をしているんじゃないわよこんな足場がフワフワしてるリングじゃ、あたしみたいな立ち技の選手に不利なのよ判ってる
気にするコトはナイネスクール水着柔道ヨタダの遊びなんダカラ楽しく闘えばイイノネ
工藤遙花の抗議を、イーディは笑って受け流す
ちょっと、あなた何見てるのよ
工藤遙花が、オレの視線に気付いた
いやちゃんと、それ着ているんだなと思ってさ
工藤遙花もスクール水着柔道姿になっていた こいつは怒りっぽいし、あんまり頭の良い子じゃないけれど美少女の美智の姉だから、見た目は綺麗なんだよな 高校女子空手チャンピオンとして、マスコミに何度か取り上げられたのは空手の成績だけでなく、顔の良いからなんだろう
き、着るわよ嫌だけど、もう覚悟は決めたわ
マルゴさんやイーディの実力を認めて一緒にアメリカへ行くと決めた以上 多少のムチャは、受け入れることにしたようだ
おはようございます本日、アシスタントを勤めさせていただきますっ、デススター・プロモーションM&M・セクションF所属のサイトー・ユーキですよろしくお願いします
サイトーさんが、工藤遙花にも頭を下げる
あら、そあたしはチーム・クロモリの工藤遙花空手をやっているわマリア、あなたもご挨拶なさい
チーム・クロモリの剣道マリアですっ押忍っ
もちろん剣道マリア旧名・天童乙女も、スクール水着柔道姿 この人も見た目だけは、それなりの美人だ
とにかく、このリングはどうにもならないのね
改めて工藤遙花が、イーディに詰め寄る
どうにもならないヨ今日は、コレでいくネ
イーディは、笑って
ハルカもマリアも、色んなマットに慣れておいた方が良いヨアメリカに行ったら、どんなリングで試合させられるか判らないヨ
ダカラ、こういうリングで闘うコトも今のウチに経験しておくノネ
わたしは、このリングの方が慣れてる
グレース・マリンカさんこと、尾上ジュンさんもスクール水着柔道姿で現れた
マットが柔らかい方が、ケガはしにくい
この人も女子プロレス時代は、実力派だけど若手の美人レスラーとして有名だったらしい なかなか鍛え上げられた身体は、肉体美と言うしかないしかも、顔もとっても綺麗だ
紹介するネ今は無所属の
尾上ジュンだ
お、おはようございますデススター・プロモーションM&M・セクションF所属のサイトー・ユーキですよろしくお願いします
よろしく
グレース・マリンカさんとも、サイトーさんは挨拶を交わす
どうサイトーさん、この子たちに並んで、君もスクール水着を着てみる
マルゴさんが、笑って尋ねる
い、いえあのいいです止めておきます
サイトー・ユーキさんは、すぐに答えた
み、みなさん魅力的な方ばかりでわ、わたしが水着姿になっても、全然おいしくならないと思います
そ、そうねユーキのプロポーションでは、格闘家の皆さんに負けるわ
マネージャーの藤森さんも、敗北を認めた
うちの事務所でも、グラビアやっているグラマー系の子なら対抗できるかもしれないけれどユーキ、あなたのおっぱいじゃダメよ
ウエストもみなさんの方がくびれてますぅぅ
サイトーさんは、泣きそうな声で叫ぶ
大人の魅力系のコもいるノヨ
更衣室兼選手控え室になっているらしい白い仮設テントの中から
どうかしら、晴子ちょっと見てくれる
ルドルフ聖子さんが現れた スクール水着柔道姿で テレビに映るんなら出場するって言い出してたことは聞いていたけれど ホントに出場するんだ ルドルフさんて確か、20代半ばだよなあ この人も美人格闘家として有名だけれど
サイズは良いんじゃないでしょうか
ライン晴子さんは、真顔でそう言うが
そうじゃないでしょうあなたは、わたくしの弟子なんですから良く似合っているとか高校生かと思いましたとか、そういう風に答えなさい
わたし、気が利かない弟子ですから
弟子としてはいい年の師匠に、スクール水着柔道はして欲しくないんだろうなあ
ああああーっ、ルドルフ聖子あんた、マジでテレビに映る気なのねっ
大きな声に振り向くと校門から、走って来たのは超実戦空手トミー・アシダ道場のモンキー・ミミこと、本名・萩原美々子さん26歳だった
イーディちゃんからメールを貰ったんら、慌てて飛んで来てみればくっそぉぉぉぉポロンさん、ポロンさん、早く来て下さいあの女スクール水着なんですよぉぉ、いい歳してお巡りさぁぁん
するとミミさんの後ろから、同じ道場の日独ハーフの大ポロン・カリスマンさんが、ゆっくりとマイペースでやって来た
あら、ルドルフさんとないしたんですまた、すいぶん、ケッタイな格好をなさってますなぁ
相変わらずのインチキな京都弁で、ルドルフさんに微笑む
好きに言いなさいよ女子格闘技で、日曜の昼間の時間にテレビに映られるのよッ時は来たぁぁこの波に乗らないで、どうするのよっこんなおいしい話出場しない方が間違っているわぁぁ
ルドルフ聖子さんが、そう言うと
コンチクショウッちょっと、イーディちゃんあたしも出るあたしも出るからねっ
モンキー・ミミさんが、イーディに叫ぶ
うちにもスクール水着と柔道着を用意して下さいな
ええミミさんも、ポロンさんも参戦か
あらあらちょっと、ポロンさんいいのスクール水着よ
すでにスクール水着を着用しているルドルフさんが、腕組みにしてポロンさんに言う
まだお肌に張りのある、わたくしならともかくポロンさんの年齢だと、かーなーりキツイと思うわよポロンさんがスクール水着を着ていた頃なんて、前世紀でしょ下手をすれば昭和
いやルドルフさんて、ポロンさんとそんなに年は変わらないはずだけれど
うちは、一向に構いませんわ
ポロンさんは、平然と答える
一向に構いませんっスクール水着でも何でも着ますそれで、テレビに出してもらえるんなら
ポロンさんまで、参戦かよ
次話で、また松下姉妹と五十嵐イズミの話に戻ります
最近の報道を見て気付いたのですが
昔、私の知り合いが東京の乃木坂に住んでいましてよくその辺りへ行ったのですが
いつも何か変なビルだなあと思っていた小さな建物がジャニ**事務所の本社ビルだったみたいです
マンガとかだと大手の芸能プロとかは、高層ビルの中に社長室があったりするのですが
よくよく考えると東京の一等地に小さくても本社ビルを持っている方がスゴイという
1395.学園祭2日目 / クロイツェル・ソナタ
良いんジャナイノ出たいヒトは、みんな出ればイイノネ
イーディは、平気でニコニコ笑っている
そうだね、この間の格闘技大会の決勝ラウンドは、あたしがメチャクチャにしちゃったからさ今日、ここで、ルドルフさんとポロンさんとジュンさんで鼎戦をやって決着を付ければ良いと思うよ
ああ、前回の大会ではマルゴさんが決勝ラウンドに残った無差別級の選手を全部一人で倒してしまったんだっけ
あたしは、今日は出場しないからさ
マルゴさんの言葉に無差別級の3人の美人格闘家たちは
マルゴと闘えないのは残念だが
そうね、この3人の中で誰が1番なのかはハッキリさせておくべきよね
うちは一向に構いませんどすわ
グレース・マリンカこと尾上ジュンさん、ルドルフ聖子さん、大ポロン・カリスマンさんの3人が睨み合う
ただし今日は高校の学園祭でやっている高校生の大会ってことになっているから格闘家としてのキャリアは上でも、あなたたちの方はエクシビション・マッチということで先に試合してもらうよ
マルゴさんは、そう釘を刺す
それで良い
構わないわわたくしたちが無理矢理割り込んだんですから
うちは何でも構いません
3人は了承するが
ちょ、ちょっと待ってあたしはあたしは誰と闘うのよ
一人だけ階級が違うモンキー・ミミさんが、イーディとマルゴさんに詰め寄る
ミミさんは高校生と一緒というわけにはいかないよね
マルゴさんが、イーディを見る 体重別の階級では工藤遙花たちと同じなんだけれど 確かミミさんは26歳ぐらいのはずだ体格からして、大人だもんな
ジュンたちを3人で闘わせるヨリミミを入れて、4人にした方が対戦カードが組みやすくナイカ
ドウセお遊びのスクール水着柔道大会ネミミが良いのなら、階級とか無視シテ試合すれば良いのヨ
そうだねジュンさんも、ルドルフさんも、ポロンさんも、ミミさんより重い無差別級の選手だけれどミミさん、特に対戦してみたい相手はいます
マルゴさんにそう聞かれたミミさんは、眼を輝かして
ルドルフ聖子の顔は、一度、引っぱたいてやりたいと思ってたよ
そうなるか
あたしは問題ないよいつも、うちの道場じゃポロンと稽古しているんだからさ
そうやねうちも、ミミちゃんが聖子はんを叩きのめすところが見てみたいどす
ポロンさんが、相変わらずのインチキ京都弁で挑発する
わたくしも、それで構わないわよわたくしもジムでは毎日、晴子たち下の階級の子たちの指導をしていますから小さい子を教育してあげるのは慣れているわ思いっきり、ブッ潰してあげるから掛かってらっしゃい
ルドルフ聖子さんもニッと微笑む
じゃあ、エキシビション・マッチの方はミミさんvsルドルフさんとジュンさんvsポロンさんで、勝った人たちで決勝戦てことでいいね
ギッタギタにしてあげるわっ
うちは一向に構いませんっ
大人の選手たちの対戦はこれで決まった
じゃあ、こっちは美魔女リーグというコトにするヨ
イーディ変更を森さんに伝えてあの人は格闘技の放送のプロだから、こういう現場での試合変更には慣れているから
マルゴさんに言われて、イーディが返事をする
あ、あのわたしにも試合のこと、もっと詳しく教えていただけますか
大会のアシスタントを勤めることになったアイドルのサイトー・ユーキさんがイーディに言う
ちょっと待ってソウいうのは、ネイが来てから、まとめて説明するネ
イーディはそう言うと、バーナム・森・スポーツ映像の車の方へダッシュで走って行く
もうっ、これってわたしたちの試合も変更になるんじゃないの
工藤遙花が、小さくなっていくイーディの背中を見ながら文句を言う
最初の予定はイーディvsライン晴子さんと尾上ジュンさんvsあたしとマリアだったのに
え1対2なんですか
遙花の言葉に、驚くサイトーさん
あたしとマリアのタッグでも、あの人に勝てるかどうか判らないのよ尾上さんは、とても打たれ強い上に信じられないパワーの持ち主だから
工藤遙花は、グレース・マリンカさんを見てそう言う あの自信家の工藤遙花が、こんなに謙虚なことを言うのはグレースさんが、オレたちのところに来てから合同トレーニングで何度も対戦したからだろう
わたしは2試合やっても平気だ
グレースさんは、ボソッと喋る
プロレスの頃は、そんなことはしょっちゅうあった
若手なのに美人で、その上異常なまでに強い上に人気もある選手だったから弱小女子プロレス団体では、まるでイジメのような数の試合を何度も組まれたそうだ それでも強靱な肉体でどんな相手も打ち倒してきたのがグレース・マリンカさんの凄さだ
あんたばっかり2試合もテレビに出るのは、ズルイわよ
それは、うちも承服しかねますわ
超実戦空手トミー・アシダ道場の二人ミミさんとポロンさんが文句を言う
まあ、その辺のこともイーディが、上手く考えてくれるよ
マルゴさんは、今日の大会のことは全てイーディに任せている
さてこれで、あたしたちがテレビの世界とも繋がりがあるっていうことは判ってもらえたよね
マルゴさんは、ずっとオレたちに付いて歩いて来た五十嵐イズミさんに、そう言う 五十嵐さんは、茉莉花がレイちゃんと知り合うだという話すら疑っていた
ジャスミンちゃんは、松下真樹さんに嘘は吐いてなかったってことだよああ、麗華さんもやって来た
マルゴさんの視線の先を見てみると ああ、私服姿のレイちゃんが校門からやって来る
おい、藤宮麗華だぜ
おおー、また現れたか藤宮麗華っ
この間もうちの学校に来たんだろオレは見てねーけど
今、見てるじゃねーか、どう見ても本物の藤宮麗華だ
すぐにオレの高校の生徒たちが、レイちゃんに気付く レイちゃんは、さっきまでの車の運転をしていた時の帽子とサングラスで変装した姿ではない 昔の英国紳士スーツの時ほど徹底してはいないけれどビシッと華麗に、スーツにネクタイ姿で男装していた 背が高く、スタイルも良いレイちゃんは、こういう姿が良く似合う もちろん手には、レイちゃんの必殺武器である撲殺ステッキを握っている
今日は、いつもの制服は着てないんだ
でもカッコ良いわね
うん、藤宮麗華って私服はあんな感じなんだ
そうか、みんなテレビで活躍するようになってからのレイちゃんしか知らないから レイちゃんには、香月セキュリティ・サービスの隊長の制服姿のイメージしかないんだ
リングドクターを香月記念病院の先生にお願いしましたのでご挨拶しておきました
レイちゃんは、爽やかな笑顔でオレに、そう言う 周りの生徒たちにはオレではなく、マルゴさんに報告しているように見えているだろう
今日は非番ですけれど香月グループの方にお会いする時は、やっぱりきちんとした格好でないといけませんから
ニコッと微笑むレイちゃんは、凛としていて格好良い うんレイちゃんのトップ・エリート警護人としての立場もあるもんな 香月記念病院はジッちゃんや、名家の人たちも診察を受ける病院だから、病院の先生たちは、警護の仕事中のレイちゃんとは面識があるんだろうし
ありがとうございます、麗華お姉さん
マルゴさんが、格闘技大会の責任者としてレイちゃんに礼を言う
こんにちは茉莉花さん、エリカさん今日は、茉莉花さんの学校のお友達と一緒なんですね
茉莉花の学校の人たちにはレイちゃんと茉莉花は親戚ということにしてあるから レイちゃんは、身内として親しげに茉莉花に話し掛ける 松下さんのお姉さんは、茉莉花と同じ制服を着ているから誰が見ても茉莉花と同じ学校の生徒だと判る
はい、わたしの大切なお友達の松下真樹さんと、妹さんの美樹さんです
は、はじめまして松下真樹です
妹の美樹です
松下姉妹は、茉莉花に紹介され緊張気味にレイちゃんに頭を下げた
そちら方は
レイちゃんが、五十嵐イズミを見る 五十嵐イズミも、茉莉花と同じ制服姿だが上に謎の革ジャンを羽織っている
あ、あたしはい、五十嵐イズミよ
そうですか茉莉花さんが、いつもお世話になっています
レイちゃんは笑顔で、ススッと一礼する その姿も、華麗だ それから、レイちゃんはオレに
次の便は、もうお届け致しましたあちらでは、その次の準備もしています克子さんと瑠璃子様で連絡を取り合っていますし問題は何もありません
オレがパン工房を離れている間にレイちゃんは、お屋敷から瑠璃子やアニエスたちが作ったパンを運んでくれたらしい そして、その次のパン作りもお屋敷の子たちは続けてくれている
判った、ありがとう
オレも、礼を言う
どう、お仕事は上手くできている
レイちゃんが黒瀬安寿に尋ねる 彼女は、オレたちの警護役になったばかりだ
いえ、あのただ、皆さんのお邪魔にならないように付いていくだけで精一杯です
黒瀬安寿は、そう答えた オレは、この子のこういう正直な性格を気に入っている
最初はそれでいいのよ頑張りなさい
レイちゃんの励ましに、黒瀬安寿の表情も緩む
さてと麗華さんが来てくれたのなら、ここから先はバトンタッチしようかな
この様子だと、あたしも調整役としてここに残っている方が良いと思うし
うんイーディのスクール水着柔道大会に色々と変更しなくちゃいけないことが増えたし 放送スタッフの件だって、マルゴさんが対応しないと解決できなかった それに、さっきのスギムラは居なくなったけれどまたテレビ局から変なヤツがやって来て、放送の邪魔をするかもしれない
あたしの姿が見えているだけでも、イーディがやりやすくなると思うんだ
あくまでもイーディに大会運営を任せるけれど、その上に責任者としてマルゴさんが居ることを示した方が何事も上手くいくか
わたくしは、しばらくは平気ですから
レイちゃんはお屋敷の次のパンができるまでは、時間がある
この子たちを連れて、音楽室まで行ってそちらのお姉さんと妹さんの演奏を聴いてあげてよ正直、クラッシック音楽はあたしには荷が重かったからね麗華お姉さんの方が、そういうのは得意でしょ
マルゴさんはどっちかっていうとジャズやロックとかの音楽に詳しい レイちゃんは、元々イギリスの昔の文化が好きだし警護の仕事でクラッシック音楽会なんかにもよく行っていると思う
わたくしも、演奏を批評できるほど詳しくはないですよ
でも、お願いするよお姉さん
はい、お願いされましたでは、参りましょう音楽室はどちらです
音楽室の場所を知っているのは、ここの高校の生徒のオレだけだ オレは、みんなを先導して校舎の方へ向かう
サイトーさんとマネージャーさんは、あたしと来て森さんに紹介するから
マルゴさんはサイトー・ユーキさんとマネージャーの藤森さんを連れて、バーナム・森・スポーツ映像の森さんの方へ歩いて行く マルゴさんとレイちゃんが交代した以外は オレとまり子と月子と黒瀬安寿茉莉花とエリカ松下姉妹と五十嵐イズミという学生食堂を出た時のメンバーのままだ みんなでゾロゾロと校舎の中へ入ったが
藤宮麗華っ
うそっ
テレビで観るより、細い
うわっ、カッコ良い
レイちゃんの登場に、生徒たちや学園祭に遊びに来た外からのお客さんがみんな声を上げて驚く というか校庭にレイちゃんが現れて以来、10人以上のヤジウマたちが、オレたちの後ろを追って来ているし校舎内に入って、さらに増えている
ホント、麗華お姉様の人気は凄いわね
まり子が、そんなことを言う
外では、ずいぶん大人しかったよなまり子
いつもなら何事にでも空気を読まずに口を挟むまり子が マルゴさんとテレビの人とのやり取りで、ずっと黙っててくれたのが不思議だった
だってマルゴお姉様は、怖いんですもの
マルゴさんが怖い
いつも爽やかに笑っていらっしゃるけれど怒らせてしまったら、誰よりも怖い方だと思うのよだから我慢して静かにしていたわ
ああ、マルゴさんの師匠はキョーコさんだからなあ 甘い考えで、いい加減なことをしたら思いっきりシャレにならない方法でトッチめられることになる
わたしだって、公たちとは、長い付き合いなんですからもう判るわよ
長い付き合いって、まり子 お前と知り合って、まだ1ヶ月ちょいだぞ そんな話をしているうちにオレたちは、西校舎の3階の奥の音楽室に到着した
済みません失礼します
この学校の生徒としてオレが、音楽室のドアをノックする 今日は音楽系のクラブは、講堂で演奏しているから この音楽室は、控え室としてしか使われていないはずだ
はーい、なあにうわっ、藤宮麗華っ
音楽室のドアを開けて出て来た女子生徒が、レイちゃんを観て驚く
はーい、こんにちは中へ入っても良いですか
この学校の卒業生のマルゴ・スタークウェザーさんが音楽担当のオオタニ先生に音楽室をちょっと使わせて欲しいって頼んでくれたはずなんだけど
レイちゃんが、そのことを知っているということは 学生食堂でのオレたちの会話を、お屋敷で盗聴していたからだろう あそこには、この学校の全ての場所を監視するシステムがある
あのオオタニ先生は、マルゴさんて先輩が来るからってだけおっしゃって、どこかへ行っちゃいました
ドアを開けてくれた女生徒は、そう答える ああ、昔、マルゴさんにシメられたことがあるんだな だから、顔を合わせないように音楽室から、逃げ出したんだ
それは残念マルゴさんは、校庭で3時からの格闘技大会の準備をしているから代わりに、わたくしがこちらに伺ったんですけれど
あのとにかく、中へ入れてもらえるかしら
まり子がどんどんヤジウマが増えていく様子を見て、女生徒に言う
あ、そうですね大崎先輩、良いですか藤宮麗華さんです
女生徒は、音楽室の中の先輩に許可を取る
よく判りませんけれど、どうぞお入り下さい
奥から眼鏡を掛けた三つ編みの上級生が出て来てオレたちに言った レイちゃんを先頭にオレたちは、ゾロゾロと音楽室の中へ入る 部屋の中では、15人ぐらいの女生徒たちが居た
うわっ、ホントに藤宮さんだ
本物なの
部屋の中でも、歓声が上がる
あ、そこの女の子までです後ろの人たちは、わたしたちとは関係ないですから
最後尾に居た黒瀬安寿が部屋に入った瞬間に、まり子が大崎さんに言う
おい、大崎オレたちも入れてくれよ
ヤジウマの一人の男子が、大崎さんにそう言うが
嫌よ関係無い人は入れません
そう言って、大崎さんはドアをピシャリと閉めた
合唱部部長の大崎善子です
大崎さんは、レイちゃんにそう挨拶した
こんにちは香月セキュリティ・サービスの藤宮麗華です
知っていますわ藤宮さんのことは
そりゃあ、今や日本中でレイちゃんのことを知らない人はいない
それで音楽室に、どんな御用ですか
大崎部長は、キッとした眼でオレたちに尋ねる
ええと説明して下さいますか
レイちゃんから、オレにバトンタッチだ
あのちょっと、込み入った理由があってピアノを貸して欲しいんです
ピアノを
驚く、大崎部長
そのここに来てもらっている松下さんの演奏を、みんなで聴かないといけないことになって
うちの生徒でない人に、音楽室のピアノをなぜ貸さないといけないんですかっ
大崎部長は、キツイ口調でそう言うが
大崎さん、演奏してもらいましょうよその人の制服って
あ、あたしも知ってる有名な音楽科の高校の制服だよ
わたしの従姉が、受験して落ちたとこだよね
演奏のレベルは、かなり高い学校ですよ
茉莉花たちの高校は、音楽をやっている高校生たちには、良く知られているようだ
こちらの松下真樹さんは、ピアノ科で学年一番の腕前だそうよ
まり子が、自慢げに言う
ほんのちょっと1曲だけ演奏してもらうだけですから、お願いします
オレは、大崎さんに頭を下げる
1曲だけですね判りましたどうぞ
大崎部長は、不承不承、納得してくれた
お借り致します
松下さんのお姉さんも、合唱部の皆さんに頭を下げる
美樹も一緒に演奏しましょう
妹に、そう告げる ずっと大事に抱えていたバイオリンケースとともに、松下美樹さんも姉と一緒にピアノの方へ向かった 松下真樹さんは、ピアノの蓋を開けて演奏の準備をする 美樹さんの方も、ケースを開けて中からバイオリンを取りだした
うわ、高そうなバイオリン
合唱部の一人が、美樹さんのバイオリンを見て声を上げる 真樹さんは鍵盤を叩いて、音を確認した 美樹さんの方も、軽く弓を弾いてバイオリンの調整をする
ピアノは調律できていますわ
真樹さんの鳴らす音を聞いて、茉莉花がオレに言う 茉莉花もピアノ科だから、聴いただけで判るんだ
いい美樹
姉妹は、演奏の準備ができたようだ
それで何を演奏してくれるのかしら
まり子が、松下姉妹に尋ねる
それではクロイツェル・ソナタの第1楽章を美樹、良いわね
姉妹の言葉に
クロイツェル・ソナタってあなたたち
大崎部長は、驚きの声を上げる
お静かに始まりますよ
レイちゃんが、大崎さんを制した 松下姉妹の演奏が始まる キュゥゥゥンッ いきなり音楽室に響いた美樹さんのバイオリン その音だけで、オレたちは演奏に引き込まれる ただの中学生の演奏じゃない この子凄い
タン、タタントトゥン、トゥン
バイオリンに続く真樹さんのピアノも
音の質からして素人ではないことが、オレにも判る
そのまま演奏は、少しずつ激しさを増していく
凄すぎる
松下姉妹は、完璧に息が合っていると同時に
ピアノとバイオリンの音が、高いレベルで競い合い、闘い合っている
音楽室の中は、姉妹の発する激しい音の洪水に包まれていく
トゥトゥトゥ、タン、ターンッ やがて演奏は終わった 余韻でしばらく、オレたちは動けなかったが
凄い、凄かったですっ
ドアを開けてくれた合唱部の人が、立ち上がって拍手すると 他の人たちも、みんな立ち上がって松下姉妹に、拍手を送る
こんなに凄いとは思ってなかったわ
10分以上もある大曲を演奏仕切っちゃうんだもん
うん、驚いたわ
10分以上 合唱部の人たちの言葉を聞いて、オレは驚いて音楽室の時計を見上げる 確かに10分以上、経過している 聴いている時は、そんなに長い曲だとは思わなかったのに
素晴らしかったわ松下さん
まり子も、姉妹に拍手する
うん、凄い演奏だった感動したよ
オレがそう言うと茉莉花が、嬉しそうに微笑む
予想以上の演奏だったわ
合唱部の大崎部長も、松下姉妹の腕前を認めてくれる
クロイツェル・ソナタは、ベートーヴェンの作曲だけれどトルストイの小説のタイトルにもなってるわね
オレたちの背後音楽室の入り口のドアの辺りから 良く知っている声が聞こえてきた
ロシアの公爵が、奥さんと友人が演奏するクロイツェル・ソナタを聴いて2人が不倫関係にあると確信するっていうストーリーだったわ
工藤父とアグリピーナさんと車でどこかへ向かったはずのミナホ姉さんが、なぜ、ここに
久しぶりにクロイツェル・ソナタを聴きました
相変わらず、コミケ会場まで電車で30分の距離に住んでますが今年は行きませんでした(夏も)
うーん、どうも体調があまり良くありません
今年は、なんとか更新が再開できるようになりましたが個人的には、色々と問題山積みの1年でした
御名穂の登場で年越しとなります
皆様、よいお年をお迎えください
1396.学園祭2日目 / ピアノの連弾
あれっ、あの人って
夏までうちの高校の先生だった人よね
合唱部の女生徒たちが、ミナホ姉さんに気付く
ええと確か、どこのクラスの担任もしていなかった先生だよ
ああ、そうだええっと
確か弓槻先生だったと思う
ミナホ姉さんはお母さんの家の弓槻を名乗って、担任クラスを持たないどころか、一切、授業を行わない謎の教師だった まあ、ミナホ姉さんは本当は教員免許を持っていないから、仕方ないんだけれど
あら辞めた教師が学園祭に来るのは、そんなに変なことかしら
ミナホ姉さんは、いつもの冷たい微笑で合唱部の人たちに言う いや、そんなことより どうして、今、ここにミナホ姉さんが居るんだ ミナホ姉さんは、駅前ホテルの地下の新しい娼館から、美里たち娼婦候補生を車でこの高校に連れて来た後
何かをするために工藤父と最強のフリー警護人のアグリッピーナさんと一緒に、車で出掛けたはずだ
そして、オレたちは、その何かと無関係なことを証明するために
アリバイとして国営放送局を呼んで、お昼のニュースにオレたちを出した
その時間には、オレたちがパン工房に居たと言う事実を確定させるために
オレは、音楽室の壁にある時計を見る
今の時間は午後2時35分
2時間30分の間に、ミナホ姉さんは予定の行動を全て終わらせてこの高校に戻って来たのか
そんなことよりあなたたち、今の演奏、素晴らしかったと思わない
ミナホ姉さんは、話題をピアノの前に居る松下真樹、美樹姉妹に戻す
ちょっと、緊張し過ぎていたみたいだったけれどまあ、まだ若いんだから良しとしておくわ次からは、もう少し、演奏を聴いて下さる方たちのことも意識するようになさい
そんなアドバイスを姉妹にする
あなたたちは、自分の内面にばかり集中してしまっていたけれどあなたたちが、そんなに張り詰めた心で演奏したら、観衆はリラックスして楽しめないわあなたたちにとっての音楽は演奏は人生を懸けた大切なモノなんでしょうけれどそれを聴く人にとっては、文字通り音を楽しむエンターテインメントなんだということを忘れないで
松下姉妹は、ミナホ姉さんの持つ重い雰囲気に呑まれてしまう それは、合唱部の人たちも同じだった みんな、弓槻御名穂という元・教師のことは知っていてもこんなに近い距離で真っ直ぐに向き合って話すのは、これが初めてなのだから
さて合唱部部長の大崎さんさっき、ピアノの使用は1曲だけってこの子たちと約束していたみたいだけれど
ミナホ姉さんの冷たい眼が大崎部長を見る
こんなに素敵な演奏だったんですものあたしはもう1曲ぐらい聴きたいんだけれど、構わないわよね
大崎部長は
ど、どうぞもう1曲ぐらいでしたら
ミナホ姉さんのプレッシャーを正面から受けて押しきられる
な、何を演奏致しましょうか
松下さんのお姉さんの真樹さんが、緊張した表情でミナホ姉さんに尋ねるが
ああ、次はねあなたたち姉妹の演奏じゃないのよ松下真樹さん、あなたには残っていただくけれど妹さんの美樹さんは、もういいわ今の演奏で、充分、才能は判ったから
ミナホ姉さんの視線が、オレたちの方へ向かう
高畑茉莉花さん
ミナホ姉さんに名前を呼ばれて、茉莉花はビクッと身体を震わせた
あなた松下真樹さんと一緒にピアノを弾きなさい
茉莉花と松下さんの姉が、一緒に弾く
連弾ということですか
松下真樹さんが、ミナホ姉さんに尋ねる
そういうことよ曲はそうね、モーツァルトの連弾ソナタならどれでもいいわ松下真樹さんが第1奏者で、茉莉花さんが第2奏者で弾いてちょうだい
わ、わたしはわたしの演奏では、真樹さんの足を引っ張るだけです
茉莉花は、そう言うが
松下さんたちの人生が掛かっているのよだから、足を引っ張らないように演奏なさい
ミナホ姉さんは、断固として2人の共演を求める
高畑さん
松下真樹さんは、茉莉花を見る
わたしと連弾して下さいどんな結果になっても、わたしは受けとめますから
松下さん
見つめ合う真樹さんと茉莉花を黒革ジャンの五十嵐イズミが、憎々しげな顔で見つめている 松下真樹さんと茉莉花が一緒にピアノを弾くのがそんなに嫌なのか
K.381の第1楽章でいいかしら
はい、それなら
真樹さんの提案に、茉莉花がうなずく 2人は並んで、ピアノの前に座った
じゃあ、始めてちょうだい
ミナホ姉さんの声に、2人は演奏を開始しようとするが オレは茉莉花たちを止める
2人とも、呼吸が合ってないよ呼吸を合わせて
松下真樹さんはという表情になったが、オレやエリカたちといつもセックスしている茉莉花にはオレの言葉の意味が通じた
松下さんわたしを見て下さいそして呼吸を合わせて下さい
茉莉花がゆっくりと大きく呼吸してみせる
まずは大きく、すぅーはぁぁすぅーはぁぁ
松下さんは茉莉花の言う通りに、呼吸を合わせた
それから少し早くしますすぅぅ、はぁぁすぅぅ、はぁぁ