まだ、オレの女になっていないし
今日は学校から、そのまま、みすずたちに合流して香月家に行っている
イーディと歌晏家の警護役の試合を観にまた、お嬢様たちが集まるのだから
みすずは、臣下にした可憐さんを側に連れていないといけない他家のお嬢様たちが不審に思う
あらわたくしも居りますわよ
不意にドアの向こうから、制服姿のまり子が現れた
え、まり子何でここに
鳥居家の令嬢であるまり子とはオレは、一緒に暮らしていない
学校だってみすずたちと同じ、超お嬢様校だし
みすずお姉様に、克子お姉様からお電話があったそうですわ今日、公が美味しいパン屋さん巡りをするから、わたくしも同行するようにって
克子姉から連絡が
え、でもまり子も、香月家に行かなきゃいけないんじゃないのか
お嬢様なんだから
別に構いませんわわたくしは、名家の令嬢ではございませんから
あの方たちのお集まりにわたくしが参加しなくても問題はございませんわ
前ならまり子の方が、無理矢理に参加していたのに
名家コンプレックスからは、完全に解放されたんだ
それに桃子お姉様は、わたくしが来るはずだと思っていらっしゃるはずですからわたくしが公とデートしていると知ったらびっくりなさるはずですわ
悪戯っ子のように、微笑む
桃子お姉様のお心を揺さぶって差し上げようと思うんですのっくふふっ
みすずの焦らす発言といい
桃子姉ちゃん酷い言われ様だな
ノブぅそろそろ、そちらの方を紹介してくれる
可奈センパイが、オレをジトッとした眼で見る
わたくしは、鳥居まり子よ公のわたくしも恋の奴隷よっ
ああそうあたしは
さっき部屋の外から聞いたわ公の学校の先輩の星崎可奈先輩でしょみすずお姉様からも聞いているわきっと、一緒にパン屋さん巡りをすることになって
克子姉だ
克子姉は可奈センパイが、部活をサボってオレに付いてくることを見切っていた
可奈センパイとまり子を会わせたいと考えた
ふーん、じゃああなたも、したのノブと
致しましたわ公と
笑顔で睨み合う可奈センパイとまり子
動画と写真も撮ったノブと
ええ、公と裸で繋がっているところもわたくしの胎内に射精したところも全て
じゃあ、あたしと一緒なのねぇ
はい、同じだと思いますわ
ううう笑顔が怖い
愛も怖がってオレにしがみつく
ああ、それでそちらが愛さんねパンを作るのがお上手な
まり子は、愛のこともみすずから聞いているらしい
仲良くして下さいねそれがルールなんでしょ公の女の
吉田くぅーん
あなたの方から、仲良くしなさいよ後から入り込んだんだから
ノブ、この子何歳
えっとまり子は、オレと同い年
じゃあ、愛とも同じ学年ねあたしは1つ上だから年齢でも先輩よ
な、何よそんなの関係ないわよねえ、公
ちょっとノブ
ていうか何で、あなた、わたくしの公のことをノブって呼ぶのよ
そういうあなたこそあたしのノブを公なんて呼ばないで
ヤバイぞこれは
皆さん、お静かに願います
ヨミが巫女の力を放つ
黙る3人
はい、先生どうぞ
ヨミが、ニコッとオレに微笑んだ
えっと可奈センパイ
まず、オレは
まり子はトリイ電子のお嬢さんあの、世界企業の
ギョッとなる可奈センパイ
そうそう就活、就活使えるモノは何でも手に入れるんでしょだから、大人しくね
ケンカしたらコネにはならない
そんで、まり子
今度は、まり子を見る
この人は、オレの女だけれど先輩でもあるんだから、行儀良くしろ仲良くできない子は、放り出すぞ
ちょっと強めに言う
二人は喋れないままシュンとなる
ヨミが抑え込んでいる間は、このままだろう
さて人員を決めよう
まず、ミタマは連れて行けないな
可奈センパイの反応を見て判った
ミタマを連れて町へ出れば昨日のテレビを観た人たちに囲まれてしまう
それからキヌカは
本当は、ミタマと同じで世間知らずのキヌカに町を案内してあげたかったんだけれど
この状況じゃあな
可奈センパイとまり子と愛を連れてその上、キヌカの面倒までは、とても見られない
この子は興奮すると、何をしでかすか判らないところがあるから
ということで警護役は
ハイジ、出掛けるから警護を頼む
この中では、ハイジが一番冷静沈着だしプロの警護を知っている
それにせっかくの機会だから、まり子と仲直りもさせたいし
即答するハイジ
ミタマとキヌカは、オレたちが不在の間この屋敷の警護を任せる
かしこまりましたでございます
安城姉妹は、オレに一礼する
ただし、お前たちの勝手な判断で警護をするなよ屋敷の監視システムについては、マナが熟知しているからマナの指示に従えそれから、月子にも必ず意見を聞け
残っている人の中で、一番年長で落ち着いているのは月子だ
それに月子には巫女の力もあるからミタマたちの暴走を止められる
オレたちよりも先に渚が帰って来たら、渚がチーフだいいな
安城姉妹は、同時に返事をした
あら、あたしは
この子たちに、あたしの命令も聞くように言っておいてよ何しろ、あたしはお腹が大きいんですから
雪乃の命令は聞かなくていいから
安城姉妹は、これまた歯切れの良い返事をする
えっとまり子は、雪乃とは
公が来る前にマナさんに紹介されたわ
わたくしは公を驚かせようと、そこのドアの後ろに隠れていたのよ
まり子はニカッと笑う
まあ、いいわハイジ、よろしくね
申し訳ございませんが、わたくしの現在の主は黒森様でございます鳥居まり子様のご命令には従えませんのでご容赦下さいませ
ハイジはクールにそう言う
な、何よ判っているわよ今のわたくしとあなたは同じ立場そういうことなんでしょ
はいもちろん、警護役のお役目ですので、危機の時にはお助けは致しますが同じ身分であることは、ゆめゆめお忘れなきようにお願い致します
はあこのメンツは、なかなか大変かもしれない
吉田くぅぅん
愛が震えて、オレの腕にしがみついている
えっとそれじゃあ、行こうか
オレは、克子姉の渡してくれた美味しいパン屋さんのリストを見る
克子姉は、3軒廻れって言ってたけれど今からだと、全部廻るのは難しいかもな
ここから駅までバスで行って電車に乗って
3軒とも、結構、離れているし
どうしてよ車で行けば大した時間は掛からないじゃないの
いや、車を運転できる人がいないからさ
渚は店
克子姉はミナホ姉さんのところ
マルゴさんも寧も居ない
今日は、翔姉ちゃんもレイちゃんも来ていないし
公あなた、あたしがどうやってここに来たと思っているの
あ、そうかまり子は、家の車で来たのか
超お嬢様校はほぼ全員が、運転手付きの自動車通学なんだっけ
あ、でも乗れるか、この人数で
オレ、愛、可奈センパイ、まり子、ハイジ+運転手さん
まり子の家の車が大きいとしても6人は無理だろう
それは克子さんに言われているわうちの車じゃ、目立つからここの車のミニバンに乗り換えて行きなさいって
まり子さんの乗って来た車って
もちろん、ロールスロイスのファントムよ
当たり前のように、まり子は言った
現行のファントムでしたら、ラウンジシートを使っても5人しか乗れません
じゃあ、やっぱり、うちのミニバンを使うしかないか
でもさ、まり子の家の運転手さんて他の家の車でも運転してくれるのか
そういうのは契約的に大丈夫なんだろうか
それがうちの運転手さんは、みんな香月セキュリティ・サービスから派遣していただいているんですけれど今日は、いつもとは別の人が来たのよ
はいはいはーいそれはオレぇぇぇ
突然、中庭から帽子に制服に白手袋の運転手ルックを着たオッサンが現れる
運転手はオレだっお前は誰だっイエーイ
ああ久しぶりだなあ
ノブ誰
え、公の知っている人なの
吉田くぅぅん
美智のお父さん
そうだこの人は、工藤父
そうですこのオレが美智のパパですっ
工藤父は、大きな声でそう言うと
娘がいつもお世話になっています
ペコッと庭から、室内にするオレたちに頭を下げた
ちょっと今までとは違う顔触れで
そんなに長い話にはならない予定です
1056.パンを巡る冒険 / 発進
ミニバンでしたら、まだ乗れますよね
ヨミがオレに微笑む
ヨミも行きたいのか
というより、わたくしが居た方が便利だと思いますけど
巫女の力の使える子が1人居た方がいいか
よし、じゃあヨミも来てくれ
運転手が、工藤父で
警護役が、ハイジ
そして、オレと愛と可奈センパイとまり子とヨミ
7人なら乗れる
オレは留守番の女たちに言った
あんた、着替えないで行くの
このままでいいよ可奈センパイも、まり子も愛も制服のまんまだし
ハイジとヨミはお揃いのメイド服を着ている
先週の香月家のパーティ以来、メイド服が流行っているから
では、行ってらっしゃいませ
お気を付けてお戻り下さい
安城ミタマ&キヌカ姉妹が、ペコッと頭を下げる
おー、車は正面玄関の前だぞ
外の庭から、工藤父がそう言った
はい、今、行きます
オレたちは急いで、正面玄関へと向かう
相変わらず、迷路みたいな家よね
可奈センパイが、そう言うが
あら、面白いじゃないテーマパークみたいで
まり子が煽る
それに、みすずお姉様の香月家の本宅は建物だけでも面積で、ここの8倍ぐらいあるわよ
それが何よあなたは、みすずさんじゃないでしょ
可奈センパイが睨む
そうねわたくしの家はただの高層マンションの一室でしかないわ
まり子は、ニヤッと微笑む
東京の家はね
トリイ電子は、本社が静岡なのよだから、静岡にも家があるわそっちはそうね、ここのお屋敷ぐらいはあるかしら
静岡が本宅なんだ
やっぱり、子供の教育を考えたら東京の方が良いでしょだから、わたくしが幼稚部に入園する時から、こっちにもマンションを買って暮らすようになったのよお父様は、静岡と東京を行き来なさっているし
例の超お嬢様校に娘を通わせるためにわざわざ、引っ越したんだ
みすずたちの学校は、小学校や中学校からの編入生は、ほとんど取らないと聞いた
だから、名家ではない鳥居家が、娘をあのお嬢様校に送り込むとしたら幼稚部からを狙うしかない
それが何なのよあなたの家がお金持ちだからって、あなたが偉いわけじゃないじゃないあたしの家は普通の家だけれど両親には、何不自由なく幸せな生活をさせてもらっているわよ感謝しているわ
可奈センパイは、強い口調でそう言った
あら、そ良かったわねでも、それだってあなたのご両親が素晴らしいんであってあなた自身の成果じゃないでしょ
ツンとして、まり子は言う
止めろよ、2人とも
両親が健在な子ばかりじゃないんだからな
ここにはヨミやハイジも居る
あごめんなさい、ハイジ
まり子は、元雇用主だからハイジが、孤児であることを知っている
わたくしだけではございませんわ
冷たい眼で、ハイジはまり子を見た
いいのよあの、わたくしも最近、両親を亡くしていますので
騒いじゃって、ごめんなさいね
可奈センパイが、ヨミに謝る
そ、そういうことなら吉田くんが一番かわいそう
2人はお父さん、お母さんが亡くなってしまったけれど吉田くんは
ノブのご両親どうしたの
可奈センパイが、心配そうにオレを見る
オレ本当の両親に捨てられたんだよオレみたいな子は、いらないってそれで、黒森家に拾われたんだ
だから生まれた時の名前は、吉田良信で今は、黒森家の養子だから戸籍上は、黒森良信でも、黒森の人間として、公の場に出る時には黒森公って名乗ることになっているんだ
本当は、もう一つ秘密の戸籍をオレは持っている
寧の双子の弟さんの籍を貰ったから
それは言わないというか、ここでは言えない
ああ、それでこの人は公のことをノブって呼ぶのね
そんで、あなたはノブのことを公って言うんだ
吉田くんは吉田くんだよ
わたくしは、先生とお呼びしていますわ
ヨミの声に、まり子と可奈センパイは
それは何でよ
何の先生なのよ
ほぼ同時に突っ込む
もちろんセックスですわ
ヨミは、ニコッと笑った
あらそ
まあノブは、エッチが凄いものねえ
2人は、オレを見る
オレそんなに凄いか
凄いわよあたし、毎回イッちゃうし今では、週に1、2回はノブに中出ししてもらわないと、身体が疼いて寝付けなくなるものしかも、他の男の子とは、エッチしたいなんて思わないし
可奈センパイはそう言ってから
あなたはどうなの
フフッと笑ってまり子を見る
わ、わたくしはまだ、公とは1回しかしてないですから
ああ、まだイッてないんだへぇぇぇ
ぐぬぬと、苦い顔をする、まり子
ハイジ、あなたはどうなのよ
話の矛先をハイジに向ける
ハイジちゃんは一昨日ぐらいから、イケルようになったわよね
ハイジの代わりに、ヨミが答えた
ま、まだわたくし1人では難しいかもしれませんけれどヨミお姉様たちが、サポートして下さいますから
ああ、イクイクイクーッっていうのを、増幅して伝えてくれるのよねぇあれが、また腰が抜けるほど、気持ち良いのよ
うん吉田くんとのセックスは気持ちいい
愛も、ポツリと呟く
な、何よも、もしかして、あたしだけ
日曜の夜に香月家で別れて月、火、水、木、金今日は土曜日
ほんの数日で、ハイジに差を付けられたことが悔しいらしい
まり子そんなことで、うろたえるなよ!
ちゃんとお前もイケるようにするからさ
わ、わたくしにもしてくれるのね
まり子が、オレを見るが
違うオレがしてやるんじゃなくってまり子が、オレに調教されるんだよ
ええ、先生ですから
ヨミが、ククッと笑う
ああそうねあたしもノブに調教されているのよセックスを仕込まれているのよノブじゃないとダメな身体にね
愛もエッチ奴隷だから
まり子お嬢様わたくしも、ご支配を受けているだけでございます
可奈センパイ、愛、ハイジがそう答えた
ああそうねそういうルールなのよね
えっと公、わ、わたくしにもまり子のことも、ちょ、調教して下さいはしたない、まり子にセックスを教えてお、お願い致します
今までならまり子にプレッシャーを掛けるみすずや桃子姉ちゃんが居たから
だから、まり子の言動には多少は、ブレーキが効いていたけれど
今はそういう人たちが不在だからちょっと調子に乗って、可奈センパイや他の子に強気で話していたことに、ようやく気付いたらしい
そういうことですわわたくしたちの主は、黒森様なのですから
まり子お嬢様もお仕えさせていただいているという思いを、お忘れにならないで下さい
そうよそうよあなたの家がお金持ちとかノブの前では、関係ないんだからね
可奈センパイも笑って、そう言う
まり子後で、泊まりに来られる日をオレに教えろよ
まり子のためのスケジュールも組むから合宿だセックス浸けにするからな
恥ずかしそうにまり子は、顔を赤らめた
玄関のドアを開けると正面に、いつもの7人乗りのミニバンが停まっていた
工藤父は、玄関脇に座ってお屋敷の側面をジッと見ている
どうかしましたか
何か、防犯上の問題とかがあるのだろうか
オメェよこの建築物の側面のなこう、上に屋根的なものがあって、軒下っぽくなっている所があるだろ
ここを建築用語で犬走りって言うんだ
いぬばしり
いや、昔からな本来は、戦国時代とかの城に使われていた用語だから石垣の内側が武者走りで、外側が犬走りだったんだ
むしゃばしり
でもよ何で、犬走りなんだ猫走りとか猿走りとか蟹走りとか牛の糞走りじゃ何でダメだったんだろうな
あの今夜にでも、イーディに聞いておきます
日本の昔のことを半年前まで、日本語も喋れなかったアメリカ人に尋ねるとはどうかと思うけれど
イーディなら、きっと答えを知っていると思う
うん、頼むぞ答えが判ったらメールで知らせてくれ
大きく伸びをして立ち上がる
ならオレも車に
そう思って、車に向かって歩き出すと
ところで、オメェ今日のネットニュースの話題のトピックスを見たか
オレの背中に刺すように言う
いえ、見ていません
オレは慌てて振り向いてそう言った
それがなぁトンデモねぇ記事が載ってたんだわ
恐ろしいニュースだオレは、ショック死するかと思ったぜあのなぁ
女の子の胸の大きさはほぼ15歳で決定的になってしまうんだそうだ
な、ナニィィィィ
ぜーったいに、美智に言うなよ
い、言いません
工藤美智15歳の希望を打ち砕くようなことを言うヤツは、このオレが容赦しねぇからな
オレだって同じ気持ちです
そこのお嬢ちゃんたちも慈悲の心で、美智には黙っていてやってくれ
可奈センパイたちは、呆然として工藤父とオレを見ていた
オレからは以上ださあ、車に乗り込めッダッシュ
工藤父は、シュパパパッと運転席に乗り込む
えっとまあ、ああいう人だから
ここのお屋敷に着くまでは、わたくしには一言も喋らなかったのに
まり子は、呆れ顔でそう言った
えっと席だけど
オレが、座席を決めようとすると‥
ハイジちゃんが、警護役だから助手席ですわ2列目のシートに、わたくしと愛お姉様が一番後ろのシートに、先生を真ん中にして可奈お姉様とまり子お姉様がお座り下さい
そうか‥ヨミは、警護のノウハウも
翔姉ちゃんや、レイちゃんの記憶から、読み取ってきているんだ
でも、わたくしには専門的な後方警戒などは、実際にはやったことがございませんから
オレの心を読んで、ヨミが言う
それはわたくしがフォロー致します
アカデミー出身者のハイジが言う
いや、ハイジがそこまで頑張らなくても平気だよ美智のお父さんは‥見た目はあんな感じだけれど、とても有能な人だから
尾行車輌は不審人物の接近なんかは‥運転しながら、チェックしてくれるはずだ
でも、ヨミ接近して来る人の心のチェックは、やってくれ
巫女の力は、距離が遠いと‥相手の心に届かない
だからせめて近付いて来る人だけは確実に
了解ですわ先生
オレたちは、ヨミが指示した通りの座席に着く
ああ、なるほどまり子と可奈センパイは、オレが間に入って座った方が正解だな
2列目のシートから愛が、寂しそうにオレをジトッと見ているけれど
全員、シートベルト着用
そしてブルルルンッと、エンジンを始動させ
ちょっとエンジンを暖めるから、しばし待てぇい
あの現代の車輌は、暖気しなくても問題はありませんが
助手席から、ハイジが言う
気分だよ気分そういうのが大事なんだよ
工藤父は笑う
ほらエンジン内圧力上昇エネルギー充填90%って感じだろ
何のエネルギーです
まり子の質問を、工藤父は無視する
エンジン内、圧力上昇エネルギー充填100パーセントフライホイール始動開始
ノブフライホイールって何
いや、オレも判らない
な何だろう
エンジン内、エネルギー充填120パーセント
公、100パーセントを超えちゃっても平気なの
フライホイール始動波動エンジン点火10秒前抜錨
ハンドブレーキを解除する
点火10秒前9、8、7、6
こういうのアニエスちゃんたちが居る時なら、喜ぶと思いますけれど
ハイジが、ボソッと呟いた
3、2、1、ゼロフライホイール接続、点火
何に火を付けているのよ
愛の叫びの中
クルマ発進ッ
工藤父がギアを入れて、車を始動させる
ちゃちゃちゃーんちゃちゃちゃちゃーん時に西暦****
陽気に喚きながら工藤父は、オレたちの乗る車を走らせていく
ちょっと、急発進させないでよっ
どうなるんだろうこの美味しいパン屋さん巡りは
車とかに乗ってて、前に邪魔な車が走っていると
スイッチを押したら、ミサイルとかマシンガンが出れば良いのにとか、妄想することがあります
脱出スイッチも欲しい
アメリカのマーベルコミックスで、ウルヴァリンが死んだらしい
でも、来年のシリーズの予告のポスターにウルヴァリン(ローガンさん)が描かれているので
きっと、またすぐに蘇るのでしょう
死んだと思ったら、沖田艦長並みの勢いで復活したキャプテン・アメリカみたいに
ちなみに2代目バットマン(アズラエル)は、初代(ブルース・ウェイン)が復活した後、行方不明でしたが
死んだヒーローたちがゾンビになって蘇るエピソードでゾンビの群れに交じって描かれていたという
いつ死んだのかさえ、誰にも知られないまま
1057.パンを巡る冒険 / 1軒目のパン屋
お屋敷の玄関前からオレたちを乗せたミニバンは、坂を下って門へ
門前で一旦停まって大きな鉄の扉を、ミニバンから遠隔操作で開けることなんるんだけれど
ああ、工藤父はミニバンの運転席の隠しスイッチを知っているのか克子姉が教えたのかな
まり子の家のロールスロイスを運転してお屋敷に来た時には監視カメラの映像を元に、マナが開けたんだろうもう、すっかりそういう操作もできるようになっているから
ガガガガカッと車の前の鉄扉が、自動で開いていくと
ああ、今日は門前の車輌が少ないな
公安警察の監視車は1台しか着ていない
これは、キョーコさんが今は関西に居ることが判明しているからだ
一方、香月セキュリティ・サービスの方もみすずや瑠璃子が、本宅に居るから今日は2台しか停まっていない
一旦、車を門の外に出して
不審な人間がお屋敷の中に潜入しないように背後で、門が閉まるまで待ちながら監視する
その間に、運転席の工藤父は公安警察と香月セキュリティ・サービスの車に、それぞれVサインをして自分の存在をアピールしている
オレはどっちの組織にも、よーく知られているからな
そう呟いてから
えっとどこへ行けばいいんだっけ
あ、これです
オレは、後部座席から身を乗り出して克子姉から手渡された美味しいパン屋さん巡りのリストを、工藤父に手渡す
ふん行く順番も決まっているのか
工藤父は、パパッとリストを見るとカーナビに打ち込んでいく
あれ、工藤さんもカーナビ使うんですか
正直、ちょっと意外だった
普段は、絶対に使わねえよ関東近県の道路は裏道に至るまで、オレは熟知しているからなカーナビの画面なんかを見ながら走るのは性分に合わねえ
じゃあ、何でカーナビを操作しているのよ
まり子が、オレの横から尋ねた
カーナビを使うと、どういうルートが示されるのかそれを知っておきたいのさせっかくの機会だからな
対象者が、カーナビを使っている場合のルートの特定に利用するのですか
ハイジが、助手席から言う
まあ、そういうことだ学べるチャンスは逃したくねぇ
しかし香月セキュリティ・サービスでしたら、各メーカーごとのカーナビゲーションのルート提示のデーターについては、すでにお持ちなのではありませんか
ハイジが言う通りだと思う
昇華姉ちゃんなら市販されているカーナビがアップグレードされる度に、調査させているはずだ
香月セキュリティ・サービスみたいな大企業なら、そうだろうがオレは、零細個人事業主なんでね
工藤父がアクセルを噴かす
車が、急加速で発進する
揺れる車内で可奈センパイが、オレにしがみつく
ひゃぁぁっ
愛もシートに必死で掴まっている
あなた何者なの香月セキュリティ・サービスの人じゃないの
まり子に尋ねられて工藤父は
オレは、私立探偵の工藤優作だ
私立探偵
何よそれ探偵なんてのは、全部私立じゃない国公立の探偵なんて、聞いたことがないわよ
まり子が喚く
ああ、私立探偵っていうのは世を忍ぶ仮の姿だからな
バックミラーの中で、工藤父がニヤッと微笑む
スピードを緩めて車は、安定して巡航するようになった
工藤さんは香月セキュリティ・サービスの社員じゃないんだけれどジッちゃんとも契約をしているんだよ
え香月様と
そうだよあの裏の仕事をするのが専門でさ
別に、香月のジィさんに魂を売っ払っちまったわけじゃねぇぜあのジィさんとは案件ごとに、個別に契約しているだけだからな主義に合わねえ仕事は、オレは受けねえからよまあ、何だ言わば、このオレ様は、特殊な用件専門のエージェント・スミスってことだ
工藤父が、そう言う
何よエージェントなら判るけれどスミスっていうのは何
まり子が、ムッとして尋ねる
何だイマドキの高校生は、エージェント・スミスを知らないのかってことは、ドクター・スミスはもっと知らないな
可奈センパイも、怪訝な顔で工藤父を見る
ほんじゃあ、ごめんなさい、スミス、もう泣かないって約束したのにイナヅマァァ、キィィィックは
呆れるまり子
ダブル・バスタァァァァ・コレダァァでオカエリナサイだよっ
あのワケ判らないんですけど
可奈センパイも、冷たい眼で言う
えっオメェはどうだ
申し訳ありませんが
ハイジが冷ややかに言う
そっちの姉ちゃんたちは
ううう判らないですぅぅ
興味無いですわ
愛とヨミもそう答える
何で、これだけ女学生が乗ってて1人も濃いやつがいねぇんだよっ
えっと工藤父
寧かイーディが居れば判ったかもしれないけれど
今日のメンバーは、割と良識派だから
ノブこの人、本当に美智さんのお父さんなの
うんそうなんだけれど
美智さんが無口な理由あたし、よーく判ったわ
ああ、こういう人がお父さんなんですものねぇ
初めて、可奈センパイとまり子の意見が合った
くっそー
悔しそうな、工藤父
ヨミは笑っている
オレや工藤父の心を読んでいるんだろう
ハイジは工藤父を無視して、車外の警戒を始めている
オレに急に呼ばれて慌てて振り向く、ハイジ
な、何でございますか
今みたいなやり取りで、惑わされるなよ工藤さんはハイジが、今、想像しているような人じゃないからな
オレの言葉にまり子や可奈センパイも、オレを見る
公、どういうこと
このオジサンが、どうだって言うのよ
へぇ、どの子もお前の話は、マジメに聞いてくれるんだな
工藤父は、オレの女たちの様子に感心している
工藤さんはさ美智と同じ工藤流古武術の人だからさ
ですがこの方からは、美智お姉様のような底力は感じません
いややり方が違うだけで、流派としての考え方は同じなんだよ
工藤流古武術は、相手が放つ気を反らしてカウンターで攻撃するのが流儀だ美智は無口で自分の気配を消して、相手の気を受け流すけれど工藤さんは、自分の方から散弾銃みたいに細かい気を放って、それで相手の気の圧力を削ぐんだよそういうやり方なんだ
オレも段々、判ってきた
だから、ハイジが今この人のハイテンションには付いていけないちょっと疲れたって感じていたらそれは、工藤さんに気を削がれたっていうことなんだよ甘く見ちゃダメなんだ警護役なら大したことないって感じた相手ほど、注意しなくちゃダメだ
あ、そうですわねダメな人を、香月様がわたくしや公のところへ派遣なさるはずがないですもの
まり子も気付く
えちょっとまるでダメなオジサンって思わせるのが、この人のやり方だってこと
可奈センパイも驚いている
そういうことだよカーナビだって別に、こんな機会にテストしなくたって本当は、詳細なデーターをもう持っているんだよただ、ああいうアクションをしたら、オレたちがどう反応するかを見ているんだよ
あわたくしたちに、自分は、香月セキュリティ・サービスからデーターを貰えないような身分だと思い込ませるためになのね
まり子の言葉に、工藤父は苦笑する
おいおいあんまり、オレの手を暴露すんなよ
でも、工藤さんそうやって、わざと無能なフリをして相手を油断させるの良くないですよだから、美智や遙花さんが
娘たちは工藤父と、あんまり上手くいっていない
そして他の子がいるから、ここでは言わないけれど
そんなことをしていたからこそ美智の母親は、香月セキュリティ・サービスの上司と浮気をして離婚するハメになってしまった
いや実際、オレは能力が低いんだよオレが、工藤流古武術の免許皆伝まで到達していないことは知っているよな
工藤父は、若くしてできちゃった結婚をしてしまったから
だから、修行途中で裏の世界で働く様になった
美智みたいに流派の技を極めるところまで行けていたら、こんな風にはならなかったかもしれねぇけどよでも、オレは
工藤さんだって今とは違うやり方でそれこそ、凄さをみんなに知ってもらうことだってできるはずですよ
よせやいもう25年以上このやり方で、やってきたんだぜ若けりゃ、路線変更を効くだろうがオレの年齢じゃ、下手に変えたら命取りだよこのまんまでいくさ
工藤父は正面を見たまま、そう言う
長年築き上げてきた自分のスタイルっていうものは、大切にしないとなそれを見誤っちまうと思いっきりコケるからな山岡と悦子みたいに
香月セキュリティ・サービスの前の警備部長の山岡さん
悦子というのは美智の母親の名前だ
香月セキュリティ・サービスみたいな大企業のそれも表の部門に長年勤務していた人間には、裏の仕事は勤まらないそれはそれでやっぱり表の世界のスタイルが身に付いてしまっているからな
2人とも、香月セキュリティ・サービスを懲戒解雇されて
関西のヤクザに雇われていたけれどそれもクビになったはずだ
オレは、そこまでしか知らない
今、どうしているんですあの2人
九州の観光ホテルに、住み込みで働いているらしいよ詳しいことは、よく知らねぇが
やっぱり警備関係の仕事に再就職することはできないんだ
でも今でも2人で行動しているんですか
ああなっちまったら、むしろ離れられないんだろうなぁ見知らぬ土地で、寂しい環境だからな
ノブ何の話をしているの
ああオレの別れたカミサンの話だ浮気しやがったから、叩き出したんだよワリィけどよ、一応、美智たちに伝えておいてくれ元気で暮らしてはいるみたいだから
そうか母親の近況を、オレの口から娘たちに伝えさせたくて
それで、工藤父はオレたちの運転手役をしに来てくれたのか
悪いな美智だけでなく上の娘の遙花まで、世話になっちまっているしな来月だろ、遙花が試合に出るのは
工藤父は知っているんだ
いや、むしろ遙花さんの高校女子空手チャンピオンの名前をオレたちの方が貸してもらうんですよマルゴさんもイーディも格闘の世界では、無名ですから
アメリカで試合をする前に格闘界に名前を売るのとプロの試合に慣れるのを目的として
マルゴさん、イーディ、工藤遙花、そして天童乙女改め剣道マリアの4人で、日本の総合格闘技の大会に出場することになったのだ
テレビのドキュメンタリー番組の取材も、決まっているみたいです工藤遙花、総合格闘技に挑戦女子校生がプロを目指すみたいなタイトルで
一応、名前が知られている遙花さんを旗頭にして世間の注目を集めようという計画だ
まあいいよ何でも使ってやってくれ遙花は競技者になった方が良いとオレも思う今は、真一のやつも稽古を見てやっているんだろ
真一というのは、美智たちの兄だ香月セキュリティ・サービスに勤めている
今の遙花さんは、天童乙女とともに香月セキュリティ・サービスの道場の方に寝泊まりして、稽古の仕上げをしている
そこへ、お兄さんの真一さんも時々、様子を見に行っているらしい
何で、そんな合宿をすることになったかというと
オレたちの屋敷に、天童乙女を住まわせることをエリとリエが嫌がったからだ
そして、天童乙女があいつは気の技は使えるくせに、空手そのものの方はすっかり稽古をサボッていたので
遙花さんに、徹底的に搾られて試合に出られる身体を作っている
工藤遙花という空手少女は、態度は尊大で頭もあまり良くないけれどとにかく稽古に対しては、本当にマジメだし、後輩への指導も熱心らしい
そういや、最初に会った時には空手の後輩たちをたくさん引き連れていたっけそういう人望はあるんだよな
ホント、警護人でなくスポーツとしての格闘技競技者を目指すべき性格だと思う
来月の試合工藤さんも応援しに来て下さいよ
いいよオレはオレの分まで、お前が応援してやってくれ
オレが居たんじゃ遙花も調子が出ねえだろうからな
寂しそうに、工藤父は言う
何でですの娘さんが試合に出るんでしょ観に行って差し上げればいいのよ
細かい事情を知らないことは、黙っていろよ人にはみんな、色々あるんだからさ
デリカシーが無いんですねまり子お嬢様は
は、ハイジあなた
もう少し、慎みをお持ち下さい
ハイジがそう言う
そうねあたしも美智さんが無口な理由が、もう1つ判ったわ
美智さんの居ないところで美智さんのご家庭の事情を聞き出すようなことをしてはいけないわそうでしょ
不満そうなまり子に、愛が
みみんな仲良く
勇気を振り絞って言う
みんな仲良くだよっ
判りましたわ確かに、わたくしが軽率でした興味本位で、お尋ねするようなことではありませんでした申し訳ございません
工藤父に、頭を下げる
ま、別にオレはどうでもいいんだよでも美智や遙花とは、みんな仲良くしてやってくれそれは親父として頼むからよ
ほい、最初の店はあそこだオレは車の中で待っているから、みんなで行って来いよ
克子姉のリストにあった一件目のパン屋は
高級住宅地り隣するお洒落な商店街の中にあった
うわぁ、素敵ね
可奈センパイが眼を輝かす
そうああいうのって、ちょっと狙いすぎじゃない
まり子は、そう感想を言った
そこはヨーロッパの民家を模したデザインの大きな店舗だった
パン売り場だけでなくカフェもやっている客席もかなりある広い
とにかく、行ってみましょう
オレたちは車を降りて、店に向かう
うーん、ちょっと立派なお店よね高校生だけだと入りづらいかも
そんなことないわよ普通じゃないこれぐらいのお店
可奈センパイとまり子の意見は合わない
でも、確かに高級住宅地の高級店て感じだよな
カフェのお客さんたちも、みんな大人だしオレたちぐらいの年の子はいない
まり子がドアを開け続いて、みんなで入る
うわ、やっぱりこういう値段なのね
まり子は1斤700円の食パンを見て、そう言った
菓子パンなんかも、普通のパン屋さんよりは、ずっと高い
えっと好きなのをみんな選んでまとめてオレが買うから
味を見るためには買うしかない
それとみんなが、どんなパンを選ぶのかも知りたい
そうは言うけれどさノブ
可奈センパイは、戸惑っている
いいから、1人3つ選んでオレも、選ぶからさ
公ここで買って食べるの
まさか工藤さんに待っててもらっているんだからさ
オレたちだけパンを食べて、お茶を飲むとか申し訳なさ過ぎる
あのここの後にも、また別のお店に行くんですよね
それは今は考えなくていいから余っても良いんだようちは家族が多いんだからとにかくこれは気になる、ちょっと食べてみたいっていうパンを3つずつ選んでくれ
はいはい、公がそう言っているんだからみんな、トレイとトングを持って
まり子が仕切る
オレは、パン売り場全体を見渡す
パンの種類は30種類以上はあるな
しかも、このパンは朝、昼、夕で別の種類を焼いて出しているはずだ
作って焼いているのは奥だな
しっかし、ノブ内側も、綺麗で上品なお店よね
確かに、ふんだんに木を使った落ち着いた内装で床や壁は赤いレンガ壁には、絵の入った額が飾ってある
上品な雰囲気を作っているけど
オレが香月家の由緒ある洋間で感じたような上品さではない
ホント上辺ばっかりで、良くない店ね
まり子が言った
中も外もドイツの古い建築っぽく、作っているけれどさこれ、普通の鉄筋コンクリートの建物に木やレンガを貼り付けただけだし
あそこの暖炉っぽいのも、フェイクよ本当の暖炉は、あんな位置には作れないわヨーロッパの人が見たら、笑うわよあんなの
雰囲気だけは上手く作っているけれどフェイクなんだ
実質感が欠けているんだ
あそこに飾ってある大きな花瓶は本当は、2つ左右対称に置くべきものなのよ1個しかないでしょ知らないのよそういうモノだってことを向こうに掛かっている絵は、フランスの風景よでも、ここのパン屋さんはドイツのイメージで作っているわよね
まり子には気になるらしい
そんなのどうでも良いじゃないあたしは好きよこういう大人っぽい雰囲気のお店
わたくしはアレは嫌です
ハイジがカフェの方を指す
せっかく、こんな綺麗なお店なのですから飲み物は、陶器の器でいただきたいですわ
コーヒーや紅茶がファーストフードやコーヒーの量販店みたいな、フタの付いたペラペラのカップに入れられている
アメリカのコーヒー店が流行ってからああいうタンブラーで出すお店が増えたわよね
でも、ハイジの言う通りだと思うわコーヒーやお紅茶は、器も楽しむものであるべきですもの
まり子は、そう言った
微妙なチクハグさがあるお店なんだな
吉田くぅん
愛がオレを呼ぶ
あのねこのパン良い小麦粉を使っていると思う
見ただけでもなるほど、良く判る
でもどれもそんなに難しくないパンだね
ここにあるパンなら愛や吉田くんでも作れるよ
突然、母が
お父さんが元気なうちに旅行がしたいのよ
ああ、いいんじゃないの
だから、あんたも付いて来てあたしだけだと、お父さんを見るのが心配だから
いや別にいいけれどどこへ行くの
軽井沢よマンペイホテルで、お茶を飲んでみたいのよ
何だ自分が行きたいだけなんじゃないか
というわけで、来月行くから
いや、ちょっと待ってそんな急に決められても
え、大丈夫よ日帰りだから
東京から日帰りで、軽井沢へ行くの
80歳と73歳を連れて
だって、夜は家で落ち着きたいじゃない
元気すぎるぞこの母
そういえば、この前の冬も日帰りで箱根まで行かされて
私も父も、クタクタになって帰って来たんだけれど
というわけだから、いいわね
何か軽井沢へ行くんじゃなくて
気が重い沢です
1058.パンを巡る冒険 / 2軒目の攻防
当たり前でしょこれだけたくさんの種類のパンを、毎日作って売っているんだからアルバイトのスタッフだって、雇っているわよ
営業時間が、午前9時から夜9時まで朝から夜まで12時間も営業していてしかも、その間にどんどん新しいパンを作って、焼いて、補充しているわけでしょということは、何班かで交代しながら作らないと間に合わないじゃない
そう言いながら、まり子は自分のスマートホンを操作していた
あああったわここのお店、オーナーは38歳で海外のパン屋さんで修行したっていうことになっているわ趣味は読書で話題になっている本は、必ず購入して読んでいるですって
まり子は、ここのパン屋のホームページを見つけたらしい
判るそういう趣味が成立するっていうことはオーナーが、朝から晩までパンの製作に立ち合っているわけがないのよ
朝のパンの仕込みは前日の夜からしないといけないし
ずっと、オーブンの前に付きっきりなら休んでいるヒマが無い
だから何なのそんなことが判ったからって、どうだって言うのよオーナーが、味のチェックをしていれば問題ないんじゃないのここのパン見た目も綺麗だし、美味しそうだし実際、評判良いわよ
可奈センパイも、自分の携帯を出している
ネットでの評判を見ているらしい
今ね東京の美味しいパン屋さん部門で3位に入っているわ
うん克子姉が、オレと愛に見てこいと言うんだから
評価の高い店なんだとは思う
でもわたくしには、上品ぶっているだけのニセモノなお店に見えますわ
まり子は、苦笑する
そりゃあ、あなたはヨーロッパのホンモノのパン屋さんとかを知っているんでしょうけれどここは日本よあたしは、充分、素敵なお店だと思うわ
可奈センパイは強くそう言う
あのお二人ともお声が大きいですわ
ヨミが注意する
ああ店員さんや、他のお客たちが怪訝な表情をしている
まあ、そもそも高級住宅地の高級パン屋に合わない制服姿の学生たちが、店内で議論しているんだから
それでも注意されないのは
まり子の制服のお陰だと思う
お金持ち向けのお店だからこそまり子の着ている超お嬢様校の制服は効果がある
あらごめんあそばせ
まり子が、気品ある仕草で周囲の人たちに謝った
ほら、早く3つずつ選んでくれオレが、まとめて買うから
あああま、待って
慌ててパンを選ぶ愛
ハイジとヨミは、まり子と可奈センパイが言い争っている間に、さっさとパンを選び終わってしまっていた
オレも気になったパンと食パン1斤とバケット一本を取る
克子姉にも味を見て欲しいし
大丈夫、ノブお金あるの
可奈センパイが、心配そうに聞く
ああ、このお店ならカードが使えるだろ
こういう場だからこそミナホ姉さんから貰った、カードを取り出す
うわそれ、ブラック・カードでしょ
可奈センパイは、驚くが
このカードは、この方が所有なさっているものですわわたくしが、保証致します
まり子は、店員さんに笑顔でそう言う
店員さんは、困惑した表情で店の奥を見る
あ、さっきのまり子が見ていたスマホの画面に出ていたオーナーが、顔を出している
店の中が騒がしいから、様子を見に来たのか
ハイジが早口のドイツ語でオーナーに何か言った
オレはドイツ語なんてよく判らないけれど凛として、品のある声だった
するとオーナーは、慌てて店の中に入って来て
お買い上げありがとうございます
と笑顔で、まり子に言った
早く、お包みしたまえ
ということで何とかパンを買うことができた
パン屋の名前の入った紙袋はオレとハイジが受け取った
皆さん、お騒がせ致しました失礼致しますわ
まり子が店内に、そう挨拶してオレたちは店を出る
あなた、さっき何て言ったの
外に出るとすぐに、可奈センパイがハイジに尋ねる
変なことは話していませんただこちらは、由緒ある良家のお嬢様です失礼の無いようになさって下さいと申し上げただけですわ
え、それだけなの
可奈センパイは、意外そうに言った
ハイジのドイツ語が完璧だったんだよほら日本語だって、品の悪い話し方もあれば礼儀正しい言葉使いもあるよねあのオーナーはドイツで修行した人でハイジが、上流階級に仕えている人らしい綺麗な言葉で喋ったからオレたちのことを信用してくれたんだよ
同じハーフでもアニエスは、金髪碧眼でパッと見はフランス人だけれど
ハイジは、黒髪でよく見ないと、ヨーロッパの血が入っていることは判らないまだ小柄な13歳の少女だし
ハイジは、アカデミーでヨーロッパの名門貴族に仕えるための礼儀作法や言葉遣いを徹底的に教え込まれているのよ
まり子が自分のことのように胸を張って、言う
それもありますがわたくし
ハイジが口を開く
考えたんですイーディお姉様ならこんな場合は、どうなされるかって
イーディなら
自分自身のことだと迷ってしまいますが、信頼できる頼もしいお姉様なら、どう切り抜けるだろうかと頭の中でシミュレーションしてみたらこうなりました
ああ、そういうことってあるわよね他の人ならどうするかで考えた方が、すぐに答えが出るのよね
イーディお姉様は、素晴らしいですわ博学ですし、頭の回転もとても素早いですし度胸も良い学ばせていただくことばかりですわ
ああほんの1週間で、随分イーディと仲良くなっているんだ
そうですわイーディお姉様は、頭の中の思考のスピードが早過ぎてわたくしには心を読み取りきれないことがありますわ
月子お姉様は全て、読み切られていらっしゃるみたいですが
さすが鷹倉神社を継ぐ巫女は、イーディの早さにも追いつくんだ
ルナやコヨミちゃんなら、どうなのだろう
後で、調べないといけないな
これって、下手をしたら巫女の力に対抗できる方法になってしまうかもしれない
ヨミ、その話はもうするな
車の運転席から工藤父が、こっちを見ている
工藤さん読唇術もできると思うんだよ
オレは、手で口元を隠してそう言った
え、ノブあのオジサンは、美智さんのお父さんでしょ
不思議そうに、可奈センパイは言う
ああ、今はオレたちの敵じゃないでも、あの人はフリーだから
コトと次第によったらオレたちと敵対することもあるかもしれない
それにこういうワキの甘さは、あの人は見逃さないと思うんだよそれで評価が下がって、ナメられるのは嫌だな
せ、先生申し訳ございません
ヨミがオレに頭を下げる
今度は、ヨミも口元を隠して話した
イーディの思考に付いていく方法を何とか考え出せ
もしかしたら付いていけないのは、ヨミだけかもしれないぞ他の子は、みんな問題無いかもしれないそうなったらヨミ1人だけが、オレたちの弱点になる
オレたちの敵がイーディ並みに、思考スピードの早い戦闘員を連れて来たら
心を読む前に殺される
月子お姉様は多分、何かコツを掴んでいらっしゃるんですわ
ハイジがやっぱり、手で口を隠して言う
そのコツを、教えていただいたら良いんです
オレもそう思うよ月子は、ヨミより4つも年上なんだから心を読む経験は、ヨミよりも長いんだしさ
しかも、月子は関西ヤクザに監視される生活の中で、巫女の力を持っていることを隠し通していた
そう言えば今まで、月子お姉様と、そういうことについて踏み込んでお話したことはありませんでしたわ
鷹倉姉妹が全員力を持っていることは判っているけれどだからって、1人1人の力の詳細についてまで、話し合ってはいない
それは本質的に巫女の力が姉妹の両親を死に追い込んだ禍々しい力だからなのだろう
じゃあ、良い機会だから話してみろオレからも、言っておくから
おう、買えたか
車に戻ると工藤父が、そう言った
何だか、上品ぶってて嫌な街だなオケツが痒くなるぜ
ええ、ここから離れて下さい
店から見える位置に停車した車の中で買ったばかりのパンを広げるのも、何だし
ああ移動するぞ
工藤父は、車を始動させる
うーん、まあ美味いことは、美味いなあ
工藤父がそう言う
大きな通りに移動して市民公園の駐車場に車を停めた
とりあえず、買って来たパンの幾つかを取りだしてみんなで分けて食べて見る
でも、何て言うかあんまり、パンチはねえなあいわゆる、高級デパートの地下なんかにある高級パン屋の味って感じだな
まり子も、そう言う
そう、あたしには、とっても美味しく感じるけれど高級デパートの高級パンなんて、そんなに食べたこともないし
普段とは違うちょっとゼイタクをしたい日に、買って帰るのには丁度良いパンだと思うわよ
ゼイタクにはならないわよそんなに高いパンじゃなかったし
まり子は、そう言うが
いやいやいやいやスーパーなんかで売っているパンよりは、全然高いってそう、100円~200円は違う
パン1個の値段からして高い
それは、そうよ安物のパンなんかと比べられないわよでも、それだって1個500円とか1000円とかするパンは無いんだしゼイタクって言い切るのはおかしいわよ
金銭感覚が違うの
愛が、ボソッと呟いた
世界企業トリイ電子のお嬢様だからな
でもさイマドキ、東京で流行るパン屋さんをやろうとしたらさっきのお店ぐらいが理想なんじゃないの
パンを食べて可奈センパイが、言う
何だかんだ言ってお客さん来ていたし、売れてそうだったしあなたは、お店が気に入らなかったみたいだけれど普通のお客さんには、ああいうのが好評なんだと思うわよ
わたくしには、余り品の良い店だとは思えなかったけれど
だーかーら、あなたの感覚を日本国民の一般的な感覚だと思わないでよあたしには、綺麗で高級そうで素敵なお店に見えたわよあそこのお店のパンを買って食べたわとっても美味しかったって、友達にも自慢できるし
まあ、そういう意味じゃ正しい店作りをしているんじゃねぇのか
工藤父がモグモグ食べながら、言う
あのオーナーパン職人というより、ビジネスマン寄りなんだと思います
流行を採り入れて今、どういうパンを作って、どういうお店で売るかということに関しては、よく研究なさっていると思いました
そうねヨーロッパで修行したというのは、あくまでも自分のキャリア作りだけで現場のパンは、ヨーロッパから職人さんを呼んで試作品を作ってもらっているみたいね
まり子はまた、スマホで情報を探っている
その試作品の中から、オーナーが選んだパンをお店のスタッフとアルバイトに作らせているみたい日本人の舌に合わせた味の変更の指示なんかも、オーナーがやっているみたいだけれどそういう方法を取っているみたいよ
まそうだなパン屋のオーナーをやりながらきっちり、週休2日で働きたい夏はバカンスにも行きたいそれでいて、給料はちゃんと確保したいと思ったらそういう作戦を取るしかねえよな
何から何まで、全部、自分でやろうとしたら自分の時間なんて、取れなくなっちまうもんな
プロデューサーなのよどんな店を作って、どんなパンを売ってどうお客様を集めるかは考えるけれどできる限り、現場は他の人間に任せるっていう自分は、店とパンの味のチェックだけに集中する
パンは自分で焼かないと楽しくないよ
お店を経営するってうことは、シリアスなビジネスなんだからさ楽しいとかいうのは、違うんじゃないの
そうですわビジネスとしてはこれはこれで成立しているのですから、正しいのだと思います
まり子とハイジはそういう視点か
うーん確かにパンは美味しいしあそこのパン屋さんに常連になったりしたら、ステイタスを得られるような気がするわね
えー、そんなステイタスわたくしなら、お断りですけれど
庶民には、そうなのよ
可奈センパイが、強く言う
そうまり子みたいな、ホンモノの上流社会の人間には感じられないんだろうけれど
普通の人なら高級住宅地にある、お洒落な高級パン屋に行くというだけで
ちょっと良い気分になるんだろうな
とにかくまだ1軒目だからさ他の店も行ってみようよ
克子姉のリストに書いてあるパン屋はまだある
工藤さんお願い致します
おう行くぜぃ
再び、オレたちのミニバンのエンジンに火が入る
え何、これ
ここ、本当にパン屋さん
2軒目のパン屋さんは
住宅地のド真ん中にあった
リストの住所にあったのは小さな家だった
昭和の頃に建てられた中古の店舗付き住宅
ただ、お店って言っても
これ多分元はタバコ屋さんだよな
小さなガラスの窓口しかない
でも一応、パン屋さんぽい看板は出ているわよね
可奈センパイが指差す方を見ると確かに、小さな手書きの看板が出ていた
こんなんで道行く人に判るのか
ちなみに、タバコ屋さんだった頃には商品が入ってたであろうガラスのショーケースも空っぽだった
ちょっと待ってこのお店の名前で、検索してみますわ
まり子がスマホで調べてくれた
ああここのお店、パンのインターネット通販がメインなのね
パンの通販
それも予約は、すでに2年後まで埋まっているって
じゃ買えないじゃないか
予約した日に焼きたてのパンを宅配便で送ってくれるみたいよそういう売り方をしているみたいね
だからこんな民家でやってて、看板も目立たない
ちょっとノブ、克子さんから貰ったリストを貸してくれない
オレは可奈センパイに手渡す
ああ、ほら最後のページにプリントアウトされた予約証が入っているわよ
予約証
克子さん今日、焼かれたパンを予約してあるのよ
ああ、公ネットに出ているわパンの鮮度を気にする人は、宅配便じゃなくって、直接、お店に獲りに行くって
じゃあ予約証と引き替えに、パンを受け取ればいいのか
ここのパン屋さん凄いわね全部、1人で作って、売っているんだって
まり子がスマホの記事を読んでくれる
それで小麦粉も酵母もお水も、何もかもこだわっているから1週間に1回、土曜にしかパンが起き上がらないんだって
週に1回
だから、2年待ちの幻のパンなのね
これまた極端なパン屋さんだ
取りあえず、お店の人を呼びましょうよこれじゃないのかしら
可奈センパイが店頭のインターフォンに気付く
ああ、そうだと思うよ
一応、ここが店先だからこのガラス戸から受け渡されるんだと思う
オレはインターフォンを押す
暗い女の声がした
あ予約したパンを引き取りに来ましたえーと、高梨克子です
予約証の名前を見て言う
3分後40歳半ばくらいのオバサンが、やって来た
えっとタカナシ・カツコさん
はいこれ予約証です
オバサンは、ブリンとアウトされた紙を確認して
窓口に、食パンが2斤入ったビニール袋を出す
5400円です
2斤だから
このパン1斤2700円もするのか
それに消費税です
とにかく、財布を引っ繰り返して何とか支払う
金を受け取り領収証をくれると
オバサンは、何も言わずにガラス戸を閉めた
凄いわねこんなビジネスもアリなの
アリなんでしょうねぇここも東京の美味しいパン屋さんに出てるし、味も高評価よ死ぬまでに、1度は食べてみたいパンですって
まり子も、可奈センパイも呆然としている
でもホントに凄いよこのパン
ビニール袋に無造作に入れられているパンを見て、愛が言う
凄い時間を掛けて丁寧に作っているが見ただけで判るよ
本当に凄いモノは見ただけで判る
それはそういうパンだった
あのこの作品は、ただのエロ小説ですので
パン屋さんとか、特定のモデルはありません
いっぱい誇張もしていますので本気にしないで下さい
私は、今は頭の中がギャン子でいっぱいですのでもう寝ます
1059.パンを巡る冒険 / モノ足りない思い
2斤あるけれどこれはちょっと、勝手に試食できないよな
次のパン屋に向かう車の中でビニール袋の中のパンを見て、オレは言う
1つ2700円だもんな
克子姉が注文したパンだし
そのまま持って帰って、克子さんに渡しましょう
可奈センパイも、そう言う
しっかしここのパン屋さんは、ビジネスとしては、かなり厳しいわね
またスマホを見ながらまり子が言った
ホントに何から何まで1人でやっているのよパンの製作だけじゃなくって、梱包と発送までそりゃあ、1週間に1度しか作れなくなるわよね
だから値段が高くなって、予約制の2年待ちになるってことよね
可奈センパイが、うなずく
それって良くねえな1人でやってて、2年も予約が詰まっているってことは休めねぇってことだろ
運転しながら、工藤父が言った
ああそうですね毎週確実にパンを焼いて発送しないといけないんですよね
想像するだけでゾッとする
それはあらかじめ、ここの期間は、お休みしますって予定を立てて、予約を受けているんじゃないんですか
予定はそうなっててもケガとか病気とかしたら、どうなるんだよトラブルが1つでも起きたら、一発アウトじゃねぇか
1人で店をやっているんだからそうなるよな
それに今、予約していても、2年経つうちに忘れちゃうかもしれないし
それは、予約期日が近付いたら、確認のメールをするんでしょ
でもさ、2年よメールのアドレスだって、変わっちゃったりしているかもしれないわよ
そうね引っ越してたり、結婚したり、離婚したりしているかもしれないわよね
可奈センパイとまり子が、そんな会話をしていた
とにかくさ何もかも、1人でジックリとこだわり抜いて、自分のパンを極めたいって言う意気込みはよく判ったんだけど
オレはパンを見て、そう感じる
見ただけで判る気迫のこもった超一流のパンだ
でもこういうのは、オレが目指してはいけないことなんだよな
どうしてよノブ
だってさこのやり方じゃ、たくさんの家族は養えないよ
うん1人じゃ1コのパンの値段を高くしても生産量に限界がある
たくさんは作れないからそんなには儲からないよ
さっきのオバサンとオバサンの家族だけなら、生活できるかもしれないけれど
オレは養わないといけない家族が多すぎる
そうね数を増やしてダメなんでしょうね生産数が限られているからこそ希少価値があって、高く売れるんでしょうし
まり子は、そう分析した
そういう意味じゃあたしは好きにはなれなかったけれど、さっきの高級住宅地のパン屋さんの方がビジネスになっているわよね
あれなら2号店、3号店もできるよ
そうだなオーナーが、売り出すパンを決めあの店のパンなら、一通り作り方が判っている子なら、誰でも作れるし
違うのは材料やオーブンなんかの機材の方だと思う
そういうところで、他店と味に差を付けている
だけど今買って来た方のパンは、あのオバサンじゃないと作れないと思うよ
何年にもわたる研究と、経験の積み重ねで作っている
専門的な工房でなく、普通の民家で作っているんだから材料は厳選しているんだろうけれど、機材なんかは普通のものを使っていると思うし
気温や湿度の変化で細かく、調整していると思う
そういう変化でパンの出来が変わるから
さっきのお店は、そういうのはどうなっているの
前の店は奥のパン工房は、エアコンで365日、気温も湿度も一定に保っているんだよ
それなら1年を通して、同じ条件でパンが焼ける
あたしたちの工房もそうなっているよ
ああだから学生食堂の売り場との間にドアがあるのねそういえば、毎回、キチッと閉めているものね
まあ、いいわとにかく極端な例としてこういうパン屋さんもあるっていうことが判ったんだからそれでいいでしょ
まり子がまとめてくれた
ああ、3軒目そろそろ着くぜぃ
工藤父が、そう言った
3軒目は2軒目と、そんなに離れていないところにあるらしい
停車した車からオレたちは、降りる
うんまあどっから見ても、街のパン屋さんよねぇ
可奈センパイの言うとおりそのお店は、商店街の中によくありそうな小さなパン屋さんだった
ガラス越しに明るい陽射しが、店内を照らしている
建物は少し古そうだけれど綺麗に掃除されていて、清潔さを感じる
ああ、小学校がすぐそこだからここの商店街は活気があるのね
まり子の言う通り少し先に、小学校の校庭が見える
だから、子供連れの主婦の客が多い
とにかく、入ってみようよ
オレたちは、店の中へ入った
あら、このパン可愛い
まり子がすぐに動物の顔になっているパンを見て言う
ノブ、このお店でも1人3個ずつ選んでいいの
可奈センパイは、すでにトレイとトングを持っていた
ああ3つでも4つでもいいよ
値段は全て、普通のパン屋さんと同じだ
100円台から、高いパンでも300円台くらいまで
これ食べてみたい
愛が1つパンを取った
ヨミお姉様は、どうなさいますわたくし、これが良いですわ
ハイジとヨミもは、2人でパンを選んでいた
さっきの高級パン屋だとみんな、選ぶのに苦労していた
1つ1つが高いパンだったからだろう
今度は普通の値段のパンだから気楽に選んでいる
公、わたくしこれとこれとこれでいいわ
ノブあたし、この3つね
あたしこれ
ヨミお姉様とわたくしはこれに致しました
あっという間に、みんな自分のパンを決めた
オレも幾つか選んでまとめて買う
ああお店の雰囲気が良いからなのか、みんなニコニコ笑っているな
全部、お兄さんが払うの
お店の人40代後半のオバサンが驚いていたが
はいオレが全部払います
なあに、罰ゲームか何かなの
いいえ、そういうことじゃないんですけれど
女の子たちのパンを男のオレが1人で買うのは、変に見えるのか
まあ、いいや全員分買っても、さっきの食パン2斤より安いし
ノブ飲み物も買ってよこのパンなら、牛乳とかと一緒に食べたいわ
可奈センパイが、店のレジの横の冷蔵庫で売っている飲み物を指差す
ああ、紙パックに入ったミルクやジュースか
いいよみんな、好きなのを買えよオレはコーヒー牛乳がいいな
はーいノブはこれね
わたくしこういう容器に入った飲み物は、余り飲んだことがないんですけれど
お嬢様のまり子は紙パックのミルクとか、飲まないんだ
ああ、超お嬢様校には自販機とか無いって、みすずが言ってたもんな
ミルクホールという名前の学生食堂では、ソーサーに乗ったカップの紅茶しかないって
飲んだことがないのなら試してみなさいよ
じゃあ、公と同じのにするわ
わたくしもそれに致します
あの外国には、無い飲み物ですので
ああ、カフェ・オレはあってもコーヒー牛乳は無いんですわね
どう違うんですか
ハイジの問いに
カフェ・オレはコーヒーに牛乳を入れたものでコーヒー牛乳はコーヒー味の牛乳
愛がそう言う
コーヒー味だけじゃなくって、砂糖がいっぱい入ってますわ
ヨミが付け足す
まあ、飲んでみなさいよ普通の紙パックの牛乳を飲むよりは美味しいからあなたとかって、牛乳とかももの凄く新鮮で美味しいのしか飲んでないと思うのよ
まあいいや工藤さんの分もコーヒー牛乳を買っていこう
お金は何とか足りた
このお店は、さすがにカードは使えないだろうし
多めに持ってきて助かった
はーいお兄ちゃんありがとね
そんな風に店のオバサンに明るく言われて外を出る
うーん何から何まで普通のパン屋さんだ
ああ、このお店も東京の美味しいパン屋さんに出ているわね14位よ
可奈センパイが、携帯で調べて教えてくれた
特別なモノは一切使っていないけれど昔ながらの変わらぬ味で美味しいって書いてあるわ
でも、14位のお店をわざわざ選んだんだから克子さん的には、公にどうしても見せたいお店なのよね
まり子は、オレを見る
おっ、戻って来たなあー、良い匂いだな
車に乗り込むと工藤父が言った
1軒目のパン屋より焼きたてのパンの匂いがするぜ
それは、1軒目も2軒目もパンを一つ一つビニール袋に入れてくれたからですよ
ここのお店はくっついたら良くないパン以外は、全部、紙袋に小分けしているだけですから
固くならないうちに、すぐに食えってことなんだな
まあ、ちょっと食べてみましょうよ
車中で包みを開ける、可奈センパイ
はい、工藤さんコーヒー牛乳
オレは、紙パックを手渡す
おう、これでアンパンがあれば刑事ドラマの張り込みみたいだな
ありますよ、アンパン
オレは、アンパンの入った紙袋を開けるこれはオレが選んで買ったやつだから工藤父にあげても構わない
おっ、じゃあ1つ貰うぜ
見てみて、公このカメさんの形のパン、可愛いでしょ眼がレーズンなのよ
まり子が、笑顔でオレにパンを見せる
これも可愛いです
ハイジは、クマの顔を模したパンを手にしていたチョコで顔を描いているんだな
ほら、こうやってストローを伸ばしてここに突き刺して飲むのよ
可奈センパイが、まり子に紙パックの飲み方を教えていた
へえ、面白いわね
よし、とにかく食べてみよう
オレは1つ、囓ってみる
うん、モチモチしていて美味い
あら、美味しいわね懐かしい味だわ
ああ、コーヒー牛乳に合うな美味いぜ
工藤父もそう言う
そう不味くはないとは思うけれどそれほど、美味しくはないわね
これ小麦粉とか、そんなに良いものを使っていないでしょ
普通のだよ普通の小麦粉材料は特別なものは何も使っていない
普通以上よその辺のスーパーとか、コンビニとかで売っているパンよりは、格段に美味しいじゃない
可奈センパイが、ムッとして言う
わたくし、そういう普通のパンは普段食べないから判らないわハイジはどう思うの
まり子が、ハイジに尋ねる
とても日本的な味のパンです
日本的
こういうモチモチした感触のパンは、日本の方は好まれますよね味もヨーロッパのパン屋さんのパンとはちょっと違っています
ハイジはそう言う
いや、それが別に悪いと言っているわけではありませんここは日本ですからわたくし、この国に来てから西欧の色んな物が、日本風にアレンジされているのを見て来ていますから日本の方は、こういうパンがお好きなんだろうなって思います
そんなに違う
はい違いますね
うなずくハイジ
日本人がパンを食うようになって100年以上が経つけれどよなかなか、日本にはパン食の文化は浸透しなかったみたいだからな
最初は明治の時に軍隊で食わせようとしたんだよ米だとさ一々、飯ごうで炊かないと食えないだろ燃料が必要だし、1度、飯にしちまったら握り飯にして持ち運ぶくらいしかできない日持ちがしない寒冷地だと、凍り付いてしまうでも、パンなら軍隊が携行するには丁度良いだろ火を使わずに食えるし軽くて、長持ちする
でもさぁダメなんだよ昔の日本人は、米を食わないと力が出ないっていうか試験的に、食事を完全に洋食にしてパンしか食わない部隊を作ってみたらしいんだが兵士たちが米を食わせろって、反乱一歩手前まで行ったことがあったらしいその時は、部隊長の士官が自費で米を買って飯を炊いて食わせたら、兵士たちが鎮まったそうだ
そんなにお米のご飯が好きだったの
うーん当時はよ軍隊に入ったら、白い飯が腹一杯食えるっていう話になってたからよパンを食わされるのは、話が違うってことになったらしい日露戦争で、白米ばっかり食べてたから、ビタミン不足の脚気でたくさんの兵士が死んだっていう話があってよそれは、まあ、脚気を軍医総監の森鴎外が伝染病だと思ってたからで、玄米を食わせていたら、そんな酷いことにはならなかったっていう意見があるんだけど実際には、当時の軍隊になんか玄米食わせたら、白い米を食わせろって反乱が起きてただろうって話だぜ
まあ、何とも言えねえ話なんだけどよ現実問題として、不足するビタミンB1を大量に薬にして配布する技術が確立したのは、第2次大戦後なんだってなそれまでは、どうすることもできない問題だったらしいぜ
お米の話はいいわよパンはどうなったの
ああ、だからよ日本では、戦前まではパンはあくまでも、おやつみたいにものでしかなくて主食にはならなかったんだカフェとかでは出るけれどな庶民が毎日食べるようなものではなかったそれが戦後になってアメリカの影響で小学校の給食にパンが出るようになったんだよ戦前の給食ではパンは食べていないそれで、子供の頃からパンを食べる生活をするようになって食事にパンを取る頻度も高くなっていったんだ
でも今でも、パンていうのは、主食とまではいっていないんじゃない朝やお昼はパンで済ませるっていうことは増えているけれど主食じゃなくて、あくまで脇役って感じよね
そうですわね今のお店でもおやつ用の菓子パンの方が多かったと思いますわ
ヨミもそう言った
ああ、そうか判った
1軒目の高級パン屋のパンが選びにくかったのはみんな、ちょっとガッツリしているんだよな主食っぽいんだよだから、さっき試食するにしても1個のパンをみんなで分けて食べたじゃないか
でも、3軒目の今のパン屋さんのパンは
みんな1個を丸ごと、ペロッと食べちゃっている
これ、大きさも丁度いいんだよな確かに、日本人向けのパンなんだ
オレは手元のパンを見てそう呟く
あたしあのねもし、吉田くんと2人きりでパン屋さんをできるのなら
愛はさっきの商店街の小さなパン屋を見る
あんなお店をやりたい
パン屋の中では、また子連れの主婦が何人もパンを買い求めている
そこの街に根付いて街の人に愛されている、普通のパン屋
でも愛と吉田くんはああいうお店をしてはいけないから
あのお店は家族でやっていると思うお手伝いの人もいるかもしれないけれどパンを作って焼いているのは2、3人だよ
店の規模から見てそうだろう
その人たちは腕が良いだから、パンも美味しい
ああ、オレもそうだと思うよ
だけど限界がある
吉田くぅんあたしたちって克子さんに、すごーく良い勉強をさせてもらっているんだねぇ
あのお店だと予算の都合があるから、普通の材料しか使えない普通に作って、普通の値段で売っているそうだよね
うんそうだと思うよ
あたしたちは克子さんに、色んな材料を試させてもらっているよ高い小麦粉とか、珍しい酵母とかも
克子姉は色んな素材をオレたちに使わせてくれる
そして、それを使う方法も細かく教えてくれる
だから、あたしたちのパン屋さんは普通のパンの中に、特別なパンも一緒に混ぜて売っているよそれを食べた人の反応も、判るんだよ
オレたちのパン屋はあくまでも研修だから
シビアに儲けを出す必要は無い
だから、高価な材料を使ったパンも他のパンと大して変わらない値段で売っている
まあ買うのは学生だから、仕方ないんだけれど
もし、あたしたちがあそこのパン屋さんみたいなお店をやるんならもう、そういう材料は使えなくなるよ
こういう街に溶け込んだ庶民的なパン屋さんをやるのなら
でも愛も吉田くんもこの普通の小麦粉のパンだけになるのは嫌だよね
オレはオレたちは
良い材料で作るパンの美味さも知ってしまった
それでねもし、あたしたちが最初の高級パン屋さんみたいなところに就職したらあそこのお店のパンの作り方は覚えるけれどそれ以上のことは何も判らないと思うあそこのお店は、店長さんが何もかも決めて店員さんは、言われた通りに作るだけのお店だから
自分で色々と研究して、新しいパンを提案するとかさせてくれないだろうな
ていうか次から次へと、ノルマのパンを作って店頭に並べるだけで精一杯だろう
だから、あたしたち今、とても良い勉強をさせてもらっているんだよ
あたしこのパンが、どんな小麦で作られていて作るのに、どれくらいの時間が掛かって原価が幾らかなのかとか全部判る
オレも判るよ克子姉に普段、鍛えられているから
オレたちが使っている材料の値段とかどういう工程で作ると効率的なのかとか
毎日、徹底的に仕込まれているから
吉田くぅんあたしたちが作るパン屋さんはあのパン屋さんみたいなお店じゃないよ
愛は商店街の小さなパン屋さんを指差す
最初の高級パン屋さんでもないしもちろん、2軒目の1人で何でもやっているお店でもないよ
じゃあノブや愛は、どんなパン屋さんをやりたいのよ
それは判らない
何よあなた、そこまで言っておいて、判らないの
まり子が、愛を責める
今は判らないけれど今のうちから、どんなお店にするのかちゃんと、イメージを持たないとてけないって克子さんは、愛たちに言いたいんだと思う
ああ、そういう勉強のために克子姉は、今回のパン屋巡りをオレたちにさせているんだと思うよ
別に、今回の3軒を目標にしなくても良いんだ色んな形式のパン屋を見て自分はどんな店を作りたいかを考える材料にするだから極端な例を、3軒示してくれたんだ
オレも愛も少しずつ、技術や知識を教わって
パン屋というモノを、具体的に考えることができるようになったから
そうね確かにビジネスとしてパン屋さんを考えていく上では、面白い3軒だったわよね
でも足らないわこれだけじゃ
足らない
一軒目のお店はあなたたちは、高級店て言っているけれどわたくしにとっては、高級店のフリをしている大衆向けのお店としか思えなかったわ2軒目はパン職人さんとしては凄いんでしょうけれど、ビジネスとしては発展性が無いわそして、今の3軒目庶民的で可愛らしいんだけれど、わたくしにはモノ足らない味だったわ
それは、まり子がお嬢様だからだ
と、可奈センパイが
あたしは、1軒目のお店は、素敵だったと思ったけれどそうね、今、この人の意見を聞いたら、気取っているだけのお店だったのんもしれないって感じるわ2軒目はスゴイ職人さんなんだろうけれど、あたしには高すぎて、自分では絶対に買わないパンよね3軒目のそこのお店は、可愛くて好きだけれど、味もあたしは美味しいと思うわよでもノブや愛には、ああいうお店はやって欲しくないわ
やって欲しくない
だってもう少し、野心を持って欲しいもの街のパン屋さんとして地域に愛されるのは良いことかもしれないけれど、それだけじゃモノ足りなくない
モノ足りないという言葉を2人とも使った
もう1軒、参りませんこと
まり子もう1軒て
公に、食べさせたいパンがあるのよ
まり子は、そう言うと運転席の工藤父に
ホテル・アストラル・トーキョーに向かって下さい
ああ、外資系の高級ホテルだな
高級ホテル
はいそこにパンがありますから
まり子はニコッとオレに微笑んだ
昔、新宿の三角ビルの地下にカメのパンを売っているお店があって、好きだった
まだ売っているかは知らないけれど
1060.パンを巡る冒険 / ホテルのパン
20分ほど都心を走ってまり子の指定した外資系のホテルに到着する
っていうか、ここホテルなのか
何か、ものスゲェでっかいビルが、ドカーンッと建っているけれど
ここは40階から55階までのフロアが、ホテルになっているんです
他のフロアは、オフィスやショッピングセンターや病院、美術館も入っていますわ
それでそのホテルの中に、あなたがノブを連れて行きたいっていうパン屋さんが入っているの
違いますわそういうことではありません
まり子は、クスッと笑う
お連れしたいのは、ホテルのティーラウンジですわ
ティーラウンジ
そこでしたらここのホテルが、レストランやルームサービスで出しているのと同じパンが食べられますから
ホテルのパン
ここは外資系の一流ホテルですわ本社はアメリカ世界中の大都市でホテルを営業している企業グループです特に、ここは日本の官公庁や各国の大使館にも近いですからアメリカやヨーロッパの政財界のVIPも、たくさんお泊まりになられているそうですわ
ここのホテル・グループは、全世界のどの系列のホテルでも、最高級のパンを提供していますわパンを主食にしている国の方のための最高のパンです
そうか日本のパンとは違うものかもしれないんだな
日本ではパンは、まだ、おやつや間食として食べられていると思う
食事をパンで済ませるなんて言うのはガッツリとした正式な食事とは、認めていないということだ
それに、朝食や昼食がパンということは、よくあるけれど
夕食にも、毎回必ずパンを食べるなんて人は少ないだろうし
うん食べてみないといけないよな
よっしとにかく、駐車場に車を停めるぜ
工藤父が、オレたちのミニバンをビルの地下駐車場へ入れる
ここに車を停車させておくんなら、美智さんのお父さんに残っててもらう必要はないんじゃない
今までは目的のパン屋さんの近くの道に、車を停めていたから
運転手の工藤父に、残っててもらわないといけなかった
うんそうだね工藤さんも、オレたちと一緒にお茶を飲みに行きましょうよ
わざわざ運転とかしてもらっているんだからコーヒーぐらいご馳走したい
いやオレは、止しておくよ
工藤父は、苦笑して言う
こういう高級ホテルとはオレは相性が悪いんだわ
しかも外資系だろ香月のジィさんの顔とかは効かねえかもしんねえしな
日本のホテルなら、香月セキュリティ・サービスの名前である程度までの融通はしてくれるかもしれないけれど
本社が外国のホテル・グループじゃな
オレみたいな見てくれから、胡散臭いヤツが同行していたらお前たちまで、ホテルの人間に睨まれるぞティーラウンジに行き着く前に、帰ってくれって言われるかもしれねぇ
わたくしは、お父様やお母様とよく来るけれどそんな失礼なことを言われたことは一度も無いですわ
そんなの、あなたが良い家のお嬢様だからでしょ
可奈センパイが、呆れて言う
そうよわたくしは、鳥居まり子ですものだから、大丈夫ですわわたくしと一緒なら、美智さんのお父様だって入れてもらえますわよ
ホテルの人間が、まり子の顔を覚えていたら
工藤父を警護役と思って、ホテルから排除することは無いかもしれない
いわゆる警護の人間らしくもないんだよな工藤父は
何というか非情に、胡散臭いから本人が言う通り
いや、オレは行かねえ駐車場で待っているよだから
工藤父は、ハイジを見る
お前、頼んだぞ
驚くハイジ
こういうホテルは伏魔殿だからなガードが、しっかりしていないといけねぇ
ハイジが、返事をする
マジで気を付けろよいいな
工藤父は、ハイジにニコッと微笑んだ
地下駐車場からエレベーターで、40階まで一気に昇る
まり子が、スタスタと前に立ってオレたちを案内してくれた
ノブ高級ホテルとか、あたし大丈夫かしら
エレベーターに入った瞬間、可奈センパイが心配そうにオレに尋ねる
大丈夫よあなたもノブもえっと、愛さんだっけ3人とも学校の制服だしハイジたちも、変な格好はしていないから
ハイジとヨミはお揃いのメイド用のエプロンドレスを着ている
先週、名家のお嬢様たちを招いたパーティで使っていたものだから決して、下品なものではない
香月家に相応しい、品のあるドレスだ
むしろ、オレの学生服姿の方が貧相だよな
可奈センパイは美人でスタイルが良いし愛も、ムチャクチャ可愛い子だから
普通の私立高校の制服でも一流の雰囲気に負けないと思うけれど
オレの学生服は見事なまでに貧相だと思う
ほら、胸張って、公堂々としていないとね高級ホテルなんだから
まり子が、オレにそう言う
いつもは黒森公として、みすずと一緒にパーティなんかに出ないといけない時は
克子姉たちが、パリッとした良い服を用意してくれるし髪型なんかも、何とかしてくれる
それに、みすずや瑠璃子や美智が、常にオレの側に居て色々とフォローしてくれているからな
今日みたいに学校から帰って来たまんまの姿で、こういうホテルに来るのは初めてだよなぁ
大丈夫ですわ先生
ヨミが、オレにニコッと微笑む
こういう時のためにヨミが付いて来ているんですから
確かに巫女の力を持つヨミが居てくれるのは心強い
オレもヨミに微笑む
ハイジも最大レベルで警戒していてくれ
オレに応えるハイジ
もう、公ったらそんなに畏まるような場所じゃないわよただのホテルなんだから
まり子が、呆れて言う
いや、普段、入り込まない場所だから注意深くしたいんだよ
わたくしにはいつもの場所ですわ
まり子には、そうなんだろうけれどオレたちにとっては、違和感が感じ取りにくい場所だからさ
違和感
ああ初めての場所だとさアレ、何かヤバイって勘が働いてもさ何がキーになって心の警報が鳴っているのか、判らなくなっちゃったりするからさ
へえ、そんなことを考えているの
まり子は、驚いている
考えているさいつもオレ1人ならいいけれどみんなを危険な目に遭わせるわけにはいかないからね
オレは、犯罪組織の人間であり敵は多い
また、オレたちにわざと絡んでこようとする輩も居るだろう
気は抜けない
え愛
気を付けるのは良いけれど緊張するのはダメ
リラックスしないと
ポーン40階です
エレベーターが停まる
凄い
40階だというのに広大なロビーになっている
見て見て、ノブあそこの水槽に、お魚がいっぱい
可奈センパイの言うとおりホテルのフロントの後ろに、大きなガラスの柱が立っていて
その中には、数十匹もの魚が泳いでいた
しかも、ガラスの柱ごと青白く光っている
愛も巨大な水槽に見とれている
こっちよそんなの見てないで付いて来て
まり子が、オレたちに強く言う
あいきなり驚いたりしたのは、大失敗だな
高級ホテルなんかに慣れていない、一般人の感性丸出しだ
まり子は、真っ直ぐに同じフロアのティーラウンジに向かう
入り口に居たボーイさんを見て
6人よ
当たり前の様に、堂々と言う
そのままオレたちは問題無く、テーブル席に案内された
ボーイさんに、笑顔で礼を言うまり子
うん慣れている
さっすがねぇ
可奈センパイが、感心している
大したことじゃないわいつものことですもの
あなたのことじゃないわよあなたの着ている制服のことよ
可奈センパイは、意地悪そうに言う
やっぱり、そのお嬢様学園の制服だと服を見ただけで、信用してもらえるのねさすがだわあなたじゃなくて、あなたの学校が
可奈センパイもみすずや瑠璃子の制服姿を知っているから
ていうか美智は、どんな時でもこの制服だし
まり子も、超お嬢様学園の生徒だということはよく判っている
あらそれじゃあまるで、わたくし自身には何の価値もないみたいじゃない
ムッとするまり子
そこまでは言ってないわよあたしも鬼じゃないし
ニッと微笑む可奈センパイ
ああ、まり子のホーム・グラウンドに踏み込んでしまったと感じてちょっと、攻撃的になっちゃっているんだな
そんなことより、ほら注文をしなくちゃ
オレは、メニューを開いて可奈センパイに見せる
うわ、やっぱりホテルねコーヒーも紅茶も高い
可奈センパイの言うとおり飲み物の値段が高い
そういうのは気にしなくていいからここはカードが使えるんだしさ
高級ホテルなんだからミナホ姉さんから預かっているブラックカードが使えるはずだ
あ、そうよねじゃあ、気にしなーい
可奈センパイが、オレの腕に抱きついて甘えてくる
ああ吉田くぅん愛も
愛も、オレの反対側の腕に縋り付いて来た
ちょっと、あなたたちここでは、そういうことは止めてちょうだい周りの眼があるんだから
まり子が注意する
はいはい、判ったわよ
はいは1回
愛さんは
ぅぅごめんなさい
まり子と同い年の愛はともかく
可奈センパイは、まり子より1つ年上のハズなんだけれどな
やっぱり、慣れていない場所で不安なんだな
わたくしは、紅茶にするわ公は
じゃあ、オレも紅茶にするよ
なら、あたしも紅茶
可奈センパイが答えた
ああたしも、それにする
ヨミとハイジは
わたくしも紅茶に致しますわ
まあさっきコーヒー牛乳を飲んだもんな
今は、コーヒーは飲みたくないか
そう言えば、まり子さっきのコーヒー牛乳は、どうだったんだ
確か飲むのは、初体験だったはずだけど
あれは甘過ぎよもうちょっと、糖分を控え目にすればいいのに
だから、それもあって紅茶が飲みたいのよ
コーヒー牛乳は、お口に合わなかったらしい
まり子は片手を軽く上げてボーイさんを呼ぶ
紅茶を6つそれとパンの籠を
まり子が、ボーイさんに注文する
そうか籠にパンを盛ったやつが届くのか
公ここのティーラウンジ、女の人の店員さんがいないでしょウェイトレスさんを使っていないのよ
そう言えばティーラウンジで働いている人は、みんな男性だね
ボーイさんばかりだ
それが一流の証なのよヨーロッパでは、本来は、飲食物のサービスは男の仕事だからヨーロッパでは、良いレストランに行くと今でも給仕の人は全員男の人よ
ホテルって貴族の屋敷に働いていた使用人たちの仕組みが、結構残っているのよねそして、ヨーロッパの貴族は本当は使用人は全部、男の人なのよそれが19世紀以降男ばかり雇うのが難しくなって、女のメイドさんも使うようになっただけだから
一流だか何だか知らないけれどあたしは、ウェイトレスさんの方がいいわよ
あ、そうだあたしと愛今度、学園祭でウェイトレスさんをやるのよノブの焼いたパンをテニスウェアで運ぶの
何でテニス着なのよ
だって、あたしテニス部だからテニス部で喫茶店をやるのよあなた部活は
聖書精読会と赤十字奉仕団に籍は置いているけれど活動には参加していないわ普段は、桃子お姉様と株式投資研究会を個人的にやっているから
桃子お姉様って誰
その人もノブの新しい
違う違うそういう関係じゃないよこの間、オレも会ったけれどそういうことにはなっていない
桃子姉ちゃんはオレの女ではない
えーと、みすずと同じ学年でまり子の先輩
そうよわたくしのお姉様なの
まり子は、ニコッと微笑む
わたくしが保証致します先生とは何もない人ですわ
ヨミが、笑顔でそう言った
ええ、そうよねハイジ
まり子の言葉にハイジも保証してくれた
変な人じゃなけりゃあ、別にいいのよねえ、愛
ぅぅはい
可奈センパイと愛は、そう答えた
もし、そういうことになったらちゃんと報告するよオレは、今までもそうしてきているだろ
うんそうだねごめんなさい吉田くん
小さい声で、愛がオレに謝った
あたしも疑って、ごめんね
そんな話をしているうちに紅茶とパンが届く
良い色
匂いも、美味しそうね
愛と可奈センパイが、パンの第一印象を述べる
籠の中には3種類ぐらいの丸いパンが入っていた
まあ、食べてご覧なさいよ
これってやっぱり、バターを付けて食べた方がいいのかな
パンの籠と一緒にバターとバターナイフも運ばれている
そうだけど最初は、このまま食べてみたら
そうだなまり子の言う通り、オレはパンを1つ手にとって
一口分、ちぎって口入れる
うん、確かに美味い
さすが世界規模の高級ホテル・グループのパンだ
他の子たちも、オレと同じようにパンを食べていく
確かに美味しいわね
可奈センパイと愛が口の中に拡がる味を確かめている
確かに美味しいし、一流のパンなんだって判るけれど何かちょっとこれだけっていう感じもするわ
2人は険しい顔をしている
そりゃそうよだってこれは主食のパンだから
まり子がニヤッと笑った
本当はメインのお料理と一緒に食べるパンなのよだから、自己主張はしないのこのパンだけで、食事が完結するわけがないんだから
白いご飯と一緒なんだ
ご飯は他の食事と一緒に食べるもので
ご飯だけで、味が完結したりはしない
ご飯の自己主張が強かったら他の料理が美味しくなくなる
そうよ公でも、ほら、お米のご飯だってさ、美味しさが大切でしょお米そのものの良さとか炊き上がりの具合とか
そうだ他の料理と一緒に食べるものだけれど
無味ではない
主食は主食として美味い方が良い
一流のパンは、やっぱり美味しいのよ美味しいけれど他のお料理と、争うような味ではないってことむしろ、他のお料理の味を引き立たせる効果が無いといけないって思わない
思うよ
中世のヨーロッパではさ、パンが料理を乗せるお皿だったこともあるのよ丸くて平たいパンの上に、肉料理とかを乗せてお肉のソースの染み込んだパンを最後に食べたりもしたのよ
わたくしは、パンというものは一緒に何を食べるかを、考えるのも楽しいと思うのよこのパンなら、ローストビーフに合うだろうなぁとか赤ワインとチーズと一緒に食べたいとか
そうかただ、パンの美味さだけを追求しちゃダメなんだ
一緒に何を食べるためのパンなのかまで作り手であるオレは、考えていないと
買ったパンを、どう食べるかはお客様の自由ですっていうのが、普通なんだけれどパン屋さんの方で、このパンは、こう食べて下さいってお客さんにもっと提案しても良いと思うわよわたくしは
そういう売り方もある
このパンは違うけれどねこれは、とにかく他のお料理を引き立たせるためのパンだから
次はバターを付けて食べてみてまた、印象が変わるはずよ
まり子の言う通りだった
バターがあるとパンの味の重みが変わる
なるほどねえ最初は美味しいだけの、つまらないパンだと思ったけれど、なかなか奥が深いのね
そうよ今日行った最初のパン屋さんは確かに高級パン屋さんなんだけれど、パンばっかりが突出しててちょっと鼻についたのよね
2軒目はパンに人生をかけすぎだと思ったしパンだけで完結しちゃうのは何か間違っている気がするのよ
パンは他の食べ物と一緒に食べるもの
3軒目のお店は可愛かったけれど発展性に欠けているでしょ公がこれからビジネスとして、パン屋さんを展開していくのならこれからの時代を見据えて、新しいパン屋さんの形を提案していかないとダメだと思うのよ
それが、まり子の言っていた野心を持てということか
うん何かあたしたちらしいモノが、足されないといけないよ
愛もそう言う
おやおやトリイ電子のお嬢さんじゃありませんか
振り向くと高そうなスーツを着た30半ばぐらいのオッサンが立っていた
こんなところで奇遇ですねぇ
オッサンは、蛇のように微笑む
髪型とかも若作りでかなり気持ち悪い
あら松沢さん、こんにちは
まり子は、作り笑顔でオッサンに挨拶した
一騒動やって、このエピソードは終わる予定です
昔、インタビュー本の構成の仕事をしたことがあるのですが
その時の編集者はなぜか、毎回、ホテルの喫茶室で打ち合わせをしたがる人で困りました
わざわざ品川とかの大きなホテルに呼び出すんです
別に普通の街の喫茶店でもいいのに
ていうか、編集プロのある駅とは、全然違う場所にあるホテルを指定する
それで、わざわざ高いコーヒーを飲むわけで
何がしたかったんだろうなあ
経費で落ちるとしてもよく判らない人でした
1061.パンを巡る冒険 / ゴカイ
いやぁ、こんな所でお会いできるなんて思いませんでしたよ今日は、結婚式か何かの帰りですか
松沢という30代半ばのオッサンが馴れ馴れしく、まり子に話し掛ける
結婚式の帰りと思ったのはオレたちの大半が、学校の制服を着ているからだろう
ヨミとハイジのエプロンドレスも正装に見えるし
いえ、違いますわ親しいお友達とちょっと
まり子は、作り笑顔のまま言葉を濁す
松沢にとても警戒している
へえ鳥居さんのお嬢さんの親しいご友人ですかぁ
松沢は、値踏みするようにオレたちをジロジロと見る
松沢くーん、どうしたの
松沢が現れた先のテーブルに高そうなスーツを着たオッサンたちが座っていた
その中でも、とりわけ派手な青いネクタイをしたオッサンが大きな声で松沢を呼ぶ
ああ鳥居さんのお嬢さんがいらしたんですよっトリイ電子のっ
周囲を気遣うこと無く、大声で叫ぶ
ええ、あのトリイ電子のお嬢さんなのそれなら、松沢くーん、こっちのテーブルに招待しちゃってよ
な、何なんだそれは
誰なんだあのオッサンは
ああ、おっしゃってますから鳥居さん、ボクたちのテーブルに来て下さいよ
まり子を連れて行こうって言うのか
申し訳ありませんけれどわたくしは、お友達たちとご一緒しているわけですから
まり子は、笑顔を崩さずに要請を拒む
そう言わずにちょっとだけでいいですからねぇ、ワタシの顔を立てると思って決して、悪いようにはしませんから
ニヤニヤ笑うオッサンの態度がオレは、気に入らなかった
あのまり子が嫌がってますから
ん何キミ、もしかして、ワタシに話しているわけ
あなた以外、誰がいるんですか
空気が、緊迫する
ちょっと公、落ち着いて
まり子が、慌ててそう言うと
ねー、どうしたの松沢くーん何かあったの
向こうのテーブルから、また派手なネクタイのオッサンが叫んでいる
いやぁ、三沢さーんあのですねぇ
松沢は一度、自分たちのテーブルに戻って、三沢という派手ネクタイに報告をする
テーブルには、他にもスーツのオッサンが2人ほどいる
みんなチラチラとオレたちの方を見ている
何なの、あの人たち
可奈センパイが、まり子に尋ねる
厄介な人たちよ今の松沢っていう人は、IT関連の会社をやっている人で最近、パーティなんかで、わたくしのお父様に近付こうとしているのよ何か自分のビジネスに協力させたいみたいで
胡散臭いオッサンなんだ
オレが聞くと
いいえ、お仕事は上手く行っているのよ政財界の人たちにも取り入っているしお父様は警戒なさっているけど
で向こうのテーブルの人は
可奈センパイが派手ネクタイを見て言う
あの人はグリーン・バッキーズっていうレストラン・チェーンがあるでしょ
ああ、あるわね
そこの創業者よ創業者で今でも、株の大部分を保有しているんでしょうけれど、経営からは離れているわあの人、今は国会議員だから
国会議員
政治家なのでも、あんな人、あたしは知らないわよ
そりゃ国会議員なんてたくさんいるんだからあの人の選挙区に住んでなきゃ選挙のポスターだって見られないわよ政治家たってまだ1回しか受かってないんだから、テレビのニュースに出るような役職には就けないし
とにかく松沢はやり手のIT企業の経営者で
三沢は、レストラン・チェーンの創業者で国会議員か
2人とも、40歳前で社会的に成功して調子に乗っているのよ
でも、とても面倒臭い人たちだから注意してね
その言葉に、ヨミがキッと身構える
ハイジ慌てるな
オッサンたちのテーブルを見る
あれ警護の人間じゃないだろ
松沢と三沢と一緒に居るスーツのオッサンたちは警護関係者特有の気は感じられない
そうね議員秘書か、松沢さんの会社の部下だと思うわ
あいつらが高級ホテルで何の話をしているかは判らないけれどお互い、警護要員を連れて来るような関係じゃないんだろ
オレは、そう判断した
あいつらが本当はどれくらい親しいんだか判らないけれどとにかく、見た目通りの親しさを示すためには警護役を連れたままだと、相手を信用していないと思われるんじゃないかな
そうね本当の警護役は少し離れたところから、様子を見ていると思うわ
まり子の言葉に、可奈センパイは思わず周囲を見廻そうとするが
見てはいけません
ヨミが制する
怪しい動きをするのは相手を刺激するだけですわ
ヨミ、判るか
いえわたくしの力で読み取れる範囲には、いらっしゃらないようです
巫女の力は、離れたところに居る人には効かない
ということは判りました
このティーラウンジの中を監視することができるポイントはそう幾つもありませんから
ヨミの力が及ばぬ範囲に居るんならこの店の外だ
それなら、店の入り口のあっちの方だな
いずれにしても、何か問題が起きても松沢や三沢の警護役が飛び込んでくるまでには、10秒以上は掛かる
あれ、あの人たちこっちに来るわよ
可奈センパイの言うとおり松沢と三沢は、自分たちのテーブルを離れて、オレたちの方に
鳥居さんのお嬢さんは、ワタシたちのテーブルには来ていただけないご様子ですから
松沢は、ニヤッと笑う
ボクたちの方が、来ちゃった
三沢の笑顔はさらに醜悪だった
三沢先生が最近の若い人たちの意見も、お聞きしてみたいっておっしゃっていますのでね
はーい、座らせてもらうよーっ
ズカズカと隣のテーブルから椅子を持ってきて、オレたちのテーブルに座り込む
いやぁ、鳥居くんは女子校生なのに、株式投資に興味があるんだってぇぇ
いきなり、三沢議員がまり子に言う
いやぁ、ワタシが三沢さんにお話ししたんですよこの間のパーティで、お父様とお会いした時にそんなことをおっしゃっていたでしょう
松沢もハイテンションで、突っ込んで来る
わたくしのは子供の遊びですわ
まり子は、困惑して言う
いやいや、良いんじゃないのぉっ女子校生が投資その感覚YESだねぇっ
何なんだ、この国会議員は
投資のことなら、ワタシに相談して下さいワタシはご存知だと思いますけれど、インターネットでの証券会社もやっていますから
ウンウン、そうだねぇ松沢くんに相談すると良いよそれが良いよぉ、キミィ
若い人の意見を聞きに来たというのに自分たちばかり喋っている
しかも、まり子だけを集中的に
いや、アレですよその辺の証券会社とかの連中を信用しちゃダメですよそんなの、損するだけですからねぇあいつら自分自身は、大した給料を貰ってないくせに、客の金を運用しているだけでデカイ人間になったと勘違いしていますからねぇワタシなんかは2億、3億は平気で投資にブチ込みますけれど全部、自分の金ですからねぇ気合いと覚悟が違うんですよぉ
そうそう、松沢くんはなかなか凄いんですよねーっ
ねーっ
ご機嫌な様子で笑い合う松沢と三沢
三沢先生だって、素晴らしいですよ何といっても、コッカイギインですものねっ
いやぁ、ボクが議員になって会社の経営から離れたでしょそしたら、ちょっと売り上げが下がっちゃってね今の経営陣に、このままなら、議員バッチを外して、ボクが社長の椅子に戻るぞって、怒っちゃったりしたのもう、みんなビビっちゃってねぇホーント、ボクが全部見ていないとみんな、何もできないんだから
三沢は言う
三沢先生は一代でグリーン・バッキーズを起業し、巨大なレストラン・チェーン・グループに育て上げた経営の天才でいらっしゃいますからっワタシも、日々尊敬させていただいておりますっ
いやいや、松沢くーんボクなんて大したことはないんだよただ、若き日に思い描いた夢に向かってガムシャラに働いただけだからねぇおーい、三太夫例のモノを持ってきて
三沢は秘書を呼ぶ
スーツ姿の秘書が何か持ってくる
はーい、君たちにこれをあげよう
三沢は本を配り出す
まり子と、可奈センパイと、愛と、ヨミと、ハイジに
オレのことは無視だ
ああ、それはね三沢先生がお書きになられたご本なんですよ
うんボクの自伝どうぞ、読んじゃって
読んじゃってって
ボクの会社ではねぇ全ての社員に正社員から、契約社員、アルバイトに至るまで、全員に読んでもらっているのよだって、これにはボクの思想が全て書いてあるからねえやっぱり、ほら一緒に会社を成長させていくためには、下々の人までボクの思想を共有してもらわないといけないでしょ
それで、全員に感想レポートを提出して貰っているのよね毎週例えば今週は第3章・起業と同時に経営危機千葉の海に誓った涙を読んで、キミたちが感銘を受けたことを800字以上で提出せよとかねっぬふふふっ
キミたちも、良かったら感想レポートを書いてくれたまえボクは、待っているよーんいやね正直、この感想レポートによる社員教育は、ボク的にはメチャクチャ、いけてるって思っているのよだって、ホントボクんとこの社員は、YESだからね何もかもみんな、1日26時間働くことを目標に夢に向かってSET UPしているからねっ
この教育システムをねボクは国にも導入したいんだよ
とにかく、ボクの夢はいや、ボクとボクの仲間ボクたちの夢はだねこのボクが書いた本を日本の全国民が読んで、感想リポートを提出させることだよボクの思想に感銘することで国民全体が目ざめるボクの思想が国民全体に普及したアカツキには日本は、今の10倍スゴクなるよねいや、10倍の10倍つまり、2000倍の大変革だよ
ワケが判らん
そして、次は世界を目指すボクは思想で世界を革命したいんだよ
さすが素晴らしいっ三沢先生、グレートですっ
ポカーンとしているオレたち
あ一応、言っておくけれど、その本は政務報告資料として無償で配っているモノだからキミたちに、有価物として寄付したわけではないからそこは間違えないでね政務活動費で印刷したモノだけど違反にはならないからそうならないように、値段は付けていないし、出版物としてISBNを取ってないから
まあ、ボクの思想には値段なんか付けようがないんだよ本当なら、1冊300万円ぐらい払って貰いたいんだけれどま、しょうがないその変わり、今のボクは国会議員だから国のお金で印刷して、こうやって国民の皆様に配布させていただいているんだよねーっ
こいつ国費で自分の本を刷っているのかよ
うーんホント素晴らしい三沢先生の夢は、本当に素晴らしいですねぇ実は、ワタシもうちの会社に三沢システムを導入しようと思いましてね今、一生懸命、本を書いているんですよいや、ワタシは喋るだけで口述筆記でというか、ライターに話している内容をまとめさせているんですけどねでも、ワタシの本です
松沢くーん君もかねっ
ニヤッと笑う三沢
はい三沢先生のように、ワタシの思想とその思想に行く着くまでの人生を自伝を書いておりますッ
こいつも自分を書いているのか
ワタシは、ホラ現在の地位を築くまでに、インサイダー取引と粉飾決算で捕まったりそれで、しばらく一般社会と隔絶させられたり色々と波乱万丈な人生経験をしておりますし
あーあーあー、あれねあれは良くなかったねもちろん、松沢くんでなく司法の方がね松沢くんよりも、もっとヒッドイ粉飾をやってた企業もあったのに結局、君だけゲストハウスにINさせられたんだよね
はぁ8ヶ月ほどですが
逮捕されて牢屋に入れられていた
実にケシカラン話だよねその辺のこともボクが議員になった以上は、シャッキリポッキリさせるよ国会でガンガン運動していくから
お願い致します、三沢先生
ああ、キミのような精力的な企業家が経済活動に参加できない期間を作るというのは、国家の損失だよ億単位で金を動かしている人間をそんじょそこらの一般大衆と同じ法律で裁くこと自体が間違っているんだよ
誰なんだこんなヤツを当選させたのは
教育と司法を正すこれが、ボクの使命だねそれで、アレだ松沢くんのようなゲンゲン元気な月曜日な企業家が、もっともっと広く、浅く活動できるギンギンに活躍しやすい日本にするよまあ、大船に乗ったつもりで待っていたまえぬはははははっ
はい、よろしくお願い致します三沢せんせー
任せーて、任せーて三沢にお任せあれいっおおっ、そー言えば大船で思い出したけれどさぁ、ボクの持っているほら、逗子のマリーナに停めてあるクルーザーがあるよねーっ
ああ、あの素晴らしい大きなお船でございますねぇ
うん松沢くんもこの間、乗ったんだよねぇ
はいはい、お邪魔させていただきました豪華客船に
そこまで大きくは無いけれど揺れた
揺れないです大―きなお船ですから
うん、ボクみたいにドッシリ、腰が据わっているからねぇ
その通りでございますっ
それでまた、再来週に、あのクルーザーでパーティをやる予定なんだよねぇ
うちの党の幹事長や、若い政治家たちも来るしボクと親しい若手の企業家たちも、みーんな集まることになっているんだけれどちょっとした、交流会だよね政財界の若手のそれで松沢くん、また来るぅ
はいはいはいはいはい、はーいっワタシも不肖、松沢、万難を排して伺わせていただく所存でございまするるるるッ
うんいいよー来て来て、松沢くーん
はいはい、三沢せーんせ
それで、松沢くーんそのパーティに、こちらにいらっしゃる鳥居さんのお嬢さんをお誘いしたらお嬢さんは、来てくれるかなぁ
そりゃあ、来て下さいますよ三沢先生のパーティですよしかも、政財界の若手がみーんな集まるんですから
そうだよねえボクは鳥居さんのお嬢さんが、来てくれると良いなあって思っているんだけれど
来てくれるといいなあってボクは思っているんだけどねぇ
ニヤッと微笑む三沢
ああ、いっそのことお友達も、皆さん一緒にお招きするっていうのはどうです
おおー、良いねえ松沢くーん、そのアイデアYESだよキミたちも、ボクのクルーザーへお出でよ海は良いよー、心が洗われるからねぇ
あ、もちろん三沢先生は、女の子だけにお話しているんですよね
松沢は、オレを見て
キミ空気読める子だよね
キミだけは呼ばれてないからね
うん、まあそういうことだよね
オッサン2人いい加減にしろよ
オレが、そう思った瞬間
あのさこの人って、どこの党の人与党、野党
可奈センパイがまり子に尋ねる
野党ですわしかも、この間分裂して今は、10人ぐらいしか議員がいないはずです
まり子は答える
そ、それは今、与党に対抗するために、野党勢力が結集して、大きな党を作る準備をしている最中ということでいずれは凄くなる予定なのだよっ
いずれはってことは、今は大したことがないってことでしょ何かさあたし、思ったんだけれどあなたたちみたいな人って、お友達もロクでもない人ばかりだと思うのよ
可奈センパイは、平然とそう言う
そういう人たちのパーティとか、あたしは興味が無いわよクルーザーなんて、乗せられるのは怖いしね何されるか判らないから
ししし、失礼なわ、ワタシたちを破廉恥漢だと思っているのかね
松沢が叫ぶ
痴漢とは思っていないけれどハレンチな人たちだと思っているわ
可奈センパイはそう言って、まり子を見る
この子は、お嬢様だからあなたたちみたいな、礼儀知らずな人たちに文句を言うのは、はしたなくてできないんでしょうけれどあたしは、庶民の娘だからハッキリ言うわよあなたたち、迷惑だからささっさと自分たちのテーブルに戻りなさいよこの本もいらないわあなたみたいな人の思想とか人生とか、あたしたちは全然興味がないからっ
ななな、何を言うままま、まだ読んでもいないクセにっそういうことは、実際に精読して原稿用紙に800字以上で反論したまえっ
三沢は叫ぶ
嫌よそんな人生のムダ使いあたしはしないわっ
可奈センパイは、キッパリと言った
キミィ無礼はよしたまえっ三沢先生は、国会議員だぞあー、キミの名前と住所と学校と親の職業を言いたまえワタシの弁護士から、連絡させるから
こういう連中は極端なことをやりかねないから
ヨミが、笑顔でオレに振り向く
この人たちのチェックは終わったか
はい、完了していますわ
裏はありません政治の世界でも、財界でも小物ですわたくしたちのことも、全く知らないみたいですしここに現れたのも、偶然のようです
黒い森や香月家のことを探るために誰かに送り込まれたんじゃないんだな
この人たちの記憶を消去致しますか
ヨミがオレに尋ねる
それは無理だ
さっきから、ここのティーラウンジに居る店員と客が、みんなオレたちのテーブルを見ている
三沢と松沢の秘書と部下も居る
オレたちが、ここで会ったという事実は変えられない
とりあえずまり子や可奈センパイ、そしてボクたちに対する無礼を謝って下さい
オレはオッサンたちに言う
き、キミィ何を言っているんだね
松沢がオレを睨む
無礼なのは、キミの方だワタシたちを誰だと思っているのかねおいおいおい、キミィ
ああメンドクサイなあ
まったく、イマドキの子供は何でも、自分中心に考えるから困るねぇもう少し、大人になりなさいよ空気の読めない子だよねぇ、困ったもんだよねえ、松沢くーん
三沢もそう言う
本当ですね自分さえ良ければ、それでいいと思っているでしょうよこういう子供が増えているんです
嘆かわしいねえやっぱり、この国にはボクの思想と教育が必要なんだねぇ
ああここいらが、我慢の限界だ
ヨミがオッサンたちに言う
お2人とも黙って下さい喋らないで耳が腐りますから
ぬむむむむ
んんんん
急に喋れなくなる、2人
はい、立って回れ右して
ヨミの力が働く
はい、そっちの人大きな声で、今、心の中に浮かんでいる言葉を心を込めて斉唱して下さい
ヨミは松沢に言う
松沢は巫女の力に制される
いっ、1はいという、素直な心っ
松沢は叫んだ
2すみませんという、反省の心っ
店の中の人たちは呆然としている
3おかげさまという、謙虚な心っ
何なんだこれは
4させていただきますという、奉仕の心っ
そして
5ありがとうという、感謝の心っ
松沢は、大きな声で言った
よくできました今のは、なあに
笑顔でヨミが尋ねる
け、刑務所で毎日、斉唱させられる刑務所5戒でありますっ
松沢は答えた
そうねあなたにとっては2度と思い出したくない、屈辱的な記憶なんですよねでも
ヨミは微笑む
今のあなたたちに必要なのは、その戒めなんだと思いますわ
強調していますが、本当にこういう人が政治家をやっている現実が恐ろしいです
教育分野の委員会に本当に居るんですよねブラックの人
風刺ネタが終わったら、エロシーンに入ってこのエピソードは終わりにするつもりです
1062.パンを巡る冒険 / アクション大魔王
ちょっちょっと、どうなっちゃったのよ、松沢くーん
直立不動で刑務所5戒を叫ぶ松沢を見て三沢議員が驚愕している
高級ホテルのティーラウンジの中は、客も店員たちもみんなオレたちの方を注目していた
ブラーボゥッ面白いですねぇ相変わらず、松沢さんは芸達者だ
オレたちの死角になっていた座席から白いスーツの男が、拍手しながら現れる
皆さん、お騒がせして申し訳ありませんちょっとした悪ふざけですお気になさらないで下さい
この男も30半ばか細面でオールバック一見、痩せて見えるけれど、かなり鍛え上げられた身体をしている
小声で、可奈センパイがまり子に尋ねる
知らないわよ、わたくしも
まり子が知らないというのだから政財界のパーティなんかに出て来るような人間じゃないんだな
男は、スタスタとオレたちのテーブルへ来ると
三沢先生、松沢さん元のテーブルにお戻り下さい
二人のオッサンに言う
な、何なのかね君はぼ、ボクを国会議員と知っててそう言うのかね
三沢議員は、不機嫌そうに言う
はい、もちろん存じ上げておりますですから、これ以上、コトを荒立てないように無礼を承知で参上致しました
男は言う
わたくしはこういう者です
男はそう言って三沢に名刺を手渡した
ギョッとなる三沢
わたくしこちらの方たちに、お話しなくてはならないことがありましてね誠に申し訳ございませんが、席をお譲り下さい
三沢議員は
ま、松沢くーん、ももも、戻ろうよ
1.はいという、素直な心
松沢はまだヨミの力に支配されている
3時間ほどで治りますわですから、ご心配にならないで下さい
ヨミが、そう言って3時間で治るという新たな指示を、松沢の心に落とし込む
そ、そうなのほ、本当なんだろうね
はい、本当でございますわ
ヨミは、ニコッと三沢に微笑む
ほ、ほらっ行くよ、松沢くん
2.すみませんという、反省の心
刑務所5戒を唱えながら松沢は、三沢と元のテーブルへ帰る
ただティーラウンジから出て行こうとはしない
秘書や部下たちと一緒に、オレたちのテーブルの様子を見ている
そんなに気になるんだこのオールバックの男のことが
さて座ってもよろしいですか
男はオレに尋ねた
まり子ではなく
つまりこいつは、黒森公という人間のことを知っている
嫌です座らないで下さい
オレは、男の眼を見たままそう答えた
おやおや連れないお返事ですねぇあの議員の先生たちに絡まれて、お困りなご様子だったからわざわざ、わたくしが皆さんをお助けしたんですけれどねぇ
そうですかオレはあの2人が、オレたちのテーブルに寄って来たのも、あなたの仕込みなんだろうって思っていますけれど
何もかもが仕組まれたことなんだ
そう考えた方が良い
何をおっしゃるんです全て、偶然に決まっているじゃないですかあの議員さんたちが、たまたまここに居たのもわたくしが、たまたまここに居たのも皆さんが、ここにいらしたのだって事前の計画は無かったのでしょう
オレたちが、このホテルに来たのはまり子の思いつきで、前から決まっていた予定では無い
男の人って幾つになっても、やることは同じなんですねぇ
不意に可奈センパイが、口を開く
さっきのオジサンたち高校生の男の子が、あたしたちをナンパしてくる時と、全然変わらなかったわナンパしてくるオトコって大抵、2人組なのよねそれでオレたちと付き合うと、こんなに楽しいぞって、女の子の関心を惹こうって頑張るのよ
そう言えば香月仁たちも2人組で女の子を口説いていたなぁ
いい歳をしてもう大人のくせに、高そうなスーツを着て、社会的な地位があっても頭の中は、高校生男子のままなのね
そしてやっぱり、いるのよねしつこく絡んで来るナンパオトコを追い払う代わりにそのまま、自分がオンナのコをゲットしようとするオトコも
ジロッとオールバックの男を見る
オジサンもやっぱり、高校生の頃からずーっとこんなことを続けているわけ
あ、あなた、よしなさいよ
まり子が止める
ふふふ元気なお嬢さんですね嫌いじゃないですよわたくしは
男は、ニタァとまり子に微笑む
いずれに致しましてもお名前をお聞かせ下さいどうやら、あなたはわたくしたちの素性はご存知のようですから
まり子が、そう言うと男は
また名刺を1枚取り出してオレたちの前に置く
嶋田清十郎さん
名刺には、それしか書いていなかった
肩書きも、電話番号も、メールアドレスも無い
さっきの議員さんに見せていたのとは、別の名刺ですよね紙の色が違ってましたから
可奈センパイが指摘する
ええ、それは人によって、出す名刺は変えていますよ
いや、そういう人なんだよこの人はさ
オレは可奈センパイを制して、言う
そういうお仕事に就いていらっしゃるんですよね
名刺を使い分けるということはそういうことだ
しかも、国会議員が一発でビビッて立ち去るような名刺を使えるってことは
相当、ヤバイ権力の下で働いている人間だ
まあ、座らせていただきますよ立ったままでは話ができません
嶋田は、勝手に椅子に座る
さてそうそう、あなたは鷹倉神社の巫女さんの家系の娘さんですよねお名前は確か、鷹倉夜見子さん
嶋田は、ヨミを見てニヤッと笑う
あなたは、もうわたくしの頭に入り込んでいるんでしょうねだったら、お判りのはずですわたくしたちが、何を望んでいるかということを
ヨミが、ブルッと震える
いやはや本当に素晴らしい能力をお持ちだ大変、興味深く実演を拝見致しましたよ
目的は巫女の力か
それを見極めたくてあの議員たちが、オレたちに絡むように仕向けたんだ
このホテルに居るのは、おそらくこの男1人じゃない
この男の配下がいや、この男もまた手下なのかもしれない
とにかく、組織でオレたちを包囲しているはずだ
その中の何人かを使って三沢議員たちにまり子が来ていることを知らせ、オレたちのテーブルに行くように勧めたんだ
全てが誰かによって仕組まれている
大丈夫ですよわたくしは覚悟して交渉役になることを志願して参りましたから頭の中を読まれることや松沢さんのように、操作されるかもしれないということは、最初から想定しています
嶋田はニヤッと笑う
でオレたちにどんな用があるんです
単刀直入に、申し上げますわたくしたちは夜見子さんたちがお持ちになられているような特殊な能力をあなたたちが独り占めしているのは、良くないのでないかと考えています
こういう素晴らしい力はもっと、それを使うのに相応しい場かあると思いますそう国家の権益を守るためにとかあるいは、世界に恒久的な平和をもたらすために
あなたもしかして、国の機関の人なの
さあそれは、わたくしの口からは申し上げられません
嶋田は笑う
どうなのヨミさん
まり子に尋ねられて、ヨミは
はいあのおそらくは
嶋田の心を読んでそう言う
日本国がヨミちゃんたちの力に眼を付けたってこと
可奈センパイが囁く
多分そういうことだと思うわ
この力は政治や外交に使ったら、とてつもない効果があると思うもの
交渉相手の心を読み取りこちらの言う通りに、従わせることができる
記憶だって、自由に書き換えられる
これほど万能な能力は無い
そう鷹倉神社の巫女の力は、国民のためにいや、地球に住む人類全体のために役立てるべきものだと、わたくしたちは考えているのですよ
嶋田はニヤッと微笑む
この人違うよ
愛が呟いた
オレもそう感じた
ハイジ、蹴飛ばせッ
ハイジが、椅子を蹴って嶋田の頭にキックを放つ
何ぃぃッ
きゃぁぁ
頭を蹴られて、吹っ飛び床に倒れる、嶋田
ティーラウンジ内は、騒然となる
な、何で鳥居家の警護役が
ああ嶋田は、ハイジがオレの女になっていることを知らないんだ
オレの指示で、ハイジが攻撃してくるとは思っていなかった
ハイジ、黙らせろ
ハイジが、連続したキックを嶋田に食らわせる
嶋田は、2発ぐらいは直撃を食らったがすぐに腕でガードする
わ、わたくしに、こんなことをしてどうなるのか判っているのですかぁぁ
ハイイッ、ハィィッ、ハィィッ
次々繰り出されるハイジの高速キックに嶋田は、防戦一方だ
お、おい何とかしてくれ
嶋田は、オレたちにでなくティーラウンジの外の誰かに叫んだ
やっぱり、仲間が居るんだ
はい、そこまでよ
一斉に、10人ぐらいの人間がティーラウンジに飛び込んで来た
はいはい、皆さんすみませーん、わたくし、こういう者です
先頭に立っている、鳥打ち帽にトレンチコートを着た小柄な女性が警察のバッジの様なモノを、みんなにチラッと見せた
ハイジ、もういい
オレが止めたのはその女性が、ネコさんだったからだ
工藤父の仲間のフリーの警護人の
だ、誰だお前は
嶋田は、ネコさんに叫ぶ
誰だっていいでしょあんたの仲間は親玉まで含めて、全部、捕まえたからねみんなして、このホテルに集合してくれたから一網打尽よ
ネコさんは言う
お、お前、まさか香月セキュリティ・サービスかいや、そんなわけがない香月セキュリティ・サービスは、今は
今日は、旧研修館で先週のパーティに来たお嬢様が、イーディVS山田梅子(セバスティアヌス)さんの試合を観に来ることになっている
そっちの警備に人員が取られている
だーから、こういうモノだった名乗ったでしょうっはーい、この男は国際的な詐欺師グループの一員ですので、わたくしたちが逮捕致しましたこのまま、連行致しまーす
ちょっと待ておい
待てるかふん縛っちゃってーっ
ネコさんの配下のオトコたちが嶋田を縛り上げる
あボール・ギャグで猿轡までしている
こんな警察があるかっていう扱いだけれど
みんな、突然のことの衝撃に何が何だか、判らなくなっている
とっころで、あのそこの人そうそう、そこのあなた
ネコさんは、三沢議員を指差す
ぼ、ボク
そう、あなた今、ここで起きていたこと全部見ていたわよね見ていたのなら、目撃者としてちょっと署まで来て欲しいんだけれど
い、いやぼぼぼ、ボクは見ていないですいや、何か良く判らないうちに、その人が蹴飛ばされていただけで全然、目撃とかしていませーんそ、そうだよな、松沢くーん
3.おかげさまという、謙虚な心っ
松沢はまだ刑務所5戒の呪いから解けていないあと、2時間55分ぐらいだ
あらそう、それならあなたは、何も見ていないしもしかして、この時間、ここに居なかったことにしたいのかしら
ははは、はいそうしていただけると、大変、助かります
4.させていただきますという、奉仕の心っ
じゃあ、そういうことにしといてあげるわっ
申し訳無い感謝しますっ
5.ありがとうという、感謝の心っ
つまり三沢議員と松沢には、オレたちも会っていないということになる
あなたたちは、一緒に来なさい署で、詳しい話を聞かせてもらうわっ
そうしてオレたちは、無事にティーラウンジを出ることができた
あの今、飲んだお茶の支払いは
オレが、ネコさんに尋ねると
立て替えておくわ経費で請求するから伝票は、関さんの方に回るわ
後で、翔姉ちゃんに払えばいいのか
下で工藤ちゃんが待っているから、このまま車に乗って帰ってあたしたちは、捕まえた連中からさらに協力者まで、根こそぎに退治するから
そうなんだよな
工藤父が、オレたちの運転者をやってくれるということは
同時に、工藤父の仲間たちも動いているっていうことなんだ
ここだと誰が聞いているか判らないから詳しいことは、車の中で工藤ちゃんに聞いて
ありがとうございます、ネコさん
いいのよあたしは、これで稼がせてもらっているんだから
ネコさんが、地下駐車場まで配下の人を2人付けてくれた
車に戻ると
おう、なかなか大変みたいだったらしいな
工藤父が、笑ってオレたちを出迎えてくれた
悪いな車に残ったオレにも監視が付いていたからな一斉に、敵を制圧するまで動けなかったんだ
ということは工藤父も、自分を監視していた敵を仕留めたのか
とにかく、乗れさっさと戻るぞ
はいみんな乗って
最初と同じように助手席にハイジ
2列目のシートにヨミと愛
1番後ろのシートに、オレと可奈センパイとまり子が乗る
オレたちは、送ってくれたネコさんの配下の人たちに頭を下げる
どこから判っていたんですか
車がホテルから外の道路に出たところでオレは、尋ねた
判っていたも何も今日は、あいつらを招き寄せるために、最初から仕組んであったんだよ
工藤父は言う
香月セキュリティ・サービスが、別のところに集結していて美智もお前の警護のイーディもいないそんで、お前がその子を連れて、出掛けるっていう話をリークしておいたんだ
香月家の警護無しにオレがヨミと出掛けることを狙って
でも、オレヨミを連れて行くって決めたのは、出掛ける寸前ですよ
ギリギリまで決めていなかったはずだ
おいおいどうしてお前が入った部屋に、その子が居たんだと思う
そう言えば学校から帰って来てから、オレは中庭前の部屋に行って
そこに居た巫女の力を持つ少女はヨミしかしなかった
月子もルナもコヨミちゃんもあの部屋には居なかった
お前がもし、その子を連れて行こうとしなかったら誰かが連れてった方が良いって勧めただろうよ
オレは警護のハイジの他に、巫女の力を持つ子が居た方が良いんじゃないかって思ったから
それでヨミを選んだ
それでパン屋巡りをしながら、こっちのメンツを敵に見せてしかも、運転手のオレは、絶対にお前らには付いていかないことも示した後は敵が襲撃しやすいポイントに誘導するだけだったんだが
急に、外資系のホテルに行きたいとか言うから作戦の変更が大変だったんだぞ
まり子が謝る
いいんだよアクシデントには、オレたちは慣れているあのホテルも知らない場所じゃなかったしな敵がまさか、たまたまその場に居た国会議員とかを使ってくるとは思わなかったが
ああ、ティーラウンジでのことはみんな知っているんだ
それであいつらは何者だったんです
その前に、お前たちはどうしてあいつがニセモノだって判ったんだ
工藤父は、逆に質問してきた
ああ、そうよね愛が違うって言ったのよね
可奈センパイが、愛を見る
そうそう、そうだったわあなた、何で判ったの
まり子も、愛に尋ねる
あのね野党だったから
愛は、ポツリと答えた
何よ、それじゃあ全然判らないわよ
何が野党なの
可奈センパイとまり子が、同時に愛に聞くから
オレが説明するよ
オレの出した結論と愛が感じたことは、同じだったんだな
ほら、例の嶋田っていう男はさオレたちに、自分が国とか国際機関で働いている人間だって、思わせようとしたんだよ
盛んに国益とか国際平和とか、でかいことを言っていた
そうやってさそういうちゃんとした組織からの話だから、自分たちにヨミを引き渡せっていう風に話を持っていこうとしたんだよ
それは判るわよ
うんわたくしもそういう政府系の人なんだって、思ったもの
何でそう思ったんだよあんなに胡散臭い人なのさ
オレは笑顔で、2人に聞く
それは名刺1つで、国会議員を黙らせちゃったからですわ
そうそうあのゴリ押しの政治家が、名刺見ただけで退散したからだから、あたしも、何かそういう立場の人なのかって思ったのよ
三沢議員を使うことでオレたちに、自分の背景を信じさせようとした
でも、ほらあいつ、名刺を使い分けたろあの議員に見せたのと、オレたちに見せたのは別の名刺だった
それは何か、あたしたちに本当の所属とかを知らせたらマズイのかなってそう思ったのよ
ええ、わたくしたちには伝えられない事情があるんだろうって
可奈センパイと、まり子はそう言う
それが嶋田の手だったんだよあいつは政府とか国際機関の人間じゃない
だからノブと愛は、どうしてそれが判ったのよ
ええ、何で公たちには判ったの
だってあの議員さんは、野党の議員さんだろ
そう聞いている
もし、嶋田が警察とか、公安の人間ならビビったりしないよ逆に偉そーに対応するよそういう人間だろあいつらはさ
国の官僚とかには頭は下げないはずだ
むしろ、反発する
あんなにスゴスゴと引き下がったりはしない
しかもあいつらは、まり子がトリイ電子のお嬢さんだってことは知っているんだそこに、国家機関の人間が来たんなら政府とトリイ電子に、何か関係があるんじゃないだろうかって探って来るはずだろあいつらは、政府を動かしている政権与党を攻撃できるネタが欲しいんだから
あのテーブルに残って嶋田とオレたちの会話を聞き取ろうとするはずだ
嶋田が国際機関の人間だと想定したとしても同じだよあの三沢みたいな議員が、ビビるような国際機関なんてあるのかササッと自分たちのテーブルに戻るなんて国連機関とかでも無理だろうし
アメリカの何かの人とかだったらアメリカ軍の特殊部隊の司令官とか
そういう立場の人だったら、やっぱり反発するよそれで大使館に訴えたりするよアメリカの人に、何で日本のホテルの中で指図されなきゃいけないんだって
それもまた野党議員なら、国会で問題にしたりするだろう
ていうことはさあの名刺には、何て書いてあったのかしら
そうよねあの議員さんたちが一目見て、震え上がっていたものね
まり子と可奈センパイは顔を見合わせる
工藤さん、知ってますか
オレは、運転席の工藤父に尋ねる
昔さ特撮ヒーロー番組でダイヤモンドアイっていうのがあったんだわ
工藤父は、そんな話を始める
そんでよ敵は前世魔神キングコブラっていうバケモノなんだがこいつは普段は、アジアの子供が手を繋ぐ会っていう慈善団体のボスをやっているんだわ
悪の魔神が慈善団体
今の日本にもあるんだよ名前は、事前活動をやっているようなNPO法人だけれど実は、裏では暴力団とかヤバイ連中が運営している組織が
そういう連中に眼を付けられたら表の世間体の良い名前の組織で、抗議活動とか仕掛けてきてよ政治家なんか、大変なことになっちまうわけよそういうプロがいるわけだよ引きずり落とすためのプロの団体がさ
嶋田の名刺にはそういう組織の名前が書いてあったってことですか
まあそういうことなんだろうなぁ
工藤父は言葉を濁す
それで結局あの人は、本当はどんな組織の人だったのよ
まり子が尋ねた
それは、お前らは知らなくていいことだ
ちょっとそれはないんじゃないの
オレは、まり子に言う
工藤さんが、そう言うんだからオレたちは知らなくていいんだよ
おそらく今日捕まった連中は全員、処分される
一罰百戒
2度と、香月セキュリティ・サービスの裏をついて鷹倉神社の巫女たちに手を出す輩が出ないように
というかもしかしたら
嶋田は政府関係者じゃなかったけれど
嶋田を操っていたのは政府関係者や大物政治家かもしれない
巫女の力を欲しがるなんていうのはそういうヤツラだ
となればこれは香月家とそいつらとの戦いだ
裏の話だからさオレたちが知っちゃマズイこともあるんだよ
まり子は納得してくれた
おい、ちびっ子なかなか良い蹴りだったって、ネコのやつが言ってたぜ
工藤父が、ハイジに言う
やっぱりオレたちが地下駐車場に降りるまでの間に、ネコさんと連絡を取り合ったんだ
わたくしはただ、いっぱいいっぱいでした
でも、そいつの指示が出ると同時に、敵に食らいついて、反撃する間を与えなかったんだろしかも、止めの指示が出るまで攻撃し続けてたっていうじゃないかそれだけできりゃあ合格だよ
礼を言うが、ハイジは何か不満そうだった
もっと自分はできるはずなのにって、後悔してんのか
工藤父が尋ねる
でもよ今の自分にできることを、精一杯やったんだろだったら今日の自分は、褒めてやれよそうでないと、お前自身が可哀相だぞ
ああ今の自分に不足を感じるんなら、鍛えていくしかねえんだでも、取りあえず一生懸命やった今日を認めろそうでないと、前に進む力が出なくなるぞ
ダイヤモンドアイは大きなダイヤモンドの精霊で
第1話では、その宝石から飛び出して来たのに
最終話では、なぜかアラビアに飛んでってしまいました
レインボーマンダイヤモンドアイコンドールマン3部作の真ん中ですね
全然関係無いのですが、この前、快傑ズバットの第1話を見たのですが
スバットと敵が闘っているのが東京タワーとロシア大使館の間にあるビルの屋上で
昭和の頃は、当時のソ連大使館の辺りは非常に物々しかったので
よくあんなところで撮影したなあと驚きました
1063.パンを巡る冒険 / moto-con
うー、何か自分に頭にくるぅぅっ
走る車の中でまり子が言う
工藤父とハイジの会話を聞いて何か思ったんだろうか
だぁって、公わたくしったら、あんなヘッポコ議員がやって来ただけで緊張しちゃってさその後のニセモノの人だって、政府関係の偉い人だって思い込んでたんだもんっ
わたくしったら、何て馬鹿なのよっ小心者で、騙されやすくて
ああ、あの嶋田と名乗った男の手にまんまとハマッていたのか
議員相手にドギマギしている心の隙をついて嶋田は自分のペースで、オレたちを陥れようとしていた
別にいいんだよまり子は、そのままで
いいわけがないでしょわたくしもう少しで、騙されるところだったのよ
騙されなかったろオレたちが居たから
オレの言葉にまり子は、眼を丸くする
ででで、でもい、いつでも公が側に居てくれるわけではないでしょ
電話してこいよいつでも何か変だなって思ったらどんな時でも、相談に乗るしホントにヤバそうなら、駆けつけるから
当たり前だまり子は、オレの女なんだから
そ、そうわ、判ったわだ、だったら相談するわいつでも、必ず公に
まり子は恥ずかしそうに、そう言った
ていうか何で公は気付いたのよあの男がニセモノだってそういえば、公より先にあなたが気付いていたわよね
まり子は愛を見る
あのねコツがあるの
まり子は、小さな声で答えた
人でも何でもね出会った時に何かちょっとでも変だなって思ったらそれは変なのだから何で、変なのかの理由を探すの
何よ、それ直感が大事ってこと
まり子は問う
そりゃ、そうだろうインスピレーションは、大事だぜ
運転しながら、工藤父が言う
詐欺師に騙される人間の大半は第一印象の段階で、名ん、こいつはおかしいって感じているんだよところがさ詐欺師っていうやつは、論理的な言葉で相手の思考を誘導していく第一印象は怪しくても話していることは、論理的に正しいって感じると人間は、その相手を信用していってしまうそうだ
そんで、気付くとどう見ても、見た目からして詐欺師にしか見えない人間に大金を騙し取られることになるんだよ後から考えると、まさか、あの人が詐欺師だとは思わなかったという事件より、そう言えば、最初っから怪しいやつだったっていう事件の方が遥かに多いんだわ馬鹿な話だけど
しっかも自分は頭が良くて、人を見る眼も備わっていると思い込んでいる人間の方が、よく騙される詐欺師の語る理屈を、一つ一つ頭の中で検証して真っ正面から、詐欺師の論理にハメこまれちまうからだ
あああなたは、そういうパターンみたいね
可奈センパイが、ニヤッとまり子を見る
な、何よぉっ
あら、違うの
ううっそ、そうだと思うわよも、もおっ
認めるまり子
あのねパンを作る時と同じなの
パンを作る時もね眼の前の作業だけに集中してちゃダメなの生地のこととかオーブンの温度のこととか焼き上がりの時間のこととか同時に幾つものことに気を配らないといけないの
それが何なのよ
まり子は尋ねる
愛は嶋田の話にだけに集中しないで、あのティーラウンジ全体の様子を俯瞰して見ていたんだよ
嶋田は何か違う敵だって、インスピレーションで感じ取ったから嶋田の話を聞きながら、向こうのテーブルからチラチラとこっちの様子を見ている議員たちの様子や、店のボーイさんたちの様子なんかもチェックしていたんだよ
そうオレも、見ていた
議員さんたちの表情が変だったのでも、こっちを見ているの興味津々で、見ているのだけど、何か恐れている顔なの
愛が、まり子に言う
恐れている
そうだから判ったのハッとしたの本当に政府とかの人ならあの議員さんたちが、あんなに怖がる顔はしないって国会議員は、簡単には捕まえられないし野党の人だし
政府の人間が、トリイ電子の令嬢に妙なコンタクトをしているとすれば
嶋田のことを恐れたりしないで積極的に情報収集を計って来るだろう
愛はさ一見、スローモーなんだけれど、本当はよく見ているし、よく考えているのよナメちゃいけない子なんだよねっ
そ、そうみたいねそ、それより、どうしてあなたは判らなかったのよあいつがニセモノだってこと
まり子は、慌てて話をヨミに振る
それはあの嶋田という人は、ただのメッセンジャーであの人自身、自分に命令している人の正体を知らないみたいだったんです
あそこで、わたくしたちに話し掛けて議員さんたちに、あの名刺を見せわたくしたちに、ああいう話をするように指示されて来ただけの人だったので
つまり真実を何も知らされないで来た、ただの下っ端
そりゃそうだろう相手が、人間の心を読むってことを判っているのに全て知っているやつを送り込んで来たりはしねえさ
ですから、わたくしはあの人の正体が判らなかったのでいや、あの人自身は、ただの雇われただけの人だって判ったんですけれどどうやって雇った人の正体を暴いたらいいのかが判らなくて
巫女の力という能力があってもヨミは、ただの14歳の少女だ
判断に困ることが起こればパニックになる
敵は、オレたちのことを本当に良く理解している
大丈夫だ心配するな親玉の方も、今日中に決着を付けるからよ
全て、目星が付いているんだな
それなら良い
はぁ、公ったらすっかり、落ち着き払っちゃってさ
まり子が溜息を吐く
そりゃ落ち着くさたくさんの有能な人たちが動いてくれているんだからさ
工藤父の仲間たちも、香月セキュリティ・サービスのトップ・エリート部隊も
オレは信用している
だから、安心して待てば良い
まり子と可奈センパイ今日は、うちに泊まっていってよ
工藤さん作戦終了予定は何時ですか
オレがそう尋ねると運転席のフリー警護人は
深夜0時だななるべく、日付はまたがないで終わらせたいんだけどよ
そう言ってミラー越しに、車内を見る
オレからも頼むわお嬢ちゃんたちが、黒森家に居てくれる方が警護しなくちゃいけない場所が減って助かるんだわ
敵は、今日のオレたちの動きをチェックしていたはずだ
オレたちと同行していたのが可奈センパイとまり子だということも、もう調査済みだろう
あたしの家族とかが、危険なことになる心配はないの
それはねえよやつらも、突然、オレたちの逆襲を食らって泡食っている頃だ黒森家と直接接触しているお嬢ちゃんたちならイチかバチか人質に取るってことも考えられるがお嬢ちゃんたちの家族に手を出したって、黒森に効果があるかどうか判らないからな
どうしてですのわたくしの家族ですよ
鳥居家の令嬢は、ちょっとムッとする
そりゃ、オメェ黒森家は、裏の世界じゃ、血も涙もねえ悪魔みたいな家ってことになってるからだよ
だから、お嬢ちゃんたち本人ならともかくお嬢ちゃんたちの家族を人質にしたって、交渉に応じるとは思えねえんだよ黒森家なら、直接面識のねえ相手なんて、平気で見捨てそうだからよ
そこまで悪名が広まっているのか
半分はキョーコ親方のせいだがな昨日も関西でヤクザの事務所を爆破しただろ
ミス・コーデリアと楽しそうに破壊工作を仕掛けまくっている
あいつが怖いのはあいつは、盛り場とか夜遊びとか全く興味がねぇ女なんだよ男の犯罪者なら、そういう所から目撃情報が出て、足取りが判るんだがあいつ、毎晩、晩飯は自分で材料を買って作るからなあ酒も家でしか飲まねえし
ミス・コーデリアと楽しそうにお皿をつっついているんだろうなあ
ミス・コーデリアの双子の手下のイーニーさんとミーニーさんも、元気だろうか
でも、悪名のもう半分はお前ら自身のせいだからな
ミラーの中の工藤父の口が微笑む
ノブ何かしたの
思い当たることは山のようにある
白坂創介の無残な公開処刑とか
シザーリオ・ヴァイオラとの死闘あいつはオレが撃ち殺した
瑠璃子の父親の殺害もミス・コーデリアだから、オレたちがやったと思われているかもしれない
それから関西ヤクザとの戦い
東京まで手打ちしに来たヤクザたちの半数は、ブチノメしたし
抹殺した連中もいる
さらに、関西から派遣されて来たヤクザ・グループも
天童貞男たちを巫女の力で狂わせて親分たちと銃撃戦をさせて、死なせた
とんでもなく極悪非道だな、オレたちは
オレたちは、どんなこともなあなあで済ませないから
適当なところで、取りあえず手打ちにしてもさ遺恨は残るだろそうなったら、また敵はオレたちを狙って来るから敵対勢力は、トドメを刺すようにしているんだよ
えっとトドメって
それは知らない方が良いと思うよ
わたくしはちょっとだけ知っている
まり子はリエとエリの父親たちの顛末を見て知っている
そしてそれ以上は、もう知りたくないなあって思ったわ
じゃああたしも聞かないでおく
まり子の言葉に、可奈センパイが応える
まあ、一応お嬢ちゃんたちの家にも、香月セキュリティ・サービスの監視員は付いている何か起きたら、対応できる用意はしてあるから
何よ、それを早く言ってよ
可奈センパイは明るく微笑む
いや警護員じゃなくて監視員なんだよな
香月セキュリティ・サービスは名家のお嬢様たちの集いの方に、警護員を集中させているから
正規の警護人は足りていない
まあわたくしの家は、元々、香月セキュリティ・サービスと契約していますから心配する必要は、ございませんわね
まり子の家鳥居家は、問題無いだろうな
可奈センパイの家の方は
先生問題無いみたいですわ
ヨミが不意に、オレに言う
工藤さんがお心の中で、そうおっしゃっていますから
おいおい、オレの心を覗くは狡いぞ
ニヤッと、工藤父は笑う
でも、まあそういうことだ100パーセントとは言えねえが9割8分、お嬢ちゃんたちの家は問題ねえただお嬢ちゃんたち自身だけ、今夜の0時まで、黒森家に居て欲しいんだいろいろと都合があってよ
何があるのか判らないけれど
これ以上、ヨミに工藤父の心を覗かせるのはマズイ
わたくしはみすずお姉様のところに泊めていただくと家に連絡致しますわ
今日は土曜日ですしそう伝えれば、問題無いですから
歌晏家に続いて、まり子が香月家とも親交を深めていることを、まり子の父親は喜んでいるらしい
あたしは何て言おうかしら
可奈センパイは困っている
恵美の家に泊まるっていうのはダメよね恵美は有名人だからうちの両親も知っているのよ
オレとメグが高校生なのに婚約していて、同居していることを
しかも、オレたちは2人きりで、1軒屋に暮らしていることになっている
メグの女子陸上部のパーティなんかも、その仮の家でやったし
高校生しか居ない家に可奈センパイが泊まることを、ご両親は許さないだろう
わたくしが、お電話して差し上げましょうか
あらトリイ電子の娘では、ご不満なの
でもあたしが、トリイ電子のお嬢さんと友達になってそんで泊めて貰うことになったとかうちの親は信用しないわよ
そんなのやり方次第よ
とにかく、黒森様のお屋敷に戻ってからねあそこは、見栄えが良いから上手く行くと思うわよ
まり子は、ニヤッと笑った
ほんじゃあなオレは、このまま現場に向かうからよっ
お屋敷の玄関まで、車で送ってもらって
買って来たパンと、さっき試食しなかったパンもまとめて下ろす
もうすっかり、日が暮れて夜になっている
工藤父も運転席から、降りてくる
あれ、このまんま行くんじゃないんですか
だって、オメェこれ、お前の家の車じゃないか
いや、でも工藤父って、ここへ来た時はまり子の家の外車じゃなかったか
その鳥居家の大きな高級車は玄関脇の庭に停まっていた
工藤父は、そっちの車に向かう
いや、うちの車で行かれると後で、わたくしが困るんですけれど
おいおい、国産のミニバンを借りていくのが心苦しいのに人様の家のロールスロイスを強奪していくわけがねえだろ
工藤父は、そう言ってロールスロイスの後ろのトランクを開ける
うんこらせっと
何か重そうな四角いモノを、トランクから下ろす
タイヤが前後に2つ付いているけれどハンドルは無い
バイクにしてもちょっと小さすぎねえか
ほんで、こことここをチョイチョイチョイとな
工藤父は、ガチャガチャと操作してハンドルは、折りたたみ式になっているのか
まあ、お前には知らないよなモトコンポなんてバイクは
うん、何となくバイクの形になる
工藤父が、エンジンを始動させた
バイクのライトがピカッと灯る
それじゃあな今夜は、このままこの屋敷から出るなよ香月のお嬢さんたちは、香月セキュリティ・サービスの本体が厳重警備で連れ帰ってくれるからよ
そう言うと、工藤父はモトコンポに跨がって正門へと向かって行った
オレは、工藤父の背中に礼を言う
ありがとうね美智ちゃんのお父さん
気を付けて下さいねありがとうございました
可奈センパイと愛とまり子も礼を言う
ヨミとハイジは、ただ頭を深く下げて礼をした
工藤父は、こちらに振り返ることなく軽く片手を上げて、応えてくれた
正門の巨大な鉄扉が開く
屋敷の中で、マナが遠隔操作しているんだな
工藤父のバイクが出て行く
あの人に今夜、どんな死闘が待っているのかオレは知らない
さあ、中へ入ろう寒くなってきたよ
オレたちは、お屋敷の中へ
アニエスが、飛びついて来る
アニエスいいのか、勉強の方は
編入試験のための猛勉強中のはずだけど
パパが帰って来たから、ちょっと休憩ですのね、パパセックスセックスしましょうですのっ
ああ相当、ストレスが溜まっているんだな
ちょっと、その前に協力しなさいよ
まり子がアニエスに言う
あなたは見栄えがいいから丁度良いわ愛だっけあなたも制服を着替えに行かないで、そのままそこにいなさい
愛も、まり子に止められる
えっとそうねこの玄関ホールもシックで良いけれど見た目の良さは、あの中庭の前の部屋がいいわあそこに行きましょう
まり子何をする気なんだ
早く、みんな付いて来なさいよ
オレたちは中庭前の部屋に行く
あら、お帰りパン、美味しかった
雪乃がロッキングチェアに座って、雑誌を読んでいた
なあに、ファション雑誌
まり子が、覗き込む
違うわよこれはたまごガイド
ああ出産前に読む雑誌か
ま、いいわあなたは、有名人過ぎるからこのプロジェクトには不参加よ
何なのよ、プロジェクトって
不機嫌そうに、雪乃が尋ねると
写真よ写真を撮るのよ5枚ぐらいだけだけど
ああ、公も写っちゃダメよ写真は女の子だけここはわたくしの家、鳥居家の応接間っていう設定にしましょ
この中庭前の部屋が鳥居家の一室になる
あなたはまあ、色々と何かキッカケがあってわたくしに招待されて、鳥居家のパーティに来てしまったのよ女の子たぢけのパーティよそれでわたくしが強引に今夜は泊まっていきなさいって誘っているから、仕方なくそうすることにしたのよ
まり子は可奈センパイに言う
名かのキッカケって何よ
そんなの何でもいいのよとにかくあなたがもう鳥居家に来てしまっていて、帰りにくくなっているという証拠として、写真を撮りましょうあなたの携帯で撮って先に、その写真をあなたのご両親に送るのよ
女の子だけのパーティの写真を転送する
そうすれば写真があるんですもの、あなたのご両親は信じるしかないでしょその後で改めて、わたくしと通話すればいいわ
ああ、このお屋敷は家具なんかは、みんな一流品ばかりだから
そういう邸宅に、可奈センパイがすでに来ていて他の女の子たちも居て
そういう状況をまず写真で示すのか
あなたと愛は同じ制服を着ているから、一緒に来た感じがしてリアリティが出るわよねそれでこの制服のわたくしと
まり子の制服は超お嬢様校として有名だし、気品もある
外人顔もあると国際色が出て、良いわ
金髪のアニエスと日欧ハーフのハイジか
もう2、3人見繕ってよ、公あテレビに出ているようなユウメイジンはダメよ
改めて、まり子は雪乃を見る
テレビに出ている人がパーティにいたらかえって、この人のご両親は心配なさるかもしれないから
白坂雪乃だけに何とも言えない
では、わたくしもダメでございますね
ドアからミタマが入って来る
あ、あなたはいいわよ入っちゃいなさい一緒に写真を撮りましょう
えミタマは、良いの
父がボケてしまったので運転免許証を国に返しました
でも、そうなったら何か身分証明書が欲しいというので
役所に住基ネットカードを貰いに行くことになりました
ええ、1人では行けないので
私が付いていきますはぁ
1064.パンを巡る冒険 / 親への電話
ミタマだって雪乃の番組に出てるんだぞ
オレは、まり子に尋ねる
大丈夫よテレビの時はブラジル水着で日本刀を握りしめてたでしょあっちのインパクトが強いから
ああ、そうねこうやって、普通に服を着ていたら、背筋が伸びてて姿勢の良い綺麗な女の子にしか見えないものね
まり子の意見に、可奈センパイが同意する
小さい子も居てもいいけれどやっぱり、高校生ぐらいの子を揃えたいのよそういう子たちがたくさん集まっていてパーティか何かなのよねそれで泊まっていく子も多いから、1人ぐらい増えても全然問題は無いっていう雰囲気を出したいのよ
ああ可奈センパイの両親を、安心させて
なおかつ、余所の家に娘が世話になることを心苦しく感じないように
て、ことは高校生だろ
メグは、帰っているのか
オレは、アニエスに尋ねる
まだですのっ
欲求不満のアニエスは、オレの背中に自分のおっぱいをグリグリ押し付けながら言う
まだってちょっと遅くないか
女子陸上部の練習はもう終わっているはずだと思うけれど
マルゴお姉ちゃんと寧お姉ちゃんが、帰りにピックアップしてくるってさ先に渚お姉ちゃんと真緒ちゃんを、お店から連れて来るって連絡があったよ
そう言いながらマナが部屋に入って来る
格闘技興行のスポンサーと会いに行ったマルゴさんと寧が
その帰りに、渚の花屋に寄って
さらに、メグも連れて来てくれるのか
あ、そうか警戒態勢なんだな
オレには、今回の敵がどんな相手かは判らないけれど
とにかく、深夜0時までは工藤父たちの暗闘が続いているんだ
ああ、あなたも大人っぽい顔しているから入りなさい
まり子が、マナにも声を掛ける
お、お兄さん、帰ってたん
ルナや双子たち年少組も、この部屋にやって来る
それから月子も
お嬢様たちの集い兼警護役の試合に行っている、香月家組とイーディは不在だけれど
これだけ美少女が居れば充分か
ああ、双子ちゃんたちは写さないでねうちのパパが、双子ちゃんのファンだからすぐにバレちゃうわ
まあ、美少女の双子は目立つよな
はいはいはい、それじゃあそこの椅子の周りに集まって、写真を撮りましょう
まり子が、指示する
何々、写真を撮るの
え、うちら脱いだ方がええですか
ぬ、脱ぐんですか
裸がええのわたしらでお兄さんのオチンチン、みんなで舐めようか
アニエス、オチンチン、入れて欲しいですのっ
おいおいルナ、リエ、ありす、エリ、アニエス
いや、服を着たまんまだえっとエッチな写真じゃなくて、みんな仲良くニコニコしている写真を撮るんだ
そうよ、あんたたちたまには、服を着ている写真も撮りなさいよ
雑誌を読みながら雪乃が、年少組の子たちに言う
お洋服を着て、パパとセックスしている写真もよく撮ってますの
アニエスが反論するが
だから洋服を着て、セックスしていない写真も撮りなさいって言っているのよ
うー、アニエスはパパとセックスしたいですのっ
オレは、そう言うアニエスを抱き締めて
よしよし後でなでも、今は可奈センパイのためだから、みんなで写真を撮ってくれ
スキンシップでアニエスの欲求を緩和する
じゃあ、ノブこれで撮って
可奈センパイが、自分の携帯電話をオレに手渡す
ああ、両親に転送するんだからこの携帯で撮った方が良いよな
するとマナが
せっかくだから、お兄ちゃんこのカメラでも撮ってよこのメンバーで集まって写真を撮るのは、初めてだし
マナが、デジカメを持って来る
ああ、それなら雪乃や双子も一緒に写せる
お兄ちゃんも一緒に入ってねその時は、カメラマンを交代するからさ
可奈センパイの家に送る写真には両親を安心させるために、男のオレは写れないけれど
家族用の写真ならいいか
ああそれじゃあ、まず高校生だけソファに座ってアニエスたちは、ソファの前後にちょろっと顔を出しててくれればいいから
オレは写真を撮り始める
集合写真や可奈センパイとまり子を中心とした、スナップ写真風のものも
愛が可奈センパイと同じ制服を着ているから上手く配置する
ああ、そうか愛が鳥居さんの知り合いってことにしてテニス部の先輩のあたしも、一緒にお呼ばれしたっていう設定にすればいいのね
ちょっとあなた
鳥居さんてのは止めて下さらないあなたあたしより年上でしょしかも、公の女としてもあなたの方が先輩なんだから
そうよあたしが先輩よなのに、あなたこそその呼び方はないんじゃない
2人は、眼と眼で睨み合いクスッと笑う
まり子でいいわまり子って呼んで下さいお姉様
お姉様はいいわよまり子みたいな偉そうな子はタメ口でいいわよどうせ、こっちはお嬢様じゃないんだから可奈でいいわ
にこやかに微笑み合う2人の顔もオレは撮る
あぅぅあの
愛が、恐る恐る声を掛けると
あなたも、わたくしのことはまり子って呼びなさいいいわねわたくしも、あなたのことはあ、愛って呼ぶから
恥ずかしそうに、まり子は言う
さっきのホテルの一件で愛のことを認めたようだ
ぅぅよ、よろしくま、まり子
こちらこそ愛
じゃあ、あたしもタメ口にするわあたしのことは、雪乃って呼んでいいから
雪乃が雑誌に眼を落としたまま、まり子に言う
判ったわあなたのことは雪乃って呼ぶからわたくしのことは美しいまり子お嬢様って呼びなさいね
何よそれっ
雪乃が、雑誌から顔を上げてまり子を見る
冗談よ人と話をする時は、そうやってちゃんと相手の眼を見なさいよね雪乃
まり子はニヤッと微笑む
そ、そんなのあたしの勝手でしょっ
雪乃は恥ずかしそうに、そう答えた
ああ、雪乃にはまり子ぐらい、自意識の強い子の方が良い友達になれるんだな
最近、メグとはすっかり姉妹になっているから
オレは、2人の様子もデジカメで記録した
そのまま、20枚くらい写真を撮って可奈センパイに携帯を返す
この中から、5枚ぐらい選んで送ってみるわ
ちょっと、わたくしにも選ばせなさいよ
まり子も、可奈センパイの携帯の画面を覗き込む
オレは、デジカメの方で家族たちのスナップ写真を撮り続ける
そろそろ交代致しますわ
ハイジがやって来た
マナお姉様には、お台所の方に戻っていただかないといけませんから
夕食の支度をしてくれていたんだな
マナお姉さん、わたしもお手伝いした方がいいですか
ああ、平気平気コヨミちゃんたちも、みんなでここに居て
マナは笑顔でそう言うと小走りで台所へ戻って行く
しかし大丈夫なのか
マナ1人でみんなの食事を作るのは
ああさっきまで、ボクたちも手伝っていたから
ルナが、オレの心を読んで言う
今はもう大丈夫だと思います
えー、こっちの写真にしなさいよこっちの方が可愛いから
いつの間にか雪乃が、可奈センパイとまり子の間に入って、写真選びに参加している
そうわたくしはこっちの写真の方が好きよこのお部屋のゴージャスな感じもよく判るし
まり子は、別の写真を推す
仕方ないわねそれじゃあ美しいまり子お嬢様の言う通りにしたら
ちょっと雪乃っ
あーら、そう呼べって言ったのはあなたでしょっくっくっく
笑う雪乃を見て可奈センパイは
そうね、この写真も送ってみるわ
うん良い感じだな
お兄さん、姉妹集合の写真に一緒に入ってぇな
はい、うちとリエちゃんとミタマさん、キヌカちゃん
それからボクたちも
エリとリエの双子と安城ミタマ&キヌカ姉妹と鷹倉3姉妹月子、ヨミ、ルナ+コヨミちゃんか
みんな揃っての写真てまだ撮ってないですから
本当は雪乃、メグ、マナ、アニエスの腹違いの姉妹も居るけれど
それはまた今度の機会だな
はーい、撮りますよ
ハイジが撮してくれた
アニエスパパとルナとありすちゃんと写真が撮りたいですの
姉妹じゃない子たちとも写真を撮ろう
じゃあ、パパオチンチン出して下さいですの3人で咥えますから
だからそういう写真は、また今度な
そんな感じで写真を撮る
次はハイジも入れて
あ、わたくしが撮りますわ
ヨミがカメラマンを代わってくれた
はい、次は皆さんで変な顔をしてみて下さい
変な顔ですの
そうだよ、変な顔
エリが変顔をして割り込んで来る
そうそう、アニエスちゃんも面白い顔をして
ルナが、笑ってそう言う
はいですのっありすちゃんもしますのっ
はーい、こっち見て撮りますよーっ
年少組の方も色んな個性が集まって、何となく融和しつつある
元から元気なリエとエリとアニエスが、みんなを引っ張って
内気なありすやコヨミちゃんたちも明るくなった
皆様、楽しそうでございますね
キヌカだけは別次元に居るけれど
この子とミタマは時間が掛かるだろうまあ、仕方がない
申し訳ございませんまた、わたくしたちの存在が皆様にご迷惑をお掛けしたのでございますね
月子が小声でオレに言う
オレの心が読めるのだからさっきのホテルでの巫女の力を欲している敵のことを知ってしまったんだな
月子いい加減にしろよ
今のお前は何なんだ
あなた様の忠実なる奴隷でございます
そうだお前たち姉妹は、オレのモノだだから、お前たちは自分自身のことで悩んだりする必要は無いお前たちのことは、全部、オレに任せておけ
小さな声で、月子は言った
オレはお前たちを巫女として受け入れた覚えはないお前たちは、オレのセックス奴隷だオレを楽しませ、オレの子を孕むことだけを考えていろ
そんな話をしているうちに可奈センパイが、親に電話を掛けることになった
あ、みんな、パーティをやっている設定だから静かにしてなくてもいいけれどセックス関係の話題は禁止だ月子、ヨミ、ルナ変なことを口走る子が出ないようにしてくれ
アニエス限定だけれど
親と話している最中に、パパぁ、セックスしてぇぇぇ~みたいな声がしたら何もかも台無しだ
それじゃあ掛けるわよ
可奈センパイが携帯を操作する
あ、もしもしママうん可奈だけどメール見てくれたそう、写真も送ったけれどそうなの、パーティに誘ってもらっちゃってうん他の子も今日は泊めてもらうって言っているからほら、テニス部の愛も一緒なのよ前話したでしょそうそう、パンの子よいつも、家に持って帰っているあの美味しいパンを作っている子あの子の知り合いでトリイ電子のお嬢さんの家なのあ、ちょっと代わるわね
もしもし、お電話代わりましたわたくし、鳥居まり子と申しますいえとんでもございませんわ今日は、皆様でわたくしの家にお遊び来ていただいておりますのわたくしの家は、部屋も多いですしはい、他の皆様もお泊まりになられますから是非、可奈さんたちもといえいえ、迷惑なことなどございませんわ
まり子は礼儀正しく、話していく
上手くいきそうね
雪乃が、オレの耳にそう囁いたが
はいあ、ちょっとお待ち下さい
まり子が、携帯のマイク部分を押さえてオレを見る
わたくしだけでなく家の大人の方ともお話なさいたいって
お、大人って
今このお屋敷には
渚もマルゴさんもまだ帰って来てないし
ミナホ姉さんと克子姉は駅前ホテルの地下施設で娼婦候補者たちへの講習会をしている
翔姉ちゃんやレイちゃんはみすずたちの警護で、香月セキュリティ・サービスの旧研修館ビルだ
ここには誰もいない
ど、どうする
はいはいはいはーい、あたしの出番みたいねっ
何でエプロン姿で片手にお玉を持って
はい、貸して
まり子が、克子姉に携帯電話を渡す
もしもし、お電話代わりましたはいそうですわうちは大歓迎ですので、どうぞお泊まりになって下さいいえいえ他のお宅のお嬢さんたちも一緒ですし、こういうパーティはよくやっていますのではい