今の天童乙女は、月子に支配されていることを忘れてしまっている
月子の力が、そうさせている
あのオーディオ機器なんかにあるでしょPAUSEよ
だから、何のことはうっ
天童乙女の思考がPAUSEする
はい、一旦停止致しました
月子が、穏やかに言った
天童乙女は大きく口を開けたまま、ポカーンと何も無い空中を見上げている
ここまでのところ、どう思う
ミナホ姉さんが、イーディに尋ねる
このコ自身はキホン的に嘘は吐いていないと思うネただ
そうよね敵にとっては天童乙女さんが、あたしたちに捕まるっていうのは最初から想定内なのよね
巫女の力でアタシたちから知っていることを全て話させられるというノモネ
そうかだから、天童乙女の情報はアテにしてはいけないのか
敵の大人の人数がこのコの証言と香月セキュリティ・サービスの調査で違っていたのが証拠ネ
天童貞男たちのメンバーにもう1人、天童乙女の知らない人間が加わっていた
その人が増えることを、天童乙女は父親から知らされていなかった
デモ、この子は変に誤魔化したりはしなかったネ悪意は感じられなかったヨ
ああ自分の知っている情報とゲンジツが食い違っていても
その場で作り話をしたりして、オレたちを攪乱しようとはしなかった
お父さんたちのことが嫌いで仲間を助けたいという気持ちだけは、本当なんだと思うわ
でもだからといって、信用していい子じゃないわいつでも、あたしたちのことを平気で裏切るわよ
天童乙女にとっても仲間は関西から一緒に連れて来られた8人の女の子だけなんだ
オレたちが彼女を完全に信用できないように天童乙女だって、オレたちが信用できるはずがない
確か一個だけ、確実に嘘を吐いていたよね天童貞男のメンバーのイワサキ・ヒロミさんだっけ
天童乙女は関西から来たヤクザたちの中で、イワサキ・ヒロミという人だけは自分の娘を連れて来ていないと言った
はい、嘘だということは判りましたわでもこの方は、そのイワサキ・ヒロミという人のことについては、心の奥の方へ沈めてしまっていますから
もちろん力を使えば、心の奥底の深いところにある記憶も強引に読み取ることはできますが
あんまり、人の心を無理矢理、底から掻き混ぜるようなことをすると心の中がグチャグチャになって再起不能になる
確かイワサキ・ヒロミという人の姉妹も一緒に来ているのよねイワサキ・ヨシミさんだったわよねヤクザの内縁の夫婦で来ていて娘さんのロリコン動画を売っているという
ミナホ姉さんが、月子に言う
はい、そういう方もいらしていると言っていましたわ
では、彼女の心の中のイワサキ・ヨシミさんの位置はどの辺にあるか判るイワサキ・ヒロミさんみたいに奥底に沈ませたりしている
月子は天童乙女の後頭部に手を置いて
いいえ他の関西から一緒にいらしたヤクザの方たちと同じ位置ですこの方にとってイワサキ・ヒロミという女性だけが、心の底に押し込まないといけない重いモノになっていますわ
お父さんの天童貞男さんと同じくらい
あ、そうですねでも、お父様のことは基本的には、心の底に落とし込んでいますがこの方は、頻繁に心の表層部に浮かび上がらせていますから
よくその人のことを思い出し考えている
だから、その記憶や思いを巫女の力で盗み見ることができる
そんなに、そのヒロミさんて人に同性愛の相手をさせられたことが嫌だったのかな
他の大人のヤクザと比べて1人だけ、記憶の底に埋めてしまいたいような相手なんだから
何とも言えないわねただそんなに心配するようなことではないと思うわ
ヤクザみたいな相手と闘う時はね考えすぎたらダメなのよ向こうは、あんまりよく考えないで突発的に行動していることの方が多いんだからこういう可能性も考えられる、もしかしたら、こういう罠を張っているかもしれない色んなことを考えすぎてしまうと自由に動けなくなるわよ
アイテは自分よりも、頭が良いかもしれナイあるいは自分よりも頭が悪いかもしれナイ
Darlingはイツデモ敵は自分より頭が良くて、能力もアルと想定して行動するのが良いところダケレドたまには逆の想像もしてみないとイケナイノネ
天童貞男たちは娘の天童乙女の話を聞く限りは、底抜けのクズでバカだ
親分や兄貴分の命令に従って暴力を振るうことに躊躇がない
警察に捕まったり、刑務所に行くこともヤクザ世界の中では、ハクの付くことだとしか思っていない
仲間の娘を犯したり、売春させることも平然とできる
自分の娘を敵の屋敷に潜入させて
そうだ、天童貞男は
天童乙女に、香月家の邸宅内で服毒自殺させようとしていた
ヤクザ組織からの命令を遂行するためには、自分の娘の命すら捧げる
そういうことをカッコ良いと勘違いしている、クズ人間だ
そうだなこっちの裏をかくような、複雑な作戦を思い付いたり実行できる人じゃないよな
感情のままに、いきなり刃物で斬り付けるだけの短絡的な人間だ
多分、イワサキ・ヒロミという人は猪鹿蝶一郎さんと繋がっているんじゃないかなっ
寧が推理する
1人はいるはずなのよ天童貞男さんたちの様子を、定期的に猪鹿蝶一郎さんに報告する監視役が
天童乙女は、それを知っているからイワサキ・ヒロミさんのことだけ、心の中で別の場所に置いているってこと
うん違うかな
寧の推理は、多分、当たっていると思うわでもそれだけではないわよ、多分ね
いいわ天童乙女さんの意識が一時停止している間に、作戦に手を加えるわみんな、聞いてちょうだい
ミナホ姉さんは話し出す
天童乙女の一時停止が解除される
ああ、天童さんはイーディと一緒に裏から潜入してそれで女の子たちを確保いいわね
ミナホ姉さんは、何も無かったかのようにそう言う
判ったよオヤジたちとは顔を合わせたくないからね
天童乙女は自分が停止していた間に流れてしまった時間に気付いていない
それと正面からの入り込み方なんだけれど美智さんが突入する前に、公と寧とアーデルハイトさんは、カラオケボックスに来たお客のフリをして先に入り込んでおきなさい
カラオケボックスなんだからそれが一番自然でしょ
それで中で合流するのか
できれば天童貞男さんたちが何号室にいるのかとか、女の子たちの状態とか偵察して、携帯電話で教えて欲しいのよ
なるほどいきなり飛び込むより、詳細な情報を知りたいもんな
でも今はホンモノの店員さんたちは全員逃げ出してて閉店状態になっているんだろ
この邸宅の周囲の商店はだいたい香月グループの傘下だから
天童貞男たちが入店した段階で、他の客を帰し店員たちも脱出したと聞いた
その辺は機転を利かせなさい
大丈夫だよヨッちゃんあたしに任せてっ
でも、戦闘メンバーが全員出払っちゃったらミナホ姉さんとヨミの警護をする人がいないよ
大丈夫よ現地に着いてしばらくは、美智さんにガードしてもらうし美智さんが、建物の中へ突入したら、あたしたちは木下さんたちの大道芸の方へ行くから
ミナホ姉さんは、木下さんを見る
ということですからあなたたちは、猪鹿蝶一郎さんの一派の襲撃を抑えるのと同時に、あたしたちのガードも頼むわ
了解でーすあなたたちもいいわねっ
木下さんが、笑顔で安城姉妹に言う
合点承知の助左右衞門でございます
木下さんの粉砕フレイルの威力はよく知っているから大丈夫だろうけれど
安城姉妹の方はどうにも心配だ
園子たちの居場所が判ったら絶対にあたしにも連絡するんだよっ
天童乙女は、強くオレに言う
ああ、彼女はまだ月子が認識できていない
さっきから現地で月子がどういう行動を取るのかも話していないし
月子は、どこまでこの状態を続けるつもりだろう
幾ら月子でも、イーディや天童乙女と一緒に建物の裏から内部に侵入するのは無理だ
彼女はそういう能力は持っていないのだから
じゃあ、それぞれ準備に入りましょう
変装道具とか、色々と用意してありますからこちらへどうぞ
オレたちは、木下さんに誘導されて別室へ向かう
天童乙女も付いてくる
その背後に、ぴったりと月子が張り付いている
よいしょっとこんな感じかな
オレは、このまま学生服姿で行くから変装の必要は無い
女の子たちは、みんな動きやすいカジュアルな服に着替えた
美智は雰囲気を変えるため、髪もツインテールにした
ピンクのTシャツの上にGジャンスニーカーにホットパンツの美智
うん、たまにはこういう格好もいいな美智は美少女だから、何でも似合う
美智は顔を赤らめて、失神しそうなぐらい恥ずかしがる
アタシは、これネ
イーディは、ダークブラウンの長袖Tシャツと茶色のホットパンツ
暗がりを行く時は真っ黒より、濃い茶色や紺色の方が目立たないノネ
ああ、潜入を意識してこういう色にしたのか
お待たせ-っ
寧もGパンに着替えていたでも、足とお尻のラインがクッキリと判ってセクシーだ大人っぽい大学生ぐらいに見える
わ、わたくしこれなんですか
アーデルハイトさんは白いレースのワンピース姿だった
こんなあの、スカートとか
一番可愛らしい格好をしている可愛い女の子が、まさか戦闘要員だなんて思わないでしょっはい、これもっ
寧がアーデルハイトさんの頭に、白いカチューシャをハメる
何ですかこれは
可愛いでしょ日本では、カチューシャって言うんだけれどヨーロッパでき何て言うんだっけ
ただのhead BandかAlice Bandネ
何でアリスなんだ
ルイス・キャロルの鏡の国のアリスの挿絵でアリスがしているからネ
日本のカチューシャだって昔、有名な女優さんがカチューシャって役をやったのが由来でそういう名前になったんでしょ
そう言われてはいますが実際には、大正時代の舞台劇復活で女優・松井須磨子が演じたカチューシャがヘアバンドをしている絵や写真などは発見されていないのです
いや、もちろん松井須磨子演じるカチューシャが、カチューシャという名前の語源となったことは確かなのですが当時は、芝居とは関係無いものでも勝手に人気にあやかって名前を付けることは多かったですし松井須磨子はサロメも演じましたがスカーフのサロメ巻きとか薬のサロメチールとか芝居とは全然関係無いモノにまで名前が付けられていますし
へえ、そうなんだ名前だけなんだぁ
嫌だ嫌だあんたたちって、何でもお勉強にしちまうんだね
文句を言いながら天童乙女が現れる
彼女は紺色のツナギに、作業帽姿だった
配送の係員か引っ越しのアルバイトに見える
その後ろに立っている月子も、同じ格好をしていた
お待たせ致しましたーっ
致しました
そして、現れた木下さんと安城姉妹は
恐山のイタコ
おへんろさん
オレと寧が、同時に突っ込む
3人は、白い和服に身を包んでいた
頭にも、頭巾のようなものを被っているし
いえ、せっかくですので和風の路上パフォーマンスということで
木下さんは、ニコニコして言う
武田信玄をイメージしてみましたっ
和風の路上パフォーマンスだと武田信玄なんだ
わたくしも武田信玄です
わたくしも、信玄ですっ
しかも3人も
しんげんずっていうユニット名も、もう考えちゃってるんですよっ
木下さん
合い言葉は
ニンゲン、シンゲンだっ
3人で一斉に、そう言う迷い無しに
木下さんはバンバルビー3だった
3人組を作らせたりしたら
そりゃ、こうなるか
タケダ美少女騎士団もいいかなって思っているんですけれど
何故、武田信玄で騎士団なのかは聞かないことにする
毎日更新というのは、本当に毎日書き続けないといけないわけで
とりあえず書いちゃって、後で困ることがいっぱいあります
天童貞男なんて、名前だけでつい出しちゃったのに
ガンダムエースが創刊13周年だそうです
ガンダムという作品の凄さはそのスケール感の大きさで
昔のアニメはよくこの世界には、画面に登場する10人ぐらいしか存在しないのかなどと言われるぐらい世界感が狭かったのですが
ロボットアニメとか、平気で主人公チームと敵の将軍たちしか存在しないとか
最初は、悪のロボに壊される町とか逃げ惑う人々とか
主人公ロボを応援する子供たちも居たりするのですが
そのうち、敵の本拠地とロボの研究所の周囲しか出て来なくなり
いつも同じメンツでドツキ合っているだけの話が続いたり
ガンダムの世界は主人公たち以外も、地球の裏側では別の部隊が闘っているんだろうなあとか
同じ戦場に居ても、主人公たちが見えないところで色んなコトが起きているんだろうなあということを想像させるだけの深さがありました
実際戦争の勝敗を左右する、ソーラーレイやギレンの暗殺には、アムロとガンダムは無関係に起きていますし
だから、別の戦場に居る自分の考えたザクとかジムを想像することができましたしプラモでオラがザクを作ることもできました
ファンが、どんどん想像を拡げていくことができる素地があったわけです
ガンダムエースの13年はファンの想像できる余地を殺していった13年のように感じます
あの時には、こんなことが裏で起きていたとかこのモビルスーツには、こんなバリエーションもあったとかをとんでもなく積み上げられてしまったので
何か、FSSみたいになって来たような気がします
FSSは、この世界の設定は、どんな細かいことも作者が全部設定するということですから
903.夜は楽し / GO TO HELL
最後に、ミナホ姉さんがヨミを連れて現れた
あ、これロープで縛られているみたいに見えるけれど、本当はこうですからっ
ヨミが笑いながら、手をパタパタさせる
ああ、簡単に解けるようになっているんだ
現地ではさらに猿轡と目隠しもするわ
はーい、お手柔らかにお願いします
ヨミは笑った
それじゃあ、行きましょうか
ミナホ姉さんの号令で、全員が動く
ミナホ姉さんと行動を供にするのは、ヨミと美智
ただし、美智はゴー・サインが出たら、敵が潜伏しているカラオケボックスに飛び込む
外で、路上パフォーマンスをしながら敵の注意を惹くのが、木下さんと安城ミタマ&キヌカ姉妹同時に、乱入してくるはずのヤクザ・猪鹿蝶一郎たちも抑える
裏からカラオケボックスに密かに侵入する予定なのがイーディと天童乙女だ
そして、先にカラオケボックスの中に客を装って潜入するのがオレと寧とアーデルハイトさん
車は、こっちでーす
木下さんが、翔姉ちゃんの用意してくれたトラックの場所まで連れて行ってくれた
ああ、アルミの壁で四角く囲まれた荷室に大きく引っ越し社のマークが描かれている
目的地の1ブロック前までは木下さん、運転して下さる助手席にはイーデイと天童さんね
2トンのトラックは、運転席に3人しか乗れない
だから、残りの人間はみんな荷室の中に隠れて乗るしかない
トラックの荷室に人を乗せるのは違法行為らしいが
オレたちは最初から、犯罪組織だから問題は無い
何であたしが前に
天童乙女が、ミナホ姉さんに食って掛かる
仕方無いネ引っ越し業者の格好をしているのは、アンタだけネ
アタシもこの格好なら、私服に着替えたアルバイトに見えるネ
イーディは、天童乙女と同じ引っ越し業者の作業帽を目深に被って顔を隠す
確かに、スポーティな格好をしているから引っ越し作業の終わった帰りで、私服に着替えたアルバイトの女の子を駅まで送って行く途中に見えるだろう
そりゃあんたは、そうだろうけれど
天童乙女は、木下さんを見る
でもさ運転手がタケダ・シンゲンのコスチュームなのは、どうなんだい
木下さんと安城姉妹はタケダ・シンゲンをイメージした、白い頭巾と和服のコスチュームを着ている
いごっそぉぉ
木下さんは、意味不明な言葉を叫んだ
タケダシンゲン、関係無いじゃないか
別にいいのよ、格好なんてどうせ、この邸宅は監視されているわあたしたちがトラックでここから出発したら、尾行が付くと思うのよね
この時間に、香月家の邸宅から引っ越し業者のトラックが出て来るなんて変なことはバレバレだから
いやいや、オヤジたちは、そんなことしてねーよ見張りとか地道な作業ができないクズ人間どもなんだからっ
どーせ、あいつらは暗いカラオケボックスの個室の中で全員で膝をつき合わせておでこから、脂汗をタラタラ零してさうわわ、これからどうしようって、グダグダグダグダ延々と答えの出ない話し合いを続けているだけさ
あらそうかしら
そ、そりゃちょっとは、外に偵察に出るくらいはあるかもしれないけれどでも、香月家の門の前に、ベタ付きで見張りなんかする余裕はないねっあのオヤジとオバハンたちじゃさ
天童乙女は、キッパリと言う
でも、あなたのお父さんたちじゃなく猪鹿蝶一郎さんたちだったら
苦笑する、ミナホ姉さん
あそうかそっちなら居るかもしれない下っ端のチンピラに、見張らせておくぐらいのことは
天童貞男の方は、ダメなヤクザとその妻たちの仲間しかいないが
猪鹿蝶一郎の方は、一応は組織の幹部だから何でも命令に従う手下だっているはずだ
だから、天童さんは、走る車の窓から外を見ていて敵が近付いて来ないかチェックしていて欲しいのよ
ミナホ姉さんは、苦笑したままそう言う
このトラックに、あたしやヨミちゃんが乗っていることを確認するまでは猪鹿蝶一郎さんは手を出してきたりはしないと思うけれどねでも、あたしたちが作戦を開始する前に、チョッカイ出されるのは困るもの
天童貞男たちと接触する前に猪鹿蝶一郎たちとの戦闘になったら
天童貞男たちは、ビビッて何をするか判らない
それこそ8人の女の子たちを人質にして、カラオケ・ボックスに立て籠もられたりしたら困る
そんなことになって、もしマスコミなんかが取材に来たりしたら大きなニュースになってしまうし
無理に香月家と関連づけられて勝手な風評をネットなんかで流される危険性もある
関西のヤクザたちは香月家をスキャンダルに陥れたがっているのだから
そのためのネタになるのならそのまま、天童貞男も猪鹿蝶一郎も使い捨てにして構わないと思っている
でも、あたしは猪鹿のオッサンの手下は全員は知らないよっ
天童乙女は答えた
それてせも1人も知らないよりはマシでしょ普通の車なら、後部座席からでも警戒監視できるけれどトラックは、そうはいかないんだからあなたと木下さんとイーディ3人の眼だけが頼りなのよ
ミナホ姉さんはそう返す
判ったよそういうことなら
天童乙女は、イーディを見る
具体的な指示は、この子からしてもらえばいいんだね
ええ、悪いけれど頼むわ
はぁっしょうがないねっ
プリプリしながら、天童乙女は助手席に乗り込む
イーディも向かった
じゃあ、荷室開けまーすっ
木下さんが、ガチャガチャッと荷室の扉を開いた
電灯、付けっぱなしにしときますねーバッテリーに余裕がありますから、大丈夫ですよー
ああ、荷室の中に照明があるのか助かる
この荷室は、外からでないと閉められませんからどんどん、乗っちゃって下さーい
木下さんは外に残って扉を閉めてくれるのか
ほいっしょっ
よいしょでございますっ
シンゲン衣装の安城姉妹が、大きな風呂敷に包まれた荷物と長い棒をトラックに詰め込んでいく
あれは路上パフォーマンスで使う道具なんだな
奥には、段ボール箱や拘束用の道具も入っていた
天童貞男たちを捕まえた後に、縛るための
これも積んで置いてねーっ
かしこまってございますっ
キヌカさんが、木下さんから重い粉砕フレイルを預かる
さすがにアレを抱えたまま、運転はできない
ヨッちゃん、乗ろうっ
寧とオレミナホ姉さん、アーデルハイトさんも荷室に乗り込む
大丈夫なのか、あの天童乙女は
オレが尋ねると、月子は
はい作戦中はどんなことがあろうとイーディさんに従うという暗示を掛けました軽いものですだから大丈夫ですわ
よいっしょっと
ヨミも乗り込む
ではお願いします
全員が乗り込んだことを確認して、ミナホ姉さんが木下さんに言う
はいはいはーい
ぎぃぃぃ、バシーン
ガチャ、ガチャ、ガシン
トラックの扉が閉まる
しばらくして、前の方でバタンとドアの閉まる音と衝撃がした
木下さんが、運転席に乗り込んだんだな
バルッ、バルルルルルルルッ
エンジンが始動し
トラックがゆっくりと走り出す
ここからはスピード勝負よ
2トン・トラックの荷室の中で揺られながら
あなたたちが今、イメージしているよりも2倍のスピードで片付けるわ
ゆっくりと確認とかしなくていいわ相手を行動不能にして制圧することだけに集中して
ああ、ジックリ観察して対処を考えるとか、しなくていいってことっ
寧が、そう聞く
そうよ相手のことや、相手の思考を理解しようとしたらドツボにハマるわだって細かいことを考えていない人たちなんだから
天童貞男たちはそういうヤクザだ
その場の思いつきだけで、突発的に動くような人たちには時間を与えてはいけないということなのですね
そういうことよ変に隙を与えたら、あたしたちの想像の斜め上の行動に出るからこっちが想定しようがないようなアクションを取られたら対応するのが大変よ
台所のネズミを殺すのに、核爆弾を使っちゃうような人たちだから後先は考えない眼の前にあるものなら、何でも反射的に使ってしまうから
眼の前にあるものに手を伸ばす隙を与えてはいけないんだね
そうよ公だから、ゴーサインが出たら、全員、一撃で失神させて美智さんの心月を使ってもらってもいいわ行動不能にさせて気絶させちゃって
美智がうなずく
それから8人の女の子たちも
全員有無を言わさず心月で失神させてちょうだい
ストックホルム症候群て判る
誘拐とかされた被害者が長い時間、誘拐犯と一緒にいるうちに、犯人たちに対して仲間意識を持ってしまうことがあるのよ
それに今回の場合は、8人の女の子たちを監禁しているのは、実の親だし天童乙女さんは、自分のお父さんに対して軽蔑と憎しみしか感じていないみたいだけれど他の女の子たちの中には、親に対する情愛の残っている子もいると思うのよ
普段なら、天童乙女さんと一緒に自分たちの親は間違っていると話しているような子だって眼の前で、自分の父親が倒されたらとっさに助けようとするかもしれないわ
救出するはずの8人の女の子たちが、オレたちを攻撃してくる可能性もある
だから、そうならないように出会った瞬間に、心月で気絶させて欲しいのよ
ミナホ姉さんは、美智に言う
しかし、天童乙女さんはそういうやり方を嫌がるのではありませんか
天童乙女は仲間を救出に行くと思っているのだから
美智が心月で女の子たちを気絶させるのは不当な攻撃に感じるだろう
だから、美智さんと天童乙女さんを別のグループに分けたのよそしてイーディもいるわ
天童乙女の暴走は、イーディが抑えるのか
はっきり言って8人の女の子たちの今の精神状態が、全く予想できないのよ絶望しきっているかもしれないし、怒りを溜め込んでいてそれが何かのキッカケで爆発するかもしれないお父さんたちに犯され続けている子たちなんて発狂している可能性だってあるわ
だからヨミは、絶対に女の子たちの心を覗き込んではダメですよ崩壊した心に引きずり込まれてあなたまで壊れてしまうかもしれないから
月子がヨミにそう言った
8人の娘さんたちについてはわたくしが見させていただきますわ
月子の精神力はヨミたちよりも、安定している
もし、女の子たちの心に大きな傷があったとしたらそれを癒やしてさしあげるのは、鷹倉神社の巫女の仕事だと思うんです
穏やかにそう言う
だから、彼女たちにはわたくしがああ、天童乙女さんも、わたくしがこのまま担当致しますわ
スッと運転席の方を見る
あの方もかなり傷付いていらっしゃいますから
天童乙女の心が
あのわたくしたちは、いかが致しましょう
安城ミタマさんが、ミナホ姉さんに尋ねる
わたくしたちの方はその猪鹿蝶一郎という人たちの一派が襲って来たら成敗してしまってよろしいのでしょうか
この姉妹は死なない程度にとかの力加減はできるのだろうか
あなたたちのことは、木下さんにお任せしています木下さんは、あなたたちに何か言ってなかった
それが、あの観衆の前で闘う時は、笑いを忘れてはいけないと
オーディエンスに笑いを届けろとおっしゃっておりました
安城姉妹は、困惑気味に答える
わたくし、闘って笑いを生むということは今1つ、よく判らないのですが
はいわたくしたち安城流拳法の伝承者は戦いとは美しくないといけないと教わって参りましたし
美しき戦士であるわたくしたちに笑いなんてねえ、キヌカ
はい、ミタマお姉様とても戸惑っております
この姉妹は、あのキョーコさんに対してスカイラブ・ハリケーン・ミキサーを仕掛けたのに
あれも美しい闘いだと思っているんだろうか
思っているんだろうなあ
ああ見えて木下さんは、もう何年も様々な現場で闘い続けた歴戦の勇士です
はいあの方は見た目よりも、もっとお年を召していらっしゃいますから
美智その言い方はどうだろう
すっごく若く見えるけれどそれこそ、外見はまだ女学生だけれど
それでも、木下さんは、まだ20代前半だぞ
あなたたちよりも、何十倍も実戦経験が豊富な方よ今は、あの人に従って学んだ方がいいわ
黒森様のおっしゃる通りですあなたたち姉妹は、家の中での鍛錬ばかりで実戦経験に乏しいのですから
ミナホ姉さんと美智の2人に、そう言われる
な、なるほど判りました
では、全て木下さんのご指示のままに致します
ウンとうなずく姉妹
2人とも、タケダシンゲンの格好だから何か、シュールだ
ぶるるるるるっ
トラックが停車した
バタン、バタンと運転席のドアが開く音がする
ガチャ、ガチャ、ガチャリと
トラックの荷室のドアが開く
はーい、ワンブロック前に到着でーす
木下さんと、イーディと天童乙女が顔を出す
尾行は
あすこに居るヨ黄色いレンタカーわナンバーだから、すぐに判ったヨ
イーディは、ニヤリと微笑む
今、電話しているみたいよ仲間を呼ぶ気なんじゃないかしら
天童乙女の言葉に、ミナホ姉さんは
荷室のドアの外に、わざと顔を出し周囲を見る
そっちじゃないって尾行の車は、あっちだよ
指差そうとする天童乙女の手をイーディが、グイッと抑える
ミナホは、尾行車を探しているんじゃナイノネ尾行している連中に、自分の姿を見せているノネ
あたしたちは、猪鹿蝶一郎さんたちも全員捕まえないといけないのよだからこっちに集まって来てもらわないとね
そう言いながら、ミナホ姉さんは携帯電話を取り出す
外に顔を出したままカチャカチャと操作して
あもしもし、あたしよフジ・ミネコです
天童貞男に電話している
取りあえず、上手くいったわ鷹倉神社の娘次女の夜見子って子を香月の屋敷から連れ出せたわええ、今は薬で眠らせてあるわよ後、12時間は目覚めないはずよ
そう言われたヨミは荷室の奥、オレの隣でニコニコ笑っている
それとあんたたちが脱出するための車も用意したわ引っ越し屋のトラックだけど荷室の中に入れば、全員乗れると思うわよえ、何トラックの荷台で集団移動は嫌昔のアングラ劇団みたいだってだって、しょうがないでしょバスなんか借りてきたら、目立ってしょうがないし大体、バスなんてあんたたち運転できないでしょ2トン・トラックなら普通免許でいいんだからさそうよ東京を脱出するまでの辛抱じゃないどうしても我慢できなかったら新横浜あたりで乗り捨てて、新幹線で関西へ帰りなさいよチケット代ってそこまではあたしも面倒見きれないわよっ
脱出するトラックまで、用意してもらっておきながら文句を言うんだ
ホントに自分の立場とか状況とか、全然、見えていないんだな
えーとそうねそれじゃあ、今から20分後20分後にあなたたちの居るカラオケ・ボックスの前に横付けするわ取引は、その時っていうことでいいかしらなあにもっと早く来い無理よこっちも香月セキュリティ・サービスの眼を盗んでやっているんだからさ20分くらい、待ちなさいよ
ミナホ姉さんは電話にそう言う
はーい、それじゃあ20分後に着いたら、また電話するわじゃあねフジ・ミネコでしたぁっ
ミナホ姉さんは、電話を切ると
美智さんちょっと出て来て
美智が、トラックの外に出る
幸い人通りはないわね
木下さんは、オレたちがトラックから降りるところを見られないように、通行人のいないところを選んで車を停めたらしい
つまり見ているのは、あすこにいる人たちだけね
尾行車の中の猪鹿蝶一郎の手下だけ
美智さん、そこに古い交通標識があるでしょ
確かにちょっと折れ曲がっていて、スプレーで落書きされた汚い標識が立っていた
それ、ブッ壊してちょうだい思いっきりね
美智が、ふわっと空中にジャンプすると
服の裾から赤いムチをシュバッと取り出す
ムチの先端は音速を超えるという
しかも、美智のムチの先端には金属の刃が埋め込まれている
ジャキンッッ
交通標識の金属プレートが、バッバッと鮮やかに切り裂かれる
セイッ
美智が、さらにムチを繰り出す
ガッ、ガッ、ガッ
標識の柱が、どんどん削られていく
ラストッ
バムンッ
お、折れた太い金属の柱が
ビュンとムチが奔るッッ
交通標識のプレートは、粉々に切り裂かれ柱は真ん中から、ポキリと折れた
ベコベコベンッ
カラカラカラーンッ
金属の破片がアスファルトの地面に転がる音だけがする
美智はフゥと息を吐くと、ムチをまた服の内側にしまっていく
ありがとう、美智さん
これであの見張りの人たちは猪鹿蝶一郎さんたちが到着するまでは、あたしたちを襲って来ないわ
自分たちだけで仕掛けて大ケガしたくはないものね
そのために美智にデモンストレーションさせたのか
すっげぇな、あんた
天童乙女が、驚いている
わたくしたちならもっと凄いことができますわ
できるであります
安城姉妹は、対抗意識を燃やしている
そうねやりましょー、やりましょーはいはい道具を出して、持って持って
木下さんは、そう言って自分の粉砕フレイルや路上パフォーマンスで使う道具をトラックの外に出していく
ヨッちゃん、あたしたちも
うんアーデルハイトさん
オレは、アーデルハイトさんを見る
アーデルハイトさんは、暗く沈んでいた
大丈夫アーちゃん
寧が、声を掛ける
あ、大丈夫です参りましょう
アーデルハイトさんは、返事をしてくれた
どうして、この子はこの作戦に参加しようと思ったんだろう
主の鳥居さんの指示ではなく自分の意志で
これから出発するという時なのにオレの脳裏にはそんな疑問が浮かんでいた
トラックの荷室って人が乗っちゃいけないんですけれど
演劇の裏方の仕事をしていた時に、閉じ込められたことがあります
まだ一番下っ端だった頃ですね
大道具の搬出の時に
劇場から大道具を搬出して、劇団さんの倉庫に入れに行くんですけれど
運転席に乗れる3人だけでやるのは嫌だからお前も来いと
夜公演が終わってからの搬出なので10時を越えていましたね
電車とかで倉庫に向かったら、間に合わないし
タクシーとかを使う予算は無いからって
舞台監督が怖い人だったのでええ、1人だけ真っ暗な荷室の中に閉じ込められまして
ベニヤのパネルや椅子とかカーペットに挟まれて20~30分ぐらい乗りました
いやー、暗いわ、狭いわ、怖いわ
もう20年くらい前ですから時効でしょうけれど
70年代、80年代のアングラ劇団は本当に、トラックの荷台に乗せられて旅公演していたそうです
それは幌のトラックだったそうですが
天井の鉄の金具にロープを結んで、そのロープをつり革代わりにして
それで20人くらい荷台に乗せられて何時間も
しかも、道中はずっと焼酎の1升瓶を廻し飲みしながらだという
恐ろしい話ですね
904.夜は楽し / ハイ・パフォーマンス
さて、じゃあ各部隊、出撃するよっ
寧がオレたちにそう言う
オレと寧とイーディが、ヨッコイショとトラックの荷室から外に出る
ああ、外はすっかり日が暮れようとしている
街路のあちこちで街灯が点灯していく
いいのかよあたしたちが、このトラックの荷室から出て行くのをあいつらに見られるぜ
降りて来た天童乙女がオレたちを監視している猪鹿蝶一郎の手下たちの車を差す
おいそんなに思いっきり、指を指すな
へーき、へーきあたしたちが何をしようとしているのか、どういう集団なのかとか全然、理解できないだろうからさっ
はいはいはーい、あなたたち荷物、荷物
了解でございます
木下さんと安城ミタマ&キヌカ姉妹が色々な道具の入った風呂敷を背中に背負う
手には長い棒を持って
何か、3人ともタケダ・シンゲンじゃなくてムサシボウ・ベンケイっぽくなっている
こんなの謎の3人組が香月家の邸宅から出て来たトラックから降りてきたら
そりゃ尾行して来た連中は戸惑うはずだ
結局ボスの猪鹿蝶一郎さんが自分の眼で確認するまでは、何も方針が決まらないわよ
わたくしはここに
美智は、スタッとトラックの屋根に登った
おい、そんなところに登ってさ
呆れたように、天童乙女が言う
暴走した若者みたいなタイトルでネットに写真が流されてしまうよっ
ああコンビニの冷凍庫に入っておどけている若者みたいに
トラックの屋根によじ登っている女子中学生として
すでに辺りは暗いですし気配を殺しますから、一般の方たちには気付かれません
今、わたくしがここに登ったのを目撃した敵だけですわたくしが、ここに居ることを知っているのは
美智は交通標識をあっという間にブッ壊すというデモンストレーションをしたばかりだから
向こうの尾行車の中の猪鹿蝶一郎の手下たちはトラックの屋根の上に、ヤバイ子が隠れているとボスや仲間に報告するだろう
このトラックにうかつに近づけなくなる
後ろの扉ロックしないですよだから、気を付けて下さいね
木下さんが、トラックの中に残ったヨミと月子に言った
ヨミが、緊張した顔で答える
オレは月子にそう言った
月子は、ニコッとオレに微笑む
ていかわらず、天童乙女には月子が感知できない状態になっているらしいからそれ以上の会話はしない
大丈夫よ屋根に美智さんがいるし急発進、急停車はしないわ
木下さんも出撃するからこの後のトラックの運転は、ミナホ姉さんがする
寧ゴーサインは、あなたが出しなさい
ミナホ姉さんは、寧に携帯電話を手渡す
これで電話すると会話内容が、各班の人たちに伝わるわ
イーディと木下さんにイヤホンの付いた携帯ラジオのようなものを手渡す
トラックの屋根の上の美智にも手を伸ばして、1つ手渡す
寧と公とアーデルハイトさんはカラオケボックスの中の女の子たちの位置を確認してそれで突入できそうなら、みんなに指示してみんなは、寧の指示が出たらすぐに作戦開始よいいわね
はーい、了解でーす
オーケイネ
はぁ、責任重大だヨッちゃーん
ニコニコ顔の木下さん、無表情のイーディ、ニカッと笑うイーディ
寧は、ギュッとオレを抱き締める
天童乙女さん、アーデルハイトさん、安城さんの姉妹もよろしくお願いするわね
おっ、おーよっ
拝命致しました
そしてミナホ姉さんは、運転席に入る
オレと寧とアーデルハイトさんの偵察班
イーディと天童乙女の裏口潜入班
木下さんと安城姉妹の攪乱路上パフォーマンス班は
それぞれ徒歩で天童貞男たちの潜伏するカラオケボックスへと向かう
ミナホ姉さんと美智、ヨミと月子のトラックは少し遅れて現地に到着することになるだろう
しっかし、ヨッちゃん今回は、月子さんの怖さを思い知っているよね
寧が夜道を歩きながら、オレに言う
だってさ天童乙女さんの心を、完全に掌握しているでしょ
天童乙女とイーディは少し早足で、オレたちの先を歩いている
彼女たちは、カラオケ・ボックスの建物の裏にぐるっと廻り込まないといけないから
ミィちゃんやルリちゃんや鳥居家のお嬢さんたちが居る前では、全然別のそれほどショッキングでない話を天童乙女さんに話させたでしょ
そうだみすずたちの前では
仲間の8人の娘は父親たちに性的な被害は受けていないと言っていた
でも天童乙女は、あれは少し前のことで性的な虐待が始まったのは、半年ぐらい前からだって言ってたよね
だーかーらミィちゃんたちの前では、半年以上前の状況しか話せないように、月子さんが制御していたんだよっ
それは、やっぱり瑠璃子や鳥居さんたちに、セックスに対するネガティブな情報を聞かせたくないから
親に犯されるとか、売春させられるとかああ、ロリコン動画に出演させられている姉妹もいるんだっけ
そんな恐ろしいことが、ゲンジツに存在することをあのお嬢様たちには知って欲しくないから
ヨッちゃんがそう思っているからだよ
ヨッちゃんの希望通りに月子さんは、してくれているんだよ巫女の力だって、前は思いっきり使っていたでしょ今みたいに相手の心を壊さないように慎重に操作しているのはさヨッちゃんが怖がっているからだよ
オレは後ろを振り向く
銀色のアルミのトラックの荷室もちろん、月子の姿は見えない
だから、怖いんだよ月子さんはあの人、ヨッちゃんのためならホントに何でもすると思うよ
オレが頭の中で、ちょっと考えただけで
そう例えば、ヨッちゃんが頭の中で、こんなクズ人間、死んじゃえばいいんだなんて思ったら頭の中でだよ口に出してそう言わないとしてもそう考えちゃったらさ
ヨッちゃんが何かする前にクズの人は突然、自殺しちゃったりするかもしれないよ
月子が巫女の力で、そいつを自死に追い込む
まあ、悪くすればね逆に、ヨッちゃんが可愛い女の子を見てさほんのちょっとでもセックスしたいなあとか思っちゃったら
月子によってオレとセックスしないといけないと思い込まされる
まあ、仕方ないんだけれどね今の月子さんにとっては、ヨッちゃんは生きる目的そのものなんだから
鷹倉神社の巫女を継ぐったって巫女は、ここ百年近くずっと関西のヤクザたちのオモチャにされていたわけだしさこれからの巫女は、何をどうしていくべきなのか月子さんにもビジョンは無いんだよ
でも天童乙女の仲間の女の子たちが、心に傷を負っていたら癒やしてあげるのは巫女の仕事だとか、言ってたよね
それもヨッちゃんがの心を読んだんだよ
もし、ヤクザの娘の8人の子がツライ思いをしていたら助けてあげたいと思っているのは、ヨッちゃんでしょ
それもオレか
月子さん自身が、本当はヤクザの娘さんたちのことをどう考えているかはあたしには判らないよ
そして寧はアーデルハイトさんを見る
アーちゃんも本当に自分の意志で、この作戦に参加したのっ
どう、自覚はあるもしかして月子さんが、戦闘要員が足りないと思って、アーちゃんに自分から参加させたとかないよね
寧も鳥居さんの警護役であり、この作戦には本来何の関係も無いアーデルハイトさんが、自分から参加を申し出たことを不思議に思っているらしい
わたくしは誰の意志の力にも左右されておりません
アーデルハイトさんはキッパリと答えた
寧はアーデルハイトさんの反応を見る
本心からそう言っているのか月子の力でそう思い込まされているのかをチェックしようとしているのだろう
わたくしにはこの作戦に参加する理由がございますから
アーデルハイトさんの眼は自分の心の底から思いを語る力と光があった
どんな理由
いや、もちろん言いたくなかったら、言わなくてもいいけれど
わたくしも売春窟の生まれなんです
売春窟ヨーロッパの
わたくしも、幸運を拾わなければ今でもあの売春靴の中でもがき苦しんでいたと思います
アーデルハイトさんが、13歳で警護人のアカデミーを卒業するまでには色々なことがあったらしい
わたくしの父はわたくしと母を捨てましたからだから、わたくしは自分の娘を苦しめるような父親が許せないのです
拳をギュッと握りしめて、ブルルッと震える
天童貞男たちが、娘たちを支配し苦しめているという話に怒りが込み上げてしまったんだ
判った信用するよ、アーデルハイトさん
オレは、彼女にそう告げる
でも作戦の間は、絶対に勝手なことはしないでくれよ全員の連携が大切なんだから
うつむいて、そう答えるけれど
頭に血が昇ったら我を忘れて、暴れ出したりしないだろうか
ヨッちゃんそんな顔しないのっミナホお姉ちゃんが言ってたでしょスピード勝負だって
寧がオレの腕をギュッと抱き締める
ヨッちゃんが今悩んでいるようなことはミナホお姉ちゃんだって、とっくに想定しているはずだし
そうかミナホ姉さんが、アーデルハイトさんをオレたちと組ませたのなら
心配なことは、何とかできるという算段ができているはずなんだ
月子さんも、ミナホお姉ちゃんには力を使っていないから
だって、ヨッちゃん月子さんは、こういうことの作戦立案とかはできないじゃない専門外なんだから無理にミナホお姉ちゃんの心を操作して歪な作戦になっちゃったら、ヨッちゃんやあたしたち全体が危険でしょそんな危ないことはしないよ月子さんてそういうところは、とってもクレバーだから
ま、いいやアーデルハイトさん、寧と手を繋いで
びっくり顔で、オレを見る
いや、今からの偵察で一応、仲良し3人組のフリをしていくんだからさ今から慣れておいた方がいいよ
あっ、そうだねアーちゃんだけ、あたしたちよりも身体が離れているよ親しい友達なんだから、もっと身体を寄せ合っていないと敵に不審に思われちゃうよ
何なら、ヤッちゃんじゃなくてオレと手を繋ぐ
躊躇っているアーデルハイトさん、そう言うと
いえっ、こちらの方と
ガシッと、寧と手を繋ぐ
オレが嫌いとか同性愛嗜好があるとか
そういう反応とは違うな
これは処女なんだな、この子は
オレは、そう感じた
ヨッちゃん、ちょっとしばらく英語で喋っててもいい
アーちゃんは英語は母国語じゃないかもしれないけれどでも、翔お姉さんと同じアカデミーに居たのなら、英語は話せるでしょ
えっとなぜ、英語なのです
アーデルハイトさんは、寧に尋ねる
ヨッちゃんに、あたしたちの会話の内容を教えたくないからだよっ
そして、それからは
物凄く早くて流暢な英語に切り替える
アーデルハイトさんも、必死で英語で話している
オレには時々、聞こえるSureとかRealyなんかしか判らない
そのまま寧が英語でワーッと喋って
アーデルハイトさんが、ぽつぽつ答える会話が続いていた
でもオレは知っている
こんな会話でも続けていけば、少しずつ仲良くなっていくということを
ミナホ姉さんが、アーデルハイトさんをオレたちの組に入れたのは
寧なら少しずつ、アーデルハイトさんの心の壁を崩していけると思ったからかもしれない
天童貞男たちの潜伏しているカラオケ・ボックスはそこそこ人通りの多いバス通りに面していた
通行人が途切れない
ああ、すぐ向こうが駅なんだな
空はすっかり暗くなっていたが街の灯りで、結構明るい
ただし、カラオケボックスは臨時休業の札が出され、看板なんかを照らすライトも切られている
その店の前だけ少し暗い
どういうわけだか、そのカラオケ店の前の街灯も消えたままになっている
薄暗さのせいで、通行人たちはカラオケ店に自然と近付かなくなっている
おっし、イーディと天童さんは裏に廻ったねっじゃあ、木下さんたちスタートしてっ
寧がさっき手渡された携帯に模した無線機で、指示を出す
どんでんどんでんどんでんどん
たったかたー、たたたっ、たったかたーっ
大きく口で出囃子を叫びながらシンゲンの衣装を着た安城姉妹が、カラオケ店の方へ向かって行く
わざと店の入り口を数メートル外した位置に陣地を張る
おいしょっ
こらしょっ
背中に背負っていた風呂敷をどすんと地面に下ろす
ピカッと突然、消えていたはずの街灯が点く
ああ、翔姉ちゃんか
ここだけわざと暗くしていたのは香月セキュリティ・サービスのしわざだったんだ
何あの子たち
急に明るくなった場所に現れた異形の女の子、2人
通行人たちの興味を惹く
やあやあ、遠からん者はこっちに来て下さい
やあやあ、近からん者は寄ってらっしゃい見てらっしゃいっ
古人曰く虎穴に入らずんば虎児を得ず
入らばんば、ラバンババランバ、ランババラバラ
姉妹は、3メートルはある長い棒を槍のように片手に持ち胸を張って、観衆たちに叫ぶ
見よ、我が技
そして、驚けイヤァァァッ
はーい、行くわよーっ
いつの間にか、2人の背後に回った木下さんが持って来た荷物の中から、大きな円盤状のモノを取り出す
っていうか円盤そのものというか
あれはお皿陶器の
はい、よいしょっとっ
木下さんが、ひょいっとそのお皿を空中に投げる
せいやっ
それをミタマさんが3メートルの棒の先端で、受けとめるっ
はーい、そっちも
ばっちこーいっ
キヌカさんも、フワッと宙高く舞い上がったお皿を棒の先で捕らえる
あら、よっと
ちょいなちょいなっ
さ皿回しか
うわわわ、凄―い
あの子たち上手ね
何かのテレビ番組の収録とかか
通行人たちが足を止めて安城姉妹の皿回しを眺めていく
はーい、続いて2本目ぇ
木下さんが、姉妹にもう一本、棒を手渡す
いっくよーっ
はぃぃぃっ
どんとこーい
木下さんが、同時に2枚の皿を空中に投げると
安城姉妹は、それぞれ空いている方の棒の先で皿を受けとめ、廻す
これで左右両方の手にそれぞれ棒を掴んで、皿を廻している
器用だなあ
うんこういうのをやっている演芸の家の子なのかな
ミタマさんは美人だしキヌカさんは、可愛いから
皿回ししている姿も、妙に様になっている
ただ、表情が固いよなあ2人とも
まだ子供みたいだから、仕方ないんじゃねーの
うん無表情なんだよなあ
姉妹とも
あっちの皿を投げてたお姉さんは、あんなに愛嬌があるのに
木下さんはいつも通りのニッコニコ顔だ
はいはいはーいここからが、凄いんですよーっ
大きな声で、観衆たちに叫ぶ
えー、まさか口でもう一本、棒を咥えて3枚目のお皿を廻すとか
お調子者っぽい男が、木下さんに言った
ザンネーンっもっと凄いんですよおっさぁっ、お二人さーんっ
木下さんが、姉妹に声を掛ける
行くぞっ、お姉様っ
いらっしゃい、キヌカ
キヌカさんは、両手で皿回しをしたままタタタと木下さんの方へ向かって走る
何をするつもりだ
オッケイでっすっ
木下さんは身体を屈める
その眼でしかと見よトオオオッ
キヌカさんが、木下さんの前で大きくジャンプしたっ
木下さんは、キヌカさんの身体を下から空中へポーンと跳ね上げるッ
もちろん、キヌカさんの廻しているお皿も高い空へ
ひっさーつ美少女姉妹合体
グランド・クロースッッ
そのまま高く飛び上がったキヌカさんは
ストッとミタマさんの頭巾の上に、降り立った
はいはいはーいっ
そのまま、ミタマさんの頭上で宙に飛んだお皿も、ストッ、ストッっと軽く受けとめる
ああ両手で皿回しする姉の頭の上で
妹も、両手に棒を握って皿を廻し続けている
我ら姉妹の力恐れ入ったか
いったか、いったか
観衆を睨み付ける安城姉妹
周囲からは、大きな歓声が起こった
はーい、これでこの子たちとわたくしギャラはおんなじなんですよーっ
木下さんが、そんなギャグを飛ばす
第一段階完了あたしたち、突入するからミナホお姉ちゃん、イーディ、ミッちゃんよろしくねっ
寧が、通信機にそう言う
これだけ通行人の注意を安城姉妹が惹き付けてくれていたら
カラオケボックスの中で多少の騒ぎがあっても、誰も気付かないだろう
ヨッちゃん行くよ
アーちゃんも
もうっ、そんな緊張感漂わせていたらダメっ笑うのっ
ヨッちゃん、アーちゃんのお尻を揉んでっ
ビクッと震えるアーデルハイトさん
はい、身体の固さが取れたっ行くよんっ
そのまま寧は、アーデルハイトさんの手を引っ張る
オレも二人を追ってカラオケボックスの店内へと向かう
家に帰ってきたらいかにも怪しいセールスらしい人が来ていて、父が相手をしている
このままではいけないと思い
あの何ですか
えー、あのわたくし、こういう者ですが(チラッと胸のネームプレートを見せるだけ、よく判らない)実は、こちらの地域のサービスが変更になりまして
何のサービスですか
えっとこちらのお宅は、A社の光回線を入れていただいていると思うんですけれど今度、新しいサービスがスタート致しまして、従来よりも月々の費用がグンと安くなります
安くなる
はい、今、お使いになっていらっしゃるルーターを新しいモノに交換していただいてお時間は全然変わりませんあと、変更の書類をいただくだけで安くなります
変更の書類
何か嫌な感じがした
もしかして契約内容の変更とか、今までの契約を打ち切って、新規に再契約しろとかそういうのですか
まあ、平たく言うとそういうことなんですけれど
ここまでの間セールスマンは、チラチラと資料を私に見せるだけで
こっちにパンフレットとかを渡してくれません
いや、あの何かよく判らないんですけれど
え、何が判らないんですか月々の費用が安くなるんですよ
あなたあの、本当にA社の方ですか
いえ、わたくしはB社の者ですが
いや、最初にそう名乗りましたが、ほら
と、あの小さなネームプレートを見せる
いや、こっちにはよく伝わっていませんでしたから
つまり、うちは今、A社の光回線を使っていますけれどそれをB社に切り替えろというお話ですか
はいまあ、そういうことになります
でも、ほらうちの方がホント、A社さんよりも安くなりますから
何でライバル企業の人が私の家とA社の契約内容を知っているんだよ
あの、帰って下さい
えー、どうしてです安くなるんですよ
済みません個人的にあなたのことが信頼できないんで、帰って下さい
そう言ってドアを閉めました
ずっと見ていた父は
最初から最後まで今の人は何が言いたいのか、1つも判らなかったよ
うん、わざと判りにくく話して強引に契約させようとしていたんだよ
いやもしかしたらB社に切り替えた方が安くなるのかもしれないけれど
人を騙しに掛かっている人は信用できないです
905.夜は楽し / うす
はいはいはーい、みなさん、こんばんわーっ毎度、お騒がせしておりまーすっ
夜のバス通り
タケダシンゲンの格好をしている安城姉妹が上下に重なって見事な皿回しの妙技を披露している前で
木下さんが、ショーの司会者のように、集まって来たヤジウマたちに挨拶する
わたくしたちは、日本の伝統と文化を守る曲芸バカ一代その名も、姉妹拳CHARGEマンとASUKA・ラングレイでーすっ
ええっとしんげんずじゃなかったのか
えー、あちらの姉妹のただ今、下になっております美少女がシスター(CHARGEマン)ケンそして、姉の頭の上に乗っております小柄な美少女がシスター(ASUKA)ケンでございますっ
何で、姉妹とも名前がケンなんだ
そして、わたくしがユニット・リーダーお願い、守護神ペガサス、みんなの夢を守ってでお馴染みのシスター(ドラゴンバスター)ラングレイでございますっ
木下さんの声に、寧が
そ、そうきたかさすが、元バンバルビーあなどれないっ
何か全部、元ネタがあるんだろうけれど、オレにはよく判らない
はーい、お皿はそろそろいいわよーっ
木下さんことシスター・ラングレイの指示に
あらはぁっ
ミタマさんとキヌカさんは、長い棒の先の大きな陶器の皿を、ポーンと天高く投げ上げる
姉妹がそれぞれ左右の手で皿を廻していたから合計4枚のお皿が、クルルルンと空に舞い落下してくるっ
うわっ、あぶなっ
観衆たちは、ハッ息を呑むが
はいはいはーい、回収しまーすっ
木下さんが、パパパっと軽くジャンプして
シュパパパっと、4枚のお皿を掴んでいく
うわっ、すげーっ
ああ、あのお姉さんも曲芸師なんだな
しっかし、みんな美人だなあ
すっかり観衆の視線は、3人に注がれている
はーい、お皿に続きまして今度は、和傘の上で鞠を廻しまーす
木下さんが、ミタマさんの頭の上に直立しているキヌカさんに和傘を投げ上げる
はいやっ
格好良く傘を掴みポーズするキヌカさん
はーい、鞠もいくわよーっ
腰に手を当てて、直立不動のミタマさんの上でキヌカさんが、投げ上げられた鞠を器用に廻していく
最初は鞠、次はマス最後は、自転車の車輪を廻す予定でーす
はいやーっ
3人ともプロの曲芸の人にしか見えない
中国なんかの気功とかの人と同じなんだね
武術がさスポーツとしての格闘技に変化できなかった場合にさ、世間の人にアピールするために見せ物的な側面を持っちゃうことがあるんだよ
見せ物
うんだって、自分たちの武術の凄さを伝えるために、一々、道場破りとかしてらんないでしょそんなことしたら、犯罪者として捕まっちゃうだけだもんだからさ、市場なんかで見せ物的なパフォーマンスをするんだよ木の棒で殴られても痛くないとかさ子供用のTシャツを身体を縮めて着て、筋肉の張りだけで一瞬で破るとか腹筋をかためて、お腹の上に車を走らせるとか
ああ、テレビなんかで観たことがある
武術を凄さを伝えるためのパフォーマンスなのに、そのうち、見せ物として観衆からお金を貰うのが目的になってっちゃうんだけれど安城さんの家の拳法も古そうだから江戸時代ぐらいには、ああやって曲芸パフォーマンスをやっていたんだと思うよ
ミタマさんもキヌカさんも、全く、迷いがなくやっているもんな
見せ物パフォーマンスも、流派の大切な伝統として徹底して、教え込まれているんだ
しかも、木下さんのハチャメチャなMCが、姉妹の曲芸をセンセーショナルに煽っているし
観衆たちはどんどん集まって来ている
来た、ミナホお姉ちゃんのトラック
寧がミナホ姉さんの運転するトラックを視認する
その後ろから、例の尾行車いや、1台じゃない
のろのろと走るトラックを3台の車が追って来ている
おそらくあの中にヤクザの幹部、猪鹿蝶一郎も乗って来ているはずだ
現場で、手下たちに指示をするために
作戦、開始するよっ偵察班突入しまーす
寧が、携帯に模した通信に告げる
いくよ、ヨッちゃんアーちゃん
アーデルハイトさんが、ウンと小さくうなずいた
オレたちは天童貞男たちのヤクザ・グループと8人の女の子が居る
カラオケボックスカサンドラ・クロスへ
こんばんわーっ
寧が、明るい声で店のガラスのドアを大きく開ける
勢いよく
そのまま、ガラスのドアが開きっぱなしになるように
な、何じゃ
受付のロビーには男のヤクザ3人と派手なオバサンが1人居た
見張りなのかと思ったけれど
みんな、店の中からガラス・ドア越しに、安城姉妹たちの曲芸パフォーマンスを見ていたようだ
えっと予約していたハラダですけれどあれっ、お店の人は
寧が、不思議そうにそう言う
店のモンはおらんわっ今日は、臨時休業らしいぞほら、帰れ、帰れっ
オッサン・ヤクザの1人が言う
えー、そんなの困るよ予約していたんだからさっホントに誰もいないのっ
寧はロビー奥の廊下を覗き込む
おらん、ちょーたら、おらんのじゃあいっ
ほら、帰れ帰れっ
そういう男のヤクザ2人に対して
おいおい、待てカラオケの機械は使えるんだからよ、このお嬢ちゃんたちに遊ばしてやってもいいんじゃねぇか
ヒゲのヤクザが寧とアーデルハイトさんをジロジロ見て言う
でもアニキ
よく見たら可愛い嬢ちゃんたちじゃねぇか小僧はいらねーけどよ
学生服のオレのことは無視らしい
ちょっと、ナカヤマさーんまたロリコン病なの
ゲバいオバサンが、そう言う
ていうことは、このヒゲ・ヤクザはナカヤマ・ミホ太郎か
何だよロリコンじゃねーよこんな良いケツとパイオツしている姉ちゃんにロリコンは失礼だろうよ
下碑た笑いで、寧を見ている
おいおい、どうしたんだ何があった
廊下の手前の部屋から紫のシャツの胸元を大きく開けたオッサンが出て来る
短く刈り込んだ角刈り頭で夜なのにティアドロップ型のサングラスをしていた
胸元にはブッ太い金の鎖が、ブラブラ揺れている
予約していたハラダですけどっお店の人はいないのっ
大きな声で寧がやって来るオッサンに言う
予約って何の予約だぁっ
カラオケ屋さんなんだからカラオケの予約に決まっているでしょっ
寧がそう言い返すが
そんなのは知らんわっとっとと帰れっ
帰れって帰れないよっあたしたち、ちゃんと予約していたんだからさっ
カラオケ屋なんて、他にもあんだろ他の店へ行け
だってここでカラオケするって、みんなと約束しちゃっているんだよっあたしたち、予約時間よりちょっと早く着いちゃっただけだから
寧の言葉にオトコは
何だと後、何人来るんだ
えーと、イーちゃんと、オーちゃんと、ミッちゃんととりあえず3人かな
裏からイーディと天童乙女
表から美智
あー、後どれぐらいでみんな集まるんだ
えっと10分以内には来ると思うよ
どうしたんすか天童サン
ヤクザの一人がオトコに言う
やっぱり、この角刈りサングラスが天童貞男か
バーカ、オメェオレたちが、こっから出て行くところを見られちゃマズイだろ
天童貞男は、手下に言う
いや、オレは別に見られたっていいですけれど
お前のことなんかどーでもいいあっちの部屋の
天童貞男は廊下の奥の部屋を見る
お前たちが、よってたかって乗り回すからブッ壊れちまったんじゃねぇか
乗り回す
壊した
あんな状態を見られちゃマズイだろ
ヤクザたちが犯している2人の娘のことか
おう、姉ちゃん悪いんだけどよー、とにかくこの店はダメなんだわだからダチに電話してよ、他の店に行ってくれよ
天童貞男は、寧にそう言う
えー、何それぇ予約してるんだよ、あたしたち
そんなの、おいらたちにに言われても困るわっ
そうそう店の人間がいなくなっちまっているんだからよ
天童の手下たちが、そう言う
そうそう、オレたちだって店の奥から勝手にビールを探し出して、飲んでんだから
バカッ、そう言う話をすんなっ
天童貞男が、手と他の頭をゴツンと殴る
ホントバカねお嬢さんアタシたちは、ここのお店のオーナーのお友達なのよだから、そういうことをしても怒られないってだけだからね
ケバいオバサンが、ニヤニヤ笑ってそう言う
しょうがないなあちょっと、みんなにメールしてみるねっ
寧はカチャカチャと携帯をイジる
天童さんいっそのこと、こいつらも連れてくってのはどうですか
ヒゲのヤクザが、天童貞男に言う
みんな園子たちにも、そろそろ飽きてきちまったみたいですし
寧とアーデルハイトさんを狙っているのか
バーカ、そこまでヤバイ橋を渡れるかよ
天童は言う
えー、ダメすか
あったりメーだろ
でもどうせ、ベッソー行きになんのは判ってんですから
別荘行きは刑務所行きってことか
なるべく、デッカイことをやった方が香月を陥れるには、いいんじゃねぇですか
寧やアーデルハイトさんを誘拐して、レイプして後で警察に捕まった時に、それも香月家のせいだと主張する
理屈がメチャクチャでも、関西ヤクザの雇った悪徳ジャーナリストが香月家が起こした事件として大きく取り上げ、スキャンダル化する
いやまてよ
おい、何だ外の騒ぎは
天童貞男はわざと話を逸らす
何にしても、ここで今すぐに寧たちを誘拐するのはリスクが大きすぎると判断したんだろう
あ、何か曲芸をやっているヤツラがいるんですわ
そうなのよ、天童さんなかなか上手なのよ
他の連中も話を変える方を選んだ
何かある
おう、そうだなさすが東京だなあれか何つったっけ道端で芸をするのは
なあに路上パフォーマンスのこと
寧が、携帯のキーをカチャカチャやりながら天童貞男に言った
そうそうそれだしかしよ
天童が呟く
あんなこと、この店の近くでやられていたらよ
不意に携帯がチャンチャラ鳴る
天童さんでしょ女のみちは
ああワシだ
天童が電話に出る
ワシじゃああああんたか、フジコ・アビオさんだったかのぉ
フジ・ミネコだっ
つーかミナホ姉さんだ
どうした車はええ、もう着いたどこにあん人だかりのせいで、トラックをカラオケ屋の前に横付けできない
木下さんと安城姉妹が、曲芸パフォーマンスを続けているから
ああ、ワシも今それを心配していたところだほんで道の向かいにトラックを停めるから、そっちまで来いって
バス通りの向かいにミナホ姉さんの運転するトラックが、スススと現れ停車する
トラックの屋根の上の美智は見えない
ぺったりと屋根の上に寝そべって隠れているんだろう
し、しかしよこの人通りの中をワシらがゾロゾロ歩いて行くのか
不満そうに、天童は言う
向かいに停車したトラックからミナホ姉さんが、携帯電話で喋りながら降りてくる
えいや、あんたもリスクを負っていることは判っているがなどうしょうもねぇだろってしかしだな
ミナホ姉さんは、トラックの後ろの扉を開ける中に入り
何だあん
道行く人はみんな、安城姉妹の曲芸に注目している
ミナホ姉さんのトラックを見ているのは天童貞男たちとオレたちぐらいだろう
いやもう一派いるか
後部の扉からミナホ姉さんが、縛られて猿轡をされているヨミを引き出す
ヨミの顔をカラオケ店の方へ向けた
うん確認した確かに鷹倉夜見子だな
ヨミを関西の親分に届ければ天童他貞男たちにとっては、大きな成果となる
そして、今ヨミの姿を、もう一派のヤクザ猪鹿蝶一郎たちも確認したはずだ
えキーは、付けっぱなしにしてあるあんたは、このまま曲芸の観客に紛れ込んで帰るからあのトラックと中身は、オレたちの好きにしろって
ミナホ姉さんは、トラックの扉をロックしないまま軽く閉じると
そのまま、安城姉妹たちを見る観衆の中に入って行く
ちっしゃあねぇな全員で、あのトラックまで行くぞっ
天童は決心したらしい
おい、みんな呼んでこい出発だ
はい、天童さん
ヒゲのヤクザを除いたオトコ2人とケバいオバサンが同時に動いた
1人のオトコは廊下の手前の部屋のドアを開ける
アニキ、姐さん行きますぜ
もう1人は奥から3部屋目をドアを開けた
おう、お前らここを出るぞ
最後に一番奥の部屋のドアをオバサンが開ける
何だいあんた、まだヤってたのかいもう行くよ早く、パンツを履きな
手前がヤクザたち
真ん中が娘たち
奥は園子さんたちが犯されている
全ての部屋のドアが開いた
おう、お前ら悪いが予定変更だお前らにも、ワシらと一緒に付いて来てもらうぜ
天童貞男はオレたちも人質にする計画に変更することにしたらしい
そうこなくっちゃ天童さん
ヒゲの男がポケットから、スッとナイフを取り出す
おい、騒ぐなよ騒いだら、殺すからな
寧が携帯に囁く
天童が、不思議そうな顔をした瞬間
スゥエエイッ
アーデルハイトさんが、ヒゲ男のナイフを蹴り上げるッ
ぶわんっと捲り上がるアーデルハイトさんのスカートから
さらに2発の鋭い蹴りがヒゲのヤクザの頭に炸裂するッッ
天童貞男が、声にならない叫びを上げた頃には
道の向かいのトラックの屋根から美智が飛び降り
シュパパパパっと、凄い勢いでこの店に向かって来る
な、なんじゃあっお、おいっお前ら
天童は表の美智に気を取られている
アーちゃんは、あたしとヨッちゃんのガードだけでいいっ
バコン
ヤクザたちの居る奥の廊下の天井の点検口が、突然開いた
WOWOOOOO
裏口から侵入した、イーディが天井から飛び降りて来る
ななな、何だオメェは
問答無用ネッWOWOO
イーディは、部屋から出て来たヤクザたちを一撃ずつで失神させていく
トゥリャアッ
美智も開けておいたガラスドアから、店内へ飛び込んで来た
遅いヨ
オトコのヤクザたちは、すでにほぼ全員イーディが仕留めている
ち、ちくしょうっ
天童貞男は手下を見捨てて、店の外へ走り出た
もちろん、目指すのはミナホ姉さんが残したトラックだ
あぶなーいっ
木下さんの楽しそうな声と共に
ばみょーんっと
安城キヌカさんが走って来た天童の上に、落下したッ
ムギュッ
だから、あぶないって言ったのにー大丈夫ですかぁ
ニコニコしたまま、キヌカさんの下敷きになっている天童貞男に近付く
わたくしサルカニ合戦のうすですか
キヌカさんは無表情で、そう言った
あ、でも大丈夫みたいですね打ち所が良かったみたいメンゴメンゴ
そう言って木下さんは、片手で天童貞男の襟首を引っ張り上げると
ちょっと、あっちのお店の中で休んでもらいますねぇ大丈夫、大丈夫ちょっとアクシデントが起きちゃいましたから、今日はもうおしまいでーすっみなさん、バイビー
余りにも明るく飄々と言うので観衆は呆然としたまま
つーか、あんなに美人なのにすっげー力持ち
あれも曲芸なのかなあ
まああれだけ平然と言うんだから、大丈夫なんだろうけど
そこへ安城ミタマさんが
見せ物ではないぞさあ、帰れ、帰れ
いや、あんたたった今まで、見せ物をしていただろ
はーいゲットしてきましたーっ
気絶した天童を片手でブラブラさせたまま木下さんがカラオケ店に入って来る
すぐにガラスドアを閉めカーテンも閉ざす
店の前は安城姉妹がガードしていてくれるはずだ
木下さん翔姉ちゃんに連絡して
オレはすぐにそう言う
この店の中に爆弾か毒ガスかとにかく何か仕掛けられているはずだから
さっきのヤクザは言っていたどうせ刑務所に行くことは、決まっているんだからみたいなことを
天童貞男たちは組織の命令なら、どんなことでもすると聞いた
香月家をスキャンダルに陥れるためならそれぐらいのことは、していくはずだ
木下さんが、携帯電話を取り出す
美智、イーディ残りは
廊下と手前の部屋に居たヤクザたちは男女とも、気絶させた
あと2人ネオトコとオンナ
イーディは、ちゃんと数えている
はぁ、はぁ、はぁあんた、早過ぎるよ
裏からの潜入して来た天童乙女がようやく到着する
アンタ、身体がカタいノネソンナンジャ、ダメヨ
普通の人が入り込めないようなところからイーディはさっさと潜り抜けて来たらしい
そっち部屋に女の子たちが居る園子さんは、多分、一番奥の部屋だ
判ったわみんな助けに来たわよ
部屋のドアに向かう天童乙女をイーディが止める
ミチッ
イーディは、美智に目配せする
美智は、うんとうなずいてドアの前へ
Darlingたちのところまで、下がっているネ
イイカラッ
あわ、判ったわよ
早くネ
も、もうっ
オレたちの居るロビーに走って来る天童乙女
眼と耳を塞いで、身体を縮めてアーデルハイトさんも、木下さんも
ほらほら早く
オレと寧はみんなにそう言う
これだけ離れていても結構、衝撃が来るはずだ
急いでっ
オレたちの様子に天童乙女とアーデルハイトさん、木下さんも耐える姿勢になってくれた
ゆっくりと静かに部屋のドアを開ける音がする
きっと、イーディがやっている
中から女の子たちの声が聞こえないのはやはれ、そういうことなんだろう
オレは、ギュッと眼と閉じ耳を押さえる
心月ッッッ
気が爆発する
美智を中心に気の風がブオオオッと吹き荒れるッッ
な、何うぐぅぅっ
はぐうっ
心月初体験の3人にはキツイだろう
気の爆発がおさまったことを確認するとオレは眼を開け、身体を起こす
部屋の中の人間は全員、気絶させました
イーディは心月の余波を食らったのか、廊下に倒れている
美智の精神統一を確実なものにするためには静かにドアを開けるのは、イーディがやるしかなかった
覚悟の上だ
ちょっ、ちょっと
天童乙女がふらつきながら立ち上がる
あたしの仲間に何するんだよっ
もつれる足取りで仲間たちのいる部屋へと向かう
オレも後を追った
あれを見てもおっしゃりますか
美智が、部屋の中を指差す
中には6人の少女たちと、1人の男のヤクザが倒れていた
オトコのヤクザは片手にナイフを持ち腹には
ダイナマイトを使った自爆装置みたいですね
遅れてきた木下さんが中を覗き込みそう言った
爆発物は、用意されていたんだ
もし、香月セキュリティ・サービスが力尽くで、天童貞男たちを捕まえようとしたら自爆テロを起こすつもりだったんだな
天童乙女に毒物を飲んで死ぬ様に指示したように
天童貞男は、自分たちの命も安いものだと思っている
しかしミナホ姉さんからの連絡で
ヨミという手柄を手にして関西へ戻れる可能性ができたから
無理な自爆は止して爆弾だけここにセットして、タイマーで爆発させるつもりだったんだろう
全員、一気に気絶させるしかありませんでした
最後の部屋も何が仕掛けられているか判りません
残るヤクザは1人
今の子は、さるかに合戦を知らないみたいです
というか、話も改変されていて
お祖母さんは死なないで、ケガするだけとか
牛の糞は登場しないとか
さて、そろそろ大徳寺園子の設定を考えよう
せめて、年齢だけでも
さすがに次話には、登場させないといけないので
906.夜は楽し / 制圧
最後の一番奥のドアがゆっくりと開いていく
敵が、自分から外に出て来た
それは野太いオンナの声だった
デ、テメェら、今、何をしやがったんだよっ
ああ、そのオンナはわずかに開いていたドアの隙間から、廊下の様子を監視していて
美智の心月の余波を食らったんだな
オンナは怒りに歪んだ顔だけを、廊下に出す
身構える美智
至近距離で心月を食らったイーディは、まだ動けないで床に倒れたままだ
オレと天童乙女は、廊下の途中
寧と木下さんとアーデルハイトさんは少し離れたロビーに居る
乙女っ、あんた、あたしたちを裏切ったんだねっ
憎しみの眼で、天童乙女を見る
ヒロミさんっ
天童乙女が、思わずそうを口走った
つまりこのオンナが天童貞男グループの謎のオンナ、イワサキ・ヒロミか
もう逃げられないですよぉ大人しくした方がいいんじゃないですかぁ
木下さんが、相変わらずのニコニコ顔でイワサキ・ヒロミにそう言う
ふざけんなっこれを見なよっ
ゆっくりと廊下に出て来るイワサキ・ヒロミ
その胸には隣の部屋に居たオトコのヤクザしと同じ
ダイナマイトを巻いたベストを着ている
半裸の少女を抱きかかえていた
そ、園子
天童乙女が呆然となる
少女は、何度も激しく犯されていたことが明白だった
下半身には何も身に付けておらず髪はぐしゃぐしゃで、心が喪失してしまったかのような呆けた表情をしていた
眼にも生気がない
10メートルは離れているオレたちのところまでぷーんと、汗と精液の匂いが漂ってきた
ヒロミさんあんた、園子に何をしたんだぁっ
天童乙女が叫ぶが
このまま、みんなで爆死するっていう可能性もあったんだオトコたちが最後にイッパツってヤりまくったのさ仕方ないだろ
イワサキ・ヒロミは言う
あんたがいけないなんだよ乙女っあんたが予定通りに香月の屋敷の中で死んでいたら、こんなことにはならなかったんだっ
こいつらの最初の計画では天童乙女が香月家のパーティの途中で変死することで、スキャンダルに陥れるということだった
それが上手くいかないのなら全員で派手に爆死してそれを香月家のせいだという話しにして、スキャンダルに発展させることになっていたのか
とにかく何らかの成果を得ないことには、関西の組織の親分たちに対してメンツが立たない
ミナホ姉さんがヨミを関西へ連れて行くという、別の成果を提案したのは追い込まれたこいつらが無茶なことをしないようにか
こっちに来るんじゃないよっこの子がどうなってもいいのかいっ
イワサキ・ヒロミは意識が朦朧としている半裸の園子さんの首筋に、右手でナイフを突き付けていた
左手には自爆ジャケットの起爆装置のスイッチを握っている
さっきの変な技を使ってもあたしは前に倒れるからねっ倒れた拍子にスイッチは押されるし、この子は死ぬよっ
それ以前に心月を受けた瞬間に、筋肉が強く収縮してしまう恐れがあります
この状況では美智の心月は使えない
しかしそれ以前に
このオバサン死ぬ気だったら、とっくに起爆スイッチを押しているよな
つまり、死ぬ気は無い
今、こんな風に人質を取ってみたけれど
この先、どうするかについては、ノープランなんだ
ひ、ヒロミさんあ、あたしはどうなってもいいからそ、園子は、園子のことは放してやってくれよっ
天童乙女が、オバサン・ヤクザに叫ぶ
冗談じゃないよっ、乙女っ親をバカにしやがって
親
あんたみたいな親を裏切る様な子は、いらないんだよっ
マズい感情が高ぶりすぎている
このままだと、突発的に、起爆装置のスイッチを押したり園子さんの首筋を切り裂いたりしてしまうかもしれない
不意に、木下さんがとぼけた声を出す
お話中のところ失礼致しますがこっちから見てて、アレレって感じたんですけれどぉぉ
人に親切をする時のように
木下さんは、ニッコリと笑って言う
その起爆スイッチコードが爆発物に繋がってないですよ
あ、ホントだ線が繋がってないや
ああ、そうですねそれでは爆発しないですよ
アーデルハイトさんまで
少し離れたロビーから俯瞰して見ている3人が揃って同じことを言う
繋がってないう、嘘だろっ
イワサキ・ヒロミは自分の左手のスイッチから、自爆ジャケットに繋がるコードを眼で確認する
左手を大きく上にあげて自分の脇の下を覗き込む感じで
そして、ギュッとする
ああああっ、ホントに繋がってないじゃないかっっ
コードの端っこはプラプラ宙に揺れていた
動けなかったはずのイーディがババッと飛び起きるっ
何だいっ
イワサキ・ヒロミがイーディを意識した時には美智の赤いムチが、彼女の手のナイフを弾き飛ばしていた
BAWOO
そのまま、イーディの跳び蹴り一発
ギャウッ
イワサキ・ヒロミは、失神するッ
そ、園子ッッ
急いで、彼女の方へ走る天童乙女
もう、大丈夫だよっ園子ぉぉっ
イワサキ・ヒロミから園子さんを引き剥がし、抱き締める
園子あたしだ乙女だよっ園子ぉぉ
必死に園子さんに話し掛ける
おおとめ
ようやく、園子さんは天童乙女を認識する
ああ判るかいあたしだよもう大丈夫だから
し、シゲヨは
シゲヨさんは園子さんと一緒に、ヤクザたちに犯されていたもう1人の女の子の名前だ
コッチの部屋に居るネアア、このコも酷いことになっているヨ
イーディが奥の部屋を確認してそう言う
デモ、大丈夫精神的にダメージを受けているダケで死んではいないネ
シゲヨも大丈夫だよ園子
天童乙女がギュッと園子さんを抱き締める
イーディが、オレに声を掛ける
ヨッちゃんほら
寧がロビーから、オレを手招きする
すぅぅ、はぁぁ
美智が深く呼吸を整えている
オレは、急いでロビーへと戻る
木下さん、もう一発来ますから
アーちゃんもさっきと同じ感じで耐えてねっ
オレと寧は身を屈めて眼と耳を強く塞ぐ
木下さんとアーデルハイトさんも、オレたちに習ったようだ
オトメゴメンネ
イーディの声の後に
心月ッッ
再び美智による気の爆弾が炸裂する
バムゥゥゥゥゥゥッ
気の爆風が吹く
眼を開けると
ああ天童乙女と園子さんも、グッタリと気を失っていた
部屋の中のコもちゃんと気絶しているネ
イーディが、シゲヨさんの様子を確認する
このまま意識があるより気絶しちゃった方が楽になれるからねここから移動させるのも、この方が楽だし
寧がそう言いながら、通信機を取り出す
作戦終了全部終わりっ、問題無しミナホお姉ちゃん、こっちに来て
イーディと美智が、園子さんを抱き締めたまま気絶している天童乙女とイワサキ・ヒロミを見ている
この2人
ソウネ
そこへ、トコトコと木下さんが入って行き
はい多分親子なんだと思いますぅ
親子
天童乙女とイワサキ・ヒロミが
オレとアーデルハイトさんも天童乙女たちが倒れている廊下へ向かう
寧はロビーのガラス・ドアのカーテンを開けてミナホ姉さんたちが来るのを待っている
ホントの血の繋がった親子じゃなくて義理の親子なんでしょうけど
いや、でもイワサキ・ヒロミって同性愛なんじゃなかったか
それで天童乙女とも、同性愛の関係にあったはずだ
両方イケルクチだったんだと思いますよぉほらあっちに倒れている天童貞男さんとと深い関係だったみたいですぅ香月セキュリティ・サービスの関西支部から届いた調査レポートに、そう書いてありましたからいわゆる内縁の妻みたいな感じなんだと思いますぅ
内縁の妻
天童家の父親と娘両方とも、食べちゃってたノネ
そういうオンナなのか
ああ、だから天童乙女は
イワサキ・ヒロミは娘を連れてきていないと言う嘘を吐いたんだ
自分がこのオンナの娘であることを認めたくなくて
オレたちを騙そうとしたんじゃなかったんだな
こんなオンナを母親とは認めたくなくて
それで、心の底の方に思いを沈め込んでいたんだ
まあ、色々あるネ家族のことハ
でも、イーディ何でお前、美智の心月を至近距離で食らって平気なんだ
心月は、広範囲MAP兵器みたいな技だが
自分の味方も、打ち倒してしまうのが弱点だった
工藤流古武術ダカラなのネ
工藤流の奥義は気を反らすことで、気の技を使う者と闘うということでした
美智が、言葉を続けた
そのことを、美智たちは今日の昼間のパーティで、キョーコさんから学んだ
その応用ダヨネ工藤流の気の受け流しの技を使って、心月の気の波動も受け流したノヨ
つまり工藤流を学んだ人間には、心月は効かないってことか
正確には工藤流のような技を学んだヒトナノネ
世界は広い
イーディがお祖母さんから習ったニューオリンズの暗殺教団の秘術だって
工藤流古武術と、とても近かった
気を使う技を発展させていけばいずれは行き着くネ
心月が使えたり、心月が効かない武術者は他にもいる
いやいやいやこんな技が使える人は、世界中探してもそうはないですよぉ
木下さんが言う
デモ心月が無敵ではないということは判ったノネ
はい例えば、ダダドムゥおじ様のような方には、心月は使えないと思います
美智の言う通りあの異次元戦士も、気を受け流すもんな
はい、おじ様は決して、場の空気をお読みにならないですもんねぇ
木下さんが、ニコニコしてそう言った
わたくしは、あのおじ様には大変可愛がっていただいていますが1年に2回ぐらいにしたいですぅおじ様とお話するのはぁ
あのオジサンの方は木下さんのことをもっともっと可愛がりたいと思っているよっ
ムフフッと笑いながら寧がやって来る
もっと可愛がるってどういうことですかぁ
キョトンとする木下さん
ていうか、今はどんな風に可愛がってくれているのっ
寧の質問に、木下さんは
えーと会う度に、お小遣いをくれますちゃんとポチ袋に入れて去年まで、2000円だったんですけれど、今年から2500円になりましたぁ
ああホントに木下さんを、子供扱いしているんだ
何とかなったみたいね
安城さんの姉妹にはトラックの方の警備に行ってもらったわ
ヨミと月子の方は
2人は無事なんだろうか
問題無いわ月子さんがもう一つのグループの方、猪鹿蝶一郎たちを全員捕獲したから
月子が
トラックの中に縛られて、猿轡をされて巫女の力が使えないヨミさんだけを残してあたしと美智さんは、車から離れたでしょ
ミナホ姉さんは安城姉妹の曲芸パフォーマンスの観衆に紛れ込み
美智は、このカラオケボックス店の中へ飛び込んで来た
だから猪鹿蝶一郎さんは、漁夫の利でヨミさんを捕まえようと、みんなしてトラックへ押し掛けて来たわけ
天童たちが来る前にヨミを捕らえてしまおうと
そして、トラックの荷室へ入ってみんな、月子さんの力に支配されちゃったわけ
ああヤクザたちは、月子もトラックの中に居たことは知らなかったから
で月子さんが支配したヤクザを使って、猪鹿蝶一郎さん本人も呼び出して
精神支配しちゃったんだ
そういうことよゴキブリホイホイみたいだったわよヤクザたちが、どんどんトラックに乗り込んで来てみーんな、制圧されちゃったんだから
月子は凄い
頭が切れる上に、度胸もある
落ち着いているしな
で今は
翔さんにお願いして香月セキュリティ・サービスの私服部隊に来て貰っているわヤクザさんたちは監視の下、自分の足で、例の香月セキュリティ・サービスの使っていない施設に行ってもらうからここにも来るわよヤクザたちと女の子たちを別々に運び出すわ女の子たちは、ちゃんと女性警護員が搬送してくれるそうよ今日の昼間のパーティにメイド服を着て、たくさん来てもらっているから人数的にも問題はないでしょうし
あれ、オレが段ボール箱に詰めてトラックに詰め込むっていうのは
いいのかオレ、働かなくて
あなたは、そんなことしなくていいわよ
いや、でも今回は裏の仕事だから、香月セキュリティ・サービスには手伝ってもらわないで全部、オレたちでやるんじゃなかったの
裏のことは黒い森だけで
もういいのよ敵の関係者は、全員、捕まえちゃったんだから表も裏もないのよ
ていうか本当は、表も裏も無いのよ香月セキュリティ・サービスも黒い森も上に居る人間は一緒なんだから
ミナホ姉さんは天童乙女を見る
あれは天童さんに、2つの組織が一体ではないと思い込ませるために言ったことなのよ
裏と表は別だと
ていうか今後も、外の人にはそう思わせないとダメよ2つの組織がどちも、あなたをトップにして成立しているということは知られてはいけないことだから
香月セキュリティ・サービスは、香月家の組織だから本当のトップは、ジッちゃんだ
黒い森は、ミナホ姉さんがボスだけれど香月家と提携しているだけで、傘下ではない
ミナホ姉さんがしている香月セキュリティ・サービスの仕事だって業務を請け負っているだけで、香月セキュリティ・サービスの正社員になったわけではないから
つまり黒い森の犯罪が、世の中にバレたとしても
香月家に飛び火することは無い
そんな犯罪組織と取引しているとは、知らなかったと突っぱねることができる
黒い森が香月家に属していない以上は
しかしゲンジツは
オレたちの家族というものがありその中で、黒い森組と香月セキュリティ・サービス組に分かれているだけだ
オレたちは運命共同体で繋がっている
表の香月セキュリティ・サービスと裏の黒い森を状況によって使い分けているだけだ
そのことは世間にも、他の裏社会の組織にも知られてはいけない
なぜ、それをわたくしが居る場でおっしゃるのですか
アーデルハイトさんが、ミナホ姉さんに言う
だってあなたはもう気付いているでしょ今更、後戻りはできないってことに
クスッと微笑むミナホ姉さん
あなたの大切なお嬢様は全然、気付いていないみたいだったけれどでも、あなたはあのお嬢様よりも鋭敏で頭が良い子のはずよ
香月家の秘密を見せていただいた以上、もはや、逃げ出すことはできないということは判っております
みすず様、瑠璃子様その他の方たちの、あのああいう行為を、その見せていただいたということは
ああいうって
ああ、風呂場でのセックスか
香月家に忠誠を誓わなければ処分されるということなのでございましょう
そんなことナイネツキコが言ってたと思うケレド今日一日ぐらいの記憶ならサクッと消せるネ
そうだよ勘違いしちゃダメだよヨッちゃんたちはさ仲間にしたい子にしか、自分のああいう姿は見せないからねっ
わ、わたくしをあの仕えさせるのではなく
アタシは仲間になれると思うヨアーデルハイトとマリコは
まり子って鳥居さんのことか
オトメは無理かもシレナイ
イーディは、失神している天童乙女を見る
わたくしと天童乙女さんと何が違うと言うのですか
アーデルハイトさんが、尋ねた
INTELLIGENCEヨ
い、いんてりって
インテリジェンス知性ってことネ
イーディは、オレに微笑む
アーデルハイトさんは、頭が良くて天童乙女は、頭が悪いってことか
ソウジャナイヨ頭脳の明晰さとは関係無いネもちろん、身体能力とも関係無いヨ
えっとオレには、よく判らない
他の家族と、仲良く一緒に生きていくための広い視野を持っているかってことなんだと思うよっ
アーデルハイトさんはみんなが話している時に、邪魔にならないように静かに控えているでしょ周りの人たちが、自分には判らない話をしていてもジッと話を聞いて、情報を集めたりそういうのが知性でしょ
オトメは自分の話したいことしか話さないし人の話は聞かないノネ
いやそれは判るけれど
そんなこと言ったら鳥居さんが、一番、自由奔放じゃないか
周りの空気を読まないで話したいときに話すし
聞きたいことは、その場で聞くし
ソレが違うノネ
あの人は計算して、ああ演技していらっしゃいますから
図々しい人の演技をしているだけで本当は繊細な人だと思うよあたしも
あたしなんて、ヨッちゃんたちが話しているのを監視カメラで観ていたからさ、あの子のお芝居はよーく判ったよ
ああ、来たみたいね翔さんの部下の皆さん
ミナホ姉さんがガラスドアの外を見て、そう言った
車だと目立つから私服で歩いて来たらしい
香月家の邸宅の香月セキュリティ・サービスの警備施設から
女の子たちは全員天童乙女さんも含めて、香月セキュリティ・サービスの診療所でお医者さんに診てもらうから
性病にかかっている可能性があるわ天童貞男さんたちがそういう病気を持っているかもしれないでしょ
オトコのヤクザたちは他でもオンナを買ったりしているだろう
その病気が娘たちにも感染している
でもホントに犯されるところまでいってたのは2人だけだろ
園子さんとシゲヨさんだっけ
処女は奪わなかったとしてもフェラチオぐらいさせていたかもしれないわ
天童乙女さんには、毒薬持たせて自分たちは、自爆テロの準備でしょあのヤクザたち、死ぬかもしれないってことになって娘さんたちに無茶なことをしたかもしれないわ
そうだった天童乙女は、約一週間前から、水島家に潜入していた
天童乙女がいない間に園子さんたちの他にも、性的虐待を受けた子がいるかもしれない
性病の中には、キスで感染するものもあるから
全員のチェックが終わるまであなたは女の子たちに触れてはダメよ
オレがもし性病にかかったら
家族のみんなに拡がってしまう
それだけはできない
でもさぁ、あの人たちホントに死ぬ気とかあったのかな
このオバサンが自爆用のジャケット着てたけれど、爆破スイッチのコードは繋がってなかったしさ
イワサキ・ヒロミはオレたちが指摘するまで、そのことに気付かなかった
天童貞男さんたちは組織の命令なら、人を刺したり殺したりするのは恐れないし、それで刑務所へ行くことになっても全然平気っていうのがウリだったでしょ
だから親分の命令なら、何でも聞くっていう風に思われていたのよね周りからも自分たち自身も
自分も
だけど人を傷つけることに躊躇しないっていうことと、自分が死ぬことに躊躇しないっていうことは別だから
人は傷つけられても自分が死ぬのは怖い
きっと、天童さんの仲間の誰かが怖くなって、自爆装置のコードを外したのよそのまんまにしておくと、仲間の誰かが自暴自棄になって勝手にスイッチを押しちゃうんじゃないかって思って
心の準備ができていないのに、いきなりボカンとか嫌でしょ
失礼致しますB班の斉藤です
ガラスドアをごく普通に開けて1人の私服警護員が入って来る
おっ、斉藤さーん待ってましたよー
木下さんが、ニコニコ顔で出迎える
日本の雑誌の黄金期は、90年代だと思う
記事は面白く、写真とレイアウトは素晴らしく、紙質も良かった
色んなコトが学べたし
今は紙質は悪くなり、ページは減った
記事もうーん
80年代の半ば頃のマリークレールの日本版が凄まじいレベルだった
何が凄いって
化粧法と、身の上相談と、セックス記事がそもそも載っていない
そして、例えば映画の特集とかだと
普通は、その映画監督についての紹介から始めるはずなのだが
当時のマリークレールは読者の皆様は、当然、**監督のことはもうご存じでしょうと、基本的な説明は一切しない
映画雑誌よりも、専門的な記事とかが載ってて
半端じゃなくキレキレだった
90年代の頭に、古本屋で必死になってバックナンバーを買った覚えがある
今はサブカル系の雑誌も、ずいぶん廃刊になっているんですよね
907.夜は楽し / 帰宅
お帰りご飯できているよっ
香月家本家の邸宅あの広大な屋敷に戻ってきた
玄関口でマナが、出迎えてくれる
まだでも取りあえず、一山終わった感じだよ
カラオケ屋の方は、香月セキュリティ・サービスに任せて
オレたちは、香月家の本家邸宅に戻って来た
カラオケ店から少し離れた道で、翔姉ちゃんが廻してくれた車に乗って
とにかくこの邸宅の周りにウロツいているヤクザたちは、全員捕獲した
香月セキュリティ・サービスが、屋敷の周囲の監視カメラを全てチェックしているからそれは確実だ
関西の組織から送り込まれて来た連中は全員、抑えた
今度は、捕まえたあいつらを処理しないといけない
お帰り、パパ
お帰りなさいですのっ
真緒ちゃんとアニエスのコンビが、早速、オレに走って来る
あれれヨミちゃんたちは
アニエスが出掛けた時より、人数が減っていることに気付く
ああ、ヨミと月子とミナホ姉さんはまだお仕事だご飯は、後で食べるって
天童貞男のクズ・ヤクザグループとその監視役だった猪鹿蝶一郎の一派
そして天童乙女の仲間のヤクザの娘たち
イーディの打撃や美智の心月で気絶した連中は全員、今は使っていない香月セキュリティ・サービスの旧・研修館へ秘密裏に運ばれる
3人はそっちに付くことになった
ヤクザたちの意識が戻ったら巫女の力で制圧するために
心を読んでまだ何か隠していないか探るという作業もある
ミナホ姉さんは、2人の指示役として残った
ヤクザたちの心から何を読み取るべきかどんな情報に注意するかは、裏社会の情報分析能力のあるミナホ姉さんでないとできない
木下さんも、向こうに残った
オレと一緒に戻って来たのは寧と美智とイーディとアーデルハイトさんと安城姉妹だ
オレも晩ご飯を食べたら、もう1回、外へ行かないといけないんだ
心の調査とそして、ヤクザの娘たちの肉体の診断が終わるまでには時間が掛かる
その間に、みんなと夕食を食べてくるようにミナホ姉さんに言われた
一度、頭をクールダウンさせるために
えーっそうなんですの
うー、つまらないーっ
アニエスと真緒ちゃんはオレに遊んで欲しかったみたいだけれど
ほらほら、我が儘言わないのっ今夜は、遊ぶ相手がいっぱいいるんだから新しい家族と仲良くなる時間にしなさいっ
寧が、笑顔でお姉さんをする
そうヨ、カレンとは仲良くナッタカ
イーディも小さい子たちを、いつも気遣っている
それなら、大分、仲良くなりましたのねぇ
そうだよっ可憐ちゃんとは、もう仲良しだもんねっ
2人の少女は顔を見合わせて微笑み会う
ああルナを置いていったのは正解だったな
真緒ちゃんにアニエスルナとコヨミちゃんそして、可憐さん
年少組がこれだけ集まれば、何とか仲良くなってくれるだろう
パパ疲れてるみたい
うん、お疲れですの
真緒ちゃんとアニエスが、オレの顔を見上げて言う
正直、ちょっとくたびれている
風呂場での連続セックスよりもヤクザとの闘いの方が疲れた
お疲れ様ご飯食べたら、ゆっくり休みなさい
翔姉ちゃんが、廊下の奥から現れる
ああ、そうさせてもらうよ
状況は、ずっと観ていたわ
ああ、監視カメラで
こっちが想定していたよりもハチャメチャな人たちだったわねまさか、爆発物まで用意していたとは
やっぱり理詰めで考えたら、ダメねああいう人たちは、ホント、こっちの考えの斜め上だから危ない目に会わせちゃってごめんなさい
気にしない、気にしないネ何とかなったカラ
はい貴重な体験をさせていただきました
イーディと美智は、そう言う
うん、まぁ問題無しだよあたしたちもイーディとミッちゃんが規格外だから
ヤクザたちも、こんな若い美少女たちが気の技を巧みに操るとは想定していない
というかオレたちみたいなのが、実戦部隊としてやって来るとは思っていなかったろう
攻撃してくるのなら、大人の香月セキュリティ・サービスの正規部隊だと思っていたはずだ
でも、ちょっともどかしいのよねせめて現場にわたくしが立ち会えれば良かったんだけれど
とはいうものの
さすがに、香月セキュリティ・サービスの表の顔である翔姉ちゃんが、現場で陣頭指揮を執るのは目立ちすぎる
それに、今日はジッちゃんが在宅だ
ジッちゃんをここに置いて翔姉ちゃんが外に出れば、それだけで敵の関心を惹く
翔姉ちゃんが、さっきのカラオケボックス店へ向かっていたら
猪鹿蝶一郎たちのグループは、慌てて撤退してしまっただろうし
天童貞男は外に翔姉ちゃんの姿を見たら、破れかぶれになって自爆テロを仕掛けたはずだ
街の人を巻き込むだけよりも香月セキュリティ・サービスの現場責任者も爆死させることができれば
関西の組織の上層部からは、高く評価されるだろうから
香月家に対する嫌がらせとして大成功なだけでなく後で、爆発テロ事件を香月家のせいだと広めるのにも有効的な一手となるのだから
それで敵の動きはどう
天童貞男と猪鹿蝶一郎の2派が潰れたところを狙ってさまさか、また関西の連中が第3の部隊を送り込んで来ているとかは
そういう可能性は無いのか
こちらの心の隙を突いて
それは無いわよ安心して
翔姉ちゃんが、ニコッと笑う
元々、関西から上京してくる向こうの組織ヤクザたちは地元を離れた段階で、全員、捕捉しているわ香月セキュリティ・サービスには、関西支社だってあるんだから
3番目の敵のグループは来ていない
それに麗華も含めて、香月セキュリティ・サービスの最強部隊の人員は、この屋敷の中に温存されたままようちの会社に属しているユーメードコロはね
翔姉ちゃんとレイちゃんに大徳さんたち谷沢チーフも、ここに居る
天童貞男さんとか猪鹿蝶一郎さんたちが、わたくしたちに対し何らかのダメージを与えることができたのなら、次の矢を放つという手もあるけれど先遣部隊が完全に不発に終わった以上、下手な動きはしないわよムダ死にを増やすだけだから
それと関西の組織に近い東京の暴力団組織には、全てこちらから脅しを掛けておいたわ歌晏様のお家も動いて下さったみたい
ああ、桃子姉ちゃんの歌晏家も
名家のお嬢様たちのパーティに、ヤクザがスパイを潜り込ませるような遣り口は許せないだろうしな
ていうか関西の組織が香月家をスキャンダルに陥れるために雇っていたジャーナリストの会社とか、弁護士の事務所とか全て、歌晏様の方で始末して下さったわ
歌晏様は香月家の香月セキュリティ・サービスみたいな実働部隊はお持ちでないから裏の世界には、直接的に力を発揮なさるのよ
歌晏家が懇意にしている裏社会の大物を使って関西のヤクザと繋がりを持った連中を全て処分させたのか
ということだから新規の敵は、もう来ないわ一応、このお屋敷の周囲の警戒レベルはマックスのままにしているけれど
全員捕獲したとはいえあの人たちの処分が終わるまでは、警戒態勢を崩すべきではないということですね
天童グループと猪鹿グループで合計して30人近いですからねこれだけまとまった人数の敵が、すぐ近所に居るんですから
うん気は緩められない
あいつらが、何かのトラブルで全員逃げ出すなんてことだって起きるかもしれないんだから
捕獲した人たちの処理は、なるべく早く済ませたいわ
翔姉ちゃんの言葉は、重い
でも、医療班が血液検査をするのに1時間ちょっともかかるみたいなのよ
血液検査
Darlingオトメの仲間の女のコたちのコトネ
イーディが、オレにそう言う
血液検査というのはあの少女たちが、性病や他の病気に感染していないかどうかのチェックか
もちろん身体の傷なんかも手当てするわよ
翔姉ちゃんは、言葉を選んでくれている
アニエスや真緒ちゃんの前で性的虐待という言葉を出さないように
まあここのお屋敷はさっ、すぐ脇に香月セキュリティ・サービスの施設があるからさっお医者さんや医療設備も充実しているから助かるよねっ
寧が明るい声で、そう言う
香月家の本宅を警護するためだけに中規模のビルが一棟建てられている
警護員だけでなく、医師も常駐している設備が
いつもみたいにさ池田先生の所まで連れて行くとか、ちょっと大変だもんねあの人数じゃさ
トイウカ短時間で血液検査ができるような機器は、個人の医院に置いてないネ
ダカラ、ショウの1時間ちょっともかかるは間違いネ1時間チョットであの人数の血液検査の結果が判るのなら大したモノヨ
池田先生は、個人医院の上に非合法なお医者さんだし
でも、香月セキュリティ・サービスの医療班のおかげで、ヤクザの女の子たちの診察が秘密裏にできる
園子さんとシゲヨさんが親のヤクザたちの慰み者になっていたことも、秘密にすることができるかもしれない
とにかくしばらく、ご飯を食べて休んでいて
翔姉ちゃんは、オレたちにニコッと微笑む
そうそう、ご飯ご飯
マナも、そう言った
あ、そうだそう言えばさ
キョーコ・メッサーさんたちもう、とっくに着いている頃よね
キョーコさんとミス・コーデリアは昼過ぎに関西へ出発した
ジッちゃんの依頼で関西の組織に、今日の報復をするために
ヤクザというのは得意技が嫌がらせだって聞いたネ
デモキョーコなら、どんなヤクザよりも数百倍は、ヒドいことをするネ
うん、そうだと思うあーあ、カワイソウだねっ
キョーコさんたちが暴れているのなら
関西の組織から、オレたちを攻撃する指示はしばらくは出ないな
東京のコトになんて、手を出している余裕はもう無い
あのお話はもうお済みでしょうか
でしょうか
安城ミタマさんとキヌカさんが翔姉ちゃんに話し掛ける
ええ、なあに
翔姉ちゃんが、笑顔で2人を見る
ああ、ギャラのことね
安城姉妹が、オレたちの作戦に参加してくれたのは
主家である鞍馬さんの借金の返済を、少しでも助けたいと思ったからだ
ええ、約束通りちゃんと払うわよ時給1050円に
せ1050円
そんな契約でやっているのか
危険手当を1500円足すわそれにボーナスよね
翔姉ちゃんの言葉に、ミタマさんは
我が妹キヌカは、とっさの機転で敵を1名捕獲しました
ああ、天童貞男を
はい、ギャラクシィ・ヒップ・プレス2回転捻りですっ
き、キヌカさんあれ、そんな名前の技なんだ
判っているわ特別ボーナスとして30万円支払うわそれでどう
ございますっ
ミタマさんとキヌカさんも興奮気味にそう言う
この子たちはずっと名家の鞍馬家の家臣として生きてきたから
世の中の金銭的な相場とかは、全然、判っていないんだ
それで、あのわたくしたちのお嬢様たちにお会いすることはできますか
ますかっ
今度は一転して寂しそうに、翔姉ちゃんに尋ねる
ごめんなさいそれはわたくしではなくて閣下やみすず様たちがお決めになることよ
翔姉ちゃんは、笑顔を崩さずにそう言う
もしかしたら夕食の席に、鞍馬様たちのご姉妹もお呼ばれになられるかもしれないけれどわたくしには、判らないですわ
ますか
ぐったりとうな垂れる安城姉妹
トニカク、ダイニングルームへ行ってみるネ
イーディが2人に言う
わたくしたちもよろしいのですか
ですか
ああみすずや瑠璃子との夕食だから
警護役の自分たちは、参加できないと思っているのか
ヨッちゃん、どうするっくくっ
寧が笑って、オレを見る
たった今、一緒に戦った仲間なんだから一緒にご飯を食べようよ
大丈夫ですよっお二人の分も、ちゃんとありますから
よろよろよろよろしいのですね
ですね
まだ困惑している2人に、イーディが
イイカラ、来るノネ
どうぞこちらです
この香月家の邸宅に詳しい美智が、安城姉妹を先導する
安城姉妹にとっては、美智もイーディも香月家に関わる警護役だから
警護役も呼ばれる夕食会なら、自分たちが付いて行っても良いのではないかと思い直したらしい
さあ、アーちゃんも行こうっ
寧が、ずっと静かだったアーデルハイトさんに言う
どうしたのああ自分のご主人様に会うのが怖いっ
何で、アーデルハイトさんは
鳥居さんに会うのが怖くなるんだ
うーんヨッちゃんはいつでも、どこでも、どんな時でもヨッちゃんのままだから判らないかもねー
ほんの1時間の間に色々なものを見ましたから
アーデルハイトさんは、呟く
1時間てこの屋敷を出て、カラオケ屋で戦って、また帰って来るまで
ホンモノをいっぱい見てアタマをカチ割られてきたのね判るわ
わたくし何もできませんでした
ええ、アーデルハイトさん
いやいやいや、アーデルハイトさんはオレと寧と一緒に、最初に強行偵察に行ってそんで、ヒゲのヤクザが突き付けてきたナイフを蹴飛ばしたじゃないか
バシッと決まった重みと鋭さのある良いキックだった
それだけしかできませんでした
それだけでれば充分じゃないか
違うんだよヨッちゃんアーちゃんはさ、自分は現場でもっと動けて、働けるって思っていたんだよ
ほらアカデミーのライセンスを持っている人だからさっ
その言葉に、アーデルハイトさんはグッと落ち込む
日本は、資格よりも現場経験が優先だっていうのよく判ったでしょ
は、はいわたくし、自分がいかに増長していたか、よく判りました
ちょっと待ってよあの時のアーデルハイトさんは、あれで充分だよオレや寧のガードに専念してくれていて、とても助かったんだから
ああ、美智やイーディ並みに働くことができると自分の中のイメージでは、そう思っていたんだな
グダグダ言ってても仕方無いよ自分が思っているほど動けなかったっていうのなら次は、イメージ通りに戦えるように頑張るしかないんだから
そうね経験することでしか、身に付かないことがあるわ
翔姉ちゃんが、彼女に諭す
あなたは13歳にしては飛び抜けた能力を持っているけれどプロの警護人としては、まだまだよ力もスピードも鋭さもね
反論しようとするアーデルハイトさんに、イーディが
ダメよ、そうやってアタマで考えすぎるノハ
優しい笑顔で、そう言った
アンタは、アタマが良すぎるノネだから今までは、アタマの中のイメージだけで自分はできるって思い込んでたノネそれが、今度はゲンジツのゲンバに出て、アタマの中だけで自分はダメなヤツだったと思い込んでいるヨ
アーデルハイトさんが、イーディを見る
真剣な眼差しで
アンタはさ評価の基準がキョクタンなのネ
評価の基準
アンタの中の世界は全然ダメかミンナが賞賛してくれるくらい凄いの2つだけなのネデモ、世の中にはその2つの真ん中にユル―いとりあえず、オーケイとかまあ、仕方ないけれどアリみたいなフンワリした世界もあるノネ
今日のアンタの仕事は、間違いなく合格ネアンタは、アンタに求められている仕事を、キチンとこなしていたネアレ以上のことができなかった自分はダメだっていうのは、間違っているノネ
アーデルハイトさんは何を苦しんでいるんだ
人より常に秀でていないと自分が不安なのよこの子は
そうやって、他の人たちよりも優れた才能と力を見せることで生き抜いてきた子なのよ
売春窟から脱出して
警護のアカデミー入学して、13才でライセンスを取得したというのは
そ、そうですわわたくしはいつだって、他の人たちよりも強くならなければ這い上がらなければいけないんです
それがさっき圧倒的な、美智とイーディの能力に負けた
いや、アーデルハイトさん本人だけが、負けたと感じている
いや、わたくしよりもお二人の方が能力が高いことは、昼間のパーティの時に判っていましたでも、わたくしはもっと自分は動けるはずだともっともっと能力があるはずだと思っていたのです
最初のヤクザを倒した後残りの連中を全員、美智たちに取られるとは思っていなかったのか
しかも次々と起こるトラブルに対して、常に冷静に対処なさっていって
自爆ジャケットを着たヤクザに心月を食らわせたりあのわけの判らないイワサキ・ヒロミを撃退したり
黒森様たちまで、飄々として状況に平然と対処していらしてドキドキして何もできなくなったのは、わたくしだけで
それは違うよーっあたしたちは今日みたいな修羅場は慣れっこだしさっヨッちゃんは、ああいう時にビビらない病にかかっているだけだからっ
そうよこの人はちょっと壊れているのよ、そういう所の頭の回路が
翔姉ちゃんまで
でも、わたくしはわたくしは
イワサキ・ヒロミが自爆ジャケットを着て現れたことに、アーデルハイトさんはビビッたんだ
明確にこのまま死ぬかもしれないという恐怖を、生まれて初めて感じた
でも、オレたちがノホホンとしていたから
いや、それは違うってオレとヤッちゃんと、美智にイーディに、木下さんだろこのメンバーは、ホントにもう慣れっこなんだよ今日ぐらいのことはさ
違いますっわたくしがダメだったんです戦う意志に欠けていたんです
すると真緒ちゃんが、トコトコとやって来て
お姉ちゃんそういう時は、パパに甘えていいんだよっ
ぬししっ真緒判ってたよパパは、お姉ちゃんは連れて帰って来るけれどもう一人の眼付きの悪いお姉さんは連れて帰って来ないって
眼付きの悪いって天童乙女のことか
アニエスも、判っていましたのっ
アニエスもそう言って、微笑む
パパは可愛い女の子が大好きですけれど可愛いだけじゃダメなんですの
おいおい、何を言い出す
パパは可愛くて優しい子じゃないとダメなんですの
うん、そうだよねえユキノちゃんとかだってイジワルっぽいことを言ったりするけれど、とっても優しいもんねぇ
真緒ちゃんが、そう言う
それでパパは、お姉ちゃんのこと好きだよ
はいですのお姉さんは可愛くて、優しい人ですから
2人が、ニッと笑ってアーデルハイトさんを見る
わたくしが優しい
そんなことはございませんっわたくしは生き抜くために心を鬼にして、たくさんの人たちを蹴落としてきたのですから
だーかーらそういうのは、もういいから
そうそうもういいですのっ
クスクスと真緒ちゃんとアニエスちゃんが笑う
これからはパパとそれから真緒と
そうそう、みんなと一緒なんだから
お姉さんは自分の成長に合わせて、ゆっくりと頑張ればいいんですのっ
そうそうパパが見ていてくれるんだから
寂しい時は、いつでもギューッとしてくれますの
アーデルハイトさんは絶句している
役所に謄本を取りに行く
いや、何かよくは知らないのですが母の店の書類を
前は、倒れる前の父が取りに行ってくれていたらしいので
私どこへ行けば取れるんだ料金は
父うーん、多分、あの辺の駅だ
私あの辺じゃ判らないよ
父じゃあ、一緒に行こう
私だから、何という役所に行くんだ
父お前は忘れた場所は大体覚えている
というので恐る恐る、父と家を出ました
父確か、ここで電車を乗り換える
私うん
父確か、ここの駅だったと思う
父確か、こっちの道だ
そして法務局に着きました
父そうだそうだ確か、ここの3階だ
私証明書なんかの交付は、2階って書いてあるよ
父じゃあ2階だ
父確か、手数料が300円だ
法務局の人600円です
父じゃあ、600円だ
法務局ちなみに手数料じゃないんで、後ろの窓口で600円の収入印紙を買って来て下さい
父じゃあ、買って来なくちゃ
覚えていることと、記憶が曖昧なことがゴチャ混ぜでとても怖いです
まあ無事にもらって来れたので、いいのですが
908.夜は楽し / スープとカツレツとカレーとサラダ
もちろん、強制じゃないわよゆっくり考えていいことだから麗華に、あなたと話をするように言っておいたわ
翔姉ちゃんは、アーデルハイトさんに笑顔で言う
藤宮麗華さんでございますか
驚く、アーデルハイトさん
ええ、昔の麗華は今のあなたに、とってもよく似ていたのよ
昔のオレたちの家族になる前のレイちゃん
あの子は、香月セキュリティ・サービスという組織の中にいながら誰とも共闘できずに孤立していたわ何でも自分1人でやろうとして他人に心を開こうとしなかった
ああ、トップ・エリート警護人なのに英国紳士の男装でピリピリしていて、いつも1人で行動していたよな
だから、いつも精神的に不安定だったわ個人でどれだけ高い能力を持っていても、それではハイレベルの仕事はできないわ
アタシはこのFamilyに入って、ホントに良かったと思っているヨ全部、1人でやらなくていいカラさっきだってDarlingやネイたちが敵の注意を惹いて、アタシが飛び出して、最後はミチが突っ込んでクルお互いが何を考えていて、どう動いて、何をしたらいいのか、ちゃんと判り合っているから、スムーズに動けたのネ
どんなトラブルが起きても、お互いにフォローし合う自信がアルからネテンパったり、トッ散らかったりしないのヨ
それはチームとしての訓練ができているからでは
アーデルハイトさんが、イーディに切り返す
ノンノンノン、Teamでナイのネ、FamilyなのヨFamilyでないとこの連携はできないのネ
何が違うというのですか
カンケイの深さヨアタシたちのFamilyは、運命共同体ダカラ
ニッと、イーディは微笑む
ホントに血が繋がった血族よりも、濃い関係ヨアタシは、Darlingもミチもネイもマナやアニエスやマオのことも、大切ネ自分の命より
イーディは、アニエスと真緒ちゃんの髪を優しく撫でてあげる
なぜです本当の血族でもない人間たちにどうして、そんなに親近感が持てるのですか
アーデルハイトさんの問いにイーディは
ウーン結婚したみたいなコトと同じナンダと思うネ
結婚
ホラ、結婚シタラ血の繋がっていない人たちとfamilyになるネ普通は
血の繋がりはなくても、そこがアタシのHOMEで一緒に暮らしている人は、みんなアタシのfamilyネアタシが愛するべき人たちネ
ああ、その感覚よく判るわ
アタシは正式な結婚はデキナイけれどまあ、それはショーガナイのネアタシは普通のコじゃないカラ
アタシは人殺しを請け負う暗殺教団に生まれて、シカモ、その教団から売り飛ばされたノネ
ギョッとする、アーデルハイトさん
生まれがロクでもないのは、アンタだけじゃないヨアタシも、メチャクチャ、マトモじゃないノネ
でも、今の時代に人が売り飛ばされるなんて
別に珍しいコトじゃナイネルリコだって、Darlingに売り飛ばされたコだし
本当だよ瑠璃子はオレが、ジッちゃんから買い取ったから
3000円で
悪いけれど冗談ではナイのネルリコ本人は、自分が売られた娘だということをよーく判ってイルシあのコをただのお嬢様だと思ったら、大間違いネあのコは、あのコで複雑な環境の中で、色々とツライ思いをして生きてきたんダカラ
香月家本家の娘という人生は決して楽ではない
アタシの話に戻るケレドアタシは売り飛ばされた相手から逃げ出して、Darlingのfamilyになったコなのヨ大正解だったネ今の生活は生きていることが、毎日楽しいモノ
アーデルハイトさんが、おずおずと尋ねる
裏の世界に生まれたアタシは正式な結婚はできないネデモ、この人がアタシの大切なDarling
イーディが、ギュッとオレを抱き締める
あっ、イーディちゃんアニエスもっ
真緒も、真緒もっ
アニエスと真緒ちゃんも、オレの足にしがみついてくる
そして、これがアタシの大切なFamilyミンナの幸せは、アタシの幸せネ今のアタシには、守るモノがある大切にしたいモノじっくりと、育てたいモノが
嬉しそうに微笑む、イーディ
ダカラDarlingの公式のパートナーは、ミスズに譲るけれどデモ、いいのネミスズだって、アタシの大切なfamilyの一員ネミンナI LOVEヨ
アーデルハイトさんは、小さくそう言う
今のあなたがそこそこの能力を持っていることは認めるけれど、でも、今のままならこれ以上は伸びないわ1人のままじゃね
麗華の場合は、それでも香月セキュリティ・サービスという組織に入れたから、まだ良かったけれどあなたの場合は、どこかの組織に属するのも難しいでしょうし
グッとうつむく、アーデルハイトさん
だから、ヨーロッパを離れて日本に来るしかなかったんでしょそして、日本での売り込みも鳥居様のお家以外は成功しなかった
ああヨーロッパは、日本以上にコネ社会だって言ってたっけ
特に警護の仕事は名家の人たちに関わるから
専門のアカデミーを出て、A級ライセンスを持っていてもあなたを受け入れてくれる名家や組織は、ヨーロッパには無かったまあ、レベルを落とせば無いことは無いんだろうけれどそうなると警護会社というよりも裏社会の方に近い組織になっちゃうでしょうしね
13歳の女の子が、安心して所属できるようなところではない
でも、さっきも言ったけれど日本だって、素性の良く判らない子を雇うような名家はないわまあ、鳥居様はたまたま、特別な家だったから、あなたを雇い入れて下さったのよ
名家でないけれど、警護役を連れて来ることが黙認されている鳥居さんだから
鳥居まり子さんは、お祖父さんが名家のさらに名門である狩野家の当主だったから
高貴な血を引いているということで、準・名家のお嬢様として認められている
しかし名家でない鳥居家のお嬢様の警護役のなり手は、今の日本国内の警護役の家系の人たちの中には一人もいなかった
それで、アーデルハイトさんを海外から連れて来るしかなかったわけで
でも、あなたこのまま、鳥居まり子様の警護をずっと続けていくそれはそれで楽しそうだけれどでも、あの方が高校を卒業したら、女の子のお付きの警護役はお役御免になるのよ
名家の令嬢が高校を卒業したら日常生活には、普通に男性の男の警護が付く
同年代の女の子の警護役が付くのは、あくまでも、あの超お嬢様校に通っている間だけのことだ
鳥居家の中でも狩野家の血を引いていらっしゃるのは、鳥居まり子様お一人だけだわ鳥居家では、もう、あなたの仕事はないわよ
鳥居まり子さんしか、準・名家の資格を持つ娘がいないのなら
だからぁ、うちへおいでよおっ
真緒ちゃんが、アーデルハイトさんに言う
真緒たちのうちは楽しいよっうししっ
と、アニエスが
真緒ちゃん、ちょっと耳を塞いでいて下さいですのっ
いいから耳を両手で塞いで、あーって言ってて下さいですのっ
うん、あーっ
真緒ちゃんが、アニエスの指示通り耳を塞いで、あーと声を出す
アニエスの声、聞こえないですの
アニエスの問いに、真緒ちゃんは
あーっうん、聞こえてないよっあーっ
聞こえているじゃないか
アニエスは、ウンとうなずくと鳥居さんに
これは真緒ちゃんには、まだ内緒のことなんですけれど
アニエスたちの家族になるととーっても、いいことがありますのっ
パパがねセックスしてくれますのっお願いしたら、いつでも、どこでも、何回でもしてくれますのっ
とーっても、気持ち良いですのっとろけちゃいますのっしないと損ですのっ
あのアニエス
アーデルハイトさんが、またポカーンとしている
真緒ちゃん、もういいですの
あー、もういいのっ
真緒ちゃんが、耳から手を離す
聞こえなかったですのよね
うん、聞こえなかったぁ真緒が大人になるまでは、知らなーいにしししっ
笑う、真緒ちゃん
真緒ちゃんが大人になるまでではないですのっパパが、真緒ちゃんを大人にしてくれるまでですのっ
あっ、そっか間違えちゃった
もう、真緒ちゃんっ
この天使のように可愛い2人はどうしたらいいんだろうか
まあゆっくり考えなさいさあ、ご飯に行きましょ
あ、そうだった
先行していた安城姉妹たちは、とっくに行ってしまった
うん、急ごう
はーい、お姉さんも行こうっ
まだ困惑したままのアーデルハイトさんの手を、真緒ちゃんは引っ張る
とりあえずダイニングルームへと向かう
おお、やっと来たか
ダイニングルームには、ジッちゃんも来ていた
みすず、瑠璃子、美子さん鳥居さんもいる
ルナとコヨミちゃんに水島可憐さんも
レイちゃんも来ていた
いつもならメイドが居るんだが今日は、克子くんと美子、それにマナくんが作ってくれた料理を、私たちだけで食べることにした
使用人たちは、下がらせているのか
お前、この部屋を見てどう思う
どう思うっていや、凄い豪華だと思うよ
何か、シャンデリアとかあるし
壁には油絵とかも掛かっているし
ジッちゃんが、ニヤッとオレを見る
全体として、12畳ぐらいの部屋だ
真ん中にどーんと大きなテーブルがあって、椅子が並んでいるだけの
前にミナホ姉さんに連れて行って貰った、高級中華料理店の個室によく似ている
うちのお屋敷の食堂よりは狭いよね真ん中のテーブルも大きすぎるしたくさんの人を招いて、パーティとかはできないよね
香月家の本家の邸宅なんだからパーティとかも、やるんだろうけれど
この部屋じゃ無理だよな
ふん、この部屋ではパーティなぞやらんよそういうことをするのは、別に広間がある
ダイニングルームというのは、そのお屋敷の家族が晩ご飯を食べるための部屋なのよ
克子姉が、ニコニコ笑いながらお盆に食器を乗せて、やって来て言った
そうだここは本来は家族だけが使う部屋なんだ家族以外でも親しい人間を招くことはあるがまあ、今日も何人か家族でない人間もいるようだがお前たちの友人ということで許してやろう
鳥居さんとアーデルハイトさん可憐さんのことか
あれ、安城姉妹は
あのヘッポコ戦闘姉妹はオレたちより先に、こっちへ来たはずだけれど
ああ彼女たちは向こうの部屋で食べて貰うわご主人様たちと
零落した鞍馬美里、ありす姉妹を、ジッちゃんと一緒に食事させるわけにはいかない
だから、安城ミタマ&キヌカ姉妹も
心配しないでお夕飯の内容は、あたしたちと同じだから
それよりお前、克子くんの言葉で聞き逃していることがあるぞ
克子くんはここを、どんな部屋だと言った
えっと家族がご飯を食べる部屋だろ
違うよ、お兄ちゃんご飯じゃなくて、晩ご飯だよ
オレたちが到着したから、マナが料理の乗ったワゴンを押して来る
晩ご飯
はい晩ご飯つまりDINNER〈ディナー〉を食べる場所が、DINING ROOM〈ダイニングルーム〉ですわ
美子さんも、料理を運びながら教えてくれた
え、晩ご飯専用の部屋なの朝ご飯は
あちらのモーニングルームでいただきます
よ、美子さんも、モーニングルームって
じゃあ、まさかお昼は、ランチルームですかっ
すると、ジッちゃんを始め部屋の中の女たちが、一斉に笑う
みすずも瑠璃子も鳥居さんも
マナも美子さんも克子姉も
寧に、翔姉ちゃんレイちゃんとルナ
美智とイーディアニエスと真緒ちゃんさえ
パパ、面白いっ
何でヨッちゃんは、そんなことまで真剣なのっ
ああ、オレの無知を笑ったのでなく
オレの大げさな表情が、面白かったのか
笑っていないのは、アーデルハイトさんと可憐さんだけだ
お昼用のお部屋は、特に決まっていないんですだから、ランチルームはないんです
美子さんが、オレにそう言った
私は基本的には、昼間は出掛けているからな
ああ、当主が家で昼食を摂らないのだから専用の部屋は作らないか
覚えておいて下さいね、旦那様これからは他の名家のお宅にお呼ばれすることもあると思いますから
そうか知らない人のお屋敷に行って、勝手にダイニングルームに入ったり
泊めてもらって、翌朝朝食を食べにダイニングへ行こうとしたりしたら、笑われるのか
香月様のご邸宅のように、由緒ある古いお屋敷でないとモーニングとダイニングを分けるようなことは、もうしていないと思いませんわ
鳥居さんが、みすずにそう言う
あら、歌晏様のお宅は
桃子お姉様のお屋敷はわたくし、何度もお泊まりさせていただいているんですけれどそう言えば一度も、ダイニングルームには入ったことがございませんわ
みすずの問いに、鳥居さんは答える
桃子お姉様は歌晏様のご邸宅の中に、ご自分の別邸をお持ちですから
それは、いわゆる離れとかじゃなくて本当に邸宅の中に別のお屋敷があるんだろうな
歌晏様の本邸の方にはわたくしは、入れていただいたことはございません
当主が住む方の邸宅には、鳥居さんは行ったことが無い
ダイニングとモーニングの区別をもうしていないと申し上げたのは狩野家の邸宅のことですわ
鳥居まり子さんは狩野家の血縁者でもある
祖父の家なのだから、泊まったこともあるんだろう
お部屋自体は残っているんでしょうけれど今は、朝食も夕食も同じお部屋で食べていますわ
狩野家は今は、昔の勢いを失って
ジッちゃんたち他の名家から、財団などの名誉職を与えてもらって何とか暮らしているらしい
昔のように、たくさんの使用人を雇ったりできないんだろう
だから、食事の部屋も1つにまとめているのか
ダイニングだけを使っているのかね
ジッちゃんの問いに、鳥居さんは
いいえモーニングの方だけを使っております今はあちらで暮らしている方が少ないですから狭いモーニングルームの方が使いやすいみたいですわ
ジッちゃんは、少し悲しげに呟いた
香月家、歌晏家、狩野家が3大名家だった時代を知っていると
小さな部屋だけを使っているという話は狩野家の没落をイメージさせて、ちょっと生々しいのだろう
はいはい、お喋りはそこまでご飯ですよっ
克子姉が、笑顔で場を和ませる
夕食は、香月家流でなくうちの流儀で作りましたからフルコースとかじゃないわよ
スープと、ミラノ風カツレツと、お豆のカレーです
カレーはマナと美子さんが作りましたつあっ、サラダもあるからねっ
マナが付け加える
お兄様も、お座りになって下さい
瑠璃子がオレに椅子を勧める
ああ、オレ、立ったまんまだった
ていうか、オレの席そこなんだ
みすずの隣の席が、空いていた
どうかなさいました
席順も決まっているんだ
当主であるジッちゃんが、一番良い席なのは当然として
次はみすず
オレはみすずのパートナーだから、その隣
鳥居さんという外部の人が来ているからきちんと順列は守る
だから、準・名家の鳥居さんはお客様ということで、ジッちゃんやみすずに近い上座に席があるけれど
アーデルハイトさんの席は、ずっと下座にある
ああ、翔姉ちゃんやレイちゃんが側に居る
うん、大丈夫だろう
ところで外の方の問題は片付きましたの
料理が運ばれて行く中で
鳥居さんが、いきなり尋ねる
ええ、とりあえず問題を起こしそうな人たちは、全員、捕まえました
オレは詳細をボカして答えた
そうですのハイジ、どうだった
鳥居さんは、アーデルハイトさんに尋ねる
無事に全て終わりました
それでは判らないわあなたは、現地の様子を見てきたんでしょどんな風だったの
皆様が活躍なさりましたわたくしは、自分の未熟を恥じております
ハイジ
あら、そんなことを言うなんてあなたらしくないわねちょっと自信家で、上から目線なところが、ハイジの可愛い所なのに
あれだけ圧倒的な力の違いを見せていただいたら自信なんて吹き飛んでしまいました
ちょっと不機嫌そうに、鳥居さんは言う
旦那様は、この後、またあちらへ戻られるんですわね
みすずが小声でオレに言う
ああ、ミナホ姉さんと、月子とヨミに残ってもらっているからオレも行かないと
御名穂お姉様から、ご指示をいただいております
ミナホ姉さんがみすずに
旦那様にたっぷり家族を感じていただくようにと
家族を感じる
守らなくてはならないものを今一度、感じていただかないといけないそうです
天童貞男たちにしても、猪鹿蝶一郎たちにしても
オレたちは、相当、酷いことをしなくてはいけない
二度と、関西のヤクザたちがみすずや瑠璃子、そして名家のお嬢様たちに手を出さないように
名家の令嬢たちを傷つけようとしたら、こんな目に合わされるんだということを徹底して、伝えなくてはいけない
一罰百戒だ
だけどオレたちが助けた、あのヤクザの娘たちの中には
自分の父親や母親が、悲惨な目に合わされることを嫌がる子もいるだろう
それでも、やらなくてはいけない
オレが、オレの大切な家族を守るために
あの女の子たちに、憎まれることになったとしても
心を鬼にして
旦那様は、お優しいから囚われていた人たちに感情移入してしまうのではないかと、御名穂お姉様は危惧なさっているようです
ずっとあのまま、向こうに居たら
オレが天童乙女と8人のヤクザの娘たちに、同情して
天童貞男たちに厳しい処分が下せなくなるかもしれないから
だから、一度、こっちの邸宅に戻って
家族との夕食時間を持って
心の緊張を、ブレイクできるようにしてくれたんだ
そういえばあの娘は、一緒に戻っては来なかったんですのね
天童乙女のことだ
ああ、向こうで仲間の女の子たちと一緒に居るよ
正確には他のヤクザの娘と一緒に気絶している
こっちには、もう戻って来ないと思うよ
そうですか良かったあれは良くない方でしたから
だって、あの方は結局、一度もわたくしたちや黒森様の眼を真っ直ぐに見て、お話して下さいませんでしたもの
天童乙女はオレたちを、ちゃんと見ていなかった
あの人の頭の中はずーっと、ご自分のお仲間のことばかりでしたから
鳥居さんの言う通りだ
天童乙女は、最初から最後までずっと父親たちに囚われている徳大寺園子さんと仲間の女の子たちの心配しかしていなかった
オレたちの顔は見ていても
頭の中は、ずっとそのことばかり
わたくしも口の悪い方には、いつも自分のことしか考えていないと言われますが
でも、わたくしはいつも、きちんと皆様を見ているつもりですわあの方みたいに、1つのことだけしか見えなくなるようなことはありませんもの
この子は俯瞰して、周りの状況を見ている
図太い性格だけど頭の良い人だ
押しは強いけれど、無理はしない
ああ、アーデルハイトさんと同じなんですね
わたくしが、ハイジと
はい一緒に、現場に出てみてそう感じました
アーデルハイトさんもよく見ている子だ
自己主張が強い時もあるけれど無理に押し通したりはしない
感情的になって、人の話を聞かなくなったりはしない
他人の意見を冷静になって受けとめるだけの強さを持っている
そっか天童乙女には、そういう部分が欠けているのか
どういうことですの旦那様
みすずがオレに尋ねる
いや、天童乙女とは一緒には仕事ができないってことさ
自分の気になることだけに集中して、周りが見えなくなる
人の話が聞けないのなら
だからイーディは天童乙女を置き去りにして、1人で素早く潜入したんだな
イーディと天童乙女は、裏からカラオケボックスの中に潜入するはずだった
そこで、イーディが天童乙女の潜入をサポートしていたら作戦開始に間に合わなかったかもしれない
園子さんの救出に焦れまくっている天童乙女が、先に現場に到着していたらイーディの命令を待たずに、勝手に暴走したかもしれない
月子が、天童乙女にイーディに従うように命じたけれど
イーディが命じる前に、アクションを起こしてしまったらヤクザたちに、警戒させてしまっただろう
だから、イーディは天童乙女を無視して
自分の最大スピードでとっとと先に行動したんだ
正しい判断だ
ていうか、イーディと天童乙女を組ませて裏に配置した、ミナホ姉さんが凄いんだな
ちゃんと判っているんだ
オレもまだまだ未熟だな
未熟で良いんですわゆっくり、学んで参りましょう
はい、一つずつ気付いて、一つずつ学んでいくのが人生の楽しさですわお兄様
みすずと瑠璃子が、そう言ってくれる
オレはダイニングルームをぐるっと見渡す
オレの家族たち
ミナホ姉さんの言う通り、今は家族を感じていよう
やがて、全員の前に料理が並べ終わる
温かくて、美味しそうな匂いの
家族の愛情がいっぱい注がれている晩ご飯が
はーい、みなさんそれでは一緒に
いただきまっす
明るい声が、部屋の中に響く
来年は2015年でエヴァンゲリオンの作品内の現在の年なのだそうです
1999年にセカンドインパクトで、2000年は地獄で
使途襲来で、シンジくんが初号機に乗ったのが2015年
ちなみに、ジェッタ-マルスが生まれたのも、2015年
エヴァは、1995年の作品なのでもう19年前なんですね
ミサトさんが携帯は必需品でしょと、中学生に携帯電話を与えていたのが
当時としては、違和感があったのですけれど
携帯電話を普通の大学生でも使うようになったのは、1996年~97年辺りです
自分も買ったから、よく覚えています
その段階でも、中学生に携帯を与えている親は、そんなにいなかったと思います
今では、当たり前ですからなかなか先見の明があったのだなあと思います でも、シンジくんが聞いているのはDATテープなんですけれど
デジタル・オーディオ・テープ
新劇場版では、父親が若い頃に使っていたものということになったらしいですが
909.夜は楽し / 加入希望
わたくし、桃子お姉様のご命令でこちらに居残りさせていただいて本当に良かったと思いますわ
和やかな夕食の席で
鳥居まり子さんが、みすずたちにそう言う
アーデルハイトさんはああ、レイちゃんや翔姉ちゃんと話しながら食事をしている
うん、今のアーデルハイトさんはプロの警護人であるあの2人でないと、ちゃんと相談はできないと思う
数歳年上の美智やイーディには、反発もあるだろうから素直に相談したりはできないだろうし
その点、翔姉ちゃんたちは大人だから
翔姉ちゃんが、わざわざオレたちを出迎えに来てくれたのもアーデルハイトさんのことが心配だったからだろう
つまり、翔姉ちゃんはアーデルハイトさんの採用に前向きなんだ
他の警護役安城姉妹には、ろくに声を掛けなかったし
天童乙女のことは、無視している
あら、どうしてですの
瑠璃子が、にこやかに鳥居さんに尋ねる
ジッちゃんはニヤニヤして、娘たちの会話を聞いている
わたくし、パーティの席では怒らないで下さいませ香月様たちは、どうしてこんなに余裕の無い方たちなんだろうと不思議に思っていたんですわわたくしは桃子お姉様の大らかなお振る舞いをよく存じ上げておりましたから
歌晏桃子さん桃子姉ちゃんは、香月家と並ぶ大名家、歌晏家の令嬢だ
自信家で何か、物凄く余裕たっぷりな人だった
怖い物知らずというか
鳥居さんは、そんな桃子姉ちゃんに妹分として可愛がられている
でも、それは家風の違いなのですね
あちらの可愛い皆さんを見れば一目瞭然ですわ
鳥居さんは、食卓のテーブルの角の方に固まって座っているアニエスや真緒ちゃんたち、年少組の子たちを見る
お風呂場でも、その後のお部屋でもあの子たち、大きな声で騒ぎ廻ったり、暴れたり、我が儘なことを言ったりは一切しませんでしたわホントに、ビックリしています何て、大人しい子たちなんでしょう
えいつもアニエスを中心に、楽しそうに遊んでいたと思うけれど
つい尋ねてしまった
ええ、いつもにこやかで楽しそうな笑顔をしていらっしゃいますわでも
鳥居家の親戚にも、小さな子供たちがおりますしお正月には、一族全員が集まるようなこともありますわいつも、大変な大騒ぎになります男の子でも女の子でも、あんな風に落ち着いてジッと椅子に座っていたりはしませんわ泣いたり、喚いたり、ケンカしたりオレンジジュースが欲しいとかニンジンは食べたくないとか、大きな声で騒いでいつも、困っていますの
普通の子供たちはもっと、大騒ぎしている
そういう視点で、アニエスたちを見たことはなかったな
やっぱり、鳥居の家は庶民からのし上がったばかりだからなのでしょうかだから、子供たちの躾がなっていないのでしょうか
広いお風呂なんて連れて行ったら多分、みんなで飛び込んだり、お湯を掛け合ったりして大人にイタズラをしたりもしますわメチャクチャになると思いますの
それはうちは、みんな女の子だからじゃないのかな
いいえ、小さい時は男の子も女の子も関係無いですわわたくしの従姉妹には、とんでもない悪戯っ子の女の子が何人もいますわ
オレは親戚付き合いというものを全然してきていないから
そういうのは、よく判らない
大人が真面目な話をしている時でも、平気で邪魔をしに来ますしほんと、自分勝手で我が儘なんですのよ
そう言う鳥居さんに、ジッちゃんは
君も小さい頃は、そういう少女だったのではないかね
鳥居さんはポッと頬を赤らめて
そうですわねそうだったかもしれません
今だって、これだけフリーダムなんだから子供の頃は、もっと
だから思ったんです香月様のお宅では、小さな頃から人に迷惑を掛けない、大きな声で騒がない、大人の邪魔をしないなど小さな子供にきちんとした躾をなさっているんですわねですからみすず様や瑠璃子様は、いつもとっても真剣で、真面目な態度でいらっしゃるんだと思ったんです余裕が無いのではなく、そういう教育を受けてこられたからなんだと理解致しました
確かに、桃子姉ちゃんの余裕たっぷりの大らかさに対して
みすずや瑠璃子は、いつも真面目過ぎる印象があるのかもしれないけれど
君は幾つかの点で勘違いをしておるよ
ジッちゃんが、口を開く
どういうことでございます
聞き返す、鳥居さん
まず香月家にも、困った子供たちはたくさんおるそれも幼稚園児なら我慢も出来るが、高校生や大学生になってなお、躾のなっておらん連中が何人もおる
ああジッちゃんの私塾の連中の中にも
困った性格のやつが何人もいるもんなあ
名家のというより、金持ちの家に生まれた子供を躾けるというのは、なかなか難しいことだと思うよ金に余裕があると、ついつい子供たちを甘やかして育ててしまうからな子供に愛情を注ぐことと、金を惜しみなく与えることの区別のできない親もいるそうして甘やかされて育った子が親になり、今度は自分の子を甘やかすそういう悪い連鎖が起きておるよ私など一族の中の50を過ぎた男のだらしない態度について、その親の70過ぎの老人にお前の息子の躾がなっておらんと苦言を呈すこともある
ジッちゃんは82歳だから
70歳の人を叱るんだ
香月家も子供の躾けについては、鳥居家と変わらないと
ああ、変わらんよそういうことはな
鳥居さんを、ジッちゃんはギロッと見る
しかし、名家でも本家のしかも家の跡継ぎとなるような人間は違う生まれた時からの注目と期待周囲から受けるプレッシャーが圧倒的にな
いつも色んな人から見られているから恥ずかしいことはできなくなる
周囲の人たちの期待に応えようと
真面目で、公明正大な人間だと言う評判を得ないと家の結束を損なうこともあるお家騒動などということになれば、家が没落することになるかもしれんなかなか難しいのだよ特に、日本人は上に立つ人間に対しては点数が辛いからな
ジッちゃんの話を鳥居さんは、ジッと聞いている
歌晏の孫娘が桃子くんだったな彼女が、あんなに鷹揚な性格でいられるのは本家の娘であっても、当主の後継者ではないからだよ
ああ家の跡継ぎになる男の兄弟が居るんだっけ
確か、男の子の方は真面目で、実直な性格だと聞いている
香月家だって瑠璃子の夫を狙っていた、香月操とかは真面目な性格だった
よほどラッキーなことでも起こらない限り、自分が後継者に選ばれるはずがないことを判っている香月仁とかは、テキトーな性格だったし
環境がというより、状況が人の性格を形成するということは、よくあることだ
ジッちゃんは、みすずと瑠璃子を見た
みすずと瑠璃子は同じ世代に嫡男となる子供がいなかったら、女の身でありながら子供の頃から香月家本家の後継者として育てられただから、実直な君から見れば、余裕の無い性格になったというだけだ
いえ、あの失礼を致しました
慌てて頭を下げる鳥居さん
いや、別に構わんよ世間から大らかだ、余裕がある、鷹揚だと言われるより真面目で、公明正大で、実直だと言われる方が何倍も良いみすずたちにとってはな
逆に美子は、この間まで瑠璃子のお付きとして暮らしてきたからな使用人的な性格がなかなか抜けないようだな
美子さんが、祖父に頭を下げる
いや、それはいいのだよほどのことが無い限り美子が、香月家の後継者となることはないのだから
みすずと瑠璃子が行方不明になるとか、死ぬとかしない限りは
美子さんは、ジッちゃんの3人の孫娘の中では一番年上だけれどジッちゃんの亡くなった長男の隠し子であって、正妻の娘ではない
それに、みすずや瑠璃子には一族の中で後押しする勢力がすでにできているけれど急に孫娘と認知された美子さんには、そういう後援者はいない
というか、美子さんはお付きとして、子供の頃から、ずっと瑠璃子と一緒に暮らしてきたのだから
瑠璃子との関係を断ち切って、自ら後継者候補に名乗りを上げるとは誰も思っていない
しかし、一族に甘い顔を見せて、馬鹿なやつを勘違いさせてはならんぞ
一か八かの逆転を狙って、美子さんを担ぎ出そうとする人間を出さない様に
今は近寄って来る者には気を付けろ少しでも怪しいと思った相手とは、交際するな
はい、お祖父様のおっしゃる通りに致します
美子さんは、恭しくジッちゃんに答える
さて、ところでさっき、君の言っていた向こうの幼い子たちのことだが
ジッちゃんは、鳥居さんにアニエスたちを示す
あの子たちの躾ができているのは香月家とは関係が無いあの子らは、黒森家の子だからな
香月様のご意志で躾けていらっしゃるのではないのですか
黒森の家は名家ではないのだから鳥居さんの考え方なら、鳥居家の子供たちよりも
もっとハチャメチャでないといけない
というかうちは別に、躾とかしていないわよね
克子姉が、苦笑して言う
真緒ちゃんもアニエスちゃんも何も言わなくても、あたしたちを困らせるようなことはしないしお手伝いも進んでしてくれるし
うんうちはみんなそうだよねっ誰も我が儘なこと絶対に言わないし
親の背中を見て育っているからだよ
渚くんは自分の花屋を軌道に乗せるまで、随分、苦労したからねそうだろ
真緒ちゃんに、そう言う
うんママはいつも頑張ってて、お疲れさんだから真緒は、頑張れ頑張れって応援してあげないといけないのっだから、我が儘なことはダメママが寝ている時は、静かに起きる時間になったら、優しく起こしてあげるのっ
そんなことを思っていたんだ
でも、今はパパがいるから前より、ずっとママは元気っ真緒も元気みんないるし、楽しいし
でも、騒いじゃダメですのちゃんとパパたちの迷惑にならないように、周りをよく見ていないといけませんのアニエスたちのせいで、パパが他の人に怒られたりしたら可哀相ですから
アニエス真緒ちゃん
アニエスは、ヨッちゃんの背中を見て成長しているんだねっ
あら、アニエスさんだけではありませんわわたくしもお兄様の背中を見つめてお兄様が恥ずかしくない娘であるように心がけております
あたしもそうですお祖父様には申し訳ないんですけれど香月家のために頑張るということでしたら、あたし、もう限界だったと思いますでも旦那様のためならどんなことでも耐えられますし、幾らでも頑張れますわ
ていうかさ、お兄ちゃんのためっていうよりお兄ちゃんの真似をしているんだよアニエスちゃんたちは、あたしもそうだけど
だってお兄ちゃんは、いつも、あたしたちに対して誠実に接してくれてて、嘘吐かなくて、真面目で
そうですわね今日のパーティでも旦那様は、ずっと控え目にしていて下さって
そうね他の男の子ならもっと、自己アピールしたり、大騒ぎしたりしているわよね
マナみすず克子姉
わざと他の名家のお嬢さんたちの前でさミィちゃんに、オレに水を持ってこーいとか命令するとかさ
いや、ヤッちゃん何でオレが、そんなことを
だって天下の香月家のお嬢様のパートナーになったんだから、普通はそれぐらいの増長はするよっおい、みすず酒だ、酒だ、酒を持ってこーいとかそれがどうした、文句があっかーとか
それじゃあバカ男だ
逆にあんな女の子だけのパーティだったんですから、恥ずかしがられてお顔をお見せにならないものですわ
鳥居さんが、オレに微笑む
それなのに黒森様は、パーティの間、ずっとみすず様に付き添っていらっしゃいましたから
ああ、何か言われたな
パーティに来たお嬢様たちに
オレが大人しい男で良かったみたいなことを
そっか、普通の男は自己主張してアピールしまくるか
恥ずかしがって、隠れているのか
でもみすずたちだけにしておくわけにはいかないから
今日のパーティだって、色んなコトがあったんだし
危ないことが起きた時に、ちゃんとオレが守れる位置にいないとさ
本当に、変わっていらっしゃいますのねわたくしの周りには、そういう考え方をなさる男の方は1人もおりませんわ
鳥居さんが、オレに言う
Darlingはライオンなのネ
アタシたち家族という群れの中心に居る一匹のオス・ライオンなのネいつも、群れ全体に危険がないように、アタシたちを見ていてくれるノネアタシやミチは敵と闘う闘士ダケレド闘う相手は何ナノカを見極めてクレルのは、Darlingなのネ
家族の要でございますから
うん結局ヨッちゃん、なんだよねヨッちやんは、ほら絶対に、相手をナメてかからない人だからどんな時でも、真っ直ぐに相手を見てどう対処するか考える人だし楽観的にはならないんだよね今の幸福も一つの間違いで崩壊してしまうような、危ういものでしかないということを身にしみて感じているから
寧が、オレをそう分析する
だから、ヨッちゃんは誰に対しても感謝の気持ちを忘れないし、あたしたちに甘えきったりもしない
恐がりなんだよ
オレは家族のみんなに嫌われることが、すごく怖いからだから嫌われるようなことは、絶対にしたくない
アニエスもそうですのっ
アニエスだってパパに嫌われるのが、一番怖いですのっだからパパに嫌われるようなことは絶対にしませんのいつも、良い子にしてますの可愛い子でいられるように頑張りますのお勉強も頑張ってますの
アニエスはオレに捨てられたら、もう行く所が無いと感じている
だから、オレに嫌われることをそんなにまで恐れていて
そうじゃないよ、兄さん
ルナオレの心を読んだのか
アニエスちゃんは、純粋に兄さんのことが好きなんだよそれは本当
ルナの言葉に、アニエスははいですのっと大きくうなずく
それで家族のみんなに嫌われたら、外に放り出されちゃうんじゃないかって、心の底で怖がっているのは兄さんだよ兄さんのそういうネガティブな気持ちが、アニエスちゃんたちにも伝わって良い子じゃないといけないという緊張感の素になっているんだよね
じゃあやっぱり、オレが悪いのか
オレのネガティブな気持ちが悪影響を与えているのなら
うーん、どうかなあボクはこの緊張感は、あった方が良いと思うよみんなこの家族を守り育てていくために、自分も何かしなくちゃいけないって言うの責任感を感じているんだし
うん、あたしも今のままでいいと思うよ
ヨッちゃんが心の奥底にネガティブな感情を抱えているのは、仕方無いものそれはヨッちゃんが生きてきたことの結果なんだし簡単には治らないことだと思うし
オレのこういう性格が家族のみんなに迷惑を掛けることになったら
それはありませんわ
あたしたち家族のメンバーは色んな性格の人がいますから
そうだよお兄ちゃんはさネガティブっていうか、家族を守っていくことの方に意識が集中しちゃう性格でしょでも、ほらうちの家族には、性格的にイケイケの人もいるし
雪乃のことか
はい最終的にはバランスは取れますわさっき、イーディお姉様とミッチーが言っていた通りに、お兄様は要ですから家族を束ねて下さっているのですから、今のまま重くていいんですわ
私が言うのも何ですが皆さん、黒森さんのことが大好きですし、黒森さんに嫌われたくないって思っています
まだオレの女でないコヨミちゃんが、中立な立場からみんなの心を読んだ結果を教えてくれる
それで、あの今一番、黒森さんに嫌われることを怖がっているのは
月子お姉様なのであの、気にしてあげて下さい
月子がオレに嫌われることを恐れている
はい月子お姉様も黒森さんのこと、ものすごーく好き好きですから
年上で、鷹倉姉妹の中では一番、精神的に安定しているって安心しちゃうのは良くないってことなのね
克子姉が、コヨミちゃんに尋ねる
はい月子お姉様はすぐに無理をしようとするからそれとヨミお姉ちゃんが、割と調子に乗りやすいですから
2人を現場に置いて来たのはマズかったか
心配することはないわ御名穂さんがいるのよ
そうですあの人が月子さんの異変に気付かないはずがないですから
レイちゃんも、そう言ってくれた
うん判ったとにかく、向こうに戻った月子と話してみるよ
コヨミちゃんは、ペコッとオレに頭を下げる
どうだね香月家じゃないだろみーんな、黒森家だ
ジッちゃんが、鳥居さんに言う
いつの間にか、香月家本家の屋台骨はこの小僧に持ってかれたのだよ
クフッと、笑う
ジッちゃんだってオレのジッちゃんだよ
そうだな私もお前に持ち去られた人間の1人だな
面白そうに言う
だが、私はこの家族に希望を感じるよこれだけ才能の溢れた人材が、機動的に助け合っている集団を私は他に知らない
鳥居さんはポカーンとしている
可憐あなたも今日から、あたしたちの家族の一員ですからね
みすずが、改めてテーブルの端に座っていた水島可憐さんに言う
全然心配いらないですのっパパが幸せにしてくれますからっ
アニエスが笑顔で、可憐さんにそう言う
最初だけはちょっと痛いですけれどすぐに、とっても気持ち良くなりますからっ
アニエスそれは
もうそろそろ、覚悟したまえただし、幸せを受け入れる覚悟だがな
ジッちゃんが、可憐さんにそう言う
はい皆様のお話を伺って黒森様も皆様も、とても優しくて良いお方なんだと確信が持てました
おどおどと可憐さんは言う
どうか、よろしくお願い致します
ススッと頭を下げる
大丈夫ですのアニエスも、ルナも、コヨミちゃんもいますの
あたしもいるよっ
マナも、可憐さんに微笑む
みすず、瑠璃子1人ずつにしておくんだぞ
ジッちゃんが、小さな声で言う
それはペットとして飼う女の子の数のことだろう
お前たちはよくてもこいつが大変だ
チラッとオレを見る
あら、旦那様は平気ですわねえ
でも、みすずちゃん限度は決めるべきですわ
じゃあ2人ずつまでということにしましょうか
そう致しましょう
おい2人とも
みすずも瑠璃子も2人ずつペットの女の子を飼うつもりなのか
おい、ちょっと
オレがみすずたちに話し掛けた途端
アーデルハイトさんが座席から立つ
鳥居さんが驚くが
わたくしも仲間に入れて下さいっ
わたくしも皆様の家族にして下さい
これを書くようになってから、ホントにテレビを観なくなりました
まあ、1日のうちの3時間前後を執筆に費やしているので仕方ないのですが
でも、たまに見るとホントに面白くないですね
ひな壇ばかりのバラエティもつまらないですがドラマも
数年前に、アニメの有名な監督がインタビューで
プロデューサーと脚本家だけで企画を練ってお前ら、オレたちの望むように作品を作れと現場の演出やアニメーターたちに強いるような態勢が増えているけれど、こんなことをしていたら作品が良くなるはずがないということを言っていました
それって、つまりトレンディドラマ以降の、テレビドラマの作り方ですよね
プロデューサーが、メチャクチャ権限を持つという
ドラマをやっていた、あるいやりたかった人がアニメの担当になって、そんなやり方をしてしまったのでしょうか
しかし、アニメは現場スタッフのモチベーションが切れるようなことをしたら、すぐに作品のレベルが低下しますし
逆にこの作品面白ぇと思ったら、メチャクチャ奮闘してくれるものですが
ちなみに、昔のアニメはプロデューサーが作品そのものを全然見ていないという
エヴァ*ゲリオンのプロデューサーは、商品化されるまで黒いエ*ァ3号機の存在を知らなかったという
何だこりゃ玩具屋が勝手に作ったのかと言い出したという
それからガンダムも
マ・クベなどとという妙な名前の人物を出したのに、プロデューサーが何も言って来なかったのでオンエアーは見ていないんだと思いました
と、トミノ監督が書いていました
910.夜は楽し / 増える家族・失われる家族
アーデルハイトさんの突然の発言に
いいよねっパパっ
真緒ちゃんが、ニコッと微笑む
オレは、突然のことに頭が付いて行っていない
いいのヨ、こうなることは判っていたンダカラ
イーディが、パクパクご飯を食べながらそう言う
familyをLOSTしたコはそして、才能と能力があってカワイイ女の子は、ミンナ、アタシたちのところに集まってくるネコレ世の中の定理ヨ常識ヨ
わたくしが責任を持って面倒をみますですから、お願いします
自分の妹分として、アーデルハイトさんを受け入れてくれるんだ
もちろん、わたくしも面倒を見るわよこの子が望むなら、一流のプロ警護人になれるように、鍛えてあげるわ
翔姉ちゃんも、そう言う
プロ警護人それも、トップ・エリートの2人にとっては、アーデルハイトさんは才能溢れる人材なんだろう
わたくしも麗華もあなたに会うまで、世の中に対してちょっと突っ張っていたでしょこの子もそういうところがあるから面倒見てあげたいのよ
アーデルハイトさんのことを、妹のように可愛いとも思っているのも本当なんだろう
わたくしたちの突っ張りも、この子の意固地さも結局は、自分の家族を持っていないことから来る寂しさが原因だったわ
だから受け入れてあげたいのです
レイちゃんは、優しくアーデルハイトさんを見る
ちょっ、ちょっと待ちなさいハイジは、わたくしと契約しているのよ
鳥居さんが、文句を言う
あら、鳥居様はパーティの席で、一度、この子との契約を解除なさいましたわ
でも、その後また、わたくしが雇ってあげると宣告致しましたわ
ツンとして切り返す、鳥居さん
でも、この子鳥居様のお申し出に同意しました
し、してたわよっそうよねっハイジ
鳥居さんは叫ぶが、アーデルハイトさんは返事をしない
何かそれを証明する書類はありましたこの子は、正式な雇用契約書にサインをしましたか
翔姉ちゃんが、たたみ掛ける
鳥居さんは、一瞬、考え込んで
そんなことを言ったらわたくしが先ほどハイジを解雇したということだって、誰も証明できないでしょだったら、まだハイジにはわたくしを警護する契約が残っているはずですわ
どうしても、アーデルハイトさんを手放したくないらしい
あら、鳥居様がこの子を解雇したのは、わたくしも目撃していますわ麗華も見たわよね
はい、わたくしも先ほどのパーティの席におりましたから
ぼ、ボクも見ました
ルナが小さく手を上げる
オレと瑠璃子とみすずはすぐ近くで見ていたよ
美子さんは、別のテーブルに居たけれど
これだけ証人がいるのにまだ、この子を解雇していないとおっしゃいます
翔姉ちゃんが、鳥居さんを挑発する
だ、だからその後、もう一度雇い入れるって言ったわよわたくしは
正式な契約書が存在しない以上その新規契約は成立していないと申し上げています
こういう話は、大人で香月セキュリティ・サービスの現場トップである翔姉ちゃんに、ただのお嬢様である鳥居さんが勝てるわけがない
よしんば、前の契約が生きていたとしても確か、この子が鳥居様のお家と契約していたのは今月末まででしたわね
他人のことでも、契約条項何かについては常に聞き耳を立てているし、忘れない
いずれにしても、誰と契約するかはこの子の自由ですわ鳥居様のご希望通りにはなりません
そういう翔姉ちゃんに
違うヨ、ショウこのコが望んでいるのは、アタシたちのfamilyになることで契約ではないカラ
一度、familyにナッタラ辞めれないヨダッテ、familyダカラ
血は水よりも濃いと言いますがわたくしたちの絆は、血よりも濃いのです
美智が、アーデルハイトさんに言う
しかし、一度家族になったからは今後、何があろうとあなたはわたくしたちの家族ですわたくしたちは、全力であなたをサポートしますし自分の命を犠牲にしても、あなたのことを見捨てることはありません
ソレが、アタシたちのfamilyなのネ
美智とイーディの言葉に、鳥居さんは
何なのあなたたちカルト集団か何かなの
ダーカーラ、familyだって言っているノネ
イーディが、面倒臭そうに鳥居さんに答える
みんな、仲良しってことですのっねっ、ルナ
アニエスがルナに言う
えーっと鳥居様のように、ご家族がきちんといらっしゃる方には判らないことなんだと思います
ルナは、そう答えた
ボクらは、みんなホントに、自分の本当の家族がブッ壊れちゃって行き場がなくなった子ばかりですからボクたち鷹倉家の3人姉妹も両親を亡くしたばかりですし
ルナは、笑顔でアーデルハイトさんを見る
ボクたち姉妹は不思議な力を持っていますだから普通の大人は、ボクらを捕まえて、自分たちの利益のために働かせることしか考えませんでも、兄さんはボクたちを家族として受け入れてくれました
あのルナちゃんたちだけでなく、わたしのことまでそれも、生活のことだけじゃなく、これから先のこと学校のことなんかまで、家族の皆さんで一生懸命考えて下さって
当然だよっコヨミちゃんだって、あたしたちの家族なんだからっ
もういいや、ブッチャケちゃおうよこの中でお父さんやお母さんや本当の血の繋がった家族を誰かに殺されちゃって、この家族に受け入れてもらうしかなかった子は手を挙げてっ
寧は真っ先に手を挙げる
あたしは両親と双子の弟を殺されているだから、今はヨッちゃんがあたしの大切な弟でみんなが大切な家族なんだよ
するとマナが手を挙げ
あたしもだよっあたしは父親をね
白坂創介はもういない
そして、可憐さんあたしもね、家から見捨てられたのあたしの本当のお祖父さんもお母さんも、もうあたしはいらないんだってそれで、お兄ちゃんに拾ってもらったの可憐さんだけじゃないからね家から捨てられたのはだから、歓迎するし命懸けで、守るよ今度は、マナが可憐さんのお姉ちゃんだから
水島可憐さんにそう言う
あ、あなたは
驚いている可憐さん
あたしはマナよろしくねっ
さっきも言いましたけれどボクたちの両親も殺されちゃったんです
わたしの両親ももういません
ルナとコヨミちゃんがそう言う
だから、アーデルハイトさんあなたも、ここに居ていいんです歓迎します
アーデルハイトさんも孤児なんだ
ルナたちは、アーデルハイトさんの心を読んでそれを知っていた
読んだのは翔姉ちゃんと、レイちゃんの心だ
香月セキュリティ・サービスは、アーデルハイトさんの履歴を詳細に調べ上げているはずだから
孤児なのに、自力で警護のアカデミーでライセンスを取り、13歳でプロとして生き抜いていこうとしているアーデルハイトさんのことを翔姉ちゃんたちは高く評価していた