言え。その手段を取るかどうか判断するのは貴様ではない!

お前を殺すことだ

だが、提示されたのはよりありえない選択肢であった。

魔力というのは肉体とりわけ、身体の中の臓腑に宿るものだ。故に、最も臓器に近い生殖器を繋ぐことで魔力の道を作るわけだがそこにあるものを俺の身体の内に入れるなら、もっと単純で手っ取り早い方法があろう

つまり、ユウェロイを殺してその内臓を喰らえばいい。

貴様に私が殺せるか!

別に俺が殺す必要はない。待っていれば自然と息が詰まって死ぬだろう

Olから距離を取り、全身を甲冑で覆うユウェロイ。しかしOlは壁にもたれかかったまま、悠々と腕を組んでそう告げる。

その時は貴様も死ぬだろうが!

魔術師を舐めるな。魔力が尽きたと言っても、完全に使い果たしたわけではない。息を保つ術を使う程度の余裕はある

なにせ母なる壁を動かす魔術は非常にコストがかかる。明らかに何らかの魔術が付与された壁を、そこにかかった魔術ごと操作するためだ。例えるならなみなみと水のはいったコップを動かすのに等しい。しかし下手にこぼしてしまえばダンジョン全体が崩壊しかねないから、そうする他ない。

それに比べれば、体内に新鮮な空気を作り出す術など消費はほぼゼロに等しかった。

それを私にも使え!

そうして二人仲良く死んで何になるというのだ。そもそもこの術は他人には使えん

自分自身の肺腑の中に新鮮な空気を作り出すからこそ、消費が少ないのだ。流石に他人の体内に干渉するのはOlとて難しいし、かと言ってこの小部屋の空気全てを作り変えるなら流石に壁を動かす方が安くつく。

貴様に食われるくらいなら、先に貴様を殺す!

落ち着け。その方法は取りたくないと言っただろうが。そうするつもりなら、お前に教えるわけがないだろう。ただ黙って死ぬのを待てばいい。お前が言えというから言ったまでだ

両手に槍を作り出し戦闘態勢に入りかけるユウェロイを、Olは落ち着いた仕草で宥める。

固定空気にしたってそうだ。放っておけばじきにお前は意識を喪失し、そのまま二度と目覚めることなく息絶える。それをわざわざ説明してやったのは、お前を死なせたくはないからだ

死なせたくない?

ユウェロイはOlの言い回しに引っかかりを覚え、問い返した。

殺す気はないとか、死なせるつもりはないとかなら、わかる。王座を奪還しフローロを魔王に据えるというOlの目的のためには、ユウェロイの壁族としての立場は今後絶対に必要になるからだ。

だが死なせたくないという言い方は、そういう利害関係とは別のニュアンスを孕んでいた。

ああ。俺は、お前のことを殺すには惜しい奴だと思っている

無論、壁族という立場は抜きにした話だ、とOlは付け加える。

お前は類まれなる武勇を誇る真の戦士であり、同時に民を思いやることが出来る良き壁族だ。みすみす殺してしまうには惜しい

そのような見え透いた世辞でこの私が喜ぶなどと思うなよ

絞り出すような声で、ユウェロイは憎まれ口を叩く。だがその口ぶりには、隠しきれない喜色があった。

ユウェロイについての愚痴は、彼女の部下であるフォリオから散々聞いていた。他者に正当な評価をくださないものは、たいてい自身も他者から正当な評価を受けることはないものだ。

この状況で世辞を口にしてどうなる。単純にお前への評価を口にしたまでだ

確かにそれはそうだ、とユウェロイは思う。抱かれることを拒んでいた時であればまだわかるが、今ユウェロイはそれを承諾した後なのだ。

ならば、さっさと私を抱けばいいだろうが

死なせたくないなどと言うくせに、一体何を躊躇っているのか。

それとこれとは話が別だ

こうしている間にもユウェロイの呼吸は徐々に苦しくなり、視界が歪み、意識が朦朧とし始めている。だがOlは大仰に首を振り、言った。

お前には女としての魅力を全く感じないからな

そしてその言葉は、ユウェロイに多大な衝撃を与えたのだった。

第8話セックスしないと出られない部屋を作りましょう-5

ユウェロイはOlに投げつけられた言葉の衝撃に、怒り狂うことさえできずにただただ言葉を失った。

ユウェロイ。お前、部下から侮られていると感じることはないか?

な、何故そんな事を聞く

続く唐突な質問に、ユウェロイは思わず問い返した。しかしそれは、肯定しているも同然の返答だ。

俺がお前を抱きたくないのと同じ理由だからだ。折角麗しい見目と高潔な誇りを持っているのに、それでは男も部下もよりつくまい

理由とは何だ。聞いてやる、言ってみろ

居丈高に問うユウェロイにOlは嘆息し、言った。

まさにその物言いのような態度だ。上から威圧的に言いつけるばかりでは人はついては来ぬ

私を侮辱しているのか!?

いや。勿体ないと思っている

肩をすくめあっさりと言うOlに、激昂しかけたユウェロイは毒気を抜かれる。

お前が類稀なる勇士であり、善良な領主であることは世辞でも何でもない。率直な感想だ

それは実際、Olの心からの感想だった。もっとも、単純な褒め言葉というわけでもないが。善良な領主が有能な領主であるとは限らないからだ。

なのにお前自身は全くそう思っておらんだろう。不幸なことだ

ユウェロイは思わず息を呑んだ。それは、誰にも明かしたことがないいや、今の今までユウェロイ自身でさえ、明確には認識していない事実だったからだ。

お前は強く善良だ。そんな者が誠意を持って頼み事をすれば、まともなものなら誰も断らぬ。にも関わらず、わざわざ高圧的に命じて反発を招く

ずいと一歩踏み込むOlに、ユウェロイは後退る。長身なユウェロイよりも若干背が低いはずの男が、やけに大きく感じられた。

お前が、お前自身を信じられておらんからだ

肩書に頼り、一方的に命令する。あるいは威圧し、武力で言うことを聞かせる。

それはここに至るまで、ユウェロイがOlに対しても行ってきたことだ。

しかしそれは相手が言うことを聞くのが当然だと思っているからではなく、むしろその真逆。肩書を持たない自分自身に相手が従うと思っていないからこその行動だった。

女としての魅力を感じないと言われ、お前はなんと思った?

Olの指先がユウェロイの胸元を指し示す。

怒りはあっただろう。だがそれ以上に納得してしまったのではないか?

それはまるで心臓を鷲掴みにされたかのような感覚だった。

ユウェロイの身体から、力が抜ける。そして壁に背を預けたまま、ずるずると床に座り込んだ。Olの言う通りだ。ユウェロイは、それを心の何処かで真っ当な評価であると思ってしまっていた。

全く、愚かなことだ

正しくその通りだ、とユウェロイは思う。虚勢は全て見破られ、生命は相手の手に握られている。どのような事を要求されても、もはや断ることはできない。

お前は強く、正しく、そして美しい。真っ当に頼まれれば俺とてどんな願いも拒めぬだろうに

だが、続いたのはユウェロイが思ったのは真逆の言葉だった。

こ、断っただろうが!

真っ当にと言っただろう。それに、お前が言ったのは好きにしていいだ。頼み事をしたわけではない

それはそうかとユウェロイは納得するが、それはつまり改めて頼めという要請でもある。そう簡単に口にできたら苦労はしない、とユウェロイは内心毒づいた。

自信を持て、ユウェロイ。お前は十分美しい。それに、別に媚びへつらえと言っているわけではないのだ。ただ単純に対等な立場から、頼めばいい

それを見透かしたように、Olはそう口にする。流石にそこまでお膳立てされてなお意地を張る程の余裕は、精神的にも肉体的にも残されていなかった。呼吸も既に随分と苦しい。

わかった私を抱いて、くれ

心得た

全身を包んでいた甲冑を消し、消え入るような声色で呟くように言うユウェロイの手を、Olは恭しく取って引き寄せる。

そして、腰を抱いて頬に手を添えながら、その唇に口づけた。

それはこちらの台詞だ

途端、Olはユウェロイに殴り飛ばされてたたらを踏んだ。

まぐわいに接吻など必要ないだろう!

それはそうだが息苦しさは抜けたか?

そう言われて初めて、ユウェロイは呼吸が多少楽になっていることに気がついた。

息を保つ術は自分にしかかけられぬと言っただろう。口移しに俺の肺腑で生まれた新鮮な空気を送っただけだ。不要だったか?

不要なはずがない。目に見えない毒素が溜まっていき、いつ死ぬとも限らない環境に身を置きたいはずがなかった。

どうやらお前には荒療治が必要なようだな

ヒリヒリと痛む頬を擦りながら、Olはユウェロイを軽く睨む。

今から、俺はお前が頼んだことしかしない。良いか。命ずるのではなく、対等の立場で頼んだことだけだ

な何だと!?

別にそのまま死にたいのであれば、好きにしていいが

素気なく言い放ち腕を組むOlに、彼が本気であることをユウェロイは悟る。

ぐっわかった。私を、抱いてくれ

とは言え先程も言った言葉だ。二度目ともなればそこまでの抵抗もなく、ユウェロイはそれを口にする。

構わんが、具体的にどうして欲しいのだ?

だがそんな事を言い出すOlに、危うくもう一度拳を振るうところだった。

具体的にだと!? どういうことだ!?

そうだな。まずは前戯をした方がよかろう。そのままでは痛みを伴う

それはつまり、前戯をしてくれと頼まなければならない、ということだった。そんな屈辱的なことができるか、とユウェロイは内心吐き捨てる。

いらん。さっさと終わらせろ終わらせて、くれ

ふむ、そうか?

命令ではなく頼むと心の中でつぶやきながらユウェロイがいうと、そんな葛藤などどこ吹く風でOlは頷く。

そして、既に硬く膨れ上がったものを取り出してみせた。

なな、何だそれは!?

どうした。男の性器を見るのは初めてか?

それはそうだがいや、違う、そういう問題じゃない!

それは、ユウェロイの知識にあるものよりも明らかに巨大だった。

そんなものが入るわけないだろう!

だから、前戯を行わなければ痛いと言っているだろう

そういう問題じゃない、とユウェロイは首を振る。股間からもう一本腕が生えているのではないかと思うほどの太さと長さ。あんな物を入れれば身体が裂けてしまうとしか思えなかった。

ならば、頼めばいいだろう

完全に腰の引けたユウェロイに対し、Olは何でもないことのように言う。

頼む? 何をだ?

痛くしないようにとだ。言っただろう。お前が望むのであればそれを叶えてやると

そんなこと不可能だろう、とユウェロイは思う。だが、どのみちあれを入れなければ死ぬしかないのだ。槍で腹を裂かれるようなものと我慢するしかない。武人として、その程度の怪我には耐えたことがある。

事が終われば我が槍でそれ以上の苦痛を与えてやる、と誓いつつ、ユウェロイは頷く。

わかったなるべく、痛くしないでくれ

心得た。では、ここに横になれ

Olは羽織っていたローブを脱ぐと、それを床の上に広げた。ローブには物理的な衝撃を防ぐ魔術がかかっているため、下に敷けばちょうどよいクッションにもなるのだ。

ローブの上に身を横たえたユウェロイの服を脱がし、彼女の肌に触れる。途端にユウェロイは身体を震わせたが、これは純粋な嫌悪感によるものだろう。

声を我慢する必要はないぞ。どうせ外には伝わらん

だがあえてOlはそう伝えた。

ふん、無用な心配だ。汚らわしい男に触れられて快楽を感じるわけがない

言葉とは裏腹に、声を出すまいと言う意識を発生させるためだ。

Olはゆっくりと、焦らすように彼女の秘裂を指でなぞる。膣内に指を入れることなく、表面を撫でるように。声を出すまいと堪えるほどに、ユウェロイはその愛撫を無視できず、むしろ強く意識してしまう。Olの愛撫に抵抗するように、ユウェロイの身体が小刻みに震えるのが指先から伝わってきた。

無駄なことはするな、さっさとあぁっ!

耐えきれなくなったユウェロイが言うのと同時に指をつぷりと侵入させる。じっと口を噤んでいる間ならばともかく、喋っている瞬間に刺激されては人は声を堪えることができない。

済ませろっ

案ずるな。ちゃんとよくしてやる

そして一度嬌声を上げてしまえば、もはや止められない。Olの指がユウェロイの膣内で蠢くたびに彼女は小さく声を漏らした。男のゴツゴツした指先が、その作りとはまるで裏腹の繊細さでユウェロイの中を撫でる。

弱い部分を的確に、無意識に欲してしまう絶妙な強さで刺激してくる様は、まるで心でも読めるかのようだった。

感じることなどないとっ、言っているだろうっ!

その割には随分良い音を立てているようだな

頑なに否定するユウェロイにも聞こえるように、Olはわざと音を立てて彼女を責め立てる。

肌に触れればわかる。ユウェロイは間違いなく男を知らぬ生娘だ。だがそれにしては膣内は随分と開発されていた。処女であれば媚薬も魔術も無しにここまで感じることなどない。そして何より、他者に身体を委ねることに慣れきっている。

は、ぁっ私は、感じてなどっあぁっ!

ぐちゅぐちゅと音を立てる秘所からは大量の愛液が漏れ出し、ヒクヒクと震える膣壁を撫でる度にきゅうきゅうと締め付けた。頬は上気して何度も喘ぎ声を漏らし、肌は汗ばんで額に髪がしっとりと張り付いている。それでもユウェロイは快楽を感じていると認めない。

あっ、ダメッ、やめっあぁっ、くぅっ! あぁっ! はぁぁっっ!

そしてとうとう、ユウェロイは絶頂に達した。

ま、待てっ! あっ、んんっ! やめろ!

だがそれでも愛撫の手を止めようとしないOlを、ユウェロイは大きく息をしながら制止する。

やめろ?

ややめてくれ、頼む

命令口調を見咎められ、ユウェロイが慌てて言い直すとようやく手が止まった。激しく喘ぎ呼吸を繰り返したせいか、先程までよりも呼吸が苦しく、軽いめまいさえ覚える。

息息が、できない空気をくれ、頼む

先程のように口づけて欲しい、ということか?

とぼけるように問い返すOlに、ユウェロイは一も二もなく頷く。

口づけていい口づけてくれ

頷いても、許可を与えても動こうとしないOlに、頼む形で告げるとようやく肺の中に新鮮な空気が入り込んできた。こちらが死にかけていようと、本当に頼まなければ何もしないつもりなのだ、とユウェロイは悟る。

それで、次は?

前戯とやらは、もういいだろうしてくれ抱いて

これ以上されてはおかしくなりそうだった。それなら、あの太い槍で貫かれた方がまだマシだ。激しい痛みに襲われれば、快楽を感じる余裕もなくなる。ユウェロイはそう考えた。

だが、初めて男に押し入られる感覚は、想像していたものとは全く違った。

ひっあぁっ!

太く硬いものが、己の中に入ってくる感覚。巨大なものが腹を圧迫し押しつぶされるかのよう。

ふぐっうっ、は、あっ!

声というよりも息そのものが押し出され、口から漏れる。

それは、思っていたような痛みは一切伴うものではなかった。例えようもない圧迫感が腰から下を支配しているが、Olが請け負った通りそこに苦痛は感じられない。ただ息さえ詰まるような圧があるだけだった。

奥まで突き入れたOlが腰を引き、肉の槍がユウェロイの中から引き抜かれていく。すると次に感じたのは、喪失感だった。先程までみっちりと己の中を満たしていたものがなくなり、そこにポッカリと空洞の残る空虚さ。

呼吸が楽になるかと思えば全くそんなことはなく、押し出された空気は戻ってくることなくただただ失われたかのようだった。

あがぁっひ、ぎぃっ!

かと思えば再び剛直が奥まで突きこまれて、先程とは全く違う感覚をもたらした。無理やり押し広げられ圧迫されるのではなく、あるべきものがあるべき場所へと帰ってきたかのような感覚。

そして同時に、全身が痺れ貫かれるかのような快感だった。

口づけ口づけ、してっ

圧迫と快楽によって追いやられた呼気を求めて、半ばうわ言のようにユウェロイは懇願を口にする。絶え絶えに掠れた声で発した求めはしかし即座に叶えられて、Olの柔らかな唇の感触とともに新鮮な空気が肺へと満たされる。

んぅぅっ!

途端にずん、と奥を抉られて、手に入れたばかりの空気はすぐさま吐かされる。それと同時に、Olの唇もユウェロイの元から離れていった。

もっと口づけしてっ

すぐさまユウェロイは首を伸ばしながらそう請う。

空気というものがこれほど美味しいのだと、彼女は初めて知った。胸いっぱいに吸い込む新鮮な空気を貪るユウェロイの膣内に、みっちりと肉の塊が埋め込まれていく。

胸と腹とを同時に埋めるその充足感に、ユウェロイは身体を震わせた。指を入れるのとは全く違う、暴力的なまでの快感がユウェロイの全身の隅々まで満たしていく。

キスしてぇっ唇、離さないで!

男根が引かれるたびに律儀に離れていく唇に、ユウェロイはもどかしくなってOlの首に腕を回しながらそう懇願した。すると重ね合わされた唇から、呼気だけでなく舌までもが割り入ってくる。

ユウェロイは一瞬驚きに身を震わせるが、それでも肺腑を満たす空気の魅力には抗えずそれを受け入れる。

んっ、ふ、んんっ、は、ぁんっ!

程なくして、それも悪いものではないとわかった。呼気と性器とに加え、柔らかな舌が己の舌を優しく捕らえ、口内を満たしていく。それはまた別種のそして、心地よい快楽であったからだ。

んむぅっ、んんっ、ふ、ぅっ! んぅっ、んっ、ふ、ぅぅんっ!

上から下まで全てをみっちりと埋められて満たされる多幸感の中、腹の奥に何度も何度も快楽が叩き込まれていく。もはやユウェロイはほとんど考えることもできず、夢中になってその快感に身を委ねることしかできなかった。

両手両足でOlにしがみつき、自ら腰をくねらせて男を受け入れ、少しでも唇が離れればキスを懇願していることにすら気づいていない。そうして快楽を貪り、何度目かの絶頂に達するという、その瞬間。

Olは、唐突に動きを止めた。

どうして。ユウェロイは声に出さず、信じられないものを見るような瞳でOlを見つめる。

して欲しい時はどうするのだった?

して奥を、満たしてぇ!

酸欠と快楽で思考能力を失ったユウェロイは躊躇うことなく口に出す。

あ、はぁぁあぁっ!

望み通り、ずんと奥を貫かれる感覚に、弓なりに背を反らしてユウェロイは達する。

出して、出してぇっ!

そしてOlの宣言にそれまでしてきた通り、何も考える事なくそう懇願した。膣内でOlの物がさらに大きく膨れ上がり、精を吐き出すのをユウェロイは感じる。

しかしその白濁の液が自分の最奥を満たしていく感覚に、彼女もまた更に深く絶頂するのだった。

第8話セックスしないと出られない部屋を作りましょう-6

目が覚めると、ユウェロイはOlと繋がったまま、彼の胸に顔をうずめるようにして横になっていた。

起きたか。ちょうどお前から得た魔力が馴染んだところだ

ああそうか

頭に残る多幸感の残照と倦怠感にぼんやりとしながらも、ユウェロイはのろのろと身体を起こす。

Olの一物は既に小さくなってはいたが、それでも己の膣内から引き抜くと喪失感のような物が胸によぎった。

が、その直後、股間から垂れ落ちる大量の白濁を見てユウェロイは我に返る。

貴様、よくも好き勝手してくれたな!

出せと言ったのはお前だろう

そ!

確かに言った記憶があった。思い返せばあの時の自分はどうかしていたと言う他ないが、あの途方もない幸福感と満たされる充足感までをも思い出してしまい、ユウェロイの怒りは急激に萎びていく。

安心しろ。魔力の譲渡で孕むことはまずない

ちっ。まあいいだろう

舌打ちしつつ、ユウェロイは乱雑に脱ぎ捨てられた衣服を纏う。

それで、その魔力の譲渡とやらはうまく行ったんだろうな

無論だ。既に空気穴をいくつかあけてあるから、頭もすっきりしているだろう。お前が服を着終われば出入り口も開ける

壁を指差すOlの指先を見れば、確かに小さな穴がいくつも空いていた。

ということは、この壁の向こうに翼獅子はいないのか?

ああ。場所も確認している。奴は最初に出会った広間に戻っているようだ

Olが開けた小さな穴からは、向こう側を覗き見ることすらできない。しかし最初に出会う前も、Olは翼獅子の場所を言い当ててみせた。敵の場所を感知するスキルでも持っているのだろう、とユウェロイは納得する。

このまま向かっていっても二の舞だ。戦うのであれば策を練る必要がある

Olの言葉に、ユウェロイは素直に頷いた。無策で突っ込んでまた同じ目にあいでもしたら

そう、そうなったら最悪だ、とユウェロイは自分に言い聞かせるように独りごちる。

貴様の母なる壁を動かす術は、穴を開けた後も使えるか?

ああ。思ったよりもお前の持っている魔力が豊富だったからな

魔力などという、どこにあるのか何であるのかすらわからない物が多いと言われても嬉しくも何ともない、とユウェロイは思う。

この私を抱いたのだから、褒めるならばもっと別の部分を褒めるべきではないか? そんな思考を彼女はすぐさま振り払った。どうやらまだ空気が十分足りていないらしい。

ならばそれで拘束できるか?

難しいな。奴は動きが速すぎる。四方を囲もうにも逃げられるだろうし、袋小路に追い込めば俺たちまで一緒に閉じ込められかねん

Olが操作する壁の動きはそれなりに速いが、瞬く間にというわけにはいかない。せいぜい、人が走るのと同じくらいの速さだ。翼獅子のスピードならやすやすと抜け出してしまうだろう。

広間の出入り口を全部塞いでしまうという手はあるが

いや、それは駄目だ。あの広間を塞いでしまうと孤立してしまう領民が出る。それに、別の出入り口に移動するにはどうしたって翼獅子の前を通らなければならない

Olの隠形を使えば気づかれずに通り抜けられるかもしれないが、広間にある出入り口は三つだ。一つ塞いだ時点で翼獅子に気づかれるだろうし、警戒して逃げられれば厄介なことになる。

私が止める

考えた末、ユウェロイが出した結論は。

最初の戦いで、一瞬とは言え動きを止められたのはお前も見ただろう。何重も甲冑を生み出せば、お前が壁で捕らえる程度の時間は稼げるはずだ

だから、と彼女は続ける。

頼めるか

そのように頼まれては否とは言えんな。わかった、任せておけ

笑みを浮かべて請け負うOlにユウェロイもほんの僅か唇を笑みの形に歪め、二人は更に作戦の詳細を詰め始めるのだった。

好都合だな。寝ているぞ

二人が隠形をかけて身を隠し広間へ戻った時、翼獅子は部屋の中央で丸くなり寝息を立てているところだった。

モンスターも眠るのか?

当然だろう

何を言っているんだ、と言わんばかりの表情でユウェロイ。

壁が動けば途中で気取られる可能性がある。作戦通り、まず私が甲冑で奴を拘束する。お前は同時に壁を動かし、閉じ込めてくれ

小声でそう言葉を交わし、隠形が破れないようゆっくりと翼獅子に近づいていく。

甲冑を出せば流石に気づかれてしまうだろうが、その時真正面にいてはすぐさま牙や爪、炎が飛んでくる。できれば背後から拘束したいところだが、Olが壁を立てるのも後ろ側からでなければ閉じ込めようとしていることが即座に気づかれてしまう。ほんの一瞬の差だろうが、その一瞬が命取りになるかもしれない。

故にユウェロイは翼獅子の側面から近づくことにした。六本の脚を抱くようにして丸くなって眠る翼獅子の背中側に陣取り、手を伸ばす。作り出すのはその脚を固定する篭手と具足だ。まずは三組六つの篭手を翼獅子の脚にはめ、その上から具足をはめる。

人間と翼獅子とでは関節の形がまるで違うから、向きや大きさはさほど気にしなくてもいい。とにかく生み出しさえすれば動きを止められるはずだった。

ユウェロイ、待て!

Olが警告の声をあげるよりほんの一瞬早く、翼獅子の呼吸音が変化した。それを寝息から唸り声へと変えながら、翼獅子はユウェロイの手をかわして身を翻す。そして天井近くまで舞い上がると、大きく開けた口からチカリと光が瞬いた。

寝たフリをしていたのだ。

それはモンスターとは思えない知能の高さだった。同じ階層のモンスターよりも大幅に高い能力を持つ特異個体とはいえ、Olの隠形を見破り、寝たフリをして騙して誘い込む。

更にはユウェロイの甲冑を作り出して拘束する能力すら把握している。そんな知能を持ったモンスターなど、今まで見たことも聞いたこともなかった。

死んだ、とユウェロイは思う。

彼女の神経は篭手を六つ作り出すことに集中しきっていて、全身の甲冑を作り出す動作に切り替えるのにほんの半瞬遅れた。しかしその半瞬で、炎はユウェロイを飲み込んで殺すだろう。忍び寄るのに邪魔になるからと防御を解いていたのが災いした。

彼女が完全に死を覚悟したその瞬間、しかし吐き出される紅蓮の奔流を遮るものがあった。

Ol!? 何をしている!

耐熱のローブと耐火の術を使ってこれか!

ユウェロイに覆いかぶさったOlは、苦悶の表情を浮かべながら彼女を守っていた。

何をしている!?

なに、良い女の頼みを聞いているだけのことだ

ニヤリと笑みを浮かべ、Olは虚勢を張る。

いいか、三つ数えたら、目の前に鎧をつけろ

目の前と言われても、そこにいるのはOlだ。炎を防ぐためにも甲冑を被せてやりたいところだが、着慣れてもいないものに着せてもロクに動けなくなるだけだ。炎は防げても爪や牙の餌食になるだろう。

俺を信じろ

だが、ユウェロイはOlの言葉に余計なことを考えるのをやめた。

Olの着ているローブの裾に、火が灯る。付与された耐熱魔術の限界を超えたのだ。

だがOlは慌てもせずに数を数える。ローブの炎が燃え上がり、彼の体を包む。

ユウェロイの視界が、独特の浮遊感とともに切り替わった。Olの姿が掻き消え、代わりに目の前に見えるのは翼獅子の背中だ。そしてそのときには既に、ユウェロイは全身甲冑のスキルを発動させている。

落ちろぉぉっ!

羽ばたく翼の根本を、ユウェロイは甲冑で覆った。その重みと拘束とで、翼獅子はバランスを崩し地面に落下する。

そしてすかさず、Olが迷宮の床石を紐のように引っ張り上げて、翼獅子の六本脚と口元に縛り付けた。母なる壁でできた口輪をつけられてしまえば、牙を剥くことも炎を吐くことすらままならない。

やれやれ、なんとかなったか

Olがなおも燃え盛るローブを脱ぎ捨てて、服に纏わりつくような炎をはたき落とすと、彼に燃え移っていた炎は掻き消えた。だが当然、無傷というわけにはいかない。そこかしこに火傷ができてしまっていた。

ああ。石さえ燃やす炎に焼かれた時に比べれば大したことはない

妙な冗談を飛ばしながら、Olは拘束された翼獅子を見やる。

で、拘束したはいいがどうする? 槍は通じんのだろう

捨て置けばいい。人を殺せなければモンスターはいずれ消える。その場合ドロップ品を回収できんのは業腹だがいや、フォリオの部下に腕持ちがいたか。奴ならば倒せるかも知れんが

とはいえ、恐らく回収に来る前に消えてしまうだろう、とユウェロイは言う。

無力化されてしまったモンスターは特にすぐ消えてしまうものらしい。

何にせよ今回はよくやった。Ol、お前のことを少しは認めてやる

笑みを見せ、素直にユウェロイはOlを労う。

ならば一つ、俺はお前に謝らねばならんことがある

そう切り出したOlに、自分を抱いたことを謝罪するつもりなのだろう、とユウェロイは思った。

成り行き上仕方なかったこととはいえ、確かにそれは謝罪して然るべきことだ。ならば寛容に許してやろう、とユウェロイは考える。昨日までのユウェロイであれば、ダンジョンの上下がひっくり返ってもそんな事を思いはしなかっただろう。このような変化が自身に訪れるとは、少し信じられない思いであった。

先程、お前を転移させただろう

ああ。まさかあのようなスキルがあるとはな

だが、Olは突然全く別の方向に話を飛ばした。とはいえ、先程の連携は即興にしては悪くないものだった。ユウェロイも快く話に乗ってやる。

あれは壁を動かすより遥かに少ない魔力で出来る

まあそうだろうな。母なる壁を動かすのに比べれば

そもそも絶対不変なる母なる壁を動かすなど、この目で目にしていなければ信じられないことだ。それに比べれば、瞬時にして移動するスキルくらいは他にもいくつか存在はしている。

うむ俺もうっかりしていた。酸素が足りず頭が回っていなかったのかもしれん

いつまで経っても本題に入らないOlにユウェロイが次第にイライラし始めたとき、彼はあっさりと言った。

アレを使えば魔力補給の必要はなかった

どうでしたか?

奴は最低の男です!今すぐ首を刎ねたほうがいい!

ブランが無事に特異個体の討伐から帰還したユウェロイに問うと、彼女は酷く憤慨した様子でそう言い捨てた。

あらまあ

ブランの前でユウェロイがここまで感情を露わにすることはなかなか珍しい。

ですが

あの男は一体何をしてのけたのだろうか、と首をひねるブランに、ユウェロイはポツリと口にする。

最低限の力はあるそれだけは、認めます

総合すると、役には立ったがユウェロイの気に入らなかった、という辺りだろうか。まあ、詳しいことは寝物語にでもゆっくり聞けばいいだけのことだ。

何にせよ、ご褒美をあげましょう。閨にいらっしゃい

そう思ってブランがいつものようにユウェロイを誘うと、彼女はいつものように喜びに表情を輝かせしかし、何かを思い出したかのように動きを止めた。

申し訳ありません、ブラン様。特異個体は思ったよりも強敵で少々疲弊しておりまして

そうでしたか。ならば無理はいけませんね

確かに思っていたより時間がかかったし、ユウェロイも随分くたびれた様子だった。

言われてみれば服の裾が焼け焦げているし、火とはなにか妙な匂いもしますね。よほど大変な相手だったのでしょう。しっかり休んでください

ブランがそう言うと、ユウェロイは顔を真赤に染めた。

し、失礼しますっ!

そしていささか乱暴に扉を閉めて立ち去る様子に、Olはよほどユウェロイを怒らせたらしい、と考えるのだった。

第9話部下の望みを叶えましょう-1

Olは一人、己の頬を撫でながら歩いていた。

篭手をはめたユウェロイに思いっきり殴られた傷は、身体に負った火傷と一緒に治し終わっているが、骨にまで響く痛みは後々まで尾を引くものだ。とはいえ、その痛みは払いすぎた駄賃のようなものだった。

ユウェロイを籠絡したのは彼女に協力させ、信頼させるのに必要なことだったが、あまり信頼されすぎても困る。なぜなら、その後ろにいるブランをどうにかする力を今のOlは持っていないからだ。

フローロを使った奇襲でなんとか認めさせはしたものの、打倒したとはとても言えない。ブランにとってOlは顎で使う存在でしかない。

厄介なのは、ブランが極めて武力を偏重する性格なのと、彼女が英雄並みの実力を備えているということだ。Ol自身が単独で倒す必要は恐らくないとは思うが、真っ向から戦って打倒しない限りそれも、一度限りしか通用しない搦め手ではなく、十度戦って十度勝てる手段を用意しなければならない。そうでなければ、ブランがOlを認めることはないだろう。

まずその第一歩として、Olは一人翼獅子の元を訪れていた。

未だ消えずにいた翼獅子は、Olを見るなり唯一自由な翼をバタバタと暴れさせ、六本の脚を突っ張り、恨みがましい瞳で見つめながら喉だけで唸った。紐状に伸ばした床石で封じられた口の隙間から、炎が立ち上る。こんな状態になってもまだ、戦うことを諦めていないのだ。ユウェロイが言うように消えてしまっていないのも、それが故だろう。

そう怒るな。俺はお前と、契約に来たのだ

Olがそう告げると、喉の唸り声は収まらないものの、翼獅子の様子はやや怪訝そうに様子を見るものへと変化した。やはり言葉はある程度通じている。

お前の望みを叶えてやる

そういった途端、翼獅子は大きく唸って身体を暴れさせた。俺の望みはお前をバラバラにすることだとでも言いたそうな態度だ。

お前の望みは殺戮と破壊。そして何より強者との戦いだろう?

だが、続く言葉にその動きがピタリと止まった。

翼獅子に殺された八人の犠牲者は、見るも無惨にバラバラにされていた。

言い換えれば、それほどバラバラにされているのに、しっかりと人数がわかった。手も足も首も胴体も、どの部位もバラバラになってこそいるものの、一つも欠けてはいなかったからだ。

つまり、翼獅子は人を食わない。ただ殺すためだけに殺したということだ。

そしてOlとユウェロイが小部屋に籠もったあと、他の人間を殺さずに広間で待ち受けていた。二人を多少は骨のある敵と認め、力のない領民を殺すよりも優先したのだ。

俺と共に来るのなら、その望みを叶えてやろう。俺はこれからこのダンジョンに棲まう者全てを敵に回す。お前の持って生まれたその力、存分に振るい試すがいい

手を差し出すOlを翼獅子はしばらく思案するように見つめ──そして、やがて恭順を示すように頭を下げた。

お前の名はそうだな。アレオスとでも名付けようか

Olが翼獅子──アレオスの額に触れると、その巨体はまるで紙にでも変化したかのようにパタパタと折りたたまれていく。そして、一着のローブへと変化した。

ふむ。ちょうどよい

Olはすっかり焼け焦げてしまった元のローブを脱ぎ捨て、アレオスが変化したローブを羽織る。

そしてぐるりと後ろを振り向き、言った。

隠れてないで出てこい

ありゃりゃ、お見通しでしたか。さすがはOlサマ

柱の陰から姿を現したのは、緑の髪をした有翼の少女。ユウェロイの部下であり、今はOlに従っている翼族、フォリオであった。

白々しい。俺が気づいていたことも悟っていただろうが

エヘヘ。でも、ってことは聞いちゃってもいいんですね。それどういうことなんですか?ドロップ品じゃなくて翼獅子そのものが変化しましたよね

Olの反応如何では見なかったふりをするつもりだったのだろう。誤魔化し笑いをしつつも、フォリオは目ざとくそう尋ねてくる。

モンスターとやらは元々そういうものなのだ

Olとしては別に隠す情報でもないので、素直にそう答えた。

お前たちがドロップ品と呼ぶものは、モンスターのもともとの姿だ。それに術をかけて、怪物の姿に変化させているという方がむしろ正しい

何故モンスターが死ぬと道具や食べ物になるのか。それはこの世界において一番の疑問であった。だからこそ、Olはそれを最優先で調べたわけだが

モンスターとしての姿が破壊されると、元の本性を取り戻す。道具にスキルを与えて形を怪物に変えたものそれがモンスターの正体だ

わかってしまえば何のことはない、よくある変性術の一種であった。同じことならOlもできる。生き物を物質に変化させるのは難しいが、物質を生き物のように動かすのはさほど難しいことではないのだ。

で? そんな話をしに来たわけではあるまい

フォリオがOlのことを何かと探ろうとしているのはわかっているが、だからといって用もないのに付け回すほど暇でもない。

Olが促すとフォリオは心得ているとばかりに頷いて、答えた。

Olサマがご所望のアレ、集まりましたよ

ふむ。確かに揃っているな

がんばったよ、Olくん!

翼獅子のアレオスと戦った下層から中層にあるOlに割り当てられた部屋へと移動する。そこで待っていたのは大量のがらくたと、それを運び込んだユウェロイの部下犬のような耳と尻尾と性格を持つ牙族の少女、鉄の腕のラディコだった。

元は横になればそれで埋まってしまうほどに小さかった部屋だが、Olが無断で周囲の廊下を取り込み壁を押し広げたので、今ではユウェロイやブランの私室よりも大きくなっている。

こんなに集めてどうするんですか?

その部屋の中に所狭しと積まれたベッドや本棚と言った家具、そして大量の鉄の鎧を見てフォリオは首を傾げた。家具はまだしも、鎧を着る人間の当てがまったくないからだ。

こうするのだ

Olが家具に触れると、木板がバラバラになって崩れ去る。かと思えばひとりでに組み合わさって、巨大な蓋のない箱が出来上がった。

更に鎧の山に触れると、鉄でできたそれはまるで熱された飴のようにぐにゃりと曲がり、互いに溶け合って巨大な一つの塊になる。Olはそれを引き伸ばし、複雑な形を作り上げて木箱に接続していく。

わーすごーい!

ええと、色々お聞きしたいことがあるんですケド

そして出来上がったものを見てラディコは素直に歓声を上げ、フォリオは頭を抱えた。

ドロップ品を溶かしてくっつけて加工するなんて事をさらっとしないで貰えますか? びっくりしちゃうので

何を言ってる? 俺が壁を動かすのは散々見ているだろう。変性魔術としてはあれよりだいぶ簡単だし、お前たちの価値観としてもそうだろう?

なにせ信仰の対象にまでなっている程、彼らは壁を絶対視している。確かに壁を動かすのは難しいが、実際以上に驚かれているという自覚はOlにもあった。

いやーどうでしょアタシ的にはどっこいどっこいって感じですね

ふむ。そうか

木をノコギリで切って組み合わせたり、鉄の鎧を炉に放り込んで鋳溶かし型に流し込めば全く同じことができる。Olがしたのはその手順を少々省略しただけのことだ。にも関わらずそこまで驚かれるとは、この世界の常識は相変わらずよくわからん、とOlは内心呟いた。

それで、これは何を作ったんですか?

うむ。このダンジョンには足りないものが幾つもあるが、これはその中でも最重要と呼べるものだ。すなわち──

本来ならばもっと早くに作りたかったのだが、素材が足りなかったのと手が回らなかったのでここまで遅くなってしまった。

湯殿だ

魔王Olがこよなく愛する、浴室を作るためのものだった。この世界には湯殿がより正確には浴室という概念が存在しない。入浴するときは大きなたらいに湯や水を張って身体を洗うのだが、それではせいぜい腰までしか浸かれないし、湯もすぐに冷めてしまう。

Olの望む、肩までゆったりと長時間浸かる湯殿には程遠いものだった。故に、こうして作ったのだ。ゆったりと入れる巨大な浴槽と、湯を温め続けるためのボイラーを。

最重要、ですか?

Olからその機能を説明され、フォリオは引きつった笑みを浮かべてみせた。ユウェロイが上司として面倒な奴であったことは間違いないが、こいつはこいつでもう少し本心を隠すという事を覚えればいいものを、とOlは思う。

まあ、理解できないのであれば身体に叩き込むまでだ。

せいぜい思い知るがいい。湯というものの持つ力をな

第9話部下の望みを叶えましょう-2

これは確かに最重要っていうのも過言ではないかもですね

浴槽にどっぷりと浸かり、背中の羽を文字通り伸ばしながら、フォリオは弛緩しきった様子でそう呟く。Olとしてはできれば湯に浸かる時は身体に巻いた布を外して欲しかったが、フォリオは籠絡のために一度抱いただけで妻でも愛人でもない。流石にそこまで要求するのは憚られた。

そうであろう

Olくん、まだ出ちゃだめえ?

心得顔で頷くOlの膝の上で、しかしラディコは不満げに声を漏らした。浴槽は十分大きく作ったから二人や三人一度に入ったところで膝の上に乗る必要などないのだが、生憎と深さの方がラディコにとってはやや深すぎた。Olが肩まで無理なく肩まで浸かれる大きさにしたのだから無理もない。

常に中腰でいなければ口元まで湯に浸かってしまうので仕方なくOlが膝に乗せたのだが、恩湯に加えて人肌の体温まで伝わって熱くなったからか、それとも単に元々堪え性がないからなのか、すぐに湯から出たがるのだ。

もう少し堪えよと言いたいところだが、仕方あるまい

もっと湯を楽しんで欲しいところではあったが、だからといって本来身も心も安らぐための入浴で気疲れしてしまっては本末転倒だ。湯冷めしてしまわない程度に身体を温めさせてから、Olはラディコを抱きかかえるようにして浴槽から上がった。

あ! えっと、じゃあお背中洗いますね!

ふむ、そうか? では頼もう

するとフォリオが慌てたように湯船から出てきて、道具袋から石鹸と洗い布を取り出す。体に巻き付けている布と同様、湯を溜めている間に自身の部屋から持ってきたものだ。

じゃあアタシが背中をやるから、ラディは前をお願いね

ぐったりしていたラディコは途端に元気になって腕を振り上げると、布で石鹸を泡立ててOlの胸板をゴシゴシと洗い始めた。

石鹸があるのだな

はい。泡雫球なんかがドロップします。流石に中層で取れる石鹸は質がいいですねえ

そんな事を答えながら、フォリオはOlの背中を洗い布でこする。その布は彼女が身体に巻き付けているものとは違って、目が粗く硬質な素材でできているようだった。

身体を拭くのには向いていないが、その分石鹸を泡立てたり、身体をこするのには向いている。久々の湯殿にゆっくりと浸かり、ゴシゴシと前後から垢を落とされる感覚は実に心地よいものであった。

さて、一体何を要求されるやら、とOlは思う。

一番風呂を譲ろうとしたOlに対し、身体に布を巻いてまで一緒に入ろうと主張したのはフォリオだ。ラディコは単純に喜んでいたしその反応に裏はないだろうが、フォリオの方はそうではないだろう。

一応、現在のフォリオはOlの部下というか、奴隷ということになっている。元々はユウェロイの物だったが、結果として彼女を裏切る形になり、それを庇うために交渉したからだ。

最初はユウェロイも難色を示しはしたが、立場としてはOlはユウェロイの下についている状態である。間接的にフォリオもユウェロイの配下であることに変わりはないと言えば一応納得した。

無論、フローロを通したブランの口添えや、Olの魔術によるある程度の提供例えば、彼女の部屋を多少広くするとかもあってのことだが。

だが、だからといってフォリオがOlに忠誠を誓ったというわけではない。ただ少しでもマシな境遇を選んだだけだ。

そんな彼女がこのようにOlに尽くすのならば、なにか魂胆があってのことというのは考えるまでもない。問題は、彼女が何を望んでいるのかということだ。

まだ出会って間もなく付き合いも浅い間柄だが、フォリオが聡い娘であることはわかっている。当然、何か魂胆があってこのような事をしていることにOlが感づいている事自体も重々承知の上だろう。

Olサマ、意外とと言うと失礼ですが、身体つきがしっかりしてらっしゃるんですね

魔術で強化できるとしても、最低限の筋力はあった方がいい。まあ、日頃から剣を振っているような連中には敵わんが

だがフォリオはなかなか本題に入ろうとしない。やたらと丁寧にOlの身体を磨き、筋肉を褒めそやしたりする。どうやら思ったよりも厄介な話らしい、とOlは警戒心を強めた。

思い当たるものがあるとするなら、彼女が以前口にしていたスキルを育てるスキルとやらに関わる話だろう。スキルを育てる事自体が目的なのか、それとも育てたスキルで成したいことがあるのか。

いずれにせよ、おいそれと頼むことが出来ない内容であることは間違いないのだろう。

こんなもんでしょうか。あと、は

Olの泡を洗い流し、フォリオはギクシャクした動作で前へと回る。

ここを、綺麗にしないとデスね

そしてOlの前にラディコと並ぶように跪くと、顔を真っ赤に染め上げながらOlの股間へと視線を向けた。

おちんちん!触ってもいい!?

構わんが無理をする必要はないぞ

嬉しそうに目を輝かせるラディコはともかくとして、明らかに無理をしているフォリオにOlはそう告げた。彼女がどんな事を望んでいるにせよ、形だけでも部下になった以上それがOlの目的と決定的に対立するようなものでない限り叶えてやるつもりはある。

そして対立するのなら、彼女がどれだけ奉仕しようと手を貸してやるわけにはいかないのだ。つまりフォリオの努力は不要なものであり、場合によっては完全に無為な行為にすらなりうる。

いえっ! やらせてください!

それを言外に伝えたつもりだったのだが、フォリオは強硬な態度を崩さず、恐る恐るといった様子でOlの性器へと手を伸ばした。泡をいっぱいに乗せたラディコとフォリオの手のひらが、Olの一物を撫でさする。

ラディ、絶対に鉄の腕だけは使うなよ

つかわないよお

からかうようなOlの言葉に、ラディコは頬をふくらませる。

ラディコの代名詞たるスキルを使われれば、流石にOlの股間は無事では済まない。とはいえOl自身使ってみてわかったことだが、あの手のスキルは使うにはある一定の精神集中と時間を要するし、使おうとすれば身体が輝くためにこっそり使うようなことも出来ない。つまりOlも本気で言っているわけではなく、ただの軽口だ。

えっと、痛くないですか?

ああ。お前はもっと力を入れてもいいぞ

しかしその軽口を聞いても、フォリオの緊張は解けることがなかった。湯でのぼせたわけでもあるまいに、耳まで顔を赤く染めてぎこちない手つきで男根を撫でている。

ひゃぁっ!

あ、おっきくなったー!

そのぎこちなさがかえって新鮮なこともあってか、Olの一物はみるみるうちに膨れ上がり反り返った。あっという間に体積を増した肉の槍に、フォリオは目を見開いて小さく悲鳴を上げる。

無理はせんでいいと言っているだろうが

だ、大丈夫です。あの、これ舐めて綺麗にしても?

どう見ても大丈夫な様子には見えないが、隣で尻尾をパタパタと盛んに振りながら期待の眼差しを送ってくるラディコがいる手前、やめろとも言いづらい。

好きにしろ

本人がしたいと言うのなら、これ以上気を使うのも馬鹿馬鹿しい。別に何かを約束したり言質を取られたわけでもない。Olはそう考えて、おざなりにそう答えた。

湯冷めしてもつまらん。こちらでやれ

Olは自身の泡を洗い流すと、浴槽の縁に座ってそう促す。ついでに魔術でその形状を少しいじって、二人の体格にちょうどいい高さの底をもう一つ作ってやった。フォリオとラディコは湯の中に腰まで浸かる形で顔を寄せ合い、そそり勃つ怒張へと舌を伸ばす。

んっふ、ちゅっは、ぁんっんむっ

ちゅ、ちゅっちゅぷっれる

二人が一瞬だけ視線を交わすとそれだけで意思疎通は済んだようで、フォリオは先端を口の中にぱっくりと咥え、ラディコが付け根から袋にかけてついばむように口づけ舐める。

決して巧みとは言えないが、湯殿にあって布を巻き裸身すら見せない女たちの口奉仕というのは、それはそれでまた別格の良さがあった。

とはいえ隠されれば見たくなるのも男の性だ。

外すぞ

二人の胸元にくいと指先を潜り込ませ、そう宣言する。

だ、ダメです!

それは許可を得るためではなくただ声をかけた程度の意識だったのだが、フォリオはぎゅっと胸元を押さえて拒否反応を示した。

ここまでやっておいて何故、とOlは一瞬思うが、考えてみればOlの方から望みを口にするのはこれが初めてだ。交渉しどころだと考えたのだろう、と納得する。

わかったわかった。お前の望みを聞くだけは聞いてやる。それで良いな?

元々こんな事をせずとも話は聞くつもりだったのだから、欲望に流されたわけでもない。むしろさっさと話を切り出さないフォリオに焦れてすらいたから、渡りに船とばかりにOlは告げる。

気づいてないとでも思っていたのか? 俺に頼みたいことがあるのだろうが。聞いてみるまで確約はできんが、聞いてやるから肌を晒せと言っておる

おお見通しでしたか

バツが悪そうに眉を寄せるフォリオに、何を白々しい、とOlは内心嘆息する。それとも、本当にOlが気づいてないと思っていたのか。

ではこの指を引いても良いな?

ボクはいいよ!

はい

Olの問いにラディコが元気よく答え、躊躇いがちにフォリオも頷く。肌と布の間に入れた指をぐいっと引っ張れば、それはあっさりと外れて二人の裸身が露わになった。

うう、粗末な身体でスイマセン

フォリオの背中から生えた翼が彼女を覆うように畳まれる。しかしそれでは意味がないとわかってはいるのだろう。中途半端に畳んだ翼の隙間からは、彼女の控えめな乳房も薄っすらと茂みの生えた秘所もバッチリ見えていた。

謙遜するな。お前たちの身体は十分美しい

魔王として君臨し、数多の女を当然の権利として抱いてきたOlにとっては、そんな風に恥ずかしがる様子はかえって新鮮だった。それに何より、手のひらにすっぽり収まりそうなフォリオの乳房も、殆ど凹凸のないラディコの子どものような裸身も、十分魔王の対照範囲内だ。

えっと、じゃあ、アタシの望みを聞いてもらえるということでしょうか

ああ、言ってみろ

眼の前に晒された魅力的な肉体に思わず抱いてからだと答えたくなるが、約束は約束だ。Olは鷹揚に答えて促すが、フォリオは躊躇うように押し黙った。

その、アタシが何を望んでいるのかもうお察しなんですよね?

大体のところはな。だが、具体的な内容は言わねばわからん

そう告げると、フォリオはなぜか驚き慌てふためく。

ぐ、具体的!? 具体的に言わなきゃダメですか?

当たり前だろうが

流石のOlも、フォリオの望みが具体的にどのようなものかまでは推測することしか出来ない。だがやはり何故か戸惑い言いにくそうにする彼女に、Olはある可能性を思いついた。

フローロのことが気になるか?

フォリオがそれほど躊躇う理由があるとするならその辺りだろう。Olはフローロの協力者として、彼女を魔王へと押し上げるために行動している。フォリオの望みがそれを邪魔するものになりうるのなら、Olに言いにくい事もあるだろう。

お見通し、ですかそれは、そりゃあ気になりますよ。だってフローロサンはOlサマの

気にするなとまでは言わんが、お前が思い悩む必要はない。その辺りの調節は俺の仕事だ

とは言え彼女自身に積極的にフローロを害そうというつもりがないのは、見ていればわかる。ならば衝突を避ける方法もあるだろう。

わかり、ました

Olの言葉に腹を決めたのか、フォリオの表情から迷いが消えた。

ぐ具体的に、ですよね

ああ。お前の口からしっかりと、何を望んでいるのかを聞きたい

そういう、コトなんですね

そういう事とはどういう事だ? とOlが問うより先に、フォリオは大きく息を吸って覚悟を決める。

そしておずおずとした動作で翼を広げて己の裸身を晒すと、Olに見せつけるように秘所を指で大きく割り広げ、言った。

アタシのはしたないおまんこをOlサマの太くて逞しいおちんぽで腰が抜けるまでズボズボ犯して、思いっきり奥に種付け膣内射精して欲しいです!

予想していたのとは全く異なる懇願に、Olは思わず問い返すのだった。

第9話部下の望みを叶えましょう-3

あんっ!そこぉっ!Olサマのぉっ!あぁっ!硬いの、当たってぇっ!あぁっ!そこ、そこぉっ!おまんこの奥っ! ずんずんされるの、だめぇぇっ!

浴室の中、肉と肉がぶつかり合う音と、水の揺れる音をかき消すように、フォリオの嬌声が響く。

くぅぅんっ!Olくんのゆびぃっきもちーよお!

そしてそれに負けじとばかりに、隣でラディコも喘ぎ声を上げていた。

浴槽のへりに手をかけ、高々と突き出された二つの尻。翼の下に隠れるような小ぶりな尻には男根が、尻尾の生えたむっちりとした尻には指が突き刺さっている。身長で言えばフォリオの方が頭半分ほど大きいのだが、筋力量の差もあるのか臀部だけならラディコの方が大きいのが趣深い。

Olを締め付ける膣口の力も、ふんわり柔らかく包み込むようなフォリオの中に対し、ラディコの膣は指を食いちぎるつもりなのかと思うほどにキツい。だがどちらもOlの与える快楽にどろどろに蕩け、滴る愛液が湯船にぽとぽとと落ちて波紋を作るほどであることは共通していた。

ああぁそこぉっ!Olサマのぉっああぁっカリがぁナカ、ひっかいてあぁっ! だめ、それ、だめ、だめ、だめになるぅぅっ!

Olがフォリオの中に突き入れるたび、彼女は膣内の様子を丁寧に実況する。誰かに仕込まれでもしたのかと思うような乱れようだが、彼女の身体に他の男の形跡を感じないのも確かなことだ。

以前抱いた時は間違いなくフォリオは処女だったし、それ以後誰かに抱かれたような様子もない。となれば単純に、この淫乱さは生まれついてのものなのだろう。あるいは他人の性事情を見聞きして妄想を逞しくしていた耳年増か。

ではお前は俺の身体を洗いながら、ずっとこうされたいと思っていたのか?

はいぃっ!Olサマの身体思ったよりずっと逞しくて、すごくエッチでっ!こうして犯して欲しいってずっと思ってましたぁっ!

エ、エッチだと?

それがいやらしい、蠱惑的であるという意味の言葉であることは言語スキルにより理解できたが、納得はしがたい言葉に思わずOlは反駁する。彼は自分の肉体が、女にとって情欲を催しうるものであると感じたことがなかった。

エッチですよぉっ!自覚なかったんですか!?スラッとしてる割に脱ぐとしっかり筋肉ついてるしっ!要所要所が骨ばっててがっしりしててっ! このおちんぽなんて、大きくて太くて逞しくて、もう凶器ですよぉっ!

確かに性器の大きさには多少自信はないでもなかったが、同時に大きさが快楽に直結するわけではないこともまた心得ている。重要なのは大きさよりもむしろ技術や観察力であると思っていただけに、フォリオの言葉は少々衝撃的なものだった。

今もっ奥ぅっ!ズンズン、突かれてっ!さっきから、アタシ、何回あぁっ!イってると、思ってるんですかぁっ!あぁぁぁっ!

自分の言葉に興奮したのか、フォリオが再び絶頂に達する。Olのカウントに間違いがなければこれで七度目だ。それに釣られるようにして隣でラディコも気をやる。こちらは十一回目になる。

二人ともいやに感じやすい。無論Olは処女であろうが善がらせ感じさせるだけの技量を持っているだけの自信はあるが、それ以前に妙に身体が出来上がっているのだ。特に小柄で幼いラディコなどは性感も未熟でも不思議はないのに、フォリオ以上に貪欲に快楽を貪っている。

もぉ、限界なんですぅっ!何度も、イカされて、わからされてぇっ!おなかの奥、切なくて、満たされ、なくてぇっ!Olサマの、子種っ!精液、欲しいんですっ!ください、注いで、満たしてぇっ!

フォリオの膣口がきゅうきゅうと締まり、言葉よりも更に雄弁に精をねだる。もしそれが演技によるものだとしたら、フォリオは稀代の大女優だろう。しとどに溢れ太ももから滝のように垂れ落ちる愛液や、快感にわなわなと震える膣のひだ、快楽のあまりに裏返った声色までをも演じているということになるのだから。

ではその望み、叶えてやるっ!

Olがぐっと腰に力を込め、射精に向けて更に膨らむ男根を敏感に感じ取ってフォリオは軽く達する。

ああっ、あああああっ!流れて、くるうっ!Olサマの、子種ぇっ!あああ、ああああっ!流し込まれて、ああっ!Olサマの、モノに、されてるううう!

そして注ぎ込まれる白濁の奔流に、高く高く張り詰めた声色は反転したように低く、呻くように状況を口にしながら、フォリオは何度も何度も絶頂に身を震わせた。

Olくぅん!

その隣で、ラディコが切なげに尻尾を振りながらこちらを振り返る。

待ってろ

Olはトドメとばかりにフォリオの奥を一度突いてから引き抜くと、すぐさまラディコの膣内に挿入した。まだ幼く小柄なラディコの膣口はひどく狭く圧力もキツいが、Olが指でたっぷりとほぐしたっぷりと愛液が分泌されたそこは簡単にOlの剛直を受け入れる。

くぅぅんんっ!

そして挿入とほとんど同時に、ラディコは背筋を反らして絶頂した。両手両脚と尻尾とがピンと伸ばされ、Olのものを激しく締め付けながらフルフルと身体を震わせる。

Olはその膣奥をえぐるようにして突き入れ、残った精液を思いっきり注ぎ込んだ。

きゅぅぅぅっ!!きゃうううううんっ!

犬が鳴くような甲高い声とともにラディコの絶頂がひときわ高く濃密なものとなる。あまりの快楽に崩れ落ちそうになる尻を掴んで支えると、Olは思うがままに幼穴を蹂躙しながら最後の一滴まで念入りに注ぎ込む。

満足いくまで射精を楽しんだ後ずるりと男根を引き抜けば、秘所からとろとろと白濁を溢れかえらせる尻が目の前に二つ並んだ。

その光景に、妙だという思いがOlの思考を一瞬かすめる。あまりにも都合が良すぎるのだ。この二人だけではない。フローロもナギアも魔族の女たちは非常に性に貪欲で、それでいてOl以外に抱かれたことはないのだ。

そしてOlもまた、それに違和感を抱いていなかった。いや、それに気づいた今もなお、理屈の上ではそれが奇妙なことであることはわかるが、感情的には至極当然のことであると受け止めている。

魔族の女を好き好んで抱くような男はいない、とサルナークは言っていた。魔族には男もいるが、彼らにとっても魔族の女というのはあまり魅力的な相手には見えないものらしい。だからこそ男に飢え、性に対して積極的な性質を持っているのかもしれない。

ユウェロイは人間だが、ブランによってずいぶん開発されていたしOlとしてもかなり本腰を入れたからそう違和感はない。そう考えれば一応、筋は通る気はする。

念のためOlは魔術で自身の思考を確認するが、外部から操作されているような形跡は確認できなかった。未知のスキルによる干渉である可能性も、ないわけではない。Olの魔術ですらすり抜ける、隠密性の高い洗脳や催眠に類するスキル。

だがもしそんなめちゃくちゃなものがあるとしたら、論理的に違和感に辿り着けるのでは片手落ちだ。姿を完璧に消しているのに足跡がはっきり残っている盗人のようなものだ。だが、このわけのわからない世界であれば、そのようなわけのわからないスキルもまた存在するのかもしれない

堂々巡りに迷い込み始めたOlの思考を、下半身に走る快楽が遮った。視線を下に向ければ、いつの間にか忘我の境から復活したフォリオとラディコが顔を寄せ合い、Olの一物を舐め清めている。

──と言えば殊勝に感じるが、その物欲しそうな蕩けきった表情を見るに更なる快楽を欲して肉棒をしゃぶっているだけと言った方が正確であるように思えた。

それを見た途端、Olは深く考えるのが馬鹿馬鹿しくなった。何らかの策略に巻き込まれているにせよいないにせよ、少なくともそれはこの二人が企んでいるようなものではない。

Olの一物に愛おしげに舌を這わせる様子はとても演技には見えなかったし、万が一それが演技だったとしてもただ警戒心を抱かせるだけの演技に意味などない。怪しかろうが怪しくなかろうが、そこに可能性がある限りOlはそもそも警戒を解くことなどないのだから。

そんなにこれが好きなら、ピカピカになるまで磨いて貰おうか

え?あ、はいっ

Olの声に我に返ったように、フォリオは浴槽から上がって石鹸と洗い布を取りに行こうとする。

違う。男の武器を磨くのに、そんな無粋なものを使うつもりか?

え、でも

フォリオは困惑したように二度、目を瞬かせた。手で洗えということであれば、やはり石鹸は必要だろうから呼び止める必要はない。舌と口で清めろということであれば、ラディコでしていたのだからそれを止める必要はない。そこまで彼女が思い至るのはほんの一呼吸のこと。すぐに彼女は、Olの意図に気づいた。

やはり聡い娘だ、とOlは思う。

ではOlサマの剣をこちらの鞘に入れて磨かせて頂きますね

だが己の花弁を両手で割り開き、表情を蕩かせて宣言する姿からはその知性は微塵も伺えない。そのギャップは、むしろOlを熱く滾らせた。

Olくん、ボクはー?

その一方でラディコは会話のいまいち理解できなかったらしく、しきりに首を傾げつつ物欲しげにパタパタと尻尾を振る。

お前はそうだな。石鹸の泡を自分の身体に塗れ

Olはフォリオを抱き寄せつつ、床石を操作して簡単な椅子を作り出す。そして文字通り羽根のような軽さの彼女を持ち上げると、そそり立った己の上におろした。

ああぁぁぁあっ!Olサマのぉっ!一気に、奥までぇっ!

軽いとは言っても肉も骨もある人の身体だ。対面座位の形で結合したフォリオの身体が、自身の重さでずぶずぶと剛直を咥え込んでいく。

そら、磨いてくれるのだろう?

は、はいぃっ!ふぁっ!これっあぁんっ!よすぎ、ますよぉっ!

フォリオはOlの首に腕を回し、上下に腰を振って言われた通り肉剣を膣穴で磨き始めた。

Olくん、これでいーい?

全身に泡を立て、まるで羊のようにもこもこになったラディコが不思議そうに尋ねる。

ああ。ではお前はそれで、俺の身体を洗え

ん-?こう?

ラディコは手を伸ばし、泡のついた手のひらでOlの肌を撫でる。小さく柔らかい掌の感触はそれはそれで気持ちよかったが、もっと柔らかく気持ちいいものがあることをOlは知っていた。

ラディコの小さな身体を抱き寄せ、泡だらけの肌をこすり合わせる。石鹸でぬるぬると滑る柔らかな女の肌は、どんな道具も敵わない最高の洗い布だ。

あははっ、くすぐったいよぉ!

肌が擦れる感触にまだ性感よりもくすぐったさが先に来るらしく、ラディコは明るい笑い声を上げる。

少し我慢しろ

Olはそう言ってラディコの背後に手を伸ばし、柔らかな尻を鷲掴みにしながらぐっと肌を寄せる。ラディコの尻はほとんど膨らみのない胸に比べてむっちりとした肉がついていて、実に良い触り心地だった。

こうしたらいいのお?

Olに抱きついたまま身体を上下させ、ラディコは泡にまみれた身体をぬるぬると擦り付ける。

んんっなんか、おしりさわるの、変な感じい

ヤじゃないけどお

何か感じるものはあれど、まだ快感にまでは繋がらないのだろう。微妙そうな表情のラディコの尻をOlは遠慮なく撫でまわす。そして彼女の反応を見ながら、徐々にその手が撫でる範囲を上へと移動させていった。

なんかはぁOlくぅんヘンな感じだよお

だんだんとラディコの頬が紅潮し、吐息に艶めいたものが混じっていく。その平らな胸の先端がピンと尖り主張を始めたところで、Olは彼女の尾の付け根を撫で上げた。

ふぁんっ!そ、そこは、だめだよお

まだ興奮しきっていないからか拒否を示すラディコだが、その反応は弱々しい。どちらかと言えばそれはしてほしいと言っているに等しい反応だった。

ラディ、舌を出せ

こお?んっ

言われるがままに口を開き舌を伸ばすラディコに口づけ、舌を絡める。更に尾の根元を撫でても嫌がる様子はなく、それどころかOlの身体に回した腕にぎゅっと力が込められた。

あぁっラディだけズルい

すると蕩けた表情でOlの剛直を膣穴で擦りあげる事に没頭していたフォリオが、恨めしそうな声でそんなことを言う。

フォル。来い

んっちゅっんんっ

なんとなく即席で思いついた愛称で呼んでやれば、フォリオは嬉しそうに目を細め唇に吸いついてきた。

フォリオ様こそ、おちんちん入れてもらってるのにずるいぃ

頬を膨らませるラディコとフォリオに交互に口づけてやりながら、Olは二人の柔らかな肢体による洗体を存分に楽しむ。泡でぬるぬると滑る柔肉と、固く張り詰めた先端がコリコリと胸板を刺激するコントラスト。

それを味わいながら戯れに尻から尾の先を撫でる度にラディコが甘い声を上げ、背筋から翼をもてあそべばフォリオがきゅうとOlの剛直を締め付ける。

はぁっ、はぁっOlサマぁっ!こんなの、えっち、スギますぅっ!アタシ、Olサマの身体、綺麗にしなきゃ、いけないのにぃ

そう口にするフォリオだが、自分で動いているためか攻められている時よりは幾分余裕があるようだった。

では、俺の身体を磨いてくれた礼にお前の中も綺麗にしてやろう

えっ?あぁぁぁぁあぁっ!

だがその余裕は、Olが下から突き上げると即座に吹き飛んだ。反射的に羽ばたこうとする彼女の翼を掴み、逃げられないようにして奥まで剛直をえぐりこむ。

あああああっ!Ol、サマぁぁっ!奥っ!奥にぃっ!ください、熱いの、Olサマの。せいえきぃっ!Olサマのシルシ、刻んでぇっ!

そして彼女が望む通り、たっぷりと最奥に白濁の液を注ぎ込んでやった。

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!

Olの背中に爪を立て、精を一滴も逃すまいとするかのように両脚をぎゅっと巻き付けながら、フォリオは盛大に達する。ピンといっぱいに広げられた両翼が絶頂の余韻にふるふると震え、やがて力尽きたようにばさりと垂れ落ちた。

ぐったりとOlに体重を預けながらも首だけ伸ばして口づけを求めてくるフォリオに応え、ゆっくりと男根を引き抜く。ねっとりとした愛液と精液が入り混じったものが糸を引いて膣口との間に橋を作り、ついで白濁がどろりと溢れ出す。

フォリオの身体をそっと下ろし横を向けば、ラディコはころんと転がるように尻もちをつくと、両脚を開き両手で秘裂を押し広げてOlに期待のまなざしを送る。ご丁寧に、くるんと丸まった尻尾までがそこに入れろと言わんばかりに入り口を指し示している。

無論、Olはその望みに満足いくまでたっぷりと応えてやるのだった。

第9話部下の望みを叶えましょう-4

男の人が、そのアレを、出せる量というか回数というか、そういうのって限られてるって聞いたんですケド

汗と愛液と精液とその他諸々。様々な体液で汚れた身体を改めて洗い流し、やや温度を下げた湯船に浸かっていると、フォリオは今更そんなことを言った。抱かれている間は散々子種だの精液だの口にしていたくせに、正気に返ればそんな事すら躊躇う様子が少し可笑しかった。

そうだな。女は何度でも絶頂できるが、男はそうはいかん。確認したわけではないが、おそらくこの世界の男も同じだろう

いや同じじゃないですよね!?

やや窮屈そうに、フォリオは突っ込みを入れる。

それとも何ですか、無限に出せるスキルじゃない、魔術?ってのがあるんですか?

なくはないが、使ってはいない

無限に射精するには、無限の魔力が必要だ。龍脈からいくらでも魔力を引き出せるOlの魔窟の中ならともかく、フローロから補給しなければ日々の生存にも事欠く今の状況でそう無駄に使うわけにもいかない。フォリオとラディコの二人を相手にしたのは、自前の精力によるものだった。

お前たちを散々イカせたから錯覚しているだけだ。俺自身が達した数はそう大したものではない

六回は十分大した数だと思いますよ!?

あんな状況で数えていたのか、とOlは少し感心する。最初に二人に半分ずつ注いで一回。その後二回ずつ膣内に射精し、最後に口で奉仕させ全身に浴びせて六回だ。

それに今だってまだ、全然お元気デスし

湯の中でそそりたつ男根を見やり、フォリオは自分の胸を鷲掴みにするOlの手のひらに自分の手を重ねる。Olは湯に浸かりながら左右に侍らせたフォリオとラディコの肩に腕を回すようにして、その乳房を愛撫していた。

というかアタシたちのおっ胸なんて揉んで楽しいですか?フローロサンやナギアサンみたいな立派な身体じゃ

楽しい

ならいいんですケド

言葉を遮って即答するOlに、フォリオは気恥ずかしそうに視線を背ける。実際、湯の中でも見えるくらいに雄々しく股間を膨らませているのだから、その短い言葉は十分な説得力を持っていた。

待て。フローロの事が気になるというのは、そのことか?

二人を抱く前の会話を思い出し、Olは問うた。彼はてっきりフローロに敵対する話かと思っていたのだが、単に性交を望むだけであるならあの会話はおかしい。

それもありますけど、フローロサンはOlサマの奥さんなんですよね?

気まずげにそう問われ、Olは久方ぶりに一般的な感覚を思い出す。そういえば一夫一妻制において妻帯者が他の女を抱くのは、不貞であり悪徳であり罪なのだ。フローロ自身もまるで気にした様子がないから忘れていたが。

気にするな。どのみちフローロだけでは足りん

それは、アタシたちにすらあれだけ出せるならそうでしょうね奪い合いにならなくて何よりですケド

フォリオがOlの一物をギュッと握って複雑そうな表情で言う。精の話ではなく魔力の話をしているのだが、まあフォリオが納得したならいいかとOlは話を流した。

ところで結局スキルを育てるスキルの件はなんなんだ

気になっていたことを改めて問えば、思ってもみないことを聞かれたとでも言いたげにフォリオは目を瞬かせた。

俺はてっきり、お前はそれを求めて風呂に入ったのだと思ったのだ

そんなそんな。抱いてもらった上にそこまで望むなんて、図々しい真似はさすがにできませんよ

恐縮するフォリオに、やはり価値観が根本的に異なっていることを感じた。あるいは魔族というのは、人間とは貞操観念が真逆なのかもしれない。

とにかく、話だけでもしてみろ

わかりました。では、後でご案内しますところで

フォリオはちらりと自分の手の中にあるものへ目を向けた。彼女が何気なく上下させていた手のひらの中で、脈打つ肉塊はすっかり硬くそそりたっている。

七回目します?

するう!

途端、余韻と疲れから先ほどまでぐったりしていたはずのラディコが元気よく答える。

一回だけだぞ

Olは嘆息し、そう答えるのだった。

そして結局、三回した。

口と膣とに追加で一回ずつ吐精されたフォリオに案内されOlが向かったのは下層の通路。フォリオが使っていた部屋の奥にある回廊の行き止まりであった。

ここになにがあるでしょう!

聞き及んで知っているのだろう、やはり口と膣とに一回ずつ精を注ぎ込まれたラディコがなぜか自慢げにそう尋ねる。物置代わりに使われていたらしく、雑然としたものが積み上げられているが、Olの目には一目瞭然だった。

隠し扉か

なんでわかるのお!?

あっさりと言い当てるOlに、ラディコは目を丸くした。

そもそもなにもない突き当りでここだと言われれば考える余地は殆どない。だがそれ以前に、積まれている荷物には巧妙に偽装されてはいたが、奥の壁を隠す意図があった。そういった意図を読むのはダンジョンマスターとしての基礎能力だ。

フォリオが壁のスイッチを押すと、音もなく壁が開いて小さな部屋が現れた。

これを溶かすことは出来ないでしょうか

人が数人入れば埋まってしまいそうな大きさの部屋にあったのは、巨大な氷のようなものだった。岩のように角張った高さ三メートルほどの結晶で、透明ではあるが中を見通せるほどではない。そして薄っすらと、その奥に人の姿が見えた。

これは生きているのか?

わかりません

Olの問いに、フォリオは首を振った。氷の表面に触れるとひんやりと冷たく、硬くもなく、かと言って柔らかくもない、不思議な感触がある。

一体誰なのか、なぜこうなっているのか、いつからこうしているのか。何もわかりません。ただ一つわかることは──

切実な声色で、独白するようにフォリオは言う。

アタシが、どうしてもこのヒトを助けたいってことです

フォリオは首を横に振った。その理由もまた、定かではないということだろう。

アタシはこの場所を、母から聞きました。母もまた、その母アタシの祖母に聞いたんだそうです。その祖母もそのまた母にアタシたちの一族に、ずっと伝わっているんです

相当の年月が経過しているということか

一族の悲願。そう考えれば、フォリオの態度にも納得はいく。切実に解決法を探してはいるが、だからと言って自分の代で解決する問題であるとも思ってはいないのだ。

少なくとも百年以上は経っているって話です

そういえば、一年とは何だ?

ふと、Olは疑問を持った。彼の住んでいた世界で、一年が何かを疑問に思う余地はない。春が来て、夏が過ぎ、秋を経て、冬に至る。そしてまた春がくれば、それが一年だ。正確な日にちを割り出すには星を読む必要があるが、星読みの心得どころか字すら読めない農夫であろうとも、暦くらいは知っている。

だがこの石造りの世界で四季など望むべくもない。壁自体が明るくなったり暗くなったりするので朝と昼との区別、一日の始まりと終わりはあるが、夜になっても星を見ることなど出来ない。だが、人を鑑定すると年齢という項目があるのだ。つまり一年という概念もあるということに他ならない。

んっとね、ぎゅーってなって、ぽんってなって、ばーってなって、ふわーってなったら、いちねんだよ!

全く要領を得ないラディコの説明を聞いて、Olは助けを求めるようにフォリオに視線を向けた。

ええと季節というのがありまして。季節によって出てくるモンスターが変わるんですが、四種類のローテーションなんです。同じ季節に戻ると一年ですね。暦のスキルがあればもっと正確にわかるんですが

やはりスキルか、とOlは内心独白する。この世界は全てがスキルとアイテムで成り立っていて、それはモンスターを通じてもたらされる。だがまさか、季節までもがそうだとは。

まあ良い。それよりも、この氷だが

この世界が奇妙なのは今更の話だ。Olは目前の問題に目を移す。

はい。見ててください

フォリオの手のひらから巨大な炎が迸り、氷に当たった。石でできたダンジョンキューブさえ投下するほどの熱量を持つ炎だ。もしそれが本当に氷で出来ていたならば、一瞬で蒸発してしまうだろう。

この通り大炎のスキルでも、ラディの鉄腕でも全く傷つかないんですよね

だが爆炎が消え去った後、氷柱は変わらない佇まいで残っていた。

スキルで作り出したものや影響を消す解呪というスキルも持ってるんですが

フォリオの手のひらから淡い光があふれ、氷柱を照らす。そちらには一応効果が認められた。氷はほんの僅かにその表面が溶け、確かに減じていく。しかしそれもほんのわずかで、フォリオが光を照らすのをやめるとすぐに元の形状に戻ってしまう。

こんな感じで、全部溶かすのは難しそうなんです。だから、もっと強い解呪を使えればなんとかなるんじゃないかとただ、解呪の上位スキルなんて聞いたことないんですよね

伝説に聞くスキルを育てるスキルであれば解呪を強化することもできるのではないか。フォリオはそう考えたらしい。

俺自身がその上位の解呪を使えるとは思わなかったのか?

っ!使えるんですか!?

勢い込んでOlに詰め寄るフォリオ。

残念ながらそんな都合のいいものはない

ですよね

肩透かしをするような返答に、肩ごとバサリと両翼が下を向いた。

これはそもそも氷ではない。それどころか、物質ですらないな

そうなんですか!?

Olは再びそれに触れる。ひんやりとしていて冷たいが、Olの体温で溶ける様子はない。氷であるなら多少なりとも溶け、手のひらに水滴がつくはずだ。

これはおそらく高度な封印術の一種だ。中の熱すらも封印されているため冷たく感じられるが、実際に温度が低いわけではない

どういうことー?

Olの説明に理解が及ばなかったのか、ラディコは首をかしげる。

人の肌が暖かく感じられるのは、それそのものが熱を放っているからだ。人間の体温などそう差はないが、抱き合えば互いに暖かく感じるだろう?

そそうですね

フォリオの頬に手を当て、Ol。先ほどまでの情事を思い出したのか、フォリオは少し赤面しつつもうなずく。

その逆で、触れれば熱は封印の中に入り出てこない。つまり熱を奪われているため、実際の温度と無関係に冷たく感じられるのだ

氷じゃなかったらどうなるの?

話を理解してるのかしていないのか、ラディコが鋭い質問を投げかける。確かに重要なのはこれが何であるかではなくどうやったら消すことができるかだ。

解呪はスキルによって作ったものや影響を消すと言ったな。だがおそらく、スキルそのものを消すことはできまい

そりゃそうですよ

例えば、解呪であらゆる攻撃を防ぐ鋼の盾を消すことはできない。だがユウェロイの全身装甲で作り出した甲冑や投槍で作り出した槍ならば消すことができる。

他にも他人の能力を阻害する呪いに属するスキルの効果を消すこともできるが、Olが彼女を下したときに使った麻痺針のような毒は属するスキルは不可能だ。どのみち自分自身が麻痺してしまっていては、解毒スキルを持っていたとしても使えないから意味はなかったが。

これはおそらくスキルそのものに近い。その解呪を強力にしても、消すことはできまい

打つ手なしということですか

スキルを消せるスキルなんて、それこそ御伽噺だ。子供なら誰もが考える空想上の存在にすぎない。

いや。単に力づくでは無理だというだけの話だ

そんな都合のいいものはないとOlが言ったのも、同じ意味だった。この世全ての扉を開けるマスターキーなどというものはない。だが、それは扉を開けられない事を意味しない。

絶対に解けない封印などというものは、どんな封印をも解く魔術と同様に実在しないし、そもそもそんなものを作る必要がない。

解けない封印を作るくらいなら、その能力を持って中身を滅ぼしてしまった方が確実かつ手っ取り早いからだ。極論を言えば、すべての封印はいつか解かれるためにあるともいえる。

とは言え精巧だな。百年以上経て綻び一つない。これを解くのは少々骨だな

封印術は苦手という程ではないが、得意というわけでもない。少なくとも同じものを作り出す自信はOlにはなかった。

え?解けるんですか?

だが、フォリオは信じられないとでも言いたげに目を見開く。

今すぐには流石に無理だ。これにばかりかまけるというわけにもいかん。一年や二年は覚悟しておけ

少し期待させすぎてしまったか、と少々ばつの悪い思いでOlは言い訳めいた言葉を口にする。

実際には年単位の時間が必要とまでは思わなかったが、この先どの程度時間が取れるかもわからないし、この手の解呪は技術や知識よりも発想や思い付きを問われる。ハマってしまえば実際そのくらいかかる可能性もないではなかった。

いやいやいやいや、アタシの一族代々の宿願ですよ!?一年や二年?本当ですか?

今まで百年以上、糸口すら見つからなかったのだ。にわかにはOlの言葉が信じられず、フォリオは念入りに尋ねる。だがOlは、それを自身の能力への不信と受け取った。

良かろう。そこまで疑うならば、明日までにある程度の目処くらいはつけてやる

明日!?

驚くフォリオをよそに、Olは封印の前に座り込んで本格的に解析の準備に入る。彼の周囲にいくつもの魔法陣が浮かび、フォリオには理解できない情報がその表面に現れた。

ほんと、奴隷風情になんでそこまでしてくれるんですかね

髪をかきながらぽつりと漏らしたフォリオのつぶやきは、もはやOlには聞こえていないようだった。

第9話部下の望みを叶えましょう-5

とりあえずはこんなものか

一通りの情報を収集し終え、Olは封印から意識を離す。気づけば周囲の壁は薄っすらと明かりを放っていた。太陽のないこの迷宮の一日は日暮れと早朝の区別がつきにくいが、体感的には後者だろう。

解析を始めたのは昼過ぎの事だったから、ちょうど半日近く経ったことになる。

フォリオとラディコの姿は既になく、傍らにスープとパンが置いてあった。おそらくフォリオが置いていったのだろう。一体いつ差し入れたものだったのか、すっかり冷めきったスープを飲みながら、Olは解析した情報に思いを巡らせる。

術は非常に複雑なものながら、構造自体は思っていたよりもずっとシンプルな結界だった。おそらくこの封印は、時の流れと空間の距離を極度に捻じ曲げたものだ。さほど大きいようには見えないが、実際には極めて広大な空間が圧縮されている。フォリオが放った炎が表面で消えたように見えるのも、実際には中心まで到達できなかったがゆえのことだ。

シンプルであるがゆえに対処が難しい。Olの力であれば結界の境を超えて中に入ることは出来るが、出てきたときには下手をすれば数百年が過ぎ去っている、などという羽目になりかねない。

長年綻び無く保っているのも納得だ。結界そのものがその効果を受けているから、主観的には張られてからそう長い年月は経っていないという事なのだ。

いずれは自然に解けるだろうが、それが何年後の話になるかはわからない。そして外部から解くにしても、干渉自体が恐ろしく鈍化されてしまうために酷く手間がかかることにわかった。鍵穴自体は単純だが、鍵を突っ込んで回すのに時間がかかるのだ。

ともあれ、ひとまずの目処がついたのは確かなことだ。余裕を持って三月もかければ封印は解けるだろう。問題は、解いた後のことだ。

Olでさえこれほど手こずる封印。施した者も、そして施され封印されている者も、相当の力を持っていると見て間違いない。そんな者の封印を軽々に解いてしまっていいものか。中に入っているのが、友好的な存在とは限らないのだ。

Olはじっと封印の中に閉じ込められている人影を見つめる。半透明の封印に入ったその人影は、ぼんやりとした輪郭くらいしか見えず、恐らくは女だろうという程度しかわからない。

だがその影を見ていると、何故か無性に嫌な予感がした。胸がざわつくというか、厄介なことになるだろうという、漠然とした勘のようなものが脳裏をよぎるのだ。

もっとも、Olはそういった勘をあまり当てにはしない。ユニスたちのような戦いに生きるものたちであれば直感に従って上手くいくこともあるが、Olの強みは論理的な解析と分析である。事実というものは直感に反することも多い。

ともかくこれで最低限の仕事は果たしたはずだ、とOlは凝り固まった身体を伸ばす。もう一度ゆっくり湯に浸かりたい気分だが、それ以前に睡眠が足りていない。まずはひと眠りするかと、Olは下層にあてがわれた自室へと戻る。

む。どうした?

そこにはナギアとフローロが待ち受けていた。

どうしたではありませんわ!

ナギアは蛇のような下半身を波打たせるとしゅるりと詰め寄り、ひどい剣幕で言い募る。

好きなだけ抱いて頂けるという約定、お破りになられますの?

ナギアさん、ずっと待ってたんですよ

初めて彼女を抱いたとき、確かにそんな約束をした。だがそれ以来、翼獅子退治に湯殿作り、結界の分析と忙しくて相手をしてやれなかったのは確かだ。

わかったわかった。お前たちの腰が抜けるまで相手してやる

徹夜明けのだるい身体に鞭を打ち、Olは二人を抱き寄せた。

んっあっ、は、くっぅぅんっ

ふふ。可愛らしいですね

布を張り巡らされた薄暗い部屋を満たすのは、甘い匂いと甘い声。

二人の女が一糸まとわぬ姿で睦み合っていた。

もっともっとっくださいっ!

今日のユウェは欲しがりさんですね

ユウェロイが大きく開いた両脚の間、秘部にブランの指がずっぷりと埋まる。

あぁっもっともっとぉ!

ええ。もっと良くして差し上げますからね

くちゅくちゅと音を立て、ブランの白魚のような指がユウェロイの膣内を出入りする。

奥奥にぃっ

ふふふこう、ですか?

あぁっ

ユウェロイは見てしまった。ブランの指が、その根本までユウェロイの中に差し込まれている。

──そしてそれでも、触れて欲しい部分に届いていない。

(そんなそんなはずがない)

否定すればするほど、思い出してしまう。

(敬愛するブラン様との逢瀬こうして頂けるご褒美。これが最高のもの、至上のものであるはずだ)

言い聞かせるまでもなく、それが当然のことだと思っていたことに、しかしユウェロイは気づかない。

(あんな男に嬲られることが良いものであるはずがない!)

だが彼女の脳裏に去来するのは、Olの長く太いゴツゴツとした指先。そして、それにもまして硬く大きい、あのグロテスクな器官であった。

(ブラン様より、あんな男のほうが気持ちいいなんて、ありえない!)

あらあら。そんなに腰を浮かせてはしたないですよ

快楽を求めて無意識に腰を突き出すユウェロイに、ブランはクスクスと笑いながら攻める。

っあっあぁっ

びくんと身体を震わせて、ユウェロイは達した。

良かったですか?

は、はい

あまりにも浅い絶頂。しかもそこでブランはやめてしまう。Olならば達しても更に攻めてきたはずだ。

ブラン様ありがとう、ございました

そんな思いを振り払い、ユウェロイは頭を下げる。前回断ったせいか、ブランの攻めはいつになくねちっこく、長いものだった。だがその長さに反して、ユウェロイは全く満足できていない。むしろ中途半端に刺激されたせいで、余計に飢えるような感覚があった。

(そんなはずがない)

心の結びつきこそ最重要であるはずだ。ましてやあんな醜悪な、男などによくされるわけがない。

だが気づけば、ユウェロイの足は下層のOlの部屋へと向かっていた。

あっ、あぁぁっ!んっ、ふぁぁあっ!

部屋の中からは、女の嬌声が漏れ出ている。フローロの声だ。魔力を供給するとかいう名目のもと、あの二人は暇さえあればまぐわっている。先日の朝もそうだ。ユウェロイはいつものように、扉の隙間から中を覗き見た。

ああぁっ!Olぅっ!いいっ、そこぉっ!奥ぅっ!気持ちいいですぅっ!

Ol様あぁっわたくしのお胸んっはぁっそんな、しちゃ、いけませんわっ!

そこには信じられない光景が広がっていた。

Olは寝台の上で四つん這いになったフローロの腰を抱えるようにして後ろから突きながら、もう片方の腕でナギアを抱き寄せ、舌を絡めあっている。二人の女を同時に抱くなど、ユウェロイの常識からは考えられないことだ。

そもそも自分以外の相手と関係を持つという時点で許容し難いというのに、目の前で睦み合うなど論外だ。だと言うのに、ナギアもフローロも随分と幸せそうだった。

魔族というのはそういうものなのか、と思いかけて、ユウェロイは首を振る。皆が皆そうであるはずがない。彼女が敬愛するブランもまた、魔族だ。

ではやはり──特殊なのはOlの方なのか。ユウェロイはそう思わずにいられなかった。まるで本物の槍のように太いOlの一物が、ズドンとフローロの中に打ち込まれる。まるで獣のように四足で立ち、みだらに尻を掲げながら、フローロは気持ちよさそうに嬌声を上げた。

激しくフローロの尻に腰を打ち付けながらも、Olの手はナギアの胸を鷲掴みにしている。子供の頭ほどもあろうかという大きさのその胸を、Olの手のひらはやすやすと覆い、無骨な指が胸の肉の形をぐにゅりと歪めて沈み込んでいる。

ブランの、どこまでもしなやかで美しい芸術品のような指とはかけ離れた、ゴツゴツとした指だ。体つきだってまるで違う。中途半端に筋肉のついた身体は、醜いとさえ言ってしまっていいだろう。ユウェロイが嫌悪する男の身体だ。

──だが。

あぁっ!Olっ!そこぉっ!そこ、気持ちいいっ!奥っ!あぁっ!奥、ズンズンしてっあぁぁっ!

Ol様っんっはあぁっわたくしの胸あぁっそんなに、いじらないで下さいませあぁんどうにか、なってしまいそうですわっ!

気持ちよさそうだ。ユウェロイはどうしてもそう思わずにはいられなかった。

あんな風に、太い指で身体を弄ばれて。

あんな風に、長いモノで奥を突かれて。

ユウェロイの腹の奥が、きゅうと切なくなる。気づけば彼女は服の中に手を突っ込み、秘裂を自分で弄っていた。だが、足りない。自分の指では、本当に気持ちいい部分に届かない。

っあ、んっは、あぁっ

くちゅくちゅと音を漏らすのも構わず、ユウェロイは己を慰める。どうせ部屋の中からは、盛大な喘ぎ声と濡れた肉のぶつかる音が聞こえているのだ。ユウェロイが秘部を擦る微かな音など誰も気には止めないだろう。

あっあっんっ、あっあっ、ああっ!

赤黒い肉の槍がフローロの中を貫くたび、彼女の高い声が甘くあがる。それと同時に、ユウェロイの腹の奥はどうしようもなくじんと疼いた。フローロの膣内から引き抜かれた肉塊の根本が垣間見えるたびに、それが己の中を蹂躙したときの感覚を否が応でも思い出してしまう。

なのに、その欲求が満たされることはない。奥のそこに、彼女の指が届くことはない。

そう、だ

不意に天啓を得たかのように、ユウェロイはあることを思いついた。全身装甲のスキルで作り出す鎧は、その形や大きさをある程度自由に設定することが出来る。それを利用して、己の手に薄い篭手を作り出す。

ちょうど──Olの手と似た大きさになるような、篭手を。

んっは、あっあぁっ!

つぷりと差し入れると、ひんやりとした鉄の冷たさが初めに感じられた。

んんっく、んっ!

鉄の籠手が中を傷めないよう、慎重に奥へと進めていく。

あっ!

そして、ついに今までは届かなかった最奥へと辿り着き──

ああぁ

ユウェロイが感じたのは、絶望であった。

なんで

男でいいのならば、鉄の篭手だっていいはずだ。だが実際にそこへ届かせてみれば、まるで味気のない快楽だけがそこに存在していた。

ならば

形や大きさを制御できるという点においては、投げ槍のスキルもまた同様だ。切っ先を丸め、大きさを最大限短くし、形を変え出来上がったものは、もはや完全に槍とは呼べぬものであった。いや、肉槍というくらいだから、それもまた槍と呼ぶべきかもしれない。ユウェロイは迷いなく、それを己の中に突き入れる。

あっくっ、あぁっ

冷たい塊が、己の中を満たしていく感覚。その冷たさは不愉快ではあったが、感覚そのものはこれこそ己が求めていたものだとユウェロイは確信する。

あっ、あぁっ、Ol、Olぅっ!わたし、もうっあぁっ!中にっ!中に、下さいぃっ!いっしょに、いっしょにぃっ!

ああ、出すぞっ!

Olの、低い、どこか切羽詰まった声。男のその声に、反射的にユウェロイの身体に衝撃が走る。

あああああああぁぁぁぁぁっ!

フローロの声が高く上がり、Olの肉槍が一際深く彼女の膣内にねじ込まれた。聞こえるはずもない射精の音が、聞こえてくるかのような絶頂。全身を突っ張り身体を震わせる雌の体に、雄が容赦なく種を流し込む。

あぁぁっ!ああっ!あっ、あぁぁぁあっ!

二度、三度、四度。絶頂のただ中にあるフローロを更に追い込むようなピストンを見つめながら、それに合わせてユウェロイも絶頂に身を震わせた。

は、あぁぁはぁぁ

ぬぷり、と音を立ててOlの一物が腰から引き抜かれ、大量に注がれた白濁の液がフローロの膣口から溢れ出る。

気持ちよかったです

この上なく幸せそうな表情で、フローロはそう呟いた。

気持ちよかった。それは、ユウェロイもまた同じであった。Olの物を模したそれで奥を貫く感覚は、かつてないほどの快楽を彼女に与えた。

だと言うのに、なぜ自分は今これほど惨めな気持ちになっているのだろう。

膣内に残されているのは冷たい鉄の塊で、穢らわしくおぞましいはずの白濁の液が、なぜこれほど羨ましく感じられるのだろう。

同じ快楽を味わいながら、フローロはあんなに幸せそうなのに、なぜ自分はこんなに虚しいのだ。

次はわたくしの番ですわ

ナギアが嬉しそうに、反り立ったままの肉の塊に顔を寄せ、舌を這わせる。

あれは排泄の器官でもあるはずだ。そうでなくとも、他の女の愛液と精液とにまみれて汚れきっている。そんな物を舐めしゃぶるなど、正気とは思えない。だが、ナギアの表情もまた、幸せそうに見えた。

己の膣内から引き抜いた鉄槍をぼんやりと見つめ、ユウェロイはそれをぺろりと舐める。

鈍くまずい、鉄の味がした。

第10話ダンジョンを探索しましょう-1

ここから先が探索区だ

先頭を進むサルナークが通路に置かれた石像を剣で指し示し、不愛想にそう告げる。

Olはサルナークとフォリオ、ラディコの三人を伴い、モンスターの狩猟に探索区と呼ばれる区域を訪れていた。特異個体のような例外がない限りは、モンスターを倒してアイテムやスキルを集めることがOlに課せられた日常的な仕事だ。

これは何だ?

Olはその石像に目を留め、尋ねる。

見れば分かるだろ。探索区と居住区の境には、この像が置いてあるんだ

それはそれでどういうことなのか聞きたくはあったが、聞いても納得のいく答えは返ってこないであろう事はわかっている。代わりに、Olは別のことを尋ねた。

これは何をかたどった像なのだ、と聞いている

それはOlの腰くらいの大きさの、翼と角を持ち二本の足で立つ生きものの像だった。造形としては非常に大雑把で、かろうじて頭と体と手足の判別がつく程度でしかない。人に類するものなのか、モンスターなのかすらわからなかった。

あん?どういう意味だ?

これは立つ者と呼ばれています

怪訝そうに眉をひそめるサルナークをフォローするように、フォリオが声を上げる。

母なる壁と同様、壁界に最初から存在していると言われています。この像に似たモンスターは見つかっていませんね

彼女の説明に、Olはサルナークの反応の意味を悟った。そういえばこの世界には、物を作るという発想が極めて希薄なのだ。だからこのような像も、誰かが作ったものであるという発想がない。故に何かをかたどるという言葉の意味も分からないのだ。

立つ者境界に立っているという意味か?

確かにその石像は、二本の足で立ってはいる。しかし像などというものは基本的に立っているものなのではないか、とOlは訝しんだ。

名前に大した意味なんかないだろう。別にモンスター共がこれを超えられないってわけでもない

退屈そうにサルナークが吐き捨てる。

確かに結界の類はないようだ。では探索区と居住区とは違いとはなんだ?

出てくるモンスターの質と出方が違うんだ

モンスター自体は、居住区にも出現する。かつて最下層でフローロが倒し日々の糧としていた角兎などはその典型だ。

居住区に出てくるモンスターははっきり言って雑魚だ。それに出てくる場所も決まってる。だがこの像を超えた場所に出てくるモンスターは一段凶暴だし、どこから出てくるかも予測できない

似たような像は更にこの奥にもあります。そして、像を一つ超える度に出てくるモンスターの脅威度は上がります。奥に行けば行くほど敵は強くなる、ということですね

サルナークの説明にフォリオが補足する。すると、サルナークは軽く舌打ちした。魔族嫌いは相変わらずらしい。

つよいモンスターをたおすと、つよいスキルがもらえるんだよ!

端的なラディコの言葉に頷きつつも、奇妙なことだとOlは思う。奥に行けば行くほど敵が強くなり、その分実入りがよくなるというのはOlのダンジョンでも同じだった。と言ってもそれは、侵入者である冒険者側から見た時の話だ。

Olたちダンジョンに住む者から見れば、自分たちの住居に近い場所ほど強力な魔物が守っているという事になる。魔物とて、戦えば傷を負うし疲弊もする。どれほど強大な魔物であろうと数の暴力の前にはやがて屈してしまう。だから多数の弱い魔物を敵の近くに配し、少数の強い魔物で中枢を守る事は理にかなっている。

だがこの世界の者たちは皆ダンジョンに暮らす民でありながら、同時にそのダンジョンを探索する者でもあるのだ。彼らはダンジョンの中心に近い場所に住んでいるから、そこから離れるほどに敵は強くなるという事になる。

だが、それは何故なのか?法則性があるからにはそこには理由があるはずだ、とOlは考えていた。

前衛と後衛がちょうど二人ずつだ。オレとそっちのチビが前を行く。大将と羽女は後ろを歩け

チビじゃないよお!

両手を振り上げ抗議するラディコを、サルナークは完全に黙殺した。そうやって腕を上げてもサルナークの上背には敵わないのだから、評価自体は事実ではあった。

この通路の広さだと、前衛が二人では横を抜かれるのではないか?

Olが知る限りこの世界の通路の幅はどこも同じで、およそ十六フィート半この世界の単位で表現するならば五メートルだ。二人でカバーするには少々広い。

まあな。だがアンタに前を張らせるわけにもいかんだろ。フローロのお嬢がいれば良かったんだがな

本人も行く気だったようなのだがな。ブランに却下された

過保護なこって

呆れたようにサルナークは肩をすくめる。

過保護、か

だがその言葉が、どこか引っかかった。具体的に何が、というわけではない。しかしブランの態度には、妙に違和感を覚えるのだ。

ま、羽女はともかく大将のことはオレが守ってやるさ。まだアンタに死なれるわけにはいかないからな

いいや、その必要はない

首を横に振り、Olはサルナークの隣に並ぶ。そして宣言した。

俺が前衛になる

あん?あのよくわからん箱みたいな武器はぶっ壊されたんだろ?ナギアのヤツから剣技スキルでも奪ってきたのか?

Olの武器であったダンジョン・キューブはブランの攻撃によって破損し、翼獅子との戦いで完全に破壊された。核となる石材から粉々にされてしまったから、もはや修復すら不可能だ。

いいやもっと、情けないものだ

情けない?

Olの言葉に、フォリオが首を傾げる。

よくわからんがまあお手並み拝見といこうか

サルナークの瞳がギラリと剣呑に輝き、回廊の奥を見やる。ガシャガシャと音を鳴らしながら現れたのは、全身を白い殻に覆われたモンスターだった。遠目には鎧を着こんだ騎士のようにも見えるが、その腕は四本ありそれぞれに剣を手にしている。

ふと、Olの脳裏を四本腕の悪魔とその庇護対象であり、弟子でもあった少女がよぎる。

白殻兵が三匹か。一人一匹だな

いや。それには及ばん

接敵に備え剣を構えるサルナークを無視して、Olが一歩前に出る。かと思えば、彼は凄まじい速度で白殻兵に肉薄した。

サルナークが瞠目する。

なんだそりゃあ!?

Olの腰辺りから獣のような脚が突き出して、彼はまるで半人半馬のような姿で駆けていた。かと思えばその右腕が巨大な獅子の顔となり、白殻兵を一口で噛み砕く。

大将、一人で突出しすぎだ!

敵は後二体いる。サルナークが慌ててOlを追いかけるが、それよりも早く二対四本の腕が二組、計八本の白刃がOlに迫っていた。

だがそれを、Olの背中からバサリと広がった蝙蝠のような翼が阻む。薄く柔らかそうな皮膜はしかし、白殻兵の振るう剣に傷一つつけられることはなかった。

お返しとばかりにOlの左腕から鋭い爪が三本生えて、白殻兵を四つに切り捨てる。そして慌てたように最後の一匹に向け、Olは右腕の獅子頭を向けた。

放て、アレオス

その名を呼ぶと同時に凄まじい熱量の炎がほとばしり、一瞬にして最後の一匹が消し炭と化す。

ふむ。悪くはないな

信じられないドロップ品を、モンスターに戻したんですか!?しかも一部だけ!?

二匹目を倒してから三匹目に移るところで少々もたついたが、もともと戦闘の専門家でもないOlの戦果としては上々だ。その結果に満足していると、フォリオが興奮した様子で翼をはためかせ文字通り飛んできた。

お前が思っているほど大した技術ではないぞ。もともと変形する機構があるのだから、それを少々弄っただけだ

それも、翼獅子アレオスにOlの意思を理解するだけの知能があり、こちらに従うことに同意しているからこそ出来る芸当だ。他のモンスターで同様のことを試しはしたが、一部だけアイテムとして、一部だけモンスターとして存在し機能するなどという技を使えるのはアレオスだけだった。

いやいやいやいやOlサマの感覚、絶対おかしいですよ

そればかりはオレも同意する

頭を抱えるフォリオに、サルナークが呆れていいやら感心していいやら計りかねたような表情で頷く。

ねえねえOlくん、どうしてそれがなさけないの?

ラディコだけが特に気にした様子もなく、素朴な疑問を呈した。

この戦い方は部下の猿真似だからだ

Olが知る中で最も強い存在──魔王軍最強の獣の魔王、ミオのほんわかとした顔を思い出し、Olは呟くように答える。

ラディ、お前にも新しい武器を用意した

なあにこれー?

Olが懐から取り出した物に、ラディコは首を傾げる。

なんだそりゃ?

不思議な形をしていますね

のみならず、サルナークとフォリオも首を傾げる。それはこの世界には存在しないし得ない道具だからだ。

大まかな形としては取っ手がついた球形の器である。ちょうどラディコの頭くらいの大きさで、上には大きく穴が空いており、取っ手の逆方向、側面には長く管が伸びている。そして管の先端は大きく広がり、無数の穴が空いていた。

これの名は、如雨露という

ジョウロ?

要するにそれは水やりの道具であった。空がなければ太陽もなく、植物すらないこの世界にジョウロがあるわけがない。その割に木製品はあるのだが、これは木のような姿をしたモンスターがドロップするものであるらしい。

フォリオ、水塊で水を入れろ

水デスか?

怪訝そうにしながらも、フォリオは言われた通りラディコの持つジョウロに水を入れてやる。

鉄の腕は全身の筋力を強化するスキルだと思われている。が、違う。実際に強化しているのは、力そのものだ

鋼の盾が攻撃を防ぐスキルではなく、力を無効化しているのと同じだな

対となるスキルを二つ名にするほど使い込んでいるだけあって、サルナークはOlの説明をすんなりと受け入れる。

どう違うのお?

だがやはり鉄の腕を二つ名としているはずの当のラディコが、首を傾げた。

膂力を強化しているのであれば、つまるところ攻撃の威力は重さと速さで決まる。どれだけ力が強かろうと速さには限界があるから、重い武器を振るう必要がある

それは単純な物理計算だ。どれだけ剛力無双の大男だろうと、ゆっくり突き出した拳が何かを傷つけることはない。

だが力そのものを強化しているのであれば、重いものを使う必要などない。鉄の腕は重さと無関係に、威力だけを上げるからだ

それは使用者の肉体を守るための原理でもあった。容易に骨を砕ける程の力を筋肉が発揮すれば、その力は己の肉体にも向かう。つまり自身の骨も砕けるのだ。

だからOlが魔術で肉体を強化するときは、発揮する力だけでなく同じだけ頑丈さを上げるのにも魔力を使う。だが鉄の腕にはそのような自身を守る機能はついていなかった。

ええと、つまり攻撃力10の武器を使っても50の武器を使っても、鉄の腕を使ったら100になるってことですか?

フォリオが少し考え、尋ねる。攻撃の威力を数字で表すという発想に奇妙なものを感じつつも、Olは首を振る。

いや、そのたとえならば10の武器を使えば110に、50の武器なら150になろう

じゃあ50の武器を使った方がいいじゃねえか

すかさず、サルナークが至極真っ当な事をいう。

攻撃速度が同じであればな

だがOlの答えに、すぐさま口をつぐんだ。

50の大鎚を一度振るう間に、10のナイフであれば三度振るえる。そのままならば50と30だが、鉄の腕があれば150と330だ

Olの袖口で、翼獅子アレオスがグルルと唸る。まるでそれに応えるように、巨大な猿のようなモンスターが通路の先に姿を現した。こちらを認めるや否や襲い掛かってくる大猿たちに指先を向け、Olは命じる。

ラディコ。振れ

理屈はわからずとも、本能的に自分の力の使い方は理解しているのだろう。ラディコはジョウロをぐっと構えると、大猿に向けてそれを振った。口の先から無数の水滴が飛び出し、そしてそれは爪よりも細かな無数の矢となって大猿たちを貫く。

これは、0を一振りで100回飛ばす道具だ

一粒一粒の水滴は、せいぜい細いナイフを突き立てる程度のもの。しかしそれを無数に浴びて、三頭の大猿はあっという間に絶命した。

うわっ、エグ

Olくんありがとう!これ、すっごく気に入っちゃったあ!

大猿は中層でも浅い区域に出るとはいえ、その中ではかなりの強敵だ。大炎の直撃でも絶命しない厄介な敵があっさりと即死するのを見て眉をひそめるフォリオとは裏腹に、ラディコはぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ。

扱いにはくれぐれもくれぐれも!気をつけろ!

残った微量の水滴が跳ねるのを避けながら、Olはラディコに釘を刺した。アレオスのローブであればその程度の威力は十分防げるが、味方から不意を打たれるのはぞっとしない。

だがこの威力は大したもんだな。もう二、三段奥に行ってもいいんじゃないか?

サルナークの言葉にまたこのヒトは油断してとフォリオは少し思いはするものの、彼女自身も戦力としては問題ないと判断したため、口をつぐむ。

いや。しばらくはこの辺りで稼ぐ

だがOlは首を振り、その提案を却下した。

新しい戦法を試しているから慎重になるのはわかりますケド、そこまで心配しなくても大丈夫だと思いますよ?元々、アタシとラディコの二人でもこの一つ奥の区画で狩ってますし

流石にこの区画は浅すぎるのではないか、とフォリオも口添えをする。ラディコの鉄槌は道具袋に入れておけばいいし、もしこの戦い方が通用しなければ元に戻せばいいだけだ。

Olくん、ボクももっと強いモンスターと戦ってみたい!

気持ちはわかるが、もう少し待て

ラディコまでが進行を提案するも、Olは頑なに方針を変えず。四人はその後も浅い区画で戦闘を繰り返す。といってもほぼ出合い頭にラディコが殲滅するだけの繰り返しだ。

たまに背後からモンスターが出たときはOlが対応し、水を補給するだけのフォリオと何もすることのないサルナークは暇そうにしていた。

そういや大将。探索をする上で、最も厄介な敵がなにか知ってるか?

結局大した収穫もないまま居住区に向かう道を指示するOlに、ふとサルナークはそんな事を問いかけた。

アンタがその服にしちまった特異個体や、毒を持ったモンスター、空を飛ぶやつ、仲間を呼ぶやつ、色々いるが中でも一番厄介な相手と言えば

他の探索者であろう

即答するOlに、サルナークは舌打ちする。

何だよ、羽女にでも聞いてたか?

言ってませんよ

それはOlのダンジョンにおいても、同じことだった。Olはダンジョンを運営する側だったから実際に目にしたことはないが、冒険者同士の争い自体は冒険者ギルドを運営していたナジャやノームから度々頭痛の種として聞いていたものだ。

探索をしている者は、その区画にいるモンスターを倒して進む。それはつまり、どのモンスターよりも強いということだ

強さは単純に推し量れるものではないが、様々な種類のモンスターを倒せるということは、対応力が高いということでもある。

ま、そういうこった。モンスターと違って探索者は何をしてくるかわからん。それに一番厄介なのは、出会った時点では敵か味方かすらわからんということだな

出会った時点では友好的なふりをして、油断したところで襲いかかってくるような者もいます。気をつけてくださいね

懐かしい。Olは思わずそう感じる。

そう言えばOlの魔窟を探索していた冒険者たちの間では、冒険者同士で出会った時の方針を決める習慣があった。

ひとまず攻撃されない限りは友好的に接するのが善。相手次第で対応を変えるのが中立。

敵か味方かなど、簡単に判別する方法があるぞ

嘘を見破るスキルを持ってるんですか?

そして──

簡単なことだ。こちらから先に襲えば、全部敵であろうが

Olは、邪悪なる魔術師なのであった。

第10話ダンジョンを探索しましょう-2

探索区に入ったばかりの通路を三人の男女が歩いていた。

金の髪を側頭部で二つ結びにした少女と、黒い髪をポニーテールにした少女。まだあどけない二人の顔立ちは、いかにも勝ち気そうな金髪と気弱そうな黒髪という違いはあるものの、基本的な造形自体はよく似ていた。

そしてその後ろを歩く、大柄な牙族の男。がっしりとした体躯に濃い焦げ茶の狼のような耳と尾。厳しい顔つきに一文字に引き結んだ口の端からは鋭い牙が覗いている。大斧を背に担いだ、いかにも屈強そうな戦士だ。

テール! 早くしなさいよ、すっとろいわね!

ルヴェお嬢様、あまり先にいかれると危険です

先頭を行く金髪の少女が後ろを振り返り、牙族の男に文句をつける。テールと呼ばれた男は自分の腰程度までしか背丈のない少女に、丁寧な口調でそう答えた。

あの、お姉様、ごめんなさい。わたしが脚遅いから

あんたはいいのよ可愛いクゥシェ。どうせこのウスノロに合わせてあげてるんでしょ?本当に優しいんだから

黒髪の少女が眉をハの字に下げて謝ると、ルヴェと呼ばれた少女はテールに対するものとは打って変わった態度でそう答える。

お嬢様!

その時、ルヴェの背後からモンスターが現れ、テールは慌てて彼女へと駆け寄る。

なーに慌ててんのよ

だが彼がルヴェのもとへ辿り着く前に、氷の壁がモンスターたちの動きを止める。

あんたなんかよりよっぽど優秀なあたしの可愛い妹、クゥシェがちゃーんと守ってくれてるんだから。それに

そしてルヴェはゆっくりと振り返ると、氷の壁に埋まって身動きの取れないモンスターたちに指を向ける。次の瞬間、その指先から凄まじい雷撃が放たれて、氷の壁の表面を伝いモンスターたちを消し炭に変えた。

こーんな浅い区画の雑魚雑魚モンスターにあたしが負けるわけ無いでしょ?

ふっ、とルヴェが指先から立ち上る煙を吹き消すと同時に、氷の壁が消え去りモンスターたちがドロップ品に変わる。

し、しかし他の探索者と出会うという可能性も

探索者ったって、どうせユウェロイとかハルトヴァンのとこの奴隷でしょ。あーんなよわよわ壁族の手下なんか楽勝よ

己を諌めるテールの言葉に、自信満々のルヴェはまったく聞く耳を持たず通路を進んでいく。

お姉様、ハルトヴァンさんとは同盟を結んでいます。倒してはまずいのでは

大丈夫よ可愛いクゥシェ。全部あたしに任せておけば間違いなんてないんだから

妹のクゥシェの言葉も無視して、ルヴェは通路をずんずんと進んでいく。

というわけだ。今からこいつらを襲うぞ

スィエル姉妹じゃないですか!

魔術で映した遠視を指していうOlに、フォリオが真っ先に突っ込む。

有名なのか?

オレでも知ってるぞ。レイユのトコの孫娘だろ

Olの問いに、サルナークは呆れ声をあげた。

ユウェロイサマ、ハルトヴァンサマ、レイユサマというのが中層で特に有力な壁族の名前です。ですがあのお二人は自身が幼くして凄腕の探索者として有名なんです。あの牙族のヒトは護衛ですね

確かに先程の戦闘は見事なものだったな

フォリオの説明に、Olは頷く。氷の壁で敵を止め、雷撃で一網打尽にする。万一敵が漏れれば後ろに控えた牙族の男が対応するのだろう。攻守にバランスのいい優れた戦法だった。

ついでに言うとあのテールって男はランクまでは知らんが、盾と腕両方持ってるって話だ

こっちも両方あるよ!

任せて、と言わんばかりにぐっと拳を握って見せるラディコ。

二人で持ってるのと一人で両方持ってるのじゃわけが違うだろうが。だったら貴様の鉄の腕よこせよ

えー、やだよお

銀の腕の方を渡せと言わない辺り、微妙に人がいいですよねこのヒトとフォリオは思いつつも口には出さない。

チッ。まあいい。そういうわけでだな大将。あいつらを狙うのは

サルナークにOlは重々しく頷く。

ラディ、スキルを銀の腕に切り替えておけ。そしてまず鉄鎚を黒髪の娘に向かって投げろ。防御役をまず潰す

話聞いてたか!?チビ、貴様もわかるな!あいつらを狙うのはナシだ!そんくらいわかれ!

何事もなかったかのように戦術を説明しだすOlに、サルナークは叫んだ。

わかったらだめなの?わからないとだめなの?

ちょっとサルナークサン、ラディにあんまりややこしいこと言わないでくれマス?

過保護か!ちょっと貴様らは黙ってろ!

眉を寄せて考え込むラディコを抱えて文句を言ってくるフォリオに、サルナークは吐き捨てる。

サルナーク。お前の言いたいことはわかっている

いいや、わかってねえだろ。あいつらが強いってだけの話じゃねえんだ。奴らに手を出せばレイユの配下全部が敵に回る。壁族同士の戦いになればどちらも消耗は避けられない。そうなりゃ弱ったところをハルトヴァンが総取りだ。そうやって中層は三人の壁族が争うことなくバランスを保ってる。だからユウェロイはアンタを守っちゃくれねえぞ。レイユにアンタを差し出して終わりだ

懇切丁寧なサルナークの説明に、なるほど、とOlは深く頷く。

──つまりお前は怖いのだな?

あ゛ぁ!?

ぶっ殺してやらぁぁぁっ!

どんなに理を説き、状況を説明し、メリットとデメリットが釣り合わないことを教えても怯懦なるは恥ではないなどと優しい口調で言われ、サルナークは半ば自暴自棄になってルヴェたちに襲い掛かった。

無論、安い挑発に乗ったわけではない。Olが最初からすべて理解した上で決め、翻す気がないという事がわかったからだ。

腹立たしいのは、Olの言葉はある一面では正しいという事だ。無謀な自殺行為を避けることを臆病とは言わないが、少なくともOl自身はそれを無謀だとは思っていない。

そしてそれは、フォリオとラディコもまた同様だった。わかったと即答したラディコは単に何も考えてないだけだろうが、フォリオは考えた上でOlの事を信じたのだろう。特に反対することもなく、彼の指示に従っている。

結果としてサルナークだけが強硬に反対した事になる。挙句の果てに気が乗らないなら帰ってもいいとまで言われ、サルナークは流石にキレた。

ナニアレ?

剣を届かせる遥か手前でサルナークの身体が氷の壁に包まれ、雷撃が放たれる。だが鋼の盾を持つ彼にそれは一切のダメージを与えなかった。流石に氷に包まれれば動けなくはなるが、風を切って投げ放たれた巨大な鉄鎚がその氷を粉々に砕き、更にそれを作り出したクゥシェへと一直線に突き進む。

だがそれが少女に当たる寸前、牙族の男テールが拳で叩き落す。

おい、あいつ銀の腕を防いだぞ

銀の盾以上の持ち主ってことですね

両方ともランクが銀であれば、威力は見た目通りの効果となる。つまり高速で飛んでくる鉄鎚を拳で叩き落せる膂力と頑丈さの持ち主という話になるが、金の盾の持ち主であることに比べればその方がいくらかはマシだ。

何よあんたたち!いきなり何を──

お姉様、危ないっ!

文句を言うルヴェの目前に氷の壁が張り、フォリオの放った大炎がぶつかって蒸気を噴き上げながら対消滅する。

いいぞ羽女、そのまま続けろ!

スキルというものは一度使用すると、次に使用するまでの時間俗にいうクールダウンというものが発生する。連発はできないのだ。そしてその時間は強力なスキルであるほど長くなる傾向にある。

氷の壁は強力なスキルであるがゆえに、大炎に比べ必要となる時間が長い。つまりはフォリオが大炎を投げている限り封殺できるということだ。

調子に乗るんじゃないわよッ!

導雷!

ルヴェの指先から稲妻が迸り、フォリオを狙う。しかしOlの魔術によって、それはサルナークへと誘導された。

は?何そのスキル

お嬢様、お下がりください!

目を丸くするルヴェの前に出たテールが大斧を振り上げ、前衛のサルナークに向かって振り下ろす。サルナークはその一撃を、剣で受け流すように捌く。だが凄まじい衝撃が彼の腕を襲い、危うく剣を取り落としそうになりながらサルナークは後方に飛んだ。

くそっ、腕も鋼以上か!?

ふん。テールは腕も盾も金よ!あんた達に勝ち目はないってこと!

焦るサルナークに、ルヴェが勝ち誇る。

ハ!だったら楽だったんだがなあ!

スキルで上回ってれば負けないのであれば、サルナークは今まで散々辛酸を舐めさせられるような事などなかった。今の彼には、スキルの差などやりようでいくらでも覆せることが骨身にしみてわかっていた。

お姉様、黒髪の人間は鋼の盾剣技LV5、牙族が銀の腕翼族は大炎に道具袋持ちです。そしてあの金髪の人間は

鑑定スキルを持っているのだろう。クゥシェが主要なスキルを報告しながら、Olに視線を向ける。

そして、動きを停止させた。

Olはその干渉に対する防護を敢えて切り、クゥシェに全てを見せた。

全てを、だ。

つまり彼女の視界はこのようなものになる。

医療魔術LV10>小癒・縫合・皮膚整形・精力回復>中癒・骨接合・負傷再生・疲労回復>大癒・欠損再生・機能再生>快癒・灰化復元>解毒・獣毒消去・蛇毒消去・蛙毒消去・魚毒消去・虫毒消去・草毒消去・茸毒消去・竜毒軽減>悪化・小傷・中傷・大傷・麻痺・無痛・盲目・沈黙・嗅覚喪失>五感強化・視力強化・聴力強化・嗅覚強化・感度強化>蘇生・回生・復活・死者蘇生>精神・平静・興奮・恐怖・混乱・魅了・睡眠・忘却・痒み・吐気・狂戦士攻撃魔術LV7>熱術・小炎・大炎・猛炎・炎壁・炎球・小氷・大氷・氷壁・氷球・凍風・灯火・閃光・暗闇>力術・小風・大風・操雷・雷撃・降雷・飛礫・巨岩・爆発・爆裂・魔力矢・魔力槍・魔力刃・魔力鎚・魔力鞭・魔力盾・魔力鎧変性魔術LV10>形状変化・巨大化・縮小化・加工>性質変化・硬質化・軟質化・封炎・封凍・封雷・易燃・易凍・導雷・加重・減重・色彩変更>元素変換・金属化・砂化・液化・固体化・石化・石化解除幻影魔術LV10>幻覚・幻視・幻聴・幻嗅・幻味・幻触・念話・伝達>幻影・幻像・幻音・幻臭・幻物・透明化>複合幻影・幻獣召喚・投影・広域幻想・隠形・変装・変身召喚魔術LV10>召喚・物質召還・小型生物召喚・中型生物召喚・大型生物召喚・精霊召喚・悪魔召喚>召還・所有物召還・使い魔召還・リル召還・送還>転移・方向転換・交換・瞬間移動・長距離転移・大規模転移>結界・封魔結界・認識結界・防護結界・増幅結界・減衰結界・時留結界・拡大結界・支配領域付与魔術LV10>物質付与・保護・施錠・開錠・物質操作・軽量化・攻撃強化・防護強化>生物強化・筋力強化・耐久力強化・持久力強化・敏捷性強化・反射神経強化・巧緻性強化・五感強化・再生力強化・耐炎・耐凍・耐電>魔道具制作・発動体化・恒常付与・魔術封入・魔術定着>対魔術・魔術防護・魔術反射・魔術抵抗・対抗魔術・魔術減衰・魔術増幅・解呪死霊魔術LV10>対霊・霊視・探霊・探骸・霊会話・霊魂捕縛・操霊・魂魄操作・除霊・封霊>死霊操作・死体作成・骸骨作成・不死化呪術LV10>呪言・禁止・指令・契約・予言>類感呪術・呪殺・雨乞・形代>感染呪術・悪化・憑依・呪詛・同期迷宮魔術LV11

そして鑑定スキルには、知られていない挙動があった。それは使用者が表示された情報を全て認識するまで行動できなくなるというものだ。読んで内容を理解するまではいかなくともいい。ただ文面を目に入れればクリアできる条件であり、普通の相手であれば意識する事もない刹那の間にそれは終わる。

だがOlの持つ膨大な量のスキルは視界に収まりきらず、意識を端に向けてページをめくる必要があった。その確認にはどんなに急いでも数秒かかる事を、Olはナギアとの実験で確認している。

お嬢様!?

いっくよー!

背後でクゥシェの異常に気付いたテールに向かって、ラディコがジョウロを振りかぶる。最初の鉄鎚は見せ札だ。腕を所有していることを理解させ、行動を縛る。

くっ俺の後ろに!

テールは腕を大きく広げ、背後に二人を庇う。ただの水滴とは思えない破壊的な音が床や壁を跳ねて、テールは己の判断が正しかったことを悟った。

そして、間違っていたことも。

これは酷いハメですね

空になったラディコのジョウロに、若干引きながらもフォリオが水塊で水を補充する。水塊はただ水の塊を出すだけの、攻撃でもなんでもない日常生活用のスキルである。

故に、クールダウンはほぼ無きに等しい。ラディコ自身が水塊を使うのならばまだしも、フォリオが完全な連携で水を足すから隙もない。結果として、彼女は致死の雨を無限に振りまく存在となっていた。

背後に二人を庇っている以上、テールは動くことができない。そして斜線を完全に遮られ、ルヴェとクゥシェも射撃系のスキルを使えない。クゥシェが氷の壁を張るも、もちろん銀の腕を持つラディコの動きを止めることはできず、もろともに破壊された。

だがこれは完全な膠着状態だ、とテールは思う。敵もまた、この破壊の雨の中に入ることはできない。鋼の盾では銀の腕の攻撃を防ぐことはできないからだ。

早く何とかしなさいよ、テール!

ルヴェから檄を飛ばされ、テールは一か八かの賭けに出ることにした。右手で握りしめた大斧を、手首の力だけで投げ放つのだ。テールの膂力と金の腕の力があれば、それでも十分相手を殺傷する事はできる。だがもし外せば打つ手はなしだ。

狙うは相手の攻撃の要、銀の腕の牙族の少女。幼い同族を手にかけるのは少々気が引けたが、守るべき主の命と引き換えにできるものではなかった。

テールが拳に力を入れた瞬間、鋼の盾の男──サルナークが動く。テールは馬鹿な、と目を見張った。クゥシェは確かに鋼の盾と銀の腕だと言っていた。だがサルナークは水滴を意に介した様子もなく進んでくる。

テールには推測できなかった。ラディコが、銀の腕を持っているのならば何の意味もないはずの鉄の腕を持っていること。そして、同様に考えたクゥシェが、報告を怠ったことを。

テールは知らなかった。銀の腕と鉄の腕を持っている場合、そのどちらを使うかは自由に切り替えられることを。

お嬢様。動かないでください

だが問題はないはずだ。大斧の届く範囲に来たら切り伏せればいい。サルナークの持つ剣技はLV5。その程度であればいかようにもなる。

ついたぜ、大将

うむ、ご苦労

だがその懐からぬっとOlが現れ、テールに向けて手のひらを向けた。道具袋か、と内心舌打ちしつつも、テールは大斧を振りかぶる。その瞬間、降り注いでいた水滴が途切れ、ほんの一瞬だけ彼は意識をラディコへと向けた。

視線をOlに戻したとき、彼の手からは灰色のガスのようなものが噴き出していた。動きはさほど早くはないが、避ければ背後のクゥシェとルヴェに当たる。

それがどのようなものであろうと金の盾で防ぐ。それが不可能なものでも金の腕で打ち破り、大斧の一振りで二人まとめて殺す。そう決意して息を止め、テールはガスを浴び──

そして、それが彼の最後の思考となった。

テール!?

全身が灰色の石に変化し、ピクリとも動かなくなった従者にルヴェが悲鳴のような声を上げる。

やはり金の盾でも変性術は問題なく通るな

鉄の鎧を湯殿に変えたのと同じ系統の術。何の力も与えずただ性質を変えるだけの変性術ならば、盾でも無効化できない。

アレ一瞬で終わるから最初は何やられたか全くわかんねえんだよな

あ、経験済みなんデスね

同情するように呟くサルナークに、それもそうかとフォリオは納得する。Olがぶっつけ本番で試すわけがなく、検証するならサルナークしかいない。

テールを無力化したOlは、残る二人に視線を向ける。

ひっクゥ!

氷の壁がOlを巻き込むように出現し、即座に雷撃が放たれた。盾を持っていない以上、避けることも防ぐこともできないはずの必殺のコンボ。

これで終いだ

だが意に介した様子もなくOlは進み

クゥシェの脳裏に先ほど目にした耐凍耐雷の文字が思い出された次の瞬間、彼女の視界は真っ暗に閉ざされたのだった。

第10話ダンジョンを探索しましょう-3

ルヴェが目を覚ました時、そこは簡素な部屋の中だった。彼女の寝所とは比べるべくもない、小さな部屋。部屋の中央にぽつんと寝台が一つ置いてあるだけで、他には家具らしい家具もない。縦横十メートルつまりは四ブロック分の小さな部屋だ。

そしてその端に、ルヴェたち三人は首から下だけが石化した状態で並べられており、目の前には先ほど戦った金髪の男と見知らぬ魔族の女──Olとフローロが立ち、ルヴェを値踏みするかのように見下ろしていた。

あんた、よくも!あたしをこんな目に合わせてタダで済むと思ってるの!?

叫ぶと同時に雷撃を放とうとするが、やはりスキルを発動することはできなかった。放射系のスキルはどれも指先から出る。身体が石化されてしまっているこの状況では発動できないようだった。

テール!あんた、何とかしなさいよ!

申し訳、ございません

従者のテールは項垂れ謝罪するだけで役に立たない。ルヴェは舌打ちすると、Olに視線を向けた。

今なら特別に許してあげるわ。さっさとあたしたちを戻しなさい

よくもまあこの状況でそんなセリフを吐けるものだ

嘲るような、呆れるような、それでいてどこか感心するような、複雑な笑みをOlが漏らす。

わかってないようだから教えてあげるわ。あたしはルヴェ・スィエル。スィエル家の長女よ。あんたがどんなに愚昧でも、これで意味が分かったでしょ?

居丈高に告げるルヴェに対し、Olは頷いてパチリと指を鳴らす。すると信じがたいことに、床がぐにゃりと変化して椅子の形をとった。Olはそこに悠々と座り、足を組む。

見ての通り、俺は母なる壁を操れる。そしてこの部屋には出入り口がない。つまりお前がどれほど泣こうと喚こうと、お前の敬愛するお婆様はお前を助けに来るどころか、見つける事すらできないという事だ

ルヴェは絶句する。確かに言われてみれば、この部屋には出入り口が全くない。首を動かすにも限界があるから真後ろは確認できなかったが、クゥシェとテールも首を動かし背後を確認しているから、本当にどこにもないのだろう。

そういえば、聞き覚えがあるわ。母なる壁を動かせる奴がいるってとんだ与太話だと思ってたけど。じゃああんた、ユウェロイのところの奴ね!

それがわかったところで何だというんだ?

余裕綽々で答えるOlに、ルヴェは歯噛みする。

望みはなんでしょうか?

それまで沈黙を守っていたクゥシェが、唐突にそんなことを問う。

わたしたちを殺すことも、石のままにしておくこともできたはずです。それでもこうして会話ができる状態にしたという事は、要求があるはずですよね?

クゥシェの言葉に、Olはほうと呟き愉快げに笑みを浮かべる。

話が早い。俺の要求はお前たちの領地だ。何、全部とは言わん。半分ほど明け渡してくれればいい

そんなことできるわけないでしょ!?

壁族にとって領地は最も重要なものだ。それによって狩れるモンスターの数が決まり、つまりは得られるアイテムやスキルの数が決まる。より上層の壁族になるには上納する量を増やし力を示さねばならない。

半分も領地を取られたら、間違いなく上層に行く可能性がついえる。いや、それどころか下層送りになる可能性すらあった。

世継ぎたる孫娘二人と、それにつけた最強の護衛の命と引き換えにでも、か?

意地悪く尋ねるOlに、ルヴェはうめく。彼女の祖母は情に流されるような可愛げのある女ではないが、確かに失うものが多すぎるのも事実だ。そもそもユウェロイ一派との戦いになるにしろ、ルヴェたち三人が欠けるのは非常に痛い。

いや、それどころか早く帰らなければ、主力が抜けたこの状況を好機とみてハルトヴァンが攻めてくる可能性すらある。最悪なのはユウェロイとハルトヴァンが共謀して襲い掛かってくることだ。

ユウェロイさんは、このことを知らないんですね?

冷静なクゥシェの質問に、ルヴェはハッとした。共謀してつぶせるのならば、そうしてしまった方が手っ取り早い。そうしない理由はただ一つ

その通りだ。領地を欲しているのはユウェロイではなく俺自身正確に言えばフローロ。この娘なのだからな

Olは背後の魔族を見やり、そう告げる。その魔族が何者であるかは気になったが、付け入る隙はそこにしかない、とルヴェは考える。

ではなぜそうしないのです?

いきなりお前の孫娘の身柄を預かっているなどと言っても、お前たちの祖母も信用はしないだろう。そこで、手土産を用意することにした

手土産って何よ

嫌な予感がしつつ、ルヴェは問い返す。

お前たち誰か一人の首だ

な──

何を馬鹿な冗談を、という言葉は出てこなかった。Olの瞳には愉悦も嗜虐も、あるいは嫌悪や決意といった色さえなく、ただただ決まった事柄を告げているというだけの、事務的な光しか宿っていなかったからだ。

そこで、誰を送るかという話になってな。本来ならばそこの従者が筋というところなのだろうが

テールを見据え、Ol。

戦った感覚で言うと、この男の方がお前たち二人よりも価値があるように思えてな。一人で戦っていたなら俺たちは負けていたかも知れん

なんですって!

ルヴェは柳眉を逆立てるが、その反面それが事実であるという事も理解はしていた。護衛なのだから、護衛対象より弱くて務まるわけがない。だがそれはそれとして、足手纏い呼ばわりされれば腹が立つ。

それで、お前たちに決めてもらおうと思ったわけだ。誰を犠牲にするか、それぞれ言ってみろ

一瞬、三人の視線が交差した。この三人にとって、それで必要十分だ。

もちろん、テールよ。可愛い可愛いクゥシェを傷つけることは許さない。もしあの子に手を出したら、あたしも舌を噛んで死んでやるから

ルヴェが真っ先にそう答える。

ならば、クゥシェ様を。お世継ぎであり次代党首であるルヴェお嬢様を失うわけにはいかん。そうなれば俺は自刃するだろう

次にテールがそう答え。

自分の領民を守るのが壁族の務めです。テールだけは助けてあげてください。それが許されないのであれば、わたしはこの命を持ってあなたの企みを防ぎます

最後にクゥシェがそう答えた。つまり三人とも、別々の相手を指定したことになる。しかも指定しなかった方を殺せば、自分も死ぬという脅し付きだ。

ルヴェが妹であるクゥシェを。

テールが主君であるルヴェを。

クゥシェが従者たるテールを。

それぞれ守ろうとしている図だ。

誰か一人でも殺せば、連鎖的に全員死ぬと言っているわけだなるほど、面白い

もしこれが、全員が誰か一人でも殺せば自分も死ぬと言っているのであれば、簡単だ。それぞれ引き離し、情報を制限した上で離反させればいい。

だがこの三人は、誰か一人が死ぬこと自体はそれぞれ許容しているのだ。そちらが言った通り選んだのだと言われれば説得もしづらい。

どうせ満場一致でテールをあるいはクゥシェを犠牲にするという結果になると思ってたんだろう、とルヴェは内心でOlをせせら笑う。とにかく、時間を稼ぐ必要があった。

たとえ母なる壁の中にあったとしても、この状況を何とかする方法はあるはずだ。そしてあの悪辣な祖母なら必ずそれに辿り着く。その信頼が、三人にはあった。

馬鹿馬鹿しい駆け引きはこれで懲りたでしょ。さっさと道理に従ってあたしたちを解放しなさいよ

道理?

ルヴェは更に時間を稼ぐために、Olを挑発する。

あんたみたいな雑魚は、あたしたちみたいな強者に従うのが本来の道理ってものでしょうが

それを言うのならば、戦闘で負けたそちらが従うのがそれこそ道理ではないのか?

食いついた!

ルヴェは内心拳を握りしめつつ、素知らぬ表情で続ける。

ふん。あんな卑怯な戦い方、勝ち負けのうちに入るわけないじゃない。それにあんただって、テール一人だったら負けてたって言ってたでしょ

交わしたのはほんの僅かな会話だが、ルヴェは既にOlの性格をおおよそ見抜いていた。プライドが高く、相手を屈服させることにこだわるタイプ。なら乗ってこいと心の中で祈るようにつぶやく。

ならばお前はどうしたら負けを認めるというのだ?

そうね。対等な条件でもう一度勝負して、それでも負けたら認めてもいいわ

来た。笑みを浮かべそうになる表情筋を制御しつつ、あくまで優雅にルヴェはそう告げる。無論、本当に対等な勝負などするつもりはない。

何を持って対等とする?スキルなしで殴り合いでもするか?

そんな野蛮なことするわけないでしょ。あたしが提案するのはもっと洗練された、正々堂々とした一対一のぶつかり合い。つまり

持ち込むのはルヴェが絶対的な自信を持つ勝負方法。それでいて、相手が引き受けざるを得ない内容。すなわち

セックスよ!

第11話繰り返し念入りにわからせましょう-1

五回目。

おお姉様、何を?

ルヴェの突然の発言に戸惑いを隠せず、クゥシェが問いかける。

大丈夫よ、クゥ。全部このあたしに任せておきなさい

だがそれを不安と見なしたのか、ルヴェは自信満々にそう答えた。

(今更なんですけどOl、これっていったい何をしたんですか?)

フローロから念話が飛んでくる。いつの間にやらそんな魔術も習得したか、と感心しつつ、Olはそれに答える。

(何、弱めに狂戦士の術をかけたまでのことだ)

それは本来であれば、恐怖を消し去り思考力を減らし、死ぬまで戦う戦士を作り出す術だ。ルヴェにかけたのはそれを調節し、論理的な思考力はギリギリ残しつつも恐怖心や羞恥心といった感情的な判断能力を奪い去ったものだった。

その結果、ルヴェは戦闘以外で最も得意なことつまり、性行為での勝負という発想に至ったのだろう。

(へー魔術ってそんなこともできるんですね)

ピントのズレた反応をするフローロをさておき、Olはルヴェに答える。

では、先に相手を絶頂させた方が勝ち、ということで構わぬか?

もちろんよ。あんたのよわよわチンポなんてすぐにイカせちゃうんだから

よほど自信があるのだろう。ルヴェはOlを鼻で笑いつつ首肯する。

ルヴェお嬢様、そのような!

あんたは黙ってなさい!ほら、さっさとコレ戻しなさいよ。それとも石相手に腰を振るのが好きなの?

異議を唱えようとするテールを一喝し、ルヴェはOlを挑発した。Olとしてもこれ以上口を挟まれても困るのでクゥシェとテールに沈黙をかけつつ、ルヴェに石化解除をかけてやる。

ルヴェが自由を取り戻すと、途端に雷撃が飛んできた。

それは効かんということくらい、わかっておらんのか?

フン。わかってるわよ。これはただの挨拶

Olとフローロは当然、事前に耐雷耐凍の術をかけてはいる。が

(Ol、痛いです。普通に効いてます)

(流石に威力全てを消すまではできん。耐えろ。全く効かないという顔をしていろ)

雷撃ほど強力なスキルの効果をゼロにするには、今のOlが持つ魔力は少なすぎた。アレオスのローブを着込んだOlはともかく、フローロにはそれなりのダメージがあった。

ほら、さっさとあんたのざこざこチンポ出しなさいよ。ま、そんな貧弱な体格じゃどうせ大したことないでしょうけど

ベッドの端に座り、シーツをパンパンと叩いてルヴェはOlを急かす。だがOlがローブを脱ぎ捨て隆々と屹立した一物を取り出すと、その声は尻すぼみに小さくなっていった。

なっなにこれ!?

男の性器だ。見たことがないのか?

小柄なルヴェの頭と同じくらいの長さに勃起した剛直を突き付けるように見せながら、Olは生真面目な口調で問う。

なんでこんな大きいのよ!

ルヴェが知る男性器とは、つまりはテールのものだ。だがOlのそれは、明らかにテールのものよりも倍以上は大きかった。長さだけではなく、太さも、先端の亀頭の膨らみも、全くの別物だ。

男は興奮すると大きくなることくらい知らぬのか?

ふ、ふーん。じゃああたしで興奮してるんだ。まだ服も脱いでないのに

虚勢を張りつつも、ルヴェの視線は男根から離すことができなかった。これを入れるのは流石に無理ではないか。まだ効果の続く狂戦士の術によって恐怖心はなかったが、それでもそんな疑念は生まれるほどの威容がOlの性器にはあった。

は!?なんでそんな事しなきゃいけないの!?

ずい、と鼻先に突き付けられる肉の槍に、ルヴェは顔をしかめる。

ハンデをくれてやっているのだ。別にしたくないならばしなくてもよい。だが勝敗の条件を忘れたのか?

勝利条件は相手をイカせることだ。確かに舐めるのならば万が一にも自分がイく危険性はない。それにこの巨大なモノを自分の中に入れるのも抵抗はあったため、ルヴェは嫌悪感よりも実利を取った。

ふん。こんなよわよわチンポ、さっさとイカせてやるんだから

威勢のいい言葉とは裏腹に、ルヴェは恐る恐ると言った感じでOlの男根に舌を伸ばす。どんなに気持ち悪い味がするのかと思っていたが、舌をつければそれは意外にも無味無臭であった。

なんだ、これなら楽勝じゃない。とルヴェは内心呟きつつ、Olの一物に舌を這わせる。そうすると、改めてその男根の大きさが認識できた。彼女の小さな舌ではとても追いつかない程の巨大さだ。

下手だな

仕方ないじゃない、こんなことしたことないんだから!

こんなこと上手くても何の自慢にもならないとは思いつつ、下手だと言われれば腹が立つ。

フローロ、手本を見せてやれ

はあい!

視線を向けるとフローロは嬉しそうに手を上げ、Olの前にしゃがみこんだ。

ふふ、Olのここ、今日もとっても元気ですね

フローロはそそり立つ肉塊に頬擦りする様に竿を両手で捧げ持ち、恭しくその先端に口づける。そして服をめくりあげると、乳房を露出して男根を挟み込んだ。

今から気持ちよくしてあげますからね

肉槍を磨くようにぎゅっ、ぎゅっと双丘を上下させながら、舌を伸ばし愛おしげに竿を舐める。肉茎を下から上に丁寧に舐め上げ、雁首の溝をぐるりとなぞり、裏筋をついと辿って亀頭をはぷりと口に咥える。

そして上目遣いでOlの様子を見つつ、乳房と舌と唇とで男根を攻め立てていった。

既にOlの弱い部分をかなり学びつつあるその技に、Olの性感はあっという間に高められていく。特に堪える必要性もないためOlが腰に力を込めると、フローロは咥え込んでいた先端を外し、舌を突き出しながら大きく口を開けた。

びゅくびゅくと脈動する怒張の先端から、噴水のように勢いよく白濁が溢れ出る。それはフローロの端正な顔を汚しながら、大半が彼女の口の中へと入っていった。

んっんくっんっふぅえへへ、お疲れさまでした。ちゅっ

フローロは口内に飛び込んだ精液をこくんと嚥下すると、もう一度ペニスの先端に口をつけ、指先で丁寧にしごき立てながら中に残った精子を一滴残らず吸い上げる。そして最後にもう一度、Olの男根をねぎらうかのように音を立てて口づけた。

どこでそのような技を学んできたのだ

えへへ、ひみつです

精で真っ白に染まったフローロの顔を、魔術をかけて清めてやる。

どうだ、参考になったか?

そんなことできるわけないでしょっ!?

ルヴェに向き直って問えば、どうやらフローロの努力は実を結んでいないようであった。胸の大きさで言えばルヴェも負けていないのだから、やろうと思えばできるはずだがそういうことではないらしい。

っていうかあんた、イッたんだからあたしの勝ちでしょ!

達した方が負け、ではなく、相手を絶頂させた方の勝ちと言ったはずだ。いつからフローロはお前の仲間になった?

どさくさにまぎれ手柄を横取りしようとするルヴェに指摘してやれば、彼女はチッと舌打ちした。

もういい!こっちで勝負つけてやるんだから

ルヴェはぐっとOlの身体を押し、ベッドの上に押し倒す。そして馬乗りになると、手早く服を脱ぎ捨てた。

まだ未熟で小柄な身体付きには不釣り合いな、大きな乳房がぶるんと揺れる。二つ結びにした金の髪にやや浅黒い肌が映え、いかにも勝気そうな赤い瞳がOlを見据えた。

射精した直後であれば、男のものは小さく柔らかくなるはずだ。つまり今の状態なら、ルヴェの小さな身体でも問題なく入れられるはず。

ってなんで小さくなってないのよ!

だがOlのモノは、小さくなるどころかますます膨れ上がっているようにすら見えた。

一度達した程度で萎えるものか。そら、さっさとしろ。それとも怖気づいたか?

そんなわけないでしょ!見てなさいよ!

ルヴェは太い肉茎を握りしめ、己の中心に押し当てる。そしてそのまま、一気に腰を下ろした。

ッ!!

その衝撃に彼女は思わず硬直する。

痛みに──ではない。

雷撃のように己の身体を貫く、快楽にだ。

腕と見まごう程の太さを持つ肉槍に身体の中心をずっぷりと貫かれ、今まで届くこともなかった最奥をズンと押し広げられている。

それには半ば覚悟していた痛みは一切なく、ただ痺れるような快感だけが腰からびりびりと伝わってきていた。

はぁ

思わず達しかける身体を、ルヴェは無理やり制する。

あんたのが大きすぎて苦しいだけよ。ホント、図体ばっかりデカいくせに役に立たないでくのぼうなんだから

ルヴェは虚勢を口にする。少しでも身じろぎするだけで胎の奥を削り取られるような衝撃が走り、それが途方もなく気持ちいいのだ。

だが、ルヴェにはそれでも確実に勝てる方法があった。

もう終わりよ。ほらっ!

うっ!?

パチリと電気が爆ぜる音がして、Olはうめく。

ふふ。これならやっぱり通るんだ

それは、体内に電気を流して操るスキル、操雷であった。威力は弱く雷撃のようにダメージを与えることはできず、それどころか離れた相手に流すことすらできない。自分の身体を動かしたり、触れている相手を麻痺させるのが主な用途の低級スキルだ。

しかしルヴェはその扱いに熟達し、別の使い方を見出していた。

ほらっ。気持ちいいでしょ?

パチッ、パチッ、と電気が爆ぜる度にOlが声を上げる。それは苦痛ではなく快楽。性感帯を直接電気で刺激される感覚によるものだった。

これ以上ないほどに密着し、粘膜同士で触れ合っている状態であれば耐雷による防護も無意味な話だ。それは身体の表面を覆うように防護する術であり、体内に直接電気を流し込まれては役に立たなかった。

さーて、この雑魚雑魚チンポ。すーぐイカせてあげるんだから

そして操雷のスキルは攻撃だけでなく防御にも使える。ルヴェが途方もない快感を得ながらいまだに気をやらずにいられるのは、このスキルで自分自身の身体をも制御しているからだ。

さ~ん

己の性感は最低限に抑え、Olの感覚は何倍にも増すよう刺激しながら、ルヴェは彼自身を締め付け、激しく腰を振る。

に~い

徐々に電気刺激を強めつつ、期待させるように数字を数える。

い~ち

更にダメ押しとばかりにぎゅっと膣口でペニスを思いっきり締め付けて。

ぜろっ!イッちゃえ~!

最後に全力で電気を流し、Olの性感帯を全力で刺激した。

盛大に噴き出すはずの精液は全く感じられず、先ほどまでうめいていたOlの表情も平静そのものに戻っていた。

ぜろっ、ぜろっ、ぜろぉっ!

腰を前後にヘコヘコと動かしながら、電気を流す。しかしOlの反応は全く変わらず、冷ややかな瞳でルヴェを見つめるだけだ。

なんでイカないの!?おじさん不感症!?

おじさん呼ばわりに新鮮なものを感じつつも、流石にOlは否定する。

単にお前に魅力が足らないだけだ

とはいえ実際にはそうでもない。ルヴェはまだ幼いながら美しい娘だったし、その齢に見合わぬ大きな乳房も魅力的だ。そして、あの繰雷。今回初めて彼女が見せたあの電流で性感を刺激されたときには、Olも流石に声を上げてしまった。

だがそれは、彼が毎夜のように抱いてきた性の権化たる淫魔、サキュバスのリルの手練手管には遠く及ばないものであった。文字通り人間離れした、セックスするためだけに作られた極上の肉体で、Olの弱い部分を知り尽くし、その上で愛情をたっぷりと込めて精をねだる愛妻との交合に比べれば、ルヴェのそれは児戯にも等しい。

そして彼女の取った手段もまた、同じことであった。

さて。では今度はこちらから行くぞ

ひぐっ!?

ずん、とOlが下から突き上げると同時、ルヴェの身体に電流が走る。

彼女がやったことはOlにもできる。それも、より精微かつ緻密にだ。

ちょっ、まっ!てぇっ!

Olの攻勢を阻止するようにルヴェの体内に再び電気が流れる。しかしOlが操る電流はそれをすり抜け、それどころかルヴェが操ったそれをも操作して彼女の性感を刺激した。

ああぁぁぁぁぁっ!!!

たった二突き半の往復で、ルヴェは背筋を反らし絶頂する。

イったな

は!?イッてないけど!?

本人の意思とは関係なく震え締め付けてくる膣口にOlが言うと、ルヴェは慌てて姿勢を戻しそう言い張った。

そうか。では続けるとするか

えっ、ちょ、まっああああっ!

Olはそれを意にも介さず、淡々と抽送を続ける。

イッたか?

イ、イッてなあぁぁああああっ!

その豊かな乳房を下からすくい上げるように鷲掴みにし、指先と腰から同時に電流を流す。乱暴で大雑把なルヴェのそれとはまったく違う、強弱を織り交ぜピンポイントで性感帯を狙う電流に、彼女は身体を激しく震わせた。

あっ、ああぁぁっ、ひあぁぁっ!らめ、むり、やめっひぐぅぅっ!うそ、こんなの、しらなっひあああぁっ!

先ほどまでは自身の電気で抑えていた快感までを掘り出され、ルヴェは今まで至ったことのない深い絶頂を味わう。電流でわななく膣壁を太い肉の槍が無理やり押し開き、その穂先が奥の弱い部分を的確に穿つ。そんな所に自分の弱点があることを、ルヴェ自身さえ今の今まで知らなかった。

ひぐぅっ!!イった!イったからぁっ!

これ以上攻められたらどうなってしまうのか。狂戦士の影響下にあってなお感じる空恐ろしさに、とうとうルヴェは降参する。

嘘を言うな、先程までと反応が変わらぬのにこれが絶頂であるわけなどないだろう

うそじゃ、あぁぁっ!!だめぇっ!!やめっ!ひあぁっ!!

もはや電流を流す必要すらなく、ルヴェの意識は快楽の波に押し流され、まともに言葉を発する事すらままならない。まるで馬の手綱でも握るがごとく巨大な乳房を掴まれて、とっくに抜けて逃げる事さえままならない腰を激しく突き上げられる。

ひぐっ!ひぐぅっ!ひへ、ぅぅぅっ!

剛直が奥を抉る度にまるで焼き印でも当てられるかのような強烈な快感がルヴェの全身を貫いて焼き焦がす。子宮を丸ごと塗り替え、征服されてしまうような圧倒的な快楽。彼女は涙を流しながら訴えるが、舌はろくに回らずOlは手を緩めない。

ひっぎぃぃぃぃっ!!

Olの腰の上で両手両足をピンと張り、この股間から黄金の液体が噴き出して、ルヴェは獣のように叫びながら絶頂する。

そして力を失い、がくりと崩れ落ちそうになるその身体を、Olは抱きかかえた。

ふむ失神したか

あまりの快楽に目をむき意識を失ったルヴェの身体を寝台に横たえて、Olは失禁した彼女の尿を魔術で清める。

気を失うまでイキ狂ったのなら、こちらの勝ちという事で文句はなかろうな

貴様、よくもルヴェお嬢様を辱めてくれたな!

パチリとOlが指を鳴らして沈黙を解くと、途端にテールが怒鳴り声をあげた。どうやら大いに文句があるらしい。

本人が言い出したことだろう

ふざけるな!貴様が何か

テール。少し静かにしてくれますか?

怒り心頭のテールを、クゥシェの静かな声が黙らせた。

勝負はまだ、ついていません

気絶しただけで達してない、とでも言うつもりか?だがどちらにせよ、これ以上の勝負は不可能だろう

白目をむき、完全に気を失っているルヴェを指すOlに、クゥシェは首を横に振って、答えた。

わたしが続きをします

第11話繰り返し念入りにわからせましょう-2

七回目。

最初に見た時の大人しく自信なさげな様子とは、人が変わったようだ。Olはそんな事を思いつつもクゥシェに問う。

自分が言っている意味がわかっているのか? お前は生娘だろう

Olは女の立ち居振る舞いや身体つき、肌の状態などからおおよその経験を推し量ることができる。相手が限られてはいるもののそれなりの経験を持っていたルヴェとは違い、クゥシェは恐らく今日という日まで、男と手を繋いだこともなかっただろう。

スィエル家のものとして、引くことは許されません

だがクゥシェは毅然とした態度でそう言い切った。

なりませんお嬢様!お嬢様がそのような事、レイユ様がお許しになるはずが

お婆様ならむしろここで保身に走ることの方こそお許しにならないと思いますが

クゥシェの言葉に、テールはうっとうめく。姉妹の祖母、レイユはどうやらずいぶん苛烈な性格であるらしい。

妙なことだな

なおも言いつのろうとするテールに、Olは口をはさんだ。

お前はクゥシェの命を犠牲にしようとしていただろう。にもかかわらず、なぜ貞操ごときでそこまでわめく?

無論、三者がそれぞれ別の相手を示したのは狂言に過ぎないことは、Olも把握している。だが誰を犠牲にすると言ったのか、そのこと自体には意味があると感じていた。

ルヴェはテールを。テールはクゥシェを。クゥシェはルヴェを犠牲にすると言った。

普通であればそれは重要視していない相手を選んだと見るべきだろうが、果たしてそうだろうか。

それは俺が、あなたをお慕いしているからです。お嬢様

テールはクゥシェを呼ぶとき、ただお嬢様とだけ呼ぶ。ルヴェには名をつけてルヴェお嬢様と呼ぶのにだ。それはクゥシェを軽んじているようにも見えるが、彼にとってお嬢様が本来ただ一人であるともとれる。

スィエル家にとって大事なのはルヴェお嬢様です。ですが俺個人として大事なのは、クゥシェ様。あなたなのです。ですから、どうか!

追い詰められてようやく出てきた、おそらく今までずっと胸に秘めていたのであろう、切実なテールの告白。

だがその告白は、なんの感動も与えなかった。

Olにもそして、クゥシェ自身にも。

申し訳ありません、テール。あなたのその想いには応えることはできません。立場としてもそして、わたし自身の心情としても

すまなそうに、気の毒なものを見る目つきで、クゥシェは答える。恐縮したその態度が、かえって偽りのない答えであることを示していた。

時間を稼ぐための狂言とわかっていても、クゥシェが自分を選んでくれた時テールは嬉しかったに違いない。そこに、自分への想いが込められているのではないかと期待してしまったのだ。

でですが

お前はそろそろ黙っていろ

これ以上聞くべき言葉もない。Olはテールに沈黙をかけなおし、クゥシェの石化を解いた。

彼女は姉とは違って即座に攻撃してくるようなことはなく、するりと衣服を脱ぎ捨てる。浅黒いルヴェとは違い、雪のように白い肌。小柄なルヴェよりも更に小さく華奢な体躯には、しかし姉と比べても遜色ない二つの膨らみが実っていた。

大きなリボンでくくった長い黒髪を一度、さらりとかきあげると、クゥシェはOlの前に跪く。

そしてしばらく己の頭ほどもあるその剛直を見つめた後、困ったように顔を上げ。

あの、おじさま

その青い瞳でOlを見つめながら、問うた。

どうしたらいいかおしえてくださいますか?

これは勝負だろうが。お前は敵に教えを乞うのか?

その申し出に呆れたようにOlがそういうと、クゥシェは困ったように眉を寄せる。

ですが、性交とはお互いに気持ちよくなるための行為ですよね?どうしたら気持ちよくなるのか、相手に問うのはいけないことなのでしょうか?

ふむ一理あるな

Olはクゥシェの言葉に唸った。少なくとも一方的に快感だけを押し付け、一人善がりに気持ちよくなっていたルヴェよりもよほど本質を突いている。

いいだろう、教えてやる。ただしこちらに都合のいい情報を吹き込む可能性はわかっておろうな

そんなことをわざわざ仰るなんて、意外とお優しいんですね、おじさま

くすりと笑うクゥシェに、Olは食えない娘だと内心独り言ちる。

お前の言う通り、性交とは互いに気持ちよくなるための行為。本来ならば、愛し合う者同士が愛情を確かめるため子を成すために行うものだ

我ながら青臭いことを言っている、とOlは思うが、クゥシェは先ほどのように茶化すこともなく、真剣なまなざしでそれに耳を傾ける。

故に、簡単なことだ。愛せ。一時的なものでも良い。生娘であるお前に技巧など期待できぬ。それよりも心構えの方がよほど重要だ

クゥシェは目を閉じ、胸に手を当ててしばし黙り込む。まるでOlの言葉が己に浸透するのを待つかのように。

わかりました。では始めますね、おじさま

そしてそう宣言すると、まず彼女はOlの一物を小さな両手で捧げ持つようにして、先端に恭しく口づけた。その刺激に膨らんでいく肉茎を支えながら、ちゅ、ちゅ、と音を立てて何度もキスを落としていく。

これはとOlは目を見張る。

クゥシェにとってOlは自分たちを拘束した憎い男。姉をいいように嬲った仇敵なのである。たとえそうでなくとも先程であったばかりの見知らぬ相手だ。

だがとてもそうとは思えないような、愛情のこもった口淫奉仕だった。

動きは辿々しく、技巧は拙い。上手い下手で言うのであればルヴェよりも更に下だ。だが勝負の話であれば、姉よりもよほど強敵と言えた。

ここがいいのですか?

淡い青の瞳がOlを上目遣いに見つめ、反応をつぶさに観察する。ちゅ、と裏筋に口づけ、震えたそれを丁寧に舌で舐め上げる。

快楽を感じなくするスキル

その合間に、クゥシェはぽつりと呟いた。

なんてものはあったとしても使いません、よね?

無論だ

正々堂々とした戦い。そういう名目で始めた勝負だ。真っ向から確認されれば、そう答えざるを得ない。そして答えてしまえば、Olはその言葉に縛られる。自分自身さえ縛るからこそ、契約は意味を持つのだ。己自身で言ったことを反故にすれば、あらゆる呪いは効果を失う。

先ほどの方は、たしか、こう

クゥシェはダメ押しとばかりに胸を持ち上げ、Olのモノを挟み込む。柔らかな白い肉が赤黒い肉塊を挟んでぐにゃりと歪む様は、あたかも神聖で無垢なものが邪悪で粗暴なものに蹂躙されるかのよう。

その征服感と背徳感に加え、崩れてしまわないのが不思議な程に柔らかい乳房に一物を挟まれる快楽は、暴力的といってもいいほどのものだった。

だがそれは、Olにとってはむしろ好都合だった。胸と舌での奉仕というのは、簡単そうに見えてなかなか難しい。事実クゥシェはちゃんと胸で挟むのにすら苦戦していた。Olの一物はかなりのサイズだから挟むことそれ自体は難しくはないが、そこから奉仕しようと胸を動かすとすぐに外れてしまう。

ましてや先ほどのフローロのように乳房を左右交互にずり上げながら先端を口でしゃぶるなどというのは、かなり高等な技術なのである。動作に手間取れば意識はうまくやることに集中してしまう。しかしクゥシェの恐ろしさとは、技巧ではなくその献身的な所作にあったのだ。

とはいえ、クゥシェもすぐにそれに気づいたらしい。

少し悩む様子を見せた後、彼女は後ろを振り向きフローロに視線を向ける。

あの、そちらの方フローロさまと仰いましたでしょうか。一緒にお願いできませんか?

そして、とんでもないことを言い出した。

いいですよー

待て、流石にいいわけがあるか。お前も承諾するんじゃない!

あっさりと頷き近寄ってくるフローロをOlは怒鳴りつける。

でも、おじさまはそちらの方が気持ちよくなれますよね?

そうですよ!一人より二人、おっぱいが二つより四つの方が、Olも嬉しいでしょう?

真摯な眼差しでクゥシェが言い、フローロは悪戯っぽい笑みを浮かべながらそれに追従する。

確かにそのような条項は定めてはいなかったか

まさかフローロが敵に回るなどとは流石のOlも想定はしていなかった。事前に禁じておらずフローロ自身が同意している以上、止めることはできない。

チッ好きにしろ

はーい!じゃあOl、やりにくいので横になってください!

なんでそんなに楽しそうなんだ、と思いつつもOlはフローロの指示に従いベッドに横たわる。

じゃあOlのおちんちんを、二人のおっぱいで挟んじゃいましょう

こうですか?

左右からベッドを挟むようにして、フローロとクゥシェがぎゅっと乳房を突き合わせ、反り立つOlの肉槍を包み込んだ。

ふふふ、Olのおっきすぎて、二人で挟んでも先っぽが出てきちゃいます。可愛いですね

そういってフローロは谷間から突き出した亀頭に舌を這わせる。クゥシェもそれに倣い、反対側から舐め始めた。

その快楽に、Olは思わずうめき声をあげる。美しい少女が二人、豊かな白い乳房で赤黒い男根を挟み込み、愛おしげに左右から舐めしゃぶる様は流石に破壊力が高い。

その上、Olの弱い部分を知り尽くしたフローロが的確に弱点を突いてきて、それをつぶさに観察したクゥシェが真似をして攻めてくるのだ。

ほとんどフローロの手柄という気もしなくはないが、このままでは達してしまいかねない。魔術を使うまでもなく魔力を操作するだけで堪えることはできたが、鑑定で魔力操作がリストに出てくる以上、それもスキルの範疇だろう。

Olにとって魔力の操作とはもはや呼吸に等しい動作であり、使わないでいるのには逆に集中が必要とされる。その状態でフローロの攻勢を堪え続ける自信はなかった。

こちらも好きにさせてもらうぞ

フローロとクゥシェはベッドに横たわるOlのモノを挟むため、前傾姿勢になり腰を突き出す形になっている。その尻に、Olは両手を伸ばした。

あっ、やぁんっ。ズルですよ、Ol

んっあっ、そんな、所を

ズルはどちらだ、と思いつつもOlは二人の秘所を指で刺激する。まだ男を知らないクゥシェの膣内に指を深く入れるわけにはいかないが、入り口だけでも彼にとっては十分だ。

んっ、ふぁっOlぅそんな、したらおまんこ切なくなっちゃいますよぉ

おじさまぁそれあぁっすごいですぅ

左右で全く異なる動きと強弱をつけながら、Olは二人の膣口を愛撫する。フローロの膣内に中指と人差し指をずっぷりと埋め込み彼女の弱い部分をくりくりと指の腹でこすりながら、クゥシェの入り口の表面を薬指で撫でるようになぞりつつ、陰核を皮の上から人差し指と中指でやわやわと摘まむ。

その精微極まる愛撫に二人の奉仕は崩れ散漫なものになるが、しかしそれはOlにとって朗報ではなかった。

Olぅんっ、ちゅうっこれぇ挿れて欲しいです

はぁっこれがわたしの、中に

腰をくねらせ甘い声をあげつつ、熱のこもった目でOlのペニスを見つめながら舐めしゃぶってくる仕草は、落ちた精度を補って余りあるものだったからだ。

ね、Ol、ちゅっ、挿れて?Olのこの、熱くて逞しいおちんちん、わたしのおまんこに挿れてください

はしたなく尻を振り、味わうように唇でペニスを甘く食みながら、フローロは完全にスイッチが入った様子で懇願する。お前が求めてどうする、という意思を込め、Olは彼女の膣壁をぐりぐりと押してやった。

んっ、あっ、やぁっOl、だめ、あぁっ!んっふああぁぁぁっ!

弱いところを知り尽くしているのはお互い様だ。フローロはあっという間にイキ果てて、腰砕けになり寝台に突っ伏す。

おじさま

上気した頬と潤んだ瞳で、クゥシェがOlを見つめる。フローロが果てた今、一人で口淫奉仕をするのは分が悪いという判断もあるだろう。だがそれ以上に、彼女の雌としての本能がそれを求めていた。

こちらにおじさまのモノをくださいませんか?

自ら両脚の間の秘裂を割り開き、彼女はそう懇願するのだった。

第11話繰り返し念入りにわからせましょう-3

八回目。

本当に良いのだな?

はいお願いします

この世界にも処女というものに重きを置く文化がないというわけではないらしいが、Olの世界に比べればそれは軽いものなのかも知れない。

Olがそんな仮説を立てていると、それを否定するかのようにミシリと音が響いた。

音のした方向に視線を向ければ、テールがこちらを憤怒の形相で睨みつけている。石化したその身体には、小さなひびが入っていた。頭から下は全て石化しているのだから、首だけでひびが入るほどに力を込めたという事になる。恐ろしい筋力だった。

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