お前は今の自分の立場がわかっているのか?
勿論です。あなた達は卑劣にして邪悪、恥知らずの人でなしです。今すぐ己の所業を恥じ、私達を解放しなさい
セレスはどうやら本気で言っているようだった。
恥知らずか確かにそうかも知れぬ。しかし、人間などと言うものは一皮剥けば皆同じ。貴様の愛するあのイーヴァンという男もいや、アールヴでさえも、本質は変わらん
ふざけないで下さい! イーヴァンはあなたとは違います!彼は強く、優しく、誰よりも勇敢で高潔です。あなたの様な姑息な人でなしが!
では、証明して見せよ
セレスが食いついたのを確認して、Olは彼女の言葉を遮った。
俺は愛などというものを信じてはおらん。それはただの肉欲に付随するまやかしだ。真の愛などというものがあると言うのなら、それを証立てて見せろ。さすれば、お前達の正義を認め、解放してやろうではないか
どうすればよいのです
Olの求めることをおおよそ理解したのか、セレスは恐れるように尋ねた。
一週間、お前を犯す。穢し、辱め、善がらせ、屈服させる。それでもなお変わらず愛を持ち続けたなら、それは真の愛と認め、貴様らを解放してやろう
もし、その提案を受けなければ?
もう二度とお互い会うことも出来ず、死を迎えるだけだ
Olの答えに、セレスは大きく息を吐き、そして覚悟を決めた。
いいでしょう。しかし、この身は既にイーヴァンの物。私の一存で決めるわけにはいきません。イーヴァンに一度会わせなさい。彼も承諾すれば、その勝負を引き受けましょう
よかろう
Olはエレンに命じ、イーヴァンをセレスの牢の前に連れてこさせた。イーヴァンは両手を縛られ、鎖に繋がれているせいでセレスに近付くことも出来なかったが、二人は再会を喜び、愛を囁きあう。
件の勝負の件を述べると、イーヴァンは愕然とし、怒り狂ったが、二人が生き延びる道が他にないと知ると渋々と受け入れた。
セレス。邪悪なるものにどれだけ穢されようと、君の輝きは少しも衰えたりはしない。変わらぬ愛を誓う
ええ、イーヴァン私はけして悪に屈したりはしません。あの根性のひね曲がった陰険な魔王に思い知らせてやります。この世界で何がもっとも強く、美しいものなのかを
セレス
イーヴァン
はい、そこまでだ
こんな状況でも二人の世界を作り始める恋人達に若干苛立ちを感じながら、Olはイーヴァンの鎖を引いてエレンに渡した。
では、一週間後を楽しみにしていろ
そして、元の独房に閉じ込めるよう指示すると、Ol自身はセレスの牢へと入る。
さて、では早速相手をしてもらおうか
言いながら、Olは懐から薬の入った瓶を取り出し、セレスに渡す。
これは何ですか?
媚薬だ。いちいち前戯などしてやるつもりはないからな
なそんなものを飲むと思っているのですか!?
媚薬と言っても、惚れ薬の様なものじゃない。単に身体を強制的に発情させるだけだ。お前の言う世界でもっとも強く美しいものは薬に負けるようなものなのか?
Olが揶揄するように言うと、セレスはぐっと言葉に詰まる。
それと、避妊薬も含まれている。孕みたくなければ飲んでおけ
それを先に言いなさい!
セレスは瓶の蓋を開け、中の液体を喉に流し込む。妙な苦味と、喉がかっと熱くなる感覚に彼女は顔をしかめた。
さて、媚薬が効いてくるまでお前にはこちらに奉仕してもらおうか
Olはベッドに腰を下ろすと、いきり立った一物を取り出す。
奉仕?
口と手でこれを愛撫しろといっているのだ
嫌悪の表情でOlのそれを見つめるセレスに、Olは彼女の手を引いて跪かせ、自らの物を握らせる。
歯を立てるなよ。立てたらその分、イーヴァンの身体に刃を立ててやる
嫌がるように頭に加えられていた力が、その言葉でふっと抜け一気に大人しくなる。
手はそのまま一定の速度で動かせ。舌は下から上へ、満遍なく這わせるのだ
セレスは頭を抑えられ、えずきながらも必死に手と舌でOlの物を愛撫した。
下手だな。まあ良い、勝手に楽しませてもらうぞ
Olは両手でセレスの頭をつかみ、秘部を犯すかのように腰を振って彼女の口の中に突き入れる。
んんっ、んぶぅっ、んぐっ!
口の中を奥まで蹂躙され、セレスはくぐもった悲鳴を上げるがOlはお構いなしに彼女の口内を陵辱する。
出すぞしっかりと飲めよ
そして、喉の奥に精を一気に解き放った。
んっんぐっ、が、はぁっ!! げほっ、ご、ほっ!
大量の精液にセレスは咳き込み、口を離して床に吐き出す。何とも言えない苦味と青臭さが彼女の鼻を突き、セレスはこれ以上ないほどの嫌悪感に包まれた。
しっかり飲めといっただろうまあ良い。どうせ後で嫌でも飲む羽目になるのだからな。さて、媚薬も回ってきたようだ。そこに横になって股を開け
セレスはなおも咳き込みながらも、火照る体をベッドに横たえた。Olは随分自信があるようだが、セレスにも自身を抑制する自信があった。
入れるぞ
Olはセレスの両脚をぐいと割り広げ、秘部に一気に突き入れた。自信ありげに言うだけあって、その一物はイーヴァンのものより太く硬く、媚薬で火照った身体に強烈な快感を与える。
セレスは無駄に抗わず、その快楽を素直に受け入れた。アールヴ達はその美しさから、時に人間達に捕らえられ、奴隷にされることがある。特にセレスは幼いころから美しく、そんな時の心得をいくつも教わっていた。
快楽に無理に抵抗しようとすれば、体力を失うのみ。抗わずに受け入れ、逃げる隙を伺う方が良い。媚薬を使っているせいもあるだろうが、確かにOlとの性交は生理的な嫌悪感を除けば強い快楽を彼女に与えていた。
しかし、心まで満たされるのは、イーヴァンとの交わりだけだ。どんなに快楽を与えられようと、セレスはその幸福感を知っている。心まで堕ちる可能性はない。
んっ、あああぁんんっ、んん
甘い声を上げるセレスに気をよくしたのか、Olが抽送の速度を上げる。
いくぞ受け止めろ!
どくどくと音さえ聞こえるほどの勢いで、Olの精がセレスの胎の中に吐き出される。セレスは身体を震わせてそれを受け、ほっと息をついた。
後6日、これを耐えるだけで仲間達は救われる。
魔王といえど何のことはない、ベッドの上ではただの男だ。
そんな事を思っていたセレスの身体が、くるりとひっくり返された。
えっ?
次は後ろから行くぞ
答えを待たず、セレスの腰をがっしりとつかみ、Olの硬く反り返った一物が彼女の胎内に再び納められた。
ひあぁっな、何でまだ、するのですか
異な事を言う
困惑の声を上げるセレスに、Olは意地の悪い笑みを返す。
七日間、お前を犯すと言っただろう。まだ一刻も経っておらんぞ
そんな冗談、でしょう?
震える声で、セレスは問う。
冗談なものか。俺の精力は無尽蔵だ。きっちり一週間、84刻(168時間)、犯しぬいてやる
セレスの表情から、一瞬にして余裕の色が消えた。
第15話阿鼻叫喚の地獄絵図を描きましょう-4
あぁぁはぁぁぁぁ
高い波と、低い波。
よせてはかえす二つの波の間で、セレスの意識は小船の様に翻弄されていた。
極度の疲労で視線は定まらず、思考も千々に乱れ纏まらない。彼女に出来る事は、高い波が来れば甘く声をあげてそれを貪り、低い波がくれば尻を振ってねだる。ただその二つだけだった。
全身は精液に塗れどろどろになり、それを疎ましく思ったことすらもはや遠い忘却の彼方。股間からはどちらの穴からもだらしなくどろどろとした白い液体を垂れ流し、目はどんよりと光をなくし半開きにした口、胡乱な表情を浮かべたその姿はとてもアールヴの美姫とは思えないものだった。
あああぁぁぁあぁぁぁ
どぷどぷと胎内に吐き出される暖かい感触に彼女は一際高い波を感じ、本能の命ずるままに高く声をあげ快楽を貪った。それが何を意味するかももはや彼女は考えることが出来ず、ただただ次をねだる様に腰を振るばかりだ。
んぁぁやぁ
久方振りに彼女の股間からOlの一物が抜かれ、彼女はか細く声をあげた。入れたまま十度は中に出されたはずだが、当然彼女はそんな回数など覚えてはいない。ただ己の胎内を満たしていたものがなくなる喪失感に声をあげ、萎えた足に力を入れ尻を突き出す。
しかし、期待した快感の代わりに、彼女の眼前に怒張したペニスが突き出された。セレスは愛液と精液に塗れたそれを何の躊躇いもなく口に含み、吸い上げ、舐めさすった。
Olと性交をはじめてからと言うもの、彼女は食事と呼べるようなものを一切取っていない。唯一口にしているのが、Olの精液だ。大量の魔力を帯びたそれは、それだけ摂っていても十分生きていけるほどの栄養分を含んでおり、量もたっぷりと出る。
それを摂って腹を満たせと最初に言われたときには怒りよりも絶望に打ちひしがれたものだったが、飲まず食わずでは一週間生き延びることなど出来ない。不承不承口にしているうちに、味にはすぐに慣れた。むしろ今では美味しいとさえ感じる。
Olを感じさせれば感じさせるほど大量に濃密な精が出てくるので、セレスは熱心にその肉棒を舐めあげ、奉仕するようになっていた。その豊満な双丘に熱く猛る一物を挟み込むと、両手でむにむにと乳房を押し付けながらOlの情欲を煽るかのように舌を長く伸ばしその先端をちろちろと舐める。
かと思えば、頬を竿にこすりつけるようにしながらたっぷりと精のつまった袋を舐めあげながら白魚のように細く白い指で肉茎をしごき、その野苺の様な唇で味わうように食みながら肉棒を上へと辿っていく。
そして品なく舌を伸ばして口を大きく開くと、鈴口をぱくりとくわえ込んだ。同時に、カリの周りをなぞるように舌先で愛撫しながら、頬をすぼめ強く吸い上げる。
んっ、んぅっ
先端から吐き出される甘露を、セレスは目を細めてごくごくと喉を鳴らし、嚥下した。最初は咳き込み吐き出してしまったそれも、今では舌の上で味わい飲み下す方が自然だと感じるようになった。もはや考えずとも、身体が勝手に動きそうするのだ。
んふぅ
たっぷりと精を飲み込みセレスが満足げな声を漏らすと、ぐいと身体が引っ張られる。彼女はその力に抗わず、汗まみれのベッドにころりと転がって両脚を大きく開いた。
はぁんっ
前からずっぷりと突き入れられる怒張の感覚に、セレスは嬌声を上げた。そして緩慢な動きで手足をOlの背に回し、腰を振って彼の股間に恥丘をぐりぐりと押し当てる。
そろそろ約束の一週間が経つな
快楽を貪るセレスに、Olはぽつりと囁いた。
しかしセレスにはそれがどのような意味を持つのかがわからず、絡めた脚でぐいぐいとOlの腰を押して奥への挿入をねだった。セレスは浅い場所を擦られるよりも、奥まで突かれる方が好きだ。ずっぷりと深くまで貫かれると、満たされた気持ちになる。
いいのか? イーヴァンが待っているぞ
イーヴァン。
その一言で、セレスは一瞬にして我に返った。思考にかかっていた霧が晴れ、ぼんやりとしていた四肢が途端に重さを取り戻し、凄まじい疲労が身体に圧し掛かる。
しかしそれでも、彼女は理性を取り戻していた。
イーヴァン私は、あなたに、屈してはいません!イーヴァンを、皆を解放してください!
その目には光が戻り、口元は引き締められ、表情にはその強い意志が宿る。全身精液に塗れ穢されてはいたが、内から漏れる輝きはそれを覆い隠すほどの強さを帯びていた。
驚いたな。まだそれほどまでの力を残していたか
Olは思わず目を見開いた。あれほど朦朧とし、貪欲に快楽を貪っていたセレスが愛しい男の名一つで我に返るとは、アールヴの愛とは流石と言うほかない。ただ一人を愛する事にその生涯のほとんどを費やすだけのことはある。
良いだろう。俺の負けだ。イーヴァンにあわせてやる
Olは部下に命じて湯を用意させると、セレスと自身の身を清め、ゆっくりと身体を休ませた。
目を覚まし、元気を取り戻したセレスはOlの案内で迷宮を歩き、イーヴァンの独房へと向かう。
あれ、ご主人様もしかして負けちゃったの?
途中、リルが目を丸くしてセレスをしげしげと見つめた。
ああ。さすがは白アールヴの姫君、一筋縄ではいかないな
七日間ずっとしてたんでしょ? すっごいね
リルはほとほと感心した、といった様子で、Olに先導し、木の扉を開いた。
こっちは、三日で陥落したのに
その奥に広がっていた光景に、セレスは言葉を失った。
何匹ものサキュバスが舞い、その中央でイーヴァンが一心不乱に淫魔達を犯している。頬は痩せこけやつれきり、目は虚ろに鈍く光って淫魔を見つめている。腰の間に生える一物だけが力強くそそり立ち、淫魔の秘部を何度も出入りしながら白濁液を撒き散らしていた。
イーヴァン?
セレスが声をかけても、彼は聞こえていないかのように情事にふける。
イーヴァン、目を覚まして!
う、はく、ぁっ
セレスがイーヴァンの肩をゆすり名を呼ぶが、彼はそれに反応せずただただ淫魔との情交を続ける。
イーヴァン、私は勝ったのです! もう、ここから解放されるのですよ!イーヴァン!!
悲痛なセレスの声にもイーヴァンは反応せず虚ろな瞳のまま、ただただ腰を振り続ける。
無駄だよ
クスクスと笑いながら、淫魔の一人が言った。
もうこの男は、魂を売り払ってしまってるの。セックスを続けられるなら、他にはもう何も要らないって、そう言ったんだよ
恋人はいいの? って聞いたら、あんな女とは比べ物にならない、とも言ってたよねえ
そんな
セレスはその場にへたり込んだ。その目の前にOlの剛直が差し出される。彼女は反射的に、それを口に咥え込んだ。
んんっ!?
そうしてから、イーヴァンの目の前で他の男のペニスを咥えている事に気付き吐き出そうとするが、Olの手が後頭部を押さえそれをさせない。イーヴァンは恋人が目の前で他の男の一物を咥えていると言うのに、全く気にした様子もなくサキュバスを犯し続けた。
お前の心は確かに快楽に打ち勝った。しかし、身体は別だ
Olがセレスの胸をつかみ、股間を足で嬲る。それだけで彼女の股間はしとどに濡れ、蜜に溢れるのがわかった。
今更イーヴァンの物を入れられても感じないだろうな。たっぷりと時間をかけて、お前の身体は俺専用に造りかえられたのだ。まあ、イーヴァンは身も心も淫魔に打ち負けたようだが、所詮人間とはこのようなものだ。数百年を生き、たった一人の伴侶を愛すお前達アールヴにはわからぬ事だろうがな
イーヴァンが不実なのではない。そもそも人間を誑かす為に存在する淫魔に無抵抗に犯されて、落ちぬ人間などいないのだ。Olの性技もそれに匹敵するだけの自信はあったのだが、セレスはそれに耐え切った。凄まじいまでの精神の強さだ。
しかし彼女は、その強さを相手にも求めてしまった。それが、間違いの元だ。
信じていたものに裏切られ、極限まで磨り減っていたセリスの心は完全に砕け散った。
ねーご主人様、久しぶりに私も可愛がってよ
じゃれるようにリルがOlの腕に抱きつく。
イーヴァンの相手を私にさせないで新しく淫魔を呼んだのは、どういうことなのか聞かせて欲しいな~
にやにやと笑いながら言うリルに、Olはそっけなく答える。
お前は淫魔にしてはどうも色気が足りないからな。あの男を落とすのは無理だと思っただけだ
む、言ったな? 色気がないかどうか、確認してもらおーじゃない!
えい、とリルが胸でOlの顔を挟み込む。
そういう即物的な対応が色気が足らんと言っているんだ。もっと間接的に誘惑できないのか?
淫魔と召喚主と言う間柄でありながら、まるで恋人同士の様に振舞う二人をセレスは羨ましげに見た。
俺ならば、わかってやれるぞ
その視線を見逃すことなく、Olは優しく囁く。
この身は既に人をやめた。アールヴには及ばぬが、数百年を生きる事も出来る。この俺ならばお前の気持ちをわかってやれる
差し出される手を、取る以外にセレスには道がなかった。それが、Olの敷いた道である事は頭では理解している。しかし、心のとる道が他にない。一人で虚勢を張り続けるには、彼女は他者のぬくもりを知りすぎていた。
そうして、森の民と白アールヴ達はその絆を完全に断ち切られ、共にOlの配下となったのだった。
おうる、さま
セレスとイーヴァンをそれぞれ部屋に戻し、久しぶりに自室に帰ろうとするOlの下に、マリーがひょこりと姿を現した。
どうした
そふぃがそふぃが
スピナがどうかしたのか?
スピナと同郷であるマリーは、未だに彼女を本名ソフィアの名で呼ぶ。
大きな瞳いっぱいに涙を浮かべ見上げる彼女に、Olは膝をついて視線を合わせた。マリーはその年齢にしては聞きわけがいいし、Olが多忙な事も理解している。今の様な特に忙しい時は、遠慮して滅多な事ではOlに話しかけたりはしない。
いないの
そして、それが今回は災いした。彼女がもっと早くにそれをOlに伝えていれば、或いはこの後の運命は変わったのかもしれない。
そふぃが、ずっと、どこにもいないの
しかし、それはあまりにも遅すぎた。
第15.5話 ダンジョン解説
第15話終了時点でのダンジョン。
瘴気:80
悪名:85
貯蓄魔力:45(単位:万/日)
消費魔力:30(単位:万/日)
牢獄
大勢の虜囚を閉じ込めて置く為の牢獄。独房に比べ、一致団結して逃げ出しやすくなっている為特別に強固にできている。
ローガンinザイトリード
戦力:12消費魔力:2
下級悪魔ローガンが鉛の英雄ザイトリードの死体に取り憑いた姿。全ての魔術を無効化する鉛の呪いは消えているものの、その膂力は健在。英雄ザイトリード自体には一歩及ばぬものの、並みの英雄なら一蹴できる程の高い戦闘能力を誇り、維持に必要な魔力は減った。
メトゥス
戦力:17
正確には部下ではなく、利用しただけの形だが特別に記載。圧倒的な力を誇る最古にして最強の竜。単独の戦闘能力としては間違いなく世界最強。吐く息と血に凄まじく強力な毒が混じっている事以外には特筆すべき能力はないが純粋にその巨体、鱗の強度、力の強さ、爪の鋭さ、すべてが脅威。ウォルフは戦力換算で15程度の能力だが、命を賭して挑む事により何とか相打ちに持ち込んだ。
セレス(白アールヴ)
戦力:8最大貯蓄魔力:7
森の妖精アールヴのうち、森の恵みや安らぎなど明るい面を司る白アールヴの姫君。黒アールヴの長エレンに匹敵するほどの弓と魔術の腕を持ち、そのほっそりとした外見からは想像もつかないほどの強さを誇る。また、魔力貯蔵量は黒アールヴを上回る。
白アールヴと森の民
セレスの配下とその盟友の森の民達。いずれも劣らぬ弓の名手で、アールヴはそれに加え魔術も使うことが出来る。エレン配下の黒アールヴに比べれば一歩、エレンやセレスに比べると二歩ほど劣る実力だが、その分数によって圧倒する。
サキュバス
女性型の淫魔。基本的にはリルと同程度の能力を持つ。
レッサーデーモン
追加で呼ばれたレッサーデーモン達。ザイトリードに入っていないローガンと同じ程度の実力を持つが、その外見、能力は様々。ショタコン、スカトロジスト、ズーフィリアなど性癖も様々。
瘴気はいよいよ濃くなり、訓練を積んだ人間でなければ低階層では動く事もできず悪魔や悪霊は何の負担もなく出歩けるほどに。死体は迷宮内どころか迷宮入り口付近でもしかるべき処置をしなければアンデッドとして歩き回るレベル。悪名はとどろき、よほど田舎でない限りは魔王の名を聞いて震えぬものはいない。吟遊詩人はこぞってその逸話を歌い、特にウォルフ王の最期は長く人気の叙事詩の一つとなる。
第16話 愚かなる者を制裁しましょう-1
ずいぶん、寂しくなっちゃったね
行き交う雑踏を見つめながら、リルはぼんやりとそう呟いた。
スピナが姿をくらませて、何ヶ月経っただろうか。
彼女の行方はようとして知れず、その真意も不明なまま、Olも捜索を打ち切っていた。
彼女にかけた呪いは無理に解こうとすれば彼女自身の命が危ぶまれる類のもので、迷宮の秘密を他人に漏らすことはまずできない。かといって、彼女本人に迷宮を踏破するほどの実力もない。
その才能と今まで魔術を教えた労力は勿体無いところだが、彼女が特定の仕事に従事していたわけでもなく、いなくても迷宮は回る。
そう説明し、スピナの行方を捜すことを諦めたOlだが、リルには彼がスピナを巻き込まないよう配慮しているようにも見えた。
その数ヶ月のうちにOlの軍は近隣の小国を少しずつ飲み込み、白アールヴ達の国を落とした所でエレン達は地上へと旅立っていった。元々、白アールヴを倒すまでの協力関係だ。彼女達には若干劣るとはいえ、白アールヴ達の精兵が何十人と手に入ったから戦力的には問題ない。
しかし、Olは重用していた彼女達をあっさりと手放し、更に別れを惜しんでいたミオまで一緒についていけと見送った。ミオはどうするか悩んでいたようだったが、結局エレンについていった。こちらも彼女が家畜や魔獣たちの世話の仕方を仕込んだ娘やインプ達が何匹もいるので仕事には問題ないが、見知った顔がどんどん減っていく事にリルは寂しさとともに言い知れない焦燥感を覚えていた。
戦力は増えている。いくつも国を落とし、奴隷や魔物を増やし、洗脳した娘達も多い。しかしOlは、以前のように一人一人名前を覚え近くに置くという事はしなくなっていた。セレス以下のアールヴや森の民の女達はもはや大半がOlに忠誠を誓うようになっているが、リルはその娘達の名前を知らない。
ウィキアやナジャ、ShalにFaro達冒険者の娘達はそういった新しく増えた部下の管理をするのに手一杯で、あまり顔を見なくなった。ローガンも、新しく呼び出されたレッサーデーモン達の取り纏めとして迷宮の警護に当たっている。
変わらずにOlの傍にいるのはリルと、スピナがいなくなってから彼にべったりと張り付くようになったマリーだけ。勢力を広げ、部下を増やせば増やすほどOlは孤独になっていくかのようで、リルは彼をぎゅっと後ろから抱きしめた。
何を馬鹿な事を言っている。人は増え、仕事も増えた。この時の為にお前を召喚したのだ。もっとしっかりと働け
その腕をぐいと引き剥がし、老魔術師は背中越しにそう命じた。
はあい
忠実な使い魔は生返事をし、迷宮の管理をする為に部下に報告を命じる。男を陥落させるために新しく呼んだサキュバス達は、いまやリルの部下だ。
しかし、彼女達とリルは何かが決定的に違った。命じた事は絶対に違えないし、忠実に働く。しかし彼女達はOlを信頼してなどいないし、Olもまた彼女達をただの労働力としてしか見ていない。
本来、悪魔とはそういうものだ。異常なのはリルの方で、この感傷も、Olに抱く想いも、何もかもが悪魔らしくない。
勿論悪魔にだって個性はあり、それぞれに性格の偏りはある。リルは自分のこの特徴を今まで、その偏りの一種だと思っていた。
しかしやはり、他のサキュバス達と自分は何かが決定的に違うように思えてならない。魔界にいた頃は感じさえしなかった違和感を、リルは日に日に強く感じるようになっていた。
じゃあリムとラルは第三階層の魔獣達の様子見、シルケとスーリヤは第四階層、ロリカとナナイは第一、第二階層の見回りを
リルが部下に指示をしている時に、それは起こった。
突如迷宮内を照らしている明かりが赤く明滅し、巨大蟻の警告音のような金属質のけたたましい音が辺りに鳴り響く。この音を、リルはかつて一度だけ聞いたことがあった。
彼女は古い記憶を呼び起こす。そう、アレは確か初めてユニスに会ったときの事だ。今では、第四、第五階層への侵入者があった時の合図となっている。
シャイア! 最近、有力な冒険者はいないって言ってたよね!?
第三階層を抜けたのもいないよ
淡々とサキュバスの一人が答える。その表情に焦った様子は微塵も見られなかった。彼女にとって大事なのは報酬である魔力がしっかりと支払われるかどうかで、Olが死ぬなり魔力が枯渇するなりしたらさっさと魔界に帰るだけでいい。そういう認識だ。
リルは目を閉じ、第三階層の見回りをしている部下に魔術で現場の様子を問い合わせる。返ってきた答えは異常なしだった。
Ol、侵入者! だけど、なんか様子がおかしいの。第三階層を誰も突破してない!
リルは急いでOlに報告する。彼はちょうど中央広場で、水を通してダンジョンコアにアクセスし迷宮内を見通しているようだった。
そのようだな。これは冒険者の侵入ではない
難しい表情をしながら、Olは虚空を見つめた。
第四階層の外郭が突破されている。コボルトだな
外郭と言うのは迷宮の最端部、周囲を支える壁の事だ。迷宮の重みを支え、進入を防ぐ為に特に厚く堅牢な壁が作られている。そこを、外から坑道を掘ってコボルト達に突破された。
コボルト? 巣がたまたまうちの迷宮に当たっちゃったとか?
リルの問いに、Olは首を横に振る。
コボルトは鉱山の妖精。坑道を掘るのは得意だが、地下深くに巣を作ったりはしない。これは明らかに、人為的な操作だ
Olは険しい表情でリルに視線を移し、言った。
別の魔王の侵攻だ
別のってどうするの!?ウィキア達を向かわせる?
いや、それはリスクが大きすぎる。こういうときの対策も想定はしてある、落ち着け
想定してんの!?
驚きに声を張り上げるリルに、Olは煩いといわんばかりに顔をしかめた。
自分がしている事を他人はしないと思うのは愚か者だ。当然、俺以外の誰かが同様のダンジョンを作った場合の想定もしておる
Olはリルを連れて召喚の間へと向かうと、短く呪文を唱える。魔法陣が光り輝き、目的のものを呼び覚ますと一斉に羽音がけたたましく鳴り響いた。
まずはこいつらで偵察を行う
Olが呼び出したのは、大量のジャイアントフライの群れだった。
ジャイアントフライは元々、ただの死骸に湧いた蝿が迷宮の濃密な魔力に触れるうちに巨大化したものだ。迷宮内に転がる死体をすぐに食べ土に還す役割と、ゴブリンやコボルトといった最底辺の妖魔達の餌になるのが迷宮の生態系での主な役割だ。
しかし、こういった場合にはその行動範囲の広さとコストの低さ、自由自在に闇を飛び回る機動能力から優れた斥候ともなる。Olは蝿の一匹に支配の魔術をかけると、敵が外郭に開けた穴へと向けて蝿達を送り込んだ。掘られたばかりの敵の坑道には転移避けの結界が張られていないので、構造が把握できている部分であれば簡単に転移できる。
蝿達はすぐさま、自分達の餌や苗床となる死骸を探して坑道を飛び始めた。そのうちの一匹をOlは魔術で操り、その視界を共有する。
リル、中央広場で敵の侵攻を把握しながら、ウィキア達に情報を中継して防衛に当たれ。他の外郭も破られないとは限らん
複眼で区切られた世界を幻視しながら、Olは傍にいるはずのリルに命じた。
肯定の言葉が返り、彼女の気配が遠ざかるのを確認してOlは蝿の感覚への没入度を深める。
巨蝿の見る世界は、人間のそれよりもはるかに広い。蝿自身が1フィート(約30cm)程度と小さいせいもあるが、それよりもその複眼が捉える範囲はほとんど360度に近い。周囲全体を見回せるその視界は慣れないと混乱してしまうが、一旦慣れれば縦横無尽に宙を飛ぶことが出来た。
襲い掛かってくるコボルト達を避けながら坑道を進んでいくと、Olは案の定見慣れた紋様を壁に発見した。
龍脈を流れる魔力を、中央のダンジョンコアに運び入れる為の魔術刻印だ。このダンジョンの主はやはり、ただの竜やたまたまOlの迷宮を掘り当てただけの魔術師ではない。
しかし、同時にOlは首を捻る。ダンジョンコアは、Olの研究の集大成。研究過程はとっくに処分し、もはや彼の頭の中にしかない。リルにはああは言ったが、Ol以外にコアを作り上げられるものなど想像がつかない。
かといって、単純に魔力を中心に集めるだけでは意味がない。人間も妖魔も、そんな濃密な魔力の只中にいてはすぐに魔力に当てられて死んでしまうから利用するどころではない。完全に魔力を遮断し、自由に取り出せるダンジョンコアがあるからこそのOlの迷宮だ。
とにかく中心を見つけねばなるまい、とOlは蝿達を分散させた。魔術刻印の流れから中央の方角はおおよそ見当はつくが、迷宮の道筋がそのとおりに走っているとは限らない。むしろ、Olの迷宮を模倣しているならそれに従えば必ず迷うように出来ているはずだ。
そんな迷宮に対して有効な方法はただ一つ。冒険者達が行っている手法つまりは、人海戦術だ。
Olの迷宮の魔力をたっぷり含んだ巨蝿達は、一種の結界として作用する。巨蝿が移動し見回った部分にはその結界が張られ、リルのいる中央広場の噴水に地図として映し出すことが出来る。リルはその地図を見ながら敵の侵攻を予測し、魔術でウィキア達と連絡を取りながら防衛に当たった。
幸運な事に、敵の手札はそれほど大したことがないようだった。送られてくるのはコボルトやゴブリン、精々がオーガといった、Olの迷宮で言えば第一階層にいる妖魔達がメインだ。
とは言え、相手がダンジョンから攻めてくる以上は油断は出来ない。どんなに戦力で圧倒できても、ダンジョンコアを破壊されればそれまでだ。敵はコボルトで坑道を掘る事が出来るから、どこから襲撃してくるか直前までわからない。
逆に言うと、Olが敵を倒すには相手のコアを破壊すればいい。何らかの呪具か、それとも魔術師自身か。何にせよ、全てのダンジョンには必ず核となる何かが存在する。それを突き止め破壊するのが、もっとも効率の良い攻略方法だ。
敵をかわしながら迷宮を進み、殺されれば別の蝿に乗り換えながら、Olはふと奇妙な予感を感じた。迷宮の中心部の方向に覚えがあったのだ。
Olはその記憶を頼りに進路を変える。それは、以前軍師のキャスがOlを罠に嵌めた方向だった。何者かが偶然に龍脈を掘り当てたのかと思っていたが、あの場所であれば確実に龍脈が通っている事が判明している。魔力を抜き出していた鉄管は撤去したが、その場所自体を再利用したのだろう。
そして、そこを知るものはさほど多くない。キャスや兵士達を殺した今、知っているのはOlの身内だけだ。半ば確信を深めて奥へとたどり着いたOlが目にしたのは、まるで心臓の様に脈打つ巨大なスライムだった。
目にすると同時にスライムの表面から触手の様に腕が伸び、Olの視界が途切れる。蝿との接続を強引に断ち切られたらしい。
スピナか
己の身体に戻ったOlは、苦々しく呟いた。
第16話 愚かなる者を制裁しましょう-2
スピナの仕業ぁ!?
恐らく間違いないだろう
もう、何やってんのあの子
リルは額を手で抑えてため息をついた。裏切り、というより無理やりOlを止めるつもりなのだろう、と彼女はすぐに思い当たる。いなくなる直前、彼女は熱心にOlにラファニスに戦争を仕掛ける事を止めていた。
Olの無茶を止めておいて、そのOlよりよっぽど無茶するよね、あの子は
らしいといえばこの上なくスピナらしいが、これは幾らなんでもやりすぎだ。
それでどうするの?
道は大体わかったからな。侵攻を始める。問題は、あのスライムをどうするかだが
あれは恐らく以前スピナが作った魔喰いスライムの改良型だろう。雨の届かない迷宮内で大量の水を用意するのは中々難しい。それ以前に、前と同様に水に弱いという確証もない。
何にも効かない無敵のスライムとか言う事はないの?
スピナならそんなものも作りかねない、と不安げに言うリルに、Olは首を横に振る。
そんなものは原理的に作り出せん。どれだけバランスをとっても、何かを喰うようにすればその歪みで必ず何かに弱くなる。その設定とて、自由自在に出来る訳ではない。ある程度の選択肢の中から選ぶしかないはずだ
うーん、と考え込み、リルはふと思いついて指を立てた。
っていうか、スピナに直接聞いた方が早いんじゃない?
お前はまた適当な事を
仮にも敵対して奇襲をかけて来た相手が素直に喋る訳がないだろうが、とOlは嘆息する。しかし、スライムを何とかするよりもスピナを何とかする方が楽そうなのは確かだ。
まあ良い。とりあえずはその路線でいくか
え、なら何で私今叱られたの?
釈然としない表情を浮かべるリルを捨て置き、Olは侵攻の為の準備を始めた。
ダンジョンからダンジョンへと侵攻するのは、冒険者達がダンジョンを攻略するのとは少々勝手が異なる。ダンジョンの主にとって、己の迷宮と言うのは自らの身体に等しい。その中で起こっている事は大体把握できるし、逆に何が起こるかは大体制御できる。
つまり、ダンジョン対ダンジョンの戦いとはすなわち、お互いの領土の奪い合い。身体の食い合いに等しい。それは国家間の戦争や、ダンジョン探索の様なお上品な戦いとはまるで異なる。
よし、陣を敷け! 壁を打ち壊せ!
ヘルハウンド達がオークの群れを食い殺し、血と脳漿の飛び散った一室でOlはそこに結界を張る。コボルトとインプ達が次々に壁面にツルハシを叩きつけ、あっという間に壁を破壊する。
わざわざ迷宮を彷徨い、敵を倒して進む必要などない。壁や床を破壊し打ち抜き一直線に中心部へと向かえばいい。それが、ダンジョンマスター同士の戦いと言うものだ。
Olはオークたちの死骸を集め、その血を持って魔法陣を描く。Olの迷宮には結界がくまなく敷かれており、転移は出来ない。しかし、スピナの迷宮であれば話は別だ。一応こちらも簡単な結界は張られているものの、その強度はOlのそれに比べひどく脆い。魔法陣を描き、結界を張りなおせば容易に転送陣を作り上げることが出来た。
貴様らはここを防衛せよ
Olは転送陣で巨人数体と、白アールヴを数人呼び出して拠点へと配置した。巨人が敵に対して壁となり、その後ろからアールヴが矢を放って援護する。防衛力に優れた組み合わせだ。
こうして背後に防衛役を配置することで挟撃や背後からの不意打ちを防ぎ、更に自分のダンジョンへの侵入も牽制することが出来る。
次は東側の壁を掘れ! 地下水脈に出るぞ!
コボルト達が壁を打ち崩すと、その先にあったのはごうごうと音を立てながら流れる地下水脈だ。空を飛ぶ巨蝿ならば上空を軽々と飛んでいくことも出来るが、Ol達はそうはいかない。ここは迂回していくしかないスピナはそう考えているはずだ。
橋を架けろ! 急げ!
Olは召喚陣から巨大な橋を呼び出すと、巨人達に命じて川岸に固定させた。橋はドヴェルグ達に急ぎ作らせたもので、木製の簡素なものだが、頑丈さは折り紙つきだ。人間の数倍の背を持つ巨人達が乗っても、軋む音さえ立てなかった。
対岸の壁を崩せ!
橋をかけた先、対岸の壁をコボルトと巨人達が協力してツルハシを振るい、あっという間に打ち崩す。途端、断末魔の声が辺りに響いた。
何だと!?
通路を埋め尽くすような巨大な丸石が転がり出て、コボルト達を押しつぶし、巨人達をも飲み込んだ。スフィアの罠余りの破壊力ゆえに使いどころが難しい、凶悪な罠だ。
馬鹿な、こんな所に仕掛けるだといや、それが故か
スピナはOlの性格や行動パターンを知り尽くしている。ここは通常の手段では渡ることが出来ない。だからこそ、スピナはOlがここから侵入してくると読み、罠を仕掛けたのだ。
この分だと、他の進入路も読まれていると思っていいだろうな
Olは脳裏にスピナの迷宮の地図を思い描いた。Olが不意をつこうと考えていた道は、思い返せばどこもくさい。守衛を配置しづらい場所が多すぎるのだ。Olはそれを隙と考えていたが、むしろこれは罠だ。守衛を配さない代わりに、恐らくは凶悪なトラップが満載してあるのだろう。かといって、正面から突破するのも上策とは言えない。そちらは守衛の魔物達が大量にいる。
幾ら個々が弱い相手とは言え、地の利は向こうにある。例えば、高台から矢を射掛けられたりすればこちらは一方的に攻撃されるしかなくなる。そうなれば負けはせずとも被害は甚大だ。
ならば、見せてやろう。スピナ、お前がまだ見たことのない戦略と言うものを
そうして、Olはついにスピナの迷宮の最深部へとたどり着いた。巨大なスライムが部屋一杯に収まり、心臓の様にどくどくと鼓動している。
壁の紋様を打ち崩せ!
Olはコボルト達に指示し、スライムのいる部屋へと通じる通路の壁を破壊し始めた。魔力はこの紋様によって中心部へと運ばれている。部屋の周囲を一旦破壊すれば、スライムへの魔力供給はほとんど止まると言うわけだ。
そうなれば、これ以上迷宮の維持もできず、スライムが大きくなる事もない。
出て来い、スピナ! 魔力供給は断った。お前の負けだ!
虚空に向かい、Olは叫ぶ。スピナがどこにいるにせよ、核たるこの部屋を監視していない訳がない。
流石です、お師匠様
ぐにゅり、とスライムの表面が歪み、腕が突き出す。次いで白い顔が露出し、粘液状の生物の中から、スピナはゆっくりとその身体を晒した。一糸纏わぬ姿を惜しげもなくさらしながら、彼女はゆっくりとOlに腰を折る。
まさか、これほどまでに早くここまで到達なさるとは
お前にはまだ見せていなかったな。こういった戦略を。まあ、戦略と呼べるようなものではないが
Olは後ろを振り返り、通路の奥を示した。
その奥にあるのは、最低限の柱だけを残し、掘られつくした巨大な広間と、ツルハシを持った巨人やコボルト、インプ達。
何の事はない。ただの、圧倒的物量による力技だ
所詮罠などと言うものは、通路や小部屋の様な閉鎖空間だからこそ有効なものなのだ。それらも全て破壊し、打ち崩してきたのだから確かに戦略と呼べるような手段ではない。が、全戦力を投下すればそれだけ防衛に割く力が減り、危険は高まる。そのぎりぎりのバランスを見積もるのもまた知略の一つといえる。
それより、これはどういうつもりだ
Olの問いに、スピナは澄んだ微笑で答える。
お師匠様をお迎えする準備を整えたのです。私と共に、この迷宮で過ごしましょう
要らぬ世話だ。さっさとそのスライムを片付けろ。帰るぞ
そういうわけには参りません
スピナの言葉に呼応するかのようにスライムがぐにぐにと動き、彼を囲むように通路を塞いだ。自我どころか知性さえ持たないスライムを、いかにして自在に操っているのか。
力づくでもというわけか?
しかし、Olはそれを見ながらも慌てることなく問うた。もはやこの娘がどれほどの才能を持ち合わせていようと驚くまい。
いいえ。ただ私は、お師匠様の身を案じているだけです
スピナはOlに近付き、そっと彼の頬に触れた。その手は驚くほど冷たく、温度の低い地下迷宮の中で尚ひやりとした感覚を彼に与えた。
本気で言っておるようだな
全く我が弟子ながら性質が悪い、とOlは嘆息する。スピナが敵意を持ってOlに対しているのなら、以前かけた呪いがその行動を妨げる。スピナは本心から、Olを案じ、守る為にこんな事をしでかしているのだ。
だが、お前の言う事を効いてやる訳にはいかん。スライムを下げろ、スピナ。さっさと
呪力を込め、Olは命ずる。しかし、その命令はスピナに何の影響も与えなかった。
な貴様!
魔力がスピナに通じなかったから、ではない。
その為に、彼女が何を代償に支払ったかを理解したからだ。
愚かなことを貴様、自分が何をしたのかわかっているのか!?
ええ、理解しております。それでも、私がお師匠様に並ぶにはあなた様の横に立つには、これしかなかった。ならば、私は己の行為を愚かとは思いません
スピナはゆっくりとOlを抱きしめる。Olの下半身は既にスライムに包まれていた。そして、そのスライムは、スピナの下半身と繋がっている。
否。
スピナの下半身そのものが、今やスライムへと変化していた。その端は長く伸び、ダンジョンの中心で鼓動する巨大なスライムに繋がっている。知性のないスライムを自在に動かせるのは、当たり前の事だったのだ。
彼女自身が、スライムになったのだから。
人である事を捨てたのは、お師匠様も同じでしょう?さあ、迷宮の奥で、永遠に私と愛し合いましょう
ずぶずぶとスピナの身体が、Olを飲み込んでいく。それはOlの身体を溶かしはしないが、魔力を奪い身動きを完全に封じていた。
ネリス・ビア・スピナ
Olの身体がほぼ取り込まれた、その時。Olは唯一露出した口で、そう彼女の名を呼んだ。
途端に、スピナの動きはぴたりと止まる。
俺を解放しろ
続く言葉に、Olの身体はスピナの身体から離れた。
スピナは愕然としながらも、Olから身体を離し、周囲のスライム達もどかす。どんなに力を込めても抗うことが出来ず、彼女はその動きを止める事が出来ない。
一つ、お前に教えていなかった事があったな
Olは息を整え、萎える手足に魔力を通しながら言った。
魔術師は、その名をつけた師に逆らう事は絶対に出来ない。魔力を無効化するだの、人でないものになるだの、そんな事は全く関係ない。名とは存在そのもの。魂にも等しいものだからだ
音もなく、スピナの頬を涙が一筋流れる。
泣くな。貴様の心配はわかるし、無碍にする気もない。さあ、さっさと帰るぞ
泣く?
スピナはそっと自分の頬に手をそえ、流れる涙を確かめた。
そして、口元を笑みの形に歪ませる。
これは、悲しみの涙ではありません。喜びの涙です。私は、ようやく
!?
Olの動きが止まる。まるで先ほどまでのスピナの様に、身体を全く動かす事ができない。
お師匠様と、同じになれたのですから
いや、事実それは先ほどまでのスピナと同じなのだ。
類感呪術か!
第16話 愚かなる者を制裁しましょう-3
呪術。
それは、まだ魔を使った不可思議な技が全て魔法と呼ばれていた時代の遺物だ。
呪術、妖術、魔道、法力などと様々な名で呼ばれていたそれらは、多くの魔術師達によって研鑽され、分類され、一つの学問として纏められ、魔術の名をつけられた。そしてそれ以前の魔法達は使い勝手の悪い、泥臭い術だと断ぜられ、忘れ去られてきた。
しかしそんな中でも、民間の中で根強く残っているものがある。それが、呪術だ。
魔術に比べ格段に効率が悪く、使用方法も限定的で使い勝手の悪い呪術ではあったが、魔術師ではなく民間の中に残ったのには理由がある。
それは、感覚的にわかりやすいという事である。
呪術とは一言で言うと、関連性を利用した魔術の総称だ。
似たものは似る。同じだったものは繋がりを持つ。
雨が欲しければそれを模して水をまいて雨を呼び寄せ、
人を殺したければその相手の爪や髪を人形に入れ、杭を打ち込む。
無論、魔術師でもない人々がそんな事をしても、望む効果が得られることはほとんどない。しかし人々はそれに力があると信じ、その信じる意識の集合体が力となって呪術師に力を貸す。
その中でも類感呪術と呼ばれるのは、似たものは似た性質を持つという関係を利用したものだ。
そして、今。
師による理不尽な強制というOlの根幹に根ざす体験を追体験し、スピナは彼との関係性を強くした。
師と弟子、弟子と師。二人の関係性が曖昧になり、それを利用してスピナは強引にOlに呪術を仕掛けたのだ。
効率は悪く、効果の薄い呪術ではあるが、スピナの蓄えた魔力は膨大だ。しかもダンジョンコアと言う外部に魔力を持つOlとは違い、スピナはその体内に魔力を全て蓄えている。その膨大な量の魔力による力押しに、Olは完全に動きを封じられた。
お師匠様ああ、お師匠様お慕いしております
スピナの姿がぐにゃりと歪み、彼女の姿が二つに分かれる。スライムと人との中間の生き物となった彼女は、人の姿と粘液状の姿を自在に渡ることが出来る。そればかりか、こうして身体を複数に分けることさえ可能だった。
Olの形代とは違い、それぞれ全てが本物のスピナで、独立した思考と統一された意思を持つ。スピナはOlの衣服を剥ぎ取ると、彼の肉棒を愛おしそうに舐めあげる。それと同時に増えた方のスピナがOlの肩に甘えるように抱きつき、彼の唇を吸う。
彼女の背後で蠢くスライムの表面からは次々とスピナ達が一糸纏わぬ姿で現れ、Olを拘束しながら彼の身体を愛撫していく。見る見るうちに、Olは全裸のスピナに周囲を囲まれた。
Olの口はぬめぬめとしたスピナの舌で満たされ、声を出す事も出来ない。Olは形代を捨て元の身体に戻ろうとしたが、それも叶わなかった。身体を捨てるにも、ほんの僅かながら魔力が必要になる。しかし、魔力を動かそうという動きを察知するや否や、スピナはそれを吸い上げてしまう。
形代を破壊されれば、魂は自然と元の身体に戻る。しかし、スピナはそうはしないだろう。ただ永遠の時をOlと過ごすだけだ。
永遠に愛し合いましょうお師匠様
スピナはOlを己の上に押し倒し、一物の上に腰を下ろした。
あぁ
胎内にOlの物を納め、スピナは声を上げる。その感触はスライムのそれではなく、人間の頃の彼女と全く代わりがない。違うのは、彼女の姿が幾つにも増えていることだけだ。
御奉仕致しますね、お師匠様
スピナは自らの胎内にOlを納めつつ、少し腰を浮かす。そこに別のスピナが顔を横から入り込ませ、スピナの中に入りきらない竿の部分に舌を這わせ始めた。更に別のスピナがその精の詰まった袋をじっくりと舐め上げ、左右からは二人のスピナがOlの腕をそれぞれその胸に挟みこんで、指先を肉棒にするように丁寧に舌を這わせ、口淫奉仕を行った。
Olの口もピッタリとスピナの唇に塞がれ、その舌は同様に口内で奉仕するかのようにスピナの舌が絡められていた。身体は更に別のスピナの手によって支えられ、その胸をぐいぐいと押し当てられている。
その天国の様な地獄に、Olは溜まらず精を解き放つ。本来であれば射精も完全にコントロールできるはずだが、スピナに魔力の流れを乱されてそれも叶わない。
あぁぁお師匠様ぁ
うっとりとした声で、スピナ達は一斉に恍惚のため息をあげた。思考能力そのものはそれぞれ独立して持っているが、感覚を共有し、意思を統一する事はできる。自分同士で争ったりはけしてしない、スピナという存在のために全員のスピナが存在しているのだ。
ずっと、ずっと私はお師匠様のお傍にいます
スピナはOlの上から退き、股間に顔を近づけると舌で清め始めた。三人のスピナが顔を寄せ合いペニスに奉仕し、腕を、足を、胸元を、体中の至る所を、スピナは舌を這わせ清める。
私の事だけを愛して、などとは申しません。ですがどうか、ずっとお傍にお傍に、いさせてください
スピナは再びそそり立ったOlの物を己の膣内に納め、彼の胸の中に身を委ねた。そのまま、彼女の輪郭がぼやけ、Olの身体をゆっくりと包み込んでいく。全身が融け、文字通りスピナと一体になるかのような快楽にOlの意識に霞がかかり始めた。
やめなさい、スピナ
その耳を、もっとも聞きなれた声が叩く。薄れいく意識の中、Olの目に映ったのは彼の忠実な使い魔リルの姿だった。
第16話 愚かなる者を制裁しましょう-4
広場から慌ててOlを助けに来たのだろう。リルは体中傷にまみれ、翼は半分折れ、肩で荒く息をしていた。
その姿を、スピナ達は冷たい表情で見つめた。
邪魔をしないで下さい、使い魔風情が。お師匠様は、これからずっと私と共にあります。あなたは必要ありません。消えてください
使い魔風情。冷たい目でそう呼ぶスピナに、リルは違和感を覚えた。彼女は他人との間に壁を作り、Ol以外の者と馴れ合おうとはしない。リルも会話はしても、名を呼んで貰った事は一度もない。
しかしそれでも、リルは彼女とのある種の信頼感を、感じていた。少なくとも使い魔風情などと蔑むような事を言われる間柄だとは思っていなかった。
そうはいくもんですか! Olは私の! ご主人様なんだからっ!
リルが腕を伸ばし、Olの腕をつかもうとする。しかし、その腕はスピナの身体に触れた瞬間溶けるように消失した。
っ!
リルは慌てて、肘まで消えた腕を引き戻す。
私のこの身体は、あらゆる魔力を溶かし、吸収します。悪魔のあなたではどうにもなりません。もう一度言います。消えてください
それが、スピナの精一杯の譲歩だった。
彼女とて、リルやユニスに友情を感じていない訳ではない。いや、むしろOl以外に信じる数少ない相手であり、ある種の尊敬に近い感情すら抱いていた。
そんな彼女を何よりも恐れさせたのが、ユニスの死だ。
戦闘能力を全く持たないスピナは、口には出さなかったがユニスの強さに強い憧れと絶対的な信頼を置いていた。
そんな彼女でさえ、あっさりと死ぬ。ならば、Olも例外ではなく、命を落としてしまうのではないか。その想像は彼女にとって気も狂わんばかりの恐怖であった。
絶対に、嫌。私だって、譲れないの
リルは左手で、消失した右腕をさっと撫でる。腕の断面が黄褐色に光り輝き、リルの腕がじわじわと復元していく。
ごめんねOl、1割までって約束だったけどOlの魔力、使わせてもらう!
リルの周囲を鎖の様に琥珀色の魔力が渦巻き、ゆっくりと彼女の傷が治り、折れた羽が元に戻っていく。彼女は大きく翼を広げると、速度をつけてスピナに向かって突進した。
無駄だと、言うのがわからないのですかっ!
無数に居並ぶスピナのうち二人がリルを止め、その両手足をつかむ。リルは一瞬にして胴体だけになり、地面に転がった。
あなたの身体は全身魔力の塊。なら、何をしても私には勝てません。それが
だったら、何よ。無理ならあなたはOlを諦めるってワケ!?
リルの叫びに、スピナはびくりと身体を震わせる。
何故、そこまで
知らないし、知ったこっちゃない! いい事、あたしはね!
魔力で手足を復元し、リルは煮え立つ感情の中、どこか冷静な部分で思った。
ああ、これで二度目だ。全く師弟揃って腹立たしい。
怒ってんのよーっ!!
カチリ、と。何か、スイッチが入ったような感覚が、リルの頭の中に響いた。
リルは復元した右腕を再度スピナの中に突っ込み、Olへと手を伸ばす。当然、瞬時に腕はスピナの中に溶けるが、リルは無理やりそこに魔力を注入し溶かされながら腕を再生する。
そんな、無茶な!
瞬時にして魔力を吸い取るスピナに対し、リルは凄まじい速度でその腕を再生させる。ありえない速さだ。幾ら人間に比べて構造が単純な悪魔といえど、その身体の再構成にはそれなりに時間がかかる。少なくとも、瞬時に出来るような類のものではない。それを成し遂げる為には、高度で複雑な魔力の操作技術が必要だ。
例えば、Olの様に。
馬鹿な、サキュバスにそんな技術があるはずが!
リルの再生速度が、徐々に加速していく。スピナの中に腕を突っ込んでいるというのに、肘の辺りがしぶとく残っている。そして、その速度は徐々にスピナの吸収力を上回り始めた。溶解と再生のせめぎあいの中、リルはじりじりと腕を伸ばしていく。
もう、すこ、し!
最初に、翼が消えた。ついで、左足が消え、左腕、右足とリルの身体が崩壊していく。魔力が足りなくなって、再生の分を身体の別部分で補っているのだ。
リル! 手を離してください!
やっと、名前で呼んでくれたね
残った顔でニっと笑い、リルは右腕でOlを掴んだ。そのままぐいっと彼の身体を引き出すと、右腕も崩壊し、顔だけが残る。
地面に落ちるリルの首。スピナは思わず人の身体に戻ってそれを抱きとめた。
その手首に、リルは思いっきり牙を突き立てる。
っ!?
一瞬にしてリルはスピナから魔力を奪い取り、全身を復活させた。
やっぱり、ちゃんと残してたんだ
新しく作った身体の調子を確かめるかのようにぐるぐる回しながら、リルは嬉しそうに笑みを見せる。
お腹にもらった、Olの魔力
偶然似た魔力を持つリルと違って、スピナはOlに精とともに仕込まれた魔力を取っておいても意味がない。むしろ、何も対処しなければそのまま自分の魔力として取り込んでしまう。
しかし、スピナなら絶対にそれを残している。リルはそう信じ、躊躇いなく限界まで自分の魔力を使うことができた。
さ、気はすんだでしょ? 帰ろ
出来ません
スピナは両腕を上げ、自らの頬のあたりに構える。
だってご、ごんなごどじでおじじょうざまに、ぎらわえる
そして、まるで童女の様に泣き始めた。
その様子をリルは唖然として眺め、苦笑交じりに息を吐いた。とんでもない事をしでかしたと思えば、そんな理由で子供みたいに泣き喚く。全く、困った娘だ。
泣き止みなさい、あんたキャラ崩壊してるから。ほら私が何とかしてあげるから。ね?
子供をあやす様な口調で慰めながら、リルはスピナの頭を撫でる。
こくこくと頷き、しゃくりあげながらも何とか涙を止めるスピナの頭をぽんと軽く叩き、リルはOlに向かう。魔力を奪われ、彼は昏倒しているようだった。
そのリルの背を見ながら、スピナは妙な違和感を感じた。何とかするとはどういう意味だろうか? いつもの彼女なら、一緒に謝ってあげるくらいは言ってくれるだろう。しかし、自信満々に何とかすると言うのは妙な違和感があった。
リルはすうっと息を吸い込み、大声で怒鳴る。
アイン・ソフ・Ol! 起きなさい!
呪力の篭ったその言葉に、Olがびくりと身体を震わせ目を覚ます。
ラリル?
一体何が起こったのか把握できず目を瞬かせるOlに、リルはにっこり笑って手を上げた。
そして、スナップを効かせてその手を振り下ろし、Olの横面を思いっきりはたく。
パン、という小気味良い音に、スピナは思わず身を竦ませた。
第16話 愚かなる者を制裁しましょう-5
な?
強かに平手打ちされ、紅葉模様を頬に貼り付けてOlは目を瞬かせた。
自分に危害を加えられないはずのリルが自分を殴った事もそうだが、あの鉄面皮のスピナがひぐひぐとしゃくりあげ、目の前のリルがにっこり笑いながら今だかつてないほど激怒したのもわからない。
それに何より、今自分は真名で叩き起こされた。知っているかいないか、という話ではない。それが出来る人間は既にこの世にいないはずなのだ。
Olがしっかりしてないから、スピナが心配して暴走しちゃったじゃない!あなたは私達のご主人様なんだから、もっと余裕を持っていつもみたいに不敵に構えてなさい!
ある種、理不尽なその物言いにOlが言葉を失っていると、リルは噛んで含めるように彼に問うた。
取り戻すんでしょう? ユニスを
Olが力強く頷くと、リルは腰に両手を当て、よろしい!と頷いた。その仕草は、Olにとってひどく懐かしいものだった。
お前はラズ、なのか?
Olは、リルの顔をまじまじと見つめながら尋ねた。彼女の表情はいつもと違うようにも、違わないようにも見える。
Ol、力むと魔力を使いすぎる癖、ぜんっぜん治ってないね
リルは悪戯っぽく笑い、Olに手を貸して彼を立ち上がらせる。
悪魔の召喚ってさ。釣りに似てるんだよね。魔界から見ると、呼ばれてる種族と、使われてる魔力が見えるわけ。悪魔達はそれを見て、この魔術師は期待できそうだ、いやこいつは駄目だ、なーんていいながら、釣られたり、無視したりするんだけど
一年以上前の事を思い出し、リルはくすくすと笑う。
Olってば、サキュバス呼ぶのに高位悪魔並みの魔力を注ぎ込んだりするから、皆逆に警戒しちゃって全然食いつかなかったんだよね。でも、私には、あなたの琥珀色の魔力がなんだかすごく、懐かしく思えたんだ
リルはOlの両頬にそっと手をそえ、彼の目を見つめた。
自分の魔力を全部吸われて、Olの魔力で身体を作って、思い出した。弟子を裏切り、悪魔に魂を捧げたラディクス・フルーメンは、魔界で悪魔にサキュバスになった
それは偶然と言えば偶然だったし、必然と言えば必然だったのかもしれない。ラズが自分に良く似た魔力を持つOlを拾い弟子にし、その魔力に良く似た性質のリルはOlに惹かれ使い魔となった。
でもね、それでも、私はラズじゃない。ラズの記憶は大半思い出したけど、私は私。あなたの使い魔の、リルシャーナだよ
Olは、短くそう答えた。ラズの死を引き摺っていた訳ではない。が、胸のどこかにつかえていた何かがゆっくりと氷解していくかのような、そんな気持ちを彼は感じた。
まあ、ラズは聡明で落ち着きのある大人びた女性だったからな。お前とは似ても似つかん
む、失礼なっ! ああ見えて結構背伸びしてたんだからね、あの女!弟子の前で良い格好してたけど、内心は滅茶苦茶オロオロしてたよ!?
おいやめろ、俺の思い出を穢すな
リルと言い合うOlは、久方ぶりに晴れやかな表情を浮かべた。そして、所在なさげに彼を見つめるスピナに無言で向き直り、歩を進めた。
そして拳を握って固めると、彼女の脳天にめがけそれをごんと振り下ろす。
帰るぞ、リル、スピナ
両手で頭をおさえ目じりに涙を浮かべながら、スピナは嬉しそうに頷いた。
そふぃ! ?
Olの迷宮へと戻り、スピナが姿を見せるとマリーは満面の笑みを浮かべ、彼女に駆け寄ろうとした。しかし、途中で足を止め、彼女は不審そうな表情でスピナを見上げる。
スピナがもはや人ならざる存在である事を、何と無く感じ取ったのかもしれない。
ほんとうに、そふぃ?
フォローしようとリルが前に出ると、マリーは怪訝そうな声で尋ねた。
まえより、おっぱいおっきくなってる
ピシリ。
音さえ立てそうな勢いで、スピナの表情が凍りついた。
い、一体何を言っているのですか。私は何もかわってなど
うそだー。まえよりぜったいおっきくなってる!
思わずOlはスピナの胸元に視線を走らせる。しかし、ローブに覆われた彼女の膨らみの大きさはいまいち判別できなかった。
な、なら、しばらく会わないうちに大きくなったのでしょう。何も不思議な事は
そんなわけないもん。いちねん、ずーっと、かわらなかったもん。いまさらかわるわけないもん
つまり、スライム化したのを利用してという事か
あー、まあスタイルくらい自由自在だよね
頑なに言い張るマリーに、Olとリルは納得してうなずきあった。それを聞いて、スピナの表情が氷を越え、修羅の様に変化する。
あっ、そふぃだっ
その表情を見て、マリーは嬉しそうに笑った。
あなたはっ! 何度っ! 私を辱めれば気が済むのです、マリィィィィッ!!
一瞬にして全身を粘液状に変化させ、触手を矢の様に伸ばすスピナ。マリーはきゃあきゃあと笑いながらそれを身軽にかわした。どうやら彼女にとって、スピナの異常は殊勝な態度と胸の大きさだけで、液状化するくらいは平常運転扱いらしい。
Ol
そんな様子を微笑ましく見ながら、リルはOlに声をかけた。
ラズはさ。最後まで、幸せだったよ
Olにとって、その言葉はそれほどの意味を持たなかった。もう、70年も前の話だ。ラズとの生活は随分と色褪せ、大切な、しかし遠い思い出と化している。
だから、Olは遠く先を見ていった。
してやる
ぽつりと呟いたOlの言葉を聞き損ね、リルは彼の顔を見て問い返した。
お前も、だ
うん!
花咲くような満面の笑みを浮かべ、リルは頷いた。
第16.1話 蛇に足を描きましょう
まあそれはそれとして、だ
Olは嬉しそうに笑うリルの頭をがしりと掴んだ。
お前が俺の頬を引っ叩けたのはどういうことだ?
え、えーと、それはほら、害を与える目的じゃないからノーカンっていうか
そんな論理が通じるか! 貴様、契約の一部が無効化されているな!?
身体の組成自体を全て入れ替えた影響か、人間であった頃の記憶を呼び覚ました結果か。どうやら、リルを縛る契約は大分緩んでいるようだった。
まさかそのような回避方法があったとはな。契約事項を全部洗いなおすぞ。どのくらい緩んでいるのか確かめ、呪いをかけなおす
ちょ、ま、待ってよOl! 私はOlを裏切ったりしないってば。他の悪魔とは違うの、信じてよ
ああ、信じているとも
Olの言葉に、リルはぱあっと表情を明るくする。
が、それとこれとは話が別だ。俺が信じていようが、そんなもの世界は簡単に裏切るからな。お前の信頼と同様に何の保証にもならん
しかしそれは、続く言葉にすぐにげんなりと崩れ去った。
おい、スピナ、お前もだ。人間じゃなくなった上に魔力を吸収するなんて存在に、呪いが元のまま残っておるとは思えん
こちらは嬉しげに、Olの下へと擦り寄る。
じゃあ検査を始める。まずは第一項、攻撃範囲の確認からだが
Olはばさりと巻物を広げた。端が地面に落ち、ころころと伸びながら転がっていく。
Ol、それ、何項まであるの
流石に唖然とするスピナの隣で、リルはげんなりと尋ねる。
大体、1000くらいだ。多いんだからさっさと片付けるぞ
せっ!?
リルの声なき悲鳴が、迷宮にこだました。
彼女達が解放されたのは、それから三日後の事だった。
第17話天に弓を引きましょう-1
宗教国家ラファニス。
その首都の更に中央に王宮の代わりに建っているのが、大陸中の教会を統括する僧侶達の大本山。メリザンド大神殿だ。
聖女メリアはその神殿の奥で毎日豊穣と平和の祈りを捧げ、表に出ることは滅多にない。代わりに、政治を担当しているのは評議会と呼ばれる集団で、実権としてのトップは存在せず、提案された政策は常に評議会の多数決によって評決が下される。
癒着や汚職、不正などがあればそれは聖女によって見つけ出され、更迭される。これらの人事を決定する権利を持っているのは聖女のみであり、その決定は神託によってもたらされる。
すなわち、間接的にではあるが神によって統治されている国。それが、宗教国家ラファニスである。
国中にその名を知られ慕われている聖女メリアではあったが、表舞台に上がることは滅多にない。年に数度の人事異動と豊穣の儀式、そして数十年に一度の聖女の代替わりの儀式以外にはけして姿を現さない。
これは他国の侵攻や訪問があった場合ですら同様で、いずれも聖女の代わりに評議会の人間が代理として受け持つ。
人事異動や代替わりはいつ起こるのかは不定であり、また神殿内で執り行われるので一般の目に触れることもない。
唯一日程が決まっており、一般市民たちも聖女の姿を目にする事ができるのが毎年初春に行われる豊穣の儀式だ。
聖女は神衣をまとい、神殿の前にある祭壇の上で豊穣の舞いを踊る。それはただの儀礼的なものではなく、神の力である理力を帯びたものだ。この儀式によってラファニスは実際に豊穣の祝福を受け、常に豊作に恵まれる。
人々はその加護を受け田畑を耕し、富を築いてそれを聖女に、ひいては国へと返す。これが、ラファニスが大陸でも有数の大国になった秘訣だ。
そして今年も、その日がやってきた。
豊穣の儀式は一日がかりの大事だ。神殿の周りは青銀の鎧に包まれた聖騎士たちがくまなく警護し、詰め掛ける市民や不心得者達から聖女を守る。
街は聖女を一目見ようとやってきた旅人達で賑わい、男はその美しさに見惚れ、女はかつて見た夢に想いを馳せる。次の聖女は神官の中から神託によって選ばれる。世界に教会は多くあり、僧侶は更に無数にいるが、その中でも神官になれるのはほんの一握り。
そして、その神官の中から聖女になれるのはたった一人だ。齢20を越えたものが聖女に選ばれた試しはない。聖女に選ばれるのは常に、若い少女の中でも才能に優れ、見目麗しいものだった。
そして、およそ30歳程で次の聖女を選び、その任期を終える。
メリア様、綺麗ね
例外なく美しい聖女達の中でも、今期のメリアは特に美しいと誉れ高い。齢は今年で24、花の妖精も女神すらも彼女の前では霞むと形容されるその容姿は、確かにアールヴのような妖精と比較してなお美しいものだった。
光をそのまま束ねたかのような純白の髪は足元に届くほど長く滑らかで、澄んだ瞳は紫水晶を削りだし、100年間に渡って磨き上げた宝珠のよう。唇は熟れた果実の様に瑞々しく、手足はすらりと細く長い。その胸元には豊かな双丘をいただいていたが、劣情を抱く事が罪悪であると感じさせるような神秘的な美しさを湛えていた。
屈強で敬虔な聖騎士たちが隙なくその周囲を守ってはいたが、彼女に手を出そうなどと言う不心得ものはここ数十年一人たりとていない。祭りの雰囲気に羽目を外して泥酔した旅行客すら、その美しさの前には息を飲み、背を伸ばして居住まいを正すほどだ。
故に、その日は多くのラファニス国民によって、忘れることの出来ない日となった。
突如として轟音が辺りに鳴り響き、聖女の乗っていた祭壇が砂埃に覆われる。
何だ!? 一体何が起こった!?
くそっ、聖女様は無事か!?
誰か、風を起こせ! この砂埃を消し飛ばすんだ!
聖騎士達が血相を変えて祭壇へと殺到し、魔術師達が必死に風を起こし砂埃を払おうとする。無数の悲鳴と怒号が辺りに響き渡り、恐怖に慄いて逃げようとするものと、何が起こっているのか把握しようとするもの、騒ぎを聞きつけ野次馬にやってくる旅行客で辺りは大混乱に陥った。
穴だ!
聖騎士の一人が叫ぶ。
巨大な穴が空いている! 縄を持って来い、不用意に近付くと落ちるぞ!
砂埃が晴れた後に姿を現したのは、祭壇全体を包み込むような巨大な穴だった。穴の底には僅かに祭壇の頭が顔を出しており、そこから横穴が見える。聖女は、浚われたのだ。
追うぞ!
何人かの騎士が魔術で風をまといながら、穴に飛び降りる。まだそれほど時間は経っていない。相手は聖女を連れているのだ、全力で駆ければまだ追いつけるはず。
そんな騎士達の思いは、ほんの数ヤード横穴を進んだところで脆くも崩れ去った。
坑道の天井が崩され、穴が塞がれていたのだ。逃走する際に崩していったのだろう。通れるように穴を掘るには、崩すのにかかる時間の何十倍も必要だ。追いつきようがない。
暗い坑道の中で、騎士達は己の不甲斐なさに膝を屈した。
どうやら上手く行ったようだな
己の部屋の中でじっと瞑目していたOlはぱちりと目を開いた。
で、何をしておる貴様らは
遠隔地の形代からもとの身体に戻ってみれば、彼の右腕をリルが、左腕をスピナが胸に抱きかかえ、膝の上にはマリーが乗っていた。
んー、英気を養ってる?
それと領地の確保でしょうか
なんも、してない、です!
娘達は口々に答えた。
お前達にはお前達で仕事があるはずだが?
大丈夫、問題ないよ。ほら
ひょい、とリルとスピナは移し身を作ってみせる。どちらも形代ではなく、独立した思考と統一した意思を持つ、もう一人のリルとスピナだ。
半スライムとなったスピナは魔力さえあればほぼ無制限に増殖する事が出来、ラズの記憶と知識を思い出したリルは魔力で自分の身体を作り出すことが出来る。これによって仕事の効率は大幅に改善していた。
ちなみにマリーにはそのような芸当は勿論出来ないが、元々何かの役に立っていた訳でもないのでなんら問題ない。
それにしても、いつの間にラファニスまでの坑道なんて掘ってたの?
ラファニスの首都は遠い。馬車でも丸々一週間はかかる距離だ。いかに石と鉄の申し子であるコボルトやドヴェルグの鉱夫をそろえているとは言え、一朝一夕に掘れる距離ではない。
大体、コボルトが迷宮に巣を構え始めた頃からだな
滅茶苦茶前じゃん! うちにエレンがきた頃だからええ、もう一年以上前!?
リルは指折り数え、驚きを通して呆れる。
そんな頃から、ラファニス攻める気満々だったんだ
だから言っただろう、いずれは攻めるつもりであったと
信じていなかったのか、とOlはリルを睨んだ。
時間もそうですが、精度の方が私には信じられません。コボルトならば、ピッタリと祭壇の真下まで穴を掘れるものなのですか?
途中で坑道の存在を知られる訳には行かないから、地上に穴を開けて確認する訳には行かない。地下や国外ならばともかく、ラファニス国内には聖女の結界がくまなく張り巡らされている。そんな事をすれば一発でバレる。
コボルトは確かに、坑道内でも絶対的な距離感と方向感覚を保てる。が、地上に何があるか伺う事までは出来ん。しかし、地上での距離がちゃんと把握できていれば、それにあわせて寸分違わず坑道を掘る事など朝飯前だ
Olは簡単に言ったが、リルとスピナにはそれはより困難なことの様に思えた。地上には山があり、森があり、河がある。そんなものがなくとも些細な起伏があり、とても直線距離を測ることなど出来そうもない。
そんな精度を持った地図なんてあるの?
あるぞ。龍脈を探るのに精密な地図が必要だったからな。地図技師に測量方法を習い、龍脈を探りながら地図を作った。足掛け25年がかりの大作だ
自作!?
恐らく俺以上に精密な地図を持つものはおらんだろうな
当然だ。並大抵の人間であれば、25年かけた事業など、ほぼそれに人生を捧げたに等しい。
今はフィグリアの周囲から各国の首都までしかないが、いずれは大陸全土の地図を作りたいものだ
一年前どころか25年以上も前から、Olはそんな事を考えていたのだ。
いつからこんな子にいや、昔からなのか
リルの脳裏には、ビッシリと書き込まれた予定帳を嬉しそうに拡げるOlの姿が浮かんだ。いつも仏頂面をしている今では表情に全く面影はないが、こういった部分はラズと暮らしていた頃から変わらないらしい。
届いたようだな
転移してくる魔力の揺らぎを感じ、Olは腰を上げる。いつの間にか眠っていたマリーがころんと転げてむぎゅうとくぐもった声を上げた。
では、聖女の顔を拝みにいくとするか
第17話天に弓を引きましょう-2
聖女メリアよ。遠いところ、足労頂いたな。お初にお目にかかる。我が名はOl。世に魔王と呼ばれているものだ
私をどうしようと言うのですか?
芝居がかった口調で慇懃に挨拶をするOlに対し、メリアは騒ぎもせず、おびえもせず、平坦な口調でそう尋ねた。
流石は聖女だな。肝が据わっておる
両手足を拘束されたまま、身じろぎもしないメリアの髪を指で梳き、Olは威圧するようにその顎を掴んだ。
要求は単純だ。法術の事を教えてもらおう
法術とは魔術と似てはいるものの、源流も体系も異にする技術の一つだ。
一般にも広く知られている魔術とは異なり、聖女のみがそれを語り継ぎ習得している。魔力とは異なり、理力と呼ばれる力を糧として扱うといわれている。
豊穣の儀式で使われている祈りや、国全体を包む結界はこの法術によるものだ。Olにも、それが魔術でない事は理解できたが、具体的にどのようなものなのか、どう使用するものなのかは推し量る事ができなかった。
出来ません
きっぱりと、メリアはそう答えた。とは言え、Olもその反応は予測済みだ。
正直に言おう。手荒な方法で招きはしたが、こちらはラファニスと敵対する気はない。法術について教えてもらえれば、無事に国へと送り返し、二度と手は出さぬと誓おう。無論、法術を悪用するような事もせぬ。失った大切なものを取り戻したい。ただ、それだけなのだ
切々と語るOlに、メリアは表情一つ変えず悩む素振りさえ見せずそう答えた。
であれば、仕方がない。ラファニスへと攻め込み、奪い尽くすしか手がなくなる。自国が負けるわけは無いと思っているのかもしれないが、こちらとてそれだけの準備はある。何より、勝とうが負けようが必ず少なからぬ犠牲は出る。それを未然に防ごうとは思わないのか?
それでも、法術を教えることは出来ません
取りつく島もなく、メリアは答える。
Olは睨むフリをしながら、メリアの様子を観察した。表情は全く変わらず、肌に汗もかいていない。視線も泳がずまっすぐ同じ場所を平静に見続け、声には震えもよどみもなく、指先をもぞもぞ動かすような事もない。
恐怖や動揺を押し隠しているならとんでもない演技力の持ち主だし、感じていないならその胆力は並大抵のものではない。何か奥の手を持っていたとしたって、人間というのはここまで平静を保てるものではない。
Olはしばし黙り込み、彼女を何が支えているのかを考えた。人は、他人であれ自分であれ、何らかの支えを持たなければまっすぐ立つことは出来ない。それが何であるかは人それぞれだが、どんな人間だろうと必ずそれはある。
愛国心だろうか。それとも、正義感? 自分が聖女である事の自負、或いは神への信仰いくつか思いつくがどれもメリアにはそぐわない気がした。
そういったものにしては、メリアには揺らぎがない。なさ過ぎる。人知を越えたそれこそ、神のような鋼の精神を持っているとでもいうのだろうか?
馬鹿馬鹿しい。Olは首を振り、その考えを打ち消した。人をやめようが、英雄だろうが、永い時を生きようが、人は人である限りその心のあり方を変えることなど出来ない。
ならばその決断を、後悔してもらおう
Olはメリアの服を掴むと、びりびりと破り剥ぎ取った。陶磁のような白い肌に、桜色の頂点を持つ豊かな乳房、頭髪と同じ透き通った白色の淡い茂みと、その奥に隠された秘裂がOlの目に晒される。
それでもなお、メリアは顔色一つ変えず、眉一つ動かすことはなかった。ただじっと、Olの様子を平静な瞳で見るだけだ。
スピナ
ここに
闇の中からスピナが姿を現し、Olに小瓶を渡す。中身は以前彼女が作り上げた媚薬スライムだ。ただし、媚薬の効果は以前の倍にしてある。
Olが瓶を開けると、スライムはすぐさまメリアに纏わり付き、その身体に残った衣服を吸収して体積を増やしながら彼女の肌の上を這いずり回る。
程なくしてメリアの肌が上気し、彼女は小さく声をあげた。薬の類は効くらしい。当たり前と言えば当たり前なのだが、Olはその結果に僅かに安堵した。
メリアは得体が知れない。法術という未知の技術を使う以上、ある程度予想外の事態は覚悟していたが、それ以上の違和感をOlは感じていた。
十分に媚薬がメリアの身体に浸透した頃合を見計らい、Olはスライムを瓶に戻して彼女をベッドの上に押し倒した。
入れるぞ。覚悟はいいか?
どうぞ
メリアの脚を掴み、Olがいきり立つ一物を見せ付けても彼女の表情は変わらない。言いよどむ事すらなく答える聖女に、Olは遠慮なく突き入れた。
そこは媚薬の影響で濡れそぼってはいるものの固く閉じており、男を受け入れたことがないのは明らかだった。Olは構わず、奥へと突き進む。ずんと勢いを突けて奥まで到達し、引き抜くと破瓜の血が愛液に混じり流れ出る。
見よ。お前の純潔が失われた証左だ
そうですね
痛みに顔をしかめはするものの、彼女はあまり気にした様子もなくそう答えた。
その余裕がいつまで続くか見ものだな
Olはメリアの胸を両手で円を描くように揉み込みながら言った。
んっく
小さく声を漏らし、メリアは僅かに身動ぎする。媚薬がだいぶ効いてきたのか、その肌はうなじまで真っ赤に染まっている。
んっ、はぁっ、あぁん!
Olが指をクリトリスへと移動させると、メリアは一際高い声をあげた。
どうやらここは自分で弄った事があるようだな
んっう、ふぁ
媚薬の効果で敏感になったそこを擦りながら、Olは抽送を繰り返す。相手は全く経験のない処女だ。まずはとにかく一度快楽を覚えさせない事には話が進まない。
聖女ともあろう者が、男を奥まで咥え込んでよだれを垂らして声をあげるとは。はしたないとは思わないのか?
ああぁんっ、ふ、ぅ
Olが声をかけてもそれに応じる事無く、メリアは断続的に声をあげるばかりだ。発汗や愛液の分泌からして感じているのは確かなのだが、言葉への反応は全く感じられない。まるでOlの声が聞こえていないかのようだった。やりにくい事この上ない。
Olは言葉で揺さぶりをかけるのを諦め、肉体的な刺激に専念する事にした。ゆっくりと抽送を繰り返しながら、右手で淫核を攻め、左手で右胸を愛撫しながら口で左胸に吸い付く。
んっんんんん~~~~っ!!
ぎゅっと眉根を寄せ、ふるふると身体を震わせながらメリアは気をやった。Olは容赦せず、達したばかりの彼女の体をひたすらに攻める。
ああっ、あっ、んあぁっ!! あああああぁっ!!
メリアの声が徐々に高く大きくなり、彼女は背筋を反らして痙攣した。
いくぞ、メリアッ!
Olは彼女の奥まで突き入れると、最奥に精を解き放つ。
~~~~~~~ッ!
もはや声もあげることが出来ずぎゅっとベッドのシーツを握り締める彼女の膣内を擦り上げ、Olはたっぷりと白濁の液を吐き出す。
絶頂の余韻にぐったりとするメリアの額に、Olはぴたりと指を当てた。ここからが本番だ。
メリアよ。ここから先は、絶頂に至ることを禁じる
今まで崩れなかったメリアの表情に、疑問符が浮かぶ。
どれほど快楽を得ようと、俺の許しがなければお前は気をやることは出来ぬ
呪力を帯びたその言葉は、暗示であると同時に呪いでもある。平時ならともかく、聖女といえど意識が朦朧とした状態でこれに抵抗する事は不可能だ。
無限の快楽を、とくと味わうがいい
Olはメリアの身体をひっくり返すと、ベッドに押し付けるようにして背後から突き入れた。
達した後の敏感になった状態で刺激を与えられ、メリアは悲鳴を上げるかのように嬌声を上げた。
どうした。この程度で声をあげていては、喉がつぶれるぞ
Olはメリアの白い尻を抱えてぐりぐりと円を描くように腰を動かす。同時に指を震わせるように動かし、淫核をはじく。
ああああああ、あああああっぁあぁぁっ!!
メリアは尻を高く掲げて声をあげ、更に求めるように腰を振った。Olはその動きに合わせ、ずんずんと奥へと突き入れる。
あっ! あっ! あっ! ふぁぁぁっ!
一突きするたびにメリアは高く鳴き、きゅうっと膣を縮めてOlの一物を締め付けた。一度突かれる毎に彼女の快楽は一段、また一段と高まっていく。しかし、訪れるはずの絶頂はOlの呪いによって押し留められ、かゆいところに手が届かぬようなもどかしさに彼女は気も狂わんばかりに鳴いた。
あぁぁーっ! あ、うぁぁぁっ!
もはや鉄面皮は崩れ、ただただ飢える欲求のままに腰を振りたくる。
ああぅっ、はぁぁもっとぉ
ついにメリアは我慢が出来なくなり、よだれをたらし、胡乱な表情で振り向くと逆にOlをベッドの上に押し倒した。
そして自らOlの一物をその胎内に納めると、彼の胸に手を当てて滅茶苦茶に腰を振り、ひたすら恥丘を彼の股間に押し当てる。Olはその光景を、彼女のたっぷりとした乳房を弄びながら意地悪く見守った。
ああぁぁぁぁぁ、ぁああああぁぁぁあ
メリアの声はもはや獣じみたうめき声のようになり、その秘部からは噴水のように止め処なく愛液が溢れかえった。Olが彼女の胸を一度揉むたびにメリアは切なげに眉をよせ、けして満たされぬ欲を求めて更に胸を押し付け、腰を振る。
イカせて欲しいか?
Olがそう尋ねると、メリアはぶんぶんと首を縦に振った。彼女の瞳は情欲の炎が激しく燃え上がり、まるで何日も食事を取っていない犬のように爛々と光り輝いた。
ならば、教えろ。貴様の知っている全てを
ああ、あぁぁぁわた、し、わたし、はぁぁ
もはや神聖さの欠片もなくなった発情し切った表情で、メリアは懸命に言葉をつむいだ。
聖女、じゃ、な
そして、唐突に、糸の切れた人形のようにOlの胸に突っ伏した。
な!?
Olは慌てて脈を取る。彼女の心臓は、完全に停止していた。まさか、何らかの病による発作か、とOlは蘇生を試みる。
そして、愕然とした。
そこにあったのは一切の穢れのない、透明と評していいほど清らかな魂だった。
人間の魂というのは、生きていくうちに必ず汚れ濁っていく。
聖女と言うのであれば常人よりも澄んだ魂をしていても不思議ではないが、限度というものがあった。
ほんの一点の曇りもないメリアの魂は、断じて美しいなどと呼べるものではなく
ほう、こりゃ出来の良い紛い物だな
ただの作り物にしか見えなかった。
やはり、そうなのか
いつの間にか横に立っていた赤い悪魔の言葉に、Olは呻くように呟く。
おうよ。このローガン様が人間の魂を見間違うわけねえだろ。例え作り物でも、それが生まれたばかりの幼女の魂となりゃあなおさらよ
放つ言葉は軽薄そのものだが、数千年を生きた悪魔の言葉に間違いはない。
魂の穢れとは即ち欲望だ。生まれたばかりの赤子でさえ、欲求は持っている。
それすらなく、何も望まず何も欲さぬとすれば、それはただの装置にすぎない。
メリアはまさしく、聖女という名の装置でしかなかったのだ。
人造人間(ホムンクルス)や魔法生物(ゴーレム)を作るのとはわけが違う。
それらは知能を持たせることはできても、魂は持たないのだ。魂そのものを作ることは魔術では不可能とされており、Olにもできない。
それはとりもなおさず、メリアの他に法術を使える者がいるということを表していた。
一筋縄ではいかぬ、という事か
最後の最後。Olによって与えられた肉欲を望み、ほんの僅かに曇ったメリアの魂を見つめて、Olは呟く。
敵は、メリアより上にいる。そして、その相手は恐らくOlととてもよく似ている。
すなわち、用心深く狡猾で、目的のためには手段を選ばない人間だ。
ラファニスで新しい聖女が発表されたのは、それから三日後の事だった。
第17話天に弓を引きましょう-3
影の聖女。裏聖女。真の聖女。ううん。どうにも悪役といった趣がぬぐえないな。どう思う?
白。白。白。壁も、床も、天井も。
家具から衣服、全てに至るまで白に塗り込められた白亜の城で、メリザンドは尋ねた。
大聖女でいいんじゃないですかね
問われた男は、これも髪から衣服に至るまで白一色。唯一つ、両の瞳だけが赤く色づいていた。
ふうむ。しかしだ、この成りで大聖女を名乗るというのもどうかな?
メリザンドはその落ち着いた口調とは裏腹に、5,6歳にしか見えぬ容姿をしていた。まっすぐ足首まで伸びた髪に愛くるしい顔立ち。メリアを幼くしたような美しい童女だったが、その瞳は理知的な輝きに満ち、表情はやけに大人びている。
まあ、ギャップがあるって言うのもそれはそれでいいんじゃないですか
男は心底どうでもいい、といった調子でそう答えた。
ギャップかうむ、では大聖女メリザンドと名乗るとしようか
楽しそうですね
そういう男に、メリザンドはピクリと眉を上げる。
馬鹿を言うな、我が国数百年ぶりの危機だぞ。楽しんでなどいられるか
楽しそうであると言うことは否定しないんだな、と男は思うが、口には出さない。
魔王Ol。よもやこんなにも早く攻め込んでくるとはな。それも地下からの奇襲とは恐れ入った
あの坑道辿ってぶっ殺して来たら早いんじゃないですか。なんなら俺いってきますよ
軽い口調で言う男に、メリザンドは首を横に振る。
奢るな、不死身。お前は不死だが、無敵ではない。舐めてかかると手痛い反撃を食らうぞ。相手はかのウォルフ王を下した相手だ
んじゃあ、何人か呼びます?
メリザンドはうなずき、パチンと指を鳴らした。
既に、呼んだ
その背後から、やはり白い衣服に白い髪の者達が6人、姿を現した。
なっ6人!? 全力でいくんですか!?
不死身と呼ばれた男は目を見開き、大声を上げた。自分を入れて7人。それがメリザンドが使役できる英霊の最大数だ。
今言っただろう。魔王は侮れる相手ではない。聖女も一人やられたのだぞ。全力を持って叩き潰す
メリザンドはニヤリと笑みを浮かべて言った。長い付き合いで不死身はそれが、彼女が激怒している時の表情だと知っている。彼女は楽しんでいたのではない。楯突く者に、怒っていたのだ。
無明の騎士
スリットのない、全面を覆われた奇妙な兜をかぶった男が、一歩進み出て槍を掲げる。
跳ね駒
純白の鎧に全身を包んだ騎士が、メリザンドに跪く。
魔弾の射手
弓を持つ軽装の男が、うやうやしく礼をする。
鉛の英雄
武器を持たぬ大柄な男が、微動だにせず立つ。
炎髪の姫
小柄な少女が、無言で剣を掲げる。
竜殺し
豊かな髭を蓄えた男が、ゆっくりと腕を組む。
そして、不死身。以上、英霊七名。全員をもって、魔王を討伐する
新入りが三人、か。ま、よろしく頼むよ
不死身が気さくに笑いかける。しかし、英霊達は反応しない。英霊とはそういうものだ。自我を備えている不死身の方が例外といえる。
そんで、どうするんです? 一気に7人で攻め込みますか?
一騎当千どころか、万の敵も相手取れる元英雄達だ。7人もいればその戦力は師団どころか一つの軍に匹敵する。しかし、メリザンドは首を横に振った。
まずは彼我の戦力を分析する。敵は魔王Olとその配下の魔物達、そしてその属国の兵士達だ
つかつかと英霊達の前を歩き回りながら、メリザンドはすらすらと述べ始めた。
兵力はフィグリアの兵がおよそ1万、グランディエラの兵がおよそ15万、ラーヴァナが5000、アルフハイムが3000他の有象無象をあわせて2万と言ったところか。とは言え、当然これらの兵を一度に全部動かせるわけではない。まあ攻勢に動かせるのは良くて半分だろうな。また、殆どは魔王に攻め入られ力で属国になった立場だ。錬度はともかくその士気はけして高くはない
確認するように視線を向けるメリザンドに、はあ、と不死身は生返事をする。彼は従軍経験はないし、戦争にかかわった事もない。正直あまりピンとこなかった。
それだけなら英霊を呼ぶまでもなく我が聖騎士団で幾らでも対処できる。が、問題は配下の魔物達だな。これはどのような種類が何匹いるか予測できん。また、聖女を浚った時のような坑道を通って進軍されるのも非常に困る。地下には結界を張れんからな
あーそりゃマズいですね
続く話は不死身にも理解できた。極端な話、この神殿内部に突然敵が万単位で攻め入ってくる可能性すらあるのだ。かなりの広さを持つ巨大な建物ではあるが、所詮は建物。乱戦になれば確実に聖女を守れると断言するのは少しばかり苦しい。
そしてもっとも厄介なのが魔王Olだ。慎重で狡猾、目的の為には手段を選ばぬ
どこかで聞いたことがあるフレーズですね
そうだな。私もそう思うよ。かの者は、私によく似ている
素直に肯定され、不死身は背筋を正した。
なるほど。そんじゃあ本気でやらないとヤバいですね
褒め言葉と受け取っておこう。厄介なのは奴が常に形代を使い、本体は表に姿を現さぬということだ。おそらく本体は迷宮奥深くに潜んでいるのであろうが、この迷宮というのがまた曲者でな。攻めるに難く、守るに易いの究極形のようなものだ
山に囲まれてるどころか、壁に囲まれてますもんねえ
今お前、自分ひとりでなら十分攻略できるな、と思っただろう
のんびり答える不死身に、メリザンドは鋭い視線を投げかける。
あ、バレました? でも実際そうじゃないですか?
不死身はその二つ名の示すとおり、文字通りほぼ不死身だ。首を刎ねられようがぐちゃぐちゃにすりつぶされようがけして死ぬことはない。敵がどれだけいようが彼には関係ない。ゆっくりもぐって魔王を殺しにいけばいいだけだ、と彼は思った。
這い上がれぬほど深い落とし穴。何もかも溶かすスライム。土の中深くや溶岩地帯に転移する罠。身動きを完全に封じる強力な呪い。精神に影響する類の魔術。私が今ざっと考えただけでもお前を無力化できる方法はこのくらいはあるが?
すんません調子乗ってましたー!
不死身はあっさりと前言を翻し頭を下げた。彼は不死身ではあるが無敵ではない。しかし、それをしばしば忘れるのが欠点だと、メリザンドは日頃から口をすっぱくして言っているがそれはあまり実を結んではいなかった。
恐らくそのいくつかは迷宮内に実際に仕掛けられているだろう。英霊といえど易々と突破できるとは限らん。もし英霊を失えば、軍対軍で正面突破される可能性もある
それは
考えすぎじゃないですかね、といいかけ、不死身は言葉を飲み込む。これ以上主人に軽率な人間という印象を与えるのがはばかられた。勿論それはとうの昔に手遅れではあったが。
敵の全勢力が未知数である限りは、予断は許されん。常に最悪の事態を想定して行動する必要がある
不死身の言わんとするところを理解し、メリザンドはそういった。
しかし、迷宮を単身で攻略するのもダメ、かといって相手の進軍を待ってたら直接神殿に攻め込まれる可能性があるからダメ、となるとどうするんで?こっちから軍を出して攻め込みます?
それも悪くはないが、もう少しいい手がある
そういい、悪戯っぽい笑みを浮かべるメリザンドに、不死身は嫌な予感を覚えた。
第17話天に弓を引きましょう-4
全力で挑むなど、愚の骨頂だ
端的に、Olはそう述べた。
敵の力は未知数。だからこそ、こちらから先に手の内を晒す事などできん。こちらの利点はこのダンジョンの防衛能力と、その中にいる魔物達だ。初手から全力で攻めるのはその利点を全て潰すようなものだな
相手を軽んじている訳ではなく、むしろ最大限警戒しているがゆえに、全軍を出す事など出来ない。それが、Olの論じた戦略方針だった。
そうは言っても、戦力を出し惜しんで勝てる相手じゃないんじゃないの?
そもそも勝つ必要などない。攻めてきた時に負けなければそれでいい。相手の核を取ればよいだけだ
聖女メリアは何の情報も残さず死んでいった。しかし、その事実こそがOlにその裏にいる存在を感じさせた。裏にいるのは組織や集団ではない。狡猾で堅固な意思を持った一人だ。その何者かを倒せば、Olの勝ちとなる。
しかし、その核がどこにいるのかはわからないのではないでしょうか
スピナの問いに、Olは再び首を横に振る。
いや、十中八九核がいるのはメリザンド大神殿だ
そんなわかりやすい場所にいるでしょうか?
では聞くが、そのような事が可能だとしてダンジョンコアを、迷宮外のどこか辺鄙なところに置こうという気になるか?
Olの言葉に、リルとスピナはすんなり納得した。ダンジョンコアは文字通りOlの命そのものだ。魔力を蓄える為にダンジョンの中に無ければならないが、そうでなくとも他の場所に置いておく気にはなれない。
確かに別の場所に置けば、不意はつけるかも知れん。が、万が一ばれたときはどうする? そんな場所では守りきれん。かといって、普段から十分な防備を置けばあっという間に発覚する。だったら、最大限守りやすい場所に置くのが当然だ。そもそも核の存在自体が秘匿されているのだしな
その辺りの事情はOlのダンジョンコアも同様だ。何通りもの方法を考えつくした上で決定した事なのだから、まず間違いはない。
だから問題は、敵の兵力ではなく戦力。英霊と天使をどの程度まで扱えるのか、という話だ
ラファニスが攻められたという話はもう数百年前の話だ。どの程度の戦力を保有しているかと言う資料ははほとんど残っていないし、現在も同じであると言う保証もない。しかしそれが事実だという事は、数十年に一度の聖女の代替わりの儀式で確認される。
英霊と天使が、新しい聖女を祝福にやってくるのだ。それはただの儀礼ではなく、周囲の国に対する牽制でもある。Olも実際に見に行った経験があるが、それが幻影などではなく、紛れもない本物であると確認できた。
天使や英霊私が食べる事は出来ないでしょうか?
ぐにゃりと身体を揺らめかせ、スピナが言う。
いや、無理だろうな。あれは魔力ではなく理力で出来ている
理力って結局何なのですか?
それさえわかれば、それを食べるスライムを作ってみせる、と言わんばかりの表情でスピナは尋ねた。
魔力は理を捻じ曲げ、世界を改変する力。理力はその正逆。理を促し、世界を形作る力当たり前の事を、当たり前にする力だといわれているな
当たり前の事を当たり前にですか
ぴんと来ない説明に鸚鵡返しに呟くスピナに、Olは頷く。
俺も法術を使えるわけではないから、漠然とした答えしか返せぬがな。例えば物が地面に落ちるように、子が成長し大人になり、やがて老い死ぬように。魔術はそういった理を捻じ曲げ、物を宙に浮かせ、老人を若返らせる
目の前にある実例に、スピナは納得する。しかし、そうであれば法術とは一体何をするものなのか? 法術を使わずとも、当たり前の事は当たり前に起こる。それは術ではなく、ただの法則だ。
魔力の多くが地中に存在するように、理力の多くは空中空に存在する、とは言われてはいるが、実際のところは良くわからん
空ねぇじゃあ、太陽が動くのも法術のせいってこと?
流石にそんな大規模な法術は人の扱う範疇ではないだろう。が、太陽は昔から神の力の象徴として見られることも多い。理力が空に満ちると言われているのもそのせいかも知れんな
リルの言葉に、考え込むように吐き出されるOlの台詞が、スピナの思考の片隅に引っ掛かる。何かを思いつきそうで思いつかない、もどかしい感覚が彼女を包み込んだ。
いずれにせよ、天使は悪魔と似たようなものだからともかくとして、厄介なのはやはり英霊だ
英雄とは、英霊になる為に生まれた存在だ。悪魔が人間と契約を行い、魂を集めて戦力を増やすのと同様に、天使達は人間を英雄として祭り上げ、生きている内にその魂を磨かせて、死後その魂を英霊として天に召し上げる。
悪魔達は質より量を選び、天使達は量より質を選んだ。細かい差はあれど、どちらも人間を食い物にしていることには変わりない。
ユニスと同等以上の戦力かあ
リルは彼女が迷宮を攻めてきたときの鮮烈な印象を思い出し、身を震わせる。あれほどの強さを持った者達が何人もいるなど、想像したくもない。
一度に何人の英霊を使役できるかはわからんが5人以上いるなら、負けるだろうな
そうでない事をOlは祈った。
準備はいいか?
暗く狭い坑道の中、Olは問うた。
うん、オッケー
この身滅ぶまで、どこまでもお師匠様についてまいります
リルが軽く答え、スピナが重く答える。
両極端な二人の反応に苦笑しつつも、Olは居住まいを正し、声を張り上げる。
恐らくはこれが最後の戦いだ! 皆のもの、心してかかれ!敵は喜びと平穏に満ち、幸福と愛情の歌をうたう鼻持ちならない天の遣いどもだ。奪い、穢し、踏み躙れ! 奴らの家のドアにその臓物を飾り立て、首を晒して火をかけてやるのだ!
魔術で拡大された声が坑道内に鳴り響き、野蛮な亜人たちが一斉に声を張り上げる。ゴブリン、コボルト、ドヴェルグ、巨人達。腕力を頼りにし、穴掘りを得意とする全ての部下をOlはここに集めていた。
行くぞ加速だ!
リルとスピナの魔力を取り込み、Olは魔術を行使する。それは亜人達の筋力を増大させ、彼らの動きは文字通り加速した。
まるで人が歩くかのような速度で、坑道が掘られ、柱と梁が立てられ、伸びていく。粉砕され、掘られた土砂は無数のインプ達が瞬く間に運び消し去る。
大神殿の真下まで坑道を掘り進め、そこに転送陣を描くことが出来ればOlの勝利は殆ど確定的なものになる。本丸の真横に敵の湧く穴を作られて、落ちぬ城などない。
でも、さすがに地下は警戒してるんじゃない?
つい先だって聖女を浚ったばかりなのだ。地下から来る事さえわかっていれば、幾らでも感知のしようがある。間違いなく、敵は何らかの手段で地下を守っているはずだ。
だからこそ、Olはそこを突破すると決めた。
何より安全だからだ。
恐らく敵は前回の坑道から掘り進むか、その途中から横道を作って侵攻する事を考慮している事だろう。であれば、警戒するのは面。祭壇の真下の坑道から大神殿の間の面を警戒し、それ以上中に侵入されないよう考慮しているはずだ。
それ以上の範囲を警戒するのは現実的ではない。何せ、その面でさえ深さという問題があるのだ。あまりにも深い場所までは魔術であろうが法術であろうが影響が届かない。
しかし、Olが今掘っているのはその思考の範疇外。既に位置的には神殿の真下だった。そこから螺旋を描くようにゆっくりと上に進みつつ、Ol達は神殿を目指しているところだ。
その場所は、聖女を浚うよりも前に掘り、陣を描いていた場所だった。もとより聖女の拉致が上手く行かなかったときの保険に襲撃用の坑道も掘っていたのだ。
入り口を念入りに埋め、万が一にも存在を知られないよう深くに埋没させたのでここから直接攻め入る訳には行かないが、攻め入る布石の一つ、地中の砦とでも言うべき一室だ。
魔術師さんよ! そろそろ抜けるぞ!
ドヴェルグの張り上げる声に、Olは眉をひそめた。
何だと? おかしいぞ。地上までまだ100ヤードはあるはずだ
Olには地中での絶対的な距離感などないので目算でしかないが、流石に100ヤードもの距離を間違える事はない。
それはそうなんだがなぁ、この音は薄い壁を掘る音だ。天然の洞窟でもあるのかも知れんな
洞窟か
それは少々歓迎できない事態だ。地上までギッシリ土が詰まっているなら真っ直ぐ坑道を掘って進めるが、間に洞窟があるとなると迂回するか階段を作らなくてはならない。どちらもかなりの時間のロスになるし、迂回するとなれば敵の警戒網に引っ掛かる可能性も高くなる。
とにかく見てみぬ事にはどうにもならん。水音はしないな?
ああ、そりゃ平気だ。じゃあ、ぶち抜いちまうぜ
地中を掘る際にもっとも気をつけなければならないのが水地下水脈だ。特に今の様に上方に掘っている場合、掘削部隊が全滅しかねない。
しかし、掘った先に待ち受けていたのは地下水脈など比べ物にならないほど厄介なものだった。
天井を打ち崩し、降り注ぐまぶしい光にドヴェルグ達は顔をしかめる。そこはまだ地上ではないはずなのに、その空間は光に満ち満ちていたのだ。
そして、その光の正体を目の当たりにし、彼らは唖然とした。
掘り当てたのは、洞窟は洞窟でも、自然のものではなかった。鍾乳石や風化した石の断面などが存在しないことから、それが人工的に作られた空間である事が一目でわかる。
そして、そこには無数の天使達が待ち構えていたのだ。
そこから先は、大虐殺だった。その身に高貴な輝きをまとい、金の髪と白い鳥の翼を持つ美しい天使達は一斉に亜人達に殺到し、手に持つ剣で切りかかった。鉱夫達とてただの労働者ではない。一人一人が戦士でもある。
しかし、坑道を掘る為にろくに武装もしていなかった彼らが天使達に敵う訳もなく、また狭い坑道で数を生かす事もできず、一人ひとりなますぎりにされていった。
その様子を見やりながら、不死身はふうと嘆息する。その首ったまにはタオルがかけられ、手にはツルハシ、白い衣装は土にまみれ汚れていた。
まずは初戦快勝、ってトコかね。しっかしうちのボスにも参ったもんだ。どこの世界に、英霊に土木工事やらせる聖女がいるってんだ
英霊の力を持ってすればこの程度の洞窟、一昼夜もあれば十分だろう?
そう笑みを見せた上司を思い出し、不死身は苦笑を浮かべた。
第17話天に弓を引きましょう-5
やられたな
目を開けるなり、Olは舌打ちした。ごうごうと耳を打つ音に、視線の先で揺れる幌。そこは馬車の中だった。予定通りならそろそろ目的地に到着する頃合のはずだ。
お帰りなさいませ、お師匠様
Olの身体を抱きかかえていたスピナの声が、Olの耳元をくすぐる。彼女もまた、分身から地下の侵攻部隊が全滅している事を感じ取っていた。
こっちの状況はどうだ?
もうすぐつくよー
御者台からリルが声をあげる。あれほどまでにあっさりと負けるとは、流石にOlも予想外だった。真下からの侵攻が予期されていたのはまだともかくとして、それを迎え撃つ為に巨大な空洞を掘り、天使を満載して迎え撃つとは敵も中々に飛んだ頭をしている。
いや。馬がなくとも馬車と言うのか、と思ってな
御者台に座るリルの横から顔を出し、Olは呟くように言った。その視線の先には地面ではなく、遠くに見える広大な森があった。
この馬車は、空を飛んでいるのだ。
あーそうだね。そういや馬つけてないね、忘れてた
御者台に座るリルが握っているのは、手綱ではなく操縦桿だった。彼女作のこの空飛ぶ馬車は10人ほどの人間を運び宙を飛ぶ兵器の一種だ。運搬以外には特に特別な能力を有してはいないし速度も飛竜に比べればかなり遅い。
しかし、地形を無視して大量に人員を輸送できる事と、作るのが比較的容易で数を揃えられる事が何よりも優れている点だった。Ol達の乗っている馬車を先頭にして、その背後にはおよそ500台。5000の兵が乗っている。
これで関も砦も飛び越え、直接首都を狙う算段だ。地下の侵攻とは互いに陽動であり、互いに本命。どちらかが潰されれば、どちらかで奇襲をかける。その手筈だったのだが、地下側が予想外に早く潰された形だ。
とは言え、奇襲そのものが失敗に終わったわけではない。地下に防衛を回した分、地上は手薄になっているはずだし、時間稼ぎは成功した。
いくぞ一気に攻め込め!
眼下に見えてきた首都の門を見下ろし、Olは号令をかけた。
遅いぞ、たわけ
無茶いわんで下さいよ、こっちはひどい目にあったって言うのに
土にまみれ、ボロボロになった格好で不死身はぼやいた。
どうした?
問うメリザンドに、不死身はどうもこうもないですよとため息を吐く。
倒したと思った瞬間、敵が見事に大爆発。坑道ごと埋まって天使どもは大半圧死ですよ。俺も不死身じゃなきゃ死んでました
咄嗟の判断で天使を盾に僅かな空洞を確保できたのと、つるはしを持っていたのが不幸中の幸いだった。そうでなければ、そのまま全身土に埋まって身動きが取れなくなっていただろう。
やはり一筋縄ではいかぬ相手だな。見よ
メリザンドは神殿のバルコニーから空を指差す。そこに浮かぶのは500台の空飛ぶ馬車だ。
どうやら魔王Olの軍勢のようだな。よもや、あのようなものを持っていたとはな。呪具いや、魔兵器とでも呼ぼうか
いや名前はなんでもいーんですけど
相変わらず妙なところに拘るメリザンドに呆れた声でそういい、不死身は空を見上げた。
アレ、結構ヤバくないですか
そうだな。結構ヤバい
メリザンドは素直に頷く。
フィグリアからここまではかなりの距離がある。転移するにもそう量は呼べぬだろうから、正面からの攻撃はないと踏んでいたのだが
難しい表情でメリザンドは唸った。
あの天駆ける馬車であればかなりの量の兵を運ぶ事ができる。それ以上に、空を取るというのはかなりのアドバンテージだ。数以上に強敵と見なければならないだろう。
まあ、予想はしていなかったとは言え
メリザンドはくいと紐を引き、早鐘を鳴らした。その鐘の音に、がらがらと音を立て巨大な塔が幾つも立ち上がった。
準備しておかぬ理由にはなりはしないがな
兵達は塔の上にずらりと並び弓を構える。
相手はわざわざ大きな的を用意してくれた。ありがたく、射落とせ
あんな塔まで用意しているとはな
首都をぐるりと囲む壁に建てられた巨大な塔に目をやり、Olは呟く。それは上から矢を射掛けたり城壁を越えるのに使う櫓の様にも見えるが、そう言った目的のものよりも更に大きい。上空から攻撃する戦術を取るOlへの対処である事は明らかだった。
塔の最上部に備え付けられた石弓や投石器から、次々に矢弾が放たれる。Olは馬車の高度を上げてそれをかわすが、これ以上近付くことはできない。幾ら上空を取っているとは言え、弓矢はまだ届かない距離だ。
ラズはさ
遠くを見つめるような眼差しで、リルは言った。
Olに会うまで、兵器を作る事を何とも思っていなかった。ただただ研究が楽しくて、より効率よく、より効果的に人を殺す武器を作り出すことを求めていた
馬車に乗せられた袋から、リルは鈍く光る鉄の塊を取り出す。
それがどういう事なのか、何を意味するのかまではわかってなかった。知らなかった。でも、Olとあって、戦争がどういうものなのか自分が何を作っているのかを理解して兵器造りをやめたんだ
そしてそれを外に向けると、躊躇いなく引き金を引いた。
でも私は悪魔だからそんなの全然気にしませーん
色々台無しだな、お前は
リルの発砲に応じて、味方の軍勢が次々に射撃を始める。鉄で出来た筒の様なその兵器は、石火矢と名付けられた砲だ。
筒の内部で小さな爆発を起こす事で、こぶし大の弾丸を放つ構造になっている。構造上、巨大で取り回しが悪く移動しながら使うことはほぼ不可能。命中精度もさほど良くはないし、連射も効かない。しかし、それを補って余りある利点が幾つもあった。
一つ目は、威力。投石器で放つような弾を、矢の如き速さで発射する事ができる。その威力たるや凄まじく、金属鎧を着ている騎士であろうと有効射程以内であれば一撃で半身を吹き飛ばす。弾丸を鉛にすれば、防御魔術ですら全く効果がない。
二つ目は、扱いやすさ。弓矢や投石器の様に高い錬度は必要とせず、1,2時間ほどの簡単な訓練で誰にでも使用できる。
そして三つ目が、その射程の長さだ。個人で携行可能な兵器でありながら、その射程距離は投石機や石弓といった大型兵器と対等の射程距離を誇る。
今の様に上空から撃てば、そう言った兵器に対してさえ一方的に攻撃することが出来る。魔女と呼ばれたラズの知識を、悪魔であるリルが遺憾なく振るった結果がこれだ。
塔の上で兵器を操作する兵達は石火矢の弾で次々と倒れ、塔から落ちていく。次々に塔を撃破して快哉を上げる後続の兵士達とは裏腹に、リルは怪訝そうに眉を寄せた。
おかしいどういう事?
リルは石火矢を構え、引き金を引く。狙い違わずその弾丸は塔に直撃し、木片を飛び散らせた。
倒れない
しかし、塔は崩れることなくその場に立ち続ける。リルの計算では、こういった類の塔でも2,3発も打ち込んでやれば根元から破壊出来るはずだった。
普通のものより大きいから、その分強度にも優れているという訳では、なさそうだな
Olの言葉にリルはこくりと頷く。派手に飛んだ木片は、いうなれば盾の様なものだ。塔の自立自体には直接影響の無い様、わざと壊れやすく出来ている。
既に塔の大半は上部の兵器を破壊され、弓兵達も満身創痍。兵器としての役割は殆ど保っているとはいえない。そんなものに、なるべく壊されにくいような細工がしてある
いけない、全軍、反転
リルが言い切る前に、白く輝く影が塔の中から無数に飛び出した。
兵達が慌てて石火矢をそれに向けて放つが、塔の影から勢いをつけまっすぐに上空を目指すその姿には一発もあたることがなかった。
やられた! 最初からこれが目的だったってわけ!?
塔の影から舞いあがったのは無数の天使達。その手には弓矢を携えていた。この近距離で出てこられては、回避も迎撃も出来ない。あの塔は攻撃の為ではなく、天使達の姿を隠し守る為に存在していたのだ。
まずい、どうしようOl! 上をとられた!
狼狽し、リルは隣のOlに助けを求めた。
空を飛ぶ馬車の陣形は、同士討ちを防ぐ為に前列ほど上方に位置するようになっている。そうすれば、斜め下方を狙えば前の味方に誤って石火矢を当ててしまうことはないからだ。
しかし、相手が上方にいてはその布陣がかえって仇となった。敵を撃とうとすれば、味方に当たってしまうのだ。
仕方なく前列にいる者たちだけが石火矢を放つが、そうなると今度は数が足りない。低い命中精度を射撃数で補っていただけに、天使達はこちらをあざ笑うかのように弾丸を空中でひらひらと避けて見せた。
逆に天使達が放つ矢は馬車を的確に貫き、次々と射落としていく。Olは魔術による障壁を張り、辛うじてその射撃を止めるが味方軍の馬車までは守り切れない。それぞれの馬車には石火矢を扱う砲兵の他にも魔術兵が乗っているはずだが、天使達の放つ矢はその防護を軽々と突き破る程の威力を備えていた。
Ol、反転の指示を!
駄目だ。今ここで横腹を晒したりすれば、それこそ全滅する
馬車の欠点は、小回りが利かないことだ。全軍すぐさまその場で後退、という訳には行かない。大きく弧を描いて反転するしかないが、敵軍はそれを許してくれそうもない。
とは言え、このままではお師匠様
せめてOlだけでも守ろうと身構えるスピナ。その視線の先で、天使が一体墜落した。
石火矢の弾に偶然当たる間の抜けた天使でもいたのだろうか、と目を見張る彼女の前で、一体、また一体と天使達が落ちて行く。
これは、一体?
思わずリルとスピナは馬車の外に顔を出し、周りを確認する。
その視線の先に浮かぶのは、数十匹の飛竜と、放たれる無数の矢。
ようやく来たか
Olが、ニヤリと笑みを浮かべる。
黒の氏族、エレン。恩義によりて、助太刀に参った!
懐かしい声が、天空に響き渡った。
第17話天に弓を引きましょう-6
ようやくって、来るの知ってたの!?
当然だ。こんな寡兵で勝てる相手ではないのは元々わかっていたことなのだからな
外で、飛竜に乗ったミオとエレンが並んで手を振る。それに手を振り返しながら、リルはOlに詰め寄った。
先に言っておきなさいよ!!
敵を騙すにはまず味方から、と言うだろう?
エレンとミオの名は、思っている以上に広まっている。手足の様に飛竜を駆る乙女と、雨の様に矢を降らす黒アールヴの美女。魔王の竜騎兵部隊と言えば、ちょっとした叙事詩(サーガ)にもなるほどの知名度を持ち、Olの持つ軍の主力として認識されていた。
それが故に、Olは彼女達を迷宮から出したのだ。リルにすら知らせぬ密命を持たせて。
はーっはっはっは! 我が弓をとくと見よ!私の兵力は五万三千だッ!!
ノリノリだね、エレンあの子、戦いになるとキャラ変わるよね?
というか、どう見ても五万三千もいないのですが
哄笑を上げながら矢を雨と降らせるエレンに、冷静にリルとスピナは突っ込んだ。彼女らが駆る飛竜達は目算で数十。いずれもOlの迷宮に棲みついたものではなく、ミオが自力で従えた野性の飛竜なのだろう。
恐らく、53人いるのだろうな。一騎当千で五万三千だ
Olがエレン達に与えた密命。それは、黒アールヴの残党の探索と、魔獣の戦力の確保だった。白アールヴ達がOlの支配下に収まった今、彼らに敵対するものはいない。大手を振って仲間を探すことが出来る。
また、ミオも放っておいても魔獣たちが集まってくるOlの迷宮で世話をしているより、外に出て魔獣を捕えに行くほうが戦力の増加を図ることができる。
戦力の隠匿と増強。その二つを見込んで、Olは彼女達を迷宮から手放した。時が来るまで待て、と、迷うミオを説得して。
そして今、その時が来たのだ。
翼を持ち宙を舞う天使達ではあったが、巨大で力強い飛竜の飛行速度にはとても敵うものではない。それは地上で言うならば、歩兵と騎兵の戦いだ。しかもこの騎兵は自在に無数の矢を放つときている。
天使達は見る間にその数を減じていった。
Ol、あれさ
ああ、わかっている
リルの言葉に、Olは頷く。数だけはいるが、あれは天使の中でも下級から中級程度。悪魔で言えばガーゴイルやヘルハウンドと同等程度の力しか持っていない。敵はまだ主力を繰り出してはいないという事だ。
準備しておけ。行くぞ
こりゃあマズいな
ハラハラと落ちては消えていく天使達を見やり、不死身は呟く。メリザンドとは千年以上に渡る長い付き合いだが、戦略においてここまで彼女が追い詰められる様を彼は初めて目の当たりにしていた。
マズい? 何がまずいというんだ?
しかしメリザンドは、それに笑みを持って答えた。
無明よ、他に敵の援軍は?
ありません
視界を確保するスリットのない、卵の様な形の兜の中で無明の騎士はくぐもった声で答えた。盲目である彼の目は何も映す事はない。しかし、千里を見通し、ありとあらゆる隠された物を暴き出す事が出来た。
ならばこれで詰みだ。まずはあの小うるさい射手を黙らせろ、魔弾
仰せのままに
羽帽子を被った男が優雅に一礼し、弓に矢を番え、ひょうと矢を放つ。
次。竜殺し、鉛
屈強な肉体を持つ二人の大男が並び立つ。
竜殺しは遥か上空を飛ぶ飛竜達を見据え、剣を引き抜いた。そして横薙ぎに剣を振るう。
落ちろ
鉛が手をかざし、力を込めて呟いた。
よし。では最後だ。跳ね駒、炎髪。止めを刺して来い
頷き、全身を甲冑に包んだ騎士が小柄な少女を抱きかかえ、跳ぶ。彼らの姿は瞬時にして掻き消えた。
これで王手。概ね予定通りだな
御無事ですか、お師匠様
Olが目を見開くと、目の前にスピナの顔があった。その首から下は半透明の粘液と化し、Olを包み込んでいる。どうやら咄嗟に、落下の衝撃から守ってくれたらしい。
一体、何が起こった?
まず、雨あられとばかりに降らせていたエレン達の矢が撃ち落された。防がれたならまだわかる。しかし、同じ矢で撃ち落されたのだ。高速で空中を飛ぶ矢を射るのが、どれほどの神業を持ってすれば為せるのか、Olには想像もつかない。
ましてや数百もの矢を同時に射落とすなど、考えもしなかった事だ。未曾有の攻撃に混乱に陥るOl達を、更なる衝撃が襲った。突然、飛竜達が残らず真っ二つに両断されたのだ。
飛竜はいわゆるドラゴン、ましてや最後の竜メトゥスなどとは比べるべくもない。竜の眷族の中でも末端に位置する弱く知性にも乏しい存在だ。が、それでも世界で最強の種族、竜であることには変わりがない。
並みの魔獣などよりも遥かに強く、その鱗は生半可な剣士の剣など受け付けない。ましてや、それを両断するなどいかなる剣士にも魔術師にも不可能だ。それを姿さえ見せず、数十まとめて両断するなど。
そしてそれと同時に起こったのが、空飛ぶ馬車の異常だ。奇妙な風が駆け抜けたかと思えば、突然馬車はその動作を止め、ただの木で出来た箱へと成り下がった。当然馬車は落下をはじめ、兵達の棺桶となった。
主殿。先程のは、一体?
軽い擦り傷を作りながらも、エレンが姿を現す。その後ろには、ミオと配下達も一緒だ。全員軽い傷を負ってはいるものの、重傷以上のものはいないようだった。
エレン、無事だったか
ええ、下が森だったのが幸いしました
アールヴ達は森の精を起源とする種族だ。弓の腕を披露する事が多いが、その魔術の腕前も捨てたものではない。落下しながら木々の木の葉やツタを操り、網を作って衝撃を和らげるくらいの事は軽々としてのけた。
久しぶり、エレン、ミオ。再会を喜びたいところだけど、そんな状況じゃないみたい。兵の方はやっぱり全滅よ、ご主人様
いつになく切羽詰った表情で、リルがOlの下へと戻ってくる。落ちた馬車を見て回ってきたが、やはり彼ら以外に生存者はいないようだった。
先ほどの攻撃がなんなのかは全くわからん。が、わからんという事は、恐らくは英霊の仕業だろう
矢を撃ち落したもの、竜を落としたもの、馬車を落としたもの。それぞれ方法が全く違うからには、それぞれ別の英霊の仕業だと考えるのが自然だ。
英霊が5人以上いれば負ける。決戦の前にOlはそう言った。敗北が決定するまで、後2人だ。
いずれにせよ、馬車も兵も落ち、これ以上の援軍もない。ひとまず迷宮に戻り、体勢を立て直すぞ
Olは魔法陣を描くと、リルとスピナの魔力を使い転移を行う。
誰もいなくなったその場所に、二つの影が姿を現した。
そのうちの一つ、跳ね駒はその場に残る魔力の残り香を掴み取ると、再び炎髪を抱え、跳躍した。
それは今までで一番の奇襲だった。
けたたましく鳴り響く警報の音と、己が身を焼く凄まじい痛み。形代を操り、人間としての苦痛とは無縁の筈のOlの全身がひどく痛み、彼を苛んだ。ダンジョンコアが攻撃されている証拠だ。
一体、何事だ!?
Olが部屋を出ると、目の前は紅蓮の炎に包まれていた。
迷宮が、燃えている。燃えるはずのない石壁が、床が、天井が、何もかもが炎を吹き上げ、燃え上がっていた。
敵襲だと!?
スピナが地中から攻めて来た時でさえ、時間的余裕はまだあった。どんな方法を取ったとしても、迷宮に侵入されれば対応できるだけの時間を稼げる準備がしてあったのだ。
こんな事は、ありえない。しかしそれを言うならば、先の敗北もありえない、理解しがたいものだった。すなわち、この襲撃も、石を焼き鉄を燃やすこの炎も、英霊の仕業と見て間違いない。
燃え盛る炎の中、Olは二つの姿を見つけた。小柄な少女と、甲冑に身を固めた騎士。炎髪の姫と跳ね駒敗北を決定する、英霊の4人目、5人目だ。
そして、Olは見覚えのあるその姿に声をかけた。
久しぶりだな。ユニス
反応らしい反応も見せず、炎髪は剣を引き抜く。
随分様が変わったな
Olはそれに身構えもせず、言葉を続けた。
お前の最後の言葉は覚えているぞ。言われたとおり、信じてやる
すっ、とOlは手を差し出す。炎髪は何も見ていない、虚ろな瞳で全身から炎を吹き上げ、彼に突き進んだ。
炎を纏った剣がOlの胸を刺し貫き、その身体を焼き焦がした。その苦しみに、Olはこの炎が尋常のものでない事を悟る。炎髪がその身に秘めた情念の炎は全てを燃やす。石であろうと、鉄であろうと、魂であろうと、何もかもをだ。
このまま燃やされれば、形代だろうが関係ない。Olという存在そのものが焼き滅ぼされる。しかし、Olは微動だにしない。ユニスを信じ、彼女をじっと見つめた。
剣が空を滑り、輝きながらぶんと振るわれ、首を刎ねる。
首はごろごろと地面を転げ、炎に包まれて一瞬にして燃え尽きた。
途端に、迷宮を覆っていた炎は消える。
それを操っていた炎髪が死んだからだ。
よく、わかったね?
兜の中から、くぐもった声があがる。
わからいでか。誰の為にこんな事をしておると思っているのだ
Olは意識して渋面を作り、焼け焦げた傷を治癒しながらそう答えた。決定的な隙を作る為とは言え、己の存在自体が燃やされるのを許容するのはなかなかに肝が冷えた。
ただいま。とりあえず、さ。久々にOlのパスタ、食べたいな
兜を脱ぎ捨て、生前と変わらぬ笑みを浮かべて跳ね駒はそう言った。
第17話天に弓を引きましょう-7
ユニスぅ~~~~ッ!!
ちょ、リル、うわっ!?
勢いをつけ、飛び込むように抱きつくリルに押し倒され、ユニスは椅子から転がり落ちた。その直前、彼女の手にしていたフォークとパスタが山盛りになった皿、そしてそれを乗せたテーブルが部屋の隅へと一瞬で転移した。
お帰りなさい、ユニス
ん、ただいまスピナ。あれ、何かちょっと感じ変わった?
ぎゅうぎゅうとリルに抱きしめられながらも、ユニスはマイペースにスピナに言葉を返す。それに対し表情を硬くし、胸を押さえる彼女にユニスは疑問符を浮かべた。
色々聞きたい事はあるがまあとりあえず食え
両手にパスタを山盛りにした皿を乗せながら、Olはそれをテーブルに乗せる。
いや、流石にそんなには食べきれないよ!?
愚か者、これは俺とマリーの分だ
ユニスからリルを引っぺがし、テーブルの位置を元に戻しながら、Olは呆れた口調で言った。しかし、皿一杯に盛り付けられたそれは、いくら食べ盛りと言ってもマリーが食べるには明らかに量が多すぎだった。
あーっ、ゆぱすただぁっ!
マリーが部屋に入ってくるなり、そう叫ぶ。一瞬ユニスに視線を送ったものの、それはすぐにテーブルの上のパスタに取って変わられた。
マリーも相変わらずだねえ
一心不乱にパスタを口に詰め込む彼女の頭を撫でてやりながら、ユニスは苦笑した。
それにしても、ちょっと意外だったな。Olがあんなにストレートにあたしの事信じてくれてるとは思わなかったよ
ニコニコと料理を口に運びながらユニスは言った。
そうするのが一番可能性が高いと踏んだからそうしただけだ。勘違いするな
憮然として答えるOlに、リルがニヤニヤと笑みを浮かべる。
それで失敗してたら、保存しておいた死体に押し込んで再洗脳するプランBがしっかり用意してあった。ああ、あの死体はもう要らんから処分していいぞ
待ってあたしの身体燃やさないでー!?
躊躇なく頷くスピナを慌ててユニスが止めると、魔術師師弟は冗談に決まっているだろう勿論冗談ですと真顔で言った。この二人が冗談を言う所なんて聞いた事がない。再会を喜んでくれているのだと思おう、とユニスは無理やり納得した。
って言うか、あの身体残しておいたのそんな理由だったんだ
リルは呆れてため息をつく。
どんな理由だと思ってたんだ?
それはその、感傷とか
はっ
リルがそう答えると、Olは鼻で嘲笑う。
くっ、なんか腹立つー!
相変わらずのそのやり取りに、ユニスは微笑を浮かべた。
ゆにす、おなかすいたの?
ユニスが空にした皿と彼女の顔を見比べながら、マリーは問うた。
えっ?
ユニスのその頬には、いつの間にか涙が伝っていた。
あげる
どう勘違いしたのか、マリーは自分の皿をずいとユニスに突き出した。
ありがとう、でも、大丈夫だよ
ユニスはとめどなく溢れる涙を拭いもせず、自分があるべき場所に帰ってきたという実感と共に、にっこりと微笑んで答えた。
胸がもう、一杯だから
にしても、なんだってあんな兜被ってたの?
にぎやかな食事も一段落し、部屋の片隅に置かれているフルフェイスの兜を指差してリルは尋ねた。生前彼女は軽装を好み、兜もロクにかぶってはいなかったはずだ。
あたし演技とか苦手だから表情とかでバレないように被ってたんだよ。基本、英霊ってあんまり表情変えたりしないし
英霊はある程度自由に自分の装備を変えられるらしい。魔力で衣服を形作っているリルと原理的には同じようなものだ。
という事はやはり、英霊として呼ばれた時点で自由に動けたのだな。殺気が全くないから妙だとは思ったが
うんお兄様が、協力してくれたから
ユニスは少しばかり神妙な表情で、そう呟いた。
お兄様の能力は鉛。ありとあらゆる術を無効化し、その存在を否定する。法術も例外じゃなくてね。それで、あたしは聖女の法術に縛られず、自由に行動する事が出来るの
空飛ぶ馬車を落としたのはザイトリードか。しかし、そうなると奴も自我を残しているのか?
Olの問いに、ユニスは頷く。
あと、お父様もね。ただ二人とも、Olの事倒す気満々だから、味方はしてくれないと思うけど
ウォルフもいるのか
娘を頼む、などと言っておいてと、Olはうんざりした。出来るなら二度と会いたくない相手だ。
お嬢さんを下さい、って頭を下げに行く気分?
そんなもんですむなら幾らでも下げるがな
何せ長い歴史を紐解いても大陸随一と名高い英雄王だ。あの齢まで生き、子もまた英雄となるほどに轟く勇名。さらに英霊ともなれば老いなど関係なく、全盛期100%のウォルフの実力を持っていると考えていいだろう。
英霊は何人いるんだ?
あたし入れて7人。で、それぞれ一人一個ずつ特殊能力っていうか法術を使えるみたい
ユニスはとん、と跳躍し、Olの目の前に転移して見せた。
あたしはコレ。跳ね駒って呼ばれてた。結界があろうと、どんなに遠くだろうと、一瞬で移動する能力。魔力を辿って魔術での転移先を割り出す事も出来るみたい。自分と、せいぜいもう一人を運ぶのが精一杯なんだけどね
無茶苦茶だ、とOlは思った。結界も距離も無視するなど、魔術の原理を根本から覆すかのような力だ。
お兄様が鉛で、あらゆる術の無効化。お父様は竜殺しで、相手が竜なら無条件に殺せるんだって
本人が為しえた偉業に関連するのか
フィグリアにOlが捕まったときにユニスが為しえた転移門の創造。あれがユニスの一番の偉業と目された結果の能力なのだろう。そして、Olは大体法術がどのようなものなのかを察してきた。
理力は理を促し、世界を形作る力。つまり法術は、理を法則を作る術、か
物が地に落ちるように、ウォルフは竜に負けない。それが当たり前である、という法則そのものを作り出す。それが、法術。
魔術は理を捻じ曲げるが、魔術には魔術の法則がある。魔の理とでも呼ぼうか。魔術で出来る事と出来ない事はハッキリしており、幾つもの決まり事と常識がある。法術は、それを捻じ曲げ、捻じ伏せる。
他の4人の能力ははっきりとはわかんない。一人はさっき殺しちゃったから、後3人、かな。魔弾無明不死身って呼ばれてたよ
名と共に、ユニスは彼らの簡単な外見などを説明した。
魔弾と無明は恐らく、魔弾の射手レックスと、盲目のガイウスだろう。不死身はわからんな
Olは記憶をあさり、該当しそうな英雄の名を挙げた。一発百中の二つ名で知られ、矢を一度も外したことのない弓の名手レックス。生涯でただ一度だけ、策略によってその矢の狙いは逸らされ、彼の妻を射殺した。
盲目のガイウスは後天的に英雄となった特殊な例だ。聖者の血を浴び、盲目であった彼は視界を手に入れたという。その後は献身的に数多の怪物を殺し、世の為に戦ったが聖者の弟子に殺されたという。
ねえ、英霊って英雄が死んだらなるんだよね?
今更何を言ってるんだ
呆れたように言うOlに、リルはぱたぱたと手を振った。
いや不死身って、死なないならどうやって英霊になったんだろうって思って
む、とOlは一瞬口篭る。しかしそれは、リルの言葉がもっともだからだと考えた訳ではない。
不死身の英雄と言うのは存外少なくない。しかし、本当の意味で死なぬ英雄はいない
英雄の能力は基本的に神が授けるものだ。その神でさえ滅ぶと言うのに、英雄が滅ばないわけがない。
大抵は何らかの弱点があり、そこを突けば死ぬ。足首だったり、背中だったり、何らかの誓約を守る事だったりする
だが、それは飽くまで地上の法則。神が与えた力を地上で磨きぬき、天へと上った英霊達が使う法術は、それより一段上の能力だ。
英霊となった不死身の男は、果たして死ぬのか?
Olの胸中に、一抹の不安がよぎった。
閑話最後の戦いに備えましょう-1
準備と覚悟は良いか?
Olの問いに、リルが、ユニスが、スピナが神妙な表情で頷く。
これが恐らく最後になろう。存分に、楽しめ
Olの静かなその宣言と共に、娘達が一斉に彼に殺到した。
複数の部屋を繋ぎ作った、巨大な広間。そこに、Olの愛人達が一斉に集結していた。
リル達三人にマリーは言うに及ばず、エレンとその配下52人にミオが列を成し、ナジャ、Shal、ウィキア、Faro達冒険者の娘達の隣には、ちゃっかりと商人のノームが陣取っている。
その後方にはフィグリアの元王妃オリヴィアと、その美しい二人の娘パトリシアとプリシラがあられもない姿を晒し、その隣にはやや気後れした様子で順番を待つ、生贄として捧げられた村の娘達。
他方に目をやればきゃいきゃいと騒ぎながら食事を楽しむハルピュイア達にリル配下のサキュバスといった魔物達がおり、セレス以下白アールヴと森の民の女達の中でも選りすぐりの美女達がしんがりを勤める、と言った具合だ。
その総勢は100人を越えていた。
それを迎えるOlは久々に形代ではなく、自分自身の肉体だ。
じゃあまず私からね。Ol、おっぱい好きでしょー?
大きさであれば私も負ける気はいたしませんわ
その豊かな乳房をさらけ出し、左右から迫るのはリルとオリヴィア。数多い愛妾の中でも文字通り一、二を争う爆乳の持ち主たちだ。
大きければいいというわけではない、が
左右からたっぷりとした果実に挟まれながら、Olは両手でそれぞれその胸を鷲掴みにした。リルの胸は大きく突き出した円錐型で、その巨大な質量にもかかわらずまったく垂れることなく、重力に逆らいツンと上を向いている。先端はまるで生娘のような綺麗な桜色をしていて、Olを誘うかのように硬く尖っている。
一方、オリヴィアの胸は子を三人産んだとは思えない見事な釣鐘型で、単純な大きさを比べるのであればリルにすら勝る、まさに魔乳と呼ぶにふさわしい偉容を備えていた。乳首は流石に多少褐色を帯びているが、それがかえって彼女の淫猥な魅力を引き出しているかのようだった。先日Olの子を産んだばかりの彼女の胸を吸うと、甘く芳しい母乳が溢れ出た。
どちらも大きさだけでなく、張りも触り心地も柔らかさも一級品の甘い果実だ。
うむこれは素晴らしいな
あんっお褒め頂き、光栄ですわ、Ol様
えへへ。たっぷり味わってね
嬉しそうにぎゅうぎゅうと胸を押し付ける彼女達をよそに、抜け目なく彼の下半身に近寄る影が三つあった。
じゃ、こっちのお宝は頂いちゃうよ
金額分、しっかりご奉仕させて頂きますね、魔王様
わたしもー
身軽な動作でクドゥクのFaroがOlのズボンを脱がし、いきり立ったものにノームがそっと手を添える。その横から割り込むように、マリーが首を突っ込んだ。
Olの両脚の中に三人もの娘が顔を寄せられるのは、小柄な彼女達ならではだ。
お二方には敵いませんけれども
ノームは着ていた服をずらすと、きゅっと腕を寄せてその体格と顔立ちに似合わぬ豊かな谷間をOlに見せ付けた。薄い絹のようなローブは彼女の身体の線をはっきりと浮き上がらせつつも、肝心な部分をぎりぎりで隠す。
あは、おっきくなったよ
嬉しそうに笑い、FaroはOlの一物をぺろりと舐め上げた。その反応を見ながら舌を長く伸ばし、鈴口やカリ、裏筋といった彼の弱い部分を丁寧になぞっていく。
んー、んんーっ
マリーはまるで人懐っこい猫の様に、懸命にOlのものに舌を這わせる。技巧も何もない、愛撫と呼ぶのも憚られる様な稚拙な行為だ。その行動の意味もわかっているかどうかかなり怪しい。しかし、彼女はOlに喜んで欲しいという一心で、懸命に彼のものを舐め擦り、その光景は肉体的な快楽よりも彼を満足させた。
では私も
ノームもローブを脱ぎ捨てると、一糸纏わぬ身体をOlの脚の間に滑り込ませ、彼の一物に舌を這わせた。左右から柔らかく巨大な乳房に挟まれ、三人の美少女たちに股間を奉仕される快楽に、Olはたまらず精を放った。
幼くあどけないマリーの顔が、Olの白濁した液で汚される。Faroは顔中に付着した精液を美味しそうに舐め取り、ノームが未だ萎えず硬度を保ったままのOlの一物をぱくりと頬張ると、尿道の奥に残った精液までをちゅうちゅうと吸い取った。
最初にお腹にもらうのは、私だからね
リルはOlと娘達に言い聞かせるようにそういうと、ふわりと宙に浮き、Olの上に跨った。そして、まるで泉のようになみなみと愛液を湛えた秘裂で一息にOlのペニスを咥え込む。
では私はこちらから
オリヴィアは逆にOlの背中に回り、そのたっぷりとした双丘を彼の背に押し付ける。Faroとノームはリルに場所を譲ると、Olの両手に陣取って彼の手のひらを自らの乳房に押し付けた。
あぁんOl、もっと触ってぇ
ふふ、Ol様、たっぷり楽しんでくださいね
Olの手はすぐに彼女達の乳房を鷲掴みにし、Faroとノームはそれぞれ嬌声を上げる。マリーは相変わらずOlの股間に陣取り、彼の精の詰まった袋を舐め上げることに熱心だ。
んんっOlぅ
リルはすっと目を細め、うっとりとした表情で彼に口付けた。それと同時に彼の腰にその長い脚を絡ませ、股間を押し付けて膣でペニスをしごき上げる。
怖がらなくていいわ全部、私がしてあげるからね、アイン
囁かれる声にOlが思わず目を見開くと、リルが悪戯っぽい表情で笑った。
似てた?
いや、ぜんぜんだ
それは、ラズの言葉。Olが初めて女を知った日に、耳元で囁かれた台詞だ。
Olは気づいてないみたいだったけど、ラズもあの時処女だったんだよ。必死にお姉さんぶってたけどさ
70年越しの事実にOlは驚く。彼にとって師は、何もかも熟達した大人の女性であったからだ。
そうか、そうか。それは良く教えてくれたな。褒美をくれてやろう
Olはそういい、強制的にリルの中に射精した。その中に、たっぷりと魔力を込めて、だ。
え、ちょ、オ、あぁぁぁぁぁっ!!
久方ぶりに自分の身体が作り変えられる感覚に、リルは高く鳴き声を上げた。
そら、淫魔の大好きな精をたっぷりくれてやろう
魔力の供給がある限り、Olの精力は無尽蔵。しかも性的快感を得ずとも射精はコントロールできる。つまり、その気になれば永遠に出しっぱなしにすることすら可能だ。
まっ、て、ちょ、これ、しゃれに、なら、なあぁぁぁぁぁぁぁっ!!
どぷどぷと吐き出され続けるOlの精液は、リルにとっては強力な媚薬だ。それが、溢れ出るどころか無尽蔵に放出されて、リルはがくがくと身体を震わせた。
あぁぁぁぁ、あぁぁぁぁあぁぁぁぁっ! あぁぁぁっぁぁぁあああぁぁぁぁ!!
あまりの量にリルの腹がまるで子を成したかのようにぽっこりと膨れてなお、Olは射精の勢いを留めない。リルは絶頂に次ぐ絶頂を味わい、ついには白目を剥いて失神する。その様子を見て、Olはようやく射精を止めた。
ずるりと白濁に塗れた一物を引き抜くと、リルの膣からはごぽりと音がして大量の精液があふれ出す。完全に気を失った彼女を他の娘達に任せ、Olは次の娘を探して視線をめぐらせた。
流石にこの惨状を見た後では、Faroもノームも微妙に視線をそらす。わけもわからずマリーだけがOlを見上げたが、流石の魔王もまだ彼女に手を出す気はない。そんな事をすれば物理的に裂ける。
Ol様、それでは次は私の中にお情けをくださいまし
たゆんと巨大な魔乳を揺らし、オリヴィアがOlに尻を向け、秘裂を割り開いた。
また子を孕める様たっぷりと、奥に射精してくださいませ
あの惨事を見た後でそんな台詞を吐けるとは。居並ぶ娘達の胸中は、元王妃への尊敬の念で埋め尽くされた。
閑話最後の戦いに備えましょう-2
ああっ、Ol様、Ol様ぁぁっ、そこ、いいですっ、もっと、もっと奥にくださいませぇぇぇっ!!
オリヴィアはそのたわわに実った果実を震わせながら、後ろから突き入れられる快感に嬌声を上げた。
Olは彼女を犯しながら、左手でFaroの胸を揉み、右手でノームの尻を撫でながら彼女の唇をむさぼる。二人の股間からはすでに白くどろりとしたものが垂れ落ちていた。三人の中に精を吐き出し、オリヴィアは二回目だ。
快楽にとろけながらも、オリヴィアの膣はOlの精をねだるかのようにきゅうきゅうとすぼまる。淫魔の血でも引いているのではないかと思うくらいの乱れようだ。
出すぞ、オリヴィア!
ああぁっ、Ol様の精液っ、奥に、奥に出してぇもっと、もっとたくさん孕ませてくださいぃぃぃっ!!
ぐっとその豊満な尻をOlの股間に押し付け、オリヴィアは背筋を反らして気をやった。その途端、膣口がぎゅっと収縮し、一滴も逃すまいとOlの精を飲み込む。
そしてそのまま、彼女のそこはまるで手の指のようにぐにぐにと蠢いてOlの一物をしごきあげると、中に残った精液も余さずその子宮へと送り込んだ。これだけの事を、無意識にやってのけているのだから恐ろしい。
次はエレン、セレス、来い
第一陣に一通り寵愛を与え、次にOlは黒と白のアールヴの長達を手招いた。
むこいつも一緒か
黒の氏族の長もですか
互いに憎しみを抱きあう、不倶戴天の間柄だ。共にOlの部下となって殺しあうような事はないが、二人は互いに避けあい顔をあわせない様にしていた。それが共に呼ばれ、二人は同じように表情を曇らせた。
お前達は共に我が部下となったのだ。二人ともいや、氏族丸ごと、同様に俺の女だ。遺恨は忘れ、最大限俺に尽くせ
そうは言うが主殿。確かに私は主殿を敬愛し、恩義も強く感じているが全てを捧げたと言う訳ではない。その命ばかりは承服しかねるぞ
エレンが固い口調でそういうと、セレスはそれを嘲笑った。
やはり黒の氏族はその程度の了見なのですね
何だと?
エレンの瞳に剣呑な光がともる。セレスはそれを無視してOlにしな垂れかかった。
Ol様、私はあなた様に身も心も捧げると決めました。私の長い長い生、それ全てをあなた様に捧げ、お仕えいたします。我が名、白のセレスティアの下に
セレスはそう宣言し、Olの一物に恭しくキスをした。元々献身的で相手に尽くす性質は白アールヴの本能のようなものだが、あれほどイーヴァンを慕っていた彼女が良くぞここまでになったものだ、とOlは自らの仕事の結果に満足する。
な! 貴様、アールヴにとって真名が何であるかわかっているのか!?
ええ、勿論。ですが、エレン様はどうぞお構いなく。黒アールヴにそのような事、出来る訳がありませんものね?
たおやかに、セレスは勝ち誇った微笑を浮かべエレンを見下した。ぎり、とエレンは奥歯を噛み締め、セレスをにらんだ。
安い挑発だ。が、乗ってやる。良いか、勘違いするな。別に貴様と張り合ってするわけではない。弓取るものとして、主殿以上に誇りを持ってお仕えできる方はおらん。主殿の偉大さは、誰よりこの私が評価している。それを証立てる為であって、けして貴様に張り合うわけではないのだからな!
はいはい
ぞんざいに頷くセレスに舌打ちし、エレンはOlへと向き直って咳払いをする。
ごほん。まあ、その、そんなわけで、だ。黒のエレオノラ、この名を持って主殿に仕える事を誓う。不祥の身ではありますが、どうぞ宜しくの程、お願いいたします
居住まいを正し頭を下げるエレンに、Olはうむと鷹揚に頷いた。
では、忠誠の証としてまずはその胸で奉仕をしてもらおうか
Olは彼女たちの顔の前にいきり立つ一物を突き出した。エレンとセレスの顔が、同時にぽっと朱に染まる。
彼女達は豊満なその二つの果実を両手で捧げもつと、左右からOlのペニスをその谷間に挟みこんだ。
大きさでは私の勝ちだな
エレンがふふん、と勝ち誇った笑みを浮かべる。褐色の彼女の肌は猫のようにしなやかで張りを持っている。そのすべすべした触り心地と、指で押せばぐっと押し返してくるほどの弾力を持ったボリュームたっぷりの乳房は膣内にも勝るとも劣らぬ心地よさだ。
大きければ良いと言う物ではありません。やはり柔らかさこそ女性らしさであるとは思いませんか?
セレスの白い肌はまるでシルクのように滑らかで、ほっそりとして柔らかい。表面はまるで手が吸い付くかのようにしっとりとしていて、白アールヴにしては破格の巨乳は揉みしだけばグニグニとどこまでも形を変える。それに包まれればまさに夢心地だ。
どちらが上などと言うことはない。別々の能力を持ったものが協力し合うことこそ肝要であるとなぜわからぬ
白と黒の乳房に挟まれながら、Olはそう言った。
どちらか片方ならばいずれそれに飽きる。しかし、二つ揃わばその可能性は無限だ。それがゆえに、俺はお前達に共に仕えよと命じたのだ
Olは適当に言葉を並べたが、二人はそれに何らかの感銘を受けたのか、お互いにじっと見詰め合った。
主殿がそう仰るならば仕方ないな
そうですね。全ては、Ol様の為に
二人の妖精の美姫はOlのものを胸ではさんだまま、舌を伸ばしその先端を舐めあげた。むにむにと左右二対、四つの乳房に圧迫されながら、二つの舌が蠢き彼のペニスを慈しむ様になぞっていった。
互いに憎しみあう二人は、誰よりも互いの呼吸を知り尽くしている。エレンが雁首を攻めればセレスは鈴口に舌をさし入れ、セレスが竿を舐め上げればエレンは亀頭を咥え込む。
絶妙な連携で、二人のアールヴはOlのペニスを奉仕していった。
Olの腰の震えを感じ、二人の舌が争うかのように彼の鈴口へと伸びる。精を求めて伸びる二つの舌はOlの肉槍の先でふれあい、絡み合った。
直後、噴出した白濁の液によって二人の顔や胸が汚されていく。褐色の肌が白く汚されていくさまも、白い肌が更に白く染め上げられるさまも、それぞれに美しく淫猥だ。
はぁぁぁ
エレンとセレスは期せずして、同じように声を上げた。
次は胎に注いでやる。横になれ
Olの指示にセレスは仰向けの形でベッドに横たわり、それを抱きしめるような形でエレンはその上に覆いかぶさった。ちょうど、Olから見ると縦に秘部が向かい合って並ぶ形だ。
ふぁぁぁぁっ!
エレンの尻を掴んで刺し貫く。奉仕している間に昂ぶったのか、その秘裂はたっぷりと蜜をたたえうるみ、抵抗なくOlの一物を迎え入れた。
はぁぁぁぁんっ
Olはすぐさま彼女の中から肉棒を抜くと、今度はセレスの中へと突き入れた。こちらもその蜜壷はしとどに濡れそぼっており、やわらかくOlの物を咥え込んだ。
あ、あ、あ、あ、あぁぁっ
はぁぁん、ん、ゃ、ぁぁんっ
色気のある艶かしい声と、可憐で愛らしい声。Olが突き入れるたびに、性質の異なる二つの嬌声がくるくると輪舞曲のように奏でられる。
あ主、殿ぉもう、もう限界だ
Ol様、どうか、どうか、お情けを
エレンとセレスは同時に切なげに声をあげた。入れられてもすぐ抜かれるので、快楽を感じつつも彼女達は物足りなさを感じ、我慢の限界だった。尻を振り、花弁を互いに擦り合わせるようにしてOlの物を誘う。
いいだろう。行くぞ!
Olはその二人の間に肉槍を差し込むと、二人の淫核を同時に刺激するように激しく突きかかった。
ぁ、ぁ、ぁ、あ、あ、あ、あああ、あああああああ!
あぁん、ぁん、っん、ん、んんん、はぁぁぁぁぁん!
その刺激に二人のアールヴ達は共に背筋を反らし、激しく絶頂へと至った。それと同時にOlは素早くエレンの中へと突き入れると、奥に思い切り精を放つ。
ふぁぁぁああああああっ!!
どぷどぷと数秒注ぎ込んでやったところで、セレスの中へと肉槍を埋め、残りの半分を解き放つ。
はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
エレンを追いかけるようにセレスは嬌声を上げ、それを受け止める。二人の中にたっぷりと精と魔力とを注ぎ込み、Olはふうと息をつく。
白と黒の美姫はぼんやりとした表情で、互いに抱き合ったままぐったりと荒く息を吐いた。その二つの秘所から流れ出る白濁の液が互いに交じり合うのを見て、Olは満足げに笑みを浮かべた。
閑話最後の戦いに備えましょう-3
次はそうだな。アレット、ベティ、クロエ、デルフィナ。お前達で奉仕して見せろ
Olが次の娘を呼ぶと、呼ばれた四人は驚いたように目を瞬かせた。
どうした。何を呆けている?
あ、あの、まさか、名前を覚えていただけているとは思わなかったので
アレットと呼ばれた娘が、言い難そうにそう答えた。
ふむ確かに、こうして名を呼ぶのは初めてだな。しかし、部下の名前くらい把握している
彼女達は最初からエレンと共に迷宮に来た黒アールヴの四人だ。名前を紹介されたのは最初にあった時の一度きりだが、Olはその名をしっかりと記憶していた。
では、ご奉仕させて頂きまーす!
いち早くOlに近づいて元気よく宣言したのはベティ。彼女は4人の中でもっとも豊かな乳房を備えていた。
彼女はOlの一物をその豊満な双丘で挟み込み、先端を口の中に咥え込んだ。
こらベティOl様、失礼いたします。エレン様には及ばぬとは思いますが、誠心誠意ご奉仕させて頂きます
堅苦しい口上でOlに跪くのが、四人の中のリーダー格であるアレット。彼女は横からベティの咥える一物をフォローするように舌を這わせる。
Ol様、これお好きですか?
小首をかしげて尋ねながら、Olの右胸をちろちろとなめるのはやや小柄なデルフィナ。彼女の技巧は弓でも性交でも4人の中で随一だ。
Ol様、お口を拝借いたしますね
柔らかな口調でそう言い、Olの首に手を回すのは最年長のクロエ。そのままOlに口付ける彼女の秘所を指で擦り上げてやると、彼女は嬉しそうに身を震わせる。
クロエがOlの舌を、デルフィナが胸を、アレットとベティがペニスを絶妙な連携で愛撫する。アレットが肉棒を下から上へと舐め上げたかと思えば、デルフィナがその乳房の先端でOlの胸板をくすぐり、ベティがちゅうとOl自身の先端を吸い上げると同時にクロエが彼の舌を唇で食むように吸う。
まるで4人が一つの生き物であるかのような連携に、Olの快楽は上へ下へと翻弄された。
さぁ、お前達も主に操を捧げるんだ
Olの性感が高まってきたのを敏感に察知し、アレットは部下へと命じた。エレン達が地上に戻って探してきた黒アールヴの生き残り、その数48人。
彼女達はその褐色の肌を惜しげもなく晒しながら、Olの周囲に集まった。
Ol様。我ら一同、エレン様と同じくあなた様に真名を捧げ、従う所存です
アレットは跪き、Olの目を見つめ言った。
私の名はアレクシア
私の名はブリジット
私の名はクロディーヌ
私の名はデルフィニーア
四人はピタリと声をそろえる。
この身全て、我が主Ol様にお捧げします
ああ。末永く、可愛がってやる
Olがそういうと、彼女達は一斉に表情をほころばせた。
ではOl様、どうぞ残りの者達にもお情けを頂けますでしょうか?
うむ
残り48人を迎え入れるように場所をあけるアレットに、Olは鷹揚にうなずいた。
半分くらいは処女ですから、どうぞお楽しみくださいね、ご主人様
そんな彼の耳元で、ベティはこっそりと囁いた。
配偶者との愛を至上と考える白アールヴに比べれば、黒アールヴの貞操観念はかなり奔放だ。ある程度気に入った相手となら恋人同士でなくても情を交わすこともあるし、生涯の内で複数人の妻や夫を持つ事も珍しくない。
そういう意味では、黒アールヴの処女はとても貴重だ。
エイレーネと申します、Ol様、どうぞ私の中をご賞味くださいませ
フェオドラです、可愛がってくださいね
ガラテアと言います。どうかお情けを
Olは左右にベティとクロエを侍らせ、次々と名乗り脚を広げ、或いは尻を振り、或いはOlの物に口付けて彼を誘う黒アールヴの娘達を犯していく。
アレットとデルフィナはその間に主に処女の娘達の準備を整え、初めてでもスムーズに情を交わせるようにOlの為に下拵えをする事に腐心した。
その入念な準備とOlの一物によって、処女の娘もそうでない娘も瞬く間に嬌声を上げ、腰を振りたくって気をやり、その胎内にOlの精を収めていく。
そうした娘たちはしばらくベッドの上でぐったりとして息を整えると、ベティとクロエのようにOlの周りに集まり、少しでも彼を喜ばせようとその舌や唇、乳房でその身体を愛撫していく。
やがてOlの体はまるで褐色の海にたゆたうかのように、娘達の身体に埋め尽くされた。胸に腹、腕、脚、頬とくまなく押し付けられる胸や唇の柔らかな感触を楽しみながら、Olは何十人もの娘を次々と犯し、破瓜の血を散らし、子宮に子種を仕込んでいく。
黒アールヴの娘達は嬌声を上げながら入れ替わり立ち代り彼の肉棒を受け入れ、或いはその身体を愛撫した。そうするうちに誰が既に抱かれ、誰が抱かれていないのか把握するものは本人以外にはいなくなる。
まだ抱かれていない娘はこぞってOlの前に並び、その列にこっそりと一度抱かれた娘達も並ぶ。
ベティッ!!
いつの間にかOlにその両脚を抱えられ、ずんずんと突き入れられ嬌声を上げるベティの姿を見てアレットが叫び声をあげた。
ではお清めします、Ol様
黒アールヴ達との大乱交を終え、Olは様々な体液によって汚れた身体をひとまず清めるために浴室へと向かった。その世話をするのは、Ol直轄の村から生け贄として贈られてきた娘達だ。
生け贄として贈られただけあってどの娘も若く見目麗しい娘ではあったが、種族として美形しか存在しないアールヴや男を誘うために存在する淫魔たちに比べると素朴で地味な娘ばかりだ。
本人達もその事をよく理解しており、その負い目はこの上ない献身という形で現れていた。
失礼します
石鹸を泡立て、体中につけた娘が前後からOlの身体に抱きつき、乳房をむにむにと押し当てて彼の身体を洗う。石鹸でぬめり、すべりの良くなった体でOlの全身を撫で、優しく擦り、洗うと共に愛撫していく。
二対の膨らみが身体の前後からぎゅうぎゅうと押し当てられ、柔らかな肌の感触と、滑らかな指先が身体中を這い清めていくその感触にOlの一物が天を向く。
ぁ
その硬く聳え立つ熱い感触を腹部に感じ、Olの前部を洗っていた娘はぽっと頬を染め、表情を綻ばせた。あれほどの美女達を相手にした後でも、自分達の体に欲情してくれる事に何よりも喜びを感じたからだ。
次は腕をお清めしますね
娘の一人が用意した簡素な椅子に腰掛け、Olはまた別の娘二人に腕を取られ、それを左右に広げた。
先ほどまでの娘達と同じように石鹸の泡をつけた娘が、横に伸ばしたOlの腕に跨るようにして脚の間に挟む。そして、彼の手首と肩の辺りをそれぞれ支えると、腰を前後に振り股間の茂みで腕をこすり付けるかのように洗い始めた。
Olはその腕にたっぷりとした尻と柔らかな太もも、そして大量の蜜を蓄えた秘所の感覚を楽しみながら、腰に合わせてぷるぷると震える乳房を眺めた。顔や身体に押し当てられるのも良いが、少し離れて揺れる様を眺めるのも勿論良い。
こちらも洗いますね
すると、先ほど身体を洗った二人の娘が、Olの脚、太ももの部分に跨った。Olに体重をかけぬ様気をつけながら、二人は腕と同じようにOlの太ももをその股間で洗い清めていく。
腕と違うのは腕に比べ距離が近い事、そして腰が脚一本分、Olより高いと近い事だ。自然、二人の双丘はOlの目の前でふるふると揺れた。
やぁんOl様ぁ。駄目です、洗えなくなっちゃいます
Olが舌を伸ばし、桜色に色付くその先端を舐めあげると、娘達は甘い声をあげてOlの行為を嗜めた。しかし、行動はそれとは真逆に、胸を張ってOlに差し出す。
左右を見れば激しく腰と胸を振り腕を洗う娘達。前を見れば脚を洗いながら胸を突き出す娘達。四肢を完全に拘束された形ではあったが、人間の男にはもう一本脚がある。勿論、それを見逃すような娘達ではなかった。
五人目、特に小柄な身体を持つ娘が、Olの両脚の間に頭を入れ、四つん這いになってその剛直を口に含んだ。全身を完全に包囲され、流石のOlもむうと唸る。
さして美しくもなく、魔力をその胎内に孕む量も少ない。それゆえ、己の快楽は度外視し、ただひたすらにOlの快楽と快適さを追及して奉仕する。それが、村の娘達の選んだOlへの尽くし方だった。
出すぞっ!
どくどくと放出された大量の精を、娘は頬を膨らませて口の中に受け止めた。そして飲み込みもせず、さりとて吐き出しもせず、口を開いてその中に溜まった白濁の液を示すと、味わうようにゆっくりと咀嚼し、喉の奥に少しずつ流し込んでいく。
そして全ての精を飲み下すと、再度Olの一物を口に含み、丁寧に舌で清めた。
その後Olの身体を湯で洗い流し、彼女達は一礼すると速やかにその場を立ち去ろうとした。彼が抱かなければならない女性たちはまだ何十人もいる。
待て、どこに行く気だ?
そんな彼女達の腕を掴み、Olはそう問いかけた。
肝心なのはこれからだろう? お前達も勿論俺の女だ。一人残らず注ぎ込んでやる
その後、浴室内に長く嬌声が響き渡った。
閑話最後の戦いに備えましょう-4
身体の汚れを洗い落とし、ついでに十数人の娘達の胎内に精を注ぎ込んで、サッパリと浴室から戻ったOlを待ち受けていたのは四人の娘たちだった。
Ol様、お待ちしてました。どうか私の中にたっぷりと精液を注ぎこんで、また子を孕ませて下さいませ
淑女のようにスカートの裾をつまみ、挨拶するのはフィグリアの第一王女、パトリシアだ。優雅なその仕草とは裏腹に、つまんだスカートの丈は恐ろしく短く、太ももの中ほどまでしか覆っていない。
当然、摘み上げればその股間部分は丸見えになり、あまつさえ彼女は下着を着けていなかった。太ももまでを覆うストッキングとそれを支えるガーターベルトの間には真っ白な太ももと、とろとろと愛液を垂れ流す秘部があらわになっている。
つい先日Olの子を産んだばかりの彼女は一つ年を重ね17歳。控えめだった胸は妊娠、出産を経て大きく成長し、既に母オリヴィアを彷彿とさせる見事な果実となっていた。あどけなさを残す表情と、その大きな双丘は少女と女のちょうど境界上のギリギリの色香を纏っている。
Olさまぁ、リシィの赤ちゃん袋も空いちゃったから、またたくさんOlさまのおちんぽずぼずぼして中に白いのたくさんくださいぃ
その隣で同じくスカートをたくし上げ、つるりとした割れ目を見せ付けるのはパトリシアの妹にして第二王女、プリシラ。彼女のスカートはパトリシアとは違い足首ほどまである長いものだが、彼女は両手で前の部分をつかみ、胸元までたくし上げていた。
勿論、姉同様彼女も下着はつけていない。ほっそりとした白い脚から、産毛一つないつるりとしたシンプルな割れ目、そしてその上の滑らかな腹とへそが見えるまでに、彼女はスカートをたくし上げていた。
彼女も同様にOlの子を産んだばかりだが、その体付きにはほとんど変化がない。13歳となり多少は肉付きが良くなったものの、胸も尻も凹凸に乏しくなだらかだ。しかし、その秘所からは姉以上の量の愛液をだらだらと流し、頬を赤くしてOlに精をねだる様には背徳的な魅力があった。
Ol様、あなた様の浅ましくいやらしい雌奴隷の子種袋に、そのたくましくて素敵なおちんぽを突っ込んで、溢れる位精液をどぴゅどぴゅ放ってくださいませ
その隣で懇願するのは、白アールヴの僧侶Shalだ。彼女は既にすべての服を脱ぎ捨て、股を大きく割り開いてOlの前にその身体をさらけ出していた。
白アールヴである彼女はかなりの年齢のはずだが、見た目はプリシラと同い年くらいにしか見えない。恐らくOlが来るまで自分で慰めていたのだろう。彼女の目は潤み、頬は紅潮して発情しきっていた。
その秘所からはとめどなく蜜があふれ、今すぐにでもOlを受け入れられるほど潤っている。染み一つない滑らかな肌には何もつけておらず、隷属の証なのだろう、唯一身に着けている赤い革の首輪が淫猥な雰囲気をかもし出していた。
好きにしたら、いいじゃない。どうせ私もあなたの奴隷なんだから
最後の一人は、Shalの仲間にして魔術師のウィキアだ。彼女だけは視線をそらし、衣服をはだける様な事もしていない。詰まらなさそうな表情をしてはいるが、その紅潮した頬と潤んだ瞳を見れば彼女も発情している事は明らかだった。
そもそも、Olの調教と呪いによってその身体はすっかり快楽に溺れ、自然とOlを求めるようになっている。ウィキアはそれに耐えられるだけの強靭な精神力を持っているわけでもない。
つまりはこれはただのポーズで、内心は他の三人とそう大差はなかった。
良いだろう。ではそこに尻を並べろ
Olがそう命じると、三人は嬉しそうに、ウィキアは嫌々を装ってベッドの上に四つんばいになり、Olに尻を向けた。
ああOl様に、全部見られてる
恥ずかしげに身悶えし、パトリシアは甘く呟いた。彼女の短いスカートは、この体勢になると大事な部分を一切隠すことはできない。衣服を着ているというのに、彼女の秘所も不浄の穴もすべてOlの目に晒された。
あああぁぁっ! 入ってくる、入ってくるぅOl様の硬いの、気持ちいいよぉ!
そのまま後ろから貫かれる感覚に、パトリシアは高く鳴き声を上げる。
Olさまぁ、リシィにも、リシィにもおちんぽ下さいぃ
その隣で幼いプリシラが尻を振ってOlを求めた。パトリシアの中で十数回抽送を楽しんだところで、Olはプリシラの中に突き入れる。
はぁぁぁぁんおっきいよぉOlさまので、おなかがいっぱいになっちゃってるぅ
プリシラの中は十分ほぐれているにもかかわらず狭くキツい。Olは彼女の薄い尻を掴み、まだ未成熟な果実を存分に味わう。
Ol様ぁ、どうかあたしにもいやらしいおまんこにその硬くて逞しいおちんぽズボズボ突き入れて下さいぃ
泣きそうな表情でShalは懇願した。プリシラの中からペニスを引き抜き、Shalの中に入れてやるとそこは熱くOlのものを迎え、二度と放さないとでも言うかのようにぎゅっと彼のものを締め付けた。
あぁぁぁあぁ、これぇ、これが欲しかったんですぅ!おちんぽ、Ol様のおちんぽぉ! きもちいいよぉ!
Shalはまるで狂ったかのように声を上げ、腰を振りたくった。
Ol様ぁ、私もぉ
その熱情に当てられたのか、パトリシアが瞳を潤ませ尻を振った。Olは次々と三人を犯し、善がらせ、喘がせた。
私には、しないというの
その隣で一人、ぽつりとウィキアが呟く。Olに命じられ四つんばいになった屈辱的な格好のまま、彼女は指一つ触れられず放置されていた。
駄目ですよぉ、ウィキアさん。欲しいんならちゃんとおねだりしなきゃ
そんな彼女に、すっかり情欲に表情を溶かしたShalが近づいて彼女の腕を取った。
そうよ。そんな態度でOl様に抱いて頂こうなんて、虫がいいにも程があるわ
もう片方の腕をパトリシアが拘束する。
リシィ、脚を
はーいっ
姉の指示に阿吽の呼吸で、プリシラはOlに後ろから貫かれつつもウィキアの両脚を掴み、思いっきり引っ張った。四つん這い状態のウィキアの膝が落ち、体勢を崩したところでパトリシアとShalがくるりと回り、ウィキアをOlの方へと向ける。
そして再度脚と腕をがっしりと掴むと、強引に脚を割り開いてその中身をOlに見せつけた。彼女は裾の長いローブの中には何も履いておらず、じっとりと濡れそぼった秘所がOlに丸見えになる。
さぁ、ウィキアさん。ちゃんとOl様におねだりしてみてください
そ、そんなこと言われてもひあっ!
なおも渋るウィキアの乳房を、Shalはぐっと力を入れて揉みしだいた。
下着もつけずここをこんなにびしょびしょにして、まだ意地を張ってるの?ほら、素直になりなさい
や、ちょどこ触ってあぁんっ!
パトリシアがウィキアのスリットに指を這わせ、耳を食む。
えへへ言わないならこのままリシィが全部もらっちゃいますよぉ
その間、プリシラはひたすらにOlの寵愛を受け嬉しそうに笑った。
ください
ぽつりと、ウィキアが呟く。
声が小さいですよ~。ほら、もっと大きな声で
彼女の胸を強調するように揉みあげながら、Shalが囁いた。
犯して、ください! Ol様の、ペニスで私の、あ、あそこ、をつら、ぬいてくださぃ
恥ずかしそうに顔を真っ赤に染め、視線を斜めに外しながら、ウィキアはローブをぐっとたくし上げ、その秘所から腹までを露にした。魔力によってその白い腹に描かれたOlの所有の印がはっきりと光り輝く。
まあ、今日の所はその程度で勘弁してやるとしよう
Shal達の様に恥ずかしげもなく淫らに求めるのもいいが、恥じらいを持って求めるのも悪くない。Olはそう思いながらも、そんな考えはおくびにも出さず彼女の両脚を掴むと、一気に貫いた。
ああぁあぁぁぁぁっ!
目の前で繰り広げられた痴態に彼女の体はとっくに発情しており、たっぷりと蜜を湛えた秘所はOlをすんなりと受け入れた。そのまま対面座位の体位でウィキアは下からずんずんと突き揺らされる。
ああっ、あぁぁっ、あっ、あああああぁぁっ!
瞳を潤ませ舌を突き出し、身体を揺らされる度にウィキアは声を上げた。
そんなに中に欲しいのか?
ぼそりと耳元で囁かれた言葉に、ウィキアは自分が両手両脚でOlにしがみ付き、恥骨を押し付けるかのように股間を密着させている自分に気がついた。今日のOlはいつものように形代ではなく、本来の肉体だ。当然その精を中に受ければ、妊娠する可能性もある。
駄目っ、中は、駄目ぇぇっ!
ならば手を離せばいいだろう。許可してやる、そうしたいならば離れるがいい
Olの言葉に、ウィキアは彼から離れようとした。しかし、どうしても手足が動かない。呪力で強制されているのではなく、自分の身体自体がそれを欲していると理解したとき、彼女の理性は決壊した。