第8話邪悪なる下僕どもを揃えましょう-3

わははははっ!

第二階層。別の用事でそこを歩いていたOlは、奥の部屋から聞こえてきた陽気な笑い声に、そちらに足を向けた。

いやー、嬢ちゃん人間にしておくのは惜しいな!強くて勇敢で酒も飲める!この際人間でもいいや、俺んとこに嫁にこねえか!?

あはは、駄目だよー、あたしOlんだもん

あー、魔術師さんの嫁だったか。そりゃあ仕方ねえなあー!

Olが部屋の中を覗くと、数人のドヴェルグたちとユニスが酒盛りをしていた。既にかなり出来上がっているらしく、皆顔を真赤にしている。

ドヴェルグは鉱山出身の、鉄と火の妖精だ。ドワーフ等と呼ばれる事もある。背は低く屈強で、生まれた時から老人の様に醜く皺に覆われた顔を持ち、立ったままでも地面につくほど長い腕を持つ。

醜く偏屈ではあるが、陽気で酒好きな妖精であり、気に入られれば中々に付き合いやすい相手ではある。また、手先が非常に器用で、魔力の篭った武具や道具を巧みに作り上げる。

あ、Olー。どしたの?

ユニスがOlに気付き、手を振る。すると、ドヴェルグたちも鷹揚に手を振った。

いや、ちょっと立ち寄っただけだ。随分仲良くなったようだな

Olが集まりの輪に加わって腰を下ろすと、ドヴェルグが長い腕を伸ばしてその肩を抱き、酒を煽った。ろくに水も浴びないドヴェルグの大衆と酒臭さが入り混じった、何ともいえない悪臭にOlは顔をしかめた。

そりゃあ、人間の娘っ子でこんなに酒が呑めるのも珍しいからなぁ!どうよ、魔術師さんも一杯!

では、頂こう

注がれた酒を飲むふりをして、Olは魔術でそれをただの水に変える。ドヴェルグ謹製の酒など、普通の人間がのめばその強さにたちまち酔いつぶれる。がぶがぶ飲めるユニスがどうかしているのだ。

しっかし勿体ねえなあ!ユニスちゃんも、もうちょい美人だったら、魔術師さんに喧嘩売ってでも

嫁にもらったかもしんねえのによ!

あっはっは、多分負けるからやめた方がいいよー

酔っ払いの戯言に、ユニスは生真面目に付き合う。それがまた、ドヴェルグ達には面白いのだろう。

ほんとなあ、背はまあちょっと高いがいいとして、もうちょい鼻が潰れてて、腹が出てて、足が短けりゃあ美人なのになあ!

ドヴェルグの美的感覚は人のそれとは随分違う。それを聞いてユニスは少々落ち込んだ。

Olぅ、Olも、鼻が潰れてお腹が出て、足が短いあたしがいいの?

いや、ユニスはそのままでそのままがいい

はっはっは! 流石魔術師さんは度量が深ぇな!

バンバンと背を叩かれ、Olは水を気管に入れてしまい、むせた。

所で、頼んでいたものは出来たか?

げほごほと咳き込みながら、話題を強引に変える。

ああ、扉と箱なら出来てるぞ

ドヴェルグが指差す方に、扉と大きな箱がいくつか積まれていた。乱雑に積み上げられてはいるが、その出来は非常に精巧で頑丈そうだ。

わかった。後でインプを寄越して、取り付けさせる

あー、駄目だ、駄目だ。アイツはちっこくて役にたたねえ。取り付けもやってやるよ、案内だけさせとくれ

今まで扉は、滅ぼした村の家屋から引っぺがしてきたり、インプに作らせたりして使っていたのだが、いずれもただの木の板に取っ手をつけただけのもので、通路の大きさにもあっておらず、隙間が空いていた。

耐久性にも問題があり、斧でも入れようものなら一撃でバラバラになり、そうでなくても使っているうちに壊れる事さえあった。ドヴェルグの手による扉なら、熟練の冒険者の攻撃でも十数分は時間を稼いでくれる事だろう。

箱の方は、いわゆる宝箱と言う奴だ。これに金貨や魔法のかかった道具なんかを入れ、罠を仕掛け、迷宮のあちこちにおいておく。欲に目が眩んだ冒険者達への餌であり、命を奪ったり捕縛したりする罠でもある。

それは助かる。後、弓を五張ほど作って欲しいんだが

弓ぃ?

Olがそう切り出すと、ドヴェルグは難色を示した。弓はアールヴの象徴の様な武器だ。男は近接武器で戦ってこそ、と言う気風もあいまって、ドヴェルグは弓にあまり良い印象を持っていない。

報酬は今年できたばかりの麦酒、10樽

よおし、乗った!

が、無骨でさっぱりしたドヴェルグは、アールヴほど彼らを嫌っている訳ではない。報酬をたっぷり用意してやると、二つ返事で了承した。

あー気持ちいー

Olの背で揺られながら、ユニスはそう呟いた。

流石に酔いつぶれ、眠ってしまった所を放っておく訳にも行かず、ドヴェルグ達に囃し立てられながらOlは彼女を背負っていった。

起きたか

目を覚ましたなら自分で歩いてもらおう、とユニスを下ろそうとするOlの気配を察知し、ユニスは彼にしがみついた。微細な筋肉の動きから相手の行動を察知し、先手を打つ。英雄として生まれたユニスの天性の戦闘センスが今、彼女が生まれてからもっとも無駄に使われた。

おい、どういうつもりだ

えへへ、Ol、久々に二人っきりだね

Olの言葉を無視し、ユニスは彼の背中に頬を擦り付けた。彼らがその主人であるとは言え、今やそこは多くの妖魔蔓延るダンジョンである。足元を小さなインプが走り、遠くからは魔獣の吼える声が響く。

しかし、ユニスはまるで恋人同士が静かな森の中でいるような面持ちだった。

ねぇ、あたしが今のままでいいって本当? もっと足短くなくていいの?

首筋から耳元に舌を這わせ、熱に浮かされたようにユニスは問うた。

それはドヴェルグの価値観だろうが。人間から見れば、お前は十分美しい

反吐を吐きそうな表情でOlは言った。

えへへへー、嬉しいなー

ユニスはぎゅっとOlを抱きしめる。

ねーOl、して?

容赦はしないぞ

Olは嘆息し、手頃な空き部屋を見繕って結界を張り、ユニスを地面に転がした。

手早く服を脱がしてそれを布団代わりに下に敷き、ユニスの股間に手をあてがう。

愛撫は必要なさそうだな

ん、でもキスはして

はい、と両手を伸ばすユニスを抱きしめ、唇を交わし舌を絡める。

そのまま、Olはユニスを貫いた。既にたっぷりと潤いを含んでいたそこは、何の抵抗もなくOlの物を飲み込む。

随分いやらしい身体になったもんだな

そうしたのは、Olでしょ~

無駄口を叩くな、とでも言わんばかりにユニスはOlの首を引き寄せ、唇を奪う。

そのままガッチリと腕は固定され、とてもOlの力では外せそうにない。仕方なく、Olは魔術師らしく搦め手で攻める事にした。

んっ、んんっ

恥骨を擦り付ける様にしてぐりぐりと円を描くように腰を動かす。こうするとクリが刺激され、快感が煽られるものの、中は殆ど動かない為に欲求ばかりが高まる。

しばらくそれを続けながら、更にユニスの胸に手を這わせた。形の良いそれは、大きくもなく、さりとて小さすぎる訳でもなく、Olの掌にすっぽりと包み込める程度の豊かさを持っていた。

もう、駄目ぇっ!

とうとうユニスも音をあげ、腕からOlを解放して叫んだ。艱難辛苦に耐えうる英雄の鉄の精神も、愛しい男から受ける快楽の前にはガラス細工の様なものだった。

あっ、ん、ねぇ、Ol。んんそれ、もっと、おっきい方がいい?

やわやわと胸をもみしだくOlに、ユニスは問い掛けた。

大きかろうと小さかろうと関係ない。お前は美しいと言ったろう

言うのが屈辱のきわみである、と言わんばかりの表情で、Olはそう答えた。最初は単に嫌々誉めているのだろう、と思っていたが、今ではユニスはそれが彼なりの照れ隠しであると考えるようになっていた。本人にそんな事を言えば、確実に否定されるだろうが。

ん、嬉しいね、もっと奥まで突いて、滅茶苦茶にして

今度は何も答えず、Olはその要望にたっぷりとこたえてやった。

第8話邪悪なる下僕どもを揃えましょう-4

調子はどうだ

Olが声をかけたとき、スピナは小刀で熱心に木に紋様を彫っているところだった。

ウッド・ゴーレム。様々な生き人形の中でも、もっとも基本的、かつ簡単なゴーレム。それを彼女は作っていた。

もう少しで完成です

入り口のOlをちらりと一瞥し、彼女は再び作業に戻る。既に両手足と胴体のパーツには紋様を彫り終え、今彼女が紋様を刻んでいるのは小さく丸い、頭のパーツだった。

ふむ、中々良い出来だ

Olは腕のパーツを取り上げ、出来をチェックする。まだ多少線がガタついてはいるが、動かない事はなさそうだった。初めてにしては上出来だ。

お師匠様が仰っていた、スライムに関しても造っては見たのですが

不意に、スピナは部屋の奥へと視線を向けた。奥の一角には女の部屋には似つかわしくない、フラスコやビーカーと言った器具が並んでいる。

魔法生物の作成には、二つのアプローチの仕方がある。一つ目が、ゴーレムやスケルトン作りと言った、素材を人型にして魔力を吹き込む事で仮初の命を与える、魔力付与(エンチャント)。

もう一つは、素材そのものを薬品や秘術によって作り出し、仮初ではあるものの魔力に由来しない、言わば偽の命を作り出す錬金術(アルケミー)。

スライムと言うのは、錬金術の過程で人工生命に失敗した際に出来上がる、出来損ないの命だ。ゲル状のぶよぶよとした核のない身体を持ち、何でも取り込んで消化しては大きくなる。ある程度の大きさになると二つにわかれ増えていく、という、何とも不気味な生き物だ。

動きは遅く、知性と呼べるようなものもない為戦力として数える事など出来ないが、放置された死骸なんかを食べて迷宮をある程度清潔に保ってくれる上、剣や槍では突いても斬っても倒せない為ある程度の障害にはなる。

と言うわけで、スピナに作成を命じていたのだった。失敗作とは言え、意図的に作れば金属だけを食べる騎士殺しのスライムだとか魔力を食う対魔術師用のスライムなんかも作れる上に、失敗作ではない人工生命(ホムンクルス)を作る練習にもなる。

どうやら失敗してしまったようで、生き物を食べないようなんです

スピナの視線の先では、フラスコの中でなにやら桃色の液体が蠢いていた。

まあ、失敗は成功の元とも言う。お前に魔術を手ほどきし始め、まだ一月も経たん。あまり気にするな

素直にスピナは頷いた。彼女は表情が殆ど変わらないため、何を思っているのかはその顔からはうかがい知れない。

時に

カリカリとゴーレムの頭を掘り込みながら、何気なくスピナは切り出した。

昨日はユニス、その前はリルと随分お楽しみだったようですね

む、とOlは呻く。スピナの口調に咎めるような色はなく、実際ただの弟子なのだから咎められる謂れもないのだが、それでも他の女との関係に触れられれば何とも居心地悪く感じてしまうのは男の性だ。

私にはご寵愛を頂けないのですか?

直截にスピナは問うた。口や手、胸での奉仕はしていたが、Olはスピナを抱こうとはせず、彼女はいまだ清らかな身のままだった。

魔術に携わるなら、純潔を保ったままの方がいい。処女である事は、様々に役立つ

美しいもの、清らかなものと言うのはそれだけで魔術的な意味合を持つ。簡単に穢れるにも拘らず、美しさを保っているものとなればその力は更に強まる。

けして錆びず、輝きを失わない金よりも、手入れを怠ればすぐに錆びてしまう銀の方が魔術的な性質が優れているのはそのためだ。

乙女も、特にそれが美しい乙女であれば処女であると言うだけで力を持つ。Olが村に処女を要求したのもそのためだ。悪魔への生贄に捧げてよし、魔術の媒体に使ってよし、最終的には自分で抱いて味わってもよしと、無駄がない。

そうですか

不満か?

いいえ

スピナは首を横に振った。相変わらず、表情は変わらない。

私は敬愛するお師匠様の仰るとおりに従います。不満などあろうはずもございません

本気で言っているのか皮肉なのか、Olは判断に苦しんだ。弟子にしてから、加速度的にこの女は読めなくなった。後継者候補としては頼もしい限りではあるが、厄介な事に変わりはない。

できました

ふっと息を吹きかけて削りカスを飛ばし、スピナはゴーレムの頭を持ち上げた。

うむ、では動かしてみろ

スピナはパーツをそれぞれ人の形になるように並べておくと、すっと息を吸い込み、呪文を紡ぎだす。闇より黒い漆黒の魔力がじわりと空間を犯し、ゴーレムの表面に彫られた紋様にインクの様に染み渡っていく。

眼窩の様に穿たれたゴーレムの顔の穴に、瞳の様に光がともる。黒い光、という矛盾したそれは額を中心にして紋様の溝を走ると、各パーツがお互いに引き合い、繋がりあった。

ぎこちない動きで、下手な道化師に操られる操り人形の様にゴーレムは立ち上がる。しかし、直立したところでよろけ、スピナを巻き込んで倒れこんだ。

衝撃で繋がりが解け、小さなゴーレムの頭がからからと勢いよく転がっていく。

大丈夫か?

カラカラに乾いた木で作った人形だ。大した重さもないし、スピナに怪我は無さそうだった。しかし、遠くでパリンと音がした。そちらに視線をやると、フラスコに入っていた桃色のスライムがスピナに向かって這いずり寄ってきていた。

ちっ、スピナ、こいつの弱点は何だ!

下手に触ればOlごと食べられかねない。普通のスライムの一番簡単な対処方法は炎で焼き払う事だが、それを見越して耐炎・食炎能力を持ったスライムも存在する。そんな相手に火を放てば事態は悪化する一方だ。

大丈夫です、この子は生き物を食べません

スピナの腕に張り付いたスライムは、じわじわと蠕動しながら彼女の肘の方へと移動した。確かに彼女の肌には傷一つついてないが、その割にスライムは徐々に大きくなってきている。何かを食べている証拠だ。

この子が食べるのは金属や一部の植物、死んだ動物の皮など要するに、衣服だけです

スライムが移動した後には、スピナの着ていた袖の長いワンピースが跡形もなく消えていた。不透明なスライムの身体越しに彼女の白い肌が透けて見える。服を食べ、拳大だったスライムはいつの間にやらスピナの全身を覆わんばかりに大きく広がっていた。

ちなみに、媚薬も混ぜたのでこうして包まれると発情効果もあります

お前は何を作ってるんだ!?

思わずOlは叫んだ。これがただの事故だとか偶然でない事は、薄々わかってきていた。

んっ、んん私の中に入ろうと、していますね

スライムがにゅるりと這いずり、スピナの下腹部の方へと向かう。彼女の衣服はもう殆ど原型を留めておらず、官能的な痴態を晒していた。

よくもまあそんなものを作ったもんだおい、これは俺にも襲い掛かるのか?

媚薬の効果で頬を紅潮させながら、スピナは首を横に振った。

男性は嫌いなので、触れようとすれば逃げます。精液をかけてくだされば特に

お前は天才か!?

Olは頭を抱えた。厄介極まりない。その凄まじい才能で、最初に作ったものがこれと言うのか。ゴーレムがよろけたのも計算なのか?

あの、早くしてくださらないと、私の初めての相手がスライムという事に

わかった、急かすな! 全く

出来の良すぎる弟子に空恐ろしいものを感じつつ、Olは彼女の脚を掴むとその間にぐっと突き入れた。

媚薬の効果かそれ以外の要因によるものか、そこは既にびっしょりと濡れそぼっていた。

Olの肌に触れるのを嫌がるように、桃色のスライムは蠢いて離れる。

抱きしめていただけませんと、スライムが取れません

注文の多い奴だ

Olはスピナに肌を密着させ、口を塞ぎ、手を背中に回した。全身をなでさすってやると、スライムは完全にスピナの身体から撤退する。その時にはもう、彼女の衣服は全て溶け落ちていた。

離れたぞ

身体を離そうとすると、スピナが腕と脚をOlに絡ませ、甘い吐息を吐く。

いけません媚薬の影響で、抱いて貰わねば気が狂ってしまいそうです

何から何まで計算づくか!

そもそも現状を冷静に説明できる時点で気が狂うも何もないとは思ったが、Olとしても今更引く気はない。身体を離そうとしたのは単にこのままやられっ放しなのが不満だったが故のポーズだ。

抱かれたいなら、初めから素直にそういえ。こんな回りくどい手を取らんでも、何度でも抱いてやる

そ、そのような事、言えません

視線を逸らし、スピナは頬を赤らめた。その赤みは媚薬によるものではないだろう。

厄介な女だ、と思いつつも、Olは抽送を開始した。どんなに策謀を巡らしていたとしても、ただOlに抱いて欲しいだけだったと思えば多少は可愛く思えなくもない。

んふ

Olに貫かれ、スピナは鼻から声を漏らした。

普段はピクリとも動かない鉄面皮が快楽に溶け、切なげに眉が引き締められる様は征服欲をしっかりと満たす。

人形の様に端整な顔立ちをした彼女が、声が出ないように目を閉じて必死で耐える様は、Olの心からすっかりしてやられた敗北感を取り上げ、かわりに嗜虐心を煽った。

どうだ。お前の中がひくひくと蠢いてるぞ?これで犯されたかったのだろう。どうだ、お前の処女を奪った肉の味は

っ、くっ

必死に唇を噛み締め、声を押し殺すスピナ。彼女の膣内をゆっくり擦るように突き入れると、びくんと身体を震わせた。

ここがクリトリス淫核だ。知っているか? ここが、何の役に立っているか。何のために女の身体についているのか?

抽送を繰り返しながら、秘核に指を当てて問うOlに、スピナは健気に首を横に振った。

答えは、性的な快感を得るためだ

ひぁっ!

そこを擦りあげると、流石にたまらずスピナは声をあげた。

わかるか? 他の何の役にも立たず、ただ快楽を得る為だけに存在するんだ。卑しく、浅ましい事だとは思わぬか

あっ、あぁっ、ひ、ぁぁんっ!

一度堤防が決壊してしまえば、もう我慢は出来なかった。後から後からわきあがる快楽に、スピナは翻弄されるままに声をあげる。

んんーっ、ん、ふ、あ、ひぃっ!

口内を舌で蹂躙し、淫核を指で擦り上げ、膣内を肉棒で陵辱する。その一つ一つにスピナは高く鳴き、身体を震わせ、首を振り善がった。

媚薬と思慕によって高められた興奮は彼女の感覚を最大限まで敏感にし、肌に触れる掌にすら快楽を感じる。もう何度も絶頂に達し、朦朧とした意識の中でスピナはただただOlを求めた。

行くぞ受け止めろ、スピナ!

ひぁぁぁっ! ああぁぁっ、あっ、あっ、ふああああああぁぁぁぁっ!!

どくどくと膣内に出されたOlの精液が膣壁に当たり、その感覚にスピナは盛大に気をやった。口からはだらしなく涎が流れ、股間からは潮を吹き、双眸からは涙が溢れていた。

白目を向いてイったスピナを見て、Olは抱かなければ気が狂うと言っていたのも本当なのかもしれない、と考えた。処女だったスピナがここまで善がり狂うとは、一体どんな媚薬を混ぜたのやら。

実際は媚薬の効果だけではなく、スピナのOlに対する狂おしいまでの愛情も大いに関係するところではあったのだが、彼は気付かない。

侵入者が女であれば、撃退や拷問に使えるかもしれないなと思考を巡らせた所で、Olは部屋の中にスライムが見当たらない事に気づいた。

数分後、遠くからユニスの悲鳴が聞こえた気がしたが、意識を失いながらも幸せそうにOlを抱きしめるスピナのせいで、助けに行くのはかなり遅れそうだった。

第8話邪悪なる下僕どもを揃えましょう-5

召喚術と言うのは難しい。

まず、異世界と次元をつなぎ、望んだ相手を呼び出すというだけでかなりの実力を必要とする。腕の悪い魔術師は狙った場所に開けず、とんでもないものを呼び出す事だってある。

次に、呼べたとしても呼んだ相手から身を守る方法が必要となる。呼ばれた悪魔は問答無用でこちらに従う、などと言うことはないのだ。それどころか、いつでも人間の魂を奪う事を狙っている。

魔の眷属が外に出られない魔法陣を描き、その中に悪魔を召喚するのが定石となるが、位の高い悪魔だと生半可な結界など簡単に破ってしまう。また、魔法陣にちょっとでも不備があれば、それは結界として成立しない。しかも、ちゃんと効果を発揮できるかどうかは悪魔を呼ぶまでわからない。

更に、無事召喚に成功し、魔法陣に閉じ込めたとしてもそれで終わりではない。

呼んだ悪魔と交渉し、契約しなければならない。召喚された悪魔は、自分の力が必要とされている事を良く知っている。だから、大抵は足元を見て過分な要求を突きつけてくる。

また、言葉巧みに魔法陣を消させようとしたり、有利な条件で契約しようとするから、嘘や脅しに屈しない知恵と精神も必要だ。

それらを経て、ようやく一匹の悪魔を従えるにいたる。インプの様な弱い悪魔であれば数分で済む簡単な仕事だが、中級以上の悪魔となればその手間は大幅に増大し、上級悪魔ともなれば準備に年単位の時間をかけなければならない事もざらとなる。

そんなわけで、Olはここ一ヶ月の間にコツコツと作り上げた魔法陣の最終確認を行っていた。複雑な紋様を描く魔法陣の表面を、舐めるように琥珀色の魔力が滑っていく。それを三度試し、途切れることなく滑らかに魔力が流れる事を確認してようやくOlは納得した。

娘、来い

手招かれ、Olから少しはなれたところに立っていた少女が、少し慌てた様子で駆け寄る。栗色の髪を三つ編みにした素朴な顔立ちのその少女は、今日新しく迷宮にやってきたばかりの生贄の乙女だ。

美人、と言うほど整ってはいないが愛嬌のある顔立ちで、田舎の娘らしく化粧気のない素朴な少女だ。名をミオと言う。

左腕を出せ

緊張した面持ちで、逆らうことなく腕を差し出すミオの手首に、Olは短剣を走らせた。痛みはなく、冷たい刃の感覚だけがすっと残る。薄く裂かれた手首からぽたぽたと血を垂らすと、Olは左手で印を組んで手首に触れた。途端に、血は止まり傷は跡形もなく消える。

よし。下がっていろ

命じられるままに下がるミオを尻目に、Olは呪文の詠唱を始めた。ミオの垂らした血が赤く輝き、ふっと掻き消える。

次いで、魔法陣の中央から炎が噴出した。炎は魔法陣の縁まで膨れ上がると、まるでそこに壁があるかのように止まり、とぐろを巻く蛇の様に渦巻きながら天井へと燃え上がっていく。

魔法陣の中一杯に炎が燃え広がったかと思った瞬間。

雷鳴の様な炸裂音が轟き、同時に一瞬にして炎が掻き消えた。

我ヲ 呼ビ出シタノハ 汝カ

代わりに、そこには醜悪な悪魔が立っていた。Olの後ろで、ミオがはっと息を飲み込む。悲鳴を上げなかったのは上等といっていい。恐れを見せれば見せるほど、悪魔はそこにつけこむ。

そうだ。対価として魔力と処女の血を払う。我に仕え、その力を貸せ

話ニ ナラン

まるで金属の板を爪で引っかくかのような不愉快な声で、悪魔は答えた。悪魔は全身赤黒く、その肌に体毛はない。筋肉は赤銅の様に輝き、四本の腕を持っていた。その腕は一本一本がOlの腰と同じくらい太く、指の先には鋼も引き裂けそうな鉤爪がついている。

頭は、狼の様に突き出た口に、山羊の様にねじくれた角が生え、松明の火の様な橙の瞳が爛々とOlを見据えていた。

血デハナク 魂ヲ 寄越セ。穢レノ ナイ 娘十人分ノ 魂デナラ 考エテヤロウ

傲然と言い放つ悪魔に、ミオは恐怖に身を震わせた。

しかし、Olは些かもたじろいだ様子もなく答える。

それこそ話にならん。貴様如き下級悪魔(レッサーデーモン)にそこまで支払う気にはなれんな。条件は変わらぬ。呑めぬと言うなら直々に魔界へ送り返してやる

ムウ、と呻いて悪魔は4つの腕を組んだ。レッサーデーモンと言う呼称は彼程度の力を持つ悪魔を人間が呼ぶときの総称だが、その名の響きに反して悪魔としての位はそれなりに高い。

勿論、最上位であるアークデーモンやグレーターデーモンに比べれば劣る事は否めないが、そんなものを使役出来るのは神代に存在した伝説の魔道王くらいのもの。現代の魔術師が召喚できる悪魔の中では、レッサーデーモンはむしろ最高位に近いほどの実力を持っていた。

しかし、そんな彼の前でOlの不敵な態度に、レッサーデーモンはただならぬ物を感じたのだ。

所詮小悪魔か。わからぬのか、666の悪魔を従える、この我の魔力が

Olの身体から、炎の様に琥珀色の魔力が迸る。糸状ではなく、身体全体を覆うように吹き出す魔力は人間の持ちえる量ではない。

666ダト

現実的な数字ではない。普通の魔術師なら、悪魔を10も従えれば干乾びる。しかし、先ほどの魔力を見ればそれも不可能ではないように思えた。何より、666の悪魔を従えていると言うのは嘘ではない。

ある程度以上の実力を持つ悪魔にとって、人間の嘘など見破るのは容易い。勿論、嘘を隠す為の魔術もあるが、今度はその魔術自体の臭いを悪魔の鼻は嗅ぎ付ける。

レッサーデーモンは、目の前の魔術師が嘘をついていないことを確信した。

であれば、強気な態度も納得できる。つまり、彼程度の格の悪魔を呼び出す事など大した苦労とは思っておらず、条件を呑めないなら魔界に送り返す、と言うのもハッタリではない。

これほどの魔術師と巡りあうのは、そうそうあることではない。

分カッタ、一ツデ イイ。乙女ノ魂一ツダ、ソレデ 力ヲ 貸シテヤル

大幅な譲歩だ。要求を減らし、文言も考えてやるから力を貸すに変えた。幾らなんでも元々突きつけられた要求は呑めない。しかし、これなら相手も喜んで受け入れるはずだ。悪魔はそう考えた。

駄目だ。魔力と処女の血、それで我に仕え、力を貸せ。命によって殺した相手の魂くらいなら、くれてやろう

が、Olは殆ど譲る気はなかった。こんな魔術師の敵対者の魂など、どいつも穢れきったものに決まっている。乙女である事さえまずないだろう。

ナラバ、交渉ハ、決裂ダ!

炎が噴出し、魔法陣を満たす。幾ら相手が稀代の魔術師だろうと、そんな薄給で仕えるなどありえない話だ。力を貸すくらいならまだいい。仕えるとなると、命令に拒否権はないし、いつまで経っても働かないといけない。そんな馬鹿げた話はない。

魔法陣は良くできているが、レッサーデーモンがその気になれば数分で破壊できそうだった。どうせ契約も出来ずに殺されるなら、一か八かにかけて襲い掛かったほうがマシだ。

そう覚悟を決め、悪魔が魔法陣を破ろうと力を込めたその時。

おうる、さま。ごはんの、じかん、だよ

新調したばかりの扉をぎぃ、とあけて、幼い少女が部屋に入ってきた。

燃え上がった炎は一瞬にして立ち消え、ぷすんと音を立て黒い煙になった。悪魔は驚愕に目を見開き、少女を見つめる。

処女の血って、その子の事か

貴様が望むなら、それでもいいが

悪魔が問うと、Olは少し戸惑ったように答えた。

分かった、する、契約する! お嬢ちゃん、名前を教えてくれないか

? わたし、は、マリーむぐ

危うく真名を名乗ろうとした少女の口を、Olが塞ぐ。

マリー、ああ、マリー。悪魔は四本の腕をかき抱くようにして口の中で呟いた。

真名ではないようだったが、そんな事は関係ない。

極上。ああ、極上の乙女だ。こんな人間、今まで見たこともない。

黄金の様に波打つ髪。宝石の様に輝く無垢な瞳。ふっくらとした頬は薔薇の花の蕾の様に赤く、柔らかく暖かそうな身体。おまけに、なにやら強力な魔術の祝福までかかっている。

お、おい、お前口調が変わってるけどいいのか

熟練の魔術師をして、急変した悪魔の態度に若干引きながらOlは尋ねた。

乙女としてはそれほど価値の高くないミオを見せておいて、譲歩を引き出したところでマリーを見せ、一気に契約させる。元々予定していた通りの手だが、ここまで劇的に態度が変わるとは思わなかった。

ああ、あんなもん人間ビビらせる為にやってるだけだ、別にいいだろ。それよりとっとと契約しろよ!

まさかロリコンだったとは。

口に出さず呟き、Olは懐からリルと契約した時と似たような条文を突き出す。悪魔はマリーに釘付けになりながら、よく見もせずに契約に同意した。

おいてめえ、騙しやがったな!?

ローガンと名乗った悪魔はOlの襟首に掴みかからんばかりに詰め寄った。

契約でOlに対する暴力が禁止されていなければそうしていただろう。

嘘はついてないだろう

666の悪魔とか言いやがって、600匹以上インプじゃねえか!

正確には650匹だな。他は10匹ガーゴイル、5匹ヘルハウンド、1匹サキュバスだ

普通の魔術師は、インプなんて悪魔の数に数えたりしない。あんなものは下級も下級、最下級の存在だからだ。そもそも2,3匹呼べば事足りるような仕事しか出来ない悪魔を何百も呼び出す意味など普通はない。

それに処女の血! そりゃあ、マリーの血は滅茶苦茶美味かったけど週に1滴2滴ってどういうことだ!?

契約書にはちゃんと書いたはずだがな。見なかったのはお前だ

普通、悪魔に血を捧げるといえば生贄の血全部だ。つまり、魂は渡さないが、肉体一個丸々といっていい。

あああああ! 騙されたあああ!

時既に遅し。ガチガチに縛られた契約によって、ローガンはOlや女たちを襲う事さえ出来ない。

Olって本当、男には容赦ないよね私女で良かった

自分が辿る可能性もあった道を横目で見ながら、リルはほっと胸を撫で下ろしたのだった。

閑話部下と交流しましょう-1

いやぁ~、マリーは本当に可愛いな。影の中まで心地良いぜ

声をあげるな変態

Olは頭を抑えながら、傍らを歩くマリーに言った。彼女の影の中にはローガンが潜んでいる。

とりあえず戦闘以外に使う気のないこの悪魔を、Olはマリーの影の中に潜ませておく事にした。それなりに分別のあるスピナやユニスと違い、幼い彼女はフラフラとどこに行くかわからない。

その護衛兼お目付け役と言う意味もあるし、マリーの影に入っていれば不満を口にしないので、煩いローガンの口を封じるためと言う意味もある。

いいか、週に一度の血以外に絶対に手を出すなよ

分かってるって、旦那。俺だってこんな極上の人間を失いたくはないしな。イエスロリータ、ノータッチ!

のー、たっち!

その馬鹿の真似をするな、マリー

意外とマリーとの仲は良好なようだったが、用済みにになったら消し炭にして魔界に返してやる、とOlは心に誓った。

ミオ、調子はどうだ

あ、Olさん。はい、今ブラッシングが終わったところです

家畜部屋を覗くと、毛足の長いブラシを片手にミオが牛の背をぽんぽんと叩いた。

食料にする為の家畜だが、食料が余ってきた為に最近はすぐに締めるのではなく、しばらく生かすようになっていた。その世話を自ら買って出たのがミオだ。

元々村では牧場主の娘であった彼女は、Olたちの杜撰な管理に眉を吊り上げ怒った。自身を生贄として差し出されても、Olに悪魔の餌にされそうになっても怒らなかった彼女がいきなり怒鳴りだしたのにはOlも驚いたが、それ以来彼女は甲斐甲斐しく家畜達の世話をしている。

普段は自分の食べ物も慎ましい態度で受け取るのに、家畜の世話に必要なものは遠慮なくぽんぽんと要求してくる。お陰で家畜部屋はどんどん広くなり、施設や備品も充実の一途を辿っていた。

今から風呂にいくところだ。お前も来るか

あ、いいんですか? じゃあ、お言葉に甘えて

あまり見た目に頓着しないミオだったが、やはり女なので衛生には気を使った。家畜の世話をしていればどうしても身体も獣臭くなるし、汗もかく。自分からは言い出せなかったので、Olの申し出は嬉しかった。

風呂は常に沸いているから、入るのに許可は要らん。好きな時に浴びるがいい

は、はい

家畜小屋を離れると、ミオは緊張した面持ちで頷いた。家畜が関係しない事だと彼女は酷く気弱で控えめな少女になる。

ぶべ!?

並んで廊下を歩いていると、突然ローガンがくぐもった声をあげた。そのまま歩くマリーの影から、べりべりと引き剥がされるように実体化する。

お前は風呂など必要なかろう。結界を壊すなよ

Olがあらかじめ張って置いた悪魔よけの結界だ。と言っても、リルは影響を受けないので実質ローガン除けといっていい。

なっ!?ふざけんな、テメェマリーの柔肌を独り占めする気かぁ!?

お前と一緒にするな

とは言うものの、リルが仕込んだ口での奉仕は何度も受けているのでOlもあまり人の事はいえない。

あ、あの、Olさん、ちょっと可哀想じゃ?

結界に阻まれ叫ぶローガンが、屠殺場に連れて行かれる家畜たちに重なってミオは思わずOlに声をかけた。

おおっ、いい事言うなそこのババア!

気のせいでした、いきましょう

が、返ってきた言葉にすぐさま踵を返す。このダンジョンに何故か沢山いる美女たちに比べれば数段劣るとは言え、齢十六花盛り。ミオにも乙女心と呼べるような物はあるのだ。

おぉ、先に失礼しているぞ、主殿

扉の先に広がっていた光景に、驚くと共にミオは落ち込んだ。気持ち良さそうに湯に漬かっていたのはエレン達黒アールヴだ。リルやユニス、スピナといった美女達と並んだ時も惨めな気持ちになるのに、褐色の美女が五人も揃うと迫力が違う。

って、混浴なんですカッ!?

躊躇わず服を脱いで備え付けの籠に放り込むOlに、思わずミオの声は裏返った。

それはそうだ。今の所居住区に男は俺しかおらんしな。常時湯を沸かせるのにそれなりに魔力も使っておる。わざわざ別にする事もなかろう

Olは自然にローガンの存在を無視した。

綿密な計算の元でダンジョンの通路を引き、龍脈の形を整え、地熱を運ぶ事で作り上げたこの湯殿はOl自慢の一室だ。

部屋にはモザイクタイルが敷き詰められ、微妙に傾斜があって濡らしても自然と水がはけるようになっている。浴槽は床の上に設置するタイプではなく、床を掘り下げて湯を溜めてある。以前の様に焼けた石を放り込むまでもなく水は常に適温に温められ、好きな時に入る事ができる。いわば人工の温泉だ。

主殿、この前頂いた弓を試してみたのだが、あれは素晴らしいな!灰色熊を一撃だ。後で毛皮と肉は進呈差し上げる

エレンは湯殿の中から、若干砕けた口調でOlに笑いかけた。

堅苦しいのは相変わらずだが、以前の様な余所余所しさはない。どうやらこちらが地の様だ。

ドヴェルグが作り、Olが呪を封じ込めた弓は一級品の魔弓に仕上がった。

驚くほど軽く引くことが出来るのに、その強さは石弓以上。狙った場所でピタリと止まり、空に放てば地平線の彼方まで矢を飛ばす事ができた。これにアールヴ達の腕が加われば百発百中、5人で放てば矢は雨の様に降り注ぐ。

うむ、それは何よりだ。早く仲間が見つかると良いな

Olはマリーを抱えて、アールヴ達の輪の中に腰を下ろした。湯船はまだ幼いマリーの背には少し深い為、こうして抱えてやらないとおぼれてしまう。

ミオ、お前もさっさと入れ

入り口で顔を赤くしたり青くしたりと忙しなかったミオも、Olに促されて渋々服を脱ぎ、湯船の端の方におずおずと身を埋める。じんわりとした暖かさが身体を包み、その心地良さにミオは思わず息を吐いた。

それでな、主殿

ごほん、と咳払いをし、エレンは改まった様子で切り出した。

あのような素晴らしい物を賜り、我ら一同、ますます主殿への忠誠を確かにした。ついては、その名目だけでなく、実際にも主殿の物にして欲しいのだが

エレンはちらりとミオに目をやった。

ああ、あれの事なら気にしなくていい。ここで構わんか?

主様が望まれるのであれば、いつどこででも

するりとエレンはOlに擦り寄り、胸を押し付けた。スレンダーでほっそりとした白アールヴに比べれば、黒アールヴの身体はいくらか肉感的だ。

ミオ、抱えてろ

Olはミオに猫の子でも渡すかのようにマリーを任せると、エレンに湯船の縁に手をつけ、尻を突き出すように指示した。そのまま後ろから突き入れると、アールヴ達がOlの周りに集まり、しなだれかかる。

はぁぁさすがはOl殿、こちらの固さも素晴らしいな

そちらも、黒の氏族の抱き心地の良さを教えてくれるのだろう?

両腕にそれぞれアールヴを抱き、腰だけでエレンを突きながらOlはそう囁く。

ああっ勿論、だともっ

エレンはきゅうっと膣を締め付けると、激しく腰を振ってOlの物を飲み込んだ。

肉と肉がぶつかり合う音が浴室にパンパンと響き、淫らな雌の匂いが充満する。

なるほど、これは悪魔の使いといわれるわけだ。まさに魔性の快楽だな

リル殿にも負けぬ良さだろう? 存分に味わってくれ

弓を引く為に鍛えられた筋力はOlの一物を柔らかな肉で締め上げ、耳元で感じられるお付のアールヴ達の甘い吐息や、すべすべした肌の感触が否が応にも興奮を高めていく。単純な技術の腕はともかく、この連携の取れた包囲網は淫魔にも為せない愉悦の坩堝だ。

だが、やられっぱなしと言うのも性に合わんな

Olはエレンの腰を掴むと、いきなり奥深くまで突き入れた。

ふ、あぁぁっ

強引な抽送にペースを乱され、エレンは背筋を反らせる。

その隙を突くように、Olは腹側の膣壁を擦りあげた、

ふあっ、ああぁぁっ!

ガクガクと震えるエレンの膝を支えるように腹に手を回すと、腰を密着させてぐりぐりと刺し貫く。後ろからこうすると、他の体位よりずっと奥まで届く。

あ、あ、あ、あ、あ!

一声ごとにエレンの声が余裕をなくし、高く上がる。

そ、れ、だ、め、ぇっ! いくっ!

エレンは固く浴槽の縁を掴み、ピンと背筋を反らしてぶるぶると震えた。膣内がぎゅっと窄まり、Olの物を締め付ける。

行くぞっ!

Olは一旦腰を引くと、一気に二度、三度奥まで突き入れた。

あっ、あっ、ああああっ!

そして、ぐっと腰を押し付けながら、最奥で大量の欲望を吐き出す。

~~~~~~~~~っ!

胎内を蹂躙される感覚に、声もなく、息すら出来ず、エレンは絶頂に達する。

一物を差し込んでいるのに溢れ出るほどの量を注がれ、更に搾り出すように何度か中を往復し、Olが一息ついて離れるのを待って彼女も固く張り詰めた身体を弛緩させた。

よろよろと浴槽の縁に身を預け、脱力する。あまりの快感に、全身から力が抜け立つ事さえままならない。

一度でそうなっていては、まだまだリルには敵わんな

意地の悪い笑みを見せるOlの一物を、二人のアールヴが競うように舌を這わせ、清めていく。残りの二人が彼にしな垂れかかり、耳元で囁く。

まだ4人残っています。勿論、私達もご寵愛頂けるのですよね?

ああ、勿論だ

Olはアールヴの美姫達を抱きしめ、ニヤリと笑みを見せた。一人一回で限界に達するとしても5回。さて、リルが気絶するまで耐えた最高記録は何回だったかな、と思い返しながら、Olは次の得物を見定めた。

閑話部下と交流しましょう-2

あーっ! あーっ! あぁーーーーーっ!

まるで断末魔の悲鳴の様に叫び、果てるアールヴの膣内にたっぷりと注ぎ込む。Olがペニスを引き抜くと、彼女は他の四人と同じように股間から白濁の液を滴らせながら浴槽の縁にもたれかかった。五人とも、一度の絶頂でぐったりと力を失っていた。アールヴは絶頂が深いのかもしれない。

そんな事を考えながら、Olはくるりと後ろを振り向いた。

ひっ

その股間にそそり立つ、全く硬度を失わぬ肉剣を見てミオは息を呑んだ。

自分で慰めていたのか?

Ol達の痴態を見て興奮したのだろう。ミオは左腕でマリーを抱きながら、右手の指は股間にあてがわれていた。慌ててミオは手を隠すように背の後ろにやった。

隠さずとも良い。お前を抱く気はなかったが家畜の世話の腕は買っている。褒美をくれてやるとしよう

ざぶざぶと湯をかきわけながら近づいてくるOlから逃げようと、ミオはじりじりと後ずさりしようとするが、元々浴槽の端に座っていたのでそれもかなわない。

マリー、お前は先に上がっていろ。ちゃんと身体を拭いて、服を着るんだ。出来るな?

あい

元気よく頷き、部屋の隅へ乾いた布を取りに行くマリーを見送り、Olはミオの両腕を掴んだ。

あ、あの、Olさん、私、ほら、アールヴの皆さんみたいに美人じゃないし、その、あの

自分で言って、ミオは自分で落ち込んだ。そう、彼はただ、たまにはちょっと変わった娘を味わいたいと思っただけだ。毎日高級で美味しいものばかり食べてるから、たまには大衆食堂で定食でも食べてみるかな、みたいな。

卑下するな。確かにお前は美しいとは言えんが、醜いわけでもない

そんな事を思っていたものだから、その言葉はミオの心の奥底に楔の様に突き刺さった。

Olはミオの顎を掴むと、至近距離でその瞳を見つめる。

素材はそれほど悪くない。磨けば光るだろう。どうだ、俺に磨かれてみるか?

Olの深い茶の瞳が、ミオを覗き込む。その瞳は、魂の奥底までも見通すようだった。

駄目だ。頷いちゃ駄目だ。ミオの心は、全力で警鐘を鳴らした。頷いたらもう戻れない。二度と家族に会う事もできないし、二度と何も知らなかった呑気な牧場の娘にも戻れない。本能的に、ミオはそれを悟った。

目の前の、昨日までは気難しいけど意外と気さくな魔術師さんと思っていた男は、炎をまとって現れた悪魔よりも邪悪な存在であると、心の奥底から理解した。

だが。

はい

こくん、とミオは頷いた。その提案は何よりも甘美で、抗いがたい魅力を放っていた。美しくなりたい訳ではない。賛美を得たい訳でもない。

ただ、目の前の男の目に留まり、関心を持ってもらえるというただそれだけの事が、ミオの心を裏切り、身体を突き動かした。

んんっ

Olが頷いたミオを抱き寄せ、口付ける。そこに優しさや労わりは存在しない。自分が所有する物を扱うだけの、無慈悲で無遠慮な態度でOlの舌は彼女の口内を蹂躙した。

んっ、む、ぅぅっ!!

それだけでミオは軽く達し、身体を震わせる。

Olはミオの脇に手を差し入れると、身体を持ち上げて浴槽の縁に腰掛けさせた。そして両脚に手をかけると、ぐいと押し開く。

このまま入れるぞ

ミオが答える間もなく、Olは彼女の処女を貫いた。そこはアールヴ達の痴態と自慰によって明らかに湯とは別の、粘性を帯びた液体でしとどに濡れていた。

ふあぁぁぁぁぁっ!!

男を知らぬ胎内を蹂躙される感覚に、ミオは激しい痛みと、それ以上の快感を味わって再び達し、びゅっ、びゅっと音を立てて潮を吹いた。

もはや彼女の魂はOlの手の中に堕ち、与えられるものは痛みですら愉悦となっていた。首を寄越せと言われれば、迷わず剣の刃を自分の喉に突きたてるだろう。ただ平凡に生きてきた哀れな少女は、齢経た邪悪な魔術師によって完全に魅入られていた。

ふぁっ、ふっ、ふぁぁっ、あああっ、ふぁぁぁっ!

奥を突かれる度に稲妻の様に全身を走る絶頂の波に、ミオは高く鳴く以外何も出来ない。思考はとうの昔に飛び、膣内をOlの肉塊が往復するたびに、彼女の心から大切だった何かが零れ落ちていく。

随分楽しそうだな。私も混ぜてもらえるか?

ようやく体力が回復したのか、エレン達がいつの間にか忍び寄り、Ol達に絡みついた。

人間は好かぬが、Ol殿と、その寵愛を受ける者は別だ

エレンがOlに抱きついてその唇を吸い、もう一人が彼の首筋に舌を這わせる。

残りの三人はミオの両胸と唇にそれぞれ吸い付いた。

んんっ、んんんんんっ!!

口を塞がれ、声すら出せなくなったミオは絶頂の余り真っ白に染まる視界の中、自分自身が空っぽになるのを感じた。両親も、家畜達の記憶も、今はもう遠くどこかに飛んでいってしまった。ミオという人間は失われ、快楽さえもはや届かない。ただふわふわとした曖昧な意識と、蹂躙される肉の塊だけが存在する。

行くぞ!

そんな空っぽの器に、Olの精が注ぎ込まれた。バチン、と音さえ立てそうな濃厚なイメージで火花が飛び散り、意識が覚醒する。それと同時に、彼女を今までにない、凄まじい快楽が襲った。それは彼女の体の隅々まで迸り、満たしていく。

何もかもなくした彼女の存在全てを、Olと言う存在が埋めた。

最後に残った涙が一滴、ミオの頬を、流れた。

ヘルハウンドですか?

連れて来られた五頭の黒犬を見て、ミオは目を丸くした。

ああ。これでも一応悪魔の一種だが、世話は普通の犬と大して変わらん。身体は少しばかり大きいがお前を襲う事はないから安心しろ

わかりました。一生懸命、お世話させていただきます!

雄牛ほどもある巨大な犬を、ミオは以前と変わらない屈託のない笑みで撫でた。

しかし、その容貌には以前にはなかった色気が溢れ、自信に満ちている。

彼女の魂は完全に闇に堕ち、悪魔が放つ瘴気も何の苦にもしない。それどころか、その方が体調がいいほどだ。

では、頼んだぞ

はい。Ol様のご命令とあれば、何なりと聞いちゃいますよ!

今のミオなら、Olに命じられれば親兄弟にでも嬉々としてヘルハウンドをけしかけるだろう。本来なら、適当に抱くなり血を使うなりした後は村に返してやるつもりだったのだが、Olのほんの気まぐれと、家畜を扱う腕の良さによって、彼女は一生を闇に囚われる事となった。

どちらがミオにとって幸せだったかは、永遠に知られる事はない。

第8.5話ダンジョン解説

第8話終了時点でのダンジョン。

階層数:3階層

瘴気:4

貯蓄魔力:20(単位:万/日)

消費魔力:7(単位:万/日)

扉LV2

ドヴェルグによって作られた頑丈な扉。作られた時点である程度の魔力を備えており、対物理、対魔法双方に対してそれなりの強度を持つ。

扉LV3

ドヴェルグによって作られ、Olが魔術をかけて作った強固な扉。各階層間を守り、滅多な事では破壊できない。この扉をくぐる為には各階層のボスを倒す必要があるが、8話終了時点でボスは未実装である。

宝箱

罠のかかった宝箱。非常に重く、簡単には持って帰ることは出来ない。無理に開けたり破壊しようとすると罠が発動し、中の物を奪おうとする不心得者に罰を与える。実は簡易転送陣が仕込んであり、破壊さえしなければ罠の種類と中身をOlが自在にかえることが出来る。

工房

ドヴェルグの工房。武具から家具まで何でも作れるように出来ている。各種罠や宝箱に入れるための餌となる武具、迷宮の住人達の部屋に入れる家具などは主に酒や食料と引き換えにここで作成される。

アールヴの部屋

湯殿の傍にあった部屋を急遽改装し、アールヴの為に用意された。5部屋あり、エレンの部屋だけ一回り大きい。

家畜部屋

牛や豚、鶏などを飼育している部屋。元は家畜達を種別関係なく押し込め、地面に餌をばら撒いているだけだったが、ミオの要求により一新。湯殿の傍に以前の3.5倍の大きさで作られ、家畜たちは柵によって区切られ、世話の為の様々な器具が置かれている。なお、魔獣などの世話も一手に任されるようになり、専門となるインプも部下に与えられて家畜部屋は日々増築の一途を辿っている。

湯殿・改

龍脈の魔力を利用して無理やり地熱を引き込む事で、焼けた岩をいれずとも常に温かい湯が利用できるようになった。地面もモザイクタイルを敷き詰め水はけを良くし、片隅には脱衣所にいつでも清潔な布が豊富に用意されている。混浴。(※男悪魔を除く)

コボルト

鉱山の妖精が堕落した結果生まれた妖魔。鉄を腐らせる能力を持つ。強さはさほどでもないが、その能力によって戦士には非常に嫌われる。元鉱山の妖精だけあって坑道掘りを得意としており、自在に迷宮を拡張強化する事が出来る。

エレン(黒アールヴ)

戦力:8最大貯蓄魔力:4

森の妖精アールヴのうち、森の持つ暗い面をつかさどる黒の氏族の長。黒アールヴ達の中でも特に抜きん出た能力を持ち、百発百中の弓の腕と卓越した魔術の知識を持つ。魔力貯蔵量もかなり高い。

黒アールヴ

戦力:7最大貯蓄魔力:3

エレン配下の黒アールヴ達。エレンには一歩劣るものの、いずれも鍛え抜かれた精鋭中の精鋭。4人揃って戦えば、ユニスと互角程度の勝負に持ち込む程度の戦闘力を持つ。ちなみに名前はそれぞれアレット、ベティ、クロエ、デルフィナと言うが、作中で言及される事は恐らくない。

ドヴェルグ

戦力:6

卓越した鍛冶の腕と醜い容貌を持つ小人。火と鉄の妖精であり、森の妖精であるアールヴとは折り合いが悪い。一応彼らも黒ドヴェルグと呼ばれる事もあるが、アールヴの様に氏族で分かれているわけではなく、報酬の為なら闇の眷属にも力を貸す奴らと言うような意味合いである。戦力以上に鍛冶の腕が有用な為前線に出す事はないが、個々が一流の戦士でもある。

ジャイアントフライ

巨大なハエ。と言っても30cmほどで、戦闘力は殆どない。ゴブリンと互角の戦いを繰り広げられる稀有な存在。ただし、暗い迷宮でも関係なく空を飛ぶその機動力にだけは特筆すべきものがあり、侵入者があった場合真っ先に気がつき警戒音で辺りに危険を知らせる厄介な存在。なお、警戒音によって引き寄せられたジャイアントスパイダーに捕食される事も迷宮内ではよく見られる展開である。

オーガ

戦力:5

人食い鬼とも呼ばれる、身の丈3mを超える大型の妖魔。人に限らず、動くものなら悪魔以外は何でも殺して食べる。群れを作らず、気ままに動く為に数をそろえるのは難しいが、妖魔の中ではかなり強い力を持っている種族であり、戦力として十分に期待できる。Olの迷宮での主食はゴブリン。

媚薬スライム

生物は一切傷つけず身につけた衣服だけを消化し、媚薬効果で発情させると言うエロ小説の為だけに生まれたかのような存在。エロファンタジーではお馴染みだが実際に作ろうと思うと、技術は必要ないが天才的なバランス感覚と発想を要求される。なお、その後Olに回収、封印された。

ミオ

戦力:0最大貯蓄魔力:0.1

普通の村娘だったが、Olに魂を闇に落とされ、ダークミオとして転生。元々持っていたスキル家畜の扱いがギフト獣の理解者として成り代わった。これは魔獣・幻獣を含む獣と意思疎通をし、ある程度自分に従わせる事が出来る能力で、本人自身には戦闘能力はない物の、Ol配下の獣であれば自在に操ることが出来る。

ローガン(レッサーデーモン)

戦力:9消費魔力:3

レッサーという名とは裏腹に、ユニスに次ぐ戦闘能力を誇る強大な悪魔。でもロリコン。レッサーとは、神代に神にはむかった悪魔の中では下級、という意味であり、人間が扱えるものの中ではむしろ最上級に近い能力を持つ。でもロリコン。

あとロリコン。

非支配領域、支配領域共に戦力が充実し、またドヴェルグ、コボルトの協力によって大幅に防衛能力が増強した。初級~中級程度の冒険者ではOlの下に辿り付く事さえ出来なくなり、同時に多くの冒険者を引き寄せる下地が出来上がっている。

第9話街を蹂躙しましょう-1

Olのダンジョンは現在、全三階層である。

三階層と言っても、地下三階の迷宮という訳ではない。一つの階層は階段や坂などで簡単に行き来できる幾つかの階で構成されており、一階当たりおおよそ10mほどの高さを持つ。一階層につき3,4階分の幅を持つので、Olの迷宮はおよそ100mから120mほどの深さを持つ大迷宮だ。

階層間には道が一本しかなく、堅牢な扉が備え付けられており、Olを含むごく一部のみがそこを素通りできる鍵を持っている。この扉は魔力で強化されており、ユニスやローガンの力を持ってしても破壊には少々手間取るほどの頑強さを誇っている。

階層ごとに住むものは別れており、第一階層には勝手に住み込んだ野生の魔物や魔獣が、第二階層には契約を結んだ妖魔たちが。そして三階層にはOlとその愛人たちが住む居住区となっている。

その第三階層の更に奥、巨大な卓の置かれた部屋に、Ol達は集まっていた。

いよいよ、街へと侵攻する

重々しく告げるOlに、全員が注目する。卓を囲うのはリル、ユニス、スピナ、エレンといった顔ぶれだ。

こちらの戦力も大分整ってはいるが、村と契約したときの様に簡単にはいかん。村と街の違いは何かわかるか?

えーと人が沢山いる?

反射的に、リルがそう答える。当たり前すぎる答えを、Olは黙殺した。

人間の事を問われてもないや、待て。数の多い集落と少ない集落の違いか。多い方は武装している人間が多く、物見櫓や備え付けの弓なんかがあったな

エレンの答えに、今度はOlは頷いた。

ただ多いだけでなく、訓練を積んだ戦力と備えがある。その通りだ。

他にはあるか?

戦力って言えば、兵士だけじゃなくって冒険者もいるよね。街になればギルドだってあるし

自身が冒険者家業をやっていた時のことを思い返し、ユニスが言う。

しかし、欲しい答えではなかったらしく、他には?とOlは再度問うた。

多様性

ぽつり、とスピナが声をあげた。

街には、多様な人間がいます。街の人間だけでなく、冒険者や行商人、旅人、役人

Olはゆっくり頷いた。

村には村人しかいないと言っていい。村長の意思が村人の総意だ。長が取引に同意すれば、個々の感情はどうあれ村全体がそれに同意する。だが、街は違う

人間ではないリルとエレンにはピンとこなかったが、ユニスはああそっかと声をあげた。

気に食わなければその街を出て行ける旅人や商人が多すぎる。何かを要求すれば、町長はそれを税で補填しようとするだろう。そんな街に留まりたいと思うものは少ない。無理に要求すれば、その街はすぐに衰退し、やがては滅びる。略奪するのとそう大差はない

村に対してやったみたいに、街も得をするような条件をつけられないの?

街でも農作業は多少しているだろうが、村ほど自給率は高くない。お互いに得にはならんな。護衛も同様だ。十分自立出来ているからこそ発展し、街の規模になっているのだ。こちらが出来る事は、そう多くない

ユニスは悲しげに目を伏せ、言った。

じゃあ無理やり攻め込んで、略奪するの?

そんな事を続ければ世界が滅ぶだろう。そうなってはこちらにも益などない

Olは彼女を安心させるように、やや優しい口調で答えた。

決めさせるだけだ。どちらにつくのが得策かをな

第9話街を蹂躙しましょう-2

その日は雲一つない快晴だった。

さんさんと照りつける太陽の光と、頬をなでる風が心地良い。絵に描いたような小春日和に、ジェイクはふああ、と間の抜けた声をあげて欠伸をした。

最近不穏な噂が聞こえてくる事もあるが、国の外れのこの街は嫌になるほど平和だ。しかし、そんな街が彼はこの上なく気に入っていた。

よう、ジェイク。調子はどうだ?

同僚のマックが物見櫓を上りながら声をかける。

いつも通りさ。天気は快晴、気分は上々、本日も異常なし

だろうな

マックはジェイクの向かいにどっかりと腰を下ろすと、懐からカードを取り出した。

ポーカーでもやるかい

いいね

見張りの仕事はとかく暇だ。マックは簡単にカードを切ると、五枚ずつ配った。

たまにはゴブリンくらい襲ってくればいいのにな

そうだな

マックは懐から銅貨を一枚置きながらそういった。

マックに相槌を返し、同じように銅貨を一枚置きながら、ジェイクは内心平和を願った。騒動なんて真っ平だ。本音を言えば、植物の様に平和な日々を送りたい。

3枚変えるぞ

マックは場に三枚カードを捨て、山から三枚カードを引いた。

という事は、元々の手は良くてワンペア。交換で良くなっていても、精々がスリーカードだろう。手元の札を見て、ジェイクはにやりと笑みを浮かべた。手元には既にフラッシュが揃っている。

交換はいらない

ほう、強気だな。レイズだ

マックがテーブルに更に銅貨を一枚置く。

レイズ

ジェイクが銅貨を二枚足すと、マックの表情が変わった。

レイズだ

マックは一気に銅貨を三枚増やした。そんなにいい手が入ったのか? ジェイクはマックの表情を伺った。ジェイクの手はフラッシュで、一番高いカードはキングだ。これに勝つとなると、フルハウスかフォーカード、ストレートフラッシュしかない。3枚交換してそれらの手が出るなんて、まずありえない。

いいぜ、コールだ

ジェイクは銅貨を二枚足すと、カードを一枚一枚開いていく。

クイーンのフラッシュだ。どうだ?

マックが驚愕に目を見開く。

おい、嘘だろ

搾り出すような絶望の声が搾り出された。その手から、ぽろりとカードが零れ落ちる。

おいおい、カードで負けたくらいでそんな顔するなよ。そんなに懐が厳しかったのか?

ジェイクの声が聞こえていないのか、マックは目を見開いている。ジェイクはマックのカードに目をやった。

何だって、フルハウスだと!?

マックが落としたカードはエースが2枚、8が3枚のフルハウスだった。ジェイクのフラッシュより上の役だ。担がれてぬか喜びさせられたのかと、顔を上げると、マックは立ち上がり、外を凝視していた。

なんだ、ありゃ

その視線を追って、ジェイクは思わず呟く。マックの視線の先、遥か彼方では、地平線の少し手前に数百匹の魔物達が列を成して陣取っていた。

けたたましい音で早鐘が鳴らされ、あたりに怒声が響き渡る。

魔物だ! 何百匹っていう魔物が攻めてきやがる!

鐘の音に、櫓の下に集まってきた兵士達にマックは叫び声を上げた。

魔物だと? 何だ、ゴブリンか?

余り緊迫感のない声で問い返す兵士に、ジェイクが声を荒げた。

ゴブリンにオーク、オーガまで編隊を組んでいやがる!宿で寝こけてる冒険者どももたたき起こして来い、街が滅ぶぞ!

見間違いじゃないのか? ゴブリンとオーガが仲良くお散歩なんて聞いた事ねーぞ

オーガは獰猛で残忍な人食い鬼だ。人に限らず、動くものなら何でも襲って食べてしまう。ゴブリンなど、彼らにとっては気の利いたデザートくらいにしか映らないだろう。オークにしたって、他の種族と協力して人間を襲ったりしない。

ゴブリンとオーガを見間違えるか! 想定外の事が起こってるんだから、兵士じゃ太刀打ちできないって言ってんだ! いいからさっさとあのごくつぶしどもを叩き起こしてきやがれ!

毎日の様に死線を潜る日々に嫌気がさして堅気の職についたが、ジェイクは昔冒険者をしていた。その時に、オークもオーガも見た事があるし、最近多少衰えてきたとは言え目の良さにも自信がある。元冒険者の勘が、全力で警報を鳴らしていた。

現役時代、この勘に従って失敗した事は一度もない。今回もジェイクはそれを信じた。

なんだありゃあ

マックの呟きにジェイクが振り返ると、小さな悪魔がパタパタと羽ばたき、こっちへと飛んできていた。それにも見覚えがある。インプだ。そいつが何やら旗の様なものをはためかせているのを見て、ジェイクは最悪の勘が当たった事を悟った。

待て、撃ち落すな!

即座に弓を構える兵士達を制止し、インプから旗のようなものを受け取る。それは思ったとおり手紙だった。インプ自身に敵対する意思はないようで、ジェイクにそれを渡すと魔物達が陣取っている方へと帰っていった。

町長を呼べ。それと兵士長もついでに商人ギルドの長もだ

物見櫓を飛び降り、ジェイクは叫んだ。かなりの高さを持つ櫓だが、身の軽さと手先の器用さだけで世界を渡ってきたジェイクにとってはその程度の高さはなんでもない。

魔術師Olが、宣戦布告を仕掛けてきた

第9話街を蹂躙しましょう-3

我々は断固として戦うべきだ!

机を叩き、兵士長が怒鳴る。

その場合、我々の損害は計り知れません。ここは歩み寄るべきなのでは?

商人ギルドの長は冷静にそう返す。

むぅ

長い髭をしごきながら、町長は唸った。

我に従い、税を払うならよし。さもなくば力づくで従わせる。一刻(ニ時間)以内に決断し、従うならば門を開けて迎えよ

Olから送られてきた文書には、概ねそのような内容が書かれていた。ジェイクは宣戦布告だと怒鳴ったが、どちらかと言うと最後通牒に近い。とにかく二時間以内に、戦うのか、受け入れるのかを決断せねばならない、と、町長の応接間で町長、兵士長、商人ギルド長、そして何故か冒険者の代表としてジェイクが顔を突き合わせていた。

そして、兵士長は徹底抗戦、商人ギルド長は服従と意見は真っ二つに別れていた。町長はどちらにも決めかね、ジェイクはあまり興味がない、と言うわけで中立を保っている。

邪悪な魔術師に屈すると言うのか!? この恥知らずめ!それに、これは我がフィグリア王国に弓引く所業だぞ!

ではお聞きしますが、あなた方はあの魔物の軍勢に勝てるのですかな?

兵士達は、王国から派遣されている者たちだ。国の頂点に王がおり、その下に王国の各地域を治める領主がいる。そして更にその下に各町や村の町長、村長がおり、下から上へと税は吸い上げられていく。

Olの要望は、その税を自分に寄越せつまりは、所属している国を変えろ、と言うにも等しいものだった。しかも厄介な事に、Olが要求している額は、王国から要求されているそれより随分安い。

国に属す兵士が断固として拒否し、利のみを求める商人が受け入れる姿勢なのも、それが原因だ。町長はと言えば、その狭間で迷っていた。それは、Olの文書に書かれている一文。

従う場合、フィグリア王国に税を納める事を禁止する

という物のせいだ。武力を楯に禁止されていると言えば、この街が王国を敵に回す事はなく、税の支出を抑える事ができる。それはつまり、この街が潤うと言う事だ。

街としては嫌々Olに従っており、従来通り税を支払って欲しいなら先にOlを討伐してくれ、というポーズをとる事が出来る。町長の頭の中にあるのは、商人とは真逆の思考。Olは国に敵対してどこまで戦えるのか?と言うことだ。

冒険者どもがいるだろう! 魔物を相手にするなら、あの無法者達が打ってつけだ!

まあ、そうかもしんねぇけどよ。あいつらは報酬がないと動かんぜ。誰がその金を出すんだ?

兵士長の言葉に、沈黙を守っていたジェイクが口を挟んだ。

貴様らと言う奴は! この期に及んでそんな事を抜かすか!?敵は悪の魔術師! これは侵略戦争だ! 正義は我らにあり、戦うのに理由など

ですが、先方は略奪をしに来た訳ではない。譲歩すればむしろこちらに利すらある。それにも拘らず、無償で命を張れと?

と言うか、俺はもう冒険者じゃないんだからそんなこと言われてもなあいつらは絶対そういうぜ、って言いたかっただけだ

兵士長が怒鳴り、商人が冷静に言い返し、ジェイクが混ぜ返す。

少し、黙りなさい!

紛糾を極めたその場を、町長は怒鳴り、収めた。

ジェイクと言ったか。君は、敵を直接見てきたと言ったな

そして、一つの決意を胸に静かに尋ねる。

率直に言ってくれ。この街の兵士と冒険者、全ての戦力を持って戦ったとして敵は、倒せるのかね?

良いか、者ども、良く聞け!

居並んだ兵士、そして冒険者達の前で、兵士長は声を張り上げた。

敵は邪悪なる魔術師Ol、そしてその配下の悪鬼妖魔ども!その魔力は計り知れず、数は300を優に越える!対して我らは、僅か200の手勢に過ぎない!だが、しかし! 我らフィグリア王国兵士団と、勇猛なる冒険者諸君が力を合わせれば、ゴブリンやオーク如き、物の数ではない!

町長が選んだ道は、抗戦だった。

勝てる。が、甚大な被害が出る。そう答えた、ジェイクの言葉を信じた。

利よりも勇を取り、悪に屈してはならない、そう決断したのだ。

しかしその決断の裏には、冒険者達が甚大な被害を受けるならその分払う額も減る。そんな打算もあった。

剣を取れ、槍を掲げよ! 正義は我らにあり、邪悪なる者は光の前に必ず滅びる!往くぞ! 我らが愛するこの街の為に!

応、と男達は声を張り上げた。敵対的とは言わないまでも、お互い反目しあっていた兵士と冒険者が、共通の敵を前に手を携え戦う。その敵は、醜悪な怪物を従えた邪悪なる魔術師。Olの要求を知らされていない兵士と冒険者達はそのシチュエーションに血を沸かせ、正義の心を燃え上がらせた。

剣を持つものならば、誰でも英雄願望を持っている。それを湧き上がらせるのには格好の状況だった。

配置につけ! ゴブリンは前衛に任せ、オーガを優先的に狙え!敵は狙いやすいデカブツだ、ぐっと引き付けて射殺してしまえ!

弓を得意とする者たちが櫓に登り、狙撃の準備をする。

門の前には槍を構えた戦士達が集い、その後方に魔術を得意とする冒険者達が構える。

相手は三種類もの魔物を操ってる。何人魔術師がいるのか知らないが、魔力は殆ど残ってないはずだ。たとえ火球を放ってきても、俺の魔術でしっかり守ってやるから安心してゴブリン共を駆逐してくれよ、兵士さん

まさかお前達に背を任せる日が来ようとはなだが、こんなに頼もしい味方は他にいない!

冒険者の魔術師が兵士に声をかけ、兵士がニヤリと笑みを返す。

勝てる。兵士長はそう確信した。

たとえこの身が朽ちようとも、後続の勇者達が必ず邪悪なる魔術師を討ち滅ぼしてくれる。全身に力が漲り、鎧が軽く感じる。

こんな気持ちで戦うのは初めてだった。

もう、恐れるものは、何もない。

往くぞ、勇者たちよ!

パンッ。

そんな、軽い音を立てて。

兵士長の上半身は消滅した。

第9話街を蹂躙しましょう-4

あ、しまった

ふと漏らしたエレンの声に視線を向けると、彼女は申し訳なさそうにOlを上目遣いで見た。

その、すまん、主殿。敵の最前列に、なんかやたらと調子に乗った感じのポーズを取っている男がいたのでつい射殺してしまった

うっかりカップを割ってしまった、位の口調で彼女は謝る。

Olの目には、門の前に集まっている者達の見分けなどつかない。

空を見上げると、布陣した頃には中天に差し掛かっていた太陽は、やや西に傾いていた。

まあ良いだろう。そろそろ一刻経つし、あの布陣が何よりの答えだ。そろそろ始めるか

Ol側の戦力は、ゴブリン200、オーク70、オーガ30。

そしてOl、黒アールヴ達、スピナ、リルだ。ユニスとローガンは迷宮を守らせている。

ミオとマリーは元々戦力外だ。戦力にならないという意味ではスピナも対して変わらないが、今後の為に見学に来ている形になる。

アールヴ達は櫓の上の弓兵を射殺せ。俺が合図したら、一気に突撃するぞ。リル、スピナ、来い

アールヴ達は弓を構え、次々に矢を放った。櫓という高さのハンデがあって尚、街側の弓とは射程がまるで違う。あちらの弓が届きすらしない範囲から、アールヴ達は次々に射手を殺していった。

灰色熊を一撃で屠る剛弓だ。この距離からでも、人に当たれば半身が丸ごと吹き飛ぶ。すぐさま、敵方は大混乱に陥ったようだった。

Olは左右にリルとスピナを侍らせながら、朗々と呪文を唱え始める。Olが持っている分ではとても魔力が足りないが、かといってリルから魔力を一気に吸い上げるとOlの身体が破裂してしまう。多すぎる魔力と言うのは、人の身には毒なのだ。

ゆえに、二人を傍に置いて魔力を魔術に変換すると同時に、二人から魔力を吸い上げる。理論上、魔力を仕込んだ女を大量に用意する事で、Olはどのような大魔術でも使うことが出来る。

さて、いくぞ

術の構成を整え、Olはリルに口付け魔力を補給する。一息ついて、印を組んだ腕を振り下ろす。

爆ぜよ

街の門が、大爆発を起こして粉々に砕け散った。

なんだ!? 一体何が起こってるんだ!?

腕が俺の腕がねぇぇぇ! どこに行ったんだぁぁぁ!?

弓兵の連中は何してるんだ!?

リーシャ君に最後に会いたかった

そんな奴らとっくに全滅してるよ!

来る、来るぞ、やつらが来る!

嫌だ、死にたくない、こんなところにこれ以上いられるか!

戦場は、混乱の局地にあった。兵士長を初めとして、櫓の上の弓兵達が次々に弾け飛んで死んでいく。街の中に立てこもるべきだという意見と、討って出て敵の魔術師を殺すべきだ、という意見が錯綜する。長を欠いた集団の意見は定まらず、結果として彼らは何もせずにその場に留まると言う最大の愚を犯した。

そこに、門の大爆発である。木製とはいえ、街を守る為の大事な門だ。その強度はかなり高く、魔術で補強もしてある為に破城槌でもおいそれと壊す事などできない。それが、木っ端微塵に吹き飛んだのだ。

爆発に巻き込まれ、何人かの兵士と冒険者も犠牲になった所に敵が進軍を始めたのを見られ、混乱は最高潮を極めた。

わ、我々は街を死守する! 敵は貴様ら冒険者が迎え撃て!

なんだと!? ふざけんじゃねえ、あんな化け物相手に出来るか!

金を払ったんだから、その分働け! 大体、敵の魔術は防ぐといっていたのは貴様らだろうが!大口を叩いただけの仕事はしろ!

あんなモン、防げる奴はこの世にいねえよ! 超長距離からの攻城級魔術だと!?人間技じゃねえ! 金なんかいらねえ、降りさせてもらうぜ

先ほどまで笑みを交し合った兵士と冒険者が諍いを始める。

いざとなったら冒険者を盾にせよ

兵士達は、町長からそう通達を受けていた。そうすれば、支払いも減ると。

ならん! 逃げるというなら貴様らも、逆賊としてこの場で処分する!

目を血走らせ、兵士は冒険者達に槍を突きつけた。前方には魔物の集団、後方には槍を構えた兵士。冒険者達は、互いに視線を交わすと覚悟を決めた。

わかったよ。やってやろうじゃねえか!

そして、魔物達に向かって突進していく。

後ろで街に入っていく兵士達を見て、冒険者の一人が唾を吐いてつぶやく。

馬鹿め。門も射手もいないってのに、街に立てこもってどうする気だってんだ。民間人もろともなぶり殺しにされるだけじゃねえか

彼らはもちろん、勇敢に敵に立ち向かったりなどしない。Ol軍に接敵する前に進路を変え、さっさと逃げ出す。敵の狙いは街なのだ。ちょいと横にどいてやれば、それで戦う必要なんかなくなる。冒険者達が選んだのは、この負け戦からさっさと逃げ出す事だった。

愚か者め。そんな事をしても鴨撃ちにされるだけだ

そんな冒険者達を見て、兵士の一人が吐き捨てる。

射手を皆殺しにした攻撃方法があるのだ。戦線を離脱すれば、それを狙って殺されるに決まってる。

しかし、案に相違して冒険者達は狙い撃たれる事なく、無事に戦場を脱した。

撃たなくて良いのか、主殿

逃げ出していく冒険者を見ながら弓を構えるエレンに、Olは頷いた。

彼らにはこの戦争の事を伝えてもらわなければならない。

大勢は決まったようだな

間も無く魔物達が街に雪崩れ込む。そうしたら、街をゴブリンが破壊しつくす前に、奴らを止めなければならない。オークはOlが、オーガはリルが完全に操っているが、ゴブリンは別に操られているわけではない。ただ単に、オークやオーガを恐れて逃げているだけだ。

しかし、やはり人間は愚かだな。この大事に、お互いに争い、足を引っ張り合う。醜いものだ

エレンの言葉に、同意するようにスピナが頷く。しかし、Olは首を横に振った。

それは違う。人間と言うのはな、多様な生き物なのだ。恐らくあの人間共は、最初は奮起し正義の為に心を燃やした事だろう。それそのものは、別に嘘でも偽りでもない。しかし、同時に裏で打算や醜い欲望も渦巻いている。それもまた嘘ではない。どちらかのみを持てる人間などおらぬ。人は常に善と悪の狭間で揺れ動く。その多様性は時には恐ろしい矛となり、時には自分を殺す毒となる。今回は毒として機能するよう働きかけたのが上手くいった。しかし、だからといって人間を侮れば足元をすくわれるぞ

むう、と呻いてエレンは表情を引き締める。

確かに、たかが人間風情と侮った先にあったのは、黒の氏族の壊滅だった。

今回は辺境の田舎町、勝てて当然の相手だ。練習だと思え

とはいえ、初陣としては上々か。兵士達を蹂躙している魔物達を見て、Olは心の中でそう呟いた。

では、そろそろ行くか

戦えなくなった街で、もう一度突き付けてやるのだ。

隷属か、死か

多様な意見を持つ街であるが故に、個の意見によって意向が決まることはない。圧倒的な力を見せ付けた今、徹底抗戦を唱える人間がいても、同じ人間によって潰されるだろう。

その日、Olは街を一つ手に入れた。

第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-1

グオオオアアアアアアァァァッ!

唸りを上げて振るわれるオーガの豪腕を、アランは軽く身体を傾けてかわす。それと同時に懐に入って剣をひらめかせる。鉄の様に硬いオーガの皮膚に、瞬く間に無数の裂傷が走った。

グウガァァァッ!

全身を切り裂かれながらもさほど怯んだ様子もなく、オーガはアランを叩き潰そうと、丸太のような太い腕を振り上げる。そこに、ウィキアの放った火炎弾が炸裂した。

全身を炎に包まれ、流石のオーガもよろけ、片膝を突く。そこにすかさずナジャが斬り込み、横薙ぎに剣を振るうとオーガの身体は腰で上半身と下半身にわかれた。

ふぅっ

剣についた血糊を払い、鞘に収めるとShalがとたた、とアランに駆け寄ってその腕に触れる。彼女が短く呪文を唱えると、暖かい光がアランの傷を包み、一瞬にして綺麗に回復させる。

うむ、素晴らしい威力だな。真っ二つの剣《ソード・スラッシュイング》、とでも呼ぼうか

今オーガを両断した剣を見つめ、嬉しそうに言うのは戦士のナジャ。ゆるくウェーブする赤銅のような赤毛を長く伸ばした、長身の美女だ。南国グランディエラ出身で、豪胆でサッパリとした気性の女性だ。

ロングソード+1とかで良いんじゃないの

ぼそりと突っ込みを入れるのは、魔術師のウィキア。サラサラの青銀の髪をまっすぐ伸ばした美少女で、表情に乏しく寡黙だがその実誰よりも情に厚く心優しい。

あ、あたしは素敵な名前だと思いますよ

慌てたように二人の間に割ってはいるのは、僧侶のShal。エメラルドの様な緑の髪をボブカットにした小柄な少女だ。かなり幼く見えるが、見た目に反して白アールヴの彼女は最年長だ。パーティで諍いが起こった時も、にこにこと微笑んで心を和ませてくれる。

じゃあ俺の剣は切り裂きの剣(ソード・スライシング)って所か

そして、腰の剣をぽんと叩きそう答えたのがパーティ唯一の男性にしてリーダー、剣士のアランだ。金髪碧眼の美男子で、剣の腕のみならず魔術に罠の解除もこなす、オールラウンダー。恐れを知らぬ勇猛さと、冷静な判断力を併せ持つ凄腕の冒険者である。

彼らはたった四人で、凶悪と噂される邪悪なる魔術師Olの迷宮に挑み、既に地下4階まで足を踏み入れていた。ゴブリンやオーク、オーガにスケルトン、ドラゴン・フライにジャイアントスラッグさまざまな怪物が彼らの行く手を阻んだが、どれも敵ではなかった。

むしろ、時折怪物が落としていく宝箱からは強力な魔法の品や金貨などが手に入り、彼らの戦力はますますあがるばかり。アランとナジャが手に入れた剣もその一つだ。

それより、アランあそこ

くいとアランの袖を引っ張り、ウィキアが曲がり角の奥を指差した。アランがそちらを覗き込むと、通路の奥に、なにやら大きな扉が見えた。今まで見たのとは違う、両開きのしっかりした作りの扉だ。

いかにも何かある、と言わんばかりのその扉に、アランはごくりと唾を飲み込んだ。

どうする?

魔力は十分に余っているわ

あたしも大丈夫です

疲れもない。私も問題ないぞ

その一言でメンバーは彼の意図を正確に把握し、体調を報告した。

よし、じゃあ行くぞ

こくりと頷き、アランは扉を軽く調べる。鍵穴はなく、鍵もかかっていないようだ。もう一度メンバーを見渡し、声を出さず手でタイミングを合図する。

3,2,1

0と同時に、アランは扉を蹴り開けた。その隣をナジャがすり抜け、次にアランが扉の中に飛び込み、Shalとウィキアが中に入って扉を閉める。その動作は殆ど一瞬にして行われた。

Shalとウィキアが扉を閉めている間に、アランとナジャは剣を抜き放って前方に駆ける。扉の向こうは大きなホールになっていて、中央に巨大な怪物が座り込んでいた。3mほどの隆々とした体躯に、牛の頭を持つ怪物。ミノタウロスだ。

アランとナジャはミノタウロスが立ち上がる前に怪物へと接近すると、左右から同時にきりつけた。ミノタウロスは座った体勢のまま巨大な斧を持ち上げると、その剣戟をいともたやすく防ぐ。

舌打ちし、反撃を恐れて距離をとる二人の前でミノタウロスはのっそりと立ち上がった。

人間ならば二人がかりでようやく持ち運べそうな大斧を、片手で軽々と持ち上げ、ぶんと振るう。

巨大な体躯と斧の柄の長さもあいまって、その射程は生半可なものではない。アランはかろうじてそれをバックステップでかわしたが、ナジャは避けきれず吹き飛ばされた。

大丈夫ですか?

しかし、胴体を両断されても良いほどの衝撃にもかかわらず、彼女には大した傷はない。Shalの唱えた魔術がメンバー全員の身体を淡く包み込み、ダメージを軽減させていた。

ああ、助かった。しかし、アレはちょっと迂闊に近寄れないな

広い場所で大斧を振るうミノタウロス。アランはかろうじてそれをかわすものの、激しく地面を打ち付ける斧は床の一部を破壊して飛ばし、アランに細かい傷を無数につける。更に、足場が破壊される事でアランの素早いステップが殺され、よけるのが徐々に困難になっていく。

動きを止めてみる。あんまり長くは持たないから

そういい、ウィキアが長い呪文を唱え始める。ナジャは頷くと、ミノタウロスに向かって突進した。

新たに向かってくる彼女に向け、ミノタウロスは斧を横薙ぎに振るう。

うおおおおおお!

吼え、ナジャは床に剣を思いっきり突き刺した。直後、凄まじい衝撃が彼女を襲うが、大斧の一撃は床に刺さった剣を折ることはかなわず、ナジャの手前で止まる。凄まじい衝撃がナジャを襲い、剣を抑えた左腕に刃が食い込むが、戦闘不能に至るほどの傷ではない。

そこで、ミノタウロスの両脇に石の壁が立ち上った。ウィキアの魔術だ。本来防御に使うためのものだが、生半可な呪いでは動きを止められないミノタウロスの動きを強引に制限した。

ナジャ、続けッ!

好機と見て、アランがミノタウロスに向かって突っ込む。ミノタウロスは素早く大斧を手元に引き戻すと、アランに向かって思いっきり振り下ろした。

しかし、アランはそれを軽くかわす。両脇の石壁のおかげで大斧は振り回せず、振り下ろす事しかできない。それだけで、攻撃の避け易さは段違いになる。そして、アランが誘発した攻撃によって前傾姿勢となったミノタウロスの手首を蹴り、ナジャが跳んだ。

階段を駆け上がるようにしてその太い腕を駆け上り、両手で構えた剣を横薙ぎに振るう。狙い済ましたその一撃は、ミノタウロスの首に突き刺さった。

だが、オーガの胴体をも両断する鋭さを持って尚、ミノタウロスの太い首を刎ねるには至らない。剣は30cmほど食い込んだところで止まった。

くっ、しまった!

慌てて剣を引き抜こうとするが、それもかなわない。

危ないっ!

ナジャを衝撃が襲った。しかし、それはミノタウロスの攻撃ではない。彼女を突き飛ばした、アランの腕の柔らかな衝撃。そして、その後ミノタウロスの豪腕によって殴り飛ばされ、宙を舞うアランを目の当たりにした心の衝撃だった。

アランッ!?

普段冷静なウィキアが悲鳴を上げる。

だいじょうぶ、だ!

口から血を吹きながらも、アランはくぐもった声で答えた。

や、れ! とどめだShal、ウィキア、ナジャ!

アランが、指示する。三人の娘達は、彼の意図を一瞬で掴み取った。

ミノタウロスが腕を振るい、石の壁を殴りつける。魔力で作った仮初の壁はミノタウロスの腕力の前に耐え切れず、轟音を立てて崩れた。

ブオオオオオオオオッ!

傷をつけられ、怒りを露わにミノタウロスは突進する。狙いはナジャだ。

神よ、光を!

その瞬間、Shalが魔術で光を放つ。悪霊や夜の生き物達を討ち滅ぼす、神の光だ。ミノタウロスには毛の先ほどの傷をつけることも出来ないが、その目をくらませるのには十分だった。

強烈な光に一瞬視力を失い、よろけるミノタウロス。突進姿勢で低く下げたその首に向かって、ナジャは再び跳躍した。何も持たないその手に、アランが投げた剣が収まる。殆ど同時に、ウィキアの魔術がその剣に纏わりつき、光り輝いた。

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

渾身の力を込めて、ナジャはまっすぐ剣を振り下ろす。左側に刺さったナジャの剣と挟み込むようにして放たれたその一撃は、今度こそミノタウロスの首を両断した。巨体がぐらりと揺れ、ずんと音を立て床に沈む。

大丈夫か、アラン!

今、傷を治しますね

無茶を、しないで

勝利の感慨にふける間も無く、娘達はアランの下へと駆け寄る。早口でShalが回復魔術を唱え、アランの腹に手を当てる。

助かったよ、Shal

やがて傷が癒え、アランはShalの頭をなでた。嬉しそうに目を細める彼女の両脇で、ナジャとウィキアが不平を口にする。

とどめを刺したのは私なのに、私にはなしか?

私も色々活躍したと思うんだけど

わかってる、ナジャもウィキアもありがとな

二人を撫でてやると、ナジャはにこっと笑い、ウィキアは二人同時ってと形のいい唇を尖らせながらも頬を染めた。三人から好意を持たれているのには、アランは気付いている。が、その中から誰か一人を選ぶ事はずっと出来ないでいた。

初めてここまで来るものがいると思えば、これはとんだ色男だな

唐突に、地獄の底から響くかのような低い声が聞こえた。慌てて声の方に目を向けると、そこには琥珀色の髪の男が、ミノタウロスの死体に腰掛けるようにして座り、値踏みするかのようにアラン達に目を向けていた。

奇妙な仮面を身につけている為顔はわからないが、武器も防具も身につけていない普通の人間の男に見える。しかし、声をかけられるまで誰も気付かなかったその異常性に、アラン達は武器を構えた。

あなたはまさか。邪悪なる魔術師、Ol?

いかにも

ウィキアの問いに、Olは頷く。予期せぬ迷宮の主の登場に、アラン達に緊張が走った。

ふん、国中を騒がせている魔術師がこんな若い男だったとはな。それも護衛もつけずにノコノコと現れるとは、運がいい

ナジャが剣に手をかける。剣は剣士の命。アランに駆け寄る際にもしっかり回収していたのだ。そうでなければ危うく手詰まりになるところだった。

合図もなく、同時にナジャとアランは駆け出した。魔術師相手の戦いは速攻がセオリーだ。いかに強大な魔術を操ろうと、その肉体は脆弱で鈍い。魔術の一撃を受ける前に殺してしまえばいい。

アランは首、ナジャは胴。挟み込むように放たれた一撃は、しかし、Olの身体を傷つけることは出来なかった。

身の軽そうな男の剣士が陽動、女の剣士の一撃が本命。僧侶が不測の事態に備えて回復の準備をし、魔術師は後方から援護射撃か。一瞬でよくもまあこれだけ連携の取れた動きをしたものだ

目の前でぴたりと止まった二人の姿を観察し、しみじみとOlは言った。二人だけではない。後衛の二人も、口をパクパクと動かすが声が出ず、魔術も発動できない。

しかしそんなパーティでさえ、このような単純なトラップに引っかかるのだな。少しはおかしいと思わなかったのか?

その言葉にウィキアがはっとして指輪を外そうとするが、もちろん外れるような事はない。

呪われて、いたのだ。ウィキアの指輪もShalの杖も、アランとナジャの剣も、この迷宮で手に入れたものは全部。

素晴らしい力を持ちながら、迷宮の主にだけは逆らえない。そんな呪いが。

さて、剣士は動けず魔術師は魔術を使えない。そんな状態でコイツを相手にしてもらおうか

首を失ったミノタウロスの死体が、ゆっくりと起き上がった。

第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-2

目を覚ますと、ナジャは見覚えのない部屋にいた。

部屋の中には簡素なベッドと便所代わりの壷が置いてあるのみで、三方を壁に囲まれ、残りの一方は鉄格子。どう見ても牢獄だ。ナジャは頭を振り、ぼんやりする頭を叩き起こそうとした。しかし、思考には霞がかかったように考えが纏まらない。とにかく、彼女は何が自分の身に起こったのかを考えた。

だんだん、記憶が戻り、意識がハッキリしてくる。思い出したのは、動かない身体と、迫る首のない大男の腕。ああ、ミノタウロスだ、とナジャは嘆息した。動き出したミノタウロスの死体に動けぬ剣士がかなう訳もなく、アランたちはなす術なく捕らえられた。

殺されなかったのは幸いだが、あまり状況はいいとはいえない。武器も防具も奪われ、彼女が身に着けているのは粗末な服だけだ。ワンピースのような作りの服だが、少し丈が短く彼女の太ももは中ほどから露出していた。

武器そう考え、ナジャはほぞをかんだ。あんな呪いの剣に舞い上がり、長年使い込んだ愛剣は手放してしまった。愛剣を使ってさえいれば、Olを倒せたかもしれないのに。

しばらく自分の不覚を悔いると、彼女はすぐに思考を切り替えた。現実的な戦士の思考は、いつまでも過去を思い悩んだりしない。大事なのは現在、そして未来だ。

彼女の気がかりは、やはりアランだった。もちろんShalとウィキアの安否も気にかかるが、迷宮の主Olは支配下の村で若く美しい娘を集めているという。貞操の心配はあるが、こうしてナジャが生きている以上他の二人も無事だろう。少なくとも、しばらくの間は。

しかし、アランはそうはいかない。確かに女に見間違われるほど見目麗しい美青年だが、彼は男だ。実は女でした、などという落ちもない。Olが彼を生かしておく意味はあるのだろうか。

考えても仕方ない思考に彼女が頭を悩ませたとき、その答えは唐突にもたらされた。

さっさと歩け!

黒アールヴに槍を突きつけられながらナジャの牢の方に歩いてきたのは、見間違うはずもない。ナジャが想いを寄せるアランの姿だった。

アラン!

思わず鉄格子を掴んで近寄ると、黒アールヴの女がナジャに槍を向けた。

奥の壁に手をつけ。早くしろ!

ぎり、と奥歯をかみ締めつつも、ナジャは言われる通りに奥の壁に手をつき、目を閉じた。がちゃりと音がし、牢獄の扉が開けられる。その瞬間を狙って反転し、扉から飛び出そうとしたナジャの身体に覆いかぶさるようにアランの身体が牢の中に蹴り入れられる。

無駄な事はするな。貴様らにはまだ二人仲間がいる事を忘れるなよ

冷たく吐き捨て、黒アールヴは牢獄に鍵をかけ、去っていった。残り二人の無事もとりあえずは確認でき、安心してナジャはアランを抱きしめた。

アラン、良かった。無事だったか

ああナジャも元気そうで良かった

一体何があったんだ?

全員捕らえられたのはわかっているが、それにしてはアランとナジャだけが同じ牢に入れられるのもよくわからない。二人ずつ入れられているにしても、アランが後から牢に運ばれてきたのも意味がわからなかった。

呪いだよ

よろよろとした動作で、アランはベッドに腰掛けた。

魔封じの呪いをかけられた。魔術を使おうとすれば、全身に激痛が走ってとても行使できない。Shalとウィキアも同じだ。ナジャだけは、魔力を感じないからって先に牢に入れられたんだ

そうなのか

とりあえず、ナジャも座ったら?

アランはベッドの端によって、隣をぽんぽんと叩いた。

あ、ああ

ナジャはぎこちなく隣に座った。今の服装を思い出したのだ。薄く粗末な衣服はナジャの身体の線をはっきりと示し、しかも太ももは露出している。その上、下着を着けていないのが感覚でわかった。

しかし、呪いと言うのは厄介だな。魔封じの呪具とかなら、破壊できれば効果を消せるだろうが呪いとなるとな

Shalなら呪いを解く事も可能かもしれないが、彼女自身も魔封じの呪いを受けているならそれも期待できない。神の力を借りる僧侶の奇跡も、魔術の一種である事には変わりないからだ。

ナジャ

思い悩むナジャの名を呼ぶアラン。

こんな時に言うのもいや、こんな時だからこそ、言っておきたい

視線を向けると、彼はじっとナジャを見つめていた。

好きだ、ナジャ。君を、愛している

3秒。彼の言っている言葉の意味を解釈するのに、歴戦の戦士をしてそれだけの時間がかかった。きっかり三秒後、一瞬にしてナジャの顔は真っ赤に染まる。

え、な、えほ、本当に?

アランはこくりと頷いた。

でも、Shalとウィキアは

二人の事はもちろん大切に思ってる。けど、愛してるのはナジャ。君だけだ

そんなアラン。ありがとう、嬉しい

他の二人に対する罪悪感がナジャの心をよぎる。しかし、アランが選んだ事なのだ。仮に他の二人のどちらかが選ばれたとしても、ナジャはそれを受け入れ祝福しただろう。そう結論付けて、彼女は素直に彼の好意を受け入れた。

その、はしたない女と思わないで欲しいんだが

今しかない。そう思い、ナジャは率直に言った。

私をその、抱いて、くれないか?

いいのか?

目を見開くアランに、ナジャは頷く。

この後、Olに無理やりされる可能性もある。そうでなくとも、無事帰れるかどうかもわからない。こんな稼業だ、覚悟はある。それでも、初めてくらいは、好きな男に抱いて欲しい

わかった

アランはゆっくりと、優しくナジャを抱きしめ、そっと唇をかわす。そのまま首筋に唇を這わせながら、ベッドに押し倒していく。

ナジャ

レオナと呼んで

普段の男勝りな態度とは打って変わった、弱弱しい口調でナジャはそう囁いた。

私の真名は、レオナというんだ。レオナ・ジャーヴィス。それが、私の本当の名だ

ざ。

綺麗な名前だ。レオナ

あっ

アランはナジャの服を捲り上げる。その豊かな胸元から、赤い茂みを備えた秘所までが丸見えになった。

あ、あまり見ないでくれ恥ずかしい

どこも恥ずかしい所なんてないさ。綺麗だよ、レオナ

んんっ

胸に舌を這わせるアランに、ナジャはぴくんと身体を震わせた。戦いに明け暮れた剣士の体だが、その肌には傷は殆どない。ナジャ自身の剣士としての腕の高さや癒し手のShalの技量ももちろんあるが、何よりもそれはアランが守った肌だ。

出会ったその時からアランは常に誰よりも前面に出、攻撃をひきつけた。そして体勢を崩した敵を屠るのがナジャの役割だった。

最初は線の細い頼りない男だと思ったものだったが、その評価はすぐに覆った。そして、それが信頼に変わり、やがて愛情に変ずるのはそれほど時間はかからなかった。

唇は胸からゆっくりと下り、腹を通って脚の間の茂みの奥へと辿り付く。

レオナ、脚を開いて

そっと脚を押すと、ナジャは顔を真っ赤にしつつもそれに従って両脚を開き、誰にも見せたことのないそこを晒した。

駄目だ、アラン、こんなの恥ずかしすぎる

両手で顔を多い、ナジャは情けない声を上げる。

可愛いよ。レオナ

言って、アランはそこに舌を差し入れた。

あぁっ

初めて気恥ずかしさからではなく、確かな快楽にナジャは高く声を上げる。アランの舌は縦横無尽にそこを蹂躙し、その度にナジャは波に翻弄される小船のように身体をよじり、声を上げた。

ア、アラン、私、もう大丈夫だと、思う、からっ

このままでは、わけもわからぬまま我を失いかねない。ナジャが声をかけると、彼女を怯えさせないようアランはゆっくりと彼女に覆いかぶさり、目を見つめた。

じゃあいくよ

アランは不思議そうにナジャを見つめた。それで、ナジャは一瞬自分の目がかすれたようになったことに気付く。目をぱちぱちと瞬かせるが、特に異常は見られない。

い、いや、なんでもないその、一思いにやってくれ

言って自分で情緒の無さに情けなくなるが、アランは優しく笑みを浮かべ、ナジャを抱きしめた。途端、ずぶりと貫かれる感覚がナジャの背筋を駆ける。じんわりとした痛みと共に、彼女は女としての幸せに包まれた。

大丈夫だ、これしきの痛みなんとも無い

心配そうに見るアランに、ナジャは微笑みかけて見せた。内臓を抉られる様な痛みは辛かったが、アランに与えられていると思えばそれも不思議な満足感を彼女に与えてくれた。

ただ、そのぎゅっとしてくれ

アランは頷き、ナジャを抱きしめるとゆっくりと抽送を始めた。

んっ、ん

しばらくそうしていると、最初は苦痛に声を押し殺していたナジャの声に、だんだんと甘いものが混じってくる。

突き入れながらアランが彼女の胸の先端に口をつけると、喉を反らせるようにしてナジャは鳴き声を上げた。

ああっ、あ、あ、あぁっ、アラン、アランっ

こんなにも甘くいやらしい声が自分から出るのか、とナジャは驚いた。アランの頭をかき抱く様にして、ナジャは快楽に身を任せる。

レオナ愛してるっ!

あぁ、アランっ、もっと、もっとして、もっと激しくああっ、アラン!

いつの間にか抽送は激しさを増し、水気を帯びた肉のぶつかり合う音が牢獄に響く。

レオナ、イくイくぞっ!

アランっ、中に中に、出してえぇぇっ!!

ざざ。

叫んだ瞬間、再びナジャの視界がブレた。

しかしそれがなんなのか考えるまでも無く、ナジャの一番奥までアランの物が突き入れられる。まるで鈍器で頭を殴られた時のように火花が散り、ナジャは身体を大きく反らせた。

~~~~~~~~~ああああああああ!!

自分が叫んでいた事にすら気付かず、絶頂するナジャの奥深くにアランはたっぷりと精を吐き出す。満足いくまで射精の快感を堪能し、アランがナジャの秘部からペニスを引き抜く時には、彼女はぐったりと気を失っていた。

アランはベッドを降りると、彼女の頭を軽くなでて囁く。

中々良かったぞ、ナジャとやら

その顔からは先ほどまでの優しい表情は消え、代わりにニヤリとした邪悪な笑みが浮かんでいた。

第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-3

あっ、ああっ、アラン、アランッ!

ベッドに横たわったアランの上で、ナジャは一心不乱に腰を振っていた。あれから幾度も肌を重ね、痛みを感じる事は全くなくなっていた。二人とも遠慮なくお互いの身体を貪り、愛欲にふける。

初めて肌を重ねた日、意識を失ったナジャが目を覚ますとアランの姿はなくなっていた。ナジャがおきてしばらくすると朝餉が黒アールヴによって差し入れられ、それから半日後、夕餉が届けられると共にアランが戻ってくる。

別々の間何をしていたのか問うと、アランは言葉を濁した。言いたくない事であれば無理には聞くまい、とナジャは彼を心配しつつも、問いただすのをやめた。

共に夕餉を摂ると、どちらからともなく手を絡ませ、再び睦みあう。情交の疲れで眠りにつき、目を覚ますとまたアランがいない。そんな生活の繰り返しが、ここ数日ずっと続いていた。

囚人生活はとにかく暇の一言だった。狭い監獄の中で、出来る事は何もない。とりあえず身体が鈍ってしまわない様に腕立てや腹筋などの筋力トレーニングを行うが、器具も訓練用の武器もない狭い室内では限界がある。食器を使って何とか脱走できないかと、壁を掘ろうとしてみたり、錠前を壊そうとしてみたりといった努力は全て徒労に終わった。

恐らく魔術で補強がかけてあるのであろう。壁や錠前は傷一つつかず、逆にスプーンやフォークなどの食器はすぐにぐにゃりと曲がって使い物にならなくなった。

食事を運ぶ黒アールヴに次に壊してみろ、焼けたスープを素手で飲ませてやると脅されてから、そういった努力は諦めた。

暇である事を除けば、囚人生活はそれなりに快適だった。運ばれてくる料理は質素なものだったが、それなりの量と味があり、メニューも毎日変わる。

朝食が終わると、食器が回収されると共に湯の入った桶と布が渡され、身を清める事も出来た。普段は滅多に湯になど浸からずたまに水を浴びる程度の生活だったが、アランと肌を重ねる時にはやはり汚れも気になる。たっぷりと時間をかけ、彼女は身体の隅々まで磨いた。

排泄物も毎日二度回収され、綺麗な壷と取り替えられる。いずれもアランのいない時間帯に、女のアールヴによって取り替えられるのが地味に嬉しかった。やはり、そういったものを男に見られるのは勘弁願いたい。想いを寄せる相手であれば尚更だ。

食事以外に時間を知るすべもない生活に、いつしかナジャは何年も牢に入れられている気分になった。楽しかったはずのアラン達との冒険の日々は遠く霞み、色彩を失って現実感がない。

そんな中、アランだけが彼女の心に安らぎを与えてくれた。彼女は縋る様に彼に抱かれ、精を求めた。彼の腕に抱かれていると心から安心し、このままの生活がずっと続けばいい、そんな気持ちになった。

ざ。ざざざ。

そんな生活に影を落とすのが、ナジャの視界を揺らすこのチラつきだった。ふとした瞬間に視界がぶれ、異音が耳を突く。アランにはこの症状は出ていないようだった。病気か、それとも何かの呪いか。最初は気のせいかと思う程度だったそれは、次第に頻度を増やし、今では拭いがたい違和感としてナジャの頭にこびりついていた。

ア、アラン

助けを求めるようにアランの頬に手をそえ、顔を近づける。

ざざざざっ。

口付けようとしたその瞬間、再び視界がブレた。ナジャは慌てて顔を上げ、首を振る。

いきそうなのか? 俺もっいくぞ!

胎内に流し込まれる暖かい感触を感じながら、ナジャは今見たものの事を思い返す。

ブレた視界の先で見えた、アランの顔。

それは、全く別の男の顔だった。

深夜。日の光など届かない、時間の流れもロクにわからない地下の中ではあるが、食事の時間から換算して恐らく深夜だろう。ベッドに横たわるナジャの横で、むくりとアランは身を起こした。

ナジャを起こさぬようにそっと牢獄の扉を開け、外に出て行く。

薄く開けた目でそれを確認して、ナジャはぱちりと両目を開いた。いつもの様に愛し合った後、気を失ったフリをしたナジャは、今までアランだと思っていた男が、全くの別人であると確信した。

恐らく、幻術の類でもかけていたのだろう。時折起こるチラつきは、思えばアランと一緒にいる時だけ起こっていた。異常ではなく、正常。魔術が綻ぶ瞬間だったのだ。

ナジャは猫の様にしなやかな動きで監獄の扉に張り付くと、そっと押した。鍵はかかってない。後で黒アールヴが閉めに来るのだろう。ナジャは隠し持っておいたナイフを服の袖から取り出すと、長い髪をぐっと握り締め、根元の方から切り取った。武器にはなりそうもない食器のナイフだが、髪を切る事ぐらいは容易い。

ショートカットになったナジャは、掛け布団を丸めて中に人が入っているかのように偽装すると、その端から髪を覗かせるようにしておいた。これで、遠目にはナジャが寝ているように見えるはずだ。

ナジャはそっと牢を出、足音を忍ばせながら迷宮の廊下を歩いていく。ナジャ達が冒険していた階層は、そこかしこに死骸が転がり腐臭に塗れていたが、この辺りはまるで王宮の廊下の様に清潔感が溢れ、塵一つない。

牢獄にいた頃はあまり気にしていなかったが、壁面も淡く光を放っていて、薄暗くはあったが明かりがなくても先を見通す事ができた。それに、薄暗いのはナジャにとっては都合がいい。

勘に任せて迷宮の中を進んでいると、光の洩れている扉を見つけ、ナジャは忍び寄って中を覗いた。そこには、大きな椅子にくすんだ金色の髪の男が座っていた。眠っているのか、目を閉じ、椅子に座ったまま微動だにしない。

こいつだ、とナジャは内心を怒りに燃やした。幻術の向こうで見えた男の顔は、間違いなく椅子に座っている男のものだった。アイツがアランのフリをして、何度もナジャを抱き、精を胎内に注ぎ込んだのだ。

ナジャの心は嫌悪感で満たされ、今すぐにでも部屋に入っていって殺してやりたい衝動に駆られるが、彼女は鋼の意思でそれを抑えた。今すべき事は、本物のアランを探し出し、助け出す事だ。

ナジャは扉をそっと離れ、探索を再開する。今夜は何故か勘が冴え渡っている。誰にも見つかることなく廊下を進み、ナジャは槍を持ってぼうっと立っているゴブリンを見つけた。

ゴブリンの背には木で出来た粗末な扉があり、ゴブリンの腰には鍵束がぶら下がっている。

あそこだ、とナジャは直感的に思った。風の様にゴブリンに駆け寄ると、その小さな首を掴んで思いっきり横に曲げる。首の骨をおられ、声をあげる間もなくゴブリンはあっという間に絶命した。

その腰から鍵束を剥ぎ取ると、扉につけられている錠前に鍵を突っ込む。一度、二度は失敗したが、三本目で鍵はカチリと音を立てて開いた。

小さな部屋の中で、彼は粗末な椅子に腰掛けぐったりとしていた。その腕を縛っている縄を解き、もう一度呼びかけると彼は辛そうにゆっくりと顔を上げた。

ナジャ?

ああ、アラン!

ナジャは彼をぎゅっと胸に抱きしめた。ナジャの様にいい扱いをされていなかったのか、髪の色は艶やかさを失い、身体もやや痩せてしまっているが、間違いなく彼こそが本物だ。

さあ、逃げよう。一旦逃げて、体勢を立て直すんだ。丸腰で逃げるのは難しいかもしれないが、私とアランなら何とかなる。運が良ければ装備やShal達も見つかるかもしれない

その必要は、ない

意外な言葉に顔を上げると、彼の瞳がナジャを見つめていた。深い茶の瞳に見つめられ、一瞬、全てを忘れナジャはその瞳を見つめ返す。

俺はこの迷宮の主。そして、お前の主だ。身分を隠して冒険者の一行に紛れ込む任。よく頑張ったな、レオナ

優しく髪を撫でる彼の手つきに、ナジャは全てを思い出した。

ああOl様

目の前にいるのは、アランじゃない。Olだ。ずっと恋を抱き、牢獄の中でナジャを抱き続けた顔、そのままの姿が今ナジャの目の前にあった。

美しい髪を、俺の為に犠牲にしてしまったな。しかし、短い髪のお前もまた美しい。後できちんと整えさせよう

ゆっくりとナジャをかき抱くOlの腕の中で、安心したようにナジャは目を閉じた。そのまま、すやすやと寝息を立て始める。

終わりましたか

それを見計らい、エレンと黒アールヴの娘が一人入ってきた。

ああ。今度は寝室に連れて行け。後で一応呪いはかけるが、もう抵抗する事はないだろう

黒アールヴの娘にナジャの身体をわたし、Olは答えた。ふむ、とエレンは眉根を寄せ、少し考えてからOlに率直に尋ねた。

主殿、私には良くわからんのだが、結局あの娘は元々主殿の配下だったのか?

そんなわけないだろう

エレンの問いに、Olは薄く笑う。

剣士と言うのは全く魔術を使わないが、あれで中々厄介でな。精神力の強さだけなら魔術師を凌ぐ事が多い

椅子に腰掛け、Olは種明かしを始めた。粗末な椅子に見えていたそれは、あっという間に巨大化し、肘掛つきの大きな椅子に変じてOlの身体を支える。

だから反抗できないよう呪いで制限をかけても、とかく扱いづらい。呪いで全身に激痛が走ろうと、構わず数秒程度なら戦い続けたりも平気でする連中だ。反面、目晦ましの類は効き易いから、今回は絡め手で攻めてみた。それがこの顔だ

Olは呪文を一節口ずさむと、その顔がぐにゃりと歪んだ。輝くような金の髪、女と見紛うばかりの細面。それは、アランの顔だった。

あの男に化けて、娘を犯したのはわかっているのですが

唐突に槍で突きながら俺を牢に連れて行け、などと言われた時には、エレンは長い地下生活で主の気が触れたのかと思った。

よく見てろよ

んんんん?

エレンはOlの顔に違和感を覚える。しかし、それが何であるかがわからない。

どうだ?

あ、あれ!?

気付いた時には、Olは元の顔に戻っていた。琥珀色の髪に茶色の瞳。整ってはいるが、男性的な顔付き。どう見てもいつものOlだ。

が、いつもとに戻ったのか、エレンにはさっぱりわからなかった。

ゆっくり、ゆっくりと顔を変化させたのだ。人間アールヴもそうだが、生き物の認識と言う奴は中々面白くてな。ゆっくりとした変化には中々気付けんようになっている

いつの間にかOlの顔は、再びアランのそれへと変化している。

まあ、金と琥珀色で、髪の色が比較的似ていたのが幸いしたな。流石に髪の様な目立つ場所の色が大幅に変わると気付かれる

そういえば、とエレンがOlの目に注目すると、確かに碧眼がゆっくりと茶の瞳に変化していた。

これを数日がかりでやりながら、夜毎に暗示をかけ、記憶を潜在的に植え込んだ。実は自分はOlの手先で、冒険者の仲間のフリをしているだけとな。偽の記憶と変化する顔、後は時折わざと見せてやるアラン本人の顔のせいで、奴はすっかりアランの顔が敵で、俺の顔が味方だと信じこんだ

ナジャが扉の隙間からのぞき見た、大きな椅子に座っていた男はアラン本人だった。そこでそれに気付けば、ナジャは或いは彼を助け出せたかもしれない。しかし、記憶を曖昧にされ、Olの顔をアランだと信じていた彼女にとっては、憎き敵の顔にしか見えなかった。

人間と言う奴はな、どんなに疑い深い者でも相手の裏をかいたと思った瞬間は酷く心が無防備になる。その瞬間を利用し、敵と味方の顔が入れ替わったのを支点にして植え込んだ記憶を一気に表面化させ、奴の今までの人生の本当と嘘をすげかえ、俺の味方であると信じ込ませた。信じ込む、と言うのは怖いぞ。疑いすらしない事は防ぎようがない

怖いのはあなただ、と思ったが、エレンは口には出さない。主人として頼れるという思いもあり、やはり恐ろしくもある。

だがまあ、実験はうまくいったがこの方法は手間がかかりすぎるな。成功したのも半分以上は運みたいなものだし、次はもう少しスマートに済ませるか

娘は後二人、別々のアプローチで堕とすつもりだ。

邪悪な思考を巡らせながら、Olは次の犠牲者の下へと足を向けるのだった。

第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-4

話は数日さかのぼる。

ナジャが牢獄で目を覚ましたその日、つまりアラン一行がOlに破れ捕えられた翌日。僧侶のShalもまた、牢獄で目を覚ましていた。

ベッドの上で半身を起こしたShalは、同じ部屋の中で椅子に脚を組んで座る男を見て反射的に身構えた。仮面をつけていたから顔には見覚えがないが、背格好と琥珀色の髪ですぐにわかる。この男こそ、邪悪なる魔術師Olだ。

慌てるな。別にお前を害する気はない。その気ならとっくに殺している

Olは慌てた様子もなくそういった。その言葉を信じた訳ではないが、Shalは身体の緊張を少しだけ解く。そもそも、反抗する事自体が無駄だというのはわかっていた。

彼女の右手人差し指にはまっているのは封魔の呪具だ(余談だが、Olがナジャにした説明は大嘘で、いちいち魔封じの呪いなどかけていない)。

これがある限り魔術は使えないし、自分で外す事も出来ない。白アールヴである彼女は人間より力が弱く体格も小さいので、魔術師といえど人間の男であるOlに腕力で敵う気もしない。

何が望みですか

話が早いな

酷薄な笑みを浮かべ、Olは足を組み替えた。彼は少し考えるように手を顎にやり

では、身体でも捧げて貰おうか

まるで酒場で酒の注文でもするかのようにそう言った。まだ経験のないShalだったが、その意味が判らぬほど子供でもない。真っ白な肌を真赤に染めてOlを睨んだ。

ふざけないで下さい。あなたの様な邪悪で下卑た男に汚されるくらいなら、あたしはこの舌を噛んで死にます

命を賭けるほど嫌か

当然です

即答するShalに、なるほど、とOlは頷いた。

ではその命が仲間の物でも、同じことが言えるかな?

Shalの顔色が、赤から一気に蒼白へと変わる。

お前の仲間は三人とも無事だ。今は、な

この、恥知らず

可愛らしい表情を憎悪に歪め、ぎりりと奥歯を噛み締めShalはOlを睨んだ。しかし、視線に刃がついていればOlをバラバラに出来そうな瞳も、邪悪な魔術師の面の皮の前では全くの無力だった。

たっぷりと逡巡した後、のろのろとした動作でShalはベッドに身体を横たえ、ぎゅっと目を閉じた。

好きにしなさい

白アールヴは、人間の何倍もの時間を生きる。そして、その時間の大半を、たった一人の相手を緩やかに愛する事に使う。白アールヴにとって愛とは至高のものであり、その証明になりうる純潔は何よりも大切にするべきものだ。

それを、仲間の為に捨てる事を決意した彼女の覚悟は、いかばかりのものか。愛するアランは勿論、ナジャやウィキアも種族は違えどShalにとってはかけがえのない友人であり、仲間だ。これから自分に降り注ぐ残酷な運命に身を震わせ、Shalは歯を食いしばった。この男の前でけして涙を見せたりしない。そう、誓った。

どうやらお前は何か思い違いをしているようだな

そんな、小さな少女の悲壮な覚悟を

俺はお前の身体などどうでもいい。乞い願うのはお前の方だ。お願いですOl様、どうかこの身を犯してください、とな

Olは、土足で踏み躙った。

あまりの屈辱に、あまりの怒りに、Shalは言葉どころか呼吸さえままならない。元々平穏を好む白アールヴであることに加え、彼女は神に仕える僧侶を目指した身の上だ。慈愛に満ち、怒りなどとは無縁であると仲間達は思っていたし、Shal自身もそう思っていた。

それがこの、身を貫くような憎しみ。生まれて初めて味わう感情に、Shalは我を失った。

ああああああっ!!

ベッドから跳ね起きると、拳を振り上げてOlに突進する。激情のままに振り抜かれた細腕は、しかし軽々とOlによって受け止められた。

なるほど、貴様の要求は良くわかった

憎らしいほど落ち着き払った態度でOlはそういうと、Shalの腕を離してくるりと背を向けた。

まずは右腕だ

Olの言葉の意味をはかりかねながらも、不吉な気配を感じ取ってShalの鼓動がどきりと高鳴る。

次に左腕、右足、左足。その後は耳を削ぎ、目を抉り、舌を切り取る。安心しろ、回復魔術をかけながら少しずつ進めてやるから死にはせん。何も出来ぬ肉の塊になったところで、会わせてやろう。お前の愛しい男にな

待って!

ShalはOlに縋りついた。怒りも憎しみも即座に消し飛び、代わりに恐怖が完全に彼女の心を支配している。

お願い、やめてお願い、します。なんでも、しますから

彼女の両目からは涙が溢れていた。少女の脆弱な誓いなど、老獪な魔術師の前ではないも同然だった。

ほう。ならば言う事があるのではないか?

ぐ、とShalは言葉に詰まった。だが、躊躇しているとOlは彼女から興味を失ってしまう。つまらない羽虫でも観察する子供の様な表情で、OlはShalを見ていた。角を持つ甲虫や蝶の様に見ていて面白いものではないが、懸命に飛んでいる間だけなら目を向ける気にはなるそんな感じの表情だ。

おお願いです、Ol様。どうかどう、か、この身をっうう犯して、ください!

ついに、貞淑な白アールヴの僧侶は屈した。

ふむまあいいだろう。ベッドに横たわり、服をたくし上げて脚を開け

特に感慨を見せるでもなく、Olは命じた。おずおずとした動作でShalはベッドに身体を横たえ、震える手で服をたくし上げた。

全部見せろ

下半身だけを露出するように服を上げたShalに、Olは文句をつける。Shalは目の端に涙を浮かべながら、言われた通りにした。脇で引っかかる場所まで服をたくし上げ、彼女の素肌が殆どあらわとなる。

肉感的な黒アールヴの身体に比べ、白アールヴの身体は凹凸に乏しい。ささやかなふくらみと、子供のように毛もひだも無いシンプルなスリットがOlの無遠慮な視線に晒され、Shalはきゅっと身体を縮めた。

Olは言葉も発さずに彼女にのしかかると、濡れてもいない秘裂に己の物を強引に突き入れた。

あああああっ!!

文字通り身を裂く痛みに、Shalは悲鳴を上げた。あまりの痛みに、目からぽろぽろと涙が零れ落ちる。喪失感など感じる暇さえ無かった。

痛みに身をよじり、苦しむShalに構う事無くOlは抽送を繰り返す。

うっ! く、ああ! ぃっ、う、ぐぅぅぅっ!

ベッドのシーツを手の色がなくなるほど強く掴みぼろぼろと涙を流しながら、Shalはそれでもやめてだとか嫌といった言葉を口にしなかった。彼女の口から漏れるのは、ただ苦痛の声のみ。少しでも拒否の姿勢を見せれば、仲間に累が及ぶ事を懸念しているに違いなかった。

口にも表情にも出さないが、その意志の強さにOlは少しだけ感心した。まあ、頃合か。そう胸中で呟き、Shalの悲鳴に紛れさせて小さく呪文を唱える。最初に畏怖を与えるのが目的であって、壊してしまうのは本意ではない。

う、あぁぁあ?

少しずつ痛みが和らぎ、Shalは戸惑ったように目を瞬かせた。

大分濡れてきたな。どんなに嫌がろうと、所詮女はこんなものだ

そんな、わけ

ではこれはなんだ?

Olはわざと音が鳴るように、ぐちゅぐちゅとShalの中をかき混ぜて見せた。

Shalの表情が、絶望に染まる。無理やり穢されるのは死よりも辛く耐え難い事だが、仲間の為を思えば耐えられる。しかし、心を穢されるのは、彼女の許容量を越えていた。

この表情は流石にまずい、とOlは方向転換する。

恥じる事はない。これは自然な事、神が定めた当然の摂理だ

神が?

ああ、とOlは頷く。

俺はお前達四人を一人で倒した。計略は用いはしたが、それでも俺がお前達より強い事は確かな事実だ。そして、女は強い男に惹かれるように身体ができている。心はどうあれ、肉体は嘘をつけぬ。天より与えられたものならば、神がそう定めたと言う他あるまい

勿論、そんなものは大嘘だ。

Shalの秘部が濡れているのは、単に強引な抽送から身を守る為の防御反応に過ぎない。前戯もなしに無理やり貫かれて感じる女などいるわけもなく、ただ強い男に女が惹かれるならば、世の中の男達は苦労しない。

しかし初めて男を知り、事実股間を濡らし痛みも消えているShalにはそれを疑う事は出来なかった。疑えば、自身の心が穢された事を認める事になる。そんな事には耐えられない。だから、ShalはOlのその嘘に縋りついた。

すぐにもっと良くなる

OlはShalに突き入れながら、隠し持った媚薬を彼女の秘核にぬりつけた。いつぞやの、スピナ製作のスライムに原材料として使われたものを、更にOlが改良を加えたものだ。皮膚に塗っても経口でも効果を発揮し、じわじわとその性感と興奮を盛り上げる。

んふ、ぁ

程なくして、Shalは甘い声をあげはじめた。

いや、こんな嘘嘘です

自分の身体を走る感覚に戸惑い、必死に否定する。

嘘ではない。言っただろう、お前の身体は俺に惹かれ、既に受け入れているのだ。だが、心まで許せとは言わん

意外な言葉に、Shalは思わずOlの顔を見上げた。

心はお前のものだ。差し出すのは身体だけで良い。神の御業をたっぷりと味わうがいい

そう言うと、OlはShalの淫核を攻めながら奥を突いた。傷はすっかり癒え、媚薬で火照った彼女の身体はその快楽を従順に受け入れた。

ふぁぁあぁぁぁっ! ふぁ、はぁぁんっ

心は許さなくていい。その言葉に、Shalの苦痛は大分減じた。

認識と言うものは、変化に過敏だ。それは何も五感に限った話ではない。

ナジャはゆっくりとした変化で視覚と記憶を騙したが、Shalは逆に感情を一気に底まで落とし、そこから快楽と許しでじわじわと上げる事により、まるでOlが彼女に幸福を与えているかのような錯覚を得ていた。

さぁ、行くぞ。強い男の精を子宮で受け止める事は、女としての何よりの喜びだ。全身を喜びと快感が突きぬけ、お前を幸福へと導くだろう。出すぞっ!

奥までずぶりとShalを貫き、Olは奥で精を解き放つ。同時に、先ほど使ったのとは別の媚薬を彼女の秘部に塗りこんだ。今度のは即効性はあるが持続力の短い物だ。

あああ、ああっ、あああああああああーーーーっ!!

Shalはあらん限りの力でシーツを握り締め、橋の様に体を反らせて絶叫した。目の前でバチバチと火花が散り、視界が明滅する。今までの穏やかな人生の中で、一度も感じたことのない激しい快楽だった。

気をやり、意識を失うShalの表情は、すっかり快楽へと溶けていた。

第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-5

それから、数日が過ぎた。朝食と共にOlはShalの牢を訪れると、彼女を抱いて出て行く。そんな生活が続いていた。Shalを抱いた後は、Olは顔をアランの物に変化させてナジャの牢へと向かうのだが、それはShalの関知する所ではない。

しかし、牢の中で退屈を持て余していたナジャとは違い、幸か不幸かShalには時間をたっぷり使って悩まなければならないことがあった。

それは、どうやってOlを誘うか、と言う事だ。

とは言っても別に快楽に屈し、Olの手に堕ちたわけではない。それは強制された事だった。毎回別の言葉で、Olの寵愛をねだり、精を求めなければならない。

どのような言葉を選び、どのように言うかは自分で考えろ。ただしその内容が気に入らなかった場合、お前を抱く事はない。

二回目に牢を訪れた際、OlはShalにそう告げた。

それから、Shalの試行錯誤の日々が始まった。二回目はどうかあたしを犯してくださいと言って駄目だと拒否され、考えあぐねた挙句出たのはあたしを愛して、どうかお情けを下さいませだった。

もし、もし自分が選ばれるような事があれば、アランに告げようと思っていた言葉だ。少女の淡い恋心は、その言葉と共に白濁の液で穢された。

三回目からは、淫語を織り交ぜる事を強制された。淫語とは何ですか?と尋ねると、Olは呆れたような表情を見せ、その日の午後から食事の運搬係が人形の様な黒髪の娘から、女悪魔に変わった。

Shalとは対極の豊かな乳房を持つその女悪魔は様々な淫語をShalに教え込み、アドバイスを送った。悪魔と言うのはもっと恐ろしいものだと思っていたShalは、まるで歳の近い友人の様に気さくに話しかけてくる女悪魔とすぐに打ち解け、熱心にその教えを学んだ。

四回目、ベッドに寝そべり自ら指で秘裂を押し広げ、ShalのおまんこにOl様の逞しいペニスを突き入れてくださいとねだると、Olは驚きの表情をみせ、良く出来たとShalを誉めそやした。

こんな屈辱的で恥かしい事を強制され、誉められても全く嬉しくない。Shalはそう思ったが、心の奥に何か不思議な疼きの様なものが残った。

その日以来、Shalは一日の大半をOlを誘う言葉を考える時間に当てるようになった。彼女がOlを悦ばせるほど、仲間達の安全が確保される。ならば、それに全力を尽くすだけだ。

食事の度に牢獄を訪れる女悪魔の助けを借りながら、Shalは思考を巡らせる。女悪魔はShalの足りない語彙を補強し、アドバイスをくれはするが、直接どういえばいいかは教えてはくれない。飽くまで文面自体はShal自身が考えなければならなかった。

最近では誘う時だけではなく、Olが射精する直前やした直後、更には行為の最中にも彼を興奮させるような言葉を言うようになった。女悪魔から貰ったアドバイスだ。そうするようになって以来、Olの対応も最初より柔らかいものになった気がする。邪悪な魔術師といえど、こちらが誠意を持って接すればその真心は伝わるのだ、とShalは感じた。

そして今日も、彼女はOlに抱かれる。

Ol様ぁOl様の立派なおちんちんで、Shalのおまんこの奥まで犯して、中にたっぷりザーメン出して孕ませてくださいぃ

Shalはベッドの上で四つん這いになり、ふりふりと尻を振りながらそうねだった。その秘裂からは何もしていないのに愛液がとろりと溢れ出している。口先でねだるだけでなく、本当に相手を悦ばせるならちゃんと身体の準備もしておかなければならない。女悪魔が教えてくれた助言に、Shalはあっさり納得し、軽く感動さえした。

相手の事を第一に考え、細かな気配りを巡らせるのが持て成しの心と言うものだ。

随分ねだるのが上手くなったな。いいぞ、Shal

誉めながらOlは彼女の腰をがっしりと掴むと、一気に奥まで突き入れた。

はぁぁんOl様の、大きいのが入ってきてるぅ

しとどに塗れたそこへの挿入に、初日の様な抵抗や痛みは一切ない。全身がうずくような緩やかな快楽がShalの身体を包み込んだ。

もっと突いてShalのおまんこ、たっぷり味わってくださいぃ

Olの抽送に合わせて、途中で抜けてしまわないように気を払いながらもShalは腰を振る。相手の動きに合わせる事で抽送距離が倍になり、快感も倍になる。

相手を気遣う事は大事だが、性交は一人でするものではない。相手の心を知る事など出来ないのだから、自分の感覚を基準にして考えるしかない。つまり、自分が気持ちよくなれる動きなら、大概は相手も気持ちよくなってると思っていい。

そんな女悪魔のアドバイスの通り、Shalは自分から腰を振って快楽を貪った。

くぅっ、いいぞ、Shal

Olが呻くようにそう言った。声色は苦しげだが、そんな時は男が気持ち良くなっている証拠だ。男は女の様に高く喘いだりしないのだ。

いいですっ、Ol様、あたしも、気持ちいいっ、もっと、もっと突いてくださいっ!おまんこのなか、ごりごりしてくださいぃっ!

代わりにShalは高く鳴いた。善がる言葉は自分の言葉で。演技などしなくて良い、感じた事を感じたまま率直に述べれば良い。大丈夫、Olならちゃんと気持ち良くしてくれるから。

女悪魔の言葉を一つ一つ思い返しながら、Shalはそれを丁寧に実践する。その度にOlのペニスが胎内でビクビクと脈打つのがわかり、Shalは嬉しくなった。

ああっ、いい、イく、イく! イっちゃうぅっ! Ol様のおちんぽに突かれてあたしイっちゃいますぅぅっ! 出して、白いのっ! Ol様の精液、沢山あたしの中に出してくださいぃぃっ!!

Shalは背筋を逸らし、全身を包む快楽に備えてぐっと腰に力を入れた。しかし、いつまで経っても、いつもの押し寄せるような快楽の波はやってこない。Olが、腰の動きを止めていたからだ。

Ol様?

不思議そうな表情で、Shalは自分の肩越しにOlに視線を向けた。

イかせて欲しいか?

はい、イかせて欲しいですお願いです、イかせてくださいぃ

Shalは懸命に腰を振る。しかし、四つん這いと言う体勢では思うように身体は動かず、それはかえって快楽への渇望を促すだけだった。

では、お前の真名を教えろ

そそれは

人間よりずっと精霊に近く、より根源的であるアールヴにとって、真名は魔術師のそれ以上に重大なものだ。魂を掌握されるどころの話ではない。真名は彼女そのものであり、それを教えるという事はShalという存在全てを掌握するに等しい。

その証拠に、Olに絶対の忠誠を誓った黒アールヴのエレンでさえ、真名を明かしてはいない。

イかせて欲しいんだろう?

あぁっ、はい、イかせて欲しいですぅ

ゆるゆると抽送を再開し、Shalは甘い声を上げた。しかし、速度が全然足りない。Olの動きはゆっくりとしたもので、Shalの情欲の炎を更に煽るばかりだ。

Ol様ぁ、お願いします、許してくださいっ! 真名は、真名だけはああぁ、もっと、もっと激しくっああ、駄目、やめないでくださいぃっ

ともすれば止まってしまいそうなOlの動きに、Shalは翻弄された。絶頂に達するには到底足らない緩やかな刺激を与えつつも、Shalの熱が冷めず、それどころかいや増す様な絶妙な動きだ。

Ol様、駄目、駄目ですぅうもっと、犯して、Shalを滅茶苦茶にしてくださいぃ!ああっ、駄目なのぉ、もっと奥、奥にぃ、やめちゃやです、くださいぃっ、Ol様の固くて逞しいおちんぽでShalのどろどろのおまんこ奥まで突いてぐちゅぐちゅに犯してくださいぃっ!

首を振りながら、Shalは激しく腰をOlに押し付ける。その腰をガッシリと手で掴み、Olは低い声で囁いた。

では、真名は言わずとも良い。その代わり、全てを我に捧げよ。求められればいつでも身体を開き、どんな命にも従う性奴となる事を誓えば望み通りにしてやろう

逃げ道を与えられ、すぐさまShalは叫んだ。

なるっ、なりますぅっ! ShalはOl様の性奴ですっ、Ol様専用の肉奴隷にしてくださいぃっ!!

そんな風に言えばOlはきっと喜ぶよ、でも取って置きだからね?

にこやかに笑いながらそんな事を言ったのが誰だったのかすら、今のShalの頭からは抜け落ちていた。しかし、単体ではただの淫猥な台詞も、Olの問いの前にはあまりにも浅はかな答えだった。

よしっ、では今からお前は俺の性奴隷だ。身体も心も全て俺に捧げ、いつでも股を開け。俺の命には絶対に逆らえず、喜んでその身に精を受けるのだっ!

あああああああっ、来る、来るぅっ! イく、イっちゃいますっ!Ol様の精液っ、来たよぉっ、あああああああああああああああああっ!!

一気に突きいれ、噴出する精液にShalは獣の様に叫び声をあげた。

清めろ

精を放出したばかりのペニスを突き出すと、Shalは嬉しそうにそれに舌を這わせた。慎み深く、敬虔な僧侶の白アールヴはもはやいない。自ら呪いを受け入れ誓約を行った今、彼女は快楽を貪るOlの性奴でしかなかった。

お前の真名は?

シャーリー・サザーランドです、Ol様

うっとりと美味しそうにOlの物にむしゃぶりつきながら、Shalは素直に答えた。真名を聞くまでもない。状況がどうだろうと、全てを捧げよとOlはいい、Shalはそれに同意した。彼女はもはや、魂まで全て売り渡したのだ。

うむ。ではシャーリー。しばし休むが良い

OlがShalの頭に指を触れると、彼女はこてんとベッドに横になって寝息を立て始めた。

お疲れ様~

迷宮の暗がりの中から染み出すようにリルが姿を現し、Olを労う。

ああ、流石に少し疲れた。お前にも手間を取らせたな

昨日、ナジャを堕としたばかりだ。午前中はShalを相手にし、午後はナジャを相手にする。その合間合間にダンジョンの管理業務もある。ここの所のOlは多忙を極めていた。

いーよいーよ。初心な子にエロいの教え込むのもまあまあ楽しかったしね

淫魔らしく下品な笑みを浮かべながら、リルはOlの肩を揉みほぐす。

にしてもご主人様ってああいうのが趣味なの? 私もあんな風におねだりした方が良い?ご主人様ぁ、リルのオマンコご主人様の逞しいおちんちんでズボズボしてぇ、って

そうしながら同時にOlの背に胸を押し付け耳元で囁くリルに、Olは大体彼女の意図を察したが好きにさせた。

別にあれは俺の趣味じゃない。言霊と言ってな、言葉と言うのは力を持つ。それが自分のものであれば尚更だ。嘘だとわかっていても言葉は繰り返すうちに真実を帯びていき、終いには本当なのか嘘なのかもわからなくなる。あの娘の様に一本気な性格なら尚更だ。心は差し出さなくていいといったが、ああいう一途な娘にはそんな事は不可能だ。相手は選ぶが、まあスタンダードな堕落のさせ方だな

とは言え、残る一人、魔術師の娘にはこの方法は効かないだろうな、とOlは考えた。

ふーん。私の事もその方法で堕落させちゃう? 私をOlにメロメロにしてみる?

後ろからぎゅうと抱きしめ、リルはOlにくすぐるように囁いた。

お前の様に二枚舌を使い分けられるような相手には効かん。善がっている演技をされたらそれまでだからな。それに、悪魔なんてものは存在自体が端から堕落しきっているものだろうが

あーそうね、そんな事されなくても私Olの事結構好きだしね

そうか

気のない素振りで答えるOlの背に、リルはそっと頬をくっ付けた。

ほんと、だよ?

Olはそれに答えず、すっと立ち上がる。そして振り向くと、リルと視線は合わさずに言った。

それより、腹が減ったんだろう。褒美だ、相手してやるから寝室まで行くぞ

ん。やったーっ、ひっさしぶりのごっはんー!

努めて明るい声を出し、リルは諸手を挙げて喜んだ。いつかは心を開いてくれる事を願いつつ、こんなの悪魔らしくないな、と思いながら。

第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-6

やっと来たの

牢獄に姿を見せたOlに、青銀の髪の魔術師ウィキアは冷たくそう言い放った。

彼女は既に数日をここで過ごしている。朝晩の食事を届けに来る娘以外に牢を訪れるものも無く、その冷静な口ぶりとは裏腹に彼女はかなり焦っていた。

もう、ナジャとShalは何らかの形で処分されてしまった可能性は高い。対処されるなら自分が最後であろう事は大体予測していた。ナジャとShalを篭絡した後でなら、彼女達がウィキアに対しての切り札になりえるからだ。

安心しろ。お前の仲間達は皆生きている

そんな言葉で安心できるとでも思っているなら、あなたは大間抜け

ウィキアはにべも無く言い放つ。大体、生きているなんて何の保証にもならない。例え何も出来ない肉達磨にされてようと、意識があるならそれは生きているんだから。

そうだな。では言い直そう。大きな怪我もないし、精神を壊すような事もしていない。今すぐ地上に戻せば、冒険者として復帰できる。三人ともだ

何が言いたいの

そんな情報には何の意味も無い、と言わんばかりの態度でウィキアは核心を促した。事実、そんな情報に何の意味も無い。嘘など幾らでもつける。

情緒の無い奴だなまあいい。お前とは手っ取り早く賭けをしにきた

賭け?

鉄格子越しに怪訝な表情で問い返す彼女に、Olはうなずいた。

ちょっとした、簡単なゲームで俺と勝負をしてもらう。お前が勝てば、仲間全員を無事に地上に帰してやる。俺が勝てば、お前自身を貰い受ける。条件は3対1だ。お前に有利だろう

馬鹿な事を言わないで。そんなものに乗るわけが無いでしょう

提案に飛び付きたくなる衝動を微塵も見せず、ウィキアはそう答えた。現状は完全に手詰まりだ。ウィキアの能力では、魔術を封じられた状態で逃げ出す事など出来ない。

まあそういうと思ってな。公正な審判役も用意した

Olが言うや否や、暗闇に炎が立ち上り、全身赤銅色の巨大な悪魔が姿を現した。

もし俺がゲームでイカサマをすれば、この悪魔に魂を捧げてお前の勝ちとする。対等な勝負だ。受けるか?

ウィキアはじっと考えた。勿論、この悪魔はOlの配下だろうが、悪魔というのは本質的に人間の絶対的な味方にはならない存在だ。これほどの大悪魔となれば尚更。魂を賭けているとなれば、悪魔は容赦なくそれを取り立てるだろう。性格にもよるが、場合によってはウィキアの味方に回ってくれさえするかもしれない。

いいでしょう。話を聞くくらいの気分にはなったわ。説明してみなさい

牢の中でベッドに座って足を組み、魔術師の少女はそう言い放った。

ゲームの内容は実に単純だ。まず、ウィキアとOlは攻撃側と防御側に分かれ、それぞれ身体の部位を相手に見えないように隠しながら書く。

書けるのは両手足と頭、胸、腹、腰の8箇所。攻撃側と防御側の書いた部位が同じであれば防御成功で、攻守交替。違った場合は攻撃側に防御側のその部位の所有権が渡り、やはり攻守交替する。

所有権を取られた部位は呪いによって相手の手に渡り、自由に動かすことは出来なくなる。ただし、生命維持に必要な内臓の活動や、視覚、聴覚などの五感、思考能力や意思、発言する為の口や喉などは所有権を取られても自由に動かすことが出来る。実質、四肢の動きを制限するものと考えていい。

イカサマについては、多岐に渡る。読心術、遠隔視、未来視、使い魔等の利用による相手の手を読む全ての行為や、暴力や呪いなどによるゲーム終了以外の方法によるゲームの停止や手の強制、妨害、幻術等による手の偽装、約束の反故などは全てイカサマとみなされ、発覚次第悪魔によって魂を奪われ、ウィキアの勝ちとなる。

例外は両腕の所有権を奪われてゲームが続行できなくなった場合で、これは反則には含まれない。と言ってもゲームの続行は出来なくなるから、実質敗北となる。ウィキアがそこを指摘すると、Olはお前には口も脚もあるだろう?と答えた。

意外な事にウィキア側は反則はない。といっても、魔力を封じられ道具もない状態では反則しようにも出来ないのだが。

勝敗は、相手に自分の持つ肉体の所有権が一箇所を残して全て奪われた時点で敗北となる。残り一箇所になれば負けようがないのだから当然だ。

勝敗がつけばお互いの取得した所有権が元に戻った上で、ウィキアが敗北した場合は彼女の全身の所有権がOlのものとなり、Olが敗北した場合はウィキアを含め、仲間4人を無事に地上に送り届けてもらえる。

既に仲間が無事でない場合は、約束の反故に違反するのですぐさまウィキアの勝ちとなる。Olの魂を奪い去った後、責任を持って悪魔が彼女達を地上に送ることになる。

無事の定義は、悩んだ結果地上に戻った後、元と完全に同じように戦える心身状態であることとした。本当はOlと戦えるくらいにしたかったが、恐らく最低でも逆らえなくなる呪いくらいはかけられているだろう。まずは勝負の場にOlを引きずり出さない事にはどうしようもない、とウィキアは仕方なく妥協した。

では始めるとするか。先攻はお前でいい

Olは椅子にゆったり腰を下ろし、鉄格子をはさんでウィキアに向かい合った。間には無言で炎を纏った悪魔が立ち、四本の腕を組んで両者を睨みつけている。片手でも札を隠してかけるように、譜面台の様な台と筆が用意された。

このゲームはいうまでもなく先攻が有利だ。相手の所有する肉体を残り1個にした時点で勝ちとなるのだから。ウィキアはゆっくりと思考を重ねた。このゲームに時間制限は特に指定されていない。

お互いがランダムに場所を指定するなら、攻撃が失敗する可能性は1/8だ。終盤はともかく、序盤の攻撃はあまり深く考えずともいい。だが、だからこそウィキアは深く考え込んだ。

8種の部位の価値は対等ではない。それが、このゲームを単なる運の勝負から、読み合いが必要な複雑なものへと変化させていた。攻撃が成功すればその部位は一時的にとはいえ相手のものになる。

腕をとられれば手で文字を書けなくなる。つまり、その時点でウィキアは敗北する。いざとなれば口や足で書くことも可能だろうが、出来ればそんな屈辱的な事はしたくないし、やりたくても腹や腰では無理だ。腕は最優先で守らなければならない。

逆に、Olはそういった事情は多少有利だ。例え両手足を縛られても、口さえ動くのなら魔術で文字を書くことなど造作もない。対等といいながら、勝負以前の部分でウィキアは不利になっているのだ。

しかし、そこにこそ付け入る隙がある、と彼女は内心で呟いた。

書けたわ

随分長い事考えたな。まあ良い

ウィキアが部位を書いた札を差出し、Olもまた札を差し出す。長考したウィキアに対し、Olは殆ど悩む事無く札に答えを書いていた。

悪魔が互いの札を改め、金属のすりあうような不愉快な声で言った。

攻撃側、ウィキア。指定部位左腕。防御側、Ol。指定部位頭。攻撃ハ成功、Ol ノ 左腕ハ ウィキア ノ モノ トナル

Olの左腕が銀に輝き、ダン! という音ともに光り輝く楔が打たれた。

ふむ。では次は俺の攻撃だな

Olは気にした様子もなく、再び迷わずに札に文字を書いて伏せた。ウィキアは、まずOlの防御札に考えを巡らせた。Olがまず守ったのは頭だ。守るなら四肢、特に利き腕である右腕がもっとも可能性が高いと思ったが、その予測は外れた。

頭をとられて何か弊害があるのだろうか? 確かに頭は重要な部位だが、五感や口の動き、意志などは取られないからそれほど害があるとは思えない。

魔術も行動も通常通り出来るし、目を閉じさせたりしてゲームの妨害をするのは禁止事項だ。そもそも所有しているだけで神経が繋がっているわけではないのだから、ウィキアにOlの身体を動かせる訳でもない。

ウィキアは悩んだ末、札に部位を書くと悪魔に差し出した。先ほどと同じように悪魔が双方の札を見て、キイキイと声をあげる。

攻撃側、Ol。指定部位胸。防御側、ウィキア。指定部位右腕。攻撃ハ成功、ウィキア ノ 胸ハ Ol ノ モノ トナル

ウィキアの胸部が光り輝き、琥珀色の鎖がじゃらじゃらと伸びて締め付ける。

しかし、特に苦しい感じはしなかった。最初に定めた通り、心臓も肺も生命維持に必要な部分は問題なく動いているようだ。

しかし胸とは、とウィキアは内心驚きを隠せなかった。最初は間違いなく四肢を取りに来ると思ったのだ。Olからしてみれば四肢に頭を封じれば勝てる勝負なのだから、胸を取りに行く必要はない。しかし、だからこそ取りに行ったのかもしれない。優先順位を鑑みて論理的に予想を張るウィキアに対し、その裏を突いている、という事か。

次は私の攻撃ね

ウィキアはそういって、札を差し出した。今度はそれほど悩まずに差し出す。Olは相変わらず、殆ど間をおかずに札を出した。

攻撃側、ウィキア。指定部位右脚。防御側、Ol。指定部位右腕。攻撃ハ成功、Ol ノ 右脚ハ ウィキア ノ モノ トナル

ほう

Olの右脚に銀の楔が突き刺さり、Olは少し感心したように声をあげた。四肢を取りに行くというウィキアの戦略は読まれている。しかし、Olにそれほどの危機感はないはずだ。彼にとっては、腕も他の部位もさして価値に差はないのだから。

だが、そここそが付け入る隙だ。

宙をたゆたう銀と琥珀色の魔力を視界に収めながら、ウィキアはうっすらと笑みを浮かべた。

第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-7

ギフト、と呼ばれる先天的な才能がある。

それは魔術よりも一段高い運命の領域にある能力で、ごく一部の人間だけが持って産まれてくる。

英雄の星もそれに当たり、ギフトの中でも特に高い効果を持つものの一つだ。

ウィキアの持つ魔力の瞳はそれに比べれば随分とおとなしい。このギフトを持つものは、本来目に見えない魔力の流れを肉眼で見ることが出来た。彼女にとって他の魔術師は、盲目の剣士の様なものだ。魔力の流れも見えぬのによくもまあ器用に魔術を扱うものだ、とは思うが、彼女の目にはその様子は酷く危なっかしく映る。

Olは熟練の魔術師であり、全身に魔力を漲らせている怪物ではあったが、やはり盲目である事には変わりが無かった。悪魔に頼るまでも無く、Olが魔術を使えばそれは容易に知れる。単純なものであれば、それがどのような魔術であるかも解析できる。

つまり、両腕を封じてOlが魔術で筆を扱うようになれば、ウィキアは魔力の流れからOlの文字を当てられる自信があった。

ギフトは魔術とは違う。使うのに呪文も印も要らないし、魔力すら使うことは無い。封魔の呪具をつけられていても何の問題も無く使うことが出来るし、使っている事は悪魔にすら気取られることは無い。そもそもウィキアには反則は適用されない。万が一バレても何の問題も無い。

次は私の攻撃ね

ゲームは既に、4巡目へと突入していた。今の所、お互いに防御は成功しておらず、ウィキアはOlの腹を、Olはウィキアの左腕と腰を手に入れていた。

しかし腰とは、相変わらず妙な場所ばかり持っていく。ウィキアが腹を狙ったのは四肢からOlの意識を逸らす為だが、Olはまるで左腕を狙うことで別の部分から彼女の意識を逸らそうとしている様に見える。

ひあっ!?

そう思った瞬間、背筋を走る感覚に思わずウィキアは悲鳴を上げた。感覚の発生源に目を向けると、彼女の左腕は勝手に動き、自身の股間を淫猥に擦り上げていた。いつの間にか服はたくし上げられ、Olの目の前に秘部をさらけ出している。

目を凝らすと、Olから伸びた魔力がウィキアに纏わりつく鎖を通じ、ウィキアの身体を操っていた。

これは、妨害行為じゃないの!?

妨害デハナイ。文字ハ 書ケルダロウ

叫ぶウィキアに、悪魔は冷静にそう答えた。思考や行動の妨げになるような行為ならともかく、ウィキアの左手はゆっくりとスリットをなぞっているだけだ。気は散るものの、ゲームを妨害していると言う程ではない。

所有物を使って、所有物を嬲っているだけだ。何の問題がある?

続けるわ

ウィキアはまだ動く脚をきゅっと締めて股間をOlの目から隠すと、札に部位を書いて伏せた。次の狙いは、今度こそ右腕と見せかけて、左脚だ。Olの頭にあるのは今、右腕か、その他の部位か、と言った所だろう。その思考の隙間を突く。

攻撃側、ウィキア。指定部位左脚。防御側、Ol。指定部位左脚。攻撃ハ失敗

しかし、その思考が読まれていたのか、Olに防がれた。

有利だった先攻が一転、ウィキアが不利となる。

焦ったな。股間を弄られて呆けたか?

いやらしい笑みを浮かべながら、Olが嘲った。

言ってなさい

恥辱に顔をしかめながらも、ウィキアは札を出した。

攻撃側、Ol。指定部位右腕。防御側、ウィキア。指定部位右腕。攻撃ハ失敗

あなたこそ、色ボケのせいで血迷ったようね

言いながら、ウィキアは内心安堵した。これで先ほどの失敗は帳消しになった。それだけでなく、狙われた右腕を守れたのは大きい。文字を書く生命線であるだけでなく、両腕を操られて身体を辱められるなどぞっとしない。

攻撃側、ウィキア。指定部位右腕。防御側、Ol。指定部位腰。攻撃ハ成功、Ol ノ 右腕ハ ウィキア ノ モノ トナル

次に出した札で、ウィキアは喜びの表情を抑えるのに苦労した。Olの右腕に楔が突き刺さり、Olの両腕がついに封殺される。しかし、その思考の片隅で、Olの防御部位が気にかかった。何故、腰なんかを守ったのか?

いや、そんなことはもはやどうでもいいことだ。それよりも、Olの魔力の流れを解析せねばならない。ウィキアはぐっと目を凝らし、彼を見つめた。そんな彼女の視線の先で、驚きの光景が繰り広げられた。

Olは何の魔術も使わず、何事も無かったかのように腕を動かすと筆を取って札に部位を描いたのだ。

何で、所有権の無い部位を動かせるの!?

逆に聞こうか

ウィキアが言い咎めると、Olはニヤリと笑みを浮かべて言った。

所有権があるとはいえお前の身体を自在に動かせるのに、たかが所有権を持たぬ程度で何故自分の身体を動かせぬ、などと思ったのだ?

その言葉に、ウィキアは完全に自分の目論見がOlに露見していた事を悟った。

これは、反則じゃないの?

何故ダ?

悪魔にも問い返される。考えるまでも無い。相手に奪われたものを、魔術で動かしてはならないなどという規約は無い。ゲームの妨害をしているわけではないからだ。Olがウィキアの身体を所有しているからといって、その身体を使っての妨害は無いという事でもあるが、当てが外れてウィキアは落胆した。

筆を魔術で操るなら、魔力の流れを見ることは出来る。が、直接Olの身体を動かしてはそれはかなわない。魔力は空中ではなく彼の身体の中を流れ、外からは窺い知る事は出来ないからだ。

どうした。次は俺の攻撃の番だ。防御部位を提出しないか

悩んだ末、ウィキアは札を伏せる。

攻撃側、Ol。指定部位左脚。防御側、ウィキア。指定部位右脚。攻撃ハ成功、ウィキア ノ 左脚ハ Ol ノ モノ トナル

左脚に絡まる鎖を忌々しく見つめ、ウィキアは舌打ちした。ゲームが始まってから、ウィキアは右腕しか守っていない。右腕を最優先で守らなければならないという理由もあるが、右腕しか守らないという印象をOlにつけるためでもある。

今回、脚を狙われるという読みは当たったものの、左右を間違えたという形だ。

気持ちを、切り替えなければ。ウィキアは息を大きく吸い、目を閉じた。変わらず股間をまさぐる指も意識から外し、ゆっくりと精神を統一する。

んはぁっ!

すると、鼻から甘い声が抜けた。気付けば、いつの間にかウィキアの左腕は股間から離れ、彼女の胸をまさぐっていた。胸。最初にとられた部位だ。ふっくらと盛り上がった双丘の先端は痛いほどに硬く張り詰め、濡れた指によってくりくりと刺激されてウィキアの脳髄を刺激していた。

その上、裾の短いワンピース状の服は腕によってたくし上げられ、全身がOlから丸見えになっている。その様子を、Olはニヤニヤしながら見つめていた。

悪魔を見るが、全く関知する様子が見られない。それを見て、ウィキアはようやく自分の失策に気付いた。人間の感情の機微や、性的な事情などこの悪魔には推し量れないのだ。飽くまで、物理的、魔術的な妨害がある事しか判断できない。つまり、審判としてまったくあてにならないというわけだ。

そこで唐突に、彼女はOlの意図に気づいた。同時に、下種め、と心の中で吐き捨てる。所有権を取られても身体を動かせるOlに、特定の部位を守る意味は無い。意識的な動きは魔力で動かし、無意識的な動きは規約によって保障される。

だが、生命維持に関係ない、しかしあまり意識的とはいえないような活動は、所有権が無ければ動かせないのではないだろうか。だからOlはさっき、腰を守った。生理的な欲求による、半分意識的で、半分無意識的な、腰の動きつまりは、そういう事だ。

攻撃側、ウィキア。指定部位腰。防御側、Ol。指定部位腰。攻撃ハ失敗

嫌悪感に突き動かされて伏せた札は、あっさりとOlに看破された。

くっぅう

ウィキアの左腕が蠢き、再び股間へと戻る。彼女は必死で漏れ出そうになる声を押し殺した。胸を弄られてそこは火照りを帯び、ぬめりを増していた。更に、先ほど奪われた左脚が彼女の意思に反して大きく広げられ、脚を閉じて手を止める事さえ出来ない。

奥歯を噛み締めながら彼女は札に部位を書き、伏せる。

攻撃側、Ol。指定部位頭。防御側、ウィキア。指定部位右脚。攻撃ハ成功、ウィキア ノ 頭ハ Ol ノ モノ トナル

半ば無意識に右脚を守ろうとしたウィキアの隙を突き、Olは彼女の頭を奪い去った。右脚が奪われれば、下半身は全てOlのものとなる。つまり、股間を彼に晒すのを防ぐことは出来なくなるばかりか最悪、この場で犯される可能性すらある。

その恐怖心を、Olは巧みに突いたのだ。

これで、こちらの方が部位が多くなったな

その恐怖心を煽るかのように、Olは笑みを浮かべていった。

そうね

しかし、ウィキアは逆に覚悟を決めていた。混乱に陥っていた自分の頭を叱咤し、悔いや迷いを投げ捨てる。追い詰められる事によって、彼女の思考は平静さを取り戻していた。

今、一番優先すべきことは何か? それは、仲間の安全だ。自分の貞操や、命などどうなってもいい。しかし、アラン達だけは何としてでも救わなければいけない。

次は、私の攻撃よ

ウィキアは迷い無く、札を伏せる。

攻撃側、ウィキア。指定部位左脚。防御側、Ol。指定部位腰。攻撃ハ成功、Ol ノ 左脚ハ ウィキア ノ モノ トナル

む?

Olは感心したように声を上げ、眉をあげた。今のウィキアが、何としてでも所有権を奪いたいのがOlの腰だ。

だからこそ、そこを外す。

ふむ

Olは初めて少し考え、札に部位を書き入れた。対して、ウィキアは全く考える事無く筆を走らせる。

今のウィキアが全力で守らなければならないのは、右腕だ。ここを奪われれば、ゲームの続行自体が不可能になる。たとえ右脚を奪われ、犯されたとしても守らなければならない。

Olの攻撃の失敗で、ウィキアは再び優勢を取り戻した。

残るOlの部位は、頭、胸、腰の三箇所。

一方ウィキアは右腕、右脚、腹の三箇所だ。

攻撃を防がれる可能性はお互いに1/3。ウィキアは、運を天に任せる事にした。Olから見えぬように指先で筆をくるくると回し、止まった場所で決める。

筆は、横向きで止まった。

攻撃側、ウィキア。指定部位胸。防御側、Ol。指定部位頭。攻撃ハ成功、Ol ノ 胸ハ ウィキア ノ モノ トナル

胸に楔を打ち込まれ、流石にOlは呻く。これで彼の残り部位は2箇所。

次は何を守るか、ウィキアは考える。右腕を守らなければ、筆がもてなくなる。右脚を守らなければ、処女を奪われる。守るならこのどちらかしかない。

攻撃側、Ol。指定部位腹。防御側、ウィキア。指定部位腹。攻撃ハ失敗

だからこそ、ウィキアは腹を守った。

あなたは蛇みたいな男ね

薄く笑みを浮かべ、ウィキアは言ってやった。

狡猾で卑怯で姑息。薄汚れ、痩せた考えしか出来ない。だから、考えを読むのは容易い。次の私の手を教えてあげる。頭よ。頭と書くから、精々疑いなさい

言い放ち、ウィキアは素早く筆を走らせると札を伏せた。

それに対し、Olは初めて余裕を失い、長く悩む。やがてゆっくりと筆を取り、文字を書き込むと札を伏せた。

攻撃側、ウィキア。指定部位頭。防御側、Ol。指定部位腰。攻撃ハ成功、Ol ノ 頭ハ ウィキア ノ モノ トナル

Olの頭に、楔が突き刺さる。ピシピシと音を立て、ひびのようなものがOlの身体に広がっていく。

所詮、あなたはそんなものよ。他人を疑う事しか知らず、真実が何かもわからない。さあ、悪魔、私を開放して仲間の下に案内しなさい

ウィキアの言葉に、しかし悪魔は何の反応も見せない。立ち上がろうとするが、鎖は依然として彼女の身体に絡みつき、動くことは無かった。

どういう事? ゲームは私の勝ちでしょう! まさか約束を違えると言うの!?

ク、ク、ク

ウィキアの叫び声を、Olの笑い声がさえぎる。

若き魔術師よ。確かにお前の言うとおり、俺は疑う事しか知らぬ。しかし、年長者より老婆心ながら、お前に一つ忠告を与えてやろう。お前ももう少し他人というものを疑ったほうがいい

Olに突き刺さっていた楔は、ぴしりと音を立ててひびが入ったかと思うと、粉々に砕け散った。

どういうこと!? まさか、悪魔が

そやつは忠実に働いている。イカサマは何もしていない。ただ、お前が少し勘違いしているだけだ

愉快そうに笑みを浮かべると、Olは楔の無くなった身体をコキコキと鳴らした。

このゲームの勝敗は、お互いの所有する肉体が残り1部位になった時点で決まる。順番については言及していない。別にどれからでもいい

順番? 一体何の事を言っている? 一体何が起こっている?

混乱するウィキアの思考は、唐突に正解を掴み取った。

まさか、所有する肉体って

Olはうなずいた。

お前の仲間は三人だろう? 俺自身を含め、4人。良かったな、後3回勝てば仲間を救えるぞ

愉快そうに言うOlの言葉を聞きながら、ウィキアは表情を絶望の色に染めた。

第10話欲にまみれた冒険者どもに絶望を与えましょう-8

暗く冷たい地下の牢獄で、アランは芋虫の様に転がっていた。腕は後ろで鉄の輪によって縛られ、足も同様のもので束ねられている。当然、魔術を使う事もできなかった。

一昨日、一日だけ広い部屋に移動させられたが、それ以外はずっと彼は狭い牢獄の床の上に転がされていた。ベッドなどあるはずもなく、身体はずっと冷たい地面の上だ。食事は最低限のものが一日一度だけ運ばれ、具も何もない粗末なスープを、アランは犬の様に皿に直接口をつけて飲んだ。

両手足を縛られている上に、部屋には何もないために満足に用を足すことさえできない。自らの出した汚物にまみれ、この上なく惨めな気持ちでアランは辛うじて生を繋いでいた。

そのあまりの屈辱に、それでも命を断つ事無く生き長らえる事ができた理由は、ひとえに仲間の存在以外に他ならない。

最初の三日ほどは、仲間達が救出に来てくれる事を期待していた。真っ先に気絶させられたアランは、仲間達が全員捕まったことを知らない。動きを封じられたナジャはともかく、アールヴのShalや、あの頼りになるウィキアなら逃げ延びて救出作戦を練ってくれているのではないか、と思った。

それから三日間は、どうやらそれが期待できそうに無い事と、Olにアランをそれほど長く生かしておくつもりがない事を悟ってきた。食事が差し入れられるとはいえ、ロクに栄養もない塩だけのスープだ。身動きすら出来ない状況と冷たい床は容赦なくアランの体力を奪い、計り知れない無力感と汚物の据えた臭いがその強靭な精神力をことごとく削っていく。そう長くは持たないのだろう、とアランは直感した。

更に次の三日間で、アランはとうとうわずかな希望を抱いた。それまで彼に食事を運んでいたのは人形の様に美しい黒髪の女で、アランが何を言おうが眉一つ動かさず自分の任務を忠実にこなした。

しかし、七日目に食事を持ってきたのはその女ではなく、蝙蝠の翼を持つ女悪魔だった。その醜悪な翼にアランは顔をしかめたが、話しかけてみると彼女は意外にも気さくに受け答えした。

仲間は三人ともつかまっているという情報はアランを落胆させたが、それほどショックではなかった。三人の待遇が、アランよりはかなりマシなものであるという情報も同時に得られたからだ。

8日目、アランは別の心配を抱き始めた。それは、何故仲間達がアランより良い待遇を受けているか、という事だ。単純に考えれば、Olは三人を殺す気は無いという事だ。少なくとも、すぐには。

しかしそれは、アランにとっては最悪の展開を予想させる。

そして、その悪夢が現実となる日がやってきた。

アランはその日、湯で身を清めることが許され、足枷を外されて狭い牢獄を久々に出ることが出来た。そのまま、大き目の部屋へと案内される。アランがいた牢獄とは比べるべくも無い。床は綺麗に清掃され、壁は光を放って地上の如く明るい。大きなベッドや家具が設えられており、アランは部屋の隅にある椅子に座らされた。

カチャリと音を立て、手錠が椅子に繋がれる。嫌な予感を覚え、ここまでアランを連れてきた女悪魔に視線で訴えるも、彼女はアランなど見えていないかのようにさっさと部屋を出て行ってしまう。

誰もいなくなった部屋の中、何ともいえない嫌な予感がアランの背筋を伝う。飛び切り悪意の込められた罠がかかった宝箱を触っているときのような、何ともいえない嫌な予感だ。

しかし、アランには何も出来ない。手かせはがっしりと椅子に繋がれていて、どんなに引いてもはずれそうには無かった。

まんじりともせず待つアラン。程なくして、部屋の扉が開いた。

ナジャ! Shal、ウィキア!

入ってきた三人の姿に、アランは歓喜の声をあげた。囚人用の粗末な服を着てはいるものの、三人ともあまり弱っている様子は無い。ナジャは長かった髪が短くなっているが、大きな傷は無いようだった。

どうしたんだ? 皆。まさか、口をきけないようにされてるのか?それとも、耳が?

アランの問いに、ウィキアだけが首を横に振る。そして、ぽつりと呟いた。

アランごめん。ごめん

俯き、謝罪の言葉を繰り返すばかりで、ウィキアは目も合わさない。

ナジャは何を考えているのか、うつろな瞳で虚空を見つめるばかり。いつも通りニコニコしているShalもアランの言葉に答える事無く、ただ笑みをたたえるだけだ。

感動の再会は堪能できたか?

Ol! 貴様、三人に何をした!?

ガチャガチャと手かせを鳴らし、アランは出来うる限り身体を前に乗り出した。

ふむ何をした、か

Olは考え込むように歩を進めると、並んで立つShalとナジャの間にたって二人を抱き寄せ、その胸を鷲掴みにした。

説明して見せるか? この数日間で何があったか

アランの目の前で敵であったOlに胸を掴まれているというのに、二人は嬉しそうに頬を染める。その表情に、アランは激しい衝撃を受けた。

Shal、ナジャ、一体どうしたんだ!?一体、何がウィキア、お前は何かわかってるのか!?

会話すら出来ないShalとナジャに、ウィキアに視線を向ける。しかし、彼女は謝罪の言葉を繰り返すばかりで、こちらもこちらで会話にならない。

ふむ、そうだな。レオナ、説明してやれ

親密そうに本名を呼ぶと、Olはナジャの腰を抱いた。その言葉にようやく会話する術を取り戻したかのように、ナジャはアランに目を向けた。

すまんな、アラン。私はお前を騙していたんだ

そういってナジャはOlに視線を移すと、両腕をOlの首に回し、彼に接吻する。

私はOl様の忠実な部下。ずっとお前を騙していた

嘘だッ!! そんなそんなはずが無い、だって、お前はッ!

がしゃがしゃと手枷を鳴らしながら叫ぶアランの言葉を遮り、Olはナジャに命じる。

この男はお前の言葉が信じられんようだ。信じられるよう、お前の忠誠の証を俺に見せてみろ

はい、Ol様

ナジャは嬉しそうにうなずくと、ベッドの上に乗って四つんばいになり、Olに尻を向けた。

どうぞ、私の忠誠の証をお受け取りください、Ol様

ナジャっ! やめろ、やめてくれ! 嘘だ、こんなの嘘だ、冗談いや、はかりごとなんだろう? そうやってそいつを、誘って、首を刎ねる、そういう事なんだろう? ああ、駄目だ、Shal、ウィキア、ナジャを止めてくれ!

悲痛なアランの叫びに、Shalはニコニコと笑みを浮かべ、ウィキアは辛そうに顔を背けた。そんな彼らの目の前で、Olはナジャの秘裂に硬く反り返ったものを突き入れた。

好意を寄せ、相手も自分を憎からず思っている。そんな、恋人にごく近い間にあったはずの相手が、今見知らぬ男に犯されている。しかしそれよりも、ナジャが快楽に表情を溶かし、嬉しそうに腰を振っているという事が、アランの心を散々に打ちのめした。

やめろやめてくれ

叫びに叫び、暴れに暴れたアランは、Olがナジャの奥に白濁の液をたっぷりと吐き出す頃には、ぐったりと疲れて椅子に座り込んでいた。

お情けをありがとうございます、Ol様

両手で秘裂を広げ、ナジャはわざわざそこから垂れ出るOlの子種をアランに見せ付けた。

これで理解できたか? 私の身体は、毛の一本から爪の一欠けらに至るまでOl様のものなんだ。私は、Ol様を深く愛している。お前を騙して悪かったとは思っているが、主人の為だ。すまんな

サッパリとしたその口調は、アランの知る女戦士そのものだった。しかし、先ほどまで彼女が見せていた、媚びるような女の顔は見た事が無い。本当に彼女はナジャなのか? アランは、助けを求めるように他の二人に視線を向けた。

ああ、勿論他の二人に関しても説明しよう。次はシャーリー、お前だ

OlがShalを呼ぶと、彼女は嬉しそうに小さな身体を弾ませ、ベッドの上に乗り込んだ。

はい。あたしは、アランさんの事を愛してました。強くて、勇敢で、誰よりも優しい。そんなアランさんが大好きでした

恥ずかしそうにそういうShalは、アランの記憶と全く変わらない笑顔を彼に向けた。暖かな日の光のような、優しい笑顔。

でも、あたしはそんなものよりもっと素敵なものをOl様に教えてもらったんです

それが、淫猥に溶けた。Shalはナジャの愛液とOlの精液にまみれた彼のペニスに舌を這わせ、口に含んだ。

それが、このおちんぽですああ、硬くて、大きくて、逞しいアランさんのなんかとは比べ物になりません。すっごく、素敵

目の前で繰り広げられる痴態に、アランの股間はいつの間にか硬く隆起していた。彼が着ているのも三人の娘達と同様の薄い囚人服なので、膨れ上がった股間の形ははっきりとわかる。それとOlのものを見比べながら、Shalはくすくすと笑った。

そして、ベッドにころりと転がると、秘裂を指で大きく割り開いてOlを誘う。

Ol様、あなた様のいやらしい奴隷めを、その太くて素敵なおちんぽで奥まで犯して、Ol様専用の子種袋にたっぷり白い精液を沢山注ぎ込んでくださいませ

アランにはもはや、目の前の光景が信じられなかった。あの清廉で純情なShalが、三人の中でももっとも控えめで清楚だった彼女が、大きく股を開いて淫語を口にし、浅ましく精液をねだっているなど。

あぁっ! Ol様の太いの、入ってきてるぅっ!もっと、もっと奥までっ! 奥まで犯してくださいぃっ!!

アランが愕然としている間に、Shalの小さな身体に、Olのペニスがずぶずぶと埋め込まれていく。凶暴なまでの大きさを持つそれは、しかしShalの秘所にあっさりと飲み込まれた。

アランは打ちひしがれながら、それを聞いていた。打ちのめされたアランの心を、Shalの嬌声が更にバラバラに引き裂いていく。もはや叫ぶ事も、暴れる力さえも無い。

嘘だこんなのは、嘘だ夢だ、夢に決まっている

必死にぶつぶつと呟き、目の前の情景を否定する。粉々に砕かれた心を、それでもどうにか保つにはそれしか無かった。

さて、最後はウィキアだ

Shalの中にもたっぷりと精を吐き出し、Olは最後の一人を呼び寄せた。

一つ朗報がある。顔を上げてみろ

Olは後ろからウィキアを抱きすくめ、その華奢な顎を手で掴んで自分の顔の方に向けさせた。ウィキアはされるがままに身を任せつつも、嫌そうに顔をしかめる。

この娘は、他の二人と違って未だ俺に身体を許してはおらん。また、真名も捧げていない

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