だがいくら金の腕のスキルを持っていようと、それ以上の事は不可能だ。身体の表面を石で覆われているだけであれば、力を込めて破ることができるかもしれない。しかし実際には変性術によって筋肉までもが石と化しているのだ。
動いているのは生存のために必要な最低限の臓器のみ。どれだけ力があろうと心臓で皮膚を突き破ることができる生き物などいようわけがないし、そんなことをすれば待ち受けているのは確実な死だけだ。
Olはテールを無視し、クゥシェに向き直る。
姉のように上に乗るか?
いえおじさまの、なさりたいようにして欲しいです
しおらしい言葉だったが、勝負の事を考えるのであればそれが最善手だった。Olが攻められるより攻める方が好きという事も見抜いている。
ではそうだな。四つん這いになって見せろ
Olがそう告げると、クゥシェは従順にそれに従い、ベッドの上に獣のような姿勢を取ってOlに尻を向ける。クゥシェは全体的に細身で華奢な印象だったが、胸元と尻にはむっちりと肉がついているという、実に男好きのする身体つきをしていた。
先ほどしっかりと愛撫しただけあって、既にクゥシェの中はすっかり柔らかくほぐれ、とろとろに濡れて準備が整っていた。
文字通りの処女地を切り開くようにOlの肉槍が突き進む。純潔の証を突き破られる感覚にクゥシェが声を漏らすと同時に、Olも声を上げた。
処女特有の硬くキツい締め付け。だがそれだけでなく、Olの一物をぎゅっと包み込む柔らかさと、蠢くような肉のざわめきが同時に存在していた。
それはOlが今まで味わった中でも一、二を争う名器と言えた。その中にはサキュバスであるリルさえ含まれるのだ。無論、腰使いや膣の締め付けの緩急といった技術においては比べ物にならないが、その分単純な資質においては淫魔さえ上回りかねないほどの気持ちよさ。
Olといえども油断すれば達してしまいかねない程の快楽があった。
おじさま
思わず動きを止めその感触を確かめるOlを、クゥシェが振り返る。
わたしは大丈夫ですから好きに、動いて下さい
そしてそれを気遣いと取ったのか、そう告げた。
余計な気は使わんでよい。性交とは互いに気持ちよくなるためのものだと言ったのはお前だろう
そうでしたね
クゥシェはくすりと笑う。女になったばかりの少女のその笑みは、ひどく妖艶なものに見えた。
では、わたしを気持ちよくしておじさまも、たっぷり気持ちよくなってくださいね
ぐ、と腰に力を籠め。
言われずともそうするとも
クゥシェの尻を掴んで突き入れれば、甘い声が飛び出した。
あぁっどうして?最初は痛く苦しいだけのものと、お姉様に聞いていましたのに
太いものが侵入してくる圧迫感こそあれ痛みはほとんどなく、腹の奥が痺れるような快感にクゥシェは戸惑う。
我々の身体の相性がよほどよかったのだろうな
相性そのようなものもあるのですか?
単にOlの技巧が優れているからではないのか、とクゥシェは思う。事実、姉のルヴェは先ほどあれほど善がらされ、フローロも指だけで達してしまった。
そうだ。性交とは子を成すためのものと言っただろう。人には男と女には相性がある。より良き子を成すために男は己にとってより美しい女に、女は己にとってより強き男に惹かれる性を持っているのだ
Olはそう言って、クゥシェの豊かな双丘を後ろから鷲掴みにする。
あぁっつまりおじさまにとって、わたしはんぅっお姉様より、そこの方より、魅力的な女であるという、ことですか?
お前の中に入っているモノで、わかるだろう?
言いながら、一際強く突き入れられる怒張の逞しさに、クゥシェの膣がわなないた。
あぁっ感じますおじさまの、太くて、熱くて、逞しい男性器が
もっとみだらな言い方をしてみろ
耳元で囁かれる低い男の声に、クゥシェはぶるりと身体を震わせる。
おちんぽおじさまのおちんぽ、あぁっわたしの、おおまんこをっずんずん、突いてぇっ!わたし、処女なのに、はじめてなのに!気持ちよく、なっちゃってますっ!
Olの剛直はまるで何度も肌を重ねてきたかのようにぴったりとクゥシェの膣内に馴染み、彼女の気持ちいいところをあらかじめ知っているかのように的確に貫いてくる。これが相性が良いと言うことなのか、とクゥシェは身体を震わせた。
よくできた。偉いぞ。いい子だ
奥を突かれ乳房を鷲掴みにされながら、まるで幼児のように頭を撫でられるというギャップにクゥシェの頭が一瞬混乱する。
しかし受け入れてしまえばそれはどちらも酷く気持ちのいいものだった。
おじさま、もっとぉ
もっと何だ?
腰を打ち付けられながらねだれば、Olはそう意地悪く問いかける。
どっちもおまんこの奥ごしごしするのも、頭なでなでするのも、どっちももっとして欲しいです!
ごり、と奥を抉られて、クゥシェは悲鳴じみた嬌声をあげる。実際、Olのもたらす快楽はもはや拷問に近いものだった。こんな目にあってはルヴェも一溜りもないだろう、とクゥシェは頭のどこか冷静な部分で微かに思う。
おじさまの、おちんぽがわたしのおまんこの奥っ! 押す度にわたしの、身体がっ!あぁっ!おじさまのを、欲しがってるって!わからされちゃって、ますっ!
心から、クゥシェはそう乞い願う。
何が欲しいんだ?
おじさまの子種っ!おじさまの赤ちゃんが、欲しいですっ!
ぎゅっとクゥシェの膣口がOlのモノを締め付けて、上の口でも下の口でも精液をねだった。
下さいっ!おじさまの、強い男の人の赤ちゃんの液、注ぎ込んで、孕ませて下さいっ!
もはや勝負の事はクゥシェの頭にはない。心の底から、ただただ雌として雄の情けを欲しがる感情だけがそこにあった。
いいだろう。行くぞっ!
あぁっ!おじさま、おじさまぁっ!来てくださいっ!
注ぎ込む寸前にクゥシェが絶頂するよう調整すれば良いだけだ。彼女の体はもうとっくに決壊寸前で、流し込まれるその瞬間を心待ちに何とか堪えているに過ぎない。
望み通りイけっ!
ああああああぁぁぁぁっ!!
Olの腰が一際力強く奥に突き込まれ、射精に備えて大きく膨れ上がる。そしてそれに連動するようにクゥシェは高く高く声を張り上げ、絶頂に──
ごめんなさい、おじさま
至ることは、なかった。
感じているのも、精をねだる気持ちも、勝負の事をすっかり忘れていたのも嘘ではない。
自動化のスキルは、自分の設定した条件を満たした瞬間に特定のスキルを自動発動する事が出来る。そして彼女は自分が絶頂する直前に全身に小凍のスキルをかけるよう設定して、心からOlとの交合を楽しんだ。それが彼を射精させる為の最善手だと考えたからだ。
射精を堪えるようなスキルは使わないよう約束している。口約束だが、恐らく彼は守ってくれるだろう。クゥシェが子供を産んでもいいと心から思うほどに強く気高い男性なのだから。
そして、白濁の液が勢いよく迸り、溢れ出るのをクゥシェは目にする。
なぜ!?
それは、Olのものでは無かった。
なぜあなたがイってるのですか、テール!?
テールの腰だけが石化を解かれ、勃起した一物が服を突き破って露出し、だらだらと白濁の液を先端から垂らしていた。
申し訳申し訳ありません、お嬢様
脱力し切り、涙を流しながらテールは謝罪の言葉を繰り返す。
悪いが女に裏切られるのは慣れているのでな。そう簡単には騙されてやれん
あぁっ!?
Olに貫かれ、クゥシェの全身に快楽が走る。凍らせ無理やり止めた感覚が、急激に戻ってきていた。いや、それどころか2倍3倍になって跳ね返ってくる。
おじさまっ!そんな、わたしっ!
あっという間に高められる性感に、自動化が発動して快楽が凍て付き止められる。しかしそれは即座にOlによって解凍され、数倍する快楽が与えられる。
停止と解除を往復する度快楽だけが膨れ上がっていく事実に、クゥシェの肌が粟だった。
そんな中、Olの手のひらがクゥシェの顎を持ち上げ、目の前のテールを示す。
あれが弱い男の成れの果て、選ばれなかったものの末路だ
テールはOlに犯されるクゥシェの痴態を見ながら、動くことも出来ず、ただ男根を反り立てて射精を繰り返していた。体格はOlよりも頭二つ近くは大きいが、性器の大きさは半分にも満たない。
そしてお前は俺に選ばれた。姉よりも優れた雌として
それは、クゥシェが密かに最も欲していた言葉だった。いつでも強く、自信にあふれ、美しいルヴェ。誰もがスィエルの後継者であるルヴェを尊び、優先し、影の薄い妹のことなど顧みもしなかった。
テールが自分の事を好いていることも、その上でルヴェと肉体関係を持っていることも知っていた。テールは自分を愛しているにもかかわらず、ルヴェの勘気を恐れてそれを言い出すことも表に出すこともなかった。クゥシェは戦う前から敗北していたのだ。
なのに、今。
優れた雌であることを証明するために、どうしたらいいか、わかるな?
はいっ、はい、おじさま!
その強く気高く美しい姉を、無様に敗北させた強い雄が、自分を選ぼうとしてくれている。姉を選んだ男を情けなく射精させて、雄としての格の違いをこうもはっきりと示した上で、自分を選んでくれている!
ならばその選択に、全力で答える道しか残っていなかった。
わたしは、クゥは、おじさまのおちんぽで思いっきり達して、イキ狂って、絶頂おまんこにおじさまの精子を受け入れますっ!そしておじさまの可愛い赤ちゃんをお姉様より先にしっかり孕んで、雌として優れていることを証明して見せますっ!
それでいい。では、自動化のスキルを解除できるな?
スキルの事まで完全にバレていたのだ。もはや何の迷いの余地もなく、クゥシェは抵抗の意思を手放した。
はいっ今イキますぅぅぅっ!!
一度達するのに必要な快楽の、何十倍、何百倍もの刺激がクゥシェの身体を貫く。彼女はもはや声をあげる事すらできず、潮と尿とを激しく噴き出しながら、背中を丸めて絶頂した。
では、行くぞ
忘我の中でクゥシェはその短い言葉が何を意味するか、すぐに理解した。
くださいっ!おじさまのせーえきっ!子種を、奥に、奥にくださいぃっ!強い精子でクゥを孕ませて、赤ちゃん生ませてくださいぃっ!!!あああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
懇願通りに流し込まれる白濁の波に、クゥシェは途方もない喜びと快楽を感じながらも、一滴も逃すまいと膣を締め付け腰を押し付ける。
これでおじさまの、あかちゃん
そして注がれた精液をこぼさないようにするかのように、高々と尻だけは掲げたまま、ベッドに突っ伏すように失神した。
流石に八回目ともなると凄いイキっぷりでしたねー
Olのペニスから滴る愛液と精液を舐めとるように舌で掃除しつつ、フローロが感心したように呟く。
八回目だと?どういうことだ?
あ、ごめんなさい、今回は意識あったんですね
その言葉を聞きとがめたテールが問い、フローロがしまったという顔をした。
何、すぐに忘れるのだから気にすることはない
テールにか、フローロにか、Olはそう言いながら服を着こんでテールの元へと向かう。
貴様、何をする気だ!?
何、ただ同じことを繰り返すだけだ
そしてそう答えると、彼の頭に手のひらを向けて呪文を唱えた。
忘却
途端、テールの瞳から正気が失われ、ぼんやりと虚空を見つめる。その間に、Olは手早く三人を石化させると、元の位置へと戻した。ついでに変性魔術で破れた服も直してやる。
まだやるんですか?
そうだな、できれば十回くらいは繰り返しておきたい
流石にややうんざりした様子で、フローロはそうですかと返す。ブランによって自室に閉じ込められているよりはマシだと思えていたのは四回目くらいまでのことだった。同じような事を繰り返し何度も陵辱される姉妹を見ながら、自分だけ抱いてもらえないのは思ったよりもつらい。
ルヴェもクゥシェも必死に時間を稼ごうとしていた。約束がOlにとって致命的なものだと知らなかったから、口約束が守られるとは思ってもいなかったのだろう。奇しくも、その目論見自体は成功していたのだ。
外ではレイユさんだいぶ探してるんでは?
それはなかろう
きっかけは、フォリオが見せてくれた結界だった。解除する目途を立てたのだから、当然再現する事だってある程度はできる。
この部屋の外はまだ一時間も経ってはおらぬのだから
第11話繰り返し念入りにわからせましょう-4
十二回目。
おじさまおじさまんっちゅっ気持ちいいですおじさまぁ
ルヴェが意識を取り戻したとき、まず目に入ってきたのはOlと睦みあうクゥシェの姿だった。ベッドの上に腰を下ろしたOlと向かい合い、脚と腕とを巻き付けて、まるで恋人のように口づけを交わしながら下の口にずっぷりとその剛直を咥え込んでいる。
それを目にした時ルヴェが感じたのは、可愛い妹を犯されている怒り──ではなく。幸せそうに抱かれている妹に対する嫉妬であった。
ちょっとあんた、うちの可愛い妹に何してんのよ!
それを怒りで覆い隠し、ルヴェはOlに食って掛かる。
あらお目覚めになったんですね。おはようございます、お姉様
だが当のクゥシェは落ち着いた様子でいつもの控えめな物腰にほんの少しだけ自信を覗かせながら、ルヴェに挨拶する。
今、確実に赤ちゃんができるよう、おじさまに念入りに種付けして頂いているところなんですあんっ♡またぁ♡中出しありがとうございます、おじさま♡
はぁ!?な何言ってんの!?
Olの一物がどくりと脈動し、収縮を繰り返す。クゥシェの言葉がなくとも、彼女の中に射精しているのだとわかった。
ルヴェは一度もしてもらっていない、膣内射精を。
ちょっとテール、あんたは何してるの!?
ルヴェは自分たちを守るべき従者の姿を探す。勿論彼の姿はすぐに見つかった。部屋の片隅で、頭と右腕そして股間以外を石化されたまま、己のモノを一心不乱にしごくテールの姿が。
あんた何してるの!?
床には何度も吐精した跡が残っていて、もはや勃起する力も残っていないふにゃふにゃの男根をそれでもしごきながら、テールはOlとクゥシェの情交を血走った目で見つめていた。
ああお嬢様があんなに乱れられて中に出されて、それを受け入れている俺以外の男の精液を、中出しされて喜んでいる!
ぶつぶつと呟きながら萎えたペニスをしごく牙族に恐ろしいものを感じ、ルヴェは後ずさる。
あんた、一体何やったのよどうして、こんなことになってんのよ!クゥシェを離しなさいよ!
原因は一つしか考えられない。ルヴェはなおもクゥシェを抱き続けるOlに食って掛かった。
お姉様。お姉様はおじさままで奪うおつもりですか?駄目です。おじさまだけは差し上げられません
だがそれに答えたのはOlではなく、クゥシェだった。ぎゅっとOlに抱き着き、そう宣言する。
あんっ♡ごめんなさい、おじさま♡もちろん、所有物はわたしの方です♡強い雄に雌が所有されるのは当然のことですから♡でも、お姉様よりわたしの方を可愛がって欲しいんです♡
ずんと下から抗議するように突かれ、媚び切った声色で懇願する妹を、ルヴェは信じられないものを見る目で見つめた。クゥシェより、あたしの方がと喉から声が出かけて、彼女は愕然とする。
欲しいんでしょう?
それを見透かすように、クゥシェが言った。
お姉様はいつもそう。わたしのものは何でも欲しがった。おじさまのこの逞しいおちんぽも、もう一度入れてほしいんでしょう?
その言葉を聞いた途端、ルヴェの腹の奥がどくんとうずく。思い出した。何度も何度も何度も何度も、どれだけイッても容赦なく奥に突き入れられ、イカされ続けるあの快楽を。
お前たちは皆、勝負に負けた
その瞬間を見計らったように、Olが低い声でそう告げる。
姉は負けを認めず何度もイカされ無様に気を失い、妹は策を弄したが及ばず屈し俺のものになることを選んだ。そして従者は愛する者の痴態を目にし吐精した。つまりは全員、俺の手によって達したという事だ
あ、あたしは!
なおも意地を張ろうとするルヴェに、Olはすっと手のひらを向けて制する。
勝負に負けたのだから領地を渡せ、などとは言わん。お前たちに要求するのは至極簡単な話だ
一体何を要求されるのか、ルヴェは戦々恐々としてOlの言葉を待つ。領地以上のものとなれば一体何だろうか。命か、スキルか、それとも──
正直に話せ。ただそれだけでいい
想像を逞しくしていたルヴェは、だからOlの要求に肩透かしを食らった。
わたしは、おじさまの女にして頂けて、たくさん種付けして頂いて、幸せです
真っ先に、クゥシェがそう言ってぎゅっとOlに回した四肢に力を込める。
俺は俺はけして手の届かないお嬢様が、他の男に汚されることに途轍もない快楽を、感じている!
そしてテールまでもが、そんなことを言い始めた。
あたしあたしは
あぁっ♡
逡巡するルヴェの前で、クゥシェが腰を大きく振って甘い喘ぎ声をあげる。彼女の秘所に出入りする太い肉塊を目にして、ルヴェはとうとう堪らなくなった。
あたしも、またセックスしたい!その太いちんぽに抱き潰されて、イヤって程イカされて、許してって懇願しても許されずに犯されたい!
その光景を見ているだけで膣奥が疼き、本能がOlのモノを欲しがっているのがわかった。
クゥだけズルい!!
それを独占している妹に嫉妬して、羨んでいることを、ルヴェはようやく認めた。
お姉様こそ、ズルいです。お婆様の期待も、家を継ぐ名誉も、テールの事も、何もかも独り占めして、わたしのものを全て奪ってわたしを選んでくださったおじさままで奪うおつもりですか!?
普段大きな声など出したことのないクゥシェの怒鳴り声に、ルヴェは怯んでたたらを踏む。
あたしあたし、そんなもの、嬉しいと思ったことなんてない。テールだって無理やり相手させてただけで、心はずっとクゥの事見てるって知ってた。あたしこそ!あたしこそ、家の事なんて気にせず自由に振舞えるクゥの事が羨ましかった!
えっ
今度はクゥシェがショックを受ける番だった。敬愛し、尊敬し──そして羨み妬んでいた姉が、自分を羨ましく思っているなんて考えもしていなかったのだ。
今だってそう!あんたは家の事なんか何も考えもしないで、そうやって簡単に白旗を振って好きなことができる!あたしはあたしは、失敗する事なんて、負ける事なんて許されてないのに!
お姉様
ルヴェはいつも自信満々で、怖いものなどないのだと思っていた。何をするにも全部自分で決めて、クゥシェの意見など聞き入れてもくれない。だがそれは、責任感の強さと表裏一体だったのではないかとクゥシェは思い至った。
ようやく、互いに互いを理解できたようだな
見つめあう姉妹の頭をぽんと撫で、Olが声をかける。
お前たちは表向きは互いに尊重しあうふりをしながら、内心では互いに羨み嫉妬しあっていた。だが、だからと言ってその外面が全て偽りだったわけでもない
こくり、と姉妹は頷く。家族として愛しているからこそ、大事だからこそ。尊敬しているから、憧れているからこそ。自分が欲しいものを持っているのに、それを蔑ろにする相手の事が許せなかった。
もういがみ合う必要も、羨みあう必要もない。二人ともに溢れる程に、与えてやる。望むだけな
ぎゅっと抱き寄せられて、ルヴェは頬を染める。肩に回されたOlの腕には、これまで感じたことのない包容力と安心感があった。
クゥシェ。構わんな?
はい、もちろんです、おじさま。お姉様と一緒に可愛がってください
姉妹がぎゅっとOlに抱き着き、交互に口づけを交わす。
先に孕むのは、わたしですけどね
だがルヴェがOlとキスしている間に、クゥシェはOlにだけ聞こえるように耳元でこそりとそう囁いた。
あああ二人ともなんて、そんなああっ!
愛した相手と、関係を持った相手。その二人を寝取られる感覚に、テールは動くこともできず一人絶頂するのだった。
お疲れさまでした、Ol
ああ。お前にも苦労をかけたな
興奮と熱狂の末、意識を失った三人にもう一度石化をかけ直すOlに、フローロは本当ですよと答える。
この後ちゃんとわたしの事も可愛がってくれないと拗ねますからね?
わかっておる
そんな事を言いつつもフローロが差し出した飲み物に、Olは術をかけた後飲み干した。
いつもそれ、何の術をかけてるんですか?
毒探知だ
当たり前のように答えるOlに、フローロは流石に呆れた。このタイミングでフローロがOlに毒を盛る理由がなさすぎるが、そういう事ではないのだろう。
そんな性格だから十回以上も同じこと繰り返すんですよね
正確には十二回だな
ルヴェを挑発し、勝負を受け、篭絡して、記憶を消す。このルーチンをOlは十二度繰り返し、その度に暗示を刷り込んでいた。
ルヴェには、優れた性技によって快楽を得ることこそが最上の価値である事。
クゥシェには雌にとって価値ある雄に選ばれることこそ最高の幸福である事。
テールには、愛する者を寝取られ幸福を失うことこそが至上の快楽である事。
それぞれの価値観がそれぞれの価値観を補強し、円環を成して強め合う暗示だ。
記憶がなくとも暗示は残り、心身の変化も消えてなくなるわけではない。いやむしろ、記憶がないからこそ対処することも出来ず、心の傷は深まり快楽を覚えた肉体はそれに溺れていく。そして暗示がそれを更に深め、確実なものにしていった。
ルヴェにかけた暗示はすぐに効果を発揮したが、クゥシェはやや手ごわく、そしてテールの暗示を完全に定着させるには十二回も彼の前でクゥシェの処女を奪う必要があった。
己の身体にひびを入れる程のストレスに彼の頑強な精神はよく堪えたが、それでも最後はそれを快楽として受け入れる道を選び取ったのだ。
繰り返した回数はともかくとして、今回の方法ってこの子たちの人となりというか、性格がわかってないと取れませんよね?いつ調べたんですか?
目を付けた段階で言えば、中層に来る少し前だな
Olの手のひらに、ぽんと音を立てて使い魔が現れる。それは風船蝙蝠と呼ばれる最下層に現れるモンスターだった。ろくなドロップを落とさない上にふわふわと空に浮いて捉えどころがなく、倒すのが地味に大変だから忌み嫌われてるモンスターだ。
こいつは音もなく空を飛び小さい身体で闇にまぎれどこにでも入り込み、見つかったとしても大したモンスターじゃないから誰も気にせん。最高の斥候だな
この風船蝙蝠に密かにリルと名付けているのはOlだけの秘密だ。
中層に来る少し前ってわたしがブランに捕まる前ってことでは?
うむ。ラディコが攻め込んできた前後だな
当たり前のように告げるOlに、フローロは呆れたものか感心したものか大いに悩む。
ところで、今回頑張って手伝ったので、一つOlにお願いを聞いて貰いたいことがあるんですが
わかっておると言っただろう
どうせ自分の相手もちゃんとしろと言う話だろうと嘆息するOlに、フローロは首を横に振る。
ブランを、助けてあげて欲しいんです
第12話冒険者ギルドを作りましょう-1
おじさん、いらっしゃい!
お待ちしておりました、おじさま
ルヴェとクゥシェに迎えられ、Olはスィエル領を訪れていた。
Ol殿
その背後に控えたテールが、厳めしい顔つきでOlに告げる。
後で機会と場所を設けますので、どうか此度もお嬢様がたを思いきり犯して頂けますでしょうか
忠告かと思えば、酷い懇願だった。
男に情事を見られる趣味はない。わざわざお前には見せてはやらんぞ
無論ですとも!後で縛られ身動きを取れなくされつつ、Ol殿のものがどれほど良かったかを聞くのが最高に幸福なのです
少々方向性を間違えたかもしれない。Olはそう思ったが、今の魔力量でこの男を殺すことなく丸く収めるにはあの方法しかなかった、と自分に言い聞かせる。戦力としては非常に頼れる男ではあるのだ。
アンタがOlかい
三人に案内されて向かった最奥の部屋。大きなテーブルの向こう側に、鋭い眼をした老婆が待ち受けていた。
真っ白な太い三つ編みを長く垂らし、細く長い古木のような印象を与える老人。彼女こそ、中層でもっとも力を持つ三人の壁族のうちの一人、レイユ・スィエルであった。
うちのはねっ返りどもが随分と世話になったようだね
カン、と甲高い音を立てて長煙管を鳴らし、レイユは灰を落とす。
それで?一体何の用件だい
Olが対面の椅子に座ると、それに呼応するかのように背後の通路から武装した兵士たちが押し寄せて、たちまち彼をぐるりと包囲した。
孫娘を誑かされたくらいで腹を立てるほど狭量じゃないけどね、アタシに対しても同じ事が出来ると思われちゃあ困るんだよ
Olは落ち着き払った態度で兵士たちを見渡す。テール程の手練では無いにせよ、優れたスキルを持った者が揃っていた。たとえルヴェたちが加勢してくれたとしてもこの質と量には抗えないだろう。
今日は商談に来た
だがOlは気にした様子もなく、懐から皮袋を取り出すとテーブルの上に置く。レイユは一瞬道具袋を警戒するが、きっちりと口が革紐で縛られているため少なくとも生き物が入っている可能性はないと知れた。生き物を入れた道具袋の口は閉じることが出来なくなるからだ。
なんだい、こりゃ?
革紐を解き袋をひっくり返して出てきたのは、レイユをして目にしたことがないものだった。
がらくた、ですね?
クゥシェが鑑定を発動させてそれを見る。がらくたとは、その名の通りなんの効果も持たないアイテムより正確に言えば、アイテムでは無いもののことだ。破壊されてしまったアイテムや使用回数を使い切ったマジックアイテム、あるいは食べ終わった食料の器なども、鑑定するとがらくたと表示される。
クゥ、鑑定に頼りすぎるんじゃないっていつも言ってんだろ
だがそれはただのがらくたではないとレイユは見抜いた。あまりにも精巧な作りであり、何よりそれには明確に種類があったからだ。
これ何個あるの?おじさん
今回はそれを全部で十万個分持ってきた
そのうち最も小さいものをつまみあげるルヴェに、Olはそう答える。
えー、どう見たって十万個もないじゃない。せいぜい数百個ってとこでしょ?
ルヴェの言葉に、レイユの脳裏に稲妻が走った。相変わらずこの孫娘は、鋭いくせに抜けている。頭でっかちで考えすぎる癖のある妹と足して分ければいいのに、とレイユは常日頃から思っていた。
コレを、一体どうするってんだい
うむ。その袋の中身はひとまずくれてやるとして、今後お前にはそれとドロップ品を交換する権利をやる
慎重に問うレイユに、Olはとんでもないことを言い出した。
何いってるの、おじさん?こんな何の役にも立ちそうにないがらくたとスキルを交換なんてするわけないじゃん
そう、確かにそれは何の役にも立たないだろう。武器にもならなければ家具にもならない。食べられもしない。だが。
これはアンタんとこのフォリオって翼族だね
そのうちの一つを摘まみ上げ、レイユは呟く。問いかけのようだが、返答は求めていない。とっくに調べはついている事だ。
で、こっちはブラン。そしてこれがアンタが担ぎ上げようとしている前魔王の娘、フローロ
よく調べ上げているな
Olの世辞に、レイユは盛大に舌打ちして見せる。こんなものをレイユの元に持ち込む以上、Olの方がレイユの事をしっかり調べてきていることは明白だったからだ。
つまりこれは、ブランがフォリオ100枚分。フローロは更にその100枚分ってトコかい
察しがいいな、その通りだ。単位はまあフローロにちなんでフルとでも呼ぼうか
テーブルの上のそれをじゃらりともてあそび、Olは告げる。あらゆるものがモンスターから産出されるこの世界に、それまで存在していなかった新しい概念を。
これの名前を、貨幣という。俺の世界で最も強い力を持つ道具だ
理解できずに互いの顔を見合わせる姉妹をよそに、レイユはその価値を完全に理解していた。いや、正確には価値という概念そのものであることを。
つまりこれはあらゆるスキルやアイテムの価値を数字にするための道具だね?
流石だな。その通りだ
今まで、あらゆるアイテムやスキルは物々交換で取引されていた。自分の欲しいスキルやアイテムを、欲しがっている者と交換する。だが、自分が欲している物と、相手が欲している物が運良く合致することなどそうそうあるわけではない。
そこに目を付けたのが、レイユだった。不要なものはがらくた以外どんなものでも引き取る。そしてあらゆる品物の目録を作り、落とすモンスターの強さや希少性、有用さなどから釣り合うスキルやアイテムを提示する。
そうすることによってレイユは己の領地以外からもドロップ品を集め、中継し、かすめ取ることによって少ない戦力でもその勢力を維持してきていた。
だがこの小さな金属片が、そのレイユの仕事を全て奪ってしまう。レイユが今まで豊富な経験と勘で行ってきた取引が、誰にでも簡単にできるようになってしまう。
もう一度言おう。貨幣とドロップ品を交換する権利を、レイユ、お前にだけやる
今ならその利益を、独占することができる。これはそういう話だった。
つまりドロップ品を貨幣と交換するのは、アンタがやるって話なんだね
まあそうなるな
つまりこうだ。不要なドロップ品を手に入れた壁民は、まずOlの所にそれを持っていき、貨幣に交換してもらう。そして次に、その貨幣をレイユの所に持っていき、好きなドロップ品と交換することができる。
そしてレイユは必要なドロップ品を、Olから貨幣と交換で手に入れることができるのだ。レイユだけが、Olからドロップ品を譲り受けることができる。
しかもOlに払う値段より、壁民と交換する時の値段を高くすれば、レイユはその差分を丸々得することができるのだ。
いくつか決めることがあるね。まず、スキルの値は固定で、変えないこと。次に、在庫があるとき売り渋らないこと。そして、アタシが売るときの値段はこっちが勝手に決めさせてもらう事だ。どうだい?
ああ。それで構わん
なんだって?
あっさり承諾するOlに、かえってレイユは驚いた。条件を詰めていくことを前提に、まずはふっかけたのだ。あまりにもレイユに都合がよすぎる条件を、まさかそのまま飲むなどとは思ってもみなかった。
ああ、後は仕入れたスキルをこっちに提示する前に勝手に使うのも禁止させてもらうよ
もちろんだ
更に気づいた穴を埋めれば、それもOlは気にした様子もなく頷く。
取引の場はうちの者に見張らせるからね。誤魔化そうったってそうは
そもそも場所を分けるのは不便だろう。同じ場所で堂々と取引を行えばいい
Olの提案に、レイユは混乱した。あまりにOlに利益がないように思える。
悩むレイユを見て笑みを浮かべ、Olは懐からごとりと鉄の鎧を取り出した。
俺はこれを、いくらでも作れる
Olが鎧を撫でると、それは一瞬にしてざらりと貨幣の山へと姿を変えた。
なんだって!?
Olが貨幣をいくらでも作れるのであれば話は変わる。実質的に無限の富を所有しているようなものだ。レイユは得をするが、それ以上にOlが得をすることになる。
アタシがその話を飲まなければどうするつもりだい?
それは、レイユという大壁族が後ろ盾になるからこそ意味のある話だ。Olなどというどこの誰ともわからぬ人間が貨幣とやらを広めようとしても、乗る人間はいないだろう。レイユが協力しなければ彼の計画は簡単に頓挫する。
ハルトヴァンに持っていくまでの話だ
正気かい?アイツにその話が理解できるとでも?
中層でもっとも有力とされている三人の壁族。ユウェロイとレイユ、そして残る一人のハルトヴァンは極めて単純な男だ。脳味噌までもが筋肉で出来ていそうなあの男に、貨幣などという複雑な概念が理解できるとは思えなかった。
無論お前と組むよりは損はするだろうな。さりとてユウェロイに話を持っていくわけにもいかん
Olが自らの主であるユウェロイに頼まない理由は明白だ。彼は、ユウェロイを追い落とそうとしているのだ。そのパートナーを探し、レイユを選んだ。そういう事だろう。
商売というのは、本来互いが得をするべきものだ。俺も、お前も、そして貨幣を利用する壁民たちも得をする。故に裏切る必要はないし、破綻することはない。できれば俺はそれを、ハルトヴァンではなくユウェロイとでもなく、お前と築きたいと言っておるのだ
揺らぐことなく立ち上る煙に、レイユはカン、と煙管の灰を落とす。
全く、その手口で娘っ子どもも口説き落としたってのかい?やれやれ、こんな婆を口説いてどうしようってんだ
それは随分魅力的な口説き文句だった。もう五十程若かったら落ちていたかもしれない、などとは思うほどに。
アンタみたいなのが孫娘に近づくと知ってりゃ、もうちょっと警戒してたってのに
舌打ちして毒づくレイユに、手遅れですとルヴェとクゥシェがOlの腕にそれぞれ抱き着く。
で、ドロップ品を集める具体的な方策は考えてんだろうね
貨幣を広めるのならば始めが肝心だ。広がりだせば勝手に動くだろうが、まず壁民たちにそれを周知し使ってもらわねばならない。それは言うほど簡単なことではないはずだ、とレイユは読む。
うむ。それを広めるために、お前の領地に作ってもらいたいものがある
何を作るってんだい
また妙なことを言い出すんだろうね、と内心呟くレイユの心情を知ってか知らずか、Olは答えた。
冒険者ギルドだ
第12話冒険者ギルドを作りましょう-2
ネリスさん!見てください!
得意満面の顔でシェロが持ち込んだのは、毛皮の服だった。中層の強敵として知られ、中堅パーティでも出会えば逃げることを推奨される大猿のドロップ品だ。
シェロ様、大猿に勝ったんですの?素晴らしいですわ!これで名実ともに上級冒険者ですわね!
ネリスと呼ばれた女はカウンターに置かれたそれを確認すると、大仰に喜んでパチパチと手を叩いた。シェロは照れくさそうに、しかし誇らしげに鼻をこする。
では査定をいたしますので、他のドロップ品も出して頂けますか?
あ、いえ、今回はこれだけであと査定もいらないです!これネリスさんに差し上げます!
シェロの申し出に、ネリスは口元に手を当てまあと目を見開く。そして申し訳なさそうに微笑みながら謝罪した。
お気持ちは嬉しいのですが、規定で受付は冒険者の方からの贈り物は受け取ってはいけないことになっておりますの
そんなじゃあ、冒険者から受付じゃなく、俺個人からネリスさんに贈るという事では?
なおも食い下がるシェロに、ネリスは首を横に振る。
わたくしがオーナーに怒られてしまいますの。どうか聞き分けてくださいまし
あああのちょっと顔の怖いオーナーさんか
オーナーの顔を思い出し、シェロは少し怯む。確かに彼に怒られるのは恐ろしそうだ、と考えるシェロの手を取ると、ネリスは両手でぎゅっと握りしめた。
シェロ様のお気持ちは、しっかり受け取っておりますわ。それは、規定では禁じられておりませんもの
ネ、ネリスさん!
カウンターの上にぐっと身を乗り出し、ネリスに顔を近づけるシェロ。
その動きを、ゴホンと立てられた咳払いが遮った。
あら、オーナー
すまんが少々用事があってな。ネリスを借りて構わんな?
怖い顔と呼ばれたばかりの鋭い眼光がシェロを捉える。巨大な猿と戦い勝利した彼でさえ、思わず腰が引けてしまうほどの雰囲気がオーナーと呼ばれた男にはあった。
あ、も、もちろんじゃあネリスさん、また来ますね!
はい。お待ちしておりますわ
ニッコリと笑うネリスに手を振って、シェロは逃げるようにギルドを出ていった。
では、休憩に入りますわ
そう言って手を振りオーナーと共に奥の部屋へと向かうネリスを、他の受付嬢たちは羨ましげに見送った。
ギルドの運営は順調なようだな
ええ。それと言うのもOl様が下さった変化のおかげですわ
ネリスは、スカートに深く入ったスリットからすらりとした脚を覗かせてみせる。
彼女は豊かな胸元と気品のある物腰、そしてそのスリットから覗く美しい脚で、ギルドでも特に人気の受付嬢であった。その上品な立ち居振る舞いや口調から、上層壁族の令嬢なのではという噂すらある。
随分とモテているようで何よりだ、ナギア
そしてその正体は、蛇の下半身を持つ美女、尾族のナギアだ。彼女はそれなりに派手に動いていた為、名も売れている。念の為に偽名を使い人族に化けて、冒険者ギルドの受付嬢をしていた。
壁族令嬢どころか最下層の魔族奴隷だと知ったらどんな顔をするかしら、とナギアは内心ほくそ笑む。
あらOl様、焼きもちですの?
幾多の愛人を抱え込むOlが嫉妬などするはずもないが、ナギアはそう言って彼をからかった。
悪いか?
だが、するはずも無いそれをしていると告げる彼に、ナギアは内心驚愕する。
では確認してみますか?わたくしが他の男のものを咥えこんでいるかどうか
そうさせてもらおうか
スカートをたくしあげ、下着が見えるかどうかギリギリの線まで脚を露出して見せれば、Olは素直にそれに乗ってきた。
え、えっと、それではどのような体位でなさいますか?
変化は解かないのか?
やや動揺しつつもナギアが問うと、Olは不思議そうにそう尋ねた。これからまぐわおうと言うのに、美しい人の脚より醜い蛇の下半身がいいと言うのだ。
もう!あなた様のような方がいて、浮気なんてする訳ないじゃありませんの!
ナギアは堪らなくなり、Olに抱きついて口付けた。変化を解いて、蛇の下半身でぐるぐる巻きにして一生自分だけのものにしてしまいたい気分だった。
ですが今日は、この姿で愛していただけませんか?
構わん。元が美しいものは変化してもその美しさは変わらぬからな
蛇の身体では取れる体位が著しく制限される。色んな形で抱かれたいナギアの提案に、Olはまたしれっとそんなことを言う。
もう!もう!本当にそういうところですわよ!
ナギアは枕をOlの胸板に叩きつけると、休憩室に設えられたベッドの上に四つん這いになった。
今日は後ろからお願いいたします
なるほど、これは蛇の身体では出来ぬ事だな
Olは敢えてナギアの服を脱がさず、スカートの中に手を入れ下着をずらして中に指を差し入れる。
もう準備などとっくに出来てますから、Ol様のお情けを早くくださいまし
何度も嬉しい言葉を投げかけられ、ナギアのそこはすっかりびしょ濡れになっていた。前戯さえもどかしく、ナギアは尻を振って懇願する。
侵入してくるOlの硬いものに、ナギアは高く声を上げる。
一度、こうして思いっきりあんっ!お尻に腰を打ち付けられて、犯して欲しかったんですのああっ!
先程の男はお前とこうする事を夢見て貢ごうとしているのだろうな
あんっ!可哀想ですけど、その夢は叶いませんわ。わたくしが身体を許すのはOl様だけ、わたくしの中を使っていいのは、あなた様だけなのですから!
その言葉を証明するかのように、ナギアの膣口がOlの一物をギュッと締め付ける。
では俺の物という証を刻んでやろう
はいっ、下さいませ!わたくしはOl様だけの物だと、子宮にマーキングしてくださいませ!
一際強く突き込まれ、大量に腟内に流し込まれる感覚に、ナギアは思い切り絶頂するのであった。
Ol様は本当に酷い方ですわ。こんなに気持ちいいことを教え込んで離れられなくしておいて、ご自分は他に何人も囲ってらっしゃるのですもの
情事の後、ベッドの上で蛇の下半身をOlに巻き付けながら、ナギアは彼の胸元を指先でつつく。
ふむ。ではお前が一人で俺の欲求を満たしてくれるか?
死んでしまいますわ
だがOlの言葉に、すぐさま白旗を上げた。今も数え切れないほどイカされ何度も奥に注がれて、腰が抜け変化を維持することすら出来なくなっているのだ。これを毎日どころか朝昼晩と繰り返されては、比喩ではなく本当に死ぬ。
それで、ギルドの方は有望そうな者はいたか?
そうですわねやはり一番目立つのはスィエル姉妹ですわね。有力壁族だけあって、他の冒険者たちとは桁違いですわ。それ以外では先ほどのシェロ様やブルゴ様、カヴァ様辺りは中層第二区画程度の力は持ってらっしゃいますわね
仕事の話になってしまったことを少し残念に思いつつ、ナギアはスラスラと答える。彼女はギルドに登録している冒険者たちの顔や能力、人となりを全て把握し、ドロップ品の価格もほとんど暗記している。その有能さも人気の理由の一つであった。
だが、その情報にOlの期待していたものは含まれていなかったらしい。彼は難しい表情でそう呟くだけだった。
引き続き有望そうな者が見つかれば報告してくれ
かしこまりましたわ。最近また冒険者の方が増えて手が足りなくなっていますから、受付の数を増やして頂けますとありがたいです
わかった。手配しておこう
それにしても、とナギアは感嘆の息をつく。
あっという間に大きくなりましたわね。まさかこんなにうまくいくとは思っていませんでしたわ。ギルドもあの、貨幣というアイテムも
そうか?
Olとしてはこの世界に通貨がないことの方が驚きだった。何せフォリオですら、コインを見せられてそれが何なのか分からなかったのだ。ドロップ品として出てこないものは自分で作ろうという感覚そのものがないらしい。
だって、そうでしょう?ただのがらくたをスキルやアイテムと交換しろと言って、する者がいるとは思いませんわ
最初に、Olは貨幣を大量に配った。冒険者として登録したものに貨幣を一定数渡し、それをドロップ品と交換するという話を広めたのだ。
そこまでであればナギアも理解できる。要するに登録しただけでタダで物をもらえるという話なのだから。別に冒険者には上納の義務がついてくるわけでもない。
俺がいた世界には悪貨は良貨を駆逐するという言葉があってな
悪人が善人を虐げ蔓延るという意味ですの?
ナギアの問いに、Olは首を振る。
いや、言葉通りの意味だ。この場合、悪貨とは何の使い道もないがらくたである貨幣。良貨とは使い道を持ちそれ自体が価値を持つスキルやアイテムの事になる
Olは手のひらにコインと服を召喚し、ナギアの前に差し出す。
100フルの値を付けている服と、100フルのコイン。お前はどちらが欲しい?
それは勿論、服に決まっておりますわ
ちょうど全裸であったことだし、何よりOlから服を貰えるというのが嬉しい。
そうだ。同じ価値なら人は有用なものを手元に置きたがる。コインで支払えるのならコインを使いたがるのだ。そして市場からは、物々交換という形態は消え去る
物々交換は不便である上に、互いに良貨を使う必要がある。Olには貨幣が絶対に使われるという確信があった。
なるほどですが、Ol様の目的は、別に貨幣を流行らせて無限の財力を手に入れる事ではありませんわよね?
なぜそう思う?
Olがわずかに目を見開き見つめると、ナギアは予想外の事を問われたかのように慌てた。
えっ、だってOl様はそう、スキルにもアイテムにもさほど興味がなさそうですもの
なるほど、とOlは理解する。別にナギアは論理的にその解答に辿り着いたわけではないのだ。だが、人が欲するものを嗅ぎ分ける嗅覚を持っている。それは商人として実に有用な素質だった。
まあ壁族として成り上がる為の財力は必要だがな。俺が真に探しているのは人ブランを打倒できる人材だ
ブラン様を?ですがOl様は一度ブラン様を下しているわけですし、そう難しいことではないのでは?
ブランは非常に強いが、搦め手には弱い。無論生半可な搦め手であればそれごと破壊する力を持ってはいるが、Olであればいくらでも裏をかけるのではないか、とナギアは首を傾げる。
策を使わず、真正面からだ
無理なのでは?
そしてその首が、反対側に傾いた。
ブランの強さはシンプルな種族としての身体能力と、磨きぬいたスキルの強さだ。単純であるが故に真正面から勝つのは極めて難しい。
恐らく、金の腕と金の盾を持つテールでも勝てないだろう。
中層で力を持つ三人の壁族のうち、レイユはその経済力ゆえ。ハルトヴァンはカリスマと部下の練度ゆえに広い領土を維持している。
そしてユウェロイの力の根源は、ブラン個人の武力によるものだ。無論ユウェロイ自身の統率力や家柄といった条件はあるものの、ハルトヴァンが、そしてレイユがユウェロイ領を攻め落とすことができないのはブラン一人の戦闘力が原因だった。
彼女に完全に負けを認めさせるには、正面からそれを打破しなければならない。ユニスがいれば何とかなっただろうに、と思わずOlはため息をついてしまう。ないものねだりをしても仕方がないが、逆に言えばユニス並みの強さを持った個人が必要なのだ。
一人である必要はないが、特定の条件や初見殺しといった要素なしでブランに勝てる個人が。
まあそんな人材にそう簡単に会えるはずもない。今は焦らず、冒険者を集めて戦力を整えるしかないか、とOlは諦める。
オーナー様。よろしいですか?指導をお願いしたいという冒険者が来ているのですが
彼が待ち望んでいた原石に出会ったのは、そんなときの事だった。
第12話冒険者ギルドを作りましょう-3
シィルです、よろしくお願いします!
ユグですえっと、お願い、します
ナギアとの情事のあとを始末して服を着こんだ後、部屋に迎え入れた二人を見て、これはまたチグハグなコンビが来たものだ、とOlは内心思った。
何せOlの目の前に現れたのは、手のひらに乗りそうな大きさの翅族と、見上げんばかりの大きさの蹄族だったからだ。
翅族というのは、鳥のような翼を持つ翼族とはまた別の種族で、昆虫のような薄く小さな羽を持つ魔族だ。身体も小さく、ちょうどOlの知る小妖精に近い外見を持っている。
シィルと名乗った翅族は、丸くまとめた桃色の髪が特徴的な少女だった。身長は30センチ程だろうか。小さいのは背丈だけではなく、体型も同様だった。短い手足に起伏に乏しい身体付きは、幼い子供のように見える。
他の翅族はなりは小さくともしっかり女性の体格をしていたので、それはシィルの個人的な発育具合によるものだろう。しかしその愛くるしい外見に相違して、彼女の瞳には幼い子供にはない理知的な輝きがあった。
一方蹄族は名前の通り、蹄の生えた足が特徴的な種族だ。ユグと名乗った少女のふんわりとした淡い茶色の髪からは、牛のような黒い角と大きな獣のような耳が突き出していた。スカートの裾から生えた脚は膝から先が蹄の生えた獣のような脚になっていて、先端にだけ毛の生えた尻尾が緊張しているようにせわしなく揺れている。
だが何より特徴的なのはその大きさだった。蹄族は大柄な者が多いが、三メートル近いその身の丈は流石に規格外だ。そしてその身長もさることながら、特に目を引くのがその巨大な胸だ。彼女の大きく張り出した乳房は、Olをして今まで見たことがないサイズだった。
体格自体が大きいのだからバストサイズも大きくなるのは自然なことだが、それを考慮に入れてもなお大きい。サキュバスのリルや豊穣を司る火山の神サクヤでさえ、身長を同じだけに引き延ばしても敵わないであろう爆乳の持ち主だ。
その二人に、Olは見覚えがあった。最下層でサルナークに仕えていた奴隷だ。フローロに解放された奴隷たちは、そのほとんどが今は冒険者として登録していた。
では、わたくしは受付に戻りますわね。どうぞごゆっくり
ナギアがその蛇の下半身を撫でると、すらりとした白い脚に変化する。そしてOlの頬に見せつけるようにキスをして、部屋を出て行った。
オーナーさん、本当に魔族とでもえっちなことをしてくれるんですね!?
シ、シィルちゃん、失礼だよ
シィルがその体躯に似合わぬ大きな声で問い質すと、ユグもまたその巨躯に似合わぬ消え入りそうなか細い声でたしなめる。
女の魅力に種族など関係ないからな
じゃあ、えっちなことをしたら強くしてくれるっていうのも本当なんですか!?
まあ、本当だな
シィルの言い方には多少語弊はあったものの、ありていに言えばそのような話だったので、Olは頷く。
じゃあ、ユグちゃんともえっちしてくれますか!?
ああ。だが、お前はしないのか?
いちいち声がデカいな、と思いつつも、Olはシィルに尋ねた。
え?あたし?あたしは流石に無理なのでは?こんな身体ですし
己の身体を改めて確認するように、シィルは両腕を広げて見せる。確かにとてもOlの一物を受け入れられそうなサイズではないし、身体つきそのものも子供のように凹凸に乏しかった。だが顔立ちそのものは十分に愛らしいし、実年齢で言えば別に幼いというわけでもない。
そんなことはない。何の問題もないな
つまりは十分、Olの射程圏内であった。
え、ほ、ほんとですか!?やったー!
シ、シィルちゃんは、可愛いけど、わ、わたしもですか?
小さな身体で諸手をあげて喜ぶシィルに、大きな身体を自信なさげに縮こませるユグ。本当に対照的な二人だ、と思いながらも、Olはベッドの端に腰掛ける。
そもそも、お前たちは指導が必要な底辺冒険者なのか?
そうです!
Olが冒険者という制度を作り出し、ほとんどの者はそれまでよりも豊かな生活を送れるようになった。わざわざ物々交換が成り立つ相手を探す必要がなくなり、需要の少ないアイテムやスキルを死蔵する必要がなくなったからだ。
しかし中にはごく一部だが、以前よりも苦しい生活を強いられている者がいた。それが底辺冒険者と呼ばれる者たちだ。
底辺冒険者とは、最下層のモンスターすらろくに倒すことができないものだ。雫球や角兎といったごくごく弱いモンスターくらいしか倒すことができず、固いパンと濁った水で最低限の飢えをしのいでいる者たち。
かつてはそれでも稀に落ちる毛皮やスキルなどを集めて生活に必要な雑貨や衣服、あるいは少しでもマシな食料などと交換してもらえていたのだが、貨幣が流通しだして以来、最下層で取れるような品物には値が付かなくなった。
皆が裕福になり、わざわざそのようなものと交換する必要性がなくなったからだ。つまりは1フル小貨未満の品物しか手に入れられない冒険者。それが、底辺冒険者だ。
底辺冒険者にはいくつかの共通点があった。
ろくな武器もスキルも持っていないこと。
最下層出身の奴隷魔族であること。
そして──女であることだ。
スキルを持たない最下層の魔族でも、男であれば鞭獣や蠍蜂くらいは倒せる。最低限の武器は冒険者に登録した時点で渡す金で買えるし、ある程度の戦い方も教えているからだ。
だが女魔族にはそれすら不可能なものが一定数いた。故に、Olはこうして指導を設けているのだった。
シィルはまあ、わかる。スキルもなくその体格では戦うのは難しかろう。だがユグはそれだけ身体が大きいのであれば男にも負けないのではないか?
わたしは、大きすぎるんです
何せテールよりも更に大きいのだ。疑問を口にした後、Olはすぐに己の間違いに気が付いた。
そうか。武器を振りかぶることがいや、違うな。走る事さえできぬのか
そうなんです!
シィルが元気よく返事をし、ユグがこくりと控えめに頷く。ユグの身長はおよそ3メートル。そしてこの最下層の天井の高さも、3メートルだ。気を付けなければ歩くだけで頭をぶつけてしまう。ましてや飛んだり跳ねたりすることなど完全に不可能だった。
しゃがんだままなら何とかなりますけど
体格に恵まれていようと、流石に中腰でまともに戦えるわけなどない。Olは納得し、頷く。
よかろう。ではお前たちに、戦うための力と方法をくれてやる。だがそれには身体を差し出さねばならん。良いか?
Olの問いに二人は顔を見合わせると、揃って服を脱ぎ落した。
こんな貧相な身体でよければ喜んで!
わたしの、身体気持ち悪くないですか?
かたやほとんど凹凸のないつるんとした小さな身体。
かたや凄まじい迫力の乳房と尻を備えた巨大な身体。
うむ。どちらの裸身も美しい
そのようなギャップのある女を同時に愛でる事は、Olの好むところであった。無論のこと、似たような娘ばかりを集めて可愛がるのも大好きなのだが。
Olも二人に倣うように衣服を脱ぎ捨て、既に隆々と反り立つ己自身を見せつける。
わ、凄い!オーナーさんのちんちん、あたしと同じくらいおっきいです!
シィルが目を丸くしてそれを見つめ、背比べをするかのように近づいてくる。
ならばちょうどいい。シィル、お前は全身を使って奉仕してみろ。ユグ、お前はそこに座れ
ベッドを指さしてユグにそう指示し、言われた通りに座る彼女の身体にOlは背中を預けた。巨大な谷間の中にOlの頭がずぶずぶと埋まっていき、顔をすっぽりと乳房に挟まれる形になる。
大きいだけでなく、柔らかいよい乳だ
あぅは、恥ずかしぃです
両手で巨大な柔肉を持ち上げ、その感触を確かめるOlに、ユグは真っ赤にした顔を両手で覆い隠した。
全身を使って奉仕ってどうしたらいいんですか!?
とりあえずまずは抱き着いて、身体を擦り付けてみろ。そして先端を舌で舐めるんだ
手を挙げて尋ねるシィルにそう命じると、彼女は素直に言われた通り、Olの一物に抱き着いて、先端をぺろぺろと舐め始める。
なんかすごく暖かいというか、熱いです!ドクドク脈打ってるんっちゅっ先っぽは、意外と無味無臭です!もっとしょっぱかったり苦かったりするかと思いました!
いちいち報告せんでいい
抱いている女に状況を報告させるのは嫌いではないが、シィルのそれはいささか色気に欠ける。だが、柔らかな肌を擦り付けられる感覚は絶品だった。
んっ、なんだかちょっとしょっぱいお汁が出てきました!飲んだ方がいいですか?
ああそうしろ
ユグの柔らかな肉に包まれながらシィルの柔らかな肢体で一物を擦られる感触は、思っていたよりも遥かに気持ちのいいものだった。ルヴェとやった勝負ではないが、このまま生娘二人に一方的にイカされるというのも少々癪だ。Olは二人の秘所へと手を伸ばした。
ひゃっ!?
はわっ!?
シィルの膣内に小指の先を、ユグの膣内に人差し指をつぷりと挿入する。意外なことに、ユグの中は体格から想像するほど広くはなかった。それでも普通の人間よりは大きいが、彼女も明らかにまだ男を受け入れたことのない処女だ。指一本でも十分にキツく狭かった。
一方でシィルの方は体格通りの大きさで、小指の先でもかなりキツい。体格を考えればむしろ指先だけでも入っているのは相当柔軟だと言えるだろう。無論、Olの一物など入るわけもない。
とりあえず、一旦イカせるぞ
えっ、ちょっあぁっ!オーナーさんの指ぃっ!気持ちいいですっ!!
あっ、んっ、だめぇっヘンな声、出ちゃうはずかしぃっ!
魔王の熟練の指技に二人の乙女はいともたやすく達し、嬌声を響かせる。
そら、身体が止まっているぞ
こんなぁっ!こと、されながらっ!できな、です、よう!
そういいつつも、シィルは必死にOlの怒張をかきいだき、身体を擦り付ける。
わ、わたし、もっ!これ、いいですか?
そしてそれに応えるかのように、ユグは自ら乳房を捧げ持ってOlの身体をぎゅっと乳肉で圧迫した。
ああいいぞシィル、いくぞ!
え?いく?いくってどこに──
キョトンとするシィルの眼前から、白濁の液が迸って降り注ぐ。
わぷっ!?なんですかこれー!?
どろどろの精液がシィルの全身にべっとりと張り付き、白く染め上げていく。だがそうなっても彼女はOlの男根に抱き着くことをやめず、むしろ射精を促すかのようにぎゅっと抱きしめた。
あっ、これ、もしかして、子種ですか!?んうっなんか、すごいにおい
自分に付着した精液を舐めとって、シィルは複雑な表情を浮かべる。
なんでしょう酷い匂いなのに、いやじゃないっていうか、ちょっとドキドキするような、どこか懐かしいようなそんな、変な感じです
けして美味しいわけでもないのに、なぜか妙に後を引くその味に、シィルは二度、三度とそれを舐めとる。その仕草に、Olは興をそそられた。
シィルの身体をひょいと掴むと、まるで人形遊びでもするかのようにもう片方の手で彼女の脚を押し広げ、露出した秘所にペニスを押し当てる。長さはシィルの身長とほぼ同じ。太さもシィルの身体とほぼ同じ。
そんな凶器を彼女の入り口に押し当てて、Olは短く宣言した。
第12話冒険者ギルドを作りましょう-4
えっ、いや、流石に無理ですよ!裂けて死んじゃいます!オーナーさんの、あたしと同じくらい大きいんですからあ!
自分の腰よりも太い肉槍を入り口に押し当てられて、流石にシィルは泡を食った。
案ずるな。お前にそのような苦痛を味わわせることはない
だがOlにそう言われ、彼女はきゅっと口を引き結び、覚悟を決める。
わわかりました!オーナーさんがそう言うならどうぞ!一思いに!ズブっとやっちゃってください!
まだOlに対してそこまでの信用もないだろうに、それは感嘆すべき度胸であった。それはそうともう少し静かに受け入れることはできぬものかと思いつつも、Olは彼女の中に挿入する。
痛ったぁっ!えっ、痛い、けど?死ぬほどって感じでは、ないですね?
痛みに顔を歪ませた後、シィルは不思議そうに目を瞬かせた。腹の奥にじんじんと痛みは感じていたが、蠍蜂に刺された時ほどではない。普通の人間ならば麻痺毒が怖いくらいで大した傷にはならない蠍蜂の針も、シィルにとっては長剣のようなものだ。
ましてやOlの針はシィル自身より太いのだから、それこそ全身引き裂けそうな痛みを感じてもよさそうなものなのだが、と彼女は首を傾げた。
オーナーさんのちんちん、思ってたよりちっちゃかった?
人聞きの悪いことを言うな。お前の中を大きくしただけだ
失礼な事をぽろりと漏らすシィルに、流石に聞き捨てならずOlは説明する。
道具袋というスキルは知っているか?あれと原理は同じだ。お前の膣内の空間を人間と同じ程度まで広げ、俺のモノでも受け入れられるようにした。痛みを感じるのは単純に破瓜の痛みだ
はえー道具袋ってすごく便利なスキルだって噂には聞いてましたけど、おまんこにも使えるんですね!
原理が同じというだけだ
道具袋は革袋の中の空間にしか効果を及ぼさないはずだ。が、確かに人間も広義の意味では革袋であると言えなくもない。今度試してみることを心のメモに書き留めつつ、Olは抽送を開始する。
んっあっ、んんっ!はぅん痛い、けどぉっなんか気持ち、いいのっあぁっ!
シィルの身体全体を掴むようにして彼女の身体を上下させる。これだけ体格差があると、Olが腰を動かすよりもそちらの方が楽だし動きも調整しやすい。そして何より、シィルの裸体をモノのように扱っている背徳感があった。
あん、んっ、はぁんんっ、オーナーさ、んんっ!あっ、それ、そこ、気持ちいいですっ
そしてそうやって犯していると、比較的シィルの煩さが緩和されることにも気が付いた。快楽に耐えるよう指を口元にあてながら、伏し目がちに喘ぐ様子は普通の少女と変わらない。そうなればかえって可愛らしくも感じられた。
オーナーさん
そうしていると、切なげな声が上から降ってくる。視線を向ければ、ユグがじっとOlを見つめていた。
おっぱいぎゅって、して欲しい、です
そして消え入りそうなか細い声で、しかしはっきりとそう懇願する。
ふむそうだな。ユグ、寝台に横たわれ
Olはユグの谷間から抜け出すと、彼女にそう指示をした。何人もの女を同時に抱けるように巨大化をかけてある寝台は、ユグが横たわってもなお余裕がある。
シィル。お前はここで四つん這いになっていろ
Olがそう指示したのは、ユグの胸の上。ちょうどデコルテの辺りだった。
こう、ですかぁ?オーナーさん、もう入れてくれないんですか?
Olのモノが引き抜かれ、期待するようにぽっかりと空いた膣口を示して、シィルはユグの胸元に腕と膝をつきながら媚びた声をあげる。
安心しろ。今挿れてやるっ!
Olはユグの乳房を掴むと、その谷間ごと貫通させるようにシィルの膣口にペニスの先端をねじ込んだ。
おっぱいに、オーナーさんの熱いのがそれにすっごく硬い
ユグの超乳に挟んでも見劣りしないサイズの男根がゴリゴリと抉るように媚肉をかきわける感覚に、ユグは熱い吐息を漏らす。
あぁんっ!そこぉっ、だめです、おっぱいのさきっぽ、あんっ!そんな、つねっちゃやぁんっ!
ユグの乳首はその乳房の大きさとは裏腹に実に慎ましやかで、乳輪も小さく色も薄い。しかしOlがきゅっと指先でつまむと敏感に反応して、存在を主張するかのように硬く張り詰めた。
ユグちゃんの、おっぱいに、挟まれながら、あぁっ!あたしの、おまんこも、犯すだなんてぇっ!ふぁんっ!オーナーさんの、ちんちん、えっち、すぎ、ます、よおっ!はぁぁんっ!
奥を突かれるリズムに合わせて吐息を漏らしながら、シィルが抗議するかのように言い募る。
指導の、対価、ってぇっちょっと、裸、見られたりおっぱい、さわられ、た、りぃっ!する、だけ、か、とおぉっ!おも、て、たの、にぃっ!
それは悪かったな
指導に身体を要求するのは別に対価というわけではないのだが、と思いつつも全く悪いとは思っていない口調でOlは謝る。
逆、っですぅっ!こんな、気持ちよく、して、もらえっ、ああっ!だめ、だめ、きもちい、でっおっきいの、きちゃう、きちゃいますぅっ!
自分自身の言葉に興奮したのか、シィルの身体が小刻みに震え、Olのモノをキツく締め付ける。
い、いくってっ!だ、だめぇっ!あんな、濃くて凄いの沢山出されたら、赤ちゃんできちゃいますっ!だめ、だめ、なの、にぃっ!
駄目だと言いつつ、シィルはむしろ尻を突き出し腰を押し付けてくる。
シィルちゃん、すっごくえっちなかおしてるわたしも
そしてその痴態を目にして、ユグもまた興奮していた。
受け止めろ!
あっああああああぁぁぁぁぁっ!!熱いですっ!
熱を持っているはずなどない精液が、ともすれば火傷してしまうのではないかと思うほど熱く感じられ、腹の中でどう動いているかわかってしまう。先程全身に浴びたどろどろの液体が腟内に注ぎ込まれ、奔流となって子宮に流れ込んでいく様まで、手に取るように感じられるような錯覚があった。
ペニスから容赦なく射精された精液が己の中を蹂躙し、征服していく。その感覚に、シィルは身体をわななかせながら絶頂した。
魔術によって拡張している空間は膣だけだ。大量に注がれた白濁の液はシィルの子宮に収まりきらず、逆流してOlの一物を押しやる。それに逆らうことなくOlがペニスを引き抜くと、噴出した精液がユグの胸に向かって吐き出された。
あっ、あぁっわたしの、おっぱいに
シィルの煽りを受けて軽く達していたユグが、ぼんやりとした表情でそれを指先で掬い取り、口に運ぶ。
んっは、ぁオーナーさぁん
そのまま自分の指を舐めながら、切なげにOlを呼んだ。くちゅりという濡れた音に後ろを振り向けば、ユグの指が自身を慰めるように蠢いていた。
欲しいか?
はいっオーナーさんのおちんぽわたしにも、挿れて欲しいです!
二度の射精を経て萎える気配もない男根を突き付けて見せれば、ユグは彼女にしては大きな声でそう答え、堪えきれぬようにその先端に吸い付いた。
んちゅっはああシィルちゃんとオーナーさんのお汁が混じったんっ、ちゅうっすっごくえっちな味がしますぁむ
何せ何もかもが人間の娘の倍近い大きさだ。普通ならば喉まで咥え込まねば口内には収まらないOlの巨根を、ユグは容易く根元まで口に含んでしまう。Olはなんとなく、衝動に駆られて彼女の角を掴み、腰を押し付けた。
んっ、んうっ、んんっ!ん、ふ、んぶっ
三日月型の上を向いた角はちょうど握りやすく、それを掴んで腰を打ち付けると無理やり口を犯しているような気分になる。だがユグはその行為が嫌ではないらしく、目を細めて嬉しそうに受け入れた。
くっ出すぞっ!
口内で竿を舐めしゃぶる舌の暖かさと、締め付けるようにすぼめられた唇の気持ちよさにOlはあっという間に高められ、ユグの口内に精を放つ。びゅくびゅくと放出される大量の液体を、ユグはこくりこくりと喉を鳴らして嚥下していった。
はぁオーナーさぁん次はこっちに注いでください
ちゅうと尿道の中に残った精液まで吸い取って、その味と匂いにすっかりスイッチが入ってしまったらしい。ユグはぺろりと唇を舐めると、股を開いてそう懇願した。
ああ。では、挿れるぞ
はいあ、んっ!
ずぶずぶと、ユグの膣がOlの肉槍を飲み込んでいく。シィルもそうだったが、やはり種族や体格に関わらず処女膜は存在しているようで、純潔の証を破る感覚が先端に伝わってきた。
痛むか?
ちょこっとだけでも、大丈夫です。それより、もっと奥にくださいおなかの奥が、切ないんです
とはいえいかにも頑丈そうなその外見通り痛みには強いらしく、ほとんど破瓜の痛みを意に介さずユグはそうねだる。
奥ここか?
あんっ!そこ、そこですぅ!
Olの腰が、ユグの腰とぴったり密着する。Olの巨大なモノを根元まで咥え込める相手は久々だった。元いた世界でも、それができる女は片手程もいない。
性の権化であり完全に膣内の形をOl専用に変えてしまっているサキュバスのリルと、半人半スライムであり身体の一部を粘体化させて受け入れるスピナ。あとは神としての頑強さで無理やり奥に押し込み犯されるのを好んでいたサクヤくらいのものだ。
あんっ、あっ、んっ、いいっ、そこぉっ!あっ、奥ぅ、ください、奥、奥に、ああっ!いいっ!
ユグの膣内は大きすぎもせず狭すぎもせず、まるで誂えたようにOlのサイズとピッタリのようだった。一番奥を突いてやるとそこがちょうど弱いらしく、腰を打ち付ける度に一際高く嬌声があがる。シィルとは真逆で普段は巨体に似合わないか細い声しかあげないくせに、喘ぎ声は体格相応に大きい。
すご、すごいっ、これが、えっち、なんですねっ!わたし、こんな、からだで、あぁっ!男の人と、することなんて、一生ないってあぁんっ!思って、たのにぃっ!きもちいいよぉっ!奥、奥もっと突いて、はぁんっ!オーナーさぁんっ!気持ちいいですぅっ!
快楽のあまりユグは脚をOlの腰に巻き付けながら、彼をギュッと抱きしめる。とはいえ倍近い体格差だ。背中を丸めたユグが抱きしめると、ちょうどOlの頭が彼女の乳房に埋まる形になった。
あぁっ!おっぱいっ!やぁんっ、そんな、先っぽ吸っちゃ、やぁっ!あんっ!奥、突きながら、おっぱい、揉まれて、吸われてぇっ!気持ち、よすぎますぅっ!
手のひらに収まるどころか、背に腕を回すことすらままならない巨大な乳房を鷲掴みにして、Olはピンと尖ったその先端を口に含む。甘噛みどころか半ば本気で噛んでも、ユグは大した痛みを感じてはいないようだった。それどころか、快楽にきゅっと膣口が締め付けてくる。
はいっ、くださいっ!オーナーさんの熱いの、いっぱい奥に出して、注いでくださいっ!ああっ!わたしも、イく、イく、イくぅっ!
全身でOlの精をねだりながら、膣壁をわななかせ、ユグが達する。腰に回された脚にぎゅっと力がこもり、凄まじい力で腰を密着させて離すまいとした。無論離すようなつもりもなく、Olはそのままユグの膣内に思いきり射精する。
ふあぁあぁっ!はいって、きてるぅっ!すごい、すごいよぉ!オーナーさんの、精液、注いでもらっちゃってる!
己の中に放出されるその感覚に、ユグは更に深く絶頂した。Olの精液がまるで媚薬のように体に染み込み、みだらになっていく気がする。だがそれを恥ずかしいと思う余裕すらないほどの快楽にユグは浸っていた。
はぁすごかった、ですぅ
Olが肉槍を引き抜いてもシィルのように逆流することもなく、ユグは放出された精液を全て呑み込んだ己の腹をさする。
舐めて清められるか?
ユグ自身の愛液と精液と破瓜の血とで汚れたペニスを差し出しても、彼女は躊躇いなくぱくりとそれを咥えた。
ユグちゃんだけずるいです。私の分もください
あっごめんね、シィルちゃん。じゃあ二人できれいにしようね
ようやく絶頂の余韻から復活したシィルがユグの胸元から羽音を立てて飛び立ち、小さな舌と大きな舌がOlの一物を前後から挟み込む。
んっ、ちゅっ流石にここまでえっちなことをする覚悟はしてませんでしたけどとっても、素敵でしたちゅっ一生の思い出ができた感じです
うんれろすごく気持ちよかったわたしも、オーナーさんに抱いて頂けたこと、ずっと忘れません
そして互いにペニスを舐めしゃぶりながら、そんなことを言った。
何を言っておる?今のはただお前たちの処女を奪っただけだ。指導は今から始める
え?だからえっちな事はここまでで、戦い方とかを教えてくれるんですよね?
Olは首を傾げ、そういえば指導の要領についてまだ説明していなかったことを思い出す。
いや。指導というのは性交を通じて行う。つまりここからが本番だ
えっ?いいんですか!?
二人は期待に、嬌声をあげる。
それぞれ十回以上は抱くからな。覚悟しておけよ
だがそれが悲鳴に変わるまで、そう長い時間はかからなかった。
第13話指導の成果を試しましょう-1
用意して欲しいものがある
会うなりそう切り出してきたOlに、スィエル家の当主、レイユは思いっきり嫌そうな表情を浮かべた。
言っとくけど、カネじゃ売らないからね。アタシはアンタがあれを無限に作れるってことを知ってんだから
真っ先に釘を刺してくる老婆に、Olはふむと顎を撫でた。
だがそれは同じことじゃないのか?カネさえあればモノも手に入る。モノはカネに換算できる。わざわざ非効率的な交換手段を使う必要があるのか?
同じじゃないさ。いくらカネがあろうが、手に入らないものは手に入らない。だからこそアンタはわざわざあの冒険者とかいう連中じゃなく、アタシに話を持ってきてんだろ
Olの詭弁を軽くかわしつつ、レイユは長煙管の先に詰めた葉に火をつける。
カネをどんなに増やしても、この壁界にあるモノには限界があるんだ。土台、無限の財力なんてものは実在しないってことさ
そして虚空に煙を噴き出した。彼女が既に市場原理まで理解していることに、Olは少し驚く。
そこまで理解しているなら話は早い。お前の言う通り、カネというもの結局世の中にある価値の総量を超えることはできない。つまり、増やせば増やすほど価値は下がっていくのだ。だから貨幣の量は厳密にコントロールしなければならない
何が言いたいのさ
こういうものを作られては困る、ということだ
Olは貨幣を取り出し、机の上にバラまいた。それは先日Olがレイユの元に持ち込み、流通させているものとそっくり同じもの。
だがどれも、赤黒く変色してしまっていた。
なんだい、こりゃあ
錆だ
サビ?
Olの言葉を、レイユはオウム返しに問う。本当に妙な世界だ、とOlは思う。この世界の人間は、錆すら知らないのだ。
いや、実に腕のいい細工師を雇ったのだな。感心したぞ。まさかここまで似せられるとは
Olは自身の作ったコインと、錆びついたコインを見比べる。錆さえなければ、ほとんど見分けがつかないほどにそっくりだ。
俺がこの前見せたから、材料が鉄の鎧であることはわかっていたな。それを手で彫り再現したわけだ。いや、実によくできている──だが、贋金を作るものが現れることくらいは予想していたのでな。無論、その対策とてしている
だが、錆びてしまえばその違いは誰の目にも一目瞭然であった。
俺が作ったもの以外は錆びるのだ
鉄の鎧は鉄の鎧に限らずすべてのドロップ品は表面を保護されており、そのまま放置していても劣化はしない。だが、がらくたは別だ。鉄の鎧を破壊して作ったコインは、つまりはがらくただ。そのまま置いておけば錆びてしまう。塩水にでもつけてから放置すれば一日で十分だ。
そう、つまり俺はお前にこれを渡した時点で偽造の可能性は考えていた。当然だ。錆以外に見分ける方法もある。今ちょうど、ギルド以外から受け取った金は贋金の可能性があり、贋金を使用したものは処罰するという触れを出しているところだ
その周到ぶりに、レイユは絶句した。その触れが事前に出されていればレイユはそれを察知出来ていたし、そこからOlへの対応を計算することもできただろう。だが、こうして面と向かって話している状態では、その情報を手に入れる事はできない。
そして何より、裏切る必要はないなどと言っておきながら、レイユが裏切ることを分かったうえでOlは彼女と手を組んだのだ。
アタシがコレを作ったって証拠でもあるのかい?
我ながら往生際が悪いと思いつつも、レイユはそう尋ねる。一応、ハッタリという可能性もあったから、それは確認しておかなければならない。
無論あるが、それは別にどうでもいい
あン?
だが、Olの返答は全く予想していなかったものだった。
俺は別に、贋金を作ったのがお前だと糾弾しに来たわけではない。取引をしに来たのだ
だから、贋金を作ったことを見逃す代わりに必要なものを用意しろって話じゃないのかい
Olが証拠を掴んでいるというのは、どうやら本当らしい。レイユの言葉に、しかしOlは首を横に振った。
言っただろう。商売は互いの得にならねば意味がないと。それではお前の得がないではないか
Olの言葉に、レイユは唖然とした。裏切られてなおそんなことを言うのはよほどのお人よしに思えるが、ただのお人よしが裏切りを予期した罠など仕掛けておくわけがない。絶対に裏があるはずだ、とレイユは思う。
そう警戒するな、レイユ。俺にお前を陥れるようなつもりはない。それはわかっているだろう?その煙で
長煙管を指さすOlに、レイユは絶句する。嘘を暴く空言の葉は、上層でしか手に入らない代物だ。中層以下の人間がその存在を知っているはずがない。
いや、知っていたとしても、それは本来水に浮かべてその揺れで嘘を感知するものだ。刻んで乾燥させ、煙管に詰めて煙にしても効果があることを知っているのはレイユだけのはずだった。
今回提供するのは、この貨幣の製造方法だ
レイユが混乱しているところに、Olは更にとんでもないことを言い出した。
つまり俺がやっていた役目を、お前もすることができるようになる。中層以下の経済を完全に掌握することができるという事だ
待て待て待て。ちょいと待っておくれ。いくら何でも話がうますぎる
流石に理解が追い付かず制止するレイユに、Olは首を横に振る。
いや、そんなことはない。先ほどお前も言った通り、無限の財力などというものはない。それに正直、経済をコントロールするなんてのは面倒なんだ。俺はそんなものに興味はないし、それに
Olはレイユの顔をじっと見つめ、言った。
俺よりお前の方が上手くやってのけるだろう。仕事というものは最も向いている者が行うべきだ
レイユはガリガリと髪をかきながら、深くため息をつく。そしてカン、と音を立てて煙管の灰を落とすと、それを傍らに置いた。
アタシに貨幣の製造方法を渡したら、アンタは用済みになるいや、なんなら邪魔になる。そうは考えないのかい?
本気で言っているのか?もしそうだとするなら少々失望するが
いいや
Olにまだまだ利用価値があることなど、確かめるまでもない。殺してしまうより、奪ってしまうより、騙して裏切るよりも、真摯に協力することの方が利益が大きい。どうやらそれを認めるしかないと、レイユはわからされてしまった。
やれやれ。アタシもヤキが回ったかね。アンタみたいな若造にやり込められるなんざ
レイユは長い間いろんな人間を見て、その思考を読み、裏をかき、食い物にしてここまでのし上がった。その手練手管にはそれなりの自負もあったのだが、Olが何をするかは全く読めなかった。
そうでもない。見たところ、七十かそこらだろう?
なんだい急に。失礼な奴だね、まだ六十八だよ
口さがないルヴェ辺りが聞けば誤差じゃんなどと言いそうではあったが、幸い冒険者として活動している孫娘は今日も元気に探索中だ。
ならば俺から見ればお前も小娘だ。俺の実年齢は九十をとうに超えているからな
はあ?なんだいその冗談は
レイユは思わず煙管に視線を向けるが、灰を落として火も消えた火皿からは煙の一筋も出ていない。
ふん、まあいいさ。それで、結局用意してほしいものってのはなんなんだい
鉄の腕と鉄の盾だ
Olが告げると、レイユは露骨に呆れた顔をした。
アンタ、こんだけアタシをやり込めといてそんなつまんないモノ要求すんじゃないよ!そりゃあ冒険者からは出ないだろうけどさ、出たら自分で使うだろうしね。だけどこう、もうちょっとわけのわかんないもの頼まれるもんだと思ってたよ
ほう。わけのわからないものを頼んでもいいのか?
Olの言葉に、レイユはうっと言葉を詰まらせる。
言うだけ言ってみなよ
そうだな。異世界に転移できるスキル、異世界から知るものを召喚するスキル、時間を巻き戻すスキル、スキルを無効化するスキル、スキルを同意なく奪うスキルああ、時間を停止させるスキルなんかもあればありがたい
聞くんじゃなかったよ
どう考えても存在しそうもないスキルのオンパレードに、レイユは頭を抱えた。そもそも異世界とは何なのか。
待てよ。アンタが望むものかわかんないけど、その中の一個だけなら用意できるかも知れない
しかしふと、あるスキルの存在を思い出し彼女は顔を上げた。
で、貨幣の製造方法ってのはどうやるんだい。そういうスキルでもあるのかい?
いや、もっと簡単な手順を用意した
Olは懐から四角い金属の塊を取り出す。上下の二枚の板が蝶番で接続されており、開くと下の板には中央に丸いくぼみがあった。
なんだいこりゃ
金型だ。これで鉄の鎧を挟んで、鉄でも銀でもなんでもいい。腕のスキルを持つ者に閉じさせれば、硬貨の出来上がりだ
つまりそれは正確には、鎧を硬貨の形に切り取る道具であった。表面を削らなければ、鎧の保護は消えない。端の断面が錆びないようにだけ、使用者の魔力を用いて保護魔術をかけるように出来ていた。腕を使えるような能力の持ち主であれば、一日一万枚作っても問題ない。
ところで先ほどの贋金を作った細工師を紹介してくれないか?特に要件があるわけではないのだが、あれほどの腕前には興味がある
アタシだよ
レイユが部下に命じてOlの要望の品を用意させている間、ふと尋ねてみると彼女はつまらなさそうにそう答えた。
そうそう、行き掛けの駄賃だ
無事に商品を手に入れ、互いに互いの品を確認した後、Olは去り際にレイユに声をかけた。
ハルトヴァンを潰してきてやる
第13話指導の成果を試しましょう-2
野郎ども!
50メートル四方はあろう巨大な部屋に、男のだみ声が響く。
真の強さとはなんだ!?
筋肉です!
そしてそれに続き、部屋をぐるりと取り巻くように囲んだ男たちが声を張り上げた。
真の男の証明とはなんだ!?
部屋の中心で叫ぶのはその言葉を裏付けるかのように、確かに筋骨隆々の男ではあった。
二メートルを超える身の丈に丸太のように太い腕、三つ編みにした太い髭。しかしそれ以上に、でっぷりと太った丸い腹をしていた。
一番強い男とは誰だ!?
ハルトヴァン様です!
熱の入った大合唱に、肥満した男ハルトヴァンは、両腕を振り上げて答えた。
レイユが言っていた通り、脳味噌まで筋肉で出来ていそうな男というわけでもなさそうだ、とOlは思う。
領民の数が最も多いユウェロイ、交易によって最も豊かな品物を持つレイユ。それに数が少なく領地も狭いハルトヴァンが伍してるのは、単純に一人一人が精強だからだ。そしてその精強さを支えているのが、ハルトヴァンのカリスマだった。
彼は少なくとも、大衆の乗せ方というものをよく知っている。
さあて挑戦者よ!知っているかも知れんがここのルールを説明させてもらうぞ!
低いくせによく通る声で、ハルトヴァンがOlに指を突き付ける。
スキルはなし、使うのは己が肉体のみ!それでこのワシに勝てば、今日からお前さんがハルトヴァン領の領主だ!逆に負ければ領民になってもらう!わかりやすかろう?
それはつまり、ハルトヴァンが無敗のチャンピオンであることを示していた。ブランでさえ、彼とのスキルなしでの戦いは避けているという事でもある。
その前に、偉大なるハルトヴァン殿に敬意を表して贈り物をしていいか?
ふっはっは!構わんぞ。今回の挑戦者は随分殊勝であるな!
Olの提案にハルトヴァンは鷹揚に頷く。ではとOlが指を鳴らすと、彼の立つ床が沈んでいった。
ぬおおっ!?
流石に驚きに目を見開くハルトヴァン。沈降は十メートルほどで止まり、巨大な部屋はすり鉢状の闘技場へと姿を変えた。
真の戦士が戦う場として、この方が相応しかろう
ぬっはっは!確かにこれは素晴らしい形だのう。我が民も戦いを見物しやすかろう
動くはずのない母なる壁が大幅に動いたことにさしたる動揺も見せず、ハルトヴァンはすぐに態度を戻す。
だが母なる壁を愚弄するかのような行い、見過ごせぬ!このハルトヴァンが成敗してくれよう!さあ、スキルを預からせてもらうぞ
悪いが戦うのは俺ではない
Olは懐から口の開いた革袋を取り出す。そして、その中からユグを引き出した。
この娘だ
Olがそう宣言した途端、熱狂的に声を上げていた周囲の男たちが、水を打ったように静まり返る。その様子にユグは怯え、身体を縮こまらせた。
ワシを愚弄する気か!?
それまでのにこやかで鷹揚な仮面を投げ捨て、ハルトヴァンが怒鳴る。
まさか体躯が大きいだけで、女がこのワシに勝てるとでも思っているのか!?
強さとは筋肉なのだろう?女でもこれだけ体格が違えば筋肉量では引けを取らんはずだ
Olがそう答えると、ハルトヴァンの表情は更に憤怒に歪んだ。
それとも女とは怖くて戦えないなんだ、ユグ
更に煽ろうとするOlの服を指先で引っ張り、ユグはかがんで彼の耳元で囁いた。
あ、あの、オーナーさん、まさかとは思うんですけど、今日言ってた実地訓練って
そう。ハルトヴァンが今日のお前の訓練相手だ
Ol以外には聞こえぬよう最大限になされた配慮を、Olは思いっきり無駄にしてはっきりとそう答える。
ぬっははははは!
それを聞いて、ハルトヴァンは呵々大笑した。
こんなに侮辱されたのは初めてだわい!女とて容赦はせんぞ!
そしてユグを睨み上げて両拳を打ち鳴らした。その迫力にユグはひぃっと悲鳴を上げてOlの影に隠れようとする。しかし三メートルが隠れられるわけもなく、その腰の引けた様子に周囲から罵声が投げかけられる。
鑑定係!
は。その女、ユグという蹄族は確かにスキルを全く所持しておりません
ハルトヴァンの部下がユグのスキルを確認し、彼に報告する。
鑑定は持っているか?お前もワシを確認してかまわん
いや、結構だ。スキルを持っているのなら使っても構わんぞ
Olの言葉に、ハルトヴァンの額に太い血管が浮かんだ。先ほどまでは多分にポーズも含まれていたが、どうやらとうとう本気で怒ったらしい。
この嬢ちゃんを倒した後、お前さんも叩き潰してやるからな。首を洗って待ってろ
お、オーナーさぁん!
ハルトヴァンの部下に拘束されるOlを、ユグは半泣きで振り返る。
大丈夫だ。俺が指導した通りにやってみろ。上手くいったらまたじっくりと復習だ
し、指導
その苦しくも官能に満ちた行為を思い出し、ユグは赤面しつつもハルトヴァンに向き直った。
じゃあ悪いが行くぞ嬢ちゃん!
ハルトヴァンがぐんと踏み込み、まっすぐに拳を突き出す。素人目に見てもわかるほど無駄を削ぎ落された美しい突きが、ユグの鳩尾に突き刺さった。
いたっ!
痛みに顔をしかめるユグ。しかしその反応に、ハルトヴァンの顔色が変わった。彼は今の一撃でユグを沈めるつもりだったのだ。
むんっ!
ぐるりと身体を回転させ、その回転力をそのままにハルトヴァンは踵を叩きつける。ユグの巨体でそれをかわせるはずもなく、かといって捌くほどの技量もなく、彼女の太ももに回し蹴りが直撃する。
うぅっ
だが彼女の受けたダメージは、多少うめき声をあげる程度であった。それもどちらかというと過剰に反応しており、実際にはその声程の手ごたえもない。まるで鉄の盾のスキル持ちを蹴っているような気分だった。
ハルトヴァンは鑑定係を見るが、彼は首を横に振る。ユグが何のスキルも持っていないのは確かなことのようだった。鉄の盾を持っているのなら、呻くほどのダメージすら入らないはずだ。
(まさかワシと同じことをしとるのか!?)
考えうる可能性はただ一つ。ハルトヴァンが気と呼んでいる力を、彼女も使っているという事だった。
そしてそれは正しい。だが同時に、間違ってもいた。
Olは底辺冒険者と呼ばれる者たちが女だけであることに疑問を抱いていた。
確かに女性には戦いに向いていない要素がいくつかある。
例えばリーチの差。
同じ種族であれば、人型の生き物は大抵女よりも男の方が一割程度大きい。
それに月の物の問題もある。
個人差もあるが、動けなくなるほどに重い生理を持つ女性も存在する。
そして、筋力。
女性よりも男性の方が筋力に優れているのは、この世界でも同じだ。
だがそれらの差は、魔力を使えば何ら問題とはならないのだ。
たとえ魔術師でなくとも魔力というのは生き物の中には多かれ少なかれ必ず存在しており、強い力を発揮したり痛みや不調を抑えたりといったことができる。そして魔力量は男性より女性の方が大きい傾向がある為、最終的な筋力差はほとんど生じない。
だからこそ、Olの世界では女戦士というのは別に珍しい存在ではなかった。
しかしこの世界では、そのような魔力の運用が全くされていない。運用を完全にスキルに任せているからだろう。故に、スキルを持たない女性は男性に劣るものとして見なされていた。
ハルトヴァンはこの魔力運用を行っていた。本人はそれを気と呼んでいたが、独自の呼吸法を用いて魔力を巡らせ、身体を強化している。それに加え生まれついて優れた体格もあり、スキルなしの勝負であれば敵なしであった。
だがそれは、あくまで独自の発想によって培われてきたものだ。それに対しユグのそれは、極めて体系的かつ理論的に、Olによって教え込まれたものであった。
性交を通じてOlが相手の魔力を操作し、体内に魔力が流れる感覚を覚え込ませつつ、同時に魔力の経路を開いていく。Olの世界で何百年、何千年と魔術師たちによって培われ洗練された要訣を、更にOlの百年近くに渡る人生で昇華させた方法論だ。
ユグがそれを体験したのは時留結界の中で数か月。現実世界においては僅か二日程度でしかなかったが、その練度は既にハルトヴァンのそれとは比べ物にならない程に高まっていた。
体格で勝り、魔力の扱いでも勝っている。だがそれでもユグがハルトヴァンに勝てない理由が、二つ存在していた。
度胸と、技術だ。
第13話指導の成果を試しましょう-3
どうした!守ってばかりか!?
ひっ!
ハルトヴァンの怒声に、ユグは身を縮こまらせる。彼の拳は硬く痛く、どうしてもそうしてしまう。たまに反撃をしようとするも、それは簡単に避けられ、あるいは反らされてしまう。
とても勝てる気などしなかった。彼女は少し前まで、最下層の角兎にすら苦戦する底辺冒険者だったのだ。それがいきなり中層の壁族、それも武闘派で有名なハルトヴァン相手にスキルもなしに戦えと言われて、どうにかできる気がしなかった。
がんばれ、ユグちゃん!
すると、胸元からそんな声が聞こえてくる。胸の谷間にもぐりこんだシィルの声だった。
と言ってもあたしはおっぱいの中で何も見えないけど!
だが別に彼女が協力してくれるというわけではない。単に一人では心細いと駄々をこねたら、スキルを持たず何もしないならという条件でOlに許されただけだ。胸を通してシィルの声は伝わってくるが、ユグから何か伝えるわけにもいかなかった。
ぴぃぃ、無理だよぉぉっ!
か細い声で泣きながら、ユグは苦し紛れの蹴りを放つ。
うおおおっ!!
ハルトヴァンはそれを容易くかわし、もう片足に全力でタックルした。流石に不安定な状態でハルトヴァンの体重の突進を支えきれず、ユグはその場に尻もちをつく。これを好機と見たハルトヴァンは、その胸元に向けて突きを見舞った。
だめぇっ!
だが初めてその攻撃がユグに受け止められる。胸元にしまわれたシィルも同様に魔力の運用は教えられているが、体格が体格だ。ユグ程の頑丈さは存在しない。ハルトヴァンの攻撃を受ければ致命傷になりかねず、ユグは必死でハルトヴァンの連撃を防御した。
やめ、てぇっ!
そしてその腕をがしりと掴むと、力に任せて放り投げる。ハルトヴァンの巨体が宙を舞い、高くなった天井を掠めて観客席に落下した。
ああれ?
その時初めて、ユグは頭上を見上げる。それは、彼女が初めて目にする遠い天井だった。いつも走ろうとすればすぐに角が引っかかり、頭をぶつけていた天井が、そこにはない。
ひろ、い
頭では理解していた。だが、そこが自分にとっても広い場所だという事を広い場所にいるという事がどういう事であるのかを、ユグはその時やっと実感した。
くそっ、油断した大した馬鹿力だ、お嬢ちゃん
その一方でハルトヴァンはきっちりと受け身を取り、全身に巡らせた気で落下のダメージを軽減している。と言っても無傷とは言えないが、まだまだ十分戦える状態だった。
だがもう今の手は通用
えっと、確かこう?
ハルトヴァンの言葉を遮るように、ユグはぐるりと身体を回して蹴りを放つ。それは、最初にハルトヴァンが見せた回し蹴りだった。
うおおっ!?
しかしユグの体格で放てばそれは大斧の一撃のようなものだ。とても捌く余裕などなく、ハルトヴァンは必死にそれをかわす。
動ける!
ぱぁ、とユグの表情が明るく輝いた。縮こまっていた背筋が伸び、視界が開ける。思いっきり身体を動かしても、どこにも当たらない。
すごい!
ぐっと拳を引き、まっすぐに放つ。少しだけそれを下に下げれば、ハルトヴァンの巨体であれば十分顔面を狙う事ができる。
見えないけど、なんかすごい!がんばれユグちゃん!
シィルの声援を胸に受け、ユグは矢継ぎ早に攻撃を繰り出した。それは全て、ハルトヴァンが見せてくれた技だ。
無論、精度で言えばお粗末なものだ。ハルトヴァンが愚直に繰り返してきた鍛錬は、目にしただけですぐに追いつけるようなものではない。ないが──しかし、ユグの体格と魔力をもってすれば、それは十分に通用する凶器となった。
ぐぅっ!
横から迫る柱のようなローキックを、ハルトヴァンは腕と脚でブロックして防ぐ。みしりと骨に響くような衝撃が走って、何とかそれでも倒れるのを堪えつつ一歩踏み込み裂帛の気合とともに鳩尾目掛け一撃を放つ。
だがそれは、今ハルトヴァンがやって見せたのと同じような形で、大楯のように構えられた腕によって防がれた。ユグが攻勢に回ることで、ハルトヴァンが見せる防御の技までが盗まれている。
拳技のスキルを使えば無用な努力と笑われながら、繰り返し繰り返し身体に染み込ませてきた技の数々。だからこそ、ハルトヴァンはそんな簡単に真似ができるものではないという事も知っている。
だがユグは、Olによって魔力の運用を隅から隅まで教え込まれている。それはつまり、肉体の構造についても感覚で理解できるようになるまで叩き込まれたという事だ。魔力の経路と肉体は密接に関係している。魔力を動かせば、肉体が動く。どうすればハルトヴァンのしている動きができるのか、ユグは理解できる。
それ以上に、彼女はハルトヴァンの動きをよく見ていた。彼女は生来の怖がりだからだ。その巨体で、ほとんどの攻撃に大した痛みを感じないにも関わらず、攻撃を怖がってしまう。それはつまり、攻撃を誰よりもよく見ているという事だった。
その性質が掛け合わされて、ユグは急速にハルトヴァンの拳を学習していっている。
そしてそれが──ハルトヴァンにとって不思議なことに、全く不愉快ではなかった。
むしろ彼が感じたのは、喜びだ。己の拳にこれほどの可能性があることに。自分の技術を学び、これほど強くなる存在がいることに。
参った!
それを認めた時、ハルトヴァンは自然と膝を屈し、そう宣言していた。
ワシの負けだ。お嬢ちゃんいや、ユグ殿。あなたこそ、真の強者だ!
ハルトヴァンの言葉に、戦いを見守っていた者たちがざわめく。不正じゃないのか、と誰かが言い、そうに違いない、女がハルトヴァン様に勝つわけがない、という声が上がり始めた。
ワシに恥をかかせるな!今の戦いは正々堂々とした、男のいや、男も女もない。まことの、よき勝負であった!それにワシは敗北したのだ
だがそれを、ハルトヴァンはきっぱりと否定する。流石に彼にそう言われ、面と向かって否定できる者はいないらしく、領民たちは押し黙った。
約束通り我が領地はお譲りしよう。者ども、祝福しろ!我らが領の新しき領主、ユグ殿だ!
え、ええええっ!?領主ってどういうことですか!?
ハルトヴァンが拳を振り上げるとそれはそれで感銘を受けたのか、領民たちが同様に拳を振り上げて雄たけびを上げる。ただの戦闘訓練としか聞いていなかったユグは戸惑い目を白黒させた。
ああ、それは面倒だから断る
だがOlはあっさりとその権利を投げ捨てた。
一日に二度も同じことを言いたくはないが仕事とは、最も適しているものが行うべきだ。この娘に領主が向いていると思うか?
Olが視線を向けると、ユグはぶんぶんと激しく首を横に振った。
ハルトヴァン領はハルトヴァン。お前が治めてこそだ。ここにいる者たちは、お前が最強だから、負けないからついてきているわけじゃない。お前が真の男だからついてきているんだ。そうだろう!?
Olが声を張り上げると、観衆はその通りだ!ハルトヴァン様!とそれに応じた。実際はハルトヴァンが負けないからその勝ち馬に乗っているという打算的な者もいただろうが、こう言われれば否定はできない。
うおおお皆、ありがとう!次は負けぬよう、我が拳を一層鍛えることを誓おう!
ハルトヴァンが拳を振り上げると、歓声が闘技場を埋め尽くす。
ところで、そんな化け物を育ててどうする気だ?
それに手を振って応えながら、ハルトヴァンはOlに問うた。領地が目的でないなら、ユグを成長させることにあったことは明白だ。実地訓練というのは冗談でもなんでもなかったのだと、ハルトヴァンは見抜いていた。
ブランにぶつける
本物の化け物ではないか
スキルなしであれば、ハルトヴァンも負ける気はしない。だがありでならば、どのようなスキルを使ったとしてもブランに勝てる気はしなかった。身体能力、魔力、そして技巧、全てでハルトヴァンはブランに勝てないからだ。
だがまあユグ殿ならば勝てるかもしれんな
腕を組み、重々しく頷くハルトヴァン。身体能力と魔力で勝てないという点では、ユグも同じだ。あとはブランを上回るスキルさえ身に着けられれば勝機はあるかもしれない
そう考える彼に、Olは端的にそう答えた。
第14話孤独な少女を救いましょう-1
んっちゅっんむ
あんっオーナーさまぁもっとぉ
次はあたしの番ですよ!
シィルさんはもうたくさん指導してもらってるじゃないですか
冒険者ギルドの奥、指導室と呼ばれる部屋の巨大な寝台の上で、何人もの女体とOlが睦みあっていた。すべて元は底辺冒険者だった女魔族たちで、かわるがわる精をねだっては、Olの唇や胸板、指先やペニスを舐めしゃぶり、少しでも多く寵愛を貰おうと身体を擦り付ける。
何をしているっ!
そこに突然、扉が開け放たれ、乱入してくるものの姿があった。受付嬢たちの制止を振り切り全身甲冑と長大な槍を構えて突進してきた、ユウェロイの姿である。
Ol、貴様!壁民としての義務も果たさず、女を集めてみだらなことを!
義務は果たしているだろう。しっかり求められた分の上納はしているはずだ
今まさに突きかからんとするばかりのユウェロイを前に、反り立った男根を隠そうともせずOlは答える。
黙れ!冒険者だか何だか知らんが、私兵を集めてドロップ品を不当に貯め込んでいること、気づいていないとでも思ったか!?ノルマよりも集めたのならば、その分多く差し出すべきだろうが!
無茶苦茶なことを言う、とOlは思う。稼げば稼いだ分だけ搾り取る税などあってたまるものかと言いかけ、意外とそれが合理的な制度なのではないかと思い至った。とはいえすべての民の収入を把握するなどあまり現実的ではないし、試すにしても元の世界に戻ってからの話だ。
ふむ。ではどの程度の収入があればどの程度の上納が必要か具体的に記載したものを書面で用意してくれ。検討しよう
なんで私がそんなことをしなければならんのだ。お前がやれ
多少の理を認めて譲歩すれば、ユウェロイは即座にその仕事をOlに丸投げした。
わかった。では上納は今の量で問題ないとする。以上だ
ななふざけてるのか!
こっちの台詞だ、とOlは思う。確かにこんな上司に仕えていたら、フォリオも離反したくなるだろう、と同情した。
では何か?お前の利益を最大化し俺の利益を最小化する条件を俺が考え、上奏奉ればいいのか?
その通りだ。わかっているじゃないか
皮肉を口にすれば、あろうことかユウェロイはそれを理解することもなく頷いた。
わかったわかった。用意しておくからさっさと失せろ
どうせロクに裏を取ることもしないだろう。適当にそれらしい文書をでっちあげる事にして、Olはユウェロイを追い払う。
おい、その破廉恥な行為をまだ続けるつもりか?さっさと壁民としての義務を勤めに行かないか
だがユウェロイはその場を立ち去ることもなく、Olを非難した。
それこそ余計な世話だ。別に無駄に女遊びをしているわけではないのだ。俺自身が狩りに行くよりも、ここでこうして指導をする方が効率がいい
そうですよ!この指導のおかげでユグちゃんはすっごく強くなって、ハルトヴァンさんに勝ったんですから!
ユグの腰を抱き寄せるOlに、シィルが加勢する。
下層の奴隷がハルトヴァンに?確かに奴が負けたという噂はあったがしかし奴はまだ領主を続けているだろう
奴の統治方法を考えれば、領主はハルトヴァンのままにしておいて上納させた方が得だろうが。上をすげかえたら領民はほとんど逃げていくぞ
Olの言葉に、ユウェロイはふむと唸り考え込んだ。だが正確には、それは考え込むふりでしかない事をOlは見抜いている。
良いだろう。そこまで効果があるのなら、その指導とやら、私にもさせてやる
ユウェロイの本来の目的はそちらだ。そもそも、ここにやってきたこと自体が。
今私たちが指導してもらってるんですけど
冒険者たちは口々に不満を漏らすが、ユウェロイはだからどうした?とどこ吹く風だった。壁民どころか奴隷階級である彼女たちより、壁族である自分が優先されるべきだと何の疑問もなく考えているのだ。
仕方あるまい。この埋め合わせはまた今度、たっぷりとしてやるからな
Olとしても、獲物がかかったところで罠を外すわけにもいかない。一人一人丁寧に口づけ、埋め合わせを約束して納得させる。冒険者の娘たちは、しぶしぶといった様子で服を着こむと、恨みがましげにユウェロイを睨みつつ指導室を出て行った。
さあ、さっさと始めろ
構わんが、その前に承知してもらう必要がある
ベッドの上に大の字に横たわり居丈高に命じるユウェロイに、Olは釘をさす。
指導は性交を通して行う。お前にとって奇異に思えることも要求するかもしれないが、それらはすべて必要なことだ。いちいち異を唱えたり抵抗したりせず俺の言う事に従え
わかったからさっさと始めろ
承諾したな?
たとえどれほどそれがおざなりに、口先だけで結ばれたものであっても、魔術師にとって約束とは絶対的なものだ。
では、これを舐めろ
は!?ふ、ふざけるな、なぜ私がそんなことをぐぅっ!?
怒張を突き出し要求するOlにユウェロイは抗議し、その直後、全身を走る痛みにうめき声をあげた。
なんだ、これは!?
呪いだ。約定を違えれば痛みが襲う。俺もまた、お前に不要なことをなせば同じ痛みを味わうから安心しろ
ユウェロイがうめくくらいで済んだのは、心の底から拒否したわけではないからだ。彼女が度々フローロやナギアが口で奉仕するところを覗いていることを、Olは知っている。
ふ、ふざけるな!さっさとそんなもの解除しぐあぁっ!!
今度は本気で拒否したのか、先ほどよりも強い痛みがユウェロイを襲った。
無理だ。一度結んだ契約はそう簡単には解けぬ。指導を完遂するまではな
そういいつつ、Olは寝台の縁に腰掛ける。
ここにうずくまり、横から口で奉仕してみろ
くそっ指導とやらが終わったら、覚えていろよ
ユウェロイは歯噛みしつつも、言われた通り膝を揃えてベッドの上に座ると、上半身をそのまま倒してOlの男根に顔を寄せる。ちょうど四つん這いになってOlの横側から腰に顔をうずめる様な形だ。
これでいいのか
うむ。これならば手が届く
そういってOlは腕を伸ばすと、ユウェロイの尻に手のひらを当てた。
おいっ
やめろ、と言いかけてユウェロイは口をつぐむ。何度も味わいたい痛みではなかった。
そら。舌で舐めてみろ
くっこう、か?
ユウェロイは片腕で己の上半身を支えながらもう片手でOlの怒張を握りしめると、その先端に恭しく口づけた。フローロの口淫を盗み見た知識しかない彼女は、それを正しい方法だと思っているのだろう。
意外な仕草に、Olはするりとユウェロイの膣口に指先を滑り込ませる。そこは既に期待で濡れそぼっていて、Olの指を簡単に受け入れた。
途端に股の間から走る快感に、ユウェロイは思わず高い声を漏らす。それと同時に、ほんの少し入り口を触られただけなのにどうして自分の指で触った時とこんなにも違うのか、と愕然とした。
罰だけでなく、褒美もやらねばな
ほ、褒美?
俺の言葉に従わねば罰が下る。であれば、従えたのなら褒美があるべきだろう?
Olはもう片方の手でユウェロイの頭を軽く撫で、口奉仕を促す。ユウェロイは一瞬躊躇った後、舌を伸ばして剛直を舐め上げた。
その動きに連動させるように、Olの指先がユウェロイの膣壁をくすぐるように撫でる。
腰から走る痺れるような快感。だがそれにユウェロイが動きを止めると、Olの動きも止まる。ユウェロイが舌で舐めると、Olの指が中を擦る。
そうするうちに次第にユウェロイもその快楽に慣れてきて、もっと強い刺激が欲しくなってきた。入り口だけでなく、もっと奥に指を入れて欲しい。そう思いユウェロイは懸命にOlの一物を舐めるが、指はちっとも奥まで入ってこようとはしない。
んむっふあぁっ!
堪らなくなり、勢いに任せてユウェロイが亀頭を口に咥え込むと、Olの指が急にずぶりと奥まで侵入してきた。その衝撃に思わず口を離してしまうと、指もするすると外に出て行ってしまう。
連動しているのだ、とユウェロイは悟った。もう一度男根を口に含めばやはり指も奥に割り入ってきて、ビリビリと快楽が走る。
それからはもう、ユウェロイは必死に男根を舐めしゃぶった。ただ動きを連動させているだけではない。おそらく、快楽自体も連動させているのだ、とユウェロイは気づく。ユウェロイがOlを気持ちよくすれば、その分Olの指もユウェロイの気持ちいいところをなぞった。
丹念に雁首のくぼみを舌でなぞり、舌だけでなく手のひらで竿をしごき立て、Olの股座に顔を突っ込んで根元の袋から先端までを舐め上げる。
脳裏に描くのは幾度となく覗き見てきたフローロの奉仕だ。残念ながらユウェロイの胸のサイズでは挟み込むことはできないが、フローロの愛情のこもった口淫奉仕を真似してOlのモノを舐める。するとOlもそれに応えてユウェロイの性感を刺激する。
気持ちいいんだ、とユウェロイは思う。Olの事を気持ちよくすればするほど、自分も気持ちよくしてもらえる。それはとても嬉しいことだ。だがだんだんと、ユウェロイはOlを気持ちよくすることそのものに喜びを感じ始めてきた。
亀頭を口の中に含んだまま、舌でその先端を舐めてみる。それはフローロの真似ではなく、ユウェロイ自身が考えやってみた事だった。覗き見ているだけでは、口の中でどうしているかまではわからないからだ。
するとOlの手が、ユウェロイの頭を撫でた。
褒めてもらえている、とユウェロイは感じる。普通ならば屈辱を感じるはずのその動作に、ユウェロイは何故か幸福を感じてしまった。おそらく、さほど気持ちよくはなかったのだ。だが、その挑戦そのものは評価した。そういう意図をユウェロイは感じ取る。
そしてそれはつまり、先ほどの行為が挑戦だったのだとOlは知っている、ということであった。自分の努力をちゃんと認識してもらえている。それはとても嬉しいことなのだと、ユウェロイは初めて知った。
ユウェロイは思いつく限りのことを試してみた。口内のペニスを強く吸ってみたり、舌先で先端の穴を刺激してみたり、あるいは軽く歯を立ててみたり。それのすべてに、Olは詳細に応えた。良い試みであれば頭を撫でつつもユウェロイの気持ちいいところを擦りあげ、そうでなくても試み自体は褒めてくれる。
頭を撫でつつ膣口の浅いところをトントン、と叩かれた時には、それはやってはいけないことなのだと学んだ。だがそんなときでも、Olはけしてユウェロイに痛い思いや苦しい思いはさせなかった。痛みを与えたのは、ユウェロイが約束を破った時。つまりは指示に従わず拒否した時だけだ。
失敗は、違反ではない。そんな当たり前のことを、しかしユウェロイは今まで気づいていなかった。部下が与えた任務に失敗したとき、彼女は必ず厳しい処罰を加えてきた。そうすることが正しいのだと──教え、られて。
行くぞ。飲め
それに気づいたとき、Olからそう指示が投げかけられた。口内のペニスが膨れ上がり、脈動して、熱い液体がその先端から噴き出した。
それは生臭く酷い味で、思わずえずきそうになるのをぐっと堪え、ユウェロイは言われた通りにそれを飲み込もうと努力する。しかし大量に流し込まれる白濁の液に、堪らずむせて吐き出してしまった。
よく頑張ったな
口と鼻から精液を垂らし、叱責に怯えるユウェロイを、しかしOlは優しく頭を撫でながら布で顔をぬぐい、ねぎらう。
そのOlの動作に。
ユウェロイは、己が今までいかに間違っていたかを悟った。
第14話孤独な少女を救いましょう-2
Ol様
長い情事を終え、ユウェロイはOlにぴっとりと寄り添い横たわりながら、彼の名を呼ぶ。様をつけて呼ぶことに、もはや何の抵抗もなかった。
これ以上はないと思うような快楽を何度も何度も更新され、自分ですら聞いたことのない声で喘がされ、数えることすらできない程に絶頂させられ、そして何度も膣内に熱い精液を注いでもらった。
その情交のすべては、ユウェロイへの労りに満ちていた。以前魔力の為に交わった時ともそして、ブランとの交わりともまったく違う。愛情の交歓がそこにあった。今までのブランとの睦み合いは、ただユウェロイの身体をもてあそばれ一方的に快楽を与えられていただけに過ぎないのだと知ってしまった。
あなたはどこかで領主をされていたのですか?
いいや。王だ
自分などとは格が違う。そう思って問えばとんでもない答えが返ってきた。今の世の中で王と言えば、かつての魔王を破り人間の治世を取り戻した勇者王その人だ。僭称することはけして許されていない。
だが、彼が別の世界から来たという話を思い出す。少し前までのユウェロイであれば世迷言と切り捨てていただろうが、今ならばすんなりと信じることができた。
領主であることは辛いか
ユウェロイの肩を抱き寄せつつ、Olはぽつりとそんな事を問う。突然に核心を突かれてユウェロイは身体を震わせた。
それは誰にもブランにすら、打ち明けたことのない本音であった。ユウェロイは領主になどなりたくはなかった。だが血筋と、ブランという大きすぎる力がそうならないことを許してはくれなかった。
強い壁族であることを示すために虚勢を張り、傲慢に振舞い、逆らうものがあれば容赦なく処罰した。少しでも甘い顔を見せれば民というものは付け上がり、こちらを侮るものなのだと教えられた。
だが本当に必要なのはそうではなかった。ただ快楽を欲して受けた指導だったが、それはまさしく指導であったのだ。戦士としてではなく、領主としての。
私は、今からでも良き領主になれるでしょうか
一人では難しかろうな。失った信頼を取り戻すというのは、言うほど簡単なことではない
それはそうだろう、とユウェロイも思う。今更手のひらを返したところで、部下たちはまた壁族の気まぐれが始まったと思うだけのはずだ。ユウェロイの後ろにはどうしたってブランがいる。中層最強の彼女がいる以上、ユウェロイには逆らえない。その図式は変わらないのだ。だが、ブランがいなくなればユウェロイ領は瓦解するだろう。
だが、お前には俺がいる。俺ならば、領主として本当に必要な事を教えてやれる
本当ですか?
ユウェロイは喜びに目を見開いて、Olを見つめた。自分のやり方が間違っていたことは自覚したが、だからと言って具体的にどうしたらいいのかというと窮してしまう。それを教えて貰えるのならば願ってもないことだった。
ああ。夜ごとでもな
毎日ですと、公務に差し障ってしまいます
喉が枯れそうなほどに叫んだ事を思い出し、ユウェロイは控えめにそう口にする。今後も可愛がってもらえるのは嬉しいが、とても身体が持ちそうもない。
今も腰砕けになり起き上がることも億劫だというのに、Olにはまだまだ余裕がありそうだった。彼が何人もの相手と関係を持っているのも頷けるというものだ。
だが、そうするには一つ必要なことがある
からかうような口ぶりから一転し、改まった口調で告げるOlにユウェロイは息をのむ。その先に続く言葉を予測できたからだ。
ブランを討つ
そしてその予測は当たった。
安心しろ。討つと言っても殺してしまうわけではない
ブランがユウェロイに対して吹き込んだ教えは、確かに間違っていた。しかし彼女を慕い尊敬する気持ち自体がなくなってしまったわけではない。親を亡くしたユウェロイを守ってくれたのは紛れもなくブランなのだから。
それにおそらく奴自身もそれを望んでいるだろうからな
Olの不思議な物言いに、ユウェロイは内心首を傾げる。確かにブランは屈するくらいなら死ぬ、というようなタイプではない。だがそれは殆どの者がそうなのではなかろうか。
いや、少し前の自分ならばそのくらいのことは言ったかもしれない、とユウェロイは自嘲する。実際には命を絶つ度胸などないくせに、壁族の矜持に縋って生きていたかつての自分は。
私に何かできることはありますか?
この日のために──この言葉の為に、Olはユウェロイに快楽の種を植え付けた後、わざわざ殴られてまで彼女がOlを認めつつあることをブランから隠したのだ。
お前にしかできないことがある
ブラン様!もう我慢なりません。あのOlという男を即刻処刑してください!
その日、自室で鍛錬に励んでいたブランは、ノックもせずに勢い込んで入ってきたユウェロイに目を丸くした。彼女がブランの前でこれほどまでに怒りをあらわにするのは非常に珍しいことだったからだ。
一体どうしたのですか?
どうもこうもありません!あの男ときたら昼間から何人もの女を侍らせ色事にふけり、ロクに探索もしない始末!あのような男が我が領にいることが我慢できません!
烈火のごとき怒りを見せるユウェロイに、少し潔癖に育てすぎたかしらとブランは思う。彼女も一応Olの動向は監視してはいるが、処刑するほどのものではないと認識していた。むしろ
ですが彼は結果として十分な上納を集めていますし、ハルトヴァンを押さえ、レイユとも同盟を結んでいるでしょう。確かに少々独断が過ぎますが、処刑というのはあまりにもそれに、姫様がお許しにならないでしょう
ブランが庇護する少女。何よりも大切な存在。彼女を思うと、ブランの心中はいつもかき乱される。フローロを悲しませることなどあっては、ならない事だ。
それがブラン様を討つ為の準備であるとしても、ですか?
ええ。構いません
その可能性は考えていた。むしろあの男であればそれを当然画策している事だろう。だが何の問題もない。
私は負けませんから
刃向かって来たら正面から潰してしまえばいいだけの話だ。仮に前回のような手段を取ってきたとしてもフローロの手前殺してしまう事ができないのは向こうも同じことだ。
Olが快楽を用いて部下を篭絡しているのは知っている。だが、その手はブランには絶対に効かない。それは自信でも確信でもなく、ただの事実であった。
ではいっそのこと、こちらから仕掛けてしまうのはどうでしょう
すると、ユウェロイはそんなことを言い出した。
私の調べによると、Olは約束を破ることができないようなのです。奴に条件を付けて戦い、ブラン様が勝てば絶対に逆らう事がないよう約束させればどうでしょうか
しかし、そんな話に乗ってくるでしょうか?
そもそも戦いを受ける理由がOlにあまりにも乏しい、とブランは思う。
奴は女好きですから、適当な魔族から見目のいいものを選んでその身体を対価とでもすればいくらでも乗ってくるでしょう。ブラン様が真っ向から負ける事はないでしょうから、何なら私の身を賭けても構いません
流石にユウェロイの台詞は短慮に過ぎる。が、一理はあった。
ならば、私の身を賭けても構いませんね
なっ!?そ、それは駄目です!
ブランに勝てば彼の得意な快楽による洗脳に持ち込める。そうチラつかせれば乗ってくる可能性は大いにあった。
なぜですか?私が真っ向勝負で負けるとでも?
それはそうでは、ありませんが
Ol。最下層からフローロを掬い上げた、正体不明の異邦人。あるいは彼ならばと抱きそうになる期待を、ブランはすぐに打ち消す。
そんなことをしても無駄とは知りつつも。
第14話孤独な少女を救いましょう-3
この日を待ちわびたぞ、ブラン
そうですか
準備万端、とでも言いたげな表情のOlに、ブランは何の感情も込めずにそう答える。ユウェロイから例の条件を伝えれば、彼はあっけないほどに素直にそれに飛びついた。
条件を確認しよう。俺とお前とで勝負をし、お前が勝てば俺は謀反を企てたりせず、無条件にお前に従う。俺が勝てば、お前の身体を貰う。それでいいか?
ブランは首を横に振る。それは約束というにはあまりにも穴だらけだったからだ。
まず、勝負というのは戦闘。どちらかが敗北を認めるか死亡した時点で決着をつけます。私が勝てばそうですね。あなたには私が許可した事以外の一切の行動を禁じます。最低限の生命維持に必要な事は無条件で許可してあげてもいいですが。あなたが勝った場合には、一晩のセックスに応じましょう。しかしそれ以上の事は許可しません
お前は魔術師の知り合いでもいるのか?
意外そうに眉を上げ、Olは問う。
魔術師というのが何かはわかりませんが、あなたのように契約のスキルを持っているものは上級壁族には珍しくありませんので
特に王族に仕えていたブランにとって、言葉尻一つを捉えて陥れようとする壁族などというものは日常茶飯事であった。当然、その辺りの訓練はしっかりと積んでいる。
よかろう。ただしその条件、別に戦うのが俺だとも、一対一だとも規定しておらんな
構いませんよ。何人連れてこようと同じことです
流石に何十人もつれてこられるのは時間がかかるし面倒だからやめて欲しいですが、とブランは付け加える。もともとOlが自分自身で戦うなどとは思っていなかった。
では、この二人に戦ってもらう
現れたのは蹄族と翅族の少女ユグとシィルの二人であった。
一応言っておくが、この二人は鉄の盾と鉄の腕を持っている
わざわざ丁寧にありがとうございます
ブランにとってそれはどうでもいい情報だった。本当だろうが嘘だろうが関係ない。立ち居振る舞いを見ればどんなスキルを持っているかなどおおよそわかるし、それは戦闘の中で判断すべきことだからだ。
では、参りますか
その前にここは少し狭い。広げさせてもらうぞ
Olがパチリと指を鳴らすと、部屋がぐっと広がった。特に三メートルの天井が倍程度まで高くなる。おそらくはあの極めて大柄な蹄族を自由に戦わせる為なのだろうが
今度は、多少本気で感謝の念がこもった礼であった。
私もこの壁界は、少々狭いと思っていたのです
長い銀髪に隠れた翼がバサリと広がり、大きく羽ばたく。次の瞬間、バチバチと雷電を纏いながらブランの身体は宙を舞い、天井を蹴った反動でそこから直滑降していた。
落下の速度を追加した雷速の蹴りを、ユグが重ねた両腕で防御する。ブランの飛び蹴りを真正面から受け止めて、ユグは数歩たたらを踏んだ。
ブランは驚きに目を見開いた。今の一撃を受け、ユグがなお立っていることに。
盾を持っているとするならこちらの方だろうが、それは関係ない。盾スキルは有用だが、決して無敵のスキルではないのだ。対処方法はいくつもあるが、最も単純なのはこれ──無効化しきれない威力の攻撃をぶつけることだ。
一定以上の強さの攻撃を受けると、盾はその攻撃を無効化できなくなる。軽減するのではなく、持ってないのと変わらなくなってしまうのだ。それはちょうど同クラスの腕を用いて攻撃したときに似ている。腕などなくとも盾くらい当たり前に貫通できなければ、上層ではとてもやっていけない。
だがそれでも、今の一撃を受けてユグが堪えるどころか倒れすらしなかったのは少々予想外だった。おそらく盾以外にも防御系のスキルを二、三持っていると見た方がいいだろう。
そしてより厄介なのは翅族のシィルの方だ。今の一撃の間に、彼女はその小さな身を隠しブランの視界の外へと隠していた。鉄の腕を持っているとしたら恐らくそちらだ。あのスキルはそれがいかにも似合いそうな巨漢が使うより、むしろ小さく軽いものに使う方が効果が高い。
久々に使いますか、とブランは心中で呟く。彼女の持つスキル、従者LV10。技術系のスキルは極めると、奥義と呼べる技を使えるようになる。従者のそれは、主人と定めた人物の意思を察し、予測し、未来予知と呼んでもいい精度で対処することだ。
本来の主人たるフローロがそばにいる状態で他の人物を主人に設定することは流石に出来ないが、今の状況であれば問題ない。盾を持ちブランの攻撃を防ぐユグと、腕を持ち姿を隠したシィル、どちらの動向を伺うべきか。
──無論、考えるまでもない。主人に設定するのはOlだ。
この場で何をするか最もわからない人物であり、同時に戦況を最も客観的に把握している人間だ。彼の様子を伺えば、次に二人が何をしてくるのかも手に取るようにわかる。Olの視線が向かうのは、ユグの方。つまり仕掛けてくるのも隠れているシィルではなく、彼女だ。
えぇいっ!
大きく腕を広げ、掴みかかってくるユグ。盾持ちに掴まれれば逃れることは難しいから、それは確かに悪くない選択だ。だが、動きがあまりにも遅すぎた。ブランは引くことなく、逆に一歩踏み込みユグの懐に一撃を見舞う。
ぐうっ!
うめき声をあげ、しかしユグはその一撃にも耐える。呆れたタフさだった。それどころか痛みを堪えつつブランの腕を掴もうとしてくる。だがブランは雷速で拳を引いてそれをかわし、軽く跳躍して身体を回転させた。
ふわりと侍女服のスカートが広がり、その下から太い竜の尾が閃いてユグを鞭のように打ち据える。鋼のような鱗に覆われたしなやかな尾の一撃は、蹴りよりも鋭く鉄鎚よりも重い。
ううっ!
だがそれでさえも、ユグは倒れなかった。大抵の敵は一撃で倒してきたブランの必殺の攻撃を三度。防御スキルを使っているとか、頑丈だとかで済まされる問題ではない。明らかに異常だった。
Olの意識は、まだユグに留まっている。これだけ攻撃の隙を晒して、シィルが一切攻撃してこないというのもおかしかった。
もしや、と集中して気配を探る。すると微かに、その気配が感じられた。ユグの服の中、その冗談みたいに大きい乳房の間に。
治癒術、ですか
ブランの攻撃を三度耐えて平気で立っている者がいるとは考えにくいが、一撃ごとに回復しているのならば話は別だ。治癒術は高等なスキルで消費も大きいが、翅族は身体が小さい分スキル容量は大きい傾向がある。鉄の腕を使っているというのがブラフであれば、中癒辺りなら使えても不思議はない。
だが種が割れてしまえばあとは簡単だ。スキルを使えなくなるまで攻撃を続けるか、回復が追い付かないほどのダメージを与えるかすればいい。ブランは後者を選んだ。
バサリと翼を広げ後ろに跳躍し、雷身のスキルで身体に雷を纏う。周囲の空気がパチパチと雷気を帯びて爆ぜ、ブランの角が光り輝く。雷身は全身に帯びた雷気によって、一撃の威力と速度とを爆発的に増幅させるスキルだ。
自分自身さえその速度にはついていけず動きが直線的になってしまう欠点はあるが、ユグ程度の技量であれば問題ない。仮に防がれようとガードごと貫ける自信があった。
はぁぁぁっ!
火花の線を床に引きながら、ブランの身体が加速する。それを予測して両腕を構えるユグ。ブランが尾を地面に突き立てると、彼女の身体はぐるんと弧を描いてユグの側面に回り込んだ。強靭な尾を持つ鱗族だからこそできる、雷光を御する技。
文字通り必殺の一撃が、ユグの脇腹に突き刺さる。三メートルの巨体が折れ曲がり、くずおれて
そして、持ちこたえた。
捕まえ、ました!
驚愕に目を見開くブランの拳を、ユグが掴む。ブランの倍はあろうかという巨大な手のひらに前腕をがっちり握られ、振りほどけない。そこで、ブランは己の勘違いにようやく気が付いた。
ユグが異常に頑丈なのではない。自分が、弱くなっているのだ。
いくら驚いたとしても、普段のブランであれば盾持ちに掴まれるような失態を犯すはずがない。即座に蹴りを放つが、その威力は腕を掴まれていることを差し引いても明らかに威力を欠いていた。
ふ、封雷!
かくなる上は雷身を用いて直接電撃を浴びせ、いったん離れるしかない。そう考え迸る稲妻を、ユグの何らかのスキルが防いだ。爆ぜていた周囲の空気が一瞬にして沈静化し、ブランの身体に漲っていた力が消え去る。
スキルの名からして、雷を封じるスキルだろう。それも恐らく触れている相手にしか効果がない。恐ろしく用途の限定された、しかしブランに対してはこれ以上なく刺さるスキル。
反転!
自身にかかるスキルであれば、ブランはその効果を反転することができる。ついでに自分にかけられた弱体化も反転させて、ブランは再度雷身を身にまとう。
がっ!?
そして、体内を貫く雷撃に、ブランは悲鳴を上げた。混乱する思考の中でOlの動向を確認し、理解する。封雷で封じられたのは、雷自体ではなく大気がそれを伝える力だ。
それを反転させればブランの肉体を含んだ大気は極めて電気を通しやすい状態となり、最も近くにいる存在ブラン自身を貫く。
だが無論、そうなればその雷撃はユグにも流れる。肌を焼く稲妻に彼女の力が緩んだ瞬間を見計らってブランは離脱し、体勢を整えた。弱体化を反転させたことで力は完全に戻っている。それどころか、弱体化をかけた側が弱くなっているはずだ。
それがユグであるにしろシィルであるにしろ、それに気づいて解除される前に倒す。相手が弱体化した状態であれば雷身を使わずとも十分可能なはずだ。突きを見舞うブランの前に、ユグの谷間からシィルが飛び出す。
鉄の腕の攻撃力。いや、それだけではない、とブランは判断する。何か隠し玉がある。だがどんなスキルがあろうと、それがブランの身体能力に優越するはずはない。彼女にはその自負があった。
小さな小さな拳を捌き、翅族を無視して蹄族から倒す。そうすれば後は消化試合だ。そう考えるブランの拳を、シィルは予想を遥かに超える疾さと鋭さで貫いた。
次の瞬間、ブランの身体は宙に浮いて吹き飛んでいた。地面を転がる身体を何とか翼と尻尾で押しとどめ、信じられない面持ちで前を見上げる。手のひらに乗ってしまう程度の大きさの翅族が、こちらに向けて拳を突き出していた。
そんな芸当、どんなスキルを持ったとしても出来るはずがない。まるで、ブラン自身の突きでも食らったかのような
ある思い付きに、ブランはOlを見、その思考を伺った。彼の視線と意思は、シィルとブラン、その両方に同じだけ注がれている。そこでブランはようやく、自分が何をされたか理解した。さっきまで受けていたのは弱体化ではない。
自分と相手の能力を同じにするスキルだ。
シィルはそれをずっと自分に使っていた。それは万全の効果を発揮してはいなかったが、しかしそれでも強靭な鱗族の能力を、小さく弱い翅族のそれに近づけていた。
そして今、ブランはそれを反転させた。つまり──今目の前にいるのは、鱗族の力を備えた翅族だ。
反転を解いたところで無駄だ。そうなれば今度はブランが弱くなるだけで、状況はむしろ悪くなる。雷身を封じられ、身体能力の差を埋められて、いかなるスキルも打破するはずの反転すら役に立たない。
彼女に残されたのは、後は拳の技だけだった。反転を解くかどうかを一瞬悩み、解かずに彼女は挑みかかる。同じ身体能力であれば、技の分ブランの方が強い。
雲霞の如く放たれる拳撃を、しかしシィルはことごとくかわす。虫のような翅で宙を自在に舞い、拳よりもわずかに大きい程度の体躯を捉えるのは至難の業であった。
そしてその背後から、ユグが大きく脚を振り上げる。後ろに引く、飛んで避ける。どちらもシィルに追撃されて手ひどいダメージを受ける。覚悟を決めて腕でガードするブランの身体を、ユグの蹴りが吹き飛ばして壁に叩きつけた。
まだまだぁ!
あらゆるスキルを封殺され、身体能力すら奪われ、拳技も通用せず、それでもブランの心は折れない。負けを認めなければ、屈することさえなければ、必ずその先がある。
ならば簡単だ。屈しなければいいだけだ。
おぼつかない足取りで、しかし闘志は微塵も衰えず、ブランは眼前の二人を見つめる。弱者と侮り、弱者であるがゆえにここまでブランを追い詰めた二人を。
だから、気が付かなかった。
足元から触手のように伸び、己を拘束する母なる壁に。
第14話孤独な少女を救いましょう-4
俺が介入してはならんというルールもなかったものでな
あなたはどこまで!
負傷し疲弊したユグとシィルを退場させた後、しれっと言い放つOlに流石にブランはキレた。
そうは言うが、お前はその可能性もしっかり考慮していただろうが
そうですが!
どれだけ心が折れなかろうと、全身を母なる壁で拘束されてしまえばどうしようもない。だが、ブランがユグとシィルの二人を認め、Olから注意を切った瞬間を見計らうあたりがどこまでも悪辣だ。どっちにしろあのまま戦っていてもブランの負けだっただろう事がわかるだけに、余計に腹が立った。
大体なんなんですか。あの相手の能力を自分と同じにするとかいうめちゃくちゃなスキルは
感染呪術だ
Olから飛び出した全く聞き覚えのない言葉に、ブランは首を傾げる。
シィルの奴は魔力量は豊富なくせに魔術の才能がからっきしでな。唯一モノになったのが、同期の呪い相手を自分と同じ立場に引きずり込む術だ
体格に恵まれ、拳闘の素質にも優れていたユグと違って、シィルの弱さはスキルや魔術でどうこうなるものではなかった。だが、それでも他者に負けまいとする心の強さ。それは呪いにとって最重要の資質であった。
わかりました。負けを認めます。さっさと好きになさってください
だらりと身体から力を抜いてため息をつくブラン。どうせ彼のやるのは無駄なことだ。彼がどれだけ快楽を与えようと、ブランがそれに屈することはない。ただ一晩やり過ごせばいいだけの話だ。
ではそうさせてもらおう
ぐにゃり、とブランを拘束する母なる壁が変形し、彼女の身体を動かす。天井から吊り下げられた状態のまま、Olに向かって高く尻を掲げるような体勢にされた。
ふむ。良い尻だな
あなたこそ良いご趣味ですね
ぺろりと侍女服のスカートをめくりあげるOlに、ブランは皮肉を飛ばす。尻尾で叩きのめしてやりたかったが、残念ながらそちらもしっかり拘束されていた。
そのままするりと下着を下ろされ、尻をじろじろと見られる恥辱にブランは身体を震わせる。
じゅっ、と焼きごてを当てるかのような音とともにOlの手がブランの腹に押し当てられ、身体を走る衝撃にブランは嬌声を上げた。
などうして?
今彼女が味わったのは、紛れもなく快感と呼ぶべき物。しかしブランが快楽を感じる事はないはずだった。なぜなら──
苦痛を快楽に変える術を、今お前にかけた
Olが施したその全く逆。快楽を苦痛に変えるよう、反転を設定していたからだ。
人は苦痛には耐えられる。だが、快楽に耐えることはできない
ま、待っ──
Olの男根が、ブランの入り口に押し当てられる。己の身に訪れる予感に、ブランの肌が粟立った。
お前の精神力であれば、確かに耐えただろうな。苦痛であれば
ずぶりと己を貫く剛直の感覚に、ブランはたまらず高く声をあげた。濡れてもいない処女穴を無理やり突き破られる破瓜の痛み。初めて知る男のものが、己の弱い部分をぐっと穿つ痺れるような快楽。そのどちらもが快感に変換されて、ブランの身体を焼いた。
フローロを通して快感を送り込んだ時も、お前は快楽ではなく痛みによって気絶していたのだな。なるほど、気を失ってしまえば落としようがない
うぐっ!ひぐぅっ!
容赦なく突き込まれるOlの肉槍に身体は否応なく反応し、滴る愛液が立てるじゅぷじゅぷという淫猥な音が鳴り響く。繰り返されている、とブランは理解した。
Olのもたらす痛みは彼の術によって快感に変じ、それは反転のスキルによって苦痛に反転される。そしてその苦痛はブランが認識するよりも早く、Olの術によって再び快楽へと変換されるのだ。
問題は、表層的にブランが感じるのが快楽の方であるという事だった。繰り返し変換される苦痛と快楽は消えることなく蓄積されていって、波のようにブランを襲う。そしてOlが一度彼女の奥を突く度、その波はどんどん高くなっていくのだ。
ひうっ!
どうすればいいと回るブランの思考を邪魔するかのようにパァンッ!と景気のいい音が鳴り響き、衝撃的な快楽が──そうとしか表現できないものが、彼女の尻から全身に伝わった。
Olが平手で、ブランの尻を叩いたのだ。音と痛みを最大限に残しつつ、しかし肉体そのものにはダメージを与えない、革の鞭のような一撃だった。
あまり女の身体を痛めつけるような事はしたくないのだがな
ひあぁぁっ!!
そう言いつつも振り下ろされる手のひらに、ブランは高く鳴く。絶頂などとうに通り過ぎ、今まで感じたことのない深い快楽の中で、更にひときわ強く深く焼けるような快楽が叩きつけられる。
あまりの快楽にブランの股間からは液体が漏れ出し、結合しているOlの股を濡らす。その恥辱にブランは身を震わせて、愕然とした。
──精神的な苦痛すら、快楽に変換されている。
ひぐぅぅっ!ひあぁぁっ!あ゛ぁっ!お゛ぁあっ!
パンパンと音を立てながら何度も奥に突き込まれる男根の快楽に。尻を激しく打たれる痺れるような衝撃に。胸を鷲掴みにされ、乳首を千切れんばかりに摘まみ上げられ、ブランはあられもなく嬌声を上げる。
涙を流しながら失禁し、太く喘ぎ声をあげるその姿には普段の涼やかな優美さは微塵もなかった。彼女を慕うユウェロイやフローロが見れば、あるいは幻滅さえするかもしれないような、雌の姿。
今までの人生をひっくり返されるような凄まじい快楽に、ブランは納得する。この快楽を得るためであれば自分のすべてをなげうっても惜しくはない。フローロにフォリオやラディコ、そしてあるいはユウェロイもこれを味わわされれば、Olに隷属してしまうのも無理はない。
そう思うほどの快楽を──
しかし、ブランは、耐えた。
耐えることが出来てしまった。
これほどの快楽を覚えこまされて、命令に背けばもう二度と与えないと言われれば堪えがたい苦しみを味わうだろう。
だがブランは、それに耐えることが出来る。そのつらさを堪えることが出来る。
ブランの真の強さとは、身体能力でもスキルでもなく、その類稀なる精神力にあった。
どれだけ感じさせられ、喘がされ、絶頂させられようと、ブランがそれに屈することはない。
先ほどお前にかけた術だが
部屋の中に響き渡るブランの嬌声を切り裂くように、Olの低い声がぼそりと響く。
アレの効果自体、お前の反転の影響を受け反転している。つまり、本来は快楽を苦痛に変える術だ。だからこそ、お前は今快楽だけを感じている
快楽に蕩けたブランにも理解できるように、Olはゆっくりとそう説明した。
反転も術も、どちらも苦痛だけを感じるようにしている。だからそれが反転して、今ブランは快楽だけを感じている。そういう理屈だった。
この状態で、お前の反転のスキルを手放したらどうなると思う?
ぞわり、とブランの身体が総毛だった。
反転のスキルがなくなれば、術だけが残る。本来の術快楽を苦痛に変える術だけが。そしてこの、膨大な快楽が一瞬にしてすべて苦痛に変換される。
これほどの快楽を感じるほどの苦痛は、いかばかりのものか。人は苦痛には耐えられる。ブランは快楽にすら耐えられる。
だが、快楽から苦痛に相転移する、その落差には?快楽に伴う多幸感が、気を失うことを許してくれない。地獄を超えた想像を絶する苦痛が、ブランを襲う。ブランはその激しさを、思わず想像してしまった。
だから、反転を渡せ
反射的にブランは思う。渡したくない。今渡してしまえば、きっと自分は壊れてしまう。故に彼女は叫んだ。
とって、下さい!
Olの腕がブランの背中からずぶりと体内に入り込み、反転のスキルを抜き取る。白と黒が互いにせめぎあいまじりあうような、奇妙で禍々しい結晶だった。
あぁっ!ぐぅぅっ!
途端襲い掛かってくる、魂を焼くような苦痛。だがそれはほんの一瞬の、更に刹那の事であった。暖かく柔らかな波動のようなものが背中に当てられたOlの手のひらから伝わってきて、苦痛が嘘のように拭い去られていく。
ほんの一瞬で、ブランの身体はびっしょりと汗にまみれていた。あれがほんの数秒続けば、自分の精神は粉々に砕け散っていただろうと確信するほどの苦痛。
拘束がするりと外れ、ブランの身体が解放される。ぐったりとして地面に崩れ落ちそうになる彼女の身体を、Olが抱き留めた。
はぁっはぁっはぁっ
目を大きく見開き、荒く肩で呼吸しながらブランはOlを見つめる。
いつから?
最初に気づいたのは、フローロだ
端的なブランの言葉に、Olはその意図を違わず受け取って答えた。
今まで、よく堪え、耐えてきたな
ボロボロと、ブランの瞳から涙が零れ落ちる。Olが彼女を抱きしめると、ブランはOlの背中に腕を回して声を上げて、まるで幼い少女のようにむせび泣き始めた。
ブランを助けてほしい。理由はわからないが、彼女はずっと苦しんでいる。
ルヴェとクゥシェを堕とした時にフローロからそう頼まれて以来、Olはブランの様子を密かに監視し続けてきた。
ブランが反転のスキルに支配されている事を確信したのは、彼女がユウェロイを可愛がっている時の事だ。あれほどユウェロイに慕われ、そして自身もユウェロイを可愛く思っている。それは間違いのないことだ。だが実際にやっているのは、加害としか言いようのない所作であった。
だがそれ以前からも細かい違和感はあった。やっていることがちぐはぐなのだ。
そもそもフローロを最下層の奴隷のまま放置していた意味が分からない。
最初は単にOlの実力を試しているだけかとも思ったが、それにしては本気でフローロを殺そうとしているように思える瞬間もあった。
そしてフローロが中層で暮らすようになってからは、何かと理由をつけて彼女をずっと自室に閉じ込め続けた。Olに会わせないためかと思えば、フローロがOlの部屋を訪れるのは一切止めようとしない。
誰かから守ろうとしているのは明白だった。しかしその誰かとは、Olでもなければモンスターでも、敵対する領主たちでもない。
他でもない、ブラン自身だったのだ。
要するにお前は愛する者を殺したくて堪らなくなっていたのだな?
Olの胸板に泣き顔をうずめながら、ブランは頷く。
そしてそれを、精神力でこらえていた
ブランはもう一度、こくりと頷く。
凄まじい精神力、そして忠義だ
おそらくは、通常の人間であれば迷わず愛する者を手にかけてしまうのだろう。だがブランはその忠誠心と思考力によって、その衝動に抗った。人を愛しく思えば思うほど、大事にすればするほどそれを虐げ破壊したくなる。己の心に背き続けるのがいかほどに苦しく辛いことか、かつて似たような経験を味わったOlにはよくわかった。
そして反転を手放したいという気持ちも反転させられていたわけだな
なぜそれがお分かりになったのですか?単に手放すことを禁じられているだけの可能性もあったはずです
スキルを抜き取るには、本人の同意がなければならない。ブランがそれを手放すには、ほんの一瞬でも心からこの呪われたスキルを手放したくないと思う必要があった。
そうだな。だが動作であればともかく、思考を禁じるというのは非常に困難だ。動作を禁じる場合も、禁を犯せば耐えがたい苦痛を味わわせるという手段を取るのが精々だろう。──そしてお前なら、その苦痛を耐えて見せたはずだ
はい。実際その苦痛も感じておりましたから
あっさりと首肯するブランに、Olは苦笑する。この娘とでは契約での縛りも意味をなさないという事だ。
一つ問おう。お前にそれを付けたのは誰だ?
それは──
ブランが返答に逡巡したその時。
部屋に駆け込んできたのは、ユウェロイとフローロであった。
Olから報告を聞きました。もう、大丈夫なのですか?
はい姫様。本当に申し訳ございませんでした。ユウェ。あなたにも、苦労をかけました
抱き合い、慰め合う娘たちを横目に見つつ、Olは今聞いた情報をどう扱えばよいものか思い悩む。
ブランは確かにこう言った。
自分に反転を付けたのは、魔王──フローロの父であると。
第15話封じられた箱を開きましょう-1
オーウルっ!今日からわたしもOlと一緒に探索できますよー!
いや、俺は探索はせんぞ
嬉しそうに飛びついてくるフローロに、Olはそっけなく言い返す。
何でですか!?
必要がないからだ
Ol自身が探索に出てドロップ品を稼いでくるよりも、冒険者たちの管理をしてその上前をはねた方が遥かに効率がいい。とはいえ、冒険者たちを管理するというのは言うほど簡単な話でもなかった。
元居た世界の冒険者というのは所詮まともな職に就けないごろつきの成れの果て。野盗よりは多少マシという部類の人間に過ぎなかったが、こちらの世界ではダンジョン探索こそが万人の就く職業だ。それゆえ、人間性で言えばおかしな人間の比率は比較的少ない。
にもかかわらず、問題は頻出した。あのパーティが獲物を横取りしただの、ドロップ品だけ盗んでいっただの、魔族だけのパーティのくせに生意気だだの、Olからしてみれば下らないとしか思えない話の仲裁をいちいちしつつ、利益を最大化するためにひよっこ達の面倒を見てやらねばならない。
基本的なスキルの使い方から戦術の運用、モンスターの特徴や対応方法、最適な狩場の紹介に普段の訓練方法などなど。そうして分かったのは、思った以上にこの世界の人間たちがふんわりとした認識で行動しているという事だった。
そもそも、訓練をするという意識がほとんどない。能力というのはどんなスキルを持っているかで決まり、それは自分の上となる人間から与えられたり、モンスターから偶然ドロップしたりといった方法で得られるものだからだ。
そんな連中を何とかまとめ上げて教育し、訓練を施し、いっぱしの探索者にしてやる。冒険者という仰々しい名前だってその一環だ。ただの探索、言ってしまえばそれは狩猟でしかない。
それを敢えて冒険と呼ぶことで、未知への挑戦言い換えれば成長を促し、生活するのに最低限必要な狩りで満足していた者たちの生産性を向上させた。
ナギアが存外そういった分野については優秀だった為なんとかなっているが、こんなものを一人で回していた元の世界の部下、商人のノームの手腕にOlは改めて感心した。
行きましょうよー
そんなに行きたければ一人で行けばよかろう。お前に合ったパーティメンバーも斡旋してやるぞ
わたしはOlと行きたいんです!
書類にペンを走らせ続けるOlに横からぎゅうぎゅうと抱きつき駄々をこねるフローロ。毎夜のようにその身体は可愛がっているとはいえ、ここの所ロクに相手してやれていないのも確かなことだ。今日は差し迫った問題も発生していないようだし、そろそろ構ってやるか。
オーナー!大変です!
急報が届いたのは、Olがそんなことを考えた直後のことであった。
これは凄まじいな
目の前に広がる光景に、Olは思わずそんな言葉を漏らす。通路をまるで海がおしよせてきたかのように埋めつくしているのは、毒々しい緑色の軟体生物。
泡雫球と呼ばれるモンスターの群れであった。
一体一体は不定形のネバネバしたスライムのようなモンスターで、その名の通りぶくぶくと表面から泡を立て、それが宙に浮いて漂っている。
その泡の中には毒素が含まれており、下手に割ると中毒症状を起こすらしかった。
対するOlは総力を連れての対応だ。フォリオにラディコ、サルナーク。ルヴェとクゥシェのスィエル姉妹にその従者のテール。冒険者としてみるみる頭角を表しているシィルとユグ。ユウェロイやハルトヴァン、レイユたちもそれぞれ部下を率いて事の鎮静に当たっている。それ程の事態であった。
気をつけてくださいね。この泡雫球の毒には解毒が効きにくいそうです
翼族の参謀、フォリオがそう忠告をする。
一体一体は大したことはない。サルナーク。フォリオ、ラディコと共に数を減らせ。ルヴェ、クゥシェ、テールの三人は居住区に向かう泡雫球を食い止めろ。シィルとユグは壁民の避難だ
Olは矢継ぎ早に指示を飛ばす。
Ol、わたしは!?
そして目を輝かせるフローロと、その横に静かに侍るブランにため息をついた。
お前は俺とナギアと共にギルド本部で待機だ
でも今は一人でも人手が必要ですよね?
フローロは真っ直ぐにOlを見据える。その瞳からは先程までの、状況を楽しむような輝きは消え失せ、真剣な施政者としての意思だけが残っていた。
それにブラン程の戦力を遊ばせておくのも勿体ないはずです
私はフローロ様のお傍を離れる訳には参りませんので
フローロの言葉をブランがやんわりとサポートして、Olは嘆息し白旗を上げた。
分かった。俺たちは遊撃部隊だ。行く手を排除しつつ探すぞ
何をですか?
どの道それを行う部隊は必要ではあった。本来ならばサルナークの部隊に任せようと思ってはいたが、効率を考えるならOlがやるのが最も効率的であることは分かってはいた。
本体だ
モンスターというのは要するに、魔力の塊で作られた自動機械のようなものだ、とOlは理解していた。無論アレオスのようにある程度の感情のようなものはあるが、純粋な生命ではない。
故になんの理由もなく大量発生するなどということは考えづらく、原因があるとすればそれは特異個体と呼ばれるイレギュラー本来のモンスターとは隔絶した能力と強さを持った特殊な個体の仕業であるだろう、とOlは予測していた。
問題はそれがどこにいるかだ。
これでは探すのも儘ならん。とにかくまずは数を減らすぞ
任せてください!
通路を埋め尽くす泡雫球に辟易するOlに、フローロは張り切って棍を構える。
掛け声と共に振るわれた棍はフローロの背丈を遥かに超える長さに伸びると、先端が太く広がり泡雫球の群れを一度に叩き潰す。
そしてそのままさらに伸び、まるで意志を持っているかのようにぶんと先端を横に振って、泡雫球たちを薙ぎ払った。
どうですか、Ol!わたしが改良した真・自在棍です!
それは元々、ただ長さを変えられるだけの道具であったはずだ。それが太さや形状、動作まで加えられるようになっている。
と言ってもOlが使ってたダンジョン・キューブの下位互換みたいなものなんですけどね
照れたようにフローロは言うが、とんでもない話だった。Olは彼女に物質を変化させるための変性術も、それを道具に定着させるための付与術も教えていない。
ましてや既に道具に定着している機能を改造することなど、そう簡単に出来ることなどではなかった。
でも泡雫球相手ならわたしの方がブランより役に立つんじゃないですか?
フローロはふふん、と胸を張る。確かに拳足を用いて戦うブランにとって、泡雫球は相性の悪い敵だった。迂闊に近づけば毒を食らってしまう。一匹二匹ならどうということは無いだろうが、通路を埋めつくさんばかりに群れているこの状況では安易に近づくのは危険だ。
さらりと髪をなびかせて、ブランは頷く。反転が取れ、彼女の物腰は明らかに変わった。以前にはあった強者としての傲慢さが消えてなくなり、代わりに仕えるものとしての落ち着いた振る舞いが表出していた。これこそが、本来のブランなのだろう。
私に出来ますのは精々
バチリ、とブランの身体が雷光をまとい、その拳に集まる。スカートの裾から竜の尾がたらされ、床にしっかりと接地して体幹を支える。
そして、彼女はその拳を力いっぱい泡雫球の群れに向かって突き出した。
雷気を帯びた風の奔流が通路を駆け抜けて、壁や床、天井に張り付いた泡雫球たちを引き剥がし吹き飛ばしていく。
この程度のものですね
ポポポポポン、と音を立てて一斉にドロップ品に変わっていく泡雫球の群れを前に、にこやかに言うブランにフローロは呆然とする。
反転しても案外本質は変わらないものなのかもしれない。真っさらになった通路に、Olはそう思うのであった。
第15話封じられた箱を開きましょう-2
リル。この先を偵察してこい
ポン、と音を立ててOlの手のひらの上に真ん丸な身体をした風船蝙蝠が呼び出され、Olの命にキィキィと返事をして飛んでいく。
あの風船蝙蝠、リルって名前をつけてるんですか?
悪いか?
その名をフローロに聞きとめられ、Olは少々バツの悪い思いで答えた。
いえ前、寝ている時に聞いた名前でしたので
元いた世界の部下の名だ。あいつによく似ていたからつけた
夢で見た時に呟いてしまったのか、と渋面を作りつつも、Olは本人がいれば大いに異議を唱えたであろうことを口にする。
そうなんですね
フローロは何か言いたげだったが、そんな下らない感傷の話をしている場合でもない。
いたか
リルの視界を受け取って、Olは泡雫球の本体らしき存在を見つけた。
アレオス、蹴散らせ!
Olの右袖が翼獅子の頭へと変貌すると、アレオスは咆哮し喉の奥から炎を吐き出して泡雫球の群れを薙ぎ払う。討ち漏らしをフローロが自在棍で潰し、長い直線の群れをブランの突きが一掃する。
幾度かそれを繰り返し、Olたちはとうとうリルの示した場所へと辿り着いた。
大きいですね
それはまるで壁のように通路をみっちりと埋めた、巨大な泡雫球だった。群れではなく、単独の個体であることが周囲を浮かぶ巨大な泡が示している。小柄なラディコくらいなら閉じ込めてしまえそうな大きさの泡だった。
まずは一撃、試してみますね
ブランがバサリと翼を広げ、全身に雷光を纏う。ここまで雑魚を散らしてきたものとは比べ物にならないほどの光がブランの身体を包み込み、それが拳に収束して、柱のように撃ち出された。
それが消え去った後、全くの無傷で佇む泡雫球にブランはのんきな声をあげる。
あの泡が攻撃の威力を散らしてしまうんですね
そのようだな
ブランが攻撃する寸前、泡が寄り集まり、光線を互いに反射させて散らしていく様をブランとOlは目にしていた。
だったらっ!
フローロの自在棍が宙を漂う泡を薙ぎ払い、貫く。しかし泡はその攻撃にぽよんと跳ねて少し移動するだけで、まるで割れる気配がなかった。
思ったより頑丈ですね
ではこれならばどうだ
アレオスの炎が泡を包み込む。ブランの雷光にすら耐えた泡がそう簡単に炎で消えるわけもなかったが、中の空気は別だ。泡である以上、それは中に空気をはらんでいる。それは炎によって熱され膨らみ、薄く引き伸ばされた泡は内圧に耐えきれずに破裂した。
だがその爆発は思った以上に大規模なものだった。辺りに毒が混じった液体が飛び散り、じゅうじゅうと音を立てる。そして、フローロを庇ったブランはそれを背中に思いきり浴びてしまった。
大丈夫ですこの、程度
同じ特異個体だからかアレオスのローブは毒液を防いだが、ブランの肌はそういう訳にもいかなかったらしい。
チッ! フローロ、来るぞ!
泡雫球の表面がぐにゃりと歪み、無数の触手が槍のように放たれる。ブランが傷の痛みを堪えながらそれを捌き、Olはアレオスの脚を使ってそれをかわす。
フローロ、お前たちは引け!
Olはどうするつもりですか!?
俺はアレを封じる
何も倒す必要はないのだ。動きは遅いようだし、壁で閉じ込めてしまえばいい。だがそれには一つ問題があった。
泡雫球は通路を完全に埋めてしまっているので、その向こう側がどうなっているか確認することが出来ない。壁に穴を開けて通り道を作ってもいいが、向こう側が行き止まりだった場合は最悪だ。故にまず、多少なりとも泡雫球の身体に穴を開けて向こう側を確認する必要があった。
フローロ、ブランとそこに入れ。冒険者ギルドへの転移陣だ。今すぐ戻ればそいつなら死ぬことはなかろう
床に魔法陣を描きつつ、Olは泡雫球をアレオスの炎で牽制する。
存外聞き分けのいい声とともに転移陣が作動する音が鳴り、さてどうしたものかとOlは思案した。
封じるってどうやるんですか?
まずあいつの体に穴を開けて待て。なぜお前が残っている!?
横から不意に掛けられた声に答えかけ、Olはフローロの姿に驚く。
それはもう、妻ですから
振り向けば転移陣とブランの姿は消えている。どうやら陣にブランだけ放り込んできたらしい。
Olのそのすごい火なら、多分穴を空けられますよね?
邪魔なあの泡がなければな
そうやり取りする間にも泡雫球は泡を吐き出し、先程爆発して減った分を補充している。
ならこうしたらどうでしょう?
フローロはそう言って自在棍を構えると、それを巨大に広げ、泡を弾きながら泡雫球の本体まで続くトンネルを作り上げた。
そこまで大きく出来るのか!
いえ結構キツいので出来れば急いでお願いします!
Olはトンネルをくぐって泡雫球の目前まで向かい、その身体に炎を浴びせかける。苦し紛れに突き出される触手をかわし、アレオスの爪が泡雫球の体を切り裂くと、その向こう側が透けて見えた。
泡雫球の背後は行き止まりだ。つまりは後ろを閉じる必要は無い。
よし!フローロ、このトンネルを引っ込めろ!壁を閉じる邪魔だ!
一瞬、このまま炎で溶かし尽くしてしまった方が早いのではないかと考えるが、泡に誘爆されても面倒だ。それに何をしてくるか分からない相手は、さっさと封印してしまった方が得策だと考えた。
閉じろ!
Olは地面に手を付き、全力で母なる壁を操る。それが完全に閉じる寸前、泡雫球が蠢く。
最後の攻撃か、と備えるOl。
次の瞬間、Olは術の制御も攻撃のことも忘れ、目の前の光景に見入っていた。
スピ、ナ?
泡雫球の取った、見知った姿に。
Olっ!
フローロが自在棍でOlを突き飛ばし、寸前まで彼のいた場所を泡雫球の触手が貫く。そしてそれはそのまま伸びて、回避しようと身を捩るフローロの肩口を貫いた。
くっ!フローロ!
Olは慌てて壁を閉じ、泡雫球を閉じ込める。そして急ぎフローロに駆け寄ると、彼女の身体を抱きかかえた。
大丈夫です、ほんのかすり傷なので
いやまずいな。毒だ
フローロの顔色はどんどん悪くなっていく。Olは手早く解毒の呪文を唱えたが、どれも効果がない。
この世界の解毒スキルではないから、という訳でもない。解毒スキルの解析は済ませているが、あれは要するに対象者の毒耐性を増加させて毒の影響を減らすものだった。それに類する術をかけても、焼け石に水だった。
Olわたし、
喋るな。毒の回りが早くなる
一つだけ、毒を取り除く方法はある。だが、時間が足りない。
時間。天啓のように、Olはある方法を思いつく。フローロを助ける唯一の方法。迷っている時間はなかった。Olは手早く座標を計算すると、フローロを抱きかかえ転移する。
そこは、フォリオの隠し部屋だった。氷柱のような姿の結界が鎮座している。Olはその結界の中に、フローロを放り込んだ。
入れるのは簡単だ。単に結界の中の座標に転移させればいい。
そして、Olは自在棍を手に取ると、それをちょうど結界の内と外の境目を横断するように入れた。
外から自在棍を操作する。Olの魔力操作の精度であれば、その先端を髪の毛よりも細い刃に整形することも可能であった。
その刃で僅かにフローロの肩口を切り開き、そこに残った毒を取り除く。解毒ができないのであれば、物理的に取り除くまでであった。
それは砂漠にばらまいた色つきの砂を一粒一粒拾い集めるような、途方もない作業だった。
時の止まった氷柱結界と自分を更に時滞結界で包み、集中して毒を取り除いていく。何度も何度もフローロの身体に捜査をかけ、毒の場所を割り出し、体を切り開いて毒を取り除き、傷口を治癒して閉じる。
気が遠くなるほどの時間をかけて、Olはとうとう毒が魔術に反応しなくなるまで取り除く。
あとは、フローロを結界から出して容態を確認するしかない。もし魔術でも見つけられないほど身体の奥底に毒が残っていれば、フローロは死ぬ。
外から入れるのは簡単だ。しかし取り出すには、結界を破壊する必要がある。その方法自体は、既に手に入れていた。
道具袋改
皮袋にレイユから買い付けたスキルをかけて、結界に被せる。それは通常の道具袋の効果に加え、中の物が劣化しなくなるという効果を備えたスキルであった。暖かい料理を暖かいままにしておくくらいの意味しかないが、それは確かに時を止めるスキルだ。
そして結界というものは概して、全く同じ効果を持つ結界を重ねると効果が上書きされる。
つまりは、氷柱の結界は道具袋に上書きされ消えるということだ。
フローロ!
直ぐに道具袋からフローロを取りだしてその脈を確認する。だが、彼女の脈拍はどんどんと弱くなっていった。
毒が、残っていたのだ。
道具袋改の時間停止効果は生き物には影響を及ぼさない。フローロを入れても中で死ぬだけだ。Olは思いつく限りの回復魔術をかけながら、何か打つ手がないか必死に頭を回転させた。
それでは駄目ですよ
その時、鈴が鳴るような声がOlの耳朶を打った。氷柱の結界の中にはそういえばもう一人、閉じ込められている者がいたのだと思い出す。
その閉じ込められていたもう一人美しいエメラルドグリーンの髪を持った女は、敵意の欠片も感じさせぬ優しい手つきでフローロの傷口を撫でる。
その手のひらから淡い光が溢れ出し、その強さと精密さにOlは驚愕した。医療魔術を極めたものと思っていた自分の、遥か先を行く術式。
傷口と毒と体力を同時に癒す、驚くべき魔術そう、それは明らかにスキルではなく魔術であった。フローロの顔に赤みが差し、急速に呼吸が整っていく。
お前は
Olはその奇跡をもたらした女に見覚えがあった。いや、正確にはその声に聞き覚えがあった。
Shal?
かつてOlが洗脳し、支配した白アールヴの冒険者。
はい。お久しぶりです、Ol様
ShalはOlの記憶と全く同じ笑顔で、そう挨拶した。
Olが本体を封じたことによって大量の泡雫球はその増殖を抑えられ、サルナークやルヴェたちの活躍もあっておおよそ殲滅することに成功した。ブランもフローロに比べれば随分軽傷だったらしく、半ば無理やり転移させたことをOlはほんのりと咎められた。
しかしそんなことを気にする必要もないほど、事後処理は大変なものだった。
大量に発生した泡雫球によって多数の犠牲者が発生し、数少ない治療スキルの持ち主はその対応に忙殺されたからだ。
幸いにも本体以外の泡雫球の毒は治療が難しいものの致死性は低く、泡雫球自体はさほど強いモンスターでもなかったこともあって犠牲者はそれほど多いわけではなかった──どころか、正確には犠牲者はゼロだった。
Shalが蘇生したからだ。
Olとて蘇生の術は使えるが、それはあくまでOlの魔窟が集める膨大な魔力を使ってのものだ。今のわずかな魔力ではとても望める事ではない。
だがShalはそれをあっさりとやってのけた。あまりにも効率よく、洗練された魔術。それはOlの知る蘇生魔術とは根本的に異なるものだった。
それで結局、あの人はなんなんですか?
俺の元の世界の部下の、はずなんだがな
フォリオの問いに、Olは歯切れ悪く答える。最初は悲願である氷柱結界の解除に、彼女は喜んだ。彼女も持つ道具袋のスキルを強化すれば結界を解除できたのだから、スキルを育てるスキルを探していた彼女の見立てもあながち見当外れと言わけではなかったわけだ。
だがその中から出てきたShalに実際会ってみると、彼女の中で何かが違ったらしく、しきりに首を傾げていた。蘇生の奇跡に聖女のような扱いをされているShalを見ると、Olもそこは同じ気持ちだ。
あら。私の噂話ですか?
うわっ!
気配も感じさせずに姿を現すShalに、フォリオは飛び上がらんばかりに驚き翼をばたつかせる。
この物腰もそうだった。Shalは、Olが知る姿から随分と成長している。寿命の長いアールヴである彼女がここまで変化するには、相当の年月が必要なはずだった。
あ、あはは、すみません。アタシちょっとユウェロイサマに呼ばれてるの思い出しましたんで
そういってフォリオはそそくさとその場を逃げ出し、入れ替わりのようにShalはニコニコと微笑みながらOlの対面に座る。