あなたぁ、みすずちゃんのパンティを穿かせてあげてぇ

今度は渚が、オレを呼ぶ

やれやれだ

みすずちゃんもTバックね今日のドレスだとお尻の形が、綺麗に出るから

みすずのTバックも金色だった

みすずちゃんのヌーブラは、あたしが付けてあげる

渚が、みすずの胸にあのぷるるん素材を当てている

オレは跪いて、みすずにパンティを穿かせた

あ、そうだみすずちゃんにも香水を付けてあげて

渚がオレに、香水瓶を手渡した

瑠璃子のとは違う

やっぱり、女の子ごとに香りが違う方が良いしこの香水は、瑠璃子ちゃんに付けた香水との相性が良いのよ

ええっと足の付け根と、手首と、脇の下と、首筋だっけ

うふふ、旦那様っ

みすずの首筋に香水を付けるとオレにキスを求めてくる

オレは、チュッとみすずの唇にキスをする

そしたら、ドレスを着てアクセサリーと、もう一度メイクの最終確認をしましょうね

みすずと瑠璃子に克子姉が言う

あなたは下半身だけ、シャワーで洗ってらっしゃいさすがに男の子はセックス臭がしない方がいいから

あ、頭は洗っちゃダメよもうセットしてあるんだから顔は洗ってもいいけれど、注意して

判ったよ、克子姉

オレが風呂場に向かおうとすると

あ、ヨシくんあたしが洗ってあげるわ

恵美ちゃん付いてっちゃダメよ

渚が止める

少しは、一人きりの時間を作ってあげないとこの人だって、息が詰まっちゃうわよ

優しい笑顔で、そう言ってくれた

そうねここまで、あたしたちにすっごくサービスしてくれているんだものシャワーの時間ぐらい、解放してあげましょう

あたしたちと言っても克子姉と渚は、ずっとサポートに徹してくれている

みすずや瑠璃子、メグたちを優先にして自分は、オレを求めるのをガマンしてくれている

そのことは、メグもよく判っている

判りましたヨシくん、行ってらっしゃい

恵美ちゃんそこのスーツケースに、この人の着替えが入っているから、出しておいてくれる

克子姉はメグの心が暴走しないように、オレのための仕事を用意してくれた

オレ、結構、消耗しているなぁ

風呂場の鏡に映る自分の顔を見てそう思う

これはマズイ

まず、冷たい水で顔を洗った

それから、シャワーでお湯を出し身体にかける

下半身は念入りに

もし何かでケガをした時に不衛生だと、化膿しやすいと聞いたことがある

今日、このあとのパーティでオレたちが戦闘に巻き込まれたりすることは無いと思うけれど

でも、世の中に絶対は無い

オレには、マルゴさんや美智の様な戦闘力は無いけれど家族を守るためには、いつでも身体を張る覚悟だけはしておかないと

軽く、ストレッチもしておく

ところで鏡の中のオレ

メグと克子姉によって、オレの髪はオールバックになっている

いいのかこんなんで

まあ何でもいいけれど

身体を清潔にして、ホテルのバスタオルで身体を拭きながら部屋に戻る

はーい、ヨシくん

メグが新品のパンツを持って立っていた

ああ、オレがみすずたちにしたようにオレにパンツを穿かせたいのか

断る理由は無いからメグに穿かせてもらった

Yシャツとネクタイは、シルクよスーツは、クラッシック・スタイルのを持って来たわ今夜のパーティは、タキシードを着なくちゃいけない様な格式のものではないから

克子姉がそう言ってハンガーに掛けられた灰色のスーツを示す

オレには格式による差は、よく判らない

総理大臣が来るったって、ロシア映画祭のパーティだからねクラッシックスタイルのダークスーツで充分よ

そういうものなのかうーむ

今日は、みすずちゃんたちを大人っぽくっていうのがテーマだからエスコートするあなたも、大人っぽい感じでチャコールグレイのスーツにしてみましたっ

ああ、この茶色っぽい灰色はチャコールグレイって言うんだ

あ、ピシッと着せるから今日は、あたしがやるわスーツを着せる時の注意点を教えるから、恵美ちゃんよく見ていて

はい克子姉さん

そして、克子姉がオレにまず、Yシャツから着せてくれる

Yシャツなんて学校の制服で慣れていたつもりだったのに

克子姉の手に掛かるとオレのボディに、ピシッとフイットする

服というものはね自分で着るより、人に着せてもらう方が、きちっと着られるものなのよ

うん、まあ客観的に見れるしな鏡を使っても、自分では見られない方向からだって

これからは、朝、学校に行く時や体育の授業の後は、恵美ちゃんがチェックしてあげてね

メグは、一生懸命克子姉の手の動きを覚えている

こういうのもねお嬢様の指示で、あたしたちは勉強してきたのよ

お客様が娼館から帰られる時に身だしなみが崩れてらっしゃったら、申し訳ないでしょう

娼婦を買えば服を脱ぐセックスが終われば、また服を着る

いらした時よりも、お帰りになられる時の方がピシッとなられる様にってねあたしも渚も随分、お着替えの練習をしたのよ

黒い森は、高級娼館だったからお客様のお相手をするためには、上品な振る舞いを覚えないといけないでしょそういう意味では、良かったわ色んな勉強ができたし

そうねあそこで習ったことが、今の仕事で役に立っているわ品の良い振る舞いは、品の良いお客様に注目されるから

お客様も、一晩に一人きりっていうルールだったしねこれが場末の売春宿だったら、あたしたちみんな身も心もボロボロになっていたわよそういうところだと、お客も粗暴で品の悪い人ばかりでしょうし

一晩で何人も下品なだけの客に乱暴されることになる

白坂創介は、ヘンタイでクソ野郎だったけれどあの男は、お坊ちゃん育ちだからお金儲けにも、そんなに興味を持ってなかったしあたしたちを安売りするようなことだけはしなかったから

拉致してきた娼婦たちを薄利多売して黒い森の高級娼館としての価値を失墜させるようなことまではしなかったんだ

克子姉が、オレのネクタイをキュキュッと締める

シルクって、こんなにキュッキュと布の擦れる音がするんだ

しかし、鈍い金色の無地のネクタイか

テカテカーの金色じゃないから、落ち着いた感じにはなっているけれど

メグ、みすず、瑠璃子美智までが

オレの首元を、凝視している

わたくしは判りましたできます

あたしはちょっと練習しないとダメだわ

あたしも、ちょっと特訓するわ

む、難しかったですわ

もう、克子ったらわざと、難しい結び方をして

あたしたちは、一目見るだけでネクタイの結び方が判るのよ

そうでないとお客様を、いらした時と違う結び方でお宅へお返ししてしまうかもしれないでしょ

もし、そこの家の奥さんが、毎朝、旦那さんのネクタイを結んであげているとしたら

旦那が、朝と違う結びのネクタイで帰って来たら色々とヤバイことになる

だから、お客様が今日はどんな風にネクタイを結んでいらしたか一目で見て、覚えないといけないのそして、お帰りの際には、元通りに結んで差し上げないと

高級娼館の娼婦はそこまでやる

今日は時間が無いけれど簡単なネクタイの結び方から、今度教えてあげるわ

いえ難しい方から、教えて下さい

そうしたらヨシくんが、外でエッチしてきたかどうか、すぐに判りますから

あたしたちで、それぞれの結び方を決めておきましょうかそうしたら、女たちの間では、直近に誰が旦那様のネクタイを結んだか一目で判るようになりますし

ダメよ、そんなことしたら寧ちゃんが、カムフラージュで色んな子の結び方をするでしょうから

寧ちゃんもの凄く、器用なんだから

ああ、寧はカードのイカサマとか得意なんだっけ

とにかく手先は器用で人にイタズラするのも大好きだ

ネクタイの結び方なんかに意味を持たせたらどんな情報攪乱をするか判らない

そうね、それは止めた方がいいわね

渚もクスクスと笑う

だいたいさオレ、そんなに頻繁にネクタイをするような仕事はしないし

オレはパン屋になるんだから

ネクタイなんて、普段はしない

えー、しましょうよ、ネクタイネクタイしている旦那様は、とっても素敵です

むしろ、素肌にネクタイだけというのも

美智お前は何を妄想している

わたくしもスーツにネクタイ姿のお兄様と、ダンスが踊りたいですわ

瑠璃子だ、ダンスって

あ別に、舞踏会に行きたいというようなことではありません香月家の屋敷の中でお兄様と2人きりで、踊りたいだけですわ

オレは、ホッとするが

え今の世界に、舞踏会とかやっているところがあるの

そんなのシンデレラとかの童話の世界だけのモノなのでは

はい、ヨーロッパで社交界デビューしたいと思ったらウィーンの舞踏会が、お披露目の場となりますから

社交界

ま、そういうのも少しずつ、慣れていくしかないわね

オレはチャコールグレイのスーツをキリリと着込んだ

ネクタイは、渋めの鈍い金色の無地

頭はオールバック

ベルトと靴は茶色

グレイに茶を合わせるのは、色っぽくていいのよ

でこの眼鏡をかけて

何この黒縁の眼鏡は

これからは黒森くんになる時は、オールバックに黒の伊達眼鏡ね

公の場に出るのはこれが最初なんだから

みすずたちの日舞の発表会やシザーリオ・ヴァイオラと闘った時に、重役たちや私塾の連中の前に姿を見せているけれど

あの日舞の会は、名家の子女たちの発表会だから一般の人たちに、画像とかは撮られていない香月セキュリティ・サービスの警備陣が、そういう連中は中に入れてないはずだし

重役や私塾の連中もオレの顔を撮影するような、ことはできなかったはずだ

そういうことをするのはみすずやジッちゃんに対して、無礼な行為になるわけだから

しかし今日のパーティは、完全に公開されている

首相が来るんだからテレビカメラや新聞記者も居るだろうし

みすずの婚約者黒森として公の場に出るのは、今夜が最初になる

まあ、変装ってことよね

オレは眼鏡を掛けてみる

女たちが、一斉に溜息を吐いた

あなた意外と、似合うわね眼鏡

そうかな克子姉

あなたが、そんな眼鏡が似合うと思わなかったわ

はいとっても素敵ですわお兄様

瑠璃子も、そう言ってくれる

ちょっと3人で並んでくれるバランスを確認したいから

克子姉の言葉に、みすずと瑠璃子がオレに並ぶ

同じデザインの色違いのドレスを着た2人

みすずは黒地に白

瑠璃子は白地に黒

みすずは、綺麗に髪をアップして

瑠璃子は、綺麗な黒髪をさらさらと梳いて垂らしている

2人とも、金のブレスレットと金のネックレスをしていた

ああ、ヨシくんの金地のネクタイは2人のアクセサリーの色と合わせているんですね

パンティもよ

なぬっ克子姉

オレは、あわてて、みすずと瑠璃子の背中を見る

大きく開いた背中2人とも、白い肌が剥き出しになっている

綺麗な背骨のライン

っていうかお尻のすぐ真上のところまで、大胆に開いている

つまりさっき穿かせたTバックの金色が、背中側にチラッとだけ見えている

ああ、だから2人とも金色のパンティだったんですね

メグは大きく頷いて、納得した

オレのネクタイと合わせているのかよっ

もうちょっと色が欲しいわね

首の周りにもう一色かしら

用意してあるわよーん

克子姉が小さな箱を2つ取り出す

ペンダントねみすずちゃんがサファイヤで、瑠璃子ちゃんがルビー

中には親指大の大きさ宝石の付いた、ペンダントが入っていた

え、これ本物

オレが、思わず尋ねると

まさか本物は、パーティなんかに付けていかないものなのよ

はい、一流の宝飾店で本物を買うと一緒に、精巧なダミーを付けてくれますから

パーティとかには、ダミーの方を付けていくものなの本物は、所有していることに意味があるんだから

ま、あたしの場合はダミーの方しか、持ってないけれど

でも、これ良く出来ていますわ

瑠璃子が、ペンダントを見てそう言う

そりゃそうよ本物を作る一流の職人さんの作品だから石だけよ、ダミーの人造宝石なのはでもまあ、人工でもルビーとサファイヤであることには変わりはないからね専門家じゃ無いと、遠目からは判別できないはずよ

克子姉は、そう言って笑った

人造宝石と天然の宝石だと、どれくらい値段が違うんです

メグが、克子姉に尋ねるやっぱり女の子だから、宝石には興味があるんだろう

これがみすずや瑠璃子の所蔵する宝石だったら、コンプレックスが発動しているだろうけれど

克子姉のだししかも、ホンモノでないダミーだと断っているから、メグも平然と受けとめている

そうね酷いのになると、1000倍以上違うらしいわよ

1000倍

人造石で1万円のルビーが天然石だと、1000万円てことか

付けて下さい旦那様

みすずが、オレに背を向けて細い首を差し出す

オレは青い方のペンダントを取り、みすずの首に付けてやる

あなた、留め金の付け方判る

うんこうだろ

そうよ、オッケイ

次は瑠璃子だ

瑠璃子に、赤い宝石のペンダントを付けてやる

女の子の首筋ってドキドキするよな

瑠璃子の素肌に触れないようにペンダントの留め金を填める

再び、2人がオレの横に並び立つ

うんとっても素敵になったわ

うん、首元に赤と青の小さな宝石が輝くだけで、ゴージャス感が1000倍になった

みんな、これがダミーの人造宝石だとは思わないわよ

オレも、渚の言葉に賛成だ

誰も香月家のお嬢様たちが偽物の宝石をしているとは思わないだろう

ダミーついでに、あなたはこれね

克子姉は、腕時計を取り出してオレの腕に付ける

アナログ式のゴツイ腕時計だ

何これ、ロレックスとか

オレは、知っている時計のブランドを言ってみた

そんな安物は、渡さないわよ

もっとも、これは外側だけは本物だけれど中身は、別物に交換してあるダミーなのよ軽いでしょ本物の機械式の時計なら、もっと重いはずだから

確かに、見た目よりも軽い

中身は、日本製のクオーツ時計のムーブメントが入っているからそうすると、時計の内側のスペースが、ごっそり空くのよで、その時計は、空いた空間に別の装置を組み込んであるの

別の装置

何かあったらここのリューズを押して、そしたらこの時計がGPSで、あたしたちにあなたの位置を教えてくれるから

発信器になるのか

まあ、心配するようなことは起こらないと思うけれど一応、持ってていいわね

よっし、これで3人とも支度ができたわね

ちょっと待って、克子姉

美智も、こっちに並んで今度は、4人のバランスを見てくれよ

オレは、克子姉と渚にそう言った

みすずと瑠璃子とエスコートのオレそれに、護衛役の美智が揃ってオレたちは4人1組なんだからさ

美智が、トコトコと前に出て来る

いいから、早く並べ

黒地に白金と青のアクセサリーのみすず

白地に黒金と赤のアクセサリーの瑠璃子

チャコールグレイのスーツに、鈍い金のネクタイ、茶の靴のオレ

そして、美智は黒いドレスに金のアクセサリー

こうなると、美智ちゃんにも個別の色を付けてあげたいわよね

いえ、わたくしは目立ってはいけない護衛役ですから

そんなに派手にならない感じなら良いと思うわよ

克子姉は、持って来たアクセサリーのケースを覗き込む

これなんかどう

そう言って黄色い石の付いたブローチを取り出した

ああ、アンバーねいいんじゃない

渚が納得する

アンバー

琥珀のことよ

オレの問いに、克子姉は笑顔で答える

美智の首元に琥珀のブローチを当てる

うん良いわこれにしましょうあなた、付けてあげて

オレに、手渡す克子姉

よし、美智動くなよ

オレは、克子姉が示した位置にブローチを留める

まあ、素敵よ美智ポン

はい素敵です

ええ、黄色がとっても似合っているわ

メグも、笑っている

あーらら、美智ちゃんだけ本物の天然石になっちゃったわね

克子姉が、クククと笑った

みすずと瑠璃子は人造宝石で美智は天然石

そ、それはよくないことですっ

慌てる美智

いいのよ琥珀は、他の宝石よりも安いのよ松の樹液が固まったものなんだから

あたしは青で、ルリたんが赤だから、美智ポンは黄色で良いのよ

みすずが、そう美智に言った

昔、海外旅行土産に、レックスの偽物をもらったことがあります

中身スカスカでしたねびっくりするぐらい

ロレックスのマークの下に、Quartzって書いてありました

ロレックスのオイスタークオーツという種類の偽物だったみたいです

そう言えば、プラダのポケットティッシュ入れを持っている人を見たことがあります

駅とかで配っている、ポケットティッシュ入れです

あれを、プラダの例の黒い布地がカバーしているという

そんな商品、本当にあるのだろうか

550.次のステージへ

オレたちだけでなく、克子姉や渚、メグも身支度を終えた

ベッドルームを出て、ジュニア・スイートの居間へ

ミナホ姉さんが、1人でノートパソコンを開いていた

他の人たちは、続き部屋の隣のジュニア・スイートに居るらしい

遅かったわねそろそろ呼びに行こうかと思っていたところよ

画面から顔を上げて、ミナホ姉さんは言う

済みません、お嬢様予定よりも少し掛かってしまいました

いいのよ計画の変更は、あたしが言い出したことだから

オレたちのパーティへ行くための着替え特に、瑠璃子をよりセクシーにするために、オレの精液浸けにするというのが当初の計画だったのだろう

そこにメグを加えメグと香月組の子たちとの融和させることを、ミナホ姉さんは急遽付け足したのだと思う

おそらく、ここへ到着した時のメグの表情を見て

あのままオレがみすずたちとパーティへ行ったらメグは、オレを香月家組に取られるのではないかと疑心暗鬼になって、コンプレックスを暴発させていたに違いない

丁度良い時間よパーティ会場にも、大分、人が集まってきているし

ミナホ姉さんは、どうやら会場の監視カメラの映像を見ているらしい

ホテル側から、香月セキュリティ・サービスに提供されている映像を谷沢チーフから配信してもらっているのか

あなたたちが、パーティに向かったらあたしたちは、このホテルの新館最上階の中華レストランへ行くわ個室を予約してあるから

中華レストラン

そのまま、たっぷり3時間以上、食事をするつもりだから

アリバイ作りですね

そうよあなたたちのパーティが始まってからぴったり一時間後に、グリーン山スタジオのアクションが開始されるわ

レイちゃん&香月セキュリティ・サービス警備部VS北九州の暴力団+恭子さんの闘いが始まる

その闘いに、黒い森は無関係であることを示すためにミナホ姉さんたちは、このホテルのレストランで食事会をするのだろう

あたしたちは、レストランの個室にテレビを持ち込んで観戦させてもらうわ

テレビ

何のために、放送施設のある野外スタジオを押さえたと思っているの

オレの怪訝な顔を見てミナホ姉さんは、微笑む

今夜、グリーン山スタジオで雪乃さんの公開記者会見が開かれるのよそれが緊急報道特別番組として、放送されることになっているわもちろん、マスコミ各社の記者を集めてね

雪乃の公開記者会見

白坂家のテレビ局が放送してくれることになったわあそこの局は、前の当主の白坂守次さんの影響力がなくなっていることを内外にアピールしないといけない立場だから

新当主はジッちゃんに頭が上がらない

自分たちが、前当主の命令で白坂創介を庇おうとしていたという過去の汚点を払拭するために事件解明の報道には、積極的に協力するしかない

その記者会見を邪魔するために、北九州の組織がスタジオに乗り込んでくるという筋書きなのよ

そして、レイちゃん率いる香月セキュリティ・サービスと全面対決となる

でも大丈夫なの雪乃で公開記者会見とか

そりゃ、雪乃はオレたちに恭順するって約束してくれたけれど

あいつは、頭に血が昇ると何をしでかすか判らない

突然、オレたちのことを喚き散らすかも

しかも、あいつは本当の事実関係を把握しているわけではないから

何を言い出すか検討も付かない

そうねちょっと心配よね

でも仕方無いわよねあたしたちには、もう、何もできないんだから

だって仕方ないでしょあたしたちは、このホテルの中から動けないんだものここからじゃ、グリーン山スタジオに指示を出すこともできないしそもそも、あっちの詳しい状況が判らないしね

ミナホ姉さんを始め、克子姉、マルゴさん、寧と黒い森の犯罪実行グループは、全員ここに居るイーディも

アリバイ作りのためなんだから、仕方ないけれどでも

翔姉ちゃんとレイちゃんだけで大丈夫かな

あの2人でナーバスになった雪乃をコントロールできるのだろうか

あら、2人だけじゃないわよ

ミナホ姉さんは、ニコッと微笑んだ

恭子さんがいるわ

でも恭子さんは、襲撃側にいるんだろ

そうよだから、どんな風にでも状況をコントロールできるんじゃないの

雪乃さんが暴走しそうになったら爆弾の1つや2つ、爆発させたりするわよ翔さんや麗華さんは、まだまだ詰めが甘いと思うけれど、恭子さんの仕事は常に完璧なんですから

まあ多少、コミカルでユーモア溢れる展開になるでしょうけれど

恭子さんが総合プロデューサーなんだから、あたしたちが心配する必要は無いのよ

ミナホ姉さんは、恭子さんのことを絶対的に信頼している

それだけの実績のある人だし

白坂創介のオーストラリアでの拉致、拘留もたった1人でやり遂げていた

そもそもグリーン山スタジオという場所を選んだのも、恭子さんだ

全て、信じて任せるべきなんだろうと思う

そんなに心配なの

何が、心配

ここで雪乃のことが心配だとは、口が裂けても言えない

レイちゃんや翔姉ちゃんのことだってプロの警護人たちの仕事を、アマチュアのオレが心配するのはよくないと思う

遠くから眺めているだけっていうのがちょっと

あの人たちが命の危険に晒されているのをこのホテルで、テレビの映像で眺めているだけだなんて

このホテルから、グリーン山スタジオまでどれくらいの時間で到着するのですか

みすずが、ミナホ姉さんに尋ねる

そうね車なら、1時間以上は掛かるわ246に出て、東名に乗って、青葉インターチェンジで下りて、そこから北上するのが最短距離ねでも、この時間帯だと、都内は混んでいるしもっと掛かるかもしれないわ

パーティの開始時間と、グリーン山スタジオでのアクション開始にはぴったり1時間の差がある

つまりパーティに顔を出せば、どうやってもグリーン山スタジオには間に合わない

諦めなさいみすずちゃんたちと一緒なんだから、パーティだってすぐに退席はできないわよ

両方は選べない

そして、オレの眼の前にある課題はジッちゃんと瑠璃子の和解だ

これに、全力を注ぐべきだ

ジッちゃんから彼女を譲り受けた瑠璃子の主人としてオレは、瑠璃子と共にジッちゃんの前に姿を見せる必要がある

ジッちゃんに瑠璃子はもうオレのものであって、ジッちゃんの邪恋の対象にはならないことを判ってもらうためには

そうだねとにかく、眼の前にあるやらなくちゃいけないことに集中するよ

オレの言葉に、メグがホッと溜息を吐いた

ああ、やっぱりオレがグリーン山スタジオに行くのは嫌なんだな

だけど、レイちゃんと翔姉ちゃんに一言頑張ってって言ってあげたいな電話とか繋がらないの

オレが、そう尋ねるとミナホ姉さんは

今は無理よ、向こうも下準備で混乱しているでしょうし翔さんも麗華さんも、組織全体をコントロールするのは、これが最初だから

そうか邪魔しちゃ悪いよな

ミナホ姉さんは、時計を見る

あなたたちは、3分後に出発よパーティに行く前に、みんなに顔を見せてあげなさいね

グリーン山スタジオのことは今は、頭の中から消しておこう

うっわー、パパ、かっこいい

真緒ちゃんが、オールバック頭に、伊達眼鏡、クラッシック・スーツ姿のオレを見て駆け寄ってくる

真緒、しがみついちゃダメよ皺になっちゃうから

渚が、愛娘にそう言う

今度、この格好で幼稚園のお迎えに来て

真緒ちゃんが、オレを見上げてそう言う

真緒パパにお迎えに来て欲しいの

真緒ちゃんは、ずっと父親がいなかったから

判った今度な約束するよ

真緒ちゃんは、満足げに微笑む

ヨッチャンは、あたしともその格好でデートねここのホテルでいいわ最上階のバーで夜景を見て、そのままお泊まりねっ

寧が、ヌフフンと笑ってそう言う

邪魔しに行かなかったんだからいいわよね、それくらいっ

みすず、瑠璃子、美智、メグに向かって寧は言う

仕方ありませんね

みすずが、代表して寧に言った

て、いうかさルリちゃん、とんでもなく妖しげなエロ・オーラ出しているけれどどうなっちゃっているのさ

寧は矛先を瑠璃子に向ける

たっぷり愛していただきましたお腹いっぱいです

瑠璃子は、自分の下腹部を擦りながらそう言う

ぬぬっ、その余裕は予想外だった

まあ、いいじゃないかあたしたちも、これからお腹いっぱい中華料理を食べるんだし

ううっ、エビチリとカニ玉思いっきり食べてやるぅぅ

冗談めいて話している時は寧は安定している

オレの女であると同時に寧は、年下組のお姉ちゃんでいたい少女だ

メグちゃんには、あげないからねぇ

パーティには同行できないメグに、わざと絡む

これもまた寧の気遣いなんだ

メグ、悪いけれど、ヤッちゃんの相手頼むよ

だから、オレもメグに寧を託す形にして話をする

ヤッちゃんて

ああ、メグはオレが、寧のことをヤッちゃんて呼ぶことは知らなかったんだっけ

すると、寧はメグの背中に取り付いて

むふふあたしヤッちゃん、今、あなたの後ろに居るのっ

ちょっと、寧姉さん

離さないよーんっ

寧は、メグとじゃれている

マナ、行って来るからアニエスのこと頼むな

うん、お兄ちゃん

マナが、オレを見て頷く

マナだって勘は良いオレが、隣室で瑠璃子たちとセックスしていたことは判っているだろう

帰って来たら、またセックスしようなアニエスと3人で

オレはしゃがんで、マナとアニエスを両腕で抱きしめる

アニエスが、ひしっとオレに抱き付く

この2人は確実にスキンシップをしないと、不安がる

肉体の接触が必要な子たちだ

お兄ちゃん約束だからね

ああ、マナアニエス

2人を抱きしめているとオレの肩がトントンと叩かれる

振り向くと、ニヤッと笑うイーディが居る

自分にもハグして欲しいということらしい

ああ、イーディ

オレは、イーディを抱きしめる

マナ通訳してくれ

オレはイーディを抱えたまま、マナに言った

オレはどうしても、みすずたちに同行しないといけないだから、イーディに家族の警護を任すって

マナがすぐにイーディに告げる

オレの家族は、イーディの家族だ家族を守ってくれイーディ

オレの言葉に、イーディは真顔でコクッと頷いた

マルゴさんも、よろしくお願いします

ああ、こっちは心配しなくて良いよ君は、自分のミッションに集中して

マルゴさんが、オレにそう言ってくれた

ミッション

ああ、しなくてはならない任務とか使命っていう意味だよ

そうだまずは、するべきことを確実に実行する

それだけに集中だ

それから、オレは克子姉と渚に振り向く

克子姉と渚もみんなのこと、頼むよ

渚は、明るい笑顔でオレに答えた

克子姉の方は

あたしたち、これから中華レストランでしょだから、今夜の夕食はこの人に作ってあげられないのよ

みすずたちに、そんなことを言い出す

パーティ会場で、この人にちゃんと食事をさせてあげてね

オレの食事を心配してくれる

夜、お屋敷に戻った時に、またお腹が減っていたらあたしが、お夜食を作ってあげるわあ、でも、お夜食は健康に良くないかしら

とにかく、この人のお腹がペコペコにならないように気を付けてあげてね

みすずが、克子姉に返事する

そうだよ、一番、ヨッちゃんをペロペロした人が気を付けてあげなきゃっ

寧が茶化す

では、わたくしですねうふふふ

エロ・オーラ満載の瑠璃子が、ニッコリと微笑む

ルリお姉ちゃん、とっても綺麗ですの

アニエスが、瑠璃子を見てそう言った

ありがとうございますでも、アニエスちゃんも、これからもっともっと綺麗になりますわ

お兄様に愛を注いでいただいた分だけあたしたちは、美しくなっていくのですから

瑠璃子はまた、オレの精液を注がれた下腹部を幸せそうに撫でる

ぐっ、負けないからっあたしもヨッちゃんとセックスして、もっともっと綺麗になるっ

対抗意識を表明する寧

いえ、寧ちゃんは

もう充分お美しいと思います

こんな言葉は今の、エロ・オーラ満載の瑠璃子にしか言えないと思う

なななな、何言ってんのルリちゃん、あああ、あたしはそんな、綺麗じゃないってばっ

真っ正面から美しいと言われて、照れる寧

寧ちゃん綺麗だよとっても

真緒ちゃんが、寧にニコッと微笑む

うん、オレもヤッちゃんは、綺麗だなあっていつも思っているよ

オレは寧の頬を撫でてそう伝えた

ぬぬぬ、もう馬鹿っ恥ずかしいなあ

寧は、真っ赤になって照れている

あたし、ヤッちゃんとっても恥ずかしいの

じゃ、ミナホ姉さんみんなのこと、頼むよ

最後に、ミナホ姉さんと言葉を交わした

Hey、MICHI

イーディが、英語で美智に何かを話し掛ける

美智は、微笑を浮かべてVサインをした

まあ、きっと頑張ってこいみたいな話をしたんだろう

みすず姉さんヨシくんのこと、お願いします

ええ、大丈夫ですから

みすずが、メグに微笑んだ

それじゃあ行って来るよ

また、後でねパパ

待ってますの

家族たちの声に送られてオレたちは、出発する

オレとみすずと瑠璃子、そして美智4人で、ホテルの廊下に出た

そう言えば、会場まではどうやって行けばいいんだろう

ここは別館で会場は本館だっけ

どこかの階と渡り廊下で繋がっているって話だったけれど

旦那様あたし、判っていますから

このホテルには何度も来ていますし、今日のパーティの会場も、お祖父様に連れてきていただいたことがありますから

そうかこの高級ホテルが初めてなのは、オレだけか

美智は、オレを方を振り向かなかったけれどみすずの警護で、やっぱり来ているんだろうし

オレたちは、廊下を曲がる

さっき、香月セキュリティ・サービスの黒服が2人立っていた場所に黒スーツの女性が4人立っていた

警備部1課の滝です

先頭の女性が、みすずに挨拶した

わたくしと片岡が、会場までお供致します

谷沢さんのご指示ですか

滝さんは、肯定する

申し訳ありませんが、あたしの警護役はここにいる工藤美智に任せています

美智のプライドを守るためにみすずは、そう言った

そのことは存じ上げておりますしかし、香月セキュリティ・サービスが、みすず様、瑠璃子様の会場入りの警護に付かないというわけには参りません

それは、あなたたちの会社の都合でしょう

みすずは厳しく言う

香月家は、香月セキュリティ・サービスの主ですが香月セキュリティ・サービスの都合に合わせて、行動を強いられるわけには参りません

おっしゃることは、重々承知しておりますですが、どうか、会場の入り口まで警護させていただけないでしょうか

あなたたちは、会場内には立ち入らないのですね

ギロッと滝を見るみすず

判りました会場の入り口までなら、同行を許可します

それよりあなたたち、谷沢さんから何か預かって来ていませんか

滝さんが、ススッと封筒を取り出す

はい本日のパーティの招待状お預かりしております

美智あなたが持っていなさい

美智が、前に出る

お預かり致します

スッと、手を出す

滝さんは無念そうに、美智に手渡す

みすずはあくまでも美智が自分の警護役であり滝さんたちは、仕方なく警護に付かせてやるのだ余計な仕事はさせないという態度を崩さない

こちらに残られるのはあなたとあなた

みすずが、黒スーツの女たちを見る

はい1課の中嶋と谷原です

2人の女性が、みすずに頭を下げる

お部屋に残られている方たちは、もうすぐ新館のレストランへ向かわれますあたしと瑠璃子が、大変、お世話になっている方々です決して、粗相のないように

警護は間接的にご不快な思いをされないように、気を付けて下さい

みすずは、女王様の様に君臨する

では、参りましょう黒森様

みすずは、オレにそう言って

オレと腕を組む

そうかここから先は

オレは、ジッちゃんに認められたみすずの交際相手黒森なんだ

みすずを、エスコートしないといけない

うん、行こうみすず

組んだ腕のオレの肘が、みすずのおっぱいに当たっている

ああ、これはヌーブラの感触だな

あくまでも、みすずの専任警護人として美智が、オレたちの先頭に立つ

続いて、警護のサブとして滝さんが

その後ろに、腕を絡めたオレとみすず

それから、瑠璃子

最後に、後方警護としてもう一人の香月セキュリティ・サービスの片岡さんが続く

これだけ並んでいれば香月家のご令嬢に相応しい来場となるだろう

17階の渡り廊下から本館の方へ移動致します

滝さんが、みすずにそう告げる

いいえ一度、1階のロビーまで下りて、そこから本館へ向かいます

みすずは、滝さんのルート設定を拒絶する

それではホテルの一般のお客様の中を通ることになりますが

構いませんあたしたちは、堂々とパーティ会場に入ります

みすずは、そう言い切る

そうだ世間の人に、ジッちゃんと瑠璃子の間に問題がないことを示すためには

オレたちは、多くの人たちに見られながら、堂々と来場しないといけない

しかしそれでは、警護が

一般客の多いロビーを通ることを、滝さんは心配している

問題はありません

美智が無表情で、滝さんに言った

はい、何か不測の事態が起きた時は美智があたしたちを守ってくれますから

みすずは、ニコッと滝さんに微笑む

そうですわ美智さんにお任せすれば、大丈夫です美智さん、とってもお強いんですもの

瑠璃子の艶やかな微笑みに、滝さんは絶句する

オレたちはそのままエレベーターに乗り込む

もしもし、あたし**ちゃん、今、あなたの後ろにいるの

とリカちゃん電話が元の都市伝説があるらしいですが

リカちゃん電話って、今の子は知っているのでしょうか

私が子供の頃には、リカちゃん電話の他に、男の子向けにトランスフォーマー電話とGIジョー電話がありました

電話を掛けたら、破壊大帝メガトロン様が電話に出られ、色々とサイバトロンを倒す計画を一方的にお話になったあげく

ここに電話をする時は、必ずお父さんお母さんの許可をもらってからにするんじゃぞぐわっはっはっは

と言って電話が切れました星一徹の声で

GIジョー電話の方はジェット戦闘機に乗っている人(多分、ストライカーさん)が、空中を宙返りしながらコブラ軍の戦闘機を撃墜しつつ一方的な話をしてくれました

戦闘中なのに

やっぱり電話をする時は、お父さんお母さんの許可をもらってからするんだよっと、ミサイルを発射しながら

良い時代だったなあ

551.セレブのパーティ

エレベーターが、1階ロビーに着く

外は、すでに真っ暗になっている

美しくライトアップされた、高級ホテルのロビーには多くの客が居た

うわぁっ、綺麗

モデルさんかしら

ドレスアップしたみすずと瑠璃子にロビーのあちこちから人々の声が上がる

それくらい、2人は優雅で、ゴージャスに見えた

その上、オレたちの前後には香月セキュリティ・サービスの黒服の女性警護員が付いている

とんでもなく目立つ一団となっている

みすずが、オレと腕を組む

瑠璃子とは手を繋ぐ

美智の先導で、別館から本館へと向かう

オレとみすずと瑠璃子は、3人並んで

香月セキュリティ・サービスのお姉さんたちは、緊張気味にオレたちの前後を守っている

モダンで新しい造りの別館から伝統的で、重厚な雰囲気の漂う本館へ

ああロビーに居る客たちも、ちょっと違う

みんな落ち着いていて、高そうな服を着ている

和服の女性も多いし

今日のパーティに来た客も、すでに集まっているんだろう

ドレスアップしている女性も多い

おい、あれ

オレたちを指差すやつらがいる

カメラを持っているから、マスコミか

香月家の令嬢だよな

急死した香月重秋氏の娘じゃないのか

そういう話は、もっと小声でしろ

瑠璃子に聞こえるような大きな声で、わざわざ叫ぶ必要は無いじやないか

旦那様、スマイルです

見ると、みすずも瑠璃子も、優雅に微笑んでいるままだ

感情を制御して下さい不機嫌な態度を見せたら、こちらの負けですわ

オレにそう囁くと、みすずはギュッとオレの腕に掴まる

オレの腕に、自分のおっぱいを押しつける様にして

あれ令嬢と腕を組んでるやつ、誰なんだ

さあ、判りません

カメラを持っていた男が、オレたちを撮影しようとする

申し訳ございませんがロビーは撮影禁止でございます

ホテルのベルボーイが、マスコミの人間に話し掛ける

オレたちの姿を撮影できないようにカメラの前に立ち塞がって

このホテルは一流ですからお任せしておけば大丈夫です

観光客のお客さんもいるから、ロビーにカメラを持ち込むことは拒絶しない

しかし、カメラで誰かを撮影しようとすればホテルの従業員が、身体を張って止める

でも、隠し撮りしているやつだっているだろう

今、このロビーには警察関係者や、名家の警護役なんかがいっぱいいるんだろう

今夜のパーティは、ロシアの映画祭だっていうから、外国の諜報機関の人だっているかもしれない

そしてみすずの婚約者が誰なのかというのは、誰もが知っておきたい情報だろうと思う

それはいいんです隠し撮りされることは覚悟して、わざわざ1階ロビーを歩いているんですからそういう方たちは、今のマスコミの方みたいに無粋な写真の撮り方はなさりませんから

こちらに悟られないところから、こっそりと写真を撮るのなら放っておくということか

あたしたち、そういう方たちとは、これから仲良くやっていかないといけませんし

みすずは、うふふと笑う

そうだこれからオレが、みすずの相手として生きていくのなら

こういうことに慣れていかないといけない

今は公の場ですわ

みすずも瑠璃子も優雅な微笑みを崩さない

オレたちは、本館ロビーの中を突き抜けていく

そちらのエスカレーターで、2階へ参ります

ああ、パーティ会場がどこなのか知らないのはオレだけだからオレを気遣って、一々教えてくれているんだ

エスカレーターを方を見ると、2階・バンケット・エリアと書かれている

バンケットって何なのか、判らないけれど

今日のパーティ会場は、昔はよく芸能人の結婚式などに使われていたんですよ

エスカレーターを上がりながら、みすずがオレに言った

一時期、芸能人の結婚式をテレビ中継するのが流行った頃に

へえ、そんなところでのパーティなんだ

エスカレーターの先を見上げると紅孔雀の間、赤龍王の間、紅天女の間と矢印が出ている

紅孔雀の間ですわ

会場の入り口には受付のテーブルが出ている

すでにたくさんの人が受付に並んでいた

もちろん、日本人だけでない

受付側にもロシア人がいる大使館とか、日本に事業所のあるロシアの会社の人だろうか

それからまた、マスコミ

こっちは、下のロビーに居たような胡散臭そうな男たちでは無い

30前後の女性記者たちだ

みんな髪型もお洒落だし、小綺麗なスーツを着ている

こういうパーティに訪れるセレブの人を取材する女性雑誌があるんです

セレブの人たちの着こなしや、流行をチェックするというような企画で

いや、セレブったって芸能人とかじゃない、普通の人たちだろ

はいでも、そういうのが好きな人たちがいるんですよ

お金持ちの奥さんとか、お嬢さんたちのパーティドレス姿とか普通の人には、全然どうでもいいことだと思うけれど

そして、あのそういう雑誌に取材されるのがお好きなセレブの方も多いんです

自分のドレス姿が雑誌に載るのが

だから、あの方たちはパーティの主催者に正式に許可を得ていらしているんです

つまりオレたちの方にも

あ来た

ちょっと、よろしいですか

うわわわ、もの凄い作り笑顔で3人ばかり、記者が来る

月刊ミセス・スタイルですがお写真、よろしいでしょうか

お断り致しますわ

にっこりと微笑む

わたくしたち、まだ高校生と中学生です取材していただく価値はございません

いえいえ、お嬢様たち、とてもお美しくていらっしゃいますよぜひとも、今日のお洒落のポイントをお聞かせいただけませんか

断固として食い下がってくる記者

後ろの記者は、勝手に写真を撮ろうとする

お止め下さいお嬢様は、お断りなさったはずです

オレたちに付いていた、香月セキュリティ・サービスの滝さんが記者に言う

スッと、香月セキュリティ・サービスの社員証を見せる

慌てて頭を下げて記者たちは退散していく

香月セキュリティ・サービスは名家の人間しか警護しませんから

下手に怒らせれば雑誌が潰れます

セレブのパーティの取材をしているだけあって、そういうことはよく判っているのか

美智受付してきてちょうだい

招待状を持った美智が受付に向かう

ああ、さっきの記者たちが美智の様子をチェックしている

みすずが、どこの名家の娘なのか知りたいのだろう

美智が、招待状を示すと受付担当者は、慌ててみすずの方へ走って来る

ようこそお出で下さいましたどうぞ、中へお入り下さい

恭しく、礼をした

みすずは、その男に礼を言うと滝さんたちを見て

お二人は、こちらで結構です以後のことは、谷沢さんからの指示をお待ち下さい

いやいや、ご苦労だったな2人とも、清原の班に合流野間たちと待機していてくれ

パーティ会場の中から、谷沢チーフ本人が現れた

オレたちの様子を中から見ていたんだな

りょ、了解です

滝さんたちは、谷沢チーフに敬礼する

谷沢チーフも、今はダンディなスーツに身を包んでいる

おいおい私服での警護の時は、敬礼はしなくていい

やっぱり、香月セキュリティ・サービスで一番偉い谷沢チーフから、直々に言葉を掛けられるのは緊張するらしい

さて、参りましょうか

谷沢チーフが、オレたちにニヤッと微笑む

さっきの記者たちは谷沢チーフが自らお出迎えしに来たことに驚いている

ほらほら、旦那様平然としていて下さい

みすずが、またオレの腕をギュッと握りしめる

はあいけない、いけない

顔に、感情を出してはダメだ

オレたちはパーティ会場へ入る

しかし広いな、ここ

すでに200人か300人くらいは、人が来ている

日本人、日本人、ロシア人あれ、黒人さんもいる中国人ぽい人も

ああ、そうかロシア映画祭という建前だけれど、ここでロシア政府やロシア企業と関係を築きたい人は、みんな来ているんだな国籍関係無く

どうだい、凄いだろ

谷沢チーフが、オレに言う

ということは、また驚いた表情を表に出してしまっているんだな

反省

そういや、芸能関係の人も来ているぞ歌舞伎役者とか、映画監督とかああ、何とかっていう女の子のアイドルも来ている

そうかロシア映画祭のパーティだもんな

芸能人も来るよな

興味は無いのか何とかっていうアイドルグループの人気投票で、上から8番目だったっていう子らしいぞ

それはまた微妙な

10位以内は、神なんだそうだが

済みませんオレ、そういうの興味無いんです

すぐ側に綺麗な女の子が3人もいますし

オレは、みすず、瑠璃子、美智を見る

そうかいそう言えば、みすず様何とかっていう、韓流スターも来ているらしいですよなぜか

なぜ、日本で行われるロシア映画祭に韓流スター

まあ、どんなところにでも食い込んでこようとするんだろうなあ

良かったら、ご紹介致しましょうか

結構ですあたしも、すぐ側に素敵な方がいますから

ぴったりと、オレにくっつく

わたくしも、興味無いですわ

瑠璃子も微笑んでいる

工藤のお嬢ちゃんは

それは、わたくしにその方と決闘しろということですか

どうして、そういう発想になる

闘って仕留めるに値する人物ならば交戦もやむなしと思いますが

いや、闘わないでくれオレが悪かった

谷沢チーフは、困り顔でそう言う

どうして、あたしたちを子供扱いなさるんです

みすずが、笑って谷沢チーフに尋ねる

そうか芸能人に会いたいかなんていうのは子供相手の会話だ

皆様が、あんまりにも急に大人っぽくなったんで試してみたくなったんですよ

谷沢チーフは、苦笑する

見た目と内面が同じかそれが知りたかったんです

あたしたちは、まだ子供ですあたしは17歳、旦那様は16歳、瑠璃子と美智は15歳大人ではありません

真っ直ぐに、谷沢チーフを見る

でもこの場には、覚悟を決めて参りました子供でも、それぐらいのことはできますだから、あたしたちが大人っぽく見えるのだとしたら、そのせいだと思います

ここで、ジッちゃんと瑠璃子の和解を成立させないと

これから先に、色々と問題が生じることになる

今日、今夜、今この場で、何とかしないと

なるほど判りましたしかし

谷沢チーフが、瑠璃子を見る

さっきお会いしてから、ほんの数時間でここまで変わられるとは

今の瑠璃子は単純に、化粧してドレスアップしただけではない

胎内と口にオレの精液を3発も受けとめている

しかも、セックスした後濡れタオルで身体を拭っただけだ

まだ身体には、愛欲の種火が残っているだろう

そんな肉体を肌も露わな大人っぽいドレスで包んでいる

15歳の少女は、淫臭と香水の交じった淫靡な匂いを醸し出している

すっかりセックスに満足したその顔は艶やかに晴れていた

子供ですけれど、女ですからわたくし

瑠璃子が、ニコッと谷沢チーフに微笑む

女は変わるんです

ああゾクッとするほど、セクシーだ

お祖父様に納得していただくためにはこれが一番だと思います

なるほど、これだけ大人っぽい瑠璃子様なら閣下もまた、お手元に置いておきたいと思われるでしょうね

谷沢チーフは勘違いをしている

彼はオレが、ジッちゃんから瑠璃子を買い取ったことを知らない

ジッちゃんの心の中にあった瑠璃子に対する邪恋も

ジッちゃんは、瑠璃子を自分の支配下に置いておくために瑠璃子が大人になることを嫌がっていた

瑠璃子には、いつまでも子供っぽく居て欲しいと望んでいた

だから、瑠璃子を世間から隔離し、世の情報を遮断してきたのだ

それで、オレたちは

ジッちゃんに瑠璃子を完全に諦めさせるために

瑠璃子を大人にした

さすが黒森家ここまで、仕上げて下さるとは思っていませんでした

ああ、ミナホ姉さんや克子姉のメイクや着付けで、瑠璃子のイメチェンができたと思っているのか

まさか、この短い時間で瑠璃子がセックス浸けにされたとは、想像しないか

谷沢チーフは、瑠璃子がまだ処女だと信じている

みすずの相手であるオレが瑠璃子に手を出すはずが無いと

失礼致しますみすず様、瑠璃子様

突然声を掛けられる

こいつは確か

君も来ていたのかい

オレに対して、露骨に悪意を向ける

ああ、香月家の分家のプリンス香月操か

よく見ると後ろに、弟の香月昴も来ている

これからの時代日本とロシアとの関係は、重要ですからね父に連れてきてもらったのです

そうか、名家の人たちもたくさん来るパーティなら香月家の分家たちも、来るのは当然か

司馬さんもいらしてますよご長男の貴彦くんは、いらしてませんが次男のアキラくんも来ています

ジッちゃんが、香月グループの最高経営責任者を任せた司馬沖達氏かジッちゃんも出席しないといけないような大事なパーティなんだから、当然来るか

長男はみすずの元の婚約者で、婚約破棄のショックからまだ立ち直っていないんだろう

次男の子は、頭が良さそうだったなちょっと固いところもあったけれど

あれ香月仁と角田は

あのナンパ男コンビは

あいつらが来ると色々と面倒臭い

あの2人がロシア映画に興味があるはずがないだろう

不機嫌そうに、香月操は言う

それに、2人とも今は謹慎中だ公の場には、しばらく出ないように申し渡してある

ああ、瑠璃子の父親の葬式の日に

岩倉さんとセックスしている姿を、親戚一同に見られちゃったんだっけ

あ、黒森様こっち向いて下さいお顔に何か付いていますわ

突然、みすずがオレに言う

はーい、ちょっと動かないで下さいね

レースのハンカチを取り出しオレのおでこを拭く

もういいですわ

そして正面から、オレに抱きつく

大好き、黒森様

わざと香月操に、見せつけている

操さんそろそろ、お父様たちの方へお戻り下さい

ニッコリと微笑んでみすずは言う

まだ他にあたしたちに御用がありますか

香月操は

弟たちの方へ、戻って行く

操さん、根が素直ですからああやって、他の人たちに利用されてしまうんですよ

みすずがオレに囁く

香月家の分家と重役の人たちに言われてあたしたちの偵察に来たんですわ

偵察

1つはあたしと旦那様の仲が、本物かどうかの確認です

オレとみすずが、本当に付き合っているかどうかの

それとみなさん、やっぱり瑠璃子が、お祖父様の元に戻っていないことが心配なんです

瑠璃子はジッちゃんの孫娘であり、香月家の後継者の本命だと思われていた

もう一人の孫娘のみすずと違ってジッちゃんが、自ら育てていたのだから

瑠璃子の夫になる人間が、次世代の香月家を手中に収めると誰もがその地位を狙っていた

本当に瑠璃子が、お祖父様から遠ざけられているのかそれを確認したいんだと思います

瑠璃子の父親、香月重秋氏は変死した

何かしらのトラブルを犯した結果だということはみんな、うすうす気付いている

だから、その娘の瑠璃子は香月家の後継者候補から脱落したのかもしれないと思われている

このままでは、美子様にご迷惑を掛けるだけですわ

心配そうに、瑠璃子は言った

美子さんは、亡くなったジッちゃんの長男の隠し子だったことが公表された

突然、香月家本家の娘として認知されたのだ

となれば瑠璃子を狙っていた人間は、新しく出現した美子さんを標的にするだろう

いや、とにかくみすず様と瑠璃子様が、こんなに仲良いご様子でここにいらしているというだけであの方たちには充分、衝撃的ですよ

谷沢チーフがそう言った

むしろ、怖がっているはずですみすず様と瑠璃子様が結託なされば、例え、美子様を手に入れたとしても、香月家を治めることはできませんから

ほんの数日前まで、香月家の中はみすず様派と瑠璃子様派に分かれて敵対していたんだぞ急に美子様派が結成されてもみすず様派と瑠璃子様派の主流派が結束すれば、全体を引っ繰り返すようなことにはならん

谷沢チーフは、オレに言う

それにみすず様が、閣下が瑠璃子様を再びお手元に置かれるように仲を取り持って下さるのではないかと、みんな期待しているんだ

瑠璃子が許されれば瑠璃子派は、今まで通りの勢力を保つだろうわざわざ、美子さん派に鞍替えする必要はないのだから

しかしこのまま、ここに居てはよくないですねまた次の偵察役がやって来るでしょうし今度は、他の名家の方たちもいらっしゃるかもしれません

香月家の人間ならまだ、内部事情を何となく知っているからいいが

他の名家の人間だとなかなか面倒臭いことになるだろう

興味本位に、オレたちのことを根掘り葉掘り聞いてくるやつもいるかもしれない

ふっ確かに、会場のあちこちから、こちらを見ている連中がたくさんいますな

ありとあらゆる方向から視線を感じる

今は谷沢さんが、ここにいらっしゃるので皆様、あたしたちに寄ってらっしゃらないのですわ

ジッちゃんの懐刀である谷沢チーフのことをみんな、恐れているんだな

とにかくあたしたちが、堂々とパーティ会場に姿を見せたということで、香月家や他の名家に対するアピールはできましたあたしと瑠璃子と黒森様が仲良く入場する姿を披露したのですから第一段階は、これで良いと思います

ですから、第二段階へ進みましょう谷沢さんパーティの運営の方との交渉はいかがでしたか

問題ありませんこちらの要請を受け入れて下さいました

ああ何か、計画があるんだな

パーティの開始まで、後、10分です閣下は、3分前に会場入りなさいます閣下はご高齢なので、お席を決めていただきましたあそこです

谷沢さんは、パーティ会場の演壇の左手前の椅子を指差す

会場入りなさったら、あそこの席に誘導します挨拶に来られる方たちは、総理大臣の入場を優先するという理由で、全てシャットアウト致します

ですのでみすず様、瑠璃子様は、お時間まであちらの控え室をお使い下さいパーティの運営とは話を通してあります

うん今ここにいる客に対しては、もう充分、顔見せしたんだ

ジッちゃんが到着するまでは、一旦、姿を消していてもいいだろう

では、あたしと瑠璃子はそちらへ美智

黒森様のことお願いします

あオレは、二人と一緒に控え室には入れないのか

あたしたちの警護は、谷沢さんが付いて下さいますから

谷沢チーフが、ニッと微笑む

ああ、任してもらおう

オレはこの場に美智と残るのか

個人的には、10年くらい前に一度だけ某国の映画祭のパーティに行ったことがありますとってもお料理が豪華でした

あら、あの人、映画俳優の人よ

という声がしたので振り向いたら日本の有名な俳優さんでした昔バンキ*ドの主役をなさっていた

あの昔変身ヒーローブームの時に、バン*ッドという番組があったんです

その番組ではライダーのバイク事故以降、主演俳優がマスクを付けて闘うのは危ないので、スーツアクターを使うのが主流になっていたのですが

なぜか、断固として俳優に、マスクとスーツを付けての闘いまでやらせてまして

しかも、バン*ッドは青年1人、男の子3人、女の子1人のチームなんですが

子供たちまで、マスクを付けて戦闘や、爆発のシーンまで撮影させられるという

不思議な作品でした今じゃ絶対に許されませんね

その俳優さんをパーティで見て心の中で、ずっとバ*キッドの歌を歌っていました

552.終わりよければ全て良し

では後ほど

みすずと瑠璃子が、ニコッとオレに微笑む

うん、気を付けて

2人は、谷沢チーフに連れられて入り口とは別のドアへ向かう

ああ、控え室というのは、あっちの方にあるんだな

パーティの司会者とか、来賓とかが待機する部屋なんだろう

ジッちゃんも、早めに会場に着いていたら、あの部屋で休んでいるんだろうけれど

ギリギリに到着する予定って話だから、あそこでみすずたちと鉢合わせすることも無いだろう

ていうかジッちゃんのレベルになると、控え室の方だって、挨拶に来る人たちが大挙して押し寄せてくるだろうから、全然控え室の意味が無い

だから、色んな国の要人と非公式な会合をする部屋は、ホテル内に別のフロアに用意してあると聞いた

ご主人様、あちらに参りましょう

あちらって

閣下のお席は、決まっているわけですから

あ、そうか谷沢チーフは、わざわざジッちゃんの座る椅子の位置を教えてくれた

つまり、そこで待ち構えていれば確実に、ジッちゃんと会える

こんな広い会場の中では後から移動しようとしても、人の壁に遮られるかもしれない

そうだな、今のうちに移動しておくか

オレたちは演壇脇のジッちゃんの席の方へ向かう

その席の周囲には、すでに香月セキュリティ・サービスの警護員らしい黒服の人たちが3人ほど居たがオレたちが、椅子に近付くことを許してくれた

谷沢チーフから、事前に指示が出ているらしい

もちろん勝手に席には座らない

椅子の近くの壁際に美智と立つ

失礼この椅子は、どなたのためのものですかな

ダークスーツを着た中年男が、香月セキュリティ・サービスの黒服に尋ねる

わたしは、民政党の大古橋センセイの事務所のものですもし、よろしければ大古橋センセイがこちらの椅子をお使いになりたいとおっしゃっていますので

黒服は

椅子のことに関しましては、本日のパーティの主催者の方にお申し出下さいこの椅子は、わたくしたちが運営の方に事前にお話しして用意していただきましたものです

しかし今は、空いているわけですよね

ダークスーツの男は、意味深に言う

もう、まもなく到着なさる予定です

黒服は答えた

さすが谷沢チーフの直属の警護員だ堂々とした態度を保っている

しかし、大古橋センセイは、もうご来場になられていますしかも、ご高齢でお座りになる椅子を必要となさっています

ですから椅子が必要ならば、わたくしたちでなくパーティの運営の方に言って下さい

パーティ会場の後ろの方の壁際には、椅子がたくさん用意してある

疲れているのなら、あっちの椅子に座ればいいのに

まあ、そっちの椅子は会場備え付けの普通の椅子でジッちゃん用に用意されたこの椅子は、肘掛けも付いた立派な椅子だけれど

ですからそちらの椅子をお譲りいただけませんか、とお頼みしております運営の方には、みなさんのご主人様が到着されてから、新しい椅子をご用意していただければいいではありませんか

何を言ってるんだこいつ

そこの椅子が、とても良い位置にあるので、横取りしたいのだと思います

そうか、パーティ会場の演壇前に、1つだけ豪華な椅子があるんだ

周りからもよく見える場所だしここに座れば、大物っぽく見える

もう一度、お願い致しますわたくしは、民政党幹事長大古橋文明センセイの事務所のものです

ダークスーツの男は、黒服を睨む

どなたであろうと、お譲りするわけには参りません

黒服は、答えた

ここまでお願いしているのにですか

ダークスーツの男が、さらに食い下がる

いかがなさいましたか

ホテルの従業員が、慌てて走って来る

ああ、こちらの方が椅子が欲しいそうです

黒服が、ホテルの人に告げる

そうですかでは、今お持ち致しますこちらへお出で下さい

ホテルの人は、巧くダークスーツの男を誘導しようとするが

できれば、この位置この椅子が良いのですがね

どうしても、ジッちゃんの椅子を奪い取ろうとする

わたくしは、民政党の大古橋センセイの事務所のものです大古橋センセイが、こちらの椅子をご所望なのです申し訳ございませんが、こちらの頭の固い方たちに、この椅子をお譲り下さる様君の方からも、言ってもらえませんかね

ホテルの従業員は笑顔で答えた

こちらのお席は、香月重孝閣下のお席でございます

ダークスーツの男は

ん今、何と

ホテルの人は、笑顔のまま

わたくしの様な者が、二度、お名前を口にすることは許されません大古橋センセイには、別の椅子をご用意させていただきます

あそうですか

ダークスーツの男は、真っ青になる

ああの、閣下には、どうか今回のことは内密に

黒服に、そう言うが

いいえ、何もかもご報告するのが、わたくしたちの任務でございます

い、いやそこを何とか

早く立ち去られた方が、いいですよあなたの行動は、すでに会場内の人たちの視線を集めていますから

1人のスーツ姿の青年が背後から、ダークスーツの男に言う

これ以上は、恥を重ねるだけです

はぁこいつも来ていたか

香月家の分家の者です

こいつは、性格がメンドくさいんだよなあ

ていうか香月操に続いて、偵察に送り込まれて来たな

みすずと瑠璃子が、どういう目的がこのパーティに来たのかを色んな人たちが知りたがっているから

し、失礼する

ダークスーツの男は、あわてて逃げて行く

真っ直ぐに走って向かう先に偉そうにふんぞり返った爺さんが居た

あれが、あの男の仕えている政治家か

政治家は、ダークスーツの男に耳打ちされると真っ青になる

やっぱり、民政党はダメですねえ今日のパーティにどんな方が来場するのか、あらかじめリサーチしていれば、特別な椅子がどなたのためのものなのかは、自ずと判るはずなのに

相変わらず、皮肉たっぷりの口調で香月健思は言う

どうです、その後はお元気でしたか

うんまあねぼちぼちかな

何かよく判らないけれどとにかく、そう答える

あの大古橋という政治家は、議会のロシアとの友好団体のボスなんですよ今は野党ですけどね今日は、首相が来るでしょうだから、自分の存在を強くアピールしたいと思っていたんでしょうロシアとの話し合いには、自分を通さないと許さないぞということでだから、演壇の眼の前に特別席があるのなら、自分用に欲しいと思ったんでしょう

聞きもしないのに、ペラペラと解説してくれた

ところで、黒森くん君はどうして、ここへ

馴れ馴れしく、黒森くんとか言われてしまった

こいつも、神経が登山ロープ並みに太いタイプだからなあ

まさかロシア映画に興味があるから、とか言わないですよねえ

クククと、香月健思は笑う

そういう、あんたはロシア映画には詳しいんですか

とりあえず、そんなことを聞く

はい僕はミハルコフの熱烈なファンですから

しまった、ヤブヘビだったかもしれない

いいですよ、ロシア映画オススメですくっくっく

くっくっくじゃねえよ

皆様、大変お待たせ致しました

ああ、演壇に司会者がマイクの前に立つ

パーティの開始か

会場の外に居た客たちが、みんな中へ入って来る

結局、4~500人ぐらいは来場していているんじゃないだろうか

会場内は、かなり混雑している

それでは、これより

入り口にから入って来る客の流れが途切れたところで

ジッちゃんたちが、入って来る

巨漢の大徳さんを先頭にジッちゃんと、美子さん後ろに張本さん

うん、このタイミングなら誰にも邪魔せずに、席まで来られる

ていうか、大徳さんと張本さんて、異常なまでに強そうに見えるな

普通の警護役と全然違う

体格もメチャクチャ凄いし、最強オーラをギラギラと発している

あれじゃあ確かに、襲撃を掛けようという人間はなかなか現れないだろう

いつもなら、大徳さんたち以上に強いオーラを発しているはずのジッちゃんが元気なく見える

そして、その後ろの美子さんが

さらに、困惑した表情を浮かべている

綺麗なドレスを着ているがああ、ジッちゃんが好きな、ちょっと子供っぽいドレスだな

でも、美子さんはもう18歳そんなに似合っているとは言えない

可哀想ですねずっと、瑠璃子様の影に控えていた方ですから、あんな風に突然陽の当たる場所に引き出されても、戸惑うばかりでしょうに

うん、その通りだろう瑠璃子のお付きから香月家の後継者候補の1人へ

華やかな場所に慣れているみすずや瑠璃子と違ってたった1人でジッちゃんの側に居るのは、さぞ気疲れするだろうと思う

しかも、瑠璃子を失ったジッちゃんは気落ちしているし

ロシア映画の素晴らしさを、どうぞ、ご堪能下さい

ジッちゃんが、用意されていた椅子に座ると同時に会場の明かりが暗くなる

美子さんは、ジッちゃんの横へ

オレたちは、黒服の後ろに居たからジッちゃんには、まだ気付かれていない

会場が、完全に暗くなった

正面のスクリーンにロシアの映画が映し出された

ああ、ロシア映画史の簡単な紹介をするのですね

香月健思が、そう呟く

暗闇の中美智が、オレの手を握る

ギュッと、力強く

大丈夫だ自分が側に居ると、オレに伝えてくる

ありがとう、美智

オレも、ギュッと美智の小さな手を握り返す

5分ほど映像は続いた

オレには、正直冷静にロシア映画の歴史を観ている余裕は無かった

大徳さんたちと黒服に護られているジッちゃんとは数メートル離れている

ジッちゃんの覇気の無い背中をオレは見ている

まるで罰ゲームのように、震えて立っている美子さんの後ろ姿も

何とかしなくちゃいけない

うん、なるほどなかなか、判りやすい構成になっていますねソビエト時代のことを、少しはしょりすぎですが

場の空気を読めないことに定評のある香月健思が、ふんふんと頷いている

やがて、映像は終わり

場内が、明るくなる

それでは、ロシア連邦の議員でモスクワ映画大学の名誉理事長でいらっしゃるトルストール・チェシレンコ様より、ご挨拶をいただきます皆様、拍手でお迎え下さい

すると、みすずたちが行った控え室のある方のドアから年輩のロシア人が現れる

場内の客たちの拍手の中にこやかな笑顔で、演壇に上がる

通訳を介しながら挨拶を始めた

あの人はロシアの芸術関連の役職を幾つも勤めていますが、実はエネルギーや資源関連の議会の重鎮なんですよ

香月健思が、オレに言う

つまり、芸術分野の交流という名目で来日したがこのパーティの影で、資源やエネルギーについての非公式会談をする

ロシアの議員は、日本でロシア映画祭の開催できることをとても嬉しく思いますみたいなスピーチを続ける

ま僕たちには、関係のないことですね

と、不意に香月健思は

後ろからジッちゃんに声を掛ける

僕です香月健思ですっ

こ、こいつ

本当に、空気を読まねえ

何だ、健思か

ジッちゃんが、椅子に座ったまま振り向き香月健思を確認する

大徳さんも張本さんも、香月家の分家の一員である健思を知っているから警戒はしない

彼も来ていますっ

香月健思はオレを指差す

驚く、ジッちゃん

美子さんも、オレの顔を見て驚いている

何で、そんな変装をしている

今日のオレはオールバックに伊達眼鏡で変装していたんだっけ

何でここにいるのかと聞いている

ジッちゃんが、ギロッとオレを見た

つい

んつい

来ちゃった

我ながら何てバカっぽい返答なんだ

真横で、香月健思が笑いを噛み殺している

こいつそのうち殺す

その子が居るということは、みすずも来ているのか

ジッちゃんは、美智を見てそう言う

うんまあ、来てるっていうか

今、どこに居る

いやそれはあの

っていうか、どうしてジッちゃんが入場したのに、みすずと瑠璃子は戻って来ないんだろうか

多分、偉い人の挨拶が終わったらこっちに戻って来ると思うよ

今、会場内をドタバタするのは、失礼だと思ってこっちに来られないんだろう

みすずと瑠璃子は、そういう気遣いのできる子たちだ

ジッちゃんは、納得する

会場内が、大きな拍手に包まれる

どうやらロシアの議員さんの挨拶が終わったらしい

ジッちゃんも顔を正面に戻して拍手する

美子さんは何か言いたげに、オレの方を伺っているがそれでも演壇に向かって拍手することを忘れない

えー、本日は内閣総理大臣、服部勘蔵様がいらっしゃておりますどうぞ、ご登壇下さい

再び、大きな拍手が

会場入り口の方から手を振りながら、どこかで観たことのある政治家が笑顔で現れる

周囲をSPに護られながら

実物は、思っていたよりも背が低いようですね

香月健思が、また余計なことを言う

壇上には、まだロシアの議員が残っていた

総理大臣は壇上に登りロシアの議員と握手をする

きちんと許可を得た報道の腕章を付けているカメラマンたちが、演壇前に集まりパシャパシャとフラッシュを焚く

テレビカメラも来ていた

これで、この映像が今夜のニュースと明日の新聞に使われるということです

香月健思が、そう言った

日露友好文化交流まあ、良いニュースですからね

なるほど、こういう写真だけ撮らせて総理大臣は、すぐに帰ってしまうんだな

そしてパーティの裏で行われる様々な非公式会合については、一切報道されない

んあれは何です

突然香月健思が言う

ままじか

ほ、本当に

香月健思も、激しく驚いている

瑠璃子みすず

ジッちゃんも、思わず声を漏らした

控え室に続くドアから大きな花束を持った、瑠璃子とみすずが

優雅な微笑みとともに現れる

それでは、ここでトルストール・チェシレンコ議員と服部首相に花束の贈呈です

司会者のアナウンスとともにオレの2人の女が、演壇に上がる

スポットライトに照らされたみすずと瑠璃子は匂い立つほど、美しい

みすずは、総理大臣に

瑠璃子は、ロシアの議員に

にこやかな笑顔で、花を手渡す

会場は、さらに大きな拍手に包まれた

カメラマンたちが、一斉にシャッターを切っていく

やられたな、これは

ジッちゃんが呟いた

この映像も、当然ニュースで使われるでしょうからね

香月健思が、チロッとオレを見た

演壇では、ロシアの議員が瑠璃子の頬にキスしていた

しょうがない外人の習慣なんだから

服部総理は、さすがにみすずにキスしたりはしていない

しかし、瑠璃子何と美しい

ジッちゃんは、演壇の上の瑠璃子を見上げて溜息を吐く

美子さんも

オレの瑠璃子はまさに花が咲いたような美しさだった

15歳の少女としての瑞々しさと

満足なセックスを覚えた女としての妖艶さを

全身から同時に発している

幸せそうだな瑠璃子は

ジッちゃんは、そう呟いた

総理とロシア議員に花を渡し終えると

みすずと瑠璃子は、演壇の前に下りる

ジッちゃんに微笑みかけまっすぐに、ジッちゃんの元へ向かった

それで、このパーティ会場に居る全員が気付く

この麗しい美少女たちは香月家の令嬢閣下の孫娘たちだと言うことを

美子様お元気でしたか

瑠璃子様、綺麗ですわ

美子さんは、すでに半泣きの状態だった

美子様だってお綺麗ですわ素敵です、そのドレス

はい、閣下がいえ、お祖父様が選んで下さいました

美子さんは、そう答える

この子らのドレスは、お前が選んだのか

ジッちゃんが、オレに尋ねる

いいえ、あたしたち自身で選びました

オレが答える前に、みすずが言った

今のあたしたちに相応しいものをそして、黒森様に喜んでいただけるものを

ジッちゃんは、みすずと瑠璃子を見る

瑠璃子は、ニコッとジッちゃんに頷いた

そうか私は、お前たちにとって2番目の男になってしまったか

寂しそうにそう言う

あら、お祖父様そうではございませんわ

瑠璃子が、優しく言う

わたくしたちのお祖父様は世界中で、たったお一人です

ジッちゃんは瑠璃子への邪恋を捨てないといけない

普通の祖父と孫娘の関係に戻らないといけない

そうそうだな、確かに私はお前たちの祖父だ

自分に言い聞かせるようにジッちゃんは言う

しかし、お前は私の手の届かないところへ行ってしまったようだな

妖艶な瑠璃子を見てしみじみと言う

今のわたくしは、もう護られ愛されるだけの存在ではございません

瑠璃子は、はっきりと祖父に言った

わたくしにも護らなくてはいけない人がおります愛している方がいます

それは瑠璃子の自立宣言だ

はっどうやら、私の完敗のようだな

オレを見て、苦笑する

一人の男として張り合うのならそういう評価になるのかもしれないけれど

そうじゃないよ、ジッちゃんジッちゃんは、何も失っていないほら、ちゃんとジッちゃんの前に3人の孫娘が揃っている

それって、幸せなことじゃないかみんな、ジッちゃんのことを愛しているんだよ

孫娘として祖父を愛している

それは詭弁だなだが、悪い気持ちはせん

ジッちゃんは、瑠璃子に対する支配力を失った

瑠璃子は、もう自由だ

ジッちゃんには、彼女を他の男から隔離することはもうできない

自分の支配下にある間は男として密かに瑠璃子を愛することもできた

良い女になったな瑠璃子

はい、愛していただいておりますしわたくしも愛して差し上げていますから

瑠璃子が、オレの女となり瑠璃子も、オレを選んでくれた

瑠璃子の妖艶さが大人の女になったことを示している

もう、ジッちゃんは男として瑠璃子を愛すことは許されない

ふっ仕方無いな

瑠璃子は、そっと祖父の頬にキスをした

それが祖父と孫娘に許される愛情表現の限界だ

美子さんこの後は、あたしたちも一緒ですもう大丈夫ですよ

みすずが、美子さんに言う

パーティが歓談になれば、色んな方がご挨拶にいらっしゃいますその方たちのお相手はわたくしたちが致します

瑠璃子も、美子さんに言う

意地悪な方もいらっしゃいますが、上手に処理する方法をお教えしますから

みすずが、微笑んだ

美子さんは、ホッとしている

みすずと瑠璃子が来てくれたことを心から喜んでくれているようだ

演壇では、総理大臣の挨拶が続いていた

あの、何がどういうことなんです

香月健思が、オレに尋ねる

見て、判らないんですか

全部解決何も問題無しってことですよ

だから僕には、よく判らないんですみなさん、何か非常に抽象的であいまいなことばかりおっしゃっていたから

何で、みすず様たちが花束贈呈をしていたんですというか、今日に限ってどうしてそんな露出の多いドレスを着ていらっしゃるんですそして、ご不興を買っていたはずの瑠璃子様が、どうして閣下とにこやかに会話していらっしゃるんです

こいつは、頭は良いんだけれど

人間の情については、全然判っていない男だった

うん空気が読めない男で良かった

だーかーらー、瑠璃子とジッちゃんは和解したんです香月家の後継者候補は、みすず、瑠璃子、美子さんの3人体制で行きます分家と重役の皆さんに、そう伝えておいて下さい

こいつの説明なら分家や重役の連中は、何が起きたのか全然理解できないだろう

とにかく香月家は、これで安泰です

オレは、健思に微笑む

昔の政治家は、まあ、そのうとかあー、うーとか、言葉がのろのろしていてそれが良く物真似とかのネタになっていました

最近の首相を見ているとあれは失言をしないように、ゆっくり頭の中で言葉を選んで喋っているんだなと気付きました

そういう意味では、伝統に則った答弁なのかもしれません

553.ノミクス

いやそうはならんよ

ジッちゃんが、厳しい表情でオレと香月健思に振り向く

ジッちゃんどういうことだ

まさかやっぱり、瑠璃子を孫娘として認めないとか言い出すんじゃないだろうな

瑠璃子や美子さんたちも、緊張している

健思私がこれから言うことを、分家と重役連中に伝えてくれ

ジッちゃんが、真顔で言う

香月健思が、ジッちゃんに返事する

私は、みすずと瑠璃子を養女に迎える

香月健思に、はっきりと言う

養女ということになれば、私の遺産は直接この2人に渡るみすずの父親の重冬は、すでに遺産相続を放棄すると約束してくれているからな

ジッちゃんの言葉に、健思は驚いている

すなわちお二人を正式に、香月家の後継者になさるということですね

そういうことだ香月家の財産土地も株券も、全てみすずと瑠璃子に譲る

ジッちゃんの息子の世代を飛び越えて直接、みすずたちに遺産を相続させる

美子様は、どうなさるのですか

香月健思が、尋ねた

美子には別に、一生食うには困らないだけの資産を渡すしかし、それだけだ美子には、香月家の未来を差配するような地位は与えない金だけだこのことも、あいつらにようく伝えておけ

それは美子様が、香月重春氏の婚外子だからでございますか

コンガイシ

ああ、隠し子のことか

そんなことはお前たちの考えることではないだが、それだけでは納得しないだろうだから、一つヒントをくれてやる

今さっき、演壇の上でみすずと瑠璃子が、ロシアの議員と総理大臣に花を渡したお前も見ていたな

はい、見ていましたが

香月健思は、答える

壇上では、今服部総理大臣が、長いスピーチをしている

あれで状況が変わったいや、みすずと瑠璃子が、自分たちの手で状況を変えたのだ判るな

あのどういうことでしょうか

香月健思は、すっかりジッちゃんのペースに惑わされている

さっきの2人が花を渡す場面報道で使われたら、大きな話題になるだろういや、私がマスコミ各社に掛け合って、確実にニュースで紹介させる

お二人をですか

そうだ日本の名家、香月家その後継者である、二人の美しい少女たちそういうネタで、報道させる

みすずと瑠璃子をマスコミに出す

これまでの香月家は政財界では知らぬ者はいないが、一般大衆に対してはわざと姿を見せないようにしていたその考えを、私は改めることにした

この二人を前面に出す伝統ある名家に相応しい、気品と優雅さのある娘に私が育て上げたのだ一般大衆は、食い付く

どうして、そんなことをなさるのです

香月健思には、ジッちゃんの考えが理解できないらしい

いや、オレもだけれど

みすずと瑠璃子は、平然としている

そんなことも判らんのか私は、健思お前のことはもう少しできる男だと思っていたのだがな

瑠璃子とみすずを正面に出せば香月家と香月グループの企業は、世間の注目を浴びるだろう

それは僕もそうなるだろうと思います

香月健思は、何とかジッちゃんの話を理解しようと頑張っている

ああ、世間の眼が集まればグループ内の人間たちは、みな姿勢を正さなくてはならなくなるみっともない真似をして、恥をかくのは誰だって嫌だからな

香月グループの、現在の問題は何かね

閣下が引退表明をなさったことでグループ内が動揺しております

これは即答した

うむ、その通りだ私から、司馬くんへの交代が果たして上手くいくか分家筋の中には、相変わらず外様の司馬くんを良く思っていない者もいるまた、逆に外様の連中の中では、司馬くんが代表になると同時に、グループ内に大改革を起こし分家のやつらを追い出そうと考えている者もいる

香月グループは香月家の分家と、外様の新興勢力が対立している

ジッちゃんは、新興勢力の司馬沖達氏を自分の次の経営責任者に選んだけれど

そこで、今回のみすずと瑠璃子だ

二人が、伝統ある名家の後継者として世間に注目されれば香月グループの中の人間たちは、身勝手なことができなくなる

分家の人間たちは、これまで以上にみすずと瑠璃子に対し忠誠を誓ってくれるだろう外様の連中も、無茶な改革はできなくなる名家・香月家の伝統と信頼こそが、香月グループの力の源であることを、彼らは思い知ることになるだろう

みすずも、瑠璃子もそういう意図があって、わざわざああいう役をしたのだろう

はい、お祖父様のお考え通りでございます谷沢さんから、今日のパーティの運営の方へお願いしていただきました

普通なら、和服を着た女性が花束を渡すべきなんでしょうが今日は、ロシア映画祭のパーティですから、ドレス姿で良いだろうと思いまして

ロシア人を日本に招待したパーティなら、和風だよな

でも、今日のはロシアのエネルギー関連の企業がスポンサーになっている、ロシアの映画を日本に紹介するためのフェスティバルのパーティだから

和服じゃ変だ

今日の昼間に瑠璃子と、ロシアのデザイナーのドレスを買って参りました

この色違いの同じデザインのドレスはロシアの人の

みすずは、最初っからこの展開を考えていた

私が、みすずと瑠璃子を推すのはこういう点からもだこの二人には、想像力と洞察力とさらに、行動力があるどうだね、私の跡を継ぐのに相応しい資質を持っているとは思わないか

香月健思は、思わず頷く

私がそう言っていたとこのパーティに来ている、香月グループの関係者全員に伝えろ私の真意をな

ははいしかし

どうしたね

ジッちゃんは、ジロッと健思を見る

みすず様と瑠璃子様あの、お二人とも後継者なのですか

ふん二人ともまだ若いどっちかを正式な後継者と決めるのは早過ぎるだろうしかも、今日の場合を見て判る通り二人が揃って登場したからこそ、大きなインパクトがあったとは思わないかね

ああ確かに

実際のところ、グループ内のゴタゴタが治まるまで二人とも、後継者候補のままでいくその方がいいだろう違うかね

いえ僕も、そうだと思います

では、早く行けみんな、私がお前に何を話しているのか、知りたがっているようだぞふふっ、いぶかしげな顔で、こっちを見ている

ジッちゃんは、ニヤッと笑う

ああ、オレは香月操たちぐらいしか顔を知らないが

総理大臣が、演壇の上で挨拶している最中だと言うのにジッちゃんの方を凝視している連中が、何人もいる

か、かしこまりました

慌てて、香月健思はオレたちの元から離れて行く

健思の方に、人が集まるああ、あれは香月操の親父だっけ分家のリーダーの

健思は、口は達者だしもったいぶって話す癖があるから、こういう場では役に立つ

うん僕だけにお話下さったんですがねとか言っているよな、あいつ

私塾も、そろそろ再開してやらんといけないな

ジッちゃんが呟く

今のうちからみすずと瑠璃子に対する忠誠心を根付かせておかないとおっ、司馬の方はさすがに動じないか彼は、場を弁えているからな

ジッちゃんは、自分が香月グループの最高責任者に選んだ司馬沖達氏を褒める

司馬さんは、香月健思を無視してまっすぐに演壇の方を見ていた

これから、ロシア映画祭のパーティの裏で両国の政府関係者たちと密談をすることになっているんだ

日本の総理大臣が喋っている時に、ドタバタするような無礼はしない

ま、私の方はもうすぐ隠居する身だ多少のことは、大目に見て貰うとしよう

ジッちゃんは、そう言って苦笑する

ジッちゃんそれよりみすずと瑠璃子だけを養女にするって話だけど

改めてオレは尋ねてみた

暗い顔の美子さんをみすずと瑠璃子が、両脇から支えている

美子には分家や重役連中と闘うのは無理だ今のままではあいつらに良いように利用されるだから、私の孫娘としては認知したが、香月家の後継者としては認めないことにした

後継者候補なら美子さんと結婚して、香月家の当主を狙ってくるやつが出て来る

美子が苦しむことになるような可能性を私は、今の内に取り除いておいてやりたいのだよ

はい今でしたら、まだ、どなたも準備が整っていらっしゃらないでしょうから

美子さんが、ジッちゃんに孫娘として認知されてまだ数日しか経っていない

美子さんのムコを狙おうかと画策している連中も具体的な作戦を練り上げてはいないはずだ

これで、美子様を担ぎ上げようとする人たちはいなくなりますわね

みすずも、瑠璃子に微笑んだ

まだ香月家の名や、美子さんが貰う遺産の金を目当てに寄って来るような小物はいるだろうが

少なくとも、香月家内の勢力争いに美子さんが巻き込まれることはなくなる

し、しかしわたくしは

だけど、美子さんは、困惑していた

みすず様と瑠璃子様に、全てを押し付けてわたくしだけ、傷を負わないところに逃がしていただくというのは

みすずと瑠璃子が、自由に動けるようにお前を逃がすのだよ

ジッちゃんが、美子さんに言った

みすずも瑠璃子も、生まれついての香月家の娘だあいつらとの闘い方については、よく熟知している

そうですよ美子様に害が及ばないということが判っていれば、安心してあたしたちは闘えます

はいわたくしたちは、あの方たちが美子様を取り込もうと陰謀を巡らすことが一番恐ろしいのです

みすずと、瑠璃子が美子さんに言う

美子さんがご無事ならわたくしには、もう旦那様がいますしあの人たちは、瑠璃子だけを標的にしてくるでしょうから

みすずの言葉に、思わず美子さんは瑠璃子を見る

ですが、わたくしもすでにお兄様のご支配を受けております

瑠璃子は、オレの奴隷だ

誰もわたくしには手を出せません

いや出させないよ

オレははっきりと宣言する

美子さんが、キッとオレを睨む

美子、そんな顔をしてもムダだ瑠璃子自身が、こいつを心から受け入れている

ジッちゃんが、そう言う

美子さんは、まだお祖父様とは言えないようだ

ジッちゃんは、美子さんを無視して瑠璃子を見る

また随分色っぽくなったな

瑠璃子は、艶然と祖父に微笑む

お兄様に、たっぷり愛していただいておりますから

こちらにうかがう前にも

瑠璃子は、ニッと微笑む

何回したんだね

はいお腹の奥に2回射精していただきましたそれと1度はお口に

瑠璃子の肉体は、オレの精液が溜め込まれている

わたくし幸せです毎日、こんなにも情熱的に愛していただいて

セックスが気に入ったか

ジッちゃんが、瑠璃子に尋ねる

ジッちゃんは瑠璃子の処女喪失を見ている

あれから、ほんの数日で瑠璃子の官能は、見事に花開いている

はいセックスという行為でなく、お兄様に愛していただくことまた自分の肉体を駆使して、お兄様にご奉仕することに、今は没頭しております

瑠璃子は優雅に微笑む

怪訝な顔をするジッちゃん

セックスが気に入ったのでなくこいつが気に入ったというのか

気に入るなど奴隷のわたくしが申し上げるべき言葉では、ございませんわわたくしは、心から愛しておりますお兄様も、わたくしを愛して下さっていますですから、お兄様とこの世でただ一人、お兄様だけとセックス致しますセックスとは愛を交えるための行為だと、お兄様に教えていただきました

オレ、そんなこと教えたっけ

お兄様とのセックスは、とても楽しくて自分がこうして今、生きていることに感謝致しますお兄様は、本当に素晴らしい方ですわこんな素敵な方に巡り会えましたことを感謝しております

そして、瑠璃子は

お祖父様わたくしをセックス奴隷として、お兄様にお売り飛ばし下さいまして本当にありがとうございますわ

る、瑠璃子

ジッちゃんは驚いている

セックスでなくこ、こいつが

みすずが間に入る

お祖父様お祖父様は、男の方の感性でセックスというものを考えていらっしゃるんだと思いますわでも

ククッと笑う

あたしも瑠璃子も女の子なんですよ

ジッちゃんは、大きく眼を開く

肉体の快楽だけでなく精神の安らぎも求めますいえ旦那様のセックスは、快感と癒やしを同時にあたしたちに与えて下さいますから

男のジッちゃんと、女のみすずと瑠璃子ではセックスに対して、求めるものが違うんだ

あたしも瑠璃子も旦那様でなければ、心を開ききって、安心してセックスできません

はいお兄様だけです瑠璃子は、生涯、お兄様のセックス奴隷として生きて参りますわ

ジッちゃんの養女になる予定の二人の美少女は満面の笑みでそう答えた

ふっ結局、私はみすずも瑠璃子も、お前に持って行かれたということか

ジッちゃんが、オレを見て寂しそうに笑う

そうじゃないよ全然、そういうことじゃないんだよ、ジッちゃん

オレはそうは思わない

みすずも瑠璃子も最初っから、ずーっと自由なんだよジッちゃんの支配の中で、自分の意志を殺して生きていたわけではないんだよジッちゃんが2人を自分の手の中に入れて保護していた時だって、こいつらは自分の意志で生きていた心は、自由だったんだよ

ていうか人には、他人を支配することなんてできないんだって今の瑠璃子はオレの奴隷であることを楽しんでくれているし、オレも瑠璃子に奴隷でいて欲しいって願っているでも瑠璃子が、もう奴隷は嫌だって思ったら、こんなのは終了だよオレには瑠璃子を力尽くで縛り付けておけるような力は無いんだから

そうだ今のオレたちは、微妙な約束事を守ることで、関係を築いている

オレは瑠璃子を失いたくないから、オレの欲望を満たすためだけに瑠璃子の嫌がるようなことはしない絶対にしない逆に、瑠璃子のためになることなら瑠璃子に嫌われるようなことだって言うし、何だってするそういうことが、オレたちの信頼の絆を強めていくことだって判っているから

そうやって、オレは毎日、必死で瑠璃子の信頼を失わないように、努力していかないといけないんだよオレは絶対に甘ったれられないオレが、瑠璃子やみすずに対して、舐めた態度を取ったら信頼を深めるための努力を少しでも怠ったなら、こいつらはオレを見捨てていくオレは、どんな時だってこいつらの信頼を裏切ることは許されないんだよ

なぜだどうして、そんな風に思う男なんて、どっしり構えて女には、黙って付いて来いと言えばいいそういうものだろうが

香月家当主香月重賢の人生なら、そうかもしれない

だが、オレはただの高校生だ

頭も顔も良くは無い

だってこいつらみんな、最高の女なんだものっ全力で、愛さなかったらもったいないし、いつまでもオレの側に居てくれるはずがないんだよ

ジッちゃんはこいつらの祖父ちゃんだ祖父と孫娘だその関係は、何があったって変わらない絶対に、ジッちゃんはみすずや瑠璃子やそれに美子さんとも、離れることは無いんだよ血の繋がった、本当の家族なんだから

でも、オレはそうじゃないオレとこいつらは、ただの男と女だオレがこいつらにとって価値の無い男ならいつだって、見限られるいなくなっちゃうんだよ捨てられるんだよオレとは関係の無い人になっちゃうんだ

努力するしかないんだよ命懸けで食らいついていくしかないんだよだって、こいつら本当に綺麗で、優しくて、頭も良くて最高の女たちなんだからジッちゃんの孫娘は最高だよ

まさか82歳にもなって高校生に、愛について諭されるとは思わなかったよ

フッと、溜息を吐く

私に、お前の様な切実さが真摯さが女というものを思いやる力があったら、もっと幸せになっていただろうな

何言ってるんだよジッちゃんは、充分に幸せじゃないかさっきも言ったけれど、こんなに綺麗な孫娘たちが居てそれも3人もこんなの幸せに決まっているじゃないか

ジッちゃんはオレの言葉をさっきは詭弁だって言ったけれどそれは違うよ祖父と孫娘は、本当の家族は絶対に変わらないんだからジッちゃんは、最高の幸せをもう掴んでいるんだよ

お祖父様あたしの旦那様は、ご両親に捨てられたお方ですこの方には、本当の心を開くことのできる家族が1人もいらっしゃらないんです

知っているこいつのことについては、谷沢に詳しく調査させた

いえ、知っていらしても判っていらっしゃいませんわ旦那様が、どうしてこんなにあたしたちを大事にして下さっているかを

ジッちゃんは穏やかに

そうだな私は、判っていなかったようだ

そうか私は、みすずと瑠璃子と美子がいるだけで、充分幸せかうむ

それから、クスッと微笑んだ

すでに肉体は男の機能をなくしたのだこれから先は、ただの好々爺として生きるべきなんだな

瑠璃子が、祖父に微笑む

お祖父様ひ孫はどういたしましょうか

瑠璃子は、今すぐに妊娠しても良いと考えておりますが

ジッちゃんは、瑠璃子に苦笑して

慌てる必要はないもう少し、瑠璃子の肉体が成長してからでいい大丈夫だ、私は長生きするそれに、もう5年もしたらみすずが先にひ孫を産んでくれるだろう

いえ、わたくしは3年後を目安に考えております

みすず3年後って

今が17歳だから20歳で生むってことか

では、わたくしは4年後にいたしますわミッチー、よろしいですね

承知つかまつりました

美智は、武家娘らしい返事をした

ふん、これも仕方ないか孫というものは、あっという間に成長するものだ

ジッちゃんは、そう言う

じゃ頼んだぞ、お前

みすずも瑠璃子もついでに香月家も、後は任せた頑張れよ

オレは香月家まで

いや、何から何まで背負うしかない

この2人を自分の女にした以上、オレには責任がある

大丈夫です、旦那様あたしたちがお側におります

お兄様これからも末永く、お願い致します

わたくしも及ばずながら、頑張ります

みすずと、瑠璃子、美智までもがオレに微笑む

美子さんが、オレに声を掛ける

わたくし勘違いしておりました黒森様が、こんなに瑠璃子様、みすず様たちのことをお考えになられているとはどうか、ご無礼の数々、お許し下さいませ

美子さんが、オレに頭を下げる

いや、いいですから頭を上げて下さい

オレは、美子さんに謝ってもらうようなことをした覚えは無い

おい、そろそろ静かにしろ総理大臣のスピーチが終わるぞ

ジッちゃんが、オレたちに言う

えー、何と申しますか、ロシアと日本は、これからも友好関係をますます深めていかなければならないと、政府与党を代表致しまして、わたくしはそう思うものであるのでして、一方、ロシア映画というものも、これはもう、うちの家内なんかも大変好きで、よく拝見しておりまして、今後のロシア映画の益々の発展を心よりお祈り申し上げ、また、今回のロシア映画祭の関係者、それこそ今日この席にいらっしゃっているチェシレンコ議員を始めロシアの皆様のご家族の益々のご多幸をお祈り申し上げわたくしのご挨拶とさせていただきます内閣総理大臣、服部勘蔵でございました

何か、今一つ内容のよく判らないスピーチが終わる

会場全体から、大きな拍手が起きる

それでは、服部総理は次のスケジュールがお有りということですので、このまま退席なさいます服部総理大臣、ありがとうございました

司会の人が、そうアナウンスすると総理大臣は、にこやかな笑顔で会場に手を振りながら、SPたちと退場していく

この会場には正味、10分ちょっとしかいなかったんじゃないか

総理大臣なんてのは、会合に箔を付けるためだけの挨拶係だからなこんなものだよ後は、会場に残った事務方の仕事だ

では、続きまして

司会が、次の挨拶をする人物を呼ぶ

この挨拶が終わったら、歓談の時間となる色んな人間が、ワーッと押し寄せてくるぞ

ああ、ジッちゃんと懇意になろうと

私は、この場で余計な人間たちを引き付けておくその隙に司馬くんが、別室での会合に出ることになっている

もうすでに、司馬さんへの仕事の移譲を始めているんだ

いや、私も途中抜けして、別の会議に出るがなみすず、瑠璃子、美子、しばらくはこの爺に付き添っていてくれ

優しい笑顔で孫娘たちを見る

お前たちが、仲睦まじく私の側にいてくれれば香月グループは安泰となるだろう

周りが、孫娘たちを別々に担いで争おうとしても3人が仲良しなら、波風の立てようが無い

はい今日は、最後までお供致しますわ

みすずが、代表して答えた

助かるよお前たちの件で、マスコミの取材もあるだろうしな

ああそれもあるんだ

ところでお前は、どうするんだね

ジッちゃんが、オレに尋ねた

オレは別にみすずたちと一緒に、ジッちゃんに付いている必要はないんだよな

むしろオレがいると絵にならない

みすずに婚約者がいることは、マスコミには伏せていた方がいいだろうし

オレ一人では、また香月健思たちが来たら対応できない

ミナホ姉さんたちの居る中華レストランにでも合流しようか

不意に、みすずがオレに言った

用意は、すでにできておりますが

用意

次に書きたい話が3つぐらいある

早く終わらせたいと思いつつ、すでに半年じっと手を見る

554.東京上空

他の家族の皆様はこのホテルの中に居続け、向こうのアクションとは無関係であるというアリバイを作らないといけません

ああ、ミナホ姉さんや克子姉マルゴさんたち犯罪組織黒い森の人間は、恭子さんとの結びつきを疑われている

それから、イーディもミス・コーデリアとの関係を断ち切るためには、ここに居て公安警察の監視を受け続けないといけない

渚や真緒ちゃんやメグも普通の生活を守るために、アリバイを作っておかないと

あたしの婚約者黒森様が、このパーティに出席したというアリバイはすでにできていますここで席を外したとしてお祖父様専用の控え室に居たと言えば、それで済みますもし、分家の皆さんたちに何か言われても、あたしたちが上手に返答しておきますわ

そして吉田というお名前の高校生は、このホテルに訪れていないことになっているんです

旦那様だけは自由に動いてもいいんですよ

ニコッと、みすずは微笑む

黒森はここに居る

吉田はここに居ない

藤宮さんと関さんのことご心配なんですよね

ジッちゃんの前だからみすずは、2人の名前をさん付けで呼ぶ

谷沢さんが、あちらに向かわれるご予定だそうですわ

横から、瑠璃子がオレに言う

え、谷沢チーフが

はい、これは関さんが主導する香月セキュリティ・サービスの最初のオペレーションになりますからご視察に行かれるそうです谷沢さんも、心配なんですよ

ミナホ姉さんの話では2人のいるグリーン山スタジオまでは、どんなに車を飛ばしても1時間は掛かると言う

腕時計を見るとすでにパーティが始まって、すでに15分が経過している

グリーン山スタジオでのアクションが開始されるまで、後45分

どうやったって、間に合わない

今から行っても

このホテルの屋上にヘリの準備ができております

はい、ヘリコプター

まるで、ドラ*もんがひみつ道具を出す時みたいに、瑠璃子は笑う

ヘリコプターってあれだよな

プロペラ、ぶるるん空を飛ぶ

さっき黒森御名穂様は、皆様が揃っていらっしゃる場で、わざわざ車なら1時間とおっしゃったんですわ

みすずは苦笑する

恵美さんたちを安心させるために

オレが危険な場所へ行くんじゃないかと、あいつらが心配しないように

先ほど、控え室で谷沢さんにお尋ねしてみましたヘリコプターの席には、空きがあるそうですわ

ヘリコプターなら、およそ25分で現地に到着するそうですあちらのスタジオは、ヘリコプター用の施設もございますので直接着陸することができるそうですわ

まだ間に合う

だけどいいのか

オレは、みすずと瑠璃子を見るオレの横の、美智も

メグたちが、オレのグリーン山スタジオ行きを嫌がっているのは

そこに雪乃が居るということもある

オレと雪乃との接触を怖がっているから

あたしたちはもう、あの人を恐れてはいませんそうよね

はい心配なのは、藤宮さんたちだけです

瑠璃子も、平然とそう言う

ご主人様が、行かれたいのなら仕方有りません

美智も、そう答えた

オレは行きたいのかグリーン山スタジオに

だけど、オレが行ったって何の役にも立たないよ

オレにはレイちゃんたちと一緒に闘う能力は無い

オレが顔を出すことは、ただの迷惑かもしれない

でもなるべく、近くに居てあげたいんだこれってオレの我が儘かな

いいえ旦那様が、わざわざ現地にいらっしゃることほどあのお二人を、力づけることは無いと思いますわ

笑ってそう言ってくれた

お兄様は、わたくしたちに勇気を下さいますから

瑠璃子も、優雅に微笑んでいる

本当はわたくしもお供したいのですが

いや、公の場だ美智がみすずたちの警護役だってことも、はっきり示さないとな

美智は、連れて行かれない自分の身は、自分で守るしかない

あちらのドアから、外へ出て下さい谷沢さんが待っていらっしゃいます

みすずが、眼でホテルの従業員用の通路をオレに示した

今の内にスピーチが終われば、色々な方がこちらに押し寄せて参ります

ああ、歓談の時間になったらジッちゃんは、取り囲まれる

オレのことをとやかく聞いてくる輩もいるだろう

1度囲まれてしまったら抜け出す隙がなくなる

判ったじゃあ、ジッちゃん悪いけど、オレ、抜けるから

ジッちゃんは、オレをチラッと見て

何やら関くんたちが、面白そうなことを企てているそうだな私も後で映像を観せて貰うことになっておる

ああジッちゃんは、香月セキュリティ・サービスの主だ

翔姉ちゃんの計画は、全て了承済みなんだろう

お祖父様他にも観ていただきたい映像がございますわ

瑠璃子が祖父に微笑む

わたくしたちの昨夜の映像です

昨夜オレたちは、みすずのマンションで撮影した

とんでもなくハレンチなセックス映像を

それも観る

ジッちゃんは小さな声で、言った

孫たちの成長を、確認するぐらいはいいのだろう

オレに尋ねた

みすずも瑠璃子もすでにオレのものだ

この子らの痴態を観るには、オレの許可が要る

ああ、構わないよジッちゃんに観てもらうつもりで撮ったんだから

はい、これからもお望みでしたら、定期的にお届けしますわお兄様のお許し下さるのなら

瑠璃子はオレを見て微笑む

オレに異存は無い

今更、ジッちゃんに観られるぐらい

ただしお祖父様のお好みに合わせての撮影は致しませんあたしたちが、楽しめませんから

みすずが笑顔で、釘を刺す

これからもジッちゃんにセックスを見せることは良いがわざわざ、ジッちゃんの喜ぶようなシチュエーションでの撮影はしない

オレたちは、アダルトビデオの俳優ではないのだから

これはあくまでも、オレたちからの贈り物だ

愛すべき、オレたちのジッちゃんへの

うむそうだな観せてもらえるだけで、感謝しないといけないのだろうな

ジッちゃんも自分に言い聞かせる

これまでのジッちゃんは、権力者として自由に女たちを抱いてきたどんなことでも、望み通りにしてきた

だが、オレたちは家族だ

自由意志があるセックスのことで、命令されるのは変だ

みすずも、瑠璃子もジッちゃんに指示されてのセックスはしない

しかし、私はきっと長生きするよお前たちの、幸福な姿をずっとこの眼で見続けることができるのだから

ジッちゃんは、笑顔でそう言った

はい、今の瑠璃子は幸福ですお祖父様、ありがとうございます

瑠璃子が、改めて祖父に礼を言う

瑠璃子はお祖父様の孫娘として生まれてきて、本当に良かったです心から神様に感謝しておりますわ

その言葉で私は、報われたよ

ジッちゃんは、眼にうっすらと涙を溜めている

私も幸せだお前たちという、孫娘がいて瑠璃子

はい、閣下いえ、お祖父様

美子さんが慣れていないのは、しようがない

ジッちゃんは、クスッと笑う

私が居て息子たちが居て今、お前たちが居る色んなことがあったが、私とお前たちは今、こうしてここに居る生きて、お互いの顔を見て、笑い合うことができるああ、何て幸せなんだろう私も、生まれてきて良かったありがとう、お前たち瑠璃子、みすず、美子私の孫として生まれてきてくれて、本当にありがとう

この瞬間、ジッちゃんの邪恋は終わったんだと思う

後に残ったのは孫娘たちに対する家族愛だけだ

誰だか判らないけれど偉い人のスピーチが続いている

オレは、ジッちゃんとみすずたちと別れて従業員用のドアへ向かう

静かに、パーティ会場から出た

遅かったな

通路には谷沢チーフが待っていてくれた

気にしなくて良い予定より、3分のロスだヘリポートに行くまでに、取り戻すぞ

谷沢チーフは、小走りで通路を抜ける

オレも追い掛ける

こっちだ

従業員用の通路を何度も曲がる

ドアを開けると

赤い絨毯の敷かれた綺麗な通路に出る

VIP専用の通路だ総理大臣が通って行ったばかりで今は、誰も使っていないこのホテルは、政府関係のイベントも多く開かれるからな色々と、都合良くできているんだよ

さらに通路を奥へと走る

エレベーターに出た

谷沢チーフは、エレベータの機械にカードを差し込む

ピッ認証されました

スピーカーからの機械音声の後、エレベーターのドアがサァッと開いた

慌てて、飛び乗るオレたち

谷沢チーフは、屋上のボタンを押した

乗った人間が下りるまでは途中の階では停まらないそういう仕組みになっている

ああ、途中の階で別のVIPと鉢合わせしないように

エレベーターが、上昇する

高速エレベーターだからな、耳がキーンとしたら、唾を呑み込め

谷沢チーフは、笑っている

みすず様が、何でお前を連れて行くように言われるのか、よく判らんがまあ、香月セキュリティ・サービスのことは、知っていてもらわないと困るからな

谷沢チーフは翔姉ちゃんや、レイちゃんが、すでにオレたちの家族であることを知らない

将来的にはお前も、香月グループの中で何らかの役職を担うことになるんだろうし

あくまでも、オレはみすずに気に入られて、彼女の恋人になり

ジッちゃんがオレたちの熱意に負けて、関係を認めてくれたという風に、思っている

まあ、オレもシザーリオ・ヴァイオラたちとの一件を見てきているからなお前が信頼できる人間で、ガッツがあるってことは判っている頑張れよ

オレは頭を下げる

ヘリコプターは今までに乗ったことはあるか

そうか、じゃあちょっと腹を括って乗ってくれ今日のパイロットは、荒っぽい操縦をするやつなんだ

あっという間にエレベーターは、屋上に到着する

ドアが開くと眼の前は、ヘリコプターの発着場だった

ブババババババ

すでに、ヘリはローターを回転させて待機している

チーフ、スタンバイできています

ローターの轟音にかき消されないように黒服の部下が、谷沢チーフに怒鳴った

ご苦労行くぞ

オレと谷沢チーフはヘリへと向かう

空は、満点の星空だ

ヘリポートの下には、美しい東京の夜景が拡がっている

ヘリの近くでは、なるべく姿勢を低くしていろっ絶対に、手を上に上げるなよっアレッサンドロ・ナニーニみたいになるぞっ

アレッサンドロって、誰ですかっ

そんなことも知らんのかっ

大轟音の中、大声で叫び合うオレたち

ヘリの脇には3人の男女が立っていた

男1人に、女が2人

女は黒スーツだが男の方は、ツナギに帽子を被ってた

女の一人は、さっきみすずたちの警護に来た滝さんだ

チーフ応援メンバーとして、2名行かせますっ

ツナギの男がそう言った

この人が、パイロットだろうか

そうかっ

谷沢チーフは、そう言いながら背広の上を脱ぐ

持っててくれっそいつの世話も頼むっ

オレと背広を滝さんに託した

乗り込めっ

オレは女性2人に挟まれるようにして、ヘリの後部座席に

操縦席には谷沢チーフが乗り込む

ツナギの人は、助手席に

驚くまもなく、滝さんにベルトで固定されるオレ

ドアが、ガッチッと閉められる

ズババババババッ

ローターがさらに高速で騒がしく回転する

振動と騒音がヘリの中を満たす

谷沢チーフは、ヘッドホンをしてツナギの男と何か喋っているがオレには、もう何も聞こえない

無線でも誰かと喋っているようだけど

離陸の許可を貰っているんだろうか

ふわりとヘリが宙に浮く

そのまま一気に東京の空を駆けていく

うううううーっ

何だこりゃあ

正直ヘリコプターの中で、谷沢チーフにあれこれ質問されたらどうしようと思っていた

下手な受け答えをしたらマズイと

だが、実際はヘリコプターでの25分の移動時間は

隣の滝さんにしがみついているだけで、精一杯だった

ヘリが、こんなに怖い物だとは知らなかった

うるさいし、振動が凄いしとにかく揺れるし

まだ、左右に人がいる後部座席だからいいけれど

大きく外が見える前の席とかだったら怖すぎて、小便を漏らしていたかもしれない

谷沢チーフの操縦は、実際には上手いんだと思う

怖かったのは、ホテルのヘリポートから離陸する時だけで

空を移動している時は、ほぼ同じ高さを保って飛行してくれた

それでも、よく揺れるズンと突然、沈んだりするとドキっとする

つくづくヘリというのは、心臓に悪い乗り物だ

結局、何も考えられないまま時間だけが過ぎていった

東京の夜景とか、見ている余裕は無い

それでも、都心を離れるにつれて高いビルがなくなっていく

民家の明かりばかりになる

グリーン山スタジオは東京の郊外、ベッドタウンの方にある

ああ機体が、下降を始めた

もうすぐ、到着するんだな

ドッバババババババ

ヘリの先に明かりの見えない広大な場所が見える

あそこがグリーン山スタジオ

撮影用の野外スタジオだっていうから

ザザバババババババッ

その一画にゆっくりとヘリは、降下していく

ビュルルルンルルルルルルルンッッ

コッという小さな感触

谷沢チーフは、実に巧みにヘリを着地させた

シュルルルルルルルルルルルルンッ

ローターの回転が、落ちていく

着いたぞっ下りろっ

谷沢チーフが、オレたちに振り向いて怒鳴る

滝さんがオレのシートベルトを外してくれる

ドアが、開かれた

外の風が、ぶわわっと吹き込む

気を付けて下りて下さいっ腰を落としてっ

騒音の中、滝さんがオレに怒鳴る

そうださっきも言われたっけ

滝さんに抱きかかえられるようにして、オレはヘリの外へ

うわっ、地面だ

足下が、ブルブル振動していないのは助かる

っていうかオレは、ヘリは苦手かもしれない

おい、こっちだ

谷沢チーフが叫んだ

見ると、すでに迎えの車が来ていた

オレたちは、ヘリをツナギの男に任せて

あの人が、ヘリの担当なんだな谷沢さんが操縦しない場合は、代わりに操縦するんだろう

あのヘリをホテルのヘリポートまで飛ばしてきたのも、きっとあの人だ

地面に足が付いた途端頭が働いて、色々なことが判った

地面て素晴らしい

いつまで、滝に抱きついているんだ

谷沢チーフが、オレを見て言った

あああっ、すっ、済みません

オレは、慌てて滝さんから離れた

腰に力が入らなくてそのまま、地面に倒れた

あ痛っ

滝さんともう一人の女性は、オレを見て笑っていた

だ、大丈夫です

オレは、腰をさすりながら立ち上がる

ヘリは初めてでいらしたんでしょ仕方ありませんよ

滝さんは、オレに敬語で喋る

みすずや瑠璃子と一緒に居たからどこかの名家の人間だと思っているんだろう

さっさと乗れヘリでせっかく4分時間を短縮したんだぞ

オレは慌てて、車に乗り込む

何かやたらとゴツゴツとした大きな車だ

確かこれハマーとかっていう車じゃなかったっけ

車をこのヘリ発着場まで廻して来てくれた人が、そのまま運転するみたいだ

今度は、助手席に滝さん

オレと谷沢チーフともう一人の女性は、後部座席に

チーフまず、どちらへ向かいますか

運転席の男が、谷沢チーフに尋ねた

関くんは彼女は今、どこに居る

第7スタジオのビル内にオペレーションルームを作りましたので、そちらに

では、そこへ向かえ

オレもお前もこっちの視察が終わったら、またさっきのホテルへ戻るからな

この状況で無いと抜け出すことはできなかった何しろ閣下は、この後数時間はパーティと会合で、あのホテルの中にいらっしゃる大徳と張本が、閣下の直接警護に付いているし今、あのホテル内は日本とロシアのSPと各家の警護役に完全に守られているからなうちの警護員たちも配置してあるし

今なら谷沢チーフが席を外しても、ジッちゃんの警護に支障は無い

閣下の移動のスケジュールに間に合うように戻るからなそのつもりでいてくれ

てことは帰りも、ヘリか

何だ、その顔はヘリが怖かったら、また滝を抱き枕にしてもいいぞ滝いいな

えっそれは

ご命令でしたら

ルームミラーの中の滝さんの顔が、赤くなっている

あ後部座席で無く、助手席に座ったのは

オレの横に座るのが、恥ずかしかったからか

色々と、申し訳ありませんでした

とにかく、頭を下げる

いえいいんです仕事ですから

そんな仕事をさせてしまって申し訳ないです

んあれか

谷沢チーフが車の窓の外を見る

たくさんの投光器によって

大きなコンクリートの建物が照らし出されている

今日のメインステージだ

あそこが

前世紀のバブルの頃に造られたバラエティ番組用のセットだあの頃は、放送局にも金があったからな鉄筋コンクリートで、頑丈に造ってしまったんだそうだそれで番組が終わった後、壊せなかったんだそうだ壊すにも金がいるからなあのまま放置されて、30年近く経つらしい

高さは20メートルくらいはある

コンクリートの塊みたいなそれはまるで城のように見えた

何しろ、この撮影スタジオは広いからなあんな廃墟があっても、撮影の場所を変えれば映らないだから、30年ずっとあのまんまだったそうだ

ああコンクリートの城の周りに、カメラやライトが取り付けられている

城の上にも、作業をしているスタッフの姿が見えた

というわけだからあの廃墟の周囲には、何も無いんだよ民家からも遠い多少のドタバタがあっても、外には影響が出ない

うん武装勢力同士が暴れるには、絶好の場所かもしれない

しかし関くんが、よくこんな廃墟を知っていたな関くんの年齢じゃこの廃墟が使われたバラエティ番組は知らないだろう

関さん海外旅行に行った時に観たって言ってましたよ何か、その番組って、外国でずいぶん放送されていたらしいですから

滝さんでない、もう一人の女性が言った

ああ、日本のバラエティ番組が意外な国で放送されているっていうのは、聞いたことがあるな

谷沢チーフは、それで納得した

多分、その国ってブラジルだろうなあ

これ、恭子さんの企画だから

でスタンバイは終わっているのか

はい、最終チェックも終わっています全て、問題無しです

運転者は、そう谷沢チーフに答えた

中学の同級生が、その撮影所の脇に住んでいました

彼の部屋の窓からはた*し城がよく見えて

私たちは、城下町の男と呼んでいました

555.風雲、たかし城 (その1)

車が、大きく7と書かれた建物の前に到着する

入り口の前には、すでに香月セキュリティ・サービスの制服組が集結していた

ええっと2~300人はいるよな

全員、ヘルメットとプロテクターと透明な盾を持っている

まるで警察の機動隊みたいな格好だ

総員整列ぅぅッ

車中の谷沢チーフに気付くと、リーダーらしい男が号令を掛ける

オレに構うなっ各自の準備に集中しろっ

車から降りながら谷沢チーフが叫んだ

今日の仕切りは、関だっオレのことは、いないものと思えっ

谷沢チーフは、制服組たちに向かってニヤリと微笑む

了解致しましたぁぁッッ第一小隊しゅっぱぁぁつっ

第2小隊しゅっぱぁぁつっ

第3小隊配置に付けぇっ

第4、第5小隊は、待機っ

第6、第7小隊は、配置に向かう全員駆けあーしっ前にぃぃぃぃ進めっ

各部隊が、それぞれの行動を始める

オレも、車の外に出た

で、関はどこにいる

はっ、ご案内致しますっ

建物の前に居た、プロテクターを付けていない制帽の警備員が谷沢チーフを建物の中へに案内する

もちろん、オレも付いて行く

ホテルから応援に来た滝さんたちも

通路を歩きながら、谷沢チーフが

オレに敬礼なんてしているヒマなんかないだろうに

独り言のように呟く

がその顔は笑っている

しかし、関の人選はなかなか良いな新しく編成した部隊とは、とても思えないだろう

後ろの滝さんに、そう言う

以前から関さんは、社内の若手の人材をよく観察なさっていましたから誰が適材なのか、よくご存じなんだと思います

歩きながら、滝さんが答える

ああ山岡が頭を張っていた時には見られなかった充実ぶりだ

関さん、優秀な上に美人ですからああいう人に自分の力を認めてもらったとなれば、男性隊員たちが奮起するのは当然ですよ

女性隊員にだって人気がありますわ関さん、社内の人間には誰とも気さくに話し掛けられますしちゃんと仕事ぶりを見てくださるって、評判ですから

もう一人の女性も、翔姉ちゃんのことを褒めてくれる

そうねわたくしの同僚も、関さんの推薦で昇格致しましたし

関さんが、わざわざ報告して下さったことで、閣下から直々にお褒めの言葉を賜ったこともありました

逆に直々に、叱責された方もいましたけれど

関に嫌がらせをしたら、閣下の耳に聞こえるぞとみんな怯えているんだろう

谷沢さんと女性たちは笑う

それは冗談だがまあ、実際は、関は表裏が無くてカラッとした性格だからなそういうことで、後々、社員から恨まれるようなことは無いだろう

はい関さんは、わたくしたちの立場をよく考えて下さいますから

実は、閣下からお叱りを受けた人それで助かったんです

谷沢チーフが、滝さんに尋ねる

実は山岡さんが、その人を内々に処分なさろうとしていましたから

オレや閣下に報告せずにか

滝さんは、答える

関さんが閣下に、どんなミスがあったかお伝えしたことで山岡部長から、その人への処罰はなくなりました

あれが山岡部長のところで留まると延々とネチネチといたぶられることになりましたわその人も辛いですし現場の士気も下がります

それが、閣下のお叱りを受けたことで、その場限りのこととして笑い話で終わりになりました

ですからわたくしたち現場の人間は、あの時の関さんの行動に感謝しているんです

翔姉ちゃん色々と気遣っているんだなあ本当にデキる人なんだ

香月セキュリティ・サービスの社内での評価はとても高い

それに、関さんが間に入って下さるとどの部署に対しても公平な立場で判断して下さいますから各部門との軋轢も無いですし

一つの問題が、いつまでも尾を引いて、後々のトラブルの火種になることは無いんですよね

ああ、だから山岡が、引っかき回してしまった後の警備部は、関でないとまとまらないんだよ

谷沢チーフは、笑顔でそう言う

香月セキュリティ・サービスのどこかの部署からの昇格だと出身の部門を優遇するのでは無いかとか、逆に冷遇されるのではないかと社内で色々と疑心暗鬼になる人が出るだろうしかし、関は入社以来トップエリートで、長年、閣下の警護を担当してきたからな

そうですね閣下の専任警護人の中でも各部門との打ち合わせや、調整をするのは関さんのお仕事したから

だから、社内のあらゆる各部署の人たちとも、ほとんど面識があるし

どの部署にどんな人材がいるかそれぞれの社員の力関係や、得手不得手を、全て観察してきている

それで、関が警備部長に適任だと思ったんだしかし、かと言って閣下の専任警護人の仕事を今すぐ辞めさせるわけにもいかん当分は、兼職してもらうことにしたよ

大徳と張本は、警護人として極めて優秀だが社内の人間との調整はなあ

そうですねえここだけの話ですけれどわたくしも、あのお二人とお話するのはちょっと怖いです

悪い人たちじゃないことは、判っているんですけれどとにかく、メッチャメチャ怖いんですよね

近くに居るだけで殺気で背筋が凍りますもの

わたくしたちみたいに、ある程度、鍛錬した人間の方があの方たちの底抜けの恐ろしさをより肌で感じますし

確か、お二人とも結婚していらっしゃらないのよね

そうなのよだから、ホント、二人っきりで打ち合わせとかちょっと無理です

男性隊員でも若い子は、お二人に睨まれると震え上がるって言ってました

ええっと大徳さんと張本さん、同性愛なんだよな

だが、あいつの能力は段違いに凄いからな閣下の警護人は、あいつらでないと勤まらんだから、大徳たちと一般の社員の間を取り持つためにも関が必要なんだ

あたし、ずっと思っているんです関さんは、いつもあのお二人と居らして本当に凄いなあって

それも笑って話してますものね怖くないのかしら

ていうか何の話をしていらっしゃるのかしら

確か結構、ガールズ・トークな内容を話していると言ってたけど

そう言えば、調整力だけでなく関さんも、あのお二人並みにお強いっていう噂もありますが

滝さんの質問に、谷沢チーフは

実際、相当の腕前だよ関は格闘よりも射撃の方が巧いそれに、あいつは欧州の養成機関で、要人警護に付いて専門的に学んで来ているからななかなか卓越した成績だったんで、オレがスカウトしたんだ

チーフが直接っていう話本当だったんですね

ああ語学も優秀だし、留学時代の友人が外国の警察や要人警護組織に就職しているだから、関でないと任せられないことが多いんだ

やっぱり凄い方なんですねえ

感心する滝さんたち

とにかく優秀だよ彼女はあれで浮いた噂の一つも無いのが上司としては、ちょっと心配なんだがな

いや、関さん綺麗だし、男の子の中でも人気ありますけれど優秀過ぎちゃって、みんな踏み出せないみたいなんですよね

側に、大徳さんたちがいらっしゃいますし

ていうか、あのお二人のどちらかと、お付き合いすればいいのに

えー、それは無いわよっ関さんみたいな知性派の女性が

そうかしら知性派だから、肉体派に惹かれるんじゃない

いや、黙っていようオレは空気だ

あいつらには、そういう感覚は無いよあいつらは、本物のプロだからな現場に恋愛感情を持ち込んだりはしないよ

谷沢さんは部下たちには、こう言っているけれど

大徳さんと張本さんの実態は、知っているんだよな

翔姉ちゃんの話だと大徳さんと張本さんは、若い男の子の部下の取り合いとかしているらしいし

それも、まあジェラシー丸出しで

男同士の恋愛感情だだ漏れみたいなんですけれど

もちろん、そんなこと香月セキュリティ・サービスの一般隊員には言えないんだろうけれど

そうですよねえ関さんは、完璧な方ですわ

滝さんは、そう言う

あたし関さんの大ファンですから

こちらです、チーフ

案内の警備員が、ドアの前で立ち止まった

うん、ご苦労

谷沢チーフが、コンコンとノックする

誰か

部屋の中から、翔姉ちゃんの凛々しい声がした

谷沢だ様子を見に来たぞ

谷沢チーフがドアを開ける

部屋の中は暗い

本当は撮影スタジオの調整室らしい翔姉ちゃんの他に、数人の制服の男たちがいる

たくさんのテレビ画面がさっきのコンクリートの城を色々な角度から映している

どうだ状況は

問題ありません全てスケジュール通りに、進行しています

翔姉ちゃんは、少し緊張気味で答えた

少し疲れている感じがする

そうか予備人員を2人連れてきたこの2人のことは、知っているだろう

滝さんたちが、前に出て敬礼する

ええありがとう、助かるわ滝さん玉城さん

2人に、ニコッと微笑む翔姉ちゃん

それからこいつも連れて来た

女性警護人2人の後ろからオレは顔を出す

あ来たよ

その瞬間、翔姉ちゃんは

ええ待ってたわよっ

恋する女の顔で、オレに微笑む

驚いている女性2人

谷沢チーフも

杉山くん、滝さんと玉城さんは、あなたの班に合流させるから

横に居た制服の警備員が、翔姉ちゃんに敬礼する

付いて来て下さい

眼が点になったまま滝さんたちは、男の警備員と共に部屋から出て行く

それでは、チーフこちらで現在の状況をご説明致します

女の顔から、警備部長の顔に戻った翔姉ちゃんを見て谷沢さんは、戸惑いながらも頷く

あなたは、廊下の向かいのお部屋に行ってお弁当が用意してあるから

え、翔姉ちゃん弁当

うちの社員に配った残りなんだけれど克子さんが、あなたのご飯を心配して、メールを送って下さったのよ

克子姉が

あこの腕時計

リューズを押すと、GPSで位置が判るとか言ってたけれど

そんなことをしなくても、克子姉たちはずっとオレの位置をチェックしているんだ

多分、メグたちには教えないで克子姉とミナホ姉さんあたりは、オレがグリーン山スタジオに向かったことに気付いている

そうだなちょっと、部外者の前ではできない話もある悪いが、お前は隣の部屋に行っていてくれ

谷沢チーフも、オレにそう言う

うん、判った向かいの部屋だね

スタッフルーム・3て書いてあるところよ

藤宮さんが居るけれど、気にしないでね

レイちゃんが

作戦前でちょっとナーバスになっているから、あんまり話し掛けたりしたらダメよ

そうだね、じゃあ行きます

時間になったら呼びに行くわ作戦は、このお部屋から観せてあげるからね

翔姉ちゃんは、そう言ってくれた

ええっとスタッフルーム・3だな

レイちゃんの声が沈んでいる

入るよレイちゃん

返事を待たずにオレはドアを開ける

昼間、克子姉が仕上げた凛々しい黒の制服を着て、椅子に座っていた

制帽は、被っていない

蛍光灯が一つだけの薄暗い部屋だった広さは6畳くらいか

折りたたみ式の会議机とパイプ椅子だけの殺風景な部屋

レイちゃん以外は誰もいない

本当に来てくれたのね

オレを見て、レイちゃんはそう言う

ごめんオレ、何の力にもなれないけれど

そうだオレは、来ただけだ

オレには、レイちゃんと一緒に闘ってあげるような能力は無い

ううん来てくれただけでも、嬉しい

レイちゃんは、頬を赤らめてそう言った

あお弁当とお茶、ここにあるから

机の上の弁当と、お茶のペットボトルを指差す

レイちゃんはもう食べたの

わたくしは作戦の前だから

レイちゃんの顔が、陰る

食べないのじゃあ、オレも後にするよ

お腹空かしている人の前で、1人だけ食事できないよ

気にしないで、後でちゃんと食べるから

克子姉がわざわざ心配して、翔姉ちゃんにメールしてくれたんだ

ちゃんと食べないとバチが当たる

レイちゃんどうしたの怖いの

うん、ちょっと怖い

2人だけの閉ざされた空間

レイちゃんの心が湿っている

恭子さんがどれだけ強いかよく判っているし

シザーリオ・ヴァイオラとの闘い以降、レイちゃんは恭子さんたちとも生活していた

あの人は、半端じゃなく強い

気にすること無いよ別に殺し合いをするわけじゃないんだから

オレは、レイちゃんの手を取る

緊張するレイちゃん

これはショーだよ恭子さんが、シナリオを作ったレイちゃんは、そのショーの主役として思いっきり演技すればいいんだ

演技わたくしが主役

オレは、ニコッと笑って頷く

そうだよオレは、主役のレイちゃんを観に来たんだからさ

あの子を見守るためじゃないの

雪乃は、オレの家族じゃないから

オレの心は、もうサッパリ片付いている

未練は無い

でも、レイちゃんと翔姉ちゃんはオレの大切な家族だ大好きだ愛しているんだよ

レイちゃんがオレを見る

みんなの家族でいられるのは、とても素敵なことだけど

だけど何

わたくしみたいな女があそこに居て、いいのかしらって

いいんだよみんな、レイちゃんが大好きなんだから

レイちゃんはどうなのオレたちの、家族になるのは嫌

嫌じゃないけれど

じゃあ、後は勇気の問題だよ

レイちゃんが、ハッとしてオレを見る

レイちゃん自身が、勇気を振り絞らないとここから先は、どうすることもできないよ

オレたちは強制はしない

自分の人生は、自分で決めるしかないんだ

でも、オレは心配していないよレイちゃんが勇気のある人だってこと、知っているから

レイちゃんがオレを見ている

美智さんが、シザーリオ・ヴァイオラとの対決の前に、あなたに処女を捧げた意味がやっと判ったわ

あれが、美智ちゃんの勇気だったのね身も心も、あなたの女になって闘いの場に向かった

あの時地下の緊急避難室から、シザーリオ・ヴァイオラとの決戦のために外に出るのに、オレたちは死を覚悟していた

だからわたくしも、今ここであなたに純潔を捧げるべきなんだろうけれど

わたくしには美智ちゃんほど、覚悟が無いのよ破瓜の痛みに耐えた後で、闘い切る自信が

美智は、処女喪失してもすぐに戦闘ができたけれど

レイちゃんには、その自信が無い

時間ももう無いし

すでに、香月セキュリティ・サービスの部隊は現場にスタンバイしている

レイちゃんも、そろそろ移動しないといけない

いいんじゃないかなそのままで

身体の関係が全てじゃないから大事なのは、いつだって心だよ

レイちゃん迷いを振り切れ

オレはねいや、オレだって自分に自信なんか、全然無いんだよでも、あいつらの前で、そんなことは言えないだろオレが心配そうな顔をしていたらみんなが迷っちゃうもの

オレは男だからやせ我慢だよオレは、家族の中のたった1人の男なんだから

レイちゃんは何になりたいのオレたちの家族の中でどういう役割に付きたいのさ

役割

うん今みたいに、ずっと家族の妹のままでいたのならそれでもいいよオレは、レイちゃんのアニキとして一生、レイちゃんを守るから

あたしが妹

そうだよオレたちは、レイちゃんが家族の庇護を求めているって気付いてからずっと妹として、レイちゃんを見ている

だから、レイちゃんはレイちゃんなんだ

でもわたくしは、あなたよりも年上で

年とか関係無いんだよレイちゃんが、何を欲しがっているかだよオレは、レイちゃんがそうして欲しいと思うとおりにしてあげたいんだから

家族だからさオレたちは、とっくの昔に家族だろ

レイちゃんの眼が、潤む

レイちゃんもう一度、家族の顔を思い出して

恭子さんミナホ姉さん翔姉ちゃん克子姉渚マルゴさん

オレは年長組から、名前を言っていく

寧みすずメグイーディ美智瑠璃子

マナアニエス真緒ちゃん

一息吐いて

レイちゃんはこの家族の何になりたい

レイちゃんは言った

あたしはやっぱりお姉ちゃんになりたい

家族の誰にとってのお姉ちゃん

オレは今度は、下から名前を挙げる

真緒ちゃんのお姉さん

アニエスも

あ、さっきは忘れていた

ここにオレが入る

レイちゃんが口籠もる

あなたは弟っていう気がしないわ

じゃあ、オレの上のみすずは

みすず様も何となく年上な気がする

ずっと上な気がする

よし判った

レイちゃんの家族の中の精神年齢はオレと同じ16歳だ

判ったじゃあ、レイちゃんはオレとタメだ

いいんだよそう思って

それじゃあさ年下の妹たちに対して、恥ずかしくないレイちゃんになろう

レイちゃんの眼が輝く

真緒ちゃんや、アニエスや、マナや、瑠璃子や、美智たちにとって格好いいお姉さんにならないとねそういう風に、頭を切り換えて

あいつらを失望させたくは無いだろ芝居でいい、演技でいい、やせ我慢でいいからみんな、レイちゃんの活躍を楽しみにしているんだからな

オレはレイちゃんを抱きしめる

なれるよレイちゃんなら

オレは、麗華の唇にキスをした

あ、ありがとうあの、どうして

レイちゃんが、オレに言う

どうしても、いつもわたくしを元気付けてくれるの今夜もここまで来てくれたこんな弱い、わたくしのために

レイちゃんとの会話の中でオレは、その答えを見つけていた

オレだってレイちゃんにとって、格好いい男になりたいから

そうだだから

オレは、ヘリに乗ってここまで来た

レイちゃんを絶対に失望させたくないからだから、やせ我慢でも這ってでも来るさレイちゃんのために

いや、レイちゃんだけでない

翔姉ちゃんや

時間が間に合う手段があるのならオレは、きっとグリーン山スタジオへ向かうと信じてくれた、みすずや瑠璃子

黙って送り出してくれた、ミナホ姉さんや克子姉たちそれに美智

みんなを失望させたくないから

オレは、みんながオレの家族が信じてくれているオレにならないといけないんだいやなるしかないんだもう

オレはそういう人生を選択したんだから

うん判ったわたくしもなります

自分からオレの唇にキスをする

そうだよねみんなが家族が、わたくしに期待してくれているんだものねここで闘わないと、みんなに申し訳無いわ

ポンと、自分の頭を両手で叩く

切り替えるわ妹たちに誇れるわたくしになります

顔に、スーッと生気が戻る

眼に、闘う意志が

そして立ち上がり窓を見る

窓ガラスに黒い制服に身を包んだ、凛とした女戦士が映っている

レイちゃんは制帽を取って、被る

これがわたくし家族が、凛として闘って来いと送り出してくれた姿

レイちゃんの立ち姿は格好良い

自分がどうしたらいいのか、判ったわわたくしは

横に置いてあった撲殺ステッキを握る

これしかないんだから

そして、ニコッと笑ってオレを見る

あなたのこと我が君って呼ぶわよ

だって、その方がわたくしらしいじゃない

そして、オレの手にを取りキスをする

あなたに、永遠の忠誠を誓います

2次元の表現規制と、警察の某社へのガサ入れが問題になっています

何か、その社が今月発行したエロマンガが、全て局部が白抜きになっていたとか

まあ80年代と90年代にも規制はあったんですけれどね

最近、私はエロマンガを余り買わなくなりました

というのはどういうわけだか極端な爆乳(あるいは奇乳)か、極端なつるぺたロリかどっちかの作品ばかり、発売されているような気がします

あの骨格のしっかりとした、普通のおっぱいのエロマンガは、もう少数派なのでしょうか

局部白抜きより、そっちの方が私には深刻です

556.風雲、たかし城 (その2)

我が君は決して、人を否定しないのですねいつも、わたくしたちがどうしてそう生きているのかを見据えてその上で、どう進んだら良いのかを一緒に考えて下さる

だからあなたと一緒に居ると、わたくしたちは元気になるんです

コンコンと、ドアがノックされる

麗華、そろそろスタンバイして

翔姉ちゃんの声だ

レイちゃんは、窓ガラスを鏡にして制服と制帽を正す

そして、撲殺ステッキを構えオレに微笑む

どうですか我が君

とっても綺麗だよ凛としてて格好良いレイちゃん

では、皆様のご期待に応えられるよう精一杯、闘って参ります

そしてドアを開く

翔姉ちゃんと谷沢チーフが待っていた

レイちゃんと一緒に、オレも廊下へ出る

何だ、藤宮また随分、派手な衣装だな

レイちゃんの黒い制服を見て、谷沢チーフはそう言う

まるでヒーローショーみたいだぞ

はい、わたくしヒーローになります

会社のために道化をやる覚悟ができているってことか

谷沢チーフが、苦い顔をしてそう言う

オレが藤宮を採用したのはこういう、イロモノの仕事をさせるためじゃなかったんだがなお前はちゃんと真面目にやれば、正統派の警護人になれる人材だ

レイちゃんは剣道家としては、かなりの実績を残していた

前の男装もそうだがどうして、お前は道化の路線へ行っちまうんだ

レイちゃんはニコッと上司に微笑む

男装はわたくしの個人的な趣味でしかありませんでしたしかし、この黒い制服は違いますこれは、覚悟の表れです

どう覚悟したんだ

わたくしに期待して下さっている人たちに応えるため絶対に裏切らないために

レイちゃんは、オレと翔姉ちゃんを見る

谷沢チーフヒーローと道化は、違いますわたくしは、ヒーローになりますいえ、ヒーローでなくてはならないんです

オレには道化とヒーローの違いってのは、よく判らん

それは谷沢さんが、裏の仕事縁の下の力持ちの役割ばっかりやってきたからですよ

よその人たちから見えない場所でみんなを支える仕事は、素晴らしいと思いますでもレイちゃんは、みんなが見ているところでこそ輝くんです

驚く谷沢チーフ

ああ今はもう、みすず様たちも、みんなレイちゃんて呼んでますわ麗華は、すっかりみんなの人気者ですから

翔姉ちゃんが、フォローしてくれる

ああここんところ、みすず様たちの身辺警護に付いてたからな

はい、オレたちにとってレイちゃんは、ヒーローです撲殺ステッキで、オレたちを悪い人たちから守ってくれる強いお姉さんですから

我が君たちの期待を裏切るわけには参りませんわ

レイちゃんは、嬉しそうに言った

我が君

再び驚く谷沢チーフ

みすず様のお相手ですからみすず様がわたくしの主君である様に、この方は我が君です香月家の皆様と同じ忠誠を誓っております

レイちゃん自身が、そう言った

そういうことなら判るがしかし、子供同士の恋愛なんて、どうなるか判らないぞこいつのことだって、みすず様がすぐに飽きられるかもしれないし

谷沢チーフは、警護役として香月家の人たちの恋愛も見てきている

まあ閣下が、お認めになられたんだから今後は香月グループの中で、何かしらの仕事をするようになるんだろうが

オレのことは、みすずの相手というよりジッちゃんの私塾の新興勢力に加わる人材ぐらいに思っているんだな

いいえみすず様は、この方と添い遂げられますよ

翔姉ちゃんが笑顔で、そう言った

わたくしには、判ります

レイちゃんも谷沢チーフにそう言う

あたしたち、女ですからだから判るんですそうよね、麗華

はい翔お姉様

笑い合う2人を見て谷沢チーフは

まあいい現場へ向かえ、藤宮お前のヒーロー姿、見せてもらおうじゃないか

藤宮、出動致します

敬礼するレイちゃん

ゾクッとするほど凛々しい

オレにそう言うと通路を出口の方へ向かって行く

胸を張って、力強い歩みの後ろ姿で

頑張れレイちゃん

レイちゃんは振り向かずに、軽く片手を上げてオレに応えてくれた

あなたもお弁当を持って、オペレーション・ルームにいらっしゃい麗華のスタンバイで、作戦開始になるから

翔姉ちゃんが、オレに言った

オレは元のスタッフルームに戻って、弁当とお茶を探す

あ、この段ボールの中か

これ街の弁当屋だと、700円ぐらいの弁当だなハンバーグも入っている

谷沢さんも召し上がります

翔姉ちゃんの言葉に、谷沢チーフは

ああ、もらっておくか

オレは、谷沢チーフの分の弁当とお茶をを取って手渡した

ふんお前も、ホテルに居たらパーティの飯が食えたのにな

それは、谷沢さんも同じでしょ

バカ言え、護衛が仕事中に食事できるか

谷沢さんは、ふんと鼻を鳴らす

あっちに居たって、オレはホテルの控え室で同じ様な弁当を食うだけさ

谷沢さんは、どんな現場でもあたしたち一般の警護員と同じお弁当を食べられるのよ

しょうがないだろ一般隊員が何を食っているか、ちゃんとチェックしておかないとな

谷沢チーフは、言う

食事ってのは、現場の士気を保つのに大切なものだからなオレも若い頃、会社から出された飯がマズくて現場でやる気をなくしたことがある

え、香月セキュリティ・サービスって、必ず、どの現場でも食事が出るんですか

オレの問いに、谷沢さんは

当たり前だろうちはVIP専用の警護会社だぞ飯の時間とかに、制服姿でコンビニとかに行かれたら、社のイメージが悪くなる飲食は全て、指定の待機所や控え室で食うように徹底指導している

確かに、警護の人がコンビニの前でパンとか食べてたら高級なイメージは無くなるな

特に一般隊員用の弁当がマズイのに、上司だけ警護対象と美味いものを食ってたりすると信頼関係が崩れるからな関もこれからは、なるべく、一般隊員と一緒に弁当を食うようにしろ同じものを食っているってのが大切なんだからな

肝に銘じますところで、チーフ

仕出しのお弁当屋さんは、変えても良いですか

今、使っている会社よりもっと美味しくて、安い会社を探そうと思います

いえさっき、経理の子に聞いたんですけれど今の会社、山岡さんにリベートを払ってたみたいなんです

呆れる谷沢チーフ

もうちょっとヘルシーで、日ごとにメニューも変えられる会社の方が良いと思うんです

そういやいつも似たような弁当だな

谷沢チーフは、しげしげと弁当を見る

関に任すよオレは、昔の人間だから365日、同じ弁当でも気にならんが、今の若い奴らは違うだろうしな

はい幾つかの会社に見積もりを出させます

そんな会話をしながらオペレーションルームの方へ向かう

通路の向こうの階段数人の列が下りていく

香月セキュリティ・サービスの制服隊員たちの中に

黒いガウンを着た、雪乃がいる

雪乃とオレは10メートルぐらい離れている

おい、雪乃っ

オレの声に、雪乃は階段の途中で驚いて立ち止まる

頑張って来いよ

オレは、雪乃には近付かない

警護員たちに囲まれた雪乃もオレの方に来ることは無い

あんたに言われなくても頑張るわよっ

雪乃はオレに向かって叫んだ

ていうか何しに来たのよっあんたっ

レイちゃんの応援だよっ

素直に答えた

レイちゃんは、応援する人がいた方がより頑張れるけれど雪乃は、一人でも頑張るだろ

だから別に、応援する必要は無い

お前はどこに行ったって、誰の前だってどんな時だって、雪乃のまんまなんだからさっ

雪乃はハッとして、オレを見て

そうねっあたしはあんたの応援なんか必要とはしていないわよっそんなの、別にさっ

なぜか、廊下で怒鳴り合っているオレたち

変な光景だなこりゃ

でも、まあ頑張れ頑張って来いよ

オレは、雪乃にそう言うそう言ってやるべきだと思った

この場で、雪乃に頑張れって言ってやれるのはオレ一人だと思うから

まったくあんたは、いつだって勝手なことばっかり言ってるんだからっ

雪乃に女性の警護員が言う

時間が無いですから行きますよ

判ってるわよっじゃあねっ

ああ、またな雪乃っ

また

どうせ、どっかでまた会うよ多分

雪乃はオレを見て

ほいじゃあ、また雪乃っ

うるさいわよっこのバカッッ

相変わらずオレをバカと罵って雪乃は、通路を消えて行った

アレは、白坂創介の娘だろお前は、結局、あの娘とどういう関係なんだ

谷沢チーフは黒い森の白坂創介への復讐りことは、何となく知っているだろう

しかし、オレと雪乃の関係の詳細は知らない

同じ高校のクラスメイトなんですよ

オレは、谷沢チーフに言った

友達なんです

それでもオレは雪乃と友達になりたいと、思っている

オペレーションルームの中で5分で食事をした

いや、谷沢さんが眼の前でもの凄い早さで食べるから、オレも釣られて

飯は5分以内それが警護役の鉄則だ

ペットボトルのお茶をゴクゴク飲みながら谷沢チーフは言う

白坂雪乃、スタンバイできました

藤宮さんと、各部隊、スタンバイオーケイです

翔姉ちゃんの部下が、報告する

オペレーションルームの各モニターには、野外スタジオのコンクリートの城の映像が様々な角度から映し出されている

マスコミの皆さんは

翔姉ちゃんが、尋ねる

誘導終わっています

各社個別のカメラの持ち込みは、禁止しましたうちのカメラからの映像だけを放送することになっていますカメラの切り替えも、この部屋から操作しますおかしな物が映らないように

谷沢チーフに報告する翔姉ちゃん

そうか色んなマスコミがカメラを持ち込んだら、こちらにとって不利なことも撮られてしまうかもしれない

特に、後から侵攻してくる恭子さんたちとの繋がりがバレてはいけない

だから、撮影カメラは全て香月セキュリティ・サービスの管理下に置いたんだ

放送は、白坂家のテレビ局とインターネット配信で途中でコマーシャル中断の無い、ノーカット完全生中継です

白坂家は白坂創介の件で、ジッちゃんに負い目がある

香月セキュリティ・サービスの要求は、全て受け入れたのだろう

うんいいだろうもう、まもなくだな

谷沢チーフが、部屋の壁の時計を見る

はい1分前です

1分前、スタンバイ

各自、持ち場に付け

第4小隊東側、注意してあの人が来るとしたら、そっち側のはずだから

翔姉ちゃんがインカムに向かって、そう言う

第6小隊南側の監視いいわね

30秒前

30秒前です

時計の針がカチカチと進んでいく

15秒前

10、9、8、7、6、5、4,3、2、1

えー、こちら東京郊外にあります、野外スタジオです

モニターの中に

白坂家のテレビ局の初老のアナウンサーが、カメラに向かって話している

夜のニュースショーを仕切っている、有名なアナウンサーだ

確か岡田アナだっけ

本日は、放送の予定を変更致しまして緊急報道番組、白坂雪乃氏記者会見をお送り致します

カメラが、切り替わる

広大な野外スタジオの中のコンクリートの巨大な城

周囲からライトで照らされた、その一番上に岡田アナウンサーが立っている

ああ、そう言えばこのアナウンサー、頭がカツラだっていう疑惑があったなあ

そんなことをあと、思い出す

そのコンクリートの城の映像白い巨大な壁面に、タイトルの大きな文字が合成されて被さる

チャララー、チャララララーという、不気味なBGMとともに

緊急報道番組白坂雪乃、ここにあり

何だ、このタイトルはていうか、この音楽昔のUFO特番で使ってたやつじゃないか

谷沢チーフが、呟く

さあテレビ局のセンスじゃないですか

翔姉ちゃんは、しらばくれた

続いて、別のスーパーインポーズが

白坂雪乃、大いに語る涙とペーソスの告白独占・女の45分

うん恭子さんだな

このセンスはキョーコ・メッサーだ、絶対

えー、わたくしどものテレビ局は前会長が、親族である白坂創介氏を庇い放送局としてはあるまじき偏った放送をしてしまいましたこの場をお借り致して、視聴者の皆様に深くお詫び致します大変、申し訳ございませんでした

深々と頭を下げる岡田アナ

パサッとカツラが地面に落ちる

お見苦しい物をご覧に入れております

顔を上げた岡田アナの頭はつるピカだった

ああ、白坂家のテレビ局が、香月家の要求は何でも聞き入れるっていうのはこういうことか

谷沢チーフも、呆然としている

本日は今回の事件の途中から、犯罪組織に誘拐され行方不明になっていた、白坂創介氏の娘さん白坂雪乃さんをお迎えして、お話を伺いたいと思います

そして、岡田アナはカツラを拾わないまま、後ろを振り向く

かつてバラエティ番組で使われたコンクリートの城の裏側は

階段状に、幾つもの段が造られていた

その上から2段目1番広い段の上に、特設の記者会見場が設けられていた

たくさん並べられた椅子には、すでに各マスコミの記者たちが並んで居る

ああ、よく見ると城の下には、各マスコミの車が所狭しと乱雑に停められている

おう、どうなっているんだ

早く始めろよ

こっちはずっと待たされているんだぞっ

ていうか、独占中継ってのはどういうことだよっ

こんな夜風の吹く、コンクリートの城の上に連れてこられて記者の中には、すっかり不機嫌になっている人も多い

えー、皆様、色々あると思いますがどうか、お許し下さい

岡田アナが、毛の無い頭を下げる

私もツライんです

岡田アナの異様なテンションに押されて記者たちは、黙る

それでは白坂雪乃さんに登場していただきます

岡田アナが、城の最上段を指差す

娘十六、番茶に出鼻、花は野に咲け涙花今、スポットライトを浴びて、燦然と輝くそうです、あなたが白坂雪乃っ白坂雪乃あんたは女だっ

まるで演歌番組かプロレスのような口上を叫ぶ

白坂雪乃っリフト・アップ

するとサイレンが、ウウウーッと鳴り響き

赤いランプが、ペカペカ光る

雪乃がコンクリートの城の中から、油圧ジャッキでグググググーッと迫り上がって来るぅぅ

もの凄く、不機嫌そうな雪乃

雪乃は極小ビキニの水着を着ただけだった

ほとんど、素っ裸だ

っていか

この水着の素材は透けている

ほとんど局部しか隠していない極小の水着だけど乳首が透けて見えている

隠している意味が全然無い

というかかえって、エロエロな格好になっている

ガタンッ

せり上がりのリフトが、停止する

と雪乃は

何なのよ、何なのよ、何なのよこれっ

全世界に向かって、喚く

まったくバカにしてるわよっあんたたち全員、バカなんじゃないのっ

記者たちは完全に絶句している

今、この放送を観ている全国の視聴者もそうだろう

えー、白坂雪乃さんどうぞ、こちらへお出で下さい

岡田アナが、雪乃に言った

判ったわよっ行けばいいんでしょっ

雪乃が、最上段から階段を下りてくる

雪乃の胸が、ぷるぷる揺れている

あんまり動くと具がはみ出すぞ

それぐらい、小さな水着が雪乃の肉体に食い込んでいる

あたしの席、ここ

ていうかお前の記者会見だから

記者席に向き合う席は、一つしか無い

はいどうぞ、お座り下さい

岡田アナに言われて雪乃は座る

普通の記者会見みたいに、前に机が無いから

雪乃の裸身は、丸見えになっている

白坂雪乃よていうか、あんたたちはもう、みんなあたしのこと、知っているんでしょ

雪乃は、記者たちをジロッと睨む

あたしが、犯されている映像とかもインターネットとかに拡散しちゃってるみたいだしあんたたちだって観たんでしょ

記者たちは答えない

どうせ、観たんでしょまだ観てないって人だけ、手を上げなさいよっ今すぐ

すっかり硬直した記者たちは、誰も手を上げない

ほーら、みんな観ているのよっいやらしいあんたたち、サイテイよねっ人間としてっ

岡田アナが、何とか話をしようとするが

何よっあんただって観てるんでしょっあたしの裸っ

岡田アナの顔が、固まる

やっぱりみんなサイテイよあんたたち全員、豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえばいいのよっ

雪乃は、荒ぶるっ

あたしは処女だったのよっヴァージンよまだ16歳なんだからっ好きな人だっていたのよっなのにさっパパが悪い人だからって、何であたしが監禁されてレイプされなきゃいけないのよっしかも、その姿を撮影されて世間に公開されてふざけんじゃないわよってのっ

あ、あの白坂さん

一人の記者が、一か八か雪乃に声を掛ける

何よ、あんただって興味本位で観たんでしょこのスケベジジィていうか、何でこの記者会見、男しかいないのよっ

そ、それは男の記者でないと会見に参加させないって

あたしは、そんなの知らないわよっ

雪乃の怒りは、治まらない

ていうかさあんた芸能記者じゃないっそっちの、あんたなんてサンジャ*ファミリーでしょっあたし、知っているんだからねっ

いつもご視聴、ありがとうございます

そういうことを言ってんじゃないわよっどうして、あたしの記者会見に芸能記者が来るのよっあんたたち、頭がどうかしちゃっているんじゃないのっ

雪乃の言葉に、記者の1人が

いや、白坂家はマスコミの会社を支配しているわけですしあなたのお父さんだって、広告代理店の

テレビ局とか新聞社をやってたのは、あたしの大叔父様でしょ判るお爺ちゃんの兄妹よっあたしの家とは、別に関係無いじゃないっパパが広告代理店に勤めてたってそれが何だってのよあたしは芸能界とか、関係無いじゃないっ

しかし、白坂創介さんの被害にあったと思われる人の中には、芸能人も多く含まれているわけですから

バーカ死んじゃいなさいよ、このバカッ

パパが罪を犯したからって、あたしがその罪を背負わないといけないのっあんたたちさああたしを誘拐して、レイプして、映像をバラ撒いた連中と同じよ何も変わらないじゃない

いや、我々は、国民の知る権利のために

あたしの処女喪失レイプビデオを観るのも、国民の知る権利なわけ

あたしは、ただの女子高生よ女子高生だったのよ

怒りの顔が、カメラを睨む

それがどうして、こんな目に遭わされるのよっ

それを私たちも、是非知りたいと

それで、わざわざ集まったんじゃないか

そうだこれは、あんたの記者会見だろ

君が話したいって言うから

うん、オレたちはそれで、話を聞きに来ただけだぞ

何で、いきなり罵倒されないといけないんだ

記者たちもエキサイトしてくる

あたしが話したいですって

雪乃が、苦笑する

そんなわけないでしょあたしは

ギッと睨む

今だって、無理矢理ここに来させられているのよっこんなバカみたいな格好をさせられてさっ

こんなバカみたいな場所で、こんなバカばっかりに囲まれてあんたたち、おかしいと思わないのこの状況異常なことが起こっているって、何で判らないのよ

岡田アナが

えー、わたくしのこの頭も指示通りでございます大変、お見苦しいものをお見せしております申し訳ございません

ざわつく記者席

あたしたちは全員、あいつらの支配下にあるのよっ

雪乃は、面白いなあ

たかし城の闘いが、続きます

557.風雲、たかし城 (その3)

あの東西新聞の西川です

オレたちの眺めているモニター画面の中で

記者席の中から1人の背広の男が、手を挙げた

極小水着しか着ていない雪乃が、ギロッと睨む

東京郊外、広大な野外スタジオ中のコンクリートの城

ライトアップされた白い廃墟の上で、奇妙な記者会見が続く

5月の夜の風が、雪乃の髪をなびかせている

さっきから、あなたたちの言っていることがよく判らないのですが

判らない方が、幸せだと思うわよ

あたしたちは全員巨大な力の持ち主に、オモチャにされてるってことだから

西川記者は

それはあなたのお父さんが、関係していたという暴力組織のことですか

雪乃は、プッと噴き出す

あんた、バカじゃないのっそんなレベルの話、誰もしていないわよっ

そして記者たちを見渡し

あのさこんなテレビ局の夜の一番良い時間のさ、しかも通常の放送の予定のある枠を突然、放送予定を変更させて、緊急報道番組とか押し込んでるのよっそいつらはさっこんなのその辺の暴力団とかができることじゃないでしょ

雪乃は、ニヤリと笑う

あたしのパパは広告代理店だから、何となく判るんだけれどこれって、元の放送枠を買ってた企業とか広告代理店に対して、とんでもなく頭を下げなきゃできないことなのよねだって、この時間スポンサー無しの完全生放送なんだからコマーシャル無しでさ違約金とかで済む問題じゃないでしょ放送局の信頼に関わる問題よね

それはこのテレビ局は、白坂家の支配下にあるわけだから説明責任を果たすためにやっていることなんじゃないのか

記者の1人が、雪乃に言う

あんた、頭悪すぎあたしがテレビ局の社長なら、そんなの日曜日の早朝とかの誰もテレビを観ていない時間に放送するわよ普通はそうでしょこんなこと、大々的にやらないわよ今は死んだフリして、世間が事件を忘れてくれるのを待った方がいいものだいたい、白坂家のトップだって、守次伯父さんが失脚して別の人に変わってるんでしょ新しい経営陣が、スポンサーの会社に迷惑を掛けてまで、こんなゴリ押しをするはずがないじゃないちょっと考えれば、判ることよっ

じゃあ、どういうことなんだよっ

キレ気味に、記者が雪乃に言う

判んないのあんた、どこの会社の人

毎朝新聞の黒田だ

ふうんじゃあ、教えてあげる今、あたしたちの会話が全国放送されているのもあいつらが、テレビ局に圧力を掛けたからよ白坂家に脅しが掛けられるくらい、バカでかい力を持っているのよあいつらはさ

記者たちは黙り込む

あんたたちだって突然、取材に行けって、会社の上の人間から命じられて、こんな東京の外れのスタジオまで来たんでしょおかしいと思わないわけ

記者たちを挑発する雪乃

あんたたちの会社にも圧力は掛かっているはずよ、あいつらから

記者の1人が、立ち上がる

馬鹿なことを言うな我々は、報道機関の人間だぞっ

そうだ、どんな圧力にも屈することはないっマスコミ人としての良心というものがあるぞっ

そうですとも我々がここに来たのは、取材することが仕事だからです

そうだ記者が取材に来るのは、当たり前じゃないか

君の言っていることは、ナンセンスだっ

だいたいな、白坂創介の一連の事件が、今、国内でどれだけ話題になっているかあんた、判っているのかっ

雪乃は、平然と

そんなの知るはずないでしょだって、あたしはこのゴールデンウィークは、ほとんどずっと、あいつらに捕まってレイプされてたんだから

雪乃の眼に、クワッと涙が溜まる

そうよっあたしは、ひたすらレイプされてたのよっテレビも新聞もネットも観られなかったわよそんな余裕、あるわけないじゃないっ

真っ正面から記者たちに言う

16歳の少女の涙に、記者たちは戸惑う

いやあの我々も、ちょっと強く言いすぎたかもしれないが

でもね君のお父さんがしでかしたことで、世間は大騒ぎなんだよ

そうだよ何としても事件の全貌を明らかにしなければ、国民は納得しないっ

ああ君には、もっと真面目に我々の質問に答える義務があるはすだだって、君は白坂創介の娘で事件の核心部分を知っているわけなんだろ

そうだよ話してくれなくちゃ

ペッと、唾を吐く雪乃

嫌よだいたいさあんたたちのヤジウマ根性に、何であたしが付き合ってあげなきゃいけないわけあたしは、被害者なのよっあんたたちみたいなクズ野郎どもに、喋りたいわけが無いじゃないっ

あからさまに示される敵意に記者たちも、ヒートアップする

しかしなあっ、君の父親は、日本の犯罪史に残るような大事件を起こしたんだぞっ

そうだっ我々は国民の知る権利を代弁して、ここにいるんだ

君には、話す義務があるっ

その通りっ

さっきから、あいつらが、あいつらがって言っているが君が言う、あいつらってのは、どいつらなのかねそして、そいつらに君は何をされたのかねまずは、そこから具体的に説明しなさいっ

そうだもっと判りやすいように、頭から時系列に沿って詳細に話しなさい

うん我々報道人には、事実を視聴者に伝える責任があるんだ

呆れ顔の雪乃

ハン知る権利、事実を伝える責任ねじゃあ、教えてあげるわっ

雪乃は、憎しみの炎を燃やしていく

あたしは16歳の高校1年生で誘拐されて、レイプされて、ロストヴァージンしましたそれから何十回レイプされたか、自分でも判らないわよ多分、妊娠しているわていうか、確実にあたしをレイプした男の子供をね

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