美智にとっても、イーディにとっても

ダダドムゥおじ様の強襲は、脅威では無かった

落ち着いて闘えば、確実に撃退できる相手だった

あの遠藤の乗ってきた街宣車から、ダダドムゥおじ様が降りて来たのを見て

こりゃ、ヤバいと焦ったのはオレだけだ

ダダドムゥおじ様の登場は、オレをビビらせるためなんだな

オレに精神的なプレッシャーを掛けるための

それなら遠藤がやって来たこと自体、オレを標的にしている

オレの心に、揺さぶりを掛けるための

オレは天井に向かって、話し掛けた

聞いているんだろ姉さん

ミナホ姉さんは、もう京都から帰って来ている

ミナホ姉さんの帰宅を待って、克子姉が学校へ来たのだから

だったらお屋敷からオレたちの様子を観ているはずだ

何かしらどうかしたの

遠藤を、あんな車に乗せて連れてきたのはミナホ姉さんだよね

別にあたしが、あの街宣車を運転していたわけじゃないわよ

じゃなくて指示をしたのは、ミナホ姉さんでしょ計画の立案をしたのはダダドムゥおじ様を雇ったのも

オレにはそう思える

ミナホ姉さんは、あっさりと答えた

ちなみに車の運転は、ネコさんにお願いしたわ色々な手配もね遠藤くんを騙すための仕込みも、あの人にやってもらったわ

ネコさんは工藤父の仲間のフリー警護人

あたしはほら京都に行ってたから、細かいことまで自分でやるわけにはいかなかったのよ

岩倉さんは

オレは岩倉さんの関与を疑っていた

あの子には臨時でお客を紹介して、売春させているわあたしの計画の邪魔をしないようにね

え黒い森は、まだ再開していないのに

知り合いの売春組織に、幸代の仕事を融通して貰っているのよ幸代には、時々、ガス抜きが必要だから5月の時みたいなことは、あたしももう嫌だから

あなたには言ってなかったけれどごめんなさいね

岩倉さんは今、この校内には居ないんだ

だけどさミナホ姉さん、なぜ

どうしてオレたちに内緒で、こんなことを

そろそろ次の段階へ進むべき頃合いでしょ

次の段階

あたしたちの家族が形成されてそろそろ4ヶ月よねあなたが、校内でパンを売るようになってもうすぐ1ヶ月

あたしとしては、本当はもう少し余裕をあげたかったんだけど

余裕が無い

それは京都でのできごとと関係があるのか

普通の会社でも1ヶ月の試用期間があるわ少し早いけれど一回、ここで現在の自分を顧みる機会を持って欲しかったのよ

1ヶ月の試用期間

ああ、克子姉が言ってた仕事を始めて1ヶ月で雰囲気が判るって

そうよちょうど1ヶ月では無いけれどあなたも実際にパンを作って、学校で売るようになってそろそろ色んなことが見えてきたでしょ

多分、ミナホ姉さんも聞いていたと思うけれどさっき、結構、反省したよオレただパンを作って売ることだけにいっぱいいっぱいになってて商売として成り立たせるための努力とか、少しも考えていなかった

仕方ないわよまた始めたばかりなんだから

でも、オレ何でもかんでも、ただ克子姉の言う通りにやってただけで店をやるってこと、商売をするってことについて、何も判って無くてその上、克子姉もまだ商売に不慣れで、物凄く不安を感じてたってこと、全然判ってあげられなくって

オレはどうしょもなくダメだった

でも、今は判ったんでしょじゃあ、それでいいじゃない

だけど、ミナホ姉さんオレはさ、そういう自分が情けないんだよだって、オレ、自分の眼の前のことしか見えてなかったんだよ眼の前にあることを何とかするだけで、精一杯でさこんなんじゃ、全然ダメじゃないかっ

ええそのことに気づけて良かったわね

ミナホ姉さんは優しい声でそう言った

ミナホ姉さんはもしかして、前から判っていたの

オレが、克子姉に依存しているだけで全然ダメだったってことを

もちろん判っていたわ

それならどうしてもっと早く教えてくれなかったの

あらこの段階で気づけたのなら、充分早い方なんだけれど

だってまだ試用期間の1ヶ月が終わったばかりよ

あなたも克子も取りあえず、1ヶ月やってみたからそれで、パンを作ったり、売ったりする生活に慣れてきたからだから、心に余裕が持てるようになって、色んなことに気づけるようになったんでしょ

もちろん、夏休みが終わった直後1ヶ月前の段階で、あたしがあなたたちに注意したらそれはそれで、商売として成功させるためには、その方がよっぽど手っ取り早いんでしょうけれどねでも、それでは、あなたたち自身の血肉にはならないわ

オレたちの血肉

やっぱり最初はあなたも克子も、スケジュール通りにパンを作って、売ることだけで精一杯よね克子だって、あなたに一つ一つパンの作り方を教えながら大量のパンを計画的に作らないといけないんだから、大変だったのよ

あたしがそこで、商売として成功させるためには、こうした方が良いとか、この方が捗る、お客様を掴むためには、こうした方が良いとか一つ一つ、その場で教えていくことはできたけれどでも、あなたたちは初めての経験でいっぱいいっぱいでしょ教えてあげても何でそうするべきなのかっていうことを考える余裕は無いわよねただただ、何も考えずにあたしの指示に従うだけになっちゃうでもそんなことでは、あなたたち自身の有益な経験にはならないわ

経験

自分でお店を経営していくのなら自分で考えて、自分で試してみてそして、失敗した経験、恥をかいた経験そういうマイナスの記憶をいっぱい重ねていかないとダメなのよよ誰かの指示に従うだけの従業員のままでいるのなら、そんな努力はムダだけどあなたたちは、自分のお店を持つのだから

克子姉の指示にただ従うだけだったオレは従業員根性だったと思う

作って売るパンの種類や値段まで克子姉に任せきりだったんだから

克子姉もオレの指導だけして、実際に店頭に立って自分の手でパンを売ることはしなかった

それは、高校を途中で辞めなくてはいけなかった克子姉のコンプレックスが原因だったのだけれど

でも、本当にこの学校の生徒たちにパンを売るのなら自ら、売り場に立って、お客さんたちの反応を感じないといけない

現場に立たないと、判らないことはいっぱいあるんだ

オレも克子姉も店をやっていくための努力が不足していた 経営者に成り切れていなかった考えが甘かった

こんなことで一々落ち込んでいてはダメよ世の中には、継続してやり続けてみてある程度の経験を積まないと理解できないことがたくさんあるんだから

1ヶ月で気づけたんだから、良かったのよそれよりあなた

どう1ヶ月やってみてこのまま、やれそうあなた、パン作りの仕事やっていかれそう

やるよだって、オレには、これしかないんだから

別にこれしかないなんてことはないのよ今のあなたは高校生活を普通に謳歌して、大学へ進んでゆっくり自分の将来を決めることだってできるのよ

いやもう決めたことだからオレはパン屋になる

そうそれが1ヶ月経過時点でのあなたの答えね

ミナホ姉さんは、オレの答えをそういう風に言った

まあ、いいわまた、時間が経てば変わっていくと思うから

変わらないよオレは

そうじゃあ、3ヶ月目にまた聞くわでも、とにかく、肉体的にツライとか、パンの仕事が自分に向いていないとかは感じていないのね

全然大丈夫だよ

むしろ、工房に籠もって黙々と作業することはオレに向いていると思う

売り子はダメだけど

とにかく焦らなくていいからねどんなことも一つ一つ、段階を踏んでいくしかないのよ

克子、来週からパンの製産を2倍にするという話だけど

そのことも聞いていたのか

この子の作業時間は今よりも増やしてはダメよ

オレの作業時間

いやでも、ミナホ姉さん作業時間を増やさないと、2倍の量なんて無理だよ

ダメよ今よりも作業時間を増やしたらあなたの生活はどうなっちゃうの高校生活を楽しむことも、家族と交流する時間もなくなってしまうわよ

でも今は、パン屋の方を軌道に乗せることが大事なわけだから

あなたのパン屋さんは、何のためのパン屋さんなの

何のため

あなた自身と、あなたの家族のためのものでしょ

オレ自身とオレの家族

あなたが一家の大黒柱で、あたしたち家族があなたのパン屋さんの売り上げだけに生活費を依存しているというのなら仕事に全身全霊を捧げるべきなんでしょうけれどでも、今のパン屋さんは、あくまでもあなたたちの勉強としてやっていることよパン屋さんの仕事だけに、のめり込んではダメよ

収益を上げることも大切だけどーそれで、あなたの高校生活や家庭生活を犠牲にしてしまうのは間違ってるわ

でも、オレが作業時間を増やさなかったら生産量を増やすことなんてできないだろ

そんなことないわよね克子

あなたたちの作業もっと効率的に、機械化を進められるはずよね

克子は、完全手作りのパンにこだわっているのは判っているけれどそれは、克子が正式に自分のお店を持ってからやればいいことじゃないかしらちゃんと、たくさんの従業員を雇って、大量生産できる体制を作ってから

ああ克子姉の目指している高級志向のお洒落なパンは

どっちみち、オレと克子姉の2人だけで大量生産するのは無理なんだ

今のあなたが売るべきなのは高校生の学生食堂で売っているパンなのよそれも、今より50円も値引きしたパンを作るためには機械化を進めるしかないことは判っているわよね

克子姉は、小さく頷いた

理想を曲げろと言っているわけではないのよ理想は、正式なお店を持ってからでいいこの子が卒業するまでの、残り2年半はあなたには、まず商売するということしっかり学んで欲しいのよまずお客様が求めているものを、確実に提供するということをそれができなければあなたが売りたい物を売り出すチャンスは得られないのよ

そうですわねもう一度、考えてみます

ええ、考えて試みなさい克子とも、3ヶ月目にもう一度話す機会を作ります多分それまでに、また今とは違う発見があるはずよ次の段階へ進むための

次の段階か

あなたたちのパン屋さんもそうだけどあたしたちの家族も、そろそろ次の段階へ進まないといけないわ

家族も次の段階に

ええ、そうこの4ヶ月はあたしたち家族が馴染むための時間だったのよ地固めね

馴染む地固め

だからあなたは本当に大変だったと思うけれど女の子たちは、とにかくみんな自由にさせていたのよ幾らでも、あなたに甘えられる状態に

オレにみんなが、甘えていた

みんなまだ家族になったばかりで、心の中に溜め込んだものがいっぱい残っていたからとにかく、吐き出させてあげないとね急に解放されたから解放されたことが嬉しいから、ちょっと浮かれてたでしょ、みんなちょっと良くない状態だったのよどの子も、みんなあなたに縋りまくっていたから

オレに縋っていた

いや、そんなことないよ

そのニブさがあなたの良いところなんだけれどね

どの子ともいっぱいセックスしたでしょ

うんしたよしたけどでも、それはオレもしたかったからだし

セックスが、心の解放の手段になっているのよだから、セックスばかりになってしまっていて

オレは別にツライと思ったことは無いんだけど

それはあなたが絶倫だからよでもそれでも、みんなもう少し落ち着いてくれた方が良いのよね

ミナホ姉さんの苦笑する声が聞こえる

でも、だからとって、変にあなたとのセックスを制しようとすると解放されたばかりの心を無理矢理抑え付けることになるしねとにかく、しばらくは様子を観るしかないと思っていたのよあなたの負担が限度を超えないように夏休みには、少数のグループに分かれて、それぞれに旅行に行くっていうこともやってみたし

あれもミナホ姉さんの計画か

でも、そろそろ4ヶ月だからねそろそろ、無制限な解放は止めた方が良いと思うのよ家族の形もまとまって来たしみんな、あなたに甘えっぱなしっていうのは、そろそろ卒業しないとね

これもまた段階を踏むということなのか

特に恵美あなたが一番酷いわこの4ヶ月間で、一番、彼に甘えて増長したわ我が儘放題な娘になっちゃったわね、あなた

あなたは学校生活では、彼を独占できたから周りの子たちも、あなたたちを婚約者として祝福してくれたしだから、甘えたい放題になっちゃったのよね

学校に居る時間は1日の3分の1

その時間はオレはメグの婚約者メグだけの男になっていた

その時間が、メグを増長させた

あたしそんな風ですか

ええちょっと問題だなって思ったから、この2学期からはあなたたちのクラスにイーディを送り込んだのよしかも、なるべくあなたが彼とベタベタできないように、間に割り込むようにお願いしておいたのよ

俯く恵美

まあ、今までのことはどうでもいいのよでも、もう今までと同じではいられないのよあたしたち次の段階へ進まないといけないんだから

ミナホ姉さん姉さんが少し慌て気味で、ことを急がせているのは京都のことが原因なの

そういうことよあたしもできれば、半年ぐらいは、この地固めのモラトリアム期間を続けてあげたかったんだけどもう無理よ

あたしたちは変わらないといけないわそういう段階に進むの進まないといけないのよ

だから昨日から、慌ただしく色んなことが起きた

現状を再確認してやり残していたことを一つ一つ処理しないといけないわ

だから、遠藤を連れてきたの

そうよあの子もあたしたちが処理するのを忘れていた子でしょ

雪乃はテレビ界で生きていくことで、世間を知って、物事を客観的に見る力を得ました

一方、吉田くんはこの4ヶ月を、家族の地固めに女たちを落ち着かせて、1人1人を馴染ませることだけに集中していました

だから家族ばかり見ていることになり少しニブくなっている

また、吉田くんにケアされた女たちの中にはイーディみたいに落ち着いた子も居るし、メグのように増長してしまった子もいます

でも、この4ヶ月のモラトリアム期間は、家族のためには必要な時間でした

その内向きだった時間がついに終わる

このエピソード2は、次の段階へと進む家族の様子を描いています

みんな今のまま、甘え合うことは許さなくなります

626.ステップ・アップ

まあ、遠藤くんのことはもういいでしょまさか、あなたが遠藤くん、真っ正面から向き合ってくれるとは思わなかったけれどでも、結果的には、アレが効いていたと思うわ

ミナホ姉さんはオレが、遠藤に好きに攻撃させてその攻撃を全て避けきったことを言っているらしい

あれで遠藤くんにも、通じたわこの4ヶ月で、彼も色々あって大変だったんだろうけれどあなたも、決して遊んでいたわけじゃないってことがね

高校に入学したばかりの頃を思い出しなさいあなた、人前に出て、あんなにハキハキ喋れる子だった

いやオレはどっちかっていうと、人と話すのは苦手だった

格闘術とかできた人とケンカしたりするのは、得意だった

オレはそういうのは、全然ダメだった

それなのに遠藤くんに、殴れるものなら、殴ってみろって宣言して一発も殴らせなかったのよね

凄かったわあたし、びっくりしたものあなたが、あんなに動けるなんてよく頑張ったわね

ミナホ姉さんは、そう言って褒めてくれるが

それはみんな、美智の指導のお陰だよ

オレはこの4ヶ月間、ずっと美智に工藤流古武術の基礎を習っている

現在、6級に認定してもらっている

イーディやマルゴさんもトレーニングしてくれているしオレが頑張ったんじゃないよみんなが、オレに教えてくれているんだから

みんなに協力してもらって少しだけ、身体が動けるようになっただけだ

オレが褒められるようなことでは無い

いいえあなたの力よあなたが、あなた自身の身体を鍛えているのよ他の人の協力があったとしても、あなた自身の意思でねあなたが頑張っているのよ褒められるべきことなのよ

はいご主人様は、本当に真面目にわたくしの指導に従って下さいますから

そうネDarlingは、絶対にトレーニングに手を抜かないネどんな時も、本気ネ嫌々やったりはしないノネ

美智とイーディが、そう言う

それは、だって必要なことだから、やっているわけだし真面目に教えてくれているんだから、真面目に頑張らないと

オレたちは犯罪組織だ

敵対する勢力に狙われることもある

家族を守るためには、オレも護身術ぐらいは身に付けておかないといけない

ホントあなたは、真面目で良い子ねちょっと鈍くてピント外れだけどそこが可愛いのよね

とにかくこの4ヶ月の鍛錬は、成果を出し始めているわ遠藤くんには、それが良く判ったはずよあの子はクラス一の体力バカだったんだから

確かに遠藤は1年生なのに野球部のレギュラーになれたことを鼻に掛けているような嫌なヤツだった

もちろん、やつの父親の野球部監督へのワイロ攻勢もあったんだろうが

元々、野球は得意だったようだ

運動神経は、そこそこ良い方だったと思う

遠藤くんにとっては、あなたなんて簡単に殴り倒せる相手だったはずよ

いや、5月の時点なら本気でケンカしたら、オレは遠藤には絶対に勝てなかったと思う

オレの方は中学の時だって、部活をやってきていないし

遠藤は、バリバリの運動部員なわけだから

それなのに今日は、あなたに負けた

いや、勝ったも負けたも無いよオレは別に遠藤を殴り倒したわけではないから

あいつは疲労困憊して、勝手に倒れただけだ

だからこそ完全勝利なのよ遠藤くんの攻撃を全部避けきって遠藤くんの方は、ハァハァして地面に転がっているのに、あなたの方は汗一つかかずに平然としているんだから

今朝のメグミとアーニャみたいだったネ

圧倒的だったヨDarling

オレ朝のアーニャみたいだったのか

グラウンドの周囲を全力疾走して疲労困憊して、汗だくで倒れていたメグと

全く整然としていたアーニャ

遠藤くんはこの4ヶ月間、トレーニングをしてこなかった自分の肉体の衰えに愕然としていたでしょうけれどそれ以上に、あなたの変化に驚いていたのよ

オレの変化

あなたには彼とは別の4ヶ月間があってそれは決して、気楽なものでは無かったこんなに鍛えられているんだから遠藤くんは自分の身体を通じて、それを理解したはずよ

だから恥ずかしくなって、引き下がって行ったのよあの子は、自分だけが学校を追われあなたは校内でノウノウと暮らしていると思っていたんだから自分がツライ状態なのに、あなたは笑って楽しく学生生活を謳歌しているそう信じていたからあなたのことが憎くてたまらなかったのよでもそうじゃなかった

ミナホ姉さん何を言っているんだよオレは、この4ヶ月ツライことなんか何も無かったよ本当に楽しく高校生活を送っているよただ、やらなきゃいけないことを一つ一つこなしているだけで

オレは別に頑張っていない

でも、ほらまだ、できなきゃいけないことが全然できていないんだよパンだって、もっと美味しく、早く、たくさん作れるようにならないといけないし護身術だって、工藤流の6級じゃ、全然ダメだろ

遠藤くんの攻撃は完全に避けきったわ

いや、遠藤の攻撃なんて大したことじゃないってその前のダダドムゥおじ様の時には、オレはただ見ていただけだよ見ていたどころか、イーディやアーニャに守ってもらってたオレがもう少しせめて、自分で自分の身体を守れるぐらいの能力があれば、オレを守ってくれていた子もダダドムゥおじ様への攻撃に加われたのに

オレを守るために、戦力が1人減っていた

今のオレは全然ダメだよこんなんじゃ、ダメだオレもっともっと頑張らないと

パンだって克子姉に助けられるばかりで、まだまだだし

ご主人様よろしいでしょうか

ご主人様は、高望みし過ぎです

わたくしのご主人様はたった4ヶ月で、工藤流の6級に到達されたお方ですそれがどれだけ素晴らしいことなのか、ご主人様は判っていらっしゃらない

でも6級だろ初歩の初歩なんじゃないのか

武道だけじゃないわパンのことだって

あなたはいつも、あたしの話を真剣に聞いてくれて、必死にパン作りを覚えてくれているわ

だって少しでも早く、ちゃんと作れるようにならないと

あなたは自分が、この短期間でどれくらい上達したのか判っていないのね

何を言ってるんだ

上達なんかしてないだろオレのパンは、まだまだ克子姉に助けてもらって、どうにかなっているってだけでそれで何とか、克子姉の味を再現できているんだからさ

オレ1人だけで、1から作ったら克子姉の味には、遥かに及ばない

そうよ再現できているのよもちろん、あたしが各工程でチェックは入れているけれどでも、パン作りを初めて4ヶ月の子が、どうにかあたしの味を出せるところまで上達してきているのこれって、とんでもないことなのよ

あなた最近、あなたのクラスの子たちが、あなたに優しいでしょ

あなたに対して、みんな協力的だし応援してくれているわよねどうしてだか判る

そんなのメグがみんなに人気があるからだろそれと、夏休み前に、クラスの連中を招待してパーティとかやったし

あら、男の子たちは、恵美よりもあなたに好意的でしょ田中くんとか特に、あなたに親しげに話してくれているわよね

確かに、今朝も遠藤についての情報を教えてくれた

田中は親分肌で、面倒見が良いやつなんだよ

だからオレが1人だけパン技能士コースに移ったことで孤立しないように、気遣ってくれているんだと思うよ

それだけなのかしらね

ミナホ姉さんの声が、クスリと笑う

今朝なんて、あなたとメグは1時間目をサボって2時間目から授業に出たのに、みんな優しく受け入れてくれたんでしょ克子、そうだったわよね

オレの教室でのやり取りをお屋敷で克子姉は聞いていた

そして京都から戻ってきたミナホ姉さんに伝えたんだ

あなたたちが始業前に学校に来ていたことは、みんな知っていたわけよね恵美とニキータさんの競走を観ていたクラスメイトもいたんだから

あなたたちが何かモメているんだろうなってことは、気付いていたとしても普通なら、1時間目をサボッたことに対して否定的になる子が居るはずじゃないかしらサボッてないで授業に出ろって怒ってくる子とかいなかったのよね

うんみんな、どういうわけだか、オレたちに好意的だった

それはオレたちに否定的な人は、遠くから冷ややかな眼で見ていただけなんじゃないのかな無視しているとか

いいえ、あなたのクラスの男の子のほとんどは遠藤くんの話をしてた時に、あなたの周りに集まっていたわよ

そう言えば確かにそうだ

元遠藤派だった不良生徒たちまで、何となく集まって来ていたし

別にオレのことを否定的な眼では見ていなかったと思う

どうしてだと思う

さあ判らないよ

オレには判らないよ

あなたの作るパンが美味しいからよ

あなたのクラスの子は田中くんや恵美のお友達が、率先して買ってくれて、宣伝してくれたから他のどのクラスよりも、あなたのパンを食べてみた率が高いんじゃないかしら

まあ、とりあえず1回ぐらいは食べてやろうかって言う気持ちだったんだろうけれど実際に食べてみたら美味しかったのよ予想よりも遥かに

でも、それは克子姉が指導してくれたパンだから

あなたが作ったパンよ

みんな、あなたのことを4月の入学式から知っているわ入学したばかりの頃は、暗くて影の薄い生徒だったそれが、恵美と突然婚約してこの9月からパン技能士コースなんて訳の判らないことを始めたみんなあなたの作るパンなんて、そんなに美味しいものではないと思っていたはずよだって、4月のあなたはとても、パンを焼くような子には見えなかったんだから

そうだ昔のオレは

パン作りに興味を示すような人間じゃ無かった

あなたのパンを食べたクラスの子に聞かれなかったいつからパン作りを始めたんだって

うん聞かれたていうか、今でもよく聞かれる

あなたは何て答えたの

いや普通に、5月の連休の後からだって答えるよ

それが真実なのだから

あなたは、それをどう思っていたの

いや何でそんなことを聞くのかなって思ってたけれど特には

あまり気にはしていなかった

みんな驚いていたのよあなたが、そんな短期間で美味しいパンを焼けるようになってたことに

しかも、あなたはこの1ヶ月学校のある日は、毎日、パンを焼いて売りに出していたわけよねたった1人で

いや、克子姉に手伝ってもらってだよ寧とメグにだって、売り子をやってもらっているし

でも、みんなの眼から見ればあなた1人よ今日から克子が表に顔を出すことになったけれど克子は、あくまでも指導役パン技能士コースを受講している生徒は、あなただけなんだから

オレ1人

あなたのクラスの子たちは本当にあなたが、一生懸命、必死でパン屋さんになるための努力をしていることを知っているのよあなたのこの1ヶ月の行動と、あなたのパンの美味しさがあなたの頑張りを示しているのだから、みんなあなたを認めてくれているのよ恵美の婚約者だからじゃないわ一生懸命なあなただから、みんな応援してくれているのよ

でも、オレ一生懸命じゃないし、頑張ってもいないってば今は、普通にパンを作れるようになるために食らいついているだけだよ食らいつくだけで、精一杯なんだから

オレは褒められたり、認められたりするようなことはしていない

あなたの普通は他の子からすれば、凄いことなのよ

さっきの遠藤くんとのことあんなに身軽に攻撃を躱しきったんだから、これから校内でのあなたの評価はもっと上がるわよ

オレには理解できない

寧昨夜、あなたがあたしに送ってくれた提案のメール、読んだわよ

ミナホ姉さんが寧に言う

この子は普通を知るべきだ正しい指摘だと思うわ

オレは普通を知らない

あなたの計画進めなさいあたしも協力するわ

ありがとうミナホお姉ちゃん

そう言えば、あなたはさっきからずっと静かだったわね寧

確かに、同じ部屋にいるのに寧だけ黙ったままだった

んそれは、ほらさっき、克子お姉ちゃんにあんたは少し黙っててって言われちゃったから

あたしのせいあらごめんなさい

克子姉が、寧に謝る

ううんいいんだよっ確かにあたし、ここのところ少し喋りすぎだったなあって、反省したから

さっき、ミナホお姉ちゃんが行ってたじゃんかこの4ヶ月は、家族の地固めを優先してヨッちゃんに対しては、どの女も好きなだけ甘えさせていたって

ミナホ姉さんはみんなが精神的に落ち着くまで、自由にさせていた

ゴールデンウィークの死闘は、家族全員にとって人生を変える大きな転機だったから

あたしはヨッちゃんのお姉ちゃんになりたい子だからさちょっと、あたしも暴走してたんじゃないかなって思ったの姉として、的確にアドバイスしようして実は、ヨッちゃんに対してうるさく付きまとっていただけなんじゃないかなって

そんなことないよヤッちゃん

オレは、即座に答える

ヤッちゃんはいつも、オレのことを心配してくれているしオレが気付かないようなことを、いっぱい教えてくれて本当に助かっている感謝しているよ

寧は寂しげに微笑む

でも、ちょっとあたしはやりすぎだったと思うよ今、ミナホお姉ちゃんの話を聞いていたらミナホお姉ちゃんは、ゆっくり時間を掛けてヨッちゃんの心の状態を見ながら、段階を踏んで少しずつ成長させてあげたいって思ってたんだよね急がず、慌てずにヨッちゃんが理解していくスピードに合わせて

そういうことなんだろうな

この4ヶ月は準備期間で

集まった家族が馴染んでいく地固めの期間で

オレのパン作りについてはとりあえず、お客様に食べてもらうという第一歩までの期間だった

こういう土台作りに時間を掛けないと先には進めない

ミナホ姉さんはオレたちの進歩を待っててくれたんだ

でも、あたしは自分が気付いたことをガンガン、ヨッちゃんに伝えてううん、押し付けてたヨッちゃんの理解のスピードとか、気にしないで

それを言ったら、あたしも同じよこの人に、自分の知っているテクニックを一つでも多く教え込もうとしてたわこの人の進歩とか考えないで

寧と克子姉が後悔している

いや、全然、問題無いってオレ、何も困っていないからさ

いいえ、やっぱりあたしが焦っていたわ長いスパンで、物事を見ていなかったと思うの

あたしもだよぉごめんね、ヨッちゃぁぁん

泣きそうになる寧

そこで泣いたらますます、みっともないことになりますよ

美智が寧に言う

堪えて下さいわたくしたちのお姉様なら

そうね堪えなきゃダーメなのネ

うんそうだね判ったぁ

グッと涙を堪える

そう言えば、美智さんは彼に武道を教えることについては、全く焦っていなかったわね

ミナホ姉さんが、美智に言う

武の道こそ積み重ねでございますから少しずつ、段階を踏んでしか高みには上れません

武人である美智は慌てて教えても、一気に上達しないことを理解している

理解とは階段状に進むものですある段階を極めた瞬間に、次の段階へスゥッと持ち上がる理解が満ちるまでは、じっくりと待つしかありません

美智は精神的には、とても大人なところがある

15歳にして、工藤流古武術の奥義を究めた子だもんな

しかし、わたくしもセックスの上達については、いささか先を急いでいた感がありますご主人様に色々と求めてしまいました申し訳ございません

夏休みの南洋のビーチでの、全裸で首輪でお散歩プレイは少し早かったかもしれません旅行先で強行するより日本の夜の公園などで、試してみてからにするべきだったかも

いや香月家で借り切ったプライベートビーチだから、あんなことができたんだろ

その辺の公園でお散歩プレイとかそっちの方が、高難度だ

これからは良く考えてから、ご主人様にお願いします

そうネDarlingは、何でも一生懸命やってくれるからミチの方で自重するべきネ

はい、心に刻みます

何だこの会話は

さて恵美、判ったかしらあなたたちがどれだけ彼に甘えきってたかってことしていつまでも、こういうことを続けていてはいけないっていうこともうそろそろ、彼が限界だし外的要因からも、あたしたちは次のステップに進まないといけなくなったのよ

ミナホ姉さんそれって、京都の件だよね

そうよあなたたちが落ち着くまで娼館の再開は、引き延ばせるだけ引き延ばしてきたけれどもう無理ね香月様が、動かれたから

いよいよ黒い森の娼館が再開する

恵美もニキータさんのことぐらいで嫉妬してる場合では無いのよこの人にはこれから娼館の主として、たくさんの女とセックスしてもらわないといけないんだから

御名穂さんそれって

あたしたちの資産は娼館の経営で作ったものよあなたも、そのお金で生活していることを忘れないで黒森の家が生き残るためにも少なくても、後、5年は娼館を続けないといけないわその間に香月様の庇護がなくなった後でも、潰されずに生き続けられるだけの力を手に入れないといけないのよ

黒い森の原点は娼館だ

それからは逃げられない

でもどうして、ヨシくんが

仕方ないでしょ彼はあたしたちの中でただ1人の男であたしたち全員の男なんだから彼には、黒森の家の主になってもらわないといけないのよ

オレが黒森家の主となる

それなら生業である娼館についても、責任を持たないといけない

判っているよ、ミナホ姉さんとっくに綺麗事では済まないってことは

黒い森は犯罪組織だ

ええ黒い森の一番黒い部分を、あなたにも担当してもらうわそうでないとダメなのよあたしたちの犯罪の中核に、あなたも加わってもらわないと

どうしてです御名穂さん

あたしたちの一番黒い部分こそが、あたしたちの切り札だから

切り札

忘れないであたしが、突然暗殺される可能性だってあるのよ黒森御名穂が黒い森のボスだってことは、裏社会ではみんな知っていることなんだから

ミナホ姉さんが殺される

あたしが先に死んでもあなたたちが、身を守ることができるようにしないといけないのよ

ジッちゃんだけでない

ミナホ姉さんも、自分がいなくなった後のことを考えている

恵美や他の子には一番黒いところは教えないわよそれを知るのはあなた1人でいいわ良信

ミナホ姉さんは初めてオレを名前で呼んだ

たくさんの女の子とセックスすることになるけれど楽しくはないわよ苦しいだけかもしれないでも、やってもらうわそれが黒い森の存続に必要なことだから

だけど御名穂さん

メグはオレが知らない女とセックスすることは嫌なんだな

だけどもクソも無いでしょ

ずっと黙っていた雪乃が口を開く

あんたたちの存続が掛かってるんでしょ生き残れるかどうか潰されないで済むかどうかの瀬戸際なんでしょだったら、受け入れるしかないわよそれが現実なんだから

今の雪乃は現実主義者になっている

ホーント、4ヶ月間甘やかされてとびっきりのバカになっているわね、あんた

雪乃が、メグに言う

恵美さあんた、こいつの女になるのは向いてないんじゃない今からでも、山峰の家に帰ったら何なら、あたしが電話してあげようか

嫌味たっぷりにそう言う

帰らないわよっあたしは

だったら少しは腹を括りなさいよっ

吠え合う2人

確かにメグちゃんは、犯罪組織には向いてないんだよねそれは、そうなんだけれど

でも、今のあたしたちには必要なんだよあたしたちは、ほらみんな普通じゃないからさ

普通じゃない

そうなんだよねヨッちゃんが他の子とセックスするって聞いたら、普通は嫉妬するんだねジェラシー燃やしまくりになるんだよねメグちやんみたいに

でも、あたしたちは普通じゃないから反応が変なんだよそれは自覚があるんだ

そうよあたしも時々、メグミちゃんを見て普通の子はこうなんだって驚くことがあるわ

克子姉も言う

色々と勉強させていただいております

だから必要なんだよあたしたちの家族にメグちゃんはさ

恵美確かにあなた以外の全員が普通ではない感性の持ち主よだから、あなたの存在は意味があるわでもねあたしたちは、黒い森は普通じゃないの普通でいることが許されない組織なのよ犯罪組織なんだから

だから、あなたの意見は参考にするけれどあなたの普通の感覚通りにはならないわよそれを理解してそうでないとあたしはあなたを追放しないといけなくなるから

メグを追放

まあいいわ恵美まずは、第一歩としてニキータさんを受け入れてみることから始めてみたわよ家族じゃない子でも、親しい友達良信が、ニキータさんとセックスすることについてはもうあなたも、受け入れることはできたのよね

それはだって、あの人は良い人でしたから

雪乃は嫌です絶対に嫌

あら残念ね

良信はどう家族以外の女の子とは、セックスしないっていうタブーは崩れたわね

うん他の子とも、できるよ

そうみたいね雪乃さんにも、あなたの方からセックスを申し込んでいたくらいだものね

家族でない雪乃とは、二度とセックスしてはいけないと思い込んでいた

アーニャとセックスしたことでその縛りから解放された

まあいいわ第1段階は、こんなものでしょう次のステップへ進むことにするわ

とにかくそこの片付けを済ませたら、急いでこっちへ帰って来て雪乃さんも、一緒に連れてきてもらおうかしら

雪乃まで

それとアニエスちゃんが、あなたとお話ししたいみたいよ

アニエスちゃんこっちにいらっしゃいここから、話ができるわ

どうやらミナホ姉さんがオレと会話している部屋を、アニエスが覗き込んでいるらしい

アニエスの声がする

ああ、オレだよアニエス

オレの返事を聞いてアニエスは

早く帰って来て下さいの

ああ、ごめんごめんもうすぐ帰るよえっと20分ぐらいで

早くして下さいのアニエス、パパとセックスしたいですの

これもまたこの4ヶ月間、女たちを解放していたということか

マナとアニエスとは2人が求めてくるだけ、応えてきたもんな

う、うん判ったとにかく、急いで片付けて帰るよ

そうかセックスをし続けないと、2人の心が壊れてしまうと思ってきたけれど

これだって改善していくべきことなんだよな

ミナホ姉さんは自分が死んだ後のことを考えてくれていた

オレだって何かのトラブルで急死する可能性はあるんだ

アニエスとマナをセックス依存症のままにしておくべきではない

次話よりお屋敷に戻って

星﨑さん編と鷹倉さん編が、同時並行で進む予定です

しかし、日中、暑すぎるせいで眠いです

書きながら、眠くて眠くてたまりません

627.おとこぎ

じゃあ、待っているわ

そう言うと、ミナホ姉さんとの通話は途切れた

とりあえず、片付けが優先だヤッちゃん、克子姉、手伝って

今日は、土曜日だから明日はパン作りは無いだろちゃんと清潔に保っておかないと、菌が繁殖するからさ

きっちりと、掃除して帰らないといけない

アタシは何するネ

イーデイと美智は、片付けは良いからあ、そうだそこの端末で、学校の内外の様子を調べてくれ

遠藤やダダドムゥおじ様は撤退したが

わざわざ翔姉ちゃんが、警戒しに現れた

香月セキュリティ・サービスや、それ以外の警護員がこの学校の周囲にも、集まって来ているはずだ

それ以外公安警察なのカ

イーディが、オレに尋ねる

公安の方々もいらしていますが、それ以外にも別の組織の方たちがいらしています

それって今、オレたちに説明できる組織か

いえお屋敷に戻られて、黒森様からご説明を受けられるべきだと思います

でも警戒は必要なんだよな

なぜ、そう思われます

美智がオレに、質問を質問で返す

わざわざ、みすずがここに美智を送り込んで来たんだイーディだけでは、心配ということは普通じゃないことが起きているってことだろ突発的なトラブルでなく組織的にオレたちを狙っているやつらがいる

そうとしか、考えられない

イーディはメチャクチャ強いが日本の裏社会のことは何も知らない

美智はみすずの警護役として、香月セキュリティ・サービスから、裏社会の連中についてのレクチャーを受けているはずだ

ご名答です

克子姉はどこまで知っているの

あたしはお嬢様が、京都で鷹倉様にお会いしたということしか知らないわそれ以上の詳細は何も

克子姉もオレと同じく、試用期間一ヶ月目の試練を受けさせられた身だ

パンのことに集中させるために、ミナホ姉さんは京都でのことは詳しく話していないのか

ヤッちゃんも途中で、遠藤を寄越したのがミナホ姉さんだって気付いてたくらいだから詳細は知らないんだよね

まあね

結局お屋敷に戻るまでは、何も判らないか

よしとにかく、掃除を終わらせよう

オレは作業を始める

あのヨシくん

あたしは何をすればいいの

すっかり遠藤の騒ぎとかで遅くなっちゃったからさそろそろメグは、陸上部の部活に行く時間だろ

待ってよあたしだけ、こんな状態で部活なんかできないわよ

だって何か大変なことが起こっているんでしょ

だからこそメグは、日常生活を守ってくれよ

異常事態は、オレたちで何とかするメグは、いつも通りの日常を守るそれがメグの役割だろ

あたしの役割

ああ、どうやらミナホ姉さんですら、ビビっちゃうような事態が起きているらしいメグがちゃんと日常生活をキープしていてくれないと、オレたちみんな異常な状況の方へ引っ張られちゃうよ

今は、土曜日の午後になったばかりだ明日の日曜1日で終わらせよう月曜の朝には、また普段通りの日常生活に戻らないといけないんだから

オレは決心する

ミナホ姉さんは、天地がひっくり返って、もう穏やかな日常は帰って来ないみたいなことを言ってたけどさそんな風にはさせないよやっと、みんな認めてくれ始めたんじゃないかオレたちのパンもオレたち自身のことも

何か大きなトラブルが起きているO.K.、それは判っただったら、適切に処理するそれで何かまた、変わることもあるかもしれないでも、オレたちの日常生活は続いていくんだ淡々とね

だからメグは、いつも通りに部活へ行ってくれ迎えもいつもどうり、誰かに来て貰うから今日は6時まで

なら、渚たちが帰ってくる時の車にピックアップしてもらうことになるな

渚の店にはマルゴさんが行っているはずだ

でもね、ヨシくん、あたし

そう言うメグに雪乃が

恵美あんたちょっと邪魔よ

雪乃は、部屋に備え付けの箒で床を掃いていた

何しているの雪乃

掃除に決まっているでしょ

雪乃は、チャッチャと綺麗に掃いていく

もう安定期だから少し運動した方がいいのよ、あたしそれで勝手にやっているだけだから、気にしないでね

雪乃は、ケロッとした顔で、そう言う

だから、邪魔よ恵美さっさと部活でも何でも行きなさいよ

メグミちゃんこれ

克子姉が紙袋を取り出し、中の包みの一つをメグに手渡す

今日のお昼みんなで食べようとサンドイッチを作って来たんだけど、色んな騒ぎで時間がなくなっちゃったでしょ部活の始まる前にでも食べてあたしたちはお屋敷で食べるわ

ニコッと微笑む克子姉

ニキータさんの分も作って来たんだけどそれは美智ちゃんに食べてもらうわ

あっ、そう言えば売り子は手伝ってもらったけれど、アーニャにパン食べてもらうの忘れてたよねっ

腹ぺこのままで帰すなんて、悪いことしたよな次の機会には、食べてもらうよ

メグちゃん今は色々、頭の中がグルグルしているでしょだから、思いっきり部活をやって、頭の中空っぽにしてきなよ

内に籠もって考え込むと、身体に悪いからさとにかく、思いっきり汗をかいて走っておいで

ご主人様の安全は、わたくしにお任せ下さい

美智も、そう言ってくれた

あーん、とにかく邪魔よっ恵美、そんなとこ突っ立ってないでよっ

雪乃お前は、何なんだ

判った判りました

メグは不承不承、納得してくれた

じゃあ、あたし部活へ行って来るね克子お姉さん、サンドイッチありがとうございます

あ飲み物のボトルも持っていきなさい

克子姉が、メグの好きなスポーツドリンクのペットボトルを手渡す

メグは、オレを見て

ヨシくんあたし、ヨシくんの奥さんのままでいいんだよね

それはメグが自分で決めることだよ

オレはメグの決めたことなら、何でも受け入れるでも、メグ自身が自分の進むべき道を決心できないんならオレには、どうすることもできないよ

だから邪魔よあんた

雪乃が後ろから、メグの足下をシッシと掃く

判ったわとにかく走って来るあたし

そう言うとメグは、元気の無い様子で工房から出て行った

オレは、イーディに振り向く

メグに付いていてくれ敵が学校に侵入して、メグを誘拐する可能性がある

携帯持っているよな美智と連絡を密にしてくれ何かあったら、すぐに知らせろこっちも助けが欲しい時は、連絡するから

判ってるヨ、Darling

あたしも学校に残るよっやることあるし

それにこの学校の警戒システムは、イーディよりもあたしの方が慣れてるからさっ

その方が良いのか

メグちゃんのフォローも、なるべくやっておくよあのまんまの状態で部活をやってたら、メグちゃん、竹芝さんに思いっきり怒られると思うし

今朝のアーニャとの競走の件もあるしなあ

竹芝さんも心配しているだろうから、あたしが少し話をしておくよ

寧は留年しているから竹柴キャプテンとは、年が同じだ

寧の話なら、聞いてくるだろう

うん頼むよ、ヤッちゃん

ていうか、あんたも邪魔っ

雪乃が、オレの足下を箒でバサバサする

どうにか掃除と片付けを終える

用具類は全て、決められた場所に

また月曜日に作業を始めた時に道具が見つからないとか、迷うことの無いように

整理整頓が、工房の基本だ

よし行きましょう

克子姉が、今日の売り上げの入った手提げ金庫を抱えている

忘れ物は無いな

出るぞ、美智

裏口からパン工房の外へ出る

克子姉のバンが、停まっていた

オレは後ろのドアを開けて空のパッドを積み込む

また月曜日には、焼く前のパン生地をこのパッドに詰めて持って来ないといけない

雪乃ちゃん、乗って

克子姉が、雪乃を後ろの荷台に乗せる

今の人の通らないうちに

雪乃をオレたちが連れて行くのを、他人に見られるのはマズい

雪乃は、パッドの山の後ろに隠れる

美智ちゃんも、先に乗って

美智は、周囲の警戒のために車外に居たいらしい

いや、お前は目立つから人気の無いうちに乗ってくれ

何たって、うちの高校の制服とは違う格好の中学生美少女だ

さっき、美智がダダドムゥおじ様を退けた様子は、たくさんの生徒に見られているし

面倒なことになる前に、美智も車内に隠してしまいたい

美智もバンの後部に積んだパッドの影に隠れる

克子姉も、運転席に乗り込んだ

オレも、助手席に乗り込もうとすると

おう、吉田店じまいか

田中が、ふらりとやって来た

今さっき聞いたんだけどよ遠藤が来て、大騒ぎだったらしいじゃないか

ああ、さっきの騒ぎのことはあの時、学食の近くに居た生徒しか観ていないんだな

悪いなオレは今日の昼は、坂本たちと校外にラーメンを食いに出てたから

悪いも何も別に毎日、オレのパンを買ってくれなくてもいい

外へ食いに出たのに何で学校に戻って来たんだ

ああ、これから委員会の会議があるんだ

委員会

オレ、ほら次の生徒会長の選挙管理委員になったからよ

そうか10月には、新会長を決める選挙があるのか

それで戻って来たら遠藤が、祭りの山車に乗っかって、校内に乱入して来たって言うから

祭りの山車じゃない街宣車だ

そんで、何か暴れるだけ暴れたけれどニキータさんとニキータさんのお友達に、ケチョンケチョンに蹴散らかされたって

お友達

うん、何かお嬢様チックな若作りのコスプレをしていた、小柄なアクション女優が来てたってみんな言ってたぞ見た目は中学生ぐらいだけど、実年齢は30歳近いはずだって映画研究会のやつが言ってたあんなに動けるアクション俳優は、業界でも10年選手のはずだって

そう言えばアーニャが、自分の親しい子みたいに話していたからな

オレたちよりも、アーニャの仲間だと思った人が多いのか

まあ、美智の制服は、超お嬢様校として有名だけど

まず先にあれだけ赤いムチとか振るって大活躍しちゃうとなあ

みんな、プロのアクション女優さんのコスプレか何かだと思うんだろうな

ホンモノのお嬢様校の女学生がムチでオッサンをシバいたりはしないもんなあ、普通は

うん、まあ今日のところは帰ってくれたよまあ、実際、オレにもよく判らないし遠藤とニャポレオン党のことは

オレは適当に誤魔化す

そうかまあ、お前らが無事で済んだんならいいや

親分肌の田中はわざわざ、オレの様子を見に来てくれたんだな

あ、そうだ克子姉

オレは、克子姉を呼ぶ

克子姉は、運転席から顔を出す

田中この人、オレのパン技能士コースの指導をしてくれている高梨克子さん

おお、この人かっ何か、今日から物凄い美人が、お前のパンを売ってたって聞いたけれど

その情報は正しく伝わっているんだな

こんにちわ来週からは、毎日売り場に立つわよ

克子姉は、ニコッと田中に微笑む

何だよ、お前こんな綺麗なお姉さんにパン作りを習っているのかよ

ああ、そうだよ

毎日か

毎日だよ、当たり前じゃないか

何か、事務室にパン技能士コースのパンフレットは無いのかって、男子生徒が押し寄せてたらしいぞ

入りたいんじゃないか、パン技能士コースにあるいは、パンフレットにこのお姉さんの顔写真とか載っていると思ったんじゃねえのかな

残念ながら、パンフレットとかはまだ無いわよ正式にコースができるのは、来年の春からだから吉田くんは、テストケースとして先にコースを受講してもらっているだけだし

克子姉は、明るく説明する

そうですよねえそうだと思ってましたよ、オレは

ニタァと微笑む田中

そんで田中さっきお前が言ってた、50円安いパンのこと、克子姉いや、高梨先生に相談したんだけど

え、マジでうちのクラスの人間だけ、50円値引きしてくれるのかっ

あオレの説明が悪かった

違う違う値引きはしないよ今、売っているパンとは別に、50円安いパンのラインナップを売り出すことにしたんだ

いやお前が50円安くしてくれって、オレに言ったってことは今より50円安いパンを売り出したら、需要があんじゃないかと思って

なるほどそれは面白い考え方だな

田中は苦笑する

うん、でも正しい判断だと思うよお前のパンは、もう50円安い方が売れる

そう思うか

ああ、ブッチャケ同じ学生食堂で売っている業者さんのパンより、ちょっとだけ高いんだよそりゃ向こうは食品工場での大量生産品でお前のパンは手作りだってことは判っている味も、お前の方が美味いでも、ほら高校生は、味よりもコストパフォーマンスだからな

安くてムシャムシャ食えた方が、良いんだよまあ、お前の場合は勉強でパンを作ってんだから、そこまで考える必要はねえんだろうけど

いや、考えるよ考えないとダメだって、気付いたんだ

田中、他にこんなパンがあったら良いみたいなのはあるか

だからさお前のパンは、女性向け過ぎるんだよ手間が掛かってて美味いけれどさ男向けには、もっとザッパでいいんだよ

ザッパ

フランク・ザッパってことかしら

いえ大雑把の略です済みません

田中が謝る

ていうかお姉さんフランク・ザッパって何ですか

えああ、若い子は知らないのね気にしなくて良いわ

克子姉は、顔を赤くする

それよりどう大雑把にしたらいいのか、教えてくれる

だから男は歯応えがあって、ムシャムシャ食えて、腹が膨れる方が嬉しいんですよ

ていうと、例えばフランスパンのバケットを輪切りにして、食べ放題とかにしたらいいのかしら

うーん、それだとちょっと味気ないかな

もちろん、バターやジャムは付けるわよ

いや、自分でパンに塗って食べるのは、メンド臭がると思いますよ

あらかじめ、オレたちでバターとかジャムを塗っておく

そんなの手間が掛かりすぎる

いえバケットのパンを焼く前に、中にチーズとか入れておけばいいのよチーズ入りのバケットとかどうそれを輪切りにして

あ、いいですねそういう方が嬉しいですね甘いパンより、ちょっと塩気のある方が男向けだと思います

田中は、答えた

うん作業工程も楽よパンを等間隔で輪切りにする機械は、工房にあるし

克子姉の頭の中でどんどん発想が拡がっているらしい

ありがとう良いアイデアを貰ったわ

克子姉が、田中に言う

いえいえお役に立てて光栄です

あたしねパン以外のお料理も得意なのよ今度、吉田くんと恵美ちゃんのお家でお食事会を開くから、田中くんもいらっしゃい

田中は、オレの顔を見る

うん、来いよ田中には色々と世話になっているし

何だよ、それまあいいやじゃ、ご馳走になります

そんな話をして田中と別れた

克子姉の運転で校門を出る

いつもは裏門からだけど今日は、正門から外へ出た

あら本当に居るわね

校門前に、あからさまに怪しい黒塗りの車が何台も停まっていた

オレたちのバンを確認するとそのうちの3台が追尾してくる

公安警察じゃないな

あの人たちだって、ここまで露骨な尾行はしない

ていうかちょっと素人くさすぎる

でも、3台も来るってことは一応は、組織化された集団なんだろうけれど

何なんだろうねこいつら

オレが、バックミラーに映る尾行車を見ながら呟くと

ニャポレオン党じゃないの

と、冗談を言った

どうする遠回りするそれで、あいつらの動きを観てみるとか

それも面倒だわこのまま帰りましょう

克子姉は、お屋敷に直帰するルートを選んだ

どうせお屋敷の前には香月セキュリティ・サービスと公安警察の車が来ているんだし

香月家の後継者である瑠璃子が暮らしている限り、香月セキュリティ・サービスの警護車輌は、お屋敷の前に常に待機している

公安警察の方は、最近は来ない日もあるが恭子さんの配下であるアーニャが昨夜泊まったんだ今日は何台が監視車が来ているだろう

今、後ろから付いてきている人たちのチェックはその人たちにやって貰いましょう

克子姉は香月セキュリティ・サービスと公安警察に押し付けるつもりだ

お屋敷に近付くにつれ路肩に停まっている、怪しい車輌が増えていく

そして、お屋敷の正門前の道には

ズラーッと、数十台の車が並んでいた

そのほとんどが黒塗りだ

ヤクザの人たちが大親分を出迎える時に、こんな風に車を並べることがあるって聞いたことがあるけれど

克子姉も、驚いている

ああ、さすがに門の正面だけは香月セキュリティ・サービスと公安警察のいつもの監視車輌だ

まいったわね

お屋敷の正門は、遠隔操作で開くけれど

門が開く前には、少し待ってないといけない

あれって門が開いたら、中に飛び込もうとしているよね

上下、真っ黒のスーツを着たどうみても、ヤクザ屋さんにしか見えない男たちが数十人門の前で腕組みしている

ギロッとした眼で、門の中を伺っている

ま、鷹倉家だものね

鷹倉家というのはね、香月家よりもさらに歴史の古い格式のある、名家中の名家なのよ

それはすでに聞いている

そして日本中のヤクザ屋さんを束ねているお家でもあるの

鷹倉家自体は、そんなに大きな勢力を持ってはいないわでも、格式の高さが尋常じゃないでしょ大組織の親分さんの襲名や、抗争の手打ちの時には、必ず鷹倉家が立ち合うことになっているのよ鷹倉家の立ち会いが無ければ、どんなことも無効になってしまうわそういう本当の意味で束ねをやっているお家なのよ

そんな家のお嬢様が

ミナホ姉さんが会いに行ったってことは、黒い森の娼婦にするためだろ

いいのかそんなこと

本人はその気でも他のヤクザ屋さんたちは許さないそういう感じよね

確かに、こりゃあヤバいかも

おりゃあっおい、テメエらここの家のもんかいっ

オレたちのバンが、お屋敷の正門の前で停まると

追尾してきた3代の黒塗りの車から、ヤクザたちがドカドカと下りてくる

何じゃあそりゃ、本当かのおっ

正門前にたむろしていたヤクザたちもオレたちに注目する

ピピィッッ

香月セキュリティ・サービスの車から、警護員が警笛を吹きながらゾロゾロと現れる

このままじゃ

一触即発か

本宮先生は時代劇マンガは、まだまだ面白いのですが

現代物は何か、ちょっともう

おとこぎも、今のシリーズはなあ

さら金も、出版業界編が酷すぎたというか某巨大ネット企業のサーバーが、誰も知らない山の中に隠されているというのは

電源はどこから引いているのメンテは誰がするの

何か風呂敷の広げ方が、キツいなあと

さて、今日は久しぶりに秋葉原へ行きました

また店頭でイデオンプラモの投げ売りがあったので、カララ専用ガダッカを30円で買ってきました

20代のちょっと気怠い感じの男性二人の会話

お前、最近どうしてるわけ

プリキュアばっかだよ

ちょっと面白かったです

628.ちはやぶる

ちょっとどうすんのよっ

バンの後部荷台空のパッドの影に押し込まれた雪乃が喚く

このままじゃ、屋敷の中にも入れないじゃないのっ

雪乃の言うとおりだこんなにヤクザ屋さんが門の前にたむろしているんじゃ

遠隔操作で正門の鉄扉を開けたら敷地の中へ入り込まれてしまう

そこから離れたまえ

香月セキュリティ・サービスの黒服たちが、車から降りてヤクザたちを威嚇している

なんじゃとぉ

きさんら、わしらに命令する気なんかっ

緊迫する正門前

わたくしが、行って参ります

大丈夫か美智

こういう時のためのわたくしでございます

ガァッチャン

バンの後部のドアを開けて美智が、外に出る

なんじゃい

何や

何や、何や

ヤクザ屋さんたちの眼が、美智に集まる

克子姉、雪乃眼と耳を塞いで、下を向いているんだ絶対に美智を見るなそれが一番ショックが無いから

オレは、二人に言った

ああ、アレね

雪乃が、憎々しげに言う

クルのが判っていれば、耐えきれるそういう技だから

雪乃は耳を手で押さえて、眼を閉じ下を向いて、歌を歌い出す

♪ウルトラマンの子供ぉ~子供ぉ~子供ぉ♪

メリーさんの羊のメロディで何の歌だ

突然、車の中から聞こえてくるスットンキョな歌に、ヤクザ屋さんたちが怪訝な顔をする

克子姉も雪乃と一緒に歌い出す

耳と目を閉じてハンドルに顔を伏せている

オレも防御の態勢を作った

♪ウルトラマン子~♪

雪乃と克子姉が、大声でそう歌いきった瞬間

美智の気の嵐が周囲の人々を薙ぎ倒す

ハァァッハァァッハァァァァ

さすがに、オレは慣れてきている

いきなり、寝起きから全力疾走で100メートルダッシュさせられたぐらいの衝撃で済んでいる

克子姉、雪乃、大丈夫か

オレが顔を上げると

な、何とか

克子姉が、青白い顔で答える

もおっ流産したらどうすんのよっ安定期で良かったわ

雪乃は、平気らしい

今すぐ門を開けるわ

克子姉が、遠隔操作のスイッチを入れようとする

オレは、車外の様子を確かめる

車外は凄惨な状況になっていた

美智を中心に、半径20メートル以内に居た人間は

ヤクザ屋さんも香月セキュリティ・サービスの黒服も、みんな卒倒している

ピクピクと震えて、立ち上がれないようだ

心月の有効半径の外に居た人たちも体調を崩して、膝を付いている

オレたちの方に視線を向けているが誰も、近づいては来ない

近付けば、美智の謎の技を食らうことは判っているからだ

何でぇ何でぇど、どうしてくれるんだ天下の往来で、好き勝手、いいようにしやがってよぉ傷害罪で訴えるぞ、コラァ

死屍累々昏倒したヤクザたちが、何十人も横たわる中で

たった一人だけ

体格の良いヤクザが両脚を踏ん張って、グッと堪えて立っている

訴えられるものならば、どうぞ

ハッしょ、傷害罪じゃ無理だろなあんたみたいなお嬢ちゃんにいい歳をした男たちが手も触れずバッタバッタ倒されたなんてのはよぉぉどうにも、訴えようがねえもんなぁ

気での攻撃はどんな刑法でも規定されていない

よく立っていられますね

アタリキシャリキよぉぉその辺のやつらとは、鍛え方が違うんだぜぇぇオイラよぉぉ

ニッと苦しげに笑うヤクザ

気を反らすとか、受け流すとかしたわけじゃないらしい

真っ正面から受け止めて耐えきったんだ

お嬢ちゃん名前は何てぇんだぃ

工藤流古武術、工藤美智です

オイラは、関西雷神鳳会・音羽組安藤風伍っていう名のケチな駆け出しよぉぉ

ヤクザはフゥゥゥと大きく深呼吸する

さぁって、互いに名乗り合ったところで決着を付けようかぃ

安藤は、空手の構えを取る

その身体でわたくしと闘うというのですか

体調とか、あんたがガキんちょだとかよぉぉそういうのは、どうにもこうにも関係ねぇんだわブルドックワンッ上の命令に従ってよぉぉ、眼の前の道を切り開くってのが、カッチョ良いオレのカッチョ良い仕事なんだわさぁ

そうですかでは手加減は致しません

美智も、安藤に正対する

アンドォ、違ったわぃお嬢たちは、ここじゃぁ無いらしいでっ

オレたちから30メートルぐらい離れたところに停まっていた車から、電気式のハンドメガホンを持った小太りのオッサンが顔を出して叫ぶ

香月の本家じゃっ香月の本家の方に、お嬢たちは匿われているらしい

ちっガセ情報、掴ませられやがってよぉぉぉブチ殺すぞぉ、ゴラァァ

そんなん言うてる場合かぁアンドォォ

判ったよぉぉコンチクショウ

安藤は、構えた手を下ろす

一度振り上げた拳を下ろすのですか

美智の言葉に、安藤は

はぁぁんっお、オイラもよぉぉこの場でカタを付けて帰りたいんだがよぉでも、今は一刻を争う大切な時なんだぜタイム・イズ・マネーゴーズ・バイ判るかなぁ、判んねえだろうなぁ悪ぃな、お嬢ちゃん

そのまま、小太り男の車に向かう

小走りで走るがフラついている

やっぱり、美智の心月でダメージを受けているんだ

音羽のニィさん今の話は本当スか

ああ、ヤマザキのセイちゃんから連絡があったで

こうしちゃいられないぜっ

他のヤクザたちも、次々と車に乗って行く

おい、倒れてるヤツらはお前らで面倒見とけや

イエッ・サー

何じゃユウゾウさんところは、また随分ハイカラな掛け声やな

あ、こいつらイエッサーズっちゅうねんワシの命令には、イエッサーとしか返事しちゃいけねえんだわそうだよな、オメエら

何や、うちの組のラブ・サバイバーズみたいなもんかいの

今の若いやつらは、格好いいチーム名がないと集まりが悪いからのぉぉ

とにかく、後は任せたからなッ

うぃぃースッ

倒れたヤクザの回収役だけを残してヤクザの黒塗り車輌は、次々に走り出す

おい本部に連絡対応を仰げ

香月セキュリティ・サービスの方も、大慌てで動き出す

このヤクザの大車輌軍団が、全てジッちゃんの本宅の方へ向かったのだから

美智ちゃん、乗って

この隙に、克子姉は門の鉄扉を開ける

美智が、周囲を警戒しながら車に乗り込む

ドアは開けたまま

もし、屋敷内に潜入してくるやつがいたら、迎撃するつもりらしい

片手に手裏剣を握っていた

発進するわよ

克子姉がアクセルを踏みお屋敷の敷地の中へ

閉門まで監視を続けます

美智が、克子姉に叫んだ

バンの車体が侵入しきったと同時に克子姉は、鉄扉を閉める遠隔操作をする

ガゴゴゴゴゴ

重く背の高い扉が完全に閉まるまで美智が、眼を光らせる

ガスッ

克子姉、オッケーだ

了解よ

オレたちのバンは動き出す

お帰りですの

お帰りっお兄ちゃん

オレたちのバンが玄関前のコンコースに付くと

アニエスとマナが、屋敷の中から走って、出迎えてくれた

何か大変なことになっちゃってるみたいだね

どうやら門前の混乱を監視カメラで観ていたらしい

ああ、ミナホ姉さんは

中に居るよお兄ちゃんのことを待ってる

あ、でもこの空のパッドを片付けないとな

お屋敷内の克子姉のパン工房に、仕舞っておかないと

また日曜日の夜には、月曜向けの仕込みをするんだし

あ、そんなのさ、あたしが運んでおくよアニエスちゃんも手伝ってくれるよね

マナとアニエスは、すっかり仲が良い

まるで姉妹のようだ

というか本当に姉妹なんだけど

あれっ、何でここに居るの

あ、マナがパッドの影に隠れていた、実姉に気付く

えっとひ、久しぶり

雪乃は妹との対面に戸惑っている

うん、久しぶり少し太った

マナは、平然と尋ねる

えー、一緒にテレビに出ているオカマさんとかとカラオケ行って、暴飲暴食してるんじゃないのネットに記事が出てたよ

してないわよっ暴食なんて

雪乃はムクれる

ふーんいつも観ているよ、テレビお兄ちゃんと

でも、ほらテレビって、よく判らないじゃん体の調子とかうんまあ、どうにか元気そうだね良かった

オレは学校で雪乃と顔を合わせているが

マナは、こうして直接雪乃と顔を合わせるのは5月以来か

あんたも健康そうねちょっと背も伸びた少し大人っぽくなったわね

うんお兄ちゃんに毎日セックスしてもらっているから毎日、子宮でゴクゴク精液飲ませてもらってるもんっあ、お口でも飲むけどね

あれから体質改善したんだよこれから、どんどん変わる予定だから

マナは黒い森の身体開発プロジェクトを受けている

食事と運動で美しくなる

マナの目標であるスーパーモデルを目指して

その第1段階である体質改善がとりあえずの目標数値に達したと、克子姐が言っていたっけ

次に会った時には雪乃さん、あたしが誰だか判らなくなっているかもねっ

マナは姉を雪乃さんと呼んだ

ああ、そうだアニエスちゃん、雪乃さんのお腹触らせてもらおうよっ

お腹ですの

そうだよ、ここにお兄ちゃんの赤ちゃんが居るんだからっ雪乃さん、いいよねっ

屈託無く自分を雪乃さんと呼ぶ妹に雪乃は戸惑っている

ほらほら、ここだよ

マナとアニエスの小さな手が雪乃のお腹を制服の上から触る

あたしたちも、早くお兄ちゃんの赤ちゃん産みたいよねっ

マナとアニエス2人とも、雪乃の妹だ

はいはいそれぐらいにしておきなさいっマナちゃんとアニエスちゃんは、お片付け手伝ってくれるんでしょガレージに車を廻すから、乗って

2人が車に乗り込む

あなたは美智ちゃんと雪乃さんを中に連れて行って

美智と雪乃は車を降りる

あ、そう言えば雪乃

オレは、ふと思い出した

さっきの歌何だったんだ

いやウルトラマンの子供

ああ昨日、教わったのよフランシーにカラオケで

フランシーってあの雪乃と共演しているオカマ・タレントか

それで頭に残っててつい、歌ったのよ

でも、変よねウルトラマンの子供で、ウルトラマン子なんてさ

こいつもしかして、意味が判ってないのか

克子姉も歌ってたよね

あたしは小学生の時に、友達から教わりました

辛そうに克子姉は答えた

何よやっぱり、オカマの人と飲み歩いてるんじゃないっ

飲まないわよあたしは

えー昔は、ワインとか家で飲んでたでしょ

今は飲まないわよ妊娠中よ、あたし

雪乃はそっと、自分の下腹部を触った

お帰りなさい大変だったわね

ミナホ姉さんは居間でオレたちを待っていた

ノートパソコンを3台並べて同時に情報収集している

何が起きているのミナホ姉さん

オレは早速尋ねた

鷹倉様のお嬢様の受け入れでちょっと揉めているのよ

ちょっと揉めているってそんな感じじゃ無かったけれど

まあ、座りなさい雪乃さんも、美智さんも

ミナホ姉さんは、オレたちに椅子を勧める

わたくしお茶を入れて参ります

美智は、台所へ向かう

ああ、美智はみすずと一緒に京都へ行っているから、ある程度の事情は知っているんだな

オレの危機を察して、学校を早退して、救援に来てくれたぐらいだし

雪乃は相変わらず、ミナホ姉さんが苦手らしい

少し離れた位置のソファに座る

克子から聞いた鷹倉家というのが、日本のヤクザさんたちを束ねるお家だということを

ミナホ姉さんはそう切り出した

聞いたよそれは

束ねると言っても鷹倉家自体は、ヤクザでは無いのよ元々は、お公家さんそれも、とてつもなく格式の高い平安時代から続く、名家中の名家よ

雪乃は知ってるか

オレは、雪乃に尋ねる

雪乃だって、白坂家という名家の一員だった

セレブのパーティが大好きで、あちこちに顔を出していたはずだ

あたしは知らないわよ鷹倉なんて家、聞いたことないわ

それはそうよ鷹倉様は、ほとんど京都から外には出られないからしかも、晴れやかな場には一切お出になられないから

どういう家なんだ

鷹倉様は全てのヤクザ屋さんに対して、平等に接している家なのよどの家かとだけ癒着して、そこだけを依怙贔屓したりすることは無いわ全て均等に扱ってきたわ

平等で、均等

だからヤクザ屋さんたちが抗争を起こした時の一番の仲裁役になれるのよ鷹倉様の顔を潰すわけにはいかないということになればたいていの抗争は鎮火するから

どうして何で、鷹倉家がそんな立場になれたんだよ鷹倉家自体はヤクザとは関係の無いただの名家なんだろ

京都の公家と、ヤクザの仲介役繋がりが見えない

鷹倉家は代々、京都のある大きな神社の神主を勤めている家なのよ神職そういう家系の名家なのよ

神社の神職

そしてその神社は、全国のヤクザ屋さんに手厚く信仰されているほら、ヤクザの事務所って、必ず神棚があるでしょ

そう言えばテレビドラマとかだと、神棚があったよな

鷹倉神社はとある神様の信仰の総本社なのよねもちろん、ヤクザさんたち以外からも信仰されているわよ何しろ歴史の古い神社だから

だから京都から外には出ない

なるほど、由緒ある格式の高い名家だ

ヤクザ屋さんの話をするけれどねヤクザ、博徒、侠客、極道呼び方は様々だけれど、その起源は江戸時代以前まで遡れるわ鷹倉様は、その時代からヤクザさんたちの仲裁を取り仕切ってきたわそれで新しい親分の襲名披露とか、祝い事には必ず鷹倉様の名代が立ち合わないといけなくなったの

まあ、別に必ず立ち合わないといけないなんていうルールは無いんだけれど鷹倉様が姿を見せない席は、格が落ちるというかカッコがつかないのよ江戸時代の末期から、明治に入る段階でもうそうなっていたわけ

ヤクザ屋さんが、大きな勢力を持って全国規模に拡大したのは戦後よ戦後の混乱期に、ヤクザは全国規模の暴力団に成長したわけ

でも勢力が大きくなっても、ヤクザはヤクザ暴力と組織力でしか力を示せない彼らは、精神的な裏付けとして鷹倉様の存在を必要としてきたわけ

雪乃もジッとミナホ姉さんの話を聞いている

そして今の日本では、ヤクザ屋さんは大きく分けて2つの勢力があるし、その2つの大勢力だって一枚岩ではないわ内部では対立したり、抗争したりしているのよ

みんな仲が悪い

だからこれからの時代でも、鷹倉様の名前と権威は、ヤクザ屋さんにとって必要なのよ必要としているだけならいいわ鷹倉様は、全てのヤクザ屋さんに対して平等に扱う神職のままなら

なのに21世紀にもなるとね、バカな人が現れるのよよりによって、鷹倉家を手中に納めることを欲するなんていう

欲する

ある暴力団組織の親分が鷹倉家を神社ごと、自分のものにしようとしたのよ

名家を奪う

そして色々と不幸があってね先代の鷹倉家の当主鷹倉神社の神主ねその方は、不慮の事故で亡くなったのよ

事故死

まあ殺されたのは確実ねそして神社は、鷹倉家を狙っていた親分の息の掛かった先代当主の従弟が継ぐことになったわ

ミナホ姉さんがオレをキッと見る

でも、亡くなった先代にはお嬢様がいらしたのこのままではお嬢様は、悪い連中によって適当な家に政略結婚させられてしまうわ

その子がまさか

でも、お嬢様はお心のとても強い方でね自分の父親を殺した連中に支配されるぐらいなら、娼婦になるっていう決意をなされたのよ

黒い森の娼婦に

娼婦なら政略結婚させられることは無いでしょ

色んな男に金で買われたことのある女を名家が嫁にするわけがない

じゃあ、さっき家の前に居たヤクザたちは

オレが尋ねると、ミナホ姉さんは

それが2種類居るのよね

2種類

1つはそのまんま、鷹倉家を乗っ取ったヤクザの一派ねこの人たちは、お嬢様を捕まえて、自分たちの支配下にしようとしているわ

もう1つのグループはそれに反対しているヤクザさんたち鷹倉家に昔から恩義を感じていてお世話になった先代のお嬢さんを娼婦なんかにしてたまるかって思っている人たち

そうなのよ2派のヤクザさんたちに、香月セキュリティ・サービス、国家警察4つの勢力が入り交じって、大混乱になっちゃってるわけ

香月セキュリティ・サービスは、どういう立場なのさ

お嬢様の意思を知ってそれなら、娼婦になる先を紹介してあげようっていうのが、香月様だったってことよ

ジッちゃんが鷹倉家のお嬢様を、オレたちと引き合わせているんだよな

つまり2派のヤクザ屋さんたちは、どっちも香月家を眼の敵にしているってわけ

こりゃ、大変だ

業務連絡

済みません、前話で雪乃を車に乗せるのを忘れました

こっそり付け足しておきました

ご容赦下さい

鷹倉さん巫女さんになりました

ほんの30分前に

書きながら設定ができていくという恐ろしさ

全然関係無いのですが

戦後間もない頃に

零落した名家のお嬢様4姉妹を全員愛人にしたという成り上がり男がいるそうです

一番下の妹は、まだ16歳ぐらいだったとか

エロマンガかエロ小説の世界ですな

しかも、姉妹で子供を産ませているし

事実は小説よりも奇なりというか

興味のある方は、こちらをどうぞ

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%A4%E5%BA%B7%E6%AC%A1%E9%83%8E#.E5.A5.B3.E6.80.A7.E9.96.A2.E4.BF.82

629.母帰る

さて現状の説明が終わったところで、あたしたちの立場だけれどね

現在のあたしたち黒い森は香月様の庇護下にあるわ

支配下でなく庇護下と、ミナホ姉さんは言った

判っているよジッちゃんに付いていくしかないってことだろ

オレの言葉に、ミナホ姉さんは

あなたはシンプルな考えで、腹を括ることのできるタイプだけれどこれからは違う考え方もして

あたしたちが黒い森が、生き残るためにはどうしたらいいのかそれだけを最優先に考えて欲しいのよ

それって、つまりジッちゃんを裏切ることもありえるってこと

苦笑するミナホ姉さん

まさか今の状況で、それは無いわよただ、頭の片隅には、どんな可能性も残しておかないとダメよあたしたちは、香月様に庇護していただいている身であっても、香月様の臣下ではないのだから香月様に何か大変なことが起きたとしても、一緒に心中するわけにはいかないわ

オレは、個人的にジッちゃんのことは好きだ

オレの女には、香月家の娘であるみすずと瑠璃子がいる

香月セキュリティ・サービスの一員として、ジッちゃんの臣下である翔姉ちゃんやレイちゃんも居る

オレはジッちゃんに何か危険なことがあったら、できる限り手助けしたい

でも、そのことで香月家とは、関係の無いオレの家族

メグやマナやアニエスたちに生命の危機が及ぶというのは、絶対に避けないといけない

心の中に越えてはならないラインを決めておいて

そのラインまでなら何があっても、ジッちゃんに付いていく

しかし、そのラインを越えるような事柄を要求されたらジッちゃんを見捨てるようなことになったとしても、仕方ないと諦める

香月様に申し訳ないとは思わなくて良いわ閣下も、覚悟なさっているはずのことだから

ジッちゃんも香月家とグループ企業の人たち全員の命を預かっている

より多くの命を守るためなら、犠牲を強いることもいとわない

て、ことはジッちゃんの方も、ことと場合によってはオレたちを見捨てるかもしれないってことだね

それがオレたちと香月家との関係だ

そういうことよだから、あたしたちは一刻も早く、瑠璃子さんとみすずさんを確保したいのよ

2人とも学校へ行ったままだ

2人があなたの側にに居ることは、あたしたちにとっての一番の保険だから

ジッちゃんの最愛の孫娘みすずと瑠璃子

2人がオレの側に居る間はジッちゃんは、無茶なことはできない

みすずと瑠璃子は今、どこに

判らないわ香月セキュリティ・サービスの警護が、お迎えに行っているはずよでも、真っ直ぐにここに来るかどうかは判らないわ

みすず様は可能な限り早く、こちらに向かうとおっしゃっていましたが

でも現状が現状でしょ2派のヤクザ屋さんのグループが、鷹倉様のお嬢様たちを探しているんだから香月セキュリティ・サービスが、フル回転で情報攪乱しているのよ翔お姉さんが、あなたの学校へ現れたでしょ

アーニャを連れて行った

翔お姉さんが、あなたの学校へ向かったことで学校とそのすぐ近くにあるあたしたちのお屋敷が注目されたのよほら翔お姉さんは、香月様の専任警護役だった方だから

ああジッちゃんの行く場所に、先乗りして安全を確かめる

オレは、瑠璃子の父親の葬儀の時に、その様子を見せてもらった

香月様が、鷹倉様をここにお連れする翔お姉さんが、この地区へ向かったことで、ヤクザ屋さんはみんなそう思ったわけそして、何としても阻止しようとねこの屋敷に足を踏み入れるということは、鷹倉様が娼婦になるということだから

だから、さっきあんなにたくさんのヤクザたちが、正門前に集結していたのか

でも翔お姉さんは、このお屋敷には来ないで、あなたたちの学校へ行ったそしてニキータさんを回収したヤクザ屋さんたちからすれば、肩すかしよね

でも、判らないことではないわヤクザ屋さんたちの襲来で、香月セキュリティ・サービスは手が足りないからニキータさんの監視に人が廻せないのよというか、恭子さんとの対決に振り分けている人員を本部に戻したいのよだから今回の件が片付くまで、対決は一旦停止ということで恭子さん側に申し入れをしたということになっているの

対決の一時停止

そしてその申し入れを受け入れてくれた恭子さんに対して敬意を表するために、香月セキュリティ・サービスの現場トップである翔お姉さんが、自らニキータさんを迎えに行った

ていうか一番、厄介なのは恭子さんたちを逮捕したがっている公安警察よヤクザ屋さんたちの乱入でゴタゴタしている時に、ニキータさんを連行したりしないように、先に確保したのよこれ以上、面倒なことが増えると困るから

ま、ニキータさんのことは、心配しなくても平気よ翔お姉さんがちゃんと守ってくれているわ

うん翔姉ちゃんが、わざわざ来てくれたんだ

任せておけば、安心だ

それとヤクザ屋さんたちが、フリーの人たちを雇いまくっているわ

だから、ダダドムゥさんや、腕の立つ敵に廻すと怖い人たちは、先にあたしたちが雇い入れたのよ言ってたでしょ、あの人

ああ私はお金で動くって、叫んでたよな

腕が立つだけならまだしも、こちら側の情報にも詳しいものねヤクザ屋さんに付かれると困るのよ

香月セキュリティ・サービスの組織の内情や、どんな警護人がいるのかもよく知っているはずだ

それで遠藤と一緒に、うちの学校へ

それはついでよあの人は見た目が派手で、闘い方がマンガチックだからニキータさんや美智さんたちと闘ったら、素人目にはアクション俳優たちのプロモーションにしか見えないでしょ

確かにダダドムゥおじ様の動きは、変態的過ぎる

外見の派手なアーニャとイーディに、小柄な和風美少女なのに強すぎる美智

学生の目から見れば派手派手し過ぎて、格闘ショーにしか見えない

さて美智さんに、1つ、悪いニュースを伝えないといけないのよ

ミナホ姉さんが美智を見る

何でございましょう

ヤクザ屋さんに雇い込まれたフリーの人の中に元・香月セキュリティ・サービス警備部長の山岡さんの名前があったわ

わたくしには関係の無いことです

しかし、ミナホ姉さんは

そして山岡悦子という名前もあったわ

悦子

美智さんのお母様今は、山岡悦子という名前を名乗っているようね

そうだ美智の母親の名前は、工藤悦子だった

山岡元部長とは不倫の関係にあった

そして、山岡が谷沢チーフに香月セキュリティ・サービスから叩き出された時に

それこそわたくしには関係の無いことです

父上とちゃんと離婚協議もせず何をやっているんでしょうあの方は

吐き捨てる様にそう言う

しかし香月セキュリティ・サービスの中核を知っていた敵が、2人もいるというのは困りますね

美智は実母を敵と呼んだ

それだけじゃないわあの2人、良信のことも知っているでしょ

ああ山岡も美智の母も、オレの存在を知っている

だから学校まで含めて、最大レベルで警戒態勢に入っているわ

オレのことを知っているのならオレとメグや寧との関係も

瑠璃子の日舞発表会の劇場や、お台場のホテルでオレたちと接触しているのだから

メグや寧たちを残して来たのは、良くなかった

大丈夫よヤクザ屋さんたちに付いたと言っても、山岡さんに大きな発言力があるとは思えないし彼らの目的は、鷹倉様でしょうちの学校みたいな普通の高校に、鷹倉様がおいでになられるはずが無いでしょヤクザ屋さんたちが、強行的な捜索を仕掛けて来ることは無いわ

よほどの確信が無ければ無理矢理乱入してくるようなことは無いか

ところでどっちなのですか

裏切り者2名は2つのヤクザ・グループのどちらに雇われているのですか

ヤクザの派閥は鷹倉神社を乗っ取って、お嬢様を自分たちの都合で政略結婚させようとしているやつらと

それに敵対して、お嬢様の保護娼婦になるのを思いとどまらせようとしているグループの2つに別れている

鷹倉家を乗っ取った方よ

つくづくサイアクの選択しかしない方々です

残念そうに美智は言った

でも実際のところ、どうなんだろう

オレはふと思う

これってさつまり、鷹倉神社を乗っ取った方のヤクザをやっつけてさ、お嬢様を神社に帰したら、全部、解決することなんだよねそれなら、万事問題無しでお嬢様は、娼婦になったりとなくていいわけだろ

オレの言葉にミナホ姉さんは

ああさっき、言い忘れたんだけれど

ちょっと困惑した表情をする

というより、さっきあたしが話したことと矛盾することかもしれないけれどね

さっきの話

ああ、ジッちゃんに盲信してくっついて行くのでは無く

ちゃんと一線を引いて、家族が生き残ることを第一に考える

さっきの話はあくまでも、他にどうにも選択肢が無くなった時のことよ家族に生命の危機を感じてどうしても、香月様を裏切らざるを得ない状況に陥った時だけ判るわよね

ミナホ姉さんが、ジッとれを見つめる

そこまで事態が切羽詰まっていない場合はあたしたちは、あくまでも香月様の庇護下に置いていただいているのだからどんなことでも、香月様のご命令に従わないといけないわ

どんなことでも

ジッちゃんが間違っている場合でも

どうして香月様が間違っているかあなたに判断できるの

あたしたちは特に、あなたは、起こっている事件についての全ての情報を知っているわけでは無いでしょあなたは、勝手な判断を許される立場にはいないわ

鷹倉家のような格式のある名家のお嬢様が娼婦になることを決心なさったのそして香月様も、それを承認なさったわその裏には、あたしたちの知らない大きな理由があるのかもしれないあるいは、無いのかもしれない

あたしたちがそんなことを詮索するのは失礼でしょあたしたちは、この件に関しては香月様のご命令通りにするしかないのよあたしたち自身は、判断してはいけないわ例えそれが、倫理的には許されないような卑劣な命令だったとしてもね

オレたちは考えない判断しない

あたしたちが注意するのは自分たちの生命に関わることだけよ他のことは、全て命令通りにそれができなければ、裏社会では誰からも信頼されないわよ

判っていると思うけれど鷹倉家のお嬢様を娼婦に堕とすのは、あなただからね

香月様は、ご自分ではなさらないわよ娼婦を教育するのは、娼館の仕事だから

ジッちゃんは、とても高齢で男性機能が無い

そのお嬢様が黒い森の娼婦になるのなら黒森家の男子として、オレが

お客様のお相手ができるようになるまであなたが、徹底的にセックス・サービスを仕込むのよお嬢様が、泣こうが喚こうが容赦してはいけないわ

それはオレの仕事なんだ

ここで黒い森の娼館で、生活させてもらっている以上

ミナホ姉さんの弟にしてもらった以上

で何であたしまで、ここに連れて来られたわけっ

あたし、全然関係無いじゃないそのヤクザとか何とか神社のお嬢さんとか

あら、言わなかったかしら香月セキュリティ・サービスが人手不足だって

それは聞いたわ

そういうことよあなたに普段付いている監視の警護員まで、別用でかりだされているわけだから、しばらくここに居て欲しいのよ

しばらくっていつまでよっ

雪乃は不機嫌になる

このお屋敷には、ロクな思い出が無いのだろう

明日の日曜日の間には解決するわよそんなに長引くようなことでは無いわ

ご飯はうまい棒以外も出るわよね

雪乃はここで監禁されている時に、うまい棒しか食べさせて貰えない時期があった

雪乃さんこそ夜中に台所に忍び込んで、盗み食いとかしないでよ

あ、そんなこともあったなあ

安心なさいあたし、あなたには健康的な赤ちゃんを産んでもらいたいから食事は保証するわ

あっそそれは良かったわ

あなたのお腹に居るのはあたしの子だものね

ミナホ姉さんは雪乃の父親に、妹さんと自分のお腹の中にいた子供を奪われた

だから雪乃を妊娠させることで、その2人を取り戻そうとした

ミナホ姉さんにとっては、雪乃のお腹の子は亡くなった人たちの生まれ変わりなんだ

雪乃とにかく食堂へ行こう

オレも昼飯食ってないし腹が減ったよ

学食でパンを売り切った後遠藤の騒ぎがあったし

飯を食うヒマが無かった

それとも雪乃はいらないのか

いらないわけないでしょっ

雪乃が、オレを睨んで喚く

美智も行こう

美智の表情が暗い

やはり母親が敵に廻ったことがショックなのだろうか

じゃあ、ミナホ姉さん食堂へ行くよ姉さんも、何かいる持って来ようか

克子にコーヒーを頼んでくれる

コーヒーだけでいいの

今はちょっと集中したいから

オレたちは、居間から食堂へと向かった

パパ、パパ、パパぁ

ね、パパセックスしますのすぐにします

ゴメン、アニエスオレたち、まだ昼ご飯を食べていないんだよ

そうよ今はダメよっ

厨房から、克子姉の声がする

美味しそうなスープに匂いが漂って来る

ホントは学校で食べるはずだったサンドイッチとでも、せっかくだから簡単にスープも作ってみてるとこあ、マナちゃん飲み物出してあげて

マナも台所に居たのか

お兄ちゃん、麦茶でいい

美智お姉ちゃんも

雪乃さんは、麦茶とか飲む人だったっけ

雪乃はムッとして

麦茶でいいわよ今、刺激物は避けてるの

相変わらず姉妹の間に、おかしな間がある

マナは、コップに注いだ麦茶をお盆に乗せてオレたちに持って来てくれた

うんサンキュ

ありがとう、マナ妹

礼ぐらい言えよ雪乃

あ、そうだミナホ姉さんが、コーヒーが欲しいってさ

判ったあたしが届けるねっ

明るくマナが答える

すっかり、克子姉の下でお屋敷の家事を担当している

いや、本来ならメグがお屋敷の主婦になるはずだったんだ

でも、メグには学校や部活があり

新しい学校の決まらないマナはずっとお屋敷の中に居て、克子姉と一緒に家事をする機会が多い

この1ヶ月は、克子姉がパンの指導で忙しいから家事が当番制になっている

そんなんでますます、マナと一緒にアニエスもお手伝いしてくれているし

当番制になって、ぐんぐん料理の腕を上げているのが瑠璃子だ

というか、あいつには元々、料理の才能があったように思う

寧は基本的に、何でもそつなくこなす人だし

要領が良くて、手先も器用で頭の回転も速いから

だから、この4ヶ月間でメグだけがちょっと停滞している感じになってしまっている

これもまたメグの焦りの原因になっているんだろうなあ

ご主人様わたくし、電話をして参ります

美智が、オレに言った

はい、兄と姉に行方不明だったあの方の所在が判ったわけですから

そうだな連絡した方がいいなあれ、お父さんには伝えなくていいのか

父はおそらく、もう知っているでしょう

工藤父は、香月セキュリティ・サービスの裏工作をする担当責任者だ

ミナホ姉さんが知っているのなら同じ情報は、工藤父にも伝わっている

美智は席を立ち食堂の隅へ

携帯を取り出し電話を始める

その横をお盆にコーヒーを乗せたマナが通り過ぎる

アニエスが、台所からワゴンでお皿やスプーンを持って来て食卓に並べている

あそうだ

オレも電話してみるか

みすずと瑠璃子

多分、一緒に居ると思うからみすずの方だな

携帯を取り出しコールする

はい、みすずですっ

みすずの声は、最初からハイテンションだった

あ、オレだけど今、どこに居る瑠璃子も一緒か

はい、旦那様一緒です美子ちゃんもです今、車で学校から外に出たところですわ

今出たのか

もう授業が終わって随分経つだろ今まで学校に居たのか

それが迎えの車を待っていたんです

香月セキュリティ・サービスは、2グループのヤクザ屋さんの対応に追われて人手不足か

ようやくレイちゃんが来てくれました

朝は瀧さんが、瑠璃子の警護に付いていたんじゃなかったっけ

いや、香月家の令嬢2人の護衛だ

ここは、エース級のレイちゃんを寄越したのだろう

というか警護車輌が6台ほど付いて下さっていますわ

完全警護か

そうだなヤクザ屋さんたちは

みすずたちを誘拐して、鷹倉家のお嬢様との交換を持ちかけてくる可能性がある

で、みすずたちは今、どこへ向かっているんだ

もちろんそちらのお屋敷ですわ

ここ

ここに来るのか

わたくしたちが旦那様をお守り致しますから、もうしばらくお待ち下さい

いやいや守るべきは、お前らだろう

ところで鷹倉家のお嬢様っていう人は、今、どこにいるんだ

さあ存じ上げません

それも判りません

みすずも知らないのか

だって、わたくしたち今、陽動をしているわけですよね

陽動

お祖父様のことですから皆様に判らないように、密かに動かれているはずですわ

なるほどそうか

完全警護で、目立つ行動をしているってことはみすずたちは囮なんだ

オレたちにも判らないように、水面下でジッちゃんは行動している

とにかく電話ではなんですから、後はそちらに着いてからお話し致します

あ、待って下さい瑠璃子に変わります

もしもし、お兄様ですか

ああ、どうした何かあったのか

瑠璃子は、観察力に優れている何か気付いたことでもあったのか

今日、調理の授業でクッキーを焼きました後で召し上がって下さいませ

わたくしたちには、何も問題はございませんわ

瑠璃子の声が、穏やかに告げる

どなたも、わたくしたちを襲うような、愚かなことはなさいませんわ

あちらも全面戦争は、お嫌でしょうから

みすずや瑠璃子に手を出したら、ジッちゃんも容赦はしない

ヤクザ屋さん対香月家の全面戦争になる

ああいうお仕事の方たちはスポンサーがいらっしゃらないと成り立たないですから

それがヤクザ屋さん

そういうスポンサーのほとんどは、香月家の旧知ですわあちらも、無茶なことはできないんです

後30分ほどで戻りますわお兄様

瑠璃子はオレにそう言った

うーん、順当に風呂敷を拡げていっている自分が怖い

630.さとし

て、瑠璃子が言ってたよ

食堂で昼食を摂りながら克子姉に言う

まあ確かに香月家とガチでケンカしようとするヤツはいないよないくらヤクザ屋さんだからって

オレは食後の麦茶をゴクゴク飲む

まあ、麗華さんが警護に付いていて下さるのだから、心配は無いと思うけれど

克子姉は、顔を曇らせる

普通に理屈で考えれば判ることが判らない人もいるのよねヤクザ屋さんて

瑠璃子ちゃんは今まで、まともな人としか見て来ていないでしょ名家の警護役に付いている人なんて、優秀な人ばかりだから

でも、ヤクザ屋さんて基本的な損得勘定すらできない人もいるのよ

え頭が悪いってこと

というよりメンツが一番大切なのよメンツを潰されるぐらいなら、死んだ方がマシって思っているのよねそれとわざと自分たちより強い立場の人にケンカを売って、名前を上げようとしたりとにかく、論理的じゃない行動をするのよ

それじゃあみすずや瑠璃子たちは、ヤバいんじゃないのか

ご心配は及びません

美智が麦茶の入ったガラスのコップを、音を立てずにテーブルに置く

ヤクザの本質は、そうであってもヤクザに雇われている実践部隊の人間は、わたくしたちとは、全くレベルが違う存在ですので

レベル

香月セキュリティ・サービスの中でも、香月家の皆様や名家の方々の直接警護をする方々をトップ・エリートと呼ぶのはご存じですね

レイちゃん、翔姉ちゃんそれに、ジッちゃんの専任警護人の大徳さんと張本さん

それとトップ・エリート全体を指揮する谷沢チーフ

オレが顔と名前を知っている人は、その人たちだけだけど

シザーリオ・ヴァイオラとの戦いの最後に、トップ・エリートが全員揃ったのも、この眼で見ている

言葉通り最高級のエリート部隊ですアメリカの大統領を護るシークレット・サービスに肩を並べる能力を有しています

国家レベル

その戦闘力、観察力、洞察力、知識と経験連携し合うチーム・ワークどれを取っても、日本の地方のヤクザ組織ごときに所属している人間とは比較になりません

そうね麗華さんたちが、国家の代表オリンピック選手だとしたら、ヤクザ屋さんたちの雇える人は県大会の上位入賞者ぐらいの力かしら

克子姉が、スポーツに例えて言った

まともな能力を持っている人間ならヤクザ組織でなく、もっとまともな組織に所属しますトップ・エリートクラスの人材なら、スカウトされることもありますし

美智の言う通りレイちゃんも、翔姉ちゃんも、谷沢チーフにスカウトされたと聞いている

この世界では才能の有る人間は、引く手あまたですから

でも香月セキュリティ・サービスとか、そういう表の組織に属したくないって人もいるだろダダドムゥおじ様とか美智のお父さんだって

工藤父は、ジッちゃんの下で働いているが香月セキュリティ・サービスという組織に属することは嫌っている

自分の判断で自由に動くことができるようにあくまでも本人は、工藤探偵事務所の所長だと言い張っている

はいご主人様のおっしゃる通りです能力があって、組織に縛られることを好まない人たちは皆さん、フリーとして独立しています

そういう方たちは、自分の腕に自信のある方たちですですからヤクザ組織ごときの支配下に入ることは決してございませんよほどのお金を積まない限りは

ダダドムゥおじ様みたいにお金で左右されるフリーの人材はとっくに香月セキュリティ・サービスが抑えているだろう

谷沢チーフは、そういうことは徹底的にする人だ

すなわち始めからヤクザ組織に属しているような人間には、大したことがありませんしお金で動く人はすでに抑えていますさっき、門前で対面した人たちにも脅威を感じるような人はいませんでした

いや、でもお前の心月に耐えた人がいたじゃないか

確か安藤とかいうヤクザ屋さんだ

耐えただけですあの方では、わたくしには勝てません

美智は、無表情でそう答える

これは言っていいのだろうか

敵のヤクザ組織には香月セキュリティ・サービスの元・警備部長の山岡さんと

美智の母親がいる

あの2人はこちらの手の内を知り尽くしているはずだ

ご主人様のご心配はごもっともですしかし、問題にはなりません

2人とも作戦の最中に香月セキュリティ・サービスを解雇されるような人間ですあの方たちの動向は、だいたい想像が付きます対応もできます

美智がそう言うのなら谷沢チーフが、山岡さんたちの行動を見逃すはずがない

心配無用ですわたくしたちは、ここで、みすずお姉様たちの到着を、ただ待っていればいいのです

まあ、多少のイレギュラーなことがあったとしても何とかなるだろう

谷沢チーフや翔姉ちゃんたちのぬかりの無さは、オレもよく知っている

じゃあ、パパ、アニエスとセックスしますの

アニエスが、オレにしがみついてくる

何で、今日はそんなにセックス、セックス言うんだよ

ちょっと、いつもよりも求め方が露骨だ

だって早くしないと、真緒ちゃんが起きちゃいますの

あ、そうか今日は渚の店には付いてってないんだっけ

土曜日でオレの帰りが早いからお屋敷に残るって言っていた

そう言えば姿が見えないけれど

先にお昼を食べてお昼寝していますの

アニエスはそう言った

パパは真緒ちゃんの前では、セックスのことは言っちゃいけないって

そりゃ真緒ちゃんは、まだ子供なんだから

幾ら何でも、幼女の眼の前でセックスの話題とかは

セックスもダメですの真緒ちゃんの前では

当たり前だ

だったら真緒ちゃんが眼を醒ます前に、したいですの

セックス依存症が進行したんじゃないかって、ドキドキしてたよ

いや、今はダメだよもう15分もしないうちにみすずたちが到着するからさ

そしたら、みんなも一緒にセックスすればいいですの

アニエス、ちょっとオレの膝の上に座れ

アニエスにはセックスと別のスキンシップを与えないといけない

アニエスは、オレと対面してオレの膝に跨がってこようとするが

違う違う、後ろ向きオレに背中を向けて、座るんだ

アニエスが、ちょこんと座る

アニエスの金髪の長い髪クンクンと匂いを嗅ぐと、フローラルな香りがする

マナ、ヘアブラシを取ってくれよ

ヘアブラシ

うん、確か隣の部屋の椅子の上に置いてあったぞ

誰が忘れていったんだろう

マナが、隣の部屋からヘアブラシを取ってきてくれる

誰のだ

メグお姉ちゃんのだね朝、バタバタしてたから

ああ、朝練に行くのに慌てて髪を梳いて、ブラシを置き忘れたんだな

アニエスお前、午前中は何していたんだ

えっとマナお姉ちゃんと、お勉強してそれから、お庭をお散歩して

髪の毛が、乱れているぞ

ああ、お兄ちゃんそれはさっきあたしとアニエスで、パン工房の片付けを手伝ったからだよ

アニエスの代わりに、マナが言った

空のパッド運びかそれで、こんなになったのか

あそこに入る時はアニエスちゃん、お兄ちゃんの真似をしてコックさんの帽子を被るから

髪の毛を落としたらいけませんのパンを作るところですから、清潔第一ですのっ

えっへんと、アニエスは言う

え、オレの調理帽を被っているのか

うん、ずっぽり被ってたよアニエスちゃん

マナが証言した

そうかそれは良いんだけど髪が乱れているから、オレが梳いてやるよ

オレはアニエスの金色の髪を、ブラシで梳っていく

細い美しい乳白色の髪

上から下まで、何度も梳く

ぽわーんとした声で、アニエスは言った

何かとっても不思議な気持ちですのパパ、これは何という気持ちですの

アニエスは、オレに尋ねる

幸せな感じってやつでしょ

テーブルの端で携帯をイジッていた雪乃が言う

はいですの今のアニエスは、幸せなのかもしれませんの

可愛いな

オレは丁寧に、髪を梳き続ける

ほーんと、面倒見がいいわよねあんたってさ

携帯の画面を見たまま雪乃は言った

あ、あたしもちょっと肩と腰がこってるかもしれないわ

マナもお兄ちゃんにおっぱい、揉み揉みして欲しい

やっぱりセックスしますの

ほら、またアニエスの興味が、そっちへ戻ってしまう

後でな

真緒ちゃんが起きちゃいますの

真緒ちゃんは8時前に寝るだろその後にたっぷりしてやるから

今日は誰の日だ

あマナか

マナとみすずだったかな

うんいいよアニエスちゃんも招待するから

ああ、とにかく今は、色々立て込んでるみたいだから状況が落ち着いてからだ夜になるまでは、動きようがないから

ついでに雪乃さんもする

マナは姉に言う

ほら、この間の時は雪乃さんとだけ、お兄ちゃんできなかったでしょ

マナは白坂創介の私刑の時のことを言っている

あたしとメグお姉ちゃんとアニエスはお兄ちゃんとしたけれど雪乃さんだけ、あんまりにも態度が気持ち悪かったから、お兄ちゃんができなくなっちゃったよね

雪乃が、キッと妹を睨む

あたしは何も悪くないわよっ

うん、悪くはないよあの時の雪乃さんが、気持ち悪かったのは顔とか身体とか心とか性格とか、自分じゃどうしようもできないわけだしさ雪乃さんが気持ち悪かったのは、雪乃さんのせいじゃないこういうのは、雪乃さんのお父さんとお母さんを恨むべきだよね

ちょっと、舞夏あんたね

雪乃が文句を言おうとするがマナは

舞夏知らないよ誰それ

きっぱりと、そう言い張る

悪いけれどあたしは過去は全て捨てたからあなたの妹では無いよあたしたち、全然関係無い人なんだからねっ

まあ何でもいいけどさ雪乃さん的には、あの時のリベンジをしてやろうとかっていう気持ちは無いわけ

リベンジ

お兄ちゃんとセックスだよっまさか気持ち悪すぎて、お兄ちゃんが勃起できなかったなんてままで済ましておくわけなの

あ、あたしはだって、あたしは

自分の下腹部を撫でる

もう安定期なんでしょセックスしても平気なんだって聞いたけれど

平気だからって、必ずしなくちゃいけないことではないでしょっ

まそりゃそうだね

姉妹は、真っ正面から向き合う

でも、ほらお兄ちゃんは、雪乃さんともう一回したいと思ってるだろうからさ

兄ちゃんにとって雪乃さんは、特別だから

特別

アニエスはパパにとって、アニエスは特別ではないのですの

アニエスが、心配そうな顔でオレに尋ねる

特別だよ特別に決まっているだろ

オレは、笑ってアニエスを抱き締める

ホッとするアニエス

そうだよお兄ちゃんにとって、あたしたちは特別特別な存在にしてくれている

でも、雪乃さんはあたしたちとは違う存在として、特別なんだよねお兄ちゃんにとっては

そんなの、あたしの知ったことじゃないわよ

低い声で雪乃は言う

そういうこと言ってるんじゃないってホント、判らず屋のまんまだねっ雪乃さんは、もう一度お兄ちゃんとしたくはないのかって聞いているのよっ

マナが、姉を問い詰める

パパ、おしっこ

ドアを開けてタオルケットをズルズル引きずった、真緒ちゃんが現れる

真緒漏れちゃいそうなの

こいつはマズい

アニエス、どいて

ほらっ、真緒ちゃん急いでトイレに行くよガマンできるか

あわわわわわ

そして、オレは生まれて初めて

幼女を抱きかかえてシーシーさせた

まあ放尿シーンは、みすずたちで見慣れているんだけれど

幼児のおしっこは

はふぅいっぱい出た

満足そうに、真緒ちゃんは言う

パパ、パンツ上げてっ

オレは真緒ちゃんの子供パンツを引き上げる

うっしっしパパ大好きっ

ダメだって手を洗ってから

抱きついてこようとする真緒ちゃんに、オレは言った

真緒ちゃんが起きてきたので、セックス談義は終了となる

おしっこしたばかりの真緒ちゃんは、コクコクとカルピスを飲んでいた

ぷはーっ

ちょっと、お行儀悪いよ真緒ちゃん

ママがねビールを飲んだ後に、いつもこうしているのっぷはーって

渚の真似かホント、子供は親を見ているんだな

でも、ママしばらくはお酒が飲めないって言ってた

ああ妊娠してるのよねあの人も

お前は飲んでないだろうな

当たり前でしょ馬鹿にしないでよっ

その頃真緒ちゃんのお目ざめで、セックスができなかったアニエスは

オレの背中に、ギュッとしがみついている

変な唸り声を上げて

おい、オレの背中に腰を押し付けるな擦るな

そんなアニエスを見て、真緒ちゃんはカルピスのコップを置いて

アニエスちゃん、もうちょっとそっちに行って

真緒も、パパの背中をギュッとしますのっ

ニタァと微笑む

アニエスは自分は真緒ちゃんのお姉ちゃんだと思っている

真緒ちゃんがしがみつく空間を、開けてあげた

うひひひっ、パパっ

オレの背中にしがみつく娘が2人になった

正直重い

重いが仕方無い

ミーン、ミンミンミンミンミンミンミー

真緒ちゃんはセミになっている

そんなこんなしているうちに

みすずちゃんたち、到着ね

食堂の監視モニターを起動させていた克子姉が言った

お屋敷の周囲の監視エリアに、みすずたちの車が入って来たらしい

尾行車は

3台よただ監視しているだけならいいんだけれど

でも、確かみすずたちの警護車輌は6台もいるはずだよ

さっきの電話でそう言っていた

3台で香月セキュリティ・サービスの6台に仕掛けたりはしないだろ

でもほらさっき言った通り、メンツを通すためにバカをやるのがヤクザ屋さんだからね

問題無いです

ええ、最終的には麗華さんが何とかしてくれることは判っているけれど何かしら仕掛けてくるかもしれないわ

そういう面倒くささがあるのよヤクザ屋さんには

克子姉は溜息を吐く

それも一番頭の悪い方法を選んだりするのこっちが後々、大変な

さっきもさ門が開いたら、無理矢理屋敷の敷地へ突入して来ようとしたわよね、あの人たち

あ、それはメンドくさいなあ庭の中とかに入り込まれたら

さっきは、美智の心月で、ことごとくヤクザたちを昏倒させたから侵入者は居なかった

でも、レイちゃんたちのグループにそういう技が使える人はいないし

美智ちょっと門まで行こう

オレは、美智に声を掛ける

門の中に飛び込まれても1人2人なら、美智が倒せるだろもっと多かったら、また心月だ

とにかく、みすずたちの車はササッと屋敷の中へ入れないといけない

判りました参りましょう

美智は、スッと席を立った

しかしわたくし1人だけで、構いませんでしたのに

玄関から外に出て正門までの道を歩く

車なら、あっという間だが歩くと結構ある

坂道だし

お屋敷全体が少し小高い丘になっているからとにかく下って行く

いや、こういう時はオレも行かないと美智だけ行かすのは悪いよ

わたくしはご主人様と、2人きりで並んで歩いてみたかったものですから

ポッと顔を赤く染める美智

ああ、それで食堂では、1人で行くとは主張しなかったんだ

じゃあ、手を繋いで歩こうか

美智と手を繋ぐ

意外と、華奢な小さな手だ

ちょっと体温が低いな

あの、ご主人様

ん、何だ

わたくしも、幸せです

しばらく行くといつもの正門の鉄の扉が見えてくる

しかし、こうやって見るとでかいな

いつもは車の中から見ているから

高さも5~6メーターはある

鉄格子もかなりブッ太い

これ、相当重いんだろうな機械だからいいけれど、人力じゃ動かないだろ

オレは、そう感想を述べる

これって停電とかになったら、動かないだろそしたら困るよな

大きな地震とか起きた時に、屋敷から車で脱出できなくなる

その場合には、自家発電装置に切り替わるのだと思います

美智は、そう言う

なるほどそういう仕組みになっているんだ

門の扉が鉄格子なのは少しでも扉全体を軽くするためか

守りのためなら、全面鉄の塊にして塞いでしまった方が防御力がアップするだろうし

これは車の中から、肉眼で外の様子を確認できるようにだと思います

監視カメラの映像だけだと、死角があるかもしれないもんな

扉の開閉をする前に、外の様子が自分の眼で見えるっていうのは必要なことかもしれない

美智はすごいな

美智は、オレに身体を寄せてくる

多分、カメラでマナたちが見ているぞ

はい、だからこれだけです

手を繋いで、身体を寄せ合うだけで美智は満足のようだった

あ、来たな

向こうから車のやって来る音が聞こえる

1台じゃない10台近いエンジン音だ

つまりみすずたちの警護車輌6台とヤクザ屋さんの追尾車輌の3台だ

何も問題が無ければよろしいのですが

まあ大丈夫だろ

ブルルルルルルッ

まずは6台の香月セキュリティ・サービスの車が門の前に到着する

ああ、真ん中の車がみすずたちの車だな

助手席にレイちゃんが乗っているのも判る

お屋敷の中に入るのは、みすずたちの車だけだ

6台の車は車列の配置を変える

みすずたちの車だけが、門に正対し他の車は、ガードするように周りに

あ、レイちゃんがこっちに気付いた

ギャガガガガガガガッ

香月セキュリティ・サービスの車の後ろに居たヤクザの車の内

1台が急加速して、突っ込んでくる

ご主人様、伏せて下さい

美智が、オレを地面に押し倒す

ドゥガガガガガッシャァァァンッッ

ホンモノの馬鹿だ

飛び込んで来たヤクザの車は香月セキュリティサービスのカード車輌の間を突っ切り、お屋敷の正門の鉄扉に全速力で追突したッ

ギュゥゥゥゥゥゥゥンンッ

ボンネットとバンパーをへしゃげて、フロントガラスも大破している

それでもなお、車体を鉄扉に押し付けて後ろのタイヤを激しくホイールスピンさせている

この衝撃じゃ、門そのものが歪んで開かなくなったんじゃないのか

門に激突した車の後部座席のドアが、ガチャリと開いて

強面のヤクザが下りてくる

どこ見てんじゃい、ワレぇぇぇオメエのせいで、ワシの車がトンデモねぇことになっとる

どう見てもあなたの車が勝手に突進して、門に激突しています

みすずたちの車は関係ありません

おい、コラぁぁちょっと事務所まで顔貸さんかいっ車から下りろってーのっ誠意を見せんかーいボケぇぇぇぇ

ヤクザはそう喚きながらピストルを取り出した

オモチャじゃあらへんどぉぉぉチャカやホンモノのチャカやでぇぇ出てこんと、撃つぞぉぉぉ

ヤクザはみすずたちの車に向かって、ピストルを向ける

その手は、プルプル震えていた

美智ここから手裏剣であのピストルを落とせないか

オレが、美智に言うと

いえ、あの男の他にまだ車の中に何人かいます

美智には感じられるらしい

わたくしはご主人様のガードを努めます下手に手を出したらみすずお姉様に叱られてしまいますわ

もし、敵が美智の攻撃に気付いて門の内側のオレたちに発砲してきたら

それでオレがケガをしたらみすずに顔向けができないということか

みすずの車の中では、レイちゃんが困惑した顔をしている

とりあえずは、自分が外に出て対応しようと思ったらしい

レイちゃんはドアを開こうとするが

ダメだダメだそれが、こいつらの狙いだよ

不意に声がした

誰かが、拡声器で喋っている

その車に乗っている限りはそんなチンケなピストルなんて問題ないだろ香月家の姫君を乗せる車だ、防弾性能は完璧のはずだ

敵の目的は、あんたが外に出る時を狙ってつまり、車のドアが開くのを待っているのさ

声の主が近付いて来る

そもそもこういう輩の退治は、あんたみたいな綺麗なお姉さんがやっちゃいけねえんだよこういうドブ仕事は、オレがやることになってんだから

オレたちの位置からも男の姿が見えた

そう美智の父、工藤優作だ

何だオメェは、いきなり現れて勝手なこと言ってんじゃねぇぞっだいたい、何じゃ、その格好は

工藤父は何故か

変装だよ、変装お前らみたいに小汚いやつらがうろついているってんでわざわざ変装して来たんだよっ

世界的に有名なポケモン・トレイナーの衣装を着ていた

何でヒロシの格好をしとるんじゃい

サトシだぁぁっ

工藤父は、拡声器をポイッと投げ捨てる

そういうお前さんだってその格好は、コスプレだろ

ワシのどこがコスプレじゃい

激高するヤクザ

なぁんだ違ったのかオレはまたてっきり、ゴルゴ13のラオスのけしの会のバーテンダーのコスプレをしているもんだと思ったぜ

瞬間工藤父の身体が奔るッ

お、おいっ

慌てて、ピストルを向けようとするヤクザ

しかし、次の瞬間ヤクザの手首に工藤父のキックが決まっていた

蹴り上げられ、宙を飛ぶピストル

マッハ・パンチッ

工藤父の拳がヤクザを打ち抜くっ

うげぇぇぇぇ

鉄の扉にブッ飛ぶヤクザ

ゲットだぜ

キメ顔で、そう言った

1度目のヤクザ(安藤)たちが、鷹倉家お嬢様を娼婦にさせたくない派のグループで

今度は、鷹倉神社を乗っ取った方です

この作品は半分、日記に近いので

この間、遠藤が街宣車に乗って来たのはたまたま渋谷に行ったら、街宣車が来ているのを見たからです某宗教団体の

コミケの日にも、国際展示場の駅前に居たな某政党の

今日、何でポケモンかというと電車の窓から、ポケモンセンターが見えたからでした

ナポレオンが出て来たのは、よく判りませんがニャポレオンになったのは、その前日にブラック羽川さんを観たからだと思います

そういうことなのです

631.アズ・ア・ドッグ

おーい、出て来いよぉ

何故かポケモントレーナーのコスプレをした工藤父がお屋敷の正門に激突した車に向かって言う

いいからよぉとっとと出て来いっての

車内からヤクザが3人、ゾロゾロと下りてくる

手にはピストルを握りしめて

もう一度確認しておくがよぉそんなピストルじゃ、香月セキュリティ・サービスのどんな車も撃ち抜けないぜ

みすずたちを乗せた車だけでなく、香月セキュリティ・サービスの車は全て防弾されている

もうちっと、強力な銃は無かったのかよまあ、その辺が田舎ヤクザの限界なんだろうがよ

工藤父の言葉に、ヤクザたちは

何やと、ワレ

もういっぺん、言うてみぃ

ギロッと、工藤父を睨み付ける

そしてオレは、ガンダム並みに強えお前たち3人ぐらい、お茶の子さいさい朝飯前だぜ

工藤父は、平然と言った

ちなみにお茶の子とは、朝飯の前に食べる軽食のことを意味する昔の農家では、早朝、朝飯の前に一仕事するようなことがある時、簡単な軽食を摘まんだんだそれがお茶の子だっ

それが、何だっちゅーねん

ヤクザが、工藤父に言う

お前らよ、その車、そこにあると邪魔だろ中に車が入れないだろ

工藤父は、彼らの車を指差す

分厚い鉄の門に激突した車体はひしゃげボンネットが開いている

だからよさっさと、どかして欲しいんだよ

ヤクザたちは

何言ってんだ、オメエはこんなんなっちまった車が、動くわけねぇだろ

そうだ、そうだここから動かしたかったら、レッカー車でもクレーンでも持ってくりゃいいじゃねぇか

前のタイヤのホイールのところで思いっきり当たってるから、転がすのも無理だからな

ああ、確かに門にぶつかったタイヤが、ベロンとありえない方向を向いている

車を押しても、うまくタイヤが回転しないだろうなこりゃ

細けぇことはいいんだよとにかくどけろよお前たち3人の力でよ

冷たい眼で言う

なぁに、お前たちの国産大衆車なら男3人の力を合わせれば、意外とひょいっと持ち上がるもんかもしれねぇぜ

まさかオレたちに、手で持ち上げて移動させろって言うのか

んなのできるわけねぇだろ

つーか、嫌だっての

慌てるヤクザ3人

ぶつけやがったのは、お前らだろいいから、やれってんだよっ

工藤父は、地面に昏倒している最初のヤクザを見る

やんなきゃ、こいつの頭をケリ潰すぞっゴラァァァ

工藤父の迫力にヤクザたちは、戦意を喪失する

わ判ったよ

ピストルをしまって、車の残骸に取り付く

でも無理だろこんな車を、男3人でなんてよ

3人は困惑している

できるだろ一般的な自動車ってのは、ほぼ1トン前後の重さがあるって言われてるぞ1トンて言ったら、1000キログラムだ水なら1000リットル1円玉なら、1000000枚だ

3人で割ったら1人333キロじゃねぇか

ああ、いけるだろ333キロぐらい、いくらお前らだって持ち上がんだろ

工藤父は、笑ってそう言う

できるかっオリンピックの重量挙げ選手じゃねぇんだぞっ

な、なあ向こうの連中にも手伝ってもらっちゃダメかよ

ヤクザの1人が少し離れたところから、こちらを監視している残り2台のヤクザ車輌を見る

そうだ、ヤクザたちは3台で尾行してきて1台だけが、門に激突してみすずたちの車の進行を妨げている

ダメだなお前らだけで、門にぶつけたんだお前らが何とかしろ

いや、オレだってよぶつけた時に、エアバッグで顔を打ったりして、力が入らねぇんだよ

それにカギハラの旦那が、そこで伸びちまってるし

そうだよ4人でブツけたのに、1人だけ失神しちまってんだもんな

ヤクザたちは、ブツブツと文句を言う

しゃあねぇなじゃあ、オレも手伝ってやるよ

工藤父が腕まくりして、車に取り付く

それとお前らホントにバカだろ

工藤父は、へし曲がっていない方の前輪のタイヤを蹴って角度を調整する

ダメになっちまってるのは、前のタイヤの片方だけなんだからそこだけ持ち上げればよぉ、後は、グイッて押せば、車は何とか動くもんなんだぜ

そうか残り3輪は無事なんだ

壊れているタイヤのところだけ持ち上げて、転がしていけばいいんだ

あっ、なるほど

こいつは気付かなかったぜ

感心するヤクザたち

いいから、力を合わせろこの向きに押すからないくぞっ

車がククグッっと動き出す

そのまま門を外して、路肩までだっ

工藤父とヤクザ3人が力を合わせて車を移動させる

ほらっ、何とかなったろ

おおっ、すげぇや

どうにかなるもんだな

こいつは驚いたぜ

何かよく判らないがいつの間にか仲良くなっている4人

おっし、これはこれでまぁ、オッケイと

パンパンと、手の汚れを払う工藤父

でもよオレらの車がブツかっちまったから、この門、開かなくなっちまってんじゃないか

そうだよ電動式だろ、これ

軸が歪んじまってるとか

ヤクザ3人は、お屋敷の巨大な鉄扉を見る

そんなん大丈夫だってのここの家のことだからよ戦車がぶつかっても、壊れないような設計で作ってあるってのこの門を壊そうと思ったら、ガンダムでも持って来るしかねえだろうな

工藤父は、笑う

やっぱりガンダムスか

何ガンダムですかね

亡くなったミサワさんは、ガンダム・ヘビーアームズが好きだって言ってましたねぇ

ま、そういうことだなフンッ

工藤父の鉄拳が高速で3人のヤクザを打つ

みゃっ

みゅっ

みょっ

3人はそのまま地面に倒れた

あわよくば、門が開いた瞬間に敷地の中へ侵入するつもりだったんだろうが、そうはさせねえぜ

そして、工藤父は残り2台のヤクザ車輌を睨む

おいっ悦子いい加減に出て来やがれっ

工藤悦子不倫関係にあった山岡さんと逃げた、美智の母親

ヤクザ車輌の1台の後ろのドアが開き

美智の母と、元香月セキュリティ・サービスの警備部長だった山岡さんが降りてくる

おう、久しぶりだったなお前、ハンコ持って来ているか

平然と、工藤父は言った

そして、上着の内ポケットから封筒に入った書類を取り出す

まあ、いいや印鑑はオレのを使えばいいここに名前だけ書いてくれ

工藤父は、書類をぴらぴらさせる

離婚届だいつまでも、いい加減な状態にしておくわけにもいかねえだろ

工藤悦子は山岡さんの顔を見る

コクンと頷く山岡さん

キッと工藤父を睨んでコツコツと足音を立てて、近付く

ハンコは持っているわ

乾いた声でそう言う

印鑑を常に持っているのは、香月セキュリティ・サービスの社内規定なのです警護の交代時に、印鑑を押す決まりになっていますから

オレの隣で美智が呟く

香月セキュリティ・サービスを追われて4ヶ月

それでも工藤悦子は、自分のハンコを持ち歩いていた

じゃ、ここに署名してハンコ押してくれ

門の前からどけた車のボディを机にして工藤悦子は書類に名前を書く

こいつは、オレが役場に提出しておくからそれから真一と遙花と美智の親権は、オレが持つぞまあ、真一は男だし、もう成人しているから問題はねぇだろうが娘2人はまだ学生だしな

工藤悦子は、夫をジロっと見て

あんたみたいないい加減な男が、親をやれるの

文句があるなら裁判でもするかオレは構わないぞ

探偵だとか名乗ってプラプラしている男を、裁判官がどう思うかしらね

何なら、裁判している間だけ、普通の会社に就職していることにしてもいいんだぜそれとオレの方の弁護士は、香月のジィさんに紹介してもらう多少値が張っても仕方ねえオレの家族のことだからな

工藤父は自分とジッちゃんとの繋がりを示す

ジッちゃんに頼み込めば香月グループの企業のどこかに就職したことにしてくれるだろう

香月家の顧問弁護士が凄腕なのはオレもよく知っている

だいたい、お前だって今はヤクザに雇われている身だろ裁判官の心証が良いとは思えねえけどな

工藤悦子は、署名を終え内ポケットから取りだした印鑑を押す

オッケイあんがとさん

工藤父は、離婚届を確認し再び上着にしまう

美智の母親は自分の手の中のハンコを見つめ

このハンコもういらないのよね

もう工藤ではなくなるのだから工藤の名が掘られた印鑑は不要になる

ふん、バカみたいこんなものを、ずっと持ってたなんて

美智の母は、手の中の印鑑を路肩に投げ捨てた

これでオレとお前は敵同士だ

じゃまそういうことで

それだけなの

キッとした眼で美智の母は、工藤父を睨む

他に何か言うことはないのあたしにあの人に

ヤクザ車の脇に立ち尽くしている、山岡さんを指差す

別に言うことは無ぇな

あたしはあるわよっあんたに言いたいことが、山ほどねっ

恨み言も憎しみもいっぱいあるわあんただって本当はそうでしょ何で言わないのよっそうやって、何でも割り切ったみたいな顔をしてあんたみたいな男、大っ嫌いよっ

美智の母は、一気に溜め込んでいた感情を吐露する

悪いなオレは敵と馴れ合うわけにはいかねぇんだわ

工藤父は、さわやかに微笑む

お前らも、そういう覚悟で香月ジィさんに刃向かうことにしたんだろ

あ、あたしたちは

もし、覚悟ができていないとしてももう遅ぇよ戦端を切っちまったのは、お前たちの方だからな悦子

コンコンと、壊れた車のボディを叩く工藤父

何よあたしのこともブン殴るつもり

まさかそんなことはしねぇよ

そして工藤父は

大きな声で叫んだ

おっまわりさぁぁんっ助けてぇぇぇぇ

こここ、この人ピストル持ってますぅぅ僕チン、殺されちゃうカモカモカモかもねかもね、そうかもね蜂の巣にされちゃうかもねっくせになっちゃうかもねっミラクルかもねっ

うるさいぞ、工藤

拡声器の声がする

そうだお屋敷の前の道には

悦子、お前は5月の事件は、途中までしか知らないんだよなこの屋敷が、公安警察の監視ポイントになっているってことは

えあの車、全部香月セキュリティ・サービスじゃないの

驚く美智の母

まったくお前ってやつぁ

公安警察の車輌から誰かが話している

見てましたよね香月セキュリティ・サービスの正社員の皆さんは、一切絡んでませんこいつらと絡んだのはオレだけです

オレの工藤探偵事務所は、香月セキュリティ・サービスとは提携してはいますが別会社ですオレはオレの意志で、仕事を請けて生きている

それも判っている

でこいつらは危険な運転をして、ここの家の門にぶつけたこれだけでも器物破損ですがピストルを持ち出して、脅迫もしたオレが殴っちゃったのは、正当防衛ですよね

一々、説明せんでもいい

それにオレは空手や柔道の段も持って無いし、ボクシングもやってないただの一般市民ですからね多少、パンチが鋭くても過剰防衛にはなりませんよね

お前は何とか言う古武術だろ

あれ工藤流古武術なんてものを、公安警察さんは認めてくれるんスかこんな誰も知らない訳の判らねえ謎の流派にお墨付きをくれる

判ったよ正当防衛で良い後から倒した3人も、拳銃を携帯していることは判っている

ああ工藤父が、香月セキュリティ・サービスの入社に必要な柔道や空手の段を取らなかったのは、こういうことか

じゃとっとと捕まえたらどうなんスかこいつら

ニッと、工藤父は微笑む

ギリギリまで、こいつらを泳がせて一網打尽にする計画なんでしょうが善良な一市民であるオレが、国家警察に助けを求めているんですぜいい加減、何もしないってのはマズいんじゃないんですか

さっき、オレたちが帰宅してきてやっぱりヤクザに囲まれた時も

香月セキュリティ・サービスの車の向こうに、公安警察のいつもの監視車が2台ぐらいは居た

あの時の騒ぎは美智が心月で潰したんだっけ

まあ相手に触れずに倒す心月は、法律では捕まえようが無いから

いや、でもあの時もヤクザはピストルを持っていた

公安警察はわざと動かなかったんだ

オレたちや、香月セキュリティ・サービス、それにヤクザ屋さんたちの動向を掴むまでは泳がせておこうという考えなのか

チッお前はうるせぇからなしゃあねぇなっ

公安警察の車から私服刑事たちが降りてくる

おい何やってんだよ、悦子

お前逃げた方が良いんじゃねぇの

ハッとする美智の母

慌てて、山岡さんの方へ走り出す

だからお前らの雇い主に言っとけよ今から先は、うかつにこの屋敷に近付いたら、根こそぎ警察に持ってかれるからなっ

おい待てっ

大人しくしろっ

公安の刑事たちが、2台残ったヤクザ車輌に向かう

それとまだ鷹倉のお嬢様は、ここには到着していないこの屋敷の中にはいないぞっそれだけは教えといてやるからなっ

慌てて、車に飛び込む美智の母

山岡さんは工藤父に深々と頭を下げると、車に乗り込んだ

そのまま、大きくターンして

2台のヤクザ車輌は逃走する

おいここには1台だけ残して、追うぞ

はい、班長

お前たちは、そこに倒れているヤクザを確保しろ本部からも応援を呼べ

公安の車が美智の母たちを追っていく

残った公安警察官が、昏倒していたヤクザたちを逮捕していく

馬鹿だぜ、悦子功を焦って無茶をしたから、こういうことになる

工藤父は呟く

グワワワワワワンッ

お屋敷の正門巨大な鉄の扉が、音を立てて開いていく

やっぱり、車がぶつかったせいなのか音が少し鈍い

それでも、問題無くいつも通りの滑らかさで、開いていく

門前に危機が消えたのを見て、ミナホ姉さんか克子姉が遠隔操作で開けたのだろう

ブォォォォォン

みすずたちの乗った車だけが門をくぐる

芝生に伏せていたオレと美智も立ち上がる

あ、レイちゃんがオレたちに気付いた

後部座席のみすず、瑠璃子、美子さんの3人も

だが車は、そのままスピードを落とさず屋敷の方へと上がって行く

ブワワワワワワンッ

みすずたちの車が通り過ぎると同時に、また鉄扉が閉じる

グワワワンッ

完全に閉じた

美智が門の内側から、工藤父に声を掛ける

工藤父は、道に落ちていた何かを拾っていた

おお、美智かつーか、そこに居たのは気付いていたけどなどうだ、オレのこの格好ポケモン、獲ったどぉぉぉっ

何か違うものが混じっているぞ

お前にはみっともないところを見せちまったな

いえ父上は、ご立派でした

まあ口では上手く説明できねえんだけどよ人生、色々あらーな

工藤父は手の中の物を見る

あいつずっとこれ、持ってたんだな

それは美智の母が投げ捨てていった印鑑だった

これよオレとあいつが結婚届を出した時に買ったんだ駅前の文房具屋でよあいつよく持ってたな

工藤父は門に近付く

そして、門の格子に手を差し入れ

美智お前にやるわ

父上様

あいつの持ちものなんて気持ち悪いと思ったら、捨ててもいいぞでもオレが持っているわけにはいかねえからなお前にやるよ

美智は印鑑を受け取る

元気そうだな少し、大人っぽくなった

はい美智は、幸せに暮らしております

門の鉄扉越しに会話する父と娘

工藤さんあの、お茶ぐらい飲んでって下さいよこんなところじゃ何ですし克子姉、門を開けて

オレはそう言うが

気持ちはありがたいがオレは次の仕事に廻らないといけねぇんだまた今度にしようぜ

これでよっぽどのことが無い限り、あいつらはここには近付いて来ないヤクザは警察とは水と油だからなそれも、普段から相手をしている暴力団取り締まりの警官なら対応の仕方も判っているだろうがカタブツの公安警察が相手じゃな

そうか工藤父は

ここに公安警察の監視車が常駐していることを知らしめるために美智の母たちを逃がしたのか

オレたちの敵のヤクザは2グループいるがなあに、今は対立していてもヤクザ同士の繋がりはあるこの情報は、悦子たちの雇い主とは違うグループにもすぐに伝わるしばらくは、ここは安全地帯になるからな

ヤクザはここには寄り付かない

いよいよ鷹倉のお嬢様が、ここにやってくるその時まではな

そうだお嬢様が黒い森の娼婦になる予定だってことは、みんな判っている

最後は必ず、このお屋敷にやって来る

ヤクザたちも公安と距離を取って遠くから、ここの屋敷の監視を続けるだろうがでも、まあ今、悦子がやったみたいな強攻策は、もう無いだろうよ無理矢理に、屋敷内に侵入しようとはしない鷹倉のお嬢様たちが、まだここに到着していないことだけは確かな情報として、やつらにも教えておいたからな

ああ、そんなことも美智の母たちに叫んでいたな

他のルートでも、同じ情報を流しているしばらくはやつら、お嬢様たちの現在位置を調べることに集中するはずだま、今のうちに休んでおいてくれ

しかし親はなくとも子は育つとは言うが親元から離れて、オヤジに育てられた美智が一番大人っぽくなるとはな

わたくしはまだ子供です

いや、お前が一番自立しているよ遙花なんて、5月以来落ち込んだままだ

姉上には、明日、会うことになっています

そうか悪いが相手をしてやってくれ美智

ケガしない範囲でな遙花も武道家だ思いっきり身体を動かす相手が欲しいんだと思うよ

工藤父は美智の姉が、一度だけ売春するという約束をしていることを知らない

じゃオレは行くわ

工藤父は、オレを見る

美智のこと頼んだぞ

工藤父はオレみたいな人間に、頭を下げてくれた

そのまま立ち去って行く、工藤父

美智は門の格子越しに、父親の背中を見つめている

それでも昔は、仲の良い夫婦だったそうです

美智は呟いた

どこで何が掛け違っちゃったんだろうな

さあわたくしには、判りません

オレもオレの女たちと、こんな風に別れる日が来るのだろうか

愛していたはずの相手に恨みと憎しみの眼で見られ

もうダメなんだろうな

ええ、無理ですもはや、敵ですから

美智は寂しそうに言った

本当に馬鹿な女ですことごとく、最悪の選択をするのですから

山岡元・部長と不倫の関係に陥ったこと

2人とも谷沢チーフに職場放棄で、解雇されたこと

そのまま、家に戻らず4ヶ月

気が付けば、香月セキュリティ・サービスと敵対するヤクザに雇われている

当然、香月セキュリティ・サービスの内部情報を漏らしているんだろう

無理だ

大丈夫ですわたくしには、ご主人様がみすずお姉様や家族がおりますから

そしてご主人様も大丈夫ですご主人様には、わたくしがおりますから

ご主人様美智のことは、人ではなく犬だとご認識下さい

犬は受けたご恩を生涯忘れません美智は死ぬまで、ご主人様にお仕え致します

わたくしはその方が良いのです婚姻関係はわたくしの父母のように破綻することもありますが犬の主従関係は、永遠ですから

コスプレしたまんま、真面目な会話をしているんだよなあ

演劇の裏方の仕事をしていた頃に

公演後の楽屋で若い役者さんが、老人のメイクと衣装を着たまんま

あんた、いったい、いつまでこんなことをやっているつもりお父さんもあたしも、いつまでも生きているわけではないのよ

と、両親と真面目な会話をしているのを見たことがあります

現実のお父さんたちよりも、本人が遥かに老けたメイクをしているのが何か異様で

思わず

済みません、劇場を閉めないと行けないので、早く着替えて出て下さい

と、声を掛けてしまいました

コミケとかだと、コスプレしたまま別れ話をするカップルとかもいるんだろうなあ

632.坂を上がる

屋敷までの道を、美智と2人で上っていくと

今し方、みすずたちを乗せててた車が下りてくる

ああ乗客だけ降ろして、車はお屋敷の外で待機するんだな

そう言えば、レイちゃんは助手席に乗っていた

警護役に徹するために、運転手は部下に任せていたんだ

さっきは、工藤父が乱入してくれたから助かったけれど

本来は、レイちゃんは車を降りて、他の警護車輌の警護員たちと敵を掃討

隙を見て、みすずたちの車だけ先にお屋敷の中に逃げ込む作戦だったんだろう

父上の判断は正しかったと思います

あの様な下賤な輩をトップ・エリートである麗華お姉様が相手なさるべきではございません

いや、でもみすずたちの身を守るためにはさ

もちろん、みすずお姉様やルリルリたちを、完全にを守り切るのは当然ですしかし、香月セキュリティ・サービスは、この国の名家の皆様を対象としたプロフェッショナルな警護会社です今回の様に、相手がただのヤクザ組織の構成員程度であるのなら圧倒的な力で勝たなければ、看板に傷が付きます

圧倒的な力

たかが車3台の襲撃でしたこの程度の相手なら、わざわざ麗華お姉様が、車外に下りたって相手をなさる必要は無いのです父上の様な、香月セキュリティ・サービスの組織外の下請けがあの様なふざけた格好で撃退するそれで一流警護会社としての香月セキュリティ・サービスのメンツは保たれるのです

工藤父は、香月セキュリティ・サービスの正社員ではないしあんなふざけたコスプレ衣装で現れた

その工藤父1人に襲撃を掛けてきたヤクザは破れた

あの時香月セキュリティ・サービスの警護車輌からは、正規の警備員は誰1人下りて来なかった

つまり工藤父に対応を委ね、香月セキュリティ・サービスとしてはヤクザたちの存在そのものを無視した

これは山岡氏とわたくしの母の存在も無視するという、意思表示であります

2人とも香月セキュリティ・サービスの正社員だったし、山岡さんは警備部長という上級職に就いていた人だ

普通なら会社の内情を知っている人物の登場に、香月セキュリティ・サービスの人たちは動揺するはずだ

しかし無視した

工藤父に任せてレイちゃんたちは、山岡さんや美智の母と対話さえしようとしなかった

これでヤクザ組織内における、山岡氏とわたくしの母の発言権は消えましたこれより先は、2人が何を言っても誰も耳を貸してはくれないでしょう

2人が香月セキュリティ・サービスを揺さぶるカードにはならなかったからですあの人たちが解雇されてもう4ヶ月経っていますから今は翔お姉様が社内の実働部隊を全て掌握なさっていますし山岡氏時代のルールは全て破棄されています

体制を移行するだけの時間は充分にあった

これで、山岡氏やわたくしの母がかつての部下たちに慕われていたのなら、まだ切り札として使えるのかもしれませんが

香月セキュリティ・サービスの車輌からは誰も下りて来なかった

山岡さんたちに、声を掛ける人はいない

ヤクザ組織の人間もそう愚かではありません今回は、山岡氏らを試しただけのはずですああまで拒絶されている様子を確認したのならばあの2人のツテを使って、香月セキュリティ・サービスの内部の人間から情報を引き出すのは無理だと判ったはずです

そうか、2人の過去の同僚や部下からこちらの動きを聞き出せるかと思ったのか

しかし今の香月セキュリティ・サービスには、山岡さんに情報を漏らすような警護員はいない

わたくしの母もヤクザ組織の監視者の眼の前で、父上に離婚届の署名を求められていましたし

工藤父の、美智の母に対する態度は終始、ドライだった

何らかの取引に応じる可能性は皆無だろう

こうなればヤクザ組織が、あの2人から得られるものは、4ヶ月前の古臭い情報だけです

2人が香月セキュリティ・サービスの正社員だった頃の

でもあの方たちは、本質的な情報は知らないままでしたから

香月様が鷹倉様のお嬢様を娼婦になさるとすれば、黒い森に預けるだろうあの2人が知っている情報では、そこまでしか判らないはずです

2人ともオレたちとみすずや瑠璃子との繋がりを知らない

お台場のホテルの闘いの最中に、重役たちや私塾のやつらには、オレがみすずの相手であることは公表された

しかし、その時は山岡さんも美智の母親も、シザーリオ・ヴァイオラの襲撃に備えて忙しかったはずだ

ホテル内の監視システムは、谷沢チーフが抑えていた

つまり2人は、盗み聞きとかできる状態では無かった

そしてヴァイオラの襲撃の最中に、2人は解雇された

瑠璃子がオレの女になったのは、ホテルの闘いの後だ

それこそ知るはずがない

山岡さんと美智の母親の認識では黒い森はジッちゃんと繋がりのある、高級娼館でしかない

そのわずかな知識だけで山岡氏とわたくしの母は、この屋敷にヤマを張ったんですここで監視をして、隙を見つけて内部に突入しようと

いや、でもあの山岡さんたちの3台の車は、みすずたちの車を追っ掛けて来たんじゃないのか

みすずたちの学校から

それで尾行して来たら、たまたまここに車が到着したんじゃ

違います母たちは、この辺りで監視していたのだと思いますなぜなら、母はこのお屋敷にルリルリが暮らしていることも知りませんから

瑠璃子がここで暮らしているのを知らないのなら

瑠璃子たちの学校を監視して、送迎車を尾行したりはしない

切り札として瑠璃子を拉致するつもりなら別だけど配下が全然いないのに、そんな危険を犯すとは思えない

ていうか、瑠璃子を誘拐したら、香月家と全面戦争になる

雇われ人の道の母親たちが、一気にそこまで踏み込むことが許されるはずがない

ですから6台もの警護車輌が付いて、麗華お姉様が警護を担当している以上これこそ、鷹倉様のお嬢様を移送する車列だろうと勘違いしたのです

そう言えば、今、みすずたちが乗って来たのは完全警護用に改造された香月セキュリティ・サービスの車だった

分厚い防弾ガラスの張られた窓は、スモークスクリーンが張られていて中に乗っている人間の顔は、外からでは判別できない

だから、屋敷の門に車を激突させてまでみすずお姉様たちの車を止めようとしたのです

そうだ、さっきみすずに電話したときに言ってたよな

わたくしたちは陽動だって

わざとみすずたちの車を、鷹倉さんのお嬢様の車と誤認させたんだ

おそらく、母の判断でヤクザ組織に鷹倉様発見の報が発信されたはずです

じゃ、マズいじゃないか今、ここに向かってヤクザたちの車がどんどん集まって来ているってことだろ

そんな情報が広まったら

いえ誤報ですから

美智は、さらりとそう言う

わたくしの父上が、最後にちゃんと母に伝えていましたここにはまだ、鷹倉様はいらしていないと

でもそんなの美智のお母さんは信じないかもしれないだろ

母は信じなくとも今頃は、もう誤報であったことは伝わっています

今回のヤクザ組織が雇っているのは母たちだけのはずがありません当然、東京の裏社会の事情に詳しい人もいます

ルリルリが5月以降、このお屋敷で暮らしていることは、その方たちは当然知っています香月家に対する基本情報として

瑠璃子は瑠璃子の父の変死から

おそらく瑠璃子の父親が、ジッちゃんや香月グループに対して不義理なことをしでかし、その結果、死んだことは裏の人間たちには知られている

それで今は、ジッちゃんの信頼する黒森御名穂に預けられている、ということになっている

黒い森は、まだ営業停止のままだし

今回の高倉さんのように、瑠璃子が娼婦にされるとは誰も考えていない

まあ、天下の香月家の令嬢が金で身を売る境遇に堕とされるはずがないし

そう考えると、むしろ娼婦になる覚悟を決めたという鷹倉さんの方が特殊なんだろうけれど

そして麗華お姉様です麗華お姉様は、ここのところ恭子さんたちとの闘い以外は、みすずお姉様やルリルリの警護を専任なさっていますから

助手席にトップ・エリートのレイちゃんが居たことで山岡さんたちは、高倉さんの乗車を疑ったんだろうけれど

この4ヶ月の香月家を見ている裏社会の情報通からすればそれは、瑠璃子の帰宅の送迎だと考える

もちろん、各名家の子女の行動を確認しているマニアみたいな人たちが、裏社会には居ますからわたくしたちの学校から、香月セキュリティ・サービスの送迎車が出たことは、その人たちが証言して下さいます

名家マニアの裏社会の情報屋がみすずたちの学校に貼り付いているのか

そりゃいるだろうな

何たって、日本一の超お嬢様校だ

後部座席に誰が乗っているかは、視認できないとしても助手席の麗華お姉様は、現在は有名人ですから

テレビでアーニャとかと死闘を繰り広げているんだ知らないはずがない

従って、即座に先ほど到着した車列は、ルリルリの送迎車ということは、確認されますつまり母の流した情報は、誤報と言うことに

なるほどな

ヤクザ側に2人が付いたことを知ってわざとハメたんだな

はい、おそらく翔お姉様の作戦でございましょう

翔姉ちゃんなら山岡さんや美智の母の思考もよく判っているから

そっかじゃあ、今頃は

はい、山岡氏とわたくしの母は叱責されているはずです

この大変な時に、大誤報をやらかしたんだもんな

前振りとして翔お姉様自身が、ご主人様の学校に出没なさいましたし

ご主人様の学校からここへ来る際にわたくしたちもヤクザ組織の追跡を受けました

うん学校の前でオレたちを待ち構えていたな

あれも母の流した情報です黒森家に暮らしている子供たちが、あの学校へ通っていることは、香月セキュリティ・サービスの古い情報でも判っていたことですから

古い情報

寧お姉様と、マルゴお姉様です

ああ、そうかマルゴさんも、去年までは在校生だっけ

寧とマルゴさんのデーターは4月以前でも、香月セキュリティ・サービスの情報ファイルに載っていたはずだ

特にマルゴさんは谷沢チーフとも旧知の仲だったし

えじゃ、オレやメグは

あの2人は結局、ご主人様やメグミお姉様のことは、よく判らないままのはずですあの人たちが香月セキュリティ・サービスを離れた時には、詳細な情報は何も無いはずですから

ああ顔は覚えたけれど、どういう人間かは判っていない

というかそこまで重要人物だとは、思っていないはずです

それもそうだ

オレはただの高校1年生だし

ミナホ姉さんの親類の男の子ぐらいとしか認識していないだろうな

ご主人様ヤクザ組織は2グループあるというのを覚えていらっしゃいますか

ああ、鷹倉さんの神社を乗っ取ったやつらとそいつらに対抗してて、単純にお嬢様を娼婦にするのは嫌だってグループだろ

はいわたくしたちが戻って来た時に、待ち構えていたのは後者のグループでした

うん、あの安藤とか言うヤクザ鷹倉のお嬢とか言ってたもんな

お嬢様に対しての深い感情が見えた

このお屋敷に、鷹倉様が来るという情報を流したのはおそらく母です

でも、美智のお母さんはもう1つの乗っ取った方のグループだろ

はいですから自分たちの敵対勢力に情報を流して黒い森に揺さぶりを掛けようとしたのです

自分たちは直接手を出さないで敵対グループを利用しようとしたのか

というか、母たちにはそもそも大した兵力が無いのですヤクザ組織に雇われてもそんなに信用されていないのでしょう与えられたのは車3台分の兵力だけしかも、母たちの監視役も一緒でしょうから

確かに門に突撃してきたのは、3台のうちの1台だけだった

ああ、もう1台が美智の母と山岡さんの車

もう1台は監視役か

今考えるとおそらく、ご主人様の学校から、わたくしたちを追って来たのは母たちの配下の車なんだと思います

ああ、似たような車ばかりだから、よく判らなかったけれど

そう言えば、そうかもしれない

そしてわたくしたちが到着した際に、門前で敵対勢力のヤクザたちに騒ぎを起こさせて、黒い森の反応を確かめようとしたのでしょう

そういや、お嬢様を娼婦にしたくない派のヤクザたちは、物凄い数の車で来ていた

美智の母たちの3台と比べて、必死さが違いすぎる

本当に大恩ある鷹倉家のお嬢様を、娼婦にするのは嫌なのだろう

だが、そいつらは美智の心月を食らい

何とか耐えた安藤たちは、鷹倉家のお嬢様は香月家の本家に居るという情報を聞いて慌てて立ち去って行った

あの情報は

判りませんわたくしの母が流したものかもしれませんし翔お姉様の陽動作戦の一部なのかもしれません

いずれにせよあの場にわたくしが姿を現したことで、母が勘違いをする下地ができたのだと思います

わたくし学校の制服のままですから

わたくしがあの車に乗っていたということは、あの中にみすずお姉様やルリルリも隠れていたと想像してしまったのだと思います

オレと克子姉の、パン事業用のバンにみすずたちが

わたくしがみすずお姉様の側を離れるはずがないと、母は考えています

わたくし同様騒ぎが大きくなる前に、学校を早退してご主人様の学校に潜伏していたと

そして、パンのバンの後部に隠れてお屋敷に入った

すでにお屋敷の中に、みすずお姉様たちが到着しているとしたら

後から来た、完全警護の香月セキュリティ・サービスの車列にみすずや瑠璃子が乗っているはずがない

つまり鷹倉さんの警護だと、思い込んだのか

そういうことでございます

だから慌てて車を激突させて、門を壊してでも、敷地の中には入り込まれないようにしたのか

騒ぎを起こしてその間に、応援を呼ぼうとした

だが、その思惑はかつての夫、工藤父に挫かれた

先ほど父上がおっしゃっていた通りこれでしばらくは安全ですこちらのお屋敷も、ご主人様の学校の方も

母と山岡氏の情報は全然アテにならないということになりましたから

もし、あのまま誤報が伝えられずにヤクザ組織の車輌が大挙して、お屋敷の門前に集まってきたら全員、警察に逮捕されることになったと、そう思い込ますことにも成功しましたし

お屋敷の外で監視を続けているのは公安警察ですあの方たちは、恭子お姉様とミス・コーデリアの逮捕、あるいは国外退去だけを望んでいらっしゃいます昨夜から、こちらにニキータさんが滞在なされていたので少しピリピリなさっていただけです

アーニャはミス・コーデリアの部下だ

彼女が日本に再来日したということは当然、次のアクションの準備をしている

本当は国内のヤクザ組織のことなど、興味は無いんですただ父上があんな風に大声で喚きましたから

工藤父のおっまわりさーんの声を思い出す

警察として父の倒したヤクザを逮捕せざるを得なくなりましたしかし、わたくしの母や山岡氏それにヤクザ組織は、恭子お姉様の件でこのお屋敷に公安警察の監視が付いていたことは知りませんでした

てことは香月家が、警察と組んでお屋敷に集まって来るヤクザの一斉検挙を狙っていると

そう思うはずです

ますます迂闊には、この屋敷に近づけなくなっている

そっかじゃあ、本当に今は安全なんだな

美智は頷く

それなら美智

オレは美智にキスをした

いや、美智が色々教えてくれたから本当に美智は、頭がいいなあそれに可愛いし、オレは大好きだぞ

わわわ、わたくしもご主人様が大好きです

オレは何でこんなに美智が饒舌になっているか、判っている

美智はやっぱり、ショックなんだ

眼の前で自分の父母が、離婚届にサインをしたことが

美智のお父さんはやっぱり良い人だな

だって、美智のお母さんたちは4ヶ月も、行方不明になったまま連絡もして来なかったんだろ

母は、迷っていたんだと思います

美智は手の中の工藤の印鑑を見る

この先、どう生きるべきか決めかねていたんだと思いますそれでただズルズルと時が過ぎてしまって

山岡さんと一緒に家に帰らず、あちこちを転々としていた

だけどずっと決められないままでは、いられないもんな時は過ぎゆくから時間切れでアウトってことになる

4ヶ月はやっぱり長過ぎだよそれだけの期間、家族を放っておいたんだからそれで、美智のお父さんはポンと美智のお母さんの背中を押してあげたんだと思う

父上が

うんもう戻れない何もかも、タイムオーバーだだから、前だけを見て先に進めって離婚届にハンを押して、それでさっぱりしろってさ

男と家を出て逃げ回っていたのは母親の方なのに

工藤父の方が、終始、さばさばとした表情をしていた

本当は心の中に、色々あるんだろうけれどあの人、何も言わなかったろ

恨み言も、泣き言も何も無しだった

父は、背中で泣いていました

気が読める美智は言う

泣いていました父は

やっぱりそうなのか

オレも美智のお父さんみたいな男になりたいよ

わたくしは父上のファッションセンスだけは、真似していただきたくありません

いや、あれはオレには無理だレベルが高すぎる

オレたちは、もう一度キスして手を繋いで屋敷へと戻った

みんなは、食堂に集まっていた

みすず、瑠璃子、美子さん、レイちゃんそして、マナと克子姉

みんなで紅茶を飲んでいた

はふぅぅ

何で、みすずは溜息ばかり吐いているんだ

オレの問いに、瑠璃子が笑って

みすずちゃんは、昨日からずーっとこうなんです

昨日から

つまり、京都で鷹倉さんに会ってから

あたし本当のことを言うと、旦那様には鷹倉様と会っていただきたくないんです

鷹倉様をご覧になったら旦那様に、あたしがホンモノのお嬢様でないことがバレてしまいますから

みすずは日本を代表する香月グループの令嬢だ

みすずがホンモノのお嬢様でなかったら世の中が引っ繰り返るぞ

考えすぎですみすずちゃんはお兄様が、そんなことを思われるはずがありませんわ

不安そうなみすずを見て美子さんが口を開く

確かにとてもカリスマのあるお方でしたわ

カリスマ

あのさカリスマって何

オレの質問にみんな、引っ繰り返る

お兄ちゃん、カリスマも知らないの

人を引き付ける魅力に富んでいてとても雰囲気のある方、という意味ですよ

レイちゃんが、教えてくれた

人を引き付ける魅力って面白い人なのみんなを明るく、笑わせてくれるとか

違うよ、お兄ちゃんもっと、こう、偉そうなんだよカリスマは

偉そう

そうね、政治家とか宗教指導者とか大衆に支持されるような魅力のある人をカリスマがあるって言うのよ

克子姉は、そう言いながらオレと美智にお茶を出してくれる

元々は預言者とか、呪術師とか英雄などが持っている超自然的、超人間的な資質のことを意味しています

それじゃあ超能力者ってこと

そこまではいきませんけれど天才というものが流行った時代があるんですよ19世紀の終わりから、20世紀にかけて世の中というものは、天才が指導するものだってそういう天才の大衆を引き付ける魅力がカリスマなんだと思います

へえ鷹倉さんて、そういう感じの人なんだ

巫女さんですから

美子さんが、小さな声で言う

鷹倉神社の斎宮になるはずだった方ですから

斎宮

女性の神主さんです神様にお仕えする

そんな人を娼婦にするのか

巫女さんて言ったら処女じゃないとマズいんじゃ

しょうがないですよご本人がなりたいとおっしゃっているのですから

だけど、瑠璃子ちょっと普通じゃない話だろ

神社を乗っ取られた政略結婚を強制させられる

それが嫌だから

娼婦になりたいだなんて

世の中を絶望しすぎているっていうかさ

克子姉がオレを見て

そういうのは実際にその人を見てから判断なさい

ごめんそうだね、会ってもいないのに勝手なイメージだけで、話をするのはよくないよね

とにかく香月家のお嬢様であるみすずに、溜息を吐かせてしまうような大お嬢様なんだもんな

会ってみないと判るわけがない

あれそういや、他の子たちは

オレは一旦、話を変える

真緒ちゃんとアニエスちゃんは雪乃さんが遊んでくれてる

ああ、あいつ子供には、前から人気があるもんなあ

それだけでなくあの方、ずいぶん変わられましたね

前よりも人の心の機微が判る方になられました

心の機微

そりゃそうよ今は、香月セキュリティ・サービスの寮で、監視されて生活しているんだもの前みたいに、家政婦さんが何でもやってくれるわけじゃないし掃除も洗濯も、自分でやっているんでしょ

克子姉がレイちゃんに尋ねる

翔お姉様が、そういうことには厳しい方ですから

雪乃自身も言ってたな

お姉様自身ヨーロッパに留学している時は、ずっと学生寮で暮らしていらっしゃったそうですから雪乃さんの自立を促したいと、おっしゃっていました

でもホント、変わってきているわあの子やっぱり、寮生活やテレビの仕事で、人に揉まれる体験をしてきたからかしら

あいつはね覚悟ができたら、腹の据わる女なんだよ

白坂家から追放されて、父親ももういないもう自分を護ってくれる力は何も無いって判ったから腹が据わったんだと思う

まあ、昔からギリギリにならないと、何もしない人だったから

まいいんじゃないあの人にとってはさ

オレは雪乃とマナを和解させたい

できることならメグも

10年前にとある演劇雑誌の連載記事で

笑いを考えるというのが、ありまして

それは、有名な劇作家の先生が書いてらしたのですが

吉田戦車先生の不条理4コママンガの笑いを解説しようとしているんです

つまりこのマンガのどこに笑いがあるかと言いますとみたいな

真面目な人って、怖えなあと思いました

不条理マンガなんて説明しちゃったらダメでしょ

パッと見て、読んで面白く無かったら不条理ギャグにならないわけで

世の中には、凄い人がたくさんいます

そう言えば、ジョジョの途中の部だけ読んで解説本を書いた先生もいましたね

このディオという名前は、誰のことなのだろうという、第1部から読んでないことがバレバレの一文があるという

633.普通星

そういえば学校の方は大丈夫かしら

そう言えば、寧からもイーディからも連絡が無いな

ちょっと、連絡してみるよ

オレは、携帯を取り出す

とりあえずイーディだなメグも心配だし

オレは、イーディの携帯に電話を掛ける

えっと画像出すわね

克子姉が端末を操作して、学校の監視システムを呼び出している

プルルルルル、プルルルル

THIS is イーディなのネハフゥゥッッ

何だ声が割れているけれど

イーディ、今、何をしているんだ

アタシ走ってるネハァッ、ハッ、フッ

走ってる

あ、映像そっちのモニターに出すわよ

克子姉の声に、オレは食堂の壁の大型モニターを見る

ホッ、ホッ、ホッ、ホッ、ホーッ

イーディが走っている

女子陸上部のグラウンドを

何故か、体操服姿で

コラァ電話しながら走るなぁっ

竹芝キャプテンが大声で叫んでいる

Darlingからだから、仕方ないのネっ

イーディは、スピードを加速しながら返事している

何で走っているんだ、イーディ

隠れて、メグを護れと命じたはずなんだけれど

あーんとネタケシバ・センパイがネそんなところで見ているぐらいなら、走れって、アタシに言ったのネ

あっさり竹芝キャプテンに見つかったか

でもネこれ面白く無いネ長距離走平たいところをグルグル廻っているだけなのネ

イーディは起伏のあるところを飛び跳ねる方が好きなのか

さっきやった別のは、面白かったヨバリケードを飛び越えるノネ

ハードル走のことか

あと、アレ面白そうネやりにげ

もしかしてやり投げか

そう、そう、そうなのネ

イーディ、メグはどうしている

メグミィィDarlingから電話なのネェェ

いやそんな、大声で叫ぶなよ

克子姉が、カメラを切り替えてくれた

メグは他の1年生部員たちと、何かの片付けをしていた

プイッと不機嫌そうな顔で、イーディには返答しない

何か怒ってるみたいネ

走りながら、イーデイは言う

ああ、オレがこっそり、イーディをメグのガードに残したことを怒っているんだ

メグ自身には伝えなかったもんな

ていうか、イーディ、全然こっそりしていないし

おーい、残り一周っスパートかけなっ

竹芝キャプテンの声に、イーディは

O.K.なのネ

ビュンンッ

イーディが急加速する

ラスト一周なのに短距離走の勢いで疾走していく

は早い

GOAL

白線を駆け抜けるイーディ

キャプテン県の高校生記録を超えてます

タイムを計っていた下級生部員が、ストップウォッチを見て驚愕している

オレと電話しながら走ってたのに

さすがイーディただ者じゃ無い

だから、何でお前は、本気で真面目に走らないんだ

イーディに食って掛かる、竹芝キャプテン

だって平たいところをグルグル走る意味が判らないのネ

相変わらずイーディは汗一つかいていない

次アレ、やってみたいのネやりにげ

やり投げだっ

アレもただ遠くに飛ばすだけナノカ

他にどうするっていうんだい

あんという顔で、尋ねる竹芝キャプテン

ターゲットは、動く的の方が面白いのネハンティングなのネ

お前は原始人かっ

ゲンシジンじゃないネアメリカ人なのネ

あー原始人は、発音だけじゃ言葉の意味が判らないのか

キャプテンイーディさん、アメリカ人ですから狩猟民族なんですよ

横に居た女子部員が、そんなことを言い出す

何だい、そりゃ

ほら、よく言うじゃないですか日本人は、農耕民族西洋人は、狩猟民族って

するとイーディは

その考えは、間違っているネニホンに農耕が伝わった時期には世界の他の地域ではとっくに農耕を初めているネ稲の文化と小麦の文化という考え方はできても、日本を農耕文化、西洋を狩猟文化と比較するのは変なのネ

けろりとそんなことを言う

稲は特に現在では日本が主に栽培しているジャポニカ米は、世話をするのに手間が掛かるのネだから、日本には米作りの名人みたいな存在がいるのネ一方、小麦というものは種さえ蒔けば、そんなに手は掛からないのネだから、小麦の世界に名人はいないのネ

竹芝キャプテンも、他の女子部員も思わず、イーディの話を聴き入ってしまっている

このことが歴史に影響しているノネ細かい手間がいらないからこそ小麦の文化では、奴隷が存在したのね古代で奴隷中世で農奴奴隷の低い労働意欲でも、小麦は作れるからなのネでも手間の掛かる稲は、奴隷では生産性が上がらないのねだから、稲の文化のニホンは奴隷は根付かなかったノネ

でも古代にはいたわよ日本史で習ったわ

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