さていいかしら
関さんは、ニコッと笑ってオレを見る
部屋の中の人間瑠璃子も、アニエスも、関さんを見上げている
雪乃だけは、興味なさそうにそっぽを向いていた
あなたが今までしてきた、藤宮さんへのアプローチについてはマルゴさんから、全部聞いているわ
やっぱりマルゴさんは、オレたちの地下室での様子を克明に観察していたんだ
藤宮さんの過去に遡ってこの人の外面は、周囲から王子様で居ることを望まれたことに生真面目に応えてきた結果だって判ったのよね大きな収穫だったわねこの人の本質がいまだに、か弱い少女のメンタリティしか無いってことも
関さんは全てを把握している短く、麗華の現状をまとめてくれた
だからあなたたちがこの人をレイちゃんとして小さな女の子として扱った経緯は、よく判るわこの人の心の欠損箇所の修復に対してはただし
関さんがハァと息を吐く
そのアプローチはあなたでは、無理なのよ
藤宮さんは、もう大人なのよ身体だって、普通の女性よりもずっと長身でしょこの人は、いつだってあなたを見下ろしているのよ仕方無いでしょ背が高いんだから
あなたたちの選択したアプローチはね藤宮さんよりも、年上でそうね、できれば父親的な頼れそうな男性が、彼女のバックアップに付いて、初めて有効的になるのよ
年上で父親的で頼れそう
もちろん彼女の本当の精神年齢、メンタリティが近い、アニエスさんやマナさんと近づけたのは成功よでも彼女が、自分を保護してくれると思えるような存在が近くにいないと片手落ちよだから、半分しか上手くいかないで藤宮さんは、より不安定な状況に陥っていたのよ
ああオレじゃ、ダメだったんだ
年下で頼りなさそうな、オレでは
そんな顔をしないであなたが、一生懸命やっていたことはみんな知っているし藤宮さんのことをどうしたらいいのか、自分には何ができるのか懸命に考えてくれたことも他ならぬ、藤宮さん自身が一番良く感じているわそうでしょう
関さんは、麗華を見る
はいこんな、わたくしのために色々と気を遣っていただいてそれが、申し訳無くてわたくしの方が、皆さんよりも、ずっと年長なのに
ああ、麗華は気にしていたんだ
地下室の中の最年長なのにオレたちに気遣われている状態を
だから、マルゴさんは今回の騒ぎを、藤宮さんが主体になって起こすように指示したのよ
マルゴさんは、オレたちの地下室での様子を危惧して今回の作戦を立案した
藤宮さんが先頭に立って行動しないと始まらないようにねこの人は、すっかり意気消沈しちゃってて、自分から動き出す力を無くしていたから
麗華がまず、最初に自らの力で、雪乃の監禁部屋のドアを打ち破って
オレたちを誘拐しなくてはならないシナリオを用意したのか
この人、あなたたちが一生懸命自分に対してアプローチしてくれることが申し訳無くなって何もかも、馬鹿正直に受けとめ過ぎてたからまあ、本当に根が真面目なのよその結果、藤宮さんの思考は飽和状態で、自分で自分の状態をどうすることもできなくなっていたから
だからあんな派手な行動を行わせた
ドアとか応接室とか、メチャクチャに破壊して少しはスカッとしたでしょ藤宮さん
そこまでいいんだけれど車に乗った途端、この人ったら全部、あなたに指示を求めて自分では何も決定しなくなったでしょあれには、ドン引きだったわよやっぱり、自分で考えて行動する能力が、落ち込んじゃっているわよね、あなた
あのオレたちの白いバンには、盗聴器は付いていないはずじゃ
確かそう聞いたけれど
わたくしは詳しく知らないけれどマルゴさんが、普段使っているのとは別のシステムの盗聴器を付けたそうよ
あ朝食後、マルゴさんは麗華に車の機器に付いて説明すると言って、車庫へ行った
あの時にか
別のシステムというのはミナホ姉さんには、オレたちの車の中の会話を聞かせないためだ
わたくしの方へは、マルゴさんが音声を転送してくれたわ
つまりマルゴさんと関さんだけが、ずっとオレたちを監視していた
当然発信器も付いているんだ
だから、関さんはオレたちの車の位置を知ることができた
それで、あのオレたちは、これから、レイちゃんいや、藤宮さんをどうしたらいいんですか
今まで通り、レイちゃんでいいわよ
関さんは、クククと微笑む
ほら年上のお姉さんでも、ちゃん付けで呼ぶことはあるでしょ小さな子供たちと仲の良い、きさくなお姉さんとかなら
そういうことはある
藤宮さんも、今まで通り彼のことは、お兄ちゃまと呼びなさい
おかしくないわよたくさん兄妹のいる家庭なら小さな子たちの目線に合わせて、年下の男の子をお兄ちゃまと呼ぶことだって有り得るでしょう
確かに男は、オレしかいないんだし
呼び方は、今まで通りただし、藤宮さんは年上のお姉さん藤宮さんも、この人のことは年下の弟だと思いなさい実際、そうなんだから
今の藤宮さんに、家族は必要よあなたのこと、こんなに親身になって考えてくれる人たちなんて、他にはいないわそれは判っているでしょ
今みたいに精神的な年齢が近い妹たちに囲まれてその子たちと一緒に成長する環境も良いと思うわ問題は年下の子たちしかいない状況では、藤宮さんを保護してくれる存在がいないということ
きっぱりと関さんは言う
精神的にはマルゴさんたちの方が、藤宮さんよりもずっと大人だけどねでも、本当は年下だっていうことが、藤宮さんの中で引っ掛かってしまっているのよね
マルゴさんも、克子姉も、渚も麗華よりは、年下だ
藤宮さんより年上なのは黒森さんとキョーコ・メッサーさんだけでしょ
さすがに、ミス・コーデリアたちは数に入っていない
ていうか、あの人たちはいずれアメリカに帰るだろうし
黒森さんというのは、ミナホ姉さんのことか
本当なら黒森家の当主は黒森さんなんだから、あの人が藤宮さんの面倒を見るべきなんだろうけれどあの人は、武闘派じゃないしねそれに、マルゴさんに聞いたんだけど、何かお忙しいの
ミナホ姉さんは復讐のことで、頭がいっぱいだ
麗華の面倒まで見ている余裕は無いだろう
キョーコ・メッサーは性的嗜好の問題があるしね藤宮さんが、そっち系なら任せちゃってもいいんだろうけれど2日間チェックしてみて、違うって判ったそうだから
2日間のチェック
あ渚のお店の手伝いのことか
あのお店はレズビアン嗜好の強い女の子たちが揃っている
1日目は古参の店員の女の子に泣かされて帰って来た
2日目は英国紳士の姿で行って、王子様になってきたけれど
そうか店員の女の子たちに対する、麗華の反応をチェックしていたのか
藤宮さんには同性愛嗜好の傾向は無いそうよだから、キョーコ・メッサーには任せられないって
恭子さんは、ガチだからなあ
真面目な話今みたいに家族に囲まれている状態で、藤宮さんに彼女が頼れるような年上の男性が現れるのが、理想なのよそうじゃないと、この人は安定して成長してはいかないわ
つまりオレでは、根本的にダメなんだな
オレが麗華が頼れるような、立派な男では無いから
でも、そんな立派なオトコは、今時居ないからね絶滅危惧種よていうか、もう絶滅していると思うわ
ハハッと、関さんは笑う
だいたい、そんなオトコが見つかったら、藤宮さんに廻さずに、わたくしが自分で付き合うわよっ
いやこれ、ホントはそう藤宮さんも、わたくしも子供の頃から、ロクなオトコに出遭って来て無いのよね本当なら、谷沢チーフが藤宮さんをスカウトした時に、ちゃんとこの人のお父さん役をやってあげるべきだったのよでも、あの人もズルいからうまーく、逃げちゃったでしょ藤宮さんが、トップ・エリートの中でずっと孤立していて、誰ともコンビを組んでこなかったのは、藤宮さんのせいじゃないから谷沢チーフが、藤宮さんをきちんと育てるのをメンドくさがっていただけなんだからっ
関さんは憤る
ホントあの世代のオッサンは、そういうところで手を抜くんだからっ即戦力と、自分で勝手に成長してくる子ばっかりを贔屓して伸び悩んでいる子のサポートとかは、おざなりなのよ
警護人の世界はオレには、よく判らない
わたくしが現場責任者になった以上はこれまでの悪癖は一掃するわだから、まず最初にわたくし、あなたのお姉様になることにしたの
ウフフと微笑む関さん
えっとあの関さん
なあにもう一回、ベランダへ出るコテンパンにブチのめされないと判らない
関さんは、革手袋を填めた手を胸の前で合わせる
組んだ指と指の間から、革が擦れてキキュウという音が鳴る
体育会系でいきましょうあなたもわたくしもそっちの世界の出身なんだからあなたの中に鬱憤が溜まったら、何度でも相手してあげるわよっわたくしに文句があるのなら、まずわたくしに勝ちなさい
関さんは麗華の前に拳を突き出す
いつでも、どこでも、何度でもお姉様が相手をしてあげるわっ藤宮さんっ
関さんが麗華の頬を撫でる
判っているわ今まで誰も、真っ正面からあなたの相手をしてあげなかったのがいけなかったのよねだから、あなたこんなに負けるのが下手になった
負けるのが下手
戦闘能力なら藤宮さんの方が上よ体力だって、わたくしがあなたに勝てるはずが無いでも今、あなたとわたくしが闘ったら何百回やったって、わたくしの勝ちよ判るわよね
どういうことなんだそれは
負けたかったんでしょあなたふがいの無い自分を、誰かに叩きのめして欲しかったずっとそうよね、藤宮さん
麗華の眼からどわあっと涙が零れる
関さんの足に縋り付いて泣く
もう判ってるわよわたくしあなたのお姉様なんだから
オレは全然判っていなかったんだな
麗華の本質はやっぱり武人で
警護人としての魂を持っていて
だから年下のオレたちに優しくされることをふがいないと感じていて
誰かの鉄拳で制裁されることを望んでいた
同じ警護人である関さんにはそれが見えていた
だから、麗華を叩きのめした
ほら、もういいでしょ涙を拭いてもう、あたしのスーツのズボンに鼻水つけちゃって
済みませんお姉様でしょ
関さんが妹に微笑む
済みません、お姉様
いいわねわたくしとあなたとマルゴさんの3人で姉妹の契りを結びましょう武闘三姉妹通称ハリケーン・シスターズよこれは香月セキュリティ・サービスとは関係無しよわたくしたち3人だけの、個人的な関係わたくしが長女で、あなたは次女、マルゴさんが末っ子よ桃の花の季節だったら、もっと良かったけれど今は5月だから菖蒲の花の誓いってことにしましょう
ハリケーン・シスターズは助け合うし、トレーニングも一緒にするわ悩み事も聞くし、ムシャクシャしたらいつでもバトルしてあげるでも、あなたとわたくしの二人きりの姉妹にはしないわあなたも、マルゴさんのお姉様になること姉に甘えるばっかりじゃなくって、妹に頼られるような人間にならないといけないものねっ
それと、なんだけど
わたくしねこの子のこと、好きなの
関さんの発言にみんな驚く
わたくしは、もちろん香月家に対して敬意を抱いているし、閣下や瑠璃子様、みすず様、美子様を命懸けでお守りするわでも、それとは別にこの子のことが好き大好きなの
な、何を言ってるのよあんた
後ろから雪乃が言う
雪乃アフロのカツラがずれているぞ
わたくしもねやっぱりずっと、年上で頼りがいのある男性を求めていたんだと思うのわたくしのことを、包み込んでくれるような包容力のある男の人を
関さんは麗華に言う
瑠璃子とアニエスが、そんな関さんをジッと見つめている
でも、そんな人には今まで一度も出会わなかったし理想的な男の人なんて、この世には存在しないんじゃないかって感じていたわそんな時に、この子に出遭ったの
オレを見て関さんは、フフッと微笑む
この子、一生懸命でしょいつでもまっすぐで、嘘を付かなくてでも、ちょっとお馬鹿さんで最初は可愛いなって思ったのでも、そのうち何かこの子は、あたしが守ってあげないといけないって思えてきて
やっぱり頼りないんだ
この子があの時シザーリオ・ヴァイオラを撃ってあたしたちは、この子に重荷を背負わせてしまったわそして、この子もヴァイオラを殺したことで気絶してしまって気を失っているこの子の顔を見た時に、誓ったのわたくしはこの子を幸せにしてあげたいずっとこの子と共にありたいって
でも、こいつは色んな女と
雪乃の言葉を、関さんは遮る
そんなの関係無いわよっわたくしが好きなんだものっ好きになっちゃったんだからっ
雪乃は関さんの勢いに口籠もる
それに今では、この子が、たくさんの女の子を抱え込まざるを得なかった状況も判っているし
関さんは、再び麗華を見る
であなたに判って欲しいことなんだけれどわたくしが、好きなのはこの子だけよ本当はわたくしこの子たちの家族には、そんなに思い入れはないの
関さんは黒い森という組織に入り込みたいわけではない
でもねこの子を愛するということは、この子が抱えている全てのものも受け入れるということでしょだからね、あたしこの子のために、この子の家族全てをわたくしは守るわ
わたくしは警護人わたくしができることは、守ることだけだから
関さんは、オレをまっすぐに見つめる
あなたはこんな年上のお姉さんは嫌かもしれないけれどううん、あなたの気持ちは関係無いの迷惑だったら、近付かないからでもねわたくしは、一生、あなたの味方よいつだって、わたくしの力が必要だと思ったら呼んでちょうだいわたくしは、あなたの力になりたいの!
オレは、ただの高校生で何の力もないし
あなたはただいつも通り、一生懸命でいてくれたら、それでいいのよあなたの一生懸命な姿を見ていたら、わたくしも頑張れるわあなたは、わたくしに力をくれているのよ
わたくしあなたの素敵なお姉さんになりたいその気持ちが、わたくしの心に元気をくれるのわたくし、切磋琢磨しなくちゃって
素晴らしいですわ関さん
わたくしも、そうですお兄様が一緒に居て下さるから瑠璃子は、頑張れるんです
瑠璃子は、オレの手を握りしめる
ううん今の関さんの告白に比べたら、瑠璃子の言葉なんて弱々しいですよねあのねお兄様あのね
好きです愛しているのお兄様っ
潤んだ瞳で瑠璃子は言う
オレはどうしたらいい
アニエスもパパが好きですの
オレの腕の中のアニエスまでが心に着火する
ずっと一緒にいたいですの
関さんが、アニエスの頭を撫でる
心配しないでわたくしは別に、この人を取って行ったりはしないわよ
優しく、アニエスに微笑む
わたくしもこの人と一緒に、あなたたちの側に居たいのよわたくしの願いは、それだけ
アニエスこのお姉さんも、アニエスの家族になってくれるってさいいだろ
オレの言葉にアニエスは
この人もですの
翔よ翔お姉さんて呼んで
ニッコリと関さん、いや翔お姉さんは言った
翔お姉さん
そうよアニエスさん
うん、判ったですの翔お姉さん
わたくしもこれからは、翔お姉様とお呼びしないといけませんね
公式な場では、今まで通り関さんで結構ですわたくしが、みなさんの家族となったことは閣下や谷沢チーフには、知らせない方が良いですから
香月セキュリティ・サービスの次期現場責任者が犯罪組織黒い森の一員であることがバレるのはマズい
今まで通り黒い森は香月セキュリティ・サービスと近い関係であるが、あくまでも別組織だということを示しておかないと
さて、藤宮さんわたくしは、こういうことになりましたあなたは、どうします
翔姉さんが麗華を見る
あなたはさっきのお話しだと、一番愛着のあるのは、真緒ちゃんやアニエスさん、マナちゃんたち小さな女の子たちなのね彼のことは、どう思っているの
麗華はオレを見る
信頼しています嫌いではありませんでも
どういう風に、対応したらよいのかよく判らないんです
麗華は本音で答えてくれた
主様とお呼びしていた時が、一番安定していたと思います年下でも、主様は主様ですし
麗華は、辛そうに言う
でも、最近はやっぱり、兄には思えないんですわたくしが、兄的な存在を潜在的に求めていたことは、よく判るのですが正直、この方を兄だとは感じられません
そうかそうだよな
年下で、自分より小さな兄なんて
じゃあ、その辺のことは、全部サッパリ、頭の中から消去しちゃいなさい
あなたの頭の中を一回、整理するわよ
藤宮さんとしてはこの人たちの家族は、ずっと続けたい
麗華は口籠もる
わたくしは居たいですでも、それではいけないんじゃないかとが
何でいけないの
関さんが、畳み込む
だって、わたくしは大人なのに大人なのに、この子たちの迷惑にしかなっていなくて
ぐすぐすっと、また麗華は泣き始める
なあ、アニエスアニエスは、レイちゃんのこと好きか
好きですの
麗華の泣き声が止まる
ずっとレイちゃんに、居て欲しいよな
はい居て欲しいですのレイちゃん
アニエスが麗華を見上げる
レイちゃんアニエスは、レイちゃんが必要だって言っているよオレもそう思う
わたくしもですわ藤宮さんはもう、わたくしたちの家族です
瑠璃子も、麗華に微笑む
藤宮さんちょっと考え方を変えてみましょうどんなことも、心をナナメにしてみるとスッキリなっちゃったりするものよ
翔姉さんが、麗華に言う
あなたが、この人たちの家族に何をすることができるかまずは、それだけを考えてみなさい
わたくしにできることは守ること闘うことだけです
じゃあ、取りあえずそれだけすれば
クスッと、翔姉さんは笑う
あなたはね我が儘すぎ何でも、オール・オア・ナッシングなんだから世の中って、そんな単純じゃないわよ
翔姉さんの言葉を麗華は、黙って聞いている
少しはガマンすることを覚えなさい100パーセントに満足できる状況なんて、絶対にありえないんだからあなたが望む状況を手に入れるためには少しぐらいガマンしなくちゃいけないし、そんなガマンもできないぐらいなら、幸せなんて手に入らないからね
あたしのさっきの話覚えている
翔姉さんが真顔で、麗華を見る
あたしはこの人と一緒に居るためなら、この人の家族全部を受け入れるわ
それは聞いていました
ならあなたもそうしないさい
小さな女の子たちと家族でい続けたいのなら家族全部を受け入れなくてはいけないってこと
麗華は息を呑む
しょうがないでしょ家族という集団があってこそこの子たちは、一緒に居られるんだから
関さんは言い切る
それと自分が力が無いとか、ふがいないとか思い込まないそんなヒマがあったら、この家族のために自分ができることをしなさいグダグタするのは、できることを精一杯やった後になさいお姉さんになりたいのならっ
アニエスが麗華を見る
レイちゃんお姉ちゃんですの
ほら、アニエスはレイちゃんをお姉ちゃんだとは思っていないんだよ自分とおんなじで、みんな守られる方の立場だと思っているんだ
これまでの麗華の様子からすればアニエスが、そう思うのも無理は無い
レイちゃんはどっちになりたいのさアニエスのお姉さんそれともアニエスとおんなじ様な小さな女の子のままでいる
オレの言葉に麗華は
お姉さん、お姉さんになりたいです
なら踏ん張って頑張らないとね
そうですねお兄ちゃま
麗華は腹を括る
わたくし大人になります
散々こんがらがっていた麗華の心の糸がするすると解けていく
お兄ちゃまとセックスするわ
隕石が落ちてきたことで思ったのだけれど、
あれって保険が利くのだろうか
火事でも、水害でも、地震でも無いわけで
隕石による被害の特約なんて、無いはずだし
本当かどうか知らないけれど
昔の西欧では、落雷での死亡には生命保険が下りなかったと聞いたことがある
理由は落雷での死亡は、天罰だから
西欧では、雷は、神の武器だし
ピーター・グリーナウェイの映画に落雷で死んだ人たちを集めたドキュメンタリーがあったはず
確か、ゴッド・アクトというタイトルだった
落雷はやはり、神のしたことということらしい
450.ゴルゴダ
ホントに麗華は、極端から極端に走る
そんな無理することは無いんだぞ
オレが、そう言うと麗華は
ですがお兄ちゃまとセックスするのが、家族のルールですよね
そして、迷いをフッ切った笑顔で微笑む
だったら、しないとわたくしこの子たちのお姉さんになるんですから
麗華は、アニエスを見る
そうねあなたは形から入るタイプだものねわたくしも賛成よ
翔お姉さんが麗華に言う
それから、オレに
本人が望んでいるんだからしてあげて
ほんのちょっと前にわたくしとセックスしたいって言って下さいましたよね
うん確かにオレは、そう言った
まだそのお気持ちが変わっていないのなら抱いて下さい
わたくし生まれ変わるキッカケが欲しいんです
今すぐはダメだよお屋敷へ帰ってみんなの見ている前でしよう麗華が、本当にオレたちの家族になるための儀式なんだから
麗華は妹たちに祝福されて、処女を卒業するべきだ
はいよろしくお願い致しますお兄ちゃま
麗華は、ペコリと頭を下げる
わたくしも立ち会うわわたくしが、藤宮さんのお姉様だからこの子の精神的なバック・アップはわたくしに任せてちょうだい
翔お姉さんが、そう言った
あの翔お姉ちゃま
恥ずかしそうに麗華が言う
んなあに
わたくしのことは麗華と呼び捨てにして下さい
ああそうね判ったわ麗華
結局実際に年上のお姉様が存在することで、麗華の心はこんなにも安定している
というか翔お姉さんのお姉様能力が凄いんだな
今日はずっとどっしりと構えていて、余裕がある
本当に頼れる大人お姉様だ
あの翔お姉様
瑠璃子が、話し掛ける
翔お姉様もいつでも、わたくしたちのところにお泊まり下さいその翔お姉様にも、お兄様とお二人だけの時間が必要でございましょう
瑠璃子は頬を赤らめる
翔お姉さんとオレのセックスの時間を作るという話をしているのだ
お気遣いありがとうでもね女も20代半ば近くになると、そんなにガツガツしないのむしろ、色々と準備がね
準備ですか
とりあえず、ダイエットから始めたわ彼の前に裸身を晒すには、今のプロポーションじゃ恥ずかしいもの
いや、オレは別にそんなこと気にしないよ翔お姉さんは、今だってとっても綺麗だし
ありがとでもね、あたしが気にするのよっ
翔お姉さんは、テヘヘと笑った
一生に一度のことでしょうしかも、ここまで延々と引っ張ってきちゃったんだから後悔しない体験にしたいのよ理想のプロポーションで理想のシチュエーションであなたに抱かれたいそのための準備に、ちょっとぐらい時間が掛かったっていいわよ慌てる必要なんか全然無いんだからっ
本当に翔お姉さんは、どっしりと構えている
うん判ったオレ、翔お姉さんが望んでること何でもするよ
あったり前じゃないっそうじゃなかったら、お姉ちゃん泣いちゃうわよっ
翔お姉さんは、オレの頬を優しく撫でる
ということでわたくしの方は、夏まで猶予をちょうだいね
夏
夏休みには素敵なところへ連れてってあげるからねっ
ああ翔お姉さんは
もう、自分の処女喪失の場所を決めているんだ
判ったよでもその前に
不思議そうに、翔お姉ちゃんがオレを見る
オレ、お姉ちゃんのことギュッと抱き締めたい
オレはソファにアニエスを置いて、立ち上がる
それから、翔お姉さんを力一杯抱き締めた
お姉さんも、オレを強く抱いてくれる
翔お姉ちゃん
もう一回言って
ええ、わたくしがあなたのお姉さんよ
1分ぐらい、そのまま抱き合っていると
はいそろそろねさあ、麗華のことも抱いてあげて
オレは、麗華と相対する
レイちゃんレイちゃんも、オレのお姉ちゃんなんだよ
抱き合う前にもう一度関係を整理する
レイちゃんは、アニエスや真緒ちゃんやマナのお姉さんになるあの子たちはみんな、オレの家族なんだからレイちゃんもオレの家族になるだからオレとレイちゃんも兄妹だ
はいわたくしは、お兄ちゃまのお姉さんお兄ちゃまは、アニエスちゃんたちの家族なんだから、わたくしの弟そして家族家族なんだからわたくしは、お兄ちゃまとセックスしますいいえ世界の男性の中でただ一人、お兄ちゃまだけとセックスする誓います約束します
麗華の眼が潤んでいる
それでいいね
オレたちはギュッと抱き締め合う
そんなオレたちを翔お姉さんが、さらに抱き締めてくれた
大丈夫よわたくしが付いているからねっどんなことでも相談していいわね、二人とも
うん、翔お姉さん
オレたち3人は、誓いの儀式を済ませる
何なのあんたたち気持ち悪いバッカみたい
雪乃が不機嫌顔で、そう言った
結局さ、マトモな恋愛ができない欠陥だらけの人間が、寄り集まって傷を舐め合っているだけじゃないあんたたちなんてさ
翔お姉さんは
ええ、その通りよだから何
気持ち悪すぎて、見てらんないのよっ
雪乃は、喚く
じゃ、出てけばはい、出口はあっちよ
翔姉さんは、ニコッと微笑む
そういうことを言っているんじゃなくって
じゃあ黙ってなさいよっ
翔お姉さんが一喝する
そんなんだからあなたは、永遠にあたしたちの仲間には入れてもらえないのよっ
入りたくないわよっあんたたちの仲間なんて、こっちからお断りよっ
それなら出て行きなさいって、言っているのよっ
翔お姉さんの言葉に雪乃は気を削がれる
あたしがどこにも行き場が無いこと、知っているんでしょ
ええ、よーく知っているわよそして、ここにもあなたの居場所なんて無いから
翔お姉さんの言葉は厳しい
気安く彼に近付かないでこの子は、あなたなんか助けないわよ
た、助けるわよっだって、こいつあたしのこと、大好きなんだからっあたしに惚れているのよっだから、あたしは一生、この男のことコキ使ってやるんだからっ
雪乃は狂った様に絶叫する
ふーんこの子が、あなたのどんなところに惹かれているって
ジト眼で翔お姉さんは、雪乃に尋ねる
いやオレも気になる
雪乃は自分のどんなところをオレが惚れていると思っているんだろう
優しいところ
何で疑問系なんだ
それから、こっちを見るな
オレに眼で訴えるな
あと、顔ほら、あたし、可愛いから
それは自信があるらしい
胸を張って宣言している
自分が今、アフロだってことは忘れているらしい
じゃあ、あなたに聞くわ
翔お姉さんが、オレを見る
あなたは、白坂雪乃さんのどんなところが嫌い
人に優しくないところ
雪乃は、我が儘すぎる
廻りの人の気持ちなんて、平気で踏みつけにするし
何言ってるのよっあたし、いつも、ものすごく人に気を遣っているのにっ知らないんでしょあんたっ
雪乃の抗議は、無視する
あと髪型
ぬぁんですって
あんたみたいな男に、あたしのファッションセンスの何が判るって言うのよっ
ファッション・キチガイだったっけ
雪乃の部屋の中は服と化粧品がひっくり返りまくった汚部屋だった
鏡
アニエスが口を開く
鏡を見てきた方がいいですの
あんたまで、あたしを小馬鹿にするつもりっー
雪乃は、さらにヒートアップする
麗華ちょっと、この子をトイレまで連れてって
翔お姉さんが指示をする
着替え、用意させてあるから
了解ですお姉様
麗華が、雪乃に向かう
あ、藤宮さんいえ、レイお姉様、どうぞ
瑠璃子が、撲殺ステッキを重そうに両手で差し出す
キッと、雪乃を睨む麗華
雪乃はステッキで武装した麗華に怯む
さっさとトイレに行きなさい判るわよね
雪乃の鼻先にステッキを突き出す
ちょっとあんた、危ないでしょっ
そう言う雪乃を見て翔お姉さんは
麗華あんまりグタグタ言うようだったら、殺しちゃっていいから
雪乃の顔色が変わる
はっきり言って、わたくしたちにはもう白坂雪乃さんの利用価値は無いのよ
白坂創介の身柄は、確保しているし
白坂本家は、ジッちゃんに屈服している
このまま、あなたが遺体で発見された方が市川さんもお喜びになるんじゃないかしら雪乃を精神病院へ送ることを画策していたのだから不審死してくれた方が、後腐れが無くて助かるんじゃない
雪乃は、がっくりと力を落とす
あんた何か言いなさいよあたしのこと、助けなさいよ
オレは応えない
何よあんたには、いっぱいセックスしてあげたじゃないっ散々、あたしに気持ち良くしてもらっておいて、今さら、そういう態度を取るつもりなのっ
雪乃はオレに一方的に犯されたことすら、勝手に変更しようとしている
あんたは、あたしに感謝するべきなのよっ
今までのセックスは、全て、雪乃がオレにサービスしてくれたことで
だからこそ、オレは雪乃に感謝し彼女に尽くさないといけない
そういうことだったと思い込もうとしている
だが、そんなのは全て、ねつ造だ
現実とは、違う
ほら、行くわよ
ビュッと麗華がステッキを振る
その風を切る切っ先に雪乃は恐怖する
麗華に連れられて、トイレに向かう途中で雪乃はオレに振り返る
裏切り者
いや、オレは一度も雪乃を裏切ってはいない
オレは最初からずっと雪乃の敵だ
オレたちの間には、劣情はあったけれど愛情や友情は無かったのだから
信じていたのに
雪乃はオレとのセックスでの快感を
二人で同時にイッた体験を信頼感にすり替えただけだ
雪乃は、オレとしかセックスしたことが無いしオレとしかイッたことがないから
他の子ともセックスしているし絶頂を共有している
雪乃のオレへの感情が、幻想だということはよく判っている
だから黙っている
雪乃には応えない
応えてやらない
よしよし、よくガマンしたわねっ偉いぞっ
雪乃と麗華がトイレに消えると翔お姉さんが、そう言ってオレの頭を抱いてくれた
翔お姉さんのふくよかな胸に、顔を埋める
さて白坂雪乃さんが居ないうちに、黒森さんに報告しておきましょうか
あなたたちのこと心配しているでしょうから
ミナホ姉さんは、麗華による誘拐の真相を知らない
まだ、この事件が本気なのか、狂言なのか見極めていないはずだ
マルゴさんが、徹底的にミナホ姉さんへの情報を遮断しているのだから
ちょっと、待ってマルゴさん経由で、連絡を取るわあなたの声を聞いたら、きっと安心してくれるでしょうから
関さんは、携帯電話を取り出す
ああのね、パパ
アニエスが、不意に喋り出した
アニエスもパパとセックスするするですの
オレは、アニエスの座っているソファに戻る
どうしたんだよ、急にアニエス
オレの問いにアニエスは
セックスってあのあれのことですのそうですの
少し興奮気味にアニエスは言った
男の人と女の人があのお股を擦り合ってオチンチンをオマンマンに入れる
うんまあ、そうだ
アニエスは、白坂創介のセックス映像だけは、繰り返し観せられている
外面的なセックスという行為については理解している
マナお姉ちゃんは、パパとしていましたのルリお姉ちゃんもミチお姉ちゃんも他のお姉さんたちも、パパとしていましたの
この2日間オレは、アニエスの眼の前でヤリまくっている
そしてレイちゃんも、パパとする約束をしてましたの
アニエスは今起きている状況を、自分なりに捉えようとしている
だったらアニエスも、パパとしますの
アニエスだけ、仲間外れなのは嫌ですのアニエスも、みんなと一緒がいいですの
オレは、アニエスを前から抱き締める
背中側からは、瑠璃子が抱き締めてくれた
うん、そうねアニエスちゃんも、一緒になりましょうね
なあ、アニエス一つだけ、教えてくれお前あの地下のお前の部屋にあった、銅像の人のことどう思っている
銅像の人白坂創介
アニエスの実父でありアニエスを監禁した張本人
自分の娘、アニエスを犯すことを夢見ていた
銅像のパパンは、ずっとあそこに立っていますけれど本当のパパンは、たまにしか来てくれないですの
ああ、アニエスは
銅像と実物の違いがよく判っている
パパンはアニエスが13歳になったら、セックスするって言っていましたのそれまで、パパンのセックスをよく観て勉強しておきなさいってそれが、アニエスの運命なんだって言ってましたの
アニエスはオレに言う
アニエスは、一生、あのお部屋からは外に出られない友達もできないパパンが来てくれるのを待って、パパンにだけご奉仕するアニエスは、パパンのお人形だからずっと、ずっとそういう風に教わってきましたの
でも違いましたのたくさんの人が、アニエスに会いにアニエスのお部屋に来てくれましたのみんな、アニエスに優しくしてくれますのアニエスは、最初は怖かったですのみんなと仲良くすると、あとでパパンに怒られるお尻を叩かれると思っていましたの
アニエスの眼に涙が溜まる
でもパパンは来なかったずっと、ずっとパパンは、アニエスには会いに来ないでそれで、パパパパが
小さな手が、オレにしがみつく
パパが、アニエスをあのお部屋から出してくれましたのアニエス出られたのパパンの言っていることは、全部、嘘でしたの嘘でしたの
白坂創介に閉じ込められていた日々が凍った時間が、溶けていく
アニエスは、もうあのお部屋には戻りたくないみんなと一緒にいたいパパといたいいたいですのだから、アニエスはパパとセックスするですのパパンじゃなくってアニエスは、パパがいいですのっ
熱い涙を零しながらオレに抱きつく
うんそうだなずっと一緒だぞみんな一緒だみんなみんな、アニエスの家族だからな
パパァァ
泣いているアニエスをオレは、あやす
この子はオレの家族だ
オレの家族にするために
オレは、アニエスを抱く
そう、全て上手くいったのん良かったんじゃないあ、待って今、ミナホに変わるから
翔お姉さんの携帯の外部スピーカーからマルゴさんの声がする
どうやら、みすずたちの送迎の後に学校へ向かったらしい
今はミナホ姉さんと、校長室の下の監視室に居るようだ
ミナホ姉さんの声は、疲れていた
香月セキュリティ・サービス、関です
翔お姉さんが、挨拶する
この度は、お手数をお掛けして申し訳ございません
いえ、藤宮は当社の警護人でもありますから藤宮が、騒動を起こしたことは当社の責任です申し訳ございませんでした
問題が起きることは想定していましたなのに、わたくしの方で有効な対策を取っていませんでした非は、わたくしにあります
ミナホ姉さんはあくまでも、自分を責める
互いに謝罪するばかりでは、話が進みませんわ黒森様この件はもう不問にしてはいただけませんか
翔お姉さんは、明るい声でミナホ姉さんに言う
そう言っていただくと助かりますそれで
はい藤宮麗華は、今後はわたくしがバック・アップ致します彼女が求めていた、年上の保護者には、わたくしが就くことになりました本人も受け入れてくれましたのでもうご心配はいらないと思います
済みません本当ならば、その役目はわたくしがするべきでしたのに
ミナホ姉さんは黒森家の当主として、自分が麗華のサポートをするべきだったと後悔しているらしい
藤宮は警護人です武闘派の肉体労働者ですから黒森様よりも、わたくしの方がバック・アップ役には適任だと思いますわたくし、彼女のお姉様になりましたわ
家族の概念は、黒森様たちからいただいたものです多分、わたくしたちには、こういうシステムが一番有効なんだと思います
翔お姉さんの言葉に、ミナホ姉さんは反応する
わたくしたち
はい、失礼を承知で申し上げますがわたくしも、黒森様をお姉様とお呼びしたいと願っております
関さんもわたくしたちの家族にご参加なさりたいと
正直に申し上げますとわたくしは、彼の女になりたいんです
翔お姉さんが、オレを見てウインクする
彼のことを愛していますだから、わたくしは彼の抱えているものも全て、受け入れたいと思っています
あの子は何と
ミナホ姉さんの言葉に、翔お姉さんは笑う
この子がどんな人間かは黒森様が一番ご存じでしょう
真っ直ぐに求められたら、真っ直ぐに受け入れる子です
はいわたくしのことも、受け入れてくれました
彼が受け入れたのならばわたくしに異存はありません彼の周りには、有能な女性がたくさん居て下さる方が良いですからただしくれぐれも、彼を独占しようとはしないで下さいまた、年下の妹たちにも優しくしてあげて下さいそれだけはよろしくお願い致します
心得ましたお姉様
ミナホ姉さんは、翔お姉さんを受け入れてくれた
藤宮はいえ、彼女はもうわたくしたちの妹ですから、麗華と呼びます麗華はこのまま、香月セキュリティ・サービスに席を置いたまま、黒森家の専任警護人ということに致しますその方が色々と都合がいいですから
そうですねところで、関さんはどうなさるおつもりですか
関ではなく翔と呼んで下さいお姉様
では、翔あなたは、香月セキュリティ・サービスとわたくしたち、どっちに比重を掛けるつもりですか
ミナホ姉さんの問いに、翔お姉さんは
警護人は、わたくしの生業ですから仕事は大切にしなければなりませんしかし、香月セキュリティ・サービスと黒森家が敵対した場合は黒森家を取ります仕事を失っても、家族は捨てられませんから
いいのね、それで
もっとも、そんな状況はまず訪れませんわご存じだと思いますがわたくしは、近く香月セキュリティ・サービスの現場責任者となりますいずれは、香月セキュリティ・サービスの代表になるでしょう社の運営は、わたくしが全て決めます香月セキュリティ・サービスが黒森家と敵対することなど、絶対にありませんむしろ、香月セキュリティ・サービスは、黒森家の関連企業だとお考え下さい
逆にあたしたちが、香月セキュリティ・サービスに協力しなければならなくなるのかしら
助けていただければ幸いですがそれは、どうぞお姉様がケースごとにご判断下さい黒森家の当主はお姉様なのですから末席のわたくしは、ただご意志に従うだけですわ
判りました翔を信じます
大人の女の会話は怖い
彼に、代わって下さる
翔お姉さんがオレに電話機を手渡してくれる
もしもし、ミナホ姉さん
良かった無事なのね
電話の向こうで、姉さんが安堵している
うん翔お姉さんに、とてもお世話になったよ
藤宮さんいえ、麗華さんは
ああ今は、翔お姉さんの指示で雪乃の監視をしているもう、すっかり落ち着いているよ大丈夫だから
ごめんなさいね麗華さんの精神状態がパンクしかけていることは判っていたのにあなたたちに任せきりにしていて
いいんだよミナホ姉さんが忙しいことは、判っているし
でもあなたたちには、抑えきれなかったんでしょだから、マルゴがこんな茶番を仕組んだのね
あバレてる
まあミナホ姉さんが相手じゃな
でも、こんな風にレイちゃんのストレスを爆発させてあげないとあのままだと、本当に煮詰まって、もっと酷いことになっていたと思うよレイちゃん根が真面目すぎるから、限界までがんばっちゃうし
限界まで張り詰めた心が破裂した時に撲殺ステッキで何を破壊するのか、考えるだけでも怖い
そうね結果的には、良かったのかもね
それにアニエスを外に連れ出せたのは、良かったアニエスも決心してくれたよ
決心
アニエス、こっちに来てミナホ姉さんに報告して
アニエスが電話に出る
アニエスですのこんにちわお姉さん
はい、こんにちわ
アニエスにお姉さんと呼ばれてミナホ姉さんは、緊張する
アニエスパパとセックスしますの約束しますの
あ、姉さんパパっていうのは、オレのことだからねっ
はいのパパとセックスしますの何回でもパパのしたいだけ、しますの
そう良かったわね
ああ良かったよこれで
ミナホ姉さんの罪は幾らかは軽くなったろ
安心してミナホ姉さん1人に、十字架を背負わせないから
雪の中、保険会社に出す父の診断書を受け取りに大学病院へ
明日は、介護保険の認定のために役所の人が来る
今が、多分、私の人生で一番最悪な状態なのだろう
しかし、ここはまだどん底ではない
きっときっともっと酷い目に合うんだろうなあ
そう言えば、例のトラブル
一週間前にもう大丈夫ですから、今週中に連絡しますと言っていたのに、それっきり
いい加減、頭に来たので、こちらから電話したら
あ、今、本社に連絡しました速達で書類を送ってもらいますので、届き次第そちらへ送ります
うん忘れていたのね思いっきり
一週間、何も進んでいない
451.たかさご
少しよくない状態ね
電話が終わると翔お姉さんが、そう言った
ミナホ姉さんの精神状態のことを言っているんだろう
ミナホ姉さんには、夕方までに戻るとだけ伝えた姉さんも了承してくれた
とても暗い元気の無い声で
うんまあ、今日が山場だからね
今夜、これからミナホ姉さんの復讐が決行される
白坂創介の眼の前で4人の娘が、オレに犯される
その後ミナホ姉さんが、白坂創介をどうするつもりなのか、オレは知らない
そうわたくしに手伝えることがあったら、何でも言ってちょうだい
翔お姉さんが、そう言ってくれたのは最悪の事態を考えてのことだろう
もし、ミナホ姉さんが、白坂創介を惨殺してしまったとしたら
その可能性は、とても高い
オレたちは、公安警察の監視下にある現在の状況の中で白坂創介の遺体を処分しないといけない
ハァと、オレは溜息を吐く
アニエスと瑠璃子は、オレにしがみついたままだ
イーディは再びベランダへ、トレーニングに出る
この部屋の張り詰めた空気が嫌なんだろう
わたくしにはこういう風にしか言えないのだけれど
復讐というのはどこかで、線引きしない限り終わらないものだと思うの
線引き
今回のケースだと黒森のお姉様は、何年も掛けて綿密に計画を練り上げて来られたんでしょだから、もう復讐の基本計画の部分は、変更できないと思うのコアな部分を取りこぼすと達成感が得られない、不完全燃焼な気持ちに陥るわ
あらかじめ決めていたことの大枠は、スッキリと遂行しないとねそれで、線引きをする復讐は、これで完了全てはもう、過去のことってことにね
そんなに上手くいくでしょうか
瑠璃子が、尋ねた
いや、どんな風に実行したって、どうせ予定通りにはできないのよ絶対に、取りこぼしが出るわ現実って、そういうものでしょうでも大枠で復讐が完遂すれば、一応の満足感は得られるわというよりわたくしたちの力で、黒森のお姉様が満足して下さる範疇に納めないといけないのよ取りこぼした分については、仕方無いと笑って諦められるようにね
翔お姉さんはオレたちの姉として動き出そうとしている
恭子さん、ミナホ姉さんの次に年長なのが、翔お姉さんだもんな
考え方が大人なんだ
ではわたくしたちは、どこで線を引くべきでしょう
再び、瑠璃子が尋ねる
それは黒森のお姉様に直接会って、あなたが感じ取るしかないと思うわ
あなたオレ
全ては、オレ次第か
わたくしの今の印象だと最悪の状況を避けられるかどうかその瀬戸際だと思うの
最悪
それぐらい、思い詰めていらっしゃる声だったわ
ああ恭子さんだけでなく、マルゴさんまでミナホ姉さんの側に居る
マジで危険信号が出ているんだ
ミナホ姉さんは、白坂創介を殺して自分も死ぬかもしれない
そこまで、煮詰まっている
でも、黒森様は黒森家の当主でいらっしゃいますわたくしたちやお兄様を残されて逝くことは
そうだミナホ姉さんは、黒い森のリーダーだ
姉さんがいなくなってしまったら、オレたちは
瑠璃子の言葉を翔お姉さんが遮る
この人が、どっしりしてきちゃったでしょだから、マズイのよ
黒森のお姉様は自分がいなくなっても、この人が居れば家は、まとまるって感じていらっしゃるのかもしれないわ
そんなオレなんて何の力も無い、ただの高校生ですよ
あなたには、力が無くてもあなたの周りには、能力のある人たちが集まっているわ
あなたには、家の女性たちを安定させる力があるわ問題なのは黒森のお姉様が、それであなたさえ健在ならば、自分が不在でも家が何とか存続すると思ってしまわれるかもしれないということもし、そうなったら極端な選択をなさる可能性が強いということよ
すなわち自死
白坂創介と差し違える
だから、マルゴさんは麗華という、あなただけでは安定化させられない案件を放置しておいたのよあなたが、あたふたしている間は黒森のお姉様は、心配していらっしゃるでしょうから
それで、マルゴさんはわざと
と、同時に黒森のお姉様は、あなたに自分の心の中の動揺を見られたくなかったのよ恥ずかしいっていう気持ちが強かったんだと思うわ
恥ずかしい何でです
それは乙女心というものでしょうね
オトメゴコロ
あなたの前ではいつも、落ち着いていて、クールで知的なお姉さんで居たいのよいつでもあたしも、そうだからよく判るわ
翔お姉さんは微笑む
わたくしもよく判ります
わたくしもお兄様の前では、いつも可愛くありたいと思いますから
恥ずかしそうに眼を伏せた
とにかく復讐の決行が迫って来るにつれて、黒森のお姉様の心の中は色々な感情がせめぎ合って、ハラハラドキドキしているんだと思うわその心の動揺をあなたの前で隠すのが耐えられなくなってきたから、あなたたちと距離を取ったんだと思う
思えば最初に、2人でアニエスの部屋を覗き込みに行った時、ミナホ姉さんは感情的でちょっとおかしかったと思う
あの辺りから変調は出ていたんだ
その後のミナホ姉さんは、極力、アニエスの部屋には近付かなかったし
オレとの接触も抑えていた
そして昨夜からは、お屋敷を出て、学校へ籠もってしまった
じゃあ、マルゴさんがレイちゃんの脱走作戦を実行させたのは
そろそろ、潮時だからでしょ今日の夕方には、予定通りに復讐を遂行しないといけないのだしその時になって、あなたたちと顔を合わすんじゃ、何もかも手遅れになるわ
あのままオレたちはお屋敷、ミナホ姉さんは学校と分かれたままで、夕方まで時間を費やしていたら
ミナホ姉さんは、極端に煮詰まった頭のまんまで白坂創介への復讐を始めることになる
何にしてもここで1アクション起こさないといけない
マルゴさんは、そう判断したのか
いや、ミナホ姉さんを側で診ている恭子さんの発案かもしれない
わたくしは、そうマルゴさんから聞いているわ
翔お姉さんは、全て事前にマルゴさんから作戦についての詳細を聞いている
それでオレ、どうしたらいいんですかね
オレは、率直に尋ねた
自分では判らない
あなたに判っておいてもらいたいことはね最良な状況を望まないでってことよ
翔お姉さん
変な期待は、絶対にしない甘い考えは全て捨てて一番最悪の状態にならないようにするために、わたくしたちは行動するそう、肝に銘じなさい
つまりミナホ姉さんの自殺を回避することだけを考えろってことか
他のことは全て諦めて覚悟するのよ
ミナホ姉さんが、何とか白坂創介を殺さないようにならないかと考えていた
ミナホ姉さんに、殺人者の十字架を背負わせたくなかった
それは甘い考えなんだ
事態は、オレが想像していた以上に深刻なんだ
ミナホ姉さんの心の中は
線引きはそこなのですね
瑠璃子が吐息を吐く
オレは寧のことを思い出す
今、寧が、スッキリとした顔でいられるのは
やっぱり、シザーリオ・ヴァイオラが死んだからじゃないだろうか
復讐すべき相手が、この世からいなくなったからこそ晴れ晴れとした気分でいられる
もし、あの時オレが、ヴァイオラを撃たなかったら
ヴァイオラが、香月セキュリティ・サービスに捕まったままとしてもまだ生きていたとしたら
寧の心は、救われているだろうか
多分、寧の心の闇は残ったままだと思う
それしかないのか
白坂創介は殺すしかないのか
とにかくこの問題のポイントは、その辺りよそれよりも下のレベルのことは、全て諦めてちょうだい
翔お姉さんは言った
黒森のお姉様の基本計画には、破綻を起こせないのよ何もかも、全て予定通りに実行するその上で、最終段階で悪い方へ行かないように阻止するもう、それしかないんだから
ジッとオレの眼を見る
だから、容赦しちゃダメなのよ
オレは、オレの身体にしがみついているアニエスを見る
アニエスは心配そうに彼女には、よく判らない内容の会話を聞いていた
オレは、アニエスの小さな身体を抱き締める
オレは絶対に容赦してはいけない
白坂創介の前でこの12歳のハーフの処女を犯すことを
4人の娘たちを父親の眼の前でレイプすることはミナホ姉さんの基本計画なのだから
白坂創介から愛する娘たちを奪い取ること犯すこと
それは、家族から誘拐され、白坂創介に犯され、娼婦に堕とされ、さらに最愛の妹をも同じ境遇に堕とされ、その妹と自分のお腹の中の子供を殺されたミナホ姉さんの果てしない憎しみの結晶なのだから
自分がされたことを白坂創介にも体験させる
これはもう変更することはできない
着替えて来たわよっ
トイレから雪乃と麗華が戻って来る
雪乃はうちの学校の制服姿に戻っていた
この着替えを翔お姉さんに託したのは、マルゴさんだろう
制服なんて、地味でダイッ嫌いだったけれどこうやって、久しぶりに着ると落ち着くわねっ
マルゴさんが、この制服を選んだ理由はただ一つだ
これが、雪乃が父親の前で犯される時の服装だからだ
雪乃は、指で髪を掻き上げる
これは白坂雪乃オレのクラスメイト
いつも見ている、雪乃の姿だ
何よジロジロ見ないでよっ
雪乃が、オレの視線に不快そうに言う
オレは、この雪乃も容赦してはいけない
絶対に容赦しちゃいけない
ていうかさご飯、まだなわけっ
雪乃オレが、お前の昼飯代、出してやろうかメニューにあるもの、何、食ったっていいんだぜ
オレは罠を張る
雪乃は飛びついて来る
その代わり条件がある
容赦は、しない
後でセックスしようぜ屋敷に戻ったら
いいだろ今さらさんざん、セックスしたんだし
へえそんなにしたいわけあたしとさ
したいから言っているんだろ
どうしょっかなあ
あ、翔お姉さん雪乃、昼飯いらないそうです
そんなこと言ってないでしょっもおっ
雪乃はキレる
じゃあ、身体だけ貸してあげるわ
身体を貸す
あたしはさ引っ繰り返って、寝そべっているからあんたは、勝手にあたしの身体を弄くればいいじゃないあたしは、何もしないからねっ
マグロでいるってことか
だから、舐めるとか、おしゃぶりするとかそういうのは、一切しないからあたしは何もしないあ、あんたは舐めなさいよやらしてあげるんだからさっ
雪乃らしいというか何ていうか
ったく、したいならしたいって、もっと早く言えばいいのよあたしの身体が忘れられないんでしょ
雪乃は、満足げに微笑む
昨日の帰還から、今までずっとオレに無視されてきた雪乃だ
オレに求められたことは自分の価値を認めさせたということになる
これからも、そうしましょうよ1日、30分ぐらいなら、あんたに身体を貸してあげてもいいわよその代わりあんたは、あたしの生活を保障しなさいよ
何だよ、それ
3食のご飯と、住む場所と、着るものよあ、もちろん、あたしはセンスの良い服しか着ないからねっ
悪い取引じゃないでしょどう
フフンと、強気に雪乃は笑う
こいつはオレが、自分のことを惚れていると本当に思い込んでいるらしい
自分の身体を抱くためならオレは何でもすると
それって、白坂雪乃さんは売春婦になるってことかしら
翔お姉さんが言った
何言っているのよっあんたっ
衣食住を満たすためだけに、男に身を任すのは売春でしょあなた、売春のお誘いをしているって判っているの
違うわよっあたしは
だって、白坂雪乃さんはこの人のこと、愛していないんでしょ
そ、そうよこんなやつ、嫌いよ
嫌いな人に恵んでもらうなんて完全に売春じゃない
だって、こいつはあたしのことが大好きなんだからっだから、いいのよっ
じゃなに、あなた的には、ストーカーはアリなわけオール・オッケー
何で、そうなるのよっ
一方的な愛がオーケイなら、そういうことでしょうが
雪乃は、タジタジとなる
とにかくこの男が、あたしを求めるのよっだから、しょうがないじゃないっあたしは仕方無く身体を差し出すだけなんだからっあたしは、何も悪くないのよっ全部、全部、こいつが悪いんだからっ
もういいじゃないっとにかく、メニューちょうだいっ何食べるか決めるからっ
呆れた様子で、翔お姉さんは雪乃にメニューを渡す
あの、雪乃一応、言っておくと一回でいいからな
オレは、雪乃に釘を差す
オレがまだ何の返答もしていないのに今ので、1日30分のセックスと引き替えにオレが雪乃の生活を面倒見ることになったとか主張されては困る
昼飯と引き替えに1回だけセックスしてくれればいい
嘘吐き
あんたが、1回だけで満足するわけないじゃないっどうせ、あたしの中に何回も射精するんでしょっ
あたし判っているんだからっ
昼飯はそのまま、ホテルの部屋でみんなで食べた
ルームサービスの洋食だった
翔お姉さんは、パスタで麗華は、ラザニア
オレと瑠璃子とアニエスは、ハンバーグ
イーディは、ビーフシチュー
雪乃は1人で、パスタとハンバーグとシチュー
3人前を、ペロッと食べた
食べ終わって、ゲップをする
雪乃4月に出会った時は、こんな女だとは思わなかったんだよなあ
まあまあよねちょっと、アルデンテじゃなかったけれどそれと、ハンバーグのソースはイマイチね
誰も聞いていないのに料理の批評までする
食後のコーヒーを飲みながら
この後、どうしましょうかまっすぐ、戻るのにはまだ早いわ
翔お姉さんが、言った
ミナホ姉さんには、夕方までに戻ると言ってある
確かに多少の時間がある
だったらもう一度、浜に行きたいなアニエスと波打ち際を歩きたい
さっきは、見ていただけだった
今度は歩きたい
濡れた砂浜の感触や海の水に触れさせたい
だったら、この下がここのホテルのプライベートビーチになっているから使わせてもらうように頼んでみるわ
翔お姉さんが、フロントに電話を掛ける
警備の問題があるんだな
ここには、瑠璃子がいる
部屋の外で待機している香月セキュリティ・サービスの人たちは、瑠璃子がジッちゃんに香月家から出されたことを知らない
今の任務は瑠璃子の警護だと思っているだろう
またさっきみたいに北九州の組織の連中に襲撃される可能性もあるしな
オーケイよ、行きましょう
翔お姉さんは受話器を置く
ザザザーンと波飛沫
やっぱり、海は凄いな
冷たいですのっ
オレと瑠璃子に左右から手を引かれてアニエスは、波打ち際を歩く
3人ともサンダルや雪駄を脱いで裸足になっていた
シュワワワーッと白い泡の波がオレたちの足下を洗っていく
波が引きまた次の波が押し寄せる
ザザザーワーッ
日本の海は、こういう青なんですね
わたくしが、いつも見ている海とは色が違います
瑠璃子の言っているのは、香月家のプライベートビーチのある南の海のことだろう
やっぱり、緑色なのかい
はい、エメラルドグリーンですそれから、陽射しも強くて、空の青も違います
それは緯度によって、太陽光線が変わるからよ
翔お姉さんがオレたちに言った
太陽の光が、地球に降り注ぐ時に、紫外線も、可視光線も、赤外線もみんな空気の層を通過する時に減衰するのよでも大気圏の空気の層の厚さが、緯度によって違うでしょ赤道に近い場所だと、日光は真上から垂直に降り注ぐから、大気の層を貫いてくる厚さは最短になるわその分、大気に減衰される量が減るのよ逆に極に近くなると、大気の層を斜めに突っ切るから通り抜けてくる空気の層は厚くなるだから、たくさん減衰するってわけだから緯度によって、太陽光は微妙に変化しているのそれせいで人間の眼で見て、美しいと感じる色も変わってしまうらしいわ
赤道に近い地方だと、エメラルドグリーンや鮮やかなピンクが映えるのは、そのせいらしいわ
イーディがやって来て瑠璃子に何か言う
アニエスさんに一緒に貝殻を拾おうって、言っているわ
貝殻
真緒ちゃんのお土産にしようって
イーディは、ニヒヒと笑う
貝殻
アニエスは、首をかしげる
そんな彼女に、イーディは手の中の巻き貝の貝殻を見せる
こういうのがいっぱい落ちているから、一緒に探そうって言っているわ
瑠璃子がまた通訳してくれる
綺麗ですの
アニエスは、貝の内側のキラキラ光っているところを見て言う
うんもっと落ちているだろうから、みんなで探してみようよ
はいですのっ
アニエスは、ニッコリと微笑んだ
レイちゃんも、一緒に探してくれよっ
オレは、後ろで雪乃の監視をしている麗華に言う
ちなみに、雪乃は1人で、ビーチのサマーベッドにふんぞり返って寝そべっている
ホテルの人に、勝手にトロピカルドリンクを注文して
どうやら、雪乃にとってはそれもオレが支払うべき、昼飯代に入っているらしい
行ってらっしゃい、この子はわたくしが見ているから
翔お姉さんが、麗華に言った
お姉ちゃんらしく、ちゃんと妹たちの面倒を見るのよ
麗華はアニエスの方へ、走って来る
アニエスレイちゃんも一緒に、探してくれるってさ
アニエスが、麗華に手を差し出す
その小さな手を、麗華は嬉しそうに握った
アニエスの手を引いて、2人で貝殻を探しに行く
イーディは大きな木片を見つけてきて、それをスコップにして砂の中を掘っている
ホッ、ホッ、ホッ
うーん、時々イーディは、イヌじゃないかと思うような挙動をする
瑠璃子がぴったりとオレに寄り添う
何でもありません
瑠璃子は顔を赤らめる
こうやって、お兄様と海を歩くのはとっても良い思い出になると思います
わたくし忘れません
昔お祖父様とロンドンの街を散策したことがあるんです
オレの手を握りしめて瑠璃子は言う
お祖父様という言葉に、オレは反応する
わたくしがまだ、幼稚園の頃ですわお祖父様が、サビィル・ロウにお洋服をお仕立てに行かれた時に一緒に付いて行ったんですその帰りに少し、街の中を散歩してあ、もちろん警護の方谷沢さんたちも、ご一緒でした
瑠璃子の幼稚園の頃の話か
午後で、空は気持ちの良く晴れていましたわたくしたちは、テムズ川の方へ出たのですけれどそこにとってもお洒落なイギリスの紳士が歩いていらっしゃったんですよ黒い燕尾服にシルクハットも被っていらっしゃって、銀のステッキ手は白い手袋で立派なおヒゲの方でしたその方が、口笛で何かの曲を吹いていらっしゃったんですよ
わたくし、何かその方が、絵本から飛び出して来たように思えてきてジッと見てしまったんですそしたら、その紳士はわたくしに気付いてわたくしにウインクをして、立ち去って行きました
そうしたらわたくしが、その紳士に見とれていたのがお嫌だったんでしょうねお祖父様が、とっても不機嫌になられて
おいおい、ジッちゃん
何だ、あんな口笛なんぞに負けやしないって、おっしゃってロンドンの街の真ん中で、謡を唸られ始めたんです
謡謡って何
お能の上演の時に、横で謡われているうーんと、判りませんか
ごめん、オレ、よく判らないんだよ
瑠璃子は、ふんっと腹に力を込めて低い声で謡い出す
高砂やぁ、
この浦舟にぃ、帆を上げてーぇ、
月もろともぅに、出潮のーぉ、
波の淡路の島影やぁ、
とぉおく鳴尾のおーき過ぎぃーて、
はぁや、すみのえに着きにけり、
はぁや、すみのえに、着きにけぇーりぃぃー
謡い終わってハッと息をつく
うふふこれを大声で、ロンドンの街中で謡われたんですよっお祖父様ったら
瑠璃子は笑う
お祖父様この謡がお好きなんです酔われると、今でも、よく謡われますこれ時代劇とかでも、謡われているの聞いたことありません結婚式の場面で
ああ、そう言えば、聞いたことあるかも
この高砂の謡曲は、結婚式でよく使われるんですだから、お祖父様瑠璃子の結婚式でも、謡ってやるからっておっしゃって
ふわっと瑠璃子の眼に、涙が浮かぶ
昔、ロンドンで
横断歩道を歩いて渡っているだけなのに屈強な黒人さん2人に、指を差されて笑われたことがあります
歩いているだけで私は可笑しいのでしょうか
452.浜辺にて
瑠璃子、ジッちゃんのところへ帰りたいのか
オレは、瑠璃子に尋ねる
いいえ、わたくしはお兄様の奴隷ですから
正直に答えてくれ瑠璃子は、意地っ張り過ぎるから
わたくしは、本当にお兄様のお側に居たいんですそれは本心ですお兄様とわたくしの家族とずっと一緒に暮らしていきたい瑠璃子は、そう望んでおります
はいでも、わたくし、お祖父様のことが心配なんです
わたくし、もう香月家のことや、グループの企業のことなどのことは考えていません香月家の後継者についても
瑠璃子は、海の彼方に眼を向ける
今は名家の娘として生まれた義務も、矜持も、全て投げ捨ててしまいましたわたくしは、ただの奴隷です家も血筋も何もかも無意味です
そして真っ直ぐに、オレを見る
そしてわたくしはお兄様を愛しておりますから
瑠璃子は、オレを抱き締める
この身も魂も、お兄様に捧げておりますその言葉に、嘘偽りはございませんでも
ジッちゃんのことが、心配なんだな
はいお祖父様と美子様のことが
そうだな家族だもんな
ジッちゃんも、美子さんも瑠璃子の家族だろう家族だから、心配なんだろう
瑠璃子がオレの顔を見上げる
前の瑠璃子は、個人の感情よりも名家の娘としての言動にばかり気を取られていた
香月家の娘だから、**しないといけないとか
あんなに頭でっかちだった瑠璃子が今は純粋に、自分の家族の問題として、ジッちゃんと美子さんのことを心配している
政治的な発想は抜きで自分の心に素直になろうとしている
瑠璃子もどんどん変わっているんだな
良い方向へ
後で、みすずたちと相談しよう
香月家のことはジッちゃんのもう1人の孫娘と話し合うべきだ
姉さんたちの意見も聞きたいしみんなで、どうしたら良いのか考えようよ
今のオレたちには頼れる姉さんたちが、いっぱいいる
きっと打開策は見つかるはずだ
さっきのロンドンでのジッちゃんの謡いの話だけど、美子さんも一緒だったの
はい、もちろんです美子様とはいつも一緒でしたから、わたくし
幼い頃から、ずっと一緒同じ家で一緒に寝起きしていた美子さんと、瑠璃子は今、離れて暮らしている
わたくしたち、お祖父様がロンドンの街中で高砂を謡われたのが、何だか恥ずかしくてそれで、その後2人で歌ったんですウエストミンスター橋のたもとの女王ブーディカの像の辺りでした
へえ、何の歌だったんだ
瑠璃子はクククと笑う
それが海の歌ですわ
今思うとおかしいですよねロンドンに居るのに、それもテムズ川の橋のほとりなのにわたくしと美子様は2人で、日本語で海の歌を歌ったんですお祖父様は、ニコニコ笑って、聞いて下さいました
眼の前に拡がる海原
海は広く、大きい
10年ちょっと前なんですよねそれでも、あの頃のお祖父様は、今よりもご健脚でいらっしゃいました改めて考えるとかなりの距離をお散歩したことになりますものねサビィルロウ街の仕立屋さんから、ピカデリー・サーカスを抜けて、トラファルガー・スクエアへナショナルギャラリーを背にチャリングクロスからテムズ川へそのまま川に沿ってウエストミンスター橋道の向こうがビッグベンです女王ブーディカの像は、そこにあります
瑠璃子は、懐かしそうに一つ一つ、思い出していく
警護が付いていたとしても、よくもまあ、あんなに長い距離を歩いたものですわそれも異国の都のロンドンでああわたくしたち、お祖父様とお散歩したのは、あの時が最初で最後ですわもしかしたら、お祖父様がわたくしたちのお相手をして下さるために送迎の車をキャンセルして下さったのかもしれません
思い出って、いいな
オレもさ父親とは、全然話をしないし一緒にどこかに遊びに行ったことなんて無いんだけどさ
オレの記憶が蘇る
オレのバァちゃんの埋葬の後にさオレのバァちゃん、ちゃんとしたお葬式はしてあげられなかったからお骨をお寺に納めただけで親父とオレと二人きりだったんだよ他には誰もいなくて冬の寒い日だったなあ今にも雪が降りそうな、どんよりとした曇り空で手袋とか買ってもらえなかったから、手がかじかんで痛かった
納骨の帰りに駅へ向かう途中だった親父がさ突然、ラーメン食っていこうかって、オレに言ってさ二人で食べたんだ390円の一番安いラーメンはは、値段まで覚えてら
芯まで冷えた身体に、ラーメンが温かくてさ親父と二人きりで、外で何かを食ったのが初めてだったもちろん、その後にも無いよこの時だけただ一度きり二人とも、全然会話しないでただ食っているだけだったなあ、そうだ親父が、オレに聞いてきたんだよお前は今、何年生なんだっけってそれだけだな話したのは
思い出
でも、良かった思い出があるってことはこうやって、思い出して話すこともできるし
わたくしにとっては、今日、今、この瞬間も大切な思い出になっています
お兄様いっぱい思い出を作りましょう瑠璃子と一緒にいいえ、瑠璃子とお兄様だけでなく家族の皆様と一緒に
と、イーディとアニエスが、オレたちの方へ走って来る
見てみて、パパこんなに取れましたの
アニエスは、イーディと拾った貝殻をオレに見せる
うん綺麗だな
イーディは、どんなもんだいと意気揚々だ
はいですのっ真緒ちゃんにお土産ですのっ
アニエスは、ニコニコと笑った
この子たちにとっても今日の海が、良い思い出になって欲しいと思う
ゲッ、白坂雪乃ッッ
その瞬間背後で、スットンキョな声が上がる
驚いて、振り向くと
雪乃にトロピカルドリンクを運んで来た、ホテルの若い従業員が叫んでいた
マジで驚いたのだろう、お盆からグラスを落とした
鮮やかな青いドリンクは、砂の上に零れ落ちる
し白坂雪乃が、ここにう、嘘だろ
20代前半だと思われるその従業員は、雪乃を見て震えている
だ、だったらどうしたってのよっ
雪乃は逆ギレする
な、何で、肯定しちゃうんだよっ
ちょっと荒井くん、何やっているの誰も通すなって、指示しておいたでしょ
ホテルの従業員に張り付いていた警備員に、翔(ショウ)お姉さんが怒鳴る
すみませんホテルの従業員なら構わないかと
勝手な解釈はしないでちょうだいっ
若い従業員は
ヤッベ、マジかよっホントに白坂雪乃だぜ
すっかり興奮している
持って来たドリンクを落としてしまったことへの謝罪の言葉すら言わない
落ちたグラスもそのままだし
何で、あんたがあたしのこと知っているのよっ
攻撃的に、雪乃が吠える
すっげ、動画のまんまだよっ
動画って何よ
だからあんたのエロ動画だよっ
従業員は、叫ぶ
オレ、全部観たよそれから、保存もしてあるからっほら、あんたの動画、児童ポルノになるからって、運営に見つかったら即消されているから
雪乃のエロ映像は確実に拡散している
やっべ、すっげ、やっべまじっすかこれ
若い従業員は、携帯電話を取りだして雪乃を撮そうとする
荒井くん
翔姉さんの指示に、香月セキュリティ・サービスの警備員がその携帯電話を引ったくる
何すんだよっ、てめえ
お前こそ客に対して、何てことをするんだ
従業員と警備員が睨み合う
やめなさい荒井くん
翔お姉さんが2人の間に入る
あなたここのホテルの正社員それとも、バイト
バイトだけど
若い従業員は、不満そうに言った
翔姉さんは、溜息を吐く
このホテルも見た目だけみたいね
こんなバイトを雇っているんだから質は悪いってことか
あ、判ったオレは、白坂雪乃を見ていないってことにすればいいんだな
若いバイトが言う
それでオレに幾ら払ってくれるわけ
だから口止め料さ
あなたね
翔お姉さんが、怒りの表情を見せる
あのさオレは、今すぐツレにメールしたっていいんだぜ白坂雪乃は、ここに居るってさあ、マスコミとかの方がいいかなあ
バイトの青年は、平然と脅しに掛かる
荒井くん、支配人を連れてきて
翔お姉さんは香月セキュリティ・サービスとしての正しい解決法を行おうとする
会社組織のトップから、圧力を掛けるという
ダメだよ、姉さん
オレは雪乃の方へ向かう
瑠璃子は、バイトの青年に顔を見られないように背を向かせてある
何だよ、お前
明らかに年下の高校生であるオレを見てバイトの青年は、高飛車な態度を取る
どうせこの人は支配人から注意してもらおうが、口止め料を払おうが雪乃を観たことをネットで呟くよ
こういう人間はそうする
何でも面白ければそれでいいと思っているんだろうから
そうですよねコガネイ・ケンタロウさん
オレは、バイトの人の胸のネームプレートを見て言った
な、なんだぁっ
若いバイトは、オレを威嚇する
このホテルでバイトしているコガネイ・ケンタロウさんについての情報を集めて下さい現住所と家族構成、友人関係について
オレは荒井警護員に、そう言う
オレたちの組織なら、簡単に全て判りますよね
オレはわざと、そう言う
何だ、お前組織
ほら引っ掛かった
そこにいるのは、白坂雪乃白坂雪乃が、闇組織によって誘拐されていたことは、あなたも知っていますよね
世間には雪乃は、白坂創介が怒らせた暴力団組織によって拉致されレイプ映像を撮られたってことになっている
オレたちがその闇組織です
オレはニヤリと笑ってやる
バイトの青年はエッという顔をする
翔お姉さんの仕事は完璧のはずだからオレたちが、香月家にまつわる人間だということは支配人レベルしか知らないはずだ
他のホテルの従業員にはどっかの金持ちが、お忍びで来ているから邪魔をするなぐらいの通達しか出ていないはずだ
香月セキュリティ・サービスの名前さえ出していないだろう
もし、あなたが、ここで観たことを誰かに言ったらあなたや、あなたの家族、友達が困ることになると思います判りますね
オレの言葉に青年は
脅すつもりかよ
オレたち、闇組織なんだぜ当たり前だろ
わざと不良っぽい口調で言ってやった
この辺は、マルゴさんや寧からの直伝だ
小物の相手に対しては、堂々と構えて基本は、丁寧な口調で
そして、一押しするところで、不良っぽく
まずは論理で攻め
オレは、麗華を手招きする
そこのコンクリートのブロック、一撃で砕いてみて
麗華は、撲殺ステッキを構えて
テェイヤァッ
ゴキッ
大きな波消しのコンクリート・ブロックが砕けて割れるっ
な、何だっ
バイトの青年は、呆気に取られる
君の頭だったら、もっと簡単に砕けるよ
麗華は、撲殺ステッキをスッと青年に向ける
オレたちの組織には、こういう人たちが何人もいるんだよ
論理の次は、暴力を見せる
それが黒い森の流儀だ
あなた、誰にも言わないって約束してくれるわよね
オレの敷いた路線に、翔お姉さんも乗ってくれる
どうするのコガネイ・ケンタロウさん
若いバイトは
い、言わないです
白坂雪乃なんて観ていないそうよね
翔姉さんの言葉に、青年は屈服する
じゃあ、もういいわあなたは、早く、自分の仕事場へ戻りなさい
なあにまだ、何かあるの
翔お姉さんが、青年に言う
その後ろで、オレと麗華がバイトの青年を睨んでいる
そのドリンクの代わりはすぐ、お持ちしますんで
自分が落としてしまったグラスを慌てて拾い上げる、青年
もう、いらないよ持って来なくていいから
ま、待ちなさいよあたしは飲みたいわよっつーか、あんた、全員にサービスしなさいよっ
雪乃が、喚き出すが
もういいから二度とオレたちの前に姿を現さないで下さいコガネイ・ケンタロウさん
行きなさい
翔お姉さんが、バイトの青年を促す
青年は小走りでホテルの建物の方へ走っていく
急いでここを離れよう
翔お姉さんに、言った
何でよっあの人、誰にも話さないって、言ってたじゃないっ
雪乃が、オレに絡んでくる
ああ、あの人はここで雪乃を観たことを、誰にも言わないってだけ、約束したんだ
ホテルに戻ったらバイトの仲間を捕まえて、おい、向こうのビーチにスゲェ人が来てるぞって言いまくるよ自分だけが、オレたちに怒鳴られるのは頭に来るから他にも犠牲者を作ろうとして
雪乃は驚く
そうやって、間接的に雪乃の存在を広めようとするそうしたら、オレたちにも復讐できるからな
自分は、雪乃のことは、誰にも言っていないと、後で主張できるし
つまり、今オレがやったのはただの時間稼ぎでしかない
この隙に、さっさとこのホテルから逃げ出した方が良いだろう
あんたよくそんなこと判るわね
簡単だよ今のバイトの人が、遠藤だったらどうするかって考えれば、すぐに答えが出る
あ、なるほどね
雪乃は、納得する
いや、雪乃お前だって
あのバイトの立場になったら、きっとそうする
オレには判っている
だから今の内にここから出るよ
オレの言葉に、翔姉さんは
判ったわ荒井くん、あなたの班は居残りよわたくしたちが撤収した後で、ホテルの清算をしてから戻りなさいあ、領収書は宇宙のこどもがみんなでてをつなぐ協会・ドリームXでね
翔お姉さんは、オレを見る
ま、色々と組織を持っているのよ、あたしたちも香月の名前を出せない仕事も多いから
オレは、浜の方へ振り向き
アニエスそろそろ帰るよ
アニエスが、パタパタと走って戻って来る
腕にいっぱい貝殻を抱えて
イーディには、瑠璃子が英語で声を掛けた
はじめは、もう少し浜でアニエスと遊びたいとクズッていたみたいだけれど真緒ちゃんが待っているからと言ったら、納得してくれた
雪乃も行くぞ
ちぇっトロピカルドリンク、飲み損なったわよ
雪乃は、不機嫌にそう答えた
こっちから駐車場へ上がりましょう
麗華が、先頭に立つ
ホテルの従業員には、見つからないように浜から、駐車場へ
途中から香月セキュリティ・サービスの黒服警護員もガードに付いてくれる
先導車は、中本くんお願いわたくしは、後ろからガードします麗華は、元通りよ
元通りつまり、白いバンの運転を託す
高木くん、無線機の予備を藤宮さんに渡して
麗華が、香月セキュリティ・サービスの無線機を受け取る
何かあったら、これで連絡するからいいわね
麗華が、答えた
さ早く、乗って下さい
瑠璃子がアニエスを白いバンに乗せてあげる
オレたちも、次々と乗り込む
麗華が運転席で
オレとアニエスと瑠璃子が、2列目
雪乃とイーディが後ろの席
イーディの位置だけ行きとは違う
各車、準備はいいわね
麗華が、ダッシュボードに置いた無線機から翔お姉さんの声がする
先導車中本、了解
藤宮、了解しました
翔姉さんのアメ車を加えてこのホテルからは、3台で撤収することになる
オーケイ中本くん、ルートはGの3よ
中本了解車、出します
先導車が動き出す
そのすぐ後ろをオレたちの白いバンが
最後に翔お姉さんの車
ホテルの駐車場から車道へ
ねちょっと潮臭いわよ、あんたたち
ああ、アニエスもイーディも、手足を海に浸して遊んでいたから
特にイーディ
お前ツナギのズボンの裾まで、ビッチャビチャじゃないか
ええっと確か
この辺にタオルがあったと思う
大分、このバンには乗り慣れてきた
ほら、拭けよイーディ
オレがタオルを手渡すとイーディは、ツナギの胸を開いて、中の汗を拭こうとする
ってスポーツブラが丸見えだよっ
瑠璃子が、足を拭けと言っているんだと伝えてくれた
その間に、オレはアニエスの手足を拭いてやる
あウエットティッシュとかもあったよな、確か
雪乃ウエットティッシュって、どこだっけ
何であたしが知っているのよっ
だって、ほら
オレはこのバンの中で雪乃を犯している
その後で、使ったような
そこのシートの下あたりだったわよ
あ、あったサンキュウ
オレは、ウエットティッシュのボトルから何枚か引き抜きアニエスの足を拭いていく
お兄様、わたくしもやります
瑠璃子はアニエスの手を
あー、足の指の間に砂が入っている
ん、どうしたアニエス
ありがとですの
アニエスは、恥ずかしそうにそう言った
って、何であんたは脱いでいるのよっ
雪乃の声に振り向くと
イーディが、ツナギを脱ぎ捨てて下着姿になっている
ええっと濡れた服を着ていたくないって言っていますわ
瑠璃子が通訳してくれる
まったくもおっ
確かこの辺に、寧さんの変装用の衣装があったはずだよ
オレはバンの中を探す
ちょっと待ちなさいよっそんなのあったのなら、何であたしあんな変な格好していたのよっ
雪乃がまたキレる
しょうがないだろあれを着ろって言うのが、マルゴさんの指示だったんだからっ
そんな指示守る必要なんか無いじゃないっ
とりあえずジーンズ地のスカートと、綿の黒いタンクトップを見つける
イーディは、これを着ていろよ
お兄様イーディ、スカートは嫌だって
これしかないから、これを着ろって言ってくれ
助けてぇぇ
不承不承イーディは、服を着たが
むぅぅ
むくれている
明らかにむくれている
どうしたんだ、イーディは
オレの問いに瑠璃子が尋ねてくれる
胸が、スカスカなんだそうです
ああ、寧はグラマラスな巨乳
イーディは控え目だから
タンクトップの胸があーあ、ブラが丸出しになっている
むむむむむぅぅ
久しぶりに、六本木の前を通りました
旧防衛庁前の通りに面したビルが、7割方立て直されていて驚きました
これって、ミッドタウンができたからでなく
***のビルが、なくなったせいなんでしょうね
453.**たちにはナイショだぞ~♫
どうしたイーディは
オレは瑠璃子に、話し掛けてもらった
イーディさん、おトイレだそうです
海で水遊びをしてお腹が冷えたと言っています
そういやホテルを慌てて飛び出して来たからな
麗華は、運転しながら無線機の通話スイッチを入れ
藤宮より、関さん応答願います
関です
無線機から、翔(ショウ)お姉さんの声が聞こえる
7番発生対応願います
関、了解
バックミラー越しに、麗華がオレたちを見る
今、どこで停車するかポイントを選択していますから少々、お待ち下さい
ああこの状況だと、簡単にその辺の公園のトイレへ行くってわけにはいかないのか
このバンには、瑠璃子が乗っている
だから、先導車に乗っている香月セキュリティ・サービスの警護員たちは、今は瑠璃子の警護に付いていると思っている
香月家の令嬢を公園の公衆便所に連れて行くことはできない
今、関さんは、カーナビでこの辺の地図を見て入れる施設を探しているんだろう
関より、先導車どうぞ
1分もしないうちに翔お姉さんの声がする
はい、先導車中本です
Fの43に寄りますいいわね
Fの43中本、了解しました
先導車が大通りから、それる
レイちゃんFの43て何だか判るかい
いいえ各ポイントの名称は、作戦ごとに違いますしこの車のカーナビは、香月セキュリティ・サービスのデータシステムとは繋がっていませんから
判るはずが無いか
でも、香月セキュリティ・サービスは、こういう場合を想定して、ルート上の使えそうなシステムはピックアップ済みなはずですから心配はいりません
ええ、要人警護の時に不意に、警護対象者がおトイレに行きたいとおっしゃられる様なことはいつもですから
本当の名家の方々はそういうことが無いように、事前に済ませておいて下さいますが大企業の重役の方とかで、ご高齢だったりすると、おトイレが近かったりもしますし
というか関さんがどちらの施設をお選びになったのか、わたくしには大体判っていますこの付近ですと、適合する施設は1箇所しかありませんから
この道を1分ほど行くと、セレブ専用の高級スポーツクラブがありますおそらく、そこです
そうか、そういう施設ならオレたちが立ち寄っても、大丈夫だろう
見えてきましたねあそこです
道の先に、大きなビルが見えてくる
先導車より、ポイント到着
そのまま、地下駐車場へ向かって
先導車、了解
オレたちの3台の車はそのまま、ビルの地下駐車場へ
ゲートの入り口で、ビルの係員に止められたが
先導車の警護員が何かを示したら、3台丸ごと通してくれた
香月セキュリティ・サービスで、このスポーツクラブの会員権を持っています毎月の会費も、ちゃんと納めていますし
麗華が、教えてくれた
何かの時に、いつでも使えるように常に準備されている
こういう緊急時に使えるような施設は、たくさんあるんだろう
3台の車は駐車場の1画に、並んで停まる
えっとトイレに行きたいのは、イーディだけか
あの、パパ
アニエスが恥ずかしそうに言う
アニエスもですの
と、なると
お兄様アニエスさんには、わたくしが付いて行きます
瑠璃子が言ってくれた
うんアニエスは、お屋敷の外のトイレは初めてだもんな
オレは、女子トイレには入れないし
イーディだけに、アニエスの世話を任せるのは心配だ
頼むよ瑠璃子
あー、あたしも行っておこうかなあ
雪乃がそんなことを言い出す
判ってるわようるさいわねえ
雪乃はアフロのカツラとサングラスを付ける
さっき、ホテルのバイトにあっさりと正体を見破られたんだ
変装して行かないとまた騒ぎになるかもしれない
うちの高校の女子の制服にアフロとサングラスだと
何が何だか、判らない趣味の女になっている
これでブラウスの胸元のボタンを適当に外したらただの不良少女くらいには見えるでしょう
そう言って雪乃は、胸元を開ける
うーんそれでも昔の不良だよな20世紀の匂いがする
オレも付いて行くよ
あまりにも心配すぎる
中本くんたちは、車輌の警備瑠璃子様には、わたくしと藤宮さんが付きます
バンを降りると翔お姉さんが、すでに指揮を執っていた
ここは、おトイレが1階のロビーに行かないと無いのよわたくしに付いてきて
さすがは、翔お姉さんこんな緊急時用の施設まで、ビルの中の間取りを把握している
あるいは、車を降りる前にデータを呼び出して、確認したのか
とにかく、翔お姉さんが、オレたちの先頭に付く
次がイーディ瑠璃子とオレで、アニエスの手を引く
雪乃がその後ろ
殿が麗華
オレは制服だし、瑠璃子はツナギ、雪乃はアフロと訳のわかんない集団になっている
あんまり人目には付きたくない
こちらへ
エレベーターで1階へ上がる
幸いロビーは混んで無かった
まあ、受付には従業員の人たちが何人もいるけれど
あの人たちは大丈夫よわたくしたちのことは駐車場に入る段階で、チェックをしているから
香月セキュリティ・サービスの名前を出した以上はこちらの素性を探ったりはしないわここのスポーツクラブは、社員教育にも定評があるしね
ああ、さっきの岬のホテルみたいに
質の悪いバイトを雇っていたりすることは無いんだ
わたくしも連続でミスはできないもの
さっきのホテルを選んだことを翔お姉さんは、後悔しているらしい
だから、今度のトイレ休憩の場所はセレブ御用達の口の固い施設を選んだ
確かに、オレたちはこんなに怪しい集団なのに従業員たちは、誰もこっちを見ようとはしない
あ、トイレはあそこね
雪乃が隊列を崩して、1人だけでトイレに走る
何よっこういうのは早い者勝ちでしょっ
アフロ頭の女子高生が女子トイレに消える
一方イーディは、アニエスの顔を見ている
イーディさん、先に行って良いかって尋ねているわ
瑠璃子がイーディの意志を通訳する
アニエスは、答えた
そういう時は、どうぞって言うんだよ
オレは、アニエスに教える
この子には、これからそういう人間関係を形成していやり取りの仕方を、一つ一つ教えてあげないといけない
どうぞですのイーディちゃん
アニエスの言葉にイーディも、ぴゅーっと女子トイレに駆け込む
アニエスは、瑠璃子に手を引かれてゆっくりとトイレへ
麗華付いて行ってあげて
麗華が警護に付いてくれる
もし女子トイレに異変があればイーディが騒ぎ出しているはずだ
イーディの危険に対する感覚は鋭い
わたくしたちは、ここで待っていましょう
翔お姉さんはオレに微笑む
そうかオレの警護をしてくれているのか
これから、こういうこと何度もあるからね覚悟しておきなさい
女の子と一緒に生活するということはおトイレの前で、待たされることよ一緒に外出した時は、特にね男の人のトイレ時間よりも、全然長いんだから
そういうもんなんだ
うん覚悟しておくよ
そして改めて、このスポーツクラブのロビーを見渡す
ブルーのカーペットが、敷き詰められていて受付のカウンターは、深紅だ
その隣に売店がある
自動販売機も
ゴールデンウィークも後半だし午後の時間だから、人が少なくて良かったわ
え、休みだからスポーツしに来たりするんじゃないの
ここのクラブの会員になるようなセレブだったら連休は海外か、別荘に行っているわ休めるのなら都内には居ないわよ
クククと、翔お姉さんは笑う
今日辺りから、帰国ラッシュになるんじゃないかしら
いっちばーん
と、言いながら雪乃が、トイレから戻ってくる
そして、オレに
あ、あたしメロンソーダね
飲み物を強請る
お前今、出したばかりだろ
そうよだから、水分を取らないと体内の血が濃くなっちゃうでしょ
あそこの自販機のやつでいいからさあたし、ホテルでトロピカルドリンク飲み損なっているのよっ
しょうがねぇな
オレは、自販機へ行ってコインを入れる
とトイレから、イーディ、瑠璃子、アニエス、麗華が、揃って出て来る
イーディは、オレが自販機からジュースを買っている様子を見て
子犬の様に走って来る
イーディも、欲しいのか
オレが新しいコインを、自販機に入れようとすると
お兄様イーディさん、自分で買ってみたいようですよ
ああこの子は、自販機に興味があるんだっけ
自分でお金を入れるところから、やってみたいそうです
幼児が、バスの降りますスイッチを押したがるようなもんか
ほらイーディ
オレはイーディに、コインを手渡す
金髪褐色碧眼の戦闘美少女は、ニッとオレに微笑む
そしてチャリン、チャリンと、コインを押し込む
自販機のランプが点く
瑠璃子が欲しいものを選んで、スイッチを押せとイーディに説明する
ジー、ガシャン
缶ジュースが転がり出る
イーディは、感嘆する
いやそんなに大げさなことでは無いと思うけれど
イーディは、ワクワク顔でオレを見る
もっとやってみたいらしい
瑠璃子何か飲むか
わたくしは結構です
名家の娘である瑠璃子は、節制が効いている
さっきのホテルでも、食事後にトイレを済ませていたし
過剰に水分を取らないようにしているのだろう
アニエスも、いいですの
翔お姉さんとレイちゃんは
仕事中だから
わたくしも、結構です
2人とも断る
ちなみに雪乃は1人で、ゴクゴクとメロンソーダを飲んでいる
そしてプハーと息を吐く
さらにげぷっと
売店に置かれているスポーツ新聞の方を見ている
じゃあ、いいやオレが飲むよ
イーディに、もう1回ぐらい、買わせてあげよう
オレは、コインを取り出して渡す
そんなに喉は渇いていないよな
イーディ、コーヒーを買ってくれ
イーディは、コインを自販機に投入しながら不思議そうに、オレの顔を見る
コーヒーだよ判るだろコーォ、ヒーィ
オレの言葉に、イーディはうんと頷いて
スイッチを押す
コーラの
おい、それコーラだろ
ジー、ガッシャン
転がり出て来た缶をイーディが、笑ってオレに差し出す
何か英語で言っている
お兄様の健康のためにダイエット・コーラの方にしたって言ってますわ
コーラは、コーラだろ健康に気遣っているんなら、コーラは飲まないよ
お茶とかミネラルウォーターとか牛乳とか
そういう物を飲むだろう
それがそうじゃないのよね
ダイエットのために、ダイエット・コーラを飲むのがアメリカ人の感性なのよ
アメリカ文化大好きの翔お姉さんが、溜息を吐く
まあ、それはいいけれどでも、オレが頼んだのはコーヒーだよ
うんとねアメリカ人には、COFFEE《カフィ》って言わないと通じないのよ
コーって強く発音したからコーラだと思ったんだと思うわ
コーしか合ってないよ
コーラのこと、COKEとも言うでしょクの音が消えちゃっているんだと思ったんじゃないかしら
イーディはただニコニコしている
はあ、しょうがないな
とにかく飲むよせっかく、イーディが買ってくれたんだから
しかし350ミリリットル缶
今のオレには、ちょっと多いな
缶を開けるとプシュと炭酸が吹く
それに慌てて口を付けて飲む
ねえお金ちょうだい
雪乃が寄って来る
お前は、もうメロンソーダ飲んでるだろ
まさか、もう1缶飲むつもりか
そうじゃないわよスポーツ新聞を買いたいのよ
スポーツ新聞
一面に出ているのよパパとあたしのことがさ
オレは小銭を手渡す
正直、オレも状況を知りたい
じゃ、買ってくるわ
待ちなさいわたくしが買ってくるわ
翔お姉さんが雪乃を止めた
その方が良いと思わない
雪乃はここの従業員と接触しない方が良い
さっきのホテルで判ったと思うけれどあなた、有名人なのよ
だが雪乃は
平気よ自分のことは自分でするわ
そのままプンスカと売店に向かう
あいつは事の深刻さを、判っていない
翔お姉さんみんなを連れて、先に戻って
どうする気
あいつマジで痛い眼に合わないと判らないと思うんだ
駐車場から車を外に廻してオレと雪乃はそこの玄関から、外に出るから
だから、今の内に
麗華を残して行くわ
翔お姉さんは、そう言ってくれるが
いや、麗華がいないとバンの運転ができないだろ
わたくしの部下から運転手を出すわ
ダメだよ、それじゃあアニエスが怖がるから
オレは、アニエスの頭を撫でる
アニエス、先に戻っていてくれパパはすぐに行くから
オレたちにはイーディが居てくれればいいよどうせ、こいつ今、缶ジュース飲んでいるし
イーディは、コクコクと喉を鳴らしてジュースを飲んでいる
瑠璃子ちょっとイーディに、通訳してくれるか
雪乃が、スポーツ新聞を拡げながらやって来る
オレは、ロビーのベンチで缶コーラを飲んでいる
イーディも一緒だ
ったく、嘘ばっかり
すでにぷんぷん怒っている
あたしは、ずっと暴力団に監禁されていて市川のお祖父様が、身代金を払って解放されたですって
ああそれはミナホ姉さんが流した、嘘のストーリーだ
酷い嘘よその上、あたしのパパは暴力団と一緒に、ずっと悪いことをしていたっていうのよ
それは真実だろ
先に車に戻ったオレたちは、ほら飲んでるから車は、下の駐車場から廻して、正面玄関に付けてくれるってさだから、このままここで待っていればいいんだよ
雪乃は新聞の記事に夢中になっている
オレの隣に、ドカッと座る
お前、よくサングラスしたまんま読めるな
あ、そうねどうりで暗いと思ったわ
雪乃はサングラスを外して制服のポケットにしまう
オレも、横から新聞記事を見るが
大したことは書かれていない
そりゃそうだマスコミには、書ける範疇が決まっている
ジッちゃんからの圧力もあるしミナホ姉さんの情報操作もある
雪乃のレイプビデオの流出みたいなヤバイ事柄については大きくは取り上げられないだろう
ネットに流れている情報に大きく遅れを取っている
この内容じゃ雪乃の危機感は、煽れない
オレは、缶を飲み干し
ちょっとトイレ行ってくるからイーディと、ここで待っていてくれ
え、何でよ
しょうがねえだろコーラ飲んだら、オシッコしたくなったんだから
多少は時間を稼いだ方が良い
あたしこの子、苦手なんだけど
イーディは、ニタニタ笑って雪乃を見ている
瑠璃子を通してイーディには、雪乃の監視を頼んでいる
つーかさ、マナは英語喋れるのに何で、雪乃は喋れないんだよ
そんなの仕方ないでしょ人には、得意不得意があるのよっ
お前マナよりも、得意なものとかあるのか
ファッションのセンスは、あたしの方が上よ
アフロのまんまで
ホント自分が見えていないんだな
まあ、いいやとにかく、トイレへ行って来るから
とっとと帰ってきなさいよっいいわねっ
オレはトイレへ向かう
すぐに放尿し手を洗って、出る
男のトイレは時間が短くて済む
イーディは、ジッと雪乃を見ている
雪乃はもう自分と父親の記事を読んでいなかった
あたし、最近のニュース全然知らないのよ
芸能欄を読み続けている
オレが出ると
今出て来れば、タイミングばっちりよ
翔お姉さんがそう言った
了解雪乃、イーディ、行くぞ
オレは、2人に声を掛ける
ちょっと待ちなさいよ今、面白いところなんだから
雪乃は、お笑いタレントの不倫疑惑の記事を読んでいる
新聞は後でも読めるだろ置いてくぞ
不承不承雪乃は立ち上がる
正面玄関のガラスの自動ドアを抜けて
スポーツクラブのビルの外へ出る
建物の前をちょうど、どこかの学校の運動部の人たちがランニングして通りがかろうとしている
トレーニングウェアの胸に**大学と書いてあるからこの近くの大学生なんだろう
何のクラブなのかは、よく判らないけれど
**ファイト
ファイトファイト
掛け声を合わせてわっせわっせと走る大学生たち
ずらっと100人近くはいる
翔お姉さんの言ったタイミングとはこの人たちのことだろう
ちょっと車、玄関前にいないじゃないっ
あんまりの金切り声に大学生たちが、振り向く
まあアフロヘアの女子高生というのもインパクトがあるし
ほら、あそこに停まっているよ
オレは30メートルほど向こうを指差す
香月セキュリティ・サービスの先導車に白いバン翔お姉さんのアメ車、3台並んで停まっている
何で、あんなところに停まっているのよっ
オレだって、知らないよ何か理由があんだろ雪乃
オレが、雪乃と言った瞬間
イーディが、ササッと雪乃のアフロのカツラを掻っ攫う
カツラの下から、バサッと雪乃の黒髪が風に靡く
な、何をするのよっ
思わぬ展開に大学生たちは、雪乃に注目する
イーディは、シュババッと車の方へ走る
オレたちからは10メートルは離れている
雪乃たちを見て言った
ユキーノ
ビッと力強く雪乃を指差す
シラサカ・ユキーノ
イーディは、指示通りに叫んだ
大学生たちがざわめき出す
いや、そうだよあの顔
うんそうだ
オレ、昨日、観たばかりだからさ
オレも抜いた
16であのエロさだろ
高1の強姦処女喪失動画なんて、なかなか観れないもんな
その上、中出しだもんな
うんそうだよ、あの顔にあの身体だよっ
口々に雪乃について語る、男たち
白坂雪乃だぜっホントに
雪乃は真っ青になる
男がたくさん並んで走っている映像を観ると、思い出すもの
*****が出~たぞぉ
こいつは、すーげぇ、シミュレーション
カーチャンたちには、ナイショだぞ~
知っている人は、オッサンですね
454.脱出不能
ランニングしていたはずの大学生たちは、足を止めオレと雪乃の方に近寄って来る
雪乃逃げるぞ
オレは、雪乃の手を引いて駆け出す
オレたちの車は30メートルの彼方だ
こらっ、待てよッッ
おいっ、捕まえろッ
運動部の大学生たちは、オレたちを追ってダッシュする
何よこれぇっ何なのぉぉぉっッ
雪乃は、すっかりパニック状態だ
いいから、走れよッッ
雪乃は、驚きで腰が抜けてしまったらしいへろへろで、上手く走れない
おい、誰か携帯持ってねえのか
ランニングん時は、持ち歩き禁止ですよ、センパーイ
おい、誰か学校戻って、部室のカメラ持って来いよ
ネット中継しようぜなあ
このままでは追いつかれる
オレの叫びにアフロカツラを摘んで持っていたイーディーが、ニイッと微笑む
On my way
イーディが、大学生たちに突進する
オレと雪乃と擦れ違って戦闘の4人ぐらいの大学生を、瞬時にくるんと転倒させるッ
な、何だこいつ
ミャーオッ
褐色金髪の戦闘少女は、スッと大地に立ち子ネコの様に鳴いた
シャァァァァッッ
さらに5人ほど、昏倒させる
全て、光速の一撃を急所に叩き込む形で
や、ヤベェぞこいつ
大学生たちは、怯む
その間に、オレと雪乃は車に到達する
車列の一番後ろの翔お姉さんのアメ車のドアが開く
そこに飛び乗れといういう意味だろう
もういいぞイーディ
雪乃を後部座席に押し込んでオレは、イーディに叫ぶ
運転席の窓から、サングラスをした翔お姉さんが顔を出して叫んだ
ミャオオオーンッ
イーディは、物凄いスピードで走って来る
大学生たちは、すっかり呆気に取られていた
イーディを追う者はいない
飛び乗れ、イーディ
オレと雪乃が、後部座席に
イーディは、助手席に飛び込む
中本くん発進よ
通信機に向かって、翔お姉さんが叫ぶ
イーディが、車のドアを閉めた瞬間車は、ドォギャアッっと発進する
香月セキュリティ・サービスの先導車、麗華の運転する白いバン、翔お姉さんのアメ車の3台が全速で、その場から逃げ出す
ギャリギャリギャリギャリッッ
通りを幾つか曲がれば大学生たちは、追いつきようが無い
もう平気よ
翔お姉さんが、サングラスを外しながら言った
この車、目立つしナンバープレートを見られたかも
今日は最初っから、偽造のナンバープレートだから次に停車したときに、交換するわ
翔お姉さんは、そう言った
クッシッシ
助手席で、イーディが笑う
この子は、暴れられれば、それで嬉しいらしい
な、何なのよ、アレどういうこと
ようやく雪乃が、喋り出す
自分がどれくらいの有名人なのか判った
運転席から翔お姉さんが、言う
そりゃあんたたちのせいで、有名人にさせられたことは判っているわよでも、何よ、今のっあたしは、珍獣か何かじゃないのよっ
あら珍獣の方がマシよ可愛がられるだけだから
どういう意味よ
雪乃がバックミラーの中の眼を、睨む
雪乃お前、さっきスポーツ新聞読んで、どう思ったんだよ
えああ何か、知らないけれど、あたしのパパは日本の敵みたいな扱いよね
今では、日本中の誰もがそう信じているわよ白坂創介という人は白坂一族のコネと大手広告代理店勤務の地位を利用してたくさんの女性芸能人や、芸能界志望の女の子たちをレイプしていたってしかも、暴力団と手を組んで少女売春までやっていた救いようのないロリコン強姦魔オーストラリアまで行って、現地の女の子をレイプするし昔、誘拐した女の子を殺して、別荘に埋めていた
翔お姉さんが、挑発的に言う
埋められていた少女とはミナホ姉さんの実の妹の、奈生実さんだ
死体で見つかった子は、検死の結果、妊娠していたことまで判ったそうじゃない
ああそんなことまで、もう判明しているんだ
嘘よみんな嘘全部、弓槻のやつが仕組んだことなのよパパを陥れるために
雪乃はミナホ姉さんを、学校の教師の弓槻御名穂としてしか認識していない
まだ、そんなことを言ってるのかよ
オレは雪乃に言う
これだけ色んな人が動いているんだぜいい加減、認めろよ白坂創介は、とんでもないクソ野郎だったんだたくさんの人間が、お前の父親に人生を狂わせられ不幸に堕とされたんだ
ミナホ姉さんと奈生実さん姉妹
克子姉と渚
メグのお母さんもちろん、メグ自身も
それからお屋敷の中に閉じ込められ、客を取らされたたくさんの女性たち
認めないわだって、嘘だから
それにさもし、仮にあたしのパパが誰かを不幸にしていたからって何で、あんたがあたしの人生を狂わせるわけあんたにそんな資格があるの
あらこういうことはね、資格とか関係無いのよもっと違うものに影響されるの
翔お姉さんがオレの代わりに答えてくれた
違うものって何よッ
運とか縁とか、そういうものよ彼とはご縁があっちゃったってことで、諦めてくれないかしら
嫌よッッ
ムスッとして、雪乃は答えた
ま、わたくしとしては、どうでもいいことだけどねあなたのことなんて
翔お姉さんは、雪乃を鼻で笑う
あなたについての世間での情報も相当、面白いことになっているわよ父親の白坂創介に犯されて、妊娠していたとか父親のトラブルで、暴力団に拉致監禁されて、ありとあらゆる拷問を受けていたとかレイプ百人組手を、3回達成したとか
全部嘘じゃない嘘ばっかりよ
そうあなたのウィキペディアには、そう書いているわよ
雪乃のWIKI
まあ要出典の表示ばかりだけどね後、今朝の段階でネットの注目検索語であなたの名前がトップになったからおめでとう、お父さんを越えたのよ
あたしがトップ
そんなわけないでしょスポーツ新聞だってパパのことは大きく取り上げていても、あたしのことはそんなに書いて無かったわよ
そりゃそうだろう雪乃は、まだ未成年なんだから
スポーツ新聞だって、普通のマスコミなんだから書けないよ、そりゃ
あん何のこと
お前のセックス動画が、ネットに流出しまくっていること判っているよな
判ってるわよでも、そんなのそういうの好きのヘンタイしか観ないでしょ
何言ってるんだよさっきのホテルのバイトの人だって、お前のエロ動画を観てるって言ってたし今の大学生たちだって
それは、たまたまネットに詳しい人に出くわしただけでしょそんなさあたしの映像なんて、みんながみんな観ているわけないじゃないさっきの大学生たちだって、本当にそこまで観ている人は少ないんじゃないの興奮した人に煽られて、あたしを追っ掛けて来ただけでさ
ああ、こいつの危機感の無さがようやく判ってきた
インターネットにはさ、エッチな動画なんて溢れかえっているんだから弓槻がどれだけ、あたしの映像を流したってみんな観ないわよ
雪乃はやっぱり、女の子なんだ
男の好奇心が判っていない
そうかしらわたくしは、さっきあそこに居た大学生は、全員、雪乃さんのセックス動画を観ていると思うわ
翔お姉さんは、言った
雪乃は、笑って誤魔化そうとする
ああ、そうか雪乃さんは、そういう風に思い込もうと一生懸命なのね
翔お姉さんの言葉にピクッと反応する、雪乃
判ったわあなたは、こんなこと、大したダメージにはならないって思いたいんでしょうけれど現実は、とてもシリアスなのよ
翔お姉さんは笑う
今、話題になっている白坂創介の娘、その子のレイプ無修正映像この2つのキーワードだけでも、男の子ならみんな食い付くわよ
しかも、黒森さんは事前に、あなたの可愛い映像を流していたからねセーラー服姿のあなたの写真を何枚も生年月日やなんかのデータもね第一段階としては白坂創介の娘は、かなり可愛いらしいという触れ込みで、ネットにデーターを広めて第2段階で、その娘は誘拐されて、レイプされているらしいと、さらに注目される様な噂を流す第3段階が朝のワイドショーで中継された、あなたの解放シーンね雪乃さんたら、あの場でレイプされたことを自分で暴露してしまうんですものそして、最終段階実際に、あなたが犯されている映像が流出する
徐々に注目が増す様にして一気に、過激動画を放出した
さすがミナホ姉さんだ
そりゃ、みんな飛びついて観るわよまた、黒森さんありとあらゆる投稿サイトに、あなたの映像をバラ撒いたから動画だけじゃないわよ静止画も
そんなの全部、あたしじゃないって言い張ればいいのよあたしじゃ無いのよっ
翔お姉さんは、フフフッと笑う
ああ、そっかどんな風にアップされているのか、雪乃さんはまだ見ていないのね
み、見るわけないじゃないっそんなの
信号待ちの時間を使って翔お姉さんが、片手で車載コンピューターを起動させる
例えばこれは、画像投稿サイトごだいばちゃんねるごだいばちゃんねるは、生まれたばかりの画像投稿掲示板ですお友達にも教えてここの、これなんてラーメン板だけど
ラーメンや、ラーメン店の写真の中に突如として、少女の裸体の写真が現れる
これ雪乃さんよね
その画像はすぐに判った
雪乃が処女喪失した直後に克子姉が撮った写真だ
女性器から処女血と精液を溢れさせている
顔も、乳房も、股間も全て露わだ
白坂雪乃とはっきり識別できる
こ、こんなにハッキリ
雪乃は驚愕する
続いてのりもの板を見てもほら、やっぱりあった
うん古い日本車の写真の次に、やっぱり雪乃のヌード
ああ、これは処女を奪う前の拘束台に縛り付けて撮った写真だ
画面の中の雪乃は羞恥に顔を真っ赤にさせている
その産毛まではっきりと判る
良い写真よねカメラも良いけれど、カメラマンが上手いんだと思うわ誰が撮ったの
克子姉だよ
へえさすが
翔お姉さんは、コンピューターを操作する
他にはこのすぴぐら板って何かしら
オレにもよく判らない
しかし、そこにもやっぱり、雪乃の裸身が貼られている
オレのペニスを膣に押し込まれている
肉茎に雪乃の愛液がタラタラ滴って、光っていたそこまでクッキリと写っている
オレの姿は、ペニス以外は巧く消されていた
これは合成よその辺にあるヌード写真に、あたしの顔を貼り込んだのよっ
雪乃は、そんなことを言うが
残念そう言われないように、黒森さんはこういう写真もアップしているのよ
それは雪乃の中学時代のバスケ部のユニフォーム姿の写真だった
どこかの大会で撮った写真らしい
上半身はランニングで、下半身はショートパンツ
ここの首のところと、太もものホクロで確認できるそうよこれも、そういうのに詳しい人が検証サイトでチェックしているから
ミナホ姉さんは、ずっと白坂創介への復讐計画を練り続けていた
だから雪乃のこういう写真も、撮ってきてある
信号が変わり車が、再加速する
こんなのプライバシーの侵害よッだいたい、こんな破廉恥な写真、貼っていいわけが無いじゃないっ
ああ、雪乃は16才の未成年だから
雪乃のヌード写真は、法律的には完璧な児童ポルノだ
しかも、陰部も丸出しの無修正だし
もちろん、管理人さんは見つけ次第に削除しているみたいだけれど黒森さんは、消されるよりも早いスピードでアップし続けているから機械的に、どんどん貼るプログラムを組んであるみたいねここの掲示板だけでは無いわよ画像や動画の投稿できるサイトには、無差別でアップしているんだもの
白坂雪乃WIKIによると流出したのは、静止画が248枚、動画が4種類らしいわ動画のコンプリートは簡単だけど、静止画の方はみんな苦労しているそうよ
助手席のイーディが、面白そうにコンピューターの画面を見つめている
動画の方も見るそっちも、静止画並みに綺麗な映像よ誰が見たって、あなた白坂雪乃って判るわよ
け、結構よ
雪乃はぐったりとして答えた
ここまで、明瞭な映像が出回っているとは思っていなかったらしい
ちゃんとした統計は取っていないけれど香月セキュリティ・サービスの調査部での予想では、日本人の20代男子の9割はあなたのヌード写真を観ているわ何らかの形でねああ、局部にモザイクを掛けた写真なら割りと大手のニュース・サイトでも普通に紹介しているしもちろん、動画まで観ているって人のパーセンテージは、もうちょっと下がるだろうけれどね
ようやく具体的に雪乃に現実が示される
10代後半の男子も同じくらいね30代以降でも男性ならば、6割以上があなたのヌードを観ている計算になるわ女性でも5割以上これって、凄い認知度よ
もちろん、お父様の白坂創介氏の話題があったから、雪乃さんに注目が集まったんだけれど今では完全に逆転しているわあなたのヌード写真とセックス動画が、一人歩きして白坂雪乃のお父さんの白坂創介って誰だっていう質問を知恵袋に書き込む人も現れているぐらいだから
ど、どうしてそんなことになるのよ
だってあなたたち父娘は、逆アンタッチャブルだから
そういうネット用語が、できたのよあなたたち用にアンタッチャブルの逆なんだってみんなが手を出してメチャクチャにしていい存在、国民のオモチャって意味らしいわ
な、何よ、それ
日本国民の敵国の恥、人間のクズ、白坂創介とその娘でしょだから、あなたたちにはどんな酷いことをしても構わないっていう風潮になりつつあるのよ
だから、ホテルのバイトやさっきの大学生たちは
物凄く高飛車な態度で、雪乃に接してきた
だからあなたの画像の流出が止められないのよ
そんなのイジメじゃないっあたしはただの女子高生よっパパの娘だけれどパパじゃないわっ
そうね理屈では、そうよねでも、ほら世の中、理屈じゃ済まないから
ホントはみんな白坂創介のことなんて、どうでもいいのかもしれないわただ、面と向かって、思いっきり叩いても許される人なんて、そうそういないでしょ
これだけ悪行が知れ渡った白坂創介なら幾らでも、叩ける
そしてあなたの場合は、単純に男性たちは、あなたのヌードが見たいのよセックス動画もね
うん雪乃は、見た目は美少女だし
16才の処女喪失レイプ映像なんて、なかなか観られない
しかも克子姉の撮った動画は、プロ並みに綺麗だ
さらに無修正
その上簡単に観られるように、ネット上のあちこちにバラ撒かれている
でも、ほら高1の女の子の可哀想な映像を観るっていうのは、なかなか後ろめたいでしょだから自分に言い訳するのよ
言い訳
これはあの白坂創介の娘なんだからいいんだこんな映像を撮られてしまうんだから、きっとこの娘にも責任があるんだろうそもそも、映像がネットに流出している段階で、自己責任を放棄しているだから、自分たちは観てもいい保存してもいい
男たちの欲求が肥大して雪乃を貶めることで、自分たちの行為を正当化する
そして観ればみるほど、雪乃さんあなたのことを、侮っていく侮蔑していくのよ
翔お姉さんが、またコンピューターを操作する
知っているでしょいわゆるツボ型掲示板ねそこの白坂雪乃スレ・98射目だって
オレは、画面を覗き込む
352やっぱりただの淫乱なんじゃね雪乃は
353同意
3544本目の動画完全に悦んでるもんな
355オトコの味を覚えるの早過ぎ
356白坂創介の血を引いているだけのことはある
357しかし雪乃が相手だったらセクロスできるか
358オレはイケル口
359オレもやれる
360オレは無理っス
361フェラだけなら
362ていうか雪乃はセックスボランティアとして奉仕に行くべき
363どこにだよ
364うんとソマリアとか
365ソマリア人に失礼だ
ああ完全に、遊び道具にされている
これは、香月セキュリティ・サービスの研究員からの指摘なんだけれど
翔お姉さんが、さらに言った
多分白坂雪乃の存在は、時代の記憶の1つになるわよ
時代の記憶
ある世代の人間だったら誰でも知っているというような存在10年、20年経った時にああ、懐かしいってみんなが言い出す様な存在ね
ほらその時に人気のあったタレントさんとか流行したゲームとかものすごくヒットしたマンガみたいなものよおそらく、今の10代後半から20代の男性たちにとって白坂雪乃のセックス画像というのは、誰もが知っている時代のイコンになるわ
それくらい雪乃は、世間に認知されまくっている
ちなみに、雪乃さんあなた今、ネットの世界では素敵なニックネームがあるのよ判る
ニックネーム
それがね全人類に全裸を晒した女っていうのよ
ぜ全人類
あなたのセックス映像海外にも、爆発的なスピードで拡まっているから特に、ロシア・東欧・中国・韓国その辺での人気が高いようねこのまま行けば、世界で一番、セックスを見られた女として、ギネスブックに載るんじゃないかって、笑い話にもなっているのよ
ギネスブック
特に、アジアでは日本のセックス映像は、とっても人気があるからAV女優さんが、VIP待遇でもてなされたって話、聞いたことない雪乃さんも、きっと、そうなるわよ
日本では若者を中心に、セックスを観られまくって
それが、世界にも拡がっている
つまり雪乃さんには、もう、本当に逃げ場は無いのよ
雪乃はゾッとしている
日本を捨ててもダメよ絶対に、どこかで誰かに見つかるわあなたのセックスや裸を観たことがある人たちに常に追い掛けられるのよ
雪乃は、全身をぶるぶると痙攣させている
この地球上に雪乃さんの居場所は、もう無いのよ
**バーガー事件の時に、本当に全然関係無い画像掲示板にまで流出した女の子の裸写真が貼られていましたから
まあ、こういうこともあるだろうなと
無修正写真を貼られても、管理人の人がすぐには対処できないですし
ネットは、怖いなあ
ネットの自分の知らないところで、知らないうちにあいつは悪いやつだという風にされると
あいつは悪いやつだから、徹底的に叩いて良いになりますからね
いや、以前経験があるので
もちろん、やられた方の
455.炎の車
面白いわよね10年、20年が経った後でも白坂雪乃っていう名前を口にすると、誰もがああ、あの女かって思い出してくれるんでしょうね今年のこのゴールデンウィークのお休みの思い出と一緒に
車を運転している翔お姉さんが、雪乃に言う
この世代の人たちにとっては、ケネディが暗殺されたと聞いた時に、何をしていたかとかナガシマの引退式の映像をどこで観たかのと同じ様に白坂雪乃の裸を最初に何で観たかっていうのが話題になるのよ
いや雪乃の映像で、何回ヌいたかだろう
今は、小学校の高学年ぐらいでも自分のパソコンを持っている
雪乃のセックス映像で精通する子だっているはずだ
まあ、雪乃さんぐらいの美少女で家柄もハッキリしていてまだ16歳の女の子のセックス映像なんて、そうは観られないものね
翔お姉さんは車載コンピューターの画面をテレビに変えた
これは録画よ今朝のワイドショーの
相変わらず雪乃の父、白坂創介の最新情報が報じられている
黒森さんは、少しずつでも、センセーショナルに、あなたのお父さんの悪行について暴露しているわ拉致監禁・強姦・強制売春そして、殺人テレビも、新聞も、ネットもあらゆるマスコミ機関によって、報道され続けているわ
流れはもう変えられない
そしてこんな希代の極悪人、白坂創介を庇った白坂家の前当主、白坂守次氏への批判も多いわねあの人には、長年に渡り新聞社とテレビ局を牛耳って、ワンマン経営をしてきたイメージが強いでしょそういうお金も地位も権力もある人が、背景にいたから白坂創介は、あれだけの犯罪を犯すことができたっていう論調になっているわ
特権階級による非道な振る舞い
白坂家は、普通じゃ無いと思われている
だからみんな、雪乃の悲劇に同情しない
雪乃の羞恥映像を観たり、拡散することに後ろめたさを感じていない
おめでとう白坂雪乃さんは、一時代を象徴するセックスシンボルになったのよ
雪乃は応えない
あなたみたいに若くして時代のセックスシンボルにされてしまった女のその後の人生って、なかなか大変みたいよ元祖It Girlのクララ・ボウは、精神病院で死んでいるしマリリン・モンローは、36歳で不審死裏モンローと呼ばれた、ベティ・ペイジは長生きしたけれど生涯、人々から奇異の目で見られて追いかけ回されたわ
そういう人たちの共通項は1つだけよ何回も結婚し、すぐに離婚一人ぼっちじゃ寂しいから、男の人を求めるのだけれど結局、パートナーと心を通じ合わせることができないどっかにズレを感じて、すぐに分かれまた、別の男へセクシーなだけで、精神が不安定な女なんて、プレイボーイからすれば格好の餌食だもの寄って来るのは、悪い男ばかりだから負のスパイラルから、抜け出せなくなる
雪乃はただ黙って、窓の外の景色を見ている
当たり前よねまともな男の人なら、世間の誰にも顔と名前と裸を知られているなんてハチャメチャな女に近付くはずが無いもの近付いて来るのは、軽く墜とせると思っているセックスしたいだけのクズ男かセックスシンボルの名声を利用して、お金儲けしようとするコスイ連中かあるいは、本物のお調子者のバカかね
翔お姉さんの眼がバックミラー越しに、時々、雪乃の様子を確認している
もう、これからの雪乃さんの人生には、そういう男しか集まってこないわよ覚悟しておきなさいよね
今や日本の若い男のほとんどが、雪乃の全裸セックス写真を見ている
動画の方も、物凄い勢いで出回っている
そして写真も動画も、永遠にネットの世界に残っていくだろう
雪乃の16歳の処女喪失レイプ動画は雪乃が20歳になっても、30歳になっても、40、50になったってずっと、付きまとってくる
雪乃に対して遊びで、セックスをしようとしてくる男はいるだろうけれど
真面目に、結婚して家庭を築きたいと思う男はそうはいない
自分の奥さんのヌードやセックス映像が出回っていることに、夫は耐えられるのか
友人や、同僚、近所の人たちがみんな、自分の奥さんの恥ずかしい姿を知っている
いやそういう女と結婚した男を、社会は受け入れるだろうか
その男がサラリーマンだったら会社は、彼を昇進させるだろうか取引先から、まともに相手をされるだろうか
お店を経営していたらお客は来るだろうか面白半分の冷やかしの客ばかりが、押し寄せて来るかもしれないのに
ましてや、雪乃が子を産めばその子も、生涯、好奇の視線に晒される
ただのポルノ女優や、AV女優ストリッパーとは違う
同世代の男性がほとんど全員、雪乃の顔と名前と家柄とそしてセックスを観ているんだ知っているんだぞ
処女喪失の激痛に喘ぐ顔も
性の快感に目覚めて、エクスタシーに達する姿も
みんなに観られている
もう、雪乃はまともな生活は望めない
これからどうするの、白坂雪乃さん修道院にでも入る
本当に、そんな道しか残っていないのか
あるいは逆にストリッパーにでもなるあああなた、まだ未成年だったわねじゃあ、18歳までは、風俗も売春も無理ね
さんざん煽られた雪乃は小さな声で呟く
許さない絶対に許さないんだから
雪乃は、暗い顔で外を見ている
みんなみんな、大嫌いよ
あら、それだけ意外とツマラない子なのね
ミラーの中の眼が、ニヤッと笑った
白坂雪乃さん新宿と渋谷と銀座とどこがいい
マルゴさんに言われているのよもう、雪乃さんは用済みだから、なるべく人がいっぱい居て混雑しているところに捨てて来いって
雪乃がハッとなる
渋谷のスクランブル交差点にしましょうか連休中だし、一番混んでいると思うわ
そんなところで、放り出されたら
大パニックになるぞ
ちょ、ちょっと
ねえ、わたくしずっと疑問に思っているんだけれど白坂雪乃さんは、どうして彼の近くに居ると、そうやって油断するわけ
わたくしたち敵なのよ判っている
だ、だってそれは
雪乃は困惑した眼でオレを見ている
この男はいいえ、この男が
いい加減、判っていると思うけれどその子は、わたくしたちとあなたを天秤に掛けたりはしないわよわたくしたちは家族であなたは、何でも無い人なんだから
翔お姉さんの声は厳しかった
そんなの判っているわよ
そうならいいんだけれど
翔お姉さんの言葉に、雪乃はうつむく
で、あなたどこで降りたいいっそ、お台場とかでもいいわよテレビ局の前とか、全国中継してくれるかもしれないし
雪乃は市川さんの家に閉じこもっていることになっている
今、雪乃がマスコミの前に現れたらマスコミは喜んで、雪乃に群がって来るだろう
翔お姉さんは笑い出す
あははははははっ
しないわよ、そんなことわたくしはね
わたくしは黒森さんたちと違って、白坂創介という人に対して恨みは無いから
ミラーの中の眼がそう言う
だから、わたくしがこの役をやっているわけ他の人だと間違いなく、白坂雪乃さんを混雑地に捨てて来るだろうからって
ミナホ姉さんも克子姉も、渚も
寧だって
黒い森の初期メンバーの人たちは、みんな白坂創介との因縁がある
マルゴさんも、自信が無いって言っていたわあんな、セルフコントロールの出来ている人までそう言うんだからあなたのお父さんは、徹底的に恨みを買うようなことをしてきているのね
マルゴさんだってずっとミナホ姉さんたちの心の苦しみを見てきたから
あたしはパパの娘だけどパパじゃないわ
雪乃が、憎しみを露わにして反撃する
ごめんなさいそれ、わたくしに言われても困るのよわたくしは黒森さんたちに何があったのか、全ては聞いていないしね
カラリと翔お姉さんは言う
確かに、親の犯した罪が子供に影響するっていうのは、あってはいけないことなんでしょうけれど倫理的にはねでも、現実的にはこんなのよくあることよねしょうが無いんじゃないかしら
そんなの酷いわよ
ええ、酷い話よねでも、同情してはあげないわたくしは、そういう仕事をしているわけだから
翔お姉さんは、ニッと微笑む
テロリストだって、犯罪者だってみんな幾らかは、正統な理屈を持っているからねでも、そういう人たちの理屈を聞いてやってたら、警護人なんてできないから世の中って、理不尽なのよしょうがないわよね、そういうものなんだからさ
だって、人権がどうのなんて意見が大きく取り上げられるようになったのって、近代になってからでしょほんの百年前なら、家族の1人が犯した罪で、一族全員皆殺しなんて普通にあったことだし
屁理屈言わないでよ
そうよ、屁理屈よでも、現実は現実だから現代日本だって、凶悪犯の家族が近所からの付き合いを断られたり、差別を受けることなんて普通に起きていることでしょ
あたしは、何も悪く無いっ何も悪く無いのにあたしはあたしは
気落ちして生命力を失っていた瞳に気力が蘇る
そうよ、あなたいつだって、あなたの問題なのよ
あなたの味方はもう、あなたしかいないんだから
雪乃はギッと翔お姉さんを睨んでいる
お父さんも、お母さんも一族の人たちも、もうみんな白坂雪乃さんのことは助けてくれないのよそこに居るあなたは1人本当にもう独りぼっちなのよ
雪乃はギュッと自分の膝を掴んでいる
後は、どんな状況だって撥ね除けて生きていくだけの気力が、あなたにあるかどうかだけよ強くなりなさいあなたが、死のうと生きようとわたくしは、どうでも良いしあなたのことなんて、興味無いわ
雪乃は耐えている堪えている
生きたかったら、生きる方法を探しなさい自分自身で
雪乃の眼から、ぽたっ、ぽたっと大粒の涙が零れる
言っておくけれど、彼を利用しようとしても無駄よわたくしたちが、全力で阻止するからこの人は、あなたみたいな、お猿さんにはもったいないもの
それからついでに言っておくけれど、今回のことが無くったって白坂創介は失脚していたわ彼は、香月セキュリティ・サービスのブラック・リストにも要注意人物って載っていたしね黒森さんが動かなくても、いずれ閣下が強攻策を採られたと思うわそれぐらいどうしょもない人だったのよ、あなたのお父様は
声を押し殺して泣いている
そんなお父様の娘に生まれてしまった不幸を呪いなさいもっとも雪乃さんが、マナさんぐらい物分かりの良い人だったら、こんな風に独りぼっちで叩き出されることも無かったんでしょうけれど
舞夏よ白坂舞夏あたしの妹を、変な名前で呼ばないで
あの子はまだ小さくて、バカなのよっ舞夏は、あんたたちに洗脳されているんじゃないっ卑怯者
そうね、洗脳かもしれないわねでも、マナさんはわたくしたちが守るわちゃんと学校も通わせるし、衣食住も用意する幸せにするわよあの子は、わたくしたちの大切な家族だから
もう、あなたには家族なんて1人もいないのよまだ、そんなことも判っていないの
違う違うわ舞夏は、あたしの妹よあんたたちに騙されているだけなんだからっ
雪乃は認めない
さあどうでしょうね
オレたちの車列は進む
ようやくお屋敷に戻って来た
午後4時少し前夕方には、まだ早い
中本くんは、外の警備と合流よろしくね
翔お姉さんが、通信機に叫ぶ
先導車、中本了解
藤宮ですどうぞ
オレたちの車のすぐ前の白いバン運転席の麗華から通信が来る
ゲート開けます関さんは、わたくしに続いて下さい
白いバンからの無線でお屋敷の鉄の門が、ギィィと開いていく
バンが敷地内へオレたちの乗る、翔お姉さんのアメ車も後を追う
庭を抜けて屋敷の車寄せの前へ
そこにはここを出発した時と同じ様に
マナと真緒ちゃんと渚が出迎えてくれた
オッケー、出て良いわよ
助手席で小さくなっていたイーディが、真っ先に飛び降りる
そのまま白いバンの方へ
ああ、真緒ちゃんにあげるお土産を取りに行ったんだな
オレも車から降りる
良かった無事だったんだねっ
オレの唇に、チュッとキスをする
ああ、翔お姉さんが助けてくれたんだよ
オレは、運転席から降りたお姉さんを示す
不思議そうに見上げるマナ
ええ、今日からわたくしも家族よあなたのお姉さんになるから
翔お姉さんは、優しくニコッと微笑む
本当なの、お兄ちゃん
ああ、みんな翔お姉さんだ翔お姉さんが来てくれたから、レイちゃんも落ち着いたんだよ
ああそっかレイちゃん、お姉ちゃんを欲しがっていたんだね
マナは賢い
一言で理解してくれた
よろしくお願いします翔お姉ちゃん
こちらこそ、よろしくねマナさん
と雪乃が、車から降りてくる
暗い顔で、実の妹を見る
お兄ちゃん、どうしてこの人を連れて帰って来たのよッ
不快そうな表情で雪乃を見る
雪乃さんなんて、どっか捨ててくれば良かったのよ
雪乃がカッとして、マナを引っぱたこうとするが
わたくしの妹に、乱暴しないで
翔お姉さんに、あっさりと手を掴まれてしまう
こういう時のスピードは、翔お姉さんが一番だ
あんたは白坂舞夏なのよあたしの妹なんだからねっ
雪乃はマナを睨んでいる
残念でしたあたしはマナ吉田マナお兄ちゃんの妹なのっ
マナは、雪乃に侮蔑の視線を送るとオレを見る
お兄ちゃん、行こうマナ、セックスしたい
舞夏そんな男に、バカなこと言わないで
したいんだから、しょうがないでしょマナは、毎日、お兄ちゃんの精液を子宮に注いでもらわないと安心できないんだからっ
マナは、小さな胸をオレに擦り付けてくる
ねえ、しようセックス今日はまだしてもらってないよ、お兄ちゃん
マナは、雪乃との会話で心が不安定になっている
だから、オレにセックスを求めている
今すぐはダメだ後でしてやるから
えー、何で
だって、みんなに翔お姉さんを紹介しないといけないし帰って来たばかりなんだから、みんなでお茶にしようよ
今度は、オレからマナにキスしてやる
うん判ったそうだね、ちょっと後にアレもあるしね
マナは自分の実父に処断される復讐をアレと言った
じゃあ、アレの時、お兄ちゃんにいっぱい甘えちゃおっと
マナは、無邪気な笑顔で微笑む
あんた舞夏は、14歳なのよそんな小さい子を犯して楽しいのヘンタイ
マナに相手にされない雪乃は矛先を、オレに変える
マナが望んでしていることなんだから、余所の人は口を出さないでっ
マナは、姉に食らいつく
あたしは、お兄ちゃんのセックス奴隷なのっセックス奴隷なんだから、幾らでも抱いてもらっていいんだもんっメチャクチャにして欲しいんだからっマナは、お兄ちゃんのセックス奴隷にしてもらって幸せなんだからっ
雪乃が呆然とする
判ったわよあんたなんて、もうあたしの妹じゃないわどこにでも行っちゃいなさいよっ顔も見たくないわ
出て行くのは雪乃さんでしょっここは、あたしたちの家なんだからねっ
この姉妹は同じレベルでケンカする
本当に姉妹なんだなあ
判ったわよ、出て行けばいいんでしょっ
カーッとなった雪乃にオレは
雪乃約束
あぁぁんっ
さっきのお前の昼飯代オレが出したんだぜ
雪乃にはもう一回セックスするのと引き替えに、飯代を払ってやっている
だけどっ
雪乃は、マナを見る
判ったよお前がちゃんと約束を守ったら夕飯も保障してやる
えと、雪乃がオレに振り向く
とりあえず、そこまではな
食事の保障に雪乃は、勢いを失う
本当に、食べることだけは、いつも反応が鋭い
渚が、ススッと前に出て来る
マナちゃん、お茶の準備するから手伝ってちょうだい
でも、この人が
マナは、雪乃の存在がどうしても不快らしい
その人は、レイちゃんに任せましょうレイちゃん、さっきレイちゃんが壊した隣の応接室が開けてあるから、そこにこの子を入れて
あ申し訳ありませんでした
応接室のドアを破壊したことを麗華は詫びる
それはいいからドアは、今は開いているけれど、次に閉めるとオートロックで鍵が掛かる仕掛けになっているから気を付けて
はい行きますよ
レイちゃんが雪乃を連行する
雪乃が居なくなると同時に真緒ちゃんとアニエスが、オレにしがみついてくる
あの人、怖いですの
真緒もキラーイ
ああ、2人とも雪乃が怖くて、オレに近寄れなかったんだな
お兄様そちらの車の方で何かございました
瑠璃子がオレに尋ねる
イーディさんが
イーディは小さく身を屈めて、立ち去る雪乃を伺っている
何か、雪乃さんと翔お姉様がとっても険悪な雰囲気だったので怖かったとおっしゃっています
ああ、だからイーディは、大人しくしていたのか
日本語判らないのにずーっと、あんな暗いやり取りを聞かされていたんだから
まあ、とりあえずは問題無いよ
どっちにしてもこの後の復讐に雪乃は必要だ
渋谷で放り出すとか言う話は雪乃を、精神的に追い詰めるためのブラフだし
イーディは、改めて嬉しそうに海岸で採った貝殻を真緒ちゃんに差し出す
お土産だそうよ
わーお
喜ぶ、真緒ちゃん
そっちの芝生で拡げてみなさい
芝生には、さっきのレジャーシートが拡げられたままだった
瑠璃子、アニエスも連れて行ってくれ
2人もそっちに行ってくれた
これでオレと渚とマナと翔お姉さんだけが残る
ところで渚、お店は
今日は行かないことにしたのよ
渚は、暗い顔をする
克子が、こっちに戻って来れなくてマナちゃんだけ、このお屋敷の中に1人にするわけにはいかないでしょ
克子姉が戻れなかった
ということは、学校のミナホ姉さんに何かあったのか
ああ、あなたが心配する様なことは無いのよあたしたちは、万全の態勢を取りたいだけだからだって
渚たちにとっても今日の復讐は重い
お店の方は、ミユキに任せたわどうせ、最初の予定でも今日は中抜けしてくる予定だったからこれでいいのよ
それより雪乃さんのことよ
さっきの話の続きだけれどあれで変わらなければ、あの子はもうそれまでだと思って諦めてねあの子にあげていいチャンスは、もう全部使い切ったって
今回の脱走作戦には色々と目的があったの
うん、渚はマルゴさん、克子姉と一緒に、この作戦の立案に関わっている
この脱走騒ぎの第一の目的はもちろん、煮詰まりきっていた麗華の心の安定だ
それと復讐に頭がいっぱいになっているミナホ姉さんの心の矛先を変えるために
そんなことは、オレにももう判っている
その中に雪乃さんに、最後のチャンスをあげるというのもあったのよ
あんな人チャンスなんてあげなくていいよっ
そう確かマナちゃんは、彼にずいぶんたくさんチャンスを貰ったんじゃなかったかしら
マナが、オレたちの家族になるまでは色々と紆余曲折があった
それにあなたもここで、きっぱりしてもらわないといけないから
渚はオレを見る
そうよこの後の復讐が終わったら雪乃さんとは、もうお別れするしかなくなるんだから
白坂創介は最終的な処分を受ける
自分の父を抹殺したオレたちを雪乃は絶対に許さないだろう
オレと雪乃との縁もここで断ち切られる
もう、そんな顔しないの
渚が、オレに微笑む
あたしたちははっきり言って、雪乃さんが好きじゃないわあの子には、何の同情もしていない情けをかける気も無いわ
あの子は、白坂創介の娘というだけで何の罪も無いことは判っているのそれでも、気が治まらない白坂創介という人間を、極限まで追い詰めるためにはその家族まで手を下すしかない
いや、ミナホ姉さんも、克子姉も
白坂創介のせいで、本当の家族から引き離された
ミナホ姉さんやメグのように、家族を殺された人もいる
家族を奪われ、傷付けられた恨みは白坂創介の家族を、彼の眼の前で傷付けることでしか晴らせない
メチャクチャなことをしているのは判っているわでも、もう止められないのよこれが、御名穂さんが計画した復讐の根幹だから
ミナホ姉さんは10年以上、この復讐を練り上げていた
今さら変更はできない
ここで変更を施せば悔いが残る
悔いが残る限りはミナホ姉さんの復讐は終わらない
計画していたものを全て、予定通りに完遂させるしかない
だから、あたしたちは雪乃さんを、平然と犠牲にできるわ覚悟はとっくにできているのでも
あなたはそれでは満足できないでしょマナちゃんを、愛し抱き締めアニエスの心を開くために、あんなに一生懸命がんばったあなただから
あなたに悔いを残さないために雪乃さんにも、最後の機会をあげたのよでも、あたしたちは、どうやったって雪乃さんの後ろに白坂創介を見てしまうから冷静には、なれないでしょだから、関さんにお願いしたのよ
確かに、今回のメンバー
麗華・イーディ・瑠璃子・アニエス
白坂創介に対して、深い恨みの念を持っていない人ばかりだ
まあ、色々と余計なことを言っておいたわ
あたしにできることは、ここまで後は、あの子次第よこれでダメなら、どうしょもないそう割り切るのよいいわね
オレももう、腹を括るしか無いんだな
オレと雪乃との関わりはそろそろ岐路にさしかかっている
前も書いたけれど、学生の時に同級生の元カノだった女の子から
家出したお姉ちゃんが、AV女優になっちゃったらしいのあたし、どうしたらいいのか判らない
と相談されたことがあります
もちろん、私だってどうしたらいいのか判らない
で、男のセンパイに相談してみたところ
何て名前の女優だ
で、家出したというお姉さんの芸名を伝えたら翌日
さっそく、借りて観たぞそうか、あれがあの子の姉貴だったら、あの子のプロポーションも大体似たようなもんだよな
という、ゲスの極致みたいな感想をいただいた
そのお姉さんはその後、売れないビジュアル系バンドのメンバーと結婚して、小料理屋を開いたということまでは知っている
456.白い騎士団
はい、お茶
渚が、オレに紅茶のカップを手渡してくれた
中庭に面した、日当たりの良い部屋
処女だったマナをレイプしたのは、あの辺の芝生だったっけ
それで、それでルリお姉ちゃん、海はどうだったの
とっても、素敵な思い出になりましたわたくしにとっても、アニエスさんにとっても
瑠璃子は、アニエスの手を握ったまま、そう言った
うわぁ、いいなあマナも行きたかったよアニエスちゃんも楽しかった
マナの問いに、アニエスは
海は大っきかったですの
そう呟く
うん、知ってるマナだって、海を見たことぐらいはあるもんっ
笑うマナ
さっきの雪乃との会話で見せた不安定さは、消えている
アニエスさんは、イーディさんと一緒に貝殻を拾ったのよね
瑠璃子が、優しく微笑む
今度は、マナとも行こうよ夏になったらさマナが、浜辺の砂でお城を作ってあげるからっ
自分よりも年下の妹の存在
守ってあげないといけない子がいるということが、心の安定に繋がっているのだろうか
麗華とは逆だな
麗華は何でも頼れる年上のお姉様を得ることで、ようやく安定してくれたから
今は翔お姉さんと並んで、紅茶を飲んでいる
じゃあ、アニエスちゃんとイーディちゃんが一緒でルリお姉ちゃんは、お兄ちゃんと何していたの
エッチした
してないよそんな余裕なかったから
ホントお口だけとか
してないってアニエスとイーディを見てないといけないし、雪乃の監視もあったし、他にも色々とゴチャゴチャあったしそれで、翔お姉さんが来てくれたんだから
北九州の裏組織に襲撃を受けたことは、マナには言わない
心配させても、しょうがないし
じゃあ、お兄ちゃん溜まってるマナのお口に出す
マナが、オレに寄って来る
この子が、過剰にスキンシップを求めてくる時は、心が不安定なんだ
上辺の表情は、明るいけれどやっぱり、動揺している
姉のこと
そして、これから実の父親が、処刑されることを
オレたちはミナホ姉さんの計画を、途中までしか知らない
白坂創介の眼の前で最愛の四人の娘をレイプする
そこまでは判っている
しかし、その後
ミナホ姉さんは、白坂創介をどうするつもりなのか
もし、ミナホ姉さんが、白坂創介を殺すつもりならば
マナは、父親の死に立ち会うことになる
マナは甘えんぼだな
ごめんねお仕置きして下さい
お兄ちゃんに、お仕置きされたいよぉ
マナが、潤んだ眼でオレを見上げる
この14歳の少女は本当は、まだセックスに慣れていない
ただ、オレに抱かれることでオレの女であることを全身で確認しようとする この子の居場所はもう、ここしかないのだから
今はダメ後でな
オレはマナを膝に抱いて、頭を撫でてやる
イーディと貝殻を並べて遊んでいた真緒ちゃんが走って来る
パパ、パパお土産ありがとうねっ
頭に最初に入った作業着屋で買った、和風の手ぬぐいを巻いている
赤い金魚の図柄が入っている
うん、可愛いよ真緒ちゃん
と、イーディがやって来る
MANA
マナにも手ぬぐいを手渡す
それ、マナの分だぞ
え、あたしの分
ああ、イーディが家族全員分選んだんだ
マナが手ぬぐいを受け取る
Thank Youありがとう
イーディは、テヘっと笑うと今度は、渚に手ぬぐいを渡しに行く
Come on.MAO
お土産配りに、真緒ちゃんも誘う
アニエスも行っておいで
オレは12歳のハーフ少女に言う
真緒ちゃんたちと仲良くするんだ
瑠璃子が、イーディに何か言う
多分、アニエスの面倒を見てくれという内容だろう
イーディは、ニッコリと笑って頷きアニエスを手招きする
おいでよ、アニエスちゃん
真緒ちゃんも、アニエスを誘ってくれた
ほら、みんな呼んでいるよ
オレの言葉に、アニエスは
行って来ますの、パパ
さっき買ったサンダルをパタパタ鳴らして、アニエスがイーディと真緒ちゃんに合流していく
ね、お兄ちゃんたちあれも、一緒に買ったの
マナがイーディの雪駄に気付く
オレと瑠璃子も、同じ雪駄を履いていた
うんアニエスの履き物を買うついでにオレたちのも買ったんだ
いいなあマナもお兄ちゃんとお揃いがいい
では、今度はマナさんがお兄様とお買い物に行ってらっしゃい
マナさんも、お兄様と素敵な思い出をねっ
うんありがとう、ルリお姉ちゃん
マナお買い物って言うより、お兄ちゃんとデートしたいな
いいよ何でも付き合うよ
そしたらさお買い物して、パフェとか食べてさ
夕方になったら、ラブホテルでご休憩ねっ
結局そっちか
女子中学生らしいデートには、ならないんだ
ラブホテルって何ですの
この子はそういう世俗の知識が無い
えっとねセックスするための専用のホテルのことだよお兄ちゃんの知り合いの人が、経営しているホテルがあるんだよマナは、メグお姉ちゃんとお兄ちゃんと3人で泊まったことがあるんだ
マナは、笑っているが
あの夜は、大変だった
また泊まりに行こうよ、お兄ちゃん今度は2人きりで
中学2年生がオレに微笑む
今日の復讐が終わったらマナのための時間を作るべきかもしれない
セックス専用のホテルですか
瑠璃子が反応する
そうだよだからね、そこに入る時はあたしたち、これからセックスしますって、みんなに宣言するんだよっ
マナが調子に乗って、嘘情報を教える
いや、瑠璃子そんなことは無いから
でもさ、フロントの人とかはこの2人、これからセックスするんだって眼で見てくるわけでしょ
マナは笑う
なるほどポーターさんや、ベルボーイさんや、コンシェルジュさんたちにもそういう風に思われるんですね
いや、瑠璃子
ラブホテルに、そういう従業員たちはいない
わたくしも、一度泊まってみたいですわお兄様と
あ何か、瑠璃子の変なスイッチが入ってしまった
よろしいですかお兄様
まあ、いいや瑠璃子の社会勉強だ
珠代さんのラブホテルなら、融通を利かせてくれるだろうし
判ったよ瑠璃子とも泊まるよ
ありがとうございますわ
瑠璃子は喜ぶ
まてよ
このことが広まると寧や、みすずや、メグや、美智もラブホに行きたいって言い出すんじゃ
しょうがないか
あたしはラブホじゃなくってお洒落なホテルの方がいいわ
と渚が、やって来る
そう言えば、あそこの岬のホテルへ行ったんですってどうだったあのホテルは、昔から結構、評判は良かったんだけど
えーっと景色は、良かったよな
はいルームサービスのお食事も、美味しかったです
ん何かあったの
オレたちの顔を見て渚が尋ねる
済みません以前よりも、従業員の質が落ちていました
翔お姉さんが、こっちへ来る
香月セキュリティ・サービスでは、もう使えないですね利用施設のリストからは、外させます
そんなに酷かったの
渚が、驚く
正式なホテルマンでなく喫茶部門のアルバイトの子でしたけれど以前は、アルバイトまで、きちんと教育が行き届いていましたしああいう不心得者を雇用することなんて、絶対に無いホテルだったんですけれど
そう言えば去年から、経営が外資系になったんでしたっけ
はいそういうことも、要因なんだと思います支配人自体は変わっていないんですけれど
それは残念ねじゃあ、この子と泊まるのは別のホテルを探しましょう
渚は、笑った
そろそろ、わたくしみすず様のお迎えに参ります
翔お姉さんが、オレに言う
みすず様もどうしても、今夜は皆様と一緒にとおっしゃっていましたから
家族としてオレたちの復讐が気になるんだ
でもいいのかな
白坂創介に恨みの無い人たちにとっては
ただただ、グロテスクな状況を見るだけになるんじゃ
あたしは居てもらった方が良いと思うわあたしたちだけだと、感情が暴走してしまって止まらなくなるかもしれないから
みすずさんが来るってことは、当然、翔お姉さんも立ち会って下さるでしょ
はいもちろん
渚の問いに、翔お姉さんは即答する
ブレーキ役っていうか、過熱しすぎないためのオブザーバーとして、恭子さんが居て下さるんだけれどあの方も、熱しやすいから
渚は苦笑する
大人の翔お姉さんが見ていて下さると、とても有り難いわもちろんみすずさんが、居てくれることも大助かりだけれど
いっそのこと、ジッちゃんに来て貰う
オレは、思い切った提案をしてみる
香月家の人間が見ているということでミナホ姉さんも、暴走しないかもしれない
それは難しいわね
昨夜の状況を思い出して欲しいんだけれど閣下をここにお連れするのは、大変なのよ周囲の警備態勢とかも万全にしないといけないし谷沢チーフや、大徳さんたちも来るわよ
そそうだった
昨夜は瑠璃子様のことだったから、谷沢チーフも控え目になさっていたけれど
ああ控え室に籠もったきり、オレたちに会いには来なかった
白坂創介を云々するていうことなら、谷沢チーフが待ったを掛けると思うわ香月家の当主の動向は、公安や各名家の調査機関にチェックされているからこれ以上は、白坂創介という人と関係させたくは無いと思っているはずよ
白坂創介という人間の悪名が、ここまで世間に知れ渡ってしまった以上
その殺害まで起こりそうな場所に、ジッちゃんを連れて来ることは反対するだろう
香月様には送信映像で観ていただくしかないわね
とにかくわたくしは、みすず様をお連れするわそろそろ、行かないと間に合わないでしょ
ええ、翔お姉さんお願い致します
渚が、頭を下げる
あ、だったら学校の前まで、オレを乗せてってくれないかな
メグを迎えに行かないといけないしミナホ姉さんの様子も知りたい
恭子さんとミス・コーデリアたち
マルゴさんに、克子姉に、寧
みんな、ミナホ姉さんのところから戻って来ない
大丈夫なんだろうか
じゃ、あたしも行くっ
マナが、立ち上がる
いやいや、ダメだよ裏から行かないから翔お姉さんには、高校の正門前で下ろしてもらうからマナはうちの高校の生徒じゃないから、入れないだろ
職員用駐車場からの地下通路の存在はまだ、翔お姉さんに知らせるべきではないと思う
その判断は、ミナホ姉さんやマルゴさんがすることでオレがするべきでは無い
えー、何でよっ
マナは、文句を言う
だから、先にメグを迎えに行ってそれから、ミナホ姉さんのところへ行くからその方が早いんだよ
適当に誤魔化す
一番の問題は学校には今、白坂創介が監禁されているということだ
白坂創介が、どんな風に捕らえられているのかオレたちは、知らない
マナを連れて行って何かの拍子に間違って、いきなり父親と対面するというのは避けるべきだと思う
マナは唸る
あなた、だったらイーディさんを連れてって
え渚
あの子のことは転校してくる予定の留学生って設定にしたらいいでしょ
だ、だけど
そろそろミス・コーデリアに預かってもらわないと困るのよ
みすずさんが復讐に立ち会うのなら美智ちゃんも、当然来るでしょ2人とも、どうしたってあたしたちの復讐を見れば、動揺すると思うの
そして、美智の動揺はイーディにダイレクトに伝わってしまう
だから、イーディさんは復讐の時間は、学校の方に行ってて貰うべきだと思うのよ
計画では白坂創介の身柄を、こっちのお屋敷に移送して
ここで復讐を果たすのか
ミナホ姉さん、克子姉、渚、メグのお母さん
みんな白坂創介に、この屋敷の中で、地獄に堕とされたんだから
でも、オレ英語ダメだよ
それは頑張って
麗華こっちに来てそれからイーディ
翔お姉さんが、2人を呼ぶ
麗華わたくしは、みすず様をお迎えに行きますマルゴさんが戻られるまで、このお屋敷の警護はあなたに任せます
はいっ、お姉様
麗華は、翔お姉さんにキリッと敬礼した
翔お姉さんは、イーディにも同じ様な口調で何か言った
イーディも麗華を真似して、敬礼した
イーディには、あなたの警護をお願いしたから大丈夫、この子、ノリがいいから
じゃあ、ちょっとメグを迎えに行って来るからすぐ戻って来るよ
オレは、みんなに言う
行ってらっしゃいませ、お兄様
すぐ帰って来てよねお兄ちゃん
まずは、瑠璃子とマナの頭を撫でてやる
パパ、行ってらっしゃーいほら、アニエスちゃんも
大丈夫だよっすぐ帰ってくるって約束したからっパパ、真緒との約束はぜったい守ってくれるんだもんっ
真緒ちゃんとアニエスも、オレに手を振ってくれる
こっちは、あたしも居るからよろしくね
渚もミナホ姉さんたちのことは心配なようだ
うんあ、そうだあいつのことも頼むよ多分、何か食わせておけば、静かになるだろうから
ええ、まだうまい棒がいっぱい残っているわ
渚は、苦笑する
全部、納豆味だけど
雪乃逞しく生きろ
お兄ちゃま、後は任せて
うん、レイちゃん頼んだよ
玄関の前に、翔お姉さんのアメ車は停まったままになっていた
すぐに乗り込む
なぜかイーディが、助手席で
オレは、狭い後部座席へ
門の開閉は、渚が操作してくれるって
監視カメラを見ながら渚が、遠隔操作してくれることになっている
翔お姉さんが、キーを捻る
ブオオオオンッ
エンジンが、野太い轟音を立てる
出るわよ
走り出す車
オレたちの車が、門の外に出ると
外の監視組のうち香月セキュリティ・サービスの警護員が敬礼して出迎えた
翔お姉さんがトップに就任するという話は、もう広まっているらしい
翔お姉さんも、答礼する
なぜかイーディも
えっと、右に曲がって、すぐの角を左ですそのまま道なりに行くと、うちの学校の正門ですから
ギュルルル
車は加速する
ねえあなた
翔お姉さんがオレに声を掛ける
イーディは、面白そうに外を見ている
相変わらず、自販機が気になるらしい
アラン・プロストって人知ってる
オレは知らない
3回、F1のチャンピオンになった、フランス人レーサーなんだけれどね
翔お姉さんは、クスっと笑う
まあ、レースの歴史に名前が残るような立派な人よあたしは、そんなに好きじゃないけれど
やっぱり、フランス人だからだろうか
翔お姉さんは、アメリカが大好きだから
そのプロストがねレーサーを引退した後に、自分のF1チームを運営していた頃があるのよ名前もそのまんま、プロスト・グランプリってチーム名で
だけど、上手くいかなくて5年しか持たなかったのよそのチームで、いよいよチームが潰れるっていう時に、プロストさんはこういうコメントを出したのよ
ミラーの中の翔お姉さんの眼が、オレを見る
残念なことに、私がアラン・プロストだということだけで、世界の半分の人間は足を引っ張ってくるってねこのコメントを聞いて、ある評論家がメチャメチャに怒ったのよプロストって言うだけで、世界の半分が足を引っ張るだとふざけるな、残り半分が応援してくれることに、なぜ感謝しないんだって
そりゃそうよね普通の人は、プロストみたいに世間に名も知られていないんだものそりゃ、敵対してくる人も多いんでしょうけれど名前さえ有れば、協力してくれるって人も現れるものよネガティブなことだけを見て、発言するのは助けてくれた人たちに失礼だものね
翔お姉さんは何が言いたいんだ
さっき、わたくしはあの子を追い詰めるために、わざとネガティブな話しかしなかったのよ
あの子
それは雪乃か
でもねちょっと視点を変えてみなさい日本中の人たちが、みんなあの子のことを知っているというのが、どういうことなのかって
そうだ、今の雪乃は
今や日本でトップクラスの有名人だ
それを利点だと、思うことができればあの子の道は、開けるわ
それにね世の中の人たちの意見ていうのは、一面的では無いのよ例え、世論の8割が彼女に否定的でも2割の人間が同情的なら、生き延びる方法はあるわそもそも、国民の100パーセントが、あの子の敵になるなんてことはありえないしねどんな相手でも応援しちゃう人っていうのが、一定量存在するのが日本という国よ
聞いたことない世の中には、死刑囚に同情しちゃって、自分の養子にしたり、獄中結婚を申し込んだりするような人もいるのよ人に憎まれているような人だからこそ、逆に助けてあげたいって思うらしいわわたくしには、理解できない感覚だけれど
翔お姉さんは、笑う
もちろん、お父さんの方は白坂創介の方は、無理ね誘拐した女の子の遺体が発見された段階で誰からも同情はされないわ
それは、ミナホ姉さんの渾身の一撃
そのためにミナホ姉さんは、妹の遺体を白坂創介の別荘に埋めた
日本人は性犯罪と、殺人だけは許さないから
でも、雪乃さんはどんなに高飛車で、生意気でも倫理的には、あの子には何の罪も無いわけだし、可哀想だって思っている人も多いわ特に、女性はね
雪乃は全国民に、嫌われているわけではない
男性の方もねほら、風俗嬢とか、AV女優だってファンが付くのよ雪乃さんは、まだ16歳でそこそこ美人だからネットの世界には、もう熱狂的なファンも現れているわとにかく、世間の認知度と注目度が桁外れだから有名人なら、どんな人でもファンが集まって来るものでしょファンクラブもできたのよ白雪ドリルインパクト聖騎士団って言うらしいわ
雪乃のファンクラブ
だから、あの子が今、すでに起きてしまったこと自分の恥ずかしい姿を、みんなが知っているという現実を受けとめてでも、そこからどうやって、生きていくかを考えられるだけの胆力があったなら
翔お姉さんの眼が、オレを見る
あの子は、この苦難から脱出することもできるかもしれないあの子の悲劇は、これ以上は進まないかもしれないわ
って言ったら、あなたはどう思う
この間、何かで読んだのですが
十字軍の時代の宗教騎士団で、まだ生き残っているものがあるらしいです
今は、民間の医療ボランティア団体になっているとか
東欧で、日本人が倒れたらマルタ騎士団の紋章を付けた救急車が来てくれたそうです
457.ビーボ
翔お姉さんは、うふふと笑った
おしゃべりは、ここまでよ着いたわ
翔お姉さんは、車を停めた
ああもう、高校の正門前か
オレの頭の中は雪乃についての事柄で、いっぱいいっぱいになっていた
それと明日のことなんだけれど
翔お姉さんは、オレに振り向く
夜、閣下がご出席になられるパーティがあるわ
外国の大事なお客様のいらっしゃる大きなパーティだから、閣下もご欠席にはなれないのよもちろん、各名家の方々も揃っていらっしゃるわ
ニコッと笑ってオレを見る
それって、翔お姉さん
知りたかったんでしょそういう情報が
ああこの人は、判っている
わたくしも困るもの今のままの状態では
世間は瑠璃子が、父親の件でジッちゃんから疎まれたと思っている
だから長男の隠し子だった、美子さんが急に担ぎ出されたと
美子さんだけでは、香月家の娘の重責に潰されてしまうだろう
何よりこのまま、瑠璃子とジッちゃんの間に、亀裂が生じたままになっていると世間に思わせたくはない
それは、香月家本家が隙を見せることになる
そうなれば香月の分家たちや、他の名家が様々な形で、干渉してくるだろう
今の気落ちしているジッちゃんだけでも、心配だけれど
美子さんは、もっと心配だ
美子さんには、名家を背負うだけのメンタルの強さは無いのだから
そうだねジッちゃんの側に、みすず、瑠璃子、美子さんの3人が仲良く揃っている姿を公の場で見せないといけないんだね
わたくしは、ただの警護人ですからアクションは起こせないわよ
翔お姉さんはオレの眼を見る
でも、わたくしはあなたの女の1人だからあなたにお願いされたことなら、何でもするわ
これは、オレのするべき仕事だ
家族の問題なんだから
もちろんあなたの男を見せてくれるわよね
ああ任せて
翔お姉さんに約束する
よっし、がんばれ男の子っ行ってらっしゃい
行って来ます
オレは車を降りる
イーディも、一緒に降りた
ありがとう翔お姉さん
じゃあ、また後でねっ
翔お姉さんは、爽やかな笑顔と共に車を発進させる
ブロロロロローッ
マッシブナな、アメリカン・ハイパワーカーは正門前の道を爆走していく
すっげぇ車だなあれ、吉田の知り合いか
後ろから声を掛けられる
振り向くとクラスメイトの田中が居た
おっおう
驚いて声が出ない
田中は、オレの驚声を挨拶か何かだと思ったらしい
で吉田、運転していた人も、超美人だったけれどお前の何なんだ
知り合いっていうかまあ、親戚のお姉さんみたいな人だ
とりあえず誤魔化してみる
お前の
田中は、疑惑の眼で見る
嘘吐け違うだろう
オレは嘘が下手だ
山峰ちゃんの方の親戚なんだろお前の顔とは似ても似つかないが山峰ちゃんなら、あの系統の美人だ
田中は、うんうんと頷いている
じゃ、いいやそういうことにしておこう
実は、そうなんだ
やっぱりな
田中は、フフンと笑う
そうか、オレとメグの婚約関係を知っているから
オレと翔お姉さんとの関係に、やましいことが無いと信じ切っているんだ