オレの一日はまだ終わらない
今が勝負の瀬戸際だ
克子さんそっちの監視室って、ホテル内の全てのデーターが送信されて来ている
それが全部は来ていないわもちろん、敵と交戦しているフロアの画像データなんかは届いているんだけれどホテル全館のデータは送られていないし完全に隠されているフロアもあるわ
マルゴさんは、さっき本部から借りてきたコンピューター端末を見ながら言った
こっちも同じだよ谷沢チーフ、あたしたちに見せてもいいデータしかアクセスさせてくれない気だね
どうしても、あたしたちには見せたくないものがあるってことなんだろうね
マルゴさんは、クッと苦笑する
谷沢チーフは、ジッちゃんの指示でオレたちアクセス制限をしていることは間違いない
何を隠そうとしているんだ
でも、こちらの機材はホテル外のネットに接続しているわ
書き込みはできないけれど外の情報は自由に見られるわ
現在のこのホテルの状況について報道で取り上げられているかどうか確認できる
待っていいえ、どこのニュース・サイトでも出ていないわ
マルゴさんの質問に、克子姉は答えた
報道管制されているなら香月さんが、やらせているってことなんだろうね
白坂家では自分の家の系列の報道機関しか抑えられない
ましてや、アメリカの犯罪者であるシザーリオ・ヴァイオラに、日本のマスコミを制御する力があるとは思えない
今、判っていることは香月さんは何かしらの企てがあって、シザーリオ・ヴァイオラをこのホテルに呼び寄せたってことしかも、自分の重役陣と私塾の連中も一緒に
あたしたちだって、そうでしょ
そうだオレたちも、ジッちゃんにここに呼び寄せられた
あたしたちはそうだけれど雪乃さんは違うよ
あたしたちが雪乃さんを連れてきたことは想定外のばずだよ普通なら、学校の監禁室にでも入れておくだろうからね
嫌よ、あんな狭い部屋
前に閉じ込められた校長室の地下の監禁室を思い出して、雪乃が不平を言う
とにかく、全ての人間をここに集めたのは、香月さんだそして、わざわざ集めて置いてあたしたちは、改めて安全な部屋に隔離している
安全な部屋
警護人を残さない上に、自分まで脱出しちゃったんだ地下の緊急避難室の防御には相当の自信があるんだよ、香月さんはそうじゃなければ、大事な孫娘を2人とも残して来たりはしないよね
うんあの地下の部屋は、完全に防御されているんだろう
そして、あたしたちもこの部屋に隔離されたんだよ寧ちょっとドアを確認してみて
判った、マルちゃん
寧さんが、部屋のドアノブに触れる
ガチャガチャ
開かない鍵が掛かっているよ
内側から鍵は掛けてないですよね
オレは一応尋ねてみる
もちろん何もしていないよ
ていうかこの部屋は、ホテルの通常の客室でオート・ロックだからさ部屋の内側からノブを回せば、ドアは開くはずだよね
ドアを閉めたら、外側からは開かないように自動的にロックされるが
ホテル内で火災などが発生した時に、すぐに避難できるように
内側からノブを回せば、ドアは開くはずだ
なのにこの部屋のドアには、鍵が掛かっている
これって、やっぱりジッちゃんが
香月さんていうより、谷沢さんだよさっきの本部から操作して、電子ロックを掛けているんだと思う
つまりオレたちは、閉じ込められた
さっき谷沢さんは、21階に絶対防衛ラインを引くって言っていたよねここは25階このフロアに居れば、あたしたちは絶対に護れるって考えたんだと思うよ
そう言えば、さっき谷沢さん、関さんと麗華お姉さんをあたしたちから引き離そうとしていたよねっ
うんこの部屋には、あたしたちだけを避難いや、監禁するつもりだったんだと思うよさっき、部屋に入る時に気付いたんだけれどこの部屋のドア、普通のホテルの客室ではありえない様な頑丈な造りになっていたから元々、敵の拘束を想定して造られている部屋なんだと思うよ、ここあたしや美智ちゃんが、本気で蹴飛ばしてもビクともしないんじゃないかなドアだけじゃなくて、壁や窓も、普通より強化されているんだと思う
でもさっ関さんや麗華お姉さんが居ればさっ
寧さんが、ニヤッと笑った
関さんはピストルを持っているからさっドアの電子ロックの回路を撃ち壊してしまうことだってできるだろうし、麗華お姉さんはつ
そうだ麗華の撲殺ステッキの力があれば、こんなドア簡単に打ち破れる
打ち壊しますか
麗華が、オレとマルゴさんを見る
待って今すぐ外に出たって、その後の行動の手掛かりが無いよもうちょっと、ここで情報の収集をしよう
マルゴさんは、通信機に向かって
克子さんそっちのコンピューターでアクセスができる範囲を全部チェックしてみて、そうしたら逆算的にアクセス制限されている領域が浮かび上がって来ると思うから
判ったわやってみます
あたしも、こっちの端末で同じことをやってみるよ
マルゴさんも、コンピューターの端末に向かう
うんオレたちに、ジッちゃんが何を見せないようにしているのかが判れば
今のままでは、どうにも動きようが無い
マルゴさんの肩越しに寧さん、関さん、麗華、香月健思が端末のモニターを覗き込む
オレはどうせ判らないから、覗き込まない
ね、お茶でも煎れない
そこにあるの、ポットでしょ
確かに、客室用の小さなポットがあった
水は入っている
えっとあ、入っている
チェックインして来る客のことを考えてあらかじめ、客室係が水を入れておいたんだろう
じゃあ、お茶煎れてよ
雪乃が、オレに言った
いや、でもさここ、元々は2人用の部屋みたいだからさお茶碗2つだけだし、ポットも全員分のお湯は沸かせないしそれに
お茶のティーパックも、二つしかない
二つあるんでしょじゃあ、あたしは飲むから、お茶煎れて
こういうところが雪乃だと思う
周りの空気とかは、考えない
ご主人様、そんな方の命令を聞く必要はありません
ずっとオレの横に侍っていた美智がそう言った
飲みたいのなら、ご自分でなさって下さい
美智の眼は冷たい
そうね、それじゃあそうするわ
雪乃は立ち上がってポットを沸騰させるスイッチを押し、ティーパックを茶碗に入れる
断固として飲みたいものは飲むんだな
一応、ホテルの館内の図面は全部見せてくれるみたいだね
モニター画面を見ながらマルゴさんが、言った
ここが現在地で迷路状になっているホテルの中を抜けて、1階に下りるルートが示されている緊急事態の時は、この図面に従って1階まで自力で降りて避難しろってことなんだろうね
ちょっと貸して下さい全部、記憶してしまいます
関さんが、前に出る
記憶って各フロアごとに違う迷路になっているんだろそれでここは25階だから
憶えなければいけない地図は25枚分だ
大したことないわ元々、このホテルの内部構造は熟知しているし各階ごとの迷路のパターンだけ憶えればいいんだから5分下さい全て、頭に入れておかないとね
形のある地図にしてしまっては、敵の手に渡った時が危ないから
頭の中に記憶してしまうしか無いんだ
大丈夫よあたし、こういうのは得意だから
さすがトップ・エリート警護人
マルゴさんから端末を受け取ると関さんは、物凄い勢いで画面上のマップを記憶していく
へぇ閣下は、こんなところまであなたたちには情報開示して下さるのですね
端末機器の画像を後ろから眺めながら香月健思が言った
それどういうことです
思わずオレが、尋ねてしまうと
いやねここよりも上の階に、重役たちや私塾の皆さんがいらっしゃいますが彼らには、こんな情報は開示されませんよまあ、下手にホテル内の地図なんか見せたら、あの人たちの場合はフラフラとその辺を歩き回ったりしそうですしね
確かに、香月操とプリンス派の一党なら、そんなこともやりかねない
あいつら、怖い物知らずだからなぁ
ホントみなさんは、閣下に信用されているみたいですね
香月健思は、ニヤッと笑う
信用されていて何で、こんなところに閉じ込められているのよ
お茶碗で熱いお茶をグビグビ飲みながら二つだけ用意されていた、お茶菓子を1人でバリバリ食べている
何かすげぇな、お前
信用しているからこそ大事になさっておられるのでしょう
香月健思は、そう答えた
前に閣下から伺ったことがあるのですが
ジッちゃんから
人間の世界には表と裏があります表しか知らない人間は弱いです香月操さんたちみたいにねでも裏の悲しさ、苦しさを知らないと言うことは屈託の無い、真っ直ぐな人間を形成します
確かに香月操は、香月家の表しか知らないで育ってきた
馬鹿だし、自尊心が強くて、迷惑な人間だけど真っ直ぐではあるひねくれた、嫌な人間では無い
逆に裏を知っている人間は強いが、裏ばかりを知りすぎた人は性根が曲がってしまいます意地の悪い、陰険な人間になってしまいます
それもそうだな
裏の世界ばかり見せられてきたらそれはそれで辛い
一番良いのは裏というものの存在を知っていながら、自分自身は表にいる人間なのだそうです裏との交渉は、誰か人を立てて自分自身では、決して裏世界とは接触しないそういう人間になれと、閣下は私塾の僕たちにいつもおっしゃっているのです
うんその意見は判る
裏なんてなるべく、関わらない方がいい
オレは黒い森という裏組織の人間だから、心からそう思う
結局大切なのは、バランス感覚です自分の所属している場所に従って裏と表をバランス良く、受け入れなければならないのです
表の人間は表の人間として
裏の人間は裏の人間として
ですから閣下は、ご自分がホテルにお呼び寄せになられた人々を、3つのグループに分けたのですね
それぞれのグループによって知らせるべき情報に差異を作るのは当然のことです裏と表の比率が違うのですから
香月健思は、モニターに提示されているホテルの図を指して
一番上の階に居る重役と私塾の連中には、ほとんど情報は伝えられていないはずです今、このホテルを襲撃している敵の目的さえ、知らされていないでしょうただ、下のフロアでの幾つかの戦闘をモニターで見せられて震え上がっているだけですあの人たちはみんな、表の人間ですからね今回は、裏の世界の恐ろしさを存分に知るだけで充分だと閣下はお考えなのでしょう
うん上の階のやつらは、今回の襲撃の真相の全てを知らなくていい
いや、知って欲しくない
寧さんの悲しい過去から続く、因縁のことなんて
それから皆様のお話を伺うと、みすず様や瑠璃子様たちは、ホテルの地下に避難なさっておられるようですねこの方たちは、上の階の方たちよりも裏の世界について、すでに知っておられるまたは、知っておいた方が良いと閣下がご判断なさったのでしょうしかし、完全に裏の世界に染まってしまってはいけないと、閣下はご心配なさっている
そうだみすずや瑠璃子が、今後、香月家を切り盛りしていくためには
裏の世界のことは、知らなくてはいけない
しかしだからといって、裏の世界の住人になってはいけない
これは、メグやマナもそうだ
黒い森の中に居たってオレは、あいつらに裏の世界の仕事はして欲しくない
これ以上は、染まらないで欲しい
娼婦を引退した克子姉や、渚だって
そして現在、この部屋にいらっしゃる皆さん皆さんは、下にいらっしゃる方たちより、さらに裏の世界に近い人なんだと思います
香月健思が、オレたちを見渡す
マルゴさんや、寧さんそれに、オレは
黒い森の中でも、直接、作戦行動をする実行部隊だ
関さんに、麗華、美智
警護人という名目ではあるけれど目的のためには、手段を選ばない
オレたちは全員法に触れることをすることに躊躇しないという意味では、同類だ
香月健思の言う通り裏の世界の方に寄っている人間なんだと思う
でも皆さんは、完全な裏の人間では無い悪に染まった人間ではないようですねここしばらく皆さんの言動を見て来てそう思いました
皆さんは裏の世界の深淵と対峙するために、あえて裏の側に寄られているのだと思います閣下にとっては、裏世界へカウンター攻撃を仕掛けるための人材として、皆様に期待なさっておられるのだと推察致します
オレたちはそんなんじゃねぇ
だからこそ完全な情報を開示してしまうと、皆様は裏の世界に堕ちてしまわれるのではないかと、閣下は思われているのでしょうだから、閣下は、皆様をここに閉じ込めこれ以上の情報が伝わらないようにしておられるのだと思います
自信満々に香月健思は言った
とても面白い意見だと思うけれどあたしは、そうは思わないよ
マルゴさんはそう応えた
それよりさあたしたちにそんなことを言う、君の立場はどこにあるんだい
そうだ香月健思は
彼自身は、自分がどのグループに属すると思っているんだ
僕は上の階へは、もう戻れません僕の父親は、香月グループの裏切り者ですからいえ最初から、僕には他の私塾の連中の様な野心はありませんでしただから、私塾を追放になることは、僕にとっては好機です僕は、やっと自分が行きたいと思っていたポジションに着くことができる
香月健思は、ニヤッと微笑む
僕は裏の側の人間になりたいのです
日曜日です
今、東京は台風接近で大風が吹いています
昔のドラマで奥さんが手術している間、バレエ教師の旦那さん(宇津井けん)がずっと病院の廊下で踊り続けるというシーンがありました
昔はよく、ネタとして懐かしのテレビ番組とかで取り上げられていたんですけれど
今回、自分の父が8時間半の緊急大手術になってみて
手術中私はずっと病院の廊下をウロウロウロウロ歩き続けていました
もし、私がバレエが踊れたらきっと踊っていたと思います
あのドラマの場面は実はリアルだったんだなあ
今だから、書けることですが
309.裏への憧れ
他の私塾の連中は、閣下のあるいは、香月家の表の側の重臣になろうとしていますいや、彼らは裏を知らないのですから、それでいいのでしょうが僕は、裏を司る閣下の重臣になりたいその方が面白そうですし表で出世争いするよりも、効率よく香月グループの中枢に入れます現在の閣下には、裏の仕事はほぼ谷沢さん一人に託しておられますから若くして、裏の担当者のナンバー2になることだって可能です
香月健思は、ニヤリと微笑む
それで君は、あたしたちに付いて来たわけ
はい将来的には、僕は皆さんのような裏の人材を使いこなさねばならないのですし谷沢さんの様に、自ら率先して危険地域に身を置く度量を示さないと、皆様の様な裏の人間は僕みたいな人間は信用して下さらないでしょう
こいつはオレたちをいずれ、自分の手駒にしたいと思っているんだ
あ、舐められてるんだ
オレたち
結局君は、私塾の子なんだね他の連中と一緒で、私塾の枠から一歩も出ていない
マルゴさんの言葉に、香月健思は反応する
君にとっては、香月グループの中で自分がどんな地位に就くかがとっても興味があるらしいけれどっていうか、それにしか興味が無いみたいだねでも、そんなことあたしたちには、何の関係も無いってことだよ
そんなことはないでしょう香月グループとの関わりは、皆さんにとっても有益なはずですいずれ、皆様は香月グループの裏の部隊に組み込まれていくのでしょうしそうなった場合に、私は閣下と皆様を繋ぐ役職を任されたいと思っているのです
それが香月健思の狙いか
そうして、裏の世界のことを学びいずれは、谷沢チーフの跡を継いで、香月グループの裏部門のトップに立つことが僕の希望する将来像です
平然と香月健思は、そう言う
香月健思さん閣下は、絶対にこの方たちを自分の裏の要員にはなさりませんよ
閣下は、この方たちを表の世界に返したいと思っておられますだからこそ、今、この部屋に閉じ込めて閣下ご自身の手で全てに決着をつけようとなさっているんですわ
そんなこと信じませんよ閣下が黒森家の人々に対して、そんな慈善事業みたいなことをなさるはずがないでしょうあくまでも、全ては黒森家をご自分の配下にするための策略だと考えるべきです
香月健思は、オレとみすずの関係は知っているが
オレたちの黒森の家族の全体像は知らない
オレたちの、心のことも
あなたには、無理です
あなたは裏の世界には入れませんその入り口に立つことすら
美智の涼やかな眼が香月健思を貫く
あなたには心の中に暗い部分が無いから
どういうことです僕にだって、心の闇ぐらいはありますよ煩悩も欲もある僕は、ごく普通の健康的な若者ですからね
香月健思は、まだ笑っている
そういう意味では無いですあなたは、暗い闇の中をたった一人で堪えたことは無いでしょうそういう思いをしたことが無い人に、わたくしたちの気持ちは判りません
暗い闇の中
オレの家電気の点いていない真っ暗な部屋
ソファの中で毛布にくるまって自分の体温だけで寒さを凌ぐ夜
一人ぼっちだったあの頃
あの一人きりの闇を苦しさを、切なさを振り払いたいという思いがあるからわたくしたちは、今、ここに居るんです
美智は両親と離れて、祖父に育てられた期間がある
マルゴさんは、インディアン居留地を追われて施設に入っていた時期があるし
寧さんは両親を殺され、弟のケイさんも失った
みんな孤独な夜を経験している
そりゃあ、確かに私は香月家の一族で皆さんからすれば、恵まれた生活をしているのかもしれませんがだから、何です辛い生活を体験した人間の方が偉いと思っていらっしゃるんですかそんなのナンセンスですよ
そういうことを言っているのではありません彼女は
関さんが、間に入ってくれる
単純に健思さんには、わたくしたちの気持ちはお判りにはならないと申し上げているだけです
自分には他の人たちと比べて、心の中に足りない部分があるという思いあるいは、何かをロストしてきてしまったという喪失感そういう満ち足りない気持ちの起こす焦燥感は、あなたはご存じないのでしょうね
関さんに続いて、麗華がそう言った
関さんはアル中のお父さんに苦しんだんだっけ
麗華も早くに家族と別れて、お祖父さんと暮らしてきたはずだ
麗華お姉さん、そんなこと口で説明しても無駄だよ判らない人には、どうせ判らないんだから
寧さんが、暗い瞳でそう言った
涙とともにパンを食べたものでなければ人生の味はわからないですか馬鹿馬鹿しいあなたたちは、自分が辛い過去を経験してきたということに酔っているだけですよそんな境遇から立ち上がった自分の素晴らしさに浸っているだけです
香月健思は、オレたちを小馬鹿にしたまま微笑んでいる
そんなことより頭の中を空っぽにして、単純に損得勘定だけで考えてみて下さい僕と組んだ方が、将来的には絶対に得ですよ僕が保証します
本当に金持ちの子供って、こんなやつしかいないのか
いやみすずや瑠璃子は、違う
あいつらは、心に深い闇を抱えている
だからオレたちは惹かれ合っているんだ
家族になりたいって思うんだ
君に付いて行ったって地獄に墜ちるだけだよどうせ君は、最後には一人で逃げ出そうとする人だろうしね
それは何事もギブ&テイクですからねその代わり、皆さんも損だと思ったら僕のことをいつでも切り捨てて構いませんその辺はドライに行きましょう
ホント、君、裏の仕事には向いていないね
マルゴさんは軽蔑の眼で、香月健思を見る
ブラック企業とか起業して、色んな人をダマして搾取してみたら君には、そういう仕事の方が向いていると思うよ
寧さんも、汚い物を見る眼で香月健思に言う
常に自分は相手より上の立場にいて上から目線で何を言っても良いと思ってるんでしょ自分は人をダマす側の人間でダマされるのは情弱で頭の弱い人間なんだから、何をしてもいいって思っているんだよね
そう思われるのは心外です僕は、ただ自分らしく生きているだけですよ態度が尊大で偉そうだとは、よく注意されますが人の上に立つ覚悟のある人間は、これぐらいのハッタリは必要だと思っていますし
もう黙んなよくそ馬鹿
黙れって言ってるのあたしたちが許可するまで、二度と口を開くな
シュルルンッ
ズバッ
美智のムチと麗華の撲殺ステッキが、同時に香月健思の前の床を貫く
次は、当てます
力ずくでないと、判りませんか
美智と麗華の殺気にさすがの香月健思も黙り込む
裏の世界ではさ自分を舐めたやつは殺してもいいんだよ舐められたら、殺してでも仕返しするそうでないと、骨までしゃぶられるからね相手がどれだけ権力者だろうと嚙み付いて殺すよあたしたちは全員、自分の牙を持っている人間だからね
だから裏の世界では、礼儀はとても大切なんだよ礼儀を弁えない人間は、死んで詫びを入れて貰う表の世界みたいに、権力者は何をしてもいい強い人間にはペコペコ頭を下げて我慢するってことにはならないんだ最初っから、生きる、死ぬ殺すか、殺されるかの世界に居るんだから
というか、ここで殺しておいてあげようよその方が、この人のためなんじゃないの
寧さんの言葉に、関さんは
申し訳ありませんが生かしておいてあげて下さいここで死なれると、わたくしと藤宮さんが困ります
うん二人とも、香月セキュリティ・サービスの所属だもんな
眼の前で香月健思に死なれるのはまずい
そんじゃあさ、君、一人で敵の中に突撃してよそれなら、関さんたちの責任にはならないでしょ大丈夫よ、ダダドムゥさんはちゃんと生きて帰って来たから鉄扇の代わりに、ハリセンぐらいは持たせてあげるわっ
興奮気味に、寧さんは言った
いやそれは
香月健思が、口を開こうとすると
喋るな
ギロッと美智が睨む
この人の自分勝手な論理展開を聞いているのは、頭に来るけれどさでも、そのお陰でちょっと見えてきたよ
ミナホがどうして、香月さんと一緒に地下の部屋を抜け出したか
オレは、思わず尋ねる
ミナホ姉さんの真意をオレは知りたい
さっき、この人が言ってたでしょ重役や私塾のグループと、みすずさんたち、それにあたしたち香月さんは、それぞれのグループに対して、違った情報制限をしているという話それは本当だと思うんだ
それぞれにアクセスできる情報量を規制している
やっぱり上の階の人たちには、そんなに裏の世界のことを知って欲しくはないだろうしみすずさんたちにも、見せたくないことはあるんだと思うよ香月さんにとっては
あたしたちに見せないようにしていることが何なのかは判らないけれどあたしたちは、裏の実行部隊だからね今更、隠し事をされても困るんだけれどまあ、あたしたちのグループに対する情報制限は置いておいてそれでもとにかく、上階と地下の人たちに対する香月さんの気持ちは、この人の分析通りで正しいと思うんだ
マルゴさんは、香月健思の顔を見る
しかし、だとしたら香月さん自身は、自分をどういう立場の人間だと思っているんだろうって考えてみたんだよ
ジッちゃんはジッちゃん自身を、どう思っている
自分の身内に裏のことは、あんまり知って欲しくないと願っている香月さんはつまり、自分自身はとっても裏に詳しい人間だと思っているわけだよね
確かに香月さんは、裏の世界との接触は多いし、普通の表の世界の企業経営者よりは、遥かに裏に詳しいと思うよでも
マルゴさんは嘆息する
それは全て、間に谷沢チーフや美智ちゃんのお父さんみたいな人を入れての話だよね香月家の当主が自分一人で裏の人間と接触することなんてあるはずがないいつだって、谷沢チーフがしっかり後ろから見張っているはずだよ香月さんの知らないところで、根回し工作だってきっちりやっているはずだ
うんそれはそうだろう
どんな時でも、谷沢チーフはジッちゃんが危なくないように、陰から監視しているずだ
香月さんも頭ではそのことを判っているんだろうけれどでも
香月さんは、自分もまた他の重役たちと同じ表の人間だってことが、判っていないんだよあの人は、そこに居る香月健思さんと同じでずっと裏の世界に憧れてきた人だから
裏に憧れてきた
だから香月さんは黒い森に対して、優しいんだよあの人が昔から黒い森や黒森楼の娼館に寛容なのはお屋敷に来て裏の雰囲気を味わうのが楽しみだったからさ香月セキュリティ・サービスみたいな組織を自前で作ったのもそうだよ裏の世界に憧れているからそうやって裏と関わる機会を増やしたかったんだと思う
そうか普通は、自分の名前を冠した要人警護の会社は作らないよな
そういう会社が必要だと思ったら香月グループとは別に、こっそりと作る
香月家とその会社には、何の関係も無いように見せ掛けるはずだ
その方が対裏組織としては、自由に行動しやすい
あ、だから
工藤父は、香月セキュリティ・サービスには所属しないで自前で工藤探偵事務所をやっているんだ
事務所の車にあんなに大きく会社名を書いてあるのも香月セキュリティ・サービスとは仕事上の付き合いはあるが、自分は別会社の人間だということを、裏社会の人たちにアピールするためだろう
その方が裏の人間たちは、工藤父に気安く接してくれる
問題なのはさそうやって裏と接する機会が増えたことで、香月さんがいつのまにか自分も裏に近い人間だって思い込んでいるってことさ
ジッちゃんはそう思い込んでいる
自分はとっても裏に詳しいという気持ちが強くあるから
身内には余り裏について知って欲しくないという気遣いが生じる
それが情報の制限という形で示されている
でも香月さんの本質は表なんだ香月さんは、裏の人間じゃないその認識のズレはとても危ういと思う
ミナホは二人きりの部屋で、香月さんから本当の目的を聞いたんだと思うよ
本当の目的
香月さんがこのホテルを一棟丸ごと犠牲にしてでも、シザーリオ・ヴァイオラの一党をここに呼び寄せなければいけなかったわけをね
何かの意味が目的が、あるはずなんだ
そして、その目的の達成のためには香月さんは、地下から出て上階に戻る必要があったその理由をミナホに話してミナホを納得させたんだと思うだけど、ミナホは香月さんを一人だけで上階へ戻らせるのは危険だと感じたんだろう
だからミナホ姉さんも、一緒に上階へ向かった
ミナホは骨の髄まで、本物の裏の人間だからねちゃんと、裏の人間として思考し、行動することができる自分が香月さんの側にいた方が良いと判断したんだと思う
谷沢チーフがおられるじゃないですかその役は黒森様でなくても、今まで通りチーフが閣下のお側に付けば問題無いのではありませんか
関さんが、疑問を発する
地下を脱出した香月さんは、すぐに谷沢さんと合流できない理由があるんじゃないかな谷沢さんのいない場所で、誰かと交渉するとかそうじゃなかったら、ミナホが家族を残して香月さんに付いて行ったりはしないよ
うんミナホ姉さんは、そういう人だ
おそらく、その交渉にはオレたち家族の未来も関わっているんだろう
だから、ミナホ姉さんは誰にも告げずに、ジッちゃんと地下から脱出したんだ
さてここからが問題だけれど
あたしたちこれからどうする
このままここで谷沢さんの引いた絶対防衛ラインの内側で、制限された情報を見ながら朝まで過ごす
マルゴさんは、フッと笑う
もっとも、香月セキュリティ・サービスの防衛ラインが破られて、敵がこのフロアまで上がって来る可能性もあるけれどね
そんな敵の本隊は判別できましたし、他の隊の動きを封じ込めれば、全戦力を投入して一気にシザーリオ・ヴァイオラを駆逐することができます現状は、わたくしたちに有利だと思うわ
でも、行方不明の4人が居るでしょまだまだ、敵にも形勢逆転のチャンスは残っていると思うよ
そうだミス・コーデリアと白いヴァイオラたちそして謎の人物が居る
この先何が起こっても不思議ではない
とにかく、この部屋からは出た方がいいと思うよっ
あたしもそう思うよ待っているだけなんているのは、性に合わないしあたしは誰かに制限された情報なんかじゃなくって、真実が知りたいからね
マルゴさんは寧さんに微笑む
わたくしは谷沢チーフに確認しないことには
香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートとして関さんは、そう言う
いえ、関さんと麗華がオレたちと一緒に行かせてくれた段階で谷沢さんにとっては、オレたちがこの部屋を脱出することは想定していると思います
さっき、谷沢さんは関さんと麗華をオレたちから引き剥がそうとしましたよね
でも最終的には、二人がオレたちに同行することを認めてくれました麗華の力があれば、こんなドアはブチ破れますもし、谷沢さんがオレたちをこの部屋に閉じ込めておきたいと考えているのなら、絶対に麗華を一緒には行かせないはずです
何か別の指令を与えるとかするはずだ
谷沢チーフは、麗華の直接の上司なんだから
それに迷路になっているホテル内の地図も、オレたちがアクセスできるようになっていますこれってオレたちがこの部屋を出て、外に出ることを想定して用意してくれたんだと思うんです
そうだ多分
谷沢チーフもきっと不安なんですよ
不安
関さんが、オレに聞き返す
はいジッちゃんが、ミナホ姉さんと二人きりでいることが谷沢さんも不安なんだと思いますだから、谷沢さんはオレたちがジッちゃんと合流してガードすることを、心の中では望んでいるんだと思うんです
台風一過で、温かい風が吹いています
310.暗夜行路
あたしも、そう思うよ谷沢さんは、あたしたちがこの部屋から出て行くだろうと判っているもちろん、公式に認めてくれているわけではないけれど
わたくしはそれでも、谷沢チーフに連絡するべきだと思います
関さんは、言った
推測だけで行動するのはよくないと思うわ
谷沢チーフの部下としては、何せよ上司の判断を仰ぐべきだと考えているらしい
公式に打診したら出て行っていいなんて言うわけないよ
寧さんは言う
このままこんな部屋に閉じ込められていたくないっていう、あなたたちの気持ちは判るのよでも、ここはとりあえず安全よ谷沢チーフの絶対防衛ラインよりも4フロアも上なんですからもし、万が一、敵が防衛ラインを突破したとしても、ここからならさらに上のフロアに退避できるし
あたしは逃げるために、ここに来たんじゃんじゃないよっ
関さんと、寧さんが真っ向から、対立する
さて困ったね
マルゴさんは、苦笑した
関さんはあたしたち全員の安全を第一に考えているもちろん、それはとても大事なことだよねだけど
マルゴさんの瞳が、寧さんを捉えた
寧は自分は、ヴァイオラと対決しなければならないと思っているそうでなければ、過去の苦しみから抜け出すことができないってあたし自身は、どこまでも寧の手助けがしたい地獄の底まで付き合うつもりだけれどみんなには、強制するつもりは無いよ
部屋中の視線が、マルゴさんに集まる
これからどうするかそれぞれの人が自分で決めて欲しい
オレはもちろん、寧さんとマルゴさんに付いて行きます最後まで
とっくに覚悟はできている
わたくしは、ご主人様をお護りするだけですみすず様にも、そうお約束致しました
美智も、即答してくれた
わたくしも一緒に行きます
藤宮さん
麗華の言葉に関さんは驚く
わたくしは、お姉さんですから、この子たちを護る義務があります
麗華は香月セキュリティ・サービスの警護人であることより、オレたちの姉であることを優先してくれた
雪乃はどうする
オレの問いに雪乃は飲んでいた茶碗をドンと置いて
もちろん、あんたたちと一緒に行くわよ
この部屋何か気持ち悪いのよこれ以上、長居したくはないわ
ふ、ふふふふふ
香月健思が笑い出す
なるほど、そういうことですか
この部屋ももちろん監視カメラは付いていますし、盗聴のシステムもあるんでしょう今のこの会話も当然、全て聴かれていると考えるべきでしょうね
聴かれている
誰に
監視システムを今、押さえているのは
谷沢チーフそして、ジッちゃんだ
この部屋の中でグダグダしている姿を、閣下たちに見られ続けるぐらいなら外へ出るべきなんでしょうね
香月健思が、オレを見る
さっきも言いましたけれど僕、もう後が無いんですよ
父親が裏切り者であることが発覚した香月健思は個人的にジッちゃんへの忠誠を示さなければ、香月グループの中に残れない
どっちにしても君は本物の裏の世界の恐ろしさを肌で感じた方がいいよね今のままじゃ、余りにも頭でっかちだから
マルゴさんは、香月健思をそう評した
怖い思いをした方が良いということは、自分でも判っていますよまあ、覚悟はできていますから
その軽口はいつまで続くだろう
しかしこれで、香月健思までが部屋を出る方に付いた
後は
判ったわよ、もう
関さんが溜息を吐く
わたくしが一緒じゃなかったらホテル中を動き回れないんでしょ行くわよあなたたちに付いて行ってあげればいいんでしょ
迷路化したホテル内の地図を暗記したのは関さんだけだ
本当のところ関さん抜きでは、オレたちは部屋の外へは出られない
谷沢チーフどうせ観ていらっしゃるんでしょわたくし、この子らに付いていきすから後で、命令違反で減俸でも、クビでも何でもして下さいっ
関さんは、監視カメラに向かって叫ぶ
ごめんね手間の掛かる妹と弟で
寧さんが、関さんに言った
お姉ちゃん、大好きっ
関さんは照れて顔を赤くしながら
わたくしはまだ、あなたたちの姉になると決めたわけではありません
それでももう、お姉さんだよあたしたちの
寧さんはニッコリ微笑んでそう言った
麗華ドアをブッ壊して
麗華が、撲殺ステッキを構える
こんなことしなくたって谷沢さんも、脱出を黙認しているのなら、ドアのロックを外してくれればいいんですよ
香月健思が、皮肉っぽく言う
谷沢さんだってサラリーマンだからねあたしたちが自力で抜け出したっていう証拠が残っていないと後で困るんだよ盗聴から脱走しそうな気配を感じたが、対処しようとした時にはすでにドアを壊されて、部屋を抜け出された後だったってね
参ります
ドゥガァァッッ
特殊合金製のステッキがドアの電子ロック部分を貫き、破壊する
オーケイ、開いた行こう
マルゴさんを先頭に部屋の外に出る
マルゴさんは、一応廊下の反対側にある、本部に通じるドアを探る
ドアノブは廻らない
金属製の分厚いドアをコンコンと叩く
うんこの階にはいないね
本部は、部屋ごとエレベーターになっていて、5フロア分くらいを自由に移動できる造りになっている
今は他の階に部屋ごと移動しているのだろう
このフロアが、本部が移動できる一番上の階だったよね
マルゴさんの問いに、寧さんがうんと頷く
ということは谷沢チーフたちは、下の階にいる
じゃあ、あたしたちも下りようか
シザーリオ・ヴァイオラと対決するとしても階下のフロアへ下りて行くしかない
もちろんそれはより危険な場所へ行くということだ
わたくしが先頭に立ちましょうか
地図マスターの関さんが、マルゴさんに提案するが
いいえフォーメーションは変えますが、関さんは2列目のままでお願いします
先頭は美智ちゃん、頼むよ
ちょっとでも変だなって思うことがあったら、報告していや、報告する前に攻撃しても構わないその辺は、美智ちゃんの判断に任せるよ
マルゴさんは、美智の気を感じる力を最大限に活用するつもりらしい
ムチは出しておいて危険な感じがしてから取り出していたら、間に合わないから
美智はスカートの下から、赤いムチを取り出す
2列目の関さんは、行き先のナビゲートと美智ちゃんのフォローをお願いします
わたくしも拳銃を出しておいた方がいいわね
関さんは、隠していたホルスターからリボルバー式のピストルを取り出す
へえ、オートマチックじゃないんだ装弾数だって、リボルバーよりオートマの方が上でしょ
マルゴさんが興味深そうに覗き込む
戦闘員なら、弾数の多い方がいいんでしょうけれどわたくしは、護衛人ですこちらから率先して攻撃することは想定していないでしょだから、装弾数の多いオートマチックよりも、どんな状況でも確実に機能するリボルバーをの方採用しているのよ
今は昔よりも機械のレベルが上がっているから、オートマチックでもジャムることは少ないでしょ
でもこの金属の塊っぽいピストルの方が、何か落ち着くのよ信頼できるっていうか
ああそういうのって大きいよね
関さんの言葉に、マルゴさんは納得する
で麗華お姉さんが、3列目寧と彼と雪乃さん、3人のガードをお願いします
麗華の武器は直接攻撃しか出来ない
この状況では、美智とポジションを交換するべきだとマルゴさんは判断したらしい
で、殿《しんがり》はあたし
マルゴさんが、一番後ろで周囲の様子を見ながら、指揮を執る
その辺は変わらないらしい
あの、僕はどうしたらいいんでしょうか
君は、あたしの3メートル後ろから付いてきて敵にヤられた時は、大声でギャーギャー喚いてね君が痛みにのたうち廻っている間に、迎撃態勢を作るからくれぐれも、一言も言葉を発さないまま即死しちゃったりしないでね君は、背後から敵に襲われた時のみんなの盾なんだから死ぬまでの間に、できる限り敵を引きつけておいてね
マルゴさんは笑顔でそう言う
あの僕、殺されちゃうんでしょうか
さあまあ、一人で頑張ってみて運が良ければ、大怪我だけで済むんじゃない
マルゴさんは、香月健思を護る気が無いことをはっきりと宣告する
あはは面白い冗談ですね
冗談じゃ無いよ本気だってば
マルゴさんの眼は冷たかった
悪いんだけれど、ここから先はあたしたちは、あたしたたちの家族を護ることだけで精一杯だから自分のことは自分でやって君を助ける義理なんか無いんだしね
あはははマジですか
うんマジ
香月健思は自分が、危険地帯にいる事に、始めて気付いたらしい
ずっと香月家の一員として特別扱いされてきた香月健思は
自分は常に他者に大事にされ、護られることが当然だと思い込んできた
しかしこの場では
そんな理屈は通じない
オレたちは、オレたち自身を守るだけで精一杯なんだから
他人を護る余裕なんか無い
やっぱり僕あっちの部屋に籠もっていようかな
それでもいいんじゃないの部屋のドア、ブッ壊しちゃったしずっと一人ぼっちだけど、別に構わないよね
皆さんと行きます
香月健思も覚悟を決める
よし、行こうフォーメーション組んで関さん、ナビ頼みます
下へ行くんですね
多分香月さんもミナホも、この階より下に居ますこの闘い全体が、香月さんが計画したものなら香月さんは、敵の戦力が疲弊し切った時に、シザーリオ・ヴァイオラと面談しようと考えているはずです
ジッちゃんはヴァイオラと会いたがっている
直接面談
それしかこのホテルにシザーリオ・ヴァイオラを呼び寄せた理由が思い付かないんだよ
マルゴさんはオレにそう言った
次正面の角を、右です
関さんが頭の中に写し撮った地図を基にオレたちを誘導する
先頭に立った美智が敵の気配を探り問題が無ければ、前に進む
時間が掛かっても仕方が無い
命には、変えられないのだから
どうせこの辺りには、敵なんていませんよ
24階ですよ谷沢チーフの防衛ラインより上なんですから敵に遭遇するはずが無いんですちょっと考えたら、判ることじゃないですか
最初の戦闘で、敵が4人ほど潜入したことは話したよね
マルゴさんが、香月健思に言う
たった4人でしょうどうせ偵察に出した斥候ですよ無闇に戦闘を仕掛けて来たりはしないと思いますよ大体、そいつらだってまだこのフロアにまでは到達していないんじゃないですか
香月健思は、自論を述べる
さあ、どうだろうね
マルゴさんは、背後の様子をチェックしながら答える
ミス・コーデリアは恭子さんと組んでいた過去のある人だからねだとしたらどんなことだって有り得るとあたしは思うよ
マルゴさんは警戒を緩めない
先頭の美智が立ち止まった
どうした美智
何か変な気を感じます
美智はスッと腰を落とし、ムチを構える
後ろもだよ
来るっ
マルゴさんは、香月健思の腕を引っ張り隊列の内側へ押し込む
関さん、麗華お姉さんっ
関さんは前の美智のフォロー
麗華は後ろのマルゴさんの方を見る
違うわ、そこに何かいるっ
前でも後ろでもなくすぐ横の天井を、雪乃が指差した
ハッと見上げると
天井に、保護色のグレーの戦闘服を着た人間が貼り付いている
完全に気配を消していた
天井の戦闘員が上からオレたちに襲いかかるッッ
311.チーム
頭下げてッ
マルゴさんが振り返りながら、天井から襲って来る敵にナイフ型の手裏剣を投げ付けるッ
ドスッ、ドスッッ
手裏剣がグレーの戦闘服の敵の腹に突き刺さるが防刃チョッキを着込んでいるらしい
敵は態勢を崩しただけで、ダメージは無いようだ
オレは寧さんを庇う腰を落として、なるべく身体を小さくして
雪乃が後ろから、寧さんにしがみついていた
マルゴさんが全速で走って、グレーの敵に飛び掛かるッ
その瞬間オレたちの前後に潜んでいた敵も行動を起こす
やらせないッッ
マルゴさんと入れ違いに麗華が後方の敵に突進するッ
美智ちゃん、下がって
関さんが、前方に姿を現した敵に拳銃を向けるッ
ドゥンンッッッダァウンッッ
牽制として、2発銃撃するッッ
敵には当たらないが正確な射撃は、オレたちへの接近しようとする動きを止める
こちら、お任せします
美智は、その様子を確認するとマルゴさんと交戦しているグレーの敵の方へ向かう
イヤァァッ、ハァァァァッッ
マルゴさんは、金属製の伸縮式警棒みたいな物を引き抜いて、天井から降りて来たグレー敵に殴り掛かる
グレーの敵は、大きなコンバット・ナイフを抜いて、応戦す
ガキッバキキキッ
金属と金属が激しくぶつかり合い、火花を散らす
ハィィ、ハィィ、ハィィィーッッ
一方麗華は、後方の敵に撲殺ステッキで三段突きを放つッ
敵は、ギリギリで避けるがオレたちとの距離は遠くなる
ダウウッッッ
関さんが、もう一発、銃を撃つ
確実に前方の敵を足止めしている
お避け下さいっ
美智の赤いムチの切っ先が、グレーの敵に飛ぶッッ
グレーの敵は、後方に跳んで身を躱す
飛びながら、美智に小刀状の手裏剣を投げ付けるが美智はサッと一歩退いて避ける
美智の脇の床に、ズドッと敵の手裏剣が刺さった
そのためにムチの第2撃は出せない
こっちを見なさいっ
美智が、片手を招き猫のポーズにする
工藤流古武術奥義心月
ダメだ、美智
美智の集中が緩む
グレーの戦闘服の敵が、英語で何かを叫んだ
伏せてッ閃光弾くるよッ
マルゴさんの声に、オレはそのまま寧さんを押し倒して床に伏す
雪乃も一緒だ
廊下の前後がビカッと激しく輝くッ
顔を上げると三人の敵はすでに姿を消していた
みんな大丈夫かい
ハァハァと荒い息でマルゴさんが言った
あたしは平気ヨッちゃんが、護ってくれたからっ
寧さんが、オレを抱き締めたまま答えた
ちょっと涙目になっている
眼がチカチカします何も見えません
香月健思は、閃光を正面から見てしまったらしい
しばらく眼を瞑っていなさい少ししたら、治るわ
関さんが、撃った弾丸を補充しながら答えた
すみません、隊列を乱す様な行動をして
麗華が、マルゴさんに謝る
いや適切な判断だったと思うよ麗華お姉さんが飛び出してくれたから、後方の敵がこちらに近づけなかったし
本来ならば、隊列の真ん中に居たわたくしが天井から襲って来た敵を撃退するべきでした
麗華はグレーの敵が天井に居たことに気付かず、初動の対応が遅れたことを反省しているらしい
いや、あの人は特別だからだから、あたしもつい身体が動いちゃったんだ本当なら、麗華お姉さんに任せて、殿《しんがり》に居たあたしが後方の敵を相手するべきフォーメーションなのについ、あのグレーの敵と交戦しなくちゃって思って、隊列の真ん中へ飛び込んじゃったから麗華お姉さんが飛び出して、後方の敵を押さえてくれなかったらヤバかったと思うよゴメンなさい
マルゴさんも、麗華に詫びる
あのグレーの敵はマルゴお姉様でなければ、対応できませんでした
マルゴさんは、グレーの敵が放った手裏剣を床から引き抜いた
ああやっぱりね
どうしたの、マルちゃん
ほら、これ
マルゴさんは、寧さんに敵の手裏剣を見せる
続いて、自分の手裏剣を取り出して
2つの手裏剣はほぼ同じ形をしていた
材質や加工は、微妙に違うけれど
同門、てことだよねこれってさ
あたしの師匠は、恭子さんあたしの前に恭子さんと組んでいたのは
ミス・コーデリア
さっきのグレーの敵は、ミス・コーデリアか
となると、前後から襲って来たのが白い女のヴァイオラとロザリンドだな
同門同士の方が、相手の手の内が判りますからフォーメーションを崩すことになっても、マルゴお姉様が相手をしたのは正解だと思います
というより、藤宮さんも美智さんも突然のフォーメーションの変更に、よく対応したと思うわマルゴさんの判断も正しかったと思うしそれぞれが常に一番良いと思うポジションに移行して、互いにフォローし合えていたちゃんとチームとして機能できているわよ
関さんが、先頭チーム全体を褒めてくれる
関さんこそ3発だけの銃撃で、正面の敵を足止めするなんて、さすがです
まああちらは、本気じゃ無かったからね
関さんは苦笑した
本気では無かったってだって
本気なら敵は最初から銃を使っているよ最初の、完全に気配を消していた状態で銃撃されていたら、あたしたちの大半は死んでいたと思うな
今回の襲撃はオレたちの戦闘力をチェックしにきただけですよね
オレはマルゴさんに尋ねる
偵察というよりあたしたちに対する、挨拶って感じだね本気で潰しには来なかったし
四人目は出て来なかったですもんね
そうだホテル内に潜伏している、ミス・ヴァイオラたちのチームは4人のはずだ
最後の一人はまだ、姿を見せない
どうせ、どこかからあたしたちの様子を観察していたんだと思うよ
では、ご主人様がわたくしを止めたのは
うん敵の目的が、ただの様子見だけならこっちの手の内を全部見せるのはマズイだろそれに
オレの中に疑念がある
美智の心月は、武道の達人には効くかどうか判らないんだろそして美智は、天井に隠れていたミス・コーデリアの気には気付かなかったんだよな
オレたちは、美智を先頭に美智の気を関知する能力を頼りに進行していた
だが、美智はミス・コーデリアには気付かなかった
ミス・コーデリアが、完全に自分の気配を消すことのできるほどの達人なら美智の神月が通じない可能性がある
申し訳ございませんご主人様
美智は、口惜しそうだった
いや、これは美智ちゃんの能力に頼りすぎるフォーメーションを組んだあたしが悪かったんだよ
マルゴさんが、自分を責める
気にすることはないわあんな化け物みたいな相手なかなかいないんだから
関さんがニコッ微笑んで、マルゴさんをフォローする
フォーメーションは元に戻しましょう藤宮さんが先頭で、あたしが2列目美智さんは他の子を護りながら、前後の気を探ってで、マルゴさんが最後尾ね
関さんの提案に、マルゴさんはウンと頷く
藤宮さんも前みたいに一人だけで突出することはしなくなったし何か突発的に起きた場合は、今みたいにそれぞれの判断でポジションを変更してくれていいからもう、お互いの能力は判っているんだし上手にフォローし合っていきましょう
戦闘チームのコンビネーションは、確実に良くなっている
さすが香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートですね、関さんあたしよりも、遥かにリーダーシップがある
ミス・コーデリアの襲撃でチームの指揮を執ることに、自信をなくしてしまっているのか
違うわわたくしも藤宮さんも、あなたたちのお陰で自分には何ができるか、チーム内で自分の付するべきポジションは何なのかを考えられる様になったのよちょっと前までのあたしたちはそりゃ、経験や技術はそこそこあるけれど、自分のことばっかり考えていて周りを見る眼に欠けていたわこうやって、このチームを組んでみて気付いたこと、判ったことがいっぱいあるのよ
わたくしも関さんと同じです
今までのわたくしは自分勝手でした反省しています
だからねこのチームの指揮は今まで通り、マルゴさんにお任せするわもちろん、あたしたちも気が付いたことがあったら、すぐに指摘するけれどでも、リーダーとしての視点で全隊を見る眼を持っているのは、マルゴさんだけだと思うから
ええ、気にしないでどんどんわたくしたちに指示を出して下さい
関さんと麗華の言葉に、美智が付け加える
わたくしも、マルゴお姉様を信頼しておりますこのまま参りましょう
みんなありがとう
マルゴさんは、感激している
うんうんっ大丈夫だよ、マルちゃんきっと良いチームになるよっ
寧さんが、ニッコリ笑ってそう言った
それからあなたも良い眼をしていたわね助かったわ
関さんは、雪乃を褒める
まあ、たまたま天井を見たら、何か人型が浮かんで見えただけなんだけどね
ドヤ顔で、フフーンと鼻高々な雪乃
これからも期待しているわ頼むわよ
任せなさいってっ
こいつは調子に乗りやすいからなあ
関さんは、雪乃とオレたちの関係の正確な関係は知らないし
白坂創介の娘を人質として連れているぐらいしか理解していないんだろう
まあ、人質にしては雪乃には自由な言動を許しているし
何となく、打ち解けてきているというかオレたちの中に溶け込んできているけれど
マナとメグがいないのが大きいんだな
あの二人は、雪乃に対する拒絶反応が強すぎるから
そう言えばあんた眼は平気ちょっとは見えてきた
雪乃が、香月健思に話し掛ける
あ、大分良くなってきましたもう平気です
雪乃本質的には、優しい子なんだよな
ただ自分は特別な存在だと思っているから
他の子と、理解し合えないギャップがあるわけで
それはさっきの香月健思の言動を見て気付いた
香月健思も何でか、自分は特別で、他人の上に君臨するものだと信じ込んでいる
だからこいつは、オレたちを束ねて、香月グループの裏部門の長に自分はなれると考えているわけで
オレたちに対し、信頼を得るとか
自分の能力をアピールするとということは一切、飛び越えて
最初っから、香月健思は自分をオレたちよりも上位の人間だと位置づけて
だから、何の問題も無くオレたちが自分の下に付くと思い込んでいる
雪乃もそうだ
自分は最初から他の人たちよりも特別な位置にいる人間だと思っているから
だから、メグをずっとイジメてきたんだし
妹にも酷かった
雪乃と香月健思は似ている
そういや二人とも、名家の一族の傍系の子だ
中途半端な位置に居る
ジッちゃんや、みすず、瑠璃子といった名家の本家の人間は家を護るという責任感がはっきりあって、他の人に対してきちんと応対するけれど
中途半端な傍系の人間は家の権威に縋り付くだけで、余計なことしかしないからなあ
自分のプライドを守るためだけに、家の恥となるようなことも平気でするし
あれちょっと待てよ
どうしたの、ヨッちゃん
寧さんが、オレの顔を覗き込む
あの私塾の連中とその親って、性格的にそっくりでしたよね
うん、どういうわけか考え方とか、シンクロしていたよねっみんな
香月健思さんとお父さんの香月昇さんもやっぱりそうですか
香月昇ミス・コーデリアにそそのかされて、シザーリオ・ヴァイオラと組んでいるって言うけれど
似ていませんよ父と僕とは、全然別の人間です
香月健思は、はっきりとそう言うが
そっくりですよそういう性格も含めて
関さんが、そう言う
関さんはジッちゃんの専任警護人だ
重役たちの集まるような場所でも、警護に付いてきているんだろうから
その意見は、正しいだろう
それがどうしたの、ヨッちゃん
何か気が付いたことがあったら、何でも言ってみて大切なヒントになるかもしれないから
寧さんとマルゴさんがオレを見る
オレ、思うんですけれど
オレは香月健思を見る
確かに健思さんみたいな人なら野心もあるし、思い切ったことをすると思うんです
香月健思は香月家の血筋でありながら、新興グループの方に属していた
そして、私塾内の両グループの調整役に徹していた
それは、彼がいずれ香月グループの裏のボスになりたいという想いがあったからだということは、すでに判っている
頭もいいし、色々と画策することが好きだし人を思い通りに動かす、才能だってあるんだろう
香月健思は、決して無能な人間では無い
健思さんお尋ねしますけれど、あなたがもしお父様の立場だったら今の状況で自分以外の重役を皆殺しにする計画なんて実行しますか
香月健思は
僕が父だったら、そんな馬鹿げたことはしないですよ自分と敵対する勢力の重役はともかく自分の下に付きそうな人まで殺すのは間違っていますから
そうだ香月健思は、他人を見下している
自分よりも愚かな人間は、いずれ支配すればいいと思っている
全員皆殺しなんていう、エキセントリックなことをするわけがない
自分と敵対するだけのどうしょうもない人間は処分してしまいたいと思うかもしれないですけれどそれ以外の人間は、助けてやって恩を売っておくことにしますねその方が長期的には、僕に都合の良い結果になると思いますし
頭は良いし、有能なのに
自分自身を高く評価しすぎているから現実と合わなくなる
それが、このタイプの人間だ
ではお父さんの昇さんの今回の行動は、少しやり過ぎだと思いませんか香月家内の裏切り者のトップがお父さんだっていうのは、変だとは感じませんか
いや、父がやったというのは間違いないと思います父は、他人の下に付くような人間ではありませんし
でも、誰かにそそのかされたって可能性はあるでしょう
もう一度聞きます香月昇さんは、ここまで過激な反乱を起こすような人間だと思いますか
香月健思は、しばらく考えて答えた
そう言われたら違う様な気がします父が計画・実行したにしては確かに、現状で起きていることは過激過ぎるような気がします父は、僕と違って気弱で小者なところがありますから
いやあんただって、小者だってのっ
とりあえず、父が帰宅しました
やっぱり痩せていますね
大動脈瘤破裂から、一ヶ月半で退院というのは中々無いケースだそうです
退院時にあなたは運が良かったと、医師に言われたらしいです
これからは、外出時に誰かしら付き添わないといけないようですしまだまだ大変ですが
皆様には、ご心配いただき本当にありがとうございます
これからも頑張ります
さてでは、仕事にいきます
312.分断工作
ちょっと、整理しよう
まず、ヴァイオラの来日は突発的に起きたことだこれは間違いない
寧さんのデータが裏社会に流出したのは、ほんの数日前だ
それをアメリカに居るヴァイオラが察知して、急遽来日した
香月セキュリティ・サービスの制服組に何ヶ月も前から工作員を忍ばせて、クーデターの準備をしていたのは、香月昇だこれも間違いないと思う
劇場からホテルに向かう途中で、オレたちを襲った警備員の入社日から香月昇のクーデター計画は、かなり前から下準備が始まっていたことが判る
ヴァイオラと香月昇を繋げたのは、ミス・コーデリアこれも間違っていないと思う
ヴァイオラの目的は寧さん
香月昇の目的は香月グループの支配
違う目的を持つ二人の人間を、ミス・コーデリアは引き合わせってことですよね
それでヴァイオラは、香月昇の仕込んだ工作員から情報を得、また利用し
香月昇は、ヴァイオラの侵攻そのものをクーデターのキッカケにした
二人じゃないわ3人よ守次様が居るもの
雪乃の大叔父白坂家当主、白坂守次もヴァイオラと契約している
この侵攻に合わせて白坂家の企業グループ内の反抗勢力の暗殺と、白坂創介とその家族の抹殺を、ヴァイオラに要請している
そのことは反白坂守次派の3人の会談の時に、ジッちゃんが話していた
そうか一つの戦闘で、それに関わる関係者たちから何重にも金を払わせるっていうのがシザーリオ・ヴァイオラの組織の手口なら
そうだオレたちは、男のヴァイオラの寧さんに対する私怨ばかりが気になっていたけれど
元々、シザーリオ・ヴァイオラの組織は、アメリカでも有数の犯罪組織だ
すでに敵の侵攻は、男のヴァイオラの私怨というレベルを超えている
これが犯罪組織としての、正式な活動なら可能な限り儲けようとするのは当然だ
4人目、5人目の顧客もいるかもしれないってことですよね
ああ香月昇の計画は多分、自分と合わない何人かの重役の暗殺ぐらいだったんだと思うよ
例えば、香月操の父親と香月仁の父親を殺害すれば
重役会の中での香月家の人間は、香月昇だけになる
プリンス派は瓦解することになるだろうしその時には、新興グループに居たはずの香月昇が一気に重役会のボスに躍り出ることとなる
そうですね父の考えることなら、そんなものだろうと思います
香月健思は、そう肯定した
落ち着いて考えてみれば自分以外の重役や、閣下のお子様まで皆殺しにするなんていう無茶な計画を、あの小者の父が思い付くはずがないですよね
うんそれはきっと別の人間の計画多分、4人目の人間がヴァイオラかミス・コーデリアに要請したことなんだと思うよ
しかし、おかしいなどうして僕は、全部父の命じたことだと思っていたんだろう
香月健思は、不思議そうに言う
そんなのこの男が、自信満々に犯人は香月昇だって言ったからよ
えっオレか
そうよ、あんたよあんたが、あんなに偉そうな口調で言い切るからみんな信じちゃったのよ
確かにオレのせいかもしれない
そうだよなオレ香月昇がどんな人間なのか、知りもしないくせに手元の情報からの思いつきで、全部の事件の黒幕はあいつだって言い切ってた
オレが間違っていた
どんな事件も1人の人間の思惑だけでは動かない
複数の人間の思惑が交錯し情念がぶつかりあうことで、事件はどんどん大きくなる
その事件に関わる人間が増えれば増えるほど複雑になっていく
ちょっと待って本当にヨッちゃんだけのせいなのかなっ
その男のせいよっあの時、偉そうに思いつきをペラペラ喋っていたのその男だったじゃない
そうだ香月昇・大ボス説を言い出したのは、オレだ
それはそうなんだけどさまず、ヨッちゃんが自説を述べてマルちゃんとあたしが、その説が論理的に正しいんじゃないかって検証してみてでも、その段階でもヨッちゃんの説は、裏付けとなる証拠の無いただの一考察でしか無かったんだよね
そうね本当にそうなのかしらって、思いながら聞いていた覚えがあるわ
そうだよでも、そこでさものすごーく良いタイミングで、ヨッちゃんの説を肯定してくれた人が現れたんじゃなかっけ
突然、谷沢チーフが現れた
オレの説に拍手してくれて褒めてくれた
あそこでさ、谷沢さんがまるでヨッちゃんの説が正しいみたいな感じで話を始めたからあたしたちは、香月昇が全ての黒幕だって思い込んじゃったんじゃないの
でもさ今思うと、谷沢さんはヨッちゃんの説が正しいとは言って無かったんだよ確か、谷沢さんが言ったのはなかなか良い推理だだけじゃなかったっけ
谷沢チーフは、オレの推理が当たっているとは言っていない
そうだねあたしたち、谷沢さんにミスリードさせられているのかもしれない
マルゴさんも、考え込む
ちょっと待って下さいでも谷沢チーフは、オレたちの味方じゃないですか
何でオレたちを欺くようなことをするんだ
頭の中をゼロにしてもう一度最初から、全てを検証してみようよ
でももし谷沢さんが敵なら、ジッちゃんは
ジッちゃんが
オレたちの家族になってくれたジッちゃんが
全ての思い込みを消し去るんだ
マルゴさんは冷たく言った
でもジッちゃんが、オレたち裏切っているなんて
それはみすずや瑠璃子まで、裏切っているということだ
そんなことがあるのか
そこじゃないよゼロにするべきポイントはさ
谷沢チーフが、何もかも香月さんの命令通りに動いているのではないとしたら
谷沢さんが忠実な部下でなく香月さんの命令に反して、自らの意志で行動しているとしたら
谷沢チーフが裏切り者だったら
そもそもさ香月さんは、何で谷沢チーフと離れて行動しているんだろう一度地下へ避難してそこから、また上階へ行くなんて面倒なことを何でしたんだろうそれってさ、もしかして谷沢チーフの監視の眼から逃れるためなんじゃないかな
ジッちゃんは2人の息子とその家族を護るため、自分の専任警護人を派遣した
何で、谷沢チーフの配下の他のトップ・エリートではいけなかったんだ
それから、関さんと麗華がオレたちのチームに入って、自分の側から離れることを許可した
それって、関さんも麗華と一緒だと谷沢チーフの監視網から逃れられないからなんじゃないのか
秘密の緊急避難室の中のさらに秘密の脱出通路は、谷沢チーフさえも存在を知らないものだったのでは
ならばジッちゃんの現在の所在地を、谷沢チーフは知らないということになる
そう考えたら谷沢さんが、あたしたちが2505号室から抜け出すのを黙認した理由が判るんだよわざわざ、迷路化したホテル内の地図まで見せてくれたのは
マルゴさんにみんなの眼が集中する
あたしたちに香月さんの居場所を探させる気なんだと思うよ
ヴァイオラ襲撃を受けている今谷沢チーフには、ジッちゃんを捜索に行かせる手駒がいない
いやもしかしたら、山岡部長にやらせるつもりだったのかもしれない
それであの時重役たちの避難している部屋に来た
だけど、山岡部長も工藤母も使い物にならなくなっていたから
谷沢チーフは、オレたちに眼を付けた
もちろん、これだって仮説だよ絶対にそうだとは思い込まないで
ええわたくしには信じられませんチーフが閣下を裏切っているなんてこと
わたくしも、そう思います谷沢さんは、忠節を尽くしておられる方ですから
谷沢チーフの部下である関さんと麗華は、戸惑っている
でも可能性がある以上は、注意を払うべきです
それはそうだと思うけれど
しかし30年も閣下にお仕えしている方ですよ谷沢さんは
2人の警護人は、どうしても納得がいかないらしい
何十年も仕えていながら、ずっと裏切るチャンスを探していたとも考えられますよ
香月健思が言う
思いつきだけで勝手なことを言わないで
関さんがムッとして怒った
でもさ、あたしはやっぱり胡散臭いと思うわよあのオジサン最初に見た時から、そう感じたもの
雪乃は、そう言う
谷沢チーフが胡散臭いなら、工藤さんはどうなるんだよ
あのオジサンは、お笑い芸人系なんだと思うと納得できるけれど谷沢って人は、詐欺師っぽい感じがするのようちの家系にもいるから、ああいう人
うちの家系って白坂家か
誰にでも当たりが良くて、実際、学歴も能力もあるんだけれど色々と裏で画策して、周りの人を陥れていくのよ杉並の叔父さんが、あの人の雰囲気に良く似ているから
いや、だって谷沢さんは、香月セキュリティ・サービスの人なんだから、裏で工作活動するのは当たり前だろ人当たりが良いのだって
要人警護の専門家のチーフなんだから
コミュニケーション能力が高いのは、当然だ
でもさぁ何か、嫌な感じがするのよあの人は
雪乃は生理的に谷沢チーフが嫌いらしい
とにかく、今は何とも言えないけれど谷沢さんに注意するってことだけは、みんな頭の中に入れておいて今、あたしたちは瀬戸際にいるんだからどんな可能性も見逃すわけにはいかないよ
そうだ、ここは戦場だ
甘い考えでは些細なことで、すぐに命を落とすことになる
ではどう致しますか閣下を探して合流するのは、止めますか
麗華が、マルゴさんに尋ねる
いや、ジッちゃんとミナホ姉さんを見つけるのは最優先だと思うよ
本当に谷沢チーフが敵なら
誰も警護がいないまま、2人を放っておくのは危険過ぎる
そうだねっ早く合流した方がいいってそしたら、先生と香月さんの話も聞けるし
うん実際の所、ジッちゃんやミナホ姉さんから直接話をするべきだ
現在抱えている疑問の多くは、それで解決するんだし
ところで敵と関係している4人目の人物重役会の皆殺しを敵に要請したのは誰なのかという問題が残っていますが
香月健思が、そんなことを言い出す
その話は今は止めようあたしたちが、ここで推理しても正しいかどうか判らないしまた間違った方向に思い込む可能性の方が大きいよ
マルゴさんは、健思の問題提起を却下する
ミスリードは、もうゴメンだよねっていうかさ
寧さんが、香月健思の顔を覗き込む
君こそがあたしたちを混乱させるために敵が送り込んできたスパイなんじゃないのっ
香月健思は、大きく笑って
面白いことを言いますねあなた
違うって言い切れるわけ
そんなの、悪魔の証明じゃないですかここにいる誰一人、自分が裏切り者ではないなんて証明できないですよ
人間なんて皆、どこか怪しいところがあるものなんですから
いいやオレたち家族の中に裏切り者はいないよ
そんなの君の勝手な思い込みでしょ
香月健思は、オレを挑発する
わたくしはご主人様を決して裏切りません
ヨッちゃんだって、ミッちゃんを絶対裏切らないよ
ご主人様が、絶対に裏切らない相手はあなたです
美智が寧さんを見る
そうだね彼は絶対に、寧のことは裏切らないよ
マルゴさんだって、寧さんのことは裏切らないでしょ
麗華は家族は裏切らないよね
はいわたくしは絶対に妹たちを護ります
麗華の中でのオレの優先順位は低いんだな
麗華が欲しいのは家族であって男ではないから
わたくしだってみんなのことは護るわよ
今、谷沢チーフが別の指令をしたとしてもわたくしは受諾しないわみんなが安全な状態になるまでは、警護を続けるからあたしは人を護る警護人なのあたしの武器は、護るためのなんだから
そう言って関さんは手の中のピストルを見る
へえみなさん、なかなか信念をお持ちのようですね
香月健思は、小賢しい笑みを浮かべたままだ
では皆さんにとって怪しい人物なのは、僕と彼女だけってことですね
そう言って雪乃を見る
いいやオレは雪乃を信じているよ
オレの言葉に雪乃が驚く
雪乃は高飛車だし、我が儘だし、自分勝手だけれど悪いやつじゃない本質的には優しい子だよ
ああんた、何を言っているの
あたふたとする雪乃
高校の入学式の日暗く落ち込んでいたオレに声を掛けてくれたのは、雪乃だったじゃないか
入学式のあの日オレの親父は、失踪した
落ち込んで震えていたオレを気遣って、声を掛けてくれたのは雪乃だった
嘘よ!あたしがあんたみたいな人に、声なんて掛けるわけが無いじゃない
雪乃は覚えていないようだ
入学式の日のオレのことなんて
でも、オレは覚えている
あの日の雪乃が優しくて美しかったから
オレは、あの日からずっと雪乃に夢中になっていたんだ
でも、そうなんだ雪乃は優しかったんだよオレに
香月健思が、ジロッとオレを見る
あのこの子、白坂雪乃さんなんですよね
そうよ、あたしは白坂雪乃よそれがどうかしたの
不服そうに、雪乃が健思に言う
いやずっと不思議なんですよどうして皆さん、敵の勢力の女をみんなに野放しにしているんだろうかって
確かに白坂家は、オレたちの敵だ
香月家とも黒い森とも敵対している
雪乃は、敵じゃないからさ
だからって味方でもないよっ
そこんとこ間違えちゃダメだよ、ヨッちゃん
そうだ、雪乃は味方では無い
絶対にオレの味方にはならない
雪乃とオレは判り合うことなんてできないんだから
それぐらいオレたちの心は離れている
そうよあたしは、あんたなんて大っ嫌いなんだから
あたしを懐柔しようったって無駄よあたし、あんたみたいな男は生理的に嫌いなのもう、DNAの段階から嫌いだってマーキングされているんだからっ本当なら、口だってききたくないのよっでも今は
口惜しそうにオレを睨む
仕方無いからそうよ、仕方無いから、あんたと話してあげているだけなんだからねっ感謝しなさいよっ
オレはフフッと笑った
何よ何がおかしいのよっ
いやマナがここにいたら、また雪乃に酷いことを言うんだろうなって思ってさ
うんマナが雪乃を責めて
メグがきっと睨んでいる
あの子は馬鹿なのよあんたみたいな悪い男に引っ掛かってさまだ子供だから仕方無いんだけれど
雪乃はオレを見る
舞夏のこと頼んだわよちゃんと責任とってね
こうなっちゃったら仕方無いじゃないあたしの家はもう、潰れちゃうんだろうから
雪乃はうつむく
父が社会的に抹殺されたということ
例え白坂家が保ったとしても自分たちの居場所はもう無いということは、判っているんだ
情けないけれど舞夏のことは、あんたに任せるしかないと思うのよ弓槻先生や香月みすずや何より、恵美に頭を下げるのは、あたし絶対に嫌だから
雪乃のプライドがそれを許さない
だから、あんたが何とかしなさいよ舞夏のこといいわね
そういう雪乃さんは、どうするつもりなの
寧さんが、雪乃に尋ねた
そんなのあたしが知りたいくらいよっ
自嘲気味に雪乃は、答えた
自分の未来が全く見えないんだ
雪乃は、いら立っている
さあっ、もう話はいいでしょっ行きましょうよ上でも下でもあたし、こんな廊下で立ち話しているのは、もうゴメンよっ
そう言って、雪乃が小走りで前に駆け出す
おい、待てよ一人で勝手に行くなよ
オレは雪乃を追い掛ける
寧さんと美智がオレを追って前に出る
隊列が崩れた
シュココココーンッ
天井からガス弾が撃ち出される
これは、さっき見たぞ
ダダドムゥおじ様が、敵との戦闘から撤退する時に
て、ことはこれを操作しているのは
マルゴさんが、オレたちを追おうとした瞬間
ドダダダダダダダッッッ
背後から機関銃の銃撃
壁の上の方に銃弾が穴を開けていく
一射眼は、威嚇の牽制か
みんな、近くの遮蔽物に身を隠して
オレたちはそれぞれに身を隠すが
結果オレたちとマルゴさんたちの間の距離が開く
ギュイイイイインンンッ
突然、大きな音がして天井から防火壁が下りてきた
こ、このままでは
オレたち分断される
缶コーヒーのおまけに空母が付いているので、買って飲んだら、お腹が痛い
あれ、つい最近にもこんなことがあったと思ったら
缶コーヒーのおまけに、アストンマーチンが付いた時だった
ジャンボ旅客機のおまけの付いた、オレンジジュースに変えよう
313.壁を挟んで
ズダダダダダダッ
ドゥダダダダダッ
掃射される後方からのマシンガンの数が増えている
3丁いや、もっと多いかもしれない
ドゥガガガガガッ
トゥダダダダダッ
マシンガンの種類が違うのか、耳に飛び込んで来る銃声も異なる
激しすぎる銃弾の雨
これでは、関さんが撃ち返すこともできないし
マルゴさんや麗華も、動けない
その間も防火壁は、シャーッと高速で下りてくる
こちらからマルゴさんたちの居る方へ走って戻るべきか
しかし、頭を上げたら確実に撃たれる
な、何よこれっ
怯えた雪乃が、後ろからオレにしがみついてくる
おい、雪乃離れろよ
雪乃にくっつかれたら素早い行動はできない
いやよっ
半分パニックになった雪乃が、叫ぶ
防火壁が閉まってしまう
ウィィィーンドゥン
完全に閉じられた
オレたちはマルゴさんたちと分断された
物陰から、美智が顔を上げる
この防火壁は、マシンガンの銃弾を防ぎますもう、大丈夫です
美智はこっち側に来てくれていたか
あはは参っちゃったねこりゃ
寧さんもこっちか
そして、オレと雪乃と
いやはや困りましたねぇこの状況は
香月健思お前もこっちかよ
防火壁の向こうに分断されたのはマルゴさん、関さん、麗華の3人
やられたな完全に
向こうは、監視カメラで僕たちの隊列が崩れるのを待っていたんでしょう僕たちの進行ルート上の防火壁は、いつでも操作できるようにしていたんじゃないですかね
そんなことができるのは
ホテル内の全システムを制御している本部にいる人間だけだ
つまり谷沢チーフか
僕たちの会話も盗み聞きしているんじゃないですかね谷沢チーフに対する疑念を口に出した途端、アクションを起こしたんですからこの即断する判断力は、さすが谷沢さんてとこですよね
オレたちは谷沢さんが怪しいと口にしていながら、心のどこかで本当にそうだろうかと思っていた
それは、現実の谷沢さんを知っていて
あの人が、オレたちの敵になるということがどうしても半信半疑のままだったからだ
それはマルゴさんや、関さん、麗華たちもそうだろう
だから、オレたちは迂闊にもホテル内には監視網があることを判っていたのに、谷沢さんへの疑念をみんなで話し合ってしまった
まさか、こんなに早く敵が次の手を打ってくるとは
ドガァッ
防火壁に、反対側から何かがブチ当たる音がする
麗華か
しかし防火壁は、ビクともしない
本当に防弾・対爆仕様の特別製の壁なんだ
寧さんが、通信機を耳に付けようとしていた
そうだもしもの時のために、通信機を持っていたんだっけ
オレと美智も、寧さんの真似をして通信機を付ける
聞こえるかい寧、オーバー
聞こえるよ、マルちゃんオーバー
近くでの通信は混信を防ぐために、言葉の終わりにオーバーを付けるんだったな
それと誰に喋っているのか、誰の答えが聞きたいのか、はっきりと言わないといけない
そっちは大丈夫なの、マルちゃんオーバー
ああ防火壁が下りきったら、マシンガンの連中はすぐに撤退したよオーバー
かなりの距離から撃ってきていましたね美智妹《ミチ・イモウト》の気のセンサーが届かないぐらいですからオーバー
麗華が、そう言う
申し訳ございませんオーバー
別に美智ちゃんを責めているわけじゃないよ敵の方が上手だったんだよそれにどうやら、向こうはあたしたちを分断することだけが目的で、本気で撃ち殺しにはきていなかったからねオーバー
どういうことです、マルゴさんオーバー
あたしたちを狙った正確な照準じゃ無かったってこと確実に殺す気なら、もっと距離を詰めて来るはずだしそれなら、こっちにも対処のしようがあったんだけれどあの距離で当てずっぽうにバカバカ撃たれたら、どうしようもないよオーバー
銃撃は後方から人数は5人でしたね、オーバー
美智ちゃんと数えていたんだ
5人てことはミス・コーデリアたちじゃない
すると、やっぱり
うん、あたしも確認した3丁は同じタイプのマシンガンで残りの2丁は、別々のタイプだった銃声が全然違ったからねオーバー
はい全て、香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートが使っている物でしたわ3丁が支給品で、2丁は私物です
関さんが言う
あたし具体的に誰が撃ってきたのか、まで判りました撃つときのリズムに癖がありますから5人とも、谷沢チーフ配下のトップ・エリートですオーバー
谷沢さんの指示なのか
はい、わたくしにも判りましたオーバー
麗華もそう言う
もう、間違いない
となればこの通信機でも、あんまり余計なことは言わない方がいいかもねこれってさ、地下で香月さんに借りてきた機械だよね
マルゴさんが、嘆息する
各階の壁の中に中継器があるから、地下とも通話できるっていうシステムだったでしょということは中継器から、盗聴するのは簡単だよねオーバー
システムを制御している人間なら
いや、このビックリ機巧のホテルのことだ
どうせ盗聴する仕組みは、最初から組み込まれているんだろう
判ったマルちゃんあたしたちの話は、全部筒抜けになっているって考えて、話をした方がいいのねオーバー
そういうことだよ、寧オーバー
壁で分断されてしまった以上どうしても、この通信機は必要だ
携帯電話じゃ、一対一の通話しかできないし
ていうかこのホテル内で声を出したら、何したって盗聴マイクで話を聞かれてしまうんだろ
だから、聴かれていることは覚悟の上で会話を続けるしかない
とにかくどうやら、今閉鎖された壁以外はフロア内のレイアウトは変わっていないみたいですここから、大廻りして壁の向こうに行くとなると10分ぐらいは掛かると思うわでも、行けないことは無いから、安心して
関さんは迷路状になった各フロアの地図を、完全に記憶している
一カ所、封鎖されてもどこをどう抜ければ、オレたちの居る場所に出るのか判るらしい
あなたたちは、そこから離れないでいいわね、オーバー
そうだね下手に動いたら、現在位置が判らなくなるあたしたちが追い掛けようがなくなるからオーバー
関さんとマルゴさんは、そう言うけれど
でも、敵がオレたちの合流を許すとは思えませんよオーバー
マルゴさんたちは、迂回する間に何度も敵の襲撃を受けることになるだろう
今すでに、その準備を始めているはずだ
敵は、オレたちの通話を聴いているんだから
大丈夫だよあたしたちはプロだから何があっても、絶対に迎えに行くから、そこで待っていてオーバー
ねえねえ、あっちの人は何て言っているの
通信機を持っていない雪乃が、オレの顔を覗き込む
迂回して、ここまでオレたちを迎えに来るからここで待っていろってさ
えー、ここで
いや、仕方ありませんよ僕たちは、ホテル内を自由に歩き回ることはできないんですから
同じく通信機の無い香月健思が、そう言った
ちょいちょい
ん美智が、オレの肩を突っつく
美智は自分の携帯電話をオレに見せた
画面の上を手で隠している監視カメラに液晶画面が映るのを恐れているのだろう
オレだけに見えるようにして注意深く手を動かす
そうかメールの作成モードを使って
筆談か
実際にメールを送るのではなく直接、相手に打った文章を見せれば、盗聴されずに自分の意志を伝えられる
美智の携帯の液晶にはこう書かれていた
[わたくしは、ホテル内の全ての地図を覚えています]
美智が、素早く次の文を打つ
[先程、関さんが記憶なさっている時に、横から拝見して覚えました]
さっきの2505室で関さんがコンピューター端末の出したマップを見ている時に、一緒に暗記したっていうのか
さすがだ、美智
美智が居れば、オレたちはホテル内は自由に歩き回れる
[他の方には、言わないで下さい]
うんここで喋ってしまったら、盗聴されてしまうだけだ
今は、オレの心に閉まっておこう
何やってんのよ二人して
雪乃がオレたちに言う
何でもないよプライベートなことだ
これからはさ何か思い付いたことがあったら、携帯で筆談しよう読ませたい相手にだけ、携帯の画面を見せて監視カメラに映らないように気をつけるんだ
なるほど、それは良い考えですね
香月健思は頷く
でも、あたし携帯持って来て無いわよ
そうか、雪乃は
オレたちに誘拐されて来たから
いいんです、あなたはこれまで通り、思い付いたことを何でもベラベラ喋っていて下さい
何よあんた、あたしのこと馬鹿にしているわけ
そうではありませんあなたの場合は、その方が良いと思うだけですあなたの周りの空気を感じずに、何でも思ったことを言う力は、これまでも警報として有効に働いていますあなたは先入観を持っていませんから
先入観
最初に3人組に襲撃を受けた時マルゴお姉様も関さんも麗華お姉様も、わたくしの気を察知する力に全面的に信頼して下さっていましたわたくし自身も、自分の能力を過信していましただから、完全に気を消した敵の接近に気付かなかった天井に貼り付いていた敵に気付いたのはあなただけです
そうだ美智の能力を信じ切っていない雪乃だけが、敵に気付いた
あの時あなたの警告が、もう数秒遅れていたら、わたくしたちは敵に敗れていたと思いますありがとうございました
美智は、スッと雪乃に頭を下げる
えっそれは、あの
寧さんは、戸惑っている
うん、美智の言う通りだ
あの時は、ギリギリのところでマルゴさんが手裏剣を放ったから何とか敵を躱すことができたけれど
もし、雪乃が敵に気付かなかったら寧さんは、捕まっていただろうと思う
寧さんが敵の手に落ちることは、オレたちの敗北を意味する
ですから、これからも先入観を持たずに思い付いたことをどんどん言って下さいお願いします
美智の言葉に、雪乃は
わ、判ったわよ思ったことを言えばいいんでしょ何よ、それくらいするわよ、あたし
何で、照れてるんだお前
そうですねそれなら僕も、どんどん意見を言うようにしましょうか
香月健思が、ニタッと笑う
あなたの意見は結構です
美智は、きっぱりと言った
あなたは、先入観の塊ですから
そうだねっあたしたちは、今までの人間関係とか思い込みとかもちろん、そう思い込まされているっていうこともあるんだろうけれど、とにかく先入観に支配され過ぎているよね
雪乃ちゃんは、先入観が無いからうん、助かってるよ
ニコッと微笑む、寧さん
ご主人様、側に付いていてあげて下さい
美智が寧さんを見たまま、スッとオレの耳に囁く
かなり緊張なさっています
そうかマルゴさんと離れ離れになってしまったんだ
寧さんの心の中はパニックになっている
それでも年長の姉として、何とかオレたちを励まそうとしてくれているんだ
オレは寧さんの手を握る
冷たい手
やはり、過度の緊張下にいるんだ
別に寧さんの側に居たくなっただけ
オレは、寧さんに寄り添う
もう甘えんぼだねっヨッちゃんは
寧さんも、オレに身体を寄せる
甘えんぼは嫌いですか
嫌いじゃないよいっぱい、甘えて
今、様子を見ながら移動しているわここまでのところ、襲撃は無いわ思ったよりも早く、そっちへ着くかもしれないわオーバー
通信機から関さんの声がする
いや、何も無いなんてことがあるはずないよ集中していこうオーバー
そう言えばさ情報制限されているとはいえ、このフロアの映像、地下の緊急避難室では見れないのかなせめて、周囲に敵がいないかどうか確認するぐらいできたらいいんだけれどオーバー
そうだねちょっと聞いてみようかもしもし、克子さんみすずちゃんかもしれないけれど、地下の人、聞こえてる
マルゴさんが、地下と交信しようするが
残念ねえ地下との通信は、今、切断してあるのよオーバー
誰だ
ミス・コーデリア
マルゴさんが呟いた
ご名答
その瞬間美智が叫ぶ
正面から来ます
廊下の向こうから3人の人影がやってくる
黒い戦闘服の2人とグレーの戦闘服
今度は気を殺すことすらしない
平然と3人並んで歩いて来る
マルゴさんこっちに来ちゃったよさっきの三人組オーバー
オレはそう報告する
シットさっきの襲撃は、陽動だったのか
そういうことよ、マルゴ・スタークウェザー
もう通信機からの声ではなく
ミス・コーデリアの肉声が、はっきり聞こえた
ナジマ・ヤスコとシラサカ・ユキノターゲット対象者2名とオマケが3名ね
三人の眼がオレたちを見ている
じゃあ捕獲させて貰うわよ
三人の敵は、ホルスターから銃を引き抜いた
ということで、吉田くんたちのピンチは続きます
314.虜
美智が、スッと身を屈める
敵の隙を突いて、反撃に出るチャンスを狙っているんだろうけれど
止めろ、美智
背後は、分厚い防火壁で完全に塞がれている
前方の3人は本物のプロフェッショナルだ
心月で一瞬の隙を作ることができたとしても寧さん、オレ、雪乃、香月健思の4人を美智1人で護ることはできないだろう
何より美智の気の技は、まだ知られてはいけないと思う
お嬢ちゃん、何かおかしな技を使うらしいわね
ミス・コーデリアが、フフッと不敵に笑い声を上げる
知っているのか、こいつ
父上の前で披露したのが、浅はかだったようですね
そうだった工藤父に対して、美智は心月を使っている
その監視カメラの映像を見られたのか
となればミス・コーデリアたちは、このホテルの監視システムをすでに乗っ取っている
いや谷沢チーフは、本当にオレたちを裏切っていて、ミス・コーデリアたちに情報を流していると考える方が辻褄がある
下手に動かないで、まだ殺したくはないからあなたたちには、しばらく生きていて貰いたいのよ大切な役目があるからそう、人質っていうね
ミス・コーデリアは、顔を覆っていたゴーグルとマスクを外す
今日の午後、劇場に来た白人の女同じ顔だ
耳にはイヤホン、口元には小型マイクを付けている
ポケットから、通信機を取り出す
そういうことになったからマルゴ・スタークウェザー、早いところ取り返しにいらっしゃいね
ミス・コーデリアの持つ通信機は、オレたちの物と完全に同型だった
色も形も大きさも材質も
オレたちの通信機は、地下の緊急避難室に置かれていた物だ
つまり元々は、香月セキュリティ・サービスの備品なんだろう
それと完全に同じ機器を持っているということは
香月セキュリティ・サービスの誰かが、ミス・コーデリアにこの通信機を手渡したとしか考えられない
ますますミス・コーデリアと谷沢チーフが繋がっている可能性が、濃厚になっていく
マルちゃんちょっとヤバいかもあたしたち、捕まるしかないみたいオーバー
寧さんが、口惜しそうに言った
絶対に助け出す助け出すから
通信機の向こうから、マルゴさんの声がする
そうね、頑張ることね期待しているわよ
ミス・コーデリアが、通信機に向かって言った
あたしたちは最初の予定通り、21階に居るから追い掛けてらっしゃいオーバー
21階
あら、そういう計画だったんでしょシザーリオ・ヴァイオラを21階で撃退するさっき、あなたたち全館放送でそう言っていたじゃない
寧さんは、ケイさんに扮して21階で待っていると、ヴァイオラに言った
しかし、それはそこが香月セキュリティ・サービスのいや、谷沢チーフの設定した絶対防衛ラインであり、そこまでなら敵を引きつけられるギリギリのラインだから、暫定的にそう発言しただけでしかない
目的は、あくまでもヴァイオラに21階フロアという目標を与えそれで突出した動きを見せた部隊を、ヴァイオラの本隊と見破るための作戦口実でしかない
本当に21階で、寧さんがヴァイオラを待ち構える予定なんて無かった
一度決めたことは実行されないといけないわ日本語で何て言うんだっけそう、初志貫徹よね
あミス・コーデリアは
谷沢チーフと繋がっているかもしれないし、オレたちのこれまでの行動は全て監視しているオレたちの喋ったことの内容も
しかし、ミス・コーデリアはオレたちではない
どうして、そんなに自分たちの能力に自信があるのか判らないけれど隔離された部屋から脱出して、下の階へ向かったのはそういうことでしょ
オレたちが、2505室のドアを破って外に出て上階ではなく、下階へ進路を取ったことを、ミス・コーデリアはそう解釈している
もちろん、オレたちが下に向かう決意をした時にはヴァイオラと対決する可能性も覚悟したけれど
一番の目的は、ジッちゃんとミナホ姉さんの捜索だ
あたしねっ約束したことは護る女なんだよっ
寧さんがわざと嘘を吐く
じゃあ、ちゃんと21階でちゃんと待っていてあげないとね
ちくしょう、喉が渇いたなお茶でも飲みたいよ
雪乃もそうだろ
雪乃はという顔でオレを見る
頼む、今は何も言うな
頼むから
お茶ぐらいは飲ませてあげるわよ人生、最後のお茶になるかもしれないけれどね
雪乃が2505室で、1人だけお茶を飲んでいたことを知らない
ミス・コーデリアも制限された情報しか、与えられていないんだ
おそらくホテルの廊下の映像や音声は、全てキャッチしているが
2505室の中での会話は知らない
何故だ
ミス・コーデリア、悪いんだけれど地下にいる香月閣下に、今後の対応について相談しないといけないんだ地下との回線、復旧してくれないかな
マルゴさんの声がそう言った
オレとミス・コーデリアの会話を聞いて
マルゴさんも、カマをかける
ダメよ香月重孝氏と黒い森《ブラック・フォレスト》は別組織でしょあなたたちは、あなたたちで判断して行動なさい
ミス・コーデリアは、ふんと鼻を鳴らしてそう答えた
うちのボスの黒森御名穂も地下に居るんだけれど
一々、ボスにお伺いを立てないと何の行動もできないのあなた、現場の指揮官でしょうあなたが判断しなさいマルゴ・スタークウェザー
これで決まった
ミス・コーデリアは、ジッちゃんとミナホ姉さんが地下から脱出したことを知らない
谷沢チーフは、巧妙に情報操作している
地下から、ジッちゃんたちの脱出の知らせがあったのはオレたちが2505室に居る時だった
その後のオレたちだけの相談も含めて2505室での様子は、ミス・コーデリアには見られていない
いや、廊下でのオレたちの会話だってミス・コーデリアに知らせたくないところはカットしているのかもしれない
とにかく地下との通信は許さないわ
オレたちと地下との通信を切断しているのも谷沢チーフだ
ミス・コーデリアではない
克子姉やみすずと会話したらジッちゃんたちの不在を、ミス・コーデリアに気付かれてしまうから
わざとそうやっているんだ
つまり谷沢チーフは、オレたちを裏切ったのかもしれないが
ミス・コーデリアと、完全にくっついているわけではない
そんなことより、いいのあなたたち、すんなりと21階へは行かせて貰えないわよ
ミス・コーデリアは言った
谷沢チーフの配下がマルゴさんたちを追撃する
そんなことは判っているよ
マルゴさんの低い声がイヤホンから響く
あたしたちが行くまでは人質の命は、保障して欲しいな
いいわよ、約束しますマルゴ・スタークウェザー
美智ちゃん、みんなを頼む
判っておりますマルゴお姉様
こっちは、オレもいますからマルゴさん
オレなんて、何の役にも立たないけれど
寧さんの盾になりますからオレ
命ぐらいは張れる
頼むよあたしたちが、行くまでの辛抱だから
すぐに参ります主様
みんな、落ち着いて行動するのよいいわね
マルゴさん、麗華、関さんがそれぞれにメッセージをくれる
寧、絶対に諦めないでね
最後にマルゴさんが、寧さんを励ます
判ってる判っているからあたしがここでは一番のお姉ちゃんだもんねマルちゃん
ああお姉ちゃんらしく、みんなをケアしてあげて
うんマルちゃん
じゃあねすぐに行くからオーバー
うん、待ってるよオーバー
ミス・コーデリアと2人の部下
おそらく白い女のヴァイオラとロザリンド2人ともまだマスクを外していない
3人の敵に銃を突き付けられてオレたちは廊下を進んでいく
オレたちの左右と後ろを取り囲む様に敵はフォーメーションを組んでいる
これでは前にしか逃げられないそして、逃げたら確実に撃たれる
廊下の角に差し掛かった度にそこは右、左に曲がりなさいと後方からミス・コーデリアが指示を出す
角を曲がる瞬間に全力ダッシュで別方向に走って逃げることはできるかもしれないが
迷路化したホテル内を、その後どうやって進めばいい
どこに逃げても監視カメラで、谷沢チーフには見えているんだろうし
健思さんまさか、1人だけ逃げだそうとか考えていないでしょうね
ミス・コーデリアにとっても、谷沢チーフにとっても香月健思の優先度は低い
1人だけ逃げ出しても、捜索隊を出すようなことはしないだろう
朝までどこかの部屋で隠れていれば香月健思が助かる確率は高い
さっきから、それをずっと考えています
香月健思は、答えた
やめてよね、1人逃げ出したらトバッチリで全員殺されるわ
それは無いと思いますどうやら、この方たちにはこちらのお嬢さんナジマさんでしたっけナジマさんを生かしたまま有効活用したい理由がお有りのようですから
香月健思は、寧さんを見る
寧さんは一度も、香月健思に名乗っていないから
さっきミス・コーデリアの言ったナジマ・ヤスコというのが寧さんの名前だと思ったらしい
ナジマじゃないわよ奈島寧《ナトウ・ネイ》よその女の名前は
雪乃にとって、寧さんは同じ学校の不良でタブリの2年生だ
雪乃だって、昨日の夜に寧さんの昔話を聞いていたのだから寧さんの本名がナジマ・ヤスコなことは知っているはずなんだけれど
最初に認識したイメージは、なかなか覆るものではない
とにかく、この女は生かしておいて貰えるかもしれないけれどあたしやあんたは、殺したって構わないって思っているはずなんだから馬鹿なことはしないでよねっ
寧さんの過去シザーリオ・ヴァイオラとの関係
男のヴァイオラの目的が、寧さんであることを雪乃は知っている
というかあなたには、抹殺指令が出てるわよシラサカ・ユキノさん
ミス・コーデリアが言った
ゾクッとする雪乃
そうだ雪乃は、白坂家本家がヴァイオラに依頼した抹殺リストに名前が載っている
あたしの方で処分しちゃってもいいんだけれどあっちのヴァイオラに任せるわあたしが受けた仕事じゃないし
オレは通信機のスイッチを入れる
白坂家に働きかけて当主に反抗する勢力と、白坂創介の家族を抹殺する要請を受けたのは、あなたじゃないんですか
そうよ営業に行ったのは、あたしエーギョーでいいのよね日本語の表現として
ミス・コーデリアは、笑って答えた
あたしがしたのは、営業としてのオファーだけよ実際に仕事として受託したのは、あっちのヴァイオラなのほら、あたしたちは通常業務で日本に来たわけではないからあたしたちが自分で手を下すわけにはいかないのよ他の用事で出張しているのに、あたしたちが正規派遣された人の営業エリアで小遣い稼ぎしたらマズイでしょ
男のヴァイオラの来日が組織から正式に命じられた業務でミス・コーデリアはそうじゃないってことですか
オレはわざと声に出して言った
あなたはあちらのヴァイオラの監査のためにいらしたのですね
そういうことよ困っちゃうわよね偉くなると脅す・殺す・壊す以外に、そういうメンドウな仕事もしなくちゃならなくなるから
ミス・コーデリアは苦笑する
はっきり言っておくけれど男の子2人には、あたし興味が無いから逃げてもいいわよ確実に殺してあげるけれど
ややめておきます
僕体力には自信が無いんです
そうそっちの子は
ミス・コーデリアがオレを見る
逃げませんよ寧さんたちを置いて、オレは逃げたりはしません
あら、勇ましいのねあなた
ギッとオレを睨む
あなた何者なのあなたの資料だけ、どこを探しても見つからないんだけど
そりゃあ、そうだろう
オレはただの高校1年生だ
黒い森と接触してからだって、まだ1週間も経っていない
彼は黒森家の人ですよ
香月健思が、そう言うが
違うわ黒森家に、こんな年齢の男の子はいないわ香月家とも、白坂家とも繋がりが無い
白坂家とは関係ありますよオレは雪乃のクラスメートですから
クラスメート
不機嫌そうな顔で、ミス・コーデリアは答える
よく判らないけれど度胸は認めるわあたしたちの会話を、通信機を介してマルゴ・スタークウェザーに聞かせようとするところなんてね
やっぱりバレていたか
構わないでしょうあなたが、オレたちから無線機を取り上げなかったのはいつでも、自由に連絡を取れるようにするためなんじゃないんですか
おそらくミス・コーデリアも情報を欲しがっている
オレたちがマルゴさんと話す言葉の内容から色々と情報を吸い出そうとしているんだ
だから無線機を回収しなかった
ふんあなただけ先に殺しておいた方がいいのかしら
ミス・コーデリアが、オレに殺気を向ける
や、やめてよっ殺すなら、あたしを先に殺してっ
大丈夫ですよ寧さんブラフですから
オレは、寧さんに微笑みかける
あらどうしてそう思うのかしら
ミス・コーデリアは表情を変えない
オレ今、ここに居る人間の中では一番、頭が悪いんですよ鈍いんですだからこんなにペラペラ喋っちゃってますよね
美智や寧さんならジッと黙ったまま、こっそりと反抗のための準備をする
そうやってオレを脅して、プレッシャーを掛けてオレに色々と喋らせるのが目的なんでしょオレ、お調子者でオッチョコチョイだから、本当に何でもどんどん喋っちゃうかもしれませんね気を付けないといけないなぁ
だから、オレはミス・コーデリアの気を惹き付ける
ホント、いい度胸だわ
ミス・コーデリアが銃を持っていない方の拳で、オレを殴る
避けない
オレは顔を殴られて、フッ跳ぶ
平気です寧さん
口の中に血の味が拡がる
馬鹿にするんじゃないよっガキがっ
ミス・コーデリアが、オレを罵る
おやおや、ミス・コーデリアともあろう人がまた、随分と余裕が無いみたいだね
マルゴさんの声がイヤホンから聞こえてくる
オレと同じ様に美智もここでの会話を、マルゴさんたちに送信していたらしい
うるさいわねっマルゴ・スタークウェザー
あたしが恭子さんから聞いていたミス・コーデリアはもっと冷静沈着でクールな女性だったけどね恭子さんの評価が高すぎたのかなそれとも恭子さんと離れてから、劣化しちゃったの
黙れって言っているでしょ
あたしたちが行くまでは、人質の安全は保障してくれるはずだったよね
この子が突っかかってきたのよ
ダウトだあなたたちの会話は、ちゃんと聞いていたからねミス・コーデリア
オレたちだってやられっぱなしじゃない
今のはあたしが悪かったわごめんなさい
ミス・コーデリアは、オレを殴ったことを素直に謝った
いいんですよあなたみたいな人に対して、わざと怒らせる様な態度で挑発したオレが悪いんだから
オレはそう言って、笑う
あたし男って嫌いなのだから、あたしの直属の部下はみんな女なのよ特に若い男の子は見ているだけで虫酸が走るわ
ミス・コーデリアは、憎しみの眼でオレを見る
マルゴ・スタークウェザー早く来なさいこの子は、あなたの見ている前で殺すわなぶり殺しにしてやる
判ったよそれまでは傷一つ付けないってことだよね
もちろんあなたのプライドに懸けて約束してくれるだろうね、ミス・コーデリア
約束するわ
じゃあ急いで行くから、待っててオーバー
寧さんも、美智もオレより、何十倍も頭がいいけれど
メンタルはそんなに強くは無い
だからミス・コーデリアの発するプレッシャーは、全部オレが引き受けるべきなんだ
それなら2人とも、心を落ち着けてこれからの対応を考えることができる
2人よりも、力も知能も劣るオレができるのは
度胸で2人を守ることだけだ
さあ、行くわよ
オレは立ち上がる
大丈夫、ヨッちゃん
寧さんと美智にオレは微笑む
平気ですから全然オッケーですよオレ
三連休で助かります
父が退院してくれたおかげで、毎日の自転車移動1時間もなくなりましたし
しかし、病院に通っていた時は毎日会話していたのに家に帰ってきた方が会話時間が少なくなっているのはどういうことだろう
昔、少年ジャンプに載った読み切りで大飢饉というのがあったんですが
作者は、本宮ひろ志先生です
大飢饉というタイトル通り、江戸時代の飢饉を扱った作品ですので、グロ場面も多いのですが
それ以上にヒロインのネトラレ・ハラボテ・出産エンドで
当時のジャンプは、凄かったです
今調べたんですが1981年の読み切りですね
少年誌でセックスを暗示する描写があるというのは具体的な描写は無いのですが、おっぱいぐらいは露出していたと思います
まあ少年マガジンの方は、その前に永井豪先生の凄ノ王でヒロインのレイプ・輪姦描写をすでにやっているんですが
いや、今週の少年マガジンで久しぶりに、セックスシーンがあったので、ふと思い出してしまいました
そういや、少年マガジンは今年2回目ですね、セックス・シーン
描写は昔と比べて、遥かに大人しいんですけれど
315.ワルキューレ
通路を何度も曲がり、階段を下りる
あるドアの前で、ミス・コーデリアは止まれと命じた
何だ客室のドアじゃない
通路と同じ白い色のペンキで塗られた、鉄製のドア
これって、ホテルの従業員用のドアだよな
何の部屋に続くドアなんだ
2人の部下に、英語で何か命じる
部下の一人が、オレたちの使っているのとは違う通信機で何か喋る
30秒ほどすると部屋のドアが、カチリと開いた
中から顔を出すもう一人の黒マスクの戦闘員
4人目だ
これで、一番最初の襲撃の現場から消えた4人が全員揃ったことになる
ミス・コーデリアが、銃を突き付けてオレたちに命じる
4人の敵、4つの銃口を向けられたら従わざる得ない
オレたちは、ドアを潜り抜ける
そこは廊下だったが表の客が通る廊下とは違い、壁紙も貼っていないし、カーペットも薄い全体的に簡素な造りになっている
そっちよ
ミス・コーデリアに促されてオレたちは、廊下を進む
廊下の途中に幾つかのドアがあった
ドアの上に書かれていた文字第2楽屋
楽屋
そのまま、まっすぐ奥のドアの向こうへ行きなさい
そこは
小さな劇場の様になっていた
そのステージにオレたちは、上がる
ふふふここは、普段は映画の試写会や、記者会見とか、トーク・ショーに使う施設なんですって
ミス・コーデリアは笑って言った
ステージの真ん中に大きな籐の椅子が置かれていた
その椅子に向かって、天井と舞台前からライトの光が集まっている
ヤスコさんあそこに座りなさい
ミス・コーデリアは、寧さんに命じた
寧さんは震えている
オレが、寧さんの手を握ると
うんヨッちゃん大丈夫あたしは大丈夫だから
ふらふらとしながらも寧さんは、椅子に向かって歩き出す
そして籐の椅子に腰を下ろす
もっと、お尻を深くどっしりと座りなさい足は組んでもっと剛胆な感じにあなた、エマニュエル夫人て映画観たことない
ミス・コーデリアが寧さんに色々と、注文を付ける
うんまあ、そんな感じでいいかしら
携帯電話を取りだしミス・コーデリアは、パチリと写真を撮る
はい送信
誰に寧さんの写真を送ったんだ
すぐに、ミス・コーデリアの携帯が鳴る
ワルキューレの騎行
美智が、呟いた
この着信音ワーグナーです
そんなことを言われても、オレには判らない
ミス・コーデリアは、電話に出る
あら随分早い返信ねあなた、今、とっても忙しいんじゃないの
ミス・コーデリアは、電話機を外部スピーカー・モードにする
電話をしてきた相手の声がオレたちにも、聞こえる
何でニホンゴなんだ
男の声
何の話をしているのか、あなたの部下たちに知られたくないでしょうだからよ、ミスター・ヴァイオラ
電話の相手は男のシザーリオ・ヴァイオラか
別に部下に隠さなくちゃいけないようなことは何も無いぜ、オレにはな
あらそう予定とは違う展開続きで、あなたの部下たちは相当不満が溜まっている頃合いなんじゃないの
オレの部下は何の問題もねえ大きなお世話だ
だってまさかこのホテルが、こんなビックリドッキリ機巧満載のホーンテッド・マンションだとは思っていなかったでしょ
ああ確かにこのホテルは、呪われている《ホーンテッド》よあんたから貰った情報とは、全然違うじゃねぇか
男のヴァイオラはここが、ジッちゃんの対テロ対策が施された特殊施設だという情報を知らなかった
知らないで、突入してきたということは
男のヴァイオラと、ジッちゃんあるいは、谷沢チーフとの間に繋がりは無い
ごめんなさいねぇあたしたちも、まさかこんな建物だとは思っていなかったのよ
ミス・コーデリアは、クククと笑う
笑いごとじゃねぇおかげでこっちは何度も水浸しになったり、ガスを被ったり大変なことになっているんだ
悪いんだけど、辛い思いをしているのはあなたたちだけじゃないのよあたしたちが、あなたたちより先にホテルに潜入したことは判っているわよね
て、ことはあんたたちも
そーよ、酷い目に遭ったわよ水が降ってきたり、ガスとかならまだいいわ大量の小麦粉とか、金だらいとか、灯油缶とか、とにかく次々とトラップが仕掛けられているんだから
ミス・コーデリアの話は、嘘だ
そんなバラエティ番組みたいなトラップがあるか
いずれにせよ、このホテルの事前調査はあんたの仕事だったろう何だこりゃ、あらかじめ受け取っていたホテル内の見取り図が役に立たねえ何だって、このホテルはRPGのダンジョンみたいになっちまっているんだ
そうなのよあたしたちも、ビックリしちゃっているのよ
ミス・コーデリアは、平然とそう言う
しかも、このダンジョンは探検して行ったって、別に宝箱があるわけじゃねえ出て来るのは、モンスターばかりだしかも、かなり頭のおかしいお笑い芸人みたいなやつなんだぞ
まっさかぁそんな人がいるわけないじゃない
嘘じゃねぇオレにしか判らない、昭和のギャグばっかり喋っているくせにアホみたいに強ぇぇんだよ何だ、あのファンキー・モンスターはいつから日本は、あんなブラック・ジョークな存在を許すようになったんだ
夢でも見たんじゃないの勤勉で、感情を表すことが苦手な日本人に、そんな愉快な戦闘者がいるわけないじゃない
だって、いたんだもんっ
もんて
本当に居たんだよっゼネラル・アバレンボーみたいな格好して、チョンマゲで、タロウ・ザ・ピーチ・サムライみたいなことを言いながら、オレたちを蹴散らかすゴールデン・モンスターがきっと今夜の夢に出る
えっとダダドムゥおじ様のことは、正直済まんとしか言いようがない
あの人は日本人としても例外だ
しかもロリコンなんだ
本当に、申し訳無い
とにかく水に、ガスに、サムライ・モンスターだこっちの被害は甚大だぜおかげで下っ端の連中が、相当ムカムカきていやがるみたいだ正直士気に差し障っているマズイ状況だ
ダダドムゥおじ様意外と効果が出ているんだな
まああんな格好の人の異常行動で
ヴァイオラの部隊は丸まる、いいようにされちゃったんだからそりゃ、部下は動揺するよなあ
30対1の闘いで、あっという間に10人、倒されてそのまま、無傷で脱出されちゃったんだから
地獄の様な悪夢だな文字通り
オレも昔、日本に住んでいたことがあるがニンジャは全部死滅したって聞いていたぜあの話は嘘かやっぱり、ニンジャの里は現存するのか
そんなの、あたしは知らないわよあたしも前にキョーコに聞いてみたことがあるけれどあの人は笑って、教えてくれなかったわでも、あたしはキョーコの技は、ニンジャの伝統技術だと思っているからニホンには、まだニンジャはいると思うわよ
ごめん、ミスター・ヴァイオラさっきも言ったけれど、あたし今、忙しいのニンジャの話なら、また今度にしてくれるそれまでに、調査部に調べさせておくから
ニンジャなんてのは、どうでもいい
自分から話を振っていたくせにヴァイオラはキレる
ふーん、じゃあ早く、話の本題を言って
ミス・コーデリア、あんたが今、オレに送信して来たこの写真これは何なんだ
ヴァイオラは、怒気を込めて言った
見ての通りよナジマ・ヤスコは、あたしたちが確保したわ一応、あなたにお知らせしておこうと思って
確保所在地を確認したんじゃなくって、あんたが確保したんだな
ミス・コーデリアは、ニヤッと微笑む
ええ、そうよここにいるわ香月家のセキュリティとも分断したの完全にあたしたちの部隊で身柄を抑えているわ
ヴァイオラの声色が、変わる
何だよそれを先に言ってくれよ
あら、わざわざ写真を送信してあげたじゃない
これじゃあ居場所を見つけたのか、身柄を抑えたのか判らねぇじゃないかオレはてっきり、ヤスコの居場所が判ったんだと思ったから
慌ててミス・コーデリアに連絡してきたのか
いやあ、お手柄だ助かったぜミス・コーデリア恩に着る
ミス・コーデリアは、ケロッとして答える
え連れてきてくれるんだろオレたちの所まで、ヤスコをなあに、ヤスコの身柄さえ押さえちまったら、ヤスコを人質にしてこのホテルから撤退できる
あら、あなた他の用件はどうするの
ヴァイオラは白坂家の反抗勢力と、白坂家の家族、それとおそらく香月グループの重役の一部の殺害を請け負っている
オレたちが撤収した段階で、ホテルごとフッ飛ばす1階の何本かの柱を一斉に爆破すればホテル全体が一気に倒壊するってことは、あらかじめ計算してあるんだ建物全隊が崩壊すれば、上の方の階にいる連中は、絶対に助からねえだろう
されるわけにはいかない
たくさんの犠牲者が出るわね
今夜、このホテルの中に居たやつが悪いんだよ運が悪いっていうより、自業自得だな
あなたの他の部隊の人たちには撤退指令を出すの
ロシアの連中かいあいつらは最初から弾避けにするために呼んだんだオレたちが逃げ切るまで、抵抗を続けて貰うよそれでガレキの下敷きなってくれれば、一石二鳥だ今夜の日当を支払わずに済むからな
ヴァイオラは自分が連れて来たロシア人たちを見殺しにする気が
ふーん、そういう考えなのねあなた
ミス・コーデリアは、笑みを崩さない
あんた今、何階に居るんだ
21階よ
じゃ、待っているからヤスコを連れて、とっとと降りてきてくれ
そういうヴァイオラにミス・コーデリアは
お断りよ
あたしはここに居るからあなたが、ここまで引き取りに来なさいシザーリオ・ヴァイオラ
手前オレを舐めてんのかっ
そうねどっちかっていうと、馬鹿にしているわね
この野郎《ファッキン・ビッチ》ブッ殺すぞ
あなたさあたしが何だか判っているわけ
関係ねぇだろオレは、お前より組織の中には長くいるんだぞ
そうよ、組織のことを考えなさいあたしは、監査部今回は、あなたの不祥事の監査に来ているのそりゃ、ちょっとぐらいは手助けもしてあげるけれど、一番大切なところはキチッと自分でキメなさい
組織の中ではヴァイオラとミス・コーデリアは、違う立場に居る
このまんまだとナジマ・ヤスコを確保したのはあたしってことで、報告しないといけなくなるんだけれどそしたらあなたは、ロサンゼルスに戻っても、結局無能って烙印を押されて組織に処分されることになるわそれでもいいの
小娘が舐めた口叩くと、承知しねぇぞ
あたしにそんな脅しは効かないわよ組織にとって、あなたはシザーリオ・ヴァイオラの一人でしか無いけれど、あたしはたった一人のミス・コーデリアですからね
判ったわあなたとの通話は、これで打ち切りますこれ以降は、ロレンザッチョ・バンディーニと話すことにするわ
その瞬間ヴァイオラの態度が変わる
待ってくれそれはオレを見捨てるってことか
監査部に従わないんじゃあ組織から、切り捨てられても仕方無いでしょあなたの指揮権を剥奪して、ロレンザッチョ・バンディーニに引き継がせますあなたたちの部隊は撤収ナジマ・ヤスコの身柄はすでに押さえてあるし残りの仕事も、あたしの監査部隊でやっておくわ10人ぐらいの暗殺なんて、容易いことだもの
この迷路みたいになっているホテルの中でターゲットを全員殺すっていうのか
あんたたちにはできないでしょうけれどあたしには、できるわ
ミス・コーデリアの笑みには、狂気の色が見えた
今、この段階であたしたちは、あんたたちに先行して上階まで入り込み、ナジマ・ヤスコを確保しているあなたたちより、あたしたちの方が遥かに優秀だってこと、あんたの干涸らびたカランコロンの脳みそでも判るでしょ
オレたちの大部隊の襲撃を陽動に使ったんだろ
だから何あたしたちの商売は、結果が全てよいいかげんになさいっ
ミス・コーデリアは、キッパリと言う
そうねあたしたちは、21階の星の間っていう部屋にいるわだから、あんたは自力で上ってきなさい
もうちょっと下まで降りて来いよなあ
ダメよ21階まで、ナジマ・ヤスコを取りに来なさいあたしは、妥協してあげているのよ実際にヤスコを確保したのは、あたしたちなんだからでも、あなたたちの力で、その部屋まで来られたらヤスコは、あなたに渡してあげるし全て、あなたの功績として組織に報告してあげるわ
男のヴァイオラは
そんな口聞いてもいいのかいオレはこのまま1階へ下りてあんたたちが残っているまま、ホテルを倒壊させることもできるんだぜ
ミス・コーデリアは、負けない
へえあんたそんな大部隊を引き連れたまま、簡単に1階まで降りられると思っているの
不敵に意地の悪い笑みを唇に浮かべる
あたしたちは小部隊だしあんたの知らない秘密の通路を知っているのよあんたが部隊を反転させて、1階へ向かうようならあたしたちはさっさとこのホテルから撤収するわそれこそ、あんたたちがモタモタしている隙に、さっさと脱出するわよそれと言っておきますけれど、あんたたちが1階に爆弾を仕掛けるのなんて、まず無理だから
どうしてだ
ヴァイオラの太い声が尋ねる
さっきのサムライ・モンスター今、1階に居るのよあんたたちが降りてきたら、また相手をしてくれるわよ
そうだダダドムゥおじ様は、今は1階で待機している
谷沢チーフだって、ホテル倒壊の危機となれば、ダダドムゥおじ様に再出撃を命じるだろう
おっじゃまじゃまじゃまぁ-、おじゃまんがっ
ヴァイオラは、軽いパニックに陥ったらしい
ちきしょうっ判ったお前らの所まで行けばいいんだろっ21階だな
逆ギレするヴァイオラ
星の間よね、ニホンゴで話して良かったでしょこんな下らない話、あなたの部下に聞かれるわけにはいかないものねぇ
ミス・コーデリアは、さらにヴァイオラを小馬鹿にする
待ってろすぐに行くヤスコだけじゃねぇお前も、ブッ殺してやるから覚えていろ
はいはい、待ってるから急いで来なさいねバイバーイ
ミス・コーデリアは、電話を切った
馬鹿な男よねこのホテルの中に誘い込まれた段階で、すでに負けているっていうのに
だって、そうでしょこんな変な機巧だらけのお化けホテルよさっき、ヴァイオラはRPGのダンジョンみたいって言っていたけれどダンジョンなら、落とし穴は付きものよね
落とし穴
あたしは、このホテルの設計図から施工時の変更箇所まで全部調べたわこのホテルは、迷路化したり、催涙ガスが噴霧できるだけじゃないのそれこそ、落とし穴だってたくさんあるし廊下と廊下を防火壁で閉じきって、本物の殺人ガスを散布することもできる今、制御室に居る人は、わざとシザーリオ・ヴァイオラの部隊を生かしているのよ彼らを全滅させることなんて、簡単なんだから
谷沢チーフがわざとやっている
ヴァイオラは、1階の主要な柱を爆破したらホテルを倒壊させられると思っているみたいだけれどそれも無理このホテルが普通の建築物だと想定すれば、そんなことも可能だと思ったんでしょうけれどこのホテルは、柱の材質からしてモノが違うからホテルで使うような建材じゃないのよちょっとした要塞よね、ここヴァイオラが持ち込んできた爆弾ぐらいじゃ、ビクともしないわ
ジッちゃんが指示して造ったこのホテルはそこまで強固なんだ
あなたの目的は何なんですか
今のミス・コーデリアとシザーリオ・ヴァイオラの電話で色んなことが判った
ミス・コーデリアとヴァイオラは、同じ組織の人間だが
共闘はしていない
聞いていたでしょあたしは監査部の人間なのヴァイオラの監査に来ただけなのよ
それをどうして、オレたちに知らせるんですか
そうだヴァイオラとの電話内容を、わざわざオレたちに聞こえるようにして
暇つぶしよただの
ミス・コーデリアの笑みは、消えない
こうやって、あちこち突っついたりしてみないとただ見ているだけの監査は、退屈だからね
そうじゃないよねっ
寧さんが籐の椅子に座ったまま、言った
あなた恭子さんに会いたいんでしょっ
そうだミス・コーデリアは
恭子・ドスノメッキーさんの昔のパートナーだった
まあね個人的な思いとして、それもあるわ
ミス・コーデリアは、あっさりと認めた
あたしはキョーコに会いたいそして
ミス・コーデリアの唇が、ニッと歪む
あたしの手で殺してやりたいのよ
殺す
あなたは恭子さんのこと、好きなんじゃないのっ
寧さんの言葉に、ミス・コーデリアは
ええ、愛しているわだから、殺すそれだけよ
クククと、ミス・コーデリアは大きく笑う
あなたたちを捕らえていれば、いずれキョーコはあたしの前に現れるわあたしはそれを待っているの
恭子さんは、来ないわよっあの人は今、日本に居ないんだからっ
そうかしらあたしの調査では、昨日の夕方にはキョーコは日本に入国しているわ
ナジマ・ヤスコ、それから、マルゴ・スタークウェザー、クロモリ・ミナホこの3人にピンチになったらキョーコは絶対に、姿を現す
それがミス・コーデリアの本当の目的か
さてミスター・ヴァイオラがこの部屋に来るまで、退屈よねえ
ミス・コーデリアが、オレたちを見る
誰かここでセックスしなさい
あたしにセックスしている姿を見せなさいって、言っているのよ
さて、三連休なので明日はセックス・シーンです
この辺でやっておかないと
それと、旧作を一本ぐらいアップしたいと思っているんですけれど
本当は、お盆ぐらいにする予定だったのですが、父の入院で伸び伸びになっていたやつで
なろうの方ですね
今夜中に、直しが終わったら、アップします
316.頭突き
あら確か、あなたたちは売春組織の人間なんじゃないのセックス・ショーぐらい演じてくれてもいいんじゃない
ミス・コーデリアは、黒い森《ブラック・フォレスト》についても調べ尽くしているらしい
残念だけどここに娼婦はいないからっ
て言うか、僕は黒森さんのトコとは無関係ですし
香月健思が、余計なことを言う
あら、そうなのじゃあ、先に死ぬ
ミス・コーデリアは、平然と言った
いや、あのそういうつもりで申し上げたのではありませんぼ、僕は香月家の人間ですから
あなた、お名前は
ギロリと、ミス・コーデリアは香月健思を睨んだ
こ香月健思です
知らないわねそんな名前は、殺害要請のリストにも無いし、保護すべき人物のリストにも無いわ
保護すべき人物のリスト
つまりあなたは、ここで殺しちゃっても構わない人ってことよね
そんなこ、困ります
あらせっかく日本まで来たんだもの1人ぐらい殺さないと、わざわざ来た甲斐が無いって、うちの子たちも言っているわ
ミス・コーデリアが2人の黒戦闘服に英語で何やら言う
下卑た笑いを零す2人
女の声やっぱり、白い女のヴァイオラたちか
もう一人この部屋で待っていた方の戦闘員は何も喋らない
ただ落ち着いて、オレたちに銃を向けたままだ
本当にこいつは何者なんだ
ミス・コーデリアと親しい雰囲気の女のヴァイオラたちと比べて妙に緊張しているけれど
まあいいわ香月健思さんの処遇は、そのうち考えるとしてセックス・ショー、やりなさいあたしたち、退屈で死にそうなんだから
寧さんが、ミス・コーデリアを睨む
あたしたちを愚弄するつもりなんだねっ
当たり前でしょあたし、あなたたちが大嫌いなのよ
ミス・コーデリアは、フフフフと笑う
キョーコみたいな人を売春組織の用心棒《バウンサー》にするなんて、あんたたちは彼女の価値が全く判っていないわよね
恭子さんは、用心棒じゃないよっあたしたちの仲間なんだからねっ
なら、尚更よ売春婦の身内になったキョーコなんて、絶対に許せないわあたしが、キッチリお仕置きしてあげないとね
かつて、恭子・ドスノメッキーさんのパートナーだった、ミス・コーデリア
彼女には、恭子さんに対する複雑な愛憎があるらしい
いいいから、早く始めなさいあたしの前で盛りのついたイヌみたいにまぐわいなさいよっ笑って見ていてあげるから
とにかくオレたちを貶めたいんだな
オレたちの心を折ろうとしているんだ
始めないのなら、この男から殺すわまあ、あなたたちの仲間じゃないらしいから、彼が死んでもあんたたちは別に痛くもかゆくも無いでしょうしね
ミス・コーデリアは、銃を香月健思に向ける
ややめて下さいっ
わ、判ったわよっあたしがするから
あたしが、あなたたちの前でセックスすればいいんでしょ
ヨッちゃん、お願い
寧さんは、まだ処女だ
初めてが、こんな場所だなんて
あなたはダメよナジマ・ヤスコ
あなたは、ミスター・ヴァイオラの景品なのよあなたを求めて、ミスター・ヴァイオラは今、奮闘しているんだからあなたがメチャメチャにされるのは、彼が来てからよ何しろ、ヘンタイ的なセックスが大好きな連中が一個小隊でやって来るんだから
冷たい眼で、ミス・コーデリアは笑う
あなたは、彼らに犯されるのよその前に手を出したら、あたしがミスター・ヴァイオラに怒られちゃうわ
ミス・コーデリアにとって寧さんは、ミナホ姉さんやマルゴさんと一緒に自分から恭子さんを奪った対象になっているんだ
だからこのセックス・ショーの要求も、寧さんを苦しめるためにやっている
ということだからセックス・ショーは他の子でやってちょうだい
他の子美智と雪乃
ご主人様、わたくしは構いません
ダメだよミッちゃん
寧さんが、叫ぶが
ご心配には及びませんわたくしは、すでに身も心もご主人様に捧げていますどんな場所でも、誇りを失うこと無く、ご主人様にご奉仕致します
凛とした声で、美智は言った
そう言ってくれるのは、とても嬉しいけれど
でも、美智
それじゃあ、ダメなんだ
それは、ミス・コーデリアの求めているものではない
ミス・コーデリアは、オレたちが絶望に泣き喚く姿を求めているんだから
苦難の中でも、美智が凛とし続けていたら
オレたちに、もっと酷い要求をしてくることは判っている
オレたちを嘆き悲しませるためだけに、香月健思をなぶり殺しにするぐらいのことはするだろう確実に
美智、今はお前じゃない
お前の力を見せるのは、今じゃない
美智とオレの眼が合う
なあにこの子の力って
ミス・コーデリアが、オレたちに割り込んできた
こいつはまだセックスに慣れていないんですよだから、自分の世界に入り込んでしまうショーとしての、見世物になるようなセックスにはなりません
ここで、オレとセックスしたら
美智はまた、オレと心と心がシンクロしてしまうかもしれない
気の同調をミス・コーデリアには見られたくない
美智の気の力を、気付かれてはいけない
奥義心月は、オレたちの最後の切り札なのだから
とういうわけでお前の出番だ、雪乃
あたしぃ
不機嫌な顔で雪乃は答えた
お前だって判るだろここで、戦闘要員の美智の体力を消耗させるわけにはいかないってことはさ
美智が戦闘要員だってことは、オレたちが廊下を進んでいたときのフォーメーションと実際の戦闘で、ミス・コーデリアにはバレている
もちろん、だからと言ってミス・コーデリアの前で断言するのは馬鹿げている
だけど仕方が無い
雪乃の頭の悪さは、底抜けなんだから
はっきり言わないと、こいつは判ってくれない
こちらの気持ちを察するってことの無い女なんだからこいつは
だからって何であたしなのよっ
寧さんはダメで、美智も無理なら、お前しかいないだろ
あたしは嫌よだいたい、あたしはあんたたちの仲間じゃないんだからっ
今だけ入れてやるよ、特別にっ
いいです結構ですあんたの仲間なんて、死んでもゴメンよっ
なら、お前、先に殺されるかえ、白坂雪乃
その瞬間雪乃は、自分が殺されるべき人間のリストに入っていることを思い出す
香月健思さんよりも、お前の方には殺される理由があるんだよっギャーギャー喚いていたら、すぐに処分されるぞセックス・ショーでも何でもして、この人たちに媚を売らないといけないのはお前の方じゃ無いかっ
そうだ今のままでは、絶対に雪乃は殺される
何もしなければ今すぐだって
わ判ったわよ
やればいいんでしょやればいいわよ、どうせ全校生徒にだって観られているんだし今更、セックス・ショーぐらい恥ずかしくないわよっ
雪乃は口ではそう言うが
すでに眼に涙を溜めていた
プライドの高い名家の娘白坂雪乃
何度、酷い目に遭わされても心が屈しない少女
本当は嫌なんだ
こんな場所で見世物として、オレとセックスすることが
だが今は
これしか窮地を乗り切る手立てが無い
さっき、寧さんが写真を撮られた籐の椅子にオレと雪乃が進み出る
照明のライトが前方と真上から、オレたちを照らしている眩しい
さあて楽しませてちょうだい
寧さんたちは観客席に座らされている
舞台の左右から白いヴァイオラたちが、全員を監視している
ミス・コーデリアは、もう一人の黒服の戦闘員に英語で何か命じた
と戦闘員は、舞台の横に置いてあった冷蔵庫から、コーラの缶を出して、ミス・コーデリアに手渡した
何だってそんな所に、冷蔵庫があるんだ
何よこれアメリカのコーラと味が違うじゃない
缶を開けて、一口飲んでミス・コーデリアは文句を言う
何でも希望の物を用意するって言ったくせに気が利かないわね、あの人たちアメリカ製のコーラぐらい、簡単に見つけてこられるでしょうに
ミス・コーデリアの要求で、冷蔵庫に物が入れられ置かれていたというのなら
やはりこの小劇場は
ミス・コーデリアたちの待機所として、あらかじめ用意されていたんだ
ここは21階
谷沢チーフが設定した、絶対防衛ラインにある
ここに待機所が用意されているというのは余りにも、準備が良すぎる
1階で姿を消したミス・コーデリアたちが、その後ホテル内を自由に行動しているのも見逃している人間がいるからだ
つまり、ホテル内の監視システムの全てを制御している人間
谷沢チーフ
これで谷沢チーフとミス・コーデリアの癒着は確定だ
もう一度、頭の中を整理しておこう
まず確実なこと
谷沢チーフとミス・コーデリアはどうやら、裏で繋がっているらしい
一方ミス・コーデリアと男のヴァイオラは、同じ組織の人間だが共闘はしていない
だから谷沢チーフと男のヴァイオラは、繋がっていない
谷沢チーフが、工藤父たちを使って男のヴァイオラと闘っているのはガチだ
ということで工藤父たちを疑う必要は無い
ミス・コーデリアは、ヴァイオラの監査に来ていると言っていたが、それが具体的にどんなことなのかは判らない
しかし、ミス・コーデリアは個人的に恭子さんに会いたいと思っている
また、恭子さんへの愛憎からオレたち黒い森のことは嫌っている
続いて判らないこと
谷沢チーフの目的これは、全く不明だ
どうして、ジッちゃんを裏切ったのかもちろん、谷沢チーフの行動は全てジッちゃんの意志に従っていて、ジッちゃん自身がオレたちを裏切っているという可能性もまだある
オレ個人としてはジッちゃんを信じているけれど
そのジッちゃんとミナホ姉さんの行方今、どこに居るんだろう
どうして急に姿を消さなければならなかったのか
その理由も判らない
男のヴァイオラの部隊の謎
何故、指揮はロレンザッチョ・バンディーニが執っているのか
男のヴァイオラの役割は何なのか
そして今、目の前に居る4人目の戦闘員の正体
ミス・コーデリアのチームの一員とは思えないが、彼女の命令には従っている
こいつは誰なんだ
希望あるいは、心配しなくていいこと
地下の緊急避難室に居る人たちに関しては、安全だと判断していい
ジッちゃんが警護人を残さずに脱出した以上、護りは完璧なんだろう
だから今は、みすずたちのことは心配しなくていい
逆に心配するべきこと
今、この部屋に居る人間特に寧さんのこと
それから、オレたちを救出するために、この部屋に向かって来ているはずのマルゴさんたち
谷沢チーフ配下の香月セキュリティ・サービスに、再襲撃されているのではないか
それと、男のヴァイオラたちの軍勢と闘っている工藤父たち
ミス・コーデリアは、男のヴァイオラが21階のこの部屋にまで到着すると信じているようだ
だとしたら谷沢チーフが、工藤父たちを陥れる可能性が強い
何、ボサッとしているのっ早く始めなさい
ミス・コーデリアの声に、オレはハッとする
しまった、すっかりボケっとしていた
ヨッちゃん、雪乃ちゃんゴメン
寧さんがオレたちに、そう言ってくれる
こんな場所で晒し者になることを自分のせいだって思っているらしい
気にしないで下さい、寧さんオレたち、観られてするの大好きなんですから
寧さんの心を和らげたくてオレは、そう言った
あんたは、そうかもしれないけれどあたしは違うわよっ
雪乃が、憎しみの眼でオレを見る
いいからさっさと脱げよセックス・ショーじゃなくって、レイプ・ショーになっちまうぜ
オレは腹を括って、雪乃に言う
その方がお得意でしょあんたはさ
オレは別に構わないけれどお前、オレにレイプされた後、ずっとビリビリに破れた服でホテルの中を歩くつもりかよ
力尽くで破かれたくなかったら、早く脱げって言ってるんだよ
オレは、雪乃を恫喝する
あ、あの人あんな性格だったんですか
香月健思が、オレの豹変に驚く
ご主人様は、やるべき時には徹底的にするお方です
そうよ、ヨッちゃんは肝の据わった子なんだから
こんな時にそんなことを言われると、ちょっと困る
ぬ、脱ぐわよっ脱げばいいんでしょ
オレに大声で怒鳴られた雪乃は、すでに半べそになっている
本当に申し訳無いが助かる
何でもかんでもすぐに感情を垂れ流して、表情豊かな雪乃は
セックス・ショーのヒロインとしては、最適だ
ミス・コーデリアのご希望に沿うだろう
これが美智なら
美智は最初から最後まで屈辱に耐え無表情で我慢するだろう
根性は据わっているが見世物にはならない
あ、あたし男には興味が無いから、その後ろの方で脱いでなさいシラサカ・ユキノさんは、前でライトの光の中で、あたしたちによく見える様に脱ぎなさい
ミス・コーデリアは、雪乃にストリップを命じる
ほら、雪乃
オレは雪乃を前に押し出す
わ、判っているわよっ
雪乃は、潤んだ眼でオレを睨む
音楽でも欲しいわねエディ
ミス・コーデリアは、4人目の戦闘員に声を掛けた
4人目はエディって言うのか
英語で何やら命じる
エディは、さっと劇場の観客席の後方へ行った
そして、音響機器を操作する
さあ音楽に合わせて、踊りながら脱ぎなさい
スピーカーから、何やら変なダンスミュージックが流れる
ほらっ早く
ボロボロと涙を零しながら雪乃は制服を脱ぎ始める
雪乃は被虐の表情に色気がある
ミス・コーデリアは、満足げに雪乃のストリップを観ている
いいわ、あなた才能があるわよっラスベガスのお店を紹介してあげましょうかううんあなたじゃ、ラスベガスは似合わないわねそうね、もっと場末の品の無いお店の方がいいわティファナとかね国境付近のメキシコ人とかに喜ばれるわよあなたみたいな下品な女の子のストリップは
楽しそうに雪乃の脱衣を笑う、ミス・コーデリア
こんな風に女の子を見下すのが好きなんだろう
性格が良く判る
ミス・コーデリアの2人の部下白い女のヴァイオラとロザリンドも、楽しそうに雪乃を観ている
上司と趣味は同じか
問題なのは、エディだけだな
雪乃は裏の世界の人間じゃない
今、現在させられていることに精一杯でしかも、怒りと恥ずかしさで感情が爆発しそうになっている
だから最高の見世物として、ミス・コーデリアに饗される
うまくいけば隙が生まれるはずだ
客席で、美智がオレを見て小さく頷いている
美智は判っている
もちろん、寧さんも
ごめんねっ雪乃ちゃんごめんっ
これまで散々、雪乃が犯される現場を見て来た寧さんが
申し訳なさそうに、雪乃に謝罪する
これはフェイクだ
ミス・コーデリアを油断させるための
オレたちの潜ってきた修羅場は半端じゃない
ヨッちゃんもゴメン
寧さんの眼が訴えている
判っています判っていますから
そんな寧さんの手を、美智がギュッと握っている
美智ちゃんと寧さんの心のフォローをしてくれている
いつでも、反撃の準備はできている
後は、オレと雪乃が隙を作るだけだ
オレは急いで、服を脱ぐ
ちくしょうちくしょうバカァァ
泣きながら雪乃は、セーラー服の上を投げ捨てた
スカートをストンと落とす
下着だけの姿になる
オレもさっさと、パンツ一丁になる
あーら、おっぱいは小振りだけれどなかなか可愛い身体をしているじゃないっ
ミス・コーデリアは雪乃のスタイルを見て、そう言った
ほら次は、下着よ早くなさいっ
音楽とライトの光の中で雪乃はブラジャーのホックに、手を廻す
パツッと背中のホックが外れると同時に、雪乃のおっぱいが弾ける
桜色の乳首を見るのは今朝以来か
2人の白いヴァイオラたちから、嬌声が起きた
本当に場末の観光地のストリップ嬢を見ている様に、雪乃の裸を笑っている
ほらほら下も脱いで
涙を零しながらミス・コーデリアを睨む、雪乃
何やっているの早く
雪乃は白いパンティに手を掛け、一気に脱ぐ
何それおかしなタトゥをしているのね、あなたそれに、下の毛は剃っているの
雪乃の陰毛は数日前に、オレが剃った
そして下腹部には吉田という消えないタトゥが彫られている
それ何て言う文字だったかしらヨシ、タヨシタって何あなたの恋人の名前
ミス・コーデリアの言葉に、雪乃は
あたしが世界で一番嫌いな男の名前よっ
涙を零しながら、絶叫する
ふーん、どうしてそんな男の名前を彫っているわけ
忘れないようによこの憎しみの気持ちをねっ
雪乃は自分の下腹部にギュッと手を当てる
そうまあ、何でもいいけれどそっちの子は準備できたの
オレは、黙ってパンツを脱ぎ勃起しているペニスを露わにする
まあやる気満々ねさすが、売春組織の男ね
ミス・コーデリアにはオレを黒い森のチンコ奴隷ぐらいに思わせたい
彼女の警戒心を緩ませるためなら
エディ
ミス・コーデリアが、エディに音楽を返させる
軽妙なダンス・ミュージックからしっとりとしたバラードに音楽が変わる
じゃあ、始めて
ニタッと微笑むミス・コーデリア
2人の白いヴァイオラたちもオレたちを見ている
オレは、裸のまま雪乃の前に廻り込む
雪乃は、自分の股間と胸を手で隠していた
顔は羞恥に真っ赤に染まり眼は涙でグショグショだ
雪乃するぞ
オレが、雪乃の顔にキスしようとした瞬間
こっのぉぉぉッッ
ズガゴォッ
雪乃が、オレの額に頭突きをかました
痛ぇぇぇッッ
全裸の雪乃が、憎しみの眼を見開いてオレを見ている
嫌よっやっぱり、こんなの嫌よっ
ふざけんなっこのっ
オレも雪乃の額にゴツンと頭突きするッ
痛ッたぁぁい何をすんのよっ
ゴツッッ
また雪乃が、オレに頭突きするッッ
手で殴ったり、叩いたりしたら
そういうあからさまに反抗的な態度を取ったら、ミス・コーデリアの不興を買うことは判っている
オレも、雪乃も
だから、オレたちお互いの頭を頭突きし合うしか無い
痛いわよっいい加減にしなさいっ
そう言いながら、また雪乃はオレで本気の頭突きをカマす
お前こそっ
オレも雪乃に頭突きし返す本気で
ミス・コーデリアは
ゲラゲラと笑っている
白いヴァイオラたちも
でも、ダメだこれぐらいじゃあ、隙は生まれない
こんちくしょうっ
オレは、雪乃に足払いを掛けて、スッ転ばせる
そして彼女の裸体に覆い被さる
セックスは次話で行き着けなくて済みません
でも、ちゃんと最後までやりますので
いいとこで止めることは無いですから、もう一日お待ち下さい
旧作の直しは、まだ終わっていません
昔の作品を直すというのは、昔の自分に向き合うということでなかなか辛いです
317.オレと雪乃のミラクル・セックス・ショー
痛いじゃないのっ馬鹿っ
オレに押し倒されて背中から倒れた雪乃が、オレに怒鳴る
うるせぇなっ黙ってろよ、バカッ
オレも、雪乃に怒鳴る
上からのし掛かってああ、雪乃が逃げる
逃げんなよ、このっ
オレは、雪乃の身体を押さえにかかる
何よ、何よ、何よこのぉぉっ
もう、こうなったら頭に来た
こんのやろッッ
横四方固めだぁぁッッ
ちょっとちょっと、どこ触ってんのよっこの馬鹿ッッ
こんちくしょうッッ
痛たたたたたたッッ重いわよっどきなさいよ馬鹿ァッ
オレの身体の下で、ドテドテとのたうち回る雪乃
ミス・コーデリアは、笑っている
女のヴァイオラたちも笑っている
るーるる、るーるーるー
今日も良い天気だと良いなあ
このっ、バカッ
ゴツン
また雪乃に下から頭突きされた
痛ぇな、これ以上馬鹿になったら、どうすんだよっ
もういいから死んじゃいなさいよっあんたなんて、頭が砕けて死ねばいいのよ
オレたちの怒鳴り合いを見て香月健思が呟く
雪乃が声の主を、カッと睨んで
あんた、何ジロジロ見ているのよっ
いや、あの僕、セックスというのを見るのは、生まれて初めてなんで
ふざけたこと言ってるんじゃないわよっブッ殺すわよ、このっ
雪乃の怒りは、収まらない
僕見学してちゃダメですか
あったり前でしょうがっ眼を閉じて、耳を塞いでなさいよ、このクズのろまヘンタイ
そんな香月健思に、ミス・コーデリアは
あなた童貞なの
香月健思は、キッパリと
当たり前じゃ無いですか
こいつ、私塾の中でも年長だから大学生ぐらいだよな
結婚するまでは清い身体でいると、誓ったんです
誰にお母さんとか
違いますっ婚約者ですっ
こ、婚約者
はい、僕には許婚《いいなづけ》がいるんですそれで、お互いに結婚するまでは綺麗な身体でいようって約束したんですっだから、僕、童貞を守っているんです積極的にっ
積極的に守っているんだ
ふん、どうせあんたの彼女は、あんたに隠れて男とヤりまくっているのよっ
雪乃が、オレの下でさらに毒舌を吐く
そんなことはありません詩織さんは、絶対に嘘をつかない優しい人ですからあ、彼女は、香月仁くんと仲が良いんですよよく二人きりで遊びに行ってますから
香月仁って、角田と二人して私塾の中での遊び人なんじゃ
二人っきりって
ほら、僕は勉強が忙しくて、中々詩織さんの相手をしてあげられませんからその点、仁くんは、流行りのお洒落なお店とかも知っていますし先週も、二人で朝まで飲んでいたらしいですよ
朝まで
それって、あんた浮気されているわよ
雪乃が呆れる
香月健思は、アハハと笑って
そんなはずが、あるわけないじゃないですか詩織さんが僕の許婚だってことは、仁くんだって知っているわけですし
朝までどこで遊んでいたのよ
いや、最初はシティ・ホテルの屋上のバーで二人きりでお酒を飲んでいたらしいんですがね詩織さんが酔いすぎたらしくて、ホテルに部屋を取って、朝まで仁くんが看ていてくれたらしいですよ詩織さんが、そう言ってましたから
あダメだ
香月仁は、きっと全裸で看病している
ミス・コーデリアが、プッと噴き出す
ねえ、シラサカ・ユキノさんいっそのこと、この子とセックスしたらどう
いやだから、僕は結婚するまで童貞を守ると誓っているんですよ
その誓いを無理矢理破らせるのも、面白いかなぁって女が男を逆レイプするっていうのも、面白い気がしてきたのよ
ま、まずいぞ
あなたもそっちの男は、頭突きするぐらい嫌いみたいだし、その方がいいんじゃない
オレは、嫌ですこいつを、他の男に抱かせるなんて
雪乃はこれまでずっと、オレのチンコしか受け入れてきていない
雪乃の心は、絶対に手に入らない
こいつとは死んでも判り合えない
考え方も、人生観や、世界観が、全然違うんだから
だけど、こいつの身体はオレのものだっていう気持ちが強い
あんた
驚いた顔で、雪乃がオレを見ている
あたしもそっちの童貞男より、この男の方がいいわよ
あら嫌いなんじゃないの、その人のことは
小馬鹿にした顔で、ミス・コーデリアがオレたちを見る
嫌いよ大嫌いよ、こんな男
オレを見たまま雪乃は、ポロリとまた涙を零す
でもこの男、セックスだけはいいのよ身体の相性は合うのよだから、頭に来るのよっ
雪乃は、複雑な感情の籠もった眼でオレを見る
雪乃は肉体の快楽に弱い
元々、あんまり深く物を考えず、自分の気分次第で行動する女だ
理屈じゃ無く快感原理だけに従って、生きているから
ほら、あたしのこと、気持ち良くしなさいよっどうせ、あんたにはそれぐらいしか価値が無いんだから
そうだ雪乃にとっては
オレは、人間バイブぐらいの価値しか無い
いや、それさえも一番最初の段階と比べたら、凄い変化だ
かつてのオレは、クラスメートであっても雪乃にとっては、路傍の石と同じ
いないも同然の無価値な存在だったんだから
人間バイブとしてでも、存在を認識して貰えるようになったのは素晴らしい進歩だ
犯すぞ、雪乃
いいわ、犯しなさいよあたしあんたに犯されるの、結構好きなんだから
ふざけやがって
オレは、雪乃にキスをしながらのしかかる
雪乃は、すぐに舌を絡めてきた
セックスすると覚悟を決めてしまったら雪乃は、周りが見えなくなる
セックスに溺れるそういう女だ
ね、舌を吸ってあたしの舌、チュウッて吸って
オレは、雪乃の望みを叶えてやる
同時に、雪乃のおっぱいを揉んだ
もっと力を込めてギュっと握りなさいよ握りつぶすみたいにして荒々しくて、痛い方が好き好きなのよっ
なら、そうしてやるよっ
オレは、雪乃の胸の弾力を楽しむ
乳首が急速に尖っていくコリコリする
舐めてよ
乳首舐めなさいよイヌみたいに
そんなのはゴメンだね
じゃあ赤ちゃんみたいに、吸ってあんたに吸われるの気持ちいいのよ
オレは雪乃の乳首を口に含む
そうよそれよそれがいいのよっ
やればできるじゃないあっ、先っぽ、舌で嬲って
乳首の先を、舌で転がす
雪乃はそんなオレの顔を、興奮した眼で見ている
雪乃下も舐めてやるから、オレのも舐めろ
乳首から、そのまま雪乃の身体の上に舌を這わせる
おへその周りをベロッと一周して
吉田のタトゥの字の間を、舌は潜り抜ける
ほら足を開けよ
こ、これでいい
恥ずかしそうに、雪乃は股の力を緩めた
もっとだ
オレは力任せに、雪乃の足を全開にさせる
局部が、ミス・コーデリアの正面に来るように
これは、ミス・コーデリアに見せるためのセックス・ショーだ
そのことを忘れてはいけない
ほら、舐めるぞお前もやれっ
オレたちは男が上のシックス・ナインの態勢となる
何だよ、ビショビショじゃねぇか
うるさいわねあんただってビンビンに勃ってるじゃない
雪乃は、濡れやすい
オレは、勃ちやすい
それだけのことだ
あーあ、相変わらず臭うわね、あなたのここ
雪乃の股間だって、臭ってるぞ
いいのよ、あんたの匂いあたし慣れてきたし
夜、一人でオナニーとかする時はねいつも、あんたのこの匂いが頭の中に出て来るのよ
雪乃匂いフェチかよ
雪乃の唇がオレの亀頭を濡らす
オレも、雪乃の割れ目に舌を付ける
ぴちゃっぴちゃっ
酸っぱいな、雪乃の汁は
何よ、それってよくないことなの
そこから出る汁が酸っぱいと、身体の調子が悪いとかあるわけ
そんなの知らねぇよ
あんたは他の女ともヤッているんだから、判るでしょあたしの味って変じゃないどこか、おかしいところは無い
そんなことが気になるんだ
別に問題ねぇんじゃないのお前は身体は良いんだよ、身体だけは雪乃がダメなのは、性格の方だからさ
それはあんたのことじゃないセックスばっかり上手くてさ
オレのペニスをチロチロ舐めながら、雪乃は言う
そうじゃないわねあんたは、顔も頭も良くないもんねホント、セックス以外に取り柄のない男人間のクズよ、あんた
そうだな雪乃は顔も綺麗だもんなこれで性格が良ければ、完璧なのによっ
うるさいわねっあたしのこと、性格が悪いなんて言うのはあんたたちだけよパパなんて、雪乃は良い子だって、いつも褒めてくれるんだから
雪乃お前のパパは、変質者の強姦魔だ
そんな白坂創介に褒められて、嬉しいのか
ねぇそこの上、舐めなさいよ
上上ってどこだよ
わざと判らない振りをしてやる
もおっクリトリスよっクリトリス舐めて
よし、やってやる
ハァァッあっ、あっああああっ
雪乃の声が快感によがる
上手いわよっ上手いじゃないもっと、舌でお願い
こうかよっ
あああっいいっ自分で触るのと全然違うのあんたの舌、気持ちいいのぉっ
まるでスロットマシーンの大当たりが出たみたいに
雪乃の割れ目から、一気にたらたらと愛液が零れてくる
自分でする時は、指突っ込んで掻き回しているのかよっ
そうよそうそうなのっ
快感にビクビクッと震えながら雪乃は語る
ならオレも指を突っ込んでやろうか
ううんッ指じゃ、指じゃ、ダメなのいつもの
長さと太さが足りないのよっブチ込んでよっ
潤んだ瞳で、オレを見上げる
あんたのオチンチンあんたのオチンチンが、ちょうどいい大きさなのよっ一番奥まで、きっちり届くんだから
ああ、そうかよっ
オレは身体を起こす
雪乃、四つん這いになれよ
観客によく見えるように後ろからヤッてやるっ
変態
そう言いながら、雪乃は舞台の上に手を付く
尻をもっと上げろよほらっ
雪乃が16歳の小さなお尻をくねらせる
ほらいくぞ
オレは、勃起を濡れた膣口に当てる
あっあんたの硬いの、熱い
雪乃だって、熱い上にグチョグチョじゃないかっ
は、早くあんたので奥まで埋めてぇぇっ
言われなくても
スブスブスブっと、雪乃の中に勃起を押し込む
愛液が押し出されて、トロトロと雪乃の太ももに滴っていく
ああっあんっっ
雪乃が、ビクッビクッと身体を震わす
軽く、イッちゃった
入れられただけで、軽くイッちゃったって言ってるのよッ
そうなのかよっ
オレは、ゴツッゴツッとピストンを始める
雪乃の最奥を突きまくる
愛液がびしゃびしゃと垂れる
四つん這いの雪乃の身体下を向いたおっぱいが、たぷんたぷんと揺れている
後ろからおっぱい掴んで
おっぱい、ギュッと握ってよ思いっきり
こうかッ
挿入したまま後ろから手を伸ばして、雪乃の胸をまさぐる
そうよっそういいわあんたの手、気持ちいいのっ
オレだって、気持ちいい
雪乃の身体の弾力肌の質感もっと貪りたい
そうだこの肉体は、愛したい身体ではない
貪りたい肉欲に溺れて、貪り合いたい身体だ
あんっああんっあああっ
オレのピストンに合わせて、雪乃が悦びに啼く
すでに身体全体に、じっとりと汗をかいている
セックスの汗はスポーツの汗と違う
ほんのりと、いやらしい性臭を含んでいる
雪乃の汗の匂いがオレの性感を高めていく
うううっああんっいいのっこれ、いいいいよおっ
セックスに溺れる雪乃は、いつも通り何も見えなくなる
ただただ、快楽に堕ちていくだけで
雪乃の乳首の先端から、汗の玉が舞台の床に滴って弾ける
いつも通りの雪乃とのセックスだ
気持ちいいだけで何の発展性もない、粘膜と粘膜の擦り合いだけの行為
ね、あたしこの格好嫌だわ
突然、四つん這いの雪乃が言った
何だよ後ろから犯されるのを人に見られるのが、急に恥ずかしくなったのかよっ
人に見られるのなんて、どうでもいいわよっ
あたしあんたの顔を見ながら、したいの
オレは一旦、雪乃からペニスを引き抜く
横になってあたしが、上になるから
オレは床に仰向けになる
そのオレの上に、雪乃は馬乗りになって
トロトロの股間を、オレの太ももに擦り付けていく
うふふ硬いままね
オレのペニスを手でしごく
亀頭を指で優しく撫でて
ほーらあたしの中に、入れちゃうわよっ
雪乃は、オレの顔を見下ろしたまま自分で自分の膣に、オレのペニスを当てる
食べちゃうんだからっ
勃起が吸い込まれる
あっ、ううんっうふふ、あんた気持ち良さそうな顔をしているわよっ
意地悪な笑みで、雪乃がオレに言う
ほらほらあっ、顔をしかめた気持ちいいのね、あたしの中
雪乃だって、気持ち良さそうだぞ
だっていつも、あんたに犯されるだけじゃない今度は、あたしがあんたを犯してやるのよっ
雪乃が、グイッと深く腰を振るッ
あはっここよ、ここがいいッいいのぉっ
雪乃は、自分の中の感じるポイントに、オレのペニスをぶつけていく
ここかよっ
オレも下から雪乃の尻をギュッと掴んで、突き上げる
まだ肉の付き切っていないだけど、柔らかい尻
ピンと張り詰めた少女の尻の感触が溜まらない
そうよっ上手いじゃないっこのぉぉあんっうふーんっ
いやらしく雪乃の裸体が、オレの上で踊る
おっぱいの肉が、回転するようにくるんくるんと揺れる
あっああんっああーっ
雪乃が身体を倒して、オレの口を求めてくる
何だよ、キスして欲しいのかよっ
あんたのキスなんて欲しくないわよっし、舌を、舌を舐めて舐めたいのあんたの舌を吸いたいのよっペチョペチョしたいのっ
雪乃の舌が、オレの唇に差し込まれる
キスより深いディープキスだ
その間も雪乃は腰を、うねうねと動かしていく
ああ雪乃の胎内が蠢く
オレのペニスをキュウキュウと締め付ける
熱い眼でオレを見下ろして雪乃は、言った
あんたなんて、大嫌いよ
そうかよ
でも、あたしもう、あんたとしかセックスできなくなっちゃってる
雪乃の手が、オレの手を求める
オレたちの手が重なる
右手も左手も、ギュッと互いの手を握りしめている
大嫌い、大嫌い、大嫌い
オレを真っ直ぐ見つめたまま雪乃は激しく腰を動かす
オレは雪乃のこと、結構、可愛いって思っているぞ
肉体と肉体が繋がり合っているから
つい、本音が出る
知っているわよ、そんなこと
あんたはあたしの外見しか、好きじゃないんでしょ
雪乃の心は受け入れられない
あたしもあんたとのセックスだけが好きっセックス以外は、大っ嫌いよあんたなんて
雪乃の中でオレのペニスが大きくなっていく
ゆ、雪乃オレ、もう
ダメよあたしもう、すぐだからっもうちょっと待ちなさいよ
ああ、待つから急げよ
結合箇所がさらに熱と潤いを帯びて、摩擦される
またあたしの中に出す気なんでしょ
ああ、雪乃の中に思いっきり、ブチ撒けてやる
オレたちは、まるで一つの機械になった様だ
そう蒸気で動く、大昔の機械のように
激しい熱と水分を放出しながら、荒々しくピストンを続ける
お互いの若い肉体を弾け合わさせていく
いいわ好きなだけ、出しなさいよ
雪乃が、オレを見ている
あたしのこと妊娠させたい
ああ孕ませてやるよ
ゾクゾクゾクッと、雪乃の背筋が震える
そうなら、妊娠してあげるわ
大っ嫌いな男の子供を孕むんだぞ
別にいいわあんたなら
ホントはそんなに嫌いでもないから
自分の口から零れた言葉に雪乃自身が驚く
ハッとなる雪乃
う、嘘よ今のは、嘘
オレの中で、一気に感情が高まる
ゆ、雪乃オレぇぇ
も、もう我慢できない
や、やっぱり嫌よあんたの子供なんて妊娠したくないっ抜いて抜いてよおっ
雪乃の心が決壊する
綺麗な瞳から一気に涙が、ボワッと溢れ出す
ダメだで、出るよ出るよ、雪乃
嫌、嫌、嫌ぁぁッッあたしの中に射精しないでっ
もう、出るぅッ
あああっ、うううゥゥゥッッ
ドビュウッ
雪乃の胎内で、オレは噴水みたいに熱い精を放出する
熱いィィィッッ子宮が焼けちゃうゥゥッッ
大きく眼を見開いて、雪乃が受精の熱をオレに伝える
オレは、雪乃の子宮に精子を送り込もうと、下からゴツンゴツンと雪乃を突き上げる
その激しい突き込みについに雪乃も
あああイクッあたしもイッちゃうゥゥゥゥゥッッ
オレのペニスを絞るように雪乃がオレの身体の上で、ピクピクピクッと痙攣するッッ
雪乃まだ出るよもっとだ雪乃ぉぉッッ
出、出てるようッッあたしの中で、ビュクビュクしてるよぉぉあたしぃぃあたしぃぃ
雪乃の若い肉体が汗を発しながら、小刻みに震えている
雪乃の熱い涙がオレの胸にぽたぽたと零れる
妊娠しちゃうぅぅ妊娠しながら、イッちゃってるのぉぉぉ
オレたちの手と手
お互い、力の限り握りしめ合う
完全に一つだ
妊娠する機械になった雪乃と、妊娠させる機械になったオレ
結合しているよオレたち
あああーっあああーんっいやぁぁ
雪乃は、悶え、よがり、啼き
そして、ドサリと雪乃の身体が、オレの上に重なる
ひぃ、ひぃ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ
雪乃の息を、顔で感じる
二人とも、全身汗だくだ
オレは、もう一度雪乃を抱き締めキスしようとする
キ、キスは嫌よ
雪乃はそう言うが、脱力し切った身体ではオレのキスは拒めない
オレは雪乃と唇を合わせ舌でペロペロと舐める
すっげぇ気持ち良かったよ雪乃
オレはそう感想を述べた
当たり前じゃないあたしの身体なのよ
はぁはぁ、肩で息しながら雪乃は答えた
く、首筋とおっぱいも舐めてよ
熱い溶けたままの眼で、雪乃がオレにねだる
まだ身体の中の火が鎮まらないのよ鎮めてよあんたの責任なんだからねっ
オレは、雪乃に挿入したまま首筋をペロッと舐めた
汗の味がしょっぱい
胸を揉む
雪乃のおっぱいは、興奮に張り詰めているままだ
尖った乳首を、ペロペロと舐めてやった
ああっ溶けるわ氷みたいに、あたし溶けるの
丁寧な後戯に雪乃の身体が悦んでいる
雪乃の身体の中で、下火になってもまだ快楽の炎は消えていない
あ、あのこんな時に何ですが
客席から香月健思の声がした
オレに身体をまさぐられたまま雪乃が返事する
セックスの絶頂で、もう羞恥心も何もブッ飛んでしまったらしい
あなたたちはその、どういう関係なんです
香月健思にとっては、オレはみすずのパートナーで
雪乃は白坂家の娘だ
ただのセフレよ
セフレ
そうよ、セックス・フレンドよっ
そう言ってから雪乃は改めて、オレの顔を見る
そうなのか雪乃
オレが問うと、雪乃は
いいえ違うわね
オレの顔を雪乃の手が、優しく撫でる
あたしたち友達ですらないものね
そうだオレたちは
あたしたちの関係はセックス何なのかしらね
オレがレイプ犯で、雪乃が被害者それでいいじゃないか
抱き合ったまま、オレは言った
それじゃダメよあたしももう、あんたとのセックスを望んでいるもの
雪乃がオレの背中に手を廻す
ホント、わけわかんないあたしたち
コツンと、軽く雪乃がオレの額に自分の額をぶつける
優しい、頭突き
フフフフフ中々、面白い見世物だったわよ
ミス・コーデリアがスッと立ち上がる
何なのあんたたちまだ子供のくせに、そんな濃厚なセックスを楽しんでいてさ
ミス・コーデリアは、オレと雪乃の激しいセックスが意外だったらしい
そりゃそうだ高校一年生のオレたちだ
脅されて、泣き喚きながら、嫌嫌ながら、無理してセックスするのを、嘲り笑ってやるつもりだったんだろう
それがこんな大人顔負けのセックスをするから
セックス・ショーをしろって言ったのは、あなたですよ
オレは、ゆっくりと身体を起こしながら答えた
そうだったわね売春組織の男をみくびっていたようね反省するわ
いや違う
この表情は
ミス・コーデリアは、明らかに戸惑っている
こんな男女の激しいセックスを観たのはこれが初めてなんだろう
そうだ、この人は裏社会の人間ではあるけれど
セックス絡みの仕事をしてきたわけではない
で、でも、素晴らしセックス・ショーだったわ褒めてあげるわよ
それでもミス・コーデリアは、オレたちに対し、余裕のある振りをしようとする