見ると、克子姉がエア・マットから下りて、デジカメで写真を撮っていた

もうっ克姉、こんなところ撮らないでよっ

寧が、恥ずかしがる

だって黒髪の寧、綺麗なんですもの

黒髪の寧とセックスするのはこれが初めてだ

んどうしたの挿入(い)れたくなっちゃった

寧が、明るくオレに答える

姉さんの顔を見て、したいよ

うふふふっ奇遇だねぇっあたしも、今、そう思っていたところっ

寧が身体を起こす

ヨッちゃん、上がいい下がいい

上オレが、姉さんを抱きたいっ

オッケーっマナ、ちょっとそこ開けて

あっ、はーいっ

寧がマットの上にゴロンと寝転ぶ

この角度ならアニエスたち、よく見えるかな

うんこれで、大丈夫だと思うわよ

克子姉が、身体の位置を調整してくれる

あっ、麗華お姉さんも、そんなところにいないでもっち、近くで見ていてよっ

寧が、麗華に言う

麗華は並べたエア・マットの隅っこで、小さくなっていた

いやわたくしは、その

麗華見ていてくれ

ははい、主様

はーい、ヨッちゃんおいでっ

マットに横たわった寧が両手と両脚を大きく開いて、オレを招く

飛び込むように、のしかかるオレ

慌てないのっあたしは、逃げないからさっ

オレは、仰向きになっても全然量感の変わらないおっぱいにむしゃぶりつく

あはっヨッちゃん、おっぱい好きだよねぇ赤ちゃんみたい

寧の18歳の肌は瑞々しくて、張りがあって、艶やかで

その先っぽの桜色の突起をオレは舐める

あんっゾクゾクするいいよおっヨッちゃん

寧の感じている顔がとても、可愛い

お兄ちゃんにおっぱいを舐められると女の子で良かったなあって、思うんだよね

そうよねおっぱいがあって良かったって、感じるわ

メグ、マナの言葉に麗華が、ゴクッと唾を飲み込む

麗華は克子姉よりも、二つ年上だっけ

23歳

この中では、一番成熟した肉体をしている

何度も、オレたちのセックスを見学させられて

そろそろセックスは、気持ちいいものだということが、麗華の中に根付いてきている

もうすぐ、麗華自身から体験することを望んでくるだろう

いや、麗華の場合はそうなるのを待たなくてはいけない

命令されてのセックスでは麗華の心は、囚われたままだと思う

麗華はいまだに、オレのことを主様とか呼んでいるし

オレたちは家族になりたいのに

主従の概念を麗華が持ち出すのは

心を完全に解放するのが怖いからだ

主からの命令で、仕方なくすることなら麗華は、自分の心を守ることができる

でも、それじゃあ本当の家族にはなれない

ヨッちゃん、あのね

寧の声にオレは乳首から口を離す

お腹の奥がキュンキュンするの欲しくなっちゃったみたい

とびきりの黒髪の美少女がオレを求めている

あっ、判る子宮が熱くなるんだよねっ

ええ、あたしも判るわ

メグの言葉に麗華は、そっと自分の下腹を抑えている

いくよ姉さん

うんちょうだいっ

オレは勃起を寧の膣口に当てる

昨日、破られたばかりのそこは狭い

痛くしてもいいからっ

ああ寧っ

思わず、寧の名前を叫んでしまった

オレの亀頭がぬめった膣内に侵攻していく

あうぐっ

痛そうな顔をする寧

いいからもっと全部きてぇぇっ

一番狭い場所を亀頭が、ぬぷっと潜り抜ける

そのままずずずっと、最後まで押し込むっ

全部、入ったよ

うん判るよっ

寧が汗ばんだ顔で、オレに微笑む

ちょっと休憩

オレのを馴染ませるんだよ

オレは、動かずにそのまま寧を抱き締める

すっごい全部入っちゃってる

マナが、結合部を見てそう言った

あたしもいつも、こんなになっているんだ

パシャ

繋がっているオレたちを克子姉は、記録する

マナちゃん繋がっているところ、舐めてあげてっ

気持ちいいのよっそうされると

克子姉が、そんなことを言い出す

あたしがやります

メグが、率先してオレたちの結合部に舌を這わす

どう、ヨシくん気持ちいい

とってもいいよメグ

マナもするっ

マナも舐める

うん、ゾゾッとして、気持ちいいよっ

オレたちの繋がっている部分を、メグとマナが様々に舐める

その様子も克子姉は、写真に収めていく

お尻の穴を舐めるのもいいのよ

シャッターを切りながら、克子姉が言った

ええーっ

あたしがしますっ

メグは、ためらわずにオレの肛門をペロペロ舐める

あっああっ

そんなに気持ちいいのお兄ちゃん

マナもする

メグが、マナに場所を譲る

うんっありがとう

今度は、マナがオレの肛門を

メグは、寧のお尻を舐めていた

うわっ、これキクっ

寧の膣が、キュッと締まる

後で、メグとマナにもしてあげるからねっ

気持ち良さそうに、寧は言った

ね、あなたアニエスを見て

克子姉の言葉にオレは、そっと振り向く

オレたちの痴態を見て自慰を始めていた

白坂創介の像ではなく

熱く潤んだ眼で寧が、オレを見る

寧が何を望んでいるのかオレには判る

メグ、マナ離れてくれオレたち、愛し合うから

うん見てるね

最初は、ぐりぐりと円を描くように

それから、ぬっぬっとピストンを始める

んんっんんっあっ

寧の息遣いが、段々荒くなる

喘ぎ声が大きくなる

うっふっはっはっあんっ

オレに突かれて、寧の肉体が揺れる

豊かなおっぱいはぶるるんと、ウェーブとなる

気持ちいいからって、脱力しちゃダメよ寧の方も、彼に合わせて腰を動かしなさい彼のオチンチンを、キュッと締めるのよ

写真を撮りながら克子姉が、アドバイスする

こ、こうかなっ

寧も下からオレに腰をぶつけてくる

色々試してみなさい自分が気持ち良くて、彼も気持ち良さそうなところを探すのよ

うんヨッちゃん、顔をよく見せて

セックスしながら、見つめ合うオレたち

オレの寧は本当に

あんっこ、ここだここ、いいよヨッちゃんも、んて、切なそうな顔になった

そう言う寧だって切なそうな顔をしている

綺麗だよ

うん綺麗で、可愛くて大好きだ愛しているよ

あたしだってそうだよっヨッちゃん

腰の加速が止められない

痛いの

いいから、気にしないであたしは、痛いのだって、嬉しいんだからっ

ヨッちゃんとセックスしているんだよっ幸せだよっああっ

オレ、もう

いいよっいっぱい出してっ

寧はまだ絶頂に向かっていない

いいからっ出して、思いっきり出してっ

下からぐいぐいと腰を押しあげる、寧

ヨッちゃんのが欲しいのっ

何て、可愛いんだ寧

オレ、オレ、オレ

いいよっ早くっ早くっちょうだいっ

寧がオレを見ている

オレを求めている

イクよっイクよっイクぅぅッッ

寧の子宮に熱流が押し寄せる

あああっ、入って来てるぅぅ熱いの、判るよおっ

寧っ

オレは、寧を力一杯抱き締める

キスする

舌を押し込むっ

寧は、身体を震わせながらオレの舌を吸ってくれた

出てる

まだ、出る

朝一番の精液が寧の子宮を満たしていく

はぁ、はあ、はあ、はあ

抱き合ったまま見つめ合う、オレたち

ちゃんとイケた

寧が、オレに尋ねる

うんすっごい、気持ち良かった

うふふっ良かった

寧が、オレの唇にチュッとキスする

自分の身体だけで、ヨッちゃんを気持ち良くすることができるって素敵だよねっセックスって、本当にすごい

本当に裸の身体だけあれば、できるんだもの幸せな気持ちになれるんだもの

裸の心も必要だよ

あ、そうだね

クスクスと笑う、寧

あたし、ヨッちゃんに心も身体も捧げちゃった

次にする時は一緒にイキたいよ

うん次は、頑張る

ニッと笑う寧

離れるよ

うん、ヨッちゃん

オレは寧から、ずるりとペニスを引き抜く

寧、アニエスに見せてあげて

はーい、克姉

寧が、アニエスたちに向かって、大きく足を拡げる

すぐに

とろろろっと膣に出された白濁液が、垂れてくる

うわっ、いっぱいだね

朝一番だからね

アニエスは大きく眼と口を拡げて、寧の割れ目から零れる液体を見ていた

すっかり自慰の手は、止まっている

男女のセックスや、精液は白坂創介に散々見せられているのだろう

ありがとう、寧さん

こちらこそ、ヨッちゃん

オレたちは、微笑み合いキスを交わす

行為の後、こんなに晴れやかな顔で、笑い合う姿は白坂創介のセックスでは、ありえなかったはずだ

むぎぎーっ

と、突然

アニエスの横でイーディが、訳の判んない奇声をあげる

昨夜のオレの射精と今の、寧の胎内から垂れてくる精液

それが、彼女の中でようやく、リンクしたらしい

セックスが男のあの液体を、女の身体に放出することだと理解したようだ

もちろん、イーディにはこれが子作りの行為だということは判らないだろうが

人間の根源的な営みの一つであるということは、何となく把握したらしい

生々しい性の実感が、イーディを襲う

あれはまあ放っておきましょう

お兄ちゃんマナが、お掃除するねっ

全裸のマナがオレのペニスを咥えて、お掃除フェラを始める

じゃあ、あたしは寧お姉さんを

同じく、全裸のメグが寧の股間に垂れた、オレの精液を舐め取っていく

ああ、これも良い絵になっているわねっ

そんな光景も克子姉は、写真に撮っていく

しばらく、全員裸のままで遊んでいた

抱き合ったり、キスしたり笑い合ったり

オレたちのそんな姿を、克子姉はカメラに収めていく

もちろん、麗華は一人だけマットの隅で困惑している

アニエスは、呆然としたままだし

イーディは、頭を抱えて布団の中に丸くなっている

メグ、今日は部活の練習に行くんだろ何時から

オレは、ふと思い出して、尋ねた

9時からよでも、一年生は8時半までに行っていないと

そうか、さすがに連休中に、朝練は無いもんな

今、何時だろ

6時半です

麗華が、腕時計を見て教えてくれた

さすがプロの警護人防水仕様の腕時計は、常に持っているらしい

じゃあ、まだ平気だね

このお屋敷は、学校のすぐ近くだ

後で、お嬢様たちが、車で学校へ向かわれますから一緒に乗せて行っていただけばいいわ

学校には白坂創介が、監禁されている

うん、お屋敷の前には、監視の連中が居るから一人は危険だそうした方がいいよ、メグ

警察と香月セキュリティ・サービスの両方だもんな

それに、ミナホ姉さんが学校に行かないと、学校の警備システムも機能しないだろうし

そうだね判ったわ

メグも、納得してくれた

そろそろ、服を着ようか

オレが、そう提案すると

もうちょっと

まだ、ダメっ

寧、メグ、マナそれぞれに返事する

まあ、朝の光の中で見る美少女ヌードは確かに、格別なんだけれど

部屋の入り口から、幼女の声がする

見ると渚と真緒ちゃんだった

あわわわっみんな裸っ

あまずかったろうか、教育上

いいのよ、真緒これから、みんなお風呂に入るんだから

渚が、フォローしてくれる

てへへっおふろっおふろっ

朝になったら、真緒ちゃんをお風呂にに入れてあげる約束だったっけ

うん入ろうか

あっ、あたし、湯船にお湯溜めてくるっ

てけてけと全裸のマナが、お風呂コーナーへ走る

あいつ自分も一緒に入る気だな

マナ、ダメだよっあんたは、後渚お姉ちゃんに入ってもらいなさいっ

寧が、マナを叱る

そうよ次は、渚お姉さんの番だわ

メグも、そう言ってくれた

そっかそうだね

今のマナは、ちゃんと他の人のことを考えることができる

あっさりと納得してくれた

よっし

オレは、マットから起き上がって裸のまま、真緒ちゃんの方へ向かう

ウーップスムギギギギーッ

すると、とんでもない勢いでイーディが、飛んで来る

そして渚と真緒ちゃんに英語で何か言う

必死の形相で身振り手振りも交えて、大声で

何を話しているんだ、マナ

ええっとねこいつは、危険だオチンチンから、謎の白い液体を出すぞこいつを近づけたら、真緒の身が危ない急いで避難しろだって

渚はニコッと、イーディに微笑む

そして、とても流暢な英語で返事をした

渚英語、できるんだ

ええ、あの子は娼婦時代に、時間があれば色んな通信講座を受けていたから努力家なのよ、あたしと違って

克子姉が、笑顔でそう言う

うんとねこの人は、あたしたちのとても大事な人です真緒には、ずっと、お父さんがいなかったけれど、彼は真緒のお父さんになってくれると約束してくれましただから、大丈夫です心配してくれて、ありがとうだって

マナが、渚の言葉を伝えてくれた

ほら、真緒パパって、呼んでいいのよっ

パパッ

真緒ちゃんが、笑ってオレの胸に飛び込んで来る

オレも、真緒ちゃんを抱き締めてだっこする

よっしお風呂、入ろうなっ

うんパパっ

真緒ちゃんの小さな身体を、床に下ろすと

待っててっ

急いで、着ている服を脱ぎ捨てていく

もう、真緒脱ぐのなら、ちゃんとしなさいっ

渚が、脱ぎ散らかされた真緒ちゃんの服を一つ一つ、拾い上げる

あのねぇパパ

ニヒヒと真緒ちゃんが、笑う

昨日の夜に、ママが言っていたの

ん何て

真緒ちゃんは、渚の口真似をして

早く、あの人抱いてくれないかしらこのままだとあたし、ヨッキューフマンになっちゃうわっ

渚の顔が、真っ赤になる

もおっ、真緒っ

ねえヨッキューフマンてなあに

オレは、真緒ちゃんの頭を撫でて

ギュッとして貰えなくて、寂しい気持ちになっちゃうことさ

オレは渚の前に行き

渚愛しているよ

渚の身体を、ギュッと抱き締めた

もうごめんなさいね

いいんだよ

あたしも、愛しているわあなた

オレたちは、さっとキスをした

はあ、土日は、ほとんど家に籠もってました

お陰様で、大分回復してきました

まだ喉が腫れてるしも微熱と頭痛は残っていますが

効く薬が無い、自然治癒を待てっていうのはなかなか辛いですね

しかし、選挙カーがうるさいです

ちなみに私のところの選挙区の政権与党の候補者は政党名を言いません

まえは**党の****ですと連呼していたくせに、

今は****ですだけです

よーく、覚えていますけれどね

あと、一週間の辛抱か

379.荒ぶる、雪乃 (その1)

うふふん、ふんっ

朝から真緒ちゃんはご機嫌で

オレにスポンジで身体を洗われている

そのオレの身体を裸の渚が洗ってくれていた

わははーいっ、あらいっこあらいっこだねっ

真緒ちゃんは、ニコニコ笑っている

子供っていいなあ

エアマットの上から、オレたちの入浴を見ながら寧が言った

そうですよねあたしも欲しい

マナは真緒ちゃんになりたい

メグがマナに振り向く

そしたら、マナも思いっきりお兄ちゃんに甘えるもんっ

ふむそれもいいわねえ今度、赤ちゃんプレーとかやってみる

克子姉が答える

どんなのですかそれ

メグ頼むから、興味を持たないでくれ

寧やマナだと、まだ遊びで済みそうな気がするけれど

メグが相手だと、赤ちゃんプレーも本気でやらないといけないような

まあ、ホントは男の人の方が赤ちゃんになるんだけれどね

克子姉のトークを、真剣に聞く少女3人

一方、イーディとアニエスは、警戒しながらこっちを見ている

イーディが、ベッドから下りこっちにスタスタと歩いて来る

麗華がスッとオレたちの方に移動する

あ、大丈夫よお姉さん

渚が、にこやかに麗華に言った

そして、英語でイーディに話す

イーディはもごもごと、何か答えた

どうしたんだいイーディ

自分にも真緒を洗わせろですって

イーディは、お気に入りの真緒ちゃんとどうしても一緒に洗いっこがしたくなってしまったらしい

オレ(射精お化け)に対する、恐怖と嫌悪を乗り越えて浴室エリアまで、やって来たのだ

早く脱げって、言ってくれ

オレは渚に言った

オレたちは、浴槽に行こう

ええ、あなた

渚が英語で話すとイーディは、機嫌を直し

服をスポポンと脱ぎ捨てる

オレから、スポンジを受け取り真緒ちゃんに向かう

真緒、足はお姉ちゃんが洗ってくれるって

渚が言うと、真緒ちゃんは

えー、真緒、パパがいいーっ

と、オレに縋り付いてくる

そんなこと言わないでお姉ちゃんに、優しくしてあげなさい

やさしく

このお姉ちゃん真緒と遊びたくて、仕方がないんだから

おともだち、いないの

今、ここにはいないかも

美智はイーディのことを、どう思っているんだろう

イーディの方は、親友いや心友と思っているみたいだけれど

真緒は、昨日もこのお姉ちゃんと遊んでもらったでしょイーディちゃんは、真緒のお友達じゃないの

だってこのひとなにいってるのか、わからないんだもんっ

そういう人にこそ、優しくしてあげなさいって、ママ、いつも言っているでしょ

真緒ちゃんは、うーんと考えて

わかりましたっまおが、あそんであげますっ

真緒ちゃんは、イーディに振り向く

おねえちゃん、あそびましょっ

そして、イーディと洗いっこを始める

オレは、渚の身体の泡をシャワーで流して自分の身体も洗い流す

そして、2人で浴槽へ

渚を抱きかかえるようにして入る

おっぱいって、水に浮くんだ

湯の中で、渚のおっぱいの量感を確かめていたらおっぱいにも浮力があることに気付く

それはそうよ脂肪なんだから

渚は、笑う

脂肪の塊っていう小説があったわねモーパッサンの知ってる

脂肪の塊っていう仇名の娼婦の話よ

と克子姉とメグとマナが、服を着てこっちにやって来る

服って言っても昨夜のバスローブだけれど

朝食の準備をしてくるわ必要なものを、ここに下ろすから

えっとホットケーキを焼くんだっけ

ええ、昨日のIHヒーターのついたワゴンだけじゃあ、みんなの分、焼けないからカセット・コンロを幾つか持って来るわ

じゃあ、オレも行こうか

荷物が多いなら男手が必要だろう

あ、大丈夫よそろそろ恭子さんたちの朝のトレーニングが終わる頃だから手伝って貰うわ

ああ、だから克子姉は時間を見計らっていたのか

あの人たち体力だけは、有り余っているからねっ

寧も、やって来る裸で

寧は、セックスしたばかりなんだからちゃんと身体を洗いなさいね

はーい、克姉っ

真緒ちゃんとイーディが、洗いっこしている横でシャワーを浴び始める

幼女と褐色肌の金髪武闘娘はいつの間にか、キャッキャ、キャッキャと楽しそうだ

すっかり、良い友達になっている

じゃあ、ちょっと行ってくるわねっ

克子姉たちが、開けっ放しのドアから外へ

オレは部屋の反対側を見る

エア・マットの上に麗華

ベッドの上にアニエス

2人ともショボーンとした感じで、たたずんでいる

アニエスは、ともかく

麗華お姉さんはそろそろ、答えを出してもらわないといけないわね

オレは、渚に振り向く

麗華お姉さんは昨日のホテルで、たまたまの流れであたしたちの家族になってしまったでしょ黒い森の家族が、どういうものなのか、ちゃんと理解しないまま

麗華は黒い森が高級娼館だったということは、香月セキュリティ・サービスの資料で知っていた

だがそれだけだ

このまま、麗華お姉さんが家族に居てくれたら、とても助かるけれどそれは、あたしたちの勝手な都合よね麗華お姉さん今なら、まだ引き返せるんだから

麗華は香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートの籍を失っていない

帰る場所はある

どうしてあたしたちがセックスを重要視しているかセックスを仲立ちとしてしか、家族を構成できないのかお姉さんは、まだ判っていないわ

だから昨夜からの、セックス攻勢に戸惑っている

そうだねはっきりさせてあげないと、いけないんだな

そうよもし、お姉さんに戻る意志があるのなら無理をしてまで、黒森の家族に入らなくてもいいんだから

渚は、寂しそうに、そう言った

オレたちが風呂から上がり服を着ると

恭子さんたちは凄い

カセットコンロと食材どころか大型冷蔵庫を抱えて、下りて来たぞ

ちまちま、台所とここを往復しててもラチが開かないだろどうせ、しばらくはこの部屋で、生活するんだろうから

恭子さんが、イーニーとミーニーに冷蔵庫の設置場所を指示する

そこがいいよ電源も持ってこれるしここの一角に、台所ゾーンを作ろうアニエスから、料理している様子がよーく見えるようにね

何のために、こういうことをやっているかもちゃんと判っている

さすがだ

恭子さんも、ミス・コーデリアも、イーニーとミーニーも

お肌が艶っ艶なんですけれど

昨夜はお楽しみだったんだよっくふふふふっ

笑う恭子さん

あなたたちもそうでしょみんな、スッキリした顔をしているわよっ

ミス・コーデリアが、寧やメグ・マナの顔を見てそう言う

あら、あなたどうしたの

麗華のげんなりした顔を見てミス・コーデリアが声を掛ける

あのわたくしは

麗華お姉ちゃんは、まだヴァージンなんですっ

とマナが余計なことを言う

あら、どうしてそんな立派な肉体をしているのにっ

ミス・コーデリアは、そう言うと小さな声で、囁く

もし、男が苦手だったら、こっちへ来てもいいのよっあなたなら、歓迎するわっ

いえそれはお申し出は、有り難いのですがそっちの方が、怖いですから

怖くなんてないわよ優しくしてあげるわっ

麗華の手を握るミス・コーデリア

こんなにあっさりと懐に入られるなんて麗華、本当に弱っているな

コーデリアあたしの眼の前で、堂々と他の女に声を掛けるわけ

恭子さんが、ジロッとミス・コーデリアを見る

キョーコ、そういうんじゃないわよっペットにするのもいいかなってそれにこの子なら、あたしたちと一緒の仕事だって組めるだろうし

ああ見た目だけでなく

ミス・コーデリアは、麗華の身体能力も評価しているんだ

だめだめ、その子は生まれつきの正統派(ベビー・フェイス)だからあたしたちみたいに、自分からヒールを演じられる子じゃないよ

ふんそうね

値踏みする眼でミス・コーデリアは、麗華を見下ろす

この子は、この国でお守り役に徹するのが正解だと思うね

麗華が、その言葉にカッとなる

ああ、ごめんね別に警護人という職業を貶めるつもりはないんだよ

警護というのは守ることだけに、特化した仕事だろでも、ほら、あたしたちは守るだけではなく、時には攻めることもしないといけないから

国際犯罪者ですからねあたしたちは

主人に付き従って普段は自分の爪と牙を隠すのが、あんたの仕事だろでも、あたしたちは爪と牙を、常に周りの連中に見せ付けないといけないから

凶暴で、狂ってて、どうにも手の付けられない野獣だって、徹底的に思い知らせないと嚙み付かれるからね

麗華はふと、考えて

失礼を承知で、お尋ねしたいのですが

いいよ、何でもどうぞ

恭子さんは、明るく答えた

なぜ犯罪者の道を進まれたのですか恭子さんやミス・コーデリアの能力なら各国の政府機関でも、充分、部隊長クラスの役職に就けると思いますが

恭子さんは笑った

ミス・コーデリアは不機嫌になる

キョーコ、何なの、この子馬鹿なの

そう言わないで、コーデリアこれが、ニホンジンなんだからさ

日本人

だから、あたしは、この国が好きなんだここは、本当にパラダイスだからね

そして麗華を見下ろす

あのね犯罪者にしかなれなかったから、犯罪者になったんだ選択肢は無し一本道さ

もし、犯罪を犯さなければううん、正確にはそうじゃないなもし、何もしなかったら絶対に犯されて、殺されて、埋められるそういう世界で生まれて、育ったんだよあたしたちは

ニッと微笑む恭子さん

政府とか警察とか教会とか誰も助けてくれない親も兄弟も大人という大人は誰一人だって信用できない生き残るためには死にたくなかったら、犯罪を犯すしかないそういう世界が、地球上では、あちこちにあるんだよお嬢さん

同じ年頃の子が、たくさん死んだわあたしは、生き残るだけの力があったから、まだ生きているそれだけのことよ

ミス・コーデリアは、ふんと鼻を鳴らす

強くなりたくて、強くなったんじゃないの強くないと、殺されてたずっと、ずっとね今だってそうよ

生きるためにした犯罪が次の犯罪を呼ぶ最初っから、犯罪者だからね絶対に足抜けはできない気がつきゃ、世界の犯罪組織の中でしのぎを削ってたのさオール・スター・キャストでね

やられないためには、自分の牙と爪で敵を倒していくしかない弱みを見せたら、やられる強くなりそうなやつは、先に潰す

そうやって、生まれてからずっと、サバイバルしているのさあたしたちはね

失礼を致しました

2人に頭を下げる

いいんだよあんたは、身内だからね

恭子さんは、優しく麗華に言う

身内

ああ、だからここに居るんだろ

平然と麗華に告げる

あたしたちみたいな身の上で一番大事なのは、家族(ファミリー)さ御名穂は、あたしに家族をくれた御名穂、克子、渚、マルゴ、寧みんな、あたしの家族さこの子らが認めた子ならあたしは、どんな子でも受け入れるよ

あたしもよ仕方ないわキョーコの家族は、あたしの家族だものもっともまさか、弟ができるとは思っていなかったけれど

ミス・コーデリアが、オレを見る

す、済みません

いいのよあなたは普通の男とは違うみたいだしあなたの記録、昨夜観たわ、なかなか面白かったわよ

オレ面白いのか

実際 あんたの存在が、御名穂の狂気にブレーキを掛けている感謝しているよ

ミナホ姉さんの狂気にブレーキ

あらあたしが、どうかしたのかしら

と部屋の入り口に、ミナホ姉さんが現れる

マルゴさんと雪乃も居た

3人とも、いつでも外出できるような服に着替えていた

おやおやどうしたんだい

恭子さんは、何も無かったという顔をしてミナホ姉さんに、微笑む

雪乃さんの引き取りのことでね市川さんと交渉しているんだ

市川老人

雪乃とマナの、母の父親だ

それで市川さんが、マナちゃんと話したがっていてね

マナが、ビクッと震える

とりあえず、掛け直すって言っておいたけれどどうする何なら、断るけれど

いいえお話しします、あたし

スッと立ち上がる

ミナホ姉さんは携帯を取り出して、リダイヤルする

もしもしお待たせして、申し訳ございませんこちらの条件について、お考えいただけましたかはいわたくしたちは、香月様のご了解を得ておりますありがとうございますでは、そういうことで

ミナホ姉さんはジッちゃんの名前を使って、市川老人に要求を呑ませたらしい

白坂雪乃は一時間後に、白坂創介さんの自宅前で解放致しますお手数ですが、そちらまで、お引き取りにいらして下さいはい、では舞夏さんに代わります

ミナホ姉さんはマナに携帯を手渡す前に、外部スピーカー機能をオンにした

どうぞ、マナさん

ミナホ姉さんは改めて、マナの名を呼ぶ

うん頑張れよ、マナ

オレも、マナにそう言った

それがマナに勇気を与えると信じて

マナが携帯に向かって

舞夏か

雪乃は、帰して貰えることになった舞夏も、一緒に戻って来てはくれないか

いいえあたしは、ここに残ります

ここに残ってここに居る人たちと、幸せになります

そっちへ帰ったらあたしは、もう幸せにはなれないから

どうしてだ僕は僕は、会社を退職することにしたよ東京を引き払って、神戸に住むことにしたあちらには、古い友人がいるお前も雪乃も、白坂の名前を捨てて、神戸でやり直せるんだぞ向こうなら、お前たちを知っている人間は誰もいない

そんなわけないじゃんか

これだけテレビで散々取り上げられているんだよっインターネットだってお祖父ちゃんと白坂創介の関係なんて、神戸の人だって知ってるよっ場所を変えて暮らしたって、何も変わりはしないよっ

マナの言葉に雪乃が、ハッとする

それに、あたし判っているよお祖父ちゃんもママも、もうあたしはオシマイだって思っているでしょっ

舞夏僕たちは、お前のためを思って

あたしのためを思うんならあたしを見捨ててあたしは、ここで生きていくからあたしはもう、ここの人なのここなら、あたしはあたしとして生きていけるんだもの

話を聞きなさい、舞夏

舞夏じゃないっあたしは、吉田マナっ吉田マナなのっ

吉田マナとして、一生生きていくわ幸せになるから

マナは腹を括る

市川さん今までありがとうございましたあたしの中の舞夏さんが、あなたにとっても感謝しています

いつか、赤ちゃんを産んだら吉田マナとして、顔を見せに行きますでも、その時は他人ですいいですね市川さん

舞夏、ちょっと待ておい

マナは、電話をミナホ姉さんに差し出す

もういいですありがとうございます

ミナホ姉さんは電話を受け取り

こういうことになりましたので

待ってくれ、もう少し舞夏と話させてくれ

無駄ですわ彼女はもう、市川様のお孫様ではございませんから

彼女はわたくしたちの妹として、育てます

そんなことは、許さんぞっ

ミナホ姉さんは静かに答える

市川様は、もうどうすることもできませんわ

わたくしたちは香月様に認められた犯罪組織ですので

広告業界の重鎮だった市川老人も娘婿のスキャンダルで退職が決まれば、ただの人だ

雪乃さんが生きて帰ることだけで、ご満足いただかなければ困りますもちろん、今からでも、死体の雪乃さんをお返ししたって構わないのですよ

舞夏を、娼婦にだけはしないでくれ

当たり前です自分の妹に、そんな惨いことをさせはしません

では、一時間後に

ま、待ちたまえ

ミナホ姉さんは、無視して電話を切った

お兄ちゃんっ

マナが、泣きながらオレの胸に飛び込んで来る

うんマナよく頑張ったぞ

もう、絶対に離れないからねっ幸せになろっみんなでねえ、お兄ちゃんっ

なんなのよ、これっ

舞夏、あんた馬鹿なんじゃないのっこいつら、みんな頭がおかしいのよっこんなやつらと一緒に居て幸せになんかなれるわけがないでしょっ

マナはキッとした眼で、姉に振り向く

うるさいよ、あんた

あんた1人で、とっとと帰りなよあんたなんか、あたしたちは要らないんだからっ

憎しみの眼で雪乃を射貫く

何なのよ、それっ帰れるのよっここでの嫌なことは、全部忘れて神戸で、新しく人生をやり直すのよっ

はんっそんなの無理だよねっ神戸に行ったって、白坂創介の娘だっていう悪名は、一生ついて回るわっ

それはお祖父ちゃんの力で

会社を辞める市川さんに、そんな力が残っているわれないでしょ

白坂の本家の人に頼むわ

あんた、バッカ過ぎ白坂本家は、あたしたちの殺害要請まで出してたのよっ今更、白坂創介の家族に関わりたいなんて、キトクな人がいるわけないじゃんっ

じゃあ、国に訴えるわよっ警察にだって

あのさあ雪乃さん、一昨日のホテルで何を見ていたわけ香月さん以上の権力者なんて、日本にはいないんだよっ

それだって法律は法律よ正義ってものがあるでしょパパのことは、パパの事よあたしは、あたしに起こったことを訴えるわ

雪乃がオレを指差す

あたしは、あの男にレイプされたんだから何度も、何度もっこの怒りと、口惜しさは絶対に公表してやるんだからっ

公表して、誰が信じるの

あたしが被害者のあたしが、証言するのよっみんな、信じるに決まっているじゃないっ

雪乃は力限りの声で、叫んだ

ベッドの上で、アニエスが怯えている

イーディが、さっと行ってアニエスを抱いてくれる

一方、真緒ちゃんはぽかーんとした顔で、雪乃を見ている

そうかしらあたしは、信じないと思うけれど

ミナホ姉さんは、冷たく言った

そうだねっあたしも、信じない方に100ドル賭けるよ

何でよっみんなが、あたしを信じないわけないでしょ

メグが重い口を開く

雪乃あなた、覚えていないの

あなた学校の人たちには、校長室の隣の部屋で遠藤君にレイプされたことになっているのよ

それだってその男じゃないっケンジじゃないわっ

雪乃は、吠える

でも学校中の人たちは、遠藤君だと思っているあなたのレイプ事件も、もうインターネットで広まっているのよ

うちの学校の生徒だってネットぐらい、接続しているもの今、話題の白坂創介の娘のレイプ事件なんて、書き込まないわけがないじゃない

だから雪乃が、ヨシくんにレイプされたって言ったって、みんな雪乃の頭が変になったとしか思わないわよ

誰にレイプされたのかみんな、知っているんだから

それにね彼と恵美が婚約したってことも、うちの学校では知らない人がいないのよその上、2人ともクラスメイトやクラブの人たちの前で、ベタベタとまくったでしょラブラブで学校公認の婚約者の居る男子生徒が、レイプなんかするわけないじゃない

ミナホ姉さんは、クスクスと笑う

あなたあたしがクラスで話した時、聞いていなかったの婚約している相手とは、セックスして良いって、教師のあたしが宣言したのよセックスに不自由していない男子が、何だってあなたみたいな子を犯すのよ

こうしてみるとミナホ姉さんの策略は凄い

凄いというか酷い

だから、ここから出て行った後のあなたが、何を言ってもあたしたちは、別に気にしないわ何でもやりなさい弁護士にでも、裁判所にでも、訴えれば

ミナホ姉さんは、さらに畳み掛ける

あなたの行く先が、神戸じゃなくって精神病院になるだけだと思うけれどね

市川さんだって、わずかばかりの世間体は残っているわ頭のおかしいことを大声で喚き続ける孫娘はどうしたって、病院に閉じ込めるしかなくなるわよね

うふふふと、ミナホ姉さんは笑う

ホントに馬鹿で想像力が、これっぽっちもないんだね、雪乃さん

だから、あたしはこっちに残るんだよそっちに帰ったって、地獄しか待っていないもんっ

こっちならあたしは、幸せになる絶対に、幸せになるから歯を食いしばってどんなことだって耐えるよここには、マナの家族がいるんだもん

ど、どうしてよ

雪乃が呟くように言う

何で、こんなことになるのよ

ギッと怒りの眼で

妹を抱き締める、オレを睨む雪乃

あたし、一晩ずっと考えたわ

低い声で、オレに言う

眼に涙を浮かべて

確かに、あたしのパパは悪いことをしたのかもしれない

ボロボロと涙を零しながらそれでも、雪乃をオレを睨み続ける

でもそんなのあたしには、関係無いじゃないっ

あたしは、何も悪いことはしていないわっなのに、なのに

なのに、どうしてあたしが、こんな酷い目に合わないといけないのよっ

今話と次話を使って、黒い森が狂気の犯罪集団なんだってことを、しっかりと書きます

感想欄で、何人かの方が書かれたとおり

黒い森の方が社会的・倫理的・論理的に異常な存在で

雪乃の方が、正常です

それは、当然です

これはエロ小説ですしこういう作品によくあるこの作品は、公序良俗に反することを題材としていますが、作者はそれを推奨する意志はありませんという一文が、やはり適用されます

そもそも、ハーレムそのものが、現在の日本の倫理から逸脱しているわけですし無理矢理、理屈を付けてハーレムを成立させるというこの作品のテーマそのものに、最初から無理があります

そういう諸々のことを、判っている上で書き続けています

この作品のメイン・ヒロインが雪乃なのは彼女だけ、正常な倫理観の世界に居るからです

私は絶対に黒い森の人たちが、正しい人たちだとは思っておりませんので

とにかく、次話に続きます

できれば、感想は次話をお読みになってから、お願い致します

まだ、雪乃の雄叫びの途中ですので

380.荒ぶる、雪乃 (その2)

あたしもね何度も、そう思ったわあたしは、何も悪いことはしていないのにどうしてって

あたしもよどうして、こんな目に遭わないといけないんだって幾晩も泣いたわ

克子姉も呟く

あたしもだよどうして、どうして神様、こんなの酷すぎるよって、夜が来る度に泣いていたよっ

寧も

あたしもよ涙なんて、枯れるぐらい泣いたわ

渚はそう言って真緒ちゃんを見る

真緒ほんのしばらくだけ、静かにしていてねあなたは、あたしたちが何を話しているのか、まだ判らないと思うけれど真緒には、ここに居て欲しいの真緒が今、ここに居てくれたことがいつかきっと、大きな意味を持つはずだから

真緒ちゃんの髪を優しく、梳る

あなたは、忘れちゃうかもしれないでも、あたしは覚えているいつか、ちゃんと話してあげるからね

渚の言葉に、真緒ちゃんはへへっと笑って

だいじょーぶだよ、ママまお、ちゃんとおぼえているから

そうありがとうね真緒

渚は、悲しげに笑った

ああんたたちが、人生をメチャクチャにされたってことは、判ってるわよ

でもあたしには、関係無いじゃないっあんたたち、パパを捕まえているんでしょだったら、パパをギッタギタにすればいいじゃないっ何で、あたしなのよっ

ミナホ姉さんが、冷たい眼で雪乃を見る

そうねどうして、あなたなのかしらね

どどういう意味よ

ミナホ姉さんは、天窓を見上げる

朝の清らかな光が、柔らかに差し込む

あたし娼婦にさせられた頃、ずっと考えていたわあたしのお父様はどうして、あたしを白坂創介の好きにさせたんだろうって

ミナホ姉さんの父親黒森公一郎

あたしと奈生実はお父様の隠し子でいいえ、お母さんは黒森公一郎から、養育費も慰謝料も、一銭たりとも貰っていなかったから実質は、父なし子だった子供の頃は、お父さんがいないことが本当に寂しかったわ

部屋の中は、シンと鎮まっている

アニエスすら、ミナホ姉さんの話を聞いている

あたしたちのお父さんは、どんな人なんだろうどうして、あたしたちに合いに来ないんだろう夜、布団の中で、奈生実と話したことがあるわ

父の不在

きっと、何か理由があるんだろうとっても、重大な外国に居るのかもしれないもしかしたら、悪い人で刑務所に居るのかもしれないでも、きっと理由があるんだろうって思っていたわどうしようもない事情があってそれで、お父さんはあたしたちに会いにはこれないんだって絶対に、お父さんだって、あたしたちに会いたい一緒に暮らしたいはずだってあたしたち、信じていた

幼い姉妹2人だけの暗い夜

きっと、ミナホ姉さんの母親は、夜も働いていたのだろう

なのにあたしは、12歳でお母さんと妹と引き離され拉致され、監禁されて、娼婦にさせられた

白坂創介が黒森公一郎の隠し子に眼を付け

無理矢理、ミナホ姉さんを

犯されて、処女を失った後白坂創介が、あたしに言ったわあっちを見ろよ、あそこに居るのが、お前の親父なんだぜって生まれて初めてお父様に出遭った時あたしは、セーラー服をビリビリに切り裂かれて股から血と精液を垂らしていた

雪乃がゾゾッと身体を震わせる

でも、一目見て判ったわお父様だってお父様の顔は奈生実に似ていたからいえ、奈生実はあたしの方が似ているって言ってたわねふふふどっちにしても、あたしたち姉妹は、お父様の遺伝子を受け継いでいたってことよねあはは犯されて、ぐったりとしたあたしを見下ろすお父様は呆然としていたわ死んだ猫を見るような眼で

グッと、息を呑むミナホ姉さん

そして地獄の生活が始まったのよ

白坂創介支配下の黒い森での少女娼婦としての生活

あたしやっぱり思ったわどうして、お父様はあたしを助けてくれないんだろうって白坂創介の言うなりでなぜ、あたしにお客を取らせるんだろうって毎日、毎晩

黒森公一郎は父親にコンプレックスを抱いていた

白坂創介は、それに眼を付け

黒森公一郎をそそのかし高級娼館黒森楼を支配下した

父親を追放した、黒森公一郎は白坂創介に弱みを握られ

白坂創介の横暴を許した

きっと理由があるはずだとっても、大きな理由がそうじゃなかったら、実の父親が娘にこんな酷いことをするはずがないあたしは、そう信じていたわそうでも思っていなければ絶望で、気が狂ってしまいそうだったあたしは、まだ子供だったんだもの

ミナホ姉さんはククッと笑う

そして、そのうちにねあたしは、こう考えるようになったのよお父様が、あたしを娼婦として働かせたいのなら一生懸命、働こうお父様が、そう望むのなら精一杯、娼婦として奉仕しよう血の繋がったお父様のお望みなんだから

スッと雪乃に振り向く、ミナホ姉さん

あたしね結構、頑張ったのよ娼館の稼ぎ頭には届かなかったけれどナンバー3ぐらいにはなったわ中学生なのにねええもちろん、あたし、お客様が望むことなら何でもしたものどんなことだってお客様が喜んで下さるなら

ブラウスの胸元をギギッと掻きむしる

そうしたらお父様は、あたしを褒めて下さる声を掛けて下さるお話をして下さるそう思っていたもの頑張れば耐えれば、きっと報われるってでも

残酷な運命は続く

白坂創介は、奈生実まで拉致して娼婦にした犯して娼婦にしてそして、またお父様はただ見ているだけで

あたしたち姉妹には一度も、声を掛けてくれなかったわあたしたちはあたしも、奈生実も、お父様に済まないと謝って欲しかったわけじゃないのよっ頑張っているなでも、オレのために働けでもいいどんな言葉でも良かった声を掛けて欲しかった娘だって、認めて欲しかった

もう、いいから

結局奈生実は、殺されてあたしは、お腹の子供を堕胎されて二度とセックスのできない身体にさせられたわそれでも、お父様はあたしと会話しようとしなかったあたしが、香月様に拾っていただいて黒い森の運営者になった後も

あたしが運営者として、黒い森を立て直すのに努力したのもやっぱり、お父様に認めて欲しいと感じていたからだと思うわうふふふふ馬鹿みたいよね向こうはあたしのことなんて何とも思っていなかったのにちょっと、心が痛むだけで娘とも、家族とも、思っていなかったのに

真緒ちゃんが渚に言う

せんせー、かわいそう

渚は、娘を抱き締めて

そうよ、とっても可哀想なのお父さんがいなかったんだもの

真緒ちゃんは渚の手を右手で握り、そしてオレに左の手を差し伸ばす

まおのて、にぎって

オレは、小さな幼子の手を握る

真緒ちゃんは、両手に渚とオレの体温を感じてニコッと微笑む

よかったまおには、ママとパパがいて

な、何よあんたの言いたいことは、だいだい判ったけれどさ

雪乃がミナホ姉さんを睨み返す

結局のところ、あんたが恨んでいるのは、あたしのパパじゃなくって、自分の父親なんじゃないのだったら、お門違いよあたしたちを巻き込まないでよっ勝手に親子で殺し合いでも何でもすればいいじゃないっ

もうしたわ

お父様は黒森公一郎は、もう廃人よそういう薬を使ったからしばらくは、人工呼吸器の力で生きているでしょうけれど植物人間状態よあなたのお父様、白坂創介を始末したら人工呼吸器も止めるわそういうことになっているから

自分の父親を、殺す気なの

あんな男が、父親なわけないじゃないっ

雪乃は、その一喝に声を失う

あたしは勘違いしていたのよ血が繋がっているから何か絆があるとか、庇護してくれるとか、優しくしてくれるとか、そんなことは無いのよあの男はあたしたちにとって災いでしかなかったあたしと家族を地獄に突き落としただけじゃないっ敵よ父親なんかじゃないわっ

ミナホ姉さんの叫びが地下室に響く

あの人が、あたしに教えてくれたことはただ一つだけよ誰も信じるな人に期待するだけ無駄よみんな、あたしたちを食い物にしようと思っているだけなんだから薄汚くて、邪な人たちと、自分の力で闘わなくちゃいけないのよ自分の爪と牙を持って嚙み付き合い、殺し合う覚悟であたしたちはいつだって、サバイバルしているんだから

ああ、そうさあたしたちは、生まれてからずっとサバイバルしている邪悪なものに、いつも付き狙われてそれを排除するために、闘い続けるのさ時には、周りのやつらを、みーんな蹴落とすこともあるでも、しょうがないよねあたしたちは、自分が生き残ることだけで精一杯なんだからさ

そうよあたしも克子も、娼婦としては優秀だったわ本当になんでもしたわどんなことだって稼ぎの良い娼婦でなければ悲惨な目に遭わされるだけだもの生きるためには、優良な顧客をたくさん作るしかなかったのよ

忘れないわ稼ぎの悪い子たちが、白坂創介にされたことをセックスだか、人体実験だか判らないことをさせられてたくさんの子が死んだのあたしは死にたくなかっただから、あたしは望まれれば、どんなセックスでもしたわ

あたしのお母さんはそうやって死んだ娼婦の一人よ白坂創介に拉致され、娼婦にされて遊び半分で、あたしを産ませてわざわざ、雪乃と同じ年に悪趣味よねお母さんは変なクスリを飲まされて、死んだわ苦しんでいるのに病院に連れてって貰えなくてあたしはずっと見ていたわ苦しむお母さんを

マナがメグを抱き締める

あたしも、マルゴも、寧も、コーデリアもそこのイーニーとミーニーだって、似たようなもんさみんな、過去にそれぞれ苦いエピソードを持っている酷い目に遭ってきたのさだからあたしたちは、自分の爪と牙を必死になって手に入れたんだ

そうね、力が無ければ、踏みつぶされても文句は言えないものね

ミス・コーデリアが、ククッと笑う

ああそういう思いをしてきて、闘う力を身に付けたからこそ、あたしたちはこうして寄り集まっているのさあたしたちは、そういう家族なんだよ

本当の家族をロストしてきたからこそ

そして、一人ぼっちで耐える日々を過ごしてきたからこそ

オレたちは、今、家族になろうとしている

弱い人間は、どれだけ集まったって強い奴らに搾取されるだけさお互いの傷を舐め合うだけの、弱い集団なんか作っちゃいけないんだよそれこそ、社会の迷惑だからねあたしたちは強い、あるいは強くなりたいって闘っている女の集団だよそういうやつじゃなきゃあたしの家族に入る価値は無いみんな、判ってるだろうね

恭子さんが、オレたちを見る

あたし、頑張ります

メグとマナが、そう言った

麗華はうつむいている

香月のジィさんだって今は、あたしたちに力があるからこそ、味方になってくれているんだもし、あたしたちが力を失えばあのジィさんは、あたしたちを見捨てるよそれを裏切りとか卑怯とか、言っちゃいけないのさ香月のジィさんだってサバイバルしているんだからねっ

ジッちゃんもサバイバルしている

香月家という、バトル・フィールドの中で

みんな、生きていくこと、幸せになることに必死なんだから

そういうこった白坂創介という男は、どうしたって、あたしたちがいつかはブチ殺さないといけない男だっただから、処分するそういうことで、納得してもらうよ、お嬢ちゃんこれも、あたしたちのサバイバルだからね

恭子さんが、雪乃に言う

あたしらハナっから、余裕なんかこれっぽっちも無いんだだから、全力で潰させて貰うよそもそもあたしら家族は、男って生き物をこれっぽっちも信用していないからね

そうよ男なんて、この地球上から全滅すれば良いのよそうしたら、この星はレズビアンだけの幸せな惑星になるわ

ちょっと待ちなさいよなら、こいつはこの男は何なのよっ

雪乃が、オレを指差して叫ぶ

この男は何の力も無いじゃないっ何で、あんたたちと一緒に居るのよ

オレには爪も牙も無い

無力なだけのガキだ

だってまおのパパだもんっ

真緒ちゃんが、言った

そうよあたしの夫よ

あたしの弟だよんっ

寧が

あたしの弟でもあるのよっ

あたしの婚約者です

マナのお兄ちゃんだよっ

あたしにとっても弟だよ

あたしの家族よ大切な弟よ

まあ、みんなが、そう言うんだからあたしも、この子は認めるよ家族として

恭子さんも、そう言ってくれる

いや、本当にさっき言った通り、あたしたちは根本的に男は信用しないんだ男って生き物には、散々煮え湯を飲まされてきたからねでも、この子は例外中の例外なんだろうね

ジロッと、オレを見る

あたしは同性愛者だから、よくは判らないけれどやっぱり、異性愛者の子たちには男のパートナーが必要なんだろ特に、御名穂や克子や渚は、娼婦として男とのセックスの快感を身体が覚えちゃってるからね

その点、キョーコやあたしは、最初っから女の子LOVEですものね

ミス・コーデリアが笑う

まあ、そういうこった

そうではありません恭子さん

ミナホ姉さんが反論する

この子は本当にあたしたちの家族なんですよ

この子は、あたしたちに対しては、どんなことでも心を開いてくれるだから、あたしたちも、心を開けるこの子は、あたしたちに隠しごとはしないんです一度、家族になった相手は、絶対に裏切らないそう信じられるこの子の心も、壊れているから

この子も本当の家族に捨てられて、孤独に耐えてきた子ですあたしたちと一緒なんです寂しくて、寂しくて家族を求めていた子ですだから、あたしたちはこの子の前だけでは、身も心も裸になれるんです

今度は、渚が

いつも、外の男たちに対して、爪と牙で武装していなければならない、あたしたちが唯一、心を許せる男の子なんです

うん、あたしも男って大っ嫌いみんな、いなくなればいいのにって思っているでも、ヨッちゃんだけは別ヨッちゃんは、必要なんだよっあたしに

あたしもこの人と一緒なら、幸せになれるって思いましたヨシくんが居なければ、あたしは生きていけないと思います

マナもお兄ちゃんが、いないとダメだよ

そんなマナに、雪乃は

舞夏っあんた、何を馬鹿なこと言っているのよっ

姉をギッと睨むマナ

いい加減にしてよっ雪乃さんっあんた、全然判っていないじゃんかっ

妹の怒号に雪乃はたじろぐ

雪乃さん、自分に甘くて、楽観的過ぎるよあたしが、どんな怖い目に遭ったのか、全然判っていないじゃない

怖い目って舞夏

マナの代わりにミナホ姉さんが、答える

マナちゃんは雪乃さんみたいに、神経が図太くて、頭の中がお花畑じゃなかったのよ

マナに向けられない憎しみを雪乃は、ミナホ姉さんに向ける

ねえ雪乃さんあなたは、どんな時だってどうせ何とかなるって思っていたんでしょ

あたしが殺すって言ったって、そんなの本気なわけがない妊娠・出産させるって話だってどこかで、勝手に堕胎させればいいそんな風に、思っているのよね

ミナホ姉さんが、オレの顔を見る

あなたは彼が、あなたに好意を抱いているって、思っていたでしょそして、あたしが彼の意志をいつも尊重することに気付いていたから危険な状況になりそうだったら、彼に泣きつけばどうにかなる嘘泣きでも、何でも彼は自分のことが好きなんだから、助けてくれるはずだってそう考えていたのよね

そんなわけないじゃないこんなやつ

最初にあなたをレイプした時のこの子のあなたに対する必死さが、ずっとイメージとして残っていたんでしょだから、あなたはいつも、この子に対して自分が優位だと感じていた

ち違うわよ

ミナホ姉さんの言うとおりだ

雪乃をレイプした朝教職員用の駐車場で、オレは雪乃が欲しくてミナホ姉さんに土下座した

雪乃はそれを見ていた

だから、オレが自分に好意があることをよく知っていた

違わないわだから、あなた一昨日のホテルだって、ずっと彼にくっついていたじゃない彼とのセックスだって、どんどん楽しむようになってきてたでしょ彼が、絶対に自分に危害を加えないことを判って彼に頼っていたのよ

そんなわけないじゃないっ

雪乃は喚く

本当に判ってないのなら、あなた、ホンモノの馬鹿よだって、あなた今朝、台所に盗み食いに入ったじゃない

盗み食い

炊飯器を抱いて、しゃもじを咥えているみっともない姿を思い出す

そそれが、何よ

昨夜マルゴは、あなたに絶対に部屋から出るなって、言ったのよおかしな振る舞いをしたら、殺すって言ったはずだわ

なのにあなたは、盗み食いに行ったしかも、その様子を彼に見られて、ごめんなさいも言わなかったあなた人の家のご飯を、勝手に食べていたのよ

その上、恵美とマナさんに食事を作って貰っておきながらありがとうも言わなかったわね

そんなの言う必要ないじゃないっ

だってあたしは、お腹が空いていたんだものそれに、あたしは自分で料理が作れないんだから

あなた生まれてきてからずっと、ご飯を作ってくれる人にありがとうって言ったことがないんでしょ

だってうちの食事は、いつもお手伝いさんが作っていてあの人たちは、仕事でやっているんじゃないっちゃんと、お金を払っているのよ

あなたが、自分でお金を出しているわけではないでしょ

でも使用人に、お礼を言う必要なんて無いじゃないっ

そういうあなたの本性を見たから彼は、あなたのことが嫌いになったのよ

ハッとして、オレを見る雪乃

ああ雪乃みたいな女オレは嫌いだ

ちょっと待ちなさいよ

雪乃の顔が青ざめる

雪乃さん彼に甘えて、彼のことを舐め過ぎたわね

待ってよそうじゃなくってあたしを助けなさいよっ

あたし舞夏を連れに、ここに来たのよっあんたに言えばきっと、一緒に帰してくれると思ったからっほら、とっとと、弓槻先生を説得しなさいよっあんた、あたしに借りがあるんでしょっ

借り

あんたあたしの処女を無理矢理奪ったじゃないっ何度も、何度も、あたしをレイプしたあたし、あんたと散々、セックスしてあげたでしょっ

セックスしてあげた

いいわよあんたが、土下座してお願いするんなら、これからもセックスしてあげるわよっ

あ赤ちゃんは無理よっあたし、あんたの赤ちゃんなんて、絶対に嫌だからっ神戸に行ったら、すぐに病院に行ってもし出来ていたら、堕ろすわよ当たり前でしょ

雪乃お前には、監視が付くって話、ミナホ姉さんがしたろ

出産までは見張り続けているそれを無視したら、殺すって

そんなの嘘に決まっているじゃないっ神戸よっ東京じゃないんだからっどうにだって、誤魔化せるわよっていうか、そのつもりだからねあたし

それと、あんたとの結婚も無理だから

悪いけれど神戸に行ったら、あたしはちゃんとした恋をするわ恋をして結婚するからスポーツマンで、それなりの名家の人とねそう決めているのあんたとは身体だけの付き合いよいいでしょあ、そうだあたしのお腹の文字の消し方を聞いて置いて自分で、病院へ行ってもいいんだけれどやっぱり、恥ずかしいから足で、メールか何かで教えなさいよ

オレと雪乃の人生は交わらない

オレたちは永遠に、捻れたままの関係なんだ

オレたちがずっと、身が凍えるほどの冷たい現実の中に居るというのに

雪乃は一人だけ、彼女の脳内の暖かい、お花畑の中に居る

オレお前とは、もうセックスしないよ

え嘘でしょ

しない死んでもしない

あたしがいいって言っているのよ

もう黙れよ雪乃

白坂創介に甘やかされ放題で成長したこの娘は

どうしようもない

本当に自分だけは、特別に幸運な星の下に産まれてきたって信じているのね

みなさん、申し訳ありません

マナが、みんなに謝った

床に手を付いて土下座して

舞夏あんた、何をやっているのよ

雪乃にはオレたちの本気は、判らない

ミナホ姉さん雪乃は、こいつは本当の地獄を見ないと判らないんだろうか

ええ、あたしはそう思うわ

もしかして

そうよ、だから市川さんのところに帰すのこの屋敷あなたの近くに居る限り、雪乃さんの頭の中はお花畑のまんまでしょうから

その通りだと思う

雪乃これまでに、たくさんの人が酷い目に遭ってきたんだよっお前のお父さんのせいで

だからそんなの、あたしには関係の無いことじゃないっ

ああダメだ

では、雪乃さんあなたに、判りやすく話してあげるわ

あたしね気が狂っているのよ白坂創介とその家族は全員、地獄に堕としてやりたいの

何でよあたしは関係無いって言ってるでしょ

しょうがないでしょあたしは、気が狂っているんだから

ああ、ミナホは狂っているよあたしたちは、みんなそのことに気付いている

気付いている上でミナホの狂気に手伝おうって決めたんだ

何言っているのよおかしいんじゃない、あんたたち

雪乃は震える

本当だよ、雪乃さんこの人たちは、ずっとずっと本気なんだよ人を殺すとか、人の人生をメチャクチャにするとか平気でできる人たちなんだよこの人たちは、ホンモノの犯罪組織の人なんだから

舞夏さん死ぬほど怖かったんだよ本当に、殺されるって判ってお兄ちゃんが、助けてくれなかったらあたしだから、あたし舞夏さんを捨てたんだよ舞夏さんのまんまなら絶対に、殺されたから

だからあたしも、その男に助けてもらえばいいんでしょ

ほら助けなさいよっあたしがピンチなのよっ

助けないよ

雪乃なんて、どうにでもなっちまえばいいんだ

雪乃さん人から受けた恨みは、人に返さない限り解消しないのよ自分の中では、絶対に消化できないわ

ミナホ姉さんが雪乃を追い詰める

はっきり言っておくけれどあたしの憎しみの対象、お父様はもう処分したわあなたのお父様、白坂創介はあたしが思い付く限り、最悪の方法でこの世から抹殺してあげるこの世に産まれてきたことを、後悔させるわ自殺さえさせてやらない真綿でクビを締めるようにじわじわとなぶり殺しにするわあたしたちの、全ての恨みと憎しみを込めて

あたしには関係無いないって、言ってるじゃないっ

雪乃さんは白坂創介を苦しめるための、道具の一つよ刺身のつまみたいなものよ白坂創介を究極の絶望に追い詰めるためのあなたには、犠牲になって欲しいのよ

じょ冗談じゃないわよっ

ええこれは、冗談ではないわあたしは本気よ

ミナホ姉さんは悪魔の様な笑みを浮かべる

仕方無いでしょだって、あたしは狂っているんだもの

ぶるぶると震え出す雪乃

狂ってる、本当に、狂ってるわよ、あんたたちっ

ああオレも狂っているよ

あたしたちも、狂っているわよ

舞夏助けなさいよあたしは、あなたの姉なのよっ

ごめんなさいあたしには、雪乃さんなんて姉妹はいませんから

マナは、冷酷に言う

もし居たとしてもこちらから、縁を切りますだって、雪乃さんどうしょも無いんだもの

雪乃は人の気持ちが判らないし、人の気持ちなんて判らなくてもいいと思っているんだろじゃあ、しょうがないよ

オレも突き放すしかない

何よっとにかくあたしは、市川のお祖父ちゃんのところへは帰して貰えるんでしょうね

それは約束するよ

じゃあ、早くしてよっあたし、こんなところもう、居たくないんだからっどこだってここよりは、マシよっ

市川老人のところに帰るということは

現実と直面するということ

雪乃の前に待っているのは

ホンモノの地獄だ

ここから出られればあんたたちには、手出しできないんだからっせいぜい、いい気になっていればいいわっ

雪乃は何も判っていない

うーむ、あんまり巧く書けていないかも

とにかく、雪乃の温度差の違いだけ、はっきりすれば良いと思うのです

書棚の整理をして、驚いたこと

私、手塚治虫先生の紙の砦なんていつ買ったんだろう

湾岸ミッドナイト、同じ様な表紙絵が多すぎて、同じ巻が2冊ある

381.ホットケーキ

ねちょっと、想像してみてよ

モハベ砂漠のど真ん中に、一人の女の子はピストルを持った強盗と二人きりで居るとする強盗は、女の子に銃を突き付け金を奪って、犯して、殺すって言っているこの女の子は、どうしたらいいと思う

モハベ砂漠って、どこよ

それが気になるのか

ロサンゼルスの先だよまあ、別にどこでもいいんだよ誰もすぐには助けに来られない様な場所ってことさ

それじゃあ、何をしても無駄じゃないどうしたって、殺されちゃうんでしょその子

土下座して助けを乞うとか命だけは助けて下さいとか、そういうことをする可能性は無い

いや、あたしはその子じゃないから判らないわよでも、そんなことをしたって何の意味も無いじゃない殺す気満々なんでしょその強盗は

じゃあ、もしあんたが、その女の子だったらどうする絶対に命乞いはしない

そんなのわかんないわよあたしが、そんな目に遭うことなんか、あるわけないんだから

あたし、モハベ砂漠なんて、一生行かないと思うし

そ、そこなのかポイントは

だいたい、そんな強盗と二人きりになるなんて馬鹿なことあたしはしないわあたし、人を見る眼は確かだし慎重な性格だもの

お、おう

だからもしもっていう、前提が成立しないわよ

雪乃は今、国際的に有名な犯罪者と話をしているんだけれど

いや、お前恭子さんの隣にいる、ミス・コーデリアが瑠璃子の父親を一撃で蹴り殺したのだって、目の前で見てきたろ

本当に客観的な視点で、自分が今、どんな立場に立たされているのか理解できない女なんだ

ここまでくるとゾッとする

どうしょもなく貴族なんだね発想があんたは

恭子さんは、呆れ顔で笑った

それ褒めてるのけなしてるの

皮肉だってことすら雪乃には、判らないらしい

もちろん、褒めているのさ

あっそう

雪乃はミナホ姉さんを見る

もういいでしょ帰らせてよ

マルゴ送ってあげて

マルゴさんが、雪乃の方へ行く

ばいばい、恵美もう一生、あんたの顔を見なくて済むと思ったら、清々するわ

雪乃は、メグに言う

メグは、答えない

舞夏これが最後のチェンスよあたしと一緒に帰りましょう

マナも、答えない

あっそ裏切り者覚えてなさいねいつか、後悔するわよ

そして、雪乃はオレを見る

あたし判っているんだからねあんたが、本当はあたしのこと好きだってこと

雪乃の眼は最後まで、オレを見下したままだった

あたしのこと、あんなにガッついた眼で見てたじゃないずっとさ

入学式の日から他にも、あたしに色目を使う男子はいっぱいたけれどあんなに気味の悪い眼で、ジロジロ見続けていたのは、あんただけだった今だから、言うけどずっとずっと、気持ち悪かったんだからね

雪乃はオレの視線に気付いていた

いや、そういうものだろう

これでもう、二度とあたしのことは抱けなくなったのよ一生、後悔なさいよねっ

雪乃は、自分を世界中の誰よりも価値のある人間だと思っている

その幻想が、解けない限り雪乃とは、会話できない

オレも、何も答えなかった

ふんっ行くわよ

雪乃が、マルゴさんに言う

はいはいじゃあ、お姫様を届けてくるよ

頼むわ

雪乃は、入り口のドアをバンッと蹴飛ばして出て行った

さあ、疫病神は出て行ったしご飯にしましょうか

ずっと、後ろの方に居たイーディが出て来てマナと話している

ああ、何なんだ、あれはって言っているよ

マナが、通訳する

あの女からとても、陰気なオーラを感じただってさ

イーディも人の気を感じ取ることのできる武闘家だ

場の空気は、読まないが

とにかく、あの人は、もう来ないから安心してとだけ、伝えといたからっ

マナは、そう言う

まああそこまで、自尊心が肥大している子もなかなかいないよねさすが、ソースケの愛娘だわ

本当に済みません

済みませんでした

雪乃の姉妹であるメグとマナが、みんなに謝る

あ、ごめんごめん別に、あんたたちのことを言ったわけじゃないんだよ

恭子さんは謝るが

いえマナも、舞夏さんの頃は、雪乃さんとおんなじ様に考えていましたから自分は特別な女の子で優遇されているのが、当たり前でお兄ちゃんは、あたしのことが好きなんだから、お兄ちゃんに縋り付けば、どんなことでも許して貰えるって思っていました

マナはラブ・ホテルで考えを改めて、心の底からオレたちの家族になってくれた

雪乃さんを見ていてちょっと前の自分を見ているようでした今のあたしはみなさんに、生きていることを許して貰っているだけなんですよね

そんなこと、気にしなくていいんだよあんたは、もうあたしたちの家族なんだから

家族の父親役である恭子さんが、マナに言う

はいありがとうございますあたし家族の一員として、一生懸命頑張りますからまた、あたしが調子に乗って、生意気なことをしたら、すぐに叱って下さいお仕置きして下さいよろしくお願いします

マナはその場に土下座して、オレたちに頭を下げた

さっそくだけれどマナちゃんは、今日から特別食だから

克子姉が優しく笑って、言った

スーパー・モデルを目指すための肉体改造始めるよっ午後には、マルゴお姉ちゃんの作ってくれた運動プログラムもあるからねっ

寧が、マナに言う

はいっよろしくお願いします

マナはサッと立ち上がって、礼儀正しくお辞儀をする

ん麗華

どうしたんです麗華お姉さん

渚が、笑顔で尋ねる

いいんでしょうかわたくし

麗華は、困惑している

あたしもこのまま家族に入れていただいて

それは、麗華お姉さんが、ご自分で判断なさることだと思いますわ

彼は麗華お姉さんを、もう家族だと思っていますだから、今後、お姉さんがどういうお立場になられたとしても彼は、家族としてお姉さんを全力でサポートするでしょうねあたしたちは、彼の意志に従うだけです

うんもし、今、麗華がやっぱり、家族から抜けると言ってもオレは、それを許すし家族でなくなった麗華を、これからも家族同様に扱っていくと思うだってオレはもう、麗華の人生に踏み込んでしまったから

人生に、踏み込む

ああ一生、責任を持たないといけないって思うんだ

自分でそう言ってハッとする

では雪乃は

まあ、慌てて答えを出す必要はないよゆっくり考えな

恭子さんが麗華に言う

そうだよいっそ、こっちの組に入ってもいいんだからね同性愛は、楽しいのよっ

ミス・コーデリアがそう言って、笑った

そして朝のホットケーキ大会となる

大きな鉢に、ホットケーキミックスを大量に作って

複数のコンロで、どんどん焼く

朝の地下室に、甘ったるくて美味しそうな匂いが立ち込める

アニエスが、自分のベッドから興味深そうにこっちを見ている

これまでのアニエスは、できあがった料理しか見ていない

粉や牛乳や玉子が掻き混ぜられ焼いてケーキになっていくという過程を、驚いた表情で見ている

これで料理とは、誰かが、自分のために作ってくれていたということを、理解してくれれば

もう一人イーディの方は、みんなとの共同作業にキャッキャと騒いでいる

マナや真緒ちゃんと、ホットケーキミックスを掻き混ぜるのが楽しいらしい

あっという間に大量のケーキの山ができあがる

蜂蜜やバターや生クリームは、好きに付けて食べて下さいハムとかもありますよそれから、サラダも食べて下さい

マナちゃんは、ホットケーキは1枚だけねサラダは、どれだけ食べてもいいわ後はお薬とか、サプリメントがいっぱいあるからいいわね

それでは皆さん

オレたちは、大皿からケーキを取って食べ始める

イーディが、アニエスの分を持って行こうとするが

マナが、イーディに何か言う

真緒ちゃんあっちのお姉ちゃんに、ケーキを届けるんだけれど、一緒に行こう

真緒、行ってらっしゃいとっても綺麗なお姉さんでしょ

渚も娘に言う

そして、イーディ、マナ、真緒ちゃんの3人でアニエスの処へ

はーい、おねぇちゃんどおぞっ

真緒ちゃんが、ケーキの皿を手渡す

横でイーディーが、うんうんと頷いている

マナも、ニコニコと笑顔でアニエスに微笑む

アニエスはおずおずと皿を受け取った

おねえちゃんっひとにもってきてもらったら、ありがとうっていわないと、いけませんよっ

真緒ちゃんが言った

か細い声だが確かに、そう答えた

えへへっどういたしましてっ

にっこり、微笑む真緒ちゃん

おねえちゃんおなまえはっ

真緒ちゃん、そういう時は、まず自分から名前を言わないといけないのよっ

マナが、お姉さんらしくそう言う

あっ、そうでしたっこんにちわっはじめましてっまおですっおねえちゃん、きれいですねっ

あ、アニエスですの

小さいが、はっきりとした声だった

ああにですの

アニエスっていう名前なのよ、真緒ちゃん

マナは、そう言って、アニエスを見て

あたしはマナっよろしくねっ

そのまま3人は、アニエスを囲んで食事を始める

イーディには、マナが通訳してやっていた

うんとっても、良い感じだ

いい景色だね可愛い女の子たちが、集まって食事しているのはさ

恭子さんが呟く

そうねあの子たち、あのまんまみんな同性愛に目覚めないかしら

ミス・コーデリアは、物騒なことを言う

まおは、ことりさんがだいすきですっアニエスちゃんは、何がすきですかっ

真緒ちゃんが、どんどん切り込んでいく

いいぞ

ことり

ことりほら、おそらにいる

真緒ちゃんは、天窓を指差す

ちょうど窓の上に、小鳥が下りて来ていた

ああ小鳥ですのね

そうそれで、アニエスちゃんはなにが好きなの

アニエスはしばらく考えて

ぱぱん

パパのことよ、真緒ちゃん

あーっ、そっかぁまおも、パパがすきっでも、ママもすきですっ

真緒ちゃんはどうして、パパが好きなの

だってまおのパパだからっ

そのまま、真緒ちゃんはお皿をベッドの上においてテケテケテケっと、オレの方へ走ってくる

アニエスちゃんこのひとが、まおのパパっ

それから、渚の前に

この人が、まおのママなのっ

真緒ちゃんは、とっても嬉しそうだった

朝食が終わったらアレ、引きずり下ろそう

恭子さんが、フォークで壁の上の白坂創介像を差す

あんなものがずっとあるのは教育上、よろしくない

勃起した男の裸像だもんな

あれの代わりにあんたの像でも乗せるかい

え、何で

判っていて欲しいんだけれど一度、洗脳されてしまった人間は、別の思想に洗脳するしか無いんだ脳みその上書きだね

アニエスは、すでにソースケ至上主義に洗脳されているこれをブッ壊すには、ソースケよりも大切なものを、あの子の頭の中に作ってやるしかないんだ

そうねアニエスは、この地下室だけが全てだったんですものあの子に、ここから外に出てはいけないって命じたのが、白坂創介である以上彼女の心に、白坂創介より上位の存在が生まれなければ自分の意志で、ここから出て行くことはないわ

判りやすいだろアニエスの祭壇から、ソースケの像を取り除いて、あんたの像と取り替えたらあの子だって、誰が自分のマスターなのか理解できる

それで、いいのだろうか

それだとアニエスは、幸せになれるんだろうか

オレの像とか、ダメですよ

みんなで写真を撮りましょう

写真

オレの言葉に、恭子さんは怪訝な顔をする

はいオレたちの家族写真ですその写真を大きく引き伸ばして、あそこに貼りましょう

それが一番、良いと思う

もちろんアニエスも一緒に写った写真です

そうだ家族の中に、アニエスもいなくてはいけない

今のアニエスが大切に思っているのは白坂創介だけだ

だけど、これからのアニエスは

自分自身のことも、大切に思わないといけない

んいいんじゃない

そこまでは、思い付かなかったよ結局、あたしも他人を自分の意に従わせることばかり考えているみたいだね

そして、ミナホ姉さんに

あんたたちが、この子を大事にしている理由判ってきたよ

でも、そう言っているこの子自身が一番、自分を大事にしてくれないんですよ

その辺は、あんたたちが世話してやんなよこの子だって、まだまだ子供なんだからさそれにあんたたちだって、この子の世話が焼きたいんだろ

渚と克子姉が、同時に返事をした

じゅあ、いいじゃないか

恭子さんは、クツクと笑った

アニエス、イーディ、マナ、真緒ちゃんの4人は仲良く食事を続けている

今日はこのまま、真緒を置いていくわアニエスの相手をさせておいた方がいいと思うの

お屋敷には、あたしが残って見ていますわマナちゃんにも、残ってもらった方がいいと思いますあのまま、少しずつ気安く話せる相手を増やしていきましょう

イーディはダメだよあの子は、あたしたちが連れて行くからあの子には、ちょっと働いて貰うよ外で思い切り身体を動かさないと、暴発するしね

一度ソースケの様子を見てから、コーデリアたちと一緒に日本のヤクザを一組織、丸ごとブッ潰してくるから今の状況の中で、あたしたちのヤバさを日本の裏社会に強く印象づけて置いた方が、この後で効いてくるからね

あたしとキョーコが組んでいるってことも全世界に披露しておかないとね

あたしのバックのマランドロと、コーデリアのとこの組織にとっても、あたしたちが組んだことで何かしら有益な結果を出しておかないといけないし

日本のミスター香月とコネクションができたっていうだげでも、あたしの組織には言い訳が立つけれどどうせなら、大きな花火を上げたいものね派手に名前を売ってくるわ

生き残っていくため、仕方無いよね

恭子さんも、ミス・コーデリアも裏世界で、常にサバイバルしている

いやオレたちも

黒い森は、犯罪組織だ

だから、オレも自分が犯罪者だということを、決して忘れてはいけない

家族みんなで幸せに暮らすためには、何でもする

オレは、そう誓ったのだから

あたしも、恭子さんたちと一緒に学校へ行くわ恵美あたしの車に乗って行きなさい

悪いけれどしばらくは、自動車通学よ監視の人たちも、今はまだ不慣れでしょうから変な摩擦を作りたくないの

うん功を焦った下っ端が、オレやメグを拘束しようとするかもしれない

制服姿の高校生なら脅しが効くと思うかもしれないし

メグ練習が終わった頃に、迎えに行くよ

オレは、今日瑠璃子の誘拐に行かないといけないから

朝から、学校へ行くことはできない

もっとも運動部員でもないオレが、休みの日に朝から校内をウロウロしているのは変だし

ヨシくん本当に終わる頃で、いいからね 練習しているところを、ヨシくんがグラウンドの外から眺めているとかしたら竹柴キャプテンに気が散るって怒られると思うの

竹柴キャプテン硬派だからなあ

かといって、メグを迎えに行かなかったら、それはそれで何で、自分の婚約者を迎えに来ない心配じゃないのかって、怒られそうだし

寧はどうするの

ミナホ姉さんが、寧を見る

うーん、マルゴお姉ちゃんが帰ってきてから考えるよどうせ、瑠璃子さんの方は、マルゴお姉ちゃんが帰って来てからでないと動けないでしょう

香月セキュリティ・サービスを出し抜いて、瑠璃子を誘拐するんだ

マルゴさんの力が要る

麗華お姉さんは、予定通りにあたしのお店に来てくださいね

渚が麗華に言った

色々考えるにしたって、ここよりも、あたしのお店の方がいいでしょう

麗華は、ニコッと笑う

麗華渚の警護を頼む

は主様

オレは主従でなく早く、本当の家族になりたい

麗華に、その気持ちが通じてくれるといいのに

約束通り今日は、お店には、いつも通りの英国紳士のお姿で来て下さいねいつもの自分を取り戻したら色々と、頭の中もスッキリすると思いますわ

渚は、麗華にそう言った

ミナホ姉さんのポケットの携帯がぶるぶると振動する

電話に出るミナホ姉さん

すぐにオレを見て、電話を差し出す

あなたによ

朝のこの時間と言えば

旦那様漏れちゃうぅぅっ

えっと、オレの携帯は

昨夜から、ずっと上の部屋に置きっぱなしだ

ごめんみすず今、どこに居るんだ

お、おトイレぇぇおトイレの中ですぅぅ

いいから、早くしろっ漏らせみすずっ

はぃぃ失礼致しますぅぅ

シャァァという水音

聞こえますかぁぁ旦那様ぁ

うん聞こえてる

いっぱい出てますあんっ恥ずかしい

やがて、水音は小さくなる

はぁ、はぁ申し訳ありません朝のお忙しい時に

いや、オレこそ携帯の近くに居なくてごめん

いいんですっあ、旦那様、代わりますね

へ代わる

みすずお前、トイレの中に居るんじゃないのか

代わりましたご主人様

今朝からは、お前もなのか

大変申し訳ないのですがご主人様わたくしに、お小水を排尿することをお許し下さいませ

許す、許すから早くしろっ

美智は、我慢強いから言葉はしっかりしているけれど、膀胱が心配だ

はいそれでは、失礼させていただきます

シュワワワワっ

美智の方が排尿音が軽快だった

何でだか、判らないけれど

で、出てます凄いです

うん、聞こえているぞ美智

ああんっみすず様のおっしゃる通りですこれ、とっても恥ずかしい

排尿音を聞かれることに美智は、暗い悦びを感じているらしい

その声がセックスの時の喘ぎを思い出させる

ふぅ完了致しましたお粗末でございましたご主人様

普段、言葉の少ない美智がこんなに喋っている

やっぱり、興奮しているんだな

あの、美智こんなことまで、みすずに付き合わなくてもいいんだぞ

いえ、わたくしは自分の意志でしております

美智は、M度の高い子だった

いずれは、毎日お目に掛けます

見ないといけないんだ

それより、ご主人様わたくし、今朝、大変なことに気付いてしまいました

何だ何かあったのか、美智

みすずや、瑠璃子ジッちゃん、美子さん

香月家の方で、何か起きたのか

ご主人様美智は、ご主人様に毎日抱き締めていただかないと、寂しくて死んでしまう生き物のようですっ

おそらく、24時間以上、ご主人様のぬくもりを感じないとくたっと倒れて、死んでしまいますこれは、もう間違いのない事実だと、先ほど確信致しました

判ったちゃんと後で、会えるから幾らでも、ギュッと抱き締めてやるな、美智

はいお声だけでは、とっても寂しいですご主人様ぁっ

美智の声が真面目一本槍の警護役から15歳の美少女に変わる

ちょっと、美智、狡いわっ

みすずが電話を奪い返したらしい

旦那様っみすずも、寂しいですっみすずだって、あんまり長い間、旦那様と離れ離れでいると、寂しくて死んでしまいますっ

判った判ったから、みすず

早く流した方がいいぞ匂うだろ

美少女2人は排尿したままの便器

流していないよな

あっ、失礼しましたっ美智、流して、早くっ

ズッジャーッッ

汚水の流れる音(ウォーター・クラック)

はい流れましたもう、大丈夫です旦那様

よかったところで、瑠璃子はどうしている

瑠璃子はまだ落ち込んだままなんだろうか

瑠璃子も誘ったんですけれど

いや別に、オレは瑠璃子の排尿を確認したいわけじゃない

先ほどお祖父様に呼ばれて行きました

瑠璃子はジッちゃんに

あ、あたしたち、昨日から、お祖父様のお家に居るんです今日の本葬が終わるまでは

というより、一昨日のホテルの一件があったから今しばらくは、孫娘たちを全員、自分の眼の届くところに置いておきたいんだろう

美子さんは

美子さんもジッちゃんに呼ばれたんだろうか

いえ、美子さんは、みすずよりも年上でいらっしゃいますから

一緒に、旦那様に朝のご挨拶をしましょうとは申し上げられませんでした

いや排尿はいいんだよ

美子さんも、ジッちゃんのところか

いいえ呼ばれたのは瑠璃子だけですわ

何か、悪い予感がする

雪乃みたいなものの考え方をする子は実際にいます

そういう子に出遭ったから、私は、この作品を書いています

本質的に、悪い子じゃないんです

でも、どうしようもなく自分の世界だけで完結している

あの子は、今、どうしているんだろう

悪い男に騙されるか

弱くて優しい男を、消化し続けているか

どっちかなんでしょうけれどね

ちなみに、私はその子との肉体関係はありません

恋愛関係にあったことも、ありません

私は、いつも横から眺めているだけでした

382.対面式

さて、朝食が終わるとオレたちは、記念の集合写真を撮ることになった

アニエスのベッドの前でアニエスを中心に

アニエスの左右から、マナとイーディ前には真緒ちゃんが居るから、アニエスは動けない

そのまま、一気にわっと

はーい、恵美ちゃん、顔が被ってるから少しずれて麗華お姉さん、もうちょっと右に、顔半分しか入ってませんんオッケーちょっと待っててね

三脚に乗せたデジカメを覗き込む、克子姉がタイマーをセットする

マルゴさんだけいないのは、残念だね

オレが、そう言うと、寧が

まあ、マルゴお姉さんだけは、後で写真の上の方に別枠でハメ込んでおけばいいじゃんかっ

うーむ、卒業アルバムの写真を撮る日に休んだ生徒みたいだな

そうじゃなければ、克姉が上手いこと合成してくれるよっ

合成写真というのもうむむ

また撮ればいいんだよ別に、これが最初で最後の写真じゃないんだから

はーい、いきまーす全員、スマイルでお願いしまーすいっくわよっ

ペチッとカメラのスイッチを入れた克子姉が大慌てでで、オレたちの方へ走ってくる

チチチと点滅する、カメラのライト

克子姉は、ミナホ姉さんの隣に飛び込むっ

カメラのシャッターが切れる

はーい、オッケーご協力ありがとうございましたーっ

集合写真が撮り終わるとオレたちは、朝食の片付け

恭子さんたちは、脚立を持って来て壁の上の白坂創介像を調べる

あ、こりゃダメだわガッチガチに固めて、台座に溶接されてる簡単には、外れないよ

恭子さんの声が、壁の上から聞こえる

いっそのこと、削岩機みたいのを持って来てバラバラにブッ壊すその方が、楽だよ

削岩機あ、工藤父が持っていたよな確か

そうね、ガス溶断機をここまで持って来るのは面倒だしいっそ、爆破するってのはどう

ミス・コーデリアが、また過激なことを言い出す

ここと、ここに爆薬をセットすればバキッと折れると思うのよ火薬の量は、そんなに必要じゃないわ

でもさこれ、中に鉄の芯とか入ってると思うよ

ああサダム・フセインの銅像をブッ倒すニュース映像とかだと、確かに芯が入ってたわね

とにかく足の部分をブチ壊して中の芯はブチ折るとかかな

壁の上で、相談する恭子さんとミス・コーデリア

待って下さい-、恭子さんあんまり派手に壊すとそれは、それでアニエスのトラウマになりますから

克子姉が、見上げて言った

アニエスは自分の信奉する神の像を、恭子さんやミス・コーデリアがベタベタ触っている様子を、心配そうに見上げている

白坂創介の洗脳はとても、濃く深い

アニエスは、生まれてからずっと白坂創介を崇拝するように、教育されてきたのだから

うん神像が、バラバラ、メチャクチャになる様子を直接見せられるのは、アニエスにはキツイかもしれない

ま、どっちにしろ、すぐにはどうにもできないわねシーツか何かちょうだいとりあえず、あの子には見えないように隠すから

ミス・コーデリアが、言った

はいえっと

昨日、持って来たシーツの予備がありますから

メグがシーツを持って来る

いや、シーツだけじゃダメだよアニエスが、元の像を想像できなくなるくらい、シルエットが変わらないとそこら辺の毛布とかもじゃんじゃん持って来て克子それと、ガムテープ

恭子さんが、叫ぶ

克子姉とメグが、走り回って言われたものを準備する

それを、イーニーとミーニーがスススッと脚立を上がって、次々と恭子さんたちに手渡していく

うおっし

白坂創介蔵は毛布で何重に覆われ、ガムテープでぐるんぐるん巻きにされた

外からではもはや、何だか判らないものになっている

ちょっとした梱包芸術だね

とりあえず隠されて見えなくなっても、像は、まだここにあるってことで、アニエスのストレスは軽減されると思うよ後はアニエスが、ソースケのことをどうでも良いと思うようになるように、みんなで頑張らないとね

脚立から、下りて来た恭子さんがそう言った

そうだそこの壁をブチ抜いて、隣の部屋と繋げるんだったよね

ああ、そういう話もあった

これは、すぐ終わるからやっとこうか

恭子さん、工具を持ってきましょうか

そんなんいらないよあたしたち4人で、蹴り壊すから

麗華ちゃんだっけあんたも、あのステッキ持って来て、破砕を手伝いなさい

う、はい

麗華が、ステッキを取りに行こうとするが

恭子さん、今は止めて下さい

ノートパソコンを開いていた、ミナホ姉さんが制止する

恭子さんの壊し方では破片が飛び散って、子供たちに危険です

その辺は、まあ、気を付けてやるから

いいえ今は、壊した壁の残骸を、上の階まで運ぶ時間もありませんから瓦礫が残ったままだと、子供たちが遊んで危ないです

確かに真緒ちゃんや、イーディが破片をオモチャにしたら、ケガをするかもしれない

そっかそうだね御名穂の言う通りだこっちの壁は、時間と人手のある時にやろう

恭子さんは、納得してくれた

それより雪乃さんが、到着したみたいよ

ミナホ姉さんは、ノートパソコンの画面を示す

おおっ、どんな感じだいっ

みんなミナホ姉さんのノートパソコンの前に集まる

ミナホ姉さんが、外部スピーカーの音量を上げた

どうやら朝のワイドショーの映像らしい

えー、こちら、白坂創介氏の自宅前です先ほど、こちらに暴力団組織に誘拐されていた白坂創介氏の長女、雪乃さんが解放されるという情報が、マスコミ各社に送られてきました

男のレポーターが雪乃の家の前で、絶叫している

雪乃の家の前には、100人を越す報道陣と野次馬が集まっている

えー、私たちの取材によりますと雪乃さんは、白坂創介氏が懇意にしていた暴力団組織に拉致・誘拐されていたとのことですこの暴力団組織は、一連の白坂創介氏の行動に不満を持ち、雪乃さんを人質にしていたと

マスコミには、そういう話になっているらしい

これも、ミナホ姉さんとジッちゃんの情報操作か

これが誘拐されている雪乃さんの写真です

レポーターが、雪乃のこれ、入学式の集合写真を拡大したやつだな

粒子がメチャクチャ粗い

とにかく、雪乃の写真を出す

大変に明るく、明朗な少女でご近所での評判の良い少女だそうです

この写真で見る限りは雪乃は、か弱い美少女だ

馬鹿な父親の事件に巻き込まれて暴力団に誘拐された、被害者にしか見えない

あただ今、あちらから雪乃さんのお祖父さんの乗る車が到着致しました

人だかりの向こうからやって来る大きな黒塗りの車

市川老人の車か

車を通らせるために、報道陣と野次馬を押し除けているのは香月セキュリティ・サービスの制服を着た警備員たち

やっぱり、ジッちゃんも1枚噛んでいるんだ

えー、これは雪乃さんのお母さん方のお祖父さん市川伸一郎氏ですあっ、車中には、お母さんも乗っているようですね雪乃さんのお母さんは、白坂瑤子さんは、著名な料理研究家として、広く知られています

現地のヤマシタさん

テレビ局のスタジオから、ワイドショーの司会者が、レポーターに呼び掛ける

そちらには、白坂家守次氏は、緊急入院しているとのことですが白坂家の関係者は、どなたかいらしていいますか

いいえ白坂家からは、どなたも見えていないようです暴力団組織に対しても白坂家は、雪乃さんの引き取りを拒否したという話です

では雪乃さんの解放については、白坂家はまったくタッチしていない

はいお祖父さんの市川氏とお母さんの瑤子さんが身代金3億円を支払って、解放にこぎつけたと

何かすごい、話だ

白坂創介氏の事件は、最初は海外での暴行事件として報道されていたのですがそれが、芸能界全体に拡がる一大セックス・スキャンダルに発展さらに、白坂創介氏が、特定の暴力団組織と長年に渡って少女の誘拐・拉致・監禁し暴行した上に、殺害していたことが判明しています

大騒ぎの雪乃の家の前を映したままスタジオのアナウンサーが、事件の概略を語る

この事件を受けて白坂創介氏の叔父である白坂守次氏が、代表を務めていた新聞社、テレビ局などから全て退くということになりました

マスコミ界の貴族と呼ばれていた白坂一族だったのですが一族の中の人間から、とんでもない人物が現れたことで、大変なことになっていますね

司会者が語る

はいしかも現在もなお、白坂創介の行方は判らない状態ですオーストラリアから、強制退去命令を受け、日本へ帰国する飛行機に乗ったことまでは判っているのですがその後の足取りは、まったく不明です

そこへ今朝、突然入って来た、娘さんが誘拐されていたというニュースですね

はいどうやら、白坂創介氏とこれまで組んでいた暴力団組織との間に、何かしらトラブルが起きたものだと思われますそれで長女の雪乃さんは、先日、通っている高校から拉致・誘拐されたと

公式な場で、雪乃が目撃された最後は

学校の校長室の隣の部屋でオレに(みんなは、遠藤だと思っている)犯された後に

学校の校庭からマルゴさんと寧さんに拉致された

マルゴさんはあの時ヤクザに雇われて、雪乃を連れに来たとみんなに言っていた

それが身代金3億円で、解放されるということですか

はい、私たちが確認した情報ではそういうことになっています

司会者とアナウンサーが、そんな会話をしている

これってこんなテレビ中継されている場所に、マルゴさんが現れたら、マズくないですか

確かにここにマルゴさんが顔を出すのは、後々問題になるだろう

ええだから、雪乃さんの受け渡しは、マルゴじゃなくって、別の人にお願いしたわ

別の人

こういう場所にうってつけの人がいるじゃない

ほら来たみたいよ

オレたちは、画面を凝視する

あっ向こうから、何やら車が来たようですっな、何でしょうか何か、音楽を大音量で流しながらこちらへ向かってきています

スピーカーから、聞こえてくるその音楽は

ワーグナーのワルキューレの騎行

そして、その大音量を発している車にオレは、見覚えがあった

ワンボックスカーの横に、大きく工藤探偵事務所と書いている

ここで工藤父か

まあ、適役かもしれないけれど

人だかりを押しのけて工藤父の車が、雪乃の家の前で止まる

運転席のドアが開く

はいはいはいれでぃーす&じぇんとるまん+おとっつぁん、おっかさん、みなさん、こんな朝っぱらからよーくお集まりで

テレビカメラとフラッシュの光を浴びながら工藤父が、そんなことを言う

はーい、市川さんっいっちかわさんっご要望にお応えして、暴力組織のオッチャンたちから、お孫さんを救出してきましたよはーい

工藤父に、テレビレポーターが突っ込む

あの雪乃さんは、雪乃さんは無事なんですかっ

おいおい、人にものを聞くときは、まず自分の名前を名乗れって言われたことぁないのか母ちゃんに何を習ってきたんだ

わたしの母のことは、関係ないじゃないですかっ

そのとおーりっ

工藤父は、レポーターたちを無視して市川さんの高級車へと歩いて行く

車を警護していた、香月セキュリティ・サービスの制服組が、一斉にサッと道を開ける

ホテルでの事件以降警備員たちの再教育が行われたらしい

市川老人のいる運転席の窓をコンコンと工藤父は叩く

スーッと、少しだけ開かれる窓

な何なんだね、君は

市川老人の怯えた声が、マイクに拾われる

なあに閣下のイヌの1人ですよ

それで話は、通じたらしい

どうすればいい

別にあなたと娘さんと2人揃って、車から降りて、お孫さんをお出迎えしてあげて下さい

お孫さん相当、ツライ目に遭われたみたいですから

マスコミに撮られたくない車を横付けしてくれ、そのまま孫を引き取る

市川氏は、自分も雪乃も極力、カメラには撮りたくないようだ

そうはいかねえっすお孫さんには、オレっちの車から、ここまで歩いて来てもらいます

10メートルは離れているじゃないかっ

なあに、ほんの10メートルですよ

工藤父はニッと、笑った

もう2度と会えないかもしれないと思っていた時よりはよっぽど、近いでしょ

判った瑤子、車から降りよう

しかしお父様

今は、雪乃を確実に取り戻す雪乃が帰って来たら、舞夏の行方だって判るだろうしでも

雪乃のためだ

老人は雪乃の母親を見つめる

僕はもう、会社を辞めたんだ守るべきものは無いからな

わたしは、まだ

諦めろ華やかな場には、もう立てん僕たちはな

雪乃の母が、嘆息する

ではオレは、雪乃ちゃんを引っ張り出して来ますわっ

工藤父は、再び自分の車の方に向かいながら

はーい、お集まりいただきましたマスコミ業界の皆さん、これから、白坂雪乃さんを解放しまーすっあっ、そうそう、一応、言っておきますがオレっちは、あそこに車の横にデトデダーンと書いてある通り、探偵です私立探偵しがない町の探偵さんですわっ雪乃さんを、誘拐した暴力団組織とは、なーんの関係も無いですから、そのつもりで

じゃあ、何でお前がさらわれた娘を連れて来たんだよっ

記者の1人が、叫ぶ

おい、ちょっと待て、こらぁ今、お前って言ったのは、お前かあっ、お前のこの口か、こらぁ

な、何だ暴力かおい

オレっちはなあ、お前なんかにお前呼ばわりされる様な、安っぽい人間じゃねぇんだよっ

お前こそ、オレのことをお前って言ってるじゃないかっ

うるせえっオレがお前で、お前がお前だっ

記者のクビを、ギュッと締め上げて

オレはとある方の命を受け、白坂雪乃嬢を暴力団組織さんから助け出してきただけだそれが、どうしした、文句があるかっ

工藤父は、記者をそのまま人の群れの中にどーんと突き飛ばす

なんつったって、オレっちは私立探偵・工藤優作車は、これ電話番号とメール・アドレスはこれだっ

トントントンっと、ワンボックス・バンの車体を叩く工藤父

浮気調査から、誘拐されたお嬢さんの救出までお仕事、待っているよーんっ

カメラに向かって、ポーズする工藤父

うん、何かよく判らないけれど

とにかく、工藤父のペースで進んでいる

さあって、まさらわれていたお姫様を、お連れ致しましょう

ガラガラガラとバンの後部のスライドドアを開ける

と雪乃が、乗っている

雪乃は毛布を被って、全身を隠していた

眼にはアイ・マスク

耳には、大きなヘッド・フォンをしている

おおっとお姫様のこの格好については、気にすんじゃねぇぞこの娘さんを誘拐していた暴力団組織との約束でねえどこに監禁されていたか判らないように、眼と耳を塞いだままにしておくっていうことになっていたんだ仕方ないだろうオレっちも、悪の組織とギリギリの交渉をしてきたんだから

目隠しされ耳には、きっと大音量の音楽が鳴り響いているのだろう

雪乃は、肩でリズムを取っている

彼女は今、ここに集まっている報道陣や野次馬たちの存在を気付いていない

工藤父が、雪乃の腕を掴む

ほらっ、下りろお祖父ちゃんとママが待ってるぞ

しかし、眼と耳を塞がれたままの雪乃は

ちょっと、何よっさわんないでよっヘンタイっ

それが日本全国に中継された、最初の雪乃の言葉だった

まさかあんたまで、あたしのことをレイプする気じゃないでしょうねっ

雪乃の一言に

集まっていた報道陣がシーンとなる

いいから、出ろよっ

工藤父は、無理矢理、雪乃をバンから引きずり下ろした

ちょっと、やめてよっ、触らないでよっもう、犯されるのは嫌なのよっあたしっ

工藤父は雪乃の耳のヘッドホンを外す

ヘッドホンから漏れてくるのはやっぱり、ワルキューレだった

着いたぞ市川さんも、そこにいる

工藤父は、今までと違う低い声で雪乃に言った

ホントでしょうねっ嘘だったら、許さないわよっ

嘘だったら、どうするんだ

あんたのチンコ噛みちぎってやるから

雪乃の声が、電波に乗り全国へ配信される

ねえこのマスクも外していいの

ちょっと待て市川さんに合図するから

工藤父が、市川老人の車に手を振る

市川さーんっ出て来て下さぁーいっ

ガチャッ

黒塗りの高級車から市川老人と雪乃の母親が降りて来る

雪乃ぉぉッッ

白坂瑤子が、叫ぶ

ママッ

雪乃が、アイマスクを外そうとするが

まだだっ

工藤父が、制する

こういうのはなっ形式的なことが大切なんだよっ

何でもいいから、早くしなさいよっ馬鹿っ

いいかオレが色々キャッチフレーズを言うから最後にゴタイメ~ンて言ったら、マスクを外せっ

何よ、キャッチフレーズって

いいから、ゴタイメ~ンだけ、覚えていろっ

判ったわよっとっとと、終わらせなさいよっこのクズっ

おっカメラは、そっちかそれか赤いライトが点いてるやつかそうなんだな知ってんだぞ、こら

早くなさいってのっ

工藤父がテレビカメラを指差し

一目会ったその日から、恋の花咲くこともある君の飲むお茶、キミノエンボクの飲むお茶、ボクノエンおおっと、違った

何なんだそれ

ゴタイメ~ン

雪乃がアイマスクを外す

一斉に、素顔の雪乃にフラッシュが焚かれる

光の洪水に、目が眩む雪乃

おいおい、カンベンしてやれよポケモンじゃねぇんだぞっ

工藤父が、そう喚きながら雪乃の纏っている毛布の端を、足で踏む

さっきまでは、両手で毛布を握りしめていたが

今の雪乃は、アイマスクを外すために手が、離れている

雪乃の毛布はズルッと背中側に滑り落ちた

雪乃はビリビリに引き裂かれた高校の制服を着ていた

オレが雪乃を犯すときに、メチャクチャにした

パンツは履いているが

ブラは付けていない

ピンク色の乳首も透けている

下まで丸出しにしたら、中継を打ち切られちゃうから

ミナホ姉さんがククッと笑う

ゆっ雪乃っ

雪乃の母親が、絶句するっ

早く、こっちに来なさいっ

市川老人の叫びに雪乃は、我を取り戻す

きゃあああっ何なのよっこれっ

雪乃は、慌てて両手で胸を隠し

撮らないでっ撮るなっ馬鹿っヘンタイっみんな死ねっ大っ嫌いよっ

ありとあらゆる、罵詈雑言を吐きながら市川老人の車へと走る

約10メートルの距離をダッシュで

ふふふ誰がどう見ても、雪乃さんは暴力団にレイプされてきているわよねそれに、何、あの子のあの態度あれじゃあ、雪乃さんに同情する人は、日本中探してもいないでしょうね

ちょっと、お祖父ちゃん、何やってんのよっ早く乗ってママももう、みんな嫌いよっ

慌てて、車に乗り込む市川老人たち

最後に、雪乃が飛び乗る

とそれまで車を警備していた、香月セキュリティ・サービスの警備員たちが、一斉にその場から退去する

カメラや、レポーター、野次馬たちが

市川老人の車を、取り囲む

窓を叩く

声を掛ける

カメラのフラッシュ

雪乃たちは逃げられない

昨日、帰宅した時

母北がミサイルを発射したわよ

私え、それでどこへ落ちたの

母えっとね確か、日本の上は飛び越えちゃって、外国よ

私外国ってどこ

母確かねこの間**さんたちが旅行に行ったところだから

私だからどこ

母うんとねそうそう、サンフランシスコ

せ、戦争じゃ

父フィリピン沖だよ

母ああ、良く似ているから間違えちゃった

383.brand new day

ところでマルゴは、何をしているわけ

騒乱状態の雪乃の家の画像を見ながら恭子さんは、言った

全て、あのオッちゃんに任せで現地には、行ってないなんてことは無いよね

マルゴさんは、どこに居るんだ

モニター画面の中では、雪乃立ちの車を報道陣が取り囲んでいる

ちょっとお話を聞かせて下さいっ

お父さんは、今、どこに居るんですか

市川さん、社会的な責任について、どう考えていらっしゃいます

白坂瑤子さん、ご主人について一言

市川老人は、必死で車を発進させようとしているが人混みに中では、身動きが取れない

激しく、何度もクラクションを鳴らす

それでも記者とレポーターたちは黒い高級車から離れようとはしない

ドンドカと、車の窓ガラスに押し寄せるっ

中に居る雪乃と祖父と母親にカメラを向ける

雪乃が、キッと怒ってウインドゥを下げる

おい、よさんかっ雪乃っ

市川老人が、孫娘を制止しようとするが

雪乃の怒りは、すでに爆発寸前だっ

いいかげんにしなさいよねっあんたたちっこうなったら、もう、何もかもブチまけてやるわよっ

雪乃、よせっ

だって、お祖父ちゃんっあたしたちは、何も悪いことはしていないのよっ全部全部、パパのせいじゃないっ

雪乃の絶叫が電波に乗る

ということは白坂創介氏に投げられている疑惑は、全て真実なんですねっ

するっと、リポーターが雪乃にカマをかけるっ

いまさら、何言ってるのよっそうじゃなかったら、あたしがこんなに酷い目に遭わされるはずがないじゃないっ

あ認めちゃったよ

そうですか芸能界スキャンダルも、少女誘拐レイプ・殺人も、全て事実なんですねっそうなんじゃないのっあいつらは、そう言っていたから

あいつらって誰ですか

雪乃さーん、こっちにも視線お願いしまーすっ

こちらも、お願いします

向けられるマイクとフラッシュの輝きで雪乃は、さらに興奮していく

あいつらは、あいつらよっあたしを無理矢理レイプした

レイプ

誰にレイプされたんですかぁ雪乃さぁーんっ

あいつよああ

よせっ、雪乃っ全員、皆殺しにされるぞっ

市川老人は全ての黒幕は、ジッちゃんだと思い込んでいる

これは、白坂本家から新聞社とテレビ局を奪取するための香月グループの策略だと

黒い森なんて、ジッちゃんの配下の1組織としか思っていない

皆殺しっ

どういうことなんですっ市川さんっ

市川老人が、広告業界の重鎮であったということはすでに報道されている

その市川老人が恐れている相手とは

報道記者たちは、さらにヒート・アップする

一方雪乃は

あたしはあいつに、メチャクチャにされたのよっちくしょうっ

雪乃が憎んでいるのは

オレだろう

雪乃を犯し、心を踏みにじってきたのはオレなんだから

絶対に許さないわっあいつ

雪乃が、カメラに向かって叫ぶ

憎悪に燃える眼グッと歯を食いしばる

どう見ても可憐でか弱い少女性犯罪の被害者には見えない

ヒステリーを起こして、喚いているだけの雪乃は、生命感に満ち溢れ過ぎている

これでは誰も雪乃には、同情しないだろう

ですから誰なんですかあいつというのは

どっかの局のレポーターが、雪乃を問い詰める

今、教えてあげるわよっあたしをメチャクチャにしたのはッ

雪乃が、カメラに向かって告発しようとする

よさんかっお前は僕ら全員を路頭に迷わせるつもりかっ

だって、お祖父ちゃんこんなのここでバラしてやんなきゃ、あたしの気持ちが収まらないわよっ

もう、雪乃は止まらない

だから、誰なんですっ

そうだ、早く教えろよっ

記者が煽る

弓槻よっ

――ドバァァァァンッ

白坂創介の屋敷の敷地内で何かが、爆発したッ

ボアッと火の手が上がるッ

危ないぞっ逃げろっ

報道陣の上にも火の粉が舞い落ちてくる

――ズバァァァンッ

二つ目の爆発がベランダの部分から起こった

おい、やばいぞっ

退避だ、退避っ

蜘蛛の子を散らす様に報道陣たちが、走って避難する

車の前方が開けると市川老人は、一気にアクセルを踏んだ

ギャギュギャギャ

逃げるぞっ

追い掛けろっ

それより、消防車だっ

何なんだよ、この爆発

白坂創介邸の前は大混乱となる

屋敷の庭の辺りから、黒い煙が立ちのぼっている

マナが声を漏らす

オレは、マナを抱いてやる

大丈夫だよお兄ちゃんあの家とは、ちゃんとお別れしてきたから

この間、あの家に行った時に残してきたのよ

庭とベランダとガレージにね無線式の遠隔操作で、いつでも起爆させられるようになっていたの

マルゴさんあそこに居るんですね

そうよ電波の届く距離に居るわ雪乃さんが、何か口走ったら、即座に爆発させるように指示していたのよ

安心して見た目は派手だけれど、建物に延焼しないようにしてあるから煙も、発煙筒よ家が燃えているわけでは無いわ

世間の皆様にはこの爆発は、市川さんの自作自演てことにするから

市川さんが爆発させた

頭の悪い孫娘が興奮して、自分を誘拐・レイプした犯人を公表しようとしたでも、市川さんは、公表されるわけにはいかなかっただから、あんな騒ぎを起こして逃げ出した

ミナホ姉さんがニッと笑う

なぜ、市川さんは公表を嫌がったかそれは、市川さん自身も、雪乃さんを誘拐した組織と繋がっているから

雪乃を誘拐していたのは白坂創介と懇意だった暴力団組織だと、世間には伝えられている

白坂創介だけでなく母方の祖父も、暴力団と関係していたまあ、広告業界なんてそういうものだろうだから、名前を出すわけにはいかないんだそういう風に、認識して貰いたいのよ日本の全国民にはね

そんでまあその暴力団組織ってのは、今日中にあたしたちにブッ潰されるんだわ

ミナホ姉さんの言葉を受けて恭子さんが、クククと笑う

えー、現地ではいまだに混乱が続いているようですあ、今、消防車が入ってきましたね

朝のワイドショーの中継は、まだ続いている

市川さんは、あのまま真っ直ぐ自宅に戻るだろう会社は辞めちゃうんだし、他に逃げ場が無いからね

市川のお祖父ちゃんには別荘があります

無理無理、市川さんの年齢であのまま、マスコミの追跡を受けながら、地方までブッ飛ばす気力も体力も無いよそれに別荘地なんかへ行って、食料の買い出しとかできるのあの3人、これで全国的な有名人になっちゃったんだから都内ならまだ、知り合いに頼んだりとかもできるだろうけれどでも会社を辞めたら、ただの人だからねもう、市川さんのために何かと融通してくれる様な人はいないかもしれないけれどね

画面の中はヘリコプターによる、空撮の映像に切り替わる

猛スピードで走る市川さんの車をマスコミ各社の車とバイクが追い掛けている

まあっちは、マスコミに任せて置いてオッケーだろ

あたしたちも、そろそろ各自の行動に移りましょう

あたしと、恵美それから、恭子さんたちは学校へ麗華お姉さんは、渚とお店へ瑠璃子さんのお父さんのお葬式に行く人は、マルゴが戻って来てからにしてね

マルゴさんが居てくれないと瑠璃子の誘拐には、出掛けられない

あたしは、マナちゃんとアニエスを見ています

真緒あなた、今日一日、そこのお姉ちゃんと遊んでいなさい

渚が、真緒ちゃんにアニエスを示して言う

えー、なんで

あのお姉ちゃんはね生まれてから、ずーっとこの部屋に閉じ込められていて、お外に出たことが一度もないの

ほんと

そうなのよお友達も、今まで誰もいなかったの

うわぁっそれは、かわいそーだよ

そうよ、可哀想なのよ

真緒ちゃんがアニエスを見る

ママたちは、アニエスちゃんを早く、お外に出してあげたいけれどアニエスちゃんは、お外のことが何も判らないでしょそれじゃあ、怖いからアニエスちゃん、お外には出たくないんですって

えー、おそときもちいいのに

だから、真緒あなたが、あのお姉ちゃんとお友達になって、お外のこと、いっぱいお話ししてあげて欲しいのよお外は、怖くないんだって

ママ、まお、もうアニエスちゃんとはおともだちだよっ

じゃあ、仲良くできるわよねっ

渚が真緒ちゃんの頭を撫でる

真緒ちゃん、あたしも一緒に居るからっ

マナが、真緒ちゃんに微笑む

あの、へんなおねえちゃんは

真緒ちゃんは、イーディを指差す

変か

まあ、普通じゃないよな

イーデイさんは、お仕事なのだから、今日は真緒とマナお姉ちゃんで遊んであげてママ、夜にはまたここのお家に戻ってくるから

ほんとう

ママが、真緒とパパの居るところに、帰って来ないはずがないでしょ

うんわかったっ

マナ、頼んだぞ

真緒ちゃんの前でアニエスが、あのアレを始めないように、見ていてくれ

こんな幼女の前で自慰とかされたら、教育によくない

うん、気をつけるよ

マナが、オレにキスを求める

真緒ちゃんの前で、キスはまあ、いいか

オレは、チュッとキスする

じゃあ、ヨシくんあたしも一度部屋に行って、着替えたらそのまま行くから

ああ学校へ行くのには、制服じゃないとな

オレは、メグにもキスをする

あたしも、そろそろお店に行かないと今日は、頑張ってね、あなた

渚にもキスをする

ああっ、あたしも

克子姉が、やって来るのでキスをする

寧はいいの

あたしはみんながいなくなってから、ゆっくりしまーすっ

寧は、笑う

あっ寧お姉さん、ずるーいっ

麗華お姉さんも、したらいいのに

寧が麗華に、振る

麗華は色々と悩んでいるらしい

オレは、麗華の前に行く

はっきり言っておくけれどオレは、麗華のこと、好きだからな

それだけは、知っていて欲しいんだオレは、嫌嫌やっているわけじゃない本当に、麗華と家族になりたいって思っている

だから後は、麗華の気持ちの問題だけだよ

ありがとうございますあの

わたくしにもキスして下さいませ

オレは、麗華にキスをした

さ、麗華お姉さん玄関で待っていますから、早く用意してきて下さいっ

渚が、麗華をオレから引き剥がして言う

今日は、英国紳士でお願いしますからねっ

ああ、そうだった

麗華お姉さん届いた、着替えはこっちにあります

ありがとうでは、行って参ります

克子姉に連れられて麗華は、久々に英国紳士の心に戻って退出して行く

あ、待ってお姉さんのメイクは、あたしが手伝うわっじゃあねっ、あなたっ真緒も、大人しくしているのよっ

渚も、パタパタと退出して行く

さて先に出発する人たちが、地下室からいなくなる

残ったのはオレと克子姉と寧とマナと真緒ちゃんとアニエス

イーディは、真緒ちゃんやアニエスと離れることを嫌がったが

恭子さんから仕事だと言われると態度を変えた

暗殺者の眼に変わる

亡くなったイーディのお祖母さんは彼女を、組織にとっては使い物にならない暗殺者に仕立て上げたけれど

それでも、イーディの魂は暗殺者らしい

マルゴお姉ちゃん後、15分で戻って来るって

寧が携帯を切って、オレに教えてくれる

真緒ちゃんとマナはアニエスとベッドの上にいる

アニエスももう、あの子たちには警戒していない

むしろ、イーディがいなくなって、気が楽になっているらしい

イーディ、言葉が通じないし強引なところがあるから

あなたがお葬式に着ていく喪服どうしましょうか

途中で買うお屋敷にある服はさすがに、今からじゃ直せないし

克子姉はミナホ姉さんのお祖父さんの遺した服のことを言っている

制服で行くよ

香月家の葬式に名門一流校でない学校の制服で行くのは、場違いだと思う

今日は大丈夫なんじゃないかなっ

だって、今日は瑠璃子さんお父さんのお葬式でしょ会社の部下とか、色んな人も来るだろうから上流階級にこだわる必要は無いんじゃない

うんオレこれ以上、高そうな服を着て行くとボロが出そうだしそれに、色々と動き回るなら、いつもの制服の方が楽だよ

オレは瑠璃子を誘拐しに行くのだから

制服か

寧が考え込む

そしたら、あたしもヨッちゃんにくっ付いて行こうかなあ

ほら、あたし黒髪になってから、まだ制服に袖を通していないし

黒髪天然美少女になって寧の制服姿はまだ見ていない

ヨッちゃんとお揃いの制服で現れてさみすずに、ジェラシーさせてみようかなってっ

ククククッと、寧が笑う

姉さんは本当に、みすずをからかうのが好きなんだね

だって、しょうがないじゃんかっあたしが遊んであげないとあの子、他の子に気をつかいすぎるからっ

寧は、みすずさんがお気に入りなのね

克子姉が笑った

点けっぱなしのパソコンではまだ、朝のワイドショーが続いている

雪乃たちは無事に、市川さんの家に到着したらしい

今は、コメンテーターたちが、それぞれの意見を言っている

今日は世論誘導は、香月様の方でやってくれているから、楽だわ

白坂創介を追い込むまでは黒い森の仕事だったが

今はすでに、香月グループとしての白坂家のマスコミ各社の奪取が始まっている

一族の人間である白坂創介の悪評が広まるほど白坂家は、新聞社・テレビ局の経営から手を引かざる得ない状況になる

だから雪乃や市川さんについての情報操作も、ジッちゃんの方でやってくれているんだろう

もちろん、ミナホ姉さんからの指示に従ってだろうけれど

そう言えば、美智のお父さんがテレビ・カメラの前で閣下の名前を出していたけれど

オレはふと、思い出す

大丈夫なの一応、全国放送だったんだろ

克子姉は、笑って

あなた閣下というのが、香月様のことを示す言葉だって、前から知ってた

知ってるわけないじゃんかオレ、名家とか上流階級とか、全然関係無かったし

日本の国民の大部分が、あなたと同じよ閣下と聞いて、香月様を想像するのは極一部の特殊な立場の人たちだけよね

だから、工藤さんが、あそこで閣下という言葉を出したのは正しいのよ知らない人には、何が何だか判らないことだし知っている人には、市川さんが、とんでもない大物に目を付けられてしまったっていうことが判るからあれで、もう政財界・官界・マスコミで、市川さんや白坂創介を擁護する人は完全にいなくなったわよ誰だって、香月家と正面から敵対するのは嫌ですもの

だから、工藤父はわざと閣下と口を滑らせてみた

たった一言でジッちゃんの意志が働いていると、有力者たちに示す

それから雪乃さんが、最後に口にした弓槻だってテレビを観ている人には、何が何だか判らないからねっ

だいたいさ、あの子、ちょっと早口過ぎるからユヅキなんだかユッキなんだかユッヒだか、聞き取れなかったし

そうね弓槻という名前を知っている人でないと、何を言っているか判らないと思うわね

でも、うちの学校の連中はみんな、ミナホ姉さんを知っているわけだし雪乃が、弓槻って言ったら、担任の弓槻御名穂のことだって判ると思うよ

寧が、ニッと微笑む

でもさぁ例えば、ヨッちゃんのクラスメイトたちが先生が、雪乃さんを誘拐して、レイプしていた犯人だって、想像する

あたしとマルゴお姉ちゃんがさヤクザに雇われて、拉致しに来ましたって、学校に現れた時、先生も居たよね

先生が雪乃さんと仲が悪いってことは、クラスの子たちも知っていたと思うけれど白坂創介と取引していたような、大物ヤクザと繋がっているなんて、想像する生徒は果たしているのかなっ

さすがに担任の先生が自分のクラスの女生徒に、そこまで凶悪なことをするとは思っていないだろう

多分さ、ヨッちゃんのクラスの子たちが、さっきの中継を見ていたら雪乃さんは、ギリギリでヤクザの名前を口にするのが怖くなって、普段から仲の悪い先生の名前を出したんだってそう思うんじゃない嫌がらせとして雪乃さんて、そういうことやりそうじゃない

だからマルゴお姉ちゃんは、雪乃さんが弓槻って名前を出した後に、起爆スイッチを押したんだと思うよ

それにいい迷彩になっているしね

迷彩

ほら、今、テレビでちょうどやっているわよ

オレは、画面を見る

ワイドショーの司会者が、フリップを指して話している

最後に、雪乃さんが語った、このユッキもしくはユスキという言葉の意味は何なんでしょうかね

コメンテーターの1人のオッサンが、答えた

私が独自に得た情報なんですがどうも、関西系の暴力団の関係者でユッケと呼ばれている人物がいるらしく

いやいや、これはね最近、人気になっているマンガの登場人物にユッキというのがいるんですよつまり、これは犯人がフィギュア萌え族だという暗喩だと

とにかく、犯人は20代から30代あるいは、40代、50代である可能性が多いですね

うーむ、確かに迷走している

オレと寧が、制服に着替えて、地下室に戻った頃マルゴさんが、帰って来た

監視カメラの映像がお屋敷の門を潜る、マルゴさんの車を映している

ヨッちゃん、マルゴお姉ちゃん車を代えて、外で待ってるってさっ

寧が携帯を耳に当てたまま、オレに言う

じゃあ、行って来るよ克子姉

気を付けてねっ

オレは、克子姉にキスをする

ああーっ、お兄ちゃんあたしも、あたしもっ

パタパタと走って来たマナにも

パパいっちゃうの

真緒ちゃんもやって来る

うんちょっと、やらないといけないことがあるんだみんなで、仲良く待っていて

お土産買ってくるからさっ

わかったまおにも、チューしてっ

オレは、真緒ちゃんにもキスする

エヘヘと、真緒ちゃんは嬉しそうに笑う

アニエスちゃんは、いいの

真緒ちゃんがアニエスに振り向く

パパ、おでかけしちゃうよっ

女たちが、オレと別れる時に、全員キスしていたのを

いいんだよ、真緒ちゃんアニエスは、まだ誰ともチューしたことがないんだから

オレは、真緒ちゃんに言った

そうよだから真緒ちゃんとあたしで、お兄ちゃんとのチューがとっても素敵だってこと、アニエスちゃんに教えてあげようねっ

マナが真緒ちゃんに、そう言う

じゃあ、克子姉後、頼むね

ええ、何かあったら、連絡するわ

マナも頼むぞ

アニエスっ行って来るからなっ

アニエスはもちろん、返事しない

さっ、ヨッちゃん行こうっ

オレは、寧と部屋を出る

階段を上がって

1階に出ると寧か、オレに言う

ね、ヨッちゃん手を繋ごう

オレは、寧と手を繋ぐ

くっふふ今だけは、あたしだけのヨッちゃんだもんねぇ

寧は、そう言ってオレに、濃厚なキスをした

さりげなーく、ヨッちゃんと二人きりになるのに気を遣ったよ

まったく寧は

玄関に着くまでのほんの1、2分だけどねっ

オレは、寧の手のぬくもりを感じながら朝の廊下を歩いて行く

ヨッちゃんあたし、ヨッちゃんのこと、大好き知ってた

知ってた

あたし、ヨッちゃんのこと、愛してる知ってた

ヨッちゃんはあたしのこと、好き

好きだよ愛してる

うん知ってた

寧が、オレを抱き締める

もう一度、チュッとキスをする

二人とも遅いよっ

玄関でマルゴさんが、ニコニコして待っていてくれた

さあて今日は、青い車白い車

寧が、尋ねる

青はマセラッティ

白はライトバン

白い車

仕方無いだろう今日は、色々と工作をやらないといけないんだからさっ

マルゴさんが、玄関のドアを開ける

車寄せにいつもの白いバンが停まっている

その車体には

丸子典礼と書かれていた

今日、駅で見掛けた風景

4歳ぐらいの幼女と、若いお母さんの会話

お母さん、何であの人は、あんなに大きい声で自分の名前を何度も繰り返しているの

何回も自分の名前を繰り返さないと、みんなに覚えてもらえないからよ

どうして、みんなに名前を覚えてもらわないといけないの

それはねえ小選挙区制度だからよ

一番にならないと、意味がないからなのよ

二番じゃだめなの

だめだったみたいねえ

幼女に、小選挙区制度の弊害を語る母親というのが

昨日、押し入れを片付けていて、驚いたこと

サイバトロン戦士・通信員ブロードキャストなんて、何時買ったんだろう

もっと、驚いたこと

買った記憶のちゃんと残っている、デストロン戦士情報参謀サウンドウェーブは、どうして見当たらないんだろう

もちろん、当時品です

384. みっともない大人

マルゴさんは、運転へ

寧は、助手席ではなくオレと一緒に後部座席に乗る

オレに、ぴったりと身を寄せて

やれやれ寧が、そんなに甘えんぼになっちゃうとは思わなかったよ

マルゴさんが、ハンドルを持ったまま苦笑する

いいじゃんっ甘えんぼさんなんだもんっあたしっ

オレに寄り掛かる寧

オレの手を握っている

悪いけれど、そういうことみたいだから寧の面倒を見てあげてね

今だけだってばちゃんと、向こうに着いたら、みすずや美智の方を優先してくれていいからねっ

寧がオレを上目遣いで見ながら、そう言う

あたし、お姉ちゃんだからちゃんと我慢するってば

寧は姉であることを、とっても大切にしている

だから今だけねっ

ニコッと、微笑む寧

ところで、マルゴさん

ああ、瑠璃子さんを誘拐するっていう件だろ

まあ、ジッちゃんの許可は取っていますから実際は誘拐ごっこですけれど

でも、香月セキュリティ・サービスの警護を出し抜かないといけないんだろ

うんジッちゃんは、瑠璃子たちの警護の人たちには、何も伝えないと言っていた

まあ山岡部長が更迭された後の警備部門がどうなっているか、見物だよね

えっ、谷沢チーフが全部、監督するんじゃないんですか

オレの驚きにマルゴさんは、笑う

谷沢さんは、香月セキュリティ・サービスのトップだよ一昨日のホテルは、緊急事態だったし谷沢さんじゃないと、コントロールできないレベルだったから現場で陣頭指揮をしていたけれど普段の日常の業務まで、谷沢さんが現場に立つわけにはいかないよそれにあの人も、基本は裏の部門だし制服組の方は、誰かに任せるしかないよそもそも、制服組の上にいる、要人警護の専門家たちトップ・エリート警護人の監督者だから、谷沢チーフなんだしね

そっか制服組は、誰か別の人がトップになるんですね

ああ、今日のお葬式の警備でお披露目になるんじゃないかなどんな人なのか、先に観ておきたいんだよ

ルーム・ミラーの中のマルゴさんの眼が笑う

今後の付き合いもあるしね

今、オレたちのお屋敷は公安警察と香月セキュリティ・サービスの2つの組織から常時見張られている

現場の人間が個人の判断で、余計なことをしでかすっていうのはよくあることだからねあたしたちをどう思っているのかまあ、別に嫌われててもいいんだけれどそれならそれで、対応の仕方があるからね一応、知っておきたいんだ

マルゴさんが、車を発進させる

庭を突っ切って門の鉄扉を無線操作で開く

は面白いね門前の右が警察の車輌で、左が香月セキュリティ・サービスだ

マルゴさんの言うとおり門の前には、10メートルぐらい離れて、車が2、3台ずつ停まっていた

どうして、見ただけで、それぞれの所属が判るんです

ま、民間と官僚の違いかな香月セキュリティ・サービスの方が、車も乗っている人もお金が掛かっている感じがするでしょ

確かに何か、パリっとして見える

ま、香月セキュリティ・サービスみたいにお金持ちの警護が専門の会社じゃ見た目にお金を使わないと商売にならないしね

一方公安の方は、決められた予算で遣り繰りしないといけないしあたしたちの監視なんて、急に決まったことでしょ空いている車輌と人員で、慌てて準備したんだと思うよ寧警察のお兄さんたちに、手を振ってあげな

これからずっと監視されるんだよ愛想良くしておいた方がいいよ

たまたま学校の外を歩いている時にメチャクチャな理由で補導とかされてもいいのカッターとかハサミを持っているってだけで、逮捕とか

そんなこと警察がします

驚いて、オレが尋ねる

するよそれっくらいはわざと自分から転んで、よくも突き飛ばしたなとかさ

あたしたちは、犯罪組織だからね根本的に、警察の敵なんだどんなことだって仕掛けて来るって思っておいて

寧もだよ寧自身じゃなくっても、彼や恵美ちゃんが捕まえられる可能性もあるんだなるべく、現場の人間には反感を買わないようにしないとね

ムカッとした気分で不当逮捕されることもある

あっちはオレたちを犯罪者の集団としか思っていないんだから

少しでも、現場での摩擦は無いようにしておかないと

判ったわよっ

寧は、作り笑顔で車の中の監視員たちに手を振る

あみんな、寧の美しさにびっくりしている

はい、おしまいもう、行こうよっ

ああ、ご苦労さん

マルゴさんが、アクセルを踏む

あ、香月セキュリティ・サービスと警察それぞれの車が1台ずつ、オレたちを付けてくる

香月セキュリティ・サービスの方には、愛想を振りまかなくて良かったのかな

寧が尋ねた

それこそ新しい警備部長の顔を見てからにしたいんだよ下手に出ると、舐めてくるような相手だったら、逆効果だしそれに、警察と香月セキュリティ・サービスの監視者は、なるべく敵対させておきたいんだよね

仲良くされて、情報の共有化とかされたら厄介だし警察の方は、どうしたってご機嫌取りをするしかないんだから香月セキュリティ・サービスの監視者とは、あたしたちの応対に差を付けないといけないんだよ

差を

うん警察官のプライドってのは、なかなか難しいんだよ警察にも、香月セキュリティ・サービスにも、平等に寧が愛想を振り向いたらオレたちを、民間の警備員と同列に扱いやがってとか、僻むかもしれないしね

でもさ、逆に香月セキュリティ・サービスの監視員の人たちの方が、警察にばかり、良い顔しやがってとかならない

寧がそう言う

それは別にいいんだよ警察と違って香月セキュリティ・サービスの人には、あたしたちを逮捕・拘束する力は無いんだから

もっとも今日の恭子さんの行動の結果で、全部引っ繰り返っちゃうかもしれないけれど

恭子さんと、ミス・コーデリアが組んだらどれだけ、危険なことになるのかその実例が示されたら

ああ恭子さんたちは、今日、暴力団組織をブッ潰すと言っていた

何をどうやるのか、全然判らないけれど

もしかしたら、あたしたちに付く監視の数が今の倍になるかもしれないよ

昨日と同じ様に葬祭場に到着する

しかし、今日は昨日みたいに押しの利くマセラッティではないから

いきなり、警備員の立っている入り口にはいかずに一度、場外から関さんに連絡する

関さんは、裏の業者用の駐車場から入るように、指示してくれた

そっちにも、もちろん警備員は立っていたが

関さんからの連絡があったらしく、そのまま中へ入れてくれた

指定された駐車スペースへ行くと関さんが、来てくれた

おはよう皆さん

ニコッと、オレたちに微笑む

オレは、車を降りて関さんに挨拶する

今日はまた地味な格好で来たのね

白い業務用バンとオレたちの制服姿を見て、関さんが言った

あ、ちなみにマルゴさんは、黒いパンツスーツに着替えている

こっちが、オレたちの普段通りの格好ですよホテルの時は、背伸びしていたんです

そうでも、あの時のスーツ姿は、格好良かったわよその制服姿も可愛いけれど

関さんは笑う

ほら、聞いたことない男はスーツを着ると、魅力が3割増しになるって

いや、オレは聞いたことないです

関さん、彼にはすっかり気軽に話す様になっていますね

マルゴさんの言葉に、関さんはえっと驚く

そそうねどうしてかしらやっぱり、一緒に死線を潜り抜けた間柄だから親しみを感じているのかしら

関さんは、顔を赤らめる

関さんもさっ、早く、あたしたちの家族になろうよっ

寧が勧誘する

寧、強要しちゃダメだよそれは、関さんがゆっくり考えて決めてくれればいいことなんだから

うん、そうだよねっ関さん、ごめーんっ

寧は笑って、謝る

い、いいんですよさあ、行きましょうみすず様たちがお待ちです

関さんは、そう言ってオレたちを誘導する

寧が、オレの耳に囁く

いい感じだよね

関さん絶対、あたしたちの家族になってくれるよっ

そ、そうなんだろうか

もう一押しだね

マルゴさんが、関さんに尋ねる

お葬式のスケジュールは、どうなっているんですか

告別式は、10時からですそれから、出棺して火葬場の方へ向かいますそちらで2時間ほど待機して、初七日と四十九日の法要を済ませて、精進落としです

精進落としって

みなさんで、亡くなった方を忍びながら会食することですわ

それが、お昼ご飯の代わり

そうですね、予定では2時過ぎですが

オレとかって、どこまで付いて行っていいんですか

それが知りたい

うーん、この告別式の会場から火葬場に移動なさるのは、ご親族と特に故人と親しかった方だけですよ一応、大型バス2台用意していますけれど

いや、あのみすずや瑠璃子が、寂しがるかなと思って

あの閣下やみすず様、瑠璃子様には、もちろん別の車を用意しておりますが黒森様たちが一緒にお乗りになるのは、無理だと思いますわ特に瑠璃子さんはお父様のご遺影を持たれて、一番前の席に座っていただく予定ですし

確かに死んだ人の親や娘だけが乗っている車に、オレや寧が乗るのはおかしい

大型バスの方なら、乗れないことはないかもしれませんが香月家の一族の皆さんがいらっしゃいますし

あ私塾の連中とか、その親とかも居るんだ

みすずやジッちゃんが居ない車内で、あいつらに出遭ったらそれこそ、何を言われるか判らない

瑠璃子様、みすず様をお慰めしたいというお気持ちは判りますが告別式以降は、付いていらっしゃらない方が良いと思いますわ

何か別の手を考えないとな

それであの人たちも、もう来ているの私塾のボンボンたちは

寧が、サッと話題を変える

いえ今はまだ、ご親族と関係者しか集まっていませんもうそろそろ、到着なさると思いますが、みすず様たちの控え室には通しませんので、ご安心下さい

オレたちは、昨日と同じ様に建物の中に入った

おい、誰がこいつをここに通したっ

突然の怒声に、オレはビビッた

慌てて、声の方へ振り向くと

谷沢チーフだった

ヤバイ、瑠璃子誘拐のこと、バレているのかっ

谷沢チーフは、オレたちの方を見ていない

こいつは、もう部外者だろうっ

しかしあの、どうしても谷沢チーフにお会いしたいとおっしゃるので

香月セキュリティ・サービスの制服警備員が、谷沢チーフに言う

ここは厳重警備区域だぞっ部外者を入れていい場所じゃないっ叩き出せっ

谷沢チーフの前に、土下座している体格の良い男がいる

人の影になっていて今まで、気づかなかった

お願いしますっもう一度、谷沢さんの下で働かせて下さいっ

山岡(元)部長だった

山岡氏は、一昨日ホテルで最後に見たままのスーツ姿だった

いや、スーツは全てヨレヨレになっている

その顔は真っ青だった

お前はクビにしたんだなぜ、そうなったのかも、ようく判っているよな

谷沢チーフが、山岡氏に言う

はいあれから、頭を冷やして考えてみて、いかに自分が甘い人間であったか、思い知りましたあ、あの自分は

必死な眼で、谷沢チーフを見上げる山岡氏

あの女とは別れることにしました

何だぁ

ギロッと、谷沢チーフが山岡氏を睨む

いえよくよく考えてみれば、自分にはすでに家庭があったわけで一時の感情から、あの女と生活していくのは、無理なわけですしいや、あいつにも、家族が子供も居るわけですし全てを丸く収めるためには、自分とあの女は別れるしかないとそう結論付けました

何が言いてぇんだか、オレには全然判らねぇよ

谷沢チーフは、怒りを抑えてそう言う

で、ですから元通り、警備部長としての復職ができるとは、もちろん思っていません係長班長クラスの待遇で構いませんどうか、自分を香月セキュリティ・サービスの社員に復職させてはいただけませんかっ

床に頭を擦り付ける山岡氏

自分は命懸けで、お願いに参りましたっ自分には、やっぱり、この道警護の仕事しかできないんですっ

その話悦子は、納得しているんだろうな

悦子工藤悦子

美智の母親であり山岡氏の不倫相手だ

いえ、あいつはどうしても納得してはくれなかったんで

それで、どうしたんだ

自分は逃げて参りました

逃げた

工藤悦子は今、どこに居るんだ

そ、それは、あの

だから、お前は、どこから逃げて来たんだ悦子を置き去りにして

谷沢チーフの問い詰めに山岡氏は答える

新宿のラブホテルです

はぁん

いやあの自分も、あいつも自宅には帰れなかったんですこんな、みっともない状態で社内での不適切な関係がバレて、クビになったということを家内や親族に話すことは、どうしてもできなかったので

お前いい加減にしろよ

オレは、お前たちの不倫関係なんかには興味がねぇお前がクビになった理由は、命令違反と職場放棄だっしっかりと、そう伝えたろうがっ

いや、あの表向きは、そういう理由だということは判っておりますいや、あの確かに、あの時、自分はあいつとの関係で頭の中がグチャグチャになっておりまして仕事内容に問題があったことは認めますがその

この人

谷沢さんだって、あの時、あいつに言っていたじゃないですかっあいつがオレとくっついていることでオレの仕事の邪魔をしているって

そうですってだから、別れて来ました別れて来ましたから、もう一度もう一度、働かせて下さいっ

いやホテルに置き去りにしてきたのを、別れたとは言わない

谷沢チーフし

山岡、オレはな決めているんだよどんなダメなヤツに対しても、1度目の時は我慢してやろうってな

その言葉を山岡氏は、肯定的に捉える

では自分に2度目のチャンスを下さるんですねっ

顔を上げて、ニカッと微笑む山岡氏

アホかっ

谷沢チーフは、その山岡氏の顔面を思いっきり蹴飛ばしたッッ

ムギュウッッ

変な声を上げて山岡氏の巨体が、ブッ飛ぶ

後ろの壁に、ドシンとぶつかって気絶した

1度目の時は、我慢したんだ2度目の時は、当然、鉄拳制裁するッッ

いや、鉄拳じゃなくて足が出たじゃないか

おい、こいつを捨てて来い二度とオレの前に連れて来るなっいいなっ

制服の警備員たちがビビリながら、山岡氏の身体を引きずっていく

まずいところを見られたな

谷沢チーフが、オレたちの方へ来る

何だ、お嬢ちゃん金髪は止めたのかうんうん、その方が可愛いぞやっぱり、女の子は黒髪が一番だ

寧を見て、そう言う

あたしは金髪だけれど

マルゴさんが、ニヤリと笑って言う

日本人はって、話だよお前は、金髪の方が似合っているから、それでいいんだ

谷沢チーフは言った

ああ、この人はマルゴさんが、アメリカ人だってことは知っているけれど

マルゴさんの自分の金髪に対するトラウマは知らないんだ

今の話工藤の美智ちゃんには、言わないでやってくれ

自分の父親を捨てて家を出た母が早速、相手の男に愛想を尽かされて逃げられたというのは、確かに聞きたくない話だろう

ところであたしたちの家の前で、キャンプしている谷沢さんの部下たちのことなんですけれど

マルゴさんが話を切り出す

お心遣い、ありがとうございますあの人たちが、警察の人たちを牽制してくれるお陰で警察があたしたちに絡んでこないですから

わざと香月セキュリティ・サービスの監視者が居ることの、良い部分だけを挙げて感謝する

そういう皮肉はカンベンしてくれ今のあんたたちはどうしたって、監視せざるを得ない恭子だけじゃねぇからな

この場ではミス・コーデリアの名前は出せない

あいつらが、日本で大人しくしている保証がありゃあ、話は別なんだがな

探るような眼で、マルゴさんを見る谷沢チーフ

本当に、食えない人だ

そういう交渉はあたしじゃなくって、恭子さん本人か、組織のボスである御名穂としてよあたしはただの、現場担当者なんだから

ふんそうだなマルゴお嬢ちゃんに言うのは、筋違いか

谷沢チーフは、笑った

あ、そうだ現場担当者で思い出したんだけれど、山岡さんの次の警備部長って、もう決まっているんでしょ

マルゴさんが、ごく自然に話を変える

ああ、今日から陣頭指揮を執らせている

せっかくだから、挨拶しておきたいな現場担当者同士でさ

今は無理だ制服組トップとしての初仕事が、この葬儀だからな香月セキュリティ・サービスが、香月本家の警備をしくじるわけにいかんからな本部にずっと詰めているよ

あたしの方から、本部に挨拶に行こうか

おいおいうちの警備部は表なんだ裏のお前を、堂々と本部に通すわけにはいかんよ一昨日のホテルと違って、ここの本部は丸見えだからな

すでに、香月家の分家の人間たちが、会場に来ている

警備本部に黒い森の関係者が出入りするのを見られるのは、よくない

そのうち紹介するさ

今日はせっかくだから、告別式には出ようと思っているんだけれど

あたしが式の会場に居るのもマズイかな

それは構わない一般の参列者関しては、特に誰が来ようと受け入れるしかないからな何たって、閣下のお子様の葬儀だ実際、裏組織からも、たくさん人が来ることになっている

そう判った、ありがとう

マルゴさんは、笑って礼を言った

おい少年

谷沢チーフが、オレを見る

みすず様たちのところへ行くのか

ええ、そうですけれど

悪いが、瑠璃子様のことを頼むすっかり塞ぎ込んでおられるらしい

知ってます昨日も、来ていますから

そうだってなどうして、お前さんがみすず様のお気に入りなのか、オレにはよく判らないが

谷沢チーフは、オレを見て、フンと鼻を鳴らす

とにかく上手くやってくれ

大丈夫だよっあたしもいるからさっ

寧がそう言ってくれた

さあ、行こうお願いします、関さん

失礼します、谷沢さん

ばいばーい、またね

オレと寧は、谷沢チ-フに一礼した

関さんは、知っているんですか新しい、警備部長

谷沢チーフの姿が見えなくなると、マルゴさんは関さんに尋ねる

顔は知ってますけれどわたくしは、入社以来ずっとトップ・エリートですから警備部の人は、よく知らないんですよ

すぐにみすずの控え室に到着する

では、わたくしはまたここで待機しておりますね

入り口の前で、関さんはそう言う

オレたちが訪問している間中には誰も入らないようにしてくれるんだ

例え香月家の分家の連中が、やって来たとしても

ノックをすると

スッとドアが開く

お待ちしておりましたご主人様

喪服姿の美智が現れる

お早うございます寧様マルゴ様も

礼儀正しく、挨拶する美智

うん、お早うっ美智

お早う、美智ちゃん

美智っ何をしているのっ早く、旦那様に入っていただきなさいっ

部屋の中から、みすずの声がする

部屋の中へオレたちは、進む

おはようございますっ旦那様寧お姉様マルゴお姉様

みすずは、昨日とは別の喪服を着ていた

今日は和服か

えへへたまには、こういうのもいいかなと

うん綺麗だよ、みすず

何か黒い和服って、スッキリしていていいな

おはよう、みすずさんうん日本の伝統衣装の礼服を若い子が着ているの、初めて見たよいいね

おはようっ、みすず

寧も、挨拶する

ところでさみすずは、ヨッちゃんへの朝のキスはしないの

あたしたち、みぃーんなしているんだけれど克姉も渚姉も、メグもマナも、麗華お姉さんまで

するかみすず

あ、はいお願いします

オレは、みすずとキスをする

うふっ大好きです、旦那様

みすずは、嬉しそうにそう言った

そうだ、美智にもしてやらないと

しかし美智、お前

なあ美智

オレの背中から声がした

さっきから、何やっているんだお前

美智は、オレがこの部屋に入ってからずーっと

オレの背中にしがみついている

ほっぺたと胸を、ペタッとオレの背中に押しつけて

他は、後ろからオレの腰を掴んでいる

充電をしております

充電

ご主人様からエネルギーを充電させていただいております

なら、仕方無い

じゃあ、キスはしないか

します

美智が、オレの正面に廻り込む

むしろ唇と唇を重ね合わせた方が、効果的に充電できると言われています

そうか、じゃあしよう

オレは美智と唇を合わせる

私の住んでいる街の駅前は

西口には、広いロータリーがあるのですが

東口は、2車線しかない狭い道でなのに、車がいつも渋滞しています

そこの路肩に街宣車を止めて**党が、街頭演説していました

いや、そりゃ、自分たちは車で次の演説する場所へピュッと行けるからいいんでしょうけれど

完全に交通の邪魔ですバスなんて、反対側の車線に飛び越えないと通れないし

どんな演説をしようとも自分の行動が、みんなの迷惑になっていることが判らない党と候補者じゃ、誰も票は入れないと思います

あと、うちの前をグルグル走っていた、街宣車

衆議院候補****、****の妻でございます

というのを連呼していました

まあ、本当に奥さんなんだと思いますが

何か平安文学みたいです

385.DONNA

で、瑠璃子はどうしている

オレが尋ねると、みすずと美智は襖で仕切られた、奥の座敷を見る

まだ、落ち込んでいるのか

はいお祖父様とお話ししたら、さらに元気がなくなってしまって

美子さんは、付いていてくれているんだろ

はい、それはもちろん

奥の座敷で、二人きりか

ちょっと心配だな

美智はさっきと同じで、オレの背中にぺったりとくっついているし

みすずは前から、オレに抱きついている

う、動けない

二人とも何をしているわけ

ですから充電中です

みすずも、充電させていただいておりますっ

二人とも、オレに胸をすりすりさせる

くんくんくんご主人様の匂いですっ

ええ、この匂いを嗅いでいると、安心できるんです

いや何か恥ずかしいぞオレ

寧お姉様よろしいんですかまだ、旦那様のこの辺のスペースが空いていますよ

みすずが、寧に気を遣う

ああ、あたしは大丈夫っここへ来るまでの車の中で、たーっぷり、ヨッちゃんに甘えてきたからっ

ムフフンと笑う寧

まさか車内で、エッチなさったんですか

朝から、カーセックスなんてしないよっ

みすずの言葉に寧が答える

だってあたし、昨夜からずっとヨッちゃんと一緒に寝たし朝一番のセックスもしちゃったもんねぇっ

自分の下腹部を包み込む様に両手で触る、寧

今、ここに、たっぷんたっぷん入ってるんだもんっ

う、羨ましいですっみすずも、欲しいです旦那様っ

いやだって、今日は時間がないだろ

告別式は、もうすぐ始まってしまう

また、今度なそうだ、みすず、また車の中でセックスしようあれは、とっても気持ち良かったもんなっ

はいっみすずも、とっても興奮しましたっ

えヨッちゃん、みすずとカーセックスしたことあるのっ

寧が、驚く

あるよ克子姉が運転してくれて

ずるいーっあたしもするうっえー、どんなの、どんなの

ええっと克子姉様に運転していただいたお車の中で後ろのシートを倒して、旦那様に抱いていただきました高速道路を猛スピードで走りながらでカーブでの揺れとかで旦那様があたしをギュッと抱いて下さったり高速道路の継ぎ目の段々とかを乗り越える度に、お腹の奥をゴツゴツ突っついて下さったりすっごく、エッチでスリルがあって、あたし興奮しちゃいましたっ

みすずそんなに詳しく話さなくても

うわっ、すっごく楽しそうっあたしもしたいっアメリカのハイウェイで、オープンカーとかでさっ

ね寧

わたくしはご主人様のお望みでしたら、場所や車種はこだわりません軽トラックの荷台でも、皇居一周コースでも、喜んでお相手致します

美智お前が一番、過激だ

そうだ、美智旦那様に、うちの学校の敷地内で抱いていただく計画、車の中にしましょうか

でも、車内での性行為は車のサスペンションが、激しく上下して、外から見破られてしまうのでは

だから、車を走らせながらよそれなら、おかしくないでしょしかも、あたしたちは窓から顔だけ出して学校のお友達に、ご挨拶しながら

ご主人様に犯していただきながらですか

そうよやってみない、美智

みすずが、美智に言うち

いいっそれ、いいっ

鼻息荒く寧が、叫ぶ

ヨッちゃん、それやろう今日は無理だから、明日やろうっ

そうだ恵美が練習しているグラウンドの横を、それで走ろうあたし、あの子に手を振るからあとできっと悔しがるわよっあの子

あ、いいですねっあたしもやりたいですっ

じゃあ、明日ねっ美智もおいでっ

何か明日は、カーセックス大会らしい

マルゴお姉ちゃん、車出してっお願い

まあ別にいいけど、あたしは克子さんの方がいいんじゃない

克姉だと自分もするって言い出すに決まっているじゃんかこれは、あたしとみすずと美智だけっ渚さんやマナにも内緒にするっ

はいっ寧お姉様っ

まあいいか寧-みすず・美智のラインが強化されるのは、悪いことじゃない

メグやマナのためのイベントは、また考えればいいんだし

もちろん、克子姉や渚も

ああ、渚と海辺のホテルに行くって計画もあるんだよなあ

うふふ旦那様と一緒だと、楽しいことばかり思い付きます

みすずと美智は、嬉しそうだった

うん、なら仕方無い

襖がスーッと開く

ご挨拶が遅くなり、申し訳ございませんお兄様

瑠璃子が現れる

美子さんも、後ろに控えていた

制服姿の瑠璃子は憔悴しきっていた

昨日より、酷い

大丈夫か、瑠璃子

お兄様お願いがございます

瑠璃子は、オレの前に三つ指をついて正座する

お願い

はい、実は

そこまでだ瑠璃子

ジッちゃんまた覗き見してやがったな

お祖父様わたくしは

悪いが、瑠璃子私は、お前の意志を尊重する気は、全く無い

ジッちゃんの声は、厳しかった

何の話をしているんだ

今、そっちへ行く待っていなさい

そのまま、瑠璃子は身体を振るわせて何かに耐えている

美子さんが、後ろから瑠璃子の背中を撫でてあげる

どうしたんだよ、本当に

オレが声を掛けるが

美子さんが、ギッとオレを睨んだ

敵意の眼で

一体ジッちゃんと瑠璃子の間に、何があった

待たせたな

1分も経たないうちにジッちゃんがやって来た

多分、オレたちが到着したと聞いた時からずっと、準備していたんだろう

ドアの向こうに、警護人の大徳さんと張本さんの姿が見えた

関さんと合わせて、3人のジッちゃん専属の警護人が勢揃いしたことになる

もちろん2人はドアの中には入らない

ジッちゃんは、スッとドアを閉ざした

おはよう、お祖父ちゃんっ

おはようございます香月さん

寧とマルゴさんが、挨拶する

えっとおはよう、ジッちゃん

オレも、挨拶する

うむおはよう

みすずが上座に座布団を用意すると喪服のジッちゃんは、どっしりと座った

さて悪いが、たいして時間が取れない私の方から用件だけ伝える構わんな

ジッちゃんの息子のお葬式なんだ

忙しいのは、判る

昨夜、瑠璃子と話をしたそれで、色々と私は考えを改めることにした

考えを改める

まず瑠璃子は、香月家の後継者から外す私の遺産は、みすずと美子にだけ遺す瑠璃子には、何もやらんことにした

そそれって

瑠璃子が、暗い顔をして身体を震わせる

美子さんが、そんな瑠璃子を必死で支えているが

瑠璃子は、美子さんを見ようとはしない

瑠璃子は香月の家から出す香月の名前も、名乗らせないつもりだ逆に、美子は香月の家に引き取る私の養女ということにして、香月の家名を名乗らせる

瑠璃子が香月家を追われ

美子さんが正式な香月家の一員に

遺産の分配はみすずに、株式など香月グループの経営権を握るための資産を美子には、土地や銀行預金を中心に遺す瑠璃子の様な娘には、何もやらんそう決めた

ジッちゃんの顔は、厳しかった

私は瑠璃子の教育を間違えたこいつは、自分こそが香月家の正統な跡取りであり、いずれは香月家を継承するものだと思い込んで成長した

自分のお父さんが、香月家の嫡男だと思っていたから

その娘である自分が後継者だと思っていた

ジッちゃんの三男の娘である、みすずより深刻に

いや、瑠璃子本人だけじゃない

瑠璃子の周りの人々香月家の分家たちや、グループ企業の重役たち、他の名家の人たちまで、みんなそう思って来た

だから瑠璃子は、ずっと特別な存在として扱われ

お付きの美子さん以外、親しい人間のいない生活を強いられてきた

昨夜瑠璃子と話をして、私は愕然とした今のままの瑠璃子では香月の家に遺すことはできない叩き出すより他に方法が無い

瑠璃子は人としての、正しい情に欠けているこれでは、どうしようもない香月家は多くの人間の生活と未来を預かっているのだからな

ジッちゃんはオレたちを見る

私は自分が人間として間違っていることを知っている私は自分の息子を殺させた香月家とグループ企業の未来のためには重秋は、あの場で殺すしかなかったそれは、確信しているだが息子を殺さなくてはいけなかったということについては、罪の意識を持っている私は、きっと地獄に墜ちるその覚悟で私は息子を殺した

高層ホテルを一つ丸ごと犠牲にした香月セキュリティ・サービスという会社自体、重秋の暴走を防ぐために作ったあいつを殺さずに済ませるために息子の殺害を回避するために、私はあらゆる手段を執った金も使ったしかしあいつは、司馬くんを暗殺しようとしたどうしても、自分ではなく、司馬くんが香月グループのトップに就任することが許せなかったんだならば、私は香月家の当主として、重秋を処断するしかない私には、名家との当主として企業グループのトップとしての責任がある

ジッちゃんの言葉は重かった

一昨日ホテルの中の私はもう、重秋の殺害を覚悟していたあいつは死ぬいや、私が命じて、殺すのだと腹を括っていたつもりだったそれでも心が揺れた本当に、重秋が司馬くんへ暗殺部隊を送り込むのか重役たちの誰と内通しているかそれが判るギリギリまで、私は決定を保留したその結果、お前たちには、色々と迷惑を掛けた私の決断が早ければお前たちを、あんな危険な目に遭わせることは無かったと後悔している

それはあたしたちも、シザーリオ・ヴァイオラの件がありましたから香月さんだけの責任ではありませんよ

そうだよっあれは、あたしの闘いだったんだからっお祖父ちゃんとは、関係無いよっ

寧も答える

うんオレたちは、オレたちの意志で、シザーリオ・ヴァイオラと闘ったんだオレたちのことについて、ジッちゃんが責任を感じることはないよ

そう言ってくれるかありがとう、お前たち

ジッちゃんが、オレたちに頭を下げる

しかし瑠璃子は

暗い顔の瑠璃子をジッちゃんは、見下ろす

昨夜、瑠璃子と話をしたなぜ、そんなに落ち込んでいるのか私は、この子に尋ねたよこの子の答えは

ジッちゃんは、ハッと息を吐く

こいつは自分には、香月家の後継者としての資格が無いかもしれないということについて、ショックを受けているらしい重秋が香月家の内部の和を乱す、不埒者であったということだから、処分しなくてはならなかったということを、この子は当たり前に受けとめているそして、その上で重秋の娘である自分は、重秋の血を引くが故に後継者の資格を失うのではないかとそんな、下らないことで落ち込んでいる

ジッちゃんは、瑠璃子の悩みを下らないと断じた

自分の父親が、死んだんだぞそれも、祖父が命じて、殺したんだどうして、そんな暴挙を15歳の少女が納得できる香月家のためには仕方の無いことだと納得しましただとこれは恐ろしいことだよ

瑠璃子には情が欠けている私は、この子の情操を教育し損なってしまった痛恨の思いだよ家だの会社だのを守ることより、家族の情の方が大切だろうこの子は、まだ15歳なんだからなっ

ジッちゃんは、叫んだ

いや、全ては私の責任だこの子を、こんな人間にしてしまったのは、私なのだから

そんなジッちゃんそんなことを言ったらオレたちだって、お葬式の控え室だって言うのにここでイチャイチャしたり、笑い合ったり、セックスしたりしていたし

お前は違うよ

へジッちゃん

お前はいつも、自分の欲望は二の次にしているみすずや、美智を元気付けようとして、お前はこの子らの性的な希望に率先して応えている愛している男と肌を合わせることで、女は安心を得るからな

確かにみすずたちは、別にセックス中毒ってわけじゃない

現状の不安から、オレとの交合を求めているだけだ

みすずたちも自分の欲望に素直すぎる傾向にはあるがお前や周りの人間への気遣いはある昨日、今日と私はお前たちの言動を細かく観察した確かに、行動に逸脱はあるのかもしれないがお前たちには、相手を思いやる心情がしっかりとあるそれは、間違いない

しかし瑠璃子には、その情が無いこいつは、論理的かつ合理的な計算だけで、行動しているあまりにも、思考がデジタルなのだその彼女の中の怜悧な思考が自分には、もう香月家の後継者の資格が無いと判断したので、落ち込んでいるんだ

論理的かつ合理的怜悧な、思考

重秋が裏切り者であったことを司馬くんは知っている私が重秋を処分したということはいずれ、重役たちにも知れる彼らが、勘付かないはずがないそうなれば重秋の娘である自分は、次第に排除されるだろう私が、瑠璃子をみすずと対等に扱っていても重役たちの方が、勝手に気を遣って、瑠璃子から遠ざかっていく腫れ物に触る様に扱いを受けるだろうその司馬くんが、次の香月グループのトップであり私は老齢だいずれ死ぬ瑠璃子が、香月家の後継者に選ばれることはまずあり得ない合理的かつ論理的に突き詰めて考えればな

一つの論理的な解答だ

正しいかどうかは、別にして

正しい認識だ冷静に状況から考えれば、そういうことになる瑠璃子は、そう結論付けたんだそして後継者でなくなった自分は、もう無価値だと思い込んだだから、落ち込んでいる

ジッちゃんの言う通りだ

しかし瑠璃子は、判っていない瑠璃子のこの結論には情が欠けている

瑠璃子、お前自分が何だか、判っていないんだな

瑠璃子が顔を上げる

瑠璃子はもの凄く綺麗で、可愛い女の子なんだぞ

瑠璃子は判っていない

あのなあ瑠璃子は、とんでもなく可愛い女の子なんだよっそりゃ、香月家の本家のお嬢様ってこともあるけれど可愛すぎて、みんな近づけないってこともあるんだよっ

お兄様何をおっしゃっているんですか

お父さんがどうしようと瑠璃子には、関係無いんだよむしろ、お父さんが早くに亡くなってしまった、可哀想な子だって、みんな思っているよ香月グループの重役たちが、瑠璃子を邪険に扱うはずがないだろうっ

わたくしは慮外者、香月重秋の娘なのですよっ

だから、そんなの関係無いって

瑠璃子は、政治的なことにかんしては鋭い

しかし、人の情が判っていないから

人間は、合理的や論理的な答えよりも情に従って行動する

むしろ、今のままなら将来誰かが、瑠璃子を担ぎ上げて利用するかも知れないな

どうしてです、お兄様

人の情が判らない瑠璃子は騙しやすいからさ

そういうことだいずれ私は死ぬ私が死んだら何にせよ、香月グループ内で権力闘争は起きるだろうその時までに、司馬君がグループ内を掌握仕切っていなかったら性根の悪い奴らは、みすずではなく瑠璃子を御輿に担ぐだろう

そんなお祖父様

驚く、瑠璃子

父親がすでに死んでいて、後ろ盾の無い瑠璃子の方が、操りやすいしかも、お前は論理だけの女だから、理屈をこねくり回す、小賢しい男には騙されやすいだろう

だから今のお前は、香月家から叩き出すしかないのだよ

ジッちゃんがオレを見る

お前、今、幾ら持っている

金だよ三千円ぐらいは、持っているか

うん持っているけれど

出せ

よく判らないけれどオレは、財布から三千円取り出す

ジッちゃんは、懐から何か紙を取り出し万年筆で、数字を書き込む

金、三千圓

そして、その紙をオレに手渡した

読め

オレは、紙を読み上げる

譲渡証香月瑠璃子を、奴隷として金、三千圓にて譲渡する譲渡後の返還は、いかなる理由があっても認めない

瑠璃子の奴隷譲渡証

読んだな、じゃあ三千円、私に寄越せそしたら、私が譲渡証にサインするお前は、こっちの受け取りにサインしろ

ジッちゃんは、オレの出した三千円をビッと奪い取る

そして、譲渡証にサインをした

瑠璃子私は、お前には自分で自分の行く末を判断させないこれは、香月家の当主としての命令だお前はたった今から、こいつの奴隷だ奴隷として生きろ、いいな

瑠璃子は驚きの余り、絶句している

ほら、早くサインしろサインしたら、瑠璃子はお前の好きにしてくれて構わんお前の奴隷だからなただし香月の名は、もう名乗らせん黒森でも、何でも、お前の好きに名乗らせろ

寧がオレに言った

香月のお祖父ちゃんはヨッちゃんに瑠璃子を連れ帰って、人の情を教えてあげて欲しいって言ってるんだよ

オレに、情を

今のまんまの香月瑠璃子のままでは、情を理解することはできないから香月の家名を剥奪してヨッちゃんに託そうとしているんだよ

しかし、ジッちゃんは

私はそんなことは考えておらんよ瑠璃子は、香月家から叩き出すこの子の存在は、いずれ香月家に災いをもたらすからなしかし、叩き出すにしてもおかしなやつに拾われたら、大変なことになる香月グループへのダメージとなるだから、こいつにくれてやるんだ三千円で瑠璃子、どう思う私の決断は、正しいだろう

瑠璃子はジッと考え

はい、お祖父様のご判断は正しいと思います黒森様の奴隷でしたらみすずお姉様の監視下でございますし、黒森御名穂様をはじめ、有能な方々がいらっしゃいますよからぬことを考える人間には手出しができないでしょう

お前は、三千円で売られたんだそれでいいな

はい、お祖父様わたくしのつまらないプライドを打ち壊すためには、奴隷として売られるというのは、とても効果的だと思います

お前はもう奴隷なんだ奴隷として生きていくのなら余計なことは何も考えずに、主人に全てを委ねろ香月家のことなど、もうお前には一切、無縁なんだからな

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