それが、この人のプライドとコンプレックス
思わず拳銃を横に置いて、オレたちに拍手する、ミス・コーデリア
白いヴァイオラたちもオレたちに銃を向けたままだから油断したんだろうな
隙が生まれた
ウハァァァァァァァッッ
瞬時に美智が強い気を発する
劇場中の人間が、思わず美智の気に注目する
オレたちも、ミス・コーデリアも、彼女の部下たちも
つい、美智の眼を見てしまう
心月ッ
美智が全員の気を捕らえる
セックス・シーンは、はかどるなあ
吉田くんと雪乃の仲は、セックスを通さないと変化しないし
何か父のリハビリ係を任じられたので足が萎えないように、毎日近所を散歩させないといけないようです
また微妙に時間を取られるまあ、仕方無いけれど
昨日、秋葉原で聞いた道端を歩いていた人たちの会話
何かさ、toらぶるの画集が東京中で完売らしくてさ、オレの知り合いがさっき新幹線で名古屋に向かったわ
兄貴が出会い系にハマッててさ、オレが帰宅しているのに気付かないで、隣の部屋で電話していたんだけどさいきなり電話の向こうの女に、名前と年齢を言えお前の目的は何だとか命令口調で言っててさ、そんで切られたらちっ、切れたかとか言ってんだよ誘拐犯と電話している大門軍団かよって、思ったね
この二つが、ちょっとツボに入りました
盗み聞きしていて、済みません
318.Edie (その1)
美智が、両手で虚空を掴みグイッと手前に引き寄せるっ
その手の動きに合わせて気を捕まえられた全員が前にのけぞるっ
オレや雪乃も含めてドタンと前に倒れ込む
全身の力が抜ける手に力が入らない
全身が感電したみたいに痺れている
これが美智の全力の心月か
ノーッ
女の白いヴァイオラたちが、銃を落とす
銃は、劇場の観客席の段の下にカラカラと落ちていく
な、何これ
ミス・コーデリアは、あわてて傍らにあった銃に手を伸ばすが
身体が痺れて、銃が掴めない
悴んだ手に当たったピストルは、コロンと観客席の段に落ちていく
カラカラカランッ
美智が工藤父に心月を見せた様子は、隠しカメラで観ていたんだろうけれど
気を操るこの技の実態は実際の現場に居ないと判らない
前に美智は、映像では気の流れは読めないと言っていた
だから、ミス・コーデリアには心月の本当の恐ろしさは伝わっていないことは、判っていた
逃げますっご主人様っ
美智が、オレに叫ぶ
オレは、グッと身体に力を入れる
痺れる身体を、無理矢理起こすっ
行くぞ、雪乃っ
オレは、その辺に脱ぎ散らかした服を適当に掴んだ
最悪、パンツさえあればいい
裸の雪乃の手を掴んで舞台から、飛び降りる
ちょちょっと
雪乃は、まだ身体がふらつくようだ
死にたくなかったら、来いっ
寧お姉様っ参りますっ
美智が、寧さんに言う
寧さんもまだ身体が痺れたままのようだ
お姉様お願いですっ立ち上がって下さい
あう、うんミッちゃん
寧さんは姉力を振り絞って、立ち上がる
待ちなさい逃がさないわよっ
ミス・コーデリアは、必死に身体を起こして立ち上がろうとする
エイヤァァァッッッ
再度、心月の裂帛をミス・コーデリアに叩き付ける
うぎゃあっ
ミス・コーデリアは、相当な使い手だ
最初っから戦闘モードの気合いだったら、こんなに簡単に美智の気に負けたりはしない
心月の技の中身が判っていたらあらかじめ予測が付いていいたのなら、充分耐えることができたろう
完全に己の気配を消すことができるんだ美智の気を受け流すことも、遮断することもできるに違いない
しかし、今のミス・コーデリアは
オレと雪乃のセックス・ショーに心が緩んでいた
その心の隙を、美智に突かれた
美智が、出口のドアを指示する
美智は、関さんがホテルの図を見ている時に、横から眺めて暗記している
もちろん、このフロアこの小劇場のことだって
待ちなさい待ちなさい殺してやるわあんたたち
そんなミス・コーデリアの憎しみの声を聞きながら、オレたちは劇場のドアから外に飛び出した
こっちのドアです
美智は、従業員用の裏通路に続くドアを開ける
走って下さい早く
オレは雪乃の美智は寧さんの手を引っ張って、走る
もう片方の手で、服を抱えたままだ
足は裸足靴なんて履いているヒマは無かった
オレと雪乃は、全裸のまま走る
ここを曲がります
美智は、迷いなくオレたちを先導する
そこっ
美智の赤いムチが天井付近にあった監視カメラを破壊する
そうか、従業員用の裏通路は
このホテルは、テロ対策用に特化されて造られているから、内部は隠しカメラだらけだ
しかしそれは、外部からの人の通る表の通路がメインだ
本来なら、敵の襲来で防火壁を下ろして館内を迷路化した時に、裏通路は完全に封鎖してしまう設計になっているのだろう
だからここには、表の通路と比べて、圧倒的に監視カメラの数が少ないしカメラそのものも表の様に壁や天井に巧妙に隠されてはいない剥き出しだ
そこにカメラがあると、はっきり判る形で取り付けられている
ミス・コーデリアたちが、ホテル内を自由に行動できたのはこの裏通路を通り抜けてきたからだろう
裏通路から表通路に出る各階の特定のドアと、そのドアを開くアクセスキーさえ持っていれば神出鬼没に行動できる
美智この従業員通路の地図も、関さんの見ていたデータの中にあったのか
はい、ございましたわたくしは完全に記憶しておりますっ
そこまで、オレたちに開示してくれたということは
もちろん、ミス・コーデリアたちを導き入れたのは、谷沢チーフのはずだし
ミス・コーデリアたちと谷沢チーフが、何らかの取引をしていることは間違いない
しかし関さんに、2505室の端末で裏通路の図まで見せたのは
オレたちと、ミス・コーデリアたちを闘わせようという意図があるんじゃないのか
双方が潰し合って、壊滅するとかを狙っているんじゃ
ハァァッッ
美智がまた一つ、カメラを破壊する
さらに幾つかの角を曲がり、カメラを破壊する
そして、美智は火災報知器の赤い扉の前で止まった
この火災報知器は本物ですが、この赤いドアはフェイクです
美智が、床から1メートルぐらいの高さの赤い扉を開ける
本来なら、消防のホースとかが入っているはずだけど
扉の中はまた扉だった
しかも、銀行の金庫の様に電子ロックのテン・キーと静脈認証の手形のセンサーが付いている
わたくしは、みすず様の警護役ですからホテルの各階にある、VIP用の緊急避難室の位置を熟知しています
そう言いながら、美智はキーを押していく
地下の部屋は閣下専用だったのでしょうあの部屋のことは、知らされていませんでしたまた、防御力も地下ほどは無いでしょうがとにかく、一時しのぎにはなります
ああジッちゃん用の部屋なら、他の人間には気付かれないだろうけれど
ただのVIP用の避難所なら谷沢チーフも、ミス・コーデリアも判っているはずだ
しかし今は、少し休憩できる場所が欲しい
美智の心月を食らって雷に打たれたような状態で、走った
身体が疲労している
雪乃も寧さんも疲労困憊しているし
済みませんミス・コーデリアと、彼女の部下たちに目掛けて気を放ったのですがあの場合では、皆様も巻き込まざるを得ませんでした
オレの心を察して、美智が言う
気にするな敵に囲まれていたんだこうなるのは仕方無い美智はよくやってくれているよ
一人に集中するのでなく、銃を持っていた敵全員を相手にしたんだ
全方位で、気を放ったのだから
とばっちりで心月を食らったオレたちですら、こんなに身体に衝撃を受けるのなら
一対一で美智の全力の心月の直撃を食らったら、ショック死するかもしれない
ほんの一瞬でも、他人に心身のコントロールを奪われるというのは、そういうことなんだ
何か全身の血の流れが、無理矢理ストップさせられて、逆流するようなそういう激しい衝撃が全身に響いた
ピピーッ
暗証番号を入力した後、美智がセンサーに右手を当てる
承認サレマシタ
機械の音声が返答して扉のロックが解除された
みすずの警護役としての美智の登録は外されていないということか
ますます、谷沢チーフの心が判らなくなる
は、早く中へ入りましょうよ
裸の雪乃が、震えながら言った
誰です
美智が気を感じて振り向く
えまさか、香月健思
すまん香月健思
オレは、今の今まで存在を忘れていた
違います気の色が
廊下の角からスッと姿を現したのは
黒い戦闘服
ミス・コーデリアの部下ってことは
わたくしの後ろに
美智が、サッと前に出る
赤いムチを握りしめて
あんなに平然と歩いているってことはまさか、心月が効かなかったってことか
そんなことはございませんミス・コーデリアも二人の部下も、銃を落としていましたしばらくは、身体機能が低下するはずですわたくしたちを追って来られるはずはございません
ミス・コーデリアと二人の部下
白い女のヴァイオラとロザリンド
ミス・コーデリアの部下は、もう一人いたよな
4人目の黒戦闘服
確かミス・コーデリアは、エディって呼んでいた
エディは、オレたちに軽く右手を挙げて
Good Evening
ぐっど・いぶにんぐ
オレは、今日の夜に起きたことをグッドだとは思わない
嫌、ちょっと待て
今のは
女の子の声じゃ無かったか
黒い戦闘服のエディはゴーグルと黒マスクを外した
ぱらりと拡がるボブカットの乳白色の金髪
そして褐色の肌
大きな青い瞳
褐色金髪の美少女は、ニコッと笑って、オレたちに言った
コンニチハワタシハ、イーディデスヨロシクネ
な、何
そこからは英語の判る寧さんが、話し掛ける
美智も確か、英語はできるんだっけ
何かさわたしは敵じゃない、仲間になりたいって言っているけれど、どうするヨッちゃん
寧さんは、疲れた表情でオレに言った
この方の気は、わたくしたちと敵対しておりません
美智が、イーディ嬢の気を読む
信じてもいいのかこの子
でもミス・コーデリアの部下だぞこの子は
この方かなりの手練れですそれに、どうやらこの方には心月が通じなかったようです
わたくし一人では、この方と闘いながら皆様を守りきる自信はございません
美智の表情は、強ばっていた
えっとね、この子の言ってることを要約するとね
寧さんが、オレたちに言う
ミッちゃんの技は、この子のお祖母さんと同じ技でとても親近感が湧いたんだって自分と同じ年齢ぐらいの子で、これができるのは凄いと思うとても感銘を受けたので、是非ともミッちゃんとお友達になりたいんだってさどうする
心月をこの子のお祖母さんも使う
だから、技に耐性があったのか
美智が最初に気を溜めて、オレたちの注意を惹いた瞬間に全力で心を塞いだ
気をあやつる技は、世界中にあります元々、群生生物である人間は、他の個体と精神的にリンクする能力がありますそれが気の同調ですから武道や宗教儀式など、精神を鍛錬していくと到達する場所は同じです
工藤流でなくとも、心月の様な技はあるっていうことか
この子を受け入れよう美智
寧さんの疲労が酷い
寧さんは普段は自分の心を隠して生きている人だから
心月のとばっちりを受けたダメージが、他の人より大きいんだろう
その状態で、心臓バクバクの全力疾走をしたから
ぐったりとして、唇から血の気が失せている
雪乃も、ちょっと元気が無い
そうだね、ヨッちゃん
それに、この子が仲間になってくれたら心強いよ
確かに心月に耐える逸材だ
しかし、この子はミス・コーデリアの連れてきた少女だ
どんな秘密を抱えているのか今の段階では、判らない
とにかく部屋の中に入りましょう
腰を屈めて、小さな扉から避難室に入る
4畳半ぐらいの部屋だ
椅子と緊急物資のロッカーしかない
全員が入室すると美智が分厚いドアを閉めた
これで外の状態は、普通の火災報知器
近くの監視カメラは壊したから、この辺りにオレたちが潜伏していることはバレているだろうけれど
具体的にどこに居るのかは、しばらくバレないだろう
ミス・コーデリアには
谷沢チーフには、気付いているだろうけれどそこは、チーフとミス・コーデリアの関係の微妙さに賭けるしかない
はい水です
オレは、ロッカーの中からミネラル・ウォーターのペットボトルを見つけて、寧さんに手渡す
ありがとう、ヨッちゃん
寧さんは、ボトルの蓋を開くのに手に力が入らないみたいだから、オレが代わりにやってあげる
その間に、美智は部屋の中の監視カメラとマイクを探して破壊していく
これで大丈夫です
うん監視を気にせずに喋れるのは助かる
ほい、美智
美智にもペットボトルを手渡す
ミス・イーディにも
Thank You
ミス・イーディは、ニッコリと笑って微笑みそれから、何かを寧さんに言った
えっとね、早く服を着て下さいって恥ずかしいですって言っているよ
すっかり、人前で裸でいることに慣れちゃった気がするオレ
ちょっと、まずい傾向かも
ちょっとあんた、これどういうことよっ
あたしの服が無いじゃないっ
雪乃もセックス直後に全力疾走で逃げて来たから、素っ裸だ
オレが咄嗟に抱えてきた服を物色しているみたいだが
持って来たのはオレのYシャツとパンツとズボンと靴下が片方
雪乃の服は丸ごと忘れて来た
パンツだけは、何として持って行かないとって思ったから
うんそれで、自分のパンツの近所の服だけ抱えてきたんだな
あたしのパンツをどうして忘れるのよっ
不機嫌に喚く雪乃に美智が言った
ご自分の物はご自分で持っていらっしゃるべきです持っていらっしゃらなかった、あなたが悪い
そんな余裕、無かったのよっ
雪乃が、美智に食い付くが
今だって余裕はございませんあんまりお騒ぎになられるようなら、外へ出ていただきますよ裸のまま
美智の気に負けて、雪乃は黙り込む
えっととにかく、パンツとズボンはオレが履くよだから、雪乃はこのYシャツを着てくれあ靴下も穿くか
穿かないわよっあんたの靴下なんてしかも片方だけじゃないっ
オレ相手には思いっきり、突っ込むんだな雪乃
シャツだけ、借りておくわ
そしてオレは上半身裸でズボンに裸足
何かアマゾンの秘境で遭難した人みたいな格好になる
雪乃は全裸にYシャツ
しかし香月健思、置いてきちゃったな
仕方無いじゃない今更引き返して連れて来るわけにもいかないんだし
冷たく、雪乃が言った
しかし大丈夫かな、あいつ
オレたちに逃げられて、ミス・コーデリアは怒り心頭だろう
八つ裂きにされてないといいんだけれど
平気よあの人、最初にあんたたちとは無関係だ自分は仲間じゃないって断言してたでしょ
雪乃は、コクコクとミネラルウォーターを飲む
あんたたちが、あの人のために引き返してくる義理は無いしあたしたちがどこへ逃げたのかの情報だって持っていない
確かに、そうだけど
だったら、なおさらミス・コーデリアに八つ当たりされて酷い目に遭っているんじゃないか
ギリギリなんとか無事なんじゃないあの人、一応は香月家の人間なんだし名乗っておいて正解よねあんたたちには人質に使えないけれど、香月家にはカードとして使えるでしょ
でも香月健思の親父は、香月家を裏切ったんだぞ
馬鹿ね香月家を裏切って、あの女と契約した張本人でしょ
香月健思の父親香月昇は、ミス・コーデリアと何かしら交渉している
取引相手の息子なら殺したりはしないわよ多分
多分としか言えないのがミス・コーデリアの恐ろしいところだ
今はオレたちには、香月健思の無事を祈ることしかできない
雪乃が手を滑らせてペットボトルの水を零す
さっきのあの子の技、効き過ぎよまだ手がブルブルするのよ
雪乃は、手の平を開いたり閉じたりする
シャツが少し、濡れちゃったわ
あ胸元から乳首が、透け透けだ
タオルか何かない
ちょっと待ってろ
オレは、ロッカーの中を見る
医療用のガーゼならある
それでいいから貸して
そら
オレがガーゼを手渡すと、雪乃は濡れたシャツを拭うが
こんなんじゃ全然だめね
裸Yシャツで、身体をくねらせる
お、お前、その格好、気を付けろよちょっと動いたら、お尻丸出しだぞ
こんなのもう、どうでもいいわよ
さっきは裸で着る物が無いと喚いていたくせに
一枚でも羽織る物があれば、この余裕だ
ていうかさあんたのが垂れてきているわ
見ると、雪乃の太ももに白い精液が垂れている
もうしょうがないわね
雪乃は、大きく足を開いて精液を拭った
まだ興奮が治まっていないんだろう割れ目は開いたまま
ピンク色の内側が丸見えになっている
雪乃、お前、それ
何よもう慣れたでしょあたしのなんて今まで散々、見て来たんだから
そりゃあ、まあそうだけど
でも、裸Yシャツの下から覗く割れ目というのはなかなか新鮮でセクシーだ
わたくしも、下着を脱ぎますから、わたくしのをご覧になって下さい
み、美智
美智がオレたちの間に割り込んでくる
わたくしちょっと嫉妬しております
ご主人様はどうして、白坂雪乃様とはそんなに仲がお宜しいのですか
え、仲いいか
オレと雪乃
わたくし、何でも致しますからどうか、この方と同じ様に親しく接して下さいませ
美智はそう言ってオレに土下座をする
OHSAMURAIHARAKIRI
いや、ミス・イーディ
別に美智は切腹とかしないから
美智、頭を上げてくれそんなんじゃ、益々親しくはできないよ
では、わたくしはどうしたらいいんでしょう
美智が、顔を上げる
ミッちゃんヨッちゃんと雪乃さんは、お互いに遠慮が無いだけなんだよ
寧さんが、優しく笑って言う
遠慮
ヨッちゃんは優しいからみんなにはいつも気を遣ってくれるでしょでも、雪乃さんには、そういう優しい気持ちが無いんだよだから、遠慮がないから仲良く見えているだけでさ心の絆は、ミッちゃんの方が遥かに優っていると思うよ
美智は真剣な顔で答える
でも、わたくしは口惜しいんです不安なんです寂しい気持ちになるんです
美智、こっちへ来い
オレは、美智を呼び寄せる
とてとてと、美智がオレに寄って来る
ほら、美智
オレは美智を抱き締め、頭を撫でてやる
寂しくなったら、いつでも来い
はいギュッとして下さい
美智を強く抱き締める
でも、美智が我慢しないでこういうことを言い出す様になったのは良いことだと思うよもっともっと、オレに甘えていいからな
ああ、美智だってオレに遠慮しないでいいんだからな
美智は、大きな瞳でオレを見上げ
わたくしともさっきの様なセックスをして下さい
え美智とも、頭突きするのか
お嫌ですか
いや、美智とはセックスしたいけれど頭突きは嫌だな
美智の可愛いおでこにコブができるのは見たくない
オレは美智の額にキスをする
頭突きはいいですからわたくしにも、ご主人様の性欲をぶつけて下さい
ご主人様の性欲のはけ口になりたいんですわたくし荒々しく、犯していただきたいんです
中学3年生の小さな身体が、オレの腕の中で強ばる
判った今度したくなったら、すぐ美智を押し倒すからな
はいお待ちしています
美智は、ニッコリと微笑んだ
敵側の美少女が味方に寝返るシチュエーションて好きなんです
まあ、ミス・イーディが本当に味方かどうか判りませんが
金髪で褐色の肌の外国人美少女となりました
ミス・イーディの詳細は、次話で明らかになります
319.Edie (その2)
えっと、とにかくこの子の言ってることをまとめるとねっ
ていうか美智は英語が判るから、実際はオレと雪乃への説明だ
この子の名前は、イーディ・セクストンニューオリンズの近くの出身で裏社会の組織の中で生まれたらしいの
ミス・イーディは、ニコニコとオレたちに微笑んでいる
乳白色の金髪に褐色の肌大きなブルーの瞳の美少女だ
The glove
ミス・イーディのぷっくりとした唇が囁く
どうやら、それが組織の名前らしい
グローブって、手袋って意味の方ね人を殺すときに、指紋が残らないように革の手袋をするところから名前が付いたんだって何て言うのかなThe gloveってのは、どうやら暗殺教団みたいな組織らしいんだよね
暗殺教団て、何です
オレは、尋ねた
元々は、自分たちの宗教に敵対する人を暗殺する、危険な宗教結社のことですそこから様々な暗殺術が生まれ、裏社会に暗殺者を供給する組織となりました
アメリカにはさ、ハチャメチャな教義のびっくりするような宗教団体が山ほどあるんだよ普通では、考えられないような秘密結社とかも平気で存在しているからしかも、そんなトンデモ組織が百年以上も続いていたりするんだよね
とにかく、イーディは、The gloveのことをAssassin Guildって言っているから正確には暗殺教団じゃなくて、暗殺者組合とかなのかもしれないけれど詳しいことは、あたしにはちょっと判らないけなマルちゃんなら、色々と知ってるんだろうけれどとにかく、ニューオリンズの近郊に暗殺者を養成するコミュニティがあって、彼女はそこで生まれたみたい
こんな可愛い女の子が暗殺者として育てられた
彼女の話ではThe gloveは、元々はアメリカ南部の奴隷が白人の支配に反抗するために秘密裏に結成した暗殺集団だったらしいですアフリカの伝統的な格闘技をルーツにしているようですが、アメリカに連れて来られてから様々な武術と混交したようです宗教的には熱心なキリスト教徒で、自分たちをアメリカにおける宗教騎士団だと考えていたようです
美智が、ミス・イーディの話を説明する
でも、それは組織の成立時の話でその後は、アメリカの公権力と裏社会の両方から暗殺を請け負ってきたみたい特殊な秘密結社だから、組織を大きく拡大するみたいな思考はなくて、ただ組織の存続だけを考えて、無節操に殺しの依頼に応じていたらしいわ
それに、組織内の教義も時代によって変遷があったたらしいの特に、戦後のカウンター・カルチャーの影響で、東洋思想なんかもも採り入れたらしいよその辺が、いかにもアメリカっていう感じなんだけれど時代ごとにトレンドを採り入れて、組織そのものが変化しているんだってさ
気を使った武術に関しても、元々アフリカの伝統武術の中にそういう技があったらしいのですが、すっかり忘れられていて彼女のお祖母様が、東洋の武術を研究して再現することに成功したのだそうです
ミス・イーディが、うんうんと頷く
何となくどういう話をしているのかは、判っているらしい
イーディのお祖母さんは、The gloveの指導者の一人だったんだけれど、今年の初めに亡くなったんだってそしたら、イーディは現在のThe gloveのボスに嫌われてそんで、シザーリオ・ヴァイオラの組織に売り飛ばされたみたい
売り飛ばされた
うんお金で買い取られたみたいよでも、イーディ自身は全然気にしていないみたい
英語で楽しそうにイーディが寧さんと美智に喋る
イーディのお祖母さんは、昔ながらのターゲットに接近して肉弾戦で相手を殺す暗殺術を堅持しようという考え方だったらしいのところが今の組織のボスは、車で接近してマシンガンでダダダダダッの方が手っ取り早いって思っているらしいから伝統的暗殺術の否定のために、お祖母さんの技を直接引き継いだイーディを追い出したがっていたんだって
彼女のお祖母様が亡くなる前に、外の世界に修行に行けと命じられたそうですだから、組織のボスが私を売って金を受け取ったとしても、私には関係無いそもそも彼に私を売る権利は無い私は自由だと言っています
なるほどミス・コーデリアは金でミス・イーディを買い取ったつもりだったから、彼女を奴隷みたいに扱っていたんだ
でも、ミス・イーディは修行のつもりで従っていただけで、自分自身は自由だと思っていたから
しかし奴隷制に反抗して生まれた組織が、21世紀の現代で女の子を売り飛ばすって
組織を創設した人たちが聞いたら、お墓の下で泣くぞ
ミス・コーデリアの配下になったのは、先月のことらしいわでも、彼女に対してイーディはずっと不満だったみたい
不満
ミス・コーデリアの身体能力は認めるが、彼女は全然トレーニングに付き合ってくれなかったと、言っていますというか、シザーリオ・ヴァイオラの組織には彼女が一緒にトレーニングできる資質のある人間はいなかったようです
ミス・イーディが、嬉しそうに美智に何か言う
美智が口籠もる
ミッちゃんを見てこの子となら、きっと良い修行が出来るって思ったんだってだから、ミス・コーデリアを捨てて、あたしたちの方に来たらしいよこの子
How old are you ?
ミス・イーディが美智に尋ねる
Fifteen
Realy
美智が15歳ということに、彼女は驚く
私は16歳だどうして、あなたは私よりも年下なのに祖母と同じ技が使えるんだって言っているわ
わたくしは工藤流古武術の継承者ですから
工藤流古武術の話で、盛り上がっていく美智とミス・イーディ
結局暗殺術の求道者なのね、この子
寧さんが、ミス・イーディを見てそう言った
自分の暗殺術を高めることにしか興味が無いみたい
スポーツとか武道なら、それでもいいんだろうけれど
暗殺術ってのはなあ
NO、そうじゃありませんこうです
美智が立ち上がり、ミス・イーディの前で武術の型をやってみせる
OHExcellent
イーディは、食い付くように見ている
何よ似たもの同士じゃないこの子たち
結局、友達が欲しかったってだけでしょその子
友達
暗殺術の向上にしか興味の無いミス・イーディにとって、美智は同年代で研鑽し合えそうな初めての相手なんだろう
それは美智にとっても同じだ
美智も特殊過ぎて友達がいなかった
オレやみすずは、あくまでも主人だし
同い年の瑠璃子や年下のマナには、壁を作っている
美智にも親しい友達は、必要だと思う
美智ミス・イーディと友達になれると思うか
一緒に稽古を重ねて、お互いを向上させる相手になれるかって聞いているんだ
美智は、キッとした顔でオレを見て
ご命令とあれば、そう致します
そうじゃないミス・イーディと稽古したら楽しいと思うかって聞いているんだ
楽しい
美智が、困惑の表情を浮かべる
工藤流古武術の鍛錬は、厳しいものです決して、楽しいなどと感じてはいけません
美智もまた、求道者だ
ヨッちゃんは、そういうことを言っているんじゃないよちょっとイーディと軽く手合わせしてご覧部屋が狭いから、気を付けてだよ
寧さんが、美智に言った
ミス・イーディにも、英語で何か言う
Off Course
ミス・イーディはニコッと微笑む
スッと立ち上がって、美智と対峙する
美智は、スッと一礼して構える
ミス・イーディも
背はミス・イーディの方が高いな
ハァァ、ハッハッハーッ
美智が拳をラッシュする
ハッシュ、シュッシュッシュッ
ミス・イーディは、繰り出された美智の拳を巧みに捌いていく
次は、攻守交代だ
ミス・イーディが攻め、美智が捌く
うん拳の出し方、捌き方が全く違う
これが流派の違いってものか
ギアを上げますっ
また攻めに変わった途端、美智が動きを変える
工藤流独特の相手の気を反らす動きに
woow
ミス・イーディは、表情を険しくしながらも美智の動きに合わせていく
さらに攻守交代
今度は、ミス・イーディが不規則なリズムで美智を攻める
これがThe gloveの伝統的な暗殺術なんだと思うよ常に相手の死角から攻めていくみたいな技だよねっ
寧さんは、ずっとマルゴさんと恭子さんのトレーニングを近くで観てきている
格闘術にも、それなりに造詣が深い
イヤハァッ
瞬間美智の裂帛が轟く
相手の技をすり抜けて
美智の拳がミス・イーディの顔面直前でピタッと止まる
今はまだ気を読む力がある分だけ、ミッちゃんの方が先に行っているみたいだね
寧さんの言葉に、美智は
いいえ肉体の鍛錬は、この方の方が上ですわたくしの一撃では、この方は倒せません
気の隙を突いても、一発位じゃミス・イーディは沈まないということか
つまり現状では、五分五分
Great
ミス・イーディは、歓喜して美智に抱きつく
早口な英語で、何か言っている
イーディ、すごく喜んでいるわ私はあなたと出会うために、生まれてきたのかもしれないなんて言っているわよっ
寧さんが通訳してくれる
わたくしたちの技は、全く源流の違うものですだからこそ、一緒に鍛錬し合い、お互いの技を吸収すれば二人とも、より強くなれると思います
美智は、ハンカチで汗を拭いながらそう言った
思うじゃなくって美智は、そうしたいのか
オレは、美智に彼女自身の意志を問う
ご主人様がお許し下さるのなら是非
美智はミス・イーディを気に入ったらしい
ミス・イーディの方は、表情を見ただけで充分だ
じゃあ、ミス・イーディを招待しろオレたちの家に
美智の家は、オレの家だそうだろ
嬉しそうに、オレに答える
はい一生、お側から離れませんっ
ならミス・イーディには、美智の稽古仲間として家に来て貰おうミス・イーディが居たいだけ居てくれていいそう伝えてくれ
うん先生には、あたしからも頼んであげるマルちゃんや克っつんも歓迎してくれるって思うよっ
美智が英語で、ミス・イーディに話す
彼女喜んで、滞在させていただきますって言ってくれました
美智とミス・イーディが、親しげに握手する
さらに二人で何か喋っている
イーディミス・コーデリアとは、全然合わなかったみたいだねミス・コーデリアはレズなんだってさ
だから、ミス・コーデリアの部下はみんな女なんだって組織に売り飛ばされてきたイーディをミス・コーデリアが引き取ったのもこの子に気があったみたい
寧さんが、ミス・イーディの話を翻訳してくれる
さらに彼女が英語で話す
ミス・コーデリアは彼女を次世代のヴァイオラの候補にするつもりだったみたい
次世代のヴァイオラ
最初はロザリンドのスペアの予定だったんだけれど戦闘能力が高いから、ヴァイオラを継がせた方がいいんじゃないかって、ミス・コーデリアが組織のボスに進言したらしいわ
やっぱりシザーリオ・ヴァイオラは何人も居て、組織が管理しているんですね
おなじシザーリオ・ヴァイオラの名前を使って複数の人間が、幾つもの犯罪を犯す
そういう組織なんだ
そういうことねそれで、ミス・コーデリアは、時間をかけてゆっくり彼女を育てるつもりだったみたいついでに、自分のレズ相手としても攻略するつもりだったようよそれでイーディを、今回の日本ヘの出張にも連れて来たらしいのあくまで見学者として
うんこれで、なぜミス・イーディが4人目の戦闘員で
ミス・コーデリアがオレたちを襲撃した時に参加していなかったが判った
現在のミス・イーディはミス・コーデリアたちと戦闘での連携が取れないんだ
というか彼女は最初から、ミス・コーデリアの指揮下に入る気は全然無いから
時間を掛けて訓練しても、連携するのは無理だろうけれど
まあ、暗殺者組織の中で育った子だし留守番していろとか機械の操作をしろとか、そういう普通の作業の命令なら、買い取られて来た手前従うんだろう
だから、ミス・コーデリアは、彼女を従順な少女だと誤解していた
しかしミス・イーディは、自分は自由だと考えてきたし
一番大切な戦闘についてミス・コーデリアに従う気が全く無かった
それで、ミス・コーデリアを放り出して、友達になれそうな美智を追ってオレたちの方にやって来てしまったんだ
なかなか面倒な人材だなこの子
間違いなく逸材ではあるんだろうけれど
何より、ミス・コーデリアが自分のことをエディと呼ぶのが気にくわなかったそうです
そうだ何でミス・コーデリアは、彼女をエディって呼んでいたんだろう
ミス・イーディが次に喋った言葉に美智は赤面する
ええっと、その
ミス・コーデリアは、イーディという名前はEDと同じだって馬鹿にして笑ったらしいよそれで、この子のことエディって呼んでたんだって
口籠もった美智の代わりに、寧さんが説明してくれた
EDってどうして、馬鹿にされるんです
EDというのはその
恥ずかしそうな美智を見て、ミス・イーディは
Erectile Dysfunction
エレクトリック・パレード
オレの返事にミス・イーディは爆笑する
そうじゃないよ、ヨッちゃんErectile Dysfunctionてのは、 Impotenzのことだよっ
え何が大切なんですか
大切
それぐらいの英語は、さすがにオレでも判りますよimportantでしょ
違うよ、ヨッちゃんImpotenzだよっ
インポート
もっと違うよっImpotenzってのはインポだよ、インポオチンチンが勃たなくなるってことなんだよ
えっ、importantってそんな意味があるんですか
そうじゃないって、importantじゃなくって Impotenzの話をしているのっ
何が何やらオレには判らない
何の話をしているのという顔で、ミス・イーディがこっちを見ているから美智が、恥ずかしそうに英語で解説する
ミス・イーディは、ギャハハとまた爆笑する
あんたって救いようがないほど頭が悪いのね
雪乃が、呆れ顔でオレに言う
その言葉に異論は無いが雪乃には、言われたくないと思う
ミス・イーディが、ヨッちゃんに興味を示しているよ
さっき、雪乃さんと二人でしていた行為は何だって言ってるけど
雪乃としていたのはただのセックスですが
寧さんが、さらに突っ込んで尋ねる
うーんどうやら、この子セックスのこと、何もしらないみたい
ミス・イーディは、相変わらずニコニコ笑っている
この子の居たThe gloveという組織は、宗教的な戒律が多いところだったらしいわ男性と女性の居住区が完全に別れているんだって結婚するまでは、自分から男と口をきくことも許されない結婚も、組織から指示された相手としかできないみたいよ原理主義の団体だったみたい
そういやこの子今までオレとは直接会話をしていない
まあ、オレが英語が判らないせいの方が大きいんだろうけれど
その戒律って彼女はまだ、それに縛られているんですか
オレの問いを寧さんが英語で尋ねる
うんとねイーディは、もう戒律に縛られていないってThe gloveから売り飛ばされた段階で、彼女は組織からは異端者の扱いにされてしまっているらしいのだから、もう二度とニューオリンズには帰れないらしいわその代わり、戒律を守る必要もなくなったらしいんだけれど
さらにミス・イーディが、何やら言う
ごめん戒律を守らないじゃなくって、守れないというのが正しいらしいわ組織では、日常生活の全てのことについて、宗教的な上位者が下位の人間を監督していたらしいから上位の者の言葉には常に従うというのが、戒律の根幹だったみたい
そうか結婚相手まで、指示されるんだもんな
組織の外に出たら、何もかも自分で決めなきゃいけなくなるから自分の意志で何でも決めるということは、戒律違反なんだけれど身近に監督者がいない以上、一人で生きていくしからいものね
なるほど組織を離れた段階で異端者とされる理由が判った
イーディの場合はずっと、お祖母さんが監督者だったらしいわそして、今のボスよりも亡くなったお祖母様の方が、宗教的には上位の立場に居たらしいのそれでイーディは、ボスの命令に従う義務が無かったらしいのよ
そういう存在が組織内に残っていることを嫌って
ボスは、ミス・イーディを売り払ったんだ
そして、そのままレズのミス・コーデリアに引き取られたから
男女の性愛なんて、学んでいるわけがない
彼女にとっては、組織に属していることよりも、お祖母さんとの絆の方が大事なんだって自分の監督者であったお祖母様の最後の指示が、組織の外に出て、修行しろだったから
だから、ミス・イーディは暗殺術の求道者なんだ
うん、この子のこと大分判ってきた気がする
いや、確か16歳って言ってたから、オレや雪乃と同い年なんだよな
この子って言うのは、失礼か
どう、ヨッちゃんイーディのこと、信じられる
寧さんが、改めてオレに尋ねた
え、当たり前じゃないですかミス・イーディ、もの凄く開けっぴろげな性格だし
うん美智の正反対で
いつも笑っていて、感情豊かだ
感情が全て、顔に表れている
ミッちゃんはどう思う
彼女は嘘を言っていません信じられますいえ、信じますわたくし
美智も、そう言った
美智にとっては、初めての友達になれるかもしれない少女だ
雪乃さんは、どう思う
寧さんに意見を聞かれて、雪乃はビクッとする
うん、雪乃さんの意見も聞いておきたいの
寧さんは、はっきりとそう言った
この子は小細工とかできないわよいわゆる、格闘馬鹿でしょ深いこと考えていないもの
寧さんは、改めてミス・イーディを見て
三人のセンサーが安全て評価するのなら信じても平気みたいだね
そうか、寧さんはそれでも
ミス・イーディが、ミス・コーデリアの仕掛けて来たスパイという可能性を考えていたのか
この子と谷沢さんとの繋がりは、どう考えても無いだろうしスパイとして送り込んでくるにしては、彼女の設定は特殊すぎるものねそれに、ミッちゃんとの手合わせでも、邪気が無かったし
美智と手合わせさせたのもミス・イーディの本心を探るためだったんだ
うんこれなら、ここでマルちゃんたちと連絡を取っても平気だよね
ミス・イーディが味方だと判別できるまで寧さんは、待っていたらしい
通信機はミス・コーデリアに傍受されますよ
同じ機械を、ミス・コーデリアたちも持っているのだから
判ってるってでも、仕方無いよマルちゃんたち、あたしたちが捕まっていると思って、さっきの劇場に向かっているんだから
今のままでは、ミス・コーデリアたちの待ち伏せに遭う
この通信機は、壁の中の中継器を通しているでしょだから、この部屋から通信したら本部に居る谷沢さんにはあたしたちの居場所がバレちゃうと思うのよでも、多分、谷沢さんはミス・コーデリアには教えないと思うんだ
ミス・コーデリアと谷沢チーフの微妙な関係を考えて
寧さんは、一か八かの賭けに出るつもりらしい
えっえっえー、あのそれは
ミス・イーディと喋っていた美智が、突然大きな声を出す
どうしたんだ美智
美智は、困惑した顔でオレを見る
わたくしが心月を開眼したのはご主人様に抱いていただいたおかげだという話をしていたのです
何で、今、そんな話をしているんだ
それはイーディさんにも、ご主人様の素晴らしさを知っていただきたくて
オレは、全然素晴らしい人間じゃないぞ
そしたら彼女
ミス・イーディは、相変わらず無邪気な笑顔を浮かべている
自分もしたいって言うんです
したいって
オレとセックスを
ええっと一昨日までは、エディで男の子の予定でした
しかし、ミス・コーデリアが男を連れて来るはずがないよなあと思い
気が付いたら、こんなことに
イーディの設定は、この24時間で思い付きました
320.スローにオリロー
美智が、真剣な顔でミス・イーディに話す
英語だからオレにはよく判らないけれど
セックスは、本当に信頼し合って愛し合っている男女でないとしてはいけないものだって言っているよ
寧さんが、美智の言葉を通訳してくれる
ミス・イーディが、驚いた顔でオレを見る
そして、美智に尋ねる
これはオレの拙い英語力でも判る
つまりこの男性は、あなたのハズバンドなのかって尋ねているんだな
NOHe is my Master
マスターってああ、ご主人様か
さらに流暢な英語で、言葉を続ける
ミッちゃんは私はこの人に生涯を捧げ、お仕えして尽くすことにしたご主人様も、そういう私を受け入れて下さっているって話しているよ
美智の真剣な態度にミス・イーディの顔から微笑みが消える
sorry
ミス・イーディは、美智に謝罪した
あなたたちの関係を知らないまま、自分勝手な申し出をしてごめんなさいって、謝っているよこの子
えミス・イーディ
この子の中では、ご主人様とか一生お仕えするとかアリなのか
まあ、謎の暗殺者教団で育ってきた子だから、オレたちとは一般常識が違うんだろうけれど
ミス・イーディは、今度は寧さんに何かを尋ねている
うんとねあたしとミッちゃんの関係を尋ねているんだよ
この乳白色の金髪に褐色の肌の暗殺者美少女は
美智に対する興味だけで、オレたちに近付いて来た
美智と稽古友達になる約束をしてようやく寧さんやオレにも興味が湧いてきたんだろう
We Are familyっていうか、この場合はちょっと違うかなSisterhoodって言った方が判りやすいかもね
何ですか、シスターフッドって
思わず尋ねてしまう
直訳すると姉妹団てことなんだけれどキリスト教徒だと友愛の精神があるから、親しい間柄になると、すぐにお互いを兄弟って呼び合うんだよよう、兄弟とかさ
ああ、映画とかで観たことがる
それでね血が繋がっていなくても、みんな兄弟みたいに仲良い人たちの集まりだよねっていう団体をブラザーフッドって言うんだよそれの女性版がシスターフッドだよ
うん、オレたちの黒森の家族はそういう感じだよな
本当の血の繋がっている家族じゃないけれど信頼し合っているし、結束している
というか寧さんたち、前にそのまんま姉妹会っていう集まりも作ってましたよね
うんあれは本当に外国のシスターフッドを参考にしたからあ、姉妹会はこれからも健在だからねミッちゃんも入ってね
美智が、寧さんに振り向く
ヨッちゃんを愛する姉妹の会っていうのがあるの会員は、克っつんと、渚さんと、あたしと、ミィちゃんと、メグちゃんと、マナちゃん入会条件は、ヨッちゃんのことが大好きだっていうこと年会費とかは無いから安心して
みすず様も入会なさっていらっしゃるのならわたくしも入ります
美智は、即答する
オッケー
ミス・イーディが、美智と寧さんを見て何の話をしているのみたいなことを聞いている
寧さんはだから、あたしたちはシスターフッドなのよと答えている
それぐらいは、どうにか判る
あなたは、彼女のシスターなのかとミス・イーディは、寧さんに尋ねる
ミッちゃんあたし、ミッちゃんのお姉さんでいい
美智は主人であるオレを見る
寧さんは、オレのお姉さんだだから、美智も寧さんのことを自分のお姉さんだと思って敬愛しないといけない
美智が、改めて寧さんを見る
未熟な妹ですが、どうか存分にご指導下さいませ
こうして美智は、正式に寧さんの妹となる
うん、この二人の関係は微妙だったからこれで仲良くなってくれるといいな
ミス・イーディが、また美智に何か言う
雪乃を観ている
えっとね彼女は、雪乃さんもシスターなのかって尋ねて、ミッちゃんが否定したところそんでじゃあ、どういう関係なんだって聞くから、ミッちゃんがよく判らないって答えてるね
確かに雪乃は家族でも姉妹会でもない
寧さんや美智との関係どころか
オレとだって、どういう関係なのかよく判らない
でも、あなたのMasterととても親密じゃないかつてイーディが言うから、でも、判らないものは判らないんだってミッちゃんが答えて、そう、それはちょっと心配だねってイーディが慰めている
うんと何か、色々と申し訳無い
雪乃に関しては、オレもどういう判断をしたらいいのか現状では、どうしようもない
腐れ縁て英語で何て言うんだろうか
イーディが、ミッちゃんのことをシスターって呼んでもいいかって聞いてるよ
これから稽古仲間になるんだから是非とも、シスターって呼びたいってまあ、親愛の情を表しているんだと思うけれど
美智がいいんなら別にいいんじゃないか
美智は、ニコッと微笑み
判りました、これからは私をシスター・ミチと呼びなさい私もあなたをシスター・イーディと呼びます的なことを言っている多分
ミス・イーディは、オレと寧さんを見て、笑いながら何か言った
私のシスターの姉なら、あなたも私の姉ですだってでも、ヨッちゃんはマスターじゃないよって言っているよ
寧さんが、解説する
まあ美智とシスターになったと言っても、別にオレたちの家族になったわけではないし
だいたい今、知り合ったばかりの女の子から、いきなりご主人様なんて呼ばれるのも困る
しかし、あなたがシスター・ミチのマスターである以上、私も最大の敬意を払うだってさ
ミス・イーディと寧さんが会話する
ミス・コーデリアの追撃から、あたしたちを守ってくれるってそう約束してくれたよ
ああミス・イーディの中では
美智と友達になることと、美智を含めたオレたち全員を危機から救うことは、今の今まで別のことだったんだ
美智は自分と同じで力があるからミス・コーデリアの攻撃を躱して生き残るのは当然だと思っている
一緒にいるオレたちは、どうなってもいいっていうか特に関心は無かったんだろう
多分シスターフッドという言葉が、イーディの心を動かしたんだと思うよ
寧さんがオレに言う
彼女の居た暗殺教団にも、多分、兄弟っていう思想はあったんだと思うよ組織の中の人間は、みんな兄弟で助け合わなくてはいけないっていうのがだから、彼女の新しいシスターになったミッちゃんにとって、ヨッちゃんやあたしが特別な存在ならイーディにとっても守るべき存在ってことなんだと思う
それは、ありがたいけれど
そしたら、雪乃はどうなる
美智がイーディに示した感じでは雪乃のことを何とも思っていないことが明らかになっているし
美智雪乃も助けてくれって言ってくれ
美智はちょっと不快そうだ
雪乃は、ジッとオレを見ている
これで雪乃だけ死ぬ様なことになったら、寝覚めが悪いだろ
美智が、何やらミス・イーディに話す
OKI see.
ミス・イーディは納得する
何て言ったんだ
彼女は私のご主人様の大切な家畜だから、死なせたくないって、言ったんです
ちょっと、家畜って何よっ
雪乃が、反発する
あなたが今、生きてこの場に居られるのは、ご主人様の思し召しだということをご自覚下さい
美智は、冷たく言い切った
香月健思さんと一緒であの場に置いてきても良かったんですよあなたなんて
まったくどうして、オレの女はみんな雪乃に厳しいんだろう
まあ気持ちは判るが
とにかくあなたは家畜ですペット以下ですお仕置きしないと、大人しくならないようでしたら、その大きなお尻をムチで叩きますよろしいですねっ
何事にも冷静沈着で感情を表に出すのを嫌う美智が雪乃に対しては、怒りの表情を隠さないんだな
ミス・イーディは、そんな美智を見てケラケラ笑っている
本当に、美智のことを友達だと思っているんだ
さっきのほんのちょっとの手合わせでミス・イーディの方も、美智のことを信頼できる相手だって判ってくれたんだ
完全に、心を開いている
ていうか、この子自分がミス・コーデリアを裏切ったということについては、何の罪悪感も感じていないんだな
すっごい割り切りだ
こういう考え方は、本当にアメリカ人ぽいけれど
こうなるとさ早いとこ、イーディをマルちゃんや関さんと会わせないといけないね
イーディが、ミス・コーデリアの作戦計画をどれぐらい知っているかは判らないけれど何かしらの指示は受けているはずだから
そうか敵の出方が判る
あたしじゃあ、話を聞いても判らないけれどマルちゃんや関さんなら、イーディの話の中のちょっとしたことをヒントにして色んなことが判ると思うんだ
え麗華は
って、思ったけれど
麗華は、純粋な戦闘要員なんだな
部隊指揮とか、作戦立案とかの訓練はマルゴさんや関さんでないと受けていないんだろう
一か八か通信してみるよ
寧さんと美智が、通信機を取り出す
オレのは上着と一緒に、さっきのステージの上に置いてきてしまった
こうなってみるとオレたちから通信機や、美智の武器を奪わなかったのは、ミス・コーデリアの失敗だったと思う
オレたちを舐めていたというか、絶対的優位に立っていると思って、余裕をカマしていたんだろうけれど
しかし、この通信機での会話は確実に傍受される
寧さんどうする気だ
ご主人様、こちらへ
美智が、オレを手招きする
一つのイヤホンを二人で聞くことができるように身を寄せ合う
もっと、ぴったりくっついて下さい
というか、美智は小柄なんだから
オレは、美智を抱きかかえる
嫌か、美智
いえむしろ嬉しいです
赤面して言う美智に、ミス・イーディが笑って何か言う
冷やかしているんですわたくしたちのこと
美智は恥ずかしそうに言った
ほんじゃ、ま行きますかっ
寧さんが自分に気合いを入れ通信機のスイッチを押す
チェックメイト・キング2、チェックメイト・キング2こちら、ホワイトロック通信を乞う
すぐに返信が来る
チェックメイト・キング2なんて、どこにもいないよオーバー
マルゴさんの声だ
うん、嘘だからこっちもホワイトロックじゃないし・オーバー
寧さんは、そう返す
こっちはハートのエースでブラックジャックだよもう一枚のババもこっそり隠し持っているしオーバー
そうだ地下の部屋から脱出する前に色々と決めたんだっけ
上階へ来てからのドタバタですっかり忘れていたけれど
マルゴさんがスペードで、関さんがダイヤ、美智がハート、寧さんがエースで、オレがジョーカー、雪乃がババだったっけ
つまり、寧さんと美智でハートのエース、それにジョーカーのオレで21のブラックジャックだ
さらにババ追加で雪乃の無事も伝えている
あれお菓子のオマケはオーバー
オマケはどっかで落としてきちゃったもしかしたら、誰かに拾われたかもオーバー
と、寧さんは香月健思とはぐれてしまったことをマルゴさんに伝える
そう、そりゃ残念だこっちは、最初に配られたカードのまんまだよまだ何の勝負もしていないからオーバー
つまり、あの後マルゴさんたちに追撃は無かったんだ
でも、ダイヤのエースとクローバーの10にスペードの2っていう持ち札だからねこのままじゃ、カードをドロウしないといけないねオーバー
えどういうことだ
エース1枚と10のカードと2のカードですと、23か13ですこの場合、13はありえませんから、マルゴお姉様たちは今、23階にいらっしゃるということです
美智が、解説してくれる
こっちはよくも悪くもブラック・ジャックだよオーバー
つまりオレたちはブラックジャック21階に居るということ
タイガー・リリイはどうしたのオーバー
うん、何とか虎の巣穴からは出て来られたでも、まだこっちのことを狙っている足跡を追っ掛けて来ているとは思うよオーバー
でも、タイガー・リリィから逃げられたのは幸いだよオーバー
まあ、落っことしてきちゃったオマケは可哀想だけど虎に食べられちゃってないといいんだけれどオーバー
遠回しにミス・コーデリアの手から逃げ出せたことを報告する
仕方無いよ、相手は凶暴な虎なんだから今、こうやって通信できているだけでもラッキーだと思わなきゃオーバー
そうだねところでさ、タイガー・リリィはマスクを外したら、お化粧が濃かったよちょっとベッタリ塗りすぎなんじゃないかなオーバー
それは言わないであげてよお肌の曲がり角なんだから色々と気にしているんじゃないのオーバー
そういえば、おっぱいとかも垂れ気味な気がしてきたなあの人オーバー
ミス・コーデリアが傍受していることを知っていて二人とも彼女を挑発するようなことを好き勝手に言っている
南の布団部屋wc-2123ですオーバー
美智が、二人の会話に割り込む
了解オーバー
返事は、関さんだった
布団部屋というのは、香月セキュリティ・サービスの隠語でVIP用の待避所を指しますミス・コーデリアは、おそらく布団部屋という言葉を知らないでしょうから
うん生粋のアメリカ人じゃ、布団部屋は判らないだろうな
南とか、その後の数字は何なんだよ
全部、フェイクですこのフロアにはVIP用の待避所は、ここしかありませんからそして、この部屋はフロアの東側にあります
なるほど敵を混乱させるための発言か
さすが、美智
ハートのエースは、避難訓練の経験はあるのオーバー
関さんが、美智に尋ねる
テキストは全て読んでいます、オーバー
緊急時の緩降機の使い方は判るわね、オーバー
もちろんです、オーバー
緩降機ってあれだろ
学校とかデパートとかの廊下の角によく置いてある、避難する時に高いところから降りるための
おりろーとかすろーだんとか
でもここは21階だぞ
この高さから地上に降りるのは、無理なんじゃないか
せっかくブラックジャックなところ悪いんだけれどもう一枚、カードを引いてくれるかしらオーバー
関さんは言った
エースとジョーカーのブラックジャックなら、まだカードを引くことはできるでしょ勝負を下りないで、むしろ賭け金をアップなさいオーバー
もう一枚、ドロウですねオーバー
美智が、確認する
ええ、やってみてちょうだいオーバー
オーケイ、今回の通信はこれで終わりにしようこれからは30分ごとに定期的に連絡し合ういいねオーバー
マルゴさんの声だった
了解よオーバー
最後は寧さんが締めくくった
前みたいに、通信に割り込んで来ませんでしたねミス・コーデリア
オレがそう言うと寧さんは
恥ずかしいんでしょこの通信、谷沢さんも聞いているでしょうから
そうか、谷沢チーフにオレたちに逃げられたことを話すのは嫌なのか
もちろん、谷沢チーフはあたしたちが脱出したことは、もう知っていると思うけれどそれでも、自分から公表するのは彼女のプライドが許さないんだと思うわ
ところでどうしてマルゴさんたちに、ミス・イーディのことは話さなかったんですか
それもミス・コーデリア絡みよあの人は、ミス・イーディが脱走しただけだと考えていると思うの
ミッちゃんの技を見てときめいちゃってミッちゃんとお友達になりに来たとか、ミス・コーデリアの発想には無いと思うのよ
オレたちだって、びっくりしているものな
イーディは、たまたまミス・コーデリアから逃げ出す隙があったから、脱走したそうとしか考えてないわよ
ミス・イーディが、ミス・コーデリアに全然懐いていないことは判っているわけだし
だから、この子があたしたちと一緒に居ることはまだ隠しておいた方がいいと思うわ
ところで、ミッちゃんは関さんと何の話をしていたの
オレも、それを知りたい
はい合流場所について、指示を受けました
合流
22階で合流します
どういうことだ、美智
ブラックジャックの状態でさらに、もう1枚カードを引けと命じられましたつまり、21+1で22階です
でも、どうやってここから上に行くんだよ
外に出ればミス・コーデリアに発見される
迷路状のホテル内を抜けて、上のフロアに行くためにはどうしても監視カメラの前を通ることになるだろうし
このVIP用の避難所は各フロア、同じ位置にあります
え美智
そして秘密のハッチで、各階上下に繋がっています
繋がっている
せっかく、VIPをこの部屋まで避難させることができてもこの部屋に封じ込められたままでは困りますここは、地下の閣下専用の緊急避難室とは違って、食料も衣料品も碌に備蓄されていませんからだから、この部屋からさらに上下の避難所に移動できるシステムがあるんですもちろん、香月セキュリティ・サービスでも、要人を警護する専任の警護役しか知りませんが
美智は、みすずの警護役だからそれを知っている
関様は、勝負を下りるな、むしろ賭け金を上げろと仰いましたつまり、この部屋から下ではなく上の部屋に移動しろと命じられたのです
21階のVIP用避難所から22階の避難所へ
そして、上下の部屋に移動するための装置が
美智は、備蓄ロッカーを動かして、その後ろの柱の陰に置かれた箱を示す
避難用の緩降機にそっくりなんです
その箱には、スローにオリローと書かれていた
まさか深夜にオリローについて調べることになるとは
321.プル・アップ
はいそこのパネルですご主人様
今、この部屋にいる人間ではオレが一番背が高いから椅子に乗って、天井に手を掛ける
天井は、全て同じ様な白い枠で区切られていたけれどなるほど、美智の指示したパネルだけククッと動く
そのまま、押しあげて、横にスライドさせてみて下さい
あ、動いたパネルが天井の中に滑って収納されていく
その上には金属製のハッチがあった
何か、潜水艦とかみたいだ
ロックされていますから、横のダイアル・ナンバーを合わせて下さい
なるほど、大昔の大金庫みたいな大きなダイヤルが付いているみたいだ
電気式ですと、緊急時に停電したら使えませんから機械式のダイアルになっているんです
なるほどしかし、暗くてよく見えないな
ダイヤルの文字なんて、小さいから
これで見えますか
オレがモジモジしていると美智が下から、LEDライトでオレの手元を照らしてくれる
さすが、工藤父の娘だ
こういう道具もきちんと持ち歩いているらしい
ああ、よく見えるよ
うん、数字とアルファベットの彫られたダイヤルがはっきりと見える
で、ナンバーは幾つなんだ
解錠ナンバーは、6700《シックス・セブン・オー・オー》WAOです
オレはナンバーを合わせて、ハッチのレバーを開く
カチャッ
ハッチが開いた
ハッチの中は人一人が昇れる広さの煙突状の筒になっている
しかしハシゴとかはないぞ
筒の中はつるつるだし
これ、どうやって上に上がるんだ
ありがとうございますご主人様換わって下さい
もしもの場合がありますから、上の階の避難所の様子はわたくしが確かめて参ります
ミス・コーデリアには、この避難所のことも、上の階と繋がっていることも知られていないだろうけれど
谷沢チーフには、バレているはずだ
あらかじめ、谷沢チーフの配下のトップ・エリートが隠れている可能性もある
でも一人じゃ危ないぞ、美智
オレは、心配になる
しかし、美智は
この通路は、一人ずつしか通れませんし上の部屋から、皆様を引っ張り上げる装置は、わたくししか使えませんから
そう言って、美智はスローにオリローの箱を見る
このような避難器具は普通は、ゆっくりと安全なスピードで人を上から下へ吊して降ろすものなのですがこの機械は、下から上に引き上げることもできるようになっているんですこの機械は、ホテルの各階にあるVIP用避難所には全て置かれていますから
つまり美智が上の部屋に昇って行って、上の部屋にあるスローにオリローを使って、オレたちをロープで引き上げてくれるということか
1階ごとに、上の階に通じるハッチの位置はズラしてあるんですだから、特定の部屋から一気に幾つものフロアを移動することはできませんちょっと面倒ですがあんまりにもシンプルな構造にすると、敵に利用された場合、大変なことになりますから
なるほどハッチの位置が一直線なら、大人数の敵に使われたら大変なことになる
時間が掛かっても構わないから1階ごとに、別々のスローにオリローを使って移動するシステムになっているんだ
それなら、もしこの非常通路の存在を敵に察知されても途中の階で、阻止できる
ホテル内が火災とか上の方に飛行機がぶつかって、急いで逃げ出さないといけない場合とかは困るじゃない
雪乃が、皮肉っぽく言った
そういう場合には、そもそもこのVIP用の避難所は使われません普通に正常の避難経路を使って脱出しますこの部屋は、あくまでもテロ対策用の部屋ですから
うんテロ事件なら
この避難所に逃げ込んでしかも、事件解決まで時間が掛かることが予想されるなら
多少面倒でも、1階ずつ降りて行った方がいい
ていうか徹底的にテロ対策に偏ったホテルだよな、ここ
とにかく、わたくしが参りますお任せ下さい
そう言って美智は、靴と靴下を脱いで裸足になる
ご主人様、わたくしを肩車して下さい
美智の背では椅子に乗ったぐらいでは、ハッチに手が届かない
う、うん、判った美智
オレは椅子から降りて美智の前にしゃがむ
美智は制服のスカートを捲って、オレに乗っかってくる
美智の生足のふとももがオレのほっぺたを左右から包む
お願いします、ご主人様
オレは、美智を肩車して立ち上がる
は、はい何でございましょう
軽いなお前
15歳の小柄な身体はびっくりするほど軽い
違う褒めているんだよ
どうせ、あたしは重いわよ
いや雪乃の重さは、嫌いじゃない
さっき騎乗位でセックスした時にそう思った
もちろん今はそんな話をする場合じゃ無いから、言わないけれど
そのまま、動かないで下さい
美智がハッチに取り付く
オレの肩に足を置いて、ハッチの中へ
ミッちゃん気を付けてね
寧さんが心配そうに、美智を見上げている
ミス・イーディはワクワク顔だ
これから何が起きるのか、楽しみで仕方が無いらしい
行きます
美智は両手と裸足の両脚をハッチ内に突っ張らせる
なるほどこれでハシゴ無しに、上まで這い上がっていくのか
こりゃ確かに、美智ぐらいの身体能力のある子じゃないと無理だ
あんた丸見えよ
雪乃が美智に言う
両脚を拡げて天井内のハッチに足を掛けているから美智のスカートの中は、完全にご開帳されている
可愛いパンティで覆われた股間も
いいんですご主人様に見ていただいているんですから
美智は、恥ずかしそうにそう言った
中学3年生のまだ肉の付ききっていないお尻と太もも
ぴんと伸びた裸足の足
ああ眼福だ
では、しばらくお待ち下さい
そのまま可愛い足がするすると狭い筒の中を昇っていく
滑って落ちないか心配だったが美智は、どんどん上に昇っていく
オレは、心配でジッと美智を見上げているが
ヘンタイ、そんなにあの子のパンツが見たいの
オレが心配しているのは、パンツじゃなくて中身の方だ
筒の上方で、LEDライトの光が輝く
美智が上の階のハッチに辿り着いたらしい
筒の中を3メートルぐらい上がった辺りか
そこにもダイヤル・ロックがあるようだ
美智は、筒の中に足を突っ張らせて身体を保ちダイヤル廻す
上の階のハッチが開く
ゆっくりと上階に這い上がる、美智
オレたちも緊張する
しばらくして上階の部屋の電灯が点く
大丈夫です部屋には誰もいません
美智の声が上の部屋から響く
待って下さい今、皆様をロープで引き上げる準備をします
ミス・イーディが、ニコッと笑ってオレに何か言う
自分も上に行くから、肩車してって言っているよ
寧さんが、通訳してくれた
いや、でもちょっと待っていれば、美智がロープで引き上げてくれるんでしょ
と、オレは答えるけれど
ミス・イーディは納得しない
どうしても、ミッちゃんみたいに自力で昇っていきたいんだって
寧さんは、言った
子供っぽい子なんだよこの子は
ミス・イーディは、早く早くとオレにせがむ
仕方無いなあ
オレは、ミス・イーディの前にしゃがむ
Thank You
ミス・イーディがオレに乗っかる
お、重い
これはミス・イーディの肉体の重さじゃない
この子黒い戦闘服の下に、色々付けている
サポーターとか、プロテクターとか
多分武器も
ういっしょッ
ふらつきながらも、何とか肩車したまま立ち上がる
ミス・イーディの筋肉質な肉体を感じる
全身がバネの様だ
こりゃマルゴさん並みに鍛え上げられているぞ
それでいて細い
体脂肪が全然付いていないんだ
Wawoo
ミス・イーディは、ハッチに手を掛けるとそのまま、スルスルと昇っていく
慣れている
美智と違って、戦闘ブーツを履いたままなのに
この子、こういう訓練も受けているみたいだね
そうだ、ミス・イーディは、暗殺教団で育った少女だ
潜入訓練なんて、普通にこなしてきているのだろう
ミス・イーディが上階に辿り着くと
美智の声と共にハッチの上にスローにオリロー機のアームが見える
ウィィィィィィィン
アームの先からロープがゆっくり下りてくる
ロープの一番下が輪になっていますからその輪に片足を掛けて下さいそれから、これを使って下さい
美智が上から、何かのパックを投げ落とす
安全帯のハーネスです脇の下を通して、しっかりとハーネスを固定して下さいそしてロープの途中のカラビナと繋いで下さい
パックのビニール袋を開けるとなるほど、金属の固定器具の付いたチョッキの様なものが入っていた
雪乃さん、お先にどうぞ
寧さんが、雪乃に言う
寧さんは、雪乃にハーネスを付けてあげる
オレのYシャツ1枚しか服を身に付けていない雪乃
ハーネスで上半身を締め上げられると妙にいやらしい
さここに足を入れてハーネスもロープに固定してあるけれど、自分でもしっかりロープを握ってね足を滑らせて、ハーネスだけで吊り下げられるととっても苦しいことになると思うから
寧さんは、そう雪乃に言った
ミッちゃんいいわよ、上げて
上から美智の声がする
ヴゥイィィィィィィィィン
そして、ロープが引き上げられる
足が床から離れた途端、雪乃の身体はロープに揺られて、ぶらんぶらんする
ほら、危ないぞ
オレは、雪乃の身体を押さえてやる
ちょっと、どこ触っているのよっ
雪乃は口では怒っているが顔は、緊張している
そのまま、雪乃の身体がハッチの中に収まるまで身体を保持してやった
あ雪乃はノーパンだったっけ
お尻も肛門も割れ目も丸見えだ
見るさよーく見ておくぜ、雪乃
もう変態っ
もう何度、この身体を抱いたんだろう
何回、この身体に射精したんだろう
今も雪乃の子宮の中には、オレの精液が詰まっている
何か不思議な気分だ
上階へ引き上げられていく雪乃の肉体を見ながら、そんなことを考えていた
雪乃の身体が完全に筒の中に入った段階で寧さんが、オレにキスする
抱き締めて
そうだ今
この部屋の中は、オレたちだけだ
この部屋は誰にも監視されていない
オレたちを見ている人間はいない
オレは思い切り、寧さんを抱き締めた
寧さん寧さん寧さん
オレも寧さんにキスを求める
寧さんは、舌で答えてくれた
力の限り寧さんを抱き締める
ありがとうヨッちゃんが側にいてくれているから、あたし、壊れないで済んでいるよ
そうだよあたしは、寧ヨッちゃんのお姉さんだよ
ナトウ・ネイとはナジマ・ヤスコが自分の心を守るために作った、人格だ
ミス・コーデリアにヤスコと呼ばれたことで、寧さんの心はぐらついている
この後シザーリオ・ヴァイオラと対面したら、もっと揺さぶられることになるだろう
気弱で温和しい女の子ナジマ・ヤスコでは、潰れてしまう
いつも明るくて、元気で、強気な少女ナトウ・ネイでないと
寧さん寧さんオレの寧さん
オレは、寧さんを抱いたまま寧さんの髪を優しく撫でる
うんあたしは、ここにいるからね
二つの人格が今、瀬戸際にいる
ご主人様、次、参りますっ
雪乃の引き上げが終わったらしい
美智が、ロープを再度下ろしてくれる
さあ、次は寧さんの番ですよ
寧さんを最後にするわけにはいかない
オレより先に、上階へ行ってもらおう
うんヨッちゃん、ごめんね
身体を離しながら寧さんはオレに謝る
え、何がですか
ほら、あたし今日、パンツ・スーツだから何も見せてあげられないよ
そんなの今度でいいですよ
そうだね下着も裸も、いつでも見せてあげるからね
寧さんのシザーリオ・ヴァイオラによって負ったコンプレックスは、何としても今晩中に克服する
シザーリオ・ヴァイオラを倒すことで
寧さんは、自由になるんだ
今夜
オレ寧さんのためなら、何でもしますから
オレたちは、もう一度しっかり抱き締め合った
お互いの心と熱さを確認する
寧さんを無事に引き上げ
最後は、オレの番だ
おっと、美智の脱いだ靴と靴下を忘れずに持って行ってやらないと
えっと靴下のもう片方は
しかし、靴も靴下も小さくて可愛いなあ
何をしているんですご主人様
開いたままの天井のハッチの遙か彼方
上階から、美智がオレを見下ろしている
いや、美智の靴下をさ
匂いは嗅がないで下さい
いえ嗅いでもいいですわたくしは、ご主人様のものですから何でも、ご主人様のお望み通りになさって下さい
いや、オレ別に、そんな趣味は無いんだけれど
わたくしのそんな物にまで興味を感じて下さいましてありがとうございます
ま、待てちょっと
あのオレはただ、お前に靴と靴下を届けてやりたいと
ハッチの向こうの小さな顔が、赤面するのが判る
失礼致しました
うん引き上げてくれ
ウィィィィィィン
ロープがオレの身体を引き上げていく
すぐに天井のハッチから筒状の通路へ
下で見上げている感じより、実際は広いな
まあ、これぐらいの幅がないとVIPのオッサンとか入らないだろうしな
この機械のウィンチで引っ張り上げたり、降ろしたりするのも判る
オッサンたちの体力じゃ、ハシゴを昇ったりするのは無理だろうし
何人か同時に昇って、途中で一人がコケたりしたらハシゴの下に居た人間が全員巻き添えを食って大ケガする
機械で一人ずつ移動させるっていうのが、やっぱり一番なんだろう
はい、お待たせ致しましたご主人様
上の階まで引き上げられると美智が、真剣な顔で出迎えてくれた
寧さんも笑っている
雪乃は、ブスッとしているがこれはここんとこずっとだし
ミス・イーディは、ニコニコ顔のままだ
ハッチ、閉じます
美智が、ガチャッと開いていたハッチを閉じる
同時に、下の階からもガチャッという音がする
上の階のハッチが閉じられると、連動して下の階のハッチも閉じられるようになっているんですダイヤル・ナンバーも自動的にアトランダムなものになります
美智が、説明してくれた
スライドさせた天井のパネルも、自動的に元に戻りますわたくしたちが上の階に脱出した形跡は残りません
本当に、よくできているな
このホテルは
もし、敵がVIP用避難所が上下に繋がっていることに気付いたとしてもわたくしは、21階のスローにオリローの機械の箱を見える様に出しておきましたので、敵はわたくしたちが下階に脱出したと思い込むはずですこの機械、特殊な手続きをしないと、ロープを引き上げる機能は作動しませんから
うん普通の避難用の緩降器具は、ゆっくりと下に降りる機能しか付いていない
下に逃げたと思っても上の階へ行ったとは考えないだろう
それに、下の階のハッチに誰かが手を触れれば、こちらのハッチに反応が出ますから、すぐに判ります
そうか、上下のハッチは機械的に連動しているんだっけ
このハッチを開けるダイヤル・ナンバーを変更しておきますもしものことがあっても、それで時間が稼げます
美智が、ハッチに手を付いて作業をする
これで一息つける
さつきまでは、ミス・コーデリアたちと同じフロアに居たから
VIP用の避難所に居ても、気が気じゃなかった
違うフロアに居るっていうだけで大分、気分が違う
後はマルちゃんたちが迎えに来てくれるのを待つだけね
関さんは、表の廊下から従業員用の裏通路に入る秘密の入り口についてはご存じですからすぐに来て下さると思います
それまでに谷沢とか言う人の部下が、あたしたちを捕まえに来なければいいわね
谷沢さんオレたちが、ここに居ること判っているんだろうな
おそらくわたくしが、この部屋の電灯を付けた瞬間に本部にキャッチされていると思います
この部屋の監視カメラとマイクは、すでに殺しておきましたここでの会話は、聞かれませんのでご安心下さい
しかし監視システムを壊したことで、オレたちがここにいることは確定的になっているだろう
一つだけ谷沢さんにバレていないのはミス・イーディが、オレたちと一緒に居るっていうことだ
ミス・イーディの合流は誰にも知られていない
谷沢チーフだけでなく、マルゴさんたちにもミス・コーデリアにも
ミス・イーディが、本当にオレたちの味方になってくれるかどうかは確定的ではない
今は美智の友達になってくれている
ということは、美智とケンカしたら再び敵に戻ることだってありえる
この子供っぽすぎる少女の動向は判らなすぎる
ブブブブブブブ
美智と寧さんの通信機が、バイブ・モードで着信する
マルゴさんたち何かあったのか
最近驚いたこと
ガッチャマン実写化決定のニュース
何じゃ、あのキャスティングは
ゴーリキーは、ないだろ
おのーれ、おのーれ、ガッチャマン
322.あ・い・し・てーるっ
こちらハートのエースとジョーカーだよっオーバー
寧さんか、通信に出る
オレはまた、美智とイヤホンに耳を寄せ合う
いや、今度は雪乃も耳を近づけてくる
ミス・イーディは、キョトンとしたままそれでも、笑っている
こちらは、予定通り行動中そちらの状況はオーバー
マルゴさんの声が聞こえる
こっちも予定通り問題なしでいけたよっ
オーケイもう、まもなくだから
ということはこの22階のVIP用待機所まで、もう近付いて来ている
あの後、交戦は無し敵の気配は、完全になくなっている
マルゴさんたちに、谷沢チーフの部下の追撃は無かったらしい
タイガー・リリィとお別れして20分以上経つよもしかしたら、そっちへ来るかもしれないから気を付けてオーバー
うんミス・コーデリアたちの行動力なら、1フロア上がってマルゴさんたちの再襲撃をするのには、充分な時間だと思う
もちろんオレたちの追跡を諦めた場合だけれど
了解次の合図は、一休さんだからよろしく頼むよオーバー
寧さんは、通信を切った
寧さん、一休さんて何です
え、ヨッちゃん知らない一休さん
いや、あの確か、お坊さんですよね日本史でやりました
中学の時の教科書の室町時代の文化のページが思い出される
確か、肖像画も載ってたよなあ
うちの男子校のクラスメイトは、柄本明に似ているって言っていたけれど
パソコン部のやつは遺作さんと呼んでいた
遺作さんて誰なんだろう
そっか、ヨッちゃんはアニメの一休さんは知らないんだ
アニメ
あんな、オッサン顔のお坊さんがアニメになっているのか
こっちに帰って来てすぐの頃マルちゃんの日本語の勉強のためにさ、日本のアニメとかをよく観たのよあたしも一緒に日本語ちょっと、あやふやになっていたからそれで、マルちゃん、一休さんが大好きになったの
あたしが好きだったのは、ガンバと仲間たちとトム・ソーヤの冒険ね
え、それ日本の作品じゃ無いでしょ
トム・ソーヤはアメリカ人だろう確か
だから日本の人が、日本でアニメ化して、日本語なのっそういうのがあるのよっ
馬鹿じゃ無いの、あんた
ごめん、オレ子供の頃から、テレビとかあんまり観てきていないから
ご両親が厳しかったのですか
美智が尋ねる
教育熱心な御家庭だと、テレビなどの娯楽は一切禁止にされることもあると聞いていますが
そっか美智は、知らないんだっけ
逆よヨッちゃんは、両親に虐待されていたの
寧さんが、静かに答える
いや、虐待だなんて別に、殴られたり、蹴られたりしていたわれじゃないですから
もっとよくないわよ存在を、ずっと無視されるなんて
寧さんが、オレのために怒ってくれる
ええっとオレは、家の中では空気みたいになっていないといけなかったから喋っちゃいけないし、求めちゃいけないしできる限り、母親の前に姿を見せてはいけなかったから
美智が、驚いている
だから虐待されていたのよヨッちゃん
でも、中学は3年間、山奥の男子校で寮生活だったからそんなに辛い思いはしていないよまあ、テレビもラジオも禁止なところだったし携帯は、学校に申請すれば持っててもいいんだけれど、オレの携帯は非常用で親がネットに繋ぐ契約をしてくれなかったから本当に、電話する機能しか無かったしなあそれでも寮の友達が、読み終わったマンガや雑誌を貸してくれたりしたからうん、あの頃は、何でも読んだよ車の雑誌から、釣りや将棋の雑誌まで読んだ釣りなんて、道具持ってないから、一度もやったことないんだけれど
とにかく読めるものは何でも読みたかった
だから、マンガで読んだことがあったりする作品はあるんだけれどアニメは知らないなあ絵だけは、友達のアニメの雑誌とかで見たことあるけれど、絵が動いているのは知らないんだ同じ寮に居たアニメ好きのやつとかは凄いんだよ休みに自宅に帰った時に、録り溜めておいたアニメを一気に観て来るから今シーズンも何とか追いついたぜとか、言っていたなでも、オレは休み期間でも、自宅に帰れなかったから
春休みも、夏休みも、冬休みもオレは、ずっと寮に居た
だからこの春、中学を卒業して、ようやく家に帰って来たんだけれどテレビを点ける習慣がなくってさそれに、テレビを点けると怒られそうだし
いや電気の無駄使いだって、怒られそうでさ
実際はオレを叱りつける人間は、もう家には居ない
母親は、勝手に実家に戻ってしまった
親父は失踪中だ
それでもオレは、誰かに叱られそうな気がして、テレビは点けられない
いや家の中の電灯すら
寧さんがオレを抱き締める
昔のことは全部忘れてっヨッちゃんはもう、黒森の家の子なんだよあたしの弟なんだからね
張りのある柔らかい胸が、オレの頬を包み込んでいる
一緒に、いっぱい色んなものを観よう一休さん全話観るからねみんなで
全296話だからね
ミッちゃんも、一緒に観るんだよっ
あんなムサい顔のお坊さんのストーリーが296話もあるのか
どんな物語なんだ
やっぱり、天竺へお経を取りに行くのか
別の意味で興味が湧いてきた
んどうしたんだよ、雪乃
雪乃が、何か元気の無い顔をしている
別に何でもないわ
いや、何か暗いぞ
何でもないわよっあたしが、あんたのことなんかに興味を持つわけないでしょ
雪乃が、オレに嚙み付いてくる
何言っているんだろうそんなこと、言われなくたって判っている
雪乃がオレのことなんて知りたいわけがない
不意に部屋のドアが、ノックされた
鋼鉄製の分厚いドアだノックの音は鈍い
寧さんが、オレたちを制してそれから、通信機を取る
コホンと咳払いをしてから
寧さんは、通信機のマイクに向かって歌い出した
好き好き好き好き好き好っきあ・い・し・てーるっ♫
トンカトントンッ
ドアが、リズミカルな音で叩かれる
マルちゃんだっ
寧さんは、急いでドアのロックを開けた
大丈夫だったかい
開いたドアの向こうに、マルゴさん、関さん、麗華の3人の姿が見えた
みんな再開に、安堵した顔をしている
関さんの眼が、部屋の中のミス・イーディを捉える
ミス・イーディは
シザーリオ・ヴァイオラの軍勢と同じ、黒い戦闘服を着ていた
思わず関さんが発したその一言が
香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートとしての反射的な警戒心が
ミス・イーディの闘争心に着火《イグニッション》してしまう
瞬間ミス・イーディが風の様にダッシュする
YEERAAA
どこに持っていたのか判らないが手にナイフを握って、関さんに襲いかかる
キーンッ
金属と金属のブチ当たる鋭い音
さすが関さん持っていたピストルで、ナイフを受けた
よし初撃は躱せた
しかし、この近距離では銃よりも、ナイフの方が有利だ
WOOOOOO
ミス・イーディが二撃を打ち込む前に麗華が、撲殺ステッキを突き出す
すわっとギリギリの距離を見切る、ミス・イーディ
その彼女をマルゴさんが、キックで迎撃しようとする
SEAAAE
ミス・イーディは、くるくるっと廊下を転がって一旦、3人と距離を取る
まずい、全面的な戦闘になってしまった
NOEdie
廊下に飛び出した美智が、大きな声でミス・イーディに叫ぶが瞬間沸騰してしまった血を、彼女は抑えきれない
マルちゃん敵じゃないのよっこの子っ
寧さんも叫ぶが再び、ミス・イーディが、3人に向かって疾走する
シャアアッ
ターゲットは、再び、関さんだった
ナイフは両手に2本に増えている
なのに関さんは、銃をホルスターにしまっている
トォアアアッ
手袋をした手でミス・イーディのナイフを受けとめた
右も左も
片手に一本ずつナイフの刃を掴む
これ、防刃手袋なのよ
関さんは体術も、高レベルの実力者だ
劇場で、オレたちはその実力を見ている
パワー勝負には自信が無いから、銃によるサポートに徹していたが
スピードと正確な動きは卓越したものがある
女の子の力なら、あたしでも止められるわ
そう言って関さんは、受けとめたナイフの刃をギュッと握りしめた
OH
ミス・イーディは、両手のナイフから手を離す
一旦、距離を取るために左に転がる、ミス・イーディ
立ち上がった時にはすでに新しいナイフを両手に握りしめていた
今度は、さっきのナイフよりも大きい大型のコンバット・ナイフだ
2本のナイフをかざして麗華の方へ走る
獣の様な、素早さだ
SEYEEA
撲殺ステッキで、ナイフを受ける麗華
麗華お姉さんッ
マルゴさんが、叫ぶ
キラッと空中で何かがきらめいた
鋼線
美智が呟く
ミス・イーディの2本のコンバット・ナイフその2つの柄から、金属の細い線が伸びていた
大きなナイフは目眩ましで実際には、細い鋼線で相手の首を切り落とす技なんでしょうが
麗華は撲殺ステッキの先で、鋼線を絡め取っている
WOO
ミス・イーディは、両手のナイフを引き絞る
撲殺ステッキの上を、鋼線が擦るジュッと煙が上がる
わたくしのステッキはそんな線では、切れません
HAWOO
ミス・イーディが、ナイフの刃を麗華に向けると
バシュッバシュッ
ナイフの刃が猛スピードで撃ち出されるっ
はいっはいぃぃッッ
麗華は、僅かな時間差で撃ち出された2本の刃を、確実に払い落とした
その時にはもう、ミス・イーディは次のナイフを握っている
このままじゃ、ラチが開かない
んもうっ
寧さんが雪乃のYシャツの裾を捲った
雪乃は裸にオレのYシャツ1枚を着ているだけだから
お尻と女性器が、丸見えになる
きゃああああああああっっ
雪乃は絹を引き裂く様な悲鳴を上げた
いつもオレに見せ放題になっているのに
突然やられると、やっぱり恥ずかしいらしい
人々の注意が、雪乃に向かう
心月
美智が気を放つ
闘っていた全員の動きが止まった
why Sister Michi
ミス・イーディは、驚いていた
美智とはもう友達になったから
自分に心月を放つとは、思っていなかったらしい
美智は、すぐに英語で話し始める
この人たちは私の家族だあなたは誤解をしているって、言っているわ
寧さんが、そう通訳してくれた
どういうことなのこれ
マルゴさんが、寧に聞く
関さんも麗華もほとんど、身体にはダメージが無いらしい
美智は心月を使ったがミス・コーデリアたちを足止めした時の様な、全身全霊を掛けたフル・パワーの心月では無かったようだ
闘っている4人の動きを止めるためだけのただ、びっくりさせるためだけの技だったらしい
ええっとね、マルちゃん関さんも、麗華お姉さんも聞いて
寧さんが、すぐにミス・イーディとのこれまでの経緯を話す
ミス・イーディが、アメリカ南部の暗殺教団の出身だということ
教団の指導者の一人だった祖母が死に、ボスによって、シザーリオ・ヴァイオラの組織に売られたこと
ミス・コーデリアが自分の部下にしたが、全然反りが合わなかったらしいこと
美智を見て、稽古仲間になりたくてオレたちの方へ寄って来たこと
とにかくね暗殺術しか習ってきてなくて、より強くなることしか考えていない子なのよ他のことは何も考えていない、シンプルな子なの
なるほど、判ったよ
この子暗殺教団から、ミス・コーデリアの部下になって多分、これが初めての現場なんじゃないかな
うんそんなことを言っていたと思う
ごめんなさい、あたしが格好だけで敵だと認識しちゃったからあの子が戦闘モードに入っちゃったのよね
関さんが、反省する
いや、関さんのせいじゃないですよミス・イーディが、オレたちと一緒だってことは通信では、言えなかったので
ミス・コーデリアには、まだ知られたくない
うん、この廊下の監視システムは、先に破壊しておいたから取りあえずは、大丈夫だと思うよ
マルゴさんは、天井のカメラを壊した場所を確認しながらそう言った
あれだけの腕前の子です敵にしたくはありません
麗華も、そう言う
うんフィジカルは相当なものだね物凄く鍛え上げられている暗殺者に特化し過ぎているけれど
それって、どういう意味なんですマルゴさん
それはね
マルゴさんが、説明してくれる前に
美智とミス・イーディの口論の声が、大きく響く
やれやれどうしたんだい
全員で二人の方へと行く
問題はこうだった
美智がマルゴさん、関さん、麗華の3人は自分の家族だと伝えた
これは、ミス・イーディも納得した
しかし美智が、3人のお姉さんは自分の先輩で、自分よりも強いと発言したことに、ミス・イーディは猛反発した
つまり3人は、そんなに強くないと
美智は、いや、充分に強い人たちだと再度言ったら
今、闘ってみたが、そんなことはないと言い切る
あげくに私の方が全然強いとミス・イーディが言ったから
美智がそれは思い上がりだと答えたので
ミス・イーディが、爆発してしまったらしい
ええっとどういうことなんです
今の闘い3対1で、五分五分だったから、自分の方が強いと思っているんだろうね
ミッちゃんは自分よりもフィジカルは弱いけれど、年下なのに気の技が使えるから認めているんだってでも、マルちゃんたちは大人なのに、自分よりも強くないから認めたくないって言っているよ
寧さんが、解説してくれてた
美智のことを認めているのも気に関する部分だけなんだ
むしろ、それ以外は自分よりも下のレベルだと思ったから
ミス・イーディは、美智を気に入って稽古仲間になりに来たのかもしれない
フィジカル面まで同等だったらライバル視して、倒しに来たかもしれないな
この子の性格だと
でも、本当に強いですよこの子あたし一人では、正直、負けるかもしれません
関さんが、言う
わたくしもそう思いますさすが、暗殺術のエキスパートだけあって、思い切りもいいですしこちらが少しでも気を許したら、狩られていたと思います
麗華も、そう言った
お二人とも買い被りすぎですまだ、ヒヨッコですよこの子は
あたしたちはチームなんだから今のは3対1だったとか、もし1対1だったらとか、そういうのは全然関係無いんですよお互いを庇い合って、助け合ってそれで確実に勝てばいいんですからこの子、闘うってことについて、まだ何も判っていない
それから英語でミス・イーディに何か言う
ちょっちょっと、マルちゃん
こういう子は、力で認めさせるしかないよ
明確に自分の弱さを自覚させてあげないとね
美智が真剣な顔で答えた
マルゴさん何て言ったんです
オレは寧さんに尋ねた
じゃあ、あたしと1対1で勝負しようってただし、武器は無し素手の勝負でコテンパンにのしてやるって言ったのよ
マルゴさんとミス・イーディの勝負
でも、そんなことで時間を取るわけには
関さんが、苦言を呈すが
悪いんだけれど、5分だけ時間をちょうだいそれで済ませるからとにかく、この子の頭をスッキリさせておかないと、この先、一緒に歩けないからね
確かにミス・イーディがマルゴさんたちを小馬鹿にしたままじゃあ、よくないと思う
この子、凄い動きだったもんなあ
さっきの闘いマルゴさんは、ほとんど動いていなかったし
マルゴさんが勝つって、オレは信じているけれど
この勝負のせいで、二人ともダメージを負ったら目も当てられない
そんな顔をしないで大丈夫だよあたしに任せて
心配顔のオレに、マルゴさんはそう言ってくれた
じゃあちょっと離れててね
マルゴさんとミス・イーディが対峙する
ミス・イーディが、ニヤッと不敵に笑って
マルゴさんに何か言った
多分、侮辱する様な言葉だろう
それに対し、マルゴさんもミス・イーディに何か言う
涼しい顔で
ミス・イーディの顔が、怒りに赤く燃える
WAWOOOO
ミス・イーディが、疾風になる
ということで、ミス・イーディ編続きます
戦闘馬鹿は、闘いでしか納得させられないということで
323.Edie (その3)
マルゴさんは、5分で終わらせると約束したけれど
ミス・イーディとの勝負は、1分も掛からなかった
WRYYYYY
ハアッ
HASHOOOO
トォアッ
ミス・イーディは、マルゴさんに次々と攻撃を仕掛けるが
マルゴさんには、一発も当たらない
拳も蹴りも全て見透かされている
WESHZZZ
キックしたミス・イーディの足を躱すと同時に
マルゴさんがローキックで、彼女の軸足を刈る
体勢を崩して倒れる、ミス・イーディ
床を転がって、距離を取ろうとするが
マルゴさんは、その先にすでに移動している
まるでミス・イーディの次の動作が判るみたいだ
床の上のミス・イーディに馬乗りになって片手で押さえつける
もう片手の拳がミス・イーディの顔面を狙う
この距離でマルゴさんのパンチを食らえばとんでもないダメージになる
ハッ
ミス・イーディの眼前でマルゴさんは振り下ろした拳を止めた
そして低い声で、何か言った
今の闘いの中で、お前は5回死んだって、言っているよ
寧さんが、通訳する
床に倒れたままのミス・イーディは、怒り顔でマルゴさんを見上げている
イーディは、何で手加減するって怒っている
手加減
ミス・イーディと、マルゴさん・関さん・麗華の3人の勝負の時は、五分に見えたのに
何でマルゴさんとの1対1の勝負になると、そんなに差が出るんだ
君は、まだ成長途中だ伸びかけている芽を刈り取るつもりは無いだって
何より君は、美智ちゃんの友達なんだろうそれなら、私にとっても妹同然の存在だ
ミス・イーディが、床の上から美智を見上げて尋ねる
この人は、シスター・ミチの師匠《マスター》なのかって聞いているよ
美智がNoと答える
彼女は自分の姉一人だが、師匠では無いだって
寧さんの通訳のおかげで、とてもよく判る
ミス・イーディは、またマルゴさんを見上げる
どうしてさっきは、実力を隠していた3人の時は、あなたは全然動かなかったじゃないかって
それは、君の戦闘力を観察していたんだだって本当の強者は、最初から自分の全力は見せないものだって、言ってるよ
そうかマルゴさんは
関さんと麗華の闘いを観察してミス・イーディの能力を見極めていたんだ
君は、肉体はよく訓練されているフィジカル面では、あたしたちよりも強いかもしれないしかし、君には経験が余りにも不足している本当の実戦の場に出るのは、これが初めてだろうだってさ
ミス・イーディの表情が、変わる
なぜ判るって言っているね
関さんが、驚いていた
そんなのあたしは、全然気付かなかったわむしろ、常にこちらの死角から急所を的確に狙ってくる手強い相手だったわ
その常に的確ってのが、悪い癖なんですよ
マルゴさんは一瞬日本語で関さんに答えてまた、英語に戻る
君は、的確に急所を狙いすぎる暗殺術が専門だから、なるべく素早く相手を仕留めたいのは判るがそんな判りやすい攻撃では、素人しか倒せない戦闘のプロは、君のアクションから容易に次の動きを読み取る相手に先読みされるような、単純な攻撃をしてはいけない
寧さんが、英語の会話をどんどん通訳してくれる
今のは、私のトップ・スピードの攻撃ではない相手の予想など、スピードを速めれば、どうにでもなる
ミス・イーディは、そう反論しているらしい
マルゴさんは、低い声で答える
大切なのは、スピードではない闘いのリズムだ君の攻撃のリズムがいつも同じだとても単調だよリズムにバリエーションが無いこれはおそらく、いつも同じ相手としか訓練してきていないせいだと思うどんなに素早い攻撃でも、リズムが同じなら防御できる相手に攻撃の予想をされてしまったら負けだ
リズムが判れば、対処できる
的確に急所を攻めてくるのならばなおさらだ
むしろ、いつも親しい人としか手合わせしてことで、身体の動きに悪い癖が付いているあたしがわざと君のリズムを崩すように攻撃を受けたら、途端に君の動きは止まってしまった今の君では、絶対にあたしには勝てないよ
うん完全にマルゴさんが、ミス・イーディの攻撃を押さえ込んでいた
どうしたら、あなたに勝てるのか
ミス・イーディは、闘志を剥き出しにしてマルゴさんに言う
マルゴさんは、ニカッと微笑んで
あたし一人に勝ったって、何の意味も無いよあたしは、チームで闘っているんだからね
Team
ミス・イーディは、不思議そうな顔をする
そうだあたしは、今、1対1で君に勝ったみたいに見えるけれど実際は、そうじゃない前の闘いでそこの2人と君の闘いを見ていたからこそ、君のウイーク・ポイントを見つけることができたんだあたしたちは、チームだだから最終的に、チームとして、君に勝てばいい
もし、今の闘いであたしが君に敗れていたとしても残りの2人が、あたしの闘い方を見て、君の攻略法に気付くはずだよ何があっても、残った者が絶対に君を倒す君には、初めから勝ち目は無かったんだよ
倒せるものか今だって、この体勢から私は逆転してみせる
ミス・イーディの闘志は消えない
本当に、負けず嫌いだなこの子
いいえ、あなたには勝てません
美智がミス・イーディに言った
どうして、シスター
美智の言葉には、ミス・イーディも心を動かされたようだ
あなたは暗殺者だから誰かに命じられたまま、1人で敵地へ潜入して、指示された人物を殺すことしか教え込まれていないでしょうあなたの闘いには、相手を殺すか、自分が殺されるかの二択しかないわたくしたちとは、違います
違うミチ
わたくしたちの闘いは、護る闘いです1人が倒されても、残った人間がその意志を引き継いで闘いますわたくしたちは、絶対に負けるわけにはいかないのですからわたくしたちには、護りきるという未来しか許されていません
何を護っているの
わたくしたちのFamilyです
Family家族
私には家族がいないお祖母様は亡くなった教団は、私を見捨てた
ミス・イーディの顔が曇る
今の私にできることは、お祖母様から教わった暗殺術を磨き上げることしかできないこれだけが、私と祖母を繋ぐ絆だから
ミス・イーディの言葉に美智が言う
わたくしも、そういう風に考えていた時期がありましたしかしそうではありません
Sister
美智を見る、ミス・イーディ
技は、技ですあくまでも、何かをするためのものです技を磨くことを、目的にしてはいけませんわたくしの技は、祖父と父から継承したものですがわたくしはこの技を、わたくしの家族のために使いますそのために、さらなる研鑽を積みますわたくしの子供たちにも、この技を伝えますわたくしの子供たちが、自分の家族を護れるように
ミチの子シスター・ミチは、子供を産む気なの
はい、産みます
ミス・イーディは、暗い顔のまま
私は、子供が産みたくない自分の子供を、自分と同じ様な暗殺者にはしたくないから
暗殺者にしたくないならそう育てればいいんだよ
でも私は、暗殺者としての教育しか受けていない
君は今、何歳なの
シックス・ティーンです
なら、全然間に合うじゃないか今から、暗殺者になる以外のことを学べばいい
ミス・イーディは、キッとした眼でマルゴさんを睨み
私に、祖母から受け継いだ技を捨てろというのですか
そんなことは誰も言っていないよ君がお祖母さんから受け継いだ暗殺術を基に、暗殺以外のこともできる新しい武術を作ればいいんだよ
別の武術
わたくしの工藤流は古武術です元々は戦場での、人殺しの技でしたしかし、何代もの継承者が様々な試みをして改良することによって、人を殺すだけでない力を有することができました
わたくし今宵、初めて工藤流の技を、人を愛するために使いました
セックスでの心月開眼
愛する
そうですシスター・イーディあなたの技だって、きっと暗殺以外のことに活かせるはずです
ミス・イーディは、うつむき
そんなの判らないよ私は、暗殺以外のことは判らない
だから、あなたのお祖母様はあなたに教団の外に出て、修行しろとおつしゃったのだと思います
色々な人に出会って色々な技を知れと世界には、まだまだあなたの知らないことがたくさんありますできない、判らないは、世界を知るまでは言ってはならない言葉だと思います
マルゴさんが、クスッと微笑む
ミス・イーディあたしは君に倒されるわけにはいかないから、あたしに勝つ方法は教えてあげられないけれど今の君が、もっと強くなる方法は幾らでも教えてあげられるよ
ハッとする、ミス・イーディ
教えてくれるというのですか
ああ、君は美智ちゃんのお友達なんだろそれなら、あたしにとっては妹分みたいなものだから
マルゴさんは、優しく微笑む
それは、さっきそちらの女性にも言われました
ミス・イーディは、寧さんを見る
当ったり前じゃんあたしもマルちゃんも、同じFamilyの一員だものミッちゃんもねだから、みんなイーディのことは歓迎するよっ
寧さんが、答える
っていうかさイーディも、あたしたちのFamilyに入っちゃいなよっ
私が
驚く、ミス・イーディ
うんそれが一番だようちの子になりなさいっ
寧さんの言葉にミス・イーディは、美智を見る
本当のシスターになりましょうシスター・イーディは、わたくしの姉妹になるのは嫌ですか
そんなことないけれど
じゃあ、決まりだよっ
寧さんが笑って、言った
いいのですか私は暗殺者ですよ教団の出身ですよ
ミス・イーディが、不安そうに言う
って、言ってるけれどヨッちゃん、どう思う
そんなの関係ないって、言ってあげて下さい
そんなの関係ないってさイーディなら大歓迎だって、ヨッちゃんも言っているよ
他の方の意見も聞きましょうマルゴさんは
美智が、マルゴさんに尋ねる
あたしは、もちろん歓迎するよ
麗華お姉様は、いかがです
はい、家族なのですからお答え下さい
美智の言葉に麗華も、英語で答える
香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートなんだから英語も堪能らしい
わたくしは妹が増えるのは、大歓迎です
恥ずかしそうに、麗華は言った
このお姉様も、さっきは様子見をしていただけです本気になられたら、あなたよりも遥かに強い方ですよ、シスター・イーディ
いや、わたくしは
否定しようとする麗華に、ミス・イーディは
いいえ、私以上の鍛え上げられた肉体をお持ちなことは判っています
家族、仲間になるということでミス・イーディは、冷静に相手を見ることができるようになったらしい
孤独な暗殺者であった間は誰もが否定すべき敵に見えたのだろう
ただ1人祖母と同じ技を使った美智を除いて
以前のわたくしはあなたと同じだったのです、ミス・イーディ
たった一人、孤高であろうとし自分のスタイルに頑なにこだわっていましたそして、1対1なら自分は最強だと自惚れていたそんな相手と二人だけで決闘するなんて状況は、現実の戦地ではまず無いのに
家族を持つことで、わたくしは様々なことを思い知りました自分一人でやれることの限界と孤高を守ろうとすることの無意味さを今のわたくしには、たくさんの姉と妹がいますみんなが、わたくしを助け、励ましてくれていますわたくしも、この身の尽きるまで家族のために闘いますわたくしは、家族に学ぶためのチャンスを貰ったんですミス・イーディにも同じキッカケを掴んで欲しいと願っています
イーディは
シスター・イーディと呼んで下さいお姉様
麗華の言葉を受けとめる
お姉様の言葉が身に染みます
そしてマルゴさん、関さん、美智を見る
私の姉妹たちはみんな、私よりも強い今は、よく判ります
祖母の死と、故郷からの追放ミス・コーデリアとの関係
ミス・イーディは、ずっと心を閉ざしていたんだ
祖母から学んだ暗殺術だけが、孤独な彼女の支えだったんだろう
だから、他の技を使う人間全てを否定して己の暗殺術だけしか、見ていなかった
美智と出会ったことで祖母と似た技を見た懐かしさから、心が開けて
マルゴさんに、負けたことと
オレたちの家族にならないかという誘いが
ミス・イーディの凍り付いていた心を溶かしている
この子の日頃の微笑みは全部、フェイクだったんだ
感情を押し殺す代わりに無理に笑顔を作っていたんだ
麗華お姉さんは、これでオッケーとして関さんは、どうなの
寧さんが、わざと日本語で関さんに尋ねた
いえ、あのわたくしは、まだ皆様の家族ではございませんから
関さんも、日本語で答える
そういうのはどうでもいいからさ闘いの先輩として、イーディに何か言ってあげてよ関さんも何か言わないと、この場がしまらないよっ
確かにさっきは、3対1で闘ったんだから
いまさら、関さんだけあたしは、ちょっと違うと言われたら、ミス・イーディが混乱する
関さんは、流暢な英語で喋り出す
確かにあなたは、まだ未成熟ねでも、とっても素質はあると思うし、今までの修行は絶対に無駄にはならないわきっと、もっともっと強くなるこれからも研鑽を積めば
関さん、そういうアドバイス的なことはいいのっ
寧さんが、メッと睨む
イーディを仲間として認めるかどうかそれだけを言ってあげてよっ
改めて、関さんはミス・イーディを見て
わたくしも、あなたを受け入れますこれからは仲間よミス・イーディ
ミス・イーディが、ニコッと微笑む
All Right Sister
再び、美智がミス・イーディに
シスター・イーディ、あたしたちが闘うのは護るべき人がいるからよあたしたちのFamilyシスター・寧と、あたしのご主人様それから、ご主人様の家畜のこの女性一緒に護ってくれるわよね
雪乃が、ブスッとする
また、あたしのことを家畜って言った
無視されなかっただけいいだろ雪乃は家族じゃないって言ったら、今のミス・イーディなら平気でお前を見殺しにするぞ
うん軽く想像できる
雪乃は美智に感謝するべきだ
I Do
ミス・イーディは、答えた
シスター・美智の家族は、私の家族シスター・美智の護る人は、私の護るべき人です
そんな風に宣誓してくれたらしい
そしてちょっと考えてから、また口を開く
なるほど自分一人で闘うのとは違う護らなくてはいけない人がいるというのは、全然違う感覚なのですね
ミス・イーディの新しい修行が始まる
さて、オレたちはマルゴさんたちに、ミス・コーデリアに捕まった後のことを手早く話す
マルゴさんたちも、オレたちと別れた後のことを話してくれたが通信で話してくれていた通り、何の襲撃の気配も無いまま、このフロアまで降りて来られたらしい
続いて、マルゴさんと関さんが、ミス・イーディに質問する
しかし、ミス・コーデリアは新人の彼女にはほとんど作戦内容については教えていないようだ
まあミス・イーディは、ミス・コーデリアに全然懐いていなかったし
一応、命令は聞くけれど、本質的には反抗的だったんだから仕方無い
現在のホテル内の状況知りたいわね
ここVIP用の待避所でしょ館内情報を引き出すことはできないの
監視システムとリンクするためのコネクターはあるんだけれどここにはモニタリングできる端末用の機械が無いのよここにVIPが避難してくる時には、必ず香月セキュリティ・サービスの護衛人が一緒にいる手はずだから
そうかその担当警護人が、専用の端末機械を持ち歩いているのか
まあ、こんな部屋に機密事項の多い機会を置きっぱなしにしておくわけがないか
こんなことなら、2505室から端末の機械を持って来れば良かったね
あんな大きな機械を抱えていたら、最初にミス・コーデリアに襲撃された時にやられていたわよ
そうだねだから置いてきたんだったっけまったくトニーさんにやられたねわざと、あたしたちに一番大きな端末機を持たせたんだから
苦笑する、マルゴさん
オレたちが2505室から脱出する時には、持ち運びに困って置いていく様にわざわざ大きい機械を貸してくれたのか
20階まで降りれば、警備員の分室があるわそこなら、ある程度の監視カメラの映像は見られるかもしれない
関さんが思い出したように言った
うんとりあえずは、そこを目指そうか
マルゴさんが、そう決定する
そろそろ良い時間だと思うんだ敵はみんな、あたしたちに構っていられないと思うよ
工藤さんたちが、シザーリオ・ヴァイオラの本隊に総攻撃を掛ける頃合いだと思うんだそうなったら、ミス・コーデリアたちはヴァイオラの支援に向かうしかないよね谷沢チーフだって、そっちの現場を注視するのが優先になる
これまでのところ
谷沢チーフとミス・コーデリアの間に繋がりがあることは予想されているが
谷沢チーフとシザーリオ・ヴァイオラの間には、何の裏も感じられない
抗争状態のままだ
どう考えても、ヴァイオラたちが21階まで上がってくるのは無理だと思う
工藤父ら、フリー警護人たちに迎撃され人数を削られているんだ
少なくなった人数で、偵察しながら進むんだから
侵攻のスピードだって、極端に遅くなっているだろう
わたくししも、そう思います
関さんも、そう言った
おそらく決戦地は、19階辺りのフロアになるでしょうね
ということで、ミス・イーディ編は終わります
家族入りしましたので、いずれ吉田くんとのエッチもあるでしょう
というかまた、月曜日か
324.友よ、なぜ
さて、再び隊列を組む
戦闘が麗華、サポートが関さん、真ん中に美智と寧さんと雪乃にオレ、殿《しんがり》がマルゴさん
ここまでは、前と同じだ
そのマルゴさんの後ろ10メートルくらいの距離を取って、シスター・イーディが追っ掛けてくる
(本人の希望で、親愛の情を込めてオレたちはシスター・イーディと呼ぶことになった)
とりあえず、このVIP用の避難所の周りは、ホテルの従業員の裏廊下だから監視カメラも隠しマイクも数が少ないし、ほとんど剥き出しになっていた
21階で、それらの機器を一個一個美智が破壊した様にこの22階の裏廊下の監視システムはマルゴさんたちが壊して来たらしい
だから、今までのことオレたちの合流や、シスター・イーディの加入は、谷沢チーフにもミス・コーデリアにも知られていない
しかし、裏廊下から下のフロアに降りるルートは、全て封鎖されている
下階へ行くには、再び表の廊下に出るしかない
表廊下の監視システムは、こことは比べ物にならないほど数多く仕掛けられているし隠し方も巧妙だ
とても、一つ一つ監視装置を壊していくわけにはいかない
となればシスター・イーディとは距離を取るしかない
あたしたちを尾行しているフリをして、付いて来て
マルゴさんが、英語でそんな様なことをシスター・イーディに言っているのだと思う
それなら、シスター・イーディは小劇場からオレたちが逃げ出したのを、独断先行して一人で追っている様に見えるだろう
監視カメラの画像を見たミス・コーデリアには、そう見えるはずだ
いかにも、シスター・イーディのやりそうなことだし
少なくとも、オレたちと仲間になっているとは思わないはずだ
香月セキュリティ・サービスの警護人にだけ気を付けて
シスター・イーディには、暗殺者としてのスキルがある
気配を消して追尾するのは、得意らしい
ということで元々の7人プラス、ちょっと離れた後方にシスター・イーディという隊列で、オレたちは出発する
ここから、表廊下に出られます
そこは、洗濯に廻すシーツなんか集めて運ぶ業務用エレベーター・ホールだった
関さんが、エレベーターの脇の大きな金属製のドアのロックを開ける
ここが、表と裏の境界か
ガチャ、ギィ
思ったよりも遥かに分厚い扉だった
なるほど、これなら爆弾を仕掛けられても開くことは出来ない
まずは
美智が、外の気を探る
大丈夫です気配はありません
それでも、最初に麗華が飛び出し辺りを探る
関さんも銃を構えて、不測の攻撃に備える
さっき、美智はミス・コーデリアの気を捉えることができずに襲撃を受けた
だから、念には念を入れて行動する
前方、天井まで含めて、異常なしです
後方も、異常なしよ
関さんも確認する
二人の報告を受けてから美智、寧さん・雪乃・オレの真ん中グループが、分厚い金属製のドアを潜る
それから、マルゴさんが
今は敵の姿は見えないけれど、その辺に隠れているのかもしれないこの先で敵に遭遇したら、またこのドアから裏廊下に逃げるよだから、このドアはこのまま開けておくよ
オレたちに話す様な口振りでマルゴさんは、隠しマイクに言う
ドアを再度ロックしないのは、本当はシスター・イーディのためだ
だから、ドアは開けっ放しにしておく
藤宮さん、廊下を右に進んで二番目の角の奥に、下へ降りる階段があるわ
関さんの記憶は、完璧だ
麗華を先頭にオレたちは、歩き出す
そのまま関さんの指示に従っていく
美智は気を探り続ける
それとは別に、麗華たちはいつでも突然の襲撃に対処できるよう、心を集中させている
オレはシスター・イーディが、後ろからちゃんと追っ掛けてきているか心配だったが
もちろん、振り向いて後方を確認することは許されない
この表廊下でのオレたちの行動は、全て監視されていると考えるべきだからだ
武術も何もできないオレが、暗殺者のシスター・イーディの気配を感じ取るのはおかしい
大丈夫ですちゃんと付いて来ています
美智が、小声で教えてくれた
美智の気のセンサーは、シスター・イーディがちゃんとキャッチしているらしい
あたしたちまで神経を張り詰めているのは、良く無いよヨッちゃん
落ち着いてさ自然体でいこうよっさあ
そうは言うけれど
そうね、悩むだけ無駄よねどうせ、あんたは何もできないんだから
雪乃が小馬鹿にしたように、オレに言う
堂々としていて下さい絶対にわたくしがご主人様たちを護ります信じて下さい
美智がそう言ってくれるのがとても有り難い
そのまま21階へ
小劇場星の間が、ミス・コーデリアたちの待機所になっていることは、すでに関さんに伝えてある
だから、関さんは星の間から一番遠くを通って、下の階へ行くルートを選んでくれた
そのルートから逆算して、さっきの22階の業務用エレベーター・ホールから表廊下に出たそうだ
何しろホテルの中は迷路化されている上に、あちこちで分断されている
警戒しながら、フロア内を通り過ぎ下階への階段へ
とりあえず、ここでの襲撃は無かった
オレたちは、20階のフロアに降りる
ミス・コーデリアたち、21階には居なかったんでしょうか
オレは、後方のマルゴさんに尋ねた
多分ねあちらさんも色々と状況の変化に追われているんだよ
そしてオレたちは無事、20階の警備員詰め所に到着する
はい、こちら七曲署捜査1係
内線電話を取っているのは工藤父
ネコさんもいる
馬鹿野郎それっくらい、そっちで何とかしろ6階G-4の敵は任せたからなメンドくさかったら、適当な部屋に監禁しちまえロシアのチンピラどもはロクなことは知らされてない尋問するだけ無駄だ
ガチャンと、電話を切る工藤父
おう、どうしたお前ら
オレたちに気付いて、声を掛けてくれる
そのまま、部屋の入り口から中を覗き込むオレたち
シスター・イーディは、後方で物影に隠れているようだ
ここで何をやっているんです
みんなを代表して、オレが尋ねる
見りゃ判るだろ陣頭指揮だよそろそろ大詰めだからな
工藤父は、部屋の中のたくさんのモニターを指差す
ホテル内のありとあらゆる監視カメラの映像が次々に、映し出されている
無線だと傍受されている可能性があるからなオレの仲間への連絡は、ホテルの内線電話を使っているんだ
ネコさんが、工藤父にモニターを示す
赤隼《レッド・ファルコン》さんたちのチーム、8階のB-6ゾーンに入りました
モニターを見ると、フリーの警護人のチームなんだろう派手な色使いの服装の5人が武装して廊下を歩いて行くのが見える
やつらに一番近い内線は
08603です
ネコさんはフロアごとの内線リストを見て、即答する
すぐに工藤父は、内線電話をプッシュする
モニター画面の中ホテルの通路脇に設置された、内線電話がプルルルルと鳴る
チームの中で、緑の服の男が電話を取った
オレだ緑犀《グリーン・サイ》か赤に換わってくれ
電話に出る、赤い服の人この人がチームリーダーなんだな
お前らの前方、B-7のエリアにロシア人が20人ほど溜まっている蹴散らしてくれブッ倒して、適当に拘束しておいてくれればいい
判ったぜ
赤い人は、そう返事すると内線電話を切る
行くぞ
5人の超獣戦士が、雄叫びを挙げる
あいつらは元々3人のチームだったんだが、死んだ仲間の弟を2人チームに加えたんだよまあ、それなりに頼りになるやつらだ
モニターを見て、工藤父が言う
これでヴァイオラの本隊以外のロシア人部隊は、全て追い込んだこっちはすぐに片が付く
こうやって、監視カメラで現在位置を確認して進行方向にある最寄りの内線電話を使って、指示を送っているんだ
なるほど、上手い手を考えましたね内線電話なら有線だから、少し手間が掛かるけれど外部から盗聴される心配は無いですものね
マルゴさんが、工藤父に言う
そうだろうオレのアイデアだぜ
それに内線での会話なら、谷沢チーフも本部で全てチェックしているんでしょ一々報告する手間が省けますもんね
ああ、ここみたいな中途半端な警備員詰め所と違って、谷沢のオッサンの部屋はホテルの監視システムの中枢だからなこうやって、オレと各チームとの会話を内線で喋っておけばノーマくん辺りがまとめて状況報告してくれるだろ
マルゴさんは、谷沢チーフと工藤父の関係を探っている
工藤父は、谷沢チーフの裏切りの可能性なんて全く考えていないみたいだ
谷沢のオッサンだってオレに何か指示したいことがあれば、この部屋に内線で連絡してくるだろうしな
あの後、谷沢さんから何か言ってきました
何もないよとりあえず、オレに任せてくれているんだろそっちはどうだった
重役の皆さんは、上の方の階に逃がしました情報漏洩の起点も、判明しました
関さんが、重役たちの中の裏切り者をそう表現する
そうか、まあ、そっちはオレの管轄外だからな閣下と谷沢のオッサンにお任せするよ
工藤父は、ジッちゃんが行方不明なことも知らないんだ
谷沢チーフは、工藤父に大事な情報は何も伝えていないということになる
ところで工藤さん21階の星の間って、ここからモニターできますか
星の間ぁできるか、ネコ
そこは無理よ重要機密区域になっているから、この部屋からは無理ね
機密区域
ただの小劇場だったぞ
それが、どうしたんだ
例の最初に侵入して来たまま行方不明の4人組と、その近くで交戦したんですよ
マルゴさんは、さらに嘘を言う
ミス・コーデリアの襲撃を受けたのは、21階では無い
そうなのか、ここからモニターしている限りでは、そんな戦闘は気付かなかったぞなあ、ネコ
これで判った
谷沢チーフは、オレたちがミス・コーデリアに襲撃されたり、香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートに銃撃された映像は工藤父たちに見えないように細工している
一瞬でしたから見落とされたのかもしれませんとにかく、4人の敵がその星の間の方に逃げ込んだみたいでしたので
判ったネコ、谷沢のオッサンに伝えてくれ
ネコさんが、内線電話を取る
まあ、谷沢のオッサンの本部なら機密区域だろうが、全部モニターしているだろうからすぐに対処してくれるだろう
工藤父の谷沢チーフへの信頼は、大きい
あ、もしもしトニーくん谷沢さんいるえ、席を外している
谷沢チーフは本部にいない
ああ、そうなら伝えておいてマルゴちゃんたちが、21階の機密区域星の間辺りで敵と遭遇したらしいからあ、谷沢さんの部下の方で、捜索部隊を出してくれる助かるわ、あたしたちそろそろ佳境だからじゃ、お願いね何かあったら、こっちに電話して工藤ちゃんもあたしも、まだしばらくはここに居るから
ネコさんは、電話を切る
谷沢のオッサン、どうしたって
んトイレに行ってるってさ
同時進行で、何かが起きている
きっと
まあいいさこっちは、もうすぐヴァイオラの本隊以外の部隊は、全て制圧できそうだ早いとこ、片付けてしまおうまあ、ことごとくロシアのチンピラばかりだがな
再び監視カメラの映像を次々と変えながら工藤父は言った
ヴァイオラの本隊の方は、どうなったんです
さっき30人の部隊を、ダダドムゥおじ様が20人に削った
その後、先行していたロシア人の2部隊と合流して、部隊の人数を補充しようとしていたはずだけれど
それが色々とヤバイことになった
合流する部隊に強襲を掛けて、人数を減らすことには成功したんだがそれでも、20人以上がヴァイオラの本隊に吸収された50人足らずぐらいの人数だな
かなりの人数がシザーリオ・ヴァイオラを護っているということか
そしたらだ部隊の幹部のやつら、腕章を外してしまったんだよ
ホテルに侵攻してきたヴァイオラの軍勢は、全員同じ黒い戦闘服に、ゴーグル、黒マスクをしている
外見からでは、ほとんど違いが判らない
シザーリオ・ヴァイオラの幹部、ロレンザッチョ・バンディーニ、ジュリアーノ・ジェンカ、ロミオ・モンタギューの3人だけは色違いの腕章をしていてそれで何とか、人物を特定することができたのに
腕章を外したら、他の戦闘員の中に紛れてしまう
しかもやつら分裂しやがった
分裂
今は上階へ侵攻するグループが1に、下階に降りて行くグループが23グループに別れて行動している人数は、どれも20人前後だ
上と下に、同時に進んでいる
マルゴさん、どう思います
関さんが、マルゴさんに意見を求める
元々、今回のことにこだわりがあるのは、シザーリオ・ヴァイオラだけだからねロレンザッチョ・バンディーニは、状況不利だと判断して撤退することに決めたんだと思うよ
じゃあ、上へ進んでいるのがヴァイオラで他の幹部たちは、下ですか
オレの言葉に、マルゴさんは苦笑する
そういう簡単なことじゃないんだよヴァイオラがアメリカから連れて来た子飼いの戦闘員は、本隊にいた30人しか居なかったってことを思い出して
うんホテルに突入してきた、150人強の敵戦闘員のうち
30人だけが、元からのヴァイオラの部下だ
残りの120人は、ロシアから拾って来たマフィア崩れのチンピラだった
その30人が20人に削られた仕方無いから、先行させていたロシア人たちを合流させたでもこのロシア人たちは、はたしてヴァイオラたちの指揮下で命令通りに動いてくれるだろうか
無理だと思いますあのロシア人の中で、英語の判る人なんて何人もいないでしょうし、軍隊経験のある人もそうはいないでしょうただの犯罪者予備軍の若者ですほとんど面識の無いアメリカ人の指揮に従うとは思えません
あたしもそう思うよだから、ヴァイオラたちは、せっかく集結させた戦闘員たちをまた分裂させるしかないんだ
20人のアメリカ人は、そのまま固まって下階へ撤退を開始
40人近いロシア人は、2つの部隊に分けて上と下に、ということか
上階へ向かった部隊は、囮だよ撤退グループが後ろから追撃されるのを防ぐための捨て駒にされたんだよ
ヴァイオラ本人も、おそらく撤退組の中に居ると思うよロレンザッチョ・バンディーニが撤退を決めた以上は、ヴァイオラも意志を曲げるしかないからたった1人、上の階に向かうロシア人の中に紛れて行くなんて度胸は、あの人には無いだろうさ
下へ向かった2グループのうち、先行しているのはロシア人ばかりだと思うこっちも、ヴァイオラたちの盾として利用するつもりなんだろうでも、このロシア人の中には、何人かアメリカ人も紛れ込ませていると思うよロシアのチンピラ兄ちゃんたちだけじゃ、すぐに壊滅しちゃうからね
ヴァイオラの組織の戦闘員が、補強として組み込まれている
合理的に考えれば、そういうことなんだろうな
工藤父は、マルゴさんの意見を肯定する
しかしオレはちょっと、疑問があるんだよ
どんなことでしょう、工藤さん
いやね何か、ちょっと、もろ過ぎるなって
もろい
やつら全然、下調べをしてきていないみたいだろこのホテルのことも、香月セキュリティ・サービスのことも、オレたちのことも全然、判っていないまま、無策で突っ込んできたとしか思えねぇんだよそれどころか、武装戦闘員150人で突入したら楽勝って思っていたような気配さえある
工藤父は、深く考え込む
何の調査もしていないなんてことが、あのシザーリオ・ヴァイオラの組織で有り得るんだろうか閣下がこのホテルを決戦地に指定してからだって、調査に充分な時間はあったオレなら、絶対に調べるぞ
いやヴァイオラたちだって、事前調査はしているはずだ
だから、ミス・コーデリアたちは、すんなりとホテル内への侵入することができたんだし
そもそも、ミス・コーデリアと谷沢チーフが繋がっているのも、作戦前の事前活動の一環だろう
谷沢チーフが、ジッちゃんを裏切っている可能性があるように
ミス・コーデリアも、ヴァイオラたちを裏切っているとしたら
マルゴさんも、その可能性に気付いている
ミス・コーデリアは、絶対にホテルや香月セキュリティ・サービスの情報は掴んでいる
これは間違いない
なのにシザーリオ・ヴァイオラには、嘘の情報を流していたとしたら
ホテル普通の建物ですセキュリティも、大したことはない
香月セキュリティ・サービスろくな人材はいないから、気にしなくていい
そういう報告をしてヴァイオラたちに、今夜の強襲を実行させたのだとしたら
どうにもオレには解せねぇんだよ
工藤父は、心がモヤモヤして仕方がない様子だった
オレだってモヤモヤしている
だから、さっきからあたしが言っているじゃありませんか
ネコさんが、工藤父に言う
最初に消えた4人が本物の暗殺部隊で後から来た150人が全員、囮なんですよ
しかしシザーリオ・ヴァイオラが、自ら囮になるかしかも、とんでもない窮地に陥っているし
それは判りませんけれどあたしたちがゴタゴタやっている間に、暗殺部隊の4人が目的を達すればいいんでしょう
ネコさんの勘は鋭い
ミス・コーデリアたちこそが、敵の要なのかもしれない
判らねえなそっちは、谷沢のオッサンの管轄だそれに、閣下には大徳と張本っていう2人の化け物が警護に付いているんだあいつらに任せるしかないな
その2人はジッちゃんの側に居ない
オレたちは、オレたちに指示された仕事に集中しようぜ
だがオレは
ジッちゃんとミナホ姉さんが、行方不明なことを知っている
谷沢チーフが、怪しいことも
結局、谷沢チーフとミス・コーデリアが、どんな取引をしているかが判らない限りは
真実は、見えて来ない
父上ママ上様が、香月セキュリティ・サービスを解雇されました
スッと、美智が話を変える
悦子が何でだ
驚く工藤父
命令違反と職場放棄で、谷沢さんに処分されました
関さんが、補足する
命令違反に職場放棄あいつは、そういうことをするような女じゃないぞ
ママ上様は仕事よりも、男性をお取りになりました
美智の言葉に工藤父は、絶句する
そうか、判った
そして、大きく深呼吸して
この話は、今は止そうネコ、味方のチームを集結させよう3つに分かれたヴァイオラの本隊を各個撃破する
そうね今は眼の前のことに集中しましょう
ネコさんが、各チームの現在地を確認していく
下に向かった方の先行グループ多分、ほとんどがロシア人だと思うけれど、そいつらにもうすぐバンバルビーの3人が追いつくわ
丁度良い先にバービーたちに、強行偵察して貰おうか
工藤父は、内線電話を取る
また遅刻ギリです
325.クイーン・ビー・ダイナマイト
しっかしさあ、ルビーちゃぁーん4
何です姐さん5
あたしから言い出したことだけどさ6
後悔しているんですか7
うんちょっと8
あたしは、覚悟してましたよこうなることは9
そうねダウト
画面の中のバンバルビー3の3人
ここはエレベーターホールだな
ちょっと広めのエントランスになっていて大理石の彫像や、ベンチがあちこちに置かれている
身を隠しながら乱戦するには、丁度良い様な空間だ
いや、このホテルのことだからそういう場所を意図的に散在させているんだろうけれど
大理石の床にどっしりと腰を下ろして年上の2人、バービーさんとルビーさんはトランプで遊んでいた
プレイヤー2人でダウトって相手の持っているカードが丸わかりだから、面白くないですよ
そうね自分の持ってないカードは、絶対に相手が持ってるんだもんねぇ
何をやってるんだこの人たち
ダウトは止めて別のゲームするインディアン・ポーカーとか
1人だけ武器のフレイルを持って立っている番場さんが、泣きそうな声で叫ぶ
あたしも入れて下さいよおっ3人ならきっと楽しいですよ無限の可能性が拡がりますってば
バービーさんは、番場さんをチラッと見て
ダメよ番場ちゃんは、警戒してなさい
そうだねあんたがあたしたちのトランプに加わるのは、10年早い
ルビーさんも、番場さんのゲーム参加を却下する
いや戦闘中に、あんたたち何をしているの
つーか、ずっと番場さん一人に闘わせてバービーさんが、このホテルの中でまともに仕事しているのを観たことが無いんですけれど
ルビーさんは、たまに援護の射撃をしたりしているけど
しっかし、姐さん小腹が空いてきませんか
そうね工藤のオッチャンに、ピザでも届けさせようか
あたし、ラーメンとかがいいですね番場ちゃんは何がいい
あたしは、あの
判ってると思うけれど出前で届けてくれるものだよこんな深夜に、刺身定食とか持って来てくれるお店は無いからね
いえバービーさん
この戦場と化したホテルに、出前してくれる店なんかありません
いえ、あたしダイエット中なので間食は控えないとさっき、工藤さんの持って来て下さったお弁当、3つも食べちゃいましたから
そういや、1階のロビーで弁当配っていたな
番場ちゃんあんたがダイエットすると、あたしが困るんだよっ
バービーさんが、ギロッと睨む
え、何でですちゃんと体調管理はしますし、筋肉が落ちるようなことが無いように、トレーニングも頑張りますから
姐さんは、そういうことを言ってるんじゃないんだよっ
ルビーさんまでが、番場さんを叱る
えっとじゃあ、どういうことです
キョトンとした顔の番場さん
すっかり困っている
番場ちゃーん、あんた質量保存の法則って知っているわよね
はい、知っていますけれど
あたしとルビーちゃんさ、今、番場ちゃんに内緒でダイエットしているのよ
えっ、そうだったんですか
そうよそれであたしたちの要らないお肉は、番場ちゃんの身体に引き取って貰うことにしたから
何だ、何だ
だから、質量保存の法則よっあたしたちの身体から減ったお肉は、誰かの身体に増えないと宇宙のエントロピーが崩壊しちゃうでしょ
質量保存の法則って、そんなのだったか
えあたし、バービーさんたちが痩せた分だけ、太らないといけないんですか
逆よっあんたが太った分だけ、あたしたちが痩せるのよ
はいぃぃ
だから、あんたはガンガン食べて、どんどん肥え太りなさいっそれを横目で眺めながら、あたしたちはどんどんスリムになっていくからっ
うんうん、質量保存質量保存
バービーさんのトンデモ理論に、ルビーさんはケラケラ笑っている
ということなのでぇ、番場ちゃんは、今からギトギトのとんこつラーメンを食べなさい3杯食べなさい100メートル先からでも、ぷーんとニンニク臭い女になりなさいっ
嫌ですよおっそんなのぉっ
とエレベーターホールの内線電話が鳴る
受話器を取る、バービーさん
はぁーいお電話ありがとうございまぁす愛の伝道師、あ・な・た・のバービーちゃんでーす
電話を掛けているのはもちろん、オレたちと同じ部屋に居る工藤父だ
ケンちゃんラーメン・新発売だ
あーら、ちょうど良かったラーメン食べたかったのよねぇでも、ケンちゃんラーメンじゃ、少し量が少ないかなあ
敵の本隊がお前らの方へ向かっている
工藤父は、とっとと本題に入った
てことはやつら反転して、撤退し始めたってこと
そういうことだ死に物狂いで、こっちの包囲をこじ開けに掛かってくるぞ
了解お化粧直して、お出迎えするわーんっ
バービーさんは、手に持っていたトランプの束を放り出す
お前らがこれからブチ当たる先遣隊は、どうせロシアのチンピラが主体だと思うが
判ってるわよーん撤退戦なら、やつらもエースのカードを使ってくるってことでしょん
そういうことだ油断すんなよ
あたしを誰だと思っているのよ例え、番場ちゃんが戦死したとしても、あたしとルビーちゃんは生き残るわっ
バービーさぁーん、あたし死んじゃうんですかぁもう、確定なんですかぁ
お遊びは、それまでだ来たぜ
工藤父が、監視カメラの映像を変える
バービーさんたちの向こう廊下の先に、黒い戦闘服の男たちがゾロゾロと現れる
20人くらいか
てんでバラバラで綺麗な隊列は組んでいない
オレの眼から見ても、集団戦闘の訓練はしていないやつらだと判る
こいつらがヴァイオラの撤退部隊の先遣隊
あーららそんじゃあ、バービーさんまた、あたしが蹴散らしてきますね
番場さんが、自慢のフレイル棒を構える
番場ちゃんは、ちょっとお休みしてなさい
バービーさんは、クールに言った
えー、何でですぅ
一目見て、相手の実力が判らないとダメよ番場ちゃんド素人の中に、プロが5人ほど混じってるわ
ルビーさんもいつもの、ゴム弾の入ったショットガンを放り出し
近くに隠してあった、自動小銃を手にする
ルビーさん、そのAK《アーカー》、実弾入りですよ
番場さんが、驚いている
そうよマジで殺し合いしないと、生き残れない相手だからね
敵の黒い部隊は、ジリジリとバービーさんたちに近付いて来る
ルビーちゃん、あたしの武器取って
敵を睨み付けながらバービーさんが、ルビーさんに手を伸ばす
木《ウッド》ですか、鉄《アイアン》でいきますか
ルビーさんは、傍らのゴルフ用のキャリー・バッグを開けている
バービーさんゴルフの道具で闘う人なの
決まっているでしょうブラック・シャフトよ
ほいっ、姐さん
ルビーさんはバービーさんに、漆黒の長い棒状の物を手渡す
ジャキッ
一瞬にしてバービーさんの背丈ほどに伸びたそれは
釣り竿だった
ふん、ふん、ふんっ
受け取った漆黒の釣り竿をビュンビュンと振り回すバービーさん
黒い軸のロッドは、ギュンギュンしなって、バービーさんの周りに疾風を巻き起こしている
良い感じ、良い感じ爆釣りしてやるからね、あんたたち
ルビーさんは、乳首に貼っていたニプレスを剥がしている
やっぱり乳首は外気に晒していないと、敵の気配が察知できないんだわあたし
ガチャッと音を立てて、もう一度小銃の感触を確かめる
バービーさん、あたしどうしたらいいんですか
番場さんは、やる気満々の二人にすっかり戸惑っている
番場ちゃんは、そこで映画幻の湖についてのレポートを書いてなさい
はいぃぃぃ
テーマは、スペースシャトルと戦国時代の関連性について
無理ですよぉぉあたし、あの映画、難解過ぎて全然意味が判らなかったですからぁ
それじゃあ、今からテレビドラマ愛するために愛されたいを全話観て、スペースシャトルとタンゴとシャンペンと武田修宏を軸に、あらすじを簡潔にまとめなさい
無理ですよぉぉあのドラマ、ストーリー展開、メッチャクチャじゃないですかぁぁ
何で日本の実写物でスペースシャトルの出て来る話は、必ず脳みそお花畑な展開になっちゃうんですかねぇ
ルビーさんが、ぼそりと言った
敵の接近が止まる
黒い戦闘服の男たちは、全員ピストルを持っていた
番場ちゃん流れ弾に気を付けてね今は、生き残ることだけを考えるのよ
ダダァーンッッ
最初の銃声とともに、バンバルビーの3人は物影に飛び込むッッ
バービーさんっ
番場ちゃんは、出ちゃダメっ
今までの相手とは違うわ接近したら、同士討ちを恐れて銃撃を止めるなんてことはしない平気で味方も撃ってくるわよっ
ああロシア人のチンピラたちの中に、ヴァイオラの配下が混じっているのなら
バービーさんたちを、身内のロシア人ごと撃ち殺そうとするだろう
ルビーさんが、自動小銃を斉射する
敵もあわてて、物影に身を伏せる
ほらよっ
バービーさんが、ビュンッと釣り竿を振るっ
シュワッと空中に何かがキラッと光って
グワッ
大理石の大きな彫像の後ろに隠れた敵戦闘員が、悲鳴を上げるッ
エンジョイフィッシング
バービーさん敵を釣ってる
ちなみにこれ、ただの釣り針じゃないから刺さると即効性の猛毒が噴出する仕組みになっているのよね
釣り針から毒が出る
どこに隠れても無駄よーんっバービーさんのクィーン・ビー・ダイナマイト針が、あなたの心に忍び込むのよーんシャランラッ
また、ビュッと釣り竿を振るうバービーさん
竿の先から細くて強靱な糸そして、毒針がびゅわんと弧を描いて、敵の隠れている物影に飛び込むッ
アカカガッ
身体のどこでも毒針が刺されば、アウトらしい
何て恐ろしい武器なんだ
バービーさんが、針を戻そうと釣り竿を上げると同時に敵の1人が、糸を掴もうとする
残念ねっ
バービーさんは、ジャリジャリジャリッとリールを巻くッ
シュジュジュジュジュ
黒い手袋をしていた男の手の平が、糸の摩擦で煙を上げる
手の裂ける痛みに、男は糸を手放した
そこへ再びバービーさんは、毒針を叩き込むッ
その男も針を打ち込まれて、悶絶して倒れる
糸も針も特別製よーん簡単には切れないし、手袋無しで掴もうとすれば、指がズバッと切れちゃうわよん針も特殊合金だから、そんなチンケな戦闘服ぐらい平気でズブズブ貫くからねぇ
ルビーさんが小銃で牽制し
隠れた敵を、バービーさんの毒針が死角から襲う
そんな闘いが、しばらく続く
ズダダダダッ
ビビュン
ウガァァ
ほーら、そろそろ番場ちゃんにも見えてきたでしょ
バービーさんは、言った
烏合の衆の中に混じって連携して行動している人間が、5人ほどいるのがさ
その5人がヴァイオラの部下なのか
そろそろ仕掛けて来るでしょうね
そうバービーさんが言った瞬間
敵の1人が、ルビーさんに目掛けて、何かを投げ付ける
まさか手榴弾
こんな屋内で、手榴弾てこたぁ無いわよね
そう言いながらも、ルビーさんは小銃を抱えて別の物影に飛び込む
ジュワッ
白いガスが噴き出す
ルビーさんが体勢を崩している間に
敵の数人が、バービーさんに向かって突進する
この竿は、こんな風にも使えるのよーんッ
白い煙の中バービーさんは、竿をムチのようにしならせて、敵を一人一人打ち払って行くッ
ビシュッビシュッ
ビビビシュシュ
風を裂く鋭い音
竿の先のスピードは、音速を超えるからねぇぇ
敵の黒い戦闘服やマスクが切り裂かれ次々に倒れていく
ちなみに、竿先にも毒が塗ってありまーすっ
何という、毒竿
昔っから言うでしょセクシーなお姉さんには、毒があるって
いや言わないと思う
しかし、バービーさんが毒女だってことはよーく判った
つーことで、ほらあんたたちだけになったわよんっ5人組出てらっしゃいっ
竿をブンブン振って、敵を挑発するバービーさん
バービーさん、そんなこと日本語で言っても
番場さんが、突っ込む
あら、そうだったわね
そしてバービーさんは、とてつもなく流暢な英語で何か喋った
バービーさぁん、それは酷い、酷すぎますアメリカで訴えられたら、絶対に負けちゃうぐらいの酷い侮辱ですとんでもない罵倒ですよそれ
物影から番場さんが言う
何か、スラングとかでトンデモないことを言ったらしい
隠れていた敵が、スッと姿を現す
1人、2人、3人、4人5人
その全員が顔のゴーグルと黒マスクを外した
全員、金髪の白人の男たちだった
ロミオ・モンタギュー
男の中の1人を見て寧さんが呟いた
ヴァイオラは、撤退の先遣隊に幹部の1人を送り込んで来たらしい
残りの4人もロミオ・モンタギューの子飼いの部下なのだろう
おそらく、5人の連携は完璧のはすだ
まあっ揃いも揃って、金髪の良い男っ
バービーさんは、ニコッと微笑む
あたし子供の頃、キャンデイ・キャンディのアルバートさんが大好きだったのよねえだから、ある日、ママに言ったのママ、あたし大人になったら、アルバートさんと結婚するってそしたら、ママは
黒い釣り竿を握った手が、プルプルと震える
アルバイトさんじゃなくって、せめて定職のある人と結婚なさいって言ったわ天国のママ、ごめんなさいあなたのバービーは、アルバイトどころかもっとアコギな仕事に就いております
ま、アコギな商売って言うより、完璧にアウトローですからねあたしたち
ルビーさんが、苦笑する
5人の男のうち、2人がナイフを残り3人が銃を取り出す
ツー・トップで、フォローが3人てことね
ロミオ・モンタギューは、もちろんフォロー組の中央にいる
ロミオ・モンタギューの命令と共に、5人の男たちが一斉に行動を開始する
ザッとナイフの2人が、バービーさんとルビーさんの間に廻り込む
これでは、ルビーさんは牽制の銃撃はできない
はん教科書通りの行動ね
私の兄は、ちばあきお先生の名作野球マンガプレイボールのコミックス買ってきたら
あんた、小学生のくせにプレイボーイなんて買って来て
と母にビンタされたことがあります
表紙は、野球部のユニフォーム姿のタニグチくんの絵なのに
中ボス戦になりましたがここから先の展開をまだ考えていない
さあ、明日までにロミオくんの戦法を思い付かないと
えっと、幻の湖と愛するために愛されたいについては、興味のある方は検索してみて下さい
幻の湖がカルト的な人気もありますが愛するために愛されたいはマジで、某局テレビドラマの黒歴史になってますので公式サイトも、もう消えてますし
WIKIにあらすじだけが、載ってますが本当に恐ろしいドラマでした
326.バービーガールズ
しかし、あれでは敵も同士討ちを恐れて発砲できないでしょう
モニター画面の中の戦闘状況を見て、美智が言う
それはどうかな
ダダーンッ
バービーさんを取り囲んだ5人の男たちは味方がいるのも構わず、平然と銃を撃つ
およっと
銃口が自分に向いた瞬間に、バービーさんは身を躱す
そこへナイフの2人が突進してくる
バービーさんが、黒竿《ブラック・シャフト》でナイフを薙ぎ払うと
また、ピストルで狙われる
ドガッンッ
ズズゥゥン
今度は、2丁同時に発砲だ
それもバービーさんは軽やかに躱す
凄い素晴らしい反射神経ですね
麗華が驚嘆する
それだけでは無いわバービーちゃん、襲って来ている5人全員の動きを完全に把握しているわ事前に相手の次の行動が判っているからギリギリで躱せるのよ
ネコさんが、そう解説する
しかし、何であいつらあんなにバンバン撃ってくるんです
味方に流れ弾が当たるとか、全然考えていないみたいだけれど
あの5人も相当の訓練を積んでいるってことさフォーメーションでお互いの位置が判っているから平然と銃撃してくるんだよ
男のシザーリオ・ヴァイオラ本人には、あの馬鹿っぽい言動で、劣悪なイメージがあるだろうけれどね配下の処刑人は、みんな一流の腕前だよヴァイオラの組織を維持しているのは、彼らの力だからねロミオ・モンタギューは、その中でもビッグ・ネームの処刑人だ舐めてかかると命が無いよ
バービーさんは、番場さんに下がらせたんだ
今までは半分素人みたいなロシア人のチンピラが相手だったから幼稚園児と野球していたら、突然、メジャー級の剛速球エースが出て来たみたいなもんだよ闘いの感覚が、ロシア人で慣れてしまっているままでは、ロミオ・モンタギューに瞬殺されちゃうよそれも、もちろん敵の策略の1つなんだけれど
つまりヴァイオラたちが、戦闘員の人数稼ぎに連れてきたロシアのチンピラたちとずっと闘い続けてきた番場さんは、いきなり現れたロミオ・モンタギューのチームのスピードには、眼や身体がついていかないってことですか
オレの問いに、マルゴさんは苦笑する
スピードとコンビネーションだけじゃないよ一流のプロは、殺気が違うからね実戦経験の浅い人なら、あの人数のプロチームが相手じゃ気後れしちゃうよ
そうかそれで、バービーさんたちは今まで戦闘に参加していなかったんですねレベルの低いロシア人の相手は、ほとんど番場さんに任せて自分たちは、高レベルの敵が現れた時にすぐに対処できるように
低レベルの敵に、眼や感覚を慣らさないように
いや、それはねえな単に年のせいなんじゃねぇの長時間の闘いだと、腰が痛むんだと思うぜ、あいつ
工藤父が、茶化して言う
でも、この状況まずいわねあんまり時間が掛かると、さすがのバービーちゃんでも分が悪いかもね
ネコさんが、心配そうに言う
ずっと、あんなスピードで躱し続けられないでしょう幾ら、あの子でも
画面の中では、バービーさんがひたすらナイフの切っ先と銃弾を躱し続けている
もう5分近く一度も止まらずに、ハイ・スピードで動き続けている
馬鹿なこと言うんじゃねぇ敵が一流の処刑人なら、バービーは超一流の警護人だぜあいつのことだもう、次の手は考えているよ
工藤父は、バービーさんの逆襲を信じている
あはっはぁなかなかやるわねっあんたたち、コンビネーションと集中力は褒めてあげるわ5人で相当、訓練したみたいねでも
バービーさんの眼が、キラッと光る
こういう事態は、想定している
またナイフの男が、ズバッとバービーさんに斬り付ける
ギリギリで身を躱す、バービーさん
そこへ銃撃
これも避ける
最初のナイフの男が、ズッコケた
見るとバービーさんが、釣り竿で男の足を釣っている
身を躱す時に、男の足に針を引っ掛けていたんだ
ほらコンビネーションが崩れた
転んだ男の首に、ガキッっと蹴りを入れるバービーさん
悶絶してブッ飛ぶ男
はい、1人減ったぁぁッッ
ロミオ・モンタギューが、英語で何か指示する
拳銃の男が1人自分の銃をロミオ・モンタギューに投げて渡す
それから、腰のコンバット・ナイフを引き抜く
ナイフが2人に、ピストルが2人ロミオ・モンタギューは2丁拳銃
すぐにフォーメーションが、4人体勢に移行する
なるほど、メンバーが欠けた場合のコンビネーションも訓練済みってことね
苦笑しながら、再び敵の攻撃を躱していくバービーさん
大分、体力が消耗してきている
酷く汗をかいて息も荒い
うっひぃこのままじゃ、こっちがヤバいね
バービーさん、援護しますっ
番場さんが、そう言うが
冗談っあんたのトロい動きじゃ、こいつら2人のコンビネーションでもやられちゃうよっ
バービーさんは、叫ぶ
確かに長くて重いフレイルを振り回しながらじゃ、この敵のスピードには付いていけないだろう
あんたは、そこでしっかり見てなっいいわねっ
でも、バービーさんっ
姐さんの言う通りにするんだ番場ぁっ
ルビーさんが叫ぶ
姐さんが見てろって言ったら、言われた通りに見ているんだよっ
ルビーさんは、自動小銃のマガジンを交換している
今は流れ弾が当たる可能性があるから撃てないが
いつでも、形勢を逆転するチャンスは来ると信じているのだろう
とついに、バービーさんが足をもつれさせて、転びそうになる
バ、バービーさん
っていうのは、嘘ーんっ
バービーさんは、床に倒れる寸前にクルッと回転し接近してきたナイフの男に、何かを叩き付けるッ
ウガァァッ
それは黒竿の先の毒針か
悶絶して倒れるナイフの男
はいこれでさらに1人減った
残る敵は3人
バービーさんは、ニコッと微笑むがすでにふらふらの状態だ
ロミオ・モンタギューが、部下たちにまた何か命ずる
ピストル組の2人が銃をホルスターにしまう
そしてナイフを引き抜く
そろそろ残弾が少なくなってきたから、全員ナイフってことね
はぁはぁと肩で息をしながらバービーさんは言う
いいんじゃない銃が無い方が、あたしも助かるわ
バービーさんも黒竿を投げ捨て拳を握りしめる
ピストル無しなら、あたしも出ます
と、番場さんがフレイルを片手に、隠れていた物影から飛び出そうとする
ロミオ・モンタギューたちナイフの3人が、ササッと後退し
同時に、誰もいないはずの物影からマシンガンを抱えた男が2人飛び出して来る
バービーさんも、番場さんも撃たれるッツ
ビカッボムッボムッ
マシンガンの男たちの足下で激しい閃光と爆発音が起きる
ドゥガガガガガガッ
突然の目映い光に思わず足を止めたマシンガンの男たちを、ルビーさんが自動小銃の斉射で薙ぎ払う
同時に、バービーさんはロミオ・モンタギューの頭に回し蹴りを叩き込んでいた
ウグゥァァ
続いて、残りの2人も閃光に眼が眩んでいるうちに、急所に鉄拳を叩き込む
は、早い
さっきまでの動きよりさらに加速している
はいさっ
倒れたマシンガンの男2人にもバービーさんは、手裏剣を打ち込んだ
ウガァッ
ウゲェェ
悶絶する男たち
この反応は手裏剣にも、即効性の毒が塗ってあるのか
バービーさんは、敵が全員沈黙したのを確認すると床に四つん這いになる
ルビーちゃん、グッジョブよ
バービーさぁん
飛び出して来る、番場さん
ルビーさんも銃を抱えたまま、ゆっくりと立ち上がる
どうせボディアーマーだの、防弾チョッキだの着込んでいることは判っていましたからより打撃力の強いゴム弾にしといて正解でしたね
そうか、実弾の銃撃じゃ確実に相手を倒せないと思ったから
ルビーさんは、相手を打ち倒すことを優先してそういうタイプのゴム弾に弾倉を換えていたのか
そして、それにバービーさんは気付いていたから
倒れたマシンガンの男たちのトドメに毒手裏剣を打ち込んだ
うんルビーちゃんが、引っ繰り返してくれたから助かったわ
バービーさんは、まだ立ち上がれないでいる
あの突然床がピカッてなったのは
番場さんが、ルビーさんに尋ねる
ああ、どうせ伏兵がいるのは判っていたからね無線式の閃光地雷を仕掛けておいたんだ
えいつの間に
ルビーさんが苦笑する
番場ちゃんに気付かれないように、こっそりさ
えー、何であたしには教えてくれなかったんですぅ
だって番場ちゃんに教えると、敵の前でも平然とあそこの地雷を使いましょうとか言い出しそうだったから
むぅそんなことしないですよっあたしっ
ふーん、そう
ジトッとした眼で、ルビーさんは番場さんを見る
ええっと言っちゃうかもしれませんねあたし
顔を赤くして反省する番場さん
でも何で、敵に伏兵がいるって判ったんですか
そりゃあ判るわよプロだもの
あいつらプロの処刑人のくせに、真っ正面から攻めてきたでしょまあ、あたしたちを舐めてたってこともあるんだろうけれど本物のプロには、あるまじき行動だったわ
番場ちゃん、覚えておいて戦場で、一か八かの勝負を仕掛けて来るのは、素人だけなんだよ本物のプロは、自分たちが圧倒的に優位な状況を、何としても作ろうとする卑怯で上等アリンコ一匹潰すのに、戦車を持ち出すんだよオーバーキルでいいから、絶対に自分たちは負けない体勢を作ろうとする
最初は素人のロシア人の中に、プロの自分たちを隠しておいてこっちを油断させようとしたろそれと思想はおんなしさピストルを見せておいて、それ以上の強力な武器は無いって、あたしたちに思い込ませようとするそんで、残弾なくなってきたからって、銃をしまうだから、さっきの番場ちゃんは、もうこれで銃撃は無いって信じて、思わず、外へ飛び出したんだろそこへマシンガンを持った伏兵が飛び込んで来る実に卑怯で、よく考え込んである手だと思うよ
最初の5人のチームが、丸まる囮だったんだ
ただ、この作戦の場合使えるやつを前に出さないといけないからねあたしと直接闘った5人は、みんなそれなりの戦闘能力の持ち主だったけどマシンガン担当の2人は、戦闘経験の浅い子だったんだと思うよだから、閃光地雷にも引っ掛かってくれたし、毒手裏剣の一撃で倒せた
敵の指揮官が、伏兵の方にもそれなりの実力者を配していたら飛び出しちゃった番場ちゃんは、穴だらけになってたかもしれないですよねぇ
そんなぁ怖いこと言わないで下さいよぉっ、ルビーさぁん
まあ、その辺は向こうさんも人材不足って言うか指揮官が出たがりタイプだったんでしょうね
バービーさんは、そう言った
とにかく番場ちゃんは、まだまだ半人前ってこといいわね、一人前になるまでは、あたしたちから卒業させてあげないからねっ
はいっこれからも、ご指導下さいっバービーさんルビーさんっ
素直な番場さんが、2人の姐さんに頭を下げる
あんなこと言っちゃってさ一人前にして、手放す気なんて無いくせに
バンバルビーの3人をモニターで眺めながら、ネコさんが言う
そうよバービーもルビーも、番場ちゃんみたいな素直な子を育てるのが大好きなのよでも、一人前にして独り立ちはさせないの良い男性と出会わせて、寿引退させるのよいつも番場ちゃんは、まだ若いからもう2、3年は、今のままのチームだけれど
番場ちゃんの前の子は、今、どうしている確かガンちゃんだっけ
工藤父が、ネコさんに尋ねる
そうよその頃は、ガンバルビー3だったからガンちゃんは、今、山梨のぶどう農家の奥さんよお正月に年賀状貰ったから
ガンちゃんの前は、今みたいなコードネームも名乗ってないでおんな組てチーム名だったわよね
闘魂3銃士じゃなかったけ
それは、さらにその前
3銃士なのに、4人いた頃もあったよなあ
そうそう新人2人入れてね
そもそも、バービーとルビーが最初に組んだ当初は2人チームだったろう
ああ、最初は鈴々《リンリン》と蘭々《ランラン》って名乗ってわそう言えば
それから、新人が1人入ってきて
そうそう、乾々《カンカン》ちゃんね
リンリン、ランラン、カンカン
ルビーと反りが合わなくて、すぐに辞めちゃった子もいたろ
いっぱいいるわよ飛々《フェイフェイ》と童々《トントン》でしょ悠々《ユウユウ》っていう子も居た気がする
いつからあいつバービーって名乗り出したんだっけ
闘魂3銃士の時からよバービー、ルビー、グレートムタの3人コンビね
うん、人に歴史ありだな
麗華が、暗い顔をしている
わたくし、バービーさんにチームに誘われたことがあるんですけれど
ああ、それはあんたが素直でからかい甲斐のある子だって思ったんじゃないの
ネコさんは、笑って言った
からかい甲斐がありますか、わたくし
でもさあ、バービーちゃんは本当に素質のある子しか選ばないからあの人に認められたってことは、胸を張っていいことだと思うよ
麗華は、複雑な表情だ
素質を認められたって麗華自身は、香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートで
すでに一人前の警護人のつもりなんだから
わたくしバービーさんには、半人前に見えているんですねぇ
昔の麗華なら、激しく反発しただろうが
今の麗華は、素直に自分の未熟を認める
麗華も変わってきている
これでシザーリオ・ヴァイオラの本隊は、20人から7人減って13人か
工藤父が、計算する
って言っても、シザーリオ・ヴァイオラ本人とロレンザッチョ・バンディーニには、大した戦闘能力は無いだろうから気を付けなきゃいけないのは11人だけだな
工藤ちゃんでも、もう1枚の大看板のジュリアーノ・ジェンカが残っているし今のロミオ・モンタギューの処刑人チーム並みに訓練された凄腕が隠れていると思うわよ
ネコさんは、そう言う
ま、そうだろうな相手は、ロサンゼルスで名高い犯罪組織だとんでもねぇ隠し球が出て来る可能性もあるな
本当にオレが知る限りの、男のシザーリオ・ヴァイオラは、馬鹿で品の無いヘンタイ親父でしかないのに
ヴァイオラの組織の人間はミス・コーデリアたちといい、ロミオ・モンタギューのチームといい一流の処刑人が揃っている
このギャップは何なんだ
いえ何でこいつら、男のヴァイオラみたいな小悪党を組織のトップに掲げているんだろうって、疑問に思うんです
やっぱり、男のヴァイオラは見せ掛けだけのボスなんだと思うよ
前のダダドムゥさんとの戦闘の時だって部隊指揮は、ロレンザッチョ・バンディーニがしていたしね
誰も男のヴァイオラに従っていない
それなら何で、みんな日本へやって来たんだ
男のヴァイオラが来日したのは寧さんへの個人的な憎しみからでは無いのか
とにかくバービーは、休ませないとな
オレの心の中に渦巻く疑念とは関係無く工藤父は言った
画面の中のバービーさんは、まだへたり込んでいる
トップスピードを、あれだけ長く維持していたのは久しぶりでしょうしょうがないわよ
年なんだよ年
工藤父は、そう言って笑う
だが、こうなったら仕方ねぇヴァイオラの本隊との決戦は、オレが下に降りて直接指揮を執るしかねぇなここはネコに任すよ
残りは2つの部隊だけだ
上の階に向かっている、囮の部隊と
下の階へ向かうヴァイオラの本隊
さあてクライマックスだぜ
木曜です
遅刻ギリなので、もう出ます
327.トランスフォーメーション
今、手が空いているやつは何人いる
そうだね交代で休憩させてたのが、2チームいるよカップスとカーナビーズそれから、8階の制圧が終わったから、ジム・ボタンとエマのコンビ、タケシ・ハンター、タケシマ・タケヒデと中年探偵団も動かせるよチームフレンズのポールとミッシェルもいるね
ネコさんは、全員の配置状況を見て即答する
タケシ・ハンターはいいあいつは、接近戦しかできないからなカップスは、メンバーの脱落者はいないのか
コーちゃんとデイブは健在マーちゃんとマモルは、途中で逃げたみたい
ミッキーとケネスは
休憩所に居るから、呼べば来ると思うわ
じゃあ、呼んでくれあいつら、腕は良いんだがすぐにやる気をなくすのが困るマモルの代わりには、カーナビーズからモッチンを入れてくれ
8階のやつらは7-14のルートで上がらせろ10階のD-7ゾーンに集合だ
そこからだと、ヴァイオラの本隊の居るルートには入れないわよ
谷沢のオッサンに連絡して、D-7の防火壁だけ開けさせればいいんじゃねぇか
なるほどそれなら、近道になるわね
迷路状の館内マップを検討しながら、2人はそんな会話をしている
下手に防火壁を上げれば4人の潜入者が、ヴァイオラたちと合流してしまうかもしれませんが
関さんが、苦言を呈す
確かに、この厳しい状況ならミス・コーデリアたちがヴァイオラたちの救援に向かう可能性は高いと思う
おいおい、オレたちが10人以上集結するんだぞその潜入チームが相当な腕前だとしても、簡単にはやられねぇぞそれに、D-7の防火壁は、オレたちが潜り抜ける時だけ、一瞬開けて貰えば充分だオレたちが通ったら、また閉めさせるさ谷沢のオッサンの居る本部なら、そういうコントロールは自由自在なんだぜ
工藤父は、そう言う
とにかく、オレは現場へ向かうからな谷沢のオッサンへの連絡は、ネコ、任したぞ
ええ、谷沢さんトイレから戻ってきているかしら
さっき本部に連絡した時谷沢チーフは、席を外していた
あたしたちも、行きましょうか