黒森の家は一夫多妻と聞きましたが皆さん、お兄様の奥様でいらっしゃるのですか
オレは家族一人一人の顔を見る
違うよここにはオレのお姉さんと、オレの女の両方がいるんだ
まずはミナホ姉さんを示す
この人がミナホ姉さんオレたち全員の姉さんだよ
黒森御名穂ですようこそ、瑠璃子さん
ミナホ姉さんに、瑠璃子は一礼する
瑠璃子ですよろしくお願い致します
それから、マルゴさんオレの姉さんだよ
マルゴさんは、クスッと微笑む
いいのあたしも姉さんで
はい頭が良くって強い、とっても頼りになる姉さんなんだ
ああ、よろしく歓迎するよ
次が寧さんオレの姉さんだよ
と、オレが言うとマナが
ちょっと待って寧さんはお兄ちゃんの女でしょ
マナ見えてるぞ
いやぁん
閣下の視線を感じてマナが胸を隠す
今度は股間が丸見えだ
しばらく、そこで土下座してろ
いいからっ
土下座していた方が、恥ずかしいところを香月老人に見られないと思ったらしい
マナは再び、土下座の体勢へ
うふふっあたしは、寧っヨッちゃんのお姉ちゃんだよっ
本当に嬉しそうに、寧さんは言った
姉と名乗れることが、嬉しくてしょうがないようだ
瑠璃子です
うーんと、るーちゃんるーちゃんがいいねっ
寧さんは、家族に自分だけの仇名を付けるのが好きなんだ
まあ、そうでございますか
だから、るーちゃんて呼ぶからねっ
さてと姉の部は、これで終了だ
続いてオレの女だけれど
オレは克子姉を示す
この人が克子姉
よろしくお願いしますわ瑠璃子さん
克子姉は、にっこりと微笑んでくれた
克子姉は、とっても料理が巧いんだ
まあ瑠璃子にも教えて下さいませ
いいわよっ一緒に、美味しいものをいっぱい作りましょうね
渚は、もう知っているよね
はい、よろしくお願い致します
こちらこそ、よろしく
渚も微笑む
あれ、真緒ちゃんはどこに行ったんだろう
ぬふふふっ黒子ちゃん、みーつけたっ
しーっこっちに来ないで
丸テーブルに掛けられた白いテーブルクロスを、真緒ちゃんが捲っている
中には黄色と黒の頭の悪そうなドレスを着た女の、お尻が見える
あ、姿が見えないと思ったら
そんなところに隠れていたのかよ雪乃
黒子ちゃん、黒子ちゃん、黒子ちゃーんっ
雪乃に絡んでいく、真緒ちゃん
騒がないでってば、あたし隠れているんだからっ
いやもう隠れていないだろ
あの小さいのがあたしの娘の真緒あの子も、あなたの妹として、可愛がってくれる
渚が、瑠璃子に言った
瑠璃子は、素直にそう言ってくれた
ところでお兄様
黃縞黒子さんはお兄様とは関係ない方なのですよね
真緒ちゃんにぺしぺし叩かれて、テーブルの下で右往左往している雪乃
何か馬鹿みたいだぞ、お前
関係無いわけじゃないんだけどオレの女ではない
では、どういうご関係なんです
瑠璃子が小首をかしげる
うんと、それは話すと長くなるからまた今度にしよう家族の紹介は、まだ終わってないし
はい、そうでございました
オレはメグとマナを示す
で、メグとマナもオレの女だよ
よろしくお願い致しますわ
頭を下げる瑠璃子に合わせてメグも頭を下げる
マナは、土下座したまんまだ
メグはまだ暗い顔をしている
大丈夫です恵美お姉様
瑠璃子の言葉に、メグがという顔をする
わたくしは、恵美お姉様からお兄様を奪ったりは致しませんお兄様の愛情は、家族全員に注がれていますから
ニコニコと微笑む瑠璃子
ですから恵美お姉様も、お兄様を独り占めなさらないで下さいね
瑠璃子は、性知識だけが極端に乏しいのであって
人としての感受性には優れている
優しくて、気品があって、人の気持ちの判る女の子だ
メグの不満に、すぐに気が付いたらしい
わたくしは、恵美お姉様の妹ですどうか、よろしくご指導下さいませ
自ら、メグの下になってみせる瑠璃子
え、ええよろしくお願いします
メグも姿勢を正して、瑠璃子に一礼をする
あたしも、よろしくお願いしまーす
マナは土下座したまま、そう言った
こいつには、上品さというものを教えてやって欲しい
オレは、瑠璃子にそう言った
そうですねマナさんは、品格を身に付ければもっともっと魅力的な女性になりますものね
えっ、ホント瑠璃子お姉ちゃん
マナが、頭を上げる
ああ、本当だだから瑠璃子に色々と教わるんだぞ、マナ
うん、判ったお兄ちゃん
ニコッと微笑むマナ
おい見えているぞ
身体を起こしたから桜色の乳首も局部も、オレに丸見えだ
見せてるんだよお兄ちゃんだもんっ
確かにオレと瑠璃子が前にいるから、閣下には見えないけれど
じゃあ、あたしは瑠璃子お姉ちゃんにエッチなこと、いーっぱい教えてあげるねっ
エッチなことですか
瑠璃子は、エッチという言葉の意味も知らない
セックスのことだよっ
赤くなる瑠璃子
こらっマナちゃん、あなただってまだ教えてもらう方でしょ
克子姉が、マナに突っ込む
そういうのはあたしと渚が伝授しますっ
克子姉が、胸を張ってそう言う
そうそうあたしも教えてあげるからさっ
おいおい、寧さん
あなたは処女でしょうが
さてこれでみんな紹介したよね
瑠璃子も、ニコニコしている
皆さんがわたくしの家族になって下さるなんて、瑠璃子は本当に幸せですっ
可憐な美少女にそう言って貰うととても嬉しい
みんなも、嬉しそうな顔をしている
メグだけ、まだ複雑な表情だけど
うむ私も幸せじゃ
閣下も、楽しそうだった
ところでヨッちゃん
寧さんが言う
あたしたちを、るーちゃんに紹介してくれたのはいいんだけどさ
そろそろ、あたしたちにもその人たちを紹介してくれる
寧さんの言葉にオレは、背後を振り返る
自分の紹介される番を待って、ニコニコしている麗華と
すっかり暗い顔になっている、美子さんと
さらに、どんよりとした顔の関さんが居た
登場人物が多すぎる
色々、大変です
結局コミケは行かれませんでした
マケドニア国旗だけ欲しかったのですが
まあ、仕方無い
260.家族の時間・1 (戦闘チーム)
ええっと、まずこの人は
にっこりと微笑んで麗華が前に出る
香月セキュリティ・サービスの藤宮さんだよねっ
そうかメグとマナは、劇場の楽屋で会っているんだっけ
いえ今はもう、ただの警護人ではありませんっ
意気揚々と、麗華が言う
わたくし藤宮麗華は、みなさんの家族にしていただきましたっこれからは、わたくしを親しみを込めて麗華お姉ちゃんとお呼び下さいませっ
シーンとなる部屋の中
麗華は本当に嬉しそうだ
家族が欲しかったんだな
その気持ちは良く判る
あのどういうことなのかしら
絶句している一堂の中で、ミナホ姉さんがオレに尋ねた
さて何と説明しよう
あたしが勧誘しましたあたしたちの家族になりませんかと
みすずが、オレの代わりにみんなに答える
はいそれでわたくし、お誘いを受けることに致しました家族になりますみなさんは、わたくしの妹ですわたくしは、全身全霊を懸けて家族のために働きますっ
そんな麗華にミナホ姉さんは
あたしは、あなたよりも年上です
存じております黒森御名穂様どうぞ、お姉様とお呼びさせて下さい
スッと頭を下げる麗華
トップ・エリートの警護人なんだ黒い森についてのファイルは熟知している
彼女は、竹を割ったような真っ直ぐな性格の人ですこういう風に言ってくれた以上、絶対にオレたちを裏切ることはありません
オレは、麗華を信じている
彼女のことは、私も保証する類い希な戦闘力を持った人材だこれからの私たちにとって、有益な人材になってくれるだろう
閣下も、そう言ってくれた
でもあたしたちの家族になるということは、彼女も彼の女になるのですか
克子姉の問い掛けにメグがビクッと反応する
はい、私は構いません純潔だって捧げさせていただきますし、子供だってお望みでしたら何人でも産みますっ
うんと麗華
麗華はちょっと欠けているところがあるんだよ
オレがみんなに説明しようとするとメグが
麗華
そんなんで一々反応するな
麗華は、オレたちの家族になるそれはもう決定だただ、麗華は家族が欲しいだけの人なんだ男女の関係とか、恋愛とかそういうことは全く判っていない無頓着なまま、一人で生きてきた人なんだよ
オレは、一生懸命説明する
だから麗華を抱くとか、子供を作るとか、そういうことは今は保留にするそうしようと思っているんだ
わたくしは一向に構いませんが家族にしていただいた以上は、この身はすでに主様に捧げておりますし
麗華は、平然とそう言う
メグのどんより感が増している
男装の麗人、麗華もまた相当な美人だしなあ
しかも、大人の色香を持っている
なるほど彼女に欠けている部分があるっていう意味は、よく判ったよ
マルゴさんが口を開く
つまり彼女は、男女間のセックスを生殖行為以上には考えていないんだね
うんそういうことなんだろう
ただ、男の種を貰う
あるいは男の性欲を解消させてやるだけの行為だとしか認識していない
だから気安く、オレのセックス・パートナーになることを了承してしまった
麗華さんは彼のことを、どう思っていらっしゃるんです
どうって立派な主様だと思っていますわたくしたち家族の要になっていらっしゃる尊敬に値する人物だと思っておりますわ
彼のこと好き
克子姉の問い掛けに、麗華は少し考える
わたくしは、これまで男性との人間関係が、とても疎い女でございましたから正直、よく判りませんただ、この様な出会いをしたのは運命だと感じています
こりゃ、相当根が深いね
マルゴさんが、ククッと微笑む
ヨッちゃんのこと、好きかどうかはよく判らないけれど身も心も捧げるということなのっ
はい武士に二言はございません
いや武士じゃ無いだろ
英国紳士マニアの男装撲殺剣士でしょ
麗華は
ですから、オレは麗華がちゃんと、オレのことを好きになってくれるまでは麗華とはしないつもりなんだ
オレはみんなに告げた
そうじゃないと麗華とは、上手くやっていけないような気がするんだよ
主様は、ナイーブなお方なのですねわたくしが構わないと言っているのですから、好きになさって下さってよろしいのに
そうはいかない
あたしは彼女とは、さっさとセックスしてしまった方が良いと思うよ
失礼だけど麗華さんは、お幾つですか
22歳ですあなたは
あたしは19歳です
じゃあ、麗華さんじゃなくって麗華お姉ちゃんと呼んでっ
オーケー、麗華お姉さんあたしのことは、マルゴって呼び捨てにしてくれて構わないから
判ったわ、マルゴちゃん
判ってないじゃん麗華
とにかく麗華お姉さんは、もう22歳だよ今更、男女間の恋愛とはなんて中学生女子みたいなところから始めるのは無理があると思うよ
そうね、あたしもそう思うわこれだけ素敵なプロポーションをしていらっしゃるんだから実際のセックスを体験してみて、男女の性愛の素晴らしさを理解して貰った方が早いと思うわ
克子姉もそう言う
でも、それじゃあセックスに溺れるだけの、偏った人間になってしまうんじゃないのかな
雪乃のように
あなたが相手なんですもの大丈夫よ
オレいや、オレ、そんなことできないよ
オレには自信はない
何を言っているのよあなた、あたしに何をしたのか忘れちゃったの
娼婦にさせられて、自暴自棄になってセックスの快楽に溺れることだけに陥ってしまっていたあたしを救い出してくれたのはあなたじゃない
そうよあなたが、優しく温かいセックスであたしを包んでくれたからあたしは、あの暗い海から出ることができたの
克子姉が、優しく微笑む
もっと自分に自信を持ちなさい
そうだよ、お兄ちゃんはマナのことだってガンガン、エッチして助けてくれたじゃない
裸のマナが、土下座から顔を上げてオレに言う
マナなんて、最初はレイプでエッチに対して凄く恐怖感があったのにお兄ちゃんが、何度も何度も一生懸命してくれたから、今はエッチ大好きだもんっもちろん、お兄ちゃんとしかしないよお兄ちゃんじゃないと、マナ、気持ち良くなれないもんっ
だから麗華お姉さんとも、ヤっちゃえばいいんだよ大丈夫だって、30回ぐらい、お腹の中に出しててあげれば、そのお姉さんもお兄ちゃんのこと大好きになるから
マナが笑って、そう言った
うんうん、ヨッちゃん、実践あるのみだよっ
なるほどそういう考えも、確かに一理ありますね
みすずも、うんうんと頷いている
じゃあ、やりましょう主様っ
いやいやいや麗華
待ってちょっと考えさせて
オレにも考える時間が欲しい
つーか、メグがますます暗い顔になっているし
とにかく今はまだ、みんなに紹介していない人がいるから
うん関さんと美子さんが残っている
ああそうでございましたね
麗華は、さっぱりとした性格だから無理強いはしない
こういうところは助かるんだけれど
えっとこちらは、関さん
あっどうも関ですぅぅ
関さんは、すっかり暗ーくなっている
まさかこの人もあたしたちの家族になるの
ミナホ姉さんが、オレをジトッと見る
いえ関さんは、まだ家族じゃないよ
まだ
あメグが反応した
あの関さんも、みすずがお誘い致しましたっでも、関さんは、あたしたちの家族に加わるかどうかは保留なさっていますとりあえずは仲間になって下さることになりました
はい仲間になりますぅぅ
半泣きの顔で、関さんはそう答えた
確か劇場で、香月さんのすぐ側でガードしていた人だよね
マルゴさんが、颯爽としていたころの関さんを思い出してくれた
はい、関さんはお祖父様の3人しかいない直衛警護人の1人です
みすずが、説明してくれた
あたしたちの戦力になってくれるって期待してもいいんだよね
マルゴさんの言葉に、関さんは
ええ、こうなったら、やってやるわよっこのわたくしが仲間になった以上は、あなたたち大船に乗ったつもりで安心なさいねっ
半分逆ギレしたみたいな感じで、関さんは喚いた
うん助かるよ麗華お姉さんと関さんこれってつまり、香月セキュリティ・サービスの精鋭が2人、あたしたちの陣営に加わってくれたってことだよね
マルゴさんは、嬉しそうだった
これで連携して戦える戦闘要員が4人も要れば、色々なフォーメーションが組めるからね
マルゴさん美智麗華関さん
なるほど戦いの専門家が4人になった
じゃあ、早速連携の確認をしようか
マルゴさんが、麗華たちに言う
ちょっと待ってまさか、指揮はあなたが執るつもり
どんよりしていたはずの関さんが戦闘のことになると、ハッと元通りのきびきびした女性に戻る
そうだけど何か、問題がある
あなたまだ19歳って言ってたじゃないしかも、素人でしょあたしはプロよプロが素人の指揮に従うわけが無いじゃないっ
ふーん、ちなみに関さんはお幾つなんですか
24よ
じゃあ関さんのこともお姉ちゃんて呼ばないといけませんね
もうふざけないでっ
関さんが、マルゴさんに怒りを向ける
主様わたくしは、主様のご判断に従いますマルゴちゃんの指揮下に入った方がいいですか
麗華は、オレに尋ねた
それは麗華自身で判断してくれ
マルゴさんが、信頼できる指揮官かどうかは麗華が自分の眼で判断すべきことだ
そうじゃないと本当の信頼関係は生まれないだろ
心から信頼できる相手で無いと一緒には戦えないだろう
わたくしはどんな方でも別に構わないですけれど
麗華はそう言ってマルゴさんを見た
その眼に侮りが感じられたから
オレは麗華を叱責する
麗華お前、まだ1人で戦っているつもりになっているな
どんな苦境になっても、最後は自分自身の力でどうにかできると思っているんだろう
だからどんな人間が指揮官になっても平気だと言う
本当に苦しくなったら、指揮官なんか無視して麗華個人の力だけで戦うつもりなんだ
それでも、敵に勝てると思っているのだから
麗華は自分の戦闘力に自信があるのだろう
確かに麗華1人だけなら、それで切り抜けられるかもしれないでもな麗華にはもう家族がいるんだ小さい妹たち全員を守るためには警護メンバーの連携は必要だと思わないか
麗華も顔が、真顔になる
それまでの浮ついていた様子が消え元のクールビューティーな麗華に戻る
わたくしが間違っておりましたお許し下さいませ
麗華は、オレに頭を下げる
そして再び、マルゴさんを見る
マルゴちゃんは実戦での指揮経験はあるの
多少は細かいことは、師匠が見てくれたけど
師匠それってもしや
はい恭子・ドスノメッキーが、あたしの師匠です
ハッとなる麗華と関さん
恭子・メッサー
関さんが、恭子さんの異名を呟く
それは恭子・メッサーの所属しているマランドロの作戦だったの
はいマランドロのコロンビアの麻薬カルテル強襲作戦で、あたしも1小隊指揮しました
関さんの質問にマルゴさんは、明瞭に答える
マランドロというのは確か、恭子さんの所属していたブラジルの犯罪組織の名前だったと思う
3年前のティル・ドゥーン作戦に、あなたも参加してたというの
はいあたしは、16歳でしたけれど恭子さんが、実戦を経験する良い機会だっていうから
信じられない
関さんと麗華が、驚きの表情を見せる
恭子のやつがマルゴくんには、指揮官として戦場を俯瞰して見る能力が備わっていると言っておったよ
閣下が2人のプロ警護人に言う
君たちに一番欠けている能力だ
ギロッと香月家当主の眼で、香月老人は二人を見る
君たちは二人とも抜群の戦闘能力を持っているが、客観的に状況を分析する力に欠けている瞬間、瞬間の的確な状況判断ができていない谷沢から、その様に報告を受けている
確かに劇場から、このホテルに来る途中
車に仕掛けられた機器の存在を二人は気付かなかった
先導車の警備員が、敵と入れ替わっていることにだって判っていなかったし
いや、私は別に君たちを責めているわけではない何事にも、人には向き不向きがあるつまり君たちは、純粋な戦闘要員だ適切な指揮官の下で働いてこそ、機能的に能力を発揮することができる
自分では、何も考えるなということですか
閣下の言葉に対して、関さんは不満そうに言う
そうは言わんよでも、関くんはさっきもこいつらに言われたろうちょっと考えすぎる傾向が強いと
うん関さんは、考えすぎて自爆するタイプ
その点麗華くんは、考えずに敵に飛び込む勇気はあるが、余りにも判断力に欠ける
そうだった偽警備員との戦いで、麗華は不用意にオレたちの車から離れすぎていたと思う
もしバンバルビー3のお姉さんたちが助けに来てくれなかったらオレたちは敵に分断されていただろう
一人で孤立した麗華は、それでも自力で敵の包囲から脱出できたかもしれないが
車の中に閉じ込められたオレたちはアウトだ
確かにわたくしたちには、指揮官が必要なことは認めますしかしこの子にその能力があるかどうかは
麗華の言葉にマルゴさんは、フフッと笑う
麗華お姉さんはその重そうなステッキが、メインウェポンですか
はいわたくしは、このステッキで全てを叩き潰します
麗華が答える
ちょっと構えてみてくれませんか
マルゴさんに言われるまま麗華は、撲殺ステッキを構える
剣道で言う中段の構えだ
判りました麗華お姉さんは、正面左側の敵を攻撃するのがお得意みたいですね
わたくしの癖が、判るのですか
構えの姿勢を見れば判りますあたしだったら、お姉さんを襲うのは正面右側からにします
つまり右側に苦手な死角がある
特にこの角度
スッとマルゴさんが、身体を動かす
麗華が一歩も動けないうちにその懐に飛び込む
マルゴちゃん、あなた
ほらこの角度で、タイミングを計って突入すればお姉さんの反応が追いつかなくなるでしょう
マルゴさんが、ニヤッと微笑む
麗華お姉さんは、ずっと独力でトレーニングなさってきたみたいですね手足の左右の筋肉のバランス特にこことこことが良くないんですだから、正面を向いているつもりでも、身体全体が捻れているんです思わぬ角度からの攻撃には、一瞬対応が遅れます
マルゴさんは、説明していく
そ、そう気付かなかったわ
ええ、自分では鏡を見てもなかなか判らないことってありますからあたしは恭子さんと、いつも互いの肉体の状態をチェックし合っています
恭子さんがいない時は、あたしが代わりにやってるよんっ身体のどこをチェックするべきかは、全部恭子さんに教わっているからっ
寧さんが、笑って答えた
オーケイ、筋肉バランスの矯正は、すぐにはできませんからお姉さんの右側に関しては、今日はあたしたちでフォローします
う、うんお願いするわ
麗華は、すっかりマルゴさんの言うなりになっている
次に関さん
マルゴさんの笑みが関さんを射る
関さんの力は、劇場で拝見しました
劇場で、閣下に近付いて来た不穏な人間を関さんは一撃で倒してしまったんだっけ
関さんは、スピードは素晴らしいですがパワーが足りないんですよね
だから的確に相手の急所を突くことで、確実に敵を倒している
フフンと笑ってマルゴさんが関さんを見る
そそうよ
ですが今夜の相手は、プロです関さんのスピードでも、確実に敵の急所に打ち込むことはできないかもしれません関さんのパワーでは、一撃で相手を倒すことができなければ、自分がやられます今夜は接近戦は避けて下さい
じゃあ、あたしにどうやって闘えっていうのよ
関さんが、ムッとしてマルゴさんを睨む
関さんあなた、本当は射撃の方がお得意でしょう
ニッと笑うマルゴさんに関さんは、黙り込む
その通りだ彼女は留学時代に、徹底的に射撃を仕込まれている
閣下
もう仲間だろう隠し事は無しにした方がいいだろう
香月老人の言葉に関さんは
愛用の銃はお持ちですか
ちゃんと持って来ているわよここに
関さんは上着をポンと叩く
その下に、銃を隠しているらしい
では、銃によるバックアップをお願いします決して、あたしたちからは離れない位置から敵と距離を取るようにして下さい
予備の弾倉は2本しか持ってないわよ
充分です敵を威嚇していただくだけでも、効果がありますから
関さんにマルゴさんは微笑み掛ける
マルゴお姉様わたくしは、いかがいたしましょう
スッと美智が、前に出る
こうなると接近戦の麗華お姉さんが前衛で、銃を持っている関さんが直衛のガードあたしと美智さんで、フォローするのが一番良いフォーメーションなんだけれど美智さんには、ギリギリまで死んだフリをしていて欲しいんだよね
死んだフリですか
ああ君はせっかく、みすずさんたちと同じ制服を着ているし小柄で可愛い子だから、美智さんが警護役だとは敵は気付かないと思うんだよだから、みんなと一緒にいて、ギリギリの状況に陥った時の最後の切り札になって欲しいんだよ
切り札ですか
美智さんが、前面に立って全力で闘いたい気持ちは判るんだけれど今は、家族全員の安全を確保する方が重要だからね
美智も納得してくれた
その代わり敵の接近をあたしたちに知らせて欲しいな美智さんは、あたしたちの中で一番感覚が鋭敏だと思うし特に背後から近寄って来る敵には注意して欲しい
すげえなマルゴさん
あっという間に、戦闘要員の3人を仕切ってしまった
あたしが全体のフォローをするから3人とも、いつでもあたしの位置だけは確認しておいて固まりすぎると、一気に撃滅されちゃうけれど離れすぎて、分断されたら各個撃破されてしまうあたしが見えなくなる場所へは行かないということを徹底的に守って欲しいんだ
マルゴさんが穏やかにそう言う
はあ、判ったわあなたが指揮官よ
関さんが、マルゴさんを認めてくれた
わたくしもマルゴちゃんに従うことに致します
麗華も
ご主人様たちは、わたくしが身体を張ってお守りします
美智もそう言ってくれた
うん戦闘グループの方は、これで安心だな
それならちょっと、実際に身体を動かしてみようか
悪いんだけれど、寧と二人で敵の役をやってくれないかな
オレは、軽く了承した
それじゃあ、あっち空いている空間で
マルゴさんが、そう言った瞬間
みすずが大きな声で言った
まだ紹介されていない人が残っていますっ
あっいけねえ
マルゴさんと、麗華、関さんの関係に気を取られてすっかり忘れていた
振り向くと美子さんが
どうにも暗い顔でうつむいていた
ご、ごめんつい、話に夢中になってしまって
オレの言葉に、美子さんは
いいんですよわたくしなんて皆様のお荷物でございますから
本日、父の手術が行われました
心臓のカテーテル・アブレーションという手術でした
無事に手術は終わり、術後の様子も大丈夫な様です
メスで切らないで、血管の中にカテーテルという機械を通して行われる手術なので、特に大きな外傷も残らず
今夜の容態が良ければ、明日には退院できるそうです
皆様には、ご心配いただきまして本当にありがとうございます
感謝致します
手術後は、4時間ほど身体を動かしてはいけないということだったのでずっと、病室で付き添っていました
たまたま夏休み期間だったのが私だけなので、二人っきりです
老齢の父と二人だけで何時間も過ごさないといけないというのはなかなか大変ですね
何か、国際情勢とか意味も無く話していました
他に話ができる共通項が無い
父は昔の私との思い出とかは、すっかり忘れていますので
小学生の時に、一緒に007の映画を観に行ったねえ
覚えていない
オクトパシーだよ
日比谷だな
覚えているじゃん
映画館は覚えているがお前、いたっけ
父は手術も意識を失うことなくむしろ、お医者さんからこれ痛くないですかとか聞かれながら、手術されていたそうです
しかし、心臓を弄くられながらこれ痛くないですかとか
私も、以前入院を経験したことがあるので、判りますが
自分の死というものを真摯に見つめなくてはいけない時間を過ごした後はしばらく、心が日常に戻って来ません
退院しても、これからしばらくは大変だなと覚悟しています
色々、大変ですが
261.家族の時間・2 (立食パーティ)
マルゴさんと麗華&関さんが、上手くいくか心配で
ついつい、美子さんのことを忘れてしまった
えっと瑠璃子のお付きをして下さっている、小森美子さんです
恐る恐るオレは、みんなに美子さんを紹介する
小森美子ですお世話になります
美子さんは暗い顔で、みんなに挨拶した
あれっ美子さんは家族にならないのっ
マナが、余計なことを言う
はいそれは、その
美子さんは家族になりたいと言ってくれた
しかし、それはあくまでも瑠璃子と離れたくないという思いからだ
オレや黒森の家族のことを受け入れているわけではない
だから、瑠璃子もみすずも美子さんの家族入りは保留にした
関さんの場合は、あくまでも関さん本人の意志で保留になっているけれど
美子さんの場合は美子さんの意志とは関係無く、保留になっている
だからこの問題はとってもデリケートだ
どうして美子さんも家族になろうよっマナ、美子さんがお姉さんになってくれたら、とっても嬉しいよっ
やれやれ
オレが、割って入る
お前はしばらく黙って土下座していてくれ
えー、何でよっお兄ちゃん何か理由があるのっもし、そうならマナにも教えてよっ
マナは、周りの空気を読む
うつむく美子さんや、困っている瑠璃子の様子から秘密の存在に気付く
美子さんが本当は、香月老人の長男の娘みすずや瑠璃子の従姉であることは秘密になっている
ここにいる家族たちにもオレの口から言うことはできない
そんなことをしたらオレは美子さんからの信用を失うだろう
今の美子さんは、まだ瑠璃子のお付きとして選ばれただけの、香月家の一家臣の娘として、普通に生きることもできる
香月の血筋であることがバレたらみすずや瑠璃子と同じ様に、後継者争いの渦の中に巻き込まれるだろう
だから閣下も、みすずも、瑠璃子も美子さんに、自分で将来を選択するための猶予を与えようとしている
今は何も言うべきではない
そんな態度のマナには何も教えられないよ
オレははっきりと言った
どうして家族でしょ
マナが、キッとしてオレを見る
美子さんは、まだ家族じゃないって言っているだろそれに
誰にだって、自分1人でじっくり考えて答えを出さないといけないことがあるだろオレは、家族の内の誰かが問題を抱えていて、オレに相談したいっていうのなら、喜んで話を聞くよ何時間だって、一緒に考えるでも、オレの方からお前、悩んでいることをオレに話せなんて、相談の押し売りはしないそういうのは、間違っていると思うんだ
何で何でマナだったら、悩んでいる人がいたら、どんどん話し掛けるよ自分から言い出しにくい子だって、いるんだしさ積極的に話し掛けたって、いいじゃないっ
マナはそう言う
マナちゃんそれじゃ、ダメなんだよ
マルゴさんがマナに言った
それじゃあマナちゃんに話し掛けて貰った方は、いつまでも強くなれないマナちゃんの優しさに縋るだけの弱い子のままになってしまうよ
別にいいじゃん家族なんだし
家族だからこそそれじゃあ、ダメなんだよ
はっきりとマルゴさんが、言った
麗華お姉さんも、よく聞いてあなたが、一番妹たちを甘やかしそうだから
はい、教えて下さい
戦闘チームの結成の過程で、マルゴさんを認めたのだろう
麗華は、素直にマルゴさんの話を聞く
家族って人の集まりだよねだったら、なるべく強い人たちの集まりになるようにしたいと思わない弱い人たちの集まりは、悲惨だよ特に心の弱い人たちの集団は、世間の迷惑にしかならないから
マルゴさんが穏やかに話していく
マナちゃん人にはね、自分で決めなきゃいけないこと自分でやらないといけないことが、たくさんあるんだよそれを、他の人に決めてもらったり、代わりにやってもらったりしてはいけないそんなんじゃ、いつまで経っても一人前の人間には成れないからね
でも家族じゃん悩んでいることがあるのなら、助けてあげたいじゃん
寂しそうにマナが言う
マルゴさんは、ニコッと微笑み
克子さんあなたは家族の誰かが苦しんでいたら、どうしますか
美味しい物を作るわそして、一緒に食べるわ
克子姉は、答えた
寧は
あたしはとにかく笑わすよくすぐってでも、笑わせる笑うと気持ちが楽になるもんっ
寧さんは、そう答えた
あたしは一緒にスポーツでもするなドライブもいいかもね
マルゴさんは、マナを見て微笑む
あたしたちは家族だだから、いつも寄り添ってあげることはできるというか寄り添うことしかできないでも、それが大事なんだと思う
苦しい時に、側に居てくれるだけで充分だ
それ以上は要らない
うつむくマナ
集まって、寄り添っているから家族なんだだけど、家族1人1人は、自分で自分の人生を決めていかないとね判るよね
オレは、しゃがんでマナと視線を合わす
思ったことをすぐに口に出すのはお前の悪いところだよ自分の意見を、物怖じせずにハキハキ言えるのはいいことだけれど、お前は相手の人の気持ちとかがまだよく判っていないのに平気で喋るだろそういうのは、相手に失礼だぞ
マナの眼を見て、はっきりと言う
そうだよヨッちゃんなんて、余計なことは絶対に言わないじゃんあたしたちの話はよく聞いてくれるし本当に必要な時にしか、自分の意見は話さないでしょ
いや、それはオレ、馬鹿だから何か言われても、瞬間的に言葉が出て来ないんです何か、相手の様子に違和感を感じてもその理由が、すぐに判らないからだから、判るまで様子を見ているしかなくって
それでいいのよダメな人は、違和感を無視して自分の感情だけで話を押し通そうとするわそうでなければ、違和感に反発して余計な言葉を言ったりね何が問題なのか具体的に理解できるまでは、じっくり相手の様子を見るというのは正しいことよ
ミナホ姉さんがそう言ってくれた
判ったあたし、余計なこと言い過ぎたんだね、お兄ちゃん
そうだな美子さんに謝れ
マナは全裸で美子さんに向かって、手を付く
ごめんなさい美子さん
それは心の籠もった全裸土下座だった
美子さんは、困惑している
美子さんマナのこと、許してあげて下さい
許すも何もわたくしは、気にしていません
美子さんは、そう言ってくれるが
いいえマナさんは、美子さんに無礼を働いたんです人の心に土足で侵入するのは、悪いことですちゃんと罰は受けないといけません
そうですねお尻を3回叩きましょう
みすずがオレを見て、ニコッと微笑む
もしや
オレがやるのか
お願い致します、旦那様
お嫌でしたら、わたくしが叩きますが
美智が赤いムチを出す
いや、そんなので叩いたら、マナのお尻が大変なことになるよ
主様、わたくしが叩いてもよろしいですよ
うんと麗華の力だと、骨が砕ける
いいよ、判ったオレがやるから
オレは、マナの後ろに廻り込む
ほら、四つん這いになってお尻を高くしろ
全裸の14歳が尻を高く突き出す
オレの視線からは、肛門も陰部も丸見えだ
罰なんだからな思いっきり叩くのだぞ
閣下が楽しそうに、オレに言う
そう言われた以上は、手加減はしない
力一杯叩いてやる
1回目バシィッ
耐えるマナ
2回目ビシィィッ
ふぅッッ
3回目バシィッッ
あぅッッ
ほーら、これで終わりだ
オレはオレの手形が真っ赤に付いたマナのお尻を擦ってやる
大丈夫か痛いか
平気だよありがとう、お兄ちゃん
赤い顔でマナはオレを見上げた
お兄ちゃんが叩いてくれなかったらマナ、見捨てられたみたいで、悲しかったと思う
そ、そうか
手加減してくれなかったのもマナのことを考えてなんでしょう
いや、特にそういうわけでは無いんだけれど
嘘マナ、お兄ちゃんの愛をいっぱい感じたよ
お尻を叩かれて愛を感じるなんて
マナちゃん彼は普段から、マナちゃんのことをとっても深く愛しているからどんな時でも、普通に愛情の籠もった選択をしてしまうんだよ
でもそうなのか
あなた、罰を与えた後は優しくしてあげるのよそれがルールですからねっ
うんその理屈は、オレにも判る
ほら、マナ
オレはマナの身体を抱いてやる
背中と髪を撫でてやった
お兄ちゃんキスして
唇を重ねるとマナは自分から、オレの舌を求めた
う、羨ましいです
その呟きは美智か
羨ましいのはキスかお尻叩きか
両方なんだろうな美智の場合は
さてマナさんのお仕置きも終わったことですし
みすずが、美子さんを見る
美子さんあなたはまだ、あたしたちの家族ではありませんが
みすずお姉様そこから先は、わたくしから伝えます
瑠璃子がみすずの言葉を遮る
美子
瑠璃子が、美子さんに手を差し伸べる
美子さんが、その手を握る
繋がり合った2人の少女
わたくしは、黒森様に心と身体をお委ねする決心を致しましたしかしだからといって、わたくしとあなたの絆がなくなってしまったわけではありません
15歳の美少女主人が18歳のお付きに言う
これからも、今まで通り私に仕えなさい
それは当然、そう致しますですが
美子さんは、主人の真意が判らず困惑している
瑠璃子は、スッと顔を上げみんなを見る
皆様そういうことでございますから、申し訳ございませんが、美子も関さんの様にわたくしたち家族の仲間として受け入れてはいただけませんか
シンとなる室内
あたしは、構わないわ
最初にミナホ姉さんが、そう言ってくれた
うん仲間でいいんじゃないかな
はい、歓迎します
うん、いいと思うわ
うっふふーんまあ、とりあえずってことだよねっ
いいと思います
メグ元気出せよ
承認致します
美智は、相変わらず表情が固いなあ
わたくしも、歓迎します
麗華
えっ、わたくしはわたくしも、保留にしている立場ですから、いいんじゃないかと思いますけど
私に異論があろうはずが無いだろう何でも、君たちの決定に従うよ
閣下後は
ほら、マナはどう思う
マナは美子さんは、最初っから仲間だよ今更、仲間にするとかしないとかって話は変だと思います
お尻を叩かれても自分の意見を言うことは止めない
まあ、これはマナの良いところなんだろうな
さてオレは
オレもそう思うよ美子さんは仲間です
ありがとうございます皆さん
瑠璃子の手をギュッと握って嬉しそうに、そう答えた
あれ家族を1人忘れてない
あれ、うちの子どこへ行ったのかしら
渚が慌てる
そう言えば、真緒ちゃんの姿が見えない
というか雪乃も
まだテーブルの下で、かくれんぼしているのか
ねえ、ねえ、みんなこっち、こっち
見ると広い部屋の端のドアから、真緒ちゃんが顔を出している
真緒、勝手にそんなところへ入ってはダメよっ
えへへっこっちの部屋にね、ごはんがあるよっ
ごはん
そうなのよっ立食パーティの準備が出来ているんだけどこれって、食べてもいいのかしらっ
真緒ちゃんの開けたドアから雪乃がニョッと顔を出して叫ぶ
何をやっているんだ
まったく下品なんだから、あの人っ
マナが、実の姉を罵る
まあ今の雪乃は格好とメイクのせいで、お笑いタレントにしか見えないから
何をやっても許せる感じだけど
ああ食事の用意をさせておいたんだったみんな、向こうの部屋へ行こう
そう言えば、軽食の支度がしてあるって言ってたっけ
みんなそろそろ、お腹が減ったろう
閣下はフフッと笑った
隣の部屋もパーティ・ルームだった
確かに、食事の用意がされている
しかし軽食というには、余りにも豪華だぞこれ
色んな種類の料理が、量も半端なく置かれていた
オレたちだけでは、どうやっても食べきれないだろうこれ
すでに、料理人もボーイも避難させてしまったからねパーティ用のオードブル的な物ばかりで申し訳無い温かい料理が無いのは、許してくれ飲み物なんかも、自分で注いでくれたまえ
閣下は、オレたちにそう言ってくれた
はーい、では先にみんな、飲み物を持って
食事となると克子姉がみんなを仕切る
渚と2人でコップをみんなに配っていく
飲みたいものは、自分で注いでシゲちゃんは、何がいいの
酒は控えておいた方がいいだろうな
渚に、閣下は答える
一杯ぐらいはいいんじゃない戦闘要員じゃない、あたしたちは一杯だけ飲むわよ寧ちゃん、どのワイン開けるか決めた
うん、渚さんこれにするっ
寧さんが、器用にワインのコルクを抜いていく
では私も一杯、貰おう
ワイン組は閣下、ミナホ姉さん、克子姉、渚、寧さん
フレッシュ・オレンジ・ジュース組がマルゴさん、麗華、関さん、美智の戦闘チーム
ウーロン茶組がマナとメグ、瑠璃子と美子さん
アイス・ティがオレとみすず
アイス・コーヒーが雪乃と真緒ちゃん
真緒ちゃん、コーヒーとか飲むの
ミルクどばどば入れてっ
カフェオレにするの
かふぇおれ
真緒ちゃんは、小首をかしげる
あなた真緒のは、ミルクの方にコーヒーをちょっとだけ入れてあげてお砂糖もたっぷりね
横から、渚がオレに言う
ということで、オレは真緒ちゃんにコーヒー牛乳を作ってあげた
うひひっコーヒー、コーヒー
真緒ちゃんにはこれがコーヒーなんだ
大人の真似をしているつもりなのよこの子
渚が、愛娘を愛おしそうに見て言った
はーい、それではみんなグラスは持ったわね
克子姉が、確認する
では、乾杯の前に閣下、何かございますか
私に気を遣わないでくれ、克子くん私は、この家族ではお情けで参加させてもらっている私の様なお祖父ちゃんでは無く真の家長が一言挨拶するべきだ
そう言ってミナホ姉さんを見た
うんこの家族のトップは、ミナホ姉さんだ
では、お嬢様お願いします
えっあたし
ミナホ姉さんは困った顔をして、みんなを見る
ま、いいわこれが、この家族での最初の食事になりますみんな、懇親を深めてね必ず、全員と話をするのよ会話を楽しみなさいね
そしてミナホ姉さんは、オレを見た
乾杯の音頭は、任せたわよ
えオレ
そうよあたしがこの家族の家長なら、あなたは家族の要でしょ
家族たちの視線がオレに集中する
お兄ちゃん、早くぅ
ご主人様、どうぞ
ヨッちゃん、ほらっ
はあ仕方ないか
じゃあ、みんなグラスを持って
スッとみんな、グラスを掲げる
何か気の利いたことを言おうかと思ったけれど、何も思い浮かばなかった
シンプルにいこう
では乾杯
かんぱーいっ
そして家族の立食パーティが始まる
飲んだり食べたり
あ関さんと美子さんは、まだみんなに打ち解けてないな
でも、克子姉やマナが積極的に話し掛けてくれている
逆に麗華はノリノリ過ぎる
こっちは、マルゴさんと寧さんと美智が相手をしてくれている
メグが暗いままなのが心配だけど
しかも、周りに知らない人ばかりな上に、妹に邪険にされているから
雪乃が、暗いメグの後ろに背後霊みたいになって、へばりついているし
大丈夫よ、あたしが行って来るから
渚が、オレの耳に囁く
こういう時は、年上のお姉さんの方が良いと思うの
うんオレがフォローしに行くと、みんなの注目を浴びるし
メグも気にするだろうな
頼むよ渚
はい、頼まれましたっ真緒、行くわよっ
合点だぁぁっ
真緒ちゃんそれ、どこで覚えてきたの
旦那様お祖父様に椅子を
そうだ立食のままだと、老齢の閣下は大変だ
椅子は室内の壁際に幾つか並んでいるだけだ
オレは急いで、その一つを持って来る
はい香月さん
ああ、ありがとう
閣下は、椅子に腰掛けながら、オレを見て
そろそろその香月さんというのは、やめないかね
家族なんだろう公の席ではともかくこういう場では、堅苦しいそれに
お前が、私に堅苦しいままだと他の娘たちも、いつまでも私に対して堅苦しいまんまになる
今だって、実の孫のみすず以外は、みんな閣下に近寄って来ないもんな
じゃああの、ジッちゃんとか呼んでもいいですか
ジッちゃん
オレ母方の本当の祖父が、あんまり良い人じゃなくってもう亡くなっているんですけれどお祖父さんとかだと、その人のことを思い出すから
ふむ
それに、父方のバァちゃんが、とっても大好きだったんです父の方のお祖父さんは、オレ、会ったことが無いんでなら、ジッちゃんが良いかなって
閣下は、ジッとオレを見ている
お前は、本当に馬鹿正直だな私のご機嫌取りをしようという気は無いのか
あ確かに
天下の香月家の当主にジッちゃんはないか
いや、いいそこがいいこれからも馬鹿を貫けそこが、お前の良いところだ
香月のジッちゃんは、ククッと笑ってワインを飲んだ
お祖父様、ワインもっと飲まれます
いや、いいみすず、アイス・ティを持って来てくれそれから、何か食べ物も適当に見繕って来てくれ
はいお祖父様
みすずが、オレたちから離れる
オレ、大丈夫でしょうか
ん何が心配なんだ
あのオレみたいなのが家族の要で、いいんだろうかって
和気藹々と、楽しそうに食事している家族たち
正直オレには、自信が無い
ジッちゃんは、オレの顔を見て
お前1万円札、持っているか
オレは、ポケットをまさぐる
財布から1万円札を取り出す
あるけどどうしたの
貸してみろ
オレはジッちゃんに、お札を手渡した
おいこの1万円札は、本当に1万円の価値があるのか
意味が判らない
実際の話1万円札を一枚刷るのに、10円もかからないただの紙だからな逆に1円玉を作るのには、1円以上掛かるアルミニウムだからな
そう言えばそうだな
このペラペラの紙が、1万円の価値があると決めているのは誰だなぜ、世界中の人間が、これが1万円の価値があると信じているんだ
全てはこのお札を発行している、日本という国家の信用だ日本国が信用されているから、この紙切れに1万円の価値があるということになる金融経済のルールが成立するんだこれがもし、日本国が潰れてみろ紙の上には1万円と書いてあるが、その価値は全て消え失せる
私たちの家族というシステムも結局は、みんながお前を信用しているということで成立している
オレですかミナホ姉さんの力の方が上ですよ
御名穂くんだけなら私は、この集団には加入せんよみすずだって、瑠璃子だって相手がお前だったから、信用しているんだろう
お前の馬鹿正直さは信じられるしかも、お前は馬鹿正直だが、決して馬鹿じゃない悪意のある者は、ちゃんと避けるし場の雰囲気に流されることも無いとりあえず、お前が身内にしても大丈夫だと思った人間は信じられる
そんなそこまでみんな、オレを信用してはいませんよ
ジッちゃんは、判っとらんなと、オレを笑った
私が、お前が要でなければ、この家族に参加しなかったように御名穂くんだって、お前が連れて来なければ私を受け入れなかったよ
私も御名穂くんも徹底的に相手を疑って、ようやく生き延びることができる世界に居るお前の存在が無ければ、私たちが家族になるなんて展開は起こり得なかったんだ
あたしも、そう思いますわ
振り向くとミナホ姉さんが居た
はいお祖父様、お飲み物とお食事です
みすずも、帰って来る
ちょうど良かったでは、少し込み入ったお話を致しましょうか
みすずが、祖父とミナホ姉さんに微笑み掛ける
込み入った話ってみすず
父は、無事に退院致しました
しばらくは自宅療養ですが術後の容態は良いようです
ご心配いただいて、本当にありがとうございます
シゲちゃんこと、閣下は亡くなった昭和の名優のTさんをイメージして書いています
その方は、声も良い方でコマーシャルのナレーションなどでも有名な方でした
声優としても、有名な作品に出ておられます
その方のエピソード
そのTさんが、地方公演に行かれたとき
本番で、セリフを忘れたとか何とかで、俳優のMさん(この方も名優です)とトラブルになったそうです
で、その日の公演の跳ねた後
Mさんは他の役者さんやスタッフと飲みに行かれて、ずっとTさんの悪口を言っていたそうです
その後宿泊先のホテルの部屋で、さらに飲み直そうという話になったのですが
あるスタッフの部屋に入ったら、たまたまTさんがそこで酔っ払って眠っていたのだそうです
その日ずっとTさんの悪口を言い続けていたMさんは寝ているTさんを見た瞬間、酒の力もあってこいつめ、こいつめと寝ているTさんを蹴り始めたそうです
それを若手の俳優とスタッフで何とか止めて別の部屋に連れ出して、その晩は収まったのですが
翌朝スタッフの1人が、朝食に行こうとホテルのエレベーターに乗ると、Mさんも乗ってきました
Mさん、昨夜は大変でしたよ
と、スタッフが笑って言うとMさんは、
いやあ、ごめんごめん酔った勢いで、ついあんなことをしてしまったしかし、これもみんなTのやつが悪いんだよ
などと、まだTさんの悪口を言っています
さて、エレベーターは1階の食堂へ向かうはずだったのですが
スタッフとMさんの乗ったすぐ下の階で止まり
そこにTさんが1人で乗って来ました
と、スタッフさんが身構えます
狭いエレベーターの中は、そのスタッフさんと、機嫌の悪いTさん、Mさんの3人しかいません
このまま、何事もなく1階へ着いてくれと、スタッフさんは神に願ったのですが
Tさんが渋いバリトンの声で、そっと呟きます
おい、Mお前は判っているのか
Mさんは意味が判らず、
するとTさんは、まるでシェイクスピアの歴史悲劇でも演じているような、朗々とした様子で
昨夜、お前たちが部屋に入って来た時、実は私は起きていたのだ私が、そのままそこに居ると大変なことになるだろうと思い慌てて寝たりをしたのだよなのに、お前はそんな私を蹴ったないや、蹴った何度も蹴ったなしかし、私はここで起き上がると、とても深刻なことになるのではないかと思い、ジッと耐えておったのだよ
エレベーターの中が、ゾゾっと凍ります
そういう私の心をM、お前は判っているのかと聞いているのだ
スタッフさんは、早くこのエレベーター止まってぇぇと、必死になって耐えていたそうです
そのスタッフさんから、この話は聞きました
では明日も頑張ります
262.家族の時間・3 (香月重孝)
ふん何のことだ
香月のジッちゃんは、不機嫌な顔で孫娘を見る
はいお祖父様このサワークリームのサーモン、お好きだったでしょ
みすずは、笑って祖父に取り皿を渡す
私の好物ばかりよく覚えているな
大好きなお祖父様のことですから
私に媚を売っても、何も出ないぞ
いいえ、あたしはお祖父様のお世話をするのは大好きなんですこれからも、ずっとお側におりますからね
みすずは、ジッとジッちゃんの顔を見ていた
ですからご無理はなさらないで下さい
ジッちゃんは、みすずの言葉を無視して皿に乗せられていたフォークでサーモンを食べる
美味い料理人の腕は落ちていないな
お祖父様ちゃんと、みすずの顔を見て下さい
ジッちゃんが、みすずを見上げる
何を心配しているこの小僧とお前たちの関係は、認めてやった私自身も君たちの家族の一員となって、御名穂くんたちの活動のバックアップも約束するそれどころか、お前が将来香月家の当主になることも保証してやるみすずにとっては、何から何まで万々歳な結果ではないのか
みすずは、真剣な表情で言った
良すぎる結果ですお祖父様が、あたしたちにここまで譲歩して下さるとは、予想していませんでした
良すぎて不満なのかね
不満ではありません不安なんです
不安てみすず
御名穂くんがやって来たのも、同じ理由かね
ジッちゃんは、ミナホ姉さんの顔を見る
はい先程の香月様のお言葉は、信用しております香月様は、一度お約束下さったことを翻すようなお方ではございませんしかし
ミナホ姉さんも、ジッちゃんの眼を見る
わたしには香月様が、何かお急ぎになられているようにしか見えません
ほう御名穂くん君がそういう結論に達した理由を詳しく教えてくれないかね
ジッちゃんは、ニヤッと笑ってそう言った
はいまず、第一に香月様がご自分を標的になさって、このホテルに敵を招き入れようとなさっているということ普段、慎重でいらっしゃる香月様とは思えない行動だと思います
何香月セキュリティ・サービスに対するちょっとした監査だよ緊急事態で、彼らがどれだけ機能的に活動できるかの
警備会社の能力テストのためということでしたらシザーリオ・ヴァイオラの相手をさせるというのは問題だと思いますが
シザーリオ・ヴァイオラは、アメリカでも大物の犯罪集団のボスだ
人の命を奪うことに躊躇が無い
その上、その組織は謎だらけだし
相手にするには、危険過ぎる
劇場からあたしたちを先導した警備員たちは、ヴァイオラの手下に入れ替わっていました香月セキュリティ・サービスの中に、敵が浸透していたのは事実です
この件寧さんのことが、アメリカに居たヴァイオラに知れる前から進行していたとしか思えません
ええ寧の情報が漏れたことが、ヴァイオラが来日するキッカケになったのでしょうが事件の根は、もっと深いところにあると思いますわ
ジッちゃんは
クククッお前たちは鋭いな素晴らしい判断力だ
ワイングラスを手に取り、グイッと飲む
お祖父様の真意をお聞かせ下さい
みすずの言葉に、ジッちゃんはニッと微笑む
真意など無いよ私は、ここにこの場所に、シザーリオ・ヴァイオラという人間をやって来させたいだけだ
ヴァイオラを呼び寄せるために
ここは湾岸地区東京の外れだからなここなら多少の騒ぎが起きても、関係の無い人間を巻き込むということは無いホテル内に居るのは、香月セキュリティ・サービスの精鋭と工藤の雇ったプロばかりだシザーリオ・ヴァイオラとその一党とは、真っ正面から戦える
このホテル内に居るのは、戦闘要員ばかりではありません
ああ申し訳無いが、君たちには私と一緒に特等席で見物して貰う敵を引きつけるためには、これしか方法が無かった申し訳ない
いいえわたしも、いずれヴァイオラの襲撃を受けていたと思いますいつまでも隠れているわけにもいきませんでしたし
うんあのまま学校の中に隠れていても
ゴールデンウィークが終われば、通常通りの授業に戻るのだし
生徒が居る日中に、ヴァイオラの襲撃を受ければ一般生徒にも、大変な被害が及ぶことになったろう
ここで、香月様とご一緒に警護の中心に置いていただけることに、感謝しています
そう言って貰えると嬉しいよ
ジッちゃんは、フッと笑った
しかしお祖父様
みすずが、キッとした眼で祖父を見る
ここにお呼び寄せになられたのはあたしたちだけではございませんね
オレたちだけでは無い
この部屋に用意していただいているお料理の量あたしたちには、多すぎます
オレたちが、3倍の人数になっても食い切れないぐらいの量がある
それにあたしたちとお祖父様の交渉は、決裂する可能性もありました最初から、お祖父様があたしたちのためだけに、このお料理を用意させていたとは思えません
みすずは、自分の感じたことを一気に言った
いや例え交渉が上手くいかなくても、私はお前たちには食事を提供するつもりだったよ年頃の女性たちがひもじい思いをしている様子など、私は見たくないからな
ジッちゃんは、そう答える
だが、みすずの言う通りだこの食事は、お前たちだけのために用意させたものではない
やはり、私塾の方たちもお連れになっているんですね
私塾って
オレが尋ねると、みすずは
お祖父様がなさっている香月家の分家や、重役たちの子弟を集めた勉強会のことです
ああ劇場で、ジッちゃんの後ろにズラッと座っていた
エリート青年団か
ここに連れていらしたのは、司馬貴彦さんだけではなかったのですね
ああ21人中、元から見込みの無い人間は帰らせた司馬貴彦も帰ったから、残りは15人だな
あのエリートの連中が、15人も
どうして、私塾の方々をこのホテルにお連れになったのです
あいつらがどれくらい肝が据わっているか見てみたくてね
ご冗談は止めて下さいみすずは、真剣にお尋ねしています
ムッとする、みすず
そうだな本当のことを言おう15人の青年たちだけでなくその親も呼んでいる
15人の中には兄弟も何組かいるから、親は9人だ全員、香月グループの重鎮だ貴彦の弟も居るから、司馬沖達くんも来る
司馬沖達って香月グループの中の新興派閥のボスだっけ
名目は白坂家との交渉だこれから、ここに白坂家の代表者が来て、私たちと折衝することは知っているな重役たちには、この機に白坂家の新聞社とテレビ局を解体し、香月グループに組み込む布石を作るとだけ言ってある私塾の連中には、勉強のために私たちの交渉を見ておけとしか伝えていない
つまりここにシザーリオ・ヴァイオラの強襲があることは、誰も知らない
そうか、だから
1階のロビーやお店は、通常通りの営業をさせているんだ
ホテルマンや店員を、全て香月セキュリティ・サービスの警備員に入れ替えてまで
9人のジッちゃんの部下の重役と、残り15人の重役の息子たちに異常事態を気付かれないように
ちょっと警備体制が厳重に見えるだろうがマスコミ対策だと言っておけば、やつらは納得する何しろ、御名穂くんのお陰で白坂家は大変なことになっておるからな
テレビやネットでは白坂創介と白坂家に関するスキャンダルで大騒ぎになっている
その渦中で、白坂家の今後を決める会議を開くのだから警備が厳重でも、不思議には思われないだろう
しかし重役の中には、個別に香月セキュリティ・サービスと接触している方もおられるのではありませんか外国の犯罪集団が襲撃してくるという情報が、すでに漏れているかもしれません
みすずが、心配そうに言った
問題は無い私が、ここに居るんだ何者かの襲撃が予想されようとも、私がすでにここに居るということは、必ず敵を撃退する用意ができているということだなのに、敵を恐れて、私の招集命令に逆らう重役が居るとしたらそいつはクビだよそれに
ジッちゃんが、溜息を吐いてオレたちを見る
来ないやつは、自分が裏切り者だということを自ら示すことになる
ヴァイオラとすでに繋がっていて、香月セキュリティ・サービスに手下を送り込んできた日本側の協力者は
9人の重役たちの中に居ると、ジッちゃんは考えている
みんな、何があってもやって来るだろうよ今はまだ、自分が裏切り者であることを知られたくはないはずだからな
やっとジッちゃんの計画の全貌が見えた
ジッちゃんは、一気に香月グループ内の裏切り者を炙り出すつもりなんだ
そのために自分自身を囮にして、このホテルに関係者全員を集めようとしている
私塾の小僧たちを連れてきたのも、同じ理由だ息子は人質だよ子供のことを考えたら、襲撃があることが判っているとしても来ないわけにはいくまい
それがジッちゃんの計画
悪いが、君の復讐を利用させて貰うことにした
ジッちゃんが、ミナホ姉さんに言う
構いませんわわたしたちも、香月様の計画を利用させていただきます
ミナホ姉さんは、そう答える
お祖父様のお考えは、よく判りました
みすずが、ジッと祖父を見る
でもまだ半分しか、お答えしていただいていないような気がします
今は、これ以上は話せんな
ジッちゃんは、そう答えるだけだった
だから、みすずは
瑠璃子さんの初体験はお祖父様のお好みのシチュエーションでしていただけないでしょうか
驚くジッちゃん
判ったジッちゃんのお好みの場所、状況、衣装でやろう瑠璃子、こっちに来てくれ
オレは、瑠璃子を呼ぶ
瑠璃子は、美子さんと一緒にマルゴさんと話していた
あメグを囲む輪が大きくなっている
渚と真緒ちゃんに加えて克子姉と寧さんと麗華に関さんまでいる
メグ、こんなにみんなから心配されているのに
自分では、気付いていないみたいだ
どうなさいましたお兄様
スッとやって来る瑠璃子
歩く姿も上品だ
えっと、あのさ
こんな上品で可愛い子にこんなことを言うのは忍びないんだけど
瑠璃子とオレの最初のセックスなんだけどジッちゃんが色々と考えてくれることになったから
ああ、お祖父さんて呼ぶのは何か照れるから
瑠璃子は、ニコッと微笑んで
お兄様は、すっかりお祖父様と仲良くなられたのですね
嬉しそうに、そう言った
ああそれで、ジッちゃんに全部お任せしちゃってもいいか
大丈夫よ心配しないできっと、お祖父様がロマンチックな体験にして下さるわ
みすずもフォローしてくれる
瑠璃子は、オレとジッちゃんを見て
わたくし、セックスをするのは初めてですし全て、お兄様とお祖父様にお任せ致しますわ
ジッちゃんは感激している
みすずもお祖父様のお好みのセックスを御覧にいれますわ旦那様、よろしいですよね
ああ、毎回は困るけれどたまになら
お前たち
みすず、瑠璃子オレたちの子供は、ジッちゃんに名前を付けてもらおうと思うんだけどどうかな
賛成ですわっ
わたくしもですお兄様
2人はニッコリ微笑んで、答えてくれた
みすずお前、何歳で出産したい
大学の卒業後がベストですけれどいいえ、大学へ入ってしまったら、いつでもいいです
みすずが、言葉の途中で意見を変えたのは
ジッちゃんの年齢を考えたからだろう
ジッちゃんは82歳だひ孫の顔を見てもらうなら、早い方が良い
じゃあ、オレが20歳になったらにしよう後、4年頑張って生きて下さいねっ
オレは、ジッちゃんに言う
瑠璃子は、今すぐでも構いませんわ
セックスや妊娠のシステムを知らない瑠璃子は、平然とそんなことを言う
それはダメだ
何故です、お兄様
高校を卒業するまでは、学生生活を思いっきり楽しむそういう決まりなんだ赤ちゃんが産まれたら、世話をするのが大変なんだから
それがオレたちのルールだ
そうですわねでは、いつ赤ちゃんを産むのかも、お兄様にお任せします
瑠璃子は、天使のような純真な笑顔で微笑む
瑠璃子は、もうお兄様のものですから
本当にいいのだろうかこんな純真な子をオレのものにしてしまって
いや、絶対に他の子に渡す気は無いんだけれど
そういうことですからお祖父様は、お命は大切にして下さい
みすずは、笑ってジッちゃんにそう言う
口は笑っているが眼は、真剣だ
判った無茶はせんよ約束する
ジッちゃんは、約束してくれた
御名穂お姉様
突然みすずがミナホ姉さんをお姉様と呼び出す
これからは、お姉様と呼ばせていただきますですからお姉様も、これ以降は香月様ではなくお祖父様とお呼び下さい
家族が家族として結束するそこにしか、あたしたちの勝機はありません色々と複雑なお気持ちがあると思いますがよろしくお願いします
そうかミナホ姉さんの本当のお祖父さんは、黒森公之助だ
ジッちゃんを、お祖父さんと呼ぶのは抵抗があるのかもしれない
あのミナホ姉さんオレも本当のお祖父さんが居るからしかも、その人のことそんなに好きじゃなかったからお祖父さんて呼ぶのは、何かシクッと来なくてそれでジッちゃんて呼ぶことにしたんだ
オレはミナホ姉さんに、そう言う
だから、ミナホ姉さんも呼び方を変えてみたら
ミナホ姉さんは、ニコッと微笑んで
ありがとうでも、あたしは隠し子だったから生前の黒森公之助には一度も会っていないのよだから、あなたのような抵抗は無いわ
純粋に、今まで有力な顧客として対峙してきた香月重孝を、お祖父さんと呼ぶのに抵抗があるんだ
でもみすずさんの言う通りねあたしたちは、もっともっと結束しないといけないわねお祖父様、よろしくお願い致します
ミナホ姉さんは、ジッちゃんに頭を下げた
うむこちらこそ、よろしく頼む御名穂
ジッちゃんもくん付けを止める
こんな些細なことでも、お互いの壁を壊すことができる今は疑似家族、家族ごっこでしかないかもしれんがやがて強い絆になるだろう
はいわたしも努力致します
御名穂お姉様、こちらへ少し、ご相談したいことがあります
みすずが、ミナホ姉さんにそう言う
はいわたしも、あなたとお話したいことがあるわ
お祖父様、失礼致します
みすずとミナホ姉さんは、席を外す
2人で、壁際へ行って真面目な顔で、話し始めている
残ったのは、オレとジッちゃんと瑠璃子の3人だ
今の私の説明に満足しておらんのだよ2人とも
ジッちゃんが、苦笑する
あの2人は鋭い感性の持ち主だいや、いささか鋭すぎるな
確かにミナホ姉さんも、みすずも頭が良い勘も冴えている
問題点を見つけて、すぐに対策を考えついて、実行する行動力も持っている
そこへ行くとお前と瑠璃子は、少し鈍い
ジッちゃんは、オレを見る
いや鈍いことは悪いことではない鋭すぎる人間は、ついつい人に余計な傷を付けるからなお前や瑠璃子の鈍さが、あの2人の鋭さにブレーキを掛けることもあるだろうそれはそれで必要な力だよ
ああ、鋭い人間だけの集団は自滅する鈍い人間が重しになってこそ、集団は機能するんだ
そこへ美智が、皿を持って現れる
お話は終わりましたか
ああみすずとミナホ姉さんとジッちゃんと、ずっと話していたから
オレに近寄らないようにしてくれていたんだ
うん、もう終わった
美味しそうなものを選んで参りました
美智はオレのために料理を運んできてくれたんだ
ありがとう美智
オレは礼を言って、皿を受け取る
そういや、オレはまだ全然食べていない
フォークで魚のフライを刺して、食べる
そういや、ホテルの料理だもんな
美智が、まだオレの前に突っ立っている
あ、あのご主人様
オレの前に跪いて上目遣いで、オレを見る
もしかして頭を撫でて欲しいのか
オレに頭を撫でられるの気に入ったのか
えっとこの子犬娘は
そういう時は頭を撫でて下さいって、ちゃんと言うんだ
美智は、恥ずかしそうに
美智の頭を撫で撫でして下さいご主人様
ちくしょう可愛いなあ
この15歳、中学3年生は
ほら、ここへ来い撫でてやるから
オレはお皿を置いてしゃがんで美智を抱き締める
そして、長い黒髪を撫でてやる
お前、オレにして欲しいことがあったら、すぐに言えよ無茶なことじゃなかったら、何でもしてやるんだから
ありがとうございますご主人様
そんなオレたちの様子を、微笑ましく瑠璃子が見ている
良かったですね美智さん
美智と瑠璃子は、同い年だからどっちも姉さんにはならないんだな
瑠璃子も撫でてやろうか
はい、後ほどお兄様のお食事が終わった後にお願いします
美智は、瑠璃子のその言葉でオレが食事の途中だったことを思い出す
あっお食事を、なさって下さいっ
サッと、オレから離れる美智
そんなに慌てなくてもいいよ美智も、また後で撫でてやるからな
さて食事に戻ろう
皿を取るとマナが来る
マナも持ってきてあげたよっそれ食べ終わったら、マナのお皿も食べてねっ
いやそれは助かるんだが
マナ何でお前、まだ裸なんだ
だって何か、また服を着るのがメンドくさくなって
マナは、もう秘部を隠していない
かわいいおっぱいも、股間も丸見えだ
えっといいのか、見えてるぞ
さっきは、ジッちゃんに見られるのを嫌がっていたくせに
今は、ジッちゃんの前でも平然としている
うんもう気にするのやめたマナのお祖父ちゃんなんだって考えたら別にいいかって気になって
こいつも割り切りが早いんだよな
お祖父ちゃん、エッチな眼でマナのことを見てもエッチはできないんだしそんなら、少しサービスしておこうかなって
うん、それは実に良い考えだと思うぞ
ジッちゃんが、嬉しそうにそう言う
それにこういう時に少しでも、アピールしておかないとさっ
マナが、オレに肌を擦り付ける
魅力的なお姉ちゃんが、いっぱいいるんだもんマナ、負けちゃうでしょ
マナは、オレへ自分のセクシーさをアピールしているつもりらしい
マナ今、ご飯食べているんだからオレの眼の前で、乳首をチラつかせるな
もうご飯と一緒に、マナも食べてよっ
そんなことよりお前、早く服を着ないと大変なことになるぞ
えっ、何で
並んでいる食事の量を見てみろよオレたち用にしては多すぎるだろ
マナが、テーブルの方を見る
そう言えばそうかも
これから、他の人たちも食いに来るらしいぞ
他の人って
ほら、劇場でジッちゃんの後ろにズラッと並んでいた高そうなスーツを着ていた
えっ、あのお兄さんたちここへ来るの
驚く、マナ
そうだなそろそろ、あいつらも呼んでやらんといけないな
ジッちゃんが、とぼけた感じでそう言った
えー、うっそ
本当だよだから、急いで着て来い
慌てて自分の脱いだドレスのところに走っていくマナ
ふむ、面白い子だな
ちょっとあいつは、品の無いところがあるから瑠璃子、真似しちゃダメだぞ
裸でうろつくとかダメだからな
はい瑠璃子は、お兄様にしかお見せ致しませんっ
瑠璃子は品はあるんだが少し固すぎるんだよな
まあ、それが瑠璃子らしさなんだからいいけれど
もうっヨシくんのバカっバカっオチンチンっ
メグどうした
そんなに赤い顔をして
そんなにその子がいいのっいいわよっどうせ、あたしはお嬢様じゃないもんっあたしは、他の子よりも綺麗じゃないんだからっ
誰ですかメグにお酒を飲ませたのは
あ後ろで、寧さんがワインのボトルを持って立っている
オレの方に向かって、ごめんと頭をペコペコ下げている
寧さんか
これ相当、飲んでいるよな
もう、あたしのことなんて、嫌いになっちゃったんでしょっ
半べそでメグは叫んだ
えー、前に付き合っていた彼女が酒乱でした
一番酷い時は、飲み屋の他の客にケンカを売ってました
謝るのが大変でした
酔っている時の記憶が無いから、私の苦労はあんまり判って貰えませんでした
私はそんなに酒に強くないので、そもそも記憶を無くすほど飲めません
基本的に、みんなから会計してお店に払って、おつりを返す係でしたし
あの子今は、どこで飲んだくれているのでしょうね
結局、夏休み期間は何もしないまま終わってしまいました
明日から、仕事再開です
ずっと宿題になっている、最新の登場人物リストも終わってないし
263.家族の時間・4 (恵美とみすず)
酔っ払っているメグは、いつもとは全然様子が違う
もおっ、ヨシくんのバカバカ、バカ、バカうわぁぁーん
メグは、大きな声で泣き出した
その場にうずくまる
ちょっと大丈夫か
オレもしゃがんで、泣いているメグを覗き込む
近寄らないでよ、バカァ
嘘、嘘もっと、こっちに来てぇギュッとしてぇヨシくん
今度はオレに抱きついて来る
チューしよ、チューチューしたいのぉぉ
メグの唇がオレの唇を塞ぐ
メグの息は、ワインの香りがする
オレの口に入れられた舌も、ワインの味がした
どれだけ飲んだんだ
好き好き好きなのぉぉメグが一番、ヨシくんのこと好きなんだからぁぁ
とろんとした眼で、オレに言う
メグねヨシくんのこと、監禁したいロープで縛って、どこにも行かれなくするのご飯もおトイレも、メグがお世話するの夜はメグが、抱き締めてあげるからヨシくん、メグの抱き枕なんだよ
この酔っ払いは、どこまで暴走するんだ
もう、離さないんだからっ誰にもあげないのヨシくんは、メグのなんだからメグだけ見ていてよ
またオレの口に、メグの熱いキスが
ぷはっメグ、ヨシくんとチューするの大好きずっとしていたいよぉぉ
どれだけ溜め込んでいるんだよ、メグ
内面に澱んでいた感情が、一気に放出されている
あそっか
実際には、メグはそんなに飲んでいないな
こんな短時間で泥酔するのは無理だし
そもそも、そんな大量のワインを寧さんが開けているはずがない
実際には、3、4杯がいいとこだろう
ただ、メグは
酔っているという名目を求めていた
酔ってしまったから、オレに甘えてしまっていると自分に言い訳できるから
それで数杯のワインをあおっただけで、泥酔した気分になっているんだ
なぁによぉ
可愛いな、メグは
もぉぉ、みんなにそう言ってるんでしょメグは、可愛くないわよっ他の子の方が、もっともっと可愛いんだから
メグのコンプレックスは、根深い
単純な容姿の問題じゃないもんな
メグは山峰家という、庶民の家で育った
家は古かったし、決して裕福な家じゃない
その上、白坂家という金持ちの親族からずっとイジメられてきた
良家に対してはコンプレックスがある
何よ、みすずさんとか瑠璃子さんにデレデレしちゃってさいいのよあたしは、あんなお姫様じゃないものヨシくんは、お姫様のところへ行っちゃえばいいのよっ
さらに瑠璃子たちの家族参加で、色々と事情が変わった
これまでの黒い森はミナホ姉さんたち、元々からお屋敷にいる人たちに、オレやみすずやメグやマナが付け加えられただけだった
みすずとマナは、オレの女になったということで黒い森に特別に加えてもらっていたような感じだったけれど
メグはお屋敷生まれだから最初から、ミナホ姉さんたちに近い立場だった
ところが、瑠璃子たちの参加で今、この場に居る女たちに三つの系統が生まれてしまった
1.元からの黒い森のメンバー ミナホ姉さん、克子姉、渚、マルゴさん、寧さん
2.白坂家絡みの人間 メグ、マナ、そして家族じゃないけれど雪乃
3.香月家の関係者 みすず、瑠璃子、美智、麗華そして、まだ家族じゃない、関さんと美子さん
かつては、オレの女の1人、あるいは渚の系列でしかなかったみすずが香月家の人々を連れて来て、一気に大派閥の長になってしまった
みすずには、そういうつもりは無いんだろうけれどメグには、そう見えるのだろう
しかも、ジッちゃんまで家族入りしたから
香月家派閥が、黒い森の中で大勢力になったことは間違いない
メグとしては自分の立場が急激に低下しているような気がするんだろう
メグだって、お姫様だよオレにとっては
嘘よあたし、可愛くないもんっ
可愛いよメグ
オレは、メグの背中を擦ってやる
子供をあやすみたいに言わないであたし、美智さんじゃないんだからっ
メグは難しいな
ごめんな
何がよ
年下の子や、年上の人だとどうしたら良いのか、何となく判ってきたんだけど
オレはメグの眼を見る
同い年の同級生だとどうしたらいいのか、判らなくなる時があるんだ
甘えればいいのか受けとめればいいのか
なかなか難しい
メグは、ツンとした顔でオレを見て
そんなのヨシくんの好きにすればいいのよっ
そんなこと言われてもオレの好きにやったら、メグはきっと不満だろう
今だって、こんなに感情を溜め込んでいたんだし
どうしたらメグは満足してくれるんだろうか
もうさ、メグお姉ちゃんがあんまりガタガタ言うようならさ、お兄ちゃん、お隣の部屋でエッチしちゃえばいいじゃない
急いでドレスを着たマナが、戻って来てそう言った
やっぱり、メグのことは気になるらしい
今まで、メグがマナのことをずっと気遣っていたから今度は、マナがメグを心配している
っていうかマナ
お前また、ドレスだけ着て下着を付けていないだろう
エッチしたらさ、だいたいの場合、ゴタゴタした気持ちはブッ飛んじゃうんだからさっ
マナの言葉に、メグがオレを見る
あたしはいいよヨシくん、隣の部屋行く
行かない
何でよっ
今、セックスで嫌な気分を解消しちゃうとメグがまたセックスに溺れちゃうだけになるから
いいじゃない溺れたって
メグが、熱い眼でオレを見る
オレはそういう後ろ向きのセックスはしたくないよ
現実逃避のための暗いセックスじゃなくってメグとは、明るくニコニコしてセックスしたい
メグは、オレの奥さんになるんだろ
ヨシくんの奥さんはメグよりも、みすずさんの方がいいんじゃない
メグはオレの奥さんになりたくないのか
なりたいよでも
みすずに対するコンプレックスがメグを押し潰そうとしている
なら、頑張れ諦めるな
だってあたし、みすずさんに勝てるところなんて一つも無いから
うつむくメグ
美人じゃないしお嬢様じゃないし日本舞踊だって踊れないし
でもメグは走れるだろ
メグが陸上をやっている姿は格好良くて好きだよメグの走っている姿は、綺麗だと思う
陸上の格好で、セックスする
馬鹿そういう意味じゃなくってメグにはちゃんと、メグの魅力があるんだよ
うんこれは、ちゃんと解消しとかないといけないな
みすずちょっと来てくれ
オレは、みすずを呼ぶ
ミナホ姉さんと話していた、みすずがこっちへ来る
はい、何です旦那様
オレは、メグを抱き締めたままみすずに言った
メグは、みすずにコンプレックスがあるらしいんだみすずが、綺麗でお嬢様だから
ヨシくんちょっと待って
本人の前で言われて、メグが慌てるが
オレは両腕でメグをギュッと掴んで、逃がさないようにする
だから、この際、はっきりさせておこうと思ってみすずも、メグにコンプレックスがあるだろう
オレは一か八か、そう言ってみた
いやみすずなら、判ってくれる
はいみすずにも恵美さんへのコンプレックスがあります
みすずさんどうして
あたしはただの女の子です普通の家の
はいですから、あたしは恵美さんには敵わないことがたくさんあるんです
みすずはメグにニコッと微笑む
みすずは、ずっと女子校生活ですし満員の電車やバスに乗ったことはありません普通の女子高校生がするみたいなことはそんなに知りませんから
みすずは超名門のお嬢様女学園に通っている
ですから旦那様と上手く生活ができるかどうか、とても心配なんです旦那様は、あたしに気を遣って下さって、あたしの生活の方に一生懸命合わせて下さるような気がしてとても、申し訳無いんです
みすずの言葉をメグは、ジッと聞いている
多分、恵美さんとの交際が旦那様にとっては、高校生らしい普通の恋愛なんだと思いますみすずはどうしても香月の家からは離れられませんからあたしは旦那様に、普通の高校生の恋愛は体験させてあげられませんあたしは、恵美さんがとても羨ましいんです
あたしは旦那様の同級生にはなれません学園祭も体育祭も恵美さんは、修学旅行も旦那様と一緒に行かれるんですよね
そうだ、そんなイベントもある
学校帰りに、2人でアイスクリームを食べながら歩いたりするんですかみすずは、そういうのがとっても羨ましいです香月の家の娘は、制服姿で買い食いとかできませんから
寂しそうに、みすずは微笑む
みすずのできないことを恵美さんは、旦那様にしてあげて下さいお願いします
みすずさんごめんなさい、あたし
メグは泣き出す
みすずみすずの学校の学園祭も体育祭も、オレ観に行くから応援する
はい、家族用のチケットをご用意致しますね
修学旅行も全部の日は無理だけど、1日ぐらいなら追っ掛けて行くよ自由行動の日があるだろ
うん1日学校をサボってでも、みすずのために行ってやりたい
旦那様ありがとうございますでも
いや、どこでも行くよみすずの学校の修学旅行ってどこへ行くの京都まさか、沖縄とか
イタリアです
い、イタリア
イタリアって、日帰りできたっけ
直行便で12時間ぐらいですわ
えっと修学旅行って、一週間ぐらい行くんだよね
じゃあ、日曜日を入れれば何とか、往復できるよ
それではイタリアには、何時間も居られませんよ
いいよ、みすずと旅行先で一緒に歩きたいだけだから
泣いていたメグが、顔を上げる
みすずさん、ごめんなさいあたし、もう我が儘は言いません
いや、メグ、我が儘はいっぱい言ってくれメグの場合は、溜め込まれる方が困る
そうですよ、恵美さん旦那様は、あたしたちの我が儘は何でもきいて下さいますからねっ
何でもは困るけれどまあ、いいか
みすずさんいいえ、みすずお姉さん
メグはみすずを姉と呼ぼうとする
いいえ、恵美さんあたしのことは、お姉さんと呼ばないで下さい
みすずは、優しく微笑んでそう言った
みすずは、恵美さんとは対等なライバルでいたいんです
ライバル
はい旦那様の奥さんとしてのライバルです
ニコッと笑う、みすず
恵美さんはとっても手強い相手ですけれどみすず、負けませんからっ
恵美は、それでも自分に自信が無いようだった
みすずは、毎日ずっと旦那様と一緒に居ることはできませんでも、恵美さんは学校も教室もずっと同じで旦那様と高校生らしい普通の恋愛生活をなさっていてとても大きなハンデですが、絶対に負けませんみすずは頑張ります
みすずは自分の名家の娘としての価値よりも、恵美のオレと普通の高校生活を送れるということが遥かに大きな価値があると言ってくれた
恵美の方が、オレに近いと
判りましたあたしも負けませんっ
みすずの言葉に、ようやくメグは心の曇りを吹っ切ったらしい
強い眼で、みすずに誓う
それでこそ恵美さんですあたしのライバルです
みすずは、恵美に手を差し出す
2人の少女が握手する
ふむ青春しとるな、お前たち
ジッちゃんがオレたちを見て、そう言った
恵美は、みすずが連れて行った
改めて、瑠璃子や麗華たちと話している
さっきまでは、不機嫌だったメグはみすずの仲介で、みんなと打ち解け合っている
助かりましたみすずのおかげです
そうかな私は、お前の力だと思うが
いや、オレは何もしていないじゃないですか
まあそう思っておるのなら、それでいい
麗華が、こっちへやって来る
閣下、家族というものがこんなに楽しいものだなんてわたくし知りませんでしたわ
閣下はやめろお祖父ちゃんだ
はいお祖父ちゃん
恥ずかしそうに、麗華が言った
うむ麗華くんの様な美人から言われると、身体がゾクゾクするな
ジッちゃんは、満足そうにそう言った
では、もっと言いますお祖父ちゃんっ
私のことはいいから早く、この小僧とも家族になってやれ
麗華は、きょとんとしてオレを見る
主様は主様ですが
判っておらんようだな麗華くんは、妹がたくさんできたことに喜んで、肝心要のこいつとは家族になっておらんよ
そうでございましょうか
ああだいたい、麗華くんはこいつの妻になるのか、それとも姉になるのかどっちにするんだね
そうでございますね他の家族の皆様は、明確に決めていらっしゃるのですね
そうだみんな自分とオレとの関係を自分なりに決めている
でも、美智ちゃんは主様のことをご主人様と呼んでいらっしゃいますが
あの娘は、マゾなんだよこいつに犬の様に所有されたいと願っているのだから、あれでいいんだ
ジッちゃんは、そう言った
では、わたくしはどう致しましょうか主様のご希望は
正直オレも困っている
麗華は克子姉や渚よりも年長だけど
全然、姉さんぽくないんだよな
だからって、妻って感じでもないし
いや、この人の率直さやさっぱりした性格は、愛すべきものだと思っているし
オレたちの家族に入って貰ったことに、後悔は無い
ただオレとの関係がしっくり来ない
それが解消されないと
この人とは、セックスできないような気がする
おいおい、こいつにそれを言うのは可哀想だぞ麗華くんが自分で決めて、こいつに提案すべき事柄だぞ
ジッちゃんが、そう言ってくれた
そうなのでございましょうけれどわたくし、男性との交際経験がまったくありませんから
麗華は、困っている
それは時間を掛けて少しずつ、信頼関係を作っていきましょう
オレは、麗華にそう言った
信頼はしておりますわ主様は、わたくしたちを見捨てて、戦場から逃げ出すような方ではありませんから
あの戦場での信頼ではなくて男女関係にも信頼というのがあるんです
オレは何とか説明しようとするが、上手い例えが思い付かない
麗華くんはこいつとセックスすることは承諾しておるのだよな
オレの代わりに、ジッちゃんが麗華に尋ねた
はいいつでも構いません
しかし君は、男性に身体を触られるのは初めてだろう抵抗は無いのかね
我慢致します歯医者さんに行ったと思って
歯医者
麗華にとっては、オレとのセックスは歯医者の治療と同じレベルなのか
それでは信頼関係があるとは言えんよおい、寧、こっちへ来てくれ
ジッちゃんが、寧さんを呼ぶ
どうしたのあっ、ヨッちゃんごめんねぇまさか、メグちゃんがあんなに酔っ払っちゃうとは思わなかったからそんな大して飲ませたつもりは無いんだけど
いや、メグの場合は、本人が酔っ払いたがっていたから
数杯のワインでも充分だったんです
わびの代わりにその大きなおっぱいをこいつに揉ましてやってくれこいつは、寧の胸が触りたくて仕方ないそうだ
おいおいジッちゃん
えー、何だそうだったのヨッちゃん、あたしのこと触りたかったら、いつでも触っていいのにっ
どうしたのっ恥ずかしい
じゃあ、あたしが先に抱き締めてあげるねっ
寧さんが、オレをギュッと抱き締める
寧さんの豊満な胸にオレの顔が埋まる
うふふ可愛いっ
優しい笑顔で、オレの頭を撫でてくれる寧さん
麗華くんこれが男女間の信頼関係というものだ
ジッちゃんが言った
見てみたまえこいつも彼女も、肉体の接触に全然拒絶反応が無いだろう
確かに、おっしゃる通りでございます
麗華は、興味深そうにオレたちを見ている
もおっ、ヨッちゃんお姉ちゃんが抱き締めてあげている時は、お姉ちゃんにだけ注目
寧さんが、オレを叱る
よろしいっおっぱい揉む
オレは寧さんの胸に手を当てて、揉む
でかい柔らかい
みすずやメグとは、レベルが違う
つるぺたの美智に至っては、次元が違う
美智の胸は2次元で寧さんの胸は、ハイパー3次元だ
いや、自分でも何を言っているのかよく判らないが
直接触りたい脱ごうか
寧さんは、そう言ってくれるが
いえこのままで結構です
何かマヌケだが寧さんに抱き締められたまま、寧さんの胸を揉むオレ
うふふんっ
ヨッちゃんがあたしの腕の中にいてあたしの身体を求めてくれてるあのねあたし
寧さんが、オレの耳にそっと囁く
今、濡れちゃてるよ、アソコ
なるほどわたくしも、この様な境地にならないといけないのですね
麗華境地って
ああ麗華くんは、まだまだ心に壁が多すぎる家族の前では、そんな壁は無用だ特にこいつに対しての壁は大きく残っている
判りましたご指導ありがとうございます
麗華にとっては、恋愛やセックスも何かの道なのか修行なのか
はぁ大変だな、この人も
うちの家族で何とかしてあげないといけないよな
もおっ、また他のこと考えているっ
寧さんが、ムッとしてオレに言う
もうっ、キスしちゃうんだからっ
そして、寧さんがオレにキスした
あー、寧さんがお兄ちゃんとキスしてるぅぅ
うはっ、ホントだっ
マナと真緒ちゃんが、やって来る
あたしも、あたしも
真緒にもしてっ
子供か、お前ら
いや、本当に子供だけど
14歳と3歳か
しょうがないなはいっ
寧さんも妹には弱い
オレのことを離してくれる
はい、お兄ちゃんっ
マナが、オレにキスをする
当然の様に舌も入れてくる
こいつの性感は、どんどん開発されていっている
いいのか、こんな中学2年生で
ああん、真緒も、真緒も
真緒ちゃんにはほっぺたにキスしてあげた
えー、真緒もお口にブチュッていうのがいいっ
真緒ちゃんは、そう言うが
前は、してくれたじゃん
うん前にお屋敷の風呂場で、真緒ちゃんとキスしたことがある
でも、あの時と今ではオレの中の決意が違う
オレは真緒ちゃんのパパになるんだ
これ以上は、いけない
真緒お口のキスは、もっと大人になってからね
渚が娘にそう言ってくれた
4歳になったらいい
そうね12歳ぐらいかな
そんなの真緒、おばあちゃんになっちゃうよぉぉ
真緒ちゃんは、部屋中の女たちを敵に廻す様なことを言う
可愛いっ可愛いですっ
麗華だけは、ニコニコしてムッとしている真緒ちゃんを抱き締める
そんな顔しないで、麗華お姉ちゃんがキスしてあげますっ
麗華が真緒ちゃんにキスをする
ちょっと麗華お姉さん
慌てる渚
家族ですから
麗華は、澄まし顔でそう言った
突然、部屋のドアがガチャっと開いた
やっぱり、こんなところにいらっしゃった
ゾロゾロと入って来る高級スーツに身を包んだ若い男の一団
ジッちゃんの私塾の連中か
やれやれ見つかったか
ジッちゃんは不機嫌な顔をする
何だ食事があるじゃないですか
これって、オレたちもご相伴させていただいて構わないですよね
何か、すっげぇ綺麗なお姉さんばっかり居るじゃないですか
さっすが閣下のご趣味は素晴らしいですね
許可も得ずに、わらわらと入って来る男たち
何なんだこいつらは
メグも何とか治まりました
こういう作品だと、物分かりの良い女の子ばかりになるんですけれど
手間の掛かる女の子も可愛いんですよね
メグは普通の子なので色々大変です
普通って言うなあ
今日から、通常のお仕事です
はぁ暑そうだなあ
264.私塾のやつら
みすずがオレに寄って来る
今、騒いでいる人たちのことは気にしないで下さい奥の人が、わざとやらせています
オレの耳にそっと囁く
一番奥に居る背の高い人が、香月操さんお祖父様の上の弟の孫です
確かに、落ち着いた様子でオレたちを観察している男がいる
そのお隣が、操さんの弟の昴さんです今、騒いでいる人の真ん中に居るのが香月仁さんこの方は、お祖父様の下の弟さんの血筋になります仁さんの脇にいるのが、夏木惇さんお祖父様の妹の孫ですこの4人が香月家のプリンスたちと呼ばれています
操さんの周りに集まっている方たちが、操さんの派閥の人たちです惇さんのお隣にいるのが角田文和さん操さんの後ろにいらっしゃるのが、虎田知徳さん、谷楽進さん、大張遼さん 、嘉田奉孝さんみなさん、香月グループの昔からの重役の息子さんです
香月家のプリンスたちを中心として派閥を形成している
それと廊下の外にいらっしゃる方たち
うん、部屋の入り口付近に固まっている香月操の一派とは別に
ドアの外に、別の集団がいるのが見える
あちらが最近になって香月グループの中で台頭してきた、新興勢力の人たちの息子さんです司馬アキラさん貴彦さんの弟華岡侘介さん、孔守融さん、河藤晃司さん、香月健思さん健思さんは香月家の分家の出身ですが、操さんを嫌ってこちらの派閥についていらっしゃいますそれから、高木風太さん
ジッちゃんの私塾の15人はプリンス派の9人と新興グループの6人に分かれているのか
親と同じで、子供たちも派閥を作って対立している
誰がここに入っていいと言った
ジッちゃんが強い眼で騒いでいる青年たちを睨み付ける
お、お祖父様それは、その
香月仁が、慌てふためく
お前は、私の弟の孫だろう私の孫ではない
ジッちゃんは、冷たくそう言った
いや僕は、実の祖父の様に閣下を敬愛しておりますので
嫡流でなければ、血族も臣下それが、香月家の定めだ私は、お前みたいな若造ごときに敬愛される程、落ちぶれてはおらんよ
ジッちゃんの言葉に香月仁は、黙り込む
仁、閣下に謝罪しろ
背後から、香月操が言った
わたくしからもお詫び致しますご無礼を致しました
香月操は、スッと頭を下げるが
それはポーズだけで、心の中では何とも思っていないことが態度で判った
こいつ嫌なやつだ
も、申し訳ございません閣下
香月仁も、頭を下げる
いや、仁だけではありません我々も、いささか礼を失した態度でした申し訳ございません猛省致します
そう言ったのは夏木惇か
この人が、一番年長に見えるそれでも20代の前半だろう
夏木惇の謝罪には、心があるように見えた
ちゃんと心から謝罪と反省をしている
お前たちをここに連れてきたのは、誰だね
ジッちゃんが、私塾の若者たちに尋ねた
私でございます
廊下の外から、女の声がする
と、青年たちを掻き分け1人のタイトスカートに銀縁眼鏡の女性が、部屋の中に入って来る
君かね須藤くん
ジッちゃんは、憎々しげにそう言った
はい香月会長の秘書として、私がご案内致しました
どうして私に確認を取らなかった
タイム・スケジュール通りに行動致しましただけでございますが
眼鏡の女性秘書は、ツンとした態度でそう言った
多少の時間のズレなど、どうでもいいことだ
ジッちゃんは、そう言うが
すでに予定時間を20分オーバーしております私の職業倫理では、20分オーバーというのは多少の時間のズレではございません今後のスケジュール進行に、多大な影響を及ぼしかねませんから
この女性は香月家の当主であるジッちゃんの意志より、タイム・スケジュールの方を優先するというのか
一応、聞いておくが君の作った予定表では、今の時間は何になっているのかね
女秘書は、答えた
私塾の方々とのお食事・懇親会ということになっています
ふんだから君は、彼らを連れて来たのかね
はいこの時間は45分に設定しておきましたが、すでに20分オーバーです残り25分でお食事していただかないと、次のスケジュールに響きます
女秘書は、平然とそう言った
ジッちゃんは、みすずを見る
みすず覚えておけ大きな企業の秘書となると、彼女の様な勘違いした人材も現れるもっともこれは、こういう人間に自分のスケジュールを任せきりにして平気でいられる鈍感なジィさんが、重役連中の中に多いからだがな
ムッとする女性秘書
悪感情が、完全に顔に出ている
私の作成したタイム・スケジュールには、会長もご承認下さったはずです
ああ、確かに私は承認しただから、私は自由に予定を変更する権限も持っている
静かにジッちゃんは、言った
須藤くん君は、この4月に私の秘書になったばかりだったね
はい4月1日より、香月会長付けとなりました
君を推薦してきたのは秘書課長の虎田くんだが彼も固すぎる男だからな
どういうお話でしょうか
ツンとしたまま、須藤秘書は言った
君を解任する本社に戻り給え
冷たい眼で、ジッちゃんは言った
不当解雇なさるおつもりですか
何だ、君は耳も悪いのか私の秘書の任を解くと言っているんだクビにするとは言っておらん本社に戻って、誰か無能な重役の秘書になりたまえ君には、私の秘書は勤まらんよ
ジッちゃんの言葉に、須藤秘書は
はい、私もそう感じておりました会長の様な、身勝手な方が相手では、秘書の仕事なんてやっていられませんわっ行き先を教えて下さらない、タイム・スケジュールは守らない他社の重役との会食の予定も、何度もキャンセルなさって私が先方に何度、お詫びの連絡をしたことか
そこで、キレるのかおい
会長は、私が作った綿密な予定を全て無駄にしてしまわれました私の方こそ、我慢ができませんっ
ジッちゃんがフンと鼻を鳴らす
気が変わった君を解雇する
横暴です私訴えますからね
怒る須藤秘書に、ジッちゃんは
先に言っておくが君の推薦者、上司、それから君が入社した時の保証人、全てにペナルティを支払って貰う君のご両親は、長野で精密部品の製造業を営んでいるのだったな
どうして、そんなことを
フッと笑うジッちゃん
私は、自分の部下の資料は必ず読み込むよ妹さんは、まだ女子大生だったね弟さんは、高校で軟式野球をやっているはずだ
黙り込む須藤秘書
君のお父さんの会社に圧力を掛ける取引先には、全て手を切らせる君のお父さんには、製品を作るための材料すら手に入らないようにする銀行にも貸付金を回収する様に指示する月末には、君のお父さんの会社は潰れることになるが、仕方無いことだ
な何をおっしゃっているんですか
怯える秘書
香月重孝を怒らせるということが、どういうことなのか身を持って、知り給え
そ、それって脅迫じゃないですか
脅迫では無い香月重孝がやると言っているんだ速やかに実行されることだよ
ジッちゃんはニッと微笑む
わ、私本当に警察に訴えますからねいいんですね私、マスコミの知り合いだっているんですからね
マスコミの知り合いなら、私にだって居るよそもそも、大手マスコミの何社かは、私の支配下にある私は大株主だからね
そそんな
君の様な身の程知らずの秘書を相手するのは、初めてだったからね楽しく遊ばせてもらったが、もう1ヶ月だそろそろ飽きたよ次の秘書は、もう少し仕事のできる仕事の判っている人に来て貰うことにしよう
そしてジッちゃんはゴミを見るような眼で、須藤秘書を見る
さっさと帰り給え本社へ戻って、私物をまとめるんだそして、香月重孝を怒らせてしまったことについて、周囲の人間に相談してみたまえ自分が何をしでかしたのかじわじわと判ってくるだろう怖くなるのは、それからだよ
私負けませんからっ
須藤秘書は、ジッちゃんを睨んでいる
何にだね勝つも負けるも無いよ私と君の間には、勝負なんて成立しないのだから
私は会長が私に何をしようとしても、絶対に成功してみせますいつか、見返してやりますからっ
ジッちゃんは、大声で笑う
彼女を嘲笑う
では君のせいで、君の推薦者たちや家族が不幸なことになるのは、構わないのだな
ひ、卑怯です会長は
そうやって、自分の置かれた現実の状況を考えずに、高いところから他人を見下している君の方が、よっぽど卑怯だよ君が大事にしているのは、君のちっぽけなプライドだけじゃないか
私は会長の様な方とは違います
それでも、須藤秘書はジッちゃんに屈しない
まあ、いい私は、明日にはもう君のことなんて覚えていないだろうからねしばらく経ってから、報告書を読むだけだ君か、君のお父さんの結末をねそれを読んで、ようやく思い出すああ、そうだ私に楯突いた馬鹿な秘書が居たまた随分、たくさんの人間を犠牲にしたものだなとね
ジッちゃんは、須藤秘書の言葉を無視して携帯電話を取り出す
谷沢かすまんが、私の秘書を解雇した本社まで誰かに送らせてくれ早急にだ二度と私は顔を見たくないからなそれから一度、こっちへ来てくれどうせ、この秘書には初めから大切な情報は伝えておらんのだろお前から、直接状況の説明を聞きたい
電話の内容を聞いて須藤秘書は、また屈辱に身震いする
電話を切ったジッちゃんが彼女に告げる
1階のフロントに、香月セキュリティ・サービスの山岡警備部長がいるそいつに言えば、帰りの車を手配してくれる5分以内にこのホテルから出て行けいいな
ジッちゃんの言葉は、どこまでも冷徹だった
はい、判りました失礼いたします
女秘書は、最後までジッちゃんを睨んで退室して行った
これから、このホテルで起こることを考えて今のうちに退去させてやったのだがあいつには、どうせ判らないだろうな
ジッちゃんは、小声でそう言った
御名穂くん今の女をどう思う
気が強い子でしたわね最後まで、睨んだままでしたから
それなりに優秀なんでしょうけれど秘書の様な、裏方の仕事には向いていませんね自分を前に出してアピールしたいという性格ですから
ああ企業家にでもなれば、そこそこの成功はするだろうだが、あの性格じゃ、敵もたくさん作るだろうし、イエスマン以外の部下とは上手くいくまい
ジッちゃんが、そう分析する
わたしに何かお望みですか
ミナホ姉さんがジッちゃんに尋ねる
君のところに向いているとは思わんか
あの子が
あんな性格だが容姿はいいスタイルも自分に自信があって、ちやほやしてくれる人間を求めているまあ、彼女ならちょっとやそっとのことでは挫けんよ
ジッちゃんはあの女秘書を、黒い森の娼婦に推薦しようとしている
確かに、ああいう子を好むお客様はいらっしゃいますが
そうだろう私も若ければ、顧客になっただろうよ正直この1月、あいつとケンカし続けるのは楽しかった
お気に入りだったんですね
私の予定は谷沢のやつが完全に管理しているからな女秘書なんて、ただ座っているだけでいいのだよそれをあいつは、ムキになりおってあいつをからかうのは、本当に面白かったよ
だから避難させたのですね
ああ巻き込むのは可哀想だからな
ジッちゃんは、寂しそうにそう言った
判りましたあの子のことは、わたしにお任せ下さい
まさか、本当に娼婦にするんじゃ
君のところで使ってくれるか
うちの女にはしませんあの性格のまま香月様のお世話のできる女に仕上げます
楽しみにしていて下さい
ミナホ姉さんは、言葉の最後をわざと喋らなかった
だけど、動いた口の形で判る
ミナホ姉さんはお祖父ちゃんと言った
シゲちゃん美人で気の強い女の子が大好きなのよあの子のこと、気に入っちゃったのね
渚が、そっとオレの耳に囁く
とにかく後々のお楽しみは、たくさんあった方がいいわ今を生き抜くためにはね
ジッちゃんは、須藤秘書の行く末を案じて、ミナホ姉さんに託そうとした
娼婦になるのは、決して良いことだとは思わないけれど
ジッちゃんも屈折しているから自分だけの女にならないくらいなら、いっそ娼婦にって思ったんだろう
でも、それではジッちゃんとあの女性との関係は、断ち切れたままだ
だから、ミナホ姉さんはジッちゃんに、あの女秘書との関係が継続する可能性を示した
そうやってジッちゃんの生き抜く気力に、燃料を足そうとする
さてと白坂家との交渉には、女の秘書は必要だ華がなければ、殺伐としてしまうからな御名穂くん、克子くんを貸してくれないかねまあ、お茶出しと機械の操作だけやって貰えばいいのだが
ジッちゃんは、ミナホ姉さんにそう言う
構いませんわ克子
克子姉は、立ち上がる
では、私と御名穂くんで段取りを詰めておこう向こうの部屋がいいな克子くんも来てくれそれから、警護には関くんを連れて行くがいいな、みすずお前たちの警護は、藤宮くんに任せる
はい、お祖父様
みすずが、澄まし顔で返事をした
判っていると思うが、この場を治められなくてはお前の未来は無いぞ
この場15人の私塾の男たち
香月家の分家と、重役の子供たち
こいつらを御することができなければみすずが香月家の当主になることは、難しい
今はまだ、みすずの野心を勘付かれるのはマズイけれど
自分が彼らにとって手強い相手ということを、示さなければならない
だから、ジッちゃんはわざと席を外そうというのか
お待たせ致しました、閣下
谷沢チーフが、部屋に入って来る
お、待っておったぞあちらの部屋で話は聞こう
ジッちゃんが、谷沢チーフに声を掛ける
お前たちは、ここで飯でも食っていろ酒は飲むなよ白坂家との交渉の席には、お前たちの親も来るのだからな親が真剣に仕事している席を、子供が飲みながら眺めているというのはなどうも気分が悪い
ジッちゃんは、プリンス組にそう言った
はい、判りましたっ
軽く返事をするのは、香月仁か
それからこちらのお嬢さんたちは、みすずと瑠璃子のお友達だ私のガールフレンドも居る絶対に粗相の無いようにな
青年たちは、ジロジロとオレたちを見ている
やっぱり女たちに興味があるらしい
了解致しましたっみんな、判っているよなっ
これも、香月仁が代表して返事する
おい、廊下に居る連中も入って来い
ジッちゃんは、まだ部屋の外にいる新興グループの6人に声を掛ける
は失礼いたします
頭を下げて入室する6人
お許しがあるまでは、入室してはいけないと思い控えておりました
グループの1人が、そう言う
高木風太さんですあちらのグループのスポークス・マン担当ですわ
みすずが、こっそりオレに教えてくれた
両方の派閥でそれぞれ担当がいるのか
プリンス組はちょっと馴れ馴れしい感じの香月仁
新興組は高木風太
派閥のボスはどっしりと構えて直接前には出て来ない
あっちの組のボスは誰なの
さっきのみすずの話ではプリンス組は、香月操って人なんだろう
新興組は
本来なら、貴彦さんなんですけれど貴彦さんは、この場にいませんから
そうだ、みすずの婚約者だった司馬貴彦は
婚約破棄になったので、このホテルから帰らされた
まあ、残っていてもこのメンバーと顔を合わせるのはキツイだろうし
ですから、おそらく弟さんの司馬アキラさんになるだと思います
兄がいなければ弟
つまり、香月グループの新興勢力では、2人の父である司馬沖達の力が群を抜いているのだろう
どの人
一番奥の青いネクタイの人です
みすずが、小声で教えてくれた
オレと何歳も変わらないんじゃないかな
みすずと同い年ですわ
司馬アキラは高校2年生か
では、しばらくお前たちだけで歓談していろいいな
ジッちゃんは、そう言って部屋を出て行った
谷沢チーフ、ミナホ姉さん、克子姉、関さんが続いていく
ジッちゃんたちが、いなくなると
へぇ、可愛いじゃんどこの家の子みすずさんと瑠璃子さん、どっちの知り合い
いきなり青年の1人が、寧さんに声を掛ける
えっとプリンス組の方のやつだな
オレ角田文和つーか、知ってるだろオレのことはさ
ナンパ男に、寧さんはニッコリと笑って
ごめーん、口が臭いから、どっか行ってくれるかなっ
ムッとする角田
何だ、この野郎
おい、角田、やめろ
後ろから、香月仁が声を掛ける
失礼なのは、お前の方だぜ
でも仁さん
閣下は、女性たちに粗相はするなとおっしゃられていたろ
香月仁が、角田に言う
オレからも謝罪致します申し訳ありません、お嬢様
ギャハハと大声で笑い出した
香月仁が、寧さんを見据える
あんたたちさあ、チームワーク良すぎいっつも、そういう手で女の子を引っ掛けてるんでしょ
寧さんが、笑いながら言う
片方が強気でナンパして、もう1人が女の子を助ける振りをして気を惹くって作戦バッカみたい、そんなの引っ掛かる様な子は、ここにはいないわよっ
寧さんが、ニッと笑う
この野郎オレたちをバカにするつもりかっ
角田が寧さんに詰め寄る
そう思うのならバカにされるような真似は、しないことだね
ススッと、マルゴさんが前に出る
何だよ手前どこの家の警護役だ警護役は連れて来ちゃいけないルールだろっ
喚く角田
それ君たち私塾の子たちだけのルールなんじゃないあたしたちには、関係ないと思うけれど
お、オレはボクシングやっているんだぜ
角田が、マルゴさんに強がる
そうなら、打たれ強いのかなちょっと、あたしのサンドバッグになってくれないかな
拳を手の平にパンッと打ちつけて、マルゴさんが前に出る
おい、お前何とかしろよお前、香月セキュリティ・サービスの社員だろオレ、知っているんだぜ
香月仁が、麗華に言う
麗華は、真緒ちゃんを膝に抱っこして2人でお菓子を食べていた
そうでございますがなぜ、わたくしが何とかしないといけないのですか
麗華は、真緒ちゃんが可愛くて仕方ないらしい
真緒ちゃんの口にお菓子を運びながら、答えていた
香月仁に振り向きさえしない
だってオレの親父は、香月グループの重役だぞオレたちを守るのが、お前の仕事だろうっ
香月仁は、喚く
現在のわたくしは、みすず様、瑠璃子様の警護を命じられておりますですから
ですから、何だよっ
わたくしが敵対するとすればあなた方ということになりますが
麗華が、ギロッと強い眼で男たちを見る
はいあなたたちは、あたしの親しいお友達に無礼を働いているわけですからあたしが藤宮さんに命じて、あなたたちを処分させることもできます
みすずははっきりとそう言った
角田、仁、お前たちの負けだ
プリンス組のボス、香月操が先鋒役の2人に声を掛ける
みすず様、失礼致しました彼らの無礼は、私が謝ります
スッと頭を下げる香月操
こいつ相当、狡いやつだ
あくまでも悪いのは角田と香月仁であって
自分は関係無いという顔をしている
遅刻しマース
ヤバイです
265.プリンス派
角田が、わざと寧さんに馴れ馴れしく近寄り
寧さんを助ける振りをして、香月仁がやって来る
多分こいつら、いつもそういう風に分担して、女の子に声を掛けているんだろう
ごめん、ごめん別にこいつにも悪気は無いんだとか何とか言って
そうやって女の子の気を惹く作戦だ
ところが、その作戦をあっさり寧さんに見抜かれ
マルゴさん、麗華、みすずに糾弾されると
親玉の香月操が出てくる
結局同じパターンの繰り返しだ
そちらのお嬢さんが、あんまりにもお美しいので彼らもつい、気安い態度で声を掛けてしまったんでしょう彼らには、お嬢さんに謝罪させます
ほらこういうことになる
角田、仁
香月操が、2人を睨む
は、はい、操様
判ったよ操さん
2人は、寧さんに頭を下げる
香月操は、ニッと微笑む
どうです、みすず様これで全て、水に流してはいただけませんか
そして、オレたちをいや、女たちを順に見て
ちょっとしたトラブルがありましたが気になさらないで下さいどうですせっかくの機会ですし、私たちにみすずさんと瑠璃子さんのお友達をご紹介下さいませんか私たちも、ご挨拶致しますそういうプロセスさえ踏んでおけば、今あった様なつまらない揉め事は無かったでしょうし
狙いはそれか
香月操は、みすずに公式にオレたちを紹介させようとしている
一度紹介さえされれば後は、自由にオレたちと交流できる
それぞれの女たちから個別に、情報を探りだそうというのだろう
お断り致します
みすずははっきりと言った
何故です私たちは親族ではありませんかあなたや瑠璃子様のお友達なら、私たちも仲良くしておきたいさっき、閣下からもご指示いただきましたみすず様、瑠璃子様のお友達と仲良くするようにと
香月操は、さわやかな笑顔でそう言う
普通の女の子なら、この自信たっぷりの表情に誤魔化されてしまうかもしれない
しかしオレのみすずは、普通の女の子ではない
あらお祖父様がおっしゃられたのは、操さんたち私塾の殿方たちがあたしたちに粗相をすることの無いようにというご命令だけでしたわよ別に仲良くしろなんていうお言葉は無かったと思いますが
そうだジッちゃんは、そんなことは言っていない
直接のお言葉ではありませんが文脈を読めば、おのずと判ることです
文脈
文脈って何だ
香月家の後継者であられるお二人と香月グループの未来を担う、我々せっかくの機会だから、打ち解けて相互理解を深めろという閣下の思し召しだと推察いたしますが
香月操は、自説を押し通そうとする
それは、操さんの勝手な推論でしょう
みすずはそう言う
そうでしょうか私は、操様のご推測が正しいと思います
穏やかにそう言ったのはプリンス派の一人、嘉田奉孝だった
うむ、オレもそう思うこの部屋といい、料理といい閣下は、ここでオレたちにみすず様・瑠璃子様と懇親せよと命じられているのだろう
自信満々にそう言うのは、夏木惇だ
オレも、惇兄ィの言う通りだと思う
香月仁がうなづく
そうでしょうな閣下は、無駄なことはなさらない方だ我々に命じられることの全てに意味がある
言葉の裏を理解しなければ、閣下のお心は理解できない
大張遼と、谷楽進が言葉を繋げる
というよりオレは、腹が減りましたっ
そう言ったのは、虎田知徳だ
プリンス派の一党は、ガハハと笑う
まあ、待て待てまずは、お互いを紹介し合い、乾杯の一つもしてからだしばし待て虎田飯は逃げていかぬからな
夏木惇が、大きな声でそう言った
みすず様そういうことですので、みなさんをご紹介下さいお願いします
最後に、人懐っこそうな笑顔でみすずに声を掛けたのが香月昴
プリンス派のボス、香月操の弟だ彼らの中では一番年下だと思う
ね、いいでしょうお願いしますよみすず様
プリンス派のチームワークは良い良すぎる
それぞれが自分のポジションを理解した上で状況を香月操の望む方向へ持って行こうとしている
お断りすると言ったはずですあたしに、同じことを2度言わせないで下さい
みみすず様ぁ、どうしてです僕たちは、ただみすず様たちと仲良くしたいだけなんですよぉ
強攻策が外れた時は、年少の香月昴が下手に出る
そういうフォーメーションになっているんだな
あたしにはあなたたちと仲良くする必要は無いからです
みすずの顔は笑顔だったが眼は、真剣だ
本気で、そうおっしゃっているのですか
香月操が、そう言う
ええさっき、お祖父様がおっしゃっていましたわ香月の血族だとしても、嫡流で無い者はみな臣下ですあなたたちが、あたしたちにきちんと臣下の礼を取らない限りあたしはあなたたちを認めません
みすずの言葉にプリンス派の連中は、互いの顔を見る
アイコンタクトが嘉田奉孝に集まる
そうはおっしゃいますがみすず様とて、閣下のご次男様のお子様言わば分家のお嬢様です香月家の正当な嫡流では無いと存じますが
論理的に攻めてる、嘉田
こいつがプリンス派の参謀役なんだろう
お黙りなさい
ずっと口を閉じていた瑠璃子がおもむろに声を出した
みすずお姉様は、わたくしの心を代弁して下さっているのですみすずお姉様のお言葉は、わたくしの言葉と思いなさい
ジッちゃんの長男の一人娘香月家の正当な後継者である瑠璃子
本当はみすずと瑠璃子の親には、殺された兄がいるのだが私塾の連中もその存在は知らないらしい
ハッ申し訳ございません
嘉田は、さっと頭を下げて退く
いつからお二人は、そんなに仲が良くなられたのですか私はてっきり、お二人の関係はあんまりよろしくないと理解しておりましたが
香月操が、不審そうに尋ねる
そうだ香月家の中では、みすずと瑠璃子は不仲という設定になっていた
ずっと昔から仲良しですわっわたくしは生まれてからずっと、みすずお姉様を敬愛しております
瑠璃子は、みすずとの仲を悪く言われてちょっと怒っている
みすずが、サッと声を掛ける
一々、操さんたちの質問に答える必要はありませんそれが、この人たちの手です
うんこちらを感情的にさせて、色々と内情を喋らせようと言うのだろう
そもそもこの方たちは、形だけ謝ったからというだけで、寧さんのお気持ちを確認しないまま全ては水に流したことにしてしまおうとなさる様な方々です
そういや、そうだ
こいつらは、もう全部終わったことみたいにしているけれど
こっちの気持ちなんて、少しも気にしていない
寧様この方たちをお許しになられるおつもりは、ございますか
これっぽっちも無いよっこの子たち、女を馬鹿にしすぎていると思う
改めて謝罪させますか
それもいい頭だけ下げても、心の中で笑っているの判っているものこういう男たちって、あたし大っ嫌い
寧さんは、はっきりそう言った
そういうことですから、あなたたちはあたしたちに構わないで下さい
すみません、父の容態が急に悪くなったので
これから病院に連れて行きます
途中で済みません
※そのまま緊急手術となりました
8時間半という大手術で私が帰宅したのは、翌日の午後になりました
続きは、余裕があれば帰宅後に書きます
266.笑う女たち
いいでしょうみすず様が、その様なお考えでしたら我々も無理強いは致しません
香月操は、ジッとみすずを見る
しかし現状についての、ご説明だけはしていただきたいと思います私は分家であっても香月家の一員ですし私の味方は、香月グループの未来を担う有能な人材の集まりです当然我々にも、知る権利はあると存じますが
相変わらず、香月操は余裕のある表情を崩さない
自分の言っていることが正当であり、みすずは彼の希望に応えて説明する責任があると心の底から思っているようだ
何をお知りになりたいんです
探るような眼でみすずは、答えた
今日の紺碧流の発表会で、あなたが起こした政治的なパフォーマンスそこに居る正体不明の男を、あなたは舞台に引き上げられた
いやオレが、自分の意志で舞台に上がったんだ
しかし、香月操はみすずを自分たち同様、香月家に対して野心のある策略家だと考えているらしい
だからオレたちの恋愛を政治的と皮肉る
その後の司馬貴彦の反応また、我々がこのホテルに移動した後、司馬貴彦だけが閣下に呼ばれたという事実嘉田お前は、どう考える
香月操は、チーム・プレーに徹する
自分1人でみすずに対するより、グループ全体で圧力を掛けた方が効果的だと考えているのだろう
はいまず、間違いなく閣下が極秘裏に指名なさっていたみすず様の婚約者は、司馬貴彦だったのだろうと推察されます
嘉田は、恭しくボスに頭を下げてそう答えた
そして司馬貴彦は、閣下のお呼びから我々の待機している部屋に戻ってきた時、大変狼狽しておりました何か、精神的にショックなことがあったとしか思えません
ああ確かに、そうだった慌てふためくとしか言い様の無い状態だったな我々とは、一切接触せず我々のグループの人間に表情を見透かされるのを嫌ったのだろう弟の司馬アキラくんにだけ、何か呟いて気分が悪いからと1人だけ帰宅して行ったが
香月操は、司馬貴彦を嘲笑うようにニヤッと笑う
そうか婚約者の地位を剥奪された司馬貴彦は
敵対グループであるプリンス派の連中に、事情を探られるのが嫌で
1人だけ逃げ帰ったんだ
まああのギャーギャー喚いただけのエリートさんらしい行動だ
まさしく尾羽打ち枯らすといった風情でしたなっハッハッハ
プリンス派の夏木惇が、豪快に笑う
釣られて、香月仁、虎田知徳、谷楽進、角田文和、大張遼 と言った連中も笑う
面白いから笑っているのでは無い
あくまでも部屋の入り口の方に固まっている新興グループの連中、特に司馬アキラの心を傷付けるための笑い
意図的な悪意だ
アキラくんお兄様は君に、あの時何と言っていたんだね
これまた報告するのが当然だろうという態度で、夏木が尋ねる
もっとも、それを押し通せるだけの貫禄が夏木にはある
わざと軽薄かつ失礼な態度で、相手を誘発するのが角田なら
夏木は、偉そうな雰囲気で相手の心に迫って来る
家族の中での会話です皆様にお知らせすべきことではありません
司馬アキラは、穏やかに答えた
そう言わないで、アキラくん同じ私塾の仲間じゃないかっ
今度は明るく最年少者の香月昴が、話し掛ける
もし、みんなには言えないことなら後で、こっそり僕にだけ話してくれよっ僕たちは私塾の中では一番年少の仲間じゃないか何でも、相談に乗るよっ
うわぁ男性アイドルの様な薄っぺらい笑顔で、香月昴は微笑んでいる
剛の次は柔手取り足取り、次から次へとよくやる
昴無理を言うなアキラくんにも事情があるんだそこは推して察してあげるというのが、本当の友情というものだぞ
はい操お兄様アキラくん、ごめんね、君の気持ちも考えないで僕、ちょっと余計なことを言っちゃったみたいだねでも、本当に僕は君のことが心配なんだそのことだけは判って欲しいなっ
ああうぜぇ
何て、うざい笑顔なんだ
さてさりとて、我々は手持ちの状況から、現状を推察せねばならん嘉田、お前の推論を述べてみろ
ハッ、操様所見を申し上げますこれは、あくまで私の勝手な推論であり実際の状況とは違っているかもしれませんが
嘉田はあくまでも自分の推論を話すのだと、先に弁解する
つまり今から話すことはプリンス派の公式見解では無いし
個人の推論だから、多少失礼な見方になってしまっていても仕方ないという言い訳をしたのだ
閣下の指名なさっていたみすず様の婚約者が、司馬貴彦氏であったということは閣下はお二人のお孫様、瑠璃子様とみすず様の結婚相手を、我々の内部の二つのグループから輩出することによって、将来の融和を図っておられたのではないかと考えます
嘉田さんよぉ、オレにも判るようにもう少し判りやすく言ってくれないか
プリンス派の虎田が、大きな声で言う
はい、すなわちおそらく閣下は瑠璃子様の婚約者と致しましては、永年に渡り香月家の屋台骨を支えてきた臣下の子息である我々の中から指名なさるおつもりだったのだと思います瑠璃子様は、真の正当な香月家の継承者であらせられます新参の臣下の子を婿に迎えるというわけにはいかないとお考えだったのでしょう
そうか、その代わり瑠璃子様の次に高貴な血筋である、みすず様には、司馬貴彦を妻合わせようというお考えか
嘉田の説明に、夏木がそう言う
はい司馬貴彦は我々私塾のメンバーの中でも、一番の年長者でしたし司馬沖達氏ら香月グループ内の新興勢力の重役たちに対するガス抜きとしては、一番有効な策だと思われたのでしょう
嘉田はみすずと貴彦の婚約をガス抜きと表現する
ああみすず様との結婚で、新興勢力のオッサンたちには満足してもらおういや、あの方たちには、それだけで満足していただかなければならん
夏木が、そう言う
うむそれ以上、新興勢力に譲歩する必要などない
谷楽進が、真顔で頷く
いえちょっと、発想をお変え下さいみすず様の婿になるということは、司馬家も香月家と縁続きになるということですそれはすなわち司馬家が、新興勢力から我々代々の家臣のグループに移籍するということです
嘉田がそういう意見を言う
なるほど今後は、司馬家も譜代の家臣として認めてやるという閣下のご配慮なのか
まあ司馬沖達氏には、認めるべき功績はあるしな
それより司馬沖達氏が抜ければ、香月グループ内の新興勢力なぞ瓦解してしまうぞむしろ、閣下は、そちらを狙っていたのでは無いのか
香月仁、大張、夏木の順で勝手なことを言う
あくまでも自分たち香月グループの旧来からの家臣が偉くて、新興勢力は下劣だと考えているらしい
お前ら、分家や重役の子供だろ
自分自身が、香月グループ内で働いているわけでもないくせによくもまあ、偉そうにピーチク・パーチク話すもんだ
しかし、そこの男の登場で閣下の計画は変更せざるを得ない状況になったと思われます
嘉田がオレを指差す
嘉田それは、どういうことだ
香月操が、ニヤッと微笑む
はいみすず様が、今日の劇場でその男を観客に紹介なさいましたあれは紺碧流の家元の発表会であり観客席に居たのは政財界の主だった方々ばかりですあの会で、ああいうパフォーマンスをするということは、その男がみすず様の相手だと、広く知らしめることになります
しかし閣下の指名した婚約者は、司馬貴彦だったはずだ彼のその後の態度が、それを示していた
はい、操様みすず様のなさったことは、当然閣下の意志に反する行為です香月家に属する人間が、決して犯してはいけない第一級の反逆行為です
嘉田は、みすずを責める
だがさっき閣下は、笑ってこの場にいらした
香月操が呟く
みすず様との会話は、いつも通り何も変わらなかったそれどころか、そこの男がこの部屋に居ることも認められておられた
プリンス派の男たちの視線がオレに集まる
司馬貴彦の様子を見ればやつが、みすず様の婚約者から降ろされたのは確実だということは閣下は、みすず様とこの男の関係を許されたということになる
自分の推論を語る香月操
おい君は、どこの誰なんだ
うむこんなやつ、見たことは無いぞ
おい、お前、どこの家の人間なんだ
新興勢力の誰かの息子なんじゃないか我々が知らないだけで
うむそうとしか思えないな
いや、もしかしたら他の企業グループの人間かもしれないぞ
確かにそれなら閣下が、司馬貴彦を蹴って、こいつに挿げ替えられたのも理解できる
ったく勝手なことばかり言いやがって
お前ら、世界は香月グループを中心に廻っていると思っているのか
おい、早く答えろよ香月操さんがお尋ねになっているんだぞ
角田が、偉そうにオレに命令する
黒森だよっ
オレの代わりに寧さんが、答えた
あたしらはみんな、黒森の家の人間だからっ
ニタッと微笑む寧さん
そうよ、あたしも黒森だものそうよね、真緒
渚が、寧さんに続く
真緒ちゃんが、ニッコリ微笑む
うんそうだよねあたしも、黒森家にお仕えする警護役だから
マルゴさんも、笑ってそう答える
あっ、あたしも黒森の家の子でーすっ
マナまで、そう言う
ほらっ、メグお姉ちゃんも
あ、あたしも黒森家です
美智は、黙ったままでいる
きっと、私塾の連中の中に工藤父のことを知っているやつがいるからだろう
もちろん、香月セキュリティ・サービスの所属である麗華も黙ったままだ
雪乃は麗華の後ろに隠れている
みすずは、まっすぐにプリンス派たちと向き合ったまま
瑠璃子は美子さんと手を繋いで、椅子に座ったままジッと部屋全体の様子を見つめている
お前、聞いたことあるか
嘉田も知らないのか
プリンス派の連中は顔を見合わせる
彼らは、年長者でも20代前半だ
親たちから、高級娼館である黒い森のことは聞いていないのだろう
いや黒い森は、白坂創介によって酷い状況になっていたから
かつての日本の政財界の重鎮たちの集う黒森楼の時代のことは彼らの祖父の代でないと知らないのかもしれない
僕は知っています
入り口の方から司馬アキラが、そう言った
ほう知っているのか、アキラくんは
香月操が、司馬アキラを見る
言葉は、余裕たっぷりだが声に内心のブレが見える
はい父に聞いたことがあります
司馬沖達という人が黒い森のことを知っていて、息子に話している
となればそれはジッちゃんに対する、対抗策の一環としてだろう
ジッちゃんはミナホ姉さんをサポートしたり、恭子さんを送り込んでくれたり、森下さんを番頭として復帰させてくれたり黒い森のことを何かと支援してくれてきた
しかし、それは同時にジッちゃんが、高級娼館の運営に関わっていたということであり
司馬沖達は、ジッちゃんを追い落とすカードとしようとしているのでは無いか
そんな疑惑が、オレの中に渦巻く
へえ、アキラくん知っているんだ良かったら、僕たちにも教えてくれないかっ
香月昴が、また薄っぺらいスマイルで、司馬アキラに話し掛ける
僕が聞いた話では戦後の日本の政財界の裏側の全てを知る家だと
司馬アキラの言葉に、プリンス派の連中は息を呑む
何だそりゃ
そんなマンガみたいな家、あるわけないだろう
うむお前の父は、冗談を言ったんだろうな
香月仁、角田、大張がそう感想を述べる
そっれが、あるんだよねぇっ
寧さんが、ケラケラと笑った
寧世間知らずの子供を笑ってはいけないよ
そういうマルゴさんも、笑っている
あっ、ごめーんでもさっ、この人たちがあんまりにもおかしくって
きゃははと嘲笑う寧さん
そうね馬鹿馬鹿しくて、笑えてくるわ
渚も笑い出す
えっ、どうしたのママ
真緒ちゃんが、渚に尋ねる
ほら、真緒、見てご覧なさいあのお兄ちゃんたち、あんなに真面目な顔で、さっきから馬鹿みたいなことばっかり言ってるでしょ
うんすっごい偉そうだよねっ
そうでしょ、笑っちゃうでしょだから、ママたち、笑っているのよっ
にゃはははっうんっ、おっかしいよねっ
真緒ちゃんも、笑い出す
ホント自分自身の力なんて、まだ何も持っていないのに、おかしな方たちですね
瑠璃子もこいつらの無礼が、本気で許せなくなってきたらしい
美子、わたくしたちも笑いましょう
こんな頭の悪い方たちでも、わたくしたちの身内ですせめて、笑ってあげなくては、可哀想ではありませんかふふふふ
瑠璃子はプリンス派のやつらを笑う
る瑠璃子様
驚く香月操
いや、プリンス派だけでなく、新興グループも含めた私塾全員が驚いている
司馬アキラさえ
あなたたちはお祖父様に従順なだけの、人形の様なあたしたちしか知らなかったんでしょうでも、あたしたちも人間です笑って差し上げるしか評価のしようが無い相手に対しては、心の底からの侮蔑を込めて嘲笑います
みすずも笑う
あはははははっうんっこれは、確かにおかしいですっ笑うべきことですねっ
麗華も笑う
ぬふふふふ、ぐふふふふふ
美智、笑うのが不得意なら、無理して笑う必要は無いんだぞ
メグお姉ちゃん、あたしたちも笑おうよっ
でも、あたし急に笑うなんてできないわ
そんなの簡単だよっ大きな声で、わっはっはって言えばいいんだよっさん、はいっわっはっはっはっはっは
わ、わっはっはっは
黒子ちゃんも今だけは一緒に入れてあげるから、ほらっ笑って
うわっはっはっは
マナにせっつかれて、雪乃までわっはっはを始める
何かオレの女たちが、メチャクチャにカオスな感じになっているけれど
みすずが、瑠璃子を見て微笑む
はいみすず、お姉様
瑠璃子も、みすずに微笑み返す
香月家の正当なる後継者として、あなたたち臣下に申し渡します
瑠璃子が立ち上がった
わたくしの相手はわたくし自身が決めますお祖父様は、わたくしに様々なご助言を下さいますでしょうが決めるのは、わたくしです
わたくしはあなたたちの勝手な争いの道具にはなりませんわたくしを手に入れたいのなら、その情けない集団から自立なさって、もっとご自分たちを磨く努力をなさるべきだと思います
プリンス派は、はっきり言って瑠璃子を舐めていたのだろう
その強い言葉に、みんな仰天している
みすずお姉様お姉様も、はっきりこの人たちに宣言なさって下さい
瑠璃子が、みすずにバトンを手渡す
あたしたちは、お祖父様の香月重孝の孫ですあなたたちみたいな弱い人間とは、生まれが、育ちが違います
みすずが、瑠璃子に寄り添うように近付く
美子さんの肩にも手を置いて
彼らに気付かれないように美子さんに、あなたも香月重孝の孫なのよとメッセージを送っている
あたしたちは生まれながらにして、香月の家を背負っているのですから
みすずの眼は、力強く輝いている
家を背負っているのなら、なんでそんな得体の知れない男を引き込もうとしているのですか
香月操がみすずを挑発しようとするが
あたしはこの方と結婚しますそれは、もうお祖父様にもご承諾いただきましたあなた方は、まさか香月家当主、香月重孝の決定に異議を唱えたりは致しませんわね
みすずが、私塾の連中をザッと見渡す
お祖父様にはこの方を、香月家には引き込まないという条件で、あたしとの交際を認めていただきました
司馬アキラが、ハッとする
それはどういうことですか
この方黒森様は、あたしと結婚しても香月家の企業、関連団体には入られません香月グループとは、完全に離れていただきます
それはみすず様が、香月家からお離れになられるということですか
司馬アキラの問いにみすずは、笑う
あたしと黒森様は、別の人格ですあたしは、ずっと香月家の中で生きてきた人間ですどうして、今更、香月家を離れることができます
みすずの言葉に、瑠璃子が補足する
はいみすずお姉様には、香月家の中でわたくしの補佐をしていただきます美子と一緒に
美子さんが顔を上げる
ずっと一緒よ美子
涙目で、瑠璃子さんに大きく頷いた
つまりそちらの男性は、香月家の中で何らかの役職に就くことは無くみすず様と瑠璃子様は、自ら香月グループの運営に関わられるおつもりなのですか
司馬アキラの言葉に、みすずは
今、そう申し渡したはずですアキラさんあたしは、あなたはもう少し理解力のある人だと思っていましたが
いえ申し訳ございませんっ
フッと、不敵にみすずは微笑む
あたしたちあなたたちの様なつまらない男性に、大切な香月グループをグチャグチャにされるのは嫌なんですあなたたちに期待できないのなら自分でやるしかありません
そうですね、お姉様この方たちの振る舞いには、瑠璃子もゲンメツいたしましたわ
香月家最高ランクの美少女2人が、エリートたちを罵る
あなたたちお父様が、重役だからと言って、このまま香月グループに入社できると思ったら大間違いですからね
しかしみすず様、オレたちは代々、香月家に仕えてきた
角田が、叫ぶ
ご先祖が忠義であったからといって、なぜ、あなたたちを雇わなくてはならないのですか
みすずが切り捨てる
はっきり言ってさきほどまでのあなたたちの態度には、我慢なりませんお父様たちがどうであれ、あなたたちが香月家に対して忠義の心を持っていないことはよく判りました
瑠璃子もそう言った
いや私たちは
香月操は、そう言うが
あなたたちは香月グループを、あなたたちがゲームする遊び場としか思っていません申し訳ないですがあたしは、あなたたちをプレイヤーとして受け入れる気はありません
みすずの言葉に香月仁は
ふざけんなっお前ら女に何ができるって言うんだっ
そうだ、馬鹿にしやがって閣下の孫だからって、オレたちをナメるんじゃねえぞ
角田も、喚き立てる
そうですとも今の当主は閣下ですそして、閣下は我々の才能を認めて下さっている
嘉田も、必死で叫ぶ
そうだっお前らなんか、関係ないっ全て閣下が決めることなんだからっ
香月仁の興奮は、治まらない
操様こうなったら、誰が瑠璃子様の亭主になるのか、はっきりさせちまいましょうよ
角田も煽る
そうだ、瑠璃子様と結婚して、香月家の当主となるのは操様以外には考えられないっ
大張も、そう言う
うん、オレもその意見に賛同するっ
オレもだぁっ
谷と虎田も
まったくまた、このパターンか
みんなで同じ方向の意見を叫んで無理矢理、多数決でそういう展開にしようとする
操さんだけは、絶対に嫌です
わたくしあなたの様な心の狭い方、大嫌いですから
瑠璃子の言葉が、香月操の心にズサッと突き刺さるが
操様瑠璃子様の意見なんて、どうでもいいんですよっ
そうだ、そうだ閣下が、操様をお認めになって下さればいいんだっ
うん、いずれ閣下のご命令で操様と瑠璃子様が結婚する絶対にそうなる
その時が来るのを、楽しみにしていろよ
希望的な予測だけでよく、そこまで言えるな
あのさぁあんたたちって、もしかして馬鹿ぁ
寧さんが呆れて、そう言った
なんだとぉ貴様、どういうつもりだっ
角田が、寧さんを睨み付けるが
あの香月のおジィちゃんがさこの部屋の様子を、モニターしていないと思うの
ご報告だけ
昨日、午後9時に父が身体に痛みを訴え
10時に病院へ搬送しました
それから様々な検査をしていただき、
午前3時に、病名を告げられました
大動脈瘤破裂ということで今すぐ手術しないと助からない
手術しても、成功する確率は半分だと宣告されました
4時から緊急手術
手術終了は昼の12時を過ぎていました
8時間半にも渡る大手術で
一応、手術は終わったのですが現在もICUの中で、父の意識は戻っていません
まだ予断を許さない状況が続いているそうです
家に戻ったのが午後3時過ぎで少し仮眠を取った後、今日の文を書きました
ちょっと、色々とどうなるか判らない状況が続きそうですので
更新の量や日時が、コンスタントにいかなくなることもあるかもしれません
ご心配をお掛けして、大変申し訳ございません
267.阿呆船
寧さんの投げ掛けた言葉に、プリンス派の連中は沈黙する
あの2人の孫娘が可愛くて可愛くて仕方が無いおジィちゃんがさあんたたちみたいのと同じ部屋に置いていて、何もしないと思う
寧さんがニヤッと微笑む
ここってさ、あのおジィちゃんのホテルなんでしょいつも会議とかで使ってるらしいし当然、盗聴システムとか監視カメラとか完備しているはずだよねっ
はいその通りでございます
麗華が、答える
このホテルは、香月グループのビジネス基地ですから
そうだね、あたしの見る限りそこの天井とあそこの壁、それからそこの柱の飾りの下にあるのは監視カメラだよ
マルゴさんも参戦する
マイクはそことそことそこかなうん、通常ならそういう配置で仕掛けるねもっとも、こういう施設だと、あからさまに監視システムだと判るものは全部フェイクで、それらとは別にカメラとマイクを仕掛ける場合もあるけれど
あーあプリンス派は、みんな真っ青な表情になっている
ジッちゃんに、女の子たちには粗相をするなと言われたはずなのに
やつらのしでかした無礼は、粗相の塊みたいなものだから
結局さあんたたちって、何もゲンジツが見えていないんだねっ
寧さんが、男たちを嘲笑う
いいあのおジィちゃんが、香月重孝が自分の決めた婚約者を拒絶されたっていうのにみぃちゃんとこの子との交際を認めてくれたんだよっ判る
ええっと寧さん
それって、どういうことです
そうですお祖父様は、この方をあたしの旦那様として承認して下さいました
みすずが、改めて宣言する
そうそうっあんたたちがみぃちゃんのことをみすず様って呼んでいるのは香月家のルールでは、あんたたちよりもおジィちゃんに血統の近いみぃちゃんの方が順列が上ってことでしょ
こいつらのルールではそういうことなんだろう
そのみぃちゃんの相手として、この子は認められたの香月重孝さんの決定だよっていうことはどういうことになるのか、判るよねっ
寧さんは、意地悪そうにそう言った
あんたたちはこの子よりも下の立場なんだよっみぃちゃんの旦那様なら、おジィちゃんの義理の孫だからねっ今すでに、あんたたちよりも全然上の存在なんだってのっ
いやそんなことはない
みすずはオレの女だけれど
オレは別に、香月家なんてものに興味は無いし
自分たちの血筋ルールにこだわる、プリンス派の連中にとっては
寧さんの発言は、深刻だったようで
全員集合だ、緊急協議を開催する
いきなり香月操が、そんなことを一派の連中に告げる
は、はい操様
うむ集合
わらわらと香月操の周りに集まるプリンス派9人
顔を合わせて、何やら小声で相談し始める
ホント態度は偉そうなのに
小者だよなこいつら
アキラさんそんな端の方にいらっしゃらないで、中へお入りなさい他のみなさんもお腹が空いていらっしゃるでしょうお食事なさったら
みすずがそんなプリンス派を無視して、司馬アキラと新興グループの連中に声を掛ける
彼らは、ずっとプリンス派に圧されて部屋の出入り口の前に固まっていた
はいありがとうございますお言葉に甘えさせていただきます
司馬アキラが、グループを代表してみすずに礼を言った
ただしあたしのお友達に話し掛けるのは止めて下さいそこのテーブルから、こちらには殿方はいらっしゃらないようにお約束していただけますか
司馬アキラは、みすずの指示を受け入れる
さあ、みなさんみすず様のお許しをいただきました食事に致しましょう
そう致しましょうか
ぞろぞろと料理のあるテーブルに向かう、新興グループの6人
彼らは、みんな言葉数が少ない
お互いに喋ったりもしていない
穏やかにみんな足音を立てないように、そろりそろり歩いていく
みんな、てんでバラバラに食事を摂っている
誰も、司馬アキラの相手はしていない
司馬アキラが特にこちらのグループのリーダーというわけでは無いんだ
やはり兄の司馬貴彦が脱落したのが、ダメージだったのだろうか
あの人たちは、操さんたちほどグループとしてのまとまりが無いんです
オレにみすずが囁く
操さんたちは、香月家の分家と何代にも渡って香月家に仕えている家臣の子供たちですから子供の頃から、お互いのことをよく知っているんです
だからあんなにチーム・ワークがいいのか
香月家では、血筋が全てだ
それ故グループ内で一番、当主であるジッちゃんに近い香月操を、最初から一派のボスと定めている
グループの中で一位が香月家の一族でお祖父様の弟の孫である操さん、二位が弟の昴さん三位が同じく香月家の分家である仁さんその次が香月家ではないけれど、親戚筋の夏木さんという様に最初から順列を決めてしまっているんです
血筋で最初から順列が決まっているから他の連中は、香月操を出し抜こうとはしない
ただそれぞれグループ内で自分が担当すべき役割を演じているだけだ
まあ連中が納得しているのなら、それでいいんだろうけれど
その彼らだけの狭い世界のルールを、オレたちに押しつけられるのは納得できない
こいつらは永遠に自分たちだけで閉じ籠もって、仲良しごっこをやっていればいいんだ
そしてアキラさんたちの方のグループは
みすずが小さな声で言う
こちらのグループのお父様たちは、一代で香月家の企業の中でご出世なさったりご自分の育ててこられた事業が認められて、香月グループに迎えられた方たちですから
親が香月グループの中で台頭してきたのが最近なら
子供の頃からの付き合いなんてあるはずがない
あちらのグループの方は、操さんたちほどまとまってはいないんです
うんあくまでもプリンス派に対抗して、何となく集まっているだけで
司馬貴彦や司馬アキラが、派閥のリーダーというわけでは無いんだ
むしろあちらのグループの中の人たちは、お互いに競い合っていらっしゃいますから
つまり全員が、瑠璃子の夫香月家の当主を狙っている
現実には香月家の古くからの家臣たちの勢力に立ち向かえるだけの実力をお持ちなのは、司馬沖達さんだけです
後の連中は、個別には大した勢力を持っていない
だから固まらざるを得ない
しかし、だからと言って一番勢力のある司馬沖達の子分になるつもりは無い
こっちも、相当にメンドくさい連中なんだな
ちょっと待ってさっき司馬貴彦さんがみすずの婚約者に選ばれたのは、司馬家を香月家の古参の臣下のグループに入れるためっていう話があったよね
みすずと縁付けて、香月家の親戚となる代わりに新興勢力である司馬沖達を、取り込んでしまおうという
それは、操さんたちの勝手な解釈ですわ
お祖父様の考えは、あくまでも古参グループと新興勢力の融和が狙いだったんだと思いますしかしどうやら、そのお話でアキラさんたちはギクシャクしてしまわれたみたいですね
ああ司馬貴彦が、プリンス派の言う通りの理由でみすずの婚約者になることを承認していたとしたら
司馬沖達は、他の新興グループの人たちを裏切って、古参はに鞍替えしようとしていたということになる
だから新興グループの青年たちは、司馬アキラと少し距離を置いて食事しているんだ
気を付けて下さいね旦那様
みすずが、心配そうにオレに言った
次にあの人たちが考えるのは旦那様を取り込むことです
オレを取り込む
はい、旦那様を自分たちの一派に引きずり込んだ方が優位になりますから
いや、だけどオレは香月グループとは関係無いんだし
オレが香月グループに入る気が無いことは、さっきみすずが宣言した
あの人たちは、あたしの言葉ぐらいでは納得してくれないですわみなさん、香月グループだけが全てという人たちですから
ホントメンドくせぇな、あいつら
気を引き締めて旦那様は、香月重孝に認められた男なんですから
みすずはニッコリと微笑む
あ、マルちゃんとあたしで、飲み物とサンドイッチのお皿とか、こっちに運んでくるよっ
あっちの連中を近寄らせない様にするとあたしたちも、食べ物や飲み物のお代わりを取りに行かれなくなっちゃうじゃない今のうちに、運んできちゃうっ
うんプリンス派が協議している今のうちに持って来ちゃった方がいいよな
あ、オレも行きますよ
こういうのは、数人で固まって一気にやった方がいい
では、わたくしも行きましょうっ
麗華がスッと立ち上がる
麗華お姉ちゃんあたし、オレンジジュースお代わりっ
真緒ちゃんが、にひひっと微笑む
まあ可愛いっうん、可愛いっ
麗華は、すっかり真緒ちゃんのことが気に入ったらしい
真緒ちゃんの頭を撫で撫でする
いいでしょ、子供って
渚が、麗華に微笑む
麗華お姉さんも、早く産んだらいいわよ、自分の子って
麗華は、真緒ちゃんを抱き締めながら言った
わたくしは現在が、気力も体力も一番充実している時期ですから今は警護人としての仕事を全うしたいのです
妊娠・出産したら現在の肉体は維持できないと、麗華は考えているらしい
そう、残念ね
残念ではありません真緒ちゃんを精一杯可愛がりますから
真緒ちゃんの柔らかそうなほっぺたを指で突っつく、麗華
真緒ちゃんは、嬉しいそうに笑っている
エプロン・ドレスが必要ですね
エプロン・ドレス
渚が、麗華の言葉に驚く
はい、やはり英国趣味で少女を育てるとしたら、エプロン・ドレスは外せないと思うんです
おい麗華
不思議の国のアリスとマザー・グースの唄はわたくしが言語で教えますもう少し大きくなったら、シャーロック・ホームズですねむふふ楽しみですわっ
麗華は、真緒ちゃんも自分と同じ英国趣味にしたいらしい
渚は、苦笑しているだけだし
問題になるようなら、ミナホ姉さんや克子姉に止めて貰えばいいか
じゃあ、行って来ようか
ちょっとお兄ちゃん
マナが、ちょこちょことオレに寄って来る
どうしたんだ何か取って来て欲しいものでもあるのか
飲み物か、食べ物で
うんっパンツ
パンツ
あのさあそこの椅子のところに、マナのパンティ置きっぱなしにしてきちゃったの
マナお前
さっき、全裸土下座した後急いでドレスを着るように言ったのに
また、下着だけ付けなかったんだな
あそこか
うわっよりによって、プリンス派が協議しているすぐ脇だ
あいつら、話し合いに夢中になって椅子の上に置いてあるパンティに気付いていない
ごめんなさいっ後で何でもお仕置きしていいから取って来て
マナはオレに手を合わす
でもあの男たちの中に、マナを行かせる訳にはいかないし
今ノーパンなんだもんな
判ったよ行ってくる
お兄ちゃん、ありがとう
マナが、オレの耳に囁く
後でいっぱいご奉仕するからねっマナのお腹の中で気持ち良くなってねっ
14歳の美少女は、オレにニッコリと微笑んだ
とにかく行って来よう
マルゴさん、寧さん、麗華ととともに
男たちのゾーンへ侵入する
よし何気ない感じで、マナのパンティに近付こう
パンティではなく
テーブルの料理を見ている振りをして
3、2、1、0
よしゲット
オレは拾い上げたパンティを、ポケットの中に押し込む
おいっ、貴様っ
ドキッとするオレ
オレに声を掛けたのはプリンス派の夏木惇だった
操様が、貴様に話があるそうだこっちへ来い
とりあえず、マナのパンティを仕舞い込んだことは、バレていないようだ
ほらっ、早くしろっ
命令口調でそう言われるとちょっとムカッときた
だいたいオレの位置と香月操の位置は、そんなに離れていない
大声で喋れば、声が届く範囲じゃないか
そっちへ行くつもりは無い話があるなら、そこからすればいいじゃないか
オレは、強く突っぱねた
何だと生意気だぞ、貴様っ
香月仁が、オレを罵る
まあ、いい特に許す
操様
高圧的な態度では、建設的な会話はできないそうだろう、仁
はっ、操様
おい、貴様操様の寛大なお心に感謝するんだなっ
ああ、さすがは操様だ
また、そういう展開かよ
香月操の器をでかく見せようとする演出なんだろうけれど
こう何度もやられたら、小者っぽさの方がよっぽど強調される
とにかく、アホなんだなこいつら
1人1人は頭が良くってエリートなんだろうけれど
自分たちが選ばれた人間だと思い込んだ時から馬鹿の集団になってしまっている
でオレに何が言いたいんです
喋りながら退路を確認しておく
包囲されたら、逃げるのが大変になる
まさか、いきなりオレを攻撃してくることはないと思うが
いや警戒を怠ってはいけない
オレが死ねばみすずは再び、フリーな存在になる
香月操の思い通りの状況を作るため
一か八か、オレを殺そうとするやつもいるかもしれない
それぐらいの想定をし続けなければ
これからのオレは、生きていけない
ああ、ブン殴り棒があればなあ
シザーリオ・ヴァイオラ相手なら、下手に武装している方が危険だということでオレのブン殴り棒は、学校に残して来たんだっけ
では単刀直入に言おう
香月操が、オレに告げた
貴様我々の同士となれ
特別の恩情を持って、操様は貴様を我々の一派に入れてやろうとおっしゃっているのだ
夏木惇が、大きな声でそう言う
その代わり、今後は操様に忠誠を誓ってもらうぞ我々の盟主は操様だいいなっ
何、このドヤ顔で、オレを見下している人たちは
お前ら全員、脳みそ腐っているんじゃないか
我々の仲間になるということは、香月の次の世代を動かす中枢の人間になるということだ貴様にとっても、悪い話ではあるまい
一番貫禄のある夏木惇が、オレにそう言う
みすず様は、貴様を香月グループの企業に入れるつもりは無いとおっしゃったがお前も本心では、野心があるのだろういや、答えなくても良い私には判っている
嘉田が、もったいぶった態度でそんなことを言い出す
あのオレ、パン屋になるんですけれど
パン香月ゼネラル・フーズ社を狙っているのか
そう叫んだのは、大張だ
いや、違います普通のパン屋です街でパンを売っている
まさかフランチャイズ事業を
嘉田パンを主製品とした飲食店チェーンは、香月グループの中に幾つあるんだ
18社、26ブランドあります
おい、お前ら
人の話は、ちゃんと聞け
操様、いいんじゃないですかオレたちみんな、香月グループの中でも金融やマスコミ企業志望ですからこいつが食品関係がやりたいって言うんなら、任しちまったって問題は無いでしょう
角田が、また軽薄そうに言う
そうだな我々の興味の無い業種は、どうせ司馬貴彦たちに押しつけるつもりだったしいいだろう食品関係は好きにやらせてやるから、お前はオレの下になれ
香月操は、平然とそう言った
あダメだ、こいつら
こんなやつらが親の後を継いで香月グループの重役になったら
香月グループは、潰れる
ごめん、悪いんだけどオレはあなたたちの仲間になる気はないですから
なぜだこんな好条件を、なぜ断る
そうだ、幸運の女神には後ろ髪が無いぞ捕らえるなら、今だ
あのさ操様がせっかくチャンスを下さっているのに、乗っからないなんて馬鹿だぜ
うーんと
そうなんですよオレ、馬鹿なんですすみません
オレは、スッとその場から離れようとする
マルゴさん、寧さん、麗華の3人で必要な食べ物と飲み物は運び出したみたいだし
こんな馬鹿の群れの中に、いつまでもいられるか
オレは、みすずたちの方へ戻ろうとする
おい、ちょっと待て話は終わっていないぞ
夏木惇、大張遼、谷楽進らが、オレを捕まえようと動き出す
やばい、こいつらは動きが速い
このままだと囲まれるぞ
オレを助けに、美智が飛び込んで来る
そいつを近づけるな
香月操がそう命じる
そいつは、工藤の娘ですぞ
工藤閣下のお飼いになっておられる警護人の
その娘も父親と同じ奇妙な技を使うはずです
知っているのか、嘉田
はい私の妹の同級生でございますっ
はあ嘉田の妹も、あそこのお嬢様校か
そんな話をしているうちに美智は、あっという間にオレの前に到着する
ご主人様、お手を
オレは美智と手を繋ぐ
参りますっわたくしに付いて来て下さいっ
美智ケガはさせるなよっ
承知
オレと美智は手を繋いだままプリンス派の包囲をすり抜ける
な、何だこいつら動きが変だぞ
工藤流古武術の奥義は、敵の気を反らすことにある
相手の予想の裏をかきオレたちは、みすずたちの方へ戻った
ストップそれ以上、こちらに近寄ることを禁じます
みすずが男たちを制する
それ以上は、実力行使で制するよ
マルゴさんと麗華がみすずの脇に控えている
長身の2人の美女が並び立つ姿は凄みがあった
さてどうなさいます
撲殺ステッキをくるんと廻す麗華に香月操は
この場は引け
苦々しい顔で、そう命じた
一触即発にはならなかった
まあ、もし乱闘になったら
マルゴさんと麗華と美智で、あんなやつらは徹底的にノしてしまうんだろうけれど
怪我人が出なくて良かった
あれ仁さん、あの女
角田がオレたちの方を見て、何かに気付いた
どうした、角田
香月仁が、角田に寄って来る
やっぱり、そうだ間違いねぇっすよ
だから、何がだ
あの女白坂雪乃ですよっ
角田が雪乃に気付いた
何だとお
いや、絶対そうです変装していますが、オレの眼は誤魔化されません前に吉永家のパーティで見たことがありますからっほら、仁さんも一緒に行ったじゃないですか
パーティの席で雪乃と会っている
あっ、そうだこいつ、間違いねぇや白坂雪乃だぜ
香月仁が、喚き出す
はい、今、問題になっている白坂創介の娘です
マスコミは、行方不明だって言ってなかったか
だから、ここに居たんだよっ
プリンス派のやつらが、次々に口を開く
え、ちょっと待って下さいよ皆さん
一番年下の香月昴が、角田や香月仁を制して、そう言った
その人が、本当に白坂雪乃さんだとして
男たちの視線が、雪乃に集まっていく
遠くにいる司馬アキラたち新興グループの男たちも、興味深そうにこっちを見ていた
やばいぞ、これは
香月昴が、みすずに問う
どうして、白坂雪乃さんがみすず様と一緒に居るんですか
今日は、何とか書けました
いつもと執筆時間を変えています
このペースが続けられるかどうか
私塾の連中の名前は、三国志の魏の国の人たちから取っています
ただ、名前を貰った人をそのままモデルにはしていません
元の人物のエピソードは無視して下さい
そうしないと、高木風太が裏切り者ということになってしまいます
魏の国で反乱を起こした魏諷の名前から貰ってますから
同様に華岡侘介(華 佗)も医者じゃないですし、孔守融(孔融)も儒学者じゃないです
268.臣下の礼
部屋の中の視線が黄色と黒の縞々のドレスを着て、面白メイクさせられた雪乃に集中する
雪乃が、口を開く
白坂雪乃さんでは、ありませんナリ
ナリ
いや、間違いないオレは、パーティで出遭った名家の女は全部チェックしているんだっ訳の判んねぇ変装をしているけれど、絶対にお前は白坂雪乃だっ
香月仁が、叫ぶ
違うナリィィあたしは、黃縞黒子ナリぃぃ
そういうキャラ付けでいくんだ、雪乃
何だよっキジマクロコって
黄色と黒の縞々のドレスを着ているから、黃縞黒子なのナリィィ
雪乃それじゃあ、変装だって自分からバラしてるだろ
はあじゃあ、何だ赤白の服なら、赤井白子かッ
た、多分ッナリ
香月仁と、雪乃
お前ら、お笑いでコンビを組め
ていうか、白坂雪乃さんなんですよねあなた
呆れた表情で、香月昴が尋ねる
そうだよッお前は、白坂雪乃なんだよなっ
香月仁が、改めて雪乃に詰め寄る
ちゃうねん
あたしは、大阪で生まれた女やさかい、白坂雪乃はんでは無いんどす
どす
本当に違うのかよっ
さ、左様ッ
左様って
違うっちゅーたら、違うんでごわすあたしは、雪乃はんでは無いんでござるよ、ニンニン
新しい才能の誕生を目撃しているのかもしれない
だ、だいたい白坂雪乃さんのようなお洒落な人は、あたしみたいなオモロイ格好はなさりまへんどすえ雪乃さんは、お洒落で、お洒落で、お洒落することに人一倍気を遣っているお人なんでございますけん
クッと涙目になっていく雪乃
こんなお笑いタレントみたいな変な格好をさせられてこんな姿で、連れ回されるなんて屈辱よこんなの、絶対に納得できないわっあたし、あんたたち全員、絶対に許さないっ許さないんだからねっ
オレたちを睨んで雪乃は一気にヒート・アップする
それって、自分は白坂雪乃だって認めるってことなの
ほえっ
だって、そうでしょお笑いタレントみたいな格好をさせられて、屈辱感を抱いているって言うそんなら、あなたは誰なわけ
マナはサディスティックな笑みを浮かべる
本当にこいつは実の姉に対しては酷い
歪んだ愛情なんだと思うけれど
口を大きくパクパクさせて、困惑している雪乃
雪乃の中でアイデンティティが、ぐらぐら揺れまくっている
あったしは、黃縞黒子ナリィィ
それは、もうやったでしょ
マナは雪乃のネタが、振り出しに戻るのを許さない
雪乃の眼に、涙が溜まっていく
あたしはこんなのあたしじゃないわよっあたし、こんなの嫌なんだもんっこんなの違うわよっあたしは違うんですからっ
だから違うって言ってるあなたはだあれ
ハッと姉を鼻で笑ってマナが尋ねる
あんた、もういい加減にしなさいよねっ舞夏
雪乃がキレる
姉を馬鹿にして嬉しいの楽しいのそんな連中の仲間になって
その言葉にプリンス派の嘉田が
まさか白坂舞夏
うぬっどういうことだ、嘉田
大張遼が、嘉田に尋ねる
いえ、確か白坂創介には、白坂雪乃の他に白坂舞夏という娘がいたはずです
知っているか、仁
香月操が、香月仁に聞く
いやそいつとはパーティでは会ったこと無いですね
マナは、身体が弱くて数年前まで、東京の家族から離れて静岡の親戚の家で療養生活をしていた
だから、雪乃の様に名家のパーティに頻繁に顔を出したりはしていないはずだ
また、派手な場所に派手な衣装で行って脚光を浴びるのが好きな姉にマナは、コンプレックスを抱いていた
東京に戻ってきた後でも、マナが雪乃と一緒にパーティに行くことはほとんど無かったんだろう
あたしはマナですお兄ちゃんの妹よあんたみたいな人とは、全然関係無いんだからっ
父の悪行を知り母と祖父に見捨てられ
何より、オレにレイプされたことで
白坂舞夏という少女のアイデンティティは崩壊し吉田マナという別人格を再構成させてしまった