遙花さんが美智さんと決闘なさるんですか
驚く、瑠璃子さん
はい姉上と勝負致します
美智が、ギラッとした眼で答える
その手は、ちゃんとパンフレットを折り続けていた
ちなみに、この段階でも作業を続けているのは
美智と、メグと、寧さんとマルゴさんだけ
マナは、こっちの話を聞くのに夢中になっている眼をキラキラさせて他人の家の事情に興味があるんだろう
寧さんは、こういう時に手を抜いたりしない根は真面目な人だから耳はこっちに傾けながらも、ちゃんと手は動かし続けている
メグは、生真面目過ぎる子だから黙々と作業している香月家の事情を聞いても、自分にはどうすることもできないと割り切っているのだろう
マルゴさんはちゃんと話を聞きながら、作業している同時に二つのことをすることができる人なんだ手は動かしながら、頭では現在の状況を冷静に分析しているのだろう
オレはみすずと一緒にいるから、何か作業しながらだと瑠璃子さんに失礼な感じがして申し訳無いけれど、手を止めている
そして雪乃はただ、ポーっとして机の上を見ていた何で、あたし、こんなところにいるんだろうという顔をしてその気持ちもまあ、判る
妹の美智に負けて、鼻が折れれば遙花さんの増長も止まりますご自分が、ボディーガードに不向きなことに気付いて、空手の世界だけに専念して下さるでしょうそこまで、徹底的に彼女を追い詰めます
みすずが可愛い従姉妹にそう言った
美智さんが、遙花さんに勝たれる
美子さんが、驚いている
無理も無い
美智と遙花さんでは、年齢も体格も全然違うし
遙花さんのことは、空手の試合なんかでその強さも知っているだろうけれど
美智の工藤流の闘いは、見たことが無いのだろう
はい美智が、圧倒的に勝ちます
みすずが、断言した
ああそれで決闘なんですね
瑠璃子さんが、納得する
大丈夫よ、美子決闘なら、遙花さんには勝ち目は無いわ
瑠璃子様
遙花さん、あんな靴で警護に来るような方ですから
瑠璃子さんは、ちゃんと気付いている
今日の遙花さんパンプスでしたわ
瑠璃子さんが、みすずに言った
ええあんな脱げやすそうで、カカトの脆そうな靴でボディガードだなんて、人を小馬鹿にしているとしか思えません
みすずが、怒りを込めてそう言った
仕方ありませんわ遙花さんは、わたくしの警護というより、ご自分のプロモーションのつもりで、今日はいらしているのですから
瑠璃子さんは、そう答える
ですからそんな警護役には、退いていただかないと
みすずの言葉に瑠璃子さんは
判りました全て、みすずお姉様にお任せします
瑠璃子さんの承諾を得た
これで、美智は正々堂々と遙花さんをブチのめすことができる
そういうことだから美智、いいわね
美智の迷いも、フッ切れる
ところで瑠璃子さん
みすずが、15歳の従姉妹に尋ねる
はい、何でしょうみすずお姉様
瑠璃子さんは、もうすっかりみすずを姉として受け入れている
瑠璃子さんセックスって言葉、知っているかしら
お前いきなり、なんてことを
いいえ申し訳ありません聞いたことがございません
聞いたことが無い
美子あなたは知っている
すみませんわたくしも、寡聞にして存じません
美子さんも知らない
美子さん、高3だろ
いや、この顔はマジだ
本当に、この人たちセックスって言葉を知らないんだ
セックスって、どのようなことですか
瑠璃子さんは、ニコニコしながらみすずに尋ねる
ということで頭も良くて、判断力もあり、おっとりとした鷹揚な性格のお嬢様なのに性的な知識が一つもない瑠璃子さんなのでした
この辺は、香月閣下の趣味です
わざとそういう環境にして、育てています
電車で会った不思議な人たちについて
1.山手線に乗っていたらオートバイの革のライディングスーツを着て、ヘルメットを被った人が座席にちょこんと座っているのを見たことがあります
これは、そんなに不思議じゃないですね
多分、どっかでコケてバイクが壊れたので、電車に乗っていたのでしょう
何で、電車の中でヘルメットまで被っていたのかは判らないですけど
2.高田馬場の駅でテンガロンハットで、完全に西部劇の格好で電車に乗って来た人を見たことがあります足もウェスタンブーツで何より、腰にホルスターを付けて、2丁拳銃を下げていました
いや、多分、モデルガンだと思いますけれど
マジで、ピストルまで付けてました
そこまで徹底的にウエスタンな格好をしているその人は
なぜか、伊勢丹の紙袋を持っていました
理解ができません
3.車内のオバサンが、男の子に言っていた言葉
あんたは何で人殺しの道具ばっかり欲しがるのよっおもちゃ屋さんで売っている男の子の玩具って、どうして人殺しの道具ばっかりなのかしらっ納得いかないわ
219.好き好き大好き
えっ、瑠璃子さん知らないのっ
マナが、大きな声で叫ぶ
いや、待て
マナは、マズイ
絶対に危険なことを言い出すんじゃないのか
海外旅行に行った時の入国カードとかに書いてあるじゃん
はいぃぃぃ
入国カードって何だよ
思わず、尋ねた
お兄ちゃん海外旅行、したこと無いの
あるわけない
今度、行きましょうね旦那様っ
みすずが、オレの腕に寄り添う
いや今は、そんな話をしている場合じゃ
ほら、よその国へ行く時に書く入国カードの名前を書く欄の後に男か女かって、印をつけるところがあって
おいマナ
お前が言っているのは性別の方のSEXかよ
そうでしたっけ、美子
瑠璃子さんが、三つ年上のお付きの少女に尋ねる
さあ、覚えていませんわわたくしたちが、海外に行く時はそういう物は全て、あらかじめ、秘書の方が全てご用意して下さいますし
そうよねわたくしたちは、自筆で署名しなければいけないところにサインするだけですものね
あの、海外旅行って家族旅行とかじゃ無いんですか
もちろん、家族で参りますわ
瑠璃子さんは、答えた
わたくしたちは、まだ未成年ですから旅行は、お父様たちとしか参りません
何人ぐらいで、行かれるのですか
怖いが聞いてみる
そうですわね家族旅行の場合は、お父様とお母様と、秘書の方が数人それに
ボディーガードの方も、4、5人はいらっしゃいますよね
そうよねだから、毎回、大体15人前後ですわね
海外旅行もですか
海外の場合は、国によっては通訳の方も付きますし
現地でガイドの方に同行していただくこともありますよ
まあ、それでも20人は越さないですわ
そんな家族旅行は無い
わたくしの家では、毎年2回の海外旅行は個人秘書やボディガードの方々の慰安旅行も兼ねていますから
断じて、家族旅行では無いぞ
と、とにかく性別の方のSEXの文字も見たことが無いんだ
あの瑠璃子さんて、普段、テレビとか観る
寧さんが、恐る恐る尋ねる
いいえ一切、観ません
あやっぱり
ニュースとかも観ないの
寧さんがさらに尋ねる
はいわたくしは、政治的なことや、社会的なことは知ってはならないことになっています
え、どうしてっ
瑠璃子さんは
わたくしは、香月家の象徴ですわたくしが、世事に詳しくなると将来、わたくしの夫になる方が煩わしく思われるかもしれませんわたくしは、香月の家を継承しますが香月の影響下にある各企業については、一切口出しは致しません経営は全て専門の方たちにお任せするその様に教育を受けておりますから
世の中についての情報を閉ざされている
あでも、学校のお勉強の範囲なら許されていますから社会や政治の仕組みは、知っていますわ現代史も、教科書に出ているところまででしたら
理論だけは知っているってやつか
本とか小説は、お読みにならないんですか
いえ、本は好きですよ家の図書室にある本を楽しんでおります
おうちに図書室があるんですか
はいわたくしが読むべき本は、全てお祖父様がお選び下さっていますのでわたくしと美子は、図書室の本を順番に楽しんでおります
本まで香月閣下の選んだものしか、読ませて貰えない
ちなみに瑠璃子さんが一番好きな本て何
寧さんが尋ねる
トルストイの人はなんで生きるかですわ
残念ながら、オレは読んだことがない
雑誌とかも読まないんですか
はい、そういうものは見ないようにしております
あのお洋服とか、髪型とかは、どうやって決めているんですか
今度は、メグ
それはわたくしと美子には、お父様がスタイリストの方に似合う洋服を探していただいていますからわたくしたちは、その方の指示通りに着ています
髪の毛も美容院の先生にお任せです
この二人には選択の自由が無い
いや、自分一人にだけ自由が無いのなら不満にも思うだろうが
瑠璃子さんと美子さん二人揃ってそうだと、違和感を感じないのだろう
今日は、楽しいですわね美子
瑠璃子さんが、お付きの少女に言った
こんなに色んな方とお話しできるなんて
あたしたちの学校は、幼稚舎からずっと顔触れが同じですから
みすずが、説明してくれる
小中高の1年生の時に、多少の新入学生もいらっしゃいますがほとんどは、幼稚舎からの持ち上がりですわね
美子さんが補足する
わたくし、こんな性格ですし人様のような流行などには詳しくないですから、段々、学校の中でお話しする方も減っております
まあそうだろうな
女の子同士じゃ、年齢が上がっていくに従って、次第に会話が噛み合わなくなっていくだろう
お寂しくは、無いのですか
メグが聞く
寂しいわたくし授業中以外は、いつも美子と一緒ですしクラスには、美智さんがいらっしゃいますから、心細く思ったことはございませんわ
いつも一緒なんですか
はい、美子とは一緒に暮らしておりますしあ、寝室は別ですよ
瑠璃子様が小学生の時までは同じベッドで寝起きしておりましたが中学生からは大人ですので、今は別の部屋で休ませていただいております
わたくしは、ちょっと寂しいのですが
美子さんという人は、完全に瑠璃子さんに人生を捧げている
いや、それが当然だと思い込んでいる
瑠璃子さんが3歳、美子さんが6歳の時からずっと一緒に居るんだから
マナ、この間、メグお姉ちゃんとお兄ちゃんと同じベッドで朝まで一緒だったよ
マナが、突然、そんなことを言い出す
それって珠代さんのラブホテルに泊まった時のことかよ
朝まで一緒って言うよりセックスしっぱなしだったじゃないか
それを言うなら、あたしなんかヨッちゃんと二人っきりで抱き合って寝たもんっ
寧さんが、クシシッと笑う
そんなこともありましたね
雪乃が、チラッとこちらを見た
ああ雪乃と最初に犯した夜は、朝まで一緒だったっけ
オレのそんな表情にみすずが気付く
旦那様みすずとも、一緒にお泊まりして下さいっ
うんじゃないですみすずも夜中、旦那様を独占してみたいですっ
ああ、判ったよ
オレは、笑って返答した
あーっ、マナもお兄ちゃんと二人だけでお泊まりしたいーっ
均等にスケジュールを組みましょう
マナとメグが、そんなことを言う
そうだよね克っつんと渚さんの日も作らないといけないし
寧さんが、真剣な顔でそう答えた
でも、みんな一緒の夜も楽しそうだと思う
マナが意見を言う
そういう日も作りましょうでもヨシくんを独占できる夜は、欲しいです
うん、それは絶対にいるよっ
一度、姉妹会で相談致しましょうね
うん、姉妹会の総会だぁ
メグ、マナ、みすず、寧さんで盛り上がる
何だか、楽しそうですよね
瑠璃子さんが、4人を見て微笑む
本当に仲の良い姉妹のようですわ
美子さんも、4人の様子に驚いている
香月家の人間であるみすずが、他の3人に溶け込んでいるのが意外なんだろう
ええ、姉妹なんですあたしたち、姉妹になる誓いをしたんです
まあ、そうですのそれで、みなさん、みすずさんのお身内なんですね
はいですから、あたし今は、全然寂しくありませんみんな、あたしの家族同然いえ、家族以上に親しい姉妹たちですから
みすずは、会心の笑顔でそう言った
とっても羨ましいですみすずさん
瑠璃子さんが、微笑ましく見ている
みすずさんには、愛し合う男性がいらして姉妹の方々もいらっしゃるなんて
瑠璃子さんにだって、美子さんがいらっしゃるわご姉妹同然の
メグが、言った
滅相もございませんわたくしは、瑠璃子様にお仕えする身分でございます
美子さんは、激しく否定する
そんなこと言わないで瑠璃子さんも美子さんも姉妹会に入ろうよっみんなで一緒にお泊まりしたり、ご飯食べたり、お喋りしたりしよっきっと、楽しいよっ
寧さんが人懐っこい笑顔で、そう言う
うんうん、そうだよそれがいいとマナも思いますっ
マナもヒートアップしている
お言葉は嬉しいですが
わたくしたちは
瑠璃子さんと、美子さんは寂しそうに顔を見合わせた
わたくしには、香月の娘という立場がございますし
そういうの別にどうでもいいんです、オレたち
みすずが、にこやかにオレを見る
はいあたしたちには、関係の無いことです
身分も立場もそういうのは一切無いんですあたしたちだから姉妹なんです姉妹になったんですそういう姉妹会を結成致しました
最初にお話しした通り旦那様は、あたしが香月の家の娘だということは、全く知らずにみすずを愛して下さいました
うんそういうの全然関係無いあたし、ミィちゃんのこと大好きだもんっ
みすずも、寧さんが大好きです
マナだって、みすずさんのこと大好きだよっ
みすずも、マナちゃんのこと好きよ
それぞれが、それぞれに好きを告げる
あたしもみすずさんのこと好きです
みすずも、恵美さんのことが好きです
メグちゃん大好きぃぃぃぃっもう、抱き締めちゃう
あたしも寧さんが好きですっ
メグお姉ちゃん、いつも優しいしマナ、感謝してるよ大好きっ
あたしも、マナが大好きっとっても、大好き
マルちゃん、愛してるぅぅっ
あたしも寧のことが好きだよ
マルゴさん、格好いいから、マナ大好きっ
マナちゃんは、可愛いね
うふふふ旦那様、愛してますっ
あーっ、ミィちゃんずるーいあたしもヨッちゃんが好きぃぃぃ
ヨ、ヨシくんあ、愛しているからねっ
お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん好きぃぃぃ
吉田くん、好きだよ
まったくこの姉妹たちは
オレも好きですマルゴさん好きだよ、みすず寧さん、大好きですメグオレも好きだよマナもとっても、大好きだ
オレは、一人一人にそう告げる
ほらほらほーら
寧さんが雪乃を見る
黒子ちゃんはどうなわけ
雪乃はいきなり、ハッとして
パンフレットを折る作業を再開する
いや、それはいいからあんたの今の気持ちを言ってミソ
き、嫌いよ
手が震えている
好きなわけないじゃないそんな男嫌いよ
嫌い嫌いも好きのうち
その言葉に、カッとする雪乃
嫌いですっ嫌い嫌い、大嫌いっ
オレは好きだよ最初に会った時から
ああたしは嫌いよあんたのことなんて
モジモジする雪乃
むふふ、瑠璃子さん、覚えておいて下さいこういう症状をツンデレと言いますっ
寧さんが、また変なことを言い出す
ツンデレどこの国の言葉ですか
イタリア語です
相手のことが好き過ぎて、逆に嫌いと言ってしまうことを古代ローマの哲学者ツンデレアヌスの名前を取ってツンデレと呼ぶようになったのですっ
そうなんですの一つ、勉強になりましたわねぇ、美子
はいわたくしも始めて知りました
寧さんみたいな、無邪気な悪戯っ子に会ったことが無いんだな
超箱入りのお嬢様だもんな
ち、違うわよあたしは、本当にその男が嫌いなのっ大っ嫌いなんだからっ
雪乃は叫ぶ
ツンデレなんですね
興味津々に雪乃を見る瑠璃子さん
はい、ツンデレでーすっ
寧さんが、クフフフと笑う
本当にみなさんお互いのことが、大好きなんですね
美子さんが、オレたちを見て、そう言った
あらあたしは、美子さんのことも好きですよ
もちろん瑠璃子さんのことも
瑠璃子さんの頬が、赤くなる
あたしも好きだよっ瑠璃子さんも美子さんもっ
寧さんが突貫するっ
あたしも好きです瑠璃子さん、美子さんあたしとお友達になって下さいませんか
メグがニコッと微笑む
マナも好きですっ瑠璃子さん美子さんマナはまだ14歳の中学2年生なんでマナのお姉さんになって下さいませんかっ
マナがそんなことを申し出る
あたしも好きだな瑠璃子さんも美子さんも、とっても素直で良い人たちだと思うし
黒子ちゃんは、どう思うこの二人
また寧さんが、雪乃に振る
うええ
今度こそ、戸惑う雪乃
黒子ちゃんは、どう思うかって聞いているのよ
寧さんの言葉にみんなの視線が、雪乃に集中する
い、いいんじゃないの
何がいいのよ、黒子ちゃん
いやこの子たち、お金持ちの娘なのに偉ぶってないし、素直だしちょっと、世間知らずなのが心配だけど悪い子たちじゃないと思うわ
どうして上から目線なのか判らないが
お前だって、白坂家のお嬢様だったくせに
しかも、いつも偉そうにしていて廻りに迷惑を掛けまくっていた女がよく言う
そういう感想じゃなくってさ好きか嫌いかを聞いているのっ
寧さんの強い言葉に、雪乃は
こんな可愛い子嫌いなわけがないでしょっ
その言葉に瑠璃子さんは
顔を真っ赤にさせて
トドメは旦那様が刺して下さい
瑠璃子さん美子さん
二人が、オレを見る
好きです瑠璃子さん美子さんも、大好きです
瑠璃子さんは、顔を紅潮させたまま
それはあたしたちが香月の家の人間だからですか
オレは笑って答えた
あなたたちが、可愛らしい女の子だからです
二人の眼がハッとする
オレはここにいる、他の子と同じくらいあなたたちが好きです
みすずと寧さんとメグとマナとマルゴさんと雪乃と
みなさんと同じ
瑠璃子さんが、驚いている
はい同じです瑠璃子さんと美子さんも
いえそんなのはいけませんっわたくしが、瑠璃子様と同格になるなんて許されないことですわ
常に瑠璃子の下に居た美子さんは同じという言葉に、抵抗があるようだった
オレの心の中でのことですから仕方無いじゃありませんか瑠璃子さんも、美子さんも同じくらい好きです
素晴らしいわ何て、素敵なのわたくしみなさんと同じなんですねっ
はい、同じです
あたしそんなことを言っていただくのは、生まれて初めてです
感激している瑠璃子さん
瑠璃子さん旦那様もあたしたちも、あなたたちを愛していますみんな等しく同じくらいあなたは、どうですか
瑠璃子さんがオレたちを見る
あ、あたしも愛していますっ愛してもいいですか
もちろんですどんどん好きなって下さいあたしたちも、瑠璃子さんたちをどんどん好きになりますから
みすずの言葉に、瑠璃子さんは
ああみすずお姉様お姉様のお言葉の意味が、ようやく判りましたわあたし、なりますみなさんの姉妹にいいえ、姉妹にして下さいっわたくしと美子を
心配そうに、主人の顔を見る美子さん
大丈夫よこの方たちは信頼できるわずっと、あたしたちに心を開いて下さっているじゃない
これからは美子もあたしのお姉様になるのよ
他の方が居る時は、これまで通りにしますでも、二人だけや、他の姉妹の方と一緒の時はねっ
美子さんとずっと二人だけで、寂しかった瑠璃子さんは
姉妹会への加入に、すっかり喜んでいる
美智良い機会だから、あなたも姉妹会に入りなさい
みすずはわざと放置していた美智に、声を掛ける
いえあの、わたくしはみすず様の家臣ですから
一人だけ蚊帳の外に置かれていて、寂しい思いをしていた美智は
それでも自分は警護役なんだと言い張る
あたしの妹にしてあげると言っているのこれが、最後のチャンスよ
その言葉に美智は
は、入ります入らせていただきますですっ
語尾がおかしくなっているぞ
これでお姉さんとの決闘に迷いは無いわね
血の繋がった本物の姉を失うことになったとしても姉妹会の絆は、永遠ですあたしは一生、あなたの姉になりますそのつもりで付いて来なさいっ
はいっみすず様ぁ
楽しい時間になった
再び、みんなでパンフレットを折る作業に戻る
今度はみんなが、瑠璃子さんに自分の話をした
特に、マナが自分の中学校での、ダンス部での話をして
瑠璃子さんは生まれて初めて、姉という立場で妹の話を聞くことを楽しんだ
それからメグの陸上部の話も、興味深く聞いていた
マルゴさんがアメリカの話をすると瑠璃子さんも、海外旅行の時の話をした
楽しそうに
嬉しそうに
あたし美子以外の方と、こんなに心を開いてお話したの初めてです
それからみすずが、マルゴさんと美智に武術の話を振って
二人がそれぞれ、護身術についての簡単な話をする
美智さんは幼稚舎の頃から、ずっとクラスメイトでしたのに、こんなにお喋りをするのは初めてですね
また、瑠璃子さんが感嘆する
わたくしは、武術に関する話しかできませんが
いいえ、とっても面白いですわ
祖父に定められた範囲の知識しかないのだ
その上、超お嬢様校で非常に幅の狭い交友関係しかなかったわけだし
どんな話だって、新鮮で興味深く感じるらしい
みんなで楽しく話ながら、作業しているうちに
3500枚のパンフレットの作業は、無事に終了した
瑠璃子様もうそろそろ、舞台稽古の順番になります一度、楽屋に戻りましょう
美子さんが瑠璃子さんに、そう告げる
そうねでは、みすずお姉様、みなさま
立ち上がる、瑠璃子さんにみすずは
待ってみんなと握手して行きなさい美子さんも
これからはみんなあなたの姉妹なんですからね
まず、みすずが瑠璃子さんと握手する
よろしくね、瑠璃子さん
はいありがとうございますみすずお姉様
それからは、年の順だ
みんなと仲良くしてあげてね、瑠璃子さん
はいマルゴお姉様
よろしくっ大好きだよ、ルリちゃんっ
あの最初にお会いした時から、綺麗な人だなって思ってました寧お姉様
次はオレか
うんと、よ、よろしく
こちらこそお兄様可愛がって下さい
よろしくお願いします、瑠璃子さん
はい、恵美お姉様
お願いしますっ瑠璃子お姉ちゃん
はいマナさんっ
よろしくお願いします
こちらこそ美智さん
こっちへいらっしゃい、黒子さん
みすずに言われてすごすごと、雪乃が来る
よろしく、お願いします黒子お姉様
よ、よろしく
握手する二人
オレたちは、美子さんとも同様の挨拶と握手を交わした
瑠璃子さんとの間に差は付けない
完全に同格の姉妹として扱う
では、お先に楽屋へ戻りますお姉様
瑠璃子さんが、みすずに一礼する
あたしもすぐに行きますから
みすずが、そう返事をすると
ところでみすずお姉様
瑠璃子さんが尋ねた
あのセックスというのは、何だったのですか
あその話を忘れていた
その話はまた今度みんなでお泊まりした時に教えてあげるわ
お泊まりで教えるって
他の方に聞いてはダメよあたしと旦那様が、あなたと美子さんにじっくり教えてあげるから
みすずは、笑顔で妹にそう言った
はい、お姉様楽しみしていますねっ
瑠璃子さんは、無邪気な笑顔でそう答えた
黒い森の子たちは連携プレーを覚えました
今後は、集団で困難を乗り越えていく機会も多いと思います
220.香月重孝の退屈
瑠璃子さんと美子さんの姿が見えなくなると
マルゴさんが、自分の上着の胸ポケットに向かってささやく
もう平気だよ
ミナホ姉さんと克子姉がやって来る
集音マイクを携帯電話に繋げて、音声を送信していたんだよ
ミナホ姉さんと克子姉は、耳に挿したイヤホンを外しながら、ククッと微笑む
二人とも今の瑠璃子さんたちとの会話を聞いていた
いいのかしら、みすずさん香月様のご意志に背くことになるのではなくって
そう言いながらも、ミナホ姉さんの口元は微笑んでいた
構いませんわあたしたちが、幸せになるにはこれしか方法がありませんから
お祖父様のご意志に沿って決められた婚約者と結婚し、香月の家の奴隷となるのは我慢できません瑠璃子さんもその運命から解放します
瑠璃子さんとっても可愛らしいし、聡明そうなお嬢様だったわねいいの、みすずさん下手をすると、吉田くんを獲られちゃうかもしれないわよ
そのミナホ姉さんの言葉に、みすずは
そんなことはありません旦那様は、ちゃんとどの女も平等に愛して下さいますわ
あら随分と自信があるようね
はいあたしの旦那様ですから
いやオレは
みすずオレは、何の取り柄も無いただの高校生だぞ
頭だってそんなに良くないし
そこがいいんですっ
えいいのか
馬鹿がいいのかみすず
でも、旦那様には勇気があります決して、あたしたちを裏切らない清廉さがあります旦那様みたいな方で無いとダメなんですあたしや瑠璃子さんみたいな娘には
みすずさんと同じくらい聡明で、想像力も洞察力のある子だったよね
うんただのお嬢様では無いわちゃんと、自分の立場とか廻りの状況とかが判っていて色んな人の思惑とか、野心とかも感じながら、それでもきちんと自分が生きるべき道を進もうとしていたわ
メグが、そんな風にまとめる
確かに想像していたよりも、何倍もしっかりとした子だった
そうだね自分の見えている範囲のことについては、ちゃんと判っているバランス感覚もあるとっても良い子だったよ
自分の見えている範囲って
彼女たちは香月閣下に徹底的に情報遮断されているからね本物の超・箱入り娘なんだよ
確かに性的な知識は、皆無だったし
政治や経済なんかの社会問題にも疎そうだった
そうよ世間の人たちからは、世間知らずで何も判らないお嬢様にしか見えないようになっているのよ
ミナホ姉さんが、そう分析した
あなたたちにみたいにちゃんと、時間を掛けてお話しすれば、瑠璃子さんたちの本当の聡明さが判るんでしょうけれどほとんどの人たちは、ほんのちょっと話しただけで頭の中が天国の可哀想なお嬢様たちと思い込むわ
テレビは観ませんだし、流行とかは知りません
服や髪型はスタイリストと美容師に任せていますだもんな
同年代の子とは、そこで会話が終了だ
あげくに、愛読書はトルストイの人はなんで生きるかだし
普通の子たちとは、会話が成立しない
簡単に超・箱入りのお嬢様のレッテルを貼って祭り上げて、おしまい誰も近寄ろうとしない香月の家の恐ろしさは知っているからみんな悪口さえ言わないでしょうね
存在していることは認めながらの無視
そうして瑠璃子さんは、美子さんだけを友人にして成長して来た
みんな、あの子たちの本質には気付かないんだろうねっだから、工藤遙花みたいな子にナメられるんだよっ
工藤遙花は瑠璃子さんをナメている
鷹揚なだけのお嬢様たちだからさ自分の好き勝手にできると思ったんだよねだから、今日みたいな華やかな席に着飾ってやって来てさ瑠璃子さんのボディーガードってことで、セレブの人たちに名を売ろうとしたわけでしょ
あのピンクのスーツやパンプス
4人の手下は、そういうことか
姉上も、前からああでは無かったんですやはり、インターハイで優勝し、マスコミに取り上げられたことが大きかったんだと思いますそれまでは、細々と地道に鍛錬を重ねてまいりましたが最近は、華やかな場所に行くことを楽しみにしてしまって
真面目で地味な生活をしていた人ほどついつい、足を踏み外してしまうんでしょうね
あ、高3でようやくデビューしたんだそりゃ、浮き足立っちゃうよね
中2で大人の世界に憧れていたマナが、笑う
情けない話ですテレビを観た方から、ファンレターなどをいただいて、すっかり舞い上がってしまって最近では、化粧品だの洋服だのに凝るようになってしまいました
美智の言葉に、マナは
お姉さんがそんなになっちゃうとツライよねマナも、お姉さんがお洒落キチガイな人を知っているからよく判るけれど
いやそれ、自分のことだろ
オレは、洋服と化粧品でぐちゃぐちゃだった雪乃の部屋を思い出す
マナの中で、白坂舞夏の記憶はどうなってんだ
二重人格とかになっているんじゃないだろうな
ちょっと、心配になる
そういえば遙花さんたち、戻って来ませんね
確かに遅すぎるような気がする
美智さんが怖くなって、逃げたんじゃないの
マナが意地悪そうに言った
それはありません姉上は、わたくしを弱いと思っていますから
美智が、穏やかにそう言う
それに今夜の発表会が始まる前に、尻尾を丸めて逃げ帰るということは姉上の頭には無いはずです
死んでもセレブの方々への売り込みは果たすということか
おそらく確実にわたくしに勝つ策をろうじているのでしょう
策
姉上は、黒い森のみなさまを信用しておりません
そうか、途中でマルゴさんが乱入するとか考えているんだ
本当に、とことんナメられたものだね
マルゴさんが、ニヤッと笑う
まあどんな手を考えているのか、だいたい想像がつくよ
うわぁマルゴさん、にこやかに怒っているぅぅ
それは、マルゴに任せるわ話を瑠璃子さんたちに戻すけれどね
ミナホ姉さんが、話を戻す
あたしと克子が姿を現さなかったのはね瑠璃子さんたちに、警戒心を起こさせないためよ
警戒心
吉田くんや、恵美やマナさんは同世代だから問題無いしマルゴや寧は、性格的には素直で、ある意味ピュアだから
ある意味じゃなくっても、ピュアですぅ
ミナホ姉さんの言葉に、寧さんがプーたれる
まあ、あたしは多少怪しくても、吉田くんのボディ・ガードなんだろうって思ってくれるだろうし
マルゴさんがオレのボディ・ガード
みすずさんの交際相手として紹介されたんだから瑠璃子さんは、吉田くんのことをどこかの名家のお坊ちゃんだと思っているよ
いや何で
オレは、こんなに庶民丸出しの顔をしているのに
今、吉田くんが着ているスーツ、本当に良い物なんだよ
このスーツはミナホ姉さんのお祖父さんの物を借りた
まさか10万円とかするんですか
オレの問いに、マルゴさんは笑う
100万円払ったって買えないよ
そ、そんなに
その布地はビンテージ物だから今では、もう作れないんじゃないかなだから値段は付けられないよ
そんな高価な物をミナホ姉さんは、オレに貸してくれた
元々、体型が似ていたんでしょうねそんなに時間が掛けられなかったのに、良い感じに仕上がったわ我ながら、会心の出来映えよ
克子姉が自分の仕立て直ししたスーツを見て、嬉しそうにそう言った
瑠璃子さんや美子さんならそのスーツの価値は一目で判るよ
そういう一流の観察力を持った子たちだったからあたしと克子は、姿を現せなかったの
一度でも、売春婦に堕ちてしまった女には、どうしても暗い影が付いてしまうから判る人には判るのよ
マルゴさんと寧さんは裏の世界の人間でも、娼婦では無い
だけど、ミナホ姉さんたちは
さすがにみすずさんが娼婦と一緒に居るのは変でしょうあたしたちが近づいて、瑠璃子さんが警戒してしまったらよくないでしょうせっかく、みすずさんが瑠璃子さんたちの心を開いて、あなたたちと仲良くなったのに
ご配慮、痛み入ります
みすずが、ミナホ姉さんに頭を下げた
では、聞かせていただけますか香月閣下が、みすずさんと瑠璃子さんについて企てていることについて
はいあたしも、みなさまにご報告するつもりでした
さっき、瑠璃子さんが香月の家の中で、あたしと瑠璃子さんを争わせようとする人たちがいるという話がありました
うんそんな話を聞いた
それはお祖父様が、そう仕向けていることなんです
香月閣下がわざと二人の孫娘を対立させようとしている
やはりね
ミナホ姉さんが、そう呟いた
そこまで香月様は、ご退屈なさっているのね
退屈
退屈しているからって孫娘を対立させて、争わせる
はいお祖父様は、香月の家を内部分裂させて争わせその過程で、悪い人間を排除なさるおつもりなんだと思います
みすずは、暗い顔でそう答えた
半分はそれが目的なんだと思います
もう半分は
後はお祖父様の趣味ですあたしと瑠璃子さんを、わざと歪めて育ててどう成長するかを楽しんでおられるのです
あたしと瑠璃子さんは2歳違いですあたしたち以外に、お祖父様に孫がいないのはお祖父様がそう命じられたからですご自分の長男と次男にそれぞれ、娘を一人ずつ産むように2歳違いも、最初からの計算です
でも娘を産むったって、男の子が生まれてくる可能性だってあるだろ
今は、性別は産み分けできるんですよそういう技術が確立されています
どうして、娘でないといけなかったんだ普通は、跡継ぎには男の子を欲しがるもんなんじゃないのか
お祖父様は香月の家に、わざと波乱を起こしたかったんだと思います
波乱
後継者が女ならば後々、問題になる要素が増えます誰を嫁にするかより、誰が婿になるかの方がモメる要素は大きいですから
みすずや瑠璃子さんの結婚相手は香月家の次の支配者になれる
一族の誰もが自分の息子を、送り込もうと画策するだろう
でもみすずさんと瑠璃子さんの婚約者はすでに決定しているんだろう
はいあたしは、それがどなたなのか知っています自分の婚約者だけは瑠璃子さんのお相手は知りませんしかもあたしの相手すら、まだ公表されていませんから
誰が婚約者なのかということで一族の中は、疑心暗鬼になる
本当に、モメさせたいんだ
香月家は大きくなりすぎてしまいました今の半分の規模、六分の一の人数で良いというのが、お祖父様の持論です
香月の家そのものをリストラしたいんだね
リストラ
リストラクチャー、再構築って意味だよ無駄な人員を省いて、スリムな組織にしたいんだよ
それにお祖父様は、男の人を信用していませんから
男を信用していない
今の若い男たちは信頼できないと常々、おっしゃっていますお祖父様は、もう八十歳を越えていらっしゃいますから
今生きているほとんどの男は香月閣下から見れば若い男たちだ
女の子の方が閣下の信頼に足るってこと
寧さんが尋ねると
そこにお祖父様の趣味が組み込まれます
さっき御覧になられた通り瑠璃子さんには、性的な知識は全く与えられていません他の女の子から、そういうことを知らされないために美子さんという、唯一無二の友人兼姉を、3歳の時からお付けになっています
美子さんがいつも一緒に居ることで瑠璃子さんは孤独にならない
そして、美子さんも一緒に情報を制限されて生活しているから自分の置かれた状況に疑問を抱かない
そういうものなんだと、思い込んでいる
二人だけで寄り添って他に友人がいないことにも疑問を抱かない
お祖父様は女の子を純粋培養で育ててみたかったんだと思います
確かに瑠璃子さんも美子さんも、素直で良い子に成長している
しかし情報制限されて成長させられるということは、歪まされているということに代わりは無い
みすずの場合は、どうだったんだ
オレは思い切って、尋ねてみる
あたしの場合はその逆です
逆
あたしは八歳の時に、お祖父様に男女のセックスの場面を見せられました
それに、お父様が愛人の方とセックスしている姿も映像で見せられました
八歳で男女が絡む姿を見せられた
それで、あたしすっかり気分が悪くなってしまって男の人が苦手になったんです
香月閣下はわざと、みすずに性的なトラウマを作った
お祖父様はあたしをレズにしようとなさっていたんだと思います
みすずのレズ嗜好は香月閣下が仕向けたことなのか
本当に苦手なんです男の人のケダモノの様な姿を、何度も見せられましたあたしダメなんです男の人に対して、嫌悪感が拭えないんです
みすずオレは
あ、旦那様は別ですというより旦那様しかダメなんです、あたしあたし男性の方とお話しするのは、お祖父様と旦那様だけですから学校の先生やお医者様でも、男性の方とは直接口を利きません
えお父さんとは
父とは八歳の時から、会話していませんお話しがある時は、母を通してかメールということにしていただいています
あたしが香月の家の娘として、学校で孤立して精神的に一番辛かった時にお祖父様は、あたしを渚様に引き合わせてくれました渚様のおかげで、あたしは救われたんです
えっと渚のお店でアルバイトしているよね
男の客は、来ないのか
あのお店は九割が女性客ですし男の方がいらしたら、他の方が代わって下さいます
そうか渚がちゃんと気遣ってくれているんだ
お祖父様は渚様が、あたしを癒やして下さると思われたんでしょうそして、渚様によって、あたしのレズ嗜好が完成すると
渚は娼婦を引退した後
白坂創介に父親が誰だか判らない子を妊娠させられて、お屋敷を追放されたことで
男性不信になっていた
それで男を嫌い、お店の女の子とのレズ行為だけにハマっていた
まさか渚様が、旦那様にあたしをペットとして譲渡するとは想像なさっていなかったんだと思います
渚に任せている限りみすずのレズ嗜好は、強化されると思っていた
なのに渚は
みすずをオレにくれた
あたしすごい怖かったんですでも、渚様のご命令には逆らえませんし
みすずを最初に抱いた時のことを思い出してオレは、謝る
旦那様はとっても、優しくして下さいましたみすずのこと、好きって言って下さいました
あたしも旦那様のこと、どんどん好きになってしまいましたもう、ダメですみすずは、一生、旦那様のペットです
うん大切にするから
愛しています旦那様
みすずが、オレにそっと寄り添う
あたし旦那様でないとダメです他の男の人はダメです言葉を交わすことも嫌なんです旦那様だけです
あたしは、お祖父様によって、歪んで成長してしまいましたお祖父様は、あたしを男性嫌いのレズに仕立て上げたかったのでしょうがみすずは、旦那様だけの女になってしまいました
すでにオレたちは香月閣下の望んでいない関係になっている
そうかだから
みすずは、もう祖父と闘うしかないんだ
でもどうして、香月さんはみすずをレズにしたり、瑠璃子さんに性的な情報を教えようとしないんだろう
オレの疑問にミナホ姉さんは
そんなの決まっているでしょう二人の孫娘を他の男に獲られたくないのよ
他の男に獲られる
うんずっと、香月さんの管理下に置いておきたいんだろうね
孫娘を他の男に獲られたくないというだけで、無理矢理レズにしようとしたり、情報制限してセックスのことを教えないで囲い込んでいるというのか
ですから趣味なんですよ
みすずの眼が辛そうだった
でも、まだギリギリ救いはあるよ自分で、自分の孫娘を犯そうとはしないんだから
いや、白坂創介がそういうことを企てていたっけ
自分の好み通りの娘を育てて犯す計画を
アニエスという女の子は、お屋敷の地下に今も居るんだろうか
だけどこの先はどうなるのみすずさんも瑠璃子さんたちも、香月さんの思い通りになっていて幸せになれるの
マナが、そんなことを言った
お祖父様は楽しんでいらっしゃるんですよあたしたちの悦びも悲しみも上から見下ろして、面白がっておいでなんです
生き物の観察でもするかのような気分で
二人の孫娘の苦難を眺めて面白がっているのか
いやわざと対立する様な要因まで作り出して
孫娘たちに、さらに苦難の波を浴びせようとしている
ですから瑠璃子さんと美子さんにも、旦那様が必要なんです
みすずが、強い眼でオレを見る
オレ
オレは何の力も無い
頭の悪い、ただの高校生だ
このまま何の性的な知識も無い、あのお二人が婚約者に引き会わされたら、どうなると思います
セックスの知識が無いままメチャメチャにされるかもしれない
でも、香月さんがそんなことにはさせないだろ
香月閣下は、孫娘たちを独占したいんだから
お祖父様はご高齢ですいつまでも、お元気とは限りません
それにおそらくお祖父様は、ご自分が亡くなられた後のことはどうなってもいいと思われているんだと
今は香月閣下が、家の全てを支配しているからバランスが取れているけれど
もし、急に倒れたりでもしたら閣下が退屈を紛らわすために行った波乱の要因が、一気に問題化して噴き出す
香月家は、メチャメチャになる
その中でみすずも、瑠璃子さんたちも、酷い状況に押し潰されることになる
お祖父様は自分が死んだら、香月家も一緒に潰れてもいいぐらいに思われているんでしょうね
みすずが、寂しそうに言った
だから、あたしは闘うしかないないんですお祖父様と自分の運命と
判ったオレのできることは何でもするよみすずのために
ありがとうございます旦那様
それから、オレはみんなに振り向く
みんなも協力して欲しい香月さんと対立するなんて自殺行為かもしれないけれど
オレの言葉に、マルゴさんは
黒い森としてどうするかは、リーダーであるミナホが決めるべきだよ
あたしは、吉田くんとみすずさんを応援するわどうせ黒い森は、なくすつもりだからできる限り早くね
黒い森に対する香月閣下の影響力のことは気にしなくて良いとミナホ姉さんは言ってくれた
ミナホがそういう方針なら、あたしは黙って従うよ
ま、あたしもそうですわねあたしはただのパン屋さんになるんですから香月家と対立しても問題はありませんっ
克子姉は、ニコッと微笑む
あのみすずさん
メグが、顔を赤くしてみすず言う
あたしも同じなんですヨシくんでないと、ダメなんです
あたしは、娼館で育ちましたから将来、自分が男の人に愛されるとは思っていませんでした実際白坂さんに、あたしは娼婦として売られる寸前でしたから
メグは白坂創介の計画では、ゴールデンウィークが開けたら娼婦として働かされることになっていた
でも、みなさんに助けていただいてあたしは娼婦にならずに済みましたそして、ヨシくんがあたしのことを愛してくれてだからあたしも、ヨシくんしか愛せませんヨシくん以外の男の人に抱かれるのは、絶対に嫌なんです
それなら、マナもそうだよっお兄ちゃん以外の人なんて、気持ち悪くてエッチできないよっ
メグもマナもオレしか知らない
あたしももあたしもっヨッちゃんがいい
寧さんあなたは処女でしょ
だからみすずさんとヨシくんを引き離すようなことになるのは、絶対に嫌です
うん、みすずさんのお祖父さんにマナが抗議してあげるよっ
あたしも、あたしも抗議するぅ
みなさん
みすずが、感動している
わたくしは何があっても、みすず様の警護役ですから
美智は香月家でなく、みすずに付いていくと言ってくれた
一応、聞くけれど黒子ちゃんは、どう
寧さんが笑って、雪乃にそう言う
雪乃は、遠くを見ている
あそこの外人の3人組が、さっきからずっとこっちを見ているなぁって
外人の3人組
雪乃の視線を追うと
そこにはスラッとした長身の体型の3人の女性が居た
3人とも20代後半から30代前半に見える
そのうち二人は双子なのか、全くそっくりな顔をしていた
顔を体型もそっくり
同じ白いパンツスーツを着ている
黒い靴に、黒い革手袋
眼にはサングラス髪の毛は、真っ白に染めていた
そして、二人の間に居る女性は
こちらも真っ白なタイトスカートのスーツを着ている
やっぱり、サングラスで髪の毛は白
みすず奥へ行って
オレはその3人組に危険な匂いを感じた
うんミナホも奥へ
マルゴさんと美智が前に出る
3人組の外人美女たちは、ニヤッと笑うとこちらに近付いてきた
私の祖母は、91歳で亡くなりました
あんまり高齢で死ぬのも大変だなと思ったのはお葬式に、祖母の友人がほとんどいらっしゃらなかったことです
78歳のお祖父さんからあなたのお祖母さんにはお世話になりましたと言われましたその方が最高齢だったみたいです
91歳じゃお友達は、みんなもう亡くなっているんですね
祖母はとても友達の多い人でした
私が子供の頃に祖母の家に行くと、毎日、色んな人が尋ねてきました
和室に二十人くらい、祖母のお友達のオバチャンたちが集まったこともあります
ああ、あの人たちはみんなもう死んでしまったんだろうなと思うと
ちょっと、ゾッとします
なんか、悲しいですね
221.白いヴァイオラ
白いパンツスーツに黒い革手袋サングラスに白髪の若い双子の外人女性
それと、同じく白いタイトスカートの白髪の女性その人もサングラスを掛けている
三人が、オレたちの前に立つ
全員、モデルとしか思えない様な体型と美貌
双子の一人が、スッと前に出る
コンニチハワタシハ、あめりかノ商務省ノオ役人サンデース名前ハキャサリンデース彼女ハ妹ノオードリーデース
確かに、彼女が首から下げているカードには
ゲスト/ アメリカ商務省という文字が書かれている
香月セキュリティ・サービスのチェックを受けて、ゲートで渡された物なんだろう
しかし、自分で言うかお役人さんとか
とにかく、一人だけがカタコトの日本語を喋る
後の二人は、日本語が判らないらしく微笑を湛えながら、こちらの様子を伺っている
スミマセン警備本部ハ、ドチラデスカ
それなら
口を開くマナを、オレは制する
マナ喋るな
変だ
違和感を感じる
この三人には、決して隙を見せてはいけない
お遊びは、それぐらいにして下さい子供が怖がりますから
ミナホ姉さんが、日本語でそう言った
オ遊ビデハアリマセンワタシハ、スミブル真面目ニオ話ヲシテイマース
オレは寧さんを守るように、大きく手を広げる
メグは、みすずを克子姉はマナを抱き締めるようにしていた
雪乃は、おどおどとしている
美智さん、こちらから手を出してはダメだよ
心得ております
そういう美智の手は、すでに赤いムチの柄を握っている
マルゴさんが三人の女性たちに言った
もう一度お名前をちゃんと伺いましょうかね
たどたどしい日本語で喋る双子の片割れは、ニヤッと微笑んで
ワタシハキャサリン・ヘップバーンですソチラガ妹ノオードリー・ヘップバーンソシテ、ソチラノ方ガ、国際交流課長サンノビビアン・リーデス
うんよく判らないけれど
とにかく、偽名だってことは判った
自分の本当の名前を言うのなら、こんなにニヤニヤしたりはしない
この人たち相当、性格が悪い
その設定でここまで入って来られるってことは香月セキュリティ・サービスも大したことはないみたいね
ミナホ姉さんが、吐き捨てる様に言った
その鬱陶しい喋り方止めてくれるかな本当は、日本語ができるんでしょあなたたち
マルゴさんが、言った
ナゼ、ソウ思ワレマスカ
外人オンナは、ニヤニヤと笑いながらそう言う
シザーリオ・ヴァイオラは、子供時代を沖縄の米軍基地で過ごして、日本語がペラペラだっていう設定だからだよ
マルゴさんは、そう答える
あなたたちのどちらが、シザーリオ・ヴァイオラなんだい
マルゴさんは双子だけを見た
もう一人、スカートの女性は無視する
ちょっと、待って違うよ、マルちゃん
寧さんが、後方から叫ぶ
シザーリオ・ヴァイオラは、こんな女の人じゃないよ
オレもマルゴさんの言葉に驚いていた
ヴァイオラは、変装の名人だって聞いていたけれど
こんな若くて綺麗な女の人にまで化けられるのか
いやそうじゃないよ寧
マルゴさんが、落ち着いた口調で話す
この人たちは、寧を狙って来日してきたシザーリオ・ヴァイオラじゃないんだよ
前にあたしたちが闘ったのとは別のシザーリオ・ヴァイオラなんだよ
ヴァイオラは複数いる
三人の女たちは、クククっと笑い出した
全員日本語が判っている
一人がカタコトの日本語で喋って、他の二人は日本語が判らない振りをしていたけれど
全部、フェイクかよ
よく判りましたね、ミス・マルゴ・スタークウェザーキョウコ・メッサーの教育が良いということかしら
一番後ろに立っていた、タイトスカートの女性が流暢な日本語でそう言った
キョウコ・メッサーとは、マルゴさんの師匠の恭子・ドスノメッキーさんの裏の世界での通り名だ
その名前を知っているということは
恭子さんからは、ちゃんと自己紹介のできない人とは会話するなとも教えられているよ
あら、失礼
マルゴさんの言葉にタイト・スカートの女性が双子たちに眼で指示する
さっきまで、カタコトの日本語で喋っていた方の女が口を開く
初めましてあたしは、シザーリオ・ヴァイオラ本名、ファビアーノ・カトゥよ
そして、今まで黙ってた方の双子も
こんにちわあたしは、ロザリンド・オーランドー本名、ファビアーナ・カトゥよ
寧さんが、反発する
違うわロザリンドは、あんたみたいな女じゃないし死んだのよケイちゃんに撃たれて
寧さんの中で、過去がフラッシュ・バックしているのだろう
強い言葉で、寧さんは叫んだ
そうね第4のシザーリオ・ヴァイオラのところで、そんな事件があったみたいね
第4のシザーリオ・ヴァイオラ
でも、あそこのヴァイオラには、ちゃんと次のロザリンド・オーランドーが補充されているわよ
もう一人のシザーリオ・ヴァイオラが、そう言った
そうよねシザーリオ・ヴァイオラには、妹のロザリンド・オーランドーがいないと格好が付かないもの
もう一人のロザリンド・オーランドーがクククと笑う
どうなっているんだ
旦那様敵の言うことを一々真に受けてしまってはいけません
みすずが、オレの迷いを払ってくれる
そうだこんな話は、全部嘘かもしれない
まああなたたちが、別のシザーリオ・ヴァイオラとロザリンド・オーランドーだとしても、全然構わないけれどね
マルゴさんが、平然と敵に対する
ところでその二人を統べるあなたは誰
マルゴさんの眼がタイトスカートの女性に向かう
その女はフフッと笑って
どうせ、シェイクスピア絡みのコード・ネームなんだろさしずめ、レディ・マクベスってところじゃないのかな
あら、あたしそんな年齢ではないわよ
タイトスカートの女性は、笑って否定する
カタリーナ・ミノーラなら、助かるんだけれど
あたしは、そんなにじゃじゃ馬ではないわ
ではクレシダとか
そんな浮気者の小娘でもないの
二人は、笑い会う
じゃあ、オフィーリアとか
幾ら何でも、何も知らない無垢なお嬢様を名乗るほど、恥知らずでもないの
では、あなたは誰なの
女は答えた
コーデリア・フランスよ
つまりあなたず組織のトップではなく、まだ上に誰かがいるってこと
そういうことねあたしはただの使いでしかないわ
ミス・コーデリアは、そう答えた
であたしたちに何の用なのかな
マルゴさんが、女たちに言う
ただの表敬訪問よ一度、あなたたちの顔が見ておきたくて
殺す相手の顔を確認に来たってことかい
雪乃が、ヒイッと声を上げる
ミス・コーデリアは、フフフと笑って
あたしたちは、別にあなたたちと闘うつもりはないわ1円にもならない闘いをしても、意味はないもの
じゃあ何をしに来たわけさ
別のシザーリオ・ヴァイオラが、答える
あたしたちは見届け役だよ
そうよ、あなたたちと第4のシザーリオ・ヴァイオラとの闘いのね
別のロザリンド・オーランドーが、そう付け加えた
おかしいな第4のシザーリオ・ヴァイオラにとってだって、あたしたちとの闘いは、お金にはならないと思うんだけれど
そうだ寧さんを捕らえても、金銭的な補償は無い
これは完全に、彼女らが言う第4のシザーリオ・ヴァイオラの私怨から始まった行動だから
組織は日本へのプロモーション活動ということで、第4のシザーリオ・ヴァイオラの渡航を許可しました
ミス・コーデリアが、そう言った
やはり日本に、アメリカ西海岸の殺人組織シザーリオ・ヴァイオラの力を示すのが狙いか
しかし第4のシザーリオ・ヴァイオラは、すでに日本で依頼者との契約を済ましているそうですよ
依頼者
殺人の
白坂守次という人物があなたたち、今回の事件に関わる全ての人間の抹殺を要請したそうです
ミス・コーデリアは、楽しそうに言った
白坂本家の当主がオレたちを
敵同士が、結びついた
第4のシザーリオ・ヴァイオラが、自分で白坂家に営業を掛けたんだろう
プロモーションの無料奉仕より少しでも金になる仕事にした方が良い
ヴァイオラの手下たちの、モチベーションが変わる
この際だから、リストをあげるわ
別のロザリンド・オーランドーが、ハンドバックから一枚の紙を取り出した
それは英語で名前の書かれた、一覧表だった
ロザリンドが、紙を差し出す
美智さん、受け取って注意して
マルゴさんの指示に美智が、落ち着いて紙を受け取る
大丈夫よあたしは、とって喰ったりしないから
ロザリンドが、クスクスと笑った
あら、あんたはこんな子がタイプなんじゃないの
双子の妹をからかう、もう一人のヴァイオラ
そうね黒髪の子って、まだ食べたことは無いかも
ロザリンドの言葉に、美智は
わたくしは毒がありますから食べても美味しくはないですよ
ロザリンドは、楽しそうに
あらあら、また可愛いことを言うのね
美智が、受け取った紙をマルゴさんに手渡す
マルゴさんは、紙を確認し後ろの、ミナホ姉さんへ
あら案外、甘いのねその紙に放射性物質のポロニウムでも付いていたら、あなたたち全員死ぬわよ
ミス・コーデリアが、そう言う
ロシア・マフィアじゃあるまいし、そういう無粋な暗殺はしないでしょポロニウムやVXガスは、仕掛ける方にとっても危険な物だしそんなつまらない殺し方は、あなたたちはしないでしょう
あら、どうしてそう思うのあたしたち、見た目よりも粗暴でメチャクチャかもしれないじゃない
綺麗なお姉さんたちは、自分の美貌を損ねるかもしれないような真似はしないってことさそれに
コーデリアって、名前に聞き覚えがある恭子さんに、コーデリア・プリスケンという人の話をよく聞かされたよ
マルゴさんがジッと、ミス・コーデリアを見る
キョウコ・メッサーは、あたしのことを何て
さあ本人から直接聞けば
やはりキョウコ・メッサーは、すでに日本国内に居るのね
恭子さんのやり方は、あなたもよく知っているでしょ自分の見せ場になるまでは、誰からも見えないところに隠れているよ
それを聞いて安心したわあたし、キョウコ・メッサーには借りがあるの
借り
そうよ貸しでなくて借りがね早いとこ、返してしまいたいのよこういうのは、ずっとそのままにしておきたくは無いから
ミス・コーデリアは、そう言った
それで見届け役として来てくれたのかな
そうねそれも理由の一つだわ
見つめ合うマルゴさんとミス・コーデリア
第4のシザーリオ・ヴァイオラにはこの劇場には、襲撃しないように厳命してあるわ
ここには日本の家柄の良い子供たちが集まっているんでしょ下手に巻き込んでしまったら、プロモーションにはならないわ
彼らは、シザーリオ・ヴァイオラの組織の力を、日本の上流階層に宣伝したいんだ
下手に関係の無い名家の子供を殺してしまったら悪名しか残らない
それに今日は、あたしたちの母国のお役人さんも来るんでしょう
ミス・コーデリアは、自分の首から下げた名札のアメリカ商務省の文字を指差す
合衆国〈ステイツ〉の権威を落とすような真似はしないわあたしは、愛国者だから
お心遣いを感謝するよ
第4のシザーリオ・ヴァイオラにはここの後の、みなさんがホテルに移動した後に襲撃させますそうね、そういうレクリエーションは、夕ご飯の後がいいわよね戦闘開始は、午後8時以降ってことでどうかしら
午後8時
戦闘はしなくてもその時間までに、潜入工作はしてくるんだろ
当然よ戦闘開始までに、どこまであなたたちに接近できるかも、見所の一つでしょ
ミス・コーデリアは、また笑った
では、そういうことでキョウコ・メッサーによろしく言っておいてねあたしとは、会えないままかもしれないら
ミス・コーデリアは、立ち去ろうとするが
恭子さんが、あなたに挨拶しないはずが無いだろ
コーデリアの足が止まる
マルゴさんに振り返る
キョウコ・メッサーは、あなたにあたしのことを何て言っていたの
あなたほど愛した人はいないと言っていたよ
コーデリアが、ギッとマルゴさんを見る
あなたはキョウコ・メッサーの今の恋人なの
マルゴさんは、アハハと笑った
あたしは、恭子さんの弟子だよ今でも、子供扱いされている
子供
あたしも施設の出身なんだ
その言葉にミス・コーデリアの顔が和む
そうだったの
恭子さんが、ブラジルの犯罪結社マランドロを離れて、黒い森の警護役になったのも同じ理由だよあの人にとっては、あたしたち全員が自分の娘みたいなものなんだ
何となく、判ったわ
だから恭子さんを恨まないで欲しい
恨んではいないわただ、あの人の才能を惜しんでいるだけキョウコ・メッサーなら第1のシザーリオ・ヴァイオラにも勝てるでしょうに
コーデリアは、寂しそうにそう言った
ご機嫌ようあなたとは、また会いたいわね
そうだね恭子さんと3人でカルフォルニア・ワインでも開けたいね
それは無理よ
あなたの気持ち次第だと思うけれど
とにかく第4のシザーリオ・ヴァイオラに勝ちなさい話の続きは、あなたが生き残っていたらってことにしましょう
幸運を祈るわ
ミス・コーデリアは、スッと歩き出す
双子の白い二人が、その後を追う
じゃあね、みなさん
がんばって下さいね
そして三人の白い死に神が、姿を消す
マルゴさん、あの人たちの話、どこまで信じられます
何一つ信用できないさ
でもあの人、わざわざマルゴさんに会いに来たみたいでしたけれど
メグが不安そうな顔で、そう尋ねた
あの人が、本当にコーデリア・プリスケンなら恭子さんの最初の弟子で、一番長く組んでいた相棒のはずなんだ
ならって
コーデリア・プリスケンは、死んだはずだからあたしは、恭子さんからそう聞いている
オレたち死んだはずの人と会話していたのか
まあいいよあの人たちは味方ではないけれど、完全な敵ではないから
どうしてそう言い切れるんです
本当の敵ならあたしたちは今、殺されているよ3人とも、相当な戦闘力の持ち主だったからね
見逃してくれたんだと思う
シザーリオ・ヴァイオラの上に、誰か支配者がいることは想定していたし今のヴァイオラがオリジナルでは無い可能性も想像していたまさか複数のシザーリオ・ヴァイオラが一つの組織の中に存在するとは思っていなかったけれどね
あの人たち、あたしたちを狙っているのは第4のシザーリオ・ヴァイオラと言ってました最低でも、4組のシザーリオ・ヴァイオラとロザリンド・オーランドーが居るってことなんでしょうか
メグの問いにマルゴさんは
その辺は誤魔化されているかもしれないよ今の双子だって、本当にシザーリオ・ヴァイオラなのかどうかは判らないし
でも合理的な説明は付きますね今までのことについて
克子姉が言う
あたしたちを狙っているシザーリオ・ヴァイオラは彼女たちの言い方に合わせて第4のシザーリオ・ヴァイオラと呼びますけれど粗暴なだけの小者のイメージが強い相手でした
寧さんの話で聞いたヴァイオラは危ないだけのオッサンだった
緻密な計画性などは、全く感じられませんでしたあたしは、そんな粗野な犯罪者がずっと野放しにされていた理由が判らなかったんです
克子姉の言葉にミナホ姉さんは
複数のシザーリオ・ヴァイオラを一つの組織が同時に操作しているというのは本当なんでしょう仕事の内容によって出動させるヴァイオラを変えているんでしょうね
あたしたちを狙っている第4のシザーリオ・ヴァイオラは、一番粗暴なだけの暴力的な仕事を請け負っていたチームなんじゃないかしら
そうですね今の三人の方が、遥かに洗練された雰囲気を持っていました
色んな人から、様々な犯罪行為を請け負い実行する
現実には、それぞれの仕事に適任の人間が担当するが
それぞれのチームのトップは、全員シザーリオ・ヴァイオラとロザリンド・オーランドーを名乗っているんだ
そうして、ヴァイオラの犯罪伝説が強化されていく
殺されたって、逮捕されたって問題は無い
別のシザーリオ・ヴァイオラが健在なんだから
警察署でオレがシザーリオ・ヴァイオラだと、自白しても嘘だとしか思われない
シザーリオ・ヴァイオラを名乗る犯罪者の事件は、続いていくからだ
本当に4組以上もヴァイオラが存在するとは思えないけれど2組以上はいるのかもしれないね
ところでさっき貰ったリストだけど
マルゴさんの言葉にミナホ姉さんが、紙を広げる
コーデリアの言葉を信じるなら
これは、白坂守次が第4のシザーリオ・ヴァイオラに要請した殺して欲しい人間のリストだ
吉田くんの名前が無かったよね
オレはリストを覗き込む
確かに、オレの名前は無い
白坂家は吉田くんの存在に気付いていないのよ
そうかオレは
白坂本家には、全然知られていないんだ
それより白坂守次は、本気の様ですわね
克子姉が、リストを見てそう言った
白坂家の中の守次氏に抵抗する人間の名前も書いてあります市川氏や、白坂創介と夫人の名前も
今回の事件に関係する全員を殺してしまいたいんだ
白坂守次は
全員死んで全てを、ウヤムヤにしたいんだ
最後の手段として
あたしの名前もあるわ
山峰さんの名前は無い
メグが白坂創介の娘だと知っているんだ
今回の事件の原因白坂創介の関係者を全員抹殺しようとしている
だからメグだけを殺害要請したんだ
舞夏さんもだよ
白坂守次は白坂舞夏も殺すつもりだ
そんな大叔父様
リストには
白坂雪乃の名前もあった
こんなの嘘よ
雪乃が悲嘆に暮れる
白坂雪乃は白坂家当主・白坂守次から見捨てられた
眠いデス眠いデスむちゃくちゃ、眠いDEATH
222. 敵また敵
これで一つ判ったよ
マルゴさんが嘆息する
ミス・コーデリアは、あたしたちの敵だ
あの人が、恭子さんの話をしたのは過去の郷愁だけじゃないってことね
ミナホ姉さんが、そう言う
吉田くん白坂守次が、今一番始末したい人間て、このリストの中の誰だと思う
ミナホ姉さんが、オレの前にリストを拡げる
みすずやメグたちも、テーブルの上の紙に眼を落とした
殺害要請リストの中に載っているのは
まず白坂本家に敵対する黒い森の人間
ミナホ・クロモリ
白坂守次は、ミナホ姉さんを黒い森のリーダーとしてしか知らない
だから弓槻ではなく黒森の姓なんだろう
続いてカツコ・タカナシマルゴ・スタークウェザー
二人は黒い森の人間として表に出ているから認知されている
寧さんの名前は無い
当たり前だ白坂守次は、寧さんを知らない
寧さんは、黒い森では一度も客の前に姿を現していないのだから
寧さんに用があるのは第4のシザーリオ・ヴァイオラだけだ
渚の名前も無いホッとする
うん渚は、黒い森を引退して、もう4年だもんな
リストには続いて、シラサカという苗字の名前が、何人も並ぶ
全部、知らない名前だ
おそらく、この人たちは今、白坂本家で当主の白坂守次を追い落とし、香月閣下と手打ちをしようとしている白坂家内部の反抗者たちだろう
最後に白坂創介とその家族
市川老人の名前で、リストは終わっていた
あなたが白坂守次なら誰を最優先で殺して欲しいと願う
ミナホ姉さんなのかな
今回の事件の首謀者は、ミナホ姉さんだ
白坂守次が一番恨みを抱いているとすればミナホ姉さんだろう
残念そうじゃないよ
白坂創介さんですわ
みすずが、そう呟いた
何で
白坂守次にとっては、白坂創介は甥だろう
今まで、何かと面倒を見てきたっていうし
そうね白坂創介さんの口を封じないことには、どうにもならないものね
今回の白坂家のスキャンダルはぶっちゃけて言えば、全部白坂創介が一人でやった悪事がバレたってことだよねだから白坂創介が死ねば、何もかもウヤムヤにすることができる
そうねむしろ、白坂創介がこの先も生きているのは、白坂本家としてはマズいことなんだと思うわマスコミに捕まって、白坂創介がペラペラ喋り出したら
克子姉の言う通りだ
今はまだ、ミナホ姉さんの流した証拠映像と奈生実さんの遺骨しか公表されていない
色んな芸能記者が、白坂創介にまつわる悪い噂をテレビで流しているが
白坂創介本人のコメントは、まだ取れていない
もし、白坂創介のインタビューとか、記者会見があれば
このスキャンダルは、さらに燃え上がるだろう
だからそうなる前に、白坂守次氏としては、可愛い甥には死んで貰いたいんだと思うよこのスキャンダルの火消しには、その方法しか残っていないから
不審な死に方でも構わない
白坂創介が死ねばこのスキャンダルの火種は消える
マスコミの追求も止まるだろう
マルゴさんの言葉に、雪乃が小さく呟いた
マナは何も言わないメグの手をギュッと握りしめている
だからミナホは、恭子さんに白坂創介を行方不明にするように指示したんだ
うん白坂創介の現在の所在地は、誰も知らない
だからあの女の人は、マルゴさんに恭子さんのことを聞いたんですね
そういうこと白坂創介と恭子さんが一緒に居るってことは、知っているんだよあの人たち
白坂創介も恭子さんも、オーストラリアに出国している
出国記録からそのことを知れば後は、簡単に想像できる
ミス・コーデリアが、あたしたちに日本語でしかも、親しげに話してきたのも策の内だよ誰かがうっかり、ヒントになる様なことを喋るかもしれないって思ったんだろうね
でも、残念ながらあたしたちは、誰一人、恭子さんと白坂創介の現在位置を知らないもんねっ
寧さんが、くふふと笑う
ちょっと、待って下さいあの3人組が、白坂創介の居場所を知りたがっているっていうことは
悪い予感が心によぎる
そういうことだよ、吉田くんミス・コーデリアともう一組のヴァイオラたちが、ただの見届け役っていうのは、嘘なんだよ
マルゴさんが明言した
あの3人組も白坂守次との契約に従って、本気であたしたちを殺しに来ているってこと
やっぱりそうなんだ
あの3人が、まさか第4のシザーリオ・ヴァイオラの命令で動いているとは思えないどう見たって、あの3人の方が格上だよなのに白坂創介の居場所を探っているってことは
彼女たちも白坂創介の命を狙っている
白坂創介の消息を知るためにあたしたちのことは、今回は見逃してくれたっていうのが現実なんだろうね
マルゴさんは、溜息を吐きながらそう言った
じゃあ、いずれはあたしたちのことも殺すつもりなんですか
そうなんでしょうね白坂守次は、第4のシザーリオ・ヴァイオラでは無く、あの人たちの組織と契約したんでしょうから
つまり敵は第4のシザーリオ・ヴァイオラだけではない
敵の組織全てが
他のシザーリオ・ヴァイオラまでもが、オレたちを襲いに来る
その契約を破棄させる方法は無いんですか
やっぱり依頼人では無い人が大金を支払って、契約を無効にするってことはできないんですよね
うん、残念だけれど裏の世界は、信用第一だからね一度結んだ契約は、何があっても実行されるよ
マルゴさんが、答えた
途中での契約破棄の方法は二つだけよ白坂守次が、違約金を払って殺害要請を取り下げるか
もう一つは何です
白坂守次が、成功報酬を支払えない状態になればね
マルゴさんが、ミナホ姉さんの言葉を解説してくれる
依頼人が、報酬の支払いができないと判断されれば殺人契約は、自動的にキャンセルされるわお金にならないのに、仕事をするのは馬鹿らしいでしょ
そういうルールを作っておかないとね私怨を晴らすためなら何でもする人は、後で自分も殺されたって構わないっていう覚悟で犯罪組織に頼ってくるからね
そうかお金を持っている振りをして、殺人依頼をする様な人間がいるんだ
依頼通りに人を殺した後で、金は無いと言われたら組織は丸損だからね人を一人殺すんだって、下調べなんかでかなりのお金が掛かるんだから
依頼人の命なんかじゃ全然、割が合わないのか
だから依頼人の懐具合を組織は常に監視しているよそして、もし依頼人に支払い能力が無くなったと判明したらその時点で、契約はキャンセルだよ
白坂守次はこれだけの人数の殺害要請をしたんだ成功報酬は、数億円規模になると思うよだけど、白坂守次が失脚して白坂家の当主の座から滑り落ちたなら、そんな大金を自由に使うことはできなくなるよね
数億円という金を白坂守次が、個人で支払うことは不可能だろう
いや、そもそもこの殺害依頼は、白坂守次が当主の地位に固執しているからこそ行われたもので
当主の座を追われてしまった後では何の意味も無い
だから、あたしたちの当面の作戦は白坂守次の失脚を確実にすることだね
夜のホテルでの白坂家の反抗勢力と香月閣下の手打ちを成功させるってことですか
オレの問いに、マルゴさんは
逆を言えば夜のホテルは修羅場になるよそのリストに載っている人間が、全員集まるんだから
合理的に全員を抹殺できる
ホテルごと、ミサイルとかで吹っ飛ばされることとかって無いんですか
さっき、ミス・コーデリアとの会話で放射性物質とか殺人ガスとかが出て来たせいだろう
マナが心配そうに、そんなことを言った
マナちゃんビジネスには、費用対効果が大切なんだよ
マルゴさんが、マナに優しく微笑み掛ける
数億円稼ぐのに数億円掛けてミサイルを撃ち込むのは馬鹿らしいよね敵がこの仕事に使う経費は、精々数千万円単位だよ
それでもかなりの金額だ
さっき襲って来た不良外国人とかなら、何百人でも動員できるだろう
これでミス・コーデリアが、あたしたちに接触してきた理由は大体判ったけれど
ミナホ姉さんが、考え込む
それでもわざわざ、あんな風に挨拶してくれたってことは、恭子さんに対して借りがあるって話は本当なんだろうと思うのよ
マルゴさんが、暗い顔答える
でも、ミス・コーデリアの言う借りが、恩義なのか恨みなのか判らないしねいずれにせよ敵は増えたってことよね
オレたちは、ゾクッと身震いする
でもどうして、このリストに恭子さんの名前が入って無いのかしら
ずっとリストを見続けていた、克子姉が言った
そう言えば一番名の知られた裏社会の住人である、恭子・ドスノメッキーの名前が抜けている
白坂守次が、見落としたからじゃないですか
いいえ恭子さんは黒い森の警護役だってことは、白坂守次は知っているはずよ
そうだ恭子さんは、マルゴさんや克子姉が加入する前からの黒い森の警護役だ
白坂守次が知らないはずがない
ミス・コーデリアが、白坂守次と交渉してリストから外させたとしか思えないね
マルゴさんは、そう結論を出した
オレには、その理由が判らない
どうしてそんなことをしたのかあたしにも、判らないけれど
そんなの決まっているじゃない
雪乃が口を開いた
その人のことは仕事としてでなく個人的に殺したいからでしょ
うん雪乃さんの言う通りかもね
マルゴさんが同意する
それ以外、考えられないわよっ
雪乃、お前は自分の立場を判っているのか
はぁ何か、お腹空いてきちゃったわ
雪乃、雪乃さん
こんなの、ここで考えていてもどうにもならないじゃないどうせ、なる様にしかならないんだからさ
雪乃の登山ロープ並みにブッ太い神経が、時々羨ましくなる
そうだね雪乃さんの言う通りだミス・コーデリアの約束してくれた、この劇場では事件を起こさないというのと、襲撃は午後8時以降っていうのは信用できると思うよもっとも、あの3人だけで無く工作員は限りなく侵入しているんだろうけれど
そうだミス・コーデリアは言っていた
襲撃は8時からだとしても工作員は、その前から潜入させると
午後8時になった途端たまたま隣に居た人に撃ち殺される可能性はある
まあ今は香月セキュリティ・サービスの警備員と、子供たちの護衛しかいませんけれどこれからこの会場はどんどん各家の警護人が集結して来ますから
そうだ、開場時間になれば香月閣下を始め、様々な名家の人たちがこの劇場にやってくる
もちろん最高クラスの重要人物たちには、最高クラスの警護役が就いているんだろう
会場の安全度は高まる
全員、なるべく固まっていて離れないように少しでも怪しいと思った人には近寄らない変だなと感じることがあったら、すぐにあたしかミナホに報告していいね
マルゴさんの言葉に
判っているわよ
いや雪乃
お前はオレたちの何なんだ
段々、心配になってきたぞ
ミス・コーデリアの件香月セキュリティ・サービスに報告した方がいいかしら
いやアメリカ商務省の身分証を使われたんじゃ、山岡部長たちには対処できないよあの3人は特別だよ同じ手を使って工作員を潜入させては来ないと思うむしろ、工藤さんに知らせておいた方がいいと思うなあの人は、今日来場するアメリカ政府関係の人間のチェックもやっているだろうから
美智さん、お父様は今どこに居ると思う
克子姉に、美智は
お父様は、どうせ劇場の周り飛び回っていると思います正面入り口にノーマさんがいらっしゃいますから、ノーマさんに呼び出していただいたら良いと思います
うんこちらから劇場外へ出向くのは止した方がいい
判ったわそちらは、あたしが連絡に行って来ます
よろしくね克子
ミナホ姉さんに一礼して、克子姉が入り口へ向かう
さてあたしたちは、どうしようか
マルゴさんが、ミナホ姉さんに尋ねる
とみすずが
あのあたし、そろそろ自分の舞台稽古の準備に入らないと
衣装に着替えたりしないといけないんだな
うん楽屋に行くんだね
はい皆様もいらっしゃいませんか
そうね恵美やマナさんたちは、しばらくみすずさんと一緒の方がいいかもしれないわね
今、この劇場内で一番安全な場所だからよ外で自主練習している子たちも居るけれどほとんどの出演者は、楽屋に居るんでしょ
そうか出演者を守る警護役の人間も、楽屋に居るはずだ
はい、ですから皆さんで参りましょうよ
そう言うみすずにミナホ姉さんは
そうもいかないのよ今日の出演者の中には、小さなお子さんも居るでしょ警護役だけでなく、保護者の方も来ているんじゃない
はい、何人かはいらっしゃると思います
それがお母様ならいいんだけれどもし、お父様で、あたしたちの顔を知っている人なら
あ黒い森の顧客が居るかもしれないんだ
こんな所でしかも、開場時間前にミナホ姉さんと顔を合わすのはマズイだろう
だから、もうしばらくロビーに居るわ
オッケー、なら、あたしもこっちに居るよ
マルちゃんが居るなら、あたしもっ
あたしにとってはさ、マルちゃんが居る所が一番安全なんだもんっ
寧さんは、そう言って微笑む
後は、オレと美智と雪乃か
雪乃さんは楽屋には、いらっしゃらない方が良いと思いますよ
そのお姿ではさすがに変です
雪乃は、黄色と黒の工事現場カラーだ
決して品の悪い服装では無いが
どうみても、頭が弱い子にしか見えない
趣味が悪すぎて目立ちすぎている
それに今日は、高林清子さんがいらしています
みすずの話に、雪乃がスットンキョな声を上げる
雪乃さんの中学校時代のクラスメイトです
マナが、教えてくれた
お昼からずうっと、楽屋で雪乃さんのお話しをなさっていますよ白坂創介さんの家に遊びに行ったことがあるっていう話で家の間取りから、おやつに何が出たかまでずっと話していらっしゃいますわ
みすずが、苦笑する
白坂創介だって、一流広告代理店の部長だ
白坂家の一員だし雪乃だって、中学まではお嬢様校に通っていた
紺碧流の家元の弟子に、一人ぐらい知り合いがいてもおかしくはない
あの女
雪乃が、苦々しい顔をする
それなら、顔を合わせない方がいいかもね
幾ら変装しているとはいえ元のクラスメイトなら、雪乃の正体を見破るかもしれない
マナは、その人と会っても平気なのか
舞夏さんは、その人とは一度くらいしか会ってないしそもそも、マナは舞夏さんじゃないもんっ
マナは、そう言ってニタァと笑う
大丈夫よあたしが付いているから
メグが、そう言ってくれた
旦那様は、どうなさいます
こっちに数人やって来る
前を歩いているのはオレたちにパンフの作業を頼んだ、加奈子さんだ
その後ろに居るのは
工藤遙花と4人の手下だった
ごめんなさい舞台稽古の後、また本番用の衣装を脱がないといけなかったから
稽古様の浴衣に着替えた加奈子さんは、ハァハァ息を切らしてやって来た
わたしの今日の衣装は、家元様からお借りした物だから汚すわけにはいかないんです
加奈子さんは、小さなハンドタオルで汗を拭きながらそう言った
まあもう、全部終わっているのごめんなさい、みすずさんとお客様にみんなやらせてしまって
あたしたちだけじゃないわ瑠璃子さんと美子さんにも手伝っていただいたから
本当申し訳ないです
みんなを代表してオレが、加奈子さんに言った
オレたちみんな、みすずの身内ですから
オレの言葉に加奈子さんは、びっくりする
みすずさんもしかして、この方
あしまった
加奈子さんは、オレを現在非公開になっているみすずの婚約者だと勘違いしてしまったらしい
違うのよ加奈子さん
この人は、お祖父様がお決めになったあたしの婚約者ではないの
メグとマナが、オレの背中をトントンと叩く
ここはみすずさんのテリトリーだから
うん仕方無いよね
もう、鈍いなぁ早く、ミィちゃんの隣に行きなっての
寧さんが、オレを後ろからドンッと突き飛ばす
オレはみすずの横に並ぶ
みすずがニコッと微笑んで、オレを見た
この人はあたしが選んだ、あたしの大好きな人よ
まあそうだったんですか
加奈子さんの顔が、パッと明るくなる
ええ加奈子さんだけに、教えてあげるわねっ
この二人の感じだと加奈子さんは、とっても大人っぽい顔立ちをしているけれど
みすずより、年下なんだな
愛美ちゃんには、話してはダメですか
うふふいいわよでも、愛美さんだけにしてね
和やかに微笑み合う、みすずと加奈子さんの後ろで
工藤遙花は、苦々しい顔でオレたちを睨んでいた
じゃあ、パンフレットのことは加奈子さんにお任せしていいのね
はいもうすぐ、撫子先生の内弟子の皆さんがいらっしゃいますから
あれ、内弟子なら清香さんがもういらしているはずなんじゃ
清香さんは、今、緑子さんと牧恵さんの自主練習を見て下さっています
そっか内弟子の皆さんも、大忙しなのね
みすずと加奈子さんは、紺碧流の弟子同士にしか判らない会話をしている
そろそろ、みすずさんも準備なさらないといけない時間ですよね
そうだったわ急がなくちゃ
加奈子さんが、オレを見る
パンフレットの順番、御覧になりました
順番
みすずさん今日は、最後から3番目に踊るんですよ
最後から3番目って
一番最後は家元の撫子先生が踊られますから
今日の会は、紺碧流の家元がやっている日舞教室の発表会だ
最後は先生自らが踊るんだな
撫子先生の前はお教室の中で一番上手な、愛美ちゃんです
確か愛美さんは、家元先生の孫娘だって言ってたっけ
みすずは、その前
ということはみすずは、今日の出演するお弟子さんの中で2番目の腕前ってことか
大抜擢なんですよみすずさん、とってもがんばっていらっしゃいましたから
そんなこと言わないで恥ずかしいわ
みすずは、照れている
うんとっても、楽しみだよみすず
今日はあたし旦那様のために踊ります
オレはみすずにキスしたくなった
でもここではマズイな
加奈子さんの眼があるし
その後ろで、睨んでいるやつらもいる
悪いんだけれど、あたしとの約束、忘れたわけじゃないでしょうね
工藤遙花が、オレに言った
次話から遙花との決闘に入ります
ここのところ、蒸し暑くていけませんね
じわじわと体力を削られている気がします
とにかく今日さえ乗り切れば週末が来ます
がんばろうっと
駅前が七夕に合わせて、竹に願い事の短冊が吊されています
どうも近所の幼稚園の子に書いて貰ったのを集めて、駅員さんが吊しているようです(高い場所にも吊してあるので)
幾つか見て、面白かったのが
弟が良い子になりますように
幼稚園児の字だと、何ともいえない味わいがあります
あと、
キュア・メロリーになりたい
多分、キュア・メロディだと思います
そんな短冊を見て、思い出したのですが
私が小学生の時、先生に大きくなったら何になりたい聞かれて、
と答えた、田代くん
クラス全員が小さくなってるじゃないかと突っ込んだのは、言うまでもありません
(この話、前にも書いたかもしれません)
223.エム
どなたですこの方
工藤遙花のただならぬ雰囲気に加奈子さんが、みすずに尋ねる
みすずは、平然と微笑んで
瑠璃子さんの警護役です加奈子さんは、気にしないで
香月家の中できちんと、解決致しますから
そう言われてしまえば加奈子さんは黙るしかない
みすずさんは、とにかく自分のお稽古を優先して後は、あたしたちに任せてくれていいから
先にみすずさんを楽屋口まで送る構わないよね
鋭い目で、工藤遙花に告げるマルゴさん
ええ、構いませんわ
工藤遙花も、了承した
とにかく心配しないで、加奈子さん
みすずが、もう一度加奈子さんにそう言う
ホントに大丈夫だからっ
寧さんが、不安そうな加奈子さんにニカッと微笑む
それでも、加奈子さんか心配そうな表情を浮かべていた
全員でゾロゾロと劇場ロビーから、楽屋口へ向かう
劇場横の通路を、舞台側に歩いて行くと
関係者以外立ち入り禁止と書かれたドアが、大きく開かれていた
あの向こうが、楽屋になります今日は、あのドアは開けっ放しです
みすずがオレに説明してくれた
そうか、今日は日舞の発表会だし
50人以上も出演するから
観に来たお客さんが、楽屋を訪問するし
出演者も自分の出番でない時に、他の人の踊りを観に行ったりするから
観客席と楽屋を隔てるドアは、開け放しにしているんだな
そのドアの辺りには、いかつい男たちがたくさん待機していた
あの方たちは、みんな護衛の人たちですわ
みすずがそっと、オレの耳に囁く
今日の出演者は、みんな名家の子女たちだ
女性の警護役なら、楽屋の中まで入ることもできるけれど
男の警護役は、そうはいかない
だから、ここで待機しているんだな
みすず様、また随分不思議な連中と一緒にいらっしゃいますね
一人の50過ぎくらいのオールバックの男性が、みすずに声を掛ける
ミナホ姉さんをジロッと見ている
まあ、谷沢さんもういらしたの
ニッコリと微笑むみすず
今日は、先乗りなんですわここの警備体制の確認もしときたかったんでね
谷沢と呼ばれた男が、口をニッと歪めてみすずに答える
旦那様こちら、谷沢さんお祖父様の専任警護部隊のチーフですわ
香月閣下の専任警護役
そうか、工藤父は外回りで色んな調査や工作活動をしているから
閣下の身の回りに張り付いて警護しているのは、別の人たちなんだ
山岡部長たちの、工藤父に対する評価が低い理由が判った
香月セキュリティ・サービスの正社員たちからすれば工藤父たち警護課の人間は、香月閣下に信頼されていないようにしか見えないんだろう
専任の護衛部隊が、すでにあるんだから
谷沢さんこちら、黒森さんです
みすずはオレを黒森と紹介した
香月閣下の身辺にずっと張り付いている部隊のチーフだ
それだけでオレが黒い森の人間だということは判る
オレは谷沢チーフに一礼する
谷沢チーフは、冷たい眼でオレを見下ろしているだけだった
売春組織の人間に挨拶する気は無いらしい
みすず様変な連中とのお遊びは、そこそこになさっておいて下さい閣下がご心配なさります
まあ、何のことかしら
みすずは、笑顔のままそう答えた
お祖父様は、ご存じですよ
それなら、いいんですがね
谷沢チーフが、マルゴさんを見る
お、姉ちゃん、久しぶりだな師匠は今日はどうした
やっぱりマルゴさんの顔を知っているということは、黒い森のお屋敷に来たこともあるんだろう
恭子さんなら別件で出張しているよだから、今日はあたしだけだよ
あんな鬼みたいな女の下で働いてないでうちの会社へ来いよ売春宿の警護なんて、面白く無いだろ
谷沢チーフは、ミナホ姉さんの前で堂々と勧誘する
こっちは香月セキュリティ・サービスよりも給料が良いんでね
マルゴさんは、笑って答えた
バカ言え、こっちは厚生年金と雇用保険が付くんだぞ後々の福利厚生を考えたら、まっとうな会社の正社員になっておいた方が得なんだぜ
香月セキュリティ・サービスが、まっとうな会社だっての
売春宿よりはマシだろオレは、こう見えても香月セキュリティ・サービスの役員なんだ今ならオレの鶴の一声で、無試験で入社させてやるぞ
役員て山岡部長よりも、上の立場なんだ
残念だけれどその気は無いよ
何でぇ、つれねぇなまあ、いい気が変わったら、いつでも連絡してくれよ
谷沢チーフは、そう言った
旦那様谷沢さんがいらっしゃっていますから、あたしと瑠璃子さんは安全です
いや、香月閣下が専任の護衛部隊のチーフにしている人間だ
仕事は完璧なんだろう
お祖父様が心配なさって、先に谷沢さんを派遣して下さったんですわね
みすずの言葉に、谷沢チーフは苦笑する
そういうこってすわ山岡や工藤みたいな若造どもは頼りにならねえしね
谷沢チーフにとっては、山岡警備部長も工藤父もまだまだ半人前らしい
おい工藤の小娘大切な任務をほっぽらかして、ご主人様から離れるってのはどういう了見だ
谷沢チーフが、工藤遙花を叱責する
工藤遙花も香月セキュリティ・サービスに籍のある人間だ
谷沢チーフは、会社の上の人間に当たる
頭を下げる工藤遙花
谷沢さん悪いんだけど、この子、ちょっと借りるね
マルゴさんが、そう告げる
どういうことだい
この子がねあたしたちにケンカを売ってきたんだよ
ほお
谷沢チーフが、呆れた顔で工藤遙花を見下ろす
それで姉ちゃんが、きっちりと教育してくれるって
いいや相手は、そっちの子がするよ
マルゴさんが、美智を指した
美智はうつむいている
その子はこいつの妹じゃないのかい
谷沢チーフが驚く
はい、美智に姉と闘わせます必ず勝てと厳命しました
みすずが、チーフに言った
工藤遙花が侮辱した相手にあたしも入っていますから
谷沢チーフは、はぁと溜息を吐いて
判った処分は、姉ちゃんに任せる親父に似て、馬鹿なんだなこの娘は
いいえ、似ているのはお母様の方ですわ
いやありゃ、工藤のやつがちゃんとカミサンの相手をしてやらねぇからおかしくなっちまったんですわ
谷沢チーフは工藤母と山岡部長の不倫関係を知っている
そのまま、チーフは工藤遙花を見て
いずれにしても香月セキュリティ・サービスの看板を背負ったまま、他の組織にケンカを売る、仕事はいい加減、みすず様のご機嫌を損ねるじゃあ、話になりませんわ構わねぇから、姉ちゃんがガツンとやってくれよオレが許可するから
谷沢チーフは、美智の腕前を信用していないらしい
美智でなくマルゴさんに、工藤遙花の制裁を許可する
工藤遙花と4人の手下はすっかり真っ青になっていた
いいえ谷沢さんそれでは、困ります
みすずが、真顔で言う
工藤遙花が妹に勝てば全て不問にするということにしていただけませんか
この勝負が工藤美智には、必要なんです
美智が、ハッと顔を上げる
みすずお嬢さんは、この小さい子を随分買っておられるようですね
はい美智には、生涯あたしの護衛をさせるつもりですから
谷沢チーフが、工藤遙花に告げる
おい、お前その小さい子に勝ったら、今までの不始末は全部忘れてやる死ぬ気で勝ていいな
その命令に工藤遙花は
もし勝ったらあたしを谷沢チーフのチームに入れて下さい
あたし子供のお守りなんて嫌なんです本気になれませんどうせ警護するなら、重要人物でないと
ホントに馬鹿なんだこの女
あたしには、それだけの才能があります
空手で高校日本一になったということが、工藤遙花に変な自信を持たせている
お前な
叱責しようとする谷沢チーフを、マルゴさんが止める
後は、あたしに任せてよ
しかし、姉ちゃん
こういう才能の無い子はどうせ、身体でしか理解できないんだろうから
谷沢チーフが、マルゴさんを見てみすずを見てもう一度、工藤遙花を見る
馬鹿は死ななきゃ直らねえもんなおい、空手娘負けたらクビだそれだけは覚えておけ
あたしが妹に負けるはずがありません
工藤遙花は、どこまでも馬鹿丸出しだった
では、あたしは楽屋に参ります恵美さんとマナさんは、あたしと一緒に来て下さい
みすずが、そう言うがマナは、決闘に興味があるらしい
あたしやっぱり、お兄ちゃんと一緒にいようかな
マナあたしたちが居ると、美智さんが自由に闘えないわ
マナさんみすずの楽屋は、瑠璃子さんと同じお部屋なんです
瑠璃子さんと美子さんに旦那様の素晴らしさをお話しするの恵美さんとお手伝いして下さいませんか
瑠璃子さんと美子さんにオレとのセックスを勧めるってことか
マナは、ニタッと笑って
判ったマナは瑠璃子さんとお話しするねっ
旦那様、ちょっと
みすずがオレを他の連中から引き離す
みすずは、他の人に聞こえないようにオレの耳に、小さな声で囁いた
美智を見て下さい
美智は姉と闘うということで、すっかり意気消沈している
どうにも、工藤遙花が苦手らしい
美智はあの子は、精神的にとても子供です弱い子です本質的に、誰かに支配されていないとダメな子なんです
ですから、旦那様が美智をご支配下さいみすずのいない場所で
オレが美智を支配する
美智はMなんです信頼できる人間に、支配されることを望んでいます
Mって
マゾなんですよ
みすずと同じです
みすずも旦那様に支配されたい女の子なんですから
確かにみすずは
最初は、オレのペットだったし
オレに、支配されることを望んでいたような気がする
オレに犯されるような受け身のセックスを好むし
恵美さんとマナさんは違いますよねお二人は、どっちかっていうとサディスティックな傾向がありますから
メグとマナを見る
きょとんとした顔で、オレたちの方を見ている二人
この二人は、自分から積極的にセックスを求めてくる
確かに、MでなくSっぽい
この機会に美智の心を完全にご支配下さい美智には、旦那様が必要なんです
みすずが、美智に強い声で話し掛ける
は、はいみすず様
美智は、慌てて顔を上げた
あたしのいない間は、旦那様があなたの主人です何でも、旦那様のお言いつけに従って行動なさい
みすずの指令が美智の心に突き刺さる
ははいかしこまりました
では、旦那様美智をよろしくお願いします
みすずがオレにニコッと微笑む
楽屋口でみすずとメグとマナと別れる
克子姉は、工藤父に連絡しに行ったまま、まだ帰らない
じゃあ行こうか
マルゴさんが、工藤遙花に声を掛けた
あたし負けないわいいえ、負けられないのよ
工藤遙花は、そんなことを呟いている
で、決闘場へはどう行くのかな
工藤遙花が、舞台へ通じる扉を開いた
オレたちは、彼女に続く
舞台では照明合わせの途中の様だった
舞台スタッフが何人も働いている
舞台袖から地下に降りる階段へ
舞台の地下奈落へ向かう
うわっ、何かヒンヤリするねっ
地下だけあって、階上の冷気が溜まっているらしい
奈落は非常灯が灯るだけの薄暗い場所だった
今は誰も居ない
それが回り舞台の軸だねあ、ここはセリ上がる様にできているんだっ
寧さんが、劇場の機構を興味深そうに見ている
黒子ちゃん、こっちにおいでっ
寧さんが、雪乃の腕を引っ張る
いいから、あたしの側に居てっ
そう言って寧さんはマルゴさんの後ろに立つ
ミナホ姉さんも、スッとマルゴさんの背後に回った
工藤遙花と4人の手下と距離を取る
マルゴさんの前にオレ
美智はまだうつむいたままだ
さてちょっと確認しておきましょうか
ミナホ姉さんが、工藤遙花に言う
あなたが美智さんと闘って負けたら、香月セキュリティ・サービスはクビうちで売春して貰うそういうことでいいかしら
いいわどうせ、あたしが勝つんだから
工藤遙花は、そう言いながら4人の手下に目配せする
今よっ
4人がサッと動いて、オレを取り囲む
オレは、逃げようとするが、4人の空手少女の動きは速い
あっという間に捕まってしまう
一番体格の良い娘が、背後からオレを羽交い締めにした
あ、姉上
驚く美智
ちょっと保険を掛けさせて貰うわ
工藤遙花は、そう言った
美智と闘っている最中にその女が、変な真似をしないようにね
オレを人質にしてマルゴさんの介入を防ぐつもりか
構わないよどうせ、そんなことだろうと思っていたし
マルゴさんは、平然とそう言った
その背後で、寧さんが雪乃を抱き締めて、ニコッと微笑む
そうかだから寧さんは先に、雪乃を確保したんだ
工藤遙花が、人質作戦を取ることに気付いていて
彼だって黒い森の人間よ覚悟はできているわ
オレは、それぐらいの覚悟は定まっている
美智オレのことは気にしないで、精一杯闘え
美智がハッとして、オレの顔を見る
蹴散らせ、命令だ
美智は戸惑っている
さて、始めましょうか美智
工藤遙花はパンプスを脱いだ
裸足になって、空手の構えを取る
判っているわよねあんたは、あたしに一度も勝ったことが無いこれからも、永遠にそうよ
姉の言葉に美智は、怯えている
どうしてそんなに、姉を怖がっているのか
何か、トラウマがあるんだろうか
さあ構えなさい、美智
美智は震える手で、構えを取る
何やっているんだよ、美智
オレは思わず、そう言った
美智がオレを見る
それは空手の構えだろ
は、はい姉上との対決は、いつも空手ですから
美智は、そう答えた
空手じゃねえだろ
オレは、怒鳴った
お前は、工藤流だっ
美智がハッとする
そうか判った
美智が、何に怯えているのかが
工藤流では姉に圧勝してしまう
工藤遙花のプライドを粉々にしてしまうどころか
姉の肉体を傷付けてしまう恐れがある
美智は工藤遙花が、二度と空手ができない様な身体にしてしまうことが怖いんだ
美智殺す気でやれ
美智が、ブルッと震える
吉田じゃねぇご主人様って呼べ
さっき、みすずに言われたろうみすずが居ない場所ではオレがお前の主人だ
美智はまだ震えている
オレのためにやれ
オレは美智を支配する
そう腹を括る
姉を捨てろお前の家族は、オレとみすずだ
美智の眼が大きく見開かれる
オレとみすずのためだけに生きろっ
美智は
スゥと大きく息を吸い
そして吐く
姉上申し訳ありません
美智の身体の震えが止まる
覇気が溜まっていく
わたくし姉上を殺さなくてはならなくなりました
そう言ってスカートの下に隠した、赤いムチを取り出す
ムチの先端が、空気を切り裂いて、奈落の床を叩く
あ、あんた何やっているのよ
工藤遙花が、驚く
まさかそれを使うつもりじゃないでしょうね
何か問題でも
美智の冷たい眼が姉を見入る
馬鹿なこと言わないでよっあんたとあたしの勝負なら、素手でやるに決まっているでしょう
残念ですが、わたくしは勝たなければなりませんから
武器を捨てなさいその男が、どうなってもいいの
工藤遙花が、オレを取り囲む手下に目配せする
ドシュッ
手下の足下ギリギリに、投げナイフが突き刺さる
今のはわざと外しましたご主人様を解放しなさいでないと
美智はムチを持った反対の手に、別の投げナイフを握っていた
ひ、卑怯よ美智
工藤遙花が、そう言った瞬間
美智のムチが、姉を襲う
ズバシュッ
遙花のピンクのスーツの胸元が切り裂かれた
白いブラジャーが剥き出しになる
遙花の肉体を傷付けることなく正確に服だけを裂いた
美智の技量に誰もが驚く
ご主人様を守らねばならない闘いに卑怯も何もありません
右手にムチ、左手に投げナイフ
もう一度言いますわたくしのご主人様を離しなさい
オレを捕まえていた遙花の手下が手を離す
ゆっくりと4人から離れて美智の背後に廻る
申し訳ございませんでしたご主人様
美智が言った
すぐにこの女は処罰致します
すっかりぐったりして、夕方まで寝込んでいました
そしたら夢の中で
みすずと美智は、Mメグとマナは、S
という、お告げがありました
そうしたら、迷っていた展開がサッと開けました
こんなことも、あるんですね
224.工藤美智
マルゴ様、ご主人様をお願い致します
美智が姉を睨んだまま、そう言う
了解吉田くん、あたしの後ろへ来て
オレはマルゴさんの背後へ
寧さんが、スッとオレに寄って来てくれた
大丈夫だよっ
オレを見て、ニッと微笑む
ミナホ姉さんはジッと美智を見ている
雪乃が、オレの側に近寄って来た
オレの背広の裾を、キュッと握りしめる
雪乃、怖いのか
雪乃が、オレをチラッと見上げ
うるさいわねっ
雪乃は小さく、震えていた
卑怯者武器に頼るなんて、武道家じゃないわよっ
工藤遙花は、ヒステリーを起こしていた
わたくしは武道家ではございませんから
鋭い目で姉を見据える
わたくしは、主を守る楯主の命のままに動く、一振りの剣
スゥハァ
美智の独特の呼吸音が、暗い舞台下の奈落に響く
本来の工藤流古武術とは自らの意志をもたぬ一塊の凶器と化す業でございます
自分の意志を持たぬ凶器
姉上今生の最期に、お見せ致しましょう姉上も、工藤の家に生まれし者ならばこの業の神髄を見ずして死ぬのは、もったいのうございます
そう言って美智は
赤いムチと手投げナイフを床に捨てた
驚く、工藤遙花
改めて素手でわたくしと勝負するつもり
美智は、そんな姉を無視して姉の4人の手下に向かう
掛かって来なさい
スススッと滑るように美智が、4人の前へ進む
4人まとめて仕留めて差し上げます
何の躊躇もなく接近する美智に4人の空手少女はビクッと震える
人間にはね他人に踏み込まれると、反射的に拒絶してしまう距離感というものがあるんだよ
それは基本的に、手を真っ直ぐに伸ばして届く範囲自分の腕のリーチの長さと同じ距離だよ誰でも、その内側に他人に入られることを嫌う生存本能が危険のシグナルを発信してしまうんだ
正に美智が、一人の空手少女の拒絶距離に侵攻する
ヒッ
空手少女は、反射的に美智に拳を突き出す
少女の身体が、くるんと宙を飛んで肩から床に倒れる
美智が正拳突きの勢いを利用して、投げたんだ
受け身ぐらいは、きちんとできますよねお姉様方
美智の冷たい眼が、残りの3人の空手少女の恐怖心を一気に煽った
トァァァァッ
一斉に、美智に襲いかかる
スゥハァァスゥゥゥ
美智の身体が波間に揺らぐクラゲの様に、ゆらりゆらりと3人の攻撃を避ける
あんんんどぅぅとろぁぁ
1人の少女の蹴り足の美智は、足首を下から極めて掬い上げる
別の少女の突き出して伸びきった腕の肘の関節をクルッと捻る
最期の少女が、美智に掴み掛かろうとした瞬間身体を翻して、その少女の喉を下から突き上げるッ
グヘェェッ
3人の少女の苦悶の悲鳴が重なった
それぞれが床に倒れて、痛みに唸る
4人とも、戦闘不能に致しました競技者としては、支障を来たさぬ程度の負傷に留めましたので、一週間ほど安静にしていれば直りますどうか、これからも4人で仲良く空手のお稽古をお続け下さい
肩を足首を肘を喉を押さえて、苦しむ年上の空手少女たちに、美智は無表情で言った
工藤遙花さんに、そそのかされて来たんだろうけれど、これに懲りたら君たちはスポーツの世界に帰るんだね
マルゴさんが、少女たちに言う
君たちはルールがあって、審判の居る場所で1対1で闘うことしかしてきていないだろあたしたちの世界は、そうじゃない反則有りで、審判はいないそして相手の数は、時と場合で違う
ニッと笑ってマルゴさんが、工藤遙花を見る
あたしも美智さんも1対多数のトレーニングを積んできているそれもガードすべき人間を守りながらのね
マルゴさんは夜の街で、不良やチンピラヤクザを狩り続けていた
寧さんを守りながら、必ず複数の敵を相手していた
あれは実戦形式のトレーニングだったんだ
雪乃がオレにしがみついてくる
オレは、雪乃の肩をギュッと抱き締めてやる
さて姉上
美智が改めて、姉を見上げる
工藤流古武術の奥義は、その呼吸法にあります
また、ゆらゆらと不規則に揺れながら、美智が姉に近付いていく
全ての武術は敵の気を感じ、その気の途切れる隙を狙って攻撃を行うことに奥義があります
気
ほら日本人は空気を読むっていう言葉が好きだよね
この場合の空気とは気の流れだよ人間は個として別々の意志を持ちながら、群れを作らないと生活することができない群生動物だよだから、他者と気を通じさせる気を合わせるということを大事にする群れとは気の合致した集団だ他者の気を感じ取り、自らの気とシンクロさせていく能力は、人間誰もが生まれながらにして持っている力なんだよ
そして気の本質は、呼吸にあります相手と呼吸を合わせ鼓動、脈拍のリズムさえ合わせる完全に気の通じた者同士は、生物的な肉体のリズムそのものがシンクロするのです
マルゴさん美智
何を言っているんだ
ゆえに武術の奥義は、敵との気のシンクロと、シンクロからの離脱を自由にコントロールすることにあります
相手を自分の気の世界に引きずり込むこと相手を呑むって言ってもいいかなそれが気のシンクロそして呑み込んだ瞬間に、自分だけシンクロから離脱して敵を討つそれが敵の隙を突くということだよ
そうだ、マルゴさんの闘い方はいつも、相手の意表を突く
心の隙を作って、一気に刈り取る
しかし工藤流古武術は違います
美智の身体がまた、ゆらりと揺れる
工藤流古武術は、相手の気とは決してシンクロしません気を合わすことを拒絶します常に、相手の気を反らし焦点をズラしていくだからこそ他の流派の人々には決して真似のできない、特殊な呼吸を行います
しゅるるるるすぅぅしゅははははぁぁすぁすぅぅ
不規則で不安定な息遣い
不気味なリズムで、美智の息吹が薄闇に拡がっていく
お父様が常にふざけているとしか思えない闘い方をなさっているのはこの呼吸法の神髄を敵に悟られぬためです
わざと派手な格好をしおかしな武器で、不格好に闘うのは
特殊な呼吸法を、相手に気付かせないためか
では姉上わたくしどもの先祖伝来の技によって、そのお命、頂戴致します
美智の身体が、ブンッと歪んだ
物凄いスピードで、姉の懐に飛び込むッ
ひゃあああっ
怯えた姉が、不用意に右の拳を突き出した瞬間
工藤遙花の右腕が、ありえない方向に曲がるッッ
ギャッ
オレは人の骨の折れる音を、始めて聞いた
雪乃が、オレにしがみつく
マルゴさんとミナホ姉さんは平然と見ていた
お覚悟ッッ
美智の手が、工藤遙花の首に迫るッッ
このままでは、美智は本当に姉を殺してしまう
止めないと
しかししがみつく雪乃が邪魔になって
オレは、咄嗟に動けなかった
あんたたち何をやっているのッッ
階段の方から、女の絶叫の声がした
動かないでッ撃つわよッッ
階段の途中でピストルを構えている、一人の女性
美智ぃぃやめなさいぃぃッッ
美智と遙花の母親
香月セキュリティ・サービス総合警備部工藤悦子だった
美智、ストップだ
工藤母の作ってくれた気の隙間を使ってオレは美智に告げる
まだこの敵を殺しておりませんが
美智は自分に銃を向ける母親を無視して、オレに答える
オレは殺す気でやれって言ったんだ殺せと言ったわけじゃない
美智は姉の喉笛を狙っていた手を、下ろす
ご主人様のご命令に従います
そのままゴミクズを投げ捨てるように、姉の身体を奈落の床に突き倒した
ヴガァァァァッッ
右腕を骨折した工藤遙花は激しい悲鳴を上げる
何てことをするのあんたはっ
工藤母が、慌てて姉娘に駆け寄る
あれほど言ったじゃない遙花と本気で闘ってはいけないって
工藤母は工藤父とは、幼馴染みの関係だ
当然工藤流古武術の全てを知っている
美智が姉と本気で闘えば、どうなるかも
姉上は、わたくしの敵となりましたゆえ
あんたは、お姉ちゃんを殺すつもりなのっ
主を守るためならば、致し方ございません
馬鹿なこと言うんじゃないわよっ
母が美智を引っぱたく
美智は、その手を避けずに受けた
あんたは、あの人そっくりね工藤流古武術なんて、どうでもいいもののために、平気で家族をないがしろにするのよっ
工藤母が、鬼の形相で美智を叱る
わたくしはあなた様の娘である前に、工藤流古武術継承者でございますから
美智は顔色一つ変えずに、そう答えた
わが主の敵ならばわたくしの姉であろうと、母であろうと、お父様が相手でも、わたくしは闘います
キチガイよあんたは
工藤母は美智を罵る
遙花、大丈夫
妹に腕を折られた姉に母親は声を掛ける
上腕部の骨をきれいに折っただけだから、すぐに直るよ全治に半年以上は掛かるだろうけれど空手だって、またできるさ
マルゴさんが、笑ってそう言った
売春組織の警護人が、偉そうなこと言わないで
工藤母が、怒りの矛先をマルゴさんに向ける
そういうあんただってただの警備会社の社員じゃないだろ裏の世界に少しでも顔を突っ込んで生活している人間が、偉そうなことを言うもんじゃないよ
あたしは香月セキュリティ・サービスの人間ですあんたたちとは、違うわ
工藤母は、黒い森への蔑視をあからさまにした
夫以外の男と不倫している様な女が、勝手なことをおっしゃらないで下さい
美智が、静かに母に告げる
子供のくせに、親を批判しないでよっ
カッとなった工藤母が、再び美智を平手打ちしようとする
今度は、美智は母の手を避ける
母の首元をドンと突いた
工藤母は、そのまま後ろに尻餅をつく
美智ぃぃあんたぁぁ
工藤遙花が、折れた腕の痛みに耐えながら妹を見上げる
そんなに強いくせに今まで、あたしに隠していたの
工藤遙花は悔し涙を流していた
妹に圧倒的な力の差で負けたことが、どうしても納得できないようだ
姉上に勝つなというのがこの方のご命令でしたから
美智は母親をこの方と言った
もはや工藤悦子を自分の母親とは認めたくないらしい
お母さん何で
工藤遙花が、泣きながら母親を見上げる
この子は美智は、工藤流古武術の申し子なのよこの子は、生まれつき工藤流の考え方をしていたの誰にも教えられないのに、工藤流の闘い方を理解していたいいえ、何度あたしが教えても、普通の格闘技のルールが理解できなかったの工藤流しかできない子なのよ
わたくしには、スポーツとしての格闘技に対する興味はありません必ず1対1で闘うとか、時間制限や、禁じ手の有無審判による判定など、理解ができませんそんなもの実戦には全て関係ないではありませんか
美智は実戦、本気での殺し合いにしか、興味が無い
この子は天才よあの人も、そう言っているわ工藤流古武術の歴代の継承者の中でも、この子ほど早熟な人間はいないってでも
工藤母は、憎々しげに話す
この子の力は現代では裏の世界でしか使えない無意味な天才なのよ
工藤遙花が、妹を見上げる
じゃあ今まで空手の試合で、一度もあたしに勝てなかったのは
マルゴさんが、口を開く
美智さんだって、もう大人なんだ空手の試合ってことなら、ルールを尊重しようとするさだから、混乱してしまうんだろうねルールとは関係無く、美智さんには相手を確実に倒すための道筋が見えているそれが空手という格闘技の枠からは大きく外れているから実際にその通りにするわけにはいかなくて、それで負けてしまうんだろう
はい空手という枠の中では、わたくしは自由に動けません
美智が、そう告白する
美智あんた、いつからあたしに勝てると確信していたの
三歳年上の姉が妹に尋ねた
わたくしは物心がついてより今まで、一度たりとも姉上に劣っていると感じたことはございません
生まれてからずっとあたしのことを弱いと思っていたのねずっとずっと、あたしのこと馬鹿にしていたのね
口惜しさと憎しみの涙がボロボロと零れる
申し訳ありません
美智はスッと姉に頭を下げた
どっちにしても君には、この世界は無理だよ他のお友達と一緒にスポーツの世界へ戻るんだね
マルゴさんが冷たく、工藤遙花に言った
ちくしょうみんなして、わたくしを弱いと嘲笑うのねちくしょう
震えながら泣く工藤遙花
どうせ、あたしの才能なんてこんなものよ妹にすら勝てない、弱い身体の持ち主なのよ
こうなるのが判っていたから美智には、本気で遙花と闘わないように言い聞かせてきたのに
工藤母がマルゴさんとミナホ姉さんを睨む
恨むわよ、あんたたち絶対許さないから
違うよその子が弱いのは、才能が劣るからでも、身体が弱いからでもないさ
工藤母と姉娘が怒りの眼で、マルゴさんを見上げる
弱いのは心だよ
心なら
美智だって、決して強くはない
オレの呼び掛けに、美智がスッと反応する
はいご主人様
今、この瞬間に家を捨てろお前の残りの人生は、オレとみすずに捧げるんだ
美智は母親と姉に振り向く
お別れでございますこれまで、わたくしを育てて下さってありがとうございましたお二人には、大変感謝致しております
美智あんた、何を言っているの
驚く母
わたくしは身も心も完全に工藤流古武術継承者になってしまいましたもう、あなた様たちと一緒の家族には戻れませぬ
美智
わたくしの私物は全てご処分下さいお手数をお掛けして、大変申し訳ございませんが
美智馬鹿なこと言わないで
姉が、叫ぶ
武人として生涯を捧げるべき主に巡り会えましたわたくしは、この道を参りますどうぞ、ご達者で
美智は、オレとみすずが貰いますこいつには、オレたちのために生きて貰いますオレの子を産ませます
ずっと母親と姉に対して無表情だって美智が背筋をゾクッとさせる
ご主人様
美智はさっき本来の工藤流古武術とは自らの意志をもたぬ一塊の凶器と化す業だと言った
つまり美智は、自分の圧倒的な戦闘力を自分でどうつかうべきなのかは、考えられない
武人として力は全て、主に捧げるものだと信じ切っている
それは、みすずが言っていた通り
美智には、常に彼女を支配する人間が必要だってことだろう
そういう相手がいないと美智は、自分の武力に押し潰される
ずっと、オレとみすずの側に居ろお前は、オレとみすずのことだけ考えていればいいんだ
そういう顔はするなオレやオレの仲間に対しては、愛想良くしろお前、オレやみすずに可愛がられたいんだろ
なら、オレやみすずが喜びそうな態度を取れオレたちの喜びが、お前の悦びだそうだろ美智
肝に銘じます
そして、美智は不器用そうに、ニコッと笑った
まあ初めは、こんなもんでいいか
キスするぞ美智
オレは、美智を抱き寄せる
どうぞわたくしの全ては、ご主人様のものですお好きになさって下さい
オレは美智に唇を重ねた
工藤母と姉が苦々しく、オレたちを見ている
絶対に許さないわあたしの生涯を掛けて、あんたたちをブッ潰してやるから黒い森
工藤母は、オレではなくミナホ姉に呪詛の言葉を吐いた
あたしたちは誰からも許されるつもりはないわ
ミナホ姉さんが、冷たい眼で答えた
あたしたちはあたしたちで自らの生存を賭けて、サバイバルしているだけよ美智さんが、彼とみすずさんの支配下でなくては生きていけないというのならあたしたちは、彼女を受け入れるだけだわ
工藤美智さん黒い森にようこそっ
寧さんが、ニッと笑ってそう言ってくれた
そう言ってスッと頭を下げた
工藤母が、香月セキュリティ・サービスの医療隊を奈落に呼んだ
4人の空手少女と工藤遙花が、緊急治療を受ける
工藤遙花は、折れた腕に添え木をされた
他の少女たちも、美智に痛められた箇所を固定される
痛いと思うけれど今、この劇場内で騒ぎを起こすわけにはいかないの自分の足でしっかり歩いて、建物の外に出て貰うわいいわね
工藤母は、姉娘たちにそう言った
日舞発表会の開場前だ
劇場に救急車を呼ぶわけにはいかないし
出演者たちや、他の名家の護衛たちに見られる場所で香月セキュリティ・サービスの関係者がタンカで運ばれるわけにもいかない
会社の名誉に傷が付く
ごめんなさいお母さん
工藤遙花は自分の母にだけ、謝罪の言葉を述べた
大丈夫よ山岡部長が、あなたたちのために車を一台用意して下さったから
その車で工藤遙花たちは、病院に運ばれるのだろう
ところで、遙花さんさあ
寧さんが声を掛ける
最初の約束、覚えているよねっうしししっ
最初の約束
もし、妹に負けたら工藤遙花は、一度だけ黒い森で売春をする
工藤母が、強い警戒心を見せるが
あたしだって空手家のつもりです二言は無いわ
妹に腕を折られた空手少女は約束の履行を約束した
昨夜からまた、体調不良です
ちょっと一日、ぐったり状態です
明日になっても不調なら、医者に行きます
遙花の処女喪失は、美智の後にします
妹が先という方が、いいような感じがして
225.罰して下さい
奈落から、再び舞台袖に上がる
工藤遙花と4人の怪我人は、痛む箇所を押さえながらも何とか自分の足で歩いている
工藤母と救急要員が、彼女たちに付いている
楽屋口の方から劇場外へ
人目を避けて、病院へ向かうのだろう
オレたちは、そんな彼女らを見送って再び、みすずの居る楽屋の方へ向かう
一度、楽屋の前を通り抜けないと、劇場ロビーには戻れない構造になっていた
また、随分派手にやったらしいな
楽屋の並ぶ廊下香月セキュリティ・サービスの谷沢チーフがオレたちを待っていた
この子の圧倒的な勝ちさ関節を極めて、躊躇無く腕を折ったよ
マルゴさんが、チーフに闘いの様子を語る
実の姉の腕をへし折るたぁ、大した度胸だな
谷沢チーフは、小柄な美智を見下ろして驚嘆する
いやそれぐらいの根性の方が、将来有望だ工藤遙花は、技のキレだけは優れていたからなあれをかい潜って、一発で勝負を決めたってのなら、なかなか大したもんだと思うよ
谷沢チーフは、工藤遙花を採用する時に一応能力をチェックしていたらしい
高校生空手日本一の姉を仕留めた美智の技量を、チーフなりに分析する
技は時間を掛ければ何とか身に付くが心の方は、そうはいかねぇその年齢で、一端の度胸があるんなら、今後の成長が楽しみだよ姉の方の正式採用は見送るつもりだが嬢ちゃんの方は、育成枠で正式採用だな
どうやら美智も工藤遙花も、香月セキュリティ・サービスには仮採用という状態だったらしい
谷沢様お願いがございます
美智がスッと香月セキュリティ・サービスの役員に告げる
わたくの籍を抹消して下さい
驚く、谷沢チーフ
お嬢ちゃん、うちの会社から抜けると言うのかい
わたくしは今後は、個人として、みすず様にお仕えして参ります
しかし香月セキュリティ・サービスに属していなければ、給料は出ないぞ
その子の報酬は、うちで払いますわ
ミナホ姉さんが、谷沢チーフに言った
あんたのところが
黒い森が、みすずの警護の費用を支払うという理屈が谷沢チーフには理解できない
はいわたくしは、黒い森に所属することにいたしました
美智は、真顔でそう答える
なんだぁお前たちのところは、売春部門だけじゃなくって、警備部門も開業するつもりかよ
皮肉交じりの谷沢チーフに、マルゴさんは
そういうわけではないけれどこの子は、香月セキュリティ・サービスみたいな大きな所じゃ、才能を伸ばせきれないよだから、うちで預かることにしたんだ
まさか姉ちゃんの弟子にするのか
この子の師匠は、父親だけだよあたしは、一緒に研鑽するお姉さんぐらいの立場かな
谷沢チーフは、美智の移籍について、どう返事するべきか悩んでいるようだった
谷沢さん、オレは構わないからミッチィくんの好きなようにさせてやってくれないか
そんな声に振り向くと
工藤父が克子姉と一緒に立っていた
父に一礼する美智
悦子と遙花には、今、そこで会った悦子に、睨まれたよ
工藤父は、そう答える
父親のお前がそう言うのなら、仕方無いのかもしれねぇが正直、うちの会社の将来の戦力になりそうな子を他の組織にブン取られるのは面白くねぇな
谷沢チーフは、そう言う
チーフは、さっきの美智の闘いぶりを見ていない
チーフにとっては、美智はまだ将来有望な女の子ぐらいの存在なんだろう
それにちっぽけな売春組織なんかに任せて、この子が大成するとは思えないしな
谷沢チーフは、ミナホ姉さんを睨んでそう言った
あたしや恭子さんじゃ、美智さんの指導はできないって言うの
そうは言わねぇが姉ちゃんはともかく、恭子は規格外だ
規格外
マルゴ姉ちゃんみたいな人材ならオレは、喜んで香月セキュリティ・サービスに迎える姉ちゃんの技には癖が無い応用力も買うやっぱり、重要人物の警護は正統派でないと勤まらねぇからな
恭子さんだって、正統派だよ
嘘吐けあいつは、底抜けの規格外じゃねぇか護衛対象の重要人物を餌に、敵対勢力を炙り出しにするくらいのことは平気でやるだろう
それは誤解だよ恭子さんは、仕事に関してはとことん真面目だからね目的と方法を取り間違える様なことはしないさ護衛対象をわざと危険に直面させる様なことはしないよただ護衛対象以外の人は、平気で陥れるだろうけれど
そうね恭子さんが、今、ここに居たら劇場内の人間の安全は絶対に守るだろうけれど、香月セキュリティ・サービスの警備の人たちについては平然と楯にするでしょうね警護役を職業に選んだ人たちですもの当然の覚悟はできているはずだって、恭子さんなら割り切るわ
ミナホ姉さんが、フフっと笑う
それみろ大組織には向かない人材だ
警備会社の役員としては社員の安全にも配慮しないといけないのだろう
命を投げ出す覚悟はできているはずだという前提で、行動指示を出されたら困る
谷沢チーフと恭子・ドスノメッキーさんは根本的に立場と考え方が異なるんだ
そういう意味なら工藤美智さんは、あたしたちに近い人材なんだと思うよ
マルゴさんは、チーフにそう言うが
馬鹿言えまだ、こんなに小さい子だぞそんなもん、今後の教育次第で幾らでも修正できる
谷沢チーフからすれば香月セキュリティ・サービスの様な大会社の社員として、規律のある行動ができる人材が一番なのだろう
残念ながらこの子の戦闘思想は、もう完成されているよ工藤流古武術の継承者だからね
そうなのか、工藤
マルゴさんの言葉にチーフが工藤父を見る
オレよりもよっぽど工藤流古武術の精神に迫ってますよこの子は
それじゃあ
はいこっから矯正するのは無理だと思いますねうちの会社に所属させてもオレのとこの警護課みたいな裏仕事しかできない人間になっちまいます
だから外に出したいのか
はいオレみたいな器の小さな人間じゃ、この子の指導はできません
恭子が、そんなに器のでかい女とも思えないがな
谷沢チーフは、考え込む
一つだけ、約束してくれ絶対にこの子には、客を取らせないと
チーフが、ミナホ姉さんを見る
約束するわ工藤美智は、娼婦の仕事はさせません
ミナホ姉さんは、はっきりと断言した
判った移籍を認めよう
谷沢チーフが、美智に言う
ただしみすずお嬢さんの許可はちゃんと取ることそれと、黒い森に愛想が尽きたら、いつでも香月セキュリティ・サービスに戻って来ることこの二つは、守って貰うぜ
美智は、そう返事した
で、何だって外回り担当のお前がここに居るんだ
谷沢チーフが、工藤父に告げる
それなんですがね
工藤父は、チーフに何やら耳打ちした
おそらくミス・コーデリアと白いヴァイオラたちの話だろう
それでそいつらはどうした
すでにここの敷地の中からは出て行ったよオレの配下の予備の連中に尾行させている
でこの件は、もう山岡には伝えたのか
それなんだけど
工藤父は、困った顔をする
あいつは固すぎるからこんな事態を知ったら、守りをガチガチにしちまうでしょう
そうは言っても山岡警備部長が、ここの現場責任者だ命令系統ってものがある
工藤父が山岡部長を飛ばして、その上の立場である自分に報告してきたことに谷沢チーフは苦言を呈する
オレは、あいつは苦手なんですよ
判ったとにかく、警備本部に行こう山岡には、オレから話してやる
お前の娘が二人とも、うちの会社の管理下から消えたってのもあるしなみすずお嬢さんと瑠璃子お嬢さんの警護に、誰か廻して貰わないとな
それこそ、谷沢さんの部下の方にお願いできませんか
それが狙いか
はい山岡のとこの連中じゃ、経験も実力も足りません
確かに山岡の組んだ何重ものガードを潜り抜けて敵に侵入されたんだ並みの相手じゃねぇんだろうな
子供のお守りと兼務しているようなレベルの警護役じゃあ対応しきれません
そうかやっぱり、子供の警護役というのは格が低いんだ
判ったそれもオレに任せろ
谷沢チーフは、近くに居た黒スーツの男に声を掛ける
菅井、ここの警護は任せるオレはちょっと警備本部まで行ってくるから
それと藤宮を警備本部まで呼んでくれ
菅井と呼ばれた男が、すぐに携帯電話を取りだした
え藤宮にお嬢様たちの警護をさせるんですか
驚く、工藤父
藤宮じゃ、不服か
逆です藤宮は、谷沢さんの部隊のトップ・エースじゃないですか
他に女の隊員で空いている人間がおらん
谷沢チーフが、苦笑する
でも、藤宮は攻守でいったら、徹底して攻な女じゃないですか
あいつはそれだけ危険に対する感度が良い今の状況なら、適任だよ
他の家の警護役の連中がビビっちまいますよ
構わん、ビビらせとけそれぐらいの緊張感があった方がいいだろう
藤宮という人は、そんなに怖い人らしい
それにオレが藤宮を出したということが、効果的なメッセージになる他の家の連中にも、山岡にもな
谷沢チーフは、会場全体に良い意味でのプレッシャーが掛けるつもりなんだ
あの警備本部に報告に行くのなら、あたしも同行しましょうか
克子姉が気を利かせてそう言うと
いや、あんたらが来ると山岡が変に誤解する可能性があるここは、オレに任せて貰おう
谷沢チーフが、そう言った
うん変に誤解されてオレたちが、ミス・コーデリアと繋がっていると思い込まれたりしたら厄介だ
ここは、山岡部長の上司である谷沢チーフに任せた方がいい
行くぞ工藤
うっす
早足で、谷沢チーフと工藤父は警備本部へ向かう
あたしたちも、一旦、ロビーに戻るわ
あなたは美智さんと、みすずさんの楽屋へ行ってらっしゃい
みすずさんに報告しないといけないでしょ
確かにそうだけど
ついでに、恵美ちゃんととマナちゃんを回収して来てよ
いつまでも、楽屋に居るのはみすずや瑠璃子さんの迷惑になるだろうし
黒子ちゃんなら、あたしが預かっていてあげるからさっ
寧さんがオレにくっ付いている雪乃を見て、そう言った
雪乃は、さっきの闘いの最中から、ずっとオレの背広の裾を握りしめたままだったのだ
ほらっ、黒子ちゃんはこっちに来るのっ
寧さんが、オレから雪乃を引き剥がす
こっちは、あたしが付いているから安心して美智さんは、そのまま楽屋に残って、谷沢チーフの部下の人が来るまで、みすずさんと瑠璃子さんの警護に入って
マルゴさんが、指示をする
美智と二人だけでみすずと瑠璃子さんの楽屋へ向かった
廊下には、稽古用の浴衣姿や、すでに舞台衣装に着替えた女の子たちがたくさんいた
それぞれがスーツ姿の大人の女性を連れている
ああ、これがさっき谷沢チーフたちの言っていた、お守り役兼護衛の人たちなんだな
確かに、楽屋の入り口でたむろしていた、いかつい男の護衛たちとは感じが違った
それなりに訓練されているのだろうが戦闘能力だけに特化している様子は無い
小さな子供たちの警護となると、穏やかな女性らしさも必要なんだろう
ご主人様、こちらです
美智が、スッと歩いて行く
美智は、前にも来たことがあるの
はいこの発表会には、毎年来ていますお嬢様たちは、いつも、同じ楽屋をお使いになっておられますから
楽屋にはそれぞれ、使用者の名前が紙にプリントされて貼られていた
ほとんどの出演者は、大部屋を共同で使っていたけれど
みすずと瑠璃子さんは、二人で個室をあてがわれていた
オレが外から声を掛けると
楽屋の中からマナが顔を出す
あっ、お兄ちゃんっ美智さんも
嬉しそうにオレを見る、マナ
今、入っても平気か
みすずたちが、着替えているといけない
オレはマナに一応、尋ねてみた
楽屋の中へ戻る、マナ
みすずさぁん、お兄ちゃんと美智さんが来てくれたよっ
どうぞ、お入り下さいませっ
中から、みすずの声がする
お邪魔します
オレと美智は揃って、楽屋の中へ
楽屋の中は、6畳ほどの広さがあった
鏡台が二つありそれぞれの前に、みすずと瑠璃子さんが座っていた
二人とも、すでに衣装の和服に着替えている
いらっしゃいませ
瑠璃子さんが、オレに挨拶してくれた
あ本番前に、済みません
お気になさらないで下さいまだ開場前ですしわたくしも、みすずさんも出番はずっと後です
みすず舞台稽古は
今、舞台監督さんが呼びに来て下さるのを待っているところですちょっと、全体的に時間が押しているみたいですね
間に合うのか
開場時間まで、もうそんなに残っていないけれど
最悪、明かりの調整だけで舞台で、あたしの踊りを頭から通して確認する時間は、いただけないかもしれません
そんな状態で大丈夫なのか
はい出番の遅い出演者に、しわ寄せが来るのはいつものことですから
みすずは、こういう事態に慣れているようだった
一番最後に踊られる家元先生は、いつもぶっつけ本番でいらっしゃいますし
そりゃ全員の稽古を見て、細かくチェックしているんだから
すでに相当くたびれているだろうし、自分の踊りの確認までしていられないんだろう
だけど家元先生は、踊りのプロなわけだし
どんな状況でも観客の前で問題無く踊ってみせるだけの技量はあるんだろう
それでいかがでした
みすずは、美智と工藤遙花の勝負の結果を尋ねた
うん、どうだったの、お兄ちゃん
マナも興味津々で、オレの顔を見る
みすずの横で、メグもオレに注目していた
美智が勝ったよ圧勝だ
オレの答えにマナが
やっぱりねぇ絶対、そうだって思ってたよっ
マナが、はしゃぐ
いやマナが想像している様なレベルじゃなかったぞ
もう、とんでもないレベルでの完全勝利だったんだから
それで遙花さんは、どうなさいました
瑠璃子さんが、オレに尋ねる
遙花さんはちょっと、腕を痛めたので早退しましたあの、お母さんが来てくれて
さすがに、美智が工藤遙花の腕の骨を折ったことは、言わない方がいいだろう
瑠璃子さんたちには、刺激が強すぎる
ああ、お母様も香月セキュリティ・サービスに在職なさっておられるのでしたね
美子さんが、穏やかにそう言った
はい、大事を取って病院へ向かいました4人のお友達が、付き添っていますから
正確には、その4人も美智によって病院送りになっているんだけれど詳細は述べない
それでこの後の瑠璃子さんの護衛なんだけど
オレの言葉を、瑠璃子さんと美子さんが真面目な顔で聞いていた
谷沢チーフの部下の人で、藤宮さんて人が来てくれるらしいよ
まあ、藤宮さんが
驚く瑠璃子さん
わたくしの護衛には、もったいない方ですわ
あ、何か他に今、護衛のできる女の人がいないみたいで
とにかく聞いた話をオレは話す
それなら仕方ありませんけれど何だか、申し訳ないわねえ、美子
はい、瑠璃子様
お嬢様二人が、顔を見合わせる
あの、みすず様
美智が主に言う
どうしました美智
美智がまっすぐにみすずを見上げる
しかし、緊張しているのか声が出ない
美智はオレとみすずだけを主人にして、生涯生きていく覚悟を決めたんだよ
代わりにオレが、みすずに告げる
そうあたしと旦那様だけに忠節を誓うのね
はいわたくしは、生涯をお二人に捧げます
緊張にかすれた声で美智は言った
それで香月セキュリティ・サービスからは、離れることになったんだ
香月セキュリティ・サービスに籍を置いている限り
社内での命令系統に束縛される
みすずにだけ忠誠を誓っているから、上司の命令は聞けないなんていう我が儘は許されないだろう
そうねその方がいいわね
みすずも、納得してくれた
当面は対外的には、黒森様のところに所属しているということに致します
瑠璃子さんと美子さんの前だから美智は黒い森という組織名を避けた
みすずは、嬉しそうに微笑む
よく決心してくれましたあなたのことは、あたしと旦那様がずっと可愛がってあげますからね
家族や香月セキュリティ・サービスから切り離された、自由な美智を手に入れたことにみすずは、心から満足しているようだった
そのことなのですがみすず様
美智がみすずを見上げる
実はわたくしは、先程、ご主人様のお言いつけを守らないという失態を犯してしまいました
そんなことあったっけ
ご主人様ってヨシくんのこと
メグが、美智の変化に驚く
はい、わたくしにとってのご主人様でございますから
美智どういう失態をしたのか、詳しく説明しなさい
みすずは、ご主人様という言葉に関する話を断ち切る
メグが、美智に対して変な嫉妬心を起こさないか、気にしているのだろう
みすずの問いに、美智は
はいご主人様はわたくしに、姉を殺すつもりで闘えと叱咤激励して下さいましたがわたくしは、つい殺せと命じられたものと勘違いしてしまいました
そんなことも、あったような
幸い敵の喉笛を断ち切る前に、母が勝負に介入して参りましてその場で、ご主人様がわたくしの誤解を正して下さいました
いや、別に大きな問題は起こらなかったんだよ遙花さんだって、ケガはしたけれどちゃんと生きているし
慌てて、オレがそう言うと美智は
いいえご主人様の命を、曲解するなど万死に当たる過ちでございました
美智お前、何でそんなことを言い出すんだ
オレには、美智の真意が判らない
判りました美智
みすずがニヤッと笑う
つまり、あなたは旦那様に罰していただきたいのね
オレが美智を罰する
はいできましたら
美智が、オレに頭を下げた
旦那様美智にどんな罰を与えましょうか
みすずが、オレに囁いた
美智はどんな罰が、相応しいと思う
オレが返答しないので、みすずは美智自身に希望を尋ねる
お尻を
尻
わたくしのお尻を激しく打擲して下さいませ
打擲
どういう意味の言葉だ
お尻を強く叩いて欲しいって言っているんですわ
みすずが、興奮した顔でオレに言った
昨日よりはましですがまだ体調不良のままです
されど、働かないとジッと手を見る
次話は、美智の公開お尻叩きです
226.お尻を出した子一等賞
美智のお尻を叩く
オ、オレが
美智は、旦那様にそうしていただくのを望んでいるのね
みすずが、ニッコリと微笑んだ
はい、みすず様の前で処罰されたいのです
美智が、顔を赤くしてそう言った
その瞬間、オレには全てが理解できた
これはお仕置きではない
美智は、ご褒美を欲しているんだ
瑠璃子さんどんな、些細なミスも警護役には許されませんしかし、美智はまだ子供ですしお尻を叩くということで、罰を済ませたいと思います
みすずが、驚いている瑠璃子さんにそう言う
瑠璃子さんに美智の痴態を見せるというのもどうやら、みすずの作戦らしい
あ、あのわたくしと美子は、お外に出ていましょうか
瑠璃子さんが、恥ずかしそうにそう言った
いいえ、できれば瑠璃子さんにも見ていててただきたいの今はまだ瑠璃子さんには美子さんしかお付きの方はいらっしゃらないし美子さんは、とてもよく出来ておられる方だからこんな失敗はなさらないと思いますけれど
滅相もございません
美子さんが、慌てて否定する
わたくしなど、まだまだ未熟者です
そんなことないわ美子さんの瑠璃子さんへの忠節がどれほどのものか、みすずはよく知っていますでも瑠璃子さんは、いずれ香月の家を継がれるお方なのだから、今後は美子さん以外にもたくさんの人間を従えることになります美子さんの様に何でもこなされる人たちばかりではありません無様な失敗をする者も、出ると思います
確かにいつまでも瑠璃子様のお付きが、わたくしだけということは無いと思いますが
美子さんが困惑した表情で、そう答えた
ミスを犯した者には、主が直接罰を与えなくてはいけませんしかも、内々で決して、外の者に不名誉な姿を見せることなく処理してやらないと、罰を受ける者が可哀想ですこれは罰を与えることで、その者が奮起してくれるだろうという主人の期待と愛情を示すものなのですから
はい、なるほど
みすずのもっともらしい言葉に、瑠璃子さんは引き込まれていく
ですから美智の様な年頃の少女には、お尻叩きというのは適切な罰だと思います瑠璃子さんも、いずれは誰かを処罰しないといけない時が来るでしょうからご見学なさって下さい美智、構わないわね
はいどうぞ、御覧下さい
美智も、瑠璃子さんにそう言う
そうおっしゃられるのでしたら見学させていただきます
瑠璃子さんが、緊張気味に答えた
そうしましょうねえ、美子
瑠璃子様が、そうおっしゃるのでしたら
美子さんも、みすずの妙な論理に引っぱられる
恵美さんもマナさんも、あたしの身内ですから当然、美智の処罰は見ていて下さりますよね
みすずが、メグ・マナに言った
これは内々の処罰ですので美智の名誉のために、他言は厳禁でお願い致しますそして、お尻叩きの終了をもって、美智の今回の罪は抹消致しますみなさん、よろしいですね
みすずが、部屋の中の人たちをぐるっと見渡す
うん、判った美智さんが叩かれたことは、誰にも言わないねっ
マナが、明るい顔でそう言った
あたしもちゃんと見ていますから
メグも恥ずかしそうな顔で、そう答えた
では、美智旦那様には、何回、お尻を叩いていただきたい
美智が、ちらっとオレを見る
10回、お願いします
あら、それはちょっと多すぎるんじゃないかしら
みすずが、すぐに却下する
旦那様には、力一杯思いっきり叩いていただくのよ10回も叩いたら、美智のお尻が腫れ上がってしまうわ
腫れ上がっても構いませんっ
美智は、そう言うが
ダメよ5回にしなさい
旦那様は、とてもお優しい方なのよあなたのお尻を10回も叩くのは、可哀想だと思っていらっしゃるわ
オレは、この展開にただ驚いているだけで
正直、5回も10回も変わらないと思います
では、5回で力一杯、お願い致します
その眼は熱く潤んでいた
美智そうじゃないでしょ
みすずが、さらに指導をする
そういう時は痛くして下さいって、お願いするのよ
美智が、ごくんと唾を呑む
ご、ご主人様い、痛くして下さい
判った美智
こうなったらやるしかない
美智自分でスカートを捲って、お尻を出しなさい
みすずが命じる
美智が、ゆっくりと名門女子中学校の制服のスカートを捲っていく
美智の細い足
美智の肌は、透けるように白い
15歳のまだ肉の付いていない太ももに、黒革の器具で、電撃警棒と赤いムチを固定している
それがまるでガーター・ベルトの様だ
今日の美智のパンティは黒だった
未成熟な中学3年生の肉体に、黒い下着というのが何とも言えない不道徳な感じを醸し出している
美智は丸いお尻を、ぷりんとオレに向ける
子犬の様に、四つん這いになりなさい
お尻を出したまま、犬のポーズを取る美智
顔は上げて鏡台の鏡を見なさい鏡の中に、旦那様の姿が見えるでしょ
鏡越しにオレと美智の眼が合う
美智は、罰を受ける悦びにすっかり溶けた顔をしていた
オレが、美智のお尻の前に近付くと
何をしているの美智
みすずの叱責の声が響く
まさかそのまま、旦那様にお尻を叩いていただくつもりじゃないでしょうね
みすず何を言っているの
ちゃんとパンティを脱ぎなさい直接、肌を叩いていただかなければ、罰にならないじゃないの
パンティを脱ぐ
それって生尻を叩くってこと
も、もうしわけございませんっ
早くパンティを下ろしなさい
た、ただ今、致しますっ
美智が、片手で黒いパンティに手を伸ばして
つるんと下ろす
ちゃんと脱ぎなさい
美智は、四つん這いのままパンティから足を抜いた
白いお尻に小さな肛門と、無毛の割れ目がはっきりと見える
その二つだけがサーモンピンクに色づけされていた
ぬ、脱ぎましたっ
美智の黒いパンティは、右の足首に丸まっている
旦那様、まずは美智のお尻の感触をお確かめ下さい
触ってみないと、どこを叩くと効果的か判らないでしょ
美智、触るぞ
どうぞ、ご堪能下さい
オレの手が美智の尻に触れる
はぁっ
美智は敏感だった
少女のお尻は、ひんやりとしていた
傷一つ無い、つるつるのお尻
美智の尻には、生ゴムの様な柔らかな弾力があった
あ、あああっ
鏡の中で美智が切なそうな顔をしている
美智見ているわよ
みすずが、美智の耳に囁く
見ていて下さいませみすず様
これは、オレを介したレズプレイなんだろうか
いや、今は美智の尻の感触を楽しもう
オレは尻の肉を揉んでみる
あっ恥ずかしい恥ずかしいです、みすず様
あたしを見てはダメよ鏡の中の旦那様のお顔を見なさい
美智の眼が、オレを見る
そ、そろそろ下さいませ
熱い眼がオレを見ている
い痛くしてっ
美智の尻をもう一度、ギュッと握りしめてから
思いっきり、手を振り上げるッ
いくぞっ
オレの手が、振り下ろされるッ
風を切って、平手が美智の尻を打ち鳴らすッ
バチィィッ
ひぃあああっ
一発目から、美智は歓喜の涙を零した
ふたーつッ
ビチィィィッ
美智の白い尻にオレの手形が赤く浮き上がる
みっつ
バシシィィッ
痛いぃぃぃ
美智の肌にしっとりと汗が浮く
ビシィィッッ
尻を叩くオレの手に熱い液を感じる
美智は割れ目から熱い汁を垂らしていた
いつつゥゥッッ
バシィイッ
きゃあああんっ
最期の一撃が、美智の尻に食い込むッ
オレは、手をぐりぐりと押し込むようにして
最期まで美智の尻を楽しんで、手を離した
美智の尻は真っ赤に腫れ上がっていた
ヴァギナから、ツーッと愛液が糸を引いて床に垂れる
へなへなと力が抜けて、床に倒れ込んでいく
ね、五回で正解だったでしょ
みすずが、美智ににっこりと微笑む
みすず様ぁぁ
美智は、軽い放心状態だった
旦那様しっかり、美智を抱き締めてあげて下さい
美智は、きちんと処罰に耐えたのですから褒めてあげて
床に突っ伏した小さな肉体を抱え上げ抱き締める
華奢な小さな身体
よく頑張ったな偉いぞ、美智
ご主人様ぁぁ
美智の張り詰めていた心が、一気にほぐれる
オレの胸の中で、美智はワーッと一気に泣いた
やはり、堪えていたのですね
姉との対決
姉の肉体とプライドを根底から破壊尽くした美智
母に決して姉に勝ってはいけないと厳命されていたにもかかわらず、美智はオレの命令に従ってくれた
その後母親から冷たい言葉を浴びせられても、美智は無表情のままだった
この15歳の少女は全ての感情をこの小さな身体に押し込んで、耐えていた
それが尻叩きの処罰を経て、一気に噴き出した
美智ずっと一緒だからな
オレは小さな身体を、ギュッと抱き締める
美智とみすずとオレとずっとずっと一緒だ離さないからな
うぁぁっ
美智が泣く
大きな声で
押し込んでいた思いが、涙に変わって溢れ出る
美智もまた自分の本当の家族を失ってしまったんだ
ヨシくんあたしたちも、居るわよ
メグが、にっこり微笑む
そうだよお兄ちゃんマナだって、ずっと一緒だよ
マナが、オレたちに寄って来る
美智お姉ちゃん
マナが、美智に話し掛ける
美智がハッとして、マナを見る
マナはまだ2年生で年下だからお姉ちゃんて、呼んでいいよねっ
わ、わたくしは
美智は涙目のまま、戸惑っている
あたしは美智さんて呼ぶけれどあたしのことは、恵美お姉さんて呼んでね
メグも、そう言った
わ、わたくしはみすず様の警護役でございますから
そんな美智にみすずは言う
そうよ美智は、あたしの警護役家族ですからねっ
一生あたしのことを守ってくれると誓ってくれたわよね
はいお誓い致しました
美智が、オレに抱き締められたまま答える
一生、一緒にいるんですものそれは家族ということでしょ
よろしいのですか
美智が尋ねた
美智はどうしたいの
みすずは逆に美智に問い返す
主とか家臣とか忠節という言葉しか頭に無かった武士娘は、言葉に詰まっているようだった
もう、お前は家族なんだよマナはお前の妹で、メグはお姉さんだこれからは、そう思って生きろ
オレが主として、美智に命令する
ははい、かしこまりました
結局この子は、壮絶な戦闘能力を持っていながら、心が弱い
誰かが、いつも後ろから支えてやらないといけない
前に向かって押してあげないと前進できない
美智はオレが見ていてやらないとダメな子なんだ
何か困ったことや判らないことがあったら、いつでもどんな時でもオレに相談しろ美智はもう、一人で悩む必要は無いんだぞ
美智は、また熱い涙を零す
美智は泣き虫だな
オレは、美智の涙を唇で吸う
しょっぱくて少し苦い
みすずも笑って、オレたちに顔を近づける
美智の目尻をペロッと舐める
あたしたちの前では、堪えなくていいのよ美智はあたしたちの前ではいっぱい泣いていいの笑ってもいいのよ
うん家族なんだからな
オレとみすずが夫婦で、美智が娘の様な気がしてきた
可愛い小さな娘
あたしたちだって、いるんだからねっ
オレたちが良い雰囲気になったのを見てマナが割り込んでくる
にっこりと、美智に微笑むマナ
思いっきり、可愛がって差し上げます大事に致しますからマナさん
それでも妹に敬語を使っていた
まあ、実の姉の遙花とも敬語で喋っていたから
美智にとっては、これが当たり前なのかもしれない
そろそろ、お放し下さい
美智が泣き腫らした眼で、オレに言った
もう平気ですから
少し恥ずかしそうにオレに言う
オレが、美智の身体を放そうとすると
美智、そうじゃないでしょ
みすずの教育的指導がまた、入る
主人に命令するのは、間違っているわ
旦那様美智の身体を抱き締めるのは、気持ち良いですか
オレは素直に答える
では、お気の済むまで、じっくり抱き締めて下さい美智の身体は、旦那様の物なんですから
オレは、美智の身体をもう一度ギュッと抱き締めた
美智も旦那様のお身体を抱き締めなさい
美智もオレの背中に手を廻してギュッと抱き締める
どう抱き締めていただくのも、自分から抱き締めるのも気持ちがいいでしょう
はいみすず様でも
美智は答えた
気持ちがよくて癖になってしまいそうです
みすずは、うふふと笑った
いいのよ、癖になって家族なんだからあたしも大好きよ、旦那様と抱き合うのは
マナも好きっお兄ちゃんにギュッてして貰うは
あたしも癖になっているわ
みんな来いっ
右腕で美智を抱いたまま左の腕を大きく拡げる
みすずとマナが、オレの胸に飛び込んで来る
メグは、背中からオレを抱き締めてくれた
みんな、一緒ですっ
みすずがそっと、呟いた
オレたちは、身体を離した
みんな、それぞれからエネルギーを貰ったようだ
ニコニコ微笑んで、元気になっている
いつもは無表情の美智さえ、さっぱりと晴れやかな顔をしていた
ご主人様実は、ご相談したいことがございます
美智が、オレに言う
うん何だ
わたくしはご主人様に抱いていただきとうございます
今、思いっきり抱き締めてやったろ
そういう意味ではございません
みすず様に御覧になっていただきながら捧げたいと思います
捧げるのは、やっぱり
美智の純潔
マナとメグが、ジロッとオレを見る
お前そういうことは
いつでも、どんな時でも相談せよとお命じになられました
確かにそう言ったけれど
いいわよ、今夜にも機会を作りましょう
その代わり生涯、旦那様だけですよ
判っております
美智は工藤流古武術を何人に伝えるつもりかしら
みすずが遠回しに尋ねた
できましたら3人
あたしにではなく、旦那様にお願いなさい
はいご主人様3人、よろしいでしょうか
美智が耳まで真っ赤になって、オレに言う
3人も産むのか
いや美智が産みたいのなら、仕方が無い
し、仕方無いな
オレが答えると
お兄ちゃん、マナは女の子が一人でいいな
ヨシくん、あたしも
感動致しました
困っているオレの背後から、そんな声がする
振り向くと、瑠璃子さんと美子さんが、オレたちを見て泣いていた
素晴らしいですわみすずさん何という美しい主従愛なんでしょう
瑠璃子さんは生まれながらにして、香月家の中核にいる
祖父は香月家当主の閣下で父親は、その長男
他に家族は無く3歳の時から、年上の美子さんがお付きの家臣として側に居る
瑠璃子さんにとっては人間関係は、全て主従でしかないんだ
家臣を家族の様に愛するというのは、こういうことなんでございますね
わたくしも勉強させていただきました
美子さんも、そう言う
人と人の関係に様々なパターンがあるということを、この二人は知らない
主の瑠璃子さんと家臣の美子さんの二人だけの世界にずっと、隔離されて来たのだから
自分たち以外の人間とはほとんど接触せずに、成長して来た二人
例外は香月閣下とみすずだけだ
オレたちの今の抱擁も主従関係という観点でしか理解していない
みすず様と黒森様がご結婚なさったら本当に素晴らしい家庭をお築きになられるのでしょうね
瑠璃子さんはオレもどこかの名家の人間だと思っている
昨日、街で見たカップルの会話
男すっげぇ、でっけぇマンションだな何LDKあるんだろう
女え部屋によって違うんじゃないの
男そうじゃねーえ、バーカマンション全体で何LDKあるのかって話をしているんだよっバーカ
い、意味が判らない
227.ハグの練習
瑠璃子さんも、あたしの旦那様にギュッと抱き締めていただいてはどうですか
みすずが、そんな提案をした
はいわたくしが、黒森様にですか
ハグですよ、ハグ
みすずは、そう言ってにっこりと微笑む
古来より、西洋では親愛の情を示す行為です
ここは日本ですし男性の方と抱擁するというのは
お付きの美子さんも、困惑している
あたしの旦那様ですよ瑠璃子さんの親族になられるお方ですから親愛のハグをするのは、何の問題も無いはずですわ
みすずは、論理的に攻めていく
瑠璃子さんは、香月の家の代表としてこれからは外国の方ともたくさんお会いにならないといけなくなるのですから今から、男性とのハグにも慣れておかれるべきですよ
何としてもオレと瑠璃子さんを抱き合わせたいようだ
全然平気ですよっお兄ちゃんは、怖くないですからっ
マナが、オレの胸に飛び込んで来る
しょうがないな抱き締めて、頭を撫でてやる
えへへお兄ちゃん、大好きっ
続いて、メグも
ヨシくんあたしも、もう一回
はい、メグお姉ちゃん、どうぞっ
マナが身体を離して今度は、メグと抱擁する
背中、撫でて
メグの希望に応えて、抱き締めたまま背中を擦ってやる
うんヨシくんに、こうして貰うの、好きなの
メグが、美智を見る
美智さんももう一回、して欲しいんでしょ
あ、あのできましたら
美智が、恥ずかしそうに言う
ヨシくんしてあげて
メグが美智と交代する
美智の身体は、本当に小さいな
わ、わたくしは力一杯、ギュッとされる方が好きです
美智の身体を、思い切り抱き締める
美智ははぁと大きく息を吐いた
ご主人様に抱かれていると、安心します
美智は可愛いな
戦闘中の姿は、凜としているけれど
こうして抱いている美智は、日本人形みたいに可愛らしい
黒髪に白い肌大きな眼に、整った鼻筋
美少女だよなあ
わ、わたくしか、可愛くはございませんっ
オレの腕の中で、身体をビクッと震わせて美智が言う
美智主の言葉を否定してはダメよそういう時は、ありがとうございますこれからも、ずっと可愛い女でいますから、どうぞ可愛がって下さいってお答えするものよ
美智が、顔を真っ赤にしてオレを見上げる
可愛いと言って下さって、ありがとうございますどうか、ずっとわたくしを可愛がって下さいませ
オレは、美智の髪を撫でてやる
美智は、気持ち良さそうに背筋を伸ばした
猫みたいだな
美智そろそろ交代よ
あたしも、旦那様に抱き締めて欲しいから
美智が、スッと身体を離す
みすずがオレの胸に
舞台用の綺麗な和服を着たみすず
着物からはお香の良い匂いがした
今日は、旦那様のためだけに踊りますからね
ああ、がんばれよ
みすずが、オレを抱き締める
オレも、みすずをガッと抱く
みすずの絹の衣装が、衣擦れでキュッと音を鳴らした
うふふ旦那様から、元気をいただいちゃいました
それから、瑠璃子さんを見て
いかかです、瑠璃子さんあたしたちと旦那様のハグは怖い感じは、全くしないでしょう
はい黒森様とみなさんの親愛の感情だけが伝わってまいりました
あたしの旦那様は、とってもお優しい方ですあたしや他の女性たちを敬って下さいます力尽くで無理矢理に女性の身体を抱き締めるようなことはなさいません
それはわたくしにも、よく判りましたわ黒森様は、どの方に対しても優しくご抱擁なさっていらっしゃいました
瑠璃子さんには、そう見えたらしい
オレはいつも通りに、一人ずつ抱き締めただけなんだけれど
ですからあたしの旦那様は、瑠璃子さんがハグの練習をするのには最適な方だと思いますわ
みすずが、攻め込む
瑠璃子さんも、もう15歳ですし本当に、外国の方とお会いする時には、ハグは必要になりますから
どうしましょう美子
瑠璃子さんは、3歳年上のお付きの少女に尋ねる
わたくしには、何とも
6歳の時から、ずっと瑠璃子さんと一緒に居るんだ美子さんにも、男性経験は無い
瑠璃子さんは、今までにどなたかとハグなさったことはありますか
お祖父様とはあります父とは、ありません美子とは、たまに抱き合います
瑠璃子さんが、答えた
夜、寂しくなったりした時には美子と抱き合って寝ますから
本当に香月閣下に、女の子二人だけで、隔離されて暮らしているんだ
若い男性とハグなされたことは
ありません
では、ハグの練習相手には、あたしの旦那様が最適じゃありませんか
みすずが、オレを売り込んでいく
それはそうかもしれませんけれど
困惑している、瑠璃子さん
では、まず先に美子さんが旦那様とハグしてみましょうか
みすずが、矛先を変える
わ、わたくしですか
戸惑う、美子さん
美子さんだって瑠璃子さんのお付きなんですから、これからは外国の方とお会いすることが増えますよパーティの席などで、ハグを求められる機会もあると思いますし
徹底してこの二人が男性と接触する機会を、香月閣下は断ってきた
それは、これからも変わらないだろう
しかし、瑠璃子さんたちはそれは、自分たちがまだ子供なので、大人の社交の席には呼ばれなかっただけだと思っている
もう少し成長すればパーティなどにも出席しなければならないのだろうと
みすずは、そういう瑠璃子さんたちの気持ちを知っている
みすず自身が瑠璃子さんたちと同じ立場で、男性から隔離されてきたのだから
瑠璃子さんが社交界デビューなさった後は、美子さんも一緒に公式の場に出られるのでしょう美子さんの方が大人なんですし、ハグしないわけにはいきませんよ
みすずは、美子さんから落とすつもりだ
わたくし社交界デビューなんてしたくはありません
瑠璃子さんは、言う
ずっと美子さんと二人きりの世界に居たんだ大人の世界へ出て行かなくてはいけないというのは、恐ろしいのだろう
香月の家の後継者には、そんな我が儘は許されないことは判っていますね
みすずが、瑠璃子さんを見る
暗い顔の瑠璃子さんを見て、美子さんが奮起する
判りましたわたくし、ハグを経験してみますわっ
美子さんが、緊張した面持ちでオレを見る
これも瑠璃子様のためですから
美子さんが、オレの方へやって来る
美子さんは、紫色の和服を着ている小さな歩幅でそそそと歩く
絶対に裾を乱さないこの人も、お嬢様だ
確か、18歳だっけ
近くで見るとこの人も相当の美人だ
お、お願い致しますっ
身体を固くして震えている
オレは穏やかに、美子さんを抱き締める
美子さんが、小さく声を上げた
怖がらないで、大丈夫ですから
オレは、美子さんの耳元に囁く
美子さんの緊張は、解けない
美子さん大きく深呼吸して下さい
深呼吸ですスゥッと吸って
美子さんが、大きく息を吸う
胸が空気を吸って拡がるのをオレは感じる
はいゆっくり、吐きます
息を吐く美子さん
まだです肺の中の空気を全部吐ききって下さい
緊張しているから少ししか空気が吸えないし、全部吐き切れない
だから、深い呼吸を意識してさせる
大きく息を吸ってはい、吐いて下さい全部、吐き切って
何度か、深呼吸を繰り返すうちに
美子さんの身体が、柔らかくなっていく
身体の固さが取れていく
はいいい感じですよ
オレは背中の黒髪を撫でてやった
緊張が取れると美子さんの肉体の量感が、はっきりと伝わって来る
和服で胸を押し潰されているから、よく判らなかったけれど
この人すごい巨乳だ
お尻も大きく発達している
それでいて、腰はキュッと細い締まっている
さすが18歳大人になる寸前の肉体だ
いやいや
邪念が湧いてくると、美子さんに伝わる
オレは美子さんの魂を優しく抱き締めることだけに集中する
初めて男に抱き締められて怯えている魂を
美子さん
美子さんの身体柔らかくて、あったかくて気持ちいいです
オレは、そっと美子さんの耳に囁く
黒森様のお身体もがっしりなさっていて、わたくしの身体をしっかりと抱き留めて下さっていらっしゃいます
いつの間にか、美子さんの身体から力が完全に抜けていた
オレに肉体を委ねきっている
男の方に抱き締めていただくってこんなに安らかな気持ちになるんですね
美子さんの言葉に、みすずが
旦那様は、とてもお上手なんですよどんな男性も、そんな風に優しく抱いて下さるわけではありません