決して、ご迷惑をお掛けしないようによく考えて、祖父と相談して参ります
みすず、瑠璃子、美子さんは言った
あの、お前たち判っていると思うけれど
お前たちの方から特に、瑠璃子からジッちゃんと一緒に暮らしたいって、お願いするんだぞ
いや、今はジッちゃんが、寂しそうにしているのが問題なのは判っているけれどそれでも、お前たちの方からどういう風に話したら、ジッちゃんが喜ぶかを考えろよ論理的とか合理的とかじゃなくて
3人とも頭が良すぎるんだよな
だから、すぐに頭の中でシミュレートして、答えを出しちゃうから
人の微細な感情のこととか、ついつい忘れちゃうんだろうな
それとあたしからもアドバイスするけれど
マルゴさんが3人に言う
君たちの方からこういう問題があるので、こうしましょうとか、そういう話し方をするのはダメだよ
ニコッと笑う
問題点だけを話してそこから導き出される解決策は、喋らないでおくんだ
香月さんは君たちが結論を持って来るのは、嫌だと思うよこういう問題がありますから、こう解決しましょうなんて提案されたら、絶対にそのプランには乗らないよ必死になって、君たちの提案をキャンセルする論理を組み立てるだろうね
香月さんには、香月さんのプライドがあるんだから孫娘にこうしろって命令されて、受け入れると思う
でも問題点に対する解決策を示さないと話が進みませんわ
そうだろうか適確に問題点だけを指摘してお祖父様、わたくしたちはどうしたらいいでしょうって、香月さんに委ねたら香月さんの出す解答は、君たちの提示するはずだった答えと、そんなに変わらないと思うよ
マルゴさんはクスッと笑う
香月さんみたいな人はさ、自分で考えて出した結論でないと、本気で動かないからねだから判断と解答は、香月さんにしてもらうんだ
でも、そんなに上手くいきますでしょうかお祖父様が、わたくしたちと全然違う答えを出されるということも
美子さんが、不安そうに尋ねる
それは問題点を提示していきながら、上手に誘導するんだよでも、お祖父様、こういう問題もございますどうしましょうって
香月様は君たちに頼られたいと思っているだから、頼ってあげて君たちが、君たちの寂しさから香月さんと同居したいと思っているでも、みすずちゃんも瑠璃子ちゃんも、良信くんと離れることもできないどうしたら良いのでしょうお祖父様取りあえずは、それだけでいいんだよ君たちのお祖父様はこれまで、数々の困難な判断をして、物事を進めて来た人だからねちゃんと答えを出してくれるって正直香月さんなら、最初からミナホの立場も考えたベストな答えを考えてくれると思うよ
ジッちゃんも、ビジネスの世界に生きてきた人だ
ミナホ姉さんの顔も立ててくれると思う
3人は頷く
まあ頑張ってみてあたしのアドバイスは以上です
マルゴさんは笑ってそう言った
今夜、お祖父様にご相談致しましょう
鷹倉さんの一件が片付いたら美子さんは、ここからお祖父様のお屋敷に戻られるでしょその車に、あたしとルリたんも乗せていただくわ
そうですわねこういうことは早い方がいいですわね
瑠璃子も承諾する
旦那様わたくしたちは、こちらに残りますから3人で、もう少し話し合ってみますわ
うんでもとにかく、合理性とかでなくジッちゃんやミナホ姉さんの気持ちをよく考えて、話を進めるんだぞ
みすずたちは頭は良い
一度判ったことはきちんとできると思う
おっ待たせぇ~
そして、寧たちが着替えから帰って来た
さてでは、そろそろ出発しましょうか
ええ行きましょう
いよいよヤクザたちの元へ、向かうのか
演出助手のさらに助手だった頃に言われたこと
下っ端は、結論を言うな
例えば、舞台の壁際の照明が、ちょっと暗いなあと思っても
あそこ暗いんで、明るくしましょう
では、ダメ
あそこ暗いと思うんですけれど、どうしたらいいですかねえ
判断は演出家に自分でさせる
724.Do IT
いかがでしょう公様
月子、夜見子、ルナの3人が揃いの巫女衣装で現れる
白い着物と緋色の袴みんな、髪は後ろでまとめている
昨日着ていたコスプレ用と違って、良い生地を使っているから乳首が透けて見えるなんてことは無い
これは翔姉ちゃんが、どこかのちゃんとした神社から借りてきた衣装だからむしろ、月子たちを、清廉な雰囲気に包んでいる
うんとても良く似合っているよ
月子は、元々巫女らしい美しさを持った女の子だ
静かで、穏やかで澄み渡った湖水のような
処女を失ったことぐらいでは、月子の清らかさは変わらない
先生ヨミは
夜見子は袴姿になると、ロリ巨乳がさらに際立つ
でも、まだ14歳だいやらしさよりも、可愛らしさの方が遥かに勝っている
明るく、元気で、カラっとした初夏の太陽のような女の子だ
うん可愛いルナも綺麗だぞ
ありがと兄さん
赤くなる、ルナ
12歳の美少女の巫女姿は、ただただ可愛らしいとしか言えない
ああ、そうかルナは、自分の外観が可愛い女の子過ぎることにコンプレックスがあるんだ
だから、自分のことをボクという
Darling、アタシは
へイーディ
イーディと寧は美智たちの学校の制服を模した、セーラー服を着ていた
どうネこれ
くるんと回転して、スカートを翻すイーディ
うん可愛いよ、イーディ
こういう清楚な制服も似合うんだな
いつものうちの高校の制服だと胸元のボタンを外したりして、アメリカ人らしく、ラフに着こなしているけれど
ヤッちゃんも似合っているよその制服
えへへ、ありがとヨッちゃん
寧は、超絶美少女だから何を着ても、可愛いし普段からお洒落だから、どんな服でも着こなす
でもこういう清楚なセーラー服もいいなあ
落ち着いて上品な感じと寧の豊かな胸のセクシーさが、バランス良く拮抗してて
Darlingあのネアタシネ
オレの意識が寧に向いたことでイーディが、むくれる
アタシはさミチと違って、パンツが見えないようにするタメニ、下にホット・パンツを穿いたんだヨ
そう言って、スカートを捲りオレに、ブリンとお尻を突き出す
確かにイーディは、パンティじゃなくて、もう少し分厚い化繊の生地の黒いパンツを穿いていた
つーかせっかくの上品な雰囲気が台無しだよ
それはホット・パンツじゃないってばブルマだよ
ブルマって何ナノネ
うんとねブルマー婦人ていう人が、最初に穿いたからブルマって言うんだよ日本じゃ、長いこと女の子用のトレーニングウェアだったんだけれど21世紀になる前に、頭の固い人たちに駆逐されて絶滅しちゃった感じかなでもここのお屋敷には、段ボール箱で各サイズ大量に残っているから、イーディに穿かせたんだよ
娼婦にブルマを穿かせたがる客が多かったんだろうな
何で、アタシに穿かせたネ
不思議そうに、寧を見るイーディ
女の子のブルマ姿が好きな男の子って、多いんだよ身体のラインが、はっきり判るでしょ
寧は、ニタッと笑う
Darling好きカコレ
イーディは、スカートを捲り上げてブルマの腰をオレに見せつけたまま尋ねてくる
う、うんまあね
ソッカならば良しなのネっ
イーディは、明るく微笑む
あの先ほど、何となく暴言を吐かれてしまった気がするのですが
ん美智
わたくし、別に普段から、スカートを捲り上げて、人様にパンツを見せびらかすような行為はしておりませんが
美智がイーディに抗議する
そうカナよくしているネミチは
イーディは、ケロリとした顔で答えた
JUMPする時トカ、KICKする時トカ後、武器を取り出す時モミチはスカートの中に、いっぱい武器を隠しているカラ
ムチだの手裏剣だのみんな、細い太ももにくくりつけているからなあ
ほ、本当ですかご主人様
うんとたまに
しょうがないから正直に答える
き、気が付きませんでした
恥ずかしそうに自分の股間とお尻を押さえる
美智の顔が、真っ赤になった
あ美智は、ずっと武闘少女として生きてきたから戦闘中のパンチラとか気にしたことが無かったんだな
美智の師匠であるお祖父さんとか、工藤父もそういうことについては、注意しなかったんだろうし
大丈夫ネそう思って、ミチの分も持って来たネはいブルマ
イーディが、ポケットから黒いブルマを差し出す
これを穿けば、今まで通りに闘えるネ
親指を立てて、ニコッと笑うイーディ
それは、パンツの上に重ねて穿くものだからさそのまんま
寧が、美智にブルマの穿き方を教える
と、言っても太ももに色々と、武器を仕込んでいる美智としては、このまんまブルマを穿くわけにはいかない
スカート内の武装を一旦、外さないと
美智はゴゾゴソと、スカートの下から一つ一つ武装を取り出して、テーブルに置く
赤いムチに、手裏剣にあれは、ワイヤー・ソウだな
うん何だ、ありゃ
美智、そのカプセルは何なんだ
プラスチック爆弾と、その起爆装置でございます
ばくだん
ご安心下さいこのタイプの物は、起爆装置と接続しない限り、決して爆発致しませんから
そそうなんだ
美智はあの工藤父の娘なんだから
爆発物ぐらいは、持ち歩いているよな
ところでDarlingDarlingは、着替えなくてイイノカ
あ、いけねっ
みすずたちとの話に夢中になっていて、オレはまだ着替えをしていなかった
ちょっと、待ってオレも、すぐに着替えるから
オレも、このままここで着替えちまえ
まあ、下着姿になって、寧の持って来てくれた防刃・学生服に着替えればいいだけだから
ここに居る子の前では、何度も裸になっているんだ
誰も気にする人はいないだろうと短パンを脱ぐ
ち、ちょっとあ、あんた、な、何をやっているのよ
スットンキョな声が聞こえた
あ工藤遙花が居たんだっけ
そんなところで着替えないでよっ
えっと悪いが無視だ
工藤遙花のためだけに、他の部屋に行くとかメンドくさいし
あら、やっと頭の中が再起動したみたいね
ミナホ姉さんが、工藤遙花を見て笑う
あたしたちのしている話を聞いて自分が今、どんな立場に居るのか判って、震え上がっていたのよこの子
それで静かだったのか
オレたちにみすずや瑠璃子が、ジッちゃんの隠居場所の相談をしたり
翔姉ちゃんとミナホ姉さんが、対等に話していたりしているんだから
今までの工藤遙花の頭の中では
黒い森は、香月家よりも圧倒的に立場が弱いというイメージだったろうから
オレたちが、連携し合っていることに、驚いているんだろう
判っていると思うけれど、遙花さんあなたが、おかしな行動を取れば、香月セキュリティ・サービスの組織の全てが、あなたの敵になるからね
翔姉ちゃんが、遙花に言う
わたくしには、そうする権限があるから
翔お姉様は、現在の香月セキュリティ・サービスの現場責任者ですから
以前の山岡部長よりも上の役職に就いていらっしゃいます
震え上がる工藤遙花
その横で
旦那様お手伝い致しますわ
お兄様、わたくしも
香月家の2人の令嬢みすずと瑠璃子が、オレの着替えを手伝ってくれる
みすずが、オレの上着を後ろから着せてくれて
瑠璃子が、オレのズボンの
いや、大丈夫だよズボンのチャックぐらい、自分で上げられるよ
ご奉仕させて下さいませ
ジーッと、ジッパーを引き上げる白い手長い指
ルリコそんなことしてると、Darling、また大きくなっちゃうカモヨ
その時は車の中で、わたくしたちがご奉仕致しますわっねっ、ルナ
ロリ巨乳の巫女が、胸を張ってそう言う
うんボクもするから兄さん
ルナも恥ずかしそうに、そう答えた
残念だけれど彼とあなたたちは、別の車よ
翔姉ちゃんが宣言する
1号車が、わたくしの車で彼とイーディちゃんにも乗ってもらうわ2号車が、運転手が麗華で鷹倉さんたちと美智ちゃんね3号車は、運転がマルゴさん御名穂さんと寧ちゃんが乗車ね
鷹倉3姉妹をガードする形で、前と後ろに翔姉ちゃんとマルゴさんか
姉上は、どちらに
美智が工藤遙花を見る
ああ、工藤遙花さんはわたくしの車にどうぞイーディちゃん、よーく見張っていてね
うん工藤遙花を鷹倉姉妹と同乗させるのも、良くないだろうし
美智とも、離した方がいいよな
かといって、ミナホ姉さんやマルゴさんと一緒というのはビビリまくっちゃうだろうし
一応、母親の同僚であった翔姉ちゃんと一緒の方が、まだマシだろう
お兄さんも、香月セキュリティ・サービスに在籍しているわけだし
うー、先生と一緒じゃなくって残念っ
ごめんねうちの7人乗りのミニバンじゃなくって香月セキュリティ・サービスの警護用のベンツで行くから運転手+警護役に、君たち3人でいっぱいいっぱいなんだよ
美智車の中でも、3人の気の訓練を見てやってくれ
ギリギリまで鷹倉姉妹の力は、高めておきたい
うちもあたしのマセラッティでなく、今日はミナホの白い方のベンツで行くからねスピードは出ないけれど、あの車が一番頑丈だから
ベンツだからイタリア製の高級スポーツカーよりも、作りが頑丈ということではない
ミナホ姉さんの白のベンツは防弾・防爆仕様に改造されている
マルゴさんはそれだけ慎重になっているのか
お嬢様、お車の準備ができました
克子姉の声が、スピーカーから聞こえてくる
ああ、さっきの打ち合わせの間に克子姉に、ガレージから車を玄関前に廻してくれるように頼んであったんだ
うちの車ももう玄関前に停めてあります
この屋敷に来る時に、レイちゃんが乗ってきたんだな
わたくしたちはいつもの、わたくしの車よ
うううーっ、ルナだけズルイですのっ
玄関前で、アニエスがオレに抱きついて来る
アニエスもパパとお出掛けしたいですのっ
アニエス、ただ出掛けるだけじゃないんだよ人に会わないといけないんだ怖ーい顔をしたオジサンたちにたくさん
オレは、アニエスを抱き締めてそう言う
たくさーん、人の居るところに行くんだよアニエスは苦手だろ
うううーっパパが一緒なら平気ですの
でも、オレは仕事があるから、ずっとアニエスとは居られないよ車の中で、1人で待ってられるかあるいは、この不機嫌なお姉ちゃんと2人きりとか
オレは、工藤遙花を示す
何よっその言い方
そんな遙花を、見てアニエスは
むむむむーぅっ
アニエスちゃん、ダメだよパパは、お仕事なんだからこういう時は、行ってらっしゃいって言わないといけないんだよ
12歳のアニエスが4歳の真緒ちゃんに諭される
くぅぅん
よしよしお土産買って来るから、大人しくみんなと待っててくれよ
オレは、アニエスの背中を撫でる
仕方無いですのぉぉっ
みすず、瑠璃子、マナアニエスたちのことを頼むよ
ええ、お兄様
判っているよお兄ちゃん
雪乃も、頼むな
なななな、何を言っているのよ
雪乃は子供好きだしアニエスたちとも仲が良いだろ
そそそ、それはそうだけど
だから頼むよ
わ、判ったわよあああ、あんたが、そこまで言うんならさ
うん真緒と雪乃ちゃんでアニエスちゃんの面倒は、ちゃんと見ておくからねっ
パパは、お仕事頑張って来て下さいっにひひひっ
微笑む真緒ちゃん
こういうことを言ってみたいのよこの子は
渚が愛娘の髪を撫でる
真緒ちゃんには、ずっとお父さんがいないから
うん、オレ頑張ってくるから
オレは、真緒ちゃんと握手した
あ、パパアニエスも
アニエスとも、手を繋ぐ
克子姉と渚も、頼むよ
判っているわ
2人もオレに微笑んでくれた
美子さんもお願いします
オレは、美子さんにも頭を下げる
いえ、あのわたくしは、こちらのお屋敷にお守りいただいているだけですから
みすずと瑠璃子と美子さんの3人がここに揃っている以上香月セキュリティ・サービスの警備態勢は、最高レベルのはずだ
外の工藤さんと連絡を密にして工藤さん、うちの学校の方にも部下の人を警護に廻してくれているのよね
はい恵美ちゃんの方にも、警護を付けて下さっていますあたしも、監視装置でチェックしますから
お願いね
ミナホ姉さんは、メグの安全のことも忘れていない
この屋敷は、オレたちの学校とは近いし工藤父は、あそこのことも良く知っている
任せておいて、大丈夫だろう
オレは屋敷に残る人たち全員に告げる
美智、旦那様をお願いね
イーディちゃん、頼むよ
皆様のご無事を祈っております
みすず、マナ、瑠璃子がそう言ってくれた
何をしに行くんだか、知らないけれどさどーせ、あんたはバカみたいに突っ込んでくだけでしょだったら、思いっきりやんなさいよ後悔しないようにさ
雪乃が苦笑して、オレに言った
じゃあ、ヨッちゃん後ほど翔お姉ちゃん、イーディ、お願いねっ
寧が、そう言いながら3号車に乗り込んでいく
任せるネミチそっち任せるネ
美智も2号車の助手席に乗り込む
では、公様
3人の巫女衣装の美姉妹がオレに声を掛ける
大丈夫だからオレたちを信じて
鷹倉姉妹は、2号車の後部座席に乗った
あなたは助手席イーディちゃんと、工藤遙花さんが後ろの席よ
翔姉ちゃんがオレたちに言う
了解ネほら、乗るヨ
わ、判ったわよの、乗ればいいんでしょっ
不安を丸出しにして工藤遙花は、翔姉ちゃんの車の後部座席に乗り込む
ていうかさあんた、結局、何なのよ何者
そうか遙花にはイーディのことは、ちゃんと説明していないんだよな
暗殺教団出身者とは伝えたけれどそんなの、工藤遙花には知ってるはずがないし
教えてあげてもいいケド知ったら、殺すネ
イーディはニヤリと微笑む
そういう経歴のオンナなのネアタシは
震える工藤遙花
彼女みたいな子からすればこの褐色の肌で金髪で青い瞳で、それなのに日本語がペラペラのアメリカ人少女は、相当、不気味な存在なんだろうなあ
そうねあなたはもう少し、裏の世界の恐ろしさを知った方が良いわよ
翔姉ちゃんが、運転席に座りながら彼女に言う
お母さんから、何となくそういう世界があるっていうことしか聞いていないんでしょ
そして助手席に座ったオレに、1枚の写真を見せる
これ見ておいてすでに、鷹倉姉妹には個別に確認しているから
個別に確認
今日は、そのためにわざわざ3人姉妹を別行動させたのよ
オレと姉妹が1人ずつ、セックスしている間に
翔姉ちゃんたちは、残りの子と個別面談をしていた
後ろの2人もこの写真の顔を覚えておいて
翔姉ちゃんの示した写真には1人の美しい中年女性が映っていた萌葱色の和服を着ている
これ誰なんですか
工藤遙花は、そう尋ねたがオレには判る
タカクラ・キヨミ
イーディが呟いた
月子たちの叔母
心を病んでいた母親の巫女に代わって、鷹倉姉妹たちに巫女の力の指導をしていたという
そして、もしかしたら
清美さんは、オレたちの敵かもしれない
鷹倉神社を乗っ取ったヤクザの支配下にあるか
あるいは、清美さんがヤクザたちを巫女の力で支配しているかもしれない
昨日のあなたたちの会話を元に関西に出張していた谷沢さんの部下に調べてもらったのやっぱり、鷹倉神社から清美さんはいなくなっているわ
月子たちの両親が謀殺された後
鷹倉神社は、清美さんが送り込まれて住んでいたはずだ
なのに姿を消した
それでうちの調査部員が、何枚か清美さんという女性の写真を入手したのよでも、みんな数年前の写真だから今の感じがどうなっているか判らないでしょそれで、鷹倉さんのご姉妹に1人1人、集めてきた写真を見てもらってこれが一番、今の感じに近いという写真を選んでもらったのよ
3人一緒だと場の雰囲気で、これが一番似ているとか、決まっちゃったりするでしょでも、3人バラバラならそれぞれの視点から、落ち着いて判断してもらえるし
翔姉ちゃんは清美さんが、東京に来ていると思う
もっと言えばジッちゃんと関西ヤクザたちとの手打ちの会場であるホテルに
そう考えるべきよね
オレは改めて、清美さんの写真を見る
暗い顔、暗い眼笑っていない
美人だけれど冷たい雰囲気の人だ
清美さんは見付けたらすぐに捕まえるんだよね
清美さんも巫女の力が使えるはずだ
鷹倉神社の巫女の心を読む力も従わせる力も
あまりにも、危険過ぎる
特に力をジッちゃんに使われたら
香月家や香月グループの秘密が知られ
当主のジッちゃんが清美さんの支配下に陥ってしまうことになる
いいえ、違うわ
捕まえるんじゃないのよ
清美さんを 捕まえない
鷹倉清美には発見次第に、射殺する命令を出してあるわ
見つけ次第殺す
この話鷹倉さんたちには、内緒よだから、あなたにはこっちの車に乗ってもらったのよ
今、おそらく3号車でも、ミナホ姉さんとマルゴさんが寧に同じ話をしているんだ
知らないのは2号車だけいや、運転手のレイちゃんは知っているのか
えあなた、殺すって
震えている工藤遙花
殺さないと安全が保障されないのナラ殺すしかないネできる限り、速やかにDo it
翔姉ちゃんがエンジンをかける
ドゥルルルルルルッ
そして、オレたちの車を先頭に車列が動き出す
スタートレックで
そのエピソードの終わりに、エンタープライズ号が次の恒星系を目指して飛び立つわけですが
日本語版の放送だと艦長が発進と言うのですが
原語ではDo itなんだと教わりました
つまり、艦内なりブリッジなりの人員たちに
それぞれが担当する、やるべきことをやれというだけの命令
発進という訳も、とても雰囲気は出ていて良いと思うのですが
Do itの内包している意味は、充分には伝わらないような
725.ハルカなミチ
オレたちの3台の車は、無事に屋敷の正門を出る
外に香月セキュリティ・サービスの監視車が居るのは、いつも通り
みすずたちが同乗していないから香月セキュリティ・サービスの車は、追い掛けて来ないそのままお屋敷の警護を固めてくれるんだろう
ああ、公安警察の車輌だけ、追い掛けて来るなあ
でも1台だけか
ま、しょうがないわね今回のことは、公安の人たちには関係無いんだけれど
運転席で、翔姉ちゃんが苦笑する
これから会いに行くのは関西のヤクザだ
公安警察が担当するような件では無い
一応、警察の組織暴力団担当の部署の人にも、公安の関係者にも話は通しておいたわでもマルゴさんが一緒にいるから、気になるんでしょうね公安部としては
マルゴさんが、国際指名手配の重犯罪者、キョーコ・メッサーの弟子であるということは、公安警察も掴んでいる
日本のヤクザとのホテルでの話し合いに、キョーコさんが姿を現すとは思えないが一応、念のために尾行しているんだろう公安さんだって、報告書は書かないといけないのだから
だから、いつもの尾行より台数は少ない
どこへ何をしに行くのかは翔姉ちゃんが、すでに伝えてあるからだ
オレたちの3台の車列が、途中でバラけるとは思えないだろうし
ま、放っておきましょうむしろ、あの人たちが追跡しててくれるのは会場のホテルに到着するまで、国家警察がわたくしたちを警護してくれているようなものだわ
関西ヤクザたちだって、底抜けのバカではない
公安警察が見ている前で、オレたちを襲撃してきたりはしないだろう
みんな裏では警察にバレたらマズイことをやっている連中だ
警察が取り調べをするキッカケを、自分たちの方から与えたいとは思わないだろう
こうなると山岡さんがあっちに付いてくれてて、良かったわ
あの人は元はうちの社の警備部長だから、公安さんとの面識はあるしそして、あの人の性格だと公安の人たちは、とても恐ろしいとか、ヤクザさんたちが必要以上にビビっちゃうような話し方をすると思うのよ
現実は公安警察は、キョーコさんのことしか興味が無い
ヤクザのことなんて、気にしてはいないだろう
あの人は香月セキュリティ・サービスの警備部長だった自分の価値を、高く見せたいのよだから、ついつい気を付けろあれは、公安警察の監視車だぞあいつらは、あんたたちが普段、相手をしているマル暴の刑事たちなんかより、遥かにヤバイぞとか言っちゃうのよ
ああ確かに、言いそうだなあ
それで、ヤクザさんたちも普段は、公安部の警察官なんて相手にしていないでしょだから、山岡さんの言う通りに信じ込んで必要以上に、警戒しているのよ
それでヤクザたちはビビッて、お屋敷への襲撃を控えた
そう言えば昨日は、門前まで攻めてきたのに
今日は、全く姿を見せない
普段から付き合いの無い実態のよく判らない相手とは、ケンカは避けるのよヤクザ屋さんていうのは、臆病な人たちの集まりだから
ヤクザが臆病
絶対に勝てる相手からは根こそぎ奪い取るけどね少しでも負ける要素のある相手とは、闘わないわリスクを恐れるのよ
いや、でも理屈抜きに、暴力で何でも解決しようとするようなイメージがあるけれど
それは、ヤクザ屋さんたちでも一番下の実行部隊の人たちだけよそういう人たちは、最初っから切り捨て要員の鉄砲玉でしかないわヤクザでも、上層部の人たちは自分がリスクを負うことを嫌うわ誰だって嫌でしょつまらない理由で、刑務所に入って何年も過ごすのは色々頑張って、組織の幹部になったからこそ50代、60代になって何年もの懲役刑とか、受けたくは無いわけ
さてと話を変えるけれど
翔姉ちゃんがチラッとオレを見る
さっき、みすず様たちが話されていたこと閣下を黒森家にというお話わたくしは賛成よ
あ、気にしないでこれは、この車の中だけのプライベートな会話だからあたしが、あなたと個人的な意見交換をしたって構わないでしょ
さっきのみすずの話の時は
オレたちは、一つの家族だけれど
ミナホ姉さんには黒い森のリーダーとしての立場翔姉ちゃんには、香月セキュリティ・サービスの社員としての立場みすずたちには、香月家の血縁者としての立場がある
だから、あんな風にジッちゃんのことについて大っぴらに話すのは、問題だった
それぞれの立場上いや、ジッちゃんとの関係の違いで、受け入れられないこともあるわけだし
みすずにとっては、祖父でもミナホ姉さんにとっては、重要なビジネス・パートナーだし翔姉ちゃんにとっては、所属企業のオーナーだ
あれは確かにみすず様の勇み足よもっと少人数の場所で内密にご相談して下されば良かったのよ
でも、みすずはみんなが居る場所で、話したかったんだよ
みすずにとっては今やオレたちの家族の方が、香月家よりも大切なものになっているから
みんなに話してみんなに、ジッちゃんを受け入れることを容認してもらいたかったんだと思う
そうなんでしょうねでも、何事にも段階というものがあるわ
確かにみすずは、少し急ぎすぎだったと思う
本当に閣下を受け入れることになったら大変よ閣下だけでなく、大徳さんたちや谷沢さんも付いてくるから
警護は翔姉ちゃんやレイちゃんに任せれば問題無いと思っていたけれど
専任警護人がジッちゃんから離れるはずがない
谷沢チーフだって、ジッちゃんの安全を常に確認しておきたいだろうし
そうなると御名穂さんとしては、困るでしょ自分の家の中に谷沢さんたちが常駐するなんて
それは黒い森の内部に、谷沢さんたちが乗り込んでくるということであり
ジッちゃんを頂点としたもう一つの組織がオレたちと同居するということになる
ジッちゃんは、どこへ行ってもどうせ我が物顔で王侯のように振る舞うだろうし
ていうか、ジッちゃんは生まれてこの方そういう生活しかしてきていないし
オレたちのお屋敷の中で
ジッちゃんとミナホ姉さんの意見が対立した時に側に、谷沢さんや大徳さんたちが居たら、面倒なことになる
谷沢さんはどんなに理不尽なことだろうと、ジッちゃんの希望に沿おうとするだろうし
だからもっと具体的に、何をどうするか閣下を受け入れるための下準備のための裏工作をどうするかなんてことから、秘密裏に話し合わないといけないのよ
大人数でなく数人で、こっそりと
そして、段階を踏んでジッちゃんを受け入れる
でも、わたくしは閣下が、あなたたちと住むということには賛成よ老人は、小さな子供たちの元気な笑顔の中で生活する方が、幸せだから
わたくしの大叔父がそうだったの息子さんの一家とご同居なさっていたんだけれど小さな女の子がいてねその子の成長を眺めながら、老後を過ごすというのはとても幸せそうだったわもう亡くなったけれど丁度、そこの家の女の子が、高校生になった年だったかな
老人は特に男は、老後を子供たちと過ごした方が幸せ
オレには判らなかった世界だな
今、閣下と美子様、2人だけでの生活は本当に暗いのよあなたたちの家の明るさとは、比べ物にならないわ美子様だって昨日、今日のご様子を見る限りは、とても楽しく過ごされているようだし
え美子さんは、雪乃と話しているだけだよ
将棋の女子プロ問題とか
ボーリングの女子プロ組織が潰れたとか
今朝は、競技麻雀の大会における三味線問題について話していたな
どういう話題だ
雪乃の興味は一体、どうなっているんだ
それが楽しいのよご自分の知らない話、ご自分とは関係の無い世界の話は、頭を空っぽにして聞けるから
今の美子様は学校では、瑠璃子様にお会いできるけれどご自分のクラスでは孤立していらっしゃるみたいなの
クラスで孤立
瑠璃子様のお付きだと思っていた方が、いきなり香月家の後継者の1人になってしまわれたのよクラスの子たちだって、対応に困るわよ
しかも、あの学校はほとんど全員が、幼稚部から持ち上がって来ているわけでしょ
みすず、瑠璃子、美子さん、美智の通う日本一のお嬢様学園は
幼稚園から大学まで、全て揃っている
途中で入学して来る子もいるんだろうけれどほとんどの生徒が、幼い頃からお互いをよく知っている
なおさら困るわけお付きだと思ってたから、失礼なことをしてきてしまったんじゃないかとか今までは親しくしていたけれど、今後はどう付き合っていいか判らないとか
それで、お家に戻られれば閣下と2人きりでしょ閣下は、美子様にも後継者教育をなさっているおつもりなんでしょうけれど今までは、瑠璃子様にお仕えすることだけに集中していたのに突然、経営学とか経済学とかの講義が始まっても
ジッちゃんが、美子さんと2人きりになるとそうなるわな
私塾なんかもやってるし基本的に、ジッちゃんは教育好きなんだよな
今までなら瑠璃子様がいらっしゃったから、お二人で仲良くお話もできたんでしょうけれど
美子さんは香月家の屋敷で、寂しい思いをしているんだ
だから雪乃さんとのお話を、とても楽しんでいらっしゃるわよ雪乃さんは、美子様に対して、何の屈託も無く話しているから
それは雪乃の良いところだ
相手が誰だろうといつも、自分のペースで生きている娘だから
だから美子様が、このまま黒森のお屋敷に残りたいとおっしゃっていたのは、本心からだと思うわ
ジッちゃんに、美子さん何とかしないとなあ
後部座席から工藤遙花が、声を出す
ルームミラー越しに、遙花を見る翔姉ちゃん
あ、あたしいいんでしょうかここでそんなお話を聞いていて
遙花は不安そうに言った
あら聞いていたのあなた
お、同じ車に乗っていたら聞こえます聞こえちゃいました
あなたが、聞かないでおくそういう選択もあったんじゃないの
翔姉ちゃんはクスッと笑う
工藤遙花は混乱している
ど、どういうことなんでしょう
すると工藤遙花の隣に座っている、イーディが
アンタミチやルリコたちと同じ学校じゃなかったのネ
は、はいそうですけれど
工藤遙花も瑠璃子の警護役として、仮採用されていたから同じくあの超お嬢様校に通っている
アンタ、今、何年生ネ
こ、高校3年ですが
やっぱりこの褐色金髪の天才アメリカ人美少女が、遙花は苦手らしい
イーディの方が2つも年下なのにいつの間にか、遙花の方が敬語になっている
奇遇ネ確か、ヨシコもHIGH SCHOOLの3年生のはずネ
イーディはニヤッと笑う
ええあたしの、すぐお隣のクラスにいらっしゃいますけれど
工藤遙花は、困惑した表情で、そう答えた
もういいわイーディちゃんその子どうにも使えない子みたいだから
ハンドルを操作しながら、翔姉ちゃんが言った
つ、使えないあたしがですか
工藤遙花は、不満げに言う
情報のリークって言葉、知ってるカネ
イーディが、笑いながら遥かに言う
わざと情報を漏らすことでこちらが、させたいことを相手にさせるのネ
はい何の話です
ああ、遙花はマジでバカな子なんだ
翔姉ちゃんは今の話を聞いて、工藤遙花が美子さんの学校生活でのフォローをしてくれるかどうか試したんだ
美子さんは突然、香月家の娘として認知されたから
今の美子さんには独自のお付きも警護員もいない
たまたま、工藤遙花が美子さんと同学年で、同じ学校に通っているままで空いているんだから
遙花が使える子かどうか試してみたんだ
あなたは、失格ってことよ
翔姉ちゃんはそう言い切った
な、何がですか
そうねえ何だと思う
いえ、あの失格とか言う前に、ちゃんとあたしを試験して下さいあたし使えない子じゃないですちゃんと、使えますから
いや遙花
今のが試験だったんだよ
取りあえず、言っておくけれどあなたが、今聞いたことは他言無用よ誰かに話したら、香月セキュリティ・サービスがあなたを処分します
ビクッと震えて工藤遙花は、背筋を伸ばす
と言ってもどうせ、あなたは誰かに喋るんでしょうねでも、平気よあなたのお友達は、みんな、あなたの話すことなんて信用しないでしょうから
な、何を言ってるんですかあ、あたしはあたし、友達だって多いんですよみんな、あたしのこと良い子だって言ってくれていますし
反論する工藤遙花
あなたの学校の生徒はみんな、名家のお嬢様たちか、そのお付きと警護役でしょ
もう、みんな知っているわよあなたのお母様が香月セキュリティ・サービスから、追放されたことはそれも原因が、お母様の方にあるっていうこともね
遙花と美智の母親は元警備部長の山岡と不倫関係になったあげく、2人ともシザーリオ・ヴァイオラとの戦いで、使い物にならなかった
あげくに職場放棄をしたと、谷沢チーフに受け取られて解雇された
あなたは、しばらく入院していたから学校へ戻ったのは、夏休み明けからでしょ何か変だと気付かないみんな、あなたに余所余所しいでしょ
そりゃそうよみんな、香月家に睨まれている人の娘とは、仲良く出来ないわよ
今の香月セキュリティ・サービスは香月グループの中の1企業ではないのよ香月セキュリティ・サービスは、全ての株を閣下がお一人で持っていらっしゃるわグループの経営は、今後は司馬さんがなさるけれど司馬さんだって、香月セキュリティ・サービスには手が出せないの香月セキュリティ・サービスは、閣下の私的な警護会社いえ、私兵だから
ジッちゃんは自分の次男が、長男一家を謀殺したことで他の家族たち、特に孫娘たちを守るために香月セキュリティ・サービスを創設した
ジッちゃんの次男が雇った殺し屋が、シザーリオ・ヴァイオラだったからだ
表向きには、自分や名家の人たちを専門に警護する会社ということになっているが
実際の組織力・戦闘力は国際犯罪組織と渡り合うだけの力を有している
そんな香月セキュリティ・サービスにお母様がお勤めだったから、これまであなたのお友達はあなたのことを信頼していたのよでも、お母様は香月セキュリティ・サービスを裏切ったわこうなると、皆さん、あなたとの付き合いを断とうとするのは当然でしょ
ましてや今の遙花の母親は
山岡と一緒に、関西ヤクザに雇われている
名家のお嬢さんたちや、警護役からしたら工藤遙花のことは、避けるしかない
あなただって退院して学校に来てみたら、みんなの様子が変だ余所余所しいこのままじゃマズイそう感じたから慌てて、美智ちゃんにコンタクトしたんでしょ美智ちゃんを通じて、彼と会って何としても、みすず様に自分を売り込んで、香月セキュリティ・サービスに採用されないとって
遙花が、香月セキュリティ・サービスに正式採用されたら
世間の遙花を見る眼は変わる
そ、そうですよだ、だから
遙花は、あっさりと認めた
だからどうか、あたしのことを試験して下さいちゃんと試験してもらえないのに、失格とかは酷すぎます
あたし、美智みたいに自分を上手に売り込んだりするのは、苦手なんですからちゃんと技術で技を見て下さい
何でここで美智が出て来る
あの子はずるいのよ自分だけみすず様たちに取り入ってホント、自分のことしか考えて無いのよ
遙花はそう言う
ああ学校ではミチの方は、全く、周囲の子たちの評価が落ちてないのネ
イーディが、頷く
そうよあの子だって、あたしと同じなのにあの人の娘なのに、あたしだけがあの人の不祥事のアオリを食らって、立場を悪くしてあの子の方は、何も変わらないなんて変よホント、ズルイんだからあの子は
姉と妹
あたしが入院している間にあの子が、何かやったのよそれで、あたしだけが評判が落ちるようにしたんだわ
だって自分だけ、あんなにみすず様にベッタリでさ普通なら、姉のあたしを推薦してくれるように、お願いしたりするもんでしょ妹なのよ、あの子はあたしのっ
遙花は、翔姉ちゃんには不満をぶつけられないから
一気にオレに、悪感情を叩きつけてくる
ホーント判ってないノネ
呆れた口調でイーディが言った
あなたに、何が判るのよっ
叫ぶ遙花
逆ネ全部、逆なのネ
アンタたちのMOTHERが、不祥事を犯したことはみんなに知られているネだからルリコとミスズは、廻りの人たちが見ている前で、自分たちの方からミチに積極的に近寄ったネミチと今まで通り、親しい様子を見せたノネ
だから、みんなミチのことを認めているのネミチからじゃないヨミチは、そういうことは苦手な子なのネというか、ミチは廻りの子の評価とか、全く気にしない子なのネ
美智はそういう娘だ
だから、ルリコたちの方がミチを気遣ってくれたノネ
いい子ネみんな、いい子ネ
しかし、工藤遙花は
そんなわけがないわ何で、香月家のお嬢様たちが、わざわざ警護役の美智を気遣って下さるのよそんなこと、あるわけないでしょっバッカじゃないのっ
工藤遙花は自分の狭い想像力の中でのみ生きている
あのさ、美智は最近、みすずたちのこと何て呼んでるか知ってるか
し、知らないわよそんなのっどうでもいいわよっ
どうでもいいわけがない
美智は、みすずのことはみすずお姉様、瑠璃子のことはルリルリって呼んでるよ
逆に、ルリコはミチことをミッチーって、呼んでるネ
呼び方は相手との関係を示す
ホントなのネ
ちょっと、待って関さん、これって、あたしなんかよりも、よっぽど美智の方が失礼じゃないですかっ香月家のお嬢様たちに対して、不遜ですこんなの許しちゃダメです処罰するべきよっ
あらみすず様たちがお許しになっていらっしゃるのなら、わたくしたちがどうこう言う問題では無いわ
翔姉ちゃんは、冷たく返す
でも美智なんですよ
ええ、美智ちゃん可愛いわよねみすず様は、ご自分の妹のように可愛がっていらっしゃるし瑠璃子様とは、まるで親友のように
そんなのダメですってば
何でダメなんだよ
あの子ったらどうして、そこまでして自分を売り込もうとするのよっ
遙花の頭の中は、どうなっているんだよ
しょうがないでしょ美智ちゃんは、可愛いんだからあなたと違って
そうネ美智は可愛いネアンタとは違うネ
翔姉ちゃんとイーディが、せせら笑う
だからそれが、あの子の手なのよズルイ子なのよあの子は
違うよ
美智は可愛いでも、工藤遙花さんあんたは、可愛くないそれだけだよ
何よ、それ何言ってんのよバカにしないでよっ
遙花さんあなたは、仮採用で瑠璃子様の警護役をしていた時に廻りの子に対して、偉そうにしていたでしょそのくせ警護の方はいい加減だったし
オレも日舞発表会での、遙花のいい加減な働きぶりを見ている
瑠璃子の警護役なのに全然、瑠璃子の側にいないし
わたくしは、ちゃんと報告書を読んでますから誰も見ていないと思ってたの
美智ちゃんの方はどんな時でも、みすず様から離れないし他の生徒に余計なことは、一切喋らないでしょいつも控え目で、前に出ない主人のことを常に考えて行動し続けているあなたみたいに役職として知った情報を、廻りの子にペラペラ喋ったりはしないのよ
やっぱり喋ってたのか
香月家のお屋敷の間取りとか食事内容とかそれが、どれだけの機密事項なのかあなたには判らないんでしょうね
そんな情報も外に漏洩したら、襲撃計画に利用されるかもしれない
というか、大体、主家のことをペラペラ話す警護役なんて、信用できるわけがない
その点美智ちゃんの方は、警護役として、見事に勤めているわ満点よあなたの学校の子たちは、みんなそういう美智ちゃんの見事な働きぶりを知っているのよ正直、今年の春には香月セキュリティ・サービスに、美智ちゃんを自分の娘の警護役に譲ってもらえないかってオファーがあったわかなりの名家香月家クラスのお家からよ
美智に他の名家から、警護役の依頼があった
今はそういう声ももう無いわ美智ちゃんがみすず様、瑠璃子様に本当に信頼されていて、家族同然に受け入れられているということを、学校中のみんなが知っているからあの学校の中では、美智ちゃんの警護人としての腕前を知っている人は、ほとんどいないわ工藤流古武術という名前を聞いて、笑う人もいるでも、みんな警護役としての美智ちゃんを馬鹿にする人はいないわみんな、美智ちゃんに敬意を感じているわだからよお母様が不祥事を起こしても、全く美智ちゃんの評価が下がらないのは
みすずや瑠璃子の気遣いもあるけれど
何よりも美智の努力の結果なんだ
みんなちゃんと見てくれているんだ
あ、あたしはな、納得いかないですそんなの
工藤遙花はそれでも、そう言う
あたしが、美智に妹に劣るわけがないんですから
いやお前
5月も今日も美智に負けてるじゃないか
ま、あなたがそう思っているんなら、あなたの世界ではそうなんでしょうね
翔姉ちゃんが突き放すように言った
さっき母から
母明日ね、お父さんとポーラ美術館に行きたいのよ
私あ、そうなんだ行ってくれば
母でも、あたし一人じゃお父さんの面倒が見られないかもしれないから、あんたも付いて来てくれないかしら
私いいけど
母助かるわ
私でも、ポーラ美術館てどこにあるのさ
私は完全に都内にあるのだと思ってました
母強羅
私ゴーラってもしかして、箱根の
母そうよ紅葉が綺麗らしいのよ
私あの日帰りだよね
母当たり前でしょ、うち、お金無いもの
今年の初めにも、私は日帰りで箱根へ行ってますが
今度は、78歳と72歳を連れての旅か
はぁぁ
726.地下へ
都内に入ったネ
イーディが、道路の表示を見て言う
すでに彼女は、東京近郊の地図と地名を完全に覚えている
暗殺教団の闘士としての英才教育を受けてきただけでなく、イーディは本物の天才だ美智と同じくらい、スバ抜けた頭脳を持っている
ショウそろそろ現地での、具体的な指示が聞きたいネ
イーディは、運転席の翔姉ちゃんに言った
関西のヤクザさんたち完全に潰すから容赦は無用よ
翔姉ちゃんは、ミラー越しに言う
ミンナ殺すのカ
平然とそう言うイーディに、工藤遙花がギョッとする
そこまでは、しなくていいわキリが無いからただちょっとでも刃向かってきた相手は、必ず1撃で仕留めて
ONE ACTIONデ
ええ、殺すんじゃなくて1撃で気絶させるのよ
さっき、話したけれど今の香月セキュリティ・サービスは、閣下の私兵よわたくしたちは、名家専門のVIP向け警護会社を表の顔にして、閣下のご希望に沿って裏の仕事をしてきたわでも、これからは今までのようにはいかない状況がどう変化しているかは、あなたたちも判っているわよね
オレとイーディは、頷く
工藤遙花は、ポカーンとした顔をしている
香月グループからジッちゃんが引退して、グループ全体の経営は司馬さんがするんだから香月セキュリティ・サービスは、今までみたいに香月グループからのバック・アップを貰えなくなる可能性があるんだろ
これまでは、香月家と香月グループ、香月セキュリティ・サービスの3つは、全てジッちゃんの支配下だった
でも、香月セキュリティ・サービスはあくまでも、ジッちゃん個人の組織だから司馬さんの支配下には入らない
そのことを、司馬さんは不服に思うかもしれない
ぶっちゃけ、今までは資金や情報なんかの提供も、香月グループからしてもらっていたりするのようちの会社は裏で使うお金がたくさん必要だし香月グループの社員に化けて、潜入捜査とかしてたわ香月グループの会社には、色々と協力してもらってたのよ
でも、この先はそういう親密な関係は許されないでしょ司馬さんから見たら、閣下の配下の職業的なスパイが、自分の支配域でウロウロしているわけだから
やりづらいというか嫌だよなそういうのは
ジッちゃんに、上から監視されているみたいで
だからわたくしたちは、今後も香月グループとは連携していくけれどこれからは、はっきりとケジメのある付き合いをしていかないといけないわけ平たく言うと、香月グループとも、ちゃんと契約書を交わしてわたくしたちとの取引企業の一つになってもらうしかないのよ
今後も香月グループに関する警護は、香月セキュリティ・サービスが行う
しかし、それ以上の密接な関係にはならない一線を画す
ということだからこれからの香月セキュリティ・サービスは、ちゃんと独立採算でいける会社にならないといけないのよとりあえず表の本業の名家専門の警護会社として、業界ナンバーワンにならないとね
香月グループからの裏からの資金援助は断たれるなら、自分で稼ぐ収益を増やしていくしかない
だから今回の件は、わたくしたちにとっても大切なのよ新生香月セキュリティ・サービスのお披露目としてね
今回の件
鷹倉神社を巡っての関西ヤクザたちのトラブルにジッちゃんが、介入したということではないのか
名家の皆様には今回のことは、鷹倉姉妹が香月セキュリティ・サービスに自分たちの警護を依頼したということになっているわ
月子たちの依頼
でまあ、これからヤクザさんたちと手打ちをするわけだけれどこれって、ヤクザさんたちは、どういう決着になるって想像していると思う
ヤクザたちがジッちゃんが、どう決着を付けると思っているか
オレは考える
だって状況としては、ヤクザたちの全面敗北だろ東京へ鷹倉姉妹を追っ掛けて来た人たちは、ほぼ壊滅だし自分たちの関西の本拠地には、谷沢さんたちに襲撃されたんだしあげくに、わざわざ関西から東京に呼び出されているんだからさ
いくら手打ちをするからって2グループの大親分とも、自分たちの地盤からジッちゃんのいる東京まで出向かせられている
こんなの圧倒的な敗北を、認めたとしか思えない
あらそれは、ヤクザっていう人種を見誤っているわね
翔姉ちゃんは、クククと笑う
ヤクザさんは閣下と五分五分の取引をしようと思っているはずよいえどっちかっていうと、自分たちの方が有利な形にできると思っているんじゃないかしら
この状況で何で、そう思える
ヤクザさんだからよ
どんな状況でも口八丁手八丁、ブラフに、脅しに、逆上、逆ギレ、屁理屈、暴力、裏金、権力者のコネとにかく仕えるものは何でも使って、自分の有利に取引を進めようというのがヤクザよ特に、今回の二人の大ボス雷神鳳会の大鳥総裁に、雲龍会山森組の佐竹会長どっちも関西の重鎮ヤクザ・オブ・ヤクザみたいな相手なんだから
大人しくジッちゃんの言うことを聞くわけがないのか
それにヤクザさんたちは、まだ逆転の可能性を残しているわよね
鷹倉3姉妹の身柄をオレたちから奪取する
あるいは、ジッちゃんを人質にする
もしくは、お屋敷に襲撃をかけてみすずたちを拉致する
方法は、幾つも考えられる
しかも、実際にそういうことをしなくてもいいのよこいつになら、そういうことをやりかねない、こちらが引かないと、大変なことになる、こいつらは危険過ぎる相手だって、閣下に思わせればいいんだから
ヤバイやつらだとビビッたら負ける
ブラフや脅しが効力を発揮するのはこいつらは、やりかねないという狂気や暴力性を相手に感じさせ
また、その実行を裏付けるだけの暴力を有しているかによる
ヤクザさんたちは、広域暴力団だからね暴力だけは、売るほど持っているのよ命知らずの鉄砲玉に、捨て身で突っ込ませればいいんだから自爆テロだっていいのよ例えば、みすず様たちの通っている学校に自爆テロを仕掛けるとか他の生徒まで、平気で巻き込む覚悟で、みぃーんな吹っ飛ばすとかねそれも、お腹にダイナマイトを抱えた人を、5人も10人も突っ込ませるとか
そんな規模のテロ行為をやられたら防ぎようがない
普通は、そんなことはやらないわよね無関係な人を巻き込むなんて、論外だしみすず様たちのクラスメイトは、皆様、名家の子女ですものそれこそ、日本中の名家を敵に廻すことになるわ
うん無差別テロで、他の名家の子まで危険が及ぶとなったら許さないよな
そういうリスクを背負ってでも、香月家に一矢報うという覚悟を閣下に納得させれば、それでもうヤクザさんたちの勝ちになるのよ
関西のヤクザさんからすれば名家中の名家である香月家が香月重孝閣下が、自分たちに一歩でも引いたというだけで、良い宣伝になるわけあの香月家も、自分たちの恐ろしさに怖じ気づいたって
あー、メンドくせぇ
つまり、あれだ
小学生の悪ガキの論理のまんまなんだオッサンになった今でも
O.K.、ショウつまり、アタシたちは、何があってもビビッちゃダメってことなのネむしろ、アタシたちの方が徹底的にヤクザをビビらせないといけないってことなのネ
そういうことよあちらさんの方にこそこいつらは、ヤバ過ぎる気が狂ってんじゃないかこんなやつらには、怖くて逆らえないって思わせないとね
判ったネ耳の穴から手ぇ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わしたるってのを、アタシたちの方が実践するノネ
イーディよく、そんな言葉を知っているな
だからちょっとでも、わたくしたちに敵対的な態度を取った相手は1撃で気絶させて下手に身体を痛めつけるだけだとああいう人たちは、根に持つから1発でノされたら倒された本人は記憶が残らないから、後々まで根に持たないのよその代わり、周囲の人たちには大きなインパクトがあるから知ってるでしょ後遺症が残らなくて、一発で気絶させられる急所は
もちろんネ
オマエは、知ってるノカ
そのまま工藤遙花に尋ねる
な、何言ってるのよヤクザを叩いたりして、もし少しでも避けられたら、大変なことになっちゃうじゃない
ダカラ1撃ネ
イーディは、遙花に拳を突き出す
そんな相手だって、格闘技をやっているかもしれないし向こうの方が人数が多かったら、どうするのよ
ダカラみんな、順番に1撃で倒していくのネ
そんなの、できるわけがないでしょ
イーディは、大きくカカっと笑う
アタシはできるアンタはできないそれだけのことネ
ニッと唇が微笑む
わたくしだって、できるわよもちろん、麗華も美智ちゃんもね
運転席から、翔姉ちゃんが言う
そんな相手は、ヤクザなんですよね無理ですよ
工藤遙花は、ぷるぷると首を振る
だからあなたみたいな子は、香月セキュリティ・サービスでは採用できないのよ
うちの会社は実現不可能なことは、させないわよ一見、実現不可能に見えることでもできることしか求めないわ
ショウこの子には言ってもムダなのネ
イーディが、翔姉ちゃんの言葉を遮る
こういうのは判る子は判るできる子はできる判らない子は、一生判らないできない子は一生できないって類のことネそして、この子は判らなくて、できない子ヨ
工藤遙花は必死で反論しようとするが言葉が出て来ない
まあ少し、黙って見ていなさいそれで判らなきゃ本当にどうしようもないから
翔姉ちゃんは、溜息を吐く
あ、あの翔姉ちゃん
オレには気になっていることがある
あのさ月子たちの巫女の力のことなんだけれど
ヤクザたちとの話し合いが、かなりメンドくさいことになりそうなのは理解できたけれど
鷹倉神社の巫女の心を読む力や従わせる力があれば、全部、オレたちの有利に進められるんじゃないのか
イーディルナや夜見子のトレーニングって、どれくらい進んだんだ今日の会場である程度使えそうなのか
オレが月子の相手をしている間
ルナにはイーディが、夜見子には美智が付いて訓練をしていてくれたはずだ
月子と3人合同で力を融合させる訓練の時間は取れなかったけれど
それは、まあ思ったよりは、POWERがCONTROLできるようにはなっているネでも、Darling
イーディが苦笑する
アタシたちは、今日できる限り、あのコたちのPOWERは使わないで済ませることを考えるべきネ
だってそれが目的で、昨日からやってきたんじゃないのか
鷹倉3姉妹と順番にセックスして
みんな、処女を喪失させて力を目覚めさせ
それを確実に使えるように、早朝からまたセックスしてトレーニングして
昨日の今日だヨ今の段階では、あの3人のPOWERが実際に使えるかどうか判らないネあのコたちは敵と直面した切迫した空気の中で、POWERをCONTROLしたことは無いんだカラ
トレーニングと、本番は違うネ
遙花に、夜見子が力でねじ伏せた時だってあそこは、廻りにオレたちがいるという安心感のある場所だったわけで
ヤクザさんたちだらけの場所で、同じ様に夜見子が力を振るえるかどうかは、実証されていない
あたしも、そう思うわあの子たちの力は、戦力としてカウントするべきでは無いと思うの
翔姉ちゃんもそう言う
でもだったら何で、オレがあいつらのトレーニングを急がせたのを止めてくれなかったんだよ
昨夜から、今日の午前中とオレは、月子たちの力を有効なものにするため、かなり焦っていた
3姉妹にも無理をさせた
ロスト・ヴァージンしたばかりなのに、激しいセックスも強要したし
理由は2つあるわ
一つはとにかく鷹倉神社の巫女についての、詳細な情報が知りたかったからあなたが、あの姉妹から聞き出したことと、あなたたちの様々な推論は、全て御名穂さんが聞き取ってメモしてくれたわそれで、わたくしやマルゴさんを交えて何度も討論したの
オレたちの会話は全て、ミナホ姉さんに聞かれていた
オレたちのセックスも観られていた
でも、鷹倉姉妹たちは部屋に年少組の子たちしかいなかったから
心を開いて、何でも話してくれた
それを元に寧やみすずや瑠璃子たちがもたくさんの推論を立てていったし
その度ごとに、月子たちからも感想を得られた
おかげで鷹倉神社の巫女の力というものが、何となく判ってきたわまだ、完全じゃないけれど
ミナホ姉さんと翔姉ちゃんたちはそのことを調べていた
敵が何を狙っているかなぜ、あの姉妹を追うのか巫女の力にどのような価値があるのかそういうことが判らないと、対策の取りようがないでしょ
じゃあ月子たちの力は、全然アテにしていないんだ
当たり前でしょそんな力に頼らなくても、この1件を解決できないと香月セキュリティ・サービスの沽券に関わるわよ
翔姉ちゃんは、フフッと笑う
もう一つの理由はあの姉妹に、自信を持って胸を張って、運命と立ち向かって欲しかったから
京都から黒森のお屋敷に到着したばかりの頃のあの子たちはちょっと、変だったでしょ
夜見子ばかりが、妙にハイ・テンションで勇み足で
月子は、内面に色々な感情を隠していたし
ルナは、すっかり暗く落ち込んでいた
あの時のあの子たちはヤクザに両親を殺され、ずっと暮らしてきた神社から逃げ出して来たっていう状況で将来が見えなくて、絶望しちゃってたでしょ
絶望
そうネそれが何をすることだか判っていないのに娼婦になるって、イキリ立ってたんだカラ
とにかく閣下に縋って、東京に自分たち姉妹の生活の基盤を築くことしか、生きていく道が見えなかったんだからそうじゃなかったら、閣下のあんなメチャクチャな提案に乗って来ないわよ
うんそうだよな
それぐらいあの子たちは、怖かったのよヤクザたちが
月子たちがヤクザを怖がっていた
あの3人姉妹は生まれてから、ずっとヤクザたちが廻りに居たのよ鷹倉神社はヤクザに支配されていたんだからそんなの怖いに決まっているわ
月子とルナは仲裁の儀によって生まれた、ヤクザの大親分の娘だ
月子の父親が、大鳥総裁であることも判っている
大鳥総裁は、しばしば鷹倉神社を訪問したしその度に月子に対して、プレッシャーも掛けていった
そしてご両親が、ヤクザに殺されたばかりなんですものヤクザの恐ろしさが、身にしみて判っていたはずよ自分たちじゃ、もうどうすることもできないと感じたから閣下を頼ったんだもの
そして、3姉妹はオレたちの屋敷に来た
そこまでヤクザを恐れていた子たちが今は、率先して、自分たちからヤクザに立ち向かおうとしているこれって、とても凄いことよ一体、誰のせいであの子たちは、勇気を手にすることができたのかしら
月子、夜見子、ルナ、本人の力だよあいつらは自分で運命を切り開く覚悟をしたんだよ
あいつら自身が自分で立ち上がったんだ
オレは後ろの2号車を見る
運転席のレイちゃん
助手席の美智が、後ろを向いている
後部座席の月子たちは、今、この瞬間も3人でトレーニングを続けているらしい
あなたがそう思うのならそれでもいいわでも、わたくしはあなたが、あの子たちに良い影響を与えているんだと感じているわ前向きに自分の人生と向き合って、闘う方向に導いているって
オレにはそんな力は無い
とにかく、いずれにしても、月子たちの巫女の力はアテにしちゃいけないってことだよね
そういうことよ切り札だと思ってはいけないわよ本当に最終手段として、使うことがあるかもしれないけれど基本的には、あの力を使うことなく勝つことを考えないとね
だから清美さんは
オレは理解した
そう鷹倉清美は、発見次第射殺するわそれが一番、確実な方法だから
その翔姉ちゃんの言葉で
ジッちゃんや、香月セキュリティ・サービスは
鷹倉神社の巫女の力を、全く欲しがっていないことが判った
巫女の力を自由に使えるようにするためには
清美さんを捕まえて、知っていることを全て話させたいと思うだろう
そうしないで有無を言わさずに殺すのは
巫女の力なんて、どうでも良いと思っているからだ
わたくしたちは関西のヤクザたちを屈服させて、香月セキュリティ・サービスの力を示したいだけよ本当のことを言えば今まで、香月セキュリティ・サービスの警護員を使っていなかった関西の名家の人への宣伝+営業活動なのよ
ジッちゃんや翔姉ちゃんたちにとっては鷹倉神社よりも、そっちの方が重大なんだ
あ、勘違いしないでね閣下が、あの姉妹の境遇を可哀想に思われて助けてあげたいと思われたのも本当のことだから
判っているよジッちゃんが、助けたかったのは月子、夜見子、ルナ鷹倉家の3姉妹そのものであって特別の力を持つ鷹倉神社の巫女じゃなかったってことだろ
ええ閣下はあの方は、巫女の力なんてオカルティックな超常現象の力なんて信じていらっしゃらないわ
うんジッちゃんは、そういう人だ
見えてきたわあの建物よ
翔姉ちゃんがホテルらしき建物を指差す
あれも香月グループのホテルなの今日は、10階から15階のフロアが貸し切りよ
ああ、その5フロアに関西ヤクザたちを押し込んでいるんだな
今日、到着した2人の大親分はそれぞれ警護の子分たちも連れてきているだろうし
手打ちの見届け人として、他にもヤクザ界の重鎮に来てもらっていると言ってた
他に昨日までに東京に派遣された連中も、あそこに集められているだろうし
1号車関より、各車へ聞こえますか
翔姉ちゃんが、無線機で喋る
2号車、藤宮、聞こえます
3号車、マルゴ感度良好
スピーカーから、各車の運転者の声が聞こえる
そろそろ到着ですが少し、荒っぽいことになるかもしれませんでも、露払いは1号車が担当しますから2号車の援護の必要はありませんそちらは、自分の安全を第一に行動して
藤宮、了解
いや、これはレイちゃんに言った言葉じゃない
月子たちにだ
もし、1号車のオレたちがヤクザたちと揉めても巫女の力は使うなと、釘を刺したんだ
頼むわねあなたは、わたくしたちのエースなんだから最後まで、敵に手の内を知られたくないのよ
翔姉ちゃんはこの無線が盗聴されていると想定している
今のレイちゃんはキョーコさんとの戦いが全国放送されているから、大有名人だ
その撲殺ステッキの威力も知られている
だから、この通信を聞いた人はレイちゃんが、オレたちの警護の要であり、エースなんだと思い込む
まあ、2号車には美智もいる
今の連絡が、月子たちに力を隠すことだとちゃんと話してくれるだろう
あたしの方は、好きにやらせてもらうよ
マルゴさんの声が、続いて聞こえてきた
別にあたしは関さんの子分では無いんだから
ええ、そうねあたしも、あなたたちをコントロールできるとは思ってないわお好きにどうぞ
ついでに黒い森と香月セキュリティ・サービスが上手く連携できていないという印象を、盗聴者に与える
凄いなみんな
じやあ、行くわよ
オレたちの車列は、ホテルの地下駐車場へ飛び込む
老父母を連れて、箱根へ日帰り旅行
朝9時出発
はあ、父も母も我が儘というか、マイペースと言うか
そして2人とも、歩くスピードを合わせようとしないし
片方を探して、また片方を見失って
母のあら**昔も、ここへ来たことあったでしょという問いと、
父のうーん、忘れたの繰り返し
何か、私の生まれる前から2人で箱根には、よく来ていたらしいです
そして驚いたこと
どうしても、母が冨士屋ホテルに行きたいというので連れて行ったのですが
なぜか、ホテルの前を素通り
私え、どこ行くの
母こっち
私え、パン屋さん
母違う、その上
母よなぜ、箱根の山の上で、普通の魚屋に入る
母昔、ここで買ったお魚が美味しかったのよ
私それいつの話
母うーん、30年くらい前
結局、ホテルへは入らず、お茶も飲まず
山の途中の、土産物屋でもない、普通の魚屋で魚を買って帰って来ました
母箱根湯本の土産物屋さんの魚よりも、ここの方が新鮮なのよ
いや標高は、こっちの方が上だって
何で山の上で鯛を買う
午後7時に、やっと帰宅
母楽しかったわねまた行きましょう
母だけ元気
父箱根へ日帰りは、身体にきついよ頼むから1泊させてくれよお
うん絶対そう思う
母でも、お魚美味しいでしょ
うんでも
魚は帰りに小田原で、普通に買った方が良かったんじゃないかな
727.仁義なき戦い
翔姉ちゃんのいつものアメ車を先頭に、レイちゃんの運転する車、マルゴさんの車と順番にホテルの地下駐車場へ入る通路へ
ここまで、何の問題もない
翔姉ちゃん全然、警備の人を見ないんだけど
ここのホテルの従業員らしい、制服の警備員は居た
でも香月セキュリティ・サービスの制服をオレは見ていない
大丈夫よちゃんと配置しているわ私服でね
わたくしは、山岡さんとは違うわよあの人みたいに、何でもかんでも制服組を動員してガチガチに固めるなんてことはしないわ
ああ山岡が警備部長だった頃は、異常な数の香月セキュリティ・サービスの警備員が出動してたもんな
ああいう数で制圧するみたいなことが、効かない相手でしょ今回の連中は
相手は関西のヤクザたちだ
下手に人数で勝負しようとすると向こうも、同じ手を使うわよ地元から、自分の組の構成員を呼び寄せてもいいし、関東近郊の親しい暴力団から兵隊を借りてもいいあの人たちにとっては、メンツを保つことが一番大切なんだから特に手打ちの相手が閣下でしょ多少、お金がかかっても、それぐらいのことは仕掛けて来るわよ
山岡みたいに、ホテル全体を香月セキュリティ・サービスの制服組で固めたら
ヤクザたちも同じぐらいの人数を揃えて、威嚇してくる
そんなことになったら、このホテルの周りの人たちに迷惑でしょ警察も介入してくるでしょうしだから、今回は量でなく、質で勝負することにしたの
香月セキュリティ・サービスの私服組とは
非合法の裏の仕事を担当する、トップ・エリートたちのことだ
みんな、とんでもない能力を持っている
例えば、制服組なら10人配置しなくちゃいけない場所でも、私服組なら2人で済むわ費用は、ほぼ3倍だけれど
つまり、制服警備員1人の15倍の金額が、トップ・エリートには支払われる
すでに、何回かホテルに集まってきているヤクザさんたちとトラブルが起きているけれど全て、ホテルの従業員や他のお客様たちには気付かれないうちに、処理しているわだから、さっき話した5つのフロア以外には、ヤクザさんたちは出てこられなくしてあるのロビーやレストランやバーにも、入れないようにしてあるわ
ヤクザたちの封じ込めは成功している
ああこの地下駐車場だけは、例外よヤクザさんたちも、お出迎えの仕事があるから
手打ちの立会人になる親分さんたちが、まだ全員揃ってないのよ
オレたちの車列は地下駐車場の一番下のフロア、地下3階まで下りていた
ああやっぱり、居るわね
フロントガラスの向こうに黒服のヤクザさんたちの一団が見えた
オレたちの通行を妨げるように10人は居るな
各車、ストップよ
翔姉ちゃんが無線で、他の車に告げる
車が止まる
さっき言った通り、2号車は待機3号車は、後方警備ね
マルゴ、了解
そして、翔姉ちゃんは運転席のドアを開けて、外へ出る
ちょっと邪魔なんだけど君たち
ニコッと、黒服たちに微笑む
大鳥さんと佐竹さんどっちの子分なのかしら
すると黒服の中の1人が
えー、お控ぇなすってお控ぇなすって
片手を差し出し、腰を落とすポーズを取る右手の手の平を、オレたちに見えるように開いている
年齢は30歳くらい髪は短く刈り上げ、サングラスをしている
控えてるわよ
呆れて、男にそう答える翔姉ちゃん
えー、早速のお控え、ありがとうにございやす手前、粗忽者ゆえ、前後間違いましたる節は、まっぴらご容赦願いたてまーつりまーます向かいましたる姐さんには、初のお目見えと心得ます手前、生国は河内国、オオザカ、富田林にございやす稼業、縁持ちまして、8代目雲龍会山森組、佐竹信雄に従います若いモンにございやます姓は風間、名はトオル稼業、未熟の駆出しモンでございやす以後、万事万端、お願いなんして、ざっくばらんにお頼り申し上げ、たてまーつりまーすっ
何なんだこの変な挨拶は
つまり佐竹さんところの子分てことね
翔姉ちゃんは、車内のオレにそう囁く
風間と同じ、お控ぇなすってのポーズを取り
ご丁寧なるお言葉、有難うござんす申し遅れて失礼さんにござんす手前、香月セキュリティ・サービスに属します若いモンでございます姓は関、名は翔稼業、未熟の駆出しモン以後、万事万端、宜しくお頼申します
太い声で相手に挨拶し返す
有難う御座います
有難う御座いました
ふんっまさか、警護会社のお姉ちゃんが仁義の切り方を知っているとはな
あーら、わたくし優秀なのよあなたたちの何倍も、お給料もらっているし
2人ともスッと身体を起こす
おいおい、姉ちゃんの方が安月給なんじゃねぇのか何なら、うちで雇ってやってもいいんだぜあんた中々のベッピンさんだしよ
風間の人を小馬鹿にする態度に、翔姉ちゃんは
残念だけれどわたくし、知っているのよあなたの年収がどれくらいかもねカッコつけてもダメよその安物のスーツで、お里が知れるわ
香月セキュリティ・サービスの調査能力を舐めない方がいいわ君は、佐竹さんのところの組織かなり下の方で小さな組の若頭をやっている人よね確かに、未熟な駆け出し者っていう言葉に相応しいわ
何だと、テメエ、こら、この野郎
激高する風間
つまりこの10人が、風間の組のヤクザたちなんだろう
でわたくしたちに、何のようなわけ
おお、黙ってよおっ後ろの車に乗ってる、娘たちをオレたちに渡してもらおうかっ
やはり狙いは月子たちか
ふーん、渡したら、どうなるの
そ、それはそんなんは、オレらは知らねえよそっから先は、本部の兄貴たちが決めることだから
でわたくしが、素直に渡すと思う
風間は
こっちは10人居るんだぜ
それが何
翔姉ちゃんは、顔色一つ変えない
わたくしのことあなたは、知ってるの
そ、そんなの知らねえよ
あこの様子は、知っているな
翔姉ちゃんは、ジッちゃんの専任警護人として公の席での警護に付いていたから
あら、わたくし強いのよ残念ねでも後ろの車の警護員の顔は知っているでしょ
2台目の鷹倉姉妹の乗る車の運転席には、レイちゃんが居る
アニキあれは
マジモンですよ
オレらイモ引ぃちまったんじゃねぇですか
あんなのが相手とか無理っスよ
周囲の黒服が、風間に声を掛ける
判ってる判ってるよオメェたちオレはここでゲェェ、藤宮麗華って、大声上げるべきなんだよなでもな、受けちまった以上は、やんなきゃいけねぇんだよこの仕事は組織の上からの勅命なんだからなっ
逆ギレ気味に風間は言う
ああ、判ったわつまり君たち、鉄砲玉ってことなのね
なるほどどんなことでもいいから、あたしたちと大きなトラブル起こしてそれを理由に、今日の手打ちを中止に持ち込みたいとそう思っている人がいるのねあなたの上に
自分たちからケンカを売っておきながら、レイちゃんにやられたら一方的に、暴力を振るわれたとか何とか言ってゴネるつもりなんだ
理由なんかどうでもいい
とにかく、今の内に事態をメチャクチャにして今日の手打ちを回避したいと思っているやつがいる
今日の手打ちは、ヤクザの皆さんが、カタギの香月家に負けを認めるという内容ですものねどうしても、受け入れられないっていう人がいるのも理解できるわだったら、どんな無茶をしてでも、今日の会をブチ壊したいってことなのね
そそそ、そういうんじゃねぇよ
風間は否定するが
いいのよ隠さなくてももう、判っているからだって、ほら君たちだけじゃないのよ
今日は、すでにこのホテルの内部で、似たようなことが何件も起きているのようちの香月セキュリティ・サービスの人間が、あなたたちみたいな人から、次々にインネンをフッ掛けられているわまあ全部が全部、今日の会をブッ潰すのが目的でも無いみたいだけれど何てったって、上の階の人たちはフロアに閉じ込められたまんまになっているから、気が立っているのよね
ホテル内のヤクザたちは相当焦れている
でもどうしてだか、うちの人間にケンカをフッ掛けたヤクザさんたちは、みんな謎の急病に罹ってお腹が痛くなったり、突然転んで頭を打って気絶したりしているのよねぇわたくしたちが手を下すまでもなく
相手は、香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートだ
ヤクザが絡んで来たぐらいでは、動じない
戦いになる前に、相手を制するだけの力がある
それも、周囲の人間に気付かれないうちに
で君たちも、そうなりたいわけ
おオレらはみんな、さっさと関西へ戻りてぇんだよこんなところで閉じ込められているのは納得いかねぇんだよだから、お前らをブッ飛ばす納得いかねえから、ぶっ飛ばすオレが決めた後は、オレらが実行するだけだどうだほれこれで、お前らを叩きのめす、大義名分ができたっていうことだから杉内、行けっ
風間は、黒服の1人を指名する
あ、アニキオレっすか
いいんだよ行けったら、行け
いや、でも藤宮麗華ですぜあんなのに殴られたら、骨とか折れちまいますよ
レイちゃんの撲殺ステッキの威力は、この4ヶ月間で広く知られている
オレ、テレビで観ましたよあいつ、車のドアとか1撃で貫通させるんですよ6時のニュースで、特集してましたから藤宮麗華VS謎のロシア少女の時の番宣で当たり所が悪かったら、死にますよあんなのっ
うんオレも観た
キョーコ・メッサー側のアーニャは、国際犯罪者だから番宣に出せないから
ほとんどがレイちゃんの特集番組になっていた
大丈夫だ骨は拾ってやるからお前のオンナの面倒は、オレが全面的に見といてやるからほら、言って来い
ちょっとアニキ面倒って、何を見る気なんですっ
いいからこうなったら、益子と若島津お前たちも一緒に行け
ええ、オレらもすか
慌てる黒服が増える
誰か1人でも、あいつらにケガさせられたらそれでいいんだよそれで終わりだそれで決まりだすぐに、救急車と警察を呼んで弁護士も呼ぶかよら上で、橋村のアニキが全部、準備してくれている予定になってるからよついでに、ネットで呟くんだり書き込む用意もできているってよあの藤宮麗華とその上司が、ヤクザとケンカしてたってだけで、マスコミは食い付いてくるっていうか、食い付かせる市民派のジャーナリストを使ってだな暴力反対キャンペーンをだなアフィリサイトとかにも書かせるし
何か具体的な計画があるみたいだな
でも、ケガさせられんのはオレなんですかい
お前か、益子か、若島津か確率3分の1だよっ
せめて、10分の1にはなりませんか
馬鹿野郎、それならオレまで危なくなるだろっ
とにかくよ誰か1人が骨を折られることまでは、覚悟してっからよとっとと出て来やがれ藤宮麗華
風間は叫ぶ
ハーイ
あれいつの間にか、イーディが車の外に出ている
Hallo
ニコニコと笑顔でヤクザに声を掛けながら
足の屈伸運動をしている
な、何なんだおめぇ
金髪に青い眼、褐色の肌の健康的な肉体高校1年生の美少女
しかも、イーディの笑顔は、夏の太陽のように明るい
ち、ちょっとどっか行ってろ危ねえだろ
するとイーディは、さっきの仁義のポーズを取り
えー、お控えナスッテお控えナスッテ控えオロウッッ
ここにおわすアタシを誰だと心得るネ畏れ多くも、ただの女子校生イーディちゃんとは、アタシのこったネ
あのイーディ
イーディちゃんの御前でアルネ頭が高い、控えオロウ
ポカーンとしているヤクザたち
オメエそれって、ヤクザの仁義切りと水戸黄門がゴッチャになってるぞ
呆れた口調で、風間は言った
だが、イーディは平然と
おっと、間違えたネ人、それを誤りと言ウ
結局何なんだ、お前
キサマたちに名乗る名前は無いネ
カッコ良く、ヤクザたちを指差すイーディ
いや、たった今、名乗ったろうお前
そんな風間の突っ込みを無視してイーディは
サテここで、キサマたちに悲しいお知らせがアリマス
アタシはただのアメリカ人女子高校生ナノネそっちのお姉さんの会社とは、まったく関係が無いノネ
イーディは香月セキュリティ・サービスとは、何の繋がりも無い
美智ならみすずの警護役として登録されているけれど
オレたちとの関係は深くとも香月セキュリティ・サービスという企業とは、何の契約もしていない
だからアタシが、ここでキサマらを叩きのめしたとしてもそっちのお姉さんたちには無関係ネ
イーディは、ハウウと大きく深呼吸して構える
アタシは、キサマらが気に入らないネその顔が気に入らないネその服装がキサマのサングラスが、気に入らないネだから、キサマらをブッ潰すそれが大義名分ネ
外国人の美少女にケンカを売られヤクザたちは、呆然となる
あーらら大人のヤクザさんが、ただの女子校生しかも、アメリカからの留学生とケンカして、全員倒されちゃったりしたらちょっと恥ずかしいわよね
翔姉ちゃんはクスクスと笑う
キサマたちに明日は無いネ掛かってきやがれナノネ
ふ、ふざけんなよこっちは、お前、10人もいるんだぞっ10人たら、1人の10倍だぞお前みたいな、女の子1人にブッ潰されるわけがないだろ
大丈夫ね普段の3倍の力で、2倍のジャンプをして、4倍の回転をするから今日のアタシは24倍なのネ
馬鹿なことを言ってるんじゃねぇ
その瞬間イーディは飛ぶ
イーディの足が、杉内と呼ばれた黒服の急所を打ち抜く
風間が反応する前に、3人の黒服が倒された
全て、1撃で
イーディは、翔姉ちゃんの指示を守っている
HAWOOPOWOO
流れる水のようにあっという間に、相手の懐に入り急所を打つ
あれは工藤流の動きだわ
オレたちの車の後部座席から、工藤遙花が身を乗り出していた
ああ、美智と相当トレーニングしていたからな
相手の気を受け流していくのが、工藤流だ
ヤクザたちは、どうすることもできない
な、何だ、何だアワワワワ
風間は全ての子分たちが倒されるのを、ただ眺めているだけだった
キサマが、最後ネ
ち、ちょっと待て
待てないネ
イーディが、風間に向かって大きくジャンプする
最後の技は風間の脳天へのカカト落としだった
ぷひぃぃぃぃぃ
変な叫び声を上げながら風間は、地面にブッ倒れた
10人倒すのに3分も掛かっていない
これぐらいの力がないと、うちでは採用できないわよ
翔姉ちゃんが、車内の遙花に告げる
遙花さんは、高校女子空手チャンピオンだったわよねあなたにもできる同じ時間で、同じ人数の制圧
遙花はうな垂れる
まだ終わりじゃないネ
その瞬間イーディは、スカートの中から手裏剣を引き抜き
オレたちの車列の後方に投げた
ひ、ヒィィ
後ろを振り向くと、駐車場の車の影にまだ黒服がいた
その黒服の足下のコンクリートに、イーディの投げた手裏剣が刺さっている
やたらと10人、10人て言うからおかしいと思っていたのネッ
シュババババッとイーディが、オレたちの車の脇を走り抜ける
HAWOOOOOO
ヅカッ
ドカッ
後ろの車に隠れて見えないがイーディの打撃音だけが聞こえた
翔姉ちゃんが、再び車の中に入ってオレに言う
もちろん、後ろに別働隊が居たことはわたくしにも判っていたわよ美智ちゃんや、マルゴさんもね
イーデイだって場の気が読める子だ
まるで今、気付いたばかりみたいな演技をしたが
最初から、後ろに黒服たちが隠れていたことは気付いていただろう
でも、この場はなるべく、手の内を明かしたくないからここは、イーディちゃんにお願いするわ
威力偵察って言葉、知ってる
相手の力が判らない時に強引に、それなりの戦力で攻め込んでみて、相手の戦力や状況を探ってみるっていう手よ
今のが
そうよ弁護士を呼ぶとか、ネットに書き込むとか、ジャーナリストを使うとかただの脅しよそういう脅し方をして、あたしたちがどう反応するかを見ているのよ
どこから
振り向かないでね右の奥の車の中にカメラがあるわ窓が少し開いていて、レンズとマイクが飛び出しているから、すぐに判るわ
大丈夫よあのカメラの位置なら、この車内は死角になっているしあのマイクじゃ、ここの会話は聞き取れないはずだから
つまりヤクザ側の中でも、オレたちを監視しようとしているやつがいる
香月セキュリティ・サービスの人間に、ケンカをフッ掛けたりしたのもあの人たちの迷彩ね狙いは、最初からあたしたちよ
オレたちの到着時に、同じ様にケンカをフッ掛けて来るやつが現れても変だと思われないように
ここからが勝負よ敵が確認したいと思っているのは
今の月子、夜見子、ルナ
鷹倉家の3姉妹の状態だ
敵が、本当に清美さんの巫女の力を利用しているのなら
あるいは、清美さん本人が力でヤクザたちを支配しているのだとしたら
一番、気に掛かるのは
今の3姉妹が、どれだけの力を持っているかだ
それを知られてはいけない
だから、翔姉ちゃんは3姉妹を車外に出さないように、指示していたんだ
いっそのこと、その仕掛けられているっていうカメラを壊す
オレは、翔姉ちゃんに尋ねた
カメラを止めれば、オレたちの様子を敵が知ることはできなくなる
改めて、オレたちを盗撮しようと近くに寄ってこようとすれば美智やイーディが気で察することができるし
いいえわたくしたちは、カメラに気付いていないということにしておいた方がいいわまだ
始まったのは、ヤクザとイーディの肉弾戦だと思っていたけれど
実際には情報戦が続いているだけのか
終わったヨ、全部
イーディがニコニコしながら、車に戻って来る
箱根で、風邪を拾ってきたみたいです
具合悪すぎ
私は、あの山とは相性が悪いのかも
感想欄の返信をまた溜めています済みません
時間のある時に、少しずつ返信します
必ず返信しますので、しばらくお待ち下さい
728.木下涼子 カム・バック
昏倒させたヤクザたちを避けて、車を地下駐車場の奥へと進める
後ろの2号車、3号車も続く
一番奥の壁まで行き着くと、姉ちゃんは
各車、周囲を警戒して
無線機で後ろの車に指示を出す
イーディちゃんもう一度、隠れている人がいないか気を探って
後部座席に戻ったイーデイにも、そう告げた
イーディは、クンクンと鼻を鳴らして
大丈夫ネ人はいないネ
2号車問題ありません
レイちゃんの声が聞こえた2号車は、美智が探査係を担当したのだろう
3号車大丈夫だと思うよ
マルゴさんも、そう報告する
3号車は、マルゴさんと寧で視認してくれたようだ
1号車、了解
翔姉ちゃんは、運転席の窓を開け外に顔を出す
ああその視線の先壁の上方にある監視カメラがあった
翔姉ちゃんは、そのカメラに自分の顔を晒しさらに手で何かのサインを出した
壁が開く
コンクリートの壁に偽装されていたけれどこれは、奥へと通じるゲートだったんだ
手のサインはフェイクよ実際は、網膜承認だから
そのまま、オレたちの3台の車列は、ゲートの奥の隠し駐車場へ侵入した
マルゴさんの3号車が通ると同時に、再びゲートが閉じられる
オーケイ、侵入者無しね
翔姉ちゃんは、溜息を吐いた
もういいわよ運転手だけ残して、みんな降りて
通信機で、そう告げる
ここなら、ヤクザたちが入って来ることは無いということか
Darling、降りるネアンタもナ
イーディが、工藤遙花に言う
すっかりアンタという呼び方にハマッてしまったらしい
遙花は、口では反発してみせるがイーディの圧倒的な戦闘力を見せられたばかりだから、気後れしているのが判った
ホレホレ、降りるヨ
助手席のオレイーデイ、遙花が降車する
2号車の鷹倉姉妹と美智3号車の寧とミナホ姉さんも、車から降りた
ちょっと待っててね車は、そこの立体駐車場に入れちゃうから
翔姉ちゃんが、開いたままの車の窓からオレたちに言った
見ると奥の扉がスーッと開いた
ああ、よく見る立体駐車場の車だけ乗せる、エレベーター室みたいになっている
そこに納車すると、コンピューター制御で地上1階から、地下3階まで、どこのフロアからでも車を出せるようになるのよ
ああ駐車場の各フロアに、ここと同じ様な隠し部屋があって、立体駐車場で繋がっているんだ
このホテルは、香月グループの施設だし、ジッちゃんがヤクザとの取引に使うんだからこんな秘密のシステムがあっても、全然変じゃない
でもだったら、何で地下3階まで来たんだよ
駐車用のリフトには、人が乗ったままの状態で車を乗せてはいないルールになっているのまあ、当たり前だけれど危険な物が搭載されていないかとか、人が隠れていないかとか、途中でエックス線検査とかもしているし
ああ、普通の立体駐車場でも人が乗ったままなのは禁止だよな
そしてこの地下3階の隠し駐車場には、16階への直通エレベーターがあるのよ
16階
閣下が、そちらでお待ちになっているわ
ジッちゃんが居る
閣下は昨夜の内に、こちらのホテルに入っていただいたわヤクザさんたちに、手打ちの会場を伝える前に
そうか、先にジッちゃんをここに連れてきておけば
ジッちゃんの会場入りを狙ったテロ行為は起こせない
そこのドアの奥がエレベーター・ホールだから、待ってて
翔姉ちゃんが、そう言うが
翔お姉ちゃぁーんこのドア、開かないよっ
寧が、ドアノブをガチャガチャやっている
ああ、ごめんなさいそれも、あたしの指紋認証が要るんだったわ
取りあえず翔姉ちゃんが、車をリフトに乗せる
運転席から降りて、リフトの外に出ると自動的にウォォォォンと、車が上に運ばれて行った
また、空のリフトが現れる
そこに、レイちゃんが車を入れ
次は、マルゴさん
オレたちの乗って来た3台の車は、全て立体駐車場の中に吸い込まれて行った
心配そうに、巫女服姿の3人がオレに寄って来る
大丈夫だ今のところ何も問題無く済んでるから
オレは、姉妹たちにそう言った
そうそう、怖いことなんか何もないからねっ
寧も、3人を元気付けてくれる
その間に、翔姉ちゃんが指紋認証の装置のカバーを開けて、自分の手の平を当てる
ピピッ認証サレマシタ
ドアのロックが外れる音がした
さあ、行きましょう
エレベーター・ホールに入ると
2台のエレベーターの前にスーツ姿の2人の女性が待機していた
お待ちしておりました
1人は前にもお世話になった、香月セキュリティ・サービスの滝さんだ
もう1人は
監視カメラで、ご到着が判っておりましたのでお迎えに上がるようにと、谷沢チーフのご指示を受けました
元・バンバルビー3の番場さん
そうだバービーさんとルビーさんは、キョーコさんの配下になって
番場さんだけ、香月セキュリティ・サービスに入社したんだった
バンバルビー3の時のビキニにホットパンツに日本刀なんていう馬鹿衣装でなく
普通にスーツ姿だと、清楚で綺麗な人だな番場さんは
手には、お得意の柄の長い武器フレイルを抱えているけれど
ご苦労様滝さん木下
翔姉ちゃんが、2人に言う
あっ番場さんて、本名は木下さんだっけ忘れてた
フンこのエレベーター
マルゴさんが、2基のエレベーターを見比べる
右が、16階へ直通で左は、1階へ行くの
ええ、ここから緊急脱出する可能性もあるから
翔姉ちゃんは答える
1階はどこへ
ロビーの裏よ従業員用の倉庫に出るわ
あたしたちこのまま偵察に出ちゃダメかな
翔お姉さんとミナホは、香月さんに報告しないといけないよねだから、鷹倉さんたちと一緒に先に16階へ上がっててよ
あたしと寧とイーディでちょっと偵察に行ってくるからさ
イーディを連れて行く
さっきの地下駐車場での闘いを監視していた敵はさイーディの姿を見たら、何かしらの反応をすると思うんだ
ほんの数分前イーデイ1人で、10人以上の待ち伏せしていたヤクザを倒した
その様子を隠しカメラで観ていたやつがいる
オレたちはカメラの存在には気付いていたが、あえて無視した
さっきのヤクザは本人は、佐竹会長の子分だって名乗っていたけれどさ
マルゴさんは、話を続ける
でも、だからって今の襲撃を命じたのが、佐竹会長本人とは限らないじゃないか
別に命令した人物がいる
そうだねヤクザさんたちの各グループだって、1枚岩じゃないかもしれないよねグループのボスである佐竹会長に許可を取らず、中ボスぐらいの幹部が、勝手にヤクザを送り込んで来たっていうことも考えられるよねっ
ええこの機会に自分の勢力を拡大しようと、画策している人も当然いるでしょうねヤクザさんて、そういう人種だから
ていうか上の階に居るヤクザたちは、年輩の大鳥総裁の一派と、新興の佐竹会長のグループに分かれて対立しているってことになっているけれどさ実際は、両グループの間にスパイや裏切り者もいっぱい居ると思うよ関西なんていう狭い世界のヤクザたちなんだから漁夫の利を狙っているコスッ辛い人もいるだろうし
ああそれぞれの思惑が絡み合って、こんがらがっているんだな
だから、ちょっと藪を突っついてみようと思うのさイーディを連れて
マルゴさんは微笑む
つまり、イーディの姿を見て過剰に反応する相手は、地下での戦闘を知っているすなわち、隠しカメラの映像を観ていた人間だ
逆にイーディに警戒しないとなればそいつらは、今の地下の闘いのことは何も知らない
イーディの存在が、ヤクザたちのリトマス試験紙になる
美智ちゃんは、鷹倉さんたちの警護ねイーディもそうだけど君たちが気の技を使えることは、なるべく秘密にしておきたいから
マルゴさんの指示に美智は、こくんと小さく頷いた
それから君と遙花さんも来てもらうよ
オレと遙花も
君も行きたいよね偵察
マルゴさんは、ニッとオレに微笑む
威力偵察なんですよね
オレは、さっき覚えたばかりの言葉を言った
そういうことついでできる限り、ヤクザたちをビビらせるよあたしたち黒い森が、ヤクザの何百も危ないヤツだってことを教えておかないとね
この威力偵察部隊にオレも参加しておけば
そして、オレがマルゴさんたちが暴れる中で、泰然とした態度を保っていれば
ヤクザたちは、手打ちの時にオレに対しても、警戒する
オレ自身は、マルゴさんやイーディのような戦闘力は無いのに
オレのことまで警戒しないといけなくなるなればヤクザたちの集中を乱すことができる
判りましたオレも行きます
先生危険でわそんなの
夜見子とルナが、オレの腕にしがみつく
いやそれを言うなら、今、ここに居ることだって、充分危険だよ
オレは2人に微笑む
大丈夫さオレは、今までだって、もっと危険な体験をしてきているからこれぐらい何でも無いさ
公様にお任せ致しましょう
でも、くれぐれもお気を付けて下さいませ
ああ、判ってる
イーディちゃん、先生のことお願いね
寧お姉ちゃん頼むね
夜見子とルナの言葉に
任せておくネ
心配ないから先に行って、待っててねっ
よし後は
ということだから行くよ
オレは工藤遙花に、声を掛ける
ええちょっと、どうしてあたしが偵察に行かないといけないのよ
余りの驚きに、遙花の脳は一時停止していたらしい
そんなの決まっているじゃんかっ
約束したでしょ遙花ッチ、身体を売るって
工藤遙花は美智と闘って負けたら、一度だけ売春婦になるという賭をして
コテンパンに負けた
だからさその相手を探しに行くんだよ
相手
まあ、多分、息のクサーイおっちゃんヤクザばっかりだと思うけどさ
待たないってあ、どの人にするかは、もちろん遙花ッチじゃなくって、ヨッちゃんが決めることになるから
そのことだけど良信くん
マルゴさんが、オレに振り向く
工藤遙花さんの相手あたしに決めさせてくれないかな
一度だけ相手が誰だろうと、こちらの指示した相手に身体を売るだったよね確か、約束は
そうですけれど
あたしにちょっと良い計画があるんだ
うわっ、何か企んでいる
こうなったらしょうがないか
じゃあマルゴさんに任せます
あんた何てことを言うのよ
慌てる工藤遙花
そんなの勝手に決められたらあたし、どんな目に合わされるか判らないじゃない
うん諦めろ
ちょっと、美智あんた、何か言いなさいよ姉の貞操がピンチなのよ
頑張って下さい
美智は冷たい眼で、そう言った
もう、キィィィィ何なのよっ
ビシュッと、工藤遙花の眼前にイーディの爪先が
後、ほんの数ミリでハイ・キックが遙花の額を割っていた
アンタ、うるさいネ弱いのに、ピーチクパーチクよく喋る
小さくコツンと、遙花のおでこを蹴る
そうです姉上は弱いのに喚きすぎです
美智も言った
あたしが弱い
はいそろそろ、お認めになられるべきだと思います
妹の言葉に、遙花は沈黙する
さてと翔お姉さん、悪いんだけれど、道案内を1人付けてくれないかな
マルゴさんが、場の空気を変えようと明るく言った
このホテルの中のことは、あたしたちじゃよく判らないし16階に合流するにしても、あちこちに香月セキュリティ・サービスの私服警護員が居るんだよねそういう人たちに一々呼び止められるのも嫌だから
香月セキュリティ・サービスの社員がオレたちと一緒なら面倒なことにならずに済むだろう
わたくしが行きましょうか
レイちゃんが、真っ先にそう申し出てくれたけれど
麗華お姉さんは、有名人過ぎるよここでは
そうねヤクザさんたちが、麗華さんに反応すると困るわね
イーディを見て、顔色を変える連中を調べたいのに
有名人のレイちゃんが一緒だと、ヤクザたちはみんなレイちゃんにハイ・テンションで注目するだろうから
細かい感情の変化が、判りにくくなる
木下あなたにお願いするわ
翔姉ちゃんは、番場さんいや番場さんに命じた
この木下は、香月セキュリティ・サービスに入社してまだ日が浅いから世間にはよく知られていないわ見た目も華奢で可愛い子ちゃんタイプだからヤクザさんたちも警戒しないでしょうし
それにしてはブッ太くて長いフレイルを担いでいるけれど
マルゴさんたちをご案内してそれで最終的に、16階までお連れするのよ
はいかしこまりましたあの、ところで関さぁん
木下さんは尋ねる
何があっても、わたくしはヤクザ屋さんたちには手を出してはいけないんですよね
そんなことないわよ身の危険を感じたら、対抗しなさい正当防衛の範囲なら、何をしても構わないわ
判りましたぁ
パッと花が咲いたように微笑む木下さん
この人、おっとりしてて可愛らしい人なんだけれど
物凄い強い人だったよなあ確か
あのダダドムゥおじ様を、ブッ叩いてたし
じゃあ、わたくしたちは先に16階へ行っているわ
翔姉ちゃんが、直通エレベーターのドアを開ける
中はかなり広い大型エレベーターだった
ミナホ姉さんが、翔姉ちゃんの次にエレベーターに乗り込む
では、後ほど公様
待ってるからね先生
兄様また後で
こちらはお任せ下さい
マルゴさん木下さんお願いします
月子、夜見子、ルナ、美智、レイちゃんがエレベーターの中へ
最後に滝さんが、乗り込んだ
すぐに合流するから
オレがそう言うとスーッと、エレベーターのドアが閉まる
ヨッちゃん、これでちょっとは気が楽になったでしょ
寧が笑ってオレに言った
いきなり、香月のおジィちゃんに会って、話をするのは胃が痛いよねっ
少し考える時間があるのは助かる
オレは、ジッちゃんに鷹倉姉妹を全員、娼婦にしないでオレにくれと頼まなければならないのだから
じゃあ、こっちも向かおうか
はい、どうぞお乗り下さい
木下さんが1階へ向かうエレベーターを開けてくれた
このエレベーターも、指紋認証になっているらしい
木下さんの指紋も登録されているということは
彼女もすでに、トップ・エリートの一員として認められているということなんだな
あのオレ、前に、木下さんに助けていただいたことがありますありがとうございました
まあいつのことでしょう
木下さんは、あららという顔をする
あのシザーリオ・ヴァイオラが襲撃してきた日に、みすずと瑠璃子が翔姉ちゃんの車で劇場からホテルへ移動した時にオレも、その車に乗っていたんです
んんんんええっとということは、もしかして前に所属していたチームの頃のことでしょうか
木下さんは顔を真っ赤にして
そそそ、その節は大変、失礼致しました
いやいや、助けていただいたのは、オレの方ですから
いや、あのわたくし、何であの頃、あんな格好をしていたんでしょうねく、黒歴史です全て、闇に葬ってしまいたいですぅ
前のチームの方たちには、わたくし大変お世話になりましたし、とても感謝しておりますがなぜ、あんな格好を強要されていたかそれだけが、今ではとても恥ずかしく
ああ他の人たちもみんな同じ格好していましたよね
木下さんの顔が、強ばる
確か胸はビキニで、下はホットパンツ肩に日本刀を背負って、ノーヘルでバイクに跨がって火炎放射器とか
あああーん本当に知ってるぅぅ忘れて、忘れて、忘れて下さぁぁい
木下さんは、慌ててポカポカとオレの肩を叩く
い、痛い痛いです
華奢に見えて、この人メチャクチャ力が強いから
ああ、これは
その後のホテル内の闘いも、全部カメラで観ていたこととか言わない方がいいな
判りました忘れます忘れますからっ
ほんとっ
オレの叩く手が止まる
はい、約束します
ならば良しっ
何なんだ、この人は
Darling、早く乗るねバンバちゃんも
イーディが、エレベーターの中で言った
あの今、何と
木下さんの顔がまた引きつった
アンタ、バンバルビー3のバンバちゃんネアタシは知ってるヨ
その名前を言わないでぇぇぇぇぇ
木下さんが、グッとイーディの口を塞ぐ
わたくしは木下木下涼子でございまするるるるるるるっっっ
ああ、バービーさんたちに恩義は感じていても
番場ちゃんという名前で呼ばれるのは、本当に嫌だったんだなあ
どどど、どうしてあなたが、わたくしの黒歴史を知っているのののののっ
するとマルゴさんが
あたしたちもさ、あの日、あのホテルの別の階で闘っていたんだよ
つーか翔お姉さんとかレイちゃんと一緒に谷沢さんや香月のおジィちゃんの近くにも居たよだから、知っているの
ちなみにシザーリオ・ヴァイオラにトドメを刺したのは、そこに居るヨッちゃんだから
それは言わなくていいのに
ご同業ですか
あたしとイーディはね彼と寧は黒い森のメンバーだけど戦闘要員じゃないからあ、あとこの子はカタギの素人さんだから
マルゴさんは、工藤遙花を指してそう言う
YESアタシ、知ってるネバンバちゃん、強いコト
イーディ今から先は、木下さんて呼ぶんだ
今はもう木下さんなんだから
判ったネキノシタ、ごめんネこれから、よろしくお願いするネ
イーディは、ペコリと頭を下げる
木下さんは
あはははは、判って下さればそれでいいんですでも、どうか、くれぐれもわたくしの過去のことは、誰にも言わないで下さい
はぁと、大きく溜息を吐く
バンバルビー3は、全員、戦死したことになっておりますので
なぜか、木下さんでなく、白鳥さんだと思い込んでいました
こうキャラクターが増えると
729.忘れてしまいたいことが、今の私には多すぎ
いや、あのバンバルビー3は、宇宙鉄メン党との最後の闘いで、全員、お腹にダイナマイトを抱えて、敵の本拠地に特攻して爆死したということに
そういう設定になっているのか
まあ、いかにもバービーさんが考えそうなことだけど
あるいはキョーコさんかもしれない
バービーさんたちに、自分の配下になるのなら過去の栄光は捨てろとか、言ってそうだし
宇宙鉄メン党って何ネ
それは、わたくしもよく判らないのですけれど鉄道マニアとラーメン愛好家の集まりだと聞きました
真顔で元・番場さんこと、木下涼子さんは答える
宇宙は、どっからきたのネ
だから、宇宙人なんですよ地球征服を企む悪の宇宙人で、鉄道マニアでラーメン愛好家なんです
そうきたか
ということですので、わたくしの過去については、くれぐれもご内密にお願い致します
ペコリと、木下さんが頭を下げる
この人は基本的には、とんでもなく素直で可愛い人なんだよなあ
ものすごく世間とはズレているけれど
片手に握りしめている、長柄武器フレイルがガチャガチャ音を立てているし
こんな重そうで、見た目からして破壊力満載の打撃武器を普通に持ち歩いている
よく警察や施設の警備員に呼び止められないもんだ
もっとも、こんなゴツイ武器でも、木下さんが携帯しているとま、いっかという気分になるよな
この人、ホンワカし過ぎてるから
とにかく、上に参りましょう
オレとマルゴさん、寧、イーディ、工藤遙花、木下さんでまずは1階へ直通のエレベーターに乗る
あ、あなた香月セキュリティ・サービスの正社員なのよね
工藤遙花が、木下さんに聞いた
えっとあなたは、どうやって入社したの
まだ香月セキュリティ・サービスへの入社を諦めていないのか
わたくしの場合は、途中入社ですぅ前のチームのリーダーが推薦して下さいましたぁ
木下さんは、可愛い笑顔でそう答える
じゃあ、その人も今は、香月セキュリティ・サービスで働いているの
いーえ、前のチームの人たちは、今は国際犯罪組織にお勤めです
遙花が怪訝な顔をする
たまにメールをいただきますよ頑張ってらっしゃるみたいです国際的な犯罪行為を
つーか、数ヶ月に一度、テレビでレイちゃんと闘っているしな
さすがの木下さんでも、キョーコ・メッサーの名前は出さないか
あのあたし、今高3であなたたちみたいな仕事に就きたいって、今、就活中なんだけれどね
ああ、工藤遙花は木下さんを自分と同じぐらいの年齢だと思っている
この人は見た目は、すごく若く見えるけれどもう大人なんだよ
遙花よりも、全然、年上の
それでしたら、国際犯罪組織の方にご推薦致しましょうか
満面の笑みで、木下さんは答えた
この間いただいたメールで、若くて活きの良い鉄砲玉が欲しいって書いてありましたから
鉄砲玉
ああ、そんな怖い人たちじゃないですよ1人で暴力団の事務所に乗り込んで、全員倒して来いとか、その程度のことですから
ククと可愛く、木下さんは笑う
ああ、それアタシもやらされたネ時間制限付きで
イーディもニヤッと笑う
そういえば、キョーコさんとミス・コーデリアたちと一緒に、白坂創介と関係のあった暴力団事務所の襲撃とか行ってたよな
最初の部屋だと、向こうはまだ迎撃態勢が整ってないから楽ねスピード勝負ね最後の組長の部屋が大変ネピストル持って、待ち構えていたりするカラ
そうですよねぇ段々ハードになっていくんですねぇ
2人の会話を、遙花は呆然と聞いている
街の不良とかチンピラ・ヤクザ狩りなら、あたしとマルゴお姉ちゃんもよくやったよヨッちゃんも一緒の時があったし
寧が、会話に参加する
えー、もしかして遙花ッチ、そういう経験ないの
あ、あるわけないじゃないっ
すると木下さんが
強そうな人には、ケンカを売らないといけませんし、どんな手を使ってでも勝たないといけませんそういう実戦に近いトレーニングをしないと、この仕事はできませんよっ
ああ、プロレスラーさんとか、お仕事で闘っている人には手を出してはダメですあと、競技選手も狙うのは、あくまでも裏社会で強いと呼ばれている人たちですそういう人たちは、闇討ちしてもいいんですから
闇討ちアリなの
当たり前じゃないですかこの世界に居るんならわたくしだって、前のチームに居た時は、よく闇討ちされましたよ
バンバルビー3は、あちこちで恨みを買ってそうだからなあ
プールサイドに手榴弾とかありましたからドドンガドンドンですよ
はあそうですか
工藤遙花は、溜息を吐く
何なら、遙花さんあたしと、イーディと、木下さん戦闘要員になら、いつでも仕掛けて来ていいよ
一発でもあたしたちに有効打を入れられたら君のことを、翔お姉さんに推薦してもいい木下さんもいいよね
はい、もちろんですいつでもどうぞっ
木下さんが屈託なく答えるとエレベーターは、1階に到着した
ああ、確かに倉庫だここは
はーい、みなさん、こっちに来て下さぁい
木下さんがフレイルを観光ガイドの旗のように振って、オレたちを誘導する
ドアの指紋認証ロックを外すとホテルのロビー裏の通路に出た
上階にヤクザたちが集まっているとはいえ、ホテル自体は通常営業だ
日曜日だし、たくさんの人たちで賑わっている
ああ、ちゃんと香月セキュリティ・サービスの私服の人が警備しているんだね
マルゴさんは、そう言うが
オレには、どの人が警護員なのか、全然判らない
それらしい人がいても、ジッと見つめたりしちゃダメだよこれはそういう形式の警備なんだから
5月の山岡が警備部長だった時みたいに、制服警備員をズラズラっと並べたりはしない
有能な私服のトップ・エリートがごく普通に、一般の人たちの中に溶け込んで警護する
翔姉ちゃんらしい警備態勢だ
木下さんも、別に誰ともコンタクトしない
お互いに判っているのだから敵に覚られるようなことはしないんだ
フレイルをガチャガチャ言わせながら、フロント前のエレベーターへオレたちを連れて行った
もっとも
何かしら、あの棒
何に使うものなんだろうね
華奢で可愛い女性が担いでる、太くて長い打撃武器はホテルの人たちの注目を集めているけれど
えっといいの、あなた、それケースに入れるとか、布に包むとかして持ち歩くべきではないの
工藤遙花が、廻りの視線に耐えられなくなって木下さんに囁く
そんなことしたら、襲撃された時に、すぐに使えないじゃないですか
ケロッとした顔で、木下さんは答える
それに、今のわたくしはフロント・ライン担当ですからこうやって、目立ってていいんです
はあこいつは
今、このホテルのロビーで武器持って歩いているとなれば、香月セキュリティ・サービスの人間てことだろ
東京へ来た関西ヤクザたちは全部、上階に隔離されているんだから
名目上は
だけどもしかしたら、このロビーとかに、敵の別働隊や仲間が紛れ込んでいるかもしれないだろ
昨日までに、鷹倉姉妹を追って上京してきたヤクザたちと
手打ちのためにやってきた2人の大親分に付いて来たガードのヤクザ
それと、見届け人として来たヤクザの重鎮とその警護員
上の階に居るのはそういう人たちだけだ
当然、別働隊として一般人に成りすまして、このホテルに侵入してきたヤクザの配下だっているはずだ
フロント・ラインの人が目立つ行動をして反応した敵を、伏兵が狩るそういうことだよね
マルゴさんが、笑顔で言う
翔姉ちゃんが、滝さんでなく木下さんをオレたちに付けてくれた理由がよく判った
この人は目立つ
だけど、一般の人から見ればこの可愛い女性が闘うなんて想像できないだろうし
彼女の抱えているフレイルが、打撃武器だということすら気付かない
ご苦労様ですっ
エレベーター前はさすがに、プロの警護員だと判る人を置いている
でかくて、ゴツイ黒スーツのマッチョマンだ
耳に無線機のイヤホンをしているし
さすがプロだ余計なことは言わない
翔姉ちゃんから、オレたちが行くという連絡は受けているだろうし
ありがとねっ
寧がマッチョマンに礼を言う
オレたちは、エレベーターに乗り込む
ちょっと待って下さいね10階から16階は、一般のお客さんが降りられないようになっていますから
エレベーターにも、指紋認証のシステムが付いているらしい
各階のボタンの下のカバーをパカンと開いた
で何階へ行きます
現れたタッチ・パネルを操作しながら、木下さんが尋ねる
確か、16階にはジッちゃんたちがいるんだよな翔姉ちゃんにレイちゃん、ミナホ姉さんや鷹倉姉妹、美智もそこにいる
15階と10階はもしもの場合を考えて、閉鎖してあります
ジッちゃんたちや、一般のお客さんたちにヤクザたちが迷惑をかけないように
1フロアずつ、無人の空間を作ってあるのか
で、11階には、雲龍会山森組佐竹組長の一派がいます
今回の事件の発端となった月子たちの両親を殺して、鷹倉神社の乗っ取りを謀った
関西ヤクザとしては、新興勢力だと言う
12階には見届け人をして下さる親分さんたちと、その警護の方たちが
13階は、関西雷神鳳会大鳥総裁のグループの方たちがいます
こちらは、関西ヤクザでも古株だ月子の実の父親でもある
そうか、真ん中に見届け人の人たちを挟むことで両派の人たちがケンカしないようにしてあるのか
14階は何なのネ
イーディが尋ねた
14階は、元々、宴会場ですから本日の式典の会場となります
それなら13階へ行くことにするよ
佐竹さんとこの下の人たちには、地下駐車場で会ったしね今度は、大鳥さんの方の人に会ってみようよ
それに他にちょっとヤボ用もあるんでね
マルゴさんは、ニヤッと笑う
はーい、判りました13階ですねぇっ
木下さんがボタンを押すとエレベーターが、スーッと上がっていく
あんた、怖くないの
工藤遙花が、オレに囁く
だってヤクザよヤクザがいっぱいいるのよヤクザだらけなのよ
一度言えば判る
ヤクザだろそんなに怖くないじゃんかみんなと一緒だし
何、言ってるのよあんた馬鹿なの死ぬの
いや、だってマシンガンで武装した、ロシア人軍団とかロサンゼルスの伝説の犯罪組織のボスとかじゃないだろ
シザーリオ・ヴァイオラの時はこんなもんじゃなかったもんな
ちなみに、事前にボデイ・チェックしていますから少なくても、ピストルを持っている人はいませんよ
木下さんは言う
ジッちゃんや、ヤクザの大物たちが集まる手打ちなんだ
銃器の持ち込みは、礼儀に反するしバレたら、抹殺されても文句は言えない
少なくてもって、何よ
ピストルは無理ですけれどボディ・チェックをかいくぐって、武器を忍ばせることなんてみんなやっているじゃないですか
平然と、木下さんは言った
すると、イーディがスカートの下から、スッと手裏剣を取り出し
1つ、あげようカ
いっ、いらないわよっ
鋭く尖った切っ先の輝きを見て、遙花は拒絶する
そうカこれ、ミチからもらったのネミチのお姉さんなら、一つぐらいあげてもイイカナと思ったノニ
また、スッとスカートの下に隠す
ピピンッジュウサンカイデス
エレベータの機械アナウンスが流れる
さあ、みんな集中して寧と、良信くんはあたしたちの真ん中に
さあ知らないよ、君のことなんてさ
マルゴさんは、遙花を笑う
スーッとドアが開いた
うえっ
思わず工藤遙花が、声を上げる
エレベーターホールなのに、ヤクザ、ヤクザ、ヤクザヤクザだらけだ
みんな黒服の20代後半から、40代ぐらいの目付きの悪いオッサンばかり
床のカーペットにごろーんと寝転がったり
ウンコ座りしてたり
全部で1クラス分くらいはいるよな
ご苦労様でっす
木下さんが、エレベーター前を守っていた香月セキュリティ・サービスの私服警護員たちに挨拶をした
警護員たちも、木下さんに敬礼する
ああ、やっぱり木下さんは、トップ・エリートとしてそれなりの地位を得ているんだ
ここを担当しているのは4人やっぱり、ロビーと同じマッチョマンタイプの警護員だ
同じ様な服装でも、香月セキュリティ・サービスの人の方が品が良くて清潔感のある着こなしをしているから、違いがハッキリと判る
名家専門の警護会社なんだから立ち振る舞いや、着こなしにエレガントさが要求される
こういうところも、山岡から翔姉ちゃんにトップが変わって改善された気がする
おい、何だよ、オメェこのエレベーター、ちゃんと動くじゃねぇかっ
1人のヤクザが怒鳴る
おい、そのまんまドア開けとけよワシが乗るからっ
アニキ、ワシもお供します
オレも乗るでっ
わいもや
ズカズカと、大挙してエレベーターに向かって来るが
式典が終わるまでは、どなたも他の階へ行かせないよう命じられておりますので
香月セキュリティ・サービスの警護員が、ススッとヤクザたちの前方を塞ぐ
ふざけんな、ボケェェちょっとタバコ買って来るだけじゃいっ
オメェらは、うちのアニキにタバコも買わせないつもりかアーンッ
缶コーシーが飲みたいんじゃいっ
外の空気ぐらい、吸わせろってんだよっ
だいたい、ホテルの館内、全禁煙ってのは、どないなってるねんっ
どないなってるねんっ
もっとぉ
どないなってんねんっ
エイちゃん風にっ
どゆことぉ
エレベーターホールに居た、全てのヤクザが憎々しげな顔で、警護員に突っかかってこようとする
あれあれ、また随分荒れているね
仕方ないかこんな場所に追いやられているのは、みんなヤクザでも下っ端の下っ端だろうから
そうか奥の方のちゃんとした部屋は、みんな兄貴分たちが使っているから
下っ端の連中は、居場所が無くてみんな、ここに固まってたのか
おいよぉせめて、酒ぐらい持ってくるとか何かねぇのかよ
サービス悪いぞサービス
ホテルは客商売だろこの野郎
いや、あんたたちは別に客じゃ無いだろ
おいでも、今来た姉ちゃんみんな、そこそこ美人じゃねえか
そうだなおい、姉ちゃんたち、こっち来いよこっち
オッチャンたちが、面白い話をしてやっからよっ
つーか、マジでオレのオンナにならねえか
ああ、すっかり悪ふざけになっている
ずっと閉じ込められて、この部屋に居るから鬱屈した気分が、一気に解放されてハイになってるんだな
高崎一郎さんて、幹部の人どこに居るか判る
マルゴさんが笑って、ヤクザたちに尋ねた
ななな、何じゃオメェ高崎のアニキの知り合いか
ヤクザたちの中に動揺が走る
いや、別に初めて会うんだよ向こうは、あたしのことは知らないと思うし
な、何だよ脅かすなよ
ヤクザたちは、ホッと胸を撫で下ろす
その高崎って人は、そんなに怖い人なのか
ちょっと会ってみたいんだよ関西雷神鳳会の生きる伝説4天王の1人リビング・フォウの高崎一郎さんにさ
ニヤッと微笑むマルゴさん
お、お前本気か
何言ってるんだい当たり前だろで、高崎一郎さんはどこの部屋にいるのさ
一瞬静まり返る、ヤクザたち
高崎のアニキなら、1304だ
あっそ、ありがとう
マルゴさんは、ズカズカとヤクザの中へ歩いて行く
ほら、あたしたちも追い掛けるよっ
寧に言われてオレたちも
ほら、行くぞ
工藤遙花は、すっかりオレとイーディにしがみついている
はいはーい、ではシンガリはわたくしが勤めまーす
木下さんが、ガチャガチャとフレイルを鳴らしながらオレたちの後ろをガードする
おいおいちょっと待てよ
そんな簡単に通すわけにはいかねえんだよ
今、高崎のアニキんとこの舎弟に、連絡するからちょっとここで待てよ
ヤクザたちが、慌ててオレたちを引き止めようとする
彼らも、上の人たちの警護という目的でここに来ているから
勝手にズカズカと入られるわけには、いかないんだろう
とにかく待てよ
勝手に行くんじゃねーよ、コラ
黒服ヤクザたちがオレたちを取り囲む
木下さんがフレイルを、ドカッと床に叩き付けた
だー、れー、でー、すー、かぁぁ
今誰かわたくしのお尻を触りましたねぇぇぇぇぇぇぇっっっ
オレたちを押し留めるフリをして木下さんのお尻を触ったやつがいる
えへへ、いいケツだったんでつい
1人のヤクザが、にやけた顔で答える
あなたですかぁぁッッツ
バチコォォォォォンッ
粉砕フレイルがその男の頭を吹っ飛ばす
ぴぎぃぃぃぃぃいっ
男は、鼻から血を噴いて壁まで吹っ飛んだ
おいこら、何しやがるんだぁぁっっ
開かれた戦端にヤクザたちの血もヒートする
乙女が身の危険を感じた以上は、命と命のやりとりになるのは当然でしょうがぁぁ
あ、さっき翔姉ちゃんが、木下さんに言ってた
身の危険を感じたら闘いなさいって
ケツ揉んだぐらい、構わねぇじゃないかぁぁ
そうだ、テメェそんなんでブン殴ることはねぇだろ
この野郎、テメェ
バッと木下さんに敵意を示す男たちに
その態度宣戦布告とみなしますっ迎撃ぃぃぃぃっ
ブオオオッン
風を切るフレイル
バキィィ
バチコーンッ
あっという間に、3人のヤクザを昏倒させる
みんな、全員で謝った方が良いよ
マルゴさんがヤクザたちに言う
香月セキュリティ・サービスの木下さんお尻を触ってしまってごめんなさいってさ
そ、そんなの、オメェ
お、男が謝れるかよっ
つーか、オレが触ったわけじゃないし
ああ、謝るぐらいなら触らせろ小一時間、揉ませろ
ていうか、やらせろ
強ぇぇぇぇぇぇ木下さんマジ、強ぇぇ
これ以上の狼藉は、許しませんよっ
いや、もはやジェノサイドしている木下さんの方が、よっぽど狼藉者だ
あれあんた、もしかしてよ
1人の壮年のヤクザが木下さんを指差す
そうだ、思い出したその武器その動き
おい知ってるのかよ雷電のアニキ
ああ前に一度、シンガポールの現場で見たことがあるぜ
木下さんが慌てる
それ、違う多分、違いますわたくし、シンガポールとか行ったことないですからっ
いや、間違いねえそんなお上品な格好をしているから、気付かなかったがオレの眼はハッキリと覚えているぜテメェ
これだけヤクザがいれば、バンバルビー3時台の番場ちゃんを見たことのある人間もいるか
だ、だからそれ、違
木下さんは、必死で否定するが
オメェはダンボール3の段田だなっ
辺りがシーンとする
いえ、違います
木下さんは、無表情でそう答えた
あっ今ので思い出したっ
別のヤクザが木下さんを指差す
あいつ、バンバルビー3の番場ってオンナだっ
次の瞬間
ジェノサイドは再開された
忘れなさい、忘れなさい、今聞いたことは、全部忘れてぇぇぇぇぇぇぇ
バキィィ
エレベーターホールに居たヤクザを、全員駆逐するまで
木下さんのフレイルは、止まらなかった
ニューヨーク1997という映画が、80年代のマンガ界に与えた影響ははかりしれない
北斗の拳なんて、マッド・マックス2と同じくらいニューヨーク1997に影響されているし
オレの名前を言ってみろの人とか
お、お前はリプケン、リプケンじゃないか
スネークって呼んでくれ
お前は死んだって聞いたぞ
オレは、今、ここに居る
基本は、この繰り返しなのですが
730.男の子とは違う
な、何じゃこりゃぁぁ
どうしてこうなった
何てことしやがるんだぁっ
木下さんによる、エレベーターホールのジェノサイドの叫びを聞きつけて
奥の部屋から、黒服のヤクザたちがわらわらと出て来る
木下さんは、なおもフレイルをジャララランと鳴らして、闘う姿勢を崩していない
何や40人、いや50人はもブチのめされとるで
あいつ香月セキュリティ・サービスの兵隊か
こんなん手打ちなんて、吹っ飛んじまうぞ
あかんせ、戦争やえらいこっちゃぁぁ
これから、ジッちゃんと2グループの関西ヤクザの親分が手打ちをするというのに
その片方のヤクザの子分を、40人も香月セキュリティ・サービスの人間が、ブチのめしたとなると
手打ちそのものが中止に追い込まれる
じゃかぁしぃ騒がしいぞ、テメェらぁぁっっ
黒服ヤクザたちの集団の奥から、太い声が響いた
道、開けんかいっこのドサンピンどもがぁぁっ
黒服たちの人山が、ササッと2つに割れる
そして、廊下の奥から
真っ白なスーツを着た体格の良い中年ヤクザが、のっしのっしと歩いてくる
何だこいつ白いスーツに、ネクタイの色はゴールド金一色
その男の背後には、そらに色違いのネクタイをした黒服のヤクザが5人付き添っていた
それぞれ、赤、青、緑、黒そして赤のネクタイ
色違いじゃ無かった
赤が2人居る
おおっ、徳田のアニキだ
徳田のアニキとレインボー5人衆
こりゃ、血の雨が降るでぇぇぇぇぇっ
白いスーツの徳田と5人の部下がヤクザたちの先頭に立つ
どういうことか、説明してもらいましょうかの
徳田がオレたちを睨む
あんた、誰
そういう強そうな言葉はさ、自己紹介してから言うべきことなんじゃないのかな
ムッとする徳田
何じゃ、テメェワシの名前を知らんのかっ
あたしは、見ての通りのアメリカ人だからね日本のヤクザに詳しいわけがないだろ
アタシもアメリカ人ネ
イーディが、ニタニタ笑う
あたしは、女子校生だからヤクザのことなんか知らなーいっとヨッちゃんも、そうだよねっ
寧が、オレに微笑みかける
遙花ッチは知ってるこのオジちゃんのこと
知ってるわけないでしょっ
工藤遙花は、家族が香月セキュリティ・サービスに勤めているけれど
遙花本人が関西のヤクザについての詳細な情報を知っているわけがない
あれこれって、もしかしてオジちゃん、やっちゃった
寧がアオる
自分のこと、ユーメージンだと勘違いしてて、ドカーンとカッコ良く登場したけれど実は世間的には、無名だったってパターン
徳田の頬が、ピクッと反応する
クックックカッコ悪ーいっ
超絶美少女の寧に、そう嘲笑われると男として立つ瀬がない
うんうんみっともないネ
イーディも、寧と一緒になって、相手を小馬鹿にする
あんたたち、いい加減にしなさいよっ
工藤遙花が、寧たちに叫ぶ
相手はヤクザよっしかも、何か偉そうな感じで出て来たでしょあたしたちにとっては、見たことも聞いたことも無い、何だかよく判らない人けれどヤクザ業界的には、そこそこ知られている人かもしれないじゃないっ
えっと遙花
今の発言で、徳田たちさらに不機嫌になっているみたいなんだけれど
いーえこの徳田さんて、結構ユーメイな人なんですよ
フレイルをガチャガチャ鳴らしながら、木下さんが言った
徳田虎ノ介さんとレインボー5人衆確か、大鳥総裁の配下の4人の大幹部リビング4の1人ですよ
ああ例の大鳥総裁の4天王の1人なのか
何や、姉ちゃんあんただけは、よー勉強してるようやな
徳田が、自信を取り戻しニヤッと微笑む
ただしこの徳田さんは、4人の大幹部の中では最弱リビング4の面汚しと言われているお方です
ケロッと真顔で木下さんは、オレたちに言った
うわっ言っちまった
それを言っちゃあ、おしめぇだわ
あかんそれは、あかんそんな風に言うたらアカン
ヤクザたちの群れが、ざわざわする
姉ちゃん、あんた何か勘違いしてるみたいじゃのぉぉぉぉぉぉ
徳田が涌き起こる感情を噛み殺しながら、木下さんに言った
はい何か間違ってますか
木下さんは、のほほんと答えた
極道生活25年ここまで愚弄されたのは、生まれて初めてだぜおいテメェら、この姉ちゃんに思い知らせてやれいっ
徳田は、脇に控える5人の部下に命ずる
ハハーッ行くぞっ
赤ネクタイの1人が、残りの4人に号令をかける
おい、ちょっと待て何で、お前がオレの前に立つんだ何でお前が、みんなのリーダーみたいな顔をしている
もう1人の赤ネクタイが、文句を言う
そんなのオレが、レインボー5のリーダー、レインボー・レッドだからに決まってるだろ
そういうのオレは、認めてねぇからレッドはオレだお前はよ、今からでもイエローか、ピンクをやれよ
ふ、ふざけんなよっ男がピンクなんてやれるかっ
黄色ならいいだろ
黄色も最近はオンナの担当だろ
お前、カレー好きじゃねぇかよ
歴代のイエローで、カレー好きは2人しかいねぇよっ
あんたって人はぁぁ
いや、今時、戦隊ごっこなんて幼稚園の子の遊びなんじゃ
いや、あの赤が2人居た戦隊も、2つぐらいありましたよ
見かねて木下さんが、口を挟む
隙アリィィィィ
必殺ぅぅ人間ナイアガラ大瀑布ゥゥゥゥゥゥ
あ、危ない
5人の男が、一斉に木下さんに襲いかかる
はい何です
木下さんのフレイルが炸裂する
ダドゥゥン
ギャシャーン
ドゥガァァン
ゴワァァァァンッ
隙とか無いですよわたくし
不思議そうに、そう言う木下さんの前で
レインボー5が、バタバタと倒れていく
鬼のようにいや、鬼より強い
シーンと静まり返る天ヤクザたち
うわっやっちまったぁぁ
これで、オシマイだあの子も
ああ、結構、可愛い子なのによー
徳田のアニキを本気なさせちまったぜあの子
こうなっちまったら、あの子に勝ち目はねぇ
黒服ヤクザたちが、口々にそう言う
ななな、何だ
徳田ってそんなに強いのか
すると徳田は、スタスタと前に進み出て倒れた部下たちに見下ろし
クッと、涙を堪えるポーズを取る
赤ネクタイ、青ネクタイ、黒ネクタイ、緑ネクタイそして、もう1人、赤ネクタイ
グッと拳を握る
オメェたち、痛かっただろう辛かっただろう仇は、この徳田が取ってやるからなぁぁ
ジロッと木下さんを睨み付ける
5000万だ
徳田は手を開いて、5本の指を木下さんに示している
治療費と慰謝料1人、1000万ずつだ合計5000万今日中に耳を揃えて、きっちりかっちり払ってもらおうかのぉ
ワシの可愛い子分たちをそれも無抵抗な、未来ある若者たちに暴力を振るったんだ当然の報いを受けてもらう
どうみても、先に徳田の部下が襲いかかったので
これは、木下さんの正当防衛になるんじゃ
ほらほら5000万だ、5000万だレインボー・ホワイトレインボー・ヴィオレット出ませいっ
徳田が後ろを振り返ると白と紫のネクタイをした小太りと痩せの小男が、のそのそと前に出て来る
えー、レインボー・ホワイト医者ですあこりゃ、5人とも大変なことになってますわここから見るだけで判りますはい治療費、5人合計で2000万オーバー、間違いございませんですっ
レインボー・ヴァイオレットこと、検弁護士でございます元・裁判官で検事もやってました検察庁にコネもありますはい、慰謝料3000万徳田様のおっしゃる通りですこんなの裁判するまでも、ありません3000万で確定ですっ
倒れた5人+2人で七色のネクタイ
ああレインボー
相変わらず、やることがエゲつねぇぜ、徳田のアニキは
でも、ああやって、カタギから金を脅し取って部下の命を踏み台にして、ついに幹部まで昇り詰めたんだからよー
立身出世じゃのぉぉ
死んでいった歴代の5色ネクタイのことを考えると涙が止まらねえぜ
後ろのヤクザの声に、徳田は倒れた5人に
オレを恨むんじゃねぇぜ赤ネクタイ、青ネクタイ、黒ネクタイ、緑ネクタイそして、赤ネクタイ生まれた時代が、悪かったんだぁお前たちはよぉぉぉ
あの一応、加減して叩いていますから、脳震盪を起こしているだけで死んではいないですけれど
木下さんは、呆れた様に言う
馬鹿野郎オメェみたいな、娘ッ子に殴り倒されとしたらオトコとしては、命取りなんだよぉぉぉっヤクザとしては、死んだも同然なんでぇぇぇっ
いやでも死んでないですし
死んでなくても治療費は、2000万ですワタシ、医者ですから間違いありません
白ネクタイが言う
はい、死んでなくても慰謝料は、3000万ですワタクシも弁護士なので間違いありません
合計5000万さあ、払ってもらおうかのぉっさあ、さあ、さあ
徳田が、背後のヤクザたちを手で煽る
さぁ、さぁ、さぁ
木下さんは、キョトンとしたまま
とは、いうもののアンタみたいな娘ッ子に、いきなり5000万の支払いは無理だぁなっ
徳田はニコッと微笑む
そこでレインボー・ゴールドこと、ワシが浪速の徳田虎ノ介だすっ
ワシの本業は、金貸しやせやからのぉ可愛そうな、姉ちゃんのために、このワシが5000万円、融資してやるわっ
金貸し
出たっ徳田のアニキのハメ殺し技っ
人呼んで、3年殺し、5カ年計画
あの娘さん骨までしゃぶられるでぇぇぇぇ
徳田はポケットから、1枚の紙を取り出した
そこには借用書 金 50000000 円確かにお借りしましたとしか書いてない
ここに、アンタがサインすれば、それで問題無しだ今日のところは、黙って帰ったるわワシがこんなに譲歩するのは、1年に1度あるかないかじゃのぉぉなあ、白ネクタイ
ワタシは医者ですから、言っておきますけれどねサインした方が良いですよアナタはついてるここでサインすれば、全て丸くおさまりますからっ
いや、あのその借用書、期限とか利子とか条件とか、何も書いてないじゃないですかだいたい、そこの金額の蘭に大きく空白がありますから前にも後ろにも、幾らでも数字を足せるじゃないですか
うん、返却期限とか利子とか条件とか何でも、後からどうとでも書き足せる
えー、ワタクシ、弁護士ですからその辺は、問題無しですどうか、ワタクシを信用して下さい
信用できませんっ
でも、ワタクシ弁護士なんですよ元・裁判官で検事もやってました検察庁にコネもある
さあここにサインせんかいっ実印がなかったら、拇印でもええでぇぇぇもっとも、あんたボインちゃんではないがのクックックック
徳田の下品な笑いが、エレベーターホール内に響く
と木下さんは
胸は関係無いです胸は
フレイルの先端の、重い塊が付いているところをクルクル回して外す
えっとワタクシ、弁護士ですけど何をなさってます
木下さんは、紫ネクタイの言葉を無視して腰の後ろから、金属塊を取り出す
それは鋭い金色のトゲが何本も付いていて、重そうで、痛そうで
こんなので殴られたら確実に死ぬ
前に所属していたチームのリーダーに言われたんですわたくしのフレイルは、破壊力が強すぎるから人を殺さないように、力をセーブできる穂先を付けろって
それが今までのもの
えーと皆さんは、黙ってて下さいますよね
木下さんが、オレたちに振り向く
うん、もちろんヨッちゃんも、イーディも、遙花ッチも黙っているよねっ
場の雰囲気を察した寧が、慌ててそう言う
もちろんあたしも黙っているよこれから起こることは、記憶から消す
マルゴさんも、笑顔でそう答える
木下さんは再び、ヤクザたちの方を見る
では後は、この場にいるヤクザの皆さんを皆殺しにすれば、問題無いですね
ジャララランッ
トゲドケのフレイルが重々しい音を立てる
死人に口なし死んでしまえば、治療費も慰謝料も関係無いですよねついでに目撃者も、全員消します
木下さんは、見た目は可愛らしいけれど
この人は、バンバルビー3でバービーさんたちに教育されたんだから
普通の人だと思ったら、大間違いなんだよ
ちょっちょっと待て
徳田は、すっかり戸惑っている
わたくし確かに、そんなに賢くはないですけれどそれでも、こういう形で馬鹿にされるのは嫌いです
木下さんが、フレイルを構えて言う
それと、わたくし脱いだら、凄いんですからっ
ジュバッ
ふんぎぃぃぃぃぃっ
徳田が物凄い勢いで宙を飛び、壁に激突するっ
まるで人間ホームランだ
あの、ワタシ医者なんですけれど
ワタクシ、弁護士なんですけれどそれも検察庁にコネのある
ドカッ、ビュワッ
かばちょーんっ
ふんだばぁぁ
ああ、白ネクタイと紫ネクタイも鼻血をビューッと噴きながら、飛んでいく
あ、落ちた
さあ、全員、覚悟していただきましょうか
グイングイングイッとフレイルを廻す、木下さん
金色のトゲの金属塊が、グワッシャ、グワシャとリズミカルに鳴り響く
バーサーカーや
ヤクザの1人が、そう呟いた瞬間
そこまでにしていただきましょ
低い女の声が響いた
あ、姐さん
奥から和服の中年女性が現れる
昔は美人だったんだろうな眼も大きいし、顔立ちも綺麗だ
だが、今はかなり太ましい体格をしていた
髪の毛も、下町のオバチャンがみたいに、紫色に染めている
うちの徳田がとんだ失礼を致しましたあたくしが、お詫び致します
スッと木下さんに頭を下げる
今までのことあちらから見させていただきましたが、全て、こちらの過失です先に手を出したのは、あたくしどもあなた様は、ただ、ご自分を守ろうとなされただけ大変申し訳ございません
そして、周囲の黒服ヤクザたちに
お前たちもいいねっこのお嬢さんには、何の落ち度も無かった悪いのは、あたしらだそうだねっ
和服女性の迫力にヤクザたちは
は、はい姐さんおっしゃる通りです
あの娘さんは悪くないです
悪いのは、わしらの方でしたっ
よく見たら、あのお嬢さんのプロポーションも悪くないですっ
むしろ、ボインとすら言えます
とうちの連中も言っておりますどうかここは、あたくしに免じてお許しいただけませんかこの通りです
作戦を変えてきたみたいだね
マルゴさんが、小さな声で囁いた
これ以上、動ける兵隊の数が減ると大鳥総裁のガードが足りなくなるからね
すでに、木下さんが50人は、昏倒させている
それに、香月セキュリティ・サービスがヤクザたちに対して下手に出るつもりはないというメッセージも伝わったここで、場を治めないと東京に出て来たメンバーは、このまま全滅させられかねないからね
木下さんをここに連れてきたら、こうなることは想定できるもんねっ
ああ、これはジッちゃんの穏便に手打ちをするつもりは無いという、メッセージなんだ
自分たちはヤクザを恐れていない
こちらを舐めたら、皆殺しにするという
このまま大鳥総裁の兵隊だけ、極端に減ったら別の階に居る佐竹会長の手下に、暗殺される可能性だってあるからね
大鳥総裁も他の人たちと一緒に上京して来たのだから、この奥に居る
警護の人数の減少は、自分の命に関わる
頭を上げて下さいそこまでおっしゃるのならわたくしも、忘れます
木下さんは言った
まあまあ、水に流して下さいますかありがとうございますあんたたちも、お礼を言いなさいな
済みませんでした、ボインなお姉さん
オレたちが悪かったです、ボインなお姉さん
そ、そんなわたくし、そんなにボインとかじゃないですよっ
ポッと、頬を赤く染める木下さん
こうしていると本当に可愛らしいお嬢さんなのに
そうそう、自己紹介がまだでしたね
そして、改めて和服に紫の髪の太ましい女性が、オレたちを見る
あたくしは関西雷神鳳会、森沢マミと申しますわ
あああなたがリビング4の1人クリーピー・マミさんなんだね
マルゴさんがニヤッと笑う
この人も大鳥総裁の4天王の1人
ええあたくしのことを、そう呼ぶ方もいらっしゃいますわ
森沢マミという女は、平然とそう答えた
で香月セキュリティ・サービスの方がいらした御用は何でございますか申し訳ございませんが総裁は、お時間まではどなたともお会いなさらないとおっしゃっておりますが
いや、あたしたちは別に、大鳥さんに会いに来たわけじゃないよ
あたしはマルゴ・スタークウェザー・クロモリ名前の通り、黒森家の人間だあなたたちに用があるのは、あたしなんだよ
森沢マミの表情が変わる
香月セキュリティ・サービスの木下さんは、案内係として付いて来てくれただけだよなのに、あなたたちが木下さんに絡んだから、こうなったんだ
まあそうでしたか
紫髪の女はわざとらしく、笑う
ホント男の方たちは、せっかちでいけませんねあたくしは、男の方たちとは違いますわどうですここは、女同士で少し、腹を割ってお話したいのですが
ああ、この人は黒森家が、女ばかりだということを知っている
おそらくマルゴさんが、ミナホ姉さんの懐刀であることも
いや、悪いけれどあたしたちは、 あなたじゃなくて、リビング4の高崎一郎さんに会いに来たんだちょっと、今日のことと別件で話があってね
そうですかそれは残念
森沢麻美の口は笑っているが眼は笑っていない
でも高崎さんのついでに、あたくしともお話致しましょうよどうせ、あたくしたちは今、3人とも同じお部屋で待機していますから
3人
はいリビング4の最後の1人ギルバート・オサレバンも、その部屋におりますわ
30周年か
いや、立ち食い師にクレープのマミて人がいるんですよ
あと、例の5000万円の借用書が、人を馬鹿にしすぎなので
自分の本職がノンフィクション・ライターのくせに、あんな借用書を出してくるとは
あの人政治家としてでなく、むしろ作家として終わった気がします
相変わらず、変な夢ばかりみます
昨夜は、ガンダムエイジのどこに問題があったかを、知らない人に必死で説明する夢を見ました
どうなっちゃうんだろう私
731.オサレ戦士
関西雷神鳳会大鳥総裁の4天王、リビング4の1人
クリーピー・マミこと森沢マミと名乗る、紫髪の和服のオバサンに連れられて
オレたちは、このホテルの13階のフロアの奥へと通された
廊下や他の部屋から、黒服のヤクザたちがオレたちを監視しているが
ただジッと見ているだけで、声も出さない
それだけ、この森沢マミという女は恐れられているんだろう
やがて、オレたちはとある一室の前へ到着する
開けな
森沢マミは、ドアの前で立ち番していた黒服ヤクザをギロッと睨み付ける
は、はい姐さん
黒服は、慌ててコンコンとドアをノックする
何じゃいっ
室内からの太い声
あ、姐さんが戻ってらっしゃいましたぁ
おう入っていただけ
中からの声に立ち番が、ドアをガチャリと開けた
お客人お先にどうぞ
森沢マミは、マルゴさんにそう言う
じゃあ失礼させていただくよ
オレたちは、マルゴさんを先頭に部屋の中へ入る
マルゴさん、寧、オレとオレにしがみついている工藤遙花、イーディしんがりに、木下さん
部屋の中は、タバコの煙でもやっとしていた
部屋の壁際には体格の良い男たちが、ズラッと並んでいる
今さっきドアを開ける時に応対してくれたのも、その中の1人か
つまり、こいつらはただの護衛
おうああああ何じゃ、そりゃあナメとんのか、コラぁああチーや
そして部屋の奥では、4人の男が麻雀卓を囲んでいた
そのうちの1人がメガネにオールバックの小男が、携帯電話を掛けながら、麻雀を打っている
ああ、チーやチーその三萬をこっちに寄越せいや、こっちのことやオメェとは関係ねぇでスギモリの野郎は、何て言ってるんやワシの名前は出したんかああんワシの名前を出した上で、3000万て言うとんのかあのガキ、ナメくさって2000万までなら出すって、伝えろそれ以上は、絶対にありえへんからなああ、キツー言うたれやスギモリとは先代からの付き合いやけど、ワシもこのラインからは引けんからなそうだ一発、カマシたれやローンその六萬で当たりやいや、こっちのことやオメェの方は、2000万や、六萬は関係ないっ東ホンイツ、ドラ1やイッツーならへんから、安い方や
電話か麻雀、どっちかだけにすればいいのに
ほな、頼むなまた進展がアリ次第、連絡しろええな
メガネの男が、電話を切ると振り込んだ男が、恭しく点棒を差し出した
おおっ、次はワシが親やの
はい、そうでございやす
ここが勝負の分かれ目何としても、連チャンさせてもらわんといけんのぉぉ
男たちはジャラジャラと、麻雀牌を全自動卓の真ん中の穴へ落とし込む
グワチャラララ
ジィィィィーッと、背中の色の違う牌が、下から上がってくる
全自動は楽やけど味気ないのぉ積み込みが、できへんからの
メガネの小男は、笑ってそんなことを言うが他の3人は、無言のままだった
人間関係に、大きな差がある
高崎サン、お楽しみのところ、済みませんが
森沢マミが男に、声を掛ける
ということは、このメガネの小男がリビング4の1人、高崎一郎か
なんじゃい、ワシは今、リクリレーションの真っ最中やど判っとんのか、リクリレーション中学ン時の移動教室ン時に、そういう時間があったろう
高崎サン、それを言うならレクリエーションですわ
森沢マミが、溜息を吐く
そうか、クリかワシが間違っとったか
違いますがな間違ってたのは、クリやのうて、リエのところですがな
そうか、そうかリエのクリかいな
ガッハッハと、高崎は笑うが部屋の中の他の人間は、一切笑わない
マぁミオメエが居てくれんと困るわこいつらだと、ワシがどんなにボケても、突っ込んでくれんからの
ボケてたんだ
高崎サンのお言葉は、高尚すぎるんですわあたくしたち、みんな、高崎サンみたいな学がありませんから
よく言うわワシかて、3流大学の商学部の中退やぞ
入っただけ偉いですがな
なるほど、そういう考え方もあるかのぉ
何なんだ、この会話
しかし、この2人こんな会話をしながら、こっそりオレたちの様子を探っている
オレたちがどんな相手なのかを
で何なんやマぁミワシに用って言うのは
たっぷり、もったいぶってようやく高崎は、話を切り出す
あたくしと違いますよこのお客人が、高崎サンに御用があるんだそうですわ
おう、そうかいな
改めて、高崎はオレたちをジロリと見る
で誰かかいなワシに用があるっちゅうのは
あたしだけど
ほおまあ、ええ見ての通りの取り込み中や悪いが、打ちながら話を聞かせてもらうで何しろワシの親の場だ
高崎は、再び麻雀を再開する
自分の牌を見て
何じゃいこりゃまた酷い配牌じゃの
カチリと最初の牌を切る
でそもそも、誰なんじゃいオメェは
これは失礼あたしは、マルゴ・スタークウェザー・クロモリ名前の通り、黒森家の人間だよ
マルゴさんは、そう告げる
はーんクロモリクロモリさんねぇおい、サブ、お前知ってるかクロモリさんて家のこと
いえ存じ上げませんっ
タケシお前は、どうだっ
聞いたこともねえっス
壁際に直立している護衛たちが、大きな声で答える
ワリィなワシらは、大阪から出て来たばかりのイナカモンでのぉクロモリなんちゃう家のことは知らん
また、ガッハッハと高崎は笑った
別に知らなくてもいいよあたしたちも、あんたたちのことは、そんなによく知らないし
たださある人から言われたんだよ日本で格闘技の興業をするのなら、高崎一郎さんという人に、挨拶しておいた方がいいって
高崎がマルゴさんに振り向く
格闘技の興業オメェがか
ああそうだよ選手兼興行主ってことになるのかな
改めて高崎は、マルゴさんの全身を上下くまなく見る
鍛えてはいるようだな
当たり前だろこれから、この身体で稼ぐつもりなんだからさ
ニッとマルゴさんは、微笑む
いややめとけ、やめとけ
高崎は、麻雀を打つ手を止める
ああ、この人
格闘技のことになると、夢中になるタイプなんだ
あんたのその体格だとプロレスじやなくて、総合だろ女の総合は、売れねえぜ今までに何人もの人間が起ち上げて、失敗している
するとマルゴさんは
そうかなあたしは、成功させるつもりだけれど
平然と笑っていた
あーん、でもなぁオメェは強そうなオーラはあるが、そんだけだな格闘技の女子なんてのは、何かしら売りがないと無理だキャラクター付けってのがな今時だったらクレイジー・サイコ・レズぐらいじゃねぇと、キャラクターが立たねえぞ
高崎は、格闘技選手としてのマルゴさんを評価していないようだった
ご忠告ありがとうございます
それもそうだが興行を打つってんなら、1試合だけで済ませるわけにはいかねぇんだぞオメェ、1人じゃどうしょもねぇ他の出場選手はどうするんだぁ
ああ、それなら
マルゴさんは、イーディと工藤遙花を指差す
そこに2人居るよ
こっちの日本人の女の子格闘技好きの高崎さんなら知ってるよね工藤遙花去年の女子高校生空手チャンピオンテレビニュースとかでも、取り上げられていたでしょ美少女格闘家って
ちょっちょっと待ちなさいよっ
あれれ遙花さんは、あたしの命令で身体を張ってくれる約束じゃなかったっけ
マルゴさんが、遙花に詰め寄る
身体を張るのと、身体を売るの大した違いはないけれど、全然違うとも言えるよねどっちがいいの
工藤遙花は、黙り込む
このままゴネるとこのヤクザだらけの部屋で、何をやらされるか判らないと感じたらしい
遙花さんの隣に居るのが、イーディこの子は強いよそして、可愛いこの子も現役女子校生だ
その通りネ
イーディが、胸を張る
イーディのしなやかな肉体は、服の上からでもハッキリと判る
もちろん、金髪碧眼の褐色の肌の美少女であることも
あたしの商品価値が低いとしてもこの子たちなら、充分、評判になると思うよ何てったって現役女子校生、それも美少女たちのガチバトルだからね
高崎はジッと遙花とイーディを見て、考え込んでいる
そういうマルゴだって、まだ19歳ネ全然、美少女戦士で売れるヨ
イーディが、そう笑うが
あたしは戦士はともかく、美少女は遠慮しておくよ
すると高崎が
いややっぱ、無理だなオメェら3人だけじゃ、興業にならねぇ
そして、フフンと笑ってマルゴさんに
どうだいオメェよこの話、プロモートは、ワシに任せてみねぇかこの、高崎一郎によぉっ
高崎が食い付いた
そしたら、オメェ良い対戦相手も、会場も、スポンサーもええアンバイのトコを、ワシが見つけてきてやるわオメェが、1人で自分で無理して興業を打つより、何倍も楽だぞ話が、ガツンガツン進むからな何と言っても、ワシは格闘技の興行界には、顔が広いからのぉ
どうやら、マルゴさんのことはともかくイーディ、工藤遙花の2人に、高崎は商業価値は見出したらしい
それならいっそのこと、自分の傘下に入れて稼がそうということか
女子プロのヤマグチ・ヒデコとか柔道の銀メダルのヨコタニ・マドカとか、そういう相手を連れてきてやれるぞあっちは、名前は通っているし、実力も知られているがいかんせん、ビジュアルが弱いオメェたちは、世に知られちゃいねぇがとりあえず、そこそこ見られる顔をしている野獣少女VS美少女戦士どうだ、この企画今からだって、年末の特番に売れそうだぞサブ、オメェもそう思うな
はい、そう思うっス
タツは、どう思う
アニキのおっしゃる通りっス
シゲハルはどうだ
サイコーのプランっスクレイジー・サイコ・レズより、全然良いっス
うんうん、そうだよなぁオメェら
高崎は、すっかり気分を良くしている
なるほど確かに、昔はアイドル・レスラーなんて、顔とプロポーションだけで売ってる選手も多かったもんなそれを今度は、総合のマットで美少女キャラで売るってのもアリだぁなオメェらが勝っても負けても、客が湧く痛みに苦しむ顔が、色っぽいからなっ
その通りッス
高崎たちは、盛り上がっているが
ちょいと、高崎サンどうやら、このお嬢さん高崎サンのお世話になるつもりは、無いみたいですけど
森沢マミがマルゴさんの表情を見て、クククと笑う
ああ、悪いけれどプロモートは、すでに他の人に頼んでいるんだよ
マルゴさんが高崎の申し出を断った
なななな何だと誰に任したんだおい、コラぁ、言うてみぃモチヅキかナンバかヨシハラの野郎かそいつらよりも、ワシの方が上やでぇぇ
ギロッと、怒りの形相をマルゴさんに向ける
この日本で北海道、本州、四国、九州、沖縄どこだろうとこのワシに逆らって、格闘技の興行を打つことはできへんからなっ必ずブッ潰すしブッ殺す相手が誰であろうとじゃっ
ひぃぃい
工藤遙花だけがブルッて、オレにしがみついてくる
判っているよだから、あたしたちはアメリカで試合するんだよ
マルゴさんの穏やかな言葉に高崎の顔色が変わる
あ、アメリカ
ああ、場所はラスベガス会場は、UGMホテルもう予約してあるよ
お、オメェ何を言ってるんだ
あたしに、女子格闘家としての特色が無いって、教えてくれてありがとうあたしも、そう思うよ確かに、このままじゃ格闘家としては、売れないよねだから、決めたんだ男と闘おうって
お男
驚く高崎
ラスベガスでの試合あたしの相手は、ピョートル・ゲルゲレンコだよ
総合男子のトップ選手じゃねぇか
その辺のレベルじゃないと、売れる試合にならないだろ
マルゴさんが、男の総合格闘技の選手と試合をする
まあ、その前に女子の大会にも出て、何度か優勝しておく予定だけれどね去年の総合の王者と闘うのに、あたしの方も何かしらのタイトルを獲っておかないと見てくれのバランスが悪いだろ宣伝だよ、宣伝女相手でまず、あたしが底抜けに強いところを見せておかないと客の食いつきが悪くなるだろ
オメェ女相手なら、簡単に勝てるって言うのか
マルゴさんは、ニヤニヤ笑うだけだ
返答しない
じょ、冗談で言っているんだよなラスベガスとかゲルゲレンコとか
まさかゲルゲレンコのマネージャーとも話は付いている
そんなことできるわけがねぇ
高崎は、マルゴさんに凄む
ゲルゲレンコのケツ持ちはロサンゼルスの裏社会の人間だぞっこのワシだってゲルゲレンコの試合には、手が出せないんだからなっ
ああミスター・バルバッツァでしょ先月、渡米した時に会って来たよ
マルゴさんはオレたちの夏休みの時に、しばらくどこかへ行っていた
会ったってオメェ
あたしの師匠は、キョーコ・メッサーだから、あたしのケツ持ちは、ブラジルのマランドロだついでに、あたしはキョーコさんの繋がりで、ロサンゼルスの組織の人間とも交流があるそして、ラスベガスはロサンゼルスのすぐ先だ面倒なことは、あたしの身内のお姉さんが全て片付けてくれたんだよ
ミス・コーデリアか
あの人はロサンゼルスの犯罪組織の重鎮だもんな
試合の放送は、全世界に売るしそのプロモートも、専門家に頼んである高崎さんも、知ってるんじゃないかなドン・オルシーニさんて言うんだけど
知っている
その人に言われたんだよもし、試合の放送権を日本でも売るつもりなら高崎さんに一言、挨拶しておいた方が良いって何しろ、高崎さんは日本での格闘技興行の顔役らしいから
高崎は苦虫を噛み潰したような顔になり
そういうことでっかクッ
手に持っていた牌を、麻雀卓の上に放り投げる
ワリィな麻雀しているような気分じゃ、なくなったんでのぉぉ
そして改めて、壁際の護衛に
このお嬢さんたちに椅子を用意しろいっ立たせたまんまじゃワシが、オルシーニに怒られる
おい、椅子だ椅子
慌てる子分たち
待って下さいよ、アニキ
麻雀卓の高崎の対面に座っていた男が、スッと顔を上げる
今の今まで気配を消していたが
今の話ちょいと、できすぎてませんかい
細面に短く五分刈りに刈り上げた黒髪
空手か柔道でもやっているのか体格も良い
背筋も伸びていて、ただずまいも綺麗だ
見るからに、日本男児というようなアナクロな雰囲気を醸し出している
昔の日本映画の時代劇スターっぽい感じがする
そうは言うかなオサレバン
もしかして大鳥総裁の4天王こと、リビング4の最後の1人
ギルバート・オサレバンてこの人
そうねこのお嬢さんとキョーコ・メッサーとの関係は、あたくしたちも知ってるからねキョーコ・メッサー経由で、ロサンゼルス・コネクションと繋がりがあったとしても変ではないわよ
森沢マミがそう口を挟む
とはいうもののこのまんま、こんな小娘に、ワシらが頭を下げるっちゅーのは、いかがなもんかと思うんですがの
オサレバンはそう言った
あああなたが、ギルバート・オサレバンさん
マルゴさんが、笑ってそう言う
人は、ワシをギルバート・オサレバンと呼びますのぉ
オサレバンは、不機嫌そうにそう答えた
本名、城の内哲也確か何かのヘマをやった時に、大鳥総裁から名前を
ギルバート・オサレバンに変えるか、シロマティに変えるか2つに1つやと言われたんじゃぁぁ
それでギルバート・オサレバン
シロマティよりオサレだからのぉぉぉ
まあ、名前なんてどうでもいいけれど確か、あなたが大鳥総裁の親衛隊のリーダーなんだよね
それが、どうかしたかのぉぉぉ
てことはやっぱり、強いの
その一言にオサレさんは、カチンときたらしい
キサマァァ、ワシを馬鹿にしておるのかぁぁ
馬鹿にしているわけではないけれどちょっと知りたいだけだよ大鳥総裁の親衛隊長が、どの程度強いのかをさ
なんじゃとぉぉ
オサレさんは、麻雀卓から立ち上がる
おい、よさんかいオサレバンっ
高崎が止めようとするが
あら、いいんじゃないですかあたくしたちもキョーコ・メッサーの弟子が、どのくらいの力を持っているのか知りたいですわ
森沢マミがそう言う
そうそうお互い相手の力は、知っておきたいもんね
マルゴさんはスッと、構える
高崎サンもう止めてもムダですっワシの怒りは、爆発寸前だぁぁっ
イーディ、頼むよ
マルゴさんの言葉に、イーディが頷く
さて、オサレバンさん力の試し合いのルールはどうします
マルゴさんが、ゆっくりと部屋の中の広い方へ移動する
ルールだぁぁ
オサレさんもマルゴさんに誘導されている
ほら総合ルールとか、寸止めルールとか色々、あるでしょ何でもアリのケンカ・ルールとかも
すると、オサレさんは
ワシは、極道じゃぁぁ、極道ルールにキマッとるわぁぁ
じゃ、そういうことで
ふわっと
マルゴさんの身体が、羽のように軽く地面を蹴る
シュゴワッ
一瞬
まるで竜巻のように、マルゴさんの身体が高速で回転したかと思った瞬間
マルゴさんの回し蹴りが、オサレさんの首にキマッていた
むぐぅぅっ
何もできないまま、崩れ落ちる巨体
おっ、テメェオサレのアニキに、ななななんてことを
反射的に動いた、壁際の護衛たちは
イーディの拳と蹴りで、打ち倒されていく
マギィッッ
ミギィィィィッ
プゲラッ
動かなかった護衛だけがイーディの攻撃を受けなかった
極道ルールなのネ
イーディはニコッと笑う
ありがとうとても、よく判りました高崎さん、森沢さん
オサレさんを撃破した、マルゴさんがそう告げる
とりあえずミスター・オルシーニの顔を立てないといけないんで、高崎さんのことは生かしておくことにしますその代わり、あたしたちの試合の日本での宣伝よろしくお願いしますね
高崎はブルブルと振るえていた
あら、あたくしは、どうなるの
森沢マミが、マルゴさんに尋ねる
さあそれは、森沢さん次第なんじゃないですか
世の中は、奇妙なことばかり起こる
祖母の介護は叔母がした
そして、祖母の死後静岡の叔母は、自分だけが辛い思いをしたことに腹を立て
他の親戚と絶交してしまった
祖母の家は、売り払われ今では、どこに住んでいるかも判らない
私と親しかった従妹も今では、どこに居るのか判らない
今日、道でバッタリ母が絶交した叔母と出会ったらしい
それも何故かうちの地元の駅で
遺産相続の裁判以来、数年ぶりに会ったらしいのだが
母と叔母は、少しだけ話をしたのだそうだ
するとなんと
行方不明だった私の従妹は、結婚して今は、私と同じ街に住んでいるらしい
この街に暮らすようになったのは従妹の夫が、たまたまここに住みたいと言ったからで
全くの偶然らしい
それで、叔母は従妹の家を訪ねて、田舎から出て来たのだそうだ
でこの街のどこに住んでいるんだって
と、私が聞くと母は
そんなの教えてくれるはずがないでしょあの子、あたしのことが大嫌いなんだから
うん絶交した姉と、自分の娘が親戚づきあいするのは嫌なんだろうなあ
それでも、どうやら従妹は近所に住んでいるらしい
街も広いからなあ
よほどの偶然でも無い限り会うことはないんだろうけれど
732.マルゴと寧の脅迫アタック
ふんっまあ、いいわで、あんたたち大鳥総裁には、会っていかないのかい
和服に紫髪で太めの中年女性大鳥総裁の4天王、リビング4の1人、女森沢マミがマルゴさんに尋ねる
何でさあたしたちは、最初っから格闘技興行の話をしに、高崎さんに会いに来ただけだよ
そりゃ、確かに途中で不幸な出来事が幾つかあったけれどさエレベーターホールの件は、あんたたちの手下が木下さんに失礼なことをしたのが原因だし今のは、あたしの技量を高崎さんに見てもらうための野試合でしょ
ようそんなことをおっしゃりますなあ兵隊50人以上にリビング4が2人こんなにようけんブチのめしておいて
だから、不幸なできごとだって言ったはずだよ
2人とも笑みを崩さないで、睨み合う
ねえねえ、オバサン
不意に、寧がニヤッと笑って、森沢マミに話し掛ける
あたしたちってさ、か弱い女の子4人と高校生の男の子1人なんだけれどこんなあたしたちに、大人のヤクザさんたちがブチのめされちゃったってのヤクザ業界的にはどうなわけ
外の50人なんて、木下さん1人で倒したんだしあたしたちが、全く手を出していないのは知っているよね今のオサレさんは、お互いの合意の元、極道ルールで正々堂々とマルゴお姉ちゃんがブッ倒したそれと極道ルールなら、対戦中に闘いに割り込んで来そうな素振りを見せた人は、排除されても仕方ないよねしかも、この人たちプロの護衛なのに、女子校生のイーディちゃんにやられちゃったよ
つまりこちらに非は無い
全部、先に仕掛けて来たのはヤクザ側だし高崎さんに用があったのは本当のことなんだから、オレたちが不当に挑発したわけでもない
よせ、マぁミワシらの負けじゃい今のとこはのぉぉ
高崎が、森沢マミにそう言った
オメェらの興行の件は、判った日本での宣伝、放映なんかに関しては、問題無くできるようにワシから言うておく
ああ、頼むよちゃんと高崎さんにも、美味しい思いはさせてあげるから
クッオメェみたいな小娘に、手玉に取られるのはシャクだがワシもアメリカさんのプロモーターとは仲良うせんといけんからのぉぉ