鳥居さんだからこそ、平然と受け入れる

こうやってみんなの前で、変なパフォーマンスだってできる

こういうことを恥ずかしいと思っていない

家の名誉や、メンツなんかを背負っていないから

そんな鳥居さんなら歌晏さんに、変に擦り寄ってきたりはしない

ゴマスリもしない

いつも平然と思ったとおりのことをズケズケと言ってくれる

だから、手放せない存在なんだ

ありがとうございましたぁぁ

ようやく、鳥居さん&アーデルハイトさんの歌()が終わる

面白かったわ、まり子それからあなた

歌晏さんが、アーデルハイトさんに言う

行き場が無いのなら、もうしばらくはまり子の所に世話になっていなさいまり子もいいわね

でも桃子お姉様

わたくしの言うことが聞けないの

ニッと歌晏さんが、鳥居さんに微笑む

判りましたわハイジ、解雇は取り消しますもうしばらく、うちに居なさい

アーデルハイトさんは、躊躇している

どうしても、まり子の家が耐えられないというのならみすずにお願いして、香月セキュリティ・サービスに話を付けてあげるわよでも、あなたの実力じゃまだ無理だと思うわしばらくはまり子の警護役を続けながら他の皆さんとトレーニングして、腕を磨いた方がいいんじゃないかしら

歌晏さんの言葉に、みすずが

美智この子と稽古してあげてね

美智が、スッと頭を下げる

関さんも藤宮さんもよろしくお願い致します

取りあえず香月セキュリティ・サービスとコネができるのなら、アーデルハイトさんには損ではない

というか、このままならどこの家からも雇われずに、行き場を失ってしまう

わ、判りましたまり子お嬢様、よろしくお願い致します

鳥居さんに、深々と頭を下げる

ええ、ハイジ

アタシも、トレーニングしてあげるネ

イーディが、大きな声でそう言った

次はアタシが歌うヨ

イーディ、お前

いきなり、イーディは英語で歌い始めた

う、上手いですわ

綺麗な声ですわ

イーディは歌まで上手いのかよ

いや、体幹も優れているし、感覚も鋭敏だし、表現力も豊かだから

歌だって、上手いに決まっているんだろうけれど

やがて、イーディの歌が終わる

ジェリコの戦いの歌ね

みすずが、イーディに微笑む

そうヨグランマが良く歌っていたノネ

ああジッちゃんの声の乱入から、大分緊張していたパーティ会場が

どんどん晴れやかになっていく

次は、わたくしたち全員で合唱しましょうか

みすずの提案でお嬢様や警護役たち全員で、歌を歌うことになった

どうも、みすずたちの学校の生徒なら、全員知っている歌らしい

校歌というわけじゃないんだろうけれど

旦那様、聞いていて下さいね

香月セキュリティ・サービスのメイド部隊や、翔姉ちゃんたち、みすずたちの学校の生徒ではないイーディも一緒に聞く

その歌声は

美しいハーモニーが、完全にできていた

この子たちは、本当にお嬢様なんだな

レイちゃんやマルゴさんに、キャーキャーと群がったり

みすずや、歌晏さんみたいな大きな名家の子の顔色をうかがったりするけれど

かつて、ジッちゃんたちが願っていた通り

みんな、名歌のお嬢様たちとしてしっかり教育されている

こうやってみんな全員で合唱したら、よく判る

歌うフリだけをして、実際に歌っていない子なんて一人もいない

全員がちゃんと声を出している

何かを披露しなければいけない時は、精一杯頑張らなければならない

それが、名家のお嬢様なんだということを判っているから

常に注目され、他家や臣下たちから見つめられているのがお嬢様なんだから

手抜きをしているのが見つかったら、家の名誉に関わる

自分だけでなく、両親や一族、臣下たちまでが恥をかくということを理解している

皆さん、本当に素晴らしかったです

オレは、パチパチと手を叩いた

イーディたちも、みんな拍手した

歌晏様、香月様、狩野様次はわたくしたちが、歌いますわ

それからは積極的に、お嬢様たちがグループを作って歌を披露した

しかし流行りの歌なんかが1つもない

みんな声楽とかの歌ばかりだ

しかも、みんなそれなりに上手い

そうして、懇親会パーティは和やかに進んで行った

はーい、それでは警護役の方だけこっちに集まって下さい

すっかり、お嬢様同士の警戒心が消えてしまった

パーティは再び、色んなグループに分かれての談笑になっている

その雰囲気を見て、翔姉ちゃんが警護役だけを呼んだ

合同トレーニングのことについて、お話ししますから

こうなったら、それぞれのお嬢様に警護役が張り付いている必要はなくなる

スパイなんかも摘発されたわけだから、もう心配はない

行ってらっしゃいわたくしは、皆様とお話ししていますから

どの警護役も、にこやかに警護役を送り出してくれる

ああ、合同トレーニングのことでしたら、わたくしもそちらへ参りますわ

武闘派お嬢様の栗宮さんも、翔姉ちゃんの方へ行く

そして、そっちはそっちで

警護役同士の和やかな懇談会になる

みすずたち3家のお嬢様が義姉妹の誓いを結んだことが

このパーティに出席した人たちを結束させてくれたように思う

あの場に臨席したことが

それから、みんなで合唱したことも

このコたちの方は、もう大丈夫ネ

大丈夫でないのは

みすずの隣の席で、青ざめた顔をしている水島可憐さん

これはまあ、このお嬢様たちの集まりにスパイを連れて来てしまったわけだから

自分の家に、どんなペナルティがあるのか怖くて仕方がないのだろう

それと主を失った安城姉妹

この二人は、警護役だけれど翔姉ちゃんたちの方に合流していない

まあ、守るべき主を喪失してしまっているのだから仕方ないか

オレがみすずの所へ行くと

こちらは、もう大丈夫だと思いますからこの子と、あちらの2人を屋敷の中へ連れて行って下さいませんか

みすずも、可憐さんと安城姉妹のことが心配らしい

せっかく良い雰囲気になっているパーティに、3人だけどんよりした顔の子がいるのは良くない

一度、中へ連れて行くか

歌晏さんと入れ違いで、屋敷に入った鷹倉姉妹たちのことも気になるし

スパイの天童乙女のことも

あたしも戻るわ

ジッちゃんの声の登場から、会場の隅に下がっていたミナホ姉さんが言う

鞍馬様たちのこと香月様から、お引き渡しをしていただかないといけないし

鞍馬さんは黒い森の娼婦になる

やっとトラブルの相手と関係が切れました

何か、とても疲れました

理屈が通じない人とは、何を言ってもダメですね

私は自分と意見の違う人間に、自分の主張を理解させようとは思わないただ、一刻も早く、そいつから遠ざかるだけだ

ハインラインに、そんなセリフがあったと思います

父今、50円しか持って無いんだよ

私お父さん、それ500円玉

父えそうなのか

つ、ついにお金の硬貨の種類が判らなくなったらしいです

私だって、50円玉には穴が開いているだろ

父でも、こんなに大きいぞこの50円玉

私も、もしかして50銭とかのコインと勘違いしている

父ああ、違うのか

私だから、それは500円玉だって

父いや、ほら普段、あんまり見掛けないコインだから

私いやいやいやいや

怖いです

868.ハイ・ライフ / お披露目

あら、公ちゃんはみすずの言うことは素直になんでもしてあげる子なの

オレたちの会話を聞いていた歌晏さんが、そう言う

あたしの旦那様は、とってもお優しい方ですから

みすずが、ニッコリ微笑んでそう言う

ええ、お兄様はわたくしたちのお願いは、何でも面倒がらずにして下さるんです

ふーん男の子なんて、女の前では威張っていて、命令ばっかりするものだと思っていましたわ

どうも鳥居家は、男尊女卑の家風らしい

ああ、なるほど名家の出身じゃない、年下の男のですものね

歌晏さんが、フフンと微笑む

こういう選択肢も確かにアリですわね

みすずに振り向く

香月家の現状は、お二人のお家とは違いますから

桃子お姉様にはお兄様がいらっしゃいますし桜子にも、弟さんがいらっしゃいますものね

つまり、歌晏さんは兄狩野さんには弟

それぞれの家には、男の跡継ぎがいる

ですが、香月家の場合は

みすず、瑠璃子、美子さん

本家には、3人の孫娘しかしない

どこの名家も、香月家への婿入りを狙っていましたものね

歌晏さんが、ニヤッと微笑む

香月家の内部でも、色々な動きがありましたわ

分家の連中とか、重役たちとかが争っていた

結局、誰が婿入りしても何らかの派閥抗争は起きるものねそれならいっそ、名家同士のしがらみや、派閥争いに関係の無いところからお婿さんを取るというのは有効な手よね

歌晏さんが、ジロジロとオレを見る

香月様がお認めになった男の子ということなら誰も文句は言えないわけだしね

ジッちゃんの公認というのだけが、オレの後ろ盾になっている

ま悪い人じゃないってことは、よく判っているわこれだけのお嬢様が集まっているパーティに臨席して、ここまで控えめな態度でいられる男の子なんて、なかなかいないと思うし

オレが控え目

うちの兄とかだったら皆様に愛想を振りまいて、逆に嫌われまくっていると思いますわ

鳥居さんも、お兄さんが居るんだ

そうよ普通は舞い上がるわよね色んな名家のお嬢様たちと知り合いになろうと、どんどん声を掛けたりして

でも、桃子お姉様それはさすがに、みすずお姉様が見ていらっしゃるわけですから

鳥居さんが、クスッと笑う

オレはみすずの公認パートナーでありだからこそ、この会場に居るのに

みすずを放っておいて、他のお嬢様たちに話し掛けに行ったりはしない

ジッちゃんの私塾の連中じゃあるまいし

そこまで考えて、ハッとする

あいつらなら、やるよな

香月仁とか角田とか

ああいうナンパ男でなくても、香月健思だってきっとあのニヤニヤ顔でお嬢様たちに接触していくはずだ

いや、香月操や司馬アキラみたいなお堅そうなタイプのヤツラだって

積極的に女の子たちとコンタクトしていくはずだ

だって、ここにいるのはみすずたちの学校の生徒たちの中でも、さらに格の高い名家のお嬢様たちだけなんだから

学校に自分だけの警護役を連れて来ることを許されているほどの

自分たちの将来のためにも、知り合いになっていた方が得な子ばかりのはずだ

しかも、歌晏さんや狩野さんのような親・香月家ではない家のお嬢様まで来ているんだし

わたくしや桜子に対しても、毅然な態度で接しているものね

オレが毅然

こんな風にわたくしたちが揃っているのに、ここまで落ち着いてみすずのパートナーという立場から、一歩も逸脱しないのはさすがだと思うわ

歌晏さんが、オレを褒める

ええ、わたくしも驚いておりましたわ

狩野さんも、オレを見上げる

ありがとうございます、お姉様桜子

みすずが、オレの代わりに礼を言う

いや、オレは別にそういうことじゃなくってあのオレはほら、色んなお嬢様たちと無理に知り合いになったりする理由がありませんし歌晏さんや狩野さんに対しても、ペコペコしなくちゃいけないこともないわけですから

だって、オレは名家のお嬢様と知り合いになることで、出世することなんか無いんだし

パン屋になるんだから

私塾の連中なんかとは、人生の目的が違う

当然よね公ちゃんは、香月家の総帥になるんですものね

歌晏さんはい

そういう殿方が、わたくしたちに対して腰を低くなさるのは変ですものまり子、今の聞いた

はい桃子お姉様のことをさん付けでお呼びになられる方なんて、驚いていますわ

あ歌晏様って言わなくてはならなかったのか

いいのよ確かにあなたはまだ、正式には名家とは関係の無い立場の方ですものね様を付けたらおかしいわもっともだからって、わたくしに対して平然とそう言える殿方はなかなかいないと思いますけれど

うわ、怒っているのかな

謝った方がいいのかな

次からは、ちゃんと桃子お姉様と呼ばなくてはダメですよ公ちゃん

公ちゃんがこのパーティに臨席することになったのも香月様の試練なんだと思うわ公ちゃんが、この席でわたくしたちに対してどんな態度を取るのか香月様はテストなさっていたんだと思うの

さっきのわたくしと一緒よそして、おそらく公ちゃんは合格だわわたくしが、香月様ならそういう判断を致します

みすずのパートナーとして、最適だと思うわ公ちゃんみたいな子は

歌晏さんもオレを認めてくれた

ま、このパーティで香月様のお試しを受けた同士としてこれからも仲良く致しましょうねっ

とりあえず、そう言っておく

あ、それと

判りました桃子姉ちゃん

驚く、桃子姉ちゃん

いや、あのオレは男だし桃子お姉様は変かなって思ったから

ま、マズかったか

うーんともう一回、今と同じ様に呼んでいただけるかしら

桃子姉ちゃんは、そう言う

も、桃子姉ちゃん

桃子姉ちゃんは、オレをジッと見つめ

うん、アリね

というより本当に凄い子ねあなたはわたくしが公ちゃんと呼んだことに対して、このタイミングで仕掛けてくるなんて

わたくしが、あなたを軽んじて公ちゃんなんて呼び方をしたことに、全く嫌な顔をしないで逆に、わたくしとより親しい関係を構築しようとしてくるなんていやはや、歌晏桃子敬服したわ

そんなつもりは無かったんだけれど

いいわわたくしを公の場で桃子姉ちゃんと呼ぶことを許します

いや、あのむしろ私的な場所で、そう呼びたいのですが

オレ名家の人間じゃないから、公の場なんて行かないし

旦那様は、本当に桃子お姉様を自分のお姉様として敬愛させていただきたいと思っているんですわ

桃子姉ちゃんが、オレを見る

うんそれはあの桃子姉ちゃん、カッコ良いし

カッコ良いわたくしそんなことを言われたのは、生まれて初めてだわ

あ表現が良くなかったか

だって、華やかだし、みんなの前で颯爽としているのもカッコ良いしジッちゃんに叱られている時だって、キリッとしてて、とにかくカッコ良いと思ったから

あたしの旦那様は、本当に心からそう思っていらっしゃるんです

この子嘘吐かないですからそこが、凄い可愛いの

そ、そうねわたくしも、公ちゃんが可愛い子だっていうことはよく判ったわ

桃子姉ちゃんは、そう答えた

そろそろ行かないとマズいネ

何を元にそう判断したのか判らないけれど

イーディが、そう言ってきたのならそうなんだろう

ええ、旦那様パーティが終わる前に、お戻り下さい皆様のお見送りは、あたしと一緒に

うん、判ったでは、桃子姉ちゃん、それから桜子さん

桜子で結構でございますわ公お兄様

桜子は、そう言うが

いや、オレと桜子は同い年なんだからお兄様は止めてくれ

公でいいじゃないわたくしは、そう呼ばせていただきますわわたくしも同い年ですから

鳥居さんが、そう言った

わたくしのことも、まり子で結構ですから

うんまり子それから、桜子

オレは、1人ずつ声を掛けていく

これからもみすずや瑠璃子、美子さんがお世話になりますそれから、他にもこけからお世話になる子が居るんですけれどとにかく、よろしくお願い致します

オレは、深々と頭を下げた

それから護衛役のシエさん、アーデルハイトさんそれから

桃子姉ちゃんの護衛役って、何て名前の人だったっけ

セバスなんとかじゃなくって、あの本名の方は

ヤマダ・ウメコさんネ

そっと、イーディが囁く

ああ、イーディが天才児で本当に助かる

山田梅子さんもよろしくお願い致します

3人の警護役は、キョトンとしていたが

あそこに居る美智も、ここに居るイーディもオレの大切な家族ですからそれから、もうすぐさっき顔を出した、ヨミやルナも警護役として皆さんの学校に通うことになりますし

警護役って誰の

まり子が、不思議そうにオレに尋ねる

それはいずれご紹介致しますわ

瑠璃子が、上手い具合にフォローしてくれた

じゃあ、あのオレは1回、引っ込みますから

さ、可憐さん旦那様と一緒に、屋敷の中で休んでいなさいね

みすずが、隣の椅子に座っている12歳の美少女に声を掛ける

自分がペットにしようと目論んでいる水島可憐さんに

旦那様、お願い致します

うん、可憐さん行こう

可憐さんは、迷っているが

水島家とお祖父様とのお話し合いが終わるまでは、お家にお返しすることはできませんしそもそも、可憐さんのような小さな子を、スパイの手に渡すような家をあたしは許しませんわ

関西ヤクザのスパイの天童乙女に、こんな可愛い子を託すなんて、確かに保護者たちはどうかしていると思う

それに、ここにずっと居ると他の名家の方たちからの奇異の目に晒され続けることになりますよ

イーディが、そろそろ行かないといけないと言った理由が判った

パーティ会場全体の空気が和み、3大名家のお嬢様たちが義姉妹の誓いをしたことで

他の名家のお嬢様たちが、みすずや桃子姉ちゃんや桜子と親しく話したいと思っているんだ

みんな、こっちの様子をチラチラ見ている

桃子姉ちゃんの道化としてのまり子はともかく

水島家が香月家のパーティにスパイを送り込んで来た問題は香月家だけでなく、このパーティに参加している全ての名家にも関わることだから

今、水島可憐さんと仲良くするわけにはいかないんだ

だから、すでに退席させられた鞍馬姉妹同様外へ連れ出さなくてはならない

震え声で、可憐さんが答える

黒森様よろしくお願い致します

うん、行こう

席を立った可憐さんを、オレはエスコートする

ほら、ポンコツ姉妹そんなところでヘタレてないでアタシに付いて来るネ

イーディが、安城ミタマ・キヌカ姉妹にそう言う

ポンコツではありませぬっ

ヘタレてないですっ

ああ、主と別れてすっかり気落ちしていたくせに

イーディの罵倒に、クッと生気を取り戻す

アンタたちのご主人に会いたくないのネ

イーディは、スバッとカードを切った

驚く、安城姉妹

2人とも、屋敷の中に居るネアタシたちは、そこへ行くアンタたちは来ないノカ

い、行きます

ススッと立ち上がる姉妹

では、皆さん失礼します

オレは、もう一度頭を下げた

これでパーティ会場の中庭に居るのは、ショウとレイカとメイドたちを除いたら、ミンナ、ミスズたちの学校の生徒だけになったのネ

屋敷の中に入るとイーディが、そう言った

美智やシエさんも警護役として学校に通っているわけだし

オレとイーディ、それにまだみすずたちの学校に編入していない鷹倉姉妹たちも中庭から居なくなったから

先週から警護役として潜入して来たばかりの天童乙女も、もういない

ミナホ姉さんとマルゴさんも

あの子たちだけになったから今まで以上に、ハッチャケられるノネ

そうねやはり外部の人の眼特に男の子が近くに居ると、どうしたって緊張しちゃうのよあの子たちは、ホンモノのお嬢様たちですからね

すでに屋敷の中に入っていたミナホ姉さんが、オレにそう言った

あなたをお披露目は充分にできたから、後は女の子たちだけで楽しくはしゃがせてあげましょうね

オレのお披露目

みすずさんたちが義姉妹の誓いをしたことだけでも大成功だったけれどあなたが公ちゃん・姉ちゃんの関係になれたっていうのはミラクルだったわ

ソウでもないネDarlingは、本当に可愛いんダカラ

ミナホ姉さんの言葉に、イーディが笑ってそう返す

でも、ホント香月様のおっしゃっる通り、ちゃんと教育されているお嬢様たちっていうのは素晴らしいわね

ミナホ姉さんは、窓の外のパーティの様子を眺める

うちの学校の女の子たちなら、こんなにお行儀良くないもの

ジッちゃんの話も、みんな黙って大人しく聞いていたし

どんな時でも、慌てず騒がず、お上品に礼儀作法を守っている

例えば携帯電話を取りだして、パシャパシャ勝手に写真を撮る子なんていなかったでしょ

うちの高校の子ならこんなパーティに来たら、写真を撮りまくっている子とか現れるよな

女の子は、写真を撮るのが大好きですものねあの子たちだって、それは同じなのよでも、ホンモノのお嬢様だから時と場合をわきまえているし、パーティの主催者であるみすずさんの許可が出る前に、勝手に写真を撮るようなことはしないのよ

ココは、コウヅキ家の本家の邸宅ダカラネ

ああ、勝手に写真を撮って、内部情報が外に漏れたら困るんだ

だから、今日はガーデンパーティなのネ

スパイが来ることは判っていたから

ガーデンパーティなら、屋敷の中に入る機会はほとんどない

どこがジッちゃんの部屋だとかそういう秘密を探るチャンスは無い

何よりあなたの写真が出回るのは、困るのよ

黒森公は、謎の人のままでいないといけないわ

ああオレの顔写真とかが、流出するのは確かにマズい

でも、お嬢様たちダッテレイカや、ミスズたちと記念写真が撮りたいネ

うんレイちゃんは、今じゃテレビで活躍している有名人だし

みすず、桃子姉ちゃん、桜子の義姉妹と一緒に写真を撮りたい子も多いだろう

だから、これからみすずさんが、みんなで写真を撮る時間を設けるのよ多分、あそこの壁を背景にするんじゃないかしらあそこなら、屋敷の方は映らないし

だから、Darlingは一度退席しないといけなかったノネ

オレもミナホ姉さんも記念写真に撮られてはいけない

さ、ここでも偏光の望遠レンズを使ったら、写真に撮られてしまうわもっと奥へ行きましょう

お嬢様たちは問題無いでしょうけれど警護役の方は、判らないもの

ああ、他にもスパイが紛れ込んでいるかもしれないか

お嬢様たちが撮影タイムにならない限り、警護役が勝手にカメラを取りだして写真を撮ることは無いだろうけれど

記念写真を取り合うことになったら、当然、警護役がシャッターを切るんだし

お嬢様たちを撮るふりをして、こっそり他の写真も撮ろうとするかもしれない

ソレハ心配しなくていいノネ

今、あそこに居る警護役の大半が先祖代々警護役の家に生まれて、子供の頃からお嬢様に付いている子なのネ警護役ダケレドお嬢様たちと同じ教育を受けてきているノネ同じ学校で

ああ、礼儀作法がきちんとしているお嬢様教育をバッチリと受けてきているのか

外から新しく警護役として採用されて来た子は、あのアーデルハイトという子の他に数名だけネみんな、さっきまでの段階でツキコとヨミとルナが心をチェックしたネ心配しなくちゃいけないような子は、もうイナイのネ

イーディは、オレの知らないうちに3人から報告を受けていたらしい

もうスパイや、悪いヤツラと通じているような子はいない

デモ、間違って撮ってしまう可能性はアルカラ奥の部屋に行こうネ

ええ、しばらくは女の子たちだけで楽しい時間を過ごしていただきましょう

それでなくてもスパイ騒ぎとか、ジッちゃんが怖がらせるとか色々あったわけだし

オレたちは、中庭に面する部屋を抜けて屋敷の奥へと入って行く

恐る恐る、オレたちに付いてくる水島可憐さんと安城姉妹

あっ、パパ

少し大きめの部屋に入ると

パパ、パパ、パパっ

綺麗な白いドレスを着たアニエスが、オレに飛び付いて来る

その向こうで、コヨミちゃんがペコッと頭を下げた

もおっ、ずっとコヨミちゃんと2人で寂しかったですのっ

アニエスが、チュッチュッとオレにキスしてくる

そう今日はせっかく集まってくれたお嬢様たちに、アニエスのお披露目もしなくてはいけない

アニエスも香月家の関係者だと紹介することでこれから学校へ入った時に、色んな家のお嬢様と仲良くできるようにする

アニエスは顔も姿も綺麗すぎて、どこかのお嬢様という設定にしないといけない

ていうか、こいつは警護役とかお付きとかは性格的に無理だし

お嬢様どころかお姫様っぽいんだよなアニエスは

先生、もう少ししたらわたくしたちが、会場に連れて行きますわ

ああ、月子とルナもこの部屋に居るのか

まだキョーコ・メッサー様がいらっしゃいますからキョーコ様は、わたくしとだけは絶対にお会いしたくないそうで

鷹倉3姉妹の中でも最強の力を持つ次の巫女の月子

キョーコさんも、月子の巫女の力には脅威を感じているらしい

わたくしはヨミやルナのように、空中に投げ飛ばすことはできないそうなので

ああ、12歳と14歳の妹たちは空に放って、精神集中をさせないことで巫女の力を放出させないことができたけれど

一番上の月子は、立派に成長しているから

公様わたくし、そんなに重たそうに見えるのでしょうか

オレは月子を重く感じたことはない

騎乗位でセックスする時も

月子の膣はキュッと締まって気持ちいい

肌触りが、たまらなくいいんだよな

もおっ、公様ったら

月子が、オレの心を呼んでポッと赤面する

兄さんの方が、よっぽど巫女の力を封じるのが上手だよね

あ、そっかオレが、この子たちとのエッチな記憶を思い出したら

うわ、兄さん

オレは、ルナを後ろから犯している時の12歳のプリッとしたお尻の感触を思い出していた

ううん満足してもらってて、ありがとう

オレがルナとのセックスに満足していることまで、伝わってしまう

え、パパしたいのアニエスとする

セックスの話題だと勘付いて、アニエスがオレに言う

今はダメだいつ呼ばれるか判らないんだから

うー、残念ですの

あれれあの子たちは、何ですの

部屋の外で、中に入っていいものか悩んでいる、水島可憐さんと安城姉妹にアニエスが気付く

もしかしてアニエスへのプレゼントですの

昔、舞台関係の人たちのパーティでとある小さな新劇の劇団の年輩の演出家が、こんなことを言ってました

うちの劇団は主役をやらせてやった若い子が、みんな劇団を辞めてしまうんだよどうしてだろう

いや、それはあなたの劇団の芝居に魅力が無かったというか

ここにこのまま居たら、ヤバイと気付いてしまったからで

脇役やお手伝いなら、そんなに判らなくても

主役なんかをやってしまうと、そこの劇団の地力がよーく判ってしまうわけで

だって、若い子をわざわざ抜擢して主役をやらせてあげたんだよ普通なら恩義を感じて、劇団のために身を捧げてくれるものだろう

つまりそもそもの

主役をやらせてあげたという感覚が、間違っているわけで

そこそこ顔が良くて、自分に自信のある俳優は自分が主役を演じることになっても、それが当然としか思わないわけで

みんな主役になりたくてその道を志したわけで

今回は主役をやらせてもらったから3年ぐらいは、脇役や裏方を頑張りますなんて子はいないわけで

ここで主役をやったんだから、もっと大きな舞台で自分を試したいと思うわけで

特に、若い子は

**してあげたのにという意識は、相手を下に見ていることで

そういう人間のところには、能力や才能のある人材は残っていきません

その演出家の先生は、もう亡くなられたそうですが

何か考えちゃいますよね

そこから次の仕事に繋がる何かがあるのならそこで必死に頑張ることもできるけれど

一度主役をやらせてもらっただけでそこの劇団に居る限りは、より上へ行ける道が無いと感じたら、そこには留まれない

留まっているとしたら、その人はさらに上に行くだけの能力も才能も無い人です

そして、留まっている人たちと話してみると愚痴と他人への悪口しか出て来ないし

869.ハイ・ライフ / 通過儀礼

アニエスが、オレたちの連れてきた自分と同世代の女の子たち水島可憐さんや、安城姉妹の妹のキヌカさんを見て、眼を輝かす

えっと違うよこの子たちは、この後、どうなるのかオレにも良く判らないし

水島可憐さんは、みすずがペットにしたがっていることは判っている

しかし、その前に香月家と水島家で、話し合いをしなくてはならないだろう

水島家が、関西ヤクザのスパイが香月家の邸宅に潜り込むのを助けたのは間違いないのだから

ジッちゃんは、水島家に何かしらのペナルティを追わせなくてはならない

そうでないと、今日来てくれた他の名家に対しても示しが付かない

他の家のお嬢様をも危険に巻き込んだことになるのだから

安城姉妹の方も取りあえず、香月家預かりになったけれど

この子たちをどうするつもりなのか

そうですの残念ですわ

アニエスが、オレに可愛いおっぱいをムギュッと押し付けながらそう言う

とりあえずこっちの水島可憐さんは、みすずのお客さんだから仲良くあげてくれ

この屋敷にはみすずの招待で来ているんだものな

確か、アニエスと同じ12歳だよね

暗い顔で、可憐さんは答える

ええ、そうですのっアニエスも12歳ですのっこっちのルナもそうですのっあっちのコヨミちゃんもそうですのっ

アニエスは、ニコニコ顔でそう言う

じゃあ、パパのご命令ですから仲良くしましょうですのっよろしくですのっルナ、コヨミちゃんもこの子と仲良くしてあげてですのっ

ルナとコヨミちゃんも、仲良く返事をする

それでキヌカさんは、13歳だから1つお姉さんだよねミタマさんは18歳でしたっけ

オレの問いに、姉妹はムスッとして

ああ、嫌われているのかオレ

ていうか、この子たちも生まれてからずっと名家である鞍馬家のお嬢様たちの警護役だったんだから

名家の人間でないオレとは口もききたくないというか

なるべく無視したいんだろうな

あなたたちも、しばらくここに居なさい

ミナホ姉さんが、安城姉妹に言う

鞍馬美里様、ありす様とお会いさせて下さるというお話でしたが

でした

ムッとして、安城姉妹がミナホ姉さんを睨む

モノには順序というものがあるわあたしとこの子は、これから香月様のところへご報告に行かないといけないのよ多分、鞍馬さんたちもそこに居ると思うけれどいきなり、あなたたちみたいな子を連れていけると思う

口籠もる、ミタマさん

香月家の本家の当主の居る部屋だ

誰でも自由に連れて入るわけにはいかない

なるべく鞍馬さんたちに会わせてもらえるように交渉してはあげるけれどまあ、全ては香月様次第よ判るでしょあなたたちも、名家に仕えていたのなら

主従の力関係は、よく判っている

香月家の当主に、絶大な力があるということも

アンタたちが変なことをシタラただですら危ういクラマ家がもっとキケンになるネ

鞍馬姉妹の父親はジッちゃんたちの世代の名家の人たちの思い出がいっぱい詰まっていた鞍馬閣の建物と日本庭園をブッ壊して、高層ホテルにしようとした

ジッちゃんたちの反対の声に耳を貸さないで外国の投資グループにダマされて

あげくに、古い建物は完全に失われホテルは建設途中で、資金切れ

このままでは、鞍馬家の全ての事業が滞りグループ企業は倒産、鞍馬家自体は破産することになるだろう

さっき、歌晏様がみすず様に言っていたけれど名家は潰せないのよ鞍馬家だって、それなりに歴史と伝統があるんだから

だから、香月様は、鞍馬家の救済はしなくてはならないと考えていらっしゃるわでもそれなりのペナルティは支払っていただくことになるわ

つまり鞍馬家の当主の娘を高級娼婦にするというのは

鞍馬家の莫大な負債を返済させるためというより

鞍馬の家に不名誉な罰を与えるということなんだと思う

そういうことをさせないとジッちゃんたち、他の名家の当主たちの怒りが治まらないんだろう

今、アンタたちが、アノおじいサンの視界に入ったらご機嫌を損ねる可能性が高いとアタシは思うネ

ダカラ、とにかくココデ待ってるネ

鞍馬さんたちがどんな様子だったかは後でちゃんと伝えますから

オレも、そう言う

えー、パパ、もう言っちゃうんですの

アニエスが、オレにしがみつく

なら、アニエスも一緒に行きますのっ

キョーコさんたちも居るけれどいいのかしら

ミナホ姉さんが、アニエスに言う

キョーコさんて、あのピョンピョン飛び跳ねて暴れる変なオバサン

ああアニエスにとっては

地下室幽閉時代に、突然やって来たキョーコさんのイメージが強いんだな

えっと確かに飛んだり跳ねたりして、暴れて強いけれど変じゃないし、オバサンでもないと思うぞ

どうせ、この部屋の様子も監視カメラで観ていると思う

何たって、そういうことに関しては、ミナホ姉さんの師匠みたいな人だから

そうよとっても綺麗で若々しいお姉さんよ

ほら、ミナホ姉さんもちょっと顔が引きつっている

キョトンとするアニエス

そうだよ、アニエス

パパがそういうんでしたら

だから、ほらアニエス、大きな声でキョーコさんは、とっても綺麗なお姉さんですって言って

オレと一緒にほら

オレは、アニエスと一緒に大声で宣言する

キョーコさんは

とっても綺麗なお姉さんです

とっても綺麗なお姉さんですっ

ホントにですの

おい、アニエス

ホントにそうだってば

じゃあ、ホントにそうですのっ

アニエスは後ろを振り向き

ルナとコヨミちゃんもそういうことになりましたですのそれからえっと

可憐でございます

うん、可憐ちゃんもいいですの

うんとりあえずいいか

じゃあもう少し待っててくれあっちのパーティ会場の方も、しばらくは同じ学校の子たちだけで歓談することになっているから

アニエスをお披露目するのは、もう少し後でいい

月子ここの部屋のこと頼む

月子が、笑顔で返事をする

一番年長で、落ち着いている月子が居てくれれば、心配は無いだろう

Darling、アタシもここに残るネ

アタシ、綺麗で若々しいキョーコはいいケレド綺麗で麗しいアノ人は

ミス・コーデリアのことは、苦手なんだよな

イーディは、あの人の同性愛のペットにされそうになった経験があるから

判ったじゃあ、イーディもここに居てくれ

イーディが居れば安城姉妹も、抑えられるだろうし

わたくしも、その方が良いと思いますわ

それと、公様もしもの場合は、善処させていたたいてもよろしいですか

もしもの場合

月子が、巫女の力を行使するということか

色々と抱えていらっしゃるようですから

ニコッと、月子は安城姉妹を見る

この姉妹はこの部屋を抜けだして、鞍馬さんたちを連れて、この屋敷から脱出するぐらいのことは考えているんだな

この子たちは思いきったことを考えて、実行する胆力がある

キョーコ・メッサーに、スカイラブ・ハリケーン・ミキサーをカマすような武闘派姉妹なんだから

何か物騒なことを考えていることを月子が、この子たちの心から読み取ったんだな

うん許可するイーディも月子と協力してくれ

ニヤッとイーディが微笑む

先生、任せておいて下さいませ

兄さん、大丈夫ですから

ヨミとルナも、オレの思考を読んでそう答えた

巫女の力のある鷹倉3姉妹+コヨミちゃん、それにイーディも居るんだから

心配ないか

じゃあ、みんな仲良くな

オレはアニエスの美しい乳白色の髪を撫でてそう言った

ジッちゃんの声がした

オレはドアを開けミナホ姉さんと中に入る

うんご苦労だったまあ、どこでも好きな所に座れ

20畳ぐらいはありそうな大きな部屋に大きな椅子に座ったジッちゃん

その後ろにはジッちゃんの2人の専任警護人、大徳さんと張本さん

部屋の反対側には、キョーコさん、ミス・コーデリアがソファでくつろいでる

それから、入り口のドアに近いところのソファに鞍馬姉妹が怯えた表情で座っていた

お前、せっかくのパーティだというのに、何も飲み食いしていないだろう克子くん、こいつにお茶を入れてやってくれないかね

ジッちゃんは、まるで秘書の様なタイトスカート姿の克子姉にそう言った

あ、お茶はいいよみすずや瑠璃子もほとんど飲み食いできていないんだからオレだけここでお茶を飲んでいたら、あいつらに悪い

パーティの主催者だということと狩野さんや鳥居さん、さらに歌晏さんといった他の名家のお嬢様たちとは異質な子たちが同じテーブルに来てしまったことで

みすずも瑠璃子も、自分のテーブルから離れられなくなってしまった

いや、あいつらのテーブルには鳥居の娘がサンドイッチを運んで行ったろうそれに歌晏の娘が来たことで、飲み物や食べ物も頻繁にメイドが持って行っておる

ああ、歌晏さんは遠慮なくこっちに持って来てって言えちゃうタイプだもんな

だから、あの子たちの方は心配するな全然飲み食いできていないのは、むしろお前の方だ

オレは乾杯のグラスだけだもんな

そうよお茶ぐらい飲みなさい

克子姉が、オレにお茶を運んで来てくれた

とりあえずジッちゃんとキョーコさんの真ん中辺りに座る

ミナホ姉さんも、オレの隣に座った

しかし、歌晏の娘が言っていた通りお前は良いな邪魔にならないところが良い

ジッちゃんは、いきなりそんなことを言う

あれだけ女しかいないところに居て舞い上がらず、余計な自己主張もせずに平然としている

だってうちは、オレ以外はみんな女の子だし

もう慣れた

毎日、あれだけたくさんの女の子と一緒に暮らしているんだから

24時間、いつも誰かと一緒なんだし

風呂も夜寝るときも

それでもだあの少女たちも、きっとお前については良い印象を持ってくれていると思うぞ

いや、良いも悪いもオレ、ほとんどの子とは話していないし

それがいいのよ名家のお嬢様たちはガツガツしている男の子にはウンザリしているから

みんなパーティとかに行かなきゃいけないでしょそしたら、**家のお嬢様でございますかってニヤケた男が次々と近寄って来るんだから

ああ香月仁とか、角田とか

ああいうナンパ男は、いっぱいるんだろうな

男というのは、ニヤニヤしながら自分を売り込んで来るものなんだって皆さん、思っているのよ警戒もしているわだって、今日、いらしている方々はホンモノの名家のお嬢様たちだけだから

ミナホ姉さんも、オレに言う

うかつに変な男と知り合って付き合うどころか、噂話になるだけでも不名誉なことなのよあの家のお嬢様は、お尻が軽いなんて言われたら、恥ずかしくて生きていけないわ

そんな世界なのか

あの学校に通う子たちには名家の一員である名誉を徹底的に教え込まれる自分が恥しいことをすれば、一族と先祖に申し訳が立たないとな

今の時代に箱入りのお嬢様を作っておるそうでないと名家は守れん成金の娘や芸能人の娘を入学させないのはそのためだ親が下品なら、娘も下品になるそして、悪貨は良貨を駆逐する下品な人間と知り合うと、どんなに品良く育てた娘も慎みを失う品の悪いゲスな男と付き合って、そういう子供の子を宿すそうなれば、名家全体が下品な連中に浸蝕されることになる

名家の娘と結婚すれば財力も、色んな権力者とのコネも手に入る

何とかして、食い込みたいとお嬢様たちを口説きまくるヤツだっているだろう

人間の教育は20歳までだよ私は、そう思う人間は、20歳までに学んだことを基礎にして、その後の人生を組み立てていく

みすずたちの学校を卒業した少女たちの多くは名門の大学へ進む今は、女子だって高等教育を受ける時代だからなだが、あの子たちは大学へ進んでも決して、馬鹿な男子学生との酒を飲む会とか、下らない会合などには所属しないそういう一見、楽しそうなモノが、実は何の意味も無いものだということを高校までに学んで来ているからなそういう活動をやっている男には、決して近付いてはいけないということを

えっと飲み会とか、サークルとかには参加しないってことか

変な男と付き合って子供など孕んだら、家にどれだけの迷惑が掛かるか自分1人の問題ではないのだよ先祖と家族だけではない代々仕えてくれている臣下たち、それに家が経営している企業そこに働いてくれている人たちにとっても恥辱を与えることになってしまうということが判っているのだ

自分だけでなくみんなにも恥ずかしい思いをさせてしまう

戦後の個人主義の教育は全て、自分の責任でやっていることなら、親も兄姉も関係無いという思想を子供たちに植え付けてきた自分がどんなに恥ずかしいことをしたとしても、それでペナルティを受けるのは自分自身なのだから好きにやらせろとしかし、人間は1人では生きていけない群れを作って、その中でしか生きられないのだ家族とは、群れの最小単位だ

個人と家族

自分が恥ずかしいことをしたら、家族にも恥辱が及ぶそのことを理解して、日々の生活を勤めるのが名家に生きる人間の義務だこういう考えは、普通の学校の戦後民主主義教育が至上なものだと勘違いしている教師たちには、受け入れられないだから、私たちは名家の娘たちだけのための閉鎖された学校を守り続けるしか無かったのだ品の悪い親に育てられた娘たちだけでなく高貴さというものを理解しない教師を受け付けないために

それでジッちゃんや、狩野さん、歌晏さんのお祖父さんたちは

日本一のお嬢様学校を時代の変遷から守り続けた

しかし、みすずが突然、名家とは何の関係も無いお前をという人間をパートナーとして選んだこれは、あの学校に通う娘たちとしては、衝撃的な事件だ

名家の娘たちの9割近くが許婚と結婚する自由恋愛は認められていないのだ

家の伝統を守るためには

親の決めた結婚相手と結婚する

いや、これもまた現代の日本人が勘違いしていることだが自由恋愛による結婚なんてものが、人間の歴史の中で主流になったのは、この百年ぐらいのことなのだよ結婚というのは、家と家との関係で親が相手を決めるのが普通だったのだ

でも、ロミオとジュリエットみたいな話も昔からあるじゃないか

結婚と恋愛は違う

お前、マリー・アントワネットの恋人のフェルゼンという男を知っているか

だ誰

フランス王妃のマリー・アントワネットに恋人が居ることは宮廷中の人間がみな知っていたもちろん、夫であるルイ16世もだ

は夫も知っていた

だが、王妃の恋人だからといって、フェルゼンが処罰されることは無かった結婚と恋愛は違うからだ結婚とは、家と言えとの結び付ける行為であって妻や夫と恋愛感情を持たなくても良い結婚していても、恋愛はしていいんだヨーロッパには長く、宮廷風恋愛の文化があったからな

アーサー王の王妃ギネヴィアは、アーサー王の忠実な臣下であるランスロットと恋仲にあるそして、そのことはアーサー王も知っているこの関係が、アーサー王とランスロットの主従関係を傷つけることはないし、アーサー王もギネヴィアを不実だとして処罰することもない

結婚は家と家との問題だから自分の好みの相手と結ばれるとは限らないだから、恋愛は別でするそういう考えだな

ただし、これはヨーロッパのキリスト教文化が、女性の権利を比較的認めていたからこそのことだヨーロッパでは、女にも財産を持つ権利があったからなしかし、東洋では多くの場合、女性には権利が無いだから、自由恋愛は男だけのものになっていた戦前には姦通罪という罪があったこれは妻にだけ適応される夫の方は外で浮気をしようが、恋人を作ろうが、妾を囲おうが罪にはならんが妻が夫以外の男性と通じた場合は、処罰されたのだよ

現在の倫理観というのは産業革命後に中産階級が生まれ、家族の単位が夫婦とその子供たちの小さな世帯だけになってからのものが多い産業革命以前は家族というものは、幾つもの世帯が集まった大きなものだったそれだけの人数がいなければ、機械化される以前の農業はできなかったのだ一族の結束がとても大事だったからこそ、誰と誰を結婚させるか一族の中で結婚させるか、他の家との関係を強化するか、そういうことが家族の長によって決められていったのだ

ああ、大家族でないと農地も耕せないし、放牧もできない

土地や水場なんかの問題もあるだろうし

そしてそれには利点もある知っていると思うが、恋愛結婚よりも、親に決められた結婚の方が離婚するケースが少ないのだ家と家との関係があるから何か問題が起きたら、親たちだけでなく一族の人間がみんな介入するしな小さな子の面倒もみんなで見るし、何かと助け合いをしてくれる

ああ、大家族なんだもんな

それと結婚できない人間がいなくなるよほどの欠陥のある人間でない限り、息子も娘も一族が結婚相手を見つけてくれるからだ

名家はまだ大家族のままなのだだから、そういう昔のやり方をまだやっていると思ってくれ

そっか香月家の分家の連中は、所詮、分家なんだ

だから、ナンパな行為をして女遊びをしていられる

でも、名家の本家の人間はそんなことは許されない

それなのにみすずちゃんが、あなたとデキちゃったわけよ

しかも、香月様がそれをお認めになっただったら、どんな男の子なのか、みんな見てみたいって思うのは当然よね

つまり今日は、あの子たちの大半はあなたを見に来たのよ歌晏様のお嬢様なんて、ホント、それだけが目的だったんじゃないかしら

でさっき、みすずちゃんが、お嬢様たちに香月家の事情をお話ししていたでしょ

ああ、香月家は男の後継者がいないから婿取りをしないといけないっていう

あれで、あのお嬢様たちも納得したのよそして、あなたを見て悪く無い子だと、認めてくれたってことよね

お前が控え目にしていたことが良かったのだよただでさえ、女の子の中にたった1人の男は目立つそれなのに常にみすずを立て、全く自己主張をしなかったことが

みすずちゃんと、瑠璃子ちゃんも合格よ普通の女の子ならさカレシができたら、みんなの前でデレデレベタベタするものだけれどあの子たち、毅然とした態度で、必要以上にあなたにくっついていなかったでしょ

女の子って眼の前でベタベタされると、ムカムカするからでも、ちゃんとこの人たちは愛し合っているんだなとか信頼し合っているんだなっていう自然な雰囲気が出てたから、皆さん、あなたたちを見て嫌な思いはしなかったと思うわよ

ま、それでもみすずちゃんに対する違和感とかは残るんでしょうけれど、その辺は集団のトップを歌晏様のお嬢様に挿げ替えることで、誤魔化しちゃったしね

桃子姉ちゃんで誤魔化す

ほら、今日のパーティはみすずちゃんの主催のはずなのに、いつの間にか歌晏様のお嬢様が全体を仕切っていたでしょ

そうだ義姉妹の誓い辺りから

あれでいいのだよ歌晏の娘を立てたことでみすずの立場が頑健になったのだ

今日のパーティに来た少女たちは、これからは1つのグループとして結束していくだろう会長は歌晏の娘で、みすずは副会長で良いいや、むしろその方が良い目立たずに済むからな何しろ、歌晏の娘は目立つことが大好きなようだし

桃子姉ちゃんは派手好きだもんな

今日の会は共同体験であり通過儀礼として機能した緊張と緩和キョーコくんの襲撃や、スパイの逮捕が良い緊張を呼び私の声によって、さらに集中される歌晏の娘が私に叱られている時、会場内の娘たちは自分も私に叱られているような気分になったろうあの時、私が一気にまくしたてたことなど全てどうでもいいのだよ私に叱られたことを恐れ許されたことで、心がほぐれるさらに、私に秘密を打ち明けられたことで

閣下という呼び方の話よ

ミナホ姉さんが、オレに囁く

ああ、そうだあれみんなに話しちゃっていいの

ジッちゃんが、自分のことを閣下と呼ぶ人を実は小馬鹿にしているという

ジッちゃんには大使になった経歴なんてないのに元・大使なので閣下と呼ばなくてはいけないらしいという嘘を信じ込んでいるんだから

これから会う大切な人間について、事前調査すらしてこないようなヤツだと

いいのだよアレで

ジッちゃんは、フフフと笑う

あの子たちは、今日帰宅してから私が話したことを親たちに話すだろうしかし

うん歴史上閣下と自分のことを呼ばせたのは、成り上がりの悪いヤツで

だから、ジッちゃんをそう呼ぶことはそいつと同じだと言っているみたいなことになるわけで

親たちはどうすることもできんのだよ

香月様はご自分が本当はどう呼ばれたいのかというお話は、一切なさっていないわ

そして私は、私の部下には自分に対する戒めとして、私のことを閣下と呼ぶように命じている

そうだ閣下という言葉の裏の意味はどうあれ

翔姉ちゃんやレイちゃんたちが、ジッちゃんを閣下と呼ぶのは

ジッちゃん自身の命令だ

私の部下は、これからも私のことを閣下と呼ぶ

ああジッちゃんに対して、臣下の礼を取るのなら閣下と呼び続けないといけないのか

むしろ、明日から急に公の場で私のことを閣下と呼ばなくなると困る連中も出て来るのだ今日、来たのは一部の名家の娘たちだけだからな

そうか今日来ていない名家の人は、閣下という言葉の真実を知らない

だから、今まで通り閣下と呼び続けるだろう

そんな中で、今日来た子の親だけが急に閣下を止めて、香月様とか呼び出したら

他の人たちからは浮くし、目立つし、反感を買うかもしれない

皆、結局娘からは何も聞いていないという顔をして、今まで通り閣下と私を呼び続けるよそれが一番、ことを荒立てない方法だからな

ジッちゃんは、別に閣下と呼ばれることを嫌がっているわけではないから

みんな気まずい思いをするだろう困惑した顔を楽しませてもらうよ

意地悪そうにジッちゃんは、笑った

大事なことは、今日来た娘たちが香月家の当主が自分の秘密を打ち明けてくれるほど心を開いてくれたと感じてくれることだ極度の緊張の後での緩和みんなで同じ体験をしたことで仲間意識が芽生えているだから、今本当に、みんな和やかに和気藹々とパーティを楽しんでいるだろ

親・香月家組とかもなくなった

桃子姉ちゃんを中心に、みんなで楽しく談笑している

これでいいのだあの娘たちはみすずや瑠璃子、美子、そしてお前にとってお互いに一生助け合うことのできる大切な仲間になってくれるはずだ

セックスシーンは、誰から行くか悩んでます

鞍馬姉妹か、天童乙女か、水島可憐ちゃんかうーん

そしてそろそろ、何とかせねば

落ち込んでいても、仕方がない

ただ貧すれば鈍するというのは、本当ですね

多分、もっと酷いことになる前にトラブルの元凶から離れられたのは正解なんですけれど

ああいう人間を信用してしまったのは、やっぱり心に隙があったんだろうな

いや、昨日までは本人は善良で、こちらのことを気遣っているつもりなんだけれど、結果として大迷惑な人だと思っていたのですが

今日、改めて思い直してみると

最初っから、ガッツリとダマす気満々な人だったんだろうなあ

人を見る眼が無かったなあ

また落ち込んでしまいそうです

870.ハイ・ライフ / 始動

さてと上流階級のオジィちゃんの偏屈話は、それで終わりかい

ニヤニヤしながら、ジッちゃんとオレたちとの会話を聞いていたキョーコさんが口を開く

まあ、あたしが言うのもなんだけどさそのオジィちゃんの言うことは、話半分に聞いておくのが正解だからね

フンと鼻を鳴らす、キョーコさん

イケスカナイ上流階級《ハイ・ライフ》の人間の上から目線の勝手な理屈で、世の中は、こうなっていますっていうような話だからね全部間違っているとは言わないけれど鵜呑みにしたら、とんでもないことになるよ

ジッちゃんは、名家の人間として

しかもたくさんの名家を束ねる由緒ある香月家の当主としての立場から、オレに話している

あたしからしたらあのお嬢様たちは、動物園の檻の中に居るようなもんだ生きていくためには何の問題も無いように見えるけれど自由が無いこいつと結婚して、子孫を作れなんて、誰かに命令されて一生を送るなんてのはサイアクだと思わないかいそんなの、女を家畜だと思っているようなもんじゃないか

確かに、キョーコさんの意見はそう通りなんだけれど

男は、どこまで女を馬鹿にしたら気が済むんだろうね

そういう視点になるのも、当然なんだけれど

残念ながら私たちも家畜の一部なのだよ

ジッちゃんは、言う

男は自由で女だけが、男の言うままに人生を決められているわけではないからな不自由な思いをしているのは名家に生まれた人間全てだ男だから、女だからという区別は無い

そうか男だって、好き勝手に恋愛して結婚はできないんだ

名家の当主の家では

財産や権力など自分の家の中だけでなく、色んな家の思惑も絡むから

私だって、自分の望んだ相手と結婚できたわけではないからな

ジッちゃんが本当に愛していたのは瑠璃子の祖母だ

ジッちゃんだって、家のために一族によって決められた相手と結婚するしかなかった

男はいいんだよ結婚がどうだろうと外で幾らでも、浮気ができるんだからアンタだって、相当、遊んだんだろ

うむまあな

苦笑する、ジッちゃん

だが、女の方はさっき、昔の日本には姦通罪っていう罪が女にだけ適用されていたっていう話があったけれど今の日本だって、妻の浮気は即・離婚になっちゃうレベルの大罪っていうことになっているんじゃないのかい夫がフーゾクへ行って、妻に内緒でセックスして来るなんて話はよくあるけれど妻が、ホストにハマって、若い男とセックスしてたなんて話が流れたら親・兄姉・親戚・友人・知り合い・仕事関係者、ぜーんぶそんな妻とは、すぐに離婚しろっていう話になるだろ

夫の風俗通いは、まあまあ、落ち着いて離婚するほどのことじゃないですかぐらいの話になるだろうけれど

妻がホストクラブに通い詰めて、その上、若いホストとセックスしているということがバレたら

世間からは、袋叩きにされるだろうな

人間てのはさ、どうあがいたところで性欲ってもんがあるんだよ名家に生まれた男の場合はどうやって解消させているのさ

ジッちゃんの問いに、ジッちゃんは

本家の男子の場合は多くの家では、思春期になった段階で、性欲解消のための側女をあてがっている代々仕えている臣下の娘などから、探して

セックスの相手をさせているのか

放っておいて、変な虫が付くよりは良いからな

名家の跡取りを狙って寄って来る女たちがいる

いや、悪い大人たちが、そういう子たちを送り込んで来るんだな

私にも居たよこいつと同じような年齢の頃には

ジッちゃんは、オレを見てそう言う

若く美しく主家に対する忠誠心に厚い女だった若い頃の私の、有り余る性欲を全て受けとめてくれたよそういう女が居てくれたから、外の女たちの誘惑に耐えられたのだと思うその頃の黒森の娼館は、政財界の大物たちの影の社交場だからな香月家の次期当主といえども、若造は立ち入れなかったそうだな大学を卒業して、何年か経った頃だな幾つかの事業を自分で手掛けるようになってようやく、父から黒森楼に足を踏み入れることを許されたのだ

つまり学生時代のジッちゃんは、臣下の娘を側女にしてセックスしていたのか

それでその人は、今は

それがまだ居るこの屋敷の中にな

申し訳ないことだが彼女は、私の側女になった時に、子供の産めない身体になっただから、一生、私に仕えてもらっているみすずや瑠璃子の世話もずっとしてくれているよ

そうやって他人の人生を変えてしまっていることをアンタはどう思っているんだい

キョーコさんは、尋ねる

別にどうも思ってはおらんよ全ては運命だ

その女性が、アンタの性欲処理の道具として一生を棒に振ったのを運命っていう言葉で片付けようというのかい

それを言うなら私が、香月家の本家の嫡男として生まれたのも運命だよ15歳の誕生日に眼の前に、3人の少女を連れて来られてこの中から、1人を選べと言われただから、1人選んだ彼女を選んだのは、私だが誰か側女を1人選ばなくてはいけないということは、私の意志とは関係がなかった私にだって、選択肢は無かったのだよ

ジッちゃんの親とか、一族の人たちが決めたことで

いや、ジッちゃんの前の跡継ぎだった人も、その前の人もみんな、そういう風にしてきたから

しかも、私が選んだ少女が家臣の誰の娘なのかということも、私はよく知っている娘本人だって、子供の頃から、本家での集まりでよく顔を合わせていた子だそういう子を側女にしたからには、ちゃんと抱いてやらねばならないし他の女に、眼を向けてもいけない実際、学生時代から結婚するまでは私は、側女以外の女とは同衾していないしな

あれは良い修行になったその後他の名家から迎えた妻と、夫婦の生活をしていく上で女と暮らしていくということ、女というものが何を考え、どんなことに腹を立て、何をしてはいけないのか私は全て、あの側女に教わったようなものだ

おやおや、とても性豪として名を馳せた香月重孝とは思えない言葉だね

キョーコさんが、笑う

私の女遊びは男の付き合いだよ昭和の頃の話だぞ豪快な人物だと思われないといけない理由もあったしな

最初はそうでもオジイちゃんは、オンナ遊びにハマッたんだよね

40過ぎたら、妻も側女も相手をしてくれなくなったからだ女は性欲が衰えるらしいが、男はそうではないまだまだ、女を抱きたいのだからまあ、そういうことになる

苦しそうな言い訳を、ジッちゃんはする

まあ、いいやそういうことにしておこうオジィちゃんの過去を責めても心苦しくなるだけだからねただ

キョーコさんは、ジッちゃんをギロッと睨む

そうやって、名家の跡取り息子には若いうちから側女を与えたりして、性欲処理させているっていうのにさ今でもやっているんだろ

おそらくな今の香月には娘しかいないが、若い跡取り息子のいる名家では

男にはそうやって手厚くケアして娘の方は、ほったらかしなんだろ名門女子校という動物園の檻の中に入れて低い家柄の男とは、口をきくなとか話し掛けられても無視しろとか徹底的に教育して成人して、他の家に嫁に出すまでは、性欲を抑え付けている

私はみすずは、子供の頃から性欲が強いことは判っていたから、渚くんに頼んで同性愛で性欲を解消させるようにしていたよ

でも、瑠璃子と美子さんには性的な知識を何も教えないようにしていたじゃないか

オレは思わず言った

そうだなあれは抑圧だな、確かに

ジッちゃんは、認める

あたしはさ男の子の性欲のことは、家臣の娘の人生を犠牲にしてでもケアしてやろうとするのに女の子の方は、抑圧するだけっていう、その考えが気にくわないんだよ

男の跡取り息子にもガマンさせるっていうのなら、まだ判るよ何で、女だけ娘はあんたたちの可愛らしい天使じゃないんだ生きているんだからね

うむそうだなそれは、今後の課題として考えさせてくれ私1人では、どうすることでもできない

名家全体のことだから、ジッちゃんはそう答えるしかない

男の跡取り息子に側女を当てがうみたいにお嬢様たちに側男っていうわけにはいかないし

男と女の性欲も違うと思う

オレは男だから、毎日だってセックスしたいと思うけれど

女の子は精神が安定していると、そんなに毎日じゃなくてもいいらしい

ただ、一ヶ月の中に数日は、狂った様にセックスしたくなる日があるらしくて

そういう時には、思いっきりセックスの相手をすると歓んでくれる

それも翔姉ちゃんやレイちゃんみたいに、普段はキリリとしている人の方が、激しく乱れるし

ま、別にいいんだけれどあたしには、関係無い話だし

キョーコさんは、カラッと態度を変える

判ったろ上流階級とか、名家とか言っているけれど要は、絶滅しそうな少数民族なんだよおかしな独自の文化と風習を持っている希少価値はあるから、保護した方がいいのかもしれないけれどまあ、その辺の判断は、アンタが自分でしなただアンタ自身は、そんな民族では無いんだからこのジィちゃんたちの文化や風習に取り込まれる必要はないんだよ

そうだオレは、名家の人間ではない

アンタが、あのみすずとか瑠璃子っていう子を自分の女にしたんであってまた、あの子らがアンタと生きていくって自分で決めたんであってさアンタが名家の世界に呑み込まれちゃいけないんだよ

名家が、どういう仕組みで、どういうルールで成立しているかは知っておくべきだけど

オレが名家のしがらみに、押し潰されるのはダメだ

香月のジィさんもさほどほどにしておかないと、アンタの孫娘たちごと、この子を海外に連れて行くよ名家とか香月家とかが、関係無い世界へ

キョーコさんは、ジッちゃんにそう言う

この子が面白いのは公平な価値観を持っていることだろ相手が名家のお嬢様だろうが、貧乏人の娘だろうが、公平に敬意を持って相手するところだろそういう良いところを壊しちまいそうなことは、やらないで欲しいね

不機嫌そうに、キョーコさんは言う

なぜ、君がそこまで言う

ジッちゃんに問われたキョーコさんは

そりゃ、あたしは黒森家の父親代わりだからねあたしが文句を言ってあげなきゃ、誰が文句を言えるんだよこいつの姉ちゃんのミナホだって、アンタには真っ正面からクレームは言えないだろ

キョーコさん

母親代わりでなく父親なのかね

そうさ意外性があって、面白いだろ

ニヤッと、キョーコさんは笑う

ということだから、うちの家族をヨロシクねおジィちゃんあ、そうだ、ミナホ

キョーコさんが、ミナホ姉さんを見る

あたしのことをさ綺麗なお姉さんて、呼ぶのはいいんだよあんた綺麗な若々しいお姉さんとか言ったなかったかい

さっきのアニエスとの会話を盗聴していたんだ

綺麗なお姉さんが若々しいのは当たり前だろていうか、あんたまさか、あたしに若さが無いとか言いたいのかい

ごめんなさいは

ごめんなさいキョーコさん

頭を下げる、ミナホ姉さん

声が小さい

ごめんなさいっキョーコお姉さんっ

んよろしいっ

ああミナホ姉さんにとっては

キョーコさんが、オレにとってのミナホ姉さんみたいな存在なんだ

年上の優しくて頼りになる家族

そしてキョーコさんも、ミナホ姉さんのことを本当の妹のように可愛がっている

そんじゃそろそろ、あたしとコーデリアは失礼させてもらうよお嬢様たちがお帰りになる前に、キョーコ・メッサーがこの屋敷から立ち去ったってことにしておかないといけないだろ

パーティ会場の中庭には、他の名家の大人の護衛役は入れなくしてあるから

今は、まだ外の人たちには、キョーコ・メッサーがここに居ることは知られていない

しかし、パーティが終わって、それぞれお嬢様たちが自分の車で帰宅する時にはオレを見た感想や、レイちゃんたちに出会ったことと並んで、キョーコ・メッサーの乱入も語られることになる

お嬢様たちにとっては、キョーコ・メッサーはテレビの中でのレイちゃんの敵役でしかないけれど

プロの大人の警護人たちにとっては国際的な犯罪組織マランドロの大幹部だ

当然、警戒をする

だから、お嬢様たちの帰宅時間になる前にもう、キョーコ・メッサーは帰りましたという情報が伝わるようにしておかないといけない

とにかくオジィちゃんからの仕事は受けるよこれから、すぐにコーデリアたちと関西へ行って来るから

関西

ホントどこの国でも、マフィアっていうのは下らないよね嫌がらせのためだけに、人や時間やお金を浪費するわけだから

嫌がらせですか

そうだよ今日、ここに潜り込んで来たスパイの目的はただの嫌がらせだよそうじゃなかったら、あの娘を鉄砲玉みたいに使い捨てにしたりしないだろ

あの娘って天童乙女のことか

自分たちは、いつでもあの子みたいにお嬢様たちの近くに、スパイや刺客を送り込むことができますよっていう、関西のヤクザさんの嫌がらせなのよ

そういう嫌がらせを仕掛けてくるほど向こうは、弱っているってことさ

キョーコさんが、そう答えた

あっちも一枚岩じゃないってことだろうね内部で意見が割れて、まとまらないからこういう時間稼ぎをするだから、こっちは嫌がらせには応じないで一気に、攻撃に出るのさ

だから今日のスパイは、捨て駒なんだよ香月家の屋敷にそれも香月セキュリティ・サービスのエースが揃っている時に、あんな子1人を送り込んだって意味は無いだろ今日はそっちの怖いオッサンたちまで、ここに居るっていうのにさ

恭子さんは、ジッちゃんの背後に控えている大徳さんたちを見る

確かに、名家のお嬢様たちのパーティでそれぞれの警護役も来ていて

レイちゃんも翔姉ちゃんも来ていて

なおかつ、ジッちゃんが在宅で最強の専任警護人の2人までが居る

単純に香月家が主催するパーティをメチャクチャにして、他の名家に不快な思いをさせるってのだけが狙いだよあのスパイが捕らえられるのは、最初っから予定の内なのさ

キョーコさんは、言う

そして敵は巫女の力の存在も知っているだから、あのスパイには、余計な情報は知らされていないしむしろ、嘘をたくさん教え込まれているはずさ

巫女の力で天童乙女の心を調べたら

こちらを騙すための情報ばかりを掴まされるのか

でその情報の裏を取るなり、解析するなりするのに時間を取られることになるその隙を付いて、あちらさんは次の手を仕掛けて来るっていうことさ

パーティを潰して、香月家の評判を悪くするのにプラスして、嘘情報で時間稼ぎもしようっていうのか

だから、こっちはスパイの尋問なんかしないで、さっさと攻撃に出るわけだよ

天童乙女の尋問をするのは、時間のムダということか

でも、あの人気が使えましたよねそんな能力のある人を、使い捨てにしちゃうんですか

オレの問いにキョーコさんは

そういう手駒の価値を考えないで、鉄砲玉にしちゃうってのがあちらさんが焦ってて、内部分裂しているっていう証拠なのさ

ああ、中で揉めているから適材適所というわけにはいかない

鉄砲玉として使い捨てるにしてもそれなりに能力のある子を使わざるを得ないのか

あの天童乙女っていう子ですけれどキョーコさん、要りますかもちろん、今回の仕事が終わった後ですが

ミナホ姉さんが、キョーコさんに尋ねる

あたしは要らないね

キョーコさんは、即答した

そうですかああいうタイプは香月セキュリティ・サービスよりも、キョーコさんの組織の方が向いていると思ったんですけれど

ヤクザ世界で育った侠客の娘だもんな

ていうか、ミナホ姉さんはもう、天童乙女をどうするかを考え始めている

ああ、今は香月セキュリティ・サービスに分析担当として在籍しているからか

性格的には、あたしたちの方が近いんだろうけれどあの子は、もうダメだよ巫女の支配下にあるだろ

天童乙女は月子が力によって自分に従えと命じられている

もしもの時におかしな要因で裏切る可能性のある子はうちでは使えないよ

いや、でも月子ですからキョーコさんを困らせるような命令とかは、しないですよ

オレがそう言うと、キョーコさんは

それは、あくまでも今は、巫女の3人姉妹がみんな、アンタの女になっているからだろもう1人の子も心は掴んでるようだし

だから、心配ないですって

アンタが生きている限りはね

もしも今、あんたが何かの理由で死んだらあんたの女たちは、みんなどうなってしまうか判らない

自暴自棄になって、とんでもないことをしでかす子だって現れるかもしれないそうだろミナホ

そうねあたしだって、今、あなたが死んでしまったら何をしてしまうか判らないわうちの学校の生徒を全員道連れにして、自殺しちゃうかもしれない

寧もそうだろあの極端に心のバランスが取れていない子は、あんたっていう重しを得て、ようやく落ち着いたんだから

みすずや瑠璃子もそうだ今、お前に死なれたらあの子たちが何をしでかすか、私には想像ができん

じ、ジッちゃん

巫女の3姉妹もそうさあんたの存在があの子たちにとっては、物凄く大きいんだだから、みんなあんたのためなら何でもするどんなことでも

だから、命を大切にするんだよ今のあんたをみんなが頼りにしているんだ無理はしなくていい頑張りすぎなくて良いとにかく健康でいることが、一番大切なんだからね

キョーコさんは、オレに微笑む

この若くて綺麗で頼りがいのある美しいキョーコさんが言うことなんだから忘れちゃダメだからね

お前は凄いな

キョーコさんとミス・コーデリアが立ち去った後ジッちゃんが、言った

あのキョーコ・メッサーが男を心配するとは

それがこの子の素晴らしさなんですわ

キョーコさんが話していた時は、会話に参加しなかったよな

それが、キョーコさんと克子姉の微妙な距離感なんだな

ジッちゃんは、昔は克子姉の顧客だったからこんな風に親しげに話せるけれど

あたしたちと生活していても周りがみーんな女の子なのに、全然、平然としているしみんなとお風呂に入るのも、当たり前っていう顔をしているし

うむ、外のパーティも女たちだらけなのに、泰然としておったものな

その空気の中にふわっといる子なんです変な自己主張をしないから、誰ともぶつからないどんな人のことも受け入れちゃう子だからどこでも場の空気に溶け込んじゃうんです

オレは、子供の頃から家の中で、気配を消していることを強制されていたから

オレの母親は、子供を完全に無視していたから

だから、オレは空気になるのが上手いだけで

さてとキョーコくんたちが退席したのだから、他の仕事を勧めよう

ジッちゃんは、ずっと部屋の片隅にいる鞍馬姉妹を見る

どうして君たちに、私たちとキョーコ・メッサーの会話に同席させたか判るかね

怯えきったままの姉の美里さんは、プルプルと大きく首を振る

妹のありすさんは

わたくしたちをもう名家の娘として、家に帰ることはないからなのですか

そういうことだ今、見たことを君たちは、父親や一族の人間に話すことは無い

そして、ミナホ姉さんを見る

妹の方は、なかなか見所があるようだね

しかし、まだ13歳ですわ黒い森は、若すぎる子は使わないことにいたしますから

ミナホ姉さん自身が、12歳で誘拐され娼婦に堕とされている

うむそうだなもっとも、姉もこれだけの器量なら充分売れるだろう

はいこういうオドオドした子を好まれる方はいらっしゃいますから

やはり鞍馬美里さんを娼婦に堕とすんだな

お姉様、大丈夫ですわありすが、ここにおりますっ

妹は気丈に、姉を強く抱き締める

まあ、この子たちのことは、もう少し後だ先に片付けないといけないことがある

お前水島の娘をここに連れてきてくれ

水島可憐さんを

キョーコくんが動き出したのだから私も、水島家に揺さぶりを掛けなくてはいけない

関西ヤクザのスパイ、天童乙女を自分の孫娘の警護役にして、今日のパーティに送り込んで来たのは

ミズシマ・ホールディングスの会長だ

それに、ほれみすずが欲しがっているのだろ、その娘を

ジッちゃんは、微笑む

みすずがパーティから帰って来る前に私が話を付けておいてやらんといけないしな

ジッちゃんは、可憐サンをみすずのペットにすることを

水島家に承諾させるつもりなのか

タミヤから第一次大戦の時の菱形戦車が発売になるそうです

一番最初の、キャタピラに車体が挟まれてるみたいな

昔、ロンドンの戦争博物館で実物を見たことがあります

あの頃は、あんまり興味が無かったんだよなあ

戦争博物館だけはテムズ川の反対側にあったと思います

あの頃はまだバブル余熱か残っていたので、私でもロンドンまで行けましたが

今は、もう無理だなあ

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