お任せするも何も、鞍馬さんのお家のことですから鞍馬さんがご自分で解決するべきことですわまだ、何も決まっていないのに、わたくしたちが騒ぎ立てるのはよくないと思います
おっしゃる通りですわね先走りましたわ済みません
狩野さんは、ススッと頭を下げる
あの安城さんたちは、何年生なんですか
オレは場の空気を変えるために、質問してみた
わたくしは高校3年妹のキヌカは中学1年生です
鞍馬さんのところは、主と警護役が完全に同い年なんですわ
ということは鞍馬美里さんが18歳で、ありすさんの方が13歳か
うんこれでやっと、誰が誰だか判った
オレは、大きくうなづく
えっと皆さんよろしくお願いしますあの、みんなで仲良くできるかどうかは判らないけれどとにかく、色々とお話を聞かせて下さい
鞍馬さんの家のことと
鳥居さんは、何で他のお嬢様たちから浮いているのかと
狩野さんも一匹狼のままじゃよくないだろうし
とにかく香月様のご命令を遂行致しましょう鞍馬さんさっさとこの方に、あなたの家のことをお話しなさい
狩野さんが、鞍馬姉妹に言う
ああ、鞍馬美里さんの方が年上なのにこういう態度なんだな、この人は
話してしまったとしてもこの方には、どうせどうすることもできないでしょうけどとにかくあなたたちが話をすれば、この奇妙な顔触れのテーブルも解散できるわわたくしは早く、シエと一緒に元のテーブルに戻りたいのよ
元のテーブル他に誰もいない孤立したテーブル
あ、ちょっと待って下さい狩野様
まだうちの警護役のご挨拶が終わっていませんわ
美智が来たのか
オレは、屋敷の方を振り向くが誰の姿も見えない気配もない
美智そろそろ姿を見せなさい
みすずが、そう言った瞬間
わたくしでしたら御前《おんまえ》に
みみみみみみー、美智ぃぃぃ
お、お前いつからそこに居た
みすずの背後に、いつもの制服姿の美智が立っている
狩野さんや鳥井さん、鞍馬姉妹たちの警護役がギョッとする
いや、他のお嬢様たちの警護役たちも全員
気配を消していただけでございます
いつもの無表情でケロッとそう言う
香月みすず様の専任警護役を仰せつかっております工藤美智です
突然の美智の登場に、中庭全体がシーンと静まり返った
ソシテェェ
な、何だ今度はオレの背後からッ
ワタシがクロモリ・コウを守るガーディアン仮面イーディなのネッ
い、イーディ
い、今の今までいなかったろお前
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンパーマン2号を遅れるナっ
いや呼んでねーしっ
ンンン何でミンナ、驚いているノネ
イーディは、なぜかピンクのジャージの上下に首にはマフラーを巻いているトンボの眼みたいな大きなサングラスで顔を隠していた
イクゾッ仮面イーディ・あーるえっーくすッッ
また、訳の判らない名乗りとともにポーズをキメる
寧の意見と趣味が入っているな
おいえっと、イーディ
アレレパーフェクト・イーディ・キャノンMark2の方がよかっタカ
いや、あのパーフェクトは判るが、キャノンて
お前、肩に大砲とか付いていないだろ
あ済みませんこいつら、すっごいイタズラ好きなんで
オレが、取りあえずみんなにフォローしようとしたが
だ、ダメか
中庭に居た全員が呆然と、美智とイーディに注目している
えどうなっているんだ、これ
驚くオレにみすずが笑う
ここに来ていただいたのは名家のお嬢様と、お嬢様を日頃からお守りしている警護役の方たちですから
そんなことは判っているけれど
皆さん、驚いていらっしゃるんです美智が、わたくしの背後に立つまでどなたも気配を感じ取れなかったということと
その上、美智の事例を見たばかりなのにイーディさんの気配にも、誰も気付かなかったんですわ
あ美智たちと同じ様に、気を読む子だっているはずなのに
完全に、美智とイーディに出し抜かれたのか
しかもイーディときたらこんな、全身ピンクの派手な格好をしているのに
光の戦士イーディ・ブラック
いや、キメ・ポーズはもういいから
こんなことぐらいで驚いていたらダメなのネ
コレカラ、もっとスゴイことが起きるヨ
母が美容院で変なパーマをかけて帰って来ました
何歳になっても、これほどヘコむことはありません
何で、あんな頭にするのかなはあ
10月からまたトミノ監督のガンダムが観られると聞いて、とても嬉しいです
あれだけ若い才能との交流ょ求めていた監督が、15年前のキングゲイナーのスタッフと組むというのは
今の新しい人たちには光るものを感じなかったのでしょうか
逆を言うと、キングゲイナーの時のスタッフはこの15年を生き残った人たちだったわけで
ホント、新しい才能がすぐ死ぬ世界ですから
845.ハイ・ライフ / ダークマター
あら、何の騒ぎですの
と中庭に、警護役を連れたお嬢様が1人入って来る
大きなつばの広い帽子に、ベージュのパーティドレスを着ている
高校3年生ぐらいの綺麗な女性に見えた
後ろの警護役は、とても背の高い少女だった
この人も凄い美人だな
ようこそ、森村様
みすずが、やってきたお嬢様に挨拶する
本日はお招きいただきまして、ありがとうございますわ
ベージュのドレスのお嬢様も、みすずに頭を下げる
どうぞ、お好きなテーブルにお座り下さいまもなく始まりますわ
みすずの申し出に、森村さんは
まあ、わたくしが最後のようですわね恥ずかしいですわ
いいえ、時間通りですわお気になさらないで下さいませ
2人もまた、誰も座っていないテーブルに座った
まあ、森村様までお出でになられるなんて
鳥居さんが感心している
確か、スイスにご留学中だと伺っていましたけれど
狩野さんが、そう言った瞬間
皆様、大変長らくお待たせ致しました
屋敷の中から、翔姉ちゃんとレイちゃんが現れる
翔姉ちゃんは、いつものスーツ姿でビシッとキメている
レイちゃんは、テレビの放送でキョーコさんたちと闘う時の香月セキュリティ・サービスの派手な制服を着ていた
制帽に、金モール白い革手袋をはめた手には、レイちゃんの武器である撲殺ステッキを握りしめている
レイちゃんは、会場に集まっているお嬢様たちにニコッと微笑んだ
あああ麗華様ぁっ
とても、素敵
本当にお綺麗
みすずたちの学校は、女子校だから
男装の麗人の藤宮麗華のファンが多いんだ
よく見るとお嬢様たちだけでなく、お付きの警護役の中にもポワッとしている子がいる
香月セキュリティ・サービスの方でなければ、わたくしの専任警護人になっていただけましたのに
そんなことを言う人までいる
どうシエ藤宮麗華さんは
狩野さんが、自分の警護役に尋ねる
勝てるかどうかは判りませんが、負ける気はいたしません
シエさんは、レイちゃんと自分の戦闘力を測っているらしい
ハイジはどう
鳥居さんも、自分の警護役のハーフ美少女に尋ねる
どうということもなく
アーデルハイトさんは、ブスッとして答えた
わたくしなら、藤宮麗華を空から攻めます
主人の鞍馬姉に聞かれてもいないのに、安城ミタマさんが物騒なことを言い出す
あの方の間合いの外から攻撃すれば、あのステッキの恐るべき破壊力も怖くはありませんから
何でレイちゃんと闘うことが前提になっているんだ
あら空からって、どうするつもりなの
鳥居さんが、よせばいいのに、ついつい聞いてしまう
すぐに首を突っ込むのが、この人の悪い癖だな
だってわたくしたち姉妹にはできますから
今度は、妹の安城キヌカさんがクフフと笑う
キヌカ、黙りなさいミタマも
鞍馬姉妹の妹の方のありすさんが、2人の警護役を叱る
ミタマさんが、主に頭を下げる
あなたたち主人替えをするためのアピールのチャンスだからって、この場で藤宮さんを襲ったりはしないでしょうね
狩野さんが、安城姉妹を睨む
そういう行為は、みすず様たちやわたくしを愚弄することになりますからね大人しくしていなさいね何でしたらあなたたちの行く末のことは、わたくしが考えて差し上げてもいいのよ
ああ、判ってきた
この人は、生徒会長タイプの性格なんだ
どんなことでも秩序が整っていないと気が済まないんだな
狩野さんは、鞍馬家はもうダメだと思っている
この警護役姉妹を雇い続けることはできなくなると
だから、自分の警護役のシエさんや、鳥居さんのアーデルハイトさんのレイちゃんには負けない発言は聞き流せるけれど
鞍馬家の警護役の安城姉妹はもしかしたら実際に行動に出るかもしれないと心配している
ご心配は無用です、桜子お嬢様
シエさんが安城姉妹を見る
この方たちにはわたくしが馬鹿な真似はさせませんから
ギロッと、安城妹が睨み返した
無視しなさい、キヌカ
姉のミタマさんが、妹を制する
でもお姉様
弱い人の相手をしている余裕はありませんよ
ミタマさんは、レイちゃんを見る
いつでも意識は場内で一番強い人に向けていなさいそれが警護人として大成するための心得ですお父様にそう教えていただいたでしょう
姉妹は、ジッとレイちゃんを睨む
ホントに、変なことにならないといいんだけど
よくよく見廻してみると確かに、レイちゃんにポワワンとしている警護役の子もいるけれど
安城姉妹のように、睨み付けている子も多い
ま、香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートはこの国の警護人の最高峰ですものね
鳥居さんが、フフフと笑う
この国の警護人のレベルでは仕方ありませんわ
アーデルハイトさんが、そう言った
この人は、外国で警護の修行をしてきた人なんだろうか
あら、まるであなた日本の警護人の全てを知っているような口振りね
狩野さんが、不快そうにアーデルハイトさんに言う
あなたまだ来日して数年でしょ鳥居さんの警護では、一流の警護人を連れている方たちがいらっしゃるような席には行かれないわよね
鳥居さんの家は名家の中でも、格が低いのだろうか
だから、撫子先生の発表会にも来られなかった
あそこで日舞を踊った名家のお嬢様たちに知り合いがいない
だいたい、日本の警護人を雇えなかったからその子のような外国の人を連れているのでしょ
伝統ある名家は、それぞれ昔から警護役の一族を抱えていますからねあなたの家のような
ハイジは日本人ですわ
ムッとして、鳥居さんが狩野さんの言葉を遮る
この子は、アーデルハイト・鹿取鹿取というのは、日本の名前ですわ
あら、アーデルハイトという名前は、ドイツ語圏の名前ではないの
狩野さんは、さらに挑発する
だからハイジなんですわハイジは、日本のアニメですっ
鳥居さんの主張は、訳が判らない
ヨハンナ・スピリが聞いたら怒られるわよ鳥居さん
狩野さんは、クククと笑い出す
ヨハンナ・スピリって誰っ
鳥居さんは、アーデルハイトさんにガバッと振り向いて尋ねる
わたくしは知りません
ヨハンナ・スピリは、アルプスの少女ハイジの原作者ネ
イーディが、ニヤッと笑って答えた
アナタたちは、ホント全然、ダメネ
ば、馬鹿にしないでよっ
鳥居さんの怒りが、今度はイーディに向く
彼女はそういう話をしているのではありません
美智が、ゆっくりと言った
皆さんは本当に、今、この場に居る人間の中で一番強いのが麗華お姉様だとお考えなのですか
オマエたちの眼はフシアナなのカ目玉が腐っているんじゃナイノカ
イーディが、さらに笑う
な、何を言うんです
ギョッとするシエさん
藤宮麗華さんはあんなにも強い気を放っています
香月セキュリティ・サービスの関さんも強いとは聞いているが、ああやって並んでいるところを見れば、藤宮麗華の方が強いことは一目瞭然
安城姉のミタマさんも、そう言う
香月閣下とともに、大徳氏、張本氏は退席なさっています今この場で一番強いのはどう考えても、藤宮麗華様でしょう
アーデルハイトさんも、そう言った
そうそう、その通り
安城キヌカさんも
ダカラ、アンタタチの目玉はフシアナなのネッ
イーディは、大声でそう言う
その声に、他のテーブルのお嬢様たちもこちらに注目する
な、何よま、まさか
鳥居さんが、また余計なことを口走るのか
あなたたち、まさか自分がこの場で一番強いとか言い出すんじゃないでしょうね
やっぱり、そうきたか
シエ、あなたはこの人たちをどう判断しているの
狩野さんが、シエさんにイーディと美智についての意見を求める
はい先ほどの穏行術は完全に気配を殺していましたさすが、香月家の雇われている警護役だと感心致しました
そんなことは判っているわそうじゃなくってこの子たちは強いの評価なさい
主の命に、シエさんは
強いとは思いますしかしこのお二人からは怖さを感じません
隠れん坊の技は凄かったけれどこの人たちは強い気を発していないんです
シエさんでなく、安城妹のキヌカさんが答えた
本当に強い人は常に強い気を発していますあちらにいらっしゃる、藤宮麗華さんのように
姉のミタマさんが、レイちゃんを見る
会場のお嬢様たちや警護役たちも、みんなレイちゃんに振り向いた
本当に強い人は近付くだけで、ゾクゾクするものですですが、このお二人からはそういう危険な匂いを感じません
そうそう、こんな怖くない人たちが強いわけがないわ
はい負ける気が致しません
わたくしなら、空から攻めます
キヌカさん、シエさん、ミタマさんたちもみんな自分の方がイーディたちより強いと思っているらしい
ハァ
イーディは、呆れて溜息を吐いた
何トイウ、世間知らずなお嬢ちゃんたちなのネ
イーディの言葉に、全ての警護役たちがムッとする
仕方ありませんだからこそみすずお姉様は、このような会を開催なされたのですから
どういうことなんですのみすず様
狩野さんが、すぐさま同じテーブルにいるみすずに尋ねる
それはすぐにお判りになられますわ
みすずは、翔姉ちゃんの方を見る
関さん、始めて下さい
翔姉ちゃんとレイちゃんが、みんなの前に立つ
では、これより香月セキュリティ・サービスによる、要人警護についてのレクチャーを始めさせていただきますレクチャーの後は、懇親会のパーティとなりますゲストとの懇談もお楽しみ下さい
さすが、普段はジッちゃんたち要人の相手をしているだけのことはある
にこやかな笑みで翔姉ちゃんが話しただけで、場内の緊迫した雰囲気が解ける
ゲストとの懇談で麗華様ともお喋りできるのね
わたくし一緒に写真を撮っていただくから、頼みますわよ
わたくしもお願い致しますわ
お嬢様たちが、またそんなことを言い合う
ホントにレイちゃんは、大人気だな
では、最初に香月セキュリティ・サービスの藤宮より、皆様にご挨拶させていただきます
翔姉ちゃんに呼ばれてレイちゃんが前に出る
藤宮麗華です初めましていや、どこかのパーティでお会いした方たちもたくさんいらっしゃいますね本日は、ようこそいらっしゃいました
男装のレイちゃんは、本当にカッコ良い
さて、今日は警護の話をするということで普段、警護役の方に身を守っていただいている皆さんと警護役の方ご本人に集まっていただきました
結局何人来たんだ
30人近いのかな
単純に主が15人に、警護役15人ということではないらしい
一人の警護役が2人の主に付いている場合もあるし1人で2人の警護役を連れて来ている人もいるみたいだ
一応、全員、みすずたちの学校の生徒ということで女子校なんだから、全員女の子だ
ただ幼稚部のお嬢様と大学部の学生は来ていない
幼児には、今日のレクチャーは難しすぎるし大学生には、もう大人の警護が付くことになるから
小学校高学年から、高校生までの女の子だけが対象だ
ああ、だから警護役を2人連れている人は、幼い妹がいる人なんだな
レクチャーを受けに、警護役だけが来てくれたんだ
それで今、ちょっとそちらで揉めていたでしょ警護の人同士で皆さん、聞いていらっしゃいましたよね
レイちゃんは、オレたちのテーブルの方を指す
わたくしも、こちらで聞いていましたけれどとても、面白い議論でした今日のレクチャーにも関係ある話なんです
オレたちの話
美智とイーディにシエさんたちが怖さを感じないということか
本当に強い人を前にするとああ、この人は強いなっていう気を感じることがありますこれは、警護役としての修行をした人は、みんな感じていることですしもしかしたら、お嬢様たちの中でもそういう気を感じられている方がいるかもしれません
わ、わたくし判ります
ええ、あっ、この方怖いっていう感じですよね
レイちゃんファンのお嬢様が、大きな声で返答する
そうです、そういう感覚です人間は元々は自然界の中で、危険と隣り合わせで生活してきましたから危険な物に対して、勘が働きますあ、ここは危ない、何かが起こるかもしれない、この人は危ない人かもと感じたらすぐに、その場から離れて、安全な場所へ行くべきです危険かもと勘が教えてくれるのにそんなはずがないきっと平気だろうと心の不安感を押し切ったために、悲惨な思いをなされた方はたくさんいますいや、そういう場合は皆さん自身でなく、皆さんのお父様やお母様親族の皆様までも悲しませてしまうようなことにもなりかねません
うん、わたくしが酷い目に合ったらお母様が悲しまれるわ
ええ、わたくしも
ですからまずは、危険なものに対する感覚を普段から研ぎ澄ませておくことそして、危ないと感じたら、すぐに立ち去る勇気を忘れないで下さい
はい、麗華様
わたくしも、お約束致します
レイちゃんファンは、盛り上がっているけれど
3分の1ぐらいの人は、冷ややかな眼で見ている
そんなことは、今更言われなくても、もう判っているという眼で
特に、警護役の子たちは
しかしそれだけでは、まだ不十分なんですよ
レイちゃんは、ニコッと笑う
わたくしはプロの警護人ですから、ご主人様に悪い人が近付かないように、常に強い気を放っているようにしています警報ですねあ、こいつが居るのなら、悪いことはできないぞと思わせるようにしているんです
そうだレイちゃんは
わたくしは、そうしていますしここにいる香月セキュリティ・サービスの関もそうですさきほど、皆さんがご覧になった閣下の専任警護人、大徳、張本の二人もとても強い気を放っていました
ええ、とっても怖かったです
あたし、ブルッと震えちゃいました
このお嬢様たちに大徳さんたちが、女の子っぽいことが大好きな同性愛コンビだと伝えたら、どうなるだろう
いや、もちろんそんなことは言わないけれど
でも、わたくしたちがそうしているのはわたくしたちが、日頃から誰からも警護人だと知られている存在だからです
わたくしはこの通り制服を着ています関や大徳たちは、スーツですけれど要人の側に居れば、警護担当者だということは誰にでも判りますそういう立場だからこそ、常に強さを見せつけなければなりませんわたくしたちが弱いと感じたら、悪人たちが躊躇せずに要人を襲って来るかもしれないからです
だから強さを示し続けなければならない
大徳たちは、あのように立派な体格をしています誰が見ても強い人だと感じますわたくしは、この通りですから制服で強そうに見せてみたり、こうやって武器を常に誇示したりしなくてはいけません
そんな麗華様は、とてもお強いですわ
ファンの子が叫ぶ
レイちゃんは、その子にニコッと微笑む
強い気を放ち続けるのもそういう強さの誇示の一環でしかありませんそこでわたくしたちのような職業としてのプロ警護人ではなく、皆さんの警護役の方たちのことを考えてみましょう
レイちゃんの言葉に、お嬢様たちはそれぞれの警護役の少女を見る
皆さんの警護役は普段の生活も一緒に行い、同じ学校にも通っていらっしゃいます皆さんのご学友として、また学校生活や登下校の間も安全を保つためにも、警護役の皆さんは必要なのですが
オレはちょっと、やり過ぎだと思うけれど
でも、名家のお嬢様というのはこういうものなんだろう
いや、ジッちゃんから聞いた話だと
名家の子供が、自分の警護役を学校に連れて来る前は深刻なイジメが多かったらしい
外国では、王子様が寄宿学校で、他の生徒たちにイジメられ酷いトラウマになって、後々、問題が起きた例もあるという
伝統があり、資産もあり、権力者である名家の子供だからこそ嫉妬されたりして、嫌がらせをされることも多いという
だから、個別に警護役を連れて学校に行くのは自衛のために必要なことなんだそうだ
皆さんの警護役が、わたくしたちのように普段から強い気を発しているというのはどうなんでしょうか確かに悪い人は近付いて来ませんがなかなか、新しいお友達はできにくくなるのではありませんか
警護役が怖くて
また警護役の方たちも、女学生なのですしいつも怖い顔ばかりしているのは、決して良いことではないと思います
オレは自分のテーブルのお嬢様たちの後ろに立つ警護役たちを見る
シエさん、ハイジさん、ミタマさん、キヌカさんみんな、無表情で怖い顔をしている
うちの美智も
イーディだけは、派手なトンボメガネの下でニコニコ笑っているけれど
確かに怖い顔ばかりしているのもねえ
お嬢様の1人が、そう言った
しかし、我々もまた主を守るために、気を張り続けているのです
シエさんが、強い口調でレイちゃんに言った
あなたがプロならば、我々も警護のプロだそんなことまで口出ししていただく義理はございませぬっ
この人は武士だな考え方や態度が
ああ、昔の美智もこんなだったっけ
きっとシエさんの家系も、親子代々、警護役をやっているんだろうな
それは、ごめんなさいお気を悪くしたのなら、謝ります
レイちゃんは、笑顔でそう言う
では、ちょっと別の視点から話をします
別の視点
わたくしたちはつまり警護の人間は、悪い人たちを寄せ付けないために強い気を発していますが
では、悪い人たちの方はどうなんでしょう
悪い人たちは皆さんに近付いて来る時に、わたしは危険な人間ですよという気を発してくるでしょうか
もちろん、悪い人たちにも色々なレベルの人がいます普通の悪い人ならばさっきお話した通り、勘で判りますあ、この人は危ない人だって心を研ぎ澄ませていたら、誰にでも判りますしかし
本当に高レベルの悪い人たちは、わたくしたちに危険な感じを全く感じさせないで、接近してきますそう皆さんも、さっきご覧になったと思いますが、そちらのテーブルの2人が完全に気を殺してここへ入ってきましたよね
アタシたちのことネっ
イーディが、手を上げて笑う
いいですか先ほど、どなたかがおっしゃっていたように本当に強い人間は、強い気を放ちますそれは本当です気とは、充実した生命力が現れたものですからだけど
ニコッと、レイちゃんは笑う
鍛え上げられた人間は体から発する気を制御できます気の量を抑えることも完全に押し殺すことも
さっきの美智とイーディがそうだ
もちろん、そんな恐ろしい人は、そうはいませんしかし、皆さんは名家のお嬢様たちとその警護役ですわたくしたちが生きている世界には、そういう怖い人たちと出会う可能性は常にあります
レイちゃんの言葉に、誰もが息を呑む
そしてそういうレベルの人になると、いつの間にかわたくしたちの近くに這い込むだけでなく気の力で、わたくしたちの感覚を誤らせ、間違った現実を信じさせることだってできます
間違った現実
皆さんはこの中庭で、同じガーデン・テーブルの椅子に座っていらっしゃいますがお一人だけ、おかしな椅子に座られている人がいることに気付いていますか
おかしな椅子
ほらお一人だけ、エマニュエル夫人の籐の椅子に座っていらっしゃるでしょ
エマニュエルって何
鳥居さんが、声をあげる
森村様だけ椅子が違う
狩野さんも気付いた
森村様よくご覧下さい本当に、その方は森村様ですか
本日は、皆様のレクチャーのために最も危ない人をゲストにお招きしました
幅広のつばの帽子に、ベージュのドレスを着ていた森村さん
その帽子がフワッと投げ飛ばされるッ
ベージュのドレスを一瞬にして脱いだッッ
少女の肌は、ピチピチしてフレッシュだ人、それを若さという
深紅のタキシードに黒いタイをしたキョーコさん
その後ろにはミス・コーデリアまでいる
あの護衛役は、ミス・コーデリアだったのか
秋の風に誘われて、はるかニューギニアの火力発電所から600万ワットの電流とともに、やって来たそうです、わたしがキョーコ・メッサー・ダークマターですっ
な、何なんだダークマターって
ほらヒヨっ子どもせっかく、キョーコ・メッサーに会えたんだよ
キョーコさんは、クククと笑う
あんたたちも、警護人の端くれだってんならちょっと遊んでったらどうだい
いや、バキが再開したので済みません
演劇の裏方をやっていた頃、ある演出家の先生が若い俳優さんに話していたこと
先生お前、何で髪の毛、金髪に染めているんだよ
俳優いや、こっちの方が似合うかなって思ったんで
先生お前、そんな頭でまともな役が来ると思っているのかよ
俳優いや、黒い髪の役が来たら、すぐに染めますから
先生だから来ると思ってるのかよ
俳優え、意味が判らないんですけれど
先生お前さ、例えばオーディションに呼ばれて行くとするだろ
俳優はい
先生そんで、お前今みたいな金髪でもいいような、チンピラとか遊び人の役は決まるかもしんねーけどさ
俳優あ、はい
先生今のお前で、黒髪の役が来るってのはなかなか厳しいぞそして、世の中金髪の役よりも、黒髪の役の方が多いからな
俳優いや、全然来ないってことはないでしょ
先生あのさお前、オーディションの審査員が今の金髪のお前を見てこの子は黒髪だと、こんな顔になるとか、一々、イメージを想像してくれると思うか
俳優でもそういうのが、オーディションする人の仕事でしょ
先生バーカ何人も審査するのによよっぽど素材が良いやつでもないかぎり、そんなメンド臭いことするかよ
俳優はあ
先生で、お前は誰が見てもハッとするような役者なのか
俳優そうじゃないですけれど
先生だったら、普段から気を付けていろよ俳優は、自分で自分をプロデュースしないと使ってもらえねーんだよ今のお前なら、金髪のクソバカ、チンピラ小僧以外は使ってもらえねーよお前自身が、お前をそういう風にプロデュースしているからな
846.ハイ・ライフ / ハリケーン
あんたたちも、警護人の端くれだって言うんならちょっと遊んでったらどうだい
キョーコさんが、そう不敵な笑みを浮かべた瞬間
シュババババババババッ
シュシュシュシュシュッ
疾風の様に、美智とイーデイが突進するッ
美智のスカートの下から取り出された赤いムチが風を切って、キョーコさんの居た籐の椅子を切り裂くッ
キョーコさんとミス・コーデリアはすでに加速して、その場にはいない
HAWOOOO
イーディが、キョーコさんに接近して連続蹴りを喰らわせる
キョーコさんは、その全ての攻撃を軽やかに避けきった
おっ、さらにやるようになったねっ
嬉しそうに、イーディに拳を突き込むキョーコさん
もちろん、イーディもキョーコさんの攻撃を躱していく
一方、美智は赤いムチでミス・コーデリアを追い詰めていく
美智は小柄だから、拳や蹴りの勝負では負けてしまう
だから、ムチで距離を取って闘っている
あらあら、あなたもしばらく見ないうちに、ずいぶん可愛くなったわねっ
ミス・コーデリアも、楽しそうに美智のムチを避けていく
シュババッ
シュダッ
ビュウウンッ
シュドッ
信じられないような高速で、4人が闘い続けている
この屋敷の中庭に居る名家のお嬢様たちも、その警護役もみんな呆然としている
あ、皆さんは、お茶でも召し上がりながら、ご鑑賞下さい
レイちゃんが、笑って言う
ただのエキシビジョン・マッチですから
そうは言われてもみんな、身動きもできずに闘いを見ている
今日のキョーコ・メッサーさんは香月セキュリティ・サービスの招聘でこのイベントのためにわざわざ来日して来ていただいています皆様に、危害を加えることは決してございませんから、ご安心下さい
翔姉ちゃんも、ニコニコ笑いながらそう言った
そういうことよーん今日は、可愛い女の子がいっぱいいるって聞いて来たからお姉さん、ハリキッてまーす
ミー・トゥよ
キョーコさんも、ミス・コーデリアも
やはり香月セキュリティ・サービスとキョーコ・メツサーの抗争は茶番だったのですね
狩野さんが、みすずに尋ねる
表向きには香月セキュリティ・サービスとキョーコ・メッサーの国際犯罪組織は、全面対決していることになっている
というか、定期的にレイちゃんが主演のバトル大会が放送されているし
わたくしたちが、ああいう闘いをしていることで欧米の他の組織が、日本に入り込んでこないとは考えないのですか
みすずでなく、瑠璃子が答えた
わたくしたちとキョーコ・メッサーさんの組織は、高度な信頼関係を築いていますそうでなければこのような形で、皆様にキョーコ・メッサーをご紹介することはできませんわ
瑠璃子の言葉は、会場内のお嬢様たちにも伝わっている
言っておくけれどあたしは闘うことに手は抜かないよユーモアは交えるけれどねっ
キョーコさんは、イーディのパンチを受け流しながらそう言う
それよりさこれだけ警護役の女の子がいてさ、あたしたちに挑戦するのはこの子らしかいないのかい
ニッと笑って挑発する
そうねこの子たちの成長が見れたのは嬉しいけれど別の子ともお手合わせしたいわねっ
可愛い女の子は、大好きよわたくしっ
あたしもさ
この二人はガチの同性愛嗜好だから
コッチに集中するネッ
だぁっ
イーディと美智が、同時に仕掛けるが
惜しいっ
まだまだっ
シュバッと、キョーコさんとミス・コーデリアが位置を入れ替える
イーディの相手が、ミス・コーデリア
キョーコさんの相手が、美智に変わる
あらあら、元から変則的な技を使う子だったけれどあなた、動きのヘンタイっぽさに磨きが掛かったわね
ミス・コーデリアが、イーディの連続攻撃を受けながらそう言う
うるさいヨッヘンタイはアンタネッ
イーディの回し蹴りにミス・コーデリアはキックで返す
スピードもパワーも増したわねうふふ、お姉さん嬉しいわ
まだまだ早くなるネッHAWOO
イーディは、さらに攻撃を早める
すりゃあッ、たぁッ、すあっっッ
美智のムチがキョーコさんに襲いかかる
あんたは前からすばしっこかったけれどでも、その身体じゃ、パワーの方はまだまだ足りないよっ
キョーコさんが、タイミングを見計らって、伸びきったムチを足でググッと踏みつける
態勢を崩す、美智
ほらっ、捕まえた
キョーコさんが、美智を攻撃しようとするが
もらったぁぁっ
その瞬間オレたちのテーブルから、シエさんがキョーコさんに手裏剣を投げ付けようとする
だめっ
美智が、シエさんに強い気を放つっ
うう
シエさんは、手裏剣を握ったまま身体が硬直して、動きを止めた
見ると、キョーコさんも動きを止めている
クッ、それがあんたの強化した気の技かい
美智とイーディは月子たちから鷹倉神社の巫女の修行法を教えてもらった
それで、気の力や放射をレベルアップさせることができるようになった
本物の巫女の力のように、相手の心や身体を操るところまではできないが
あなたレベルの人でも、一瞬なら動きを制することができます
美智がキョーコさんを睨む
なるほど2つの方向に同時に気を放つとはスゴいねもっとも、あっちの子は、完全にまだ硬直したまんまみたいだけれど
肩や肘の関節を回して、身体の状態を確認するキョーコさん
ぅぅ
キョーコさんの言う通りシエさんは、手裏剣を振り上げたままプルプル震えて、動きが止まっている
眼が驚いたままだから、意識はちゃんとしているんだな
ショウガナイのネッバウッ
イーディが、気を放ってシエさんの硬直を解いてやる
もう平気ネッ
ミス・コーデリアのキックを避けながら、イーディが言う
くっこんな、屈辱
シエさんは、まだしびれが残っているようだ
あの方たちを悪く思われるのは間違っていますわ
アーデルハイトさんが、シエさんに言った
あの時、あなたが手裏剣を投げていたらキョーコ・メッサーは手甲で手裏剣を払い除けたはずですそうなったら、飛び散った手裏剣が人に当たる危険性がありました
手甲
ああ、確かにキョーコさんは手の甲と上腕部に、プロテクターみたいな物をハメている
あれが防刃素材なんだな
あんなんで手裏剣を弾いて払い除けたら、どこに飛んでいくか判らない
失礼なことを言うねえその子が投げた手裏剣ぐらい、ちゃんとキャッチして本人に投げ返せるよ
キョーコさんは平然とそう言う
それから、美智を見て
でも、あんたの判断は正しかったあたしと闘ってるのにちゃんと周囲の気を感じ取れているのも合格だ
シエさんの攻撃の意識を美智が感じ取ったことを褒めてくれる
あなたに褒められても嬉しくないですわたくしが褒めていただきたいのは
美智はスカートの下から、もう一本予備の赤いムチを取り出す
ご主人様のみっ
ブオンッッと、赤いムチが炸裂する
さすが、みすず様の警護役ですわ
ああ、他のお嬢様たちが勘違いしている
まあいいか美智のご主人様がオレであることは
みんなに知られたら困る
先ほどは茶番などと申し上げて失礼致しました
狩野さんが、みすずと瑠璃子に謝る
あれが本物の強さなのですね
全力全開で闘っている4人を見てそう言う
キョーコ・メッサーという方たちも、みすず様の警護役のお二人もレベルが違いますわ
そう言ってまだ手裏剣を握りしめているシエさんを見る
情けないことですがうちのシエでは敵いません
さ、桜子お嬢様
認めなさい、シエ自分の未熟を
あなたは、後方から手裏剣を投げ付けようとしましたそれが、他の方に当たるかもしれないということを考えずに
怖いのでしょあの中に飛び込んで直接、肉弾戦で闘うことが
キョーコさんが闘っているところに乱入して、パンチやキックで闘って勝つ自信が無いから
敵を前にして何もしないなどということは、武人として
でも、シエさんにも警護役としてのプライドがあるから
それで、ついつい、遠くから手裏剣を投げるなんていうイチかバチかの無茶な攻撃をしようとしてしまったのか
ハイジ、あなたはどう
鳥居さんが、自分の警護役に尋ねる
あなたもあの人たちには敵わない
アーデルハイトさんは
わたくしは無理なことは絶対に致しませんいついかなる時も、主を守ることが警護役の勤めでございます敵がこちらに攻撃する意志を示していないのに手裏剣を投げ込もうとするなどという無謀な行為は、警護役に携わる者としては絶対にしてはいけないことだと思います
と、思いっきりシエさんを非難する
何なのハイジ
これだけ、自分との力量の差を誇示されると非情に腹立たしく感じます
アーデルハイトさんは、自分の膝をギュッと掴んで、プルプル震えている
やっぱり眼の前で、美智たちがキョーコさんと好き勝手に闘っているのを見させられるのは屈辱なんだ
結局、あたしたちのところの警護役では、キョーコ・メッサーの相手は無理ということみたいね
狩野さんが、鳥居さんに言う
あら、うちのハイジは狩野さんのシエさんみたいな無茶をしないだけ、まだマシですわ
言い返す鳥居さん
あら、シエは精一杯やってくれましたわ他の家の警護役が誰1人動くことのできない中であのキョーコ・メッサーに対し攻撃する意志を示したのですから
香月家のみすず様の警護役が、他家の警護役と格が違うのは当たり前のことですわとなれば次に強かったのは、うちのシエということになります
どんな状況であったとしても、常に闘う意志を示し続けるということシエの勇気ある行動で、狩野家は名誉を保つことができましたわたくしは、そう確信しております
桜子お嬢様
シエさんは、主の言葉に感動している
だって、そうでしょ他家の警護役の皆さんただ見ているだけで、何もできないではありませんかもちろん鳥居さんのアーデルハイトさんも
は、ハイジ
鳥居さんは、アーデルハイトさんを見上げる
無理なものは無理です
でも、あなたもちょっと、闘うぞっていう気持ちをアピールするだけでいいから
わたくしだってガマンしているんですからっ
アーデルハイトさんは、主に食って掛かる
闘う意志を示した結果闘って、負けたらそれこそ警護役としての生命が終わってしまいます
この人たちはやっぱり、他の主と警護役の関係とは違っているみたいだ
アーデルハイトさんは、主に無条件に付き従うようなことはしない
そこをハイジ何とか
無理ですあそこで闘っているのは、本物のバケモノたちですモンスターですからっ
アーデルハイトさんは、強くそう言う
ああいうのとは闘っちゃダメなんですっ闘わなければ、負けないんですからっまり子お嬢様は、大人しく見ているだけにしてて下さいっ
ムクれる、鳥居さん
キヌカロングホーン・ヘルメット、取り出せ
ロングホーン・ヘルメット取り出しました
あの安城さん安城姉妹のお二人さん
姉ミタマさんの指示で、妹の13歳のキヌカさんが大きな野牛みたいな2本の角が付いた、ピンク色のヘルメットを取り出している
ロングホーン・ヘルメット、着用
ロングホーン・ヘルメット、着用しました
ムギュッと、角のヘルメットを被るキヌカさん
キヌカ射出ポイント、目測
射出ポイント目測致しますっ
キヌカさんが、自分たちの現在位置とキョーコさんたちが闘っている距離を眼で測る
射出ポイントは目標前、5メートルに設定
設定了解
今度は、姉のミタマさんが返事をする
あの二人で何をするおつもりなんですか
キヌカちゃん
み、ミタマさん
それぞれの主人である鞍馬家のありすさんと美里さんが心配そうに声を掛ける
美里様何も問題はございません
ありす様キヌカとお姉様にお任せあれっ
あの何をするつもりなんですか
オレは、恐る恐る聞いてみた
キョーコ・メッサーは空から攻めます
攻めますっ
この姉妹はマジなのか
あ、あなたたち聞いていたでしょあの人たちはうちのシエですら敵わないような
そうよ、うちのハイジが闘う意志を見せることすら嫌がるような
問答無用です
ミタマさんが、狩野さんと鳥居さんの言葉を打ち切る
行きますわよっキヌカ
ガッテン承知姉上
そして、姉妹揃ってキョーコさんに向かって、走り出す
ええっ
鞍馬家、警護役安城ミタマ、参るッ
同じくキヌカ参ります
二人は、走りながら大声でそう叫んだ
しかし、イーディや美智の疾走とは全然スピードが違う
キヌカさんのピンクのロングホーン・ヘルメットが、ヒョコヒョコ揺れているし
姉上射出ポイントセット
了解、キヌカ
姉のミタマさんが、タタタと前に先行してキョーコさんまで5メートルの地点に
ね寝転んだ仰向けで
キヌカバッチ、コーイ
了解、姉上ホップ
牛の角のヘルメットを被ったキヌカさんが、仰向けに寝ている姉に向かってジャンプするッッ
ステップ
姉のミタマさんが足の裏で、妹の足を受けとめたぁぁっ
ジャァァンップッッッ
そのまま、姉妹がお互いの足を蹴り合って
13歳のキヌカさんの身体が、弾丸みたいに宙に飛び出すッッ
喰らえッスカイラブ・ハリケーン・ミキサーッッッ
そのまま、キヌカさんはヘルメットの角をキョーコさんに向けて体当たりを試みるぅぅ
見たか、我が姉妹の必殺技スカイラブ・ハリケーンとハリケーン・ミキサーを合体させたまったく新しい秘技っっ
ミタマさんが、寝転んだまま叫ぶ
照準セット当たれぇぇぇぇぇぇッッ
キヌカさんが全身で突っ込む
いや、勇気は認めるけれどね
キョーコさんは、飛んで来たキヌカさんの身体を片手でパクッと受けとめた
うまく2本の角を避けて、ピンクのヘルメットをドッジボールみたいに片手で掴んでいる
その先に、キヌカさんの身体が上下逆に
ううう、放せ-
こら、ジタバタするな危ないだろメッ
キョーコさんが、キヌカさんを叱る
いや、とても勇気があって面白かったけれどこの技であたしを倒すには、角をもう2本つけて、2倍の高さでジャンプして、3倍の回転を加えないとダメだわ
くぅぅパワー不足か
口惜しそうに、キヌカさんは言うけれどいや、そういう問題か
ていうかさこれ、スカイラブ・ハリケーンでもなければ、ハリケーン・ミキサーでもないよせいぜい、南斗人間砲弾だ
な、なんと
せめて人間大砲コセイドンぐらいの威力になんないとさ
キョーコさん何を言っているんですか
つーことでイーディ、ほら
キョーコさんは、掴んでいたキヌカさんの身体をイーディに放り投げる
ウワワ危ないのネ
何とか、ガバッと受けとめるイーディ
美智なら無理だな小柄すぎて
イーディの腕の中で、キヌカさんが誤る
さってとエキシビション・マッチはこんなとこかな
キョーコさんは、微笑む
はい、名家のお嬢様たちそれと警護のお姉ちゃんたち
キョーコさんは、中庭にいる全員に言う
今の自分たちの位置関係をチェックしてみな
とりあえず守らなきゃいけない主の前に、警護役がいれば合格だよよくできましたのハンコをあげるよあたしたちが現れてから、一歩も動けなかった子はもっと頑張りましょうだけどまさか
一歩でも後ろに退いた警護役はちょっとこれからのことを考え直した方が良いと思うねそして、さすがにいないと思うけれど主の後ろに隠れているなんていう困ったちゃんは
い、いたのかマジで
一応、オレたちのテーブルを見るとシエさんもアーデルハイトさんも、主の前に立っている
ミタマさんとキヌカさんも前にいたよなそのまま突進してっちゃったけど
あんたたちぐらいの名家だとほとんどの警護役が、親の代から仕えているっていう感じだろでもさ、家が警護人だからってあんたたちが、その仕事に向いているかどうかは判らないじゃないか
キョーコさんは、そう言う
だからさ親に言われたからとか家の仕事だからとかじゃなく、自分が警護役に向いているのかどうか、もう一度よく考えてみるんだね
主の方も自分の警護役のことを、よく見てあげた方がいいわよもしかしたら合わない仕事を、嫌々やっているだけなのかもしれないんだから
ミス・コーデリアも笑ってそう言った
まったく、レイちゃんたちじゃ言いにくいことを犯罪者のキョーコさんは平然と言う
ああ、それで国際犯罪組織キョーコ・メッサーと愉快な美少女軍団も、新人を募集しているから
キョーコ犯罪結社マランドロでしょ
そうともいうとにかく、可愛い女の子だけ、限定だからあ今、警護役やってる子だけじゃなくて、可愛いんならお嬢様でも入ってくれていいからね
あたしたちが手取り足取り教えてあげるわ
な、何をだ
あんたたちが強くなりたいんならね
キョーコさんは、ニヤッと笑う
あのキョーコ・メッサーさんさすがに、わたくしたちの前で、犯罪組織の新人募集は困るんですけれど
レイちゃんがキョーコさんに言う
まあまあまあ、いいじゃないエキシビジョンも、もう終わりなんだからさ
まだ終わりじゃないヨ
ええ、まだです
イーディと美智が立ち塞がる
イーディは、抱き上げていたキヌカさんを地面に下ろしていた
何だい、あんたたちまだやる気なのかい
ニヤッと笑うキョーコさん
まだ試していない技があるノネ
ああ、そうかいッッ
キョーコさんとミス・コーデリアが同時に飛ぶッ
バウウッ
はぁぁっ
イーディと美智は同時に、強い気を放った
その技は、さっき見たよっ
ミス・コーデリアは、動きを止めたが
キョーコさんはえ、動ける
放出された気を反らすこれって、あんたのところの技術だろ
まさか工藤流古武術
キョーコさんが
あんたの家の技にしろ、ダダドムゥの技にしろ見せてもらった技は、使えるようにしてあるんだよっ
それがキョーコ・メッサーの力
そうか、シザーリオ・ヴァイオラとのホテルの闘いの時も
一番最後に現れたのは他の人の技をチェックしていた
ミナホから巫女の力っていうのの威力も聞いているよっあんたたちは、その鍛錬術で気の能力をアップさせたんだろうけれど
キョーコさんが、美智たちに迫る
だが、あんたたち自身はホンモノの巫女ほどの力はないっ
では、ホンモノの巫女の力を知って下さい
美智とイーディの前に
い、いつからそこに居たんだ
誰だいこのロリ巨乳は
そうだこのぷっくりとした大きな胸は
弓槻ヨミと申しますわ
ニッコリとヨミは微笑む
さすがにマッド・ハリケーンは出せなかった
父ちょっと母さんの帰りが遅くないかい
私ああ、そうだね
父お前、ちょっと家の周りをぐるっと見て来てくれないか
私いや、今日は母は店だから近所じゃないって
父それでもほら、一応
私いや、だから心配なら、電話してみればいいだろ
父電話
その顔で気が付く
私父さん今は携帯電話というものが発明されているんだよ
父はぁ、そうなのか
時々、びっくりするようなことを忘れています
847.ハイ・ライフ / ふたりは
はーい、わたくしに注目っ
ヨミが、キョーコさんの意識を自分に引き付けようとするが
キョーコさんの動きは速いっ
キョーコさんは、ヨミの意識の死角からスバッと一気に接近する
まさか、ヨミを叩くとか
そんなのし、死んでしまうぞ
ヨミは、美智たちみたいにキョーコさんの攻撃を防御する技術は持っていないんだからッ
ぱぁんっ
恭子さんは、ヨミの眼の前に姿を現すとヨミの鼻先で、大きく手を叩くッ
ね、猫ダマシ
驚いたヨミを、ブンっと担ぎ上げて、空中でぐるるんと廻すッ
あわわわわわわッッ
巫女の力ってのは、精神集中していないと使えないんだろッ
ヨミの身体を楽しそうに振り回しながら、キョーコさんは叫ぶ
それに、あんたが心の中で明確に相手をこうさせるというイメージが固まっていないといけないんだよねっ
そうだ相手をどう自分に従わすか、ヨミの中にはっきりとしたイメージがなくては
だから、そんなことを考えている余裕なんてないようにしてあげるよっ
キョーコさんは、ヨミの身体を空中でお手玉のように投げて玩んだ
うわわわわわわぁぁっ
上下左右に揺さぶられ、宙に放り投げられては、受けとめられる
こんなんじゃヨミが力を発揮させることなんかできやしない
巫女は一人きりじゃないですっ
な、何だッッ
ボクを見て下さいっ
今度は、屋敷の中からルナが飛び出して来るッ
まさかの鷹倉神社の巫女2段構えか
残念、こっちも2人なのよ
よ、読まれていた
ルナの背後に、ミス・コーデリアが取りつく
はーい、高い高い高いっ
ミス・コーデリアは、ルナの身体をビヨヨヨーンと宙に放り投げた
ひゃああああああっ
ルナはヨミよりも小さいから、より高く宙に舞う
はい、キャッチ&リリースっ
そして、ミス・コーデリアはルナを両腕でキャッチするとまた空へ放り投げる
キョーコさんも、ヨミを空に投げてはキャッチしている
2人ともボール遊びでもしているようだ
言ったろう巫女の力がどんなものなのか、使い手が何人いるのかを把握した段階で対抗策は考えてあるんだよ
まさか、こんな手で巫女の精神集中を妨害するとは
ヨミもルナもクルクルと空中で回転させられている
あれじゃあ、目が回る
キョーコさんとミス・コーデリアが高く投げあげられた2人を取り落とすと困るから、美智もイーディも攻撃できないでいる
美智は本当に小さいし、イーディだって高く空中に投げられている鷹倉姉妹を受けとめられるような体格ではない
力はあっても、ヨミたちの身体を受けとめきれずに、地面に落としてしまうだろう
しかしこのままでは
空中で振り回されている2人が危ない
はぁぁっ、エイヤッ
レイちゃんが、テーブルを蹴って高くジャンプし空中のヨミを捕らえるッ
そのままヨミを抱きかかえて、ストッと地面に下りた
ヨミに、ニコッと微笑む
頭の中がぐるんぐるんしていますのぉぉ
ふらふらの状態で、ヨミは答えた
ミス・コーデリアも、その子を放してあげて下さい彼女たちにはもう、攻撃能力ありませんっ
凛とした顔で、そう言う
ミス・コーデリアはルナを腕で受けとめると静かに地面に寝かした
あううう、お星様が見えますぅぅ
ああ、ルナの方もグッタリしている
子供相手に少しやりすぎなんじゃないですか
レイちゃんがキョーコさんに抗議する
はい麗華
翔姉ちゃんが、預かっていた撲殺ステッキをレイちゃんに手渡す
ありがとうございます翔お姉様
そしてスッと、撲殺ステッキを構えた
悪いけれど君たちは手を出さないで
レイちゃんが、美智とイーディに言う
最後はやっぱり、大人同士で決着をつけないといけないからね
レイちゃんが、キョーコさんと闘う
かしこまったノネ
美智とイーディは、スッと頭を下げヨミとルナの看護に向かう
今日は若い人たちの講習会ということでしたからわたくしは前に出ないつもりでしたがやはり、警護人としての血が騒ぎました
レイちゃんは、ゆっくりと間合いを詰めていく
おお、言うようになったねぇうちのニキータと良い勝負のあんたが、このあたしとガチでやり合うって言うかい
ニヤッと、キョーコさんは微笑む
ええ、せっかく機会ですからね
ステッキの切っ先がキョーコさんを狙っている
あら、ここにはあたしもいるんだけれどあたしの相手は、もしかしてあなた
ミス・コーデリアは、翔姉ちゃんを見る
まさか今のわたくしは香月セキュリティ・サービスの現場責任ですわヘッドがフロントの仕事を取るわけには参りませんもの
翔姉ちゃんは、平然とそう言う
じゃあ藤宮麗華さん、2対1になるけれど、それでもいいのかしら
ミス・コーデリアがレイちゃんの背後に廻り込む
前にキョーコさん、後ろにミス・コーデリアでは
いくらレイちゃんでも、勝ち目はない
いえいえここで、ヒーローの登場になるんですよ
屋敷の中からまた別の人の声がする
ぴったりとしたウエスタン・シャツに、ジーンズ
足には、ウエスタンブーツ
テンガロンハットで、顔を隠した長身の女性
ははは、ここでお前かい
嬉しそうに、キョーコさんは笑う
あたしよりも、後から出て来るとは良い度胸じゃないか
真打ちは最後に出るものとあたしに教えてくれたのは、キョーコさんじゃないですか
そうだったねぇマルゴ
マルゴさんが帽子を取る
現れたのは爽やかな笑顔だった
だ、誰あの人
アメリカ人
うわぁぁ、カッコ良い
柔らかな金髪に、ブルーの瞳長身の長い足
誰が見ても強いと判る、鍛え上げられた屈強な肉体
君、悪いけれど預かっててくれるかい
マルゴさんは、近くのテーブルに座っていたお嬢様にテンガロンハットを預ける
は、はいわ、わたくしでよろしければ
自信たっぷりで、ニコニコと笑っている
うわぁぁ、素敵
あん、好きになっちゃいそう
どなたなのこの方
凛とした雰囲気のレイちゃんとは、また違った魅力で名家のお嬢様たちを心を惹く
随分、鍛え直してきたようだね
キョーコさんは、愛弟子に言った
ええ、マスター・クリタイメストラに稽古を付けていただいてきましたから
マルゴさんは、アメリカに行っていた
帰国することをオレは知らなかったから、もしかしたら空港から直接、この香月家本家の邸宅までやって来たのかもしれない
うんいいね立ち姿がスッキリしたよ闇の匂いが、まったくしない
キョーコさんはそう言う
麗華さんキョーコさんのお相手は、あたしに任せていただけますか
マルゴさんは、軽くジャンプして身体を解す
ええ、どうぞということであなたのお相手が、わたくしになりました
レイちゃんは、ステッキの先をミス・コーデリアの方へ向ける
ま仕方ないわね
ミス・コーデリアもニヤッと微笑んで構える
せっかくだから若い子たちのお手本になるような、綺麗なバトルをしましょうよ
マルゴさんが、キョーコさんに言う
ああ、そうだねこのまま若くて可愛い女の子たちに嫌われたままっていうのも困るからね
そうね少しは大人らしさを見せてあげましょうか
キョーコさんとミス・コーデリアが微笑む
ええ、お願いします若い人たちのために
では、キョーコさん
いくよ、マルゴ
藤宮麗華、参りますっ
オーケイ、Come on
そして4人の大人たちの闘いが始まった
シエさんが戦闘を見て、呟く
綺麗だわ
アーデルハイトさんも
う、美しいですわ
狩野さんが、溜息を漏らす
どうして、こんなことができるの
鳥居さんは、呆然と見続けている
4人の闘いは、まるで舞踏のように美しかった
さっきの美智やイーディの攻撃は
相手の隙を付こうと高速で突っつきまくるだけの荒々しい闘いだったけれど
キョーコさん対マルゴさんレイちゃん対ミス・コーデリアの闘いは、優雅だった
お互いにお互いの技量が判っている者同士の闘い
相手のミスを誘い、付け入ろうとするような姑息なアクションは一切無い
真っ正面から、己の持つ力と技の全てをぶつけ、相手の力と技を受ける
この闘いには、相手に対する尊敬の念がはっきりと見えた
美智やイーディの闘い方が、力の無い子供が大人相手に精一杯背伸びしていただけのもでしかなかったことが判った
ホンモノのプロは小手先の技なんて使わないんだ
藤宮麗華さんは、剣道の出身だから、こんな闘いもできるとは思っていましたが
まさかキョーコ・メッサーがこんな清らかな闘いをするとは
アーデルハイトさんとシエさんが、思わずそう感想を述べる
キヌカよく、見ておきなさいあれが一流の方たちです
スゴイです
わたくしも、この光景を心に刻みます
いつの間にか戻って来ていた、安城ミタマ&キヌカ姉妹もそう言った
こんなの、ズルい
アーデルハイトさんが呟く
香月家の警護役にも、先を越されていると感じたのにこの人たちは、わたくしの遥か向こうに居る
美智やイーディなら、まだすぐに追いつけると感じていたんだろう
だから、まだ負けていないと思っていた
それなのに、この4人には勝てないと感じたんだな
わたくしも全然、ダメですこの人たちとはレベルが違い過ぎる修行も経験も何もかも
口惜しそうに、そう言うシエさんに狩野さんは
ならば鍛錬なさい口惜しいのなら鍛錬を重ねるしかないのよ、シエ
はい桜子お嬢様
ハイジあなたも、頑張るのよ
鳥居さんが自分の警護役に、そう話し掛けるが
アーデルハイトさんは、拳をギュッと握りしめたまま返事をしない
ありす様わたくし、絶対、この人たちと同じくらい強くなりますから
安城キヌカさんが、主の鞍馬ありすさんに言う
いえ、キヌカわたくしたちが目指すべきは、この方々の上ですこの方たちよりも強くならなければ鞍馬家をお守りすることはできないわ
はい、姉上
姉の安城ミタマさんに、キヌカさんが答える
でももう、鞍馬家は
鞍馬家の姉の美里さんが、ブルブルと身体を震わせる
美里お姉様
ええ、わたくしは大丈夫ですよ、ありす
誰もが4人の大人たちの闘いを見ている
この中庭に居る全員がまるで、美しい芸術表現でも観ているかのように
マルゴさん、キョーコさん、レイちゃん、ミス・コーデリアの闘いに引き込まれていった
よしもういいだろう
スッと、キョーコさんが闘いを止める
マルゴあんた、その道を進むんだね
改めて弟子に問う
はい、キョーコさん
そうかならいい
師匠と弟子は、優しく微笑み合う
頑張りなあたしは、どこまでもあんたを応援するよ
ありがとうございますいえ、ありがとうございました
その言葉でオレにも、マルゴさんが何をしにアメリカへ行っていたのかが判った
マルゴさんは、表の世界で格闘家として生きていくために
キョーコさんから習った技の裏の世界の匂いを取り除いてきたんだ
マルゴさんが今後キョーコさんの犯罪を手伝うことはない
2人の師弟関係は永遠だけれどボスと部下の関係は、ここで解消する
そのために2人は、綺麗な闘いで拳を交わしたんだ
ま何にせよ、あんたの人生はあんたのモノだ精一杯生きるんだね
そしてキョーコさんは、翔姉ちゃんに振り向き
あたしの出番は、ここまででいいだろ
はい本日は、ご足労いただきましてありがとうございました
翔姉ちゃんも、笑顔で頭を下げる
いやあたしも来て良かったよマルゴにも会えたしこんなにたくさんの可愛いお嬢さんたちとも知り合いになれたからね
キョーコさんは、会場中の少女たちに向かって微笑む
何人か誘拐して帰りたい気分だけれど今日は止めておくさあ、さっきの話あたしんトコも新人募集しているっていうのは、本当だからね可愛い女の子限定で腕は未熟でもいい稽古は、あたしやミス・コーデリアがつけてあげるから朝も昼も夜も
それってベッドの中までってことですよね
だけどあたしは、裏社会の人間だあたしのトコじゃ、今見せたみたいな綺麗な技は身に付かないからね薄汚くなってもいいっていう子しか、来ちゃダメだよ綺麗なまま、強くなりたいのならそっちの麗華ちゃんや翔ちゃん方の道を進みな
そして、クスッと笑って
今日のギャラは、あたしの口座に振り込んでおいてね
翔姉ちゃんは、あくまでもキョーコさんの参加がビジネスであったことをみんなに示す
さてとそれじゃあ、あたしはブラジルの懐かしの我が家に帰るけれど
キョーコさんは安城姉妹を探して、指差す
さっきのあんたたち
ギロッと睨む
わ、わたくしたちでございますか
急に呼ばれて、さすがの安城姉妹をギョッとしている
さっき、あんたたちがやってたことだけどさ
えもしかしてスカイラブ・ハリケーン・ミキサーのこと
あれはさこうやるんだよッ
キョーコさんが、いきなり加速する
コーデリアッ
オーケイ、キョーコ
名前を呼ばれた時には、ミス・コーデリアはすでに地面に寝転んでいた
ホップ
キョーコさんが、ミス・コーデリア目掛けて、大きくジャンプする
ミス・コーデリアが、足でキョーコさんを受けとめ発射台《カタパルト》となるッ
ジャンプッッ
ホントに2倍のスピードで飛び込んで、3倍のジャンプをして、4倍の回転で
キョーコ・メッサーが空を飛ぶ
じゃあね、みんなバイバーイ
そのまんま、キョーコさんは香月家の屋敷の開いていた3階の窓の中へスワッと消えて行った
あれ、ミス・コーデリアもいない
みんなの視線が空中のキョーコさんに向いている隙に、姿を消したんだ
ホント騒がしい人でごめんなさい
弟子のマルゴさんがみんなに詫びた
◇ ◇ ◇
あ、あのお名前は
キョーコさん退場で、一旦休憩となったが
レイちゃんと並んで座ったマルゴさんがお嬢様たちに取り囲まれる
マルゴ・スタークウェザー・クロモリです
ハーフなんですか
いやいや、生まれも育ちもアメリカだよ日本の家の養女になったんだ
インディアンの血筋のことは言わないのか
それであのマルゴ様も、香月セキュリティ・サービスの方なのでございますか
お嬢様の1人が尋ねる
いいや、違うよ
ええ、マルゴさんは香月セキュリティ・サービスとは関係の無い人です
レイちゃんも笑顔で、そう答える
それで、あの今はどちらのお宅の警護役をなさっているんですの
もし、よろしければわたくしの家に
あっ、ずるいですわわたくしが先にお伺いするつもりでしたのに
わたくしから、父にお願い致しますから
わたくしのところへおいで下さいませ
あー、そういうことになるのか
でも、いいのかそんな話をしてて
今現在の警護役の子たちが悲しそうな顔をしているぞ
残念だけれどあたしは、もう警護役は引退することになっているんだよ
マルゴさんはニコッと微笑む
実はアメリカで格闘技の大会に出ることになったんだよだから、警護の仕事はもうしないんだ
まあ、そうでしたの
そう言うお嬢様たちに
でも、皆さんが応援してくれたら、嬉しいなあたしはねまずは女子の世界チャンピオンになって、その次は男と闘いたいんだそれも世界一強い男の人と
とても面白そうですねマルゴさんなら、屈強な男の人たちでもバッタバッタと次々薙ぎ倒していくんでしょうし
レイちゃんが、笑顔でそう言う
ああ、それ楽しそう
面白そうですわ
わたくし応援致します
お嬢様たちが、口々にそう言う
あれがマルゴの狙いネ
イーディが戻って来て、小声でオレに囁いた
ああやって、あの子たちを自分のファンにしてあの子たちの父親に格闘技興行のスポンサーになってもらうノネ
ダカラ、さっきはキョーコたちもああいう闘いをしたノネ
マルゴさんの綺麗で正統派の綺麗な闘いを見せるために
オレは2人の様子が心配だった
それも大丈夫ヨ屋敷の中で、寝ているネミチが看てるのネ
まったくキョーコさんたち相手に、無茶するから
2人とも鷹倉神社の巫女として生きることを断念したのはいいけれど
何で、あんなイチかバチかみたいなことをしたんだろ
アレはミナホの指示ネそして、あの2人が来ることをキョーコたちは知ってたヨ
どういうことなんだ、イーディ
イーディはさらに小さな声で、オレに言う
コノ警護役の子の中にヤクザの娘がいるノネ
今、鷹倉神社の一件で香月家と抗争している関西ヤクザの
そのムスメに関西に色々と報告してもらわないといけないノネ
日に日に、温かくなり春めいてくるのは良いけれど
花粉がツライです
今日は昼間に父と、某大手カメラ店まで行ったのですが
増税前に家電を買いたいという、たくさんの家族連れと
春休みで来たらしい、たくさんの外国の人で混雑していました
1000円の時計を大量に買っていた中国の人は、あれをお土産として配るんだろうなあ
家電のところにも、たくさん外国の人がいたけれど
日本で、メイドイン自分の国のものを買っちゃったりはしないのだろうか
何か色々と人生が見えて面白かったです
849.ハイ・ライフ / 乙女たち
ヨミたちを見せた目的の1つはわざと関西のヤクザたちに巫女の力の弱点を教えるコトなのネ
イーディは、小声でオレに言う
え、何でそんなことを
オレも小声で、イーディに尋ねた
巫女にも弱点があるんだって判ったらヤクザたちも、少しは巫女に対する警戒を緩めるネ
ああ、月子たちの母親の狂乱によって何人もの人が犠牲になったから
関西の連中は、鷹倉神社の巫女を酷く恐れている
キューソ、ネコを噛むと言うヨあんまり思い詰めさせない方がいいノネ
そんな言葉まで覚えたかこの金髪褐色肌の天才アメリカ人美少女戦士は
2つ目はアタシたちが巫女をキョーコ・メッサーに使わせたりはしないというアピールなのネ
ただでさえ、キョーコさんたちの外国勢力が日本の裏社会に入り込んで来ていることをヤクザたちは嫌がっている
元々は、自分たちのモノであった鷹倉神社の巫女を、オレたちがキョーコさんに差し出したりしたら、とんでもなく反発するだろう
変な疑心暗鬼が生じる前にキョーコさんとヨミたちを対決させたのか
これで、巫女の力はコウヅキ家が預かっているということの証明になったのノネそして、コウヅキの家には、売国はしないという保証があるノネ
ジッちゃんは、この国の名家中の名家の当主であり様々な権力者に影響を持っている
だから、香月家にしろ、香月グループの企業にしろ日本の国益を第一に行動する
外国勢力のキョーコさんたちと提携することはあっても鷹倉神社の巫女を売り渡すようなことはしない
むしろ、キョーコさんたちに対する対抗策の1つとして、保有し続けるだろうと想像する
関西ヤクザたちは結局、巫女の力をくだらないことにしか使えなかったノネ今となっては反省しているハズヨダカラコウヅキ家の方が、巫女の力を日本のために有益に使えるというキャンペーンを張れば、敵対を止める人たちも出て来るノネ
香月家対関西ヤクザの抗争の図式に、キョーコさんを割り込ませることで関西の連中を2派に割るのか
どこまでもオレたちと闘うという勢力と、外国勢力に牽制するために香月家と和解しようとする勢力に
そしたら半分になった、あくまでも香月家に逆らう連中だけ、ブッ潰せばいいんだもんな
抗争が楽になる
違うヨ敵が2つに割れたら、放っておけばいいのネ
後は、2つに割れた勢力同士で勝手に潰し合うノネ
え、えげつない
それで残った方をクシャッと潰せばいいのネどうせ、仲間内の抗争でヘロヘロになっているから、簡単ネ
お、恐ろしい
でも、まあそういうことか
トコロでDarling気付いているカ
んイーディ
今、この中庭にいる警護役の女の子たちは3つの勢力に別れているノネ
イーディに言われて、オレは中庭を見廻す
1つめのグループは主と一緒に、レイカとマルゴの周りに集まってキャーキャー騒いでいるネ
ああ、相変わらずレイちゃんとマルゴさんの周りには、たくさんの女の子が集まっている
ほとんどは名家のお嬢様たちだけれど警護役なのに、強いお姉様たちに眼を輝かせている子たちもいる
2つ目のグループはレイカたちの方へ行かない主を警護している子たちネ
ああ、名家のお嬢様たちだって、全員がミーハーな子ばかりじゃないから
それぞれのテーブルで、何人かの仲間とあるいは一人きりで、休憩しているお嬢様たちもいる
みすずや瑠璃子とテーブルを囲んでいる狩野桜子さんや鳥居まり子さん、鞍馬姉妹なんかもそうだな
その背後には、それぞれ警護役の子たちが立っている
まあ警護しているんだから普通の景色だよな
3つめのグループは主に付いていないで、少し離れたトコロから場の様子をうかがっているネ
あ、ホントだ
確かに、中庭の端や屋敷の壁や柱の方に、警護役の子が隠れるようにして立っている
そうかレイちゃんたちの方に集まっているお嬢様のうちの何人かは、警護役が付いていない
テーブルにも、1人だけで座っているお嬢様たちもいる
そういう人の警護役が主を置いて、1人だけ壁際へ行っている
別にオカシイことではナイのネこの中庭ぐらいの広さの空間なら警護役が、主にぴったり付いている必要はナイノネ
確かに普段だって、警護役が常にくっついていることはないだろうし
ここは香月家の本家の邸宅だレイちゃんたちも居る
キョーコさんたちが立ち去った今、脅威は無いんだから
ぴったりと離れずにガードしなくたって、充分なんだろう
デモああやって主から離れている子たちは、みんな考えることがあるからなのネ
考える何を
さて、そろそろレクチャーを再開します
笑顔の翔姉ちゃんが、大きな声でそう言う
皆様、ご自分のテーブルにお戻り下さい
レイちゃんも、周りのお嬢様たちにそう告げた
さてとじゃあ、あたしは
マルゴさんが席を外そうとする
ええー、もうお帰りなんですの
もっと、お話ししたいですわ
お嬢様たちの一部は、すっかりマルゴさんのファンになってしまったようだ
レクチャーが終わったら、懇親会のガーデンパーティだろその時にまた顔を出すよ
きゃー、待ってますわ
お待ちしていますマルゴお姉様
わたくしは、レイカお姉様がいいですわ
わたくしも、わたくしも
女子校の子なんだよなあこういうところが
皆様、速くお席に戻っていただけないと、レクチャーが始められませんそうなりますと懇親会の時間がなくなってしまいますよ
翔姉ちゃんが、女子校の先生のような口調でそう言う
はーい、判りましたぁ
パタパタと席へ戻るお嬢様たち
じゃ、また後でね
マルゴさんは、みんなにそう言うと屋敷の方へ向かう
オレは、このお嬢様のための安全講座とかを聞く必要は無いんだし
オレは、みすずたちのいるテーブルに戻り
オレもちょっと席を外すよ
みすずに言った
ヨミとルナが心配だから
2人とも、キョーコさんとミス・コーデリアに、ぶるんぶるん振り回されていたから
このタイミングで席を外すのなら、他の人たちに注目されることもないだろうし
判りましたわ、旦那様
お兄様、懇親会までにはお戻り下さいね
瑠璃子も、笑顔でそう言ってくれる
じゃあ、皆さんちょっと失礼します
オレは狩野さんや鳥居さん、鞍馬姉妹に挨拶をしてテーブルを離れる
鳥居さんは、オレに笑顔で会釈してくれた
鞍馬姉妹は、心配そうな顔のままで一礼してくれる
でも、狩野さんはオレを無視したままだった
このメンバーも、色々あるんだよな
ちなみに、警護役の子たちは全員、オレを完全無視している
シエさん、アーデルハイトさん、安城ミタマさんキヌカさん姉妹
オレは、みすずたちの警護を美智に頼んだ
美智は、無言でオレに頭を下げる
アタシも付いていくネ
今のアタシはクロモリ・コウのガードなのネ
ああ、そういう設定になってたよなじゃあ、しょうがない
さっきの話も途中だったし
ああ、来てくれ
オレたちは、屋敷の中へ
ううう、まだ頭がクラクラしますぅぅ
応接間のソファに、ヨミとルナが引っ繰り返っていた
大丈夫か2人とも
先生キュッとして
オレは、ヨミを抱き締める
よしよしヨミ
ううう怖かったですぅ
ヨミの大きなおっぱいの弾力を胸で感じる
兄さんボクも
今度は、ルナか
ヨミルナと交代だ
ヨミがオレの唇に、チュッとキスをする
兄さんっ
ルナは、オレを強く抱き締めるとキスを求めて来た
オレの口の中に舌を入れて来る
ルナも怖かったんだな
オレは小さな背中を擦ってやった
だってあの人たちの心の中、真っ暗なんだもん
ええ、漆黒の深い穴の中へ吸い込まれて行くようでしたわ
人の心が読めるというのは、両刃の剣だ
キョーコさんたちのような、恐ろしい体験をたくさんしている人の心も覗けてしまうのだから
兄さん、もっとキュッとしてキスして
オレは両腕にヨミとルナを抱き締め、何度もキスする
はぁぁ、気持ちが落ち着く
うん先生の匂い、安心する
ヨミはクンクンとオレの首筋の匂いを嗅いでいた
こんなことで、強ばっていた心がほぐれるのなら、いくらでもしてやる
Darlingアタシモ
え、イーディ
アタシも頑張ったヨ
今、両腕が塞がっているからお前がオレを抱き締めろ
YES、Darling
イーディは、オレの背中に抱きつく
Darling、Darling、Darling、リンリンッ
犬の様に、オレの髪の毛に鼻を突っ込んで、クンクン匂いを嗅いでいる
先生、先生っ
ヨミは、オレにグイグイ巨乳を押し付けてくる
ルナも必死に、オレにしがみついてくる
兄さん、ボクセックスしたい
あぅぅ、ヨミも
巫女姉妹が、赤い顔でオレに言う
アニエスちゃんなら、絶対にセックスしたいって言うと思う
ヨミは、アニエスちゃんじゃないけれどセックスしたいって言っちゃいますの
アニエスならそうなるんだろうけれど
へもしかして、イーディも
今はダメネガマンヨ
イーディは、厳しい顔でそう言った
今ここでDarlingがセックスしたらミチが怒るネミスズも怖いネ瑠璃子もプンプンなのネ
それに、今はまだ警戒していないといけないノネ
ああ、名家の警護役がいっぱい来ているんだ
あの人たちはそんな怖くないよ
ええ、みんな美智お姉様やイーディお姉様よりも、弱い人たちですわ
ルナとヨミはそう言う
いや、誰がどんな技を隠しているか判らないんだからさ巫女の力みたいな不思議な能力を持っている子がいるかもしれないし
そんな人、いなかったですわ
うん、兄さんボクたち、みんなの心はチェックしたから
ルナやヨミの力を潜り抜ける能力の持ち主だっているかもしれないだろ
そうだよ名家に代々使えている警護役の家系には誰も知らない技を受け継いでいる人もいるだろうからね
そう言いながらマルゴさんが入って来る
美智ちゃんの工藤流古武術に気の技の伝承があったんだから他にも、そういう秘密の技を継承している人がいるかもしれない油断しちゃダメだよ
ということだから今はダメだまた後でな
オレは3人に、順番にキスする
良信くん、こっちに来てミナホが呼んでいるから
判りましたすぐに行きます
あっ、ヨミも行きます
2人がそう言うが
キョーコさんたちも居るけれど、いい
あうーっ
2人の勢いが止まる
ヨミとルナは、ここで待っててイーディ、2人のことを看ていてくれよ
オレは、イーディに頼んだまだこの子たちは、回復していないと思うから
イーディも今は顔を合わせたくないだろ
美智と2人で、全力で攻撃したのにあっさり、いなされたんだから
イーディは、ハッと溜息を吐いて
ソウネアタシは、ここにいるヨこの子たちのことは任せるネ
そう、オレに言ってくれた
◇ ◇ ◇
うん使えそうなのは、この子とこの子とこの子ぐらいだね
ミナホ姉さんとキョーコさんとミス・コーデリアは大型モニターで中庭の様子を観ながら話していた
各家の警護役の能力を分析しているのか
あら、わたしはこの子とこの子が欲しいわ
そっちは、お嬢様ですよ
ミナホ姉さんが、ギロッと睨む
だから、いいんじゃないかペットに欲しい
平然と、そんなことを言う
誘拐とかして帰っちゃダメ
ダメです香月家が非難されますから
ミナホ姉さんは、強く言う
そりゃ香月家の主催で、本家の邸宅で行われている会で誘拐事件が起きたら大問題になる
香月セキュリティ・サービスの信用はガタ落ちになるだろうし、みすずやジッちゃんの名前にも傷が付く
あら、残念ね
クククとミス・コーデリアは笑う
ところで、キョーコさっきのボンバー・シスターズはどうなの
ボンバーああ、スカイラブ・ハリケーン・ミキサーッッッの姉妹ね
安城ミタマさんとキヌカさんたちのことか
あの子たちは大した能力は無いじゃないか
でも、キョーコは、ああいうバカなムスメは大好きでしょ
まあね、あの場に飛び込んで来るだけの度胸はある天然かもしれないけれど、笑いのセンスもなかなかだだけど
キョーコさんは苦笑した
ああいう忠誠心の強い子はあたしは苦手だね
忠誠心安城姉妹の
あの娘たちなら、放っておいても手に入りますから
ミナホ姉さんが、2人に言った
そして、部屋の入り口に立っているオレに言う
良信もう、判っていると思うけれど
あの子たちの主鞍馬美里さんは、娼婦に堕とすわ
ジッちゃんに直訴し損なってしかも、家の状態が良くないと言っていた
つまりお金に困っている
そして、オレに相談しろと、ジッちゃんはあの姉妹に言った
ということは黒森の娼館で働かせるということか
1人だけなの下の妹はどうするの
ミス・コーデリアがミナホ姉さんに尋ねる
妹のありすさんの方は、まだ13歳ですから
あたしの娼館は若すぎる子は、働かせないんですこれからは
ミナホ姉さんは12歳で娼婦に堕とされた
姉の美里さんの方にはお客を取らせますが、でも良信ありすさんの方もいつでも売りに出せるように調教はしますいいわね
あの姉妹は2人セットで引き取るというのが、条件なのお姉さんだけが身体を汚すのでは、妹さんの精神がもたないわお姉さんも妹さんより、心が弱そうだし2人同時に、調教しないと潰れてしまうと思うのよ
オレは犯罪組織黒い森のメンバーで娼館を経営する黒森家の子供だ
黒森御名穂の弟なんだ
ミナホ姉さんと一緒に、地獄へ堕ちる覚悟はできている
ああ、なるほど主が娼婦になるのなら、専任の警護役は解雇されてしまうわけね
そうだよなただの娼婦が自分専用の警護役を持つことはできない
ましてや、ミナホ姉さんの顧客は、みんな政財界の重鎮だそれぞれが自分の警護の人間を連れている
そういう人たちの買う娼婦には警護役は不要だし、邪魔になる
まあ、いいさその話は
キョーコさんが、鞍馬姉妹の話を打ち切る
それより良信くん、また後で会場に戻るんだろ
はい、懇親会の時間になったら戻りますけれど
キョーコさんは、監視カメラの操作スイッチをカチャカチャ動かす
今日の会に関西ヤクザから送り込まれて来た女の子は2人いる
うち、1人はこの子このお嬢さんの警護役この子は心配ない大阪との関係は、知り合いの知り合いぐらいだし後で、今日の香月家の様子を聞かせてくれぐらいしか言われていないはずだからさっきのあたしたちの茶番劇で騙せたと思う
ああ、キョーコさんを見たとかレイちゃんがカッコ良かったとかしか、話さないか
キョーコさんは、またカメラを切り替える
厄介なのは、こっちの子この子はちょっとメンド臭いと思うんだなんてったって、大阪から直で送り込まれて来ているから
カメラに映ったのは、目付きの鋭いポニーテールの女の子だった
名前は天童乙女《テンドウ・オトメ》大阪の天童貞男っていう侠客の娘だよ
美人だけれどすっげぇ、怖そうな子だなメチャクチャ不機嫌そうな顔をしているし
ミズシマ・ホールディングスの会長の警護役に先週からなっている香月家が、こういうイベントをやると知って、押し込んだとしか思えないね
みすずが、今日の会の計画を学校で話した後からか
学校に自分の警護役を連れて来ている女の子限定なのだから今まで警護役のいなかった子に、慌ててこの天童さんを押し付けたのか
あの、キョーカクって何です
ヤクザの世界のまあ、用心棒みたいなものよ義理と人情に溢れて、抗争の時に真っ先に敵と闘うっていう
それって、仕事なの
いつでも抗争とかしているわけではないだろうし普段は何をしているんだ
いつもは博打とかして、組の中でふらふらしているのよでも、とにかく強いってことになっているからその怖さで周りを威圧したり、人を脅したり、借金の回収とか、揉め事の仲裁に入ったり
特に天童貞男という侠客は大阪のヤクザの世界では知らない人がいないくらい有名な人なのよその筋の人たちには42歳の天童貞男って呼ばれているらしいわ
何が42歳
それが良く判らないのよ42歳が男の厄年だからこの人に会うと、厄年みたいなトラブルに巻き込まれるっていう説と、結婚したのが42歳の時だったっていう二つの説が有力らしいんだけれど
とにかく、ヤクザ世界にどっぷり漬かっている子なんだな
後でヨミたちに聞いてみよう
有名なヤクザなら、鷹倉神社に来たことがあったかもしれないし
とにかくさ、この天童乙女には注意して何か仕掛けて来るかもしれないから
キョーコさんは、オレにそう言った
ところであの
オレは、さっきイーディが言っていたことを聞いてみた
何で、こんな風に警護役の女の子が3パターンもいるんですか
それはキョーコさんたちのパフォーマンスが良すぎたからよ
名家のお嬢様が普段から、同い年ぐらいの女の子を警護役に付けるのは、ほとんどがイジメ対策なんだよ
キョーコさんが言う
それは聞きました
お嬢様が学校内で孤立しないように、最初からお付きを連れて行くでそのついでに、お付きの子に多少なりとも格闘技の心得があって強かったら、なお助かる現実は、そんなものだよ
つまり警護役の子は、メチャクチャ強い必要はないのよ
キョーコさんとミナホ姉さんが、笑って言う
いじめっ子が警戒するぐらいでいいわけだよ登下校には、どうせプロの男の警護員が別に付くんだしね
ああ、お嬢差学校の中、限定なら
だから、普通は警護役の子は、その名家が雇っている警護の家系の中で、お嬢様と年が近い子を選ぶだけなんだよ本当の強さとかは、そんなに考慮しないんだ
イジメ対策なら、警護役の子のお父さんやお兄さんが強いってだけでも、効力があるもの
ああお父さんが警察官の子や、お兄さんがプロレスラーの子はイジメられにくいってのと同じか
美智さんみたいに、本当に強いって子はそんなにいないのよ
だからさ主のお嬢様と一緒に、マルゴの周りで楽しくキャッキャしているのもアリなんだよ警護役としてはお嬢様の仲の良いご学友でもあるんだからさ
キョーコさんが、そう言った
でちゃんとご主人様にくっついていた警護役の子たちは、まあ普通に仕事しているっていう意識のある子たちだよ問題なのは
最後の主から離れていた連中か
あの子たちは今のお嬢様の警護役の仕事に不満があるんだよ
警護役の家に生まれてお父さんやお兄さんは、名家の当主の警護を勤めているわけだろそっちがやりたいのさお嬢様の警護なんて、バカらしくてやってられないって思っているんだよ
それだけじゃないわ今の自分が担当している家でなくもっと大きな家の警護役になりたいって思っちゃったのよ
今まで通り自分の生活だけしか知らなかったら、先祖代々、この名家に仕えてきたんだから自分もこのお嬢様に仕えなくてはいけないって思ってたんでしょうけれど
今日の会に来たことで他の名家に仕えるっていうのもアリなんだって気が付いちゃったのよ
それは、美智さんやイーディが本気でキョーコさんと闘うのを見てしまったからよ全力で、自分の習い覚えた技を使って闘っている姿をね
ただの警護役だと普段は、自分の技は隠しているからね特に家伝の技は
美智にとっての工藤流みたいなものが、それぞれの警護役の家にもある
イーディたちの闘いを見て力一杯自分の能力を発揮してみたいって気分になっちゃった子は多いと思うよ特に、真面目な子はね自分で人生を選んで、今の主に仕えているわけじゃないんだからあの子たちは
キョーコさんは言う
まあ、あたしやマルゴ、あるいはイーディたちには敵わないとしてもでも、今の自分なら、もっと格の高い良家の警護役にクラスアップしてもいいんじゃないかって、思っちゃったりしてさそれは、ほら自分の警護人としての腕を認めてもらうってことなんだから
今は、たまたま先祖代々、その名家に仕えてきたという理由でしかも自分がその家のお嬢様と年が近かったということだけで、警護役を任じられている
つまり、その子自身の能力は認めてもらっていない
やっぱりさ、毎日、必死で稽古しているんだから認められたいんだよそれで、あの子は実力であの名家の警護役になったって言われたいんだろうよ
だけどマルゴたちの周りでキャーキャーやってた子たちの中にもさ、かなりの名門のお嬢様の警護役も居たみたいなんだけど
ああ、むしろ真面目に警護役をやりたい女の子からすれば
家の繋がりでたまたま格の高い名家のお嬢様に付いているだけの警護役が
主と一緒に、楽しくワーキャー騒いでいるなんていうのは絶対に許せないわけで
そんな子よりも、自分の方が強いのにと感じたら
今の主を捨てて、自分が格上の家の警護役になりたいって思うようになってしまったのか
世の中には、香月セキュリティ・サービスみたいな会社もあるしね香月セキュリティ・サービスに入って腕試ししたいとか、思っている子もいるんじゃないかな
レイちゃんのファンになって、キャーキャー騒ぐより
レイちゃんの下で自分を鍛えたいという子もいる
だから、この後の懇親会裏では大変なことになると思うよ
キョーコさんが、ニッと微笑む
あちこちで、売り込み合戦が始まるから
マズいなそれは
そんなの自分の警護役に逃げられたお嬢様が、みすずに抗議してくることになる
それぞれの家の問題に発展するかも
良信気を付けなさいね
売り込みを掛けてくる子が、狙って来るのは瑠璃子さんと美子さんの警護役だと思わない
そうだ2人には、専任の警護役がいない
さあ大変だねえ、良信くん
キョーコさんは、楽しそうに笑った
キャラがどんどん増えて、済みません
敵役がちょっと足りなかったので
天童貞子にしようかと思ったんですが、可哀想過ぎたので親の名前にしました
大昔のマンガに、登場人物の名前がオチン・コイジロウとマンコシ・タイゾウなのがありました
漢字は覚えていません
850.ハイ・ライフ / それぞれの立場
ところで、良信
鞍馬さんの姉妹については、今言ったとおりうちの娼館に受け入れることになるんだけれど
ああ、そのことは判っている
今、みすずさんたちと同じテーブルに居る、あと2人のお嬢様たち狩野桜子さんと鳥居まり子さん
その2人のことも、よく見ていてね
それってまさか
あの2人も娼婦に引きずり込む
いえ、そういうことじゃないわこれは娼館の経営者としての仕事じゃなくって、香月セキュリティ・サービスの分析担当としての話よ
ミナホ姉さんは翔姉ちゃんから、香月セキュリティ・サービスの仕事も請け負うようになっている
香月のジィさんが、あの2人を孫たちのテーブルに座らせたのはあのジィさんなりの気遣いだったってことさ
今日、この香月本家の邸宅に来たお嬢様たちの中ではあの2人だけが浮いているのよ良信も、最初はあの子たちがそれぞれ離れたテーブルに座っていたことを知っているでしょ
ミナホ姉さんの言うとおり狩野さんも鳥居さんも、他のお嬢様たちと一緒のテーブルにはいなかった自分の警護役だけをめ連れてぽつんと孤立していた
他の子たちとは、会話すらしていなかったと思う
むしろ、鞍馬さんたち姉妹の方が親・香月家のお嬢様グループのテーブルの端っこに座っていた
鞍馬姉妹が父親の失敗した事業の救済を、ジッちゃんに直訴しようとした時までは少なくとも、他のお嬢様たちは鞍馬姉妹を仲間として受け入れていた
狩野さんや鳥居さんのことは、完全に無視していたのに
狩野さんと鳥居さんには何か、友達がいない理由があるってこと
オレは、ミナホ姉さんに尋ねてみた
それは、あたしの口からは教えられないわ
ミナホ姉さんは、フフッと笑う
良信が自分で調査しなさい
オレが調べる
今回の件はねあたしたちは、みんなそれぞれ立場が違うんだよ
あたしは、香月のジィさんとの契約で動いているだからあたしは可愛い女の子たちは大好きだけれど、今は香月家の利益になることだけを考えて行動している
あたしもそうよあたしの場合は香月セキュリティ・サービスとの提携での業務と、あたしの娼館の出資者の一人である香月様に対する義務で行動しているわ
あたしたちのは、お金が絡んでいる仕事だからね色々と割り切って動くしかないんだよ
あたしたちの立場から、良信に具体的なことを言うのはフェアじゃないでしょ
ああ、それを聞いてしまったらオレは、ミナホ姉さんやキョーコさんの都合に合わせて、行動しなくちゃいけなくなる
良信をあたしたちの手駒にしたらみすずさんたちに怒られちゃうわよ
そしてジッちゃん=香月セキュリティ・サービスと、みすずや瑠璃子の考えも違うんだな
ミナホ姉さんは、最低限の情報としてジッちゃんが、鞍馬姉妹を娼婦に堕とそうとしていることと、狩野さん鳥居さんを気遣うように指示していることだけを教えてくれた
みすずや瑠璃子たちが、鞍馬姉妹を娼婦にすることを反対している可能性だってある二人の考えは、まだ聞いていないんだから
それから、狩野さんや鳥居さんに対しても何か思っていることがあるのかもしれない
ジッちゃんにとっては、全てが香月家や名家に関わる事柄でもみすずや瑠璃子にとっては、同じ学校に通う女生徒たちの問題だ
立場は違う
良信も、たくさんの女の子たちと繋がっているんだからそれぞれの立場と意見を聞いて、自分の進むべき方向を決めて欲しいのよ
強制はしないわ自分で状況を調べて自分で判断をして、自分の立ち位置を決めなさい
あたしたちと敵対したって構わないよそれはそれだからただし、あたしもミナホも請け負った仕事は最後までやり通す女だけどね
キョーコさんは、そう言った
じゃあ、そろそろ戻りなさいあんまりあなたの帰りが遅いと、みすずさんたちがヤキモキしちゃうと思うから
うん、判った色々、ありがとうございました
オレは、キョーコさんとミナホ姉さんに頭を下げた
はいはい、またね健闘を祈るわよ、boy
今までオレたちの話を聞くだけで、会話に参加しなかったミス・コーデリアが笑ってオレに手を振った
ミナホ姉さんたちが居た部屋から、廊下に出るとマルゴさんが待っていてくれた
マルゴさんが、オレと一緒に部屋の中に入らなかったのは
そうだよ今のあたしは中の2人と立場が違うからね
今はちょっとミナホたちの悪巧みの仲間入りはできないから
マルゴさんは、表の世界で格闘技ビジネスをすることになっている
だから、ミナホ姉さんの新しい娼館に関わる仕事や、キョーコさんの裏の仕事の手伝いをすることはできない
今日のあたしは、スポンサー集めの方が大切だしね正直、資金的なことはもう大丈夫なんだけれど社会的に名の通った会社が何社か居てくれると、色々と助かるんだよ保証になるからね
今日、ここに来ているお嬢様たちの家は、大きな会社と繋がりがあるから
大手企業に名前だけでも協賛してもらうための、キッカケが作れるかもしれない
それなら、ヤッちゃんも連れて来れば良かったのに
オレは、そう思った
スポンサー開拓なら、マルゴさんと2人でアピールした方が効果的だろう
いや、寧は年下の子には、割と人気があるけれど同い年ぐらいの女の子には、意外と敬遠されちゃうんだよ
特に今日は、可愛いお嬢様たちの集まりだからさ
ああ寧だと美人過ぎて、反感を持つ子もいるのか
今日はさできる限り波風を立てたくないんだよあたし1人なら、元・警護人で今はプロ格闘家を目指している女っていうことで、みんな納得してくれるでしょ納得ができるものには、人は反感は持たないものだからさ
マルゴさんに寧が加わると
この美人過ぎる子は何マルゴさんと、どういう関係と疑念が反感に変化していく
そして、その空間に反感を持っている子が何人かいるだけで、場の雰囲気が悪くなっちゃうからね空気が澱むとあたしに好感を持ってくれている子たちも萎縮しちゃうだろうし
なるほどとにかく今日は、明るく楽しく、格闘家としてのマルゴさんの魅力をアピールして、スポンサー獲得に繋げたいのか
あたしが今はもう格闘家なんだって知った途端警護の女の子たちも緊張が緩んでいたでしょ
ああ警護役の女の子たちの中には、他の名家に鞍替えしたがっている子もいるから
マルゴさんがもしフリーの警護人だったら、瑠璃子や美子さんの警護役の仕事を奪われちゃうんじゃないかって不安になったんだ
でも、そうじゃないって判ったから
ただの格闘家なら興味の無い子は、放っておいてくれるしね
ということで、良信くんあたしに何か質問はあるかい
廊下を歩きながらマルゴさんが言う
今のあたしは割とニュートラルな立場だからね
ミナホ姉さんやキョーコさんの大人の仕事をしているという立場でもなく
みすずや瑠璃子のお嬢様学校の生徒仲間という立場でもない
じゃあ、1つだけ相談したいことがあるんですけれど
オレはさっき、キョーコさんたちが言っていた警護役の子たちの売り込みの件をマルゴさんに聞いてみることにした
そういうことで今、警護役の子たちは、主と一緒に楽しんじゃっている子とちゃんと真面目に主の警護に集中している子と主の警護を放棄して、もっと別の家に自分を売り込もうとしている子の3グループに分かれているっていうんですけれど
君はどう思うの
オレは確かに、キョーコさんたちの言う通りかなって、でも
何か雰囲気的に、もうちょっとメンド臭い感じなのかなって
ただ単に3種類の子たちに分かれたというような簡単な話ではないと思う
ふうん何でそう思うのか、自分で分析できる
マルゴさんが、オレの眼を覗き込む
何か気持ち悪いんですよ
オレは、心の中の違和感を言葉にする
キョーコさんたちと、美智やイーディは本気のバトルをしていましたその後の、マルゴさんやレイちゃんもキョーコさんたちと、スッゴイ闘いをしていました
オレは見ていた
あの闘いは、物凄く高レベルなものだってオレにも判った
でも休憩時間になったら、お嬢様たちはみんなワーッとマルゴさんやレイちゃんのところに集まってみんな、キョーコさんたちの凄さとか怖さとか、話していないっていうか気にも留めていないみたいだから
あれだけの戦闘を見たばかりなのに、平然とワーキャー喚いていた
それはさ君もいろんな人たちの闘いを見てきて、すっかり眼が肥えてしまったってことさ
そして、キョーコさんという人が、どれだけ恐ろしいかってことなんだけれど
マルゴさんは足をとめ、窓から中庭の様子を見る
お嬢様と警護役たちは、みんな仲良くレイちゃんの講義を聞いているようだった
みすずたちもいる
ああ、テーブルのメンバーみすず、瑠璃子、狩野さん、鳥居さん、鞍馬姉妹そして、それぞれの主の背後に立つ、美智、シエさん、アーデルハイトさん、安城姉妹も、そのままだ
誰1人、他のテーブルに移っていないということは狩野さんや鳥居さんにとっても、みすずたちの保護下である、あのテーブルに居る方が都合が良いということなんだろう
元の一人きりのテーブルで孤立しているよりは
さっきのキョーコさんの闘いキョーコさんは、わざとあそこに居るお嬢様たちや警護役の女の子たちには、敵意を放射しなかったんだよ
だから武闘の能力も経験も無いお嬢様たちや、修行の浅い警護役の子にはあたしたちの闘いが、本当に自分たちにはまったく危害が及ばないものなんだって感じていたんだそうプロレスの試合会場でリングの中を見ているような気分でいられたんだ
すぐ眼の前で、あんなに激しいバトルがあったのに
安全な見せ物だと感じて、悠々と見ていた
ほら、レイカお姉さんが言ってたでしょこれは、エキシビション・マッチだって本当にそういう練習試合だと思って見ていたんだよお嬢様たちにとっては、キョーコ・メッサーもレイカお姉様もテレビの世界で闘っている人でしかないから
フィクションだと思っているってことですかテレビの中で行われている闘いはキョーコさんとレイちゃんのヤラセっていうか、作り事の闘いだってバレてるってこと
そういうことでもないんだよ何がフィクションで、何がゲンジツかなんてことは、普通の人間には関係ないんだからさ
関係無い
大事なのは自分自身に関係あるかどうかって、ことだけなんだよ自分の生活に影響が無ければ、多くの人間は遠くの国で戦争が起きてもへえ、そうなんだとしか感じないからねその人にとって、ゲンジツの戦争とドラマの中で起きている殺人事件に、どれほどの差があるんだろうね
自分の生活に関係無ければそれがゲンジツかどうかは、問題ではない
むしろフィクションの世界で起きている可哀相なできごとに、共感しちゃったりするだろ**ちゃんがとっても可哀相とかホントは、それはドラマの中の世界のできごとで実際には、誰も死んでいないとしても
前にある映画監督が、学校での講演会でこういう実験をしたんだけれどさ
まず最初にシェイクスピアっていう大昔の劇作家がいるでしょあの人の歴史劇の中にさ、戦死したイギリスの貴族たちの名前を読み上げる場面があるんだよそのセリフを学生の1人に渡して、みんなに読み上げてくれっていうわけ
それはさ、イギリスの中世のばら戦争の時の話だからさ戦死したのは、**公爵、**伯爵とか仰々しい名前ばっかりなわけだから、読み上げる方も笑っちゃうし聞いている方も、真面目に聞けない
それは、まあそうだろうな
大昔の戦死した人たちの名簿とかを、真面目に読むのは
で、次に同じ学生に、この間の大震災で亡くなった人たちの名簿を渡して読み上げろっていうわけ
震災でなくなった人
今度は**町の**さんとか**村の**さんという名前の読み上げになるよね読み上げる学生も、とても慎重に緊張して読むし聞いている他の学生たちも、シンと静かになって真面目に聞いたんだそうだ
どうして、シェイクスピアの歴史劇の中の戦死者リストを読むと笑いが起きて震災で亡くなった人の名前を読み上げるとシンとなるんだと思う
だって震災は本当にあったことでその人たちは本当に死んでしまったからですよ劇の方はフィクションじゃないですか
シェイクスピアの作品は劇だけどばら戦争は本当にあった戦争なんだよ劇中で読み上げられている戦死者たちは、本当にその戦争で死んだ人たちなんだフィクションじゃなく、みんな実在していた人なんだよ
本当に生きていた人たち
亡くなった人の名簿という意味では2つは同じ
学生たちが震災の名簿でシンとなったのは、まだまだ記憶が鮮明だからだろもしかしたら、学生の身内や友達も被災したのかもしれないし
だから、真摯に受けとめてしまう
シェイクスピアが生きていた時代の人たちにとってばら戦争は、お祖父さんやお父さんの代に起きたことだったんだだからその戦争で死んだ貴族たちの名前が読み上げられるのは、当時の観客たちにはリアルだった自分の直接の先祖が仕えていたり、殺されたりした相手の名前なんだからね
今の自分と密着したことには人は真面目に受けとめるしかない
自分とは無縁なことだと感じたら本当にあったことだって、気に留めないこともある
その映画監督の実験は最後は同じ学生に、震災で亡くなった人の名簿を読む時の気持ちで、歴史劇の戦死者の名前を読み上げるように指示するんだそうするとさっきは、くすくす笑いの起きた戦死者**伯爵も真面目に読み上げられる聞いている人たちも、真面目に聞くようになる
キョーコさんたちの戦闘力がホンモノだっていうことは、誰の眼にも判るでも、自分に対して敵意が向けられていないと感じられれば楽しいショーだとして受けとめちゃうんだよ普通の人たちは
ただのショーだから終わったら、もう気にならない
レイちゃんのところで、キャーキャー笑い合うことができる
あの闘いが何だったのか改めて意味を考えたりはしない
キョーコさんの一番恐ろしいのはああいうことが平気でできるってことだよあの闘いの意味が感じ取れなかった子たちは今後、どこかでキョーコさんに会っても、警戒したりしないからね
例えばどこかの高級ホテルで、ばったりキョーコさんと出会ってしまったとする
お嬢様からすれば香月家のイベントで、レイちゃんと闘っていた体の良く動く愉快なお姉さんでしかない
テレビの中でのレイちゃんとの闘いも、香月セキュリティ・サービスの宣伝キャンペーンなんだと思っているだろう
そうだあの時は、この人は自分に敵意を見せなかっただからこのお姉さんは、信用できる人なんだと感じてしまう
世の中で一番怖い人はねこちらに敵意をまったく見せないで、近付いて来る人だよもっと、怖い人になるとこちらに好意を持ってくれているんじゃないかって思い込ませる人は自分のことを好きでいてくれる人にはとても弱いからね
そしてこちらの懐の内側まで、潜り込んだところで豹変する
敵じゃないと思っていた人自分のことを好きでいてくれると思っていた人に
いきなり刺される
良信くんはあたしやキョーコさんのことをどう感じている
敵意を感じる君に何か悪いことを仕掛けて来る人だと思う
むしろ、オレに好意を持ってくれていて、優しくしてくれると思っていた
ほら、君もキョーコさんの術にハマっているもしかしたらあたしにもね
ニヤッとマルゴさんは、笑った
いつもこちらに敵意を向けてくるやつらなんて大した連中じゃないんだよ君も、これからは本当の敵と闘っていかないといけなくなるんだよ
友人の振り仲間のフリをして、近寄って来る敵か
そして、こちらが心を許した瞬間に急所を刺してくる
キョーコさんは、ああやってわざとショーみたいに闘いをやって見せて今日、集まっているお嬢様と警護役の女の子たちを試したわけ誰がダマシやすいかもこちらの仕掛けに気付いたのは誰なのかっていうことも
本当はメチャクチャ強いキョーコさんが、わざとふざけた闘いをしてみたことに違和感を感じた人も居るんだ
人はね能力があるだけじゃダメなんだよ洞察力もないとねあそこには警護役として鍛錬を積んで、とても強くなった子もいるでも、戦闘力を持っていてもキョーコさんの詐術にあっさりとハマるような子なら、使い物にならないむしろ、今はそんなに強くなくても洞察力のある子の方が欲しいと、キョーコさんは考えているよ
マルゴさんは、中庭を見てそう言う
戦闘力は鍛えれば、ある程度までは上達するけれど洞察力があるか無いかは、その子の資質に掛かっているから洞察力だけは、他人が稽古で磨いてあげることはできないんだ自分で掴まないと、手に入らないものだから
洞察力
さっき、君が言ってたあそこにいる警護役のグループ分けだけど、3つじゃなくて6つだから
6つ
1つ目はあたしやレイちゃんのところに集まって来た子たちで、キョーコさんの詐術に気付かなかった子本当のミーハーの女の子だよね名前だけのホントにイジメ対策のためだけのご学友をやっている子
親が警護役の家系というだけで警護役としての洞察力に欠ける子
ただし、その戦闘力は強いか弱いか判らない練習試合なら、メチャクチャ強いっていう子もいるかもしれないよ実戦では、おそらく使い物にならないどころか仲間の足を引っ張ることになるだろうけれど
2つめはあたしたちの近くで騒いでいたけれど、本当はキョーコさんの詐術に気付いている子この子たちは、怖いよキョーコさんたちの本当の実力に気付いたからわざと楽しそうに騒ぐ演技をして、主を守っているんだよ
腹を括って楽しそうなお芝居をしている
3つめはキョーコさんの詐術に気付かないで、主の側にいる子何が起きているのか、全然判っていない子だよねキョーコさんの怖さも、あたしたちの闘った内容にもピンと来ていないからキョーコ・メッサーも、香月セキュリティ・サービスも大したことはない自分の方が強いなんて思っているかもしれない
ああ、本当のバカか
4つめはキョーコさんの詐術に気付いて、最大警戒で主を守っている子あたしたちに近寄るような危険な行為も自分の主にさせないように見張っているというまあ、警護役としては合格だけど面白味のない子たちだよ
5つめはキョーコさんの詐術には気付かなかったけれど、あたしたちのバトルを見て思わず興奮しちゃった子たちそれで、自分の主を見捨てて別の主に売り込もうとか考えちゃってるわけヒーロー物のテレビ番組を観た後に、子供がヒーローになったつもりで暴れたりするでしょあれと同じあたしたちの闘いを見て、自分も強くなったみたいに錯覚しちゃっているんだよ
ああ一番、困ったタイプか
それでいて、主人に対する忠誠心にも欠けているから
そして、最後の6つめの人たちこの人たちは、キョーコさんの詐術に気付いて、あたしたちや美智ちゃんの本当の強さ、恐ろしさにも気付いている人たちだよ
どうして、そういう人たちが主から離れちゃっているんですか
警護役の仕事を何で放棄しているんだ
1つは主を見捨てでも、自分が助かるポジションに居たいとあたしたちを警戒しているんだよ
ああ、殺されるかもしれないというレベルまで想定して、動いている
もう1つはキョーコさんみたいに、強くなりたいって思っちゃったんだよ自分とのレベルの違いに愕然として
今の自分の実力を知って
キョーコさんどころか、あたしやレイカお姉さんあるいは、美智ちゃんやイーディと比べても、自分の方が弱いと感じて心の底から、悔しがっているんだと思うよ
武に生きる家の娘ならそういうこともあるだろう
だから、あの子の中の何人かは本気でキョーコさんに弟子入りすることも考えていると思うよそれがダメなら、レイカお姉さんでもいい香月セキュリティ・サービスでも、あるいは美智ちゃんたちでも
香月家に関わる場所に居られればキョーコさんの技を盗むこともできるかもしれないんだから
それぐらいキョーコさんの圧倒的な技量に、魅了されている
いずれにしても、今のまんま特定の家のお嬢様の警護役をやっている限りは、キョーコさんみたいに強くはなれないって気付いちゃったんだよ
だから主を捨てて香月家関連に、自分を売り込む決心をしている
というのが、あたしの意見だけれど信じるかどうかは、君が自分で判断してね
マルゴさんは笑って、そう言った
オレは、改めて中庭の少女たちを見る
マルゴさんの言う通りだと思います
1人1人警護役の子たちを見ていく
講義しているレイちゃんを見て、ポーッとしている子
講義を無視して、自分の主に集中している子
常に周りを気にして脱出経路のことばかり気にしている子
他の家のお嬢様たちを順番に見ている子
みすずや瑠璃子や美子さんだけをチラチラ見ている子
そしてキョーコさんが消えて行った、この屋敷の方をうかがっている子
何とかしないといけないな
講義が終われば、懇親会のパーティだ
何かしら騒ぎになることは判っている
でも、あたしは自分のスポンサー探しに集中しないといけないからね
判っていますオレが、何とかしますよ
オレは、ヨミとルナが横になっている部屋に急ぐ
この状況を何とかするためには
あいつらの協力が必要だ
作中に書いた実験をしたのは、ピーター・ブルックです
本当は、歴史劇の戦死者報告のセリフと、アウシュビッツで殺された人の名簿だったと思います
判りやすくするために、震災の名簿に変えさせていただきました他意はありません
大学を卒業して、演劇の裏方の仕事を始めた頃
ある芝居の打ち上げで、20代後半の男の俳優が、若い女優さんに
ボクはねえ、ピーター・ブルックのなにもない空間を読んだときに、ハッと眼の前が開けたんだよ
と、演劇論で女の子を口説いている姿を目撃しました
うわー、いまだにこんな人がいるんだと内心驚いたのですが
その男の俳優さんの話していることが、ものすごーく下らなかったので
ヤン・コットは読みましたかマーティン・エスリンをどう思います
と、突っ込んだらこちらを睨んで、どっかへ行ってしまいました
私も、もちろん読んでないのですが名前だけ上げただけなんですけれど
しかし、それから5年ぐらいして
やっぱり打ち上げの席で、40歳過ぎの俳優がなんと、いまさらスタニスラフスキーの演劇論で、若い女優を口説いていました
面白いのは、どちらも女の子ははあ、はあと困り顔でうなづくだけで
男の方が自分の知識を、ひたすら偉そうに語っているだけだという
そして、これも驚くべきことなのですが
そういう演劇論で説教する俳優さんに限ってとても芝居が下手だったりします
俳優としての功績で騎士に任じられたローレンス・オリビエは、
演技論なんて、スタジオへ向かう車の中で読んでしかも、車の中に置き忘れてくるべきものだ
と、言っていたと思います
851.ハイ・ライフ / 力の見せ方
マルゴさんと、ヨミ・ルナが休んでいる部屋に戻ると
巫女姉妹の介護は、イーディがしていたはずなのに
なぜか、美智がいる
イーディお姉様と交代したんですわ
うん、イーディお姉様が窓から中庭の様子をご覧になってミチが心配だって言って
もう大分回復したらしいヨミとルナが、オレに説明してくれた
ああ、なるほどイーディ、あそこにいるんだね
マルゴさんが、中庭を見ている
オレも窓の外を覗いてみた
うんイーディがみすずの後ろで、フンッとふんぞり返って立っている
イーディが自分から中庭へ戻って美智にみすずたちの警護役を交代することを提案したのか
それで美智が、ここへやって来た
なかなか楽しそうにやっているね
マルゴさんの言うとおり講義は、一見、和やかな雰囲気で行われているようだ
ただ実際にはあそこにいる警護役の少女たちの中には、今の主を捨てて、他の家に売り込みをかけようと思っている子もいる
懇親会のパーティになったら、色々と面倒なことになるだろう
でも、いいのか美智は、みすずの警護役ってことになっているんだろ
今日来ているのは、全員、みすずや美智と同じお嬢様校の生徒たちだ
当然美智のことは、みすずの警護役だと思っている
香月家の娘の警護役が主人を置いて、公の席からいなくなることなんてあっていいのか
それは大丈夫だよ、良信くん
何たって、ここは香月家の本家の邸宅だからねこの敷地の中での警護体勢が、どうなっているのかはよその家の人間には判らないよ
ここは美智にとっても、ホームグラウンドなんだ
それにレイカお姉さんの安全講座がああやって続いていて側には、翔お姉さんもいるここの中庭の周囲は香月セキュリティ・サービスが完全にガードしているってことも、みんな知っているし第一、今日は、香月さんが在宅しているってこともみんな知っているんだからさ
あジッちゃんは、わざとあの少女たちに姿を見せた
大徳さん張本さんという最強警護人がここに居ることも判っているんだから美智ちゃんが少しぐらい席を外したって、みんな変には思わないよ
それに、さっきのキョーコさんたちとのエキシビション・マッチで、美智ちゃんととイーディがコンビを組んでいる様子もみんな見てるしイーディが強いことも伝わっているはずだよね
あの子たちには、イーディは君の警護役だって紹介したろでも、今は良信くんが席を外しているんだからさみすずさんの警護役がイーディと交代しても問題は無いよ
常にみすずに、香月家の警護役が付いていることに変わりはないのだから
で、どうしたんだ美智
イーデイとの交代に問題がないことを確認してオレは美智に尋ねる
うううご主人様
今の美智は、泣きそうな顔で落ち込んでいた
さっきまでの美智は、みすずの後ろに無表情で控えていたが
あれは警護役として、感情を押し殺していただけなのか
そして、美智の心の中の動揺にイーディは気付いた遠くから見ただけでも
ほら、落ち着け美智
オレは、美智の小さな身体を抱きしめる
ああ、体が緊張しているな筋肉が強ばっている
オレは、美智の背中を優しく撫でてやる
可愛いおでこに、チュッとキスしてやった
美智は、小さく息を漏らす
抱き締めていてやるから大きく深呼吸しろ
オレの両腕の中ですぅぅ、はぁぁと、美智が呼吸する
よし心の中に思っていることを、全部オレに話してみろさあ
美智は、震えながらオレを見上げる
でもなかなか言葉が出て来ないらしい
何なんだキョーコさんと闘ってみてもう少し、追い詰められるって思っていたのか
最近は、イーディやレイちゃんたちと鍛錬を続けていたし
月子たちから学んだ巫女の修行法で、気の技がかなりレベルアップしたと言っていたし
あんなに簡単に、気の技を対処されるとは思っていなかったろう
そ、それもありますでも
わたくしはあの方に指摘されるまで、気付いていなかったのです
ん何の話だ
工藤流古武術の神髄が気を用いて闘うことでなく気を駆使する敵と闘うためのものであったということを
工藤流は相手の気を受け流して、反らす武術だ
気を使う攻撃技に対する返し技として工藤流は編み出されたのです
気を使う武術が、どれくらい昔からあるのかは判らないけれど
イーディの属していたニューオリンズの暗殺教団でも、そういう技があるくらいだから世界中に気を用いた戦闘術はあるんだろう
工藤流の創始者は、そういう気で闘う武術者と闘うために新しい流派を興したのか
わたくしは気の技が使えるようになって、有頂天になりすぎていました
そして世の中には、わたくしやイーディのような技を使える武人はそうはいないと勝手に思い込んでいました
美智たちの気よりも、巫女の力の方が協力だけれど
鷹倉神社の巫女の力は、誰にでも身に付けられるものではない
あくまでも、特殊なごくまれな存在だ
しかし工藤流が、気を駆使する敵との闘いを想定して編み出されたものなら
気を使うことのできる武人は、想像していた以上に存在しているのかもしれない
あの2人はわたくしやイーディに対して、気を放ちませんでした
そうだキョーコさんたちは
美智の工藤流や、ダダドムゥおじ様の技を見ただけで再現できるのなら
気の技だって使えるはずだ
なのに、キョーコさんたちは色んな家の警護役の少女たちの前では、気の技を使ってみせなかった
それはそれぞれ名家の警護役の少女の家族たちが、様々な裏社会の人々たちに通じているからです
ああ名家の人間を守るためには、裏社会の連中に顔が効かないといけない
警護役たちはみな、今日、キョーコ・メッサーの闘いを間近で見たことを、親族に報告するでしょう
その報告はあの子たちの親兄弟から、裏社会に伝わる
日本の裏社会から世界の裏社会にも
わたくしもイーディも本気であの方たちと闘ってみました全力で今、自分たちの使える全ての技を繰り出して、挑戦致しましたでも
あの方たちは状況を見てここまでなら、見せられるという範囲の力でわたくしたちと闘い圧倒しました
キョーコさんたちは見せちゃいけない技は、一切使っていないんだ
それでも、美智たちを圧倒した
その上わたくしに、工藤流の神髄を知るためのヒントまで与えて下さいました
工藤流は気で闘う流派でなく
気を使う相手を、制するための技だと
完敗でございます
ま、そういうことだよね
美智ちゃんとイーディの次に、ヨミちゃんやルナちゃんが現れるっていうのは誰が立てた作戦
わたくしでございます
マルゴさんに、美智が答えた
悪くない作戦だったけれどヨミちゃん、ルナちゃんの2段構えだったところもでも今日のこの席で、巫女の力を全員に見せるわけにはいかないものね
関西ヤクザのスパイが2人いることは判っているけれど
ほとんどの子たちは、巫女の力の存在を知らない
こんな力があることを知ったらまた別の裏社会の組織が、月子たちの奪取に動き出すかも知れない
それも外国勢力とかにまで伝わったら、大変なことになってしまう
だから、キョーコさんたちはヨミちゃんやルナちゃんが力を発揮する前に、強引に無力化してしまったんだよ
お手玉みたいに空中に放り投げて、精神集中できなくしてしまった
あれはキツかったですわ
うん、まだクラクラしてるもん
ヨミとマナは、そう言う
でも、安心してあんなことができるのは、世界中でもあの2人ぐらいしかいないから
圧倒的なスピードとパワーと正確さ全部揃っていないと、あのタイミングで君たちを放り投げて受けとめることなんてできないから
12歳の小柄なルナだって、瞬時に捕らえて、空中にポンポン放り投げて、正確にキャッチし続けるなんて普通の人間には、絶対にできない
ましてや、ロリ巨乳のヨミを高く投げ飛ばし続けるなんて
つまり、あの巫女の力への返し技はキョーコさんたちにしか使えないってことさ
ああ巫女の力を封じることができることは示したけれど
関西ヤクザたちが、キョーコさんたちを真似することはできない
わたくしが未熟だったから力を発する前に、あの人に捕まってしまったんですわ月子お姉様ならあの方を制御していたはずです
ボクもそう思う
ヨミとルナは、そう言う
ヨミは猫ダマシで、驚かされて心の隙をつかれた
ルナは、背後に廻り込まれてミス・コーデリアに捕まった
でも、いつも落ち着いていて冷静な月子なら、そんなミスはせずにキョーコさんたちを力で支配できたかもしれないというのか
いや違うよ
月子ならそもそも巫女の力を闘いには使わないから
月子はすでに巫女として生きることを覚悟している
ヨミとルナは、巫女にはならないのだからこの先、生きていくための別の道を探さないといけない
何にしてもヨミとルナの力は、大っぴらに使っちゃダメだ変なやつらを集めるだけになる
オレは少し強めに、言った
ごめんなさい、兄さん
オレに謝る2人
いえ、わたくしですそういう作戦を立て、2人に指示をしたのはわたくしなのですから
美智が、泣きそうな顔でそう言った
わたくしは何も判っていませんでした申し訳ございません、ご主人様
美智はマルゴさんを見る
わたくしたちの後で麗華お姉様とマルゴお姉様があの方たちと闘われる姿を見て、つくづく反省致しました
キョーコさんたちとの肉弾戦
純粋に身体能力だけを使った闘いでしたしかも、その場に居る人間たちにどう見せるかを考えたお互いに相手をリスペクトした清々しいバトルでした
うん凄かった
良質な舞踏でも観ているみたいな華やかで、綺麗で、カッコ良い闘い
わたくしとイーディのコセコセとした、余裕の無い、みっともない闘いが恥ずかしくなりました
そんな美智にマルゴさんは
美智ちゃんただ強くなるんじゃダメなんだよ大切なのは、どう強くなるかだよ
はっきり言ってあたしなんかよりも、君たちの方が強いところはいっぱいあるんだよあたしやレイカお姉さんは、気の技とか使えないからね
フフッと笑う
でもさ、どんな強くたって状況に合わせて、上手に使えないと意味がないんだよ例えばF1のレーシングカーはとっても速いけれど、あれってドライバー1人しか運べないんだよねたくさんの荷物を運ぶのは無理だしサーキットの中をグルグル廻るのはいいけれど、信号のある街中を一般の乗用車と走るのは適していないよね荒れた山道なんかも走れないフロントウイングや車の底が擦れちゃうから高性能すぎる車体やエンジンは、常にメンテナンスを必要とするずっと長く使い続けられる車じゃない
でも、もちろんF1カーには価値があるF1のルールで行われるレースで競い合うものとしては
レース用の車だからこそ、ドライバー1人だけ乗せられれば良いサーキットの中だけに特化して速ければいい山道を走ることなんか考えなくていいレースの期間だけ、最高のパフォーマンスで動くことだけを想定して作られているいつも、メカニックが付きっきりで調整することも考えて
あたしは、格闘家になるんだから今、そういう体になるように調整しているんだよだから、もうキョーコさんの手伝いはできないんだよキョーコさんの仕事なら、1週間ぐらい戦闘状態のままなんてことは、よくあるんだからそういう持久力のあるスタミナを付けるんだけれど格闘家には、余計なスタミナはデッド・ウェイトになるからね
美智は、真剣にマルゴさんの話を聞いている
美智ちゃんは美智ちゃんの状況に合わせた形で、強くなることを考えるんだね1つや2つ、他の人よりも強力な力を持っていても合わないのなら、意味がないんだよサーキットでなら強力な何百馬力も出るF1のエンジンを持っていても、山の上の村に荷物を運ぶのには使えないから
はいわたくしは、気の力を使えるようになっただけで自分を見失っておりました
そして先ほどの、お姉様方の闘いを見て初めて、父上が目指している世界がよく判ったのです
工藤父のことが
父上の闘いは、まるでふざけているようで不真面目なものだと思われております
ああ、でもあれは周りの人たちに、危険な闘いをしているってことを感じさせないためのカムフラージュだろ
だから、工藤父が誰かをブッ倒しても
みんな、コントか何かだと勘違いする
テレビの収録かなんかだと
そうなのですけれど父の現在のレベルでは、お笑いにしかなっておりませんが
美智は、マルゴさんを見て
先ほどのお姉様たちの闘いはとても優雅で、品があって名家の子女たちが鑑賞するに相応しいものになっておりました
そうなんだよ工藤さんはさ惜しいんだよねあの人は、ああやってみんなを笑わせてあげているつもりなんだろうけれど
凄いことをしているのに人から評価されないってことは、よくあるんだよ普通の人には絶対に真似できないような、達人の技を持っているのに見せ方を知らないから、評価してもらえないってことがさ
見せ方
世の中の多くの優れているものは一般の人には、その凄さが判らない一流の才能や能力を持っていてもね判る人にしか、判ってもらえないってことは多いその判る人っていうのも、またクセモノでさ審査員になっているような人なのに、眼が曇っているていうこともよくあるよ
超一流の天才なら誰にだって、凄さが判るものもあるピカソとかゴッホとかダ・ヴィンチの描いた絵なら、素人が見たって凄さか判る作品がオーラを発しているからねモーツァルトの音楽だってそうさ
超一流なら
でも、例えば将棋の名人がどう凄いのか何が、他の棋士よりも優れているのか、一般の人には判らないよね将棋が強いことは判るだから名人になれたんだろうからでもどう強いのかはなかなか判ってはもらえない
だからさ一般の人に、判ってもらえるように自分から見せていくしかないんだよ工藤さんは、そのことを判っていないから
判ってもらうことが必要だと父上は思っていらっしゃらないんです自分の強さは、判る人だけが判ってくれれば良いのだと
そういう考えは工藤さんにとって損なだけだし、人に迷惑を掛けることでもあるんだよね
迷惑
さっきの、あたしたちとキョーコさんの闘いでもさ美智ちゃんたちとキョーコさんたちとの闘いだと、お嬢様たちには凄さが判らないんだよ警護の女の子たちは、美智ちゃんやイーディの身体能力がズバ抜けていることは伝わっているけれどお嬢様たちは、闘いの訓練とかはしていないわけだからさ
しかも、わたくしたちは必死で食らいついていくだけで、余裕がありませんでしたから
そういうことだから、あのまんまあたしやレイカお姉さんが登場しないで終わったらお嬢様たちの中には、勘違いする子も出て来るわけキョーコさんが強いことはテレビでやっているから、知識として知っているそのキョーコさんたちに、てんで歯が立たないわけだから
美智たちが、弱いと感じる
美智ちゃんたちだけじゃなくってそういう警護役を使っている、みすずさんたちまでナメられるよそれで済むなら、まだいいけれど自分の警護役にあれならも、あなたの方が強いとかあんな弱い人たちが挑戦したのに、どうしてお前はキョーコ・メッサーと闘わなかったんだとか言い出したりしたら
他の警護役の子たちが困ることになる
だから、あたしとレイカお姉さんが出張ってキョーコさんと見せる闘いをしたんだよ一般の人から見ても、キョーコさんがトンデモなく強いって判りやすく伝わる闘いをそれでいてあたしたちの評価も下がらない闘いをね
それって、もちろんキョーコさんたちも
判ってやってくれたんだよまあ、あの人は、可愛い女の子が大好きだからあたしとレイカお姉さんとミス・コーデリアと自分自身がとってもカッコ良く見えるような闘いに仕上げてくれたって感じかな
だから今はお嬢様たちの美智ちゃんたちに対する評価も変わっているあんなに凄いキョーコ・メッサーに挑戦するのだから、この子たちは勇気があるさすが、みすずさんの警護役だぐらいまでには
今日は、学ばせていただくことばかりです
シュンとして美智は言った
うん本当に強い人は自分の強さは、判る人だけが判ればいいなんて思っていないよちゃんと強さを、一般の人たちにアピールしている判りやすくねそうじゃないとさ自分の所属している業界の地位はいつまでたっても上がらないし、仲間たちからも評価されないからね
工藤父は同業のフリーの警護人たちには評価されているけれど
香月セキュリティ・サービスの正社員たちには評価されていない
あの人の判る人にだけ判ればいいという態度がそういう風にさせている
確かに、それはもったいないことなんだ
そういう不満が美智の母親が、愛人を作った原因の1つにもなっているんだし
一度、父上とよく話してみます
そして、わたくし自身も判りやすく強い女になります
そうだねキョーコさんみたいにいつでも、どこでも、誰が見ても強いと感じるような女にあたしもなりたいって思っているよ
オレもさ今日は、学ばせてもらっていることばっかりなんだよ
みんなに言う
さっき、オレミナホ姉さんに、鞍馬姉妹を娼婦に堕とすって言われたんだ
あのオドオドしているお姉さんの美里さんと、そんなお姉さんを支えているありすさんを
そう言われた瞬間オレはさオレは、ミナホ姉さんの弟で黒い森のメンバーなんだから言われたとおりに、そうするとかないって思った腹を括ろうと
それは違うんだよなそんなのはさミナホ姉さんに言われたから、そうするしかないんだなんていうのはただの思考停止でさ責任の放棄でさ
そうだそれは甘い考えなんだ
何より今のオレは、ミナホ姉さんの弟で黒い森のメンバーだけれどみすずの相手でもあるし美智や、ヨミや、ルナや、イーディやマルゴさんもとにかく、たくさんの家族を抱えているんだよ、オレは
オレは、みんなを見る
ミナホ姉さんやキョーコさんには、仕事としてそうしなくてはいけないという立場があるでも、みすずたちにも名家の人間で、鞍馬姉妹の友達としての立場があるオレは、その両方と関わっているんだから1つの立場からの命令で、どうするかを決めてはダメなんだよオレが関わっている全ての人の立場をちゃんと自分で見て、考えてそれで、オレの判断でどうするか決めないといけないんだ
オレはもう誰かの命令に従っていればいいなんてことは許されない
さっき、そのことをジッちゃんに言われたばかりだ
店の経営者として、自分の商売の責任を背負うように
オレ自身が、オレの行動の責任を負わなくてはいけない
ま、そういうことだよねみんな、そういうつもりで、良信くんのことを教育しているから
マルゴさんがニッと笑う
ジッちゃんの話さっきのミナホ姉さんとキョーコさんの話
みんな繋がっているんだな
オレを学ばせるために
だから、美智この後の懇親会で起こる騒ぎは、オレたちで食い止めるからな
美智の眼に、闘志が満ちている
このまま落ち込んではいられないと、立ち直ったんだな
ヨミとルナ身体の調子はどうだ
もう平気ですわ
ボクも大丈夫
うん2人も、オレに協力してくれ
2人も約束してくれた
あたしは手伝えないよそういう立場だから
マルゴさんが、優しくオレたちに微笑む
はいマルゴさんは、スポンサー探しを頑張って下さい
これはオレのいえ、オレたちが頑張らないといけないことですから
何か、声優の新人オーディションで優勝した女の子の名前が
アムロさんらしいです
苗字でなく、名前が
アムロ・レイから取ったんだろうか
この間、ニュースで35歳の宇宙太さんが捕まっていましたが
ザンボット3に神江宇宙太が登場したのが36年前だそうです
まあ実際に、娘さんになのはって名前を付けた人を知っていますし
アニメのキャラの名前を付けられた子供というのも、どんどん増えていくのかもしれません
そういえば、長男にケンシロウと名付けた人もいたなあ
長男はラオウだろうとみんなから突っ込まれていました
ラオウイチロウ、トキジロウ、ジャギサブロウ、ケンシロウが正式な名前ではないかという説もあります
851.ハイ・ライフ / 乾杯
美智、今日来ている警護役の中に気を使える子はいると思うか
オレの問いに、美智は
はい1人は確実に
美智が気付いたのは、一人きり
いや、さっきキョーコさんは今日の警護役の中で、見込みのある子は3人いるって言ってた
オレは向こうの部屋での会話を思い出す
もちろん、キョーコさんたちはオレが聞いていることを承知で会話していた
だから、これはオレに対するヒントかもしれないし
あるいは、オレを引っ掛けるための罠かもしれない
キョーコさんが、3人と言ったということは3人以上、凄い能力の持ち主がいるかもしれないって考えられるけれど
逆に、3人以下っていうことは無い
少なくとも、美智が気付いた子以外にもヤバイ能力を持った子がいるんだと思ってた方がいい気が使えることを、完全に隠している子だっているはずだ
使える能力はギリギリまで隠しているものだ
さっきの戦闘で、色々と見せまくってしまった美智やイーディの方が間違っていたんだ
判りました油断をしないよう、細心の注意を払います
美智が、ウンとうなずく
関西ヤクザから派遣されて来ていて巫女の力を知っているっていう天童乙女さんて子のことは知っているか
はい、それはさきほど、翔お姉様に
ああ、イーディも知ってたもんな
おそらく、オレがジッちゃんと話している時に知らされたんだろう
ヨミたちは
はい、わたくしたちも聞いています
うん兄さん
これをどう考える
天童乙女さんに注意を払いつつ、他の子たちもチェックしてくれ他にも、スパイが潜り込んでいるかもしれない
はい翔お姉様は、もう一人スパイがいると
それは、オレも聞いた
もう一人だけじゃないかもって考えて行動してくれ
翔お姉様のお話を、信じてはいけないということですか
ヨミが驚いて、オレを見る
そうじゃない事態は常に進んでいるっていうことだよさっきはキョーコさんたちが素早く動いたから、ヨミとルナの巫女の力は不発に終わった警護役の子たちに見られずに済んだ
美智が、キョーコさんの動きを止めたのはあくまでも気を当てたからだ
巫女の力ではない
でも、お前たちが巫女っていう言葉を喋っているのは、聞かれているだろさっきの休憩の時に、誰かがあれはどういう意味で、あの子らは何をしようとしていたのかしらなんて話題が出たかもしれないその時に、天童さんが適当に巫女の力について説明してしまったとしたら
え、兄さんどうして、そんなことを
ルナが、不思議そうにオレに聞く
天童さんとしては今日の会を混乱させた方がいいんだよ今日の会が上手く行けば、今後、みすずたちの学校の中に居る警護役たちが、みんな仲良く、まとまって行動できるようになるだろそれもみすずや瑠璃子を中心として
そのための懇親パーティだ
そうなったら、天童さんは動きにくくなる天童さんが、本当に関西ヤクザの命令でここに来ているのなら何とか、みすずたちの評判を悪くして、それぞれの名家の警護役がお互いを疑心暗鬼に監視し合うような状態にしようとするはずだ
香月家と他の名家との結びつきが、今以上強くなったらヤクザたちは困るのだから
むしろ、他の家を香月家とケンカさせたい
そうなったら、香月家は関西との抗争以外にも、リソースを割かないといけなくなる
そして現状は、少しオレたちに不利になってきている
オレは、マルゴさんに説明してもらったことを美智たちに話した
今日の懇親会で警護役の人が、自分の主を捨てて、他の家に売り込みとか始めたら確かに雰囲気が悪くなりますよね
うん大騒ぎになっちゃうよね
美智、ヨミ、ルナは納得してくれた
警護役に逃げられた家は恥辱に感じるでしょうしそんなキッカケを作った香月家のことを恨まれるかもしれません
ていうか警護役に逃げられた家と、逃げて来た警護役を新しく雇った家で遺恨が残りますわ
学校生活が殺伐としちゃうよね
そんなことになってはいけない
だから、そんなことにならないようにオレたちで何とかするからな
オレはみんなにそう告げた
まず、ルナお前は、全員の心のチェックだけに集中してくれ天童さん以外にスパイはいないか、ヤバイ能力のある人はいないか、徹底的に調べてくれ
巫女の力は、相手に近付かないと使えないし精神集中が必要だ
さっきは、キョーコさんと闘うことに集中していたから警護役の少女たちのチェックまではできていないはずだ
えっとルナは、何か他の服に着替えて変装してくれパッと見たら、さっきの子とは違うっていう感じにしたいんだけれど
ルナは今は動きやすいように、ヨミとお揃いのパンツ・スーツを着ている
わたくしの制服の予備があります
ああ、ここは香月家の本家だからみすずと泊まった時のための着替えが置いてあるのか
ルナは12歳だけれど発育が良いし、美智はつるぺただからぴったり着られるだろう
あルナ
今、オレが考えたことは誰にも言うな
大体想像がついております
ムッとして、美智が言う
髪型も変えれば、ルナをさっきの少女と気付かせないようにできると思います
う、うん頼む、美智
美智の眼が、怖い
それでルナはオレの妹ってことにしよう無口で恥ずかしがり屋でオレにぴったりくっついている、そういう子になっていろ
ルナが返事をする
先生わたくしは
ヨミは、今のままだそのままの姿でオレに付いてこい
ヨミは変装したって無理だ
この美少女のロリ巨乳はゴマカしようがない
こんなに立派で形の良いおっぱいの14歳が、他にいるか
それで、ヨミは美智の妹弟子だ工藤流古武術のそういう設定でいく
それで美智ここからは、いつもの工藤流で行くぞ
美智は眼を丸くする
お前のお父さんの工藤流だ周りの人に脅威を感じさせない笑える古武術だ
もちろん、お前なりにアレンジしろでも、それしか今の危機を乗り越えることはできないぞ
オレは強く、そう言う
ううう判りました
美智は何とか納得してくれる
わたくしとイーディが不用意にあの方たちに仕掛けたのが失態だったのですから責任は取ります
よし、急いでスタンバイだレイちゃんの講座が終わるまでに準備しろ
オレたちは、動き出す
やれやれ君たちは、立ち直りが早くていいねすぐにパパッと動けるし
オレたちのそんな姿を見て、マルゴさんが楽しそうに微笑んでいた
最近、海外で起きた誘拐未遂事件では、そのような事前対処で襲撃者を撃退できたそうです皆様も、気を付けて下さいいずれ、今のようなケースの事件が日本でも起きるかもしれません警護の方たちでなく、警護を受けるお嬢様たちにも知っておいていただきたい事例としてご報告致しました
レイちゃんのレクチャーは、終盤に入っている
うん、取りあえずみんな静かに話を聞いているけれど
うっとりした眼で話を聞いているレイちゃんファンの子
真面目に、香月セキュリティ・サービスによる最新情報に耳を傾けている人
話を聞いてはいるが、レイちゃんや香月セキュリティ・サービスを小馬鹿にしていることがアリアリと判る子
売り込みを考えているのか、他の家のお嬢様や警護役をチラチラ見ている子など
反応は様々だ
よし、美智、ヨミ行け
講義が終わる前に、美智とヨミを中庭に行かせる
2人は、ススッとみすずと瑠璃子の後ろに立つ
イーディが横にズレてくれた
狩野さんの警護役のシエさんと、鳥居さんの警護役のアーデルハイトさんがジロッと美智を見るがそこは無視だ
鞍馬姉妹の警護役の安城ミタマ・キヌカ姉妹は、振り向きもしない
オレたちは、タイミングを見てから動き出すことにするからな
髪の毛を三つ編みに編んで、美智の制服を着ているルナは可憐で可愛い
とてもさっきのキョーコ・メッサーに攻撃しようとした子と同一人物には見えない
あの兄さんに、くっついていますね
ルナは、オレに小さな胸を擦り擦りと押しつけて来る
はぁう兄さんの匂い、安心する
オレの服に鼻を擦り付けて、クンクン匂いを嗅いでいた
では、これでわたくしのレクチャーを終了致しますご静聴、ありがとうございました
レイちゃんが、話を終える
中庭の少女たちは、みんなでレイちゃんに拍手した
こういう礼儀作法は全員、ちゃんとしている
さすが名家のお嬢様たちとその警護役だ
いや、1人だけ拍手せずに、ジッとレイちゃんを見ている警護役がいる
ポニーテイルの鋭い目
関西ヤクザの命で潜入してきたという、天童乙女さんか
ルナ、あの人は要チェックだただしあの人だけに気持ちを集中させすぎるなよ
そうだあの人は、スパイにしては目立ちすぎる
オレにしがみついたままルナが、答えた
本当はここで皆様から質問を受け付ける時間だったんですけれど皆様、そろそろお腹が空きましたよね
レイちゃんに代わって、翔姉ちゃんが少女たちに告げる
ですから、藤宮やわたくしへの質問は懇親会のパーティの時に、個別に聞いていただくということでみすず様、いかがでしょう
翔姉ちゃんが、みすずに話を振る
ええ、あたしもその方が良いと思うわ
みすずは、ニコッと笑ってそう言った
ではパーティの準備をよろしくお願い致しまぁす
翔姉ちゃんの号令で屋敷の中から、メイド服を着た女性たちが料理や飲み物を運んでくる
ホンモノのメイドさんではない
これはみんな香月セキュリティ・サービスの女性警護人だな
だって、木下さんもいるし
相変わらず、女子高校生みたいに若々しい容貌なのに背中に爆砕フレイル棒を背負って、ガチャガチャ音を鳴らしている
いや、見た目が可愛らしすぎてあれが武器だとは誰も思わないんだよな
グラスをどうぞ
メイドさんたちが、会場内の娘さんたちにグラスを渡していく
そして、それぞれが希望する飲み物を尋ねて注いでいく
ああ、こういう席でもまず乾杯するのがルールらしい
グラスは名家のお嬢様たちにしか渡されていない
それぞれの警護役の女の子たちは立ったままだ
レイちゃんと翔姉ちゃんもグラスを持っていない
誰が主で誰が使用人なのかがはっきりしている
使用人には、主たちと一緒に乾杯することは許されないのか
皆様、グラスをお持ちになられました
みすずが椅子から立ち上がってみんなに言う
いや、このままじゃダメだ
この流れはきっと、今の主に不満のある警護役たちに主を捨てる決意を後押しすることになる
ちょっと待てみすず
オレは大きな声でそう言いながら、みすずにそう言う
ルナも、オレの後ろに隠れるようにしてちょこちょこと付いてくる
はい、旦那様旦那様に早くグラスを差し上げて
みすずは、近くに居たメイドさんにそう命じるが
そういうことじゃないみすず
ちゃんと皆さんに全員にグラスを差し上げるんだ
皆様、もうグラスをお持ちですわ
みすずは、不思議そうにそう言った
いいや警護役の皆さんが、まただろ
オレの言葉に、会場内がザワザワする
みすず今日の会の主旨は何だ
オレは大きな声で言う
はい香月セキュリティ・サービスの藤宮さんに、警護についての最新情報をうかがうレクチャーと、学校に警護役を連れて来ていらっしゃる皆様との懇親会パーティですわ
みすずもまた名家のお嬢様だ日本一のお嬢様学校に通っているんだ
そういう発想なのは、仕方がない
いやオレの前で、他のお嬢様の思考はこうなっていると示してくれているのかもしれない
それは間違っているよみすず
今日、ここにお招きしたのは名家のお嬢様とその警護の方たちだお嬢様はもちろん警護の方たちだって、香月家の客だぞ
中庭がシーンと静まり返る
お前は、お客様に対して大変な失礼をしているんだぞ
申し訳ございません旦那様
深々と、オレに頭を下げる
ま、まぁ
みすず様が
驚くお嬢様たち
オレに謝ってどうするんだお客様に謝れ
はい警護の皆様、申し訳ございません早く皆様にグラスを
みすずの命に、メイドさんが動き出す
ちゃんとグラスは人数分、用意されている
ということは、オレがこうすることは想定されていたんだな
お待ち下さいみすず様あなたは、わたくしたちに使用人とグラスを捧げろとおっしゃるのですか
狩野さんが、みすずに講義する
狩野様ご意見は、ごもっともですが
みすずは狩野さんを見て
旦那様がおっしゃった通り今日、お集まりいただいた方たちは、すべて香月の家がお招きしたお客様ですわ失礼をすることはできません
そして、中庭の中の名家のお嬢様たちに言う
皆様の中には、ご納得いただけない方もいらっしゃると思いますがどうか、ここはわたくしに免じて、お許しいただけませんか
わたくしは構いませんわ
鳥居さんが、口を開く
わたくしはいつも、お茶の時間はハイジと一緒にしています主だけがお茶を飲んで、警護役は立たせておくなんて今の時代には、もう合っていませんわ21世紀なんですよ、もう
アーデルハイトさんが、クッとうなずく
まり子さんあなたは黙っていなさい
狩野さんが、鳥居さんに怒鳴った
まり子さんて
この2人実は親しい間柄なのか
わ、わたくし桜子さんに叱責されるようなことはしておりませんわ
ケンカするようなことじゃないでしょ今日、来てくれた人全員で楽しく歓談するためには、全員で乾杯するのが当たり前じゃないですか
オレの言葉に、狩野さんはムッとして
いったい、何なんですあなたは名家の人間でないみすず様に取り入っただけの卑しい身分の人間の分際でっ
狩野様
みすずが、狩野さんを制する
あたしの旦那様に無礼を働くのでしたら狩野様でも容赦致しませんよ
中庭に居た全員が凍り付いた
黒森公様はあたしの夫となり、香月の家の全てを継がれるお方ですお祖父様も、すでにそうお認めになられていることは先ほど、あなたもご覧になっていたではございませんか
ジッちゃんはわざわざ、お嬢様たちにオレと親しく会話している姿を目撃させた
お兄様が、そうお望みなのでしたらわたくしも従いますわ
瑠璃子が立ち上がり、空のグラスをアーデルハイトさんに差し出す
はいグラスをどうぞ
ニコッと、優しく微笑む
困っているアーデルハイトさんに、主の鳥居さんが
いただきなさい香月家のお嬢様が差し出して下さったものを拒むことはできませんわ
アーデルハイトさんが、グラスを受け取る
では、あたしも江さん、どうぞ
みすずは、ニッコリ微笑んで狩野さんの警護役のシエさんにグラスを差し出す
シエさんも困惑の表情で、狩野さんを見る
仕方ありませんわ受け取りなさいみすず様のなさったことなんですから
シエさんも、グラスを受け取る
では、皆様もどうぞ
美子さんが、他のテーブルの警護役の子たちにもグラスを配っていく
警護役の人たちは一応、自分の主の顔を見る
主は、渋々と了承していった
警護役の子たちに、ここに来た時の主従関係を再確認させることができたぞ
主がいるからこそ、この場に来られた
そう感じれば今の主を捨てて、他の家に行こうという気分も削がれる
関さんと藤宮さんにも、グラスを渡して
オレは、メイドさんたちにそう命じた
しかし、わたくしたちは香月の家の臣下ですから
翔姉ちゃんが、オレにそう言うが
臣下だろうと何だろうと大人の人に、わざわざ講義をしてもらうために来てもらったんだからお礼をするのが当然だよ
この子らは礼儀としての拍手はしたけれど
誰もまた、レイちゃんたちに感謝の言葉を述べていない
みすず乾杯はまず、関さんたちに感謝の気持ちを込めてそれから、今日来て下さった皆さんの健康と幸せを願ってそうしてくれ
はい、判りましたわですから、旦那様もグラスをお持ち下さいませ
あそういや、オレがグラスを持っていない
ルナが、イーディからグラスをもらって来てくれた
オレンジジュースみたいのが入っている
美智たちも、グラスを持ったな
メイドさんたち以外はお嬢様たちも警護役も全員、グラスを持っている
さすがにメイドさんたちはお客様ではないから
では、皆様まずは、とてもためになるレクチャーをして下さいました、藤宮麗華さんと香月セキュリティ・サービスの関さんありがとうございました
みすずが頭を下げるので、他の子たちも頭を下げる
そして、今日、お集まり下さいました皆さん本当にありがとうございますどうか、この場にいる全員が健康で楽しく恐ろしいトラブルに巻き込まれないで、生きていけることを祈念して乾杯させていただきます
そうだ今日はそういう集まりなんだ
みすずの声が中庭に響く
オレたちは杯を捧げグラスに口を付けた
では、皆様楽しくご歓談下さいませ
みすずのその言葉で懇親会パーティが始まる
さあここからが勝負だ
美智たちにパーティで何をさせるのか、まだ思い付いていません
明日までに考えつくのだろうか
このエピソードは、登場人物が多いので人物リストを作ろうかと思います
なぜか群像劇になっていく
高校の卒業式でなぜか、全員で贈る言葉と乾杯を歌わされた記憶があります
何で、卒業する3年生が自分たちに乾杯を歌わなければいけなかったのか今でも判りません
大学は、演劇科だったので
謝恩会で、教授が屋根の上のバイオリン弾きの日は昇りまた沈むを歌うのが決まりになっていました
卒業生は、コーラスラインの悔やまなーいって出だしの歌
これから社会に羽ばたいていくのに、すでに挫折している人の歌を歌わせられます
853.ハイ・ライフ / 秘技
みすずが、懇親会パーティの開始を宣言したのに
お嬢様たちは、まだ静まったままだった
使用人である警護役たちと一緒の乾杯に戸惑っているようだ
しかし、この緊迫した空気があるからこそ
警護役の中から、他の家に自分を売り込みたいと思っている子たちも行動を起こせない
みすず様質問がございますわ
狩野さんは、乾杯のグラスに口を付けることすらしていなかった
はい、狩野様何でございましょう
会場内の少女たちの眼は、2人に集中した
どういうおつもりなのですか
ジロッと、狩野さんはみすずを睨んでいる
その背後で、警護役のシエさんが無表情で立っていた
彼女もグラスを持ってはいるが、中のドリンクは飲んでいない
まあ、主がまだ杯に口を付けていないのに臣下が飲むわけにはいかないのだろう
ですから何のお話でございます
みすずは、ケロッとして平然とそう答える
香月みすず様は警護役をわたくしたちと同じ扱いになさるおつもりなのでございますか
狩野さんが、尋ねる
同じ扱いも何も先ほど、あたしの旦那様が申し上げた通りでございますわ
みすずは熱い眼で、少し離れた所に居るオレを見る
今日はあたしが皆様をそれぞれのお家のお嬢様と、その警護をなさっていらっしゃる方々を招待致しましたここにいらっしゃる皆様は全て、あたしの香月家のお客様でございますわ
そういう理屈を聞いているのではありませんわわたくしはなぜ、わたくしたちと使用人を同じに扱うかということ聞いているんですっ
少し苛立ち気味に、狩野さんは答えた
あら、狩野様ともあろうお方が、お判りになりませんの
ゆっくりと、みすずは答える
あたしがお招きしたのですからあたしが、この場で一番腰を低くしなければならない立場なのですお嬢様たちはもちろんのこと、警護の方たちも今は、あたしよりも目上の存在なんでございますわお客様なのですから
少女たちはお嬢様も警護役も、みすずの言葉にジッと耳を傾けている
それなのに、あたしはお客様である警護の方々にグラスをお配りしないなんて大変失礼なことをしでかしてしまうところでしたあたしは傲慢でございましたそういうあたしの過ちを旦那様が指摘して下さったのです
みすずがオレを指差すからみんなが、オレを見る
オレの背中にしがみついているルナが、ますますオレに身体をくっつけてくる
旦那様みすずが間違っておりました申し訳ございません二度とこのような失態は繰り返しませんのでどうか、みすずのことをお見捨てにならないで下さいませ
みすずは、たくさんのお嬢様、警護役の少女たち、メイドの格好をしている香月セキュリティ・サービスの女性警護員たちの前で
深々とオレに頭を下げる
判ればいいんだ二度とこんなことはするなそれと
こんなことぐらいで、お前を嫌いにはならないから安心しろ
はい、旦那様ありがとうございます
オレたちの変なやり取りに会場の女の子たちの緊張が少しだけほぐれる
香月の家のことですのでどうか皆様、お気になさらないで下さいませ
みすずに代わって瑠璃子が少女たちに笑顔で言う
香月の家は由緒正しき貴族の家柄でございますが、現在は様々な企業を経営することで糊口を凌いでおります
経営と申しましても商業であることに変わりはございません商業ならばお客様に失礼がないようにするのが第一でございます
15歳の少女が、にこやかにスピーチを続けていく
香月の企業グループには、たくさんの方たちに働いていただいておりますその方たちは、勤務時間の間は香月グループが雇用者ですが勤務時間が過ぎれば、その方たちも香月グループの製品やサービスを購入して下さる大切なお客様ですお祖父様が、いつもわたくしたちにおっしゃっていますわ香月グループで働いて下さる方たちこそが、率先して香月グループの製品のカスタマーになって下さるようでないといけないと
ジッちゃんの会社で働いている人が他の会社の製品の方が、出来が良くてサービスもいいからそっちを買おうなんてしていたら
香月グループには、未来はない
世の中には強制的に自社製品の購入を強いる企業もあるのだそうですが、香月グループにはそういうルールはございません強制購入では、雇用者の皆様から製品やサービスに対する不満や要望は聞こえて参りませんから
ヘンリー・フォードの思想ですわね
ああ、空気を読むということを知らない鳥居さんが、ニコニコして話に割り込む
かつては、自動車と言えばお金持ちだけの贅沢品でしたわヘンリー・フォードは、自分の自動車会社の工場労働者の給料を上げ、安く造れるT型フォード自動車を大量生産することで、自社の工員が自動車を買えるようにしましたわまず自社の人間が買わなければ、自動車が大衆に普及することはないという考えで
雇用者だから、使用人だからという考えは、今の時代には合っておりませんわわたくしどもは警護役の皆様にも、香月グループの製品をお求めいただきたいですし
ええ、ですから本日は、警護役の皆様も賓客としておもてなしさせていただきますわ
瑠璃子の言葉をみすずが引き取る
どうぞ、警護の皆様もご自身のご判断で、お楽しみ下さいませ
自分の判断
というか自分の主の許してくれる範囲内でということか
みすずは、あくまでもお嬢様たちと警護役を同等に扱ったのではなく
警護役たちにも、任務の範囲の中でできる限り楽しんで欲しいと思っているのだとそういうメッセージを送っている
それはお嬢様と警護役の関係が、それぞれバラバラだからだ
警護役が、お嬢様の友達感覚のご学友の家もあれば
完全に、警護専門の臣下の使用人という家もある
ただ、こういう色々なお嬢様たちが集まった会合だと
ついつい、一番厳しい家のルールに全ての警護役が適応させられる
昔ながらの何から何まで、主従関係を明確にハッキリとさせる方式に
さっきの警護役には乾杯のグラスが配られないなんていうのもまさしくそうだ
あんなのお嬢様と警護役の関係が和やかな家の子だけの小さな集まりなら、みんなで乾杯するのが普通だろうし
香月みすずが、お願い申し上げますわ
わたくしからも、お願い致します
みすずと瑠璃子が頭を下げる
こういう時に、美子さんが前に出ないのは
長いこと、瑠璃子のお付きとして生活してきたからだ
こういう場で、香月家の代表のような発言をすると反感を持たれることもある
だから、みすずと瑠璃子に任せて美子さん自身は、目立たないように控えている
みすず様たちが、そうおっしゃって下さるのですから
さあ、改めて乾杯致しましょう
自分の警護役と親しい間柄のお嬢様たちから改めて、警護の子たちとグラスを合わせる
中庭全体が、和やかな雰囲気に包まれそうになったが
狩野さんは、まだ納得できていないようだ
何か、上手く誤魔化されていらっしゃるようですが普通の傘下企業の雇用者たちと、警護役は違いますわ
強く、みすずに言う
警護役は親子代々、その家に仕えている生まれながらの臣下ですわ使用人です決して、私たちと同等の立場にしてはいけない存在ですわ
そう主が発言する後ろでシエさんは、無言で立っている
狩野様のお家はそうなのでございましょうけれど今時、そんな封建的なことをやっている家ばかりではございませんわよ
鳥居さんがニヤッと笑う
うちのハイジなんてちゃんと、わたくしのお父様と雇用契約しておりますし時間外労働の賃金とか、何もかも事前に取り決めています
自分の後ろのアーデルハイトさんを見る
はい、わたくしは全て契約に従って、まり子お嬢様の警護役を勤めております
黒髪ハーフの13歳警護役アーデルハイトさんは、ムスッとして答えた
鳥居の家は、現代的でございますから狩野様のお家とは違ってもう21世紀でございますよ前世紀どころか、19世紀以前の身分階級制度で警護役の方をお縛りになるなど、時代錯誤も甚だしいと思いますわ
鳥居さんが、狩野さんを攻撃する
それはだって、あなたの家には代々仕えるような家臣など、1人もいないからでしょ
狩野さんも、ムッとして反撃する
狩野様こそわずかに残った昔ながらの家臣の方たちだけしか、周りにいらっしゃらないからそんな時代遅れな思想に囚われていらっしゃるんですわ
クスッと鳥居さんは、嘲笑を浮かべる
ああ、そういえば狩野様のお家は、企業の経営などなさっていらっしゃらないませんものねだからみすず様のおっしゃるような経営者としての思考はご理解できないのですわ
狩野家は名家だけれど、会社とかは経営していないんだ
じゃあ何で、今時、警護役の子なんて雇っていられるんだ
もしかして、シエさんは親子代々仕えている一族の子だからってお金とかは払ってもらっていない
そんなことあるのか
美智だって毎月、ジッちゃんが銀行にみすずの警護料を振り込んでいるのに
鳥居の家の人間が狩野の家を愚弄なさるおつもり
ギッと、狩野さんが鳥居さんを睨む
狩野さんの後ろのシエさんも怖い顔をしている
鳥居の家は多くの企業を抱えておりますから雇用者への責任があるんですわ過去の栄光だけが自慢のブラック名家とは違いますから
鳥居さんも、狩野さんを睨む
が、アーデルハイトさんはケロッとしている戦闘意欲とかは、全然無いらしい
はい、そこまでになさって下さいませ
翔姉ちゃんが笑顔で割り込む
香月家の使用人がわたくしに指図するつもりですか
狩野さんは、翔姉ちゃんを睨む
はい使用人ですわわたくしは使用人だからこそ、この場はわたくしがお止めしなければなりません
狩野様もご存じのはずですわ本日は、閣下がご在宅です
そうだジッちゃんは、この邸宅に居る
そして、わたくしはまだ閣下の専任警護人のままなんですよ
狩野さんの顔色が変わる
閣下のいらっしゃる時に、香月家の本家の邸宅で狩野様のお嬢様が、よりによって鳥居家のお嬢様とトラブルを起こされるというのはわたくしとしましても、大変困ることになるのですが
狩野さんが、小さな声で言う
はい何をお判りになられたのですか
翔姉ちゃんは、笑顔のままでさらに詰め寄る
わたくしの言葉が過ぎました香月様のお屋敷だというのに大変、失礼を致しました申し訳ございません
わたくしは使用人ですからそのようなお話をわたくしになされても
翔姉ちゃんの言葉に、狩野さんは
みすず様、瑠璃子様それに、皆様大変、お見苦しい姿を晒してしまいました申し訳ございませんわ
スッと席を立つ
あら、どちらへ行かれますの
帰宅致します本日はお招きいただきまして、ありがとうございました
え帰るのかよ
言い争いをして、カッコが付かなくなったからって
そんな我が儘が、許されるとお思いですの
みすずは厳しい口調で、言う
これ以上、この場に居ることは家の恥となります
狩野様がこのままお帰りになられたら香月家の恥になりますわ
ピシャリと、みすずは言い返した
桜子様は、香月の家と並び立つ由緒ある長い歴史と伝統をお持ちの狩野家のお嬢様でいらっしゃいますわ他の家でならいざ知らずこの香月の本家の邸宅にお招きして、何のおもてなしもできないままお帰りいただくことなど
はいみすず様のいえ閣下の恥辱となりますわ
みすずの言葉に、翔姉ちゃんが続けた
お座り下さい狩野様
翔姉ちゃんに促されて、狩野さんは椅子に戻った
鳥居様もどれだけ親しい間柄だとしても、他の方たちの眼のある場所で言い争いをなさったりするのはよくないことですわ
みすずに怒られて、鳥居さんが謝る
親しい間柄
狩野さんと鳥居さんが親しい
しかし、みすず様
不意にお嬢様の1人が、みすずに声を掛ける
何でございます
みすずは、そのお嬢様に振り向く
先ほどの狩野様がおっしゃっていた件わたくしも気になるのですわ