そのお嬢様が、真顔で答える

ルナが、小声でオレに囁く

あの人例の天童さんて人に、そそのかされて喋っている

ルナはオレにしがみついたまま、この場にいる少女たちの心を1人1人チェックしていた

天童乙女は関西ヤクザのスパイでああ、あそこに居るニタニタ笑っている

わたくし、とある方からうかがったのですが今日の会は、香月の家がわたくしたちの警護役を品定めするために開かれたのではないかと

わたくしたちの警護役の中から有能な人間を、香月セキュリティ・サービスに引き抜くために若くて重要人物の身辺警護のできる少女警護人は、とても需要があり高い報酬で、あちこちへ派遣することができるからそういう香月セキュリティ・サービスの新しいビジネスのために

会場内がざわめく

みすず様がわたくしたちから警護役を奪われる

品定めって

ああ、天童乙女がもう何人か仕込んでいるな

このタイミングで、香月家の悪い噂が広まるように

それが何か問題ですの

みすずは、笑顔で攻勢に出た

では本当なのですね

相手のお嬢様が、そう言った瞬間

いやですわどうしたら、そういう解釈になってしまわれるんですの

みすずは、飛びっ切りの笑顔で微笑む

そもそも香月セキュリティ・サービスには、すでに充分な人数の警護人が在籍しておりますわ

みすずに立ち塞がるお嬢様は、チラリと天童乙女を見る

天童乙女は、ウンとうなずいた

香月家は今、瑠璃子様と美子様の専任警護役を探しておられるのでは

2人には今は警護役はいない

えー、わたくしたちの警護役の中から

お2人の警護役を選ばれるのですか

他のお嬢様たちも声を上げる

それから、元々、他の家に移籍したがっていた警護役たちの眼の色が変わる

まあ、それは良い方がいらっしゃればでも

美子様は、高校3年生ですしあたしは2年生高校を卒業すれば、大人の警護役が付くようになりますし

そうだ美子さんは半年、みすずは1年半だけしか少女の警護役は必要でない

ですが例え、半年間だとしても、香月家の警護役に任じられたということは名誉ですわ

その方にとってはそうでしょうけれどわたくしたちにとっては、必要かどうかの問題だけですから

瑠璃子は、まだ中学生ですがわたくしの警護役の美智と同い年ですしこのまま美智が、瑠璃子の警護を担当しても良いのですから

はぁと警護役の中から、溜息が出る

それに美智も後進を育てていますし

みすずは、美智の横のヨミを見る

ヨミご挨拶なさい

ヨミは

はいっ工藤流古武術5級弓槻ヨミですっ

うん工藤流の門下生ということにしたのは、オレの指示だ

ああ、あの子

さっきのエキシビションでちょっとだけ出て来た子ね

ああ、キョーコ・メッサーさんにお手玉にされていた

おっぱい大きい

口々に、みんなそう言う

ヨミルナはどうしたの

みすずが、わざとそう言う

ルナが変装して来たことの意味に気付いてくれているようだ

ルナはポンポンお空に放り投げられていたので、まだ気分が悪いのが治らないそうですっ

ヨミが答える

そう仕方ないわね

このようにわたくしたちも、新人の養成はしておりますわ

会場の少女たちは

そ、そうですのね

キョーコ・メッサーさんにも立ち向かわせるぐらいですし

あれも、警護役のお勉強だったのね

経験値を積むための

そう思ってくれたら、助かる

あたしが、なぜ今日の会を開いたかを、詳しくご説明致しますと

みすずが、にこやかに話し始める

あたしたちの警護役は以前の古い名家でしたら、狩野様がおっしゃっていた通りそれぞれの家に、代々仕えている警護人がいて、その一族の中で年格好のちょうど良い娘を選んで参りましたわ

今のシエさんのように

しかし、時代が変わり今では、どの名家にもそういう臣下がいるということもなくなりました鳥居さんのように、新規で能力のある警護役を雇用なさっているお家もございます

鳥居さんは、フンと胸を張る

アーデルハイトさんは、相変わらず無表情のままだ

うちの美智は美智のお父様の代から香月家に仕えていただいております元々の古くから香月家を警護していた家系は、すでに断絶してしまっていますのでお祖父様が、香月セキュリティ・サービスを設立したのには、そういう経緯もございます

わたくしの家もそうですわ

わたくしのところも

ああ、シエさんみたいに同じ家系が警護役を続けられないこともあるのか

このような時代にあってはあたしたちの警護役も、システムを変えた方が良いのではないかと思うのです

システム、ですか

ええ例えば、あたしたちの学校の前で、もしあたしが暴漢に襲われたとしたら美智があたしを守ります

うんみすずの警護役なんだからな

でも、その時たまたまあたしの隣に、狩野様がいらしたら

みすずが、狩野さんを見る

わたくしの安全はシエが守りますわ

当然、そうなりますわよねでも、そうなった場合美智とシエさんが上手に連携し合えなければ、あたしも狩野様もとても危険なことになってしまうかもしれません

シエは上手くやりますわ

狩野さんは、ムッとしてみすずを見上げる

そうでしょうねでもちゃんとお互いの技量を知っていて、フォローし合える方が、より良いと思われませんか

シエはわたくしのことだけは完璧に守りますわ

みすずは、クスッと笑う

では状況を変えますあたしと狩野様と学校の警護役を連れて来ていない生徒たち15名が、20人の暴漢に襲われるとします

グッと狩野さんを見る

敵が何人いようとシエはわたくしを

他の生徒たちのことは、どうでも良いのですか

わたくしたちの学校は名家の子女しか通うことができませんどんなお金持ちでも、由緒ある家の子でなければ、入学を許されませんわたくしたちは、そういう名家の娘たちの中でさらに自分のためだけの警護役を学校に連れて来ることが許されています

ズワッと会場中の少女たちを見渡す

高貴なるものの義務としてわたくしたちには、警護役を持たない生徒たちまでを守って差し上げなければならないとは思いませんか

みすずの言葉が、浸透していく

警護役同士が、連携することができればどんな事態が起きても、対処できるはずですわ

みすずはシエさんを見る

しかし、これまでの警護役はそれぞれの家に従うばかりで、警護役同士での交流を断っていました

それは他の家に、引き抜かれないためですわ

さっきみすずに話しかけたお嬢様が言う

変に警護役同士が仲良くなったらそれぞれの家の事情が筒抜けになってしまうかもしれませんし

また、わざとみんなが不安になるようなことを言う

それは、あたしたち主の心がけの問題ですわ

臣下だと思って、警護役に辛く当たったり平気でだらしないところを見せたりすれば、評判が悪くなるのは当たり前のことですわ

例のお嬢様は、また天童乙女を見るが

今度は、何のサインも出ない

大事なことは交流することです警護役同士が、普段からもっと仲良くなっておくことです

それは、困ります

発言したのは

みすずたちと同じテーブルに居るのにずっと、小さくなったままの

鞍馬美里さんありすさん姉妹の警護役

安城ミタマさん

わたくしたちにはそれぞれ、絶対に誰にも教えることのできぬ奥義や秘技がございます

交流というのは名ばかりで他家の秘技を狙っている不届き者がきっと現れます

妹のキヌカさんが、ウンウン大きくうなずいている

例え、みすず様のお言葉であろうとも他家の警護役に、我が安城一族の秘技、どんなことがあろうとも盗まれるわけにはございません

さっき、スカイラブ・ハリケーン・ミキサーをやらかした本人が

そんなことを言うのかよ

狩野さんたちの説明が少しはできたので登場人物リストは、これから書きます

なぜか、家のポストが壊れたので修理

父それは、こうした方がいいんじゃないか

私そんなことないから

父これは、こうだろ

私それだと無理

父何でこうしないんだ

私そういう風にできていないから

子供の頃は、とても頼りになる父親だったんだけれどなあ

今はうーん

父これは、こうする方がいいだろ

私だから、それじゃダメだっての

854.ハイ・ライフ / 忠臣

エピソードハイ・ライフからの新登場人物

お嬢様とその警護役

・狩野桜子/16歳香月家と並ぶ長い歴史を持つ名家、狩野家のお嬢様

・不知火シエ/17歳桜子の警護役代々狩野家に仕える警護役一族の娘

・鳥居まり子/16歳トリイ電子のお嬢様なぜか他の子たちから浮いている、空気が読めない

・ハイジ鹿取/13歳まり子の警護役ただし最近、雇用契約された娘ハーフ

・鞍馬美里/18歳家が傾いている鞍馬家のお嬢様娼婦に堕とされる予定

・鞍馬ありす/13歳美里の妹姉をいつもかばっている

・安城ミタマ/18歳美里の警護役空から攻撃するが口癖無口

・安城キヌカ/13歳ありすの警護役肝っ玉が太い

関西ヤクザのスパイ

・天童乙女/17歳ミズシマ・ホールディングスの会長の孫娘の警護役として潜り込んで来ている

そういうものは人様に盗まれないように、自分でしっかりと隠しておくものなんじゃないんですの

相変わらず空気を読まない鳥居さんが大きな声で、そう言う

ハイジ警護役の世界では、そういうのはどうなっているの

主に質問されたアーデルハイトさんは

わたくしたちの世界ではお互いに技を盗み合うのが普通です他人に盗まれたくない秘技は人目に触れないように秘匿しておくというのも、警護役の心得の1つでございます

つまり技を盗まれる方が悪いってことですわよね

鳥居さんの言葉はキツイ

おっしゃる通りでございますそしてわたくしたち姉妹は、家の秘技を守り通したいと考えておりますから、他の家の警護役との交流は一切お断り致します

致します

姉の安城ミタマさんに続いて、妹のキヌカさんも無表情でそう言った

隠さなければナラナイ技なんて、ホントにあるのカネ

イーディが、ニッコリと笑ってそう言う

安城家拳法には350年の歴史がございますが

無表情ながらも、ミタマさんがムッとしているのが伝わって来る

歴史は関係無いネ強いか弱いか使えるかデショ

イーディは、ミタマさんたちを挑発する

今の時代でもホントに使えるのカネその秘技とかいうノハ

そうよねあなたたちのさっきのアレぴょぴょーんってお空に飛び出す技だって、キョーコ・メッサーさんたちには全く通じなかったじゃないの

鳥居さんが、そう言う

うーん、スカイラブ・ハリケーン・ミキサーは

ハイジさっきのアレを見て、あなたはどう思った

アーデルハイトさんは、冷たい眼で安城姉妹を見て

DUMM

それ、どういう意味なの

鳥居さんは、クスッと笑う

はい、ドイツ語で馬鹿、阿呆、間抜けなどを意味する言葉ですわ

アーデルハイトさんは、そう答える

ヤバイ安城姉妹が

特に妹のキヌカさんが、今にも飛び掛かりそうな感じになってしまっている

はぁソレをアンタが言うのカ

しかしイーディが、割って入る

思いっきり、呆れ顔で

ホンモノのキョーコ・メッサーに身がすくんで、何もできなかったアンタが一撃なりとも食らわせようと飛び込んだ人たちを笑うノカ

イーディは、美智とともにキョーコさんと拳を交えた

全然敵わなかったとはいえ一歩も動けなかったアーデルハイトさんを批判する資格はある

わ、わたくしは状況を見ていたのです

アーデルハイトさんは、そう反論するが

今のままのアンタなら状況を見ている間に、みんな死ぬネ主も警護役も

イーディは、意地悪く笑う

お止しになられた方がいいんじゃないかしら

狩野さんが、アーデルハイトさんに言う

その方の腕前は、わたくしたち全員拝見させていただいているんですからあなたが何を言っても負け犬の遠吠えにしかなりませんよ

わたくしのハイジは、負け犬ではございません

鳥居さんが狩野さんに叫ぶ

そういう話をしているのではありませんうちのシエだって、キョーコ・メッサーさんの前では何もできなかったんですから

シエさんが、主に深く頭を下げる

あなたを責めているわけでもありません

狩野さんは、自分の警護役にそう言った

それから、大きくハァと溜息を吐く

判りましたわ認めますみすず様のご提案が正しいんですわ

みすずに、そう言う

時代が変わったんですわね昔のように、それぞれの家の警護役が自分の主だけを守っていれば良いというわけにはいかないキョーコ・メッサーさんのような外国からの犯罪者もたくさん日本にいらっしゃるわけですしね

あんなメチャクチャな戦闘力を持っている人は何人もはいませんわ

アーデルハイトさんが、強くそう言うが

呼んでこようカもう一度

イーディが、ニヒヒと笑う

ヨミキョーコとコーデリアは、まだいるネ

う、うんまだ帰っていないと思います

ヨミが、イーディに答える

皆様がご想像通り現在は、香月家とキョーコ・メッサー様は提携関係を結ばせていただいておりますもちろん、香月の家が多額のお金をキョーコ様に支払っておりますそれで、キョーコ様たちが日本でのビジネスをなさる際には、必ず香月家に詳細をお聞かせいただけることになっていますし他の外国の犯罪組織が日本に侵攻してくる場合には、キョーコ・メッサー様の組織が水際で排除して下さるお約束になっております

じゃあ、あの藤宮麗華様とのテレビでの闘いは

レイちゃんファンのお嬢様の1人が質問する

あれはキョーコ・メッサーさんの趣味ですただしあの人の趣味は、本気だからわたくしたちは常に、命懸けでキョーコ・メッサーさんたちと闘わなくてはなりません

レイちゃんが、そう答える

キョーコ・メッサーさんには、香月セキュリティ・サービスの実戦研修もお願いしていますから

訓練であったとしてもああいう能力の高い方を相手にしませんと、これからの時代を担う警護人は育てることができませんわ

でも、キョーコ・メッサーさんという方はこの先、ずっと私たちに協力的でいて下さるのかどうかは判りませんわ

ホンモノの世界的犯罪組織の大幹部でいらっしゃるのですからもし、どなたかが香月家よりも好条件で契約を持ち掛ければあっさり、そちらに鞍替えなさるかもしれません

みんなシーンとなる

ご想像下さいキョーコ・メッサーさんとその一党がわたくしたちの学校を襲撃して来たとしたらわたくしたちは全員、名家の子女ですわわたくしたち全員が、もしも犯罪組織に誘拐されるようなことになったら

日本中の政財界の重鎮たちが、人質を取られることになる

そして、そんな事態が起きてしまった時わたくしたちは、自分の身だけを守ればそれで良いのでしょうか警護役に守られて、自分だけが安全な場所に避難するそんなことでいいのですか警護役を連れて来ていない一般の生徒たちが犯罪者たちに誘拐されてしまっても構わないのですか

キョーコ・メッサーという圧倒的な存在を見たことで

瑠璃子の言葉のイメージが、より具体的に会場内の少女たちに伝わっていく

わたくしたちの警護役が、非常時に連携して行動できるように日頃から訓練させておくべきなんでしょうねそのための常設の交流会も必要だし場合によっては、お互いの秘技だって教え合っておかないといけないでしょうね

狩野さんがそう言った

しかし、秘技は警護役の家の宝でございます

安城ミタマさんが、断固としてそう言う

狩野さんは、シエさんを見て

シエ、あなたも家伝の秘技を持っているの

シエさんは、周りを気にしながらも

はいございます幾つかは

シエさんの家にもあるんだな、やっぱり

それ実際に使って試してみたことがあるのかしらそしてそれは、キョーコ・メッサーさんのレベルの敵には通用するものなの

シエさんは

最初のご質問には、お答えできません皆様が聞いていらっしゃいますので2つ目のご質問については、判らないとしかわたくしにはお答えできません

あくまでも、隠す方向で答える

そうでも、わたくしは、全ての技を一度試して検証してみる必要があると思うわ

狩野さんは、そう言った

さっきの鞍馬さんの警護役のご姉妹のとても珍奇な技を拝見した限りはあれも秘技なのかどうかは判りませんけれど

いやスカイラブ・ハリケーン・ミキサーはここ30年以内に編み出された技のような気がする

スカイラブ・ハリケーンでハリケーン・ミキサーなあたりが

香月セキュリティ・サービスでも、古い武術の技法の中から、現代でも使えるものともはや時代遅れなものそれから、現代向けにアレンジすれば使えるものを選り分ける作業をしておりますわね、美智さん

翔姉ちゃんが、美智に言う

はいわたくしの工藤流古武術も、現代戦向きにするために大分整理致しました

うーん、工藤流は美智の父親のところで、かなりおかしな方向へ向かっていたような

皆様のお家の家伝武術もそろそろ、そういう整理をしなければならない時期なのではないかと思いますわ

香月セキュリティ・サービスには、そういうノウハウもございます様々な武術を使うプロの警護人が揃っておりますし現代戦における問題点も、把握しておりますよろしければ、皆様をお助けすることもできますわ

しかしそれでは、香月セキュリティ・サービスに家伝の秘技の数々を吸い上げられるだけになってしまうのでは

文句を付けたのは例の関西の天童乙女にそそのかされている少女だ

あの天童っていう女スパイつくづく自分が直接動くのは嫌みたいだな

別に秘技の全てを明らかにしていただく必要はございませんわ隠しておかれたい技は、どうぞそのままご秘匿なさって下さいでも、一度プロの眼で検証してみたい技というのも、皆様、たくさんお持ちなのではございませんか

ご家伝の秘技の全てが、一子相伝で門外不出の奥義ということではございませんよね

要は何かアッタ時に連携できるシステムが作りたいダケなのネ今みたいに、全く交流が無いと、誰がどんな技を使うのか判らないネデモ少しでも、流派の方向性が判ればお互いにサポートするのも楽になるネ

アタシとミチはさっき、かなり見せたつもりダヨ秘技どころか奥義までネ

いやわざと見せたのではなく

キョーコさんに本気で立ち向かうのに、隠さないで思いっきり闘っちゃっただけなんだけれど

イーディは、そういう理屈で少女たちを説得しようとした

よろしいかしらさっき、あなたたちが使ったキョーコ・メッサーの動きを一瞬だけ止めたあの技あれは気の技ですね

1人のお嬢様が手を上げる

長い真っ直ぐな黒髪の大きな眼の美少女だ

他のお嬢様様たちは、みんなパーティドレスで来ているのに

この人だけはまるで、詰め襟の学生服のような真っ白のパンツ・スーツを着ていた

イーディは、フフンと笑う

思いきって、申し上げるあの技わたくしに教えていただけないか

え教えて欲しい

でも、この人警護役じゃなくって、お嬢様の方だよな

どっしりと椅子に座っているんだから

人に教えを乞う時は、まず名乗るものだと教わらなかったノカ

イーディが、その黒髪のお嬢様に言う

あなた、無礼よあなただって、警護役でしょ

鳥居さんが、そうイーディを叱るが

武人同士の話ネお嬢様も警護役も無いネ

イーディの言葉に黒髪のお嬢様は、スッと立ち上がる

大変、失礼致しましたわたくしは栗宮流槍術師範、栗宮素子《クリミヤ・モトコ》と言う

栗宮さんはイーディに頭を下げる

栗宮の家に生まれこの通り、警護役を持つ身ではあるがわたくし自身も、1人の武人として常に武の道を進み続けている

お嬢様なのに武道家なのか

こういう人もいる

御厨お前もご挨拶しろ

栗宮さんの後ろに立っていた、ふんわり髪のドレスの少女が頭を下げる

こっちは警護役なのにスカートパッと見は、この子の方がお嬢様っぽい

栗宮流、御厨《ミクリヤ》くるみでございます

ドレスの持って、ちょこんと可愛らしく礼をする

アタシはイーディなのネ

イーディは、そう挨拶した

気の技くらい、イツデモ教えるネタダシできるようになるかどうかは、アナタたち次第なのネ

どんな厳しい稽古でも構わないわ

栗宮さんと御厨さんは、そう言う

稽古のキツさは関係無いネセンスの問題ヨ

センスの無い子は、どれだけやってもできないネセンスのある子は、すぐに覚えるネそうよネ、ミチ

イーディは、美智に話を振る

美智は、小さくうなずく

テ、イウカ他にも習いたい子がいたら、みんな教えるネアタシはアメリカ人だから、流派がどうのトカ、ナイショにして隠し続けるトカ言わないネそういうの、とてもミミッチィのネ昔の人の極めた技が、ただただ消えていくダケになるのネ

イーディの言葉にシエさんは

そんなことはありません日本人は伝統を重んじる先祖代々家伝を受け継いで来ているのですアメリカの方には、お判りにならないのでしょうか

ダカラ、今、言ったデショ大切なのはセンスなのヨ

イーディは苦笑する

1つの家の中でその家に生まれた子供だけに、細々と技を伝えるなんてことをしていたら技は消えて行くだけなのヨいつも、武闘のセンスのある子ばかりが生まれてくるハズがないのダカラ

武闘センスに欠ける子には、家伝の技を完全に受け継ぐことはできない

代を重ねるにつれ、秘技はどんどんボンヤリしたものになっていく

正しい形で何かを残そうとしたらよその家の血が絶対に必要なのネ

イーディさんの言う通りですわ能や歌舞伎の世界でも、大昔の芸がそのまま1つの家だけに受け継がれてきたことはございませんもの他の家の血が良いセンスを持つ俳優さんに、途中で何度も芸の橋渡しをしていただくことで現代にまで繋がっているのですわ

瑠璃子が、伝統芸能を例にしてそう言った

シカモ武術は、芸能みたいな芸術じゃないネ人を倒す、あるいは守るためだけの技なのネどんなに昔から伝えられて来た秘技でも、今の時代で使えないのなら意味が無いのネ伝統芸能として残すならイイヨだけど、人を警護スルための技としてなら、無意味な技は捨てなきゃダメネ

イーディは、強く言う

つまらない執着に囚われていると誰も守れなくなるヨ

ソレカラ警護の子たちだけじゃなくって、お嬢様タチも少し、身を守る技を習ってみたらどうなのネ

このモトコみたいにネ

イーディは、栗宮さんを指さす

おい、栗宮様に失礼でないか

シエさんが、イーディに怒鳴るが

いや、構わないわたくしの方から弟子入りを希望したのだ呼び捨てにされるのは、武闘家として当然のことだ

栗宮さんは、平然とそう言う

あのわたくしも習っているんです護身術として工藤流古武術を

瑠璃子がみんなに言った

あたしも、旦那様と一緒にお稽古させていただいおりますわ

時には藤宮さんや関さんとも、一緒にお稽古していますし

うん、お屋敷にレイちゃんや翔姉ちゃんが泊まりに来た時は

よく、みんなで一緒にトレーニングする

お屋敷のトレーニング・ルームにはたいていのマシンは揃っているし

庭や、昔アニエスが幽閉されていた地下室で汗を流すこともある

あたしも、よく練習に参加させてもらっているよ

フラッとマルゴさんが登場する

みんなも遊びに来て一緒に身体を動かしてみない

いえ、あの主に護身術を教えるのも、警護役の家の大切な任務でございますから

シエさんが、そう言うが

そんなの別にいいじゃないみんなで、一緒にした方が楽しいしさ

マルゴさんは、ニコニコと爽やかに笑っている

しかし香月様のいらっしゃるこちらのお屋敷に、わたくしたちがそう気軽にうかがうことはできませんわ

今度は、主の狩野さんが反対する

ああオレたちがこの香月家の本家邸宅に暮らしていると思っているんだな

今日だって、みんな綺麗なドレス姿だ

ジッちゃんと顔を合わすかもしれない場所というのは、色々と気を遣うんだな

それでしたら香月セキュリティ・サービスの旧館をお使いになったらいかがです

こちらのお屋敷の通りを隔てた、すぐ向かいにございますこちらに勤務する警護員たちの待機所として長く使われてきた館ですが、今は新しくビルを建てて、そちらに全員移動しておりますから、誰も使っておりませんわあそこには道場もございますし

いいんですか、関さん

そちらの館も香月家の所有物でございますから

判りましたわお祖父様にわたくしから、お願いしてみます

みすずと瑠璃子が、そう言った

では、わたくしが定期的に皆様とお稽古させていただきます

レイちゃんが、みんなと約束する

あたしも、時々、顔を出そうかな

えー、レイカ様が護身術を教えて下さるの

うわ、どうしましょうわたくし

みすず様わたくし、ぜひとも参加させていただきますわ

将を射んとせばまず馬を射よ

先に、レイちゃんファンのお嬢様たちが参加を表明してしまえば

その警護役たちも、付いてくるしかない

ついでに一緒に鍛錬することになるわけだし

警護役同士の交流も、自然と深まることになるだろう

トコロデモトコ

イーディが、武闘お嬢様の栗宮さんに言う

さっき、モトコの言っていたソウジュツとは何なのネ

ニコッと、イーディは微笑む

栗宮素子さんは、その笑みの意味をすぐに理解した

では、槍術はわたくしが御指南いたします

ヨロシク頼むノネ

うん上のレベルでも、交流が始まろうとしている

どうぞ、皆さん参加なさって下さいませ

瑠璃子が、もう一度、みんなに呼び掛けた

わ、わたくしたちは参加致しません

せんっ

それでも安城姉妹は拒絶する

み、ミタマキヌカ

すっかり小さくなったままの主鞍馬美里さんが、困惑している

み、みすず様たちに失礼よそ、そんな大きな声で

そうよあなたたち

怯えている姉を抱き締めたまま、妹の鞍馬ありすさんも自分の警護役たちを叱った

で、ですが

この姉妹は何をこだわっているんだ

鞍馬さん仕方ないわよこの子たちは、今、必死で自分たちを売り込まないといけないんですから

鳥居さん

今の鞍馬さんのお家の状況ではこのまま警護役を雇っておくのはご無理でしょうし、そうなったらこの子たちは失業ですものね

鳥居さんの言葉に鞍馬姉妹は、また震える

だから、こんなに必死なんですわイチかバチか、キョーコ・メッサーに飛びついてみて勇猛さをアピールしてみたり

妹の安城キヌカさんが小声で否定する

ありもしない家伝の奥義をアピールしたりして他の家に雇われるように、一生懸命、自己宣伝をしているんですわ何とも健気なことですわ主からヒマを出される前に、自分から次の主を探すなんてもっとも、鞍馬さんのお宅のような、のんびりなさった家風ですとこの子たちの行く末のことなどまるで考えていらっしゃらないでしょうし自分から動き出さねば、鞍馬の家とともに頓死してしまうとこの子たちも心配なのでしょうね

安城姉妹が変なテンションなのは、そういうことなのか

今までの突飛な言動は全て、就職活動のためのアピールなのか

安城家拳法に、奥義はあるのです

ミタマさんが、鳥居さんを睨んでそう言う

もういいですよそういうのはあなたたちの気持ちは、よーく判りましたから

鳥居さんは相手にしてあげない

あなたたちの次の雇い主は、わたくしが探してあげます

狩野さん

あら、随分とお優しいのですわね

鳥居さんが、嫌味を言う

鳥居さんの家では他の名家とそういう話はできないわよね

狩野さんが、キッと鳥居さんを睨み返す

シエ

はい、わたくしも父から、各家の警護役に打診していただきます

狩野家は由緒ある名家だから、そういう警護役同士のネット・ワークもあるのか

お言葉は感謝致しますが、結構でございます

安城姉妹は、狩野さんにそう言う

でも、あなたたちあなたたちの雇用を止めれば、鞍馬さんの家も少しは楽になるのよ

鞍馬家は本当に、破産寸前の危険な状態らしい

いえ、わたくしたちすでに給金はいただいておりませんので

ので

わたくしもキヌカも生まれながらの鞍馬家の警護役でございます

もしも鞍馬の家が滅ぶのならばその時は、わたくしもお供致します

ちょっちょっと待て

キョーコ・メッサー様の闘いに飛び込んだのは鞍馬家家臣の心意気を皆様にお示しするためにございます家は傾いているとしてもわたくしたち臣下は、何人にも屈するつもりはございません

ございませんっ!

姉妹はそう言った

何て、忠誠心に厚い警護役たちなのかしら

お父様にお話しして、わたくしもどちらかのお家を探して差し上げますわ

そうですわねどうしたところで、鞍馬家はもうダメなんですし

新しい雇用主を見つけてあげる方が、あの子たちのためですものね

鞍馬家の崩壊は決定事項なのか

みんな、もう無理だと思っている

ああいう忠臣までが、鞍馬さんの家と一緒に消えてしまうのはもったいないですものね

いっそのこと、うちで雇ってあげようかしら

ああ、あの小さい子の方は可愛らしいですものね

わたくしの妹が、そろそろ警護役が必要な年頃ですし

そういう会話をお嬢様たちが始めたら

他の家への移籍を考えていた警護役たちの眼の色が変わってきた

新キャラは、ここまでで止める予定です

どうしても武闘派お嬢様を1人出したかったので

昨夜、WUGの最終回を観たら、ゾッとしましたが

キルラキルの最終回を観たら、ホッとしました

同じ系列会社で作っているのに、どうしてあそこまでの差が

855.ハイ・ライフ / グローバル・スタンダード

・栗宮素子/17歳武闘派お嬢様栗宮流槍術師範

・御厨くるみ/14歳素子の警護役なのだが、ふんわり髪の可愛い少女

わたくしたちの主家は鞍馬家のみ美里様、ありす様だけにお仕えすると、固く誓っております

おります

安城姉妹は、そうみんなに告げる

ミタマ、キヌカ

主である鞍馬姉妹は、感激しているが

でも、家が没落してしまったのですからもう、どうすることもできないですわ

空気を読まない鳥居さんが、平然とそう言う

むしろ臣下であるあなたがたの方から、暇乞いをして主家から立ち去る方が鞍馬さんにとっては良いことかもしれませんわ鞍馬さんのお家にも、名家としてのプライドがございますでしょうからなかなか、ご自分の口から長年尽くしてくれた家臣に解雇を申し渡すこともできないでしょうしやっぱりそういうのは、恥でございますからね

オホホホと、鳥居さんは笑う

まり子お嬢様

鳥居さんの背後から、警護役のアーデルハイトさんが声を掛ける

なあに、ハイジあなたも、鞍馬さんのところの警護の方たちに何か言いたいひとがあるの

鳥居さんは、ニヤッと笑ってアーデルハイトさんを見る

ハイジは、わたくしのお父様がヨーロッパから見つけてきましたのあちらのスイスにある世界中の貴族の子女が学ぶ名門寄宿学校で、警護役を担当していた子ですのよこれからは、警護役も国際基準で人材を求めないといけませんからね

アーデルハイトさんは、そういう出自の人なのか

はいわたくしは要人警護を担当する人間を養成するアカデミーにて、国際基準での警護役ライセンスA級を所持しております

ヨーロッパには、そういうのもあるんだ

でも凄いな

アーデルハイトさんは、まだこんなに若いのに

中学生ぐらいだよな

そうそう、凄いのよわたくしのハイジは

鳥居さんも、鼻高々だ

父が日本人でございましたので、この通り日本語も話せます他に、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、アラビア語が話せます

ええ、警護だけでなく個人秘書としても有能ですのよわたくしの警護役は

ニッコリ微笑んで、胸を張る鳥居さん

ですのでお集まりの皆様どなたか、このわたくしをお雇い下さるというお方はいらっしゃいませんか

アーデルハイトさんが、トンデモないことを言い出す

もちろん鳥居様と現在交わしている契約よりも、好条件を提示していただいた場合ですがいえ、雇用条件は現状維持でも構いません鳥井様のお家より、家格の高いお方でしたら

ハイジさんが、自分の売り込みを始めた

は、ハイジあなた、何を言っているの

驚く鳥居さん

しかし、アーデルハイトさんは、無表情のまま

鳥井様との契約は今月いっぱいで、切れますので問題は何もございませんが

そんなの自動的に再契約するに決まっているでしょ

鳥居さんは叫ぶ

再契約するかどうかの判断はわたくしにも決定権があります

アーデルハイトさんは、そう言う

鳥居様にはわたくしを日本に連れて来て下さったことを感謝しておりますが

だったら、主人に忠節を誓いなさい

はい契約期間の間だけはしかし、先のことを考えれば、これ以上鳥居様の警護役を続けても得られるものは少ないのではないかと感じております

2人の言い争いを聞いて他のお嬢様たちが、囁き合う

まあ鳥居様のお家ではね

世界基準のA級ライセンスが、もったいないですものね

鳥居さんは今日はずっと、他のお嬢様たちと交流していない

最初は、みんなと違うテーブルに、1人だけで座っていたし

ジッちゃんに無理矢理話し掛けて、怒られて

そのまま、みすずが自分のテーブルに引き取ったけれど

他の名家の子たちから、浮いているという印象が強い

欧米では警護役もステップ・アップしていくものなんですよ

翔姉ちゃんが笑顔で、割り込む

ずっと同じ家の警護役を続けるということは無いんです最初は、能力が認められると、少しずつ格上の家により高い報酬で雇われていくんです

ああ、欧米ではどんな仕事でも、そうですものね

みすずが、続ける

何かの自分の専門の仕事に就いて何かしら実績を上げたら、別の会社へ移って

はい、役職が高くなり、報酬も増えますステップ・アップは、企業の方からヘッドハンティングされて引き抜かれることもありますし自分から、どんどん売り込みをかけて他社に移籍することもあります

それで、より規模の大きい企業で働いたり同じ様な規模の会社に移る場合でも、今までよりも高い役職に就くのね

同業のライバル会社に就職することもよくありますこの間も大手コンピューター関連企業の副社長が、ライバル企業の社長に就任しましたわ

わたくしもそろそろ、ステップ・アップしなければならないと考えております

アーデルハイトさんのその言葉に、鳥居さんは

何よハイジあなた、鳥居の家を馬鹿にしているの

そういうことでは、ありませんただわたくしの持つ技能ならば、より格の高いお家の方が有効に役立つのではないかと感じているだけでございます

こういう考え方もヨーロッパ的なのか

あらあら、鳥居さん警護役に裏切られるとは、とんだ醜態ね

狩野さんが苦笑する

こ、こんなのあたしは、認めませんからねっ

お認めいただかなくとも、月の終わりとともに自動的に契約は切れますので

とことん、ドライな性格なんだなアーデルハイトさんは

でもそんなあなたなら、どこの家からも雇うという声は出ないと思うわ

みすずはアーデルハイトさんに、ニコッと微笑む

なぜでございます

アーデルハイトさんは、無表情を崩さない

当たり前じゃないそんなにコロコロと他の家に移っていくような警護役危なくて、雇えないわよ

狩野さんは、不快そうな顔でそう言った

前の家で見聞きしたことは、決して他家には漏らしませんそういう職業上の倫理規定の厳守もA級ライセンスを持つ警護役には課せられています

あなたが職務上知ったことは漏らさないって言っても雇い入れる方は、やっぱり気持ち悪いのよそういうことは警護役の人とは、日常生活を供にするんだから信頼できる子じゃないと

そう言って狩野さんは、自分の警護役のシエさんを見る

うちのシエみたいに先祖代々、仕えてくれているような血筋の子でないとね生まれてからずーっと、わたくしの警護をしてくれているのよ信頼感が違うわ

シエさんは無言のままだ

でもどの家にも、狩野様の家のように代々の警護役が居るわけではございませんわ

口を開いたのは武闘派お嬢様の栗宮さんだった

我が栗宮家は武家の血も引いておりますから槍術の弟子筋から、このように警護役を選出することもできましたが

栗宮さんは、警護役の御厨さんを示す

しかし、多くの名家では令嬢を警護するための、武術の心得のある少女を探すのが難しくなってきたと聞きます

そうなの関さん

みすずが、翔姉ちゃんに尋ねる

はい香月セキュリティ・サービスでも、何人かご紹介したことがございますわたくしたちと契約している信頼できる警護人に娘さんがいらっしゃる場合に

ああ、そうねあたしの美智もそういう形で、あたしに付いてくれているわよね

美智は、工藤父がジッちゃんと個人的に契約している関係でみすずの警護役になったんだし

わたくしどもが関わらない場合はお家同士で、ご縁戚から警護役を融通し合うことが一番多いようですわ

わたくしの家が、そうでございます

わたくしの警護役に妹がおりましたので

はいその子に、わたくしの警護をしていただいております

もう1人別のお嬢様が、手を上げる

2人の背後から、ニョッと警護役が顔を出す

なるほど姉妹だそっくりの顔をしている

主のお嬢様2人が、親戚なんだな従姉かハトコか

名家同士で結婚していることも多いんだろうからこういうこともあるんだな

しかし、日本は少子化傾向にありますのでそれは、警護役の家系も同じです

それに、そういう家は主家を守るために、まず男の子の跡継ぎを欲しがりますから

ああ、名家の警護役の家系にとってはお嬢様よりも、当主を守ることの方が大切だ

当主は普通男だし当主の警護役も、男の方がいいんだよな

主家に必ずお嬢様が生まれるとは限らないわけだし

お嬢様を守るために何が何でも娘を作ろうなんてことには、なかなかならないよな

昔の兄弟姉妹がたくさんいた時代なら、ともかく

今の出生率では

さらに、警護役の家系に女の子が生まれても性格や才能が、お嬢様の警護役には向かないということもありますし

女の子だもんな戦闘に向かない場合も多い

父親や家族が息子が家業を継ぐのは仕方ないとしても、娘には警護の仕事を継がせたくないと拒絶することも多いそうですわ

今後は、ご令嬢専属の警護役を探すのはどんどん難しくなっていくと思います

翔姉ちゃんは、そう報告する

あたしも、驚いたんです

今日はあたしたちの学校にご自分の警護役を連れて来ていらっしゃる方に集まっていただいたわけですが

広く会場内の全員を見る

会を開くために、全校生徒の名簿を拝見したのですが由緒ある名家の本来ならば、警護役を連れていても不思議ではないのにそういう方のいらっしゃらない方が何人もいらして

みすずの言葉に、お嬢様たちは

そういえば、そうですわね

わたくしにも、幾人か心当たりがございますわ

ええ歴史ある名家であり、お家の事業も順調でいらっしゃるのに警護役のいらっしゃらない方って、いらっしゃいますわよね

ああ、家に問題は無いのに、警護役になってくれる子が見つからないお嬢様もいるのか

そうかと思えば、鳥居さんのような方が警護役を連れて来るから

狩野さんが、ギッと鳥居さんを睨む

な、何ですのっわたくしだって国内では、そういう能力のある子が見つからないから海外から、ハイジを探して来たのよっ

鳥居さんは、大声でそう言う

はいよろしければわたくしには、母校のネットワークを通じて、ヨーロッパの警護役をご紹介することができますが

アーデルハイトさんは、自分の売り込みどころか外国人警護役の斡旋まで言い出した

全て、わたくしと同じ国際基準A級ライセンス所持の警護役でございます

ちょ、ちょっと待ちなさいよ

移籍を考えていた警護役の少女の1人が、口を挟む

そんな外国の人に日本の名家のお嬢様の警護なんて無理よ

そうですわそういう仕事は、やっぱりわたくしたちでないと

自分たちの売り込みをする前に外国から、どんどん警護役が輸入されることになってしまったら、この子たちは困るのだろう

わたくしのアカデミーの出身者はヨーロッパの王侯貴族の皆様の警護を担当している者もたくさんおります

アーデルハイトさんは言う

日本向けの警護に合わせることなどわたくしたちならば、すぐに

うっ、何かちょっとカッコ良いかも

うーん、外国の人に警護してもらうっていうのもねえ

わたくしは良いかもしれないって思いますわ

お嬢様たちの中からは、そういう意見も出るが

皆様その子の言うこと、あまり信じないで下さい

翔姉ちゃんが苦笑して、言う

アーデルハイト・鹿取さんでしたよね

そうですが

アーデルハイトさんは、ムッとして答える

あなたA級ライセンスでもA-3でしょ

ギョッとするアーデルハイトさん

関さん、何かご存じなの

ご存じも何もそのアカデミー、わたくしも留学しておりましたから

翔姉ちゃんはヨーロッパで要人警護について留学して来た人だった

わたくしは、ちゃんと卒業しましたわでも、アーデルハイトさんは短期講習でA-3ですわね

いえねそのアカデミーは、半年コースの授業を受けただけでも、A級のライセンスをくれるんですよA級を持っていると言えば、仕事を探しやすくなりますから

仕方ないんですわそのアカデミーは、世界中から警護について学びたいという人たちが集まってきますから本科の3年コースの他に、短期留学の半年コースがあるんですよアーデルハイトさんが受けられたのは、そちらのコースでしょ

そう言えばこの子は、若すぎる

3年コースなんて、受けられるはずがない

しかも日中は義務教育の授業を受けていたんでしょうから夜間だけのコースですよね

アーデルハイトさんは答えない

それが悪いとは言っていませんわ夜間だけの半年コースでも、アカデミーの講義を受けられたことに間違いはありませんしA級のライセンスを受けられていることも、本当ですよねただ

やはり、正規のコースを受けて卒業したプロの警護人とは違いますさきほど、アーデルハイトさんは、アカデミーの卒業生の中には王侯貴族の警護を担当している人もいるというお話があれましたがそういうのは全て、正規コースのしかも、S級ライセンスを所持しているような人たちだけです

S級

同じアカデミーの出身でライセンスを持っていると言ってもS級とA-3では全然違いますから皇帝専属の料理長と町の食堂のコックさんぐらい違いますわ

アーデルハイトさんの売り込みが、強引すぎたことを告発する

わたくしは閣下の専任警護人ですから当然、そのS級ライセンスを保持しています外国の要人との会合などの場合にはアカデミーのライセンスを持っていると、相手方の警護役との話し合いがスムーズになりますから

何だその方のA級は、大したものではないのですね

まあ恥ずかしい

関さんがいらっしゃらなかったら、てっきりわたくしダマされてしまっていましたわ

ええ、わたくしも今夜お父様にご報告しようと思っていましたから

お嬢様たちの中でのアーデルハイトの株が、みるみる下がっていく

A-3のライセンスも、決して悪いものではございませんわただ日本の名家のお嬢様たちの警護を担当するには、どうかと思います

翔姉ちゃんは、キッパリと言う

アーデルハイトさんは、翔姉ちゃんに言う

アカデミーの短期講座を受けてA-3を取る人は上昇志向のある人ばかりだということは知っているわ特に、あなたのような中学生にはA-3のライセンスだって取得するのは大変だったでしょうねでも、このライセンスなら欧米や中東のお金持ちのお子様たちの警護役になるのが普通でしょ日本でも名家でなく、普通のお金持ちの皆さんに売り込んでみたらどうかしら

真面目な顔で、翔姉ちゃんはそう言う

日本の名家はとても特殊なのよ歴史と伝統があるから今後、わたくしのように日本からアカデミーに留学するというケースは増えていくと思うけれど、アカデミー出身の外国の警護人が日本の名家の警護役になるということは無いと思うわ

それは日本の名家の世界が排他的ということですか

アーデルハイトさんは、ムッとしてそう尋ねる

違うわ名家は日本独自の歴史文化を背景とした独特の世界なのよそこに国際基準は、通用しないわグローバル・スタンダードで押し切ろうとしたら、潰されるわよ

しかし、先ほど日本の名家を守る警護役たちの家系も、少子化で弱体化しつつあるとおっしゃっていたようですが

その通りよだからわたくしたち、香月セキュリティ・サービスがこの国にはあるのよ

翔姉ちゃんは、キッパリとそう言い切った

わたくしたちの基盤は香月家という、日本の伝統を守る側の名家よわたくしたちは、閣下の理念によって行動しているわそれぞれのお家の警護役が弱くなった分は、わたくしたちが守ります

その翔姉ちゃんの言葉に、みすずは

今日、皆様にお集まりいただいたことで色々な問題点が見えて参りましたわ例えば今は、ご縁戚同士で警護役を融通し合っていたり、この子みたいに外国から警護役を雇い入れているということもあるようですね警護役が見つからない家のことも

結局警護役の市場が流動的でないんだな

基本はそれぞれの家が、独自に警護役を抱えていただけだから

いる家にはいるし見つけられない家にはいない

今、困惑した顔をしている警護役の子たちみたいに今の主家に不満で、他の家に移籍したがっている子たちもいる

どうでしょう今後は香月セキュリティ・サービスが仲介に入るというのは例えば、どちらかの家で警護役の子が余っていれば、他の家にお知らせできますし外国の情報も、今の関さんのように皆様にお知らせできますわ

そうだわ香月セキュリティ・サービスに、若い警護役の育成もさせますわそして、わたくしたちが推奨できる高い能力と、性格の良さを持つ警護役を皆様にご紹介致しますわ

そ、それでは警護役ビジネスを、全て香月家が支配することになってしまうではありませんか

大声で文句を言うのは天童乙女にそそのかされている例のお嬢様だった

ビジネスまた、とても面白いことをおっしゃいますのね

名家のお嬢様たちのための警護役の育成なんてビジネスとしては成立致しませんわむしろ、とても面倒で損なことばかりですわ

だからこそこれはわたくしたち香月の家の仕事だと思うのです

フフッと、美しくみすずは微笑む

日本の名家と伝統を守る香月家でございますから

文句を言った少女は沈黙する

それと場合によっては、警護役の交代も考えないといけませんわね

今はとにかくどの家も、縁のある子に警護役をしていただいていますから例えば、あたしの場合でも2歳年下の美智に、警護を任せています

みすずは鞍馬・安城姉妹を見る

やはり、本来は鞍馬さんのように、警護役が同じ年齢の子の方が何かと都合がいいはずですし

それから主に不満を持っている警護役の方を見る

警護の方たちにとっても、なるべく警護しやすい環境を作って差し上げるべきだと思うんです

つまり今の主従関係をバラバラにして

警護役にとっても、納得できる主従に組み直すという可能性を示す

それともう1つ、みすず様お嬢様専属の警護役は、将来の問題もございます

ああ、そうねあたしたちは高校を卒業したら、男性のプロの警護人が付いて下さるようになるものね

そうか主の卒業とともに、お払い箱になる子もいるのか

わたくしは一生、美智に仕えてもらうつもりですけれどお家によっては、そういうことができないこともありますわよねそうね関さん

もし、警護役の方でご卒業後にご希望があられるのでしたら、香月セキュリティ・サービスに入社していただくということはできますか

わたくしから、閣下に上申致します

頼みますわ

みすずは、再び全員に向かい

もちろん、強制ではございませんご希望の方だけですわ小さな頃より、主を守り続けて来た技能と経験を今後も生かしていくお仕事に就かれたいのなら、ということです

現状に不満のある警護役の子たちには悪くない話だ

みんな中高生なんだから、もう何年かしたら卒業する

今は先祖代々の繋がりで、特定の家の警護の任に縛られているが

香月セキュリティ・サービスに入社すれば、そういう束縛から抜けられる

その他ご提案があれば、どうぞ、わたくしにお話下さいませ

警護の皆様は関さんの方へ色々とご相談に乗れることもあると思いますし

ええ、わたくしがお伺いするわ

翔姉ちゃんが、ニコッと微笑む

なし崩し的に名家の警護役たちの問題は全て、香月家が預かるという流れになっていく

でもどうなるのかしら、あの子

1人のお嬢様が、呆然としているアーデルハイトさんを見て言った

うんどの名家も、あの子は雇わないわよね

関さんがおっしゃっていた通り名家ではない、その辺のお金持ちの家で警護役をやっていればいいのよ

何よそれなら、今と変わらないじゃない

鳥居さんの家は名家じゃないんですから

今日、コンビニに行ったら

隣のレジで、女性が税金を支払っていました

今はコンビニで、税金とか支払えるんですよね

あの、ピッとバーコードを読み取らせて

そんなの、別に珍しいことではないのですが

私が、100円の缶コーヒーを買っている横で

えー、56万円です

コンビニで56万円払っている人を、初めて見ました

バイトの店員さんが、札束を数えていました

でも、あのお金は

右から左で国に行くお金なんですよね

レジの中では+56万円の売り上げだけど

そんなことを考えながら寂しく家に帰りました

856.ハイ・ライフ / イミテーション・ゴールド

鳥居さんの家は名家じゃない

みすずたちの学校で、個人の警護役を連れてきても良いのは名家中の名家超一流のお嬢様たちだけだと聞いたけれど

鳥居の家は決して皆様にひけを取る様な家柄ではございませんわ

鳥居さんは、お嬢様たちに言い返す

そうですわね確かに鳥居さんのお家は資産家でいらっしゃいますわ

お嬢様の1人が、そう言った

オレもトリイ電子という会社の名前はよく聞く

かなり大きな企業のはずだぞ

確か歴史も、そこそこあるはずだし

日本だけでなく、海外にもよく知られた国際的な大企業だ

しかしただお金持ちなだけの家を名家とは呼びませんわ

ええ、しかも鳥居さんのお家のご家業はご成功なさったのは、昭和のそれも戦後になってからでしょ

高度経済成長の賜物

トリイ電子は創業50年でしたっけホントつい最近のことですわね

前にジッちゃんが雪乃の白坂本家のことを、そんな風に言っていたっけ

本当の名家は、創業50年くらいの会社のオーナーぐらいじゃ仲間に入れてもらえない

どれだけ、今の経営している会社の業績が良くて大金持ちになっていたとしても

鳥居さんの家が名家として認められるにはもう50年は必要ですわ

意地悪な笑みを浮かべてお嬢様の1人がそう言う

あなたが学校に警護役を連れて来るなんて、本当はあってはならないことなのよ

ホント、分をわきまえない人って嫌ですわ

鳥居さんが、お嬢様たちの中で1人だけ浮いている感じだった理由がこれで判った

警護役も国内になり手が見つからず、海外から連れて来なければならなかった理由も

本来なら、警護役を連れていてはいけない家柄なのだから

もちろん、鳥居家に代々仕えている警護役の家なんか無いわけだし

他の家から、警護役を融通してもらうこともできない

警護役の方だって、断るだろう

他の名家の人たちから、冷たい眼で見られるだけなのだから

悔しそうに言い返そうとする鳥居さんを、狩野さんがスッと手で制する

確かに鳥居さんの家には、警護役を連れ歩くことが許されるような名家の資格はございませんわ

狩野さんがお嬢様たちに言う

しかし、彼女には鳥居まり子さんには、その資格がございます

真面目な顔で、みんなを見る

まり子さんは狩野護良の孫娘ですわ

狩野

狩野桜子さんと鳥居まり子さんは従姉妹なのか

まったくあなたという人は

狩野さんは、大きく溜息を吐く

あなたは狩野家本家の当主の血を引いておりますわ狩野の家から鳥居のような家格の低い家に嫁を送り出したということは、一族の恥辱ですがその結果、生まれて来てしまったあなたを責めることはできません

な、何ですのわたくしのお母様を愚弄なさるおつもり

鳥居さんが、狩野さんに食ってかかるが

お黙りなさいわたくしは狩野本家の人間ですわ本来であれば、あなたはわたくしと直接口をきくことさえ許されないことなんですからね

そんな身分差が存在するのか現代の日本で

あなたのお父様は狩野家の権威を利用なさりたくて、狩野家の女を妻に迎えたのよそしてあなたもいつかは、政略結婚の道具としてどこかの名家に嫁ぐことになるのよ鳥居家の家格を少しでも上げるために

狩野さんは、厳しい顔でそう言う

母親が名家の出で、あなた自身もいつかは名家に嫁ぐそうなることが判っているから、わたくしたちはまり子さんが名家の子女のように振る舞っていることを許しているのよ学校に警護役を連れて来ることも

つまり準・名家の子女ぐらいの感覚で、理解されている

まり子さんは、ホンモノの名家の人間ではないのよいい加減、それに気付きなさいでないとわたくしが恥ずかしい思いをするのよ血縁にあなたのような人がいると

鳥居さんは、グッと唇を噛みしめて

わ、わたくしは狩野さんを血縁だと思ったことはございませんわ

わたくしだって、そう思いたいわよでも、世間の眼というものがあるのよ事実は事実なんですから誤魔化せないのよ

狩野さんも憎々しげに、鳥居さんに言う

お二人ともそこまでになさって下さい

みすずが、間に入る

鳥居さん狩野様は、お口では厳しいことをおっしゃっていますが本当は、あなたのことを心配なさっているのよ

みすずは狩野さんを見る

そうでなければ狩野本家のご令嬢が、香月本家の邸宅に来て下さるはずがございませんから

狩野様は香月の家に匹敵する由緒正しきお家柄ですわいえ300年ほど前には、狩野様の方が香月家よりも位が高い時期もございました

狩野家が香月家に勝っていた

ですから、狩野様があたしのお誘いに応えられてこの家での懇親パーティに来て下さったことは大変有り難く思っておりますでも狩野家のご令嬢が、他の家の皆様と席を同じくなさることなど、あってはならないことですから

狩野家は家格が高過ぎるんだ由緒があり過ぎる

だから、レクチャーが始まる前は狩野さんは、1人だけ外れたテーブルに座っていたし

ジッちゃんは、狩野さんをみすずと同じテーブルに座らせた

他のお嬢様とは一緒できないと判断して、特別扱いすることにしたんだ

みんな過去のことですわ現在の狩野家は香月様のご繁栄には遠く及びませんもの

狩野さんは、そう言ってみすずを見る

しかし名家としての誇りは残っております

ああ狩野家は、名家の中でもとりわけ格の高い家柄だから

祖父が狩野家の当主である鳥居まり子さんも名家の子女として、ギリギリ認められているのか

まり子さんが、狩野家の恥を晒さないようわたくしが、直接出向いて監視しなければならないと思ったのですわ本当に香月様には大変、ご迷惑をお掛けしております

今日はみすずの学校に来ている警護役とそのお嬢様の会だから

鳥居さんも当然、招待される

そしたら、香月家に来た鳥居さんが、色々と無礼を働くかもしれないから

狩野さんは、心配になって自分も着たんだ

もし、鳥居さんがいなかったら狩野さんは、みすずの誘いを断っていたんだな

香月家の主催の会など、興味はありませんと

本当にまり子さんは、香月様にも他の皆様にもご不快になさるような言動ばかりして警護役までトンチンカカンなんですものわたくし、顔から火が出そうですわ穴があったら入りたいです

まり子さん皆様にお謝りなさいそして、わたくしと退席いたしましょう

まり子さんをキッと見る

わたくしは嫌ですわ

鳥居さんは、狩野さんを睨み返した

だって、わたくし悪いことは何もしていませんもの

まり子さん

嫌なものは嫌です

鳥居さんは、キッパリとそう言う

わたくしにだって鳥居家の娘としての誇りがありますわ両親や家を笑いものにされて、このまま引き下がるわけには参りません

オレにはこの人の言い分も判る

鳥居さんの家のトリイ電子だって、今じゃ日本を代表するような一流企業なわけだし

家柄がどうのとか納得できないんだろうな

だいたい、狩野家が何だと言うんです昔は権勢を誇っていたのかもしれませんがそんなのはわたくしたちが生まれる前のことではありませんか今の狩野家は何でもないただの家ではありませんか

狩野の家は

狩野さんのお父様が、幾つかの社会団体で名誉総裁や理事をなさっているだけですわ会社を経営なさっているわけでも、政府の要職にあるわけでも、議員をなさっているわけでもない今の狩野家は、何も生み出していないではないですかただただ、昔の名家の名前だけで細々と暮らしているだけの

狩野家は家柄が高いだけで、今は没落しているのか

それでも、狩野の家はただの名家とは違うんですわ品格が違うのよ

狩野さんが叫ぶ

ええ、そうでしょうね普通の名家なら鞍馬さんの家のように、傾いてしまえば潰れてしまうだけですけれど

鳥居さんが、鞍馬姉妹を見る

鞍馬美里さんが、また恥ずかしそうに下を見る

妹のありすさんが、姉の背中を抱いていた

でも、狩野家のような格式の高過ぎる家は、簡単に潰してしまうことなどできませんものね

鳥居さんの言葉に、狩野さんがウッと息を呑む

だから狩野家の人たちが名家の一員として恥ずかしくないような豊かな生活が送れるように他の家の皆様が、あちこちから名誉職をご用意して下さるわけですわ

ニッと、鳥居さんは微笑む

まり子さんが、それを言うの

狩野さんは、それだけ言い返すが

鳥居家だって、狩野さんの家に役職を差し上げていますのよあなたにわたくしの家を馬鹿にされるのは納得できませんわ

狩野家は格式は高すぎる名家だが、今はお金も社会的地位も持っていない

一方、鳥居家は今はお金も社会的地位もたっぷりあるが、名家としては認められていない

鳥居さんの両親がどういう経緯で結婚したのかは判らないけれど

お金と名誉を引き替えにした、政略結婚だったと思っている人が多いんだな

だから鳥居さんも、そのうち別の落ちぶれた名家と政略結婚させられると、みんな思っている

そういう鳥居さんだから、他のお嬢様たちからは相手にしてもらえないし

家柄が極端に高いだけの狩野さんはみんなが扱いに困っているんだ

鳥居さんが、さっきいきなりジッちゃんに自己紹介しようとした理由も判った

この人は、場の空気が読めないんじゃなくって

名家の権威とか家格とかをクソ食らえだと思っている

だから、香月家の当主であるジッちゃんとも、対等の立場で挨拶したいと思ったんだ

もう、そろそろよろしいかしらお2人とも

ご親族同士の罵り合いほどみっともないことはありませんわ

いつの間にか感情剥き出して、喚き合っていたことを狩野さんは恥じる

お、お騒がせ致しました申し訳ございません

席を立ちみすずと他家のお嬢様たちに頭を下げる

すぐに退席させていただきます鳥居さん、参りましょう

狩野さんが、鳥居さんにそう言うが

鳥居さんは、不機嫌そうに下を向いているだけだ

お待ちなさい

みすずが、静かに言う

この状況で退席なさる方が、よっぽど失礼ですわ

狩野さんが、ハッとしてみすずを見る

あなたに狩野家の誇りがあるようにあたしにも香月家の娘としての立場がありますこのまま、お二人がお帰りになられたら、あたしのお祖父様と狩野様のお祖父様の問題にまで発展してしまいますわ

家柄の高すぎる家同士は、関係を保つのも大変だ

そんなことになりましたら、あたしお祖父様に何とお詫びをすれば良いのか判りませんわはっきり申し上げますけれど桜子さん

みすずは狩野様でなく、彼女を名前で呼んだ

あたしは、あなたよりも1つ年上ですから、学校の先輩として意見させていただきますけれど

ジッと狩野さんを見る

自分の家の家格が高い家ほど他家の皆様への気遣いを忘れてはいけないのよ今のあなたは自分のことばかりで周りが全然見えていないわ

ていうか他家どころか香月家のメンツすら考えないで思い切った行動をするあたりは、さすが狩野家のお嬢様ということか

ある意味、鳥居さんとよく似ている

2人とも、基本的に傍若無人な性格なんだな

狩野さんは、頭を下げる

今日は、パーティの最後まで居て下さいねお帰りの車も、他の方たちの後にしていただきます

みすずは鳥居さんを見る

鳥居さんも、そうして下さいね

鳥居さんも、不承不承納得してくれた

さすが、みすず様ですわ

お嬢様たちが、みすずに感心している

やっぱり香月のお家の方が、狩野家よりも上ですわね

シッ、そんなことを聞いたら、狩野様が泣いてしまわれますわ

あらあらそうですわね

鳥居さんも香月様の権勢には敵いませんものね

まるで歯が立ちませんわよトリイ電子では香月グループには

家柄と財力と社会的地位全てを兼ね揃えている香月家には、狩野家も鳥居家も敵わないのか

そう考えると、この従姉妹同士を上手く捌くのはみすずにしかできないことなんだな

さて、皆さん大変お待たせ致しました

あたし、もうお腹ペコペコよさあお食事にしましょう

みすずの指示に合わせて

香月セキュリティ・サービスのメイド班の人たちが、ガーデン・パーティのケータリングの食事に被せられていた覆いを取る

冷えているドリンクを屋敷の中から運んでくる

温かい方が美味しい料理が、様子を見て運ばれてくる

乾杯以降ゴタゴタしていたのに

パーティに最適な状態で食べ物をサービスできるように上手く対処されている

普段から、ジッちゃんが主催するパーティなんかで慣れているんだろうな

外国の要人とかをお招きしたパーティなんかで、主賓の到着が遅れることなんてよくあるんだろうし

そういう時でも、料理が美味しく食べられるような配慮に心がけているんだろう

あなたたちも、たくさん食べてね

みすずが、狩野さんと鳥居さんに微笑む

2人は暗い顔をしている

あらそんなことでも、あたしに無礼を働くの

みすずは笑顔で言う

パーティの席では、楽しそうにするというのも気配りよもちろん、料理を味わって感想を述べると言うのもね

はい行きますわよ、まり子さん

狩野さんは席を立ち、ケータリングの食事の並んでいる方へ行こうとする

な、何よ狩野さん1人で行けばいいじゃない

鳥居さんは、文句を言う

みすず様のご配慮で、わたくしたちが仲直りしたというところを他家のお嬢様に見せないといけないわみすず様のご配慮に対するお礼として

はぁぁ判りました確かにこれ以上、香月様のパーティにご迷惑をお掛けするわけにはいかないですものね

鳥居さんも席を立つ

狩野さんの後ろには、当然の様に警護のシエさんが付いている

鳥居さんは、それに気付いて

ハイジ、行きますわよ

後ろのアーデルハイトさんにそう言うが

アーデルハイトさんは、うつむいたまま動かない

そうだったわねいいわ月末前ですけれどあなたとの契約は打ち切ります

ハッとして、鳥居さんを見るアーデルハイトさん

仕方ないでしょあんな風に恥をかかされてこれ以上、わたくしにはあなたを連れ歩くことはできないですもの

アーデルハイトさんは、泣きそうな顔で下を見る

鳥居さんは、同じテーブルの鞍馬さんに

もしよろしければ鞍馬さんの警護役、2人ともわたくしが引き取りますわもちろん、移籍料として鳥居家から鞍馬家にお金も払いますわあなたたちのお家今は少しでもお金が必要なんでしょ

鞍馬美里・ありす姉妹は黙ったまま、答えない

わたくしたち姉妹は

姉妹は

安城ミタマ・キヌカ姉妹は、鳥居さんに拒絶の意志を示そうとするが

あなたたちとは話していないわ

警護役の主としか、交渉しないと言うことか

まあ、いいわ今日のパーティが終わるまでに、考えておいて下さいねわたくし、最後まで居なくてはいけないそうですから帰りの車に警護役が乗っていないのは、嫌なのよ

このままミタマさんたちを雇い入れて自分の家へ帰るというのか

ま、別にあなたたちでなくてもいいんですけれどね

鳥居さんは狩野さんたちと一緒に、テーブルを離れる

オレは、変装しているルナと一緒にみすずのところへ行く

瑠璃子と翔姉ちゃんもやって来た

イーディは最初から美智の後ろにいる

逆に、美智とヨミはオレたちから離れて行った

ヨミとルナが一緒に居たらルナがさっきキョーコさんたちと闘った子だとバレるかもしれない

関西ヤクザのスパイ天童乙女さんが、まだ居るんだから

レイちゃんとマルゴさんは、ファンのお嬢様たちとまた仲良く談笑している

親・香月家のお嬢様たちは、美子さんが相手をしてくれていた

凄いな、みすずは

どうなることかと心配していたのにとりあえず、何とか片付けちゃったしさ

まだ半分ですわ

そうだ天童乙女は、まだ何か企んでいるかもしれない

でもオレ、心配でさ美智やヨミたちと、色々な事態を想定して対策を考えたりしていたのに

オレたちの策は、取りあえずは使わずに済んだ

あたしたちも、色々と考えてやっていますから

ここは香月家の戦場であたしや瑠璃子の最前線ですから

みすずたちは、名家のお嬢様としての闘いを日々、続けている

大分、お嬢様たちのお気持ちを掴むことはできましたがもう少しですわね

全ての名家の警護役を香月セキュリティ・サービスが一括して管理するという案を完全に受け入れていただくためには

警護役は、ほぼ24時間一緒にいるから

その家の行動の全てが知られてしまう

もう一押しネ

そのためには一騒ぎ起こすネ

一騒ぎ

イーディは、落ち込んだままのアーデルハイトさんのところへ行く

Heyアンタアンタのことネ

顔を上げるアーデルハイトに、ニコッと微笑むイーディ

このマンマだと、マズいネアンタの日本での生活は、オシマイになるノネ

確かに今の状態では

鳥居さんに解雇されたアーデルハイトさんを雇う名家は無いだろう

さっきのアカデミーとかA級ライセンスとか、大口をたたいた売り込みが大失敗だっただけに

デモアンタ、腕はドウナノ

わたくしの腕ですか

使えるオンナなのかってコトネ

イーディの言葉に、キョトンとするアーデルハイトさん

今すぐはダメネ懇親会のパーティが始まったバカリだから25分後を目安に、作戦を開始するネ

作戦

パーティに余興はつきものなのネ

今日はいいともが最終回でした

私は32年前の第1回を観ています

いや、普通の学生には見られないはずの時間帯なのですが

多分、気管支炎にかかって、しばらく小学校を休んでいた時だったんだと思います

あれから32年か

ザブングルとかダグラムの放送年でもあります

この作品で、いいともネタをやる予定があったんですけれど

間に合いませんでした

あと、明日から増税なのでヨドバシでガンプラ買って来ました

何か、凄い混んでましたね山ほど塗料を買ってる人もいて

ガンプラとかも全然作っていなかったのですが

ガンダムBF恐るべし

今日はそのガンダムBFも最終話の放送でした

まあ、最後まで思いっきり、やってくれたというか

とても楽しくて素晴らしい作品でした

ガンダム種死で戦場に介入しまくるメチャクチャな主人公陣営という、困ったストーリーをやってしまったことに対する抗議がガンダム00ならば

ガンダムBFは、ガンダムAGEに対する抗議なんでしょうねダンボール戦記まで含めて

856.ハイ・ライフ / わたしの価値、低すぎる

アンタは、なぜ自分が失敗したか、判っているノカ

イーディが、アーデルハイトさんに尋ねる

ああ、イーディがオレたちの方へ近寄って来たから

今は、美智がヨミと一緒に少し離れた位置に移動している

うん、他のお嬢様たちや警護役の少女たちの様子をヨミにチェックさせているんだな

例の関西ヤクザのスパイ天童乙女さんは、オレたちから一番離れたテーブルに居る

自分の主や、さっきから自分の代わりに発言させているお嬢様に何か話している

また何かを仕掛けて来るつもりなんだろう

それは香月セキュリティ・サービスの関様に邪魔されたからです

アーデルハイトさんは、ギッとイーディを睨んで、そう答える

あら、あたしなの

翔姉ちゃんが、思わず振り向く

うんにゃそうじゃナイのネ

イーディは、呆れて笑う

アーデルハイトさんは、納得がいかないらしい

ジャア、質問を変えるネアンタの元主人は、アンタを解雇した後にすぐに、そっちのシスターズに声を掛けたネ

シスターズ安城姉妹のことか

安城姉妹も、イーディとアーデルハイトさんの方を振り向く

いや、その主の鞍馬姉妹に狩野さんとシエさんも

鳥居さんだけは、すでにケータリングの料理の並んだゾーンへ行ってサンドイッチをパクついている

ただし彼女の周りには、誰も近寄らないやはり、他のお嬢様たちに避けられているようだ

で何で、カノジョたちだったと思うカネ

イーディは、アーデルハイトさんにニカッと微笑む

まり子お嬢様はわたくしの代わりに、新しい警護役を必要となさっていているからですわ

口惜しそうに、アーデルハイトさんは言う

ソレだけカネ

他に何があるというのですっ

ムッとする、アーデルハイトさん

アンタは全ての判断間基準が自分ナノネソシテ自分で自分のコトを高く評価していて、それが当然だと思っているネ

何がいけないのですわたくしは、一流の警護役ですわ

アーデルハイトさんのその言葉に、イーデイは笑う

アンタは、そう思っているノネそして、ソレは本当カモしれないノネアンタは強いのカモ

判りましたそこまで、おっしゃるなら勝負致しましょう

スッと、構えるアーデルハイトさん

まだ早いネミンナ、食べ始めたばかりネ余興はもう少し後でないとネ

わたくしの武は、余興ではございませんっ

そう彼女が言った瞬間イーディが強い気を放つ

気に圧せられて、動けなくなるアーデルハイトさん

イイカラ、アタシの話をよく聞くネ

アーデルハイトさんは、イーディを睨み付けたままだ

アンタは、本当は強いのカモシレナイ少なくとも、アンタ自身は自分には能力があると考えているシカシ

一方、イーディの方は、笑顔を崩さないで言う

ソンナコト、他のミンナは知らないノネアンタが自分をどれだけ高く評価していても他の人には、ハァ、何ソレなのネ

わたくしはアカデミーのA級ライセンス保持者です

アーデルハイトさんは、身動きできないまま反論する

ダ・カ・ラ何ソレなのネ

日本という国はね実績主義なのよどんなに著名なアカデミーの出身者でも実務経験が乏しければ、初心者と同じ扱いにされちゃうのよ

大切なのは、現場で何年働いたかってことだけそれも、できれば良い現場をねわたくしもアカデミーのS級を持っているけれど、この国ではそんなライセンスより、閣下の身辺警護を勤めてきたことで評価されているわこの国の重要人物のお一人であり、お会いになられる方々も内外の政財界の重鎮ばかりですからね閣下に関わる現場を仕切ってきたということが、わたくしの評価なの

ジッちゃんの警護人は、大徳さんと張本さんもいるけれど

あの二人は、肉体派のボディガードだからな

ジッちゃんが会う色んな人たちの事前調整とか、警護態勢全体の仕切りなんかは翔姉ちゃんか谷沢チーフでないとできない

警護計画の立案、人員の選定、運営、相手方の交渉外国の賓客が相手なら、語学にも堪能じゃないといけないし

わたくしにとってS級のライセンスは、わたくしの能力を飾るものの1つでしかないわ欧米の方たちと交渉する時には、多少は役に立つからS級ライセンスを持っているっていうだけで、仕事にはならないのよ

翔姉ちゃんはオレを見て

実務経験を重視することが、日本の良いところであり悪いところでもあるんだけれどね例えば欧米なら、アーティストというのは全員、アート・スクールを出た人を指すわプロとアマチュアの違いは、専門教育を受けているかどうかだけよだから、欧米のアーティストは、プロフィールにどこのアート・スクールを卒業したか必ず書いてあるわ卒業証書がなければ、プロのアーティストだと認めてもらえないのよ専門教育を受けていない人がどれだけ面白い作品を作っても、それはアマチュアの作品だということでアートの本流としては認めてもらえないの

でも、日本ではどこの学校も出ていないアーティストなんてたくさんいるでしょそりゃ、美大によって派閥みたいのはあるけれど結局、その人がどんなアートを作っているかの方が大切なのよ良い物なのか、面白い物なのかそっちの方が重視されるわけ美大とかアート・スクールを卒業していないのに、活躍していて評価の高い画家やイラストレーターとか、いっぱいいるでしょ日本には

オレはそういうのは、あんまり詳しくないけれど

ただ、問題なのはアート全体に対する社会的評価や金銭面が弱いのよね外国よりアマチュアだった人でも、才能があれば評価されるっていうことが安く使われちゃう原因でもあるのよねでも、一部某国立美術大学出身の現代アートの人が主張しているみたいに日本のアート界も欧米化しようっていうのも間違っていると思うわそうなったら、アートの専門教育を受けている人だけがアーティストで、国家の補助も民間の資金もみんなそういう人たちに任せるべきだってことになっちゃうからあのオジサンの主張は、自分が楽になるためだけのことだからね

何にしたってねまあ、日本人だって色んな免許を取得するのが趣味な人はいるし、ライセンスが無ければできない仕事もあるわよでもライセンスだけでもダメなのよ

アーデルハイトさんに、微笑む

わたくしが、どんな思いをしてA級ライセンスを取得したのか、あなたには判らないのでしょうね

アーデルハイトさんは、暗い顔で言う

あら、判るわよわたくしもあのアカデミーに在籍していたんだからあなたは確か、まだ13歳よね13歳でA-3のライセンスを取るのがどれだけ困難なことかだって知っているわ相当、スバ抜けた能力がなければ無理なことはねあなたは、学校も飛び級して済ませているんでしょ13歳でもう、高校は卒業しているのよね

香月セキュリティ・サービスは、今日来ているお嬢様の警護役たちのプロフィールは、全て調査して把握している

翔姉ちゃんは、そのトップだ知らないはずがない

それをご存じでしたら、なぜ、先ほどわたくしを貶めるような発言をなさったのですか

アーデルハイトさんは、強く抗議をする

大人のビジネスに割り込もうとする子供は、蹴飛ばされてもしょうがないわよ

香月セキュリティ・サービスは日本の名家専門の警護会社なのよその会社の人間であるわたくしや麗華が居るのに、あなたの乱暴なビジネスを見逃すと思う

アーデルハイトさんは、自分の売り込みだけでなくアカデミーの他のA級ライセンス保持者を紹介すると、名家のお嬢様たちに言った

ホント、乱暴で粗雑で相手のことを何も考えていない売り込みだったわねお嬢様たちは、みんな楽しそうにあなたの話を聞いて下さっていたけれど実際にあなたを雇ったり、あなたにアカデミーの卒業生を紹介してもらおうとする方はいませんからねこの日本では

アーデルハイトさんは、真顔で聞く

わたくしは能力があります警護役としては、完璧に働けますそれに、わたくしが紹介する人間も、みんなアカデミーのライセンスを持っているのですから

この中庭にいる警護役の少女たちを、アーデルハイトさんは見る

ビシッと主の後ろに付き従っている子たちが多いが

友達感覚で、主と仲良く食事をとっている子もいる

主から離れてレイちゃんやマルゴさんに張り付いている子も

少なくともこの場にいる警護役の大部分よりは、皆、優秀です

そう言い切るアーデルハイトさん

ダカラソレハ、アンタの評価なのネ

イーディが、苦笑して言う

アンタは、この国では何の実績もナイのネアカデミーの人間が優秀かどうかも、あのLADYたちは知らないのネ

そうよあなたの中だけでの基準で世の中は動かないわ

イーディと翔姉ちゃんが、そう告げる

だから、この場であなたたちと闘って実力を示せというのですか

アーデルハイトさんは、手に汗をかいていた

ああ、そうかこの子

そのアカデミーとかいう機関を出たばかりで、警護役としての勤務は鳥居さんが最初なんだ

本当に現場での経験が足りない

もう、遅いのネ

本当に、アンタが実力をアピールするのならさっき、キョーコたちが攻めてきた時に、何かすれば良かったノネ

さっきのキョーコさんの乱入

実際に戦闘に参加したのは、美智とイーディヨミとマナレイちゃんとマルゴさん

そして安城ミタマ&キヌカ姉妹

鳥居様が、あの子たちに声をかけたのはキョーコ・メッサーに対して攻撃を仕掛けたからよ

あ、あんな攻撃何の役にも立たなかったではないですか

そうだ安城姉妹のスカイラブ・ハリケーン・ミキサーは不発だった

角の付いたヘルメットを被ったキヌカさんを、キョーコさんがヒョイと捕まえて終了だった

そうかしら身体がすくんで何もできなかった人よりはマシでしょ

わたくしは状況を判断してまり子様をお守りするのが第一だと考えていただけです身体がすくんでいたのは、他の家の警護役たちです

そう反論する、アーデルハイトさん

同じよ結果的に何もしなかったんだから他の家の警護役とあなたの違いを名家のお嬢様たちに判っていただけるのあれじゃあ、何のアピールにもなっていないわよ

それに、あの子たちを雇い入れることは、鳥居様に大きなメリットがあるのよだって、これだけたくさんのお嬢様たちが見ている前でキョーコ・メッサーに飛び掛かっていった子たちなのよ鳥居様があの子たちを連れていて、どなたかにお会いした時には、ちょっとした話題ぐらいは提供できるでしょこの子は、あのキョーコ・メッサーと闘ったことがあるんですまあ、勝てませんでしたがうふふふふって

警護役を世間話の種にするのですか

アーデルハイトさんが、翔姉ちゃんを睨む

あら、これは武勇伝よ警護役にとっては、良いことよ何も語るべきエピソードの無い警護役なんて、連れていて面白くないじゃない

翔姉ちゃんの言う通りだキョーコさんに立ち向かったことで、安城姉妹たちは注目されている

だからこそ、鳥居さんはあの2人に眼を付けたんだ

逆の話をするネアンタの今までの主が、他の家からはアマリ高く評価されていないということは何となく判ったネ

鳥居まり子さんは母親が名家の狩野家の出身だから、名家のお嬢様同然として認められているが

鳥居家そのものは評価されていないお金はあるけれど

それは判っておりますわたくしも、まりこ様と他の方々との関係については詳しく調査致しましたから

さすがA級ライセンス保持者アーデルハイトさんは胸を張って、そう言う

で、アンタはそういう主に雇われて、ヨーロッパから日本にやって来た子なのネ

警護役ですプロの国際基準A級の警護役ですわ

アーデルハイトさんは、大きな声でアピールする

デモあの子が雇っていた子なのネ他の家の子は、アンタのことは絶対に雇わないネ

あの子のお古は嫌だと思うノネあの子のことが認められない人たちはアンタのことだって、認めるはずがないのヨ

意味が判りませんわたくしとまり子お嬢様は別の人格ですそれにわたくしは、鳥居家と契約しているだけで鳥居家の事情は、わたくしが関知することではないではありませんか

そういう簡単な理屈で済まないのが大人の世界なのよ

これは日本だけじゃないわよこういうのは、欧米でもあるからねむしろ、欧米の方がコネとか、誰は誰の派閥だとか、うるさいのよそういうのが判っていないと、世の中を渡っていけないからね

わたくしには判りません

アーデルハイトさんは憤慨している

まあ、まだ13歳で、アカデミーを出たばかりじゃしょうがないんでしょうけれどね師匠みたいな人もいないみたいだし

でも、あなたみたいな子をこのまま放っておくわけにもいかないのよそのままにしておくとあなたみたいな子は、悪い人たちが捨て駒にするのに丁度良いって利用されちゃうだけだから

わたくしは悪人に利用されるほど馬鹿ではございません

あなたを心配して言っているんじゃないわゲンジツの問題としてこのまま、あなたを放置しておくと利用されるから面倒なことの芽を先に詰んでおきたいと思っただけなのよ

もし、あの時

鳥居さんがアーデルハイトさんを解雇した直後に、イーディが声を掛けなければ

アーデルハイトさんは、新しい雇い主を求めて中庭に居るお嬢様たちに自己アピールしに向かったろう

だけど、ここに居る名家のお嬢様たちが鳥居家を解雇された警護役を雇うわけがない

しかも、ここに居る子たちは全員、自分の警護役を連れて来ているんだ

アーデルハイトさんがヨーロッパ式の自己主張で、ガンガンお嬢様たちに売り込みをかけたら

他の警護役とトラブルとなる

それを天童乙女は見逃さないだろう

いや、ささっとアーデルハイトさんに誰か雇い主を探してやるとか、甘い話をして自陣に引き込もうとするかもしれない

だから、先手を打って、先に話し掛けたんだ

なかなかメンド臭いネデモ、仕方ないノネ

イーディも、溜息を吐く

それで結局、わたくしにどうしろとおっしゃるんですか

アーデルハイトさんは、それでも挑戦的な態度を崩さない

まさか、わたくしに香月セキュリティ・サービスへ入社しろと

あ、アーデルハイトさんが矛先を変えてきた

この子、ハシっこいけれど困ったもんだな

自分だけの力で他の名家に再就職することは困難だと理解したから

今度は、香月セキュリティ・サービスをターゲットにすることにしたのか

アンタは会社勤務は向いてないネ忠誠心が欠如しているカラ

アーデルハイトさんの場合、香月セキュリティ・サービスに入社したって

自分のステップ・アップの踏み台としか思わないだろうから

良さそうな雇い主を見つけたら、とっとと退社しちゃいそうだもんな

引き継ぎとかもしないで、周りに迷惑かけ放題で

外国ならそれでいいんだろうけれど日本では、良くない

そういう子を雇うのは、香月セキュリティ・サービスの信用にも傷が付くことになるし

というよりあなたの実力が判らないことには、雇いようがないのよ

判っていると思うけれど今日の会は、みすず様の主催ですからここでわたくしたちが行うことには、全てみすず様のご認可が必要だわ

翔姉ちゃんは、みすずを見る

みすずは瑠璃子と、何やら相談している

あなたの身柄についても最終的には、香月家のお嬢様たちがお決めになることよわたくしは上申はできるけれど、決定権は持っていないの判るわよね

名家のお嬢様たちの警護役の問題はデリケートな問題だ

今のアーデルハイトさんは、お嬢様たちに微妙な眼で見られているんだから

受け入れるかどうかを翔姉ちゃんが、勝手に決めることはできない

さっきも言ったけれどわたくしは、アカデミーの出身者だから、あなたのA-3ライセンスの本当の価値は判っているわでも、わたくしが判っていても意味がないのよあなたが、ここに居るお嬢様たちに自分の価値を示さないといけないししかも、判っていただかないといけないのよ

判っていただく

アーデルハイトさんが復唱する

そうよお嬢様たちに理解していただけないアピールは、無意味なのよ力を示せないのと同じなのよ

どんなに警護役としての能力があってもお嬢様たちのほとんどは、武術のことなんて知らないのよ興味だってないかもしれないわ

だから、先ほどのエキシビション・マッチの後半は

キョーコさん、ミス・コーデリア、レイちゃん、マルゴさんの4人は

徹底的にショーとして魅力たっぷりのバトルを演じた

しかも、それでいて身体能力や戦闘力の高さを、お嬢様たちにアピールできる闘いを

それで、みんなお嬢様たちは、あの闘いを楽しんで観ていたし戦いが終わったあと、4人の大人たちの評価は下がっていない

むしろ、レイちゃんもマルゴさんも大人気だ

おっしゃることの意味、ようやく判りました

アーデルハイトさんが、納得する

この子は、馬鹿ではないまだ子供なだけだ

ちゃんと説明したら、判ってくれる

でわたくしは、どなたと闘えばよろしいのですか

アーデルハイトさんは、翔姉ちゃんを見る

わたくしや麗華はダメよ美智さんやイーディさんたちも香月に関わる警護役と闘って、みすず様に取り入るのは無理ですものね

今、警護に付いていらっしゃる方より、わたくしの方が強いと判っていただければその地位をわたくしに下さるのでは

そういう世界じゃないから

本当にこの子は世間のシステムが判っていない

フーンアンタアタシやミチに勝つ気なのネ

それはあの方でしたら、絶対に負けませんが

アーデルハイトさんは、少し離れた位置に美智といるヨミを見る

さっきは巫女の力は不発だったもんな

そういや、ルナの方は

オレの背中に、ぴったりくっ付いたままだ

あの子たちは特殊技能者ナノネ武術は始めたバカリなのネ

イーディが、そう説明する

冗談です初心者を圧倒しても、わたくしの実力は理解されないでしょうし

確実に、アーデルハイトさんが負けると思う

キョーコさんはスピードが超常な人だから、ヨミが力を出す前に先に仕掛けられたけれど

アーデルハイトさんは、向き合った瞬間にヤられると思う

わたくしが対戦致しましょうか

そう言い出したのは、狩野家の警護役シエさんだった

桜子お嬢様ご許可下さいませ

シエなぜ、あなたが

狩野さんは、驚いている

シエさんは、キッと翔姉ちゃんを見る

関様あの香月セキュリティ・サービスでは、アルバイトの募集はなさっていらっしゃいませんか

シエ、あなた何を言っているの

桜子お嬢様わたくし、学校を退学しようと思っております

何を言うの

わたくしが退学すれば学内での桜子お嬢様の警護は適わなくなりますが桜子お嬢様がお勉強なさっている時間は、わたくしの身体が自由になりますその時間に、香月セキュリティ・サービスのお仕事をさせていただければ

狩野さんが学校に行っている間だけ香月セキュリティ・サービスでアルバイトをする

お昼間にも要人の方々の会合などの警備の仕事があると思いますそういう場で下働きで結構でございます他の方たちと一緒に制服を着て、持ち場に立っているというようなとにかくわたくし、働きたいのです

シエさんは言う

そんなに狩野家は、財政が芳しくないの

瑠璃子と話していたみすずが、シエさんに振り向いて尋ねる

い、いえそういうわけではございませんがわたくしの食い扶持ぐらいは自分で働いて稼ぎたいのです

いや、シエさんは警護役として狩野家に24時間居るんだから

衣食住は、狩野家が保証しないといけないんじゃないのか

いえ、本当は金銭を少々、貯めておきたいのです

驚く狩野さん

いずれお嬢様が、狩野家から独立なさる時のためにわたくしも資金を貯めておきたいのです

狩野さんが家を出る

三井家の雛飾り展というのに行ってきました

家にあった物を展示するだけで美術展になっちゃうんですよね名家は

去年、旧岩崎邸も行きましたし

名家というものについて、少し考えています

で帰りに、ドーナツ店でお茶を飲んだのですが

とても可愛い中学生たちを見ました

それで女子中学生についても色々と考えています

857.ハイ・ライフ / レディ・ゴー

お気持ちは、判りますけれどね

翔姉ちゃんが、シエさんの話に苦笑する

もう少し、よく考えてから話されるべきではありませんか

ギョッとする、シエさん

香月セキュリティ・サービスは、香月家のそれも閣下直属の警護組織ですわそこに狩野家のお嬢様の警護役を、アルバイトとして雇い入れることなどできるわけがないでしょ

狩野家の家格は香月家に匹敵する

そんな家柄のお嬢様を守る警護役が、他家の運営している警護会社でアルバイトするなんてありえない

そんなことをしたら狩野家だけでなく、あなたを受け入れたわたくしたちにとっても恥ずかしい思いをすることなりますわ

それに警護のお仕事に、アルバイトなんてものは存在しないわよあなたの主が学校に行っている時だけの仕事なんてあるわけないでしょ

確かに要人同士の会議が長引いたりした場合に

シエさんだけ、狩野さんのお迎えのために現場から帰るとかありえるはずがない

だいたい、うちの要人警護の制服警護員なんて、コワモテで体格の良い男性の方がいいのよ周りを威圧して、変な人が寄って来ることを避けるのが仕事なんだからあなたみたいな可愛らしい女子校生が制服を着たらかえって、制服マニアのおかしな人たちを呼びこんじゃうわ

ああ、可愛い女の子の制服姿が大好きな男っているもんな

わたくしは可愛くなどございません

シエさんは、そう言う

あら、わたくしたちから見たら、可愛いだけよあなたは

翔姉ちゃんは、笑って言う

わたくしたちが相手をしているのはキョーコ・メッサー級の犯罪者なんですからね

そうだ翔姉ちゃんたちは、警護のプロなんだ

主のお嬢様に張り付いているだけの専属警護役とは、仕事の重さが違う

少なくとも、あなたがアルバイト感覚で入り込めるような業務ではないわよ

大変、失礼を致しました

シエさんは、スッと頭を下げる

もっとも、あなたが狩野様の家から離れて、香月セキュリティ・サービスに入社するというのなら話は別よ

もし、そうしてくれるのならわたくしたちは、あなたに他の名家のお嬢様の警護を担当させるわ主は変わるけれど、仕事の内容は今のままあなたも学校を辞めずに済むわわたくしたちがあなたを派遣するお嬢様も、あなたたちの学校の生徒でしょうから

シエさんが狩野家を出て、香月セキュリティ・サービスに入って

他の名家のお嬢様の警護役に派遣される

ああ、でもあなたを入社させて、狩野様の家に警護役として派遣するなんていうのは無理よそういう大きな会社が資金繰りに困って本社ビルを売り払ったのに、賃貸契約に切り替えてそのまま同じビルに居座るみたいなのは世間の眼がありますからね

シエさんが、狩野家を離れて香月セキュリティ・サービスに入社するのは個人の問題だ

狩野家にとっては、代々仕えてきた警護役の娘に逃げられるというのは失態だろうし

香月セキュリティ・サービスには、他家の警護役の少女を引き抜いたという悪い噂が流れるだろうが大した問題ではない

個人の問題である以上、シエさんと狩野家の間で何かしらのトラブルがあったという可能性も考えられるのだから

だが、シエさんが所属を香月セキュリティ・サービスに移したのに、今のまま狩野桜子さんの警護を続けていくとしたら

わたくしたちよりも狩野様の方が、お困りになられるでしょ

世間の人間は狩野家が警護役の費用に困り、香月家に頼んで援助してもらっていると思い込む

シエさんの給金は、香月セキュリティ・サービスが払うが狩野家は香月セキュリティ・サービスに正当な警護料金を支払っていないのではないかと香月家にサービスしてもらっているのではないかと

つまり狩野家は財政難で、相当困窮していると思われる

わたくしは狩野家に命を捧げております

そうよねだったら馬鹿な申し出をするのは、お止めなさい

翔姉ちゃんは笑顔だが、その言葉は厳しい

結局のところ、特定の家に忠誠を誓っている警護役がアルバイトで他の人の警護をやれるはずがないんだ

他の人の警護をしている時に、狩野さんが危機に陥ったらシエさんは、現場を放棄して主のところへ馳せ参じることは判っているんだから

シエさんは深々と頭を下げる

関さん、わたくしからもお詫び致しますうちのシエが大変な粗相をしかし、シエにこうさせてしまったのは、主であるわたくしの不徳からでございますどうかお許し下さい

シエさんの主人である狩野桜子さんも、翔姉ちゃんに頭を下げようとするが

みすずが、スッと手を伸ばして狩野さんを制する

狩野様、あなたが頭を下げてはいけないのよ

ニッコリと笑う

驚く狩野様

ここには、人の眼があります皆様、楽しく食事をなされてご歓談なさっていますけれどわたくしたちの様子を見ていらっしゃる方もいらっしゃいますわ

今はガーデン・パーティでこの中庭には、たくさんの名家のお嬢様たちと警護役がいる

関西ヤクザのスパイも

関さんは、わざわざ臣下同士の会話に徹して下さったんですわですから、わたくしたち主は聞こえていても、聞こえていないという態度でいなければなりません

警護役としての会話なら翔姉ちゃんの方がシエさんより、ずっと年上なんだし

2人が会話していて、シエさんが翔姉ちゃんに頭を下げていても変ではない

というか、翔姉ちゃんはずっと笑みを崩していないし

遠目には、香月セキュリティ・サービスの現場チーフである翔姉ちゃんに、シエさんが何か質問したとか、頼みごとをしたとかその程度にしか思われないだろう

さっき、翔姉ちゃんは香月セキュリティ・サービスの研修館を開放することをみんなに話したばかりだし

シエさんも合同練習に加わりたいとか、レイちゃんと練習試合をさせて欲しいとかそんなような内容だと考えるだろう

しかし狩野家という名家のお嬢様である桜子さんが

香月家の臣下である翔姉ちゃんに頭を下げるのは異様だみんなに注目される

何かがあったんだと、思い込まれる

おっしゃる通りですわ申し訳ございません

狩野さんは、無表情でそう言った

今のお話は関さんと彼女だけの会話あたしたちは、一切、関知致しませんから

アタシも聞いていないネ

ミンナも、イイネ

オレとルナがうなずく

イーディが視線を向けたから、安城ミタマさんキヌカさん姉妹も

わたくしたちも聞いてませんからっ

うつむいたままの姉の代わりに、鞍馬ありすさんがそう言った

さてとそれでは、話を戻すけれど

翔姉ちゃんが、明るい表情でそう言う

その上でこちらのアーデルハイトさんの対戦相手は、あなたじゃ困るのよ

アーデルハイトさんに実力を披露する機会を作るという話をしていて

シエさんが、突然自分が相手になると言い出したんだっけ

なぜでございますただ今の失礼のお詫びも兼ねて、わたくしがこの方と闘うというのではいけませんか

シエさんは自ら、ペナルティとしての対戦を申し出る

はぁあのねぇ

大きく溜息を吐く、翔姉ちゃん

コウヅキ家の本家の庭で、カノウ家のアナタとトリイ家の警護役としてここに来たアンタが闘ったらオオゴトになるネ

ソンナことも、判らないノカ

わたくしはすでに、鳥居まり子様に解雇されておりますが

ソンナのはアンタたちだけの都合なのネここの屋敷に誰が連れて来たノカという責任問題は消えないノネカノウの家は偉いンデショそういう家の警護役に人様の家の庭でケンカをフッ掛けるような狂犬を連れて来たってことになれば、トリイの家が非難されることにナルノネ

なるほどその通りだ

アンタたちホント、自分の都合ダケでナク、他の人の立場とかメンツとかを考えた方がいいネ困った子たちなのネ

アーデルハイトさんとシエさん2人に、イーディは苦言を呈する

それに真っ当な主が居て、年上のアナタの方がこっちのアンタよりもどうしても負けられない理由が大きすぎるネフェアな闘いにならないヨ

シエさんは、狩野家の警護役としての責務を背負ったまま闘わなければならないが

鳥居さんから解雇されたアーデルハイトさんには、背負う物は何もない

それにアーデルハイトさんは、まだ13歳で

シエさんは17歳

年の差など関係ありませんどうせ、わたくしが勝ちますし

アーデルハイトさんは、そう言うが

見ているお嬢様たちが気にするのネ

ああ年上が、小さい子に勝つのは当たり前とか名家の名誉を担っている以上、負けは許されないとか

色々と考えてしまう

ダカラ、アンタの相手はアンタと年が近くて、やっぱり背負っているものが無い子じゃないとダメなのネ

いるのか、そんな子

ルナがオレの足にムギュッと抱きつく

そうだ、ルナは12歳だ

ソレハないネ

イーディが、ブンブンッと手を振って否定する

ソッチのアンタ確か、アンタは13歳だったハズヨ

イーディが指したのは鞍馬家の警護役、安城キヌカさんだった

驚くキヌカさん

ねえ、あなた今までの皆様の会話を聞いていらして、どう思われました

みすずの隣にいた瑠璃子が、キヌカさんに尋ねる

わ、わたくしはいえ、わたくしも何も聞いておりませんでしたから

キヌカさんは、そう答えるが

先ほどのあなたたちご姉妹のキョーコ・メッサーさんへの挑戦は、主の家の名誉のためだったのですよね

瑠璃子は、さらに尋ねる

そうでございます鞍馬の家とそれに仕えるわたくしたちの心意気を示したのでございますね、姉上

妹に声を掛けられて、姉のミタマさんもウンとうなずく

そのために、わたくしたち姉妹はキョーコ・メッサーを空から攻めたのです

残念ながら、かわされてしまいましたが

鞍馬家と美里お嬢様、ありすお嬢様にはわたくしたち姉妹が付いていると、世間に示したかったのでございます

お嬢様に無礼を働く方は、わたくしたちが容赦しないのであります

警護役姉妹はそう言い切る

そこまでしてあなたたちは、鞍馬さんの家に残りたいのね

でも、このままですと鞍馬様の家は、潰れてしまいますわ

お家が無くなってしまったとしても、わたくしたちは忠臣としてお仕えし続ける覚悟です

覚悟です

何の戸惑いもなく、安城姉妹はそう言い切った

でも、お家がなくなってしまうよりは続いていた方がいいのではありませんか

あなたたちの主のお二人にとっては

そりゃ安城姉妹は、鞍馬家が潰れても主人を守り続けるというが

鞍馬家のお嬢様姉妹にとっては、家が潰れない方が良いに決まっている

サッキ、コッチのこの子は主に仕えたまま、香月セキュリティ・サービスで働けないかって言っていたネ

イーディが、シエさんを指して、そう言う

アンタたちは、主を守るだけでなくその腕を売って、主の家を助けようとは思わないノカネ

腕を売る

わたくしも、鞍馬さんの家のご負債がどれほどの額になるのかは存じ上げませんけれど

アンタたちが他の家の警護役として身売りをしたら少しは返済が助かるんじゃないのカネ

イーディが続く

しかし、そうなればわたくしたちは

お嬢様たちと、離れ離れになってしまいますっ

安城姉妹は、困惑する

別に一生、他の家に仕えろっていう話ではないノネ期間限定でイイノネ

それに、姉妹のどちらかお一人だけでも、鞍馬さんに付いていて差し上げればいいのではありませんか

姉妹の片方だけでも、外に出稼ぎに行く

わたくしたちの会社でしたら、そういう契約はアリよただし相応の実力は見せていただかないといけないけれど

構いませんわよねみすず様

ええお祖父様も、香月セキュリティ・サービスの若い警護役の採用は、関さんにお任せしておりますから

みすずも承諾する

さっきコッチの子の主が言ってたみたいにアンタたち姉妹がキョーコ・メッサーに仕掛けたのは、鞍馬家を見限って、他の家に就職活動するためのパフォーマンスだったとここに居るお嬢様たちは思っているネ

鳥居さんは、そう思い込んでいたきっと、他の人たちも

あれは、わたくしどもは

アンタたち姉妹がどういうつもりだったかとか、他の人にはドウデモイイことなのネ真意が伝わらなければ、他人の推察が事実になってしまうノネ

みんながそう思っているのだからそういうことなんだとして、受け入れられてしまう

つまり、今のあなたたちは主に解雇さればかりのこの子と同じ立場なのよ

翔姉ちゃんが、アーデルハイトさんを指す

しかも、妹さんの方はこの子と同い年よね二人とも、見た目はまだ子供だし背負っている家は無い

翔姉ちゃんは、今日来ている警護役全員のことを記憶している

鳥居家は、名家でない成り上がりとしか思われていないし

没落寸前なことが広く知られてしまった鞍馬家にも、守るべき名誉は残っていない

その上、キヌカさんはさっきの闘いで、皆様に知られているパーティの余興の対戦としては、丁度良いマッチ・メイクだと思うんだけれど

13歳の可愛い女の子同士の対戦なら

ま、待って下さいわたくしたちに相談なさらないで勝手に話を進めないで

姉妹の主である鞍馬ありすさんが、怒ってしまう

キヌカは、わたくしの警護役ですわそうですわよね、お姉様

相変わらず姉の鞍馬美里さんは、オロオロするだけだ

残念ですけれど美里さん、ありすさんには何もご相談できないんですわ

今のお二人には、もう何もお持ちになっていらっしゃらないのですから

ミナホ姉さんは言っていた

美里さんは娼婦に堕とす

ありすさんも、一緒に調教する

それは、もう決まっていると

つまり、鞍馬家とジッちゃんミナホ姉さんとの話はついている

この警護役のご姉妹への給金も衣食住ももう鞍馬のお家では、保証してさしあげることはできませんわ

そんなものはいりませぬ

わたくしたち姉妹は、自分の意志でお嬢様に付いて参るのであります

瑠璃子の言葉に、安城姉妹は反応するが

わたくしは今、鞍馬様たちとお話ししているんですわ

やんわりと、瑠璃子は答える

ミタマ、キヌカ静かにしていなさい

鞍馬ありすさんが、臣下たちにそう言った

瑠璃子様申し訳ございませんお続け下さい

姉の鞍馬美里さんも

今のあなたたちの警護役はご自分たちの意志で、あなたたちに付いて来ているだけですわ現実の鞍馬さんたちには、この方たちに仕えていただくだけのお力はもう無いのですから

美里さんが、ポロポロと涙を零す

ですから、この警護役のご姉妹はすでに自由なんですわもちろん、何の代償も与えられないとしても、今まで通り鞍馬さんたちを警護し続けるというのも、この方たちの自由ですそして、鞍馬の家を救うために、ご自分たちの能力を他の家に売るというのもこの方たちの自由

つまり鞍馬さんたちに相談することではないのよもう

安城姉妹が自分たちの腕を売るかどうかは、もう彼女たち自身の問題なんだ

だから、あえて主の鞍馬姉妹を無視して話をしていたのか

むしろ臣下に対して何も与えられなくなった主が、いつまでも臣下を拘束し続けることの方が問題だと思いませんか

でも、キヌカはミタマだって、生まれた時からずっとわたくしと一緒にいるんです

ありすさんが、そう言う

そうでございますわたくしたちは、生まれながらにして美里様、ありす様の警護役でございます生涯お仕えすることを、愛染明王に誓っております

わたくしは、毘沙門天に誓っております

この姉妹は

いえあなたたちはわたくしたちから離れるべきですわ

鞍馬姉の美里さんが、そう言った

お、お姉様どうしてキヌカたちは、ずっとわたくしたちを

ええとてもよく働いてくれたわだからこそミタマたちがわたくしたち姉妹と一緒に沈んでしまうことだけは避けないといけないわ

鞍馬美里さんは、翔姉ちゃんを見る

関様ミタマたちを引き受けていただくのは、香月セキュリティ・サービスが一番適していると思いますこの2人のことをお願いできませんか

それを決めるのは、彼女たち自身ですわそういうお話を、みすず様たちはなさっているんですよ

そう身売りするにしても、どこに行くのかは安城姉妹が自分で決めることだ

わたくしたちは、どこにも参りません

ずっと、美里様たちの臣下でございますっ

そう言う姉妹たちに、鞍馬美里さんは

では、ミタマ、キヌカ主として2人に命じます

ポロポロと涙を零しながら言う

香月セキュリティ・サービスのお世話になりなさい

美里お姉様わたくしは嫌ですわキヌカたちと離れるなんて

他のお嬢様たちが、こっちの騒ぎに気付いた

そうおっしゃられても香月セキュリティ・サービスとしても、能力が判らなければ採用はできませんわ

翔姉ちゃんが、わざと大きな声でそう言う

そうやって家が没落することが決まった鞍馬美里さんが警護役たちを香月セキュリティ・サービスに引き取ってもらおうとしているんだと、みんなに思い込ませる

強い子デナイと、コウヅキの家ではムリなのネ

イーディが、そんな芝居をする

ダカラ、こっちのもう1人の子と闘って実力を見せてみるノネ話はそれからヨ

アーデルハイトさんの背中をドンッと叩く

これでアーデルハイトさんも、自分から香月セキュリティ・サービスに売り込みを掛けてきたように見える

安城キヌカ13歳VSアーデルハイト鹿取13歳でバトルなのヨレディ・ゴーなのヨッ

余興が始まる

お嬢様たちが面白がって、こっちに注目していく

ちょ、ちょっと待って下さい

アーデルハイトさんは、慌てて言った

さっきから、勝手に話が進んでますけれどこんな子と闘うなんて、そんな弱いものイジメみたいなこと、わたくしにはできませんわっ

これまた大きな声でただし、この子の場合は演技ではない

わたくしは、アカデミーのA級ライセンス保持者ですわこんな子と闘ったらこの子が可哀相ですわよっ

胸を張ってそう言うアーデルハイトさん

人に注目されるのは好きらしい

って、言っているけれどキヌカはどうなのネ

キヌカさんは、明らかにムッとしていた

ただ今のご発言はわたくし、納得できませぬっ

き、キヌカ

驚く、鞍馬ありすさん

今までの話とは別です安城流拳法、安城キヌカここまで言われて、立ち向かわなければ拳士としての面目が立ちませぬっ

キヌカさんも闘志に火が付いてしまったぞ

増税になったからといって、世界がそんなに変わるわけもないのですが

あちこちのコンビニにあった100円の安売りコーヒーが消えました

コンビニの自社ブランドは100円のままですけれど、あれはマズいから

これからは100円の自販機を探すか、大きなスーパーへ行くか

1日1本は缶コーヒーを飲む人間としては、ツライです

858.ハイ・ライフ / リトル・キャットファイト その1

闘志を剥き出しにして、前に出るキヌカさん

まあ、何ですの

何が始まりますの

会場中のお嬢様たちが、みんなこちらに注目している

関西ヤクザのスパイ天童乙女も

あ、例の自分の代わりに発言させているどこかの家のお嬢様に何やら囁いている

天童乙女自身は、ミズシマ・ホールディングスのお嬢様の警護役という身分でこの会場に紛れ込んでいるから

お嬢様たちに対しての発言権が無い

関西から警護役として潜入して来て日が浅いから、他の警護役たちともほとかど面識が無いだろうし

どういう方法で、あのお嬢様を味方にしたのかは判らないけれど

あのお嬢様がミズシマ・ホールディングスの会長の孫娘じゃないよな

何か、お嬢様としては小物臭がするし

うん兄さんあの人は高浜物産の社長のお嬢様だよ今日来ている人たちの中ではそんなに家柄の良い方じゃないみたい

オレの背中に張り付いているルナが言う

ルナはさっきから、会場中の少女たちの心を読んでいた

ミズシマ・ホールディングスの会長のお嬢様はあっち今、麗華お姉様の隣に居る小さい子

ああ、レイちゃんのファンの中に、小学校高学年くらいの女の子がいる

カールした長い髪が綺麗な、綺麗な女の子だ

あの子もあの天童という人が怖い人だって判っているから、ああやって麗華お姉様の近くに逃げているんだよ

あの子は天童乙女が関西ヤクザからスパイとして、無理矢理押し付けられたという経緯を知っているのか

だから、近付かないようにしている

それで高浜物産のお嬢様が、天童という人の言うことを聞いているのはあの人たち、レズッ子の関係なんだよ

ルナが、オレの耳に囁く

レズっ子

うんあの天童っていう子がそっちの世界へ引きずり込んだみたいミズシマ・ホールディングスのお嬢さんは幼すぎて、天童っていう人のストライクゾーンじゃなかったから

ああ、レズだけどロリータ趣味は無いんだな

それに、お嬢様たちに裏工作を仕掛けるのにはあっちの高浜物産のお嬢様ぐらいの年齢と顔の広さが必要だったみたい

なるほど、お嬢様でも小学生じゃコネクションが弱い

高浜物産のお嬢様は、高校生ぐらいだもんな

でも、これ全部、高浜物産のお嬢様とその周辺の人の心を読んだ結果だから

ルナは、心配そうに言う

あの天童っていう人はボクたちの力の届く距離を知っているんだよ

巫女の力は、距離があると通じにくくなる

だから、ボクとヨミお姉様からはいつも距離を取っているんだよ

天童乙女は、関西から来た

今まで判っている巫女の力の秘密は、全て調べてきているだろう

変装してオレの後ろに隠れているこの子が鷹倉ルナだということも、当然気付いている

ルナのおでこに汗の玉が浮いていた

あの天童っていう人時々、ボクとヨミお姉様に殺気を放っているんだよ

殺気

具体的には手裏剣をズバッて投げ付けるイメージをボクたちの頭や胸に、手裏剣が刺さるイメージを思い浮かべているんだよ

ルナが、ギュッとオレにしがみつく

そうやって恐怖でボクたちに心を覗かせないようにしているんだ

心を読む力に対抗するのに、そういう手を考えてきたのか

天童乙女が心の中で、自分を殺すあるいは殺した後の明確なイメージばかり思い描いていたら

ヨミやルナは、怖くて相手の心が覗けなくなる

大丈夫ヨモシ、そんなコトをしたら会場中の警護役があのオンナを攻撃するネ

オレたちの会話を横から聞いていたイーディが、そう言う

アタシたちの居る方はミスズやルリコの居る方角ネコッチに手裏剣なんか投げたら、全員が反応するヨ

会場内の名家の警護役たちだってみすずたちの危機は見過ごすわけにはいかないか

レイちゃんや翔姉ちゃん、香月セキュリティ・サービスも、天童乙女を捕まえる理由ができたんだから、確実に動く

それに今のオレたちは、香月家と並ぶ家柄の狩野家のお嬢様も、一緒だし

香月家、狩野家の両家の令嬢に対するテロ行為ということになれば、この場で抹殺されても文句は言えないだろう

ああ、ジッちゃんはだから、狩野家のお嬢様たちをみすずのテーブルに座らせたんだな

みすずたちだけなら、香月家に怨恨があったということになるけれど

現状では、狩野家や鞍馬家に対するテロ行為かもしれないと焦点をボケさせることができる

鳥居さんだけは、今はテーブルを離れて1人でケータリングの食事を貪り食べているけれど

オレたちはお腹が空いても料理の方には行かれないな

天童乙女がオレたちと距離を取っているのと同じで

オレたちも不用意に、天童乙女に近づくと危険だ

ヨミの方は、ミチが上手く対処しているネ

イーディの言葉に、オレは少し離れた場所に居る美智とヨミを見る

あのオンナがヨミに殺気を放った瞬間に、ミチも殺気を放ち返しているネ

モシ、ホントにあのオンナがヨミに手裏剣を放ったら同時にミチもあのオンナに手裏剣を放つということネ

つまり、ヨミを殺そうと動けば天童乙女の命も仕留めると、美智は警告しているのか

だけどああ、ヨミも震え上がって美智にしがみついているな

仕方がないヨミもルナも、まだ闘う方の経験は全然無いのだから

デモ、さすがミチ上手いことやっているネ

もう少ししたら判るネ

イーディは、そう言ってまた笑った

さあて、ここでエキシビション・マッチ第2弾です

翔姉ちゃんが、大きな声でそう言う

懇親会パーティが始まって、20分ぐらい経った

余興をするのには丁度良い時間だ

はーい、皆さんこちらをご覧下さい

さすがにガーデン・パーティをやっている場所で闘うと危ないし、食事にゴミが入るから

アーデルハイトさんと安城キヌカさんは、オレたちのいる中庭に続く屋敷の前庭で相対していた

足場は石作りで、中庭よりは少しだけ高くなっている

これなら中庭のお嬢様や警護役全員から、よく2人の闘いがよく見えるだろう

何か天下一武闘会の会場っぽいぞ

13歳警護役対決どっちが強いかデス・マッチ

翔姉ちゃんが、ノリノリで司会を務める

赤コーナーほんのちょっと前の失態で、鳥居家から解雇されてしまいました今はフリーのワケアリ、ヨーロッパ代表少女アーデルハイト・鹿取さーん

アーデルハイトさんは、ムスッとして翔姉ちゃんを睨む

青コーナー主家のためにも、自分のためにも、この闘いは絶対に負けられなーい日本代表少女安城キヌカさーん

キヌカさんは、無表情のまま闘志をみなぎらせている

皆さん面白そうですから、応援してあげましょう

レイちゃんが、ファンの少女たちに言う

そうだね君たちはどっちの子が勝つと思う

マルゴさんもそう言って、お嬢様たちの関心をアーデルハイトさんたちに向ける

えー、わたくしは

うーん、あっちの元・鳥居さんの警護役はA級ライセンスなんですよね

でも、ほら関さんのお話ですと、オマケの大したことのないライセンスみたいですし

そうね鳥居さんのお家で雇ってたぐらいの子ですものねぇ

お嬢様たちの遠慮の無い言葉に、アーデルハイトさんはますます不機嫌になっていく

あっちの鞍馬さんの家の警護の子は、とっても可愛らしいですわ

さっきも、ピョーンてキョーコ・メッサーさんに飛びついてましたし

ええ、ニャンマゲみたいで可愛かったですわ

可愛いと言われて、キヌカさんは困惑している

でも鞍馬さんのお家がああなってしまわれた以上は

あの子も、新しい主家を探さなくてはならないから大変ですわね

ああ、だからあっちの外国のA級の子と闘うのね

そういうことですのね

案の定、お嬢様たちの理解はそういうことになってしまうらしい

うふふわたくしのいない間に、面白い展開になってしまいましたわね

鳥居さんが、皿にサンドイッチなんかを山盛りにしてみすずたちのテーブルに戻って来た

はい、皆さんお召し上がり下さい何か色々とお話が大変で、お食事を取りに行かれる余裕が無いようでしたので、わたくしが持って参りましたわ

鳥居さんが、みすず、瑠璃子、狩野さんに言う

ありがとうございます狩野様、いただきましょう

みすずは率先して、鳥居さんの持って来たサンドイッチに手を付けた

礼には礼で返すのが、みすずの流儀だ

わたくしは結構ですわ

狩野さんは手を付けないそれが彼女の生き方か

関さんこの方と闘う前に、1つ、皆様の前でお約束していただきたいことがございます

アーデルハイトさんが、大きな声で言う

あら、何でしょう

もし、この子にわたくしが勝った場合は香月セキュリティ・サービスのお力で、わたくしをどこかの名家の警護役に推薦して下さいそれがご無理でしたら、香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートとして契約していただけませんか

トップ・エリート

香月セキュリティ・サービスでは、トップ・エリートは普通の社員とは別格で、特別な契約を結んでいると聞きましたわ香月閣下直属の警護要員として

ニヤッと、微笑むアーデルハイトさん

ええ、わたくしも麗華もトップ・エリートよ一般社員とは、雇用条件が全く違っているわお給料もね

微笑み返す翔姉ちゃん

でも、あなたはトップ・エリートにはちょっと無理だと思うわよ

わたくしには、優れた能力と才能がございます

それ自分で言っちゃうんだ

感性がホント日本の子とは違うんだな

それをこの場でこの子を叩きのめすことで、証明させていただきますっ

アーデルハイトさんは、シャッと鋭く息を吐いて身構える

よっ、A級ライランス

マルゴさんの掛け声にお嬢様たちがドッと笑った

アカデミーのA-3がどれほどのものなのかしかとご覧下さいっ

アーデルハイトさんは、くじけない

一方、キヌカさんは

よいしょ、よいしょ

コキコキと、体操をして身体をほぐしている

ねえ、君今度こそはちゃんとした実力を見せてくれるんだろうね

どういうことですの

お嬢様たちが、マルゴさんに尋ねる

さっきレイちゃんと一緒に、キョーコ・メッサー相手に華麗な闘いを繰り広げたマルゴさんの発言だ

警護役の少女たちも興味津々で聞き耳を立てる

それはあたしより黒森くんの方がよく知っていると思うよ

マルゴさんオレ

会場中の少女たちの視線が、オレに集まる

黒森くんはここにいる皆さんが麗華さんのレクチャーを受けている時に、キョーコ・メッサーさんに挨拶に行ってたよね今日、来てくれたことのお礼を言いに

今日の会はみすずの主催だ

あくまでも、キョーコ・メッサーの登場は今日の会を盛り上げるための演出ということになっている

で、エキシビションの闘いが終われば、キョーコさんは帰るわけだから

主催者として会場から離れられないみすずの代わりに、みすずのパートナーであるオレが労をねぎらいにキョーコさんに会いに行くのは変では無い

キョーコさん、何て言ってた今日、ここに集まっている警護役の子たちについて何かを感想を言っていたでしょ

そのマルゴさんの言葉に警護役の少女たちが、強い視線でオレを見る

みんなキョーコ・メッサーの感想が知りたいんだな

えっと、キョーコさんは確か

オレは記憶を辿る

今日、来ている警護役の子の中に3人、スバ抜けた才能の子がいるって言ってた

オレの言葉に、警護の子たちがざわつく

あ、もちろんうちのイーディや美智たちや、香月セキュリティ・サービスの2人やマルゴさんを除いての話です純粋に、今日、来ていただいている香月家以外の家の警護役の皆さんの中で3人、引き抜きたいぐらい良い人がいるって言ってました

ホントか、どうかは知らないけれど

黒森くんキョーコさんたちの話は、それだけだった

たち

マルゴさんは、あの時部屋の外から、オレたちの会話を聞いていた

あの部屋に居たのはキョーコさんとミナホ姉さんと

それからミス・コーデリアがあ、ミス・コーデリアたちっていうのはキョーコさんのパートナーの人ですその人があのボンバー・シスターズはいいのかってキョーコさんに尋ねて

つまり安城ミタマさん、キヌカさん姉妹のことですわね

みすずが、そう付け足してくれた

そうだオレはてっきり、キョーコさんはイタズラ好きだからだから、あんな奇抜な闘い方をした安城さんたちはどうなんだって、ミス・コーデリアが尋ねたんだと思ったんだけれど

ミス・コーデリアはそんな理由で、戦闘要員を推薦したりはしない人だ

安城姉妹には推薦できるだけの力があると、認めていた

みんなの視線が安城ミタマ、キヌカ姉妹に集まる

わたくしもそう思いますわあんな無茶苦茶な攻撃を仕掛けることで、会場内の皆様に闘う意志を示しながらあなたたち姉妹は真の実力を隠した

スカイラブ・ハリケーン・ミキサーは目眩ましなのか

本当の安城姉妹の実力を知られないようにするための

でもわたくしたちやキョーコ・メッサー相手に、それはちょっと無謀すぎるんじゃないかしら

そうだねいくら隠そうとしたって隠し通せるものでもないしね

少なくとも相手に礼を尽くした闘いとは言えないですからああいう形の目眩ましは

レイちゃんも、安城姉妹にそう言う

そうでしたかでは、今度はちゃんと闘って見せて下さいそうでないと安城キヌカさんあなただけでなく、主人である鞍馬さんたちの名誉も汚すことになりますよ

最後に、みすずがそう言う

キヌカさんが、姉を見る

安城ミタマさんは

いいでしょうキヌカの実力でしたら、安城流拳法の全てを盗み見られることも無いと思います

キヌカ、ミタマ

鞍馬ありすさんが、怯えている姉の美里さんを抱き締めたまま警護役たちに声を掛ける

ご心配にはおよびませんあの程度の外国少女に倒されるような、キヌカではございませぬ

ませぬっ

わたくしはこんなことで、あなたたちが見せ物のように闘わせられるのが嫌なのです

ありすさんは、みすずを見る

みすず様、どうかこのような闘いは、止めさせて下さい

それは、闘う人たちが決めることですわ

相対する13歳武闘少女、2人を見る

わたくしはもう後がないのよ何としてでも、このチビっこい子をクシャンクシャンに叩き潰して、わたくしの実力を天下に知らしめるしか

わたくしは我が主と我が流派の名誉のためにあなたを倒しますそれと

キヌカさんは、アーデルハイトさんに言う

わたくしは少々、小さめにできていますがチビっこくははありません

小さい子を日本語でチビつていうのよ辞書にそう載っていたわ

アーデルハイトさんが、ククッと笑う

辞書にどう書いてあろうとわたくしの身体は、心と同じように雄大なのです

キヌカさんは、無表情のままそう言う

我が身体、すでに山なり我が心、すでに星なりテンマフクメツ

ええい、ワケのわからないことを

2人が、スッと構え合う

会場中の少女たちが2人の警護役に惹き付けられる

ちょっとお待ち下さい

手を挙げたのは天童乙女に言いなりになっている例の

高浜物産のお嬢様か

天童乙女ここで仕掛けてくる気か

あのこんな茶番の試合を拝見する前に、はっきりとさせておきたいことがございます

高浜物産のお嬢様は、大きな声でそう言った

お嬢様からの発言だから

司会役の翔姉ちゃんでなくみすずが応対をする

名家と名家のお嬢様通しの会話だからだ

いえねこういう闘いを香月セキュリティ・サービスがいえ、香月家が仕切られるというのはやはり、香月様がわたくしたちの家の全ての警護役を全て管理・支配されようとしているからではないかと感じるのでございます

高浜物産のお嬢様は悪意のある笑顔で、そう言った

それはさっきもご説明致しましたわ香月家には、そんな野心はございませんただ、現実の問題として香月セキュリティ・サービスというプロフェッショナルな警護人の組織を活用するのが、皆様にとっても有益だとご提案しただけですわ

そうよ麗華様が、わたくしたちにも護身術を教えて下さるんですもの

警護役通しの連携のためにも香月セキュリティ・サービスの施設をお借りするのは悪くないことだと思いますわ

レイちゃんファンや、親・香月家のお嬢様たちからそういう発言が出る

しかしプロの組織として香月セキュリティ・サービスだけが、わたくたちの警護に関与するというのは良くないと思いますわ人によっては、やはりどうしても香月様がわたくしたち全体を支配なさろうとしているようにしか見えませんもの

高浜物産のお嬢様の向こうで天童乙女がニヤニヤ笑っている

ではどうしたら良いと思われますの

香月セキュリティ・サービス以外の他のプロフェッショナルな警護人組織にも、わたくしたちの警護に関与していただくべきだと思いますわ

他の組織

わたくしたちの家はこう言っては何ですが、全てが香月様と良い関係にあるというわけではございませんし家が香月グループと様々な分野で競い合っているというのにわたくしたち、娘たちが香月セキュリティ・サービスと結びつくというのは

確かに香月グループの企業の商売仇の家の子もいるんだよな

そう言えば、そうよね

わたくしのお父様は香月セキュリティ・サービスと関わるのは、お嫌かもしれませんわ

わたくしの家も

そういう家の子たちが、声を挙げる

でも、香月セキュリティ・サービス以外に名家の警護役を束ねることのできる組織なんてあるのかしら

お嬢様の1人が、そんな疑問を口にした

それがあるんですわ

高浜物産のお嬢様がニヤッと笑う

株式会社インペリアル・ガードです

そんな会社聞いたことがないですわ

わたくしも知りません

それもそのはずですわインペリアル・ガードは、本社が大阪にある会社でございますから

これまでは、主に関西圏の名家の皆様を警護していた会社でございます

高浜物産のお嬢様はそう言う

そのインペリアル・ガードがこの度、東京へも支社を出すということになりましたの

大阪関西から、東京に進出

ああ、天童乙女が笑っている

ですからわたくしたちの半数は、香月セキュリティ・サービスのお世話になるとしても残りの半数は、インペリアル・ガードと契約を交わすべきではないかと思いますわ

おそらくインペリアル・ガードというのは、関西ヤクザが経営しているんだろう

関西の名家の警護を担当しているっていうのも実は、ヤクザの親分たちのことかもしれない

そういう連中が東京に進出してきて東京の名家のお嬢様たちの半数を、人質にしようというのか

話になりませんわね

そう答えたのはみすずではなく

鳥居まり子さんだった

あら、鳥居さんは香月家による支配が進むことにご賛成なんですの

高浜物産のお嬢様は、そう言う

鳥居さんは、ニヤッと笑って

そういうことは、取りあえずそのインペリアル・ガードという会社の資料をお持ちになってからおっしゃって下さい

資料

資本金、従業員数、取引銀行、主な顧客、近年の経営状況、株主の構成そういうしっかりとした資料を見せていただかなければ、何のお話もできませんわ

鳥居さんは、そう言う

少なくともわたくしたちは、香月様のお家や香月セキュリティ・サービスがどのような会社なのかは知っておりますから日本列島が沈没でもしない限り、香月様のお家は安泰ですし香月セキュリティ・サービスも絶対に倒産することのない会社ですわ

鳥居さんは、みすずを見る

その隣の狩野さんも

狩野さんの家は家柄が良すぎて家が傾いても、絶対に潰れないように、周りの人たちが色んな名誉職の仕事をあげてフォローしていると聞いた

香月家だって、もしもの時はそうなる

日本が滅ばない限り、潰れることはない

そんな香月セキュリティ・サービスに対抗する組織として関西の無名の会社を紹介するとか、あなた頭は平気ですの

関西圏の名家の警護では、有名な会社なんですわどちらの家も、今ではみんなインペリアル・ガードを使っているのだそうです

高浜物産のお嬢様は、あくまでもそう言い切ろうとする

うしろの天童乙女の表情も厳しい

あら、わたくし株式投資が趣味ですから、日本中の色々な会社情報を読んでいますけれど、インペリアル・ガードなんていう会社のこと、聞いたことがありませんわよ

鳥居さんは、ニヤッと笑う

杉村さんあなたのご本家は、確か京都よね

みすずが、1人のお嬢様に尋ねた

そのインペリアル・ガードという会社、ご存じ

杉村さんは

いいえ、聞いたことがございませんわ

その答えに、高浜物産のお嬢様は困惑する

杉村さんのご本家は、警護人はどちらの方を使っていらっしゃるの

みすずの問いに

香月セキュリティ・サービスですわ

ええ、わたくしたちは関西にも警護人を派遣しておりますわ

つまり、関西圏の名家がインペリアル・ガードを使っているのは誇張された嘘なんだ

高浜さんあなた、よくご存じじゃないようですから、お教え致しますが

今、わたくしたちが居るのは香月家本家の東京邸宅というのが正式名称なんですよ

東京邸宅

香月家は、明治維新とともに東京へ移って参りましたが元々は、京都の家ですから

京都にも、この屋敷の3倍ほどの広さの邸宅が、まだありますのお祖父様もわたくしたちも、年に数回は京都に滞在致しますわつまり

高浜物産のお嬢様は、ブルブルと震えている

関西圏の警護の人たちの状況などは、ようく知っていますのよ

インペリアル・ガードという会社が、信頼できる企業かどうかよく判っている

た、大変失礼を致しました

高浜物産のお嬢様は、頭を下げると急いで、天童乙女のところへ戻って行く

天童乙女は、チッという顔だけをした

ああ、これはただの揺さぶり工作でしかないんだな

まだまだ、何か企んでいる

さあ、ハイジつまらない茶々が入りましたけれど気合いを入れ直して、闘ってちょうだい

鳥居さんが、アーデルハイトさんにそう言った

あなたが、良い闘いをしたら解雇を取り消してあげてもいいのよ

アーデルハイトさんは、ムッとして

わたくしは鳥居様の元には戻りませんわ

キコキコ、キコキコ

あなた何をなさっているの

アーデルハイトさんが、対戦相手のキヌカさんに尋ねた

手甲に鉄爪を付けております

キヌカさんは、両手の甲に何やら、物騒な物を

何ですのそのウルヴァリンの爪みたいなものは

アーデルハイトさんの質問に、キヌカさんは眼の前で両手の鉄爪をクロスさせる

カッシャーン

乾いた金属の固い響きがした

本気で闘えというご要望ですので

13歳のチビっ子少女が、鉄の爪を構える

最近あったことを、ガンダム風に言うと

シャアどんな仕事でもするということと、どれだけ安い仕事でもするということは同じではないなぜ、それが判らない、アムロ

いや確かにどんな仕事でもしますからとは言いましたが

そこまで安い仕事だと無理です

というか、そこまで安いともはや仕事ではありません

前にも、かなりブラックな現場で何度も働いたことがありますが

低賃金で正規雇用でないのに、仕事なんだから責任をもってやり遂げろとよく、サービスを強要されました

そういうのは日本の悪いところですよね

若い頃は、それでもサービスした分の頑張りは、ちゃんと見ていてくれるはずの人がいるはずだとか思っていましたが

そういう人は、本当にいないんですよね

むしろ、こちらがサービスするが当然になっていくだけで

だから、今回いただいた仕事はちょっと無理だよなあと思いました

昔、演劇の仕事をしたいた頃に

無償奉仕とか、サービスとかそういう仕事も多かったのです

お金が無い劇団さんとか、その劇団の関係者が知り合いだった時に

でも、ある時、名古屋で活躍している演出家の先生とお話をしたら

オレは若いときから、ちゃんと仕事に見合った金をくれる現場にしかいかなかったずいぶん、あいつは冷たい人間だとか金の亡者とか言われたが、そういう覚悟で仕事をしないとプロじゃないから

と聞いたことがあります

多少安くても、自分が決めたラインがあってこれだけの仕事をするのなら、最低限、これぐらいはもらわないと合わないっていう基準を守らないとダメになるから

安かったり、無料奉仕だと結局、仕事が雑になります

安くてもお金と関係無く、いつでも最高の仕事を精一杯するというのは、無理ですから

1日が24時間で稼がなくては生きていけない金額というのがある以上は

同じ時間働いて、最低時給で稼げる額以下の仕事はやっぱり、しちゃいけないんだと思います

しかも、その仕事をしても給与が今後増えたり、人脈が拡がるという可能性が皆無なら

さて、どういう風に相手のプライドを傷つけずに断るか

恐ろしいことに、そういう無茶な条件を提示する人にかぎって、

お前のためにやってあげているんだから

と、思っているんですよね

859.ハイ・ライフ / リトル・キャットファイト その2

カッシーンッ

小柄なキヌカさんが、両手の鉄爪をクロスさせる

はぁぁ、そんなのが相手じゃわたくしも、奥の手を使わざるを得ませんわ

相対するアーデルハイトさんが、溜息を吐くと

シャキーンッッ

アーデルハイトさんの両脚の革靴の爪先から、鉄の刃が勢い良く飛び出す

あなたごときに、わたくしの技を使うのは大人げないことだと思いますがわたくしも、出し惜しみしている場合ではないみたいですから

スッと片足で立ち、靴先のきらめく刃をキヌカさんに向ける

わたくしのゲルマン忍法の神髄お見せしますわ

ムムッ、ゲルマン忍法なのネ

知っているのか、イーディ

かつて世界忍者フクロウ男爵と互角の戦いをした、キョージ・ブレーダーが創始者の技ネ何でも、ゲルマンの秘術とヤーパン忍法を混ぜ合わせたものらしいネ

ヤーパン忍法

ヤーマン族も関係しているらしいネ

ニヒヒと、イーディは笑う

何だ冗談か

大人げないとか言いましたがあなたとわたくしは同い年のはずですが

キヌカさんが言う

年は同じでも、わたくしの方が成熟しておりますわっ

ほんのちょっと背の違いだけです

背だけあなたわたくしのこの胸と、あなた自身のその貧相な胸板を比較なさいましたの

ハーフのアーデルハイトさんは、13歳でもかなりぷっくりとした胸をしているけれど

キヌカさんはつるぺただ

ああ、判りました大人げないというのは、すなわち

キヌカさんが、アーデルハイトさんを睨む

あなたは、もう毛が生えているのですねっ

だから大人なのですねアソコがワッサワサなのですね

ワッサワサなわけないでしょっ

では、ボーボー

チョロチョロよ当たり前でしょわたくし、まだ13歳よ

何なんだこの会話は

なるほど、チョロチョロでございますか

キヌカさんは、ふふんと大きくうなずく

あらそういうあなたは、もしかして、まだ生えていないのかしら

全く動揺せずにむしろ勝ち誇った顔でアーデルハイトさんは微笑む

もしかしてつるつる

つるつるで、ございます

あら、じゃあまだお子様なのね

下の毛と戦闘力は、関係ございません

毛の話を始めたのは、あなたの方じゃないの

何なんだ、この13歳東西武闘少女対決は

そろそろ始めなさい皆様、呆れていらっしゃるわよ

審判役の翔姉ちゃんが苦笑する

しかし、実際のところ

会場内のお嬢様たちや警護役の少女たちは面白がって、2人の様子を見ていた

アーデルハイトさんは鳥居家から解雇されているし、キヌカさんの主家は潰れかけていることがバレている

2人とも、名家の威信を背負うような立場ではない

どっちが勝っても負けても、他家を巻き込むような問題にはならないだろうし

何より2人とも見た目は、とても可愛い13歳の少女だ

凶器を持っていても、微笑ましい感じに見える

ていうか、オレも各家のお嬢様たちも

警護役の少女というのが、どれぐらい鍛え上げられているかを良く知っているから

こんな鉄の爪と靴の仕込み刃ぐらいで悲惨な結果になることはないと判っている

ここは香月家のパーティ会場なのだから

本当に、パーティの余興としての闘いしか望まれていないことはこの少女たちも、よく判っているはずだ

2人とも、そういう意味では優秀な警護役のはずだから

勝敗は、どう決める

アーデルハイトさんが、キヌカさんに尋ねる

泣いたら負けというのでは

それはダメよあなた、何回負かせても泣きそうにないもの

では、先に3度膝を地面に付けた方が負けというのは

乗ったわ

2人には、ニヤッと笑う

では、始めるわよレディゴーッ

翔姉ちゃんの合図とともにキヌカさんが、ブワワッと加速する

安城流拳法必殺、猫拳ッッ

左右の鉄の爪をネコの手みたいに繰り出していく

にゃにゃにゃにゃにゃーにゃ、にゃーにゃーにゃぁぁっっ

まるでミッキー・ロークネ

イーディのその例えは、オレにはよく判らない

何よ危ないわねっ

襲いかかって来る猫パンチの鉄の爪をアーデルハイトさんは、全て靴先の刃で跳ね返していく

あの子徹底的に足技を使う流派みたいネ

ホントアーデルハイトさんはキックでしか闘っていない

にゃにゃにゃにゃにゃぁー

ハイハイハイハイハイーッ

キヌカさんの鉄爪の猫パンチと

アーデルハイトさんの爪先の刃でのキック

真ん中で、カチカチカチンッと爪と刃が打ち鳴らされて火花を飛ばす

とっても可愛らしい闘いですわね

狩野さんが、呆れたようにそう言った

あのニャニャニャの子うちに欲しいわ

ええ、あんな子が警護役というのも可愛らしくて良いわ

わたくしの妹の警護役に丁度良いと思いますの

あれれお嬢様たちの中から、そんな声が漏れてくる

向こうのハーフの子も、なかなか面白そうな子じゃない

はい鳥居さんが雇っていた子ということでしたから、どうかと思っていましたけれど

語学も堪能なんでしょヨーロッパに行くときに連れて行ってもいいわ

留学なさる方など、ああいう子がいると便利なのではございません

何か2人とも、良いアピールタイムになってしまっている

結構、やるわね

あなたこそ

アーデルハイトさんとキヌカさんは、一旦、ブレイクしてまた

にゃおおおーんごろにゃぁぁんにゃにゃにゃしゃぁぁっ

キヌカさんは猫になり切って、アーデルハイトさんに襲いかかる

ハイハイハイハイハイ、ハァァァッツオィツオィツォイ、ハァァァァァッ

アーデルハイトさんは、素早いキックの連続で全ての攻撃を弾いていく

あ黒なのネ

ハイキックの連続にアーデルハイトさんのスカートが捲れ上がり、パンティが見えた

まあハイジったら、13歳なのに大胆

鳥居さんの言うとおりアーデルハイトさんは、大人っぽい黒のレースの小さなパンティを穿いていた

にゃにゃにゃにゃぁぁんっ見えてますにゃんっごろにゃーん

闘いながら、キヌカさんがそう指摘するが

ハイハイハイッ戦闘中なのよパンツぐらい何よっ

アーデルハイトさんの蹴りがスワッと伸びた

にゃああんっ

アーデルハイトさんの靴先の鋭い刃が

キヌカさんの制服のスカートの前を、スパッと切り裂く

にゃにゃにゃ

キヌカさんのパンティも見えた

あらパンティもネコなのね

みすずが、クスッと微笑む

うううううーっ

キヌカさんのパンティには、可愛いネコの絵がプリントされていた

なあに、お子ちゃまパンツもネコにするのが、あなたの猫拳の奥義なの

アーデルハイトさんがキヌカさんを笑う

にゃにゃにゃううーっ、もう怒ったですぅぅヤッてやるですっにゃぁぁっ

キヌカさんが、猫の子供パンツ丸出しで飛び掛かる

ハイハイハイハイ、ハイイイッ

激しい攻撃をアーデルハイトさんも、黒レースの大人パンティ丸出しで受けとめる

なかなか白熱した闘いになってきたなあ

わたくし、猫の子の方が勝つと思いますわ

わたくし、ハーフの子だと思います

お嬢様たちも、みんな楽しんでいる

アノ子たちもレイカやマルゴたちの闘いで学んだから今は観せる闘いに徹しているネ

お嬢様たちに関心を持ってもらえるようにしないとただ強いだけではダメだと判ったのか

ああやっていながらも身体能力の高さや、技の正確さもアピールしているネダカラ、他の警護役の子たちもみんな感心して、2人の闘いに注目しているネ

闘いの見た目の派手さだけでなく判る人には、能力の高さも示す

そうしておけば、今後他家の警護役たちに一目置かれることになる

ちゃんと強さが伝わればナメた態度で接せられることはないだろう

ほら、もうこの中庭にいる子たちが全員、アノ子たちの闘いに集中しているネ

ダカラ敵にとっては、これがチャンスになるのヨ

敵って

関西ヤクザのスパイの天童乙女

天童乙女が、この機会に動く

Darling動かないデちゃんとミンナ、判って行動しているカラ

イーディが、オレの耳に囁く

敵でなくゆっくり、ミチを見るネ

オレは美智の方を見る

オレたちと少し離れた場所にいる美智とヨミ

2人も、興味深そうにアーデルハイトさんとキヌカさんの闘いを眺めている

天童乙女の目的は何だと思うネ

イーディが、オレに尋ねた

え、オレたちの情報を集めたりそれから、香月家に対するネガティブな情報をお嬢様たちに流したりそれと

巫女の暗殺ネ

タカクラの姉妹を全員殺さなくてもいいノヨ1人だけでも、殺すことができれば、アタシたちへの充分な威嚇になるカラ

そうだ関西ヤクザたちは

清美さんの一件で、鷹倉神社の巫女の恐ろしさは良く知っている

このまま巫女を香月家に占有されているままなら

いっそ、殺してしまおうと考える

オレの背中に張り付いているルナが、オレたちの会話を聞いて震え上がる

巫女は力の使える範囲の外側からなら殺すことができることも、アイツラは知っているノネ

ヨミやルナの母親は、そうやって銃撃されて死んだんだっけ

自分たちは巫女の力を怖がっていないなぜなら、巫女なんていつでも殺せるカラそういういうアピールがしたいのネアタシたちと彼らの身内に対して

何で、身内にもなんだ

今、関西ヤクザたちが一番困っているのは自分たちの身内の中で、コウヅキ家や巫女の力にビビッちゃっている人たちが増えているっていうことナノネ

関西ヤクザが、一枚岩でないことはオレも知っている

香月家の力や、巫女の力の恐ろしさにビビッてジッちゃんたちと闘うことを嫌がっているヤクザたちも多いんだ

香月家の本家の邸宅内で、巫女の1人を暗殺することができれば

香月家も巫女も恐るるに足らずということになる

関西ヤクザたちを反・香月でまとめることができるのか

でも、この会場に銃は持ち込めないだろ

香月セキュリティ・サービスがチェックしているんだから

しかも、こんなところで銃なんか使ったら、全ての名家を敵に廻すことになる

ここには、色んな家の大切なお嬢様たちがいるんだから

だから手裏剣か吹き矢を使うネ毒の塗ってアル

ルナが、ビクッと震える

大丈夫ヨさすがにミスズたちに近い方に居るルナは狙わないネショウやマルゴも、常に意識がミスズたちに向いていることも判ってイルシ

となれば天童乙女のターゲットは

ヨミか

今、ミチがわざと天童乙女がヨミを狙いやすい位置に誘導しているネ

13歳少女たちの闘いに注目しているフリをして

わざと隙を作っている

でも、大丈夫なのか

ヨミを危ない目に合わせるなんて

何言っているのDarlingのミチなのネ失敗は無いヨ

後でミチとヨミをたっぷり可愛がってあげればいいノネ

ニコッと、そう笑うが

ホントに平気よ敵の捕獲は最初っから今日の予定に入っているノネ

プレイヤーは、アタシたちだけじゃないのヨ

きゃああああああああああああああッッッ

突然、天童乙女の居る方向から、絹を切り裂くような女性の悲鳴が響いた

ひっひっひぃぃぃぃ、人殺しぃぃぃぃぃぃぃっ

ええっ、何

見ると天童乙女のすぐ後ろで、香月家のメイドさんが叫んでいる

あれは香月セキュリティ・サービスの木下さん

見た目は若くて可愛らしいのに、実際は武闘派の

ここここ、この方ひひひひひ、人殺しなんですぅぅ

天童乙女を指差して叫んでいる

そして、その天童乙女本人は

右手に手裏剣を握りしめ、今まさに投げようとしていたところだった

何やっているの、あなた

翔姉ちゃんが、大きな声で叫ぶとレイちゃんを始め、香月セキュリティ・サービスのメイドさん部隊が天童乙女を取り囲む

きゃあ、な、何

お嬢様、こちらへ

さあ、皆様その女から離れて下さい

それぞれの警護役が、自分の主をガードしながら天童乙女から距離を取る

天童乙女の主であるはずのミズシマ・ホールディングスの会長の孫娘も、メイド服姿の香月セキュリティ・サービスの警護員がいつの間にか連れ出していた

ミチとヨミに集中し過ぎてあのコも、キノシタの接近に気付かなかったのネ

そう包囲網はすでに敷かれていたのか

チッぬかったわ

天童乙女が、舌打ちする

Darling、ヨミを引き取りに行くネ

翔姉ちゃんを始め何人もの警護人が、オレやみすずのテーブルを囲んでいる

だから、ルナも安全だ

イーディは、ススッと美智とヨミの方へ行きヨミを保護する

あなたその手裏剣で誰を狙っていたの

翔姉ちゃんの問いに、天童乙女は

あら、何のことですの

シラッと誤魔化そうとする

わたくしに何かあった場合は香月家と水島家の間で大きな問題になると思いますけれど

ミズシマ・ホールディングスは、関西ヤクザに何か弱みを握られているのだろう

だからこそ、大切な孫娘の警護役にヤクザたちが派遣してきた天童乙女を就任させるしかなかったのだから

その女は関西の暴力団組織から派遣されてきたスパイです

スッと美智が前に出る

ええ、何

スパイ

暴力団ですって

お嬢様たちがざわめく

今日のパーティに潜り込んで、テロ行為を働こうとしていたのです

美智が、天童乙女を指差す

みすず様が主催なさっているパーティでの狼藉わたくしは、あなたを絶対に許しません

はん、そうやってアタシを悪者にするって作戦なのね

天童乙女は、クスッと微笑む

そ、そうでございます天童さんは、悪い人ではございませんこれは何かの間違いですわ

天童乙女にレズっ子支配をされている高浜物産のお嬢様が、必死で擁護しようとしているが

関さんこれを

はい、ありがとう

メイド部隊の1人が、スッと翔姉ちゃんに何かの書類を手渡した

先ほど高浜様が宣伝なさっていらっしゃったインペリアル・ガード株式会社の調査報告が参りましたわ

この会社表向きは判らないように細工していますが、株の6割は関西のとある暴力団組織のダミー会社が所有していますね残りの2割は、他の暴力団組織のペーパー・カンパニーが

驚く高浜物産のお嬢様

それって暴力団が経営している警護会社ということですね

みすずが、翔姉ちゃんに言った

そんな会社から、名家のお嬢様たちの警護役を派遣していただいたら大変なことになりますわ

こういう時に、空気を読まない鳥居さんの存在が光る

警護役といえば、24時間わたくしたちと行動を共にしているんですものプライベートにことが全部、暴力団に知られてしまうわ

そんなことでは済まないわよ

狩野さんも、口を開く

暴力団の下部組織に警護されているなんていつ、誘拐されても文句は言えませんわ

狩野さんの暗い声で、会場内に拡がっていく

誘拐ですって

でもそうよね

暴力団なんですものね

あたし怖いわ

高浜さん何だって、そんな恐ろしい会社をわたくしたちに紹介しようとなさったのよ

お嬢様たちが、高浜物産のお嬢様を責める

くるっと天童乙女に振り向く

その視線が、全てを物語っていた

その暴力団組織から派遣されてきた女に、そそのかされたのですね

ちっ、ちきしょう

天童乙女は、逃げ道を探っている

まずい毒の付いた手裏剣とかで、他の家のお嬢様に傷つけたりしたら

関様みすずお嬢様のパーティを汚した者の処罰は、みすず様の警護役であるこのわたくしが行います

美智はそう言うと天童乙女に向き合う

掛かって来なさいこの薄汚いドブネズミ

美智の言葉に、天童乙女はムッとして

何さアンタが、このアタシを処罰するって

美智は、天童乙女を挑発して自分に集中させ

天童乙女も、美智の挑発に乗るフリをして脱出方法を探している

この状態なら、とりあえず他家の人たちに危害が及ぶことはない

あなたのような存在に長々と時間をかけるのはムダですさっさとわたくしに始末されなさい

美智は、わざと隙を作って天童乙女に近付いていく

ふんあんたが気を使うってことは、さっきの闘いで見せてもらっているからね

天童乙女は、余裕のある口調でそう言う

でも気が使えるのは、あんただけじゃないからねっ

瞬間天童乙女は、美智に強い気を放った

さっき美智が、キョーコさんたちの動きを止めたように

何かなさいましたか

美智は、そのままスワッと天童乙女の身体に近寄ると

その腹に、ドムッと一撃を放った

うぐううッッ

見た目は、ただの打撃だが強い気が込められている

天童乙女の内臓に衝撃が拡がる

そのまま崩れ落ちる天童乙女

さあ、どうしてでしょうか

相手の気を反らすのが工藤流古武術だ

気を使う相手を倒すために工藤流は生まれた

キョーコさんの教えを美智はすでに実戦している

くっちっ、ちくしょう

激しく苦しんで地面にのたうち回る天童乙女

それでも、必死に逃げ道を探している

香月家のメイド服を着た1人の女性がススッと現れた

そして、地面で苦しんでいる天童乙女の前にしゃがみ込む

こんにちはやっと会えましたね

ククッと天童乙女に微笑むその女性は

お、お前は

天童乙女が、月子を認識すると同時に

わたくしに従いなさい

月子は巫女の力を放射する

あっあううううう

月子を見上げたまま、震え上がる天童乙女

じゃあ、取りあえず気絶して下さいませ

月子の柔らかな微笑みの中で

パタンと天童乙女は、気を失った

ここで月子が出て来るのは、前から決めていました

学生の頃に、警備員のアルバイトをしていました

そこの会社は、工事現場の警備もイベント会場の警備も両方やるところだったので色んな現場に行きました

そこの会社は、仕事できる日や時間をあらかじめ登録しておいてそれに合わせて、前日に翌日の現場を伝えてくれるシステムなのですが

ある日、仕事を入れていない日の午前8時頃に電話がかかってきました

ちょっと人が足りない現場があるんだけれど、今日、働けないか

多分、たまたま休講で空いていたんだと思います

頼むよホント、困っているんだわ

配置担当の人が、そう言うので

私はいいですよと指定された現場へ行きました

今頃、来やがってこの野郎

現場に着いたら、メチャクチャ怒鳴られました

つまり、その現場は人が足りないんじゃなくって

前日にその現場へ行くように手配されていた人が、サボッて来なかった現場だったのです

だから現場の人は、私が予定の時間を2時間ぐらい遅刻してきたと思っていたようでした

警備会社の担当者は、他の人がサボッた現場と私に言うと、行ってもらえないと思ったのでわざと事情を隠していたようです

しかし、私や現場の人は、そういう事情を一切聞いていないのでただ単に、その1日、私が現場の人にイジメられまくって終わりました延々と文句を言われたり、休憩時間も私だけ缶コーヒーをもらえなかったり

それ以来今日、君の予定は入って無かったけれど働けないという電話は全て断るようにしました

困っているんだから、行ってあげた方がいいのかなあとか思っていると、トンデモないことに巻き込まれるのだと学んだからです

それからしばらくして、その時の配置の担当の人と話をした時に

あの時は、大変だったんですよ

と話したら

え、そんなことあったっけ

そう向こうは覚えていないんです

たがら、そういうことは貸し借りにはならない

いつも立場の弱い方が損をするだけなのです

860.ハイ・ライフ / 獲物たち

はーい、回収しまーす

香月セキュリティ・サービスの木下さんが、ニコニコ顔でやって来て失神した天童乙女の襟首をムンズと掴み上げる

メイド服を着た可愛らしいお姉さんが、軽々と天童乙女を1人で担ぎ上げる様子を見て、会場中のお嬢様たちが驚く

木下さんそのスパイ気絶しているうちに、全部服を脱がせて、口内と肛門と膣を全部調べて爆発物を隠しているかもしれないから

みんなに聞こえるような大きな声で、翔姉ちゃんが言った

さっきは何もできないうちに気絶させることができたけれど自爆テロを起こす可能性もあるからね

そうよね暴力団組織の送り込んで来たスパイですものね

お嬢様たちが震え上がる

了解でーす解剖して、よーく調べておきまーす

木下さんは、笑顔でそう答えた

ま、待って下さいそ、その方をどうなさるおつもりですか

天童乙女にレズッ子支配されていた高浜物産のお嬢様が叫ぶ

えっと、多分真っ裸にひん剥いたら、その後はゴーモンだと思いまーす

明るく答える

ご、拷問

だって、この人お嬢様たちの様子を調べるために潜入して来たスパイですよーっ

ちゃんとゴーモンにかけて調べないとどなたの秘密をどれだけ調べていたのか判らないじゃないですか

ざわつく会場内

あ、あなたさっき、あの人と喋っていたわよね

お嬢様の1人が、自分の警護役に尋ねる

それはあの、香月セキュリティ・サービスよりも例の関西の会社の方が良い研修ができるからというお話で

わたくしも、そのお話だけですわ

わたくしは今度、一緒にトレーニングしようってお誘いを受けていました

何言ってるのよ、あなた今よりももっと待遇の良い警護のお仕事があるって、勧誘されていたじゃないの

それはあなたのことも誘っていたじゃないの

わたくしは、きちんとお断り致しましたちゃんとした主を持つ身ですから

わ、わたくしだってお断りしたわよ

ああ、この懇親会パーティの中で自分の手駒を増やそうと、今の主家に不満のある警護役たちに声を掛けていたんだな

わたくしたちは、あの人とは直接お話しておりませんが

別のお嬢様が、みすずに言う

高浜さんが香月様や香月セキュリティ・サービスは信用できないから例の関西の会社と契約した方がいいと、執拗に

わたくしにも、そういうお話がありましたわもちろん、お断り致しましたけれど

警護役は、天童乙女本人が

お嬢様たちの方には、高浜物産のお嬢様が話を広めていたんだな

多分、親・香月家ではない名家のお嬢様たちを中心に

結局あたしたちが心配しているのは、今回の様なケースなんです

かつての名家は全てそれぞれが警護を担当する忠臣を抱えていましたわたくしたちの警護は、そういう家系の少女たちが担当していましたしかし、今は代々仕えて下さっている警護の方がいない家も多いですわ

狩野さんや鞍馬さんの家にはそういう臣下の警護に娘がいたけれど

鳥居さんみたいに、新しく外から警護役の少女を雇い入れないといけない人もいる

これまでは、それぞれの家の警護役は自分の主人だけを守るものであり他家の警護役とは、一切交流を持ちませんでしたわしかし、今はどちらの家が新しく雇い入れた警護役がどんな素性の人物で、悪い人たちと交際していないかどうかを誰かが確認しないと、わたくしたち全員に被害が及ぶことになります

そうですわね警護役として、暴力団組織のスパイがわたくしたちの学校に潜り込んでくるというのは、大変な問題ですものね

鳥居さんも真剣な顔で、そう言う

いえ、むしろわたくしたちのように自分の警護役がいる生徒はまだいいですわおかしな方が近付いて来ても、わたくしたちの壁になって下さいますから

狩野さんが言う

しかし警護役を連れて来ていない、普通の一般生徒たちは

みすずたちの学校は、日本一の超・お嬢様校だ

家柄と財力の両方が備わっていなければ、そもそも入学することさえできない

しかし、その生徒たちの中で学校に自分の警護役を連れて来ている子となると、さらに数が限られてくる

今日のパーティに集まった30人弱のお嬢様たちだけだ

ええ一般生徒が警護役として潜入したスパイのせいで被害を受けることになったら、学校の名誉に関わる深刻な事態になりますわ

この方が警護役として雇われたのはいつからなの

狩野さんの問いに

まだ1週間も経っていませんわそうでございますわね、水島様

天童乙女の雇い主ということになっている小学生くらいの可愛い少女に翔姉ちゃんが尋ねた

水島さんは、ブルブルと震えている

そんな彼女をマルゴさんが、優しく抱き締めてあげる

大丈夫だよ君が悪くないことは、判っているから

は、はいわ、わたくしはこの人を警護役として学校に連れて行くように父に申しつかっただけででも

ぽろぽろと涙を零して泣き出す

うんうん、怖かったんだねこのお姉さんと一緒にいるのは

はいこの方とっても怖くて余計なことを口にしたら、わたくしを痛めつけるって

大丈夫だよもう

マルゴさんにしがみつく少女

天童乙女はレズッ子だけど、ロリータ趣味は無かったらしい

だから、この子は脅されただけで済んだんだろう

性的な虐待を受けていたら、もっと過剰な反応をするはずだから

ええ、あなたは心配しなくて良いわよあなたのお父様には何らかのペナルティを受けていただくことになると思うけれど

香月家の敷地に、スパイだと判っている人を送り込んできたわけですし香月の家が動かなくとも、今、ここにいるそれぞれ家の方たちがミズシマ・ホールディングスに制裁なさるでしょうから

ええ、わたくしも家に戻ったら父に報告致しますわ

空気を読まない鳥居さんが、早速、そう宣言する

こんなことをされた以上は水島さんのお家との交際はお断りするしかありませんわ

わたくしも、お父様やお祖父様に申し上げないと

親・香月家のお嬢様たちから、そういう空気が拡がっていく

ただ、水島さんあなた自身は、被害者なんですからわたくしたちは酷いことは致しませんからねもし、お家が大変な状態になられたら香月の家があなたを引き取るわ

みすずが、そういう

まだ小学部の小さな子に、こんな怖い思いをさせるなんて何て酷いお父様なのかしら

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