つまりオレたちの婚約は、学校公認になった

そこまで、ちゃんと学校側にも筋を通してきているんだものあたしだって、この二人には文句は言えないわ学校に公認された正式な婚約者同士なんだから

残念そうな表情を作るミナホ姉さん

ちょっと待って下さい

眼鏡の女子が、ミナホ姉さんに問う

どうして、婚約したら文句が言えなくなるんですか婚約したって、山峰さんと吉田くんが高校一年生なことに代わりは無いじゃないですか

どうして婚約が公認になったら、オレたちは恋愛・セックスしても良くなるんだ

婚約したのは判ったけれどエッチしてもいいってことにはならないよな

そうですあたしたちの暮らしている自治体には、青少年保護育成条例があるんですよ

眼鏡の女子が、ミナホ姉さんに強く抗議する

セイショーネン何だよ、それ

あれだよほら、淫行条例ってやつだよ

ああ確か、十八歳未満の青少年とセックスすると、警察に捕まるんだよな

十八歳未満の青少年てじゃあ、高3で十八歳の誕生日を迎えたらエッチしてもいいのか

バーカダメに決まってるだろ

こういうのは、十八歳になっても高校生の間はダメってことになっているんだよ

えー、じゃあ、あたしたちは高校生のうちは絶対にエッチできないじゃない

でも淫行条例って、大人が青少年とエッチした場合にだけ引っ掛かるもんなんじゃねぇの

いいや未成年同士でも捕まるというか、補導されるんじゃねえか

何だよそれ

生徒たちの疑問に、ミナホ姉さんが解説する

まあ売春や買春、強要や強姦で無く、青少年の男女が双方の合意の上でセックスした場合は、見逃してもらえるという場合が多いけれどねそれでも、条例違反は、条例違反よ自治体によって青少年保護育成条例の内容が微妙に異なっているんだけれどそれでも、ほとんどの自治体では、高校生がセックスしていることが確認されたら、警察はいつでも補導することができるわ

ま、マジかよ

まあ、警察も面倒なことになるのは避けたいから、よっぽどのことが無い限りセックスしているからという理由だけで高校生を捕まえたりはしないけれどねでも例えば、女の子の両親が警察に訴えたら、男の子が補導されるケースは充分考えられるわよ未成年者に対しての親権者、保護者の力ってとても大きいから

じゃあ、オレは捕まるな

いや、オレはその前に雪乃とマナに対する強姦罪ですでに有罪だ

二人とも処女だったから強姦致傷にアップグレードされるかも

さてこの青少年保護育成条例について、1985年に最高裁判所でとても大事な判例が出ているの

いよいよ、ミナホ姉さんの眼が爛々と輝く

教室内の生徒たちは、今やミナホ姉さんの講義を真剣に聴いていた

青少年保護育成条例違反で逮捕されたある男性がね自分たちは、きちんと婚約しているということを裁判で主張してねそれが認めらて、最高裁判所で無罪を勝ち取ったのよ

婚約が認められれば無罪

判決文によると婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いということになっているんだけど

それ、どういう意味なんですか

眼鏡の女子が、解説を求める

つまり婚約、またはそれに準じる真摯な交際関係であれば、青少年保護育成条例には引っ掛からないということよ逮捕されることも補導されることも無いってことね例えもし警察が勝手な思い込みで、そういうカップルを逮捕・補導したとしても、裁判になったら絶対に勝てるということ最高裁判所での判例という、最高のお墨付きがあるんだから

ミナホ姉さんは、何でもよく知っているなあ

え、どうなるんだ

山峰ちゃんと吉田くんは今、婚約しているわけだから

青少年だけどセックスもして構わないってことなるのか

再び、教室内が騒然とする

あの、先生一応、質問しておきますけれど、婚約に準じる真摯な交際関係ってどんなことなんです

うんそれは、オレもちょっと気になる

まあ、そうね取りあえず、将来の結婚を誓い合っているというのが大前提なんじゃない

それじゃあ、婚約と変わらないじゃないですか

女に結婚しようぜって言ったら、それでいいんだろ

不良男子の極端な言葉に、ミナホ姉さんは苦笑する

婚約というのはね、当事者の男女だけが言葉だけで誓い合いましたってだけじゃ成立しないのよ口約束だけじゃ、本気かどうか判らないしね裁判になったら、相手に送った手紙とかメールとか具体的な証拠が無ければ、立証できないわよ特に未成年者の場合は保護者が二人の恋愛関係を認めているってことが最低条件なんじゃないかしら

え親の承諾がいるのかよ

日本の法律では、男は十八歳、女は十六歳から結婚できることになっているけれど未成年の場合は、親の同意が必要なの親の同意が無ければ結婚できないということは、当然、婚約もできないということになるわよね

ミナホ姉さんは、ニヤリと微笑む

親は反対していますが、あたしたちは結婚を前提として真剣に交際していますって主張しても、未成年者の親権者が訴えたら、青少年保護育成条例違反で逮捕されるのが普通よ

先生は、楽しそうにそう言った

絶対に認められないということでもないのよ実際の話判例が一つあるわそれは妻子のある男性が女子高生と交際していて、その女子高生の親から告発されて青少年保護育成条例違反で逮捕されたケースなんだけれど現在の妻とは離婚して、その女子高生と正式に結婚するつもりだったということを主張して、裁判で無罪になったということが一度だけあるわでもこれはかなり特異なケースよ検察側が控訴しなかったんで、簡易裁判所での判決だけで結審しちゃっているからこの裁判で無罪になった男がその後、自分を起訴した自治体と国に対する賠償訴訟を起こしたんだけど高裁では真剣な交際とは思えないと前の裁判とは真逆の審判を受けたし、最高裁でも負けてるわ多分、最初の裁判も、最高裁まで争ったら真剣な交際とは認めて貰えなかたでしょうね

つまり正式な婚約をしているか、親や周囲の人間がこいつらは、本当に真剣に交際しているという証明が無い限り、高校生はセックスできないってこと

いやもちろん、これは法律上の話で実際には、セックスしている高校生はたくさんいるってことは判っているんだけど

青少年保護育成条例のある自治体では、いつ警察に補導されても文句は言えないってことなのか

ちなみに、日本のほとんどの自治体は独自に青少年保護育成条例を設けているから長野県には無いっていうのは有名だけど、長野県の中でも市によっては条例を定めているところもあるわまた、各自治体ごとに条例の内容は細かく違うからね

はあ、そういうものなんだ

2005年に制定された東京都の条例なんか凄いわよ何人も、青少年と淫らな性交又は性交類似行為を行ってはならないだからね青少年は、どんなことがあろうともセックスもエッチなことも全面禁止だっていう宣言だから

そいつは、すげえぜ

それって、高校生以下のセックス、全否定じゃん

何やってんだよ太陽の季節書いたやつ

でもちょっと待って下さい条例でそこまで明確に書かれているのに婚約していたら、高校生でもエッチしていいってのはおかしくないですか

眼鏡の女子が、なおも食い下がる

それはね条例が規制しているのは、あくまでも淫らな性行為だからよ

ミナホ姉さんは、さらりと答える

婚約者のセックスは、淫らな性行為には当たらないという考えなの

オレとメグのセックスは淫らじゃない

いや充分、淫らだったけど

オレすっごい興奮するもの

さっき話した1985年の最高裁の判例でね青少年に対する淫らな行為つまり淫行とは、いわゆる性犯罪的な行為、暴力や脅迫でセックスを強要したり、金銭を支払ってセックスするということだけではなく心身ともにまだ未成熟な青少年に自己の性的欲望を満足させるための対象として性交又は性交類似行為を行うことも含むと記載しているわ

えどういうこと

つまり、青少年高校生以下の年齢の少年少女に対して、ちょっとでもエッチな感情を抱いて、キスしたり触ったりしたら、それだけでもう淫行性犯罪だっていうことになっているのよ

えムラムラして、触っただけで犯罪

さっき、あたしが話した婚約している場合はセーフという判例は、この文のすぐ後に続くわただし青少年の性行為全てを考えると、婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年の性行為等などは、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いし、淫らな性行為を示す淫行には当たらないだろうと最高裁は、審判を下したのよ

ど、どういうこと

婚約している相手とはエッチしても、淫らな行為じゃないから性犯罪にはならないってことですか

眼鏡の女子が、先生に尋ねる

すでに話が高度になりすぎて、他の不良男子や女の子たちは、ミナホ姉さんの言葉に茶々を入れることさえできなくなっていた

そういうことなんでしょうね婚約ってのは、公式に結婚する約束をしているってことだから

ミナホ姉さんは、明確に答える

結婚て何のためにするの子供を作って、子孫を残すためでしょだから、正式に結婚した夫婦間のセックスは、淫らな行為には当たらないのむしろ義務よね性の不一致が離婚調停の理由になるぐらいだから

日本の法律では、男は十八歳以上、女は十六歳以上から結婚できるってことは話したわよねこの法律は、高校生でも適用されるの高校生でも、親の承諾があれば日本では結婚できる結婚を認めるということは、セックスを認めるということでしょ国の定めた民法は、地方自治体の定めた条例よりも上よつまり高校生であったとしても結婚しているカップルの行うセックスは淫らな行為では無いから、青少年保護育成条例には違反しないの従って正式な結婚の約束をした婚約者同士によるセックスも同じように淫らな行為には当たらないだろうというのが、最高裁判所の判断なの

でも、実際に結婚しているのと婚約では違います

そうだ婚約したって、破棄する可能性もあるんだし

結婚なら国に書類を提出しなければいけないけれど婚約は別に、公式な届け出とか無いんだし

その通りよでも、仕方ないでしょ婚約者とのセックスなら、相手が高校生だとしても青少年保護育成条例違反にはならないという判例を最高裁判所が下してしまっているんだからこの判例が覆らない限り日本では、高校生が正式な婚約をしていれば、セックスしても罪には問えないのよ

何か、ミナホ姉さんに大きく誤魔化されている様な気がするけれど

とにかくオレとメグは、セックスしても誰からも文句は言われないってことなのか

だからあたしは一人の教師として、山峰さんと吉田くんが正式に婚約して、学校もそれを認めた以上二人が恋愛しようと、セックスしようと文句を言うつもりは無いわ国の決定がそうなんだから

ミナホ姉さんの言葉に教室中が沈黙する

いや、でもうちの学校は私立なんですし、国の決定がどうであろうとも、学校の教育方針で処分することはできるはずです

眼鏡の女子は、それでもミナホ姉さんに抗議を続ける

そんなにオレとメグの婚約に納得ができないのかよ

あなた、あたしの話を聞いていたのさっき、職員会議で山峰さんと吉田くんの婚約が、校長先生から伝えられたのうちの学校は、二人の関係を認めているということよ

この学校の真の支配者は、ミナホ姉さんなんだから

どうにでもなるんだろうけれど

さすがに教室内でキスしていたというのは注意ぐらいするけれど山峰さんと吉田くんが婚約している以上、二人が恋愛をしようと、セックスしようと、学校側は一切、文句は言わないわ

妊娠してもですか

女生徒がミナホ姉さんを睨む

吉田くんの子供を妊娠するつもりだから、山峰さんは婚約したんでしょそうよね、山峰さん

ミナホ姉さんの問いにメグは

あたしは高校に在学している間は、妊娠するつもりはありませんでも、ヨシくんがあたしを望むのならあたしはいつでも、ヨシくんとセックスするつもりですし、その結果もし、赤ちゃんができたなら、喜んで産みます

メグはそう言ってくれた

吉田くんはどう

オレもメグと同じですもし、子供が出来たら、オレは学校を辞めて働きますそして、メグと子供を養っていきます絶対に、幸せにしてみせます

教室のみんなの前でオレはハッキリと宣言した

そういうことだから山峰さんと吉田くんの件は、これでもういいかしらみなさん、二人のことを温かく見守ってあげてちょうだいね

ミナホ姉さんはそれで話をまとめようとした

おい、ちょっと待てよ

今までずっと黙っていた遠藤が

突然、口を開く

てことは、何だよオレと雪乃も、正式に婚約しましたって学校に届けたら、セックスしても構わないってことなんだよな

遠藤が、ミナホ姉さんに言う

まあ、そういうことよね

ミナホ姉さんは、冷たい笑みで遠藤に答えた

よし判ったなら、今日にでも親父に話して、雪乃の家に交渉して貰うぜ

え遠藤

そしたら、何でもやり放題でしかも、学校も警察も一切、文句は言えないんだろ

遠藤はニタニタと品の無い笑いを浮かべる

な、そうしようぜ雪乃

遠藤が雪乃に声を掛ける

オレはこの話題の間、ずっとミナホ姉さんとメグの方を見ていた

一度も雪乃の方を見ていない

雪乃は、オレを睨んでいた

物凄い形相で

雪乃がオレに憎しみの視線を浴びせている

裏切り者という表情で、オレを強く見つめている

オレがメグと幸せになるということが、許せないんだ

雪乃は、オレに何十回とレイプされて

おそらくおそらく、お腹の中にはすでに

オレの子供を孕んでいる

おい、雪乃、どうしたんだよっ

自分の方を見ようとしない恋人に遠藤は苛立って、声を荒げる

そんな遠藤にミナホ姉さんは言った

遠藤くん、あたし時々思うんだけど

侮蔑と嘲りの籠もった笑みで

あなたってもしかしてバカなの

ミナホ姉さんの言葉に、遠藤はカチンと来る

おい、どういうことだよっオレを舐めるのもいい加減にしろよなっこの間のことを忘れたのかよ

この間のことってああ、校長先生の話

そうだ、校長はオレの味方なんだからなあんたみたいな、どうでもいい女教師の首なんて簡単に飛ばせるんだからなっ

キレた遠藤が、クソガキ丸出しの態度でミナホ姉さんを罵る

ふうんどうして、校長先生が遠藤くんの味方なわけ

ミナホ姉さんは、ニッと笑って遠藤と対面する

ヤバイミナホ姉さん、絶好調だ

それはオレの親父は、この学校にスッゲエ寄付しているし

何で、あなたのお父様が学校に寄付していると、校長先生があなたの味方になるわけ

だって本当にマジですっげぇ金額、寄付しているんだぜ

お前、マジでバカみたいだぞ

確かに遠藤くんのお父様がうちの学校にたくさん寄付金を下さったことは本当だけど

そうだろうなっ

でも四位ぐらいよ今年、寄付して下さった保護者の中では別に、遠藤くんのお父様の寄付金が無くても、うちの学校は困らないし何なら、返していいわよ

ミナホ姉さんがじわじわと、遠藤をいたぶり始める

そんなの学校に雇われているだけのあんたが、勝手に決めれる話じゃないだろ

遠藤は、ミナホ姉さんの余裕のある態度に戸惑いを見せる

ごめんなさいあたしね、この学校の理事なんだけど

ミナホ姉さんは、ニタッと笑った

理事

理事会を運営する理事の一人よあたし、面倒なことになるから、あんまり話さないことにしているんだけど、この学校の前の理事長の親族なのよそのうち、理事長になる予定よ今の理事長は、あたしの親しい人に臨時でお願いしているだけだし

ざわ

ざわざわ

この学校でのあたしの様子を見て、何か気付かなかったあたしって、ただの教師にしては、ちょっと偉そうじゃない他の先生方よりも、好き勝手にやっているように見えない

ミナホ姉さんの冷たい微笑みに教室の生徒たちは、圧倒されていく

理事会と校長先生とどっちが、立場が上か判るわよね

遠藤は大きく口を開けたまま、返答しない

理事会は、校長先生を辞めさせる権限を持っているのよ

でも、この間、校長はあんたのことを叱ってたじゃないか

遠藤は、額に冷や汗を垂らしながらミナホ姉さんに言う

そりゃあ、校長先生ですものあたしの教育方針に問題があると思えば、叱って下さるわそういうことのできる方だから、理事会はあの方に校長の職をお願いしているのよ

屁理屈では、ミナホ姉さんには絶対勝てないよ

判らないのかな

遠藤は、バカだから

でも、オレの叔父さんは市会議員だぞオレに何かあったら、叔父さんに言って、学校に抗議させるからな

ミナホ姉さんは、あはははと大きな声で笑った

あたしあなたに前から一回聞いてみようと思っていたんだけど市会議員でそんなに偉いの

遠藤のアイデンティティを崩壊させる一撃を、ミナホ姉さんは炸裂させる

うちの学校は私立なのよたかが市会議員ぐらいが口を出しても、別にどうすることもできないと思うんだけどね

でも、オレの叔父さんは

この学校も地元では、結構な伝統校なんだけどあたしだって、県会議員とか地元選出の国会議員の知り合いぐらいは何人もいるわよ

ミナホ姉さんは、ニヤニヤと笑う

あなた、叔父様の名前を出してこの間、あたしと校長先生を脅迫したわよねあなたの叔父様、次の選挙からは党から公認貰えなくなるから、覚悟しておいてちょうだいね

党の支援で当選していた人が、無所属になるのは大変よあなたの叔父様に対抗する候補者も、ちゃんとあたしの方で用意してあげるから

どどういうことだよ

ミナホ姉さんは言った

親のコネを持ち出して、大人を脅迫したんでしょだから、あたしも同じことをしてあげることにしたのもっと上の立場の人たちを使ってね

遠藤の顔が怯む

あなたのお父様の建築会社は、叔父様の市会議員とつるんで市の公共事業の多くを手掛けているわよねそういうのは、もうできなくなるからねお父様の会社、きっと潰れることになると思うけれど悪く思わないでね全部、遠藤くんが悪いんだから

それからさっき、遠藤くんのお父様がうちの学校にたくさん寄付したって話をしてたけれど

ミナホ姉さんは、爆弾を投下する

だって、アレはしょうがないじゃない

ククッと笑うミナホ姉さん

遠藤くん、裏口入学なんだから

ざわざわ

ざわ、ざわざわ

な何言ってるんだよ、てめぇぇっ

机をガッと叩いて、立ち上がる遠藤

あなたって入学試験の点数が全然足りてないのよ判ってるまあ、判んないでしょうねあなたの頭じゃ、そんなことも理解不能でしょうからね

ミナホ姉さんは、ニヤニヤと楽しそうに笑っている

あなたの叔父様に依頼されて、うちの理事の一人があなたの裏口入学を引き受けたのよこの件次の理事会でハッキリさせますからねその理事には辞めていただくし裏口入学に関わった教職員は全員処分しますあたしがね

ミナホ姉さんが、そう宣言する

嘘だぁこんなのみんな嘘だからなっ

遠藤がそう叫ぶが

その裏口入学を斡旋した理事奥村さんて言うんだけど、遠藤くん会ったことあるわよね

遠藤は奥村という名前を聞いた瞬間、あっという顔をして驚いた

クラス全員が見ていた遠藤の表情が変わった一瞬を

それでみんな遠藤の裏口入学を確信する

いや、叔父さんの知り合いで前に一度、ホテルで高級中華料理を食ったことがあるだけだよ一回、会っただけだ別に、何か頼んだわけじゃないそんな斡旋とか

遠藤は、クラスの連中にそう叫ぶが

喋れば喋るほど怪しさが増す

生徒たちは、すでに遠藤を胡散臭そうな眼で見始めている

う訴えてやるからな弁護士をうちの弁護士を呼べよ

今や

野球のユニホームを着たバカが一人で喚いている

ミナホ姉さんは、笑っているだけで相手にしない

遠藤は、自分の取り巻きの連中に声を掛ける

お前らも何とか言えよこの間、寿司オゴってやったろおい、オレの立場が悪くなったら、野球部への差し入れもなくなるんだからなこの間、松阪牛持って来てやったろプロテインだって、オレが親父に言って一番良いのを差し入れているんだからな

遠藤は、取り巻きたちに叫ぶが

誰も返事をしない

ミナホ姉さんの裏口入学の一言は想像を絶するダメージを与えたらしい

ホントにバカなのねあなたが他人を見下して偉そうな態度でいることは、みんな、お金とコネでどうにかしたってことばかりじゃないそれも、全部、お父様の後ろ盾があればこその話であなた自身の力では無いわ

遠藤が金とコネの話しかしなかったから裏口入学の話が、どんどん信憑性を増していく

違う、違うんだよオレは

何か、とても調べ物が多くて大変でした

裁判の解釈とか、違ってたら、ごめんなさい

先生は、屁理屈を言って楽しんでいるだけなので

本気でこういう主張をしているわけではありません

133.遠藤くんて、もしかしてバカなの(後)

ああ、遠藤くん自身は知らなかったのかしら自分が裏口入学だってことは

意地悪そうな眼で、ミナホ姉さんは遠藤をせせら笑う

そうねあなたぐらい頭の悪い子なら、教えない方がいいってお父様が判断なさったんでしょうね他の子に、オレは裏口入学だから、学校はオレの言いなりだとか訳の判らない自慢を始めそうだし

遠藤は呆然としている

いやオレがこの学校に着たのは、叔父さんの紹介でその野球の推薦が

もう、しどろもどろになっている

あらお父様のお金と叔父様のコネと両方使ったの自分で暴露しちゃったわねやっぱり、知ってたんじゃない自分が裏口入学だってこと

そういうことじゃねえっ

遠藤は叫ぶが

はいみなさんでは、ここでこの間、遠藤くんが校長室であたしを脅迫した時の録音を公開するわね

ミナホ姉さんは、胸のポケットからICレコーダーを取り出す

最近は、モンスター・ペアレンツみたいなおかしな保護者が、学校に言い掛かりを付けて訴えてくるケースも多いでしょだからうちの学校の教師は、常に校内での会話を記録している規定になっているのよ

ホントに嘘吐きだなあ

学校中に監視システムを仕込んでいる張本人のくせに

ちょっと待てよ、おいっ

遠藤の言葉を無視して

ミナホ姉さんの白い指がレコーダーを起動させる

再生される遠藤の過去の声

うんこれだけ聞いた感じでは、まるで遠藤が裏口入学を自白しているようにしか聞こえないよなあ

問題発言はこの後よ

音声は、さらに続く

ミナホ姉さんは、そこでスイッチをオフにした

これ確かに、遠藤くんの発言よね

ちょっと、どういうこと

え遠藤くんの家って、暴力団と関係してるってこと

自分でそう言ってるじゃない

これ、弓槻先生のことを完全に脅迫しているわよね

遠藤くんて、こういう人だったの

こんなのヤクザのやり口じゃない

裏口入学という印象操作から今度は暴力団との癒着の疑惑へ

真面目な女の子たちのグループから遠藤に対する不信感が高まっていく

違うオレは、こんなの知らねえ

遠藤は、必死に否定しようとするが

ミナホ姉さんによるイメージ操作は、クラスの生徒たちの心に浸透していく

確かあの時は、校長室に白坂さんと吉田くんも居たわよねでも、白坂さんは遠藤くんの彼女だから、何を聞いても本当のことは話してくれないわよね吉田くん、悪いんだけど証言してくれる

ミナホ姉さんは、するりと雪乃が発言しないようにブロックする

クラスの注目はオレに

これ遠藤くんの発言よね

犯罪組織黒い森の人間だ

そのボス、弓槻御名穂の玩具であり

彼女の弟でもある

はい確かに間違いはありません遠藤は、この発言の通り校長室で弓槻先生を脅迫していました

遠藤が、憎しみの眼でオレを睨む

吉田、てめえっ

オレは遠藤のことなんて、少しも怖くなかった

遠藤本人の暴力や、その取り巻きに何かされるという恐怖もない

もちろん遠藤の家の力なんて、気にしていない

なぜなら、オレは

黒い森の人間だからだ

遠藤もう高校生なんだからさ自分の発言には責任を持てよ

オレは、遠藤を冷たい眼で見る

ミナホ姉さんの様に

怒りや憎しみの感情を露わにするのは、愚か者のすることだ

オレたちは冷ややかに自分の感情を包み込む

その方が何倍も鋭く、相手の心に傷を付けられるから

見てみろ

オレの発言に遠藤は、頭から湯気を出す勢いで怒り狂っている

その表情は馬鹿そのものだ

こんな状態の人間は誰にも理解されない

人は、理性を失った人間には、絶対に同情も共感もしないからだ

常に冷たい鉄のような強い意志で、状況を分析し最善の決断を心掛けている弓槻御名穂という姉から、オレは学んだ

正しい冷淡さというものを

そんな顔でオレを睨んでも無駄だよお前が、こういう発言をしたという事実は変わらないんだから

この数日本当に、色々なことがあった

ヤクザから渚さんを守ったり

岩倉さんの雇った暗殺部隊に襲われたり

昨日は、暴力団の大群に追跡されたし

今、現在もなおオレたちは、白坂本家とシザーリオ・ヴァイオラという強大な敵と交戦している最中だ

正直今のオレには

遠藤とか、取り巻きの不良たちとかは、もうどうでもいい

オレの心は、もっと大きなそして、オレたちに牙をむいて襲いかかってくる敵勢力に向いている

昨日からずっと臨戦態勢で、警戒状態のままなんだから

遠藤みたいな馬鹿勝手に自滅すればいいんだ

吉田、てめえ覚えてろよオレは、絶対に許さねえからな

はぁ捨て台詞まで、馬鹿っぽい

遠藤お前って、本当に馬鹿なんだな

オレは遠藤から、ミナホ姉さんに視線を移す

先生ちょっと質問があるんですけれど、いいですか

あら、吉田くん何が知りたいのかしら

ミナホ姉さんは、ニッと微笑む

弓槻御名穂に学んだことを実践する

先生は、事実上、この学校の代表者の一人なんですよね

ええそう考えて貰って構わないわ

ミナホ姉さんは、軽やかに答えた

この学校って、この地域では結構昔からありますよね正直な話、今までの卒業生やその保護者の中に暴力団と関係のある人間って何人もいるんですよね親が暴力団関係者とか、生徒が卒業した後に暴力団員になったとか今では、組織の大幹部になっている人とかもいるんじゃないですか

オレの質問に教室内がまた、ざわめく

そうね個人のプライバシーに関わることだから、具体的に、ハッキリは答えられないけれど何人もいるわよ今では、暴力団組織の上層部にいる人もね

そういう人たちと、学校は現在もコンタクトしていますか

それは、仕方ないでしょ学校は、卒業生やその保護者との関係を断ち切ることはできないものもちろん、学園祭や学校行事への参加は、なるべくお断りしているけれど

ミナホ姉さんは、フフツと笑う

学校への寄付も、そういう方たちにはご遠慮していただいているわでも、ああいう稼業の方々って、とっても義理堅いでしょご自分の子供が通っている学校だから、思い出深い母校だからという理由で、わざわざ暴力団とは関係無い別の方の名義にして寄付をして下さる方は多いわそういうのは、お断りするわけにはいかないでしょ名義上は、その方の寄付ではないのだからでも、学校としては本当はどなたがして下さった寄付なのかは把握しているわよ

ミナホ姉さんの言葉に、女子生徒の一人が叫ぶ

え今の在校生の保護者にもいるんですか

親がヤクザの人がいるの

あ、あたし知ってる三年の先輩にそういう人がいるって

知ってる、知ってるお父さんが組長なんだよね

二年生にもいるはずよ

先生それって本当なんですか

だから、言ったでしょプライバシーに関わることだから、あたしの口からは言えないわ親が暴力団関係者だからって、子供には全然関係ないでしょあたしたちは、基本的には入学試験の成績と中学の内申書で、生徒の合否を決めているだけなんだから

基本的にはという言葉を強調する、ミナホ姉さん

まるで遠藤は、例外中の例外みたいな顔をする

では、答えられる範囲で教えて下さい今の再生音声で、遠藤は知り合いの暴力団員に依頼して、弓槻先生を付け回すと言ってましたがそういうことは、現実的に可能ですか

オレの質問にミナホ姉さんは、クククと笑う

うーん無理なんじゃないかしらうちの学校に支援して下さっている方々は、遠藤くんのお父様や叔父様と仲の良い人たちよりも、上の立場の人だから

けろりとした顔でミナホ姉さんは言った

さっきも言ったけれどあの世界の方々って、本当に律儀なのよ息子さん、お嬢さんが在学・卒業している学校の関係者に、自分の配下のチンピラ・ヤクザが迷惑を掛けていると知ったらこちらからお願いしなくても、あの方たちのお力で止めて下さると思うわよ何しろ、我が校は伝統ある学校ですからね

つまり、遠藤の脅迫は何の意味も無い

甘やかされた子供が、親の威を借りて適当なことを言っただけだ

だから遠藤くんくれぐれもお知り合いのヤクザさんに相談しない方がいいわよあなたのお父様の会社が潰れる理由が増えるだけだからあ、もう遅いかもしれないわね

遠藤は真っ青な顔をしている

遠藤お前、もうヤクザに依頼したな

この数日の休みの間に

あーららどんな結果になっても、あたしは知りませんからね

ミナホ姉さんは、クククと楽しそうに笑っている

あの方々は、組織の中での上下関係が全てだから遠藤くんに頼まれて、行動を起こしてそれが組織の上の人にバレて怒られたら回り回って、遠藤くんのところに怒りの矛先が向くことになるかもねメンツを丸潰れにされたわけだから

遠藤は、青い顔をしたまま黙り込んでいる

ミナホ姉さんは、そんな遠藤を無視して今度は、雪乃の方を見る

ねえ白坂さん、あなたはどうしてこんなバカな男の子と交際してみようと思ったのもしかして、白坂さんも頭が悪いのかしら

雪乃を挑発する

雪乃は、怒りと屈辱で爆発しそうな表情をしていた

今、雪乃が何を考えているのかオレには、よく判る

できることなら、ミナホ姉さんの主導で、オレにレイプされたことを公表したいと思っているんだろう

オレとミナホ姉さんがグルでオレたちが卑劣な悪党であることを、クラス全員に告発したいと

そうせずにはいられないくらい雪乃は怒っている

憎しみで一杯になっている

そんなことをすれば雪乃自身も公的な立場を失う

オレに、何十回もレイプされたことを世間に知られたら

現在の雪乃の生活は、完全に崩壊する

両親や、白坂本家にも悪影響を及ぼすことは雪乃本人が一番良く知っている

その結果白坂本家から見捨てられることを、雪乃は何よりも恐れているに違いない

だから雪乃の怒りと憎しみは、雪乃の中で増幅されたまま出口を失っている

あんたたちは、嘘吐きよっ馬鹿ぁ気違いっ卑怯者ぉっ

ヒステリーの症状を起こしたように、雪乃が大声で喚き散らす

ああああっバカぁっっバカぁぁっみんな、大ッ嫌いよぉぉッッ

ギャーギャー喚き泣き出す、雪乃

申し訳無いが

それでは誰にも何も伝わらない

クラスメイトの中でこんな姿の雪乃を見て、彼女に同情する子は一人もいないだろう

雪乃、大丈夫

いや一人、居た

それはメグ

メグが雪乃の側に駆け寄って、彼女に触れようとする

あたしに触らないでよッ

雪乃は、メグの手を払いのける

愛人の子のくせにっあたしに優しくしないでッ

メグを睨み付ける雪乃

その雪乃の一言が

クラスメイトたちに、反射する

え愛人の子って

そう言えば山峰さんて、さっき

養女だって言ってたよね

そう言えば、確か白坂さんと山峰ちゃんて、親戚なんじゃなかった

うんそう聞いているけれど

ざわめく声を背景にミナホ姉さんが、次の手を打つ

確かに山峰さんのお母様は、きちんとした婚姻関係を結んでいないまま、山峰さんを出産したわそして、養女になったその通りよあたしは、彼女の身上調査票を読んでいるから、よく知っているわ

クラスの視線が、再びミナホ姉さんへ

ごめんなさい山峰さんあなたのプライバシーを勝手に話してしまってでも、白坂さんの今の発言はどうしても見逃せなかったのよ

ミナホ姉さんは、興奮してつい喋ってしまったという芝居をする

構いませんあたしが養女であることは、事実ですから

メグは、毅然とした態度で答えた

でもどんな親から生まれようと、あたしはあたしです

オレのメグは本当に、可愛くて格好いい女の子だと思う

あたしは今まで、精一杯生きてきたし、これからもそうしていくわ

雪乃を強い眼で、見下ろすメグ

雪乃はメグから、視線を外す

そうだよ、山峰さん

うん、親のことなんて関係無いって

恵美が優しくて良い子だってことは、あたしたちみんな知ってるから

こんな時こそ日頃の人との交流が意味を持つ

メグの親しい友人たちがみんな、声を掛けてくれる

メグは誰にでも優しい、明るくて元気で頑張り屋さんの少女だから

そうよ、今のは白坂さんが悪いわよ

幾ら、自分の彼のことでいっぱいいっぱいになってたってちょっと酷いよね

うんそもそも、悪いのは遠藤くんなんだし

心配してくれた山峰ちゃんにアレは無いよな

あっという間にクラスの空気は、雪乃を悪者にしてしまう

白坂さん謝った方がいいんじゃないの

ていうか、山峰さんに謝れよ

そうだよな

お調子者の男子生徒が、ここぞとばかりに雪乃を責め立てる

いいのよ雪乃があたしのことをどう思っていても、あたしは平気だから

メグがクラスメイトたちにニコッと微笑む

先生お騒がせして、済みませんでした

そう言ってメグは、自分の席に戻った

さてどうしましょうか

わざと大きく溜息を吐いてクラスの注目を、自分に引き戻す

学校としては今の発言について、白坂さんが山峰さんに謝罪するように指導したり、遠藤くんの言動について反省を求めるのは、簡単なんだけれどね心の籠もっていない謝罪や反省では意味がないでしょうそんなのは、教育ではないものね

ミナホ姉さんは次の展開へ話を進めようとしている

あたしもね遠藤くんみたいな子を全く評価していないわけではないのよもちろん、遠藤くんにも良いところがあるわ彼には、彼独特の魅力があるからだから、白坂さんは遠藤くんと交際しようと思ったんでしょそれは、あたしにもよく判るのよ

急にミナホ姉さんは、優しく物わかりの良い大人の様に喋り出す

落としに落とし切った、遠藤の人間性を急に褒めようとする

さらに、遠藤を陥れるために

遠藤くんの行動力は、ある意味、高校生離れしているわこういうのを人並み以上のバイタリティって言うんじゃないかしらいつも前向きだし、自分の欲望に素直でしょこういう子は、社会に出てから活躍することが多いのよ

生徒たちは、ミナホ姉さんが突然遠藤を褒めだした理由が判らなくて、ぽかーんと聞いている

背も高いし、イケメンよねカリスマ性も、そこそこあるわよね飲食店チェーンの経営とかしたら、大成功するんじゃかしら

ほらテレビとかでよく出てくる、飲食店チェーンの経営をしている青年実業家とかって、遠藤くんみたいなタイプの人が多いでしょ

確かに遠藤って、そういう系統かも

まあ成功する人も多いけれど食品偽装とか食中毒とかで、役所から営業停止処分とかを受けちゃうような経営者もいるわよねきちんと謝罪会見ができなくて、後でネット上でブログとかが炎上しそうな

あそういう意味なら

間違いなく、遠藤はそっちだ

でも、ああいう人たちって、みんな自分なりの信念を持って、たくましく活躍しているからみんな、奥さんが美人だったりするのよ暴走族のリーダーの彼女が綺麗だったり、暴力団の組長さんの奥さんが美人だったりするのと一緒人並み以上に前向きなバイタリティとそれなりのカリスマ性で、女の子を惹き付けるのよね

そこでミナホ姉さんの視線が遠藤から、雪乃に移る

白坂さんも、そんな理由で遠藤くんと交際を始めてしまったんでしょ

当たり前だ

ミナホ姉さんは、遠藤を褒めている様で貶している

遠藤に惚れた雪乃のことも

そうでなかったら誇り高き白坂一族の一員であるあなたが、遠藤くんみたいな庶民の子と付き合うわけがないものね

父親は地元の名士で叔父は市会議員というのを口癖にしている遠藤をミナホ姉さんは、庶民と言い切ってしまった

オレの家が庶民だって

遠藤がミナホ姉さんの仕掛けた罠に、反応する

あら、ごめんなさい別に、遠藤くんのお家のことを小馬鹿にしたわけではないのよ白坂さんのお家みたいな名家に比べたら、世の中のほとんどの家は庶民だってことが言いたいだけだから

ミナホ姉さんは、笑みを崩さない

雪乃の家が、名家って

遠藤が雪乃を見る

あら、遠藤くん白坂さんから聞いていないの

ミナホ姉さんの挑発に、遠藤は

雪乃の親父さんは、ただのサラリーマンのはずだ

その答えに雪乃と親しい女生徒が、つい口を滑らせる

遠藤くんバッカじゃないの白坂さんのお父さんは、有名な広告代理店の部長さんだよ

えそれじゃ、サラリーマンはサラリーマンでも、超大企業のエリート社員じゃねぇか

遠藤の家って、地元じゃ名が通ってるけれど結局、ただの建設会社だよな

うんでっかい仕事は大手のゼネコンがやってるわけだし

お父さん社長ったって中小企業だよな

中小企業の社長さんと、大企業の部長さんてどっちが凄いの

そりゃあ大企業のほうでしょ

つーかさ、土建屋さんとギョーカイジンだぜ白坂の家の方が上だろ

うんゲーノージンとかと、毎日会っているんだろ

ていうかさテレビでコマーシャルとかやりたい大企業と、コマーシャルに出るゲーノージンの間を取り持つのが広告代理店だろ

じゃあ、白坂の親父の方がダブルで凄いじゃんか

給料とかもメチャクチャ良いらしいぜ、ボーナスとかも

はぁ本当にエリート会社員なんだ

白坂さん、スゲェ

白坂さんじゃなくて白坂さんのお父さんがでしょ

そんなの一緒でいいんだよ同じ家に住んでるんだし

高校生は、ゲーノージンとかエリート社員とかという言葉には弱い

あれってことはさ

何だよ

遠藤って、何かにつけてうちは金持ちで地元の名士だ叔父さんは、市会議員って言って偉そうにしていたけどさ

もしかして、大したことないんじゃねえか

お前、今頃気が付いたのか

バカじゃねえのオレたちみんな、遠藤が色々とオゴってくれるから、ヘーコラして付き合ってただけだぜ

うん遠藤といると便利だからな

ちょっと小腹が空いた時とか

お前もしかして、マジで遠藤の話、信じてたの

あれれ

あのさあさっきの弓槻先生の言葉じゃないけどさぁ

叔父さんが市会議員だからって、何かスゲェ力があるわけねえだろ

うん市会議員だよ立候補した人間の、半分以上が当選するんだよ、うちの市じゃさ

大きな政党に入ってて、普段からちゃんとしたポスターを作って貼ってるような人は、みんな当選しているよね

つーか、遠藤の市会議員、市会議員ての正直、うざいよな

何で、お前らそんなこと詳しいんだよ

お前こそ、高校生にもなって、何でそんなこと知らねぇんだよ

ほら、オレの家みたいに地元で商売しているとさ商店街の繋がりで、色々あるからさ店の壁にポスター貼ってくれとかさ

遠藤の取り巻きをやっていた連中も判っているんだ

判っていて財布として遠藤を利用してきて

今、大きな声でそんな話をしているということは

こいつらもう、遠藤を切り捨てるつもりなんだ

それよりさあ白坂さんのお父さんて、アイドルとかと会ったりする

あオレもサインとか欲しいな

お宝グッズとかあったら、オレにくれよ

何だよお宝って

ほらアイドルが飲んだ後の紙コップとかさ

広告代理店のエリート社員は、そんなの集めてたりはしねえだろ

遠藤を見限って雪乃に接近しようとしている

こいつらの方が、よっぽどバイタリティに溢れているよ

あらみんなは、そこまでしか知らないのね

ミナホ姉さんが、さらに生徒たちの好奇心をくすぐる

別に、白坂さんのお父様が広告代理店にお勤めしていることなんて大したことじゃないのよだって、白坂家はもっとトンデモなく凄い名家なんだから

ミナホ姉さんの言葉にお調子者たちが食い付く

え先生、それって、どういうことなんですか

止めて下さいプライバシーの侵害です

だがミナホ姉さんは、許さない

白坂さんだって、山峰さんのプライバシーを暴露したじゃない

確かに、そうだ

だからって、ミナホ姉さんが雪乃の家のことを話すのは、絶対に変なんだけど

この場の雰囲気では理屈よりも勢いが勝る

白坂さんのお父様のご実家は有名な新聞社のオーナーなのよどこの新聞社かまでは言わないけれどプロ野球のチームを持っているところよ

ミナホ姉さんの爆弾が炸裂する

あ判った

うんスポーツ・ニュースで白坂オーナーって見たことがある

おうおう、球界改革とかでやたらと顔を出しているよな

つーか、すぐに選手会とケンカするんで有名な

ほらほらお調子者たちに火が付いた

そうよあの球団の白坂オーナーは、親会社の新聞社のトップも兼ねているでしょあの人が、白坂さんのお爺さんの弟さんなの

つまり現在の白坂本家の当主

白坂守次という人物

今、オレたち黒い森と敵対している勢力の親玉だ

えマジかよ

じゃあ白坂さんて、超お嬢様なんじゃねぇの

うんただの金持ちとか、そういうレベルじゃねえよな

確かに、名家だわ

球団のオーナーってことは、あのドーム球場も持ってるってことだろ

バーカ、あそこの新聞社のグループ企業って、物凄くでかいんだぞ

そうだなラジオ局とかもあるだろテレビ局とも提携してるわけだし

だから、新聞屋が色んなイベントのチケットを持って来るんだ

変なテンションで、ざわつく教室内

雪乃はただジッとミナホ姉さんを睨んでいる

半分心を閉ざしたような顔をして

すげぇな白坂

つーかさ

何で、白坂そんなスゲェ家の子なのに、遠藤と付き合ってるんだよ

言われてみれば確かに

遠藤が幾ら地元の名士だって偉そうにしたって白坂の家とは、比べ物にならないじゃんか

そうだな、家のレベルが五十くらい違うよな

うん超高学歴で、超金持ちのボンボンとか、知り合いにいっぱいいそうじゃん

うん何で、遠藤なんだ

勝手な事を言う元・遠藤の取り巻きたち

それがほら弓槻先生の言うところの、バイタリティの強さなんじゃねえの

ああエリートのボンボンてひ弱そうだもんな

待てよてことは、別に遠藤じゃなくてもいいなじゃねぇ

そうだなあオレも割とバイタリティある方だと思うんだけど

バーカ、お前みたいなのを白坂さんが相手にするわけないだろ

仲間内だけでガハガハと笑う、男子生徒たち

いつの間にか教室の雰囲気が変わってしまっている

すっかりと立場を失った遠藤

今や、彼に話し掛ける仲間はいない

逆に祭り上げられてしまった雪乃は

誰も声を掛けられない

掛けられるような雰囲気では無い

二人は完全に、教室内での居場所を失っていた

そろそろ、移動して下さぁい

不意に、ガラガラと教室の戸が開いて

隣のクラスの担任が、ミナホ姉さんに声を掛ける

ありがとうございますみなさん、身体検査の順番が来たみたいよ男女に分かれて移動してちょうだい

代理店の人は、個人的には大嫌いです

134.男の世界

身体測定と言ったって、別に大したことをするわけではない

男子は校舎の1階の空き教室、女子は体育館1階の特別教室へ行って、身長や体重なんかを測って貰って、それからレントゲン車へ行く

それで、終わりだ三十分も掛からないだろう

並んで待つ時間を抜けば

廊下で列を作って順番を待つオレたち

上着だけ教室に置いてきて、みんなYシャツ姿だ

あれさオレたちが覗きをするんじゃないのかって警戒しているらしいぜ

一人のクラスメイトの言葉に、窓の外を見るとジャージ姿の体育教師の山口がうろうろしている

生徒指導の先生たちは、みんな見回りしているってさ

男子と女子じゃ、測定の場所が全然離れてるじゃん

学校の建物のほとんど西と東の端と端だよな

レントゲンの車だって、男子のは校舎の脇で女子のは体育館前だろ

うん2台、別々

どうやったって、覗きに行ったりはできねえじゃん

いやそこを何とかするのが、エキスパートだろ

何のエキスパートだよ

いや覗きのさ

馬鹿じゃねえのお前

まあ最近は、カメラとかも高性能だしな

画像がネットなんかに流出して、どこの学校か判ると大問題だしな

うんシャレになんねえよな

つーか、オレたちなんかよりも、よっぽど男の教師が覗く可能性の方が大きいんじゃねえ

まあ最近は、そういう不祥事も多いしな

バーカ、オレたちが覗きをやったって停学と反省文で済むけれど教師が覗きでバレたら、懲戒免職で一生アウトだぞ

うん覗き教師じゃ再雇用は無理だよな

校内は隠しカメラだらけなことを知っているオレとしては何とも言えない

でもよ実際、見てみたいよな女子は、みんな脱いでるんだろ

脱がねえよ、身体測定だぜ下着姿までだろ

そうだよオレたちだって、パンツまでは脱がねえじゃん

だけど、レントゲン撮る時は、ブラジャー外すだろ

そうなのかなやっぱり

ほらブラにワイヤーが入ってたりすることもあるからさ

えワイヤー入りのブラなんて、高校生が着けるのか

それはまあ本当のところ、どうなんだ

うーむそれはまた、オレたちには未知の領域だな

女体それは、最後のフロンティア

つーかさってことは、もしかしてレントゲンの技師とかになったなら女の裸が見放題なんじゃね

そうだなこの時期は、学校検診ばっかりだろうし

オレちょっと、レントゲン技師になってくるわ

バーカ、爺さん婆さんばっかり撮影しないといけない日だってあんだぞ

いや一年の内、一日でも女子高生の裸が見放題の日があれば、オレは満足だ

アホか、お前は見るだけだぞ

うん医者なら、さらに触れるんだよな

オレもそっちの方がいいよな女子校の内科検診なんて、触り放題じゃねぇか

冷たい聴診器を女の乳首にペタッとさ

それで、女の子がビクッとして

イヤぁん

バカァん

うんいいよなあ

がんばって、医者を目指すか

オレはレントゲン技師でいいやそっちの方が、簡単になれそうだし

バーカ、X線をナメるなよ

え、X線て何かヤバいの

知らないのかたくさん身体に浴び過ぎると、大変なことになるんだぞ

そうだよ、肌が緑色になって、筋肉ムキムキになるからな

眼からビームが出るんだろ

腹からミサイルが

屁が臭くなるんだよ

そうそう、蛍光ピンクの小便が出る身体になる

暗いところで小便すると、光るんだよなネオンみたいに

段々大喜利みたいになってきたな

あのさあオレの叔父さんが、産婦人科の医者やってるんだけどさ

おおっそういう話を待っていた

マンコ見放題じゃんか

さらに、触り放題だろ触診しまーすって

それがさ叔父さんの話だと仕事になると、実際つらいって

何がつらいんだよ見放題に、触り放題だろ

だってよ基本的に、すでに他の男に種付けされている女の身体だぞ

あそっか

確かに、それはちょっと萎えるかも

オバチャンとかのも、見たり触ったりしないといけないんだしな

いや、叔父さん曰く見た目が綺麗な女の子が、グロいマンコだった時の方が、ダメージでかいって

な、なるほど

いやそのギャップに、むしろ興奮しねえか

お前、もしかして天才か

でもさ毎日診ていたら、もう、そんな気分にはならないんだろうさ

うーむ確かに

結局さどんな仕事をしたら、女の裸、見放題なんだよ

やっぱりさ、AV男優とかじゃね

この間さAV男優の書いたこうしたら女にモテるぞみたいな本を読んだんだけどさ

そんなの読んでるのかよ、お前

いや、家にあったんだよ兄貴のだと思うけど

そんなのはいいからさそんで、読んでみてどうだったんだよ

いちいちさよく、世の中では女性は**という様なことが言われていますが、実際には違います私の周りの女の子に聞いたところって書き方なんだよ私の周りの女の子に実際聞いてみると、本当は男に**を望んでる場合が多いですみたいなさ

いいじゃん別にちゃんと調べてみた結果だろ

だってそいつAV男優だぜ周りに居る女って、全員AV嬢じゃん

平気でAVに出るような女たちの意見を聞いたって、それが世の中の女全体の意見とはならないだろ

そうだなちょっと、偏ってそうだよな

実際、読んでみると変なとこいっぱいあるんだよ

そっかAV男優になったって、所詮、エッチできるのはAV嬢ばっかりか

そうだなあ

いや、オレはAV嬢でも何でも、女ならどんなんでもヤリたいけど

えお前、古文の東山とかとヤレるの

東山、五十過ぎじゃねえか

女ならどんなんでもヤリたいんだろ

東山は女じゃねぇよ元・女ぐらいだろ

と、犯人は意味不明なことを口走っております

なんじゃそりゃ

まったく男しかいないと、馬鹿話ばかりしている

オレが気分的に助かっているのは、この列が名前順だということで

名前順で前の方の遠藤は、もう測定会場の教室に入っている

オレは名前順では、男の最後だ

吉田の後ろは誰もいない

馬鹿話に興じているのは遠藤とは、そんなに仲良くない八人ぐらいの連中だった

ところでさ吉田、さっきのは結局、どういうことなんだよ

その中の一人が、オレに話し掛ける

そうそう何で、お前が山峰ちゃんと婚約なんだよ

理解できないよな

納得できないっての

どう答えればいいのかオレには判らない

バーカ、お前ら、ちゃんと見ていたのかよ

それは田中だった

この間、電車の中でばったり出会った

あれは、どう見たって山峰ちゃんの方が吉田にベタ惚れじゃねぇか

アプローチして来たんだって、山峰ちゃんの方からだって言ってたろ

田中がみんなにそう言ってくれた

確かに

そうだったよな

あんな子に迫られたら

しかも、いきなり親のところに連れて行かれて、挨拶させられて、婚約だぜ吉田あれ、全部、本当のことなんだよな

田中が、オレの顔を見る

ああ本当に、メグの家に行って、ご両親に挨拶した

オレは正直に答える

そんで婚約して学校にも報告だぜ

さらに、クラスメイトに公表か

そうだよこれでもう吉田は、山峰ちゃん以外の女の子とはろくに話もできなくなるぜ山峰の婚約者だってことは、みんな知っているんだから

え何でだよ

女って、こういうことになると一々、チェックしだすからさ

チェック

吉田がどっかで別の女と喋ってたりするだろそしたら、山峰ちゃんの友達が山峰ちゃんに報告に行くわけ

今、吉田くんが、**ちゃんと楽しそうにお喋りしてたわよーんって

その子にも直接言ったりしてな

吉田くんて、恵美の婚約者なのよあんた、判ってんのぉとか

そして吉田は、山峰ちゃん以外の女子とは接触できなくなる

こ、怖ぇぇ

山峰ちゃん、友達多いし運動部のネットワークもあるから、これから吉田の高校生活は全て女子たちに監視されることになるぞ

うんオレ、姉ちゃんいるから判るわ

そうなのか

ほら、みんな婚約者のいる女の子なんて珍しいじゃんちょっとは、羨ましいって感情もあるからさ親切な顔をして、どんどん二人に干渉してくると思うよ

女って、そうだよな

それじゃあ山峰ちゃんも、吉田以外の男とは喋れなくなるじゃん

別にいいんだろ山峰ちゃんは、吉田にベタ惚れなんだし

むしろそれが、山峰ちゃんの作戦なんでしょ自分も他の男子と接触できなくなってもいいから、吉田のことを完全に自分だけのものにしたいって

肉を切らせて、骨を断つですか

その例えは、どうだろ

むしろ死なばもろともだよな

まあ実際、二人ともこれで高校生活の自由な恋愛はもう無理だわ心中したも同然だよ

え婚約解消するって可能性もあるじゃん

バーカ、高校生なのにいきなり婚約しちゃった過去があるやつなんて、怖くて付き合えるかよ

うん山峰ちゃん、すっげぇ美人になったけれどそういうことを考えると、ちょっとな

もしこれで吉田と別れたとしても手を出すやつはいないよな

吉田ももう、この学校にいる限りは、他の女との可能性は完全に切れたな

確かに心中っぽいかも

メグもオレももはや、添い遂げるしかない

他の道は全て、閉ざされている

そう考えると山峰ちゃん、ちょっとスゲェな

真面目な子って、ハジけると怖いな

うんいきなり、親の前へ連れてって婚約させるって、並みの女じゃやらないぞ普通

うんマジ、ヤベぇよ

山峰ちゃんは、そういう覚悟なんだろうけれど

吉田

お前

クラスの男たちが、みんなでオレを憐れみの眼で見る

今後、お前の行動は全て女子たちに監視されるんだぜ

そして学校内で、吉田がどこで誰と何をしているか、全部、山峰ちゃんの耳に入る

もう、吉田には自由な学園生活はありませーん

そう、なるのか

別に、何も困らないけれど

そう言えば、吉田お前ら、陸上部の竹柴キャプテンにも報告したんだって

もうそのことも広まっているんだ

うんしたメグがお世話になってる先輩だから

オレは正直に朝のことを話した

あ、じゃあもうダメだ吉田て、お前もう終わってるわ

うん竹柴先輩って、運動部のドンだから

いや、応援してくれるって言ってくれたよ

うん悪い人じゃない

竹柴キャプテンは

だからその応援の仕方が、問題なんだろう

きっと、女子の運動部にはもう伝達がいってるよな

まあ、これで山峰ちゃんのことは安心だろうけれど

もし、男の先輩とかが、山峰ちゃんを口説こうとかしたら

運動部の女の先輩たちが、ただじゃ済ませないってことだよ

山峰ちゃんの身は、完全に守られる

というか他の男には、触れさせないって感じになるのか

まあ、吉田はその方がいいだろうけれど

でもお前もそうだからな

お前が、山峰ちゃんをいい加減に扱ったり他の女とへらへらしているところを目撃されたら

女子の運動部のキャプテンたちの前で正座だな

うん説教されて、何かやらされるだろうな

グラウンド百周とか

そういうんなら、まだいいよ

全校生徒の前で、山峰ちゃんに全裸土下座とか

うんありえる

むしろそうであって欲しい

何か凄いことになった

学校公認の婚約ってそういうことなのか

まあ仕方ない

どんなことでも、オレは黙って受け入れる

オレは、メグとの婚約を自分の意志で決めたのだから

しっかしそう考えると

うん山峰ちゃんと婚約って

羨ましいんだか、可哀想なんだか全然、判らないな

とても幸せな気分なんだけどな

でも、みんなの顔は暗い

正直、女がいることは羨ましいけれど

親に挨拶とか、婚約してみんなに公表とか

オレには無理だわ

オレも、ダメだ

ちょっと、想像できないよな

みんなが、しげしげとオレの顔を見る

これで吉田の高校生活は、終わっちゃったようなもんだぜこれから、ずーっと嫁と女子たちに監視され続けるんだ

うんよりによって嫁は同級生だもんな

楽しいことばかりだと思うけどな

ずっと、一緒に居られるんだから

何だって、吉田なんだよ

どうして、山峰ちゃんの相手が吉田なのかそれだけが理解できないわ

何だって、あそこまでベタ惚れなんだろう

どういうことなんだよ

男の一人が、オレに尋ねた

ごめんそれは、オレにも良く判らないんだよ

正直に、そう答える

そうだよなオレたちに判らないんだから

吉田だって判ってるはずないよなあ

何だそりゃ

身体測定の会場の教室の戸がガラガラと開く

中から出て来たのは遠藤だった

遠藤はもう、測定が終わったらしい

オレの存在に気付いてオレを睨み付ける

吉田、覚えていろよてめぇだけは絶対に許さねぇからな

遠藤はそう言って、オレを脅しに掛かる

遠藤お前に何ができるんだよ

オレは平然と遠藤に答えた

この野郎っ

遠藤がオレに殴り掛かって来る

オレは、遠藤が身体を痛めて、変な歩き方しかできなくなっていることを知っている

冷静に、遠藤の動きを見て

身体を躱す

遠藤はそのまま、床に転んだ

何やってんだよ、お前

オレは、冷たい眼で床の遠藤に声を掛けた

ちくしょうっ

大声で叫ぶ遠藤

教室の中から、中年の男性教師が顔を出す

何騒いでいるんだ、お前たち

あこいつが転んだんですよただ、それだけです

本当なのかお前ら

オレたちを見る教師

ええっとはい

あ、確かに、遠藤が勝手に転んでました

特に問題になるようなことは起きていません

クラスメイトの男たちは、口々にそう言ってくれた

遠藤も、今日はこれから野球部の試合があるんだろ転んで、ケガとかしたらマズイんじゃないのか

田中が、遠藤にそう言った

ちくしょう覚えていろよ

遠藤はぷりぷりしたまま、レントゲン車の方へ向かって行く

よく判らないですけど何か解決したみたいです

オレは、男性教師にそう告げた

そうかまあ、何も無かったのならいいんだが

そう言って、教師は教室の中へ戻っていく

お前、変わったな

田中が、オレにそう言った

うん何か、落ちついたな

遠藤が怒ってても、全然、慌てないし

怖くねぇのあいつのこと

いやオレ、遠藤なんかよりも怖い人がいるんで

もう遠藤ぐらいに、ビクついてはいられない

平然と泰然とどんな時でも、慌てずに対応できないといけない

そうでないと

オレは黒い森のメンバーとして、他の人たちに迷惑を掛けることになる

遠藤よりも怖い人って

ああ山峰ちゃんか

いや、あの

誰も、そんなことは言ってないんですけど

やっぱ、変わったよ吉田

女ができると男は変わるってのは、本当だな

何か、嬉しいような悲しいような

勘違いを正すのは、やめた方がいいよな

こいつらに、シザーリオ・ヴァイオラのことなんて説明しようが無いし

でもよ山峰ちゃんと、初エッチしたら、ちゃんとオレたちに報告しろよ

そうだ、何かオゴれよ

缶ジュースでいいからさ

ちゃんとオレたちにも筋は通せよいいな

そこに居る、クラスメイトたちの数を数える

オレと会話していたのは八人ぐらいだけど

聞き耳を立てて、様子を伺っていたやつまで数えると十二、三人だろう

うんこれなら

今の所持金で足りるな

別に、遠藤の元取り巻きの連中や、不良のやつらにまでオゴる必要な無いんだし

レントゲン車の帰りに、購買部へ寄ろう

オレはクラスメイトたちに言った

えどういうことだよ

田中か、オレを見て言う

一人、ジュース1本でいいんだよな

オレのその言葉に

クラスメイトたちは

あ山峰ちゃんが、急に綺麗になったなあって思ってたけど

何か、キラキラ光ってるみたいに見えたんだけど

大人の女になったからってことなのね

うんそりゃあ婚約とか言い出すわ

山峰ちゃん超がつくマジメッ子だもんな

溜息を吐く男たち

だから婚約したんだよオレとメグ

オレははっきりとそう言った

みんなにも約束するメグのこと、絶対に幸せにするから

田中がオレを見る

オゴリは一人2本だ

ニャっと微笑む田中

それでみんな、チャラにしてやろうぜなあ

田中が男たちに、そう声を掛ける

仕方ないな

山峰ちゃんを泣かすなよ

結婚式には呼べよこの野郎

クラスの男たちはそう言って、オレに笑ってくれた

判った一人、2本ずつだからな

オレもみんなに微笑む

少し短めで済みません

ブックオフで買った、八〇年代のモテるためのマニュアル本に載っていることま大半は、今やると捕まります

毎日、彼女の家に電話を掛けろ相手が迷惑そうでも続けろそして、ある日突然やめるんだきっと女の子の方から心配になって、君に電話してくるはずとか

ストーカーすれすれというか、まあストーカーという言葉の意味が違った頃の話ですし

大学生になって、東京に出て来たばかりで、イケメン野郎に処女を奪われて捨てられた直後の女の子を狙えというレポートは、とてもリアルでしたけれど

えー、働いてきます

135.教室の力学

レントゲン車での撮影を終えた後みんなで連れだって、自販機のコーナーまで行く

全員で十二人一人に2本ずつか

好きなのを選んでくれ

オレは千円札を自販機に突っ込む

後はそれぞれ、勝手にボタンを押させる

吉田、オレ、こっちの自販機のやつがいいんだけど

そっちにも、千円札を突っ込む

みんな、遠慮無しにガンガン買って行く

オレとメグの仲を認めて貰うためだから、仕方ない

みんな、まだ開けて飲まないでくれ

オレは、早速とばかりにプルトップに手を掛けたクラスメイトたちを止める

え何でだよ、吉田

と、聞き返してくる田中にオレは尋ねた

今、ここに居る以外で、缶ジュースを持っていった方がいいやつって何人居る

今、ここに居るのは、たまたま廊下で並んでいる時にオレに近くに居たやつらだ

オレたちは50音順で並んでいたのだから先頭の方は、身体測定の教室の中に入ってしまっていて、オレと会話していない

そいつらが知らないうちに、ここに居るやつにだけジュースをオゴるのは何か悪いような気がする

オレはクラスの男子全員にオゴるつもりは無いんだ遠藤とか遠藤の仲間とか、不良グループの連中にまで、買ってやる気は無いからでも、それ以外のやつらには、お前らと公平にしておきたいんだ

オレは正直な気持ちを田中に話した

うん、そうだな相原と加藤と菊池と合田には、買ってってやった方がいいんじゃないかな

田中は、そう教えてくれた

みんな名前順で、前の方に居たやつらだ

大田はどうすんだよ

他の男子が、そう言った

大田って、遠藤のグループなんじゃなかったのか

いやこの間、遠藤と揉めて、今はグループから抜けてるはずだぞ

じゃあ、大田の分も買っていこう

オレは、そう決める

後々、面倒なことになるのはゴメンだ

缶ジュース2本で済むのなら、波風は立てたくない

そいつらが好きそうなのを買ってくれ

オレは、コインを自販機に投げ込む

相原と合田の分は、あっちの自販機でオレが買うわ

頼む

そう言ってくれたクラスメイトに、金を渡す

そこまで気を遣うのならやっぱり、クラスの男子全員に買った方がいいんじゃねぇか

別の男子が、オレに言った

いや遠藤のグループと不良連中にやったって、損するだけだよむしろ、吉田のことをナメて今後、タカッてくるかもしれないしな

田中が、オレの代わりに答えてくれた

確かにあいつらじゃ、こちらが下手に出ると付けあがる可能性が高い

相原たちへの缶ジュースも、吉田が自分で手渡さない方がいいな他のやつがさりげなく渡す方がいいこれ、吉田からって

田中がオレにそう言う

女子陸上部の時はオレとメグで一人一人頭を下げて、手渡ししたけれど

同じクラスの人間だしな

あんまり下手に出るのは、嫌味かもしれない

女の世界と男の世界って、やっぱり違うもんな

判ったみんなに頼むよ

加藤と菊池には、オレが渡すよ

田中が、引き受けてくれる

オレが手渡ししてこれ、吉田からって言うそれで、加藤や菊池が吉田の方を見たら、お前はおう、飲んでくれとか言ってくれ軽くだぞ、押しつけがましくならないようにな

そんなアドバイスまで、してくれた

大田には平林、頼むわ

田中が、別の男子に指示をする

えオレか

お前、大田と同じ中学出身だろ

大田は、遠藤のグループを抜けて、他のグループに入りたがっている良い機会だから、こっちに入れてやろうとぜ

田中って割と親分肌なやつなんだ

じゃあ、相原と合田はオレが渡すわ

さっき、その二人の分のジュースを買ってくれた男がそう名乗り出てくれた

ありがとうよろしく頼む

そいつは、オレにニッと笑った

吉田って、こういうマトモなやつだって知らなかったよ

ああちょっと、ポーッとしてて変なやつだと思ってた

やっぱ童貞捨てたら、頭がシャッキリしたのか

何だよ山峰ちゃんとヤったんだからお前ももう、大人だろ

オレが童貞を捨てたのは、雪乃なんだけど

もちろん、ここではそんなことは言えない

でもどんなもんだよ、セックスって

山峰ちゃん、胸は小さいけれどスタイル良しな

陸上やっている子は、締まりがいいって本当か

バカ、吉田だって初めてなんだし他に比較のしようがないだろ

田中が、笑ってそう言う

うんととにかく、黙っていよう

みすずとか、渚とか、克子姉とか、マナのことは

まあ、吉田は山峰ちゃんをゲットした代わりに、残りの人生を山峰ちゃんに捧げることになったんだから

ホントもう学校生活で自由は無いんだもんな

まあ、頑張ってくれたまえ

田中たちは、口々に勝手なことを言う

でもよ本当にいいのかよ不良グループのやつらの分を買っていかなくて

気の弱そうな男子が、オレに言う

あいつらってそういうこと、根に持つタイプだぜ

オレはそいつに答える

いいんだよ別に、あいつらと仲良くしたいとは思わないし

関わるだけ、時間の無駄だ

でもようあいつら、学校の外の不良たちとも交流があるし

気弱くんが、怯えてそう言う

そんなの関係ねぇよ吉田だって、金髪センパイと知り合いじゃないか

金髪センパイって寧さんのことか

ああそうだったな

あの金髪センパイと今年卒業した留学生の外人オンナが、この学校では最凶の不良コンビだったらしいからな

マルゴさんか

剣道場に放火して、全焼させたんだろ

何か、男の教師を一人ボコボコにして、半身不随にしたらしいな

えオレは三人て聞いたぞ

空手部を廃部に追い込んだんだろ

オレはボクシング部殲滅って聞いたぞ

入学式から一ヶ月

寧さんとマルゴさんの悪名は、一年生の間でも広まっているらしい

この前、金髪センパイがうちの教室に乱入して来た時は驚いたよな

うんあんなに美人なのに

ものすごいオッパイしてたよな

それでいて腰はキュッとしまってて

見た目は美少女なのに

メッチャクチャだったよな

遠藤のこと、脅してたもんな

そんなこともあったなあ

吉田お前、金髪センパイとは、どこで知り合ったんだよ

田中が、オレに尋ねる

他の男たちの視線もオレに集まった

こないだ屋上でさ

屋上

オレ遠藤に殴られてさ顔を腫らせて、授業をサボッたろ

ああそうだった

そんなことあったな

その時に会ったんだよ

寧さんとはそういう出会いをした

殴られて気絶していたオレを寧さんが膝枕していてくれたんだ

そうか金髪センパイは、いつも授業をサボッて屋上に居るって話だもんなそれで、倒れている吉田を見つけて

吉田を殴ったのが遠藤だと知って、怒鳴り込みに来てくれたのか

なるほどそういうことだったのか

いやそんな簡単な話じゃないんだけど

まあいいか

でも金髪センパイって、そんな面倒見の良い人なのか

田中がオレに尋ねる

優しい人だよとってもいい人だ

みんなにも、本当の寧さんを知って貰いたい

筋の通らないことは、許さないって性格なのかな

硬派だな

いや、単に吉田のことを新しい遊び道具と思ったんじゃねえの

そっちの方がありえるな

確かにうちのクラスに乱入して来た時、楽しそうだったし

うん遠藤のこと、楽しそうにイジメてたもんな

眼に狂気が籠もってたよ

ヤバイ人だってことは、確かだよな

みんな、そんな風に思っていたんだ

まあいいや、金髪センパイのことはそれより吉田、缶ジュースのことで不良のやつらが何か言ってきたら、一発カマしてやれよ

一発、カマす

ああ不良だなんだって言ってたって、どうせうちの学校の人間だ大したレベルじゃねえよオレらと同じ高校一年だしな

相手の隙をついてさのど輪をカマせよ

坊主頭に眼鏡の男子が、そう言う

のど輪

そうだよ手でさ相手の喉をガッて押さえつけるんだケンカの時は、これが一番効くらしい有名なケンカ空手の先生の本に書いてあった

そんなの読んでいるんだ

競技試合の様な1人対1人の闘いは、現実の闘いにはまずない男の闘いとは、1人対3人、あるいは4人であることが普通だって、先生だから

街で誰彼構わずケンカを売っているだけでは無いのか

相手のさ息を吸っているところを狙うんだよ

息を吸う

ほら、力を入れて何かアクションする時って、息を吐くだろブン殴る時とか逆に、防御する時は息を止めるじゃないか筋肉を張り詰める時とさだから相手が、一度息を全部吐ききった後で、次に息を吸っている時に攻撃するのがいいらしいその瞬間だけは、相手は攻撃も防御も力が入らなくなるんだそうだ

マルゴさんが、人の隙を突いて攻撃を仕掛けるけれど

相手の呼吸とか、そういうことを見ているのかもしれない

後で、聞いてみよう

また、浜本の格闘技話かよ

眼鏡に坊主頭の男子は、浜本という名前らしい

浜本は、格闘技オタクだからな

田中が、浜本についてそう言った

正確には、格闘技本オタクだな

うんこいつ、こういうことを読んだり話したりするのは得意だけど

別に、格闘技やっているわけじゃないし

浜本、何部だっけ

将棋部だろ

闘うことは好きなんだよな

汗を流して練習するのは嫌いなんだ

理論派なんだよオレは

ああそういうやつなんだ

まあいいとにかく、教室へ戻ろう

親分肌の田中がみんなに言った

不良連中が絡んできたら、オレたちも文句言ってやるから吉田は気にするな

悪いな

オレは、田中に礼を言う

文句を言うだけだ実際に揉めたら、知らないぞ

判ってるその時は、自分でどうにかするよ

みんなで一緒に教室へ戻る

男子は、ほぼ全員戻って来ていたが女子は3分の1もいない

女子の方が、時間が掛かっているらしい

まあ体育館の方が遠いし

女子は、着替えとか面倒だもんな

お前ら、遅かったな何していたんだよ

先に教室に戻っていた男子が確か、こいつが加藤だと思うまとめて帰って来たオレたちにそう言った

加藤、これ吉田から

田中が、スッと加藤の机に缶ジュースを2本置く

菊池も吉田からだ

菊池というやつの机にも缶ジュースが

え、吉田が

二人が驚いて、オレを見る

さっき、田中に言われたとおり

おう飲んだくれ

か、噛んでしまった

何だよ、飲んだくれって

お、大田これ、吉田からだってよ

大田という男子にも、ジュースが渡る

え、いいのか吉田

ああ飲んでくれ

今度は、ちゃんと言えた

相原と合田にも缶ジュースが届く

つーことだから吉田からのオゴリだみんな飲もうぜ

田中が、音頭を取ってくれた

みんなして、プルトップをパシッと開けて

飲む

ふぅこれで取りあえず、筋は通したことになるんだろうか

遠藤は、憮然とした表情でオレを睨んでいる

遠藤の取り巻きだった連中は固まって、オレを無視していた

絡んでこないだけ、良いと思うことにする

おい、オレらの分はどうしたんだよ

そうだぜ、オレらのジュースは

不良の小林と大宮がオレに絡んでくる

悪いがお前たちにやるジュースは無い

オレははっきりと、そう答えた

アン何でだよ

席から立ち上がる大宮

お前らと仲良くするつもりは無いからだ

あんだとぉぉてめぇ

大宮がオレに迫ってくる

ざけんなよぉッナメてんのか、こらぁぁッッ

オレの耳元で大宮が大声で喚く

こういうのが効くと思っているらしいけれど

オレ大宮よりは、3倍は怖そうなヤクザさんから同じことをされている

今更こんなことでビビるオレでは無い

むしろ喚ききって、息が切れた瞬間を狙う

さっきの、浜本のアドバイス通りに

いやここは、マルゴさんになったつもりで

んッ

大宮が息を吸い込み始めた瞬間

その隙を突いて大宮の喉を、グッとオレの手を押し込むッ

マルゴさんならここから、加速するッ

スゥッ

オレは大宮の喉を強く押さえ込んだまま一気に、教室の壁に大宮の身体を叩き付ける

大宮の後頭部が、ドドンッと壁に当たった

オレに喉を押さえつけられた大宮の顔が真っ赤になっていく

悪いけど、お前らの分は無いんだ

絶対に大声は出さない

低い声で小さくしかし鋭く、自分の意志を相手に叩き付ける

感情任せにしてはいけない

感情を抑え込んでその反発力だけを利用して、喋るんだ

その方が深く鋭く言葉が、相手の心に刺さる

オレはそれをミナホ姉さんから、学んだ

そういうことだから

大宮の喉を、もう一度グイッと突き上げてそれから、パッと手を離す

大宮は、壁をずるずるとへたり込んでケホケホと咳をした

完全に戦意を喪失している

浜本本当にこれ、効くな

オレは、のど輪を教えてくれた浜本にそう言った

あ、ああそ、そうだろ

格闘技本オタクの浜本は、ちょっと驚いた表情をしていた

ケンカ空手だっけ

う、うんそうそう、ケ、ケンカ空手

あれおかしいな

浜本が言うとおりにやったのに

クラス中の男子も女子も、みんなびっくりした顔でオレを見ている

吉田って意外と、武闘派なんだな

そう言ったのはああ、加藤だったな、こいつは

吉田って、キレるとヤバいタイプか

さすが金髪センパイの弟子だけのことはあるな

うん恐るべき突進力だった

いつのまにか、オレは寧さんの弟子ということになってしまった

でもまあ今のは、大宮の方が悪い

うん誰にオゴるかは、吉田の自由なんだし

強要するのは間違っているよな

とにかく、オゴリのジュースを飲もうぜ

田中がそう言ってくれた

何でもいいだろとにかく、吉田がちゃんと筋を通すやつだってことは判ったんだからさ

こういうことを言ってくれるやつが居てくれて本当に助かる

そそうだな

ジュース、ご馳走になるわ

ゴチになるっす

ありがとな、吉田

いただきます吉田さん

おい誰だよ、今、吉田さんて言ったの

ああさっきの気弱くんか

冗談でも、さん付けは止めてくれよ吉田でいいからさ

はいも変だろうまあ、いいけれど

白坂さんそんなとこで、何やっているの

その声にオレは、後ろを振り向く

教室の入り口の戸のところに

雪乃が居た

そこに立っていられると、中に入れないでしょ

雪乃の後ろに居た女生徒が、教室の入り口に立ち尽くしている雪乃に文句を言う

文句を言ってきた女子を通してやる雪乃

雪乃は、たまたま教室に戻ってきた瞬間にオレの今ののど輪を見たらしい

やっぱり驚いた顔をしている

ちょっと、邪魔よ白坂さん

その後ろから来た女生徒にも雪乃は文句を言われる

白坂さんて基本的に態度、でかいよね

椅子に座っていた女生徒が雪乃にそう言った

でっかいのは、パンツだけにして欲しいわよねぇ

雪乃の後から教室に入って来た、女生徒が、そんなことを言う

でかいパンツ

不良のもう一人小林が、その女子に尋ねた

ああ、この女の子は不良グループの子なんだっけ

それがさあ白坂さんて、すっごいでっかいパンツを履いているのよおへそまで隠れるようなさ

不良の子は、思いっきり大きな声でそんなことを言いだした

あれはないよねえ

正直、ババァ臭かったよねぇ

ケラケラと雪乃を笑う、女生徒たち

え白坂さん、お腹壊しているの

真面目グループの女の子が、雪乃に尋ねる

う、うんちょっと

雪乃は、そう答えた

違うっての白坂さんの家はお金持ちだから、パンツも大きいのよ

そうそうきっと、生地が違うんだよね

ブランド物のデカパンなんじゃない

そんなわけないでしょ何か、すっごい分厚い生地だったわよ

毛糸のパンツかな

白坂さんのパンツは良いパンツ、でかいぞ、でかいぞ

これから白坂さんのこと、デカパンちゃんて呼ぼうよ

あそれ、いいかも

ミナホ姉さんの作戦は見事に当たった

雪乃の家白坂家のことを公表することで雪乃は、まず不良グループの女子から反感を買うことになった

名家で、お金持ちでゲーノージンとも近いマスコミ機関のトップの家系

そんな雪乃の環境を知らされた他の女子は羨ましさを超えて、憎悪を感じることになる

この流れはクラス全体に拡がっていくだろう

雪乃は孤立することになる

おい、雪乃

雪乃に声を掛ける遠藤

あたしのことは、放っといて今は、話し掛けないで

雪乃は、遠藤に冷たくそう答えた

あーあ、遠藤くん可哀想

しょうがないよ遠藤くんじゃあ、白坂さんの家とは格が合わないんだもの

親は社長で、叔父さんは市会議員じゃあ、届きませんか

無理よ無理デカパンちゃんは、親戚が球団オーナーで、お父さんがギョーカイジンだよんッ

あはは全然、無理だわねっ

遠藤と近かったはずの不良グループの女の子たちが今や、遠藤と雪乃を攻撃の標的にしている

クラスの状態がすっかり変化してしまった

あんたもデカパン履いてみたら白坂さんみたいなお嬢様になれるかもよ

無理無理あんな、でっかいパンツを履かなきゃならないんなら、お嬢様になんか成りたくないわよ

雪乃が身体測定に、大きなパンツを履いて来たのは

下腹部に入れられたタトゥの文字の隠すためだろう

緑色に輝く吉田の文字

あのタトゥを誰にも見られないように

あんなパンツ履いてる姿を見たら、遠藤くんだって冷めるよね

うん百年の恋も冷めるわ

セクシーさの欠片もないもんね

そこへ、別の女子が飛び込んで来る

ねえねえねえねえ山峰ちゃんが、すっごい下着履いてたよっ

山峰だから、名前順では最後の方だ

まだ、教室に戻って来ていない

この女生徒は、測定の教室の中で、メグの下着姿を目撃したのだろう

すっごいって何が

いや、山峰ちゃんだから、ちゃんと校則通りの無地の白いブラとパンティなんだけどさ高そうなのよちゃんと上下でセットになっているやつだと思うあれ、一万円以上すると思う

うわホントに

だってさもう、外観からして違うんだものすっごい大人っぽいデザインなのしかも、山峰ちゃんてスタイルいいでしょ何か、モデルさんが着ているみたいだったわ

良かった一万二千円のにしておいて

メグが褒められるのは、とても嬉しい

ねえねえ山峰ちゃんの下着がさ

また別の女子が、教室に飛び込んで来る

今、その話をしていたところよ

不良グループの女の子って、何でみんな声が大きいんだろ

それが山峰ちゃんが、他の子と話しているのを聞いたんだけどさ

飛び込んできたばかりの子が言った

あの下着って、吉田くんに買って貰ったんだって

教室中の視線がオレに集中する

えホントなの、吉田くん

ここは本当のことを言うで、一点突破だ

ああ昨日、メグと買い物したから

うわっ、二人で下着を買ったんだ

オレが、メグの下着を選んでメグにオレのパンツを決めてもらったんだ

何か

むちゃくちゃ恥ずかしいぞ

あの下着上下で幾らするの

一万二千円

本当に、吉田くんがお金を出したの

当たり前じゃないかメグの必要な物は、これからはオレが払うよ

メグはオレの女なんだから

山峰ちゃんの婚約指輪ももちろん、吉田くんが買ってあげたんだよね

うんあのちょっと、臨時収入があったから

ミナホ姉さんが黒い森の仕事をした分のお金をくれたから

え吉田くんのお金なの吉田くんの親が出してくれたんじゃなくって

あのうちは親が離婚してあんまり、会ってないから

あんまりどころかここのところ、ずっと会っていない

母親はオレを捨てて実家へ戻って行ったし

父親は失踪中だもんな

吉田はバイトしてんだよ

田中が女の子たちに、そう言った

この間、休みの日に電車の中でばったり会ったんだ吉田がちょうどバイト中でツナギを着ていたよな確か花屋だっけ

ああそういう話にしたんだっけ

うんそうだ駅前の花屋さんシュバルツ・ヴァルトってお店

まあ、花市場で車に積み込むのを手伝ったからまんざら、嘘ではない

また手伝う約束もしているし

週に一回は、渚の家に行く約束をしたから店の手伝いも、いっぱいしないといけないな

えー、あの可愛くて評判のお店

吉田くん、シュバルツでバイトしてるの

不良グループの女の子だけでなく普通の女生徒たちも、オレたちの話に加わってくる

渚の店ってそんなに評判なんだ

ああお店のオーナーの店長さんと知り合いなんだ

知り合いって言うかオレの女の一人なんだけど

あの店長さんて綺麗よね

ていうかさあそこのお店って、店員さんがみんな可愛い女の子で有名なのよね

そうそう普通の女の子がバイトさせて下さいって頼んでも、まず採用して貰えないって聞いたわよ

というよりあのお店の店長さんが、綺麗な女の子をスカウトしているって聞いたわ

じゃあさ吉田くんは、どうして採用されたわけ

綺麗な女の子ばかりのお店になんで吉田くんだけ

いやだから、オレは店には出ないんだ花の市場での仕入れとか男手が必要な時に、裏で手伝うって感じで

ああ、そっか店員さんがみんな女の子だから、力仕事に男の子が必要なのね

そんなバイトがあるなら、オレたちにも紹介しろよ

田中が、そんなことを言ってくる

いや、でもそんなに人数はいらないんだよ男が一人いれば済むような仕事内容だから

そんなら、仕方ないけどさもし、他にも男手が必要な時は声を掛けろよ

あ、オレもやる

あそこの店の子とは知り合いになりたいから、オレもやりたい

お前なんか紹介したら、吉田が首になっちまうよ

笑い声が起きる

うんどうにか、誤魔化せたぞ

それでバイトしたお金で恵美に、プレゼントしたんだ

吉田くんて、男らしいんだ

まあ婚約しちゃったんだから、それくらいはしないとね

でもまあ偉いようん

偉いとかそういうことでなく

メグとマナの生活は、これからはオレが支えていかないといけないから

オレは、もう腹を括っている

でもさああんな可愛い店員さんばかりのお店でバイトしているんじゃ、山峰さんの方が心配になるんじゃない

えー、恵美が

吉田くんを取られちゃうんじゃないかって

ないないそれは、無いでしょう

むしろさ吉田くんの方が、綺麗な店員さんに目移りしちゃうかも

あそれは、ありえるわね

女子たちは、好き勝手なことを言ってくれる

それは大丈夫よ

教室の入り口に、メグが立っていた

メグも身体測定とレントゲンが終わったらしい

あたしもねそのお店で、バイトすることになったから

メグは、みすずの代わりに渚の店でバイトするんだっけ

だからね心配は無いのよっ

ニッコリと微笑むメグ

そうだよねえ、今の山峰ちゃんならあのお店の店員さんになってもおかしくないよねぇ

ホント綺麗に可愛くなったもんね

うん恋する女は違うよね

いやいや婚約した女はでしょ

女の子たちが、笑い合う

不良グループの子も、普通の子たちもみんな、一緒に

メグに悪い感情を持っている女の子は、一人もいないようだ

ちょっと、ホッとする

雪乃が居る

雪乃は暗い眼で、オレたちのほうをジッと見ていた

ということで、吉田くん-メグと遠藤-雪乃の立場は、逆転していきます

昨日書いた、モテモテマニュアル本が見つからない

昔は、青年向けの雑誌でよくああいう特集やってましたけれど

今でもあるのだろうか

ポパイもブルータスも、もう何年も読んでないです

136.二人きりの教室で

さて、生徒たちが全員戻って来た頃を見計らって、ミナホ姉さんが教室に戻ってくる

席に着きなさい

全員が自分の席に戻る

みなさんも知っている通り、今日はこの後に避難訓練があります

避難訓練て先にやるって宣言してからするものじゃないような気がするんだけど

でも、今日、避難訓練をすることはみんな知っているし

ゴールデンウィーク中の平日は、身体測定と避難訓練だけで1日潰すというのがこの高校の長年のしきたりらしいから

まあしょうがないのかな

避難訓練の後は、そのまま解散でいいわ帰りのホームルームはやらないわ

時計を見ると十時二十分

雪乃とマナの祖父市川老人が、やってくる予定が十一時

悪いんだけどちょっとあたし、これから人に会わないといけないのよ避難訓練にも出られないのうちのクラスのことは、隣の長谷川先生にお願いしてあるから何かあったら、長谷川先生に相談してちょうだい

ミナホ姉さんとしては、事前の準備なんかもあるんだろう

グラウンドに生徒全員が避難するだけでも、十分以上は掛かるし

それからゲロッパ校長の話と消防署の人なんかも来るのかな

多分、消火器の使い方とかの講習とかあって

うん訓練に参加していたら、十一時には間に合わないな

それから学級委員二人は、教室に残って避難訓練は不参加でいいわちょっと、資料の運搬なんかを手伝って貰わないといけないから

学級委員て

メグとオレか

グラウンドに避難した後の点呼とかは吉田くんの前の委員長って誰だったかしら

あオレです

さっき後から缶ジュースを渡した一人合田が手を挙げた

じゃあ、あなたにお願いするわ女子の方は

それなら、あたしがやります

挙手したのは荻野さんだった

では、お願い点呼の報告も長谷川先生ね

じゃあそういうことであたしからは、他には連絡事項は無いわ明日は、通常授業の日ですからね連休の合間だからといって、気を緩めないでね

そう、今年のゴールデンウィークは飛び石連休なんだ

今日、五月一日と、明日の二日は平日だ

もっともその後は、三日、四日、五日、六日と四連休だけど

じゃあ、みなさんは訓練が始まるまで、教室で待機していて

とミナホ姉さんが言ったところで

火災報知器のベルが高らかに鳴る

じりりりりりりりりりりりんッ

スピーカーから全校に向けて、放送が行われる

避難訓練を開始する避難訓練を開始する二階、化学室より火災発生ただちに、全校生徒はグラウンドに避難せよ北側の階段は、使用できないものとする繰り返し伝える二階、化学室より火災発生ただちに、全校生徒はグラウンドに避難せよ

この声はゲロッパ校長だな

何か、楽しそうだぞ

まあ、自分の一声で全校生徒が大移動するんだから

支配欲の強い人間には、こういう指示出しは快感なのかもしれない

じゃあみなさんは、避難して吉田くんと山峰さんだけ残ってちょうだい

ミナホ姉さんの指示で、生徒たちはゾロゾロと教室の外に向かう

山峰ちゃんと二人っきりだからって、教室の中でエロいことすんなよ

田中が、笑ってオレにそう言った

そんなのしないよ

そうよね恵美とは、後でいっぱいイチャつけるもんね

ゴールデンウィークも、まだ半分残ってるしな

まあ、せいぜい楽しんでくれや

山峰ちゃんも、いっぱい甘えなさいね

えー、吉田くんじゃ頼りなくない

そんなことないよバイトして指輪買ってくれたんだよ

あー、あたしも指輪くれる人が欲しいなあ

婚約もする

それは、ちょっとパスだけど

缶ジュース、ごちそうさんな

じゃあな、吉田

男子生徒も女子生徒もオレとメグに声を掛けて、教室の外に次々と出て行った

雪乃がミナホ姉さんに話し掛けている

教室の中に残っているのはミナホ姉さんと雪乃、オレとメグの四人だけ

あら、何かしら白坂さん

ミナホ姉さんは、平然と雪乃に微笑む

冷たい眼で

ちょっとお話がしたいんですけれど

雪乃は暗い顔で、ミナホ姉さんに言った

悪いんだけど、さっき言った通りあたしは、今、時間が無いのよ学校に人が訪ねてくるのよ

雪乃はそれが、自分の実母と祖父であるということは知らない

さらに言えば自分の妹が、校長室の下の隠し部屋に全裸で監禁されているということも

すぐ済みますあの、これのことなんですが

雪乃はポケットから、液晶の小さなバッジを取り出す

あったなあ、そんなの

液晶に浮かんでいる数字は雪乃が残り何回オレとセックスしないといけないかを示している

雪乃は一週間で百回の精を受けるという約束をした

今、バッジの上に浮かんでいる数字は53

53

これ、いつの間にか数字が減っているんです

オレは、雪乃とは35回したはずだ

だから、残りの数字は65じゃないといけない

えっと65-53=12

12回分、減っている

さあ、どういうことかしらねあたしにもよく、判らないわ故障しているんじゃないのかしら

ミナホ姉さんは、冷たい眼で笑っている

オレは頭の中で、必死に記憶を再現する

そうだこれは

オレがマナを犯した数だ

昨日雨の中庭での処女レイプで3回膣内射精した

それからお屋敷のベッドの上で、さらに2回

珠代さんのラブホテルでは朝までに7回

合計12回

ぴったりと数字が合う

勝手に減った数字でもいいわそのバッジに出ている数字が今の残り回数ってことにしてあげるわよあなたとしては助かるんじゃないの数字が減ることは

ミナホ姉さんは雪乃のノルマから、マナが受けたレイプの数を引いたんだ

雪乃は、戸惑っている

ミナホ姉さんには、これまで散々騙されてきた

いくら、雪乃でもそろそろ学習する

何か裏があるのではと疑っているらしい

というより、どうするまだ、これ続ける

ミナホ姉さんはそんな雪乃の心を読んで、わざと話題を変える

続けるって

あたしとしては、あなたの妊娠さえ確認できたら別に、残りのセックス・ノルマは無くしてあげてもいいんだけど

改めて強調される妊娠の強要

雪乃がうつむく

オレに犯され続ける地獄からの脱出は妊娠の確定次第

まあ十中八九、もう妊娠していると思うけれどねでも、こればかりは、もう少し日が経たないと判らないことだから

大丈夫よあなたの体型なら、妊娠八ヶ月くらいまでは、お腹が出てきても目立たないでしょうし体育は休んでもいいようにしてあげるからあたしたちも、お腹の子のことを第一に考えていますからね最後の二ヶ月だけ、学校をお休みして後はハワイでもオーストラリアでも、好きな方で出産すればいいわ

ミナホ姉さんは、それが当然というように話した

子供を産んだ後、あたしはどうなるんです

そんなの知らないわ赤ちゃんは、あたしが貰ってあなたとはサヨナラよ解放してあげるわどこでも好きなところへ行きなさい恋愛も自由にできるわよ

何か不満なの

ミナホ姉さんの冷たい視線が、雪乃の心を探る

あたし、妊娠したくありませんあの人の子なんて

キッと席に座ったままのオレを見る、雪乃

メグがスッとオレに寄って来て雪乃の視線を遮る

メグがオレの手をギュッと握った

吉田くんが嫌なら、他の人にするその場合は、駅前のホームレスの浮浪者とかが相手になるけれど、それでもいいかしら

ミナホ姉さんはニッと微笑む

吉田くんは、まだあなたに優しい方だと思うわよ

オレはメグの陰から、雪乃を見る

雪乃がキッとした眼で、ミナホ姉さんを睨んでいる

いいわ、あなたはそういう眼の方が暗い眼で落ち込んでいるあなたって、イジメてもあんまり楽しくないから

ミナホ姉さんはさらに雪乃を挑発する

吉田くんも浮浪者も拒絶した場合はその次は、犬になるからね

獣姦て判る大型犬のペニスを、あなたの中にブチ込んで射精させるわ犬の精液を受けて、子犬を産みなさい

ミナホ姉さんが静かに雪乃を脅す

嫌よそんなの絶対に嫌

雪乃はぶるぶると震えている

あなたが、あたしの指示に逆らうのならあたしは、そこまでやるわよあたしは、あなたをどうすることもできるわそれだけの組織も、力も持っています

ミナホ姉さんの脅迫が続く

あなたのこれまでの痴態は、全てネット上に流出させる準備ができているのよ名前と住所もちゃんと判るようにしてあるわ一度、ネットに恥ずかしい動画がアップされたら、それがあなたの人生に一生つきまとうということは判っているわよね

これは、あなただけのことじゃないのよあなたのご両親や、妹さん、白坂の一族のみなさんにも影響を及ぼすことだと思うけれど

ミナホ姉さんは、楽しそうだった

一族の恥さらしになってみる

嫌よそんなの、絶対に嫌です

ならあたしに逆らわない方がいいんじゃない吉田くんの子を産みなさいそれが、最低条件よそれを拒絶するのなら、もっともっと酷い地獄に堕としてあげるわ

それから言っておきますけれどあなたの恥ずかしい画像は、吉田くんや恵美でもネットに流出させられるようになっているから

え、そんなの知らないけれど

ミナホ姉さんが、オレとメグの方を見る

二人とも雪乃さんが、あんまりにも判らず屋の我が儘放題だったら、自由に流出させちゃいなさい一々、あたしに許可を取る必要は無いわ

雪乃が絶望の眼で、オレとメグを見る

はい、判りましたミナホさん

雪乃があたしたちに刃向かうようでしたら、あたしが雪乃を破滅させます

真剣な顔でメグはそう告げた

雪乃は屈辱に震えている

吉田くんもいいわね

はい雪乃、オレたちに逆らったら、容赦しないからな

オレは黒い森の一員として

雪乃への脅迫に加わる

悪いけれど今は、これ以上あなたと話している時間は無いわ

ミナホ姉さんは、壁の時計を見る

予定通り遠藤くんの練習試合を応援に行きなさい

ミナホ姉さんは、雪乃にそう命じる

雪乃は、困惑している

あの人とはもう、別れます別れますから

これは命令よ遠藤くんの試合を観に行きなさい

ミナホ姉さんは、強く命じた

雪乃は震えながら、返事する

吉田くんと恵美も観に行くでしょう

いや遠藤の試合なんて、別に観たくはないけれど

そんなに面白そうでも無いし

でもミナホ姉さんが、こう言うからには

何か、特別な予定があるんだな

はい行きます

オレの代わりに、メグがそう返事をした

じゃあ、雪乃さんも吉田くんたちと一緒に観戦しなさい

ミナホ姉さんの雪乃に命じる

吉田くんや恵美の命令は、あたしの命令だと思いなさいいいわね

雪乃は震えたまま、答えない

白坂の家を巻き込んで、破滅する

ミナホ姉さんの言葉に、雪乃は

雪乃はまた涙を零した

いいわあうふふ、あたし、泣いている雪乃さんの顔を見るのが一番好きよ

ミナホ姉さんは悦んでいる

では雪乃さんは、急いで避難訓練に参加しなさい

あの、あたし

早く行きなさい

雪乃は泣きながら、教室を出て行った

一瞬だけオレの方を見る

憎悪と拒絶の眼で

雪乃はオレを心底嫌っている

ミナホ姉さんが、オレたちの方を見る

はいミナホさん

あなたたちは、十五分後に校長室に来なさいそして、市川さんとの交渉の間は、下の部屋でマナさんの相手をしていて

メグが、答える

十五分間は、この教室にいなさいそして、恵美の気の済むようになさい

メグの気の済むようにって

ではあたしは、先に行きますからまた後でね

ミナホ姉さんは、フフフと笑って教室から出て行った

二人きりになった瞬間メグがオレにすり寄って来る

ねキスしてキスして欲しいの

オレはメグと唇を重ねる

メグがオレの手を引っ張る

こっちへ来て

いいから

メグがオレを引いていった先は雪乃の席だった

ここで、もう一度キスして

ヨシくんが雪乃の方を見ようとしたらあたしのことを思い出すようにしたいの

今日もヨシくん何度も、雪乃の方を見ていたよ

自分でも気を付けていたつもりなのに

それでも、雪乃の方を振り向いていた

メグが制服のブラウスのボタンを外していく

白ブラウスの中から純白のブラジャーが見える

みんな褒めてくれたよヨシくんが買ってくれた下着

うん綺麗だ可愛いよ、メグ

メグは自分でスカートも捲り上げる

下も見て

細くて長い足の間に純白の布地が見える

つい雪乃の方に眼が向いてしまうのはいいの仕方がないことだって、判ってるでも雪乃の方を見た後で、あたしのことを思い出してメグの身体は全部ヨシくんのなんだよ何でもしてあげたいのメグはヨシくんが好きなの

オレのメグ

何て、抱き心地の良い身体なんだろう

スリムで両腕の中にすっぽりと入る

それでいて柔らかい

メグの内側から熱い高まりを感じる

このまま雪乃の机の上で、ヨシくんに犯して欲しい

十五分じゃ無理だよな

与えられた時間は、余りにも少ない

残念そうに、メグは言った

ミナホ姉さん今、はガマンしなさいって意味で、十五分て言ったんだと思うよ

そうだよねヨシくん、昨夜から朝に掛けてたくさん射精しているしお腹痛くない

メグが撫でてあげるね

メグの白い手がオレの下腹部を撫でてあげる

メグメグのおっぱいを舐めたい

オレは今の時間でできるだけのことがしたい

メグと肉体の快楽を分かち合いたい

うん、舐めて

メグは自分でブラジャーをたくし上げて、乳首を晒した

その桜色の乳首を吸う

あああんっ気持ちいいよヨシくん

舌の先で転がす内にメグの乳首は、あっという間に鋭く固く尖っていく

メグの手がオレの股間を優しく触る

ダメだよメグ、そんなに触るとしたくなっちゃうから

あんなに射精した後なのに

また、勃起してしまう

やっぱり、したいよね

十五分でセックスしようヨシくん

メグがオレのベルトをカチャカチャと外す

白い手がオレのズボンを下ろし、パンツからペニスを露出させる

オレさっきまで、クラスメイトたちの居た教室の中で

勃起した生のチンコを出している

ごめんねメグどうしてもガマンできないの

メグは自分からパンティを下ろした

雪乃の机に手を付いて

スカートを巻くって、裸のお尻をオレに向ける

ここで犯してメグの中に射精して

メグのそこはすでに湿っていた

濡れたヴァギナを見せながらメグはオレに振り返る

恥ずかしそうにオレの侵入を待っている

後ろから、メグの腰を掴んで

メグの中に突き入れるッ

グチュュッ

ペニスを押し込んだ分だけ愛液がとろとろと外に押し出される

ぐっちょりと濡れた柔らかい膣肉

オレを迎え入れ悦んでいる

誰もいない教室

オレたちは二人きりで、セックスに興じる

メグの細い腰を掴んで、オレは激しくピストンする

制服を着たまま半裸でのセックス

十五分で終わらせないといけないという焦りが

オレとメグの心を急かせる

荒々しい獣のようなセックスになる

避難開始の放送から、全員の点呼確認が終わるまで九分三十二秒も掛かっていますこれでは、もしもの時には大惨事になります

窓の外からそんな校長の声が聞こえてくる

そうだ他の生徒たちはみんな、校庭に整列しているというのに

オレたちはセックスしている

雪乃の席雪乃の机の上で

動物みたいに、バックから繋がっている

あっあっヨシくんヨシくん

メグがオレの名を呼ぶ

メグに求められているということが何よりも嬉しい

メグメグうううっ

あはぁんっメグねもっともっと、いけない子になりたいのあんんんっヨシくんに愛されて、悪い子になりたいの

もう、なっているよオレたち、こんな時にセックスしている

うんメグ、犯されてるよ大好きなヨシくんに、犯して貰ってるのああんっ

動物みたいだろ、オレたち

メグ犬なのヨシくんの飼い犬いつでも、どこでもしたくなったらメグを犯してぇっ

ああいつでも抱くからなっ

ヨシくんメグの首輪を触って

オレはメグのグリーンの首輪に触れる

鎖を付ける金具を指で引っ張る

ヨシくんの可愛い犬になりますっメグのこと、可愛がって

ああ、可愛いよメグ

後ろからメグのおっぱいを揉む

ああそれいいッおっぱい、ギュッとして

痛くないのか、メグ

痛い方がいいのメグは、ヨシくんに痛くして欲しいのっ

オレはメグのおっぱいを力一杯握る

ああっ気持ちいいっ痛いの、いいヨシくんっ

急がないといけないという状況が

一気にオレを高ぶらせる

メ、メグオレ

いいよっヨシくんガマンしなくていいのっメグの中に出してヨシくんの温かいのメグの中でお漏らししてぇぇっ

メグの胎内がキュキュッと締まるぅぅ

ぬあああああっ

メグぅぅッッ

メグの名を叫んで

オレはメグの腰をギュッと掴んで

メグの胎内に思いっ切り、射精するッッ

びゅるるるるっ

ひゃああああんっ

メグが震えて叫ぶ

オレの白い熱液が噴流となって、飛び込むッ

メグの子宮の中をとろとろに満たしていく

びゅるるっびゅるるっびゅびゅっ

あああ、温かいのぉお腹の底に、拡がってるのぉぉ

メグの身体が精受けて、大きく弓なりになるっ

オレのペニスを締め上げて最後の一滴まで子宮に呑み込ませようと

締まるッ

締まるぅぅッッ

メ、メグ

オレとメグの結合部から白い液体が、ぽたぽたと零れ落ちる

雪乃の机の上に

雪乃の机の上で熱い息を吐く、オレたち

ヨシくん愛してるよ

ああ、オレもだメグ

オレたちはまだ、繋がったままで

窓の外では、消防署の人が話をしている

急がないと約束の十五分が過ぎてしまう

オレは、克子姉に渡されたポケットティッシュでメグの陰部を拭いた

ありがとうヨシくんのは、メグが綺麗にしてあげるね

メグはオレの半萎えのペニスをちゅばちゅぱと舐める

亀頭の先を咥えてちゅうちゅうと尿道に残った精液を吸い取ってくれた

さあ急ごう

オレはメグにパンティを履かせてやる

このまま履くとオレの精液が垂れてきて、汚れてしまうな

ごめんな、メグ

え、何のこと

せっかく綺麗な下着を買ったのにもう汚してしまって

メグがオレの顔に微笑む

バカねヨシくんに汚して貰うために、買ったのよ

メグのこといっぱい汚してメグの下着も、メグの身体もグチャグチャにしていいのよメグは、ヨシくんに犯されるのが大好きなんだから

メグがオレを優しく、バグする

これで、もう雪乃の方を振り向いても平気だよね

オレの耳元にメグがそう囁いた

また、つい雪乃の席を見てしまったらここでメグとセックスしたことを思い出してね

メグは断固として、オレを雪乃から引きはがしたいらしい

ねえ、ヨシくん部活の子に聞いたんだけど男の子って、授業中でもオチンチンが硬くなっちゃう時があるって本当

相変わらず、メグは耳年増だ

うんそんな時もあるよ

もしヨシくんが、そうなったら先生にお腹が痛くなったって言って、保健室で待っててねメグもすぐに行くから

授業中でも構わないのよヨシくんがしたくなった時は、いつでもメグの中に出して欲しいの

でも二人とも居なくなったら、みんなにバレちゃうよ

別に構わないじゃないあたしたち、婚約しているんだものそれに

メグは微笑む

クラスのみんなにも知って欲しいのメグは、ヨシくんのためなら何でもする女の子だってこと

あたし心も身体も、ヨシくんにあげるのっメグが、全部ヨシくんのものだってこと世界中の人に知らせたいのよッ

大好き大好き絶対に離れないからメグを離さないで

オレもメグを抱き締める

それでは、次に消火器の使い方を説明します

二人きりの教室で愛し合うオレたちには窓の外から聞こえる声は、異世界のものの様に思えてた

うーむ、予定ではメグのおっぱいを舐めるだけでここでは、エッチまではしないはずだったのに

メグが暴走しました

この調子だと、今日も吉田くんの射精数は大変なことになりそうだ

メグすっかりエッチな子になってしまって

他の生徒がグラウンドに居る時に、教室の中でセックスするというのは男の子の永遠の憧れですねえ

では働いてきます

137.メグの気持ち

メグと手を繋いで校長室に向かう

校舎の外では、まだ避難訓練が続いている

窓には、近付かないようにして廊下を歩いて行く

グラウンドから、誰かがこちらを見上げているかもしれない

オレとメグが校長室の方へ向かっている姿を見られるのはマズイ

なるべく教室側に沿って歩く

うふふっ

メグが、笑っている

メグは自分の下腹部に手を当てて言った

ここにヨシくんの温かいのが入っているんだなって思ったら安心できたの

安心

やっぱりね心配なのよ、あたしヨシくんを雪乃に取られちゃうんじゃないかって

ずっとあの子は、白坂の家のお嬢様であたしは、あの子には絶対に勝てないって思ってたからううん勝っちゃいけないって、思ってたから

白坂家と山峰家の関係は

親戚であるにも関わらず、主従関係に近い

メグはずっと雪乃にコンプレックスを感じて、成長してきた

オレは雪乃より、メグの方が好きだよ

オレはメグの手を強く握りしめる

セックスの時には、もっと格好付けたセリフも言えるのに

校舎の廊下を二人で歩いている時にこんなセリフを言うのは照れる

困ってしまう

判ってるヨシくんのことは、信じてるでも、あたし怖いの

メグは、心配そうにうつむいた

雪乃は、ずっと勝手気ままなお姫様だったからあたしから、ヨシくんを奪って行くんじゃないかって怖いの

メグは雪乃から、様々な嫌がらせを受けてきた

お洒落をさせて貰えず

中学のバスケ部も退部させられ

合格していた第一志望の高校にも行かせて貰えなかった

メグの中に雪乃という存在は、突然、自分を苦しめるものとして強く存在している

長年に渡って固着してしまったコンプレックスから抜け出せないでいるんだ

ごめんねヨシくん

さっき、ヨシくんがセックスしたい時は、いつでもいいよって言ったけれど本当は、逆だね

あたしがヨシくんに抱いて貰わないと、不安なんだよねさっきだって、求めたのはあたしの方だったものダメなんだよね

何がダメなんだよ

あたしねやっぱり、雪乃のことが怖いの

怖いから抱いて欲しいと思うヨシくんとセックスしている時は、ヨシくんの温かさを全身で感じられるからヨシくんが、本気であたしを求めてくれていることが伝わってくるからお腹の中に射精されるとね涙が出てくるくらい、嬉しいの愛してくれているんだって、感じるの

でもねヨシくんに愛して貰って幸せを感じれば、感じるほど怖くなるのだって、今までだってあたしが幸せになろうとする時には、必ず雪乃が邪魔をしてきたから

やっと、バスケ部のレギュラーになれたり行きたかった高校に、ようやく合格した時とかあたしが幸せな気持ちになると、必ず雪乃が現れるの

だから、メグはさっき、教室でオレを求めたんだ

雪乃が怖いから

メグメグが怖い気持ちになったら、すぐにセックスしよう抱いて欲しい時は、いつでもオレを求めてくれ授業中だって構わないちょっと保健室へなんて言わないで堂々と、二人で教室から出て行こう

クラスのみんなにセックスをしに行ったって思われてもいいいいや、見せつけてやるんだ、雪乃にオレが、先生に言ってやるからちょっとムラムラした気持ちになったんで、オレの女とセックスしてきますって

メグはクスッと笑った

そんなの、ダメだよ恥ずかしいよ

恥ずかしくないメグと愛し合うんだからこれより大切なことなんか、他に無いよ

セックスで、怖さが紛れるのなら

オレが、幾らでも抱いてやる

オレはメグとキスをする

約束してくれ絶対にガマンしないって

判ったして欲しくなった時は、必ず言うね

ヨシくんもメグに言ってね

判ってるよ

昨日、みすずさんが車の中で言ってたよね

エロスの愛人間には、セックスのある愛がとても大切なんだって

ああそんなことを言ってたよな

その通りだねあたしヨシくんと毎日セックスしないと、ダメになっちゃうと思う

セックスし過ぎても、ダメになっちゃうだろ

し過ぎてもいいよヨシくんとなら

メグの眼が潤んでいた

雪乃のことなんて、すぐに怖くなくなるよメグの方が、雪乃よりも何倍も綺麗で優しいオレは、本当に雪乃よりもメグが好きなんだ

これを機に、雪乃から卒業しようと思った

オレが、メグの方だけを見て雪乃を見るのを止めれば

メグの不安は、きっと解消される

そんなことないわだって、雪乃は、ヨシくんの赤ちゃんを産むんだもの

ヨシくんあたし、ピルを飲むのを止めてもいい

メグがジッとオレを見る

雪乃に産ませるのはミナホ姉さんのための赤ちゃんだ雪乃とは、関係無い

渚も今、赤ちゃんを欲しがっていることは知っているだろう

渚さんはいいのよ渚さんには、赤ちゃんを産んで欲しいしあたしも、その子を可愛がるわ世話もする真緒ちゃんだって、自分の娘だと思うわ他の女の人だって、みんなそうよ

メグは強い眼で言った

他の女の人が、ヨシくんの子を産むのはいいのでもね雪乃は、嫌なの雪乃が妊娠するのならメグも妊娠したいあたし、負けたくないのよ

メグ二年だけいやオレが二十歳になるまで待ってくれ

オレはメグにそう告げた

二年経ったら、オレは十八歳で、法律上は結婚できる年齢になる

これはそういうことではない

二十歳

うん高校を出て、2年間で必死で仕事を覚える大した給料は貰えないだろうけれど二十歳になったら、結婚しようそして、オレの子を産んで欲しい

どうして、二十歳なの

メグとのことは結婚も妊娠も、みんなに祝福して欲しいから

本当にクラスのやつらを呼んで、式をあげようもちろん、メグの山峰のご両親にも来て貰ってオレたちは、みんなに祝福されて結婚するんだそして子供を作ろう

ほんの数日前まではオレは、一ヶ月先のことすら判らなかった

親父が失踪して一人きりで家に居て

自分の未来なんて、どうにも考えようが無かった

今だって、そうだ

オレは自分の未来は、どうしたらいいのか何一つ判らない

成りたいものなんかないししたいこともない

ただオレの女たちには、幸せになって欲しいと思う

幸せにしたいと思う

オレの全てを懸けて

メグは自分の指の婚約指輪を見る

そうだねあたし、今はガマンする今焦って、子供を作っても祝福されないもんねちゃんと大人になって結婚してみんなに祝福された方が、何倍も幸せだもんね

大好きヨシくん

もう一度、唇を合わせる

オレたちは小鳥のように、キスをする

愛している、メグ

校長室のドアの前に着くと自動的にガチャッとロックが外れた

監視カメラで誰かが観ていて遠隔操作で開けてくれたんだろう

メグと手を繋いだまま中に入る

校長室には、ミナホ姉さんと克子姉が居た

ミナホ姉さんと克子姉は、揃いの黒いスーツに着替えていた

それが黒い森の人間としての正式な衣装なんだろう

恵美は落ちついた

ミナホ姉さんが、笑ってそう言う

やっぱりカメラでオレたちの様子を見ていたんだな

あそこで吉田くんを消耗させるのは望ましくなかったんだけど恵美の心が不安定になっているのが判ったから

だから二人きりの時間を作ってくれたんだ

はいこれ飲んで

克子姉が、オレに飲み薬のボトルをくれる

精力剤よあんまり使いたくないんだけど、この後はあなたにがんばって貰わないと困るから

がんばる

もし、市川さんがあたしたちとの約束を違えるようなことがあったら市川さんの見ている前で、マナさんを犯しなさい

ミナホ姉さんはそう言った

そこまでやるんだ

いいや市川老人やマナの母親を、ミナホ姉さんは味方だとは思っていない

敵の勢力白坂本家を攪乱するための道具ぐらいにしか考えていない

むしろ気を許せば、こちらを攻撃してくる敵だと認識している

マナは今、どうしています

オレは尋ねた

下の部屋で寧と遊んでいるわ

寧は、あの子を操縦するのが上手いから

確かにマナは寧さんに憧れの気持ちを持っていたけれど

とにかく、それは飲んでおきなさいそれで、下の部屋でしばらく身体を休めていて恵美もよ市川さんとの交渉は、あたしと克子でやるから

確かにメグの姿を市川氏たちに見せるべきではない

マナの母親は、白坂家の遠縁であるメグのことを知っているだろうし

白坂本家には、メグは黒い森に誘拐されたことになっているんだから

オレはとりあえずボトルを開けて、中の薬を飲む

だけど身体の奥がポカポカしてくる

空の瓶を、克子姉が回収してくれた

克子姉、今日からオレにパン作りを教えて

いいけれどどうしたの

克子姉は、驚いている

オレ克子姉のパン屋で働くから二十歳までに、ちゃんと稼げるパン職人にならないといけないだろ

えっあたしとパン屋さんやってくれるの

克子姉は感激しちゃっているけど

渚の花屋だって手伝うよでも、あのお店は接客が綺麗な女の子だから人気があるんだろオレにできることなんて、仕入れの時の力仕事くらいだから

うん大したことは、オレにはできない

オレにフラワー・アレンジメントの才能なんて無いだろうし

克子姉のパン屋さんも、きっとそうなると思うんだお店に出るのは、克子姉に任せてオレは、店の奥でずっとパンを作っている方がいいと思うだから、今からパン作りについて勉強しておきたいんだ

オレみたいな馬鹿には他に、できることは無いだろうし

本当に、いいのね

うんメグには大学に行って欲しいしマナの生活費だって、オレが稼がないといけないだろ

他の仕事をしてもいいのよ

オレは克子姉の男だろ克子姉の仕事を手伝うのが当然じゃないか

あなた

もちろん、渚の店も手伝うしみすずやメグやマナが、将来何か始めたいっていうのなら、それも手伝うでもまずは克子姉のパン屋さんが先だろ

オレの中で将来のビジョンが次々と産まれる

判った今日から、教えるわ

克子姉は嬉しそうに微笑んだ

あたしにも教えて下さい、克子姉さん

メグが、そう言うが

ダメ恵美ちゃんには、教えてあげない

彼とあたしの二人だけの幸せな時間を奪うつもり

あのそういうつもりは無いんですけれど

メグは恥ずかしそうにうつむいた

あたしのパン屋さんだって、まだどうなるか判らないんだから開店してみたら、全然売れなかったってこともありえるでしょだから恵美ちゃんは、別のことを探しなさい

別のことですか

そうよ自分の一生の仕事として彼と一緒に生きていくためには、何ができるかを考えなさいそのために、学生時代を有意義に過ごしなさいあたしの夢に乗っかってくる必要なんてないのよ恵美ちゃんも、自分の夢を見つけるのよ

メグの顔が笑顔になる

はいっ判りました

ミナホ姉さんが卓上のノートパソコンの画像を見ながら、オレたちに言った

学校の敷地内に、市川さんの車が入ってきたわ吉田くんと恵美は、下の部屋に降りなさい

時間は十時五十分

うん、判ったよミナホ姉さん

オレとメグは、急いで隠し扉から下の階へ向かう

お帰りっ

下の部屋では

寧さんとマナが、遊んでいた

遊んでいたってまあ、トランプなんだけど

マナが朝のままの全裸に首輪状態なのは判るけれど

どうして寧さんも、下着姿

いやあマナちゃん、強くて

二人はポーカーをしていたらしい

あたしが負けたら一枚脱いで、マナちゃんが負けたら身体に落書きするルールなの

確かにマナの裸を見てみると

お腹と太ももにマジックで正の字が書いてある

勝ったときは、どうなるんです

どうにもなんない負けた方だけが、罰を受けるルールなの勝負

寧さんとマナが、自分のカードを晒す

2と6のツーペアです

うっふふん、ジョーカーが入って4カードだよーんっ

寧さんの勝ちらしい

はいお腹出して

寧さんが、未完成の正の字に一本書き足す

マナは今までに十一回、負けたらしい

寧さんが下着姿だということを考えると

何だ寧さんの方が、ずっと強いんじゃないか

マナ寒くないか

ずっと裸でこの部屋にいるんだから

平気ですもう慣れてきちゃいました寧さん、マナが裸でも全然普通に相手してくれますし

マナはそう言って新しいカードを配っている

寧さんと二人で居たことで少し、安定しているみたいだけど

やっぱり、雰囲気は暗い

そんなに喋らないし

いやマナの場合、明るくペラペラ喋っている時はキャラを作って演技している時だから

こうやって静かな方が、正しいのかもしれないけれど

おっぱいも股間も、お腹のタトゥも隠すことなく黙々とゲームを続けている

ヨッちゃん、裸の女の子をそんなにジロジロ見るのは失礼だよ

寧さんに叱られた

あすみません

うそうそいいの、いいのマナちゃんは、ヨッちゃんの奴隷なんだから

寧さんは、当たり前のこととしてそう言った

ヨッちゃんとメグちゃんも、一緒にポーカーやる

寧さんがオレたちを誘ってくれたけれど

すみません少し休みます

何だか和やかな雰囲気になっているけれど

オレことの次第では、お祖父さんと母親の前でマナを犯さないといけなくなる

少しマナから離れていたかった

そうだよね、ヨッちゃんメグちゃんとエッチしたばかりだもんね

観てたんですか

当然ここは、そのための部屋だよ校内の全てを監視するシステムがあるんだから

寧さんは、立ち上がってモニターを起動させる

たくさんのモニターに一気に学校中の様子が、映る

マナちゃんにも見せたんだよ一通りね

どうやら、さっきまで寧さんはマナに監視カメラに映る各教室の様子を見せていたらしい

マナが元気の無い理由もそれだろう

この監視システムはオレたち黒い森の裏の力を示しているのだから

この学校内にいる限り隙を見て逃げ出してもマナはすぐに捕まる

そういうことだ

それからねヨッちゃんが観たそうな映像は、ちゃんと記録しておいたよ

寧さんが笑って、スイッチを押す

画面が再生モードに切り替わる

全てのモニターに映ったのは

それは、さっきの身体測定の時の女子の様子だった

下着姿の女子生徒たちが次々に映り変わる

もっと凄いのもありまーす

寧さんはさらにスイッチを切り替える

レントゲンを撮る寸前の女子たちの映像

女の子たちはみんなブラジャーを外している

可愛いおっぱいがそのまま晒されている

あこれ、うちのクラスの荻野さんじゃないか

荻野さんて乳輪が大きいんだ

全学年の女子生徒の分みんなあるんだよ

寧さんが次に映したのは

竹柴キャプテン

竹柴キャプテンの鍛え上げられた裸身にロケットみたいに尖った、おっぱいが

寧さん、どういうことなんですこれ

オレの問いに寧さんは、答えた

一応、毎年やっていることだからね今年も継続してみたんだよ

毎年、やっている

うちの学校の女子生徒は、ずっとお屋敷の売春婦の候補者だったでしょだから、毎年この時期に身体測定をして裸の映像と、肉体の成長データを記録していたのよそれを後から、白坂創介が見てこいつを候補にするとかこいつは、もう一年様子を見るとか決めていたんだよねずっと

そのための身体測定だった

でも、白坂創介はもう失脚したわけですよね何で、今年もこんなことをしているんですか

寧さんは寂しそうに言った

学校の教職員の中には女生徒を娼婦にするのに関わった人がまだ何人か残っているわけ

そうだ、ゲロッパ校長とか

きっと、他にもいるんだろう

その人たちには、まだ白坂の失脚は教えていないんだよね先生は、機を見て一気に全員処分したいと考えているみたいだから今年も、いつも通りの身体測定を行ったってわけ

もちろんその人たちには、この映像やデータは見せないから安心してあの人たちには、このシステムにアクセスする方法は教えてないから

そうかこの部屋か、ミナホ姉さんの英語準備室でしか見れないんだっけ

あの部屋だって、勝手に入ることはできないんだろうし

女生徒たちの裸のデータが悪用されないのなら、ひとまず安心だ

あヨッちゃんは、見てもいいんだよ裸が見たい女の子がいたら、どうぞ使い方、教えてあげるから

いやそんなこと言われても

いいのよ、ヨシくん

メグがオレの顔を見る

もし、それでヨシくんがエッチしてみたい子がいたらあたしが連れてきてあげるから

どうして、メグはそんなことを言うんだ

メグはうつむいて言った

あたし自分の身体に自信がないからだからヨシくんが、あたしよりもセクシーな女の子を抱きたくなっちゃったら、仕方ないって思うの

メグの身体には満足しているよ

オレはそう答えたのに

でも、あたし、おっぱい小さいでしょ

何度、オレが否定してもメグは、そこから離れられないらしい

どうも自分の肉体にコンプレックスを持っているみたいだ

だからいいのよヨシくんは、他の子とエッチしても

何て、言えばいいんだろう

もう、メグちゃんはホント、言ってることとやってることが違うんだから

寧さんが笑った

さっきの教室でのやり取りずっと、ここでマナちゃんと見てたよメグちゃんたら絶対に、ヨシくんを誰にも渡さないって、凄い剣幕だったじゃない

それも見ていたんだ

朝のやり取りからミナホ姉さんのホーム・ルームオレが、クラスメイトの男子に缶ジュースを渡したことまで

そんなあたし

メグは赤くなる

あんな様子のメグちゃんを見たらクラスの他の子は、絶対にヨッちゃんに手出ししないっての

外から見るとそんな風なんだ

当事者だと、よく判らないけれど

メグちゃん本当の気持ちを言って本当は、誰にもヨッちゃんを取られたくないんでしょ

雪乃に取られるのは、嫌です

メグはそっと呟いた

うそうそ雪乃っちだけじゃないよね本当はヨッちゃんのこと、独占したいんでしょ自分だけのものにしたいって顔に書いてあるよ

寧さんが、ニヒヒと笑う

ヨシくん本当のことを言うね

あたしね自分に自信が無いからヨシくんが、他の女の子とエッチしたくなったらそれは仕方ないって思っているの本当に、本当なのよ

でもねヨシくんには、もう何人もの女がいるでしょ

オレには克子姉、渚、みすず、マナ、そしてメグがいる

だからね今いる子たちよりも素敵な子としかこの先は、ヨシくんに好きになって欲しくないの

今いるオレの女たちより素敵な子としかって

そうでないとヨシくんは、また可哀想だからってそれだけで女の子を拾って来ちゃったりしそうだから

メグは遠回しに、オレがマナを自分の女にしたことを責めている

そして雪乃は、絶対に女にするなと

その意見には賛成だねっヨッちゃんは、ちょっと優しすぎるんだよ

寧さんはそうオレに言った

もちろんあたしは、寧さんのことは受け入れます寧さんは、あたしよりもずっと綺麗で優しくて、素敵な人ですから

メグは寧さんにそう言った

えあたしうんと、あたしのことは

照れる寧さんにマナが驚く

えっ寧さんて、お兄ちゃんのセックス・パートナーなんですよね

マナに、寧さんが処女だということはいつ告げようか

寧のことはともかく吉田くん、他にもまだ自分の女を作る気があるのなら、今のあたしたちには足りない人材を探して欲しいね

その声は

地下通路に続く階段からマルゴさんが上がって来る

ターゲットは無事に到着したよ護衛の車が付いてきたけれど学校の敷地内には入っていない

マルゴさんは外で、市川さんの動きを監視していたんだ

マルゴさん今足りない人材って、どんな人ですか

メグが話を戻す

どうにも、気になってしまっているらしい

あたしのサポートができる人が欲しいな

マルゴさんのサポートですか

ああ武闘派の仕事ができるのは、あたしだけでしょそれも、あたしは相手の意表を突いて一気に殲滅っていうパターンだしね正統派の格闘家タイプが欲しいなミナホやみすずさんのガードを任せられるような誰から見ても警護役だって判るような人がいい

マルゴさんはかなり、具体的なことを言った

確かに今のオレたちで、戦闘能力のあるのはマルゴさんだけだ

ミナホ姉さんは、頭脳系だし

克子姉や寧さんは、行動力はあるけれど格闘は無理だろう

みすずも頭脳派だよなあ

メグは頭も良いし、身体能力もあると思うけれど優しい子だから、闘うのは向いていないと思うし

マナは論外だ今はまだ、仲間ですらない

そして、オレは足手まといなだけで、戦力では無いよな

あ、恵美ちゃんこの学校の女子の運動部を探しても無駄だよそういう子は、大体チェックしてあるから武道系の部活をやっている子に、有望な子はいないね

少し、現状でのメグの気持ちを整理してみました

この作品は、それぞれの少女が別の少女にコンプレックスを抱えています

吉田くんのセックスが、彼女たちのコンプレックスを解消してくれるのか

次話は、市川氏との交渉に入ります

138.交渉.1

でもさそれって、恭子ちゃんが帰って来てくれたら、少しは楽になるよね

寧さんがマルゴさんに言った

恭子ちゃん

寧恭子さんのことは

マルゴさんに、寧さんは謝る

オレとメグは、顔を合わせる

マナもキョトンとした顔をしていた

仕方ないね恭子さんていうのは、あたしの師匠なんだよ

マルゴさんの師匠

恭子・ドスノメッキー黒い森の娼館の警護責任者だよ

マルゴさんの他にも、お屋敷には警護役がいるってこと

あたしは、去年まで高校生だったしミナホに連れられて、日本に来たのは数年前だからね黒い森には、あたし以前に絶対的な警護責任者がいたんだ

確かに黒い森は犯罪組織だし、長い歴史が在る

マルゴさんがメンバーになる前から、警護役の人間が居るのは当然だ

組織を守るための武闘派の人材はいつだって必要なんだろう

娼婦たちだけでは、男たちに対抗できない

その人は今どこに

オレは、マルゴさんに尋ねた

そんな人がいるのなら、是非とも協力して貰いたい

マルゴさんの師匠ってことは、きっと能力も優れているんだろうし

ていうか現役の警護責任者が、何で今いなくなっているんだ

黒い森は、今、大きな二つの敵と戦っている最中なのに

ゴールドコーストだよ

マルゴさんは答えた

ゴールドコーストってオーストラリアですよね

メグが、マルゴさんに言う

マナが、オーストラリアという言葉を聞いてハッとする

みんなの想像通りだよ恭子さんは、オーストラリアで白坂創介を拘束しているミナホは白坂の身柄を抑えるために、一番信頼できる人物を派遣したんだよ

ミナホ姉さんが白坂創介の海外での拉致・監禁を

黒い森の身内以外の人間に任せるはずがない

恭子・ドスノメッキーという人は、一人でその任に就いているんだ

たった一人で白坂に、あのとんでもないオーストラリア地獄観光をさせている人だよあのバカなイベントも、ほとんど恭子さんが企画して、実行しているんだよ

白坂創介が、オーストラリアで通信手段を失って

ゲイ専門のホテルに泊まらされたり、教会で一晩中説教されたりしているという

そういうことを考えて実行できるってことは、相当、オチャメな人なんだな

というかもしかして、マルゴさんだけでなく、克子姉の師匠でもあるんじゃないか

恭子さんは、元々はミナホが黒い森の運営に加わることになった時に香月さんが寄越してくれた人なんだそうだよ

みすずのお祖父さんが

香月さんは、白坂創介がお屋敷を支配する前のミナホ姉さんのお祖父さんの作った高級娼館であった黒森楼の時代からの顧客なんだっけ

白坂とミナホ姉さんのお父さんが、黒い森を乗っ取り高級娼館から、自分たちの欲望を満たすためだけの売春組織に変えてしまった

そんな白坂の横暴に耐えかねた屋敷の古参の娼婦たちが、香月さんたち昔の顧客に訴えてそして、その人たちがみんな政財界の大物だったから

黒い森は、香月さんたちの介入を受けた

それ以降お屋敷は、昔の黒森楼に回帰しようとするミナホ姉さんと、自分の趣味嗜好を満足させたいだけの白坂創介の2つの派が並立していた

ミナホが黒い森の運営に加わった時は、まだ十六歳だったしねしかも、元娼婦でしょ最初の数年は、白坂たちの勝手な振る舞いに対抗することは難しかったんだってそして恵美ちゃんのお母さんが亡くなったことがキッカケで、恭子さんがお屋敷に呼ばれたんだそうだ

メグのお母さん

メグのお母さんは、客に無理矢理薬物を飲まされ苦しんでいるにも関わらず、白坂創介に病院に行くことを拒絶され亡くなった

もう二度と、そういうことが無いようにお屋敷の警護役というより、白坂たちの行動を監視するために香月さんが、恭子さんを派遣してきたんだ

そういう人なんだ

白坂が全ての主導権を握っていた頃は、白坂の仲間のチンピラみたいのが屋敷の中をうろうろしていたらしいよそういう人たちが、お屋敷の女たちにたくさん酷いことをしていたんだそうだ恭子さんは、そういう客じゃないやつらを文字通り叩き出してくれたんだそうだ

そうかミナホ姉さんの黒い森の改革は、その恭子さんという人の後ろ盾があって、始めることができるようになったんだ

恭子さんは、腕が立つし裏の仕事も何でもできる人だからねあたしは日本に来てから、ずっと恭子さんに色々なことを教えてもらっている正直、まだ全然、恭子さんには敵わないんだ格闘も調査も裏工作もね

それがマルゴさんの師匠

だからさ恭子さんが、戻って来てくれれば一番良いんだよっ

ミナホだって、そう思っているさだから、予定を変更して市川さんと交渉することにしたんだよ

マルゴさんは、苦笑する

本当なら白坂家との闘いは、もっとゆっくり時間を掛けるつもりだったんだ白坂創介を抑えている限り、こちらは有利だからね

つまりミナホ姉さんは、解決を急いでいる

とにかく白坂本家と話が付いてしまえば彼らが、白坂創介を見捨てるという決断をしてくれれば恭子さんは、白坂を連れて帰国できる

ミナホ姉さんが、今、急いで白坂家と交渉したいと考えているのは

シザーリオ・ヴァイオラの方が危険だと考えているから

ミスター・ヴァイオラと闘うためには恭子さんという人の力が必要だから

恭子さんを帰国させるために予定を早めている

何とかこの交渉で、全てを終わらせたいねオーストラリアの隠れ家から日本に戻るには、どんなに早くても丸1日は掛かるからね

今すぐ交渉が成立して、白坂創介を隠しておく必要がなくなったとしても恭子さんが帰国するのは、明日の午後以降ってことか

まあとにかく、あたしたちにはもう一人頼りになるお姉さんがいるってことは覚えておいてよっ

寧さんが、オレとメグに微笑む

でもさっき言った、ガード役のできる人材ってのは、恭子さんとは別に必要なんだよ恭子さんも、あたしと同じで表に出ないで行動する方が良いタイプだからね公にガード要員が勤まる人は、やっぱり欲しいんだ今の黒い森には、守らないといけない人が増えているからね

マルゴさんはそう言った

こちらがそこの子を捕まえたということだけで、市川老人と取引しているわけだよね

そうだオレたちは、マナを人質にして取引のカードにしている

それなら敵だって、みすずさんや恵美ちゃんや吉田くんを拉致しようとしてくるかもしれない

敵だって、人質を取る作戦に出るかもしれない

今まではミナホだけをガードしていれば良かったミスター・ヴァイオラに対しては、寧だけをねでもこれからは、複数の人間を同時にガードしないといけないだから、警護役の人数がいる

それもあたしや恭子さんみたいに陰からこっそりガードする役と、敵から丸見えでいいから直接対象者の真横に立ってガードする人間が、同時に居た方がいい敵の襲撃を受けた時に、守るのに徹する人間と攻撃に転じる人間に分かれることができるからね

うんなるほど

ぶっちゃけ、ガード役らしく見えるだけの人でもいいんだ相手を警戒させるだけでも、今は効果がある

そんな人がいればいいけれど

確かに、うちの高校の中にはいそうじゃないな

ん、マルちゃん来たみたいだよ

寧さんが監視カメラの映像を変える

うちの高校の玄関先に駐まった黒塗りのベンツから

市川老人が現れる

その次に降りてくるのは綺麗な中年女

マナが呟いた

画面の中緑色のスーツを着た不安そうな表情の女性は、白坂老人の後ろを追う

この人が料理評論家の白坂瑤子

別のカメラが、女性の顔を正面から捕らえる

確かに、雪乃とマナに似ている

おや、もう一人車を降りたね

マルゴさんの声に元のカメラの映像を見ると

確かに、もう一人黒眼鏡を掛けた、スーツ姿の男性が降りてくる

黒い鞄を抱えている

あれは、誰だか判るかい

マルゴさんがマナに尋ねた

白坂浩太郎さん本家の人で、弁護士さんです

市川老人は白坂家の弁護士を連れて来た

オレたちは、さらに映像に注目する

高校の事務所から、女性の事務員が出て来て市川さんたちを案内する

階段を昇って2階へ

校長室へ向かう廊下を行く

カメラを切り替えながらオレたちは、彼らの様子をジッと見ていた

やがて校長室のドアの前に到着する

女性事務員がドアをノックする

ミナホ姉さんの声がする

開かれるドア

カメラは校長室の内部の物に切り替わる

わざわざお越しいただいて、申し訳ございません

校長の机に座っていた、ミナホ姉さんが立ち上がって、客たちに挨拶する

あなたはもういいわ下がってこのお客様たちには、お茶も要りませんからこちらで用意します

ミナホ姉さんの言葉に女性事務員は頭を下げて、部屋から出て行く

ドアが完全に閉まったところでミナホ姉さんは、改めて頭を下げた

初めまして、黒森御名穂です

市川老人が強い眼でミナホ姉さんを見て、応える

市川伸一郎ですこれが、娘の

白坂瑤子です

マナの母親が、ミナホ姉さんを見る

舞夏はどこにいるんですかすぐに舞夏を返して下さい

ミナホ姉さんはフフッと微笑んだ

それは、交渉次第ですわそのために、来ていただいたのですから

市川老人が、憮然とした表情で言う

まずは、舞夏をここに呼んで貰おう話は、それからだ

それを決めるのは、我々ですこのままお嬢さんを残されて、お帰り下さっても私たちは構いません

市川老人の圧力を押し返す

舞夏さんも白坂創介さんもあたしたちの管理下にありますそれをお忘れにならないように、お願いします

市川老人は、それでも言葉を続ける

せめて、元気な顔を見せて欲しいここへ連れて来ては貰えないか

お断りします

ミナホ姉さんは、即断した

交渉が成立するまでは、生身のお嬢さんをお見せすることはできませんご安心下さいお嬢様は、この学校の敷地内にはいらっしゃいますから

ミナホ姉さんは、意地悪く微笑む

学校の外で待機なさっている部下の方々を捜索のために侵入させるのは、お止し下さい学校というところは、関係者以外の立ち入りは禁止ですから昨今は、色々とうるさいですからね無茶をなさった場合は、すぐに警察に通報します

マナの母親が、ミナホ姉さんに叫んだ

それなら、あたしたちだって警察に通報します今すぐ舞夏を返して下さい

ミナホ姉さんは、冷たい眼で彼女を見た

それでは、白坂家も市川さんの家も、大変なことになりますが構いませんねあなたも、二度と料理評論家のようなお仕事はできなくなりますよお嬢さんの将来にも、傷が付くことになりますが

マナの母親は、それでも止めない

全部、悪いのは創介さんなんでしょうあたしたちには、関係ありませんっ

どうやらマナの母親は白坂創介のしてきた悪行について、父親である市川氏から聞いているようだった

それを知った上で自分たちとは、関係無いと言う

あなたは、白坂創介氏の奥様ではないのですか

夫は夫ですあたしたちとは別の人格です

そういう理屈が通ると本当にお考えなんですか

ミナホ姉さんの言葉にマナの母親は口籠もる

白坂創介氏が、売春組織を運営してことはご存じなかったのかもしれませんそれも、一般の女性や少女を無理矢理、拉致監禁、強姦して売春婦に仕立て上げていたことは

ええあたしたちは、何も知りませんでしたみんな、創介さんが勝手にやったことですあたしや父や娘の舞夏には、少しも関係の無いことです

確かに、まだお若い娘さんには関係のないことかもしれませんしかし、白坂創介氏の奥様である瑤子様には道義的な責任がございますでしょう

責任

マナの母親が、驚いた顔をする

まさか、売春組織をやっているとまでは想像なさっていなかったとしても白坂創介氏が、何らかの法律的に際どい行為をしているということは知っていらっしゃいましたよね何人もの女性と関係を持ち子供も産ませているということは

ミナホ姉さんは笑った

知らないはずはございませんわ奥様は、白坂創介氏との離婚を考えて、すでに興信所に調査を依頼していたのでしょう

ギョツとする、マナの母親

白坂創介氏が、犯罪行為をしているということはご存じでしたよね

そんなこと、あなたには関係ありません

逆ギレする白坂瑤子

実に、雪乃やマナとよく似ている

こういうところを見ると親子なんだなって思う

関係ありますわあたくしも、白坂創介氏の被害者の一人ですから警察を呼んで下さっても結構ですよ全てを洗いざらい、お話致しますから白坂創介氏が、十二歳のあたくしをレイプし、売春を強要したことを公共の場で申し上げますわ写真も映像も残っています創介氏は、ご自分のレイプを撮影するのがお好きな変態でいらっしゃいますから

ミナホ姉さんの言葉にマナの母親は、何も言い返すことができない

法律上のご夫婦でしたら旦那様が悪事に手を染めていることについて知っていたなら、奥様には諫める責任がございますよね旦那様の行為を黙認しておきながら、自分は無関係だとおっしゃるのは、少々無責任すぎると思いませんか

ミナホ姉さんはジッとマナの母親を見る

マナの母親はミナホ姉さんから、眼を反らした

瑤子、黒森さんに謝罪なさい

市川老人が娘に言う

でもお父様どうして、あたしがこんな女に

言葉を選びなさいっ舞夏が人質になっているんだぞっ

老人は、厳しく娘を叱責する

こちらの方が立場が悪いさあ、瑤子

父親に命じられてマナの母親は、不承不承、頭を下げる

ちょっと言い過ぎたかもしれませんわごめんなさい

マナの母親の口調は少しも謝っているようには聞こえなかった

娘もこう言っている創介くんについて、我々が監督不行届だったということは認めよう申し訳無かった

市川氏も、ミナホ姉さんに頭を下げるが

心の中では、謝罪する気なんか全然無いことがよく判った

とにかくお座り下さい立ったままでは、お話もできませんわ

ミナホ姉さんは市川氏たちに椅子を勧めた

腰掛ける市川氏たち

ミナホ姉さんも校長の机に座る

克子、市川様にお茶を差し上げて

克子姉は、すでにお茶の用意を済ませていた

市川氏の前に、お茶を置く

あたしも、白坂創介さんにレイプされた女の一人です十六歳で拉致監禁され、売春を強要されましたわ

微笑みながら克子姉は、市川氏らにそう言う

その眼は冷たい

ところでもう一人の方は、どなたですかあたくしは、市川様とお嬢様のお二人だけをお呼びしたはずですが

ミナホ姉さんの眼がもう一人のスーツの男性に向かう

男性は、ぺこりと頭を下げ

申し遅れました私は白坂浩太郎と申します白坂の顧問弁護士の大畑先生の事務所に属しております、弁護士です

ミナホ姉さんが市川氏を見る

弁護士さんをお連れになって、どうなさるおつもりですか

市川氏の代わりに、弁護士の男が話す

いえ私は弁護士ですが白坂本家の人間でもあります本日は、白坂家を代表して参りました

白坂家の代表

それは白坂家の現当主、白坂守次氏の代行としていらっしゃったということですか

ミナホ姉さんの言葉に弁護士はハンカチで額の汗を拭く

いいえそういうことではございません

白坂守次氏の意志に反して白坂家を代表することなんてできないはずでは

ミナホ姉さんの冷たい眼が、弁護士を射貫く

それはその当主の守次様は、現在、非常に感情的になっておりましてちょっと、冷静なご判断をいただけるような状態ではございません

この弁護士は、当主を無視してここに来たと言うのか

守次様以外の白坂家の面々は、みな全て同じ意見に到達していますですから私たちの意見が、白坂家の考えだと思っていただいて問題は無いと思いますいずれ、守次様にもご容認していただきますので

ミナホ姉さんは、クククと笑い声を上げた

白坂の家では、当主である守次氏の意見が絶対なのではありませんかそういう家だと聞いていますが

それはあの、そうなのではありますが

白坂家のビジネスの根幹である新聞社のオーナーでいらっしゃるわけですし全てのグループ企業の大株主でいらっしゃいますよね

ええ確かに、私たちの家は守次様を中心に結束していますしかし、今回のことは、家の存続に関わる大きな問題です守次氏は、私たちが絶対に説得いたしますどうか、私たちを信じていただきたいと思います

白坂の家の人間の言うことを、どうして信じられるって言うんだろう

まあいいでしょうとりあえず、ご当主以外でまとまったという意見をお話し下さい

ミナホ姉さんの言葉に弁護士は話し始める

まず白坂家は、白坂創介氏を追放致します創介氏については、どのようになさっても構いません

それは、白坂家は白坂創介を見捨てるということですね

マナがうっと声を上げる

白坂の家はマナの父親を切り捨てた

はいただし創介氏の身柄は、一度、白坂家にお戻しいただきたい

どういうことですか

いや、別にどういうことでもないのですが創介氏は、現在海外に居るのですね

ええオーストラリアにあたくしたちの仲間が、監禁しています

では、帰国時に一度、白坂家へお戻しいただけませんかそれから、改めて、そちらに身柄を引き渡します

納得できるか

どういう理屈だ

そういう約束だけしておいて創介氏を、白坂家の中で処分するおつもりなんですね

処分て

殺す気なのか

白坂家は自分たちの手

いえ、そういうことではありませんあくまでも、形式上のことですどうか、白坂家の顔を立てるということで白坂創介氏の身柄を一度、ご返却いただきたいのです

弁護士は、滅茶苦茶なことを言う

それから山峰恵美も、こちらに引き渡していただきたいと思います

メグも

山峰恵美は、わたしたちの一族の人間ですそちらにご迷惑をかけるのは、申し訳ありませんわたしたちが、責任を持って養育致します

弁護士の顔は無表情だった

それはまるで、メグに対する死刑宣告のようで

メグがオレの手を強く握りしめる

大丈夫だオレがついているから

オレは、メグの身体を抱き締める

ああどこかの地方の家に閉じ込めるつもりですね恵美を飼い殺しにするおつもりですか

いえいえ、そういうことではありませんわたしたちの手で、立派に教育をして彼女に相応しい家に嫁がせます

彼女に相応しい家って

これは守次様の承認を得てはいませんが、白坂家の総意ですどうか、信用していただきたいこの通り、念書も用意してあります

弁護士は鞄から一枚の紙を取り出した

そんな念書を貰ったって

当主が認めていない物が、効力を発するわけがない

舐めていやがる

馬鹿にしている

オレたちを

黒い森を

こんないい加減なことで、オレたちが白坂家の思い通りになると考えているんだ

まったく馬鹿にされたもんだね

あちゃあ先生、あれ、マジで怒っているよ

ミナホ姉さんは暗く微笑む

結局そういうお考えですか白坂創介も、恵美も闇に葬るおつもりなんですね消してしまえば、白坂家には傷が付かないと

弁護士は

端的に言えばそういうことです白坂家の力を甘く見ないで下さいわたしたちはメディアを自由に操ることができますお判りですね

ニッと笑う弁護士

こいつは最初っから、こちらに譲歩させるつもりなんだ

守次くんの承認の代わりに、僕が約束しよう創介くんの身柄は、必ずそちらに返す僕の約束なら信用して貰えるだろう

市川老人も平然とそんなことを言う

こいつら自分たちの立場が、全然判っていない

オレたちみたいな下の人間は白坂家や市川家みたいな名家には逆らわないのが当然だと思っていやがる

えっと、マジで遅刻しそうなので

働いてきまーす

139.交渉.2

もちろん無償でとは申しません

白坂本家の一員である白坂浩太郎弁護士が、ミナホ姉さんに言った

三千万円でいかがですか

交渉現場の映るモニターを見てマルゴさんが苦笑する

安すぎるよ全然、話にならないね

まず前金で千五百万円、お支払いします残りは、舞夏さんと山峰恵美さんをお返しした時に、五百万白坂創介氏の身柄をお渡しいただいた時に、一千万を分割してお支払いしますどうです、あなた方にとってもそう悪い取引では無いと思いますが

舞夏には、僕も一千万出そうそれでどうだね

弁護士の話に市川氏も加わる

合計で四千万円なら、君たちも不服はあるまい

市川氏の勝手な言葉についに、ミナホ姉さんは笑い出す

ふふっくくくくっ

何がおかしいんだね

強い眼でミナホ姉さんに圧力を掛けようとする、市川氏

しかしミナホ姉さんは

いえね白坂家も市川家も所詮、こんなものなのかと思いましてね

それは、どういう意味だね

ミナホ姉さんは、冷たく微笑んで市川氏に言った

では、一応お尋ね致しますがそのお金は、どうやってわたくしたちにお支払い下さるおつもりですか

それは君の銀行口座を教えてくれれば、今すぐにでも秘書に連絡して振り込ませる

市川老人は、答えた

この様なことに会社の秘書の方を仲介させるのですか

僕の秘書は、僕に忠実だそんなことは、君の心配することではない

市川老人は、憤慨してそう答えるが

秘書って市川氏の会社の従業員だろ

こんな裏の事件に巻き込むべきでないことは、オレにだって判る

銀行振り込みなんて形に残る方法で、身代金を送金なさってもよろしいんですか

どこからどこへ幾らの送金があったか、銀行の記録にはっきりと残りますが

ミナホ姉さんの言葉に市川老人は、口籠もる

やっぱり、何も考えていないんだ

口では、ああしろ、こうしろってこちらに要求ばかりしているけれどそれを実現するための具体的なことについては、彼らは全然考えてきていない

どういうことなんだ、これは

そもそも市川さんの一千万円にせよ、弁護士さんのおっしゃる三千万円にせよどこから、捻り出して来るお金ですかまさか、お二人の個人資産からお支払いいただくのではありませんよね

ニヤリと笑うミナホ姉さん

そんなことこそ、あんたには関係のない話だ

市川老人は、大きな声で怒鳴る

いえねもし、お二人が市川様の会社なり、白坂家のグループ企業から資金を調達しようというお考えでしたならそれは、業務上の横領に当たりますよどちらの会社も、上場している株式会社でいらっしゃいます大きな額の使途不明金の存在は、会計監査で問題となると思いますが

そうだ数千万円というお金は、そう簡単に捻出できるような額じゃない

二人が言っている四千万円という数字は、具体的な支出先の裏付けがない限り、全く信用できない

こんなのただの口約束でしかない可能性の方が高い

ば、馬鹿にするな一千万くらいの金は、僕の個人口座からいつでも引き出せる

激高する、市川老人

ええ市川様はそうでございましょうしかし、白坂家は当主の認可が無いのなら、本家の資産は使えませんよね

そうこの弁護士はさっき、白坂家の当主はこの話に納得していないと言った

ならば白坂本家の口座から、三千万円というお金を引き出すことはできない

どうなさるんですまさか、一族の皆さんから頭割りでお金をかき集めるおつもりですか

困惑する弁護士

え本当に、何も考えてなかったのかよ

白坂一族が何人いるのか知らないけれど全員で三千万円集めるとなるとモメるだろうな

誰が集めるのかとか、一人幾らなのかとか

それは、これから話し合って、白坂の家の主要な人間で出し合います一人、五百万円くらいなら、どうにか集められるだろうと思いますので

何だよどうにかって

全部、推測の言葉ばっかりじゃないか

誰が幾らずつ出すのかいつまでに出すのかそのお金は、いずれ返ってくるのかあるいは返って来ないのか返ってくるのなら、それは誰が補償するのか問題は山積みだと思いますが

ミナホ姉さんは、さらりと言う

そうこれは本来、白坂家の一員である白坂創介個人の引き起こしたことだ

一族の他の人間からすれば、こんなことで自分たちの金を取られるのは心外だろう

オレなら、千円だって払いたくない

後から返還するという約束でもない限り、金を集めることなどできるはずがないと思う

そ、それは、いずれ白坂創介氏の個人資産を処分して、一族の人間には弁済しますおそらく創介氏の家と土地だけでも、三千万円程度にはなるはずです

弁護士は、額の汗をハンカチで拭いながら、また適当なこと答えた

おい、ちょっと待ちたまえ

市川老人が、弁護士に口を挟む

創介くんの資産は、創介くん一人だけのものではない資産の半分は、妻である瑤子の物だろう

それは、そうでございますが

これは全て創介くんが一人で起こした不祥事だこんなことになった以上瑤子は、創介くんとは離婚させるそれは判っているだろうね

はい白坂の一族の者が、市川様にご迷惑をお掛けしたことは、大変申し訳なく思っております

では、白坂家は当然、創介くんの資産の半分と慰謝料を払ってくれるんだろうね

市川氏の怒りの矛先はミナホ姉さんから、白坂弁護士に移る

あーらら、白坂創介の資産は半分になってしまった上、慰謝料まで取られることになった

それに雪乃と舞夏の大学卒業までの養育費もだ

市川氏の言葉に、弁護士はしどろもどろになった

何だよ白坂家と市川家の間でも、何をどうするのか全然決まって無いのかよ

これでは、白坂創介の家を売って、一族が立て替えた身代金を補償するという計画は実行不可能だろう

それはその一度、白坂家に持ち帰って、皆で相談致しますいえ、相談させて下さい私一人の一存では、今この場で何ともお答えしようがありません

これじゃあ、何の約束もできやしない

交渉としては、完全に失敗じゃないか

またあの、創介くんの娘さんたち雪乃さんと舞夏さんのことですが

弁護士の言葉に市川氏は

瑤子と二人の孫娘は、僕が引き取る今後、白坂家とは接触させるつもりは無い

それがその当主の守次様は、お二人を特に、雪乃様を大変可愛がっておられていまして創介氏の二人のお子様は、白坂家で引き取ると強く要望されていますので

市川氏が、カッとして弁護士に怒鳴る

そんなことは絶対に許さん二人は、僕の孫だぞ

し、しかし

もういいその件は、僕が白坂くんと後で話そう君では話にならんよ

は、はい、申し訳ございません

ななな何だ、こりゃ

そんな話、余所でやってくれ

つーか、こんないい加減な交渉を提示しておいて、マナは返ってくると本気で思っているんだこいつら

呆れて、モニター画面を見ているオレにマルゴさんが言った

吉田くん、マナちゃんのお母さんをどう思う

えどうって

ああいう、中年の女性に君は、性的な魅力を感じるかい

そんなことを急に言われても

オレは改めて、別のモニターに映し出されている雪乃とマナの母親を見る

父親である市川氏の前だからほとんど黙ったままだけど

物凄い怒りの形相でキキッとミナホ姉さんを睨み付けている

どうして、自分たちがこんな目に遭うんだと言わんばかりに

マスコミによく顔を出す料理評論家の時の愛想の良さなんか微塵も無い

とにかくミナホ姉さんを見下して、怒っている

どうしょうもなく酷い顔をしている

うーん正直、あんまり近寄りたくないですねああいう、偉そうな態度のオバさんには

そうだろうねじゃあ、あのオバサンをレイプする計画は無しにしよう

吉田くんは、ずっと母親不在の状態で成長してきているからねマザコンの気は無いのは判っていたんだ君の場合コンプレックスを形成する以前に、本当のお母さんというものを知らないわけだからね

オレは何を言われているかよく判らない

吉田くんは、自分のお母さんを一言で表すとどうなる

信用できないですかね

別の言葉なら

得体が知れないです

うんオレは、あの人が良く判らない

そして知りたくもない

二度と会うつもりはない

会いたくない

存在を忘れてしまいたい

そういう吉田くんだから克子さんや渚さんの母性本能をくすぐるんだと思うよ

君には、母親みたいな存在が自分を保護してくれるっていう実感を得たことがないんだろうどんな時でも、自立せざる得ない状況で生きてきたから誰かに頼るという考えが無い守られたいという感覚に欠けている

メグが振り向く

はいあたしの心もいつも、ヨシくんにくすぐられています

えメグ

ヨシくんは、いつも自分一人でがんばろうとするからあたしの前では、もっともっと甘えてくれればいいのにって思っているんです

だから君の女たちはみんな、君を抱き締めてあげたくなるんだと思うよ

正直、よく判らないけれど

あの話を戻しますけれどミナホ姉さんの復讐計画の中には、オレにあのオバサンをレイプさせる予定もあったってことですか

ああミナホは白坂創介を苦しめるために、ありとあらゆる計画を練っていたからね白坂の妻を犯すというのは、もちろんあったよ

それならミナホ姉さんが望むのならオレは、やりますよ

オレはミナホ姉さんの弟だ

ミナホ姉さんが望むのならどんなことでもする

そんな無理する必要は無いんだマナちゃんが、心配しているじゃないか

マルゴさんの言葉にマナを見る

マナはこちらに聞き耳を立てていた

ジッと、オレたちの様子を伺っているのが判る

おそらくミナホも望んでいないと思うしねあのオバサンを君がレイプするんじゃああのオバサンにとってはご褒美になっちゃうよ若い男の子に抱いてもらったってね

マルゴさんは、そう言って笑った

それにあの奥さんを見ている限り、白坂創介との間に夫婦としての愛情は全く存在していないねそれなら白坂創介に、奥さんをレイプしているところを見せたって何の復讐にもならないよ本人たちは、痛くもかゆくも無いんだから

確かにさっきから誰も、白坂創介の安否を尋ねない

白坂創介のことは、みんなどうなってもいいと思っているんだ

誰も彼のことを心配していない

心配しているのは家のスキャンダルのことだけで

そう言えばマナのことすら

そんなに心配しているようには見えないけれど

どうなってんだ

さあモニターに集中して、そろそろミナホが次のカードを切ると思うよ

マルゴさんの言葉にオレたちは、隠しカメラの映像に眼を戻す

その様子では、お二人ともご存じないみたいですね

ミナホ姉さんが不意に、市川老人と弁護士に話し掛けた

白坂創介氏は、とある暴力団に多額の借金をしていますその返済をすれば、彼の資産なんて何も残らなくなりますよ

市川氏ら三人が、ギョッとした顔をする

夫婦の資産は法律上、共同財産です瑤子様はまだ、白坂創介氏の奥様でいらっしゃいますから創介氏の残した借金を支払う義務があると思いますが

どうして、そんなお金をあたしが払わないといけないんですかッ

マナの母親が、キッとして叫ぶ

瑤子、黙りなさい

市川氏が娘を制しようとするが

でも、お父様何だって、あたしたちがこんな女にバカにされないといけないんですか

それが本音か

こんな売春婦に馬鹿にされてそれでもお父様は、腹が立たないのですか

うんオレ

こんなオバさんは、抱きたくない

死んでも嫌だ

あたしたちだって望んでこうなったわけではありません

静かにミナホ姉さんは、口を開いた

あたしたちは白坂創介氏に、無理矢理、売春婦に堕とされました

そんなことあたしには、関係無いって言ってるじゃないですかッ

マナの母親は、叫ぶのを止めない

あダメだこれじゃあ

オレの横でマナが呟いた

ママがこんなじゃああたし、助からない

オレはマナの肩を抱きしめる

大丈夫だ大丈夫だから

オレの言葉にマナが小さく頷く

モニターの中では

市川様

冷たい眼でミナホ姉さんが、老人を見る

な、なんだね

マナの母親をなだめていた市川氏が、急にミナホ姉さんに声を掛けられてギョッとする

昨日の夜にお電話で舞夏さんをお預かりしていることをご報告してから市川様には十二時間以上の猶予を差し上げましたしかしどうやら市川様は、その時間を何一つ有効にお使いにはならなかったようですね

ミナホ姉さんの顔が、妖しく微笑む

な、何を言うんだぼ、僕は、白坂家とも話し合って君らにとって有利な条件を提示しているつもりだ

よく言う

自分たちだけに都合の良い話をしているだけじゃないか

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