Don’t Move
ようやくロザリンドが、立ち上がってピストルを構えようとする
空気を切り裂く音がしてそのロザリンドの手に、小さなナイフが刺さった
手裏剣
最初に突入してきた、青い覆面の忍者さんが打ち込んだ
青い覆面の中の顔が、ニッと笑ったのが判った
それでその人は、女の人だってことが判った
Fucking Bitch
青い覆面の忍者が、さらに二発ガス弾を地面に叩き付ける
シュバババッ
催涙ガスの白い煙が周囲に立ちこめる
Come on
煙で、視界が閉ざされた瞬間
あたしたちの手を引いていた黒い覆面の人は、進行方向を90度右に変えた
ロザリンドたちの追撃を躱すためなんだろう
どっちに逃げたかを攪乱するために
煙の中に全てを置き去りにして
あたしたちは、走った
ドキドキした
全身をアドレナリンが、駆け巡る
うわぁぁっ
ケイちゃんが突然、泣き出した
耐えきれなくなったらしい
あたしは、ケイちゃんの身体を抱き締めて
黒い覆面の忍者さんに付いて走る
しばらく行くと、ホテルの従業員用の通路があった
そこを抜けてホテルの裏道に出る
眼の前に1台のライトバンが停まっていた
その後部のスライド式のドアは、すでに開いていた
Hurry up
黒い覆面の人の命じるままに
あたしは中へ飛び込む
ケイちゃんも
黒い覆面の忍者さんが、飛び込んでドアを閉める
青い覆面の忍者さんは、助手席に乗り込んだ
ミーナ、出して
猛スピードで車が発進する
ホテルが遠ざかる
車の窓の外ホテルの裏庭から、白い煙がモアッと上がっている
あそこがさっき、あたしたちの居た場所
あれから、きっと3分も経っていない
なのに、あたしたちは
ロザリンドから逃げられた
どうしょう、どうしよう、お姉ちゃん
車の中で泣きながら、ケイちゃんがあたしにしがみついて来る
ヴァイオラはシザーリオ・ヴァイオラは、きっとボクたちを殺しにくるよおっ
ここはロサンゼルスは、ヴァイオラの庭だ
この街に居る限り
あたしたちは無事ではない
ホテルの監視カメラに映ってると思うから、二人ともまだしばらくはマスクを外すんじゃないよ
青い覆面の忍者さんが、黒い覆面の人と運転手さんにそう言った
ソースケの野郎に嫌がらせするだけのつもりだったんだけど迷子を二人、拾ってくるハメになるとわねえ
助手席の青い覆面さんがあたしたちを、見る
動いて正解よアメリカから奴隷を購入するなんてルートを、白坂に築かれたらたまらないわ
運転席の女性がそう言った
まあねこの子たちを買い取ろうとした資金だって、うちの女たちが身体を張って作った金だろ娼婦から絞り取った金で、奴隷を買うなんて冗談じゃないね
青い覆面の人が吐き捨てるように、そう言った
でも、日本人が何でロサンゼルスで奴隷にされていたんだろうね
判りませんあたしは、白坂のパソコンのメールを盗み見ただけですから
二人の会話をあたしは、心配そうに聞いていた
これから、自分たちがどうなるのか
不安でいっぱいだった
All right! I am at your back.!
あたしたちと一緒に後部座席に座っていた黒い覆面の人が
あたしたちに、そう言ってくれた
その人も、女性なんだって気付いた
それが
あたしとマルちゃんの最初の出会いだった
で、これからどうしたらいいかしら恭子さん
運転席の人は、青い覆面の忍者さんを恭子さんと呼んだ
スタジアムのパーキングへ行ってそこに予備の車を用意させているからそっちに乗り換えてとにかく、同じ車のままじゃマズいわさっきのホテルから遠ざかったし、そろそろマスクを取りましょうかマスクマンが運転している車なんて、町中じゃ怪しすぎるもんね
そう言いながら彼女は、青い覆面を脱ぐ
黒い髪が中から零れる
忍者さんは、三十半ばの日本人に見えた
ロサンゼルスで長く暮らしている日本人みたいな雰囲気だ
目が吊り上がっていてちょっと、お化粧が濃い感じの
あたしたちの横の黒い覆面の人も素顔を晒す
綺麗な金髪の背の高い少女
マルちゃんが、あたしとケイちゃんに優しくニッと微笑んでくれた
信号で停止したところで、運転席の人もマスクを脱ぐ
冷たい印象の表情をした20代の女性
そう弓槻先生とは、こうして出会ったの
ブルルルルルッッ
前の座席シートの物入れの中で携帯電話が震え出す
あたしのだわきっと、ソースケね
恭子さんと呼ばれた人が携帯の画面を見る
やっぱりミーナもソースケの反応が知りたい
もちろんです
オッケイじゃあ、やつの音声が聞こえるようにしてあげる
恭子さんは、携帯電話と車のスピーカーに繋げた
そして電話に出る
はーい、世界のアイドル・恭子ちゃんでーすっ恭子ちゃんは現在、電波の届かない場所に居るか、電源が入っていませーんっどひひびーんという音がしたら、30秒以内にご用件を録音して下さいねえっはい、どびびびびーんッッ
車のスピーカーから
男の日本語の声が拡大されて聞こえてくる
どういうつもりだ
十秒経過
私の取引を邪魔するとは、どういうつもりなんだと聞いているんだ
二十秒
おい、恭子
二十五、六、七、八、九
ふざけるなっ
男の怒鳴り声が、スピーカーをワンワン唸らせる
あーら、ふざけているのはどちら様なんですかねえ
恭子さんはお茶らけて返事をした
黒い森の資金を使って、高額な買い物をする時には運営員会の承認を必要とするそういうルールになっていたと思いますけれど
そのようなルールは、お前たちが勝手に決めたものだろう私は関知していない
ソースケくんそのセリフ、香月様の前でも言えるのかなぁ
恭子さんの言葉に電話の相手は、口籠もる
恭子ちゃんは、香月様に派遣されたお目付役だってこと判っているのかなそれも、これも、みぃーんな、君が黒い森を乱脈経営して、運営状態をメタメタにしたからなんだけど
いや私は今後の黒い森の発展をために
ふーん、それで海外から奴隷少女を買うことにしたわけ
国内で少女娼婦を仕入れるのはリスクが大きすぎるこれからは、海外にもルートを求めるべきだと私は考えたのだよ
男の言葉に運転席の先生が呟いた
そのリスクが高すぎることを散々やってきた男がいまさら
男の発言は続く
私は、黒い森の代表者のはずだ私が、そういう運営方針を選択した以上君たちには、私に従う義務があると思うがね
それから探るように尋ねた
それで二人の奴隷は、君がキープしているのか
恭子さんがあたしたちを見る
居るわよここに
そうかなら、そのまま私のところへ連れて来たまえ
ふーん、どうするつもりなわけ
高い金を払って買い取るはずだった商品を無料で手に入れたそういうことなら、運営員会も文句はあるまい
あたしたちは
やっぱり、売られるんだ
主人が代わるだけでこれからも、奴隷なんだ
あたしは、ケイちゃんと顔を見合わせた
ケイちゃんは震えていた
でもいい
今までは、あたしのためにケイちゃんが犯されてきたんだもの
これからはケイちゃんを守るために、あたしが身体を捧げよう
そう決心したわ
それで、やっと同じになれる
あたしもケイちゃんと同じに
恭子さんはアハハハと大きな声で笑い出した
恭子、何がおかしい
激高する電話の男
あんたさあ自分が誰と取引していたのか、判っているのかい
ロザリンド・オーランドー女史が、何だと言うんだね
恭子さんは、ハッと鼻でせせら笑った
その女は、ロサンゼルスで一番の殺人組織のボス、シザーリオ・ヴァイオラの妹だよあんたは、裏社会で最も恐れられている男の顔に泥を塗るつもりかい
そ、それは本当なのか
こんなことで嘘を吐いてどーすんのよまさか、彼女には、ソースケとあたしとの関係を話していないでしょうね
私の敵対組織の人間が、取引の邪魔に来たんだろうとだけ話した
ふーん、あんたにしては上出来だねあちらさんには、ブラジルの日系人の裏組織ってことにしておいてあたしの名前を出してくれて、構わないからあたしは、公式にはそこ組織の構成員ということになっているからあたしが、日本に戻ったことは誰も知らないからねブラジルの組織とあんたがトラブルを起こしているということにしておいた方がいい
くれぐれもあんたとあたしが、同じ組織の人間だってことは言うんじゃないよとばっちりで、殺されたくなかったらね
気、気を付ける
とにかくこの二人は、あたしとミーナが預かるから
そう言って恭子さんは、電話を切った
スタジアムで車を換えて
レストランの駐車場で、また車を換えた
車は、どんどん高級車に換わっていく
どこに行くんですか
と、あたしが尋ねると
恭子さんは、
マリブ・ビーチだよ
って答えた
金持ち用の貸し別荘を借りてあるんだ日本の知り合いの会社の名前でねこういう時は、ホテルじゃ人目に付きすぎるからね金持ち用の別荘地なら、セキュリティも万全だし
そして車は、ビーチに着いた
ずっとロサンゼルスに居たのに
海を見るのは、初めてだった
潮風と青い空が
あたしとケイちゃんの心を和ませた
さて取りあえず、あんたたちの話を聞こうか
貸別荘のリビングルームで恭子さんが、言った
先生もマルちゃんも居た
その別荘は、ビーチの先の岩場のところにあって
リビングルームから、入り江に繋いである大きなモーターボートが見えた
まずは、話を聞かせて貰わないとこれから、あんたたちをどうしてあげたら良いのか検討できないからね
あたしはケイちゃんの顔を見た
ケイちゃんは迷っているようだった
それはあたしも同じだった
鏡を見ているようにケイちゃんの表情の中に、あたしの困惑が見て取れた
話しなさい助かりたいのなら
先生が冷たく、そう言った
生き続けたいのなら、何でも利用しようと思わないとダメよ貪欲にねあたしたちをどうしたら利用できるか必死になって、考えなさいそうじゃなかったら、あたしたちから逃げる方法を考えなさいあたしたちも、リスクを背負ってあなたたちを奪取した以上簡単には、逃がさないけれどね
先生の口調は、ドライだった
間違ってもあたしたちを信用できそうだとか思わないでね信用できるわけがないでしょあたしたちも、裏の世界の住人ですからね
冷たい眼で、そう言った
信じたら、馬鹿を見るのはあなたたちよだから利用できるかどうかだけを考えなさい
信じられるかではなく利用できるか、どうか
あたしたちも、そうよあなたたちが何者で、どうして日本人なのにアメリカで奴隷にされていたのかは判らないけれどあなたたちの存在が、利用できると思ったら力を貸してあげるわ
もし、利用できないと判断した場合はどうなるんです
あたしは先生に尋ねた
先生はフツと微笑んで
あたしたちの組織は、殺しはやらないのよだから、ロサンゼルスの街のどこかにあなたたちを捨てるわどこでもいいわよ日本領事館の前とかね
日本領事館は、無理だ
絶対に、ロザリンドが監視している
ボ、ボクはお、お尻で、男の人を楽しませることができます
それまで、ずっと黙っていたケイちゃんが突然、立ち上がって、大声で叫んだ
口も使えます何時間でも、フェラチオしますボクのフェラチオは、上手くなったってシザーリオさんも褒めてくれていましたボクは、男の人の精液便器です何人とでも、誰とでも、どんな人の命令でも聞きます
先生がケイちゃんに言った
悪いけれどあたしたちは全員女なのゲイに用は無いわ
ボ、ボクは、ゲイではありませんっ
それならボクを売って下さい道端で、男の人に身体を売っても構いませんですから、お姉ちゃんをお姉ちゃんだけは、助けてあげて下さい
ケイちゃんが床に手を付いて、頭を擦り付ける
あたしのために
いつも、あたしのために
あたしにはこの人たちにとっての利用価値なんてあるんだろうか
あたしには、何ができる
カジノのイカサマ師としての技術は
ううんあんなの、所詮、子供だからって見逃してくれていただけ
本当は大したことはできない
それならあたしに残っているのは
あたしは、ヴァージンですまだ、男の人としたことはありません
この身体しか無い
あたしをセックス奴隷として売って下さいあたし、どんなことでもしますだからケイちゃんを自由にしてあげて下さい
これ以上
あたしのために、ケイちゃんを苦しめるわけにはいかない
あんたたち、何か勘違いしているんじゃないの
恭子さんが呆れた様に、そう言った
確かにあんたたちは、かなりの美少女に美少年だけどねだからって、あんたたちをセックス奴隷にしようとする人間なんてのはね、世の中にはそうそういないんだよいてたまるかっ
恭子さんは怒っていた
そういうやつらはホンモノの変態のゲス野郎でクズ野郎さあんたたちを支配していたシザーリオ・ヴァイオラは、そういうクソ野郎だったのかもしれないさっき、あんたたちを買おうとした白坂創介は、間違いなくクソッタレだでもね世の中全体が、そんな奴らばっかりだと思ったら、大間違いだからね
大人の女性が居た
普通の人間のモラルを持つ
この人はシザーリオ・ヴァイオラたちとは、違う
あたしはねこういうのが一番、嫌なんだよ身体を売れば何とかなるって考えがね別に、あんたたちに対して、怒っているんじゃないよあんたたちに、そういう考えを吹き込んだ、大人に腹が立つんだそいつら、みんな死ねばいいんだよ
恭子さんはビールを開けて、ゴクゴク飲む
二人とも、あたしに約束しな無事に日本へ帰ったら、ちゃんと学校へ通って、卒業してきちんと働いて生活するってロサンゼルスでの生活のことは、忘れる二度と、自分の身体を売るなんてことは考えないって
吊り上がった眼があたしたちを見る
あたしと約束するのならあんたたちが、安全に日本へ戻れるように、あたしが手配してあげるよ
恭子さん
先生が心配そうに、恭子さんを見た
責任はあたしが取るだから、任せて
あたしは、あたしのやりたいようにやるんだよミーナの考えは判るけれども、そこは譲れないよ
恭子さんが再び、あたしたちを見る
この子らには世の中は、悪いことばかりじゃないってことから教育してあげないといけないんだよ
あたしたちの横で、マルちゃんはずっときょとんとした顔をしていた
日本語が、判らないんだろう
そうこの部屋での会話は、ずっと日本語のままだった
とにかく何でこんなことになったのか、頭から話しな内容が、グチャグチャになっても構わないから頭の中にあるものを、全部、吐き出すんだ
恭子さんがそう、言ってくれたから
あたしは話し始めた
お父さんとお母さんが、砂漠で殺されてから
今までに起こったことを全て
ケイちゃんは黙ったままだった
だからあたしが一人で話す
途中で時系列がわやくちゃになったり
感情が高ぶって、上手く言葉にならなくなったりした
それでも
恭子さんと先生は、聞いてくれた
あたしとケイちゃんに起こった物語を
オーケイ、大体判った
恭子さんが言った
恭子さんそのシザーリオ・ヴァイオラという人物について、どれくらいご存じですか
先生が恭子さんに尋ねた
ヤバイ人間だってことは、知っているよ人殺し組織のボスで金とか名声には、全然興味が無いって男さだから誰も、そいつの顔を知らないんだ
顔を知らない
シザーリオ・ヴァイオラへの殺しの依頼は、ロレンザッチョ・バンディーニって代理人を通して行われるこの男は、みんなよく知っている裏組織に顔が広いし社交的なことが大好きな男で、パーティなんかにも頻繁に顔を出すからねアカデミー賞の受賞パーティには、毎回、顔を見せているって男さ
恭子さんは、ぐびりとビールを飲んだ
外との繋ぎは、全部そのロレンザッチョ・バンディーニがやっているだから殺しの実行者である、シザーリオ・ヴァイオラの顔は誰も知らないそもそも、シザーリオ・ヴァイオラってのは偽名だからねイタリア系アメリカ人だってことは判っているけれど
すると、この子たちがシザーリオ・ヴァイオラの素顔を知っているっていうのは
とても危険だねそれだけでも、消される可能性は大きい
あたしたちには
ヴァイオラによる死の影が、くっきりと浮かんでいる
早いところロサンゼルスから連れ出して、日本へ連れて行くしかないね
でも、パスポートがありません
あたしたちは
シザーリオ・ヴァイオラに連れ去られる前の物は、何も持っていない
だからって、日本領事館はダメだよあんなところ、裏組織の人間がやまほど関わっているから
アメリカ人スタッフからの情報が、すぐにヴァイオラに届くと思っていいだろうねさて、どうしようか日本の偽造パスポートを手に入れるのは、難しいしね
恭子さんは、クスッと笑う
そんなに心配そうな顔をするんじゃないよ
ここはアメリカだよ世界中の国の人間がいるんだ日本のパスポートが難しいのなら他の国のパスポートを手に入れればいいんだ
木曜日です
このシリーズは、三回で終わりませんでしたごめんなさい
もうちょっとだけ、寧さんの悲しい過去話にお付き合い下さい
これが終わったら、朝の騒ぎ(セックス含む)と学校生活(セックス含む)があって、みすずの発表会(セックス含む)になりますので
ああ早く、学校話に入りたい
ロサンゼルスとかだと、調べ物が多くて書くのが大変です
しかも、ストーリーを考えながらですから
本当なら資料として、映画の二、三本も見たいのですが
この平日の忙しさでは、執筆するだけで精一杯です
あ、白坂創介のキャラがなかなか定まらなかったのですがもう、シャアでいきます逆シャアの頃のシャアみたいに話す、オッサンです
それで行きます
いつのまにか、総合評価が一万ポイントを超えました
最初の1ポイントをいただいた時に、よつばのお父さんのようにパソコンの前で小躍りしたことを覚えています
あれから半年ですか
いや本当に、ありがとうございます
180.チャイナタウン(その1)
まああたしたちに、任せときな
恭子さんは、そう言うとビールを飲み干した
そして、先生の方を見る
この子たちに掛かる経費は、あたし持ちにしておくれこれは、あたしが個人的にすることなんだからこの先のことも、ミーナとマルゴは関わらなくていいからね
そういうわけにはいきませんわ白坂創介が、この子たちを奴隷として購入をしようとした段階でこの件は黒い森と関わっています
いいのかい損するだけだよ
恭子さんは、ニッと笑う
ですから、黒い森の資金は使いません経費は全て、白坂創介に請求します
あのクソ野郎が、払うと思うかい
払わざる得ないように仕向けます
先生は、真顔で答えた
ロサンゼルスの裏社会の人間なんかと接触した白坂が悪いんですから
これでいいのだろうかと、思った
あたしたちはこの人たちに、何も返せない
身体を売るなと言われたら
もう、あたしたちには何の価値も無いんだから
ケイちゃんも暗い顔をしている
じゃあ、いいねミーナ
はい恭子さんにお任せ致します
よし
恭子さんは、携帯電話を取った
そして電話を掛ける
ご無沙汰だね、あたしだよ、恭子だああ、あたしがあんたの所に電話を掛ける理由なんて決まっているだろそうだパスポートが欲しい2枚だアメリカよりも、カナダがいいね幾ら掛かるこの前よりも、高いね値上げしたのかいその2倍払うから、急いでやってくれないかな明日の朝までにオーケイ、その額でいい即金で払うよ写真とデータの打ち込みは、受け取りの時にできるよねああ、写真は、明日、あんたの事務所に行った時に撮って欲しいんだ対応させるデータは、こっちで用意するあんたは、今夜中にパスポートの原紙だけ用意しておいてくれればいいからじゃあ、明日の朝、10時に行くから頼んだよ
恭子さんは、電話を切った
写真なら、ここでも撮れますメールで送った方が、早く仕上がるんじゃないですか
先生がそう質問すると、恭子さんは
そしたら、この二人の顔写真がパスポート屋から、外部に漏れるよロサンゼルス中に、偽造パスポートを欲しがっているような連中は何人もいるけれどあたしが、連絡したのは偽造パスポート屋の中でも、一、二を争うトップの職人だ腕は良いんだけどね口は軽い
恭子さんは二本目のビールを開ける
仕方ないよね、偽造パスポート屋ってのは、地元に密着していないとできない仕事だからねずっと同じ場所に住所を構えて、同じ電話番号で営業してなきゃならない誰かが偽造のパスポートを必要とした時に、あれ、連絡がつかねえあいつはどこに行っちまったんだなんてことなったら、商売上の仁義に欠ける
じゃあ明日、偽造パスポートを受け取ったら
一時間以内に、この子たちのパスポートを作ったってことが、シザーリオ・ヴァイオラに伝わるだろう2倍の料金を払う約束をしたのは、特急料金の手間賃じゃない少なくとも、あたしたちがそいつの事務所に居る間は、情報を外に漏らさないって確約を得るためにさ
恭子さんが、笑顔で先生に言う
ミーナ、覚えておきなこっちが、相手の立場を理解しているということをいつでもはっきりと示すんだ理解している上で交渉しているとねそして、相場よりも高い料金を払ってやるんだ絶対にケチくさいことはするんじゃないよ相手に対する敬意と評価は、金銭の額で伝えるんだそうすれば裏社会の人間は、あんたに対しても敬意を払ってくれるだろう信用と信頼は、そういうことの積み重ねでしか、獲得できない
判りました恭子さん
恭子さんは、ビールを一口飲んで再び、電話に向かう
ハロー、ハロー、ハローそうだよ、恭子だよイエーッ元気してたぁウッソーへぇジョンも元気あ、ジョン、誕生日のプレゼント喜んでくれたあれ、日本の子供たちにも、とっても人気があるんだよところでさそうそう、そういうこと戸籍を二つ買いたいの双子で、東洋人黒髪眼は茶色年齢は十四歳でいいやううん男女男女の双子ね二人とも英語は普通に喋れるから特に、日系人てことにしなくてもいいや料金は幾らウッソー、安すぎだよ友達だからって、ディスカウントしてくれなくていいんだからねちゃんと正規の料金を取ってホント、いいから判ったジョンは、まだ新しい自転車欲しがってるオッケー、それ、あたしがプレゼントするわいいのよ男の子は活動的な方がいいんだから恭子オバチャンからのプレゼントよそれからパトリシアの卒業式に着ていくドレスって、もう用意したオーケイ、パトリシアに好きなドレスを選んで貰って支払いは、あたしに廻してくれていいから何よいいのよ、友達でしょあ、でも趣味の良いドレスにしてねちゃんと、あなたとパトリシアの二人で相談して決めてね判ったあたしから、パトリシアにメールしておくわ必ず、お母さんと相談して選ぶことあんまり趣味が良くないドレスなら、買って上げないわよっっていいわよ、別にブランド物とかでもそっか、他のクラスメイトの着てくるドレスとのバランスがあるのねうん、あなたに任せるわいいのよ卒業式なんて、パトリシアの晴れ姿じゃない良いドレスを着なきゃ一生の思い出なんだから全然、気にしないでそうそう戸籍の方だけどうん、頼むわねできれば、今夜中にデーターだけでも欲しいんだけどごめんね、お願いするわじゃあ、またバァーイ
そして恭子さんは、電話を切った
カナダって広いし、まだ移民を受け入れている国だからね戸籍を手に入れるのは、他の国よりは楽よ今の家のお母さんとはずっと、友人関係をキープしているの地方都市のお役人さんだけどね友達には、色々と融通してくれる人だからだから、あたしも彼女の家族の誕生日は忘れないわ必ず、何かをプレゼントする仕事でカナダに寄った時には、なるべく会い行くしねお土産を持って彼女は裏社会の人ではないからあたしという裏社会の人間とも親交があるだけの一般人よだから、裏の人間とは、また別の対応をしないといけないの
今、考えると
あれは、恭子さんの先生に対する指導だったんだと思う
先生を鍛えるための
さて、これで明日までにパスポートに書き込むデータができるわあんたたちの偽の名前と偽の住所がね偽の経歴までは作っている余裕は無いけどとりあえずは問題なしね
恭子さんはあたしたちに、微笑む
偽造パスポートを手に入れる前後が、ちょっとした試練だけどね
恭子さんその後は、どういうルートで脱出しますか
先生が、恭子さんに尋ねた
そうだねロサンゼルスの空港は、チェックされていると思うから、車で他の都市へ出て、そこから国外へ出るルートだね
ラスベガスまで行きますか
その辺は、まだ決めないでおこうよシザーリオ・ヴァイオラの動きで変更できるようにしておきたいし最悪、東海岸へ出て逆回りで日本まで行くことになるかもしれないよ
ロサンゼルスから、直接、日本ではなく
ロサンゼルスから、ニューヨーク、ヨーロッパ経由で日本
日本に帰る
帰れるんだ
とにかく今夜はシャワーを浴びて、ぐっすり寝ておきな明日は、大変だからね
恭子さんはあたしたちに、そう言った
この部屋を自由に使って
簡単な夕食の後
先生が、あたしとケイちゃんにそう言った
あなたたちの着替えは、今、マルゴに買いに行って貰ってるわ
先生は、あたしとケイちゃんをじっくりと見る
ホント綺麗な双子ね、あなたたちは
二人ともそっくりね髪型のせいかもしれないけれど、二人とも女の子みたいね
ケイちゃんの表情がまた曇る
あたしも、白坂創介のメールを盗み見ていなかったらとっても綺麗な女の子の双子だと思っていたでしょうね
ロザリンド・オーランドーだったっけその人から、白坂にあんたが買おうとしている娘には、双子の弟がいる姿形は、そっくりだもし良かったら、一緒に弟も買わないかというメールが入ってたのそれを読んでいたから
先生は先にメールの文章で、あたしたちは男女の双子だと知っていた
だからケイちゃんを女の子だとは思わなかったんだ
ホント、綺麗ね
先生の言葉にケイちゃんは、うつむく
でもそのせいで、お父さんとお母さんは殺されてボクとお姉ちゃんは、奴隷にされましたボクは
ケイちゃんはシザーリオ・ヴァイオラに犯され続けた
過去に起きてしまったことは、もう覆せないわ今、どうするべきなのかだけを考えなさい
今どうするべきか
マルゴには男の子っぽい服を買ってくるように言ってあるわ今のあなたたちは、双子の女の子にしか見えない格好をしているけれど明日は、二人とも男の子のつもりでね
双子の男の子に変装する
変装って、やり過ぎるとかえって目立つからあなたたちが双子だってことは、隠しようが無いんだしせめて、今日とは逆のバージョンでいきましょう
先生はそう、言った
ケイちゃんと二人きり
久しぶりだった
しばらくは、あたしはカジノでの仕事があったし
シャワーを浴びてくるね
あたしはシャワールームへ行く
貞操帯を付けていない
あれはあのホテルの裏庭に落としてきた
シザーリオ・ヴァイオラの認可が無いのに
あたしは、貞操帯を外している
今夜は
ケイちゃんに、あたしを捧げられる
バスタオルを巻いたままだけの姿でシャワールームを出る
薄暗い部屋
ケイちゃんは、ベッドに腰掛けてうな垂れていた
本当に、ボクたち助かるのかな
ケイちゃんは下を向いたまま、そう言った
あの人たちは、良い人たちで信用できそうだけど
ケイちゃんは震えている
シザーリオ・ヴァイオラは、恐ろしい人だから
ケイちゃんは全身で、ヴァイオラの恐ろしさを体感している
徹底的に肉体を犯されるという方法で
ヴァイオラがサディストの最悪の変態だってことを知っている
大丈夫だよケイちゃん
あたしは、言った
一緒に帰ろう、日本に日本にまでは、ヴァイオラだって追っ掛けて来ないよ
あたしも、不安だった
1年以上も続いたヴァイオラたちとの生活
血と悲鳴とヴァイオラの下卑た微笑み
ロザリンドの他人を愚弄する笑い声
あたしたちの心にシザーリオ・ヴァイオラに対する恐怖が、はっきりと刻みつけられていた
日本に帰って、ボクはどうなるの
お姉ちゃんは日本へ帰るべきだよ日本へ帰って幸せになって勉強して、恋をしていっぱい笑ってボクの分まで
ケイちゃん何を言っているのよ
ケイちゃんがゆっくりと、あたしを見る
ボクはもう、ダメだから
そんなことないよそんなことないってば
ダメだよお姉ちゃんボクは男に、シザーリオ・ヴァイオラに何百回も犯されてしまったボクの身体は、ダメなんだよ
ケイちゃんは、子供だった
純真だったから
汚された自分の身体に耐えられなかった
ボクはもう結婚だってできない女の子との恋は
そしてあたしも
子供だった
だからお姉ちゃんが、ケイちゃんと結婚してあげるって言ったじゃない
あたしはバスタオルを脱ぎ捨てて
ケイちゃんの前に肌を晒した
さあ、結婚しよう今夜は、あたしたち、結婚できるのよ
貞操帯の無い裸の陰部をケイちゃんに見せる
明日のことは、判らないわもしかしたら、ヴァイオラに捕まって、ケイちゃんは連れ戻されるのかもしれないお姉ちゃんは殺されちゃうかもしれないわでも、今夜は違うあたしたち、自由なのよ今
あたしは裸のまま、ケイちゃんの前にひざまづく
さあお姉ちゃんが、ケイちゃんの花嫁さんになってあげるわ何でもしてあげる結婚しよう今夜だけでもいいからね、ケイちゃん
泣きながらあたしに抱きついた
あたしも、ケイちゃんを抱き締める
もう泣かないの男の子でしょ
お姉ちゃんお姉ちゃん
ケイちゃんがあたしの胸に、顔を埋めて泣いている
あたしは幸せだった
さあしよう、ケイちゃん
あたしは全てを弟に捧げたかった
この心も肉体も純潔も
あたしの血肉は全て、ケイちゃんに捧げる
だって、ケイちゃんは
ずっと、あたしのために耐え続けてくれたのだから
お姉ちゃんを食べて
食べて欲しいのあたし、ケイちゃんに食べられたい
あたしはケイちゃんにキスしようとした
ごめん、お姉ちゃん
ケイちゃんはあたしのキスを拒んだ
どうしたのケイちゃん
ボクにはお姉ちゃんを汚すことは、できないよ
汚す
汚すって
お姉ちゃん大好きだよお姉ちゃんは、とっても優しくて綺麗だ
ケイちゃんお姉ちゃんも、ケイちゃんのことが大好きよ
あたしは嬉しくてケイちゃんに抱きつこうとする
ケイちゃんは、あたしの肩を掴んで距離を取ろうとする
だから、ボクお姉ちゃんを汚すようなことはできないんだ
お姉ちゃんがいてくれたからボクは、今までずっと頑張ってこられたよどんな、辛いことだって耐えられたヴァイオラは、約束してくれたんだボクがヴァイオラの言うことを聞いている限り絶対に、お姉ちゃんには誰にも手出しさせないって
ケイちゃんが無理に微笑んでくれる
お姉ちゃんが、誰かに犯されたりしたらボクは、耐えられないよお父さんとお母さんが殺されるのを見た時よりも耐えられないもし、お姉ちゃんがレイプされたらその時は、ボクは死ぬそう、ヴァイオラに言ってやったんだだから、ヴァイオラはお姉ちゃんの純潔を守ってくれた
幼い身体をヴァイオラに提供してあたしを守ってくれていた
でももう、ダメだボクたちは、ヴァイオラから逃げてしまった悪いのはロザリンドだけれどヴァイオラは、ボクたちを許さないだろう今戻ったらお姉ちゃんは、ヴァイオラの手下たちに輪姦されると思うお姉ちゃんのことを狙っていたやつらは、いっぱい居たから
あたしはゾッとした
だからケイちゃんが、お姉ちゃんを抱いてお姉ちゃんのヴァージンは、ケイちゃんにあげるから
ケイちゃんは静かに首を横に振った
お姉ちゃんは、純潔のまま日本に帰るんだよそして、本当の恋をして心の底から愛している人にヴァージンを捧げるべきだよ
あたしは愛しているわケイちゃんのことを本当に心の底から
あたしは縋り付くように、ケイちゃんに叫んだ
ケイちゃんは、言った
それは神様が、お許しにならないよボクたちは姉弟だから
こんな酷い状況に堕ちて
苦しんで、泣いて、耐えて、耐えて、耐えて
それでもなお神様のご意志だなんて
神様なんて
どれだけお祈りしたって、あたしたちを助けてはくれなかったのに
お祈りしようお姉ちゃん
ボクはお姉ちゃんのために、お祈りするからお姉ちゃんは、ボクのためにお祈りして
ケイちゃんの悲しそうな微笑み
あたしたち幼稚園が、プロテシタントの教会だった
だから幼稚園の時には、いつもお祈りさせられていた
あたしは小学校へ上がってからは、そんなこと止めてしまっていたけれど
ケイちゃんは続けていた
三度の食事と夜、眠る前に
てんにまします、われらのちちよ
ケイちゃんが、お祈りの言葉を唱える
あたしましますって言葉の意味、今でも知らない
あたしとケイちゃんのお祈りは幼稚園で習った、ひらがなのままだから
ねがわくは、みなをあがめさせたまえ
みくにをきたらせたまえ
みこころのてんになるごとく、ちにもなさせたまえ
それはただの呪文だった
言葉の内容なんて判らない
ただのオマジナイの言葉
われらのにちようのかてを、きょうもあたえたまえ
われらにつみをおかすものをわれらがゆるすごとく、われらのつみをもゆるしたまえ
冗談じゃない
あたしは許さない許されない許したくない
われらをこころみにあわせず、あくよりすくいだしたまえ
ああこれが神の試みだとするのなら
神も悪魔も同じだ
あたしたちを苦しめるだけの
くにとちからとさかえとは、かぎりなくなんじのものなればなりアーメン
アーメン
ケイちゃんが、あたしを見る
お姉ちゃん大丈夫だよきっと大丈夫だから
ケイちゃん、あたしは
お姉ちゃんのことは、きっとボクが守るから
守りたいのはあたしの方だ
でも、あたしは女で
ケイちゃんに、ずっと守って貰うだけで
お姉ちゃんなのに
お姉ちゃん、今夜は一緒に寝よう手を繋いで
ケイちゃんの笑顔が
心に痛い
うんケイちゃんが、そうしたいのなら
あたしはケイちゃんに抱いて欲しかった
あたしの肉体を純潔を捧げたかった
だけど、現実は
あたしたちは、ただ手を繋いで寝るだけだった
同じベッドに寝ているのに
接触しているのは手だけ
悲しかった
辛かった
でもケイちゃんは
あたしに、それ以上は求めなかった
だから、あたしも求められない
無理に求めることはケイちゃんの心を傷付けるから
ケイちゃんはこれまで、徹底的にヴァイオラに犯されてきた
あたしが無理強いするのはレイプと変わらない
ううんそうじゃない
あたしには、魅力が無かったんだ女としての
ヴァイオラに、女として無視されてきたように
ケイちゃんにとってあたしは女じゃなかった
だから求めては貰えなかった
口惜しい
一晩中、枕を濡らした
女になんて生まれるんじゃなかった
暗闇の中で、ケイちゃんが言った
ごめんねお姉ちゃん
ううんケイちゃんが、謝るようなことじゃないよ
あたしが女としての魅力に欠けるから
だからなんだ
ボクね
ケイちゃんが、不意に言った
オチンチンが大きくならないんだ
ずっと、ヴァイオラに犯されてきたからかなボクはゲイじゃないゲイじゃないって、自分に言い聞かせて耐えてきたからやっぱり、男の人は好きじゃないよ触られるのも好きじゃない
ケイちゃんがあたしに大切なことを話してくれる
でもね女の人に対しても、そうなんだ女の人が近付いて来るのも、怖いんだ
ボク人に触られたりするのが、どうにも辛くて苦手なんだよ人間が怖いんだ
両親を殺され殺人狂とその仲間に連れ回されている現実が
ケイちゃんを人間嫌いにしてしまった
あたしは繋いでいた手を離そうとする
ケイちゃん、ごめん
その手をケイちゃんは、ギュッと握りしめてくれた
お姉ちゃんだけは別だよ世界中でただ一人、お姉ちゃんだけは怖くない大好きだよ
でもボクは、エッチなことはできないお姉ちゃんとも、他の人ともボクのオチンチンは絶対に、大きくならないから
ああ、あたしは
何て、罪深い女なんだろう
ケイちゃんごめんごめん、ケイちゃん
あたしは朝まで泣き続けた
プチ繁忙期で地獄を見ています
今日さえ、乗り切れば
181.チャイナタウン(その2)
シザーリオ・ヴァイオラってのは、変装が趣味なんだろ
朝食の席で、恭子さんが英語で言った
マルちゃんにも聞かせたかったからだろう
だからあたしも、英語で答える
はい専属のスタイリストとメイクアップ・アーティストがいて、毎日、ヴァイオラのイメージ通りの姿にしています
恭子さんが、ニッと笑う
丸っきり別人にしか見えないぐらい凝った変装をするって言うじゃない本当
本当です
でも、それならヴァイオラの手下は、どうやってヴァイオラを見分けるんですか
マルちゃんが、あたしに尋ねる
先生も興味深そうに、あたしを見ていた
ケイちゃんはうつむいて、スクランブルエッグを食べている
簡単だろ仕事前に全員集合して、見慣れない顔のやつが一人いれば、そいつがヴァイオラだ
恭子さんが、そう言う
そんないい加減な
マルちゃんは、そう言うけれど
実際ヴァイオラのチームの顔ぶれはいつも同じですから仕事のターゲットが敵対者、裏切り者、目撃者で、チームが変わりますけれど配下のチームごとのメンバーは、いつも同じです
あたしは答える
とにかく恭子さんたちに、あたしの知っていることは何でも伝えた方がいい
生きて、ケイちゃんと日本に帰るために
仕事前に必ず、ヴァイオラの指定する場所に集合するのが決まりです広場や公園スタジアムや映画館、食堂ヴァイオラは、人が多い場所を好みますそしてその日集めたメンバーたちに、変装した自分を探させるんですヴァイオラは、このかくれんぼを楽しんでいましたカモフラージュのために、あたしやケイちゃんを連れて行ったこともあります
ケイちゃんの食事の手が止まる
その場には、ヴァイオラの妹のロザリンドも来ていますロザリンドは、ヴァイオラが変装する過程をずっと見ていますから
ヴァイオラはメイクしている時に、妹にフェラチオさせるのが好きだった
時にはケイちゃんにもさせた
だからどの人物が、ヴァイラか判っていますそして、手下たちが誰がヴァイオラなのか迷っている様子を見て、ニタニタ笑っているんです
嫌な女嫌な、兄妹
逃げ出したい
あの人たちの支配から
そしてヴァイオラの指定した集合時間に、必ず五分遅れてロレンザッチョ・バンディーニが現れます彼が、ヴァイオラだと思った人物に声を掛けますそして、ロザリンドが、笑いながら近付いていくほぼ、100パーセントの確立で、ロレンザッチョ・バンディーニは、ヴァイオラ本人を指摘します
どうしてロレンザッチョ・バンディーニには、ヴァイオラの変装が判るんだい
恭子さんが、尋ねた
それは毎回、変装が終わった段階で、ヴァイオラはバンディーニに電話をするんですそしてヒントを出します今日の変装は、1978年の助演男優賞にノミネートされた一人だとか、セルジオ・レオーネの四本目の監督作品の登場人物だとかヴァイオラもバンディーニも映画マニアですからそのヒントだけで、判るみたいです
そんな下らないことをして遊んでいるのだ
人を殺しに行く前に
しかしヴァイオラの手下は、その顔合わせを済ましているから平気なんでしょうけれどあたしたちには、誰がヴァイオラなのか判りませんね
マルちゃんが、心配そうに言った
ロレンザッチョ・バンディーニは、繋ぎ役ですから現場にまでは、同行しないでしょうしあたしたちが確認できるのは、ロザリンドだけです彼女の顔は昨日のホテルで確認しましたから
あんたたち1年近くやつと暮らしていたんだろパッと見て、やつだって判ったりはしないのかい
恭子さんが、あたしたちを見るけれど
ごめんなさいあたしには、判りません
変装を完了したヴァイオラは普段とは別人だ
見分けることなんてできない
あんたも、そうなのかい
ボクはあの
うつむいたまま小声で答える
判る時もあります
ヴァイオラと、ずっと肌を重ねてきたケイちゃんは
判るんだ
あたしはヴァイオラに対して、ジェラシーを感じていた
ヴァイオラとケイちゃんはあたしよりも、近い距離にいる
ほんとうに、たまにですけれど
そうかいなら、気付いた瞬間には、間髪入れずに教えておくれ
恭子さんが、ジッとケイちゃんを見る
それがあたしたちの生死を分けることになるかもしれないんだからね
あたしたちは、今
生きるか死ぬかのライン上に居る
貸別荘から青いフォードのセダン車で出発する
車内にいるのは運転席の恭子さん、助手席のマルちゃん
後部座席にあたしとケイちゃん
先生は、いない
ミーナには、時間をズラして別の車で出て貰う全員一緒だと、一網打尽で潰される可能性があるしね
恭子さんがそう言った
あたしたちはパスポートの偽造屋さんの事務所へ向かっている
もうすぐ着くからねチャイナタウンに
チャイナタウン
偽造屋は、そこに住んでいるんだ
車は、チャイナタウンの一角の古ぼけたビルの前に泊まった
大通りに面したそこそこ人通りのある場所だ
行くよ人に見られないように、急いで建物の中に駆け込んで
恭子さんに言われるままあたしたちは車を飛び出し、ビルの中へ
あたしとケイちゃんはお揃いの黒いジャージを着ていた
少し大きめでダボッとしている
昨夜、マルちゃんが買って来てくれた服だ
頭には、スポーツ用具のプラン土のマークの付いた白いベースボールキャップを被っている
髪の毛は全部、帽子の中に入れて
遠目にはあたしとケイちゃんは、双子の男の子にしか見えないだろう
待っていたよ、準備はできている
3階の事務所のドアを開けて現れたのは背の低い、痩せた白髪のお爺さんだった
分厚いレンズの老眼鏡がお祖父さんの眼を大きく拡大していた
ニッと笑うと黄色い歯の間に、ギラリと金歯が見える
あんまり信用できそうな人には、見えない
まずは前金だ
恭子さんが、裸の札束をお爺さんに叩き付ける
残りもちゃんと、ここにある
胸ポケットの中の札束を恭子さんは、チラリと見せた
確かにいや、少し多くないか
いいんだよあんたには、世話になっているからね今後とも、あたしはあんたとは仲良くやっていきたいんだよ
お爺さんは札束を見て、それから言った
悪くは思わんでくれこの街では、シザーリオ・ヴァイオラに睨まれたら生きていけねえんだ
やはり
判っているよヴァイオラ本人が、出張ってくるのかい
恭子さんが、お爺さんに尋ねた
何かよくは知らないが妹が連絡して、昨夜のうちにティファナからロサンゼルスに戻って来たらしい
ってことはティファナで作戦行動中だった敵対者襲撃チームをそのまま率いて来ててるってことだね
そこまでは、わしは知らんよ
お爺さんは、首を振った
やつとはどういう段取りになっているんだい
恭子さんが、お爺さんに詰問する
わしには、迷惑が掛からないようにして欲しいと頼んだんだだから
あたしたちが、この建物から外に出た瞬間に襲撃を掛けて来る
多分、そうだろうあんたたちが、この部屋を出たら、そこの窓から合図することになっている
合図の方法は
窓を開けるそれだけだ
恭子さんは、スッと考えをまとめる
ヴァイオラには、あたしたちはこの事務所にどれくらいの時間居るって伝えたんだい
ヴァイオラじゃねえロレンザッチョ・バンディーニの方だ
そんなのどっちでも構わないから
偽造パスポートの製作には、1時間半は掛かると言っておいた
なら1時間でやりな
恭子さんは言った
おいおい、二人分だろ無茶は言うな
あんたヴァイオラが、本当にあんたとの約束を守ると思うのかい
あたしたちが、最も油断するのは偽造パスポートが完成して、手に入った瞬間だろあたしなら、そのタイミングでこの事務所に突入するね
恭子さんは、そう言って事務所の窓に近付く
カーテンの隙間から外を見て
そしてあんたごと、あたしたちを全員始末する外で騒ぎを起こすよりは、この部屋の中で始末する方が遥かにスマートだろう
わしも一緒に、殺す気だって
目撃者は確実に始末するのが、シザーリオ・ヴァイオラのやり方だろ
しかしわしの安全は、ロレンザッチョ・バンディーニが保証してくれている
ロレンザッチョ・バンディーニは、シザーリオ・ヴァイオラとは別の人間だよその約束本当に信用していいのかな
恭子さんが微笑む
いずれにせよあんたは、できる限り早く、あたしたちに出て行かせた方がいいと思うよ
その通りのようだな
なら急いで、作業に入っておくれこれが二人のデータだ名前と住所カナダのパスポートナンバー
恭子さんが、プリントアウトされた紙を手渡す
そして偽造パスポートの作成が始まった
あたしとケイちゃんは、事務所の奥で写真を撮られ
すぐに現像された写真がパスポートの原紙に貼られる
そして恭子さんがカナダのお役人さんから買ってくれた、個人データが打ち込まれていく
あたしは香港系のカナダ人、メイ・リン
ケイちゃんはファン・リン
これどういう漢字を書くんです
あたしは、恭子さんに尋ねた
さあねぇ自分で好きに決めればいいと思うよ
恭子さんは、そう言いながら携帯電話で誰かとメールしていた
何か企てているらしい
ほらできたぞ
汗びっしょりのお爺さんが
あたしとケイちゃんにパスポートを突き出す
あたしが、受け取ろうとすると
ちょっと見せて
恭子さんが受け取って出来をチェックする
ケイちゃんの分も
うん特急スピードで作業したにしては良い出来だ
当たり前だわしの仕事だぞ
お爺さんは、そう言って怒る
さあさっさと残金を払って、出て行って貰おうか
恭子さんは、残金の札束を取り出す
判っているよマルゴ
マルゴさんはカーテンの隙間から、ずっと外をうかがっていた
何人、判った
この部屋の様子を伺っているやつらが4人居ます
恭子さんは、ククッと笑う
あんたも、まだまだだねえここから見える範囲で、7人は居るよ
謝ることはないこういうのは、経験しないと学べないことなんだから
恭子さんが、お爺さんを見る
あたしたちが、部屋を出てから下の連中に合図するの3分間待ってくれないか
3分
いいだろう、それぐらいはサービスで
恭子さんは、お爺さんに微笑み掛ける
いいだろうそれくらいは待ってやる
頼んだよじゃ、世話になったねまた何かあったらよろしく頼むよ
シザーリオ・ヴァイオラ絡みの仕事は、もうごめんだぞ
あたしだって、ごめんさ行くよ、みんな
恭子さんが、あたしたちに声を掛ける
見送りはいらないからね
ああでは、達者でな
あんたも
お爺さんの事務所の外に出る
ドアが閉まった瞬間恭子さんが呟いた
全員、階段で2階まで走って
恭子さんが、あたしの手を
マルゴさんが、ケイちゃんの手を掴んで走る
飛び降りるように階段を2階まで駆け下りる
そこで、ストップ頭を低くして、階段の手すりにしっかり掴まって
恭子さんが、そう言った瞬間
ボァァァンッッ
三階から爆発の音が
建物がグラグラと揺れ
そして窓の外に
さっきのお爺さんが血まみれになって落ちて行くのが見えた
うわああああっ
ケイちゃんが悲鳴を上げる
あたしは、声も出ない
チッだから、すぐに窓に近付くなって言ってやったのに
恭子さん爆弾を仕掛けていた
な、何が起こったんだ
2階の事務所の中から爆発に驚いて、スーツ姿の男が飛び出して来た
通らせて貰うよ
恭子さんが、その事務所の中へ入り込む
おいな、何をするんだ
驚くスーツの男を、マルゴさんが一撃で気絶させる
さあ早く中へ
2階の事務所の中へ入る
そこは、小さな旅行代理店らしい
コンピューターのに前女性が、驚いた顔であたしたちを見ている
通らせて貰うだけだからねっ
恭子さんは部屋の奥の窓をこじ開ける
そこは爆発した3階の事務所のちょうど裏側だった
この建物の構造は、前々から把握しているからねっ
恭子さんが、窓の外を見る
うん、ミーナが来たよ
窓の外に一台のピックアップトラックが、走ってくる
運転席にいるのは先生だった
トラックが窓の下に停まる
さあ、トラックに飛び降りて
まずはマルちゃんが、トラックの屋根にひらりと降りる
続いてケイちゃんが、マルゴさんにサポートされながら
次にあたし
最後に恭子さんが
早く、乗りなさい
運転席から、先生が叫ぶ
あたしとケイちゃんは、バクバクする心臓を押さえながら4ドア仕様のトラックの後部座席に飛び込む
マルちゃんが、助手席に
恭子さんは、ピックアップトラックの荷台に掴まって
居たぞあいつらだ
チンピラ風のやつら二人があたしたちに向かって、走ってくる
手には、ピストルを持っていた
止まれ
止まらねえと撃つぞ
二人がピストルを構えようとした途端
恭子さんが、何かをシュッと投げつける
痛ぇぇッッ
二人の男は、手をケガしてピストルを落とした
手裏剣
あたしが呟くと
カブト割りだよ
と、マルちゃんが答えた
金属製の礫〈つぶて〉を投げているんだ
さらに恭子さんが、男たちにカブト割りを放つ
ミーナ車を出して
車が、猛発進する
グゥアアアアッッ
ピックアップトラックは、建物を廻り込んで、大通りに出ようとした
CUT
そんな叫びが拡声器から発せられた
何これ
荷台から恭子さんの声がする
下らんアクション映画は、これくらいで終わりにして貰おうか
大通りには銃を構えた男たちが百人以上いた
あたしたちの車を20メートルくらいの距離で取り囲もうとしている
服装はみんなバラバラ
さっきまで、普通に街を往来していると思っていた人たちが
みんな、ヴァイオラの手下だったんだ
普通のピストルだけでなくライフルや、大きなマシンガンを構えている人もいる
その全ての銃口が
あたしたちに、向いていた
ここまで、徹底して仕込んでくるとはね
先生の口惜しそうな声
建物の窓から見えていた7人の監視者は囮で
あたしたちの見えない場所にさらに百人以上の人間が配置されていたんだ
ロサンゼルスが、シザーリオ・ヴァイオラの地元だってことあたしも恭子さんも、過小評価していたみたいね
百人の武装集団の前に
白っぽい背広を着た男が現れた
手には、拡声器を抱えている
男は
何故か、鼻に大きな絆創膏を貼っていた
あれが、シザーリオ・ヴァイオラだろ
荷台から恭子さんが、あたしたちに尋ねた
そうだと思います
ケイちゃんが答える
だと思ったわ
恭子さんが開き直ったように、荷台の上に立つ
ヘイあんたがシザーリオ・ヴァイオラね
シザーリオは、クフッと笑う
そういう、あんたは恭子・ドスノメッキーさんだそうだね
拡声器からヴァイオラの声がする
オレはブラジルの連中との関係は、そんなに悪くは無かったはずだがね
ヴァイオラはやはり、恭子さんをブラジルの裏組織の人間だと思っているらしい
ブラジルじゃあ、あんたは有名人じゃないからねっ
恭子さんはヴァイオラを挑発する
でも、あたしが教えといてあげたからシザーリオ・ヴァイオラっていう、ロサンゼルスの小悪党は、小さな男の子を犯すのが趣味の変態野郎だってね
ヴァイオラは、不機嫌そうにハンカチで額の汗を拭った
この状況で、そういう口をきく勇気は認めるがね気を付けた方がいい君は、ロサンゼルスの裏社会の王と会話しているのだからね
恭子さんは鼻で笑った
何の王よああ変態、ポン引きの王様ね
恭子さんが、ヴァイオラを挑発している間に
車内では先生とマルちゃんが
ヴァイオラの目的は、この子たちよ彼が射撃を命じることは無いわ
そうだね殺してしまったら、元も子も無い
いいや
この子たちじゃない
ヴァイオラの目的はケイちゃんだけだ
あたしは殺してもいいと思っているはずだ
とにかくヴァイオラが何を言っても、あたしたちから離れないでね
先生があたしたちを見る
判っています
ケイちゃんが答えた
そうだケイちゃんには、よく判っている
お父さんと、お母さんがヴァイオラに殺された日
あたしとケイちゃんはヴァイオラの子供二人だけ降りてこいという命令を素直にきいてしまって
だからお父さんとお母さんは、銃撃された
あれと同じことを繰り返すわけにはいかない
おーい、ケイそのトラックから、降りてこっちに来ーいお前が降りてくれば、他のやつらは助けてやる約束してやるぞ、ケーイ
拡声器の声がケイちゃんを呼ぶ
ケイちゃんは、ジッと下を向いて耐えている
ケイちゃんダメだからねあいつの約束なんて、絶対に信用できないんだからね
あたしはケイちゃんの手をギュッと握る
判ってる判っているよお姉ちゃん
その間に先生とマルちゃんは
マルゴ催涙弾は何発残っている
六発だね
もっと用意しておけば良かったわ
うんあ
マルちゃんが近くのビルの中から、キラリと輝く光点を見つける
ギリギリ間に合った
あたしもマルちゃんの見ている方を見上げる
ビルの窓から誰かが投光器で、合図をしている
とっころでさあミスター・ヴァイオラ
荷台から恭子さんが、ヴァイオラに声を掛けた
あんたは、物凄い映画マニアだって聞いたけれど嘘よねッ
ヴァイオラが怪訝な顔で、恭子さんを見る
何で、嘘だって思うんだ
恭子さんはニッと笑った
その格好ってさ映画のチャイナタウンのジャック・ニコルソンの扮装でしょ
ヴァイオラは、ニカッと微笑んで
判っているじゃねえか
判っていないのは、あんたの方よその格好をしたニコルソンは、映画の最後で何もかも失敗するんじゃなかったかしら守らなければいけない、大事な娘も連れ去られて
オレは、ニコルソンの格好をしているだけだ何から何まで、映画通りにするつもりはねえ
ヴァイオラは鼻の絆創膏をペリペリと剥がす
ケイを取り戻して、お前らは殺すストーリーの続きは、そういう予定になっている
恭子さんは、クククと笑って
あら、そうなのところで、ミスターチャイナタウンの幕切れのセリフって何だったかしら
幕切れのセリフ
それが何だってんだ
ド忘れしちゃったのよ映画マニアのミスターなら、知っているでしょえまさか、知らないの
知っているさ
なら、教えてよはいっ
そして緊張感溢れる状況は、幕切れとなる
最後のセリフはなあ
ヴァイオラは答えた
忘れるんだチャイナタウンで起こったことは
ああ、そうだったわそう
恭子さんが、上に向かって手を上げた
すぐ横のビルからヴァイオラたちに向かって銃撃が
ジュバババババッ
真横からの強襲にヴァイオラたちは
土曜日
まだ終わらなくて、済みません
そして、この中から脱出する方法をまだ考えていない
なかなか難しいですね過去話は
色々と、ムシャクシャする展開でごめんなさい
本当に、毎日ギリギリの状態で書き続けていますので
今週は、本当に時間がなくて辛かったです
本当なら、もっと下調べして書かないといけないエピソードなんですけれどね
俗語辞典とかも使って
ああこういう状況だと、いかに自分の才能が無いかが露わになって辛いです
しかし恥をかきながら前進するしかないんですね
がっくりしますけれど
死んでも毎日更新するという、ルールにしておいて本当に良かったです
毎日更新出なかったら心が折れてます
そういう一週間でした
すぐにまた、別のエピソードへ行きますので
朝になれば、久々の学校パートです
もう少々、お待ち下さい
このムシュクシャ感は、雪乃レイプで晴らします
182.死の棘
今よ、ミーナ、ターンして
恭子さんが、荷台で叫ぶ
マルゴは、催涙弾
窓からマルちゃんが、催涙弾を外に投げる
ヴァイオラの手下たちは、突然の真横からの銃撃に対処するのに精一杯で
あたしたちの車を止めることはできない
ライフルやマシンガンの轟音
怒鳴り声と叫び声
撃たれて倒れる男たち
車の影や、建物の入り口に逃げ込んで、応戦している人もいる
ふざけるな、バカッあいつらを止めろ
ヴァイオラ本人は、拡声器で怒鳴っているけれど
彼自身、近くの建物の中に逃げ込んでいた
そして白煙が、あたしたちの乗るトラックを包み込む
突っ走れ、ミーナッ
恭子さんの言葉に先生がアクセルを踏むッ
あたしたちのトラックが、チャイナタウンを駆け抜ける
あたしも、ケイちゃんも頭を抱えて、トラックの後部座席に小さくうずくまる
銃撃と雄叫びで騒然とした街から脱兎のごとく、離れて行く
ケイ絶対に、逃がさないからな
ヴァイオラの声が遥か遠くから、響いていた
助手席には、あたしが乗るマルゴは、後ろの二人の面倒を見て
4ブロックほど走り抜けたところで、先生は一旦車を停めた
荷台に掴まっていた恭子さんが、飛び降りて車内に入る
マルちゃんは、後部座席のあたしたちの隣に
シザーリオ・ヴァイオラが、あの場所へ来ることをリークしたんだよ
恭子さんは、少し興奮気味にそう言った
ヴァイオラは自分のことを、ロサンゼルスの裏社会の王って言っていたけれどねこのドでかい都市は、王様がいっぱいるんだ裏にも表にも昔からのさばっている連中も居れば、新興勢力だっている当然ヴァイオラに深い恨みを持っている王たちも多いそいつらに、教えてやったのさ
恭子さんは、そう言いながらノートパソコンを立ち上げていた
現在の状況が知りたいのだろう
ヴァイオラって男は、普段は変装していて正体が判らない人間だだから、いつもヴァイオラは、一方的な襲撃者として活動しているヴァイオラの敵対勢力の連中は、いつもやられっぱなしさだけど
鋭い目がモニター上の情報を読み取っていた
今回は、立場が逆だあたしが、あの時間のあの場所にシザーリオ・ヴァイオラが現れることを教えてやったんだからしかも誰が、変装したヴァイオラ本人なのかも、きっちり示してやった
だから恭子さんの指示で
ヴァイオラたちは、敵対勢力の人たちから銃撃された
どうですか、恭子さん使えそうなルートはありますか
運転席の先生が恭子さんに尋ねる
ダメだねLAPDと近くの郡の保安官事務所が動き出しているこの車のまんまで、街から脱出するのは難しいね特に内陸部方面は危険だ脱出ルートが特定されたら、待ち伏せを喰らうことになる
街を出て、ラスベガスかフェニックスを目指せば砂漠の中のハイウェイだ
そんなところで、敵に捕捉されたら
逃げ場は無い
地平線まで、何も遮蔽物が無いのだから
あたしたちのお父さんやお母さんが殺された時のように
砂漠での犯罪は誰も助けてはくれない
かと言って、海岸線をメキシコ方面に向かうのはあっちは、ヴァイオラの勢力圏内だ
それなら北上してサンフランシスコに向かいますか
いやこのまま、一度、貸別荘に戻ろう
しばらく、ロサンゼルスの中に隠れるんですか
まさか籠城戦は、苦手だよあたしはね
恭子さんは、苦笑する
ここは、プランBでいくよ
またちょっと費用がかさみますね
全部、ソースケのやつに払わせるんだろ
そうでした了解です
先生も、納得したようだった
別荘に戻る前にどこかで車を代えますか
先生が、チラっと車を見て尋ねた
このトラックはヴァイオラたちに見られている
今は、そんなことをしている時間も惜しいとにかく、急いで別荘へ戻って
あたしたちのトラックが再び、走り出す
大丈夫さロサンゼルスの街中なら、こんなピックアップトラックは幾らでもあるからね
恭子さんが、あたしたちを気遣って、そう言ってくれた
そのまま車は、ロサンゼルス市内を抜けて
途中で、ドライブスルーでハンバーガーを買って走りながら、食事をした
無理でも食べておくんだいざって時に、力がでなくなるからね
恭子さんの言葉にあたしは、無理矢理ハンバーガーをコーラで胃に流し込んだ
ケイちゃんは食べられないようだった
無理なら、コーラだけでも飲んでおいて
マルちゃんにそう言われてケイちゃんは、何とかストローでコーラを吸う
本当に大丈夫なんでしょうか
ケイちゃんがマルちゃんにそう言った
ボクたち助かるんでしょうか
マルちゃんは、優しくケイちゃんに微笑んで
最後は君の意志の力に掛かってくると思うよ
意志の力
君に生き抜くという意志があればどんな困難でも克服できるはずだ
ボクは正直、もう死んじゃってもいいんですでも
お姉ちゃんには生きて欲しい生きて、幸せになって欲しいんです
双子の弟の言葉があたしの心を濡らす
あたしはケイちゃんに生き残って欲しいよケイちゃんに、幸せになって欲しい
ボクはダメたよボクはもう、幸せになることなんてできないから
マルちゃんがあたしとケイちゃんの手をギュッと掴んだ
二人ともお互いにお互いの心配をしているそれでいいじゃないか
綺麗な瞳があたしたちを見ていた
お姉ちゃんは弟のために弟はお姉ちゃんのために必死で、生き抜くんだ意志を持つんだ自分の胸に、しっかりとね
マルちゃんが、自分の胸をドンと叩く
自分のためじゃない相手のためだって思ったら、幾らでも腹が据わるはずだよ
あたしは、そう返事をした
黙って、うつむいたままだった
そして車が、今朝出発した貸別荘に戻る
あれを使うよ
恭子さんが、別荘の先入り江の中に停泊しているボートを指差した
あれで海上に出て大型クルーザーで迎えに来させる知り合いが、ちょうど今日、船を出しているはずだからミーナもジョアン・スリムとは面識があったよね
はい香月様のご紹介で日本にいらした時には、うちの女をホテルに派遣致しましたから
ジョアンに助けて貰おうあの男のクルーザーなら、高級ホテル並みだしねそのまま、サンフランシスコ辺りまで連れてって貰おういっそ、ハワイまでって手もある
また、高くつきそうですね
それもソースケに押しつけてやればいい
判りましたでは、あたしはミスター・スリムと連絡を取ります
先生が運転席で携帯電話を取り出す
マルゴは、あたしと一緒にボートの準備だ
マルちゃんがドアを開けて、トラックから降りる
あんたたちはどうしたの、具合が悪いのかい
真っ青な顔をしたケイちゃんを見て恭子さんが、そう言った
へ平気です
と、ケイちゃんは言うけれど
すぐに船は出られないからしばらく、別荘のリビングで休んでな
恭子さんが、そう言ってあたしに鍵を渡してくれた
お姉ちゃんは、面倒を見てやるんだよ
そしてあたしたちは、トラックを降りる
二人でケイちゃんと手を繋いで
大丈夫、ケイちゃん
う、うんお姉ちゃん
あたしは心配だった
海に出た船は、とっても揺れるはずだ
今からこんな状態で
ケイちゃんは保つのだろうか
とにかく居間に行きましょう温かいお茶をいれてげるから
あたしは、ケイちゃんを引きずるようにして
居間のドアを開けた
ッ
ハーイ、お邪魔しているわよっ
ロザリンド・オーランドーが、お茶を飲んでいた
そしてロザリンドの向かいに座っているのは
やっぱり、君は私のものになるこれは、運命なんだよ
白いスーツの男
確か白坂創介
ミスター・白坂がね、あたしに教えてくれたのよここが、あんたたちの隠れ家だって
ロザリンドが意地悪な笑顔で、そう言った
安心して兄には、何も教えていないから下手な報告をしたら、あたしが殺されちゃうもの
いつもなら、絶対にシザーリオ・ヴァイオラと一緒に行動しているはずのロザリンドが
チャイナタウンに姿を見せなかったのは
この隠れ家のことを知って
ズババババッ
タトゥン、タトゥン、タトゥン
銃声が別荘の外から、聞こえる
双子は、あたしたちが捕まえたよッ外の連中は、皆殺しで構わないからねッ
ロザリンドが、トランシーバーに向かって怒鳴っている
罠だったんだ
本当にいいのかい外の連中は、あんたの仲間なんじゃないのか
ロザリンドが、白坂創介に言う
とんでもないあいつらは、ブラジルの裏組織の連中で、私の敵だここで始末して貰えるのなら、とても有り難い
白坂創介は、そう言ってニヤリと微笑んだ
まあたしは、どっちでも構わないけれどね
ロザリンドがあたしたちを見る
ハンドバッグからピストルを取り出して
あたしたちに、向けた
怯えるケイちゃんをあたしは、抱き締める
冷たい汗が身体を流れる
ケイは連れて帰るよ本当は、この場で撃ち殺してやりたいけれど連れて帰らないと、あたしが兄貴に殺されるからね
そして、姉の方は私が連れて行くそういうことで構わないだろうね
白坂がいやらしい眼で、あたしを見ている
ああ代金は、最初のあんたの提示額で負けておくよ
こういうのをWIN-WINな関係と言うのかな
白坂が、ニッと微笑む
外の銃声も止んだどうやら、全員片付いたらしいね
恭子さんたちが
あたしとケイちゃんが、絶望する
その瞬間ッッ
バシュッッ
窓を蹴破って、恭子さんが飛び込んで来る
何ッ
慌ててピストルを向けるロザリンドの手を、恭子さんの足が払いのける
黒いピストルが宙を舞い床にコロコロと転がった
あんたの手下は、全部で6人かい
恭子さんがロザリンドを睨む
ロザリンドは床のピストルと、自分のハンドバッグの両方を見ている
ハンドバッグにも、まだ武器があるのだろう
そうだけど、それが何か
ロザリンドが、そう言った瞬間
ホントに嘘吐きな女だねッ
恭子さんが自分の突入して来た窓に目掛けて
鉄のカブト割りを投げ付けるッッ
ブシャッ
ぎゃああああっ
窓の外に隠れていた、ロザリンドの手下が額から血を噴き出して吹っ飛ぶ
これで七人
いきなり、部屋のドアが開く
銃を構えるロザリンドの手下
しかし、恭子さんはその男の足下に滑り込んで
股間を蹴り上げるッッ
ぐぅええッッ
急所を潰された男が悶絶して倒れた
八人だぁっ
窓の外からも、男の悲鳴がした
恭子さん二人倒しましたッ
マルちゃんの声がする
これで十人まだ、かくれんぼしている子はいないだろうね
血走った目でロザリンドを見る、恭子さん
あんた何者なんだい
ロザリンドが怯えた声で呟く
知ってるだろブラジルから来た女さ恭子・ドスノメッキー
あんたがキョウコ・メッサー
驚く、ロザリンド
そう呼ぶ人もいるねえ
ロザリンドが、白坂を見て
何で、相手がキョウコ・メッサーだって教えなかったんだいッ
そ、そんなに有名なのか彼女は
馬鹿か、あんたは
白坂を罵るロザリンドに恭子さんは
ごめんねソースケ、本当に馬鹿なんだよ救いようが無いくらいにね
そしてあたしたちを見る
さあ脱出するよ
そんな恭子さんに白坂が
待ってくれ、恭子私も連れて行ってくれこのまま、ここに取り残されたらシザーリオ・ヴァイオラに殺される
いいんじゃない、ソースケあたしたちを裏切ろうとした罰だよこのまま、死になよ
簡単に死ねとか言わないでくれ私はお前たちの組織の代表者だぞ
あんたこそ簡単にあたしたちを、その女に売ったくせに
恭子さんは、ペッと床に唾を吐いた
とっとと出て行け今回の費用は、全てあんたに支払って貰うそれで構わないだろうね
あ、ああそれは、もちろんだともところで
白坂は、あたしたちをチラリと見た
私が費用を払う以上はこの子らは、私に所有権があると考えていいのだろうね
恭子さんが、白坂の顔を平手打ちする
白坂の大柄の身体が、後ろの壁に吹っ飛んだ
な、何をするッ
人間にはねえ他の人間を所有することなんて、できないんだよっ
恭子さんの眼は、怒りに燃えていた
この二人は、あたしが責任を持って育てるあんたには、指一本触らせないからねっ
白坂は、憎しみの眼で恭子さんを見上げていた
別に良いんだよあんたはここで死んだって、閣下には報告しておくから
恭子さんの手が鈍く光る鉄塊カブト割りを掴む
待て、恭子
突然ロザリンドが、ハンドバッグに飛びつく
中から予備のピストルを掴んで
お姉ちゃん、危ない
飛び出したのはケイちゃんだった
ずっと青い顔をしていたケイちゃん
震えていたケイちゃんが
床に落ちていた、ピストルを拾う
死ねぇッ
恭子さんに向かって、ピストルを向けるロザリンド
させるかァッ
恭子さんは手にしたカブト割りを、ロザリンドに投げ付けるッ
アガァッ
鉄塊が、ロザリンドの左胸に当たり彼女を身体が回転するッ
彼女は、ピストルの引き金を引いた
ドゥグゥゥゥゥンッ
銃口が火を吹く
ケイちゃぁぁんッ
ケイちゃんのお腹から
赤い血が、噴き出す
ちっきしょうッ
ロザリンドは
すぐにまた、ピストルを構える
銃口があたしに向いていた
あああああーッ
お腹の傷を押さえながら
ケイちゃんが、ロザリンドに突進する
ロザリンドに飛び掛かって
離しなよケイッ
ロザリンドの二発目の銃弾が、ケイちゃんを貫いた
ドゥギュウアンッッ
ケイちゃんの身体が跳ね上がる
ケイちゃんは、歯を食いしばって
ロザリンドに向かって、銃を撃った
ジォヒュゥゥゥンッ
ロザリンドのお腹にも穴が開く
うああああッ
激痛にロザリンドは、銃を落とした
ケイちゃんはそのまま床に、倒れた
ゆっくりと
スロー・モーションで
あたしはケイちゃんに走り寄る
ケイちゃん、ケイちゃん、ケイちゃぁぁんっ
お姉ちゃん逃げて早く
ケイちゃんがあたしを見上げている
ケイちゃんが一緒じゃないとケイちゃんが
あたしはパニック状態だった
お姉ちゃんだけでいいからボクのことは、いいから
そんなのダメだよ嫌だよケイちゃん
マルちゃんが、部屋の中へ飛び込んで来る
恭子さんは
無理だよ腹を二発じゃ止血のしようがないし出血が多すぎる
このままじゃ、ケイちゃんが
ケイちゃんが
これでいいんだよ、お姉ちゃん
ケイちゃんが言った
このまま生きていたってボクにはもう、幸せなことなんてなかったんだから
ケイちゃんの馬鹿お姉ちゃんが幸せにしてあげるって、約束したじゃないっケイちゃんと結婚してあげるってあたし、ケイちゃんの赤ちゃんだって産んであげるよ何でもする何でもするから
泣き喚くあたしにケイちゃんが、言った
幸せになって幸せにお姉ちゃんはもっともっと、幸せになるべき人だと思うから
うわわわわわわわぁぁッッ
あたしは絶叫して泣いた
叫ぶことしかできなかった
ったく、何てこったこれじゃあ、兄貴にヴァイオラに殺されちまうよ
血だらけのロザリンドが口を開いた
ちくしょう何で、ケイの方に当たっちまうんだよ死ぬんなら、姉の方が良かったのに
血まみれのままずるずると、自分のハンドバッグの所まで、這っていく
恭子さんが、ハッとして身構える
もう武器は無いよ安心しなタバコを吸いたいだけだから
そう言って、ロザリンドはハンドバッグから、タバコを取り出した
一本咥えて火を付ける
ふぅぅ落ち着いたよ
その間もケイちゃんは、身体から血を流している
トクントクンと、ケイちゃんの心臓が動く度に血が流れた
どんどん、身体が冷たくなっていく
ああお姉ちゃん、寒い寒いよ
あたしはケイちゃんの身体に縋り付いた
縋り付いて泣いた
あたしの涙がケイちゃんの顔にぽたぽたと零れた
ああお姉ちゃんの涙あったかいなぁ
大好きだよ、お姉ちゃん
ケイちゃんは、そのまま動かなくなった
ああああああああああああああ
涙と叫びが止まらない
破裂する
破裂しちゃうよあたし
助けて、ケイちゃん
そう言うとロザリンドはハンドバックの中の携帯電話を操作した
おい何をしている
恭子さんが、叫んだ時はもう遅かった
ロザリンドか、どうしたおいっ、どこに居るんだ
携帯電話から漏れてくる声
それは彼女の兄
ごめん、兄貴、やられちゃったあたし、もうダメだわ
ロザリンドが携帯に囁く
やられた誰にだおい
携帯の向こうの声が喚いている
ケイも死んだケイは死んだよここで
死んだ
おいっどういうことだロザリンドケイを連れてった連中を追い詰めたのか
そうだよ追い詰めた所で、ドジを踏んじまったあたしももうダメだ内臓に弾をくらっちまってるから
お前もケイも、やられたっていうのか
さっきからそう言ってるじゃないかまったく、兄さんは、物分かりが悪いよね
誰だ誰にやられたお前とケイをやったのは、誰なんだ
ロザリンドは、あたしを見て
ニィと、笑った
ヤスコだよ
ヤスコ
奈島寧子〈ナジマ・ヤスコ〉
それがあたしの本当の名前
ヴァイオラたちは、ずっとあたしをヤスコと呼んでいた
あたしもケイもヤスコに撃たれた
自分がケイちゃんを撃ったことを兄に知られたくなかったんだろう
だからその罪を、あたしに押しつけた
ヤスコが
ロザリンドの眼が、カッと見開かれる
そうよっあたしもケイも、ヤスコに殺されたのよッ
ドゥゥンッ
その瞬間ロザリンドの頭が吹き飛んだ
先生だった
戸口から入って来た、先生
先生の握りしめているピストルから白い煙が上がっていた
死に損ないに、喋らせすぎです恭子さん
あああ、そうだねミーナ
恭子さんが頭の吹き飛んだロザリンドの遺体から、携帯電話を取り上げる
あたしは、恭子・ドスノメッキーだ
ようやく、ケイちゃんの死まで辿り着きました
明日は、過去話のラストから吉田くんの方に戻ります
長々と、申し訳ありませんでした
エロ回を挟んで朝の学校パートに入ります
183.夜の静寂の中で
恭子・ドスノメッキー
死んだロザリンドの携帯電話からヴァイオラの声がする
ブラジルでは、恭子・メッサーって呼ばれているよッ
何で、ブラジルの組織のやつが、オレの邪魔をするんだ
さあねえこれも何かの因縁かもしれないねあんたの妹の遺体は、マリブ・ビーチの貸別荘の前に転がしておくすぐに判るようにしておくから、引き取りにきな
ケイはケイは、どうなったんだ
あんたの妹が言っていた通りさ死んだよ
ロザリンドもケイも、お前が殺したってのか
恭子さんがああ、そうだと答える前に
あたしは、携帯電話を引ったくった
違うわ、あたしよヤスコよ
これ以上あたしとケイちゃんのことで、この人たちに迷惑を掛けるわけにはいかない
シザーリオ・ヴァイオラの憎しみの標的には
あたしが、ならないといけない
あたしが殺したのよこのまま、あんたの玩具でいるくらいなら死んだ方がマシなんだからっ
あたしは絶叫していた
それでロザリンドとケイを殺したっていうのかお前が
そうよッ
死んでしまいたい
もう、死んでしまいたいという感情が
ヴァイオラにそう、叫ばせていた
ちきしょう、ブッ殺してやるヤスコ絶対に許さねぇからな
電話の向こうのヴァイオラが低い声で言った
お前を男に千回輪姦させて、嬲り殺しにしてやる世界中のどこに隠れていようが、必ず見つけてやるからな覚えていろよ
恭子さんが、あたしから電話機を奪った
長話が過ぎたようね次に会った時はどうやら、あたしたち、殺し合いをするしかないみたいね
殺し合い冗談じゃねえお前らは、オレに虐殺されるんだ一方的になヤスコの味方をした連中は、全員皆殺しにするシザーリオ・ヴァイオラ様が、そう宣言してやるぜ
そう期待せずに、待っているわ
お前らは、全然判ってねえんだよオレが、どれくらいロザリンドとケイを愛しているかをな
あんただって判ってないわあんたが、どれくらい世間様に嫌われているかをね
な、何ぃぃぃ
精々頑張って、あたしたちを追っ掛けて来なさいブラジルで待っているわじゃあね、Adeus. Cesario
ま、待て
恭子さんが電話を切る
これでしばらくはブラジルには帰れないわね
結局恭子さんは、全てを背負ってくれた
まあいいわあたしのブラジルの仲間には、アメリカ人の殺し屋の脅しにビビるようなやつは一人もいないからね
そう言ってあたしに、微笑んでくれた
それから、マルちゃんに振り返り
マルゴ失神している男たちと、この女の遺体をこの屋敷の外へ出して駐車場の向こうまで、引きずって
マルちゃんが、駆け出す
ミーナジョアン・スリムとの交渉は
問題なしよ沖合で、あたしたちを待っていてくれるわ
オーケイところで何であんた、ロザリンドを撃ったの
先生は表情を変えずに答えた
あのままではヴァイオラに、あたしたちの情報が漏洩する恐れがあったわ
相変わらず思い切りだけは、良すぎるんだから
恭子さんは、先生の行動をそう評した
ま、しょうがないね今更、どうすることもできないもの
次に白坂創介に眼を向ける
白坂は銃撃の後、ずっと頭を抱えて床に伏せていた
ぶるぶると震えて
ズボンは漏らしてしまっていた
そこの臭い男あんたは、この件とは関係が無いいいね
わ判った、恭子
あんたとロザリンドの接触を知っている人間は、どれくらいいるんだい
そ、そこら辺で気絶している連中と裏カジノの支配人だけだ
あんたまさか、そいつらに本名を晒したりはしていないだろうね
私だって広告代理店の正社員だバレたらマズイところに、本当の名前で出入りするほどの馬鹿じゃない
恭子さんは、クッと鼻で笑った
いや、あんたは底抜けの馬鹿だからね正体がばれるようなことの、4つや5つはしでかしていると思うよ
な何を言うんだ
ま、しばらく様子を見ていれば判るさ日本まで、シザーリオ・ヴァイオラが、あんたを殺しにくるかもしれないからね
おい、脅かすないでくれ恭子
白坂創介が震えながら、恭子さんを見上げる
まあいいこの街でのあんたの足跡は、あたしが消しといてあげるあんたは、このまま、滞在しているホテルには戻らないで、ラスベガスへ行きな
ホ、ホテルには、スーツケースもあるし娘たちへの土産も
全部、あきらめな盗まれたことにして、ラスベガスで全て買い直すんだパスポートと財布と携帯電話は、持って来てあるんだろ
それは、ある
ノート・パソコンは
それも外のレンタカーの中にある
じゃあ、問題なしだホテルにあるあんたの荷物は、あたしの知り合いに回収・処分させるあんたは、ラスベガスの空港から国内線を乗り継いでバンクーバー経由で、日本へ帰るんだこのままロサンゼルスに居残ったら、命は無いと思うんだね
わ、判った、お前の言う通りにしよう
白坂創介が立ち上がる
それから今後は、絶対にこの娘には手を出さないいいね
恭子さんがあたしを指差す
手を出すはずがないだろうシザーリオ・ヴァイオラに命を狙われている娘なんて
白坂は汚い物でも見るような眼で、あたしを見た
この子はあたしとミーナが引き取るからね黒い森の中で育てるわ
白坂が、ショックを受ける
おい、恭子お前、正気か
恭子さんは、ニヤッと笑った
正気さ今後、あんたがあたしたちの行動に対して、阻害するように行動に出た場合はこの子が黒い森に居ることをヴァイオラに密告する
おい恭子
黒い森の代表責任者は、誰だったっけヴァイオラの第1のターゲットは、ソースケになるだろうね
嘲る様な恭子さんの声に白坂創介は、黙り込んだ
言っておくけれど日本国外の裏社会のネットワークは、あんたよりもあたしの方が遥かに詳しいからねあんたの名前や顔写真どころか表の仕事や、家族と住んでいる家の住所だってこっそりと、ヴァイオラに知らせることはできるんだよ
や、やめてくれそんなことをされたら、会社や白坂の家にも迷惑が掛かる
恭子さんが鋭い目で、白坂を見る
馬鹿じゃないのとっくに、そんなレベルは越えているんだよ敵は、シザーリオ・ヴァイオラだよあんたの奥さんも二人の娘それだけじゃ済まないね、あんたの兄弟や親戚一族全てに至るまで身内は全員、ヴァイオラによって、輪姦されて殺されるぐらいのことは覚悟しておくんだね
おい勘弁してくれ、恭子
これもみんなあんたがあたしたちの了解を得ずに、勝手にロサンゼルスの裏社会の人間と接触したせいじゃないか違うかい
判った全てお前の言う通りだ
なら、とっととあたしの言う通りにしな
白坂創介は逃げるように立ち去った
黒い森の中で先生たちの活動が、白坂創介の支配から完全に離れることができたのは、この時からだった
この日以降、黒い森での白坂創介は、少しずつ実権を失っていく
間違いなくこの瞬間が、転機だった
その時のあたしには、そんなことは判らなくて
ただ、ケイちゃんの遺体に縋って、泣くことしかできなかった
残念だけれど、その子は連れていけないよ
恭子さんが、あたしに言った
でも、遺体だってヴァイオラにはやらないこの子は、この屋敷ごと燃やすよ
あたしも死にますここで、ケイちゃんと
死にたい
死にたいよう
ふーん、それで死んだその子が喜ぶのかね
あんたは、まだ生きているんだろその子に、生かして貰ったんだろ命を助けられたんだろ
それは、そうですけれど
もう死んでしまいたい
死んでしまいたいのよケイちゃんと
でも、あたしは
でもも、クソも無いよっ
恭子さんがあたしの頬を、引っぱたいた
痛いかい
痛いです
ほら生きてんだよ生きてるから、痛いんだ勝手に、心を殺すな
恭子さんは、あたしの髪の毛を鷲掴みにして
リビングから、玄関に引きずって行く
いやぁぁ、ケイちゃんケイちゃん
ケイちゃんの遺体が遠ざかる
離れたくない
ケイなら、ここにいるだろっ
恭子さんがあたしを玄関前の鏡の前に、突きだした
眼を大きく開いてよく見るんだッ
鏡の中
そこにケイちゃんはいた
血まみれの服を着て
大きく眼を丸くして、ぽかんと鏡の中を見ている
それは、あたし
ケイちゃんの双子の姉
あたしの顔はケイちゃんに、そっくりだった
そうだあたしたち
ずっと昔生まれた時から
とてもよく似た、双子の姉弟だった
あんたが生きている限り、ケイも生きているそう、思いなだから、あんたは必死で生きるんだよケイのために
ケイちゃんのために
あんたは、ケイの分まで2倍生きるんだ2倍、幸せにならないといけないんだよっ
恭子さんはそう、言ってくれた
さあ、脱出の準備だその血だらけの格好じゃ、ジョアンの船には乗せて貰えないよ
あたしは血まみれの服を着替えた
昨日、ヴァイオラの隠れ家からロザリンドに連れ出された時の服に
あたしの服じゃない
あたしは、ケイちゃんが着ていた方の服を着た
恭子さんが、あたしにハサミを手渡してくれた
ケイの髪の毛を切っておきなそれぐらいしか、持って行けないんだから
あたしは震える手で、ケイちゃんの髪を一房切った
それをハンカチに包んで、ポケットにしまった
ハサミは、ケイの胸の上に置いておくんだ
恭子さんは、そう言った
確か、日本の風習だろ悪魔に遺体を取られないように、刃物を置いておくってのは
ケイちゃんの胸の上にハサミを置く
それがケイちゃんに触れた、最後になった
さあ、行くよ
あたしはふらつきながら、立ち上がる
ケイちゃんの死に顔は苦しそうだった
ケイちゃんはずっと、苦しそうな顔ばかりしていたと思う
あたしは恭子さんに肩を抱かれて、部屋を出た
ボートに乗ると別荘の全体が、よく見えた
リビングの位置もよく判る
あそこに、ケイちゃんがいる
あたしは、ケイちゃんを残してきてしまった
恭子さんと、マルちゃんが
別荘の外壁に、ガソリンを撒いていた
そして火を付ける
燃える
別荘が、燃えていく
ケイちゃんが、燃えていく
ミーナ、ボートを出して
恭子さんとマルちゃんが、ボートに飛び乗って
運転席の先生に言った
ブボボボボボボッ
モーターが回転しボートが岸から離れていく
燃える別荘が
あたしから、遠ざかっていく
青い海の向こう
緑の森の中に
真っ赤な炎と黒煙が立ち昇る
あ、こんな炎を前にも見たなって思った
お父さんとお母さんが殺された時もこんな炎が遠ざかっていくのを見た
あたしの人生は炎がいつも、大切な家族を焼き尽くしていく
悲しいな
情けないな
そう思ったらあたし
ボートの上でフッと、気を失った
目が醒めるとベッドの上に居たわ
部屋全体が、ゆらゆらと揺れている様な感じがした
だから大きな船の中に居るって判った
気が付いたかい
そこには、恭子さんが居た
マルちゃんと先生も
みんなにっこりもあたしに微笑んでくれている
もう安心だよここは、ジョアン・スリムの船の中だからね
あたしは助かった
助かってしまった
あなたのことを、日本のデータベースで調べたいのこれに漢字で名前を書いてくれるかしら
先生があたしに、ペンと紙をくれた
漢字の名前
日本語で名前を書くことなんてもう無いと思っていた
はいできました
あたしは、奈島寧子名前を書いた紙を先生に差し出す
ナトウ・ネイコ
横から紙を覗き込んだ恭子さんが、そう読んだ
ナジマ・ヤスコです
あたしは、そう答えたのだけれど
嘘つけヤスコなんて読めないじゃないか本当は、ネイコなんだろ
ブラジルの日系人である恭子さんは自分の漢字の読みは間違っていないと、強く主張した
ケイのお姉さんが、ネイってことだろ違うのかい
ケイの姉のネイ
そうね、ヴァイオラの追跡を攪乱するに丁度良いわ漢字の読みを変えましょう
漢字表記は同じでも、英語では全然違う名前になるからナジマ・ヤスコという名前は隠してしまって、今日からはナトウ・ネイコということにしましょう
ネイコなんて言いづらいよネイでいいだろネイでさ
恭子さんが、そう言った
だからあたしは
その日から、奈島寧〈ナトウ・ネイ〉になった
そうだヤスコじゃない
ヤスコは、あの炎の中に消えてしまった
あたしは、寧〈ネイ〉
これかせは、寧〈ネイ〉として生きるんだ
スープを用意させたよ無理でも食べておきな
恭子さんが、あたしにお皿を持って来てくれる
マルゴ鏡を持って来てどんなんでもいいから
恭子さんが、マルちゃんにそう言う
マルちゃんは、すぐに洗面室から手鏡を持って来た
鏡を見なネイ
鏡の中に泣いている子供がいる
ケイちゃんの顔をしたネイ
その子を泣かすと、ケイが悲しむだから、食べるんだ
あたしはスプーンを取った
スープを掬って、口の中に入れる呑み込む
胃の中にジュワッと血が集まる感覚
スープがあたしの血肉になっていくという感覚
鏡の中のその子が元気だと、ケイは喜ぶこれからは、そう思って生きていくんだいいね、ネイ
恭子さんはそう言った
だからあたし
それからは何かある度に、鏡を見る
嬉しいこと、悲しいこと、辛いことがある度に
鏡の中の顔に報告する
鏡を見ればケイちゃんに会えるから
ケイちゃんはあたしの中に生きている
だからあたしは、生きている
あたしが食事をするのは、ケイちゃんのため
あたしが笑うのは、ケイちゃんのため
あたしが、笑うとケイちゃんも笑うから
だからなるべく笑う
楽しそうに大きく笑う
深夜の学校校長室下に隠された監視室
寧さんはそうして、長い話を終えた
それが三年前のことシザーリオ・ヴァイオラが、何であたしを狙っているのか、これで判ったでしょ
監視室の中は静まりかえっていた
マナとメグは、同じエア・マットの上で眠っている
おそらく、雪乃も
克子姉も眠っている
ミナホ姉さんはいない
起きているのはオレと寧さんとミッチィとマルゴさんだけ
あたしね今でも時々、自分で自分が判らなくなるんだよっ
寧さんが、遠くを見てそう言った
本当は嬉しいんだか悲しいんだか心の中がゴチャゴチャになって、大きな声で叫びたくなるの助けて、助けて、助けてって
そんな時は、鏡を見るの鏡の中には、ケイちゃんが居るからホッとするよあたしの心は、ワサワサしてて今にも爆発しそうなのに鏡の中の顔は、ニコニコと笑っているのよあたしの顔じゃないのそれは、ケイちゃんの顔なのあたし鏡の中のケイちゃんの顔に癒やされるんだよっあはは、おかしいよねっ
寧さんの身体を抱き締める
どうしたのヨッちゃんごめんねあたしが変な話をしたから、怖くなっちゃった
寧さんは、そう言ってオレの頭を優しく撫でてくれる
ごめんね、ヨッちゃん
寧さんはお姉さんに成りたがっている
ケイさんを失った寧さんは
心の中に溜め込んだ計算への思いが、膨れあがって破裂しそうになっている
この人は
心の中の愛情を注ぎ込む相手を失っている
お姉さん
オレは寧さんに言った
オレ、寧さんの弟になりますなりますから
寧さんは、オレを優しく抱いてくれている
ホント優しいよね、ヨッちゃんは
薄闇の中でミッチィが言った
それは、根本的な解決にはならないと思います
双子の弟に成り切るのは、不可能です
そんなことは判っている
ケイという人は、もう死んでしまっているのですから
ミッチィの言葉に、寧さんの身体がビクッと震える
根本的な解決ではないとしても吉田くんの存在が、寧に良い影響を与えているのは事実だよ
ずっと口を閉ざしていたマルゴさんがそう、言った
吉田くんには心に問題を抱えている女性を癒やす力がある
寧も、前から比べたらずっと安定した克子さんやミナホだってそうだ君のご主人様のみすずさんだって、そうじゃないか
それは確かに、そうかもしれませんが
マルゴさんは、ニッと笑う
大した力だとあたしは思っているよだから、あたしはなるべく吉田くんに近付かないようにしているんだ
あたしは実行部隊の戦闘要員だからねあんまり癒やされてしまったら、いざという時に動きが鈍るだろだから、彼とは距離を置いているんだ
だけど君には、本当に感謝しているよ君に出会う前の、ミナホや克子さんは危険な状況だったからね特にミナホはあたしはかなり注意していたつもりだったけれど、あのままの心理状態では大事な場面で判断を誤る可能性もあったと思う
吉田くんのおかげで安定してくれたからいや、自分の復讐だけにのめり込むんじゃなく、吉田くんや恵美ちゃんや他の子たちのことを気遣う余裕が出来ているからこそ、今まで上手い具合に計画が遂行できてきているんだと思うよこれが、最初の勢い通り差し違える覚悟で、白坂創介を追い込むだったら計画の途中で破綻をきたしていたかもしれない
オレの存在という要因がミナホ姉さんたちに良く働いているのだろうか
オレはただの足手まといでしかないのに
だからこそ少しでも、役に立ちたいとは思っているけれど
あたしは、吉田くんが寧と接してくれていることは良いことだと思うはたから見ていたら姉弟ごっこにしか見えないとしても今の寧には、そういう形でしか男の子と接触することはできないわけだしねいいんじゃないかと思うよ
でも、オレは
本当に寧さんの弟になりたいんんです寧さんの力になりたいんです
ありがとう、ヨッちゃん本当に、ありがとう
そんなオレに
マルゴさんは、言った
そうじゃないだろ吉田くん
寧が弟という存在を欲しているからだから、君は寧の弟になってあげたいと思っている
でも本当の君は、男として寧のことを愛している弟としてではなく
その通りかもしれない
オレは一人っ子だし
実際、弟というものが姉をどう愛するものなのか判らない
オレは寧さんが好きです寧さんが、求めるのなら何でもなりますオレには、寧さんが大切で寧さんが、幸せになってくれるのなら、オレはどうなったっていいんですから
寧さんは困惑していた
それは困るよ
だってあたしはあたしは、絶対に幸せになれないもんっ
あたしの幸せはあたしの中で、ワサワサして深い底に、閉じ籠もっちゃっているから
寧さんがオレから、身体を離す
あたしの中に、ケイちゃんがいる限りあたしがあたしを許さないのあたしは絶対に、幸せになってはいけない女なのよ
また、一週間が始まるぅぅ
ようやく、過去話から現世に帰還しました
うううー、ここまで書いてまだ伏線の積み残しがある
寧さんは、深すぎるなあ
次話は、無理でもエロ回にします
では、働いて参ります
184.家族の役割
オレは頭に浮かんだ言葉を、そのまま寧さんにぶつけた
世の中には幸せになっちゃいけない人なんていないと思います
寧さんが勝手に、自分を幸せになってはいけないって決めつけているだけで現実は、そうではありませんだって
ええい言っちまえ
寧さんはきっと、オレが幸せにします幸せにしてみせますからオレ、馬鹿だから、今はどうしたら寧さんが幸せになるのか全然判らないけれどでも、必死で考えます色んなことを試してみます探しますオレ
もちろんそれには、きっと長い時間が掛かると思いますだからオレに時間を下さいとりあえず十年いや、二十年二十年でダメなら、一生掛けます一生掛けてもあなたを幸せにしますだから
寧さんの涙目が薄暗い部屋の中で輝いている
オレを見つめている
フフ、吉田くん、それプロポーズ
マルゴさんが、苦笑してそう、言った
違いますっそういう不真面目なこととは違うんです
おやおやプロポーズは、真面目なことだろう
それはそうなんですけれどそういうことじゃなくってオレは、別に寧さんと結婚したいとか、寧さんにオレの恋人になって欲しいんじゃないんですオレは、この人に幸せになって欲しいんですオレじゃなくて、別の男の人と結婚したって構わないただ、寧さんがずっと、ニコニコ笑って幸せになって欲しいんですよッ
オレの頭の中はメチャクチャに混乱していた
寧さんの悲しすぎる過去の話を聞いて
オレ幸せってよく判らないですどうしたら、人って幸せになれるんですか何をしたら、人を幸せにすることができるんですかオレ判らないよオレどうしたらどうしたら、いいんですか
寧さんがオレの手を握る
ありがとう、ヨッちゃんその言葉だけで充分だよっ
寧さんは熱い涙を流しながら、オレを見つめている
違いますそうじゃないこんなのは、ただ言葉でしかないじゃないですかオレはあなたを、心から幸せにしたいんですっ
幸せだよ、あたしそう言ってくれる、ヨッちゃんがいるだけで
違う、違う、違うオレ、まだ何もしていないじゃないですかこれから、やりますっオレ、頑張ります何をするのか、何を頑張るのかだって、全然判らないけれどオレ、必死で頑張りますからッ
情けなかった
口惜しかった
オレはどうしたらいいのか全然判らない
ただ、判っていた
今のままのオレでは
ケイさんを失った寧さんの悲しみを癒やすことはできないってことが
ヨッちゃんは、今だってあたしに充分良くしてくれているよ
寧さんがうつむいて、そう言う
違う
そういうことじゃ、ないんだ
寧いいかげん、弟に甘えるのは止めなさい
高い場所からミナホ姉さんの声がした
上階の校長室へ通じる階段をミナホ姉さんが、降りてくる
先生、それ、どういうこと
寧さんがミナホ姉さんを見上げて、尋ねる
寧、あなた、今年で何歳になるの
十八歳です
三年前はあなたが黒い森の最年少者だったわそれから、幸代が加入したけれど彼女とあなたは、同い年だけれど直接の交流は無いしねアニエスも、隠された存在だし
ゆっくりと、階段を降りながらミナホ姉さんは、言う
でも今は、違うわあなたは、今お姉さんの立場にいるのよ
寧さんがハッとする
姉妹会なんてものをやりたいって言い出したのはあなたでしょう
そうだ姉妹会のアイデアの提案者は、寧さんだった
はい、先生
あなたは、ずっとずっとお姉ちゃんをやりたかった子でしょ
ニコッと寧さんに微笑む、ミナホ姉さん
うんそうだと思いますあたし
ミナホ姉さんが眠っている、メグやマナを見る
恵美やマナさんのこと可愛くないの
可愛いと思ってます
吉田くんのことは、どう思っているの
可愛くて仕方がありませんっ
寧さんは、真顔でそう叫んだ
じゃああたしは、幸せになってはいけないなんて二度と言うのは止めなさい妹や弟が、そんな姉の言葉を聞いたら心配するでしょ
お姉さんになりたかったらもっと、強くなりなさい
寧さんの眼から大粒の涙が零れる
はい先生
ミナホ姉さんがオレを見た
吉田くん寧はちょっと、思い違いをしているのよ
思い違い
寧は確かに、双子のうちのお姉さんだったけれどだから、寧は自分は、お姉さんにならなきゃいけないって気持ちは強いんだけどねでも双子って特殊でしょ結局は、同い年だしケイくんは男の子だったからね実際は、ケイくんにずっと守られて妹みたいな状態で成長してきた子なのよ
そっかさっきの寧さんの話でも
ケイさんは、ただ双子の姉弟の一人として男として寧さんを守ろうとしてきただけだ自分は弟だからというコンプレックスは無かった
姉にならなきゃというコンプレックスは、寧さん独自のものでだけど、そういうコンプレックスを抱えている寧さん本人は、ずっと誰かに保護される存在であることに慣れてしまっている
今だって寧は、年下の吉田くんに甘えているだけじゃないあなたが、本当に吉田くんのお姉さんになりたいのなら自分から率先して行動して、吉田くんを幸せにするべきでしょ
はいそうだと思いますあたし弱い子でした間違っていました
ぽろぽろと泣いている
自分は絶対に幸せになってはいけないなんて考えているお姉さんが弟を幸せにできると思う
だからって今更、吉田くんから逃げることは許しませんからねあなたのことこんなに愛してくれている子は、他にはいないわよ
オレの寧さん
マルゴ警戒・監視は、あたしが変わるわ寧とシャワーでも浴びてらっしゃい
ミナホ姉さんがマルゴさんに言った
この子、泣きすぎて酷い顔になっているから助けてやって
了解、ミナホ
マルゴさんが席を立ち寧さんの所に行く
さあマルゴお姉さんが、面倒見てあげるからね
マルちゃん
あたしは寧のお姉さんだからね幾らでも、甘えてくれていいんだよ
うわあああぁっ
寧さんはマルゴさんに抱きついて、泣く
うんシャワー・ルームで、寧の話は聞いてあげるからね
それからマルゴさんは、オレに振り向き
この子のことは、心配しないであたしは、もう三年もこの子のお姉さんをやっているからね
ニッコリ微笑んでそう言ってくれた
そのまま二人は、シャワー・ルームの中に消えて行く
納得いかない吉田くん
ミナホ姉さんが、監視モニターのシートに座ってオレに言う
どうせオレには、寧さんを助けられる力なんて無い
オレはただのガキだ
ミナホ姉さんやマルゴさんみたいな大人じゃない
そんな顔をしないの何からなにまで、一人で背負い込もうとするのは止めなさいあたしたちは、家族なんだから
年上の姉の方が話しやすいこともあるし逆に、年下で無いと解決できないこともあるわ家族って、そういうものでしょ
ミナホ姉さんはオレを見ないで、モニターのチェックをしている
ごめんオレ、そういうのよく判らなくて
オレは、兄弟はいないし
家族交流の経験も無いから
あ、そうだったわねじゃあ、判りやすく説明するわね克子
ミナホ姉さんが、軽く克子姉の名前を呼んだ
眠っていたはずの克子姉が、スッと身を起こす
あなたいつから起きてた
最初からです寧様が彼に何を話されるのか、心配でしたから
克子姉、ずっと起きていたの
でも何で、寝たふりしていたんだよ
別に、起きてきて話に参加してくれたって、良かったのに
それはあの状況の中では、あたしが眠っていた方が、寧様が話しやすいと思ったからよ
年上の姉役は、マルゴ様が居れば充分だったし特に、マルゴ様は寧様の過去の体験にずっと同行していたわけでしょこの場で、マルゴ様が居るということで、寧様は感情が爆発せずに最後まで話ができたんだと思うわ
ケイさんの死の場面を一緒に体験したマルゴさんが見守っているから寧さんは、最後まで落ち着いて話ができたんだ
あそこであたしが眼を覚ますときっと、寧様は話をするのを止めたと思うの結局ね寧様は、あなただけに、あの話を聞いて貰いたかったのよ
オレだけに
判らないシザーリオ・ヴァイオラが、日本まで寧様を追って来てあたしたち全員が対決しなくてはいけない状況になった寧様を守ることは、当たり前のことだとあたしたちは考えて行動しているけれど寧様本人としては、心苦しいのよ
だからなぜ、ヴァイオラが自分を追って来ることになったのか、きちんと話しておきたかったのよあなただけに
どうしてオレだけなんですか
メグやマナにだって話してあげたって、いいじゃないか
亡くなった弟さんのことはその人への思いは、あなたにしか話したくないのよ
ケイさんのこと
あなたには、まだ判らないかしょうがないわねあなたも、きちんと初恋をしてきていない子だからね
初恋
寧様は本当に、あなたのことが好きなのよだから自分の心の一番奥底に隠していた悲しい思い出を、あなたに知って欲しいと思ったの
寧さんがオレのことが、好き
そんな馬鹿な
するとあたしの存在は何なんでしょうか
ミッチィが、ポカンとした顔をして尋ねた
工藤さんは話を切り出すための、ダシに使われたのよあなたは黒い森のメンバーでは無いから自分の話を聞かれても、平気だと思ったんでしょう何より、あなたは裏社会のことを知っている子だから、ああいう怖い話を聞いても耐性があるでしょう
その言葉でオレは、気付く
話を盗み聞きしていたのは、寝たふりをしていた克子姉だけじゃない
ミナホ姉さんも、階段の上に隠れてずっと聞いていたんんですね
そうよあたしが出てったらそれこそ、寧は話を止めてしまうわ今夜は、とても良い機会だからきちんと、最後まで話させてあげたかったの
良い機会
ミナホ姉さんが、フフッと笑う
寧が三年間、ずっと胸に溜め込んでいた思いを言葉にしたのよどんな形でもいいわ言葉にして、誰かに思いを吐き出すっていうのは、とても大切なことだから吉田くんが、聞いてくれて本当に良かったあたしたちでは、寧は心を解放してはくれないから
あたしもマルゴもあの場に居たからよ改めて、言葉にする必要は無いでしょ全部、知っているんだからかえって、あたしたちの視点から見たケイさんの死を語られれば、それがより生々しく寧の心を傷付けることになるかもしれない
でも誰にも話せない言葉にできないというのは、辛いのよ寧の胸の中でずっと、強い感情が溜め込まれて可哀想だったわ
だから今夜は、これでいいの寧は、あなたに自分の過去を話すことができた今は、それだけでいいわこれだって、すごい進歩なんだから
ミナホ姉さんはそう言う
とにかく、覚えておいて寧は、身体は大人だけど心は幼いわ吉田くんも、あの子のことは一番年下の妹だと思って接して欲しいの
寧さんが妹
そうよケイさんとの関係も、現実には妹だったし、黒い森の中でもずっと妹として扱われてきた寧は、妹気分が身に染みついちゃっているのよ吉田くんや恵美みたいに、自立していないのよ
そうだ寧さんは、いつも誰かといる
たいがいは、マルゴさん
守ってあげないといけないオーラのある人だから仕方ないんだけど
確かに、寧さんはオレたちみんなの妹だ
別にあの子を甘やかしてきたわけじゃないのよ弟を失ったという、あの子の心の傷が、あまりにも大きかったからゆっくり、時間をかけて癒やしていくしかなかったの
最初の頃は、誰にも心を開かなかったしねマルゴと仲良くなったのだって、うちの高校へ入ってからのことだし本当に手間の掛かる子なのよ
ミナホ姉さんは、フッと溜息を吐いた
これから先寧がちゃんと、吉田くんやみんなに心を開いていけるかどうかは、今後の課題よみんなで、温かく見守っていきましょう
みんな
オレたち、全員で
あたしたちは、年上の姉としてそれも、あたしも克子もマルゴも、それぞれ別の立場から寧を見守るわ役割が違うのよあたしは指導役だしマルゴは親しい姉ね克子は、わざと寧と少し距離を取っているからだから、寧があたしやマルゴに相談できないことを話すことができる相手になってくれているのよ
ミナホ姉さんたち、年上組は
それぞれの役割をそれぞれの人が、自覚している
そっか、だから寧さんはミナホ姉さんを先生って呼んでいるんだ
年下組もそれぞれ自分の役割を考えなさいっていうか吉田くん以外の他の子たちは、もう判っているみたいだけどね
ミナホ姉さんは、眠っているメグとマナの方を見る
あたしあなたに対する考えを変えるわ黒い森のメンバーとして、正式にあなたを承認しますマナさん
眠っているはずのマナが、スッと手を挙げてVサインをする
お前起きていたのか
もっともあなたは、妹をずっとやってきた子だからこういう時の空気が読める子なのよね
そっか寧さんの話の邪魔にならないように
ずっと、寝たふりを続けていてくれたのか
恵美もありがとう
メグは横になったまま、ピクリとも身体を動かさない
でも、ミナホ姉さんがこう言っているんだからやっぱり、眼を覚ましているんだな
メグもマナも寧さんに気遣ってくれたんだ
二人とも今の話は聞かなかったことにしてくれたのよ恵美は吉田くんの寧に対する告白も聞いていないことにしたいんでしょだから、今も、寝たふりを続けているのよ
安心なさい、恵美吉田くんは確かに、寧に対して深い愛情を持っているけれどさっき、彼氏自身が言っていた通り普通の恋愛感情とは、ちょっと違っているから
ミナホ姉さんは恵美に、そう言う
この人にとっての寧は本当に初恋なのねだから、寧が至高な存在になっちゃっているの彼の中であなたやみすずさんに対しての思いとは、種類が違うのよ吉田くんのあなたたちへの思いは、ちゃんとしたごく普通の恋愛感情だから
スッとメグが起き上がる
本当にしっかり目が醒めているんだ
吉田くんはね寧には、甘えられないのよ初恋の相手だから、ついつい格好つけちゃうしね、さっきみたいにできもしない、大きなことを約束したりするし
いやオレは、本気ですッ
ミナホ姉さんはそんなオレを見て、苦笑する
だから、吉田くんは困った子なのよ
一方的に片方がもう片方を愛するだけっていうのが、健全な人間関係だと思う
あなたに一生掛けて、幸せにしますって言われたら嬉しいけれどこれが、プロポーズならアリよでも、別に自分以外の男と結婚しても構わないですからとか言われたら、正直、女の子は困っちゃうわよ
吉田くん、正直に答えてあなた、恵美たちにも同じことを考えている
恵美やみすずさんやマナさんも他に良い男性が現れたら、あなたは身を引く気
そうしなくちゃいけない
そうするべきだって思っているけれど
ちゃんと恵美を見て自分の気持ちに正直になりなさい
恵美を見る
心配そうにオレを見ている、恵美
長身でスリムな肉体
間違いなく、誰が見たって美少女だ
オレ誰にも渡したくないです
恵美がハッとして、オレを見る
恵美は、ずっとオレのものにしておきたいです
それが正直な思いだった
じゃあ一生、恵美の面倒を見るのね
そういうことらしいわよ、恵美吉田くんにとって、寧は至高の初恋の相手だけどあなたのことは、現実の恋人らしいわ
とっても、嬉しいです
メグが頬を赤らめて、そう言った
マナさんのことは、どうなの
ミナホ姉さんがオレに尋ねる
マナだって一生、オレのものです絶対に、他の男には渡しません
エア・マットの上のマナがスッと眼を開ける
オレに向かって、大きく脚を開いて挑発的なポーズを取る
当たり前じゃんマナは、お兄ちゃんのセックス奴隷なんだから一生、お兄ちゃんとしかエッチしないんだからね
みすず様のことは、どうお考えなんですか
ミッチィがオレに尋ねる
真剣な眼で
オレはみすずの姿を思い出す
あのにこやかな微笑み
しなやかな肢体
みすずとの熱いセックスを
あいつもオレの女だもう、誰にも渡さない
香月様と戦うお覚悟なのですね
みすずの祖父香月閣下は、みすずの婚約者を決めている
うんみすずに政略結婚なんかさせないあいつは、一生、オレの女だ
オレは心を決めた
オレがしてしまったことの結果の全てを受け入れる
メチャクチャです全員、自分の女にしてしまうだなんて
ミッチィが、そう言う
そうだこんなのはメチャクチャだ
メチャクチャでいいんだ
あたしは、構いません
マナもいいよ
克子も、全然オッケーですわ後、多分、渚も
マナ克子姉
早くさ寧さんもこっちに引きずりこもうよお兄ちゃんは、もっと初恋気分を楽しみたいんだろうけどさ女になっちゃった方が気楽でいいよね
マナが、そんなことを言う
でも寧さんも、お兄ちゃんとセックスしているんだよねいつも、あんなにハイテンションな感じでエッチしているの
マナは、寧さんが処女って知らないんだっけ
あら、あんなハイテンションで、愛を告白しながらするセックスも気持ちがいいわよ
克子姉が、うまいこと誤魔化してくれた
そっかうん、そうかもねでも、あんなテンションじゃ、何回もできないよねマナは嫌だなマナは、お兄ちゃんには何回も気持ち良くなって欲しいし
ニコッとマナは、笑う
さてじゃあ、恵美とマナさんと工藤さんは寝なさい少しでも睡眠を取っておかないとね
ミナホ姉さんがそう、言う
お兄ちゃんはお兄ちゃんも、こっちにおいでよマナとメグお姉ちゃんの間で寝よう
マナが、オレを誘ってくれるけれど
吉田くんはまだ、胸の中が治まっていないんでしょ
オレはまだ納得できていない
オレ自身の無力さに
寧さんをオレが助けられないということに
胸がムカムカしている
なら、マナとエッチする一回、エッチしたら気持ちも落ち着くよあ別に、一回じゃなくてもいいけれど
マナが、オレに微笑む
ごめん今は、そういう気分じゃないんだ
そう残念したくなったら、いつでも言ってねマナの身体は、お兄ちゃんのためにあるんたからねっ
マナの横でメグが、複雑な表情をしている
ここでマナとセックスしたら
メグともしなくちゃいけなくなる
みんな、オレの女だって宣言したけれど
女たちの関係を良好に保つのは大変だ
吉田くんあなた、ちょっと散歩してきなさい
うんそれは、いいアイデアだ
少し一人になって、考えてみたいし
自分のことも
寧さんのことも
これからのことも
そうだね、ミナホ姉さんオレ、ちょっと出てくるよ
オレは起き上がって、制服のズボンを履いた
上は下着代わりの無地のTシャツでいいか
じゃあ、行ってくる
オレが靴を履くと
あそこの動物も連れてってね
今日はずっと横になっているから少し、歩かせないと運動不足になるでしょ
ミナホ姉さんの指差した相手は雪乃
え、雪乃を連れて行くの
ミナホ姉さんが苦笑する
あなた全然、気付いていなかったの雪乃さんも、ずっと起きていたのよ
雪乃も寝たふりしていた
起きていてオレと寧さんの話を、聞いていたんだ
うん、いい感じにまとまったかなと
次話は、夜の校舎でエロ犬の散歩です
雪乃と吉田くんの関係を、もうちっと詰めます
185.夜の散歩へ
そうよね雪乃さん
ミナホ姉さんが、そう話し掛けると
雪乃が、むっくりと起き上がる
そして機嫌の悪そうな顔で、オレをジロッと見た
どうしたんだ
ホントに、動物っぽくなっている
そうね今から校内を散歩するのなら、3階の視聴覚室なんて、いいんじゃないかしら
ミナホ姉さんは、そう言ってオレに鍵を差し出す
はいこれが、視聴覚室の鍵だからそれから、懐中電灯はそこのテーブルの上にあるでしょ
時刻は午前4時を少し過ぎたところ
まだ、外は暗い
ちょっとした、肝試しだ
校内を歩く時は、懐中電灯の灯りは必ず床に向けること間違っても、窓の外を照らしちゃダメよ光が外の人に見られたら、大変なことになるでしょ
うん校内に人が居ることが知られるのは、マズイ
視聴覚室の中は、電灯を点けても平気よあの部屋は、外に灯りが漏れないようになっているから
それって、窓に遮光カーテンを完全に閉めた場合だろ
さっきまで、ミナホ姉さん視聴覚室に居たな
視聴覚室に何か準備をしているのか
雪乃さんの鎖を外す鍵が、これね首輪は付けたまんまにしておきなさい
ミナホ姉さんが、小さな鍵を手渡してくれた
オレは雪乃のところへ行く
雪乃首をこっちに向けろ鍵を外してやるから
雪乃は嫌がる
ちょっと触らないでよ
オレに触れられるのが、嫌らしい
ずっと、鎖に繋がれていたんだ少しは、身体を動かしたいとか思わないのか
思うわよ
じゃあ行こうぜ、散歩
雪乃は、少し考え込み
判ったわよ
オレに首を差し出す
首輪と鎖を繋いでいた、鍵が外れる
じゃあ行くか
そ、そうね
雪乃が立ち上がる
うんと大きく伸びをした
やっぱり、鎖に繋がれている状態は窮屈だったらしい
御名穂さん、あたしも行きたいです
不意に、メグがそう言った
あたしも、一緒にお散歩してきてもいいですか
ダメよ恵美は、そこで寝ていなさい
メグは、強い声でそう言った
吉田くんのこと、信じられないの
ミナホ姉さんは、モニターを見たままメグに振り向かずに、そう言った
そういうわけではないですけれど
吉田くんと雪乃さんが、二人きりになるのが嫌
あたし雪乃だけは、嫌なんです
ずいぶんと嫌われたものね雪乃さん
雪乃はグッと奥歯を噛みしめている
でも、ダメよ恵美は吉田くんを束縛したいだけみたいだから
今後、雪乃さんとどう付き合うのかは吉田くんが、自分で決めるべきことでしょあなたが一緒に行ったら、吉田くんが雪乃さんよりも恵美の方に気を遣ってしまって、ちゃんとした判断ができなくなるわ
判断
これからの、オレと雪乃の関係を
オレは、朝までに決めないといけない
でもあたしは
メグはオレと雪乃が二人だけになることを、どうしても納得できないようだった
あんたが、気にすることなんか何も無いわよ
雪乃が言った
どうせ、いつもと同じよ途中で、このオトコがムラムラして、あたしのことをレイプしてあたしの中に射精するんでしょ今まで散々されてきたことだもの、もう慣れたわよ
オレの顔をギッと睨む
どこでする視聴覚室に行くまでに、どうせガマンできなくなるんでしょ廊下でするのそれとも、前の時みたいに階段の踊り場でするいいわよあんたに何十回もレイプされまくった身体だものあんたの好きにすればいいじゃないの
もう、雪乃なんかとはしないでヨシくんの相手は、全部、あたしがするから
雪乃の挑発的な言葉にメグは乗ってしまう
判ってるわヨシくん、寧さんのお話を聞いて、辛いんでしょ色んな気持ちが身体の中をぐるぐる駆け回って何もかも吐き出してしまいたいんでしょあたしも、同じ気持ちよだからあたしを犯してあたしの中に、ヨシくんの辛い気持ちを全部吐き出してお願い
メグは真剣な顔で、オレにそう言う
あなたでは、ダメなのよ恵美
ミナホ姉さんは冷たく、そう言った
どうして、あたしじゃダメなんです
吉田くんは、あなたのことを本当に大切に思っているから
メグの顔が曇る
あなたを感情のはけ口にすることなんて、吉田くんにはできないわ吉田くんは、あなたのことを心から愛しているのだから、あなたには酷いセックスは、絶対にしないわ
メグがうつむく
メグお姉ちゃんマナたちには、マナたちで別の役割があるんだよ
メグの隣でエア・マットに横になっていたマナがメグにそう言う
マナ別の役割って
メグお姉ちゃんはお兄ちゃんにとって、同級生の理想の恋人になってあげればいいんだよ高校生の仲の良い恋人らしいエッチをすればいいんだってだから、メグお姉ちゃんは、性欲ギラギラの変態っぽいセックスとかしちゃダメなの
あメグお姉ちゃんは、したいんだそういうセックス
でもメグお姉ちゃんがしたいのは、あくまでも恋人同士のレイプごっこみたいなやつでしょエッチな遊びとして、してみたいだけなんでしょ
そうねうん、そうだと思う
そうだよほどほどに、しておきなよ本当のレイプって、痛いし怖いし大変なんだらね
と昨日、オレにレイプで処女喪失させられたマナが言う
あたしはお兄ちゃんのセックス奴隷だからお兄ちゃんがしたかったら、レイプでもエスエムでも何でもするけどさでも、あんまり痛いのや、怖いのは好きじゃないなあ
オレもう、二度とマナをレイプするようなことはしないよ
マナが、オレにニコッと微笑む
ありがとお兄ちゃん、大好き
マナはお兄ちゃんのセックス奴隷だけど、妹でもあるんだよねだから、お兄ちゃんにとっての可愛い妹になるのお兄ちゃんがマナのことを一生懸命、大切にしてくれているようにマナもお兄ちゃんのことを愛するの奴隷として、妹としてそれが、マナの役割だよ
マナがメグに笑って言った
だからもし、お兄ちゃんが寧さんの話を聞いて、今、イライラした気持ちを誰かにぶつけたいんだとしたらそういうのは、マナやメグお姉ちゃんがしちゃダメなんだよあたしたちだと、お兄ちゃんは気遣ってくれるから本当に気持ち良くはなれないでしょ
渚がここにいればいいんだけどねあの子は、男の人のそういう気持ちを、癒やして差し上げる力があるけれどあたしが、相手をしてあげてもいいけれどううん、あたしじゃダメねきっと、セックスの方の比重が大きくなっちゃって、ただダラダラとセックスをマラソンみたいに続けることになっちゃいそうだから
お兄ちゃんが、ただ落ち込んでいるだけなら克子さんがエッチの相手をするのが、一番なんだけどねでも、今はもっとワーッと心の中のモヤモヤを吐き出したいだけなんでしょ
何で、お前がオレの生理状態をそんなに詳しく分析している
そうね彼の表情を見ている限り、そうなんでしょうね
そうですか、顔に表れているんですか
だから弓槻さんの指示通り、ここは雪乃さんでいいんだよ
マナが、メグに言った
雪乃さんなら敵だからお兄ちゃんだって、雪乃さんのことは全然好きじゃないんでしょモヤモヤを吐き出すだけのレイプなら、雪乃さんで充分だよ
相変わらずマナは、雪乃には酷い
白坂舞夏時代を封印するために、雪乃に辛く当たっているのか
そしてマナは、オレと雪乃のそもそもの関係を理解していない
オレは、オレが雪乃に対して特別な感情を抱いていたことをマナに伝えたけれどマナは、その言葉をまともに受け取ってはいない
自分の時と同じ様に雪乃は、黒い森の復讐の一環としてオレにレイプされたのだと思っているらしい
雪乃さんなんて、ここに居たって、お兄ちゃんにレイプされるぐらいしか役に立たないんだしね
雪乃が、妹に怒鳴る
口惜しかった、レイプじゃなく、セックスしてごらんよ
マナが姉に食って掛かる
あたしやメグお姉ちゃんや他の女たちが、お兄ちゃんとしているのはセックスだよあたしたち、みんな愛しているもの愛し合っているもの
マナが吠える
雪乃さんだけだよ何十回したって、何も変わらない石みたいな女はずっとレイプにしかならない、欠陥オンナじゃない
あんた、姉に対して何てことを言うのよ
雪乃は、マナをまだ自分の妹だと思っている
自分の支配下にある自分がギャーギャー喚けば、引き下がる妹だと
あたしは、吉田マナですお兄ちゃんの奴隷で妹お兄ちゃんの女なのっ雪乃さんとは、もう完全に無関係なんですからっ
マナは、姉に背を向けてゴロンと寝転ぶ
だからお兄ちゃんは、早く、雪乃さんと気分転換してきなよそして、気持ちが落ち着いたらマナと一緒に寝ようマナがお兄ちゃんのこと、ギュッと抱き締めてあげるから
舞夏、あたしはねあたしは、白坂の家の人間よこんなオトコにどれだけ犯されたって絶対に負けるわけにはいかないのよっ
雪乃はそれでもなお、プライドを振りかざす
雪乃さん、こんな状況になって、まだそんなことを言っているわけ
呆れた様に、マナは言った
あなたとあたしいいえ、舞夏さんは、人殺しの娘なんだよ日本中に、そう知れ渡っちゃったんだから白坂創介は、女の子を誘拐してレイプして殺して山に埋める、極悪非道の悪魔だって白坂の一族からだって、追放になるわよううんあんな記者会見を開いちゃったんだから、守次大叔父様だって引退させられちゃうでしょうね雪乃さんには、もう何の後ろ盾も無いんだから白坂の家は、守ってはくれないんだからね
そんなこと、無いわよ
雪乃は妹を睨み付ける
ふーん、じゃあ何で、雪乃さんの電話は鳴らないんだろうね
雪乃がゾクッと震える
判っているんでしょマナがずっと、雪乃さんの見えるところに、雪乃さんの携帯電話を出して置いてあげたから着信のランプ点いてないよね
確かに鎖に繋がれた雪乃では届かない場所、テーブルの上に雪乃に見えるようにして携帯電話が置かれている
白坂創介さんのことで、夕方からずっと大騒ぎになっているっていうのにどうして、誰も雪乃さんに連絡してこないんだろうね雪乃さんのお母さんや、お祖父さんは何をしているんだろうね白坂の一族の人からだって、連絡が無いのは変だと思わない
あんたにだって、連絡が無いじゃない
雪乃の言葉に、マナはニッと微笑む
あたしが黒い森の側の人間になったことは白坂の人には、もう伝わっているんだよあたし雪乃さんのお母さんと祖父の市川さんと弁護士の白坂浩太郎さんの三人の見ている前で、お兄ちゃんとセックスしたから
とっても気持ち良かったよお兄ちゃん、とってもマナのこと可愛がってくれたからあたし、一生、お兄ちゃんに尽くすわ一生、奴隷でいいううん奴隷がいいのお兄ちゃんのセックス奴隷じゃない人生なんて、もう考えられない
マナは家と過去を全て捨てた
だからオレは、マナにそれ以上のものを与えてやらなければならない
市川さんは、白坂家と関係を断つ方を選択したよだから、雪乃さんのお母さんもそっちに動いた自分たちの保身のために行動するので、今は精一杯なんでしょだから、忘れているんだよ雪乃さんは、白坂創介さんのあの家で閉じ籠もっていると思い込んでいるんだよまさか、あたしたちに拉致されているなんて想像していないんでしょうね
マナはあたしたちと言った
完全に彼女も、黒い森のメンバーになっている
で雪乃さん、これからどうするの日本の敵・白坂創介の娘として、みんなに冷たい眼で見られながら生きていくの白坂家は、絶対に助けてくれないよホント真面目に考えた方がいいと思うよ
雪乃がぷるぷると震えている
お兄ちゃんと夜のお散歩をしながらゆっくり、考えてくれば
雪乃も自分の今後を決めないといけない
オレたちは、岐路にいる
メグが、マナに声を掛ける
ごめんね、あたし自分とヨシくんのことばっかり考えていたマナの気持ちとか、考えてあげられなくて、ごめんね
同じエア・マットの上の二人
マナがメグの手を握る
いいんだよ、メグお姉ちゃんマナもメグお姉ちゃんの気持ち、よく判るし
マナ、ごめん
謝らないでいいんだよ姉妹じゃない、あたしたち
姉妹
確かにマナとメグは腹違いの姉妹だ
おんなじ、お兄ちゃんの女でしょ大丈夫だからお兄ちゃんは、ちゃんとあたしたちのところに帰って来てくれるから雪乃さんみたいな変な女にクラクラして、どっかへ行ってしまうことなんか無いんだよ黒い森が姉妹会が、お兄ちゃんの戻ってくる場所なんだから
戻るべき場所
それは家
帰って来たら、ギュッと抱き締めてあげようねいっぱい、お兄ちゃんに甘えようねお姉ちゃん
マナとメグが、微笑み合う
ヨシくん、あたし、もっともっと自分を磨くいい女になるから
ヨシくんが、あたしのところに、すぐに帰って来てくれるようにあたしは、もっともっと魅力的な女になるからヨシくんのために
そうだよマナだって、いい女になるあたし、お兄ちゃんのために、スーパー・モデルになるんだもの
マナもオレを見ている
あたしは、いつでもお兄ちゃんのところに戻って来るからねお兄ちゃんの奴隷なんだものずっと奴隷として愛し続けて貰えるように必死で頑張るよ素敵な女になるからね
いいなあ、若い子たちは夢があってあたしは取りあえず、後十五年はこのボディラインを維持することから始めようかな
冗談よあたしも、もっといい女になるわ負けてらんないもの姉妹たちとあなたを取りっこするつもりは無いけれど女の魅力では、勝つわよ勝ち続けてやるんだから
吉田くんあなたには、もう帰ってくることができる場所があるそれは、判ったわね
最後にミナホ姉さんが、言った
オレは、もう一人じゃない
このオレの女たちに対して義務と責任がある
それが判った上で雪乃さんとお散歩していらっしゃいそして、帰って来るのよまた、ここへ
オレは、はっきりとそう答えた
そんなオレを熱い眼で見ているメグとマナと克子姉
フフッと笑う、ミナホ姉さん
雪乃はムッと憮然とした表情をしている
そして、ミッチィが
何か考え込んだ様子でジッとオレを見つめていた
階段を昇って校長室に出る
こんな仕組みが学校の中にあるなんて、知らなかったわ
雪乃が、隠し扉を見てそう言った
校長室から廊下へ
LED懐中電灯の白っぽい光が、床を照らす
でどうするの
雪乃が、言った
すぐに視聴覚室へ行くそれでも、他の場所でする
雪乃が切り裂かれた制服の胸を隠す
オレは、気付いていた
雪乃の乳首は、すでに鋭く勃起していた
1階の自販機コーナーへ行こう
驚く、雪乃
喉渇かないか何か、飲もう
そして、オレたちは1階へ向かう
お前、何にする
オレは、財布を取り出して小銭を探す
いいわよ、自分の分は自分で払うわ
雪乃はビリビリの制服のポケットから、財布を取り出そうとする
いいよ缶ジュースくらいオゴってやるから
オレは、自販機に小銭を投げ込む
どれがいいんだよ
じゃあブラック・コーヒー
そんなんでいいのか
あたし夜間は、糖分を取らないことにしているから
オレは、コーヒーを買って、雪乃に手渡す
ん、ありがとう
オレもコーヒーでいいか
あ、でも胃がムカムカしているから
カフェ・オレにしよう微糖の
コーヒー缶を買って蓋を開ける
コーヒーの香りが、当たりに漂う
自販機の灯りが、ぼんやりと雪乃を照らしていた
変な感じよね
コーヒーを一口飲んで、雪乃は言った
夜の学校って昼間とは、全然雰囲気が違うから
確かに何か、不思議な緊張感がある
それでいて開放感もある
あたし制服こんなんなっちゃっていて下着も付けてないし昼間なら、恥ずかしくて外なんて歩けないのに今は、平気なのよ
夜の校舎内は密閉されている
ここには、オレと雪乃しかいないということも判っている
だからだろうか
今までとは違う、妙な親近感を雪乃に感じる
であんた、本当は誰が好きなのよ
雪乃が缶を持ったまま、オレに尋ねる
あの、奈島寧っていう上級生に相当入れ込んでいるってことは、よく判ったけれどさま、確かに色々と大変な経験をしてきた可哀想な人なんだろうけど
雪乃も寧さんの話を寝たふりして聞いていた
でもそれ以外に、恵美や舞夏やあの克子って女にまで手を出したわけ
別に
手を出したとか、出されたとかそういう関係じゃないんだけどな
オレと、克子姉は
まああんたの勝手だから、何でもいいけれどねでも、実際誰が一番好きなの
一番とか二番とは無いよみんな好きだし、みんな大切だよ
ハッ何それメチャクチャじゃない
メチャクチャでいいんだオレたちは、これでいいんだから
何よそれ全然判らないわよ
雪乃は、コーヒーを飲み干す
まああんたみたいな変態の考えが、あたしに判るはずなんか無いんだけど
雪乃は、缶を見つめたまま
でも舞夏や恵美が、あんたの毒牙に引っ掛かっているのが嫌なのよすっごく気持ち悪い
これは
雪乃が姉妹である、マナやメグを心配しているということなんだろうか
いいや、違う
雪乃はずっと、マナやメグの上に君臨し、支配してきた
特にメグには酷い干渉を何度も行ってきた
雪乃にとっては、マナやメグは自分の所有物の様に思えていたんだろう
その所有物をオレに取られた様な気がしているのに違いない
そういうお前は、どうなんだよ
オレの毒牙に掛けられたって言ったら雪乃の方が上だろオレ、お前とセックスした回数が一番多いもの
雪乃は、ククと笑った
そうよね、結局、あたしが一番の被害者なのよね
そしてオレを見る
さっさと視聴覚教室へ行きましょう
あたしまたレイプされてあげればいいんでしょういいわよ、させてあげるわ人形みたいに、横になるから好きなだけあたしを犯せばいいじゃない
吐き捨てる様に、雪乃は言う
もう、慣れたわよ全然、平気なんだから
雪乃は、ギッと強い眼でオレを見るが
お前、これだけ犯されて何も判っていないな
ミナホ姉さんが視聴覚室に何も仕掛けていないはずがないだろ
雪乃はまた屈辱的なセックスを体験することになるだろう
昔、今は更地になった秋葉原のラジオ会館で見たこと
夏休み期間の頃
中学生ぐらいの女の子が二人、3階のイエローサブマリン(模型店)から出てくる
女の子の一人は、1/60のフリーダムガンダムの巨大な箱を持って
あーあ、あたしこれから夏期講習なのに、何でこんな物買っちゃったんだろう
あんた、それ本当に塾に持っていくつもり
だって、しょうがないじゃない安かったんだから
うんあたしはホシ・ガンダムよりも、スズ・ガンダムの方が好きなんだけれどね
驚いたこと
①、中学生女子が1/60のガンプラを買っている
②、この中学生たちは、ガンプラを声優のグッズの一つだと思っている
あと、ラジオ会館では他にも、
海洋堂の自販機コーナーの前で、仮面ライダーWの探偵みたいな格好をしたオトコが携帯電話を掛けながら
オレたちは、ここに居るようなやつらとは違うんだよここのやつらは、みんな眼が死んでいるが、オレたちは生きているこんなオタク野郎どもなんか、目じゃねぇんだよオレたちで革命を起こしてやろうぜ
と、エスカレーターを昇ってくる人たちを見下した眼で嘲笑いながら、大きな声で叫んでいるのを見たことがあります
厨2病は、外で発作が出ると痛すぎますね
それでは、働いて参ります
186.オレと雪乃と
雪乃と、夜の校舎の中を歩く
雪乃は踊るようなステップで、ツツッと歩いて行く
何やっているんだよ
つい聞いてみた
ちょっと身体が、ナマッているのよここしばらく、ロクに運動していないし
オナニーばっかりしていたんだろ
そんなわけないでしょ
雪乃はフンッと膨れる
マナに聞いたから、知ってるんだよお前が、一日中オナニーしていたって
雪乃の足取りが止まる
う、嘘よあの子がまた、いい加減なことを言ったんでしょ
必死になって、誤魔化す雪乃
嘘なはずないだろていうか、マナは絶対にオレには嘘は吐かないよ
何でそう言い切れるのよ
昨日、マナはオレたちに嘘を吐いていたから大変なことになったんだ
そう言えば昨夜は、マナとメグと三人でラブホテルに泊まったんだっけ
大変なこと
ミナホ姉さんに処分されるギリギリの瀬戸際まで行った
殺される寸前だったってことだよ
うんマナが、心を入れ替えてくれて本当に良かった全裸で土下座してみんなに謝ってそれで、許して貰ったんだ
何なのよ、それ
仕方ないだろミナホ姉さんは、白坂創介って人に妹を殺されて、自分は赤ちゃんの産めない身体にされてしまった克子姉たちは、高校生の時に拉致されて無理矢理、売春婦にさせられていただから、白坂創介を破滅させ、その二人の娘をレイプして姉は強制妊娠、妹は殺すっていうのが、そもそもの復讐計画だったんだ
馬鹿みたい狂っているわよ、そんなの
雪乃はそう、言う
パパが、どうしょもない悪い人だってことはよく判ったけれどあたしや舞夏は関係ないじゃないあたしたちは、何も悪いことをしていないのに
それを言ったら白坂創介に酷い目に遭った人全員がそうだよみんな何も悪いことはしていないのに白坂創介の眼に留まっただけで、人生を狂わせられたんだから
だからって家族のあたしたちまで、復讐されるのは間違っているわ
雪乃は、本当に馬鹿だ
世界の中心が、自分なんだなこいつの中では
別に、白坂創介の家族だからって、八つ当たりして酷い目に遭わせているわけじゃないよ復讐のターゲットは、あくまでも白坂創介本人だ
なら、何であたしたちまでレイプされなきゃならないのよ
だから白坂創介に家族を奪われた苦しみを復讐するためには、白坂の家族に酷い目に遭わせて見せつけてやるしかないだろ
えあたし、パパを苦しめるためだけにレイプされてるわけ
そういうことだよ
ちょっとちょっとあたしの人権とかはどうなっていのよ
知らん
知らんじゃないでしょう基本的人権は、守られなければならないって憲法にも書いてあるのよ
じゃあ白坂創介に酷い目に遭った人たちの人権はどうなるんだよ
そんなのあたしに聞いても知らないわよパパのしでかしたことについては、警察なり裁判所に訴えればいいじゃない
じゃあお前も訴えろよお前をレイプしたのは、オレなんだからさ警察でも何でも行けばいいじゃないか
そんなの警察なんかに、言えるわけないじゃない
だろ警察に言ったって、何の解決にもならないだから、ミナホ姉さんたちは自分の手で復讐するとかなかったんだよ
そういうことじゃなくて
言えないわよあたしの初体験がレイプでしかも、相手があんただなんて恥ずかしくて、誰にも言えないわそんなこと
うあーっと
せめて、もう少し格好いい人とか何か、ステイタスのある人なら、まだ納得できるけれどあんた、クラスの中でも地味だし、暗いしどうしょもない方の男子じゃない
そうだな
あたしも、誰にも言わないであげるからあんたも誰にも言わないでね
雪乃が、眉を顰めてオレに言う
ホントあんたみたいな男とセックスしていることがバレたら、身の破滅よ
この馬鹿女
結局想像力が足りないんだな
だからミナホ姉さんたちの苦しみが理解できないんだ
その上自分のことにしか興味が無いから
周りの状況が全然判っていない
お前自分が破滅しているってこと、気付いていないのか
だってお父さんが、テレビやネットで徹底的に叩かれているんだぞオーストラリアの少女強姦とか、芸能界でのスキャンダルとか、あげくに殺人事件だぞお前、今日、どんな顔してクラスのやつらと顔を合わせるつもりだよ
ああそのこと
雪乃は、平然と答えた
そんなの簡単よあたし、こんな学校すぐに辞めるから
パパのことだって白坂家の弁護士の先生って、とっても優秀なのよ大畑先生と言ってね
知ってるそこの弁護士事務所に居る、白坂家の男が昨日来ていたから
だからしばらくは、グダグダするだろうけれどパパだって、すぐに保釈されるわよオーストラリアの事件は、示談になったんでしょ芸能界のことは、みんな噂話で証拠なんて無いじゃない
ネットに、白坂創介と元アイドルのセックス映像が流れているだろ
そんなの、みんなそっくりさんてことにすればいいのよあたしのパパだって、証明にはならないじゃない
ミナホ姉さんの妹さんのことは、どうするんだよ
それだって行方不明者の遺体が、たまたまあたしの家の別荘地から見つかったってだけでしょパパとその子の映像だって、偽物だって突っぱねれば平気よあたし、信じているからパパは、絶対に無罪を勝ち取るって
白坂創介は何も悪いことはしていないって言うのかよ
そんなことは言ってないわきっと、全部パパがしでかしたことなんでしょ判っているわよパパは罪になる様なことをたくさんしてきたでも、だからって有罪判決を受けるかどうかは別のことじゃない
罪を犯したのに、無罪放免になるって言うのか
当たり前でしょパパは、白坂家の人間なのよ
あ、ダメだ
こいつは完全に、オレたちとは違う
物の考え方が、思いっきり偏っている
守次様には申し訳ないけれど当主が別の人に代わって、新聞社を引き継ぐことになるでしょうねでも、やっぱり白坂の一族の人間がトップになるわハハッ、こんなことぐらいで、白坂の家が潰れたりはしないわよ
お前白坂創介や自分が、白坂家から追放される可能性とかは考えないのか
雪乃はクククと笑った
そんなことあるわけないじゃないあたし、白坂家の中では、とっても可愛がられているのよあの人たちが、あたしを見捨てるはずがないものしばらくはそうね、市川のお祖父様の家へ行くわ名前も市川ということにして、それで新しい学校へ通うことになるんでしょうね
市川さんてさっき、マナが話したろお前のお母さん方のお祖父さんはマナを見捨てたんだお前だって
あたしは、舞夏とは違うわ
市川のお祖父様が、あたしを見捨てるはずがないわよ
じゃあ、何でお前の携帯に誰からも連絡が来ないんだ普通なら大丈夫かとか、心配して電話してきてくれたりするもんだろ
何かの手違いでしょたまたま、電話するのを忘れているだけよそうじゃなきゃ、あたしの携帯電話の番号が判らなくなっちゃっているとかきっと、家の電話の方には、掛けて来てくれているわよそうに決まっているわあたしはお祖父様の自慢の孫娘なんだから
そこまで、自分に都合良く考えられる
ここまでくるとある意味、才能と言ってもいいかもしれない
舞夏は、何か勘違いしているのよっていうか、あんたたちに散々、変な事を吹き込まれて、頭がおかしくなっちゃっているのよ
頭がおかしくなっているは、お前の方だ
そうよ舞夏は返して貰うからねあの子は、あたしの妹よ
いいや、返さないマナは、もうオレの女だ
変態中学生をレイプして楽しいのロリコンなわけ
そういうことじゃないあいつは、もうオレの家族だ吉田マナなんだ
あんたまで、頭のおかしいことを言わないでよあの子は、白坂舞夏よあたしの妹ですっ
どこまで行っても平行線だ
オレたち永遠に噛み合わないな
オレと雪乃が判り合うことは絶対に無い
とにかく朝になったらいいえ、遅くても午後までには、白坂家の人間があたしたちを助けに来てくれるわ弁護士の大畑先生があんたたち交渉して下さって多分、身代金とか払うんじゃないの何千万円かそれで、あたしと舞夏は解放されることになるでしょうね
雪乃は、勝手なスケジュールを妄想している
そうしたら、もうこの学校には、二度と来ないわそうだ市川のお祖父さんの兄弟が、神戸で会社を経営しているのよあたしと舞夏は、その人を頼って、神戸の学校へ行こうかしら神戸なら、あたしたちのことを知っている人はいないし白坂の名前を名乗らなければ絶対にバレないと思うのよだからあんたとも今日限りよ
あたし神戸で、いい男を見つけるわあんたよりも格好良くて、ステイタスのある人をケンジとのことは、全部、あたしの勘違いだったからもう、あんな下らない思いはしたくないの今度こそあたしは、初恋をやり直すのよ
スポーツマンで、格好良くてガッシリした体格の人がいいなあそれで、エッチが上手ければもっといいんだけどさっきの話だけどさ、あたしは別に一人エッチが好きなわけじゃないのよあんたに、散々やられまくっちゃったから身体がうずくのよあたしは、セックスがしたいオナニーじゃなくってね
風俗嬢にでもなれよ毎日、セックスできるぜ
冗談白坂家の娘が、そんな真似できるはずがないでしょパパのことが無ければこのまま、この学校に居られたんなら、あんたをセックス・フレンドにしてあげたんだけどね誰にも秘密であたしに忠誠を誓うのなら、一週間に3回ぐらいはセックスさせてあげたのに残念よねあたしたち、今日限りで2度と会わないんだから
雪乃の中では、そういうことになっているらしい
だから視聴覚室では、たっぷり犯させてあげる最後だもんね思いっきり、あたしの身体を楽しみなさいよもう、これっきりなんだから
オレはどうしよう
こんな馬鹿女本当に、これっきりにするべきか
オレには何人もの女がいる
オレは、彼女たちに義務と責任がある
雪乃みたいな女と関わっているのは他の女たちに対して、失礼なことなんじゃないのか
オレお前にとって、何なんだろう
オレはふと、そんなことを雪乃に尋ねてみる
そんなの決まっているじゃないただのレイプ犯よ
あたしを騙して、無理矢理、ヴァージンを奪った卑劣なレイプ犯じゃないその後も、何度も何度もあたしを犯して最悪よ、あんた
うんオレも、そう思う
あんたにとって、あたしって何なのよ
うんと憧れの女だったんだけどな
何よ、そのだったって
高校の入学式以来、ずっと憧れていてだから、遠藤なんかに持っていかれるのがどうしても嫌でそれでレイプしたオレも、お前が初めてだし
そうでしょうね最初の頃、あんた下手くそだったもんね
すっごい勢いで、あたしの身体にしがみついていたわ童貞丸出しでさ
悪かったな
悪いわよ怖かったし、痛かったし気持ち悪かったしね
雪乃は自分の下腹部に手を当てる
今更、何を言ったってどうしようもないんだけど
やってしまったことは、どうしようもない
オレはただ、前に進むしかないんだ
あんたあたしのことが、好きなんじゃないの
雪乃が大きな瞳で、オレを見る
どうだろ嫌いじゃないけれど愛してはいないな
お前のためには、命は懸けられないもの
舞夏になら、命懸けになれるっての
恵美にも
馬鹿なんじゃないのあたしの方が、いい女なのに
ここまで来ると、もう笑うしか無かった
何がおかしいのよ
いやお前とメグだったら、恵美の方が3倍いい女だっていや、10倍だな
そんなはずないわよ
本当だってメグの方が可愛いし、優しいし、頭もいいしオレ、メグと結婚するから
何言ってるのよ
お前だって知ってるだろオレたち、婚約したんだから
あんなの冗談でしょまだ高校一年生よ、あんたたち
でも、決めたんだあんなにいい嫁さんはいないよ
本当に、愛しているの
うん愛しているメグと一生、一緒に居る大好きなんだ
オレの心に迷いは無い
舞夏はどうなのよ
マナは妹だから
あんたの妹じゃないわ、あたしの妹よ
オレの女で妹だあいつだって、一生、オレのものだ絶対に離さない誰にもやらない
香月家のお嬢さんとか、あの克子って女も
そうだよみんな、オレの女だ一生、付き合っていくそう決心したんだ
変態欲張り気違いロリコン
それから、お前は知らないんだろうけれどもう一人、渚って女もいるから
まだいるの
うん克子姉と同い年の人で、3歳の女の子のお母さんなんだ
まさか人妻なの
違うよ父親はいないというか、誰だか判らないお前のお父さんの白坂創介に、無理矢理売春させられて、強制的に妊娠させられて産まれた子供だから
だからお前のことも、妊娠させるよ絶対に、オレの子供を産ませてやるから
嫌よ他のどんなことでもガマンできるけれど、妊娠だけは絶対に嫌
雪乃が、オレを睨む
でももう、できていると思うぜお前だけは、避妊しないでガンガン、セックスしちゃっているんだから
そんなことないわよあたし、運は良いんだから絶対にできてないわよ
運の良い女の子なら、そもそもレイプなんかされてないだろう
じゃあ、今度こそ孕ませてやる絶対に
嫌よ今日、お昼過ぎに解放されたらあたし、すぐに病院に行くから弁護士さんにだけは、レイプされたことを言うわそれで、絶対に秘密を守ってくれる白坂家の掛かり付けの病院に連れてって貰うのよもし、妊娠していた堕ろすわ今ならまだ、妊娠初期だから何とかなると思うのよ
そんなことを考えていたんだ
ならお前は、解放しない出産するまで、ずっと監禁する
そんなの、あんたが決めることじゃないでしょあたしは、お昼過ぎには解放されるわ弁護士の先生の交渉が上手くいくのよそういうスケジュールなのよもう、決まっているの
それはお前の脳内スケジュールだろう
もう、何も言うまい
何を言ってもこいつには、無駄だ
こんな話を続けているうちに
オレたちは、視聴覚室へ着いた
何があるのかしらね
さあな
ベッドぐらいあるといいんだけれど
それでも雪乃は、オレとセックスする気らしい
というか、セックスはしたいんだな
本当に根っからの淫乱ビッチなんだ
開けるぞ
ドアの鍵を開き中へ
真っ暗な部屋
なるほど、遮光カーテンが完全に閉め切られているらしい
これなら灯りを点けても平気かな
何か、グリーンのランプが点いている機械がある
近寄ってみると幅1メートルくらいの四角い機械だった
何だこれ
これ演劇部の照明の機械よ
照明の機械
ライトの明るさとかを調整する機械よ中学の時に友達が演劇部に居たから、学園祭の時に見たわ
なるほど操作パネルを見るとT-6調光機と書いてある
ランプの光の下にメモが貼ってある
吉田くんへ 右端の黒い大きなスイッチを入れること 御名穂
メモには図も書いてあるその図の通りのスイッチをパチンとオンにすると
ピカッ
壁際に立てられたスタンドに取り付けられた舞台用のライトが光る
その光線は視聴覚室の中央に集まっていた
そこにあるのは
監視室で使っているのと同じエア・マット
エア・マットを照明の光が闇の中から、くっきりと浮き上がらせている
何か、アダルト・ビデオの撮影現場みたいね
というかエア・マットの正面に三脚に乗せられた大きなビデオカメラもあるし
あらマットの上に、何か置いてあるわよ
それは一冊のファイルだった
表紙に、またメモが貼ってある
吉田くんへこのファイル通りに行動すること 御名穂
何か、ここに書いてある通りにしろってさ
何でもいいわやってあげるわよ
雪乃は、マットの上に乗る
照明の明かりを浴びて少し、興奮しているようだ
どうせ最後だし今までだって、何度もカメラに撮られているんだから
雪乃はそう言って、マットの上に四つん這いになった
マットの弾力性を確かめているらしいが
ビリビリに裂けた制服で、下着を付けていないから
オレからは、裸のお尻が丸見えだ
割れ目も肛門もはっきり見える
で何をすればいいの
雪乃がオレに尋ねるからオレは、急いでファイルを開ける
中を読んで
雪乃マットの脇に、男物のYシャツがあるだろ
あ、あるわね
1回全部脱いでそのシャツだけ羽織って
Yシャツだけ着るの
えっと、ここに書いてあるんだけど男のセックスフレンドの家に遊びに来て、セックスした後に男のYシャツを借りて羽織っている感じだってさ
ミナホ姉さんも注文が細かいな
雪乃が服を脱ぎ始める
とビデオカメラの電源が勝手に入る
赤いランプが点いているから録画状態になっているな
カメラのレンズが自動的にズームしたりカメラそのものも、細かく上下左右に角度を変えている
ミナホ姉さんが、遠隔操作でカメラを動かしているんだ
ふふふストリップしてあげる好きなんでしょ、そういうのが
雪乃は笑って、踊るように服を脱いでいった
相変わらず良い身体をしている
胸の大きさで比べたら、
爆乳克子姉
巨乳渚
豊乳寧さん
美乳雪乃←ココ
良乳みすず
並乳メグ
控乳マナ
貧乳ミナホ姉さん
無乳ミッチィ
(マルゴさんは高身長な上に体格が違いすぎて、比較しようが無い)
だけど、十六歳の高校一年生としては、大きい方だと思う
形もいいし
ピンクの乳首が、興奮してビッと尖っている
あんたあたしのおっぱい好きなの
そうよね、いつも眼をギラつかせてペロペロ舐めているもんね
下も引き裂かれたスカートを脱げば、丸裸だ
陰毛を剃られて、つるつるになった下腹部
明るい緑色に浮かび上がった吉田のタトゥ
割れ目から愛液が染み出していて、ライトの光に反射して光っている
はい、サービスはここまでよ
雪乃は、サッと大きめの男性用のYシャツを羽織った
何だ、このシャツ生地が薄くて、透け透けだ
桜色の乳首が透けて見える
いや、勃起した乳首が布地の下から、自己主張している
ただの裸より、よっぽどいやらしい格好だ
で、これからあたしはどうすればいいわけ
雪乃はエア・マットの上にぺたりと座り込んだ
周囲からの照明光を浴び雪乃の肉体が輝いている
オレは、ファイルの次のページをめくる
ここから、インタヴュー・シーンの撮影だってさ
インタヴュー
アダルトビデオとかで、よくあるんだよ最初に、女優さんにインタヴューするっていうのが
ああ、やっぱりそういう設定なのね
雪乃は、ニッと笑った
いいわよ、何でも聞いて
ノリノリだな、こいつ
じゃあ、いくぜオレじゃなくて、カメラを見ろよ
そっか、撮影しているんだものね
雪乃は、カメラに向かって微笑む
馬鹿で淫乱
ホント救いようがないな、こいつ
まだ早く質問しなさいよ
オレはミナホ姉さんのファイルにある項目を読んでいく
あなたの名前は
白坂雪乃です
年齢は
この間、十六歳になりました高校一年生です
あなたは処女ですか
知ってるくせに
いいえ、違いますあたしは、処女ではありませんっ
えっと3人です
それから雪乃は探るように、オレの顔を見る
あんたは、知っているかどうか判らないけれどさあたし、援助交際させられて、オジサン二人とエッチしているんだよね夜の公園の公衆トイレでさどっちの人にも中出しされたからもし、あたしが今、妊娠しているとしてもさあんたの子供じゃなくて、そのオジサンたちの子かもしれないわよ
お前は、知らなかったみたいだけどそのオッサンは、二人ともオレだ
嘘よだって、二人連続で何回も出されたわよ
うん大変だった
何よ、それ本当にあんただったのあれ
そうだだから、安心しろお前の中に突っ込まれたチンコは、世界中探してもオレのチンコだけだお前の子宮に中出ししたのも、オレの精液だけだというわけでもし、お前が妊娠しているとしたら、それは確実にオレの子だからよろしくな
よろしくって何よ
元気な赤ん坊を産んでくれ
嫌よ絶対に嫌
雪乃が、マットの上でジタバタと身体を揺する
ほらインタヴューに戻るぞ
オレは、次の項目を読み上げる
オナニーとセックスでは、どちらが好きですか
セックスよ
雪乃は即答した
それにしては、オナニーばっかりやっていたんだろ
それは相手がいなかったからよそれで、一人でやってたんだけど自分の指じゃ、もうそんなに気持ち良くなれないのよ届かないのよ、あそこに
どこにだよ
子宮よ子宮の入り口のところ男の人のオチンチンでないとあたしの指じゃあ、気持ちいい場所に届かないのよ
大人の玩具とか買えばいいじゃないかバイブとか最近は、ネットで注文できるらしいぜ
嫌よ白坂の家の娘が、そんなはしたないことできるわけないじゃないっていうか
化粧品の瓶とか試しに入れてみたんだけど、やっぱり違うのよ男の人のオチンチンの方が気持ちいいの肌と肌が張り付くような感じであたしの中の気持ちいいところをキュッキュッて擦ってくれるのよそれから
雪乃が興奮した眼で、カメラに語る
お腹の中にね精液をピューッて出されるのが気持ちいいのよ熱いお湯を、身体の一番深い場所に注がれたみたいな感じなのゾクゾクして気持ちいいの
淫乱
何よあんたのせいで、こんな身体になっちゃったんじゃない
いや元々の素質だろ
違うわよあんたのせいよ
男のチンコなら誰のでも、どんなやつのでもいいんだろ
オレは思わず、そう叫んでいた
こいつは多分、オレと離れたら、すぐに別の男を作る
そして、セックス浸けの生活をする
何人も男を代えて色んな男の精液を身体に受けるんだろう
そういう淫乱なメス犬なんだ
どうなのかしらね判らないわよ
雪乃はそう答えた
あんたの話が本当ならあたしは、あんたのしか受け入れたことが無いんだしもしかして、あんたのオチンチンとだけ、物凄く相性が良くて他の人とでは、あんたとする時ほど気持ち良くないのかもしれないし
雪乃がYシャツの前をはだける
ね、もういいでしょインタヴューなんて、もう止めて
そして、オレの前に大きく開脚した
あたし欲しいのよさっきから、ずっと待っているんだから
雪乃は自分の指で、ヴァギナを開いた
とろーりと、愛液が滴っている
犯して早く、あたしを犯しなさいよ
うーん今の学校でもT-6調光機とか使っているのだろうか
私の時でも、すでに古すぎる機械だったけれど
体育館とかでも、そんなにアンペアの使えないところが多いだろうから
五年くらい前に見たこと
今ぐらいの季節
川の堤防の横の道で、お天気雨がパラパラと降っている中
自転車に乗った十七歳ぐらいの髪の長い女の子が
ぽろぽろと涙を零して泣きながら
サクラ大戦の歌を泣き声で唄って
走り去って行った
はっしーれぇぇ、こおそくのぉぉ、てぇいこぉくかげきだん
何があったか知らないが
いや、きっと悲しいことがあったんだと思うけれど
なぜに、サクラ大戦
サクラ大戦といえば、十年くらい前に、高校の時の後輩が結婚したばかりなのに、突然離婚したというので心配になって、何人かで様子を見に行ったら
結婚して、新居として広い部屋に引っ越したばかりなのに奥さんの荷物だけなくなっていて、やたら閑散とした雰囲気の部屋の中で
その後輩が、なぜか一人でサクラ大戦をやっていました
何やっているの
いや他にやることもないので
えっとだからって、なぜサクラ大戦
その後輩は、奥さんと三年付き合って結婚したのですが、結婚して二ヶ月で奥さんがホームシックにかかり
ある日仕事から帰ったら、奥さんの荷物だけ全て運び出されて、離婚届が置いてあったそうです
それから、しばらくしてその後輩に会った時に、
どう、最近はどうしているの
あ、オレ、ミニ四駆に今、ハマッてます
ミニ四駆
ええ、今、またブームなんで
でも、それってどこで走らせるの大会とかに出るわけ
いえ成人用の大会って無いんですよ
じゃあ、ミニ四駆作っても走らせるところが無いじゃんか
だから、コース買いました
コースを買った
ほら、オレの部屋、今、がらんと広くなったんで空いたスペースを埋めるためにも、ミニ四駆のサーキットを作るしかないかなと
その後、彼がどうなったかは誰も知りません
187.そして朝がくる
あたしあんたみたいな男は、大嫌い格好悪いし、キモいし一緒に歩いているのを人に見られるのも嫌よ
照明のライトに照らされた雪乃はオレを見て、淫靡に微笑む
でもあんたのセックスだけは、好きあんた、絶対にあたしの身体に傷を付ける様なメチャクチャなことはしないし一生懸命だしあたしに、命令したりしないしね
ホント誰にも秘密にしてくれるっていうのならセックス・フレンドになってもいいって思ったわよあたしがシタくなった時に、呼び出してセックスするそんな関係もいいかなってでも、もうダメね
雪乃の顔が、曇る
あたしもう、この学校には居られないもの本当に神戸に行くかどうかは判らないけれど少なくとも、あんたとは二度と会わないわ今回の事に関わった人とは、一生会わない舞夏にも、会わせないからね
雪乃はまた、勝手なことを言う
恵美は、あんたにあげるわ別に、あんな子あたしは、元々どうでも良かったのよ
嘘だ
雪乃とメグはお互いに、コンプレックスを抱き合っている
その代わり舞夏は返してあの子はあたしの大切な妹なんだから
お前には渡さないよ
ふんいいわよなら、あんたには頼まないから弁護士の大畑先生にお任せするわどうなっても知らないからね