そしてメグを見る
戸籍の上で血筋がどうとかってのは、関係無いんだよ親戚ってのは、ハートの問題だお年玉もくれない、家に呼んで飯をご馳走になったこともない、年賀状も来ないそんな相手が、親戚なわけないだろっ
キャプテンの言葉に観衆たちは
何だ全然、関係無いじゃん
白坂創介に会ったことがあるってくらいの関係か
あーらら、つまんねえな
手の平を返した様にメグに対する興味をなくしていく
判ったら、とっとと消えなうちの部員は、白坂なんとかとは全然関係ないんだからねッさあ
竹柴キャプテンの怒号に、観衆たちは解散していく
キャプテンがオレたちに近寄って来る
あ、ありがとうございます竹柴先輩
オレは、キャプテンに頭を下げる
あたしは別に何もしていないよ山峰、さっさと着替えな1年は準備だろ
は、はいありがとうございます
メグは頭を下げ部室に向かおうとする
ほら、メグカバン
オレは、カバンを手渡す
メグは部室の中に駆け込んで行く
部室では他の1年生部員が、メグを迎えてくれた
何だ、全然関係無かったんだ
あたし、心配してたんだからね
そうそう、恵美ちゃんのお家にもテレビ局の人が行っているんじゃないかって
行くわけないじゃん親戚ったって、全然関係無いんだから
そうだよね苗字違うんだし
部室の中は、笑顔が拡がっている
部活中は、あたしが様子を見ているから安心しな変なやつらは近づけさせないから
竹柴キャプテンが、オレにそう言ってくれた
悪いけれど朝練の終わる時間にまた、迎えに来てやってくれあの子には、あんたが付いていた方がいいだろうから
オレは大きな声で、そう答えた
平日の後半は、辛いです
今日も遅刻ギリです
※あはは久しぶりにタイマー設定失敗しました
変な時間のアップになって済みません
195.進行する計画
仲間の部員の笑顔に囲まれているメグ
オレの方を向いて、ニコッと笑って、手を振ってくれた
とりあえず朝練の間は大丈夫だろう
他のクラブの生徒たちが、興味本位でメグに近付いてきたら竹柴キャプテンが、撃退してくれるだろうし
ならばオレは、一旦、戻った方がいいな
オレとメグが婚約したっていうことも、もう広まっているだろうし
わざと目立つようなことをするべきでない
あんた顔付きが変わったね
竹柴先輩が、オレに言った
ああ、昨日はちょっと頼りない感じもしていたけれど今日は、ピシッとしている男の顔をしているよ
山峰のこと頼むよ
はいメグは、オレが守りますですから、すみません部活の時間は、メグをよろしくお願いします
オレは、竹柴キャプテンに頭を下げた
うん判っているよ山峰は、あたしのとこの部員だ安心して、このあたしに任せておきな
キャプテンは、さっぱりとした笑顔でそう約束してくれた
ところで竹柴先輩
オレは一つ気になっていることがある
どうして、恵美の家が白坂家と深い親戚づきあいをしていないって、知ってたんです
そうだ白坂家と山峰家の関係は
みんなが知っているようなことでは無いし
ああ、それならね
竹柴先輩が部室棟の先の水飲み場の方を指差した
あの人が教えてくれたんだよ
水飲み場の後ろに隠れて、オレたちの様子を見つめている女生徒
岩倉先輩
何で、あの人が山峰の家のことに詳しいのかは、よく判らないけれどね生徒会長なんだから、特別に情報を知るルートがあるのかもしれないしとりあえず、あの人が言った通りにしてみたのさ
竹柴先輩は、岩倉会長のことよくご存じなんですか
そりゃああたしは運動部の部長だからね予算会議なんかで顔を合わすよていうか同学年だからねあの人、一年の時は暗くて喋らなくて何考えているのか判らない子だったけれどよく変わったよね3年生の間じゃあ、あの人のことを小弓槻って呼んでいるんだよ
小弓槻
英語の弓槻って先生がいるだろああ、一年は教えてないのかとにかく、いつも偉そうにしていて、毒舌の女教師が居るんだよ
えっとオレたちのクラスの担任です弓槻先生
というかミナホ姉さん
いや先週から担任が交代したんで
そう知らなかったよなら、判るだろ岩倉って弓槻先生に雰囲気似てないか
今となっては、オレは優しい時のミナホ姉さんを知っているから
でも確かに、身内以外の人間に対する時の迎撃モードのミナホ姉さんと、岩倉会長の感じはよく似ている
すっと背中を伸ばして、腕組みして立っているところなんか
ていうか岩倉会長が真似しているんだな
岩倉先輩は、ミナホ姉さんみたいになりたくてでも、なれなくてズッコケている
ほら、あんたのことを呼んでいるみたいだよ
竹柴キャプテンの声に、改めて岩倉さんを見ると
オレに向かって、ちょいちょいと手招きしている
物凄くふんぞり返った、偉そうな態度で
じゃあ、オレ、行きます竹柴先輩、失礼します
ああ朝練の終わる頃に、戻って来るんだぞ
はい判っています
オレは、竹柴キャプテンに一礼して岩倉会長の方へ向かう
小走りで走りながら
学生服の下に隠した、武器を確認する
一度はオレの命を狙って裏社会の殺し屋を仕向けてきた人だ
校内で不良にオレたちを襲わせたこともある
警戒を、怠ってはいけない
ちょっと、こっちへ来て
水飲み場まで行くと岩倉会長が、オレにそう言った
ここだと他の生徒の眼があるわ竹柴さんが、まだこっちを睨んでいるし
だからってあなたと二人きりになるのは、危険だと思いますけど
岩倉会長は、ククッと笑った
何を言っているのよあなたもあたしも、弓槻先生の玩具じゃない
この笑顔が怪しい
メチャメチャ、怪しい
とにかく、こっちへ来て
岩倉会長は、オレを人気の無い体育館の裏に連れて行く
オレはブン殴り棒をいつでも出せる状態にして
周囲を警戒するが誰もいないようだ
あたしねあなたのことを勘違いしていたみたいね
二人っきりになった途端岩倉さんは、そんなことを言い出した
何のことです
あらトボケなくてもいいのよ白坂さんのことよ
弓槻先生から指令をいただいたわあなたの企画なんですって
そう言えば昨夜
ミナホ姉さんは、息抜きに、ちょっと悪巧みするって監視室を抜け出して行った
あれって岩倉さんに連絡しに行ったのか
しかもその悪巧みの企画者はオレだと、岩倉さんには伝えているらしい
まさか、あなたがこんな愉快な計画を思い付くなんてね見直したわ
岩倉さんは、ニヤニヤと笑ってオレを見る
実は、あなたを陥れるための計画の第二弾も準備していたんだけど取りやめるわこんなアナーキーな企画が実行できるならあなたとは友好関係を築いておきたいから
どんな計画なんだ
ミナホ姉さんは、雪乃に何をやらせようとしているんだ
だが岩倉さんに、オレが何も知らないということを気付かせるべきではない
そうですねオレも、岩倉会長とは仲良くしたいと思っています
上手く、芝居できているだろうか
とにかく準備は全部、あたしに任せてもう手配は済ませてあるから思いっきり、楽しませてもらうわよ
はいよろしくお願いします
オレは、岩倉会長に頭を下げた
朝のホームルームの時間になるまでに、仕込みは終わらせますと弓槻先生にお伝えしていいわね
はいオレも期待しています
うふふ可愛いことを言うのねじゃあ
岩倉会長は、笑いながら立ち去っていく
急いで、監視室に戻ろう
ミナホ姉さんに計画の内容を教えて貰わないと
オレは、校長室に向かって走った
校長室から監視室へ下りると
あれいない
監視室の中には、克子姉と寧さんとマナだけ
お帰り、お兄ちゃん
マナは寧さんとまたトランプをしていた
今ね寧さんに、イカサマのやり方を教わっていたの
イカサマ
マナちゃんは筋がいいんだよっこれなら、ラスベガスへ行っても通用するようなイカサマ師になれると思うよ
うんっイカサマは、手先の器用さと演技力と度胸の三つが揃ってないと上手くいかないんだけれどマナちゃんは、その三つとも良い感じに持ってるしね頭も良いし
うわぁ、やったぁ
まあマナが、喜んでいるからいいけれど
マナと寧さんとは、賭けトランプはやらない方がいいな
いや黒い森の人たちは、みんなオレよりも頭が良いから
誰とやったって、どうせオレが負けなんだろうけれど
そんなことより
どうしたの、お兄ちゃん誰を探しているの
キョロキョロしているオレに、マナが尋ねる
ヨッちゃんクゥちゃんなら、おトイレだよ
クゥちゃん
工藤さんだよ工藤だから、クゥちゃんて呼ぼうかなって思っているんだけど
寧さんが、にこやかにそう言うと
残念ながら、それは却下致します
トイレに繋がっているドアがギィと開いて
ミッチィがあらわれる
白いレースのハンカチで、手を拭きながら
寧さんを、ギッと睨んでいる
オレが、そう声を掛けると
え、ヨッちゃんは、ミッチィって呼んでいるんだじゃあ、あたしもそうしようかなっ
そう言う寧さんにミッチィは、冷たく
わたくしのことをミッチィと呼ぶことは、吉田にしか許してはいません
ヨッちゃん、吉田って呼ばれてるの
はいなぜか、そういうことになりました
うんミッチィって、年下なんだよなそう言えば
吉田わたくしは、昨夜からずっと吉田の様子を観察して参りましたそして、考え続けて参りましたその答えが今、おトイレの中で出ました
ミッチィが周囲をチラッと見る
マルゴさんは、いない
やはり吉田には死んでいただきますっ
それって確か
オレ、冷凍倉庫に閉じ込められて、凍死させられるの
ちょっと、ミッちゃんどうしたのっ
寧さんが、ミッチィを止めようとする
というか、ミッちゃんにすることにしたらしい
吉田は、ハレンチですハレンチすぎますっみすず様に、あのようなハレンチ極まることをさせるわけには参りません
あミッチィには
朝方のメグとマナとのやり過ぎセックスを観られている
この監視室から、みんな観ていたんだろうから
ま、まずい
わたくしがこの場で吉田退治しますっそこへ直りなさいっ
ミッチィがスカートの中から、電撃警棒を引き抜く
いや、工藤さんあれはみんなマナとメグお姉ちゃんが、お兄ちゃんにお願いしてしてもらったことだから
慌ててマナが、そう叫ぶが
それならばみすず様がお願いすれば、みすず様とも同じことをするということですか
う、うんお兄ちゃんの性格だと、そうだと思うけれど
そんなことは、わたくしが断じてさせませんっみすず様に、あんなハレンチなことをさせるぐらいならわたくしがこの場で吉田を殺して、わたくしも自害しますそうします
ミッチィの眼はマジだった
先程、お父様にもその様にお伝えしました
そうだミッチィは、工藤父に朝ご飯を届けに行ったんだっけ
それで工藤さんは何て
父はどんなことでも、悔いの残らない様に精一杯しろと言ってくれましたですからこれより、吉田を撲殺します
ぼ、撲殺って
文字通り殴り殺しますっ
ミッチィの電撃警棒からビリリリッと、青白い火花が飛ぶ
撲殺だけじゃないじゃんか
電撃も喰らわせるつもりだろ
撲殺してエターナル・フォース・ブリザードです
おいおいさらに冷凍する気かよ
でも、工藤さんが彼を殺すとみすずさんが、とても困ることになるんだけど
克子姉が監視装置を見たまま、平然とそう言った
あっ、そうだったよねそう言えば、そろそろだよねっ
寧さんも、ハッとする
え、何なんですか
マナが寧に尋ねる
あれマナちゃん知らなかったっけミィちゃんの朝の儀式
そろそろ、そんな時間だ
と、思った瞬間
オレの携帯が、激しく鳴り出す
ミッチィ、ストップだみすずからだから
みすず様から
ミッチィは、構えていた電撃警棒を下ろす
オレは急いで携帯を取り出す
もしもしみすずどうした、おしっこか
オレの声に、みすずは
も漏れちゃうぅぅッ旦那様ぁぁ
その声は、携帯から漏れてミッチィにまで聞こえているはずだ
今、トイレの中かそれなら、放尿しろっ今すぐにだ
オレは、携帯に向かって怒鳴る
は、はいっみすず、おしっこさせていただきますっ
じょろろろろろろろろ
携帯電話の向こうから温かい水と湯気さえ伝わってきそうな水音が聞こえる
ああーっ、旦那様ぁぁ今、出てますぅぅみすず、おしっこ出ていますぅぅ
涙声でみすずがそう叫ぶ
おしっこの音は、なかなか終わらない
ミィちゃんはねヨッちゃんのお許しが無いと、おしっこしちゃいけないことになっているんだよ
寧さんがミッチィにそう伝えるが
ミッチィは、ぽかーんと口を開けて呆然としている
そう言えば、昨日の朝もこんな電話していたよね
マナが前日の朝の車の中でのやり取りを思い出したらしい
もうずっと毎朝だよね、ヨッちゃん
寧さんには、一昨日の朝に聞かれている
朝晩2回です
オレの言葉に、寧さんがキョトンとする
朝だけでなく夜にも、こういう電話があってオレの許可が無いと、みすずはおしっこしないんです
そのオレの言葉に、寧さんは
でもヨッちゃん、昨夜ミィちゃんと電話していないじゃない
昨夜はあたしたちみんなでこの部屋に、ずっと一緒に居たでしょ
ヨッちゃん誰とも電話なんてしていなかったよねっ
みすずお前まさか、昨夜からおしっこしていないのか
昨夜はみすずからの放尿定期連絡が無かったってことは
昨夜は、白坂家関連のことが深夜まで続いていましたから旦那様も、とってもお忙しいと思ったので
オレに電話しないで、おしっこをガマンしていたのか
じょろろろろろ
放尿は、まだ続いている
みすず、どれだけ溜め込んだんだよ
馬鹿っそんなの、ガマンするな膀胱が破裂したらどうするんだッ
だって旦那様のお許しなしに、勝手におしっこするなんてそんなことできませんっ
できないなんて言わずにしろっ
ううーっと
こんな時は、どう言ったらいい
何て言えば、全てが丸く収まるんだ
判ったこうしようオレと連絡が付かなくて、それでもどうしてもおしっこがガマンできなくなったら健康第一で、とにかく放尿しろ絶対に放尿しろ不健康なことは、絶対にするなオレは、健康的なみすずが大好きなんだからな
でも、旦那様
話はまだ途中だその代わり、オレに内緒でおしっこしたら、みすずにはペナルティが課せられる
ペナルティですか
そうだ、ペナルティだええっと、何か、すごいエッチなことをしようすっごく、恥ずかしくていやらしいことだ
どんなことです
みすずは、興味津々なようだった
オレとみすずの電話を聞いている、克子姉や寧さんやマナまでも、興味津々でオレたちに注目している
それは何か、考えておいてくれっ
えーっ、旦那様が考えて下さいみすずは、どんなペナルティでも喜んで受けますから
この電話みんなが横で聞いているんだよっみすずのペナルティを今、決めたら他の子も同じことをやりたいって言い出すだろ
それってみすずだけに特別なペナルティを与えて下さるってことですか
あーんっと
そうだよっそういうことでいいからだから、ペナルティの内容は、みすずが自分で考えてくれ言っておくけれど、あくまでもペナルティだからなみすずが、やってみたい新しい趣向のセックスじゃないからな
みすずはとっても嬉しそうだった
終わったか、おしっこ
ええ、とってもスッキリしましたありがとうございます旦那様っ
携帯電話から漏れる声を聞いて寧さんがミッチィに言う
どうする、ミッちゃんここでヨッちゃんを殺しちゃうと、ミッちゃんの大切なミィちゃんがおしっこできなくなって死んじゃうよ膀胱が水風船みたいに、パーンッて破裂しちゃうんだからねっ
こ、困りますそれは困りますぅぅ
ミッチィは、電撃警棒を持ったままがっくりとうな垂れる
旦那様そこに美智はいますか
電話の向こうで、みすずがそう言う
ああ、すぐそこに居るけれど
ちょっと、代わって下さい
ミッチィみすずが、話があるって
みすずからと聞いてミッチィがかしこまってやって来る
オレから電話を受け取って
おはようございます、みすず様美智です
お早う美智ちゃんと、あたしの旦那様にお仕えしていますか
ほんのちょっと前撲殺&冷凍宣言をしていたとは、ちょっと答えられない
あなたは、あたしの身代わりとして、そこに居るのですから精一杯、旦那様にお仕えするのよ
旦那様はもう、あなたの身体をお求めになった
い、いえ
きっと、お優しい旦那様のことだから、美智のヴァージン・ブレイクはみすずの前でして下さるおつもりなんだと思うけれど美智から積極的に、旦那様にご奉仕するのよいいわね
もちろん美智の放尿は、きちんと旦那様にお見せしているわよね
まさか、お見せしていないの
旦那様が、美智の放尿は見たくないっておっしゃったの
いいえそんことは、言われていません
なら、どうして美智の方から率先してお見せしないのあなたは、あたしの身代わりなのよ
も、申し訳ございませんっみすず様
謝っている時間があったら、今すぐにでもお見せなさい早く旦那様をおトイレにお連れして
それが
まさか旦那様にお見せしないまま、もう朝の放尿をしてしまったんじゃないでしょうね
工藤美智、不覚を取りましたかたじけのぅございますっ
朝の放尿だけでなく、排便も済ませてしまいました
おい、君たち
朝から何てことを話しているんだよ
二人とも、飛びっ切りの美少女なのに
何か、凄く残念だ
はぁあなたには失望しました、美智
みすずが、そう言う
あなたには何かペナルティを与えますいいですね
今からは心を入れ替えてあたしの名代として、精一杯旦那様に尽くしなさいいいわね
じゃあ旦那様に代わって
ミッチィがさっきとは全然違うへりくだった態度で、オレに電話を戻す
オレが携帯を取ると
美智のペナルティは旦那様が考えて下さいね美智に何でも、旦那様の好きなことをさせましょうあセックスだけは待って下さいそれは、みすずの居る時に一緒に、三人でね
みすずの声は明るいけれど
おい、いいのかミッチィ、すっかり落ち込んじゃったぞ
オレの言葉に、みすずは
いいんですそろそろ、ストレスが溜まってきて、極端な行動を始めようとする頃合いですから
例えば旦那様を倒してしまえばいいんじゃないかとかそういう、ろくでもないことを考えたりすると思いますから
その通り撲殺寸前まで行ったよ
美智は、まだ子供なんです一晩中、緊張して警戒を続けるなんていう経験は、これが初めてのはずですからそして旦那様は、昨夜も恵美さんや克子さんやマナさんとお楽しみになったんでしょう
いいんですよあたしのことは気になさらなくてもあたしも姉妹会の一員ですから
みすずはオレと他の女とのセックスを笑って了承してくれた
でも美智にとっては、警戒状態の中でそういうことをするというのが納得できないと思いますそれで旦那様が不真面目な人に見えてきて警戒態勢の中のプレッシャーやストレスを、みんな旦那様のせいにしてしまいたくなるんです
ですからみすずが、引き締めておきましたしばらくは、少し強めに命令するような口調で美智に接して下さい何かあったら、みすずの名前を出せば落ち着きますから
判ったありがとう
すごいなみすずは
ミッチィのこと、よく判っているんだな
小さいときから、よく知っていますから美智のことはあたしの、大切な妹だと思っています
だから旦那様とみすずと美智と三人で愛し合うのが、今のあたしの夢なんです
みすずはレズの性癖が強い
多分男は、オレ以外は受け付けないだろう
だから三人でのセックスを強く望んでいる
色々大変だと思いますけれど、今が正念場ですから頑張って下さいね
旦那様にお会いできるのは夕方ですね待ち遠しいです
オレもみすずの日本舞踊が早く見たいよ
はい精一杯踊ります今日だけは、旦那様のために
みすずの声は、艶やかだった
昨日は、タイマー設定に失敗して変な時間にアップして申し訳ございません
今日は、0時ギリギリまで書いています
学校パートに入って、色々なキャラクターが同時進行で動いています
さて、どんなことになるのでしょうか
196.遠藤と雪乃の朝
みすずとの電話が終わると克子姉が、オレに言った
悪いんだけど、監禁室の中の雪乃さんに朝ご飯を届けてくれないかしら
見るとテーブルの上の銀盆に一人分のおにぎりと味噌汁が用意してあった
お嬢様もマルゴ様もいらっしゃらないからあたしは、監視装置の前から動けないのよ
二人とも、どこに行ったの
オレは、克子姉に尋ねる
特にミナホ姉さんの行方が知りたい
マルゴ様は、学園内を巡回しているわどうしても、監視カメラとセンサーだけでは不安な場所があるしもう明るいから、一通り、肉眼でチェックなさりたいそうよ
さすがマルゴさんは、いつも先のことを考えて行動している
お嬢様はまた悪巧みの準備よ
悪巧みって何か、岩倉会長も一枚噛んでいるみたいだけど
オレはその内容が知りたい
それはあたしの口からは、言えないわお嬢様のお楽しみを、あたしが奪うわけにはいかないもの
克子姉はそう言って、笑った
ただこの映像だけは、見せてあげるわほんの数分前の映像よ
そう言ってキーを操作する
予備のモニターに映像が映った
野球部のグラウンドに仕込まれた、隠しカメラの映像だった
何しに来たんだよ、お前
怒号がグラウンド内から発せられる
いや、あのオレは
グラウンドの外に白い練習着姿で立っている男
それは、遠藤だった
オレはじゃねぇよ、この野郎てめえ、昨日、自分が何をしたのか判っているんだろうなっ
グラウンドの中から野球部の部員たちが、遠藤を睨み付けている
どの眼も怒りに燃えていた
対外試合の最中に監督批判して、勝手に帰ったんだぞ、お前は
お前、よその学校の部員にあんな様子を見られてオレたちの顔に泥を塗ったってこと、判ってるんだろうなぁ
ゲロッパ校長まで来てたんだぞ監督の立場は丸潰れだ
うちの学校の生徒だって、いっぱい居たんだぞそれなのに、お前
よく、平然とオレたちの前に顔を出せたな
他の学校の野球部を呼んでの練習試合で
遠藤のやつは、監督に交代を命じられたからって
さんざん、人前で監督を愚弄するようなことを言って
試合中に、勝手に帰ったんだっけ
で、ですからそのことを謝罪しようと思いまして
遠藤が金網の間の入り口から、グラウンドの中へ入ろうとする
部外者が、勝手に神聖なグラウンドの中に入るんじゃねぇ
厳しい言葉に、遠藤の足が止まる
部外者
野球部員の中から一人の大柄の男が出てくる
安宅キャプテン
つぶやく遠藤を、安宅キャプテンがギロッと睨む
お前さ、野球部除名になったから
じょ、除名
ああ、昨日、試合の後のミーティングでみんなで話し合って、そういう結果になったから退部届とかいらないからなつーか、二度とオレたちの前に顔を見せるな
野球部のキャプテンは、遠藤に絶縁宣言を叩き付ける
そ、そんな厳しすぎますよ、キャプテン
遠藤はヘロヘロと笑いながら、そんなことを言うが
ていうかお前、今日の職員会議で無期停学になると思うし
大口を開けて、馬鹿顔を晒す遠藤
お前底抜けの馬鹿だろ校長の見ている前で、あんな騒ぎを起こしやがって無傷で済むわけがねーだろ
一時の感情で、あれだけの馬鹿騒ぎを一人でやって
試合の進行は止めるわ、監督の批判はするわ
それを全部校長と他の学校の人間に見られていたんだもんな
普通に考えれば、完全にアウトだ
口籠もる遠藤
自慢の叔父さんの市会議員も何か、逮捕されるらしいじゃねぇか
見たぞ、昨日のニュース
贈収賄疑惑お前の親父の会社も絡んでいるんだってな
遠藤は叔父の市会議員の政治力と
父親の金の力を借りれば、どうにでもなると思っていた
だから昨日は平然と大暴れした
しかし今や、遠藤の後ろ盾は、力を失おうとしている
遠藤は、自分のしでかしたことの責任を自分自身で支払わないといけない
とにかくお前はもう、野球部とは関係ない人間だ今日、運動部の会合があるから、そのことはハッキリと伝えておく
安宅キャプテンは、そう言った
オレたちもさ、夏の予選が近いんだよお前みたいな、クソ馬鹿野郎の相手はしてられないんだよ
本当なら、全員でボコボコにしてやりてぇところだよな
よせよせ、こんな馬鹿殴ってそれで、出場停止になったら元も子もねえからな
絶対、こいつ、親に言うだろうしな
パパー、みんなにイジメられたーんってか
そうそう親に泣きついて、どうにかして貰おうとすんだよ、どうせ
でもこいつんちの親、今、そんな余裕あんのかね
そこは可愛い、可愛い、お坊ちゃまのためにネジ込んでくるだろ学校と高野連に
怖い怖い過保護ちゃんは、怖いですねぇ
部員たちが遠藤を罵って、笑う
先輩方、それはちょっと言い過ぎなんじゃないですか
学習能力の無い遠藤のガマンの利かない幼稚な心が、眼を開く
言い過ぎふざけんな、バァーカ
昨日の試合だってお前のミスがなけりゃ、オレたちが勝ってたんだ
余計な恥をかかせやがって
無期停学喰らう前に、自分から学校辞めちまえよ
そうだ、その方が清々するっ
売り言葉に買い言葉
遠藤の心が、一気にヒートアップする
ああこっちから辞めてやるよ、こんな学校
ここでガマンできれば、まだ良かったのに
そうできないのが遠藤ケンジという人間の小ささだ
お前らみたいな弱っちぃやつらとは、こっちから縁を切ってやるよ
あーあやっちまった
何だ何だ何だ、お前ら寄ってたかって、オレのことをコケにしやがって大して野球も上手くねえくせにオレはな、お前らなんかよりも、よっぽど才能があるのにわざわざこの学校へ来てやったんだぞ
そこで止めとけばいいのに
オレの親父の寄付で、備品だっていっぱい揃えたじゃねぇか飲み物とかプロテインとか、オレがお前らにどれだけ投資してやったと思っているんだそれをこんな、どうでもいいようなことで手の平返ししやがって
遠藤の本性が出る
もういいや、お前らなんてオレは、他の高校へ転校するわそこの野球部に入って絶対に、お前らを後悔させてやるからな
遠藤は野球部員全員に中指を立てて、力一杯、そう叫んだ
遠藤は、ガツンとかましたつもりなんだろう
眼を血走らせて、野球部員たちを睨み付けている
その言葉を叩き付けられた野球部員たちの頭上には、しらけ鳥が飛んでいた
ふぅん
あ、そう
がんばってみれば
うん、できるもんならな
部員たちの反応は、氷のように冷たい
な、何だよ、手前らオレは本気だからなお前らのことは、公式試合でギッタギタに叩き潰してやるからな、覚えとけよ
お前は、悲しいまでに馬鹿なんだな
えっと誰かこいつに説明してやれ、オレはもう口を利くのも嫌になってきた
安宅キャプテンは、呆れた様子でそう言った
ほんじゃあ、オレがキャプテンの代理で
一人の背の高い部員が手を挙げる
こいつは見たことがある2年生の鯉住って先輩だ
前にこの野球部員が屋上でタバコを吸ってそれを目撃したオレが、たまたまその場に居た遠藤に殴られて
雪乃レイプのそもそもの起点になった二人組のうちの一人だ
その鯉住が遠藤に言う
お前さ公式戦で、オレたちと当たるような学校へ転校するつもりなわけ
当ったり前じゃねえかオレの目的は、あんたたちに後悔させてやることなんだからこんな下らねぇことで、オレを追い出したことを死ぬまで後悔させてやっからな
激高している遠藤は大声でそう怒鳴る
でもよー県内の予選でオレたちと当たりそうな高校が、マジでお前を受け入れてくれるって思っているわけ
遠藤の怒りの顔が、引きつる
どどどどういうことだよっ
だっからさあうちの高校の野球部の中でトラブルを起こして、その上無期停学をくらって学校を辞めた様な生徒をさわざわざ引き受けてくれるような殊勝な学校があると思っているのかっての
お前の叔父さんとか親父さんの神通力は、もう使えないって判っているよな
遠藤の顔がみるみるうちに真っ青になっていく
しかもお前は対外試合の最中に騒ぎを起こしたんだし
予選で当たりそうな他の学校の偵察メンバーも来ていたよな
ああお前多分、近隣の学校の野球部員には、相当有名になっていると思うぜ
試合中にうちのパパに言いつけて、監督はクビにしてもらうもんねって、叫んでグラウンドから逃げ出した大馬鹿野郎だぜ
ていうかあの時の様子、何でだか動画投稿サイトに載っているし
えそれ、マジかよ
偵察に来ていた学校のやつがビデオ撮ってたろそれをそのまんまアップしたんだろ
あ、オレも昨夜見たネットのまとめサイトの笑えるニュースでも紹介されていたし
うん昨日の注目度ランキングのトップ5に入ってた
それも多分、ミナホ姉さんの仕業だろうなあ
あの人、恨み事に対しては、地道に復讐していくから
ってことで県内には、お前を入れてくれる野球部なんて無ぇからよッ
鯉住は、意地悪く遠藤に告げた
どーしても野球が続けたいんなら、県外の遙か彼方の田舎の学校とかを探すんだなインターネット回線とか繋がっていないようなド辺鄙な学校をさそんなところなら、お前の悪行も知られないまま、無事に転校できるかもしれねえし
でも、まあどっちにせよ、オレたちとは二度と会うことは無いよな
県外の学校なら、全国大会に出ない限り、公式戦で当たりようがないし
でもオレたちの実力じゃ、甲子園に行ける可能性なんて素粒子レベルでしか存在しねぇし
さらに、遠藤の転校した田舎の学校と、オレたちが甲子園で対決できる可能性に至ってはこれはもうゼロに等しいな
とにかくオレたちはもう、お前とは縁切りだ
うんまあ、しょうがないよな
遠藤が自分で決めたことだもんなうちの学校を辞めるってのは
まあ他の高校でも達者で暮らせよ
二度と戻って来るんじゃねえぞ
山へお帰りッ
野球部員たちは、ギャハハと笑い合う
遠藤は今にも、小便をちびりそうな顔でブルブルと震えている
最後に、安宅キャプテンが遠藤に言った
昨日の試合でお前が着たまんま持って帰った、公式戦専用のユニフォームだけどなあれだけは、返して貰えっていう部員の意見も多かったんだけどこうなっちまうと、お前が着ていたユニフォームなんて縁起が悪過ぎて使えねぇやいらねえよお前にくれてやるから高校野球の最後の思い出にな
安宅キャプテンは遠藤が転校して、高校野球を続けることは不可能だと思っているらしい
確かに県内の近隣の学校は、みんなお断りだろうし
遠くの学校に行くってプランも、遠藤の親族が贈賄事件に関わっている現状ではまず無理だろう
遠藤の高校野球はもう、おしまいだ
あ、あのキャプテン、みなさん
遠藤が、あたふたと地面に手を付く
お、オレな、生意気なことを言って、申し訳ありませんでしたっ
青い顔で、おろおろと土下座する遠藤
でも、オレ野球が好きなんですっ野球を辞めたくないんですっ
額を土に擦り付け
オレ、やっぱりこの学校に残りますっこのまま野球部に野球部に居させて下さい
安宅キャプテンは害虫を見るような眼で、遠藤を見下ろす
もう遅ぇよ
他の野球部員たちも嘲りの眼で遠藤を見ている
本当、どうしようもねぇクズだよな、お前
絶対に許さねぇからな
つーか、もう死ねよお前
遠藤は、それでも頭を下げたまま叫ぶ
こんなことぐらいで、オレに野球を辞めろっていうんですかッ
その言葉にキャプテンがキレた
ふざけんじゃねぇぞッ、てめぇ
他の部員が、全員でキャプテンを抑える
キャプテン、予選前ですから
そうです、あんなやつ殴る価値もありませんから
殴ったら負けっすあいつ、絶対に高野連にタレ込みみすから
ここは、落ち着いて下さい
オレたちも、内心ハラワタ煮えくりかえっているのをガマンしているんですから
堪えて下さい
キャプテンが叫ぶ
そのクソガキを、オレの見えない所へ連れていけっ
うっす、判ってますキャプテン
二年の二人組あの時、屋上に居た鯉住と杉山が、グラウンドの外に飛び出して来る
ほら、遠藤こっちへ来い
ほら、早く
二人の先輩部員が、遠藤を無理矢理引っ張り起こして連れ去ろうとする
ま、待って下さいオレはキャプテンにまだ話が
抵抗する遠藤
バーカ、ここまで怒らせちまって、話しも何も無いだろう
とにかく今は、オレたちと来い
そう言って二人がかりで遠藤を肩に担ぎ上げる
じゃあ、キャプテン、ちょっとこいつを捨てて来ますっ
そう言うと、鯉住と杉山はエイホ、エイホと掛け声を出しながら、遠藤を運んで行く
待ってくれちょっと、待てってばおい
二人の屈強な先輩部員に担がれて遠藤の姿がどんどん小さくなる
馬鹿の相手をしていて、練習開始が遅くなったさあ、始めるぞ
安宅キャプテンが気を取り直して、部員たちにそう告げた
はいッッ
ようやく野球部の朝練が始まる
何じゃこりゃ
オレは呆れるしか無かった
遠藤くん絡みの映像は、ここまでよ
克子姉が、笑ってオレにそう言う
いや、あのこの後はどうなっているんですかあの先輩二人に運ばれて遠藤は今はどこに
オレの質問に克子姉は
今はまだ録画中よ
録画中ってことは
現在も、何かが進行している
リアルタイムの画像で、見せてもらったりできませんか
校内には居るのだろう
監視カメラで録画しているのなら生中継だって、できるはずだ
それは今はダメよ
お嬢様の計画には順番があるの今のあなたには、ここまでしか見せられないわ
これも、ミナホ姉さんの計画のうち
それより雪乃さんの朝ご飯、早く届けて来てくれないかしら
そうだ克子姉の言葉で思い出した
雪乃が腹を空かせているのは、可哀想だ
オレはおにぎりと味噌汁の盆を持つ
あの、克子姉監禁室てどこ
オレの問いに、克子姉はミッチィを見る
工藤さんあなたさっき、雪乃さんを監禁室に連れて行く時に、お嬢様に付いて行ったわよね
みすずの電話の後、落ち込んでいたミッチィが顔を上げる
は、はいわたくしが警護致しましたが
なら彼と一緒に監禁室まで行ってきてくれないかしら雪乃さんが暴れ出すかもしれないし
任務を与えられたと感じたミッチィは、スッと仕事モードの顔になる
寧さんと遊んでいたマナが、オレの方を見て
ならあたしも行く
お兄ちゃんと雪乃さんを一緒にさせたくないもんっ
むしろマナを雪乃に会わせたくない
雪乃との接触は、マナの心を刺激する
これ以上、マナの依存症をこじらせるわけにはいかない
いやミッチィが居れば充分だあんまりたくさんで行って、雪乃を興奮させたくないあいつ、精神的に今、ヤバイと思うから
さっきのミナホ姉さんとの会話で、現実を突き付けられた雪乃は
危険な状態になっている可能性がある
そういうマナを、横から寧さんが抱き締めて
マナちゃんは、あたしとここでお留守番ねっ
寧さんの微笑み
大丈夫だよっ監禁室の中の様子は、ここからでも監視できるからねっ
そう言って寧さんは、モニターを一つ起動させる
監禁室の中の様子が映る
雪乃は何だか、ぐったりとしていた
夜の時とおんなじだ
動物園のライオンみたいになって、横たわっている
あたしと一緒に、ここで観ていようねっ
寧さんの優しい言葉にマナは
と、小さな声で答えた
こっちです
ミッチィに案内されて監禁室へ
といっても、大した距離じゃない
監視室からバスルームとトイレに通じるドアを抜けてトイレの隣の壁を開く
一見、機械室の壁みたいに見えるけれどそれが隠しドアになってった
その奥の通路を抜けると小さなドアが3つ並んでいる
これは3つとも監禁室になっているそうです
雪乃さんは一番手前の部屋です
ミッチィが克子姉から預かった鍵を開ける
ギィィ
何という狭い部屋だ
床は2畳分しかないし天井は180センチぐらいだ
こりゃ閉所恐怖症になるな
天井全体がライトパネルになっていて、明るく光っているからいいけれど
これで真っ暗だったら、パニックになる
息苦しさ150パーセントの空間だ
雪乃、朝飯を持って来てやったぞ
オレがそう話し掛けるが
白ブラウス一枚で、床にごろんと横になっている雪乃はピクリともしない
おい、雪乃大丈夫か
オレが部屋の中に入ろうとすると
入って来ないで放っといてちょうだいよっ
と、怒鳴り声を上げる
とりあえず生きてはいるらしい
ほら、腹減っているだろ朝飯持ってきたぞ
オレは銀盆の上の食事を見せようとするが
いらないわよっ持って帰って
雪乃は、ご機嫌斜めだ
そう言わずに食っておけよ食わないと体力が保たないぞ
食欲がないのか
オレはちょっと心配になる
あるわけないでしょこんな状況で、食欲があったらどうかしているわよ
雪乃は怒鳴る
まあこれだけ元気なら、心配ないか
食欲が無いなら仕方ないけれどとにかく、ここに置くぞ
オレは銀盆に乗せた食事を、寝転がっている雪乃の横に置く
狭すぎる部屋だ
すぐに味噌汁の美味そうな匂いが、部屋の中に漂う
ぐぅぅ
雪乃の腹が鳴った
何だ、あるじゃないか食欲
雪乃が飛び起きて来て、オレを睨む
うるさい、うるさい、うるさぁーいっ
うるさいのは、お前だ
とにかく食え席を外してやるから、落ち着いてゆっくり食べろいいな
オレは雪乃にそう言った
ふんっ
雪乃は、オレを無視してまた、ごろんと横になる
本当に動物だな、こりゃ
それ、誰に言われて持って来たのよ
寝転んだまま雪乃がオレに言った
え克子姉に言われて雪乃が、腹を空かせているだろうからって
そうやっぱり
雪乃ははぁと息を吐く
あんたって結局、いつも人に命令されて行動しているだけなのね
自分の意志ってものが無いのよ何でも、人に言われたことを素直にうんうんと聞いて、従っているだけなのよ最低よね
あんたが自分で何かを決めたことなんてあたしを最初にレイプした時だけなんじゃないのいいえ、あれだって弓槻先生に何から何までお膳立てして貰って、あんたはただ弓槻先生の計画通りに行動しただけじゃない
あんたには、自分が無いのよ
昔、学生時代に警備員のアルバイトをしていたら
一緒の現場を担当していた男の子が、東京都のとある島の出身でした
その子との会話
うちの高校って、ビーチの前にあるんですよ
だから、六月過ぎるともう大変なんです本土から、どんどん観光客が来ますから
て、ことは
そうなんですよ学校の前に、毎日水着のお姉ちゃんがたくさんうろうろしているんですよそんなんじゃ、学校なんて、もう行ってられないじゃないですか
うんそりゃあ、目の毒だ
だから、もう六月の半ばになったら、みんな高校なんて行ってられませんビーチに行って頑張らないと
えそれってつまり観光客のお姉ちゃんをナンパするってこと
何言ってるんですかトウモロコシ焼くんですよ
ト、トウモロコシ
観光シーズンに稼がないで、どうするんですか
あそっちを頑張るのね
197.あなたは私の何なのさ
オレには、自分が無い
うん、そうだなそうかもしれない
オレは、雪乃の言葉を肯定する
そうよあんたは、弓槻先生に命じられたことなら何でもするんでしょ人間じゃないのよロボットよレイプ・ロボットよ
雪乃はまた壁の方を向いて、ごろんと寝転がる
吉田そうなのですか
ミッチィが、オレに尋ねる
うんミナホ姉さんに言われたことら、どんなことでもするよ
レイプでも、人殺しでもですか
ああ多分、すると思う
オレの答えに、雪乃は
ほら、あたしの思った通りよあんたには、何もないのよっ
ミッチィが、ジッとオレを見ている
そりゃあミナホ姉さんのこと、信用しているから
ミナホ姉さんはいつもオレたちのことを考えてくれているミナホ姉さんが誰かを殺せって言うのなら、それは黒い森にとって必要なことなんだろうしレイプしろって言うのも、やっぱりそうなんだろうと思う
しかし弓槻様だって、判断を間違われることはあるでしょう
それは大丈夫だよミナホ姉さんは大事な判断をする時には、必ずマルゴさんと克子姉の意見を聞いているから三人とも、オレなんかよりは遥かに頭の良い人たちだし三人集まれば、大抵のことは間違わずに済むだろう
オレはあの三人の女性の知性を信じている
それに寧さんだって、すっごく頭が良いし何か問題があれば、渚だって連絡してきてくれるしオレが、自分で判断する必要なんか無いんだよ
雪乃が、オレをチラッと見る
バッカじゃないのあんたなんて、あの人たちに利用されているだけなのよ
雪乃はそう言うけれど
それなら、それでもいいし
オレのその発言に、雪乃はギョッとする
でももう、そういうレベルは、とっくに越えてきたんだオレは黒い森のメンバーだし他の人たちのことを心から信頼しているオレたちは、もう運命共同体なんだよ
オレも、メグも、マナももう黒い森の中でしか生きられない
いや克子姉やマルゴさんだって、黒い森の中だからこそ、実力を発揮できる
渚だって完全に黒い森と決別できているわけではないし
何よりミナホ姉さんは、黒い森そのものとして融合している
なら弓槻先生が死ねって言ったら、あんたは死ぬのね
雪乃がまた、当たり前のことを聞いてくる
死ぬよ命令じゃ、仕方ないじゃないか
雪乃がブルルッと震える
気違いなんじゃないのあんた
オレは、気が狂っているのだろうか
いいや自分では、そう思わない
ミッチィが厳しい顔で、オレを見る
ど、どうしたのミッチィ
吉田はわたくしに、みすず様のためになら死ねると言っていたではありませんかあれは、嘘だったのですか
うん、死ぬよみすずのために死ぬのは、全然苦じゃない
でも、今弓槻様の命令があれば、いつでも死ぬと吉田は言いました
みすずはいや、みすずもオレの家族だオレの中では、黒い森のみんなと同じくらい大切な存在だだから、死ぬ気で守るし命だって掛ける他のみんなと一緒だよ
他のみんなと同じ
ミッチィの顔が、いよいよ険しい
ああ、オレはみすずだけじゃないメグのためにだって死ねるし、マナのためにだって命を掛けれる克子姉や渚のためだって
どうして、みすず様が一番にならないんですかっ
他の女たちよりも、みすず様を優遇するのが正しい姿でしょう違いますか、吉田
ミッチィが叫ぶ
みすず様は天使ですあんなに純真で可愛らしい方はいらっしゃいません吉田は、他の誰よりも、みすず様に帰依し、深く深く心の底から崇拝するべきですっ
ミッチィにとってはみすずは、そんなにも崇高な存在なんだ
いや、みんな同じだよみんな、同じぐらい大事だどの人も、オレの中では一番なんだ
そんなのは変ですちゃんと優劣を付けるべきです
優先順位か
ああもし、今、オレたちが沈む船の中に居るんだとしたら誰を最初に救命ボートに乗せるか、オレの中での優先順位は、確かにあるよ
みすず様が一番先ですみすず様よりも大切な存在なんて、いないんですから
オレはみすずを崇拝するこの小柄な少女に告げる
誰を先に乗せるかなんて、そんなことはどうでもいいんだっ
絶対に全員助けるんだから
全員助ける
驚く、ミッチィ
そうさオレは死んだっていいたった一人で、沈む船に残されて溺れ死んだっていいだけど他のみんなは全員、助けるみすずも、寧さんも、メグも、マナも、克子姉も、渚も、マルゴさんも、ミナホ姉さんだって絶対に死なせるもんかっみんなみんな、助けるんだっ
そんなのおかしいですっ
ミッチィは、首を振る
もし助けられない人が出たらどうするんですかっ
そんなことは考えない死んだって、全員助けてみせるっ
吉田は、メチャクチャです
メチャクチャじゃないっ
狭い雪乃の監禁室で怒鳴り合う、オレとミッチィ
何故ですそんなに平等に男が女を愛せるはずがありませんっ
ミッチィがオレにそう言った
愛せるよみんな家族だから
家族
オレは、ミッチィの眼を見てはっきりと告げる
黒い森はオレの家族なんだだからみんな、愛してる命懸けで守る絶対に幸せにするみんなみんな、オレの家族だ
家族だ
オレは、やっと自分の家族を見つけたんだ
オレの守るべき家族を
みすず様が家族
そうだよみすずは、オレの家族だだから、愛している絶対に、守る幸せにしてみせる
吉田は不遜です
ミッチィはそう呟いた
フソン
思い上がりも甚だしいという意味ですわたくしたち平民が、みすず様の様な血筋の方と家族になれるはずが無いじゃないですか
ミッチィは子供の頃から、みすずに仕えている
当然、香月という家のことは、よく知っているんだろう
香月の家のことは、よく判らないけれどみすずは、普通の女の子だよ全然、普通の人間だよだから家族になれる
どういう意味です
血が繋がっていなくても赤の他人でも信頼し合うことができれば、みんな家族になれるんだオレは、黒い森に来て、それを教わった
本当にそんな、馬鹿げたことを信じているのですか血の繋がりよりも、濃い関係の家族に他人がなれるなんて
ああ信じているよ
だってオレは
オレはむしろ、血の繋がりなんて何も信じていないもの
オレは両親に捨てられた子供だしメグもそうだマナだって親だから、血の繋がりがあるから、子供たちを守ってくれるなんてそんなことは無いオレたちは自分たちの力で、サバイバルしていかなければならないんだ
そのために寄り集まっている
それが今の黒い森だ
他の人だってそうだマルゴさんは、自分の家族とは一緒に居られなかった人だし寧さんは、家族全員を殺されてしまった克子姉と渚は、拉致されて娼婦にさせられて家族の元に返れなかったミナホ姉さんは、その両方父親に捨てられて、お母さんの元から拉致され妹さんは殺されたみんな血の繋がった本当の家族を失っているんだだから黒い森を自分の家族にしているんだ
みすず様は違いますみすず様は、ご家族も健在ですお祖父様の香月様だけでなく、お父様もお母様もご健在ですみすず様は、ご自身の家族に何のご不満も感じていらっしゃらないはずです
それは確かに、そうなのかもしれないけれど
オレには一つの確信がある
オレとみすずは魂が呼び合ったんだちゃんと繋がっている絆があるオレはそう感じている
自分の中で決意が固まっていく
だから今日の夜、香月さんに会った時にちゃんと言うよみすずをオレに下さいって
ミッチィが呆然としている
みすず様と結婚するつもりなのですか不可能です庶民が、香月家と縁を結ぶことなど
正式な結婚は、できないかもしれないでも、そんなことは関係無いんだオレは、みすずと一生一緒に居たいそれだけだよ
そんなのみすず様が可哀想ですっ
花嫁衣装を着ることができないなんて女として生まれてきたのにそんなこと
本当にこの武士みたいな格闘少女は
頭の中は、女の子なんだな
十五歳の普通の少女
ごく普通の
でも政略結婚よりはましだろ
ですが家同士の関係を強化するために婚姻するのが、名家に生まれた女の宿命です
ミッチィは、両手をギュッと握りしめてそう言った
そんな宿命知ったことかよ
あいつはもうオレの女だ他の誰にも渡さない
ミッチィが驚きの表情で、オレを見上げている
あのさそういう下らない会話は、あたしのいないところでしてくれる
床に寝転んだ雪乃が呆れた表情で、オレに言った
あんたが何を決心するのも、あんたの勝手だけどさあたしには関係の無いことだしはっきり言って頭のおかしい犯罪者の、滅茶苦茶なリクツを聞かされるのは迷惑よ
うん、そうだな
雪乃から見ればオレは、頭が変になっているとしか思えないだろう
それはオレにも判る
オレは、もうこの道を行くしかないんだ
黒い森の人間として、生きていくことしか
しかしあんたもさあ、毎回毎回、よくもこんな訳の判らない討論に付き合っているわよね
こんなのさうるさい、バカオレはオレのやりたい通りにやるんだ、黙ってろで、済むことなんじゃないの
オレはきちんと対話したいんだ対話した上で理解したい判りたいんだ
きょとんとした顔で、雪乃がオレに尋ねる
今だったらミッチィのことをだこの子がどんな子でどういう考えを持っているのか、知りたいんだ
あんたがどう思っているのかをこの子に思い知らせる方が先でしょ
もちろんオレの考えは、ミッチィに伝えるけれど別に、同調して欲しいわけじゃないし判って貰いたいわけでもないそんなことより対話することで、ミッチィの心の中を知りたいんだ
ああ相手の女の心の中を盗み見したいのねつくづく、ゲスな男よねあんた
雪乃が、フンと鼻を鳴らす
だって心が見えなければ、理解できないだろ
理解
ミッチィがつぶやく
オレはミッチィのことが、理解したい
わたくしを
雪乃が、ケラケラと笑い出す
そんなの、ただ普通に見ていれば判るじゃないこの子は、香月家のお嬢さんが大好きな、格闘バカの護衛女でしょそんなことも判らないのあんた
違うそうじゃない
そんな上辺のことだけで、人を判断しちゃいけないんだミッチィは
オレはミッチィを見る
ミッチィもオレを見ている
可愛らしい女の子だよ一生懸命、背伸びしている十五歳の女の子だ
雪乃がゲラゲラ笑い出す
何よそれっなあに、今度はその子を口説くつもりウケるわ、あんた
笑う雪乃にミッチィが
笑うな
電撃警棒を、雪乃の眼の前に突き付ける
ビシッと一瞬輝く、青白い火花
ひぃ
雪乃の顔が引きつる
それが、どんなことだとしても一生懸命な人間を笑ってはいけないわたくしは、お父様からそう指導されています
わたくしには吉田の考えは、よく判りませんはっきり言って、無謀で無茶なことを言っているだけとしか思えませんでも、吉田が一生懸命なことだけは判ります
ですから今のみすず様に対する不遜な発言は、わたくしの胸の中に仕舞い込んでおきますとにかく吉田は、これからもみすず様にお仕えして下さいみすず様が、吉田のことを気に入っているのは確かなのですから吉田が、みすず様を裏切らないというのならわたくしは、吉田の存在をとりあえず許すことにします他の女との情交も見逃すことに致します
絶対にみすずを裏切る様なことはしない誓うよ
オレは、ミッチィにそう誓約した
では、吉田一つだけ、教えて下さい
ミッチィが、真剣な顔でオレに尋ねる
電撃警棒で、雪乃を示して
この女を吉田はどう思っているんてす
この女は、わたくしたちの敵のはずですそう、わたくしは聞きました
あ、ああ雪乃は、白坂創介の娘でオレたちにずっと反抗的な態度を取っているし敵であることに間違いは無いと思うよ
少なくとも味方では無い
ではなぜ吉田は、この女も他の人と同じ様に優しく扱っているのですか
雪乃に優しい
バカなことを言わないでよこいつは、あたしをレイプしたのよ何十回もこいつがあたしに優しいわけがないじゃないっ
雪乃が、喚く
そうだ雪乃の言う通りだ
本当に敵対勢力の女に対するレイプは、こんなものでは済みません
ミッチィは言った
わたくしはお父様より、何度も陵辱映像を観せられましたそれは、もし敵に囚われたならば、どんな辱めを受けるかということをわたくしに学ばせるためで人間は敵対者にはどこまで残忍になれるかを理解させるためのものでした今思い出しても、吐き気がしますわたくしが、男性というものに激しい嫌悪感を持っているのは、あの様な映像を散々観たからです
工藤父
また偏った教育をしているなあ
そんなのを女子中学生に観せたりして
それでミッチィは、レズッ子になってしまったんだ
あなたは見たところ肌に青アザも出来ていませんし歯だって、一本も折られていないじゃないですか
ミッチィは、雪乃に言った
あたしはこいつに、三十回以上犯されたのよ
雪乃は、尚もミッチィに嚙み付く
しかし女性器が裂けるほどの暴行はされてはいないではありませんか
どんな陵辱映像を観せられてきたんだよ
むしろ吉田が、手荒なことをしないことをあなたはよく理解している性交相手としての吉田に信頼すら感じているではありませんか
雪乃がオレを信頼している
そんなわけないじゃないあたしが、こいつを信頼しているだなんて
ミッチィは、さらに言葉を続ける
先程のあなたと吉田の情交はわたくしもカメラの映像で観ていましたあなたは確実に吉田とのセックスを楽しんでいたように見えましたが
楽しむわけないじゃないこんなやつに抱かれて本当は嫌なのよ嫌で嫌でたまらないんだからっ
雪乃はそう否定するが
嘘ですあなたは嘘を言っています
ミッチィはそう看破する
そして吉田あなたはなぜ、みすず様や他の女性とセックスする時の様に、この女に気を遣って奉仕しているのです
オレが雪乃に奉仕
どうしてこの女が快感を感じるように、一生懸命になるのです陵辱ならば吉田が一方的に快感を得ればそれで良いのでしょういやこの女には、肉体的にも精神的にも苦痛を与えなければ、陵辱にはなりません
それはその通りなんだけど
むしろ吉田とのセックスが、肉体的にも精神的にも、この女を救済しているようにすらわたくしの眼には見えましたが
吉田とこの女はどういう関係なのです吉田にとって、この女はどういう存在なのですかっ
ミッチィが、激しくオレに詰問する
オレの中から答えが出て来ない
オレたち何なんだ
最初は陵辱者と被害者の関係だった
でも今は
ミッチィの言う通り雪乃は、オレとのセックスを伸び伸びと楽しんでいるように見える
そして、オレは確かに、他の女と同じ様な態度で雪乃ともセックスしている
何なんだこれ
オレにとっての雪乃は
雪乃にとってのオレは
いやでも、ミッチィ
オレは口を開いた
だけど雪乃とは、もうセックスしないから
雪乃がギョッとして、オレを見上げる
だってさっき、雪乃はこれで最後って言ったから
だからもう、雪乃とのセックスは無い
雪乃が、ぷいっと顔を背ける
そんなはずがありません
ミッチィがオレに言う
この女が吉田との情交から脱することができるとは、とても思えません
もしまたこの女が情交を求めて来たら吉田は、どうするのですか
雪乃がまた、オレとのセックスを求めて来たら
その時オレは
はい、それまでぇぇ
スピーカーから、克子姉の声がした
工藤さん問題提起ありがとうございますねっ
克子姉の声は、楽しそうだった
ああオレとミッチィを、雪乃の所へ行かせたのは
ミナホ姉さんの計画通りなんだな
みすずのことで焦れているミッチィにオレを突っつかせるために
今、そこまでにしておきましょうみんな、少し頭を冷やして考える時間が必要よ
それぞれの人の意見を、ようく吟味して考えてみなさいそれから自分が言ったことの中身も、もう一度考えるの三人ともね
オレと雪乃だけでなく
克子姉は、ミッチィにも今の会話の内容を、もう一度よく考えろと言う
人はついつい自分の本心を、違う言葉で誤魔化してしまうものよ自分に騙されないで本当の自分と向き合ってみなさい
克子姉の声は優しかった
とにかく雪乃さんは、お食事をして二人は戻って来てそろそろ、次のステップに移行するから
ここから
何が、起きるんだ
ぐったりしている雪乃にとにかく、飯だけは食えよと言って、監禁室を出る
ミッチィも、何かを考え込んでいるようだった
オレも色々と思いを巡らせる
監視室に戻るとマルゴさんもミナホ姉さんも戻って来ていた
克子姉、寧さん、マナ、マルゴさん、ミナホ姉さん、ミッチィ、オレ
部活中のメグを除いたフルメンバーが、揃っていた
さっきのあなたの言葉録音して、みすずさんに送っておいたから
いきなり克子姉が、そんなことを言う
え何のことです
ほらみすずをオレに下さいって、香月様に言いに行くんでしょ、あなた
うわそのことか
後で自分の口からも、はっきりみすずさんに言ってあげなさいプロポーズの言葉なんですからね
ミナホ姉さんもニッと笑っている
でもいいんですかお兄ちゃんが、香月様にそんなことを言ってそれで弓槻さんたちが香月様と険悪なことになったりしたら
マナが心配そうに、ミナホ姉さんに言う
その時は、その時よあたしは吉田くんとみすずさんの味方よ
そう言ってくれてとても嬉しい
ま、結局、なるようにしかならないもんねっ
と寧さん
ああ、みすずさんのことは、あたしも気に入っているし
皆様は、全然お判りになっていらっしゃらないっ
ミッチィが、プンプンと怒り出す
香月様は、そんな甘いお方ではありませんっみすず様にご奉仕する愛人の一人ということならともかくみすず様を下さいだなんてっ
この子の価値観はしっかりと固定されているらしい
そんなことあなたに言われなくても、判っているわ
ミナホ姉さんが、軽くミッチィに言葉を返す
でも黒い森だって、決して甘い組織ではないのよ
ミナホ姉さんの冷たい眼にミッチィは
し、失礼なことを申し上げました
頭を下げる、ミッチィ
いいのよそれも吉田くんのせいなんだから
オレのせい
本当なら、人見知りな性格でなかなか、他人には心を開かない工藤さんが、あたしたちに気安く自分の気持ちを話している吉田くんがいなければ、こうはならないわ
と、オレが謝るとミナホ姉さんは、クスクス笑って
いやね褒めているのよ
本当に女の子の心を開くのが上手いわねあなたは
ただただ、ミッチィを怒らせてしまっているだけみたいな気もするし
さてでは、次の段階へ進みましょうか
ミナホ姉さんが克子姉を見る
克子姉の操作でモニターに、映像が映る
今から二十分前の遠藤くんよ
画面の中の遠藤は野球部二年の二人の先輩に
ボコボコに殴られていた
おいてめぇら、こんなことして
地面にうずくまった遠藤が苦しげに言う
学校にでも、警察にでも、高野連にでもチクれば
杉山という名前の方の部員がニタニタ笑いながら、そう言った
ああ、別にオレたち野球部が出場辞退とかになって構わねぇし
鯉住の方が、遠藤の腹を蹴りながらそう言う
2年になっても、レギュラーになれねえんだオレらは、最初っから出場できねぇんだもんなっ
だからチクリたければ、幾らでもチクりなっ
また、杉山の拳が、遠藤をアゴに打ち込まれるッ
とにかく、この学校パートで吉田くんに様々なことに対しての腹を括らせるつもりです
もちろん、雪乃と遠藤の処遇が一番のテーマなのですが
昨日に続いて、学生時代に警備員のアルバイトをした時のこと
駅の建て替え工事の大きな現場で、警備員も20人ぐらいいる場所でのこと
そこに、いつもすぐにサボって仕事をしないオバサン(といっても、60近い)がいた
そしてそこの現場リーダーは、定年退職後に警備員をやっている、とても真面目で固そうなおじいさんで
その現場リーダーと、サボっているオバサンの会話
リーダー**さん、あんたまたサボッていたな
オバサンまあまあ、いいじゃないのちょっと、持ち場を離れて缶コーヒー飲んでただけなんだから
リーダー**さんオレはね、自分のとこの部下が何か不始末をやらかしたとしても、十回りうち九回まではガマンして見逃してやることにしているんだよ
オバサンならいいじゃない今回も、見逃してよぉぉ
リーダーそれがな**さん、あんたの場合は
リーダー、大きく息を吸って
リーダー今が、最後の十回目だぁぁッッ
何か、北斗の拳かドラゴンボールみたいな勢いの雄叫びでした
これはクリリンの分だぁぁみたいな
実際は、おじいさんとオバサンの闘いなんですけど
何か、マンガチックで、格好良かったです
そう言えば大学の時に、約束を守らなかった学生に対する教授の雄叫び
こんな約束も守れないぐらいならもう大学なんてやめちまえやいっ
も、凄かった
やいっって
江戸っ子だったのか、教授
198.ステップ1
遠藤ところで、お前、アレはどうする気だよ
野球部員の鯉住が地面に倒れた遠藤に言った
ああ、アレのことな
杉山もニヤニヤと笑っている
お前さ野球部クビになったのはいいけれどよ、まさか、アレまでチャラってことはねえよな
鯉住が遠藤の胸ぐらを掴んで、引っ張り上げる
あ、アレってな、何のことだよ
遠藤は、鼻血をたらーりと垂らしながら二人の先輩を睨み付けた
決まっているだろカケのことだよッ
カケ
お前があの子、何子ちゃんだっけ
雪乃ちゃんだろ
そうそうあの子と、五月何日にハメるかってトトカルチョだよ
遠藤と雪乃のベッド・インの日を
野球部員全体で、賭けていたんだっけ
あ、あいつはあんな女、もうどうでもいいんだよっオレは
昨日遠藤は、野球部のグラウンドで、観衆の前で雪乃に恥をかかせられた
もう、知らねえよあんな女
遠藤は、吐き捨てるようにそう言う
へっ、お前は、そういうつもりだとしてもよ
オレたちは、そうはいかねえんだよっ
鯉住がもう一発、遠藤の腹を殴りつけた
オレたちも賭けてんだよっ儲けたいんだよねっ
今更、女とはダメになったんで払い戻しますってわけにはいかねぇからなっ
二人がかりで遠藤を痛めつける
何としかしろよ、ゴラァ
無理でも、どうにかしろってんだよォッ
遠藤がボコボコにされる
そそんなオレに、どうしろって言うんだよ
遠藤は泥まみれになって半分、泣きべそで叫んだ
そんなん決まっているだろ
鯉住が薄ら笑いを浮かべながら、遠藤に言う
強姦でもレイプでもして何としてでも、賭を成立させろッ
杉山もヘラヘラとしながら
あっ、ちなみにオレと鯉住は、五月二日つまり今日に賭けているから
つまり今日中に、確実にやるんだよ
今日中に
雪乃が遠藤に犯される
で、でもあいつはあんたたちも知っているだろあいつは、昨日からテレビで話題になっているあの白坂創介の娘なんだぜ
おお、野球バカの遠藤も昨夜からの騒ぎは知っているらしい
オレはもう、あいつに関わりたくないんだよっ
遠藤はあっさりと、雪乃を見捨てた
犯罪容疑者の娘だと知った途端に遠藤にとっての雪乃の価値は、なくなってしまったらしい
鯉住と杉山二人の不良野球部員は
そんなの関係ねぇ
はっ
あらよっと
えいやっとっ
全然意に返さない
笑いながら、遠藤をいたぶっていく
五月二日に賭けているのは、野球部員の中でオレと杉山くんの二人だけなんだよねぇ
そうなんですよねぇ、鯉住くぅぅん
遠藤が今日、一発キメたらオレたちの丸儲けってことになんだわッ
全額、いただけるんだよッ
でオレたち、幾らの収益になるわけよ、鯉住くぅぅん
それがざぁっと四万二千円なんだわ、杉山くぅぅん
一人頭では
二万一千円になりまーすっ
それって、大きいよねぇぇ杉山くぅぅん
絶対に見逃せないよねぇぇ鯉住くぅぅん
二人が、再び遠藤に襲いかかる
だから、お前は
絶対にやるんだよ
あの女とハメろ
そんで証拠の写真を撮ってこい
遠藤に浴びせられる鉄拳
人気の無い体育館裏の土の上に
ボコボコされた遠藤がバッタリと倒れる
いいな判ったな、遠藤
今日中に、絶対だからな
お返事はぁぁ
遠藤は返答しない
まあいいやまた、後で呼び出すからな
それまでに、女をどうにかするメドを立てとけよ
いい加減なことしゃがったら、こんなもんじゃ済まさねぇからな
判ったな、遠藤
じゃあな、ペッ
杉山の吐きかけた唾が遠藤の顔に落ちる
鯉住と杉山はゲラゲラと笑いながら、歩き去って行った
うつぶせに倒れたままの遠藤
ちっくしょう
そんな憎しみの声を上げるが動けないようだ
な、何でオレがこんな目にちくしょう
遠藤は自分は何も悪くないと思っている
苦境の原因は、全て他人にあると思っている
それが、遠藤ケンジという人間だ
あいつら、ふざけやがってふざけやがってふざけやがって
監視カメラの画面に誰かが入って来る
あらっ誰か、そこに倒れているみたいよ
生徒会長岩倉幸代
岩倉会長は二人の男子生徒を従えていた
二人とも生徒会の腕章をしている
確か生徒会の人間は、全員岩倉さんの手下だ
どうしたの、あなたケガをしているみたいだけど
岩倉さんが驚いた演技をして、遠藤に近付く
まあまあ、酷いケガね原田、牧野、その子を運んでそうね、ここなら体育館の中のスポーツ研修室が近いわねあそこなら、医薬品もあるし
いや普通、医務室へ連れて行くだろう
スポーツ研修室なんて部屋聞いたことも無いし
何か、裏があるのか
はい、会長
さあ早く、連れて行ってあげましょうねっ
岩倉さんは、そう言いながら隠しカメラの方を見て、ニヤッと笑った
カメラの位置を知っているんだ
ちやんとミナホ姉さんの指示通りに行動していることをカメラ越しにアピールしているのか
ほら、立てるか
二人の手下が遠藤を抱き起こす
二人の生徒会の学生に支えられて遠藤が体育館の入り口に向かう
その後ろを岩倉会長が、優雅に歩いて行った
はい映像は、ここまでよ
克子姉が映像の再生を停めた
えっちょっと待って
ど、どういうことなのミナホ姉さんは、岩倉会長にどんな指令を出したんだ
今はまだ、教えられないわ
そう言ってコーヒーを飲む
そんなまさか、本当に遠藤に雪乃をレイプさせたりしないよね
オレがそう質問すると
さあどうなるかしら全ては、遠藤くんと雪乃さん次第なんじゃないそうでしょ
あんなに殴られたからって、遠藤が不良先輩たちの言うことを聞くとは思えない
遠藤の性格じゃ逆に、雪乃に近付こうとしないだろう
絶対に、二人の先輩を賭で勝たせないようにするはずだ
なあに吉田くん、そんなに雪乃さんのことが心配なの
いやだって
あんな人もう、どうなったっていいよ
マナがそう呟いた
お兄ちゃん、ギュッとして
マナは雪乃の実妹として、雪乃に深いコンプレックスを抱いている
そのコンプレックスが、オレに対する依存症を加速している
お兄ちゃんには、マナがいるんだからもう、あの人のことは考えないで
あら吉田くん、そろそろ恵美を迎えに行かないといけない時間なんじゃない
ミナホ姉さんが、時計を見てそう言った
確かにもうすぐ朝練が終わる
はい迎えに行ってきます
あいつも依存症状態になっている
迎えに行ってやらないと心配だ
ほらほーらっ、マナちゃんはあたしとお留守番ねっ
寧さんがマナに声を掛けてくれる
マナは、オレの学生服にしがみついたままだ
マナちゃんもメグちゃんのこと、心配でしょ
寧さんが、マナに優しく微笑んでそう言った
だからヨッちゃんには、しばらくメグちゃんに付いていて貰おうよねっ
その寧さんの言葉に、マナは
判ったお兄ちゃん、メグお姉ちゃんのことお願いね
マナがオレの学生服から手を離す
ああ任せておいてくれ
オレは、マナの頭を撫でてなりながらそう答えた
寧様マナちゃんと、お台所の片付けをお願いできます
おっけー、克っつーん
続いて、マルゴさんがミッチィに
工藤さん上の校長室で、ちょっと身体を動かそうか今日は、どんなタイミングで戦闘状態になるか判らないから、アップをしておきたいんだ軽く、相手をしてくれないかな
了解ですわたくしも、そう思っておりました
寧さんとマナが奥の台所へ
マルゴさんとミッチィは上の校長室へ
ミナホ姉さんと克子姉はまた何か企んでいるな
ミッチィとマナに見せたくないことを、この部屋でする
それは十中八九、雪乃のことだろう
もうすぐ、始業時間だ
そしてミナホ姉さんは、雪乃を授業に参加させるつもりのはずだし
あなたが、そんなに色々なことを考え込まなくてもいいのよ
ミナホ姉さんが、オレの顔を見てそう言った
眼の前にある問題を、まず片付けなさいできることからやっていかないと、何も解決しないわよ
オレの眼の前にある問題
まずは恵美の心のケアでしょ
メグは他の部員たちと、上手くやれているだろうか
竹柴キャプテンが、ああ言ってくれたからそんなに心配はしていないけれど
でもメグは
あいつはしっかり者なんだけど、メンタルが本当に弱いからなあ
判りました行ってきます、オレ
カバンを持って行きなさいあなたは、そのまま授業に出るんでしょ
時間的にはそういうことになるか
そうだね判ったよ、ミナホ姉さん
おれは学生カバンを抱えて
再び女子陸上部に向かう
おっし朝練は、これで終了だ一年は、片付け他は、解散
竹柴キャプテンの声がグラウンドに響く
何とか間に合った
メグは他の一年生部員と用具の片付けをしている
あ、山峰ちゃん、彼氏が迎えに来たよ
一年生の一人が、オレに気付く
先に上がりなよ片付けはあたしたちでやっておくから
同じクラスの荻野さんが、気遣ってそんなことを言ってくれた
でもいいわよみんなに悪いし
メグはそう言って、用具の入ったバスケットを抱える
もう、素直じゃないなあ吉田くんをお待たせさせてると、あたしたちの方が気になるんだよ
そうだよ山峰さん
急いで、一年生部員たちの中へ入っていく
手伝うよメグ
オレはメグの持っていたバスケットを奪うように、持ち上げる
これ女子陸上部の部室に持っていけばいいんだな
荻野さんがオレに
いいよ、吉田くんがそんなことしなくたって
そうだよ、山峰さんを連れてっちゃっていいんだから
うん片付けは、あたしたちだけてもできるし
みんなも知っていると思うけれどメグはとっても、真面目な子なんだちょっと真面目過ぎるんじゃないかってくらいにねだからオレたちに、気を遣ってくれたのは有り難いけれど、メグにもみんなと一緒に片付けをさせてあげて欲しいんだよオレも手伝うから
ほら、持っていくぞメグ
みんなで用具を抱えて、部室まで戻る
それを二往復して
ありがとう、吉田くん後は、あたしたちで中にしまうから
女子部の部屋は、男子禁制だから入れてあげられないのよっ
うんオレにできるのは、ここまでか
じゃあ外で待ってるよ
うんすぐに山峰さんは返してあげるから、今だけ貸しておいてねっ
一年女子の部員たちが、笑う
ていうかさいっそのこと、吉田くん入部しない
女子陸上部初の男子マネージャーってことで
正直荷物運び用の男の子が必要なんだよねぇ
そんな声に部室の中から、竹柴キャプテンが顔を出す
馬鹿なこと言っているんじゃないよっ準備と片付けだって、トレーニングの一環だっていつも言っているだろそれに、整理整頓は、武道を志す者の基本だよ
さすが陸上は武道だの竹柴キャプテン
す、すみませんっ
まあ、いいけどね用具は、部室の入り口の前に重ねておけばいいよどうせ、放課後の練習でまた使うんだとっとと、シャワー浴びて授業に行きな
居眠りとかするんじゃないようちは文武両道がモットーなんだからねっ
ほらっ、さっさと行きなっ小娘どもっ
失礼しますっ
一年女子たちは、着替えを持ってシャワールームへ向かう
すぐ済ませてくるから
メグもみんなと一緒に、小走りで行く
とりあえず、女子陸上部の人たちとは、上手くいっているらしい
しっかしお前は本当にマメなやつだな
竹柴キャプテンがオレに言った
マメオレがですか
ああ普通の男は、ここまでしないぞ朝練の終わりに迎えに来いと言ったのはあたしだけど片付けの用具運びまでやってくれるとは思わなかった
それはメグに、他の部員の子たちと仲良くして欲しかったしそれに
オレは遠ざかるメグの背中を見る
他の部員の子に気を遣って貰うような状態が続くんじゃメグが、心苦しいだろうと思うんですあいつ、メンタルが強くないですし
気遣って貰えるのは有り難いけれど
それで、他の部員に負担を掛けるのではメグの心の重荷になる
それに部員たちだって、全員がメグの味方なはずはない
今だってメグやオレと、一言も口をきかなかった一年生部員が居る
現実は、そんなものだ
だったらメグが特別扱いされるのと、後々に問題になる可能性が残ってしまう
だからオレは片付けを手伝った
メグにも、最後までみんなと一緒に作業させた
少しでも、問題の種になりそうなことは取り除かないといけない
メグのために
お前さ、本当に面倒見が良いよねああいうのメンドクサイとか思わないわけ
竹柴先輩が、ニヤッと笑ってオレに言った
え何がです
普通の男はさ彼氏だ彼女だって、関係になったってひたすら、女の胸と尻を眺めているだけじゃない自分の欲求だけで、女に甘えてくるだけでさ女の気持ちとか、全然考えてないやつとかの方が多いだろ
すいませんオレ、他の男のこととかは、よく判らないんで
お前女と付き合うのは、山峰が初めてなわけ
セックスの初体験は、雪乃だけど
彼氏彼女っていうのは、メグが初めてだよなあ
みすずとは、最初はペットと飼い主っていう関係だったし
はい付き合うとかは、メグが初めてです
それにしちゃあ落ち着きすぎだよ、あんた
ああ腹が据わりすぎだよ一年生っぽくないね
済みません
バーカ、褒めてるんだよ
竹柴先輩は、そう言って微笑む
オレメグの家族になりたいんです
今の竹柴先輩の言葉で思い出したんですけれど家族って、メンドクサイんですよねメンドクサイのが当たり前なんですよね
オレの脳裏に
懐かしい記憶が、蘇る
オレおバァちゃんに育てられたんです子供の頃もう亡くなって、ずいぶん経つんですけれど
バァちゃんの小さな、曲がった背中を思い出す
うちの両親は忙しいっていうか、オレには全く興味の無い人たちだったんでそれで、うちの母親は家事を全くしない女なんで家のことは全部、バァちゃんがやってました毎日、大変そうでそれなのに、バァちゃん、いつもオレの心配ばかりしているんですよ
バァちゃんは、いつも
ちゃんとハンカチ持ったかとか外では車に気を付けろとか誕生日には、小さなケーキを買って、二人だけで必ずお祝いしてくれたし本当に優しくしてくれたんです
あんなにオレの母親に虐げられていたのに
いつも、オレに気遣って優しく面倒を見てくれた
あの頃オレに優しくしてくれたのは、ホント、バァちゃんだけでそれで、オレ小学校一年生の頃かな一時、バァちゃんに聞いてみたことがあるんですよ
バァちゃんは、どうしてオレに優しくしてくれるのオレの面倒を見るのなんて、メンドクサくないのオレって、バァちゃんの迷惑になってないって
オレ自分がバァちゃんの重荷になっているんじゃないかって思ったんですオレみたいな存在がいなければバァちゃんは、もっと幸せになれるんじゃないかってだから、オレ、バァちゃんに言ったんですそんなにオレのことばっかり心配してくれなくてもオレは平気だよオレは一人でも、そこそこ何とかやってけると思うからバァちゃんは、もっとバァちゃん自身のことを大事にしてくれていいんだからねって
オレは本当に、ガキだった
そしたらおバァさんは、どう答えたんだ
バァちゃんは子供がメンドクサイのは当たり前のことなんだよだから、あんたは気にしないでいっぱい、バァちゃんに迷惑を掛けなあんたに迷惑を掛けられてあんたの面倒を見るのが、バァちゃんの仕事なんだから、気にするんじゃないよって
はいそれから、ちょっと経ってバァちゃんは亡くなったんですでも、その言葉はしっかり覚えていますだからオレ
家族の心配をして、家族の面倒を見るのは当たり前じゃないですかメンドクサイのだって、当たり前なんですでも、苦しんでいたり困っていたりしたら、助けてあげないと家族なんですから
山峰はもうあんたの家族なんだね
オレは竹柴先輩に、はっきりと答えた
そうかこれからも大切にしてやってくれ
いえ、オレの方こそメグをよろしくお願いします
オレは、竹柴先輩に深く頭を下げた
うん部活のことは、あたしに任せておきなしかし
竹柴先輩は、クククッと笑う
そういやお前の面倒見の良さは、どことなくお祖母ちゃんぽいな
あんたの腹が据わっている理由もよく判ったよ
先輩は、にこやかにそう言ってくれた
ヨシくーんっ
急いでシャワーを浴びて、制服に着替えたメグが走って来る
ほらお姫様のお戻りだお出迎えしてやんな
竹柴キャプテンが、オレの背中をドンと叩く
オレも走って、メグを迎えに行く
あのねっ、ヨシくんっみんな優しくしてくれたのっキャプテンも、他の子も、みんなあたしのこと
本当は白坂創介の隠し子であるメグ
誰にも言わないが内心では、色々な思いがあるのだろう
白坂創介への憎しみ白坂を破滅させてやりたいという思いがあるのと同時に
白坂の娘として自分も世間から罰せられるという恐れがずっとあったのだろう
だからオレへの依存が高まっていた
メグにとっての心の避難場所として
良かったなみんな、いい人たちで
うんみんないい人だよぉいい人たちで良かったよぉぉ
メグはオレの胸の中で、涙を零す
女子陸上部がメグをいつも通りに受け入れてくれたことが、本当に嬉しいのだろう
これから教室へ行って、授業を受けなければならない
クラスの連中は
メグをどう受けとめるのか
今は判らない
子供の頃に相手が話している時は、ちゃんと相手の眼を見なさいという小学校教師の言うことを真に受けたからでしょうか
私は、本当に話をしている相手の眼を見る癖があります
そしてそういう会話をしていると
どういうわけか、昔から、私には色んな人が話し掛けてきます
それもことごとくそんなに私とは仲良くない人ばかりです
私は基本的に人畜無害で、集団の中では居るのか居ないのか判らない空気みたいな存在感の人間です
また、セックス・アピールという物が、これっきしも無いらしいです
だから周囲の人からすれば話しやすい相手なんでしょうか
その人の仕事上の人間関係の問題を、延々と聞かされたり
私の知らない無関係な、職場のトラブルについて話し続けられたり
その人の将来の夢とかを、延々と語られたり
あとどういうわけか、女性から高校時代から現在に至るまでの全ての恋愛遍歴を延々と語られたことが2回あります
もちろん、二人とも別の女性で私に好意を持っているわけではありません
なのになぜか、私に語るのです
語られると、聞かないといけませんからこっちは、真剣に聞きます
そんなわけのわからないことが何度もあります
そして話をした人は、その後、私と疎遠になっていきます
何で、オレあんなやつに、会社の愚痴とか喋っちゃったんだろうとか
あんなやつに、自分の夢を話しちゃって恥ずかしいなあとか
どうして、あんな人に色んなことを話しちゃったんだろうあの人、よそで喋らないかしらとか
みなさん私に話した後、後悔するみたいです
なのでみんな、私から離れていきます疎遠になります
そういうものみたいです
いつも私の中に彼らの物語だけが残って彼ら自身はいなくなります
私が、文章を書くようになってからは
作品になりそうな話があるんだけど、聞いてくれない
という人が何人も現れました
その話というのは、ほぼ百パーセント、その人の個人的な体験談です
でも、それは
私の作品としては、書けないんです
あくまでもその人の体験した物語なのですから
書きようがないんです
結局私は、その人の物語家族の問題や、恋愛での葛藤、病気や死にまつわるものまで重いプライバシーの話を延々と聞かされることになります
話が終わった後だいたいの人は、満足した顔をしています
そして、言うのです
今の話次の作品の参考にしてくれていいからねっ
でもね参考には、ならないんです
作品には使えないしそれらは、私が使ってはいけない物語なんです
もし、その人の物語を私が書くのならその物語に登場する全員にインタヴューしないといけないんです
複数の視点からの意見を集めて、客観的に判断して
そうして彼らの物語ではない、別の物語に再構成しなければ
人様にお見せしていい作品にはならないからです
ある人の個人的な涙をその意味と価値を他の人が、本人と同じ重さで認めてくれるかどうかは判らないのですから
結局私の中に、重い話だけが残って
たくさんの疎遠になった人たちがいます
さて私が、ここまで何でこんなことを書いたかと言うと
ノクターンには、感想欄の他に作者とダイレクトにメールを送ることのできるメッセージ・ボックスという機能があります
で
私のメッセージ・ボックスに長文のお手紙を送って来るのは、ご遠慮下さい
連続で幾つもメールを次々に送ってくるのは、やめて下さい
特に個人的な思い出話とか
近況とか悩みとか送っていただいても困ります
何通も連続で送って来られても、困ります
今までの人生で大変だったこととか書かれても、困ります
読むのも大変ですし何を返信したらいいのか、全然判りません
私はプロの作家でも、悩み相談の人でもありません
ただの一般人です
自分の書いた物を、ただ投稿しているだけです
文通相手は、募集していませんしそういうことをする気はありません
そんな時間もありません
ついでに書くと作品の間違いや矛盾点などを指摘して下さるのは大変有り難いのですが
もっと、こうしたら面白くなるぞとか私なら、こうするとかは
そういう作品の展開に関わるようなことは、送って来ないで下さい長文で
そういうアドバイスは、迷惑です
好きに書かせて下さい私の作品です
お願いしますお願いしますマジでお願いします
ということなのでメッセージ・ボックスに届いた私的なメールに関しては、今後は基本的にお返事しないと思います
ご了承下さい
199.クラスの人たち
あたし弱いよね
メグがうつむいて、そう言った
二人で校舎へ向かっている途上
他の女子陸上部員の一年生たちは、気を遣ってくれてオレたちとは距離を取ってくれている
ついこの間まであたしは、白坂さんに命令されるまま、娼婦にさせられるって思っていたのに学校だって、もう何日も通えないって諦めていたのに
白坂創介は黒い森を離れて、自分の売春組織を立ち上げようとしていた
そしてメグをその組織の娼婦にしようと企んでいた
ゴールデンウィークが終わればメグは山峰家から連れ去られるはずだったんだ
なのにヨシくんと出会って、御名穂さんにも再会できて幸せな気持ちになったら、すっかり気持ちが緩んじゃってたダメだよね、あたし
自分でも判っているのあたし、ヨシくんに頼りすぎているってヨシくんが側に居てくれるから今だって教室に向かえる本当は心臓がドキドキしているの
教室のみんなはメグが雪乃の親戚だと知っている
白坂創介の血縁だと
どうしようあたし、ヨシくんがいないと生きていけない子になっちゃってる
メグがオレの手をギュッと握りしめる
大丈夫だからオレが守るからメグに変なことを言うやつは、みんなオレがブン殴ってやるから
しかしメグは
ダメだよヨシくん、そういうことじゃないのよ
メグは悲しげな眼で、オレを見た
そんなじゃあたし、ダメになっちゃうよ
あたしはヨシくんに守られたいんじゃないのそういうつもりで、ヨシくんのこと好きになったんじゃない
どういうこと
あたしヨシくんの隣に立つ女の子になりたいって思ったのお屋敷でヨシくんの今までの話を聞いた時あたし、ヨシくんの側に居てあげたいって思ったわそれなのに
メグは、また下を向く
いつの間にか、あたしはヨシくんに甘え御名穂さんたちに甘え山峰のお父さんやお母さんや、部活のみんな竹柴キャプテンに甘えさせて貰っている今、自分で自分の弱さにゾッとしているの何て、情けない女の子なんだろうって
メグの手が震えている
本当に自分で自分が嫌になるわ部活の時間に、頭の中が冷静になってハッとしたの昨日からずっとあたしはヨシくんに甘えっぱなしだったって
今、メグの頭の中では昨日からのこと
特に、早朝のオレとのセックスのことが思い出されているんだろう
確かにメグは変だった
オレとのセックスに溺れようとしていた
それもこれも自分が本当は白坂創介の娘であるという現実から逃避するため
もっと強くなりたい、あたし
メグがそう呟く
こんな時、何て言ってあげればいいんだろう
この子に
オレの大切な女に
オレ、思うんだけど
そんな言葉が口から勝手に零れた
強くなるって身体の場合だと大変じゃないか一生懸命時間を掛けて鍛え上げないといけないんだから
オレ何を言っているんだ
だけど心の場合は心を強くするためには
どうすればいいの
勇気だけでいいんだよ
オレは、自分の胸をドンと叩いた
勇気さえあったら、大抵のことは乗り越えられるはずだから心は、勇気一つだけで強くなれる
メグも自分の胸をトンと叩く
そうだね勇気だね
メグの表情が落ち着いていく
それとさオレ昔からずっと思っていたんだどんなに辛いこともいつか終わるって
オレも色んなことあったけれど、どうにかなったしどんな辛いことも、悲しいことも絶対に終わる時が来る全て過ぎ去るんだ必ず夜は来るんだから
メグがクスッと笑う
ヨシくんそれを言うなら、必ず朝が来るでしょ
オレ、朝は嫌いだったんだまた、辛い一日が始まるからオレはずっと夜を待っていた夜になって暗い部屋で、あのソファに横になればオレは一人になれるからあの頃は、毎日毎日、ずっと一人きりになれる夜を待っていたから
寮生活だった、中学から戻って来て
両親はいつの間にか離婚していて
親父が失踪した
優しかったバァちゃんは、とうの昔に亡くなっている
ずっと一人きりのあの家
夜の暗闇だけがオレの逃げ場だった
眠ってしまえば何もかも忘れられる
ほんの一週間前には、毎日、夜が来るまでガマンして生きていたんだから
ほんのちょっと前のことなのに
オレもすっかり忘れてた
ダメだな、オレも
オレもみんなに甘えてるよみんながオレの側に居てくれることが、いつの間にか当たり前のことになってすっかり甘えてたメグだけじゃないよオレも自分が情けないよ
うんあの暗闇の孤独を忘れちゃいけない
そこから掬い上げてくれた、ミナホ姉さんへの感謝も忘れちゃいけない
側に居てくれる黒い森のみんなにも
ヨシくんは、全然甘えていないよだって、ヨシくんいつも一生懸命だもの一生懸命、あたしたちのために頑張ってくれているもの
メグがギュッとオレの腕を掴む
身体を寄せて
みんなが、オレに期待してくれるのなら精一杯やらないとみんなの役に立ちたいんだオレ
オレずっと、いない子だったから
いない子
うん両親にとってのオレは、産んで後悔した子だったから
オレが産まれちゃったから両親は、離婚できなかったんだろうし
世間体のために
だからオレバァちゃんが死んじゃった後は、ずっと両親の視界に入らないように、気を遣って生きてきたろ
息を殺して
だから嬉しいんだミナホ姉さんに、指示を出されたりメグやマナのために何かをすることが克子姉の気持ちがよく判るんだよ最近
克子姉さんの
うん克子姉が、オレたちのために美味しい食事を作ってくれるのはそうやって、人と関わることが、嬉しいからなんだと思うんだ自分の作ったパンを食べて、美味しいって顔をしてくれる人を見るのが、とっても幸せなんだと思う
他人との関係自分が他人に影響を与える
その影響が相手にとって、プラスなことになれば
こんなに嬉しいことは無い
オレだってそうだよメグやみすずやマナが時々、寧さんもだよな暗い顔をしていたり、怖がっていたりする時にオレと接してそれで、少しでも心が落ちついてくれたら、とっても嬉しい
克子姉さんと渚姉さんは
あの二人は大人だからオレのことが本当に必要になった時だけ、向こうから来てくれるから
だからそう心配はしていない
本当にどうしようもなく寂しくなった時は、ちゃんとSOSの信号を出してくれるものそれが判っているから
そうね克子姉さんたちは、大人だよね
メグがまた、下を向く
ヨシくん、ごめんね
あたし、とっても子供だったと思う
そしてまたオレを見る
あたし全然、ヨシくんのこと考えてあげれてなかったずっと自分のことばっかりになっていてごめんなさい
な、何言っているんだよ
オレにはメグが何を謝っているのか、全然判らない
あたし、良い奥さんになるって約束したのに
オレはメグの手を握る
ゆっくりなればいいさ毎日、少しずつ成長していこうオレも、そうするから
自分以外の人のことなんて、少しずつしか判らないし気付いていかれないんだよいいや、自分自身のことだって本気で判ろうとしなければ、全然理解できないじゃないか
そういう実感がオレにはある
あの暗い夜の中で毎晩、オレは一人だったのに
自分一人しか、そこにはいなかったのに
自分自身の頃の状態を、少しも理解してはいなかった
オレはもっとメグのことが知りたいみすずや、マナや、寧さんや克子姉、渚のことがマルゴさんやミナホ姉さんそれから、ミッチィのことだって
オレはまだ、みんなのことを全然理解していないって思うんだ
いいや、そうなんだってだって、毎日、新しい発見があるもの一人一人の今までは見えなかった心の中が見えてくるああ、オレは判っていなかったって、何度も反省しているもの
多分人間の心は多面体なんだ
横から見たら四角くても上から見たら丸かったりする
でも矛盾はしていない
一つの人間の心として、確かに存在している
だから様々な角度から見ないといけない
あいつのことは、よく判っているとか全部知っているって思い込んだ瞬間に、落とし穴にハマるような気がするだから判ろうとする努力は、決してやめちゃいけないんだ
そして相手のことを判ろうと思ったら、本気で踏み込んでいかないといけないだろ勇気を持って
オレはまた、胸をドンと叩いて見せる
だからオレは、メグを理解する努力を止めないよ
最初は、オレの前に優しくて、しっかり者のクラス委員長として現れた
でもその心の中に、深い悲しみと諦めを隠していることが判って
なのに、不安定だったマナを厳しく叱咤する厳しいメグもいた
その一方ですぐにオレに依存してくる心の弱い、メグもいる
メグは雪乃と違って、淫乱体質では無い
メグにとってのセックスはオレを独占し、現実から逃避するための心の防衛手段だ
現在はまだ
そういうメグの様々な側面が少しずつ見えてきて
オレは少しずつ、メグを理解していく
でもあたしのことが判っていったらヨシくんは、あたしのこと嫌いになると思うあたし心の汚い女の子だから
オレは、即、否定をする
どんどん好きになっていってるメグのことが、判れば判るほど
だからオレは、何度でもメグに踏み込んでいくよ勇気を持ってメグのこと、本当に理解したいって思っているから
オレとメグの眼が合う
メグの瞳にオレの顔が映っている
うんオレは
さっぱりとした顔をしている
心に迷いは無い
ヨシくん愛してる
メグがそっと呟いた
ありがとうあたし、愛してるって言葉の意味、生まれて初めて判った
あたしもヨシくんのことを判ろうする努力をするわずっと一生、努力する踏み込むわ勇気を持って
メグが、オレの胸に顔を寄せる
愛してる大好きだよ、ヨシくん
校舎の中に入るとメグを見て、ひそひそと話をするやつらが現れる
やっぱりメグが白坂家の親戚だということは、バレている
それでも玄関口では、オレたちに話し掛けてくるような生徒はいなかった
ただ遠くからジロジロと見ているだけだ
それでも人から不躾な視線を投げ掛けられるのは、気持ちの良いことではない
ヨシくん行こう
メグが、オレの手を引く
あたしは大丈夫だから
二人で堂々と廊下を歩いて教室へ向かう
オレたちの教室の前には黒山の人だかりができていた
おっ、あいつだよ
えっ、あれが白坂の娘
違うよ、親戚の方
そうかこの教室に、今テレビで話題になっている白坂創介の娘がいると聞きつけて
学校中から、野次馬が集まってきているんだ
しっかし、すげぇよなオーストラリアで連続少女強姦だろ
日本の恥だよな
それより、ゲイノージン食いまくりの方だろ
何か、某アイドルユニットの全員とヤッたらしいぜ
48人か
いいや、フルメンバーだと確か
正にセックス・モンスターだな
あの誘拐されて殺されちゃったって女の子、可哀想よね
あんなに小さい子だったのについにお母さんに会えなかったんでしょ
酷いことするよね
ていうかさ、昨日の火事は凄かったよな証拠隠滅のために、あそこまでやるか
さすがは白坂グループ
もうさサカモリには、球団のオーナーとかは辞めて欲しいよな一族から犯罪者を出したんだし
辞めるだろあの記者会見、大失態だったじゃないか
っていうかさ白坂家の新聞社とテレビ局ごと、ヤバいんじゃね
あああそこだけ、異様だったもんなずっと白坂創介の擁護ばかりして
何か、テレビ局前で抗議デモやるらしいぞ
そうそう、あそこの局の番組で、白坂創介を擁護するコメントを言ったタレントが全部リストアップされてるぞネットでさ
プライバシーの侵害だってやつだろバッカじゃねえの
うん天下の白坂一族だもんな
オレもネットで見た擁護しているタレントって、だいたい同じ事務所なのな
それも、白坂と繋がっているのかな
バーカ、白坂創介本人が広告代理店の部長だぜ繋がってないわけがないだろ
マスコミと広告代理店の闇は、暴かんといけないわな
ミナホ姉さんの復讐の仕掛けは凄い
時間を分けて、様々な方面から白坂創介の悪行を晒したことが効力を発している
昨日の夕方から、次々に明かされていった白坂創介という人間の裏の顔
ある者はオーストラリアの事件に興味を持ち
ある者は芸能界スキャンダルにのみ、反応している
少女誘拐・殺人事件に強く関心を持っている者もいれば
白坂家という名家に対する反感と批判だけの者もいる
結果として、誰もがこのニュースに関心を持っている
国民レベルとして性犯罪者・白坂創介のイメージが浸透している
すみません、通して下さい
オレは野次馬をかき分け、メグと教室の中に入る
うーん、テレビに出て来た写真の白坂創介とは似ていないな
あったり前だろ、ただの親戚だぜ
でもちょっと、可愛くね
つーか、横にくっついている男は何
まあ彼氏なんじゃねぇの
ああ、野次馬は煩い
お、お早う
オレたちの教室に入った途端クラスメイトたちの視線が集まる
すでに始業時間に近い
ほとんどの生徒が揃っていた
みんなメグの挨拶に返事をしない
ほらメグ
オレはメグを守るようにして、席まで連れて行く
ねえねえ山峰さんさぁ
不良の女子生徒が侮りの視線でメグに話し掛けた
メグは緊張しながら、その娘に振り向く
もしかしてあんたも、白坂創介にヤられちゃったりしてるわけ
教室の外の野次馬たちがワーッと湧く
そんなわけないでしょう
メグが悲しげな顔で、そう答えた
ほら、だってさテレビの報道だと、白坂創介ってのはロリコンの変態野郎なんでしょだったらさ、親戚の山峰さんだって襲われちゃっているんじゃないのかなーって
そうそう山峰さんて処女
調子に乗って、他の不良女子までがメグに酷いことを言う
メグは、オレとやるまでちやんと処女だったよ
不良女子に、キッパリと言ってやる
また、廊下の野次馬が騒ぐ
な、何だそりゃ
あいつらセックスしちゃってんの
不良女子はなおも絡んでくる
そんなの、山峰さんにダマされてんじゃないの処女のふりなんて、簡単にできるんだからウブな男は騙されやすいんだよっ
吉田だって、ドーテイだったわけでしょ
不良女子二人は、ギャハハと笑った
残念だけどオレは、メグで5人目だし
不良たちの笑いが止まる
というか教室全体が、いや廊下の野次馬までがシーンとなった
メグの処女を貰った時は、ちゃんと処女膜だって見たし血も出たよすっげぇ、嬉しかったよ
こうなればはっきりと、言ってやるしかない
メグはオレの女だ白坂創介の親戚だからって、メグ本人には全然関係のないことだろってめぇら、ふざけんなよっ
オレの中で怒りが噴き出す
オレこんなに感情が爆発するような人間だったんだ
メグのことを悪く言うようなやつは、オレが全員ブンなぐってやるからなっ
不良少女は
ビビりながらもオレに言う
へぇあんたたちヤリヤリなんだぁ
そ、そうよね婚約したんだって、セックスしまくれるからじゃないの
そうよやっぱり、淫乱の血筋なんじゃない
オレがその女子をブン殴ろうとした瞬間
メグが、その娘を平手打ちした
見損なわないで
あたしは、この人の赤ちゃんを産むの今すぐは無理だけど、いつかきっとこの人と結婚して、幸せになるのよだから婚約したのよ
メグの言葉には迫力があった
セックスだってするわよあたしは、この人に尽くしたいんだものこの人が悦んでくれることなら、何でもするわあたしの旦那様よ
平手打ちされた不良女子がメグに言う
高校一年で、何が婚約よ旦那様とか言って、バカなんじゃないの
高校一年生だって、自分の人生を決めることはできるわあたしは一生、この人と生きていくそう決めたの誓ったの約束したのあなたには判らないでしょうけれど、あたしたちはちゃんと繋がっているわあたし幸せだからっ
高校一年でプロのスポーツ選手になる人だっているわ自分の人生を選択している人はたくさんいるあたしは、この人と結婚することを選んだのよあたしの心はう、吉田恵美なんだからっ
メグが力一杯、宣言した
お前らがどう思おうと、そんなことはどうだっていい笑いたけりゃ、笑ってろよでも、オレはメグを守る一生、オレの家族を守るそう決めたんだ
シーンと静まり返った教室の中
スッと一人の男子が立ち上がる
少し、親分肌のあるオレのクラスメイト
一つだけ教えて貰えないか
田中が、廊下の外の野次馬たちにも聞こえるような大きな声で言った
白坂創介ってやつの家と山峰さんの家って、どれくらいの親戚なんだ
メグ白坂家と山峰家の関係は
わざとそう尋ねる
白坂創介とメグなら現実は、血の繋がった父娘だが
白坂家と山峰家なら
山峰の家は白坂家の新聞社の創業者の後妻さんが、山峰家から嫁いだのそういう関係よ
白坂家の新聞社は、戦後になってから発展した
そんなに歴史は古くない
創業者の後妻そんだけの関係他に山峰家の人で、白坂家のやつと結婚した人間はいないのかよ
田中が、わざと詳しく聞いてくれた
いないわ今の白坂家の人たちは、みんな前妻さんの子供たちだし山峰家から嫁いだ後妻さんには子供がいなかったし
メグは、答えた
親戚って言ったってそんなに親しくして貰ってはいないのよ就職先のお世話とかはしていただいているけれど山峰の人間は、絶対に白坂家の新聞社には入社させて貰えないし
田中が大きな声で言う
なぁんだそれじゃあ、親戚ったって言葉だけじゃん山峰さんとは、全然関係無いじゃんか
田中の声が教室と廊下に拡がっていく
あのあたし
クラスの中の一人の女子が口を開いた
あたし恵美ちゃんとは、中学が一緒で昔、恵美ちゃんの家に遊びに行ったことがあるんだけど
その子がうつむいて喋る
恵美ちゃんの家はごめんねとってもボロっちかったよ昨夜のテレビで映っていた白坂さんの家とは、全然比較にならないくらい貧乏そうだった
その貧乏そうという表現が教室内の空気を溶かしていく
そうなんだよ、山峰さんの家は貧乏なんだよっだから吉田と早く結婚して、二人で稼いで幸せな家庭を築きたいんだよそんで吉田と婚約したんだよ貧乏が辛かった子の発想なんだから、仕方ないじゃないかっ
田中が無茶苦茶、勝手なことを言ってくれる
しかしその発言に、みんなは納得してしまったらしい
そっか山峰さん、そうだったんだ
そういえば吉田もバイトしているし
というか、吉田くんもすっごい貧乏そうだもんね
貧乏な子どうしで付き合うと結婚したくなるのは当然か
でも、避妊はちゃんとするんだよ貧乏で子だくさんてのが、一番よくないパターンなんだから
吉田くんも、しっかり頑張ってね
すっかり、オレとメグに貧乏というイメージがくっついてしまっているけれど
そう言えば山峰さん、白坂さんとは親戚だけど一度も、白坂さんの家にご飯に呼ばれたことは無いって言ってたよね
メグが答える
確かに雪乃の家で、飯は食ってないよな
セックスならしたけれど
とにかくテレビでやっている白坂創介の件は、山峰さんとは関係無いみんな、そういうことでいいなっ
田中がそう、まとめてくれた
ごめんね山峰さん
そうだよね山峰さんが、あんな悪い一族と関係あるわけないよね
あたし部活の人たちにも、ちゃんと説明しておくから
うん山峰ちゃんがどんな人かは、あたしたちが一番良く知っているし
こうなると普段、みんなに親切で優しかったメグは
あっさりと、女子生徒たちに受け入れられる
不良の女子はまだ、機嫌の悪い顔をしているけれど
他の女子たちに受け入れられたメグに、一々突っかかってくるほどバカではないだろう
ちょっと、安心する
そうだよ山峰さんは、白坂さんとは違うもんね
その女子の言葉にオレはハッとする
親戚のメグでさえこれだけの注目を浴びるのだ
白坂創介の実の娘である雪乃は
雪乃が、ここに来たらどうなるんだ
そう言えば白坂さん、まだ来てないね
来られるわけがないわよお父さんが犯罪者だよ
そうだよねぇ普通なら、休むよねぇ
おい、来たぞ
廊下から、そんな声が響く
え、あいつか
何か、地味じゃね
野次馬たちの声
雪乃が地味
もうすぐ始業のベルが鳴るわ自分の教室に戻りなさい
ミナホ姉さんの声
ほら通して
野次馬たちの間を抜けてミナホ姉さんが姿を現す
その背後に雪乃の姿があった
今日は、遅刻ギリなので
何も書けません
200.遠藤くんの欠席裁判
ミナホ姉さんの背後から現れた雪乃は
雪乃が昨日まで着ていた制服は、オレがビリビリに引き裂いてしまったから
今着ているのは、雪乃の部屋からマナが持ち出した予備の制服だ
雪乃はその制服を、普通に着ていた
いや普通っていうのとは、違うよな
うちの高校の女生徒たちは一部の超真面目組の女の子たちを除いて
ちょっと、制服の着方を工夫している
スカートを腰のところで巻き込んで、短くしてみたり
ブラウスのボタンを一つ開けてみたり
いわゆる日本の女子高生っていう感じで、着こなしている
雪乃もそうだった
昨日までは
おいおい、どういうことだよこれ
教室の中がざわざわする
今の雪乃は超真面目組の女の子と同じで
完璧に校則通りに、制服を着ている
生徒手帳に載っているイラストのまんま
正しい長さのスカートが野暮ったい
ブラウスも一番上のボタンまで、きっちりと留めている
髪の毛は真ん中でぴっちりと分けて、三つ編み
リボンとかは無し髪留めの黒ゴムのみ
額のセンターから頭にかけてペタッと2分された髪の分け目が白いラインを形成している
そしてオッサン風のダサい銀縁のメガネ
雪乃お前、視力は悪くないだろ
雪乃は、徹底的に地味な女の子にドレス・ダウンされていた
ここまでやると顔立ちの良い美少女の雪乃も、貧相で不細工な少女に見える
何だ、あんな女なのかよ
ぶっさいくだな
廊下の外からは普段の雪乃を知らない野次馬から、そんな発言が飛び出す
違うよ、バーカ
はい確か、もっと見栄えの良い子だっはずっス
雪乃を見掛けたことのある隣のクラスの一年生が、先輩らしい男子生徒に言った
あどういうことだよ
わざとあんな格好して来ているんですよ
そりゃ真面目っ子のフリでもしなきゃ、やってらんないでしょ
だから、どうしてだよ
だって、家の周りとかマスコミの連中に取り囲まれているんですよカメラに映った時に、ちょっとでも心証を良くしようっていうんでしょう
そいつの説明に野次馬たちは、みんな納得する
うわぁサイテイだよね
普段は、もっと遊んでる子なんでしょ
そりゃお父さんが、広告代理店だもん
どうせクラブとか入り浸って、チャラチャラしているんでしょ
モデル男の子とかと、ヤリまくっているんじゃないの
白坂創介の娘だもんね
あの子のお父さんて、ゲイノージンの女の子とか集めて乱交パーティやってたんでしょ
絶対にあの子も、参加しているよね
うんうん間違いなく売りやってるよ
ああ確かに、そういう顔してるよ
それが今日は、わざわざ、あんな格好してきてさ
偽装ってやつ
馬鹿なんだよあんな格好をしていたら、オレたちの同情が引けるって思ったんだろ
どうして白坂創介の娘なんかに同情するのよ
それはさあたしは、パパが悪いことをしているなんて、全然知りませんでしたエーンって、泣いて誤魔化す計画だったんだろ
そんなんで騙されないよな
当ったり前だよなふざけんじゃねぇってんだよ
廊下の野次馬たちはどんどん勝手にヒートアップしていく
そうだ写真撮っとこうぜ
おおっオレ、ネットにアップする
何人かの男子生徒が、携帯電話を取りだして勝手に雪乃の写真を撮り始める
あオレも
そうだよな犯罪者の娘の写真なんて、なかなか撮れないもんな
今、日本で一番有名な犯罪者だもんな白坂創介って
携帯電話の機械的なシャッター音が幾つも響く
ずっと、教卓のミナホ姉さんの横に立たされたままだ
廊下から聞こえる罵声とシャッター音に晒されながらジッと耐えている
そろそろ時間ね
ミナホ姉さんが教室の時計を見上げた
とそこで
ホーム・ルームの開始を告げる、チャイムが鳴る
キンコーンキンコーン
はいみなさん、自分のクラスに帰りなさい
ミナホ姉さんが野次馬たちに言う
でもさ、先生
少し興奮気味の上級生が、ミナホ姉さんにそう言うが
ミナホ姉さんは冷たい視線で、そいつを睨む
わ判りました
ほら、行こうぜ
そうだなとりあえず、学校に来ているのは見たし
また後で来ようぜ
うん写真も撮ったし
オレ、また後で撮りに来るよリアル・タイムでネットにアップしてったら、きっと祭りになるぜ
あ、いいなそれ
そんな勝手なことを言いながら
廊下に居た野次馬どもが解散していく
はいみなさん、お早う
ミナホ姉さんはいつもの無表情で、素っ気なく朝の挨拶をした
雪乃は暗い顔のまま、まだミナホ姉さんの脇に立っている
自分の席には着かない
クラスの連中は、すっかり困惑している
まだ入学式から一ヶ月しか経っていないとはいえ
雪乃は、クラスメイトだ
ずっと毎日、顔を合わせてきた同級生だ
そんな雪乃が真面目少女にイメチェンして現れたのだ
誰だって戸惑う
というか何これという空気が
最初に、白坂さんからみなさんにお話があるそうよ
ミナホ姉さんの言葉に、雪乃がペコリと頭を下げる
あたしの父が、世間をお騒がせしてごめんなさい
あ言わされている
自分の心からの言葉では無い
そういうことが、その一言から伝わってきた
その瞬間クラスの人間が、雪乃に感じていた違和感が
一気に反感に変わる
はい、じゃあ白坂さんも席に着いて
自分の席に向かう雪乃
冷たい視線が、雪乃を襲う
出席を取るわよ
名簿を見ながら、出欠の確認をするミナホ姉さん
すぐに遠藤のところで、止まる
あら、遠藤くんはお休み
席は空いている
先生遠藤くんのカバンはあります
隣の席の女生徒が、そう報告した
あの野球部の朝練には、来てたんですけれど遠藤は、追放になりまして
野球部員の生徒が、朝の顛末を説明する
それで多分頭に来て、どっかへ行っちゃったんじゃないかと
この野球部員は、遠藤が二人の先輩部員に連れ去られて行ったところまでしか知らない
その後遠藤が、その不良野球部員たちにボコボコにされたことや、岩倉会長が倒れていた遠藤を体育館内に運んだことはオレとミナホ姉さんしか知らない
そういえば遠藤くんの家も大変みたいね昨日は、白坂さんのお父さんのニュースで大騒ぎだったけれどちっちゃく報道されていたわ
ミナホ姉さんが、皮肉たっぷりにそう言った
オレ、知らないぜ
教室の中で、小声でそんな声が飛び交う
ああ、白坂創介の件ばかり大きく報道されていたから
知らない生徒も多いんだ
遠藤くんの叔父さんの市会議員さん収賄容疑で逮捕されるみたいなの
ミナホ姉さんが、平然とそう言い切った
シューワイ
何スか、それ
そんなことを言う、男子生徒にミナホ姉さんは
賄賂を貰って、便宜を図った簡単に言うと、裏金をくれた人の都合が良いように市に圧力を掛けたってことよそれで、遠藤くんのお父さんも贈賄側裏でお金を渡していた人たちの一人だったらしいわ
あ、遠藤の親父の会社、そう言えば、市からいっぱい仕事を貰ってたんじゃね
え叔父さんにお金を渡して、仕事を廻して貰ってたってこと
そういうことだろ
そういうのって、バレたらどうなるの
ミナホ姉さんが答える
普通は警察に逮捕される前に、自分から議員を辞職するけどね議会に居座った場合は、他の議員さんたちから徹底的に責められるわ所属している政党からは追い出されるみたいねま、政治家としては再起不能ね
え、遠藤の得意技のオレの叔父さんガーっての、もうダメってこと
そういうことよ肩書きだけの議員じゃ、誰も相手にしてくれないでしょ政党の公認が貰えなくなれば、次の選挙は厳しいでしょうし
遠藤の親父の会社も市からの仕事がなくなったら厳しいんじゃねぇの
そうね倒産しちゃうかもね
ミナホ姉さんが、うふふと笑う
先生、笑い事じゃありませんっ
ミナホ姉さんとよく対立する、真面目な女子がそう言った
あら、笑い事よ昨日、遠藤くんがあたしに何て言ったのか、みんな覚えていないの
遠藤は、みんなの前でもミナホ姉さんに対してオレの叔父さん、市会議員だぞをやったんだった
またった一日で、凄い変化よねフランス革命とかって、こんな感じだっのかしらねえ、白坂さん
そうだミナホ姉さんは昨日、遠藤の話に絡めて、クラスの連中に雪乃の家のことをバラした
白坂家が大手新聞社のオーナー一族であるということを
昨日、わざと話題にして持ち上げるだけ、持ち上げておいたから
オレのクラスの人間は他の連中よりも、さらに興味を持って白坂創介についてのニュースに食い付いていただろう
雪乃の居場所は、ここにはもう無い
ところでさ遠藤が野球部の朝練から追放って何なんだよ
一人の男子生徒が、野球部員に尋ねる
あ、そっか知らないやつもいるのか
昨日、身体測定が終わって、速攻で帰ったやつらは練習試合のことを知らない
昨日さ他の学校の野球部との練習試合があったんだよ
ああ、そんなこと遠藤が言ってたな
そんで遠藤のやつ、その試合の最中にも叔父さんに言いつけてやるゥをやっちまったんだよ他の学校の人間と校長の見ている前で
あいつって、クルクルパーなんじゃねえの
それもさ叔父さんの力で、野球部の監督のクビを切るって言い出してさ
いやあいつが全然ダメなんで、監督に選手交代するって言われたら突然、キレた
うんあたしも見てたわ何で、オレが交代しなくちゃいけねえんだぁとか叫びだして監督もコーチも、クビにしてやるぅって喚いていたわ
そんで試合中なのに、勝手に帰っちゃったんだよ
それは酷い
つーか、あいつどこの国の独裁者様なんだ
ていうか頭が悪いにも程があるだろ
あいつの脳内では、市会議員の叔父さんは偉大なる指導者様だから
でも普通は判るだろ市会議員に、私立高校の野球部の監督のクビを切る権限は無いってことぐらい
そこは、ほら遠藤だから
底抜けのバカなんだな
そしてその市会議員の叔父さんが、失脚してしまったと
親父の金も、もうアテにできない
あ遠藤
うん詰んだな
今は誰も座っていない、遠藤の座席
まあいいわ誰か、遠藤くんを見掛けたら、職員室まで来るように言って
ミナホ姉さんが笑顔でそう言った
校長先生が、お呼びなの遠藤くん、無期停学は確実ね
え、どうしてです先生
バーカ、他の学校の野球部が来ている前で、それをやったんだぞ学校の恥だろ
校長も見ている前だったしね
ていうか遠藤、うちの学校辞めるらしいよ
野球部員が、みんなに言う
え、嘘
さっき、朝練で野球部の安宅キャプテンにお前は、野球部除籍だって言われたらキレちゃってさ転校して、他の高校の野球部に入って、オレたちを後悔させてくれるらしいよ
そういうことって可能なわけ
まあ素粒子レベルでは可能性もあるってやつなんじゃね
うん他の高校でトラブル起こしたやつをこんな中途半端な時期に入部させてくれる学校があるとは思えないよな
白けた空気が教室内を漂う
あいつどうなるんだろ
死ねばいいんじゃないかな
いや、あいつには地獄さえも生温いかも
うん多分、地獄の鬼にも言うんだろうなオレの叔父さん、市会議員だぞって
鬼が可哀想になってくるな
バカには勝てねえからな
と、一人の男子生徒が、オレに振り向く
そういやさ野球部の試合の途中で、金網の向こうで吉田たちヒーロー・ショーやってなかったか
ヒーロー・ショー
あ、見た見た何か小柄な女の子が、鎖ガマ振り回してたり格好いいお姉さんが、チンピラと格闘したりしていなかったっけ
ミッチィとマルゴさんか
いや、鋼球は振り回してたけれどカマは無かったぞカマは
あれ何だったんだよ吉田と山峰ちゃんも居たろ
何て説明したらいいんだろ
ああ近くの大学の映画研究会の人たちが、自主映画を撮っていたのよ
ミナホ姉さんが、ケロッとした顔でそう言った
自主映画ですか
アクション・ヒーローものらしいわ大学の学園祭で上映するらしいわ一応、うちの学校に撮影許可の申請が来てたわよ
うんすらすらと嘘を吐く
へえそれにしちゃあ、凄い迫力だったよな
そうかあの鉄球攻撃は無いだろ
でも、あの子ちょっと可愛くなかったか
可愛い子が、ああいうエゲツない戦い方をするのが萌えるんだろう
そうか大学生レベルの自主映画ならアリかもな
さすが工藤流
あんまりにも、マンガじみた攻撃だから遠目では、マジな戦闘には見えないんだ
最初に話してきたやつからしてヒーロー・ショーって言ってたもんな
そういう印象しか残らないようにしているんだ
工藤父のやっていることは意外と奥が深い
っていうか吉田
野球部員のやつがオレをしげしげと見る
オレの見間違いだと思うんだけどお前、先週、あそこに居たもう一人の美人の女の子と
そうだ野球部員は
先週のオレとみすずのキスを目撃しているッ
あら、何の話
メグがそいつに話し掛ける
いや山峰ちゃん実はあの
話した方がいいのか、悪いのか
野球部員は、しどろもどろになる
ヨシくんとあたし婚約してるの知っているよね
あたしは、何も気にしないし全然平気よ
メグはそう言って、野球部員にニコッと微笑むが
その眼は怖い
確実にプレッシャーを掛けている
いや、あの山峰ちゃん何でもないです
野球部員は黙り込んだ
あたしとヨシくんがあそこに居たら大学生の人たちが来て、映画を撮るから、ちょっとだけ出演してくれって言われたのそれだけよあの二人の女の子も、やっぱり大学生の人にスカウトされて来た他の学校の子よあたし、すっかり仲良くなったの
メグもつらつらと嘘を吐く
どうにか、心の重荷から脱することのできたメグは強くなった
黒い森の一員として、ミナホ姉さんの吐いた嘘を側面から補強していく
ああ、そういうことだったのね
試合を観に来ていた女生徒が、あっさりと納得した
でも白坂さんも、あの場にいなかったっけ
そうよ白坂さんも大学生の人に声を掛けられたからみんなで、あそこでご飯を食べていたら、そこに悪い人たちが襲ってきてそれをアクション・ヒロインの二人が退治するっていうストーリーだから
すごいぞ、メグ
よくもまあこの場で、そんな嘘が思い付くもんだ
でもみんなで車に乗っていかなかった白坂さんまで、一緒乗ってたみたいだけれど
うわこの子、よく見ていたな
そうよそこまでが映画のストーリーなんだものあのあと、大学生の人の車で街まで行って、ハンバーガーをご馳走になったわ出演料代わりにそうだったわよね、ヨシくん
オレは頷くしかない
一食浮いて、助かったよね
あ、メグ
さっき出た貧乏設定を、使っていくつもりなんだな
オレたちが、クラスメイトに受け入れられるためには
オレとメグは貧乏と思って貰う方が、良いって判断したんだろう
うん助かった一番大きいハンバーガーをご馳走して貰ったしオレ、あんなの食べたのは初めてだよ
っていうかオレは、ハンバーガー屋ってほとんど行ったことが無いから
とにかく、適当なことを言ってみる
へえそうだったんだ
よしよし何とか、誤魔化せたみたいだな
じゃあ遠藤くんが来たら、よろしくねそれと白坂さんのこと、みなさん頼むわねお父様のことで色々と大変みたいだから
ミナホ姉さんが、話をまとめた
じゃあホーム・ルームは、これで終わりよ今日も一日、楽しくお勉強してね
ミナホ姉さんは冷たく微笑んで、教室から出て行く
教室内には、生徒だけが残った
いつもなら、一気にざわつく教室なのに
変な沈黙が続いた
みんな雪乃に注目している
ああのさ、美子ユカリもさ
雪乃が普段、仲の良い女生徒に声を掛ける
二人とも雪乃には、振り向かなかった
ねぇ、遠藤くんは学校辞めちゃうみたいだけど白坂さんはどうするの
オレとメグにも絡んできた不良女子が
今度は雪乃に矛先を向ける
やっぱり辞めちゃう遠藤くんと同じ高校へ行くのあんたたち、付き合っているんだもんね
あんな人、知らないわもう、どうでもいいわよっ
ふーん、それって遠藤くんの叔父さんが事件を起こしたから
違うわよあたし、あの人があんな人間だなんて全然判っていなかったから
雪乃はあくまでも、自分主体で思考している
自分が全ての物事の選択権を持っているものとして
そういう言葉使いが不良女生徒に揚げ足を取られることになる
あら遠藤くんだって、そう思っているんじゃないまさか、雪乃さんのお父さんが、あんな性犯罪者だなんて思わなかったでしょうから
雪乃に火が付く
あたしのパパは、性犯罪者なんかじゃないわよっ
あれぇ違うのあたし、ネットで見たわよあなたのお父さんが、昔のアイドルをレイプしている動画
ニュースだけじゃない
ネット上には、際どい動画を幾つも流出させている
あんなのパパじゃないわよっ似ている人の映像を、無理矢理パパだって言って流しているだけでしょ
そうなんだぁでも、おっかしぃなあ途中で、アイドルがや、やめて下さい、白坂さんって叫んでいるんだけど
13分42秒のとこからだろオレも見た
別の不良男子も参戦してくる
やめてぇぇ、白坂さぁぁん中で出さないでぇぇって続くのよね
でも、白坂の親父は中出ししちゃうんだよ
あれってさ10年くらい前には結構、人気があったアイドルだよね
うちの兄貴が昔ファンだったからさちょっと、へこんでた
完全に本人だったよな
その子じゃなくてさ5人組のユニットのセンターだった子をレイプしている動画があったろあれって、あの子あの時は、まだ十四歳くらいだろ
あ、見た見た歌の衣装を着たまんま、控え室みたいなところでレイプされちゃうやつだろ
あの衣装絶対にそうだよね
うん間違いないオレ、子供の頃大ファンだったから
ガックリきたか
いやすっげぇ、興奮した
さ、さすが男子高校生たち
流出エロ動画には、みんな食い付いたんだ
マジな話さネットでは、検証サイトがもう幾つも立ち上がっているんだよでさ、流出動画の撮られた場所がどこのホテルなのかとか、どこのスタジオの控え室なのかとかほとんどバレてるんだよね
そうそうみんなすっげぇ調査力だよな
でさ画像の中の襲っている方のオッサンもホクロの位置なんかでさ、お前の親父だってのは判っているんだよ
うんあれでそっくりさんて言うのは、ちょっと無理があるよな
ていうかお前の親父のチンコって、ちょっと特徴的なんだよな
あ少し右に曲がっているんだよな
とにかく紫っぽい黒亀頭だよな
不良たちが、寄ってたかって雪乃を責める
自分の父親のペニスをクラスの中で批評されるというのは十六歳の少女としては、たまらなくキツイだろう
アイドルとかゲーノージンのビデオは、別にどうでもいいわよ
不良女子が大きな声で言った
あの誘拐された女の子は可哀想だったわよ
誘拐されて、殺されちゃったんだっけ
あんたの家の別荘から、遺体が出て来たんでしょ
奈生実さん
ミナホ姉さんの妹
あんなの酷すぎるわよ
そうよ可哀想よ
絶対に許せないわ
ゲーノージンの流出動画については不良生徒しか会話に参加してこなかったけれど
奈生実さんのことには真面目な女生徒たちからも、抗議の声が上がる
違うわあれは、パパじゃない
元アイドルの方の動画との比較で同一人物だって、バレてるんだよ
不良男子が、冷たくそう言った
お前の親父広告代理店の部長で、テレビのビジネス番組に出たことがあるだろそん時の映像と全部比較してチェックされているんだよ
うん白坂の親父だよアレはさ
ミナホ姉さんがネットに撒いた素材を元に
ネット界の住人たちが、徹底的に調査しているんだ
雪乃がどれだけ否定しても
白坂創介がレイプの常習者で、誘拐犯で、人殺しだということは、もう覆せない
お前の親父は最低のクソ野郎だよ
日本の恥よ
悪魔だわあんなことして
今はマスコミよりも、ネットの方の追求の方が怖いですよね
昔ある女の子に、聞いた話
あたし二回連続で、みゆきって名前の女に彼氏を獲られているんです
だから今の彼氏には、みゆきって名前の知り合いができたら教えてねって言ってあります
みゆきが現れたらそろそろ終わりってことですから
そんなこと
私に言われても
別の女の子の話
今日は、ワインを買って来たんですこれを持って、彼氏の家に行くんです
これを飲み終わったら彼と別れるつもりなんですだから、ちょっと高いのを勝っちゃいました
飲んでいる間は楽しくお喋りして飲み終わったら、別れ話を切り出します
いやだから
何で、私にそういう話をするの
どちらも別に私に気があるとかそういう子ではありません
それっきり会ってないし
ううむ
201.イジメカッコ悪い
違うわッ違うわッ違うのよッみんな、あの人に騙されているのよッッ
ついに堪えきれなくなった雪乃が、切れる
こんなの全部、嘘なのよあの人が仕組んだのよッ
あの人
それは弓槻御名穂
みんなみんな、騙されているんだからッ
泣きながら喚き散らす、雪乃
白坂、現実はちゃんと見ないとな
そうよ日本中の人を騙すことなんてできるわけないじゃない
お前んとこのテレビ局以外じゃ全部、ありのままを報道しているんだし
ネットの情報だって筋の通らないことは一つもないぜ
クラスメイトたちからの冷たい視線に雪乃は
違うのよあの人があの人が
お前さよく考えて見ろよ
最初は、オーストラリアの警察にお前の親父が逮捕されたんだろ
うん海外の話だ
次は芸能界でのスキャンダルが発覚してさ
ああ昔のアイドルの流出ビデオだ
それからお前の親父の隠れ家だっていう家が、突然、炎上してさ
すっごい、大火事だったよね
そんで最後は、12年前の少女誘拐殺人事件だ
レイプも付けとけ流出映像は出ているんだから
それであんたのとこの別荘から遺体発見だよ
これが夕方3時から、真夜中過ぎまで、一気に流れた
こんなのさ誰か一人で仕組めるようなことのわけがないだろ
うん普通は、そう考えるよな
そうよね少なくても、最初のオーストラリアの事件は無理よね
あれは、もうたまたま、悪さがバレて捕まったんだろうな
そりゃそうよ誰かが仕組んで、オーストラリアの警察を動かすことなんてできるわけないじゃない
よその国だもんな
それをやったんだ
これがミナホ姉さんが、12年掛けて仕組んだ復讐
もはや白坂創介が極悪人だというイメージは、崩せない
まあ、偶然でも何でも白坂創介が、オーストラリアで逮捕されたろその事件を、新聞社の白坂守次が揉み消そうとして、反感を買ったんじゃないかって言われてるぜ
うん朝のワイドショーでも、そう言ってた
白坂家の新聞社支配に抵抗している社員が、内部告発したって話もあるぜ
いや芸能関係の方だろ広告代理店の人間だからって、散々悪さをしてきたって話しだし
自分のところのアイドルをレイプされて泣き寝入りしていた、芸能事務所の人間とかが、この機会に動画を流出させたんだろうって、ネットでは考察していたよ
あとさ白坂創介に誘拐とかレイプとか殺人とかの手伝いをさせられていた暴力団員が、良心の呵責に耐えかねたっていう話もあるし
うんどう考えても、何人もの人間が絡んでいるよな
オーストラリアでの逮捕をきっかけに、白坂創介に反感を持っていた人間が一斉に立ち上がったんだよ、やっぱり
ああ少なくても、30人ぐらいの人間が動いているだろうってネットの検証サイトで誰かが書き込んでいた
とにかくさ白坂守次が、オーストラリアの事件を揉み消そうとしたのは本当なんだよ
絶対おかしいもんな突然、隠れ家が炎上とかさ
白坂創介が、ロリコンのド変態で昔から、女の子を誘拐して来てレイプしているって話は有名だったらしいもんな
チャンスがあったら告発してやろうって思っていた人間がいっぱいいたってことだよな
つーか白坂家そのものが、日本の恥部で嫌われ者だったんだよ
違うわっ全然、違うわよ
雪乃にとって白坂家のステイタスは、自分のアイデンティティの根幹だ
それを否定されることは
自分自身を否定されることと同じだ
こんなのデタラメよみんなデタラメなのよ
雪乃が、涙を零しながら叫ぶ
全部、あの人が仕組んだのよあの人の命令で、こんなことになったのよッッ
不良男子が、そんな雪乃をせせら笑う
んな、わけないでしょう
つーかさ誰がそんなことをしたって言うんだよ
オーストラリアの警察を動かしてマスコミも動かしてネットの中の言動を誘導して
別荘に、行方不明の女の子の遺体を埋めていたやつがどっかに居るってのか
そうよそうなのよッ
クラス中から失笑が起こる
誰なんだよそいつ
そんな人間がいたら、それこそ神じゃないか
おい、白坂そこまで言うんなら、教えてくれよ
そうだよそんな人間がこの世に居るんなら、教えて欲しいってんだよッ
不良たちが雪乃を睨み付ける
雪乃がその先を喋ろうとした瞬間
ひぃぃぃッ
雪乃の身体が背中からビクンッと跳ねる
ぎゃわわわわァッぎゃあああッッ
背中を押さえて反り返って喚く、雪乃
ぐぅあああああわッ
オレには判る
この反応はミッチィの電撃警棒で、何度か見た
これはスタンガンによる電撃だ
雪乃は遠隔操作のスタンガンを背中に貼り付けられている
あぎゃっあぎゃぎゃぎゃぎゃッ
ミナホ姉さんか、克子姉か判らないが
雪乃が、ミナホ姉さんやオレのことを口走ろうとするとその瞬間に、背中に強烈な電撃が奔るようにしてあるんだ
だから雪乃は
ミナホ姉さんに、地味なスタイルを強いられても文句を言わずに従った
ミナホ姉さんの前では大人しくしていた
みんなの前で、父のことについて謝罪させられた
いやわざと、ダサダサな着方で、校則通りに制服を着て来たのも
身体のラインをはっきり出さないようにして、背中に貼り付けられた電撃のユニットを隠しているんだ
雪乃大丈夫
メグが急いで、雪乃に駆け寄り抱き起こす
雪乃が心配だからじゃない
他の子に、電撃の装置の存在を悟られないようにメグは、さっと雪乃を他の生徒から隔離する
おいどうしちゃったんだよ、そいつ
不良生徒が驚いて、メグに尋ねる
雪乃は、子供の時からこうなのよ自分の思い通りにならないことが起きると、頭の中でパニックを起こしてひっくり返っちゃうの
メグはまた、さらっと嘘を吐いた
あ、聞いたことあるそういう性質の子なんだ、白坂さん
はあ現実に負けると、パニックかよ
メグの嘘はあっさりと受け入れられる
大丈夫なの
しばらく放っておけば直るわいつものことだから、気にしないで
メグは、そう言い放った
あたしの家は白坂の家に奴隷みたいに扱われていたからあたしは、昔から雪乃の面倒を見る係にさせられていたの
前半分が本当で後半は、嘘だ
しかし、半分でも真実の実感がこもっているからクラスのみんなは、メグの言葉を信じてしまう
そうよね入学式からずっと、山峰ちゃんは白坂さんのこと気遣っていたもんね
その女生徒の発言がメグの言葉を補強する
しょうがないよな白坂の家は、大金持ちで山峰の家はド貧乏なんだから
もう貧乏という設定は、覆せないものになってしまってるらしい
まあ、いいけど
本当に保健室に行くほどのことじゃないから、みんな安心していつものことだからそうよね、雪乃
メグは雪乃の背中を擦ってやる
いや背中の制服の下の電撃ユニットに触れている
下手なことをすればさっき以上の電撃が、雪乃の身体を襲うことになる
そう雪乃に示すために
メグも黒い森の一員だ
そ、そうよもう、平気よ
雪乃がメグの手を振り払うようにして、身体を起こす
しかしその眼は、怯えている
その身体は震えていた
何だよパニックになるぐらい、ヤバヤバなんじゃねぇか
ホントは、自分でも判っているんでしょあんたのパパは、リアル犯罪者なのよ
自分の思い通りにならないと、キレちゃうってどれだけお子様なんだよ
どうしょうもねぇな
不良生徒たちがバカにしたような口調で、雪乃をなじった
ホントあんたには、がっかりだよ白坂さん
雪乃は唇を噛みしめて、堪えている
おい、何を騒いでいるんだもう、授業だぞ
ガラガラと教室のドアを開けて一時間目の数学の中年教師が入って来た
同時にチャイムが鳴る
さっさと席に着け
すっかりエキサイトしていた教室内の温度がサーッと冷めていく
はい教科書開け34ページ右上の問題からだ
そして授業が、いつも通りに始まった
どうにか、一時間目の授業が終わった
雪乃はぐったりとしていた
授業の間中、雪乃はずっと不良生徒たちから嫌がらせをされていた
消しゴムのクズを投げ付けられたり
後ろから、ガンガン椅子を蹴られたり
小学生か、お前ら
オレはちょっと心配になるが
休み時間になった途端メグがオレの席にやって来る
そしてオレの手をギュッと握りしめる
決して、雪乃には近寄らせないという表情でオレを見ている
おっ、いたいたあいつだよ
あれが、白坂創介の娘かよ
また他のクラスや上の学年の生徒たちが、雪乃を見にやって来る
動物園のパンダの様に物珍しそうに、眺めている
廊下にたくさん人が居て、迷惑なのよねぇ
不良女子が、雪乃に嫌味を言う
白坂さん廊下のみなさんに、ご挨拶するべきなんじゃないの
つーかさ、インタヴューとかしてやれよ
そうそう、質疑応答の時間だよな
お父さんがロリコンで変質者だって判って今、どんな気持ち
えー、白坂は前から知ってたんだろ
つーか、白坂もヤられてんじゃないの親父にさ
パパやめてぇぇぇあたしたち、親娘なのよぉぉ
いいじゃないか、いいじゃないか、いいじゃないか
ギャハハハと、下品に笑う不良たち
普通の生徒たちは、不快な顔でそんな様子を見ているが
誰も文句は言わない
みんな、雪乃を憎々しく思っている
屈辱の10分間を耐え抜き次の授業へ
2時間目は化学だった
化学の教師は、定年間近の少し耳の遠い老教師だったから
さっきよりもさらに明からさまに雪乃へのイジメが続く
そして、授業開始から15分が経過
突然教室のドアが開く
ミナホ姉さんがやって来た
どうしました、弓槻先生
化学の老教師に、ミナホ姉さんは
校長先生が白坂雪乃さんにお話があるそうなの
不良たちがキターッという顔をする
おいおい、白坂、退学になるんじゃね
まあ学校の汚点だしな
バイバーイ、雪乃さーん
どういうご用件かは判らないけれどとにかく、お呼びだから付いてきて
それからメグを見る
それと山峰さんにも来て貰うわ
だって、山峰さんは白坂さんの親戚なんでしょ
そんなミナホ姉さんの言葉にメグの友人たちが怒る
先生山峰さんは、白坂さんの家とは関係ありませんっ
そうです、親戚って言っても恵美ちゃんの家は、白坂さんの家とは全然親しくは無いんですからっ
不良男子も、調子に乗る
そうだ、そうだ山峰ちゃんの家は、貧乏なんだぞ
貧乏ナメんなよ
ミナホ姉さんはいつもの冷たい眼のまま、平然と言った
あたしは校長先生に言われて呼びに来ただけだからそういうことは、山峰さんが校長先生に直接言ってちょうだい
その言葉に、メグの友達たちは
そんなの酷いです
恵美は何も悪くないんですからっ
行くことないよ、山峰さん
メグには抗議してくれる友人が居る
雪乃にはそんな人は一人も居ない
大丈夫よあたし、校長先生にちゃんと説明するから
メグは、友人たちに微笑んで席を立つ
先生、オレもメグに付いていきますいいですね
オレも立ち上がる
オレはメグの山峰恵美の婚約者ですオレもメグと一緒に、校長先生に説明します
ミナホ姉さんは、ニッと微笑み
そうねそれなら、あなたにも来て貰おうかしら
これでいいんだよねミナホ姉さん
さあ、行きましょう雪乃
メグが雪乃の席に向かう
雪乃は立ち上がろうとしない
ここで教室から連れ去られることに不安と恐怖を感じているらしい
早く立ちなさい校長先生がお待ちになっているわ
ミナホ姉さんは、冷たい笑顔で雪乃にプレッシャーを掛ける
雪乃ここに残っていても、ネチネチ、みんなにイジメられるだけよ
メグがそっと雪乃に囁いた
すっと雪乃の背中に手を当てる
あたしたちと一緒、行こう
電撃ユニットを上からトンと指で叩いた
わ判ったわ
雪乃も席から立ち上がる
ミナホ姉さんがクラスのやつらに尋ねる
そう言えば遠藤くん、戻って来た
みんなクビを横に振る
どこへ行っちゃったのかしらね遠藤くんも校長先生に呼ばれているんだけれど
ニヤッと微笑むミナホ姉さん
多分遠藤の行方は、ミナホ姉さんしか知らないと思う
こんなに、あたしを苦しめてこれだけすれば、もう満足でしょ
廊下を歩きながら雪乃が、ミナホ姉さんに言った
いいえ満足には、ほど遠いわね
この上まだあたしに何かさせるつもり
さあどうしましょうかね
ミナホ姉さんは、素っ気なく答えた
校長室に戻ると
マルゴさんとミッチィが居た
ミッチィは赤くて太いムチを持っていた
そのムチなら鋼球と同じ感覚で使えると思うんだよ工藤さんなら
ミッチィが、赤いムチを軽く振る
それでも、ムチの先端はシュッと、鋭く空気を裂いた
特殊な強化ゴムでできているからね、それ熟練者が本気で使えば、先端のスピードは音速を超えるよ
マ、マジかよ
そんなムチでブッ叩かれたら肌は裂ける骨だって、折れるかも
鋼球よりは、攻撃範囲が狭まるけれど鋼球だと、一撃を放った後に二撃目の攻撃に移るまでの時間が掛かりすぎるよねムチなら、そんなことは無いから半径2.5メートルの範囲なら、どこでもすぐに攻撃できるその空間を、君の絶対制圧圏にするんだ
ミッチィが、ムチを打ち込むッ
右に左に
シュバッ、シュバッとムチの先端が床を叩く
校長室の有の絨毯から、もわっ、もわっとホコリが飛び散る
これなら、いける
手応えに自信があるらしい
ミッチィがフッと微笑む
ムチの弱点は、知っているね絶対に奪われないこと相手にムチを掴まれないように、先端は常に動かしているか相手の手の届かない位置に置くこと敵に掴まれて引っ張り合いになったら、小柄な工藤さんの方が不利だからね
はい師匠
いつの間にか
マルゴさんは、ミッチィの師匠にランク・アップしている
この武器、気に入りましたお預かりします
ミッチィは、満面の笑みでムチを握りしめる
そのムチは、工藤さんにあげるよ
本当ですか師匠
うんあたしよりも、工藤さん向きの武器だと思うしそう思って、倉庫から出して来たんだ
ミッチィは、眼を輝かせてムチを見る
レッドビュート、レッドビュートと名付けます
ミッチィは嬉しそうに言った
マルゴさんは、ミッチィに
じゃあ、自分で色々と試して鞭の感触に慣れておいてここよりも、地下通路の向こうの隠しガレージの方が広いから、そっちで練習しようこの部屋は、ミナホたちが使うみたいだし
先に行ってて、あたしはミナホと話をしたらすぐに追い掛けるから
ミッチィは、下の階への隠しドアを開くと嬉しそうに、オレを見た
レッドビュート、確実に使えるようにしておきますからっ
あ、ああ頑張って
オレには、そんなことしか言えない
それからミッチィは、ミナホ姉さんに礼儀正しく一礼して、雪乃には憎しみの眼で一瞥して監視室へ下りて行った
現在までのところは異常なし工藤さんのお父さんたちも警戒してくれているしね
マルゴさんがミナホ姉さんに報告する
香月様の挑戦状が効いているんでしょ夜までは、襲ってこないと思うわ
挑戦状って
オレの質問に、マルゴさんは
ほら、ホテル一棟丸ごと使って、ヴァイオラを待ち構えるってやつだよ
シザーリオ・ヴァイオラ本人は寧に対するこだわりだけで来日しているけれど、他のメンバーは違うわ
特にヴァイオラの殺し屋集団のマネージャーのロレンザッチョ・バンディーニはねせっかく日本まで来たんだ金になる仕事と自分たちの能力の宣伝をしたいって考えているわよ
香月閣下は、その標的としてはベストだよね
みすずのお祖父さんぐらいの大物なら敵も多い
せっかくの機会だからそういう人と契約して、香月さんを暗殺して大金を稼ぐ
また、そのことで日本の裏社会に自分たちの能力を誇示したいんだ
そういう流れになるように香月様が、ご自分から動いて下さったのよ
ま、閣下は楽しんでいるよねヴァイオラの標的になることを
だから少なくとも、学校に居る間はヴァイオラの襲撃は無いと思うわ
百パーセント安全てことは無いけれどミスター・ヴァイオラだって、下手なことをして戦力を失いたくないだろうし
少数の精鋭しか連れてきていないんですから
シザーリオ・ヴァイオラは、閣下のお膳立てしたゲームに喜んで乗ってくるよそういう性格の男だからね
だから心配事は、なるべく今のうちに処理しておいた方がいい
マルゴさんがオレに言う
工藤さんのガス抜きはあたしがしておいてあげるから
ガス抜き
あの子は、みすずさんに言われてあたしたちと合流しているだけで黒い森のメンバーでは無いだろだから、一晩、見知らぬ集団と一緒に居てちょっと、ストレスが溜まっているんだよ
だから朝、吉田くんに強く当たったのよ
ていうかあの子も大分、吉田くんに依存し始めているよね
あの子吉田くんにみすず様だけを選べみたいなことを言っていたけれど心の中は違うよね
ええ正確には、みすず様と自分を選んでってことなんでしょうね
元がみすずさんLOVE一筋のレズっ子だから
男の子に全然関心の無かったレズッ子が吉田くんのことが、気になってしょうがなくなっているってことだよ
さっきも吉田くんを意識して、ムチを振り回していたわよね
うん可愛かったよね
まとにかく、少し運動させて気を紛らわせてあげることにするよそれにあのムチは使えるよヴァイオラとの対決には、工藤さんの力も必要になるし
そうね護衛に徹して貰うにしても、鋼球よりもムチの方がいいわね
彼女の思い通りに使えるように指導しておくよ
頼むわマルゴ
警戒監視は、克子さんと寧でやっているけど
寧一人では無理かしら
大丈夫だと思うよセンサーに何かが引っ掛かったら、アラームで知らせてくれることになっているし
じゃあ克子にここへ来るように伝えてくれる
マルゴさんも隠しドアへ向かう
ふと、立ち止まって
吉田くん、頑張ってね
マルゴさんは、オレにそんなことを言った
君が正しい選択をすることを祈っているよ
とにかく、そう返事をした
マルゴさんが隠しドアの向こうに消えるとすぐに、入れ替わりで克子姉が上がって来た
お呼びですか、お嬢様
ええ克子、雪乃さんの背中の機械を外してあげて
背中に貼られた遠隔操作の電撃ユニットか
はいかしこまりました
克子姉が、雪乃の方へ行く
そうね隣の部屋を使ってちょうだいここであたし、吉田くんに内密の話をするから
隣の部屋
校長室の隣は緊急事態が起きたときの放送室になっているのよ
確かに、壁に小さなドアがある
外の廊下かからも入れるけれど校長室からも直接入れるようになっているのよ
じゃあ、雪乃様参りましょうか
克子姉の言葉に、雪乃は
不安な表情をしている
ずっとそのままスタンガンを貼り付けにしておいた方がいいのかしら
ミナホ姉さんが冷たくそう言った
いいえ外して剥がして下さい
ならあちらの部屋に行きましょうね
克子姉が雪乃を隣の部屋に連れて行く
校長室の中に残ったのはオレとミナホ姉さんとメグの3人だけだ
ミナホ姉さんは、校長の机に座り
ノートパソコンを起動させた
そろそろ遠藤くんがどうなったか知りたいでしょ
そうだ遠藤は
20分前の映像よ
ミナホ姉さんはノートパソコンの画面を、オレたちの方に向けた
学生時代に、同級生に国会議員の娘がいました
すっごいお金持ちで、いつもお洒落な格好をしている子だったんですけれど
あたし選挙の時って嫌なのよ地味な格好して、お父さんと一緒に選挙区廻りしないといけないからちゃんと校則通りに制服着て、頭とか三つ編みでさ地味で真面目な子みたいにしていないといけないんだもん
雪乃の地味バージョンは、彼女のその発言から思い付きました
ちなみに当時の私の彼女が、その子の家に遊びに行きまして
すっごいお金持ちだって聞いていたけれど、想像を絶するほどじゃないしま、こんなもんなんだろうなあってぐらいの家だったよ
と言うので
あのさあの子のお父さんの選挙区は、地方なんだよだから、君が遊びに行ったのは、あの子の家の東京の別宅であの子は、東京の学校に来たくて、わざわざこっちに住んでいるんだからきっと、地元にはもっと凄い家があるんだと思うよ
と私が言ったところ
世の中、理不尽だよ
と、言ってわあわあ泣き出してしまいました
相手の暮らしぶりを見て、泣くって
202.ステップ2
ノートパソコンの画面の中
そこは体育館の中の一室だった
岩倉会長とその手下である、二人の生徒会所属の男子生徒の姿が見える
そしてもう一人
小さなベッドの上に気絶している遠藤が、転がっている
いや普通のベッドとは違うぞ
妙に高さが低いし明らかに小ささ過ぎる
人が一人横になっるのが、ギリギリ精一杯なサイズしかない
気付いたあれ、ストレッチャーよ
ミナホ姉さんが、ニヤッと笑う
ストレッチャーって
病院とかで、患者さんを運ぶためのキャスター付きのベッドよ救急車に乗せたりするのにも、使うわ
ああ判った
しかもねこれ、特別製なのよ
ミナホ姉さんが、そう言うと
画面の中で遠藤は、胴体と手足に何を括り付けられていく
あれ患者さんが、救急輸送の途中で暴れないようにするための拘束具よ
拘束具
よく見ると黒い革製のベルトみたいだ
遠藤は、二人の生徒会男子らよってストレッチャーに完全に固定される
さあてと
モニター画面の中で岩倉会長が、特徴的な形をした大きなゴーグルとヘッドフォンを取り出す
素敵な夢を、見せてあげるわ
岩倉会長が、意地悪なの笑顔で遠藤にゴーグルとヘッドフォンを填める
あのゴーグルはね内側がモニターになっているのヘッドマウント・ディスプレイ人間の眼に直接ビデオ映像を見せることができるようになっている、ゴーグル型のモニターよヘッドフォンも特別製でねあれを付けると、外の音は全く聞こえなくなるわつまりね視覚と聴覚を制限し、こちらの示した映像と音声だけしか知覚できないようにしたのよ
肉体の自由を拘束され
眼は強制的に、ビデオ映像を見せられ
耳は特定の音声しか聞こえないようにされている
これ昔、カルト宗教の団体が使っていた洗脳装置を参考にしているのよ
まさか遠藤を洗脳するの
オレの言葉に、ミナホ姉さんはクククッと笑った
遠藤くんみたいな子は、洗脳するメリットなんて無いわよ洗脳したぐらいじゃ、頭の悪さは直らないんだから性格もね
じゃあ何で、こんなことを
遠藤くんには、真実を見て貰うわ正しい現実の姿をね
画面の中では岩倉さんが楽しそうに、遠藤に取り付けたゴーグル型モニターとヘッドフォンから伸びるコードをノート・パソコンに繋げていく
目を覚ませてあげなさい
岩倉さんが、一人の生徒会男子にそう命じる
その男子は何かの薬品瓶を取り出し、その匂いを遠藤に嗅がせる
ムハッッッ
薬の匂いにむせ込んで遠藤が眼を覚ますッ
ゲホッ、ゲホゲホゲホッッ
激しく咳き込む遠藤
な、何だこりゃあ真っ暗だぞか、身体が動かねぇどうなってんだ、こりゃあ
岩倉会長がノートパソコンのキーを叩く
ステップ2
その会長の声は特殊なヘッドホンで、完全に耳を塞がれている遠藤には届かない
何だ眩しいぞおいっ何なんだぁッ
そんな画面の様子を見ながらミナホ姉さんは言った
今、遠藤くんには眩しい光の点滅を見せているわ軽い催眠状態になって、何が何だか判らなくするためにね興奮作用もあるのよ、あれ
そういう機械なんだ
今の遠藤くんはもう、自分が縛り付けられて寝転がっていることも判らなくなっているわ夢と現実の境が判らなくなっているだから
ミナホ姉さんの眼が、冷たく輝く
ここで、あの子に跳びきりビターな現実を注ぎ込んであげるわ
岩倉会長を使って、遠藤に何をするつもりなんだ
なんだこりゃあオレ、どうなっちゃったんだよおいっ
遠藤が目映い光の点滅する世界に絶叫している
ガシガシ身体を揺するが
ストレッチャーにしっかりと拘束固定された身体は、1ミリたりとも動かすことができない
さあここからが、本番よ
画面の中で、岩倉会長がパソコンを操作する
催眠導入の映像は、もうおしまい
ミナホ姉さんも、キーを操作する
画面を分割して今から、遠藤くんの眼に映るものを、あなたたちにも見せてあげるわ
画面が左右に分割される
右側は監視カメラによね、部屋の様子が今まで通り映っているが
左側は
閉ざされた遠藤の視界直接、眼に入って来るビデオ映像
そこに映し出されたものは
今日の早朝の、白坂雪乃の姿だった
何だ雪乃雪乃お前、そこに居るのか
知覚を制御されている遠藤にはそれが過去の映像なのか、現在そこに居る姿なのか判らなくなっている
現実の遠藤は、ストレッチャーの上に仰向けになって拘束されているのだから
論理的に考えれば、視界に入って来た雪乃は天井に張り付いていることになる
しかし知覚をメチャメチャにされた遠藤は、そんな不条理にも気付かない
え雪乃、お前、何でそんな格好しているんだよっ
画面の左側遠藤が今、見ている雪乃は、男物のYシャツを一枚纏ったままの半裸の状態だ
そうそれは数時間前の視聴覚教室での雪乃の姿
過去の雪乃が現在の遠藤の方に振り向く
ニコッと微笑む
そうだ夜明け前の視聴覚室で、雪乃はカメラに向かって確かにそんなことを言った
な何を言っているんだよ、雪乃
遠藤には意味が判らない
早く質問しなさいよ
半裸の雪乃が遠藤に向かって、そう言う
質問て何なんだよここはどこなんだよお前、何をしているんだよっ
遠藤が、矢継ぎ早に質問するが
当然、その声は過去の雪乃には聞こえない
白坂雪乃ですこの間、十六歳になりました高校一年生です
あこの映像は、編集されている
オレの言葉が上手く、カットされている
何言ってるんだそんなことは、知っているんだよっ
遠藤が過去の雪乃に、キレる
にこやかに遠藤に告げる、過去の雪乃
な何だよ、それ
遠藤は絶句する
えっと3人ですあんたは、知っているかどうか判らないけれどさあたし、援助交際させられて、オジサン2人とエッチしているんだよね夜の公園の公衆トイレでさどっちの人にも中出しされたからもし、あたしが今、妊娠しているとしてもさあんたの子供じゃなくて、そのオジサンたちの子かもしれないわよ
その受け答えで遠藤は、ようやく気付く
雪乃お前、誰と喋っているんだよ
過去の雪乃は遠藤の問いを完全に無視する
だって、二人連続で何回も出されたわよ
親しげな人間と遠慮の無い様子で、普通に話している雪乃
雪乃何回も出されたって
遠藤はぶるぶると震えている
雪乃は、笑って答えた
自分の指じゃ、もうそんなに気持ち良くなれないのよ届かないのよ、あそこに
子宮よ子宮の入り口のところ男の人のオチンチンでないとあたしの指じゃ、気持ちいい場所に届かないのよ
雪乃の情欲に燃えている瞳
雪乃が興奮した眼で、遠藤に語る
その言葉が遠藤の心を乱す
何だよそれど、どういうことなんだ
そこに今までカットされていた過去のオレの声が聞こえてくる
そうだあの時
オレは、雪乃にそう言った
雪乃がニヤッと微笑む
オレこんな声をしているんだ
まるで、オレらしくない
でも、確かに過去のオレの発言だ
オレと雪乃の会話に遠藤は、激しく混乱する
おいっお前、誰と喋ってるんだよ誰なんだ、お前ッッ
絶叫する遠藤
分割された反対側の画面では
そんな苦悩する遠藤を見て、岩倉会長がニタニタと笑っている
過去の雪乃がYシャツの前をはだける
ね、もういいでしょ
そして、大きく開脚した
過去の雪乃は、下着を履いていない
剃毛された赤子のような女性器が露わになる
オレは気付いた
雪乃の下腹部の吉田の緑色のタトゥが無い
この動画はかなり加工されているらしい
過去の雪乃は自分の指で、ヴァギナを開いた
おいちょっと待てよ雪乃
遠藤は雪乃の女性器を見るのは初めてだろう
いや雪乃どころか、他の女の局部だって見たことはないのかもしれない
ましてや同い年の少女が、自分で自分の割れ目拡げてみせる光景なんて
過去の雪乃が荒い呼吸で、そう言った
雪乃が淫靡に微笑む
遠藤が混乱している
ホント誰にも秘密にしてくれるっていうのならセックス・フレンドになってもいいって思ったわよあたしがシタくなった時に、呼び出してセックスするそんな関係もいいかなって
遠藤の中で確固とした雪乃のイメージが崩壊していく
雪乃お前、誰と喋っているんだよっ誰とヤっているんだ、お前
憎しみの声で遠藤が叫んだ
ほらあんたも脱いで、こっちにいらっしゃいよ
雪乃が、笑って男を誘う
遠藤ではない別の男を
今更恥ずかしがる間柄でもないでしょ
そんな声が、脇からして
画面の中に過去のオレが映し出される
遠藤にはずっと隠れていたオレが、突然現れたようにしか見えないだろう
よ、吉田
驚く遠藤
過去のオレは過去の雪乃前で、裸になっていく
雪乃は服を脱ぐオレを、うっとりとした眼で見ている
ふ、ふざけんなよっそれはオレの女だぞってめぇ、いい加減にしろッッ
ブチ切れる、遠藤
必死に全身に力を込めて拘束具から抜け出そうと、もがく
しかし革のベルトは、ギッチリと遠藤の身体に食い込んでいる
過去のオレが全裸になる
雪乃は裸になったオレに動じることなくむしろ、オレのペニスを見てニヤッと微笑む
オレのペニスはすでに隆々と勃起していた
雪乃は舌なめずりする
何て、エロい顔なんだ
過去の雪乃が、過去のオレの勃起を指差して見上げる
雪乃、お前、何を言っているんだよ
積極的な雪乃の言葉に遠藤は呆然とする
過去のオレのそんな問いに雪乃は
過去の雪乃の手が過去のオレのペニスに触れる
おいっ、止めろ雪乃ぉっ吉田のチンコなんか、触るんじゃねぇぇ
遠藤の声が過去の雪乃に届くはずがない
過去の雪乃は片手でオレのペニスを持ったまま、遠藤に向かって微笑む
いや本当は、カメラを見ただけなんだろうが
今の遠藤には自分に振り向いたようにしか見えないだろう
興奮しきった女の満面の笑み
馬鹿野郎ッそんなことするんじゃねぇぇ
過去の雪乃のぷっくりとした唇が過去のオレの亀頭を包み込む
過去の雪乃は、満足そうに笑いながら過去のオレの亀頭をペロペロと舌で舐めている
可哀想な、遠藤
自分の彼女だと思っていた女が自ら、男にフェラチオする姿を見せつけられている
十六歳の少女は淫乱なメス犬の顔をしていた
亀頭から唇を離して過去の雪乃が、過去のオレに言う
オレたちの過去の会話はセックスフレンドの甘い言葉のやりとりにしか聞こえない
過去の雪乃は、クククと笑い出す
あんたの精液で、お腹の中、いっぱいになりたいのくたくたになるまで、徹底的にセックスしたいの
遠藤は処女だと信じていた自分の彼女の真の姿を知る
淫乱なビッチ
すでに男を知りセックスの悦びに目覚めている女
それが白坂雪乃
画面の中で過去のオレが、雪乃の乳首を吸う
過去のオレは桜色の乳首を舌先で転がしているん
過去の雪乃は紅潮した顔でオレを見ている
どうしてだよ何でだよお前は、オレの女だろ何で、吉田なんだよっオレには、触らせてもくれなかったくせにっ
遠藤の中で徐々にショックが怒りに転化していく
そんな遠藤の心とは、反比例して過去の雪乃の行動は、さらにエスカレートする
大きく、M字に脚を開いて
過去の雪乃が自分から、オレの指を求める
クリトリスが大きくなって顔を出している
触らせるなッ吉田なんかに触らせるんじゃねぇぇ
遠藤の命令を過去の雪乃は、無視する
過去のオレが指の腹で、押し潰すようにクリトリスを刺激した
身体を震わせて、喘ぐ雪乃
過去の雪乃がさらにエスカレートした愛撫をねだる
雪乃はもうホンモノの淫乱クソ・ビッチにしか見えない
過去の雪乃が妖しい眼で、過去のオレを見ている
その声に遠藤は
止せよやめろよおいってめえら、今すぐ離れろっブッ殺すぞ、てめえらっ
渾身の怒声を、オレたちに叩き付ける
なのに過去のオレは
過去の雪乃に、キスを求める
一瞬遠藤の息が止まった
過去のオレが過去の雪乃に問う
そんな過去のオレの屁理屈に
過去の雪乃は、ニッと微笑んだ
遠藤がぶるぶると震え出す
ふざけるなぁお前は、オレのものなんだぞっ雪乃ぉッッ
過去のオレは過去の雪乃の唇に、むしゃぶりつく
雪乃も自分から舌を絡めてくる
過去のオレたちの舌と舌が重なり合う
ふざけやがってふざけやがってふざけやがって
遠藤の悲痛なつぶやき声